2011年01月17日

初代レッドル

初代レッドル.jpg





















1995年、オウム真理教事件によってクローズアップされた「身近に存在する悪意」というものに対して「オーレンジャー」がヒーロードラマとして対応することが出来なかった頃、それに対応し得た、もう1つの戦隊ヒーロードラマが有りました。
それが同じ東映制作の「重甲ビーファイター」です。

「重甲ビーファイター」はメタルヒーローシリーズ第14作です。
メタルヒーローシリーズは1982年の「宇宙刑事ギャバン」から始まる東映制作、テレビ朝日系放送のシリーズで、同年のスーパー戦隊シリーズ作品は「大戦隊ゴーグルファイブ」でした。
まだスーパー戦隊シリーズでは重厚なドラマを描くよりもシリーズの基礎を固めることが優先されていた頃です。
こうした時期に、やや高い年代(就学児童あたり)をターゲットにして重厚なSF人間ドラマを描くというコンセプトで「宇宙刑事ギャバン」は作られました。
これがヒットして、「宇宙刑事シリーズ」が続いて「宇宙刑事シャリバン」「宇宙刑事シャイダー」と、3年間で3作品作られました。これがメタルヒーローシリーズの始まりです。

宇宙刑事というと、宇宙警察みたいなところから地球に派遣されてきて、宇宙犯罪組織と戦うわけですが、この宇宙犯罪組織自体にはあんまり意味はありません。結局やってることは戦隊シリーズの悪の侵略組織と大差はありません。
この宇宙刑事シリーズのポイントは、仕事として正義のヒーローをしている主人公が私的な事情との板挟みでいろいろ苦悩することです。そこに人間ドラマが生まれるわけです。
そのために「公的機関所属の宇宙刑事」という設定があるのであり、その敵役として適当なので犯罪組織が出て来るだけのことです。
実際、この宇宙刑事三部作が終わった後も、「公的な使命を帯びたヒーロー」である主人公が、犯罪組織でも何でもない普通の悪の侵略組織と戦いつつ、個人的事情にも振り回されるという構図は2年ほど維持されました。ここでは、もはや敵は犯罪組織である必要は無くなっています。

しかし、これは次第に飽きられてきました。何故かというと、スーパー戦隊シリーズもこの頃には重厚なドラマを描く路線にシフトしてきていて、内容が結構かぶってきたからです。
この頃は戦隊シリーズはまだ土曜の夜にやっており、一方メタルヒーローシリーズは平日の夜で、やはり同じような内容なら戦隊シリーズの方が有利な時間帯でもあり、ヒーローの数も多いし、優勢でした。
そこでメタルヒーローシリーズは従来の方針を変えて、フィギュア玩具を売るための路線にシフトして、敵キャラにもスポットを当てたロボットバトル作品「超人機メタルダー」や、忍者バトル作品「世界忍者戦ジライヤ」をやりましたが、
当初かなり視聴率が苦戦してしまったので、放送枠を日曜朝9時半枠に変えて、新たな視聴者層の開拓を目指すことにしました。
この休日朝の時間帯は「不思議コメディーシリーズ」のヒットによって新たな子供番組の時間帯として開拓されていたのです。
そして1989年にテレビ朝日の日曜朝の番組編成の整理に伴って日曜朝8時開始枠に移動したのを機に、再び主人公を警察所属の刑事に戻した「機動刑事ジバン」を制作し、なりきり玩具を売る路線に戻しました。
この作品の段階では、往年の宇宙刑事シリーズを日本の架空の都市ローカル規模に移し替え、主人公をサイボーグにしてSF的な犯罪組織と戦うような感じでした。

メタルヒーローシリーズの大きな変化は翌1990年の「特警ウインスペクター」において生じました。
警察組織に属する変身ヒーローは悪の犯罪組織や侵略組織と戦うのではなく、通常の犯罪者や災害から人々を守るために戦うのであって、敵を倒すことが目的ではなくなったのです。
人命救助や事件解決の過程で犯罪者と戦うことはありますが、逮捕が目的であり、倒すことは目的ではなくなりました。これは重大なコンセプトの変更でした。
また、それまでのメタルヒーローシリーズ作品では正義の変身ヒーロー(あるいはロボットヒーロー)は基本的に1人だったのですが、この「ウインスペクター」から、物語序盤から3人ぐらいのチームを組んでいる集団ヒーロー体制に移行しました。

この「ウインスペクター」はそれまでに存在しなかった斬新なコンセプトがウケて、人気を獲得しました。
ちょうどこの年は戦隊シリーズでは「ファイブマン」が大コケしており、まさに冷戦終焉の時代の変わり目に新しいコンセプトを提示出来なかった「ファイブマン」が、新しいコンセプトを提示し得た「ウインスペクター」と「ポワトリン」に人気を喰われた年だったといえます。
その後、メタルヒーローシリーズでは、この「ウインスペクター」と同一の世界観の「特救指令ソルブレイン」「特捜エクシードラフト」という作品を続け、これら3作品を総称して「レスキューポリスシリーズ」と言います。
しかし、このシリーズは最初のウインスペクターが割とハッピーエンドで終わるエピソードが多い明るい作風だったのが、作品を重ねるごとにバッドエンドの多いリアルで暗い作風になっていったので人気は下降していきました。
これは同時期の戦隊シリーズが「ジェットマン」「ジュウレンジャー」と順に勢いを取り戻していくのとちょうど反比例するような流れで、戦隊シリーズとメタルヒーローシリーズで同じ男児市場を喰いあっているような状況だったとも言えます。
これは言い換えれば共倒れは無いという状況で、メタルヒーローシリーズはある程度は安心して冒険的な作風を追求していたのかもしれません。

それでメタルヒーローシリーズはレスキューポリスシリーズ三部作の後、ロボットヒーローが人間の作った悪の組織と戦うという逆転の発想の「特捜ロボ・ジャンパーソン」や、
装着型の共通装備を身に付けた特殊部隊のヒーローチームが人間に憑依して秘かに侵略するエイリアンと戦うリアル志向の「ブルースワット」など、異色作を制作していきました。
特に「ブルースワット」のミステリアスな作風は後の平成仮面ライダーシリーズの先駆となるものでしたが、とにかく地味で、この時点では子供にはウケませんでした。この手の作風は「仮面ライダー」という超メジャーヒーローと組み合わせることで成功することになるのです。

メタルヒーローシリーズがこうした冒険をしている間に、1993年には不思議コメディーシリーズが終了して東映特撮は女児玩具市場から撤退し、更に男児市場で「ブルースワット」がコケた1994年には、戦隊シリーズの方も「カクレンジャー」が決して成功とは言い難い視聴率と玩具売上に止まってしまいました。
つまり、ここで初めて、戦隊シリーズとメタルヒーローシリーズが同時にコケるという現象が起きてしまったのです。
これに焦って東映は次の戦隊シリーズ作品「オーレンジャー」を急遽、シリーズ20周年記念作品としてキャンペーンを張ることとしたわけですが、
当然、メタルヒーローシリーズの方でも冒険的な作風は廃して、次の作品は一般受けしやすい作風に転換しようということになりました。
そうして作られた1995年のメタルヒーローシリーズ作品が「重甲ビーファイター」なのです。

ここで1995年度にバンダイと東映が打ち出した戦略は「戦隊二本立て」でした。
両シリーズともにコケてしまったことから、安全策をとって両シリーズとも、最も一般受けする戦隊シリーズのフォーマットで制作しようということになったのです。
だから「重甲ビーファイター」はメタルヒーローシリーズでありながら、実際はほとんど戦隊シリーズ作品と同じような内容です。
というか、厳密に言えば、実質的には真の意味でのメタルヒーローシリーズは「ブルースワット」で終了して、第二戦隊シリーズの第一作として「重甲ビーファイター」は始まったのかもしれません。

ただ、まぁ既存の戦隊シリーズとは若干違う点もあります。
まず5人戦隊ではなく3人戦隊であること。
強化スーツが戦隊シリーズ特有のレオタード風のソフトスーツではなく、メタルヒーローシリーズ特有のメタリック系のハードスーツであること。
巨大メカは出てくるが、合体して巨大ロボにはならないこと。
しかし、これらの相違点以外は、戦隊シリーズに非常によく似ています。

メタルヒーローシリーズでは敵が大規模な破壊型の侵略組織であることはほとんど無かったのですが、「ビーファイター」の敵組織は異次元からの侵略者組織ジャマールです。
メタルヒーローシリーズでよく見られた犯罪組織や犯罪者たちとは違って、犯罪が目的ではなく、侵略行為そのものが目的化した、よく戦隊シリーズで見られるタイプの敵組織です。
よって、これと戦う正義のヒーローも警察機関所属などのプロ戦士ではありません。

メタルヒーローシリーズの大きな特徴は、正義側は敵に関する情報を熟知しており、正義側が敵と同等以上の科学力や戦力を持っており、正義側は正攻法で敵を鎮圧出来るという点でした。
一方、戦隊シリーズの場合は敵は人間側にとって基本的に未知の存在であり、敵の科学力や戦力も人間より優れており、人間は既存の科学では敵に太刀打ち出来ないため、未知の新技術や異世界からの助太刀によって状況を打開して敵に優越する戦隊を組織することに成功するという点が大きな特徴です。
つまり正義側の組織結成に至るドラマの有無が両シリーズを大きく分ける特徴といえます。

その点「ビーファイター」は、ジャマールの侵攻を昆虫界の長老から知らされた主人公の1人で若き昆虫学者の甲斐拓也がその危機を訴えても政府も社会も全く相手にせず、いざジャマールの侵攻が始まると人間側も昆虫界も全く歯が立たないという点、メタルヒーローシリーズよりも断然、戦隊シリーズに近いです。
そして、仕方なく独力でジャマールと戦おうとして拓也とその支援者であるアースアカデミアの向井博士が開発していた戦闘用アーマーも彼らの力だけでは完成させることが出来ず、昆虫界の長老が昆虫の精と融合させることで完成するという点も、戦隊シリーズっぽい設定になっています。
こうして完成した3つのインセクトアーマーは昆虫の精が宿っているので意思を持っており、その適合者をアーマー自身が選びます。
それは自然を守るために命を賭けて戦う勇気を持った人間であり、アーマーが選んだ適合者は拓也と、ジャマールの侵攻に生身で立ち向かって自然を守ろうとした樹木医の片桐大作、動物学者の羽山麗の3人でした。
ヒーローに変身する者が戦闘のプロではなく民間人であるという点は戦隊シリーズによく見られる傾向であり、メタルヒーローシリーズでは見られない特徴です。
また、変身にビーコマンダーという手持ちのアイテムを使用するのも戦隊シリースと共通した特徴です。

rei.jpgこの3人の若い学者たちがインセクトアーマーを纏って変身するチームがビーファイターですが、
このうちの紅一点が羽山麗で、レッドルというメスカブトムシをモチーフとしたインセクトアーマーの装着者です。
麗は22歳の動物学者で、水族館のインストラクターもしています。
なんでも幼い頃から両親に連れられて世界中を転々としていて、その行く先々で戦争で人間や動物が命を失う光景をさんざん見たため、あらゆる動物の命を守ることを目的に動物学者になったのだそうです。
それでジャマールの侵攻にも立ち向かい、アーマーの適合者に選ばれたというわけです。

こうした経緯を見ても分かるように、麗は非常に真面目な性格です。
それに幼い頃からさんざん苦労しており、しっかり動物学者になるという夢も実現しているあたり、非常に落ち着いたしっかり者の優等生です。
もちろんとても頭も良く、運動神経も良いです。
まぁデキる女ですが、決して高慢なタイプではありません。謙虚で真摯な性格です。
そして美人でスマートで冷静、いわゆるクールビューティーのタイプです。

こういう、クールでカッコよく、能力が高く、しっかり者で大人の女性の魅力に溢れたヒロインというのは、メタルヒーローシリーズの伝統的なヒロイン像です。
だいたいは主人公ヒーローのサポート役の女性同僚刑事であったりすることが多かったのですが、
彼女たちはライダーヒロインやウルトラヒロイン、スーパーロボットアニメのヒロインなどと同じタイプで、変身して戦わないヒロインであり、主人公ヒーローを支援して戦いつつ、主人公ヒーローに守られ救われる存在です。
つまり、それだけ、か弱い女らしさが強調されたヒロインとなり、女性らしい色気が強調されます。
実際、歴代メタルヒーローヒロインは際どい衣裳のヒロインが多く、同じようにミニスカートを履いていたとしても戦隊シリーズヒロインとはどうも印象が違います。大人の色気が強調されている感じなのです。

これはあくまで男のヒーローが主人公であり、そのヒーローの男らしさを際立たせるために、傍に大人の色っぽい女性を配置しているという意味なのでしょう。
傍に侍る女性のグレードが高いほど、男の価値は上がって見えるものなのです。
ただ、単に色気だけの女性の場合、逆に価値が低く見えてしまうので、侍るのは有能でクールでカッコいい女性がよいのです。
逆に言えば、普通の男では口もきくのが憚られるほどの有能でクールでカッコいい大人の美女が、その主人公ヒーローに対してだけは従順になるからこそ、そのヒーローのカッコよさが最大限に引き立つのです。
だからメタルヒーローシリーズのヒロイン達は戦闘力の高いクールな美女たちでありながら、露出の高めの服装をしてヒーローの前では女の弱い顔を見せるのです。

麗というのは、どうもこの歴代のメタルヒーローヒロインと同じ系譜に位置するヒロインに見えるのです。
それは麗を演じている葉月レイナの印象から直感するものですが、実際、麗のキャラ的にも、非常に有能でソツが無く、しっかり者で真面目、美人で大人の魅力があるわけですから、そのような印象はどうしても受けてしまいます。
ただ、歴代メタルヒーローヒロインは変身はしないものの、生身でも有能なプロ戦士です。
一方、麗はレッドルに変身すれば分析能力と身軽さに秀でた戦士になりますが、生身では戦闘訓練を受けたわけではなく、単なる戦闘の素人です。
だから真の意味でのクールビューティーというわけではない。
そもそも、麗はクールビューティーとしてヒーローの傍に侍ってヒーローの価値を上げる必要性など無い。
麗自身も変身ヒーローであり、「ビーファイター」の主役3人のうちの1人だからです。だから、必ずしも戦闘のプロのクールビューティーである必要も無いし、露出の高い色気を強調した服を着てヒーローの傍で女の顔をする必要も無いのです。
実際、麗は男っぽい服装が多く、せっかく美人なのに色気が強調される服はほとんど着ていません。
ただ、そうなると、麗はクールビューティーにもなりきれず、色気を売りにするわけでもなく、単に真面目で有能なしっかり者の大人っぽい美女というだけで、いささか地味な印象になってしまいます。ソツが無さ過ぎてつまらないといえます。

これは要するに、急な路線変更の影響で、メタルヒーローシリーズのスタッフが戦隊シリーズのキャラの魅せ方というものをまだ把握出来ておらず、主要キャストをメタルヒーローシリーズのまんまの感覚でキャラ造形やキャスティングしてしまったのです。
男性メンバー2人に関してはそれでも戦隊シリーズと共通した部分も多かったのでなんとかなったのですが、女性メンバーの場合は、戦隊には戦隊独特のヒロインの魅せ方というものが有るのですが、それとはかなりズレたメタルヒーローヒロインのタイプのキャラ造形をして、それに合った葉月レイナをキャスティングしてしまったのです。
しかし、実質的には麗は戦隊ヒロインですから、メタルヒーローヒロインのような魅せ方をすることも出来ず、結果的にかなり薄いキャラとなってしまったのです。
麗のキャラは、戦隊でもダブルヒロインの片割れとしてなら成立はしたでしょうが、単独ヒロインとなると、やはり優等生で大人しすぎたといえるでしょう。
岬めぐみが似ているようにも見えますが、めぐみの場合、もっとハジケた部分がありました。

まぁ麗が「ビーファイター」の作風の中で浮いていたというわけではありません。
むしろ、麗も含めて、メイン3人がみんな学者で非常に理知的な印象であったため、作風が地味にまとまって変な意味で安定してしまっていたのが問題でした。
綺麗にまとまった作品になってしまい、せっかく面白い設定の作品なのに、爆発力に欠けました。
何か世界観を壊すぐらいのカンフル剤が必要だったのです。

そんな時、全く偶然の展開なのですが、撮影で張り切り過ぎた葉月レイナが序盤(13〜14話付近?)の爆発シーンの撮影で首を負傷してしまい、その後、しばらく声が出せない状態となって、吹き替えなどで暫くは対応しましたが、結局、21話で降板することになったのです。
劇中では22話冒頭で麗が博士らに相談した結果、ビーファイターを辞めて南米の動物たちを守るために旅立つことを決めた旨の置手紙を拓也と大作宛てに残して既に旅立った後というシーンから始まり、この22話で二代目のレッドルの適合者が現れるという流れとなります。
かなり強引な展開ですが、これによって結果的には「ビーファイター」という作品の展開は大きく変わっていくのです。
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 01:40 | Comment(0) | 戦隊ヒロイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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