2011年10月31日

第34話「夢を叶えて」感想その2

では本編ですが、冒頭は街に買い出しに出た帰りのルカとハカセが歩いているシーンです。
ハカセは荷物を両手いっぱいに持っており「ルカ〜!ちょっとくらい持ってよぉ!」と文句を言います。
ルカはハカセに荷物を全部持ってもらって手ぶらで歩いており、これは第27話の冒頭と同じような感じですが、
一見こき使われているだけのようでも、こういうさりげない(?)優しさがハカセの男の魅力であると
見込んでいるルカは、こうして甘えるのが心地よいようで、
ハカセも文句は言いつつも結構こういう2人の関係性は好きであるようです。

そういうわけでルカは相変わらず変な理屈で駄々をこねて甘えたように
「だぁめ!アンタは身体鈍ってんだから、少しは運動・・・!」と言いかけて、
地面を見てハッとしたかと思うと、いきなり側転して起き上がります。
何事かと思ったら、ルカは500円玉を手にして得意げな顔をしています。
道に落ちていた500円玉に気付いて拾い上げたようです。
お金を見つけるのが素早い守銭奴キャラのルカらしい行動です。

しかし、ハカセはすぐに駆け寄って「この星で拾ったお金はお巡りさんに届けるんだよ!」と注意します。
ルカが拾ったお金をネコババするつもりなのではないかと心配になったようです。
しかし、なんという子供番組的に正しいセリフなのでしょうか。
しかもこれを宇宙海賊が言っているのですから、ある意味素晴らしい。
かなり違和感はあるのですが、こういうセリフがハマるのはハカセが元来、海賊らしくないキャラだからです。

一方、元盗賊であり、マーベラス一味で最もそういうモラルからは遠いキャラであるルカは
「分かってるって!」と、ホントに分かってるのかどうか、かなり怪しい様子で
嬉しそうに500円玉を指の間に挟んでかざして眺めます。
どうも自分のモノにしようとしている気満々です。

もちろん拾ったお金は交番に届けなければいけない。
これは大原則ですが、それにしても数百万円はするような宝石類を多数所持するルカが、
こんな500円玉程度にここまで目をキラキラさせるというのも、ある意味素晴らしいとは言えます。
どんなお金持ちになっても小銭を決して軽々しく扱わずに価値を見出し、そこに夢を見るというのは、
ある意味、真にお金の価値を知った者による道徳的行為ではあります。
そもそもここまで500円玉にひたむきな愛情を注ぐ人間はルカよりも貧乏な者の中にもほとんどいないことでしょう。

そうしてちっぽけな500円玉を純粋に愛でるルカの至福の刻を一発の銃声が邪魔し、
500円玉は銃弾に弾かれてルカの手からこぼれて、地面を転がり側溝の中に落ちてしまいました。
悲しそうな顔で驚いたルカがキッと銃声のした方を睨むと、
ゴーミン達を引き連れたスゴーミン数人が立っており「海賊ども!今度こそ抹殺する!」と喚いています。
たまたま鉢合わせになったザンギャック部隊が襲ってきたようです。

抹殺するとか言って、すっかり殺る気満々のスゴーミン達。
狙われているのはルカとハカセの命なのですが、ルカはお金を失った悲しみと怒りの方が大きいらしく、
「よくもあたしのお金を!」と激怒してスゴーミン達に掴みかかろうとして進み出ます。
ハカセはやっぱりルカが500円玉を自分のものにしようとしていたことに気付き、
慌てて後ろからルカの肩を掴んで「・・・分かってないじゃん!ルカのじゃないって!」と注意します。
しかしルカは完全にキレてしまっていて、いきなりハカセの顔面に裏拳を喰らわせると、
「いくよハカセ!」と叫びます。

確かにハカセの言うように自分のお金ではないかもしれない。
しかしそれでも、たとえ他人のものであっても、お金はルカにとっては大切なものなのです。
それを粗末に扱ったザンギャックに対しての怒りがルカを突き動かしていたのでした。
それでとにかくひと暴れしないと収まらない状態となっているようです。

ところが、その戦いに割って入るように、突然「その必要は無いよ!」という声を上げて、
何者かが木陰から出現します。
白い上着を着てサングラスをかけた、長身のイケメン風の男です。
なんだか一昨年の今頃、「仮面ライダーW」に出ていたガイアメモリの売人上がりの婿養子さんによく似ています。

変な男の登場で戦意を削がれたスゴーミンは「なんだ貴様は!?」と、その男に凄みますが、
その男、普通の人間のように見えますが全くスゴーミン相手にビビった様子も無く、
クールに「通りすがりの・・・」と自己紹介し始めます。
通りすがりということは、これはやはり仮面ライダーなのだろうかとも思えますが、
よく考えたらそれはまた違う仮面ライダーです。
案の定、男は記憶喪失の悪の大首領みたいなことは言わず、「宇宙実業家さ!」と言います。

宇宙実業家がこの場面に通りすがって戦いの邪魔をしたそうです。そんなアホな。
すると男は続けて「ちょっとルカ・ミルフィと話がしたいから、お引き取り願えるかな?」と言います。
やっぱり通りすがりは冗談であって、
ルカに何か用があるのでザンギャックの連中は邪魔だから帰ってほしいということのようです。

が、当然、スゴーミンは「ふざけるな!」と激昂します。
一介の人間から邪魔だから帰れと言われて、はいそうですかと帰っていてはスゴーミンは務まらない。
しかしサングラスの男はあくまで落ち着いて「・・・とりあえず!」と懐に手を入れて何かを取り出します。
やっぱりガイアメモリを出すのかと思ったら、「これでどう?」と男が差し出したのは札束でした。

このお札、どうやら「1000ザギン札」であるようで、ザンギャック帝国支配地域内、
つまり宇宙の大部分で流通している紙幣のようです。
もちろん発行しているのはザンギャック帝国の政府であるようでして、
紙幣の真ん中に描いてある肖像画は、
例のザンギャック帝国の紋章の真ん中に描かれた意匠によく似たデザインをもっとよりリアルにしたような
怪人の肖像画になっています。
おそらくこれがザンギャック皇帝なのでしょう。
皇帝のリアルタッチの肖像画はこれが初登場です。

但し、ザンギャック帝国というのがいつの時代に成立したものなのか劇中では明らかにされていませんので、
この肖像画の皇帝が何代前の皇帝なのかは分かりません。
普通は帝国の草創期の皇帝が紙幣の肖像画になると思われますので、
もしこの肖像画が現在の皇帝だとするなら、
ワルズ・ギルの父である現在の皇帝は一代でザンギャック帝国を作り上げた傑物ということになります。

まぁそれはともかくとして、この札束はその1000ザギン札が100枚で1つの帯でまとめられているようです。
つまりこの札束1つで10万ザギンということになり、
第1話時点のルカの懸賞金が30万ザギンであり、現在の鎧の懸賞金が10万ザギンであることを考えると、
これはそう簡単に手に入れることが出来るような金額ではないことは分かります。

案の定、スゴーミンはその10万ザギンを手に取って「こ・・・こんなに!?」と仰天し、
慌てふためいて二の句が継げません。
しかし、すぐに気を取り直したのか、その札束をサングラス男に押し付けるように突き返して
「ふ・・・ふざけるな!こんなはした金!」と怒鳴ります。
が、「はした金」とか言ってるあたり、単にもっと大金を出すように暗に催促しているようにも見えます。

そうしたスゴーミンの下心は分かりきった様子でサングラス男は今度はアタッシュケースを持ち出し、
「じゃあ・・・更に、ど〜ん!!」とケースを開きます。
アタッシュケースということは、やはり中身はガイアメモリなのか?と思いきや、そうではなく、
やっぱり中身は札束でした。
しかも10万ザギンの札束が1ダース、つまり合わせて120万ザギンです。
このとんでもない大金を見て、スゴーミンやゴーミン達は「おお!?」と色めき立ち、ざわざわします。
明らかに動揺しているザンギャック連中に対して、
その男は「皆さんでどうぞ!」とアタッシュケースごと、その120万ザギンを渡してしまいます。
120万ザギンをくれてやるから、この場を立ち去るように暗に促しているわけです。

「金があるぞ!」とスゴーミン達は歓喜し、考え込みます。
ルカとハカセの現在の懸賞金を合わせても150万5000ザギンであり、
今こうしてタダで手に入った120万ザギンとそう大差は無い額です。
しかもルカとハカセを相手に戦って勝てる保証は無い。
ならば無条件で手に入る120万ザギンの方がスゴーミン達にとっては魅力的です。
どうせルカ達とはたまたまバッタリ出会っただけであり、
司令部からルカ達を抹殺する作戦を厳命されてきているわけでもなさそうですから、
何喰わぬ顔で120万ザギンを貰ってギガントホースに帰還して、この金はコッソリ山分けしても大丈夫なのです。

そういうわけで、いきなりスゴーミン達はルカとハカセに向かって
「急用を思い出した!今日のところは許してやる!次は必ず抹殺するからなぁ!」と、
池野めだか師匠のような捨てゼリフを残して退散していったのでした。
そのザンギャック連中の最低の振る舞いを見送って、
サングラス男は「地獄の沙汰も金次第・・・」と呆れたように呟きます。
お金さえあれば、どんなルールでも捻じ曲げることは出来るということです。
お金の万能さを表現すると同時に、お金に容易に屈する人間の醜さを嘆くニュアンスも込められた言葉です。

それはルカのようなお金大好き人間を揶揄するような意味合いもある言葉であり、
ルカはあまり聞いて愉快なフレーズではない。
それに、その人間の醜さを煽るような仕掛けをしたのはこのサングラス男自身なのです。
それなのに他人事のように澄まして、一段高いところから下民を見下ろすような傲慢さが少し漂います。

だいいち、ルカはたった500円を粗末に扱ったザンギャックに対する怒りで大暴れしたい心境であったのに、
この男は120万ザギンもの大金をゴミでも捨てるようにザンギャックに渡して場を収めてしまいました。
それは物凄くお金を粗末に扱う、ルカの嫌いな行為であったので、ルカはこの男に好感を持てませんでした。
こんな男が自分に何の用があるのだろうかと思い、
「何アンタ!?・・・余計なことして!」とルカは不機嫌そうに睨みつけます。

すると男は優しげな声で「久しぶり!ルカ・・・」と言うとサングラスを外して素顔を見せました。
そして「迎えに来たよ・・・君を・・・」とルカに向かって優しい眼差しを向けるその顔は、
霧彦・・・ではなくて、よく似てるけど別人のようです。
ルカは「カイン・・・!?」と驚きの表情で、その男の顔を見つめたのでした。
そうして見つめ合うこの2人、どうやら旧知の仲であったようです。
ただ、どうもこのカインという男の風貌が以前とは変わり過ぎていたためか、
ルカはサングラスをかけた姿では旧知の仲のカインのことが分からなかったようで、
2人が長らく会っていないことが想像できます。
そして、そのイケメンのお金持ちが、やけにルカと親しげであること、
そして「迎えに来た」などと言っていることに、ルカと一緒に居るハカセは胸騒ぎを覚えるのでした。

なお、このカインという男を演じているのは、
一昨年から昨年にかけて平成仮面ライダーシリーズ第11作として放送された名作「仮面ライダーW」で
印象的な敵キャラである園崎霧彦を演じられた、君沢ユウキ氏です。
レジェンドゲストではありませんが、
スーパーヒーロータイム的な意味ではレジェンドゲストに近い役者です。

なお、このカインは孤児が努力して立身出世したという設定ですが、
園崎霧彦も孤児院出身で努力で奨学金を得て勉強して這い上がった男という設定で、
悪役といっても根っからの悪というわけではなく、
金と出世に懸命なだけで、心根は綺麗な理想主義者であり、
真の悪に利用される存在という点でも、カインとちょっと似た役柄です。
ちなみに霧彦の妹の須藤雪絵を演じた平田薫さんは、
「マジレンジャー」で小津魁のガールフレンドの山崎由佳も演じており、
ある意味、レジェンド役者といえます。

さて、ここで今回はOPテーマとなり、OPナレーションは通常回バージョンです。
そしてCM明け、「夢を叶えて」という今回のサブタイトルが出ます。
今回は通常回ですから、過去作品のサブタイトルのフォーマットとは関係はありません。
ただ。この「夢を叶えて」というフレーズは「ダイマナン」のEDテーマ曲のタイトル
「夢をかなえてダイナマン」を連想させるフレーズであり、
当然、その歌詞の中にもこのフレーズはあります。

そもそも「ダイナマン」という作品のテーマの1つが、
夢をかなえるべく研究にいそしむ若き発明家たちが皆の夢を守るため戦士となって戦うというような感じでしたから、
この「夢を叶えて」というフレーズは「ダイナマン」を連想させるフレーズといえます。
但し、今回のエピソード内容と「ダイナマン」は何の関係もありません。かすりもしません。
ただ、「夢」というのは、スーパー戦隊シリーズ全体を貫く1つの重要なテーマでもあります。
そして、今回のエピソード内容は「夢を叶えるために頑張る」ということが描かれる話です。

そういう意味では、今回のサブタイトルは第32話「力を一つに」と似ているように思います。
あれも「ゴレンジャー」を連想させるフレーズでありながら、
エピソード内容は「ゴレンジャー」とは何の関係もなく、
しかし「力を一つに合わせる」ということ自体はシリーズを一貫したテーマであり、
同時に第32話の内容もまさに「力を一つに合わせる」という内容であった。
今回もそういうのと同じ趣向で、「ダイナマン」において強調はされたものの、
実際はシリーズを貫くテーマである「夢を叶えるため頑張る」ということを表現しつつ、
今回のエピソード内容も表すというものでありましょう。

さて本編が再開し、場面はゴーカイガレオンの船室に変わっており、
買い出しから戻ってきたハカセの話を聞いて、マーベラスが怪訝そうな顔で「ルカの幼馴染?」と問い返しています。
ルカはおらず、ハカセだけが戻ってきているところを見ると、
さっきの冒頭の場面の後、ルカは久しぶりに再会したカインと一緒に何処かに行ったようで、
買い出しの荷物を持ってハカセだけがガレオンに戻ってきたようです。

で、カインはやはりルカの幼馴染であったようで、
それをハカセが聞いているということは、冒頭のシーンには実は続きがあって、
ルカとカインの間で会話があり、それをハカセは聞いた上で別れてガレオンに戻ってきて、
その内容をマーベラス達残った仲間に報告しているようです。

その概要はだいたい皆に話した後のようで、
ハカセの話を頭の中で整理した鎧が「それって、もしかして、もしかすると・・・元カレさん?・・・ですよねぇ!」と
勝手にあれこれ想像して面白がっています。
ナビィも鎧の推理に同意のようで、「そうだそうだ!感動の再会まちがいないんじゃない!?」とはしゃぎます。

鎧とナビィはルカとカインはきっと愛し合っていた関係だと思い込んでおり、
何やらこれからロマンチックな展開があるのだと決めつけています。
その根拠は「迎えに来たよ、君を」という、あのカインのセリフでしょう。
確かにそれはプロポーズの言葉のように聞こえます。
ハカセも鎧やナビィにそのように囃されると確かにそのようにも思えてきます。
そう考えると、ルカがあの長身のイケメンの金持ちと一緒に遠くに行ってしまうような気がして、
なんだかムシャクシャしてきて「・・・知らないよ!そんなの・・・」と声を荒げると、
買い物袋を鎧に乱暴に押し付けて、憮然とした顔でソファに座り、
「・・・なんか怪しいんだ・・・スケールがでかすぎるっていうか・・・」と呟くのでした。

ハカセがどうもルカとカインの件が気に入らないのは、確かにジェラシーのような心情もあるのですが、
それだけではない。
何となく、あのカインという男から胡散臭さを感じるのです。
それは、さっきもスゴーミン達を追い払うために、これみよがしに札束をチラつかせるような、
いかにも自分はすごい金持ちだとアピールするような態度が鼻についたからです。
あまりにスタンドプレーが過ぎて、実態以上に自分を金持ちに見せようとしているように感じられたのです。

何故、それがハカセの頭の中で胡散臭さとして引っ掛かるのかというと、
ルカが非常にお金が好きすぎるというか、お金に釣られやすい性格だからです。
カインという男がルカと旧知であるのは間違いないであろうから、
カインはルカのお金に弱い部分を熟知しているはずで、
ならばカインはお金持ちのフリをしてルカを騙そうとしているのかもしれないと、ハカセは思ったのです。
何故そこまでハカセが疑うのかというと、
ちょっとカインの自己アピールが常軌を逸したものであったからです。
ハカセは皆にさっきの冒頭の場面の会話の続きの部分を説明します。

それはまず、カインが「君の夢を叶えるよ!海賊なんか辞めて一緒に行こう!」と
ルカに熱く語りかけたところから始まります。
ハカセはムッとして「・・・海賊なんかって何だよ!」と口を挟もうとしますが、
ルカはハカセを制して、笑顔で「無理無理!ハンパな夢じゃないんだから!」と言います。

ハカセは夢を叶えるとかそんな話以前に、
ルカがいきなり昔の知り合いに誘われて仲間を離れて何処かに行くなど有り得ないと思っています。
それだけハカセはルカが海賊団マーベラス一味の一員であることを何より大事にしていることを信じており、
海賊仲間がルカにとって一番大事なものであると思っています。
つまり、ルカは海賊であることに誇りを持っている。
そしてルカの「夢」とは、マーベラス一味の皆の夢である「宇宙最大のお宝」を手に入れることであり、
それは海賊としてマーベラス一味の中にいてこそ叶う夢なのです。
だから「夢を叶えてやるから海賊をやめろ」などと言われてルカが相手にするはずはない。
というか、金持ちだからといって「宇宙最大のお宝」を追う海賊の夢を金で買うことなど出来はしない。
えらく不遜な物言いだとハカセは思い、憤りを感じたのでした。
そして、それはルカも同じ気持ちだろうともハカセは思っていたのです。

ところがルカはハカセのそうした反発は制して、
カインの提案を「あたしは海賊を続けて宇宙最大のお宝をゲットする」と真っ向から拒否するのではなく、
自分の夢を叶えるには膨大なお金が要るから、
ちょっと金持ちだからといってそれは無理だという旨のことを言ったのです。
それはつまり言い換えれば、ルカの夢は「宇宙最大のお宝」ではなく、何か別の物であるという意味でした。
「宇宙最大のお宝」は「大いなる力」を34個集めて手に入れることが出来るものであり、
お金をいくら積んでも買うことなど出来ないからです。

ルカの夢は「お金を使って実現する何かの夢である」ということは、
第6話でジョーが「それはいったい何なんだ?」とルカに質問して、
ルカが「言うと叶わなくなるから」とはぐらかしてその内容は言わなかった、あの「夢」ですから、
内容は不明ながら、そうした「夢」の存在自体はジョーは知っているようです。
ただ、ハカセはルカがそういう「夢」を持っていること自体知らなかったようです。
おそらくその「夢」の存在を知っているのはジョーとマーベラスだけであり、
その2人もその「夢」の内容は知らないようです。

だからハカセはルカの「夢」の存在を知らなかったので、
ルカが「宇宙最大のお宝」よりも大事な別の「夢」を持っていたという事実そのものがまずショックでした。
そしてそれに加えて非常に気がかりであったのは、
ルカがその夢を叶えるために膨大なお金が必要だということをカインに言っていることでした。

ルカはそれに足るだけのお金をカインが用意できるわけがないから、カインについていくことはないと、
一応カインの誘いを断っているのですが、
これは言いかえれば、もしカインがそのルカの夢を叶えるに足りるだけの金額を用意できるのならば、
カインの誘いに乗る可能性はあるということになります。
お金で買えない「宇宙最大のお宝」がルカの夢であるのならばこんな心配はしなくて済むのですが、
ルカの夢がお金で買えるものだと分かったことによってハカセは心配になってくるのです。
そのハカセの心配を増幅させたのは、カインがルカに拒否されるなり、
自信満々に「今の僕の財産が・・・8千億ザギンでも?」と応えたからでした。

その話をハカセから聞いたジョーは「・・・フッ・・・8千億ザギン?・・・冗談だろ!」と呆れ果てて鼻で笑いました。
全く非現実的な数字を耳にしたかのような反応ですが、
どうも「ザギン」という単位が地球人の我々にはピンとこないので
ジョーがここまで呆れる感覚がどうも分かりにくい。
それは同じく地球人の鎧も同様であるようで、
「ああ、そういえば1ザギンで、日本円だといくらぐらいなんですか?」と、基本的質問をしてくれます。
鎧、ナイスです。

その質問に対して、ハカセは「360円くらいかな」と即座に回答します。
なんだか昔の固定相場制の時代の円とドルの為替レートみたいですが、
要するに「1ザギン=360円」であるようです。
てゆーか、それってザンギャック経済圏と日本との間で貿易や金融取引が成立してるということなのか?と
疑問は無いではないですが、まぁ細かいことは気にしないことにします。

ちなみに、マーベラスの現在の懸賞金は500万ザギンですから、日本円に換算すると、なんと18億円です。
一味で一番懸賞金の安いハカセですら、5000ザギンですから日本円に換算すると、180万円となります。
といっても、まぁザンギャック帝国と地球では物価が違うのでしょうから、
あんまり参考にはならないでしょうけど。

しかし、そうだとしても、それでも8000億ザギンというのは、
ちょっと桁が違い過ぎる、天文学的数字だということは明白です。
鎧は「あぁ・・・ということは、日本円で・・・」と頭の中で8000億に360円を掛けて、しばし暗算をしてみて、
「・・・300兆円!?」と飛び上がって驚き、床に転がり落ちて「ああ、びっくりしたぁ・・・」と呆気にとられます。
正確には8000億に360円を掛け算すると、288兆円です。まぁおよそ300兆円ということになるでしょう。
その300兆円をカインは財産として保有しているというのですから、ジョーが呆れ果てるのも無理は無い。
常識を超えた金額であり、一介の青年実業家がそんなに稼ぐことが出来るわけがない。

ナビィはその金額を真に受けて「玉の輿だぁ!超玉の輿ぃ!!いいないいなぁ!」と大騒ぎします。
まだルカがカインと恋人同士だったと思っているようですが、
それを鬱陶しそうにハカセは「うるさいよ!!」と一喝し、黙らせます。
あんまりルカとカインの恋仲を妄想させられるのが不愉快というのもありましたが、
ハカセのイライラの原因はそういう単純な問題ではなく、
ルカの夢が膨大な金で買えるものであり、カインの財産がそこまで膨大なものであるのなら、
ルカはカインの誘いに乗ってしまう可能性があるということでした。

ハカセは今までルカにそんな夢があるとは知らなかったので、
ルカがやたらお金にこだわっている姿を見て呆れることが多かったのですが、
こうしてルカの夢の存在を知ると、今までのルカの守銭奴のような行動には、
それなりの切実な理由があったのだと気付きました。
それが分かった今だからこそ、ハカセはルカが夢のためにお金を必死になって欲しがるのであろうと
予想することが出来るのであり、カインの誘いに傾く可能性も高いということは理解出来るのです。

そのようにしてルカが夢のために自分達よりもカインを選んで何処かに行ってしまうということも
もちろんハカセは嫌でした。
でも、それならまだマシです。
自分達は寂しいけど、それでルカの夢が叶うのなら、それはそれで祝福すべきことだからです。
でも、本当にハカセが心配していることはそういうことではないのです。

まさにジョーが呆れたように
「8000億ザギン(300兆円)」などという財産は絶対に有り得ない非現実的な数字なのです。
そんな有り得ない数字を持ち出して信じる人間はいない。
現にジョーも信じてはいないし、ハカセも信じてはいない。
つまり、そんなウソを言うということは、あのカインというのは金持ちのフリをしているだけの
嘘つきだということです。

しかし、極端に欲の皮の突っ張った人間は、そんなミエミエの嘘にでも引っ掛かってしまうものです。
まさにルカは、その膨大な金の必要な「夢」のせいで、お金に非常に弱い、釣られやすい状態にあるといえます。
そして、そういうルカの状況をあの幼馴染のカインは知っているのです。
だから、カインは大金持ちのフリをしてルカを騙すために近づいてきたのだとハカセは睨んでいます。
そして実際にルカはカインの誘いに応じて、後で戻ると言って、一緒に何処かに行ってしまった。
ルカが簡単に罠に嵌るようなこともないとは思うが、それにしてもお金が絡んでいるだけに、
どうも心配になるハカセであったのでした。

そこにナビィを抱いたアイムが進み出て、
「・・・それにしても、いったい何なのでしょう?・・・ルカさんの夢って・・・」と皆に問いかけます。
アイムもルカが「宇宙最大のお宝」以外に重大な夢を持っているということは知らなかったようですが、
今のハカセの話を聞いて、ルカにお金がたくさん必要な夢があるのだということを初めて知り、
その夢が何なのか、純粋に興味が湧いたのでした。

アイムは誰かその夢の内容を知っているのかと思って問いかけたのですが、一同は黙り込みます。
誰もルカの夢が何なのか知らないのです。
以前に一度、突っ込んでみたことのあるジョーも「・・・さぁな・・・!」と腕組みします。
あの時も結局「言うと叶わなくなる」などと変なゲン担ぎみたいなことではぐらかされて
ルカは夢の内容を教えてはくれなかった。
あの調子では誰が質問しても教えてくれそうにはないと思い、
おそらくルカは夢が叶うまでは誰にも言うまいと、ジョーは思いました。

しかし、そう考えると、そのカインという男はルカの夢の内容を知っているのだということにジョーは気付きました。
幼馴染だから知っているのだろうが、そんな膨大な金の要る夢の実現のために金を出すという、
そんな普通は有り得ないような申し出をルカが信じて何処かについて行ったということは、
ルカにとってそのカインという男は、よほど信用のおける相手なのだろう、
それはあるいはマーベラス一味の仲間よりも信用出来る相手なのかもしれないとも、ジョーは思ったのでした。
旧友というものは、そういうものだと、ジョーはふとシドのことを想うのでした。

さて、その頃、宇宙空間のギガントホースのザンギャック軍指令室では、意外な光景が繰り広げられていました。
先ほどカインから120万ザギンを受け取ってルカ達の前から退散したスゴーミン達が
指令室の中でさっきのお金の入ったアタッシュケースを持って集まって、ワルズ・ギルに謁見しているのです。
金で釣られてルカ達を見逃したことがバレたらマズいはずなのにこれは不可解・・・と思ったら、
なんとワルズ・ギルは「いい芝居だったぞぉ!お前たち!」と、このスゴーミン達を褒めたのです。
そして殿下は「女海賊め!まんまと作戦に乗ってきた!」と上機嫌です。

どうやら、さっきのスゴーミン達の「お金を貰って退散した」という行動はルカを騙すためのお芝居だったようです。
ということは、お金を渡したカインもその芝居の片棒を担いでいたわけで、
カインもザンギャックと共謀しているということになります。
どうしてそんなお芝居をする必要があったのかというと、
お芝居の結果にワルズ・ギルが満足していることから推理するに、
カインが金持ちであることをルカに強く印象づけることが目的であったと思われます。

それは、ルカという女海賊が非常に金銭欲が強いということに目をつけた作戦であり、
カインが金持ちだと思い込めば、金銭欲にかられてカインに対するルカの警戒心が緩んで、
まんまとルカを誘い出すことが出来るだろうという作戦でした。
つまり幼馴染のカインを使ってルカを罠に嵌めようという作戦であるのです。
そうなると、カインは宇宙実業家であるとか、8000億ザギンの財産があるとかいう話は
全部ルカを騙すためのデタラメであり、
ルカがお金を使って夢を叶えようとしているということも含めた情報をザンギャックに提供した上で、
ザンギャックに協力してルカを陥れる手伝いをしているということになり、
旧友に対する酷い裏切り者ということになります。

さて作戦が順調に進んでいて上機嫌のワルズ・ギルは
「・・・さて、さっきの金は回収だ!」とスゴーミン達に命令します。
さっきのアタッシュケースの中の120万ザギンはあくまでお芝居用の小道具であり、
お芝居が終わった以上は回収するようです。
120万ザギンは日本円に換算すると4億3200万円で、確かに大金であり、
芝居への出演手当としてスゴーミン達に気前よくあげるわけにはいかない金額です。

「スゴ!」とスゴーミンも素直にアタッシュケースを開いて、
しっかり10万ザギンの札束が12個入っているのをワルズ・ギルに示します。
ワルズ・ギルはその札束を2つ取出し、両掌に載せて「ふん・・・」と、何やら重さを確かめている様子。
するとワルズ・ギルがほどなく「ん?・・・1枚分ずつ足りない・・・」と言ったものだから、
スゴーミンは思わず「スゴッ!?」と動転します。
それを見たワルズ・ギルはスゴーミン達が札束から1000ザギン札を1枚ずつネコババしたことに気付き、
「こらああああ!!」と怒鳴ります。

慌てたスゴーミン達はアタッシュケースを取り落として一目散に逃げ出し、
床に散乱した札束を見てワルズ・ギルは「大切なお金を!?」と、更に激怒、
手にしていた2つの札束を「・・・任せた!」とバリゾーグに渡して、
「待てええええ!!こらああああ!!」とスゴーミン達を追いかけて駆けていきます。

その場に残ったバリゾーグは2つの札束を両手に持って、
「たった1枚の差を瞬時に見抜くとは・・・さすがはボス・・・というか・・・」と言い、
それを引き継ぐようにダマラスが「・・・セコいというか・・・!」と呆れます。
なんでこの2人、急に漫才してんの?
いや、というか、今のは、ワルズ・ギルが札束の重さを見破ったかのようにカマをかけて
スゴーミンがまんまと引っ掛かってしまったというだけのことだと思うのだが、
それにしても1000ザギン札の1枚ぐらい(日本円で36万円)作戦成功のご祝儀でくれてやればいいのに、
変な小芝居までして断固回収しようとするワルズ・ギルがセコいのは事実です。

相変わらず安定感たっぷりのギガントホースの面白空間っぷりですが、
そのバリゾーグから何故か札束を2つ、さりげなく取り上げながら、
インサーンは「しかし地球に侵入しようとした宇宙実業家が女海賊の知り合いだったとは・・・好都合だわ・・・!」
とほくそ笑みます。
これはどういうことか?
つまりカインが宇宙実業家であるということは事実であるようです。
しかも何か言い方が他人行儀というか、カインがザンギャックの一味という扱いではないかのような言いっぷりです。
単にカインを利用しているかのような・・・これは何か更に裏があるようです。

そのカインですが、ルカを何処かの人気の無いところに連れていっていました。
ルカは少し不安げに「・・・何処に連れていく気?」と聞きますが、
カインは「ちょっと見せたいものがあってね・・・」と、ハッキリとしたことを言わず、
ルカについてくるよう促します。
どう見てもカインの態度は怪しいのですが、ルカは何故か素直について行きます。
普段のルカならば、こんな明らかに怪しいシチュエーションに無防備に入り込んでいくことは無いはずですが、
やはり金に目が眩んで冷静さを失っているのか?

そうしてカインは誰もいない倉庫の中に入っていき、ルカもすぐ後ろにくっついていきます。
そしてカインはルカを立たせたまま、倉庫の隅にある大きな木箱のような場所で何かをゴソゴソと弄って、
ルカの前に何か大きなものを転がり出しました。
なんと、その物体はカインだったのです。
つまり、この場にルカを連れてきたカインとそっくり同じ恰好をしたカインがもう1人、
突然倉庫の物陰から現れたのです。

「・・・カイン!?」とルカは仰天します。
ただ、その新たに出現したカインがここまで歩いてきたカインと大きく違っていた点は、
その転がり出されてきた方のカインは鎖で縛られて気を失っていることでした。
即座にルカはその縛られた方のカインこそが本物であり、
ここまで自分を連れてきたカインはその本物のカインを捕えておいて、
その姿形を特殊能力でコピーしたザンギャックの怪人だと気付いたのでした。
「アンタ、偽者ね!?」とルカが怒りの声を上げると、
その偽者のカインは「フッフッフッフ・・・」と不気味に笑いながらその姿を黄色い怪人の姿に変えます。
これが本来の姿のようで、この怪人の名はヴァンナインというそうです。

そのヴァンナインは本来の姿に戻るなり、ルカに突進してみぞおちに強烈な一撃を食らわします。
ルカは「うっ!?」と気絶してしまい、ぐったりしたルカはヴァンナインに抱きとめられます。
ヴァンナインは「気付くのが遅かったな・・・しばらく眠ってろ!」とほくそ笑むと、
抱き起したルカの額に自分の額をくっつけます。
すると、なんとヴァンナインの姿はみるみるうちにルカの姿に変わっていったのでした。

つまり、こうしてヴァンナインはカインにも化けていたわけです。
そして、こうしてルカをまんまと罠に嵌めたにもかかわらず、ルカを殺そうとはせず、ルカに化けたということは、
ヴァンナインの作戦の目的は単にカインに化けてルカを殺すことではなく、
カインに化けておびき出したルカを捕えて、
そのルカに化けて、また別の誰かを油断させて罠に嵌めることであるようです。
それこそがヴァンナイン、というか、ヴァンナインの擬態能力を利用して作戦を立てた
ワルズ・ギルの狙いであるようです。
そして、ルカに化けて油断させる相手となれば、それはもうマーベラス一味の面々しか有り得ないでしょう。
にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
にほんブログ村 にほんブログ村 テレビブログ スーパー戦隊へ
にほんブログ村
posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 23:50 | Comment(0) | 第34話「夢を叶えて」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月30日

第34話「夢を叶えて」感想その1

今回のエピソードは通常回で、
このところ続いている個別主役回で順番的に1人残っていたルカ主役エピソードで、
3クール目の通常回はスーパー戦隊定番エピソードシリーズということで、今回は「ニセモノ篇」です。
「ニセモノ篇」というのは戦隊メンバーのニセモノが現れて内部攪乱を狙ってくるエピソードで、
だいたいは擬態能力をもった怪人の仕業によるものです。

擬態能力をもった怪人が正義のヒーローに擬態するというシーンは、ヒーロードラマでは結構頻繁に見られます。
そもそも悪の怪人、特に幹部クラスはそうした擬態能力というものは備えている場合というのが多く、
様々な姿に化けて暗躍することが多いので、正義のヒーローに化けることもあります。
ただ普通の単独ヒーロードラマの場合は、それは一般人を欺くためです。
スーパー戦隊シリーズでも一般人を欺く目的でニセモノ戦隊が現れることはあります。
しかし、これは本物の戦隊が現れればすぐに正体が露見してしまう、ちょっとしたトピック的な扱いでしかなく、
それを中心にしてドラマを作れるようなものではなく、
いわゆるスーパー戦隊シリーズ定番エピソードとしての「ニセモノ篇」ではありません。

スーパー戦隊シリーズでよく見られる「ニセモノ篇」というのは、
チームヒーローものだからこそ成り立つ特殊なストーリーです。
擬態能力をもった悪の怪人が戦隊メンバーの1人に化けて戦隊内部に潜入し、
内部攪乱を狙うスパイアクション的な静かなスリル感が特徴で、
しかもこの作戦を成功させるためにはその本物の方の戦隊メンバーは怪人によって何処かに捕らわれて
監禁されていなければならないわけですから、その捕らわれた本物の方の危機感あふれる描写も見応えがあります。

そして、その場合、他のメンバーがその潜入した怪人の正体を見破った後、
一気に倒してしまうという展開にはなりません。
他のメンバーはニセモノの正体を見破った瞬間、本物の仲間が敵の手に落ちていることに気付くことになるからです。
もし怒りに任せてその懐に入り込んだ敵を追い詰めて倒してしまったら、
捕らわれている仲間の身も危なくなってしまいます。

だから、仲間を取り戻すためには、他のメンバーは
「騙されたフリをしながら潜入者を泳がせて、騙し返す」という高度な作戦を展開する必要があります。
このあたりの騙し騙されの駆け引きが応酬する静かな頭脳戦の妙味が楽しめるストーリーなのです。
そして、その内実の多くは種明かしの場面までは視聴者にも伏せられていることが多く、
視聴者の子供たちはハラハラしながら見て、最後のドンデン返しに驚き、喝采を送るわけです。

また、ちょっと通な楽しみ方としては、当然、本物もニセモノも同じ、
いつもお馴染みの戦隊メンバー役者が演じることになるので、
その演じ分けの妙を楽しむというのもあります。
いつもの正義の味方としての本物の演技、悪役の演技、そして悪役が正義の味方を演じている演技、
この3つのキャラを1人の役者が演じ分けるのであり、
若い戦隊役者には結構ハードルの高いお芝居となります。

こういう「普段の自分の役とは違うキャラを演じる」というのは「入れ替わり篇」と似た特徴ですが、
その演じ分けの難しさの質がちょっと違います。
「入れ替わり篇」は、普段の自分の役のキャラと仲間の役のキャラを演じ分け、
2役とも視聴者に馴染があるキャラなので、
入れ替わる相手のキャラをよく分析して完全コピーしなければいけない難しさがあります。

一方、「ニセモノ篇」の場合は、幹部でない単発の悪役キャラならば普段視聴者に馴染がないので、
いかにも悪役風に演じていればいいので楽です。
問題は「悪役が演じている自分」をどう演じるのかの方です。
普段の自分に限りなく似せつつ、微妙な違和感を出さないといけない、この匙加減が非常に難しい。
これをこなすには、まず普段の自分の役のキャラを完璧に掴んだ上で、それをそうやって微妙に崩すか、
しっかり演技プランを立てなければいけません。

だから「入れ替わり篇」と「ニセモノ篇」はどちらが高度であるかというのではなく、
それぞれタイプの違う難しさが演じる側に要求されるといえます。
だいたい基本的に「入れ替わり篇」はギャグに転びやすいし、
「ニセモノ篇」はサスペンスタッチになりますから、
他の役者も含めた全体的なお芝居が全く異質なのです。
もちろん、「入れ替わり篇」にせよ「ニセモノ篇」にせよ、
この難しい演技プランを演じる役者1人で立てるわけではなく、
他の役者やスタッフも含めた制作陣が一丸となって作り上げていくのですが、
それにしても第27話の「入れ替わり篇」でも、今回の「ニセモノ篇」でもその演者を託された
ルカ役の市道真央さんは、やはり演技力の信頼度がひときわ高いのでしょう。

今回の「ニセモノ篇」は、だいたい上記のような「ニセモノ篇」の王道の面白さを満喫できる内容になっています。
しかし、スーパー戦隊シリーズにおける「ニセモノ篇」の最重要の要素を外しているところが
今回の最大の特徴となっているのです。

その「ニセモノ篇の最重要要素とは、
「どうやって他のメンバーが潜入者がニセモノであることを見破るのか」という部分です。
そして、それは通常の「ニセモノ篇」の場合、
メンバー同士の信頼関係の強さが、ニセモノを見破るポイントとなるのです。

ニセモノは悪役であり、部外者であるので、普段のメンバー間の信頼関係を知らない。
だから仲間との信頼関係を損なうような行為をしてしまいます。
最初は仲間が酷いことをしたと見なして憤慨する他のメンバーですが、
ふと「アイツがそんなことをするはずがない」と思うのです。
人間誰しも間違いを犯してしまうことというのはあるわけで、
普通はちょっとした逸脱行為があったぐらいでは、「まぁそういうこともある」と流してしまうものです。
しかし戦隊メンバー同士の絆は特別に強いので、ある特定の事柄に関しては
「仲間なら絶対にこんなことはするはずがない」というポイントがあり、
そこで逸脱行為があった場合、本物の仲間ではないということが分かってしまうものなのです。

但し、それは非常に分かりにくいポイントです。
明らかに組織の輪を乱すような行為ならば疑われる可能性が高いのは当然ニセモノも分かりますから、
そんな分かりやすい失敗はしません。
非常に些細なミスを犯すだけなのです。
ところが、そんな普通は気付かない些細な違和感を
「アイツなら絶対にそんなことはしない」と確信出来るというのは、
よほど仲間のことを信頼しているからです。
そうして、その真実の絆の力が、ニセモノの嘘を暴くことになるわけです。

つまり、騙し騙されの嘘だらけのエピソードの中で、
たった1つの真実である「仲間の信頼関係」が嘘を見破る力となるというのが、
「ニセモノ篇」で描かれる主題なのであり、
「ニセモノ篇」のテーマは「仲間の絆」「仲間の信頼関係」ということになります。

ところが、今回の「ニセモノ篇」においては、ニセモノを見破る決め手となるポイントが
「ブロッコリーを食べられないはずのルカが食べたから」という、
かなり即物的で分かりやすいポイントになっており、
また、変身後に再び鎧に化けた怪人の正体を炙り出す際にも、
これは「ゴーカイジャー」らしく、他戦隊に豪快チェンジが出来るかどうかで見分けるなど、
これも作品の特色が出ていて面白いですが、それでもやはり即物的で、
どうも一番肝心の「仲間の信頼関係」を描くことを避けているように見えます。
そのように見えるのは、今回が「ニセモノ篇」であると同時に
「ルカの過去篇」の最終章であることに原因があるのでしょう。

今回はあくまでストーリーは擬態能力を持つ怪人との駆け引きという「ニセモノ篇」が主に描かれる中で、
その話の流れの中でルカの過去も触れられるというような扱いであるように見えますが、
実際はルカの過去および、そこから繋がってくるルカのキャラを描くことの方が主眼であって、
ニセモノ篇はそのためのシチュエーションとして機能しています。
というか、ルカの過去篇だけでストーリーを作ってしまうことを避けるために、
ニセモノ篇と組み合わせているのだといえます。

どうしてルカの過去篇だけでストーリーを作らないのかというと、
今回のようなルカの過去の描き方では、全くルカだけの個人的ストーリーになってしまって、
マーベラス一味の仲間があまり絡まないストーリーになってしまうからです。
ならば仲間がもっと絡めるような描き方をすればいいのだが、それはしたくないようです。
つまり、このタイミングでルカの過去とそこから派生するキャラはひとまず全部描き切ってしまおうという
意図はあるのだが、その全貌を仲間と共有させることは避けているわけです。

そういう作り方をしたのが第6話でしたから、
今回も第6話のようにルカとゲストキャラの絡みをしっかり描くエピソードにしてもよかったのですが、
どうも今回はそれすらも避けている印象です。
それは今回のゲストキャラが第6話の春日井親子や、またあるいは第23話の巽マツリなどとは違い、
ルカの過去や人柄を熟知している幼馴染のカインだったからではないでしょうか。
あまりルカとカインの絡みのシーンを盛りだくさんにしてしまうと、
ルカの過去やキャラが詳しく描かれ過ぎるので、それを避けるため、
描写は限定的にして、そうなるとどうしても尺が余るし、ルカ過去篇だけで1エピソードを作れないので、
盛り上がるのが必至のニセモノ篇と組み合わせたのではないかと思えてきます。

そう考えると、ルカの過去やルカというキャラは、
その詳細はマーベラス一味の仲間にも、そして視聴者に対しても、
出来るだけ全部を明らかにしたくないという制作側の意図というのがあると思われます。

マーベラスとジョーに関してはその過去は全貌がほぼ明らかになっています。

まずマーベラスは第2話のアカレッドとの別れの回想シーンの段階ではまだよく事情は分かりませんでしたが、
第15話で赤き海賊団時代の概略と、赤き海賊団の壊滅事件、アカレッドとの別れなどのほぼ全貌が
仲間と視聴者に向けて同時に明かされています。

なお第16話でアカレッドとの出会いの回想シーンが描かれており、
これは視聴者にのみ示されていて仲間には明かされていませんが、
これに関しては仲間にとってはさして重要な話ではなく、
むしろ今後アカレッドが再登場してから活かされる伏線と考えるべきでしょう。
また、マーベラスとバスコとの関係に関する詳しい回想が未だ描かれておらず、
これに関しては今後バスコとの戦いの中で描かれる可能性は残されているでしょうが、
それでもマーベラスに関しては仲間たちとの関係の中で重要な過去の出来事、
そしてそこから導き出される現在のマーベラスのスタンスは
だいたい視聴者にも仲間たちにも明かされていると言えます。

また、ジョーに関しては、第4話、第8話で過去に関する断片的情報や推測が出ただけでしたが、
第11話でザンギャック軍兵士時代の回想シーンが視聴者には示され、
第12話では遂にザンギャック軍を脱走した経緯とシドとの別れという
ジョーの隠された過去の核心部分が回想シーンで描かれます。
ただ、これはこの時点では仲間には明かされていません。
仲間たちは第12話のマーベラスの回想によって、ジョーがマーベラスの仲間になった時の出来事と、
ジョーが元ザンギャックの脱走兵だったことを知っただけです。
その後も、ジョーは仲間たちにマーベラスと出会う以前の自分の過去を語ってはいません。

しかし、第30話でジョーがバリゾーグに改造された何者かを元に戻すために奔走したのを見て、
仲間たちは第11〜12話のジョーの不可解な行動と合わせて推理して、
どういう経緯でそんなことになっているのかは分からないながら、
バリゾーグがジョーの剣の師の改造された姿であるということは知ることとなりました。
そしてジョーも仲間たちにそう勘付かれたことも分かっており、
同じ第30話では、バリゾーグに改造された自分の剣の師の名がシドであるということも仲間の前で明言しています。

つまりジョーの場合は、視聴者にはその過去の全貌とそこから導き出される彼のスタンスは明かされており、
仲間たちに対しては過去の詳細は明かされていないものの、
現在のジョーのスタンスに繋がってくる過去の最重要要素である「バリゾーグとの因縁」は
既に仲間たちに知られていることになります。
そう考えると、ジョーに関してもマーベラス同様、その過去の最重要部分とそこから導き出される現在のスタンスは、
仲間にも視聴者にもほぼ明かされていると言っていいでしょう。

一方、新規加入組に関しては、
まず鎧については、語るべき過去や考え方というものは語り尽くした形で登場してきているキャラであり、
これ以上、過去を描写する必要性は無いでしょう。

次にアイムですが、ザンギャックに滅ぼされたファミーユ星の元お姫様であるということは、
視聴者にも仲間にも知られるところにはなっていますが、
その過去の回想シーンもこれまで第8話の階段で歩いている1カットのみでしか描写されておらず、
詳細は謎のままです。

ただ、これは未だ視聴者に分かる形で描かれていないだけの話であって、
マーベラス一味の鎧を除く他の仲間は、アイムが加入した際に、ある程度は事情を聞いているでしょうから、
むしろ視聴者よりも仲間たちの方がいくらかアイムの過去に関しては情報を持っていると言えます。
まぁそれでも互いの過去にあまり立ち入らない主義のマーベラス一味ですから、
ファミーユ星時代のアイムの行動の詳細までは知らないでしょう。

それでも、それがここまでマーベラスやジョーの場合のように回想シーンなどで登場しなかったのは、
つまりアイムの過去というのが現在のアイムの行動に与えている影響というものが
さほど大きなものではないからでしょう。
マーベラス一味の面々は基本的に自分のそれ以前の過去との連続性を断ち切った上で
一味に加入しているようですが、
アイムの場合、母星の滅亡というショッキングかつ決定的な出来事があったためか、
特にその自分の過去との決別の度合いが大きいように思えます。

だからアイムの現在のスタンスとアイムの過去はそんなに大きな繋がりは無い。
繋がりがある部分に関しては第13話で誘拐犯の山路にちょっとだけ示唆した程度の、
「ザンギャックによって滅ぼされる母星から逃げるしかなかった自分だからこそ、
ザンギャックに苦しめられている人々を助けたい」という、ほんの些細なものでしょう。
だから現時点ではアイムの過去というのは、大して描く必要は無いのだといえます。

但し、「母星をザンギャックに滅ぼされた」という衝撃的な過去というのは、
今後ドラマを非常に作りやすい美味しいネタであり、
アイムの過去絡みのエピソードは間違いなく描かれると予想は出来ます。
というより、わざわざそんな美味しい設定にしてあるということは当然最初からそのつもりであるのは明白です。
第29話で意味深に描かれた結婚式を見る視線や、同じ回のマーベラスの意味深な言動なども
そこで使われる伏線なのでしょう。

ただ、当初の予想ではアイムの過去絡みのドラマはもっと早いうちに消化するものだと思っていました。
それがこんな終盤も近づいた状況で未だに消火されていないということは、
予想以上に全体ストーリーの中で重要な扱いになることが予想されます。

そしてハカセに関しては、視聴者に対しては未だに、全くそのマーベラス一味に入る前の過去は明かされていません。
ただ、最近の第32話で地球に来る直前のハカセの初陣と思われる場面の回想シーンが描かれており、
そこからハカセの過去は何となく、
「おそらく最初は非戦闘要員扱いで加入した一般人」なのであろうと想像は出来ます。

それは同じ第32話で加入当時のハカセを評してジョーやルカがかなり低い評価をしており、
後から加入したアイムまでが当初のハカセの印象がかなり低評価であったことを示唆していることでも
裏付けられ、序盤のハカセの異常に頼りない描写とも整合性はとれます。
そういうこともふまえて、ここまでのハカセのあらゆる描写を見る限り、
ハカセの過去に他のメンバーほどの劇的な展開があったとは、あまり思えません。

第13話で垣間見えたような意外に物知りである点や、
他にも随所で示されている頭脳明晰さは確かに一味の中では際立ってはいますが、
あの程度ならば、単に勉強好きであったり持って生まれた才能であったりで片付けることは出来るレベルであり、
基本的にはハカセは一味の中で唯一の普通人であることに意義があるキャラとして造形されているのだと思われます。

そういうわけで、ハカセの過去というのは、視聴者には明かされていないだけで、
マーベラス一味の仲間は少なくとも先輩格の3人はほぼ把握しており、
それが特に詳細に把握する必要もない内容であり、気にするほどの内容でもないことも
分かっているのだと思われます。
当然、その過去が現在のハカセの行動やスタンスに決定的な影響を及ぼしているということもなく、
ハカセの過去は、別に描かなくても物語上、支障は無いとは思います。

ただ、他のメンバーの過去が描かれる中でハカセの過去だけ触れないというのも変なので、
何かの形で過去エピソードを、むしろ「作らねばならない」状態になっているのだろうと思います。
その場合、そんな普通人であるハカセがマーベラス一味に入った動機については謎であり、
ハカセの過去エピソードが描かれるとしたら、これをテーマとしたものとなるでしょう。
あるいは第32話の断片的な初陣シーンの回想はその時に回収される伏線なのかもしれません。

さて、そこで問題は今回のエピソードの主役のルカですが、
他のメンバーが過去を既にしっかり描写してあるか、
あるいは過去を描写する必要性が低いかのどちらかであるのに対して、
ルカだけはそのどちらでもありませんでした。
つまり、過去を描写しなければいけないはずなのに、ちゃんと描写していなかったのです。

今までルカの過去が描かれたのは、第6話と第8話と第23話でありました。
ただ、しっかりした過去物語が描かれたマーベラスやジョーとは違い、
ルカの場合、第6話で描かれたのは単に
「貧乏の中で子供たちを養っていたらしい」という断片的回想がルカの頭をよぎっただけ。
第8話で描かれたのは「ザンギャック対象の盗賊をやっており、高エネルギー物質を強奪した」という事実を
インサーンとダマラスが語っただけ。
第23話では「妹が死んだ時、何もしてやれなかった」という断片的想い出をアイムとマツリに語っただけで、
ルカが自分の過去を仲間に語ったのは、少なくとも描写されている限りは、
この第23話のアイムに「妹が死んだ時に何も出来なかった」と語ったことだけです。

おそらくマーベラスとジョーはルカの仲間入りの時に既に一味にいたわけですから、
ルカが盗賊であったことぐらいは承知していたのでしょうが、
マーベラス一味の過去を互いに詮索しない主義からして、それ以上のことまでは知らないのでしょう。

そう考えると、ルカの過去はこれまであまり描かれていないといえますし、
仲間に明かされている部分は極めて限定的だといえます。
このブログではこれまでルカの過去についても勝手にいろいろと考察してきましたが、
それはあくまで想像しているだけのことであり、
実際に劇中で明かされたルカの過去に関する情報は、マーベラスやジョーに比べると意外に少ないといえます。

しかし、それにしてはだいぶ初期の頃から断片的情報を出してきており、
ルカの過去がこの物語の中で重要な要素であることは窺えます。
何といっても不可解なのは、第6話という序盤の時点でルカの
「お金を使って叶える夢」の存在を匂わせておきながら、
その中身は仲間にも視聴者にも秘密にされており、今回に至るまでずっと秘密のままであったことです。
普通はそういうフリをすれば、そう遠くないうちにそれに関する情報を出すべきものです。

例えばマーベラスの場合、「命の恩人との約束」の存在が匂わされたのが第2話で、
その内容が視聴者と仲間に明かされたのが第15話でした。
またジョーの場合、「剣の師との辛い記憶」の存在が匂わされたのは第4話で、
その内容が視聴者に明かされたのが第12話、仲間に明かされたのが第30話でした。

それに比べてルカの「お金を使って叶える夢」は、
その存在は第6話で匂わされている(しかもジョーをはじめ仲間もその存在は知っている)のに、
その内容は今回、第34話で初めて視聴者に明かされ、仲間にはまだ明かされていません。
展開上、本来は語られているべきはずの過去が、語られてこなかったのであり、未だ語られていないのです。

マーベラスのアカレッドとの因縁や、ジョーのバリゾーグとの因縁も、
これから終盤まで引っ張る重要な要素になるのは間違いありませんが、
ここまで引っ張ってきているということは、
同様にルカの夢の件も終盤のドラマを構成する要素になるのでしょうか?

ただ、マーベラスの場合やジョーの場合と違い、
ルカのこの「夢」に関しては、その内容が仲間にも秘密であるということがポイントなのでしょう。
確かにその内容をよくよく考えてみると、それは仲間に秘密にすることに意味があるような内容です。
ルカの過去がここまで明らかに描かれていなかったのは、
ルカの過去とこの「夢」が密接な関係があるので、
過去を描くことで「夢」の内容がバレることを防ぐためであったのだろうと、今となっては理解出来ます。

つまり、ルカというキャラは徹底して秘密の多いキャラなのであり、
今回でルカの過去と、その目指す夢の内容はようやくその全貌が明らかに描かれたが、
それでもそれは視聴者に対してだけであり、仲間に対しては相変わらず秘密にしている部分は多く、
決して正直にはなっていない。
というより、今回、ルカの本音が明らかになったことによって、
むしろそれを仲間に隠したままのルカの仲間に対する不正直さがハッキリしてしまったのだといえます。

今回のエピソードは一見すると単なる「ニセモノ篇」に
ルカの過去絡みでイケメンの幼馴染がゲストで登場して、
ルカとほろ苦いラブストーリーを演じるというような、綺麗なエピソードのように見えますが、
よくよく読み解いていくと、ルカが仲間に重大な秘密を抱えたままであることが分かる話なのです。

だから、今回は「ニセモノ篇」であり、
そのテーマは「仲間の信頼関係」でなくてはいけないはずなのに、
肝心の主役のルカが仲間に対して正直ではないキャラであることが明らかとなるエピソードであるため、
その「仲間の信頼関係」をドラマとして描くことが出来ず、
それゆえ、ニセモノを見破るポイントが信頼関係に基づいたポイントではなく、
ブロッコリーなどになってしまっているのです。
ある意味では、仲間を騙しているルカというキャラクターにピッタリのエピソードが、
「騙し騙され」が特徴の「ニセモノ篇」であるという引っ掛けた意味で、
今回はルカの過去話との抱き合わせ要素が「ニセモノ篇」というチョイスになっているのかもしれません。

まぁよく読み込んでみると今回のエピソードは一見そのように見えます。
しかし実際はそうではない。もっと深く考察すると、全く違うものが見えてきます。
今回のエピソードは実は相当深く、ルカというキャラを掘り下げて描いてあります。

まず、どうして今回、ルカの過去話だけでエピソードを構成出来なかったのかというと、
ルカの過去や夢について詳細に触れてそれが明らかになってしまうとマズいので、
どうしても話の内容がぼやけたものとなるから、
それとは別に「ニセモノ篇」などのようなストーリーと抱き合わせたという理屈でさっきは説明しました。

今までは確かにそういう配慮はする必要はありました。
しかし、今回はルカの夢の内容は視聴者には明かされたわけですから、
仲間にはまだ明かすことは出来ないにしても、
仲間がいない場所ではもっとその夢や過去について詳細に描いたドラマを作ってもいいはずです。
今回はそれをやるのに格好のパートナーであるカインが登場しており、
ルカとカインの2人きりのシーンはたっぷりありました。
だから、ここでルカとカインとでもっと「仲間には秘密の夢」の話を具体的に進めて
物語をガンガンと盛り上げることは出来たはずで、
それをやれば、別に「ニセモノ篇」などと抱き合せずとも面白いエピソードを作ることは出来たはずです。

ところがそうはならずに、「ニセモノ篇」との抱き合わせになっているのは、
ルカとカインのシーンも何やら曖昧で煮え切らないからです。
いや、曖昧に描くしかなかったのでしょう。だから「ニセモノ篇」と抱き合わせになったのです。
何故、ルカとカインの遣り取りまでも曖昧に描くしかなかったのかというと
それは、つまり、ルカの本音を描きたくなかったからです。

つまり、ルカはカインにも嘘をついているのです。
というか、ハッキリした物言いを避けている。
そして、カインもルカにはぐらかされながら、実はルカの本音に気付いているが、
それをルカにはハッキリとした形では指摘しない。
これは何だか「ニセモノ篇」の騙し騙されの駆け引きに似ていますが、
このルカとカインの場合はお互いがお互いを傷つけないように労わり合ってそのようになっているのです。

ただ、その2人の美しい関係はそれでよいとして、
どうしてそんな微妙な遣り取りをわざわざ描写しているのかというと、
ルカの夢に関する本当の本音を視聴者にもハッキリさせないまま、
微妙な伏線だけは残しておきたいがためではないかと思えるのです。
それは何のためなのかというと、
このルカの夢が終盤の物語の中で1つの重要な要素になるからではないかとも思えるのです。

つまり、ルカは単純に夢の内容をマーベラスたち仲間に隠しているわけではなく、
実は相変わらず視聴者にも隠したままであり、
今回ルカがカインに語った夢の内容も、あれが完全に本音ではないのだが、
そのあたりは曖昧にしたまま終盤にもつれ込んでいきたいようにも思えるのです。
つまり、そのあたりは謎のまま、
終盤のドラマを盛り上げる要素として使えるものなら使いたいというような意図も見えるというわけです。

こういう、いったい何が真実なのかよく分からない騙し騙されの心理劇と、
騙し騙されの「ニセモノ篇」のドラマとが今回は絶妙のコラボをしている、
そういう、かなり高度な、久々登板のメインライター荒川氏の貫録のエピソードであったといえます。

ただ、それをよくよく読み込んでいくと、
結局、今回は「ニセモノ篇」の王道のストーリーであったのだと分かります。
それはつまり、「仲間の絆」がメインテーマであるという点によってです。

「仲間の絆」は確かに表面上はルカを不正直者として描かねばならない関係上、
ニセモノを見破るポイントとしては使われていませんが、
ルカの心理描写の方をよくよく考察していくと、
それはやはり、この騙し騙されの嘘だらけのように見えるエピソードの中、
たったひとつの真実が「仲間の絆」であり、それがメインテーマになっているからです。

そう考えると今回はやはりルカのキャラを丁寧に描写した、綺麗にまとまったお話のようにも思えてきて、
これはこれで綺麗に完結しておて、終盤に繋がるような話でもないようにも思えてもきます。
ただ、それがあまりに微妙な描かれ方をしているので、あれこれ深読みしてしまうだけなのかもしれません。
単にルカとカインの微妙な心理を微妙なトーンで描くのが
エピソードの完成度を高めるという狙いであるのかもしれません。
ただ、やはりこの曖昧な表現が終盤への伏線である可能性も十分あり得るとも思えます。
まぁ、どっちの可能性もあるでしょう。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
にほんブログ村 にほんブログ村 テレビブログ スーパー戦隊へ
にほんブログ村
posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 21:03 | Comment(0) | 第34話「夢を叶えて」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月29日

第33話「ヒーローだァァッ!!」感想その5

ザンギャック部隊を前に立て続けに素面名乗りを披露した亮と鎧に対して、
行動隊長のザキュラは彼らがスーパー戦隊の戦士だということはよく分かっていませんから、
単に一般人が粋がって何か吼えているだけだと思い、「やれぇ!」とゴーミン達をけしかけます。

こうして亮と鎧が生身アクションでゴーミン達と戦う場面となり、
ここで亮はなんとなんと、シシレンジャー大五の獅子拳やテンマレンジャー将児の天馬拳を披露します。
動きのコピーだけでなく、大五の「ヤァ〜ッ!!」、将児の「ヤッハーッ!!」という
それぞれのキャラ独特の掛け声までコピーして披露するのですから芸が細かい。
そして、その獅子拳の動きにシシレンジャーの変身後スーツでの同じアクションポーズ姿がオーバーラップし、
天馬拳の動きにテンマレンジャーの変身後スーツでの同じアクションポーズ姿がオーバーラップします。
そして当然、亮自身の得意拳法である赤龍拳の型も披露し、
ここにも再びリュウレンジャーの変身後スーツでの同じアクションポーズ姿がオーバーラップします。
ちなみに亮のキャラ独特の掛け声は先ほどから多用されている「ハイーッ!!」というやつです。

このダイレンジャーの生身アクションシーンの優遇っぷりは、
「ダイレンジャー」という作品がシリーズにおけるアクション随一の作品とされるからというより、
ここはもう純粋に和田氏のアクションの素晴らしさに対するリスペクトによるものでしょう。
ここの演出は、まさに「ゴーカイジャー」という尺が常にキツキツの作品において最も忌避される
「必然性の無さ」の極みといえます。

今回のエピソードにおいて、リュウレンジャーはともかく、
ここでシシレンジャーやテンマレンジャーを出す必然性は全く無い。
だから、ここでは余計なことをしているのです。
実際は和田氏はこのシーンの撮影時にはキリンレンジャー知の麒麟拳や、
ホウオウレンジャー・リンの鳳凰拳も同様にコピーして披露しておられたそうですが、
さすがにその2つは編集時にカットされてしまったようです。

それはつまり、それは和田氏のアドリブであり、
本来制作陣がこのエピソードに求めていた必然性のある要素ではないのです。
だから本当なら獅子拳も天馬拳もカットされて当然のはずです。
ところが、それでも、本来は不要なはずなのに、獅子拳と天馬拳の場面は残り、
しかもスーツアクションのオーバーラップ演出まで追加されている。
これは、和田氏のアクションがあまりに素晴らしいことに制作陣も敬意を表さざるを得なかったからでしょう。

しかし、それだけではない。アクションだけがリスペクトの理由ではなかったはずです。
それはやはり和田氏の「ダイレンジャー」という作品、
そしてダイレンジャーの共演者仲間への強い思い入れへの敬意でしょう。
「ダイレンジャー」という作品は、シリーズで初めて「戦隊メンバー全員が主役」という設定の作品で、
それゆえか非常にメンバーを演じた役者さん達の結束力が強く、
誰か1人だけでダイレンジャーを代表するという発想にならないのでしょう。

だから今回の亮の素面名乗りが単なるリュウレンジャーの名乗りではなく、ダイレンジャーの全体名乗りまでやり、
そしてこうしたアクションシーンでの技のコピーによる「全員出演」にこだわったのではないかと思われます。
そうした和田氏の熱意が「ゴーカイジャー」制作陣にも、
同じスーパー戦隊シリーズを愛する者同士の共感を呼び、こうしたシーンが成立したのだと思います。

一方、鎧の方も、というか池田くんの方も、相変わらずバック転からの回し蹴りなど、
第18話の工事現場での自らの生身アクションを自らオマージュするかのような、
いかにも鎧らしい素晴らしいアクションを披露し、
ゴーミン達を蹴散らすとザキュラ目がけて突進します。
亮もゴーミンを片付けると鎧と一緒にザキュラ目がけて突っ込みます。
遂に2人は生身のままゴーミンを全部片付けてしまったのです。

しかし、突っ込んでくる2人に対抗させるべく、ザキュラはスゴーミン3人を自分の前に壁のように立たせます。
そこに向かって鎧と亮の2人は躊躇なく突っ込んでいき、
高々とジャンプして「ハイーッ!!」と叫び、ライダーキックのような飛び蹴り、
しかしこれがスゴーミンの屈強な腕に弾き返されて、2人は吹っ飛ばされます。

それでも2人は立ち上がり「まだまだぁ!!」と再び突っ込み、スゴーミン3人を相手に戦いを挑み、
亮がスゴーミンを食い止めて「いけぇ〜っ!!」と指示をすると、
「はいっ!!」と応じた鎧は遂にスゴーミンの壁を突破して「うおおおお!!」とザキュラに向けて突っ込みます。
第18話の生身アクションではスゴーミン相手に全く歯が立たなかった鎧ですが、
ここは亮のサポートもあるとはいえ、遂にスゴーミンにも勝ってしまったのでした。

そして果敢にザキュラに向けて攻撃を繰り出しますが、
さすがに行動隊長クラスに生身のパンチやキックの攻撃は全く効かず、
腕を掴まれて捩じられ、倒された鎧はザキュラに踏みつけられて大ピンチとなります。
そこに、なんと生身でスゴーミン3人を退けた亮が、鎧を助けるため突っ込んできて、
ジャンプして突きをザキュラに叩き込もうとします。
しかしザキュラが放った電撃を浴びて、亮は突きを叩き込むことは出来ずに逆に吹っ飛ばされてしまい、
絶叫を上げて地面を転がります。
ここの和田氏のやられアクションは素晴らしい。アクション俳優の貫録のやられっぷりです。

そしてザキュラは「よくも邪魔しやがってぇ!!」と鎧を放り上げて落ちてきたところを触手で弾いて、
亮の倒れている方に向けて弾き飛ばします。
ここも最後の吹っ飛んで地面に叩きつけられる部分は池田くんが生で演じており、
さすが和田氏の前で手は抜けないとばかりの気合いの入ったやられアクションを披露してくれます。

倒れたまま呻いて立ち上がれない亮と鎧に向けて、
ザキュラは「よし!トドメだ!!」とスゴーミン3人に砲撃を浴びせて2人を殺そうとします。
健闘はしたものの、やはり絶体絶命の状況となってしまった2人、
もはやダメかと思われた瞬間、
2人を撃とうとしたスゴーミンが逆に何者かに銃弾をハチの巣のように浴びせられて後退してしまったので、
ザキュラは驚き、スゴーミン達と折り重なるように倒れてしまいます。

そこに現れたのは横一列に並んでゴーカイガンをぶっ放しながら歩いてくるマーベラス達5人でした。
まぁ考えてみればマーベラス達はこの近辺で
ザキュラやその配下が暴れた時に発するザンギャック反応を追跡して走り回っていたわけですから、
これだけ長い間、鎧と亮を相手にザンギャック部隊が暴れていれば、
余裕でこの場にやって来るのは火を見るよりも明らかでした。
しかし、これまでのところはザキュラに間一髪逃げられてばかりだったマーベラス達は、
こうして鎧と亮が生身で戦って時間を稼いでくれたおかげで、
遂にザキュラを追い込むことが出来たのだとも言えます。

クルクルッとゴーカイガンを回して肩に担いだマーベラスは
「・・・まったく地球人ってヤツは・・・どいつもこいつもムチャクチャな奴だな!」と呆れたように言いながら、
倒れている鎧と亮の横を通って前に出ます。
ハカセとアイムは鎧と亮を助け起こし、
鎧は「マーベラスさん!」、亮は「ゴーカイジャー・・・」と言います。
2人ともマーベラス達が間一髪のところで現れたのかと思ったようです。

しかしマーベラスは「うちの見習いが世話になったなぁ・・・」と、亮の方に少し振り向いて言います。
以前に明石暁と会った時には彼と黒十字王との戦いの際のレンジャーキー空間で出会っていたことを
すぐに想いだせなかったマーベラスですから、
今回もあの時同じようにレンジャーキー空間で顔を見ただけの亮のことを
一瞥しただけで想いだせるはずもなく、
マーベラスが先ほどからの亮の素面名乗りあたりからこの戦いを見ていたことが分かります。

そんなに前から見ていたのにどうして早く乱入しなかったのかというと、
なんとなく悪態をつきながらマーベラスの顔が嬉しそうであったことから推察できるように、
マーベラスはどういう事情なのかはよく分からないながらも
鎧がマーベラスが仲間入りを認めた時の、変身出来なくても、どんな劣勢でも、
怪人相手に果敢に戦う気概のある鎧に戻っていることが嬉しくて、つい見入ってしまっていたのでした。
そして、鎧を立ち直らせてくれたのが、
どうやらこの元ダイレンジャーの男であることを理解したマーベラスは
ぶっきらぼうながら、誠意をもって礼を言ったのでした。

これに対して、立ち上がった亮は「気にすんな!これも先輩の務めってやつだ・・・」と、
同じく隣で立ち上がった鎧の方を見ながら笑顔で応えます。
亮としては礼を言われる筋合いのことではない。
果てしなく続く正義と悪の戦いの中で、かつて正義の戦士として戦う宿命を負った男が、
今その同じ宿命を引き継いで背負うことになった後輩のことを見守るのは当然の務めであったのです。

当然、亮から見ればマーベラス達5人も同じ意味での後輩ですが、
マーベラス達のことは黒十字王との戦いの際の彼らを見て、
亮はマーベラス達が「人々を守りたいという気持ち」というヒーローの一番大切な要素を、
「自分の守りたい物を守りたい」という形で一番大切にしており、
彼らが地球や地球の人々を守りたいと思うようになっていることを見てとって信頼しています。

「あとは私達にお任せください!」とアイムがレンジャーキーを取出し、
5人は「豪快チェンジ!!」と、ゴーカイジャーに変身します。
そして、スゴーミン達と共によろめきつつ起き上がってきたザキュラを見ながら、
素早く更なる豪快チェンジをしながら「行くぞ!」とダッシュして、
走りながらゲキレンジャーに変身します。
そして高速移動で一気にスゴーミン3人を弾き飛ばしつつ、一気にザキュラに肉薄します。

ゲキレンジャーへの豪快チェンジは前回に続き2回連続で、
そういう意味では不自然な優遇っぷりのように見えますが、
前回は噛ませ犬扱いであったので今回は名誉挽回のために登場という意味もあるのでしょう。
また、ダイレンジャー回なので拳法戦隊繋がりということもあるのでしょう。

しかしアクション的な必然性はちゃんとあります。
まず、さっきから追い詰めようとするとザキュラに姿を消されて逃げられてばかりだった5人は、
まずはザキュラが姿を消す術を使うヒマも与えないほどのスピードでザキュラの懐に入るため、
身体能力に優れた獣の力を持つゲキレンジャーの高速移動能力を使ったのです。
しかしスピードだけならゲキレンジャー以外にも優れた戦隊はあります。
ゲキレンジャーをチョイスした真の理由はここから示されるのです。

「あいつのお腹を狙うよ!」と言って、ゲキイエローの姿のルカは、
ゲキチョッパーの姿のアイムと共に、執拗にザキュラの下腹部、無限胃袋のある辺りに
突きや肘打ちを連続して叩き込みます。
続いてゲキブルーの姿のジョーと、ゲキバイオレットの姿のハカセも
ザキュラの下腹部ばかりを狙って、蹴りの連射を叩き込みます。

つまり、5人は最初のザキュラとの戦いの際に、
ザキュラが自分の下腹部の胃袋のあたりを何度も叩いて胃の中の食物を吐き出して攻撃してきたのを覚えていて、
下腹部を軽めの攻撃で何度も叩けば、
ザキュラの胃袋から食物と一緒にゴーカイセルラーも飛び出してくるだろうと読んでいるのです。
そのために打撃系の攻撃の特に巧みな戦隊であるゲキレンジャーがチョイスされたのです。

一方、ザキュラは自分がゴーカイセルラーを呑み込んでいるという自覚も無いので、
どうしてゴーカイジャーが自分の腹に軽い攻撃を繰り返してくるのかよく分からないまま、吐き気を催してきます。
そして、トドメとばかりにゲキレッドの姿のマーベラスがザキュラの腹に突きと肘を叩き込んだ後、
両掌をザキュラの腹に当て、そのマーベラスの背にルカとジョーが掌を当て、
ルカとジョーの背にハカセとアイムが掌を当てます。
その態勢で「激気注入!!」と、やや力をセーブした激気を全員がマーベラスの掌に集束して
胃袋上部に叩き込むと、遂にザキュラは耐えきれず、
胃の中の食物を全部、猛烈な勢いで吐き出してしまったのでした。

その放物線を描いて舞い上がった吐瀉物の中に、ゴーカイセルラーが混じっており、
飛んできたゴーカイセルラーは戦いを見守っていた鎧の手の中に飛び込んできたのでした。
鎧は驚きつつゴーカイセルラーを受け止め、
「ああ!・・・おかえり俺のゴーカイセルラー!」と、感極まって叫びます。
ゴーカイセルラーが戻ってきて嬉しいという気持ちはもちろんありましたが、
それ以上に鎧はゴーカイセルラーに謝って泣き出したい気分でした。

ゴーカイセルラーを無くしたことで亮と出会い、亮の言葉や戦いに触れることによって、
鎧は自分がゴーカイセルラーを手に入れてゴーカイシルバーとなった経緯を改めて想い出したのです。
そして、その経緯の中で、アバレキラーに代表されるレジェンド戦士の方々や、
マーベラス一味の仲間たちから、どれほど自分の「人々を守りたいという気概」が認められて、
期待されたからこそゴーカイセルラーが与えられていたのかということが鎧は分かったのでした。

それなのに、自分は何時の間にかそのヒーローに一番大切な気持ちを忘れて、
自分がヒーローとして活躍してスーパー戦隊の一員という名声を得ることばかりに夢中になってしまっていた。
ゴーカイセルラーに込められた、多くの人達の想いを自分は裏切ってしまっていたのです。
だから自分には再びゴーカイセルラーを手にしてゴーカイシルバーに変身する資格などは無い。
ヒーローの資格も無い。だからゴーカイシルバーは自分の手から離れていったのだと、
鎧はさっき戦いながら思っていました。

自分は失っていたヒーローの一番大切な気持ちをようやく想い出したばかりであり、
また少しずつゴーカイシルバーに相応しいヒーローになれるように一歩一歩、
亮が果てしなく餃子を作り続けるように自分も果てしないヒーローの道を歩んでいこう。
そう思っていた矢先にゴーカイセルラーが自分の手の中に飛び込んできたのです。
もう会えないと思っていた家族に会えたかのような嬉しさがある反面、
鎧はまずはゴーカイセルラーやゴーカイシルバー、そこに込められた多くの人々の想いに
懺悔し、償いたい気分でした。

そこに背後に立つ亮から
「守るんだろ!?みんなを・・・ゴーカイシルバーとして!・・・ヒーローとして!!」という一喝が飛んできて、
鎧の背に突き刺さったのでした。

それを聞いて鎧はハッとします。
確かにさっき鎧は「みんなを守りたいからヒーローになりたかった」と言いました。
その鎧の想いをヒーローの一番大切な想いだと認めて、
皆が鎧に授けたのがゴーカイシルバーというヒーローの力なのです。
その大切な「みんなを守りたい」という想いに再び気付いた鎧に、
こうして再びゴーカイシルバーの力は舞い戻ってきて授けられた。
ならば、自分はゴーカイシルバーの力でみんなを守るために戦う宿命からもう逃れることは出来ないのだと
鎧は気付いたのでした。

いや、人々を守るために戦うのならば、今の鎧でも、亮でも、変身出来なくても戦うことは出来る。
しかし、さっき亮は「転身出来なくなった俺は地球を救うことは出来ない」と言いました。
ならば、変身して戦えるゴーカイシルバーの力を与えられた鎧は
より多くの人々を守り、ひいては地球を救う宿命から逃れることは出来ない。
かつてその宿命を背負っていた者である亮が、果てしない戦いの中で鎧をその宿命を引き継ぐべき者と認め、
その宿命を引き受けるよう檄を飛ばしてきているのです。
鎧にその宿命から逃れられるはずもありません。
ゴーカイシルバーというヒーローに鎧が懺悔や償いをするというのなら、
ゴーカイシルバーの宿命を果たしていくことで償っていくしかないのです。

鎧は亮の檄に背中を押されるようにキッと前を向きます。
ヒーローは果てしない戦いの中で何かを守り救っていく宿命を負う者であり、
変身能力など強大な力を与えられたヒーローはより大きな何かを守り救わねばならない。
そのことが分かった上でアバレキラーはゴーカイシルバー伊狩鎧に向かって
「一番のヒーローになれ」と言った。

それを想いながら、鎧は目の前で戦うマーベラス達の姿を見て、
既に自分がその「一番のヒーロー」の背負うべき宿命の解答を得ていたことに気付きました。
それは、マーベラス一味に入った時に誓った
「ザンギャックを倒し、宇宙全体を平和にする」ということ、
すなわち「宇宙を救う」ということがゴーカイシルバーの背負うべき宿命でした。

鎧は1人、力強く頷くと、ゴーカイセルラーにゴーカイシルバーのレンジャーキーを挿入し、
「豪快チェンジ!!」と掛け声をかけて、ゴーカイシルバーに変身し、
ゴーカイスピアを手にして大きく跳び上がってザキュラの前に着地しながら斬りおろし、
更にゴーカイスピアを振るってザキュラを吹っ飛ばします。
そこにゴーカイジャーの姿となってやってきたマーベラス達に向かって鎧は
「皆さん!ありがとうございます!」とゴーカイセルラーを取り戻してくれたことに感謝の言葉を述べ、
「改めまして!ゴオオオオオカイ!シルバアアアアッ!!」と、いつもの変身後名乗りをします。
それを受け、6人全員で「海賊戦隊!ゴーカイジャー!!」と名乗りを上げるゴーカイジャーの姿を見て、
亮は満足そうに笑みを浮かべるのでした。

遂に6人揃ったゴーカイジャーに対してザキュラは「お前らなんかに負けるかぁっ!!」と、
新手のゴーミン達にバズーカを撃たせて攻撃してきますが、
ここでゴーカイジャーは爆炎の中でダイレンジャーに豪快チェンジします。

今回はダイレンジャー篇ですから、ここは当然、「ダイレンジャー」のOPテーマのインストバージョンが流れます。
一方、変身エフェクトの方は、いつもの豪快チェンジのように
モバイレーツからダイレンジャーとキバレンジャーの紋章が飛び出してくるだけで、
他のレジェンド回の当該戦隊変身エフェクトに比べて地味な印象ですが、
これは別に手を抜いているわけではなく、
そもそも「ダイレンジャー」本編の変身エフェクトもこんなもんなのです。
だから結構オリジナルに近いといえます。
ダイレンジャーの場合、変身後の名乗りシーンが強烈なインパクトなので
変身エフェクトは割とシンプルだったのでした。

ここで各自の変身ですが、一応書きますと、
マーベラスがリュウレンジャーに、ジョーがテンマレンジャーに、ルカがキリンレンジャーに、
ハカセがシシレンジャーに、アイムがホウオウレンジャーに、鎧がキバレンジャーに変身します。
ちなみにダイレンジャーは戦士名に色名が入っていないので分かりにくいですが、
鎧を除くゴーカイジャーの各自は完全に自分のパーソナルカラーと一致した変身をしています。
鎧の場合だけ自分のパーソナルカラーは銀色ですが、変身したキバレンジャーは白の戦士です。

その鎧が右手を高々と上げて「天に輝く!五つ星!」と音頭をとって、
それから全員で「五星戦隊!ダイレンジャー!!」と、全体名乗りは再現します。
ダイレンジャーの場合、「全員が主役」というコンセプトなので、
この全体名乗りの最初の音頭を各エピソードの主役キャラがとるというのが特徴で、
今回もそのフォーマットを踏襲して、今回の主役である鎧が音頭をとるわけです。

しかし、この全体名乗りですが、ハカセのシシレンジャーが相変わらずコミカルな動きをして、
せっかくのカッコいいシーンが台無し・・・いや、面白いからいいんですが。
それにしてもオリジナルのシシレンジャーはダイレンジャー随一の二枚目キャラなので、違和感が凄い。
またもや渋いキャラがハカセ、というか竹内さんの犠牲になってしまったようです。

この「オリジナルキャラがどうであれハカセにあくまでコミカルなアクションをさせる」という演出方針は、
多分嫌いな人もいると思いますが、私個人としては賛成です。
好きか嫌いかでいうと、確かに思い入れのあるキャラの場合は不愉快になることも無いではないのですが、
あくまでこの作品が今の子供たちを対象として、あくまでゴーカイジャーを活躍を見せるための作品である以上、
ハカセのキャラを活かそうとする演出が正解なのだと思うのです。
ハカセ以外のキャラもちゃんとキャラの特徴を出しているという点では同じなのですが、
ハカセだけが違和感が目立ってしまっているのは、
それだけハカセというキャラが歴代戦士の中に埋没しない独特のものだということであり、
それは制作陣としては誇るべきところだと思います。

ここで戦闘開始となり、ダイレンジャーに変身したマーベラス達とゴーミン達の戦いの場面となります。
ここでは個人武器を使ったアクションが披露されます。
マーベラスはリュウレンジャーの個人武器である赤龍双龍剣という二振りの剣を振るっての二刀流アクションですが、
ここは身のこなしが亮のものよりかなりマーベラス風になっています。

そしてジョーはテンマレンジャーの個人武器である天馬両節棍というヌンチャクではなく、
共通装備の剣スターソードを使った剣術アクションを披露します。
これは普段のジョーの西洋剣術風ではなくかなり中華武術風の動きですが、
それでもあくまで剣にこだわるあたりジョーらしさが表現されているといえます。

続いてハカセはもうこれはオリジナルのシシレンジャーの面影は全く無いコミカルアクションです。
シシレンジャーの個人武器は獅子棍棒という棍なのですが、
ここではハカセは緑色のロープでゴーミン達を縛り上げてピコピコハンマーで殴っていくという、
全くのオリジナルアクションを披露します。

一方、ヒロイン2人の方は割とオリジナルに近い動きで、
まずルカはキリンレンジャーの個人武器である麒麟九節鞭というムチ状の武器を振り回しますが、
キリンレンジャーの知のキャラもルカのキャラも共にかなり個性的なので、
ここは完全にルカのアクションとなっています。
片やアイムの方は槍鳳凰というホウオウレンジャーの個人武器の短槍を流麗に振り回すアクションは
オリジナルのホウオウレンジャーに酷似しています。

こうして見てみると、今回のレジェンド回ダイレンジャーアクションは、
全体的にはどうも他のレジェンド回の時よりも
ひときわオリジナルから遠いものをあえて志向しているように思えます。

そもそもダイレンジャーのオリジナルのアクションは、この個人武器アクションはあまり使われず、
むしろ素手の拳法アクションや、奇想天外な気力技アクションの方がメインでした。
だから、ここではどうもオリジナルとは違うものを見せようとしているように思います。
何故オリジナルと違うものを志向するのかというと、
むしろそれがダイレンジャーのアクションに対するリスペクトの徴なのかもしれません。

これはシンケンジャー篇やデカレンジャー篇の時にも感じたことですが、
ダイレンジャーなら拳法アクション、シンケンジャーなら剣術アクション、
そしてデカレンジャーならガンアクションなど、
1つのジャンルで最高峰に達してしまった戦隊のアクションは、
あえてその同じ方向性では勝負しないようにしているっぽいのです。

それはオリジナルを「超えることが出来ない」から、というよりは、
「超えてはいけない」という意識が存在するように思います。
いや、もっと厳密に言えば、オリジナルを超えようという対抗意識が勝ちすぎるというのが、
「ゴーカイジャー」という作品のアクションのコンセプトではないとして戒められているのだと思います。
単にコピーするだけという安易な道よりも、
オマージュしながらゴーカイジャーのアクションを作ることにこだわっているのでしょう。

鎧のキバレンジャーは「いくぜ白虎神剣!」と叫んで、
キバレンジャーの個人武器である白虎神剣を振り回してゴーミン達を倒していき
「ギンギンにいくぜ!!よっしゃあ!!」と決めます。
そこにマーベラス達5人がやって来て、今度はダイレンロッドを出します。
これは5人各自の共通装備の長い棍で、
先端にヤイバーという各自バラバラの形のアタッチメントがついています。
本編でもこのダイレンロッドを使ったアクションは多用され、
長ものを振り回すアクション特有の派手で流麗な動きで視聴者を魅了しました。

が、ここはあっさり目で、5人がダイレンロッドを振りかざしながら
スゴーミン達とザキュラのところに突っ込んでいって、一撃をお見舞いしていくという簡単な演出となります。
バックが夕景というのがダイレンジャーっぽいとは言えますが。

そして、鎧は「吼新星!乱れやまびこ!!」と叫んでザキュラに白虎神剣の一閃をお見舞いします。
しかし、この技は本来は破壊音波で敵を攻撃する技であり、
ここではそれとは異なり、単なる剣技のようになっています。
このあたりも、あえてオリジナルから遠いものを志向している印象です。

ここで鎧はゴーカイシルバーの姿に戻り「一気に決めましょう!!」と、ゴールドモードにチェンジして、
豪快レジェンドリームでスゴーミン3人を一気に撃破します。
そして同じくゴーカイジャーの姿に戻っていた5人も、マーベラスの「こっちも決めるぜ!!」という号令のもと、
ゴーカイバックルを開きます。
すると、そこから飛び出した5色の5つの光が空中で集まり、ゴーカイガレオンバスターになったのでした。

これはつまり、前回完成したゴーカイガレオンバスターがレンジャーキー同様、
カーギーロードを通って現れたということです。
今までもゴーカイガンやゴーカイサーベルが突然出現していましたが、
あれも要するにゴーカイバックルから取り出していたのであり、
ガレオンの武器庫もカーギーロードでゴーカイバックルに繋げてあるのでしょう。
こうして出現させたゴーカイガレオンバスターを発射し、マーベラス達はザキュラを倒したのでした。

ギガントホースでその模様を見ていたワルズ・ギルはまた指令室で食事中でした。
今度はすっかり食欲が出て、たっぷりの料理をテーブルいっぱいに乗せて、
さぁ食べようかとしていた矢先、ザキュラが倒される映像がモニターで映し出され、
手にしていたナイフとフォークを落としたワルズ・ギルは、
また急に食欲も無くなるほどの怒りに襲われて
「うおおおお!!」と叫んでテーブルの上の料理を全部床にぶちまけ、「インサーン!!」と怒号を発します。
それに「お任せください」と応えてインサーンは巨大化銃を発射し、
ザキュラとスゴーミン3人は復活巨大化して暴れ始めます。

これにゴーカイオーと豪獣神で立ち向かうゴーカイジャーでしたが、
ここで意外にスゴーミン達が良い働きをして、ゴーカイオーと豪獣神の動きを封じて、
ザキュラがゴーカイオーと豪獣神をメッタ打ちします。
それを見上げて亮が「ゴーカイジャー!!ダイレンジャーの大いなる力を使うんだ!!」と叫ぶと、
ゴーカイオーのコクピット内で5人のゴーカイバックルからダイレンジャーのレンジャーキーが飛び出してきて
例の如く光を発し、それを握り取ったマーベラス達は「分かった!」とコクピットにそれらを挿入、
するとゴーカイオーの胸部から気力の炎が出現し、
「豪快豪獣気力ボンバー!!」という掛け声のもと、その炎が発射されて豪獣神を包み込み、
更にゴーカイオーもその中に入り、気力の炎を纏った豪獣神とゴーカイオーが
スゴーミン達目がけて猛烈な勢いで突っ込み、一気にスゴーミン3人を倒します。

そして最後に残ったザキュラに対して、
いつも通り、ハリケンゴーカイオーにチェンジしてから、ゴーカイ風雷アタックでトドメを刺します。
ザキュラは分身して襲い掛かってくる風雷丸を全部口を開けて吸い込みますが、
結局、内部から無数の風雷丸の持つ手裏剣でお腹を破られて、爆発して果てたのでした。

エピローグは戦いが終わった後、
無事開催したバザー会場の一角で、テーブルを囲んでいるマーベラス一味に
亮が「お待ち!」と自分の屋台の餃子を差し入れするシーンです。
「いただきまぁす!」と大喜びのマーベラス一味に亮は
「ささ、たくさん食べてくれよ!」と大皿に山盛りの餃子を勧めます。

飢えていたのか、さっそく餃子にむしゃぶりつく一同ですが、
反応は上々で、ルカは一口食べてすぐに「う〜ん!すっごく美味しい!」と感激し、
マーベラスも口いっぱいに餃子を頬張りながら「ああ!気に入った!」と偉そうに褒めます。
そしてジョーは「・・・美味いっ!」と何故か亮を見つめてマジ褒め。よほどジョーの口に合ったようです。
しかし最近ちょっとジョーがおもしろすぎます。

それにしてもグルメのマーベラス一味をここまで感動させるとは、
さすがに世界一を目指しているだけあって、亮の餃子はかなり美味しいようです。
皆の反応に亮が鼻高々になって「そりゃあ、うちの餃子は・・・」と言いかけたところ、
亮の横で鎧が立ち上がって「世界一!・・・ですよね?フフッ!」と、
亮の言おうとしたことを先回りして言ってしまいます。

やや調子に乗り過ぎの鎧に対して亮の肘打ちの制裁が軽く入って「あいてっ!」と痛がる鎧に向かって、
急にシリアスになって亮は「いつまでも忘れるな・・・一番大切なことを・・・みんなを守りたいっていう想いを!」と、
鎧の目を見て言い、鎧も真面目な顔になって亮の目を見つめ、「・・・はい!」と力強く頷くのでした。
しかし、戦いの場面でこういう感じの熱い2人の遣り取りは既に十分に堪能した視聴者としては、
ここの遣り取りはやや蛇足の印象・・・と思ったら、
亮は鎧が頷くと、笑顔で鎧の肩を叩き、「・・・で、いいのか?食べなくても・・・無くなっちまうぞ?」と、
テーブルの方を指さします。

すると、なんとテーブルの上に乗った大皿の中の餃子は亮と鎧がマジ話をしている間に
マーベラス一味の5人によって食い散らかされて、もう2個しか残っていません。
その2個も、「ちょっとぉ!皆さん!俺の分、残しといてくださいよぉ!」と慌てて鎧が叫ぶ間に
ルカとハカセに食われてしまい、全部無くなってしまいます。
亮が鎧にいきなりマジな話をしたのは、その間に皿の餃子が食い尽くされていくのを見越して、
鎧に餃子を喰わせないという、ちょっとした意地悪をして、からかうためであったのでした。
まぁ「ダイレンジャー」という作品は基本は熱い作品ですが、ユルいところはやたらユルい作品だったので、
今回のやたら熱いエピソード、こういうエピローグもアリでしょう。

なお、これで今回の「ゴーカイジャー」のダイレンジャー篇は終わりですが、
実は「ダイレンジャー」の物語は、他のシリーズ作品とは違って、
このダイレンジャー篇が最終回の後日談ではありません。
「ダイレンジャー」の最終回は、先述のゴーマが滅びてダイレンジャーが解散したところで
ラストシーンではないのです。

ダイレンジャー解散の約20年後に今回の「ゴーカイジャー」のダイレンジャー篇のエピソードがあり、
その更に30年後の出来事が「ダイレンジャー」最終回の最終パートで描かれています。
つまり、「ダイレンジャー」の物語の最終盤は、
最終回の最終パート前のダイレンジャー解散から、
一旦「ゴーカイジャー」の劇場版映画「199ヒーロー大決戦」、そして「ゴーカイジャー」第33話を経て、それから再び「ダイレンジャー」最終回の最終パートに戻るわけです。

その「ゴーカイジャー」第33話の30年後の場面、何が描かれているかというと、
ダイレンジャー解散50周年の同窓会に集まった70歳代になった亮たち、元ダイレンジャーの戦士5人は、
突然ゴーマが復活したことを知り、暴れるゴーマ怪人を見に行くと、
そこに亮たち5人の孫(亮たちそっくり)が現れてオーラチェンジャーでダイレンジャーに転身し、
ゴーマと戦い始めるのを見るのです。
つまり、再びダイレンジャーがゴーマの侵攻に対して立ち向かう宿命を負う日がやってくるのです。
そして、その時、亮は50年前の嘉挧の
「お互いが争い合いながら永遠に生きていく」という言葉の真の意味を悟ることになるのです。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
にほんブログ村 にほんブログ村 テレビブログ スーパー戦隊へ
にほんブログ村
posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 22:16 | Comment(0) | 第33話「ヒーローだァァッ!!」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月28日

第33話「ヒーローだァァッ!!」感想その4

鎧はマーベラスと回転寿司屋で別れた後、とぼとぼと歩いて近くの公園の池のほとりにやって来ました。
鎧はすっかり変身できないばかりにヒーローとして何の役にも立たない自分に無力感を感じていました。
しかし、マーベラス達は鎧のためにゴーカイセルラーを取り戻そうとして奔走してくれているわけで、
いずれはゴーカイセルラーを取り戻してくれる可能性は高い状況なのです。
そのことはさっきも鎧は自分の目で見て把握しているはずなのです。
ならばもう少し期待感や焦燥感が湧きあがってきても良いはずなのですが、
鎧は何故か無力感や虚脱感を覚えてしまいます。

鎧は変身出来なくなったことによって、
自分の中からヒーローとしての気持ちが消えてしまったように思えたのです。
変身出来なければ戦えない。戦えなければヒーローではない。だから自分はヒーローではない。
そういう想いが自分の心を委縮させて、怪人の被害に遭った人々を見ても、戦う気力が湧いてこないのです。

いや、ゴーカイセルラーが戻ってきて変身出来るようになれば、また戦えるようになって、
自分はヒーローとしての気持ちは取り戻せるはずです。それで万事解決するはずなのです。だから問題は無い。
そう自分に言い聞かせようとする鎧でしたが、
今こうして無力感にとらわれてしまった自分が、たとえ変身出来るようになったとしても、
本当に再びヒーローの気持ちを取り戻せるのだろうかと疑問に思いました。
こんな無力感にとらわれたのは初めてでした。
一旦変身出来なくなったことで、自分はもうダメになってしまったのかもしれないと鎧は思いました。

さっき鎧がマーベラスに申し訳ない気持ちになったのは、
単に自分のために皆が奔走してくれていることに感謝してではなく、
皆が必死になってゴーカイセルラーを取り戻してくれたとしても、
もう自分は以前のゴーカイシルバーには戻れないのではないかという危惧があり、
そんなダメな自分のためにマーベラス達を奔走させていることが心苦しかったからでした。
そんな自分が情けなく、なんとか心を奮い立たせようとするのですが、
なかなか気力が湧いてこなくて、鎧は苦悩しながら池の水面を見つめます。

そうした鎧の耳に喧騒の音が聞こえてきて、ふとそちらを見ると、
鎧から見て左手の方の池のほとりで、人々が集まって屋台の準備をする作業が行われています。
その時、鎧の背後で「あれ?鎧くん?」という声がしました。
鎧の後ろ姿を見て、誰か鎧のことを知っている人間が声をかけてきたようです。
鎧が振り返ると、そこにはハッピを着て段ボール箱を抱えた亮が階段を下りてきて、
鎧の存在を確認して「おう!」と軽く手を振っています。
「亮さん!?」と、鎧は意外な場所で亮に会って驚きの声を上げるのでした。

亮は昨日、鎧がいきなり青い顔をして帰っていったので心配しており、
たまたま出会った鎧をその屋台の会場に連れていきました。
亮が持っていた荷物はその屋台で使う材料や道具であったのです。
その会場には亮と同じ「亀尾商店街」と書かれた青いハッピを着た人々が多くの屋台の準備をしており、
「亀尾商店街」と書かれた幟も立っていました。

亮の屋台の傍らでその様子を眺めて「バザー・・・ですか」と鎧は言います。
そういえば昨日、赤龍軒に訪ねてきたご近所の3人の人たちが
明日のバザーがどうとか言っていたことを鎧は思い出したのでした。
亮は「ああ、ここに皆を集めてね!うちの商店街の恒例行事なんだ!」と応えながら、
自分の屋台の準備をてきぱきと進め、
振り向いた鎧に向けて「俺は、言うまでもなく・・・餃子!」と明るく言って、
手にした餃子の材料を掲げて示します。

なお、この「亀尾商店街」の「亀尾」は
「ダイレンジャー」に出てきた超気伝獣ダイムゲンの人間態の青年
「亀夫」へのオマージュによるネーミングでしょう。

亮のバザーの屋台で出す品が餃子であるのは、赤龍軒が中華料理屋であり、
亮が世界一の餃子作りを目指す餃子職人である以上、まぁ当然のことなのですが、
あくまで餃子作りにこだわる亮を見て、鎧は思わずイラッとして「・・・また餃子って・・・」と呆れたように呟きます。
こうしている今もこの近所でザキュラの被害が出ているというのに、亮はヒーローとして戦おうともせず、
餃子を作ることしか頭に無いようだと鎧は思いました。
やはり変身能力を失って亮はヒーローの気持ちを失ってしまったのだと鎧は失望して、
自分もこのままではいずれ同じようになる、いや、既にもう同じなのではないかと思うと怖くなってきました。
だから鎧は亮が餃子を作っている姿を、自分が腑抜けていく姿を見るようで不愉快に感じ、
「これが亮さんの今出来る精一杯のことなんですか!?」と声を荒げてつっかかってしまいます。

いきなり目上の相手にキレて声を荒げるなど、逆に一喝されても仕方ないほどの無礼ですが、
亮は鎧が変身出来なくなったショックでヒーローの一番大切なことを忘れてしまっている、
普通ではない状態であることは分かっていますから、頭ごなしに叱ったりはしません。
何事も無かったかのように同じペースで餃子の餡を皮で包む作業を続けながら
「何をイライラしてる?変身出来ないのがそんなに辛いのか?」と問い返しました。

鎧は図星を突かれて一瞬怯みます。
確かに今自分が亮を非難しているのは、亮の情けない姿を見て、自分を見ているような気がして辛いからです。
つまりは変身出来ない自分がもうヒーローとしてダメになってしまうのかと不安で、
それで亮に突っかかっている。八つ当たりというわけです。
なんとも情けない男だと鎧は自分でも思いました。
でも、それは亮には言われたくないとも思いました。

鎧は自分がこんなみっともなく苦しんでいるのは、
まだヒーローとしての気持ちを失いたくないと足掻いているからなのであって、
亮がそんなに涼しい顔をして餃子を作っていられるのは、
もう完全にヒーローの気持ちを無くしてしまったからなのであり、
それならまだ自分の方がマシと思ったのでした。
それで鎧は思わず開き直ってブチ切れて
「・・・ええ・・・辛いですよ・・・死ぬほど!・・・呑気に餃子なんか作ってる、あなたと違って!!」と大声で怒鳴り返します。

これはもう亮に瞬殺されても文句を言えないレベルの暴言ですが、
亮は変わらず冷静に同じペースで餃子の餡を皮で包む作業を続けながら、
「言ったろ?・・・俺は腕を磨いてこの餃子を世界一の餃子にしたいんだ」と穏やかに言います。
鎧はここまで言われてもまだ餃子の話しかしない亮に心底ガッカリして悔しげに俯きます。

しかし、確かに鎧にここまでの暴言を吐かれて、それでも亮が餃子の話をするというのは、
視聴者から見ても不自然ではあります。
こうなると亮が鎧に対して餃子にこだわる態度を示すことは何か深い意味があるのではないかと、
何となく分かってきます。
案の定、亮は出来上がった1つの餃子を手に乗せたまま、
「世界一の餃子なら、食べた人はみんな美味しいって笑顔になる・・・
世界一の餃子は世界一多くの笑顔を作れるって思うからね!」と語るのでした。

つまり、亮が世界一の餃子を作りたい理由は、
餃子職人としての名声を高めたいとか、商売繁盛で大儲けしたいとか、そういう理由なのではなく、
世界の人々を笑顔にしたいからなのです。
要するに、亮は自分のために餃子を作っているのではなく、他の人々のために餃子を作っている。

しかし鎧は、亮の餃子作りに賭ける姿勢はそれで分かったが、
どうして亮がいきなりそんな話を自分にするのかが分からない。
確かに自分の名声のためではなく人々の笑顔のために餃子を作るという考え方は
餃子職人としては素晴らしいとは鎧も思います。
しかし、今、鎧が亮に問うているのは餃子職人としての亮の姿勢ではなく、ヒーローとしての亮の姿勢です。

いや、ヒーローとしての亮の考え方を問いかける形で、
本質的には鎧自身にヒーローとして、どうあるべきかを問いかけているようなものです。
変身出来なくなったヒーローである亮が本当はどう考えているのか、それを知ることによって、
同じ境遇である自分がこれからどうしていけばいいのか、それを知りたくて
鎧は無意識のうちに亮に突っかかっているのです。

ところが亮から返ってくるのは餃子職人としての考え方だけです。
何か話が噛み合っていないような気がして、鎧はイライラしながら憮然とした顔で
「・・・何が言いたいんです・・・?」と言い返しました。
すると亮は真っ直ぐ鎧の顔を見て「・・・忘れてるんじゃないのか?・・・一番大切なこと・・・」と穏やかに、
しかし重みのある口調で言うのでした。

それを聞いて鎧はハッと気づきました。
餃子の話は何かの例え話であって、
亮は自分に何かヒーローとして大切なことを伝えようとしているのではないかと思ったのです。
しかし、鎧には亮の言おうとしていることが何なのか分かりませんでした。

亮の言葉をそのまま受け取れば、世界の人々を笑顔にすることが一番大切なことということになります。
しかし、それは確かに大切ですけど、あくまで目的です。
その目的を達成するための手段はそれぞれであり、
例えば餃子職人ならば、美味しい餃子を作ることがその手段に相当します。
そしてヒーローは変身して戦って悪を倒して世界を救うということが、
世界の人々を笑顔にする手段である存在です。
だから、ヒーローと餃子職人とでは同じ目的を達成するにも手段が全然違うのであり、
ヒーローの話で餃子職人の話を喩えに出されても、鎧にはピンとこないで、困惑した表情を浮かべます。

その時、突然、亮の屋台に並べられていた出来上がった餃子が浮き上がって飛んでいきました。
あっと驚いて鎧と亮が餃子を見ると、他の屋台の食べ物も同じように飛び去っていくのが見えました。
そして、それらの飛び去った食べ物は、全部1ヵ所に集まっていきます。
そこにはザキュラがゴーミンやスゴーミン達を引き連れて、何時の間にか現れており、
吸い寄せた食べ物を全部呑み込むと「へへ〜んだ!」と、すっかりいい気になっています。
なんとザキュラは今度はよりによって、このバザー会場の食べ物を平らげに来たようです。

鎧と亮は屋台から飛び出して「ザンギャック!」と怒鳴りますが、
ザキュラは鎧がゴーカイジャーの一員であることもよく覚えていないようで、
一般人が吠えている程度と思って全く相手にせず、
「ごちそうさま〜!ゴーミン!やっちゃえ!やっちゃえ!」と号令をかけて、
バザーの準備をしている商店街の人々にゴーミン達をけしかけて叩きのめし始めます。
屋台を守っている人数が結構多いので、食べ物を全部吸い取る邪魔になると思って、
全員を叩きのめしてやろうと思っているようです。

ここで商店街の人々がゴーミン達にいたぶられる場面となりますが、
昨日の赤龍軒の場面で亮を訪ねてきた商店街の3人組も
ここで盛大にゴーミンにやっつけられるアクションを披露します。
この3人は実は超有名なスーツアクターで、新堀和男氏、神尾直子氏、ショッカーO野氏の御三方です。
新堀氏はスーパー戦隊シリーズ初期のレッド戦士を演じた初代ミスターレッドであり、
神尾氏はベテランのスーツアクトレスで、夫はゴーカイレッドのスーツアクターの福沢博文氏です。
また、O野氏は元スタントマンのマルチタレント・プロデューサーで有名な方です。
この3人が亀尾商店街の人たちとして出演しているというのは、
前述の「亀夫」というキャラ名へのオマージュであると同時に、
「カメオ出演」にももじっていると思われます。
ここは3人とも見事というか余裕というか、やられアクションをしっかり披露してくださっています。

さて、こうして商店街の人々がゴーミン達に痛めつけられているのを目の前にして、鎧は悔しがって俯きます。
いつもの自分ならゴーカイシルバーに変身出来るから、ヒーローとしてザンギャックと戦って、
この人達を救うことが出来る。
でも今の自分は変身出来ないのでヒーローとして戦えない。
だから人々が痛めつけられているのを目の前にしながら何も出来ない。
そういうヒーローでない無力な自分が鎧は堪らなく悔しいのでした。

そうして下を向いてしまった鎧を横に立った亮が苦しそうな顔で見つめます。
亮もまた、この状況を前にして自分の無力に苦しんでいるかのように見えます。
そして、亮がゴーミンに襲われる商店街の人々の方に視線を移した時、
鎧がいきなり顔を上げて、飛び出していき、ゴーミンと商店街の人たちの間に割って入り、
ゴーミンを追い払って「逃げて!」と叫んで商店街の人たちを逃がそうとしたのでした。

鎧はヒーローでなくなった自分の無力感をとことんまで味わった結果、
もうこれ以上の無力感は味わいたくなくなったのでした。
変身出来ない今の自分ではヒーローとしてザンギャックを倒して人々を救うことは出来ないかもしれないけど、
それでも人々の悲鳴を聞きながら俯いて突っ立っているだけの自分はもう、1人の人間として嫌だったのです。
勝てなくっても構わないから、1人でもこの場から逃がすために、
ヒーローとしてではなく1人の人間として何かをしたいと、鎧は思ったのでした。

そうして戦い始めた鎧の姿を見て、亮はフッと笑うと、
猛然と鎧とゴーミンの戦っている場に飛び込んできて、
「ハイーッ!」と掛け声を発しながら凄まじいキレのある蹴りや突きを繰り出して、
そのあたりにいたゴーミンをあっという間に薙ぎ倒していきます。

鎧はその亮の動きを見て「亮さん・・・!」と驚き、唖然とします。
てっきり亮はもう変身出来なくなってからヒーローとして戦う気持ちを失ってしまっていて、
だからこの状況でも戦えないのだろうと鎧は思っていたのです。
ところがいきなり飛び込んできた亮の動きには全く迷いが無い。
切羽詰って仕方なく戦っているというような感じではない。
いや、そもそもこの身体のキレは、餃子のことしか考えていない商店街のオヤジでは到底不可能なものでした。
日頃からしっかり鍛錬していないと、この動きは出来ない。

つまり、亮は決して腑抜けてなどいなかったのです。
日々の生活の中でしっかり戦える準備はしていたのです。
つまり戦う心は失っていなかった。
鎧は自分が亮のことを誤解していたと悟りましたが、
しかし、それでも亮が変身できないこともまた事実です。
変身出来なくなってヒーローでなくなって数年も経つ亮が、何のためにそんなに鍛錬を重ねていたのだろうかと、
鎧は不思議に思いました。

いや、戦う心を忘れて腑抜けになったと思っていた亮に憤慨していた鎧が、
逆に亮が鍛錬していたことを不審に思うというのも勝手な話ではありますが、
鎧自身が変身出来なくなってヒーローでなくなってたった1日でここまで心が折れてしまっているわけですから、
変身出来なくなってヒーローでなくなって数年も経つ亮が鍛錬をしっかり続けて、
今こうして見事な動きを見せることが出来ることが心底驚きであり、不思議だったのでした。

亮の方は昨日の赤龍軒やさっきまでの屋台の場面では、割とぼやっとした顔付きの、
いかにも中華料理屋の主人という感じの風貌であったのですが、
ゴーミンと戦い始めて以降は何だか顔付きも少し変わって
まるで20年前そのもののような精悍な顔つきになり、ヒーローのオーラが漂ってきています。

そして周囲のゴーミンに睨みをきかせつつ、鎧に向かって
「それからもう1つ・・・転身できなくなった俺は、世界を救うことは出来ないかもしれない・・・」と言い、
そこに襲い掛かってきたゴーミンを軽くあしらって一撃で倒し、
「・・・だが、目の前の敵を見逃すほど、俺は年はとっちゃいないぜ?」と言いながら、
ハッピを高々と脱ぎ捨てて動きやすい恰好になると、
なんとここで「リュウレンジャー!天火星!亮!」と、
生身でのリュウレンジャーの複雑な名乗りポーズを披露します。
そして手を高々と天に突き上げてから、「天に輝く!五つ星!五星戦隊!ダイレンジャー!!」と、
全体名乗りの部分まで1人でやりきってしまったのでした。

ダイレンジャーの各戦士の名乗りポーズというのは中国拳法の動きを採り入れた
シリーズ歴代で最も難易度の高いものでした。
名乗りシーンというのは変身シーンの直後にあるものですから、
当然、変身後スーツの中に入っているスーツアクター、すなわちアクションの専門家によって演じられます。
普通の戦隊の名乗りポーズは、まぁ少し練習すれば素面の役者でも可能ですが、
このダイレンジャーの名乗りポーズは、素人目に見てもスーツアクターだから可能なのだろうと分かるものです。
実際、本編放送時も「子供が真似できない」と一部で不評で、
その結果、次作以降は難しすぎる名乗りポーズはタブーとなったぐらいです。
つまり「ダイレンジャーの名乗りポーズは難しい」というのが世間的評価であったのです。

ところが、「ダイレンジャー」の最終盤の第47話において、
和田氏をはじめとするダイレンジャーの(キバレンジャーのコウを除く)5人の戦士の素面役者5人は、
素面のまま、つまり変身前の姿のまま、この超難易度の名乗りシーンを演じるという快挙を成し遂げたのです。
スーパー戦隊シリーズではこの第17作の「ダイレンジャー」より前は、
名乗りシーンを素面役者が素面のままで演じるという演出は存在しませんでした。
いや、実は素面役者が終盤にスーツの中に入って名乗りシーンやアクションシーンを演じるという
恒例行事というのは存在していたので、素面役者が終盤に名乗りをするという習慣自体は存在していました。

しかしそれを変身しない姿でやるというのは前代未聞でした。
というか、変身もしないで名乗りをするという場面の必然性自体が普通は無い。
名乗りというのは戦士の名を名乗るのであって、変身してこそ戦士だからです。
例えば、変身(転身)しない亮はあくまでただの亮であって、リュウレンジャーではありません。
だから、亮の姿のままでリュウレンジャーの名乗りをする意味など無い。
だから「素面名乗り」という演出の必然性はもともと存在せず、
シリーズにおいても当然、この時まで「素面名乗り」などという妙な演出は存在しませんでした。

しかし、「ダイレンジャー」においては終盤の特殊な展開の結果、
この素面名乗りと、それに続いて変身を前提としない生身アクションのシーンが自然に成立することとなり、
この名乗りの異常に難易度が高い動きを素面役者が見事に成功させ、
更に生身アクションのレベルも異様に高かった(これはいつものことだったが)ので、
これが一種のシリーズにおける伝説の名シーンとなり、
これ以降、シリーズ各作品において、終盤に素面名乗りを行うのが半ば恒例行事化することとなったのでした。

それでも、未だにこの最初のダイレンジャーの素面名乗りが歴代最高峰の素面名乗りと言われています。
それぐらい素晴らしい完成度であり、
それゆえ「素面名乗り」という本来は必要の無い演出が恒例行事化するほどになったと言われています。
その18年前の最初の素面名乗りのリードをとった和田圭市氏によって、
今回、同じリュウレンジャーの素面名乗りが見事に、当時と変わらない見事な動きで再現されたのです。

ただ、この「素面名乗り」というものですが、
最初の「ダイレンジャー」47話の伝説の素面名乗りが素晴らしかったのが恒例行事化の原因と言われていますが、
では何故、この時の素面名乗りが素晴らしかったのかというと、単に動きが素晴らしかったからではありません。
むしろ、このシーン全体のテンションが異常に高かったから、動きが素晴らしくなったのだといえます。

まぁ「ダイレンジャー」という作品は基本的にテンションが高いのですが、
この終盤の45話から最終50話までのテンションの高さはちょっと異常です。
この時期というのは年が明けて怒涛のクライマックスに突入する、
シリーズのどの作品でも異様にテンションの上がる時期なのですが、
通常の作品はそれでも、単に絶体絶命の絶望的な状況からの大逆転が描かれるのがパターンで、
作品の世界観自体は起伏がやたら激しくなるだけのことで、基本的な構図に変化はありません。

ところが、この終盤のクライマックスの時期に
作品の世界観そのものが突如ひっくり返ってしまったようなトンデモない作品がシリーズでは3つあります。
これは単に意味不明に破綻したというのではなく、本当に設定がひっくり返ってしまっており、
それはグダグダになっておかしくなった場合とは根本的に異なり、
かなり勢いのある成功作でなければ生じない現象ですから、
トンデモないといっても別に貶しているわけではありません。
むしろテンションの高さが並はずれていると言っていいでしょう。

その3作品というのは「シンケンジャー」「タイムレンジャー」「ダイレンジャー」です。
ただ「シンケンジャー」と「タイムレンジャー」はそれでも一旦ひっくり返した後、
ちゃんと綺麗にまとめて終わりました。
ところが「ダイレンジャー」だけはひっくり返ったまま終わってしまったのです。
それでいて最後までテンションが下がることはありません。
というより、テンションが上がり過ぎて、綺麗にまとめるどころではなかったのだといえます。
そういう高すぎるテンションの終盤の展開の中での素面名乗りだったからこそ伝説となり、
その後の恒例行事化に繋がったのだといえます。
単にアクションの出来が良かったから伝説になったわけではないのです。

その「ダイレンジャー」終盤の怒涛の展開を生み出したのは、
もともとの「ダイレンジャー」という作品の持つシリーズにおいて他に例の無い特殊な世界観が原因だといえます。
それは東洋哲学的な陰陽思想に基づいた世界観です。

すなわち、正義と悪というのはもとは1つの太極から生じた二極であって、表裏一体の存在であり、
どちらかが生き残り、どちらかが滅ぶということはない、
互いに永遠に争い合いながら永遠に生きていくのが宿命であり、勝負がつくことはない、
全ては虚しい戦いである、というような世界観です。

こうした思想のもとに作られた「ダイレンジャー」の物語世界の設定は、下記の通りです。

8000年前に生まれた古代帝国であるダオス帝国では気力という特殊能力を持つダイ族と、
妖力という特殊能力を持つゴーマ族が、特殊能力を持たないシュラ族を支配しており、
帝国を我が物にしようとするゴーマ族がダイ族を攻撃し、
5000年近い戦いの結果、ダイ族とゴーマ族は姿を消して、シュラ族の子孫が現在の人類となったのでした。
この現代の人類社会に突如ゴーマ族が復活して地球を支配しようとして動きだし、
これに対抗するためダイ族の道士・嘉挧がダイ族の血を引く気力の強い若者たちを集めて
ゴーマの侵略に対抗させるべく編成したのがダイレンジャーであったのです。

ただ、ここで初期設定からして、
正義のダイ族と悪のゴーマ族というのはもともと同じダオス帝国を共同統治していた同士であり、
考え方の相容れないダイ族とゴーマ族が争い合いながら適度にバランスをとって
5000年もの間、ダオス帝国を維持して、シュラ族、つまり特殊な戦う能力を持たない一般の人々を
守護してきたのだといえます。
その戦いがエスカレートして、遂にバランスを崩壊させた結果、破局が訪れ、
ダイ族もゴーマ族も共に姿を消す羽目となったのでした。
どちらか一方だけが滅びるということはないのですが、
そのバランスを崩すまで戦いをエスカレートさせるようなことがあれば、
大宇宙の意思の介入によって、正義と悪は双方ともに滅ぼされるのです。

そして現代、悪のゴーマ族が復活すれば、それに対抗して正義のダイ族も復活するのが宿命であり、
それゆえダイレンジャーは結成されました。
普通の戦隊ならば、正義のダイレンジャーは悪のゴーマを倒さなければなりません。
しかし、この「ダイレンジャー」の世界観では、
ダイレンジャーに求められていることはゴーマを滅ぼすことではなく、
ゴーマと争い合いながらバランスが崩壊しないように折り合いをつけていくことなのです。

ただ、そうした大宇宙の法則は、現代に甦ったダイレンジャー側もゴーマ側もハッキリとは把握していませんから、
当初は双方ともに相手を滅ぼすために全力で戦います。
ダイレンジャーの指揮官である道士・嘉挧はある程度はそうした正義と悪のバランスについては
知っていたようですが、それでも実際にバランスが崩れた場合に何が起きるのかまでは分かっておらず、
状況次第ではゴーマを滅ぼすことも視野に入れていたのだと思われます。
そういうわけで嘉挧はダイレンジャーのメンバーには正義と悪のバランスの話はしておらず、
当然、亮をはじめダイレンジャーのメンバーは正義の力で悪を倒すヒーローの自覚をもって
ゴーマと懸命に戦っていました。

ところがダイレンジャーとゴーマの戦いがエスカレートして、その規模が一線を超えた時、
大宇宙の意思の代弁者である大神龍という巨大な龍が地球に降り立ち、
圧倒的な力でダイレンジャーとゴーマを攻撃し、停戦協定を結ばせたのでした。
おそらくかつてダオス帝国を滅ぼしてダイ族とゴーマ族を壊滅させたのも、
当時のダイ族とゴーマ族は気付いていなかったが、大神龍だったのでしょう。

大神龍は争う者は善悪関係無く滅ぼすので、こうしてダイレンジャーとゴーマは戦うことが出来なくなります。
しかしゴーマの中の好戦勢力が何度も停戦協定を破りダイレンジャーを攻撃し、
ダイレンジャーも当然それに反撃し、そのたびに大神龍が襲来して双方を攻撃するという
ややこしい状況となっていきます。
これではダオス帝国の破局の二の舞になると悟った嘉挧は、ゴーマと戦うことを止めることを決意し、
ゴーマに戻ることを決めます。

実は嘉挧はゴーマの穏健派の幹部で、地球征服に反対して強硬派に追い出された身であり、
強硬派に実権を握られたゴーマの企みを阻止するためにダイ族に移ってダイレンジャーを組織していたのです。
しかし大神龍の襲来によってゴーマ内で穏健派が復権して地球征服を止めることが出来る可能性が生じたので、
嘉挧は自分がゴーマに戻ってゴーマの実権を握るべく、ゴーマの支配層と交渉し、
嘉挧がゴーマに戻れる代償に、停戦の証としてダイレンジャーを解散するということになりました。

ただゴーマ内部に強硬派の勢力は根強く、ゴーマを穏健派主導で動かそうとする嘉挧には
危険は待ち構えていることは明らかで、
そのことを亮たちが知れば、ゴーマ強硬派と戦い始める危険があり、
そうなるとゴーマ支配層との約束が台無しになると恐れた嘉挧は、
亮たちには一切事情を説明せずに自分がゴーマの幹部だと明かした上で
ダイレンジャーを解散して、亮たちの変身アイテムのオーラチェンジャーまで奪ってしまいました。

もともと亮たちは嘉挧の唱える「地球を救う正義の戦い」に賛同して、
嘉挧から与えられたオーラチェンジャーを使って転身して正義のヒーローであるダイレンジャーとなり、
嘉挧の命ずるまま戦っていましたから、
この嘉挧の背信によって自分達の正義のための戦いは無価値だったと思い、
転身出来なくなった自分達はもはやダイレンジャーではないと、ヒーローとしての自分達を否定して、
無気力状態となって各自バラバラに元の一般生活に戻って腑抜けのようになってしまいました。
まさにゴーカイセルラーを無くしてヒーローとしての自分を見失ってしまった今の鎧と同じです。

しかし亮たちは転身出来なくても、ヒーローでなくても、
それでも自分は確かにダイレンジャーであったのであり、
仲間たちはやはり仲間であり、そして嘉挧もやはり大切な人なのだと思い、
この中途半端なままダイレンジャーのことや嘉挧のことを忘れることなど出来ず、
嘉挧が妙な塔を設置していたビルの屋上が気になって5人は自然に再びそこに集まり
独自にダイレンジャーを再結成しました。

そこにゴーマ強硬派のザイドスが塔を破壊しに現れて、
その塔が、ゴーマ宮でまさに今行われている王位を賭けての嘉挧と強硬派の頭目のシャダムとの決闘における
嘉挧のパワーの源となっているので、それを破壊しに来たことを亮たちに伝えました。

嘉挧が自分達に心配かけまいと全てを背負い込んで戦っていることを知った5人は
嘉挧を守るために、転身出来なくても、ヒーローでなくても、ダイレンジャーとして戦おうと決意し、
塔を守るために生身のままザイドスに立ち向かいます。
この時に転身出来なくても自分達はダイレンジャーなのだということを示すために、
生身のままでいつもの転身後の名乗りをあえてやったのが、
伝説の47話のシリーズ初の素面名乗りだったというわけです。

そして、圧倒的戦力差にボロボロになりながらも、
ひたすら嘉挧を守るためにザイドスに立ち向かう亮たちのもとに、
嘉挧に奪われたはずのオーラチェンジャーが勝手に舞い戻ってきて、5人は転身しザイドスを倒します。
しかし一瞬のスキを突かれて塔は破壊され、嘉挧は力を失い決闘で敗死してしまいました。

このザイドスの引き起こした戦いによって再び停戦協定は破られ、
これを察知した大神龍はゴーマ宮を攻撃し始め、
そんな中、亮たちは悪の新皇帝となったシャダムを倒して嘉挧の仇を討つためにゴーマ宮に攻め込み、
最終決戦が始まります。

ところが先に倒したザイドスをはじめゴーマの幹部や前皇帝までが泥人形となって崩れ去り、
全てはシャダムが黒幕となって操っていたことが判明し、
そこに死んだはずの嘉挧の幻影が現れて、
「正義と悪は表裏一体でありお互いが争い合いながら永遠に生きていく。永遠に勝負はつかない。
愚かな戦いを止めてゴーマ宮から立ち去れ」と亮たちを諭します。

すると何故か亮たちの転身が解けてしまい、シャダムも元の姿に戻り、
ゴーマ宮は大神龍によって崩壊し、
亮は仲間たちを脱出させた後、1人残ってシャダムと決着をつけようとしますが、
シャダムもまた泥人形となって崩れ去り、亮は何が何やら分からないまま戦いは終わりました。
そしてゴーマはそのまま姿を消し、必然的にダイレンジャーも解散することとなったのでした。

ここで一旦、ダイレンジャーの物語は終わり、
その時系列の続き、およそ20年後に「ゴーカイジャー」の「199ヒーロー大決戦」映画における亮のドラマがあり、
そして今回のダイレンジャー篇の亮のドラマがあります。

この「ダイレンジャー」終盤で起きた不思議な出来事を解釈すると、
嘉挧を守るために戦おうとした亮たちはオーラチェンジャーに選ばれ、
復讐のためにゴーマを倒そうとした亮たちはオーラチェンジャーに拒まれたということになります。
そしてシャダムをはじめゴーマを動かしていた者達も、
何者かに作られて操られて悪を演じさせられていた傀儡人形に過ぎなかったのであり、
その役割を超えて悪の勝利を目指したためにその何者かに見放されて泥人形となって朽ちたのだといえます。
そして、正義と悪の戦いが激しくなると飛来して双方を滅ぼそうとする大神龍。
それらの現象は嘉挧の幻影が言っていた
「正義と悪は表裏一体でありお互いが争い合いながら永遠に生きていく。永遠に勝負はつかない」
という謎の言葉に繋がっていきます。

亮は当然、恩師の嘉挧の残した謎の言葉の意味を知ろうとして、嘉挧の師である虞翻のもとを訪ねて、
その言葉の意味を質問したはずです。
そして3000年前のダオス帝国の滅亡を経験しているほどの古株のダイ族の虞翻は、
ダオス帝国の真実を亮に語って聞かせたのだろうと思われます。

すなわち、特殊な戦う力を持つ者である正義のダイ族と悪のゴーマ族は
本来は相争い合いながら共存してバランスを保ち、
そのバランスによる安定のもと、特殊な力を持たないシュラ族、つまり一般の人々を守護していくのが、
特殊な戦う力を持つ者として与えられた宿命なのだという話です。
そして、かつてその本来の宿命を忘れて、互いを滅ぼすことに夢中となったダイ族とゴーマ族は、
双方ともに滅びることになった。
つまり、正義のヒーローの特別な戦う力も、悪の怪人の特別な戦う力も、
本来は悪を倒すためや、正義を倒すために使うべきものではなく、
人々の暮らしを守るために使うものなのです。

悪の力が人々の暮らしを守るというのも妙な話のようにも聞こえますが、
人間という存在が本来、陰陽両面から成立しており、
人間の心の半分も悪で成り立っているという思想に立てば、
悪の力もほどほどであればむしろ暮らしの役に立つといえます。
毒も容量を加減すれば薬になるわけですから、適度な悪はむしろ有用というのが東洋思想です。
そして過ぎたる正義はむしろ害悪にもなるというのも東洋思想で、大事なのは陰陽のバランスなのです。

本来のバランスをとって人々の暮らしを守るという宿命を忘れて、
そのために与えられた特別な力を間違った目的、つまり正義の貫徹、悪の貫徹に使おうとしたために、
その度が過ぎた瞬間、ダイ族とゴーマ族は大宇宙の意思によって滅ぼされたのでした。
そして現代、ゴーマが復活し、ダイレンジャーが招集されたのも、
陰陽のバランスをとるために大宇宙の意思が泥人形にゴーマを演じさせ、
また同時に嘉挧という人間を動かした結果だったのでしょう。

嘉挧はダイレンジャーを戦わせて正義と悪のバランスを維持しようとしたのだが、
大神龍の出現によって、ゴーマの暴走のせいで正義と悪のバランスが崩壊寸前にまで至っていることを悟り、
自分がゴーマ皇帝になることによって和平を実現しようとしてダイレンジャーを解散したのです。

それは嘉挧がダイレンジャーというヒーローの力は悪を倒すためではなく、
人々の暮らしを守るために使われるべきだと思っていたからです。
そして、それは大宇宙の意思に通じていた。
だから、その嘉挧の目指していることを知り、
嘉挧を守り、ひいては人々の平和な暮らしを守ろうとして生身で戦おうとした亮たちを
大宇宙の意思はヒーローと認め、ダイレンジャーとして変身して戦う力を復活させたのです。

そして大宇宙の意思は、嘉挧を殺してあくまで悪を貫徹して正義を滅ぼそうとした
シャダムおよび彼に操られたゴーマを見限り、泥人形に戻した。
そしてダイレンジャーはその役目を終えたのだと、ダオス帝国の真実を知った亮はそう解釈したのでした。

そして、そこから亮が学んだことは、
ダイレンジャーというヒーローの本質は、変身して強大な力で悪を倒すことではなく、
人々の平和な暮らしを守りたいという大宇宙の意思に従うことであったのだということでした。
人々を守りたいという想いがヒーローにとって一番大切なことであり、与えられた真の宿命なのであり、
その宿命に従う限り、ヒーローとして戦う力が失われることはない。
逆にその宿命を忘れて己のエゴのために戦うようになれば、ヒーローとして戦う力は失われてしまう。
そういうことを亮は、ゴーマとの最終決戦の実体験をふまえて実感したのでした。

ただ、1つどうしても分からなかったのが、
「お互いが争い合いながら永遠に生きていく」という嘉挧の言葉でした。
それはつまり正義と悪の戦いは永遠に続いていくという意味ですが、
しかしゴーマは泥人形となって滅び、ダイレンジャーも解散した。
確かに決着はつかなかったが、とにかく戦いは終わったのです。
だから亮にはしばらく嘉挧のこの言葉の意味が分かりませんでした。

しかし、ゴーマとの戦いが終わり、再び世界一の餃子職人を目指す生活を再開した亮は、
しばらくして再び世界に不穏な空気が満ちてきていることに気付きました。
それは悪の妖怪の跋扈によるもので、
もしその悪の勢力の極端な伸長が人々の生活を脅かすというのなら、
自分達ダイレンジャーが再び正義の力でバランスをとらねばならないと亮は思いました。

しかし、よく見ると、妖怪の悪の動きに対抗して正義の力でバランスをとっている者達の存在があることに
亮は気付きました。
それはカクレンジャーという、ダイレンジャーによく似たヒーローのチームでありました。
それを見て、亮は嘉挧のあの言葉の意味が分かったような気がしたのです。
正義と悪の戦いはこうやって永遠に続いていくのであり、
今度は自分達に変わってヒーローの宿命を負っているのがカクレンジャーなのだと理解できたのでした。

そして妖怪軍団が滅びるとカクレンジャーも姿を消し、
その後も新たな悪の侵略者が現れると新たな正義のヒーロー戦隊が
ヒーローの宿命を負って現れるということが繰り返されていくのを亮は観察し続けていきました。
正義と悪の戦いはこうして永遠に続いていく宿命となっており、
ゴーマが滅びても別の悪がまた繰り返し現れる。
それがこの世界の真実の姿だと悟った亮たちは、
一旦正義の戦士として宿命を受けた身として、
いつ自分たちに正義の側で戦う宿命が巡ってくるか分からない以上、鍛錬を怠るわけにはいきませんでした。

しかし、その宿命は毎回新たな悪が現れるたびに亮たちとは別の新たな戦士たちに下されていきました。
今回も、また今回も戦う宿命は巡ってこない。
そうした生活の中で自分達はどうやって生きていけばいいのか、亮たちは考えました。
そして、変身して戦わなくてもヒーローである以上は、
あの生身でザイドスと戦った時のように大宇宙の意思に従うべきであろうと思いました。
それはつまり自分の宿命に従い人々の平和な暮らしを守るために生きるということであり、
そうしている以上、たとえ戦う順番が回ってきていなくても
ヒーローとして戦う力は自分から離れることはないと、亮たちは考えたのです。

そうして亮たちダイレンジャーの面々は、日々の暮らしの中で人々の平和な暮らしに貢献して生きながら、
戦いの日に備えて鍛錬を重ねていくことにしました。
亮の世界一の餃子を作る夢も、単なる職人としての目標を超えて、
世界一美味しい餃子で世界の人々を笑顔にすることもまた、
ヒーローの宿命を負った者の目指すべき道だという考え方に基づくものとなりました。

もちろん現実にはまだ亮の餃子は世界一にまでは至っていません。
極論を言えば世界一の栄冠まで本当に達成することは前提とはしていません。
例えば餃子世界一決定戦に出場して優勝するとか、そういう自身の名誉を求めているわけではないのです。
「世界一」というのは「果てしない目標」というものを言い換えた言葉です。
果てしない目標に向かって永遠に研鑽していくことが大切なのです。
何故ならヒーローの戦いは永遠に続いていくからです。
ヒーローにとって一番大切なことは名誉や達成や勝利ではなく、
果てしない戦いの中で常に人々の笑顔を守りたいという気持ちを持ち続けることなのです。
それが本当のヒーローの宿命です。

だから亮はどれだけ腕を上げても「世界一を目指している餃子」を作り続け、
「世界一の笑顔」を実現するための研鑽を続け、決してその研鑽の道が終わることはない。
そのようにして亮はヒーローの生き方を体現しているのです。
だから、亮の餃子にはヒーローの一番大切なもの「人々を守りたいという気持ち」が込められており、
それは亮の「夢」であり「希望」の象徴なのです。

「199ヒーロー大決戦」映画で、人生に挫けたサラリーマンが元デンジブルーの青梅大五郎、
元デカピンクのウメコ、そして亮と出会います。
「昔は夢も希望もあったが、今はもう人生に夢も希望も無い」というサラリーマンに向かって、
3人は「今まで自分達もどれだけ悪を倒してもまた新たな悪が現れてきた。
でも今よりほんの少しでも未来を美しくしたいという気持ちを忘れたくないと思って頑張っている」と言います。
つまり「ほんの少しでも未来を美しくしたい」というのが3人の夢であり希望なのです。
これはつまり、亮たちダイレンジャーが辿り着いた「人々の平和な暮らしを守りたい」という想いと同じことです。
つまり歴代レジェンド戦隊は結局は皆、同じ「ヒーローとしての宿命」に辿り着いているわけです。

そして実際に「199ヒーロー大決戦」映画の中でこの3人のレジェンド戦士のやっていることといえば、
青梅は保育園の子供たちにアンパンを配って回ることであり、
ウメコは普通に婦警として街の犯罪を減らす努力をしています。
そして亮は「夢や希望を捨てたら人間はおしまいだ」と言ってサラリーマンに餃子を差し出して食わせて、
「俺はこの餃子を一生かけて美味くしていく」と言っているのです。

サラリーマンは思いのほか亮の餃子が美味しかったので少し元気になり、
元レジェンド戦士の3人が勝利の光の見えない果てしない悪との戦いの中でも、
そして遂に戦う力までも失った逆境の中でもなお、
人々の笑顔を守ることを希望として、ささやかに、しかし粘り強く頑張っており、
その努力を一生続けていくつもりであることを知ります。
そして、それが彼らヒーローにとって一番大切なことなのだということにサラリーマンは気付きます。

しかしサラリーマンは自分はヒーローではなく、自分にはそんな夢や希望はもう無いと思い、
まだ完全には立ち直っていませんでした。
しかし3人と出会ったことでスーパー戦隊のヒーローの本当の心を知ったサラリーマンは、
その後、強大な悪の権化である黒十字城がスーパー戦隊の抹殺と地球の破滅を目論んで
ゴーカイジャーとゴセイジャーを追い詰める中、この2戦隊が懸命に戦う姿を見て、
思わず2戦隊に声援を送ります。

青梅やウメコや亮がどうして戦う力を失っても自分の日常業務を通しての地道な世界への貢献に甘んじて、
戦えないことで絶望しないで済んでいるのか?
それは果てしない悪との戦いのサイクルの中で、
今は自分達が正義の力で戦う宿命を負う順番ではないことが分かっているからです。
今、その宿命を負っているのがゴーカイジャーであることを理解しているので、
とりあえずゴーカイジャーに任せようと思うことが出来るのです。

ウメコのデカレンジャーはこの時点で既にゴーカイジャーに「大いなる力」を託していましたし、
青梅と亮はゴーカイジャーの戦いを見て、
彼ら海賊がヒーローの一番大切なことである「人々を守りたいという夢や希望」を
自分達と同じように持っていることに気付き、「大いなる力」を渡しました。

サラリーマンがゴーカイジャーが戦っているのを見たのはその後です。
サラリーマンは3人が言っていた悪との果てしない戦いの歴史の中で今現在、
彼らレジェンド戦士たちの「人々を守りたい」という想いを継いで戦う宿命を負っているのが
ゴーカイジャーなのだと感じ、声援を送りました。

すると、その想いが彼の持っていたバリブルーンの古い玩具に込められていた、
彼自身の子供の頃の夢と希望であった「世界の人々を守りたい」という想いと共鳴し、
そしてそれが励起したレンジャーキーのパワーと結びついて巨大なバリブルーンを出現させて、
それがゴーカイオーと合体してゴレンゴーカイオーとなり黒十字城を倒したのでした。
その光景を見たサラリーマンは、自分にも子供の頃の夢や希望であった「人々を守りたい」という想いが残っており、
それは亮たち元レジェンド戦士たちと同じであり、
ならば自分も彼らと同じように粘り強く世の人々のために生きていける、
つまり昔持っていた夢と希望を実現していけるのではないかと思うことが出来たのでした。

この「199ヒーロー大決戦」に登場したサラリーマンは、
彼のヒーローとしての心が玩具を依り代として実体化したバリブルーンが
黒十字城を倒す決め手になったりして、実質的にヒーローとして機能しているキャラです。
結局、変身して戦う力があっても無くても、
ヒーローとして一番大切なこと「人々を守りたい気持ち」を理解している人は皆、
ヒーローになれる可能性はあるというのがこの映画の趣旨といえます。

そして、このサラリーマンがヒーローであるとするなら、
亮たちはヒーローを1人立ち直らせて、ヒーローとして力を発揮させたのだといえます。
そもそもどうして3人はこのサラリーマンにここまで構ったのか?
それは亮たちが世の中の人は皆、人々の笑顔を願う前向きな気持ちを持つ限り
ヒーローになり得るのだということを知っており、
世の人々は皆、自分のようにヒーローになり得る仲間なのだから、
誰かがヒーローの前向きな気持ちを無くしていたら、
ヒーローの宿命を負った先輩として、構ってあげたくなり、立ち直らせてやりたくなるからなのでしょう。

亮が鎧のことを構うのも同じことなのです。
鎧もまたこの映画のサラリーマンと同じように一般人であったが、
ヒーローの一番大切なことを理解していたからこそ、ヒーローとして戦う力を与えられたのです。
しかも映画のサラリーマンのようにあくまで一般人のまま、そのヒーローの心が奇跡を起こした者ではなく、
鎧の場合は果てしない正義と悪の戦いの連環の中で、
今回の戦いにおける正義の戦う力を振るうヒーローの宿命を背負ったゴーカイジャーの一員として
選ばれた者なのです。亮から見ればまさに後輩です。

亮はかつて自分達が正義のヒーローの宿命を誤解して、
その戦う力を自らのエゴのために使ってしまうという失敗を犯した経験上、
後輩である同じ正義の宿命を負った戦士たちが同じ過ちを犯さないよう、
先輩として見守っていこうと思ってきました。
だから今回、亮はまさにその先輩の務めを果たして、鎧のことを心配しているわけです。

そもそも今回、鎧が変身出来なくなったのは、
直接的にはザキュラにゴーカイセルラーを呑み込まれてしまったからですが、
そうなったのは鎧が浮かれまくって隙だらけの戦い方をしたからです。
どうして鎧が浮かれていたのかというと、
怪我が治って変身してヒーローとして戦えるのが久々なので嬉しかったからです。
つまり鎧はゴーカイシルバーとして変身して戦う力を自分の「悪を倒す正義のヒーロー」としての名誉欲や
自己満足感のために使ったのであり、一番大切な「人々を守りたいという気持ち」に集中出来ていなかった。
その結果、変身能力を失って、ゴーカイシルバーではなくなってしまったのです。
つまり、かつて嘉挧にオーラチェンジャーを取り上げられてダイレンジャーではなくなった亮たちと同じです。

ならば、鎧が再びゴーカイシルバーになるためには、単にゴーカイセルラーが返ってくればいいというものではない。
それは変身能力を失うほどに堕落したゴーカイシルバーに戻るだけのことであって、
そんな程度の心構えで形だけゴーカイシルバーに戻ったところで、
再び大きな失敗をして、ゴーカイシルバーの資格はおろか命まで落としかねないでしょう。

鎧が戻るべきは一番大切な気持ちを見失っていなかった頃のゴーカイシルバーであり、
そこに戻るためには、ゴーカイセルラーが戻ってくる前に、
まずはヒーローとして一番大切な気持ちを取り戻していないといけない。
亮たちがかつてオーラチェンジャーが無くてもダイレンジャーとして一番大切な気持ちを取り戻して、
生身でも人々のため戦おうとした時と同じ気持ちを、鎧も持たねばならない。
そうすれば、あの時、オーラチェンジャーが飛んで戻ってきたように、
自ずとゴーカイセルラーも戻ってくるはずです。

亮はそのように思って、鎧に自分のヒーローとして一番大切にしている気持ち
「世界一の餃子を作って世界一の笑顔をたくさん作るため、腕を磨き続ける」ということを説きました。
そうして鎧自身がヒーローとなった時に持っていたはずの一番大切な気持ちを想い出すよう促したのです。
それはもちろん「人々を守りたいという気持ち」です。
亮は鎧がそれをきっと想い出すはずだと信じていたのです。
だから、ザキュラ率いるゴーミン部隊がバザーを襲ってきた時、
亮は鎧が人々を守るために飛びだすのを一瞬待ってしまったのです。

本当は亮も飛び出したかったのだが、
亮はまず当然、鎧が飛び出すものだと思っていた。
ところが鎧が下を向いて躊躇しているものだから亮も困惑してしまったのです。
現在の正義と悪の戦いにおいて正義のヒーローとしての戦う宿命を負っているのは亮ではなく鎧なのです。
ですから、ここは鎧がたとえ変身出来なくても人々を守るために飛び出さないといけない。
餃子の話をしても、まだ鎧に迷いがあるということは亮も少し予想外で、
ここで鎧が大切な気持ちに目覚めるのを待つか、それとも、鎧はもう諦めて自分が戦うか、
一瞬、亮も躊躇しました。
そうして亮が躊躇している間に、遂に鎧が飛び出していって人々を守ろうとして戦い始めたので、
亮はホッとして、心置きなく戦い始めたのでした。

そして、まだ鎧が迷っていたことを知った亮は、
更にダメ押しで鎧にヒーローの一番大切な気持ちが何なのかを教えるため、
「転身出来なくなった俺は確かに世界を救うことは出来ないかもしれないが、
目の前の敵を見逃すほど年はとってない」と言って、
自分が20年前にヒーローの一番大切な気持ちが何だったのかハッキリ知った時に、
その証として披露した生身での名乗りポーズを、20年ぶりに再び披露して鎧に見せることにしたのでした。

そして押し寄せてくるゴーミン集団に「いくぞぉぉっ!!」と突っ込んでいき、
「タァッ!!」「イヤッハァーッ!!」「ハイーッ!!」と激しい気合いを発しながら
ゴーミン達を叩きのめしていく亮の姿を見て、鎧は呆然としていました。
鎧は亮が意外なほどに鍛錬していて、意外なほどに戦えていることに驚いていましたが、
それは鎧が勝手に亮のことを腑抜けていると思い込んでいたからであって、
元ヒーローならばこれぐらいの動きが出来るのはそんなにおかしいことではありません。
それに強いといっても、所詮は生身での強さであって、
ゴーミンには通用してもスゴーミンやザキュラには通用しない。

だから、この場で変身能力の無い亮が戦っても勝ち目は無いのです。
それでも目の前で人々が痛めつけられるのを黙って見てはいられないから亮は戦っているのだろうと、
鎧は思いました。
実際、亮は「変身出来なくなった自分は世界を救うことは出来ないが、
目の前の敵を見逃すことは出来ない」と言っています。
だから、亮が勝ち目が薄いのは承知の上で人々を守るために生身で無茶をしているのは間違いない。
そして、それは鎧も同じ気持ちでした。

ところが、ここで鎧にとって全く予想外であったのは、
いきなり亮が生身のままでリュウレンジャーの名乗りポーズを披露して
リュウレンジャー、そしてダイレンジャー全体の名乗りまで上げたことでした。

もちろん鎧は有名なリュウレンジャーの名乗りポーズは知っていましたが、
「ゴーカイジャー」の物語世界は「ダイレンジャー」47話が放送されているような世界ではありませんから、
鎧は亮たちが素面名乗りをしたことがあるとは知りません。
同様に他の戦隊の数々の素面名乗りの事実も知りません。
鎧の認識では、名乗りポーズというのは当然、変身後の戦う姿になってから行うものであって、
素面で行うものではありませんでした。
だから鎧はいきなり亮が、ここで一見全く意味の無い素面名乗りを行うのを見て、心底驚きましたが、
同時に、その亮の名乗りはあまりに堂々としていて、
鎧の目には亮は間違いなくリュウレンジャーに見えたのでした。

それはつまり、亮が1人の人間として、あるいは元ヒーローの生身の拳法家としてではなく、
あくまでリュウレンジャーとしてこの戦いに臨んでいるということです。
しかし、実際は亮はリュウレンジャーに変身しているわけではなく、
鎧同様、人々を守るためにあえて勝ち目の薄い無茶な戦いをしているだけです。
それでも亮があえて挿入する必要の無い名乗りをここで挟んだということは、
あえて自分はリュウレンジャーとしてこの無茶な戦いに臨んでいるのだということを
見せようとしているということになります。もちろん鎧に見せるためです。

つまり亮は、リュウレンジャー、すなわちヒーローとは、
変身出来なくても人々を守るために勝ち目の薄い無茶な戦いをするものだと言いたいのです。
しかし亮がそういう考え方をするということが鎧には意外でした。
亮は世界一の餃子を作りたいだけの餃子職人になってしまっていたと思っていたからです。

しかし、そこで鎧は気付きました。
餃子、餃子と散々自分はバカにしていたが、世界一の餃子というのが実際どれほど大変かということです。
おそらく本当に亮の餃子が世界一ならば、あんな小さな店の店主ではないでしょう。
実際は世界一には全く及ばない味であり、食べた人が全員笑顔になるわけでもないのでしょう。
それでも亮は世界一を目指して、自分の餃子で世界一の笑顔をたくさん作る日を夢見て腕を磨いていくのです。
それは終わりの無い、果てしない戦いであり、おそらく亮の目標が達成されることはないでしょう。
というか、そもそもどうやって餃子の世界一など決めるというのか?

だから亮は本当に世界一の称号を手に入れようとしているわけではない。
ゴールの無い、勝利の無い戦いを続けたいだけなのです。
何故か?
それは「世界の人々を笑顔にしたい」という想いを生涯、持ち続けるためです。
そして、亮はそれこそが「一番大切なこと」だと言っているのだと、鎧はようやく気付きました。

そして、その精神で亮は今、リュウレンジャーとして戦っている。
変身して強大な力で勝利することが一番大切なのではない。
亮は勝利を目指して戦っているわけではない。
勝者の称号、英雄の称号が欲しいわけではない。
ただひたすら「人々を守りたい」という気持ちを失いたくないから亮は、いやリュウレンジャーは戦うのです。
ヒーローとはそういうものであり、ヒーローにとっての一番大切なことは、そういうことなのです。

そして、鎧は亮のさっき言っていた「忘れてるんじゃないのか?一番大切なこと」という言葉を想い返します。
亮はその「一番大切なこと」を鎧が忘れているのではないか?と問いかけていたのです。

鎧はずっとさっきまで、変身出来なければヒーローではないと思っていました。
つまり、鎧にとってはヒーローにとっての一番大切なことは「変身できること」でした。
変身してスーパー戦隊の戦士の方々のように悪を倒して正義の勝利を実現するためにヒーローになりたいと
思っていたのです。
しかし、当のスーパー戦士の亮はそんな考え方ではなく、亮は鎧も本当は自分と同じはずだと言うのです。

「・・・俺がヒーローになりたかったのは・・・変身出来るから・・・?」と鎧は自分の認識を疑い始め、
自分の記憶を改めて辿りました。
自分が「人々を守りたい」という気持ちをかつて大切にしていた記憶を必死で探ります。

すると、まずトラックに轢かれそうになっていた少女を身を挺して庇った記憶が甦ってきます。
あの時、別に自分は変身も出来なかったし、何かに勝とうとか何かを達成しようとしていたわけでもない。
勝利の見込みも無い。むしろ危うく死ぬところだった。
それでも飛び込んでいったのは、ただ純粋にあの少女を守りたいと思ったからだった。
そして、その記憶が鎧にとってゴーカイシルバーの原点でした。

あの直後、不思議な夢の中で出会ったアバレキラーは
「自分の危険を顧みず誰かを守る、そういう無茶の出来ることにときめいた」と言って、
ゴーカイセルラーとゴーカイシルバーのレンジャーキーをくれて「一番のヒーローになれ」と言ってくれたのです。

どうしてアバレキラーは変身アイテムを渡してくれたのか?
自分が戦隊ファンで変身ヒーローになりたがっていたからか?
いや、そうではない。
危険を顧みず少女を守ろうとした自分を「誰かを守りたい」という気持ちを持った者だと判断し、
そういう人間こそヒーローに相応しいと判断したからだと鎧は気付きました。

そして更に鎧は工事現場で生身でザンギャック怪人と戦った時のことを想い出しました。
あの時はマーベラスにゴーカイセルラーとレンジャーキーを取り上げられていたことを忘れて
突っ込んでしまったのだが、変身出来ないことに気付いて逃げる余裕はあった。
でも、工事の人達を守りたい一心で生身で戦ったのです。
ちょうど今と同じ状況だと鎧は思い出しました。
しかし、あの時も全く勝ち目の無い戦いだった。
工事の人達を守るという目標自体、達成出来る可能性は低かった。
それなのにどうして自分は無茶な戦いをしたのか?

それは、あの時、自分はマーベラス一味の仲間として認めてもらえる
「何か」を示さなければいけない立場であったからです。
そしてまた、アバレキラーの言ってくれた「一番のヒーローになれ」という言葉を裏切りたくなかった。
それらの答えが「工事の人達を守ろうとする気持ちを諦めない」ということだったのです。
ゴーカイジャーの一員となり一番のヒーローになるということは、
勝ち目は薄くてもその場の人達を守るために逃げないことだと思ったのです。

どうしてそれが答えだと思ったのかは分かりませんが、
鎧はとにかくその時そう考えて無茶は承知で生身でザンギャックに部隊に立ち向かった。
そしてその結果、マーベラス一味の仲間入りを認められて、ゴーカイセルラーを返してもらい、
再びゴーカイシルバーに変身出来るようになった。
そう、あの時もまた、鎧にとってはゴーカイシルバーとしての原点であったのです。

それらの記憶に思い至って愕然としている鎧に向かって、
周囲のゴーミンを蹴散らした亮が「鎧くん!!」と大きな声で呼びかけます。
鎧はハッとして亮の傍に駆け寄り、「思い出しました!一番大切なこと・・・」と言います。
そして、真っ直ぐ鎧の方に向き合って話を聞く亮に向かって鎧は
「俺がヒーローになりたかったのは・・・皆を守りたかったからです!・・・
変身出来るとか、出来ないとか、そんなの関係ない!!」と叩きつけるように叫ぶのでした。

鎧は自分がヒーローとして一番大切にしていたことが、
変身ヒーローやスーパー戦隊の名声や栄誉などではなく、
どんな逆境でも「人々を守りたい気持ち」を持ち続けることであったことをようやく想い出したのでした。
亮はそれが自分をはじめ歴代スーパー戦隊の戦士たちと同じである気持ちを確信し、
鎧の顔を見て力強く頷くのでした。

そして鎧は、自分がこのヒーローとして一番大切なことに最初に気付いた時、
すなわち、あの工事現場の戦いの時、その決意を自分に刻み込むために、
亮がさっきやったような素面名乗りをやっていたことを想い出しました。
あの時は素面名乗りが亮のようなレジェンド戦士たちにどういう意味がある行為なのか分かっていませんでしたので、
自分だけの一時だけの思いつきの行為だと思っていた鎧ですが、
こうして亮の素面名乗りを見て、そこにレジェンド戦士の一番大切なことへの覚悟が込められていると知り、
改めて自分も素面名乗りをして覚悟を再度、今度は二度と忘れないように自分に刻み付けようと思いました。

あの時はまだゴーカイジャーへの加入を認めてもらっていなかったので
「〜の予定」とかいう余計なフレーズが入っていましたが、今回は正式な素面名乗りです。
鎧は一歩前へ出て、ザキュラ達の方を睨みつけると、
「ザンギャック!!俺が海賊戦隊6人目の男!伊狩鎧!!」と叫び、
そして、鋭く右腕を前で折り曲げて突き出してから、
「またの名を・・・ゴオオオオオカイ!シルバアアアアッ!!」と、いつもの変身後の名乗りポーズよりも複雑な、
拳法の動きを採り入れたようなダイナミックな名乗りポーズを披露したのでした。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
にほんブログ村 にほんブログ村 テレビブログ スーパー戦隊へ
にほんブログ村
posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 22:25 | Comment(2) | 第33話「ヒーローだァァッ!!」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月26日

第33話「ヒーローだァァッ!!」感想その3

たまたま道端でゴーカイシルバーの伊狩鎧と出会った元リュウレンジャーの天火星・亮は、
変身出来ないと言って異常に元気の無い鎧の様子を見かねて、近所の自分の店「赤龍軒」に連れていきました。
赤龍軒は、商店街の中にある、ごく普通の小さい中華料理屋でした。
20年ほど前、ゴーマとの戦いの傍ら、横浜の中華料理屋の山海閣でコック見習いをしていた亮が、
ゴーマとの戦いが終わった後もコックを続けてコツコツと貯めたお金で念願の自分の店を手に入れたのでしょう。
屋号の由来はもちろん亮の得意拳法の「赤龍拳」です。

赤龍軒の店内のテーブルに鎧を座らせて、亮は鎧から事情を聞きました。
普通の地球人だった鎧が夢の中でアバレキラーに出会って
ゴーカイセルラーとレンジャーキーを渡されてゴーカイシルバーとなり、ゴーカイジャーの仲間入りをしたこと、
そしてさっき戦いの最中にザンギャックの怪人にゴーカイセルラーを呑み込まれてしまって
変身出来なくなってしまったことということを、鎧は亮に説明しました。

鎧の話を聞いて、亮は「そうか・・・ザンギャックにゴーカイセルラーを・・・」と、気の毒そうに言います。
亮にもかつて、事情は違うものの、戦いの最中に突然変身(転身)出来なくなって
大きなショックを受けた経験はあるだけに、鎧の心の痛みは理解出来たのです。
しかし、「はい・・・凄いショックで・・・」とテーブルの前に座って意気消沈する鎧に対して亮は軽く笑うと、
「とりあえず、元気出せ!」と励まし、テーブルに今作った一人前の餃子を置き、
「ほら!俺が作った餃子!世界一を目指している餃子だ!」と明るく鎧に餃子を食べるよう勧めます。

亮は自分の実体験から、鎧のショックは理解出来るものの、
同時に自分の実体験から、それがヒーローにとって本質的な問題ではなく、
鎧がヒーローの心を見失わない限り、自ずと解決する問題であることも分かっています。
それが分かっているから、レジェンド大戦以降、再び変身能力を失った今も、亮は前向きに暮らしており、
他のレジェンド戦士もそれは同様であることも亮は分かっています。
皆、真のヒーローだから、変身能力を失ったからといって、
それが本質的な問題でないことはちゃんと分かっているのです。

だから亮は鎧もゴーカイシルバーというヒーローとして戦っている以上、
そういうことは分かっているはずだと思っています。
ただ単に、ついさっきの出来事でもあり、現役で戦っている戦士でもあるので、
一時的ショックが大きすぎたのだろうと気遣い、とにかく前向きな気持ちになれるように、
美味しい餃子でも食わせてやろうとしているのです。
それだけ亮は自分の餃子の味には自信があります。

今回はどうも全編、「食」がテーマとなっているエピソードのようで、やたら食べ物絡みのシーンが多いのですが、
この亮の餃子というのは「ダイレンジャー」本編の時から既に亮絡みで登場している由緒正しい小道具で、
「ダイレンジャー」本編では亮の夢は「世界一の餃子を作ること」でした。

「199ヒーロー大決戦」映画でも亮はリストラされて生きる希望を無くして死のうとしていたサラリーマンを
ウメコや青梅と一緒に助けて、そのサラリーマンに自分の餃子を
「世界一を目指している餃子」といって食わせており、
しっかり「ダイレンジャー」本編の設定を引き継いでいたのは昔の戦隊ファンには嬉しいサービスでした。

しかし、あのシーンは単なるサービスシーンだったわけではなく、
ちゃんとあの映画の中で意味のあるシーンであったのです。
あれは第一義的には「自分もこうして夢を目指しているのだから、君も夢や希望を失ってはいけない」
という意味が込められていたのです。

ただ、そこでサラリーマンは亮の言う通りに夢や希望を捨てないことが意味のあることだと
完全に納得したわけではありませんでした。
サラリーマンが亮(やウメコや青梅)の言葉の正しさを悟ったのは、
亮たちと別れた後、映画の終盤になってからです。

黒十字王の巨大化した黒十字城の猛威の前にゴーカイジャーとゴセイジャーが追い詰められ、
地球の最後が近づいた時、多くの人々がそれでも諦めずに2戦隊に声援を送り続け、
亮たちの説得で自殺を思いとどまっていた例のサラリーマンも
元レジェンド戦士の亮たちの励ましの言葉と、目の前で必死で戦う2戦隊の姿とが重なって、
思わず2戦隊に声援を送ります。
すると、そうした人々の想いと励起状態にあるレンジャーキーとが共鳴して、
その人々の持っていたスーパー戦隊のロボ玩具が、そこに込められた持ち主の想いによって巨大化変身して
本物の巨大ロボとなって黒十字城に立ち向かうという奇跡が生じました。

この時、このサラリーマンの持っていた、彼の子供の頃の夢や希望が込められていたバリブルーンの玩具も
巨大化して黒十字王を倒す力となっており、
それを見たサラリーマンは「どんな状況になっても夢や希望を捨てなければ、きっといい事がある」と実感して、
亮たちの言葉の正しさを完全に納得し、逆境でも希望を捨てずに頑張って生きていこうと決意するのです。

「199ヒーロー大決戦」映画というのは、結局、そういう「夢と希望」がテーマとなっている物語であり、
このサラリーマンは裏の主役のような存在であり、
ある意味、ゴーカイジャーの代理で亮たちと絡んだようなものです。
すなわち、この映画でゴーカイジャーに「大いなる力」を渡した11のレジェンド戦隊は
ゴーカイジャーの持つどういうテーマを自分達と一致するものと見なしたのかというと、
光の中のビジョンで登場したレジェンド戦士たちは色んなことを言っていましたが、
要するにこの映画のテーマが「夢と希望」である以上、
ゴーカイジャーの中にある、どんな逆境でも挫けない「夢と希望」にレジェンド戦士たちは共感したのです。

レジェンド戦隊の代表として直接ゴーカイジャーと絡んで「VS映画」的に派手に共闘しながら、
ゴーカイジャーの中に「夢と希望」を見出していく役割を担ったのがゴセイジャーだったわけですが、
アクション面では申し分ない働きをしたゴセイジャーは実はテーマ的にはかなり弱い戦隊であり、
この「夢と希望」というテーマをゴセイジャー自身の物語として体現させるのが難しいという問題があります。
そこで別のレジェンドゲストに「夢と希望」をテーマとした物語を担わせてゴーカイジャーと絡めるべきなのですが、
そうなるとゴーカイジャーに関するストーリーが複雑になりすぎてしまうので、
レジェンドゲストの亮や青梅やウメコらはゴーカイジャーの代わりに、
ゴーカイジャーに仮託出来る別キャラのリストラサラリーマンと絡ませて、
そこでレジェンド戦隊の「夢と希望」に関する物語を描き、
それが最終的に巨大戦の奇跡で1本のストーリーとなる構成としたのでしょう。

この映画の初期の脚本では、このサラリーマンと亮たちの絡みのシーンがもっと長かったようですから、
そういった構想であったと思われます。
ところが映画の全体の尺が長くなりすぎたため、このサラリーマンのパートは大幅に削られることとなり、
結果的に亮たちのシーンの描写はどうも中途半端なものになってしまったのだと思います。
それでも、このシーンによって、この映画が「夢と希望」がテーマであること、
亮のダイレンジャーをはじめとする11戦隊のテーマが「夢と希望」であり、
彼らがゴーカイジャーに同様の「夢と希望」を見出したことは十分に伝わりました。
また、亮たちの励ましとゴーカイジャー達の頑張りによって心を動かされたサラリーマンが
バリブルーンの奇跡を通じて「夢と希望」の大切さを悟り、
亮たちの言葉の正しさに思い至るというドラマの流れも十分に表現出来ています。

ただ、尺を詰めた結果の亮たちとサラリーマンのパートの描写不足の影響で、
亮の描写が少し微妙なものとなってしまったといえます。
まず、サラリーマンが亮たちの言葉では「夢と希望」の大切さを納得出来ておらず、
バリブルーンの奇跡があって初めて「夢と希望」の大切さを納得していることからして、
亮たちの言葉に説得力があまり無いという点が挙げられます。

まぁドラマの展開上、亮たちの言葉で簡単にサラリーマンが悟ってしまうのではなく、
終盤の奇跡によって「夢と希望」の大切さに気付くという方が盛り上がるわけですから、
この作り方で正解なのですが、
それにしても、サラリーマンには気付かない亮たちの言葉の持つ説得力を観客には分かるようにするとか、
そういうフォローは本来あるべきなのですが、
そのあたりが尺の都合でカットされたためか、
普通に観客が見ても、亮たちの言葉自体にはあまり説得力がありません。

青梅は単に「夢や希望を捨ててはいけない」と一般論を言っているだけであるし、
ウメコは「逆境でも自分達も頑張って来た」と言うだけです。
ただ、この2人の言葉はこの時点では一般論すぎて説得力はあまり無いですが、
最終的にはバリブルーンの奇跡によって、しっかりフォローされて説得力を与えられているので問題は無いのです。

問題は亮だけです。
亮は自分の「夢と希望」の象徴である餃子を持ち出してサラリーマンに食わせたりしているので、
3人の中では最も言動が具体的なので、一見すると亮の言葉が最も説得力があるように見えますが、
実際は全く逆で、むしろこの餃子のせいで観客にはある重要な部分での説得力が見えなくなってしまっており、
バリブルーンの奇跡でもその説得力不足が払拭されずに終わってしまっているのです。

どういうことかというと、まず、このサラリーマンを3人が説得するシーンでは、
大前提としてサラリーマンは3人が元レジェンド戦士だということは知っています。
そして3人が変身能力を失って戦えないという逆境にあることも知っています。
悪の組織を倒しても倒しても次々に別の悪の組織が現れてキリが無く、
遂にはザンギャックという最強の敵が現れて、それを何とか撃退したものの
代償として変身能力を失ってしまい、
今またザンギャックが侵略してきても地球を守るために戦うことが出来ないという逆境にあるという、
そういう3人の状況は、サラリーマンは3人から聞いて知っているのが前提です。

その上で3人が「夢や希望は捨ててはいけない」と言うからこそ、
自殺寸前だったサラリーマンを死ぬことは思いとどまらせるだけの説得力は発揮したわけです。
ただ、それでもサラリーマンは自分の身の上と元レジェンド戦士の身の上とを完全に重ねて捉えることは出来ない。
だから死ぬことは思いとどまったものの、自分程度のつまらない一般人の「夢と希望」と、
元レジェンド戦士の3人の「夢と希望」は違うのだという想いは消えていないわけです。
ところが、そこに自分の「夢と希望」が詰まったバリブルーンが奇跡によって巨大化して、
まるでレジェンド戦士たちと同じように地球を守ったのです。
それゆえ、サラリーマンは自分の「夢と希望」が
元レジェンド戦士の3人の「夢と希望」とピッタリ重なると思うことが出来たわけです。

ただ、サラリーマンは地球を守って戦うヒーローとして今後生きていくことが出来るわけではない。
地道な一般生活の中で自分の出来ることをやっていく、その中で「夢と希望」を見出していかないといけない。
また何か困ったことがあったらバリブルーンを巨大化させて解決するとか、そういうわけにはいかないのです。
あんなものは1回限りの奇跡に過ぎない。
しかし、その1回限りの奇跡のお蔭でサラリーマンは亮たちと自分を一緒だと思うことが出来たのであり、
それによって、亮たちに言われた言葉を自分の今後の人生の指針とすることが出来たのです。

すなわち、青梅の「夢や希望は捨てない」、
ウメコの「逆境でも頑張る」ということ、
そして亮の「世界一の餃子を作ることを目指す」という3人の言葉を
サラリーマンは自分の人生の指針として頑張っていくことが出来たのです。
これは何もサラリーマンが餃子屋に転職するという意味ではなく、
つまりは「地道な生活の中での積み重ねによって達成できる大きな夢を持つ」というような
意味と考えればいいでしょう。

つまり、亮たち3人はヒーローとしてサラリーマンに説教しているわけではなく、
同じ一般人目線でサラリーマンを諭しているのです。
しかしサラリーマンは元ヒーローと自分の間に一線を引いているので
その3人の言葉はサラリーマンの心に完全には届かない。
そこにサラリーマンとヒーローの間の垣根を取り払う奇跡が起きて、
その結果、3人の言葉がサラリーマンの心に素直に入ってくるようになって、
サラリーマンは3人の言葉から一般人として生きていく指針を得るのです。

この話の流れは「199ヒーロー大決戦」映画の中での流れとしては非常によく出来ており、
これはこれで良いのですが、
問題は青梅、ウメコ、亮の3人があまりに一般人寄りに描かれてしまっていることです。
まるで3人が変身能力を失った逆境の中で、もはやヒーローではなく一般人になってしまったかのようです。

それでも青梅とウメコは一般人目線の言葉はあくまで言葉の上だけであり、
サラリーマンに向けて言っただけのことと思うことは出来るから良いのですが、
亮の場合、もともと本当に「世界一の餃子を作ることが夢である」という設定があるものだから、
まるで変身能力を失ったものだから完全に餃子一筋になってしまったかのように見えるのです。

それはもちろん悪いことではありません。
世界一の餃子はもともとの亮の夢であるし、美味しい餃子を人々に提供することは素晴らしいことです。
また、このサラリーマンにとっては変なヒーローのお題目よりもよほど励みにも指針にもなる
貴重な生きる見本となるでしょう。

しかし、そんな餃子一筋となった亮はもはやヒーローであることは諦めてしまったのだろうか、
と観客目線としては少し寂しい気持ちになったことは、映画を観に行った1人として正直言わせてもらいます。
餃子一筋の亮は、確かに一般サラリーマンには何らかの示唆は与えることは出来るでしょうけれど、
現役ヒーローであるゴーカイジャーにヒーローとして何かを語ることは出来るのだろうか?
という危惧を抱きました。
実際、映画の中でも亮はゴーカイジャーとの絡みも無く、
ビジョンとして現れて「大いなる力」を渡した時も黙って頷いただけでした。

ハッキリ言って、少し寂しかったです。
サラリーマンのパートを構成する「元レジェンド戦士」の1人としての亮のキャラは完璧でしたが、
その一方で、ヒーローとしての亮はもう「ゴーカイジャー」で見ることは無いのだろうか?とも思いました。
つまり、亮が「世界一の餃子を作る」という夢一筋であるかのように描かれたことによって、
まるで変身能力を失ったために餃子一筋に逃避したかのような印象を残してしまい、
亮のヒーローとしての説得力が弱くなってしまったのです。

しかし、そうではなかったのです。実際は亮の「世界一の餃子を作る」という「夢と希望」には
しっかりヒーローとしてのテーマが込められていたのです。
だからこそ、自分の「夢と希望」でヒーロー的な奇跡を起こしたサラリーマンが、
そのままヒーロー的な夢想に走らずに、
亮の餃子の「夢と希望」にヒーロー的なテーマが含まれていることが分かっているからこそ、
亮の示唆する地道な「夢と希望」に自分を重ね合せることが出来たのです。

つまり、亮の「世界一の餃子を作りたい」という「夢と希望」をはじめとして、
青梅もウメコも、サラリーマンも、他の声援を送った人々も、
他のレジェンド戦士たちも、ゴーカイジャーもゴセイジャーも含めた全員の「夢と希望」というものに
ヒーローとしても一般人としても通用する重要な「あるテーマ」が込められていたからこそ、
あの映画の中の数々の奇跡が起こったのであり、
ゴーカイジャーは「大いなる力」をゲットし、
サラリーマンと亮たちの心は通じ合ったのです。
その「あるテーマ」があの映画の真の主題であったといえるでしょう。

亮とウメコと青梅に関しても、そのテーマを明確にした形でのフォローが
あの映画の中で本来は必要だったはずなのですが、
この3人とサラリーマンのパートを大幅カットした影響で、フォロー不足のまま終わってしまったのです。
ですから、今回の第33話がダイレンジャー篇となっていて、亮が再登場するというのは、
その「199ヒーロー大決戦」映画でやり残していた3人に対するフォローを、
亮を代表としてやってしまおうという意図があるのだと思います。
つまり、あの映画で語りきれなかった部分が今回のエピソードでは語られることになるわけです。

そういうわけで、今回も亮は餃子を出してきて、
一般人でありながら奇跡によってヒーローとなり、
そしてまたアクシデントで一般人に戻ってしまった男(つまり、あのサラリーマンと似たところのある設定)
である伊狩鎧に「世界一を目指している餃子だ」と、
あの映画でサラリーマンに向かって言ったのと同じように勧めるシーンが描かれることとなります。
今回のエピソードでは、この餃子に込められた亮の真のテーマが語られるわけです。
しかし、あの映画ではサラリーマンは餃子を食べましたが、
ひとまず、この場面では、鎧は餃子には興味は示さず、自分のことを語り始めます。

鎧にとっては「変身出来なくなる」ということは大変なことで、それをあんまり軽く流してほしくないのです。
マーベラス達もあまり大したことのように扱ってくれなかった。
それはつまり、マーベラス達が地球人ではないから、
ずっとスーパー戦隊に憧れて、ようやくヒーローになって変身して戦えるようになった
自分の気持ちが分からないからだと鎧は思いました。
その点、亮ならば自分がいかにヒーローに憧れていて、そのため変身出来なくなったことに
大きなショックを受けていることを分かってくれるはずだと鎧は期待していました。

それなのに、その心情を思いっきりぶちまけようと思った矢先に、
いきなり元気を出せと言われても、鎧としては困ってしまいます。
だから、せっかく出された餃子を無視して、
鎧は「俺・・・小さい頃から、亮さん達スーパー戦隊の皆さんに憧れてて・・・
だから、ゴーカイセルラーを貰った時はすっごい嬉しかったんです・・・
これで俺もスーパー戦隊の一員に・・・ヒーローになれるって・・・!」と、訥々と、
しかし目を輝かせて熱く語るのでした。

亮は向い合せた席で黙って鎧の話を聞きながら、
鎧がスーパー戦隊の熱烈なファンだったから、自分の顔を知っていたのだと気付きました。
そう思うと何やら亮は照れ臭くなりました。
自分はそんな他人から憧れられるような大層な英雄などではないと知っているからです。
しかし同時に、目を輝かせてヒーローへの憧れや、ヒーローになれた興奮を語る鎧を見て、
亮は懐かしさも覚えました。
自分もダイレンジャーになった頃はこんな感じで正義のために戦うヒーローになった誇りで
高揚していたものだと思い、亮は何やら面映ゆい想いがして、少し俯いて黙って軽く苦笑します。

ところが、ここで鎧の声が急に沈んだ調子になり「だけど・・・」と呟きます。
亮は不審に思って「だけど?」とオウム返しで問いかけます。
すると、鎧は「ゴーカイシルバーに変身出来なかったら、もうヒーローでも何でもないじゃないですか・・・
それが、悲しくて・・・」と、一番言いたかったことを言います。
つまり、ヒーローになれた喜びを鎧が語っていたのは、
ヒーローでなくなってしまった今の状況の辛さを強調するための前フリだったわけです。

マーベラス達に訥々とスーパー戦隊への憧れを語ったところで理解などしてもらえない。
でも、当のレジェンド戦士の亮ならば、憧れのスーパー戦士になって、
その資格をアクシデントで突然奪われたという自分の悲しさはきっと理解してくれて、
同情してくれるはずだと鎧は期待していました。

ところが、亮は表情を曇らせると、困った顔で横を向いて
「・・・それは、ちょっと違うんじゃないかな・・・?」と言います。
亮は鎧の言っていることが全部間違っているとは思ってはいません。
確かにヒーローに憧れ、ヒーローになれたことを喜んでいた鎧が、
ヒーローでなくなったら、それは悲しいことでしょう。それは間違っているとは思いません。
だが亮は、変身出来ないからヒーローでないという鎧の考え方はおかしいのではないかと思ったのです。

ヒーローにとって一番大切なことは変身出来るかどうかではない。
一番大切なことは他にあり、それを忘れない限り、
たとえ変身出来なくてもヒーローであり続けることは出来るのです。
精神論で言っているのではなく、亮は実体験に基づいて、
そのヒーローにとっての一番大切なことを知っています。
そして、それはヒーローなら皆、分かっていることだと思っていました。

ところが鎧が「変身出来なければヒーローではない」と言ったので、さすがに少し驚いてしまったのでした。
鎧が変身出来ないことを嘆いたり、ヒーローでなくなることを恐れること自体は別に問題はありません。
しかし、「変身出来なければヒーローでない」と、この両者を繋げることは亮には看過出来ません。
それはつまり、鎧がヒーローの一番大切なことを忘れているということだからです。
さすがに亮も鎧がその一番大切なことを知らないとは思いませんでした。
もし鎧がヒーローの一番大切なことを知らないような者ならば、
そもそもアバレキラーが鎧に変身能力を授けるわけがないからです。
何故かはわからないが、鎧はその一番大切なことを忘れてしまっている。
おそらく突然、変身出来なくなってしまったショックがあまりに大きすぎたのだろうと亮は思いました。

しかし鎧は、亮のそうした気持ちは分かりません。
いや、亮が考える通り、鎧はヒーローの一番大切なことは分かっている男です。
だからこそアバレキラー仲代壬琴は鎧にゴーカイセルラーや「大いなる力」までも託したのです。
そして、今の鎧がその大切なことを見失ってしまっているのは、
変身出来なくなったショックが大きすぎるからです。
それは裏返せば、あまりにもスーパー戦隊への憧れが強くて、
ヒーローになれたことに対してあまりにも喜びが大きすぎたので、
ヒーローでなくなることへの恐れが強すぎるのです。

それはヒーローであることに大きな誇りを持っているということであり、
ヒーローとして決して道を踏み外さないという安心感にも通じるのですが、
逆にこういう予期せぬアクシデントで少しでも自分のヒーロー性が損なわれると
過剰反応してしまうという欠点も内包しているといえます。
本当は変身出来なくなったからといってヒーローでなくなるなどということはない。
ヒーローの一番大切なことを分かっている鎧ならばそんなことは冷静に考えれば分かるはずです。
しかし、あまりに完璧にヒーロー像を自分に求めすぎる余り、
鎧は変身出来なくなったというアクシデントでパニックに陥り、冷静な思考力を失っているのです。

ただ、それにしても憧れのレジェンド戦士の亮に「違うんじゃないか?」と言われたら、
自分は間違っていたのではないかと思って少しは冷静になってもよさそうなものですが、
鎧はそのようには思えませんでした。
それには別の原因があります。
それは、鎧が亮たちレジェンド戦士たちの戦いの実態をよく知らないということです。

亮の実体験は非常に明確にその「一番大切なこと」を浮き彫りにした事例ですが、
現実には亮の場合だけでなく、どのレジェンド戦隊のどの戦士においても、
変身出来るかどうかよりも大切なことがヒーローにあることは実体験の中で皆、学んでいくものです。
それは鎧も実は同様なのです。
だから鎧は「一番大切なこと」を本当は知っているのです。

ところが鎧の場合、もともとが熱烈すぎるスーパー戦隊ファンであることが問題なのです。
よく考えたらゴーカイジャーも含めた全35戦隊の戦士の中で
「スーパー戦隊ファン」がスーパー戦隊の戦士になった事例というのは、鎧が初めてです。
だから鎧というのは非常に特異な存在といっていいでしょう。
亮にもマーベラス達にも鎧の心情がイマイチ掴み切れていないのは、この鎧の特異性が原因となってのことです。

この「ゴーカイジャー」物語世界の一般人や戦隊ファンは、スーパー戦隊の戦いの公式記録は知っているが、
素顔の戦士たちの心情までは把握していない。
あくまで一般人が知っているのは
「スーパー戦隊の戦士たちは変身して戦い悪の組織を倒して地球を救った正義のヒーローである」という
公式的な定義であり、
鎧のような熱烈な戦隊ファンというのは、その公式見解的なヒーロー像に強烈な憧れを抱いていたのです。

だから亮が戦いの中で実体験によって
「変身することよりも他にヒーローにとって一番大切なことがある」という実感を
持っているということには、鎧は気付きません。
それは実は鎧自身がヒーローとして戦う中で亮と同じように実体験で実感していることであるはずなのに、
鎧の場合、もともと熱烈な戦隊ファンであるため、そのマニア的な頭でっかちの知識が邪魔をして、
どうしても亮のことを公式的な「変身してこそヒーロー」というヒーロー像で見てしまい、
亮の戦いの中で得たリアルな「変身より大切なことがある」という実感に想いを馳せることが出来ていないのです。

だから鎧は亮に「それは違うんじゃないか?」と言われた時、
亮が何か自分の知らない変身すること以上の大切なことを知っているのではないかとは考えず、
逆に、「変身出来なければヒーローじゃない」という自分の言葉があまりに真実を突き過ぎていて
亮を不機嫌にさせてしまったのではないかと考えてしまいました。

鎧はひたすら自分を憐れんで、自分に同情してもらいたくて、甘えて自分のことばかり喋っていましたが、
亮に意外にも冷たい言葉を返されてしまって、驚くと同時にハッとしたのです。
亮自身が「変身出来なくなったヒーロー」なのです。
その亮を目の前にして「変身出来なかったらヒーローでもなんでもない」などと言ってしまった。
その自分の発言の無神経さに気付いて鎧は焦り、目を泳がせました。
そんな失礼なことを言われたら、そりゃあ亮が怒って当然だと思ったのです。
つまり、鎧は亮が冷たく「それは違うんじゃないか?」と反論したのは、
「変身できなかったらヒーローでもなんでもない」という失礼な自分の発言を
「そんな言い方はないんじゃないか?」と非難していると解釈したのでした。

鎧は無神経で失礼な発言をした以上、非は完全に自分にあると思いました。
このままでは怒られると思い、早く謝罪しようと思いました。
しかし、何故か謝りたくないという想いが湧きあがってきます。
この店を見て、出された餃子を見た時から心の中に生じていたかすかな違和感が増幅してきて
確かに失礼な言い方ではあったが、でも本当のことじゃないかという想いが湧きあがってくるのです。
それで謝罪の言葉も出てこず、かといってもうこれ以上失礼な発言を続ける気にもなれず、鎧は黙り込みます。

そこにいきなり鎧の背後で店の扉が開いて、
「亮ちゃん!明日のバザーなんだけど・・・」と言って、誰かが入ってきました。
鎧が慌てて振り向いて見ると、近所の人達という感じの3人組でした。
その3人を見て「やぁ〜マスター」と笑顔で亮が立ち上がり、
鎧に「・・・ここの商店街の人たちだ・・・すぐ終わるから、ちょっと待っててくれるか?」と言います。
商店街の3人組は亮に何か話があるようです。
そこですかさず鎧は「ああ、いや、いいです!・・・俺、もう行きますから!」と言って立ち上がります。
気まずいムードになったと思い込んだ鎧は、これを良い機会にこの場から逃げ出すことにしたのでした。
そうして「・・・お邪魔しました」と、頭を下げてそそくさと店を出ていったのでした。

こうして亮の真意を理解出来ないまま、鎧は赤龍軒をあとにして独りで街をふらつき、
夜になってガレオンへ戻っていったのですが、
夕暮れの街を歩きながら、
鎧はどうしてあんな失礼なことを言ったのに自分は亮に謝らなかったのだろうかと、悔やみました。
しかし悔やみながら同時に、その取り返しのつかない自分の間違った行為を弁護したくなる気持ちも湧いてきます。
さっきも湧き上がってきた妙な気分です。

自分は間違ってなどいない。
だって、自分の言ったことは本当のことだからだ。
変身出来なければヒーローでないのは事実だ。
実際、レジェンド大戦で変身出来なくなった亮は、もう戦うことなど忘れたように
「世界一の餃子を作る」などと言いながら、小さい中華料理屋の中年店主に収まって、
商店街の冴えない人達とバザーの相談なんかしている。
このザンギャックが侵略してきている時に呑気すぎる。
だから自分がゴーカイセルラーを無くしたと言っても大したことではないように笑って餃子なんか勧めるんだと、
鎧は腹が立ってきました。

亮はそんな自分のもうヒーローの心を忘れただらしない状態について
「変身出来なければヒーローでもなんでもない」と図星を突かれたから腹を立てているだけなのだと
鎧は思いました。
そして、そんな亮に比べれば、変身出来なくなって苦しんで焦っている自分の方がまだマシだと思いましたが、
同時に、鎧はいずれは自分もこのまま変身出来ない状態が続けば、
あんな亮のようにヒーローの心を忘れた腑抜けのようになってしまうのではないかとゾッとしました。

そうした様々な複雑な心情がドロドロと鎧の心中で渦巻き、
ガレオンを飛び出した時よりもかえって余計に暗く沈んだ状態となって、
鎧はガレオンに帰り着くことになったのでした。

翌朝、ガレオンのいつもの広い船室では、鎧を除く5人が食後の紅茶を飲んでいます。
朝食を食べるなりまた夢遊病者のように外に出て行ってしまった鎧のことを心配して、
ハカセが「すごい落ち込みようだね・・・鎧・・・」と皆に言います。
ハカセには変身出来ないだけであそこまで激しく落ち込む鎧のことがどうもよく分からないのです。
しかも何故か昨日よりも今日は更に落ち込んでいるのですから、不思議でした。

アイムは考え込んで「ゴーカイシルバーに、それだけ誇りを持っていらしたのでしょう・・・」と言います。
アイムにも鎧の気持ちは全く共感できるところはありませんでしたが、
これだけ皆が鎧の変身出来ないことで苦しむ気持ちに共感出来ないということは、
鎧だけの特殊な条件のせいで、あそこまで鎧が落ち込んでいるのだろうということは想像出来ました。

それはつまり鎧が地球人であるということに関係している。
アイムたちにとってゴーカイジャーであるということは単に戦うための装備であり、夢を叶えるための道具でした。
だが、鎧たち地球人にとっては、この五色と銀色の色分けされたチーム戦士の装束というのは
誇りある地球を守る正義の戦士の装束であるようなのです。
だから、そのスーパー戦隊というものに地球人には独特の思い入れがあるものらしい。
しかもその中でも鎧がそのスーパー戦隊の熱烈なファンであり、強烈な思い入れがあったらしい。
だからその1人になれたことに強い誇りを持っていたのだろう。
それゆえ、それに変身出来なくなる可能性が少しでもあることにひどくナーバスになってしまうのであろうと
アイムは推理しました。

ルカもまぁだいたいそんなところだろうと思い、
そう考えると鎧も気の毒だと思い、
とにかく早くゴーカイセルラーを取り戻して鎧を安心させてやろうと改めて心に決め
「ま、今日こそ取り返そ!」と気合を入れます。
ジョーもルカに同感で、鎧のためにも、それに地球の人々のためにも、早くあの怪人を退治しようと思い、
椅子に座っているマーベラスの方をチラリと見ると、何故かマーベラスが浮かない顔なので、
不審に思い「・・・どうした?」と尋ねます。
しかしマーベラスは不機嫌そうに「いや・・・別に!」と言います。

マーベラスもあの怪人をブッ倒してセルラーを取り戻すこと自体には全く異論は無いので、
皆のやる気に水を注すようなことは言いたくないから我慢しているのですが、
本当は内心、鎧にはムカムカしていました。
鎧が変身出来なくてウジウジしているから、
他の仲間たちまで鎧が可哀想だからセルラーを取り戻してやろうみたいなことを言い出してますが、
マーベラスはそのこともムカついていました。

別に鎧をまた変身出来るようにしてやろうとか、ヒーローにしてやろうとか、
そんなことはマーベラスにはどうでもいいのです。
単に仲間がぶちのめされて大事な宝物を奪われたのだから、
その敵討ちをして奪われた宝物を奪い返すのは、海賊の仲間なら当然のことなのです。
自分達はそういう仲間として当たり前のことをやろうとしているだけであり、
鎧も仲間のことを信頼している態度を見せるのが礼儀というものなのです。
それなのに鎧は自分が変身出来ないことしか頭に無いような態度を続けています。
その仲間をナメた態度がマーベラスには許せませんでした。

鎧は変身出来なくなったらゴーカイシルバーでなくなってヒーローでなくなってしまうと思っているようですが、
マーベラスはヒーローがどういうものかはよく分かりませんが、
とにかく鎧が仮に変身出来なくなってもマーベラス一味の仲間であることは変わりないと思っています。

そもそもマーベラスは鎧が変身出来るから仲間にしたわけではない。
それどころか、最初、変身出来るというだけで勝手に仲間になったつもりで押しかけてきた鎧から
変身アイテムを取り上げて、鎧を変身出来ない状態にして一旦追い出したのです。
その上で変身出来ない鎧が見せた気概を評価して仲間に加え、その上で変身アイテムを返してやっただけです。
マーベラスが評価して仲間にしたのは変身できる鎧ではなく、
変身できなくてもマーベラスが目を見張るような気概を見せてくれる鎧だったのです。

だから仮にこのまま変身出来なかったとしても鎧は仲間なのであり、
鎧が仲間である限り、必ずあの怪人にオトシマエはつけて、ゴーカイセルラーは奪い返す。
マーベラスは最初からそういう肚積もりでした。
ところが鎧はひたすら自分が変身出来ないこと、ヒーローでなくなることばかり心配している。
仲間がいる限り大丈夫だと思うこともない。
そういう鎧を見ると、マーベラスは、鎧にはマーベラス一味の仲間であることよりも
自分がヒーローであることの方が大事なのかと思えてきます。
それはあまりにも仲間をナメていると思えたし、鎧を仲間に選んだ自分がナメられているようにも思えました。

いや、まぁ鎧がヒーローに憧れるのは勝手だし、
そのヒーローとやらがマーベラス一味の仲間であることよりもそんなに価値があるというのなら
勝手にそれを崇めていればいいが、
それにしてもマーベラスには、その今の鎧が必死になってしがみつこうとしているヒーローというヤツが、
マーベラスが仲間にしたいと思った、変身出来ないのに怪人に立ち向かっていた無鉄砲で誇大妄想な鎧に比べて、
とてもそんなに魅力的なもののようには思えなかったのでした。
それがヒーローだというのなら、ヒーローなど願い下げだとマーベラスは思いました。

俺が仲間にした鎧は、変身は出来なかったが、そんなヒーローなんかよりももっと上等なヤツだった。
今の鎧はあの時とは違う。
そんなつまらないヒーローなんかを目指して、それにすらなれないようなヤツは
マーベラス一味の仲間には要らない。
マーベラスはそう思いました。

その時、ナビィが突然飛び上がって「出たよ!ザンギャックが!出た〜!」と、
ザンギャック反応を感知して騒ぎます。
きっとさっきの怪人(ザキュラ)です。
鎧のことはムカつくが、とにかく仲間のオトシマエをとるために行くしかない。
マーベラスは厳しい顔で「行くぞ!」と号令をかけます。

やはりザンギャック反応のあった場所に現れていたのはザキュラで、
「このナス、ぜ〜んぶいただきまぁす!焼きナスもマーボナスも出来ないよぉ!」と言って、
畑のナスを全部大きな口を開けて吸い込んでしまいます。
なんだかこのザキュラという怪人、見かけも子供ウケしそうですが、セリフもやたら子供向けな感じです。

さて、そこにマーベラス達5人は変身して駆けつけます。
畑で走るゴーカイジャー・・・なんともシュールです。
5人は畑でザキュラを追いかけますが、
ザキュラは「お前らの相手してるほどヒマじゃないんだよっと!」と言って姿を消して逃げてしまいます。

その後、またザキュラは今度は魚屋に出現し、店の魚を全部吸い込んで
「ああ〜食った食った!魚はやっぱり生が一番!でもオイラ、フグだけは食えねぇんだよなぁ」と言って
去っていきます。確かに店にはトラフグだけは残っています。
これは、視聴者の子供たちへの「フグはそのまま食べたら危険」というメッセージなのか?
ここにもジョーとルカが駆けつけますがタッチの差でまた逃げられます。

そして続いてザキュラはパン屋に出現し、店のパンを全部食べてしまい
「パンパカパ〜ン!ごっちそうさまぁ!」と言って去っていくところにハカセとアイムが懸けつけますが、
これも間一髪逃げられます。
てゆーか、こんなペースで地球の食べ物を全部食べ尽くすのって何年かかるんだ?

そして回転寿司屋にもザキュラが出現したようで、回っている寿司の皿がみんな空になっていて、
客はみんな呆然としていますが、既にザキュラは姿を消して逃げています。
そこに近所をたまたま通りかかったのか、鎧が騒ぎを聞きつけてやって来て、
空の皿が回っているのを見て「そんな・・・ここも・・・」と呆然とします。

そこに変身姿のマーベラスも駆け込んできます。
回転寿司屋にゴーカイレッド・・・これもまたなんともシュールですが、
一足遅かったと気付き悔しがるマーベラスを見て、鎧は「マーベラスさん・・・」と愕然とします。
自分が勝手にガレオンを抜け出してブラブラしている間、
自分のために皆、走り回ってくれていると分かったからです。

「・・・遅かったか・・・!」とボヤきながら変身を解除したマーベラスに向かって
鎧は「すいません・・・俺なんかのために・・・ありがとうございます」と深々と頭を下げます。
鎧は自分のことしか考えず、
仲間が自分のために一生懸命になってくれていることを忘れていた自分を心から恥じました。
仲間にこんなに迷惑をかけて何の役にも立てない自分のために仲間は走り回ってくれている。
それが鎧は申し訳なかったのでした。

鎧に頭を下げられたマーベラスは、鎧のあまりに身勝手な態度にムカついていた気持ちは多少は改善されました。
が、相変わらず鎧が自分を卑下したような物言いをするのが気に入らない。
変身出来ないぐらいでどうしてそんなに自分をクズみたいに言うのか、マーベラスには納得できませんでした。
仲間同士なんだから助け合うのが当たり前であって、そんなに深々と頭なんか下げなくてもいいんだと思い、
マーベラスは少しイラッとしながら鎧の方に振り向くと
「礼なんかいい・・・それよりお前・・・」と何か言いかけます。

お前、そんなに変身ばかりこだわってるけど、仲間になった時の初心を忘れてるんじゃないのか?と
言ってやりたかったのですが、そこにモバイレーツが鳴ります。
マーベラスが通話に出ると、またザキュラが別の場所に出現したとの報せです。
「ああ、今行く」と応えるとマーベラスはモバイレーツを畳んでしまい、
鎧に「・・・まぁいい!・・・話は後だ」と言って、急いで駆け出します。
とにかく今は鎧への説教よりもザキュラを見つけて倒すことが優先です。

マーベラスが必死に駆け出していくのを見送って、回転寿司屋の中を見て、
鎧は「今の俺には・・・何も出来ない・・・」と、こんな時に何の役にも立てない自分をますます責めます。
変身を出来ない自分は、マーベラス達に苦労をかけるばかりでなく、
街の人々が怪人の猛威に晒されてもどうすることも出来ない。
もう自分はヒーローでもなんでもない。
まさに昨日、亮に向かって言った言葉のままです。
昨日、亮のことを腑抜けになったと自分は思ったが、実際、今の自分は焦っているだけのことで、
実質的には何も出来ていないという点では、亮と何ら変わりないではないかと思い、鎧は愕然とします。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
にほんブログ村 にほんブログ村 テレビブログ スーパー戦隊へ
にほんブログ村
posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 23:50 | Comment(0) | 第33話「ヒーローだァァッ!!」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月25日

第33話「ヒーローだァァッ!!」感想その2

では本編ですが、まず冒頭はゴーカイガレオンのいつもの船室で鎧がマーベラス達5人に向かって
「ええ、皆さん!ご心配をおかけしました!!」と深々と頭を下げている場面からです。
「ええ、怪我はですね、この通り、も〜うバッチリです!」と身体をシャキシャキ動かしている鎧の右腕には、
前回のラストシーンでは腕を吊っていた三角巾がもう無くなっています。
前々回にバスコに折られたように見えた右腕ですが、完治したようです。
ということは2週間で治ったわけで、実はそんな大した怪我ではなかったのか、
驚異の回復力なのか分かりませんが、まぁ特撮ではよくあることです。

とにかく治ったようで何よりですが、えらく鎧が皆にヘーコラしてるのは、
前回、怪我をしているのに無理して豪獣神に乗り込んで巨大戦に乱入した後、
おそらく5人にこっぴどく叱られて変身禁止の絶対安静を言い渡されていたからでしょう。
それで鎧は5人に心配をかけたことを詫びた上で完治報告をしているようです。

ただ、無茶をして心配かけてしまったことだけではなく、
怪我を治している間、戦えなかったことが鎧は一番辛かったようです。
鎧は「ご迷惑をおかけした分、しっかり挽回します!」ジョーに向かってビシッと敬礼し、
テーブルで前回改造して壊してしまった自分のゴーカイガンを治しているハカセにも
「すいませんでした!」と勢いよく詫びます。
そしてルカとアイムにも「ご迷惑をおかけしました!」と頭を下げて謝ります。

「・・・迷惑だなんて・・・そんなこと思っていません」と逆に恐縮するアイムに向かって、
鎧は「いいえ!それじゃ俺の気が済まないんです!」と、やたらと元気に低姿勢です。
鎧は自分が怪我している間、仲間の戦力になれなかったことを申し訳なく思っているようですが、
別に誰も迷惑には思っていません。
前回の戦いの時も誰ひとり、鎧が怪我で戦えないことを非難などしていませんし、
マーベラス達は本当は内心迷惑に思っていてそれを鎧に隠すような連中ではありません。

だから別に鎧はそんなに皆の役に立てなかったことを気に病む必要は無いはずなのですが、
それでも気が済まないからといってひたすら低姿勢の鎧は、
指をパチンと鳴らして「まずは・・・お掃除ぃっ!!」と笑顔でモップを持って、船室の床をピカピカに磨き始めます。
要するに怪我が治ったので自由に思いっきり身体を動かしたいだけのようにも見えます。

ルカもそう思ったようで「張り切っちゃって・・・」と呆れたように言い、
マーベラスは「ま、別にいいじゃねぇか・・・」と、よく分からんが床が綺麗になって喜びます。
アイムも「鎧さんらしいです」と微笑ましく見つめ、
ジョーはマイペースに鎧の掃除を避けながらトレーニングをします。
そんな中、黙々とゴーカイガンの修理をしていたハカセは「よし・・・できた〜!」と作業を完了させます。
それを見て鎧はやたらハイテンションに
「もう出来たんですか!?さすがドンさん!」とハカセにじゃれ付き、元気がはちきれんばかりです。

一方、宇宙空間のギガントホースでは司令官ワルズ・ギルがテーブルの前に座って指令室で食事中。
というか、なんでこんな場所で食事?・・・と思ったら、どうもワルズ・ギルは食欲が無い様子で
「食べたくない!」と駄々をこねています。
ワルズ・ギルが食事を摂らないというので心配してダマラス達が豪勢な食事を用意して指令室に持ってきて
ワルズ・ギルに食わせようとしている様子です。

テーブルいっぱいにやたらと豪華で美味しそうな食事が並べられていますが、
それでもワルズ・ギルは食べたくないようです。
ダマラスは「しかし殿下!何か一口だけでも・・・」と言い、
インサーンも「御身体がもちませんわ・・・」と心配そうにワルズ・ギルにすり寄りますが、
ワルズ・ギルは突然ブチ切れて立ち上がり
「え〜い!うるさいうるさいうるさ〜い!お前らに俺の気持ちが分かるか!?
いつになったら地球を制圧出来るんだぁっ!?」と喚き散らします。

ワルズ・ギルは別に身体の何処かが病気なのではなく、
地球征服作戦が失敗続きで気が滅入って食欲が無くなっているだけであるようです。
これはやはりコント臭がしてきたと思ったら、
そこにバリゾーグが登場して「ご安心を、ワルズ・ギル様・・・新たな行動隊長を呼び寄せました」と言い、
「ザキュラにございます」と、マンガみたいなデザインの怪人を紹介したので、
今回はもう絶対まともな作戦じゃないということは分かりました。

そのザキュラという怪人、ぬいぐるみのような丸っこい胴体全体が大きな顔になっている、
なんともファンシーなデザインで「このボクちんにお任せぇ〜っ!!」とか言ってます。
そして「見ててねぇ〜!」と悪戯っ子のような口調でその胴体の大きな口を開け、
ワルズ・ギルの前のテーブルに置かれた豪勢な食事を全部吸い込んでしまいました。

「どんなもんだい!」と自慢げなザキュラですが、この能力って何の役に立つのか?と思ったところ、
バリゾーグは「ザキュラの無限胃袋に地球上の全ての食料を吸い込んでしまえば、
地球人はいとも簡単に降伏するでしょう」と、アホな作戦内容を説明します。
なんでそんな回りくどいことするんだよ?・・・とは誰もツッコミは入れません。
「よし!それはいい!」とワルズ・ギルは手を叩いて絶賛する始末。

しかしワルズ・ギル、地球征服に活路(?)を見出して安心したためか、
急に空腹になったようで腹の虫が鳴り始め、
「ん?・・・いかん!ザキュラ!さっきの食事を返せ!」と無茶な命令を下します。
「ほええ!?」とザキュラが驚くと、ワルズ・ギルは「・・・せめてメロンだけでも・・・」と、
何故か急に手を合わせて弱気に哀願。
しかしザキュラは「出来ませぇん!イシシシシシ!」と意地悪そうに笑うのでした。

ここでOPテーマとなります。今回のOPナレーションはレジェンド回バージョン。
そしてCM明け。「ヒーローだァァッ!!」という今回のサブタイトルが出て、
今回はダイレンジャー篇だと分かります。
1993年度のシリーズ第17作「五星戦隊ダイレンジャー」は
サブタイトルに一貫したフォーマットはありませんでしたが、
このフリーダムさは間違いなくダイレンジャーです。

「ダイレンジャー」は異様にハイテンションの変なサブタイトルがやたらと多くて、
第1話が「転身だァァッ」、第2話が「気力だァァッ!!」という感じになっています。
ちなみにこの2つはそのまんま「ダイレンジャー」OPテーマの歌い出しの歌詞になっています。
ただ、この絶叫調がフォーマットになっているわけでもなく、
「イヨッ結婚ぢゃ」「嫌な嫌な嫌な奴」「総登場だぎゃ!!」「感動!!君も泣け」とか、
もうワケの分からんサブタイトルが目白押しです。

それでも序盤はこの絶叫調が割と多く、
最終2話も「最終決戦だァッ」「行くぞォォッ」で締められているところを見ると、
この絶叫調が最も「ダイレンジャー」らしいサブタイトルなのでしょう。
そして「ヒーローだァァッ!!」という今回のサブタイトルの意味は、
まさに今回のエピソード内容が「ヒーロー」の在り方を確認する内容であることを意味している、
まさにダイレンジャーらしい直球のサブタイトルとなっています。

さて本編が再開し、ルカとハカセと鎧の3人がスーパーに買い出しに来ています。
「今日は何にしますかねぇ!?」と鎧は相変わらず元気が有り余っている様子ではしゃいでおり、
ルカが「鎧の全快祝いってことで、鎧の好きなもんにしたら?」と言うと、
「いいんですかぁっ!?・・・ええっと、じゃあ俺、中華がいいです!」と大喜びで、
3人はマーボ豆腐がいいとか酢豚がいいとかワイワイ言いながらスーパーで食材を物色しています。

すると、棚に陳列してある食材がいきなり飛んでいき、
変な怪人が「ごっちゃんでぇす!」と、それを吸い込んでしまったのでした。
「ザンギャック!?」と鎧たちが驚いて見たその怪人はザキュラでした。
さっそく地球の食料を全部食べ尽くしてしまう作戦を実行し始めたところ、
毎度のごとく、いきなりゴーカイジャーと鉢合わせしてしまったようです。

「地球の食べ物、ぜ〜んぶ食い尽くしてやるもんね!と愉快そうに逃げていくザキュラを、
3人は豪快チェンジして追いかけます。
スーパーの中での変身シーンはなかなかシュールです。

スーパーの外でザキュラに追いついた3人を見て、
ザキュラは「たったの3人?ボクちんの敵じゃないねぇ!」と舐めて逆に襲い掛かってきます。
こうして戦闘開始となりますが、ファンシーな外見や間抜けな能力の割にザキュラはそこそこ強く、
3人は苦戦してしまいます。
倒れた3人に向かってザキュラが嘲笑いながら「トドメだ!」と攻撃を繰り出そうとした時、
そこにザンギャック反応を受けて駆け付けたマーベラス、ジョー、アイムが変身姿で飛び込んできて
ザキュラをゴーカイガンで撃って退け、
「とっとと倒すぞ!」とマーベラスは面倒くさいので早く終わらす気満々です。

ザキュラは「あ!増えたか!」と、6人に増えたゴーカイジャーを見て焦ります。
1対6ではさすがに分が悪いと思ったようですが、
鎧はさっそく「じゃあ、ここはガオレンジャーでいきましょう!」と
ガオシルバーのレンジャーキーを出してゴーカイセルラーに入れ、マーベラス達もそれに応じて、
6人でガオレンジャーに豪快チェンジすることとなりました。
マーベラスがガオレッドに、ジョーがガオブルーに、ルカがガオイエローに、
ハカセがガオブラックに、アイムがガオホワイトに、鎧がガオシルバーに変身します。

ガオレンジャーへのガオシルバーも含めた6人一斉変身はこれが初めてのことです。
これで、鎧とゴーカイセルラーの加入後に6人同時変身が可能になったにもかかわらず、
この時点でまだ6人同時変身をしていない戦隊は、
ジュウレンジャー、デカレンジャー、マジレンジャーの3戦隊となります。

また、鎧がゴーカイセルラーのボタンに配されている16戦士のうち未だ変身していない追加戦士は、
これであとはマジシャインだけとなります。
まぁゴーオンゴールドとゴーオンシルバーへのそれぞれ単体変身もまだですが、
合体戦士のゴーオンウイングスへの変身で変身ボタンは使用済であり、
ゴーカイセルラーの変身ボタンを未だに鎧が使っていないのはマジシャインだけです。

さて、このガオレンジャーに変身して以降の戦闘シーンのBGMは
劇中挿入曲「豪快全開ダッシュ!!」のインストバージョンですね。
実は「ゴーカイジャー」という作品はサントラに良い曲がいっぱいあるのですが、
何せ2話に1話はレジェンド回で、そこでは戦闘シーンの良いところでは
レジェンド戦隊の関連の曲がかかることが多く、
なかなか「ゴーカイジャー」オリジナルの挿入曲を上手く使う機会が作れないようで、
この燃える名曲、あの第11話の生身アクションの時以来の使用となりました。

この場面、ガオレンジャーのアクションはマーベラス達5人は武器は使わず
肉弾戦で爪を使った攻撃を繰り出すアニマルアクションで、
この波状攻撃で怯んだザキュラに対して、
鎧がガオハスラーロッドを最初はスナイパーモードにして銃撃しながらザキュラに突っ込んで、
サーベルモードに切り替えて「復活した俺の姿!見ててくださ〜い!!牙吠!!」と
何やら猛烈にアピールしながらザキュラを斬りまくります。

そうして鎧の大活躍でザキュラを吹っ飛ばすと、
「よぉ〜し!!完全復活〜!!」と鎧は拳を高々と突き上げてガッツポーズをとり、
マーベラス達の方に振り返って大喜びします。
久しぶりに戦って怪人をやっつけたのがよほど嬉しいようですが、
まだザキュラを倒したわけでもないのに、鎧は少し浮かれすぎです。

マーベラス達もあまりに鎧のテンションが高いので呆れて見ていますが、
その鎧の背後では起き上がったザキュラが「おのれぇ〜・・・これでも喰らえ〜!」と言いながら、
自分の下腹というか、顎というか、そのあたりの膨らみを何度もポンポン自分で叩きます。
すると、その叩いた辺りが何度かモチのように膨らんだかと思うと、
ザキュラの口から大量の食べ物が凄い勢いで飛び出してきたのでした。
ザキュラが自分で叩いた部位が無限胃袋のある位置であるようで、そこに食べた食料は溜まっているようです。
それを一定の力で何度か叩くと溜めてあった食料が飛び出す仕組みになっているようです。
しかし、だったらさっきワルズ・ギルの食料も意地悪しないで戻してやればよかったのに。

とにかくここではザキュラはこの猛烈な勢いで飛び出した食料を
ゴーカイジャーにぶつけてやろうとして吐き出したようです。
というか、さっきは目から破壊光線とか出していたのだから、
こんな変な攻撃せずに普通に破壊光線とか出せばいいのですが、
ザキュラはあんまり深く考えて行動していないようです。

当然、マーベラス達はこんな攻撃は難なく避けます。
だが、鎧だけは浮かれまくってザキュラに背を向けていたのでザキュラの吐き出した果物などの直撃を受けて、
食料と一緒に吹っ飛ばされてしまいました。
積んであるダンボール箱の山に突っ込んだ鎧はショックで生身まで変身解除してしまい、
しかも懐からゴーカイセルラーを落っことしてしまいました。

箱の山の中から慌てて這い出してきた鎧が
ゴーカイセルラーが果物などの中に紛れて転がっているのに気付いた瞬間、
ザキュラは「おお〜っともったいない!もう一度〜っ!!」と言って大きな口を開き、
散らばった食料を吸い込みます。
だったら最初から吐き出さずに目から光線でも出してればいいのに、と思いますが、
ホントに何も考えてない怪人であるようです。

しかし、このザキュラの吸い取る力によって、
食料と一緒に転がっていたゴーカイセルラーまでも吸い込まれてザキュラに呑みこまれてしまったのでした。
鎧は唖然としてそれを見て、大慌てしますが、
ザキュラ自身は自分がゴーカイセルラーを呑みこんだことは気付いていないようで、
「あ〜!食った食った!ここはひとまず退散〜!バイバ〜イ!」と呑気にケタケタ笑いながら逃げていきます。

マーベラス達は鎧がやられているのでそっちに気が取られている隙にザキュラを取り逃がしてしまいますが、
鎧が慌ててダンボール箱に足をとられて転びながら
「ああ!待って!返して!俺のゴーカイセルラー!!」と叫ぶのを聞いて、
「ええ!?ゴーカイセルラー!?」と驚きます。
どうして鎧のゴーカイセルラーをあの怪人が持っているのか、
吸い込まれる瞬間を見ていなかった5人には何のことやらさっぱり分からなかったのでした。

ザキュラが鎧のゴーカイセルラーをそれとは知らず呑み込んでしまったということを鎧から聞いたマーベラス達は、
ひとまず鎧を連れてガレオンに戻り、ゴーカイセルラーを探すことにしました。
ハカセがゴーカイセルラーの出す信号を探って位置を特定するために計器のコンソールを操作している間、
鎧はハカセのモバイレーツを借りて自分のゴーカイセルラーを呼び出します。
もしザキュラのお腹から外にセルラーが出ていて、誰かの手に拾われていたら、
呼び出せば誰かが出てくれるかもしれないと思ったのでした。
あるいはもしザキュラの腹の中のままだったとしても、呼び出し音が鳴れば、
ザキュラが腹の中に異物が入っていることに気付いて吐き出してくれる可能性もあります。

「頼む・・・繋がってくれぇ・・・」と鎧はセルラーを呼び出そうとしてモバイレーツを操作して、
祈るようにモバイレーツを耳にあてますが、そこから聞こえてきたのはセルラーの呼び出し音ではなく、
「ゴーカイセルラー留守番電話サービスです、おかけになったセルラーは・・・」という関智一の声でした。

これは大爆笑。
ゴーカイセルラーにこんな電話サービスがあったとは・・・
確かゴーカイセルラーは仲代壬琴たちが作ったはずなんだが、壬琴はこんなものまで作ってたのか?
まぁ、このあたりは関ボイスで留守電サービスまでやってしまう遊び心ということで
いちいちツッコむのは野暮でしょう。
ともかくセルラーは電波の届かない場所にあるか、お客様のご都合で使用できなくなっているのでしょう。

「・・・ダメか・・・」と落胆してモバイレーツを切る鎧を見て、
ルカは「あいつのお腹の中までは電波は届かないってわけか・・・?」と考え込みます。
ゴーカイセルラーにモバイレーツの電波が届かないということは、
まだゴーカイセルラーはザキュラのお腹の中ということです。

鎧がガックリして差し出すモバイレーツを受け取りながら、
ハカセも「位置情報も・・・追えないみたい・・・」と残念そうに鎧に伝えます。
やはり電波の届かないザキュラの胃袋の中にある限り、
ガレオンの機器でゴーカイセルラーの位置は割り出せないようです。
鎧は「そんな・・・」とショックを受けてよろめき、床に座り込んでしまい
「俺の・・・ゴーカイセルラー・・・このまま無くしたりしたら、変身出来ないよ・・・!」と膝を抱えて落ち込みます。

しかしハカセは「大丈夫だって!僕たちで取り戻してみせるからさ!」と笑顔で鎧を励まします。
ジョーも「要はアイツを倒せばいいってだけの話だ・・・」と、全く慌てた様子はありません。
電波が届かないということは逆にゴーカイセルラーの在り処が
ザキュラの腹の中だと特定出来ているのと同じことです。
そしてザキュラは地球の食べ物を全部食い尽くすと言っていた。
ということは、また食べ物を吸い込むために何処かのスーパーや食い物屋に現れて暴れるに決まっている。
そのザンギャック反応のある現場に急行してザキュラを倒して腹の中からセルラーを取り出せばいいだけのことです。

そもそも地球の食べ物を全部ザキュラに食われるのを指を咥えて見ているつもりは
もともとマーベラス一味にはありません。
だからどっちにしてもザキュラは倒す。
その時にゴーカイセルラーも戻ってくる。シンプルな話でした。

「ほんの少しの辛抱です!」とアイムも鎧を諌めるように言います。
あの程度の怪人、そう遠くないうちに倒せるはずですから、鎧は少し待てばいいだけなのです。
それなのに床にへたり込んで落ち込むとは、少しだらしないとアイムは思いました。
マーベラスも「そういうこった!・・・ま、お前はしばらく休んでろ!」と事もなげに言います。
とにかくセルラーが戻るまでは鎧は変身出来ないわけだから、
ザキュラを倒すのは自分達5人でやるしかない。
だから鎧は大人しく待っていればいいのだとマーベラスは軽い気持ちで言ったのでした。

しかし鎧はマーベラス達の言葉もあまり耳に入っていない様子で、
下を向いたまま「・・・せっかく怪我も治ったのに・・・変身出来ないなんて・・・」とブツブツうわ言のように呟いて、
フラリと立ち上がると、皆に背を向けて船室を出て行こうとします。

皆が鎧のために怪人を倒そうと言ってくれているのに、礼も言わずに立ち去ろうとするとは、
いつもの鎧では考えられない失礼な態度です。
明らかに鎧の様子がおかしいと思ったルカは「・・・鎧!」と呼び止めます。
一同も、鎧がどうも変だと気付き、黙って鎧に注目します。
しかし、ルカの呼びかけに一瞬立ち止まった鎧は、振り向きもせず、
「・・・独りにさせてください・・・」と小さな声で言うと、そのまま船室を出て行ってしまったのでした。

その鎧の言動から、マーベラスは鎧がゴーカイセルラーを無くしたことだけでなく、
「変身出来ない」ということに大きなショックを受けていることに気付きました。
ゴーカイセルラー自体はおそらく遠くないうちに取り戻すことは出来るはずです。
いや、そう仲間を信じて待ってもらうしかない。
それぐらいの平常心も保つことが出来ないというのは、
よほど鎧がゴーカイセルラーがこのまま戻ってこなくて変身出来なくなることを恐れているということです。
まぁ気持ちは分からないでもないが、仲間を信じて待つ余裕さえ無くすとは、
つまり仲間の絆よりも鎧にとっては自分が変身出来るかどうかの方が大事ということです。
そう考えるとマーベラスは少し面白くない気持ちになりました。

だいたい、鎧が怪我が治って大はしゃぎしていたのも、
単に自分がまた変身出来るようになったことを嬉しがっていたように思えてきます。
また、戦いの最中に必要以上にはしゃぎ回っていたのも、
怪我が治って変身して戦えることが嬉しかったからであり、
結局はそのために油断が生じてこのようなことになったのだとマーベラスは思いました。
まぁそういう済んだ細かい話はどうでもよかったが、
とにかく鎧が仲間との関係よりも自分が変身出来るかどうかの方を優先している態度は
マーベラスには少し気に入らなかったのでした。

一方、船室から出て行った鎧はそのままガレオンを降りて地上をうろついていました。
何か意味があって歩いているわけではないのですが、
とにかく鎧はガレオンで何もしないで待っているという状態はもう耐えきれないので、外に出たかったのです。
怪我をしていた2週間の間も、鎧は皆の役に立てなくて申し訳ないという気持ちはもちろんありましたが、
それ以上に、自分だけが変身出来ないでガレオンに留守番しているという状況が
惨めな気分になって辛かったのです。

それでも怪我を治せばまた変身して戦えるんだと自分に言い聞かせて、
辛い気持ちを耐えて、そして遂に怪我が治って、
また思いっきり変身してゴーカイシルバーとして戦えるんだと歓喜したのも束の間、
ゴーカイセルラーを無くしてしまって、また変身出来なくなってしまった。
しかも今度は怪我と違って待っていれば元に戻るというわけにはいかない。
もしかしたら、ずっとこのまま変身出来ず、二度とゴーカイシルバーになることは出来ず、
元のただの一般人の伊狩鎧に戻ってしまうのではないかと思うと、
鎧は辛くて惨めで堪らない気分になってしまうのでした。

とにかくゴーカイセルラーさえ取り戻せば何とかなる。何とかしないと・・・と鎧は焦って考えながら
フラフラと街中を歩いていました。
「はぁ〜・・・俺のゴーカイセルラー・・・どうすればいいんだ・・・?」と呟いて頭を掻き毟って、
鎧は駆け出そうとします。
そこに突然駆け出した鎧に驚いて急ブレーキをかけた自転車がよけきれずに鎧にぶつかってしまいました。

道端で自転車は転倒し、鎧も地面に倒れ込みます。
自転車は中華料理屋の出前の自転車のようで、出前用の岡持ちには「赤龍軒」と書いてあります。
自転車に乗っていた男は「おい!君!大丈夫か!?」と慌てて鎧に駆け寄って助け起こし、
鎧は「ああ、大丈夫です・・・」とすぐに起き上がりました。
幸い、大した怪我はしていないようです。

しかし鎧は何となしに、心配そうに覗き込んでくる自転車の男の顔を見て、
あまりの驚きに息が止まりそうになります。
その男の顔は、鎧が知るあまり多くはない素顔のレジェンド戦士のうちの1人に酷似していたからです。
「も・・・もしかして貴方は、五星戦隊ダイレンジャーのリュウレンジャー、天火星・亮さんでは!?」と
物凄い勢いで尋ねる鎧に、その男はあまりの鎧の勢いにたじろぎながら
「そ・・・そうだけど・・・なんで!?」と逆にどうして自分の名前をこの見たこともない若者が知っているのか
驚いて思わず尋ね返しますが、ハッとして自分がその若者を自転車で轢いてしまったことを想い出し
「・・・そんなことより怪我してないか!?」と慌てて聞きます。

この出前の男、確かに元ダイレンジャーの赤の戦士である元リュウレンジャー、天火星・亮です。
鎧に元リュウレンジャーではないかと尋ねられた後、それを肯定した瞬間、
例の変身後マスクのオーバーラップ演出もちゃんとなされています。

「五星戦隊ダイレンジャー」は今から18年前の作品で、
この作品中の設定では亮は横浜の中華料理屋「山海閣」で働くコック見習いの23歳の若者でした。
となると、現在は41歳+レジェンド大戦後の数年分で、まぁ40歳代前半というところでしょう。
亮は「ゴーカイジャー」の物語には今回が初登場ではなく、
6月公開の「199ヒーロー大決戦」映画でも既に登場しており、
その時も亮は出前の自転車に乗って登場し、
元デカピンクのウメコの運転するミニパトに轢かれそうになったサラリーマンを助けるために飛び込んできています。

どうも交通事故絡みで登場するのがお約束になっているような感じですが、
この時にも出前の岡持ちには「赤龍軒」と書かれており、
現在は「山海閣」で働いているのではなく、独立して中華料理屋を経営していることが示唆されていました。
何故「赤龍軒」という屋号だけで亮の店だと推定できるのかというと、
「赤龍軒」というのは、亮の得意拳法である「赤龍拳」をもじった屋号だと分かるからです。

その亮を演じておられるのは、もちろんオリジナルキャストの和田圭市氏で、
現在43歳で、「ダイレンジャー」当時と比べれば落ち着いた雰囲気となっており、
いかにも中華料理屋の気のいい中年店主っぽい雰囲気がハマっていますが、
よく見ると見事な体格で、全身からヒーローのオーラが滲み出ています。
普段はこのヒーローのオーラを身に収めてニコニコした気のいい店主をやっているという感じが伝わってきており、
これが後でヒーローオーラが全開になった時とのギャップが素晴らしいです。

ところで、鎧はどうして亮の顔を知っていたのか?
一応はダイレンジャーは正体は不明の秘密戦隊だったはずですが、まぁかなりアバウトな戦隊だったので、
戦隊ファンの間では少なくともレジェンド大戦以降は変身前の素顔も知られていたのかもしれません。
まぁそのあたりはどうでもいいですが、ここで注目すべきは、
亮が自分が元リュウレンジャーであるということを結構どうでもいいことのように扱っていることです。
そんなことよりも目の前に倒れている鎧のことを心配することを遥かに優先しているのです。
これは、もともと亮というのが優しい男であるということもありますが、
亮のヒーロー観にも関係しているといえるでしょう。

さて、鎧は目の前の男が思った通り、元リュウレンジャーだったのだと分かると、
すっかり舞い上がってしまい、亮に怪我の心配をされると慌てて立ち上がり
「こんなん・・・こんなもん全然、ほら全然大丈夫ですよ!この通り!」とシャキシャキ動いて
様々なポージングをします。
そして、「はは!なんたって俺!ゴーカイシルバーですから!!」と、ポーズを決めながら
誇らしげにヒーローとして名乗るのでした。

亮は「ゴーカイシルバー!?」と、若者の口から出た意外な言葉に驚きます。
亮は「199ヒーロー大決戦」映画の時に、ゴーカイジャーの戦い方を何らかの方法で観て、
そこにダイレンジャーと通じ合う精神を認めて「大いなる力」を託しました。
だから宇宙海賊の戦隊ゴーカイジャーのことは知っています。
しかし、その時「ゴーカイシルバー」という戦士は確かいなかったはずだと思い、一瞬戸惑いました。

しかし、笑顔で「はい!」と答える鎧の顔を見ながら少し考えた亮は、
そういえば最近、ゴーカイジャーに1人、地球人が仲間に加わって6人になったという噂を聞いたことを想い出し、
それがつまり「ゴーカイシルバー」というやつなのかもしれないと思い、
「もしかして・・・君が宇宙海賊の仲間になったっていう地球人!?」と鎧に尋ねます。

しかし、鎧は「199ヒーロー大決戦」映画の時点では
既に仲代壬琴らからゴーカイシルバーのレンジャーキーとゴーカイセルラー、
そしてアバレンジャーなど3戦隊の大いなる力を受け取っており、
そうした壬琴らの動きを亮は把握していなかったようです。
やはりレジェンド戦士同士の横の連絡は希薄なのでしょう。

しかし鎧は亮が噂程度に聞いていたことを口にしただけで、
レジェンド戦士の先輩が自分のことを知ってくれていたことに猛烈に感激し、
「はい!伊狩鎧です!!」と感極まって亮の右手をギュッと握りしめて身体をくっつけて目をウルウルさせます。
亮はたじろぎながらも、さすがに近すぎて暑苦しいと思って、鎧の手を左手でポンポン叩いて、離すように促します。

すると鎧はハッと我に返り、
感激の余り、ついゴーカイシルバーなどと張り切って自己紹介してしまったが、
もしかしたらもうゴーカイシルバーにはなれないという現実を一気に思い出して、
気分が急に重くなり、手を離して亮に背を向けてトボトボしながら
「・・・今は・・・その・・・変身出来ないんですけど・・・」と小声でボソボソ言うのでした。
亮は鎧のテンションのあまりに激しい上下に驚きつつも、何かよほどの事情があるのだろうと思うのでした。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
にほんブログ村 にほんブログ村 テレビブログ スーパー戦隊へ
にほんブログ村
posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 23:25 | Comment(0) | 第33話「ヒーローだァァッ!!」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月24日

第33話「ヒーローだァァッ!!」感想その1

今回はレジェンド回でダイレンジャー篇です。
ダイレンジャーは6月公開の「199ヒーロー大決戦」映画の中でリュウレンジャー天火星・亮が登場して、
ゴーカイジャーに既に「大いなる力」を渡しています。
しかも亮の場合はビジョンだけ登場のアカレンジャー海城剛たちとは違って生身での動きやセリフもあったので、
あれでダイレンジャー篇は消化された扱いなのかとも思っていたのですが、
しっかりレジェンド回をやることになりました。

まぁスーパー戦隊シリーズはアクション面を非常に重視しており、
この35作記念作品の「ゴーカイジャー」でも歴代戦隊のアクションに非常にこだわった作りをしていますので、
歴代でアクション最高戦隊であるダイレンジャーのレジェンド回を
「199ヒーロー大決戦」映画のようなダイレンジャーアクションをフィーチャーしない形で終えるのは不自然に思い、
アクション重視のレジェンド回をやるのではないか(というか、やってほしい)と思っていたのですが、
案の定というか期待通りというか、いや期待以上の結果となった次第です。

そしてよく考えれば「199ヒーロー大決戦」映画の場合、
あそこで登場してゴーカイジャーに「大いなる力」を渡したスーパー戦隊のうち、
むしろ、ちゃんと生身の動きやセリフのあった戦隊の方がTV本編の方に登場する傾向があるようです。
ボウケンジャーがそうであったし、今回のダイレンジャー、そして近々登場が間違いないゴーオンジャーも同様です。
そもそも同じような扱いで映画に登場したシンケンジャー、デカレンジャーは
あの時点で既にTV本編でレジェンド回消化済でしたから、
その2戦隊と同格扱いということは、ボウケン、ダイレン、ゴーオンはTV本編でも然るべき扱いだと
解釈すべきであったわけです。

そもそも、オリジナル役者さんがしっかり動けて喋れて、その戦隊がゴーカイジャーの世界観に馴染むからこそ、
生身で動きもセリフもあったわけです。
映画にちゃんと出たからもう出番が無いのではなく、
むしろ、だからこそ再登場の可能性が高かったのだといえるでしょう。
さて、そうなると映画の方に元デンジブルー青梅大五郎役で大葉健二氏が出演したデンジマンも
TV本編で改めてレジェンド回をやる可能性があることになりますが、
さて、これはいくらなんでも古すぎるのでどうなのかよく分かりません。

で、今回のダイレンジャー篇ですが、「ゴーカイジャー」におけるレジェンド回の基本原則通り、
あくまでゴーカイジャーの物語の中の1エピソードとなっています。
しかも今回は3クール目の通常回で続いている、スーパー戦隊シリーズ定番エピソードシリーズでもあります。
なぜ定番エピソードでレジェンド回が出来るのかというと、
今回がスーパー戦隊シリーズ定番エピソードシリーズ
「入れ替わり篇」「ヒロイン七変化篇」「新装備登場篇」に続く第4弾「変身不能篇」だからです。

レジェンド回というのはゴーカイジャーの物語があくまでメインになっているとはいえ、
ゴーカイジャーとは異なる立場にあるレジェンドゲストが登場する以上、
そのレジェンドゲスト絡みのストーリーとゴーカイジャーのストーリーを絡ませる複合ストーリーとなり、
どうしてもいわゆる典型的な定番エピソードとは違う特殊で独特なエピソードとなります。

しかし、「変身不能篇」とは「変身出来なくなったヒーローを描くエピソード」であり、
ゴーカイジャー側では伊狩鎧が変身出来なくなった状況が描かれますが、
レジェンドゲストである亮もこの「ゴーカイジャー」という物語の基本設定上
「変身出来なくなったヒーロー」そのものであり、
今回のエピソードにおいてはこの2人は最初から立場が一致しているのです。
だから通常のレジェンド回のように、もともとは無関係に見える2つのストーリーの交差点を見出すというような
作業を経る必要が無く、2人が出会った瞬間から、鎧メインの「変身不能篇」という
定番エピソードのストーリー一本で突っ走ることが出来るというわけです。

そのスーパー戦隊シリーズにおける定番エピソードとしての「変身不能篇」というのは、
どういう構成になっているのか?
単に何らかの理由で戦隊メンバーの誰かが変身出来なくなる状況というのはどの作品でもしばしばあります。
しかし、そういう状況が描写されるエピソードが全て「変身不能篇」というわけではありません。
「変身不能篇」というのは、あくまで変身不能という状況がドラマの中核となっていて、
変身が出来ないという状況によって戦隊メンバーがそれまで気が付かなかった、
あるいは忘れてしまっていた何か大切なことに気付くエピソードのことを指します。

「無くしてみて初めて気付くこと」という言い回しはよくあります。
親が亡くなって初めて親の有難味が分かったりするというやつで、
それまで当たり前のように存在した物が無くなって、初めてその真の価値に気付くものです。
それと同じで、「変身不能篇」においては、それまで当たり前に変身して戦うことが出来ていたのが、
突然、変身して戦えなくなるわけですから、
そこで気付く大切なことというのは、「変身してヒーローとして戦うことの意味」ということになります。
そうではなく変化球で何か別のことに気付く「変身不能篇」もありますが、
今回はまさに直球で、この典型的な王道の、「変身ヒーローとして戦う意味」に気付くための
「変身不能篇」となっています。

しかし、今回はただの「変身不能篇」でないところが素晴らしいところです。
「変身不能篇」でありながら同時に「生身アクション篇」でもあるのです。
生身アクションというものは変身不能状況においては必然的に起こり得るものですが、
そういう消極的な生身アクションの場合「生身アクション篇」とは言いません。
真の「生身アクション篇」というのは、あえて生身で戦うことによって
「生身でも戦える」ということを示すエピソードです。

それは単に腕っぷしが強いことを示すという意味ではなく、
「本来は生身では勝ち目が無い敵にも生身で立ち向かい戦ってしまう心の強さ」を
積極的に示すことがテーマとなっているのです。
だから変身不能でない状況でも「生身アクション篇」は成立します。
むしろ「変身不能篇」ではどうしても生身アクションが消極的なものに見えやすいので、
真の「生身アクション篇」として成立させるのが難しいといえます。

どうして「変身不能篇」では生身アクションが消極的に見えやすいのかというと、
それは「変身不能篇」の構造的問題によるものです。
「変身不能篇」というのは「変身して戦えること」の価値や意味を再確認するという物語構造となっているため、
「変身しなくても戦える」「変身せずに戦うことに意味がある」というテーマを内包する
生身アクションを肯定的に描いてしまうと、「変身して戦えること」の価値が希薄に見えてしまいます。
だから「変身不能篇」における生身アクションは「変身できないことによる辛さ」を象徴するような
否定的ニュアンスで、やられ描写や、戦うことが出来ないで耐え忍ぶ描写などが多くなるものです。
バッタバッタと敵を倒してしまってはマズいのです。

いや、まぁ今回もそれなりに生身アクションの結果、ピンチにもなります。
逆にあくまで純粋なる「変身不能篇」でありながら生身で大活躍してしまっているような例もあります。
だからアクションシーンで優勢や劣勢かというのは相手次第ということもあって、そんなに大した問題ではなく、
本質的に重要なのは「生身で戦う」ということを肯定的に描いているか、否定的に描いているのかです。
たとえ実際のアクションではピンチの連続だったとしても「生身で戦うシーン」が肯定的に描かれていれば、
その後で「変身して戦うことの価値に気付くシーン」を描くと、どうにも繋がりが悪くなってしまいます。
だから「変身不能篇」で生身アクションを肯定的に描くのは、
「変身不能篇」としてのストーリーを貫徹させる障害となってしまう。
よって、「変身不能篇」でありながら「生身アクション篇」でもあるエピソードを綺麗にまとめるのは困難なのです。

ところが今回のエピソードにおいては「変身不能篇」でありながら、
生身アクションが極めて肯定的に描かれています。
そういう意味では完全に見事な「生身アクション篇」です。
しかし、それでいて「変身不能篇」としても見事にまとまっています。
どうしてこんなことが可能なのかというと、
これは「ゴーカイジャー」という物語の1エピソードだからこそ可能になったのだといえます。
いや、より正確に言うと「ゴーカイジャー」のレジェンド回だからこそ
こういう「変身不能篇」と「生身アクション篇」の同時成立という芸当が可能になったのです。

それはどういうことかというと、
要するに今回のエピソードには鎧と亮という2人の「変身不能になったヒーロー」が登場し、
ものすごく大雑把に言うと、「変身不能篇」担当が鎧で、「生身アクション篇」担当が亮だからなのです。
ただ、これは分かりやすくするために大雑把に表現しすぎており、
実際のストーリー展開は鎧中心に「変身不能篇」「生身アクション篇」が混ざり合っています。

変身不能になって落ち込む鎧に対して、同じく変身出来ない先輩ヒーローである亮が
「変身出来なくてもヒーローとして戦える」という考え方を示し、
鎧がそれによって「変身ヒーロー」ではない自分のヒーローとして戦う意味を発見します。
ここまでの流れでは、最初は「変身不能篇」の展開であったものが、
亮と鎧の出逢いから一転して「生身アクション篇」の展開になり、
ここで一旦、なんと「変身ヒーロー」という概念は否定されます。

ところがその直後、鎧が変身能力を取り戻します。
しかしその直前に鎧の中で「変身ヒーロー」という概念が否定されているので、
普通はここですんなり繋がらないところです。
しかし、ここで亮が鎧に向かって、変身してヒーローとして戦うよう促すのです。

一旦、ヒーローであるということにおいて変身することには大きな意味は無いということに気付いた鎧が、
それでも変身して戦うよう求められたのです。
それはつまり、以前のように「権利」として変身能力を見るのではなく、
ある種の「宿命」として変身能力を背負うよう促されたことを意味します。
ヒーローとしての務めを果たす気持ちさえあれば、
変身能力など無くても誰でもヒーローにはなれる権利はあるのです。
つまり変身能力を与えられることで人はヒーローになるのではない。

しかし、ある特定の者は変身能力を与えられる。
ならば、それはヒーローになる権利ではなく、
むしろヒーローとしてのより多くの務めを果たすために負わされた宿命と考えなければならない。
その宿命を背負うように亮は鎧に促したのです。

しかも亮自身は自分の変身能力を鎧たちゴーカイジャーに預けているのです。
つまり鎧は変身して戦うように亮から言われることで、亮の宿命をも同時に背負うこととなり、
同時にそれは全てのレジェンド戦士の「変身ヒーローとしての宿命」をも、
鎧およびゴーカイジャーが背負うことも意味するのです。

このように、「変身不能篇」の真ん中に「生身アクション篇」を挿入して、
一旦「変身能力はヒーローの必要条件ではない」とすることによって、
むしろ再び鎧が手にした変身能力に以前とは比べものにならない
重い宿命的な意味合いを持たせることに成功し、熱い魂の継承劇を成立させているのです。
そして、この成功は亮という
「変身能力を無くしてもヒーローとしての務めを果たし続けヒーローであり続ける先輩戦士」の存在が
あってこそなのです。

この「ヒーローとしての務め」というのが、今回は「人々を守りたいと思う気持ちを持つこと」であり、
これが今回のエピソードのテーマであり、
鎧のヒーローとしてのテーマであり、同時にダイレンジャーという戦隊のテーマでもあり、
これらのテーマが一致することによって、今回はレジェンド回として見事に成立しているわけです。

このように、確かに、同じように変身不能のヒーローである
ゴーカイジャー側のキャラとレジェンド側のキャラを1人ずつ絡めて
「変身不能篇」と「生身アクション篇」を同時にこなしつつ、
「レジェンド回」として熱く重厚にヒーローとしてのテーマの継承を描くという手法は見事です。

ただ、この今回のヒーローとしてのテーマに相当する「人々を守りたいと思う気持ち」は
あまりにも当たり前すぎる普遍的概念で、
このテーマを担うべき登場人物が、今回、ゴーカイジャー側が鎧でなくても成立しそうであり、
レジェンド側も亮でなくても成立しそうに思えます。
つまり、鎧と亮がメインである必然性が無いように見えるのです。
しかし、今回のエピソードは、ちゃんと鎧にしても亮にしても、彼らをメインとして扱う必然性はあるのです。

まず鎧は、そもそも3クール目に入ってからの個人主役エピソードが
途中でオーレンジャー篇を挟みながらですが、マーベラス、アイム、ジョー、ハカセという順に続いており、
今回は順番的にルカか鎧のどちらかとなるという事情もあります。
しかしこれはまぁどうでもいいでしょう。
順番的に鎧であったとしても、もっと鎧に合う内容のエピソードがあるならそっちをやればいいだけの話であって、
今回の鎧の順番のエピソードでわざわざこういうエピソードにした必然性はどっちにしても説明せねばならず、
それはつまり、このエピソードのメインが鎧である必然性を説明することと同義だからです。

となると、大きな必然性としてアクション面の必然性があります。
今回のエピソードは生身アクションでヒーローとしてしっかり戦っている描写がドラマの中核となります。
これがなんだか眠たいアクションになっていると、ドラマの根幹が崩れてしまいます。
だから生身アクションが映えるキャラをメインにしなければいけません。
そういう意味で、ゴーカイジャー6人の中で生身アクションのレベルが最も高い池田純矢くんの演じる鎧が
今回のゴーカイジャー側のメインを務める必然性があるということです。
そして同様に、レジェンド側も極めて生身アクションのレベルが高い和田圭市氏の演じる亮が
登場する必然性があるということになります。

確かに池田くんと和田氏の生身アクションは素晴らしく、
結果的にこのエピソードの完成度を高めるのに絶大なる効果を上げていると言っていいでしょう。
しかし、ゴーカイジャーの他のメンバーも池田くんほどではないが、かなりアクションのレベルは高く、
また、歴代レジェンド戦士のオリジナル役者でもアクションに長けた人は和田氏の他にもいます。
それにスーパー戦隊シリーズの制作スタッフはアクションをカッコ良く見せることに関しては
最高峰の実力を持つ集団です。
演者がそこそこのレベルのアクションさえこなせば、
後は何とでもしてハイレベルの生身アクションの映像を仕上げることは可能です。
だから、アクション面だけでは鎧と亮が今回のメインである必然性は説明出来ません。
そこにはやはりドラマ面での必然性がちゃんとあるのです。

まず鎧ですが、今回のエピソードは大前提として、
ゴーカイジャー側のメインキャラが変身不能になることで落ち込んで自分を見失わなければいけないのですが、
ゴーカイジャー6人の中でそんなことになりそうなのは鎧だけというのは、
鎧が今回メインとなる大きな必然性です。

マーベラス達、宇宙から来た5人の方は、ハカセを除いては、
全員それなりに変身能力を得る前から自分の信念に基づいて戦ってきた実績がありますから、
変身能力が無くなったぐらいで自分を見失うほど取り乱したりする描写に説得力がありません。
そしてハカセの場合は逆にマーベラス達のように自ら戦おうという意識が無く、
もともと仲間のために戦っている人間なので、変身出来なくなっても困ることは困るでしょうが、
自分を見失うほど取り乱すことはないでしょう。
だから変身能力を失うことによって自分のヒーローとしての存在意義まで見失ってひどく取り乱す
マーベラス一味のキャラといえば、鎧しかありえないでしょう。

鎧はもともと「変身ヒーロー」であるスーパー戦隊の戦士たちに憧れて、
その戦士たちと同じように変身能力を得たことがきっかけとなってマーベラス一味に加入した男です。
言い換えると、変身能力が無かった頃は戦おうとはしておらず、
変身能力を得た途端、急に積極的にヒーローとして活動しようとし始めた男です。
このように、変身能力の無かった頃から戦っていたマーベラス達4人や、
変身応力を得た後も戦う意思は希薄だったハカセとは、鎧は全然違います。
鎧にとっては「変身能力を得る=ヒーローとして戦える」なのです。

どうしてこんなに極端な思考なのかというと、
それは鎧が「ゴーカイジャー」物語世界における地球という特殊な環境で戦隊ファンであったことが原因でしょう。
つまり、この現実世界のようにスーパー戦隊シリーズがTV番組として放送されている世界ではなく、
現実にずっとおよそ35年間、歴代戦隊が実在して地球を守り続けてきた世界なのです。
だから地球を侵略する恐ろしい敵と戦うのは変身ヒーローである戦隊ヒーローだと相場が決まっている
世界ということです。そういう環境に慣れきった世界の住人なのです。
そして戦隊ヒーローたちの戦いは詳細には知られていないので、
彼らが生身でも時には戦っていたということは知られておらず、
戦隊ヒーローといえば常に変身して戦うものだと思われている世界なのです。

鎧はそういうヒーローに強烈に憧れて育ってきた男ですから、
「変身ヒーローだけが侵略者と戦うことが出来る」という固定観念を持っており、
自分も変身能力を得てから急に張り切って憧れのヒーローのように戦おうとしたわけです。
そういう鎧が変身能力を突然失った場合のショックというのは、
地球育ちではないマーベラスには理解不能であろうし、
現実社会育ちの視聴者にもそのショックの大きさは想像を超えているであろうし、
ヒーローの実態を知っているレジェンド戦士たちから見ても、いささか面喰うほどのものとなるでしょう。
そういう鎧だからこそ、今回のエピソードのメインが務まるのです。

そうした鎧をメインとした今回のエピソードでヒーローの持つべきテーマとして提示されるのが
「人々を守りたいという気持ち」であり、これは非常に単純明快に、直球で提示されているテーマなのですが、
この一見、ヒーローとして当たり前すぎるテーマがドラマのテーマとして成立しているのはどうしてなのかというと、
鎧がこの当たり前すぎるテーマに関する認識が希薄なキャラだからです。
言い換えれば、鎧が「人々を守りたい気持ち」というのが希薄なキャラだから、
今回は鎧の成長エピソードとして、これがヒーローのテーマとして提示されることになっているのです。

しかし、鎧のような「正義のヒーローに憧れる男」が
「人々を守りたい気持ち」が希薄というのは意外な印象があります。
だが、これも鎧が「ゴーカイジャー」物語世界の地球人であるという特殊条件を考慮に入れなければいけません。
つまり、鎧にとってはスーパー戦隊のヒーロー達というのは、
あくまで「悪を倒して地球の平和を守った正義のヒーローたち」という華やかなイメージの存在なのであって、
彼ら戦士たちの細かな心情については、TVドラマの放送を見ていたわけではないので分からないのです。
だから、ヒーローが本当は正義とか地球の平和とか、そういう大それたことばかりではなくて、
身近な大切な人達を守ろうとして戦っていたとか、そういう細かい人情の機微は分かっていないのです。

鎧自身はもちろん優しい人間であり、人々を守りたいという気持ちはあるのですが、
自分も憧れのスーパー戦士の仲間入りをしたという気負いのために、
公式イメージ的な立派な「正義のヒーロー」になろうという意識が強すぎて、
足元の地道な初心を忘れてしまっている状態にあるわけです。
だから、むしろゴーカイジャーの一員になった後の鎧の方が、
「人々を守りたい気持ち」などの地味なヒロイズムを少し見失ってしまっているといえます。

その欠陥が今回は変身出来なくなってヒーローでなくなるという焦りの中で増幅し、
鎧の中で自分の理想とする公式的なご立派なヒーローであろうとする気持ちが肥大化してしまい、
本当に大切な地味なヒロイズムが置き去りになってしまうのです。
今回は鎧がその大切な気持ちに気付くことがテーマであり、
それはゴーカイジャーという戦隊がヒーローとして成長するために
このタイミングで必要な1つのステップなのだといえます。
だから、今回、鎧をメインにしてこのようなエピソードをやる必然性はしっかり有ります。

問題は、その大切な気持ちを鎧に教える役割を担うのが亮であることの方です。
ヒーローにとって最も大切なことは、正義の力を振るって悪を倒すことではなく、
ただ純粋に人々の平和な暮らしを守ることであり、
ヒーローの戦う力は人々を守るために使われるべきものであるということを
鎧に示唆するのが亮の今回のエピソードにおける役割となっています。

が、これは一見、亮でなくても、レジェンド戦士の誰でも言えそうな内容であり、
今回のこの役割は亮以外の誰でも務まりそうにも見えます。
つまり、今回のレジェンドゲストが亮であるドラマ的な必然性は無く、
今回がダイレンジャー篇であるドラマ的な必然性も無いように見えるのです。

つまりレジェンド回の法則として、
そのエピソードにおけるゴーカイジャー側のテーマとレジェンド側のテーマが一致しなければいけないのですが、
今回のゴーカイジャー側のテーマが鎧が気付く
「ヒーローの戦う力は人々を守るために使われるべきものである」ということであるのならば、
それを気付かせる今回のレジェンドゲストである亮の所属戦隊であるダイレンジャーのテーマが
それと同じものでなければならない。
しかし、「ヒーローの戦う力は人々を守るために使われるべきものである」というテーマはあまりにも普遍的すぎて、
別にダイレンジャーでなくても、どの戦隊でも代替可能に見えます。
だから今回はダイレンジャー篇である必然性が無いように見えて、
ちゃんとしたレジェンド回として成立していないようにも見えてしまいます。

確かにダイレンジャーという戦隊は、メガレンジャー以降の、戦隊のテーマが明確な時期よりも前の時期の戦隊で、
戦隊としてのテーマは曖昧に描かれていました。

1993年度作品でスーパー戦隊シリーズ第17作「五星戦隊ダイレンジャー」という作品は、
よく言われるのは、アクションが歴代最高、ノリと勢いと熱さが素晴らしく、ストーリーは破綻している、
というような評価です。
だから戦隊としてのテーマは確かに曖昧でした。
シンプルに正義のヒーローが拳法アクションで戦うという作品で、
総合的には歴代でも特筆すべき魅力溢れる素晴らしい作品だとは思うのですが、
戦隊としてテーマが特に無いというのは事実でしょう。
なんといってもダイレンジャーのメンバーが単に嘉挧という道士(司令官キャラ)に言われるまま
戦っていただけというのが、彼らの戦隊としてのテーマを希薄なものにしています。
特にこれといったテーマの無い戦隊であるゆえに、
「人々を守るために戦う」というような、どの戦隊でも当てはまりそうなテーマである
今回のエピソードの担当レジェンド戦隊として使われているような印象すらあります。

しかし、実はそうではなく、
実はダイレンジャーという戦隊ほど、
今回の「ヒーローの戦う力は人々を守るために使われるべきものである」というテーマと
ドンピシャで一致するテーマを持った戦隊は無いのです。
だから、今回のエピソードのレジェンドゲストがダイレンジャーの亮であるドラマ的な必然性はしっかり有るのです。

しかし、ついさっきダイレンジャーという戦隊にはテーマは無いと言ったばかりですので、
これはなんだかおかしな話です。
いや、つまり、「ダイレンジャー」という作品においては
ダイレンジャーという戦隊はテーマがあるようには描かれていなかったのですが、
実は「ダイレンジャー」という作品自体はかなりテーマ性が濃い作品だったのです。

「ダイレンジャー」の頃はまだ「ゴレンジャー」「ジャッカー電撃隊」がシリーズに含まれていなかったので、
「ダイレンジャー」は当時はシリーズ15周年記念作品として作られていました。
つまり「ライブマン」に続く、2作目の記念作品です。
それゆえ非常に凝った作り方をされており、
「ライブマン」が異色作であったのと同様、「ダイレンジャー」もかなりの異色作であり、
おそらく作品の有するテーマの異様さではシリーズでは一番でしょう。

ただ、「ライブマン」が作品のテーマの異色性がそのまま戦隊のテーマの異色性に反映されて、
内容的には極めて名作でありながら人気が低迷してしまった反省を踏まえてなのか、
「ダイレンジャー」の場合、作品のテーマの異色性が戦隊のテーマに影響を及ぼさないように、
その作品の異色性を一手に引き受けるキャラとして嘉挧というキャラを設定し、
嘉挧は肝心のことは全部秘密にしたまま、ダイレンジャーのメンバーはただひたすら嘉挧の言う通りに
やたら元気にハイテンションに戦うのみという存在として、明朗快活な作風を維持したのでした。

おかげで「ダイレンジャー」は人気作となりましたが、
ダイレンジャーのメンバーは勢いと熱さが先行するキャラとなり、戦隊として特にテーマも無く、
そして作品のテーマの異色性を嘉挧一人に押し付けたためにストーリーは破綻していったのでした。
まぁ作劇方法が複線方式だったことも原因ですが。

そして最後には嘉挧が衝撃的な秘密を明らかとして、物語は完全に破綻して終了しました。
が、これは実は破綻ではなくて、ようやく作品のテーマをダイレンジャーのメンバーが知ることとなり、
ここからダイレンジャーという戦隊が本来持つべきであったテーマを持てるようになった瞬間であったのです。
が、ドラマ内容的には、ここから戦いが続けられる状況ではなくなっており、物語は終了するしかなかった。

というか、厳密には終了しないから余計に性質が悪いのですが、
とにかく、終盤直前までのストーリーと終盤のまとめ方との乖離が凄いので
実質的にはストーリーは破綻していると言わざるを得ませんが、
終盤の展開が本来あるべき作品のテーマに忠実な「ダイレンジャー」のストーリーであったといえます。
まぁガッツリそれでやってたら、さぞ不人気作品になっただろうとは思いますが。

で、この「ダイレンジャー」本編終盤に突然ダイレンジャーが持つことになったテーマが、
今回のレジェンド回に繋がっているのです。
そういう意味で、「ヒーローの戦う力は人々を守るために使われるべきものである」という
今回の鎧のテーマはダイレンジャーという戦隊のテーマと一致し、
今回はダイレンジャー篇のレジェンド回としてしっかりとした必然性をもって成立することになっているのです。

しかも、この「ヒーローの戦う力は人々を守るために使われるべきものである」という
ダイレンジャーのテーマが「ダイレンジャー」本編の終盤の展開の中で
「変身不能」と「生身アクション」でシリーズ史上非常に有名なエピソードとも密接に関わっており、
「ダイレンジャー」の終盤のそこのあたりのエピソードの脚本を書いたのが、
実は「ゴーカイジャー」のメインライターの荒川稔久氏なのです。
だから、今回のエピソードは、むしろダイレンジャー篇以外は考えられないほどの
強固な必然性があったのだといえます。

今回の脚本は「ゴーカイジャー」では初登場のサブライター石橋大助氏ですが、
石橋氏は荒川氏の後輩筋であり、
荒川氏が十分に把握しているダイレンジャーという戦隊の真のテーマを荒川氏から聞いて熟知した上で
変身不能と生身アクションに絡めた今回のエピソードの脚本を仕上げておられるのではないかと思います。
今回の石橋氏の脚本は非常に単純明快で燃える話で、非常に良いと思います。
それにしてもここのところの一連のエピソード、やたらとメインライターの荒川氏の姿が見えませんが、
これはやはり、このあたりの脚本が書かれた時期に、
荒川氏はそろそろ冬映画の脚本を執筆しておられたのかもしれません。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
にほんブログ村 にほんブログ村 テレビブログ スーパー戦隊へ
にほんブログ村
posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 23:57 | Comment(0) | 第33話「ヒーローだァァッ!!」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月23日

第32話「力を一つに」感想その5

地上の戦いでマーベラス達4人がそろそろ大ピンチとなりつつある頃、
ガレオンの船室内では鎧が「あ・・・!」と何かに気付いたように声を上げ
「あぁ!そうですよ!ドンさぁん!」とハカセに大声で話しかけます。
何か新武器の威力アップの決め手になるものはないかと試行錯誤中のハカセは
さすがにうるさい鎧が鬱陶しくなり「・・・何が?」と憮然として問い返します。
すると鎧は妙に嬉しそうに笑いながら
「いや、ほら、さっき俺がこの武器は何かに似てるって言ったの!あれです!オーレバズーカですよ!」と言って、
ハカセの隣に座って、完成間近の新武器を指さしてはしゃぐのでした。

ハカセはその言葉に釣られて新武器の方を見ます。
すると確かに縦に5つ並んだゴーカイシリンダーが、
オーレバズーカの縦に5つ並んだハイパーストレージクリスタルに似ているように見えます。
ゴーカイシリンダーに5色のレンジャーキーを仮に挿したと想定すれば、
5色のハイパーストレージクリスタルにますます似て見えてきます。

確かに似ていなくもない。
しかし別にハカセはオーレバズーカの真似をしてこの武器を設計したわけではない。
つまり、そんな話はどうでもいいことでした。
「そんなこと・・・今言わなくていいだろ!」とハカセは鎧の腕をペシッと叩きます。
鎧はまた怪我した手を叩かれて悶絶しますが、
この忙しい時にどうでもいいことを考えさせられたことにハカセは憤慨していて、鎧の悶絶に気付いていません。

ハカセは、だいいち、よく考えたら縦に5つエネルギー源が並んでいる大型火器という点だけしか共通点は無く、
似てもいないと思い、ブツブツと「似てないし!・・・オーレバズーカ・・・」と言います。
そう、確かにオーレバズーカは数日前、オーレンジャーの大いなる力をゲットした時に使ったけど、
オーレンジャーの大いなる力のことなんか今まで忘れてたぐらいで・・・と考えて、ハカセはハッと気づきました。
オーレンジャーの大いなる力について、今まで忘れていたことがあったことを想い出したのです。

「・・・あぁ、そうかぁ!!オーレンジャーだぁ!!」とハカセは叫ぶと、
「ナイス鎧!」と言って、また鎧の手をパシッと叩き、鎧はまたも悶絶するのでした。
ハカセは鎧に構わずそのままレンジャーキーの宝箱に向かい、蓋を開けて中を漁りながら
「言ってたでしょ?」と、鎧に向かって自分が思い出した大事なことを教えます。
それは、元オーレッドの星野吾郎がバスコに敗れた後のハカセ達に向かって言った言葉でした。

あの時、吾郎は「あのバスコ相手に力になるか分からんが・・・仲間の力を合わせるといい・・・
俺たちの託した大いなる力を使ってくれ・・・!」と言いました。
あの時、ハカセも鎧も、マーベラス一味の全員、漠然と仲間で協力して戦えばいいというような
一般論的な助言だと思い、さして気にもとめていなかったのです。だから忘れていたのです。
しかし鎧のオーレバズーカという言葉がきっかけとなって、その吾郎の言葉をハカセは思い出したのでした。
そして、ただ思い出したのではなく、その言葉に吾郎が込めていた真の意味が分かったのです。

今にして思うと、吾郎の「仲間の力を合わせるといい」という言葉は、
今まさにハカセが仲間の力を合わせて強力な武器を生み出そうとしていることを想定していたように聞こえます。
しかし、オーレバズーカのような、そもそもそうした「仲間の力を合わせる武器」を普通に使っていた吾郎が、
あえてそんな勿体ぶった抽象的な示唆を与えるとも思えない。
軍人の吾郎なら、既存の武器に類似した武器の開発を示唆するならば、もっと具体的な助言を与えるはずです。

だから、あの助言は吾郎にとっても何だか漠然とした、ハッキリとは論評のしようのないようなことだったのです。
バスコに効果があるかどうか分からないなどという曖昧な、軍人らしくない物言いも、
吾郎の中でもそれが未知の概念だったからです。
曖昧だが、それでも大いなる可能性が認められるから、吾郎はあえてそれを推したのでしょう。
それは何なのか?

実はここで言う吾郎の「仲間」というのは、ゴーカイジャーの仲間という意味ではないのです。
その言葉に続いて吾郎は「俺たちの託した大いなる力を使ってくれ」と言っていますが、
その前の言葉が「ゴーカイジャーの仲間の力を合わせるといい」では前後の文の意味が繋がらないのです。
2つの別々の助言を吾郎が与えているように聞こえてしまう。
いや、そうではなく、吾郎はゴーカイジャーをスーパー戦隊の仲間と認めた上で、
「スーパー戦隊の仲間の力を合わせるといい」と言ったのです。
だから「俺たちの託した大いなる力を使ってくれ」と繋がるわけなのです。

そして、ここで吾郎は「オーレンジャーの託した大いなる力を使ってくれ」とは言っていません。
「俺たちの託した大いなる力」としか言っていません。
「俺たち=オーレンジャー」と普通は考えてしまいがちになりますが、そうではなく、
これは「今までゴーカイジャーに大いなる力を託したスーパー戦隊の大いなる力を使ってくれ」と言っているのです。
そして、その上で「仲間(スーパー戦隊)の力を合わせるといい」と言っている。
つまり、吾郎は、ゴーカイジャーをスーパー戦隊の仲間と認めた上で、
その仲間たるスーパー戦隊の大いなる力も含んだ全ての力を一つに合わせて、
スーパー戦隊の限界を超えた未知の巨大な力を生みだすことがゴーカイジャーの使命でありテーマなのだと
言っているのです。

ハカセに言われて、鎧も吾郎の言葉の意図を悟り「・・・あぁ・・・!」と声を上げます。
そして、ハカセや鎧がその吾郎の助言の真の意味に気が付くことが出来たのは、
今まさに自分達が1人の力の限界を知ったことによって仲間の力を一つに合わせて
ゴーカイジャーの限界を超えた未知の大きなパワーを生み出そうとしていたからです。
その自分達の今の行動に照らして吾郎の言葉を解釈すれば、
ゴーカイジャーの為すべきことは、
今まさに決め手を欠いて完全に行き詰ってゴーカイジャー1戦隊のみの力の限界を知ったことによって、
スーパー戦隊という仲間たちの力を一つに合わせて、
既存の戦隊の限界を超えた未知なる巨大なパワーを生み出すことでした。

それがゴーカイジャーのやるべきことだという事実を踏まえた上で、
ハカセは今のこの袋小路を突破するために合わせるべきスーパー戦隊の大いなる力は、
まさにその助言をくれた吾郎のオーレンジャーの大いなる力だと気付いたのでした。
何故なら、オーレンジャーの大いなる力は、
それが実際にゴーカイオーのコクピットに挿し込んだ時にどのような形で実体化するのかは分からないものの、
その本質は「超力」だからでした。

「超力」とは何なのか?
その正体は結局は謎であり、よく分からないのですが、
物質の様々なエネルギーや能力を30~40倍増幅する作用があるといいます。
だから、この新武器にオーレンジャーの大いなる力を注ぎこめば、
発射されるファイナルウェーブの威力と砲身の強度が共に30〜40倍に増幅されると想像できます。

宝箱から光り輝くオーレンジャーのレンジャーキー、
オーレッド、オーブルー、オーグリーン、オーイエロー、オーピンクの
5つのレンジャーキーを見つけ出したハカセは
「オーレンジャーの大いなる力を使えば・・・!」と言って、
その5つのレンジャーキーを新武器の5つのゴーカイシリンダーに挿し込んで回していきました。
すると、一瞬、オーレンジャーの金色の紋章が浮かび上がったかと思うと、
突然、新武器は金色の光に包まれていったのでした。

さて地上の戦いの方はマーベラス達は大ピンチとなっていました。
シールドンの雷撃を受けて4人はゴーカイジャーの姿に戻ってしまい、倒れ込んで動けなくなります。
そこにシールドンは「トドメだ!」と更に雷撃を放とうとします。
その瞬間、シールドンの身体に銃弾が浴びせられ、盾を構えていなかったシールドンはよろめきます。
マーベラス達がハッとして銃撃の放たれた方を見ると、
「うおおおお!!」と叫びながらハカセが何やら船のような形の大きなバズーカのようなものを抱えて走ってきて、
そのバズーカから銃弾を連射しています。

シールドンは慌てて盾を身体の前で閉じて銃弾を防ぎますが、
その銃弾の威力はかなりにもので、しかも連射が凄まじく、シールドンは盾で全弾弾き返しますが、
勢いに押されてよろめきます。
そうして撃ちながら走ってきてハカセはマーベラス達の前に来ると「お待たせ!!」と元気に声を上げます。
アイムが「ハカセさん!」と喜びの声を上げ、ルカは「もう!遅い!」と寝たままハカセに蹴りを繰り出し、
「・・・で、完成したのか?」とジョーが聞くと、ハカセは「もちろん!名付けて、ゴーカイガレオンバスター!」と、
その手にした船型のバズーカ砲を自慢げに掲げて見せます。

それは先ほど船室に置いてあった完成直前の新武器とは全く異なった姿形となっていて、
その形状や配色からして、ゴーカイガレオンを模したものになっているようでした。
ただマストや帆は無く、上面の前の方に帆を模した照準器が寝かせてあり、
その後方の甲板にあたる部分には何故か完成直前のものに付けてあった5つのゴーカイシリンダーは無く、
新たにレンジャーキーの鍵穴が4つ並んでおり、その後方、甲板最後部に少し離れてもう1つ鍵穴がありました。
そして船体の先端、舳先にあたる部分には、まるで宇宙戦艦の拡散波動砲のような砲口が
両側に1つずつ、計2門ついており、それはもともとの二門式機関砲という設計通りとなっていました。

なんで急に形が変わっているのかよく分かりませんでしたが、
マーベラスはとにかく完成したということと、なんだかカッコ良いので上機嫌で立ち上がり
「やるじゃねぇか!」と言ってハカセからゴーカイガレオンバスターというその新兵器を受け取り、
さっそくシールドンに向けて構えます。
ハカセの言っていた計画ではレンジャーキーを挿して強力なファイナルウェーブを放つ武器のはずです。
どうしてゴーカイシリンダーではなくオリジナルの鍵穴になっているのか分からないが、
とにかくレンジャーキーを挿す鍵穴が5つ有るということは、
レンジャーキーを挿して使うという点では当初計画通りなのだろうとマーベラスは思いました。

ところがさっきハカセが撃って走ってきた時はレンジャーキーは挿していなかった。
つまり普通のゴーカイガン同様、レンジャーキーを挿さなくても普通に火器としても使うことは出来るのだろう。
しかし、さっきの普通の銃撃だけでも大変な威力であった。
ならばレンジャーキーを挿しての決め技の場合はとんでもない威力が予想出来るとマーベラスは思いました。
ハカセもノリノリで「派手にいっちゃおう!!」と腕を前へ振ります。
さっきの銃撃は序の口で、本番はここからということです。

一方、シールドンはいきなり登場した変な武器を見ても余裕綽々で
「何を用意してきたかと思えば、その程度の武器か!」と言い放ちます。
マーベラスが独りでも持つことが出来るゴーカイガレオンバスターは、確かにそんなに大きな武器ではありません。
ビッグボンバーの方が本体も砲身も大きいでしょう。
そのビッグボンバーを難なく弾き返したシールドンですから、
ゴーカイガレオンバスターの大きさを見て、そんなに大した武器ではないと思ったようです。
実際、さっき受けた銃撃はそれなりの威力ではあったが、到底この盾を破れるようなものではないと、
シールドンは安心していたのです。

まぁそもそも「ザンギャック一」の頑強な盾を持っているわけですから、
この宇宙のどんな類の攻撃を受けても自分の盾が破られることはないという強固な自信もあるのです。
「何度も言わせるな!この盾の前では全ては無意味だと!」とシールドンは絶対の自信を宣言して、
再び両腕のアーマーを合わせ、盾を身体の前で閉じます。

そのシールドンの前に立ったマーベラスが船底にあるレバーを引くと、
甲板最前部のマスト型照準器が起き上がり、
甲板にある4つのレンジャーキーの鍵穴部が2つずつ左右の舷側に倒れ、鍵穴が横向きに開いた形になります。
そのように少し変形したゴーカイガレオンバスターを
マーベラスは「ド派手にいくぜ!!」と気合を入れて自分の胸の前に構えて、シールドンの盾に狙いをつけます。

するとハカセは「みんなのレンジャーキーを挿し込むんだ!」と仲間に向かって、
横向きになった鍵穴に左右から4本のレンジャーキー、
そして甲板最後部の後ろ向きの鍵穴にもレンジャーキーを挿すよう指示します。
その指示に従ってマーベラス達4人、そしてハカセ自身もゴーカイジャーのレンジャーキーを取り出しますが、
なんとここでゴーカイジャーのレンジャーキーが光ったのでした。
つまり、ゴーカイジャーの大いなる力がレンジャーキーから初めて引き出されたのです。

しかし、そのことはあまり深く考えず、「レンジャーキー!セット!」と掛け声をかけながら、
ジョーとルカは左舷側から、ハカセとアイムは右舷側からレンジャーキーを鍵穴に挿します。
この挿した時も、今まで見たこともないような鮮やかな閃光がレンジャーキーと鍵穴から発されます。
そして最後に甲板最後部の鍵穴にマーベラスがレンジャーキーを挿して回すと、
左右に倒れていた鍵穴部が再び起き上がり、甲板上で5つのレンジャーキーが鍵穴に挿さったまま縦に並び、
ここでまた前の4つのレンジャーキーが一瞬光り、
そして「レ〜ッドチャ〜ジ!!」という認識音と共に
最後部のゴーカイレッドのレンジャーキーの挿したシリンダー部がゆっくり明滅して
エネルギーが充填されていくのが示されます。

同時に船体全体が光を発していき、巨大なエネルギーが充填されていくのが分かります。
先端の二門の砲門からも充填されたエネルギーが見えるようで、
その熱量の巨大さのために砲門の周囲の空間が歪み、その空間の元素が変異するほどの影響が生じます。
その充填音は尻上がりにせわしなくなっていき、
そして遂に「さぁこい!!」と盾を構えるシールドンを照準器がロックオンして、
エネルギーの充填が完了したことを認識音と共にマーベラス達に知らせてきます。
明らかにとんでもない衝撃波の発生が予想されるため、
マーベラスの背後に立ったジョーとハカセがマーベラスの肩と腰を支え、
更にジョーの肩と腰をルカが、ハカセの肩と腰をアイムが支えて、発生するであろう大きな反動に備えます。

そして「ゴーカイガレオンバスター!」と全員が叫ぶと同時にマーベラスは引き金を引き、
二門の砲口から二条の太くうねったファイナルウェーブが発射され、
その二本のファイナルウェーブは「ラ〜イジングス〜トライク!!」という関ボイスと共に
螺旋状に絡まり合いながら凄まじい勢いで前へ向かって飛んでいきながら合体して、
ゴーカイガレオンの鋭く尖ったラムを前方に突き出した形の巨大な破壊エネルギーへと姿を変えて、
一気にシールドンの盾に突き刺さり、それを粉砕してしまい、
「バカな!?」と絶叫するシールドンの身体を貫いたのでした。
次の瞬間、貫通部から爆発を起こしたシールドンは
「そんな、そんなバカな・・・俺を突破出来るわけが・・・!」と断末魔の叫びを残した後、
大爆発を起こして粉々に砕け散り、遂に果てました。

この戦いをギガントホースの指令室のモニターで見ていた
ワルズ・ギル、ダマラス、バリゾーグ、インサーンの4人は、さすがにこの結末には驚愕したようで、
「うっ!?」と短く呻いた後、絶句します。
ダマラスは「・・・有り得ん!・・・奴らの攻撃がシールドンの盾を破るなど・・・!」と、
未だにモニター越しに見た事実を受け入れることが出来ず、呻き続けます。
ザンギャックで最も頑強な装甲を破る武器など、この世に存在するはずはない。
ではいったい、あの海賊の見たこともない武器は何なのか?
ダマラスは帝国の絶対的な優位が破られたかのような不吉な衝撃を感じて、愕然とするのでした。
その後ろでダマラスが邪魔で見切れそうになって慌てて顔を出す殿下がマヌケすぎで可笑しい。

一方、地上ではシールドンを一撃で倒したゴーカイガレオンバスターの凄まじい威力に
ルカが「すごぉい・・・」と嘆息し、アイムは「驚きました・・・」と感激してハカセを見つめます。
ハカセは「えっ・・・」と少し慌てて照れます。
そのハカセを「やったじゃないか!」とジョーが肘で小突いて祝福しますが、
ハカセはこれほどの大きな成果が自分の手柄とは思っていません。
「みんなの力が一つになって、より大きな力になっただけだよ!」と思ったままを言います。
みんなの力とは、マーベラス一味の全員の力、そして今回はオーレンジャーの大いなる力、
更には覚醒したゴーカイジャーの大いなる力も合わせて一つにした上での力です。

それを聞いて、マーベラスは「フッ!お前は思った通り、秀才だな!」とハカセの肩を思いっきり叩いて褒めます。
ハカセは痛がりながら「そこは天才じゃないんだ・・・ウソでも天才でいいじゃん!」と
口の悪いマーベラスにブツブツ文句を言いますが、
決して天才ではない、才能が無くて不安を抱きながら努力を重ねるハカセだからこそ、
仲間の力を合わせて限界を超えた大きな力を生みだすことが出来たのだと、マーベラスは褒めているのです。
いや、単に口が悪いだけかもしれませんが。

文句を言うハカセにマーベラスは「ほら!」と使い終わったゴーカイガレオンバスターを渡し、
ハカセは「なんだよ!持ってよ!」と抗議しますがマーベラスは聞く耳持たず、
ジョーも「さ・・・帰るか!」と冷たく流し、ルカとアイムは面白がるという、
いつものハカセの弄られキャラ全開で、和やかなムードで一件落着かと思われましたが、
やはりいつもの巨大化光線でシールドンが復活巨大化します。

巨大化したものの、さっき粉砕された自慢の盾はもう無く
「盾が無くなったのに、でっかい顔しちゃって!」とルカにバカにされる始末。
やはり、あの盾はもともとのシールドンの身体の一部ではなく、
インサーンの改造手術で後付けされたもののようです。
やはりインサーンの巨大化光線では改造によってつけられたパーツは復活しないのです。

「面倒だがいくぞ!」とマーベラスがゴーカイガレオンを呼び(というか真上に停泊中)、
ゴーカイオーに合体、そしてさっそく風雷丸が「ニンニンニン・・・」と飛んできてハリケンゴーカイオーとなって
シュリケンチェーンでシールドンを攻撃します。
ところが盾の無くなったシールドンはこれを真剣白刃取りでキャッチします。
そして「貴様らのようなポンコツ!我が盾が無くとも退けてくれるわ!」と、
雷撃で攻撃してきてハリケンゴーカイオーはピンチとなります。

ハカセは「しぶといなコイツ!」と呆れます。
よく考えれば、このシールドンという怪人、鉄壁の盾を持っていただけでなく攻撃力もなかなかであり、
しかも結構、正々堂々の勝負を好む武人タイプの怪人でした。
さすがにダマラスの隠し球だけはあります。
しかしシールドンはシュリケンチェーンを掴んだまま「今気付いたぞ!攻撃こそ最大の防御なり!」とか言ってて、
今さらこんなこと言ってて、やっぱりちょっとアホです。

すると、なんとここで豪獣ドリルが乱入してきてシールドンを豪獣キャノンで砲撃して怯ませて、
シュリケンチェーンを解放してハリケンゴーカイオーを自由にします。
更に豪獣ドリルは豪獣神に変形し、シールドンに立ち向かいます。
「何やってるんだ鎧!?」とジョーに叱られた鎧は豪獣神のコクピットで変身した姿で
「すいません!我慢出来なくて・・・来ちゃいました!」と敬礼し、
そのまま動かせる左手だけで左の操舵輪だけを回して、豪獣神の左手を動かしてシールドンを攻撃します。

鎧は1人だけ戦えないのがよほど辛かったらしくて、安静にしていないといけないのに無茶をしてしまったのでした。
これにはハリケンゴーカイオーのコクピットの5人もさすがに呆れ果て、
「まったく・・・」とルカは途方に暮れて、アイムも「怪我が悪化しても知りませんよ!」と怒っています。
さっさと終わらせようと思ったハカセは「さぁ、トドメいくよ!」とハリケンジャーのレンジャーキーを取出し、
ゴーカイ風雷アタックの例の風雷丸の分身攻撃でシールドンを撃破、
シールドンは「やっぱり!盾が無ければぁ〜!!」とマヌケな断末魔の叫びを残して爆散したのでした。

さて、しかしこの巨大戦の前のゴーカイガレオンバスター登場のシーンには、2つよく分からない点があります。
まず第一は、どうしてハカセの作っていた新武器が
一瞬で船型のゴーカイガレオンバスターに変形したのかという点です。
これはオーレンジャーのレンジャーキーを新武器のゴーカイシリンダーに挿し込んで回した後、
新武器が金色の光に包まれた時に変形したということなのでしょう。
もちろん最終的に海賊船の形になったのは、バンダイと東映のずっと前の販促会議の席上で決定した
玩具デザインに基づいているのであって、いわゆる「大人の事情」によるものです。
ただ、それなら劇中描写でも最初からハカセは海賊船型の大型火器という構想で設計図を書いて作業すればいい。
ところがそうはせずに最後の最後で不思議な光の中で一瞬にして海賊船の形に変形したのですから、
これは何らかの意味が込められた描写なのでしょう。

これはまぁ一言で言ってしまえば、たまたま起こった「奇跡」でしょう。
しかし、何でもアリのご都合主義を「奇跡」という言葉で誤魔化す類の「奇跡」ではなく、
この「ゴーカイジャー」という作品においては一定の法則性に基づいて、
この種の「奇跡」が何度か、いや頻繁に起きています。
ハカセがこうなることを予想していたわけではないことから、これはたまたま起こった偶然の産物ではあり、
一般には起こり得ない現象であることから、これは確かにたまたま起こった「奇跡」なのですが、
類似の前例は無いわけではない。

例えば、光の中で大型火器が出現するという現象は
「199ヒーロー大決戦」映画におけるスーパー戦隊バズーカの出現が同様の現象です。
あれは大量のレンジャーキーが生成した光の空間内で起こった現象で、
スーパー戦隊バズーカは何も無い空間からレンジャーキーの作り上げた光(エネルギー)が原料となって生成され、
使用後はスーパー戦隊バズーカは消えて、元の大量のレンジャーキーに戻りました。

レンジャーキーは本来はモバイレーツやゴーカイシリンダーのような専用の鍵穴に挿すことで
何らかの作用を発揮するものですが、
この時はレンジャーキーが勝手に動き回って勝手にバズーカを生成したのであり、
まさに人知を超えた奇跡的な現象に近い。
つまり現象としての不自然度は今回のゴーカイガレオンバスターよりも更に上であり、
それゆえスーパー戦隊バズーカは1回限りで消滅してしまったのでしょう。
というか、あれと全く同じ条件を整えればスーパー戦隊バズーカの出現を再現することは出来るのでしょうが、
あんなレンジャーキーの不思議空間をどのようにして再現すればいいのか分からないので、
再現性は極めて低く、結局、実質的にはスーパー戦隊バズーカは1回限りの奇跡となっているのです。

ただ、この「ゴーカイジャー」という物語は「奇跡」に近い不思議現象は多々ありながら、
それらは唐突に起きるわけではなく、ちゃんと脈絡のある現象として描写されているのが素晴らしい。
スーパー戦隊バズーカの件ですら、唐突ではなく、ちゃんと原因は想像出来ます。
あれは要するに黒十字王が自分で墓穴を掘ったということなのでしょう。

黒十字王というのは過去に滅んだ悪の首領が怨念によって甦った者であり、
この世の者ではなく、一種の魔物です。
それゆえ過去に死んだ悪の幹部連中を甦らせたり、人知を超えた不思議な術を使うことが出来ます。
その黒十字王が奪った全部のレンジャーキーをその不思議な術で戦士の形に実体化させました。
これはバスコの召喚戦士に見た感じは似ていますが現象は全く異質です。
バスコはちゃんとラッパラッターの鍵穴にレンジャーキーを挿して戦士を実体化させていますが、
黒十字王は鍵穴に挿さずにレンジャーキーそのものをそのまま戦士として実体化させているのです。
このような不自然な現象を可能にしたのは黒十字王の特殊な魔術であり、
この不自然な方法によって強制的に戦士化させられた全てのレンジャーキーは、
この時、異常に励起させられた状態にあったといえます。

そして、この異常な召喚戦士の軍団は不自然な形で実体化したゆえに弱く、
ゴーカイジャーとゴセイジャーに倒されていき、元のレンジャーキーの状態に戻ったのですが、
その戦いの際、ゴセイレッドのアラタが魔術で操られているとはいえ先輩戦士の戦う力と戦うのは心苦しく想い、
「1つ1つの攻撃に想いを込めよう」とゴセイジャーとゴーカイジャー全員に呼びかけており、
結果的に、この異常励起状態のレンジャーキーに
ゴセイジャーとゴーカイジャーの想いが注ぎ込まれることになりました。

それゆえ、異常に励起して自力で動けるようになった全てのレンジャーキーの中の戦士たちの想いと
ゴセイジャー&ゴーカイジャーの想いとが共鳴して、レンジャーキーが勝手に動いて光の空間を作り出して、
そこでレンジャーキー自身のエネルギーを材料として、
全戦士たちの想いを総合したイマジネーションを実体化してスーパー戦隊バズーカを作り出したのでしょう。

また、この光の空間の中でゴレンジャーをはじめ10の戦隊の「大いなる力」が
それぞれの戦隊のレンジャーキーに移動してきており、
この時点でマーベラス達がゲットしていたマジレンジャー以下6つの戦隊の「大いなる力」も合わせて
16戦隊の「大いなる力」もこの特殊な励起状態にあるレンジャーキー空間の中で
作用していたということも忘れてはいけません。

こうした一種、特殊な偶然に偶然が重なった状態の中でスーパー戦隊バズーカは生成されたのでした。
同じように、その後、歴代巨大ロボが総出現した奇跡的現象も、この偶然の特殊状態において生じた現象です。
スーパー戦隊バズーカから元のレンジャーキーの姿に戻った戦士たちのエネルギーと想い、16の「大いなる力」は、
宝箱の中に戻っても異常励起状態がしばらく続いており、
再び巨大戦でゴセイジャーとゴーカイジャーがピンチとなったことに反応して、
日本各地にあるスーパー戦隊の巨大ロボや巨大メカの玩具に込められた持ち主の想いに働きかけて、
それらの玩具を召喚して、玩具の持ち主の、それが巨大ロボそのものだと思うイマジネーションと共鳴して
増幅させて、それらの玩具を本物の巨大ロボに変形巨大化させたのです。

この場合の巨大ロボ生成時の個々のロボに対応した玩具の持ち主の想いは、
スーパー戦隊バズーカ生成時のゴセイジャー&ゴーカイジャーの想いに比べればかなり小さなものでしたが、
励起状態のレンジャーキーのエネルギーと一体化して、
巨大ロボ玩具という「依り代」をベースとすることによって生成を可能としたといえます。
一方、スーパー戦隊バズーカは何も「依り代」の無い状態で、何も無い空間から生成されたわけで、
これはゴセイジャー&ゴーカイジャーの強い想いが
励起状態のレンジャーキーのエネルギーと一体化することによってこそ生成可能だったといえます。

いずれにせよ、このスーパー戦隊バズーカの生成も、歴代巨大ロボ総出現も、
黒十字王の魔力によってレンジャーキーが異常に励起させられた一時的な特殊状態において
可能になった現象であって、同じ状況を再び作り上げない限り再現されることはない、
1回限りの奇跡であったのです。

ところが、スーパー戦隊バズーカのようにレンジャーキーのエネルギーを実体化して
何も無い空間からメカニックな物質やエネルギー体などが生成される現象というのは、
ゴーカイオーのコクピットに、ゴーカイジャーの想いと共鳴した「大いなる力」の込められたレンジャーキーを
挿した時に空中元素固定機能によっていつも生じている現象と同じです。
つまり、スーパー戦隊バズーカの生成と、例えばマジドラゴンの生成はほぼ同質の現象ということです。

ただ1つ大きな違いは、
スーパー戦隊バズーカ生成はレンジャーキーを鍵穴に挿さないで起きる現象であり再現性が無く、
一方、マジドラゴン生成はレンジャーキーを鍵穴に挿して起きる現象であって再現性が高いという点です。
そうすると、ゴーカイオーやモバイレーツやゴーカイシリンダーというような
レンジャーキーに対応した鍵穴のついた機器というものは、
レンジャーキーに込められたエネルギーを何度も再現して安定的に使用して、
何も無い空間に物質を生成する奇跡的な現象を繰り返し起こすための機器ということになります。

いや、レンジャーキーそのものがそうしたシステムに対応した仕様になっているのだから、
レンジャーキーシステムというものがそもそも
スーパー戦隊のパワーを使って安定的に物質を生成するためのシステムなのだといえるでしょう。

すると、ここで問題は、そのレンジャーキーシステムを構成するアイテム自体はどうやって生成されたのかです。
まずレンジャーキーはレジェンド大戦の最後にスーパー戦隊の戦士たちが自分達の戦う力を
「大いなる力」以外は全て放出して、
それが宇宙に散らばった際に各戦士の姿を模した人形へと姿を変えたものでしょう。

何故「大いなる力」は放出しなかったのかというと、
あのレジェンド大戦の最終局面の直前、
巨大戦で全戦隊の「大いなる力」は一旦消尽されてしまっていたからなのでしょう。
レジェンド大戦後、各戦隊は巨大戦力を再建して「大いなる力」は復活させたが、
「戦う力」を失った戦士たちは「大いなる力」を使いこなすことは出来ず、
全ての「大いなる力」を元素に還元して地球上の空間に隠し、
その実体化のカギをエネルギー体として体内に保管しておくことにしたのでしょう。

一方、宇宙に飛び散った「戦う力」が
そこに込められたそれぞれの戦士の想い(イマジネーション)に対応して
各戦士の姿を模した人形になったことは理解出来ますが、
どうしてカギの形になったのかは謎です。
そこには各戦士の意思とは別に、
レジェンド大戦終結時の時点からレンジャーキーシステムを構想していた第三者の想い(イマジネーション)が
介在していると見るしかないでしょう。
レジェンド大戦の模様を地球上空から見ていたアカレッドがその第三者と関係が深いようにも思えます。
その時点でレンジャーキーシステムに関する構想がアカレッドにあったとするなら、
アカレッドはザンギャックが地球に再来することを予期していたとも言えます。

まぁこのあたりはまだよく分からないのですが、
とにかくレンジャーキーは強い戦士のパワーとイマジネーションさえあれば生成することは出来るようです。
実際、鎧はゴーオンウイングスキーやゴールドアンカーキーを自分で生成しています。
あれは既存のレンジャーキーを材料にして作っていますが、
既存のレンジャーキーの中の戦士の戦う力を使って
鎧自身のイマジネーションで新たなレンジャーキーを生成しているので、
既存のレンジャーキーの生成と同質の現象といえます。

一方、三条笑里もアバレピンクのレンジャーキーを自作していますが、
あれは戦士の戦う力をレンジャーキーの形に生成したのではなく、
手作業の工作で作ったレンジャーキーの玩具を「依り代」にして笑里のイマジネーションを込めて、
レンジャーキーのように使えるように変質させたアイテムです。
だから、あのアバレピンクのレンジャーキーは本物のレンジャーキーではなくて、
「199ヒーロー大決戦」映画に出てきた、玩具が持ち主のイマジネーションで変質した巨大ロボと
同類アイテムといえます。

ただアバレピンクのレンジャーキーに戦う力が無いのは、
そこにレンジャーキーの「戦う力」が介在しておらず、
笑里のイマジネーション(極めて強いが)が込められているだけだからです。
それに比べ、「199ヒーロー大決戦」の巨大ロボにはレンジャーキーの「戦う力」が介在しているので
戦うことが出来たわけです。

しかし、笑里の例を見る限り、とにかく何らかの「依り代」的なアイテムにイマジネーションを込めれば
レンジャーキーシステムに対応して使うことが出来るアイテムを生成出来るわけで、
戦闘で使うわけではないアイテムならば、スーパー戦隊の戦士の戦う力は介在させなくても、
強いイマジネーションと適切な依り代の物体さえあれば作れるわけです。
となると、モバイレーツやゴーカイセルラーもレンジャーキーのパワーが無くても、
一般の携帯電話を依り代にして強いイマジネーションを込めれば作ることは可能です。
もちろん普通の人間にはそんなことは不可能ですが、
笑里でもそのかなり簡易的なことは可能だったわけですから、
例えば強い意思を持った元レジェンド戦士たちが思念を合わせれば、
たとえ「戦う力」を失った状態であったとしても、それは不可能なことではないでしょう。

いや、もっと適役が1人います。
歴代スーパー戦隊の赤の戦士の意思が集まった存在であるアカレッドならば、
1人でも携帯電話を依り代にしてモバイレーツを生成することは可能でしょう。
そして、モバイレーツを作ることが可能ならば、一般の自動車のキー挿し込み部品を依り代にして、
アカレッドのイマジネーションを込めて、レンジャーキーのパワーを別の依り代に直接送り込む装置としての
ゴーカイシリンダーを作ることも可能だったはずです。

そう考えると、アカレッドの航海の実態が見えてきます。
アカレッドはレジェンド大戦の後、普通の赤い帆船型の宇宙戦艦に乗って、
宇宙に散らばったレンジャーキーを集める旅に出て、
最初は自分のイマジネーションだけでモバイレーツとゴーカイシリンダーを生成し、
その後、ゴーカイシリンダーを付けたアイテムに向けて、
手に入れたレンジャーキーの戦う力を注ぎこみながら
自分のイマジネーションによって依り代の物体の形状や性能を変化させて、
レンジャーキーを使った戦いに使えるようなアイテムを作り上げていったのでしょう。

「199ヒーロー大決戦」映画の巨大ロボ群の出現が
異常励起状態の全レンジャーキーのエネルギーを要したことを考えると、
1つの結晶化状態のレンジャーキーをゴーカイシリンダーに挿したとしても、
依り代をベースに強力な戦闘用アイテムを生成することは容易ではないでしょうから、
ゴーカイシリンダーの仕様を調節して、
エネルギーを徐々に依り代のアイテムに蓄積していく地道な作業をすることになったのでしょう。
そうして少しずつ依り代に蓄積されたレンジャーキーの戦う力が目標値に達したところで
アカレッドはイマジネーションで武器やメカを作っていったのでしょう。

それを地道に繰り返し、
例えばゴーカイシリンダーを取り付けた剣をゴーカイサーベルとし、
ゴーカイシリンダーを付けた銃をゴーカイガンとしていったのでしょう。
例えばゴーカイサーベルは依り代となった剣はよくジョーが練習用に使っている
シンプルな形の剣であったのでしょうが、
それがアカレッドのイマジネーションで変形してああいう蛮刀型になったのでしょう。

また、ゴーカイサーベルやゴーカイガンはそのままゴーカイシリンダーが付いたまま生成されたようですが、
例えばゴーカイオーのコクピット部などは、
あれもレンジャーキーを挿し込むようになっていますから
ゴーカイシリンダーを付けて普通の操縦台を依り代にして新たに生成したものでしょうが、
あれの場合は新たに専用の鍵穴まで生成して、
生成時に使用したゴーカイシリンダーは取り外して完成させているようです。

そのようにして最終的にはアカレッドは自分の乗っている赤い帆船型の宇宙戦艦自体に
ゴーカイシリンダーを使ってレンジャーキーの戦う力を送り込み続けて、
自分のイマジネーションで新たに変質させてゴーカイガレオンを生成させ、
そこにゴーカイオーへの合体変形機能、更には「大いなる力」への対応機能まで持たせたのでしょう。

そのためには大量のレンジャーキーが必要なので、
アカレッドはレンジャーキーを探して宇宙を旅せねばならず、
その旅をしながら大小のアイテムを生成していったのだと思われます。

ただ、レンジャーキーの用途はもちろんそれだけではなく、
ゴーカイジャーの変身アイテムとしての用途もあります。
しかしアカレッドは変身の必要は無いし、
赤き海賊団の回想シーンではアカレッドはおろかバスコやマーベラスが
レンジャーキーをゴーカイジャーや他の戦士に変身するアイテムとして使用した描写は無い。
このあたりもよく分からないところではありますが、
とにかくアカレッドにとってはレンジャーキーは変身アイテムとしてはあまり重要ではなく、
アイテム生成のエネルギー源としてはアイテムが生成されてしまえばそんなに重要ではなくなるはずです。

それでもアカレッドはレンジャーキーを命に代えても守ろうとし、
マーベラスにレンジャーキーを託して「宇宙最大のお宝」を見つけるよう言い残しました。
だからレンジャーキーが「宇宙最大のお宝」を見つけるために必要な「大いなる力」を受け取るために
必要なアイテムだということはアカレッドは分かっていたようです。
いや、それだけでなく、レンジャーキーにはまだまだ重要な秘密が隠されているような気もしますが。

とにかく、今まで「ゴーカイジャー」の物語の中で描かれた
様々なレンジャーキー絡みの不思議な現象を分析した上で、
ゴーカイジャーの使う武器類がどのように作られてきたのかを考察すると、
依り代となる普通の武器にゴーカイシリンダーを取り付けて、
ゴーカイシリンダーに挿したレンジャーキーのエネルギーを送り込むと、
依り代の武器はレンジャーキーに対応した新たな武器へと姿を変えて新たに生成されるようなのです。

もちろんその新たに生成される武器は依り代の武器の性能をベースにして強化されるものですから、
依り代次第で完成品の性能は大きく変わってきます。
例えば剣にゴーカイシリンダーを付けてレンジャーキーのエネルギーを送り込んで
銃になるようにイマジネーションしても決して銃にはなりません。

そして、送り込むレンジャーキーのエネルギーは性能面での強化に反映はされますが、
新たに生成される武器の形態はあくまで依り代の武器の形態をベースとし、
その依り代に込められた持ち主のイマジネーションを反映した形態に変形していくようで、
レンジャーキーの種類は形態変化には影響は及ぼさないようです。
逆に依り代を用いずに何も無い空間にアイテムを出現させる、
ゴーカイオーを使った「大いなる力」の発動の場合は、
そのレンジャーキーの種類に沿った形態のものが出現します。

そのような仕組みを前提に、今回のゴーカイガレオンバスターの生成を考えると、
ハカセの作っていた二門式機関砲型の新武器を依り代として、
そこに取り付けられた5つのゴーカイシリンダーから注ぎ込まれた「大いなる力」も含む
オーレンジャーのレンジャーキーのエネルギーが、
新たにゴーカイガレオンバスターを生成したと考えられます。

ハカセをはじめゴーカイジャーが
オーレンジャーの「大いなる力」も含むレンジャーキーの全ての力を引き出すことが出来るようになっていたため、
5つのレンジャーキーを同時に挿しただけで新たな武器の生成が一気に可能になったのでしょう。
また、「大いなる力」を引き出し可能なレンジャーキーを5つ同時に挿すことによって
「大いなる力」の空中元素固定機能が働きますから、
大幅な性能アップと共に大幅な形態変化も引き起こしたのだと思われます。

もちろんゴーカイガレオンバスターの威力が凄まじいものとなったのは、
依り代となったハカセの新武器自体が既に歴代戦隊武器でも最強クラスの威力の武器であったことが前提で、
そこに更にオーレンジャーの「超力」のエネルギー増幅作用、
更にプラスアルファでイマジネーションによる強化も作用したので、途轍もない威力になったのでしょう。

ただ、これは大前提として、
ゴーカイシリンダーの仕様が普段のゴーカイガンに付けられている時の状態とは違っている必要があります。
いつものゴーカイシリンダーはレンジャーキーのエネルギーを
単純な爆発力として銃身内に送り込むようになっており、
かつてアカレッドが武器生成時に使っていた頃からおそらく武器使用を前提に仕様変更がされているのです。

だから、そのままではこのような現象は起きなかった。
ハカセが試行錯誤を繰り返してゴーカイシリンダーを弄りまくっていたせいで、
偶然、アカレッドが武器生成に使っていた頃と同じような状態に調整されていたゴーカイシリンダーに、
ハカセがエネルギー増幅を目指して直感でオーレンジャーのレンジャーキーを挿し込んだ結果、
起こった奇跡であったのです。
そうして新武器はゴーカイガアレオンバスターへと姿を変え、それは専用の鍵穴を備えた形となったので、
5つのゴーカイシリンダーも不要になり、取り外して船室に置いてきたのでした。

ただ、それでも分からないのが、
どうして生成されたゴーカイガレオンバスターは海賊船、しかもゴーカイガレオンの形になったのかということです。
この依り代となった新武器を作ったのはハカセですから、
この依り代に込められていたイマジネーションはハカセのイマジネーションです。
そのイマジネーションが反映されて元素固定機能で変形した形態がゴーカイガレオンであるということは、
ハカセが新武器に込めていた想いはゴーカイガレオンだったということになります。
それはつまり、ハカセが海賊船やゴーカイガレオンに並々ならぬ思い入れを持っているということでしょう。

ここでハカセが当初はどうやら非戦闘要員として(おそらく食事係かメカニック)として
海賊船に乗ったようであること、
またハカセは賞金額が当初はタダ同然であったことなどを考えると、
ハカセの場合はお尋ね者が半ばやむなく海賊団に入ったという感じではなく、
一般市民が志願して海賊船に乗り込むことを希望してきたように思えます。
そして当初あれほど戦いを嫌がっていたところを見ると「海賊」を志願していたのではなく、
あくまで「海賊船の乗員」を志願していたように思えます。

どうしてそんなものを一般人が志願したのか?
それは単純に「憧れ」であったのでしょう。
「仲間と力を合わせて宇宙を自由に駆け回る航海」への憧れが純粋にあったのだと思います。
臆病者のハカセは戦うつもりなど無く、ただ単に信頼できる仲間と自由に旅がしたかっただけで、
そのためには海賊船に乗るのが一番だったのでしょう。
海賊船に乗っても海賊にならなければ賞金首にもならないから大丈夫だと思っていたのでしょう。

ところが自由というのはザンギャック支配下の宇宙では命がけで掴み取るものであり、
ハカセは結局戦いに巻き込まれていき、困り果てますが、
なしくずしで戦う中で、臆病者で自信の無いハカセだからこそ、
真に仲間と力を合わせて戦うことの価値を知るようになったのです。

そして地球に来て一時期、その価値を忘れかけていましたが、
今回の新武器開発によって、ハカセは再び「仲間の力を一つに合わせる」という海賊の旅の真の価値を確認した。
そしてそれは仲間全員の共通の想いでもあり、その仲間の想いがこの新武器には込められている。
だから、この新武器はハカセにとって、
「仲間の力を一つに合わせて宇宙の大海原を行く海賊船の旅」を象徴するものなのであり、
仲間と一緒に乗る海賊船ゴーカイガレオンそのものなのです。
そうしたハカセの想いが実体化し、
新武器をゴーカイガレオンの形をしたゴーカイガレオンバスターに変形させたのです。

さて、ではもう1つの謎ですが、
それはどうしてゴーカイガレオンバスターに挿し込むために取り出した
ゴーカイジャーのレンジャーキーが光ったのかです。
あれはつまり、ゴーカイジャーの大いなる力が引き出されたということであり、
ゴーカイガレオンバスターが宇宙一番の強度を誇るシールドンの盾を突き破る最後の決め手となったのは、
おそらくこのゴーカイジャーの大いなる力が引き出されたからであろうと思われるのですが、
どうして急にゴーカイジャーの大いなる力が引き出されたのか?

他の戦隊の「大いなる力」の場合は、
それを使うためのカギとなる因子はレジェンド戦士の体内にエネルギー体として保管してあるものが、
レジェンド戦士がゴーカイジャーを当該戦隊の「大いなる力」を使いこなせると認めた場合、
その因子のエネルギー体が当該戦隊のレンジャーキーに自動移動してきます。

しかしゴーカイジャーのレンジャーキーの場合、
もともと戦士の体内にそんな因子を移しておく意味も無いので
最初からレンジャーキーの中に「大いなる力」を使うための因子も入っています。
単に今まではゴーカイジャー自身がゴーカイジャーの「大いなる力」を引き出すことが出来ていなかったので、
他の「大いなる力」をゲットした戦隊のレンジャーキーのように、レンジャーキーが光ることがなかったのです。

つまり、今回、ゴーカイジャーはゴーカイジャーの大いなる力を
ようやく引き出すことが出来るようになったということです。
もちろんまだ全部引き出せてはいないのだと思いますが、
ようやく「大いなる力」に手が届くようになったということです。

では、何故ゴーカイジャーの大いなる力が引き出せるようになったのか?
他の戦隊の場合は、ゴーカイジャーの誰かの持つテーマと、当該戦隊の持つテーマとが一致した場合、
ゴーカイジャーがその戦隊のテーマと共に「大いなる力」を引き継いて、
「大いなる力」を引き出すことが出来ると認められます。
これを今回のケースにあてはめると、
ハカセの持つテーマとゴーカイジャーという戦隊の持つテーマとが一致したので、
ハカセを含むマーベラス一味がゴーカイジャーのテーマと共にその「大いなる力」を引き継いで、
引き出すことが出来るようになったのだといえます。

では今回のハカセのテーマとは何かというと、
「海賊として1人の力に自信が持てないからこそ、仲間の力を一つに合わせて強力な武器を作って
強敵を打ち破ることが出来た」ということです。
もっと端的に言えば「仲間の力を合わせること」です。

そして、今回、星野吾郎はゴーカイジャーに「仲間の力を合わせるといい」と助言して、
それが「スーパー戦隊の力を合わせる」ということだったのだと気付いたハカセが
ゴーカイジャーの仲間の力を合わせた上に更にオーレンジャーの力を合わせて
強力な武器ゴーカイガレオンバスターを完成させて強敵を倒しました。

しかし、よく考えたら、普段の「大いなる力」の発動も、
ゴーカイジャーの力に他のスーパー戦隊の力を合わせている行為であり、
今回の経験でハカセは、ゴーカイジャーはスーパー戦隊の力を合わせることが
テーマとなっているのではないかと気付いたのでした。
そして、今回の自分の経験に照らして、
「地球を守る正義の戦隊としては単独では自信を持てないゴーカイジャーだからこそ、
スーパー戦隊の力を一つに合わせて強大な力を得て、強敵ザンギャックを打ち破ることが出来る」
のではないかと思ったのでした。

ここに「力を一つに合わせる」という点において、
マーベラス一味におけるハカセと、スーパー戦隊におけるゴーカイジャーのテーマは一致し、
ハカセはゴーカイジャーのテーマと共に「大いなる力」を受け継いで引き出すことが出来るようになり、
結果的にマーベラス一味はゴーカイジャーの大いなる力を引き出すことが出来るようになったのです。

そもそも、どうしてレジェンド戦士たちはレンジャーキーや「大いなる力」をゴーカイジャーに託すのでしょうか?
まぁ全員がそういうふうに意見が一致しているわけでもないのでしょうが、
ヒュウガやゴセイジャーが言っていたように
「スーパー戦隊の力は一か所に集めておいた方がいいように思う」と考えているようです。
これは確信があるわけではなく、「多分そう思う」という程度の認識です。
しかし何の根拠も無いのに、どうして「たぶんそう思う」ことが出来るのか?
しかも複数戦隊がそういう根拠の無い認識が一致している。
それはおそらく彼らは何となく「力を一つに合わせた方が強い」ということを経験上、知っているからです。
それはスーパー戦隊として仲間の力を一つにして戦ってきた経験に裏打ちされているのでしょう。

しかし、過去の経験ということでいえば、
彼らはレジェンド大戦で全てのスーパー戦隊の力を一つに合わせてザンギャックの侵略軍を撃退しています。
レンジャーキーが地球に戻ってきた今、
ハリケンジャーがやったように全員がレンジャーキーを使って変身して力を合わせて戦えば、
再びザンギャックを撃退出来るのではないかとも思えます。
しかし、レジェンド戦隊の多くはそのようにはしようとはせず、
ゴーカイジャーにレンジャーキーや「大いなる力」を預けています。

それはつまり、レジェンド大戦の時の自分達のやり方ではダメだと認識しているということを意味します。
つまりあれは本当の意味で「力を一つに合わせる」ということではなかったということです。
あのやり方ではザンギャックの侵略軍を一旦退けるだけであり、根本的な解決にならない上に、
あの方法の場合、再びレンジャーキーは宇宙に散らばってしまうのでしょう。
だから今回は違う方法で、もっと強力な方法で、根本的な解決を図ろうとしているのではないかと思えます。
それが、まずゴーカイジャーがスーパー戦隊の力を使いこなせることを確認した上で、
ゴーカイジャーにスーパー戦隊の力を集中させて、
真の意味で「力を一つに合わせる」ということなのではないかと思います。

いわば、レジェンド大戦の時の34戦隊の力を空中に発射してそれをまとめて炸裂させたあの技は
ゴーカイスクランブルのようなもので、
ゴーカイジャーを使って真の意味で「力を一つに合わせる」というのは、
今回のゴーカイガレオンバスターのような、
スーパー戦隊の力を一つに集束させて増幅させて一気に撃ち出すような、何らかの方法なのかもしれません。

さて今回のエピローグですが、
シールドンを倒した戦いの翌日、マーベラス達6人が例の少年のいるサッカーグラウンドに
やって来ているシーンです。
週末の試合を間近に控えて練習を終えた後のグラウンドの脇でハカセは例の少年と会い、話をしました。
一昨日の夕方のハカセとの練習で仲間と一緒に頑張ることの意味を知った少年が、
心機一転頑張ってレギュラーの座を掴んだのではないかとハカセは思って、確認しに来たのでした。

何故ハカセがそう思ったのかというと、
自分が少年の言葉で仲間と力を合わせる価値を想い出して、
それでゴーカイガレオンバスターが出来上がってシールドンを倒すことが出来て、
そのことで「仲間の力があるから弱音を吐かなくなる」ということを証明出来たので、
何となくそれによって少年の方も上手くいってるんじゃないかと思ったのです。
それで少年に昨日、今日とどうだったかと聞いたら、
残念ながらやはりレギュラーは取れていないとのことでした。

「そっか・・・レギュラーにはなれなかったんだ・・・」と、ハカセは少し残念そうに言います。
しかし少年は「はい・・・でも、ベンチには入れたから、次こそは必ずレギュラー取れるように頑張ります!」と
力強くハカセに応えました。
もう俯いて「すいません」とは言うことはなく、前向きな明るく力強い表情です。
レギュラーにはなれなかったがベンチには入れたといいますから、
昨日や今日は心機一転して仲間とも積極的に力を合わせてのプレーを練習で心掛けたのでしょう。
それによって周囲も驚くような意外に良いプレーもアピール出来たに違いありません。
これならきっと大丈夫、遠くないうちに試合に出て仲間と一緒にボールを追う日が来るだろうと確信して、
ハカセは笑顔で頷きます。

そうして少年と別れて、ハカセは土手の上で待ってくれていた5人のところへ戻ってきます。
5人はハカセから少年との出来事を聞いて、多少興味が湧いてくっついてきたようです。
「・・・済んだか?」と問うジョーに向かって
ハカセは「うん・・・大丈夫!彼はきっとレギュラー取れるよ!」と胸を張って応えます。
結局その少年は今回は上手くいかなかったようだと知ったルカは、
それにしてはハカセが落ち込んでないのを少し意外に思い、
「あら、ずいぶんと自信満々じゃない?」とちょっとからかうように言います。

するとハカセは「僕は自信なんて無いよ!でも、そんな僕だって掴みたいものはこの手で掴めたんだ!」と
笑顔で応えながら、両手の掌を見つめてギュッと握りしめます。
そしてグラウンドの方に振り返って、「彼だって必ず掴めるよ!」と言って、
河川敷の道を元気に駆けて去って行く少年の後ろ姿を微笑んで見つめるのでした。

自分1人での力に限界を感じて自信を持てないハカセでも、いや、そういうハカセだからこそ、
仲間と力を一つにして戦うことの素晴らしさを知り、海賊団の仲間の役に立つ一員になれた。
だから、自分1人の力の限界を知ったあの少年ならば、
きっと仲間と力を合わせてチームに貢献できる、良いサッカー選手になるに違いないと
ハカセは確信しているのでした。
そうしたハカセの気持ちはあの戦いを経た今はもう仲間たちにもよく理解出来ます。
皆、笑顔でハカセと走り去っていく少年を眺めるのでした。

そんな中、マーベラスは「ま・・・どーでもいいが・・・
さっさとゴーカイシリンダー直して、俺たちの武器を元に戻せ!」とハカセの頭をポンと叩きます。
結局、ゴーカイシリンダーは全部無事に残りましたが、さんざん仕様を弄ってしまったので、
だいぶ調整し直さないと元通りにゴーカイガンやゴーカイサーベルには付けられません。
早く元に戻してもらわないとマーベラス達は困ってしまうのですが、
昨日はハカセは徹夜疲れでぐっすり寝てしまい、まだ復旧作業には手をつけていません。

ハカセは「ああ〜、そうだった!すっかり忘れてた!」と慌ててガレオンに戻ろうとして駆け出します。
そして振り向いて皆に向かって「すぐ直すから!今日もお弁当、買ってきてねぇ!」と明るく手を振り、
また走って去っていきます。
しかし、それを聞いてマーベラスが血相を変えて、「待てぇ!!」と鬼の表情で駆け出して
全力疾走でハカセを追います。
今日もコンビニ弁当ならば、これで4日連続コンビニ弁当です。
食いしん坊のマーベラスとしてはもうそれは我慢の限界を超えていたのでした。
ルカも同じ気持ちのようで「ハカセ!ごはん作ってからにしてよぉ!」と哀願しながら
走ってマーベラスとハカセを追い駆けます。
それを慌てて残り3人が駆け足で追っていくのでした。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
にほんブログ村 にほんブログ村 テレビブログ スーパー戦隊へ
にほんブログ村
posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 20:52 | Comment(2) | 第32話「力を一つに」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月22日

第32話「力を一つに」感想その4

たまたま知り合ったサッカー少年の「仲間と一緒に頑張れば実力よりもっと力が出せる」
「仲間の力が一つになればより大きな力になる」という言葉で、
ハカセは自分が初めて海賊として仲間のために戦った時のことを想い出しました。
あの時、ハカセのことを共に戦う仲間と認めて武器を貸してくれたマーベラスや、
懸命に励ましてくれたジョー達の熱い気持ちを受け止めて、
1人だったけど仲間が一緒に戦ってくれていると思うことによって、
ハカセはそれまでのように「自分はどうせ弱いからダメだ」などと弱音を吐かずに戦うことが出来たのです。

その戦いの後も、相変わらずハカセは臆病者で、実際弱かった。
自分が弱いということはハカセも自覚していた。
一度たまたま戦って勝ったからといって、急に自分が強くなったなどとは思わなかった。
でも、自分に自信が無く、自分が弱いと知っているハカセだからこそ、
あの初陣の時、自分が実力を超える力を発揮出来たことを理解出来たのです。
そしてそれは仲間の力と一緒に戦ったからだということもハカセは気付いていました。
だからハカセは「仲間と一緒に戦うなら、こんな自分でも戦うことは出来る」と思うようになり、
その後は皆と一緒に戦いにも参加するようになったのです。

そして、もともと素人のハカセは剣はやったこともなく(もちろん稽古はするようになったが)、
まだ銃の方が得意であり、初陣でも二丁拳銃が意外に自分にハマったという理由もあり、
ハカセはよく仲間に銃をもう一丁借りて二丁拳銃で戦うようになりましたが、
ハカセが二丁拳銃を好んだ理由はそうした戦闘スタイルとしての相性の問題だけではありませんでした。
仲間の武器を借りて戦う方が、「仲間と一緒に頑張っている」「仲間と力を一つに合わせている」と
強く実感することが出来て、ハカセはそうすることによって
「弱い自分でも実力を超えた力を出すことが出来る」と思うことが出来たのです。

そうして地球にやって来て、ハカセはレジェンド戦士の小津魁や漢堂ジャン達との出会いを通じて、
自分の中の勇気を自覚し、向上心を自覚して、
そして仲間たちが日々、黙々と1人で自分を鍛えていることを知り、
ハカセも1人で黙々と自分を鍛錬していくようになりました。
それは自らを鍛えようとする者の当たり前の行為であり、非常に良いことなのですが、
ハカセのようなもともと自分の弱さに自覚的な人間の場合、
1人で努力することに一抹の罪悪感を感じてしまいがちになります。
「自分は弱さを恥じているから隠れて努力しようとしている」と思ってしまいがちになるのです。
特にハカセの場合、心の奥底に「仲間と一緒だから自分は強くなれる」という意識がもともとありますから、
1人で頑張る時、どうしても心の奥底に不安が生じる。

それでもハカセは1人でもなんとか頑張ってきたのですが、
今回、バスコに敗北して、その上、武器開発も難航する中で、ハカセは一気に不安になってしまい、
自分は仲間に弱さを見せたくないから1人でこもって武器を作っている弱い人間だと思うようになり、
その弱さを見せたくなくて余計に殻に閉じこもって仲間に心を開こうとしない悪循環に陥ってしまっていたのでした。

しかし少年の言葉によって初陣の時の気持ちを想い出すことによって、
ハカセは今回の自分の行動は間違っていたことを知った・・・のではなく、間違っていなかったことを知ったのです。
とことん1人で頑張って悪循環に陥っていって、一旦行き詰ることこそが
今回、ハカセにとって必要なことだったのです。
そうすることによって、1人の力の限界を知ることが出来る。
1人の力の限界を知った時こそが、仲間の力を一つに合わせた力の大きさを心から実感出来るのです。

もともとハカセという人間は自分の限界をやたら低く設定していた弱い人間でした。
普通に強いマーベラス一味のメンバーの中にそういうハカセのような弱い人間が混じっていたことによって、
マーベラス一味は仲間の力を合わせて戦うことが出来るようになったのです。

強い人間というのは自分に限界など設けない。何処までも強くなれると思うことが出来る。
だから1人の力の限界に気付きにくい。
一方でハカセのような弱く自信の無い人間はすぐに限界を感じるので、1人の力の限界に気付きやすい。
そういう人間は仲間の力を合わせることの重要さに気付きやすい。
そういうハカセのような弱い人間がメンバーに居たことによって
マーベラス一味は武器交換をして仲間の力を合わせて戦うようになり、
それまでの限界を超えた強さを手に入れたのです。

しかし、それはまだ低いレベルの限界を超えたに過ぎない。
もっと高いレベルの限界を超えるためには、限界をもっと高く設けなくてはいけません。
そのために全員が「1人の力」のレベルアップをしなければいけなかった。
だから、海賊風の個人主義的な「1人の努力」は無意味などではなく、むしろ必須なのです。
1人の力のレベルを上げて、そして高いところでその限界を思い知るためには1人の努力はsなければならない。

特にハカセはもともと極めて低かった「1人の力」の限界ラインを引き上げるためにレベルアップが必要でした。
それでここまで1人でコツコツ頑張ってきて、
そうしてメンバーの中で一番低いハカセの限界ラインは引き上げられてきて、
今回、かなり高いレベルのところで遂にハカセは行き詰って「1人の力」の限界を再び思い知ったのです。しかし、この限界ラインはかつての初陣の時とは比べものにならないほど高いレベルにあります。
そして、その以前より飛躍的に高くなった「1人の力」の限界を突破するためにハカセが掴もうとする
「仲間の力を一つに合わせた力」もまた、以前の初陣の時とは比較にならないほどの大きな力を
ハカセ自身に、そしてマーベラス一味にもたらすことになります。

ハカセという、弱くて自信の無い人間がマーベラス一味の中に存在する意義というのは、
そういうことであったのです。
そのことにハカセは気付いたのでした。

しかし、その今回の限界を突破するためにはまず大前提として、
ハカセが仲間に力を貸してもらわないといけません。
それも今回の場合、初陣の時のようにちょっとゴーカイガンを借りるとかいうような簡単なことではありません。
皆の武器を預かってゴーカイシリンダーを外して作業に使わねばならないのです。
しかも作業の中でそのゴーカイシリンダーを壊してしまう可能性もあります。

そんな大きなリスクを承知で仲間が自分に武器を貸してくれるためには、自分がよほど信頼されている必要があるが、
ハカセは自分が仲間にそれほどの信頼をされているとは思えませんでした。
武器作りの実績は無いし、さっき大失敗を仲間に見られてしまったばかりだし、
何よりやはり根本的に自分に自信が無いのです。

しかし、今のハカセは、だからこそ皆に力を貸してほしいと素直に言えるのだと思いました。
自分の1人の力にどうしようもなく自信が無いから、皆の力が心から必要なのです。
自信の無さを隠す必要など無い。
自信の無いそのままの自分を包み隠さずに曝け出して、
だから皆の力が欲しいと言えばいいのだとハカセは思いました。

それで少年と別れてから日が落ちてからガレオンに戻ったハカセは、
船室に居たマーベラス達の前で、初めてちゃんと自分の今やっている新しい武器作りの作業の内容を説明しました。
ゴーカイガンの衝撃波発生の原理などを細かく説明して、
バスコやシールドンを倒すためにはその衝撃波を増幅させる工夫が必要で、
それには1つのゴーカイガンの銃身に複数のレンジャーキーのエネルギーを集中して送り込む方法が
自分の現在目指している方向性だと説明しました。

マーベラス達は最初は何やら難しい話をハカセが説明し始めたので面喰いました。
ハッキリ言って説明内容も難しすぎてあんまりよく分からなかったのですが、
ハカセがあまりに熱意をもって語るので、思わず聞き入りました。
ハカセは相変わらずオドオドとして自信無さそうで、
実際、そのハカセの方法で今日は大失敗だったわけですから、自信無さげなのも当たり前だと思えました。
でも、そんなに自信が無くて、ツッコミを入れられるのは分かりきっているのに、
どうしてハカセはこんなに一生懸命に自分達に作業の説明をしようとしているのだろうかと、
マーベラス達は不思議に思いました。

正直言って、マーベラス達には説明内容は難しくてよく分からなかったが、
そんな難しそうなことをハカセが出来るのか?という不信の念はありました。
しかしハカセがいきなり細かく説明を始めた意図がよく分からないので、
皆、とりあえず黙ってハカセの言葉を聞いていました。
そうしてハカセが「だから・・・複数のレンジャーキーをいっぺんに使えば、凄い武器が出来ると思うんだ!」と
語り終えた時には、マーベラスは船長椅子に腰かけてじっとハカセを見つめ、
ジョーはトレーニングをしながら耳はハカセの話に集中させ、
ルカとアイムはテーブル脇の椅子から立ち上がってハカセの前へやってきました。
鎧も厨房に居たのですが船室へ入ってきました。

ここでハカセはちょっと躊躇します。
ここからが本題であり、一番理解を得るのが難しそうな部分だからです。
「・・・でも、それにはゴーカイシリンダーが必要で・・・それで・・・その・・・」とハカセは口ごもります。
皆、ハカセが何を言おうとしているのか分からず、不思議そうにハカセの口元に注目します。
そうして皆の注目を浴びる中、ハカセはますます不安になってきますが、
それでも思い切って遂に「・・・みんなの武器を・・・貸してくれないかな?」と、核心の言葉を口にします。

マーベラスはその言葉を聞いて一瞬ピクリとしますが、黙ったままハカセを見つめます。
ルカと鎧は一瞬不思議そうな顔をしますが、
ルカが「・・・武器を?」と怪訝そうに聞き、
ジョーもトレーニングを中断して「・・・全員分のをか?」と質問したのに対して
ハカセが「うん・・・」と頷くのを聞き、
皆、ハカセが自分達の武器のゴーカイシリンダーを作業に使いたいと思っているのだと理解しました。

同時に、どうしてハカセがこんな丁寧に作業の説明を始めたのか理由が分かりました。
武器をハカセの未知の新武器開発作業に提供するということは、
その武器の持ち主にとっては大変なリスクを伴うことだったからです。
だからハカセは皆から武器を借りるために丁寧な説明が必要だと思ったのです。
医者が難しい手術の前に患者に手術内容を懇切丁寧に説明するようなものです。
マーベラス達は一瞬そう思いましたが、いや、そうではないと思い直しました。

医者の場合は患者と他人同士だからそうするのであって、
今のハカセと自分達の間ではそんな丁寧な説明など不要のはずです。
事前に丁寧に説明をしたところで作業の成功率が上がるわけでもない。
単に失敗した時に後で揉めないようにするための予防策に過ぎない。
そんな他人行儀な説明がこのマーベラス一味の中で必要だろうか?
ハカセは「黙って皆の武器を預けてほしい。きっと凄い武器を作ってみせる」とだけ言えばいいのです。

いや、しかし・・・とマーベラス達は思いました。
もし仮にハカセがそんなことを言ったとして、自分達は大人しく武器を差し出すだろうか?
いや、おそらく迷うだろう。
そう考えて、マーベラス達は自分達がハカセのことを信じてるなどと口先では言いながら、
本当は心の底では完全には信頼していなかったことに気付かされたのでした。

信頼していないからハカセが作業をしていることは知っていても近づこうとはしていなかった。
信頼していないから、ハカセの作業に関わったら色々と余計なケチをつけてしまいそうになるので、
それを避けるためにハカセの作業に近づくことを避けていたのです。
それはハカセへの気遣いだと思っていたが、そうではない。
本当は自分が仲間を信頼出来ていないことを悟られたくなかった、いや自覚したくなかっただけなのです。

ところがハカセはしっかり自分が仲間に信頼されていないことには気付いていた。
だからハカセは堂々と「黙って武器を預けてほしい」とは言えず、
こうして不安そうに自信無さそうに、卑屈に説明しているのです。
「・・・こんな時に武器を借りるってことは・・・ザンギャックが来ても、
武器は使えないってことになっちゃうんだけど・・・」と弱気な表情でリスクの説明をして
「でも!・・・お願いします!」と深々と頭を下げるハカセを見て、
マーベラス達はいたたまれない気持ちになりました。

自分達は見せ掛けの信頼関係を取り繕うため、ハカセへの不信感を隠すために
ハカセの作業から距離を置いていた。
その結果、ハカセを1人ぼっちにしていたのです。
それに比べてハカセは仲間から信頼されていないことを知りながら、
その不信感と正面から向き合う覚悟で、こうして不信感に晒される不安に震えながら
自分達に作業への協力を求めてきている。
そうまでして、1人だけの力を超える「仲間の力を合わせた力」を得ようとしている。

いや、自分を信頼してくれない仲間をも信じて助けを求めようとしたその瞬間、
既にハカセの力は1人だけの力を超えていたのかもしれません。
それに比べて、ハカセへの不信感にすら向き合えなかった自分達は
未だ1人だけの力でしか戦えていない。
いや、自分達も「仲間の力を合わせた力」が大きな力になることは、
以前に初陣前のハカセへの不信感を乗り越えた時に理解していたはずなのですが、
それをつい忘れてしまっていた。
それをまた今回、ハカセに思い出させてもらったのです。
これは今回はハカセに完敗したなぁ・・・とマーベラス達は思いました。

そのようにマーベラス達が黙って反省していると、
ハカセは返事が無いということはやっぱり拒否なのかと思い「・・・ダメ・・・かな・・・?」と不安げに顔を上げます。
そのハカセの自信無さそうな顔を見てマーベラスはフッと微笑むと立ち上がり、
黙ってゴーカイガンとゴーカイサーベルをハカセ向かって差し出したのでした。

マーベラスはハカセを信頼したわけではありません。
こんな不安そうな顔をしている男を信頼など出来るわけがない。
でも、マーベラスはハカセへの不信感から目を逸らすことはやめたのです。
信頼出来ないからこそ、一緒にやって見守るのです。
ハカセ1人に任せたままにするのではなく、皆で一緒にやればきっと上手くいく。
マーベラスが信じたのは、ハカセの1人の力ではなく、ハカセの求める「仲間の力を一つにした力」だったのです。
だから、仲間の力を合わせるためにハカセに武器を差し出すのです。

アイムも同じ気持ちで、ハカセに歩み寄ると
「ダメなわけありません・・・」とゴーカイガンとゴーカイサーベルを差し出します。
「俺もです!」と鎧もゴーカイスピアを力強く突き出し、
ルカもニヤリと笑って「アンタの開発のためなんでしょ?」と、ゴーカイガンとゴーカイサーベルを差し出します。
そしてジョーも一言、「・・・使え・・・!」と呟きつつ、
ぶっきらぼうにゴーカイガンとゴーカイサーベルをハカセに預けます。

ハカセは皆が力を貸してくれたことに感動して「みんな・・・!」と目を潤ませます。
自分が信頼されて嬉しいなどと思っているわけではありません。
皆が「仲間の力を合わせればより大きな力を生みだすことが出来る」という
自分の初陣の時に示してくれたのと同じ気持ちを忘れていなかったこと、
そしてその気持ちは新入りの鎧にも受け継がれていることが嬉しかったのでした。
その大切な気持ちを共有した6人は目を輝かせて笑い合い頷き合います。
そこにナビィが「持ってきなよ!」とハカセに声をかけ、
ハカセは「うん・・・!!」と力強く頷きつつ、皆から差し出されている武器を受け取ったのでした。

そうしてそのままさっそく作業を開始します。
もう1人で作業室にこもるのではなく、皆の居る船室に機材を持ち込んで、皆の見ている前で、
もちろんハカセが実際は作業をするのですが、気持ちは仲間一緒に作業に取り組みます。

ここでハカセは皆から提供してもらった貴重なゴーカイシリンダーを無駄にしないために、
根本的に作業方針を変更しました。
バスコやシールドンを倒すためには、
ゴーカイシリンダーを2つゴーカイガンにつけるだけでは到底パワー不足でした。
だから思い切って5つのゴーカイシリンダーをつけることにしたのです。
これで仮に1つのゴーカイシリンダーから銃身内に発生出来る衝撃波が10とすると、
5つのゴーカイシリンダーをつければ、10×10×10×10×10=100000のパワーの衝撃波を発することが出来ます。
これはいくら何でも巨大過ぎるので一定の調節は必要ですが、
それでもゴーカイスクランブルなど遥かに凌駕する別次元の
極めて強力なファイナルウェーブを発射することが出来ます。

しかし、そうなると問題はゴーカイガンの銃身では絶対にその巨大パワーに耐えられないということです。
そこでハカセはゴーカイガンよりも遥かに頑丈な銃身を新たに作ることにしました。
というか、そもそも5つもゴーカイシリンダーを付けると決めた時点で、
既存のゴーカイガンでは銃身が短すぎて物理的に作業は不可能だったのです。
5つのゴーカイシリンダーを付けることが出来るだけの長い銃身を新調する必要がありました。
それを太くて頑丈なものにすればいい。
更に発生させた衝撃波によって銃身が受けるダメージを極力減らすために銃身を途中から二股にして、
二門式の砲身を有した機関砲のような形になりました。

そして、予備用も含めて、全員の武器からゴーカイシリンダーを全て取り外して、
砲身を作っていき、そこにゴーカイシリンダーを付けていく作業に入りますが、
やはりここでの調整が一番難しく、
実際にゴーカイシリンダーからレンジャーキーのフルパワーを暴走させてしまうと砲身ももたないので、
慎重に砲身への負荷を計算しながら1個1個のゴーカイシリンダーの出力機能を微調整していかないといけません。
それでハカセはパソコンのキーを叩きまくったり、ゴーカイシリンダーの内部の基盤を弄ったりして、
延々と作業を続けることとなったのでした。

そして仲間たちはその作業をするハカセの傍に寄り添い、
作業には実質加われないものの、一緒に頑張るというスタンスをずっと維持し続けます。
鎧は機械の熱に晒され続けるハカセをクールダウンさせるために怪我していない左手でうちわであおぎ続け、
ルカはハカセの肩を揉み、アイムは紅茶を差し入れ、ジョーはケーキを作って差し入れます。
マーベラスは・・・ちょっとよく分かりませんが、
特に何も出来ることはなさそうなので、単に言葉で励ましていたのでしょう。

結局、そのままハカセは徹夜で作業し、鎧も徹夜に付き合ったようです。
怪我人なんだから少しは休めばいいとも思うのですが、
尊敬する先輩のハカセが徹夜してるのに休む気にはなれないようです。
新武器の方はほぼ形は設計図通りに完成していますが、
「う〜ん・・・もう少しなんだけどなぁ・・・」とハカセはまだ納得していない様子でパソコンのキーを叩いています。
まだ微調整の面で不満があるようです。

鎧はそのほぼ完成した武器をしげしげと眺めて
「それにしても・・・こんな感じの武器、なんか見たことある気がするんですよねぇ・・・」と言いますが、
ハカセはそれを聞いてムッとして「僕のオリジナルだよ!」と、鎧の肩をペシッと叩きます。
別に何か他のものの真似をして作ったわけではなく、より強力な武器を模索した結果辿り着いた形なのです。
ところがハカセの叩いたのは鎧の三角巾で吊っている方の手だったものですから、
鎧が「あお〜!」と叫んで痛みに悶えます。
ハカセは徹夜明けで疲れていて、つい鎧が怪我していることを失念してしまっていたようで
「あっ、ゴメン!」と慌てます。

その時、突然、船室にズズ〜ン!と衝撃が襲い、ハカセと鎧は椅子から転げ落ちます。
個室で仮眠していたルカとアイムがハカセの作業で何か起きたのかと思って飛んできて
「何事!?」「ハカセさんの新兵器、完成したのですか!?」と言いますが、
ナビィが「ザンギャックだぁ!ザンギャックが攻撃してきたよぉ!」と報せます。
モニターが映し出されて、ガレオンのすぐ下にシールドンと手下のスゴーミン2人が立っており、
スゴーミンがガレオンに向かって砲撃してきているのが分かりました。
その砲弾がガレオンに命中して衝撃が何度も走ります。
シールドンは遂にガレオンの停泊場所まで見つけ出したのでした。

この衝撃に驚いてマーベラスとジョーも船室に飛んできました。
「あの野郎!調子に乗りやがって!」と憤慨してモニターを睨みつけるマーベラスに、
ハカセは「どうしようマーベラス!?」と狼狽えて縋りつきます。
ハカセが最も恐れていた事態が起こってしまったのです。
まだ武器が完成しておらず、皆の武器を使えない状態にしたままなのに敵が襲ってきた。
仲間たちがハカセの作業のせいで戦えないのです。
ハカセは自分の作業が遅いせいで皆に迷惑をかけてしまったと思い、落ち込みます。

しかしマーベラスは「どうってことねぇ!俺たちが相手をしてくる!」と、事もなげにキッパリ言います。
「そういうこと!」とルカもニヤニヤしてマーベラスに同意します。
このままガレオンを発進させて逃げることももちろん出来ますが、2度も続けて逃げるわけにはいかない。
いや、意地の問題ではなく、ここで逃げたらハカセが自分のせいで敵に背を向けることになったと思って
気に病むのが目に見えています。
だから、ここはハカセの頑張りに応えるためにも、自分達は逃げずに戦うとマーベラス達は決めたのです。
ハカセの作業を全然手伝うことが出来ない自分達がハカセと一緒に力を合わせることが出来るとすれば、
ハカセが気持ちよく作業出来るよう、武器など無くても平気で戦うことだとマーベラス達は思いました。

そして、これはあくまでハカセのためではない。
ハカセが完成させようとしている、仲間の力を合わせた武器のためなのです。
だからマーベラス達はそのために戦うのであり、ハカセはそのために作業に取り組まねばならない。
皆が戦うなら自分も戦おうとするハカセにアイムが「ハカセさんはここに残るべきです」と厳しく言い、
ジョーも「俺たちの武器を使ってまで開発してるんだからなぁ!」とハカセの肩を掴みます。
そしてマーベラスはハカセの頭を叩いて「いいからとっとと完成させろ!」と言います。

自分達が戦っている間にハカセが武器を完成させて持って来れば、
それでシールドンを倒して万事解決だということです。
自分達は武器完成のために時間を稼いで戦う。ハカセはその間に武器完成のために作業をする。
どっちも同じように成し遂げられるはずだと、マーベラス達はハカセに、そして自分達自身にも、
マーベラス一味の絆そのものに信頼を示したのでした。
「・・・みんな・・・」とハカセは感激し、気持ちを奮い立たせます。

そうしてマーベラス、ジョー、ルカ、アイムの4人は変身して、
ガレオンの下で「フン!腰抜けの海賊どもが!」と嘲笑するシールドンの前に
「誰が腰抜けだって!?」と降り立ちます。
「いい度胸だ!」と言うシールドンにマーベラスが「その言葉、そっくりそのまま返すぜ!」と言い返し、
スゴーミンの砲撃を避けたマーベラス達がゲキレンジャーに豪快チェンジして戦闘開始となります。
マーベラスがゲキレッドに、ジョーがゲキブルーに、
ルカがゲキイエローに、アイムがゲキチョッパーに変身します。
ここでゲキレンジャーに変身したのは、ゲキレンジャーが拳法戦隊で、
武器を使わずに戦うことに長けた戦隊だからです。

まず狙うのはガレオンを砲撃しているスゴーミンの2人です。
これを倒して砲撃を止めさせなければハカセの作業が進められません。
そうして1人のスゴーミンにはマーベラスとアイム、そしてもう1人のスゴーミンにはジョーとルカが
それぞれ2人がかりで襲い掛かり、確実に倒しにいきます。
ルカが打打弾でスゴーミンの腹を撃ちぬき、
アイムが「チェストォー!!」ともう1人のスゴーミンを手刀で斬り裂き、
怯んだ2人のスゴーミン相手にマーベラスが咆咆弾、ジョーが転転弾という激気技を放ち、
ゲキビーストのゲキタイガーとゲキジャガーが2人のスゴーミンに襲い掛かり倒します。
これで残るはシールドンだけで、4人はシールドンを囲んで戦います。

その戦いの様子をガレオンの船室のモニターで見つめながら、
怪我で留守番の鎧が「まだですか!?・・・皆さん、武器無しで戦ってるんですよ!」とハカセに焦りをぶつけます。
作業の邪魔になるからあんまりそういうことは言わない方がいいと思うのだが、
鎧は鎧で怪我でこういう時に戦えない自分が不甲斐なくて我慢ならないらしく、かなり感情的になっています。

実際、シールドンが強敵であることは鎧も話に聞いて知っています。
今の4人では勝つことは難しく、時間稼ぎにしかならない。
しかし、それも武器を持ってフルパワーで戦うことが出来ればの話であって、
武器の無い状態では時間稼ぎにもならずに倒されてしまうかもしれないのです。
ゲキレンジャーにしても拳法戦隊とはいっても最強の武器としてゲキバズーカというものはちゃんとあり、
各戦隊の武器はゴーカイガンやゴーカイサーベルが変形して出現するわけですから、
今の4人はゲキバズーカは使えない。
ゲキレンジャーならば比較的、素手でも強いというだけのことで、やはり決め手は欠く状況であり、
シールドンの足止めも難しい状況なのです。
強気で出て行った4人ですが、実は厳しい状況なのです。
鎧が焦る気持ちも分からないではありません。

ハカセもそれは分かっています。
鎧の言葉に応えて「分かってるよ!・・・でも、このままの威力じゃ、結局あいつに跳ね返されちゃう!」と言います。
ハカセは厳しい状況は理解しつつ、それでもまだ冷静です。
今の状態でもこの新武器は使うことは出来る。
しかし、昨日のように砲身が壊れないように調整した結果、
確かに機能の改造ゴーカイガンよりもかなり破壊力は上げることは出来たが、
昨日の戦いで分析したシールドンの盾の強度を突破するにはまだ威力が足りないのです。
今の状態に更に何かプラスアルファ、別の要素を加えないと、威力はこれ以上は上がらない状況でした。
「何か・・・何か決め手が必要なんだ・・・!」とハカセはパソコンのキーを叩きながら言うのでした。

地上の戦いの方では、ゲキバズーカを使えないハンデをカバーするために、
シールドンの構えた盾に向かってルカとアイムが拳を突き立て、
その2人の肩にマーベラスとジョーが手を置いて激気を注入して
ルカとアイムの拳から4人分の激気を炸裂させる激気注入技を放ちます。
これは強烈な技ですが、やはりシールドンの盾にその威力は弾き返されて、4人は吹っ飛ばされます。
この状況でも4人はあくまでシールドンの盾を破って勝つことにこだわっているのですが、
やはりシールドンの盾はこんな技ぐらいでは破ることは出来そうにないです。
かといってゲキバズーカが撃てたとしてもおそらく破ることは出来ないので同じことだとは思いますが。

「言っただろう!この盾の前に貴様らは為す術は無い!!」とすっかりいい気になっているシールドンを見上げて、
ジョーは「やはり素手では、こいつの盾は突破できないか・・・」と少し弱音を吐きます。
ルカもアイムにも少し諦めのムードが漂いますが、
マーベラスは「諦めんな!ハカセが完成させるまで耐えりゃいい!」と檄を飛ばします。

マーベラスもシールドンの盾を今の自分達の攻撃で破れるとは思っていません。
しかし戦ってみて気付いたのですが、シールドンは自分の盾の防御力を異常に誇りに思っています。
だから、盾に向かって大技を繰り出し続けていれば、
シールドンは盾の能力を誇示しようとして、ある程度はこっちの攻撃に付き合ってくれる。
だから、素手技でもいいから盾目がけて続けて大技を出していれば、
ハカセが新武器を完成させるまでの時間稼ぎは出来るとマーベラスは思ったのでした。

そうして続いてマーベラス達が豪快チェンジしたのはチェンジマンでした。
今まで一度も豪快チェンジされたことのなかったチェンジマンが遂に初登場です。
マーベラスはチェンジドラゴンに、ジョーはチェンジペガサスに、
ルカはチェンジマーメイドに、アイムはチェンジフェニックスに変身します。
ただ、ハカセがいないのでチェンジグリフォンはここでは未登場となり、
相変わらずマーベラス一味はチェンジマンだけは5人一斉変身をしていないという状況は変わりません。

また、マーベラス一味がレンジャーキーを所持していながら未だ変身していない戦士はこれで
チェンジグリフォン、黒騎士、ゴーオンゴールド(単体変身無し)、シグナルマン、デカマスター、デカスワン、
ウルザードファイヤー、マジマザー、大剣人ズバーン、リオ、メレ、姫シンケンレッドの
12戦士ということになります。

が、おそらくもともとバスコが持っていた番外10戦士については
レンジャーバトルで十分に登場していますので、マーベラス一味は変身しないまま終わるような気がしますし、
ゴーオンゴールドは合体戦士ゴーオンウイングスという形で登場するのが定番化しているので
単体変身は無いような気もするので、
実質的に今後、確実に豪快チェンジされそうな戦士で未だに未変身の戦士は
チェンジグリフォンだけと見ていいでしょう。

また、物語の中でレジェンド大戦でのオリジナル戦士以外、
豪快チェンジやラッパラッター召喚や妄想シーンなどで一切登場したことのない戦士も、
これでチェンジグリフォンだけとなりました。
アバレピンクまで登場したというのに・・・
まぁニンジャマンやガンマジンのような登場するかどうか分からないような戦士も他にいるにはいますが。

チェンジマンはゲキレンジャーのように素手の肉弾戦主体の戦隊ではありませんから、
ここでチェンジマンがチョイスされた理由は、たぶん単に今まで豪快チェンジされていなかったからでしょう。
そういうわけで、チェンジマンにも本来は最強必殺武器のパワーバズーカというものはあります。
しかし、これは武器の無い今の4人には使えませんから、
シールドンを盾の勝負に引き込むためにマーベラス達4人は高くジャンプしてから
見た目が派手な体当たり技のドラゴンアタック、ペガサスアタック、
マーメイドアタック、フェニックスアタックを喰らわせます。
しかし、これも当然シールドンの盾に弾き返され、4人は吹っ飛ばされます。

高笑いするシールドンは「もう終わったか?」と嘲笑いますが、
マーベラスは「まだだ!」と叫んでレッドマスクに豪快チェンジして、
ゴッドハンドをシールドンの盾に向けて叩き込みます。
マスクマンもゲキレンジャー同様、拳法を使う戦隊ですが、
ダイレンジャーやゲキレンジャーが拳法戦隊の色彩が濃かったのに対して、
マスクマンというのは厳密には武術戦隊と言った方がよく、
基本的には剣や棍やトンファなど、武器を使う戦隊でした。

レッドマスクも本来の最強技はマスキーブレードという剣を使ったマスキークラッシュという技でした。
しかし剣技と共に空手を得意としていたレッドマスクのタケルは素手での必殺技として
オーラパワーを込めた右手正拳突き「ゴッドハンド」という技をもっており、
かなりマイナーな技なのですが、それをここで繰り出してきました。
しかし、やはりゴッドハンドもシールドンの盾には阻まれます。

しかし、これもマーベラスには想定内です。
「相当タフじゃねぇか・・・!」とまだシールドンを挑発して盾で攻撃を受けさせ続けようとします。
しかしシールドンはそろそろ本来の任務である海賊抹殺を果たそうとして
「では、こっちからいくぞ!」と言うのでした。
まぁ実際、マーベラス達の繰り出す技はどんどんショボくなってきており、そろそろ限界のようです。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
にほんブログ村 にほんブログ村 テレビブログ スーパー戦隊へ
にほんブログ村
posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 23:48 | Comment(0) | 第32話「力を一つに」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月21日

第32話「力を一つに」感想その3

翌日、なんとかゴーカイシリンダーを2本つけたゴーカイガンの試作機を仕上げたハカセは、
さっそく地上に降りて、山中でゴーカイグリーンの姿に変身して試し撃ちをしてみることにしました。
いつものゴーカイスクランブルの時と同じく、
使用するレンジャーキーはゴーカイグリーンとミドレンジャーの2つで、
この2つのレンジャーキーを2つのゴーカイシリンダーに挿して回すと、
いつもの関ボイスで「ダ〜ブルファイナルウェ〜ブ!!」と認識音が鳴ってエネルギーが充填され、
その銃身が補強されたゴーカイガンの引き金を引くと、
凄まじい勢いの衝撃波がきりもみ状に銃口から発射されて吹っ飛んでいきます。
「どわああああ!?」と、ハカセはその予想以上の反動に翻弄されますが、
発射された衝撃波、すなわちファイナルウェーブが
一応前方に狙いをつけていた大きな岩に命中して粉々にしたのを見て「・・・よし!!」とガッツポーズをとります。

演算結果に基づいて補強した銃身やゴーカイシリンダーにギリギリ負担をかけないように
放出エネルギー量を調整した結果、
2つのゴーカイシリンダーに2つのレンジャーキーを挿したゴーカイガン一丁だけで
ゴーカイスクランブルを超えるほどの威力を発することに成功したのです。
昨晩頑張った甲斐あって上々の成果を得たハカセは気を良くして、
「う〜ん!独りの努力ってのも、なかなか良いもんだねぇ!」と改造ゴーカイガンを眺めて悦に入ります。
こうして上手くいくと、マーベラス達がそれぞれ自主的に特訓していたのと同じように
自分も海賊として他人にことさら努力する姿を見せずに頑張る美学を実践出来たような気分になってきます。

今回も自分は人知れず努力して向上することが出来たのだと思い、
上機嫌のハカセは「帰ってこれを皆に知らせなくちゃ!」と足取りも軽く歩き出します。
自分に自信が無いハカセは自分が皆から完全に信頼されていないことは分かっています。
だから出来るかどうか分からない話をして不信の目で見られることが辛いのです。
こうして成功の目途がついたことならば、安心して皆に話すことが出来ます。

ところが、歩き出したハカセはいきなり何者かに銃撃されて、「うわっ!?」と慌てて避けます。
ハカセが驚いて見ると、ゴーミン部隊がハカセを狙い撃ちしてきていました。
そしてそこに両腕に大きなアーマーをつけた、なんだかプレデターみたいな感じの行動隊長らしき怪人が現れ
「へへ〜!いたな!賞金首の海賊!」とほくそ笑みます。
こんな人気の無い山中にザンギャック部隊がいて、偶然鉢合わせするのは不自然です。
「なんでこんなところにザンギャックが!?」とハカセは慌てます。
これは最初から自分を狙っているのだと分かり、少し恐怖を感じました。

「やれ!」と怪人はゴーミンに号令を発し、ゴーミン達はハカセに向かって襲い掛かります。
ハカセはちょうど手にしていたさっき試し撃ちをした改造ゴーカイガンを思わず使いそうになって
慌てて「はっ!これはダメだ!」と言ってしまい込み、代わりにゴーカイサーベルを出して戦います。
本来はハカセは剣よりも銃の方が得意なのですが、
ハカセのゴーカイガンは今は改造試作機の状態になっているので、
下手に戦いに使って壊れたりしたらせっかくの昨日からの苦労が水の泡となります。
だからここは慎重に使わないことにしたのでした。

しかし、あまり得意ではない剣だけでの戦いで、
しかも多勢に対して1人ですからハカセはピンチに追い込まれていきます。
そこにマーベラス達が変身した姿で現れて助けに入ります。
近くにザンギャック反応を感知して、怪我人の鎧を留守番に残してマーベラス達4人が駆けつけたら
ハカセが襲われていたので加勢したのでした。
4人はハカセを囲んでいたゴーミン達を蹴散らして、「大丈夫ですか?」とアイムがハカセを助け起こし、
ルカも「平気?」とハカセを気遣います。「みんな!」と安心するハカセ。
これで一気に形勢逆転です。

ところが4人が駆けつけたのを見て、さっきの怪人は「フン!来たか!」と余裕の態度です。
まるでゴーカイジャーが揃うのを待っていたかのようです。
ゴーミン達を難なく一掃したマーベラス達の前に立ち、怪人は「かかってこい!海賊ども!」と豪語しますが、
マーベラスは「面倒だ!一気にいくぞ!」と言い、いきなりファイナルウェーブの態勢に入り、
5人でゴーカイスラッシュを放ちます。

ところが、この怪人は両腕につけた大きなアーマーのようなものを身体の前で組み合わせて
大きな鬼瓦のような顔の描かれた盾のようにして、なんとゴーカイスラッシュを弾き返してしまったのです。
高笑いする怪人を見て「そんな!?」とアイムは叫び、全員非常に驚きました。
今までファイナルウェーブが通じなかった相手は、前回のバスコだけだったからです。
怪人は身体の前に組み合わせた盾を両腕を開いて解除して顔を出すと、マーベラス達に向かって
「見たか!ザンギャック一の防御力を持つ、このシールドン様の盾を!貴様らの攻撃など、全く感じはせんぞ!」と
大いに自慢します。

このシールドンという怪人、ザンギャックで最高の防御力を誇る盾を装備した怪人であるようで、
ある意味、ザンギャック最強の怪人といえます。
凄いのは盾であって、あくまでシールドン本人ではないのですが、
しかしこの盾が装備されている以上、例えばダマラスやバリゾーグの攻撃にも
シールドンは耐えることが出来るわけですから、シールドンに勝つことは極めて困難ということになります。

そんな強力な怪人が送り込まれてきたということは、
このシールドンこそがダマラスが言っていた「奴らの排除に最適の部下」なのでしょう。
つまりシールドンはダマラスの隠し球のような部下で、
おそらくワルズ・ギルに変な作戦で無駄に使われたくないので、
その存在を秘密にして手許に置いていた部下なのでしょう。
ワルズ・ギルから作戦を一任されて、ワルズ・ギルの余計な邪魔が入らないようにして、
遂にダマラスが切り札を使ってきたのです。
それだけ今回はダマラスは本気でマーベラス達を抹殺しようとしているのでしょう。

さて、マーベラスは「ザンギャック一の防御力」と聞くと、負けん気に火がついて打ち破りたくなりました。
ゴーカイスラッシュはゴーカイジャーの最強技ではありません。
まだ破壊力が上のゴーカイブラスト&スラッシュやゴーカイスクランブル、
それに鎧のゴーカイレジェンドリームなどもありますが、
鎧は今は怪我で戦線離脱状態であり、
さっきからハカセがゴーカイガンを使っていないのでブラスト&スラッシュやスクランブルも使えません。
マーベラス達もハカセが自分のゴーカイガンを今、新武器開発のために使ってしまっていることは分かっています。
だからゴーカイジャーとして現在、ゴーカイスラッシュやゴーカイブラスト以上の技は使えない。
ところがそれではシールドンの盾には通用しないのです。

そこでマーベラスは「フン!だったらこれでいくぞ!」と、スペードエースのレンジャーキーを出します。
他の戦隊に豪快チェンジして、その最強必殺技をお見舞いしてやればいいと思いついたのです。
まずここは5人はジャッカー電撃隊に豪快チェンジします。
マーベラスがスペードエース、ジョーがダイヤジャック、ルカがビッグワン、
ハカセがクローバーキング、アイムがハートクインに変身し、
さっそくジャッカー電撃隊の最強必殺武器であるビッグボンバーを組み上げ、
「ジャッカー必殺武器!ビッグボンバー!!」と号令をかけてシールドン目がけて発射します。
ところがシールドンは身体の前で再び両腕のアーマーを組み合わせて盾を作って
ビッグボンバーを迎え撃ち、なんとまた弾き返してしまいました。
平気で高笑いするシールドンを見て、「なぁに!?また!?」とルカはあまりの盾の頑丈さに呆れます。

そこで今度はマーベラスは「これならどうだ!」とダイナレッドのレンジャーキーを出し、
5人はダイナマンに豪快チェンジします。
マーベラスがダイナレッドに、ジョーがダイナブルーに、ルカがダイナイエローに、
ハカセがダイナブラックに、アイムがダイナピンクに変身して、
大きくジャンプして空中でマーベラスを中心に5人がスクラムを組んで大回転して炎の玉となって
「ニュースーパーダイナマイト!大爆発!!」と叫んで突っ込みます。
これはダイナマンの最強必殺技のニュースーパーダイナマイトです。
ところがシールドンはこれも盾で受け止めて弾き返す。
マーベラス達は盾から弾かれて地面に転がってしまいました。

シールドンは勝ち誇って「貴様らの力はこの程度か!?」と言います。
マーベラス達はさすがにこれには驚きます。
「・・・そんな・・・全く効かないなんて!」とアイムは信じられない様子です。
ジャッカー電撃隊もダイナマンも、両方とも既に「大いなる力」もゲットしている戦隊であり、
その最強必殺技を出しているわけですから、相手に全くダメージを与えられないなどということは
予想していませんでした。

ジェットマン篇でキアイドー相手にバイオマンのスーパーエレクトロンが効かなかったりしたことはありましたが、
あれはマーベラスのメンタル面の影響で技が不完全だったからであって、
今回はそうしたマイナス要因は無く、万全な状態で繰り出した最強技です。
どれだけ強力な怪人でも、生き物であれば何らかのダメージは与えられるはずです。
つまり、あの盾はそれほど特別に頑強なものだということです。
「ザンギャック一」と豪語するだけのことはあるということです。

なお、ここでジャッカーのビッグボンバーとダイナマンのニュースーパーダイナマイトがチョイスされているのは、
見た目で分かりやすいバズーカ系と体当たり系の最強技という意味でしょう。
ここはとにかくシールドンの盾がこれまでの技では打ち破れない強力なものだということが
今回のエピソードの大前提となっていますから、
それを強調するために強力な技をあえて使っているという意味合いのシーンですから、
決してジャッカーやダイナマンが弱いという意味のシーンではありません。
むしろ強いからこそこういうシーンで使われると理解すべきでしょう。
ただ、実際ダイナマンの技であるスーパーダイナマイトやニュースーパーダイナマイトは
敵の更なる強さを表現するのに便利な、見た目からして強力そうな技であるせいか、
こういう当て馬的な使い方ばかりされている印象は確かにあり、やや不遇な扱いといえるかもしれません。

ここでハカセは、シールドンの盾には過去のスーパー戦隊の技は一切通用しないと悟り、
今こそ自分の開発した新しい武器を使う時だと考えます。
ハカセはゴーカイグリーンの姿に戻ると、「よぉし!みんな!僕に任せて!」と言って
例の改造ゴーカイガンの試作品を取り出して、
その2つのゴーカイシリンダーにゴーカイグリーンとミドレンジャーのレンジャーキーを挿して回します。
「ダ〜ブルファイナルウェ〜ブ!!」という認識音と共にエネルギーが充填された改造ゴーカイガンを構えて、
ハカセは「これでどうだ!!」と、シールドン目がけて引き金を引きます。

マーベラス達もハカセが取り出したのが例の新兵器だと悟り、
その威力がどれほどのものなのか、固唾を呑んで見守りますが、
物凄い勢いで発射されたファイナルウェーブは、これもまたシールドンの盾に弾かれてしまったのでした。
不発だったわけではなく、確かにさっき1発で大きな岩を粉々にしたほどの威力は発していました。
明らかにゴーカイスラッシュよりは上で、ビッグボンバーやニュースーパーダイナマイトを超えて、
ゴーカイスクランブルも超えるほどの威力でした。
それなのにシールドンの盾に傷ひとつ付けることは出来ていません。

「そんなぁ!?」と驚くハカセでしたが、更にハカセの改造ゴーカイガンがいきなり火花を散らしてショートして、
2つのゴーカイシリンダーが黒焦げになってしまったことにハカセは愕然として「うわ〜・・・」と呻きます。
銃身内であまりに強力な衝撃波を発生させたため、
もともとそんな膨大な衝撃波を受け止めきれる構造になっていないゴーカイガンの銃身では、
やはりその全部を制御して発射させることが出来ず、
衝撃波の一部がゴーカイシリンダーに逆流してきていたようで、
2発撃っただけでその負荷が限界に達してゴーカイシリンダーを破壊してしまったようです。

呆然とするハカセの前で盾を開いて顔を出したシールドンは
「あ〜ん?今ので全て終わりか?・・・ならば俺の番だな!」と言うと、雷撃で攻撃してきます。
この攻撃力もなかなか強力で、マーベラス達はピンチに陥ります。
反撃しなければやられっぱなしになってしまいますが、
反撃しようにも、どうもあの盾がある限り、攻撃のしようがない。

いや、背後から攻撃するとか、方法は無いわけではありませんが、
マーベラス達はここは何とかあの盾を突破して勝利したいということに拘っていました。
ジョーは「・・・俺たちの攻撃が通じない相手が続くとは!」と悔しがります。
ここで問題は勝つか負けるかではなく、自分達の攻撃があの盾を破れるかどうかなのです。
何故なら、見たところ、あの盾の防御力とバスコの防御力は同等と思えるからです。
攻撃力に関してはバスコの方がシールドンよりも遥かに上ですが、防御力は互角に見えます。
ならば、あの盾を破れないことにはバスコを倒すことなど出来ない。
ここで盾を攻撃することを避けて背後から攻撃してシールドンを倒しても、
どっちにしてもバスコには勝てず、マーベラス一味に未来は無い。
だからここはシールドンの盾を破ることをあくまで目指したいのです。

もしシールドンが人々を襲っていたりすれば話は別で、
どんな卑怯な手を使ってもシールドンを倒さねばならないでしょうが、
幸いというか、シールドンはマーベラス一味だけを狙ってタイマン勝負を挑んできているわけだから、
ここはマーベラス達も正面突破でシールドンを倒すことに拘ることは出来るのです。
とはいってもスポーツの試合ではなく殺し合いですから、相手は殺す気で来ています。
このままでは為す術なくシールドンに殺されてしまいそうですから、
マーベラスは「仕方ねぇ!・・・一旦退くぞ!」と言ってニンジャレッドのレンジャーキーを出し、
5人はカクレンジャーに豪快チェンジし、
マーベラスがニンジャレッドに、ジョーがニンジャブルーに、ルカがニンジャイエローに、
ハカセがニンジャブラックに、アイムがニンジャホワイトに変身します。

カクレンジャーへの5人一斉豪快チェンジは初めてであり、
また、ニンジャレッドとニンジャイエローへの変身も初めてです。
これでマーベラス一味が5人一斉変身をまだしていない戦隊はチェンジマンのみとなり、
マーベラス一味がレンジャーキーを所持していながら未だ変身していない戦士はこれで
チェンジドラゴン、チェンジグリフォン、チェンジペガサス、チェンジマーメイド、チェンジフェニックス、
黒騎士、ゴーオンゴールド(単体変身無し)、シグナルマン、デカマスター、デカスワン、
ウルザードファイヤー、マジマザー、大剣人ズバーン、リオ、メレ、姫シンケンレッドの
16戦士ということになります。

さて、しかしこの記念すべきカクレンジャーへの全員変身ですが、これはほんの一瞬だけで終わります。
「消え身の術!」と叫んで5人は印を切って、煙の中、姿を消してしまったからです。
つまり、姿を消してこの場を遁走するために、
忍術で姿を消すことの出来るカクレンジャーが選択されたということです。
マーベラス達はこの場は一旦退いて態勢を整えてからシールドンに再勝負を挑むことにしたのです。
そうしてマーベラス達が逃げた後、その場に1人残ったシールドンは
「逃げたか!まぁいい!すぐに見つけ出してやる!」と、執拗にマーベラス達の行方を追うつもりのようです。

ガレオンに戻ると、ハカセは作業室に1人でこもって、
ゴーカイシリンダーが2本とも壊れてしまった改造ゴーカイガンの試作品を机の上に置いて、
椅子に座って深く溜息をつきました。
上手くいったと思っていた改造ゴーカイガンは、たった2発撃っただけで壊れてしまう失敗作だったのです。
どうもハカセの計算が甘くてゴーカイシリンダーから充填されるエネルギー量が多くなりすぎて、
発生した衝撃波が大きすぎて銃身内で制御不能になってしまったようです。

制御可能にするには充填されるエネルギー量を減らすように調節し直さなければならない。
とはいっても、さっきの状態で発射された衝撃波でもシールドンの盾には効かなかったのだから、
充填エネルギー量を減らしてしまうと、ますます威力が落ちて、シールドンの盾を破ることは出来ない。
かといって、このままの状態で充填エネルギーを上げることなど出来ない。
発生した衝撃波の制御方法を根本的に考え直さなければいけないようだとハカセは思いました。

手持ちのゴーカイガンをちょっと改造すれば出来るという考え自体が甘かったのだと思い知らされましたが、
それ以上の込み入った作業が自分に出来るのだろうかと不安になります。
あんな失敗を経験した後だけに、自分に自信が無くなっていました。
いや、それ以前に根本的に作業が行き詰ってしまう要因がありました。

さっきの改造ゴーカイガンの試作品に取り付けていた2つのゴーカイシリンダーは
作業室にあったスペアの分でした。
普段、仲間のゴーカイガンやゴーカイサーベルのシリンダーの調子が悪い時に
ハカセはシリンダーを取り外して修理をしていましたが、
その間に敵と戦うようなことがあると皆が困るので、
ハカセはスペアのゴーカイシリンダーをあらかじめ作っていたのです。
それはオリジナルのゴーカイシリンダーを精巧に複製して作るもので、容易な作業ではなく、
コツコツと作っていたスペアは3つしかありませんでした。

そのうち1つは昨日の作業で失敗して壊してしまっており、
残りはこの2つしか残っていなかったのです。
その2つがこうして壊れてしまった以上、交換して取り付けるスペアのシリンダーが無い。
(ゴーカイシリンダーのスペアも無くなっちゃったし、もう改良の仕様もないよ・・・)と
ハカセは溜息をつきました。
新しいスペアのゴーカイシリンダーを取り付けない限り、作業は続けられず、
新たな制御方法を試すことも出来ません。

改良作業だけでも大変なのに、スペアのゴーカイシリンダーを新たに作るとなると
大変な日数がかかってしまいます。
しかも、1つや2つではすぐに作業は行き詰ってしまうし、
そもそもゴーカイシリンダーを2つつけたぐらいではシールドンの盾は破れそうにないので、
作業にはもっと多くのゴーカイシリンダーが必要で、
それを全部自作してから作業に取り掛かるとなると、大変な期間を要するでしょう。
その間、シールドンやバスコと戦わずに済むとも思えません。

いや、1つだけ作業期間を一気に短縮させる方法は有りました。
それは、現在、仲間達が手持ちの武器に付けているゴーカイシリンダーを外して、
それを使って作業することでした。
しかし、そんなことをしてしまったら、作業中は敵が襲ってきても仲間達は戦いで武器は使えなくなるし、
作業後も暫くの間が武器の一部は使用不能になる可能性もありました。

確かに現在の武器ではシールドンやバスコには通用しないのだから、
それを使って新しい強力な武器を作るというのも1つの賭けとしてはアリです。
しかし、それは武器開発が成功する可能性が高ければ成立する賭けですが、
ハカセは成功させる自信がありませんでした。
もしかしたら作業の段階で皆から預かった大事なゴーカイシリンダーを壊してしまうだけかもしれません。
皆だって、さっきの黒焦げになったゴーカイシリンダーの惨めな失敗場面を見ているのだから、
信頼して自分に武器を預けてくれるはずがないとハカセは思いました。

「・・・ダメなのかなぁ・・・やっぱり・・・」と、ハカセは深く溜息をつきながら呟き、
椅子の背もたれに身体を預けるのでした。
作業室に下りてくる階段に佇んで、ハカセの落ち込む姿を見下ろしていた鎧は、
ハカセを励まそうとして階下へ行こうとしますが、その鎧の袖をルカが引っ張って行くのを止めます。
ルカは鎧を厳しい目で見つめて無言で首を振り、今はハカセを慰めたりすべきではないという意思を示すのでした。

今のハカセは作業を失敗してしまったことでかなり自信喪失してしまっているので、
他人に作業のことを触れられるだけでもますます落ち込んでしまう。
だから、今は1人で立ち直るのを待つ方がいい。
きっと今のハカセなら1人で立ち直って作業を成功させることは出来るはずだと、
ルカは信じたいと思っているのです。
マーベラス達もあんな失敗を見た後でも、ハカセに作業の件を何も言わないのは、そうした心遣いでした。

しかし、これは気遣いのようですが、実際はそうではありません。
本当はルカやマーベラス達だってハカセを励ましてやりたいのですが、
今のハカセに自分達が何を言っても余計に落ち込ませてしまうだけだと分かるので、
どうしていいのか分からなくなっているだけのことなのです。

その後、とにかく今日も作業の件があるから食事を作る余裕は無く、
ハカセはまた皆の弁当を買いに出掛け、その帰り道、また昨日のサッカーグラウンドの横を通りかかりました。
見てみると、今日は誰も練習していません。
あの少年は今日は練習していないのかと不思議に思ったハカセがよく見てみると、
グラウンド脇のベンチに1人ポツンと昨日の少年がジャージ姿で座っています。

ハカセは何となく気になってグラウンド脇まで下りていき、
ベンチに近づいて少年に「どうしたの?・・・練習は?試合、週末なんでしょ?」と声をかけて、
少年の横の席に腰を下ろしました。
少年は酷く元気の無い様子でサッカーボールを握り締めていましたが、
ハカセが来たことに気付いて、目を伏せて小さな声で
「・・・すいません・・・結局、レギュラー取れなくて・・・」と申し訳なさそうに応えました。

少年がレギュラーで出たいと言っていた週末の試合は間近に迫っており、
今日、レギュラーメンバーの発表があったようです。
しかし、連日の1人での特訓の甲斐もなく、少年は皆との練習でパッとしたところも見せられず、
レギュラーには選ばれなかったようです。
それで少年は落ち込んでいたようで、ハカセは悪いことを聞いてしまったと思い、
気まずそうな顔をして俯きました。

しかし少年はいきなりハカセの顔を見るなり謝るというのは妙です。
それはどうしてなのかというと、ハカセに昨日せっかく「僕も頑張るから頑張れ」と励ましてもらったのに、
少年は自分がこれ以上は頑張れそうにないので、ハカセを失望させてしまうと思って、申し訳なかったのでした。
それで少年は謝ったのです。

「・・・でも、もういいんです・・・」と少年は言葉を続けました。
それはつまり、もうレギュラー目指して頑張るのは諦めるということです。
ハカセはそれで少年が自分を失望させると思って気を遣っていきなり謝ったのだと分かりました。
確かにハカセは昨日、この少年の頑張りを見て、自分も頑張ろうと思いました。
その頑張りの結果、ハカセは失敗してしまい、先行きは見えなくなってしまいました。
それでもまだ一応作業は続けるつもりでこうして弁当を買ってガレオンに戻ろうとしているところです。
それなのに、少年が諦めてしまうのを見るのは、やはりショックでした。

それでハカセは「でも、努力してたんだろ・・・?」と慰めようとします。
あれだけ頑張ることが出来ていたのだから、まだ頑張れるんじゃないかと言いたかったのですが、
そのハカセの言葉を少年は強い口調で「ダメなんです!・・・やっぱり僕には・・・」と遮りました。
よほど少年は努力が報われなかったことがショックだったらしく、
下手な慰めは余計に少年を傷つけると悟ったハカセは視線を落として黙り込みます。

努力しても自分はダメだと決めるのは、努力した少年の権利であり、
第三者が口を挟むべきではないのではないかとハカセは思いました。
自分だって落ち込んでいる時に変な慰めの言葉をかけられたら傷つくだろうとも思いました。
そう考えてハカセは、じゃあ自分が今の少年のように自分がダメだと思った時、
周りがそれを黙って認めてくれて、それで自分は良いのか?と自問自答しました。

いや、今まさにハカセはそういう少年と同じ状態なのです。
さっき作業室で「ダメなのかなぁ・・・やっぱり・・・」とぼやいていた自分の姿が
隣の少年に重なって見えてきます。
さっき、自分をダメかもしれないと思う自分に、自分自身は何もしてやれなかった。

誰かの力が必要なのだとハカセは思いました。
ウザくても、傷つけてしまってもいいから、誰か他の人間が信じていると言ってやらないといけない。
それはこの少年も同じなのだとハカセは思い、
半ば自分自身に向かって言うようにハカセは、心を閉ざした少年に伝わるように
「・・・そんなの分からないじゃないか・・・!」と呟きます。

少年の心にその言葉は決して心地よくはなく、むしろ不快ではあったが、しっかり届き、
少年はハッとした顔で振り向き、ハカセの顔を見ます。
その瞬間をとらえてハカセはグッと少年の肩を掴み、
少年の目を見つめて「決めつけるなよ!」と熱く叱りつけます。
そして「ダメだなんて・・・全部やりきるまで、言うな・・・!」と厳しい口調で言うと、
その言葉はハカセ自身の胸に響き、ハカセは少し元気が出ました。
やはり、1人で座り込んで悩んでいるよりも、誰かに尻を叩かれながら何かやっている方がいい。
特にこういう時は1人で落ち込んでいると、どんどんダメになっていくと思えました。

そう思うとスッキリしてきて、ハカセはニッコリ笑って「やろう!」と声を出して立ち上がります。
「・・・やろうって、何を?」と驚く少年からハカセは「練習だよ!」と言いながらボールを取り上げ、
少年の手を強引に引っ張ってグラウンドに駆け出しました。
少年が1人じゃ練習をやる気が起きないのなら、
一緒に尻を叩きながら練習してやればいいとハカセは思ったのでした。

いや、ハカセ自身、本当は1人じゃなくて誰かと一緒に思いっきりやることに飢えていた自分に気付いたのです。
それはもちろん新武器の開発のことですが、
その改めて気づいた迸る感情をぶつけるように、
ハカセは少年と一緒に思いっきり汗まみれになってサッカーをしました。
走り回って叫びまくるハカセに乗せられて、いつしか少年も目を輝かせてボールを追いかけ始め、
2人はある時は敵同士となってボールを奪い合い、ある時は味方同士となってパスを繋いでいき、
遂にはハカセの蹴った鋭いロングパスに合わせた少年のボレーシュートが
ゴールのサイドネットに突き刺さりました。

「ああ!?」と、あまりに見事にシュートが決まったことに
自分のことなのに少年は驚き、歓喜の表情を浮かべます。
ハカセも「よしっ!!」と我が事のように大きくガッツポーズをとり、
少年に駆け寄り「やったぁ〜!よくやったぞ!」と抱き合い握手します。
なお、このサッカーのシーン、ハカセ役の清水くんとこの少年役の子の2人ともサッカー経験者なので、
吹き替え無しでやったようで、なかなか見事な動きでした。

その後もハカセと少年は空が真っ赤な夕焼けになるまで延々とサッカーの練習を続け、
最後はヘトヘトになって、2人並んでゴール前の地面の上に空を見上げて寝っ転がっていました。
「・・・なぁんだ・・・思ってたより結構上手いじゃん!」と、ハカセは荒い息を鎮めながら言います。
下手くそだと自称していた割には最後の方は少年が結構上手かったので少し驚いていたのです。
これならレギュラー取れても良さそうなものなのに、どうしてダメだったのだろうかと不思議にも思いました。

少年は「すいません・・・」と謝ります。
もうこれは口癖のようになっているようですが、
ここでは少年はハカセを驚かせてしまい、しかも上手いと誤解させてしまったことを詫びているのでした。
実際、少年はそんなに上手くはないのです。いや、上手くはなかったのです。
少年は寝転がったまま首だけハカセの方を向いて「・・・でも、1つ分かりました・・・」と言います。
「何が?」とハカセも寝転がったまま首だけ少年の方に向いて問い返すと、
少年は再び空を見上げて「僕は、皆と試合に出たいから1人で上手くなろうと思ってた・・・
でも、仲間と一緒に頑張れば、実力よりもっと力が出せるんですね・・・」と言ったのでした。

つまり少年はチームメイトと一緒にフィールドでプレーをしたくてレギュラーを目指したが、
自分に自信が無いから皆の前でレギュラーを目指すアピールをせずに普通に補欠の練習をして、
レギュラーになるための練習としてはたった1人で自主練習して上手くなろうとした。
しかしそれでは上手くはならず、結局レギュラーにもなれなかった。
でも、今ハカセと一緒に練習してみて、マグレではあっても普段の1人の練習では感じられないような
手応えを何度も感じることが出来たのです。
こんな短い時間の練習で自分の実力が上がったわけではないことは少年にも分かっています。
でも、だからこそ、仲間と一緒にプレーすることによって、
実力を超えたプレーというものが生まれるものだということを少年は実感することが出来たのでした。

これは実は少年の1人の練習が無駄だったという意味ではない。
少年が1人の練習をとことんやって、もうこれでダメなら諦めようと思えるほどやっていたからこそ、
少年は自分の実力の限界を知ることが出来たのです。
自分のダメなところを思い知ることが出来たのです。自信も失うほどに自分の実力を知ったのです。
だからこそ、ハカセとの練習で自分の実力では有り得ないプレーが生まれることに気付くことが出来たのです。
自分の限界を思い知った者でなければ、それを自分の実力だと勘違いしてしまうものですが、
少年は自分の限界を知っていたために、仲間との練習が自分の実力以上の何かを生み出すことを
ハッキリと実感出来たのでした。

そして、その気付きは非常に貴重な気付きです。
「仲間と一緒に頑張れば実力以上の力が出る」という気付き、
これは個人競技であれば別に大して価値は無い気付きです。
試合の時は所詮1人なのですから、1人で発揮出来る実力だけが問われるのですから。
しかし、サッカーのようなチーム競技というのは、
個人の実力に合わせて、まさにこの「仲間と一緒に頑張るから発揮される実力を超えた力」によって
優劣を競う競技なのです。
だから、この力の価値にこの年齢でここまでハッキリ気付いたことは、
この少年のサッカー競技者人生において、非常に大きな財産なのです。

そのことに少年は、ハカセに無理に練習に引き込まれたことによって気付くことが出来た。
しかし、それはこの少年ならば、ハカセに無理に練習に誘われなくても、
自分から仲間と一緒に練習すれば気付くことは出来たはずなのですが、
少年は変な劣等感のせいで自分からそのチャンスを遠ざけていたのです。
そのことを少年は反省していました。

そして、ハカセも少年のその言葉を聞いて、空を見上げて同じように反省していたのでした。
いや、その反省は少年以上でした。
少年は今まで「仲間と一緒に頑張れば実力以上の力が出せる」ということは知らなかったのだから、
その真理に近づけなかったのも仕方ないといえます。
しかし、ハカセは「仲間と一緒に頑張れば実力以上の力が出せる」ということは知っていたのに、
そのことを忘れ、自分からその真理を遠ざけていたのです。
ハカセは空を見上げて、自分がそのことを初めて知った時のことを想い出しました。

ここでハカセの回想シーンが流れますが、これは非常に抽象的なシーンで分かりにくいです。
一見、回想シーンでなくて単なるイメージシーンのようにも見えてしまうくらいです。
真っ暗な空で、岩場のような場所に白い霧が立ち込めていて、
そこにマーベラス一味の鎧を除く5人が追い詰められた様子で居ます。
鎧が加入する前であるのは確実で、メンバーの服装や髪形が第1話と同じなので、
5人が地球にやって来る前、何処かの星でザンギャックと戦っていた時の場面なのでしょう。
アイムが加入した後ですから地球に来る少し前ぐらいなのかもしれません。
どういうわけか全員変身していないので、変身出来ないほどダメージを受けているのか、
何らかの理由で変身出来ない状態なのかもしれません。

追い詰められた様子のマーベラス一味の5人ですが、
ジョーが「やれ・・・ハカセ!」と厳しい口調で言い、ルカも「ハカセ!」と必死で叫び、
アイムも「頑張ってください!」と苦しそうにハカセに呼びかけます。
そのハカセはマーベラスの肩を担いでしゃがんでおり、
マーベラスは何処か負傷しているようで、戦えない状況のようです。
ジョー、ルカ、アイムの3人も動けない状態のようで、だからこそ皆、ハカセに戦うよう促しているようです。
確かにハカセとマーベラスが同じような状況であれば、マーベラスがハカセに肩を担がせるわけはないので、
ハカセだけは無傷なのでしょう。

しかし、このシーンは何か異様です。
ハカセ以外の4人が悉く負傷している状況でハカセだけ無傷というのは普段の状況ではあまり考えられません。
それに、ハカセしか戦える者がいない状況ならば、当然ハカセは誰に指示されるまでもなく
仲間を守るために戦うはずです。
それなのにいちいちジョーたちがハカセに声を揃えて戦うように必死に言うのは妙です。

そしてマーベラスですが、自分のゴーカイガンを取り出して、決意の表情でハカセにそれを差し出し、
ハカセはそれを見て驚き、一瞬躊躇しますが、
ジョーたちの「ハカセ!」「ハカセ!」「ハカセさん!!」という声に応えるように
意を決してマーベラスのゴーカイガンを受け取ると、自分のゴーカイガンと合わせて二丁拳銃にして、
「わあああああ!!」と叫びながら乱射して飛び出していったのでした。

回想シーンは以上ですが、ここも異様で、
どうしてゴーカイガンをハカセに渡すだけでここまで重々しいシーンになるのか、
第1話以降の物語を見てきた人には理解が難しいでしょう。
二丁拳銃といえばハカセの基本スタイルだからです。

しかし、この場面が二丁拳銃スタイルの誕生シーンと考えれば理解しやすいでしょう。
考えてみれば、ハカセが加入する前のマーベラス一味というのは、
マーベラス、ジョー、ルカの3人戦隊であり、
マーベラスは銃と剣を使うスタイルで固定で、ジョーもルカも剣が得意ですから、
この3人の場合、ゴーカイジャー独特の「武器交換」というものが生じる余地がないのです。
ハカセが加入したことによって、ジョーとハカセが武器を交換して二刀流と二丁拳銃になるという
「武器を交換しながら戦う」というゴーカイジャーの戦闘スタイルが生まれたのです。
そして同様にルカとアイムの間でも同様の武器交換が成立するようになり、
その後、5人は地球にやって来たのです。

その「武器交換」スタイルの創始される前提として、
ハカセの「二丁拳銃」スタイルというものが生まれたのだと思われます。
この変則的な戦闘スタイルがゴーカイジャー内で生まれるまでは、
ゴーカイジャーの戦闘スタイルは海賊の伝統的な銃と剣を片手ずつ握るというもので、
これはマーベラスがずっと続けていますし、今でも5人は基本はこのスタイルです。
ジョーやルカやアイムはそれぞれ自分の得意な武器はあっても、
この時期はこの海賊スタイルに忠実に戦っていたのだと思います。

しかしハカセだけはそうではなかった。
ハカセは海賊スタイルよりも二丁拳銃で戦う方が断然戦力になったのでしょう。
だから、ハカセが危ない時に仕方なくジョーが武器交換をして助けてやったのが
武器交換の最初だったのではないかと思います。
ところが、その結果、ジョーはもともと得意だった二刀流でも戦えるようになり、戦力アップとなったのです。
同様に、ジョーがやるのならルカも得意の剣で二刀流で戦うようになり、
アイムも銃の腕に磨きをかけて二丁拳銃の名手となり、
結果的にはハカセの二丁拳銃がきっかけになってゴーカイジャーの戦力は大幅にアップしたのです。

だから、ハカセの回想シーンでザンギャック相手に苦戦していたようなマーベラス一味は
地球に来た時にはザンギャック部隊を瞬殺出来るほど強くなっていたのです。
つまり、実はマーベラス一味は地球に来る少し前に一度、大幅な戦力アップを成し遂げているのであり、
その発端はハカセが二丁拳銃を使うようになったことなのです。

そのハカセの「二丁拳銃」が偶然誕生した場面が、このハカセの回想シーンだと思われます。
もしハカセがこの時点で二丁拳銃スタイルを確立していたのなら、
マーベラスはあんなに決意した表情でゴーカイガンを渡さないであろうし、
ハカセもあんなに驚きはしないでしょう。
だから、戦える者がハカセしかいない状況でマーベラスが自分のゴーカイガンをハカセに託して、
ハカセがそれに応えて二丁拳銃で戦ったのが、二丁拳銃スタイルの誕生秘話なのでしょう。

しかし、このシーン、それだけではどうも説明がつかない。
ハカセが戦えるのなら別に普通にゴーカイサーベルとゴーカイガンで戦えばいい。
二丁拳銃の方が強いというのは、やってみて初めて分かったことであり、
この時点では分からないはずです。
だからマーベラスは何もわざわざ自分のゴーカイガンを渡す必要はなく、
単に普通にハカセを励ますだけでよかったはずです。

それでもマーベラスはこの場面でいきなりハカセに自分のゴーカイガンを渡しています。
それはつまりハカセがゴーカイサーベルをからっきし使えないということを意味しているのでしょう。
というか、ゴーカイガンを渡された時のハカセの驚きやその後の躊躇いの表情、
そして二丁拳銃をぶっ放した時のヤケクソ気味の様子などから考えて、
ハカセはこの時までまともに戦ったことが無かったのではないかと思えます。

だからこそ、ジョー達はわざわざ必死になってハカセに戦うよう促したのであり、
ハカセだけが無傷だったのも、単にハカセだけ戦闘に参加していなかったからなのでしょう。
しかしこの場面では既にアイムがいますから、ハカセは一味に加入してそれなりに期間は経過しているはずです。
それなのに、アイムは戦っているのにハカセは戦っていないというのはどういうことなのか?

これは想像ですが、ハカセは最初はマーベラス一味に非戦闘要員として加入したのではないかと思います。
おそらく食事係として加入したのでしょう。だから今でも食事はハカセ担当なのです。
ハカセは食事係としてガレオンに乗ったので、一応モバイレーツは与えられていたが、
当初は戦闘には参加していなかった。
それが地球に来る少し前ぐらいにハカセ以外の4人が負傷して大ピンチとなり、戦う羽目になった。
それ以降、なしくずしに戦闘に参加するようになり、地球へやって来た。
だから第1話あたりではハカセは5人の中では一際臆病で肚が座っていない印象だったのです。

さて、銃と剣のどっちが難しいかというと、上手に使いこなそうと思えばどっちも難しいでしょう。
ただ、素人がとりあえずムチャクチャでもいいから使おうというのなら、銃の方が断然マシです。
だからそれまで戦ったことのなかったハカセが他の4人が負傷して戦えない状況で戦わねばならなくなった際に、
ゴーカイガンだけで戦うのは正解であり、
マーベラスはハカセの戦闘力を少しでも上げるために自分のゴーカイガンを託したのでしょう。

その時のハカセの驚きの表情を見る限り、
マーベラスはそれまで自分の武器を他人に貸すなどということは無かったのでしょう。
それだけマーベラスは武器を大切にしており、
それゆえ当然、この時期のマーベラス一味には「武器交換」などという概念は無かった。
しかし、この時、マーベラスはハカセを信じて、ハカセに賭けて、自分の武器を初めて他人に託したのです。

そしてハカセはその信頼に応えたいと思って、
マーベラスの力と自分の力を合わせ、マーベラスと一緒に戦うという意識を持つことによって、
心を奮い立たせることが出来て、立ち上がって戦うことが出来た。
そして、戦えるはずがなかったハカセが実力以上の力を発揮して、その場を切り抜けることが出来たのです。

あの時、自分は仲間と一緒に戦い、仲間と力を一つに合わせれば、
実力以上の力を生みだせることに気付いたはずだと、ハカセは今、思い返しました。
そして、それはマーベラス達も同じことに気付き、
その結果、マーベラス一味はハカセという戦力を加えただけでなく、
武器交換という発想を生み出して、大幅な戦力アップに成功したのです。

だからマーベラス一味においては
「仲間の力が一つになることによって、大きな力を生みだすきっかけとなる」ということは
既に実績として存在していたのです。
バスコやシールドンに打ち勝つためのパワーアップの答えはとっくに存在していたのです。
そのことを知っていたはずなのに、自分は忘れていた。
変な劣等感に捉われて、その答えを自分から遠ざけていたのです。
寝転んで空を見上げながら、ハカセは自分の迂闊さを大いに反省しました。

少年も空を見上げながら
「・・・仲間の力が一つになれば、より大きな力になるんですね・・・!」と言って、ハカセの方を見ます。
ハカセはちょうど過去の二丁拳銃を初めて使った時のことに思いを巡らせていたので、
どうして少年がその時の自分の気持ちを分かるのだろうかと不思議に思ってしまい、
まじまじと少年の顔を見ます。
が、少年が「・・・サッカーって!」と言うと、ハカセは、ああそうか・・・サッカーの話だった、と思い出して
目を細めてまた空を見上げ、「・・・そうだよ!」と応えます。

そして上体を起こして「皆の力があるから、ダメだなんて弱音を吐かなくなるんだよ!」と言います。
少年に向かって言っていると同時に、ハカセは自分自身にも言い聞かせているのです。
そして、「それを今から証明してみせる!」と言うと、ハカセは立ち上がり、少年に向き合います。
少年も起き上がり、ハカセを見ます。

ハカセが何をしてそのことを証明しようとしているのか、少年にはよく分かりませんでした。
実際、ハカセも少年には意味が分からないだろうとは思ったし、
実際に今から自分がやろうとしていることを少年に見せることが出来るわけでもないことも分かっていました。
ただ、自分のこれからやろうとすることが成功することが、
少年の今回気付くことの出来た確信の正しさを証明することになるのだとハカセ自身が強く思うことが、
この大事なことを想い出させてくれた少年への感謝の気持ちとなるのだと思い、
ハカセは少年に向かって笑顔で力強く頷くのでした。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
にほんブログ村 にほんブログ村 テレビブログ スーパー戦隊へ
にほんブログ村
posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 23:54 | Comment(0) | 第32話「力を一つに」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。