2012年07月20日

海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE 感想その6

「・・・あれはまだ・・・俺がガキの頃だった・・・」と、マーベラスが仲間達に向かって語り始めた想い出話は、
10年以上前、彼がまだ身体も小さな10歳そこそこの少年だった頃のことです。
そのマーベラスの語る回想シーンの中の少年は浮浪児のようなボロい格好をしています。
その想い出の舞台は宇宙空間を飛ぶ貨物船の中でした。
少年は船の窓から星空を眺めて嬉しそうにしています。

その時の少年のように窓の外の景色を眺めながら、
現在の成人マーベラスはあの時のことを思い返しながら説明を続け、
「たった一人で潜り込んだ貨物船が、ザンギャックに襲われた・・・」と背を向けたまま仲間たちに言います。
その想い出の中では、少年は貨物船に正規の手続きで乗船していたわけではなく、
コッソリ1人で潜り込んでいたようです。

つまり密航しようとしたわけです。
現在のマーベラスや、この事件の何年後かのアカレッドとの出会いの場面などから想像するに、
おそらくこの頃からやんちゃな悪ガキではあったのでしょう。
ただ、まだ少年ですから、別にそんな性質の悪いことをしようとしていたわけではなく、
おそらくは宇宙船に乗って宇宙の旅に出てみたいという好奇心によるものだったのでしょう。

マーベラスの故郷の星はザンギャックに滅ぼされていますから、マーベラスもまた戦災孤児だったと思われます。
身なりを見ても貧しいのも分かります。
身元もハッキリしない貧しい戦災孤児の悪ガキなど、
正規の手続きでは客船などで宇宙に旅立つことなど出来ないのでしょう。
だから少年は貨物船の荷物に忍び込んで密航して宇宙に行こうとしたと思われます。

そもそもザンギャックの支配する領域とは、
ザンギャックに従わずに宇宙を航行する者達を「海賊」呼ばわりするような自由の無い宇宙の大海原ですから、
もともとザンギャックに反抗的であったマーベラス一味の他の仲間も、
かつて密航の経験ぐらいはあるであろうし、密航者と出会ったことも数多いと思います。
だから、仲間達は少年時代のマーベラスが貨物船で密航をしようとしていたという話自体は
大して珍しい話ではないし、動機は好奇心の類であろうと思いました。

そして、その貨物船がザンギャック軍に襲撃されたという話も、この宇宙ではそう珍しい話ではない。
ザンギャックの支配する領域ではザンギャック軍は治安を守って
悪人から人々を守護しているという建前にはなっているが、
実際にはザンギャック軍こそが率先して罪も無い人々を襲って略奪をしまくっている悪者であることの方が多い。

ザンギャック軍の匪賊同然の実態については、ジョーなどはその実体験者であるし、
他の仲間達も、地球人の鎧も含めて、イヤというほど知っています。
何か目ぼしい品物を積んでいそうな船を見つけたら襲撃して略奪し、
その行為を誰かに指摘されれば、自分達が攻撃したのは海賊や盗賊だったのであり、
あれは悪者を討伐しただけだと嘯くのがザンギャック軍の常套手段でした。
そんな見え透いた嘘でもザンギャックの支配領域では大手を振ってまかり通るのが、この宇宙の現実でした。
密航して呑気に星空を眺めていた少年はそうした宇宙の現実の洗礼を受けることとなったのです。

その時のことを回想して、現在のマーベラスは
「・・・あっという間に火の手が回って、俺は逃げられなくなった・・・」と話を続けました。
ザンギャック艦からの砲撃を受けて、その貨物船では火災が発生して貨物室には火の手が回りました。
もともと貨物室内の右も左も分からない状態の少年はどっちに逃げればいいのかも分からず右往左往して、
船員たちが火事で死んでいく姿などを目にしながら逃げ惑っているうちに、
何やら高い荷台の上で、下に降りるハシゴも炎で閉ざされてしまい、逃げ場を失って進退窮まってしまいました。
背後からも炎が迫っており、このままでは焼け死ぬのも時間の問題となりました。

その時、荷台の上で焦ってキョロキョロする少年に向けて「跳べぇっ!!」と大きな声で何者かが呼びかけました。
その声は荷台の下の貨物室の床の方から聞こえてきます。
少年が荷台の上から見下ろすと、貨物室の床の上、炎の中で革ジャンを着た1人の男が立って、
少年の方を見上げていました。

少年のいる荷台の上から見て、貨物室の床は10mぐらい下でした。
床もかなり火の手が回ってきていますが、男が入ってくることは出来ているわけですから、
まだなんとか外に脱出できる経路は繋がっているようです。
床にまで降りれば、今ならまだ脱出は可能でしょう。
しかし荷台から床に降りるハシゴはもう炎で閉ざされていますから、少年が床に降りるには飛び降りるしかない。
だが10歳そこそこの少年が10mも下に飛び降りれば怪我をして逃げられなくなる可能性が高いし、
だいいち普通は子供がこの高さは怖くて跳び降りることなど出来ない。

それで、その男は自分が下で受け止めてやるから飛び降りても大丈夫だという趣旨で、
少年に「跳べ」と言っているのです。
少年が助かるにはもうそれしか方法は無いでしょう。
じっとしていても炎は迫ってきており、すぐに荷台は炎に呑みこまれそうです。
下で受け止めてくれるという男は屈強そうな身体をしており、少年が跳び降りればきっと受け止めてくれるでしょう。
それならば男の言う通りに飛び降りて貨物室からの脱出を図るのが少年の生き残る唯一の道でしょう。

ところが少年は、下で待ち受ける男の方を見て逡巡し、目の前の手すりを掴んで俯き、
「ダメだよ・・・怖いよ・・・ぼく・・・死ぬ・・・」と力無く言って、後ずさりしていこうとします。
少年は怖気づいたようです。
そりゃあ確かに10mも下の床に飛び降りるのは、
たとえ下で受け止めてくれる人がいるといっても、子供には怖いことでしょう。
しかし、飛び降りなければ炎に包まれて焼け死ぬのです。
飛び降りるのも怖いが、普通は焼け死ぬ方がもっと怖いはずであり、
死ぬのが嫌だから仕方なく飛び降りることになるはずです。

しかし少年は死ぬよりも飛び降りる方が怖いようです。
それはつまり、死ぬのがあまり怖くないからであるようです。
というより、死ぬことにあまり抵抗が無い。
生きる気力が無くなっているということなのでしょう。
だから、死ぬことよりも飛び降りることの方が怖くなり、
いっそ死んでしまった方がマシだと思ってしまうようです。

そうした少年の生きる気力の不足が飛び降りる阻害要因となっているのを見てとったのか、
その男は少年に向かって、「男なんだろぉ!?」と叱るように言いました。
叱るといっても、非難するような感じではなく、親が子を叱るように愛情がこめて励ますような語調です。
この男の言葉に込められた温かさを感じた少年は、
冷めようとしていた心を揺り起こされたようにハッとして男を見下ろしました。

船外ではまだザンギャック艦による砲撃が続くという切羽詰った状況の中、
少年を見上げて、その男は「ここで死ぬのは君の勝手だ!」と言います。
そもそも、この男はこんな危機的状況の中で行きずりの少年を助けなければいけない義務があるわけではない。
貨物室で炎に呑みこまれそうになっている少年が助かろうとしているのだと思ったから、
それを手助けしようとして自発的に声をかけただけなのです。
誰かにこの少年を助けるよう依頼されたわけでもない。
だから当事者の少年に助かろうとする気が無いのならば、無理に助ける必要など無いのです。

実際、この男は少年の命を助けること自体にそれほど強い拘りは無いようです。
生きることだけに価値があるわけではない。
生きてさえいれば良いことがあるわけでもないし、命を長らえることだけが素晴らしいわけでもありません。
人間には死ぬべき時だってありますし、命を捨てる価値のある場合もある。
それは年端のいかない子供だって同じです。
子供だから特別に命の価値が高いわけでもない。
子供にだって命を捨てる権利はある。

しかし、それはたった1つしか無い命、たった1回しか捨てることの出来ない命の価値、人生の価値を
十分に分かった上で、今がまさにその命を、その人生を捨てる価値のある時だと思い定めた、
前向きな死でなければいけない。
もしそういう想いで死のうとしているのならば、たとえ少年であろうとも勝手に死ねばいい。
少なくとも、この男自身はこの貨物船の危機の中で見ず知らずの少年を助けるために自分の命を危険に晒しているのは、
そうした前向きな覚悟であるようです。

しかし、この男は少年からはそういう前向きな死の覚悟を感じることは出来なかったようです。
男は少年が単に未来に希望を持てずに生きる気力を失っているので安易に死のうとしているのだと感じたのです。
生きる希望を持てないから死を選ぶなどというのは、男として正しい道ではない。
男なら、そんな死に方はすべきではない。
その男は少年に男らしい生き方、男らしい死に方を求めたのです。

では、どうしてその男が初対面の少年が未来に希望を持っていないことが分かったのかというと、
少年が飛び降りることを怖がったからです。
つまり少年が勇気を持ち合わせていなかったから、
少年が「死ぬ」と言っているのは前向きな死ではなく、生きる希望を持てないから死に逃げ込もうとしている、
後ろ向きな死、およそ男らしくない死なのだと見破ったのでした。

勇気があれば、未来に希望を抱くことが出来るから、後ろ向きな死を選ぶようなことはない。
むしろ勇気ある者が選ぶ死とは、未来に希望を感じながら、それを捨ててでも何かを得るために、
あえて希望に満ちた自分の未来を捨てる勇気を貫く、前向きな死です。
少年がそういう前向きな死を選ぶというのなら止めはしない。
この男は少年に「死ぬな」と言いたいわけではない。
また、未来に希望を見出そうとしないような少年を無理に助けたいという気もありません。
この男は少年に向けて、生きるにせよ死ぬにせよ、未来に希望を抱くように諭している。
それこそが男らしい生き方なのだと教えているのです。

「・・・だが、君さえその気になれば、君の行く手にはきっと素晴らしい未来がある!」と、
男は優しく少年を元気づけるように言いました。
ここで男は無条件で未来が素晴らしいなどとは言っていません。
生きてさえいれば素晴らしい未来が得られるなどということはない。
「その気になれば」こそ素晴らしい未来は得られるのです。

では、「その気になる」とはどういうことなのかというと、
その答えとしてすぐにその男は、じっと自分を見下ろす少年に向けて
「それを掴み取るために勇気を出せ!」と力強く言いました。
つまり、勇気を出せば素晴らしい未来が感じられる、未来に希望を抱くことが出来る、
そしてその未来に感じた希望はきっと叶えられて、素晴らしい未来を掴み取ることが出来るのだと、
男は言っているのです。

勇気を出せば素晴らしい未来を掴み取ることが出来るのであり、
勇気を出して素晴らしい未来を掴み取る生き方こそが、真に男らしい生き方なのだという、
大人の男の人生訓を、この男は少年に教え諭してくれたのでした。
しかし、どうして勇気を出せば素晴らしい未来を掴み取ることが出来るのか?
そもそも「素晴らしい未来」というものが何なのかイメージ出来ない少年は、
行きずりの浮浪児である自分などに男の人生を説いてくれるその不思議な男の顔を真剣な眼差しで見下ろしました。

どうしてこの男の人は情けなく死を選ぼうとしている自分などに向けて
こんな緊急の場で一生懸命に男の生き方を説いてくるのか、
少年には理由がさっぱり分かりませんでした。
単に「勇気を出して跳び降りろ」とだけ言えばよさそうなものですが、
どうしてここで未来の話になるのか、少年にはよく分からないのでした。

しかし、それでも続けてその男が言ったセリフは少年の心に沁みました。
男は少年を見上げて、「あばよ涙・・・よろしく勇気だ!」と言うと、
右手の親指と人差し指をくっつけて立てて自分の頭の横に添えると、
少年に向けて敬礼するようにビシッと突き上げたのでした。

この男は少年がどうして未来に希望を抱くことが出来ないのか、理由を分かってくれていたのです。
男は少年の身なりや顔つきを見て、少年のこれまでの人生に辛いことや悲しいことがあまりに多すぎて、
それで未来に希望を見出すことが出来なくなっているのだろうと理解しました。
よほど恵まれない境遇で生きている少年なのであろう。
普通に考えれば、そんな少年の未来が素晴らしいものである可能性は低い。
だから「勇気を出せば素晴らしい未来を掴める」なんていうのは気休めに聞こえます。

しかし男は、そんな悲惨な境遇で涙してきたような少年にこそ、
今の悲惨な状態を抜け出すためには素晴らしい未来を掴むという不可能に挑戦する勇気が必要なのだと思いました。
そして、その勇気の必要性を最も理解しているのは、
最も悲惨な境遇にある少年自身のはずだということを知っていました。

一見臆病な弱虫のように見える少年だが、彼が悲惨な境遇にある限り、心の中では勇気を最も欲している。
勇気は少年の遠くにあるのではなく、少年のすぐそば、心の中にしっかり存在している。
ただ過去に辛い想いをしすぎたために涙が勇気を覆い隠しているに過ぎない。
自分の今の悲惨な境遇をひっくり返すような素晴らしい未来を思い描き、
その素晴らしい未来を掴み取ろうという意思さえ持てば、
少年の心の中の勇気は今より何倍も大きくなって、それを覆い隠している涙を消し去り、心の表面に姿を現す。

きっかけは「素晴らしい未来をイメージして掴み取る意思を持つこと」だけでいい。
わざわざ勇気を何処かから持ってきたり、新たに作り出す必要など無い。
勇気はもとから少年の中に存在しているのです。
素晴らしい未来をイメージし、勇気を覆い隠す涙に別れを告げれば、自然に勇気が湧いてきて、
これからは勇気が少年にとって未来を掴む旅の友となる。
それぐらい簡単なことなのです。
涙に別れを告げて勇気と共に進むという選択が、それぐらい気軽なものであるということを表す言葉が
「あばよ涙、よろしく勇気」という、全く日常的な感覚の言い回しであるのです。

その男の平易な言葉を聞いて、少年は自分の心の中に確かに勇気が存在することを感じた。
そして、その男の言う「素晴らしい未来」というものが何なのかよく分からないが、
とにかくそんなに素晴らしいのならば、それを掴みたいという熱い想いが湧き、
同時に自分のような浮浪児がそんなものを掴むのは不可能だと思えた。
そう思うと、少年は悔しくなってきて、俯いて拳を握りしめました。

不可能なのは分かっている。
しかし、それでも少年は素晴らしい未来というものを掴みたいと思いました。
すると、不可能に挑戦するという、今まで少年が経験したことのない、
ゾクゾクする熱い感覚が込み上がってきます。
少年は「面白いじゃないか」と思えてきました。
そして、これが本当の「勇気」というものなのかと思えてきました。
そう思えてきた少年はその勇気が本物であることを確かめるかのように右手の拳をギュッと強く握って、
階下に立つ男の真似をするように「・・・よろしく・・・勇気・・・!」と呟いて、
親指と人差し指をビシッと揃えて立ててみました。

気が付けば、未来を悲観して此処で死んでしまおうという気持ちは少年の心の中から無くなっていました。
その代わりに、ここを生き残って、「素晴らしい未来」を掴み取りたいという想い、
そしてその困難に挑戦する勇気が少年の心を占めていました。
少年は俯いていた視線を上げて、階下の男を見下ろして睨みつけました。
その目は先ほどまでの弱弱しいものではなく、ギラギラした光が宿っています。

その「素晴らしい未来」を掴みたいという夢に目覚めた少年は、
これからはその夢を掴むために勇気を出そうと決意し、
まずはこの火災の危機を切り抜けて生き残って夢に向かって進むために勇気を発揮しました。
少年は躊躇することなく目の前の手すりを乗り越えて、その足は虚空に向かって踏み出しました。

当然、少年の身体は下の床に向かって落下を開始し、
その一瞬後に、少年がさっきまで立っていた荷台の上の空間は噴き出してきた炎に呑みこまれ、
少年の背後では大爆発が起こったのでした。
少年は背後から爆風を受けて「うわあああ!」と叫びますが、
一瞬早く飛び出していたため、間一髪、命拾いしました。
そのまま落下した少年は下で待ち受けていた男に受け止められて、無事救出されたのでした。

以上がマーベラスの回想した内容でした。
この少年の成長した姿が現在のキャプテン・マーベラスなのですが、
一方、この少年を救出した男は何者であったのかというと、
この男に救出されたマーベラス自身、この男が何者であったのか覚えていません。
というより、この男が何者であったのか、その事件の当時において最初から不明だったのです。

マーベラス少年は男に救出された後、すぐに貨物船の救命艇に乗せられて、
他の生き残りの船員たちと共に炎上する貨物船から脱出したのですが、
救命艇までマーベラスや他の船員たちを誘導していたその男は、貨物船から離れた救命艇には乗っていませんでした。
男はマーベラスの気付かないうちに姿を消していたのです。
まさか、マーベラスに向かって生きるように諭したあの男が自ら炎上する船と共に死を選んだとも思えないので、
男は自前の脱出手段を持っていたと思われました。

当然、その時マーベラス少年はあの男が誰なのか、他の船員たちに尋ねましたが、
あの男は貨物船の船員ではなかったようで、そもそもあんな男はその貨物船には乗っていないはずでした。
ならばマーベラス同様に密航者という可能性もありましたが、
あの男の堂々とした態度や、自前の脱出手段を持っていたことなどから、その可能性は低いと思われ、
おそらく別の船で宇宙を航行していたあの男がザンギャック軍に襲撃されている貨物船を見かけて、
わざわざ乗り込んできて人命救助をして、そして自分が何者か告げることもなく去っていったようです。
そういうわけで、その男が実際のところ、どこの誰なのかはマーベラスにはずっと分からないままでした。

なお、このマーベラスの回想シーンを見た視聴者の多くは、
この男がおそらくギャバンの10年ほど前の姿なのだろうということは分かるはずです。
ここの回想シーンではこの男はバックショットとロングショットだけで映されており、
顔がハッキリとは映っていません。
これはマーベラスがこの男の顔をよく覚えていないということを象徴的に表現している演出ですが、
それでも視聴者目線で見れば、ほぼ間違いなく大葉健二氏の演じるギャバンに見えます。
これだけボカした演出の場合、よく似た他人というオチも有り得ますが、
ここの場面では声も完全に大葉氏の声なので、視聴者はほぼ間違いなくこの人物がギャバンだと認識は出来ます。

また、この男が「あばよ涙、よろしく勇気」という
1982年版のギャバンTV本編の主題歌のサビの歌詞のフレーズをセリフにして喋っていること、
この映画に登場した老ギャバンも同じ「よろしく勇気」というセリフを同じ仕草で喋っていること、
この男の「あばよ涙、よろしく勇気」という言葉の解釈が
先だって考察した1982年版ギャバンやこの映画における老ギャバンにおける
このフレーズの解釈とほぼ同じであることなどからも、
この男はギャバンである可能性が濃厚といえます。
なお、この回想シーンでこの男が少年マーベラスに向けて言った「男なんだろ?」というセリフが
1982年版ギャバンTV本編主題歌の冒頭のフレーズと同じであるというのも、
スタッフの遊び心であり、この男がギャバンであることを暗示する符号といえます。

まぁ、これらの主題歌絡みのメタ的な符号というのはともかくとして、
この回想シーンはあくまでマーベラスの脳内で思い出された情景そのものですから、
現時点でのマーベラスは視聴者が見えたり聞こえたりしているのと同じ程度には
およそ10年前の事件の時の男の顔や声を思い出しているのでしょう。
それならば、その回想の中の男が昨日出会ったギャバンである可能性が高いということも認識出来ているはずです。

これほど鮮明に覚えていたのなら
昨晩の初対面時にもマーベラスはギャバンが昔自分を助けてくれた男かもしれないと思っても良さそうなものですが、
ここの回想シーンの鮮明さというのは、
あくまでさっきの処刑場の脱出直前のギャバンの「よろしく勇気」という言葉を聞いて以降、
マーベラスの頭の中で遠い記憶が次第に鮮やかに甦ってきているからこそのものと解釈すべきでしょう。

それ以前は、この遠い昔の記憶はもっとぼんやりとしており、この男の姿も声ももっと曖昧なものでした。
実際、さっきの処刑場でギャバンの「よろしく勇気」のセリフを聞いた直後の
マーベラスの脳裏をよぎった回想シーンでは、
この男が「よろしく勇気だ」と言う後ろ姿が一瞬甦っただけであり、しかもそれはモノクロでした。
それが数時間経過して今回の仲間たちに請われて語るために回想したシーンは、
もっと前後の出来事も詳細に、赤味がかったカラー映像で思い出されており、
その男の姿や声も鮮明になっているのです。

このように徐々にマーベラスの回想は鮮明になってきており、最初は全てがボンヤリしていました。
そんなボンヤリした記憶の中でただ一つ「よろしく勇気」のセリフだけはマーベラスはハッキリ覚えていたので、
ギャバンが処刑場で「よろしく勇気」と言った時、マーベラスは驚いて、
この記憶を思い出すきっかけとなったのでした。
それだけこの「よろしく勇気」という言葉はマーベラスにとってインパクトのある言葉であったのです。

この回想の事件そのものはマーベラスの中ではこれまであまり思い出されることもなかったボンヤリしたものでした。
思い出してみると、確かに重要な出来事であったことが分かりますが、
普段のマーベラスはこの事件のことをそんなに常に意識しているなどということはなかった。
それなのに、この事件の時に登場した「よろしく勇気」という言葉だけは
マーベラスの頭の中では重要な位置づけであったようです。

しかし普段のマーベラスは仲間たちとの会話の中で、この「よろしく勇気」などという言い回しは使わない。
それなのにギャバンがその同じセリフを言っただけで激しくショックを受けてしまうほどに
マーベラスの中では「よろしく勇気」という言葉が重要な位置づけであるというのは、
「よろしく勇気」という言葉はマーベラスにとっては
その最初に聞いた時の想い出を忘れてしまっても覚え続けることが出来るほどに、
普段から心の中で想起され続けている、自分の核心として常にあり続けた言葉であり、
それはあまりにマーベラスの核心であるゆえに
仲間との会話の中でも軽々しく口にすることもない言葉だったのだと思われます。

つまり「よろしく勇気」とそれに象徴される「素晴らしい未来を掴み取るための勇気」というものは
マーベラスという人間のアイデンティティそのものと言っていいでしょう。
そして、この「よろしく勇気」という一風変わった言い回しは、
マーベラスは遠い昔のボンヤリした記憶の中で誰かに聞かされて以来、
他に誰かが口にしているのを聞いたことはありませんでした。
そうしてマーベラスは何時しか、この「よろしく勇気」というのは
自分だけが知っている言葉であるかのような感覚を持つようになっていました。

だから、さっき処刑場を脱出する直前にその言葉がギャバンの口から出てくるのを聞いた時、
マーベラスは心底驚き、混乱したのでした。
それでマーベラスは、変身するのも忘れて、慌てて記憶を辿り、
自分がこの言葉を最初に誰から聞いたのか思い出そうとしました。
そうして思い出したおぼろげな記憶の中では、
この「よろしく勇気」という言葉をマーベラスに教えてくれたのは、
確かマーベラスの父親であったということになっていました。

それでマーベラスはビックリして、ブートレグと戦うギャバンを見つめました。
あの宇宙刑事ギャバンが自分の父親だったのかと思い、
同時に、いやそんなはずがないという想いも交錯して、
更にそこに遠い昔の何処かの火事場の記憶がフラッシュバックしてきて、
何が何やら分からない混乱状態の中でマーベラスがギャバンを見つめていたところに
鎧が豪獣ドリルで乱入してきて、ジョーに怒鳴られてマーベラスは我に返って、
後ろ髪引かれる想いでギャバンを残してその場を脱出したのでした。

そうして脱出した後、やや落ち着いたマーベラスは、
さっきの自分はいきなり「よろしく勇気」という言葉を聞いたことや、
ザンギャック軍に包囲された極限状態であったこと、
直前に処刑されかかって間一髪助かったことなどから、かなり興奮状態であったことが分かりました。
それで落ち着いた思考が出来なくなっていたのだとマーベラスは思いました。

少し落ち着いてよく考えてみれば、ギャバンが自分の父親であるはずがない。
そもそも、自分に「よろしく勇気」という言葉を教えてくれた人物は
自分の本当の父親ではないのだということをマーベラスは思い出したのでした。
自分が勝手にそのように思っていただけのことであって、本当は違うのだということは知っている。
処刑場を脱出した後、少し落ち着いてからマーベラスは、
脱出直前に頭をよぎった例の火事場の記憶が何だったのか思い出して、
それが10年ちょっと前の事件であり、自分はその時にある人物と出会って「よろしく勇気」という言葉を聞き、
それ以降、一時期その人物のことを自分の父親だと勝手に思っていたのだったということを思い出しました。

しかし、今度はそうなるとギャバンは自分の父親ではないとしても、
その事件の時に出会った男その人なのかもしれないとマーベラスには思えてきました。
つまり、まださほど鮮明に思い出せてはいない、その10年ちょっと前の事件の時に
自分は宇宙刑事と出会って「よろしく勇気」という言葉を教えられたということになる。
しかし、自分のその記憶は確かそんな感じのものではなかったように思えて、マーベラスは再び混乱しました。

その時に出会った相手が宇宙刑事であるはずはないように思えて、
やはり自分の思い違いであったのかとも思えましたが、
その事件の記憶が甦っていくにつれて、
その記憶の中の人物の輪郭がどうもギャバンと似ているようにも思えてきます。
しかし、もしその人物がギャバンだったとしたなら、かなり話がややこしいことになりそうな気がして、
マーベラスは困惑しました。
何がどうややこしいことになるのかハッキリはしませんが、どうも落ち着かない気分であったのでした。

それでガレオンに戻ってからもマーベラスはじっと黙って、
ギャバンのことや、その事件のことを考え込んでいたのですが、
そこにジョーのツッコミが入って、マーベラスは思わず
「ギャバンに出会ったことがあるかもしれない」ということで悩んでいると答えてしまい、
アイムに請われ、皆の圧力も感じて、結局、仲間達にその10年ちょっと前の事件の話をしたのでした。

それがここで述べられた、炎上する貨物船からの脱出事件の回想だったのですが、
ここでマーベラスに求められていた説明は、ギャバンとの過去の因縁についてでしたので、
この貨物船炎上事件の時に自分が出会った男がギャバンなのではないかという疑惑を
自分が感じているということだけが仲間達に伝われば十分に説明は果たしたことになります。

そのためにはマーベラスは、少年時代の自分が密航しようとしていた貨物船がザンギャックに襲われて炎上し、
そこに現れた見知らぬ人物が自分を助けてくれたという話、
飛び降りるのを怖がって助かるのを諦めようとしていた自分を
その人物が素晴らしい未来を掴むために勇気を出すように励ましてくれて、
それによって自分は勇気を出して飛び降りて、その人物に受け止めてもらって助かることが出来たという話、
そして、その人物が自分に勇気を出すように励ます際に言ってくれた言葉が
「あばよ涙、よろしく勇気」だったという話、
だいたいこれぐらいの表面的な話を仲間達に説明すれば十分でした。

それだけ聞けば仲間達は、鎧を除いては
さっきマーベラスと共にギャバンが「よろしく勇気」という謎めいた独特のセリフを言っていたのを聞いていますから、
マーベラスがギャバンとその事件の時に出会った人物とが同一人物ではないかと思って
頭を悩ませていることは理解してくれるはずでした。
だからマーベラスもそれに十分な表面的な説明、
つまりその事件の時に起こった出来事だけを整理して伝えただけでした。

つまり、その事件の際にマーベラス自身がどんな想いでその男の言葉を受け止めたのか等、
ここまで述べてきたような深い心情的な部分はマーベラスは仲間たちに説明していません。
というか、マーベラス自身、仲間たちに向けてその事件の事実関係を説明していくことによって、
同時進行で事件の詳細がようやくハッキリと思い出されてきたのであり、
同時にようやくその事件の時に自分がどんなことを感じていたのかについても鮮明に思い出してきたのですから、
それを整理して仲間たちに伝える余裕はありませんでした。

そして、そうしてあの時感じたことまで鮮明に思い出したことによって、
マーベラスはあの事件の後、どうして自分があの人物のことを父親と思うようになったのかという事情も思い出し、
更に一番大事なことも思い出してきたのです。
それはマーベラス自身にとっても、ついうっかり忘れていた記憶であり、
しかし自分にとって一番大事な記憶でした。
窓の外を眺めながら10年ちょっと前のその事件についての説明を終えたところで、
その重大な記憶が頭の中に浮かび上がってきて、
マーベラスはそういえばそういうことだったのだと思い至りました。
それは、まさに現在のマーベラスという人間の原点でした。

そこでマーベラスは、この記憶が自分の夢の原点だったのだと気付き、
最初に想像していたよりも自分にとって重大な過去であったことを知りました。
それに気付いたことで、マーベラスはどうして自分が仲間たちに
わざわざこの話をするような流れに持っていってしまったのか謎が解けたように思えました。
自分自身、無意識にこの想い出が自分の夢の原点だと分かっていたから、
仲間たちと共にそれを乗り越えるために認識を共有しようとしていたのだと思えたのでした。

そういうことだったのかと思い、マーベラスは窓の外を見たまま、
あの事件の時、飛び降りた自分を受け止めてくれた男の大きな背中に父親を感じて抱きついた感触を思い出し、
あれが自分の夢の原点だったのだと実感して、ぎゅっと拳を握ると、
仲間達の方に振り向いて「・・・で!・・・今の俺があるってわけだ・・・」と、さっきよりも明朗な声で言いました。

皆に説明したお蔭で自分の頭の中も整理されて、自分の原点を知ることが出来た。
そのことを素直に嬉しく思うマーベラスだったのですが、
一方、そのマーベラスの想い出話を聞いていた5人の仲間たちは皆一様に深刻そうな、困惑したような、
なんとも複雑な表情をしています。
皆の方に振り向いて船室の中央に歩いて戻ってきたマーベラスは皆の表情が意外に暗いので一瞬戸惑いました。

そこにジョーが腕組みをしたまま「・・・だとすれば・・・あの宇宙刑事は命の恩人ってことか・・・」と呟くのを聞いて、
マーベラスはハッとして立ち止まりました。
自分の原点を思い出したなどと感じているのは、あの事件の時の自分自身の想いを思い出した自分だけであり、
事実関係だけを聞かされたジョー達から見れば、
単に火事場で怖気づいていた子供の頃のマーベラスをギャバンらしき人物が通りがかって勇気づけてくれて、
お蔭でマーベラスが命拾いしたという話でしかないということにマーベラスは気付いたのでした。

もしその程度の想い出話だったとするなら、
皆が予想して待ち構えていたような話とはだいぶ違うのだろうとマーベラスには思えました。
皆は「赤き海賊団」の壊滅事件のことを告白した時のような、
マーベラスの現在に重大な影響を与えているインパクトある事件の告白を期待していたのであろうというのに、
自分の説明した事件のあらましは、単にギャバンが自分の子供の頃の命の恩人かもしれないという話であり、
現在の自分がさっき思い悩んでいたのは、単に命の恩人かもしれない人の安否を気遣っていたという
全く個人的な話に過ぎないことになる。

そこでマーベラスは、ジョー達に向かって、
実はそうではなくてこの一件は自分の夢の原点に関わる重大な出来事だったのだということを
説明しようかと思いましたが、
その瞬間、では自分はさっき何を思い悩んでいたのだろうかと思い返しました。
確かに単に命の恩人の安否を気遣っていたというわけではない。
あの時の命の恩人がギャバンであるとするなら何か自分にとって重大な問題があるように思えて、
それで悩んでいたはずです。

いったい何が問題であるのか、その時点ではハッキリ分からなかった。
だが、あの事件が自分にとって夢の原点と思えることが判明した今となっては
何が問題だったのかマーベラスにはよく分かるような気がしました。
それはジョーが「宇宙刑事が命の恩人」と言うのを聞いた瞬間、
その言葉がマーベラスの心に突き刺さったからでした。

マーベラスにとっての命の恩人、すなわち、あの事件の時に出会った男は「宇宙刑事」などではなかった。
そのことが前提となって現在まで繋がるマーベラスの夢の原点は成り立っていたのです。
だから、もしあの時の男が宇宙刑事ギャバンであるのなら、
マーベラスの夢の原点は単なる勘違い、思い込みの類であったのかもしれなくなる。
ギャバンがあの時の男かもしれないと気付いた時から
ずっと自分の心に引っ掛かっていたのはそのことだったのだと気付き、
マーベラスは船室の真ん中で立ち止まったまま、険しい顔をして俯きました。

さっき皆に想い出話をした際にあの事件の記憶は更に鮮明になり、
あの男の姿や声もより鮮明に思い出されてきました。
その結果、マーベラスはますますギャバンがあの時の男であるような気がしてきていました。
しかし、そういうことになると、結果的に自分は重大な思い違いをしていたということになる。
そう思えてきて、マーベラスは困惑しました。
これでは仲間たちに自分の夢の原点を見つけたなどと言うどころではない。
それどころか、現在の自分の正当性に関する自信すら揺らいできます。

この場面、マーベラスは黙って険しい顔をしているだけであり、
その後も結局、マーベラス自身は自分が何を悩んでいたのか明言はしていません。
しかし、これより後の映画内でのマーベラスとギャバン、そして仲間たちの
微妙な心情を見せるドラマを読解するためには、
かなり背景となるストーリーを補完する必要があるように思えますので、
このブログではマーベラスの原点となる物語をここで勝手に補完させてもらうことにします。
まぁいつもながらの妄想なので申し訳ないのですが、
後でギャバンに関する補完ストーリーも合わせて、とにかく妄想で書かせてもらいます。

そういう補完ストーリーを踏まえて、改めてマーベラスの回想した10年ちょっと前の事件のことを考察してみますと、
まず、この回想内に登場する少年は「マーベラス」という人物なのかという疑問が浮かんできます。
もちろん、現在のマーベラスが回想している内容の主格であるのですから、
この少年はマーベラスと同一人物なのでしょう。
この少年が後にマーベラスとなったのは間違いはない。

しかし、果たしてこの時点でこの少年は「マーベラス」という名であったのでしょうか?
私は違うと思います。
マーベラスはさっきこの事件の回想を述べた後、「で、今の俺があるってわけだ」と言いました。
マーベラスは教養が足りないので気の利いた言い回しが出来ない。
だから何だか「命を救われて今の俺は生きている」という当たり前のことを言っているように聞こえますが、
これは実際は深い意味が込められているのだと思います。
つまり、この事件の結果、この少年は「マーベラス」という人物に生まれ変わったのだと思うのです。

この「海賊戦隊ゴーカイジャー」という物語の主人公である
「キャプテン・マーベラス」というキャラクターの名称の由来について、
そういえばこのブログでは一度も触れたことはありませんでした。

この名称はおそらく任天堂が1996年に発売したスーパーファミコン用ゲームソフト
「マーヴェラス〜もう1つの宝島〜」に由来していると思われます。
そもそも「海賊戦隊ゴーカイジャー」という物語自体、
「伝説の海賊の宝を探しつつ主人公が成長していく旅の物語」という物語の骨子からして、
19世紀末にイギリスのスチーブンソンによって書かれた海洋冒険小説の古典的名作にして
ジュブナイル小説の傑作である「宝島」を明確にモチーフとしていますが、
その「宝島」をモチーフとして1996年に製作されたゲームソフトが「マーヴェラス〜もう1つの宝島〜」です。

このゲームソフトも元ネタの「宝島」同様、海賊の隠した伝説の秘宝を探すというストーリーに従って進行する
ロールプレイング形式のアクションアドベンチャーゲームですが、
この物語の中で主人公(プレイヤー側)の少年たちが探し求める宝を隠した伝説の海賊の名前が
「キャプテン・マーヴェリック」と言います。

「マーヴェリック」とは「異端者」という意味を持つ単語であり、
このゲーム内では「荒くれ者ばかりの海賊の中で一風変わった知恵のある海賊として知られていた」という意味で
「異端者」の異名をとっていたという設定となっています。

しかし「マーヴェリック」という単語のもともとの意味は、
カウボーイが使っていた「焼印を押していない牛」であり、つまり「家畜ではない野生の牛」を表す言葉でした。
ここから派生して「飼いならされていない、組織に属していない異端者、一匹狼」の意味で使われていたのであり、
単なる変わり者というよりは、
「巨大な敵に立ち向かう自由自立の気概を持つ孤高かつ破天荒な抵抗者」のイメージが強い。
だから、もともと「マーヴェリック」という言葉は、いわゆる物語上の「海賊」のイメージに合致しており、
海賊の固有名詞として相応しいと言えます。
この「海賊戦隊ゴーカイジャー」の主人公である若き宇宙海賊の船長のキャラも、
まさに「キャプテン・マーヴェリック」という名にピッタリの典型的な反骨の海賊キャラとなっています。

しかし「キャプテン・マーヴェリック」という名をそのまま主人公の名にしてしまうと、
このゲームのキャラの名前をそのままパクったことになってしまうので、それではいくら何でもマズいので、
このゲームのタイトルであり、このゲームで登場する海賊キャプテン・マーヴェリックが隠した
財宝の名称でもある「マーヴェラス」を拝借して、
「キャプテン・マーベラス」という主人公の名前を設定したのでしょう。

「マーヴェラス」は「素晴らしい」という意味を持つ単語です。
つまり海賊マーヴェリックの隠した宝が「素晴らしい宝」であるという意味で、
その宝の名称が「マーヴェラス」となっているのです。
そうなると、この「海賊戦隊ゴーカイジャー」の主人公の海賊船長は
「素晴らしい」という意味を持つ名前であるということになります。

下賤な海賊にしては妙に立派な名前であり、
実際この船長のキャラは、妙に魅力はありますが、それでもそんなに素晴らしい人格者というわけではありません。
単細胞の乱暴者で、やたらと食い意地が張っています。
ハッキリ言って、名前負けしていると言ってもいいでしょう。

マーベラスが立派な素晴らしい人物だと視聴者が受け取るのは自由ではあるし、
実際のところは素晴らしい人なのかもしれません。
しかし、少なくともこのマーベラスという男は自ら「素晴らしい男だ」と主張するようなキャラではない。
そんなキャラがそんな名前負けするようなご立派な名前を名乗っているという設定になってしまったのは、
本当はこのゲームに登場する「キャプテン・マーヴェリック」という名から連想して作られたキャラが、
そのままその名を使うわけにいかないので、語感が似ていてゲーム内でもこのキャラに関わりの深い
「マーヴェラス」を名前として使うことにした結果だと思います。

そんなことは偶然に過ぎないという見方も出来るでしょうが、
この「海賊戦隊ゴーカイジャー」の制作陣はおそらく、
この「マーヴェラス〜もう1つの宝島〜」を番組制作過程で参考にしていた時期はあるはずだと思います。
そう思う根拠は、両者が「宝島」というモチーフを共通しているという点もありますが、他の理由もあります。

この映画の感想記事は物語内の時系列的にはTV本編のクライマックス篇5話の前に位置するので、
クライマックス篇の内容に触れるのはこのブログのルール的にはネタバレになってしまうのですが、
ちょっとネタバレしてしまうと、
クライマックス篇の中で登場する「宇宙最大のお宝」の形状が
任天堂のゲームソフト「ゼルダの伝説」に登場する秘宝「トライフォース」に酷似しているのです。

つまり、この「ゴーカイジャー」の制作陣は「ゼルダの伝説」に題材を求めるという意識は持っていたことになります。
そして、この「ゼルダの伝説」は「マーヴェラス〜もう1つの宝島〜」と制作スタッフの多くが共通しており、
「マーヴェラス〜もう1つの宝島〜」は「ゼルダの伝説」と同一世界観の物語であるとも認識されています。
つまり、この2つのゲームは関係が深いのであり、
「ゴーカイジャー」の制作陣が「ゼルダの伝説」を参考にする意識を持っていたのならば、
「マーヴェラス〜もう1つの宝島〜」も参考にしていた可能性は高いといえます。

むしろ、そこに登場する宝の名を主人公の名前として拝借するほど
「マーヴェラス〜もう1つの宝島〜」を最初から参考にしていたからこそ、
クライマックス篇の構想を練る段階で「マーヴェラス〜もう1つの宝島〜」に関係の深い
「ゼルダの伝説」が参考にされたのだと言えるでしょう。

ともかく、「マーヴェラス〜もう1つの宝島〜」を参考にしていたとするなら、
「ゴーカイジャー」の主人公に最も相応しい名前は本当は「キャプテン・マーヴェリック」の方であったはずです。
それが「キャプテン・マーベラス」という名に落ち着いたのは、
ゲームのキャラ名をそのまま使うわけにはいかなかったからであろうと思われ、
この主人公のキャラに「マーベラス」という言葉の意味が合致しているから
「マーベラス」という名になったわけではないと思われます。

その結果、「マーベラス(素晴らしい)」という名にはあまり相応しいとは言えない
粗野で下品な男がキャプテン・マーベラスというキャラ名となったとして、
それはあくまで制作過程での事情であって、
劇中でこの海賊船長が「キャプテン・マーベラス」と名乗るようになった経緯ではありません。

どうして彼は「マーベラス」という名前なのか、
その由来について、この物語の中でこれまで説明されたことはありませんでした。
それは絶対に説明されなければいけないというほどのことではなく、
単に親が彼にその名前を何となく名づけたのだろうと勝手に解釈しておいてもよかったと思います。
しかし物語的な時系列で最終盤となるこの映画において、ハッキリした描写ではないものの、
どうして彼が「マーベラス」という名なのかという由来が暗示されたような気がします。

実際はこの物語の制作過程では「マーベラス」という名は「マーヴェリック」の代案のような位置づけであり、
積極的に「マーベラス」というキャラ名に意味を持たせてはいなかったと思います。
しかし、今回「ゴーカイジャーVSギャバン」の映画を作るにあたって、
マーベラスとギャバンの過去の出会いのストーリーを作る過程で、
上手く「マーベラス」という名前の劇中における由来を回収したのだと思います。

ところで、先だって、マーベラス一味の面々の過去とも向き合い方について考察した際、
他のメンバーが仲間に加わった当初は過去に向き合わないまま仲間との信頼関係を築くことに
それなりに苦労していたのに、
マーベラスだけは過去に向き合わずに仲間との信頼関係を築くことに苦労した様子は無いと言いました。
マーベラスという人間は極端に過去に無頓着であるとも言いました。
それは、マーベラスにはそもそも「過去」というものが無かったからではないでしょうか。

もちろん現在のマーベラスには「赤き海賊団」時代などの過去の想い出はあります。
しかし、マーベラスという人間はそれ以前の人格形成期に
「過去を持たないまま人間関係を築く」という生活を当たり前のように送っていたので、
その結果、過去に無頓着なまま人間関係を作ることに長けた人間となったとも考えられます。
つまりマーベラスは自分のルーツや根っこを知らない。

マーベラスの「赤き海賊団」以前の過去に関して、この「ゴーカイジャー」の物語の中でこれまでに示された情報は、
まずマーベラスの故郷の星はザンギャックに滅ぼされたということがあります。
そしてアカレッドと出会う以前は1人でチンピラのような生活を送りながら
ザンギャックの施設を襲ったりして海賊を自称しており、
「宇宙最大のお宝」という海賊の伝説のお宝に憧れを抱いていた。
そしてアカレッドに誘われて、そのままアカレッドについて行って「赤き海賊団」に入りました。

これを見る限り、どうやらこの時点でマーベラスに親や家族の類はいないようです。
そして今回の映画では少年時代のマーベラスが浮浪児であり、
密航して何処かに行こうとしていたというのが描かれました。
ここにも家族の影は全く見えません。

ここでの少年マーベラスの生きる気力の欠乏した様子や、ギャバンと思われる男の言葉に対する反応、
そしてこの映画におけるこの後のマーベラスとギャバンの不思議な擬似的な父と息子のような関係も考え合わせると、
どうもマーベラスは本当の父親というものをそもそも知らないのではないかと思えます。

おそらくマーベラスが赤ん坊の頃にマーベラスの故郷の星はザンギャックによって滅ぼされ、
マーベラスの両親はその時に死亡したのではないかと思います。
その際に子供たちは脱出させられて生き残り、
その時赤ん坊だったマーベラスは物心ついた時にはもう既に天涯孤独の孤児であり、
自分の親が何処の誰であり、何をしていた人なのか、
そもそも生きているのか死んでいるのかさえ、何も知りようもなかったのでしょう。
ただ、少し大きな子供たちや生き残りの大人たちから、
自分の生まれた星がザンギャックに滅ぼされたということは教えられ、
おそらく自分の両親はその時に死んだのであろうと理解しました。

マーベラス少年の周囲には同じように自分の過去やルーツが何も分からない孤児ばかりであったので、
過去の無い者同士で人間関係を築くのはマーベラス少年にとって当たり前のことであり、
それゆえマーベラスは過去に無頓着なまま他人と関係を築くことに全く抵抗が無いのです。

いや、そもそもこの少年は「マーベラス」という名ではなかったはずです。
もともとは生まれた時に両親につけられた本名があったはずですが、
それは故郷の星が滅びて両親と別れてしまった後、もう分からなくなってしまっていたと思われ、
この少年は最初、名前すら無かったと思われます。
ただ、それでは不便なので孤児集団の中で便宜的に何らかの名前をつけられたと思われますが、
間違っても「マーベラス」などという立派な名前ではなかったはずです。
浮浪児のような戦災孤児には「素晴らしい」などという意味を持つ名前はあまりにも似合わない。
何か別の、至って平凡な名前がつけられていたはずです。

その少年の人生がロクなものでなかったのは状況的に容易に想像出来ますし、
実際、この映画では10歳過ぎぐらいに成長したその少年は浮浪児になり、生きる気力が欠乏した状態でした。
このザンギャックに支配された宇宙で、ザンギャックに逆らって滅ぼされた星の生き残りの
天涯孤独の戦災孤児の浮浪児が何をやっても浮かび上がれない極貧生活を送るのは当然で、
それだけでも絶望すべき状況ではありますが、
この少年の場合、親の顔も正体も知らず、自分の本当の名前も知らず、
自分が何処の何者なのか分からない状態で、どのように生きるべきか指針を示してくれる大人もいない中で育ったため、
このどん詰まりのような人生をいったいどうやって切り開いていけばいいのか
皆目見当がつかない状態であったと思われます。
それで何処か別の場所に行けば人生が変わるかもしれないと思い、
貨物船に潜り込んで新天地を目指したところ、ザンギャック軍の襲撃に巻き込まれてしまったのでしょう。

そして、その時、少年はすっかり絶望してしまったのでした。
ザンギャックに故郷を滅ぼされ、親を殺されて天涯孤独の孤児にされてしまい、
何をやっても報われることの無さそうな人生に最初から放り出されてしまい、
自分が何処の何者なのかも分からず、何を目指して生きればいいのかも分からない。
何かが変わるかもしれないと期待して宇宙に飛び出してみたらザンギャックに襲われてしまった。
このまま逃げ場の無い宇宙空間で、会ったことのない両親と同じように
自分も惨めにザンギャックに殺されるんだろうと少年は思いました。

自分は所詮はザンギャックには勝てない弱者なのであり、
親子ともどもザンギャックにいたぶられて殺されるだけの惨めな人生だったように思えました。
これまでもロクなことが無かった自分の人生の結末などそんな程度のものだったのだろうと妙に納得出来てしまい、
ここで足掻いて仮に助かったとしても、特に何か目標があるわけでもない人生がこの先続いても、
こんなつまらない世界でこれから先どうせ良い事などありそうにない。
辛く悲しいことばかりこれからも続くのなら、
いっそここでこのままザンギャックに殺される方がマシだと少年は思いました。

そこにあの男が現れたのです。
その男は少年に向かって、素晴らしい未来を掴み取るための勇気を持つことさえ出来れば、
悲しい人生に別れを告げて前向きに生きていくことが出来ることを教えてくれました。
それが男らしい生き方だと諭してくれました。

それを聞いて少年はその「素晴らしい未来」というものを掴んでみたいと思い、生きていく勇気が湧いてきました。
そして、こんな自分でも、いやこんな自分だからこそ、
「素晴らしい未来」を掴もうと思うなら不可能に挑む勇気が湧いてきて
生きていくことが出来るという希望が生まれ、
その男の腕の中に飛び込んで助け出され、炎上する貨物船から生きて脱出することが出来ました。

少年はいっそそのままその男について行きたいと思っていたのですが、
その男は別の船で通りかかって炎上する貨物船に人命救助に来ていただけであったようで、
何時の間にかいなくなっていて、少年が乗った貨物船の救命艇には乗っていませんでした。
男の方も自分が助けたその少年が身寄りの無い孤児の密航者だったとは思わなかったようで、
貨物船を無事に脱出すれば少年には帰る場所があるのだろうと思って、
少年には特に何も言わず、少年を含む貨物船の生き残りが救命艇に乗り込んで脱出するのを見送って
自分の船に戻って立ち去ったようです。

そうして再び1人ぼっちになった少年は、
その男に言われたように、これからは勇気を出して涙に別れを告げて男らしく生きていくことを決意しました。
ただ、その勇気を出すためには「素晴らしい未来」というものを掴む意思を持たねばいけないが、
それまで素晴らしいことなど何一つ無かった少年には
「素晴らしい未来」というものが何なのかイメージ出来ませんでした。

少年は困ってしまいました。
きっとあの男は「素晴らしい未来」というものが何なのか知っていたはずなのに、
それが何なのか聞き出す前にあの男がいなくなってしまったのが残念でなりませんでした。

そもそもあの男は何者だったのだろうかと思った少年が
あの男に助けられて脱出した他の船員たちに質問すると、
船員たちはその男が「宇宙海賊」だと言いました。
ザンギャック軍に襲われている船に乗り込んできて人を助けたりするような、
ザンギャックに睨まれることを平気でやるような怖い者知らずは、
この宇宙では宇宙海賊しか有り得ないのだそうです。

実際は男は自分が何者か明確には告げずに立ち去ったようですが、
そういう態度からしてお尋ね者の宇宙海賊そのものであり、
船員たちが男を宇宙海賊だと断定するのも無理はありませんでした。

宇宙海賊といえばザンギャック政府は公式には悪辣非道な犯罪者であるかのように喧伝していましたが、
宇宙の大海原で現実を見ている船乗りたちは、大きな声では言えないが、
実際はみんな、ザンギャック軍こそが真の無法者であり、
宇宙海賊の中にはむしろ真っ当な連中も多少はいるということを知っていました。
だから、そういう真っ当な宇宙海賊がちょうど通りかかって
ザンギャックに襲われている貨物船を気の毒に思って助けてくれたものだと船員たちは理解していました。

少年はそれまで海賊とは極悪非道な奴らだと思っていたのですが、
船員たちの話を聞いて認識が変わり、自分を助けてくれた宇宙海賊に憧れを持つようになりました。
少年は親とも接しておらず、学校にも行っていませんでしたから、
それまで少年に男らしい生き方や、人生に希望があるというようなことを諭してくれた大人はいませんでした。
自分に温かい言葉をかけてくれて、あれほど親身になってくれた大人に接したのは初めてだったのでしょう。
少年は自分を受け止めてくれたその男の大きな手の温もりをずっと噛みしめ、
父親というものはこういうものなのだろうかと思いました。

本当の父親を知らない少年はその男が父親であるかのように、その男のことを思慕し、
その海賊の男が父親だったら良かったのにと思いました。
だが、よく考えてみると、少年の父親が本当に死んだのかどうか不明でした。
そもそも自分の父親が誰なのか分からないのですから、生死すら確かめようがないのです。
自分が孤児だから親は死んだと勝手に決めつけていただけで、
本当は父親は何処かで生き延びていて、自分の息子は死んだと思っているだけかもしれない。

少年はそんなふうに考えました。
そして、あの海賊の男こそが自分の本当の父親だったのではないだろうかと思いました。
何の根拠も無い妄想であり、少年自身、実際はそうではないことは分かっていましたが、
それでも少年はそう考えることで自信を持つことが出来たのです。

自分の父親はザンギャックにも立ち向かう勇気を持つ男の中の男で正義の宇宙海賊だ。
だからその息子の自分だって父親と同じように宇宙海賊になってザンギャックとも戦える。
そう思うことによって少年は初めて自分が何者なのか心に定めることが出来たのです。
自分は海賊の息子であり、将来は父親の後を継いで海賊になる。
少年はそう決心したのでした。

そして、そうして海賊になると決めた少年は、宇宙海賊について船員たちから話を聞いていくうちに、
あの男、つまり自分の擬似的な父親が言っていた
自分にとっての「素晴らしい未来」が何なのかについても心に定めることが出来ました。

海賊である父親が自分に掴み取るように諭し、自分が将来海賊として掴み取るべき最も素晴らしいものとは、
船員たちが「海賊ならば誰でも手に入れたいと願いながら未だに誰も手に入れた者がいない
伝説の最高のお宝」だと教えてくれた「宇宙最大のお宝」でした。
きっと海賊をやっている父親もその「宇宙最大のお宝」を手に入れたいと願っており、
それを自分の「素晴らしい未来」として心に定めて勇気を出しているのだと思った少年は、
自分も海賊となるからには自分の掴み取ろうとする「素晴らしい未来」は
「宇宙最大のお宝」であるべきだと心に決めました。

そうして、それまでの悲しみに挫けてばかりだった人生に別れを告げた少年は、
生まれ変わった自分にそれまでの冴えない名前ではなく、新しい名前をつけてやることにした。
いや、本来の名前を取り戻したのです。
自分の本当の父親であるあの海賊が赤ん坊だった自分に昔与えてくれた本名を
再び今の自分が自分に与えようと少年は思ったのでした。

もちろん、少年はかつて故郷の星の滅亡の前に赤ん坊の自分がどんな名前であったのかは知らない。
しかし、あの男が自分の父親であるのならば、きっと生まれてきた息子には
「素晴らしい未来を掴む勇気を持つ男になるように」と願うはずです。
だから、それにちなんだ名前を息子に与えたはずだ。
そう思った少年は、きっと自分の本名は
「素晴らしい」という意味を持つ「マーベラス」だったに違いないと思いました。

なお、この「ゴーカイジャー」の物語世界では
宇宙では何故か英語と日本語が公用語のようになっている。
全くアンリアルな設定だが子供番組なので問題は無いでしょう。
この公用語の英語で書かれた新聞を学校に行ったことがないというルカが普通にすらすら読んでいることから考えて、
この物語世界の宇宙では学校に行かなくても英語の読み書きぐらいは出来るようになるようです。
だからこの浮浪児の少年が「マーベラス」という単語の意味が「素晴らしい」だと知っていたとしても
何らおかしくはない。

ただ、本当に自分の昔の本名が「マーベラス」だと思っていたわけではない。
少年も本当はあの海賊の男が自分の父親ではなく、
自分に「マーベラス」という名を与えたりしていないことも心の底では分かっていました。
実際は海賊の男に「素晴らしい未来」を掴むことを目指すように諭されて生きる勇気を得た少年が、
その男を見習って海賊になることを決意し、
「素晴らしい未来」にちなんで自分で自分に「マーベラス」という新しい海賊としての名前を与えたのです。

ただ、弱虫だった自分が男らしい海賊になることが出来るという自信を持つためには、
その海賊の男と自分との間に父と息子の関係があるという思い込みを必要としたというだけのことです。
だから、そうして「マーベラス」と名乗るようになったその少年は、
別に本当にその海賊の男と自分が親子だと思い込んで探し回ったりすることはせず、
成長して、操船術と喧嘩の腕を磨いて、
無法なザンギャックの兵達に喧嘩を売ってやっつけて戦利品をいただいたり、
酒場の用心棒のようなことをやったりして、チンピラ紛いではあったが
それなりに自分なりに納得できる海賊生活が板についてくるようになると、
その男のことは精神的な父親として心の奥に大事にしまうようになりました。

そのマーベラスの海賊生活ですが、
彼が自分の「素晴らしい未来」として掴み取ろうと心に決めた「宇宙最大のお宝」を、
彼は本気で探し回ってはいませんでした。
アカレッドに出会った時、欲しいものは何なのか問われて「宇宙最大のお宝」だと答えながら、
同時に「所詮は伝説」だと言っています。
まぁ実際、海賊の間でも「宇宙最大のお宝」は伝説の存在であり実在はしないのだという考え方が常識的でしたから、
探そうにも手掛かりも無い状態だったのも事実でしょう。

ただ、マーベラスは最初から「宇宙最大のお宝」が自分にとって、
あくまで象徴的存在であることが分かっていたのではないかと思います。
本当に掴み取るべきものは「素晴らしい未来」なのであり、
それがあまりにも漠然としていて実態が分からないので、
海賊という自分の立場なりのより具体的な最高到達目標として「宇宙最大のお宝」を掲げたに過ぎない。
例えば、漠然と素晴らしい未来を夢見ている人々でも、
様々な職業ごとに掲げる目標は異なっているようなものです。

海賊だから「宇宙最大のお宝」を掴み取ることによって「素晴らしい未来」を掴むことになるのです。
ただ、実は「宇宙最大のお宝」にしても「素晴らしい未来」にしても、本当に掴み取る必要は無い。
あの男がマーベラスに言ったことは、それらを掴み取ろうとすることによって
勇気が湧いてくるというのが肝要なのであり、その勇気が人生の原動力なのです。
だから、掴み取ろうという意思さえ持続出来ていれば、
目当ての「宇宙最大のお宝」や「素晴らしい未来」は完全に手に入らなくてもいいのです。

だから勇気さえ湧いてきて人生が充実していれば、目標物が手に入らなくても満足出来てしまう。
いや、普通はやっぱり欲しいものは欲しいので、それが手に入らないと満足出来なくなってくるものなのですが、
このマーベラスにおける「宇宙最大のお宝」の場合、
あまりにも伝説的で、あまりにも手掛かりが無かったものですから、
手に入りそうもない状態がいつしか当たり前になり、
いつしかマーベラスはそれで満足するようになってしまっていたのです。

「宇宙最大のお宝」は伝説であって実際には手に入りそうにないが、
それでも自分はそれを掴み取ろうとする勇気を持った海賊なのだという、
変に安定した満足感がマーベラスを支配するようになっていきました。
しかし、これは欺瞞であり倦怠です。
本当に掴み取ることが出来ると思うからこそ、掴み取るための真の勇気が湧いてくるのであって、
掴み取るポーズをとるだけで湧いてくる勇気などは所詮は虚勢に過ぎず、本物の勇気ではない。
そうした虚勢の勇気のレベルに満足するようになっていったマーベラスは次第に腐っていきつつありました。

そんな時、マーベラスはアカレッドに出会い、
アカレッドはマーベラスが「宇宙最大のお宝」を掴み取ろうと思っていることに何か感じ入ったようではありましたが、
その想いが中途半端なまま腐りかけているのを見て取って、
「本気で手に入ると思わなければ手に入れることは出来ない」と指摘しました。
それに先立ってアカレッドに完敗していたマーベラスは
「宇宙最大のお宝」を掴み取ろうとする想いが偽物になってしまっていたために
自分の勇気が偽物に堕していたことを悟り、
それゆえ赤い海賊に敗北した自分は何時の間にか男らしい生き方を忘れていた、
海賊として道を誤っていたと反省し、
アカレッドと共に今度こそ本気で「宇宙最大のお宝」を掴み取るための旅に出発したのでした。

そうして「赤き海賊団」の一員となったマーベラスは
ひたすら「宇宙最大のお宝」を目指して冒険の旅に熱中し、
そのうちにあの貨物船の事件の時のことは記憶の片隅に追いやられていきました。
その後、バスコの裏切りによって「赤き海賊団」が壊滅し、アカレッドとも死別することとなりましたが、
マーベラスは再び立ち上がり、新たに仲間を集めてマーベラス一味を立ち上げ、
あくまで「宇宙最大のお宝」を手に入れるべく突っ走ってきました。

そうして仲間と共に地球にやって来て「大いなる力」を集め、
あと少しで「宇宙最大のお宝」、
すなわちマーベラスにとっての「素晴らしい未来」が手に入るところまでこぎつけた、
ちょうどその時に宇宙刑事ギャバンが現れて、
ギャバンの発した「よろしく勇気」という言葉をきっかけに
マーベラスの忘れていたあの貨物船の事件の記憶が甦り、
あのマーベラスが自分の父親のように想っていた、自分に生きる勇気を与えてくれた命の恩人の宇宙海賊の男が、
本当は宇宙刑事ギャバンであったかもしれないという疑惑が持ち上がってきたのでした。

もしあの時の男がギャバンだったとするなら大問題でした。
マーベラスはあの時の自分に生きる指針を示してくれた父のような男が宇宙海賊だと思っていたからこそ、
自分も宇宙海賊になったのであり、
その男と自分が宇宙海賊であるという前提で、
自分にとっての目指すべき「素晴らしい未来」は海賊の伝説の「宇宙最大のお宝」を掴むことだと決意したのです。

ところがあの時の男がギャバンであり宇宙刑事だったとするなら、
あの男ギャバンの言った「素晴らしい未来」の意味合いはだいぶ違ったものだったことになります。
ギャバンがあの時の少年、すなわちマーベラスに期待した生き方は
宇宙海賊になって伝説のお宝を手に入れるというようなことではなかった可能性が高くなります。

ギャバンはあの時の少年だった自分に、
もっと真っ当で立派な、公のために尽くすような男になって欲しかったのではないかとマーベラスは思いました。
少なくとも、自分の欲望を満足させるためにお宝を手に入れようとして
邪魔者を蹴散らしていくアウトローのような生き方など、
宇宙刑事であるギャバンが望んでいたとは思えない。

いや、実際のところ、もしあの男がギャバンであり、
あの時ギャバンがマーベラス少年にそういう真っ当で立派な生き方を望んでいたとしても、
その後マーベラスが例えば刑事になるとか判事になるとかして、
その期待に応えることが出来たとは到底思えませんから、
マーベラスは別にギャバンの期待に応えられなかったことを悔いているわけではない。
問題はマーベラスがあの事件のことを思い出したことによって、自分の夢の原点だと一瞬思った、
あの時の自分の決意が、もしかしたら大きな勘違いに基づいたものであったかもしれないということでした。

まぁマーベラスはいずれにせよ所詮はアウトロー的な生き方しか出来なかったのであろうと思われ、
たとえ勘違いであろうとも、あの時の決意があったからこそ
同じアウトローでも多少はマシな生き方を出来たのであり、夢も持つことが出来たし、勇気も持つことが出来た。
だから別にあれが勘違いだったとしても、マーベラスは後悔はしていない。
ただマーベラスは不安になっただけなのです。
何が不安かというと、自分の「勇気」が本物なのか自信が揺らいできたことでした。

マーベラスは昨晩ギャバンに完敗してしまったことにそれなりにショックは受けていましたが、
それは宇宙警察との戦いに不慣れであることや、ギャバンの戦闘力が高すぎるからだという、
多分に技術的な問題だと思っていました。
しかし、ギャバンがあの時の男だったかもしれないと思うことによって、
マーベラスの中で昨晩の完敗は別の意味合いで解釈されるようになってきました。
自分がギャバンよりも弱いのは、
自分の勇気があの時、あのギャバンかもしれない男が期待したようなレベルに
達していないせいではないだろうかと思えたのです。

あの時の男は「素晴らしい未来を掴もうとすれば勇気が出る」と言いました。
あの男自身がそうやって「素晴らしい未来」を掴もうとして勇気を出していたのでしょう。
そういえばあの男は自分の身も顧みず炎上する貨物船に飛び込んで人々の命を救った。
そんな勇気を持った男の思い描く「素晴らしい未来」が利己的なものであるはずがない。
自分のことよりも他人のことを大切に思うようなものが、あの男の「素晴らしい未来」なのであり、
それを掴もうとして生じる勇気は、あのように自分を顧みず人を助けようとする勇気であり、
その勇気の生み出す力は大きいのだと思えました。
もしあの男がギャバンだったとするなら、
あのギャバンの凄まじい強さは、そうしたギャバンの掴もうとする「素晴らしい未来」が
本物の「素晴らしい未来」であり、そこから生まれる勇気が本物の勇気だからだとマーベラスには思えました。

そして、一方、自分はどうなのかとマーベラスは自省しました。
自分はもしかしたら、あの時の男が宇宙海賊だったと勘違いして、
あの男も「宇宙最大のお宝」を目指していると思い、自分も「宇宙最大のお宝」を手に入れようと思った。
それが「素晴らしい未来」なのだと思い込んだ。
しかし、あの時の男はそんな自分が宝さえ手に入ればそれでいいというような価値観を持った男ではなかった。
それはよく考えれば分かったことであるのに、深く考えることなく、
自分はあの男が宇宙海賊だと思い込んで、
彼にとっての「素晴らしい未来」が「宇宙最大のお宝」を掴むことだと決めつけ、自分もその真似をしてしまった。

だが、それはあの男の本意とは違っていたのではないか?
あの男は自分にそんな生き方を望んではいなかったのではないだろうか?
それを勘違いして、利己的な夢に突っ走ってしまった結果、
自分はあの男の獲得していた、そして自分に期待してくれていた勇気に遠く及ばない
偽物の勇気しか手に入れることが出来なかったのではないだろうかとマーベラスは思いました。

そうした考えに基づけば、
もしあの時の男がギャバンだったとするなら、自分がギャバンと戦って完敗したのは当然のことのように思えました。
真に目指すべき「素晴らしい未来」を間違えて、偽物の勇気しか出せない男に成長してしまった自分が、
本物の勇気を持つギャバンに勝てるはずがない。

もし、あの時の男がギャバンだとするなら、
自分はあの時の男の期待を裏切ってしまい、本当に男らしい生き方をしてこなかったことになる。
昨晩の敗北はその証拠ではないだろうかとマーベラスは思いました。

そんな情けない自分が本当に「宇宙最大のお宝」を掴み取ることが出来るのか?
いや、もし「宇宙最大のお宝」を手に入れたとしても、
それはあの時に自分の欲した「素晴らしい未来」とはほど遠いものなのではないだろうか?
そのようにマーベラスは不安を感じたのでした。

そうして険しい顔で俯いて立ち尽くすマーベラスの懐に入れていたモバイレーツが突然、呼び出し音を奏でます。
仲間は全員同じ船室に居るというのに、いったい何だろうかと怪訝そうにマーベラスが通話に出ると、
「よぉマベちゃん!」という馴れ馴れしいニヤケた声が聞こえてきました。
「バスコ!?」とマーベラスは顔色を変えます。
モバイレーツに連絡してきたのは「宇宙最大のお宝」を奪い合う宿敵であるバスコでした。
マーベラスが顔色を変えて怒鳴るのを聞いて、マーベラスの傍にいた仲間5人も驚き、血相を変えます。

マーベラス一味の面々はバスコとは第43話の時、
すなわちバスコがいきなりダマラスを裏切って姿を消して以来、
およそ1ヶ月ほどの間、顔を合わしていませんでした。

あの時、バスコはマーベラス達が残りの「大いなる力」を全部揃えたら決着をつけようと宣言して姿を消しました。
その後マーベラス達は残り2つの「大いなる力」を集め、
つい先日、マーベラス達が最後の「大いなる力」であったカクレンジャーの「大いなる力」を得たことによって、
そのバスコの言っていた「決着」の条件が整ったといえます。

もちろんマーベラス達も決着をつけるのは大いに望むところであったので
バスコの行方をこっちから探そうと思っていた矢先に、ギャバンによって逮捕されるという騒動に巻き込まれ、
それがようやく落ち着いて再びガレオンの日常に戻ってきたところです。
そこにバスコからの突然の連絡ですから、これはいよいよ決着をつけようということなのかと思えましたが、
卑怯者のバスコが真っ当な勝負を仕掛けてくるとも思えず、
わざわざ連絡してくるということは、またどうせ姑息な罠でも仕掛けてくるつもりなのだろうと警戒し、
マーベラスは「・・・何の用だ!?いったい!」と怒鳴りつけます。

しかしバスコは面白そうにニヤニヤして余裕の態度でマーベラスの怒気を受け流し、
「興奮しなさんな!・・・さっきの宇宙刑事にまつわる面白い情報があるんだけどさぁ・・・聞きたい?」と、
意外なことを言い出します。
どうしてバスコがいきなりギャバンの話をするのかと少し面食らったマーベラスでしたが、
続けてバスコが伝えた言葉を聞いて、「なんだと!?」と更に驚愕しました。
なんと、バスコの言うには、ギャバンがザンギャックに捕らわれたのだというのです。
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 07:25 | Comment(0) | 海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月16日

海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE 感想その5

ここで舞台はゴーカイガレオンに戻ります。
鎧の豪獣ドリルによって救出されたマーベラス達5人は、
まずはそのまま置きっ放しにしていたゴーカイガレオンに戻って、
ドルギランの攻撃によって損傷したガレオンの修復にあたりました。
しばらくの間、全員で船内の各所をチェックして回りましたが、火はすぐに消えたので船内に大きな損傷は無く、
一旦ダウンしていたメインコンピュータもナビィによって復帰していました。
そうした作業を一通り終えて、今はガレオンは鎧の乗って来た豪獣ドリルと並んでゆっくりと空を飛んでいます。

そのガレオンの船内チェックの仕上げとして船室でメインコンピュータの動作に異常が無いか確認したハカセは
「とりあえずガレオンも大丈夫みたい!」と安堵したように言って作業を終えます。
ガレオンに異常は無く、今後の航海や戦闘などに支障は無い様子です。
つまり、大詰めを迎えつつある「宇宙最大のお宝」探しの旅の継続に支障は無いということです。
また、宇宙警察による海賊行為の容疑もデッチ上げだったことが明らかとなり、
その不当逮捕を命じた宇宙警察の総裁も偽者だったことが発覚し、
今後は不当逮捕の心配もどうやらひとまずは無さそうです。
これで一安心、元通りの宝探しの日々に戻ることが出来ます。

ハカセは嬉しそうに「いやぁ・・・一時はどうなっちゃうかと思ったよぉ!」と、
船室に集まっている皆に笑顔を向けます。
処刑台に吊られた時は本当にもうこれでおしまいかと絶望していたハカセは、
こうして生きて再び皆と一緒に旅を続けられることが心の底から嬉しいのです。
1匹だけガレオンに残って皆のことを心配していたナビィも、嬉しそうにパタパタ飛んできて
「良かった!良かったぁ〜!」とハカセに相槌を打ちます。
すると、そこに「ホッホッホッホ〜!」と高笑いしながら鎧が飛び込んできて
「絶妙のタイミングだったでしょお!?俺ぇ〜!!」と有頂天でクルクル舞います。

昨晩、夜の街で火を噴いて落ちていくゴーカイガレオンを目撃した鎧は
大慌てで夜の海に墜ちたゴーカイガレオンを探し回り、
鎧がようやく海に浮かぶガレオンを発見した時には既にマーベラス達は地上に戦いに行ってしまった後でした。
それで慌てて地上に行ってマーベラス達を探しましたが、
その時には既にマーベラス達はギャバンに逮捕連行された後であり、鎧は完全にマーベラス達を見失ってしまいました。
そこでまたガレオンに取って返してモバイレーツの信号を追跡しようとしましたが、
ガレオンのメインコンピュータの復旧に手間取って信号の追跡が出来ず、
朝になってようやくメインコンピュータが復旧したのでマーベラス達の居場所が分かり、
鎧はすぐに豪獣ドリルで体育館に駆けつけたのでした。

このように、絶妙のタイミングでもなんでもなく、実際はことごとく間の悪い行動を繰り返した鎧でした。
鎧自身、助けに行くのが遅くなってしまったことは分かっていて、これはヤバいと思って焦っていたのですが、
体育館に駈けつけてみると、まさにマーベラス達が大ピンチの場面にちょうど飛び込んだことになり、
結果オーライで救世主的な役割を果たすことが出来たと思い込んでいます。
だからハカセが喜んでいるのも、自分への感謝の言葉なのだと感じて、鎧は有頂天なのでした。

ハカセは呆気にとられて鎧を見ていますが、
鎧は皆が自分に感謝していると思い込んでおり、すっかり自分に酔って
「ハッハッハ!やっぱ真打は遅れて登場〜!なんつーて!」と浮かれまくって
今度はソファに座るルカの方に行くと、「ねぇ!?」と同意を求めて、ルカに褒めてもらおうとします。

ところが、実際には鎧の登場は絶妙なタイミングでもなんでもなく、
5人が吊るされて処刑執行という絶体絶命の場面には全然間に合っていなかったのです。
その一番危ない場面で5人が助かったのはギャバンがリモコンで手錠を解錠してくれたからであって、
鎧は5人が変身してゴーミン達を蹴散らして脱出しようとしていた場面に乱入してきたに過ぎない。
お蔭で脱出はよりスムーズにはなったが、あそこまでいけば別に鎧が来なくても脱出ぐらいならば何とかなった。
あれほどルカ達が期待していた割には、鎧はハッキリ言ってあんまり役に立っていなかったと言えます。

それなのに妙に鼻高々な様子の鎧を見てムカついたルカは鎧を突き飛ばして
「何が真打よ!?何が絶妙よ!来るならもっと早く来なさいよっ!!」と耳をつねってキレまくり、
驚き慌てる鎧を「お蔭でこっちは大変だったんだから!」と押さえつけます。
そこにハカセも加わって「そうだよ!!死ぬところだったんだよ!!」と怒りながら
鎧の胸倉を掴んで身体をガクガクと揺さぶります。
助けに来るのが遅れたクセに調子に乗り過ぎた鎧はこうして折檻を受ける羽目となったのですが、
それを見てアイムが和やかに
「まぁ、よいではないですか・・・こうしてみんな無事に助かったわけですから・・・!」とルカとハカセを宥めます。

確かに鎧も遅れはしましたが、
マーベラス達5人を倒して連れ去った得体の知れない敵の居る場所に単身乗り込んできたわけですから
命懸けで一生懸命だったわけです。
実際、あれがギャバンがアシュラーダを追い詰めるためのお芝居ではなく、
ギャバンも含めた宇宙警察全体が真にゴーカイジャーの敵であった状況ならば、
果敢に乗り込んできた鎧も返り討ちに遭っていたかもしれない。
そういう可能性が大いにあるのに仲間のために命を賭けようとしていた鎧もまた、
結果的に無事に帰ってくることが出来たのだから、ちょっとは有頂天になっても仕方ない。

とにかく6人全員が無事に今回の一件を乗り切ったのは有難いことだとアイムは思いました。
せっかく仲間がこうして再び集まることが出来たのだから、あまり喧嘩しないで仲良くしましょう、
ということをアイムは伝えようとして、
「ね!ナビィ!」と傍に飛んできたナビィに微笑みかけて同意を求めます。
それを受けてナビィは「そうそう!終わり良ければノ〜プロブレム〜!・・・ってねぇ!」と、
インチキなことわざで強引にまとめにかかり、
ルカとハカセもそれを聞いて不承不承、鎧のことを許してやることにしますが、
鎧がまだ調子の良いことを言ったりするので、まだゴチャゴチャと揉めて
結局はギャーギャーと大騒ぎとなります。

まぁいつものガレオンの船室の騒々しくも楽しい情景というところですが、
そんな中、マーベラスとジョーの2人だけは何やらいつもとは違う妙なムードです。
いつもならルカ達と一緒になって率先して鎧をイジメていそうなマーベラスは
何故か船長椅子に座ったまま俯いて押し黙ったままでした。

まぁ、これだけならば、単に昨日からの騒動で疲れただけとか、
またはあれだけの敗北と危機の後ですから、船長として何か考えるところもあって黙っているというようにも見えます。
しかしジョーはさっきの処刑場を脱出する直前にマーベラスの様子がおかしかったことに気付いていますから、
ここでのマーベラスの押し黙って何かを考え込んでいる様子が、
あの時の異常な様子の延長線上にあるものだと思えてきます。

じっと黙って座っているマーベラスの傍らでじっと黙って腕組みをしてテーブルにもたれて、
マーベラスに背を向けていたジョーは、そのままの態勢で「・・・どうした?」と問いかけてみました。
しかしマーベラスは黙ったまま無反応です。
さっきのギャバンの「よろしく勇気」という言葉のことで思い悩んでいたマーベラスですが、
仲間たちには関係無い自分の遠い過去の出来事に絡んだ些細な悩み事をいちいち仲間に言うつもりは無い。
だから、別に大したことはなく、単に疲れて黙っているだけであるかのようにして
ジョーの質問をやり過ごそうとしたマーベラスでしたが、
マーベラスが何も答えようとしないのを受けて、ジョーは続けて
「・・・気になるのか?・・・あの宇宙刑事のことが・・・」と、ズバリと切りこみました。

ジョーはマーベラスが処刑場を脱出する際に戦うのも忘れて呆然として
ギャバンの方を見ていたことに気付いていました。
どうしてなのかはよく分からないがマーベラスが異常にギャバンのことを気にしていることはジョーは感じていました。

いや、ジョー自身、ギャバンのことが気にならないわけではありませんでした。
一応ギャバンは処刑を阻止して自分達を逃がしてくれたわけであるし、
あの後ギャバンが無事にアシュラーダを倒したのかどうか、気にならないわけではない。
ジョー自身、ギャバンがあの後どうなったのか気にしているのですから、
同じようにマーベラスも気にはしているだろうとはジョーも想像しました。
あの時、マーベラスがギャバンを見つめていたのも、戦いの行方が気になっていたのだと考えるのが自然です。

しかし、ジョーはさほど深くはギャバンのことで思い悩むようなことはありませんでした。
ましてや自分の戦いそっちのけでギャバンの方に気を取られるなどという気分にはなれませんでした。
あの場でギャバンに助けてもらったといっても、
もともとはギャバンが宇宙警察内部の揉め事の解決のために
マーベラス一味を利用するために戦いに巻き込んだのであって、
あの場でマーベラス達が死にかけたのはギャバンのせいです。
だからギャバンがマーベラス達を助けたのは当然の行動であって、特に感謝するほどのことではない。

そのことはギャバン自身もよく分かっていました。
だからギャバンはもともとは宇宙警察内部の揉め事には無関係の
マーベラス達はあの場を早く立ち去るように言ったのであり、
その言葉に従ってあの場を離脱したマーベラス達は、別にギャバンに負い目を感じる必要など無い。
あの場でギャバンと共に戦う義理など全く無いのです。
だからギャバンを見殺しにして置き去りにしたなどという罪悪感など全く持つ必要は無い。
1人で残って戦うという判断はギャバンが勝手にしたことであって、
そのことにマーベラス一味は何ら責任を感じる必要などありません。

もちろん、あの状況でギャバンが無事に生き残れたのか、ジョーだって心配ではあります。
あのブートレグという機械戦士はギャバンの能力を複製しているとのことだった。
ならばギャバンの苦戦は必至と思えました。
しかし、そんなことはギャバンも百も承知のはずです。
それでもあれほど自信たっぷりに突っ込んでいったのですから、
ギャバンには勝算があったはずだとジョーは思いました。
また万が一ギャバンがブートレグに敗れるような結果になったとしても、
あれほどの強さを持つギャバンが完敗するとも思えず、
敗北した場合でも何とか無事にあの場は逃れることは出来たはずだと思えました。

つまり、自分達がそれほどギャバンのことを心配する必要など無いし、
宇宙警察内部の変な陰謀についても、今回のように自分達に被害が及ぶような事態が起きない限り、
一介の海賊であるマーベラス一味が関わり合う必要など無い。
だいいち、自分達はギャバンに手も足も出ずに負けたのです。
そんな自分達がギャバンの戦いを心配するなど、おこがましいようにも思えました。

そんなことに変に首を突っ込むよりも、今の自分達には他に大事なやるべきことがあります。
それはもちろん「宇宙最大のお宝」を手に入れることです。
1年前に地球にやって来てから地道に集めてきたスーパー戦隊の「大いなる力」も29個が集まり、
あとはバスコが奪い取った5個の「大いなる力」を手に入れれば
34個のスーパー戦隊の「大いなる力」が全て揃い、「宇宙最大のお宝」を手に入れることが出来る。
つまり「宇宙最大のお宝」は目の前なのです。
そんな大事な大詰めの時期に余計な揉め事に首を突っ込む必要は無い。

むしろ、ギャバンも敗れてザンギャックの宇宙警察乗っ取りが完成してしまうような事態になるのなら、
マーベラス一味にも最大の危機が訪れることが予想されます。
ならば、なおさら急いでその前に「宇宙最大のお宝」を手に入れておきたい。
もしかしたら「宇宙全体と同じ価値をもつ」という「宇宙最大のお宝」ならば、
その最大の危機に際しての何らかの切り札として使えるかもしれないからです。

だから、確かに多少はギャバンの安否は気にかかるものの、
今はギャバンの心配をして立ち止まっているような場合ではない。
それは自分だけでなく他の仲間も皆、同じ想いだとジョーは思っていました。
しかしマーベラスという男が一見は悪党のように見えて、実はとんでもないお人好しだということも
ジョーは知っていますから、
あるいはマーベラスは妙にギャバンに感情移入して
宇宙警察のゴタゴタに首を突っ込もうとしているのではなかろうかとジョーは危惧していました。

もしそうならば諌めなければならないと思って
ジョーは黙り込んでいるマーベラスに切りこんでいこうとしたのですが、
マーベラスの方はジョーの言葉を聞いて、
自分がさっき処刑場の脱出前にギャバンの方を見つめていたことをジョーに気付かれていたことを悟りました。
そして同時に、自分が宇宙警察のゴタゴタに首を突っ込もうとしているというふうに
ジョーが誤解しているのだろうと思いました。

マーベラスは別に宇宙警察のゴタゴタに首を突っ込むつもりもないし、
別にギャバンに加勢しようなどと思っているわけでもない。
単にギャバンの「よろしく勇気」という言葉のことが自分の過去の記憶と重なって気になっているだけなのです。
変に誤解されるのも面倒だと思ったマーベラスは、思わず
「・・・昔・・・会ったことがある気がするんだ・・・あいつ・・・」と呟いていました。

意外なマーベラスの返答にジョーは驚いてマーベラスの方に視線をやり、
船室内でギャーギャー騒いでいた他の仲間たちもマーベラスが何か変なことを言っているのに気付いて、
ピタリと騒ぎを止めてマーベラスの顔を見ました。

その中で1人だけ、ギャバンと顔を合わせていない鎧が
「・・・う・・・宇宙刑事・・・ギャバンさん・・・ですか?」と、不思議そうにマーベラスに尋ねました。
鎧も脱出したハカセやルカから、5人を連れ去ったのが宇宙警察から派遣された宇宙刑事ギャバンという男であり、
それは宇宙警察の不正を暴くためのお芝居だったという感じの大まかな事情説明は受けていましたので、
ギャバンという宇宙刑事がマーベラス一味の敵ではないということは把握しています。
しかし、鎧はそのギャバンという刑事がマーベラスと旧知の仲だというような話は聞いていません。

なお、地球人の鎧も、三十数年前に地球で宇宙犯罪組織マクーと戦っていたギャバンのことは知らないようです。
スーパー戦隊についてはやたら詳しい鎧ですが、ギャバンの存在すら知らないのです。

これはまぁ仕方ないことでしょう。
いつも派手に悪の組織と人前で巨大ロボで戦ったりしていたスーパー戦隊とは違い、
ギャバンは正体を隠して地球に潜入捜査をしていただけであるし、
マクーとの戦いは主に魔空空間で行っていたので地球の人々にあまり目撃されておらず、
当時において事件に巻き込まれた特定の人々以外にはあまり知られた存在ではありませんでした。
しかも、それからもう三十数年が経っているのです。
鎧がギャバンのことを知らなかったとしても無理はないでしょう。

そのギャバンとマーベラスが旧知の仲かもしれないと言われても、鎧にはどうもピンときません。
確認するようにマーベラスに問い直した鎧に応えて、マーベラスは「・・・ああ・・・」と言いながら、ちょっと困りました。
いつのまにか自分の方から仲間に向けて過去の話をする流れになってしまっている。
マーベラスは仲間に嘘をついたり隠し事をするのは嫌いだが、過去の話となると話は別でした。
マーベラス一味においては過去の話をしたくなければしないでいいし、
他の者も仲間の過去を詮索はしないというのが暗黙のルールです。

だからマーベラスはとにかくギャバンに加勢したり宇宙警察の内紛に首を突っ込むつもりはないということさえ
明言しておけばよかった。
もしもその上で、じゃあ何を悩んでいたのかと問われれば、それは言いたくないと答えておけば、
あとは仲間の方で何か過去の出来事絡みで言いたくないことがあるのだろうと察してくれる。
マーベラス一味とはそういう仲間なのです。

だからマーベラスは自ら進んでギャバンと過去に出会ったことがあったかもしれないなどと言う必要は無かった。
それをわざわざ自分から口にしてしまったために鎧に問い返されて、それにまた答える羽目になっている。
こうなると今さらこの話はしたくないなどとは言いにくい。
どうして自分はこんな余計なことを言ってしまったのだろうかと、マーベラスは不思議な気分になりました。

一方、鎧を除く4人の仲間たちはマーベラスの言葉を聞いて不可解に感じました。
マーベラスはギャバンと出会ったことがあるかもしれないと言う。
確かに旧知の仲ならば必要以上にギャバンのことを気にするというのも理解は出来る。

だが、どうも話が変です。
昨晩の段階でマーベラスはギャバンとは出会っており、素顔も見ています。
ギャバンもマーベラスの顔を見ています。
しかし2人の間に旧知の仲らしき会話は無かったし、
その後もマーベラスはギャバンと旧知であるような話は
牢屋で一緒に居た仲間にも一言も話してはいませんでした。
それなのに今になって急にギャバンと旧知であったかもしれないなどと言い出すというのは変な話です。

だが、マーベラスがそんな嘘をつく意味は全く無いし、
そもそもマーベラスは仲間に嘘を絶対につかない男です。
だからマーベラスは本当にギャバンと出会ったことがあるかもしれないと思っているのであり、
マーベラスが急にそのように感じたきっかけが何かあったのだろうと4人は思いました。
何かマーベラスとギャバンの間にはよほど特別な因縁があるようです。

だが、4人は鎧のように気軽にマーベラスにギャバンの話を突っ込むことは躊躇われました。
互いの過去の話を詮索しないのが、彼ら宇宙から来た5人の暗黙のルールだったからでした。
鎧を除く5人の間で何ともいえない妙な沈黙が流れますが、
その沈黙を破るようにアイムが静かに立ち上がるとマーベラスの前に立ち、
少し遠慮がちに「詳しく・・・聞かせてくださいませんか・・・?」と真剣な眼差しで言いました。

マーベラス一味においては、仲間の過去の話を詮索しない。
その暗黙の了解がこの物語で最初に示されたのが第4話でした。
あの時はジョーがザンギャック怪人ゾドマスに剣の師匠(シド先輩)のことをコケにされて
意地になって一騎打ちにこだわっていたという話でした。

あの時点でジョーはまだ仲間たちにシドの件は話はしておらず、
仲間達はどうしてジョーがそんなに一騎打ちにこだわるのか理解出来ませんでしたが、
それでも黙ってジョーの好きなようにさせることにしました。
マーベラス達はジョーの激しい拘りの背景には過去の何か辛い出来事が関係しているのだろうと察し、
それは仲間といえども容易に打ち明けられるような話ではないのであろうから、
あえて詮索することはせず、ジョーを信じて黙って好きなようにさせたのです。

つまり「事情は聞かなくても仲間のことは信じる」というのが海賊の絆だということが示されたのが第4話でした。
そのこと自体は何ら問題はありません。
海賊の絆はそれほど強固なものだということです。

この第4話で、まだ仲間に加わって日が浅かったアイムだけが
ただ1人だけマーベラス達のジョーに対する態度が納得出来ていなかったのですが、
最終的には「事情は聞かなくても仲間のことを信じる」ということが海賊の絆なのだということを理解して、
アイムも海賊として一歩成長しました。
そういう意味でこの第4話はエピソードとしては完結しています。

しかし、今になって振り返ってみれば、
どうしてマーベラス達は「事情を聞いた上で信じる」という道を選ぼうとしなかったのか、
またアイムも最初は「事情を聞いた上で信じる」べきだと言っていたのに、
どうして急に「事情を聞かずに信じる」という方針に変わったのか、少し不思議です。

あの時、アイムは「事情を聞かなければ信じられない」などとは言っていません。
ただ、仲間ならばジョーに何か悩みがあるのなら事情を聞くべきではないかと思っただけです。
ジョーが事情を話してくれないから信じられないというわけではなく、
仲間なのにジョーの事情を聞いてあげようとしないマーベラス達のことが理解できないというのが
アイムの不満でした。

そのアイムの不満が収まったのはルカの言葉によってでした。
あの第4話の時、ルカはジョーには仲間にも言えないような悲しい過去があるということをアイムに教えて、
だから自分はジョーに事情を聞くことは出来ないが、それでも仲間だからジョーを信じたいのだと言いました。
それを聞いてアイムは自分も事情を聞かずともジョーを信じようと思い、
それが海賊の絆なのだと理解しました。

その時、アイムはマーベラス達が本当はジョーのことを心配しているのだが、
ジョーの悲しい過去の想い出を口にしたくない気持ちを慮って事情を聞かないようにしているのだということを理解し、
そうした事情がよく分からない状態でも仲間を信じるというのが、
過去に悲しい想い出を抱えた仲間を持つ海賊の真の絆なのだと悟ったのでした。

この第4話の時点では、ジョーに仲間にも言えないような悲しい過去があるということがハッキリし、
そのことを察して事情をあえて聞かずにジョーを信じようとする他の仲間達の姿が描かれたといえます。
しかし、その後、物語が進むにつれて、どうしてこの時、仲間たちが
ジョーの「仲間にも言えない悲しい過去を抱えている」という事情を察してあげることが出来たのか、
その理由が判明していきます。

それはつまり、仲間達もジョーと同類だったからなのです。
マーベラスにしても赤き海賊団の壊滅、アカレッドとの死別、バスコの裏切りなどの
悲しい過去について仲間達に秘密にしていました。
ルカもまた、故郷のスラムでの悲惨な日々や妹のリアの死のことなどを仲間達に言っていませんでした。
ハカセの場合は故郷の星が滅ぼされて流浪の身となって辺境の星で便利屋となっていた経緯などは
大まかにはマーベラス達に説明はしていたようですが、
自分より後に加入したアイムや鎧には自分の過去は一切語っていませんでした。

みんな、それぞれ仲間にも語りたくないような辛い過去を抱えた身であったからこそ、
ジョーが何か思いつめて何の事情の説明もしようともせずに一騎打ちにこだわる姿を見た時に、
それが仲間にも言えない過去の悲しい出来事に起因した拘りなのであることを悟り、
それならば事情を聞くことは出来ないと理解した上で、それでもジョーを信じようと思ったのです。

何故なら、自分もまた同じように仲間に言えない悲しい過去に起因する拘りに動かされて
皆に心配をかける局面はやって来る可能性はあるからです。
そういう事情を聞けない不安を抱えながらも、それでも信じ合うことが、
この悲しい過去を抱えた者同士の集まる宇宙海賊においては必要なルールなのだと、自然に理解できていたのです。

それは、ルカの話を聞いてすぐにジョーの抱えた事情や、ジョーを気遣うルカ達の心情を理解することが出来た
アイムにしても同じことでした。
アイムもまたジョーと同じように、仲間にも言えない悲しい過去を抱えていたからです。

アイムはザンギャックに滅ぼされたファミーユ星の王女であることをマーベラス達に打ち明けた上で
海賊の仲間に入れてほしいと申し出て、マーベラス一味の仲間になりました。
だからマーベラス達はアイムの過去を知っているつもりでした。
しかし、アイムはこの加入申し込みの時、自分から進んで自分の過去について話してはいません。
ただ単にファミーユ星の王女だと自己紹介しただけであり、
ファミーユ星が滅ぼされたことは有名な事件だったのでマーベラス達がもともと知っていただけのことです。

アイムもファミーユ星の王女だと名乗った理由は、
亡命した星の人々の希望の象徴となるために海賊になりたいという自分の考えを説明するためであって、
そういう事情が無ければ別に自分の過去を語るつもりなど無かったでしょう。
実際、仲間に加わって以降はアイムは自分の過去について何も語ってはいません。
アイムもまた自分の悲しい過去を仲間に語ることは避けていたのです。
例えば星の人々を一夜にして虐殺されて父と母を目の前で殺されたことなど、
アイムの心に深く刻まれた悲しい想い出でしたが、アイムはそれを仲間にも言おうとはしていませんでした。

そして、その悲しみの奥底にファミーユ星を滅ぼした下手人であるザンギャック怪人ザツリグへの復讐心という
拘りが潜んでいたことまではまだこの時はアイムも無自覚ではありましたが、
とにかく自分にも仲間に語れない悲しい過去があることはアイムもハッキリ自覚していた。
そして、それが何らかの拘りを生み出す可能性も薄々感じたのでしょう。
だから第4話の時、ルカの話を聞いて、ジョーが仲間にも言えない悲しい想い出があるゆえに
一騎打ちに拘ってしまうということにも理解を示し、
ルカ達がそうしたジョーにあえて事情を聞かずにそれでもジョーを信じようとする気持ちに
共感することが出来たのです。

また、マーベラス達もまた、
内容は不明ながらもアイムもまた何か仲間には言えない悲しい過去に起因する
何らかの激しい拘りを内に秘めていることに気付いており、
だからアイムも仲間の悲しい過去に深入りせずに信頼し合うマーベラス一味の流儀を理解出来るはずだと
第4話時もアイムのことを信じ、期待していたのです。

ところで、どうしてマーベラス一味の面々は皆、自分の過去の悲しい想い出を仲間に言おうとはしない流儀なのか?
それはまず第一義的には、あまりに悲しい話なので言いたくないという気持ちはあります。
しかし、そんな自分の感情的な好き嫌いだけで仲間に言うか言わないかを決定しているわけではないでしょう。
根本的には、それはマーベラス一味という海賊団においては「言うべきではないこと」だからです。
そういう意識があるから、悲しい過去を仲間に語ることに精神的なブレーキがかかるのです。

では、どうしてマーベラス一味においては悲しい過去の話は「言うべきではないこと」、すなわちタブーなのか?
それはマーベラス一味が「夢を掴むために集まった仲間」だからです。
夢というのは未来において掴むものであり、
ひたすら夢に向かって進んで行くマーベラス一味の仲間達は過去は振り返らないし、過去は必要無いのです。

特に明るい夢を目指しているマーベラス一味においては、悲しく辛い過去の想い出話などはするべきではない。
聞いた他の仲間が不快に思うだろうという気遣いもありますが、
それ以上に、辛い過去を振り切ってマーベラス一味の仲間になって
心機一転、明るい未来に突き進もうと決意した自分自身を裏切るような気がして、
過去の辛い想い出のことは考えないように努め、仮に考えてしまった時もそれを口にしたくはない。
そういう心のブレーキが皆の心中において働いているのです。

言い換えると、それだけ彼らの心の中で過去の辛い想い出の影響力は大きく、
第4話のジョーや第41話のアイムのように、
仲間の信頼を裏切るような身勝手な行動までとらせてしまう拘りを生む力があるのです。
だからこそ、マーベラス一味の面々は、
自分が明るく未来の夢に向かっていくマーベラス一味の仲間であり続けるために、
出来るだけ辛い過去の想い出に背を向けて生きるよう努めているといえます。

そして、このザンギャックの支配する宇宙で悲惨な目にあってきた彼らの人生における過去の想い出とは、
結局はそのほとんどが辛い想い出なので、
彼らはマーベラス一味の一員となって以降は、自分の過去全般について振り返ることを止め、
過去を必要としない生き方をすることにしたのです。

つまり、彼らは過去に興味が無い。
自分の過去のこともあまり考えないようにして日常を生きているし、
仲間の過去に対しても興味を持たないようにしている。

第4話でジョーの過去に何か辛いことがあったことは察しても、その内容を詮索しようとはせず、
それでいて過去に何があったのかに関わらずジョーのことを信用しようとしていたというのは、
一見、心が広いように思えます。
しかし、彼らは基本的に仲間の過去に興味を持たないのであり、
それでも仲間であり続けなければならないのですから、
仲間の過去に興味を持たないまま互いに信用するクセが勝手についているだけのことだったのです。

そうしたマーベラス一味の流儀は、もともとは船長のマーベラスの流儀だったのでしょう。
そもそもマーベラスが仲間たちを選んで仲間として受け入れていったのですが、
マーベラスは新たに仲間となった者の過去の事情を一切聞かないまま、それでも仲間として受け入れています。
まぁおそらく辛い想い出が多いのだろうと気遣ったという面もありますが、
それでも何らかの楽しい想い出だってあるかもしれないのですから、
何も過去を問わないというのも随分と極端な話です。

脱走兵のジョーがザンギャック兵に追われているのを助けた時も、
どうして脱走したのかマーベラスは全く質問していません。
女の身1つでザンギャック専門の盗賊をしていたルカに出会った時も、
どうして盗賊などやっているのか事情を全く聞こうとはしませんでした。
普通はそういう重大なことは質問しそうなものですが、マーベラスはそれらに全く興味を示していません。

そして同時にマーベラスは仲間たちに自分の過去を話そうともしていませんでした。
まぁレンジャーキーを集めるという作業について新たに仲間とした者に説明する必要上、
自分がもともと「赤き海賊団」の一員であって、
レンジャーキーを集めて「宇宙最大のお宝」を手に入れるという夢を
その時から継続しているということは明らかにする必要はあったので、
そういうことは簡単に説明はしていたようですが、
「赤き海賊団」時代の想い出話は仲間たちに一切してしませんでした。

結局マーベラスが「赤き海賊団」の想い出話を仲間に対してする羽目になったのも、
第15話でバスコがマーベラス一味の前に突然現れて「宇宙最大のお宝」を狙っているという話をしたため、
バスコについて仲間に説明しないわけにはいかなくなって、それに絡めて仕方なく説明したに過ぎません。

しかし、「赤き海賊団」の時期というのは、最後こそ悲しい結末となりましたが、
それ以前についてはマーベラスの人生の中でも比較的楽しい想い出が多かったはずの時期なのですが、
マーベラスは断片的にすら、その想い出を話そうとはしていなかったようです。
これも殊更に秘密にしようとしていたというよりも、単に話す必要が無いと本気で思っていたようです。
マーベラスはそれだけ「過去」というものに無頓着なのです。

どうやらマーベラスという男は、自分のものも他人のものも含めて、
とにかく「過去」というものに極端に興味が無いようなのです。
過去を見ずにひたすら未来の夢だけを見ている。
そういう一風変わった男が作った海賊団だからこそ、
マーベラス一味は自らの過去をほとんど語ることのないメンバーで構成され、
それでいて互いに信頼し合うという奇妙な海賊団となったのでしょう。

マーベラス自身は、過去を知らずに仲間と信頼関係を築くことに何の困難も感じない人間であるようです。
そういえばマーベラスは「赤き海賊団」時代も、
バスコの過去もアカレッドの過去も全く知らないのに、やたらと楽しげに馴染んでいました。
一見何てことはないようですが、これはよく考えたらかなり変わっています。
そう考えたらバスコもアカレッドも同じように変わっているのですが、
まぁアカレッドは実は思念体ですから、普通の人間ではないし、
バスコはおそらくマーベラスと同類なのでしょう。
そういう「過去に興味を持たない」という変わった連中だけが集まっていたのが
アカレッドの集めた「赤き海賊団」だったということになります。

しかし、普通の人間は過去に興味を持たないなどということはない。
マーベラス以外のマーベラス一味のメンバー、例えばジョーもルカもハカセも、
みんな語りたくない過去を抱えてはいたが、
自分の過去を明かさずに仲間と信頼関係を結ぶことに最初は困難を感じていたと思われます。

例えば第4話においてルカが回想していた、
昔ジョーの剣へのこだわりに突っ込んで質問してしまってジョーの拒絶にあったという話とか、
第6話においてジョーが回想していた、
ルカにどうして金に執着するのか質問してはぐらかされたという話などは、
まだ彼らがマーベラス一味に入って日が浅かった頃に、
それ以前に彼らが所属していた仲間内のように互いの過去を知って信頼関係を築くべきではないかという
迷いがもたらした出来事であったのでしょう。

そんな彼らもマーベラスという過去に全く頓着しない船長に接して、
ひたすら未来の夢に突き進んでいくうちに、
マーベラスの流儀に染まって、相手の過去を知らずとも信頼関係を築くようになっていったのでしょう。

またハカセも仲間入りした当初はマーベラス達に自分の過去についてある程度説明していたようですが、
それもまた、仲間となった以上は過去を打ち明けるべきという常識的な考えに基づいた判断だったのでしょう。
しかしハカセは第42話で自分の過去が伝説の勇者であったかのように仲間に嘘をつこうとしており、
それはつまり仲間内でハカセの過去の話が話題に上らなくなって久しいからこそ思いついた悪戯だといえます。
ハカセ自身、あまりに過去の話題に触れない生活に慣れ過ぎて、
自分が仲間入り当初にマーベラス達に過去を打ち明けていたことをつい忘れてさえいたのでしょう。
つまり最初は仲間内で過去の情報を共有し合うのが常識だと思っていたハカセも、
マーベラス一味の流儀に馴染んでいくうちに、過去については触れないという習慣に染まっていったようなのです。

そしてアイムも自分自身が仲間に打ち明けられない辛い過去を抱えていながらも、
そんな状態で仲間と信頼関係を築くことの難しさを感じていた。
それで行き詰ったのが第4話だったのだが、
そこでアイムはジョーの過去を知ろうとせずに、それでもジョーを信頼することによって、
ようやくマーベラス一味の流儀を身につけたのでした。

しかし、そのアイムが今、「過去に興味を持たない」というマーベラス一味の流儀の元祖といえる
マーベラスに向かって、ギャバンとの過去の出来事について説明するよう迫っています。
それは、アイムがマーベラス一味のそうした流儀が変化してきたことを感じているからです。

確かに、仲間の過去を詮索することなく、それでも信頼し合うことの出来る
マーベラス一味の仲間の絆は強い。
しかし、その仲間の絆は何のためにあるのか?
単に宝を見つけるためにあるのか?
これまでのマーベラス一味の旅を振り返ってみて、決してそうではないとアイムは思いました。

仲間の絆は、仲間の個々人を支えて成長させてきた。
そして、その成長とは、各自の過去への向きあい方の変化であったのだとアイムには感じられました。
各自が仲間の絆の中で成長して、各自の過去への向きあい方が変化するにつれて、
マーベラス一味の流儀も少しずつ変わってきたのだと、
これまでの旅、特に地球にやって来てからの戦いの日々を振り返って、最近アイムは確信してきていました。

その1つの表れが鎧という6番目の仲間の在り方です。
マーベラス一味が地球にやって来て以降、第18話で仲間入りした地球人の鎧は、
確かに夢を持っており、辛い過去も持っているという意味ではマーベラス一味の既存メンバーと似ています。
しかし、鎧は仲間たちの過去を知ろうとしたり、内面にも遠慮なく踏み込んでくることが多い。
第4話時点でのアイムがジョーに対してとっていた態度と似ています。

第4話におけるアイムはそれがマーベラス一味の流儀ではないことを悟って、
自分がマーベラス一味の流儀に合せて、仲間の過去を詮索しないまま信じる道を選びました。
しかし鎧はあまりマーベラス一味のそうした流儀に自分を合わそうとはしていない。
これは鎧の態度に問題があるわけではなく、
他の仲間たちが鎧のそうした無遠慮な態度に対して、
第4話時点のアイムに対する時よりも、より寛容になっているからです。

例えば鎧は第29話でアイムの過去を詮索しようとしていますが、
マーベラス達はそれに対して非協力的ではあったものの、面白がっていただけであって、
それが一味においてはタブーであるという態度はあまり示しませんでした。
結局その後、第41話ではマーベラス達は鎧にアイムが仲間に加わった経緯を説明していますし、
また鎧は第42話では今度はハカセが仲間に加わった経緯を知りたがりましたが、
ルカは面白がってそれを説明しています。
また第37話と第38話の前後篇では鎧はマーベラスの過去の古傷を抉るような突っ込みをしていますが、
マーベラス達はそれに対して割と寛容に接しています。

このように最近になると、
マーベラス一味の「過去には興味を持たない」というルールはかなりユルくなってきています。
それは、地球に来てから次第に各自が自分自身の過去と向き合うようになっていたからです。

アイム自身も第41話において、両親と故郷の星の人々の仇のザツリグと再会したことによって、
それまで向き合ってこなかった自分の最も悲しい過去と、
そこから生じた拘りである復讐心と向き合うこととなりました。
そのため、アイムは過去に捉われた復讐の道を選び、
それがマーベラス一味の一員として相応しくないと思い、未来の夢を掴む旅を諦めようとまで思いつめました。

しかし、その時、仲間たちはアイムの過去を受け入れて共に戦うと言ってくれました。
それは共に復讐を果たすためではなく、
その悲しい過去から生まれたアイムの「皆の希望の象徴となりたい」という夢こそが本物であり
アイムの真の夢の原点なのだとマーベラス達が認めたからです。
だから、アイムと共にその夢を掴む旅を続けるために、共にアイムの憎むべき敵と戦って勝とうと思ったのです。
そうした皆の想いを受け取ることによって、
アイムは初めて自分の悲しい過去に正面から向き合い、それを乗り越えて、
自分の夢の原点が何なのか真に知ることが出来たのでした。

しかし、第4話の時のジョーの一騎打ちへの拘りと、
この第41話のアイムの1人で復讐の戦いに向かおうとする拘りは、非常に似たケースであるにもかかわらず、
それに対する仲間たちの対応は全く違います。
第4話の時はジョーの過去に踏み込むことを遠慮して全員がジョーを信じて見守るという選択をしたのに対して、
第41話ではアイムの過去を受け入れて、そこに共に戦うに足る夢が存在することを認めているのです。

この変化の背景には、
他の仲間達も皆、第4話以降、それぞれが自分の過去に向き合い、
少しずつそれを乗り越えて、自分の夢の原点を掴んできたという経緯があるのです。

第4話の時はジョーは自分1人で自分の拘りである一騎打ちをやり遂げて、
それを黙って見守ってくれた仲間たちに感謝していますが、
これでは仲間との絆はより強くなったものの、まだ自分の過去を受け止めて乗り越えるには至っていません。

そのジョーの悲しい過去とは、ザンギャック軍時代の先輩であり剣の師であったシドを失ったということでした。
それは最初は単純な喪失感であり、未練でした。
それがシドへの過剰な思慕、思い入れとなっており、
それゆえシドのことをコケにしたゾドマスをシドの剣で倒さなければ気が済まなくなっていたのです。
ジョーの剣に関する拘りも、シドに教えられた剣こそが最強であることを証明して
シドへの恩返しをしたいという過剰な想い入れのゆえでした。

その結果、ジョーは第11話と第12話の前後篇で、シドがバリゾーグに改造されていることを知った時、
仲間に何も言わずに仲間から離れてバリゾーグをシドに戻そうとしました。
この時、どうしてジョーは黙って仲間から離れたのか?
敵であるバリゾーグと会うことを知られたくなかったというような理由ではないでしょう。
今にして思えば、それはおそらく、自分の過去の拘りそのものである
シド=バリゾーグと向き合いに行こうとする自分の行動が、
過去に向き合わないことが流儀のマーベラス一味の一員として相応しくないと思ったからなのでしょう。

結局この時はジョーはバリゾーグをシドに戻すことは不可能だと知り、シドは死んだのだと悟りました。
ここにおいてジョーは思いっきり自分の悲しい過去と向き合ってしまう羽目になったのですが、
それと同時に共に助け合って夢を掴むために旅をする仲間であるマーベラス一味が
自分にとってかけがえのない物なのだと悟り、仲間のもとに戻りました。

しかしマーベラス一味とは過去に向き合わない者の集まりであるはずです。
それなのにジョーは過去と向き合ったことによってマーベラス一味の価値を再確認した。
それはつまり、シドとの悲しい過去の出来事に向き合い乗り越えることこそが
実はマーベラス一味においてジョーが仲間と共に掴もうとしている夢の原点に繋がるのだということを
暗示しているのですが、
この第12話時点のジョーはまだ過去に向き合っただけであり、乗り越えてはいないので、
まだそこまでは気付いていません。

そのことにジョーが気付くきっかけとなったのが
第30話において元ライブマンの大原丈にバリゾーグの一件に絡んで
「過ちを繰り返さないために足掻くことこそが友の魂を救う道」と諭されたことでした。
それを聞いてジョーは、かつて自分とシドが掴もうとしていた夢が
ザンギャックによる悪行でこれ以上多くの人達を苦しめることが繰り返されないために
戦うことであったことに気付きました。

それがジョーの夢の原点であり、そのことに気付いたジョーは、
自分はシドの魂を救うためにザンギャックの悪行を繰り返さないように戦わねばならないと思い、
シドを改造して悪の手先としているバリゾーグこそがまず自分が断つべき
ザンギャックによる悪行そのものだと心に決めました。
ここにおいてジョーは遂に過去を乗り越え、仲間達にシドの一件を打ち明けることが出来たのでした。

但し、ジョーが完全に過去を乗り越えるためには、その打ち立てた目標を達成しなければいけません。
つまりバリゾーグを自分の手で倒してこそ初めて、本当にジョーは過去を乗り越えて夢の原点を掴んだといえます。
それをジョーが達成したのが第37話と第38話の前後篇で、ここで遂にジョーはバリゾーグを倒しました。
そして、その時ジョーは、自分がバリゾーグに勝利することが出来たのは
共に夢を掴むために力を合わせて戦う仲間の絆の力によるものだと悟りました。

つまり自分の過去を乗り越えて夢の原点を掴むためには、1人ではなく仲間の絆が必要だったのであり、
自分は共に夢を掴む仲間であったシドを失ったことが悲しかったのであり、
だからこそ新たに共に夢を掴む仲間を求めてマーベラスの仲間となり、
本当はマーベラス一味において自分の過去を乗り越えて夢の原点を掴もうとしていたのだということを
ジョーは初めて理解したのでした。

すなわち、マーベラス一味とは、本当は過去を捨てて未来に夢を掴むためだけの海賊団なのではなく、
過去を乗り越えて夢の原点を掴むために仲間の絆を求めた者達の海賊団だったのだとジョーは悟ったのでした。
少なくとも自分にとってはマーベラス一味とはそういうものだと思い、
だからこそアイムの一件でも、ジョーはアイムと共にアイムの過去を乗り越えて夢の原点を掴もうとしたのです。

他のメンバーにしても同じことでした。

ルカの場合の悲しい過去とは、
故郷のスラム街で酷い貧乏のために自分と同じ戦災孤児たちを救うことが出来なかったことであり、
特に妹のリアを死なせてしまったことでした。
それゆえルカは貧乏生活に絶望し、過去の無力な自分と決別するかのように故郷の星を飛び出し、
戦災孤児たちが安心して暮らせる星を買うという夢を叶えるための金を貯めようとして、
遂には盗賊にまでなっていました。

ルカは貧乏な過去を否定し、金さえあれば子供たちを救う夢を叶えることが出来ると信じていたのです。
マーベラス一味に入ったのも、「宇宙最大のお宝」を手に入れれば
宇宙全体の孤児たちを救うことが出来るかもしれないと思ったからです。

第6話で成金の春日井親子に関わった時もルカは昔の貧乏時代を思い出す羽目になって不愉快そうにしており、
自分の過去とまともに向き合うのを避けていました。
この時は春日井親子によって、貧しい時代に共に助け合った絆こそが価値があるということを
教えられた形となったルカですが、それでもこの時点ではまだ、
それを素直に自分にあてはめて考えることは避けていました。

しかし、そんなルカも第23話で目の前で苦しむ子供の命を救うことの出来ない自分の無力を痛感した際、
かつて妹やスラムの孤児達を救えなかったのは貧乏のせいではなく自分の無力が原因だったのだという、
自分の過去の真実に向き合うことになりました。
その時、初めてルカは仲間であるアイムの前で自分の過去の話を打ち明け、
自分は金を貯めるのが夢なのではなく、
金の有無は関係無く、とにかく目の前で苦しむ弱い子供たちを救いたかったのだという自分の本心に気付きました。
そしてアイムが目の前の子供の命を救うために力を合わせたいと申し出たことによって、
ルカは自分の無力の限界を超える力が仲間の絆によるものだと悟り、
アイムと力を合わせて1人の少年の命を救うことによって、過去を乗り越えることが出来たのでした。

そして第34話において、故郷のスラム時代の友人のカインと再会し、
懸命に働いて大富豪となったカインがお金の力でルカの夢を叶えて戦災孤児たちを救うことを申し出て、
自分と一緒に来るように求めてきた時、
ルカは自分の夢の原点が故郷のスラムのどん底の貧乏生活の中で子供たちを守りたいという
切なる想いであったことを再確認しました。
そして、カインもまた同じ原点から出発した夢を金の力で実現しようとしているのであり、
それは自分の目指していた道と同じであるはずだと思いました。

しかしルカはカインと共に行く道は選ばず、マーベラス一味に残ることを選択しました。
どうして自分はカインと共に行こうとしないのか考えたルカは、
自分は金の力ではなく、共に夢を掴むための仲間の絆の力で自分の原点の夢を叶えたいと思っているのだと悟り、
もともとそのためにマーベラス一味に入ったのだという自分の真実に気付きました。
そしてマーベラス一味に入ったことによって自分は宇宙全ての子供たちを救いたいのだという
もっと大きな、自分の真の夢の原点に気付いたのだということも思い出しました。

つまり、悲しい過去に向き合って乗り越えて、夢の原点を思い出して掴み取るために
自分はマーベラス一味の夢を掴む仲間の絆を求めたのであり、
そして実際、仲間の絆が自分に過去を乗り越え夢の原点を掴む力を与えてくれてきたことも実感しました。
そうしたことに気付いてカインの申し出を断ってカインに別れを告げたことが、
ルカにとっては過去を完全に乗り越えた象徴的な出来事となり、
ルカは宇宙全体の子供たちを救いたいという自分の夢の原点を掴み取るために
マーベラス一味の仲間たちと力を合わせて戦っていこうと決意を新たにしたのでした。

また、ハカセにとっての悲しい過去とは、自分の弱さそのものでした。
弱さゆえに人々はザンギャックの侵略に翻弄され、弱い者の言い分など聞く耳も持ってもらえない。
強い者でなければ生きている価値が無いような宇宙の現実こそが、
弱い人間だと自覚しているハカセにとっては辛く悲しい過去そのものでした。

そんな弱肉強食の宇宙の過酷な現実に嫌気がさしたハカセは
世界に背を向けて1人で辺境の星に引きこもって細々と便利屋を営んでいました。
それは一種の逃避ではありましたが、
言い換えればザンギャックの作ったルールに従いたくないという一種の消極的抵抗であり、
ハカセの弱者なりの意地の結果でした。
そういうハカセがザンギャックに追われるお尋ね者のマーベラス一味をひょんなことで手助けしてしまい、
そのままハカセはなし崩し的にマーベラス一味の仲間入りをする羽目となったのでした。

そうして海賊団の一員として戦うようになったハカセは、
弱い過去の自分と決別して強くなりたいと思うようになりました。
第7話などは特にそうしたハカセの「努力して新たな自分に変わりたい」という
強い向上心の表れたエピソードでしたが、その他のエピソードも通して
地球に来てからのハカセは目覚ましく成長していき、強くなっていきました。
それは言い換えれば、弱い過去の自分にとことん背を向けようとする行為だったといえます。

しかし第31話でマーベラス一味がバスコに完敗し、
更なる強さを求めた時、ハカセは限界を感じて、やはり自分は弱くて無力だと落ち込みました。
だが、ハカセはたまたま知り合ったサッカー少年との交流を通して、
仲間と一緒にやれば実力以上の力が発揮できるということを知り、
マーベラス一味に加入してからの過去を振り返って、
もともと弱い自分が強くなってきたのは自分1人の力によるものではなく、仲間と一緒だったからだと悟り、
仲間と協力して新武器ゴーカイガレオンバスターを開発しました。
この時、ハカセは弱かった自分の過去に向き合うことによって自分の弱さを知り、
それによって仲間の絆という真の強さを得たのだと言えます。

そして第42話と第43話の前後篇では、
つまらない悪戯で過去の自分を偽って伝説の勇者のフリをしているうちに仲間たちを失って
1人ぼっちになってしまったハカセは大いに反省して自分の真実の過去に向き合い、
1人ぼっちで宇宙最強の男であるダマラスに立ち向かう勇気が湧いてこない自分の弱さを痛感する羽目となりました。

しかし自分の過去に向き合ううちに、ハカセは自分がマーベラス一味に入った頃は
ゴーミン相手にもまともに戦えなかったほど弱かったことを思い出し、
その頃の自分がマーベラス達に「弱くても出来ることだけやって互いに助け合えばいい」と言われ、
それが海賊の仲間の絆だと教えられたことで何だか嬉しくなり、
海賊として戦っていく自信がついたことを思い出しました。

ハカセはそうして戦って強くなっていくにつれて、その初心を忘れるようになりましたが、
もともとは「弱くても役に立てる」という意味でハカセはマーベラス一味を気に入っていたのです。
それを思い出したことによって、ハカセはもともと自分が
ザンギャックの支配する弱肉強食の世界に背を向けてまで抱いていた夢の原点が
「たとえ弱くても生き生きとした人生を送りたい」ということであったことを悟り、
それは弱さゆえの悲しい過去から生まれたのだと知りました。

強くなって生き生きとした人生を送るようになることは過去の弱さゆえの悲しみの否定に過ぎず、
自分の夢の原点を掴み取ることにはならない。
弱くても生き生きとして人生を送ること、弱い者でも生き生きと暮らせる世界を作ることこそが、
真に悲しい過去の弱さを乗り越えるということであり、
自分の夢の原点を掴むことだと気付いたハカセは、
自分が過去を乗り越えて夢の原点を掴み取るためにマーベラス一味に入ったのだと悟りました。

そのマーベラス一味の旅は自分の夢に絶対に必要なのであり、旅を終わらせるわけにはいかない。
そのためには、共に弱さを補い合う仲間の絆が不可欠なのであり、仲間を絶対に失うわけにはいかない。
そう思ったハカセはダマラスに捕らわれたマーベラスを救い出すために、
宇宙最強の男に強さで対抗するのではなく、弱くても自分に出来ることで対抗しようと決意し、
それが真の強さを生み、その結果、マーベラスを助け出し、
更にかけつけた他の仲間たちも合わせて、弱い者たちが力を合わせることで発揮した真の強さで
ダマラスを倒すことに成功したのでした。

これによってハカセは弱さを無力と感じて打ちひしがれていた悲しい過去を乗り越え、
弱い者でも生き生きとした人生を送ることが出来るという、夢の原点を掴んだのです。
そして、それはマーベラス一味の仲間の絆があってこそ到達することが出来たのでした。

また、マーベラス一味が地球に来てから仲間に加わった地球人の鎧にしても、
他の仲間たちと同じように当初は自分の悲しい過去に背を向けていました。
それは、レジェンド大戦でスーパー戦隊が戦う力を失って姿を消し、
再び始まったザンギャックの侵略に対してなす術の無い地球人としての無力感に落ち込んでいた日々でした。

その鎧の陰鬱で不安な気分を吹っ飛ばしてくれたのが、
突然、元アバレキラー仲代壬琴らによって与えられたゴーカイシルバーとして戦う力でした。
これによってヒーローになれたことに有頂天となって一気にテンションの上がった鎧は、
さっそく第17話と第18話の前後篇の時に
ザンギャックと戦うためにマーベラス一味に仲間入りを志願して押しかけますが、
マーベラスは鎧がヒーローになったことで夢を叶えて満足してしまっていると感じ、
それ以上の夢を持たない鎧がマーベラス一味の一員としてザンギャックを敵に回して戦うことは出来ないと見て、
鎧の仲間入りを拒否した挙句、変身アイテムを取り上げてしまいました。

しかし鎧は変身できない状態で遭遇したザンギャック怪人と戦う羽目になり、
戦っているうちに、単に自分がヒーローになるという夢を超えて、
ザンギャックを倒して宇宙を平和にするという夢に覚醒し、
その結果、マーベラス一味の6人目の仲間として認められました。
こうしてゴーカイジャーの仲間入りをした鎧は大喜びでひたすら前向きに夢に向かって突き進んでいきました。
それと同時に、それ以前のザンギャックと戦う力を持っていなかった頃の
無力感に満ちた過去には背を向けて顧みないようになっていきました。

しかし第31話でバスコに重傷を負わされて満足に戦うことが出来なくなり、
更にその怪我がようやく治ったところで第33話において変身アイテムをザンギャック怪人に呑みこまれてしまって、
その焦燥から、鎧は再び昔のように戦う力を持たない無力な自分に戻ってしまうのではないかと
不安にかられてしまいました。
つまり背を向けていた悲しい過去に思わず鎧は向き合うことになってしまったのです。

そんな時にたまたま出会った元ダイレンジャーの亮との遣り取りの中で、
鎧は亮が変身出来る出来ないは関係無く人々を笑顔にしたいという夢を実現するために戦い続けていることを知り、
自分ももともとは同じであったことを思い出しました。

確かに戦う力を得たことによって鎧は実際に戦う勇気を得ることは出来たのですが、
ザンギャックから人々を守りたいという気持ち自体は、
戦う力を持たない無力感に満ちた日々の中でこそ生まれたのであり、それこそが鎧の夢の原点でした。
この悲しい過去の中から生まれた想いがあったからこそ、
鎧は第18話では変身できない状態でザンギャック怪人と戦ったのであり、
その戦いの中で「ザンギャックを倒して宇宙の人々みんなを守りたい」という
大きな夢を生み出すことが出来たのでした。

そして、もともとは想いはあっても夢に向かって突き進むことの出来なかった鎧は、
戦う力を得た段階では大きな夢を抱くことは出来なかったが、
第18話でどうしてもマーベラス一味の仲間入りをしたいと思うようになったことによって、
戦う力を取り上げられた状態で、大きな夢に覚醒して、それに向かって進みだすことが出来た。
つまり、鎧にとっても夢の原点を掴み取って実現するためにはマーベラス一味という仲間の絆が必要だったのであり、
それは最初から戦う力を持たない悲しい過去を夢の原点としているという認識に基づいていたのです。
それらのことに改めて気づくことが出来た第33話の段階で鎧は過去に向き合い乗り越えたのであり、
自分の夢の原点が何であるのか掴むことが出来たのでした。

このように、マーベラス一味のそれぞれの面々にとって、
過去というものは背を向けるものではなく、いつしか向き合い乗り越えるものとなっていたのであり、
過去を乗り越えることによって自分の夢の原点を掴み取るものとなっていました。
そして、各自は自分が過去を乗り越え夢の原点を掴むことが出来たのは、
マーベラス一味の仲間の絆があったからだと感じていました。

ただ、これは6人が話し合ってそういう共通認識を持っていたというわけではなく、
各自がそれぞれ別個にそういう認識を持っていたに過ぎない。
アイムはアイムで、自分の経験に基づいて、
マーベラス一味においては決して過去の話題はタブーではなく、
それが辛い悲しい想い出だとしても向き合って乗り越えてこそ、
自分の夢の原点を見つけることが出来るものだと思えていました。

そして、自分が加入した当初に比べて、今のマーベラス一味の絆は更に強固になっており、
その絆の力が各自が過去に向き合う辛さをきっと支えることが出来るようになっているのだと感じられました。
実際、アイムは皆に支えられたからこそ悲しい過去に向き合い乗り越えることが出来たのです。
本当のマーベラス一味というものはそういうものであるべきだとアイムには思えました。

だから、マーベラスとギャバンの間に過去に何があったのかは分からないが、
マーベラスはここでその過去にも背を向けずに乗り越えるべきであり、
自分たち仲間はそのマーベラスを支えるべきだとアイムは思いました。
そうした覚悟でアイムはマーベラスの前に立って、ギャバンとの過去の話をしてほしいと頼んでいるのです。

そして、そのアイムとマーベラスの姿を見て、
周りにいるジョーもルカもハカセも鎧も、それぞれが別々に、自分の経験を踏まえて、
マーベラス一味においては過去というものは乗り越えるべきものであると感じ、
マーベラスの抱えているギャバンとの過去の話がどういうものか不明ながらも、
もしかしたらその過去の想い出は今まさにマーベラスの中で
向き合い乗り越えるべきタイミングなのかもしれないと思いました。

実際のところ、他の仲間にはその想い出がどんな内容なのか分からない以上、
もしかしたら何てことはないつまらない話で終わるのかもしれない。
しかし、もしかしたらそれはマーベラスの大事な夢の原点に関わる話なのかもしれない。
もしそうならば、マーベラスにとって、それはどんなに思い出すのが辛い話であろうとも、
乗り越えるべき価値のある話であり、仲間ならばそのマーベラスの過去の克服を支えなければいけない。
各自がそれぞれ別個にそんなふうに思い、黙って真剣な眼差しでマーベラスを見つめました。

一方、当事者であるマーベラスはアイムや皆の真剣な眼差しを受けて、困惑したように黙って視線を落とします。

マーベラスもマーベラスで他の仲間たち同様、地球に来てからの1年の間に、
主なところでは第15話と第16話の前後篇、そして第37話と第38話の前後篇において、
仲間にも語ることもなく背を向けてきた幾つかの悲しい過去の想い出に向き合うことを余儀なくされてきました。
バスコの裏切り、赤き海賊団の壊滅、アカレッドとの死別など、
そしてそうした悲しい想い出が連想されるのであまり思い出さないようにしていた
赤き海賊団の時代の様々な出来事などです。

これらを思い出して向き合い、乗り越えることによって、
マーベラスは自分が一番望んでいることが何なのかという解答を掴み取って来たように思っています。
それは、そのマーベラスの過去の克服に際しても決して欠かすことの出来ない支えであり続けた
「共に夢を掴むために集まった仲間の絆」でした。
自分は共に夢を掴む仲間の絆を求め続けていたのであり、そのためにマーベラス一味の仲間を集めてきた。
赤き海賊団という過去を乗り越えた結果、そのようにマーベラスは思いました。

となると、マーベラスの夢の原点とは「共に夢を掴む仲間の絆を得ること」ということになるようにも思えます。
しかし、これはおかしい。
まず「夢」が存在してこそ「共に夢を掴む仲間」というものが存在するのであって、
大前提の「夢」無しで「夢を掴む仲間」そのものが「夢の原点」となるということは有り得ない。
マーベラスの「夢の原点」は「夢を掴む仲間の絆」とは別個に存在するはずなのです。

そもそもマーベラスが自分の原点だと思って思い出していた「赤き海賊団」の頃においては
マーベラスはアカレッドと出会って赤き海賊団に参加した時点で「宇宙最大のお宝」という夢を心に抱いていました。
だからマーベラスの「夢の原点」は「赤き海賊団」以前に存在するのです。
そして、その夢は「共に夢を掴む仲間の絆」と切っても切れない関係にあるようなのです。

つまり、マーベラスにとっての夢の原点は、最初から「仲間と共に掴むもの」という特性を持っていたようなのです。
だからマーベラスは共に夢を掴む仲間を求めてきたのであり、
それがあまりにも夢の原点と一体化した特性であるために、
仲間の絆そのものがマーベラスの夢の原点であるかのように見えてしまうのです。
しかし、夢の原点は別に存在しており、それは仲間と共に掴むものでなければならないようです。

この「夢の原点」は「宇宙最大のお宝」そのものではない。
単に「宇宙最大のお宝」ならば、その正体は不明ではあるが、
マーベラスたち普通の海賊たちの抱くイメージとしては莫大な財宝の類であるから、
必ずしも仲間と共に掴むものとは限らない。
実際、バスコは「宇宙最大のお宝」を一人で手に入れようとしています。
だからマーベラスが自分の夢が仲間と共に掴むものでないといけないと思っているということは、
その夢の原点は「宇宙最大のお宝」そのものではなく何か別のものなのであり、
マーベラスがその夢の原点から出発して「宇宙最大のお宝」という具体的な目標を掲げているのは、
単に便宜的な措置に過ぎないといえます。

そもそもマーベラスは「宇宙最大のお宝」が何なのかよく分かっていないようであり、
マーベラスが本当に欲しいものは「宇宙最大のお宝」そのものではなく、何か別のものだと思われ、
それはマーベラス自身、ハッキリと意識はしていないが、
それこそがマーベラスの「夢の原点」だといえます。
その原点は「赤き海賊団」の時期よりも更に昔の想い出の中に存在するはずです。

しかしマーベラス自身は普段そこまで深く自分の内面について考えないし、
他の仲間達にしても同様なので、マーベラス自身も仲間たちも、なんとなく漠然と
「マーベラスの原点は赤き海賊団の時代にある」というイメージを持っており、
マーベラス自身は自分の夢の原点は「宇宙最大のお宝を手に入れようと思ったこと」や
「共に夢を掴む仲間を集めようと思ったこと」あたりだと思っています。
しかし、これは言ってみれば「マーベラス一味の原点」ではありますが、
そのマーベラス一味の原点であるマーベラスという人間の原点ではありません。

ここでマーベラスが何故かギャバンとの過去の関わり合いの話を仲間に向かって無意識のうちに言及し、
急にギャバンとの過去の話が持ちあがってきたことによって、
仲間たちもマーベラス自身も、もしかしたら「赤き海賊団」時代以前に
マーベラスという人間の原点が存在したのかもしれないと気付き、
そのギャバンとの想い出の中にその原点があるのかもしれないという期待が起こってきました。

少なくともジョー、ルカ、ハカセ、アイム、鎧の5人の仲間は
そのギャバン関係の想い出が、マーベラスにとって「赤き海賊団」の想い出に匹敵する
重大なインパクトのあるものではないかと期待しました。
それは同時に「赤き海賊団」の想い出に匹敵するような悲しい過去なのではないかという危惧でもあり、
だからこそ仲間達はマーベラスがその悲しい過去を乗り越えるのを支えようという心構えで固い表情をしています。
マーベラスが処刑場からの脱出以降、ずっと深刻な顔で思い悩んでいる様子を見れば、
誰でもそのギャバンとの想い出は深刻な悲しい過去なのであろうと想像するのも無理はありません。

しかし、マーベラス自身は、そうしたジョー達の固い表情を見て、ちょっと困ってしまいました。
マーベラスがギャバンと出会っていたかもしれないという想い出が、
「赤き海賊団」の壊滅に匹敵するような悲しい想い出であるかのようにジョー達が想像して身構えていることは
マーベラスにも分かりました。

しかし実際はそんな大した想い出ではないのだとマーベラスは思いました。
マーベラスが処刑場の脱出以降、その過去の記憶を頭の中で思い描いては深刻な顔をしていたのは、
その想い出の内容が深刻だからではなくて、
マーベラスが自分で思い描いていたその記憶のイメージと、
そのマーベラスが出会った人物が宇宙刑事ギャバンであったかもしれないという想定とが、
あまりにも噛み合わないので、とにかくひたすら頭が混乱していたに過ぎません。

だから想い出の内容自体はさほど大した内容ではないのです。
「赤き海賊団」壊滅事件の時のようなインパクトを期待されても困るし、
そこに自分の原点が存在するという、そんな大袈裟なものでもないだろうとマーベラスは思いました。
あくまで個人的な、そんなに悲しいわけでもなく、
むしろマーベラスの過去の想い出の中では比較的マシな想い出ともいえます。

そんなものを皆に向かって大袈裟に語るほどの必要があるのだろうかとマーベラスは少し躊躇し、
船長椅子を立ち上がって皆に背を向けて船室の端に向かい、窓に向かって外を眺めます。
すっかり仲間達は意気込んで聞く姿勢になっています。
ここで語るのを拒否すれば、ますます深刻な想い出だと誤解させることになると思えました。
そこでマーベラス自身もさっきから混乱している頭の中を整理するという目的も兼ねて、
とにかく一度皆に向かってその出来事について語ってみることにしたのでした。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 23:56 | Comment(0) | 海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月12日

海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE 感想その4

ギャバンは極秘捜査によって
現在の宇宙警察の総裁ウィーバルが本物のウィーバルを殺して成り変わった偽者であることを突きとめ、
その正体はザンギャックの怪人であり、その目的は宇宙警察の乗っ取りという
ザンギャック帝国の大陰謀を見破りました。
その企みを阻止するために
ギャバンは偽のウィーバルに命じられたマーベラス一味の不当逮捕を素直に遂行するフリをして、
マーベラス一味の処刑場に偽者のウィーバルをおびき出す作戦を決行、
遂に偽者のウィーバルを追い詰めました。

一見、そのように見えます。
しかし、どうにも不自然な点があります。
いや、おそらく偽ウィーバルはギャバンが自分のことを偽者だと見破っているということは
気付いていなかったでしょうし、
マーベラス一味をエサにして自分をここにおびき出す計画であったことも気付いていなかったと思います。
そういう点では偽ウィーバルはまんまとギャバンに嵌められたといえます。

しかし、ギャバンによる偽ウィーバルへの追及が始まった時、
偽ウィーバルは自分が罠に嵌められたことに気付きながら、言い逃れして窮地を脱しようという努力を一切せず、
むしろ自ら進んで本性を露わにしていきました。
それはギャバンの意表を突くという狙いもあったでしょう。
しかしギャバンはその意表をついた展開にもしっかり対応して、
マーベラス達を救うと同時に偽ウィーバルを追い込むことにも成功しました。
ならば偽ウィーバルは進退窮まったはずです。

ところが偽ウィーバルはまだ余裕を見せています。
つまり最初から余裕があったからこそ、自ら進んで正体をバラすことも出来たのであり、
あわよくば偽ウィーバルは意外な展開に慌てたギャバンがミスしてくれることも期待はしていたのでしょうが、
さすがにギャバンはミスはしなかった。
そこで偽ウィーバルはここに至って自分も奥の手を出すことにしたようです。

まずは偽ウィーバルは化けていた宇宙警察総裁のウィーバルの姿から
自分の本来のザンギャック怪人としての姿に戻りました。
「私はザンギャックのアシュラーダ・・・」と名乗った、
その怪人の姿は頭部や両肩などに多数のドリルを備えた厳めしい姿で、かなり強そうです。

なお、偽ウィーバルから本来のアシュラーダの姿に戻った後も、
声は偽ウィーバル時と同じく、佐野史郎氏のままです。
これは厳密に考えると少し不自然です。
アシュラーダはウィーバルになりすましていた時はウィーバルの姿だけでなく声も真似ていたはずですから、
アシュラーダとウィーバルが偶然同じ声色であったなどということでない限り、
偽ウィーバルの姿からアシュラーダの姿に戻ることによって
元のアシュラーダの声に戻らなければいけないはずだからです。

だからアシュラーダの姿に戻っても同じ声のままというのはおかしい。
これは劇中描写としてはどうしても不自然と言うしかなくて、なんともフォローのしようもありません。
ただ、子供向け映画ですから、見ている子供に分かりやすい描写を心がけることも大切です。
リアルを追求することが逆に子供から見て分かりにくくなってしまうことというのは多々あるもので、
ここで姿だけでなく声まで変わってしまうと、小さい子供には別キャラのように見えてしまうでしょう。
だから、子供向け映画としては、ここで偽ウィーバルとアシュラーダを同じ声にすることで、
姿が変わっても一貫した同じキャラであることを示すという演出はアリだと思います。

それにやはりせっかく出演いただいた佐野氏の演技力を、
たとえ声だけでもアシュラーダ本体の方でも活かしたいというのは演出側として自然な感情であろうし、
佐野氏の演じたキャラの本体の方の演技を別の声優の方が引き継ぐとしたら、
それはやはりかなりのプレッシャーということにもなるでしょうから、
いっそそのまま佐野氏に一貫した演技プランで演じていただいた方が良いともいえます。

さて、物語の方に戻りますが、
この超極秘作戦の担当者であるアシュラーダはザンギャック帝国においても、
おそらく皇帝アクドス・ギルの最側近の怪人と思われ、
変身能力だけが取り柄の道化などではないのは明白です。
かなりの実力者と見ていいでしょう。

「さすがはギャバン・・・海賊をエサに私をおびき出すとは、なかなか考えたじゃないか?」と余裕たっぷりの口調で
自分を罠に嵌めたギャバンの手腕を褒めるアシュラーダに対して、
ギャバンは一歩距離を置いて用心深くレーザーブレードを構えます。
アシュラーダがかなりの実力者であることはギャバンも当然相対して分かります。
当然、アシュラーダのこの余裕は自身の実力に由来しているとギャバンは判断し、
目の前のアシュラーダに注意を集中しました。

ところが、そうしたギャバンを嘲笑うようにアシュラーダは「しかし・・・甘い・・・!」と言い放ちます。
それはギャバンの一見完璧に見える罠に不備があったという嘲りでした。
一瞬意味が分からなかったギャバンはレーザーブレードを構え直しながら「なにぃ?」と問い返しました。
と、その瞬間、突然ギャバンの背後で爆発が起こり、ギャバンは「うわあああ!!」と吹っ飛ばされたのでした。

ギャバンとアシュラーダの遣り取りを見守っていたマーベラス達も、
この突然の出来事にあっと驚き息を呑みます。
何者かがギャバン目がけて銃撃をしたようです。
その銃撃のあった方向をマーベラス達が慌てて見ると、
おそらくこれもゴーミン達の化けたものであろうが、新手の宇宙警察の隊員たちが整列して立っていました。
しかし撃ったのは彼らではない。その新手の隊員たちの隊列の中から銃を構えて前に進み出てくる者がいます。

呻いて起き上がってその狙撃手の方に振り向いたギャバンは、その姿を見て「ああっ!?」と驚愕の声を上げました。
驚くギャバンを見て愉快そうにアシュラーダは
「こいつを連れて来ていてね!ザンギャックと宇宙警察・・・2つの技術で作り上げた最強の戦士・・・
ギャバン・ブートレグだ!」と、その狙撃手の正体を説明したのでした。

最強の戦士、ギャバン・ブートレグと呼ばれたその戦士のボディは
全身メタリックシルバーのコンバットスーツ状になっており、
その外見はギャバンのコンバットスーツに酷似しています。
そっくりで見分けがつかないというわけではありませんが、基本デザインは同一で、
明らかに同系統、同じシリーズと言っていいでしょう。
むしろギャバンのコンバットスーツは三十数年前から同じデザインであるのに対して、
それを現代風に更に斬新にした最新型ギャバンと言うべきデザインです。

それが偶然ギャバンに似通っているわけではないことは、
アシュラーダの言った「ギャバン・ブートレグ」という名称からも明らかです。
その名に「ギャバン」という文字が入っていることから、
明白にギャバンと同系統の戦士として作られたことが分かります。

ちなみに「ブートレグ」とは「海賊版」という意味です。
まぁこの映画の物語が「海賊戦隊ゴーカイジャー」の1エピソードであるということに引っ掛けて
「海賊版ギャバン」という名を冠した戦士を登場させたのでしょうが、
ともかく海賊版ということは「偽ギャバン」という意味と解釈していいでしょう。

夏映画「空飛ぶ幽霊船」には偽ゴーカイオーが登場しましたが、
あれもアイムが「海賊の海賊版」と言っていたように、
「海賊版」という言葉が「悪いヤツが使う偽者」という意味で使われていました。
今回の「ブートレグ(海賊版)」も「悪者であるザンギャックの使う偽者のギャバン」ということになります。

しかもこのブートレグは、アシュラーダが「作り上げた」と言っていることから、
どうやらギャバンのように生身の戦士がコンバットスーツを蒸着して変身したものではなく、
機械で作られた人造戦士であるようです。
そして、それは「ザンギャックと宇宙警察の2つの技術で作り上げた」というのです。
ザンギャック帝国の幹部でありながら宇宙警察の総裁に化けて宇宙警察を牛耳っていたという、
2つの顔を使い分けていた狡猾な怪人アシュラーダだからこそ、
このような形の戦士を作り上げることが出来たのだといえます。

しかし、それが具体的にどう最強戦士なのか、
その場で唖然として見ていたギャバンやマーベラス達には一瞬よく分からなかった。
単にザンギャックと宇宙警察という宇宙でも双璧をなす高い武器開発の技術力を持つ組織の技術を融合したから
最強だと豪語しているだけなのかとも漠然と思えた。

しかし、そのブートレグがギャバンの顔を認識して一直線に突っ込んできたのを迎え撃ったところ、
ギャバンはそのブートレグの動きに異様な既視感を覚えました。
確かに最強戦士と豪語するだけあって見事な動きでしたが、その動きはギャバンには見事に予想がつくものでした。
但し、ブートレグもまたギャバンが防御しようとする動きを見事に予想出来ているようで、技は互角となります。
しかしコンバットスーツを蒸着していない状態のギャバンは力負け、スピード負けして劣勢に追い込まれていきます。
不利を悟ったギャバンは、ブートレグの正体が何なのかようやく分かりました。

ブートレグの攻撃を何とか受け止めながらギャバンは「俺の能力を複製したのか・・・?」と呻きます。
ブートレグの動きは何から何までギャバン本人にそっくりだったのです。
正確に言えば、コンバットスーツ装着時のギャバンの動きを完全にコピーした戦士といえます。
いったいどうやって自分の能力を完全コピーした機械戦士などを作ることが可能になったのか
ギャバンには皆目見当がつきませんでしたが、
とにかく間違いなく戦士としてのブートレグの動きは自分の動きそのものでした。

自分の変身後の姿に変身前の自分が敵うはずがない。
ならば変身すれば互角なのかというと、確かに互角といえば互角でしょうが、
ギャバンは基本は生身の戦士であり消耗するし疲労します。
一方ブートレグは完全に機械の戦士ですから疲れたり衰えたりしません。
だから互角の力で延々と戦い続けていれば、最終的には力が低下しないブートレグの方が勝つでしょう。
宇宙最強の刑事の能力を複製し、その宇宙最強の刑事をも倒し得る戦士だからこそ、
ブートレグは「最強の戦士」という称号を与えられているのです。

そして、そのブートレグがどうやって生み出されたのか、ギャバンにはよく分かりませんでした。
ギャバンと同じコンバットスーツを作ること自体は宇宙警察の技術力を利用すれば可能です。
総裁に化けていたアシュラーダならばそれは可能だったでしょう。
しかしギャバンの強さはコンバットスーツの性能だけによるものではない。
ギャバン自身が研鑽して積み上げてきた肉体的能力が加わってこそのものなのです。
それは宇宙警察の技術で再現することは出来ないはずです。

しかし、先ほど自分達を圧倒したギャバンがたちまち劣勢に追い込まれるのを呆気にとられて見ていたマーベラス達は、
ブートレグの能力がギャバンの複製だと聞いて、あることに気付きました。
アシュラーダはブートレグが「ザンギャックと宇宙警察の2つの技術で作られた」と言いました。
そこでマーベラス達はザンギャックの作り上げた機械兵士の傑作のことを思い出したのです。
それはバリゾーグでした。

バリゾーグは機械兵士の能力だけではなく、
そこにジョーの剣の師匠であったザンギャック元特殊部隊員シド・バミックの能力を移植して完成した戦士でした。
そのバリゾーグ製作のノウハウはザンギャック最高の科学者ザイエンのものであり、
インサーンなどはその技術を完全に解明することは出来なかったようですが、
帝国の中枢にあったと思われるアシュラーダはそのザイエンの技術のノウハウを手にしていたようです。
そのザイエンの遺したノウハウを用いて機械兵士の身体に移植する能力がシドのものではなくギャバンのものであり、
その機械の身体が宇宙警察の技術で作り上げたギャバンシリーズのコンバットスーツの改造版の機械兵士
ギャバン・ブートレグであったとしたならば、
移植されたギャバンの能力はフルに発揮されることになるでしょう。

しかし改造手術を受けてバリゾーグにされてしまったシドとは違い、ギャバンは本体がこうして健在なのです。
ならばどうやってギャバンの能力をブートレグに移植出来たのかというと、
そこで宇宙警察の技術力が使われたのだと思われます。
おそらく宇宙警察ではコンバットスーツを通してギャバンの能力に関する精細なデータをとっていたのでしょう。
そのデータを総裁に化けて入手したアシュラーダが
ザンギャックのザイエンの技術を使ってブートレグにそのデータを移植して、
ギャバンを超える最強の戦士ブートレグを作り出したのです。
ザンギャックと宇宙警察の2つの技術で作り上げた最強の戦士というのは、そういう意味であったのです。
細かい経緯はよく分からないながらも
マーベラス達はおそらくバリゾーグのように機械兵士の身体に宇宙警察から盗んだギャバンの能力データを
移植した戦士がブートレグなのだろうということは直感したのでした。

唖然としてブートレグを見るマーベラス達の足元に、
ブートレグに蹴り飛ばされて「おわああ!!」とギャバンが転がってきました。
しかしギャバンは立ち上がります。
ブートレグは常に生身のギャバンよりも一段上の力を発揮するのでギャバンはブートレグに勝つことは出来ない。
しかしブートレグの動きは全部読むことは出来る。
読むことは出来てもよけることが出来ないのだが、それでも読めている分、簡単には致命傷は喰らわない。

だからまだ立つことは出来るのですが、いつまでもそんなことは続けられません。
ダメージは溜まっていって結局は倒されることになります。
結局、このままでは勝ち目は無いのだということはギャバンにも分かりますし、
それはアシュラーダにも分かっています。
もはや勝機が無いことはギャバンも悟ったであろうと見て
アシュラーダはブートレグを一旦退かせて自分の横に立たせます。

こうなったらギャバンの狙いはブートレグと戦いながら
隙を見てブートレグを操るアシュラーダを急襲して倒すことしかありません。
そのギャバンの狙いを読んで、アシュラーダはブートレグにギャバンを襲わせることではなく
自分を守ることを命じたのでした。
なかなか慎重で狡猾な怪人です。
そして、ここでアシュラーダは「ギャバン!海賊と共に地獄へ行け!」と嘲笑い、
体育館の中に大量のゴーミン達を呼び寄せたのでした。
あっという間に夥しい数のゴーミン軍団にギャバンとマーベラス達は包囲されてしまいました。

ギャバンも、マーベラス達も、これはあまりに不自然だと驚きました。
マーベラス一味の処刑執行のための宇宙警察隊員たちが全部ゴーミンの変装であったのはまだ分かりますが、
それとは別にこれほど大量のゴーミン達を忍ばせておく必要があったとは思えない。
アシュラーダはギャバンの罠には気付いていなかったはずなのですから、
この場は単に手錠で縛られたマーベラス一味を処刑すればいいだけの場であったはずです。
ならば、こんな大量の兵を隠しておく必要など無いではないか。
いったいアシュラーダは何者と戦うつもりでこれほど大量の兵を忍ばせていたのだろうか?

いや、そもそもどうしてブートレグをここに連れてきていたのか?
ギャバンをも倒し得る最強戦士という隠し玉がどうしてこんなところに都合よく居たのか?
まさかこんな目立つギャバンの偽者を常に偽ウィーバルがボディガードとして連れ回しているはずがなく、
今日この場に特別に連れて来ていたと見て間違いない。
結果的にブートレグがこの場にいたお蔭でアシュラーダはギャバンの罠を打ち破ることが出来たわけですが、
それは偶然にしては出来過ぎというものでしょう。
かといってあらかじめアシュラーダがギャバンがここで罠を仕掛けていることを見破っていたわけでもない。

となると考えられるのはただ1つ、
逆にアシュラーダが最初からこの場でギャバンを罠に嵌めようとしていたということになります。
つまり、アシュラーダはギャバンがマーベラス一味の処刑を総裁臨席の場でやりたいと言ってきたのを受けて、
その場でマーベラス一味もろともギャバンを謀殺してやろうと考えて、
大量の兵と対ギャバンの秘密兵器であるブートレグを潜ませていたのです。
すると、アシュラーダの予想外にギャバンが自分の正体を見破っており、自分を倒すために罠を張っていた。
危うくギャバンの罠に嵌りそうになったアシュラーダだったが、
あらかじめギャバンを謀殺するために忍ばせておいたブートレグを繰り出すことで
窮地を脱して形勢逆転したということになります。

この場にギャバンが現れた時にウィーバルに化けたアシュラーダがほくそ笑んだことや、
アシュラーダがギャバンの罠の巧みさを褒めながらそれでも甘いと言ったのも、つまりはそういうことだったのです。
おそらくアシュラーダは最初からギャバンを謀殺するつもりで
マーベラス一味の逮捕のために地球に呼び寄せたのでしょう。
そしてブートレグを作り上げていたのも、ギャバンを倒す作戦に投入するためであったと思われます。

しかし、これはどうも妙な話です。
アシュラーダはギャバンが自分の正体に気付いていることや、
自分を罠に嵌めようとしていることは知らなかったのです。
つまり別にアシュラーダはギャバンと敵対関係にはなかったはずですし、
特に邪魔者だと思う理由も無かったはずなのです。
それなのにアシュラーダはギャバンを殺そうとしていた。

ウィーバル総裁に化けているアシュラーダとしては、目立った行動は出来るだけ避けるのが賢い判断のはずです。
ギャバン謀殺などという危ない橋を渡る必要性があるとは到底思えません。
しかしアシュラーダはわざわざブートレグまで作り上げて念入りにギャバンを倒すための準備を積んできたようです。

どうもこれはおかしい。
ザンギャック皇帝アクドス・ギルがアシュラーダに命じたことは宇宙警察の乗っ取りであって、
ギャバンを殺すことではなかったはずです。
また今回の件でも、アクドス・ギルが地球侵略の邪魔者であるマーベラス一味の排除を
アシュラーダに命じたのは理解出来るが、
アクドス・ギルはおそらく一緒にギャバンを謀殺することなど命じてはいないはずです。

どうも、このギャバンを狙ったというのはアシュラーダの独断のように思えます。
そのあたり、どうも謎が残るのですが、この場ではギャバンやマーベラス達にはそこまで頭は回りません。
ただ彼らにもハッキリ分かったのは、どうやらアシュラーダが最初からギャバンを狙って
この場で罠を張っていたということです。
もちろんマーベラス一味の処刑もするつもりではあったのですが、
アシュラーダの力の入れようを見ると、どうもギャバンの方がメインターゲットであった印象です。

どうしてアシュラーダがギャバンを狙うのか、
その理由はマーベラス達はもちろん、ギャバン自身にも分かりません。
ただ、当初はギャバンはマーベラス達の命を狙うザンギャックの手先たちの中に
あえてマーベラス達を連れてくることで敵の親玉をおびき出したつもりでいました。
だから敵の親玉を潰すという目的を果たしながら、囮として使ってしまったマーベラス達のことは
責任をもって守ろうという意識でした。
ところが実際はここに集まったザンギャック勢は主にギャバンを狙っていたのです。
実際の対決の構図は当初の想定よりも、より「ギャバンVSザンギャック」の色が濃いものだった。
マーベラス達はそこに巻き込まれてしまったという印象がより強い。

しかも現状の敵味方の戦力比を見ると、最初に想定していたよりも深刻な状況です。
ギャバンがこうした状況をあらかじめ見越していれば、
こんな深刻な場にマーベラス達を巻き込むようなことはしなかったでしょう。
自分の読みが甘かったためにマーベラス達には申し訳ないことをしてしまったと、ギャバンは悔やみました。
ギャバンは周囲のザンギャック兵達の方を睨みながら、背後にいるマーベラス達に向けて
「巻き込んで済まなかった!あとは俺がカタをつける・・・君たちは逃げろ!!」と言います。

最初はギャバンはマーベラス達を救った上でアシュラーダを倒すつもりでした。
しかしこの状況では、マーベラス達を守りながらアシュラーダを倒すのは難しそうでした。
いや、マーベラス達も自力で戦って自分の身は守るであろうが、
巻き込んでしまった立場のギャバンとしてはマーベラス達を守る義務からどうしても逃げることは出来ない。
マーベラス達が自力で戦えようが戦えまいがそんなことはこの際関係無く、
とにかくギャバンは彼らを守らねばならない。

そしてこの状況においてはギャバンはまずマーベラス達の安全確保を最優先するしかない。
そのためにはアシュラーダを倒すことは二の次とするのもやむなしでした。
まずマーベラス達を逃がし、その後、余力でもってアシュラーダを倒すという戦い方をするしかない。
そのために敵の大部分を自分が引き受けようとギャバンは思いました。

それに対してアイムが「でも・・・この数!」と言います。
周囲のゴーミン達は大変な数です。
もちろんアイムとしても、こんな不利な状況にいきなり巻き込まれて
ギャバンの戦いに付き合おうなどという気はありませんでしたが、
こんな大量の敵を相手に1人で戦ってアシュラーダを倒すなどどう考えても無謀だと思えたので、
どうせならギャバンも一緒に6人全員で血路を開いて逃げた方がいいのではないかと思ったのでした。

しかしギャバンは「大丈夫ぅっ!!」と腹の底から大声を出しながら、
自分の着ている革ジャンの腹のところをドン!と叩きます。
するとどういう仕組みになっているのかよく分かりませんが、
ギャバンの懐から没収していたモバイレーツが出てきます。
ギャバンはそのモバイレーツをひょいとマーベラスに投げて返し、
更に続けて4つモバイレーツを取り出すと他の仲間4人にも投げ返しました。

これでマーベラス達は変身も出来るようになりました。
変身して戦って囲みを解いて脱出するようギャバンは言っているのです。
そしてギャバンは少し後ろに視線をやってマーベラス達の方をチラリと見て軽く笑うと、
ぐっと前方のアシュラーダの方を睨みながら、自分に気合いを入れるように
「・・・よろしく勇気!」と言い、こめかみに右手の指2本を添えて敬礼のように前にチョイッと突き出しながら
「・・・だよ!」と、マーベラス達に対して軽くおどけてみせました。
「自分は大丈夫だから君たちは逃げなさい」という意思を伝えるためにギャバンは余裕を示してみせたようです。
そして次の瞬間、ギャバンはアシュラーダの方に向かって駆け出し、ゴーミンの群れに突っ込んだのでした。

あくまでギャバンはアシュラーダをこの場で倒すつもりです。
そのためには、まずはギャバンが多くの敵を引き付けている間に
巻き込んでしまったマーベラス達に逃げてもらわないといけないとギャバンは考えています。
この圧倒的不利な状況から一旦撤退するというつもりはギャバンには無いようです。
ならばマーベラス達としてもギャバンが戦いやすくするためには、
自分達は早く逃げた方がいいということになります。

もちろん逃げるためにはマーベラス達も戦わねばならないが、
それはあくまでこの場を逃れるための戦いであり、
この場のザンギャック兵を全部倒してアシュラーダを倒すまで戦うというものではない。
マーベラス達はこの大量の兵を相手に宇宙警察のためにそこまでする義理は無い。
マーベラス達は圧倒的劣勢になった時、自分達だけ逃げるか、あるいはギャバンともども逃げるか、
2つの選択肢がありましたが、ギャバンが逃げるつもりがない以上、マーベラス達だけが逃げるしかありません。

しかし、どうしてギャバンは圧倒的劣勢が分かっていながら、
あくまで逃げずにアシュラーダを倒すために戦おうとするのか?
ブートレグがいる以上、ギャバンの不利は決定的であるようにマーベラス達には見えました。
しかしギャバンは勝ち目が無いとは思っていません。

確かにギャバンとブートレグは、ギャバンが変身すれば能力的には互角です。
そして持久力や耐久力ではブートレグの方が上です。
しかしギャバンはブートレグに足りないものに気付いています。
それが先ほどのギャバンの「よろしく勇気」という謎の言葉に関係しています。
その言葉に象徴されるモノをギャバンは持っており、それが自身の最大の武器だと自負しており、
ブートレグにはそれが無い以上、自分はブートレグに打ち勝つことが出来ると確信しています。
だからギャバンは自信を持って「大丈夫」と言うことが出来たのです。

それにしても「よろしく勇気」というのは奇妙なフレーズです。
日常において一般人があまり使う言葉ではありません。
このフレーズは実は1982年放送の「宇宙刑事ギャバン」のTV本編の主題歌
「宇宙刑事ギャバン」のサビの歌詞に由来しています。

この主題歌のサビは「ギャバン、あばよ涙、ギャバン、よろしく勇気、宇宙刑事ギャバン」という歌詞になっています。
つまり「よろしく勇気」は「あばよ涙」と対になっているフレーズであり、
2つのフレーズが一緒になって1つの意味となっているようです。
だから、ここでギャバンが言った「よろしく勇気」には「あばよ涙」の意味も含まれていると見ていいでしょう。
それで、これはいったいどういう意味なのかというと、歌詞のフレーズの意味としてはシンプルな意味だと思います。

ギャバンの主題歌の歌詞は全体的に「男らしいヒーローのような生き方とはどういうものなのか」について
視聴者の子供たちにストレートに示すものとなっています。
1コーラス目でヒーローの条件として重視されていることは「振り向かないこと」「ためらわないこと」であり、
2コーラス目で同様に重視されていることは「あきらめないこと」「悔やまないこと」です。
つまり、後ろ向きな精神は否定されており、前向きな精神が肯定されている。
そして1コーラス目のサビに「あばよ涙」「よろしく勇気」のフレーズがあり、
2コーラス目のサビの同一箇所には「あばよ昨日」「よろしく未来」というフレーズがある。
こうしてまとめてみると、「涙」は「昨日(過去)」に重ね合わされており、
「勇気」は「未来」に重ね合わされていることが分かります。

つまり、ギャバンの主題歌に込められた子供たちへのメッセージというのは、
「悲しく辛い過去を振り向いて悔やんで涙するのはもうやめて、あきらめず、ためらわず勇気をもって進めば、
茨の道の先にもきっと明るい未来を掴み取ることが出来る」ということです。
それが男っぽいヒーローの生き方だということをギャバンの主題歌は子供たちに伝えようとしていたのです。

この場面でギャバンが言った「よろしく勇気」というフレーズには、
このギャバン主題歌のメッセージ全体の意味が込められていると見ていいでしょう。
要するにギャバンはどんな不利な状況でも諦めず躊躇わない勇気をあるので、きっと勝利するのだという
確信があるということになります。

しかし、これだけではかなり月並みな解釈となります。
まぁ月並みになってしまうのは仕方ない。
何せ、このギャバン主題歌の歌詞はかなり抽象的であり、漠然とした意味だからです。
基本的には子供たちへ向けたメッセージソングなので、ギャバンに限らず誰にでもあてはまる内容なのです。

そもそも、この「よろしく勇気」という言葉はギャバンの決めゼリフというわけではなく、
単なる主題歌の歌詞でしかありません。
1982年放送の「宇宙刑事ギャバン」本編でギャバンがこのセリフを言ったことはありません。
もしこれがギャバンの決めゼリフであったのなら、
そこには劇中人物であるギャバンのキャラ的な背景が反映されており、
そのセリフにはギャバンならではの深い意味が込められていることでしょう。
しかしギャバンというキャラが実際はこのセリフと縁が無いので、
このセリフに込められた意味は主題歌の漠然としたメッセージの域を超えないのです。

だが、この映画のこの場面ではギャバンは「よろしく勇気」というセリフを言ったのです。
メタ的なことを言わせてもらうと、劇中人物であるギャバン自身はギャバンの主題歌を聞いたことはないはずです。
それなのに「よろしく勇気」などという奇妙な言い回しを知っている。
そんな変なセリフが即興で出てくるはずはないでしょう。
つまり、この映画におけるギャバンというキャラは「よろしく勇気」というセリフを知っているのであり、
おそらく、こういう絶体絶命の場面で拠り所とするような大切な言葉なのでしょう。
ギャバンという人物を象徴する、一種の決めゼリフと言っていい。
ギャバンにとって、このセリフは自分を自分たらしめている、人生の指針のような言葉なのでしょう。

1982年放送の「宇宙刑事ギャバン」本編では、ギャバンはこのセリフを喋らなかったが、
これもまた「ゴーカイジャー」物語世界に登場するキャラがオリジナルとは微妙に設定が違うものもあるという
1つの例と考えればいいでしょう。
但し、相違点はあくまで微妙です。
ドルギランの大きさが違っているという程度の違いです。
大きさは異なっていても、あくまでギャバンの乗機は1982年のTV本編と同じドルギランなのであって、
見たこともないような宇宙戦艦などに乗ってはいない。
それと同じように、この映画におけるギャバンは「よろしく勇気」という決めゼリフを持っているが、
それはあくまで1982年のTV本編の主題歌における意味と同じ意味なのであって、
1982年TV本編の内容が背景となった決めゼリフであるはずなのです。

つまり、30年前のTV本編の中におけるギャバンの物語の中で
「よろしく勇気」というギャバンの決めゼリフは形成されたと解釈出来ます。
我々が30年前に見た「宇宙刑事ギャバン」という番組の中では
ギャバンは「よろしく勇気」などというセリフは言っていませんでしたが、
この映画に登場したギャバンは、どうもその30年前の「宇宙刑事ギャバン」のギャバンとは
微妙に違う設定のキャラであるようです。

この映画に登場したギャバンの三十数年前の地球におけるマクーとの戦いの物語は、
我々の「宇宙刑事ギャバン」で見たギャバンの物語と酷似していながら細部が少しだけ違う。
そこではギャバンは「あばよ涙、よろしく勇気」などというセリフを好んで使っていたのでしょう。
ただ、そのセリフに込められた意味は、そのギャバンの人生に根差したものであり、
そのギャバンの人生は、我々の知る「宇宙刑事ギャバン」におけるギャバンの人生とほぼ同じであるので、
だいたいそのセリフにギャバンがどういう意味を込めていたのか、
その物語を思い出し、更に主題歌の歌詞もヒントにすれば、だいたい想像することは出来ます。

主題歌において強調されていたのは
「辛い過去に涙するのをやめて勇気をもって前向きに生きれば明るい未来を掴み取ることが出来る」ということです。
この意味が込められた「よろしく勇気」というセリフをギャバンが愛用していたということは、
劇中人物であるギャバンには、そうした教訓を実感するような出来事があったということになります。

言い換えれば、ギャバンには乗り越えるべき辛い過去があったということになります。
「宇宙刑事ギャバン」の物語に登場するギャバンは子供好きな明るい成人男性ですが、
それは既に涙に暮れた過去を乗り越えて、ある程度の明るい未来を掴んだ姿だといえます。
ギャバンにも成人する前には辛い過去に涙して未来に絶望するような少年時代があり、
それを勇気によって乗り越えて明るい未来を掴んだからこそ、
ギャバンは子供たちにも明るく勇気をもって未来に向かって進むよう励ましている。
それがギャバンの主題歌の隠された真の設定なのでしょう。

では、そのギャバンの少年時代の辛い出来事というのは何なのかというと、
それはおそらく父であるボイサーの失踪でしょう。
ギャバンが少年の頃、地球に赴任していた宇宙刑事であった父のボイサーは突然行方不明となり、
おそらく宇宙犯罪組織マクーの犯罪に巻き込まれて死んだと思われていました。
ギャバン少年は絶望して涙に暮れたことでしょう。
無力な少年は父の喪失という悲しみの前に、ただ絶望するしかなかった。

しかし、その後、ギャバン少年は涙に沈んだ過去に決別して、
父を取り戻すという明るい未来を目指して進む決意をしたのです。
ギャバンは父は生きており、マクーの関与した陰謀に触れたために捕らわれたままであると信じ、
父を救い出そうと考えました。
そのためには父がマクーのどういう陰謀に関係して拉致されたのか突き止めなければならない。

そのためにギャバンは自分も宇宙刑事になろうと思いました。
そして父と同じように地球に赴任し、父と同じようにマクーと戦って宇宙の平和を守りながら、
父の失踪の手掛かりを探り、最終的には父を救出しようと決意したのでした。

しかし、まず宇宙刑事になるのは様々なテストをクリアして危険な訓練も積まなければならない。
1つの星を任される刑事になるのは更に大変な難関をクリアしなければいけない。
もし宇宙刑事になって地球に赴任出来たとしても、常に死と隣り合わせの苛酷な任務の日々となります。
そんな中、うまく父の失踪の手掛かりが見つかるとは限らない。
だいいち父が生きている確率は極めて低い。

また、もし万が一、父の失踪事件の全貌を掴みマクーの陰謀を突き止めることが出来たとしたら、
それはそれで極めて危険なことです。
父のボイサーはその陰謀を知ったためにマクーに浚われたと思われるから、
もしその陰謀を知ればギャバンにも父と同じ危険が迫ることになる。

そうした恐怖と不安を乗り越えて、
逆にマクーに乗り込んで生きているか死んでいるか分からない父を救い出そうというのですから、
かなり成功の可能性は低い絶望的な話で、
よほどの勇気が無ければこんな絶望的な道を進んでいくことは出来ないでしょう。

しかしギャバン少年は、だからこそ良いのだと思いました。
この世で一番の勇気は、この世で一番不可能なことに挑戦する勇気です。
言い換えれば、この世で一番不可能なことに挑戦することによって、この世で一番の勇気が湧いてくる。
そして、その時のギャバン少年にはこの世で一番の勇気が必要だったのです。
何故なら、当時のギャバン少年は父の喪失という、この世で一番の悲しみに沈んでいたからです。

勇気こそが悲しみを乗り越えるために必要なのであり、
この世で一番の悲しみを乗り越えるためには、この世で一番の勇気が必要であり、
この世で一番の勇気を湧き起こすためにはこの世で一番不可能なことに挑戦するしかない。
だからギャバンは、宇宙刑事になって父の失踪の謎を解き父を救出するという、
ほとんど不可能に近い明るい未来を本気で掴むために挑戦することにしたのです。

悲しみを乗り越えて勇気を発揮して未来に進むことがただ普通に素晴らしいのではない。
人は悲しみを乗り越えるためにこそ勇気を発揮して未来に進むことが必要なのです。
悲しんでいる者、絶望に沈んでいる者こそが、
その悲しみや絶望を乗り越えるために、真に勇気が必要な者なのであり、
明るい未来に向かって進まねばならない者なのです。
それゆえ、絶望している者こそが、真の勇気を得て、真の明るい未来を掴む可能性のある者なのです。

真の勇気とは必要によって生まれてくるものであり、
その必要とは悲しみを乗り越えるために必要ということです。
つまり真の悲しみを知る者こそが、それを乗り越えるために真の勇気を得ることが出来、
真の明るい未来を掴むことが出来る。

あのギャバンの主題歌の真の意味はこれであり、
「あばよ涙、よろしく勇気」という言葉の真の意味もこれです。
単に「悲しみと決別して勇気をもって未来に進もう」という意味ではない。
「涙」と「勇気」は相反するものではなく、表裏一体なのです。
「涙」があるからこそ「勇気」が生まれてくる。
「涙」を知った者は「勇気」をもって未来に進むしかないのです。
絶望的状況であればあるほど、人は勇気を必要とする。
そして、その勇気は絶望を乗り越える力となり、未来を拓く。
「あばよ涙、よろしく勇気」というのは、その真理を簡略に表したフレーズなのです。

そのことをギャバン少年は知っていた。
しかし、どうして少年の身でそんな人生の含蓄の込められたフレーズの意味を理解していたのか?
思うに、この独特の言い回し、そして極めて分かりやすい日常的な単語のみで構成されていることなどから、
これは子供向けに作られた言い回しであろうと推測出来ます。
となると、この「あばよ涙、よろしく勇気」というのは、
父のボイサーが息子のギャバンに向けて、
人生における悲しみと、それを乗り越える真の勇気というものについての真理を教えるために
作り出したフレーズであったのではないでしょうか。

その父の残した言葉によってギャバン少年は、
父を失った悲しみに沈んだ今の自分には、まさに不可能に挑戦する勇気こそが必要なのだと悟り、
宇宙刑事になって父を救出するという目標を定めることが出来たのでした。

その後、ギャバンは厳しい訓練を経て難関をクリアして宇宙刑事となり、父と同じように地球に赴任し、
マクーの犯罪と戦いながら父の手掛かりを探し、遂に父の失踪の真相を解き明かしました。
それは、父がマクーの極秘に開発していた宇宙征服のための最終兵器の完成のカギを握る
レーザーシステムの設計図の秘密を知ってしまったために、
父からその秘密を聞きだすためにマクーが父を拉致したというものでした。
そして、父が長年ずっとマクーに拷問され続けながら、
それでも口を割らずに未だに捕らわれの身のままで生きていることを知りました。

単に口を割らないだけならば、ある程度強靭な精神力を持った者ならば可能でしょう。
口を割らないまま死んでしまえば、それはそれである意味では楽だからです。
しかし、実はボイサーはその設計図を自分の掌に特殊なインクで描いており、
そのインクは体温が低下すると浮かび上がるという特性を持っていたので、
ボイサーが捕らわれの身のままで死ぬことによって設計図はマクーの手に落ちる。
だからボイサーは絶対に死ぬことが出来ず、かといって口を割ることも出来ないので、
とにかく死なないように頑張り続け、ずっと生きたまま拷問に耐え続けるしか選択肢は無かった。

それは気の遠くなるほど絶望的な日々であり、到底耐えることは不可能であるように思えます。
しかし「あばよ涙、よろしく勇気」の言葉をギャバンに伝えたボイサーは、
まさに「不可能に挑む勇気こそが絶望を乗り越える」という真理を実践し、
マクーの苛酷な拷問に耐え続けて、生き続けていたのでした。

その父の事件の真相を知ったギャバンは、遂にボイサーを救出して、マクーの最終兵器開発計画を潰したのでした。
しかし、長年の拷問によってボロボロになっていたボイサーは
ギャバンと再会し救出されてからすぐに死んでしまいました。
結局ギャバンは「父を救出する」という不可能への挑戦を成し遂げたが、
父の死によって、その達成は束の間のことであり、明るい未来を掴むことが出来たとは言い難い。

しかしボイサーが宇宙刑事として命を賭けて守ろうとした宇宙を守り、
宇宙刑事としてボイサーの遺志を継ぐことによって、
きっと自分と父の明るい未来をそこに見出すことが出来るはずだと思ったギャバンは、
不可能への挑戦はまだ終わっていない、継続していると思い直し、
その後マクーを滅ぼし、更にその後はマクーのような宇宙犯罪組織の暗躍によって
宇宙の平和が脅かされることを防ぐために宇宙刑事として身を粉にして働いてきた。

その自分の今までの宇宙刑事としての人生、そして父ボイサーの生き様を通して、
ギャバンは人間は絶望的な状況でこそ不可能に挑戦する勇気を湧き立たせ、
それが絶望的状況を乗り越える力となるのだということを確信しています。

もちろん全ての人間がそんな強さを持っているわけではないが、
ギャバンは様々な絶望を乗り越えてきた自分の持つ強さはそうした種類の強さなのだと自負しています。
父の一件だけではない。刑事なんて仕事をしていると、やりきれない現実ばかりにぶつかります。
その現実に打ちのめされて自分の弱さを知り、勇気を出してその現実を乗り越えていく。
刑事の仕事はそんなことの繰り返しであり、それが出来なければ一人前の刑事とはいえない。

長年、そういうことを繰り返してギャバンは強くなってきた。
「宇宙最強の刑事」などと言われるが、本当に自分が宇宙最強なのかと言われるとギャバンにはよく分からない。
自分は絶望を知る弱い人間だと思っている。
だが、最強かどうかは知らないが、
その弱さや絶望を知っているからこそ自分には強さが有るのだということは知っている。

そんなギャバンは、このザンギャックの兵や強敵ブートレグに囲まれた絶望的状況で決して怯むことはありません。
むしろ、そうした絶望的状況でこそ最も強いのが自分だと自負している。
「よろしく勇気」というのは、そうしたギャバンの自負を象徴する言葉です。

確かにブートレグはギャバンと同等の能力を持っており、ギャバンを凌駕する持久力を持っており、
データ的にはギャバンを超える強さを持っています。
しかし人間ではないブートレグには、絶望的状況でギャバンが発揮するデータを超えた力はインプットされていないし、
その力に対応するプログラムも施されてはいない。
ギャバンは絶望的状況に陥るたびに今でも強くなり続けているのです。
だから、こんな絶望的状況だからこそ、自分はブートレグにきっと打ち勝つことが出来るとギャバンは信じています。

とにかく、この敵軍の中で問題となるのはギャバンと同等の能力を持つブートレグです。
そのブートレグさえ倒せば、アシュラーダを討つことは出来る。
だからブートレグに勝つことを確信しているギャバンは、自信をもって突っ込んでいったのでした。

ギャバンからモバイレーツを受け取ったマーベラス一味の面々は、
「よろしく勇気」というギャバンの口走った奇妙な言葉の意味はよく分かりませんでしたが、
ギャバンの態度があまりにも確信に満ちたものであったので、それ以上はギャバンを止めようとは思いませんでした。
ギャバンはヤケクソになって突撃しているのではなく、それなりに勝算があるのだということは分かったのです。

それでも圧倒的不利ではあるのは間違いないので、心配はありましたが、
別に仲間というわけでもないので、それ以上積極的に制止する理由も無いし、
仲間でもないギャバンが加勢を求めているわけでもないのに、
こんなもともと自分達には関係無い争いに勝手に加勢するというのも変です。
とにかく今はギャバンが望むように、
ギャバンの戦いの邪魔にならないように自分達は早くこの場を脱出した方がいいと思いました。
ギャバンのことが多少は気にかかりましたが、ジョー、ルカ、ハカセ、アイムは
ギャバンの言葉を受けてそのように心を決めました。

ところがマーベラスだけどうも様子が変です。
ギャバンが「よろしく勇気」という言葉を口にして二本指を敬礼のように突き出した瞬間、
ハッとしたような表情でギャバンを見つめて固まったように動かなくなってしまったのでした。
そのマーベラスが背中を見つめるギャバンは迷いなく駆け出してゴーミン達の群れの中に突っ込み、
次々とゴーミン達を倒していきます。

大葉健二氏の生身アクションは、先ほどのいきなりブートレグが襲って来たのに対して応戦した場面と、
そしてこのシーンという2つの場面でこの映画では披露されます。
「ゴーカイジャー」の物語に3度目の出演となる大葉氏ですが、遂に生身アクションを披露したわけです。

何せこの映画の撮影時56歳ですから、
普通の演技はともかく、生身アクションについては正直、
ちゃんとしたアクションが出来るのかちょっと心配ではありました。
年齢ゆえに衰えたショボいアクションを見せられて
往年のファンがガッカリするようなことになりはしないかという危惧が無いではなかった。
また、子供たちから見てヒーローに見えない、ただの老人に見えてしまったらどうしようという不安もありました。

「ゴーカイジャー」の物語において古い作品のレジェンド回が回避されがちであるのは、
やはりあまり年齢の上のレジェンドゲストが
子供たちから見てヒーローに見えないのではないかという心配が制作サイドにあるからです。
そういう点、56歳の大葉氏は普通ならば子供たちから見て絶対にヤバいです。

しかし、そんな危惧を吹っ飛ばすような見事な身のこなしです。
さっきブートレグにやられてしまうアクションの場面も見事なアクションでしたが、
やはりこの場面のようにヒーローらしくバッタバッタと敵を倒す場面が一番映えます。

どれだけ年齢を重ねても演技によってヒーローとしての説得力を見せてくれるレジェンドゲストは
「ゴーカイジャー」の物語の中でたくさん登場はしました。
いや、全員がそうであったと言ってもいいでしょう。
しかし、これだけの高齢になって、演技だけでなくアクションでも
ヒーローとしての説得力を示してくれる役者はそう多くはいないでしょう。
大葉健二氏はまさにそれが可能な稀有な役者さんの1人といえます。

そして、ギャバンはゴーミンの群れの中で戦いながらアシュラーダを睨みつけます。
それに対して「フッフッフッフッフ・・・」と不気味に余裕の笑みを見せるアシュラーダを倒すべく、
ギャバンは「・・・蒸着!!」と変身ポーズをとり、
光の玉となって「ジュオオオッ!!」と叫んでゴーミン達を蹴散らしてアシュラーダの目の前に突っ込み、
コンバットスーツを蒸着した姿を現して、一気にアシュラーダ目がけてレーザーブレードを振り下ろしました。
そこにブートレグが飛び込んできてレーザーブレードを突き出して、ギャバンのレーザーブレードを受け止め、
ギャバンは「むっ!」と予想通りブートレグとの決着が先であることを悟り、
アシュラーダの前で激しくブートレグとの斬り合いに突入していきます。

一方、ギャバンからモバイレーツを返してもらったマーベラス一味の面々も
襲い掛かってくるゴーミン達の包囲網を突破してこの場を逃れるため、
一斉にゴーカイジャーの姿に豪快チェンジして戦闘開始しますが、
その中でマーベラスだけが未だ呆然とギャバンの姿を凝視しており、突っ立ったまま変身していません。

まさかマーベラスがこんな緊急時に棒立ちになっているとは想定もしていなかった他の4人は、
何せ周りを囲んだゴーミン達の数が尋常ではなかったので、敵の方に集中しており、
このマーベラスの異常な様子に気付かずに戦い始めました。
その中でジョーだけがマーベラスが戦っている気配が無いのに気付いて、
ふと後ろを振り向くとマーベラスが変身もしないで棒立ちになっているのに気付いて
「・・・ん・・・?」と不審に思いました。

どういうわけかマーベラスは少し離れた場所でギャバンとブートレグが斬り合いをしているのを見て呆然としています。
一体マーベラスに何が起きたのか、ジョーにもよくは分かりませんでしたが、
ここまでの描写では映画を観ているお客さんにもさっぱり分かりません。

そのマーベラス、どうやらさっきギャバンが言った
「よろしく勇気」という言葉に大きなショックを受けているようです。
ギャバンの方を凝視しながらマーベラスの脳裏には、昔の記憶のようなものがフラッシュバックしています。
その記憶は革ジャンを着た男が指を二本突き出す姿、子供の頭を撫でる男の手、
そして「よろしく勇気だ!」という男の言葉が響きます。

遠い記憶であるようで、マーベラスにはその記憶の中の革ジャン男の顔が思い出せません。
だが、どうやらその男が過去に「よろしく勇気」という独特のセリフを言うのをマーベラスは聞いたことがあるようで、
その記憶の中の男と同じ独特のセリフ、そして同じような仕草をギャバンがいきなりしたので、
マーベラスにはギャバンがその記憶の中の男と同一人物のように思えて大いに驚いたのでした。

そう思ってマーベラスがじっとギャバンの姿を見てみると、
確かにあの遠い記憶の中の男と後ろ姿や服装も似ているような気もしてきます。
年齢はずいぶん記憶の中の男とは違うが、
遠い昔の記憶ですから、その記憶の中の男ともし現在出会えば、
おそらくギャバンぐらいの年齢になっているぐらいだとマーベラスは気付き、
ますますギャバンがその記憶の「よろしく勇気」の男なのではないかという疑惑は膨らみます。

だが、そんなはずはないと思い、マーベラスは混乱しました。
何故なら、マーベラスの記憶の中のその男は宇宙刑事などではなく、
宇宙海賊、そしてマーベラスの「父親」だったからです。
だから、その男がギャバンであるはずがない。
しかし、あるはずがないと思いつつも、あるいはそうなのかもしれないとも思えてきて、
マーベラスの頭の中はひどく混乱してきました。

それで戦いの最中だというのに、1人だけ呆然自失の状態となってしまっていたマーベラスでしたが、
突然、体育館の床の下、自分の足元から異様な破壊音が湧き起こってきたため、さすがにハッと我に返りました。
次の瞬間、体育館の床がバリバリと轟音を立てて破壊され、
床に開いた大きな裂け目から巨大なドリルが突き出してきて、
ジョー達と戦っていたゴーミン達を大量に蹴散らします。

それは豪獣ドリルの尖端の巨大ドリルでした。
豪獣ドリルは地下からその姿を現すと、
コクピットからは「お待たせ致しましたぁ!皆さん!乗ってくださぁい!」という鎧の得意げな声が響きます。
ようやく鎧がマーベラス達の連れ去られた場所を特定して救出にやって来たようです。

スーパー戦隊シリーズにおいては、
戦隊側の巨大戦力で敵の等身大の怪人や戦闘員を直接攻撃するという描写は基本的にはタブーなのですが、
今回は鎧もやはりガレオンのメインコンピュータの復帰に時間がかかった関係で
マーベラス達の居場所の特定に意外に時間がかかってしまい、
大慌てで飛び込んできたという緊急時対応であったので、まぁ特例扱いということでいいでしょう。

鎧としては仲間のピンチに間一髪で颯爽と現れたヒーロー気取りですが、
実際のところは待つ身の仲間5人から見れば鎧の登場は予想以上に遅く、
ギャバンに助けられていなければマーベラス達はとっくに死んでいました。
そして、ギャバンに助けられてモバイレーツも返してもらい、自力脱出のために戦い始めた状況の中で、
彼らはすっかり鎧のことなど忘れていました。

そんな忘れられた頃にようやく現れて得意顔の鎧に呆れたルカは「来るのが遅〜い!」と激しくツッコミますが、
ハカセはこれで戦う手間が省けて脱出できると思い
「やったぁ〜!」と歓喜して豪獣ドリルの方に向かって駈けていきました。
仕方なくルカもゴーミン達を蹴散らしながらハカセの後を追い、
アイムも「参りましょう!」と豪獣ドリルに向かいます。

ジョーもそれに続こうとしてマーベラスの方を見ますが、マーベラスはそれでもまだ突っ立ったままです。
鎧が救出に来たことは分かっているはずであり、仲間達がみんな脱出の態勢に入っていることは分かっているはずです。
それなのにまだ1人だけ変身もせずに突っ立ったままのマーベラスを見て、ジョーもさすがに焦れて
「何してる!?・・・マーベラス!!」と大声で怒鳴りました。

マーベラスはまだギャバンと自分の父親が同一人物なのかもしれないと思い、
その真相を探るかのように、ブートレグと戦い続けるギャバンの姿を凝視していました。
鎧が助けに来た以上、すぐに脱出しなければいけない。
しかし、この場を脱出してしまうと、もう二度とギャバンには会えないかもしれない。
ならば今少しの間だけでもギャバンの姿を観察して、
果たしてギャバンが遠い記憶の中の父親と同一人物なのかどうか見極めたいとマーベラスは思ったのです。

しかし、観察してもよく分からない。
だいいちギャバンはコンバットスーツ姿に変身してしまっているので、見た目ではもうよく分かりません。
それでも何かヒントが見つかるかもしれないと思い必死で見つめるマーベラスでしたが、
さすがにジョーの怒声で我に返って、ジョーの方をチラリと見ます。
今の自分はマーベラス一味の船長であり、仲間たちを率いる立場です。
こんな個人的な感情で皆に迷惑をかけるわけにはいかない。
そう思ったマーベラスは残念そうにギャバンの方を一瞥すると、
想いを振り切るように顔を背けて駆け出し、豪獣ドリルに向かいました。

ジョーはマーベラスが豪獣ドリルに向かうのを見届けつつ、
いったいマーベラスは何をしていたのかと思い、マーベラスがじっと見ていた方向に視線をやります。
そこにはブートレグと戦うギャバンの姿がありました。
マーベラスはずっとギャバンを見つめていた。
しかも変身するのを忘れるほど必死で見ていたのです。
そのことい気づいたジョーでしたが、
しかし、いったいどうしてマーベラスがそんなに初対面の宇宙刑事のギャバンのことを気にかけていたのか、
ジョーにはその理由は皆目見当はつきませんでした。

だが、今はそんなことを確かめている余裕は無い。
首を捻りながらジョーも脱出を急ぎ、豪獣ドリルに飛び込みました。
そうして仲間5人全員が豪獣ドリルに乗り込んだのを確認すると、
鎧は「よし!脱出!」と言って豪獣ドリルを発進させ、
豪獣ドリルはゴーミン達を吹っ飛ばして飛び上がり、体育館の屋根を突き破って飛んでいき、
マーベラス一味はまんまとその場を脱出することに成功したのでした。

これによってその場にいたゴーミン達はほぼ全滅し、
体育館には相変わらず互角の戦いを続けるギャバンとブートレグ、そしてアシュラーダが残されます。
マーベラス一味を取り逃がしてしまったアシュラーダですが、
「フン!海賊どもの処刑は後だ!」と、あまり残念そうではありません。
アシュラーダにはむしろマーベラス一味よりもギャバンの方が主なターゲットであるようで、
ブートレグに向かって「ギャバンを魔空空間に引きずり込め!」と命令を発します。
このアシュラーダの命令を受けてブートレグは目を赤く発光させてフルパワー形態となり、
ギャバンを押さえこみにかかります。
一方、ギャバンはこのアシュラーダの意外な言葉に「・・・魔空空間だとぉ!?」と驚愕しました。

この「魔空空間」とは何なのかというと、
1982年放送の「宇宙刑事ギャバン」TV本編において登場していた亜空間のことです。
宇宙犯罪組織マクーは敵である宇宙刑事と戦う際、
このマクーの支配する魔空空間を作り出して敵を引きずり込み、そこで戦いました。
魔空空間においては、魔空空間を支配するマクー側の怪人は能力が3倍に増幅するので、
敵との戦いが有利になるのです。

ギャバンはその頃、あえて魔空空間で戦ってマクーの怪人たちを倒していきましたから、
恐ろしく強いのは間違いない。
しかし、ギャバンと同じ能力を持つブートレグが魔空空間に行けば、
数値的にはギャバンの3倍の強さということになります。
それではいくら何でもギャバンは絶対的に不利となります。

そこにギャバンを引きずり込んで一気に勝負を決しようというのがアシュラーダの目論みであるようですが、
しかし、この魔空空間はマクーの専売特許のようなもので、
ギャバンが三十数年前に首領のドン・ホラーを倒してマクーを壊滅させた後は、魔空空間も消滅したはずでした。
だから、それから三十数年が経った現在、ここでザンギャック怪人であるアシュラーダの口から
「魔空空間」という懐かしい言葉が飛び出してきたのを聞いて、ギャバンはあまりの意外な展開に驚き、
「バカな・・・宇宙犯罪組織マクーは滅びたはずだ!」とアシュラーダに向かって言い返します。

しかし、アシュラーダの身体の前方の空間には、赤黒い亀裂のようなものが生じてきて、
それが見る見る広がっていくのでした。
それは確かにギャバンの若い頃、この地球でマクーとの戦いに明け暮れていた頃に
たびたび目撃した魔空空間の入り口によく似ています。
マクーが滅びて久しい現在、魔空空間が存在しているとはギャバンには到底信じられませんでしたが、
もし万が一、あれが魔空空間だとするなら、
あの空間の亀裂がこのまま拡大してきてギャバンを呑みこもうとするはずです。
ブートレグがフルパワーでギャバンを押さえこみにかかっているのは、ギャバンを逃がさないようにするためであり、
自分もろともギャバンを空間の亀裂に引きずり込むためです。

そうした敵の意図を察したギャバンは不安な気持ちになりました。
いや、ギャバンがそんな弱気になっているのは、
そもそも勝てると思って戦い始めたブートレグ相手に意外な苦戦を強いられていたからでした。
ブートレグが予想以上に強かったというわけではない。
確かにブートレグの能力はギャバンの能力のコピーであり、
己の能力をよく知るギャバン自身が予想した通りの強さでした。

問題はギャバン自身の方にありました。
絶望的状況を勇気で乗り越えてきた自分だからこそ、
その同等の能力を持つブートレグを更に凌駕する力を発揮出来るはずだと思っていたのに、
その期待した力は生じてきませんでした。
それどころか、ブートレグと互角の戦いを強いられているうちに、
予想していた以上に早く疲労が襲ってきました。

もしかして、これが「老い」というものなのかとギャバンは思いました。
もちろん、自分が老いてきていることは知っています。
しかし、老いによる衰えを跳ね返すだけの鍛錬を積んできたつもりであるし、
自分には老いによる衰えを跳ね返す精神力があると自負していました。
実際、戦いの場でこれまで老いを感じたことはありませんでした。

しかし自分と互角の能力を持つ相手との戦いで
老いによる衰えが露呈してしまったのかもしれないとギャバンは思いました。
それは言い換えれば、自分には老いによる衰えをカバーするだけの
プラスアルファの力がもはや湧き上がってこないということです。

どうしてなのかとギャバンは考えました。
これまで自分にはその力があると思っていた。
しかし実際はそうではなかったのかと思えてきます。
それならば自分の能力を複製してなおかつ衰えることのない機械の戦士に敵うはずはない。

そこに突然「魔空空間」と疑われる空間の出現です。
マクーを滅ぼしたことこそがギャバンの勇気の象徴でした。
しかし、それがどうも根本から揺らいできたようにギャバンには思えてきたのでした。
本当に自分が勇気をもって絶望と戦って明るい未来を掴んできたのか、ギャバンの確信は揺らいできました。

そうして動揺するギャバンは遂にブートレグに押さえこまれて、床に膝をついてしまいました。
そこに赤黒い空間の亀裂が一気に拡大してきて、
ギャバンは「うわああああ!!」と絶叫しながら呑みこまれていってしまいました。
そして、その赤黒い亀裂が広がった雲のような塊は、
ギャバンとブートレグ、そしてアシュラーダを呑みこんで一気に縮小し、空間の中に掻き消えてしまい、
その後には誰もいない体育館の静寂のみが残されたのでした。

さて、しかし、その誰もいなくなったはずの体育館に、どういうわけか微かに猿の鳴き声がします。
見ると、誰もいなかったはずの観客席の椅子に、何時の間にか宇宙猿のサリーと、
そしてその飼い主のバスコが座っていたのです。
バスコは一部始終を見ていたようで、ニヤニヤ笑いながら
「・・・あ〜あ!・・・マベちゃんもまた、厄介な奴を呼び寄せたねぇ〜・・・!」とぼやくのでした。

バスコといえば「宇宙最大のお宝」を奪い合ってマーベラス一味と対立関係にある宿敵です。
「宇宙最大のお宝」を手に入れるために必要なスーパー戦隊の「大いなる力」は全部で34個であり、
この映画の時系列の直前にあたるTV本編の第46話において、
遂に最後の「大いなる力」であったカクレンジャーの「大いなる力」がマーベラス一味の手に入り、
34の「大いなる力」のうち29個がマーベラス一味、5個がバスコの手許に集まりました。
後はマーベラス一味とバスコとで決着をつけて、勝った方が34の「大いなる力」を揃えて
「宇宙最大のお宝」をゲットする。現在はそういう状況です。

バスコもそうした状況に至ったことは第46話のラストの段階で確認していますから、
マーベラス達の持つ「大いなる力」を奪うチャンスを窺って、マーベラス達のことを隠れて監視していたと思われます。
そこに突然、宇宙刑事ギャバンと名乗る刑事が現れてマーベラス達を逮捕連行してしまった。
これを隠れて見ていたバスコは意外な展開に戸惑いました。

単純に考えれば、まさに今こそマーベラス達のいなくなったガレオンに乗り込んで
レンジャーキーごと、そこに宿った「大いなる力」を全部、
そしてガレオンもナビィも、全部奪うチャンスでした。
しかし、このあまりに自分に都合の良すぎる展開に対して、極めて用心深いバスコは逆に怪しさを感じました。

バスコはさすがに博識なので
マクーのことや、かつてそのマクーを滅ぼした伝説の宇宙刑事ギャバンのことも一応は知ってしました。
しかしギャバンと直接接したことはないのでギャバンが何を考えているのか、どうもよく分かりませんでした。
マーベラス達が宇宙警察に逮捕されるような罪を犯してはいないことはバスコも知っていますから、
どう見てもギャバンのマーベラス一味逮捕は不当逮捕でした。
「伝説の刑事」と呼ばれた名刑事がそんな不当逮捕を何の疑いも無く実行するというのも、
バスコから見てどうも不可解でした。

もしかしたら、これは自分をおびき出して5つの「大いなる力」を奪うための
マーベラスの罠なのかもしれないと深読みしたバスコは、
この逮捕が真実であるのか確認するためドルギランの後を追跡し、
この体育館に忍び込んでマーベラス達やギャバンの動向を観察していたのでした。

結局、マーベラス達がバスコに罠を仕掛けようとしていたわけではないことは判明し、
バスコはそんなことならいっそ素直にガレオンに乗り込めばよかったと後悔しましたが、
マーベラス達は脱出してガレオンに戻ってしまったので、もはやそんなことを言っても仕方ない。

それよりバスコにとって問題だったのは、この一件に絡んでアシュラーダが登場したことでした。
バスコは「マーベラスが厄介なヤツを呼び寄せた」とボヤいていましたが、
これは状況的にアシュラーダのことを指していると見ていいでしょう。
つまりバスコにとってアシュラーダは厄介な相手なのです。

バスコはもともとはザンギャックと手を組んでいました。
また、これまでのエピソードを振り返ってみると、
バスコはおそらくザンギャック内部に情報提供者を抱えており、
ザンギャック内部の事情を少しは知っているのでしょう。
そのバスコはアシュラーダとはどういう役目を担った怪人であるのか知っているようであり、
それが自分にとっては厄介な相手だと認識しているようです。

そういうわけで、誰もいなくなった体育館に姿を現したバスコは、
マーベラス達から「大いなる力」を奪いつつ、
同時に厄介なアシュラーダを始末する都合のよい策は無いものか、思案を始めたのでした。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 17:39 | Comment(0) | 海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月09日

海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE 感想その3

さて、ゴーカイジャーとギャバンの戦いが夜の公園で始まりました。
どうしてこの映画の最初の等身大戦闘シーンが夜の屋外であるのかというと、
それはおそらく全身に電飾を施した戦士であるギャバンが最も映える戦闘場面が夜間の屋外戦闘だからでしょう。
この映画を観に来た子供たちにとってはおそらく初見であるはずのギャバンという戦士の
一番カッコイイ姿を印象づけようという狙いなのでしょう。
そういう意図のある場面ですから、成り行きとしてここはギャバンがカッコよく描かれ、
子供たちにとってのヒーローであるゴーカイジャーを圧倒します。

さて、そういう意味合いの戦闘場面で戦い始めたゴーカイジャー5人とギャバンでしたが、
さすがに伝説の宇宙刑事というだけあってギャバンは強く、
機先を制して1人でゴーカイジャー5人に囲まれながら逆に押し返します。
マーベラス達はいつものようにゴーカイガンとゴーカイサーベルを持っての戦いですが、
一方のギャバンは素手で戦っています。
それでギャバンの方が押しているのですからギャバンの強さは相当なものです。

ギャバンは既に老人といえる年齢のはずですが、大して衰えてはいないようです。
それになんといってもギャバンのコンバットスーツの性能が優れており、
ギャバンの戦闘力を増幅し、見事な身のこなしを可能とし、
素手でゴーカイサーベルを受け止めることも出来るのです。

しかしマーベラス達5人の方も普段のザンギャック相手の戦いの時よりもいささか精彩を欠いているといえます。
これは、基本的にマーベラス一味は宇宙警察と敵対する立場でないため、
宇宙刑事との戦いに慣れていないというのが1つの理由です。
ただそれはギャバンもお互い様であるはずです。
だからマーベラス達が押されているのは別の理由があります。
それはマーベラス達はギャバンとの戦いにいまいちモチベーションが上がらないからでしょう。
宇宙警察はマーベラス達にとって根本的に敵意を向ける対象ではないからです。

マーベラス達にとってザンギャックは彼らの存在意義的に根本的な敵なので、
ザンギャックとの戦いはマーベラス達はモチベーションは上がります。
また、地球に来てからザンギャック以外にマーベラス達が戦った相手としては
黒十字王の一味やガイアークやリュウオーンなどがいますが、
これらは明確にイカレた破壊者や侵略者たちであったので、
地球を守ろうと決意していたマーベラス達にとっては十分に戦って倒す理由は持てる相手でした。

そしてもう1つ、マーベラス達が戦いにおけるモチベーションを高めることが出来るシチュエーションというのは、
これもまた自分達のアイデンティティともいえる「宇宙最大のお宝」の獲得に繋がる戦いです。
それゆえマーベラス達はバスコ相手にも全力を発揮して戦うことが出来ます。
また幽霊船の船長ロスダークとの戦いも「宇宙最大のお宝」の獲得を目的としたものであったので
最大限のモチベーションで戦うことは出来ました。

ところがこのギャバンとの戦いはお宝探しは関係無く、地球を守る意義があるわけでもなく、
根本的にはマーベラス達は宇宙警察と戦うことに意義も感じていません。
もちろんマーベラス達は問答無用で襲ってきたギャバンに対して怒りを感じており、
本気で倒す意思をもって戦っているのですが、
それは所詮はチンピラの喧嘩のようなものであって、命懸けの勝負というほどまでには集中出来ていないといえます。

実際、第5話の時に同じような状況でマーベラスが宇宙警察地球署のドギーと戦った時も
マーベラスは手錠をしていたとはいえドギーに敗れており、
その後ドギーが遅れをとったザンギャック怪人をマーベラスは手錠をしたまま翻弄しており、
要するにマーベラスは宇宙警察を相手にした時はザンギャック相手にした時ほどには
全力を引き出すことが出来ないようです。
それは根は善良な連中であるマーベラス一味の全員に共通した傾向であるようで、
ギャバンを倒そうとして確かに本気で戦ってはいるものの、彼らは全力を発揮することが出来ていないようです。

彼ら自身、自分達の調子がイマイチだということは自覚しており、
更に手合せしてみて、このギャバンという宇宙刑事が全力で戦わなければ勝てそうにない相手だということも分かり、
このままではマズいと焦りました。
そこでマーベラスがなんとか相討ちのような感じでギャバンを押し返して動きを止めたところに
他の4人はゴーカイガンの一斉射撃でギャバンを撃ちまくりギャバンを後退させ、
ここから気合いを入れ直して反撃に転じることにします。
マーベラスが「いくぞぉっ!!」と号令をかけ、4人も「おう!!」と応じて一斉に突撃し、
マーベラス達5人は先ほどよりは集中力を高めて戦いに臨みます。

しかしギャバンもマーベラス達の反撃を受けて更に気合いを入れたようで、
果敢に突っ込むとジャンプして「スパイラルキック!!」と技名を叫びつつ、ルカとアイムを蹴り飛ばし、
そこに斬りかかってきたジョーとハカセの攻撃をジャンプしてかわすと、
素早い動作で右腕にバードニウムエネルギーを溜めて「レーザーZビーム!!」と叫んで破壊光線を発射、
ジョーとハカセは「わあああっ!!」と吹っ飛ばされます。
更にそこに襲ってきたマーベラスの攻撃をかわすと
ギャバンは「ジュオオオッ!!」と叫んで大きく跳び上がって建物の上に登り、
そこで自身の主要武器である片手持ちの剣レーザーブレードを出して構えました。

最初は素手で普通に戦っていたギャバンでしたが、ここに来てマーベラス達に合せてギアを更に一段上げたようで、
多彩な技を繰り出した挙句、必殺武器まで取り出してきて本気モードのようです。
慣れない戦いにイマイチ調子の出ていないマーベラス達に対比して、
ギャバンの方は逮捕状の出た犯罪者を制圧する戦いは手慣れたものであり、全力をしっかり発揮出来ているようです。

「野郎!!」と怒鳴ってギャバンのいる建物の上に跳び上がったマーベラスは、そこでギャバンと激しく斬り合いますが、
やはりイマイチ調子の出ていないマーベラスはギャバンの剣技に圧倒されて
「うわあああっ!!」と地面に落下してしまいました。

しかしタフなマーベラスはすぐに「やるじゃねぇか!」と身を起こし、
そこに集まって来た他の4人の仲間と共に「・・・だったらこれだ!」とレンジャーキーを取出して
ゴーカイサーベルのシリンダーに挿し、
「ファ〜イナルウェ〜イブ!!」というコールを発するゴーカイサーベルを5人が一斉に振り下ろすと、
必殺技ゴーカイスラッシュの5色の三日月型の衝撃波が発射され、
建物の上に立つギャバン目がけて飛んでいきました。
いよいよ追い詰められたマーベラス達はさすがに本気モードになり、全力で必殺技を放ったのでした。

これで倒せるはずだと確信したマーベラス達でしたが、
なんとギャバンは「バリアー!!」と叫んで前方に光の壁を出現させ、
ゴーカイスラッシュの衝撃波を防いでしまいました。
このギャバンバリアーもレーザーZビームなど同様、
ギャバンのコンバットスーツに組み込まれた多彩な装備のうちの1つです。

しかし、そんな装備のことは知らないマーベラス達は驚愕しました。
「嘘!?効かない・・・?」とルカは信じられないという風情で唖然とします。
今までファイナルウェーブをバスコやダマラスのように力で撥ね返した者はいましたが、
このような奇妙な技で防御された経験は無く、マーベラスも「マジか・・・!?」と愕然として立ち尽くしました。

その隙にギャバンはマーベラス達を見下ろしたまま「レーザーブレード!」と叫びながら、
手にしたレーザーブレードにバードニウムエネルギーを注入し、最大出力の光の剣とし、
同時にギャバンのコンバットスーツの目の部分が赤く光ります。
バードニウムエネルギーというのはバード星人であるギャバンの持つ特殊生体エネルギーで、
宇宙警察の本拠地のあるバード星で開発されたギャバンのコンバットスーツやレーザーブレードは
一連の動作を経てこのバードニウムエネルギーを注入することによって最大出力を発揮します。

そうして最大出力となったレーザーブレードを用いて放つ技といえば、
ギャバンの1982年版のTV本編では「ギャバンダイナミック」というギャバン最大の必殺技と相場が決まっており、
往年のファンはレーザーブレードが白く輝き、ギャバンの目が赤く光れば
当然ギャバンダイナミックが拝めるものと期待する場面となりますが、
ここではその期待を裏切るように、ギャバンが「ジュアアアッ!」と叫んでレーザーブレードを振り下ろすと、
その刀身から発していた光がロープのように伸びて飛んでいき、マーベラス達5人に巻きついて、
5人をまとめて縛り上げてしまったのでした。

そしてこの光のロープはそのまま5つに分割して
5人をそれぞれ別々に縛る光の輪となって5人の両手の動きを封じてしまいます。
その拍子に「うわっ!?」と倒れた5人は起き上がることも出来ず、
しかもエネルギーを輪に奪われたのか変身も解除してしまい、
マーベラスは「なにぃ・・・!?」と、あっという間に囚われの身となったことに驚きます。

ギャバンは本来は敵を倒すために使うレーザーブレードのエネルギーを
拘束用の技にアレンジして用いたのです。
これはこれで素晴らしい剣技ですが、
いつもならば抵抗する犯人はギャバンダイナミックでその場で倒すギャバンが、
今回はどうもマーベラス達をあくまで生かしたまま逮捕することに拘っていたようです。

となるとギャバンはあくまでマーベラス達を殺してしまわないように手加減をして戦っていたことになります。
つまりギャバンもまた全力を出して戦っていたわけではない。
全力を出し切れなかったマーベラス達と、逮捕という目的のために全力を出せなかったギャバンの双方ともに
条件は同じであったはずなのに、結果がこのように差がついたのはどうしてなのかというと、
それはやはり年の功というものでしょう。
歴戦の勇者であるギャバンは力をセーブしても効率よく勝利するコツを掴んでおり、
まだ若いマーベラス達は全力で戦えば強いが、
全力を出し切れない場ではギャバンほどには上手く戦うことはまだ出来ないのです。

起き上がることが出来ずに呻くマーベラス達5人の傍に飛び降りてきたギャバンは
マーベラスの懐からモバイレーツを奪うと、自らも変身を解除して生身の姿となりました。
突如現れたメタリックシルバーのボディを持った宇宙刑事ギャバンと初対面であったマーベラス達は
ギャバンのその姿が変身態であったこともよく分かっていなかったので、
変身解除後に人間の姿が現れたことに驚いてギャバンの本来の姿を見つめます。

それは茶色い革ジャンを着た初老の男で、
没収したモバイレーツを一瞥するとマーベラスの方をチラリと見て
「銀色の輝きは・・・伊達じゃないぜぇ?」と何やらキザなセリフを言って
指を二本立てて軽く頭に添えて突き出して敬礼してみせます。
若い頃からの口癖ですが、まぁあまり意味は無いセリフで、
大して面白くはないが、冗談のようなものです。

そしてギャバンは通信機を取り出して「こちらギャバン・・・例の海賊どもを逮捕しました・・・」と
何者か、おそらく宇宙警察の上司に向かって報告をしました。
といってもギャバン自身が宇宙警察ではそれなりに高い地位であろうし、
年齢的にもかなりのベテランであろうと思われるので、
そのギャバンの上司となると、宇宙警察におけるかなりの高官ということになります。
このギャバンを派遣してのマーベラス一味を逮捕する作戦の責任者は宇宙警察のかなりの高官であるようで、
地球署などのレベルを超えた宇宙警察本部のハイレベルなところで意思決定された作戦のようです。
どうしてそんな宇宙警察の中枢あたりがチンケな海賊であるマーベラス一味の逮捕に
そこまで前のめりになっているのか、ちょっと不可解ではあります。

さて、ここでこの映画の中で初めてギャバンの素顔が明らかとなったわけですが、
最初から声でバレてましたが、やはり演じておられるのは大葉健二さんでした。

ちなみに変身解除後もギャバンは役名はあくまでギャバンです。
例えばアカレンジャーならば変身解除後は海城剛、
ゴーカイレッドならば変身解除後はマーベラスというように本名で呼ぶことになるのですが、
ギャバンの場合は変身前も変身後もギャバンが本名であり呼び名です。
1982年放送の「宇宙刑事ギャバン」の中ではギャバンは地球では「一条寺烈」と名乗っていましたが、
これは地球で潜入捜査するにあたって仮に名乗った地球での通り名であって本名ではありません。
あくまでバード星人であるギャバンの本名はギャバンなのです。

ちなみにギャバンは宇宙警察(銀河連邦警察)の本部のあるバード星生まれのバード星育ちですが、
実はバード星人の宇宙刑事ボイサーが地球担当刑事として赴任した時に出会った日本人女性を妻として迎え、
両者の間に生まれたバード星人と地球人のハーフがギャバンであり、
母親の旧姓が「一条寺」だったため、母の故郷である地球に赴任したギャバンは
何か地球で正体を隠して活動するための通り名が必要だということから、母の旧姓「一条寺」を名乗ったのです。

よって、現在はもう地球で潜入捜査をする身の上でない以上、
ギャバンは「一条寺烈」という仮名を名乗る必要性も意味も無く、
あくまでこの映画内ではギャバンは常に本名のギャバンなのであって、
「一条寺烈」という往年の視聴者にお馴染みの呼び名は一度も登場しません。

そのギャバンを演じるのは、
既に紹介したように1982年当時「宇宙刑事ギャバン」においてギャバンを演じたオリジナル役者の大葉健二氏です。
大葉さんは「ゴーカイジャー」の物語世界においては既に2回登場済みです。
最初は第16話と第17話の間の時系列のエピソードである「199ヒーロー大決戦」映画の中で
元デンジブルー青梅大五郎の役で出演し、
続いて第44話のクリスマスエピソードで元バトルケニアの曙四郎役として出演しました。
それらに続いて今回、大葉氏は3回目の出演、しかも毎回違う役での出演となります。

だから既にこのブログでも大葉健二という役者については説明済みですので、ここではいちいち紹介はしませんが、
ギャバンの役柄との関係でいえば、
この映画撮影時に56歳の大葉氏が何歳のギャバンを演じたのかという点はちょっと気になるところです。
ただギャバンは1982年の本編でも年齢設定がハッキリしていませんでした。
そもそも地球人でないので年齢も何だかよく分からないのですが、
バード星人というのは基本的には地球人と同一種族であるらしく、歳のとり方や寿命も同じようなものらしい。
だから見た目が20歳代半ばであったギャバンはその見た目相応の年齢だったと思われ、
それが地球人と同じようなペースで年齢を重ねて、当時から劇中時間で33〜34年が経っている現在、
ギャバンは60歳前ぐらいということになります。

要するにもともとのギャバンの見た目から類推される年齢設定が大葉氏の当時の実年齢のまんまだったのですから、
レジェンド大戦後数年分の劇中誤差が3年ほどあるとはいえ、
まぁ大葉氏の見た目そのままの年齢が現在のギャバンの劇中年齢そのままで全く違和感は無いわけです。

その60歳手前というギャバンの年齢ですが、
宇宙警察がどういう就業規則になっているのかは分かりませんが、
もし宇宙警察にも定年制があるとするなら、ギャバンもそろそろ定年間近、
少なくとも刑事として現場の第一線からはそろそろ引退を迫られる頃なのかもしれません。
これだけ戦えるのですから引退する必要などはないようにも思えますが、
あくまで公的機関ですから誰でも規則には縛られるのであり、それはギャバンとて例外ではない。
何にしても長い刑事人生がそろそろ終着点を迎えようとしている年齢だと言っていいでしょう。

そうした超ベテラン刑事のギャバンですが、
確かに白髪混じりの頭は年齢は感じさせるものの、他の見た感じはまだまだ若々しく、
スーツなど着たりせず、相変わらず若い時と同じようにトレードマークの茶色い革ジャンを羽織っています。
何やら面白くない冗談めいたことも言ったりして、性格も若い頃とあまり変わっていないようです。

この映画ではお話の展開上ギャバンは割とシリアスな場面が多いですが、
1982年の本編のギャバンは基本的に明るくノリの良いお調子者の熱血漢で、
捜査や戦闘、訓練などは至って真面目ですが、日常生活ではお気楽でひょうきん者、
子供好きでちょっといい加減なところのあるユルい男でした。
それでいて男臭くダンディで、熱い心を持っており、ユーモアを好む余裕のある大人の男という風情で、
いわゆるハードボイルドというヤツです。
当時イメージとしては「スペースコブラ」や「ルパン三世」のルパンのような、
渋くて面白カッコいいヒーローであったと思います。

この映画ではストーリー展開上、そういうギャバンのコミカルな側面はあまり強くは描かれていませんが、
そういうコミカルな面は大葉氏の役者としての持ち味でもあるので、
随所でとぼけた味わいを出して、それがギャバンの老刑事としての余裕や哀愁を
絶妙に湿っぽくならないレベルに調整して、
マーベラスに対する大人の男の接し方の味わいを上手く醸し出していると思います。

さて、物語に戻りますと、その後ギャバンはマーベラス達5人のモバイレーツを全部没収すると、
5人をドルギランに収容してそのままドルギランを操縦して何処かに向かって飛んでいき、
そうしていると夜が明けてきました。

小さな窓から朝日が差し込んできたドルギラン内の牢屋の中に閉じ込められたマーベラス達5人は項垂れています。
5人には何やら特殊な形の手錠が掛けてあります。
ドギーやジャスミンが使っていた宇宙警察の標準装備の手錠とはまた異なった特殊な形状で、
ギャバンの所属する特別捜査チーム専用のものであるようです。

それを外す方法を思案するようにじっとその手錠を眺めていたルカは結局は解除方法が思いつかなかったようで、
「・・・何なのよもう・・・!」と苛立ちを込めて溜息をつくと、
手錠を牢屋の鉄格子に強く叩きつけて「何でこんなことになるわけ!?」と怒鳴ります。
せっかく「宇宙最大のお宝」まであと一歩というところまで迫りながら、
身に覚えの無い罪で宇宙警察に逮捕されてしまったことが悔しくて堪らないのです。

一方、牢屋の真ん中でへたり込んだハカセは床を見つめて
「・・・どうしよう?・・・海賊行為の罪って確実に死刑だよね・・・?」と毎度のごとく弱気な声で不安を口にします。
ザンギャックに賞金首にされて、その賞金額が最近はつり上がってきても平気な様子となっていたハカセですが、
不当な侵略者であるザンギャックによる刑罰のことは軽く見ることは出来るようになったハカセも、
正当な警察機関として内心認めている宇宙警察の刑罰は
リアリティのあるものとして恐怖の対象のままであるようです。

その宇宙警察の法では海賊行為の罪は重く、死刑が課されるものであるようです。
マーベラス達は海賊を名乗っていますが、それはあくまでザンギャックに被せられた汚名であって、
自分達が宇宙警察の取り締まる対象である「海賊行為」、
つまり組織的な略奪や危険物の密輸などをビジネスとして行っているような者ではないということは
マーベラス達ももちろん分かっています。
しかし宇宙警察は自分達がそうした海賊行為を行ったのだと誤解しているようだから、
このままでは海賊行為に相応の刑罰、つまり死刑に処されてしまう。
弱虫のハカセはそのことが怖いのです。

しかし、鉄格子にもたれてハカセの言葉を聞いてジョーは
「・・・だったらひとおもいに片付けられてもよさそうなもんだがな・・・?」と軽く言いながら
自分の手を拘束した手錠を掲げてみせました。

確かに海賊行為は死刑が当然であり、自分達はその海賊行為をやったと決めつけられており、
しかも逮捕を拒んで抵抗して刑事を殺そうとして戦った。
立派な公務執行妨害罪のオマケ付きです。
もともと死刑相当で抵抗までしたのですから、
宇宙警察のルールにおいては、これはその場で殺されても仕方ないといえます。
それなのにどうして自分達は殺されず、こうしてわざわざ手錠を掛けられて何処かに連行されているのだろうか?
ジョーはそのことがどうも引っ掛かっていました。
あるいは宇宙警察は自分達を殺すつもりではなく、
何か別の目的があって連行しているのではないかともジョーには思えました。

しかし、あくまで弱気なハカセは悪い方に悪い方に考えるようで、
立ち上がるとジョーに縋りついて「見せしめに公開処刑とか・・・そういうの考えてるんじゃない?」と
マイナス思考なことを言います。
ジョーが相手にしないように無視すると、ハカセは今度は席に戻っていたルカに縋りついて
「やだぁ!そんなの絶対やだあああ!!」と喚きます。

ハカセはとことん死ぬのが怖いようで、これはこれで1つの必死で生きていく力ではありますが、
ルカは死ぬことよりも宝が手に入らないことの方が辛い性格なので、
このハカセのひたすら命を惜しむ姿が鬱陶しくなって、手錠でハカセの頭を殴り飛ばして黙らせ、
それに合わせるようにルカの横に座っていたアイムが「まだ鎧さんがいます!」とハカセをたしなめました。

あの場で自分達が殺されなかったということは、
とにかく宇宙警察はすぐに自分達を殺すつもりはないのだろうとアイムも思いました。
あるいはハカセの言うように宇宙警察は公開処刑でも考えているのかもしれないとはアイムも思いましたが、
そうだとしてもそれなりの準備が必要ということになります。
ならばすぐに殺されるというわけではなさそうです。
それならばきっとそれまでに鎧が助けに来てくれるはずだとアイムは思ったのです。

そのアイムの言葉を聞いて、ルカは失礼なことに今の今まで鎧の存在を忘れていたようで、
ハッとしてアイムの方を振り返って「・・・そうよ!」と叫ぶと、
満面の笑顔で「鎧に夜食の買い出し頼んで大正解!」と得意げに言いました。

どうやらガレオンがドルギランに襲われた時に鎧だけがガレオンに乗っておらず
買い物袋を提げて街に居たのは、ルカに夜食の買い出しのパシリをさせられていたからであるようです。
そのお蔭で鎧だけは逮捕されずに済んだ。
あれだけ派手に市街地上空で空中戦をやったのですから、
鎧もガレオンが襲われたことは把握しているはずであろうし、
今はもう仲間5人が連れ去られたことも分かっているでしょう。
だからきっと鎧が豪獣ドリルで救出に来てくれるはずだとルカもアイムも思いました。

「あいつに期待するしかないか・・・」とジョーも呟きます。
ジョーももちろん鎧だけが無事であり、自分達を救出するために動くであろうことは予想していましたが、
果たしてルカの言うほど期待出来るのかどうか懐疑的ではありました。
鎧がすぐに事態に対応出来たのであればギャバンとの戦いに加勢に現れたはずで、
それが出来なかったということは鎧はガレオンが襲われたことには気付いても、
誰が襲ったのか、仲間が何処に連れ去られたのか、そういう詳細は把握していない可能性が高い。

ガレオンは海上に無事に残っており、
ガレオンのメインコンピュータを使えば5人のモバイレーツの位置情報は検索できるが、
ガレオンのメインコンピュータは墜落のショックで一時的にダウンしており、
ナビィの手で復旧するまで多少時間はかかるだろう。
それにフリージョーカーの時のように宇宙警察の円盤にも
モバイレーツの信号を妨害するシステムもついているかもしれない。
だから確実に鎧が自分たちの危機に間に合うぐらい早く助けに来ることが出来るか、
確率は五分五分ぐらいだろうとジョーは思いました。
しかし、もし宇宙警察が自分達を処刑しようとしているなら、もう後は鎧に期待するしかない。
ジョーは溜息をつき、牢屋の端に座り込んで黙ったままのマーベラスの方を見ました。

マーベラスはずっと怒りの形相で押し黙ったままでした。
死ぬことが怖いわけではないし、お宝を目の前にして挫折したことを悔しがっているわけでもない。
マーベラスは海賊の誇りを踏み躙られたような気がして、それが我慢ならなかったのです。

いや、海賊など一般的には単なるゴロツキの集まりで、
確かにマフィアの手先のような仕事に手を染めているクズが多いこともマーベラスも分かっています。
しかし自分達は確かに下品な乱暴者ではあるが、それでもそういう心底クズなゴロツキ連中とは違う。
いや、自分にとっての「海賊」とはそういうくだらないものではないのだという強い自負がマーベラスにはあります。

それはつまり自分達は夢を掴むために集まった仲間だという誇りなのですが、
最初にジョーを仲間に誘った時からマーベラスは夢を掴むために航海をしていると言っていました。
その「海賊=夢を掴むための航海をする者」というマーベラスの考え方は
アカレッドに航海に誘われた時に生まれたものであるように一見思えますが、
よく考えたらマーベラスはアカレッドに出会った時点で「海賊」と自称していました。

実質的には船も無く航海にも出たこともない単なるチンピラで、
「海賊」とは言い難い存在だったはずなのですが、
何故かマーベラスは「海賊」と自称していました。
それはつまり「海賊」に憧れていたということを意味します。
そしてアカレッドの誘いに即座に応じることが出来たということは、
もともとマーベラスの中で「海賊=夢を掴むために航海する者」という考え方があったからだと思われます。

あの時のマーベラスとアカレッドの初対面時の問答を振り返ってみると、
マーベラスの心の中にあの時点で既に「宇宙最大のお宝」への憧れが存在したのは確実であり、
「海賊は宇宙最大のお宝を掴むために航海するものだ」という考え方も存在していました。
ただ単にマーベラスはあの時までは、「しかしそれは伝説のお宝であって実在はしない」と決めつけていただけです。
しかし実在はしないお宝であり非現実的な夢だと分かっていながら、
それでもマーベラスはそのことをずっと心に留めており、海賊への憧れも捨てていなかった。

つまりマーベラスは「海賊とは宇宙最大のお宝という夢を掴むために航海するものだ」という考え方を
幼稚で非現実的だと卑下しながらも、それでもその考え方を個人的には大切にして生きていたのです。
それはアカレッドに出会った頃のマーベラスにとって既にとても大切なことであったのです。
だから幼稚な思い込みだと恥じながらも、
アカレッドに欲しいものは何なのか質問された時、マーベラスは「宇宙最大のお宝」だと答え、
海賊はそれを掴もうとするものだと言い、でも所詮は伝説だと自嘲して照れ隠しをしたのです。

それに対してアカレッドが「宇宙最大のお宝」は伝説ではなく実在すると言い、
そんなふうに諦めたら手に入らないのだと諭したので、
マーベラスは「宇宙最大のお宝」を現実の目標として行動を開始する決意が出来たのです。
そういう意味でやはりマーベラスにとってアカレッドとの出会いは非常に重要な出来事ではあります。
しかしマーベラスにとってアカレッドとの出会いは「夢を現実に移すきっかけ」であって、
アカレッドとの出会い以前からマーベラスには今と同じ「夢」はあったのです。
そして、その「夢」と「海賊」というものは既にその時点でセットになっていた。

ジョーもルカもハカセもアイムも鎧も、マーベラスと出会った時点で既に「夢」を持った者達ではありましたが、
それは「海賊」と結びついてはいませんでした。
ジョー達の「夢」に「海賊」という要素を結びつけたのはマーベラスです。
それぐらい、普通の人間にとって「夢」と「海賊」という要素は結びつきにくいものなのです。
「夢を掴むために航海する海賊」であるマーベラスというインパクトある存在との出会いがあってこそ、
彼らは「夢」と「海賊」を心の中で結びつけてマーベラス一味の一員となることが出来たのです。

ところが、その当の本人であるマーベラスの心の中で「夢」がどうやって生じて、
「夢」と「海賊」がどうやって結びついたのか、
アカレッドとの出会いまで遡って見ても、まだ謎なのです。
そのマーベラスの「夢」の原点、「海賊」としての原点はアカレッドとの出会い以前に存在するはずです。

しかし、ザンギャック支配下において「海賊」というのは決して肯定的な存在ではないはずです。
それなのにどうしてマーベラスは「海賊」に憧れを抱き、それが「夢」と繋がったのか?
何かよほど特殊な経験があったのではないかと思われます。
それが何なのかは未だ不明ながら、
とにかく世間的にはどうであろうともマーベラス個人にとっては「海賊」とは「夢」そのものなのであり、
それはマーベラスの昔からの固い信念なのです。
おそらくその確信はマーベラスの人生そのものだと言ってもいい。

だから、それが否定されたことがマーベラスには許し難いことであったのでした。
自分は普通のマフィアの手先のような下衆な海賊たちとは違う。夢を掴むために航海してきた。
もちろん殺しも盗みも一通りの悪事はやってきたが、
それはザンギャックと戦って生き抜いて夢を掴むためであって、
殺しや盗みやそれによって財産を得ること自体が目的だったわけではない。

もちろん、だからといって自分が殺人者や破壊者であるという事実が消えるわけでもないことも分かっている。
だからザンギャックと戦って死ぬこともある意味では因果応報で仕方ないとも思っている。
自分が真っ白で綺麗な人間だなどとは思っていないし、自分の手は汚れまくっているとも分かっている。
だが、自分の人生を支えてきた「夢を掴むために航海する海賊」の誇りだけは汚されることは許せない。
夢のために悪事も重ねてきたが、それはそれだけ夢に向かって純粋だったからだ。
いや、夢のために重ねた罪の重さを自覚しているからこそ、
夢を掴むために進んできたのだという事実だけは曲げたくなかった。
それを全く否定されて、マフィアの手先のような海賊として断罪されるのだけは耐えがたいのでした。

ただザンギャックに「海賊」と蔑まれてお尋ね者にされるのはマーベラスは平気でした。
ザンギャックは敵なのだから、とにかく出鱈目でも何でも相手を非難して悪しざまに言うのは当然であり、
そうした文脈でザンギャックからつまらない犯罪者扱いされたとしてもマーベラスは気にはなりませんでした。
むしろ人々の「夢」を否定し抑圧するザンギャックから悪しざまに言われば言われるほどに、
自分達こそが「夢」を大切にする海賊なのだという誇りを高めることが出来るほどでした。

しかし敵でもなく、公平な存在なのだと思っていた宇宙警察からマフィアの手先のように扱われて、
夢を掴もうとしてきた自分の航海、自分の人生を根こそぎ否定されてしまったことはマーベラスにはショックでした。
それは激しい怒りの感情を湧き立たせると同時に、
逮捕されて牢屋に閉じ込められてからはマーベラスの心に大きな失望も生んでいました。

所詮は自分のような世界に見捨てられて育ったような人間の言うことなど、
この世界は受け入れてくれないのだとマーベラスには思えてきました。
生まれてすぐにザンギャックの侵略戦争で親も失い故郷も失って、
自分が何処の誰なのかさえ分からないで筆舌に尽くし難い貧乏と差別の中で生きてきた
戦争孤児のマーベラスにとって、ザンギャックの支配する世界は自分をとことん拒絶する場所でした。
そんな世界で夢を見出し、海賊になって夢を掴もうと思い、なんとか生きる意義を見出して必死に生きてきた。
しかし、ザンギャックの世界を脱して飛び出した外の世界でも、
宇宙警察に代表されるその世界はやはりそんな自分の人生をただの薄汚い犯罪者だったと断罪した。

マーベラスは自分の人生を否定するつもりはない。自嘲する気も無い。絶望しているわけでもない。
だが、あくまで自分を拒絶する世界に対してはもうあまりに腹が立って腹が立って、もう嗤うしかない。
ムシャクシャしてきて、そんな世界をこれ以上、真面目に相手しても
仕方ないようにマーベラスには思えてきたのでした。
宇宙警察地球署のドギーに逮捕された時も同じような拗ねた気分になったものですが、
あの時はザンギャック怪人との戦いに巻き込まれて、なし崩しにドギーと共闘するうちに気が紛れていったのですが、
今回は牢屋の中でじっとしているうちにずいぶんと腐った気分になっていったのでした。

といって、仲間が必死で生き延びるために足掻こうとしている横で自分が投げやりなことを言うわけにもいかない。
自分は船長であり、自分が仲間たちをこの危険な航海に誘ったのです。
だから投げやりなことは口が裂けても言えないが、かといって皆を積極的に励ますような気分でもなく、
マーベラスはとにかく黙って俯いて、怒りの形相で床を睨みながら皆の話を聞いているしか出来ないのでした。

さて、そうしているうちにドルギランは遂に目的地に到着しました。
そこは郊外にある大きな体育館であり、その内部では宇宙警察の隊員たちが隊列を組んで待機しており、
何やら高官っぽい男性が1人います。
その体育館の上空に停止したドルギランは機体の底部から体育館の屋根に向けてビームを照射します。
ビームは屋根を透過して体育館内部に達し、そのまま隊員たちが取り囲む体育館中央の床面に照射され、
ビームを伝ってドルギラン内部から手錠を掛けられたままのマーベラス達5人と、
それを連行してきたギャバンが転送されてきました。

宇宙警察の隊員たちは転送されてきたマーベラス達5人に一斉に銃を向けて威嚇し、逃亡を警戒します。
手錠をかけられ変身アイテムを取り上げられた状態で周囲を武装した隊員たちに囲まれて、
ギャバンまでもがいる状況では、さすがにマーベラス達も手も足も出ない。
しかしそれでも宇宙警察側から見れば牢屋の中に閉じ込めておくよりもマーベラス達の逃亡リスクは高くなる。
それを承知であえてこんな場に降ろしたということは、ここで何か大事な用件があるということです。

不安げに周囲を見回したハカセは宇宙警察の隊員たちの中に1人だけ、
マントを羽織った高官っぽい人がいるのに気付き、
「・・・なんか偉そうな人がいるよぉ・・・」と前に立つマーベラスに囁きました。
マーベラスもその人物の存在には既に気付いており、
おそらくギャバンがさっき通信機で報告をしていた相手がこの男であり、
今回の自分達の逮捕を命じた上官なのだろうと思い、ハカセに向かって「・・・黙ってろ・・・」と言うと、
憮然とした顔でその男を眺めました。
するとマーベラスの前に背を見せて立っていたギャバンがその男に向かい姿勢を正すと前に進み出て
「ウィーバル宇宙警察総裁!ご指示通り、海賊たちを連行しました」と畏まって報告します。

ギャバンの後ろでマーベラス達は驚きました。
ギャバンにマーベラス達の逮捕を命じた人物は宇宙警察の総裁だったのです。
総裁といえば宇宙警察の一番偉いトップであり、人前に滅多に姿を現すことさえないという雲の上のような人です。
そんな偉い人がザンギャックの捏造の罪状を信じて自分達を逮捕するよう命じたのかと
マーベラス達は愕然としました。
その地位に見合わぬ不見識に呆れると同時に、
よくもまぁ宇宙警察の総裁ともあろう人が一介の海賊の逮捕などにそこまで深く拘り、
こうして現場にまで顔を出したものだとマーベラス達は唖然としたのです。

そのウィーバル総裁ですが、演じておられるのは、なんと名優の佐野史郎氏です。
これは劇場版ならではの大物ゲストのキャスティングというやつで、
スーパー戦隊シリーズの劇場版ではよくあることなのですが、
「ゴーカイジャー」という作品の場合、いつもレジェンド要素で色々と盛り込む要素が多いので
大物ゲストを呼んでもあまり出番を増やすことも出来ず、
これまでの春と夏の劇場版では、まぁ声優的には神谷明氏とか内海賢二氏とか、かなり豪華でしたが、
大物顔出し俳優ゲストのキャスティングはありませんでした。

それが今回は佐野氏の出演でようやく実現したのですが、
実は佐野氏の顔出し出演場面はこのシーンだけであって、そんなに出番は多くありません。
考えようによっては少し失礼な扱いかもしれないのですが、
佐野氏は特撮好きで有名な役者さんなので、頼みやすかったのかもしれません。

ただ、やはり何といっても佐野氏の醸し出す上品でありながら怪しく邪悪なオーラ、
そして独特の植物的な威圧感、緊張感がこのウィーバルという役にはピッタリであったので
オファーということになったのでしょう。
つまり、それだけ一筋縄ではいかない複雑なキャラということで、
佐野氏は絶品のキャスティングであったと思います。
やはりこの役は短い出番でも佐野氏クラスの演技派の役者でなければ独特の味は出なかったと思います。

そのウィーバル総裁はギャバンの報告を威厳を滲ませて無表情に「うん・・・ご苦労だった」と受け取ると、
ゆっくりとギャバンに近づいてきてその後方のマーベラス達の方を見つめながら
ギャバンとは目を合わさずにギャバンの横を通り抜けつつ、
微かにほくそ笑みながら「さすがは宇宙最強の刑事・・・」と言ってギャバンの肩をポンポンと軽く叩きました。
普段あまり感情を表に出さない男であるようですが、
よほどマーベラス一味の逮捕という成果を得たことが嬉しかったのか、思わず笑みが漏れたという感じですが、
何やらその笑いには邪悪なものが含まれているようにも見えます。

ギャバンはウィーバルのねぎらいの言葉にも特に反応することもなく
そのままマーベラス達に背を向けたまま直立しており、
ギャバンの背後に進み出てきたウィーバルはマーベラス達の正面に立つと、
5人をじろじろ見て「お前達がゴーカイジャーとかいう薄汚い海賊か?」と憎々しげに問い質しました。
いや、問い質したというよりも単に罵倒したというべきで、
宇宙警察総裁という権威ある立場の人間の吐くような言葉とは思えない毒を含んだ物言いといえます。

この失礼なウィーバルの態度にマーベラス一味の面々はムッとした表情で睨み返します。
マーベラスもこれには呆れたように溜息をつき、フンと冷笑します。
この宇宙警察の総裁は具体的に自分達がどういう悪事を働いたかなどには興味が無いようで、
単に海賊という薄汚い身分の者だというだけで小馬鹿にしている。
所詮はこの宇宙で支配階級に属するエリート達などというのは皆、
このような差別意識丸出しの嫌なヤツばかりであり、
自分達のような底辺の人間たちは言い分もまともに聞いてもらえない、
それどころか汚いゴミのようにしか見られないのだとマーベラスは思い、
つくづく嫌な世の中だと苦々しい気分になりました。

そのふて腐れたマーベラスの顔を見て、ウィーバルは冷たく「惨めな姿だ・・・」と吐き捨てると、
隊員たちに向かって「では、処刑の準備を!」と指示しました。
すると隊員たちはマーベラス達5人に群がってきて、
5人を体育館中央にあるステージのような一段高くなった場所に連れていこうとします。
どうやら今日この体育館はマーベラス一味の処刑を執行するために宇宙警察が借りきっているようで、
マーベラス達は処刑執行のためにこの場に連れてこられたということのようです。
中央のステージはマーベラス達の処刑台なのです。

この急展開にハカセは「え?・・・え?・・・やだよぉ!」と慌てて、連れていかれるのを嫌がります。
これはハカセの悲観していた公開処刑ですらない。
この体育館には宇宙警察の隊員たち以外には誰もいないのです。
これならば、わざわざこんな場所で処刑をする意味など別に無い。
ギャバンが戦った時にそのままマーベラス達を殺していても同じことです。
これではどうしてギャバンがあえて生かしたまま逮捕することに拘ったのか意味が分かりません。
だからこの場でいきなり処刑という展開はハカセも想定しておらず、
突然自分達の処刑が始まったことに狼狽しました。
これでは早すぎる。まだ最後の頼みの綱の鎧が助けに来ていないのです。

そうして狼狽するハカセに対してルカは「情けない声出さないの!」と叱ります。
ルカやアイムも、また処刑が目的ではないのではないかと推測していたジョーにしても
この意外な展開に驚いていましたが、この状況では抵抗は不可能です。
とにかくここまで一定の時間は稼ぐことは出来たのであり、
鎧がこの場を突きとめて救出に来てくれるには十分な時間であったと信じるしかない。
一旦、鎧を信じると決めた以上、きっとギリギリのタイミングで鎧が助けに来るのだと
ルカ達は最後まで信じる腹を固めました。

そうしてハカセ1人喚きながら、結局マーベラス達5人は処刑台の上に連れていかれ、
手錠に処刑台に設置された鎖を結び付けられていきます。
マーベラスはわざわざ生け捕りにしておきながら
どうしてこんな場所でいきなり宇宙警察の内輪しかいない状況で
自分達の処刑が行われる展開になったのかイマイチ分かりませんでしたが、
おおかたギャバンが総裁に手柄を自慢したかったのだろうと思い、
宇宙警察なんて嫌なヤツばかりだと呆れ果てました。
そして、とことん腐りきった宇宙の現実にウンザリして、真面目に相手するのもバカバカしい気分になって、
拗ねた顔で憮然として隊員たちに身を任せていました。

その時、それを冷たい視線で眺めているウィーバルの方にギャバンはおもむろに向き直り、
ウィーバルの傍に立ち「・・・総裁・・・1つだけ確認させてください」と声をかけます。
ウィーバルはギャバンの方に向き直らず、マーベラス達の方を見つめたまま
「・・・何だ?」とやや面倒臭そうに質問を許可しました。
するとギャバンはウィーバルをじっと見据えて
「彼らの海賊行為とは、どんなことですか?」と意外な質問をしました。

海賊行為の容疑でマーベラス達を逮捕した当の本人であるギャバンが
そのマーベラス達の海賊行為の罪状の内容を聞かされていないはずはない。
それなのにこんな質問をするということは、
ギャバンは自分が聞かされたマーベラス達の罪状が真実ではないと思っているということを意味します。

「彼らは何もしていないと言っています」とギャバンは言葉を続けました。
ちゃんとハカセが主張していた言い分をギャバンは覚えていたのです。
そして、そのハカセの言い分の方が宇宙警察の方の言い分よりも理があるのではないかと
ギャバンは思っているようです。
内心ギャバンがマーベラス一味の方に理があると思っているのは明らかであり、
建前上としても、少なくとも真偽を明らかにしてから処刑をするかどうか決定するべきではないかと
ウィーバルに対して異議申し立てをしているのは間違いありません。

しかし、それならばギャバンはその事実であることが疑わしい逮捕状に基づいて
マーベラス達を逮捕したことになります。
職務だから仕方ないという見方も出来ますが、
ギャバンのような公正な男が職務だからといって冤罪の可能性に気付きながら
文句の1つも言わずに逮捕を実行するというのは不自然といえます。

だから今頃になって急にギャバンが異議申し立てを行うことはウィーバルにも予想外だったようで、
やや困惑した様子で黙った後、「・・・海賊の言うことなど聞く必要は無い!」と
紋切型の口上でギャバンの意見を退けようとしました。

他でもない宇宙警察の総裁がこの逮捕は正当だと認めているのです。
いくらギャバンが伝説の刑事だからといって、一介の刑事が総裁の判断に異議を唱えるなど僭越に過ぎる。
ましてや海賊ごときの意見と宇宙警察総裁の判断とを天秤にかけて
海賊の意見の方を重視するなど失礼にもほどがあります。
厳格なる階級社会である宇宙警察における総裁の絶対的な権威で
ギャバンの異議を押し切ってしまおうとウィーバルは思ったようです。

ところがギャバンは総裁の権威に恐れ入るどころか、逆にウィーバルを睨みつけて
「・・・バカな・・・」と呆れ果てたように呟くと、
「宇宙警察がそんないい加減でいいんですか!?」と叱りつけるように怒鳴り返したのです。
口調は丁寧だが、明らかに総裁を軽侮した態度です。
確かにギャバンの言い分の方が筋は通っているが、
それでも宇宙警察の代表である総裁が判断したことをここまで全否定するというのは、
その組織の部下としての物言いとしては、ちょっと礼を失した態度といえます。

ギャバンほどのベテラン刑事がこんな物言いの良し悪しも判断がつかないはずもない。
意識的にこういう失礼な態度をとっているといえます。
それはあくまで自分はこの処刑を阻止するつもりだという断固とした意思表示であり、
更にはわざとウィーバルを怒らせて挑発しようという意図も窺えました。

ウィーバルもギャバンのそうした意図に気付いたようで、
どうやら最初からギャバンはマーベラス達を処刑させるつもりはなく、
ここで自分を問い詰めて何かを探ろうとしているのだと悟りました。
何時の間にかギャバンの描いたシナリオに乗せられている自分の姿に気付いたウィーバルは、
その流れを断ち切るかのように「黙れ!!」と大声で怒鳴り返しました。

もちろん、今のギャバンにそんな恫喝が効果が無いことはウィーバルにも分かっています。
ウィーバルは開き直ったのです。
ここでウィーバルがグズグズ屁理屈で誤魔化そうとすることはギャバンも当然予想はしているはずで、
そうした想定内の逃げ腰の対応をする限り、ギャバンはどんどん攻めの手を打ってくるでしょう。
ならばいっそ、ギャバンの探ろうとしている答えを真っ直ぐ突きつけてやって、
逆に攻勢に転じてやろうとウィーバルは思ったのでした。

ウィーバルは初めてギャバンの方に振り向いて、冷たく睨みつけて
「こいつらは・・・ザンギャックに逆らった!」と大きな声で言い放ちます。
ウィーバルがいきなり大声を出したので処刑台の上のマーベラス達も思わずウィーバルの方に注目していたのですが、
そこで飛び出してきたこのウィーバルの意外な言葉にマーベラス達は「ええ?」「ああ?」と耳を疑い驚愕しました。
それぐらいこれは異常な発言であったのです。

しかしこの衝撃の発言の意味を深く考える余裕も無く、
その瞬間、マーベラス達の手錠に結び付けられた鎖が一気に引き上げられて、
マーベラス達5人はバンザイの格好で処刑台に吊り下げられる態勢となってしまい、
空中でジタバタもがくのみとなってしまいました。
そのマーベラス達5人に狙いを定めて宇宙警察の隊員たちは一斉に銃を構え、銃殺刑の執行準備が整いました。
しかし、さっきのウィーバルの発言は隊員たちにとっても驚愕の内容であったはずなのですが、
どういうわけか、この場にいる隊員たちは全く動じた様子はありません。
処刑のプロセスも滞りなく進んでいきます。

そうして処刑準備が整えられる中、ウィーバルは平然とギャバンに向かって
「それこそがこの宇宙最大の悪であり、即時処刑に値するんだ!」と言葉を続け、
言い終るとプイッとギャバンから視線を外して処刑台の方を冷たく見つめます。

ギャバンもこのウィーバルの発言にはさすがに驚き、少しの間、言葉が出ませんでした。
いや、ギャバンの場合はその内容自体には大して驚いていません。
ウィーバルの本音がそんなところにあることは予想していたからこそ、
厳しい追及をしようとしていたからです。
しかしその厳しい追及がまだ始まったばかりの段階で、
いきなりウィーバルがここまであけすけと本音をぶちまけるとは予想していませんでしたので、
そのことにギャバンは驚愕したのです。

更にギャバンにとって少し予想外だったのは、
ウィーバルのこの異常な発言を聞いて隊員たちが全く動じていない点でした。
ギャバンはこの場でウィーバルを問い詰めて支離滅裂な発言をさせれば
隊員たちが動揺して処刑執行が困難な状況になると見越していたのですが、
どうやら状況はそんな甘いものではなかったようです。
この場にいる隊員たちは1人残らずウィーバルの息がかかった者ばかりのようで、
まともな感覚を持った宇宙警察の一員はいないようです。
だからこそウィーバルは平然と本音をぶちまけたのだといえます。

その予想以上に酷い状況に一瞬ギャバンは驚き、黙り込みました。
気が付けば周囲は敵だらけで、その敵は開き直って平然と敵意を剥き出しにしてきている。
自分の身にも危険が迫っていることをギャバンは感じました。
しかしギャバンはすぐに気を取り直します。
そうした最悪の状況への備えもギャバンはちゃんとしてきています。
ギリギリの強行策だが、その奥の手を使ってこの場を切り抜けるしかありません。

澄ました顔で処刑台を見つめるウィーバルの横顔に向かい、
ギャバンは「・・・遂に本音を吐いたな・・・」と声をかけます。
その口調は既に上官に対する敬語ではなく、
刑事が被疑者を見下ろして喋るぞんざいな口調そのものになっていました。
ギャバンにとって目の前にいる男は既に宇宙警察総裁ではなく、一介の被疑者でした。
「宇宙警察が何故ザンギャックの味方をする!?」と厳しくギャバンはウィーバルを問い詰めます。

さっきウィーバルはマーベラス達が処刑されるのはザンギャックに逆らったからだと言い、
ザンギャックに逆らうことこそが宇宙最大の悪だとまで言い放ちました。
しかし、宇宙警察の総裁という立場にある人間がこんな発言をするということは絶対に有り得ないのです。

そりゃあ人間には好き嫌いはありますから個人的にザンギャックにシンパシーを感じる総裁がいても、
それはさほどは不自然ではありません。
しかし宇宙警察は個々の紛争に対しては中立不介入が大原則のはず。
こんなザンギャックにのみ一方的に肩入れしたような発言を、
宇宙警察の代表者たる総裁がするなどということは、この宇宙がひっくり返っても有り得るはずがないのです。
もし総裁が内心ではザンギャックを好きだとしても、
立場上そんな本音を公の場で口にすること自体絶対に許されないのです。
そんなことは無教養なマーベラス達ですら知っている宇宙の常識です。
だからマーベラス達はウィーバルのさっきのあまりに偏った発言を聞いて心底驚いたのです。

しかしギャバンはその宇宙警察総裁にあるまじき発言の異常さにはさほど驚いていない。
それはギャバンが目の前の男が本当は総裁ではないと気付いているからです。
そしてギャバンに問い詰められたウィーバルも、
全く自分がギャバンに総裁扱いされていないのは明らかだというのに動揺した様子もなく
平然として処刑台の方を見たままです。

ギャバンはそのウィーバルを注意深く見据えたままポケットから手持ちのスイッチを取出し、
素早くボタンを押しました。
それと同時に遂に処刑台に向けて構えていた隊員たちの銃口が一斉に火を噴き、
マーベラス達をハチの巣にしようとしますが、
マーベラス達の両手に掛けられていたギャバンの特殊手錠が突如解錠され、
吊り下げられていたマーベラス達5人は支えを失い処刑台の床面に落下し、
間一髪銃撃を避けることが出来たのでした。
ギャバンが押したスイッチは、マーベラス達の手錠の解錠のリモコンのスイッチだったのです。

何が何だか分からないが急に自由の身となったマーベラス達は、
尻もちをついた後、素早く立ち上がって駆け出し、
慌てる宇宙警察の隊員たちの銃撃をかいくぐって突っ込むと、隊員たちを叩きのめしていきます。
同時にギャバンはウィーバルが妙な動きをしないようにレーザーブレードを取り出して
ウィーバルの首筋に突き付けて牽制し、ウィーバルはチラリと横目でギャバンを見ます。

そうしてギャバンとウィーバルが微動だにしない目の前で、
マーベラス達は処刑台の傍にいた隊員たちを全員倒しました。
ところがその倒された隊員たちは、なんと倒された後、
宇宙警察の隊員の姿からザンギャックの兵士であるゴーミンの姿に変わったのです。
これにはマーベラスは「・・・ゴーミン?」と驚愕します。

この場にいた宇宙警察の隊員たちは皆、ゴーミンの変装だったことになりますが、
いったいどうしてそんなことになっているのか、マーベラス達にはよく分かりません。
いや、それ以前にどうしていきなり自分達の手錠が5つ同時に外れて命拾いしたのか、
マーベラス達には事態の展開がどうもよく呑みこめないのでした。

そのマーベラス達に向かって背後から「手荒な真似をして済まなかった」とギャバンが声をかけて詫びを入れます。
マーベラス達がギャバンの方を見ると、
なんとギャバンがウィーバルに剣を突きつけているので、5人は驚きました。
何やらギャバンとウィーバルの2人が処刑の是非で口論をしているのは5人は気付いていましたが、
それにしてもいきなり刑事のギャバンが宇宙警察総裁に剣を向けているのですから、これはどうも只事ではない。

不審の目を向けるマーベラス達に対して、ギャバンはウィーバルに剣を突きつけて威嚇を続けながら
「こいつはウィーバル総裁に化けて宇宙警察を乗っ取ろうとしている・・・
それを止めるにはこうするしかなかったんだ!」と説明しました。
つまり、このウィーバル総裁は本物のウィーバル総裁ではなく、
何者かがウィーバル総裁になりすましている偽者であり、
その目的は宇宙警察の乗っ取りであるのだとギャバンは言うのです。

このウィーバルのさっきからの宇宙警察総裁にあるまじき言動もそう考えれば納得はいきます。
その正体は、その極端にザンギャック贔屓な不自然な発言や、
ゴーミンが隊員たちに化けていたという事実から考えて、おそらくザンギャックの怪人なのでしょう。
ザンギャック怪人が宇宙警察総裁になりすまして宇宙警察を乗っ取ろうとしている。
それは宇宙警察をザンギャックの都合の良い傀儡組織とするというザンギャック帝国の恐るべき作戦であったようです。

しかし、そもそもどうしてザンギャックは宇宙警察の乗っ取りなどという大胆な作戦を実行しようと思ったのか?
もともと宇宙警察は個々の紛争には不介入が基本方針であるため、
ここ何十年かの間に新たに勃興してきたザンギャックの非道に対して不介入方針を堅持してきており、
ザンギャックにとっては大して邪魔にはならない存在だったはずです。
まぁ悪く言えば都合のいい相手だったわけです。

ザンギャックの支配を逃れたマーベラス一味のような者との紛争においては、
確かに第5話の時のようにザンギャックは宇宙警察の個々の紛争に対する中立姿勢のせいで
煮え湯を呑まされることもしばしばありましたが、
少なくともザンギャック帝国支配下の領域内の出来事においては宇宙警察は無力であり、
ザンギャックにとっては邪魔な存在ではなかったはずです。
だからザンギャックは宇宙警察のことなど気にする必要は無かったはずです。

それなのに総裁の座を乗っ取ろうなどという
ザンギャックにとっても一歩間違えれば宇宙警察と全面対決になりかねないリスクの高い
荒っぽい作戦に踏み込んだのは、そうせざるを得ない事情があったからだと思われます。
おそらく、どうしてもウィーバル総裁を排除しなければいけない事情があったのでしょう。

想像するに、本物のウィーバル総裁は長年の宇宙警察のザンギャックへの不介入方針を改めて、
ザンギャック帝国内での非道行為についても宇宙警察が介入できるように
画期的な制度改革を進めようとしていたのではないでしょうか。
それをされてしまうとザンギャックとしても困るので、ウィーバル総裁を排除するしかなかった。

だが、ウィーバル総裁がザンギャックと鋭く対立しようとしていたのは宇宙警察内部でも知っている者は多いので、
もしウィーバルがいきなり暗殺されたりすればザンギャックが手を下したのだと疑われ、
結局は宇宙警察をザンギャックとの全面対決に向かわせることになります。
それではやはりザンギャックには都合が悪いので、
ザンギャック皇帝アクドス・ギルはウィーバルを単に排除するのではなく、
配下の怪人をウィーバルに化けさせて本物のウィーバルが健在であるかのように見せかけて、
その怪人は慎重にそれまでのウィーバルの反ザンギャック姿勢を捻じ曲げていき、
改革を骨抜きにしてきたのでしょう。
そういう場合、本物のウィーバルを生かしておく必要性も無いので、
残念ながら本物のウィーバルはザンギャックによって既に秘かに殺されてしまったのだと思われます。

おそらくザンギャックの怪人がウィーバルになりすましていることは
ザンギャック帝国の中枢においても極秘事項だったと思われます。
宇宙警察も全く無能ではなく、その諜報網もザンギャック中枢近くにまで及んでいるでしょうから、
この作戦の露見を防ぐため、この宇宙警察乗っ取り作戦の全貌は
皇帝アクドス・ギルと最側近の数名程度しか把握していない超極秘作戦だったはずです。
となると、このウィーバルになりすましている怪人も
ザンギャック皇帝アクドス・ギルに最も近い側近の怪人であるはずで、
おそらく親衛隊よりも更に皇帝に近い、皇帝と一心同体となったような家臣であるはずです。

また、偽ウィーバルも些細な言動の不自然さから正体を見破られるのを恐れて、
何かと理由をつけて人前に姿を見せる機会を減らし、不自然な態度も極力抑えていたので、
宇宙警察内部でもウィーバルが偽者であると見破る者はいなかったのです。

しかしギャバンだけはウィーバルの態度が不自然であることに気付いていたようです。
おそらくギャバンは個人的にウィーバルとは親しかったのでしょう。
それでギャバンは何時の頃からかウィーバルが別人のように性格が変わってしまったように感じていました。
しかし、それだけでウィーバルが偽者だと見破ったわけではありません。
ギャバンがウィーバルが偽者だと気付いた最初のきっかけは、第5話のデカレンジャー篇の時の出来事でしょう。

マーベラス一味が地球にやって来て、同時にザンギャックの第二次侵略軍が地球に侵略を開始した当初、
侵略軍の司令官ワルズ・ギルは海賊相手に苦戦していることを
本国の皇帝であり父であるアクドス・ギルには報せないようにしていたようですが、
まだその箝口令が徹底しない初期の頃に、地球に来ている海賊一味が侵略軍の邪魔をしているという程度の情報は
ダマラスあたりからアクドス・ギルにも伝わっていたのでしょう。

それで息子に甘いアクドス・ギルは軽い気持ちで
もともとザンギャックが捏造して宇宙警察に送りつけていた被害届に基づいて
偽ウィーバルを動かして宇宙警察の手でそのマーベラス一味とやらいうチンケな宇宙海賊の逮捕状を作らせて、
地球署にマーベラス達を逮捕させるように命じさせたのでしょう。

もともとはザンギャックの捏造した被害届は
宇宙警察のその被害があったとされる管轄内ではいい加減な情報としてあまり相手にされていなかったようですが、
それはあくまで本物のウィーバルが総裁を務めていた頃のまともな宇宙警察においての話であり、
偽ウィーバルが総裁の座についている宇宙警察ならば無理が通って道理が引っ込むことも有り得るのです。
偽ウィーバルはアクドス・ギルの命令を受けて、そのいい加減な被害届を全部真実と認定し、
マーベラス一味の逮捕状を認可し、地球署にマーベラス一味を逮捕するよう命じました。

本当は偽ウィーバルもあまりそういう強引なことをして偽者のボロが出ることは避けたかったのですが、
皇帝アクドス・ギルの命令とあれば仕方ない。
まぁ辺境の星々での偽の被害届に基づいて、これまた別の辺境の星である地球の刑事たちを少し動かして
チンケな海賊を逮捕する程度ならば話がそんなに大きくなることはないとタカをくくったのでしょう。

しかし地球署の署長のドギー・クルーガーは逮捕するよう命じられたマーベラス一味が
レンジャーキーを受け継いでいることや、マジレンジャーが既に「大いなる力」を渡していたことなどから、
その逮捕状の罪状の真偽を疑い、部下のバンに命じて極秘捜査を行わせて
その罪状がザンギャックの捏造であったことを突きとめ、マーベラス達を無罪放免とし、
地球での行動を認めてしまいました。

ただドギーはまさか宇宙警察総裁のウィーバルがザンギャック皇帝の命令で
マーベラス達を逮捕しようとしたなどとは想像もしていないので、
単なるミスでこのような逮捕状が出てしまったのだろうと思い、
「間違って変な逮捕状が来たが再調査の結果間違いだったことが分かった」という報告を
総裁に向けて提出して、この一件は幕を引いたのでした。

その報告を受けた偽ウィーバル総裁は、地球署に改めてマーベラス達を逮捕するよう命じることはしませんでした。
既にマーベラス達の無罪の真相を掴んでしまっている地球署に不当逮捕をしつこく強要して、
むやみに刺激するようなことをすれば、話が大きくなってしまって
自分の正体がバレる恐れがあると思い警戒したのでした。
よって偽ウィーバルは地球署からの報告書を素直に受け取っておいて、その後はマーベラス達の逮捕は諦め、
この一件が大きな話にならないように情報を隠蔽し、
自分がマーベラス一味の逮捕を命じたという事実そのものを宇宙警察本部では無かったこととしたのです。

ところがギャバンはたまたまドギーから直接この一件を聞いたのでしょう。
ギャバンにとって地球は母親の故郷であり、かつて赴任してマクーを倒すために戦った想い出深い地であり、
第二の故郷といってもいい星です。
今でもそれなりに繋がりのある場所なのでしょう。
それで地球署の署長のドギーとも面識はあり、おそらくドギーと個人的に話す機会があり、
たまたまマーベラス一味の誤認逮捕の一件の話題となり、
ザンギャックの捏造した偽の罪状に基づいた逮捕状が本部から送られてきたが
再調査の結果、過ちに気付いたという事実をドギーから聞かされたギャバンは、
少し気になって本部に戻ってからそのドギーから総裁宛てに送られたという報告書を確認してみようとしたが、
本部にはそんな報告書は残っておらず、そんな報告があったという事実すら確認出来なかった。
それどころか、マーベラス一味を逮捕するように地球署に逮捕状が送られたという事実すら無かったのです。

しかし長年の付き合いでドギーが自分にわざわざそんな嘘をつくはずがないと確信しているギャバンは、
最近様子がおかしいウィーバルの方を怪しみ、何か隠蔽が行われたのではないかと疑い、
地道に極秘の内部捜査を個人的に進めたのでしょう。
いくら総裁命令で隠蔽が徹底されていたとはいっても、一旦組織内で逮捕状や報告書が動いており、
その時にそれを複数の職員が目にしていた以上、
名刑事ギャバンの執拗な捜査によって遂に隠蔽されていた事実は突き止められ、
ギャバンはウィーバルがザンギャックの捏造情報を精査もせずに強引にマーベラス一味の逮捕状を発行するのを主導し、
その後ドギーからの報告書も握りつぶしていたこと、
それらの事実を巧妙に隠蔽していたということを知ったのです。

ただ、それを知ったギャバンは直接ウィーバルに抗議に行ったり、
組織内で不正として公に告発しようとはしませんでした。
そんなことをしても総裁の権限で潰されてしまうだろうと思ったのです。
それだけ総裁の権限は強大なものでした。
いや、ギャバンのよく知るウィーバルならばそんな不当な圧力はかけないだろうと思えましたが、
ギャバンはこの一件で今のウィーバルは自分のよく知るウィーバルではないと確信していました。

そもそも反ザンギャック傾向の強い正義漢のウィーバルが
ザンギャックの幼稚な捏造情報を精査もせずに海賊の逮捕状を発行するはずがなく、
そういうことが起こったということは、そのウィーバルは別人としか思えないとギャバンは確信し、
組織内で下手に動いても、この情報ごと自分が抹殺される危険すらあると思い、
慎重に行動して更に極秘捜査を1人で進めていったのでした。

そして最近まで進めた捜査の結果、
ギャバンはウィーバル総裁の正体がザンギャックの怪人が化けた偽者であり、
本物の総裁を殺してすり替わり宇宙警察の乗っ取りを画策しているに違いないという確信を得ていました。
ただ偽者を追い詰める決定的な証拠も不足しており、
滅多に人前に姿を見せない偽者のウィーバルに近づく機会すら無かったギャバンは、
この陰謀をどうやって食い止めたらいいのか、良い方法が見出せずに困っていたのでした。

すると、このまま手をこまねいているうちに定年を迎えてしまうのではないかと焦るギャバンのもとに
千載一遇のチャンスが舞い込んできました。
どういうわけなのか不明だが、なんとウィーバル総裁直々に、たっての指名で、
ギャバンに地球へ行ってマーベラス一味を逮捕するようにという命令が来たのです。

この命令を受けてギャバンは、もちろんこの逮捕状がドギーの一件の時と同様、
ザンギャックの命令によるデタラメの逮捕状だということは分かりましたが、
一度失敗しているというのに、本部の最精鋭刑事である自分まで動員して
偽ウィーバルが再度逮捕しようとするマーベラス一味という海賊が
よほど偽ウィーバルや背後のザンギャックにとっては邪魔者なのだろうと思ったギャバンは、
そのマーベラス一味をエサにすれば偽ウィーバルをおびき出すことが出来るかもしれないと思いました。

そこでギャバンは快くその命令を受けるポーズをとり、
定年前の最後の大仕事としての栄誉を求め、
逮捕したマーベラス一味を総裁臨席の場で処刑することを提案し、
その場で自分の功績について総裁から直接称賛の言葉を賜るようにせがみました。
いくら伝説の刑事である自分の頼みでも普通ならばそんな懇願は通らないだろうとはギャバンも思いましたが、
マーベラス一味を確実に葬ったことを確認するために偽ウィーバルはその誘いに応じるだろうと読んだのでした。

すると予想通り、偽ウィーバルは地球でマーベラス一味の処刑に立ち会うと言ってきたので、
ギャバンはとにかくマーベラス達の弁明は聞かずに強引に逮捕しました。
あらかじめマーベラス達に事情を話して平和裏に物事を進めるという手もありましたが、
ギャバンはそこまで初対面のマーベラス達を信用していたわけでもないので、
最後まで計画を極秘に進めるためにもマーベラス達に事情は一切説明しませんでした。

だいいち、これは宇宙警察内部のゴタゴタの問題なのであって、
その解決のためにマーベラス一味が協力する義理など全く無い。
事情を話したところでマーベラス一味に協力を拒否されるのが関の山だとギャバンは思い、
マーベラス一味には気の毒だが、背に腹は替えられないので、強引に作戦に巻き込むしかなかったのです。

そうしてマーベラス達を逮捕したギャバンは偽ウィーバルが指定した処刑場に5人を連行し、
マーベラス達を偽ウィーバルの連れてきた隊員たちに引き渡すと、
その場で今まで自分が掴んだ情報を突きつけて偽ウィーバルの不正を糾弾して追い詰め、
処刑を無効とし、偽ウィーバルの正体を明らかにしてやろうと思っていました。

ところが追及を始めた途端に偽ウィーバルがいきなり自分から正体をバラすような発言をして開き直り、
しかも処刑場の隊員たちは全員ザンギャックの手下であり、
処刑は有無を言わさずに強行されるのだと悟ったギャバンは、最後の手段に踏み切ったのでした。
それはあらかじめリモコンで解錠できるようにしていたマーベラス達の手錠を解錠して逃がし、
ギャバン自身が偽ウィーバルをその場で直接倒すという強行策でした。

以上がここまでの顛末の真相だと推測されます。
第5話で突然、マーベラス一味の逮捕状というものが宇宙警察において出現し、
それがザンギャックによる捏造であったという事実が判明し、
その後その一件がどうなったのか説明もありませんでした。
そこには本来は前後の経緯が存在するはずなのですが
「ゴーカイジャー」の物語においてはそれはサイドストーリーに属するので
特に明確に描かれることもありませんでした。
しかし今回の映画で再び宇宙警察におけるマーベラス一味の逮捕状が登場し、
しかもそれに宇宙警察の中枢を巻き込んだ陰謀が絡んでいるという展開となった以上、
第5話の前後のサイドストーリーも含めた、こうした1つのストーリーを補完した方がいいと思いました。

まぁそういうわけで、そういうのがここまでの顛末の真相であったとして、
かといってギャバンの手短な説明でマーベラス達はその経緯の全てを把握したわけではありません。
ただ、デタラメな罪状に基づいて自分達を処刑しようとしていた宇宙警察の隊員たちの正体が
ザンギャックのゴーミンであったこと、
そもそも今回の罪状はもともとデカレンジャーの捜査によって
ザンギャックによる捏造だったこともマーベラス達は知っていたことからも、
宇宙警察の乗っ取り云々はよく分からないものの、
とにかく自分達の逮捕を命じた宇宙警察総裁のウィーバルが偽者であり、
おそらくザンギャック怪人であろうというギャバンの話は信憑性があるということは
マーベラス達にも理解は出来ました。

そして、その偽者の総裁をおびき出すために自分達を逮捕してエサとしたのだとすると、
ギャバンが強引にマーベラス達を生きたまま逮捕することにこだわったことや、
その後の一転した処刑への疑念の表明などの一連の不可解な行動も説明がつき、
公開処刑でもない総裁臨席での内輪だけの奇妙で性急な処刑執行の謎も解けます。
全ては偽者の総裁をおびき出すためのギャバンの仕掛けだったのです。
となると、さっき手錠がいきなり外れたのもギャバンの仕業なのだろうとマーベラス達は思いました。
しかし、だからといってギャバンに感謝する気持ちが湧いてくるわけではない。

ザンギャックによる宇宙警察の乗っ取りというのは、
確かに大局的に見ればザンギャックに追われる立場であるマーベラス一味にとっては歓迎すべき事態ではない。
だから乗っ取りを阻止しようとするギャバンの行動は心情的には応援できる。
しかし、だからといって、その作戦に勝手に自分達を巻き込んでエサとして使ったギャバンの乱暴なやり方は
マーベラス達にとっては迷惑以外の何物でもない。

下手したら死ぬところだったのです。
あのまま冤罪で処刑されていたらシャレになっていないのであって、
勝手に自分達をそんな窮地に追い込んだギャバンがあそこで自分達を助けるのは当然の義務なのであって、
そんなことでいちいち感謝する気はマーベラス達は起きませんでした。

そういうわけで、むしろ憤慨して当然のマーベラス達でしたが、
意外にギャバンに対して怒りの感情は湧き上がってきませんでした。
それはギャバンが手荒なことをしたことを詫びてくれたからでした。
それはつまり、本当はギャバンはマーベラス達の無実を信じていたということを意味します。

ギャバンのそうした真意を聞くまでは、
マーベラス達は宇宙警察はてっきりザンギャックの言い分を鵜呑みにして
自分達のことを薄汚い犯罪者だと決めつけているのだと思っていました。
しかしこうして真相が明らかになってみると、
あくまでマーベラス達を犯罪者扱いしていたのは
宇宙警察に不正な手段で潜り込んでいたザンギャックの手先なのであって、
本来の宇宙警察はギャバンのようにマーベラス達の無実を信じてくれていた。

ザンギャックがマーベラス達を犯罪者扱いするのは別にマーベラス達には気にはならないのです。
利害がぶつかる敵同士なのですから、デタラメでもなんでも敵を悪しざまに言うのは仕方ないことです。
マーベラスの気分を重くしていたのは、本来公平であるべき宇宙警察に犯罪者扱いされたことでした。
それによって、まるでこの宇宙で無価値な存在であると決めつけられたような気がして
マーベラスは腐った気分になっていました。
しかしギャバンの言葉を聞いて、そういうわけではなくて、ちゃんと宇宙警察は
自分達が自分達なりに懸命に生きてきたことを認めてくれているような気がして、
マーベラスはなんだか救われた気分になったのでした。
この宇宙も案外捨てたもんじゃないという気がしてマーベラスは再び明るい気分になりました。

まぁ、だからといって自分と大切な仲間達がギャバンにとんだ迷惑をかけられたことも事実であるので、
マーベラスとしては嬉しいやら腹立たしいやら、どうにも複雑な気分でしたが、
とにかくギャバンにもやむを得ぬ事情があってこのようなことになったのだということは理解し、
ギャバンの方に振り向いて真顔で「・・・なるほど・・・」とだけ呟きました。

とにかく宇宙警察の隊員たちに化けていたゴーミン達は片付け、
偽者のウィーバルにもギャバンが剣を突きつけている。
この場はもはや勝負ありという風に見て取れました。
これはもともとギャバンの仕掛けた戦いであり、マーベラス達は巻き込まれただけです。
だから仕上げはギャバンに任せればいいとマーベラスは思いました。
ギャバンの強さはマーベラス達は身を持って知っていますから、
ウィーバルの始末はギャバンが勝手にやればいいと思いました。

もちろんギャバンもそのつもりで、「貴様も正体を現せ!」と偽者のウィーバルに剣を突き立てたまま迫ります。
ここまでのギャバンの言葉は偽ウィーバルも聞いていたはず。
つまり偽ウィーバルは自分が偽者だということをギャバンに見破られて
この場で罠に嵌められて進退窮まった状況であることも理解しているはずです。
ならばもう観念して正体を現し、尋常にギャバンと勝負するしかない。

もちろんギャバンは自分の勝利を確信しています。
あとはこの偽者の正体を暴き、この場で倒して宇宙警察の乗っ取りの陰謀を阻止すれば
一件落着だとギャバンは思いました。
しかし偽ウィーバルはギャバンの方を向くと、何故かニヤリと不気味に余裕の笑顔を見せ、
全身から赤黒い禍々しいオーラを発し、遂に人前で初めてその本来の怪人の姿を現したのでした。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 07:24 | Comment(1) | 海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月06日

海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE 感想その2

では映画本編ですが、まず冒頭は東映劇場版では定番の東映ロゴの後、
これも「ゴーカイジャー」ではお馴染みのスーパー戦隊シリーズ35作記念ロゴが出てきて、
その後に今回の映画で新たに作った、宇宙刑事ギャバンの30周年記念ロゴが出ます。

そしてドラマ本編が始まり、
いきなり夜の大都会上空を飛ぶゴーカイガレオンが謎の空飛ぶ巨大円盤に追いかけられて
レーザー砲で攻撃されているスリリングなスカイチェイスの場面から始まります。

マーベラス一味の面々はTV本編の第46話で
遂に34番目に表舞台に現れたスーパー戦隊の「大いなる力」であるカクレンジャーの「大いなる力」をゲットし、
これで残るは宿敵バスコの持つ5つの戦隊の「大いなる力」を奪い取れば
34の「大いなる力」が全て揃い、「宇宙最大のお宝」への道が開けるという、
1年前に地球にやって来てからのお宝探しの冒険の最終段階にこぎつけていました。

ところが、カクレンジャーの「大いなる力」を手に入れ、
これで後はバスコの行方を探すのみだとマーベラス達が一息ついたその時、
突然現れた正体不明の空飛ぶ円盤が夜空を航行するガレオンに近づいてきたかと思うと、いきなり砲撃してきたのです。

一応謎の円盤の接近に警戒して変身した姿で操縦室で操舵輪を握っていたマーベラスは、
泣く子も黙る(と本人は思っている)お尋ね者の宇宙海賊マーベラス一味に突然発砲してきた空飛ぶ円盤に驚き、
何発かの被弾にもたじろぐことなく「いきなり攻撃してくるとは・・・いい度胸じゃねぇか!!」とブチギレます。

一方、船室の方ではメインコンピュータで近づいてくる謎の円盤の形状を急いでデータと照会していた
ハカセとアイムが被弾の衝撃で大きく身体を揺さぶられ、
一緒にいたナビィも「わぁ〜!?なんだなんだぁ!?」と謎の円盤のレーザー砲がかなりの威力であることに驚きます。

操作盤に掴まって踏み止まったアイムは
「・・・ザンギャックではなさそうですね・・・こんな船、見たことありません!」と、
回線を通じて船内にいる他の仲間たちにデータ照会の結果を伝えました。
ガレオンに近づいてくる怪しい宇宙船ということで、当然、敵であるザンギャックの宇宙船であることを疑って、
ガレオンのメインコンピュータからザンギャックの船舶の全データと照合してみたのですが、
一致する船体はありませんでした。

このいきなり撃ってきた宇宙船は、大きな円盤型をしており、その大きさはガレオンよりも一回り大きいぐらいで、
メタリックな外壁が特徴で、船底には大きめの角ばった艦橋のような部位がくっついています。
ザンギャック艦にはこのような形状のものはありません。
もちろんバスコの乗艦であるフリージョーカーともこの円盤は全く違います。

被弾の衝撃で床にひっくり返っていたハカセが起き上がってきてアイムの横に立ち、
「通りすがりの賞金稼ぎかな・・・?」と船内の仲間たちに問いかけます。
マーベラス一味の高騰した賞金を狙ってやって来た未知の宇宙の賞金稼ぎである可能性を考慮したのでした。しかし、見張り台に立ってマーベラスに周囲の状況を伝える役目を担っていたジョーは
「今はそんなことどうでもいい!」と、後ろから迫って撃ってくる円盤の方を見て怒鳴ります。

戦いに際して相手が何者か判明するに越したことはないが、
曖昧な推測しか出来ないのならば、もはや戦いが始まった以上、あれこれ相手が何者か考えていても仕方ない。
とにかく相手の攻撃からガレオンを守らねばならない。
ジョーと一緒に見張り台に昇っていたルカは前方に視線を移すと、「前方に超高層ビルが!」とジョーに伝えました。
ハッと前を振り向いたジョーは、ルカの言うようにガレオンの針路の前方に超高層ビル群があるのを見て、
これはチャンスだと思い操縦室のマーベラスに向けて「反撃のチャンスだ!マーベラス!」と伝えました。

謎の円盤はまだ執拗に追撃してレーザー砲を撃ってきており、
ガレオンは敵の攻撃を避けながら逃げるのに精いっぱいでした。
全速で逃げているのですが、謎の円盤の速度は速くてガレオンは逃げ切ることが出来ず、
ひたすら撃たれ続けていたので、反撃する暇も無かったのです。
しかし超高層ビル群の中を縫って飛べば、ビルの陰に隠れて被弾を防ぐことが出来て、反撃に転じる余裕が生まれる。

マーベラスもジョーの進言を受けて、謎の円盤を超高層ビル群に誘い込んで反撃してやろうと考え、
「よぉし・・・砲撃戦用意!」と、船室のハカセとアイムに指示しました。
「了解!」と応じたハカセとアイムはメインコンピュータを操作し、
ガレオンの側面にあるキャノン砲の発射準備を素早く整えると
「左舷ガレオンキャノン!スタンバイ!」とマーベラスに返します。

マーベラスはそれを受け、全速で超高層ビル群に突っ込み、
追いかけてきた謎の円盤の右側のビル群の陰に潜り込むと速度を落とし、
円盤の右舷側をビルの陰に隠れて並走する形としました。
言い換えればガレオンは左舷側のビルの陰に円盤の姿を捕える状態となり、
発射準備の整った左舷のガレオンキャノンの射程内に円盤を捕えたことになります。

そのままゆっくりガレオンを進ませると、
円盤もビル群が邪魔でガレオンに狙いをつけられないのか砲撃が止まり、
ビルの陰からガレオンの姿が覗くと撃ってきますが、
マーベラスはガレオンのキャノン砲が円盤に有効なダメージを与えられるタイミングを計って、
敵の攻撃をやりすごして耐えます。
そして、ここだというタイミングを見計らったマーベラスは「撃てェェッ!!」と船室のハカセに向けて指示を出し、
ガレオンの左舷キャノンは一斉に火を噴きました。

そのままビル群を挟んで並走しながらガレオンと円盤は砲撃戦となりましたが、
ガレオンのキャノン砲が円盤を捉え、円盤は炎に包まれました。
円盤を撃墜したと思い、「やったぁ!」とハカセとアイムは歓喜し、
見張り台のジョーとルカは円盤を包んだ爆炎を見つめます。
ところが、その爆炎の中から、なんと巨大な龍のようなものが飛び出してきて、
真っ直ぐガレオンに突っ込んでくるのです。

ハカセとアイム、ジョーとルカも「あっ!?」と息を呑み、
操縦室のマーベラスも「なにぃ!?」と意外な展開に驚きます。
この不意打ちに対してマーベラス達はなす術もなく、
この龍は一気にガレオンに接近し、口から炎を吐き、逆にガレオンの方が炎に包まれてしまい、
マーベラス達は「わああっ!?」と大慌てとなりました。

ナビィは「初めての衝撃〜!!」と喚きながら右往左往し、
炎に包まれたガレオンがぐんぐん高度を下げているのを感じて「落ちる!落ちる〜!」と、
このままでは墜落して皆死んでしまうと焦って叫びます。
しかしマーベラスもなんとか落下していくガレオンを操って、
その墜落する向きをビル街に隣接する海の方向に向けました。
夜のビル街のネオンの輝く中、ぽっかりと空いた真っ黒な空間、そこが夜の海となります。
その真っ黒な海に向かって炎に包まれたガレオンは落ちて行き、着水しました。

そのガレオン墜落の様子を、その海辺のビル街で買い物袋を両手に持っていた鎧が唖然として見上げていました。
鎧だけはガレオンには乗っておらず、ちょうどこの街に買い物に来ていたようです。
上空が騒がしいので見上げると、なんと自分の住処であるガレオンが謎の円盤と砲撃戦を展開し、
その挙句、炎を噴いて落ちていったのですから、鎧は大変驚き、
両手に持っていた買い物袋を思わず落としてしまいました。
いったいどうしてそんな状況になっているのか、ガレオンを離れていた鎧には事情がさっぱり分かりませんでしたが、
とにかくガレオンにはマーベラスをはじめ仲間たちが乗っているのですから、これは一大事でした。

そのガレオンを撃破した上空の龍は咆哮を発するとその長い首と尾を折りたたみ、角ばった胴体部分に収納します。
どうやらこの龍は機械であるようです。
その首と尾を収納した胴体部はそのまま上昇し、高空から下降してきた円盤とドッキングしました。
円盤はガレオンのキャノン砲を受けて撃破されたわけではなく、高空に退避していたようです。
そして龍の胴体部は、円盤の下にくっついていた角ばった艦橋部であったのです。
円盤はキャノン砲を喰らった時、爆炎に紛れて下部の艦橋部を切り離して龍型に変形させてガレオンに向けて放ち、
円盤本体は高空に退避していたのです。
そうしてガレオンを撃破して墜落させた後、再び艦橋部と合体した円盤は、
そのままガレオンが落ちていった方向に飛んでいきます。
その姿を見送って、鎧はまだ事態がよく分からず、大慌てで「たった・・・大変だああああ!?」と叫ぶのでした。

さて、マーベラスがガレオンを海に着水させたのは
地面やビル街に激突することを避けてソフトランディングさせるためでもありましたが、
同時にガレオンを包んでいた炎を消すためでもありました。
その結果、着水時の猛烈な水しぶきをかぶってガレオンの火は消し止められましたが、
しばらくガレオンは動かせそうにありません。
その上空に先ほどの円盤がやって来て、海に浮かんだガレオンにサーチライトを浴びせてきます。
トドメを刺しに来たのかと思われました。

ところが円盤はガレオンを攻撃しようとはしません。
どうやら円盤の操縦者の目的はガレオンを破壊することではなく、
ガレオンを航行不能にして、中にいるマーベラス達をいぶり出すことであったようです。
つまり、そいつの目当てはマーベラス達であるということです。

ただ、円盤のレーザー砲で無抵抗になったガレオンごと吹っ飛ばしてもよさそうなものだが、
あえてそのようにはせず、サーチライトを浴びせて挑発するような様子は、
まるでマーベラス達に降りてきて肉弾戦で勝負をつけるように誘っているように見えました。
在、船同士の戦いで圧勝して絶対的有利な状況にあるにもかかわらず、
そのアドバンテージを捨てて、あえて肉弾戦を挑んでくるということは、よほど腕に自信があるのでしょう。

だが、それはマーベラス達を舐めてかかっているということでもあります。
「・・・野郎!!」と舐められたことに腹を立てたマーベラスは操舵輪を叩いて操縦室を飛び出していき、
ガレオンを飛び出すと対岸に上陸して、ひとまず変身を解くと、
円盤が誘うように上空を飛ぶのを追いかけ、円盤が上空に停止した場所に駈けていきました。

そこは夜の公園で、マーベラスが円盤の下にやって来ると、
円盤から下に向かって照射されているサーチライトがマーベラスに注がれ、
マーベラスはその眩しさに思わず腕で目を隠します。
同時に苛立ちが込み上げてきました。
ザンギャック軍でないのに自分達を襲ってくるということは、おおかた何処かの賞金稼ぎか何かであろうが、
所詮は宇宙のアウトロー同士であるのに、さっきからサーチライトでやたらと人のことを照らしたりして、
まるで犯罪者扱いするかのような相手の上から目線がマーベラスには気に入らなかった。
いくら賞金目当てとはいえ、いきなり他人の船を襲ってきておいて、
挨拶も無しに人のことを犯罪者扱いして上から見下ろす態度は許せない。

サーチライトがマーベラスの立つ場所の前に立つ階段の上を照らし、そこに向かって円盤から光線が降りてきて、
その光線を通って何者かが地上に降下してきたのを見て、
マーベラスは「舐めたマネしてくれるじゃねぇか!何者だ?」と噛みつくように怒鳴りました。
マーベラスの後を追い掛けてきたジョー、ルカ、ハカセ、アイムの4人も到着し、
マーベラスと共に怒りの視線をその円盤から降りてきた相手に向けます。

サーチライトに照らされる中、階段の上に降り立った相手は、
その乗って来た円盤同様、メタリックシルバーのボディの戦士風の男でした。
そして、その銀色のメタリック戦士は、サーチライトが消えると、
マーベラスの問いかけに応えるように勢いよく右手を高々と上げて「ジュウオオウウッ!!」と独特の掛け声を発し、
右手を下げると同時に身を低くして、腰を回して右手を右に振りだして「宇宙刑事!」と言うと、
両腕を左に、そして右に振った後、すっくと立って右拳を顎の前に掲げて
「・・・ギャバン!!」と名乗ったのでした。

ここで一旦本編が途切れ、この映画のタイトルコールの場面となります。
まず宇宙空間を背景にマーベラス一味の6人の変身後の姿が次々と現れて
最後に6人並んでポーズを決めるカットに合せて
「宇宙最大のお宝を手に入れるため、宇宙狭しと大冒険する6人の宇宙海賊!」という関智一のナレーションが流れ、
次いで冒頭の場面に登場したメタリックシルバーの戦士、
すなわち宇宙刑事ギャバンが宇宙空間を背景に剣を構える場面に合せて
「宇宙の平和を守るため、宇宙警察より派遣された伝説の宇宙刑事!」という関ナレーションが流れます。

ここの2つのナレーションは両方とも注目すべき点があります。
まずゴーカイジャーの方のナレーションですが、
いつものTV本編のレジェンド回バージョンの
「スーパー戦隊の力を受け継いだとんでもない奴ら」という意味合いのナレーションや、
通常回バージョンの「ザンギャックに逆らって海賊の汚名を名乗り宇宙の大海原を行く豪快な奴ら」という
意味合いのナレーションとも微妙に意味合いの違うナレーションをわざわざ新たにかぶせています。

まずここでは「スーパー戦隊の力を受け継いだ」という部分が完全に無くなっています。
が、この映画の中でゴーカイジャーはしっかりスーパー戦隊の力も受け継いで使っています。
また、TV本編の方の冒頭ナレーション部分の映像では鎧を除く5人だけが映像に現れており、
厳密には鎧以外の5人のことを言っていると思われます。
そう考えると「宇宙の大海原を行く」というTV本編の通常回の冒頭ナレーションは事実に正確といえます。
何故なら鎧はまだ宇宙の大海原には飛び出したことが無いからです。
ところが、この映画の冒頭ナレーションでは「宇宙狭しと大冒険する6人の宇宙海賊」と表現されており、
鎧も宇宙を大冒険していることになっていますが、これはTV本編yこの映画の劇中事実には即していません。
そして、この映画の冒頭ナレーションはTV本編の通常回バージョンに似ているようにも見えますが、
通常回バージョンにある「ザンギャックに逆らっている」という文言が無くなっています。
しかし、この映画の中でもゴーカイジャーはザンギャックに逆らっています。

ナレーションの尺的にそれらの文言が入れられなかったのかもしれませんし、
ギャバンの部分の言葉との対比の関係でザンギャック云々の文言は不要と判断されたのかもしれません。
しかし、ゴーカイジャーが「スーパー戦隊の力を受け継いでいること」や
「ザンギャックに逆らっていること」などが触れられていないこと、
何故か宇宙に行ったことのない鎧までも宇宙を大冒険していることになっていることなどから、
どうもこの冒頭ナレーションはこの映画の公開時の2012年1月21日時点でのTV本編やこの映画自体での
ゴーカイジャーの状態とは少しズレた時系列のゴーカイジャーについて述べているような気もします。
それというのも、この「ゴーカイジャーVSギャバン」の映画は、
劇場によっては2012年2月19日の「ゴーカイジャー」TV本編の最終話よりも後にも
上映されている可能性があるからです。

つまり、この冒頭ナレーションで述べられているゴーカイジャーの姿は、
TV本編最終話以降のゴーカイジャーの姿を説明したものであるようなのです。
あるいは、映画公開初日の1月21日の時点のゴーカイジャーでも、TV本編最終話以降のゴーカイジャーでも、
どちらにでも解釈できるような最大公約数的な表現というべきでしょうか。
だから「ザンギャックに逆らっている」という点や、
「スーパー戦隊の力を受け継いでいる」という表現は回避されており、
鎧も宇宙を冒険しているかのようにも解釈可能な表現にしているのです。

ということは、つまり、この映画公開初日にはまだ明らかになっていない
「ゴーカイジャー」TV本編の最終話の結末が、このナレーションによってなんとなく想像できるのです。
このナレーションがゴーカイジャーのTV本編最終話以降の姿を表しているとするなら、
それはゴーカイジャーがザンギャックに逆らっておらず、スーパー戦隊の力も受け継いでおらず、
宇宙最大のお宝を目指して、鎧も含んだ6人で宇宙を冒険しているという姿です。
そうなると、最終話でゴーカイジャーはザンギャックを倒し、スーパー戦隊の力をレジェンド戦士たちに返し、
再びお宝を探すために鎧も一緒に宇宙に旅立つということになります。

が、そうなると、ゴーカイジャーの6人は最終話に至っても結局、
「宇宙最大のお宝」を手に入れることが出来なかったということにもなります。
そのあたり、いったいどういう最終話になるのか、
この映画公開日の時点ではまだ残り5話ある状況ですから詳細はまだ分かりませんが、
この映画の冒頭ナレーションだけで色々と考えさせられます。

さて一方の「宇宙の平和を守るため、宇宙警察より派遣された伝説の宇宙刑事!」という
ギャバンに関するナレーションです。
冒頭のシーンで登場したメタリックボディの戦士は、
まさしく1982年に放映されたメタルヒーローシリーズ第1作「宇宙刑事ギャバン」に登場した
主人公ヒーロー、宇宙刑事ギャバンです。

もちろん1982年に撮影で使用されていたスーツがそのまま残っているわけではないので、
この映画用に新作されたスーツです。
だから細部は1982年当時のものとは微妙に違う、新ギャバンといえます。
だが、殊更に新バージョンであることをアピールするようなデザインではなく、
これは新しいギャバンなのではなく、あくまで1982年のギャバンを今の技術で再現したものであり、
あくまでこれは1982年のギャバンがそのまま年月を経た同一キャラなのだと解釈すべきでしょう。

「伝説の宇宙刑事」という表現も、
このギャバンが初代ギャバンからスーツを受け継いだ二代目や三代目の若手刑事なのではなく、
あくまで伝説の刑事である初代ギャバンが年を経て老刑事となって現れたのだということを示しています。
実際、冒頭の場面の最後の部分でのギャバンの名乗りポーズは、
1982年の宇宙刑事ギャバンの名乗りそのものであり、
また、その声が大葉健二氏の声であることからも、
このギャバンの正体は1982年の「宇宙刑事ギャバン」で大葉健二氏が演じていたギャバンの変身者である
「一乗寺烈」本人であろうと推測されます。

つまり、この「ゴーカイジャー」の物語世界には歴代34のスーパー戦隊だけではなく、
宇宙刑事ギャバンまで存在しているということになります。
そして「ディケイド」のように歴代キャラが同時存在しているのではなく年代順に配置されている
「ゴーカイジャー」作品世界の特徴、「伝説の宇宙刑事」という表現、
この映画撮影時に56歳の大葉氏がギャバンを演じるという点などを考え合わせると、
このギャバンは「ゴーカイジャー」物語世界における1982年に宇宙犯罪組織マクーと戦って壊滅させた
ギャバンが32年か33年ほど経って再び年を経た姿で現れたものだと見なしていいでしょう。

あの円盤は「超次元高速機ドルギラン」というギャバン専用の宇宙船で、
上部の円盤部を「ギラン円盤」といい、下部の艦橋部のような角ばった部位は「ドルユニット」といいます。
このドルユニットが分離して折りたたんで収納していた首や尾を出すと「電子星獣ドル」という青い龍の形態となり、
先ほどのように口から火を噴いて戦ったりします。

星獣といってもドルは生き物というわけではなく、一種の龍型の巨大ロボットなのですが、
電子頭脳を搭載しているからなのでしょうが、自分の意思で動く自律型ロボで、
ギャバンの指示に従う支援ロボです。
内部には操縦席のようなものもあるのですが、大抵はギャバンはドルの上に乗ってドルに指示を出して戦い、
先ほどのようにドル単体でももちろん戦えます。

ただ、このドルギランですが、
1982年放送の「宇宙刑事ギャバン」に登場したドルギランとは大きさがだいぶ違います。
オリジナルのドルギランは直径220mという設定なので、
全長46mのゴーカイガレオンよりも遥かに巨大なはずですが、
冒頭の空中戦を見る限り、ガレオンより一回り大きいぐらいにしか見えません。
この「ゴーカイジャー」物語世界のドルギランはオリジナルのものより、かなり小型になっています。

第9話以降登場しているガオライオンも
「ガオレンジャー」本編に登場したオリジナルのガオライオンとは大きさや形が違っていたり、
第25話以降登場している風雷丸も
「ハリケンジャー」本編に登場したオリジナルの風雷丸とは形が違っていたりしており、
「ゴーカイジャー」物語世界に登場する過去作品の事物は
オリジナルのものとは微妙な部分が異なっている場合もあるようですので、
ドルギランの大きさが違うのもそうしたパターンの1つなのでしょう。

その「オリジナルと微妙に違う」という意味では、
ギャバンのナレーションにある「宇宙警察より派遣された」という部分も同様のように思えます。
1982年放送の「宇宙刑事ギャバン」では、ギャバンが所属していた組織は「銀河連邦警察」であり、
「宇宙警察」ではありません。
「宇宙警察」というのは2004年放送のスーパー戦隊シリーズ第28作
「特捜戦隊デカレンジャー」に登場した組織名であり、
デカレンジャーが所属する全宇宙をカバーする警察組織でした。

この「ゴーカイジャーVSギャバン」映画では、
オリジナル設定では銀河連邦警察に所属していたギャバンが、
何故かデカレンジャーと同じ宇宙警察に所属しているというように設定が微妙に変わっているかのように見えます。
まぁガオライオンや風雷丸の例もあるし、実際ドルギランの大きさまで変わっているわけですから、
ギャバンの所属組織の設定が変わっているという解釈でもOKだとは思いますが、
この件に関しては設定変更という解釈でなく、もっと整合性のとれる解釈も可能だと思います。
というのも、1982年の「宇宙刑事ギャバン」に登場した銀河連邦警察には更に上部組織があり、
その上部組織の名が「宇宙警察機構」というからです。

1982年当時、宇宙警察機構というのは一種の評議会的な組織であって実動部隊であったわけではないようですが、
その下で実動部隊として働いていたのが銀河連邦警察であったようです。
その1982年の時点で、既に宇宙警察機構も銀河連邦警察も長い歴史を持った組織であったようです。
ギャバンの少年時代にギャバンの父のボイサーも同じ銀河連邦警察所属の宇宙刑事として活動していて
宇宙犯罪組織マクーに拉致されて行方不明になっているのは劇中でも明らかになっていますから、
地球暦で1970年以前には既に銀河連邦警察は存在していたはずです。
おそらくもっと歴史は古いでしょう。
当然、その上部組織である宇宙警察機構もそれより歴史は古いと思われます。

「ギャバン」劇中に登場する敵組織である宇宙犯罪組織マクーというのは2万6千年の歴史を持つと言われており、
宇宙警察機構よりも歴史は古いとされていましたから、
宇宙警察機構は2万6千年以内の歴史を持っているようです。
実際のところ、いつから宇宙警察機構が存在するのかは分かりませんが、
おそらくマクーの存在が先行していたことから類推して、
宇宙警察機構の設立の動機となったのはマクーによる異星間を股にかけた組織的犯罪活動に
対抗するためであったのでしょう。
そのためにマクー犯罪対策評議会のような形で、
それぞれの星の治安組織の枠を超えた宇宙警察機構という組織が設立され、
その下にマクーの異星間犯罪に対処する実行部隊として銀河連邦警察が設立されたのだと思われます。

ギャバンの父のボイサーやギャバンはその銀河連邦警察の宇宙刑事としてマクーと戦い、
1983年にギャバンを中心として宇宙警察機構および銀河連邦警察は
遂にマクーの首領のドン・ホラーを倒してマクーを壊滅させたのでした。
そして「宇宙刑事ギャバン」の続編といえる「宇宙刑事シャリバン」「宇宙刑事シャイダー」の2作品においては、
1983年から1985年にかけてマクーに続いて現れた宇宙犯罪組織であるマドーやフーマと
宇宙警察機構や銀河連邦警察との戦いが描かれており、マドーやフーマもここで殲滅されました。

そうなると宇宙警察機構の次の活動目標は
マクーのような全宇宙規模で活動する犯罪組織の次なる発生を未然に防ぐこととなります。
そのために宇宙各地の星における異星人による組織犯罪活動を取り締まって、
それが巨大な星間犯罪組織に成長しないうちに潰していく必要が生じます。
そのためには地道できめ細かな警察活動が必要となるのですが、
巨大犯罪組織との本格的な戦闘を想定して作られた銀河連邦警察は
全宇宙を大まかな活動領域とする武装警察や特別警察の類であり、まさに連邦警察=FBI的な存在であり、
宇宙各地で頻発する小規模な異星人犯罪組織をいちいち検挙していく治安警察的な活動には不向きでした。

そこで宇宙警察機構は組織改編を行い、宇宙各地の星の治安組織から人員を提供してもらって
「宇宙警察」という巨大組織に生まれ変わり、
宇宙各地の星に小規模な異星人犯罪組織の取り締まりを行う宇宙警察の所轄署を置くようになったのでしょう。
そうしてほどなくして宇宙警察の所轄の各星の出張署が置かれるようになり、
地球にも地球署が設置され、ドギー・クルーガーやスワンなどが刑事として赴任し、
十数年の勤務の後にドギーが地球署の署長となって、
やがてホージーやセン、ジャスミンやウメコが刑事として加わり、
2004年にはバンやテツが地球署に赴任したのです。

一方、ギャバンの所属していた銀河連邦警察の方はどうなったかというと、
宇宙警察機構が宇宙警察として組織改編した際、
所轄署単位では対応できない大規模星間犯罪組織対策の特別チームとして残されたのだろうと思われます。
だから銀河連邦警察という呼称は無くなったと思われますが、
FBI的な武装警察の機能はそのままで特別な権限を持った宇宙警察の最強の連邦捜査チームとして残っており、
ギャバンはかつてマクーを倒した伝説の刑事として、そこの責任者にでもなっているのでしょう。

ドギーやバンなどの所轄署の宇宙刑事は異星人犯罪者の処分に際しては宇宙裁判所の判断を仰ぐ必要がありますが、
宇宙警察の総裁の直属の連邦捜査チームのリーダーであるギャバンは
宇宙裁判所の許可を得ずに犯罪者の処断を行えるようです。

そういうわけで、この「ゴーカイジャーVSギャバン」の劇中時期である2015年あたりの1月に
ギャバンが「宇宙警察より派遣された伝説の宇宙刑事」というように形容されるのは何ら不自然なことではない。
いわばギャバンは宇宙警察の最終兵器のような男であり、
大抵の異星人犯罪は所轄署で対応出来ている現状においては、
むしろギャバンが華々しく活動出来る場はあまり無いといえます。

そもそもギャバンは銀河連邦警察の時代から正体を隠しての潜入捜査の専門家のような男であったので、
ギャバンの正体はおろか、その存在を知る者自体、宇宙にはあまり多くないといえます。
宇宙警察の内部でしかギャバンの所属する連邦捜査チームの存在は知られておらず、
「宇宙刑事ギャバン」という宇宙警察草創期の伝説的な刑事の名は宇宙警察内部では有名ではあっても、
その顔もあまり知られておらず、
未だにそのギャバンが宇宙警察内部に勤務しているのかどうかもあまり知られていないのでしょう。
伝説の刑事であり、秘密兵器のような存在といえます。

そういうわけで、ゴーカイジャーのメインコンピュータでギャバンの宇宙船であるドルギランを検索しても、
その正体は判明せず、宇宙を旅して来たマーベラス一味の誰もドルギランのことを知らなかったのです。
それぐらい隠密な存在である宇宙警察の秘密最終兵器ともいえる最強の宇宙刑事ギャバンが、
どうしていきなり地球に現れてマーベラス一味を襲撃したのか謎なのですが、とにかく両者は出会ってしまいました。

そして画面上ではマーベラスの姿とギャバンの姿が続けて大写しとなり、
「出会うはずのなかった宇宙海賊と宇宙刑事が、今、相対する!!」というナレーションが雄々しく謳い上げられます。
これは「スーパー戦隊VSシリーズ」の恒例の煽り文句で、
もともと別々の作品世界の存在である2つの戦隊が本来は出会うはずがないのに、
この作品内でだけは特別に出会うという、特別感を強調するものです。

しかし厳密にはこの「ゴーカイジャーVSギャバン」の場合、この煽り文句はあまり適切ではありません。
片割れのゴーカイジャーという戦隊は、
その「出会うはずのない」相手である他のスーパー戦隊と出会うことは当たり前の世界観の中のヒーローだからです。
ゴーカイジャーならばゴセイジャーと出会うこともゴレンジャーと出会うことも当たり前なのであり、
ならばギャバンと出会っても別におかしくはない。

もちろん、「ゴーカイジャー」の物語世界は34のスーパー戦隊の世界観のみを包含した世界だと思っていたので、
そこにギャバンの世界観まで加わったということにはこの映画では新鮮な驚きはあるが、
ゴーカイジャーに限ってはこの終盤に来ると、もうディケイド同様に何でもアリなので、
たとえ相手がギャバンでもライダーでも「出会うはずがない」とまではなかなか思えないのが実感です。

それを「出会うはずがなかった」とあえて強調しているのは、
単にいつもの「VSシリーズ」と同じ煽り文句を使うことによって、
いつもの「VSシリーズ」の1つであることを強調しようとしているに過ぎないといえるでしょう。
実際は、これは本当はいつもの「VSシリーズ」とは別種の映画であり、
それをあくまで「スーパー戦隊祭」の伝統に則った「VSシリーズ」であるように見せようとしているのです。

なお、ギャバンも「ゴーカイジャー」の物語世界に包含されるとすると、
「ゴーカイジャー」物語世界の1982年に地球で活動していた戦隊であるゴーグルファイブの活動と
ギャバンの活動がバッティングするのではないかということも考えられます。
しかしギャバンはあくまでマクーの宇宙規模の犯罪活動に対処する活動のために地球に派遣されていたのであり、
地球におけるゴーグルファイブとデスダークの戦いには不介入であったと思われます。
それにギャバンの活動は隠密行動が多く、正体も秘密にしており、
戦いも魔空空間という亜空間で行うことが多かったので、一般にはあまり知られておらず、
ゴーグルファイブと共にヒーローが並立するような状態にはなっていなかったと思われます。

そして、それはギャバンから世界観が繋がった1983年度のシャリバンや、1984年度のシャイダーも同じことであり、
シャリバンは同時存在したダイナマンと活動がバッティングすることはなく、
シャイダーも同時存在したバイオマンと活動がバッティングすることもなかったのでしょう。

そして画面上ではギャバンが愛刀のレーザーブレードを十字に斬ると、
その十字の閃光がゴーカイジャーの紋章の十字に交差した剣になり、
ゴーカイジャーのタイトルロゴが現れ、そこにゴーカイジャー6人が現れてゴーカイガンで画面を撃ち抜き、
割れた画面の向こうに宇宙刑事ギャバンのタイトルロゴが現れ、
次いで回転して飛んできたゴーカイジャーのタイトルロゴとギャバンのタイトルロゴが上下からドッキングして
真ん中に「VS」の文字が入り、
それに合わせて「海賊戦隊!ゴーカイジャー!!」とゴーカイジャー6人によるコール、
そして「対!」というマーベラスのコールに続いて
「宇宙刑事!ギャバン!!」というギャバンによるコールがなされて、この映画のタイトルコールが完了します。
そうして、OPテーマは無く、すぐに本編が再開します。

いきなりガレオンを襲撃して撃墜した謎の円盤から降り立った謎のメタリックシルバーの戦士が
「宇宙刑事ギャバン」と名乗ったのを受けて、マーベラス達5人は非常に驚きました。
5人はもちろんギャバンとは初対面であり、ギャバンという名も聞いたことはありません。
だからギャバンという名を聞いて驚いたわけではなく、
てっきり何処かの賞金稼ぎなのかと思っていたこの戦士が「宇宙刑事」と名乗ったことが
あまりに予想外で驚きであったのです。

なるほど刑事ならば妙に上から目線の態度であったのも納得はいきますが、
しかし、どうして刑事がいきなり見知らぬ他人の船を攻撃するのか、マーベラス達には意味が分かりませんでした。
すると、唖然としているマーベラス達に向かって、ギャバンと名乗ったその宇宙刑事はいきなり
「ゴーカイジャー!海賊行為の罪で逮捕する!」と言い放ったのでした。
これにはマーベラス達は更に驚きました。

宇宙刑事ということは、宇宙警察に所属している刑事だということはマーベラス達にも分かっています。
つまり宇宙警察が海賊行為の容疑で自分達を逮捕しようとして、
この宇宙刑事ギャバンに命じていきなり自分達を襲わせたということになります。
確かに刑事が海賊を逮捕するというのは、一見筋が通っている。
しかし、それは妙な話だとマーベラス達は思いました。
宇宙警察が自分達を海賊行為の容疑で逮捕しようとするはずはない。

アイムもムッとしてギャバンの言葉に対して「・・・そんな!?デカレンジャーさんの調査で、
私達の容疑は全てザンギャックの捏造だと分かっているはずです!」と言い返しました。
ハカセもアイムに同調して「そうだよ!僕たちは逮捕されることなんてしてないよ!」と抗議します。

確かにマーベラス達は地球に着いた当初、
第5話の段階で宇宙警察の地球署の署長、元デカマスターのドギー・クルーガーによって
海賊行為の容疑で逮捕されかけましたが、
その時、ドギーが元デカレッドのバンに命じていた極秘調査の結果、
地球署に送付されていたマーベラス一味の逮捕状に記してあった海賊行為の罪状は
全てザンギャック帝国によって捏造されたものであり、
マーベラス達は宇宙警察に逮捕されるような立場ではないことが証明され、放免されたのでした。
それ以降、地球において宇宙警察地球署はマーベラス達を逮捕しようという動きは一度も見せていませんでした。
だからマーベラス達は宇宙警察は自分達の無実を認めているものだと思っていたのです。
そして実際にマーベラス達は宇宙警察に追われるようなことはしていないという自信はありました。

しかし、そもそも第5話のデカレンジャー篇の時、
宇宙警察地球署の刑事である元デカレッドのバンが極秘調査の結果、
マーベラス一味の逮捕状の根拠となっていた海賊行為の罪状がザンギャックの捏造だと判断し、
無罪放免とした件ですが、
あれはこの「ゴーカイジャー」の物語世界においてはどのように解釈すべきなのでしょうか。

ザンギャックはマーベラス達のことをザンギャック帝国の法を違反している海賊として
賞金首のお尋ね者としており、
マーベラス達も自分達がザンギャックの法を破る海賊であるという自覚は持っています。
ならばマーベラス達はやはり海賊なのであり、海賊行為の罪を犯しているのであり、
ザンギャックの言うマーベラス達の罪状というのは捏造ではないのではないかとも思えます。

しかしバンは宇宙警察の刑事として、ザンギャックの主張するマーベラス達の罪状は捏造だと認定しました。
これはつまり、ザンギャック帝国の罪の判定基準と宇宙警察の罪の判定基準が異なることを示しています。
つまりザンギャック帝国において運用されている法律と宇宙警察において通用している法律は別々なのです。
ザンギャックは宇宙の大部分を制覇しているが、
宇宙全体で犯罪取り締まり活動をしている宇宙警察はザンギャック帝国の支配下にあるわけではなく、
ザンギャックからは独立した存在であるようです。
つまり一種の二重権力のような状態といえます。

日本の中世から近世における朝廷の支配体制と幕府など武士権力の支配体制が共存していた状態を連想すれば
分かりやすいかもしれません。
いや武士権力の体制の中でも、例えば守護大名の領国支配体制は
地侍や国人による惣村の支配体制から勃興してきた戦国大名の領国支配体制に取って変わられていっても、
それでも古い守護大名の支配体制や、それよりも更に古い寺社や朝廷の支配体制も
形骸化しながらも一定の影響力は有しており、そこは戦国大名の支配を逃れた自由民たちの逃げ込む先ともなり、
戦国大名たちはこれら既成権力の抵抗にも意外に手を焼いたりしていました。

このように新しい支配体制が勃興してくる時、
それに先立って存在していた体制が形骸化しつつも影響力は残し、
新たな支配体制から逃れた者たちの避難先となり二重権力構造を形成することというのは、
人の世においてよくあることです。
鎌倉幕府の支配を逃れた「悪党」と呼ばれた者達が古い朝廷や寺社の権力の庇護下に逃げ込み、
その力が結集して鎌倉幕府を倒したこともありました。

ザンギャックと宇宙警察、マーベラスのような海賊たちの関係もこれと似たようなものと考えればいいでしょう。
宇宙警察というのはザンギャックよりも古くから存在している宇宙全域をカバーする秩序維持の体制であり、
新たに勃興して宇宙を制覇したザンギャックも、宇宙警察を解体したり、
自らの支配下に置くことは出来なかったようです。
それだけ宇宙警察には歴史と伝統、実績に基づく権威があり、宇宙の人々にとって心理的な拠り所であったので、
ザンギャックも簡単に手は出せなかったのでしょう。
日本の歴史において、どんな強大な武士権力でも朝廷は潰すことが出来なかったのと同じです。

しかし日本の歴史においてそれほど人々の大事な存在であった朝廷も武士権力に実権を奪われたのと同様、
この物語世界においても古く信頼ある宇宙警察もまた
ザンギャックという新たな権力の勃興を許しているのも事実です。
それは朝廷の制度が古臭くて社会の変化に対応出来なかったのと同様、
宇宙警察の秩序維持体制では宇宙の実情に追いつかなくなっていったのが原因でしょう。
では、宇宙警察のどういうところが宇宙の実情に合わなくなっていったのかというと、
そのヒントとなるのがマーベラス達の海賊行為はザンギャックの捏造であるとした
バンやドギーの判断であると思います。

実際、ザンギャックが宇宙警察に示したマーベラス達の海賊行為の記録は捏造だったのでしょう。
しかし、そもそもどうしてザンギャックは捏造などする必要があったのか?
マーベラス達は第1話ではザンギャック艦隊に向けていきなり先制攻撃を仕掛けて殲滅しており、
それ以前にも宇宙の星々でお宝探しのためにザンギャックの守備隊を多数襲撃して壊滅させてきました。
ルカなどはザンギャック相手専門の義賊とはいえ明らかに泥棒であり、
マーベラスやジョーもルカを出し抜いてザンギャックから金を強奪したこともあります。
というか、基本的にマーベラス一味が宇宙に散らばったレンジャーキーを集めて回ったという行為自体、
厳密に言えば他人のモノを勝手に奪い取ってきた行為の繰り返しであったはずです。

これらのマーベラス一味の行為は普通に考えて社会の秩序を乱す犯罪行為です。
これらの犯罪行為を常とするマーベラス一味が「海賊」と呼ばれるのは当然のことのように思えます。
だからザンギャックはマーベラス達のこれらの過去において現実に行った数々の行為を
そのまま偽りなく列挙していけば宇宙警察にマーベラス達を逮捕させることは簡単であるように思えます。

それなのにザンギャックはわざわざバンの調査で嘘だとバレてしまうような虚偽の罪状をでっちあげた。
それは言い換えれば、現実にマーベラス達が行ってきた「犯罪行為」は
宇宙警察の取り締まり対象ではないということを意味します。
だからザンギャックは第5話の時に邪魔なマーベラス一味を始末するために
宇宙警察が動くに足るような種類の犯罪行為をマーベラス達が冒したかのように捏造した申し立てをして
地球署を動かそうとしたのだが、
ドギーに命じられたバンの調査でマーベラス達が宇宙警察の取り締まり対象となるような罪は
犯していなかったことが判明して、マーベラス達は無罪放免されたのです。

しかしマーベラス達はザンギャック軍を相手に殺人や強盗も含む破壊活動の限りを尽くしており、
その多くには正当防衛の形跡すら無く、おそらく巻き添えを食って一般人の犠牲も出ていると思われます。
これで警察の取り締まり対象でないというのも奇異な印象ですが、
実際のところ、これはそんなに奇異なことではないでしょう。

現代日本の常識に照らすと確かにマーベラス達が警察の逮捕の対象にならないというのは奇異ですが、
一昔前ならばこんなに警察が市民生活の細部にまで干渉して
細かい罪状まで規制して社会秩序を守ってくれるということの方が珍しいといえます。
西部劇の物語世界などを見れば分かるように、
昔の世界では基本的に人々は「自分の身は自分で守る」ものであり、
そこでは大抵のケースでは自分の力で自分や大切なものを守れなかった者は
単に自分が無力だったので悪かったということで諦めるしかないのであり、
暴力で他人を殺して権益を拡大した悪者はそのまま逮捕されることもなくのさばっているのが通例です。
保安官なんていうのはよほどの重罪人しか逮捕しませんで、
そこらの牧場でカウボーイが何者かに殺されたとしても、いちいち捜査なんかしません。

これが無法地帯というものですが、
西部劇の世界の良いところは、そうした悪者を最終的に決闘の末に倒した正義の味方たちもまた、
いちいち警察に逮捕されたりしないところです。
まぁそこには決闘のルールというものは暗黙のうちに存在しているのですが、
細かいことはともかくとして、個人間の暴力的な紛争解決の手段が正当化されている世界といえます。
日本でも明治維新以前には民間の個人間の仇討ちのルールが認められていたのですが、
これもそうした警察に頼らない個人間の暴力の肯定例の一つといえます。

これは悪者が暴力でやりたい放題をしてしまうという問題点もありますが、
その悪者を暴力で倒した場合にもお咎め無しで済むという利点もあります。
まぁ映画などでは正義の味方と悪者は明確に描き分けられているので分かりやすいですが、
現実世界ではこうした個人間の紛争の場合はどっちが正しいのか、大抵はハッキリとはしません。
どちらにもそれなりの正当な言い分があることが多いです。
それで争いにまでなって警察が介入してきて逮捕される羽目になるのは当事者たちにとっては困ったことです。

まぁ客観的に見れば、人が傷ついたり死んだりする事態は良くないので、
それを未然に抑止するためにも過度の暴力行為には警察の介入が有り得るという体制になっていることは
良いことだとは言えます。
現代の文明社会というのはそういう体制なのだといえますが、
これはよほど警察組織が充実していて法の支配が徹底した社会においてのみ成り立つ体制といえます。
現代でもアジアやアフリカの発展途上国の多くでは警察による解決だけでなく
個人間での暴力的解決を暗黙のうちに肯定して、
それによる自然的な社会秩序の維持能力にも頼るしかないのが現状といえます。

それが現代日本のような社会よりも素晴らしいと肯定するつもりはないです。
ただ、そんな社会でも人々はそれなりに機嫌よく暮らしていたりするのも事実です。
そもそも日本だって欧米だって、ちょっと前まではそんな社会で人々はそれなりに楽しく暮らしていたのです。
確かに現代社会の方が優れているのかもしれないし、
現代人には現代社会の方が暮らしやすいのは間違いないでしょう。
だが、昔の個人間の暴力が認められていた時代も決して完全否定されるほどの欠陥社会であったわけではなく、
人の暮らす社会の1つのタイプとして十分にあり得るのだということです。

それに現代のような暴力が警察によって徹底的に規制された社会にも問題点はあります。
それは警察が正しいという前提でこそ真っ当に成立する社会なのであって、
仮に警察が悪に染まっていた場合、暴力を徹底的に規制されて戦う力を奪われた民衆は
一方的に警察権力に抑え込まれて搾取される羽目となります。

現代でも北朝鮮や中国のような独裁国家はそんな社会なのであり、
これらの独裁国家の特徴は「犯罪が少ない」ことですが、
これは実際は警察がまともに仕事をしていないので、
そもそもまともな犯罪の案件自体がまともに取り上げられていないからです。
実際は夥しい犯罪が行われているのが現状なのですが、
警察はむしろ犯罪者と結託して善良な民衆を苦しめている場合が多い。
それは法を犯す犯罪者が権力者と結びついていたり、権力者そのものが犯罪者であったりするからですが、
警察がそんな犯罪者と結託するほどに腐り果てるのは、
やはり警察の力が強くなりすぎて、相対的に一般民衆の暴力が過度に押さえこまれた社会であるからです。

警察による一般人の暴力への規制が行き過ぎると、どうしても警察権力が腐敗して独裁の弊害が出る。
これは1つの真理です。
アメリカなどではこれを過度に嫌って銃規制に根強く反対している人達が多いです。
確かに北朝鮮のような地獄のような管理国家になるぐらいなら
アメリカのような銃社会になる方がまだマシかもしれません。

アメリカ人は国家に過度に管理されるぐらいなら銃を持った隣人に怯えながら自衛する自由を選ぶというわけです。
まぁ実際はアメリカが銃規制したからといって北朝鮮や中国のような社会にはならないでしょう。
逆に北朝鮮や中国が自由になったからといってアメリカや日本のようにもならないでしょう。
実際、改革開放後の中国はむしろどんどん社会情勢が悪化していると思います。
これは文化が違うからであり、もともとの精神性が違うからです。
宗教の問題が絡んでくるとも言えますが、それは本稿とはあまりに関係無いので、まぁいいです。

ここでわざわざ現代社会の事例を出して言いたかったことは、
現代社会のような警察による個人間の紛争への過度の介入は、
そもそも一般民衆に対する警察力のよほどの充実がないと出来ないことであり、
またそれが実現した場合、権力の腐敗や自由の制限、独裁の弊害などに繋がる恐れも孕んだものとなるということです。

だから、人間社会では警察による秩序の一元管理を嫌い、
個人間の紛争解決の余地を求める自然の欲求は存在するのであり、
それが個人間の暴力を肯定するものであっても受け入れる風潮はあります。
ただ一方でそうした無法を嫌い、権力によって悪事を徹底的に取り締まってほしいという想いも民衆には存在します。
特に社会が複雑化して個人間の紛争が多くなってくると、いちいち自分で戦っているヒマは無いですから、
人々は強大な権力によって身のまわりの悪事を取り締まってほしいと思うようになります。
近代文明社会が成立してからそういう傾向は自然に拍車がかかり、
その結果、現代のような管理社会が成立してきたのだと思いますが、
同時にまた高度管理の独裁権力による弊害も生じてきたのだといえます。

それで、本稿との関係で言うと、
ザンギャック帝国が宇宙を支配するに至った「ゴーカイジャー」物語世界における宇宙というのは、
この地球の現実世界の歴史における近代文明社会への移行期の社会に相当する段階なのではないかと思うのです。
そもそも宇宙は広大であり、多くの人々が暮らしていますから、
宇宙警察の要員だけで宇宙の全ての人々の日常の個々人間の紛争を法で縛ることなど出来なかったはずです。
だから宇宙警察は従来、個々の紛争には不介入方針であり、
あくまでマクーのような悪質な組織犯罪活動の取り締まりに特化した組織であったと思われます。

そうなると、その宇宙警察が活動していた宇宙というのは、
個人同士や地域同士、国同士、星同士などの相互の間の紛争は自分の力で解決するのが基本であったのでしょう。
まぁ現在の地球の現実世界でも国同士の紛争を犯罪として取り締まる権限は警察や裁判所にはありません。
戦争というものは国家が紛争を解決する手段として保証されており、
そこで人が死んだとしても、そのことで誰かが罪に問われるということは基本的にはありません。

戦争行為の中で逸脱した残虐行為があった場合は「戦争犯罪」として軍事法廷で罪に問われることはありますが、
線引きが非常に難しく、大抵は敗者の側が見せしめ的に裁かれるだけのことで、
勝者の側の残虐行為などは原爆投下が良い例で、大抵は罪に問われることもありません。
残虐行為程度でもそんな有様ですから、
第一次大戦後や第二次大戦後に戦争そのものを罪として裁こうという気運が起こったものの、
見事に失敗して現在に至るまで戦争による国家同士の殺人や破壊行為は正当な行為として黙認されています。

このようにこの狭い地球ですら国家同士の紛争の自己解決は
戦争という暴力的解決も含めて警察や裁判所の管轄外で黙認されているのですから、
「ゴーカイジャー」物語世界の広大な宇宙では秩序維持はもっと大変でしょうから、
個人間の紛争も含めて全て自己解決が大前提だったのでしょう。
だから宇宙警察は個々の紛争には不介入でそれぞれの自己解決に任せており、
宇宙警察の業務は悪質な犯罪組織の撲滅に限定されていたと思われます。

そもそも個人や地域の間の紛争の処理などは、
宇宙全体を統治する統一政府のようなものがあってこそ可能なのであって、
警察が単独でそこまで首を突っ込むのは越権行為ともいえます。
宇宙警察はもともと国家権力を背景に成立したものではなく有志連合のようなものであったので、
そこまで強大な権限を握ることを自ら望まなかったし、
それは一歩間違えば圧政につながる危険な行為であるとも認識していたので、
個々の紛争への介入はしない方針を貫いたのでしょう。

ただ、そうして宇宙警察によってマクーのような犯罪組織の活動を抑え込むようになって
宇宙が人々の活動で活気づくようになってくると、個々の紛争も増加し激しくなっていきました。
そうなると個々の紛争をいちいち自分で解決するのが面倒臭くなってきた人々は、
個々の紛争に不介入方針を貫く宇宙警察に飽き足りなくなり、
強大な力で個々の紛争を解決してくれる宇宙をカバーする新たな統治権力を求めるようになったのでした。

その結果、宇宙の人々は新たに勃興してきたザンギャック帝国にその統治権力としての役割を求め、
ザンギャックもそれに応える形で勢力を伸ばしてきたのでしょう。
ただ、もともと邪悪な性格を持ったザンギャック帝国は強大な権力を得ると腐敗し、
独裁の弊害は宇宙を覆い、虐げられる人も多くなりました。
ただ、それでも紛争の自己解決の気概を失った人々の多くはザンギャックの支配を受け入れ、
ザンギャックに取り入って上手く生きていく者もいたのでしょう。
だからこそザンギャック帝国の宇宙支配は成り立っているといえます。
正義や自由よりも人々は利便性や効率を重んじて、
悪に迎合して弱き者を見捨てることで繁栄を享受するようになったのです。

そうして成立したザンギャックの支配する世界ではザンギャックの法が施行されて、
人々はザンギャックの官憲によって日常の細かな行動まで刑罰でもって管理されていったのです。
個々の紛争を自力で解決することは禁じられ、ザンギャックの司法が全てを解決してくれるのであり、
紛争解決のために暴力を振るえば逮捕され刑罰を受けます。
つまり人々は紛争の自己解決の手間から解放されて
ザンギャックの官憲に頼って生きることが出来るようになったのであり、
そうしたザンギャック社会から見れば、かつての宇宙警察の作っていた秩序などは
古臭くて不完全なものに見えたことでしょう。

しかしその反面、ザンギャック帝国では官憲は唯一の暴力装置として強大な権限を持つようになり、
汚職や腐敗も横行するようになり、公平な裁きも行われなくなったのです。
ザンギャックの統治階級と要領よく結びついたものは甘い汁を吸う反面、
それと紛争を起こした側は不公平な扱いを受けて社会的に葬られることも多々あり、
ザンギャックの統治階級そのものに狙われた者などは
酷い目に遭わされても全く救済されることもない状態となりました。

そうして理不尽に仕事を奪われ、家を奪われ、家族や仲間を奪われ、果ては星を滅ぼされたりした者たちは
辛うじて生きながらえても何の救済もされることもなく、
ザンギャック帝国の社会の最下層で蠢くしかない人生を送ることになりました。
マーベラス、ジョー、ルカ、ハカセ、アイムの5人は皆そういう人生を送ってきた者達の1人であったのです。

この5人以外にも多くの人々がザンギャック支配下で虐げられて、ザンギャックの支配から逃れようとしました。
そうした人々はザンギャックの法を受け入れることをやめて、
ザンギャック帝国の支配が及ぶ前の生き方を回復させようとしました。
それはつまり、宇宙警察が作っていた緩やかな秩序体制であり、
自分の身は自分で守り、自分の絡んだ紛争は自力で解決するのが当然の世界でした。

そうした世界は滅び去ったわけではなく、
ザンギャックの庇護を離れて宇宙の大海原に逃れれば、その外に依然として広がっていたのです。
宇宙警察も依然として健在であり、そうした緩やかな秩序体制の中で
以前と変わらず悪質な組織犯罪に対する取り締まり活動をしていました。
ただ、宇宙の多数派の人々は宇宙警察には背を向けてザンギャックの支配体制を受け入れており、
宇宙警察としてもザンギャック帝国内のザンギャックの独自の法による支配体制の中の出来事に
口を出すことは出来ない状態でした。
もともと宇宙警察がカバーしようとしていなかった分野をカバーするために新たに作られたのが
ザンギャックの法である以上、宇宙警察の権限でザンギャックの法を左右することなど出来るはずがないからです。

だから宇宙警察はザンギャック帝国内でかなり非人道的な行為が行われていることは承知していたが、
それはあくまでザンギャックの司法判断でザンギャックの法に照らして正当なことだと解釈されている以上、
宇宙警察としては手を出すことは出来ず傍観するしかなかったのでしょう。
しかし同時にザンギャックの支配を逃れて宇宙の大海原に飛び出した者達が
ザンギャックと私的に紛争を繰り広げる行為に対しても宇宙警察はそれを個々人間の紛争として扱い
不介入方針を貫いたので、彼らザンギャックから逃れた者達を犯罪者として扱うこともありませんでした。

彼らは宇宙の大海原を誰の庇護も受けずに自己責任で生きていく道を選んだ者達であり、
かつてザンギャック帝国成立前は宇宙を航行する民は皆そのように生きていました。
ザンギャック帝国成立後は彼らのような生き方をする民の方が少数派となりましたが、
いわば彼らは「ザンギャック公民」に対比して「自由民」とでも呼ばれるべき存在だったといえます。

しかし帝国の支配下の民がその支配を勝手に脱すること自体がザンギャック帝国の法においては罪であったので、
ザンギャック政府は彼らを犯罪者として扱い、不法に宇宙を航行する「宇宙海賊」と呼びました。
つまりザンギャックから見れば帝国の支配から離脱して勝手に宇宙を航行する者が「海賊」なのであり、
それだけでも犯罪者として扱うべき存在であったといえます。
ただ、それはあくまでザンギャックの法における定義であって、
そもそも彼ら「海賊=自由民」たちはザンギャックの法に従う意思を持っていないのですから、
結局はザンギャックは彼ら海賊たちを捕えるためには戦って勝つしかない。

そうして宇宙の大海原ではザンギャックの官憲と海賊たちの紛争が頻発することとなり、
官憲側から見ればそれは不心得者の臣民を懲罰しているということになるのですが、
客観的に見ればザンギャックと海賊一味のそれぞれの利害の衝突する紛争ということになります。
宇宙警察から見ればそういうことになり、それゆえ宇宙警察はそれに不介入方針ですから、
海賊がザンギャックに殺されても、逆に海賊がザンギャック官憲を殺しても、
それらを取り締まり対象とはせず放置してきました。

そもそも宇宙警察から見れば、
もともと彼らのような「自由民」たちは「海賊」と見なすようなものではなかったのです。
もともと宇宙には彼らのように自己責任で自己の力で紛争を解決するような者達しかいなかったからです。
宇宙警察の法による犯罪者としての「海賊」の定義は、
もっと悪質かつ大規模なマフィアのような犯罪組織の構成員が船団を組んで
宇宙で活動しているような者達のことでした。

むしろ、そうした宇宙警察における「海賊」の定義に合せて、
ザンギャックは彼らの支配を脱した自由民たちを犯罪者扱いするために「海賊」という汚名を被せたのだといえます。
つまり、本当はザンギャックの圧政の犠牲者であり難民であったに過ぎない者達が
帝国に反逆して脱走したに過ぎないのですが、
ザンギャックの官憲は彼らをまるでマフィアの一員であるかのように濡れ衣を着せて悪質な犯罪者として扱い、
宇宙警察にもそのように告発したのです。

彼らが「海賊」と呼ばれたのはそういうわけだったのであり、
ザンギャックは宇宙警察にも彼ら自由民たちがマフィアの手先であるかのように捏造した被害届を出して、
宇宙警察にも追われる身としたのです。
マーベラス一味もザンギャックによってそうした濡れ衣を被せられて宇宙警察に告発されていたのであり、
第5話でジャスミンがマーベラスを逮捕する際に言っていた「諸々の海賊行為」というのは、
別にザンギャック兵との抗争の事実のことを指していたわけではなく、
ザンギャックから告発されていたマーベラス達のマフィアの手先としての組織犯罪への関与疑惑のことを
指していたわけです。

そして、それはバンの極秘調査の結果、
ザンギャックによる全くの捏造であり、マーベラス一味はマフィアとの関与など全く無く、
宇宙警察の取り締まり対象ではなかったことが判明し、
無罪放免となったというのが第5話の顛末であったのです。

もちろんバンは調査の過程でマーベラス達がザンギャックの施設を襲撃して
殺人や窃盗などを繰り返してきたことも確認したわけですが、
宇宙警察の法においては無法地帯である宇宙の大海原ではそれらの行為は
紛争の自己解決手段なのであり犯罪としては扱わないので、特に咎めることもしなかったのでしょう。

仮にもヒーローであるバンやドギー達がマーベラス達の殺人などの事実を知りながら放置したというのは
一見奇異ではありますが、
そもそもバン達も宇宙刑事として合法的に殺人を実行してきた立場であり、
その法が解決手段として適用されていない宇宙における個々の紛争において
宇宙刑事が殺人によって事態の解決を図ることを放棄している以上、
誰か別人、この場合はその紛争の当事者が殺人を犯してでも事態の解決を図るしかないのは当然です。
だからバンとマーベラスは基本的に同じことをしているのであり、
バンがマーベラスを非難する資格は無いといえます。

もちろんバンは自分の利害のために殺人を犯しているわけではなく、
公平な立場で公務を執行して社会正義を実現しているのであり、
それに比べてマーベラスはあくまで自分の利害のために殺人や窃盗を行っているのですから、
どっちが立派なのかといえば宇宙刑事であるバンの方がマーベラスよりもよほど立派だとはいえます。
しかし、そのバンの立派さはあくまで宇宙警察の法の適用される事案に限定された話であり、
例えばザンギャックとマーベラス一味の抗争において宇宙警察が割って入って公正な裁きをして
宇宙刑事によって正義を執行してくれるのならばマーベラスだって殺人や窃盗は犯さなくて済むのかもしれないが、
実際は宇宙警察はザンギャックと海賊の抗争には不介入なのだから
マーベラスは自分の手で自分の利益を守るために戦うしかないのであり、
マーベラスをそういう殺人者の立場に追い込んでいる責任の一端は宇宙警察にもあり、
バンやドギーのような宇宙刑事がマーベラス達のザンギャックとの抗争における自分の利益を守るための
殺人行為などを非難する資格は無いといえましょう。

ただ、別にマーベラス達は自分達の殺人や窃盗行為が立派だなどとは思っていないでしょう。
彼らも基本的には人間として殺人や窃盗という行為が正しい行為だとは思っていません。
実際あんまり気分のいいものでもないでしょう。
ただ生きていくため、自分の利益を守るため、自分の想いを遂げるためには
やらなければ仕方ないのだと割り切っているだけのことです。
そうして割り切らねば生きていけないのが彼らにとっての宇宙の現実なのだといえます。

彼らはもともとザンギャック帝国の支配下に暮らしていましたが、最初から帝国内では排斥された立場でした。
マーベラスもジョーもルカも幼少時に生まれ故郷の星をザンギャックに滅ぼされた難民の子であったようです。
マーベラスはチンピラのようにして暮らし、ジョーはザンギャック兵士の養成所に引き取られ、
ルカはスラムで迫害を受けながら戦災孤児たちの世話をして暮らし、
つまり3人とも最初からまともな市民として生きていたわけではない。
一種の帝国によって見捨てられた棄民といえます。

マーベラスは順調にアウトローになったようで、ジョーはザンギャック軍の実態に絶望して脱走し、
ルカは戦災孤児たちを救済する夢を叶えるために盗賊に身を落とし、
要するにこの3人は海賊一味に加入する以前からザンギャックの法に反逆した犯罪者であったのです。
ジョーもルカも犯罪者としてザンギャックに追われる立場となったため、
マーベラスの誘いを受けてザンギャックの法の外に生きる存在である海賊になったのだといえます。

ハカセは成長するまではザンギャック帝国の支配領域にある星でそれなりにまともな暮らしを送っていたようですが、
結局は故郷の星をザンギャックに滅ぼされて難民となり、
ザンギャックによって捨てられた民のうちの1人となり、
流れ着いた星で便利屋をしている時に出会ったマーベラス達を手助けしたために
ザンギャックに追われる犯罪者となり、マーベラスに誘われて海賊の仲間となりました。
アイムはファミーユ星の王女でしたが、ファミーユ星はザンギャックに滅ぼされて、
アイムは罪人として追われる立場となり、亡命先で出会ったマーベラス一味に自ら志願して仲間入りしました。
つまりハカセもアイムもザンギャックの法を破った犯罪者として追われる立場となって、
その結果、ザンギャックの法の外にあるアウトロー集団である海賊の仲間入りをしたことになります。

実際、海賊というのはそういう連中が多いのでしょう。
その罪状というのは宇宙警察の法においては確かに罪には問われないものなのかもしれないが、
ザンギャックの法においては確かに犯罪です。
そしてマーベラス一味の5人はザンギャック帝国内で生まれ育ったわけですから、
ザンギャックの法しか知りません。
だからザンギャックの法を違反して罪に問われた自分は犯罪者だという自覚は持っています。

自分達が邪な心で間違ったことをしたなどとは決して思っていませんが、
世間から見れば自分達はアウトローなのだという自覚はあるわけです。
「本当は自分達は海賊や犯罪者などではなく自由民と呼ぶべき存在だ」などという
宇宙の歴史に照らした高尚な思想などは全くありません。
アウトローは所詮はアウトローであり、自分達は社会から弾き出されたお尋ね者だという
コンプレックスはしっかりあるのです。

そういうアウトロー達が掃き溜めのように集まった場所が海賊団といものなのだということも彼らは知っています。
ならば彼らは自分達が海賊であることを誇ることなど出来ないはずです。
彼らは「海賊」という呼称が本来は宇宙警察で言うマフィアの一味の船乗り達という意味であり、
帝国を脱走した船乗りたちを「海賊」と悪しざまに呼ぶザンギャックの呼称自体が
不当なものであるという事実などは知りません。
彼らはあくまでザンギャックに押し付けられた常識しか知りませんから
「海賊」はあくまで「海賊」なのであり、彼らは犯罪者集団なのだという漠然とした印象を持っています。
そして実際に海賊一味の中にはもともとザンギャックの法を犯した犯罪者が多く、
もともとそういう者達は決して品の良い連中ではなくロクデナシが多かったのも事実です。

だからマーベラス一味の5人は「海賊」というものに良いイメージは本来持てないはずです。
実際、TV本編の通常回のオープニングナレーションでも「海賊の汚名」と言及されているように、
マーベラス達も「海賊」が汚名であるという認識は持っています。
「海賊」であること自体は決して誇らしいことではなく、
あくまで犯罪者の汚名なのだという認識はマーベラス達も持っているのです。

ところがそのナレーションでは
「海賊の汚名を誇りとして名乗るとんでもない奴ら」というようにマーベラス一味は紹介されています。
マーベラス達は海賊が犯罪者の汚名と認識しながら、それを誇りとして名乗っているのです。
そして、それはとんでもないこと、つまり稀有なことなのであって、
マーベラス達も海賊がみんな自分達のようにその汚名を誇りとして名乗るべきだと見なしているわけではないのです。
いや、海賊とは本来はみんな自分達のように誇り高くあるべきだとは思っているのかもしれませんが、
現実には決してそうではないことも分かっています。
そんな現実の中で自分達はある種、特別な海賊なのだと思っており、
だからこそマーベラス一味は「海賊の汚名を誇りとして名乗る」ことが出来るのだといえます。

ではマーベラス一味の何が他の現実の海賊と違うのかというと、
マーベラス一味の連中はアウトローが行き場を無くして仕方なく掃き溜めのように集まったのではなく、
あくまで夢を叶えるために集まったという自負があるという点です。
これが彼らの誇りの源だといえます。

彼らはみなザンギャック支配下では夢を断たれた者達であり、
夢を断たれたのは彼らだけではない。
数多くの人々がザンギャック支配下では無残な形で夢を断たれてきたのを彼らは目撃してきました。
彼らから見ればザンギャック帝国は人々が夢を見ることを許さない支配体制でした。
実際彼らはザンギャックの意向に反して自分の夢を掴もうとして罪に問われる羽目となりました。

そんな彼らがあくまで夢を掴むためには海賊になるしかなかった。
夢を掴むことが罪だとするならば、
なるほど確かにザンギャックから見れば
マーベラス一味は夢を掴むために集まった仲間であるゆえに犯罪者だといえます。
ならばその海賊という犯罪者としての汚名、むしろ夢を追う者として誇りをもって名乗ってやろう。
そうしたマーベラス一味の反骨精神が通常回のオープニングナレーションの真意といえましょう。

だから彼らは自分達が海賊であることに誇りを持っています。
しかしそれはあくまでマーベラス一味という「夢を掴むために集まった稀有なる海賊」に限った話であり、
マーベラス達が海賊全般に誇りを持っているわけではなく、
一般的には海賊というものは誇るべき存在ではなく、
世間からは単なるアウトロー集団だと思われているということも分かっています。

また、マーベラス一味が夢を掴むために集まった特別な海賊だということは仲間内の限定的な了解事項に過ぎず、
世間一般から見れば自分達も他の海賊同様、単なるアウトロー集団として扱われるのだということも
マーベラス達は自覚しています。

そもそも「夢を掴むために集まった」ということを誇りには思っているといっても、
それはあくまで夢を掴みたいという自分の中から湧き上がる想いに忠実であることに誇りを感じているに過ぎず、
世間に対して誇れるようなことだとはマーベラス達も思っていません。
夢を掴むといってもあくまで自分達の身勝手な欲望に過ぎないという謙虚な気持ちはあります。

誇りといっても内心のものであって、他人に対して驕る気持ちなどはありません。
自分達が聖人君子だなどとは思っていませんし、
むしろアイムを除いては大して育ちも良くない彼らは自分達のことを
世間的にはロクデナシの一種であり、不良集団だと思っています。
間違っても立派な集団だなどとは思っていません。

夢といっても自己の欲望を叶えようとしているだけのことであり、
世間にはそんな自分達よりももっと立派な人達も存在していることはマーベラス達も分かっています。
それは自己の欲望よりも公共の利益を第一に考えて献身的に行動するような人達です。
医者や教師や福祉に携わるような人達の全てがそうだとは言いませんが、
そういう仕事をしている人の中には確かにそういう人達がいます。
そんな人たちの方が自分達よりもよほど立派だとマーベラス達も分かっています。

立派だと分かっていてどうしてそういう生き方をしないのかという意見もあるでしょうが、
人生とはままならないものであり、例えば十分な教育を受ける機会なども無かったであろうし
彼らは彼らの人生の与えられた条件の中で懸命に生きて
結局は自分の夢を掴むために戦う道を選ぶことになった、そういう運命だったのだと言うしかありません。

ただ、そんな彼らでも夢を追う海賊である自分達よりも
公共のために献身する立派な人達が存在することは分かっています。
腐敗しきったザンギャックの官憲などは論外としても、
宇宙警察の刑事たちなどはマーベラス達から見ても尊敬すべき立派な存在だったとはいえます。

第5話でもマーベラス達は宇宙警察地球署の刑事たちに対して敵意は見せておらず、
それなりの敬意を払っていました。
ただドギー達が事実誤認に基づいてマーベラス達を逮捕しようとしていたので
マーベラス達が感情的に反発して衝突していただけです。
そうした衝突さえなければ、決してマーベラス達の方から宇宙警察に敵意を示すことはなく、
むしろ敬意を抱いているように見えました。

ただ、かといってマーベラス達が宇宙警察に対して好意を示していたようにも見えませんでした。
このあたり、どうも屈折した心理があるようで、
マーベラス達自身は宇宙警察に対して内心それなりに敬意を払っている一方、
マーベラス達はどうせ自分達のようなアウトローのことを
宇宙警察は嫌っているのだろうと卑下しているように見受けられます。
実際に世間で冷たい視線に晒され続けてきた彼らからすれば、
宇宙のエリート集団である宇宙警察の刑事たちから見れば
自分たち宇宙海賊などはくだらない連中だと思われているのだろうというコンプレックスはあるようです。

ただ裏社会に身を置く彼らとしては、
一応自分達の行為が宇宙警察の法における取り締まり対象である
「海賊行為」には相当しないということは把握しています。
だから敵対的関係でないことは分かっているのですが、
それでもエリートと底辺、法の執行者とアウトローというように、
あまりに対極にある両者は「所詮は住む世界が違う」とマーベラス達は冷めた認識であるようです。

だから第5話でザンギャックに被せられた濡れ衣に基づいてドギー達に逮捕されそうになった時、
マーベラス達は所詮は宇宙刑事などは自分達のことを理解しようともしないのだと思い
怒りを感じて反発したのですが、
実はドギーがバンに命じて真相を調べてくれていたことを知り、
濡れ衣を晴らしてもらって、宇宙警察と分かり合うことが出来たように思って嬉しく思ったのでした。

ところが今回、また別の宇宙刑事が宇宙警察から派遣されてきて
「海賊行為」の容疑で自分達を逮捕するというのですから、マーベラス達は驚き、非常に不快に感じました。
地球署が自分達の濡れ衣を晴らしてくれたはずなのに、
どういうわけでまた宇宙警察で自分達が罪人扱いになったのか、マーベラス達にはよく事情は分かりませんでしたが、
おそらく再度ザンギャックが自分達がマフィアの手先だとか何だとかいう捏造の告発をして、
よく調べもせずに宇宙警察本部がそれを鵜呑みにして、
このギャバンとかいう宇宙刑事を派遣したのだろうと思いました。

そう考えると、やはり宇宙警察はデカレンジャーの地球署はともかくとして、
やはり海賊のことなど基本的に見下しており、
社会の底辺の海賊の言い分など聞く耳も持たずにザンギャックの言い分の方を一方的に信じてしまうような
鼻持ちならないエリート集団なのだと思えてきて、マーベラス達は非常に不愉快に思えたのでした。

アイムやハカセの抗議を受けても
それに全く反応することもなく無言で階段を降りてくる銀色のコンバットスーツに身を包んだギャバンの姿を見て、
海賊の言い分など聞く必要も無いという傲慢な態度を見てとって、
マーベラス達5人の顔色は変わり、心の底から怒りが湧き上がってきました。

呆れたように「・・・問答無用ってわけか・・・」と呟きながら
ジョーが一歩前に出てマーベラスに並びギャバンを睨みつけ、
マーベラスは所詮は自分達は宇宙の嫌われ者のアウトローなんだという諦念を込めたふてぶてしい表情で
顔を歪めて軽く冷笑しながら、黙ってレンジャーキーを取出し、
モバイレーツを開くとレンジャーキーを突き出して「豪快チェンジ!!」とコールしました。
同時に他の4人も同じようにモバイレーツを構えてレンジャーキーを突き出し
「豪快チェンジ!!」とコールし、5人は一斉にゴーカイジャーの姿に変身します。

とにかく自分達は宇宙警察に逮捕されるような罪は犯していない。
一点の曇りも無い人生とは言い難いことは自覚しているものの、
ザンギャックのデッチ上げた罪状などで捕まるのは真っ平御免です。
相手の宇宙刑事が問答無用で自分達を逮捕するというのなら、戦ってでもこの場を切り抜けるしかない。
それにこの分からず屋の宇宙刑事に宇宙の底辺と見下される宇宙海賊の気概というものを見せつけて
思い知らせてやりたいという想いもマーベラス達にはありました。
これに対してギャバンは「ジュオオウッ!」と特徴的な掛け声を上げて大きくジャンプして、
突進してくるマーベラス達5人の中に飛び込んで、
たった1人でゴーカイジャー5人に対して真っ向勝負を挑み、両者は乱戦に突入していったのでした。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 07:22 | Comment(1) | 海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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