2011年01月05日

ブルードルフィン

ブルードルフィン.jpg






















1988年の「超獣戦隊ライブマン」はバトルフィーバーJから数えてシリーズ10作品目であったので
「戦隊シリーズ10周年記念作品」として作られました。
この頃はまだゴレンジャーとジャッカーはシリーズ作品には含んでいませんでしたので。

それで記念作品ということで、例年は無名に近い俳優をキャスティングするのですが、この作品に限っては奮発して有名な俳優を戦隊メンバーにキャスティングしようということになり
当時既に俳優としてテレビや映画で活躍していた嶋大輔をレッドファルコン役、当時売れっ子アイドルで俳優としても評価の高かった森恵をブルードルフィン役に起用しました。
ちなみにイエローライオン役には後に有名になる西村和彦が起用されていますが、この当時は無名の新人俳優でした。ただ、後に売れたことを考えると、他の有名な2人と張り合えるだけの実力があると見込まれての起用だったと思われます。

ライブマンはこの3人による3人戦隊としてスタートしました。
3人戦隊はサンバルカン以来で、スーツカラーもサンバルカンの時と同じ赤青黄の三色で、それぞれ陸海空の動物をモチーフにしている点も同じです。
どうして3人戦隊にしたのかというと、嶋大輔や森恵クラスの俳優を5人分揃えるのはさすがに予算的に厳しく、
嶋や森を他の無名俳優の中に混ぜて5人のうちの1人として扱うのは難しかったからでしょう。
5人いれば、嶋や森のメイン回が5回に1回しかなくなりますし、もし逆に嶋や森のメイン回ばかりが多くなると視聴者から見て不自然に見えるでしょう。
だから3人戦隊の方が無難だったのです。それに3人の方が一人一人のストーリーを緻密に描けますので、彼らの演技力も無駄なく活かせます。

3人戦隊にすることでストーリーは散漫にならず、より深く緻密に描けます。
もともと10周年ということで最高の物語を描こうとスタッフも気合いが入っており、3人とも演技力が抜群なので、これまでで最高に物語は深みのあるものになりました。
もともとフラッシュマンから大人の視聴にも耐えられるストーリーを描こうという方向性が進展しており、このライブマンでその風潮は最高潮に達したといえます。

ライブマンはSF的な設定の青春ドラマと言っていいでしょう。
世界中の天才が集まる科学アカデミアで宇宙開発用スーツの研究をしていた5人の若者が同じアカデミアの3人の優等生の裏切りによって2人を殺されます。
優等生3人は姿を消し、残された3人は研究を続行し、そして2年後、姿を消していた3人の優等生はボルトという組織の幹部となって現れアカデミアを襲撃し壊滅させる。
ボルトというのは選ばれた天才の頭脳によって地球を支配しようという狂信的な集団です。
しかし2年前の事件以降、この日が来ることを予期して宇宙開発用スーツの研究をしていた3人は
アカデミアの校長の支援を受けて研究を進展させてボルトと戦うための装備やマシンの開発をしていたのです。
この残された3人というのが天宮勇介、大原丈、岬めぐみの3人で、実はボルトの幹部になった裏切り者の優等生3人はかつて彼らの親友でした。
勇介と丈とめぐみの3人はライブマンとなってボルトと戦うのですが、その目的は地球の生命を守ることであると同時に、かつての親友3人を改心させて救い出すことでもあるのです。
このように競争社会の中で己の能力に溺れて道を誤った友と戦わねばならない若者達の苦難の青春と心の葛藤が描かれており、これはもうシンプルな勧善懲悪のヒーロードラマの範疇を超えていると言っていいでしょう。
青春と愛の挫折と苦悩を描く「大映ドラマ」的路線の集大成的作品といっていいでしょう。

この3人戦隊ライブマンの紅一点がブルードルフィン、岬めぐみです。ブルーヒロイン第一号です。
バイオマン以降、ずっとダブルヒロイン制が続いていたのですが、3人戦隊となるとダブルヒロインというわけにはいきませんから、久しぶりに1人ヒロインということになりました。
しかし、ここまで何年間もヒロインは2人で役割を分担し合ってきており、ダブルヒロイン制とすることでヒロイン総体としての役割は肥大化してきたわけですから、
1人ヒロインとなると、その肥大化した2人分の役割を1人でこなさないといけなくなります。
つまり「強いヒロイン」と「弱いヒロイン」の両方の要素を兼ね備えなければならなくなります。
強く、優しく、美しく、母性に溢れ、明るく、知的で、しかも弱さも併せ持たねばいけません。
これほど多彩な要素を1人で表現することは普通は不可能かと思われますが、岬めぐみを演じた森恵さんは一種の天才で、これをやってのけてしまったのです。

scan12-2.jpgアイドルではありましたが、森さんは極めて運動神経が発達しており、さすがにJACレベルのアクションは無理でしたが、かなりアクションが上手でした。また、弓矢のヒロインでもあり、その分、アクションの見栄え補正も可能でした。
アクションのレベルが高いというより、とにかく器用なので上手く見せてしまうという方が正確かもしれません。演技の才能がとにかく高かったわけです。
そういう演技の天才ですから、他のヒロインの要素も全部演じ切ってしまいました。
知性という面では、めぐみの設定がアカデミアのトップクラスの秀才という設定だったのですが、森さん自身がもともと知性派アイドルで通っていましたのでイメージもピッタリでした。
そして美人なのは言うまでもありません。

しかも岬めぐみはそれだけに止まらないスーパーヒロインでした。
ライブマンは初めてメンバーが対等な関係であった戦隊だといえます。
つまり、それまでの戦隊は全て、レッド戦士をはじめとした男性戦士がだいたい年長者で、女性戦士が年下であり、もともと持っている能力も総合的に男性のリーダー格の戦士が突出した感じであることが多かったのです。
そういうレッドのリーダーが引っ張り、他のメンバー、特に女性メンバーはそれについて行くという感じでした。
ところが、このライブマンの場合、勇介や丈はめぐみよりも1〜2歳年長で戦闘能力もやや優れており、頭だってアカデミアの生徒だったのでもちろん悪くはないのですが、それでもアカデミアの全生徒中、成績はビリとビリから2番目という有様でした。
それに対してめぐみは常にトップクラスの成績で、実際ライブマンの装備やマシンなどもめぐみがほとんど作ったようなものでした。
年齢がやや下だといってもアカデミアでは年齢など関係無く皆生徒は対等な関係でしたので、成績トップクラスのめぐみに成績ドンケツの勇介や丈は頭が上がりません。
腕っ節には自信のあった男性陣2人でしたが、その分を差し引いても、3人は対等な関係であったといえます。
しかも初期の勇介や丈はかなりいい加減な性格であったので、めぐみに叱られてばかりでした。
だいたい、敵は元成績トップクラスの秀才たちですから、ライブマン側もどうしてもめぐみの頭脳が頼りになります。
そういうわけで、実質的にはめぐみがライブマンのリーダーのようなものでした。

どうして勇介や丈を劣等生という設定にしたのかというと、変に完璧な秀才よりも、不完全な人間として描く方が、より彼らの苦悩や葛藤を視聴者の身近なものとして描けるという狙いでした。
つまり、嶋や西村の演技力に大いに期待してそのような設定にしたのであり、非常に美味しい役であったのです。当然、彼らは悩みつつ成長していき、その成長の過程が感動的に描かれます。
その男性陣2人の美味しい設定を成立させるために、めぐみはスーパーレディとして描くしかなかったといえます。
3人とも劣等生でも後のハリケンジャーのように物語は成立しますが、どうしてもギャグ色が強くなるので、
物語を締める意味でもめぐみは優等生であった方がよかったのです。

このように岬めぐみは一種、特別な扱いのヒロインでした。
80年代戦隊で特に印象的な別格扱いのヒロインといえば桃園ミキ、立花レイ、渚さやかであろうが、
岬めぐみの場合、彼女たちのように印象とか魅力とかという要素ではなく、もっとストレートに能力的、役割的に明らかに別格という感じがします。
「シリーズ歴代最強ヒロイン」という称号も一部で贈られているようです。

森恵さんはこの岬めぐみというヒロインを見事に演じきり
岬めぐみというキャラはライブマンという物語の中で見事にその役割を果たしました。
しかし、だからといってライブマンおよび岬めぐみというキャラが大成功だったのかというと、それは商業的には微妙です。

3人しか戦隊メンバーがおらず、男性2人が女性リーダーの尻に敷かれて、しかもストーリーは敵となったかつての友との戦いに苦悩し、やるせなさに満ちたものです。
おそらくストーリーは戦隊シリーズ史上最も深くて感動的なのですが、ハッキリ言って子供には理解困難です。
子供視聴者、特にメイン視聴者である男児は、悪いヤツはスッパリとやっつけて欲しいのです。いちいち悩んでるヒーローや、敵と和解しようとするヒーローなど、あまりカッコいいと思わないのです。
しかも人数も少ないし、ストーリーの深みなどあまり興味無い子供から見てハッキリ言って地味でした。
フラッシュマンから始まった大人向けの重厚なストーリー重視路線もライブマンで3年目となり、とうとう男児の戦隊離れ現象が起きてしまいました。
ライブマンは開始早々、視聴率は低迷し玩具売上も振るいませんでした。10周年ということで気合いを入れて作ったのですが、気合いが入り過ぎて子供がついていけなくなったといえます。

そこでテコ入れが決まり、中盤から戦士を2人追加して5人戦隊とし、この2人は最初に殺された2人の学友の弟たちで、自分の兄や姉を殺してボルトに走った3人の秀才たちに復讐するためにライブマンに加入します。
こういうキャラの方が男児は感情移入しやすいです。自分の友を殺した友と和解しようとする初期3人よりも、自分の兄を殺したヤツを倒そうとする追加2人の方が分かりやすいです。
で、この追加2人と初期3人とで意見が食い違うのですが、これをまとめていく新しいリーダーとして勇介が頑張るのです。
別にめぐみがまとめていってもいいのですが、やはり男性リーダーの方が男児の受けが良く、勇介も成長したということで、実質的に勇介がリーダーになります。
それに合わせて、めぐみは勇介の参謀的な位置に身を引きます。まぁそれでもかなりスーパーヒロインではあるのですが。

つまり、普通の戦隊っぽくなったのです。ストーリーもやや子供向けになりました。ただ、相変わらず重厚な部分は残っており、やるせない展開も多く、終盤には思いっきり鬱展開になっていったので、あまり視聴率は大きくは回復せず、終わってみれば、この時点でのシリーズ歴代最低の平均視聴率を叩き出した作品となってしまいました。
まぁストーリーや演技など、内容的には間違いなくシリーズ屈指の名作なんですけど。

ただ、玩具に関しては、2人の追加戦士の登場に合わせて登場した2号ロボを初期3人の乗る1号ロボに合体させるという秘策「スーパー合体ロボ」が大成功して、これがバカ売れしたので、売上は回復しました。
ロボットにロボットを合体させて別の形の巨大ロボットにするというアイデアは斬新だったのです。
これでなんとかライブマンという作品の面目は保たれました。
そしてスーパー合体ロボはシリーズの定番となっていくのです。

なお、ライブマンという作品の極めて特徴的な点は、敵組織のボルトが明確に人間の組織だという点です。
まぁ怪人は作られた生物兵器で戦闘員はロボットなのだが、幹部は人間がほとんどを占めている。というより、元人間で、自ら志願して改造人間化したような連中だが。
しかしとにかく彼らは人間で、地球や人類を滅ぼそうとしているわけではない。ただ単に天才の自分達こそ世界を支配すべきだという狂信にとりつかれているだけで、それに反対する者や邪魔する者は抹殺すべきだと思っている。
だいたい戦隊シリーズの敵組織は人類社会の外部からの脅威、つまり人類とは異質な存在であることが多く、ライブマンの前もダイナマン以降はそういう敵が続いていました。
だから人類の想像を超えるほどの強大な力を持っており、戦隊側もそれに対抗するためにアースフォースやらフラッシュ星の超科学など、人類外の力を使ってきたのです。そして敵を倒す際にも何の躊躇いも持つ必要も無く、勝利を素直に喜びました。
しかしライブマンの敵ボルトは人間の組織ですから、その強さも信じられないほどのレベルというわけではなく、よってライブマン側もアカデミアの総力を結集した叡智で対抗出来たのです。というか、そういう設定で不自然ではなかった。
その反面、相手も同じ人間で、単に道を誤っただけで、しかも元は幹部3人は親友なのですから、本当は殺したくない。改心させたいわけです。だから戦いは悲壮なものとなり、必死で説得を重ねます。
結局、説得を聞き入れて1人は戻ってきますが改造手術や戦いの後遺症で記憶を失い、あとの2人は死にます。しかしライブマンが殺すのではなく、ボルト内部の粛清や実験材料になったりして死ぬのであり、ライブマンが手を下さないよう配慮されています。
諸悪の根源はボルトの支配者である大教授ビアスという男なのですが、岬めぐみはこのビアスすら救おうとして必死で説得を続けます。
しかし結局ビアスは説得を聞き入れず、自滅して果てます。
この終盤のあたりは非常に暗い展開で、ライブマン側は勝利しても彼らを救えなかったわけで、とても喜ぶというわけにはいかず、非常にほろ苦い結末となります。
実はバイオマンの敵首領とフラッシュマンの敵司令官も実は人間でしたが、これらも倒した際にはかなりほろ苦い描写となり、敵を倒して喜ぶという分かりやすい結末とはなりませんでした。
敵側も一瞬、良心に目覚めかけたりもするのですが、もう行くところまで行ってしまってるので戻ることは出来ないのであって、哀しい最期となります。
このように、敵が人間であったり元人間であったりすると、物語としては深みが出るのですが、あまりスカッとした終わり方になりません。こういうのは男児はあんまり好きではありません。悪いヤツをやっつけて心の底から笑って終わりたいのです。しかし人間の死を前にして戦隊メンバーが笑うわけにもいかないので、これも仕方ないことなのです。
タグ:ライブマン
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 15:41 | Comment(0) | 戦隊ヒロイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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