2011年01月19日

ピンクレーサー

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カーレンジャーの5人がヒーローではなくコメディー要員だというのは少し言い過ぎではないかという見方もあることでしょう。
これ以前にもコメディー方向に相当傾いた戦隊メンバーも存在したからです。
しかしそうした過去の三枚目戦士たちとカーレンジャーには、面白さとかそういうのじゃなく、大きな違いがあるのです。
それは、カーレンジャーが初めての本当に普通の一般人が変身するヒーローであった点です。

カーレンジャー以前の19の戦隊はジャッカー電撃隊以外は皆、生身の人間(恐竜人類含む)ではありましたが、
そのうち軍人や警察官など公的な戦闘のプロによる戦隊は5つ、
戦闘術の訓練を受けた者、あるいはその血筋にあたる者による戦隊が7つで、
残りの6つがいわゆる一般人による戦隊なのですが、
そのうちデンジマンとバイオマンは血統的に特別な因子が認められて選ばれており、実際に他人より秀でた何らかの能力を持っていました。
ジェットマンもバードニックウエーブを浴びたせいで身体能力は大幅にアップしていました。
ダイナマンは身体能力に秀でた科学者が選ばれており、メンバーの多くは何らかのスポーツの達人でした。
ゴーグルファイブもコンピュータによって選び出された者達で、何らかの特技を持った連中でした。
一番怪しいのが高校生だったターボレンジャーですが、幼い頃に妖精の光を浴びており、また彼らは運動部のエース揃いでしたので、やはり少し特別な存在だったと言えます。

そして、そうした特別な存在であることを証明するように、彼らはよく生身のまま敵組織の戦闘員や怪人と戦ったりしていました。
これはもちろん演出上の都合であって、さほどリアリティがあるシーンではないのですが、
それでも戦闘員と互角に戦ったり、怪人にやられても大した怪我を負わない彼らは、普通の人間よりは頑健な身体を持っていると考えてよいでしょう。

しかしカーレンジャーの5人は何にも特別な能力を持っているわけでもない、平凡な会社員です。
ダップのクルマジックパワーで能力を与えられているだけです。
ただ、ダップは彼らを星座伝説の戦士だと認めているから能力を与えているわけで、そう考えると5人は何らか特別な資質を持っているとも考えられるのですが、
これはダップの勘違いの可能性が大です。
ダップはペガサス事務所に置いてあった、彼ら5人の将来作って売りたい「夢の車」のディスプレイがダップの言う伝説の車型星座にそっくりだったので5人を伝説の戦士だと思い込んだのですが、これはどう考えても偶然の一致に過ぎません。

ダップは勘違いして普通の会社員に変身能力を与えた、というより押しつけたのであって、妙にノリのいい5人が付き合って仕事の傍ら戦ってくれているだけのことなのです。
よって彼らは変身前の生身では戦えませんので、戦う時は変身してから現場に駆け付けますし、生身で事件に遭遇しても生身のままでは戦いません。
そして生身が無力な彼らは正体を知られるのは非常に危険なので敵の前で変身はしません。
これは描きようによってはかなり卑怯なヒーローになってしまいます。目の前で人が殺されそうになっていても、その時もし生身ならば、その場で変身も出来ず見捨てるわけですから。
しかしカーレンジャーの場合は敵のボーゾックがアホで一般人にはほぼ無害なので、そういう際どいシーンには遭遇しないようになっています。

つまり、カーレンジャーの5人は、変身していない時は戦いからも遠ざかり、戦えないということに葛藤することもなく、そしてダップ以外は彼ら5人がヒーローだということは誰も知らないので、変身していない時は全く普通の一般人として暮らしているのです。
これは実は次作品の「メガレンジャー」と割と似ているのですが、実際は根本的に違ってます。
メガレンジャーの場合、敵のネジレジアの脅威が切迫しているので、変身していない時でも一般人感覚にはなかなかなれないのです。
厳密に言うとメガレンンジャーの場合はメンバーは一般人感覚になりたいのですが、状況がそれを許してくれないことが多々あるということです。
一方、カーレンジャーの場合は、敵のボーゾックが非常にユルい敵なので、脅威がちっとも切迫せず、カーレンジャーのメンバーは変身前は簡単に一般人感覚に浸れるのです。

何故、こんな設定になっているのかというと、この作品のコメディーテイストを守るためです。
カーレンジャーの5人が普段は一般人感覚で、普通のペガサス社員として生活し、ご町内でボーゾックやシグナルマンらと単なる地球の一市民として接しておいて、
いざ変身して戦う時に、さっきまでユルい会話をしていた同じ相手と顔を合わせるのですが、
相手はまさかさっきバカ話をしていた地球市民がカーレンジャーだとは夢にも思っていないわけで、
そこでの遣り取りににギャップの笑いが生じるわけです。
その笑いのテンションを下げないために、5人は普段はヒーローではなく全く普通の一般人でいる必要があるわけです。
変に生身で戦ったりしてしまうと、たとえ正体がバレなかったとしても、もう相手からは普通の一般人としては見てもらえないわけで、そうなるとギャップの笑いのテンションが下がってしまうのです。

それに、いくらユルい戦いだとはいっても、一応はヒーローとして悪と戦っているわけですから、戦っている時は5人もヒーローっぽくなっています。
もし生身でも戦ったりしてしまうと、そのヒーローっぽさが生身の普段の彼らにも属性としてついていきます。
そのようにして普段の彼らがヒーローっぽくなっていくと、相対的に彼らの持つコメディー性が薄らいていってしまいます。
そうなると、普段のペガサス社内コントとか、ご町内コントに支障をきたす恐れがあります。

このように笑いのテンションが下がることが怖いのです。
だから、そのために、彼らは普段は戦わずヒーローとして行動せず、単なるペガサス社員であることが求められているのです。
つまり、彼らは少なくとも変身前の本来の姿においては、ヒーローではなくコメディー担当であることを制作サイドから求められているのです。
これが、「カーレンジャーの5人はヒーローではなくコメディー要員だ」という理由です。

菜摘と並ぶダブルヒロインの片割れ、ピンクレーサーに変身する八神洋子に関してもそれは言えます。
そもそも、何故この作品においてダブルヒロインが必要なのか。
カーレンジャーにおいては生身アクションというものが無い以上、戦隊ヒロインを「アクション担当(強いヒロイン)」と「女らしさ担当(弱いヒロイン)」に分ける必要は無く、女らしいヒロイン1人だけでよかったはずです。
見た目や性格的に、この洋子の方が「女らしいヒロイン」ですから洋子1人でよかった。
実際、もう1人のヒロイン菜摘も別にアクション担当でもなく、強いヒロインでもなかったわけだから、ダブルヒロインにする意味など無かった。
ダブルヒロインにする意味があったとしたなら、それはパワーレンジャー化への配慮以外には考えられないでしょう。
アメリカ版パワーレンジャーは男女平等のポリシーによりダブルヒロインがデフォですから、
変身前映像は関係無いとしても、変身後映像はダブルヒロインの方がアメリカ側に親切というものです。だからダブルヒロインにしたのでしょう。

実はパワーレンジャーはこの1996年、アメリカで大コケします。
「オーレンジャー」のリメイク版がコケたわけですが、やはりスーツデザインやメカがコンセプト不明だったのがマズかったのか、あるいはアメリカでのリメイクが悪い出来だったのか、よくは分かりません。
とにかくパワーレンジャーがコケたことによって、この後は一応パワーレンジャーシリーズはアメリカで続いていきますが、「カクレンンジャー」から「カーレンジャー」の頃のようにパワーレンジャー化への配慮をやたら優先するという傾向はスーパー戦隊シリーズにおいては無くなります。
ただ、このカーレンジャーの時点においてはまだパワーレンジャーの大コケという結果は出ていないので、ヒロインは作劇上の必然性無くダブルヒロインで、また巨大ロボもやたら出てきます。
合体巨大ロボはさすがにカーレンジャーにおいてはオーレンジャーよりはだいぶ減って3体になりましたが、2号ロボに合体する5台のマシンがそれぞれロボに変形するので、やっぱりロボは多いです。

scan024.jpgとにかく紅一点的な本来のヒロインの役割は洋子の方であって、
ダブルヒロインなのでもう1人作ってしまった菜摘は5人の中の常識人キャラにしてツッコミ役をやらせたという感じでしょう。
といって洋子にしても、ヒロインといっても別に戦隊ヒロインとしての役割が期待されているわけではない。
あくまで社内コントやご町内コントの場での役割が求められたキャラという意味では菜摘と同じです。
その役割はかなりのボケ担当で、何せ自動車会社に勤めているのに酷いメカ音痴で方向音痴です。
まぁ経理担当なのでそれでも業務上支障は無いようです。
経理として有能なのかどうかは不明。というか、社員5人の零細企業なので経理といってもそう難しくはないようです。ただお金にはやたらうるさい。
乙女チックで甘えん坊な性格で、ロマンチストというか、常々あらぬ事を妄想しているようである。例えば寿退社したいとか。
ま、ハッキリ言って、地球を守るヒロインという自覚はほぼ無い。が、それは菜摘もそうであるし、他の男性陣も似たようなものです。
単にボーゾックが悪いことをしてるから、行きがかり上戦っているという感じです。
基本的には5人とも、世の中が平和になって、業務に専念出来て、夢の車を早く売りたいという、そういう夢に向かおうとはしており、そのためにはまずはボーゾックはやっつけようという感じなのですが、
洋子にとってはその夢の車を売るという夢も、寿退社と天秤にかける程度のものですから、カーレンジャーも寿退社と同じ程度の価値しかないわけです。
顔は可愛いのだが、子供っぽく能天気で、すぐ拗ねたりして、ちょっとややこしい性格でもある。体重をやたら気にしている。
何処にでもいる普通の少女趣味の19歳の女の子だが、何故か変身すると怪力の戦士になります。

なお、洋子を演じたのは新人グラドルだった来栖あつこ。
この「カーレンジャー」出演後、「ミニスカポリス」に出ています。完全に珠緒の二匹目のドジョウ狙いという感じですが、珠緒ほどは売れませんでした。
最近、変なことで有名になってましたが。

まぁ、こんな感じで「カーレンジャー」という作品は、コメディーとしては相当面白いです。秀逸と言っていい。間違いなく、シリーズ歴代で最も楽しく笑える作品です。
ただ、これはやはりヒーロードラマではない。
確かにこの作品にも燃えるシーンや感動するシーンは有ります。
でも、そんなことを言ったら、不思議コメディーシリーズにだって「うる星やつら」にだって感動するシーンも燃えるシーンもあるわけで、
そういうのも有りつつもそれらはやはりコメディーであるのだから、
やはり「カーレンジャー」もコメディーなのです。
戦隊パロディーをメインに据えたご町内SFコメディーの逸品と言っていいでしょう。

しかし、この金曜日のこの17時半のテレビ朝日の時間帯に子供たちが求めているのは燃えるヒーロードラマですから、
カーレンジャーのシュールギャグがいくら面白くても「これはまぁいいや」と敬遠されてしまうのも事実で、視聴率はかなり振るいませんでした。
前作オーレンジャーほど酷くはありませんでしたが、それでもかなり低かったです。
ただ、玩具は意外に売れているのです。前作オーレンジャーほどは売れませんでしたが、それでも十分売れています。
玩具の種類がオーレンジャーに比べてだいぶ減っていることを考えると、オーレンジャー時の勢いは持続していたと言えます。
視聴率がドン底に落ちた「オーレンジャー」と「カーレンジャー」で玩具は売れているのだから、考えてみれば変な話です。
まぁ有り得無くはない話なのですが、そういうケースが2年続くというのはちょっと不自然です。

これはあるいは作品の出来が悪くて視聴率が落ちただけではないのではないか?
確かに「オーレンジャー」はイマイチな内容でしたし、「カーレンジャー」もヒーロードラマとは言えないような内容でした。
それで観るのを止めた人も結構いることでしょう。
しかし、それにしてもこの2作品の視聴率の落ち込みは極端すぎるし、玩具売上の好調と引き合いません。
これはやはり放送時間帯に根本的な原因があったのではないでしょうか。

1995年1月の阪神大震災以降、3月の地下鉄サリン事件に端を発したオウム真理教事件に関する報道洪水もなかなか終息せず、
1995年から1996年にかけての平日17時台は民放各局は報道特番が常態化しており、
何か重大事件が起きるたびに家庭の主婦や父親は報道特番にチャンネルを合わせ、子供が観るスーパ−戦隊シリーズは1回飛ばされたり、あるいはこの頃はもう既に家庭用ビデオデッキは完全に普及していたから、録画されて後で視聴されていたのではないでしょうか。
それで、玩具売上の好調の割に視聴率が極端に下がったのではないかと思われます。

結局、民放各局はこの1996年に入ると、夕方のニューズ番組を17時開始19時終了の2時間体制に拡大する方向に進んでおり、
テレビ朝日だけがその動きに出遅れるわけにはいかなくなってきました。
そのためには金曜日の17時台の2つの番組を整理しなければいけなくなってきました。
17時台前半のガンダムシリーズと17時台後半のスーパー戦隊シリーズです。
このうちガンダムシリーズは1996年10月の改編時に日曜朝6時枠に飛ばしました。
視聴率はかなり低迷していたので仕方ないとも言えますが、確か、1995年に同様のことをテレビ朝日がやろうとした時、バンダイの猛反対でポシャッたはずです。
それが何故、今回は上手くいったのかというと、バンダイがいちいちこんな細かいことに関わっている余裕が無かったからです。

バンダイはこの年、アメリカでパワーレンジャーが大コケして玩具売上不振となり、もともとファミコン市場の波に乗り損なっていたのもあって、赤字収支に転落し、更にセガとの提携も失敗して社内が大荒れだったのです。
こんな状態ですから、本当はテレビ番組へのスポンサー料も節約したいぐらいであり、
むしろガンダムシリーズやスーパー戦隊シリーズが朝の時間帯にでも行ってくれた方がスポンサー料は安くなるわけですから、あんまり反対する理由が無い情勢になってきていました。
それで1996年秋にはガンダムシリーズが整理され、残るはスーパー戦隊シリーズのみということになりました。
東映としても、これ以上17時台でニュース番組に囲まれて視聴率を確保出来る見込みも無く、放送枠移動は歓迎すべきムードでした。
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 15:12 | Comment(0) | 戦隊ヒロイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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