2011年01月10日

不思議コメディーシリーズ

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「ファイブマン」でスーパー戦隊シリーズが行き詰っていた時期、東映で元気だったのが「不思議コメディーシリーズ」でした。
これは1981年から1993年にかけてフジテレビ系で日曜朝9時からやっていた子供向けの特撮コメディーシリーズのことです。
ジャンルとしては、「エブリデイ・マジック」というやつで、簡単に言えば、ごく普通の日常生活に異世界の住人、例えば宇宙人やロボットや妖精、魔法使い、お化けなど、あるいはそれらに由来する超科学や不思議現象が現れてドタバタ騒動を巻き起こすというやつです。
日本で代表的なものとしては、ドラえもんやお化けのQ太郎などの藤子不二雄作品や、サリーちゃんやメグちゃんのような一連の魔法少女アニメなどでしょう。
このように基本的に漫画やアニメに多いジャンルなのですが、これを実写で成功させた最初の顕著な例が石ノ森章太郎原作で「ゴレンジャー」と同時期に東映で制作された「がんばれ!ロボコン」です。

この後、1970年代後半にかけて石ノ森原作あるいは東映独自制作でロボコンに類似した作品やエブリデイ・マジック的な作品が幾つか作られます。これらが源流となって1981年に不思議コメディーシリーズが始まります。
といっても最初からシリーズ化するつもりであったわけではなく、そもそも作風にかなりばらつきがあって、制作側も一連のシリーズという意識も希薄だったことでしょう。
ただ、ロボコンからの流れで全作品が「石ノ森章太郎原作のエブリデイ・マジック作品」という共通項でくくられていたため、次第に一連のシリーズという意識が強くなっていきました。
まぁ、石ノ森原作といっても、石ノ森は監修程度で、実質的にはほとんど東映独自制作のようなものでしたが。
このシリーズの功績は非常に色々あるのだが、最大の功績はやはり休日朝の時間帯を子供向け番組の時間帯として開拓したことでありましょう。

不思議コメディーシリーズは基本的に1年1作品のペースで作られていました。
シリーズ初期はロボット、怪生物、妖精、神様などが主人公の子供の住んでいる一般家庭に居候して、近所の変な人達も巻き込んで様々な珍騒動を巻き起こすという作品が続きます。

ところで、この1980年代前半の日本を代表するエブリデイ・マジック作品にしてコメディーの最大のヒット作品といえば、高橋留美子の漫画「うる星やつら」です。
「うる星やつら」は1978年に漫画連載が開始されて大ヒット、そして1981年にアニメ放送もスタートして、これも大ヒットしました。
1981年に始まった当初はロボコンの模倣のような作品であった不思議コメディーシリーズが次第に妙な生き物を中心に据えたコメディーに変わっていくのは、「うる星やつら」の影響は皆無ではないでしょう。
パクリというほどそっくりではなく、「うる星やつら」の生み出した要素を上手に採り入れて新たな魅力を作り出していったといえます。
ただのパクリならオリジナルに勝てるはずもないのですが、同時代に絶頂であった「うる星やつら」を相手どって、しっかりシリーズの実績を残し続けたのですから大したものです。

この「うる星やつら」が1987年に終了して、その後継作品として高橋留美子が世に出したのが「らんま1/2」です。
あの「ターボレンジャー」や「ファイブマン」が苦戦を強いられた「らんま1/2」です。
不思議コメディーシリーズは、その「らんま」の源流といえる「うる星やつら」と、一応ちゃんと勝負出来ていた実績があるのです。
だから、スーパー戦隊シリーズとしては、子供受けする作風を作るにあたって、不思議コメディーシリーズというのは非常に参考とするところ大だったわけです。
それで、ライブマンから子供向けに作風を変えてターボレンジャーを作る際に、妖精を出したり、日常生活描写に重点を置いたりしたのです。
しかし高橋漫画の方も「うる星やつら」から「らんま」へとより洗練されて進化していたのであって、「うる星」に対抗するための80年代前半型の不思議コメディーシリーズの要素では「らんま」には勝てなかったのでした。それでターボレンジャーやファイブマンでは「らんま」には対抗出来なかったのです。
ファイブマン後半が「らんま」に対抗出来たのは大人に受けた作風だったからで、子供視聴者争奪戦ではやはり勝てていません。

しかし、不思議コメディーシリーズの方では1980年代後半、「らんま1/2」に対抗するための試行錯誤は続けていました。
まず1987年から1988年までの2年間、少年探偵団ものを2作品続け、御近所コメディでありながら「悪者と戦う」という要素を前面に出しました。まぁ大した悪者じゃないんですが、エブリデイ・マジックに格闘マンガの要素を合わせた「らんま1/2」に対抗する要素でした。

そして1989年、不思議コメディーシリーズは「魔法少女ちゅうかなぱいぱい!」「魔法少女ちゅうかないぱねま!」という2作品を続けざまに制作しました。
これは従来のシリーズの基本線であった「変なものが居候する」というパターンを踏襲しつつ、その居候するものが着ぐるみのロボットや妖精ではなく、新人アイドルが演じる魔法少女であるという点で画期的なものでした。
これは「宇宙人の鬼娘ラムが居候する」という「うる星やつら」の実写版を志向した挑戦であると同時に、それが極めて中華テイストであることから、同じく中華テイストが売りの「らんま1/2」への対抗意識が見てとれます。

「ちゅうかなぱいぱい!」は中華世界の魔女パイパイがラーメンに変えられてしまった婚約者を探すために人間界へやって来て高山家に居候して様々な騒動を巻き起こすという、なんともシュールな話で、これは基本的に御近所コメディで、悪者との戦いはメインテーマではありません。
ただパイパイは普段は人間の女の子の姿に化けているので、ここぞという魔法を使う時は中華魔女の姿に変身します。だから変身ヒロインではあります。
パイパイを演じたのは当時新人アイドルだった小沢なつき。
アイドルを起用したのは、やはり子供向けドラマの主人公なので華のある若い女性タレントがいいということであったのでしょうが、前年のライブマンの森恵の起用が成功したことも影響しているでしょう。
それに、なんといっても、変身ヒロインではないながらも、同じフジテレビ系で東映制作で1985年から3年間続いた、斉藤由貴、南野陽子、浅香唯というトップアイドルを主役とした「スケ番刑事」シリーズの影響も大きいでしょう。
かといって予算不足の不思議コメディーシリーズでは森や斉藤、南野、浅香のような売れっ子アイドルは使えないのでまだ無名の新人アイドルにしたというところでしょう。

続く「ちゅうかないぱねま!」も中華世界からパイパイと入れ替わりに人間界へやって来たイパネマというお嬢様が高山家に居候して、夜逃げした両親を探すという御近所コメディでしたが、
前作との大きな違いは、イパネマは魔女ではなく中華世界に住む普通の女の子で、もともと魔法を使えないということです。
じゃあどうして魔法を使うのかというと、高山家にパイパイが置いていった魔法のペンダントを使うことでなんとか変身して魔法を使うことが出来るのですが、未熟者なので失敗が多いということになります。
ここに、「普通の女の子が力を授けられて変身して特殊な能力を使う」という新たな展開が生まれたのです。
このイパネマを演じたのは、これも当時新人アイドルだった島崎和歌子です。新人アイドルの変身ヒロイン役への起用がパターン化し始めたのです。

そして1990年、設定を一新して「美少女仮面ポワトリン」が制作されました。
これはまるで昔の人気アニメ「ラ・セーヌの星」のような西洋風の仮面騎士のいでたちで悪者たちと戦う変身ヒロインのお話です。
村上ユウコという普通の女子高生が神様から町内の平和と安全を守るように頼まれて、神様から貰ったペンダントでポワトリンに変身して戦う羽目になるのだが、神様は胃カタルの治療のためという口実で温泉旅行に行くのが目的で、しかも守るのはあくまで町内という、あくまでシュールな御近所コメディという路線は崩していません。
ただ、前作の「普通の女の子が力を授けられて変身する」という設定に少年探偵団的な要素を加えて、初めて「悪者と戦う」ということを前面に出したのが特徴的です。

ただ、このポワトリンことユウコは別に好きで戦っているわけではなく、神様に無理矢理押しつけられてイヤイヤ戦っている。しかも周囲に正体がバレるとカエルにされてしまうというから悲惨で、誰にも相談も出来ない。このイヤイヤながら戦うというのがコメディーとして最高に面白いのです。
こうして「イヤイヤ戦う変身ヒロイン」という画期的なスタイルが生まれたのでした。
ユウコを演じたのは新人アイドルの花島優子で、この「ポワトリン」が大人気となったことによって、「戦う美少女変身ヒロインを新人アイドルが演じる」という形がシリーズにおいて定着することになったのです。

この「ポワトリン」は「ファイブマン」と同時期の作品で、「ファイブマン」が裏番組の「らんま1/2」に苦戦し続けている頃、「ポワトリン」は「らんま」に十分に対抗し得る子供人気を獲得していたのです。
そういうわけですから、スーパー戦隊シリーズが「らんま」に対抗していくために、「ポワトリン」に代表される同じ東映の不思議コメディーシリーズの新しい路線を大いに参考としていくのは必然といえるでしょう。

一方、不思議コメディーシリーズの方は1991年には前作「ポワトリン」とほぼ同じ路線の「不思議少女ナイルなトトメス」を制作しました。
これはモチーフを前作の西洋中世風から古代エジプト風味に変えたもので、先祖のお墓を誤って壊してしまった女子高生の中島サナエが、そこから逃げ出した51匹のナイルの悪魔を再び捕まえて封印するように先祖の霊に約束させられてしまい、そのために戦うトトメスに変身する不思議ステッキを授けられるというお話です。
トトメスことサナエを演じたのは新人アイドルの堀川早苗でした。
基本的には「ポワトリン」と同じ部類の話ですが、これも非常に人気作品となりました。

しかし、ここで凄いのが、フジテレビと東映がこの軌道に乗った美少女戦士シリーズを捨てて、翌1992年に更なる新たな挑戦に打って出たことです。
それが世紀の怪作であるミュージカル風味のスラップスティック・コメディ「うたう!大竜宮城」なのですが、さすがにこれはコケました。
で、東映がそんなことをしている間に、漫画アニメ界では画期的なことが起きていたのです。
それは1992年に「美少女戦士セーラームーン」の漫画連載とアニメ放送が始まって大人気を獲得したことです。

この「セーラームーン」は「ポワトリン」とスーパー戦隊シリーズを参考にして作られたものだそうです。
つまり、「ポワトリン」や「トトメス」のような戦う変身美少女戦士を、スーパー戦隊シリーズのように集団ヒーロー化したものです。
ただ、この2つを参考にしたということの意味はそれだけではないでしょう。
「ポワトリン」の持つ日常性やシュールさ、普通の女の子らしさと、スーパー戦隊シリーズの戦隊ヒロインたちの持つ熱さやひたむきさ、強さ、知性、優しさなどを総合した存在が「セーラームーン」に登場するセーラー戦士たちなのでしょう。
これはもう究極のヒロインといってもいい。むしろ、こうした究極のヒロイン性を1人のキャラに収めることは不可能なので、集団ヒロイン体制にしたのだといえるでしょう。

この「セーラームーン」の大ヒットを受けて、不思議コメディーシリーズは1993年に「ポワトリン」型の美少女戦士の集団ヒロインバージョンとして「有言実行三姉妹シュシュトリアン」を制作します。
この「シュシュトリアン」は和風テイストで、酉年の平和を守るように「お酉様」という神様から無理矢理力を与えられた三姉妹がシュシュトリアンに変身して悪人たちと戦うというもので、相変わらずのシュールギャグ炸裂で人気作品となりました。
シュシュトリアンになるのは山吹雪子、月子、花子の三姉妹で、高校生、中学生、小学生です。演じていたのは田中規子、石橋桂、広瀬仁美の3人の新人アイドルでありました。
ただ、この作品、視聴率は好調だったのですが玩具があまり売れませんでした。セーラームーンの玩具の人気が圧倒的だったのです。

何故、シュシュトリアンはセーラームーンに勝てなかったのか。
それは、シュシュトリアンが単にポワトリンを形だけ集団ヒロイン化しただけで、中身は相変わらずのシュールヒロインのままだったからでしょう。
ギャグは冴えてるので見ていて面白い。だから視聴率は伸びるのですが、セーラー戦士ほど女児が感情移入は出来ないので玩具は売れないのです。
どうしてセーラー戦士の方が感情移入出来るのかというと、セーラー戦士の方がスーパー戦隊シリーズのヒロインの要素が加わっている分、ヒーロー性が高く熱いのです。その熱気に女児は惹きつけられたのです。

では不思議コメディーシリーズで同じことが出来るのかというと、あくまでシュールコメディが売りのシリーズですから、冷めた部分が基本なのであって、あまり熱さを追求するわけにはいかない。
つまり不思議コメディーシリーズではセーラームーンには玩具売上では勝てない。
そもそも不思議コメディーシリーズが美少女戦士路線に舵を切った大きな理由は、バブル崩壊後の厳しい番組制作環境の中で女児向け変身玩具などの売上を稼ぐためでもありました。
その玩具が売れなくなったということは、美少女戦士路線は破綻したということです。
別路線の「うたう!大竜宮城」もコケていましたし、ここらが潮時と判断し、視聴率は好調であったにもかかわらず、「シュシュトリアン」をもって12年に及んだ不思議コメディーシリーズは終了となったのでした。
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 12:30 | Comment(0) | 戦隊ヒロイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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