2011年11月30日

第39話「どうして?俺たち高校生」感想その1

今回はレジェンド回で、メガレンジャー篇です。
前々回、前回のゴーカイジャー篇ともいえるカンゼンゴーカイオー登場篇の2篇が恐ろしく濃厚で、
更にその前のゴーオンジャー篇の2篇も濃厚であったので、
久しぶりに清涼感あふれるエピソードで、タイミング的に非常に好印象でした。

この作品「海賊戦隊ゴーカイジャー」も、前回、敵軍の司令官ワルズ・ギルを倒して、
事実上は一旦、地球侵略組織を退けたような形となり、
普通ならそこで最終回でも良いほど、内容的にもテーマ的にも完結しました。

普通なら、というのは、ゴーカイジャー単体が普通に地球を守る地球の戦隊であったならば、という意味で、
そういう作品ならば、前回で終わっても支障は無かったぐらいです。
しかし、この作品はスーパー戦隊シリーズ35作記念の、歴代戦隊が総登場するという特殊な作品ですから、
ここで終わりにはなりません。

まだスーパー戦隊の大いなる力で未登場のものが、
バトルフィーバーJ、サンバルカン、ファイブマン、カクレンジャー、メガレンジャーの5つ残っています。
また、バスコに奪われたままのチェンジマン、フラッシュマン、マスクマンの3つの戦隊の大いなる力も、
このまま放置しておくわけにはいきません。
つまりマーベラス一味はあと8つのスーパー戦隊の大いなる力を手に入れなければならない。

そして、その後、地球にあるという「宇宙最大のお宝」を手に入れることが出来るのかどうかの
ドラマも描かれることになるでしょう。
その過程で、同じく「宇宙最大のお宝」を狙っていると思われるバスコとの因縁の決着もつけなければならないし、
その流れの中で現在、生死不明のアカレッドの再登場も描かれることになるでしょう。

また、前回、司令官のワルズ・ギルおよび特務士官バリゾーグを失った
ザンギャック地球侵略軍の参謀長ダマラスと開発技官インサーンもいずれは巻き返しを図ってくるであろうし、
前回初めてワルズ・ギルの回想シーンで登場した、ザンギャック皇帝アクドス・ギルも、
息子のワルズ・ギルを殺されてこのまま黙っているはずもなく、
きっとマーベラス一味を抹殺しようとして手を打ってくるはずです。

地球侵略に関してはもともとはワルズ・ギルの箔付けのために行われたフシがあるので、
ワルズ・ギルが死んだ今となっては、ザンギャック帝国にとってさして重要事項ではないのかもしれないが、
もともと一度は征服しようとしてレジェンド戦隊に阻止され、
そしてまた今回、皇太子の敗死という惨敗で、つごう二度も征服に失敗した星ということになり、
ザンギャック帝国としてもこうなったら帝国の威信に賭けて
征服しないわけにはいかなくなっているような気もします。

そうなると、地球侵略軍を編成し直すというよりは、皇帝率いる本軍が乗り込んでくるのではないかと思われます。
まぁ、この物語は最後はザンギャック皇帝を倒してザンギャック帝国を崩壊させないと綺麗に終わらないと思うので、
おそらく皇帝が地球に乗り込んでくるという展開になるのでしょう。
その皇帝率いるザンギャック本軍との戦いと「宇宙最大のお宝」が何らかの形で絡んでいくと思われ、
バスコも加わった三つ巴の戦いとなるのでしょう。
そして、戦う力を失った34のスーパー戦隊は最後はどうなるのか、
戦う力を取り戻すことは出来るのかも描かれると思います。

このように最終クールはかなり盛りだくさんの内容となるのが予想され、
バトルもいっそう激しく盛り上がっていくでしょう。
ただ、そのクライマックスのバトルに登場する強力な敵に
ゴーカイジャーがそれにどうやって対抗していくのかが問題です。

前回、ゴーカイジャーは、ゴーカイジャーの大いなる力「夢を掴む力」に目覚めて、
ゴーカイジャーのレンジャーキーに秘められた力を全て引き出すことが出来るようになって、
完全なるゴーカイジャーになったということになっています。
その力でワルズ・ギルを倒し、ザンギャック最強の決戦機のグレートワルズも倒しました。
前々回、地球を守りきる自信が無かったマーベラス達も、
これで地球を守る自信を持つことが出来るようになったでしょう。
これでゴーカイジャーは完全に「地球を守るヒーロー」となったのであり、
35番目のスーパー戦隊となったといえます。

ただ、前回のグレートワルズやワルズ・ギルは確かに強敵でしたが、
おそらくクライマックスに登場する敵はそれよりもっと強力だと思われます。
具体的には、ザンギャック皇帝アクドス・ギル、バスコ、そしてダマラス、
少なくともこの3人との決着をつける戦いはワルズ・ギルとの戦いよりも厳しい戦いとなるでしょう。
また、34のスーパー戦隊が束になってやっと相討ちすることが出来たザンギャック主力軍との戦いも、
グレートワルズとの戦いとはケタ違いの厳しい戦いであり、
それがクライマックスには再来する可能性もあります。

ところが、それに対抗するゴーカイジャーの方は、
前回で「完全なゴーカイジャー」になってしまっており、潜在能力を全て使ってしまっています。
しかし、これから前回のワルズ・ギル以上の敵と戦わねばいけない以上、
更なるパワーアップはしなければいけません。
しかしゴーカイジャーのレンジャーキーの潜在能力は全部使ってしまった以上、
もともとあったパワーを引き出すのではなく、新たなパワーを加えていかなければいけません。
そういうわけで、ここから先の「大いなる力」を獲得するレジェンド回の性格は
変わっていくことが予想されるのです。

1クール目から3クール目までのレジェンド回がどういうものであったのか、
前回のゴーカイジャー篇でその意味合いはハッキリしました。
それは一言で言えば、前回の「ゴーカイジャーの大いなる力」の獲得に向けてのステップであり、
マーベラス一味が地球を守るヒーローになるためのステップであったのでした。

つまり、「地球を守るヒーロー」とは、地球を守って戦うための力を己の中に生み出すことが出来る者であり、
その力を生み出す源となる何らかの精神性を心の中に持つ者のことです。
歴代34のスーパー戦隊はそういう者達でした。

一方、マーベラス一味は当初は「地球を守るヒーロー」ではありませんでした。
しかし本当は心の中に地球を守って戦うための力を生み出す多くの精神性を潜在的には持っていた。
ただ、彼らはそれらの精神性のうちの多くは持っていることすれ無自覚であり、
しかも自分の持っている精神性が「地球を守って戦う力」を生み出す源になるという自覚はありませんでした。
だから彼らは「地球を守って戦うヒーロー」ではなかったのです。
そういうマーベラス一味がレジェンド回を重ねていくことによって、
1つずつ、自分達の持つ精神性が「地球を守って戦う力」を生み出すことが出来ることを学んできたのでした。

そのレジェンド回の構造はこういう感じです。
マーベラス達が元レジェンド戦士と出会って、互いのドラマが交錯することによって、
元レジェンド戦士はマーベラス達が自分の戦隊の地球を守るために戦う力を生み出す源となる精神性と
同じ精神性を持っていることを知って、
マーベラス達ならば自分の戦隊の「大いなる力」を引き出すことが出来ると判断して「大いなる力」を渡す。
一方、マーベラス達はその元レジェンド戦士の戦隊が地球を守るための戦う力を生み出す源としていた精神性と
同じ精神性を自分達も持っていることに気付き、
自分達もその戦隊のようにその精神性から地球を守るために戦う力を生み出すことが出来ると思うようになる。
そうしてその結果、渡された「大いなる力」を引き出して戦うことが出来るようになるのです。

ただ、今まで渡された全ての「大いなる力」を戦いの場で使ったわけでもなく、
戦いの場で「大いなる力」を使うこと自体が最重要なのではありません。
大事なのは、そうしてレジェンド回を重ねていくにつれて、
マーベラス一味が1つずつ「地球を守って戦うための力を生み出す源となる精神性」が
自分達の心の中に存在することを認識していくことだったのです。
そうやってマーベラス一味は少しずつ「地球を守るヒーロー」へと成長してきた。

そして、26戦隊の「大いなる力」を獲得し、
自分達の心の中に26個の「地球を守って戦うための力を生み出す源となる精神性」を認識した結果、
遂に前回のゴーカイジャー篇で、マーベラス達は自分達の根幹といえる精神性である
「夢を掴むために集まった仲間たちの絆」が「地球を守って戦う力」を生み出すことが可能だということに
気付くことが出来たのでした。
その結果、「ゴーカイジャーの大いなる力」を引き出すことが出来るようになり、
マーベラス一味は、地球を守って戦うヒーローである、完全なるゴーカイジャーとなったのです。

つまり、前回までにマーベラス一味の心は完全に地球を守って戦うヒーローの心になったのであり、
もともと彼らが心の中に潜在的に持っていた「ヒーローの精神性」は全て
前回までに覚醒したのだと見ていいでしょう。
となると、もうこれ以上、マーベラス一味の心の中に潜んでいる精神性をドラマの展開の中で引っ張り出してきて、
レジェンド戦隊の精神性との共通性を探す必要は無いのだといえます。
つまり、ゴーカイジャー篇以降の最終クールのレジェンド回においては
マーベラス一味の秘められた精神性を俎上に載せるようなドラマ展開はする必要が無いということです。

マーベラス一味の潜在的な精神性はゴーカイジャー篇までに全て掘り起こされ、
全てヒーロー的な精神性として覚醒済みなので、もはやそこはこれ以上掘り下げる必要は無いのです。
そこはもう掘り下げても無駄です。
むしろ、最終クールにおいてマーベラス一味の成長に必要はことは、
潜在能力を掘り起こすことではなく、新たに外部から能力を加えることなのです。
つまり彼らがもともと持っていなかったもので、クライマックスの戦いにおいて有効な何かを新たに獲得することが、
これからは最も大事なのです。

となると、最終クールの「大いなる力」獲得のレジェンド回は、
マーベラス一味がもともと持っていない要素を
「地球を守って戦う力を生み出す源となる精神性」として持っている戦隊の元戦士が登場し、
その元戦士との交流でその精神性を学んだマーベラス一味が、
新たにその精神性を自らの「戦う力を生み出す源」に加えて、
地球を守るヒーローとして一歩、成長するという構造になるべきです。

つまり、このような物語構造の場合、マーベラス一味の方の精神性を掘り下げるような展開は必要無く、
ただ単にマーベラス一味が当該戦隊の精神性を触れるという展開だけでいいのです。
このゴーカイジャー篇以降のレジェンド回の物語構造は、
ゴーカイジャー篇以前のレジェンド回の、いちいちマーベラス一味とレジェンド戦士の精神性を両方掘り下げて
その一致点を探るようなややこしい物語構造に比べてシンプルです。

当初、「現役戦隊が歴代戦隊と競演する」というこの作品の企画内容を聞いた時、
多くの人が想像したのは、このシンプルな方の物語構造だったことでしょう。
ただ、そのシンプルな物語構造が避けられて、
ここまではより複雑な、ゴーカイジャー篇以前のレジェンド回の物語構造が一貫して描かれてきたのは、
そのシンプルな方の物語構造にしてしまうと、ゴーカイジャーという現役戦隊が、
単に歴代34戦隊の弟子的存在になってしまい、非常に影が薄くなってしまうことが危惧されたからでした。

現役戦隊であるゴーカイジャーのキャラをしっかりと自立させるためには、
何も知らない連中が歴代戦隊に教えを乞うという展開ではなく、
もともと彼らが持っている要素が歴代戦隊との出会いによってヒーロー的要素に転化していくという展開にして、
レジェンド回でもしっかりと彼ら自身の要素をメインに据えたストーリーを作るようにした、
そういう工夫だったのでしょう。

ならば最後までその路線で貫き通せばいいと思われるかもしれないが、
最後までそういう感じにしてしまうと、
マーベラス一味は最後の最後にようやく「地球を守るヒーロー」としての
完全なゴーカイジャーになるということになってしまい、それはヒーロードラマとしてはちょっと困る。
やはり、途中でマーベラス一味はしっかりと「地球を守るヒーロー」として完成させて、
真っ当なヒーロードラマも描かないといけないでしょう。

だから、3クールの締めでマーベラス一味を「地球を守るヒーロー」として完成させて、
最終クールはマーベラス一味は完全に地球を守るヒーローとして戦い、
レジェンド戦隊からは自分達には欠けている新たな精神を学んで成長していき、
それによって3クール以前よりも強大なクライマックスの敵を倒す力を獲得するという、
かなり王道的展開となるのだと思われます。
これを1クールからやったりすればゴーカイジャーという現役戦隊の影が薄くなるという
弊害が出たのでしょうけれど、
最終クールになった段階ならば、もうゴーカイジャーという現役戦隊のキャラは完全に確立しているので、
レジェンド回でマーベラス一味の精神性が深く描かれなかったとしても、全く悪影響は出ないのです。

さて、そういうわけで、最終クールのレジェンド回ではマーベラス一味は、
もともと自分達には無い精神性を、
その精神性を戦う力の源とする戦隊の元レジェンド戦士と会って、
それが地球を守って戦う力を生み出す源として自分達にも使えるものだと思って、新たに学び、
「大いなる力」と共に受け取るということになると予想されます。

言い換えれば、まだマーベラス一味に「大いなる力」を渡していない、
バトルフィーバーJ、サンバルカン、チェンジマン、フラッシュマン、マスクマン、ファイブマン、
カクレンジャー、メガレンジャーの8戦隊は、
マーベラス達にはもともと無い何らかの精神性をその戦う力の源として
地球を守るために戦っていたのだと予想されます。

ただ、それはあくまでちゃんとレジェンド回が描かれた場合の話です。
チェンジマン、フラッシュマン、マスクマンは「大いなる力」のバスコからの奪還は描かれるでしょうけれど、
レジェンド回は描かれないでしょうから、
この3戦隊の精神性がマーベラス一味にとって最終クールで追加で獲得すべき新たな精神性という扱いは
されないでしょう。

ここにきて、どうやら大葉健二さん絡みでバトルフィーバーJ篇がある可能性が高くなってきたので、
おそらくこの「大いなる力」未取得の8戦隊のうち、
最終クールでレジェンド回が無いのがサンバルカン、チェンジマン、フラッシュマン、マスクマンの4戦隊で、
最終クールでレジェンド回があるのがバトルフィーバーJ、ファイブマン、カクレンジャー、メガレンジャーの
4戦隊でしょう。

つまり、マーベラス達にはもともと無い何らかの精神性をその戦う力の源として地球を守るために戦っていた戦隊は、
バトルフィーバーJ、ファイブマン、カクレンジャー、メガレンジャーの4戦隊と予想されます。
その中で今回、トップバッターとして登場するのが、スーパー戦隊シリーズ第21作、
1997年度の作品である「電磁戦隊メガレンジャー」です。

ただ、あくまでこの「ゴーカイジャー」という物語のレジェンド回は、戦隊同窓会的なノリでは作られておらず、
ゴーカイジャーの物語としての必然性に基づいてレジェンド回が組まれています。
すなわち、この最終クールの一番最初のエピソードでメガレンジャー篇がチョイスされているというのは、
この時点のゴーカイジャーにとって、メガレンジャーの持つ精神性が
新たに獲得すべき精神性と合致しているからに他なりません。

この「メガレンジャー」という作品はスーパー戦隊シリーズの大きな転機となった作品です。
それは、この「メガレンジャー」の序盤で放送時間帯がそれまでの金曜17時30分開始の時間帯から、
日曜7時30分開始の現在と同じ時間帯に変わったことに関連します。
スーパー戦隊シリーズは2月上旬に第1話が放送されるという、
通常の他の番組には例の無い特殊な放送スケジュールになっているので、
それで4月改編時期に合わせて放送時間帯の変更となっただけのことで、
この「メガレンジャー」という作品は最初から日曜朝7時30分開始の時間帯での放送を想定して
企画が立てられた作品です。

ただここで重要なのは日曜朝への時間帯変更そのものではありません。
この時間帯変更に伴って、スーパー戦隊シリーズがそれまでの25分番組から、30分番組へと変わり、
5分間、放送時間が長くなったということが重要です。
30分前後の放送時間の番組で、5分の延長は非常に大きいことです。
これによって「メガレンジャー」は人間ドラマを緻密に描けるようになり、
テーマの明確な戦隊を描くことに成功し、それが好評を得たのです。

それによって、それ以降、日曜朝のスーパー戦隊シリーズは
「ギンガマン」「ゴーゴーファイブ」「タイムレンジャー」と、次々とテーマの明確な戦隊の物語を描き続け、
21世紀に入って「ガオレンジャー」で大ブレイクしたのでした。

そうしたスーパー戦隊シリーズの「戦隊のテーマが明確」という現在に至る流れの起点となった
節目の戦隊が「メガレンジャー」であり、
それゆえ、「ゴーカイジャー」のレジェンド回においてメガレンジャー篇をやらないはずはないと
思っていたのですが、なかなか終盤までやらなかったので、どうしたのだろうか?と思っていたのですが、
最終クールでゴーカイジャーには無い要素を持った戦隊のレジェンド回が来るという構成になっていたのならば、
確かにメガレンジャー篇は最終クールまで待たねばいけないはずです。

何故なら、メガレンジャーほど、ゴーカイジャーから遠い戦隊も無いだろうからです。
ゴーカイジャーという戦隊も確かに異色ですが、
メガレンジャーもまた、全く違った意味で極めて異色な戦隊なのです。
だからこそテーマが明確だとも言えますが、
ある意味、対極にある戦隊だけに、メガレンジャーという戦隊の持つテーマ、精神性というものは、
ゴーカイジャーには決して持つことが出来なかったものなのです。
そして、それは確かにこれまでのゴーカイジャーには不要な精神性であったが、
おそらくそれはクライマックスの戦いにおいて必要になってくるものなのです。

そういうわけで今回、マーベラス達は「メガレンジャーの大いなる力」と共に
その精神性もレジェンドゲストの元メガレッド伊達健太から受け取ったのですが、
それでも「大いなる力」の移動のためには、
マーベラス達はその精神性が自分達の地球を守る戦いに使えるものだと認めて受け入れなければならないのですが、
もともとはマーベラス達には無かった精神性ですから、
昔のマーベラス達ならば、このメガレンジャーの精神性を自分たちに必要なものだと
認めて受け入れることは出来なかったでしょう。

それが今回、素直に受け入れることが出来たのはどうしてなのかというと、
実は今回のメガレンジャーの精神性は、
前回のゴーカイジャーの大いなる力の源となった精神性である「夢を掴むために集まった仲間の絆」と
繋がっているからなのです。
だから、前回のゴーカイジャー篇を受けて、その次のエピソードがメガレンジャー篇となっているのです。
そういう意味で今回は最終クールの最初のエピソードとして比較的静かに始まったようでいて、
実はかなり重要なテーマが描かれたエピソードだと言えます。

そういうわけで今回は、元メガレッドの伊達健太の導きで示されたメガレンジャーのテーマを
マーベラス達が素直に受け入れるという展開となっており、
これまでのレジェンド回のようなマーベラス達とレジェンド側との葛藤やぶつかり合いはありません。
そもそもマーベラス一味の側のドラマは今回は全く描かれません。
そういうわけで非常にシンプルなお話になっています。
その分、ものすごく分かりやすいお話で、とても見やすく、すっきりして爽快感のあるお話といえます。

ただ、あまりにシンプルだけではつまらなくなるので、
メガレンジャーの極めて特殊な世界観を再現して、その特殊な世界観の中にマーベラス一味を放り込んで、
ビジュアル的な面白さで魅せようとしています。
すなわち、戦隊ドラマであると同時に学園ドラマであった「メガレンジャー」の世界観を再現して、
今回のメガレンジャー篇は学園ドラマになっており、
マーベラス達6人は学生服のコスプレを披露する羽目となっているのです。

学生服のコスプレというと、戦隊シリーズでよくある「学園潜入エピソード」のようですが、
今回は6人は潜入しているわけではなく、まさにコスプレしているだけで、
周囲の生徒たちも教師たちも、学生服を着て校内を歩いているマーベラス達が
宇宙海賊のゴーカイジャーであることは分かっています。
だから「学園潜入エピソード」ではなく、あくまで「メガレンジャー篇」であり、
「メガレンジャー」が学園ドラマだったからその世界観を再現したら
学園でのマーベラス達のコスプレになってしまったというだけのことです。

ただ、そういうエピソードに面白味を加味するための学園コスプレであるにもかかわらず、
マーベラス達が学園にコスプレして混じって学園生活を送り、
他の生徒たちがマーベラス達がゴーカイジャーだと知っているというその奇妙な設定が、
ちゃんと後でメガレンジャーのテーマや精神性に繋がってくるのですから、
やはり相変わらず今回の脚本の香村さんは巧いです。

そのマーベラス達の敵として今回登場するのはザンギャックではなくバスコです。
ザンギャックは前回、司令官のワルズ・ギルと幹部のバリゾーグが戦死するという大変な事態が起きており、
一時活動不能状態のようです。
それで、やはり「大いなる力」争奪戦ということでバスコの登場で、
バスコはメガレンジャーの大いなる力を奪おうとして奸計を仕掛けてきます。

ただ今回はあくまでマーベラス達がメガレンジャーの大いなる力を受け取るというのが話のメインであり、
バスコはほとんどその邪魔をするために現れた、記号的な敵役という感じで、
まぁ今回のシンプルなお話をバスコの奸計が大きく動かしてくれているわけで、
バスコの今回の役割は、あまりに平和で波乱の無いマーベラス達と健太との織り成す学園ドラマを揺り動かして、
ちゃんと変身ヒーロードラマらしい展開に引っ張っていってくれるという、
極めて重大なものであるかもしれません。

そういえば「メガレンジャー」本編も、ネジレジアの連中が何か悪事を働いてくれなければ、
延々と平和な学園ドラマが続くという傾向はありましたから、
今回の話はまさに「メガレンジャー」的なお話で、
バスコはネジレジアの役割を担っていたといえます。
ただ、バスコが今回、学園に爆弾を仕掛けるという策に出るのですが、
これはメガレンジャーの精神性を明らかにする重要な要素となりますから、
その点、バスコは良い仕事をしてくれています。

そのバスコ本人の問題としては、今回もまた相変わらず飄々としていて
何を考えているのか分かりにくいままでしたが、
さすがバスコ関連のエピソードの大部分を書いている香村さんだけあって、
今回はバスコの意外な一面も見えたりして、終盤に向けてバスコという重要キャラにも伏線を張り始めたようです。

なお、今回、マーベラス達がコスプレして紛れ込む諸星学園高校で、マーベラス達がバラバラに行動して、
それぞれ何人かの生徒たちと接触するのですが、
この生徒たちはキャラ的には今回ゲストで登場する健太を除いた他のメガレンジャーの元メンバーである、
耕一郎、瞬、千里、みくという4人に対応したキャラとして描かれています。

東映の公式ホームページで今回のエピソードの予告ページで、
この諸星学園高校の生徒たちに注目するように、という文があり、
それは彼らの劇中のちょっとした活躍のことを指すのか、
あるいはこの元メガレンジャーのメンバーに対応したキャラについてのことなのか、
イマイチ分かりません。

ただ、どうもこの生徒たちが気になります。
ルカとハカセがデジ研の部室で会った男女1人ずつのデジ研部員と、
ジョーとアイムが見かけた恋する女の子と憧れの先輩男子、
そしてマーベラスが飛び入りしたバスケット部の部員、
これらの生徒を演じていた役者が、これぐらいの役にしては妙に存在感があって、奇妙な印象なのです。

これはもしかして、何らかのカメオ出演なのではないか?
もしかしたら来年の戦隊に出演するとか?
まぁ来月あたりには次の戦隊に関する情報も出てくるようなので、そのあたりもハッキリするのでしょうけれど。
例えばアイム役の小池唯さんも「ゴーカイジャー」開始の半年前に
「仮面ライダーW」最終話にカメオ出演していたので、
東映はたまにそういうことやるので、少し気になったまでです。
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 23:57 | Comment(0) | 第39話「どうして?俺たち高校生」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月29日

第38話「夢を掴む力」感想その6

ドゴーミンの率いるザンギャック部隊を全滅させたマーベラス達でしたが、
そこに「負け犬の分際でバリゾーグを倒し、俺様に噛みついたこと、今度こそ後悔させてくれる!!」と
怒り狂いながら、グレートワルズに乗り込んでワルズ・ギルが飛んできます。
これに対して、マーベラス達は「今度こそ、あの七光り野郎を倒す!!」と、
ゴーカイオーと豪獣神で立ち向かいます。
皇帝の息子というだけでバカ息子のクセに司令官をやってることを「親の七光り」と評しているわけです。
ただ、さっきは完敗したというのにマーベラス達は非常に強気です。

ここで何故か戦いの舞台が山中からビル街に変わりますが、
まぁ戦隊シリーズではよくあることなので、このへんは細かく突っ込みません。
とにかく相変わらず白い騎士っぽくてカッコいいグレートワルズでビル群の間を闊歩しながら、
コクピットでワルズ・ギルは「このグレートワルズには、貴様ら程度の力では敵わん!!」と吼えます。
確かにさっきはゴーカイジャー側はグレートワルズに全く歯が立たなかったので、
ワルズ・ギルの言うことの方が説得力はあります。

しかし、マーベラス達はさっきはグレートワルズのパワーとスピードに圧倒されて
全力を出し切る前に諦めて敗れてしまったので、今回は最初から全力を出していくつもりです。
つまりスーパー戦隊の「大いなる力」を使って決め技をいきなり出していくというわけです。
「まずは俺がいきます!」と言って、まず鎧が豪獣神を使って「豪獣トリプルドリルドリーム!」と、
いきなり決め技を出します。

これはアバレンジャー、ジュウレンジャー、タイムレンジャーの3つの戦隊の「大いなる力」を同時に使う大技で、
今まで破られたことは無い。
おそらく「大いなる力」関連の技の中では最強技といえます。
しかし、こういう大技というのはいつもはだいたい相手が弱ってきて動きが鈍くなってから使うものであって、
パワーもスピードも豪獣神よりも勝っているグレートワルズがまだ全くピンピンしている状態で使っても、
そうそう上手くいくものでもありません。

案の定、豪獣神から豪獣レックスと豪獣ドリルが分離して3つのドリル攻撃が始まり、
ドリルがグレートワルズに達する前に、ワルズ・ギルはワルズアローを撃ってきて豪獣神を攻撃し、
ドリル攻撃を止めてしまいました。
これは相手に命中させる前に攻撃を止められてしまっているので、
3つの戦隊の「大いなる力」を合わせたパワーがグレートワルズに通用しなかったというわけではなく、
単に豪獣トリプルドリルドリームという技が破られたということになります。

しかし、続いてマーベラスが「マジゴーカイオーでいくぞ!」と号令をかけて
ゴーカイオーをマジゴーカイオーにチェンジし、
マジドラゴンを放って豪快マジバインドをグレートワルズに喰らわせたものの、
ワルズ・ギルは「もはや俺の怒りは、その程度では消せん!!」と、凄い気迫でグレートワルズを操って、
周りを囲んだ3つの魔法陣を粉砕し、マジドラゴンを払いのけてしまいました。
これは完全に豪快マジバインドを喰らった上で破っており、
グレートワルズの能力はマジレンジャーの「大いなる力」よりは上なのだといえます。

スーパー戦隊の個々の力にそんな大きな差は無いはずですから、
つまりこれは、単独のスーパー戦隊が全力で戦っても
グレートワルズには勝てないということを意味するのだと思います。
ザンギャック最強の決戦機というのはそれほどの能力を有しているのであり、
さすがにワルズ・ギルの地球侵略軍ではなくザンギャック本軍の力は
歴代の悪の組織を超える途轍もないものだといえます。

確か「199ヒーロー大決戦」映画の冒頭のレジェンド大戦のシーンで
大破して動かなくなったゴセイグレートの姿が映っており、
あそこで描写された最後の等身大戦の前に巨大戦が行われたことが窺い知れますが、
そこにはゴセイジャーの「大いなる力」に相当するゴセイグレートを倒すだけの敵が存在したということでしょう。
他のスーパー戦隊の巨大戦力も姿を消していたので、ゴセイグレート同様に潰されたと思われ、
おそらくその相手は戦艦程度ではなく、ザンギャック軍の決戦機だったのでしょう。

といっても、グレートワルズは帝国の最後の切り札的な決戦機なので、
レジェンド大戦には参戦していなかったのであろうと思われ、
それより格下の決戦機が34のスーパー戦隊の巨大戦力と戦ったのでしょう。
となると、おそらく1対1でスーパー戦隊の巨大ロボを倒すほどの能力があったわけではなく、
34のスーパー戦隊の繰り出す巨大ロボや巨大メカの数を遥かに上回る数の決戦機が投入され、
それらの決戦機もいなくなっていたところを見ると、相討ちで両方とも全滅したのでしょう。
となると、あるいはザンギャック帝国には今はグレートワルズ以外の決戦機は存在していないのかもしれません。

しかしともかく、1機でスーパー戦隊1つの力を凌駕するグレートワルズのような
決戦機を作れるだけの軍事的能力がザンギャック帝国には有るわけですから、恐るべき相手だといえます。
まぁ豪獣トリプルドリルドリームならば3つの戦隊の力を合わせた技ですから、
グレートワルズにも通用するのかもしれませんが、
これは厳密には3つの戦隊の大いなる力を同時に発動してから合体させる技なので、
その分テンポが遅れて、スピードのあるグレートワルズには通用しない技となっているといえます。

そういえば「空飛ぶ幽霊船」映画で別々の戦隊の5つのレンジャーキーを同時に挿して、
5つの戦隊の大いなる力を同時に出現させて攻撃したこともありましたが、
あれはおそらく、各戦隊の「大いなる力」を5分の1にしたものを同時発動させていただけであり、
総パワーとしては1つの戦隊の「大いなる力」と同じなのでしょう。

つまり、結局は、通常攻撃もダメで、「大いなる力」を使った攻撃もダメとなり、
ゴーカイジャーにはグレートワルズに通用する技は無いということになります。
これで優劣は完全に決したといえます。
もはやゴーカイジャー側に打つ手はありません。

しかし、マーベラス達は全くひるむことなく、今度はハリケンゴーカイオーにチェンジして、
「ゴーカイ風雷アタック!」と、今度はハリケンジャーの「大いなる力」である風雷丸を放ちます。
「拙者にお任せくだされ!必殺奥義、乱れ桜!参らん!!」と分身して
巨大手裏剣を掲げて飛び立つ無数の風雷丸でしたが、
ワルズ・ギルはワルズギルティをグレートワルズの胸の顔から発射し、
風雷丸たちは「うわああ!?」と蜘蛛の子を散らすように蹴散らされてしまいました。
やはり、マジレンジャーの「大いなる力」に引き続いて、
ハリケンジャーの「大いなる力」もグレートワルズには通用しなかったのでした。

そして今度は、打つ手の無いゴーカイジャー側に対してグレートワルズが攻勢に転じて、
ワルズアローを連射してゴーカイオーと豪獣神をメッタ撃ちして追い詰めます。
ゴーカイオーと豪獣神のコクピットでは、また前回の戦いと同じように火柱が上がり、
またもや絶体絶命の状況となります。
結局は前回と変わらない完全に劣勢の展開となり、前回はここらで諦めてしまっていた6人でしたが、
今回はまだ諦めたりはしないようで、
マーベラス達は「マッハルコン!!」と、今度は猛攻に晒される中で
ゴーオンジャーの「大いなる力」であるマッハルコンを召喚して、グレートワルズに突っ込ませます。

しかしマッハルコンは前回の戦いでグレートワルズには全く歯が立たず、
ワルズアローを喰らって次元の壁の向こうに追い返されてしまっています。
それでも今回はマッハルコンは「またアイツか!今度は命張っていくぜ!!」と果敢に突っ込み、
ワルズアローを巧みに避けてグレートワルズに迫りますが、
結局、ワルズギルティを喰らって吹っ飛ばされます。

遂には一度敗れた「大いなる力」まで繰り出して攻撃してくるマーベラス達に
ワルズ・ギルは「どこまでも往生際の悪い奴らだ!」と呆れますが、
マーベラス達はまだ立ち向かう姿勢で、マッハルコンも今回は次元の壁の向こうに撤退はせず、
「このままで終わってたまるかよ!」と踏みとどまってゴーカイオーの前に降り立ちグレートワルズを睨みつけます。

ワルズ・ギルはマーベラス達のあまりのしつこさに驚きました。
そもそも前回の戦いでグレートワルズに完敗しているのですから、
海賊たちがまともに立ち向かってくるとも予想していなかったのです。

ワルズ・ギルの認識ではザンギャックは堂々たる宇宙の覇者であり、宇宙の統治者です。
つまりワルズ・ギルの中ではザンギャックこそが正義であり、宇宙の平和を維持する存在なのであり、
海賊などはその平和を乱して帝国の臣民を苦しめるどうしようもないチンケな悪党に過ぎないのです。
だから卑怯な連中に決まっており、バリゾーグが倒されたのも海賊の卑怯な騙し討ちにあったのだと思っていました。
そうでなければバリゾーグが海賊などに負けるわけがない。
だからきっとグレートワルズで討伐しようとしても、一度完敗しているのですから、
絶対に敵うわけがないと思って海賊たちは逃げて、それを追い駆けないといけないとワルズ・ギルは思っていました。

ところが予想に反して海賊どもが立ち向かってくるので、
まだ勝ち目が無いことが分かっていないのだと思い、
ワルズ・ギルはわざと海賊たちの技を受け、それを破って海賊たちの勘違いを正してやろうとしたのでした。
それで、海賊たちの決め技を次々と破ってみせて、
実力差を思い知って慌てて逃げようとする醜態を晒したところを仕留めてやろうと思っていたのですが、
いくつもの決め技を破られて、もう完全に勝ち目が無いことは分かったはずなのに、
まだ海賊が立ち向かってくるのでワルズ・ギルは驚いたのです。

そして、海賊たちは勘違いして勝てると思っていたわけではなく、
負けると分かっていて、死を覚悟して突っ込んできているのだと思い、更に驚きました。
ワルズ・ギルの認識では、海賊などはザンギャックの正規軍が攻めてくれば姑息に逃げ回り、
防御の弱いところばかりを狙って奇襲を繰り返すような卑怯な連中でした。
正規軍に正面からぶつかって戦うなど絶対にしないし、そもそも海賊がそんなことをする必要など無い。

しかし、こうして明らかな劣勢であるのに正面から立ち向かってくるということは、
どうもこれは普通の海賊ではなく、何かよほどの覚悟があって、
この地球でザンギャックと戦う意思があるようだとワルズ・ギルも気付いたのでした。
それはつまり、ザンギャックによる宇宙の制覇に反対する意思なのだということです。

今まで、自分の星の異質性を守ろうとしてザンギャックによる統治を拒んで抵抗してきた者達は宇宙にも多くいたが、
そのような者達はワルズ・ギルから見れば愚か者でした。
宇宙はザンギャックによる統治の下でこそ平和が維持されるのであり、
その恒久平和の大義のために多少の不自由や不便があるのは仕方ないことであり、
そのザンギャックによる平和に逆らう者を討伐することは宇宙の平和を維持するためには仕方ない、
微々たる犠牲でしかない。
そういう考え方に染まったワルズ・ギルから見れば、
ザンギャックによる支配を拒んで自分の星を守ろうなどといって戦う者は愚か者でしたが、
単に知恵の足りない連中なのだろうと見下すだけで済む連中でした。

ところが、この海賊たちは自分と何の関係も無い星である地球を
ザンギャックに支配されないようにしようとして戦っている。
それはつまり、真っ向からザンギャック帝国の存在そのものを否定する思想でした。
それはワルズ・ギルから見れば宇宙の平和と安定そのものを否定する狂気の思想でした。
つまり、このマーベラス一味という海賊は、普通の無法者ではなく、
狂ったアナーキストの集団であったのです。
そして、その狂信は自分達こそが正義だという勘違いを生み、
この海賊たちは自分達こそが正義だと信じ込んでいるので、
その正義に殉じて死ぬことなど恐れていないのだろうと、ワルズ・ギルは思いました。

それによって、ワルズ・ギルはどうしてバリゾーグが海賊に不覚をとったのか分かった気がしました。
たぶんバリゾーグは海賊どもが死を覚悟して突っ込んでくるような
狂信者であることに気付いていなかったのだろう。
だから普通なら逃げる場面で逆に襲い掛かってきた海賊の行動を予測出来ず、
不意打ちを喰らったのだろうと思いました。

そして同時に、ならば自分はそんな不覚はとりはしないと心に決めました。
相手が死を覚悟して捨身で襲ってくることが予測出来ていれば、決して不意打ちは喰らわない。
相手が死を覚悟して突っ込んできてくれるならば、それが分かっているならば、
考えようによっては逃げる相手を追いかける手間が省けていいとも言えました。
それでワルズ・ギルは余裕と威厳をもって
「忌々しき海賊ども・・・死を迎え入れる覚悟は出来たか!?」とマーベラス達に向けて言いました。

ところがそのワルズ・ギルの言葉を受けると、
間髪入れず、鎧は豪獣神のコクピットで「そんな覚悟なんて要らない!!」とピシャリと言い返します。
これには「・・・なにぃ!?」とワルズ・ギルは驚きました。
死ぬ覚悟も無く、この絶望的状況の中、勝ち目の無い突撃を繰り返していたとは、
いったいどういうことだと不可解に思ったのでした。

すると、ゴーカイオーのコクピットではルカは「この程度で、あたし達がひるむと思ってんの!?」と、
いつも通り、腕を回して軽く言います。
この圧倒的な劣勢は、ルカにとっては劣勢と感じるようなものではないようです。
そしてジョーは気迫を込めて「打つ手が無くとも・・・絶対に逃げたりしない!!」と応じます。
ジョーも打つ手が既に無いことは分かっているのです。それでも逃げはしないという。
かといって死を覚悟しているわけでもない。
これは確かに不可解です。

その謎を解く言葉は、ハカセが「なんてったって、僕たち海賊だもんね!?」と冗談めかして言います。
ワルズ・ギルから見れば、海賊というのはちょっとした劣勢ですぐに怯んで逃げ出すような連中ですから、
このハカセの言葉は全く理解不可能でしたが、
ハカセをはじめマーベラス一味の皆にとっては「海賊」とは、強者が弱者を支配する世界の摂理から抜け出て、
自由、つまり、強者の支配を受けずに自分の意思で自分の人生を決定することを目指した者達でした。

それがつまり「夢を掴む」という行為なのであり、
それは強者が弱者を支配する世界の摂理に反した行為ですから、世界を敵に回す危険な行為です。
そうした危険に挑み、夢や自由を掴もうとすることで、
もともと弱かった者が本当の強さを得た者達が「海賊」なのです。

だから自らを「海賊」と認識し、「海賊」の誇りを持つ者は、
自分よりも強い者には絶対に屈してはいけない。
相手が強いからこそ、怯んではいけないし、逃げてもいけない。
そういうのは、「海賊」の生き方に反するからです。
とにかく強者によって動かされることがあってはいけない。
常に強者の意思に逆らい続ける反骨精神こそが海賊の強さなのだといえます。
だから、相手が殺しにかかっている時に死の覚悟を持つなど、絶対にあってはならないのです。
海賊のやるべきことは常に1つ、自分の自由な意思に従って、夢を掴むために突き進むことのみです。

しかし、そうはいっても、実際はワルズ・ギルが考えるように、
マーベラス一味の他の海賊たちも結局はザンギャック帝国という究極の強者の前では
怯み、逃げ回り、挙句の果てには死の覚悟を決めるところまで追い込まれて、
強者のいいようにその自由や夢を蹂躙されてきました。
いや、さっきグレートワルズに敗れた時までのマーベラス達は、まさにそのようでありました。

それがどうして今は怯まず、逃げず、死の覚悟すら拒絶できるほど強くなれたのか?
どこで、マーベラス一味と他の海賊たちの差はついたのか?
さっきまでのマーベラス一味と今のマーベラス一味の違いは何なのか?
それはマーベラス一味が自分達の「絆」の持つ力を知ったことです。

「自由」や「夢」というと、何か字面は美しいが、
自分の意思で自分の人生を決定するというと、それは解釈のしようによっては、
己の欲望のままに規律を破って悪事を働いてもいいということでもあります。
それは結局は他人に自分の欲望を押し付けて、他人の自由や夢を踏み躙ることにもなります。
だから、実は自由な者同士や夢を追う者同士が絆を結ぶというのは難しいことです。
自由や夢を求める者はエゴが強くなりがちだからです。

だから、もともと自分の夢を掴もうとして海賊となった連中が寄せ集まった海賊団は、
それぞれのエゴがぶつかり合って仲間割れして、強さを発揮することは出来ず、
ザンギャックに敗れていきました。
赤き海賊団だって、バスコという裏切り者がお宝を独り占めしたいというエゴを通すために
他の仲間の夢を踏み躙って壊滅しました。
これが他の海賊たちの実態でした。

いや、海賊だけではなく、結局、人間は互いのエゴをぶつけ合って、
力を合わせることが出来ずに強い者に支配されていってしまうことになりがちであり、
ザンギャックはそうした人間の愚かしさに付け入って宇宙を支配したのだといえます。

ならば、互いにエゴで争うことのないように、皆が同じ夢を目指すことにすればいいという考え方もあります。
しかし、実はこれこそがザンギャックの思想であり、
1つの夢に全ての者を従わせようという発想へと繋がっていきます。
人間は1人1人違うのですから、他人と同じ夢を持つことは出来ません。
それを1つの夢だけにまとめようとすれば、結局は最も強い者の夢を除いて、他の夢は圧殺され、
自由は奪われることとなるのです。

だから、ザンギャックのような強大な力を持ち、自分以外の自由や夢を認めようとしない者に対抗するためには、
各自が自由に夢を追いながら、力を合わせていけるような絆を結ばなくてはいけません。
今、マーベラス達がザンギャックに決して屈しない強い気持ちを宣言することが出来るようになったのは、
自分達の絆にその力があることが分かったからなのです。

その根源といえるのはマーベラスが「宇宙最大のお宝」という、実態もよく分からない、
とにかく宇宙最大の夢を掴もうとしている稀有な人間だったことです。
マーベラス自身が「宇宙最大のお宝」が何なのか知らずに本気でそれを掴もうとしているため、
結局はマーベラス」という人間の中身は、
夢を求める強い意思、自由を求める強い意思そのもののようになってしまい、
他の独自の夢を持つ5人は、そのマーベラスの夢や自由を求める意思の強さに惹かれて、
「宇宙最大のお宝」という途方もない夢を追いかけることで、
自分もマーベラスのように夢を掴もうとする強い意思を持つことが出来るかもしれないと思い、
それでマーベラスの仲間になろうと思ったのです。

一方、マーベラスも、「宇宙最大のお宝」という正体も分からない夢を掴むためには、
とにかく、バラバラな方向性の夢を掴もうとする強い意思を結集する必要があると思い、
目指す夢が何であるのかはどうでもよく、
とにかく世界を敵に回して強い意思で夢と自由を掴もうとして突き進んでいる者を仲間にしたいと思っており、
そのお互いの想いが一致した者達が仲間に加わった5人なのです。

つまり、このマーベラス一味の6人は、夢を同じくする仲間なのではなく、
お互いの夢や自由を掴もうとする想いの強さを尊重し合う仲間なのです。
そういう仲間同士だから、お互いの夢を求める気持ちや自由を求める気持ちを尊重し、
自分のエゴを押し付けることなく力を合わせることが出来て、
互いの夢を掴むために協力し合うことが出来る。
そうした気持ちを同じくした6人であったのです。

アイムは「私達、6人の気持ちは1つです!!」と凛とした声でワルズ・ギルに向けて言い放ち、
そうした互いの夢を尊重する気持ちこそが自分達を真の「海賊」とし、
ザンギャックに対しても決して怯むこともない強さをもたらしたことを示します。

そうして、その6人の気持ちが1つになった結果、
6人の夢は1つになるのではなく、6つの夢のまま、6人皆の夢になったのです。
シドの魂がジョーに言った「お前達みんなの夢」とはそういう夢であり、
そうして多くの夢を掴もうとするようになり、夢が大きくなればなるほど、6人は強くなっていきました。

その結果、夢を掴むために集まった仲間の絆が自分達にある限り、
自分達は夢を大きく膨らませれば膨らませただけ、無限に強くなることが出来るのだと
マーベラス達は気付いたのです。
さっきグレートワルズに敗れた後、ルカとハカセとアイムと鎧は互いの遣り取りの中で、
ジョーはバリゾーグとの戦いとシドの魂との会話の中で、
そしてマーベラスはアカレッドとの不思議な会話の中で、それぞれがそのことに気付き、
そして、6人が揃った後のドゴーミン達を撃破した戦いの中でそれを確信したのです。

つまり、夢を掴むために集まった仲間の絆で結ばれた海賊は夢の大きさの分だけ強くなるのです。
だから、今までの自分達では勝てない強敵に打ち勝つためには、
今までの自分達が掴もうとしていた夢よりももっと大きな夢を掴もうとすればいい。
その夢とは「地球を守り、人々の自由を守り、人々の夢を守りたい」という
海賊には不相応なほどに大きな夢です。
だからこそ、それを掴むために突き進めば自分達は強くなり、強敵を倒すことが出来る。

そのことを確信したマーベラスは、右手をぐっと前に突き出して、拳を固く握り締め、
「ああ!・・・夢をこの手で掴むまで、俺たちは突き進むだけだぁっ!!」とワルズ・ギルに向けて
強く宣言したのでした。
すると、その瞬間、ゴーカイオーのコクピットに座る
マーベラス、ジョー、ルカ、ハカセ、アイムの5人のバックルがひっくり返って光を発したのです。
「これは・・・!?」と驚く5人の目の前を、バックルから浮かび上がってきたレンジャーキーが光を発します。
そのレンジャーキーは、なんとゴーカイジャーのレンジャーキーでした。

「ゴーカイジャーのレンジャーキーが・・・光った!?」とアイムが驚きの声を上げると、
豪獣神のコクピットから「こっちもです!!」と鎧も言ってきます。
鎧のバックルからも同様にゴーカイシルバーのレンジャーキーが光を発して浮かび上がってきたようです。
これは、いつものレジェンド戦隊の「大いなる力」が初めて引き出された時に起きる現象と
同じだと気付いたルカは「もしかして・・・!」と言います。
そういえば、巨大スゴーミン軍団との戦いの時にマッハルコンに質問されて、
結局よく分からなかった「ゴーカイジャーの大いなる力」というやつなのかもしれないと思ったのでした。

マーベラスも、何だかよく分からないが、
これはゴーカイジャーのレンジャーキーをコクピットの鍵穴に挿せということなのだろうと思い、
「よしいくぞぉ!!」と浮かんでいるゴーカイレッドのレンジャーキーを掴んでカギ型にして号令をかけ、
6人は一斉に「ゴーカイ!レンジャーキー!セット!!」と叫びつつ、
ゴーカイジャーのレンジャーキーを自分のコクピットの鍵穴に挿して回しました。

すると、ゴーカイオーからはゴーカイジャーの海賊旗のマーク、豪獣神からは錨のマーク、
そして何故かマッハルコンからも「13」の数字を模したマッハルコンのマークの、
それぞれの形の光が浮かび上がったかと思うと、次の瞬間には、3体は眩い閃光を発します。
この閃光に視界を奪われ、グレートワルズのコクピットのワルズ・ギルは「うう?・・・なにぃ!?」と怯みます。
マーベラス達と問答していたら突然、ゴーカイオーと豪獣神とマッハルコンが閃光を発し、
いったい何が起こったのか、ワルズ・ギルには理解出来ませんでした。

その閃光の中、ゴーカイオーと豪獣神の胸部ハッチがそれぞれ開き、
それぞれのハッチから光が照射されて空中で交差します。
「・・・何が起こった!?」と戸惑うワルズ・ギルの前で、その2つの光線の交点に、
1つの巨大な金色のタブレット状の物体が出現し、ゴーカイオーと豪獣神がそれを掴みました。
それは、マッハルコンの炎神ソウルと同じ形で、
しかしそれよりもかなり巨大な、金色の炎神ソウルのような物体でした。
そこには真ん中にゴーカイジャーの海賊旗のマークが刻印され、
その上に「KANZEN SOUL」と刻まれており、やはり巨大な炎神ソウルのようでした。
しかもやたら巨大ですから、これは巨大化したマッハルコンに挿すためのソウルのようでした。

そのカンゼンソウルの表面のゴーカイジャーのマークを見て、
マッハルコンは「なぁんだよ!無いとか言ってあるじゃねぇか!」と言うと、
急スピンしてゴーカイオーと豪獣神の方へ走りながら
「これがお前らゴーカイジャーの大いなる力だろぉ!?」と威勢よく問いかけます。
てっきりマッハルコンはマーベラス達がゴーカイジャーの大いなる力のことを自分に隠していたと思ったようですが、
マーベラス達は別に隠してなどいません。
こんな巨大なソウルは初めて見たので驚いていたところです。

しかしマッハルコンにそう言われると、「俺たちの大いなる力・・・」と、マーベラスは考え込み、
そして確かにこれはゴーカイジャーのレンジャーキーが光って挿した結果出現したものであるので、
ゴーカイジャーの大いなる力と考えるしかないと思いました。
34のスーパー戦隊のレンジャーキーのように、ゴーカイジャーのレンジャーキーにも
「大いなる力」が秘められていたということも意外でしたが、
どうしてそれが今まで自分達には引き出すことが出来ておらず、
急に今のタイミングで引き出されたのだろうかと不思議に思いました。

自分達がスーパー戦隊の大いなる力を引き出す時、
そのスーパー戦隊の何らかの精神を自分達と共通したものと感じることが、
その引き出される条件であったようにマーベラスも思っていたのですが、
何せマーベラス達自身がゴーカイジャーであるわけですから、精神の共通など感じる必要は無いわけです。
だから何がきっかけなのかよく分からないが、
タイミング的には、ワルズ・ギルに海賊の絆の力の話をしている時に
ゴーカイジャーの大いなる力が発現したようでした。

そこでマーベラスはハッと気づいたのでした。
今までのスーパー戦隊の「大いなる力」が引き出されたきっかけとなっていたのは、
自分達の中の何らかの精神とスーパー戦隊の最も大事な精神が一致していると感じたことではなく、
自分達の中の何らかの精神が、スーパー戦隊と同じように戦う力として使うことが出来ることに
気付いたことがきっかけだったのではないかと思ったのです。

そう考えると、まさにその通りでした。
マーベラス達は例えばマジレンジャーに出会うまでは「勇気」が強大な敵と戦う力になるとは思っていませんでした。
マーベラス達にとっての「勇気」はあくまで冒険のために使うものでした。
しかし、マジレンジャーという地球を守るためにザンギャックと戦ったという34のスーパー戦隊の1つが
「勇気」を戦う力に変えて戦っていたと知った時、
自分達も自分達の「勇気」を使ってザンギャックと戦えるかもしれないと思ったのです。
そうしたら、マジレンジャーのレンジャーキーが光ってマジドラゴンが出現したのです。
そうして今まで26個の戦隊の「大いなる力」を引き出してきたのだ。

ならば、今回も同じことです。
マーベラスはバックルから光ってゴーカイジャーのレンジャーキーが飛び出してくる直前、
「夢を掴むために集まった仲間の絆を持つ自分達ならば、大きな夢を掴もうとする力は強大な敵と戦う力になる」
という確信に達しました。
つまり、「夢を掴む力が戦う力に変わる」と覚ったのです。
そしてその瞬間、ゴーカイジャーの大いなる力が引き出された。
つまり、そういうことなのです。

「・・・夢を掴む力かぁっ!!」とマーベラスは思わずコクピットで大声で叫びました。
「夢を掴む力」こそがゴーカイジャーの大いなる力の源だったのです。
そして、その具現化した姿がこの巨大なソウルでした。

どうしてゴーカイジャーの大いなる力が、ゴーオンジャー風の炎神ソウルの形をしているのかとか、
どうしてこんなに巨大なのかなど、そういう細かい疑問点は、
まぁそれらはいろいろと玩具的事情や作劇的事情があるので、細かくツッコむのはやめておきましょう。

とにかくそういう形をしている以上、それはマッハルコンに挿入するるためのものであるのは明白で、
マッハルコンは走り込んできてゴーカイオーや豪獣神に車体の左側を寄せ、
「そのカンゼンソウルを俺様にぶっ挿せぇ!!バリバリィ〜!!」と叫びながら、車体左側のソウル挿入口を開きます。

マッハルコン自身の炎神ソウルを挿入するのは車体右側の挿入口であり、
そこにマッハルコンソウルを挿入することでマッハルコンは巨大化します。
そうして巨大化した状態で左側の挿入口を開き、
そこに巨大なカンゼンソウル=「ゴーカイジャーの大いなる力」を挿入すると、
何かとんでもないことが起きるようです。

どうしてマシンワールドで暴走族をやっていたマッハルコンがそんな都合のいい仕様になっているのかについては、
あえて突っ込むのはやめておきましょう。
とにかくここはもう勢いです。
そもそも、もう既にここは何処なのかというぐらい、真っ暗なバンク画面になっており、
ノリと勢いに任せるべき場面です。

6人の「カンゼンソウル!セット!!」というコールと共に
ゴーカイオーと豪獣神はカンゼンソウルを投げてマッハルコンの左側の挿入口に入れ、
挿入口を閉じてカンゼンソウルを取りこんだマッハルコンはバンク画面の中で走り出し、
ゴーカイオーと豪獣神も走ってその後ろに続きます。
そして「海賊合体!!」という掛け声と共にジャンプしたゴーカイオーと豪獣神は
それぞれ胴体と腕のパーツを切り離し、空中で豪獣ゴーカイオーとなり、
そこでいきなりハイウェイのバンク映像に切り替わって、
マッハルコンが「海賊合体!!」と叫んで5つのパーツに分解します。

そしてマッハルコンのボディ後部のパーツは縦に2つに分かれて豪獣ゴーカイオーの両脚にブーツのように連結し、
マッハルコンの後部マフラー部は5つの排気口を5本の指としたビッグハンドとなって
豪獣ゴーカイオーの左手の先に連結し、
マッハルコンのボディ前部のパーツは豪獣ゴーカイオーの開いた胸部ハッチに突っ込み、
マッハルコンの最後部パーツは兜となって豪獣ゴーカイオーの頭部にかぶさり、
そこにゴーカイケンが兜の前立てとしてくっつきます。
ちなみにマッハルコンの前輪は豪獣ゴーカイオーの背中につきます。
そうして豪獣ゴーカイオーの背中のダイヤルが回ると、
胸部ハッチに突っ込んでいた前部パーツが展開して胸のアーマーのようになり、
これで新たな巨大ロボが完成します。

「完成!!カンゼンゴーカイオー!!」と、
豪獣神からコクピットごと移動してきた鎧を含む6人が一堂に会したコクピットで叫んだ
その新合体の巨大ロボは、右手がドリル、左手がビッグハンド、両脚がタイヤで高速移動する、
ゴーカイオーよりも一回り大きい、堂々たる巨大ロボでした。

このカンゼンゴーカイオー、かなりカッコいいです。
いつもこの時期というのは、いわゆる「全合体ロボ」というやつが登場する時期なのですが、
余剰パーツを全く出さずにそれまでに登場した全ての巨大メカを合体させる「全合体ロボ」というのは、
どうしても不格好になりがちなので、
今回は余剰パーツを出すことは前提で、カッコよさを追求したデザインになっているようです。
だから、あまりバカでかいわけでもなく、これは全合体ロボというよりは、
1号ロボと2号ロボが合体する、いわゆる「スーパー合体ロボ」というやつに相当する大きさといえます。

近年のシリーズ作品では夏ぐらいに「スーパー合体ロボ」が登場して、
その後、秋に「全合体ロボ」が登場することが多かったのですが、
この「ゴーカイジャー」では、スーパー戦隊の「大いなる力」を換装パーツにして
ゴーカイオーにつけていくパターンが基本であるため、
通常はスーパー合体ロボが登場する時期に登場したハリケンゴーカイオーは普通に換装型ロボであり、
2号ロボである豪獣神とのスーパー合体ではありませんでした。

その後に登場した豪獣ゴーカイオーは、一応は1号ロボのゴーカイオーと2号ロボの豪獣神との合体でしたが、
実質的には豪獣神の腕パーツをゴーカイオーにおいて換装パーツとして使っているに過ぎず、
あくまでゴーカイオーをベースにした換装型ロボの1バリエーションでした。
そういうわけで結局は「ゴーカイジャー」においては
1号ロボと2号ロボの「スーパー合体ロボ」というのは登場せず、
むしろ、今回登場したカンゼンゴーカイオーというのは、
1.5号ロボとも言える豪獣ゴーカイオーと3号ロボともいえるマッハルコンとの
変則的な「スーパー合体ロボ」と言った方が適切かもしれません。

そして、なんといってもこのカンゼンゴーカイオー、
右手がドリル、左手が何やらゴッツいビッグハンドですから、何だかワクワク感があります。
しかも登場時のBGMがどう聞いてもこれは渡辺宙明サウンドです。
調べてみると「KANZEN TREASURE」という曲で、
作詞が八手三郎、作曲が渡辺宙明、唄が水木一郎という、なんとも素敵なラインアップです。
今回はインスト版ですが、今後、唄入りのものも期待しましょう。

ところで、このカンゼンゴーカイオーとは何なのか?
ゴーカイジャーの大いなる力はカンゼンソウルですから、
カンゼンゴーカイオーはゴーカイジャーの大いなる力ではないようです。
カンゼンゴーカイオーは、ゴーオンジャーの大いなる力であるマッハルコンと、
そのマッハルコンに挿入されて合体の触媒となったゴーカイジャーの大いなる力であるカンゼンソウル、
そしてアバレンジャーの大いなる力である豪獣ゴーカイオーが合わさったものです。
つまり、ゴーカイジャーとゴーオンジャーとアバレンジャーの3つの戦隊の大いなる力が合わさったものが
カンゼンゴーカイオーといえます。

ゴーカイジャーの大いなる力が
ゴーオンジャーとアバレンジャーの大いなる力を合体させる触媒となったようにも見えますが、
完全に触媒だけというわけでもなく、
ゴーカイジャーの大いなる力そのものにも大きな戦う力は存在しているようですから、
3つの戦隊の力が合わさったものといえます。

ただ、これは豪獣トリプルドリルドリームのような技とは根本的に違うものです。
豪獣トリプルドリルドリームは3つの戦隊の大いなる力を同時に別々に発動してから合体させる技ですが、
このカンゼンゴーカイオーは3つの戦隊の大いなる力を合体増幅させて1つの巨大な力にして
スムーズに運用するシステムであり、
豪獣トリプルドリルドリームよりもパワーもスピードも格段に優れています。

これは、第32話の時に考察したファイナルウェーブとゴーカイガレオンバスターとの違いに似ています。
ファイナルウェーブは複数のレンンジャーキーのエネルギーをバラバラに発射して
空中で合体させる非効率な技だったが、
ゴーカイガレオンバスターは複数のレンジャーキーのエネルギーを集束して
1つの巨大なエネルギーを生み出す効率的な武器でした。

つまり、ファイナルウェーブは豪獣トリプルドリルドリームに相当し、
ゴーカイガレオンバスターはカンゼンゴーカイオーに相当するわけです。
そして、ゴーカイガレオンバスターの完成に際しての重要なテーマは「力を1つに合わせること」であり、
それがあの時、ゴーカイジャーの大いなる力の最初の発現に繋がっていた。
そして今回、カンゼンゴーカイオーにおいても、ゴーカイジャーの大いなる力が全て引き出された結果
出現したカンゼンソウルがあってこそ3つの「大いなる力」が1つに合わさることになったのであり、
やはりゴーカイジャーの大いなる力は「力を1つに合わせる」という特性があるようです。
そして、それはやはり、ゴーカイジャーの大いなる力の本質が「夢を掴む力」であり、
それは夢を掴むために集まった仲間の絆が前提となっており、
つまり、夢を掴む仲間の力を1つに合わせるのがゴーカイジャーの大いなる力の特性であるようです。

さて、このカンゼンゴーカイオーの突然の出現に、グレートワルズのコクピットのワルズ・ギルは
「なんだと!?・・・これはいったい・・・!?」と驚愕します。
一方、カンゼンゴーカイオーのコクピットのマーベラスは「ド派手に突っ走るぜぇっ!!」と号令をかけて、
6人は操舵輪を回し、カンゼンゴーカイオーはグレートワルズに襲い掛かります。
グレートワルズはその攻撃を受け止めようとしますが、
カンゼンゴーカイオーの右腕のドリル、左腕のビッグハンドの攻撃は共に凄まじいパワーとスピードで、
グレートワルズは攻撃を受け止められず、モロに喰らってしまい「おわっ!?」とワルズ・ギルは驚きます。

そこで距離をとってワルズアローでカンゼンゴーカイオーを攻撃しますが、
カンゼンゴーカイオーはワルズアローを何発喰らっても全く動じることなく、
両脚のタイヤで走り前進し、グレートワルズに迫ります。
さすが、3つの「大いなる力」を1つに合わせてより大きな力としているだけのことはあります。

ワルズ・ギルはこの突然現れたカンゼンゴーカイオーというロボットが
以前の海賊ロボットとは比較にならないほど強いことは認めざるを得ませんでした。
そして、その強さが引き出されたきっかけとなったのが、
マーベラス達がこの不思議な現象の直前に言っていた「夢を掴む仲間の絆」だということも
だいたい想像はつきました。

しかし、もし「夢を掴む仲間の絆」が巨大なパワーを引き出すのだとするなら、
それは自分にも引き出せるはずだと思いました。
何故なら、ワルズ・ギルもまた前回の戦いの出撃前にバリゾーグと、
父やダマラスたち重臣を超えるという夢を語り、絆を結んだはずであり、
バリゾーグは死んでしまったが、今の自分はバリゾーグを心に抱いて共に戦い、
強くなろうとしていると、ワルズ・ギルは思っていました。

だから、父や重臣たちを超えてザンギャック帝国の皇帝となるという
大きな夢を掴もうとする自分とバリゾーグの絆は、
海賊ごときの絆など遥かに凌駕する強さを引き出すはずであり、
もともと最強の決戦機であるグレートワルズにその強大なパワーが加われば、
カンゼンゴーカイオーなどは物の数ではないと思い、
ワルズ・ギルは「俺は超える!ダマラスも父上も!・・・見ていろバリゾーグ!!」と気合を込めて
グレートワルズを操り、高速で移動して攻撃態勢に入ろうとします。

ところがマーベラス達は「カンゼンミサイル!!」と掛け声をかけ、
カンゼンゴーカイオーの左手のビッグハンドの5本の指からミサイルを連続発射し、
高速移動するグレートワルズを的確に捉えて悉く命中させるのでした。
フィンガーミサイルとは、なんとも昭和テイストで素晴らしいですね。
ドリルが腕の豪獣神とかとか、ゲッタースリー状態のゴーオンゴーカイオーとか、
この作品のロボットはなんとも男のロマンがよく分かってます。

一方、ミサイル攻撃を浴びてしまったグレートワルズのワルズ・ギルは「うわっ!?」と驚き、
「あああっ・・・ウソだ!どういうことだ!?・・・こんな虫ケラどもに・・・!?」と混乱します。
自分も「夢を掴む仲間の絆」は持っているはずなのに、
どうしてザンギャック皇帝の息子である自分の方が海賊より劣勢なのか、理解が出来ないのです。
しかし、これは当然の結果なのでした。

ワルズ・ギルは、あくまでザンギャック帝国という強者が弱者を支配する仕組みの中での
支配者を目指しているのであって、弱肉強食という世界の摂理を超えることが出来ていない。
だから、その世界の摂理を超えて、世界と敵対して戦う自由な世界で鍛えられた
マーベラス達の強さには勝てないのです。

また、ワルズ・ギルが絆を結んでいると思っているバリゾーグのワルズ・ギルへの忠誠は
機械的に強制されたものであり、彼の自由意思に基づいたものではない。
つまりバリゾーグは決して自分の意思で夢を見ることは出来ないのですから、
ワルズ・ギルとバリゾーグの絆は「夢を掴む仲間の絆」には絶対になり得ないのです。
よって、ワルズ・ギルの「父や重臣を超えて皇帝になる」という夢は、
仲間との自由や夢を掴もうとする意思を尊重し合うものとはならない、単なるエゴにしかならない。
単なる自分の欲望のためだけのエゴはワルズ・ギルに何の力ももたらしはしないのです。

ワルズ・ギルがさっきから自分の強さだと思っていたものは、単にグレートワルズの性能であったに過ぎず、
そもそも皇帝の息子だから無条件に使うことが出来る最強の決戦機の力に頼っている時点で、
ワルズ・ギルは帝国の壁はおろか、父も重臣も超えることなど到底出来る可能性は無かったのです。
だから、操るロボットの能力が逆転した今、ワルズ・ギルの脆弱な精神では、
この劣勢をひっくり返す強さなど引き出せるはずもなかった。

「カンゼンドリル!!」と掛け声をかけて、
今度はマーベラス達はカンゼンゴーカイオーの右腕のドリルを回転させながら振りおろし、
グレートワルズを叩きのめし、
ワルズ・ギルは「何故だ!?・・・何故、グレートワルズが押されている・・・?」と、
ただただ事態が呑み込めず混乱するのみとなりました。

そしてマーベラスはグレートワルズから距離をとると、「このまま一気に決めるぞ!!」と、
カンゼンゴーカイオーの左腕を思いっきり後ろにスイングバックし、
反動をつけて前にパンチを繰り出しながら「レッツゴー!!ゴーカイ!カンゼンバースト!!」と叫び、
なんとここで左手のビッグハンドを手首から切り離して発射、
ロケット噴射でグレートワルズ目がけて飛ばします。
これは、マジンガーZばりのロケットパンチです。これぞ男のロマンです。

このゴーカイカンゼンバーストのロケットパンチがグレートワルズを貫き、
「うおっ!?・・・なあああっ!?」と何が起きたのか分からず混乱するワルズ・ギルの周囲で
グレートワルズのコクピットは爆発を起こし火柱を噴き上げ、
「俺は・・・俺はこのまま・・・終わってしまうのかぁっ!?」というワルズ・ギルの諦めの絶叫の響く中、
グレートワルズは火花を散らしてのたうった後、ガクッと機能を停止して倒れ込み、
大爆発を起こし、ワルズ・ギルの断末魔の「うああああああっ!!」という絶叫が響き渡ったのでした。

こうしてザンギャック帝国の皇太子であり地球侵略軍の司令官のワルズ・ギルは
帝国最強の決戦機グレートワルズと共に壮絶に散ったのでした。
この模様をギガントホースのモニターで見ていたインサーンやダマラスは仰天します。
「・・・そんな・・・まさか、グレートワルズが・・・!?」とインサーンは信じられないものを見たように絶句します。
司令官の戦死よりも、帝国最強の決戦機が敗北したことの方が、
技官であるインサーンには大きな衝撃であったようです。

一方、ダマラスは、嫌な予感はしていたものの、
まさかワルズ・ギルが戦死するような結果になるとまで思っておらず、大変な衝撃を受け
「殿下・・・!」と絶句し、ガックリ肩を落とし、
「くうっ・・・!」と悔しげに、むなしく空席となった司令官席の方を見ます。
自分がついていながら、むざむざとワルズ・ギルを戦死させてしまった無力感ももちろんありましたが、
最後にワルズ・ギルの孤独を知ってしまった分、
ダマラスは長年それを理解することが出来ず、一緒に地球までやって来ていて
ワルズ・ギルに何もしてやれなかった自分を恥じ、悔やんでいたのでした。

さて、エピローグは戦いが終わって夕焼け空を行くゴーカイガレオンの船室です。
ソファのところにはルカ、ハカセ、アイム、鎧が集まりスーパー戦隊大百科の
シンケンジャーやゴセイジャーあたりのページを見ています。
そうしてアイムが「つまり・・・34のスーパー戦隊と同じように・・・私達にも大いなる力が
あったってわけですね・・・?」と頭の中を整理するように言います。
ゴーカイジャーにも「大いなる力」があったという事実が未だあまりピンときていないようです。

「なんだかちょっとピンとこないけどね」とハカセも微妙な顔をして言います。
確かにゴーカイジャーの大いなる力であるカンゼンソウルは3つのスーパー戦隊の力を合わせて
カンゼンゴーカイオーを出現させる力となり、これでゴーカイジャーは強大な力を得たことにはなります。
ただ、「大いなる力」というものはもともとは「宇宙最大のお宝」を手に入れるために
34個を引き出すためのものだったはずで、
そこに予想していなかった35番目の「大いなる力」としてゴーカイジャーの大いなる力が現れたというのは、
「宇宙最大のお宝」探しにおいてどういう意味があることなのか、
ハカセはちょっとよく分からなかったのでした。

これについては、おそらくゴーカイジャーの大いなる力の特性である「力を1つに合わせる」というのが、
34戦隊の大いなる力を合わせて何かをする時に必要になってくるような気がするのですが、
まだ詳細は分かりません。

今回、ちなみに一度も他戦隊への多段変身も無く、召喚戦士の登場も無く、
つまり「ゴーカイジャー」で初めて、ゴーカイジャー以外の戦士が登場しない珍しいエピソードでした。
これは、ゴーカイジャーの大いなる力の登場するエピソードですから、
徹底的にゴーカイジャーの力だけで戦った結果、ゴーカイジャーの大いなる力が引き出されるという
流れにしたかったという演出的な狙いでしょう。

ただ面白いのが、そうして引き出されたゴーカイジャーの大いなる力が、
他の戦隊の力を合わせる触媒として作用しているという点です。
そして今回のほとんど最終回のようなバトルで、決して物語は終わりにならず、
今後のクライマックスは今回よりも激しいバトルとなるということです。
その今回においてゴーカイジャーの全ての力が引き出され、それで勝利したということは、
今後のクライマックスの戦いにおいては、
ゴーカイジャーの力にプラスアルファで別の力も足さなくては勝てないほど
強大な敵が登場する可能性があるということです。
その別の力というのが34戦隊の力であるのかもしれず、宇宙最大のお宝であるのかもしれませんが、
そこでゴーカイジャーの大いなる力は何らかの役割を果たすのではないでしょうか。

一方、鎧は「これで俺たちも本格的にスーパー戦隊ってことですかね?」と嬉しそうです。
鎧の解釈としては、「大いなる力」を使いこなしたということは、
かつて「大いなる力」を含む全ての力を駆使して地球を守って戦った歴代34戦隊と
ゴーカイジャーは同等となったのだと誇らしいようです。

それに対してマーベラスはいつもの船長椅子でくつろぎながら
「さぁな!・・・しかし、俺たちは本当のゴーカイジャーになったってことだ!」と満足げです。
スーパー戦隊の一員になったかどうかは分からないが、
マーベラスにはそんなことよりも、
夢を掴むために集まった仲間の絆が自分達の戦う力になっていることに気付いたことが嬉しいことであったのです。
そして、その力でザンギャックの侵略から人々の自由と夢を守るという、
ゴーカイジャーの守るべきものを見つけたことでマーベラスの心は晴れ晴れしていました。

そのマーベラスにルカがニヤニヤ近づいてきて
「・・・でも、独りでゴーカイガレオンに残るなんてね!・・・ちょっとは寂しかったんじゃないの?マーベラス・・・」と、
からかうように聞いてきます。
マーベラスは「フン!・・・んなわけねぇだろ!」と鼻で笑いますが、
船長椅子の後ろに立っているジョーも身を乗り出してきて「実際のところ・・・どうだったんだ?」と聞いてきます。

すると椅子の後ろにとまっているナビィが「もう、心細くて泣きじゃくってたよぉ!」と酷いウソを言うので、
マーベラスは後ろに手を伸ばしてナビィを掴んで目の前に置き「鳥・・・」と睨むと
「ウソをつくなぁぁぁっ!!こらぁっ!!」と思いっきり押さえつけて揺さぶります。
しかしナビィは全く懲りた様子もなく
「泣いちゃってぇ!寂しい!寂しい!みんな何処行ったのぉ?って泣いてたよぉ〜!」とデタラメばかり言って
飛び回るので、マーベラスは「待て!泣かすな!泣いてねぇ!」と喚きながら船室の中を走り回り、
ナビィを追いかけ回し、仲間たちをそれを楽しそうに眺めるのでした。

さて、一方、大爆発を起こして破壊され、瓦礫の街に横たわるグレートワルズの残骸の中から、
夜になってようやくダマラスはワルズ・ギルの遺骸を運び出しました。
ここで遺骸が出てきて、これで完全にワルズ・ギルが死亡したことは確定したと見ていいでしょう。
実は生きていたとか、そういう可能性は無いと思います。

そして、ダマラスは抱き上げたワルズ・ギルの遺骸を見て、
「殿下・・・私がついていながら・・・!」と詫び、空を見上げます。
そこには満月があり、その月の前を横切るように、かなり遠くをゆっくりゴーカイガレオンが飛んでいます。
それを恨みのこもった射ぬくような視線で睨みつけながらダマラスは「・・・海賊めぇ・・・!」と呻くのでした。

ちなみにダマラスさんは今回初めて地上に降りたような気がしますが、どうも敵討ちとかしそうな気配です。
この人も最初はワルズ・ギルに対して二心ありそうな印象もあったのですが、
単に人間関係が上手くいっていなかっただけで、基本的には忠臣だったみたいですね。
ただ、バスコとの妙な関係や、皇帝との関係などは、まだまだ何か屈折したものがあるような気もして、
マーベラス一味への今回生じた恨みの感情も含めて、やはり注目すべきキャラとなってきました。

そして今回、EDテーマと次回予告の後、驚くべき告知がありました。
来年1月21日公開予定の新作映画「海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバン」の告知が来ました。
今回の告知映像では内容は全く分かりませんが、とにかくこのあまりに意外なコラボ企画、非常に楽しみです。

従来ならこの時期の冬映画は前年戦隊とのVSなのですが、
今年はゴセイジャーとのコラボは6月の「199ヒーロー大決戦」映画でやってしまったし、
記念作品らしく「VSスーパー戦隊」をやろうにも、
「ゴーカイジャー」の場合、TV本編が「VSスーパー戦隊」のようなものだし、
じゃあゴーカイジャー単独のお話にするのかとも思っていたのですが、
それは夏映画「空飛ぶ幽霊船」でやったし、
どうせまた「帰ってきたゴーカイジャー」のVシネ企画もあるのだろうし、
どうするのだろうかと思っていたら、意表をついて宇宙刑事とのコラボとは意外でした。
ただ、実質的にはゴーカイジャーがメインの話になりのかなぁという気はしています。よく分かりませんが。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 23:58 | Comment(0) | 第38話「夢を掴む力」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月28日

第38話「夢を掴む力」感想その5

グレートワルズに撃破されて山中に墜落していたゴーカイガレオンが再び動き出した頃、
宇宙空間のギガントホースの指令室では、てっきりマーベラス一味は皆死んだと思い込んで
ザンギャック幹部や兵士一同は祝賀会の真っ最中でした。
すると、そこにインサーンが深刻な顔でワルズ・ギルのもとにやって来て悲報を告げます。
「なに!?・・・バリゾーグが死んだだと!?」とワルズ・ギルは腰を抜かさんばかりに驚きました。
もたらされた情報は、マーベラス一味の死体捜索のために海賊船ゴーカイガレオンの墜落した山に
派遣していたバリゾーグが死んだという、ワルズ・ギルには信じられないような内容のものでした。

ワルズ・ギルの叫んだ声を聞いて、一斉に祝賀会場は静かになります。
インサーンは沈痛な面持ちで「・・・はい・・・先ほど、バリゾーグの生体反応が途絶えました・・・
どうやら海賊どもは生きていたようです・・・!」と説明します。
バリゾーグの身体の生体反応は常に異常が無いかどうかギガントホースでチェック出来るようになっているようで、
それが途絶えるのはバリゾーグが死んだ時しか考えられないというほど厳密なチェック体制であるようです。
それで技官のインサーンは現場に行かずとも
バリゾーグが死んだことをほぼリアルタイムで知ることが出来たようです。

たぶんこの生体反応検知システムというのは巨大化銃と連動しているシステムと思われ、
モニターでの戦場チェックと二重チェック体制となっているのでしょうけれど、
今回は戦闘が前提となっていないのでモニターでチェックはしていなかったのか、
そもそも巨大化銃を撃つという前提でなかったのか、どちらかでしょう。
そして、実際、バリゾーグが倒されても巨大化銃を撃とうという話にならないことから、
やはりバリゾーグに巨大化銃は使わないのが前提であるようです。

これは作劇的な理由としては、
おそらくこの「ゴーカイジャー」という作品は幹部怪人は巨大化させない方針であるように思えることがあり、
劇中設定的な理由としては、
以前考察したように、全身が改造体のバリゾーグは復活巨大化させると、
バリゾーグの姿は維持出来ないということなのでしょう。

結局、巨大化銃のシステムを使えばバリゾーグをシドに戻すことも可能で、
そこにインサーンが一役買うのではないかという推理は的外れに終わったようで、
バリゾーグおよびシドはこのまま退場くさいです。

ただ、巨大化銃と連動した生体反応検知システムならば、その生体反応の途絶えた地点は特定出来るはずなので、
バリゾーグが息絶えた場所は分かるのでしょう。
そして、その場所が海賊船ゴーカイガレオンが墜落した山であり、
バリゾーグに危害を加える者はそのあたりでは海賊ぐらいしか考えられないので、
インサーンは海賊たちが実は生きていて、死体捜索にやって来ていたバリゾーグと遭遇して戦いとなり、
バリゾーグは戦死したのだろうと推測しているのです。

ダマラスもインサーンの言葉を聞いて驚いて振り向きます。
まさかグレートワルズのトドメの攻撃を喰らって爆発して吹っ飛んでいった海賊船に乗っていた海賊が
生きていたというのも到底信じられない話でしたが、
その海賊がバリゾーグを倒したというのも耳を疑うような話でした。
ということは海賊は半死半生というわけではなく、全くピンピンしているということです。
いや、そもそも海賊がピンピンしていたとしても、
ザンギャックでも最強格の戦士の1人であるバリゾーグが海賊ごときに倒されるとは、
ダマラスには到底信じられませんでした。

しかしインサーンが死んだと言う以上、バリゾーグが死んだのは事実であろうし、
その犯人は海賊に違いないのだろう。
それにしても不可解な海賊たちの強さにダマラスは驚異を感じました。

まぁ実際はバリゾーグを倒したのは確かに海賊一味の1人であるジョーでしたが、
ジョーは豪獣ゴーカイオーが爆発寸前に脱出させられているので無傷なのは当然なのです。
しかし最後まで豪獣ゴーカイオーに残っていてガレオンと共に爆発して吹っ飛んだマーベラスも
全く無事なのですから、あながちダマラスの感じた驚異は見当違いというわけではありません。

一方、インサーンの説明を呆然と聞いたワルズ・ギルはバリゾーグが死んだという事実に大きな衝撃を受け、
「・・・あ・・・ああ・・・」と絶句してよろめき、インサーンを押しのけて、
つんのめって壁に掴まると「うあああああ!!・・・バリ・・・ゾーグ・・・!」と号泣し、壁を抱いたまま崩れ落ちました。

ワルズ・ギルは自分を命を張って守らせるためにシドを改造してバリゾーグというサイボーグ兵士を作らせました。
それは本質的に弱い人間であるワルズ・ギルが自分を絶対的に守ってくれる存在を求めたからでした。

実際のところ、ワルズ・ギルの周囲の重臣たちや皇帝はワルズ・ギルを思いっきり守ってくれているのだが、
彼らは過酷な弱肉強食の宇宙のルールに従って勝利した強者たちですから、
本質的に弱者を守ろうとする傾向はありません。
だから本質的に弱者であるワルズ・ギルには何となく居心地が悪く、
重臣たちや皇帝と良好な関係を維持していくためには、彼ら
の願望やおだてる言葉に乗っかって万能の強者のように振る舞う、
というか自分自身が万能の強者だと信じ込むしかありませんでした。

彼らは決して弱い者に優しくしようとはしない連中であり、強者としか仲良くしようとはしないからです。
むしろ相手が弱者と知れば襲い掛かってくるような連中です。
弱者であるワルズ・ギルは本能的にそれを感じ取っており、重臣たちや父の皇帝を恐れていた。
だから今回のような誤解が生まれたりしたわけです。

そのように内心怯えながら必死で虚勢を張って生きるというのはワルズ・ギルにとっても疲れることです。
それで、自分を弱者として扱った上でひたすら守ってくれる存在として
バリゾーグを作って甘えることで、精神的に安定を保ってきたのだといえます。

今回、ワルズ・ギルが勝手に誤解してダマラスや皇帝を敵視して
勝手に自分の中で味方を無くしてしまったのでバリゾーグしか頼る者がいなくなってしまい、
それで弱気になってバリゾーグに「お前しか頼る者がいない」というようなことを言ってしまったのですが、
それを聞いたバリゾーグは自分のプログラムされた唯一の価値観である
「ワルズ・ギルを守らねばならない」という想いを、いつもよりもいっそう強く持つようになったのかもしれません。
その結果、ワルズ・ギルが自分の地位を上昇させる起死回生の作戦として推し進める海賊討伐作戦を
なんとしても成功させなければいけないと必死になって、命を張って戦ったために、
遂には命を落としてしまった。

本当はそうではなく、バリゾーグはいつも通りに命令をこなしていただけかもしれません。
バリゾーグがどのような想いで戦っていたのかなど、
ギガントホースにいたワルズ・ギルやダマラス達に分かるはずはありません。
だからダマラスやインサーンらは、
バリゾーグが任務遂行中に不幸にも海賊に殺されたというふうに捉えただけだったのですが、
ワルズ・ギルはそうは考えませんでした。
出撃する前にワルズ・ギルに自分の起死回生の作戦への協力を特に強く頼んでいたからです。
そのせいで自分に絶対忠義のバリゾーグが無理をして、そして死んだのだと思いました。
つまり、自分の弱気がバリゾーグを殺したようなものだと思ったのです。

そこまでワルズ・ギルが思いつめたのは、
やはりもともとバリゾーグの存在によって心が支えられてきたワルズ・ギルにとって
バリゾーグの死がそれだけ衝撃的だったからでしょう。
バリゾーグを失ったことによってワルズ・ギルの心は支えを失って一気に弱気になり、
弱気を自覚することで、自分の弱さを意識せざるを得なくなり、
その弱さがバリゾーグを殺したのだと、ワルズ・ギルは思ったのでした。

まぁ、もともとワルズ・ギルの心の弱さがバリゾーグという存在を作り出し、
その弱いワルズ・ギルを守ろうとする存在であったゆえにバリゾーグはジョーに敗れたわけですから、
ワルズ・ギルの考えは根本的には間違っていません。

ただ、これまでワルズ・ギルはここまで徹底的に自分の心の弱さに向き合ったことはありませんでした。
自分が強ければ、バリゾーグは死ななくて済んだのではないかと、悔やまれて仕方ありませんでした。
また、海賊を倒したと思い込んでバリゾーグに後始末を押し付けて自分は祝賀会で浮かれていたというのも、
あれほど出撃前は絆を確認したはずのバリゾーグに対する酷い裏切りをしてしまったという
後悔の感情も湧きあがってきました。
こうして、ワルズ・ギルは弱い自分を守るために命を張って戦い死んでしまったバリゾーグに対して、
返しようがないほどの大きな「借り」を作ってしまったと感じたのです。

これまでのワルズ・ギルの人生で誰かに「借り」を感じたことなど一度もありません。
全ての者は自分に奉仕するのが当然だと思っていたし、
自分が満足するほどの献身を捧げてくる者など1人もいなかったからです。
だから不満を感じることはあっても「借り」を受けたと感じるようなことは一度もありませんでした。
だから、初めて自分の弱さをハッキリ自覚し、その自分の弱さのために死んだバリゾーグのことを想った時、
ワルズ・ギルは生まれて初めて他人に「借り」を受けたと感じたのです。

そしてワルズ・ギルはその借りを返さなければいけないと思いました。
つまり、ジョーがマーベラスに守られた借りを返そうとしたのと同じです。
ジョーはバリゾーグに「ワルズ・ギルがお前を命を張って守ってくれるのか?」と問いかけ、
バリゾーグは「私をワルズ・ギル様が守ることは有り得ん」と答え、
その絆の弱さをジョーに見破られて、ジョーに逆転のきっかけを与えました。
つまりバリゾーグはワルズ・ギはル自分に守られる弱者で構わないと思ってくれていたわけなのですが、
ワルズ・ギルはバリゾーグに命を張って守られてしまった自分の弱さを悔やみ、
強くあらねばいけないと思ったのでした。

ジョーの場合はその借りを返すためにマーベラスと共に戦おうと思ったのですが、
ワルズ・ギルは既にバリゾーグが死んだという事実を知ってしまっていますから、
一緒に戦いたくても戦えない。
だから心だけでもバリゾーグと共にあると仮定して、
バリゾーグに自分の強さを見せるために戦おうと決意したのでした。
つまり、バリゾーグに捧げるための戦いに行こうということです。
いわば、バリゾーグの弔い合戦であり、
ワルズ・ギルはバリゾーグのために初めて本当の意味で強くなりたいと思ったのです。

そうしてワルズ・ギルは「うおお!俺が自らカタをつける!!」と吼えて立ち上がり、
ゴーミンに向かって「グレートワルズを用意しろぉっ!!」と激しい怒りの形相で命令します。
これを見て、ダマラスは慌てて「・・・で・・・殿下!・・・お待ちください・・・!」と言って、
ワルズ・ギルに抱きついて止めようとします。

ダマラスはワルズ・ギルが海賊がまだ生きていると知って、
相変わらず自分で海賊を倒すことに拘っているだけだと思っていました。
そして、それが自分に対する誤解に基づいた憎悪が原因になっているのだと自覚してもいます。
その誤解はダマラスにとってはやるせないものでしたが、
それでも、それがきっかけとなって、自分への憎悪を糧として
ワルズ・ギルが帝国の後継者として相応しい冷厳な指揮官に成長したようにも思えて、
それはそれでもいいと思っていました。

何より、その憎悪によって成長したワルズ・ギルが自分の予想を遥かに超える強さを発揮して
海賊たちを圧倒したのですから、
ワルズ・ギルが自分への当てつけで海賊と戦うことにこだわることを、
ダマラスは結果的には成功だと思っていたのです。
だから、ここでダマラスがワルズ・ギルを引き止める必要など無いはずです。
今度こそワルズ・ギルはグレートワルズで海賊たちにトドメを刺すはずだからです。

しかし、それでもダマラスが慌てて引き止めようとしたのは、
ダマラスにもハッキリとは理由は分かりませんでしたが、海賊に何か得体の知れない怖さを感じたからです。
バリゾーグほどの戦士が海賊に倒されるなど、考えられないことだったからです。
また、グレートワルズの攻撃を喰らって爆発し吹っ飛んだはずの海賊たちが無事というのも不可解でした。
何かマーベラス一味には得体の知れない力が秘められているのではないかと、ダマラスは嫌な予感がしたのでした。

しかしワルズ・ギルは「止めるなぁっ!!」とダマラスを掴んで強引に退かせて、
扉の前に進むとダマラスを睨みつけて「俺は戦うぞぉっ!!」と叫ぶと、
背を向けて「バリゾーグの弔いだぁっ!!」と喚きながら扉の外に出て行き、
格納庫に向かって駆けていったのでした。
ダマラスは驚いて立ち尽くし、それから慌てて「殿下!」と後を追いますが、
ワルズ・ギルが出て行った扉が閉じられると、ダマラスは追いかけることを諦めて立ち止まり、
下を向いて立ち尽くしてしまうのでした。

ダマラスはワルズ・ギルの言葉を聞いて驚いたのでした。
てっきり自分の手柄や意地のために戦おうとしていると思っていたワルズ・ギルが、
バリゾーグのために戦おうとしていることを知ったからです。

バリゾーグなどは所詮は機械仕掛けでワルズ・ギルに忠誠を誓わされた人形に過ぎない。
しかも既に死んでしまったのであり、もはやワルズ・ギルにとって何の意味も無い者でした。
そんな何の得にもならない者のために司令官であり皇太子であるワルズ・ギルが自ら戦うというのですから、
ダマラスにとってはあまりに意外でした。

ダマラスはワルズ・ギルが冷酷になったと思っていたのです。
しかし、ワルズ・ギルは冷酷になっていたわけではなく、
バリゾーグに対して強い絆を求めて、それによって力を得て戦っていたのだと、ダマラスは気付きました。
そして、ワルズ・ギルはバリゾーグとの絆に報いるために、今また更に強くなりつつある。
そのようにダマラスは感じました。
そして、機械人形などに絆を求めるほどにワルズ・ギルが孤独だったことに胸を痛め、
自分が傍にいながら、そこまでワルズ・ギルを孤独にしてしまったことを恥じました。

ただ、ワルズ・ギルが強くなったのだとするなら、不安要素は無いはずです。
が、それでもダマラスはマーベラス一味の得体の知れない力に不安を抱き、止めようとしたのですが、
ワルズ・ギルがバリゾーグとの絆のために戦おうとしていると知ってしまった以上、
ワルズ・ギルとの間に絆の存在しない自分などの意見で出撃を止めることなど不可能だということに気付き、
追うのを諦めてしまったのでした。

さて、場面は地上に変わり、例のガレオンが墜落した山中、
バリゾーグを倒し、シドの魂との別れも済ませたジョーは、ガレオンの行方を探して山腹の荒れ地を駆けていました。
そこに「ジョー!」と呼ぶ声がするので振り向くと、ルカ、ハカセ、アイム、鎧の4人が駆けてきます。
ジョーも、他の仲間もたぶんマーベラスを探してこの山に来るだろうとは思っていたので、
大した驚きはせず「お前ら・・・!」と言って、立ち止まって4人と合流します。

4人の方も当然ジョーもこの山に来ているだろうとは思っていましたが、
あまりに消息が不明だったので何かトラブルに巻き込まれているのかと心配しており、
ジョーに駆け寄ったアイムは「ジョーさん!大丈夫ですか?」と問いかけます。
ハカセはジョーの額から血が流れているのを見て「その傷・・・!」と驚いて手を伸ばします。
バリゾーグとの戦いの際に負った傷なのですが、
ハカセは詳しい事情は分からず、やはりジョーはザンギャックと遭遇していたのだと悟ります。
が、ジョーは「大したことはない」とハカセの手を掴み、
「・・・それに、俺の心配している場合じゃないみたいだ」と言って、後ろを振り返りました。

ジョーの視線の先、荒れ地の真ん中には、スゴーミンやゴーミン達が大量に現れて迫ってきていました。
バリゾーグが率いてきていた、マーベラス一味の死体を回収しに来ていた部隊が何時の間にか結集して、
遂にジョー達と遭遇したようです。
おそらくバリゾーグが倒されているのを発見して、マーベラス一味が生きていることを悟り、
一味を倒すべく結集してきたところでジョー達と鉢合わせしたのでしょう。

ジョーに気を取られてザンギャック部隊の接近に気付かなかった鎧は「何時の間に?」と身構えます。
ようやく5人揃い、あとは急いでマーベラスを探すのみとなったところで、
とうとうザンギャックと遭遇してしまい、
戦うべきか、逃げてマーベラスを探すべきか、どちらかを選ばねばならない場面です。
しかし5人は躊躇することなく、一斉にモバイレーツとレンジャーキーを出し、変身の態勢に入ります。
もはや全員、どんな絶望的な敗戦の後でも、ザンギャック相手に逃げずに戦い、
突破してマーベラスのもとへ行く覚悟は決まっているのです。

ザンギャック側も5人に向けて砲撃しようとし、まさに戦闘開始の瞬間、
突然、砲弾が降り注いでザンギャック部隊のいる場所が大爆発を起こしたのでした。
ハッと驚いてジョー達5人が上空を見上げると、
ゴーカイガレオンが低空飛行で迫ってきながら
舷側のガレオンキャノンを全門ぶっ放して地上のザンギャック部隊目がけて
砲弾を雨あられと撃ち込んでいたのでした。

この掟破りの巨大戦力による等身大戦力に対する直接攻撃(シリーズで時々ある)で、ザンギャック部隊は全滅し、
ガレオンからロープを伝って降りてきたのは、マーベラスでした。
ガレオンも無事で、マーベラスも生きていたことを確認し、
5人は「マーベラス!」と喜びの声を上げて、地上に降りたったマーベラスに駆け寄ります。

マーベラスは仲間を迎えに行こうとして、
さっき5人を強制脱出させた街に向かって飛んでいこうとしてガレオンを発進させ、
山腹の上に浮かび上がったところ、そこでいきなりザンギャック部隊と戦おうとしている5人の仲間を見つけて、
慌ててガレオンキャノンを発射してザンギャック部隊を蹴散らし、5人に会うため地上に降りたのでした。

そして地上に降りたったマーベラスは「待たせたな!」と、駆け寄ってきた5人に言います。
しかしジョーは「いいや・・・待っていないさ・・・!」と言います。
確かにこれはジョーが正しい。
マーベラスは街で待っている5人を迎えに行くつもりで用意していた第一声をそのまま言ってしまったのですが、
実際は5人は街で待つことなく、こうして山までマーベラスを探しに来ており、
もう少しマーベラスが寝ていたら、ジョー達に揺すり起こされるところだったぐらいです。

5人は完敗を喫してバラバラになったにもかかわらず、
逃げるわけでもなく、迎えを待つでもなく、自分の意思で前へ進み、
ザンギャックの山狩りする山の中をマーベラスを探しに来たのです。
そして、逃げずにザンギャックと戦おうとしていたのです。
そのことはマーベラスを驚かせました。

そして続けてジョーが「お前がモタついてたお蔭で・・・俺は決着がつけられた・・・」が言うと、
マーベラスも、他の仲間も思わずジョーの顔を見て、厳粛な面持ちとなります。
ジョーが山中でバリゾーグと遭遇し、戦って倒したことを悟ったのでした。
つまりジョーの本懐は遂げられたわけです。

続けてマーベラスを見据えて行った「借りは返す・・・!」というジョーの言葉には、
不本意にも命を守られてしまった借りを返すという意思と共に、
シドの魂を救う機会を貰えたこと、
その際にマーベラスや仲間たちとの絆の力が自分の後押しをしてくれたことも含めて、
借りは返すという意思が強く示されていました。
それは、もう決して逃げずに仲間と一緒に戦い抜くということです。
マーベラスは「・・・そうか!」と真剣な眼差しでジョーの気持ちを受け止めました。

そこに、ザンギャックの新手の部隊が現れます。
バリゾーグが率いていた部隊とは別に、ワルズ・ギルがグレートワルズで現地に到着するまでの間、
マーベラス達に立ち向かわせるために放った新手の部隊です。
そこに降り立ったゴーミン達を率いるのは、あの倉庫の戦いの際に撤退して姿を消したドゴーミン2人でした。
ドゴーミンは「全員生きていたのかドゴ!」「だが、ここがお前たちの墓場だドゴ!」と言います。

マーベラス達6人は横一列となり、そのザンギャック部隊の方に向き直ります。
そして真ん中に立つマーベラスは横に立つ鎧に向けて「鎧・・・俺が間違ってたみたいだ・・・」と言ったのでした。
鎧は敵との戦いに集中しようとしたところだったので、
いきなりマーベラスに話しかけられて少し面食らってマーベラスの方を見ます。
が、マーベラスは5人に会って確かめたいと思っていたことが、質問する間もなく早々に結論が出てしまったので、
戦う前に皆に謝っておかねばならないと思ったのでした。

それは、「守る」ということに関して、海賊としては間違った判断をしてしまい、
自分がもともと認めて求めていたはずの仲間の強さを忘れてしまい、
皆を自分が守らなければいけない弱い者扱いして守ろうとしたことでした。
どうしてそれが謝らねばいけないほどのことなのかというと、
それが海賊の絆、すなわち、夢を掴むために集まった仲間の絆を裏切る行動だからです。

それはもともとマーベラスが求めた絆であり、それを今回マーベラスは裏切ってしまった。
いや、ザンギャックの圧倒的な力の前に、
自分の求めた絆を仲間に強要して、それで仲間が命を落とすことが申し訳なくて、
自ら絆を断ち切ってしまったのです。
だから、もう一度、この絆のせいでどんな危険な目にあってもいいのか、仲間に確認したかった。
そして、一度皆を裏切った自分と再び絆を結んでくれるのか確かめたかったのでした。

しかし、5人が自分を探しにこの山に来て、
完敗の後でもザンギャックと戦うことも厭わないという姿勢であるのを見て、
マーベラスはもはや言葉で何も確認する必要は無いと思いました。
後はもう、一言謝れば、絆は元通りとなることは分かりました。

マーベラスは自分の過ちを認め、
「お前らや、お前らの夢は・・・俺に守られるほどヤワじゃねぇもんな!」と言います。
それで鎧はマーベラスが自分の地球を守りたいという夢の強さを認めてくれて、
それを実現可能だと認めてくれたのだと思い、嬉しそうに「・・・はい・・・ないっス!!」と元気に返事します。

ハカセはマーベラスが仲間の絆の基本となる皆の夢を掴もうとする力の強さを想い出してくれたことを喜び
「分かってんじゃん!」と笑顔で応え、
アイムも「それでいいと思います・・・!」と、
慣れない地球を守る戦いでどんな絶望的状況となっても今までと変わらず、
夢を掴むための仲間の絆の力で突き進むという方針で良いと、マーベラスに了承の意を示します。
また、ジョーは、夢を掴もうとする仲間の絆の力がバリゾーグを打ち破ったのだというシドの言葉に想いを馳せ、
黙って頷きます。

そして、マーベラスに思いっきり文句を言ってやろうと少し楽しみにしていたルカはちょっと残念そうに
「・・・じゃあ、文句は言わないであげるか!」と言うと、
マーベラスを横目で睨み、「で、どーすんの?・・・マーベラス!」と問います。
マーベラスが仲間の絆をもう一度結びたいという気持ちは分かっており、
もちろんルカも絆を結び直すつもりだが、
それでもさっき一緒に戦うのを拒否したのはマーベラスの方ですから、
再び一緒に戦いたいというのならマーベラスからハッキリそう言うよう促したのでした。

それに対してマーベラスは照れ臭いセリフは避けて「フン!決まってんだろ!」と
ゴーカイレッドのレンジャーキーを出します。
これがマーベラスから仲間への言葉の代わりでした。
それを見て、鎧はまた全員で一緒に戦えることに目を輝かせ、ゴーカイシルバーのレンジャーキーを出し、
ハカセもゴーカイグリーン、アイムもゴーカイピンク、ルカもゴーカイイエロー、ジョーもゴーカイブルーの
レンジャーキーをそれぞれ出して掲げます。
これが6人の絆の再確認となりました。

そしてマーベラスのいつもより一際、気合いの入った「派手にいくぜ!!」の掛け声を合図に
全員、レンジャーキーをカギ型に変形し、
「撃て!」というドゴーミンの号令で降り注ぐザンギャック部隊の砲火の中、
「豪快チェンジ!!」と叫んで、6人はゴーカイジャーに変身します。
そして、「うおおおお!!」と叫んでザンギャック部隊に向けて突っ込み、
「かかれ!」とドゴーミンに号令されて迎え撃つゴーミン達と乱戦に突入するのでした。

ここは名乗りのバンクシーン無しでいきなりアクションシーンに突入していますが、
今回は戦いながら名乗りを上げていくというチャンバラ時代劇風の演出で、かなり燃えます。
1人ずつが周りを囲むゴーミン達を蹴散らすアクションシーンを映しながら
1人ずつ名乗りを上げていくというもので、
アクションの感じとしては、鎧はゴーカイスピア、他の5人はゴーカイサーベルとゴーカイガンという、
最もオーソドックスなスタイルで、各自はいかにも各自らしいアクションを披露しながら、
カッコいいポーズでトメを入れて
「ゴーカイレッド!!」「ゴーカイブルー・・・!」「ゴーカイイエロー!」「ゴーカイグリーン!」
「ゴーカイピンク!」「ゴオオオオカイ!シルバアアアッ!!」と順番に名乗りを上げていきます。
ただ相変わらずハカセの動きが妙にせわしなくて笑えます。

そうしてゴーミンの群れを突き抜けてきて6人が並び立ち、
「海賊戦隊!ゴーカイジャー!!」と全体名乗りを上げてポーズを決めると、
6人の背後で倒されたゴーミン達がバタバタと倒れ込みながら爆発し、
大量のゴーミン達が一斉に爆発したので6人の背後で大爆発となり、
名乗りポーズの背後に華を添える効果となるという、これまたチャンバラ時代劇チックな演出となります。

なお、この全体名乗りの6人のポーズは、いつものポーズとは全然違っていますが、
これは普段とは違って武器を持った形でのポーズだからです。
これも皆、クールに決まっているのですが、
ハカセだけ銃と剣を持った両手を思いっきりバンザイしていて、あまりに豪快すぎて、可笑しいです。

さて、これでゴーミン達は全滅し、残るはドゴーミン2人だけです。
「おのれぇ〜!」「こうなれば!」とドゴーミン2人は例の槍を交差させて繰り出す
ザンギャックの紋章型のエネルギー波の連続攻撃を繰り出しますが、
これをマーベラス達6人はことごとく弾き返します。
さっきの倉庫の戦いの時はこれを1発だけの攻撃でもマトモに喰らっていたのですが、
一度見たとはいえ、連続攻撃を全部弾き返すとは、
やはり、ゴーカイジャーの力はここにきてじわじわと上がってきているようです。

マーベラスは「残りの奴らもぶっ叩くぞ!」と言うと、ゴーカイガレオンバスターを出し、
鎧を除く5人で構えてライジングストライクを喰らわせ、
鎧はゴールドモードで豪快レジェンドリームを繰り出し、
この必殺技コンボを同時に喰らい、さすがのドゴーミン2人も
「そんなバカなぁっ!?ドゴォ!!」と断末魔の絶叫を残して大爆発して果てたのでした。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 23:58 | Comment(0) | 第38話「夢を掴む力」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月27日

第38話「夢を掴む力」感想その4

ジョーがバリゾーグを倒し、
その強敵に逃げずに立ち向かった自分の強さこそが自分達の希望なのだと訴えるように
マーベラスの名を心の中で呼びかけていた頃、
ガレオンの中で倒れ込んで動かないマーベラスに向けて
「マーベラス!・・・マーベラス!」と呼びかける声がありました。

ジョーの声がマーベラスに届いたかと思いきや、その声はジョーの声ではない。
という以前に、倒れているマーベラスの周囲の様子がなんだか変です。
冒頭のシーンでガレオンのコクピットの床でマーベラスが倒れていた態勢のまま動いていないので、
一見すると同じシチュエーションのように見えてしまいますが、すぐにそこは全然違う場所だと分かります。

そこは真っ白な空間のようです。
その白い空間に響くマーベラスを呼ぶ声に反応して、マーベラスが呻き声を上げて微かに動き、
遂には目を覚まして自分の傍らに立つ何者かを見上げます。
マーベラスがあの大爆発の中、生きていたということもいささか驚きですが、
そのマーベラスの横に立っている人物の姿は、更に驚きでした。
その人物を見上げてマーベラスは「・・・アカレッド!」と驚きの声を上げます。
なんと、白い空間でマーベラスの横に立っていたのはアカレッドだったのです。
そういえばマーベラスを呼んでいた声もアカレッド(古谷徹氏)の声でした。

マーベラスはアカレッドとは例の「赤き海賊団」の壊滅事件の際、
自分を守るためにザンギャック兵の群れに飛び込んでいって炎の中に消えた後ろ姿を見て以降は、
会っていませんから、当然アカレッドはその時に死んだと思っています。
だから自分の横にアカレッドが立っているので驚いて「どうして・・・?」と尋ねながら起き上がりました。
まず、アカレッドが実は生きていたのか?と思ったのです。

ところが起き上がって周囲を見てみると、見渡す限り真っ白な空間であることに仰天します。
そして自分が目を覚ます前、何をしていたのか想い出しました。
豪獣ゴーカイオーでザンギャックの決戦機グレートワルズと戦って完敗し、
コクピットで大爆発に巻き込まれて、そこから先の記憶がありませんでした。
だから目覚めるとしたらコクピットの中であるはずなのですが、実際は目が覚めたら真っ白な空間だった。
しかも横には死んだはずのアカレッドが立っている。

「・・・俺は、死んだのか・・・?」とマーベラスは呟きます。
自分は豪獣ゴーカイオーの爆発の中で死んで、ここは死後の世界なのではないかとマーベラスは思ったのです。
ならば、死んだはずのアカレッドが居るのも納得できる。
しかし、いくら何でも寂しすぎる世界だとも思いました。他の死者は誰もいないのか?と考えた時、
マーベラスはハッと大事なことを想い出し、「あっ・・・みんなは!?」と叫び、慌てて周囲を見回します。

そう、豪獣ゴーカイオーが爆発する直前、マーベラスは仲間5人を強制脱出させたのです。
ただ、とにかくあの時は混乱していて、
5人が上手く脱出して逃げのびることが出来たのかどうか確認は出来ていません。
もしかしたら、5人のうちの誰かも脱出に失敗して死んで、この死後の世界に来ているのではないか?と考えて、
マーベラスはヒヤリと背筋が寒くなりました。

すると、マーベラスが目を覚まして以降は黙って立っていただけだったアカレッドが
マーベラスの背後で「大丈夫だ・・・5人とも生きている」と言ってくれます。
マーベラスはどうしてアカレッドがそんなことが分かるのだろうかと一瞬不思議に思いましたが、
ここが死後の世界ではないかと思っているマーベラスは、
アカレッドは死後の世界から自分達のことを見守ってくれていたのだろうと解釈し、
ならばアカレッドがそう言うのなら間違いないだろうと思い、
「・・・そうか・・・よかった・・・!」と安堵の声を漏らします。

が、同時に、「5人とも生きている」というアカレッドの言葉の響きから、
その5人がここにおらず、自分1人だけがここにいるということは、
これはもう間違いなくここは死後の世界であり、自分は死んだのだと実感し、
内心少し死んだことが悔やまれます。

すると、アカレッドはマーベラスの正面に回り込んで来て「・・・本当にそう思うか?」と尋ねてきました。
マーベラスが5人の仲間が生き残って自分1人だけが死んだと思って、それを良かったと言っていることに対して、
それがマーベラスの本心なのか?とアカレッドは確認してきているのです。
それは、まるでマーベラスが今、内心秘かに少しそのことを後悔したことを見透かしたかのような質問でした。

マーベラスは少し慌てて、
「どういう意味だ?・・・俺はあの時のあんたみたいに、あいつらを守ったんだ!」と強く反論しますが、
これはアカレッドに反論しているという感じではない。
アカレッドは「本当にそう思うか?」とマーベラスの心の中がどうなのか問いかけてきているだけだから、
本当にそれで良かったと思っているなら、堂々と良かったと思うと再度強調すればいいだけのことです。
慌てて反論するなど、本当は後悔していると白状しているようなものです。

だいたいアカレッドに反論するというのもおかしい。
確かにマーベラスの行動はアカレッドを模倣したものでしたが、アカレッドに頼まれてやったわけではない。
マーベラスが勝手にやったことであって、アカレッドは何も責められるようなことはやっていない。
マーベラスは自分で勝手に決めた行動に、自分で勝手に後悔しているだけのことです。
そして、心の中の後悔している自分に対して、
あれはアカレッドのように自分を犠牲にして仲間を守る立派な行動なのだと、必死に抗弁しているのです。

そんなマーベラスに呆れたようにアカレッドは脇を向いて
「お前は私ではないし・・・ゴーカイジャーは赤き海賊団ではないだろう・・・」と言います。
アカレッドはどうして他人の真似をするのか?と呆れているかのようです。
ゴーカイジャーのマーベラスなのだから、マーベラスらしい、ゴーカイジャーらしい
「守る」ということは何なのか考えればいいことだろう。
そうすれば後悔などしなかったはずだ。
そうアカレッドは言っているかのようです。

じっとアカレッドの顔を睨んでその言葉を聞いていたマーベラスも、
そう言われると、確かにそれはその通りだと認めるしかなく、視線を下に落とします。
確かに、元はといえば、鎧に「守る」とは何なのか質問されて答えられなかったから、
アカレッドが自分を守ってくれたという、自分の知る「守る」の唯一の例にとびついただけのことで、
それが自分に合っているか、ゴーカイジャーに合っているのかなど、全く吟味はしていなかった。
しかし、それは仕方ないだろうとマーベラスは言い訳したい気分でした。
宇宙海賊であるマーベラスは他に「守る」ということの実例など知らないのですから、
自分らしい「守る」ということや、ゴーカイジャーらしい「守る」ということなど知るわけはない。

しかし、ここのアカレッドのセリフは結構、意味深なような気がします。
というか、この場面のアカレッドとマーベラスの遣り取りはここから、かなり意味深になってきますから、
じっくり考えた方がいいでしょう。

ここでアカレッドは、「アカレッド」と「マーベラス」の違い、
そして「赤き海賊団」と「ゴーカイジャー」の違いを強調していますが、
これらはどのように違うものなのでしょうか?
もちろん、同じものでない以上、確かに違うものなのでしょうけれど、
共通点が多ければ、行動に模倣があっても悪くはないと思います。

例えば、もともとマーベラスがアカレッドの真似ばかりしているような人間ならば、
今回もアカレッドの真似をしたとしても、
アカレッドから見れば「いかにもマーベラスらしい」と評して良い行動のはずです。
ところが、アカレッドはマーベラスが自分の真似をしたことを呆れて、
それについてマーベラスもグウの音が出ない様子なわけですから、
もともとマーベラスがアカレッドの真似をするなど有り得ないことであるかのような認識が
アカレッドとマーベラスの間には存在するということになります。
「赤き海賊団」と「ゴーカイジャー(マーベラス一味)」にしても、
「ゴーカイジャー」が「赤き海賊団」を模倣して作られたものならば、
リーダーのマーベラスがアカレッド的な行動をとったとしても、ここまで呆れられる必要は無いでしょう。

つまり「赤き海賊団」と「ゴーカイジャー」は全く異質な集団ということです。
しかし、「ゴーカイジャー」を作ったマーベラスは「赤き海賊団」の出身なのですから、
「ゴーカイジャー」は「赤き海賊団」に似ている方が自然です。
しかし、それが根本的に違うというのは妙な話です。

それは「赤き海賊団」のリーダーがアカレッドであり、
「ゴーカイジャー」のリーダーがマーベラスであり、
アカレッドとマーベラスが全然違うタイプだからなのだからということで納得出来ないこともないが、
では、マーベラスはアカレッドの下で一緒に旅をしながら、
どうしてそんなにアカレッドと違ったタイプのままでいることが出来たのか?
普通は大きな影響を受けるものですが、
アカレッドの物言いだと、マーベラスがアカレッドの影響を受けるのは、まるでナンセンスであるかのようです。

何かこの2人、どうも変な距離感があるのです。
単なる師匠と弟子という関係ではないように思えます。
そもそも、ずっとつきまとっている違和感なのですが、どうしてアカレッドが宇宙海賊などをやっているのか?

アカレッドはマーベラスと初対面の時、「最近は海賊と呼ばれている」と自己紹介しており、
アカレッド自身は海賊という自意識は無いようなのです。
単なる「レンジャーキーを集める冒険家」であったのを、
チンピラ海賊のマーベラスが勝手に海賊だと誤解して一緒に行動するだけになっただけのように思えます。

そうなると、「赤き海賊団」などという名ではあるものの、本当は海賊ではないアカレッドが船長である限り、
「赤き海賊団」は海賊ではないということになります。
マーベラスは楽しい想い出だったように語っていましたが、
結局、バスコは裏切り者であったし、アカレッドは裏で何かよく分からないことをやっていたようです。
となると、一番下っ端のマーベラス1人だけが海賊団のつもりではしゃいでいただけなのかもしれない。
そう、ちょうど、海賊団の一番下っ端の鎧が1人だけ正義のヒーローのつもりではしゃいでいるようなものです。

そうなると、ゴーカイジャーこそがマーベラスが作った正真正銘の初めての海賊団ということになり、
エセ海賊だった「赤き海賊団」とは全く異質であるのは当たり前ということになります。
アカレッドは海賊ではなく、マーベラスは海賊であり、
「赤き海賊団」は海賊団ではなく、ゴーカイジャーは海賊団であるとするなら、
アカレッドがそういうニュアンスで
「お前は私ではないし、ゴーカイジャーは赤き海賊団ではないだろう」と言うのは大いに納得できるし、
マーベラスがその突き放したようなアカレッドの言葉を素直に聞いているのも自然だといえます。

つまり、アカレッドは自分がマーベラスを命を張って守ったのは、あくまで非海賊的な行動なのであって、
海賊であるマーベラスがそれを模倣すべきではないと言っているのです。
海賊には海賊の守るべきものが他にあるだろうと言っているわけです。
マーベラスもそういうニュアンスでアカレッドの言葉を受け止めて、
海賊らしい守るべきものとは何なのか考えます。

しかし、マーベラスにはそれが何なのか分からない。
海賊というのは、守るものを持たないから海賊なのです。
何も守らず、逃げ続けるのが海賊なのです。
だから、しいて守るものがあるとすれば、それは一緒に旅をする仲間達であり、
仲間達の夢だとマーベラスは思った。
だからそれを守ろうとしたのに、それはアカレッドは海賊らしくないと言う。
それで結局、マーベラスはいったい海賊は何を守るべきなのか分からなくなってしまいました。

するとアカレッドはマーベラスの方に振り向いて
「お前が選んだ仲間たちは、本当にお前に守ってほしかったのか?」といきなり妙なことを問いかけたのでした。
しかし、本来そんなことは当の本人の仲間たちに聞くべきことであって、
マーベラスに質問するのはお門違いのようにも思えます。
仲間たちが本当はマーベラスに守ってほしかったのかどうかなど、マーベラスが知るはずはない。
しかしアカレッドがそれをわざわざマーベラスに質問するということは、
マーベラスがそれを知っているはずだと分かっているからです。

そう、実際、マーベラスはそれを知っていた。
知っていたはずなのに忘れていたのです。
それをアカレッドの突然の問いかけに咄嗟に答えようとして、思い出したのです。
仲間たちは皆、マーベラスに守ってほしいとは思っていないということをマーベラスは知っていた。
いちいち面談して質問して把握したわけではありません。
他人に守ってほしいと思っているような者が仲間に選ばれるわけがないというだけの話です。
つまり、マーベラスは自分のことは自分で守れるような強い者ばかりを選んで仲間にしてきたのです。

ただ、それは単に強い仲間が欲しかったからではないし、
仲間を守るのが面倒くさかったからでもない。
それはマーベラスが「宇宙最大のお宝」を手に入れるという、
ほとんど実現不可能な夢に挑戦しようとしていたからです。

実はマーベラスは、「赤き海賊団」が壊滅して、アカレッドが死んで、バスコには裏切られて、
1人ぼっちになって、その途方もない不可能への挑戦を1人で成し遂げる自信が無かったのです。
だから不可能への挑戦の旅の仲間を求めた。
それで、既に不可能な夢に挑戦しているような人間を旅をしながら探した。
「宇宙最大のお宝」がどれぐらいの不可能に挑戦しないと手に入らないのか途方も知れないものであったので、
とにかく自分とは異なるタイプの不可能に挑戦している者を複数、仲間にしたいと思っていたのです。

それでジョー、ルカ、ハカセ、アイムを仲間にして、地球に来て鎧も仲間に加わった。
皆、マーベラスとは異なったタイプの、宇宙のルールの壁を超えて、
ほとんど不可能でリスクの高い自分の信じた道を突き進もうとしている者達でした。
いや、マーベラスも、鎧を除いては彼らの夢が具体的に何であるのかは知らない。
ただ彼らが宇宙のルールからの自由を強く求める行動をとっていたことから、
決して我儘や欲得のためではなく、命を賭けて何か信じた道を突き進んでいることが分かったので、
それだけで「宇宙最大のお宝」探しの仲間とするには十分だったのです。

そういう連中ばかりを選んで仲間にしていったのですから、
もともと自分の信じた道を突き進むため、自由を求め、夢を求めて不可能と危険に挑んでいた者達ですから、
自分の身や自分の夢は自分で守る者達に決まっています。
そういう強い者達ばかりが集まっているのであり、
マーベラスによって守られることを望むような者はいないはずなのです。

アカレッドの問いかけでマーベラスは自分の仲間たちはそういう連中ばかりだったことを想い出しました。
だから、ゴーカイジャーの仲間を自分1人が犠牲になって守ってやろうなどと考えるのが
根本的な間違いだったのです。
そんな弱い者はマーベラス一味にはもともと存在しないのであり、
マーベラス一味の仲間にそんな扱いをするのは失礼な扱いであったのです。

それはマーベラスにもよく分かった。
しかし、では結局、海賊が守るべきものは何も無いということになるのか?
結局は自分にとっての「守る」ということは不明のままで、
ザンギャックの圧倒的な力から地球を守る方法もよく分からないままだ。
やはり海賊が何かを守るというのは無理なのか。

そうマーベラスが思った時、アカレッドはマーベラスに背を向け、
「お前が本当に守るべきものは、夢を掴むために集まった、かけがえのない仲間たちとの絆じゃないのか?」
と言ったのでした。
それを聞いてマーベラスはじっと考え込みながら「・・・俺とあいつらの・・・絆・・・!」と呟き、目の色が変わります。

マーベラスは、限りなく不可能に近い夢を掴むために集めた仲間達の持つ力を結集してこそ、
絶望的状況を切り開き不可能を可能とすることが出来ることに気付いたのでした。
それは不可能に近い夢に挑戦する者同士の絆だけが持つかけがえのないパワーです。
自分達は「宇宙最大のお宝」を手に入れるためにその力をこの地球に持ってきたが、
今や自分達の夢は「宇宙最大のお宝」だけではない。
ザンギャックから地球を守って、
この宇宙でザンギャックのルールに縛られない自由を実現することも自分達の夢です。
その夢を掴むために、どんな絶望的な状況でも仲間の絆の力で突き進むという道がまだ有る。
つまり、最も大切な守るべきものは「夢を掴む仲間たちの絆」だったのです。
だから自分1人が犠牲になって仲間との絆を断ち切るなど、絶対にしてはいけないことだったのです。

しかしマーベラスは取り返しのつかないことをしてしまったという想いは湧いてこなかった。
何故なら、アカレッドがこんな話をするということは、
どうやらここは死後の世界ではないということが分かってきたからです。
かといって、この真っ白な空間が何なのかはよく分からないし、
このアカレッドがどういう存在なのかもよく分からない。
が、自分が死ぬという実感はもう無くなっていました。
とにかく、今の自分に求められているのは、猛烈に失敗を反省して、
夢を掴むために集まったかけがえのない仲間たちとの絆を回復させることだと思いました。

すると、アカレッドが振り向いてマーベラスに向かって
「マーベラス・・・それが海賊ってものじゃなかったのか・・・?」と軽く問いかけます。
それを聞いてマーベラスはフッと笑うと、アカレッドを見つめて
「・・・そうだな・・・それが海賊ってもんだ!」とニヤリとします。

おそらく、「夢を掴むために集まったかけがえのない仲間たちとの絆」という言葉は、
赤き海賊団の頃から、マーベラスが「海賊とは何なのか?」というアカレッドの問いかけに対して、
いつもその言葉を答えて「それが海賊ってもんだ」と得意げに説明していた言葉そのままだったのでしょう。
そして自分はとっくの昔に海賊が守るべきものが何なのか、答えを知っていたのだと気付き、
マーベラスは懐かしそうに微笑んだのでしょう。

アカレッドはそのマーベラスの姿を見て満足そうに頷くと、
すっと白い空間に溶け入るように消えていき、
白い空間に残されたマーベラスは小さく頷いて、決意の表情で見送るのでした。

マーベラスが謎の真っ白い空間で、
自分達の守るべきものが「夢を掴むために集まった仲間たちとの絆」であったことに遂に気付いた頃、
ルカとハカセとアイム、そして鎧の4人はマーベラスがいるはずのガレオンを探して山道を進んでいました。
先を歩くルカとハカセとアイムの3人から、数歩遅れて鎧は1人、悲しげな表情です。

さっき3人に対して、マーベラスの自分だけが犠牲になって他の仲間を脱出させた行動について納得できない、
最後まで一緒に戦いたかったという自分の不満に思っている気持ちを言ってしまったことを鎧は後悔していました。
あれから3人は黙り込んで、ずっと自分に背を向けて歩いているのです。
きっと呆れられたに違いないと鎧は思いました。

皆、マーベラスに命を助けられたことを感謝して、そのマーベラスの安否を心配して必死で探しているのです。
そんな時にマーベラスの行動に文句をつけるなんて無神経だと思われたことだろう。
だから自分のことなど無視して、3人はさっさと先を急いでガレオンを探しているのだと鎧は思います。
そして、それは仲間として当然の行動であり、
マーベラスが仲間を庇ったのも、もちろん仲間として当然の行動なのであり、
自分1人だけが仲間としておかしい言動をとっているのだと鎧は思いました。

しかし、鎧も別に軽い気持ちでふざけてマーベラスへの不満を言っているわけではない。
どんな絶望的な状況だとしてもザンギャックから地球を守るために
マーベラス達と一緒に戦い続けたいと心に決めていたからこそ、
一緒に戦わせてくれなかったマーベラスに納得が出来ないのです。

だが、それは本当はマーベラス達5人には迷惑だったのかもしれないと、鎧は思いました。
マーベラス達、宇宙から来た5人はザンギャックから地球を守ろうとしても絶対に勝てないという現実を知っており、
今まで十分にザンギャックから絶望を味あわされているのです。
だから負けると分かっていて最後まで地球を守るために戦い続ける気にはなかなかなれないのが当然です。
ということは、もしかしたら自分1人が盛り上がって、
皆を本当は関わる必要のない危険なことに巻き込んでしまっているのかもしれない。
いや、今回もしマーベラスに万が一のことがあれば、それは自分が煽ったせいなのではないか?

しかし、そう考えても、それでも鎧は絶望的な戦いを止める気は起きないのでした。
そんな自分と一緒に居る限り、大事な仲間たちをまた危険に巻き込んでしまう。
でも仲間たちと離れたくはない。

そうして散々悩んだ末、
鎧はやはり、仲間のことを心配するよりも一緒に戦えなかった自分の不満を優先する自分が醜く感じて、
そんな自分が皆の仲間であり続ける資格は無いと思い、
これ以上皆を無謀な戦いに巻き込まないために身を引いたほうがいい、
戦うなら1人で戦おう、と思いました。

そう結論を出すと、鎧は立ち止まって悲しげに「・・・俺だけなんでしょうか・・・」と目を伏せて呟きます。
3人は立ち止まり振り返りますが、
鎧は3人の顔を見るのが辛くて横を向き、
「マーベラスさんに・・・納得できないなんて・・・」と自分を責めるように言います。
そんな自分は皆の仲間の資格は無いのだと鎧は言おうと思いました。

しかし、じっと黙って鎧の顔を見ていたハカセが決意した表情で「・・・鎧だけじゃないよ!」と言います。
そして、続いてアイムも「私たちも一緒です!」とキッパリと言うので、
鎧は驚いてハカセ達の方に振り返りました。
ハカセは真剣な眼差しで鎧を見つめ、頷きます。
そしてルカもハカセの横を進み出て
「だから急ごう?・・・ゴーカイガレオンまで!」と笑顔で言いながら鎧の横に来て、
「マーベラスに文句言わなきゃ!」と、鎧の脇腹に軽くパンチを入れるのでした。

3人は、鎧がマーベラスと一緒に戦いたかったのに戦えなかったのを悔しがる姿を見て、
自分達が勝ち目の無いザンギャックとの戦いから逃げようとしていたことに気付いていました。
そして、その弱い心をマーベラスや鎧に気遣われていたのだと知り、ずっと歩きながら黙って考え込んでいたのです。
自分の弱い心に気付かされて、いい気分のはずがない。
3人はずっとモヤモヤして歩いていました。
そして、本当に自分はそんなに弱かったのだろうかと考えました。

そして、いや、そんなはずはないと気付いたのです。
何故なら、自分達は「宇宙最大のお宝」を手に入れるという、
ほとんど不可能な夢を掴むために集められた仲間だからです。
他の誰でもなく、自分達が、
この仲間達ならばどんなに不可能な夢でも掴むことが出来る強さを持っているのだと
マーベラスに見込まれたはずなのです。

そして自分達も、きっと自分ならば、その途方もない夢を掴めるという気持ちになったから、
マーベラスの仲間になったのです。
どうしてそんな自信を持てたのかというと、夢に向かって突き進むことにかけては自信があったからです。
夢といっても将来の立身出世とか私利私欲を追求するというようなものではない。
それも確かに夢だが、自分達の夢は特別に大きな夢だったのです。
それは不可能に挑戦することであり、命がけで成し遂げるものでした。

つまりザンギャックの作った宇宙のルールに縛られない自由な生き方を求めたのです。
というより、本当に自由な生き方というものを求めた結果がザンギャックへの反逆であったのです。
ザンギャックの支配下でも自由が全く無いわけではない。
そうした自由を満喫する生き方だって上手く立ち回れば有ったかもしれない。
そちらの方が快適な人生であったのだろうと思いました。

でも、真の自由というのは、世界を規定するルールを超えた危険な場所でしか手に入れることは出来ないのだと、
このマーベラス一味の仲間たちは皆それぞれがそれぞれの過程でその結論に辿り着いていたのです。
そして、そういう場所でこそ、大きな夢を追いかけることが出来る。
そういう強い意思を持った連中が集まればこそ、
「宇宙最大のお宝」という、まさに宇宙で一番大きな夢を掴むことが出来る。
そういう趣旨で集まったのがマーベラス一味だったはずです。

マーベラスは常にマーベラス一味のことを「夢を掴むために集まった仲間たち」と言っています。
だから、もともと世界全体を敵に回すような絶望的な危険の中でも夢を掴むために突き進む仲間なのであり、
その仲間が力を合わせることで絶望的な状況を切り開いて進む力を発揮するはずなのです。

つまり、鎧が絶望的な状況でもザンギャックと戦って地球を守ろうとするのは、
まさにマーベラス一味らしい夢であり、
マーベラス一味の仲間たちならば、力を合わせてその夢を掴むために突き進んでいかなければいけないはずです。

いや、実際はそれは鎧だけの夢ではなく、
ザンギャックから地球を守るというのは、まさに不可能への挑戦という意味でも、
宇宙の自由の追求という意味でも、ルカやハカセやアイムにとっても立派に夢となっていたのです。
これを実現が難しいなどと言って諦めてしまえば、「宇宙最大のお宝」など手に入るわけがない。
というより、「宇宙最大のお宝」に遂に迫りつつある自分達が、
ザンギャックから地球を守るという夢を簡単に諦めてしまえるわけがない。

それなのに、マーベラスはそんな自分達と一緒にザンギャックと戦おうとはせず、自分達を守ろうとした。
しかし、それは自分達の夢を否定することなのです。
そのことに気付かなかったマーベラスは夢を掴むための仲間の絆を裏切ったに等しい。
そう思うと、ルカもハカセもアイムも、鎧と同じようにマーベラスの行動に納得は出来ず、
不満を抱かざるを得ない。
早くマーベラスを見つけて、まずは安否を確認した上で、
仲間の絆についていったいどう考えているのか質問しなければいけない。
3人はそれぞれがそう考えて、懸命にガレオンを探し求めて山道を進んでいたのでした。

3人がそのように自分と気持ちを同じくして、
ザンギャックの圧倒的な力を知りながら、それでも前向きに戦おうとしてくれていることを悟り、
鎧は胸がいっぱいになり、ガレオンへ急ごうと言うルカの言葉に「・・・はい・・・!」と涙ぐみながら応え、
そして笑顔を向けるハカセとアイムの方を見ます。
その鎧のメソメソした様子をまだるっこしそうに、
ルカが「ほら、いくよぉ!」と鎧の頭をグイッと押し下げてから駆け出し、
ハカセとアイムもそれに続き、鎧も涙を拭って走り出したのでした。

一方、同じ山中の別の場所、さっきまでジョーとバリゾーグの決闘が行われていた台地では、
戦いの終わった後の静寂がその場を支配していました。
そこには、敗者であるバリゾーグの黒焦げになった残骸が転がり、
その傍らにはジョーが呆然と突っ立って、眼下に横たわるバリゾーグの残骸を見つめていました。
バリゾーグの残骸やその周囲からはまだおびただしい白煙が上がっており、
勝負が決着した時の爆発の凄まじさを窺わせています。

ジョーはバリゾーグに勝利したことで、
シドが自らを犠牲にしてジョーを守ってくれた時に示した自己犠牲的な強さを乗り越えて、
仲間と共に逃げずに戦い抜く真の強さを遂に獲得したといえます。
ならばすぐにマーベラスを探し出して、命を張って守られてしまった借りを返すべく、共に戦うべきところです。
しかしジョーはバリゾーグの残骸の傍に棒立ち残骸に目が釘付けになり動けませんでした。
そして、バリゾーグの残骸に向かって「・・・シド・・・先輩・・・!」と呟くと、
ガクッと膝から崩れ落ちて、残骸の横にしゃがみこむのでした。

ジョーは別に自分が倒したバリゾーグの死を悼んでいるわけではなく、
無我夢中でバリゾーグを倒した後、
自分がもともとバリゾーグを倒してシドの魂を救おうとしていたことを想い出したのですが、
もちろん魂は生きている人間の目には見えませんから、
シドの魂が本当に救われたのかどうか分かりません。

普通の人の死んだ場合は、その人がどう生きたか、どう死んだか、最期の言葉はどうであったかなどで
なんとなく判断するものですが、
シドの場合、それはかなり救われるには絶望的な状況であり、
最期の言葉も残せる状態ではありませんでした。
そうなると、死に顔を覗き込んで確かめたりするしかない。
もちろん死に顔を見たからといって、魂が救われたかどうか本当に分かるわけではない。
が、それでも死に顔が安らかであれば見送る側も少しは安心するものです。

それでジョーは無意識に死に顔を確かめるために近づいているのですが、
分かりきったことですが、ジョーが覗き込んでみたその死に顔は無表情なバリゾーグの機械の残骸に過ぎないわけで、
これではシドの魂が救われたかどうか分からない。

いや、シドの魂が救われたかどうかなど、結局は自分がそのように納得するしかないことはジョーも分かっている。
もしバリゾーグの残骸が粉々になっていれば、自分はわざわざ覗きになど行かなかったはずだとジョーは思いました。
結局、自分はもう一度シドに会いたいという未練を完全に断ち切れてはいなかったのだ。
だから、こんな醜い残骸の下からシドの顔が現れるのではないかなどと、あらぬ期待を抱いてしまったのだと思い、
ジョーは情けなくなって目を閉じます。

ところが、そのジョーの耳元で何者かが「・・・ジョー・・・」と呼びかけます。
その声にジョーは聞き覚えがありました。
それはさっきまで戦っていたバリゾーグの声でしたが、バリゾーグはもはや機能を停止している。
この声はもっと優しく、懐かしい、シド先輩の声でした。

ジョーが目を開くと、周囲は今自分が立っている山の中の風景ではなく、真っ暗な空間でした。
はっとしてジョーが後ろを振り向くと、
そこには共にザンギャック軍を脱走した時の戦闘服に身を包んだ姿でシドが立っていました。

なんとも不可解な現象ですが、ジョーはこれはシドの魂が自分の意識に見せている情景だと理解して受け入れ、
シドの魂が自分に会いに来てくれた嬉しさで微笑みながら「シド先輩・・・」と言います。
そして真っ暗な空間の中でジョーは歩いてシドの前に移動して、シドに向かい合って立ち、
その目をじっと見て、「俺・・・あなたの魂だけでも・・・救えましたか・・・?」と、
ゆっくりと一言一言、噛みしめるように畏まって尋ねます。

シドは黙ってジョーの顔を見つめ、それからゆっくり1回頷き、
「・・・強くなったな、ジョー・・・」と優しい声で言います。
シドの魂はバリゾーグを倒したことで救われたわけではないようです。
ジョーが自分の願っていたように強くなったことでシドの魂は安堵して救われたようなのです。
生前のシドの分身ともいえるバリゾーグを倒すことで
ジョーの強さがシドの生前の強さを超えて、シドの目指していた強さに到達したことの証となって
シドの魂が救われたわけですから、
結局、バリゾーグを倒すことでシドの魂が救われるという考えそのものは間違ってはいなかったわけです。

しかし、そのジョーの強さを実感できる位置にシドの魂はいたわけですから、
やはりシドの魂はバリゾーグの身体と共にあったと見ていいでしょう。
魂というものは身体にくっついているものであり、霊のように自由度の高いものではありません。
魂は身体からは基本的には離れないものです。
もちろん実際はどうだか知りませんが、物語などの設定ではだいたいそうです。
バリゾーグは身体のほとんど全部を機械に変えていましたが、高性能サイボーグのようなもので、
命はシドの命を使っています。
だからその身体はあくまでシドの身体ですから、シドの魂もそこにくっついていたのでしょう。

ただ、普通の身体ならば肉体の脳の中に魂からのコントロールを受ける部分が機能しているのですが、
バリゾーグの場合、脳の大部分を機械化することによって、シドの魂の干渉を完全に排除していたのでしょう。
だからバリゾーグの身体の機能が停止して肉体が死んだことでシドの魂もその束縛を離れて自由にはなりますが、
魂が救われたかどうかは別問題で、
シドの場合はジョーが立派に強くなったことで救われたようです。

しかし続いてシドは「でも、その強さはお前一人のものじゃない・・・お前と仲間のものだ・・・!」と、
ジョーに向かって謎めいたことを言います。
シドはさっきの戦いの時、ジョーが「命を張って自分たちを守ってくれた仲間に借りを返すために戦う」と言って、
そしてその力でバリゾーグを倒したのをバリゾーグの体内から見ていて、
それがジョーだけの力ではなく、ジョーと仲間の力だと言っているのです。

ジョーも、さっきのバリゾーグとの戦いの途中で、自分がバリゾーグを超える真の強さを持っていることに気付き、
それによって勝利することは出来ましたが、
その強さがいったいどういうものなのか、そして、それがどうして自分の中に存在したのかについては
よく分かっていませんでした。
シドがそのことについて話していることに気付き、
ジョーは「俺と・・・仲間の・・・?」と不思議そうにシドの言葉を繰り返して、考えます。

確かにマーベラスに借りを返して、マーベラスと一緒に戦い抜くことを目指して戦うことでバリゾーグに勝利したが、
それは結局は自分の意地のような気がした。
それが自分と仲間の力というのはどういうことなのだろうかと、ジョーは考え込みます。

するとシドは「いい仲間を見つけたな・・・!」と柔らかく言うと、
一呼吸置いて、グッと言葉に力を込め「その手で掴め!・・・お前達みんなの夢を・・・!」と言ったのでした。
この言葉を聞いてジョーはハッとして「シド先輩・・・」と言い、シドを見つめます。
シドは、自分の分身ともいえるバリゾーグを倒すほどのジョーの中の強い力は、
夢を掴むために集まった仲間たちの絆の生み出す力なのだと言っているのです。

確かに、マーベラス一味は「宇宙最大のお宝」という途方もない夢を掴むために集まった仲間たちであり、
それゆえ全員が不可能に挑戦する強い意思を持っている。
もともと不可能に挑戦する夢を持っていた者達が集まって、
力を合わせることで、より大きな夢を掴もうとするようになり、
より困難な夢への挑戦が自分達の意思を更に強くしてきたのだとジョーは気付きました。
つまり、これは個人の力ではなく、夢を掴む仲間の絆が生み出す力なのだ。

そうして獲得した強さで「宇宙最大のお宝」を掴み、
そして、地球をザンギャックから守って宇宙に自由を実現するという夢も実現できる。
ゴーカイジャーにはその力がある。

夢を掴む仲間の絆にそれほどの力があることをシドは知っていたのです。
それは、シドのジョーとの逃走時の別れ際の最後の言葉であった
「俺たちは宇宙に生きる者として正しい道を選んだんだ。生きていれば宇宙の何処かでまた必ず会える」
からも分かります。
自分の信じる道を突き進む強い意思は、どんな世界の壁をも超える強い絆の力を生むのです。

ジョーはそのシドの言葉を支えに自分の信じる道を貫き、
そうしてマーベラス一味の仲間と出会い、ここまでやって来た。
でも本当はその果てに巡り会い、共に夢を掴み、信じる正しい道を突き進んで戦う仲間はシドである予定だった。
しかし、こうして信じた道を突き進んだ結果、
逃げずに仲間と共に戦う力を得た自分と約束通りに会うことが出来たシドとは、
このような悲しい再会となってしまった。

シドの無念を想うと、ジョーはいたたまれず、下を向き、瞑目します。
しかしシドは真っ暗な空間の中の1点を指さして「行け!・・・ジョー!」と厳しく、少し悲しい顔で叱咤し、
ジョーは目を開いて顔を上げ、シドの指さす方向を向きます。
するとその指し示す1点から小さく光が漏れてきます。

そこに行くことはつまり、このシドの魂が情景を見せる意識状態から脱するということであり、
現実世界に意識が戻り、マーベラスや仲間たちのもとへ行くために走り出すということを意味しています。
そして、それは自分のゴーカイジャーとしての夢を掴む道でもあります。
「・・・はい・・・!」とシドに返事をしてジョーは光に向かって駆け出し、
シドはそのジョーの後ろ姿を見て、少し安堵したように表情を緩めて、潤んだ目で走り去るシドを見つめ続けます。

すると、見る見る暗闇が晴れていき、周囲の景色が元の山中の風景に変わっていき、
バリゾーグの残骸の上に立ち上がっているシドの身体が見る見るうちに透明になっていき消えていくのでした。
シドの魂が救われ、そしてもう二度と会えない別れの旅に出たことを背中で感じ取りながら、
ジョーは振り向くことはせず、ただ前に向かって駆けながら、
「シド先輩・・・ありがとうございます・・・」と、
シドの遺した言葉に導かれて信念を貫いた結果、素晴らしい仲間と大きな夢を得たことに感謝し、
その夢を必ず仲間の絆で掴んでみせると固く誓うのでした。

さて、こうして他の仲間が皆、ゴーカイガレオンの中のマーベラスを探して山の中を駆けだしているというのに、
肝心のマーベラスはさっきは妙な白い空間でアカレッドと会っていたりして、なんだか状況が不明だったのですが、
ここで場面が変わって、山中に墜落しているゴーカイガレオンが冒頭の場面以来、久しぶりに映ります。
そしてそのコクピットでは冒頭の場面と同じ態勢でマーベラスが床に倒れています。

そして、冒頭のシーンや前回のラストシーンの同一シチュエーションではナビィの姿は無かったのですが、
ここではナビィが登場します。
ナビィは基本的にはいつも船室の方におり、コクピットには滅多に来ることはありませんから、
墜落したばかりの場面ではまだコクピットには来ておらず、
その後、船室からコクピットまで飛んでやって来たのでしょう。

ナビィはグレートワルズとの戦闘中はコクピットにはいませんでしたから、
何処までこの状況を把握しているのかよく分かりませんが、
もしガレオン船内でコクピットの状況が逐一船室の方に伝わるシステムがあったとしても、
それは墜落時にシステムダウンしているでしょうから、
墜落後のコクピットの状況はナビィはコクピットに飛んで行って目視するまでは
よく分かっていなかったと思われます。
だから、コクピットに着くとマーベラスが床に倒れているのを見てビックリしたようです。

マーベラスが死んでいるのかと慌てたナビィは
「マーベラス!マーベラス!ねぇ!マーベラス!」と叫びながら、
マーベラスの頭を嘴でひたすら突っつきまくるのでした。
その痛みに反応してマーベラスは「うぅ・・・いてぇ・・・」と呻きながら頭を上げ、
けだるそうに上体を起こして座り込み、周囲を見回します。
マーベラスはやはり死んではいなかったようです。

「よかった!死んでなかった!マーベラス!」と喜ぶナビィに向かって、
「・・・死ぬか!」とマーベラスはぶっきらぼうに言います。
マーベラスはさっきまでアカレッドと立って喋っていたという意識なので、
自分が死んでいるなどという意識はありませんでした。
最初に目覚めた時は真っ白い空間だったので死後の世界かと思ったのですが、
アカレッドと喋っているうちに自分は死んだわけではないと気付いていましたので、
次の瞬間いきなりナビィに頭を小突き回されて、死んでないと大喜びされて逆に面喰らってしまいました。

しかしナビィは倒れて動かないマーベラスを見て驚いていたのですから、
マーベラスの戸惑いなどお構いなしで「オイラを置いて死んだら承知しないからなぁ!」と
マーベラスの懐に潜り込んでシャツに縋りついて喚き、
マーベラスは「鳥・・・!」と照れつつ戸惑うのでした。

そして、ナビィがあまりにうるさいので気を取られていましたが、
ようやく周囲をゆっくり見回し、マーベラスは「・・・夢だったのか・・・?」と不思議そうに呟きます。
周囲はどう見ても、いつものガレオンのコクピットであり、
自分はどうやらここの床に倒れていたようです。
ということは、あのグレートワルズとの戦いで、仲間たちを強制脱出させた後、
コクピットの爆発の際に気を失って倒れ込み、そのまま倒れ伏していたのを、
今ナビィに起こされたということになると、マーベラスは状況を理解しました。

しかし、そうなると、あのアカレッドと会った白い場所は何だったのか?
まぁ普通に考えれば、気絶している間に見ていた夢だということになります。
やけにリアルな印象であったので妙でしたが、
そもそも死んだはずのアカレッドが出てくるという時点で現実世界の出来事とも思えない。
現実世界とリンクした内容であったのは、単に自分の意識が作用した結果なのだろうと、
マーベラスはあれは夢だったのだと結論づけました。

しかし、さっきの真っ白なシーンは、果たして本当にマーベラスの見た夢の場面なのでしょうか?
この「ゴーカイジャー」に登場するアカレッドというキャラは、
マーベラスは単に自分を冒険の旅に導いてくれた「赤き海賊団」の船長だと思っていますが、
実際はマーベラスの知らない側面が何かとあるキャラであります。

「199ヒーロー大決戦」映画のレジェンド大戦のシーンでは、
スーパー戦隊192戦士の戦う力がレンジャーキーとなって宇宙に散らばっていくのを、
なんと宇宙空間に浮かんで見送っており、どうも普通の人間とは思えない。

また、第21話のボウケンジャー篇では、
元ボウケンレッドの明石暁がアカレッドとごく最近接触したらしいことが示唆されており、
数年前の「赤き海賊団」壊滅事件時に死亡したというマーベラスの認識とは矛盾しています。
しかも明石暁はもともと「ボウケンジャーVSスーパー戦隊」というOV作品で
「アカレッド」という、この作品のアカレッドと酷似しているキャラと面識があり、
ほぼ間違いなく、この「ゴーカイジャー」のアカレッドは
「ボウケンジャーVSスーパー戦隊」のアカレッドと同一人物です。

となると、「ボウケンジャーVSスーパー戦隊」ではアカレッドは
「スーパー戦隊の赤の戦士の平和への願いより生まれし者」と自己紹介しており、
一種の思念体であると思われますから、
この「ゴーカイジャー」のアカレッドも実は思念体であり、
それならば宇宙空間に浮かんでいたり、死んだはずなのに明石に接触したりするのも理解できます。

そのように、アカレッドが思念体であるとするなら、
実はアカレッドは「赤き海賊団」壊滅事件の際には死んでおらず、
ガレオンに現れてマーベラスに真っ白い空間の幻覚を見せてそこに登場するぐらいのことは出来そうですし、
あるいはマーベラスの夢の中に無理矢理に登場するということも出来そうです。

というか、あの白い空間は幻覚でない可能性もあるのではないか?
真っ白い空間というと、「199ヒーロー大決戦」映画の中で出てきたレンジャーキー空間や、
第19話で鎧がゴールドアンカーキーを生成した空間を想い出します。
あれらは皆、レンジャーキーが関係した空間でした。
そして、ガレオンには現在、198個のレンジャーキーが存在しており、
そのうち「大いなる力」が26戦隊分も揃っている状態なのです。

ただ、映画の時のようにレンジャーキーが異常に励起した状態ではなく、
また、第19話の時の鎧のようにレンジャーキーに特殊に働きかける能力はマーベラスにはあまり無いと思えます。
しかし、スーパー戦隊に深い関わりのある思念体であるアカレッドが介在するならば、
198のレンジャーキーを使って真っ白な空間を作ることは出来たのかもしれません。

いや、そもそも、マーベラスに話しかけるためだけならば、
アカレッドはレンジャーキーを使って白い空間など作る必要は無い。
普通にコクピットで話しかければいいでしょう。
だから、もしあの白い空間がアカレッドがレンジャーキーを使って生成したのだとすれば、
それは別の目的があってのことではないでしょうか?

そこで不思議なのが、どうしてマーベラスは無事なのかです。
しかもどうやらガレオンも無事のようであるし、ナビィまでピンピンしています。
ザンギャック最強の決戦機であるグレートワルズの決め技であるワルズギルティを
あれだけ至近距離で長時間浴びて爆発を起こして遠くの山まで吹っ飛ばされて墜落した割には、
あまりに損傷が軽微に過ぎるのではないでしょうか?

ザンギャック側はワルズ・ギルはともかくとして、
ダマラスやインサーンのような慎重な策士タイプの者達まで全員揃って、
マーベラス達は死んだと確信しています。
脱出した5人は計算外としても、マーベラスはダマラスらの想定通りに船内に居たのだから、
ダマラスらが死んだと信じ込んだのに生きているのはダマラスらの見通しが単に甘かったということなのか?

いや、雁首揃えてそこまで間抜け揃いということはないでしょう。
つまり、普通はグレートワルズのあれだけの攻撃を受けたら死ぬのでしょう。
運よく死ななかったとしてもここまで損傷が軽微というのは考えられない。
となると、何らかの力で防御されていたのではないかとうことになり、
198個のレンジャーキーを使ってアカレッドが何かをした可能性はあるでしょう。
そして、その空間の中でアカレッドがマーベラスに話しかけたのかもしれません。

ただ、もしそうだとしたらナビィは何も気づかないのでしょうか?
いつもレンジャーキーの宝箱のすぐそばにいるナビィなら、
もしレンジャーキーに何か異常があれば気付くはずです。
というか、ナビィはどうしていつもレンジャーキーの宝箱の近くにいるのでしょうか?
ナビィという存在そのものがもともと謎だらけなので、いちいち細かい謎はマヒしてしまうのですが、
ちょっと気になるところではあります。

まぁ、ここではナビィは相変わらず呑気そうに、
マーベラスが夢だったのかとブツブツ言うのを聞いて「は?何が?」と問いますが、
マーベラスはいちいち自分の夢の話などしても仕方ないと思い、
「・・・いや、こっちの話だ!」と言って、話題を変えて
「それより鳥・・・今ザンギャックが襲ってきたらどうする?」とナビィに質問します。

マーベラスは白い空間でのアカレッドとの会話で
自分達ゴーカイジャーの守るべきものは「夢を掴むために集まった仲間たちの絆」なのだと気付き、
その夢を掴む仲間の絆の力でザンギャックから地球を守ることも含めたどんな困難な夢でも
仲間一緒に突き進むべきだと悟りましたが、
あれが自分の見ていた夢の中の出来事だったのだと思ったことによって、
あるいは自分勝手な妄想なのかもしれないと思ったのでした。
マーベラス自身は、その考え方でいいという確信は持っていましたが、
もしかしたら仲間にとっては、こんなボロ負けの後でまだザンギャックとこれ以上戦うなど迷惑な話かもしれない。

だからとりあえずこの場にいるナビィにザンギャックと戦う気力があるかどうか聞いてみようと思ったのでした。
するとナビィは「決まってるだろぉ!2人で戦うよぉ!!」と威勢よく答えて、
目の前にあった操舵輪を思いっきり回します。
が、それは冗談だったようで「・・・なぁ〜んてね!オイラだけ飛んで逃げちゃうかな?」と言って、
とぼけて飛んでいきました。
いや、こっちが冗談なのか、どっちがどっちなのかよく分かりません。

結局、ナビィに質問した意味があんまり無かったマーベラスは「・・・お前なぁ!」と苦笑して、
回っている操舵輪を掴まえて止めて、
コクピットの鍵穴にゴーカイレッドのレンジャーキーを挿して回し、ガレオンを起動させます。
ガレオンは正常に起動するようで、やはり損傷はほとんど無いようです。

ナビィはマーベラスがガレオンを起動させて発進準備をするのを見て「どこ行くんだよ?」と質問しますが、
それに対してマーベラスは操舵輪をガシッと掴んで「フン!決まってんだろ!」と言うと、
目を輝かせて操舵輪を思いっきり回してガレオンを発進させるのでした。
やはり自分が集めたメンバーというわけではないナビィに聞くよりも、自分の集めた5人の仲間たちに直接、
こんな酷い負けの後でもまだザンギャックと戦えるのかどうか聞くのが手っ取り早いと思い、
マーベラスは仲間を迎えに行くため、ガレオンを発進させたのでした。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 18:35 | Comment(0) | 第38話「夢を掴む力」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月26日

第38話「夢を掴む力」感想その3

さて、ジョーがバリゾーグと戦い始めた頃、鎧はどうしていたのかというと、
やはり鎧もマーベラスを助けるためにこの山の中に入ってきており、
そこにゴーミン達が出現して山狩りを始めたので、
他の仲間の安否が分からない状態で騒ぎを起こすのは得策ではないと思い、
慌てて姿を隠して逃げ回っていました。

山道をウヨウヨ歩いているゴーミン達を木の上に登って見下ろしていた鎧は、
ゴーミン達がその場を去って別の場所へ行くと、地上に降りてきて
「ザンギャックの奴ら・・・いったいどんだけ居るんだよぉ・・・?」とブツブツ言います。
マーベラスはガレオンと共に吹っ飛んで安否不明で、
他の仲間は自分と同じようにその直前にマーベラスによって強制的に脱出させられたと思われますが、
無事なのかどうか分からない。

ただ、脱出した仲間に関しては、自分がこうして無事なのだから、
おそらく同じように安全な場所に不時着はしたのだと思うが、たぶん皆バラバラになっており、
そして皆、自分と同じようにマーベラスを助けるためにこの山に向かっているはずだと鎧は確信していました。
しかし、これだけ山の中にザンギャック兵達がいるとなると、
バラバラに行動する仲間たちは既に山中でザンギャックに発見されて捕らわれてしまったかもしれない。

それにこの山に落ちたはずのガレオンが沈黙しているということは、
マーベラスが生きていたとしても動けない状態にある可能性は高く、
それならザンギャックに既に捕らわれているのかもしれない。
もし、そうなれば自分はもうこの山の敵の中で独りぼっちなのかもしれないと、鎧は不安な気持ちになりました。

その瞬間、背後から鎧の肩を誰かが掴んで「鎧!」と呼びかけます。
鎧はビクッとして、何時の間にか敵に囲まれて背後から肩を掴まれたと思い、
反射的に「うわっ!わ〜!わ〜!」と騒いで必死で肩の手を振りほどき、
振り向いて自分の身を守ろうとして手で自分の身体をガードしますが、
肩を掴んでいた者は素早く鎧の首に腕を回して締め付けてきます。

それで鎧も一瞬、必死に抵抗しますが、
「・・・大声出したらゴーミンに気付かれるでしょ!」と耳元で怒鳴る声を聞いて、
横目でチラリとその声の主を見ると、それはルカでした。
ルカは鎧の姿を発見して声をかけたら鎧がいきなり大声を出して暴れたので、
ゴーミン達に気付かれてはいけないと思って、慌てて鎧を黙らせようとして首を絞めていたのでした。

鎧は思わずガバッとルカの肩を抱き「ルカさぁん!?」と喜びますが、
馴れ馴れしくお触りしたのでルカにビンタを喰らい、「いて!」と顔をそむけます。
すると、その視線の先にはハカセとアイムも立っています。
それを見て、鎧はルカとハカセとアイムが既に無事に合流済みであったことを理解しました。
「ドンさんに、アイムさんも!・・・皆さん、無事だったんですね!」と鎧は安堵して笑顔になります。
3人の無事が確認出来た安堵と、仲間と合流出来たことによって
孤独感から解放された安心感が鎧を明るい気分にさせたのでした。

しかし、ハカセはどうやら鎧が1人で行動していたらしいということが分かると、
「・・・まだ、ジョーがいないけどね」と、未だ合流出来ていないジョーのことを心配して、笑顔にはなれません。
鎧の姿を発見した時、あるいはジョーも一緒なのかとも思ったのですが、
鎧の様子を見ると、どうやらジョーとは一緒ではないことが分かったのです。

鎧も無事でこの山に来ているということは、おそらくジョーも無事で、
別ルートでこの山に来ているはずだとハカセは思いましたが、
自分達と鎧がそれぞれ山中を彷徨っていて未だにジョーと遭遇していないということは、
ジョーはもしかしたらザンギャックの拠点の近くを彷徨っているうちに、
自分達と遭遇する前にザンギャックと遭遇してしまい、身動きが出来ない状況なのかもしれないとも思えたのです。

そして、それ以上に心配なのがマーベラスの安否です。
アイムもハカセに続いて重い口調で「それに・・・マーベラスさんも・・・」と、
まだ自分達はマーベラスの安否が確認出来ていないことを鎧に伝えます。
鎧はアイムの口からマーベラスの名が出たことで表情を変え、笑顔は引っ込んで沈んだ表情になってしまいます。
マーベラスとジョーが未だに見つかっていないと知って安堵している場合ではないと分かったこともありますが、
鎧が沈んだ顔になったのは、それだけが原因ではありません。
マーベラスの名を聞いたことで、
自分が必死になってマーベラスを見つけ出そうとしている理由を想い出したからでした。

それはマーベラスに生きていてほしいという想いだけではない。
鎧はマーベラスに会って、聞きたいことがあったのです。
そして、それは鎧にとって非常に深刻な問題だったのです。
鎧はルカ達3人に背を向け、数歩進んで
「あれが・・・マーベラスさんにとっての、“守る”って意味だったんでしょうか・・・?」と問いかけます。
これが鎧がマーベラスに聞きたいことでした。

「あれ」というのは、つまりマーベラスが自分だけ豪獣ゴーカイオーに残って仲間を脱出させたことです。
鎧は自分との問答でマーベラスが「守る」ということについてのマーベラスなりの答えを示さなかったのは、
ジョーに事情を聞いて、それがザンギャックから何かを守るということが
非常に困難なこの宇宙においては大変な難問であるからだと思っていました。
しかし、実際はマーベラスは自身にとっての「守る」ということがどういうことであるのか、
答えを秘かに出していたのではないかと鎧は思いました。
だから、マーベラスはああいう自己犠牲的な行動に出たのではないかと鎧は考えていました。
つまり、「自分の命を犠牲にしてでも仲間の命やその夢を守る」ということが
マーベラスの「守る」ということなのではないか?
マーベラスはそういうつもりなのではないか?と鎧は疑念を抱きました。

何故そう思えるのかというと、
ジョーからマーベラスにとってのアカレッドの行動の意味の持つ重さを改めて教えられたからです。
つまり、ジョーの話を聞いた上であのマーベラスの行動を見て、鎧は気付いたのです。
アカレッドが自分の命を捨ててマーベラスの夢を守ったことが、
マーベラスにとっての唯一知り得る「ザンギャックから何かを守りきった実例」だということに気付いたのです。
だから、マーベラスにとっての「守る」とは、
「自分の命を犠牲にしても仲間の命や夢を守ること」なのではないかと鎧は思ったのでした。

ルカ達3人も、マーベラスがあの時、自分を犠牲にして仲間を守ろうとしたのだと理解しており、
マーベラスがそれをアカレッドを倣って自分にとっての「守る」という行為なのだと
思い込んでいるのだろうということも想像していました。
鎧はほぼそれと同じことを言いつつ、
ルカ達に、そうした行為は本当にマーベラスにとっての「守る」ということに当たるのだろうかと疑問を呈している。
そのように3人は解釈しました。

ただ、どうして今そんなことを鎧が言い出すのか、
しかも背を向けて深刻そうな声で質問してくる意味が3人にはイマイチよく分かりませんでした。
それでルカはちょっと不思議そうな顔をして
「さあ?・・・自分がアカレッドにしてもらったことを、あたし達にしたってことでしょ?」と、
少し呆れた口調で答えます。

ルカは、確かにあれは自分達を守ってくれた行為だったとは認めていましたが、
マーベラスが単にアカレッドに憧れて、その真似をしただけの行為だと思っていました。
だから行為自体は「守る」行為としては立派ではあるが、
本来のマーベラスらしい行為ではないと思っていました。
だから、あれが本当のマーベラスにとっての「守る」ということなのかと問われれば、
それは違う、いや、違うはずだというのがルカの答えでした。

一方、ハカセとアイムはもう少し肯定的に、
あれはマーベラスがアカレッドから引き継いだ船長としての責務を果たして
仲間を守ろうとした行為だと見なしており、
「ああ見えて責任感強いからね!」「マーベラスさんらしいです・・・」と苦笑いしつ、視線を落とします。
つまり、個人的にはマーベラスが自分の身を危険に晒すような行為は決して嬉しくはないが、
あれがマーベラスなりの「守る」という行為であるという考え方自体は認めており、
実際にそれによって自分達が助けられたのも事実だと認めているのがハカセとアイムのスタンスだといえます。

ルカもハカセもアイムも、3人ともマーベラスの自分の命を粗末にした行動は歓迎してはいなかったし、
マーベラスが犠牲になって自分達が助かったとしても、嬉しくはなかった。
自分だけカッコつけて残って、もし死んだりしたら、残された自分達がどれだけ悲しむか、
マーベラスは何も考えていない。
どうして自分達と一緒に脱出してくれなかったのかと、3人はマーベラスに対して不満を抱いていました。

というより、マーベラスがそういうバカみたいに責任感の強いヤツだということが分かっていながら、
マーベラスの行動を予測出来ず、マーベラスを見殺しにしてしまった自分達を情けなく思っていました。
自分達がもっとよくマーベラスを観察して、その様子がおかしいことに気付いていれば、
マーベラスを助けることが出来たかもしれない。

そう、結局、ルカ達3人を突き動かしていたのは、マーベラスを守ることが出来なかったという後悔でした。
むしろ、自分達が船長のマーベラスを守るべきだったのに、守れなかった。
だから、これ以上悔やみたくないから、今からでも急いでマーベラスを助けようと思っているのです。

つまりルカ達は自分達がマーベラスと同じように自分にとっての「守る」ということを
確立出来ていなかったのが間違いだったと思っているのです。
自分達もマーベラスのように「自分の命を捨てても仲間を守る」という想いを強く持てていれば、
マーベラスに先を越されることもなく、結果的には全員脱出できたかもしれない。
それが出来なかったのは自分達が「守る」ということを心の中に確立できていなかったせいだ。
だから今、非難されるべきは、マーベラスの「守る」という意識がどうであるかではなく、
自分達の「守る」という意識が曖昧で薄弱であったことでした。

そして、その原因は、自分達が今までザンギャック支配下の宇宙で
何も守りきった経験が無いせいだということも分かっています。
逃げてばかりいた自分達には「守る」という意識が希薄で、そのせいで結局マーベラスを助けられなかった。
だから、今、問われるべきは自分達の「守る」という意識であるはずでした。

ところが鎧はマーベラスの「守る」という意識を問題視し、どうやらそれが不満な様子なので、
ルカ達は不思議に思いました。
マーベラスの行為はどう見ても立派に「守る」行為のように思えました。
「自分を犠牲にして仲間を守る」という行為はどこからどう見ても「守る」行為そのものであり、
それをまんまと1人でやられてしまったことが自分達の後悔の元となっているのだと、ルカ達は思いました。
非難されるべきは、マーベラスと同じ「守る」行為が出来なかった自分達の方であり、
マーベラスの行為そのものが非難されるのはおかしいとルカ達は思いました。

ところが鎧がマーベラスの行為を、まるでそれは「守る」行為ではないかのように非難がましく言うので、
ルカ達は何か妙だと思いましたが、一応鎧に対して、
マーベラスの行為は「守る」行為にあたるという見解を述べ、一応マーベラスを弁護したような形となりました。

ところが、そうすると鎧はルカ達の方に振り向いて
「・・・皆さん、それでいいんですか?」と真剣な表情で問いかけてきます。
ルカ達3人は「え・・・?」と呆気にとられました。
さっきまで鎧がマーベラスを非難していたと思ったら、今度は急に自分達が非難されたのですから、
よく意味が分かりませんでした。
それに、どうしてマーベラスのあの行為が「守る」行為にあたるとしたら、自分達に不都合なのか、
その理屈がさっぱり分かりませんでした。

むしろ自分達はマーベラスの行為を立派な「守る」行為だと認めて、
それを見習って今度は自分達が自らが犠牲になってもマーベラスを助けようとして、
こうしてザンギャックがウロウロする山中を進んでいるのです。
鎧だってそのつもりでこの山に来ているはずではないか。
そうした自分達の行為まで否定するつもりなのか?とルカ達は鎧の発言に驚いたのでした。

そうして呆気にとられる3人に向かって鎧は必死な眼差しで
「確かに、マーベラスさんらしいかもしれません・・・すっごい男らしいかもしれません・・・!」と言います。
鎧は実はマーベラスの「自分を犠牲にして仲間を守る」という行為が自分達を「守る」行為だったことは認めている。
それは確かに立派であり男らしい、責任感溢れる行為であり、マーベラスらしい行動だったと認めています。
つまり、ルカ達の言っていることを否定しているわけでも非難しているわけでもないのです。
ただ、どうしてもそれを受け入れることが出来ないのです。

鎧は苦しそうに首を振って「・・・でも・・・俺には納得がいきません!」と絞り出すように言うと、
またルカ達に背を向けてしまいます。
鎧は、ルカ達の言い分はよく分かるし、
自分もルカ達のようにマーベラスの行動を自分を守ってくれたのだと素直に認めるべきだと思っています。
それを認められないのは自分のエゴだと思っています。
しかし、それでもどうしてもマーベラスの行動が自分を本当の意味で守ってくれたとは納得が出来ない。

しかし、その自分の考えをルカ達に理解してもらえる自信は無い。
というより、そのような考えを主張すること自体がいけないことのように思える。
それだけ自分とルカ達とは根本的に感性の違いがあるのです。
マーベラスの行為について考えれば考えるほど、語り合えば語り合うほど、
ルカ達と自分との間を隔てる距離のあまりの遠さに、鎧は悲しい気持ちになってしまうのでした。
それでルカ達を正視出来ずに、鎧はこうして核心に触れる話をするたびに3人に背を向けてしまいたくなるのです。

しかし、ルカは鎧が何を言いたいのかよく分からず「・・・納得?」と聞き返します。
鎧は背を向けたまま、自分の考えを3人に言っていいものかどうか少し躊躇し、そして遂に思い切って
「俺は・・・マーベラスさん一人に背負ってほしくなかったです・・・」とゆっくり自分の心境を語り出しました。
そして、勇気を出して3人の方に振り向くと、
「仲間なら!・・・俺たちを守るんじゃなくて・・・最後まで一緒に、戦いたかったです・・・!」と声を絞り出しますが、
自分を見つめるルカ達3人の視線に驚きと戸惑いの色を感じ、
そこに共感の色を感じ取れなかったことに、やはり言い知れぬ悲しみと孤独感を感じて、
思わず下を向いて鎧は涙ぐんでしまうのでした。

一方、ルカ達3人は鎧のその言葉を聞いて驚きました。
鎧はマーベラスが自分達と一緒に脱出しなかったことが不満なのではなく、
マーベラスが1人だけで戦おうとして、鎧を一緒に戦わせてくれなかったことが不満だったのです。
そして、その鎧の本心を知って、
3人はどうして鎧がマーベラスの行為を自分を守る行為として納得することが出来なかったのか、理解出来ました。

何故なら、マーベラスは自分が命を張ってまで鎧の夢を守ったつもりかもしれないが、
本当は鎧の夢を否定しているからです。
鎧の夢とは「地球や宇宙を救うためにザンギャックと戦って勝つこと」です。
鎧をザンギャックとの戦いの場から排除するということは、
マーベラスは鎧を守ったつもりかもしれないが、実際は鎧の夢を否定しているのです。
夢を否定された鎧が、マーベラスの行為を、守って貰えたなどと感謝出来るはずがない。

そういう鎧の気持ちは3人には瞬時に理解出来ました。
しかし問題はそこではありません。
鎧が「皆さんはそれでいいんですか?」と必死に問いかけてきたのは、
本当は鎧は自分達にも同じ気持ちであってほしいと思っているからだということが、
ルカ達3人には分かったのでした。

つまり、マーベラスが逃げなかったことを非難したり、
マーベラスを守れなかったことを悔やんだりするのではなく、
マーベラスと一緒に最後まで戦えなかったことを残念に思ってほしい、と鎧は自分達に求めてきているのです。
そういえば、あのグレートワルズに完全に追い詰められた時、
マーベラスをはじめ全員が絶望的な心境となった中で、鎧だけはあくまで戦おうとしていました。
だから鎧は戦いを諦めてしまったマーベラスや自分達を残念に思っているのだと、ルカ達は悟りました。

しかし、それは無茶だと3人は思いました。
あんな状況で鎧が諦めなかったのは、鎧が単に怖い物知らずなだけじゃないかと思いました。
鎧は地球人だから、ザンギャックの本当の恐ろしさを知らないのだ。
地球はまだザンギャックに征服されていないから、
だから地球人はザンギャックと戦って勝てるかもしれないなどと気軽に考えるのだ。

実際は宇宙でザンギャックに勝って星を守ることが出来た者など存在しない。
自分達はそのことを嫌というほど知っている。
だから、ザンギャックと戦って何かを守り抜けるとは思えない。
ずっと戦えばいずれは負けると思ってしまう。
グレートワルズに追い詰められた時、その時が来たと思ってしまった。
それで諦めムードになったのだ。

要するに自分達はザンギャックの強大さを知っている分、
どうしても鎧ほどは強い気持ちを持つことが出来ないのです。
悔しいけど、自分達は弱い人間なのだとルカ達は思った。
だから、ザンギャックの怖さを知らないゆえに怖い物知らずの強気を持っている鎧に、
自分と同じ強さを求められても困ってしまうと3人は思いました。
そして、やはり鎧と自分達は根本的に違うのだと、少し醒めた気持ちになって、3人は鎧をじっと見つめます。

しかし、下を向いて涙ぐんでいる鎧を見て、そうではないということに気付いたのでした。
そんな能天気な物を知らないゆえの強気で発言しているのなら、どうして鎧は涙ぐむ必要があるのか?
どうしてあんなに背を向けたりして躊躇して話をする必要があるのか?
だいいち、そんな無知ゆえの強気であったなら、グレートワルズの猛攻によって簡単に心は折れていたはずです。

つまり、鎧は誰かから聞いて、宇宙の現実は知っているのです。
そして、ルカ達が宇宙でどんな酷い目にあってきて、
それゆえ心の弱い人間になってしまっていることも知っているのです。
それらを全て知った上で、鎧はそれでも恐怖や絶望を乗り越えて、強い心をもって戦おうとしている。
そして、ルカ達のことを恐怖や絶望を乗り越えられない弱い人間だと見なして、
同情し、遠慮し、気遣ってくれているのだ。
酷い目にあったせいで心の弱くなってしまった3人に自分の強さを押し付けるのは申し訳ないと思って遠慮して、
自分の苦しい本心を言うのを躊躇して、結局それを言ってしまったことでルカ達を苦しませると思って、
それが申し訳なくて、涙ぐんでくれているのです。

そうした鎧の本心を全て悟ったルカ達3人は、なんとも惨めな気分になりました。
自分達は何時の間に、そこまで後輩に気遣わせる弱く情けない人間になってしまったのか?
3人は愕然として黙って立ち尽くすのでした。
そうして自分の弱さを自覚することによって3人は
自分達は弱いからマーベラスに守られたのだということに気付いたのでした。
マーベラスは自分達を見て、弱いから守ってやらないといけないと思ったのだ。
そして自分達は弱いから、それをマーベラスの立派な「守る」行為だと素直に受け入れてしまったが、
鎧だけは強いから、守られることが納得出来ず、自力で夢を掴もうとした。
自分達と鎧の真の相違点はそこだったのだと、3人は悟ったのでした。

さて、その頃、ジョーとバリゾーグの一騎打ちの方はどうなったのかというと、
なんとジョーはバリゾーグに押しまくられてしまっていました。
さっき倉庫の中で戦っていた時はほぼ互角の勝負に持ち込めていたというのに、いったいこれはどうしたことなのか?

剣の勝負でジョーを圧倒した挙句、バリゾーグが剣を地面に突き刺すと、地面を伝って電撃がジョーを襲い、
ジョーは崖から転落して「ぐわっ・・・!?」と一段下の台地の地面に思いっきり身体を打ちつけます。
そこにバリゾーグも飛び降りてきて、再びジョーに対峙して、いよいよジョーを追い詰めにかかります。
ジョーは立ち上がって「うおおおっ!!」と吼えて斬りかかりますが、
また斬り負けて吹っ飛ばされ、地面にうつぶせに倒れ込んでしまいます。

いったいこれはどういうことなのかというと、ジョーはバリゾーグに気後れしてしまっていたのです。
さっき倉庫の中で円月剣のぶつけ合いの勝負を演じた際、ジョーの円月剣とバリゾーグの円月剣は互角の威力でした。
ジョーにとっては、これはショックでした。
ジョーは自分こそがシドの魂を受け継ぐ者、
つまり自分の命を張ってでも仲間を守るために剣を振るう戦士なのだと思っており、
それゆえ自分はシドの技である円月剣を完全に使いこなせると自負していました。
対してバリゾーグは所詮はシドの剣の技だけをコピーした戦士であり、そこにシドの魂はこもっていない。
だからバリゾーグの放つ円月剣は偽物の円月剣であり、
真っ向からぶつかれば自分の本物の円月剣が負けるはずはないと思っていました。

ところが実際に真っ向からぶつけてみると、互角だったのです。
つまり、バリゾーグの円月剣も本物であり、
バリゾーグもまた誰か(おそらくワルズ・ギル)を本気で命を張って守ろうとして
剣を振るっているという点では自分にひけをとらない本物の戦士だったと認めざるを得ないとジョーは思いました。
つまり、ジョーとバリゾーグは互角というわけです。
実際、倉庫では互角の勝負でした。

それが何故、この山中の戦いではここまで一方的にバリゾーグ優勢になってしまっているのかというと、
ジョーがマーベラスを守ることが出来ず、逆に守られてしまったからでした。
これによってジョーの心の中で、自分がシドの魂を継ぐ本物の剣士だという自信が揺らいでしまい、
むしろワルズ・ギルを命を張って守る気持ちに嘘偽りは無く、
それをひたすら実践しているバリゾーグの方が、真にシドの魂を受け継ぐ戦士のように思えてきて、
倉庫では自分が本物のシドの後継者であり、バリゾーグをシドの偽物と見なして見下ろしていたジョーが、
ここでは心理的立場が逆転してしまい、
シドの偽物であったことが露呈してしまった自分が、
本物のシドの化身であるバリゾーグに追い詰められているような気分になってしまっていたのでした。
それで心理的に位負けしてしまい、押しまくられることになったのです。

バリゾーグは倒れ伏したジョーを見て勝利を確信し、
「残念だったな!せっかく仲間に救われた命だったのに・・・」と小馬鹿にしたように言います。
バリゾーグはワルズ・ギルに忠義を尽くしてひたすら守るようにプログラムされ、
それが戦士の誇りなのだと信じ込んでいますから、
先ほどジョーが「仲間に守られて生きながらえた」と言ったのを聞いて、
戦士の誇りの無い奴だと思って軽蔑していたのでした。
だから、仲間に救われて拾った命を必死になって守ろうとしているジョーの姿を見て、醜態だと思い、
からかうような言葉を浴びせて侮蔑したのでした。

ジョーはバリゾーグの言葉に込められた侮蔑の意思を感じ取り
「仲間に救われた命・・・」と、その言葉を復唱して怒りに震えます。
が、確かに自分で復唱してみて、惨めな響きだと思いました。
仲間に守られて生きながらえたような弱い自分の命をこうして地べたに這いつくばって必死で守って、
自分は何をしようとしているのか?
自分が必死になっているのは、マーベラスを救いに行くため、つまりマーベラスを守るためでした。
しかし、それは結局、マーベラスの命を「仲間に救われた命」としてしまい、
今の自分同様、マーベラスを弱い惨めな人間に貶める行為なのではないかということにジョーは気付きました。

自分は「守る」ということは立派な行いだと思っていた。
シド先輩の行為は立派だと思っていたからです。
いや、確かにシド先輩は立派な人だった。
だが、シド先輩が立派な人だったから、シド先輩の行為は全て立派な行為だと自分は思い込んできたのではないか?
シド先輩が自らの命を捨てて自分を守ってくれた行為は本当にこれ以上無いほどの立派な行為であったのか?

もちろんシド先輩の自己犠牲の精神は尊い。
だが、シド先輩に守られて命を救われたことによって、自分は弱い人間になってしまったのではないか?
いいや、そうではないだろう。シド先輩が自分を弱くするためにそんなことをするはずはない。
そうではなく、あの時の自分が弱かったから、シド先輩は自らの命を犠牲にして守るしかなかったのだ。
もしあの時、自分がもっと強ければ、2人とも自分の身は自分で守って、
2人一緒に戦って囲みを突破出来たかもしれない。

そう考えると、ジョーの脳裏にシドの最後の言葉が思い起こされます。
シドはジョーに「ザンギャックに逆らったからには逃げ続けるか死かだ」と言いました。
つまり、それはあの時点のジョーとシドの2人の運命を言っていたのです。
シドは死に、ジョーはその間に逃げるということです。
ジョーは弱かったから、シドの命を犠牲にして逃げるしか生きる道が無かった。
そして、そのジョーの弱さとは、ザンギャック支配下に生きる人間全ての持つ弱さでもありました。

しかし、その言葉に続いてシドは
「だが、俺たちは宇宙に生きる者として正しい道を選んだんだ!生きていれば宇宙の何処かで必ずまた会える」
と言ったのです。
これは今まで、ジョーは単にシドが自分たちの掲げた正義の正しさを主張しただけだと思っていましたが、
そうではなく、「だが」という言葉で結ばれている以上、
この「だが」以後の文は「だが」以前の文を否定する意味のはずです。

つまり「宇宙に生きる者としての正しい道」を貫くことによって、
「逃げるか死か」というザンギャック支配下の宇宙の現実を超える第三の道、
つまり「逃げずに戦って生き抜く」という道を選べるほどに強くなれるのだということを
示唆していたのではないかとジョーは気付きました。
今は逃げて、生きながらえて信じた正しい道を貫き通して強くなれば、
きっとまた出会って、今度こそ一緒に戦えるという、そういうシドからのエールだったのでしょう。

だから本当に一番立派な道は「自分を犠牲にして仲間を守ること」ではなく、
「仲間と一緒に逃げずに戦うこと」だったのです。
本当はシドはその道を選びたかった。
でもまだ仲間のジョーが弱い人間だったため、仕方なくシドは自分の身を犠牲にしてジョーを守るしかなかった。
そして、遺言でシドはジョーに「仲間と一緒に逃げずに戦うこと」が出来るような
真に強い人間になるよう求めたのだ。

そのシドの真意に気付いてジョーは立ち上がると「うおお!」と叫んでバリゾーグに突進して斬りかかり、
刃と刃をぶつけ合い、剣を絡めあって押し合いながら
「シド先輩!・・・いや、バリゾーグ!!」と呼びかけます。

目の前にいるのは確かにかつてのシド先輩のように
大切な相手を命を張って守ろうとする戦士であるバリゾーグだった。
そういう意味ではバリゾーグは確かに本物の戦士であり、決して偽物のシドではなかった。
大切に想い守る対象はすり替えられてしまっているが、
命を張って大切なものを守る一途さはシドそのものであり、シドの生まれ変わりと認めてもいい。
偽物のシドではなく、バリゾーグはある意味、本物のシドだったのだ。

しかし、それはシドという人間のほんの一部であり、シドの本当に理想としていた姿ではない。
本当のシド先輩はもっと大きく強い戦士を目指していた。
シドの遺言の本当の意味を知った今のジョーはそう断言できる。
だから、やはり目の前にいるのは本当のシド先輩ではない。
これはあくまでバリゾーグでした。
そのバリゾーグにジョーは問いたいことがあった。
ジョーは体を入れ替えて再びバリゾーグの刃に自分の刃をぶつけて激しく斬り合いながら、
バリゾーグに向かって
「・・・お前が忠義を通すワルズ・ギルは!・・・お前を命を張って守ってくれるのか!?」と問いかけます。

するとワルズ・ギルはジョーの刃を自分の刃で受け止めながら動きを止め、
ジョーの意外な問いかけに少し面食らったような風情となります。
バリゾーグにはワルズ・ギルがバリゾーグを守るために命を張るなどという事態は想定できない。
何故なら、あくまでバリゾーグはワルズ・ギルに忠義を尽くし守りきるためにプログラムされているのであり、
もし自分のためにワルズ・ギルが危険に晒されるのであれば、
バリゾーグはワルズ・ギルを守るために自分自身を排除しなければいけなくなるからだ。
それはつまり自分の存在意義を否定するということだ。
そういう結論に至る以上、バリゾーグはそのような危険なことは想定しないようになっている。
つまり、ワルズ・ギルがバリゾーグを守るという事態の想定は
バリゾーグのプログラムの中では除外されているのです。

ゆえに、一瞬の間のあと、バリゾーグは
「・・・ボスは私が守るべき存在・・・私をワルズ・ギル様が守ることは有り得ん・・・!」と機械的に答えて、
ジョーの刃をどかせて、ジョーの胴を剣で払って弾き飛ばします。
その攻撃を喰らって「うわっ!」と叫んで10mほど宙を舞って再び地面に倒れ伏したジョーですが、
「そうか・・・やはり俺たちとは違うな・・・!」と、何やら確信を持った口調で言いながら、
ぐぐっと身を起こしてきます。
バリゾーグはジョーの言葉の意味が分からず「なに・・・?」と言います。
しかし、もはやジョーはバリゾーグと会話はしておらず、心に中である確信に達していました。

この宇宙が今、過酷な状態となっているのはザンギャックが原因だとジョーは今まで思っていました。
ザンギャックさえいなければ、弱い者を守ろうとした勇敢な者が命を捨てる必要もないのだと思っていました。
しかし、それは自分の弱さゆえにシド先輩を死なせてしまった罪悪感を誤魔化すために
全てをザンギャックのせいにしていたに過ぎない。

実際は、世界は過酷な弱肉強食が現実なのであり、
ザンギャックが存在しなくても、その現実は何も変わらないのです。
過酷なようだが、この世界で弱い者は自力で生きていけない。
その弱い者を守ろうとすれば、命を捨てる羽目になる。
命を捨てなければ弱い者を守ることは出来ないのです。

むしろザンギャックはそうした宇宙の過酷な法則を利用して征服を進めて大帝国を築いたと言っていい。
つまりザンギャックは世界の弱肉強食の摂理に極めて忠実なのです。
まずザンギャックは決して弱い者を守ろうとはしない。
弱い者を守ると自分が破滅することを知っているからです。
そうして、執拗に弱い者を攻撃する。
すると、見かねて優しく強い人間が弱い者を守ろうとする。
優しく強い人間はザンギャックにとっては手ごわい敵なのですが、
弱い者を守ろうとすることで命を捨てなければならなくなり、ザンギャックから見れば弱体化して倒しやすくなる。
そうして優しく強い人間はいなくなり、ザンギャックは残った弱い者たちを脅して従わせればいい。

そうしていくうちに、大抵の強い者たちは弱い者を守って戦って犬死にすることの無意味を悟り、
弱い者を守らなくなり、ザンギャック側に与して弱い者を虐げるようになる。
こうして帝国の支配層を形成する酷薄な強者と、被支配層を形成する惨めな弱者に分化され、
見事に弱肉強食の法則に忠実な、非常に安定した支配体制が出来上がる。
この宇宙の弱肉強食の法則に逆らって弱者であるジョーを守ろうとしたためにシドは死ぬことになった。
つまり、ジョーの弱さがシドを殺したのです。残酷なようですが、これが真実なのです。

この宇宙の摂理に忠実なザンギャックの支配体制は一見盤石のように思えます。
しかし、それは宇宙の弱肉強食の摂理に支配されているゆえに不安定にならざるを得ないのです。
何故なら、宇宙の摂理は絶対なので、
どんなにザンギャックの支配体制によって保護されようとも、弱者は絶対的に弱者なのであり、
どんなに被支配態勢によって抑え込まれようとも、強者は絶対的に強者だからです。

すなわち、自らの意思で支配層の地位を勝ち取った者は確かに強者であり、
自らの意思で被支配層に落ちていった者たちは確かに弱者なのでしょうけれど、
それはあくまで第一世代の話であり、
そうした支配体制が出来上がった後に生まれた第二世代になると、
支配層に弱い者が生まれることもあれば、被支配層に強い者が生まれることもあり、
そういう者達はそれぞれ自分の住む階級に馴染めず、せっかく安定していた支配体制を乱す要因となるのです。

ジョーは自分の問いかけに対するバリゾーグの答えを聞いて、
バリゾーグの思考の中にワルズ・ギルがバリゾーグを守るために戦うという想定が
なされていないことを悟りました。
大原丈がバリゾーグの設計図を解析した結果、
バリゾーグの中でシドの剣技以外は全てシドの要素は消去されていると言っていたことをジョーは覚えています。
つまり、そうしたバリゾーグの思考は、シドの思考を引き継いだものでもなければ、バリゾーグ独自の思考でもない。
それはワルズ・ギルの意向で組まれたプログラムのはずです。
それゆえ、バリゾーグの答えを聞いてそこからワルズ・ギルという人間の人間性がジョーには分かったのでした。

つまり、ワルズ・ギルは自分を命を張って守ってくれる存在を欲しながら、
自分がその相手のために戦うことは絶対に無いという状況も欲したのです。
それはまさにザンギャックにだらしなく支配されていった弱い者たちの思考そのものでした。
要するにワルズ・ギルは強者の集まりであるザンギャック帝国の支配層の中枢の中の中枢、
よりによって皇帝の後継者という立場でありながら、弱い人間として生まれてきてしまったのです。

ザンギャック帝国の支配層を構成する強者たちは弱者を決して守ろうとはしない酷薄な連中ですから、
そんな連中の真っただ中で生きるのは、弱者であるワルズ・ギルにとっては辛いことのはずです。
表面上は優しく接してくれたとしても、酷薄な強者たちの弱者に対する本質的な冷酷さは
ワルズ・ギルは敏感に感じ取り、気が休まることは無かったでしょう。
だからワルズ・ギルは弱者を守ってくれる優しい強者を求めた。
弱い自分を守ってくれるヒーローを求めたのです。
それがバリゾーグだったのです。

そもそもワルズ・ギルはどうしてシドをバリゾーグに改造したのか?
剣技の優れた者なら他にもいたでしょう。
手当たり次第にたくさんのバリゾーグを作って自分の傍に侍らせることも出来たはずです。
しかしワルズ・ギルはバリゾーグを1人しか作らず、その素体はシドであることにこだわった。
それはつまり、シドが「弱い者を命を張って守って戦い捕らわれた戦士」であることを知っていたからであり、
そんな奇特な戦士は他に帝国中枢のワルズ・ギルの手の届く場所にはいなかったからでしょう。

ワルズ・ギルはシドならば弱い自分をひたすら命を張って守ってくれるヒーローになってくれると思い、
シドに自分への忠誠を求めたが、シドは当然拒絶し、
シドをどうしても自分を守る存在としたいワルズ・ギルは
シドをその戦士の武器である卓越した剣技だけ残して、自分の求める人格を植え込んでバリゾーグに改造したのです。

だから、ワルズ・ギルがシドをバリゾーグに改造したことと、
そのバリゾーグが一方的にワルズ・ギルを命がけで守るようプログラムされており、
ワルズ・ギルがとても大切な存在であるはずのバリゾーグを守るために何かをするという想定が
そのプログラムから全く抜け落ちていることから考えて、
ワルズ・ギルが本質的に極めて弱い人間であることが浮き彫りになってきたのでした。

そして、宇宙の弱肉強食の摂理は冷酷なほどに絶対であり、
それはたとえザンギャックの皇帝であろうが皇太子だろうが、その摂理の拘束力から逃れることは出来ない。
当然、バリゾーグもその拘束力から逃れることは出来ない。
すなわち、弱い者を守って戦う者は命を捨てる羽目になるのです。
バリゾーグは絶対的弱者であるワルズ・ギルを命を張って守って戦う限り、
ジョーを守って死んだシドや、マーベラスを守って死んだアカレッド同様、
そして地球を守りきる自信が無くて敗北の運命を予感するマーベラス一味の面々同様、
敗れ去り死んでいく運命から逃れられないのです。

ジョーは、そうしたバリゾーグの本質的な儚さ、脆さ、弱さを感じ取り、
バリゾーグは決して強くないのだと知ったのです。
それはジョーを守って死んだシドと同程度の強さであり、
シドが本当に目指していた強さには遠く及ばない弱い戦士でした。

現実にはバリゾーグはこれまで全ての戦いで勝利してきているが、
それは単に剣技があまりにも卓越しているからに過ぎない。
並の腕の相手ではバリゾーグの本質的な脆さなど発見する間もなく瞬殺されてきたのだろう。
しかし、同じレベルの剣技を有するジョーが押されるほどに強いというのはどういうことなのか?
それについてはジョーは、自分が今回初めて本気でバリゾーグと戦った際、
ちょうど船室での鎧とマーベラスの問答の影響を受けて、
かつてのシドのように命を捨てて仲間を守ろうという気持ちになっていたのがいけなかったのだと気付いていました。

それは仲間を自分が守らなければいけない弱者だと見なす考え方であり、
弱者を命を張って守ろうとするという点で、
弱肉強食の摂理に照らせば敗北が約束された脆弱な戦士の思考でした。
つまり、わざわざバリゾーグと同じ弱さのレベルまで自分で降りていってしまって、
心理的に対等の立場で勝負してしまったのです。
そうなると、悔しいが剣技は師匠のシドの技を完全にコピーしたバリゾーグの方が少し上なので、
どうしてもジョーはやや押され気味となったのです。
それが倉庫での戦いの真実でした。

そしてマーベラスに守られてしまったことで自分の弱さを強く感じてしまったジョーは、
ワルズ・ギルのような守られるべき弱者のレベルにまで心理的に劣勢となり、
この山中での戦いではバリゾーグに圧倒されてしまったのです。

ならばジョーはやはり今回も勝てないのではないかとも思えますが、
ジョーは先ほど、シドが真に目指していた強い戦士「仲間と一緒に逃げずに戦う戦士」を知ってから、
再び心理的に盛り返して、バリゾーグとそれなりに斬り合えるようになっています。
確かに劣勢ですが、その差は倉庫の時のように剣技の差による程度の僅かなものになってきつつあります。

つまり、自分が本来なるべきであった「仲間と一緒に逃げずに戦う戦士」という真に強い戦士となれば、
弱い者を守って戦う脆弱性からは解放されてバリゾーグよりも心理的優位に立ち、
剣技がほぼ互角の自分ならば、その心理的優位によって僅かな剣技の劣勢を跳ね返して
バリゾーグに勝利できると、ジョーは理解しているのです。

問題は、ジョーがその「仲間と一緒に逃げずに戦う戦士」となれるのかどうかです。
ジョーはかつてシドに守られた時はワルズ・ギル同様、単なる弱い者でした。
そして、命を捨てて仲間を守ろうとしていたジョーは
バリゾーグと同じように「弱い者を守ろうとする者」でしかありませんでした。
だから今のところ、ジョーはバリゾーグとそう変わらないように見えます。

しかしジョーはバリゾーグに向かって「俺たちとは違う」と言っていますから、
ここで明らかに自分はバリゾーグとは違うと思っている。
その違いとは、自分がマーベラスに守られたことを「不本意」だと感じていることでした。

シドに守られた時は悲しかったが「不本意」とは感じなかった。
それは心の奥で自分の弱さを認めていて、自分はシドに守られるべき存在だと見なしていたということです。
ところが今はマーベラスに守られて「不本意」だと感じているということは、
自分の身は自分で守れるぐらい強いのだという自負があるということです。
ところが強いはずなのにマーベラスに守られたことで弱い者扱いされたので「不本意」なのです。
このまま自分が弱い者として扱われるのが不満なのです。

そう考えると、どうして自分がこんなに必死にマーベラスを助けようとして走っていたのか、
ジョーは本当の気持ちが分かってきました。
本当はジョーはマーベラスを助けようとか守ろうとか思っていたわけではないのです。
マーベラスのことを自分が守らなければ生きていけないような弱い者だとは思っていないのです。
何故なら、強いはずの自分を守ったマーベラスが弱いはずがないからです。

そして、強い自分を守ったマーベラスが死ぬはずがない。
宇宙の摂理では、死ぬのは弱い者を守った者だと相場が決まっているからです。
マーベラスがもし死んだとしたら、それはジョーが弱いからだということになるが、
ジョーは自分が弱いなどとは毛ほども思っていないのだから、
ならばマーベラスが死ぬわけはない。
だから、きっとマーベラスは生きており、
生きている以上、強いジョーを守ったりするほど強いマーベラスがジョーに守ってもらう必要などあるわけがない。

つまり、「ジョーが強い」という前提ならば、
マーベラスは生きているし、他人の助けなど必要無い状態ということになります。
そしてジョーは守られて不本意だと思うくらいに自分のことを強いのだと自負しています。
それなら、何故ジョーはマーベラスのもとへ走っているのか?
それは自分が強いことを証明するためでした。
不本意でもなんでも一旦守られてしまったジョーは
自分が守られて終わりの弱い人間ではないということを証明しなければ、
弱い人間であることを認めることになってしまうのです。

そして、もしジョーが自分が弱い人間だと認めてしまえば、
「ジョーが強い」という前提で成り立っていた
「マーベラスが生きており強い状態である」という論理が崩れ去ってしまう。
だから、ジョーが自分が強いということを証明しなければマーベラスの生存が危うくなる。
だから、今、ジョーが最もすべきことは、自分が強いのだと証明することなのです。

では、今、どうすればジョーが自分の強さを証明できるのかというと、
マーベラスに守られてしまったことで「弱い」という不本意な負債を負ってしまったわけで、
この負債を返せばチャラです。
つまり、借りを返せばいい。
では借りを返すにはどうすればいいか?

マーベラスを守り返せばいいのかというと、
ジョーが自分が強いと自負しなければ借りを返すアクションは起こすことが出来ないが、
ジョーが自分が強いと思う限り、マーベラスも強くて助けの必要無い状態なので、
マーベラスを守って借りを返すのは無理です。
そうなると話はシンプルで、マーベラスの目の前でジョーは自分の強さをただ見せつけてやればいい。
つまり一緒にとことん戦えばいいのです。

マーベラスが逃げない限り、ジョーも絶対に逃げない。
マーベラスよりも1秒でも長く戦い続ければジョーの勝ちです。
それぐらい意地になってマーベラスに強さを見せつけてやれば、
もうマーベラスに「弱い」なんて思わせないで済み、借りは返したことになるのです。

要するに自分は自分の身は自分で守れるぐらい強いのだと思っているのです。
しかし仲間として一緒に戦ったりしていると、ふとしたことで助けられたりして借りを作ってしまうことはある。
それをチャラにしないと自分が弱くなったみたいで落ち着かないから、
一緒に戦って絶対に逃げない強さを見せつける。
そうやってお互い意地になって強さを見せつけ合うというのが、
結局「仲間と一緒に逃げずに戦う」ということなのであり、
マーベラス一味というのはもともとそうやって戦って強くなってきたのではないかと、ジョーは思いました。
それは地球を守る戦いだからといって、そのスタイルは変わるものではないはずであり、
自分はあくまでそれを貫くだけだとジョーは思いました。

そして立ち上がると、ジョーは自分に言い聞かせるように
「俺は絶対にここで倒れるわけにはいかない!」と叫んで剣を構え、
いつも通りのゴーカイブルーの名乗りポーズの時のように頭の帽子を押さえる仕草をすると
「仲間のために命を張った大馬鹿野郎に、借りを返すためにもなぁっ!!」と叫んで
バリゾーグ目がけて真っ直ぐ突っ込んでいきました。

マーベラスが仲間を守るために命を張ったせいで、自分はマーベラスに大きな借りを作ってしまった。
この大きな借りを返すためには、マーベラスと合流して一緒にとことん最後まで逃げずに戦ってみせるしかない。
そのためにこんな場所でバリゾーグに負けるわけにはいかないのです。

この強い気持ちは、守られることを当然と思うワルズ・ギルと、
命を捨てて守ることを当然と思うバリゾーグとの関係性の中では理解できないはずです。
バリゾーグは常に弱いワルズ・ギルを守るために命を張って戦っている。
しかし一緒にとことん戦ってくれる仲間はおらず、誰かと一緒に戦い抜こうという気持ちも無い。
そんな儚い剣に、自分の強い気持ちのこもった剣が負けたりはしないという思いで突っ込むジョーに向けて、
バリゾーグは「フン!お前は私に勝つことは、出来ない!」と言いながら渾身の円月剣を繰り出します。

バリゾーグはジョーの言っている「借りを返す」などという概念は全く理解出来ず、
ジョーが錯乱して意味不明のことを言っているだけとしか思えず、
自分のワルズ・ギルへの絶対忠義の捨身の剣こそが最強だと自負していますから、
勝利を微塵も疑ってはいません。

こうして繰り出された円月剣に対して、ジョーは今回は同じ円月剣で迎え撃とうとはしません。
シドの捨身の剣に同じ捨身の剣で挑んでも相討ちにしかならない。
勝って前へ進むためには、マーベラス一味で磨いた自分の剣で勝負しなければいけないとジョーは決意したのです。
そして円月剣の3段構えの衝撃波の1つ目の衝撃波を、なんとジョーは剣で弾き飛ばしました。
次いで2つ目の衝撃波も弾き飛ばし、しかし3つ目の大きな錐揉み状の衝撃波を受け止めたものの、
その勢いを止められず、それを弾いた反動で「ぐわっ!!」とまた10mほど吹っ飛ばされ、
また地に伏してしまいます。

さすがにバリゾーグの捨身の剣も凄まじく、ジョーも完全には防ぎきれませんでしたが、
それでも最後の紙一重及ばなかっただけで、実際のところは普通に剣を払うだけで
ほとんど円月剣を止めていたと言っていいでしょう。
とはいっても、バリゾーグはもうこれでジョーも限界だろうと見て、「これが終局だ・・・」と勝利を確信します。

しかしジョーは傷だらけになって、また懸命に身体を起こしながら、
まだバリゾーグの捨身の剣に勝つには、
絶対にバリゾーグに勝ってこの場を突破してマーベラスに借りを返しに行くという想いの強さが足りなかったと思い、
マーベラスに作った借りの大きさを再確認するために、
マーベラスがグレートワルズとの戦いの際に1人残ると言った時のことを想い出し、
「俺は・・・絶対に勝つ!!」と心の中で気合いを入れます。
そして剣を握りしめて「・・・借りを作ったまま死ねないからな・・・!」と呟きつつ立ち上がります。

借りを返さないまま自分が死ねば、自分は弱かったと認めることになる。
それは、弱い仲間を守るために命を捨てようとしたマーベラスの行為の正当性を認めることになってしまう。
つまり、マーベラスが命を捨てるのは正しいということになる。
しかし自分がバリゾーグに勝てば話はひっくり返る。
さすがにバリゾーグは恐ろしく強い。ここまでジョーが全力を絞り出してまだ劣勢とは、さすがというしかない。
しかし、だからこそ、このバリゾーグを倒すことで
自分の強さをマーベラスに圧倒的に示すことが出来るとジョーは思いました。
マーベラス一味の仲間の強さを知って、
マーベラスは命を捨てて仲間を守ろうとした自分の行動の無意味さを知ることだろう。

つまり、自分がバリゾーグに勝って強さを示すことが、
マーベラスを死なせない道だとジョーは心に定めたのでした。
「待っていろ・・・マーベラス!!」と剣を提げて再びジョーはバリゾーグへ向けて、ゆっくりと進みます。
バリゾーグは倒したと思ったジョーがまた迫ってくるので再び円月剣の構えに入って
「むぅん!」と衝撃波を発しますが、ジョーは剣で防ごうともしないで静かに歩き続けます。

衝撃波はジョーを直撃したかと思われましたが、
続けざまに3つ、ジョーの身体に当たって軌道を変えて後方に弾かれて飛んでいき、
後方の岩塊が3つ、続けざまに爆発を起こしました。
それでもジョーは最初と全く変わらず、剣を提げたまま悠然と歩いてバリゾーグへ迫ってきます。
これはゴーカイジャーのスーツが円月剣の衝撃波を弾いたとしか思えない。
しかし、ゴーカイジャーのスーツにそこまでの強度は今まで無かったはずです。
これはどうやら、仲間の強さを示すことがマーベラスを救う道だとジョーが悟ったことによって、
ゴーカイジャーのスーツに何か異変が起きたようです。

予期せぬ事態に「・・・なんだと!?」と仰天したバリゾーグは慌てて
再び円月剣を「とあっ!!」と至近距離でジョーに向けて放ちますが、
ジョーは今度は剣でその衝撃波を「むうっ!」と受け止めて、気合いを込めてそのまま保持します。
こうなればもう弾いて軌道を変えて処理することは容易なはずですが、
衝撃波の推進方向の真正面から押し返す力を加えながら、
なんとジョーの姿が頭の先からあっとういう間に下に向かって変身が解除して生身に戻っていきます。
そして、その変身に要していたエネルギーが
円月剣の衝撃波を受け止めたままのゴーカイサーベルにどんどん吸収されていくのでした。

これは要するにレンジャーキーのエネルギーがゴーカイサーベルの刀身に取り込まれていっているという意味で
ファイナルウェーブと同じ状態なのですが、
レンジャーキーを鍵穴に挿さずにそういう現象が起こっているというのも、かつてない事態といえます。
しかも通常はファイナルウェーブの時にレンジャーキーから注入されるエネルギーは
変身に要するエネルギーは含まれないはずですが、
どうやらこれは変身に要するエネルギーも含んだゴーカイブルーのレンジャーキーの
全エネルギーが注入されているようです。
しかも、さっきの円月剣を弾いたスーツの状態からして、
現在のゴーカイブルーのレンジャーキーの状態は何か異常に活性化した状態にあるようですから、
これはなかなか凄まじいエネルギーのファイナルウェーブだといえます。

そうして一気に全身の変身を解除しながらゴーカイブルーの全エネルギーをゴーカイサーベルに込めると、
ジョーは「うおあああああっ!!」と裂帛の気合いを発して、
ゴーカイサーベルを高エネルギーのファイナルウエーブを炸裂させながらその勢いで振り抜き、
ファイナルウェーブの爆発力を使って、剣に受け止めていた円月剣の衝撃波を全て余すところなく
1つの凝縮されたエネルギー弾にしてバリゾーグ目がけて超高速で撃ち返したのでした。

このエネルギー弾をバリゾーグは避けることも出来ず、
エネルギー弾はバリゾーグの胸の真ん中を撃ち抜きます。
「うっ!?・・・あ・・・!」と何が起きたのかも分からずよろめくバリゾーグに
ジョーは生身のままゴーカイサーベルを振りかぶって突っ込み、
「うああああ!!」と絶叫して袈裟斬り、
そして「はあああああっ!!」と横一閃にバリゾーグの胴体を撫で斬りにしたのでした。

「ああ・・・」と一瞬呻いたバリゾーグはジョーの顔をそのモニターに捉えますが、
その画像はあっという間に歪み、ブラックアウトしてバリゾーグは機能を停止して倒れ込み、
その直後、大爆発を起こして、遂にバリゾーグは最期を迎えたのでした。

一方、爆発炎上するバリゾーグを見て自らの勝利を確信したジョーは、
「マーベラス・・・!」と心の中で、この山中の何処かに生きているであろうマーベラスに向け、
この自分の示した、マーベラス一味の仲間の強さこそ、
マーベラスの生きる希望の灯になるのだと知らしめるように呼びかけたのでした。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 16:40 | Comment(1) | 第38話「夢を掴む力」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月25日

第38話「夢を掴む力」感想その2

では本編・・・と、その前にまず本編前、今回は通常通りに8時から「フォーゼ」はあるのですが、
やはりスーパーヒーロータイムのミニコーナーは無し。
このままフェードアウトの模様です。

そして7時30分ジャストに開始された本編ですが、冒頭は前回の粗筋の紹介ナレーション。
ジョーとバリゾーグが戦う中、ワルズ・ギルが現れてグレートワルズでゴーカイジャーを圧倒、
マーベラスは仲間を脱出させて、6人はバラバラになったという、
前回の粗筋というよりは、今回の冒頭に繋がる前回の後半部分の粗筋紹介という趣です。

そのナレーションに被せてジョーとバリゾーグの対決シーン、
グレートワルズが豪獣ゴーカイオーを圧倒するシーン、
そして山中に墜落したゴーカイガレオンの中で生死不明で横たわるマーベラスの姿という前回のラストカットに続き、
ジョーとルカ・ハカセ・アイムと鎧という、3か所にバラバラに脱出させられた仲間たちが
別々に山中を走るカットが挿入されます。

豪獣ゴーカイオーから強制脱出させられて地上に不時着した時は皆、
街の中で豪獣ゴーカイオーが見える位置にいたのですが、
豪獣ゴーカイオーが吹っ飛ばされてガレオンに変形して遠くの山中に消えていくのを見て、
5人ともすぐに駆け出していましたから、山中に墜落したガレオンを探しに山中に入っていったようです。

一応ちょっと気になる点を挙げると、
豪獣ゴーカイオーが吹っ飛ばされた後、ゴーカイオーを構成するパーツがガレオンに戻っていったのは分かるとして、
豪獣神を構成していたパーツの方はどうなったのかという疑問点はあります。
まぁこれは、爆発して合体が解けた瞬間、30世紀に戻っていったのでしょう。

というか、そもそも豪獣ゴーカイオーになった時点で余剰パーツは何処で何をしてるのかという問題があります。
ゴーカイオーの余剰パーツはガレオン(胴体部分)に収納されたと考えるべきでしょうが、
豪獣神の腕以外のパーツは、これもやはり30世紀に戻っていったと考えるしかないでしょう。
つまり豪獣神関連のパーツは分解して使用しなくなった途端、
全部、30世紀へ移動するのだと解釈すればいいでしょう。

そう考えると、豪獣ドリルがタイムレンジャーの大いなる力によって召喚されるというのも、
なかなか便利な設定です。
「タイムレンジャー」本編でもロボのパーツの出し入れは
この「30世紀の世界に基地が存在する」という設定を上手く使って
貧乏便利屋の5人組が正義の戦隊をやるという世界観に説得力をもたせていました。

そしてもう1つ、疑問点は、
どうしてバラバラになった6人はモバイレーツやゴーカイセルラーで連絡を取り合わないのかという点です。
これは、おそらく発信した電波をザンギャックに傍受されることを恐れているからでしょう。

普段ならば電波を傍受されて位置を捕捉されても、ガレオンですぐに遠方に移動できるし、
もし戦う羽目になっても勝てる自信があるので平気なのでしょう。
それに普段のザンギャック軍は勝てる可能性も低いのに
マーベラス一味を襲うようなことにはあまり積極的ではないし、
地球侵略作戦の方が忙しいのでマーベラス一味にとってそんなに深刻な脅威ではないのでしょう。

しかし今はザンギャックは明らかにマーベラス一味の抹殺を狙って動いていますし、
ガレオンは動けない状態で、もし電波を傍受されて位置を特定されて戦うことになって、
またあのグレートワルズで襲われるのは脅威です。
仮に襲ってくるのがゴーミンなどの雑魚であったとしても、
今は戦うよりも早くガレオンに辿り着いてマーベラスを助けなければいけないと思っているので、
5人はマーベラスに連絡を取ろうとしたり、互いに電波を飛ばして連絡を取り合おうとはしていないのでしょう。

ガレオンが落ちた山はだいたい分かるので、
そこへ行けばガレオンの巨体を見つけること自体は目視でさほど難しいことではないので、
まずは一目散にその山へ向かって5人は駆けているというところでしょう。

さて一方、街中でのゴーカイジャーとの戦いに勝利したグレートワルズのコクピット内のワルズ・ギルは
「これで海賊どもの船は沈んだ!」と大満足です。
そしてモニター越しにバリゾーグに向かって「バリゾーグ!ゴーミンと共に奴らの死体を見つけてこい!」と命じ、
モニターの向こうではバリゾーグが「イエス、ボス」と応じます。

これを見た感じでは、ワルズ・ギルはマーベラス達が全員死んだと思い込んでいるようです。
マーベラスが他の仲間5人を脱出させたことにも気付いていないようです。
激しいビーム攻撃の中だったので分からなかったのでしょうし、
5人を脱出させた後、マーベラスが1人で少しの間持ちこたえて、それから爆発して吹っ飛んでいったので、
ワルズ・ギルは爆発した豪獣ゴーカイオーの中に6人全員が居たものと思っているようです。

まぁそれはマーベラスが上手くやったのでワルズ・ギルが騙されても仕方ないことだとは思いますし、
爆発して吹っ飛べば乗っていた海賊6人は全員死んだとワルズ・ギルが思うのも無理はないでしょう。
実際、バリゾーグをはじめ他のザンギャック幹部も皆、
爆発した海賊ロボットの中の海賊たちが生存しているのではないかと疑う者はいませんでした。
猛烈な勢いで吹っ飛んでいった海賊船は山中で残骸になっており、
そこに海賊たち6人の死体が転がっていると思っているようです。

しかし、本当にその予想が当たっているのかどうか、
グレートワルズで山の中を探しに行けばすぐに判明しそうなものなのですが、
ワルズ・ギルは自らそのようにして調べに行こうとはせず、
バリゾーグにゴーミンの地上部隊を率いて死体回収に行くように命じただけでした。
つまり、ザンギャック側は全員、自分の目で確かめたわけでもないのに、
マーベラス達は全員死んだと決めつけているのです。

確かにそう思い込むのも無理もない状況ではありますが、実際はそうではないのですから、
ここはより慎重に、マーベラス達の生死をすぐに確認すべきでした。
そうした慎重な確認を怠ったのは、
それだけグレートワルズの能力をザンギャック側の全員が絶対視しすぎていたからでしょう。
ザンギャック最強の決戦機であるグレートワルズの決め技で爆発して吹っ飛んで、
生きていられるわけがないと、百戦錬磨のダマラスさえも思い込んでしまったのです。
それはつまりザンギャック帝国の驕りでした。
そうした思い込みがある以上、司令官自らが死体探しなどという下らない作業をしようと思うわけがない。
死体は逃げていったりはしないのだから、地上部隊でゆっくり探せばいいということになります。

そんなことよりもワルズ・ギルの頭の中を占めていたのは、やはり「政治」でした。
マーベラス達と戦っている最中から既にワルズ・ギルは目の前のマーベラス達は眼中に無く、
父である皇帝や腹心のダマラスが自分を裏切ろうとしているという妄想に捉われて、
海賊を退治して地球を征服して英雄となり、父やダマラス達の鼻を明かして、
一気に彼らを超えて帝国の実権を握ってやろうという野心の虜となっていました。

だからマーベラス達との戦いに勝利して、海賊たちの死を確信したワルズ・ギルの頭の中からは
ほとんどマーベラス達のことは消え去り、
後で晒し者にするための死体をバリゾーグに拾いに行かせるよう指示しただけで、
ワルズ・ギルの頭の中はまずは凱旋将軍としての自分をいかに華々しい英雄らしく演出するのかというプランと、
その後の地球征服作戦のプラン、そして悔しがる父やダマラスを嘲笑う気持ちでいっぱいでした。

ここでOPテーマとなり、今回はもちろんOPナレーションは通常回バージョンで、
CM明け、「夢を掴む力」という今回のサブタイトルが出ます。
これは通常回ですから特にフォーマットは関係なく、
言葉の意味も今回のテーマそのものズバリの直球のサブタイトルです。

さて本編が再開し、ギガントホースの格納庫にグレートワルズが戻ってきています。
ワルズ・ギルは結局、マーベラス達の死体探しをバリゾーグに任せて、
自分はさっさと宇宙空間のギガントホースへ戻ってきたようです。

しかし、前回もこうした格納庫のシーンはありましたが、
ギガントホースにはこうして決戦機を格納するためのスペースがあるということに改めて気付きました。
考えてみれば、「最強の決戦機」ということは最強ではない普通の決戦機が他にも有るということです。
そもそも地球侵略軍の怪人を再生巨大化させる巨大化銃はインサーンが独自に作ったもののようなので、
ザンギャックの他の軍においては、この怪人巨大化システムは使われておらず、
そのかわりに決戦機が使われているのでしょう。

といっても、マーベラスも「決戦機」というものを知らなかったところをみると、
そんなに量産されて何処の戦場でも使われているというわけではないようです。
おそらく一般的なザンギャック軍では巨大戦兵力というのは戦艦がメインで、
決戦機を使っているのは本国の主要な軍だけだと思われ、
決戦機は最新兵器であり、その数はさほど多くはないのでしょう。
そして、その中でも最新で最高性能のものがグレートワルズなのです。

だから本来は地球侵略軍は戦艦のみで編成されており、
旗艦のギガントホースはワルズ・ギル専用艦なので本国仕様で決戦機を格納するスペースもあるのでしょうが、
地球方面には決戦機は積んできていなかったので、その格納スペースはこれまでは空になっていて、
インサーンの怪人巨大化システムは、決戦機の代用的な意味合いが強いのではないかと思われます。

つまり、ということはザンギャック本国の最精鋭部隊、例えば皇帝親衛隊などは
他の決戦機を所有しているということであり、
あるいはこれから物語終盤に皇帝アクドス・ギル自身が地球方面にやって来た場合、
また別の決戦機が登場して、
またゴーカイジャーとの間で巨大ロボ同士の戦いを展開してくれる可能性はあるということになります。

また、いずれ来るであろうバスコとの決着の時、
バスコはインサーンの巨大化光線を浴びて巨大化することはないでしょうから、
バスコ自身は巨大化しないと思われ、
そうなるとバスコ自身との決着バトルの巨大戦は、
バスコが独自の決戦機を使用するという可能性もあるかもしれません。

まぁともかく、話を戻して、
ワルズ・ギルはギガントホースに戻ってきました。
そして軽い足取りで格納庫の階段を昇ってくるワルズ・ギルを
「見事な勝利です、ワルズ・ギル様・・・」と、インサーンが出迎えます。
それに対してワルズ・ギルは上機嫌で「俺が自ら出撃したのだ!これぐらいは当然のこと!」と、
まるで自分の腕で勝ったかのような口ぶりです。

実際は最強の決戦機であるグレートワルズの性能あってこその勝利であり、
ワルズ・ギルの能力で勝利したわけではありません。
しかしワルズ・ギルは自分の戦闘能力が高いから勝利したのだと本気で思っているようです。
だが、そんなに戦闘能力が高いなら普段からもう少し前線に出ていても良さそうなものですが、
最強の決戦機が手に入った途端、急にそれに乗って出撃するという時点で、実は臆病者なのだということは明白です。
いや、そもそも大した必要性も見受けられないのに司令官自ら決戦機に乗って出撃したということ自体、
司令官としてはあまり褒められたことではない。
そんなことを自慢している幼稚さが司令官として一番問題だといえます。

ただ、司令官としては全く幼稚な行動ではありますが、
本来は臆病者であるワルズ・ギルが、たとえ最強の機体であるとはいえ、決戦機に乗って出撃して戦い、
しかもあの手強い海賊相手に完勝したわけですから、
ワルズ・ギルという個人としては、これは確かに結構、快挙です。
だからワルズ・ギルがいささか高揚しているのもやむを得ないかもしれません。

そして、そもそもワルズ・ギルがそんな危険な行動に打って出た理由は、
海賊をどうしても退治したいからというよりは、
ダマラスが父である皇帝と結託して自分の手柄を横取りしようとしているという誤解から、
ダマラスや皇帝の付け入るスキの無い明白な自分の手柄を立てて
自分の帝国政界における地位を高めたいという利己的動機に基づくものでした。
だからこうしてワルズ・ギルが自画自賛しているのは、そうした政治的な意図を含んだ発言と見るのが正確でしょう。

そして、それに対してインサーンは何やら調子の良い態度で
「祝賀会の用意が整っています」と媚びた口調でへつらうのでした。
ワルズ・ギルはその自分の誤解した皇帝とダマラスの陰謀について、
他の部下たちが居る場でダマラスに向かってぶちまけており、
インサーンもその場に居たので、事の真偽はどうあれ、ワルズ・ギルが皇帝やダマラスへの反感が動機となって
今回、司令官でありながら自ら出撃したということは了解しているはずです。

しかし、その軽率を諌めようともせず、
むしろインサーンはこうして積極的に媚びてワルズ・ギルに取り入ろうとしています。
今までインサーンは割とダマラスに距離が近く、
ダマラスに対して明白な敵意を示したワルズ・ギルに取り入るということは、
ダマラスを裏切ろうとしているということになります。
しかもワルズ・ギルの話を信じるとするならば、ダマラスのバックには皇帝がついているはずなのです。
つまりワルズ・ギルに取り入るということは、皇帝やダマラスを敵に回すということであり、
バカで無能なワルズ・ギルに擦り寄って皇帝やダマラスに睨まれるというのは、あまり得な選択とは思えませんが、
いったいインサーンはどうしたというのか?

まずインサーンは、実際のところ現状の地球侵略軍の戦力でどうやってマーベラス一味を始末すればいいのかと、
困り果ててしまっていたところなので、
こうしてマーベラス一味を始末してくれたワルズ・ギルの戦果によって肩の荷が下りて、
本心からホッとしていました。
そして、インサーンは実際にワルズ・ギルの思惑通りに、
この海賊討伐と地球侵略成功はワルズ・ギルの帝国内の地位を押し上げることになると読んでいました。
だから、ワルズ・ギルに取り入っておいて損は無いと思っているのです。

ただ、それだけの理由で皇帝やダマラスに睨まれる危険のある賭けに打って出るほど
インサーンは軽率ではありません。
インサーンはワルズ・ギルが今回の一件で確かに成長したことを感じ取ったのです。
皇帝やダマラスの陰謀の事の真偽はよく分からないが、
とにかくワルズ・ギルはダマラスや皇帝への反発によって自ら決戦機に乗って戦い勝利したわけで、
これは今までのワルズ・ギルでは考えられない勇気ある行動でした。
インサーンもワルズ・ギルがヤケクソ気味の行動によって大失敗でもするかと危惧していたのですが、
意外にもワルズ・ギルはグレートワルズを上手く使いこなして危なげなく完勝したのでした。

これを見て、あるいはワルズ・ギルはダマラスや皇帝を乗り越えようとすることで
今までにない成長を遂げたのかもしれないとインサーンは感じたのでした。
あるいはこの勢いで一気に帝国を掌握することも有り得ると思い、
インサーンはワルズ・ギルにとりあえず媚びておくことにしたのでした。

ワルズ・ギルはそうしたインサーンの態度の変化を敏感に感じ取ります。
まぁ敏感も何も、インサーンは意識してそういう自分の擦り寄る心を見せようとしているわけですから、
気付くのが当然なのですが、これですっかりワルズ・ギルはいい気になります。
海賊を倒したことで周囲の連中の自分を見る目が変わり、どんどん自分に心酔する連中が増えていくことが実感され、
出撃前の孤独感など吹っ飛んでしまって、
上機嫌で「おお〜、用意が早いな!さすがはインサーンだ!」と調子に乗ったことを言いながら、
指令室に向かって歩き出したのでした。
祝賀会という晴れの場で自分が多くの者達にチヤホヤされるのが楽しみで仕方ないようです。

しかし、このようにワルズ・ギルが浮かれまくっている傍ら、
バリゾーグは祝賀会にも参加せずにゴーミン達と海賊の死体探しを命ぜられているのです。
それが部下の仕事だと言われればそれまでですが、
しかしワルズ・ギルは出撃前はダマラスや皇帝に逆らって、誰からも守ってもらえなくなった孤独感から
バリゾーグに「俺にはお前しかいない」みたいなことを言って頼りきり、
海賊を探し出しておびき出す作戦をさせています。

つまり今回の作戦の影の功労者はバリゾーグなのです。
そのバリゾーグに死体探しのような泥臭い作業を丸投げしておいて、
自分は再び自分に擦り寄ってきたお調子者たちと一緒に浮かれて祝賀会で英雄気取りとは、ちょっと呆れます。
なにもバリゾーグと一緒に死体探しまですべきとは思いませんが、
せめてバリゾーグの帰還を待ってから祝賀会を開くぐらいの気遣いはあってもいいのではないかと思います。

もともとそういう気遣いの出来るような男ではないのは百も承知ですが、
それにしても今回は、あれほどバリゾーグに精神的に守ってもらって、それでやっと成功した作戦なのですから、
この軽薄な掌返しを見ると、やはりワルズ・ギルにとってバリゾーグは
常に絶対服従して守ってくれる便利な機械に過ぎず、その便利さゆえに重宝しているように見えてしまいます。

しかしワルズ・ギルはすっかりバリゾーグのことなど忘れたかのように有頂天に
「フッハッハッハ!」と笑いながら指令室に凱旋してきます。
指令室の中には豪勢な料理が並べられており、祝賀会の準備は整っています。
すると、その入って来たワルズ・ギルに向かってダマラスが歩み寄り頭を下げ
「お見事です、殿下!」と言ったのでした。

今回の作戦からは外されてしまっているダマラスですが、それでもワルズ・ギルの部下であることには違いないし、
それより何より、ワルズ・ギルは皇太子であり、ダマラスは皇帝一族に仕える重臣であるのですから、
ワルズ・ギルの勝利を称えて頭を下げるのは当然のことでした。
しかし、ワルズ・ギルはダマラスの顔を「ん・・・?」と見ると、
「チッ!!」と舌打ちしながら露骨にそっぽを向いて、軽蔑の意を示します。

インサーンの追従は自分への賛美だと肯定的に受け取ったワルズ・ギルも、
ダマラスの祝賀の言葉は卑屈な追従だと見なして軽蔑したようです。
それは結局、ダマラスが本心では自分を陥れようと画策している敵だと見なしているからであり、
自分が海賊に勝利して英雄になったから途端にダマラスが本心を隠して掌を返して取り入ろうとしていると、
ワルズ・ギルは見なしているのです。

ワルズ・ギルにソッポを向かれてしまい、
自分が相変わらず酷い誤解を受けたままであることを痛感し、ダマラスは苦しげに呻きます。
このままワルズ・ギルに誤解されたままでは自分の身が危うくなると思ったのでした。

確かにこの海賊討伐作戦の成功によって地球征服作戦の成功も間違いない状況となり、
全てはワルズ・ギルの手柄となります。
もともと地球征服作戦の手柄は全てワルズ・ギルの手柄となる手筈ではありましたが、
それはダマラスの予定としては自分が実質的には成し遂げた地球征服の手柄を
ワルズ・ギルに献上するはずのものでした。
そうなれば自分は次期皇帝のワルズ・ギルに恩を売ることになり、
自分にとってもそう悪い話ではないと思っていたのです。

ところがこのままではワルズ・ギルは自力で地球征服の手柄を立ててしまい、
しかも酷い誤解で自分のことを憎んでいる。
そうなるとダマラスは英雄となり次期皇帝となったワルズ・ギルにいずれは粛清されてしまう可能性が高い。
それでダマラスは困り果てているのです。

しかし困っていると同時に、ダマラスは1人のザンギャックの重臣として喜びも感じていました。
それは、今回の海賊討伐作戦でワルズ・ギルがグレートワルズを見事に操って
あの手強い海賊に完勝するとまではダマラスは予想していなかったのですが、
それが意外にも上手くいったので、
自分や皇帝に敵意を抱くことでワルズ・ギルが今までの甘いボンボンから脱却して
大きく成長したことが分かったからでした。

それが分かっているからこそ、
ダマラスはワルズ・ギルがこのまま自分の力を借りることなく地球を自力で征服して英雄となり
文句無しの次期皇帝となることを予期したのであり、
それゆえにこそワルズ・ギルに誤解されて憎まれた自分の将来を悲観する羽目となっているのですから、
非常に複雑な心境でした。
帝国の忠臣としてはワルズ・ギルの成長は嬉しいが、
自分の身はもちろん可愛いので今の展開は非常にマズいとも想うのでした。

ただ、こうして自分に向けられるワルズ・ギルの酷薄な敵意を実感することで、
ダマラスは、このあまりに巨大なザンギャック帝国、
広大な宇宙を1人の独裁者として一手に統治するために必要な資質は、
決して人間的な温かみなどではなく、こうした酷薄さや冷酷さなのだろうと思えてくるのでした。

多様な世界を併合して1つのルールで縛って統治する広大な帝国の独裁者は、優しくては務まりません。
むしろ冷酷なまでの厳しさが必要であり、恐ろしく孤独な立場です。
それに耐えるだけの酷薄な精神が無ければいけない。
今までのワルズ・ギルはあまりに甘えていて、その酷薄さが徹底していなかった。
あるいは自分が犠牲となることでワルズ・ギルの酷薄さが完成するというのなら、
それも自分のザンギャックの重臣として帝国に貢献する1つの運命であったのかもしれない、
などともダマラスは考えてしまうのでした。

さて、ここで場面は変わって、ガレオンが墜落したと思しき山中では、ゴーミン達が大勢走り回っています。
こいつらはバリゾーグに率いられた、マーベラス一味の死体を回収するための部隊であり、
どうやら山中の何処にガレオンが墜落しているのか、まだ掴めていないようで、あちこち走り回って探しています。

そのゴーミン達の様子を岩陰に隠れてハカセが窺って「うわぁ・・・どうしよう?」と困っています。
豪獣ゴーカイオーからの強制脱出の際にハカセはルカとアイムと一緒の地点に飛ばされて、
それから3人で一緒にこの山中までやって来てガレオンを探していたのですが、
そこにゴーミン達が大勢やって来たので慌てて隠れたのです。

ハカセは岩の上から出してゴーミン達を眺めていた頭を引っ込めて、
岩陰の奥の方に隠れているルカとアイムのところへ戻ってくると、
「ザンギャックの奴ら、僕たちを探してるみたい」と報告します。
それを聞いてルカも悔しそうに「落ち武者狩りならぬ、落ち海賊狩りってヤツね・・・」と呟きます。

ザンギャック側はマーベラス一味は皆死んだと思っているので
ガレオンの中に転がる死体を探しているだけなのですが、
ハカセやルカにはそんな事情は分からないので、
てっきり自分達がこの山中に身を隠しているのを見つけようとしているのだと思い込んでいます。
むしろ、このガレオンが墜落した山の中がそういう状況になることは半ば予想していたようです。

そういう危険な状況となることが分かりきっているなら、
わざわざこの山までやって来ることもないはずなのですが、
自分達を脱出させた後、1人でガレオンと共に墜落したマーベラスが心配なので
3人はこの山へ来ないわけにはいきませんでした。

「マーベラスさんは大丈夫でしょうか・・・?」と、
アイムはこんなにゴーミンがウロウロしている状況では既にマーベラスは捕らわれているのではないかと心配します。
というより、グレートワルズのワルズギルティを喰らって大爆発を起こして
ガレオンが吹っ飛んでいったのを3人とも見ているので、
本当はマーベラスが生きているのかどうかも心配な状況なのですが、
とにかくマーベラスがきっと生きているという前提でここまで懸命に駆けてきているのです。

しかしアイムの言葉で、その最悪の可能性が3人の頭をよぎり、沈黙が少しその場を支配します。
その空気をかき消すようにハカセが「大丈夫だよ!マーベラスだもん・・・」と努めて明るく言います。
マーベラスが死んだりするわけがないと、ハカセは思おうとしました。
しかし、3人は微妙な表情のままです。
あの大爆発では無事だという保証は無いということは分かっているのです。

そう考えると、どうしてマーベラスはあんな行動をとったのだろうかと考えざるを得ません。
つまり、他の仲間を脱出させて自分だけガレオンに残ったことです。
確かにあの敵のロボットには全く歯が立たなかった。
あのまま戦い続けていたら全員あの場で死んでいたでしょう。
だから「脱出」というマーベラスの判断自体は正しかったと思う。
しかし何故、マーベラスだけが残る必要があったのか?

もちろん1人だけ残って持ち堪えている間に他のメンバーが脱出する方が他のメンバーは安全に脱出できるが、
それでは残った1人が危険すぎます。
どうせ脱出するなら全員で一斉に脱出すればよかった。
危険度は増すから誰かは犠牲になるかもしれないが、それはもう賭けでやるしかない。
戦いに負けた以上、全員それぐらいのリスクは覚悟している。
全員で一斉に脱出して、運の悪い者は死んで、運の強い者が生き残るという形でよかったのではないかと
3人は思いました。
何もマーベラスだけが犠牲になって他の5人を守る必要は無い。

それに3人から見て不可解だったのは、
マーベラスが自分達を脱出させた後、
爆発するまでの間に自分が脱出するように努力したように見えなかったことでした。
つまりマーベラスは最初から自分が犠牲になって他の仲間を守ろうとしていたように見える。
どうしてマーベラスはそんなことをしようと思ったのだろうかと3人は不思議に思い、
おそらくあの船室でのマーベラスと鎧の遣り取りを聞いた時に感じた違和感が関係しているのだろうと思いました。

あの時、マーベラスは鎧にマーベラスにとっての「守る」ということが何なのか質問されて、答えられなかった。
あの時、ルカ達3人も自分にとっての「守る」ということを考えてみて、
やはりマーベラス同様、答えは出せなかった。
ザンギャックから逃げ続けてきた自分達は「守る」ということはよく分からないのです。
それはマーベラスだって同じはずであり、だからマーベラスが答えられなかったのは当然でした。
しかしマーベラスは妙に長時間考え込んでいました。
ちょっと考えれば答えが出せないことは分かるはずなのに、
変に長く悩んでいるので変だとはルカ達も違和感は覚えていたのです。

しかし、あのマーベラスの自己犠牲的行動を見た今となっては、
ルカ達はその違和感が何であったのかハッキリ分かりました。
マーベラスはきっとあの鎧に質問された時、
我が身を犠牲にして戦ってマーベラスの夢を守ってくれたアカレッドのことを考えていたに違いない。
そして、アカレッドに憧れて海賊になったマーベラスは、
そういうアカレッド的な行動こそが自分が見習うべき「守る」という行動なのだと思ったのだろう。
ちょうど鎧との会話の時にそういうことを考えていたものだから、
その直後にグレートワルズの攻撃に絶体絶命に追い込まれた時、
マーベラスは咄嗟にああいう「自分が犠牲になって戦って、仲間の夢を守る」という行動に出たのだろう。

そう考えると、ルカは少し呆れてしまい、
「・・・まったく、独りで無理しちゃってさ!」とマーベラスの行動に文句をつけます。
アカレッドへの憧れが強すぎてそういう行動に出たのだろうけど、
あの状況で1人残って戦うなんて無茶もいいところで、
全員で一斉に脱出するか、あるいはマーベラスが最後に遅れて脱出すべきだったと思ったのです。

あれほど強大な相手と戦って何かを守るなんて、そもそも無理なのです。
いや、マーベラスは無理は承知でやったのでしょう。
だから死は覚悟していたのでしょう。
だから5人を守ることは確かに出来たのかもしれない。
しかし、今まではザンギャック相手にヤバい状況になったら逃げて生き延びてきたのです。
それなのに急に死ぬ覚悟なんか持って、しかも自分達を助けるために戦われても困ってしまう。

ルカはマーベラスに自分達を守るために死んでほしくはないのです。
だからマーベラスは逃げて生き延びようとしてほしかった。
そうした自分の気持ちが分かってくれないマーベラスがルカは少し腹立たしかった。
それでつい文句も言いたくなるのでした。

一方、ハカセとアイムもマーベラスに逃げて生き延びるという努力をしてもらいたかったという点では
ルカと同感でしたが、
ああいう行動をとったのはマーベラスが「船長」という立場の責任を
「仲間を守ること」だと考えていたからなのだろうと肯定的に評価していました。
ガレオンの前の船長であったアカレッドが、
その死をもってマーベラスに船長としての責任の取り方を教えたような形になっているので、
マーベラスとしてもそれを見習って、今回は船長の責任をとったつもりなのだろうと思っていました。

もちろんハカセもアイムも船長の責任をとるよりも、
マーベラスが生き延びるために脱出してくれた方がよかったと思っていますが、
マーベラスが船長の責任をとることを選んだとしたら、
それは確かにマーベラスらしい行動ではあるというふうに、一定の理解はしていました。

そうこうしていると、ゴーミン達がルカ達3人の隠れている岩陰の方までやって来ます。
慌てて3人は更に奥の岩陰に隠れます。
戦えば勝てないわけでもないが、とにかく今はマーベラスを助けだすのが先決であり、
ザンギャックと戦って消耗したり警戒を強めてしまうことは避けねばならない。
今はとにかく追手からは逃げるしかない。
「とにかく戦ってるヒマは無い!急ぐよ!」とルカはハカセとアイムに声をかけて、
ゴーミン達とは反対側に駆け出します。

ハカセもアイムもそれに続いて駆け出し、
アイムは「ジョーさんと鎧さんも、探さなくてはいけませんね・・・」と応じます。
脱出時に別々の場所に不時着して今は所在不明のジョーも鎧も、
きっと自分達と同じようにマーベラスを助け出そうとして、この山に来ており、
この山中のガレオンを探して、自分達がガレオンに近づいていけば
ジョーや鎧ともきっと自然に出会えるに違いないと、ルカ達3人は思っています。

そのジョーですが、やはりアイムの言う通り、同じ山の中を駆けていました。
ただジョーの駆けている辺りはルカ達のいた辺りよりは見晴らしがよく、ゴーミン達はいませんでした。
それゆえジョーは未だザンギャック軍がこの山中に展開していることは知らず、
とにかくひたすらガレオンの姿を求めて走り回っていたのでした。
この山中に墜落しているであろうガレオンを見つけて、
その中でマーベラスが生きているのを確認して救出するためにジョーは必死で駆け回っているのです。

ジョーもワルズギルティを喰らったガレオンが爆発して吹っ飛んでいくのを見ていますから、
マーベラスが生きていると確信は出来ていません。
マーベラスが生きていることを確信しているというより、
生きていてほしいという切なる願いがジョーを動かしていると言っていいでしょう。
「マーベラス・・・生きてろよ!」と切羽詰って呟きながらジョーは駆けます。

そこまでジョーが切なる想いでマーベラスの生存を願うのは、
もちろん単純に仲間だから生きていてほしいというという想いもありますが、
このままマーベラスに死なれては自分が惨めすぎるという想いが、
ジョーに強くマーベラスの生存を念じさせていたのでした。

ジョーもまたルカ達と同様に、鎧とマーベラスの船室での「守る」ことについての問答を聞きながら、
自分の「守る」について考え、
シドが自分の夢を命を捨てて守ってくれたことこそ、自分が目指すべき「守る」という姿勢だと悟り、
イザという時は自分もシドのように仲間の夢を守るために命を張ろうと思いました。
このザンギャックの支配する宇宙で逃げ回ってきた自分の守れるものなど、それぐらいのものだと思ったのであり、
それだけは守り抜くのがせめてもの自分の意地だと思ったのでした。

ところがマーベラスも同じようなことを考えていたことにジョーは気付いておらず、
不意打ちのようにマーベラスの方が命を張ってジョーを守ってしまった。
そうなると、ジョーはこれでシドの時に続いて、
また仲間の命を張った行為によって守られてしまったことになります。
仲間の夢を命を張って守るなんて言いながら、結局はまた守られてしまったのです。

つまり自分は全然誰も守れてはいない。
シドの命を捨てさせた時と何も変わらず、「守る」ことなんて出来ない弱い人間だったのです。
弱い人間だから守られてばかりで、
自分が弱いせいで仲間が自分を守るために命を落としていく。
そう思うとジョーはあまりに自分が情けなかった。

だから、それを必死で否定したかったのです。
自分は弱くない、仲間を守ることが出来る強い人間だと思いたかった。
そう心から思うためには、今度こそ仲間を守らなければならない。
自分を守るために命を張ったマーベラスがこのまま死んでしまえば、
自分は弱い負け犬であることが確定してしまう。
だからマーベラスを今度は自分が助けなければならない。
マーベラスを助けることが出来れば、自分は仲間を守ることが出来る強い人間に成長したといえる。

だから、ジョーは自分のプライドを取り戻すために、
必死でマーベラスを救い出そうとして走っているのでした。
しかし、マーベラスがもし爆発時や墜落時に死んでしまっていては、もうどうしようもない。
だから、ジョーはガレオンを探して駆け回りながら、
マーベラスがまだ生きていることを願わずにはいられないのでした。

ところが、そうして全力で山腹の台地に駆け入ってきたジョーの前に予期せぬ敵が立ちはだかります。
そこに立っていたのはバリゾーグでした。
ジョーはその姿を見て「バリゾーグ・・・!」と驚きの声を上げて立ちつくします。
まさか、ここで因縁の相手であるバリゾーグに会うとは予期していませんでした。
が、冷静に考えれば、ガレオンが墜落したこの山に
ザンギャックが自分達の生死の確認のために山狩りをかけてくるのは当然のことだとジョーは悟りました。
その指揮官がバリゾーグなのだろうが、
それにしてもこんな時にバリゾーグにバッタリ出くわすとは、ツイてないとジョーは思いました。
今はとにかくマーベラスのもとへ急がねばならないのであり、バリゾーグと戦っている場合ではない。

一方、バリゾーグの方も、いきなりジョーに出くわして
「ゴーカイブルー・・・生きていたのか?」と少し驚いた様子です。
グレートワルズの攻撃を喰らって、ジョーをはじめ海賊たちは皆、死んだと思っていたようです。
おそらくバリゾーグは死体回収だけの簡単な任務ということでゴーミン達にガレオンを探させて、
自分は1人でこの台地に待機して山の中に展開した各隊からの報告を待っている状況だったのでしょう。
そこにいきなりジョーが生きた姿で飛び込んできたものですから、少々驚きました。

そのバリゾーグの質問に、ジョーはバリゾーグに向かい合って立ち、
「ああ・・・不本意ながら、仲間に守られてしまってな・・・」と答えます。
皮肉なことに、ジョーがかつて不本意ながら仲間の命を犠牲にした行為で守られてしまった時、
そのジョーを守ったシドのなれの果ての姿が目の前のバリゾーグでした。
ジョーの言葉にはそうした感慨が多少込められていたが、
シドとしての記憶を奪われたバリゾーグにはそんなことは分かるわけもなく、
「ワルズ・ギル様のためだ・・・私がここで始末する・・・!」とジョーに向けて剣を構えます。

今回の作戦はワルズ・ギルが海賊を排除することが目的です。
だから海賊の一味の者がこうして生きて動き回っているのを許すことは出来ない。
自分の手でジョーを始末してワルズ・ギルの作戦の成果を完璧なものにしなければいけないと
バリゾーグは思ったのでした。
それに、海賊の分際でどういうわけか帝国の皇太子ワルズ・ギルの忠臣である自分と同じ技を使う
この目障りな男の存在そのものがワルズ・ギルへの冒涜であると思っていたバリゾーグは、
今度こそジョーの息の根を止めることがワルズ・ギルへの忠義の証であり、
ワルズ・ギルを守ることになるとも思ったのでした。

そうして剣を構えたバリゾーグに対して、ジョーはゴーカイブルーのレンジャーキーを出して
「・・・そうはいかない・・・!」と強く言います。
こうなれば戦いは避けられない。
今、自分は仲間に守られて生きながらえてきた弱い自分を乗り越えて、
仲間を守ることが出来る強い自分になろうとしてマーベラスのもとへ駆けている。
その「弱い自分」というものを自分の心に刻みつけた根源の想い出がシドの死でした。
そのシドの亡霊といえるバリゾーグが、
あくまで自分の「強い自分」への成長を阻止しようとして立ちはだかるというのなら、戦って突破するしかない。
いや、今こそ、シドの亡霊を倒して乗り越えなければならない時なのだとジョーは思いました。

そうして戦う決意を固めて、
ジョーはバリゾーグに向かって駆け出しながら
モバイレーツにゴーカイブルーのレンジャーキーを挿し、
「豪快・・・チェンジ!」と掛け声をかけ、ゴーカイブルーに変身し、
ゴーカイサーベルを振りかざして突っ込んでいったのでした。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 09:33 | Comment(0) | 第38話「夢を掴む力」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月23日

第38話「夢を掴む力」感想その1

今回は前回からの続きで、前後篇の後篇でした。
そして、前回の冒頭にちょっとだけ話題に上って、そのまま忘れ去られていた
「ゴーカイジャーの大いなる力」というやつが、今回ゲットされることになったので、
結局、終わってみれば前回と今回の前後篇というのは、まさに「ゴーカイジャー篇」であったということになります。

このゴーカイジャー篇で「ゴーカイジャーの大いなる力」を得て、
ゴーカイジャーという戦隊が完全なるゴーカイジャーとなる。
その象徴が「カンゼンゴーカイオー」という巨大戦の新戦力である全合体ロボであり、
これがすなわち「ゴーカイジャーの大いなる力」が発現した姿というわけです。
このあたり、なんとも明快です。

そして、ゴーカイジャーが完全なるゴーカイジャーとなったということは、
これでゴーカイジャーのヒーローとしての形が一応は出来上がったということであり、
明確にこの「ゴーカイジャー篇」こそが3クール目の締めであったと言いきってよいでしょう。
これで晴れて次回からクライマックスの最終クールに突入していくことになります。

というか、今回のエピソードでゴーカイジャーは圧倒的な力を獲得して、
第1話から地球を侵略している敵のボスを、その敵の最強兵器と共に倒してしまうわけですから、
事実上、敵軍を壊滅させて地球を守りきったことになり、
普通の作品なら今回が最終回でもおかしくないぐらいの内容になっています。
実際、ドラマ的なテンションも、ほとんど最終回と言ってもいいくらいの高揚度、充実度でした。

しかし「ゴーカイジャー」という物語はここで終わりません。
まだ登場していない「大いなる力」もありますし、「宇宙最大のお宝」もまだ見つけていません。
バスコとの決着もついていませんし、ザンギャックには地球侵略軍の残党もおり、
前回初めて登場した皇帝もいます。
残り数話の状況でこれだけ積み残しがあれば中途半端に終わる失敗作だったと判断してもいいのですが、
残り11話という状態ですから、それらの要素は全て処理するつもりということです。

それは、まだこの先、今回の戦いを超える激しい戦いが待っているということであり、
その試練を乗り越えるためには、まだゴーカイジャーはこれから先、
獲得していかなければいけない力があるということです。
つまり、実は今回、完全なるゴーカイジャーとなったマーベラス一味は、
まだ真の意味で地球を守り切って「宇宙最大のお宝」を掴むための完全なる力は手に入れてはいない。

最終クールは単にクライマックスのバトルで敵との決着をつけるだけではなく、
まだマーベラス一味の成長物語は続いていくのであり、
今回、完全なるゴーカイジャーになったというのは、その最終試練に挑む資格を得たようなもの、
最終決戦に勝利する力のヒントを得たようなものと考えたほうがいいでしょう。
今回、マーベラス一味が獲得した「ゴーカイジャーの大いなる力」というものは、
物語全体の流れの中で見ると、そうした「最終試練のパスポート」的な意味合いが強いのだと
解釈した方がいいでしょう。

では、その「ゴーカイジャーの大いなる力」は何なのかというと、
それは劇中のマーベラスのセリフでは「夢を掴む力」だと明言されています。
しかし、ゴーカイジャーとはもともと夢を掴む意思を持った者達が集まった戦隊ですから、
もともと、そういう精神性を持っていたはずであり、
自分達がそうした精神性を持っていることに自覚的であったはずです。
ならば、もっと前から「ゴーカイジャーの大いなる力」は引き出せていないといけないはずです。

しかし今回ようやく「ゴーカイジャーの大いなる力」が引き出せたということは、
マーベラス一味が自分達が夢を掴もうとする精神を持っているのだと気付くだけでは
「ゴーカイジャーの大いなる力」は引き出すことは出来なかったということです。
要するに「夢を掴もうとする精神」なのではなく「夢を掴む力」を持っていると自覚しなければ
「ゴーカイジャーの大いなる力」は引き出せないようです。
つまり「夢を掴もうとする精神」はあくまで「精神性」であり、「力」ではないから
「大いなる力」そのものではないのです。
それに対して「夢を掴む力」は「力」ですから「大いなる力」とイコール関係で結ばれるのです。
すなわち、「夢を掴む力」=「ゴーカイジャーの大いなる力」=「カンゼンゴーカイオー」なのです。

ならばマーベラスの言う「夢を掴む力」というのは「夢を掴むための力」ではない。
カンゼンゴーカイオーは夢を掴むための力ではないからです。
カンゼンゴーカイオーはあくまで巨大戦における戦う力です。
だから、ここでマーベラスの言っている「夢を掴む力」というのは、
「夢を掴もうとする精神がもたらす戦う力」と解釈すべきでしょう。
もう少しマーベラスの言葉に近いニュアンスで言えば「夢を掴む精神には力がある」ということであり、
その力が「ゴーカイジャーの大いなる力」であり「カンゼンゴーカイオー」なのです。
カンゼンゴーカイオーそのものは夢とは何の関係も無い物体であり、
夢を掴もうとする精神が生み出した「戦う力」なのです。

言い換えれば、「夢を掴もうとする精神は戦う力を生みだす」という事実に気付くことによって、
自分の持つ夢を掴もうとする精神から強大な戦う力を生みだすことが出来るようになる、
それが「ゴーカイジャーの大いなる力を引き出す」ということなのです。

つまり「大いなる力を引き出す」ということは、
「自分の持つ特定の精神性が戦う力を生みだすということを認識する」ということなのです。
そして、その「大いなる力」が特定の戦隊の「大いなる力」である場合は、
「自分の持つある特殊な精神性が特定の戦隊においては戦う力を生みだしていたということを認識する」
ことによって、その特定の戦隊の「大いなる力」を含む戦う力の全てを
レンジャーキーから引き出すことが出来るようになるのです。

例えば、「勇気」がマジレンジャーの戦う力を生みだしていたのだということをマーベラス一味が認識し、
自分の心の中にそれと同じ「勇気」があることを認識することによって、
自分の心の中の「勇気」によって、レンジャーキーの中のマジレンジャーの戦う力を
全て引き出すことが出来るようになり、「大いなる力」も引き出すことが出来るようになるのです。

つまり、単にマーベラス達が「自分は勇気がある」と思っているだけでは
「マジレンジャーの大いなる力」は引き出せない。
「自分には勇気がある」と認識した上で、
「マジレンジャーは勇気から戦う力を生みだして使っていた」という事実を認識することによって、
「勇気は戦う力を生みだすことが出来る」という一般的事実を知り、
「ならば同じ勇気を持つ自分達ならばマジレンジャーと同じように勇気から戦う力を生み出すことが出来るはずだ」
ということに気付き、それによってマジレンジャーのレンジャーキーから
マジレンジャーの大いなる力を含む、マジレンジャーの全ての戦う力を引き出すことが出来るようになるのです。

実はこの法則を第3話の時、小津魁は全てしっかりハカセに説明してくれています。
まず「不思議な海賊だねぇ・・・君は・・・宝物じゃなくて、仲間のために勇気を出すなんて・・・」と言うことで、
ハカセに「勇気」があるということを教え、
続いて「勇気・・・・それが魔法で戦うマジレンジャーの本当の力なんだ・・・」と言うことで、
マジレンジャーが「勇気」から戦う力(魔法)を生み出していたことを教え、
「今の君なら、マジレンジャーの大いなる力を引き出せるよ」と言うことで、
ハカセの心の中の「勇気」がマジレンジャーと同じ戦う力(大いなる力)を生み出すことが出来るということを
教えています。

そういう予備知識を魁から聞かされた上だったからこそ、
魁が姿を消した後の巨大戦の時にマジレンジャーのレンジャーキーが突然光って浮き上がった時、
ハカセは、さっきの謎の男(魁)が言っていた通りに、
自分の心の中の「勇気」がマジレンジャーの「大いなる力」を引き出したのだと気付いたのです。
そうしてマジレンジャーのレンジャーキーをゴーカイオーに挿してみたところ、
本当にマジドラゴンという「大いなる力」が出現した結果、
ハカセをはじめマーベラス一味の一同は魁の言っていた法則を本当の話だとして受け入れることになったのです。
つまり、あそこで魁がしっかり道筋は示してくれていたのです。

その後は、第5話のデカレンジャー篇になると、
マーベラスがドギーとの遣り取りの中で自分の「誇り」とドギーの「誇り」がよく似たものだと悟り、
ドギーの「誇り」が彼の戦う力を生み出しているのだということも認識し、
その上で巨大戦時にデカレンジャーのレンジャーキーが光り、
ドギーに「今のお前達ならデカレンジャーの大いなる力を引き出せる」と言われたことで、
マーベラスはドギーがデカレンジャーの元戦士だったと悟り、
ドギーの示していた「誇り」が生み出す戦う力こそが「デカレンジャーの大いなる力」だったのだと知り、
自分の「誇り」も「デカレンジャーの大いなる力」を引き出すことが出来ることを悟ったのでした。
これによって結果的にパトストライカーという「デカレンジャーの大いなる力」を出現させることが出来た。

そうしてこれ以後はもうマーベラス達もこの「大いなる力」獲得の法則をだいぶ呑み込んでいくようになり、
同時に視聴者も慣れてきて、そのことを見越して
かなり簡略化された形で、いきなり巨大戦時にレンジャーキーが光って、
マーベラス達が「大いなる力」をゲットしたと喜んですぐにゴーカイオーに挿すというのがパターン化されました。

ただ、エピソードを厳密に見ると、
マーベラス一味のうちの誰かは必ず元レジェンド戦士と出会って、
その元戦士が戦う力を生み出していた源の精神が何であったのかを知り、
その元戦士の精神と自分達の中に同じ精神が存在すると認識するという描写が
大抵は盛り込まれていました。
その上でレンジャーキーが光ったので、
マーベラス達は自分達の中のその精神がレジェンド戦隊同
様に、戦う力を生み出すことが出来るのだと認識することが出来たのです。

ただ、そのマーベラス達とレジェンド戦士との精神性の一致について、
ハッキリとした説明が毎回レジェンド側から必ずなされるわけではないので、
マーベラス達は本当に精神の一致があったのかどうか自信は無いのです。
そういう状態でレンジャーキーが光ることによって
マーベラス達は自分達とレジェンド戦士との、その精神の一致が確実になされたのだと
確信することが出来るのであり、
その結果、マーベラス達の心の中のその精神がその戦隊の大いなる力を引き出すことが出来るのです。
つまり、レンジャーキーが光るのは精神性の一致によって大いなる力を引き出すことが出来る
確信をマーベラス達の心に与えるための現象だといえます。

ただ、例外的な扱いであったのは、
黒十字王との戦いの際にレンジャーキー空間の中のビジョンの中に現れた元レジェンド戦士たちの中で
マーベラス達に何も語りかけず黙って頷いていただけの
デンジマン、ダイレンジャー、デカレンジャー、ボウケンジャー、ゴーオンジャー、シンケンジャーのうち、
既に「大いなる力」を譲渡済だったデカレンジャーとシンケンジャーを除く4戦隊でした。

4戦隊の方はマーベラス達を見て、
自分達の戦隊の大いなる力を引き出していた精神と同じ精神を持っていると判断して
安心して「大いなる力」を渡していましたが、それは一方的な譲渡であり、
この4戦隊はマーベラス達に何も語っていないから、
その戦隊のどういう精神が戦う力を生み出していたのかマーベラス達は分かっていなかった。
だから当然、自分達の中のどういう精神がその戦隊と同じ戦う力を引き出せるのか想像もつかないので、
結局、その戦隊の「大いなる力」を引き出すことは出来なかったのです。

そういうわけで、ダイレンジャー、ボウケンジャー、ゴーオンジャーに関しては
補完のレジェンド回が設けられて、
そこでマーベラス達はそれら3戦隊の元レジェンド戦士と接触して、
彼らが戦う力を生み出していた精神を知り、自分達にもそれと同じ精神が存在することを知ったので、
その精神から戦う力である「大いなる力」を引き出すことが出来るようになったのです。

となると、デンジマンも同じように補完をする機会は必ず設けなければいけないということになります。
何故なら、34戦隊の「大いなる力」を全部引き出せないと「宇宙最大のお宝」は手に入れられないからです。

また、既にバスコに「大いなる力」を奪われたチェンジマン、フラッシュマン、マスクマンについても、
何らかの方法でマーベラス達に彼らの戦う力の源になっていた精神が何であったのか知らせないといけません。
それは「199ヒーロー大決戦」映画のゴレンジャーやジャッカー電撃隊のように
ビジョンで登場させて一言ずつコメントを言わせるだけでもいいし、
ジュウレンジャーやタイムレンジャーのように黙ってスーツ姿で佇んでいる横で
誰か他の者(あの場合は仲代壬琴)が簡単に代弁するような形でもいいでしょう。
言葉は無くてもマーベラス達が彼らの精神を悟るような場面は作ることは出来ます。
だからまぁ、何とでもなるでしょう。

また、デンジマンについては
TV本編で補完レジェンド回があるかどうかは分かりませんが、
冬映画の方に登場するらしいので、そこで簡単に補完することは出来るでしょう。

まぁ少し話が逸れましたが、
要するに「スーパー戦隊の大いなる力を引き出す」というのは、
「ある戦隊の戦う力を生み出していた精神と同じ精神を持っている自分をマーベラス達が自覚し、
自分もその精神から戦う力を生み出すことが出来ると思うことによって、
レンジャーキーから大いなる力を引き出す」ということなのです。
言い換えれば、
「自分が持っている精神と同じ精神をある戦隊が戦う力を生み出す源として使っていたことを知ることによって、
自分もその戦隊の全ての戦う力を引き出すことが出来るようになる」ということです。

では、この「ある戦隊」をゴーカイジャーに置き換えてみるとどうなるかというと、
ゴーカイジャーはまだ「大いなる力」を使用していないわけですから、
ゴーカイジャーがどういう精神を戦う力を生み出す源として使っていたのかを探すのではなく、
ゴーカイジャーの戦う力を生み出す源となり得る精神は何なのかを探すことになります。
ただ、これは「ゴーカイジャーの大いなる力」を積極的に探している場合の思考法であって、
今回は「ゴーカイジャーの大いなる力」を積極的に探しているお話ではありません。
たまたま「ゴーカイジャーの大いなる力」を見つけてしまったという話です。
しかもゴーカイジャーとマーベラス一味は同一人物ですから、精神性の一致は最初から既にしています。
だから精神性の一致点を探る必要は無い。

そうなると必要な作業は、
マーベラス達が自分達の持っている最も根本的な精神が戦う力を生み出す源になっていることに気付くだけでいい。
つまり、彼らを彼らたらしめている根本的な彼ら独自の精神であれば、
それは他の戦隊の精神と一致した精神ではないから、ゴーカイジャー独自の精神なのです。
ゴーカイジャー独自の精神が生み出す戦う力とは、すなわち「ゴーカイジャーの大いなる力」というわけです。
つまり、マーベラス達は彼らの根本的な精神が戦う力を生み出すことが出来ることを知ればいい。
そうすれば自動的に「ゴーカイジャーの大いなる力」は引き出されるのです。

その彼らの根本的な精神とは「夢を掴もうとする心」であり、
マーベラス達は「夢を掴もうとする心」が戦う力を生み出すことに気付けばいいということになります。
そうすることによって「ゴーカイジャーの大いなる力」が引き出される。

例えばマジレンジャーの場合、「勇気」が戦う力を生み出すことに気付くことで
「マジレンジャーの大いなる力」を引き出すことが出来ますが、
この「マジレンジャーの大いなる力」とは、「勇気が生み出す戦う力」であり、
簡潔にまとめると「勇気の力」です。

それと同様に、ゴーカイジャーの場合、
「夢を掴もうとする心」が戦う力を生み出すことに気付くことで
「ゴーカイジャーの大いなる力」を引き出すというのなら、
この「ゴーカイジャーの大いなる力」とは「夢を掴もうとする心が生み出す戦う力」であり、
簡潔に言えば「夢を掴む力」となります。
マーベラスが言う「ゴーカイジャーの大いなる力」=「夢を掴む力」とは、こういう意味の力なのでしょう。

すなわち、今回、マーベラス達が「ゴーカイジャーの大いなる力」を引き出すことが出来たのは、
自分達に「夢を掴む力」があることに気付いたからですが、
それは単に自分達に「夢を掴もうとする心」があると気付いたからではありません。
そもそも自分達にそうした「夢を掴もうとする心」があることなど、
マーベラス達はマーベラス一味に加わった段階で既に知っています。
だからそうなのではなく、彼らが今回、「ゴーカイジャーの大いなる力」を引き出すことが出来たのは、
自分達の「夢を掴もうとする心」がどんな強大な敵との絶望的な戦いでも戦い抜くだけの、
大きな「戦う力」を生み出すことが出来ることに気付いたからなのです。

つまり、マーベラス達はこれまで、「夢を掴もうとする心」は持っていたが、
それが「戦う力」を生み出すということを知らなかった。
今回、自分達の「夢を掴もうとする心」が「戦う力」を生み出す力があることに気付き、
マーベラス達は「ゴーカイジャーの大いなる力」を引き出したのです。
前回と今回の前後篇の「ゴーカイジャー篇」のエピソードは、
マーベラス一味の面々が自分達の「夢を掴もうとする心」が「戦う力」を生み出す力があることに気付くまでの
過程を描いたエピソードなのだと言っていいでしょう。

但し、今回のエピソードでは誰かが彼らにそれを教えてくれるわけではない。
何か価値観を一変させるような強烈な出来事があるわけでもない。
まぁ確かに前回グレートワルズに敗北したことは強烈な体験ではあったが、
「夢を掴もうとする心」が「戦う力」を生み出す力があることに気付かせるような出来事ではありませんでした。

また、今回ジョーがバリゾーグを倒すということも強烈な出来事ではありますが、
これはむしろジョーが自分達の「夢を掴もうとする心」が「戦う力」を生み出す力があることに気付いた結果、
バリゾーグに勝利することが出来たのであり、
バリゾーグと戦ったことによってジョーが何かを学んだということはないのです。

またマーベラスは今回、アカレッドと夢の中で会話していますが、
アカレッドはマーベラスに何か目新しいことを教えてはいません。
マーベラスがじっくり自分の心の中を見つめるように示唆しているだけです。
そしてマーベラスは自力で自分達の「夢を掴もうとする心」が「戦う力」を生み出す力があることに気付いています。

つまり、マーベラス達は既に自分達の「夢を掴もうとする心」が「戦う力」を生み出す力があることに
心の中では気付いていたのです。
ただ、今まではそれをハッキリ意識していなかった。
今回、グレートワルズに敗戦した混乱の中で自分の気持ちを整理した結果、
実は自分達は何時の間にか自分達の「夢を掴もうとする心」が「戦う力」を生み出す力があるという認識に
辿り着いていたということに気付いたのです。

つまり再確認に近い。
その再確認の結果、自分達の「夢を掴もうとする心」が「戦う力」を生み出す力があるという確信を初めて得て、
その結果、「ゴーカイジャーの大いなる力」が引き出されたのです。
その心の軌跡を描くのが前回と今回の「ゴーカイジャー」篇のメインテーマです。

では、どうして彼らは何時の間にか自分達の「夢を掴もうとする心」が
「戦う力」を生み出す力があることに気付いていたのか?
実はそのことに彼らが気付いていく過程はじっくりこれまでの物語の中で描かれていました。
その過程を描いていたのが、実はレジェンド回だったのです。

そもも何故、「大いなる力」はマーベラス一味の持つ精神とレジェンド戦士の持つ精神の一致が認められて
譲渡されるという設定になったのか?
最初は、その方がドラマを作りやすいからなのかと思っていました。
また、マーベラス一味が知らないことをレジェンド戦士から一方的に教えられる描写ばかりになると、
マーベラス一味の影が薄くなるから、それを避けるためかとも思っていました。
まぁそれらの動機も無かったわけではないでしょう。
しかし、どうやらもっと根本的な理由があったようなのです。

それは、「地球と無関係のお宝目当ての宇宙海賊が地球を守る正義のヒーローに変わっていく」という
物語の大筋に関係があったのです。
つまり、お宝目当てということは、夢を追いかけるのが本性で、
地球を守って戦うことなど興味の無い連中ということです。
そういう連中を地球を守って戦うヒーローに変えていくためには、
その本性である「夢を追いかける」というのを「地球を守って戦う」というのと
同じ意味合いにしてやらないといけない。

そのために、彼らの本性である「夢を追いかける」という精神と関連のある彼らの中の様々な精神、
例えば「勇気」「誇り」などが、
実は「地球を守って戦う」ためにも使われる精神なのだということを彼らに教えていくのです。
そのために、「勇気」を地球を守るための戦う力の源泉として使っているマジレンジャーや、
「誇り」を地球を守るための戦う力の源泉として使っているデカレンジャーなどのレジェンド回をやり、
そこでマーベラス一味もそれらの戦隊と同じ精神を持っているという描き方をするのです。

そうすれば結果的にマーベラス達は自分の「勇気」や「誇り」が宝探しだけでなく、
地球を守って戦う力にもなるということを知り、
そのようにしてレジェンド回を重ねていくにつれて、
マーベラス一味の「夢を追いかける」という本性に関連する精神はどんどん
「地球を守って戦う」ための精神という意味合いも帯びるようになっていき、
その結果、最終的には本性である「夢を追いかける」という精神までも
「地球を守って戦う」ための精神の意味合いも帯びるようになるという算段なのです。

そういう狙いで作られたレジェンド回を重ねてきて、
マーベラス達は自分達の「夢を掴もうとする心」に関連の深い様々な精神と同じ精神を持ったスーパー戦隊を見続け、
自分達の「夢を掴もうとする心」に関連の深い様々な精神が「戦う力」を生み出す力があることに気付いてきました。
そうなれば自然な成り行きとして、
「夢を掴もうとする心」も「戦う力」を生み出す力があることに気付くようになるのです。

つまり、マーベラス達はもともとはザンギャックから何かを守って戦うことからは逃げて、
単に「夢を掴もうとする心」でお宝を探そうとしていた連中だったが、
地球に来てレジェンド回を重ねて、
自分の精神の中に「戦う力」を生み出す要素が多く存在することに少しずつ気付いていき、
その過程の積み重ねの中で、
今回遂に自分の精神の中心である「夢を掴もうとする心」もまた「戦う力」を生み出すことに
何時しか気付いていたのです。
そのことを今回、ハッキリと認識した結果、「ゴーカイジャーの大いなる力」が引き出せたのです。

つまり、これまで多くのレジェンド回を重ねて、
様々な戦隊の「大いなる力」を引き出してきたのは、
今回の「ゴーカイジャーの大いなる力」を引き出すに至るまでのステップだったということになります。

それらの中で、特に重要なステップであったのがシンケンジャー篇とゴーオンジャー篇、
そしてゴーオンジャー篇の前段階としてのハリケンジャー篇でしょう。
それゆえ、この3篇は、シンケンジャー篇が1クール最終エピソード、
ハリケンジャー篇が2クール最終エピソード、
そしてゴーオンジャー篇がゴーカイジャー篇とセットで3クール最終ユニットを構成しているというように、
物語の節目に配置されていたといえます。

このうちハリケンジャー篇はゴーオンジャー篇へ至るステップであるので、
シンケンジャー篇の「絆」と
ゴーオンジャー篇の「自由の尊重」という2つの要素が特に重要です。

すなわち、マーベラス達はシンケンジャー篇でシンケンジャーという戦隊を知って
「絆が戦う力を生み出す」と知り、
ゴーオンジャー篇でゴーオンジャーという戦隊を知って
「自由を尊重する精神が戦う力を生み出す」ということを知りました。
そして、マーベラス達の心の中にも「絆」も「自由を尊重する精神」ももともと存在しており、
それらはもともと「夢を掴もうとする心」と非常に深い関係にありますが、
普段はそれは常に意識されているわけではありません。
今回、そのことを強く確認することによって、
マーベラス達は自分達の「夢を掴もうとする心」もまた「戦う力」を生み出すことが出来ることに気付くのです。

そのようなマーベラス一味の面々の心の軌跡を描いているのが前回と今回のゴーカイジャー篇ですが、
今回は「夢を掴もうとする心」が「戦う力」を生み出すことを視聴者に示すため、
前回からの流れの中で複数のドラマを並行して進める手法をとっています。
「マーベラスとアカレッドのドラマ」、
「ジョーとバリゾーグ(シド)のドラマ」、
「鎧とルカ・ハカセ・アイムのドラマ」、
そして「ワルズ・ギルのドラマ」という4つのドラマが描かれています。

これら4つのドラマがそれぞれの切り口で「夢を掴もうとする心」こそが
真に強大な「戦う力」を生み出すのだということを示しつつ、
最後は1つに集束していって、
「ゴーカイジャーの大いなる力」=「夢を掴む力」が
ザンギャック最強の決戦機グレートワルズを倒してワルズ・ギルを葬り去り、
ゴーカイジャーがザンギャックの地球侵略の野望を一旦、打ち砕くという結末に至るのです。

この4つのドラマを30分番組の中で並行して進めるというのは、
「詰め込みすぎ」という意見もあるかもしれません。
特にジョーとバリゾーグのドラマは1つの独立したエピソードで味わいたかったという人もいるでしょう。
まぁ確かにそのこと自体は同感ですが、
しかし今回のエピソードに関しては「詰め込みすぎ」という印象は不思議とありません。

それはどうしてなのかと考えると、それはこの4つのドラマは、
4つのドラマがバラバラに進行しているのではなくて、
1つのテーマのストーリーを4つのドラマでリレー形式で繋いでいるからなのでしょう。
だから流れが非常にスムーズで、ゴチャゴチャした印象が無いので
「詰め込んだ」という感じがしないのです。
そして、凄いのは、だからといって、個々のパートだけで繋げ直した時に
話が飛んでしまって意味が通じなくなるということはなく、
ちゃんと個々のパートはパートで、しっかり完成したストーリーとなっていることです。

いや、この4つのドラマが1つのストーリーでリレー形式でうまく繋がるということは
もともとこの4つのドラマは1つにまとめて描写すべきなのであり
だから別にそもそも「詰め込みすぎ」ではないのです。
おそらく今回、この4つのドラマでそれぞれの切り口で「夢を掴む力」を描こうという
順当でありながら超難易度の高いプロットを提案したのは宇都宮Pでしょうけれど、
この4つのドラマを絶妙なリレーで1つの「夢を掴む力」のストーリーに繋いで、
これだけの詰め込んだ内容でありながら、むしろ余裕を感じさせるスケールの大きなエピソードに仕上げたのは、
前回と今回のゴーカイジャー篇の脚本を担当された下山健人氏の力によるものでしょう。

下山氏は最近は、アカレッドの登場したボウケンジャー篇や、
バスコ完全体が登場したオーレンジャー篇、ゴーカイガレオンバスター登場篇など、
物語の縦糸に絡む重要回を担当しており、
それに加えて今回の節目のゴーカイジャー篇ですから、
もうめっきり香村氏と並んでダブルメインライターであるかのような大活躍といえます。

綺麗で巧いと唸らせて安心感が抜群なのはどちらかというと香村氏の方ですが、
下山氏は香村氏ほど綺麗にまとめてはいないものの、
大きなスケールのお話が得意のように見受けられます。
特に前回と今回のゴーカジャー篇は実に素晴らしい。
シンケンジャー篇に匹敵する神回だと思います。

というか、今回のゴーカイジャー篇は、
夢と絆、ジョーとバリゾーグの対決、ワルズ・ギルの出陣、ザンギャック本国からの増援など、
シンケンジャー篇と似た要素が多く、シンケンジャー篇の完結篇として捉えることも出来るでしょう。
だからもともとこれら複数のテーマは一体化したものであり、だから並行して描こうということになるのです。

確かに、ここまでのレジェンド回というのはほぼ全てハリケンジャー篇を経て、
あるいは直接、ゴーオンジャー篇に集約されてゴーカイジャー篇に回収された印象がありますが、
シンケンジャー篇だけは異質な印象のレジェンド回として残っていた印象があります。
おそらくシンケンジャー篇はゴーカイジャー篇に直接繋がって完結するものとして
最初から設定されていたのでしょう。
それゆえ、レジェンド回の出来としてはシンケンジャー篇よりも上のものは幾つもあったにもかかわらず、
制作サイドではシンケンジャー篇はどうも特別視されていたのでしょう。

そして、こうして今までの全てのレジェンド回がこうして今回、ゴーカイジャー篇に回収されて、
ゴーカイジャーが自分の「夢を掴もうとする心」が「戦う力」を生み出すと気付いて
「ゴーカイジャーの大いなる力」を獲得し、ゴーカイジャーが地球を守るスーパー戦隊として完成したとすると、
その後のレジェンド回というのは、
ゴーカイジャー篇以前のレジェンド回とは根本的に形式も意味も違うものとなることが予想され、
そこでテーマとなってくるのは、最終決戦を勝ち抜くためにゴーカイジャーが
今回の完全なるゴーカイジャーという状態からさらに加えて
獲得しなければいけない力に関するものとなるのでしょうが、
それについてはおそらく次回に考察することになるでしょう。

さて、この節目のゴーカイジャー篇、下山氏の脚本に大満足ではありますが、
それにしても、本来ならこうした節目のエピソードを担当するはずの
メインライターの荒川氏の姿がめっきり見えません。
今回、遂に本編終了後のCMで告知がありましたが、
1月に「ゴーカイジャーVSギャバン」というものすごい映画企画があるようで、
そちらの脚本で荒川氏は大変なようですね。

もちろん、それだけでなくTV本編のクライマックスの方もまとめて荒川氏が担当するのでしょうから、
それも大変なのでしょう。
特にこの「ゴーカイジャー」はあまりにもスケールの大きな物語なので、
どうまとめるのか非常に頭を悩ませておられることと思います。

そして、「ゴーカイジャーVSギャバン」にバトルケニアの曙四郎が登場するらしいので、
どうもこの映画、戦隊の冬映画の恒例のパターンとは少し違うのかもしれない。
戦隊の冬映画は、だいたいいつもは劇中設定では32〜36話のどこか、
つまり放送日でいうと10月ぐらいの何処かに挿入されるエピソードなのですが、
「ゴーカイジャー」においてはこの第38話現在において未だバトルケニアは登場していないし、
バトルフィーバーJの大いなる力についての言及も無い。

つまり、「ゴーカイジャーVSギャバン」は、
「ゴーカイジャー」TV本編の結構終盤に挿入されるエピソードになる可能性があるのです。
もしかしたら「仮面ライダーW」の夏の劇場版だった「AtoZ運命のガイアメモリ」のように、
TV本編終盤の展開に深く関係するような使い方をする可能性もあります。
もしそうであるならば、「ゴーカイジャーVSギャバン」の脚本とTV本編終盤の脚本の製作は
一貫した大変な作業となっている可能性が高く、
それならば荒川氏が3クール目ほとんど姿を見なかったのも納得がいくというものですが、
まぁ詳細は分かりません。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 23:55 | Comment(0) | 第38話「夢を掴む力」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月22日

第37話「最強の決戦機」感想その6

一方、倉庫の外ではジョーを除くマーベラス達5人がゴーミンやスゴーミン達を全て片付けましたが、
そこにまた新手のゴーミン集団が現れて迫ってきます。
「キリがねぇなぁ・・・」と溜息をついたマーベラスは
「一気にいくぜ!!」とゴーカイガレオンバスターでゴーミン集団を撃って全滅させます。
この時、今回はジョーがいませんから、
いつもはジョーがゴーカイブルーのレンジャーキーを挿す鍵穴に鎧がゴーカイシルバーのレンジャーキーを挿し、
いつもはジョーが支えるマーベラスの左肩と左腰も、鎧が支えます。

ところが、このゴーカイガレオンバスターを撃ち終った直後、
ゴーミン集団が吹っ飛んだ爆炎の前に突如、例の2人のドゴーミンが降り立ち、
猛スピードでマーベラス達に突っ込んできて、
ガレオンバスターを撃ち終った直後の反動を受けて一瞬の無防備な状態のマーベラス達に
激しい攻撃を浴びせてきたのでした。

猛スピードで動き回る2人のドゴーミンに打ちのめされたマーベラス達から
再び猛スピードで離脱して距離をとったドゴーミン2人は、
それぞれが手にした槍を突き上げて交差させますが、
マーベラス達から見て左側に立つドゴーミンの突き出した槍の穂先が青い龍、
右側に立つドゴーミンの突き出した槍の穂先が赤い龍の形となっており、
これが交差されて突き出されて、右に青い龍、左に赤い龍が向かい合うようになり、
ここにザンギャックの紋章のエネルギー体が重なって浮き上がるように発生して、
このエネルギー体を2人のドゴーミンは槍先で繰り出してきてマーベラス達に撃ち込んできます。

なるほど、確かにザンギャックの紋章には真ん中の皇帝の顔と思しき模様の右に青い龍、左に赤い龍が描かれており、
あれは親衛隊を象徴していたようです。
あるいは、何か別の由来があるのかもしれませんが、
その何かを模した槍が親衛隊のマークとなっているのでしょう。
このエネルギー体が炸裂してマーベラス達は吹っ飛ばされて倒れます。

この一連のドゴーミンの攻撃が一瞬のうちに繰り出されて、
あっという間に倒れ伏してしまった5人は驚きました。
ハカセは「何こいつら!?」と怪しみ、アイムも「強すぎます!」と呆れたように言います。
そして鎧も「スゴーミンに似てますが・・・比べものになりません!」と、
いきなり現れた謎の赤いスゴーミンが何者なのかと戸惑いを示します。
どうやらマーベラス達は皇帝親衛隊のドゴーミンの存在は知らないようです。

このハカセ達の言葉を聞いて、ドゴーミンの片割れが
「皇帝親衛隊である俺たちドゴーミンの力は、一介の行動隊長の力などは優に超えるドゴ!」と野太い声で言い、
もう1人の片割れも「見た目で人を判断するなと、先生に教わらなかったのか?ドゴ!」と、
こちらは少し冗談めいたことを言います。
何か1人は微妙に武闘派で、1人は微妙に知性派っぽいです。

しかしドゴーミンは行動隊長クラスの怪人よりも遥かに強いとは驚きですが、
この一連の攻撃を見ればそれも納得です。
ただ行動隊長といっても今まで出た者にはかなり実力にバラつきはあったので、
中にはドゴーミンよりも強そうな者もいました。

そもそもこのドゴーミン達を率いていた親衛隊長のデラツエイガーをもゴーカイジャーは倒しているのですから、
十分にゴーカイジャーもドゴーミンとは渡り合えるはずです。
まぁ親衛隊長が必ずしも親衛隊の隊員たちよりも強いとは限らず、
案外、実力はさほど変わらないが家柄などの要素でデラツエイガーは隊長であっただけかもしれませんが、
まぁ今の攻撃はマーベラス達がガレオンバスターを撃ち終った瞬間を狙った奇襲であり、
マーベラス達が一方的にやられてしまったのはそのあたりにも原因があり、
確かにドゴーミンは強いが、圧倒的というほどでもなさそうでした。

やはり反動の大きいガレオンバスターは怪人を1人残して弱らせてトドメを刺すような
戦闘の最終段階で使わないと、こういう逆襲を喰らってしまう危険はあるようです。
が、とにかく見た目は似ていてもドゴーミンはスゴーミンとは比べものにならない強さであるのは間違いない。
知性派の方の1人は見た目だけでスゴーミンと同種扱いされたのがちょっと嫌で、
皮肉混じりの冗談を言ったようです。

これに対して「・・・ゴメン!学校なんて行ったことないのよね!」と冗談を返しながらルカは立ち上がり、
他の皆も立ち上がります。
不意打ちは喰らってしまったが、仕切り直して戦えば勝てない相手ではないと判断しているようです。
まぁ実際、スラム育ちのルカは学校に行ったことはないようですが。

そしてマーベラスも「てめぇらこそ、皇帝に教わらなかったか?
海賊ってのは一筋縄じゃいかねぇってな!」と言いつつ、バックルからレンジャーキーを取り出します。
このセリフ、ドゴーミンの冗談に冗談で返しただけのようにも聞こえますが、少々引っ掛かるセリフでもあります。
あるいは皇帝は海賊と何か因縁があり、マーベラスはそのことを知っているのかもしれません。
ただマーベラス自身はドゴーミンのことも知らないぐらいですから皇帝とも当然、面識は無いでしょうから、
マーベラスの知る海賊、例えばアカレッドが皇帝と何らかの因縁があることを聞いていたという可能性はあります。

まぁここは戦闘の場面を追います。
5人はレンジャーキーを出してモバイレーツに挿し込み「豪快チェンジ!!」と、多段変身を遂げますが、
何やらいつもと様子が違います。
関さんのいつもの変身ボイスが聞き取れない。
なんだか5種類混じってしまってワケ分からん「×××レンジャー」みたいな言葉になってしまってます。

見ると、マーベラスがウルザードファイヤー、ルカが大剣人ズバーン、ハカセがシグナルマン、
アイムがデカスワン、鎧が黒騎士に変身しています。
それぞれマジレンジャー、ボウケンジャー、カーレンジャー、デカレンジャー、ギンガマンの
番外戦士扱いの戦士です。
まぁシグナルマンや黒騎士は本編では番外戦士扱いではなく、どちらかというと追加戦士扱いなんですが、
この「ゴーカイジャー」においては最後までバスコが所持していた
10個の番外戦士レンジャーキーのカテゴリーの戦士となります。

この第31話のオーレンジャー篇でマーベラス達が手に入れた番外戦士カテゴリーの戦士は
別格に強い戦士という扱いになっており、ある種、切り札的な戦士です。
ドゴーミンがそれなりの強敵で、しかも2人もいるということで、
マーベラスはここで切り札の番外戦士への多段変身に初めて踏み切ったようです。

そのチョイスの基準は、一応マーベラスは赤い番外戦士であるウルザードファイヤー、
ルカは黄色っぽいズバーンという色合わせで、
ハカセはシグナルマンとは第31話で召喚体と戦った因縁があり、
アイムは女性型戦士のデカスワン、
鎧は因縁のあるヒュウガからレンジャーキーを受け取った黒騎士というように、
一応皆、なんとなく根拠のあるチョイスとなってます。

ただ、鎧の場合、ゴーカイセルラーに黒騎士のボタンが無いのにどうやって変身したのかという疑問はありますが、
まぁこの際、細かいことは突っ込まないでおきましょう。
玩具の仕様に縛られすぎるより、これぐらい融通は利いた方がいいです。

これでマーベラス達がレンジャーキーを所持していながら未だ変身していない戦士は
ゴーオンゴールド(単体変身無し)、デカマスター、マジマザー、リオ、メレ、姫シンケンレッドの
6戦士となります。
ただ、TV本編で未変身という意味では、ファイブレッド、ファイブブルー、ファイブブラックも追加されます。

ドゴーミン達もこの番外戦士への多段変身には驚いたようで、
「なんだ、それは?」と武闘派っぽい方が言います。
ドゴーミン達はそもそもこの場に何をしに現れたのかというと、勝手にやって来たわけではなく、
バリゾーグの作戦に参加しているのでしょう。
つまりワルズ・ギルはバリゾーグだけを信用して孤独に戦っているつもりでいるようですが、
実質的にはバリゾーグを通じて地球侵略軍全体を動かしている状態には変わりなく、
単にダマラスが指揮系統から外されているだけというのが実情です。
そして、この本国からグレートワルズを搬送してきた2人のドゴーミンも臨時で地球侵略軍の配下に加わって、
バリゾーグと連動して動いているようです。

それゆえ、ドゴーミンはある程度ゴーカイジャーに関する情報は入手していると見られます。
ガレオンバスターの弱点を突いた攻撃などはゴーカイジャーの戦法を研究していたからこそ出来たことでしょう。
だから当然ドゴーミン2人はゴーカイジャーがスーパー戦隊の戦士に多段変身することも知っていたようですが、
さすがに初めて披露する番外戦士への多段変身はデータに無かったので面喰ったようです。

これに対してルカは「ま、変化球ってヤツ?・・・可愛いでしょ?ズンズン!」と、
両腕を曲げて肘を下に押し込むズバーン特有の動きをします。
金ピカの化け物風のズバーンですが、ルカのクネクネした動きや声がつくと妙にエロくて、確かに可愛い。
こんなものを可愛いとは思いたくないのですが、クセになってしまう可愛さがあります。

これを聞いて知性派っぽい方のドゴーミンはイラッときたようで
「ズンズンって・・・ふざけてるのかドゴォ!?」と怒鳴ります。
いや別にふざけてません。ズバーンってこういうヤツですから。
オリジナルのズバーンはセリフは「ズンズン」とか「ズバズバ」しか言いませんし、
こういうポーズをとりながら喋るヤツなのです。まぁ声は男の声でしたが。

そもそもドゴーミン自身、「ドゴ」とか語尾に変なのをつけてるのだから、
他人の事をとやかく言えた義理じゃないでしょう。
ルカは構わず「ズンズン!」と返します。
すると何を思ったか武闘派っぽい方のドゴーミンが「うぅ〜む・・・ドゴォッ!!」と吼えます。
こいつら、もしかして案外面白いキャラなのかもしれません。

そして、これに対抗するようにルカは更に「ズンズン!!」とノリノリで、
横では黒騎士の鎧まで一緒になって同じポーズで「ズンズン」をやってます。
ふざける黒騎士というのも新鮮です。
そして画面奥ではハカセの変身したシグナルマンが、このくだらない遣り取りを無視して、
シグナイザーをポリスバトンモードにして呑気にゴルフのパターのフォームチェックをしています。

このグダグダの展開に呆れたようにマーベラスが「・・・いつまでやってんだ!一気に叩くぞ!!」と号令をかけ、
ドゴーミン目がけて5人は突っ込んでいき、ドゴーミン達も迎え撃ちます。
武闘派っぽいヤツの方はマーベラス、ハカセ、アイムと戦い、
知性派っぽいヤツの方はルカと鎧のペアと戦います。

番外戦士とはいってもシグナルマンとデカスワンはそんなに強い方ではないので、
最強戦士格のウルザードファイヤーと組むのは順当といえます。
一方、ズバーンと黒騎士は最強レベルとまではいかないが、両方ともかなり強い戦士ですので、
この2戦士のタッグならウルザードファイヤーにシグナルマンとデカスワンを合わせた戦闘力にも匹敵するでしょう。

この2つの最強チームともいえる相手に対して、ドゴーミン2人もかなり善戦しますから、やはり大したものです。
武闘派っぽいヤツの方はマーベラスのウルサーベルの斬撃を槍で受け止めて弾き飛ばし、
更にハカセとアイムも投げ飛ばして「おととい来やがれ!」と、
ハカセとアイムに向けて腕からエネルギー弾を発射してトドメを刺そうとしますが、
マーベラスが「させるかぁ!!」と割って入り、
ジャガンシールドとウルサーベルでエネルギー弾を弾いて防御し、そのまま逆襲に転じて突っ込み、
ハカセもアイムもそれに続きます。

一方、知性派っぽいヤツの方は鎧のセイバーモードにしたブルライアットの攻撃と
一進一退の攻防を繰り広げているところに
ルカが「ズバァッ!!」と強烈なローリングソバットを炸裂させて、
よろめいたドゴーミンにルカが「いくよぉ!」と腕を回して攻勢に転じます。
ルカは前進しながら「ズンズンズンズン!ズババババババァッ!!」と、
ドゴーミンのボディに連続ボディブローを叩き込み、
最後は豪快なアッパーカットでドゴーミンを天高く吹き飛ばします。

そして「うおおお!?」と宙に舞ったドゴーミンに対して、
同時にジャンプした鎧が空中で「黒の一撃!!」とブルライアットを一閃して、その胴体を斬り裂きます。
黒の一撃は本来は回転ジャンプして斬り下ろす技なので、ちょっと違うのですが、
まぁ変形技ということで、この一撃を受けてドゴーミンは絶叫して落下していきます。

一方、武闘派っぽいもう1人の方に対しては、
アイムが「スワンファンタジー!!」と、そしてハカセが「シグナルスラッシュ!!」と叫び、
それぞれ連続で大技を炸裂させます。
このスワンファンタジーもシグナルスラッシュも、両方とも本編でオリジナル戦士は使ったことのない新技です。
スワンファンタジーは羽根が舞い散るエフェクト付きの回転回し蹴りのような技で、
シグナルスラッシュはポリスバトンモードにしたシグナイザーで突っ込んで一閃する技です。

そしてマーベラスがジャガンシールドの盾の目を開き、「くらえ・・・!」と言うと、
盾の目から光弾を出して「ブレイジングシュート!!」と叫んで
ウルサーベルで弾き飛ばしてドゴーミンにぶっつけます。
このブレイジングシュートはウルザードファイヤーの得意技の1つで強力な技です。
これを喰らってドゴーミンは吹っ飛ばされて転がり、
そこにもう1人のドゴーミンもフラフラになって逃げてきます。
形勢不利と判断したドゴーミン2人は
「・・・意外にやるなドゴォ・・・!」「一時退却だドゴォ・・・!」と呻いて姿を消し、撤退していきます。

まぁ強いといっても5対2の数的劣勢で最強格の戦士に変身したゴーカイジャーに勝てるほどの
力は無いようですから、行動隊長の中でも強めの部類のものと同程度の強さというところでしょう。
これで倉庫の外のザンギャック兵は一掃されたこととなり、
後は倉庫の中でジョーと一騎打ちを繰り広げるバリゾーグを残すのみとなります。

さて、そのジョーとバリゾーグの一騎打ちですが、
激しく剣と剣をぶつけ合いながら倉庫内を動き回る目まぐるしい展開となっていました。
何と言ってもお互いひたすら無言なのが良いです。
「語るべき言葉を持たない」なんて言いながら結局ベラベラ喋って戦ったりしがちなのですが、
ここではお互い無言でひたすら殺し合ってるのが迫力があって良いです。

攻防の方は互角の均衡した勝負というよりは、
一瞬の油断であっという間に勝負が決しそうなシーソーゲーム的な展開で、
確かにこの方が真剣勝負らしいですね。
倉庫内の障害物なども利用して転がったり飛んだりして綺麗な勝負ではないのも真剣勝負っぽいです。

ただ、互いに本気で殺しにかかっている意味でメンタルでは互角なはずの勝負で、
それでもややバリゾーグ優勢であるのは、さすがに剣の師匠であるだけに強さの引き出しが多いのでしょう。
途中でジョーは二刀のうち一刀を弾き落とされて一刀になってしまいますが、
それでもジョーもまだまだ逆転のチャンスを窺って闘志は衰えず、
激しくバリゾーグに向かって剣を振るいます。

バリゾーグはこのまま斬り合っていてもジョーを倒すのは困難で、下手をすれば自分が倒されると悟り、
勝負を長引かせるのは得策ではないと判断し、「・・・腕を上げたなゴーカイブルー!」と言うと、
跳び下がってジョーと距離を置き、
「しかし・・・ワルズ・ギル様のためにも、ここで負けるわけにはいかない・・・!」と言いながら、
一気に勝負を決するために必殺技の円月剣の構えに入ります。
自分がもし死ねばワルズ・ギルを守る者がいなくなってしまう。
さっきワルズ・ギルに「お前しかいない」と言われた以上、
バリゾーグはここはどうあっても負けるわけにはいかないのです。

ジョーはそのバリゾーグの構えを見て、「あの構え・・・!」と驚き、声を上げます。
それは第11話でバリゾーグが自分に向けて放った技の構えであり、
同時にそれはかつてシドが編み出して自分に教えてくれた、2人の絆のような技である円月剣の構えでした。
「シド先輩の技を・・・!」とジョーは怒りにかられます。
その技は本来、シドが自分の信じた命懸けの正義の実現のために使うはずであったものであり、
シドの身体に偽物の正義を自分の意思によらず埋め込まれた機械兵士が
ワルズ・ギルやザンギャックを守るためなどに使って良いような技ではない。

「死ぬがいい!」と剣を身体の前で十字に振るうバリゾーグに対抗して、
すかさずジョーも「うおおっ!!」と同じように身体の前で十字に剣を振るい、円月剣の構えに入ります。
仲間の夢を守るために命さえも捨てる覚悟を自分の意思で固めた、その自分の円月剣こそ、
命を捨てて自分の夢を守ってくれたシドの本来の円月剣と同じ、本物の円月剣であり、
バリゾーグの放つ偽物の円月剣など一蹴して、この勝負を決する剣だと考えたのでした。

そうして向かい合ったジョーとバリゾーグは互いに同じ動作で、
同時に円月剣の十字型の衝撃波を放ち合い、その衝撃波は両者の中間点でぶつかり合い、
一瞬、きりもみ状となって押し合い、直後、その中間点で大爆発を起こしたのでした。
その激しい爆風にバリゾーグは「ぐあっ!?」とよろめき、
ジョーは「うわあっ!?」と後方に弾き飛ばされ、倒れます。

そこに倉庫の中に入って来たマーベラス達が駆け寄ってきて
「ジョー!」「大丈夫ですか!?」と口々にジョーに声をかけるが、
ジョーはマーベラス達を「来るなぁっ!!」と声を張り上げて後ろ手で制します。

ジョーは円月剣の撃ち合いが相討ちに終わったことが信じられず納得がいきません。
どうして自分の本物の円月剣がバリゾーグなどの偽物の円月剣と互角の威力なのか?
あのバリゾーグはシドの魂など受け継いではいない。
自分こそがシドの魂を受け継ぐ者なのです。
ならばシドの技を撃ち合えば、自分が勝つはずでした。
まさかバリゾーグのワルズ・ギルやザンギャックを守ろうとする剣と、
自分やシドの仲間や人々の夢を守ろうとする剣が同じだとでもいうのか?
シドの魂をバリゾーグが持っているというのか?

いや、そんなはずはない。シドの技をザンギャックを守るために振るった剣が本物であるはずがない。
自分の技がちょっとしたミスで不完全だっただけだとジョーは思い、
「手を出すな!!・・・バリゾーグは俺がやる・・・!」と立ち上がります。
今度こそ円月剣でバリゾーグを倒して、どちらが本物のシドの後継者なのかハッキリさせ、
シドの魂を救う決意でした。

しかし、その場に「ハッハッハッハ!!」と高笑いの声が響きます。
見ると、何時の間にか倉庫内にワルズ・ギルが現れて、高笑いしながらバリゾーグの傍に歩いてきており、
バリゾーグは恭しく黙礼しています。
ワルズ・ギルはバリゾーグの横に立つと「よくやった!バリゾーグ!」と褒めます。

この作戦はそもそもワルズ・ギルが自らマーベラス一味を倒すための作戦であったのですが、
ワルズ・ギルはグレートワルズを使えば勝てるとは思っていましたが、
それでも自分が直接戦わなくても勝利すればそれはそれで楽でいいと思い、
バリゾーグやドゴーミンがマーベラス達を倒すという展開でも良かったようです。
要はダマラスを排除して自分が前線で指揮を執った形での勝利であれば何でもよかったのです。
普段なら怖くて海賊相手の前線には出てこないのですが、
今日はグレートワルズという切り札がありますから、こうして前線に出てきて指揮が出来るというわけです。

ただ結局、ドゴーミンは撤退し、バリゾーグもジョーを倒しきれず、
このままでは5対1でバリゾーグを倒されてしまうと見て、
ワルズ・ギルはやはり自分がグレートワルズでマーベラス達を倒さねばならないと思って、遂に姿を現したのです。

マーベラス達はワルズ・ギルの姿を見たのは第11話と前回、第36話の2回だけですが、
ついこの前に会ったばかりですからよく覚えています。
「あいつは・・・!」とハカセは驚きます。確か、ザンギャック軍の司令官です。
まさか、こんな前線にいきなり司令官が現れるとは予想外でした。

一方、ジョーは「皇帝のバカ息子!・・・ワルズ・ギル!!」と怒りを露わにします。
そもそも自分がバリゾーグとここまで血みどろの死闘を演じてシドの魂を救おうとする羽目になっているのは、
この皇帝のバカ息子のワルズ・ギルが気紛れでシドをバリゾーグに改造したからでした。
諸悪の根源と言っていい。
いや、それだけではない。現在の宇宙の不幸の根源はザンギャック皇帝一族と言って過言ではありません。

そのジョーの言葉で目の前に居るのがザンギャック皇帝の息子、
つまり地球侵略軍の司令官なのだと知った鎧は仰天します。
鎧は一応、先日のガイアークとの戦いの際にワルズ・ギルとは顔を合わしていますが、
あの時はすぐにワルズ・ギルが撤退してしまったので誰なのかよく分かっていなかったのです。
第11話の時点では鎧はいませんでしたから、司令官ワルズ・ギルの顔は知らなかった。

目の前に敵の親玉がいきなり現れて驚くと同時に、鎧はこれは好機だと思いました。
地球侵略軍の司令官を倒せばザンギャックは撤退していくかもしれない。
そうなれば地球を守ることが出来る。
鎧は一歩前へ出てワルズ・ギルを指さして
「ノコノコ出てくるなんてちょうどいい!一気に決めましょう!!」と言って、
マーベラスの方に振り返って言いました。

しかしマーベラスは鎧にアイアンクローを決めて強引にどかせます。
確かにワルズ・ギルを倒す好機だが、
いつもは臆病にも前線に出て来ず、出てきても怖がってばかりいるヤツが、
妙に余裕の態度で出てきたのがマーベラスは気になりました。
バリゾーグに「よくやった」と褒めていたところを見ると、
これはどうやらワルズ・ギルが自分達に仕掛けた罠であるようだとマーベラスは気付き、
何か小細工があるに違いないと、慎重にワルズ・ギルの様子を窺います。

するとワルズ・ギルは「威勢だけはいいようだな海賊ども!・・・
そうだ!俺こそが宇宙帝国ザンギャックの司令官、ワルズ・ギル様だ!」と、派手にポーズを決めてノリノリです。
グレートワルズという絶対的な切り札を手にしているお蔭で、すっかり余裕です。
しかしマーベラス達には、どうしてワルズ・ギルがこんな危険な場所に出てきてこんなに余裕を示していられるのか、
その根拠は分かりません。
ただ、何かがあるのだろうということは想像はつきます。

続けてワルズ・ギルは「この場で平伏するか、それとも死すか、選ぶんだな!」と、
ますます調子に乗った発言をしますが、
こうした発言を見る限り、ワルズ・ギルはかなりキザで上品な悪役だと分かります。
つまり、マーベラス達を絶対に自分の手で殺したいと思っているわけではなく、
降伏すれば受け入れてやろうという度量は持っているのです。

というより、そういう度量を示してやろうという意識が強いのだといえます。
それはつまり、統治者としての風格を示したいということなのでしょう。
ワルズ・ギルにとってマーベラス一味は全身全霊をかけて憎むべき敵ではなく、
単なる地球侵略作戦を邪魔する障害物でしかない。
だから「抹殺」ではなく「排除」なのです。
生きていようが死んでいようが、とにかくいなくなればいいのです。
だから降伏してくれば受け入れて生け捕りにして、帝国の然るべき裁きを受けさせればいいし、
もしあくまで抵抗するならその場で殺すしかない。
まずは降伏するか抵抗するか、相手に選ばせねばならない。
何故なら、抵抗する意思を無くした敵を殺したりすれば統治者としての品格を疑われるからです。

つまり、ワルズ・ギルは残酷な殺戮者ではなく、あくまで本人は正義の執行者のつもりなのです。
何故なら、宇宙はザンギャック帝国のもとに統一されることにより安定するのだとワルズ・ギルは思っており、
ザンギャックによる全宇宙の併合はワルズ・ギルから見れば正義だからです。
そしてその宇宙の統治者にして平和をもたらす者は自分なのです。
そのワルズ・ギルから見ればマーベラス一味は許されざる悪ですが、
正義の執行者であり統治者たる自分が無慈悲な殺戮で手を汚すわけにはいかない。
だから、こうしてしっかり順序は踏んでいるわけです。
降伏すると言っても殺すつもりだとか、そういう卑怯な真似をする気も無いでしょう。
もし万が一マーベラス達が降伏すればワルズ・ギルはそれを受け入れて捕縛するつもりでいたと思います。
それが為政者としての正しい姿だからです。

もちろんザンギャック全体がこのように上品な騎士道精神を行動理念としているわけではない。
下っ端の兵たちは無抵抗の女子供も容赦なく虐殺する無法な連中です。
しかし、それは彼らが下っ端だからです。
ワルズ・ギルのような統治階級にいる者は、為政者としての風格を見せねばならないので、
民から軽蔑されるような無法な行為をするわけにはいかないのです。

だから、ワルズ・ギルがマーベラス達に温情を示すようなことを言っているのは、
別に優しい性格だからでもないし、マーベラス達に特別な感情を抱いているからでもない。
単にワルズ・ギルは「政治」をしているだけなのです。
「騎士道精神に則って無法な海賊を排除した英雄」というパフォーマンスを演じて、
ダマラスや重臣たち、ひいては父である皇帝に対してすら政治的優位を得ようとして
正義の執行者を演じているのです。

つまり、あくまでワルズ・ギルが意識している「敵」は目の前のマーベラス達ではなく、
あくまでダマラスや皇帝なのです。
マーベラス達のことは敵としてはあまり眼中には無く、
自分の政治ショーのダシ、生贄のようなものとしか意識していない。
当然、この戦いはギガントホースではモニターされており、映像も記録されている。
今後のワルズ・ギルの政治的なプロパガンダに何度も使われる予定の大事な映像です。
だから、さっきからワルズ・ギルはやたらと芝居がかった大袈裟な言動をしているのです。

しかしマーベラスにはそんな政治の話が想像がつくはずもなく、
大してピンチでもないのにいきなり降伏を勧告されて、呆れて
「あいにく平伏するほど行儀よく育ってないんでなぁ!」とガラ悪く応えます。
まぁどんな不利な状況でどんな強敵が相手でもマーベラスは絶対に降伏などしないのですが、
今の6人VS2人の状況で、しかも相手が最弱のボンボンであるワルズ・ギルならばなおさらのことでした。

このマーベラスの降伏を拒絶する言葉を聞いてワルズ・ギルは
「なるほど・・・死を選ぶか・・・」と後ろを向いてほくそ笑みます。
ワルズ・ギルとしてはその方が好都合だったのです。
戦わずして海賊を捕縛する映像よりも、
抵抗する無法な海賊をグレートワルズの圧倒的な力でねじ伏せる映像の方が
自分を英雄として演出するインパクトは圧倒的に上だからです。

ワルズ・ギルはあくまで画面映えを意識してカッコ良く振り向くと
「よかろう!我が手で引導を渡してやるから光栄に思え!」と高らかに宣言し、
左腕を胸の前に水平に畳んで敬礼のポーズをとりつつ、
威厳に満ちた声で「グレートワルズ発進!!」と号令を発します。

すると、それをモニターしているギガントホースの指令室では
インサーンが「グレートワルズ発進・・・!」と復唱しつつコントロールパネルのキーを操作し、
格納庫のグレートワルズを起動させます。
グレートワルズはその顔面部の目にあたるカメラ部に赤い灯がつき、
腕を動かすと、おびただしいジェット噴射の煙を残して、格納庫から飛び出します。
同時にギガントホースの前面について二頭立ての馬の顔のパーツのうちの1つが割れて、
その割れ目から猛烈な速度で宇宙空間へ向けてグレートワルズが飛び出していったのでした。

母船が割れて中から巨大ロボが飛び出してくるという演出は、
昔はスーパー戦隊シリーズではお馴染みでしたが、ずいぶん久しぶりにこういうの見ました。
懐かしくてインパクト大ですね。
まさか馬が割れるとは思わなかった。

しかし、グレートワルズがカッコいいというのもありますが、
この一連のシーンは確かに文句無しにカッコいいです。
メカニックな演出の貢献度も高いですが、
やはりその前段階のワルズ・ギルの堂々とした君主的、騎士的な言動は、
たとえ政治的意図の入ったパフォーマンスであるにせよ、かなり映えました。

これはやはり今までのワルズ・ギルとは一味違います。
今までのギャグキャラとしてのワルズ・ギルに慣れた人から見れば、
ちょっと違和感を覚えるくらいでしょうけれど、
意外に違和感が無いのは、ちゃんと前段階でワルズ・ギルの(全く誤解に基づくとはいえ)孤独と、
(グレートワルズという万能ロボの入手が前提とはいえ)それを乗り越えて前へ進もうとするチャレンジが
描かれており、そこからこの場面に至るまで、いや今回ラストまで、
ワルズ・ギルの声を担当される野島裕史氏の迫真の演技がそれらにリアリティーを与えているからです。

ワルズ・ギルはこれまでの人生、皇帝や重臣たちによって一切の障害を取り除いた万能の世界を提供されてきたが、
それは実際は果てしなく広い何も無い牢獄に閉じ込められていたようなもので、
一見は自由だが、その牢獄の中には一切の障害物も壁も無いため、
壁を乗り越えてこそ獲得される自由も夢も得られない世界でした。
いわば、ワルズ・ギルというキャラは、ザンギャック帝国という自由を隠微な形で抑圧した独裁帝国に
嬉々として暮らして恩恵を受け、引き換えに夢や自由を手放した人達の象徴のようなものだと思えばいいでしょう。
つまりマーベラス一味と対極に位置するザンギャックの理念が実体化したようなキャラがワルズ・ギルと言っていい。

そのワルズ・ギルが今回初めて、誤解によって皇帝や重臣に不信感と敵意を抱き、
何でも有るようでいて実は何も無かった自分の世界の中に、
初めて父や重臣という「乗り越えるべき壁」を作り上げ、
彼らを乗り越えたいという夢を持ち、壁を乗り越えるという自由の精神に触れることになった。
それがワルズ・ギルに大きな自信を与えて、今までにない堂々とした態度をとらせているのです。

しかし、その壁を乗り越える勇気を持つためにはワルズ・ギルは信頼できる仲間が必要だということを初めて知り、
信頼出来る相手はバリゾーグしかいなかった。
バリゾーグと一緒だからこそワルズ・ギルは壁を超える勇気を持つことが出来たといえます。
しかし、そのバリゾーグとの絆は所詮は作られた嘘の絆であり、非常に不安定であります。

また、そのバリゾーグと超えようとしている壁にしても、
その壁を乗り越えた先は決して自由な世界ではなく、元の牢獄の中です。
何故なら、あくまでワルズ・ギルはバリゾーグも含めて、自分の壁を乗り越えようとする力を、
全てザンギャック帝国という万能の牢獄から自由を失う引き換えに与えられてきたものを使っており、
牢獄の壁を超えて真の意味で自由になることは放棄しているからです。
彼は単に牢獄の王になろうとしているだけであり、牢獄の外周の壁は超えようとはしていない。
そもそも超える力も無い。
その点、帝国の作った牢獄の壁を超えようとしているマーベラス一味とは違っています。

そういうわけで、確かにワルズ・ギルは以前よりは強くなり、
あるいはザンギャックの皇帝として相応しい人物へと脱皮しようとしているのかもしれないが、
その基盤は案外脆弱であり、
帝国の理念を脱した場でマーベラス一味と戦うとなると、危ういかもしれないといえます。

さて、ギガントホースから射出された無人のグレートワルズは誘導システムで一瞬にして地上に到達し、
ワルズ・ギルがマーベラス達と対峙していた倉庫のすぐ脇に降り立ち、
ワルズ・ギルは「と〜う!」とジャンプしてグレートワルズに乗り込みます。

6人はそのグレートワルズを見上げて驚きます。
「なんだこれ!?」とハカセは呆れ、マーベラスは「また面倒なのが出てきやがったなぁ!」とぼやきます。
まぁ、あんまり危機感は抱いてはいないようです。
一方、グレートワルズのコクピットに乗り込んだワルズ・ギルは
「ザンギャック最強の決戦機グレートワルズで、お前達を葬ってくれる!」と張り切ってレバーを操作して、
グレートワルズを動かし、グレートワルズはゆっくりと歩き出します。

ガラス張のビルにグレートワルズの姿がきれいに映ったりして、
もうほとんど正義のロボット級の破格の待遇のグレートワルズは、
改めて見るとワルズ・ギルにそっくりというわけではなく、
色合いや細部のデザイン、胸部の顔模様がワルズ・ギルを彷彿させている
スマートなフォルムの巨大ロボットで、イメージとしてはワルズ・ギル親衛隊の巨大騎士という感じです。

これに対してマーベラスは「やれるもんならやってみろ!!」とゴーカイガレオンを呼び、
鎧は「時を超えて出でよ!タイムレンジャーの大いなる力!」と、豪獣ドリルを召喚します。
そしてゴーカイオーと豪獣神でグレートワルズに立ち向かいます。
「決戦機だか何だか知らねぇが、ぶちかますだけだ!!」とゴーカイオーのコクピットからマーベラスは怒鳴り、
ワルズ・ギルはグレートワルズのコクピットで「フン!」と余裕で鼻で笑います。

これ、向かい合ってる姿を見てると、「騎士VS海賊」なので、
どう見てもグレートワルズの方が正義のロボットみたいに見えて可笑しいです。
まぁワルズ・ギル自身は自分こそ圧倒的な力で宇宙に安定をもたらす正義の戦士だと思っており、
ザンギャックによる平和を乱すけしからん海賊を討伐しているつもりなのでしょう。

それにしても、やはり、こういう搭乗型の巨大ロボット同士の対決は燃えます。
スーパー戦隊シリーズの巨大ロボの発想の源流は「マジンガーZ」「ゲッターロボ」以降の
巨大ロボットアニメなのですが、
巨大ロボットアニメのバトルの売りは、やはり巨大ロボット同士のバトルでした。
スーパー戦隊シリーズでもその路線も試みられたこともありますが、
やはり経費節減のため、1つの着ぐるみで等身大戦と巨大戦をこなすために、
怪人が巨大化するという設定が普通になりました。

しかし、この敵の巨大化怪人と戦隊の巨大ロボが戦うという構図は、
どうしても「化け物を武器を使って退治している」という印象で、
あまり対等な立場での人間ドラマというのが成立しにくいといえます。
等身大戦の時は人間臭さを見せていた敵怪人も、巨大化してしまうと、どうしても化け物になってしまった感が強く、
人間臭さが無くなってしまう印象で、巨大ロボ戦で深いドラマを表現するのは難しいといえます。
その点、戦隊側と同じように敵側も巨大ロボットに敵キャラが乗り込んでいると、
戦闘機同士のバトルのような感じで、
互いのコクピットの場面を描くことで、しっかり人間ドラマを描くことが出来るのが良いところです。

さて、戦闘開始となり、まずマーベラス達はゴーオンジャーのレンジャーキーをゴーカイオーのコクピットに挿して
マッハルコンを召喚し、キャストにソウルを挿して巨大化させ、
マッハルコンは「バリバリいくぜぇっ!!」と叫んでビーム砲を発射しながらグレートワルズに疾走していきます。

しかしワルズ・ギルは「知っているぞ!そいつの力は!」と言ってレバーを引いてグレートワルズを操り、
素早い動きでマッハルコンのビーム砲を避けていきます。
マッハルコンの能力は既に何度かの戦いをモニターして研究済だった上に、
グレートワルズがとにかくスピードに優れており、攻撃が当たらないのです。
「ハッハッハ!」と高笑いしながらワルズ・ギルはマッハルコンの攻撃を全部避けてしまいました。
マーベラス達はグレートワルズの桁違いの機動力に驚き、ルカも「速い!」と唸ります。

そしてワルズ・ギルは「喰らえ!ワルズアロー!」と、
グレートワルズの左腕に装着した弓からエネルギー矢を発射してマッハルコンを射て、
矢が何本も命中したマッハルコンは「うわあ!」と叫び、次元の扉の向こうに撤退してしまいます。
「マッハルコン!」と叫ぶマーベラスに向かい、
ワルズ・ギルは「ざまあ見ろ海賊ども!本気の俺を止められると思うなよぉ!」と勝ち誇ります。

グレートワルズが大変な強敵であると悟ったマーベラスは、
今度は豪獣神に乗る鎧に向かって「豪獣ゴーカイオーだ!鎧!」と指示します。
「わかりました!」と鎧も応じて、アバレンジャーのレンジャーキーでゴーカイオーと豪獣神が合体し、
豪獣ゴーカイオーとなります。
圧倒的なスピードを誇るグレートワルズに対しては、スピード重視の攻撃は通用せず、
複数のロボで攻撃してもあまり意味は無い、
むしろこちらがグレートワルズのスピードに翻弄されて各個撃破されるだけだとマーベラスは判断したようです。
それよりも、ゴーカイオーと豪獣神の力を1つにして最もパワーと防御力に優れた豪獣ゴーカイオーで
確実に攻撃してくるグレートワルズを迎え撃つ方が良いという考えです。

しかしグレートワルズは真正面から豪獣ゴーカイオーに突っ込んできて、
懐に入ると右腕に装着した剣で豪獣ゴーカイオーをメッタ斬りにし始めます。
「このグレートワルズがこれまでの行動隊長と同じだと思うなよ!」と嘲笑うワルズ・ギルは
更に距離をとってワルズアローを叩き込み、
マーベラス達6人は豪獣ゴーカイオーのコクピットでなす術なく「ぐあああ!!」と苦しみます。
ワルズ・ギルは勝利を確信して「ハッハッハ!素晴らしいぞ!これぞ俺の求めていた力だぁっ!!」と高笑いして
再びグレートワルズを豪獣ゴーカイオーに突っ込ませて剣で斬りまくります。

豪獣ゴーカイオーのコクピットではハカセが「そんなぁ・・・」と途方に暮れます。
スピード重視の機体なのかと思って豪獣ゴーカイオーでパワー勝負に持ち込もうとしたのに、
パワー勝負でも圧倒されるとは、予想を遥かに超えるグレートワルズの強さでした。
「まるで歯が立たないなんて・・・」とアイムも驚きます。
これほどの秘密兵器をザンギャックが保持していたとは想定外でした。
「・・・信じられん・・・!」とジョーも呻くばかり。

ルカは苛立った声で「どうすんの?・・・これ!」とマーベラスに対応策を問いかけますが、
マーベラスもどう対応したらいいのか分からない様子で、無言です。
代わりに鎧が「突撃しましょう!・・・逃げるわけにはいきません!」と強い調子で言います。
どんな絶望的状況でも逃げずに戦わなければ、地球を守ることは出来ない。
さっき、どんなにザンギャックが強大でも地球を守ってみせるとジョーの前で自分に誓ったばかりの鎧ですから、
いきなりここで逃げるわけにはいかないと思っているのです。
しかし、突撃してもあのスピードでは絶対にかわされて手痛い反撃を喰らうのは目に見えています。
ハカセは「でも・・・破れかぶれに行っても無理だよ!」と鎧に反論します。

そうこうして揉めていると、ワルズ・ギルは「喰らうがいい・・・ワルズギルティ!!」と言って、
グレートワルズの胸部の自分の顔から強烈な高熱ビームを発射します。
どうやら、これがグレートワルズの決め技であるようです。
これを喰らった豪獣ゴーカイオーはコクピットの回路がショートして電撃に襲われ、
6人は「うわあああ!?」と絶叫して苦しみ、もはや身動きで出来ない状況となります。

まさに絶体絶命となってしまった6人であり、
豪獣ゴーカイオーでグレートワルズに反撃する手立てももはやありません。
電撃で苦しみつつ、マーベラスはこの未だかつてない絶体絶命の状況を、
かつての赤き海賊団の壊滅事件の時の想い出に重ねて見ます。

あの時、ザンギャックの襲撃を受け、赤き海賊団を守りきることが出来ずに壊滅させてしまった時、
船長のアカレッドは最後の最後に、自分の命を投げ出して、仲間である自分の夢を守ってくれたのだったと、
マーベラスは改めて想い出しました。
今、自分もアカレッドと同じ立場に立っている。

さっき、鎧と船室で問答した時、自分にとっての「守る」ということは、
到底勝ち目の無いザンギャックとの戦いの果てに、ザンギャックに敗れるその時、
アカレッドのように自分の命を捨ててでも仲間の夢だけは守ってやることだと心密かに決心していたのです。
それはまだ遠い将来のことだと思っていたが、
まさかザンギャックがいきなりこんな強力なロボットを投入してくるとは予想外でした。

しかし、これもまた想定内のことでもあります。
ザンギャックはやはり凄まじい底力を持っており、
遠からずこのような圧倒的な力に敗れる時はやってくる運命だったのです。
案外早くその時がやって来ただけのことだとマーベラスは悟り、
今こそアカレッドと同じような決断をすべき時だと覚悟を決めます。

つまり、ここで自分の夢を追う旅は終わりということです。
それは残念ではありましたが、仲間の夢を守れるのなら本望だと思い、未練を断ち切り
「・・・ちっ!・・・ここまでか・・・!」とマーベラスは呟きます。
後ろでマーベラスが何かを言ったことに気付き、何か対応策の指示かと思った鎧は
「ど・・・どうしたんですか?マーベラスさん!」と必死で問いかけますが、
マーベラスは「俺が残る!お前たちは脱出しろ!」と決然とした口調で言い切りました。

これには他の5人は呆気にとられ、ルカは「はぁ!?」と耳を疑います。
ハカセも「何言ってんのマーベラス!?」と、マーベラスの真意を測りかねて問い直します。
マーベラスやガレオンを置いて脱出などして今後どうするというのか?
全く話が見えませんでした。
しかしマーベラスは「いいから脱出しろ!!」と怒鳴りつけます。
あまりに一方的なマーベラスの物言いにアイムも「そんな!?」と反発しますが、
マーベラスは「・・・これは船長命令だ!!」と問答無用の態度で皆に脱出を命じます。

ゆっくり問答などしているヒマは無い。
早く皆を脱出させないと、すぐにもガレオンは爆発してしまうかもしれないし、
脱出装置だって、いつ使用不能になるか分からない状況なのです。
だからどんな手を使ってでも5人を脱出させなければいけない。
そして5人を安全な場所まで飛ばすためには自分がここに残って脱出誘導システムを操作しつつ、
抵抗し続けて敵の目を引き付けなければならないのです。

そのためには船長権限だって使ってやろうというマーベラスの姿勢でした。
海賊船においては船長の命令は絶対なのです。
しかし普段のマーベラスはグウタラ船長なので、皆に絶対的な命令を下しても説得力もあんまり無いし、
面倒臭いので、あまり強権的なことは言わず、皆の意見に流されてダラダラしたりしていることが多い。
それでマーベラス一味は上手く回っています。
しかし、ここは船長の権限で皆に従ってもらうしかないとマーベラスは思いました。

しかし、ジョーは「お前!!・・・こんな時だけ、都合が良すぎるだろ!!」と激怒します。
普段ダラダラしてばかりいるクセに、こんな時だけカッコつけるのは卑怯すぎる。
というより、この騙し討ちのようなマーベラスのやり方にジョーは腹が立って仕方なかった。
さっき鎧に「守る」ということについて質問されて何も答えなかったのは、こういうことだったのかと、
ジョーは今になって気付いたのでした。

マーベラスも自分と同じように、「守る」ということを命を捨てて仲間の夢を守ることだと心に決めていたのです。
考えてみれば、自分がシドに命を捨てて守られたのと同じように、
マーベラスもアカレッドに命を捨てて守られたのです。
ならば同じ結論に至っても当然といえました。
そう気付きつつも、ジョーはマーベラスに先手を打たれてしまったことが悔しく、
騙し討ちにあったような気分でした。
守ろうと思っていたのに、守ることは出来ずに、また守られてしまう。
また大切な仲間の命を捨てさせてしまう。それだけはもう嫌だとジョーは思いました。

一方、グレートワルズのコクピット内のワルズ・ギルはワルズギルティを放ちながら
「見ておられるか父上!?・・・見ているかダマラス!!」と陶酔したように叫びます。
あくまでワルズ・ギルの目に映る敵は目の前の海賊ではなく、自分の超えるべき父やダマラスでした。
海賊を討伐して地球を征服し、英雄となった自分は、父やダマラスを超えて、帝国を我が物として、
自分を裏切った父やダマラスを死ぬほど後悔させてやる。
その時になって、自分を愛さなかったことを懺悔させてやる。
そのための第一歩が今日なのだと思い、「俺はこいつらを倒す!!・・・喰らえ!!」と、
ワルズ・ギルはレバーを倒してワルズギルティの出力を最大にします。

これによって更に豪獣ゴーカイオーを強烈な高熱ビームが襲い、コクピットのあちこちが爆発を起こし、
6人は「うわあああ!?」と絶叫し、マーベラスはもはやこれ以上は猶予は無いと判断し、
「このぉ!!」と叫んで5人の席の強制脱出装置を作動させ、
5人は「うわあっ!?」という声を上げ、5つの光る玉となって
豪獣ゴーカイオーの外に強制排出されて飛んでいきます。

そのまま遠方まで一気に誘導されて飛ばされた5人は、3手に分かれて地上に不時着します。
ハカセとルカとアイムの3人はさっきの倉庫のあたりに不時着し、
鎧は何処かのビルの屋上に不時着し、
ジョーはどこかの道路の上に不時着し、「マーベラスの野郎・・・!」と悔しがって地面を叩きます。
3か所はバラバラで、お互いの場所は分かりません。

一方、豪獣ゴーカイオーのコクピットではマーベラスが1人で頑張って抵抗を続けており、
脱出した5人の方にグレートワルズの注意が向かないようにしています。
しかしワルズ・ギルは脱出した5人にはあまり興味も無いようで、
ひたすら豪獣ゴーカイオーを倒すことに必死です。
それも当然で、ワルズ・ギルにとってはグレートワルズが派手に海賊のロボを吹っ飛ばす映像を記録することが
政治的に大切なのであって、海賊の生き死になどどうでもいいことでした。

どうせこの圧倒的なグレートワルズの力があれば、
誰も自分の地球征服を邪魔することなど出来ないのだとワルズ・ギルは確信しているのでした。
そんなことより、とにかく今は派手に海賊ロボを倒すことだけが大切でした。
「しぶといっ!!」と怒鳴ってワルズ・ギルは更にワルズギルティを発射し続け、
遂に豪獣ゴーカイオーは大爆発し、マーベラスは「うわああああ!!」と絶叫し、
コクピットに上がる火柱に包まれます。

その大爆発を地上から見て、3か所に分かれた仲間5人は
「マーベラス!」「マーベラスさぁん!!」と口々に叫びます。
そうして、豪獣ゴーカイオーは吹っ飛びながらガレオンへと姿を戻していき、
そのまま遠くの山中に突っ込んで動かなくなってしまいました。
大爆発の中、マーベラスが果たして無事なのか不明ですが、
その方向に向けて5人の仲間は一斉に駆け出します。
とにかく一刻も早くガレオンに行ってマーベラスを助けなければいけない。
また、他の仲間とも合流しなければならない。

一方、ゴーカイジャーを破ったワルズ・ギルはグレートワルズのコクピットで
「ハッハッハッハ!!見たか!俺がワルズ・ギル!ザンギャックの次期皇帝だ!!」と高笑いして勝ち誇り、
これで父やダマラスを見返すことが出来ると自信を深めるのでした。
これで今回の前篇は終了し、次回の後編へと続きます。

なお、この本編終了直後、
なんと次回登場の「カンゼンゴーカイオー」という新合体ロボの玩具バレのCMが流れてしまいました。
そしてEDテーマと次回予告終了直後、「199ヒーロー大決戦」映画のDVDに関する告知も流れます。
このDVD、ちなみに本日我が家にも到着しました。
また機会があれば、これのレビューもしたいと思います。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 22:55 | Comment(1) | 第37話「最強の決戦機」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

第37話「最強の決戦機」感想その5

それから少し経った頃、再びゴーカイガレオンは錨を上げて、ゆっくり街の上空を飛んでいました。
そのガレオンのマストの見張り台では鎧が1人、ぽつんと柵にもたれて眼下の景色をしょんぼりして眺めていました。
鎧はマーベラスが「地球を守ってないし、守れてもいない」と言いながら、
じゃあマーベラスにとっての「守る」とはどういうことなのかという鎧の質問に答えられなかったことに
ショックを受けていました。

本当はマーベラスは答えられなかったわけではなく、答えなかっただけなのですが、
鎧には答えられずに逃げたように見えました。
つまり、マーベラスは地球をどうやったら守れるのか分かっていないのだと、鎧は思いました。
地球を守って戦っているはずのゴーカイジャーとしてはそれは由々しきことだと鎧は思ったのでした。
まぁ実際、マーベラスは地球を守る方法は分かってないどころか、
そもそも内心それは無理だと思っているのですから、鎧の危惧は的を射ているとはいえます。

しかし、鎧がこんなところで1人でしょんぼりしているのは、マーベラスのことだけが原因なのではありません。
船長のマーベラスが地球をどうやったら守れるのか分かっていないと言っているのに、
自分以外の全員、それが問題であるようには考えていないようなのです。
その温度差が感じられて、鎧はさっきの船室でも自分一人、「地球を守ってる」とか言ってはしゃいでいたが、
何か浮きまくっていたような気がしました。

鎧は最近ではマーベラス達5人も地球を守って戦うことを素晴らしいことだと
思うようになってくれているのだと思い込んでいたのですが、
もしかしたら、それは自分の勝手な思い込みであって、
地球を守って戦っていることを嬉しがっているのは自分だけであって、
他の皆は相変わらずそうでもなかったのかもしれないと思い、
そうすると強い疎外感を覚えて、船室に居づらくなり、
こうして見張り台で1人でしょんぼりと考え込んでいたのでした。

そこに誰かが見張り台に上がってきます。
それはジョーでした。「どうした?」と鎧に声をかけて、ジョーは鎧の上着を差し出します。
鎧が上着も着ないで見張り台に1人でいることに気付き、上着を持ってきてあげたのですが、
もちろん単に上着を届けるのが目的ではなく、
上着も持たずに見張り台に1人でいるということは鎧が何か塞ぎこんでいるのだと気付き、
気になってやって来たのです。

ジョーに声をかけられて鎧はビクッとして、振り向いて慌てて上着を受け取りながら
「あ・・・いやぁ、その・・・なんていうか・・・」と苦笑いしつつ言葉を濁します。
正直に自分だけ除け者のように感じたので1人になりたかったなどとは言いづらかったのです。

ジョーは鎧が何を落ち込んでいるのかイマイチよく分からなかったが、
鎧がマーベラスに「地球を守ってない」と言われて、
その後「守る」ということについて問答して、マーベラスがハッキリとした返事をせずに去っていった時、
鎧が戸惑っていたのを想い出して、そのことをまだ気にしているのかと思い、
「・・・マーベラスに言われたことを気にしているのか?」と問いかけます。

鎧は上着を羽織りながら、「まぁ・・・そんなとこです・・・」と歯切れの悪い口調で答えました。
本当は皆の態度の方が気になっているのですが、
確かに、もとはといえばマーベラスが「地球を守ってない」とか言い出したことが原因だと思いました。
そして、自分はマーベラスの話を変だと思ったのに、他の皆は変だと思っていないから、
だから自分と他の皆との間に溝があるように感じられたのだと気付きました。
つまり他の皆から見ればマーベラスよりも自分の方が変に見えるのだろう。
ならば、皆から見て自分がどう変に見えるのかを聞けば、この疎外感の原因が分かるかもしれないと思い、
鎧は「俺、なんか変なこと言っちゃいましたかね?」とジョーに尋ねます。

マーベラスに自分が言ったことが皆から見て変だったというのなら、
それがどう変であったのか教えて貰いたいという意図で鎧は言ったのですが、
ジョーは鎧がマーベラスの言ったことが納得がいかないという抗議の意味で言ってきていると解釈して、
マーベラスがどう考えて鎧にああいうことを言ったのか説明してやろうとして、
少しマーベラスの心情を想像しつつ、
「お前も知っているだろう・・・あいつが赤き海賊団に居た時のことを・・・」と語り始めます。

鎧は「はい・・・ドンさんから聞きました・・・」と応えます。
マーベラスが赤き海賊団の時の想い出を仲間に語ったのは、第15話のバスコ登場篇の時だけであり、
あの時点ではまだ鎧は仲間になっていない。
だからマーベラスは鎧に直接、赤き海賊団の壊滅の時の話はしていないのです。
一応、鎧はハカセから又聞きの形ではその話は聞いているようですが、
やはり直接本人から聞くのとでは実感が全然違うものです。

そう考えるとジョーは、そういえば自分達は鎧に自分達の宇宙での想い出話など
ほとんどしたことがないことに気付きました。
特にマーベラス一味に入る前の話などは元の5人の仲間内でもほとんどしていません。
大抵のことは特別に秘密にしなければいけない事情があるわけではない。
しかし、碌でもない嫌な想い出ばかりなので、あまり口にしたくなかったのです。
宇宙から来た元の5人はお互いそういう境遇であることはだいたい分かっているから、
あえて過去の話には踏み込まないようにしていたし、
お互いの過去の話などしなくても、宇宙でどういうことが起きているのかは十分に分かっていました。

しかし、そのノリのまんま皆が鎧と接して、自分の宇宙での悲惨な経験の話をしなかったため、
もともとザンギャック支配下の宇宙の現実をよく知らなかった鎧は、
宇宙の現実を知らないままでここまで来てしまい、
宇宙で育った自分達とは物事の見方にズレが生じてしまっているのだということにジョーは気付きました。
それで鎧が1人だけ落ち込んでいるのだと気付いたジョーは、
ならばこの際、ちゃんと宇宙の現実を教えてやらねばならないと思いました。

まずジョーはマーベラスがどうして鎧に「地球を守ってない」などと言ったのか、
その心情を説明するために赤き海賊団の壊滅事件のことに言及しようとしています。
というか、ジョーが知るマーベラスの過去というのは、赤き海賊団の話だけ、
しかも詳しく知っているのはその壊滅事件のあらましだけなので、
そこからマーベラスの心情を推察するしか術は無いのです。

「船長のアカレッドは・・・マーベラスを守るためにザンギャックと戦って命を失った・・・」と
ジョーはゆっくり言葉を噛みしめ、
「・・・はい・・・」と素直に聞く鎧に向かって語りながら考えます。
そして、アカレッドが、自分を庇って死んだシドと同じであり、
自分を守るために恩人が死んでしまったという点で自分とマーベラスが同じだと気付きました。

あのシドが捕らわれてバリゾーグに改造されて実質的に殺されてしまうきっかけになったのは
ジョーが異星の子供たちを守ろうとしたことでした。
ジョーはあの時、子供を守ることが正しいと信じて、素直に正しいことをしただけだった。
しかし、その結果、自分は死にかけて、代わりにシドが自分を守ってくれて命を落とした。
もちろん今でもジョーは子供を守ることが間違っていたとは思っていないが、
それでも、あの時、ジョーはザンギャックから何かを「守る」ということは
ザンギャック支配下の宇宙では命と引き換えにしなければ出来ない過酷な行為なのだということを
嫌と言うほど実感させられた。

あの時の苦々しい気持ちを想い出したジョーは、
きっとマーベラスも同じ実感を味わったのだろうと思いました。
命と引き換えにするということは、命が1つである以上、1度しかその機会は無いということです。
だからよほどの時でないと「守る」なんて気軽に約束出来るわけはない。
死ぬことが怖いというより、たった1度のチャンスをそれに使ってしまっていいのか迷いが生じるのが
1つの命しか持たない人間ならば当たり前だからです。
ザンギャックから何かを「守る」というのはザンギャック支配下の宇宙ではそれぐらい重いことなのです。
その重い決断をしたシドの姿を目の当たりにした自分と同じ想いを、
マーベラスもアカレッドの重い決断を見た時にしたに違いない。
「・・・だから、簡単に守るなんて言えないんだろう・・・」とジョーはマーベラスの気持ちを想像して、
眼下に流れていく景色を見ながら言います。

マーベラスは軽々しく「守る」などとは言えなかったから、ああいう言い方をしたのだとジョーに説明されて、
鎧は確かにあの時、自分はマーベラスをからかうような軽い口調で
「守っている」などと言っていたことに思い至り、身を固くします。
続けてジョーは「ザンギャックに連戦連勝していた赤き海賊団も、アカレッドも・・・
最終的にはザンギャックに負けたんだ・・・!」と言って鎧の方に振り向くと、その目を見つめます。
鎧は「負けた」というジョーの言葉を聞き、思わず目を伏せます。

マーベラスは大切な人を守れなかったのです。
逆に大切な人の命に捨ててもらって守られてしまった人なのであり、そのことで深く傷ついている人だった。
そのことを自分はハカセから聞いて知っていたはずなのに、
あんなに無神経にマーベラスに向かって軽々しい言い方で「守ってくれている」などと囃し立ててしまった。
その自分の無神経がどれほどマーベラスを傷つけてしまったことだろうかと、鎧は自分が恥ずかしくなりました。

そしてジョーは再び前を向いて「・・・ルカや、ハカセや、アイムの星も同じだ・・・
今までザンギャックと戦って・・・勝ったヤツは誰もいない・・・!」と固い表情で言います。
鎧はハッとした顔でジョーの方を見ます。
他の皆もマーベラスと同じ境遇なのだと初めて知ったのでした。
ジョーはあえて自分のことは言いませんでしたが、「勝ったヤツは誰もいない」と言った時点で、
自分もその敗北者の一人だったのだと告白しているに等しいのです。

つまり、鎧は自分以外の仲間は皆、
自分の星をはじめ、大切なものを守ることが出来ずに負けてしまった人達だったと初めて知ったのでした。
そんな人達が見知らぬ星である地球を守って戦ってくれているというのは、鎧には分からない重みがあることでした。
そして全員がザンギャックから何かを守るということの困難をよく知っている。
何せ、今まで宇宙で誰もそれに成功した者などいないからです。
だから、地球を守るために戦ってはいるけれど、本当は皆、守りきる自信など無いのです。
どうやって守っていいのかも分かっていない。
そんな便利な方法が分かっていたら、まず真っ先に自分の星を守ったはずです。

そんな自信の無い状態で、地球人の鎧に向かって「俺たちが地球を守ってやる」などと胸を張って言えるわけがない。
そんな安請け合いをして後で落胆させたくはないのです。
それなのに、自分は「守ってくれてますよ」とか「俺は嬉しいですよ」とか、軽々しいことを言って、
皆を精神的に追い詰め、その挙句「守る」とはどういうことなのかなどという、
皆にとって一番の難問を突き付けてしまった。
そう思うと鎧は申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。

皆に「守る」ということの意味など分かるわけがない。
いくら守りたいと思っても、ザンギャックから何も守れたことなどないのだから。
いや、もし「守る」ということのマーベラス達にとっての意味を一言で表現するなら、
それは「絶望」や「不可能」だと、鎧は思い、やりきれない気持ちになりました。

いや、自分だって「守る」ということの意味をマーベラスに問われた時、まともに答えられなかった。
自分だってザンギャックから自分の星を守りきったことなど無いという点では皆と同じなのだと鎧は気付きました。
そして、皆の絶望を知った今、鎧の心にもザンギャックと戦って地球を守るということの
絶望感が覆いかぶさってきます。

そうしてジョーを潤んだ目で見つめる鎧の姿を横目で見ながら、
ジョーは鎧に皆の考え方を説明するためとはいえ、かなり鎧に残酷なことを言ってしまっていることに気付きました。
自分達は既に自分の星を失った身だから開き直れる部分はある。
しかし、鎧は今まさに自分の星を守ろうとして踏ん張っているのです。
その鎧に向かってこんな未来を絶望させるような話をして本当によかったのだろうかとジョーは戸惑いました。

しかし、もう言ってしまったものは仕方がない。
これが現実なのであり、鎧に現実を受け止める強さがあることを期待するしかない。
そう思ってジョーは「だから・・・ザンギャックから地球を守るっていうのは・・・
宇宙最大のお宝を見つけるのと同じぐらい・・・難しいかもしれない・・・!」とキッパリと言って、
鎧の方に再び向き直り、じっと鎧を見つめます。

すると鎧は俯いたまま「・・・それでも・・・」と言います。
この宇宙を覆う絶望的な現実すら知らず軽口を叩いていたような愚かな自分ではありましたが、
それでもその絶望に負けてしまうわけにはいかないと思ったのです。
自分は宇宙の現実も、戦いの本質も、守ることの何たるかも知らない、
ただのスーパー戦隊に憧れるだけのミーハーな男かもしれないが、
そんな自分でもマーベラス一味に入ってから、実際にレジェンド戦士の人達に出会って、
様々な想いを受け取ってきた。

「自分が地球を守りたい」と心の底から言った自分だからこそ、
黒騎士ヒュウガから地球を守る使命を託されたのであるし、
リュウレンジャーの亮からは、
どんなに絶望的な状況でも人を守りたいという気持ちを持ち続けるのがヒーローだと教わった。

そう、どんな絶望の中でも希望や夢は捨てたくはない。
マーベラス達だって、どんなに困難でも「宇宙最大のお宝」という夢を捨てはしなかった。
自分にとっての夢は「地球を守るヒーローになること」なのです。
自分もマーベラス一味の仲間である以上、どんな絶望の中でも夢は諦めない。
だから、たとえ絶望的だと分かっていても、地球を守りたいという気持ちは絶対に諦めない。
そう心に決めると、鎧は顔を上げてキッとジョーを睨むと
「だとしても!・・・俺は守ってみせます!絶対に!!」と強く言い切ったのでした。

するとジョーはフッと微笑んで、前を向くと「・・・お前らしいな!」と清々しく言うのでした。
鎧が絶望的な宇宙の現実をただ受け止めるだけではなく、それを跳ね返すような強い意思を示したのが、
ジョーは嬉しく思いました。
そんな強がりを言ったところで絶望的な状況が変わるわけではないが、
最初に鎧の仲間入りを認めた時から、
この不思議なほどの鎧の逆境の時ほど希望を示そうとする奇妙な反発力がジョーは好きでした。
それが実に鎧らしいと思えたのです。

いや、地球人には皆そういう傾向があるのかもしれない。
それが地球にスーパー戦隊というヒーロー達が存在して、
今まで彼らによって守られていたことと関係があるのかもしれないと、ジョーはふと思いました。

ところがその時、いきなり大きな衝撃が見張り台を襲い、ジョーと鎧の身体を大きく揺さぶりました。
いや、見張り台だけではなく、ガレオン全体が大きく振動しています。
しかも多数の爆発音と何かが飛来する音が響きわたっており、何処からかガレオンが砲撃されているようでした。

慌てて下を見た鎧は「あれは・・・!?」と左斜め前方の地上から砲弾が飛んできており、
その発射元と思われる倉庫の脇の地点に多数の人影があるのを発見します。
それはザンギャック部隊で、ゴーミンやスゴーミン達を従えてバリゾーグが
「見つけたぞ」とガレオンを見上げて、どんどん部下たちにガレオンを攻撃させています。
ワルズ・ギルにマーベラス一味を探し出すよう命令されたバリゾーグが、遂にガレオンを発見し、
マーベラス一味を引っ張り出すために攻撃してきているのです。

見張り台からバリゾーグの姿を確認したジョーは「・・・バリゾーグ!」と呻きます。
鎧もザンギャックの攻撃だと悟り、
「ザンギャック!・・・ジョーさん、どうしましょう?」とジョーに判断を仰ぎます。
このまま更に高度を上げて逃げようと思えば逃げられる。
別にバリゾーグ部隊は一般人を襲っているわけではなく、自分達と戦おうとしているだけのようでした。
ならば、別に必ず戦いに応じなければならないわけでもない。

しかしジョーはバリゾーグを睨みつけて「・・・みんなを呼べ・・・」と鎧に指示します。
今さっき、ザンギャックが無敵であり自分達はザンギャックに勝つ自信が無いということを鎧に告白し、
それでも鎧が戦うという気持ちを返してくれた以上、
ここでザンギャックに挑まれた勝負から逃げるわけにはいかない。

それに、見たところバリゾーグ以外は雑魚ばかりのようです。
つまり、ジョーとバリゾーグの勝負に余計な邪魔が入る要素は少ない。
ならば、今こそ好機だとジョーは思いました。
シドの身体を使って宇宙の自由や希望を踏み躙るバリゾーグを我が手で倒し、
シドの魂をその過ちによる苦しみから救済することが出来るかもしれない。
そう考えて、ジョーは静かに闘志を燃やします。

そうしてマーベラス一味の6人は地上に降り立ち、倉庫脇でバリゾーグ率いる部隊の前に立ちはだかります。
「来たか・・・海賊ども」と言うバリゾーグの姿を見て、
アイムは「あれは・・・ジョーさんの先輩だった・・・」と、少し戸惑います。
「バリゾーグ・・・!」と、ルカもじっとバリゾーグを睨みつけますが、単なる敵を見るよりも厳しい顔です。

バリゾーグがジョーの先輩のシドという男の改造された姿であるということは、
ジョーは仲間にいちいち説明はしていません。
しかし第30話のライブマン篇の時のジョーの言動によって、仲間たちは大体の事情は察しており、
ジョーも仲間たちが事情を察していることは分かっています。
つまり、もはやバリゾーグを元に戻すことも、シドの記憶を取り戻すことも出来ないということは皆、
分かっているのです。
ただ、そのバリゾーグに対してジョーが今後どう対処するつもりであるのかは皆には分かっていません。
だから皆、飛び降りてきてみると相手がバリゾーグであり、
バリゾーグとジョーが対峙する状況となったことに少し驚いていました。

実は前回のガイアークとの戦いの際にもバリゾーグはいたのであり、
ジョーはバリゾーグの姿を見て決着をつける勝負の決意を固めていたのですが、
あの時はザンギャックの幹部たちはすぐに撤収してしまったので勝負は実現せず、
ジョー以外の他の仲間たちはあの時は主敵のガイアークの方に気が集中していたので、
ジョーとバリゾーグの因縁のことにまで気が回っていませんでした。

しかし今回は、相手は実質的にはバリゾーグ1人と言ってもいい状況です。
そうなるとジョーがいったいどうするつもりなのか気になって、
アイムはジョーがかつての先輩と戦うというようなことがあってもいいものだろうかと動揺し、
ルカは逆に、ジョーが降りて戦うことを選んだということは覚悟を決めてのことだと悟り、
その重い決断を受け止める表情となっているのです。

そしてジョーはバリゾーグを睨みつけながら「バリゾーグは俺がやる・・・他の連中は任せてもいいか?」と、
有無を言わせぬ低い声でマーベラスに言います。
マーベラスはジョーがライブマン篇の時に言っていた「悲劇を繰り返させん」というのは、
すなわち一騎打ちでバリゾーグを倒すことで
改造されて元には戻れないシドの悲劇に自分の手で終止符を打つことなのだと悟り、
そのお膳立てを整えるために雑魚の相手をさせられることに
「仕方ねぇ!・・・そのかわり、さっさと終わらせろよ!」と応じて、レンジャーキーを取り出します。

そして6人は「豪快チェンジ!!」と、ゴーカイジャーに変身し、名乗りを上げます。
名乗りが終わると「ジョーさん!」とアイムは自分のゴーカイサーベルをジョーに投げて寄越します。
アイムはジョーが第4話の時にこだわっていた剣の師匠が今はバリゾーグに改造された、そのシド先輩なのだと悟り、
この悲しい師弟対決が避けられないのなら、せめてあの時ジョーが師匠の名誉のためにこだわっていた
二刀流で勝負をつけさせてあげたいと思ったのでした。
ジョーもその気遣いに感謝しつつ、既に勝負に集中する態勢に入っているため、
黙ってアイムのゴーカイサーベルを受け取ると、代わりに自分のゴーカイガンをアイムに投げて寄越します。

そして「よっしゃあ!派手にいくぜぇ!!」とマーベラスが号令をかけて6人はバリゾーグ部隊に向けて突撃し、
バリゾーグもゴーミン達を率いて突っ込んできて、両者は激突し、乱戦となります。
打ち合わせ通り、ジョーはバリゾーグに向かっていき、
マーベラス達5人はゴーミン達がジョーとバリゾーグのサシの勝負を邪魔できないように、
ゴーミン達をひきつけて派手に立ち回りを演じます。

一方、ジョーはバリゾーグを一騎打ちの状況に誘い込むために、
わざとバリゾーグの攻撃に押されているように受けに徹して後退を重ねて、倉庫の中に転がり込んでいきます。
それを追って倉庫の中に入ってきたバリゾーグを見て、
ジョーはこれでようやく完全に誰の邪魔も入らない一騎打ちの状況に持ち込めたと判断して、
突如攻勢に転じて、バリゾーグに斬りかかり、両者は激しく剣と剣を叩きつけ合って斬り合います。
ここの両者の動きはチャンバラアクションとして実に素晴らしいレベルで、観ている方も一気に盛り上がってきます。

ところで、何故、洋の東西を問わず、剣のアクションというのは人を魅了するのか?
もちろんリアルな剣を使った殺し合いではなく、映画やテレビなどでの剣のアクションのことですが。
それは人間の繊細な動きが一瞬で勝負を決するほどの大きなパワーを生むからでしょう。
肉弾戦はダメージの積み重ねを描写しないといけないので、あまり単純明快な描写にならない。
かといって機関銃や爆弾など、機械に頼りすぎると人間同士の勝負という描き方が難しくなります。
それに肉弾戦だと体格差、機械化戦だと武器の差などで、勝負の公平性が無くなって、
結局は肉体的な強さや武器の性能の差で勝敗が決したように見えてしまう。

その点、剣のアクションが良いのは、
対峙し合った者同士の精神力の差がそのまま勝負を決するような描き方がしやすくて、
アクションシーンを通して人間ドラマを描きやすいことです。
前々回のガンマンワールドで描かれたような拳銃の早撃ち勝負なども
剣のアクションとそうした特性では似ていますが、
剣のアクションの方が様々なバリエーションで人間ドラマを描けるという点でより優れているといえます。
まぁそういうわけで、この剣豪同士のジョーとバリゾーグの勝負は、
まさにここまで人間ドラマとして描写されてきました。

最初に両者が対峙したのは第11話の時でした。
あの時は最初はバリゾーグの正体を知らなかったジョーはバリゾーグと互角の勝負をしていたが、
バリゾーグがシドの円月剣のような必殺剣を使ったことで動揺したジョーが
まともに技を喰らって変身解除してしまい完敗し、
その後はバリゾーグの正体を知って放心状態となりバリゾーグになす術もなく斬られそうになって
マーベラスに救われました。
そして第2戦はその直後の第12話、
バリゾーグの中のシドの記憶を取り戻そうとしてジョーはバリゾーグ目がけて円月剣を放ちましたが、
バリゾーグはこれを簡単に剣で受け流して破り、去っていきました。

まず第11話の時は、ジョーはバリゾーグがシドだと気付いた時点で戦意を喪失してしまっており、
一方のバリゾーグはワルズ・ギルを守るために本気で戦っていたため、
そのためバリゾーグの一方的な勝利となり、ジョーはマーベラスに助けられなければ死んでいるところでした。
しかし第12話になると少し状況は変わっており、
ジョーはシドの記憶を取り戻すためにショック療法のように円月剣をバリゾーグ目がけて放ちますが、
これは殺気の欠けた攻撃であり、あくまでフルパワーではありません。
それゆえバリゾーグに防がれてしまったのですが、
バリゾーグもこの時は剣を拾いに来ただけであり、
ワルズ・ギルにジョーを殺すように命じられていたわけではないので、ほとんど戦意を示していませんでした。

しかしこの時、バリゾーグはジョーの円月剣にだけは反応して対応しており、
そうでなければたとえフルパワーでなかったとはいえジョーの円月剣を防ぐことは出来なかったでしょう。
そして円月剣を破った後はバリゾーグは再びジョー相手に無関心となり、トドメを刺すこともなく去っていきました。
つまり、この時点ではジョーはバリゾーグを殺さずにシドに戻そうとして強い関心を示しているが、
バリゾーグの方はあくまでワルズ・ギルにしか関心が無いといえます。

しかし円月剣だけは別で、ジョーが円月剣を使うと反応して戦おうとしますが、
その威力が大したことがないと分かると興味を失っています。
しかしバリゾーグはシドとしての記憶は無く、剣の技だけがシドから受け継がれている状態です。
だから、おそらくこの円月剣という技そのものによほど深い意味があったので、
バリゾーグの中でもこの技だけは特別な技として認識してしまうようです。

それは心の動きというほどのものではない。
そもそもバリゾーグに心など無い。
それはバリゾーグなりの特別な最強の剣なのであり、正義を執行する剣なのでしょう。
だから、それを他人が使うというのはバリゾーグにとって脅威なのでしょう。
だからジョーがその構えをした時、脅威を感じてバリゾーグは迎撃し、
受けてみると大した威力ではなかったので安心して再びジョーを無視したのでしょう。

と考えると、どうしてジョーがこの円月剣を喰らわせることでシドに記憶を刺激出来ると考えたのかも
何となく分かってきます。
第11話の回想シーンでザンギャックの兵士養成所でジョーとシドが2人きりでいる場所で
シドがこの技を披露している描写がありましたが、
どうもこの技は2人にとって特別の意味があったようです。
おそらく2人が養成所時代に共に信じた正義を執行するための特別な最強技として、
この技を2人で極めたのでしょう。
つまり、2人の正義の戦いを共に遂行する同志の絆の象徴であったのでしょう。
その正義はおそらく宇宙の人々の夢を守ることであったと思われます。

しかしザンギャック軍の実態はその反対であり、宇宙の夢を見る自由を圧殺するものでした。
それゆえ2人は脱走しましたが、シドは捕らわれ、
ワルズ・ギルによって記憶を奪われてバリゾーグへと改造されて、
その正義を執行するための技は、ザンギャックの正義、ワルズ・ギルの正義を執行するための技として
意味を捻じ曲げられてしまいました。
そのシドの変わり果てた姿を見たジョーは、その技を本来の意味で喰らわせることで
シドの記憶を呼び覚ますことが出来ると考えたのでしょう。

しかし実際はジョーは本来の使い方は出来ていないのです。
自らの信じる正義の執行のために技を放ったのならば、
それはザンギャックの悪を撃つ技でなければならないはずです。
しかしジョーはバリゾーグを倒すのではなく、シドを救いたいという気持ちだけで撃っていました。
改造前のシド自身ならば、そんな中途半端な気持ちで円月剣を放つことはなかったでしょうから、
そんな剣ではバリゾーグに通用するはずもなく、
バリゾーグに大した脅威を感じさせることもなかったのでした。

ただ、バリゾーグがこうして全くジョーに無関心となったことで、
さすがにジョーもバリゾーグの中にシドの記憶は無いと悟り、バリゾーグへの興味を失いました。
そうして第3戦目は「199ヒーロー大決戦」映画の時(第16話と第17話の間)、
第4戦目は第26話に巡ってきましたが、
これらの時はジョーは既にバリゾーグへの特別な興味は失っており、
バリゾーグはワルズ・ギルから特にジョーやマーベラス一味の抹殺命令を受けていたわけではないので、
一騎打ちになったわけでもなく、普通に「戦隊VS怪人」として戦っただけでした。

しかし第30話の際にジョーはバリゾーグの設計図が手に入ったことから再びシドの記憶を取り戻そうとしますが
元イエローライオンの大原丈によってそれが無理だと宣告され、
過ちを繰り返させないようにすることでシドの魂だけでも救われるということを示唆され、
ザンギャックを倒してシドのような悲劇の連鎖を断ち切ることが
シドの目指した正義に通じるということを悟りました。

そうして、かつてシドと絆で結ばれた正義の心を取り戻したジョーは、
昔のシドと同じ威力の円月剣を放ち、
シドを改造した科学者怪人であるザイエンを葬り去りました。
その模様をギガントホースのモニターで見ていたバリゾーグは、
ジョーの円月剣に以前とは違う明確な脅威を感じとり、注目したのでした。

こうして第30話を境に、ジョーはシドの魂を救うためにバリゾーグを倒すことを誓い、
バリゾーグは自分の正義を脅かす潜在的な脅威としてジョーを意識するようになりました。
そうして第36話において両者は対峙することになりましたが、
あくまでバリゾーグはワルズ・ギルの命令に従うのが第一ですから、
ワルズ・ギルの撤退命令に従い撤退し、2人の対決は実現しませんでした。

そして今回の一騎打ちということになったわけですが、
確かに互角のように見えて、しかし少々バリゾーグが押し気味となります。
バリゾーグはジョーのことを自分の信じる正義を脅かす脅威と認識して目障りだと感じており、
しかも今回はワルズ・ギルが海賊抹殺のための作戦を発令していますから、
心置きなくジョーを抹殺する気で剣を振るっています。

しかし一方のジョーは少し躊躇があります。
さっきの船室での「守る」ということについての問答や、見張り台での鎧との会話の際に、
シドがかつて命を捨てて自分を守ってくれたことを改めて想い出して、
ジョーの剣先には自分のせいでバリゾーグとなったシドの身体に対して、
本気で殺すつもりで斬りかかることに僅かばかりの躊躇が生じていたのでした。
その僅かの剣先の鈍りの分、バリゾーグの本気の剣に対して遅れが生じて、
ジョーはじりじりと押し込まれていきました。

これではいけないと思い、ジョーはバリゾーグの剣を肩で受けて跪いた姿勢から
「シド先輩!・・・俺は貴方の記憶を取り戻そうと考えていた・・・」と言いつつ、ゆっくり立ち上がりました。
バリゾーグの中に無意識にシドを感じてしまって剣先が鈍っているのなら、
バリゾーグを見るのではなく、あえてシドに語りかけ、シドに決別することで吹っ切ることにしたのでした。

そうしてジョーはバリゾーグの剣を弾き返し、バリゾーグを睨みつけながら
「だが、それが不可能ならば!・・・俺は貴方に語る言葉を持たない!」と怒鳴ります。
それは自分の中に僅かに残ったシドを殺したくないという想いへの決別の言葉でした。
そしてジョーは剣を構え、「この刃こそが・・・俺の・・・言葉だっ!!」と叫ぶと、
渾身の一撃をバリゾーグに叩き込みます。

ジョーは当初は必死で呼びかけて記憶を取り戻すことでシドの魂を救いたいと思っていた。
しかし、それが無理ならば、自分の刃でバリゾーグを倒すことによってシドの魂を救うしかない。
言葉で呼びかける代わりに剣で殺すことによって魂を救うのです。
目的は魂を救うという点で同じなのだから、つまり、シドの魂の救済という目的に関して言えば、
言葉も剣も同じであり、刃は言葉なのです。

しかし、この本気で殺すつもりになったジョーの剣をバリゾーグも受け止めます。
そして「フン!剣などで誰と語らうつもりだ?・・・あいにく私の刃に言葉など無い!」と言うと、
ジョーの剣を弾き返して、反撃してきます。
そしてこれを受け止めたジョーに対してバリゾーグは
「・・・あるのは、ワルズ・ギル様への忠義のみ・・・!」と言うと猛然と攻撃に転じます。

ジョーの剣はバリゾーグを本気で殺すつもりの剣となったが、
それはあくまで本気でシドの魂に向き合う剣です。
しかしバリゾーグの剣は本気でジョーを殺そうとする剣だが、ジョーの魂とは向き合っていない。
そこにはワルズ・ギルへの忠義しかありません。
ジョーに対する殺意も、自分の「ワルズ・ギルのためだけに剣を振るう」という正義とは別の何かのために
自分の正義の必殺剣を同じ威力で使うジョーの存在が許せないからでした。
結局はバリゾーグにとってはワルズ・ギルこそが絶対正義なのであって、
バリゾーグはジョーの方を向いているわけではなく、ワルズ・ギルの方にしか向いていないのです。

もちろん、それは偽物の忠義、捏造された忠義です。
しかし、どんなに嘘でも、バリゾーグにとってはそれは間違いなく真実なのです。
だからバリゾーグの剣にも一切の迷いは無い。
それゆえジョーの本気になった攻撃を受け止め反撃に転じることも出来る。

が、ジョーもまた、その嘘によって作り上げられたバリゾーグの本気という悲劇に終止符を打てるのは、
バリゾーグの死だけだと分かっていますから、こちらももう全く迷いは無い。
それゆえバリゾーグの猛攻を受けて、ジョーは更に反撃に転じて、
こうして両者は更に激しくぶつかり合うのでした。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 01:12 | Comment(0) | 第37話「最強の決戦機」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月20日

第37話「最強の決戦機」感想その4

さて、一方、ギガントホースの指令室ではワルズ・ギルが幹部連中を集めた前で
「いいか!グレートワルズがある今!」と言って司令官の席からぴょんと飛び降りると、
指令室の中央まで進み出て「海賊なんぞ虫けら以下の存在に過ぎん!奴らを強制排除する!!」と堂々と宣言します。
父親の皇帝から最強の決戦機グレートワルズが届けられた途端、急に強気になっています。
それほどグレートワルズは圧倒的に強いようで、こうなれば細々した作戦も無く、
マーベラス一味を見つけてグレートワルズで倒すというシンプルな作戦でいくようです。

幹部一同、その作戦に異論は無いようです。
こんな辺境の戦いにわざわざ帝国の秘密兵器のグレートワルズを送ってくる皇帝の親バカぶりには呆れたダマラスも、
まぁそれでも手の打ちようがなくなっていたマーベラス一味をこれで簡単に倒せるのは確かであるし、
グレートワルズでマーベラス一味を倒す作戦そのものは賛成でした。
バリゾーグに異論があるはずもなく、
もちろん、すっかりグレートワルズが気に入ったインサーンも異論は無い。

が、インサーンは1つだけ確認しておかねばいけないことがありました。
インサーンは「・・・では、誰に出撃を?」とワルズ・ギルに確認します。
つまり、グレートワルズはゴーカイオー同様、搭乗型の巨大ロボなのです。
だから操縦者が乗らないと戦えない。
そして、その操縦者を誰に命じるのか、その肝心の指示がワルズ・ギルから出ていないのです。

すると、ワルズ・ギルはインサーンの方に振り向いて、
なんと「決まっているだろう!俺自ら行く!」と言うのです。
この意表を突いた言葉に一同は仰天しました。
司令官のワルズ・ギルが自らグレートワルズに乗り込んでマーベラス一味を討伐するというのです。
何故そんなことをしなければいけないのか、幹部一同、意味が分かりませんでした。

普通に巨大ロボの操縦に長けた行動隊長を行かせればいいはずです。
それでワルズ・ギルの司令官としての名声に傷がつくなどということはない。
部下を上手く使うのが司令官の求められる能力であって、
自ら戦って武勲を上げる能力など、無くても何の支障もありません。
自ら海賊を討ち取ったからといって、ワルズ・ギルの司令官としての評価が高まるなどということはないのです。
だから、そんなことは全くする必要は無い。

それでも勇将型の司令官の場合、闘争本能が抑えきれずに自ら出撃するタイプもいないことはない。
が、ワルズ・ギルはおよそそういう勇将タイプとは対極に位置するタイプの司令官であったはずです。
むしろ臆病な男のはず。
それが自ら出撃など、全く予想外の展開に混乱したダマラスは、
慌てて「ううっ!・・・殿下!お待ちください!」とワルズ・ギルに駆け寄り、
「確かにグレートワルズは最強の決戦機!・・・しかし、司令官自らが出撃など、常軌を逸しております!!」
と思わず声を荒げて諫言したのでした。

ダマラスがワルズ・ギルの出撃に反対の理由は、
まず司令官自らが出撃する意義が感じられないことが第一の理由でしたが、
ワルズ・ギルの身を案じてという側面もあります。
グレートワルズはザンギャックの科学の粋を集めて作られた究極の決戦機ですから、
誰が操縦してもマーベラス一味のロボを圧倒する能力を発揮することは出来るはずです。
だから戦士としては使い物にならないワルズ・ギルでもグレートワルズを操縦すれば
マーベラス一味を倒すことは出来るでしょう。

しかし、それでもワルズ・ギルではグレートワルズの全ての能力を引き出すことは出来ない。
ならば万が一ということも有り得るのです。
戦場は何が起きるか分からないから、万全の状態で戦うように態勢を整えるのがベストです。
ここはやはり操縦者はワルズ・ギルではなく、ロボの操縦に長けた者の方が安全です。
グレートワルズは1人乗りのロボですから、ワルズ・ギルが搭乗すれば、
ワルズ・ギルを戦場に1人で放り出すことになってしまう。
それでもし不測の事態が生じれば帝国の一大事です。

ワルズ・ギルは本来は血を見ても怯えるような臆病な男ですから、
戦場の危険を覚悟の上で出撃するなどということは有り得ない。
おそらくグレートワルズの能力と自分の能力を過信して、絶対に大丈夫だと思って行こうとしているのでしょうが、
それは戦場を甘く見た軽挙妄動だとダマラスは思いました。

いや、それでも臆病者のワルズ・ギルは危険がゼロとまでは思っていないはずですから、
いつもなら自ら出撃しようなどとは言い出さないはずです。
そもそも司令官が自ら出撃する意味など無いし、そんなことをしても司令官として評価されるわけでもない。
いつも指令室でふんぞり返っているワルズ・ギルは、ある意味、そういうことは熟知しているはずです。
だから、こんな常軌を逸したことをする必要は無いし、そもそも普段のワルズ・ギルらしくない行動です。
ダマラスがワルズ・ギルのことを気でも狂ったのかと勘繰ってもやむをえないといえます。

しかし、そうはいっても皇帝の息子に面と向かって「常軌を逸している」は、
いくら慌てていたとはいえ、ちょっと言葉が過ぎるでしょう。
これはまたワルズ・ギルに「失礼なことを言うな!」と一喝されても仕方ない状況です。
ところが、ワルズ・ギルは意外にもダマラスの言うことを否定はせず、
苛立ちを爆発させるように「・・・常軌でも何でも逸してやるさ!!」と大声で怒鳴り返したのでした。

つまりワルズ・ギルは自分が自ら出撃することが司令官の行動として常軌を逸していることは自覚しているのです。
自覚していて、あえてそれをやろうとしているわけですから、
常軌を逸してでもそれをやらねばいけない理由があるということでしょう。
そして、その理由が常軌を逸している理由だから、自分のことを常軌を逸していると言っているのであり、
つまりはワルズ・ギルは自分は常軌を逸する必要があるとまで思っているようなのです。

ただ、それはあくまで中途半端ではあります。
何故なら、ワルズ・ギルはどのような局面でもそんなことを言い出しているわけではないからです。
普段から自ら出撃することにこだわる性癖があるのならば、
常軌を逸脱した司令官キャラとして一貫しているから、それはそれで説得力は有るのですが、
結局ワルズ・ギルはグレートワルズという戦場で自分を絶対的に守ってくれる安全装置が手に入った途端、
急に常軌を逸したことを安心して言い出したようにしか見えません。

おそらくワルズ・ギルは自分には司令官が自ら出撃するような常軌を逸した行動が必要だと
普段から何か思い詰めるものがあったのですが、
臆病者なので常軌を逸した行動にずっと踏み出せなかったのでしょう。
それがグレートワルズが手に入ったことでタガが外れたようです。
ではワルズ・ギルは何をそんなに思い詰めていたのか?

ワルズ・ギルはダマラスを睨みつけて
「俺を舐めるなよダマラス!・・・お前は俺を無能なバカ息子だと思っているのだろう?」と言って、
ダマラスに背を向けて数歩、歩きます。
ワルズ・ギルはダマラスが自分の出撃に反対するのは
グレートワルズを十分に使いこなせない無能だと思っているからだと見抜いているのです。
そして舐めて見下しているのだと決めつけています。

ワルズ・ギルに心の中を見透かされるとは予想していなかったダマラスは一瞬狼狽えますが、
すぐに慌てて「・・・滅相もない!!」と強く否定します。
確かに軍人として無能だとは思っているが、バカ息子だとまでは思っていないし、舐めてなどいないのです。
ところがワルズ・ギルはゆっくりダマラスの方に振り向いて
「・・・見え透いた嘘を・・・俺が何も知らないとでも思っているのか?」と、ねちっこく言い、
自分がザンギャック本国の皇帝宮殿で目撃した話をし始めます。

ワルズ・ギルが目撃した場面、それは、この地球侵略作戦が始まる前、皇帝の謁見の間での出来事です。
狭い部屋で、数段高い床面に置かれた玉座に皇帝が座り、
その左右にドゴーミンが1人ずつ、計2人槍を立てて護衛として立っていますが、
この2人が今回地球に来ているドゴーミンと同じとは限らないでしょう。
そして、その玉座の前の数段下がった床面にダマラスが跪いており、
他にはこの部屋には何本も太い柱が屹立している以外には何もありません。
宇宙を総べる帝国の皇帝の玉座としては質素に過ぎるので、
これはおそらく重臣に内密の命令を下すための私的な謁見の間なのでしょう。

その皇帝の姿はこのシーンでは影になっていて、シルエットぐらいしか分かりませんが、
そんなに巨大な姿をしているとか、特別な怪物的な姿ではないようです。
まぁ基本的にザンギャック幹部は地球人から見れば怪人なのですが、
ザンギャック基準で考えれば、別になんてことはない普通の怪人という印象で、
むしろダマラスなどよりは小柄で、しかしだらしなく肥えているようでもなく、
老人ながら精悍な体つきであるようです。

その顔はここでは詳細はよく分かりませんが、
第34話で出てきた1000ザギン札の真ん中に描かれた肖像画と同じ顔のように思えます。
また、例のザンギャックの紋章の真ん中にデフォルメされた形で描かれている顔のような模様にも
似ているように思えます。
ただ、1つ気になるのは、お札の肖像画にしても紋章の顔にしても、ちゃんと両目があるのですが、
このシーンの皇帝はどうやら片目が塞がっているようなのです。

皇帝とワルズ・ギルが親子なのにかなり風貌が違う点からして、
お札の人物が皇帝の父であるというわけでもなく、おそらく皇帝本人であると思われることから、
この本物とお札の片目の有無の相違は少し気になります。
少し、というのは、まぁ独裁者の場合、妙に風貌を気にする傾向があるので、
ザンギャック皇帝が醜い片目顔では具合が悪いので片目であることを
民衆には隠しているという可能性も十分にあるからです。

ただ、もしそういう事情でないとしたら、
何か特別な事情があって片目が無いことを隠さねばならないのかもしれません。
ただダマラスの前では平気で片目顔を晒しており、
おそらく宮殿で他の家臣と会う時も顔を隠したりはしていないであろうから、
そんな重大な秘密であるとは考えにくい。

そうなると、あと1つ考えられる可能性としては、
紋章やお札などが出来て以降、つまり帝国が成立して以降の比較的最近において
皇帝が片目を失ったということです。
そして、もしそれが病気で原因ではなく、何らかの怪我で片目を失ったのだとすれば、
ザンギャック皇帝の片目を奪うほどの何か重大な出来事が比較的最近起こったということになります。

そのあたりはまだ謎であり、単に深読みしすぎかもしれません。
もし単にみっともないから片目であることを民衆に隠しているだけだとするなら、
若い頃に片目になった可能性が高く、その精悍な体つきからしても、どうも歴戦の勇将というイメージで、
この皇帝が一代でザンギャック帝国を築いたという設定であっても、
十分説得力のあるようなキャラ造形がなされているのがシルエットだけで伝わってきます。

シルエットだけでそれが伝わってくる大きな要因になっているのはその声で、
超ベテラン俳優・声優の小川真司氏が声をあてており、
その知的で落ち着いた、それでいて凄味のある冷徹な声は、
この「ゴーカイジャー」という作品の悪のラスボス役に相応しいといえます。
まぁ本当にこの皇帝がラスボスになるかどうかはよく分からないのですが、
小川氏に声をお願いしておいて軽い扱いで終わるはずもないので、ラスボスとなる可能性が濃厚だと思います。

なお、この皇帝は今回、劇中ではその名前が呼ばれることはありませんが、
OPテーマ中でテロップでその名前が出ており、その名はアクドス・ギルというそうです。
ワルズ・ギル(悪すぎる)の父親がアクドス・ギル(悪どすぎる)というのも、笑ってしまうネーミングですが、
要するにこのザンギャック皇帝家はギルという姓の家柄であるようです。
まぁどこの馬の骨とも知れない成り上がり者がアクドス・ギルと名乗って、
息子にワルズ・ギルと名付けただけかもしれませんが。

とにかく「ギル」さんであるわけです。
そうなると小川氏が2000年のテレビアニメ「人造人間キカイダーTHE ANIMATION」で
「プロフェッサー・ギル」役の声を担当されたのは奇遇ということになります。
おそらく「ギル」繋がりで小川氏に声をお願いしたとか、
小川氏に声をお願いすることを前提に序盤から登場に息子のキャラの姓を「ギル」にしたとか、
そういう事情ではなく、全くの奇遇であったのだろうと思います。

ただ、「悪どすぎる」という邪悪さが前面に出た名前ではありますが、
小川氏の声のイメージの影響か、あまり邪悪で狂気に満ちたキャラという印象ではありません。
今回は短いシーンだけの登場ですから断言は出来ませんが、
やはりザンギャック帝国は皇帝も含めて、割と正統派でまともな敵組織として描かれるような気がします。
ただ、小川氏は知的で冷徹な悪役の演技がお上手なので、まさか善人であろうとも思えず、
何か裏のあるキャラなのであろうと推測は出来ます。

まだまだ謎が多く、一筋縄ではいかない部分が残っているザンギャックの設定ですが、
それでも今回ワルズ・ギルにスポットが当たった描写のお蔭で、
ワルズ・ギルを取り巻く人間模様に関してはだいぶ真実が明らかになってきているといえます。

これまで謎だったダマラスとワルズ・ギルの関係も、
ダマラスはワルズ・ギルに対しては例えば裏切りを画策しているとか、そういう根深い悪意や敵意は無いようです。
今までの不誠実な態度や、隠れてコソコソ動くような態度、陰口を叩いていたような態度も、
単にワルズ・ギルがダマラスを嫌っているせいで
ダマラスもワルズ・ギルを疎ましく思うようになった結果だったと解釈すべきでしょう。
ただバスコと何か妙な関係があることに関してはまた別問題で、
そちら方面ではまだ何か裏のありそうなキャラではあります。
そして皇帝も息子のワルズ・ギルに対しては単に甘やかしているだけの父親であるようですが、
それ以外はまだまだ謎の多いキャラといえます。

さて、回想シーンですが、
まず、謁見の間に召し出して玉座の前に跪かせたダマラスに向かって皇帝アクドス・ギルは
「ダマラス・・・第二次地球侵略艦隊、ワルズ・ギルに司令官を任せる」と威厳のある声で伝えます。
顔を伏せていたダマラスはこれを聞いて、さすがに「うっ!?」と驚いて顔を上げると、
「・・・殿下に?・・・しかし、それは荷が重すぎるのでは・・・?」と跪いたまま、慎重に異議を唱えます。

ダマラスは私的な謁見の間でそのような話をされたことを、
重臣である自分に皇帝が内密に意見を求めているのだと解釈して、
率直に軍人として自分の意見を申し上げたのでした。
実戦経験の無いワルズ・ギルに軍司令官など務まるわけがない。あまりに危険すぎる。
論じる価値も無いナンセンスな話だとダマラスは思ったが、
さすがに皇帝にナンセンスなどとは言えないので、これでも言葉を選んでいるつもりです。
皇帝の意見に異議を唱える以上、叱責は覚悟の上ではありましたが、
叱責されても諫言すべき時はするのが忠臣の務めと思っているのでダマラスは言うべきことは言ったのでした。

しかし皇帝はダマラスを叱責しようとはせず、
ハッキリ言って自分の跡取り息子の無能を指摘されたにもかかわらず、別に不機嫌になる様子もありません。
静かに「・・・一度侵略に失敗したとはいえ、地球を守るスーパー戦隊とやらはもう居ない・・・」と
地球の状況を説明します。
積極的に息子のワルズ・ギルが司令官に適任である理由を説こうともせず、
単に地球はそれほど手強い相手ではないのだという、
どちらかというと、だからワルズ・ギルでも大丈夫だとでも言いたげな、消極的な擁護です。

これは皇帝もワルズ・ギルをどうしても司令官として行かせたいというほどではないということで、
この地球行きを希望したのがワルズ・ギルであることが窺えます。
皇帝は手柄目当ての息子のおねだりに負けて地球侵略軍の司令官に任命することを既に決意しており、
ダマラスを呼んだのは別に意見を聞くためではありませんでした。

息子が無能であることなど皇帝は分かっており、
公の場ならともかく、こんな内密の場でそんなことを今さら指摘されても怒る気もありません。
スーパー戦隊がいなくなったという地球ならば無能な息子でもそんなに危険ではないと分かっているから
地球侵略軍の司令官になりたいという息子の願いを聞き届けたのです。
だから今さら分かりきったダマラスの意見など聞く気もない。

皇帝は続けて「それにダマラス・・・お前にワルズ・ギルの補佐を任せる・・・」と言い渡したのです。
こっちが皇帝の本題でした。
ダマラスは予想外の展開に「・・・私が・・・!?」と驚愕し、絶句します。
今さっき、自分はワルズ・ギルが司令官には不適格だと意見したばかりだというのに、
その自分がそのワルズ・ギルの補佐につくというのだから驚きでした。

というか、そもそもこうして皇帝に直々に謁見するような立場のダマラスは
参謀というより司令官クラスの軍人、いやおそらくザンギャック全軍の総司令官あたりであるはずで、
タイプ的にも勇将タイプですから、誰かの補佐をするというより、一軍を率いる大将が適任のはずです。
そんな自分が今さら補佐役の参謀などを命じられること自体がダマラスには驚きであり
不本意なことでもありました。
その上、その自分が仕えるのが、自分が無能と判定したばかりのワルズ・ギルだというのだから、
更に驚きでした。

それに、確かに皇帝の息子と一介の軍人のダマラスでは身分は違うが、
軍歴は比べものにならないほどダマラスの方が上なのです。
だから、こんな人事はダマラスもハッキリ言って不愉快でしたが、
それ以上にワルズ・ギルもやりづらいだろうとダマラスは思いました。
補佐役ならば他にもっと優秀でワルズ・ギルの使いやすそうな者がいるはずです。

ところが、そんなこんなで納得出来ない顔のダマラスに向かって皇帝は
「お前がいれば、地球など簡単に征服出来るだろう・・・」と謎かけをするようにゆっくりと言い聞かせ、
最後に「違うか・・・?」と凄みのある声を発してダマラスを片目で睨みつけたのでした。

これを聞いてダマラスはハッとします。
つまり、ワルズ・ギルは飾りの司令官であり、
実質的に自分が地球侵略軍の司令官に任命されているのだと気付いたのです。
そして、実質的に自分が取り仕切って地球を征服し、手柄は全てワルズ・ギルに献上するようにという命令なのです。
もし断れば、ダマラスは地球征服に自信が無いという臆病者だとされて処分される。
だから断ることなど出来ない。
皇帝はそういう有無を言わさぬ命令を下すために自分を呼んだのだとダマラスは悟り、
「・・・はっ・・・陛下の仰せのままに・・・」と畏まるしかありませんでした。

こうしてダマラスはワルズ・ギル軍の参謀長として地球へやって来ることになったのです。
しかし、どうして皇帝がこのような酷い命令をダマラスに下したのかというと、
別にダマラスに恨みがあったわけではないと思います。
皇帝もダマラスもまだ謎の残るキャラなので、何とも断言は出来ませんが、
少なくともこのシーンの2人の間からは険悪な雰囲気は見受けられませんでした。

ただ最後の「お前がいれば地球など・・・」の件は、
あるいはダマラスと皇帝と地球の間に何らかの因縁があるようにも見えないこともない。
が、皇帝は地球にスーパー戦隊が居ないという間違った情報をそのまま信じ込んでいるし、
「スーパー戦隊とやら」と言っていることからも、どうやら地球とは因縁の無いキャラのようです。
だから最後のセリフは地球とダマラスの因縁を突っついた発言ではなく、
単に明言を避けつつダマラスに地球征服の手柄をワルズ・ギルに献上するよう暗に促した発言と
解釈した方がいいでしょう。

そして、ダマラスをその役目に選んだ理由は、
ダマラスが帝国で最も有能な司令官であり、同時に最も口の堅い忠臣であったからでしょう。
だから、無能なワルズ・ギルの代わりに地球を征服して、全ての手柄をワルズ・ギルに献上するという、
帝国の恥部ともいえるような作戦を任せることが出来たのです。
では、なぜ皇帝はそのような恥ずべき作戦をダマラスに命じたのか?
それは、次期皇帝となるべきワルズ・ギルの経歴に一切の瑕がついてはいけないからでした。

特に、強大な力によって宇宙を1つにまとめて支配するザンギャック帝国の皇帝は
完璧な強さを持っていなければならない。
皇帝の完璧な強さによって宇宙の安定と平和は保たれるというのがザンギャック帝国の根本原理です。
あまりに広大で多彩な宇宙を1つの大帝国としてまとめるためには、
法や理念や損得勘定だけでは不可能であり、絶対的なカリスマが必要なのです。

現皇帝のアクドス・ギルにはそのカリスマは文句無しに備わっています。
しかし、その跡取り息子のワルズ・ギルにはそのカリスマが欠けている。
それをそのまま放置しておくと、次代になると帝国は瓦解してしまう。
それは皇帝自身はもちろん、帝国の中枢で利益を貪っている重臣たちとしては困るのです。
飾りでもウソでも何でもいいから、ワルズ・ギルには万能のカリスマであってもらわねば、自分達の身が危なくなる。
だから偽りでも何でもいいから輝かしい軍歴は必要なのです。
そういうわけで、実質的には参謀のダマラスが司令官として動いて地球を征服し、
ワルズ・ギルはギガントホースで寝ているだけで「地球征服の英雄」として祭り上げられる手筈となったのです。

皇帝アクドス・ギルとしてもいずれはワルズ・ギルのカリスマの捏造のために
このような措置は取らねばならないとは思っていましたから、
今回ワルズ・ギル本人から地球侵略軍司令官への就任を希望してきたのをちょうどよいと思い、
こうした役目に適任のダマラスに影の司令官役を命じたのです。
ダマラスも帝国の中枢で利益を貪る重臣グループの1人ですから、
皇帝が何を考えて自分にこんなことを命じてきたのか、ようやく理解し、
1人の軍人としては忸怩たる想いではありましたが、
帝国の今後のことを考えれば、無能なワルズ・ギルのカリスマを捏造する作業は不可欠であり、
自分がこの汚れ仕事を引き受けるしかないと決意したのでした。

ところが、この謁見の間の柱の陰で、ワルズ・ギルが隠れてこの2人の会話を盗み聞きしていたのです。
どうしてそんなことをしたのかというと、
おそらく自分が地球侵略軍の司令官になれるのかどうかが気になって、
父親が軍司令官のダマラスを地球侵略作戦の件で内々に呼びつけたという報告を受け、
きっと自分の話をするのだろうと思い、コソコソと盗み聞きをしたのでしょう。

なぜ皇帝の私的な謁見の間などという最高度の警備の敷かれている場に潜むことが出来たかというと、
それはまさに皇帝の溺愛する息子のワルズ・ギルだからこそ
皇帝親衛隊をも抱き込んで忍び込むことが出来たからでしょう。
逆に、ワルズ・ギル本人でなければ、例えばワルズ・ギル配下のスパイのような輩では
絶対に忍び込むことは不可能だったことでしょう。
そういうわけでワルズ・ギルは謁見の間の柱の陰に隠れており、皇帝やダマラスはそれに気づかなかった。

それでワルズ・ギルは秘かに2人の会話を全部聞いていたのですが、
まずダマラスが自分のことをまるで無能のように評したことに驚愕しました。
何故ならワルズ・ギルは自分のことを天才だと思っていたからです。
というか、ワルズ・ギルにそう思い込ませたのは、ダマラスをはじめとした重臣の面々、そして父である皇帝でした。
だからワルズ・ギルはダマラスが自分の前で言う言葉と正反対の言葉を父に向かって述べるのを聞いて、
まさに青天の霹靂であり、大きなショックを受けました。

ダマラスや重臣たちにとっては次期皇帝のワルズ・ギルは無謬の存在でなければならず、
非の打ちどころの無い万能の天才であってもらわねばならない。
もちろん現実にそんな都合の良い天才が存在するわけがないことは彼らにも分かっています。
しかし巨大になりすぎたザンギャック帝国が宇宙を1つにまとめて支配していくためには、
その非現実的なカリスマが必要なのです。

現皇帝のアクドス・ギルのカリスマは宇宙の征服王としての実績に裏打ちされたものだから問題無いが、
既に征服するべき広大な敵地すら存在しなくなったこの宇宙で征服王を実際に再び作り出すことは出来ない。
だから非現実的なカリスマを捏造するしかない。
そのことが分かっていた重臣たちは、最初からワルズ・ギルを立派な英雄に育て上げようなどとはしませんでした。
ザンギャック皇帝に求められる非現実的なカリスマはそもそも努力などで到達できるものではないのです。
演出して作り上げていくしかない。

むしろ変に英才教育などして中途半端に英邁になられては自分達の好きなように操ることが出来なくなる。
皇帝はあくまでカリスマとして祭り上げた飾りであり、
実質的な政務は自分達が好きなようにやりたいというのが重臣たちの本音でした。
現皇帝のアクドス・ギルが家臣に苛烈なところがあったので、
余計に重臣たちは次期皇帝は御しやすい方が望ましいと思いました。
だから重臣たちはワルズ・ギルを厳しく鍛えようなどとはせず、ひたすら天才だと褒めそやして、
周囲にもカリスマ捏造のため「王子は天才だ」と吹聴して回ったのでした。

また皇帝のアクドス・ギル自身、戦争に出掛けていることの方が多く留守がちであったので
息子の教育は重臣に丸投げ状態であり、
自身もたまにしか会えない息子のことはひたすら甘やかしていたので、
ワルズ・ギルを鍛えるようなことはありませんでした。

こうしてワルズ・ギルは無能で怠惰な臆病者として成長したのですが、
自分のことを万能の天才だと思い込み、自分の望むことは全て何の苦労も無く叶うものだと思い込んできました。
そして重臣たちは皆、自分があまりに天才なので恐れ入って仕えているのだと信じ込んでいました。
もちろん尊敬する父にとって自分は自慢の息子だとも思っていました。
幼い頃からそう言い聞かされてきたのですから、そうとしか考えられなかったのです。

しかし、そんな万能の天才のはずのワルズ・ギルは父親のように戦場に行くことにあまり積極的ではなかった。
それもそのはずで、本当はワルズ・ギルは臆病者だからです。
しかし、そのようには誰も指摘してくれなかったのでワルズ・ギル自身、自分が臆病者で無能だという自覚は無い。
だから、やはり戦場で武勲を立てなければいけないと思い、
根が臆病者ですから、無意識的に安全そうな戦場を選び、
数年前にザンギャック艦隊を撃滅したが実は今は丸裸同然という地球という星の存在を知り、
その侵略軍の司令官として次期皇帝に相応しい手柄を立てようと決意して父親におねだりしたのです。

ところが父の皇帝とダマラスの会話を盗み聞きすると、
ダマラスが自分のことを無能呼ばわりして司令官就任に反対し、
父はそんなダマラスを自分の補佐役として地球について行くように命じて、
「お前の力で地球を征服しろ」などと言うのです。

いつもは自分のことを褒めちぎる2人の、あまりに普段とは掌を返したような言葉に
ワルズ・ギルは、騙され裏切られた気分になって激しく傷つき、
あまりのショックの大きさによって疑心暗鬼になってしまい、
ダマラスと父親が共謀して自分から手柄を取り上げて陥れようとしているのではないかという
疑念を抱いてしまったのでした。
今まで無邪気に信じていた相手に騙されていたと知ったショックがあまりに大きくて、
その反動でワルズ・ギルは人間不信になってしまったのです。

皇帝がハッキリとダマラスに「お前が地球を征服してそれをワルズ・ギルの手柄にしろ」と言っていれば、
ワルズ・ギルはこれもまた酷く傷ついたでしょうけれど、それでも変な誤解をせずには済んだはずです。
しかし皇帝も、いくら何でもそこまでハッキリと自分の息子の無能を認めるようなことを
父親として口にしたくなくて、ダマラスならば曖昧な言い方をしても意図は察するはずと思って、
ああいう謎かけのような言い方をしたのですが、
まさか物陰に隠れていた息子がその内容を曲解して疑心暗鬼になってしまうとは
予想だにしていなかったことでしょう。

そういうわけでワルズ・ギルは地球遠征の旅の最初からダマラスのことを油断のならない奴だと警戒して、
手柄を横取りされてたまるものかと思い、ダマラスの邪魔ばかりして、意見も聞かず、遠ざけたのです。
そしてダマラス抜きで何とか自分の力でさっさと地球を征服してしまおうとして焦り、
もともと無能である上に焦りも加わって作戦は失敗の連続、
しかもマーベラス一味という邪魔者まで現れて、
いなくなったと聞いていたはずのスーパー戦隊の連中まで何やら暗躍して
マーベラス一味と手を組みだす始末で、もうどうにもこうにも何ともならない状況となってしまったのでした。

しかし、ダマラスのことを裏切り者だと思っていたにもかかわらず、
ワルズ・ギルはダマラスを疎遠にして姑息な意地悪はしつつも、参謀長を解任しようとはしませんでした。
父である皇帝やその重臣たちのことも自分を裏切ったのだと決めつけながらも、対決しようともしていません。
本当に皇太子たる自分を陥れようという陰謀があるのなら帝国の一大事であり、放置しておいていい話ではない。
たとえ父である皇帝が関与しているとしても、そんな陰謀に関与する以上、
たとえ相手が皇帝でも皇太子として対決しなければいけないはずです。
しかしワルズ・ギルは全く戦おうとはしていない。

いや、本当は戦いたいのですが、戦うのが怖いのです。
皇帝や重臣たち、そしてダマラスとも全面対決する勇気が無いのです。
勝つ自信が無いのもありますが、
それ以前に、仮に彼らと戦って勝利して排除したとして、
彼らを乗り越えてその先に広がる世界に1人で立ち向かう勇気が無いのです。
何故なら、彼らに庇護される万能な世界しかワルズ・ギルは知らないので、
彼ら抜きで1人で道を切り開くことなど出来ないからです。
だから、彼らを憎みながら、同時に彼らを頼りたくなってしまう。それで中途半端にウジウジしてしまう。

地球侵略作戦にしても、疑心暗鬼に陥ってダマラスや皇帝や重臣たちの力に頼らずに
自分1人の力で武勲を上げてやろうと意気込んで地球へやって来たのですから、
話の筋からいけば、自ら出撃して戦うべきです。
司令官自ら出撃して戦うなど常軌を逸しているかもしれないが、
まさにワルズ・ギルを取り巻いている(と本人が思い込んでいる)状況は常軌を逸しているのです。

何せ、重臣一同に父である皇帝までがグルになって自分の手柄を横取りしようとしているわけです。
普通に戦っていても手柄は全部ダマラスのものになってしまう。
だからワルズ・ギルは誰にも文句を言わせない自分の手柄を上げるためには
自分自身が自ら出撃しなければいけないのです。
そんなことが常軌を逸していることはワルズ・ギルも分かっています。
しかし、自分を取り巻く状況が常軌を逸している以上、
常軌を逸した行動に出るしかないのだとワルズ・ギルは思ってしまっているのです。
しかし、実際はワルズ・ギルはその常軌を逸した行動をとってきませんでした。
それはやはり勇気が無かったからです。

結局は皇帝や重臣たちの庇護が無ければ何も出来ないのです。
もちろんワルズ・ギル本人は自分は天才だと思っていますから臆病だなどとは認めませんが、
実際は臆病なのです。
だから彼らのことを憎みつつ、なんだかんだで彼らに擦り寄って頼るという心の揺れを示すのです。

いや、今まで二度、ワルズ・ギルは自ら出撃しました。
一度目は第11話の時、親衛隊長のデラツエイガーがやって来た時です。
あの時はデラツエイガーという自分に忠実な強者が現れたのでダマラスへのあてつけに
デラツエイガーを護衛につけて自ら出撃しました。
しかし、デラツエイガーも本来は皇帝の忠実な配下であり、
ワルズ・ギルはその父である皇帝に複雑な感情を抱いているはずなのに、
あっさりその皇帝の手持ちの怪人のパワーに頼っていたのです。
これは結局、皇帝の庇護のもとということです。
しかもこの時は実質的には全く戦闘に参加していません。
撃たれて腰を抜かせて退却して、むしろ味方の作戦の邪魔をして終わっています。

そして二度目の自らの出撃は第36話、つまり前回のガイアークとの戦いの時であり、
あれは相手がザコばかりと見くびって出て行っただけであり、
いざ戦闘が始まると物陰に隠れて参加せず、
マーベラス一味が現れるとさっと逃げてしまいました。

つまり結局、ワルズ・ギルは自ら戦ったことなどない。
しかし潜在的には自分はそうしなければダマラスや父の皇帝たちに手柄を横取りにされてしまうという
強迫観念を抱えていたのです。
そのような時に父親から最強の決戦機であるグレートワルズが届けられて、
最初は父の好意を素直に感謝していたのですが、
ダマラスがグレートワルズを見て「これを使えば誰でも地球を征服できる」と言っているのを聞いて、
ワルズ・ギルはまた疑心暗鬼の虫が騒ぎだしてしまいました。

ダマラスが「誰でも」と言っているのを、「自分でも」という意味で言っていると曲解して、
ダマラスがグレートワルズで地球征服をして、それを自分の手柄にしようとしているのだと思ってしまったのでした。
そして、父の皇帝や重臣たちもそのつもりでダマラスと示し合わせてグレートワルズを送ってきたのではないかと、
ワルズ・ギルの疑惑は広がっていきました。

ならば、ワルズ・ギルとしては自らの立場を守るためには
自らグレートワルズに乗って出撃して海賊たちを討伐して、
文句のつけようのない自分の戦果を上げる以外、道は無くなってしまいます。
それでワルズ・ギルはたとえ常軌を逸していようとも、
自分を取り巻く常軌を逸した陰謀を打ち破るためには、自ら出撃するしかないと思い、
自分がグレートワルズに乗って出撃することにこだわったのでした。

自分をそこまで追い詰めたのは、ダマラスや父の皇帝周辺が企んだ自分を排除しようとする陰謀のせいであり、
ダマラスはその陰謀が無能な皇帝のバカ息子にはバレていないと思い込んでいるのだろうが、
ところが実は俺はそんな陰謀はあの秘密の会話を聞いて見破っているのだ、
ということをワルズ・ギルはダマラスに言い放ったのでした。

そして、ワルズ・ギルは怒りに震える拳を握りしめて
「今までお前の芝居にも付き合ってきたが・・・グレートワルズがある以上、我慢もこれまでだ!!」と
ダマラスを怒鳴りつけます。
グレートワルズという帝国最強のパワーを手にした今、
遂にワルズ・ギルは今まで自分を小馬鹿にしてきたダマラスや重臣たち、
そして父である皇帝に宣戦布告をしたのでした。

自分はグレートワルズの力を使って、自分の手で帝国の実権を握ってみせる。
その前祝いにまずは小手調べで海賊どもを血祭りに上げる。
そうワルズ・ギルは決意し、そう思うともはやダマラスなど相手にする価値も無いと思い、
「お前は沈黙と共に見ていろ・・・!」と言い捨てて、
ダマラスに背を向けて、さっさと指令室から出て行こうとします。

一方、ダマラスはワルズ・ギルから地球遠征前の皇帝と自分の秘密の会話内容を暴露されてしまい、
愕然として言葉を無くしていました。
ワルズ・ギルが自分と皇帝の真意について酷い誤解をしていることに気付き、なんとか弁解しようとしたのですが、
かといって真意を説明しようにも、
その真意が「あなたが無能だから私が代わりに手柄を立ててあげるようお父上に頼まれていたのです」なんていう
ミもフタもない内容なので、今そんなことを言えば余計にワルズ・ギルの怒りが爆発するだけであるし、
しかも自分が天才だと思い込んでいるワルズ・ギルがそれを真実だと信じて受け入れるはずがない。

それでダマラスは絶句してしまい、何か上手い言い訳は無いものかと必死で考えますが、何も思い浮かばない。
というか、他の部下たちの前で自分が皇太子のことを皇帝の御前で誹謗していたなどと暴露されてしまって、
ダマラスは完全に立場を無くして平常心でいられない状態でした。
そうしてダマラスが立ち尽くしている間にワルズ・ギルがさっさと部屋から出ていってしまうので、
ダマラスは焦って「殿下!・・・お考え直しを・・・!!」と呼び止めようとします。
自分の受けた誤解はともかく、まずはワルズ・ギルを引き止めなければいけないということに気付いたのです。

ワルズ・ギルは酷い誤解のせいで自分がグレートワルズに乗って出撃するしかないと思い込んでしまっているが、
それはグレートワルズで戦えば必ず勝てるという過信が前提になっている。
が、戦場では絶対に大丈夫などということはない。
おかしな思い込みで戦えば、何かとんでもない落とし穴にはまるような羽目になるのではないかと
ダマラスは心配になったのです。
しかしワルズ・ギルは「フン!」とダマラスの呼びかけを無視して指令室を出て行ってしまいました。
そのワルズ・ギルの後ろ姿をバリゾーグが黙って見つめ、そして歩き出します。

ダマラスを怒鳴りつけて指令室を飛び出し、その足でワルズ・ギルはギガントホースの格納庫にやって来ました。
そこではグレートワルズが出撃準備態勢を整えつつありました。
そのグレートワルズを見上げて、ワルズ・ギルは「父上・・・」と寂しそうに呟きます。

もともとグレートワルズは父の皇帝がワルズ・ギルの守護のために
ワルズ・ギルに似せて作らせた最強の決戦機であり、
ワルズ・ギルから見れば父から自分への愛情の象徴のようなものでした。

ワルズ・ギルは思う。
父がこれを作ってくれた時は自分を愛してくれていた。
それなのに今はもう父は自分を愛してくれていない。
それどころか、この自分への愛の象徴を使って自分を陥れようとまでしている。
いったいどうして父は変わってしまったのか?
愛する父と戦いたくはないが、父があくまで自分を陥れるというのなら、
自分はこの父から自分への愛の象徴たるグレートワルズを使って父と戦うしかない。

まぁほとんど誤解に基づく妄想なのですが、ワルズ・ギルは大真面目に悲しがっています。
そして、そのように感慨にふけりながら、ワルズ・ギルはそれでも父への想いを断ち切ることは出来ない。
それも当然です。
そもそも、そうして父とまで戦おうなどと思うようにまでなったのは
ワルズ・ギル本人の力の裏付けや決意があってのことではなく、
父が作った帝国最強の力が手に入って勝てると確信出来るようになったからです。
つまり、まだ依然としてワルズ・ギルは父親の庇護下の安全で万能な状態でなければ
生きていくことは出来ないままなのです。
そんな男が父と戦うことなど出来るはずがない。

それでグレートワルズを見上げてグズグズ言っているのですが、そこに何者かが歩いてきます。
ワルズ・ギルが振り向いて見ると、バリゾーグでした。
「バリゾーグ!」と言うワルズ・ギルの前に立って、バリゾーグは無言でワルズ・ギルを見つめます。
バリゾーグがどうしてここにやって来たのかというと、
それはバリゾーグがワルズ・ギルを守るようにプログラムされているからです。
つまり、バリゾーグはワルズ・ギルの心身の状態を常に正確に検知して、
それに合わせた行動をとることが出来るようになっているのです。
そのバリゾーグの目から見て、さっき指令室を出て行くワルズ・ギルがとても悲しそうに見えたので、
心の弱った状態のワルズ・ギルを1人にしてはいけないというプログラムが作動して、追いかけてきたのでした。

そのようにバリゾーグの前ではワルズ・ギルは心の内を隠すことは出来ない。
それはあくまで護衛の機械兵士として付加された機能であり、
絶対忠義とセットになった機能ですから、心の内を知られても言いふらされたり悪用されることはない機能です。
しかし結果として、ワルズ・ギルは次期皇帝として他の者には言えない本音を隠す必要が無い相手として
バリゾーグを重宝するようになっていました。

ここでもワルズ・ギルは自分の心の悲しみを察知してやって来てくれたバリゾーグを
長年の親友を見るような目で見ると、
「・・・俺は子供の頃からずっと、父上の重臣たちに囲まれてきた・・・」と言いつつ、
バリゾーグに背を向けて述懐し始めます。
そして「しかし、誰もが父に似ぬバカ息子と思っていただろう・・・」と自嘲するように言います。

ワルズ・ギルは自分のことは万能の天才だと思っている。
だから本当に自分がバカ息子だなどとは思っていない。
自嘲しているのは、表面上は天才などと持ち上げておいて、裏に回れば無能扱いして誹謗していたような
連中の本心を無抜けなかった自分の迂闊さでした。
しかし、それは自分には人の本質を見る目が無いということだ。
それだけで既に万能ではない。
そして、自分のことを天才だと教えてくれたのは、その嘘つき連中ばかりです。
ならば自分が天才というのも嘘なのかもしれない。本当は自分はバカ息子なのかもしれない。
そう考えると、なんだか自信が無くなってきて、戦う自信が無くなってくるワルズ・ギルでした。

そうすると、自分はもしかしたら、誰かに守ってもらわなければ生きていけないのかもしれないとも思えました。
しかし、もう父も重臣たちもダマラスも自分を守ってくれる人たちではなくなった。
自分が捨ててしまったのだと、ワルズ・ギルは思いました。
無性に寂しくなったワルズ・ギルは「・・・俺は1人だ・・・お前がいなければな・・・」と言います。
バリゾーグは「ボス・・・」と応じます。

もはや誰も信じられなくなり、自分を守ってくれる相手を皆捨ててしまったワルズ・ギルは
それでも1人で世界に立ち向かっていく勇気を持てず、自分を守ってくれる相手を探します。
そうすると残っているのは、自分に絶対忠誠の行動をとるようプログラムされ改造された
機械兵士のバリゾーグだけだったのです。

シドがバリゾーグに改造されたのは、ジョーと共にザンギャック軍から脱走して捕まってすぐの頃でしょうから、
今から数年前のことと思われます。
それはワルズ・ギルが地球侵略軍の司令官となるよりもだいぶ前のことでしょうから、
ワルズ・ギルが捕らわれたシドに会ったのは、
先ほどのダマラスと皇帝の会話を盗み聞きしてショックを受けたりするよりもだいぶ前のことと思われます。

だから、その頃のワルズ・ギルは心の底から自分を万能の天才と思っており、
何でも自分の望んだことは叶うと思っていた頃でしょう。
そうしたワルズ・ギルがシドの剣の腕を気に入り、自分の側近になるよう求めたが、
シドはきっぱり断り、ザンギャックの支配体制を批判するようなことも言ったのだと思われます。
それで激怒したワルズ・ギルは自分を称賛せず従わない、あまつさえ帝国の批判までするシドを異常者だと決めつけ、
正常な状態に矯正するように改造してやったのです。

つまりワルズ・ギルとしてはむしろシドはバリゾーグになって素晴らしい人生を手に入れたという解釈であり、
自分はシドをバリゾーグにすることで救ってやったとまで思っていたと思われます。
つまり、ワルズ・ギルが作ったバリゾーグは、自分の素晴らしさを称えるための人形であり、
それがバリゾーグの幸せと思ってワルズ・ギルは悦に入っていたのです。
ところが、ここにきてワルズ・ギルは自分を守ってくれる者達を自分の疑心暗鬼で全て手放してしまい、
誰にも守ってもらえずに不安になったワルズ・ギルが最後に自分を守ってくれる相手として縋ったのが、
皮肉なことに自分が救ってやった気で玩具にしていたバリゾーグだったのです。

ワルズ・ギルは思い切って「俺はダマラスや父上の重臣どもの鼻を明かしたい!」と初めて口に出して宣言します。
それでもさすがに父である皇帝そのものへの反逆の意思を口にする勇気はありませんが。
そしてワルズ・ギルはバリゾーグの方に向き直り「・・・お前は俺についてきてくれるな?」と尋ねます。
するとバリゾーグは姿勢を正し
「私はワルズ・ギル様の忠実な部下・・・どんな命令でもお聞きいたします」と、堂々とした言葉で
ワルズ・ギルの期待に応えてくれたのでした。

「うん・・・!」と感動して、安心したように頷くワルズ・ギルですが、
しかし、このバリゾーグの返答はいつものプログラム通りの、
常にワルズ・ギルを称えて、ワルズ・ギルの命令に従うというだけの人形としての反応に過ぎません。
そこに心などは存在しておらず、ただの機械的反応があるだけです。

こんなものは作られた偽物の忠義であり、見せかけの称賛の言葉を述べる重臣たちと何も変わらない。
バリゾーグをこんな人形にしたのはワルズ・ギル本人であるのに、
そのバリゾーグの作られた言葉によって自分が守られたと感じるとは、愚劣を通り越して哀れですらあります。
しかし、それでもワルズ・ギルはこのバリゾーグの言葉で再び戦う勇気を得ます。
哀れではありますが、ワルズ・ギルにとっては、もはやそれしか頼るものはないのです。

グレートワルズが手に入り、そしてバリゾーグが守ってくれるなら、
海賊とも、重臣たちとも、父親とでも戦えると、心を奮い立たせたワルズ・ギルは
グレートワルズの方に向き直ると「グレートワルズで、海賊どもを排除する!!」と勇ましく号令をかけ、
次いでバリゾーグに向き直ると「バリゾーグ!!奴らの船を探し出せ!!」と命令を下します。
バリゾーグは姿勢を正し「イエス、ボス」と一礼して応じます。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 19:39 | Comment(2) | 第37話「最強の決戦機」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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