2011年01月27日

ゴーピンク

ゴーピンク.jpg





















「ギンガマン」の成功でひとまず安定したスーパー戦隊シリーズは続く1999年度は「救急戦隊ゴーゴーファイブ」を送りだしました。
これはノストラダムスの「1999年7の月、恐怖の大王が降臨する」という予言と、当時話題となっていた、1999年8月18日に太陽系の惑星と太陽が地球を中心に十字型に並ぶ「グランドクロス」という非常に珍しい現象から着想した作品です。

どういう話かというと、1999年8月のグランドクロスが完成する日、地球に大魔女グランディーヌという巨大なマイナスエネルギー(負のエネルギー、邪悪なエネルギー)の集合体が降臨するので、それを阻止するために正義の戦隊が戦うという話です。
このグランディーヌが降臨する条件としては、グランドクロスの完成だけでは足りず、その時に地球がマイナスエネルギーに満ちていなければいけないのです。
マイナスエネルギーは人間の苦しみや嘆きから生まれるので、宇宙空間で降臨に備えるグランディーヌは、自分の地球への降臨の条件を整えるために、自分の子供たちや手下たちを先に地球に送り込んで、人間たちを苦しませてマイナスエネルギーを吐き出させるために破壊活動を行わせます。
だから、さしあたりは正義の戦隊はこの手下の怪人たちを倒して破壊活動を阻止します。破壊活動自体が看過できないものでありますし、グランディーヌの降臨も阻止しないといけないからです。

この破壊活動が何故かいつも日本に集中しているのは、特撮ヒーローもののあまり突っ込んではいけないお約束なのですが、
一応この作品ではグランディーヌ降臨予定の地が日本だからだという理由はつけられています。
そして、こういうリアルタイムと同じ時間軸で危機が進行していく物語ですから、まさに物語のちょうど折り返し点にあたる8月の放送回で、現実のほうもシンクロしてグランドクロスがやってくるのですから、ここを大イベントとして盛り上げないわけがありません。
結局、怪人たちを撃破はしていくものの、マイナスエネルギーが溜まることは阻止出来ず、8月15日放送の25話においてグランドクロス完成の時を迎え、グランディーヌ降臨の儀式が始まってしまいます。
しかし、ここで戦隊側の捨て身の阻止活動によって降臨の儀式は失敗し、グランディーヌは不完全体で降臨し、北極に作った宮殿に引き籠って、以後は完全復活を目指して足りないマイナスエネルギーを手下たちに集めさせることになり、戦隊側はこれを阻止するため戦うという、また以前と同じような戦いの様相に戻ります。
そして最後はいろいろあって完全体となった大魔女グランディーヌと戦隊の最終決戦ということになります。
なかなか巧みな構成になっているといえます。

さてここで問題は、この戦隊ゴーゴーファイブが、どうして今回は「救急戦隊」なのかです。
1999年だから「99」と引っ掛けて「救急戦隊」としたという要素もあるでしょうが、それはあくまで語呂だけの問題であって、もし語呂だけでそのようにしたのだったら実際は内容は全然違っていてもいいわけです。「救急」なんて言葉は抽象的で何とでも解釈出来ますから。
しかし実際に作品全体を貫くコンセプトとしてしっかりと救急救命活動が据えられているわけですから、決してこれは単なる語呂合わせではなく、災害時の救急救命活動が作品のコンセプトであることは明白です。
つまり、ゴーゴーファイブは災害などから人命を守るための戦隊なのだということは最初からしっかり作品の大方針であったのです。

大魔女グランディーヌにしても、単なる悪魔ではなく、「災害をもたらす悪魔」という意味で「災魔」と呼ばれており、グランディーヌが降臨すると地球規模の大災害が起きるという設定になっています。
だから災害から人命を守る戦隊ゴーゴーファイブは、大災害を未然に防ぐためにグランディーヌ降臨を阻止しなければならず、そのためには手下の怪人たちの破壊活動を阻止するために戦うことになるのです。
しかし、実際は「災魔」などという用語自体が存在せず、このあたりは1999年のグランドクロス時の悪魔降臨説と救急戦隊という2つのコンセプトを繋げるための苦労の跡が垣間見えます。
別に普通に邪悪な悪魔の降臨を地球防衛軍あるいは伝説の勇者みたいなものが阻止するという話でも、物語はもっと自然な形で成立したはずです。
それをあえてせずに「救急戦隊」にこだわったのは、それなりの理由があってのことでしょう。

災害から人命を守るヒーローというのは、メタルヒーローシリーズにおけるレスキューポリスシリーズを思い出させます。
スーパー戦隊シリーズは「メガレンジャー」以降、メタルヒーローシリーズの影響を強く受けていますが、
それはメタルヒーローシリーズが絶対正義でない正義のヒーローが悪に打ち勝つことが出来る理由を追求してきたからです。
その要素を採り入れて戦隊シリーズは「メガレンジャー」「ギンガマン」という順に復活してきたのです。
そして、そうしたメタルヒーローシリーズにおける試みが始まったのはレスキューポリスシリーズにおいてでした。
つまり、「ゴーゴーファイブ」という作品は、メタルヒーローシリーズにおける「正義が悪に勝つ理由」の原点に立ち帰って、その理念を「闇の意思」そのものと言っていいマイナスエネルギーの塊に対峙させることにしたのです。

正義が悪に勝てる理由は、何かを守りたいという気持ちが自分の中の闇に打ち勝つからです。
その何かをこの作品では「人の命」としました。これはなんとも直球です。
「人の命は地球の未来!」というのがゴーゴーファイブの名乗り時の決めゼリフでありますが、これはただお題目として唱えるだけなら、ヒーロードラマとしては当たり前のことではあります。
昔の作品における地球防衛の戦いをしていた戦隊だって、地球に住む人々を守るためにこそ戦っていたのであって、気分としては「人の命は地球の未来」という感じでしょう。
しかし、ゴーゴーファイブの場合、これはお題目ではないのです。

ゴーゴーファイブは地球防衛軍の戦士ではなく、あくまで災害時の救命活動が本分の救急戦隊なのです。
だから、そもそも地球防衛の戦いの専門家ではないし、それがどういうものなのかもよく分からないのです。
彼らは戦闘訓練を受けたり戦士の心得などを教えられたこともなく、ギンガマンのようなプロの戦士ではありません。
彼らが戦っているのはスーツの性能によるものです。
ゴーゴーファイブのスーツはメガレンジャーのスーツに似たタイプで、さすがにメガレンジャーのように全自動というわけにはいきませんが、使い方はスーツに組み込まれたガイドラインに沿って瞬時に適切な行動が選択出来るようになっています。

ならばゴーゴーファイブがメガレンジャーと同じような素人戦士なのかというと、それは違います。
彼らは戦闘のプロではありませんが、もともと消防局のレスキュー隊員、化学消防班員、ヘリコプター部隊員、そして首都警察の巡査、病院所属の救急救命士というように、全員が救急救命活動に関わる現場のプロです。
だから地球防衛の戦闘のことはよく分からないが、「人の命を守る」という一点に関しては全員が揺るぎない信念と覚悟を持っていますから、
「人の命を守る=地球の未来を守る」という等式を自分の頭の中で描くことによって、最初から怪物と戦うことに関する不安や恐れなどは吹き飛び、戦う覚悟が定まっていました。
「人の命は地球の未来!」というのは、そういうゴーゴーファイブ特有の戦いについてのスタンスを表しているのです。

だから、彼らにとって「人の命を守る」というのは単なるお題目ではないのです。
「戦った結果、人の命を守る」のではなく、「人の命を守る」という強い想いが無ければ彼らは戦うことすら出来ないのです。
だから彼らは常に「人の命を守る」ということを強く思いながら戦っています。
常にそういうことが描写されているわけではありませんが、彼らがもともと救急救命のプロであることと、毎回繰り返される「人の命は地球の未来!」という熱いセリフによって、彼らが常に「人の命を守る」という決意を心の中心に据えて戦っていることは、ハッキリと伝わってきます。

ただ、そういう「守りたい気持ち」を持って戦っているだけでは、それは確かにヒーローではありますが、そのヒーローがより強大な悪に勝つことが出来る理由にはなりません。
そこに説得力を持たせるためには、その「守りたい気持ち」によって、そのヒーローが自分の心の闇や弱さに打ち勝つ描写が必要なのです。
ところがゴーゴーファイブでは、彼らは「人の命を守る」という一点において戦う覚悟を固めてしまってますのでメガレンジャーのように覚悟出来ずに弱気になったりしませんし、
逆に「人の命を守る」という一点しか信念の選択肢が無いので、ギンガマンにおけるヒュウガやリョウマのように迷ったりもしないのです。
つまりゴーゴーファイブは「人の命は地球の未来!」という信念があまりに明快で、心に闇や弱さが生じる余地が無いように見えるのです。

しかし、これは全く逆です。
「人の命を守る」という想いが戦いの際に心の中心にあるため、彼らは戦いながらでも常に人の命を助けようという意識が強過ぎるのです。
つまり、単に敵の怪人を倒して目的達成なのではなく、怪人を倒すのは彼らにとっては通過点に過ぎない。その後、被災者が助かることが真の目的であり最終目標なのです。
その救命作業までいつも彼らがやるわけではなく、それは消防局などと役割分担していることが多いのですが、それでも彼らの意識の中には戦いの時も常に被災者のことがあります。
要するに彼らは戦いにおける達成目標のレベルを自分で勝手に引き上げているのです。
敵を倒すことだけで安心したり満足することは出来ないのです。

だから逆に言えば、敵を倒す程度のことで苦戦していると、焦りも倍増します。
目標値があまりに高いので、同じことをやっていても、他の戦隊よりも目標達成率が極端に低くなるのです。
だから上手くいかないと、苛立ち、焦り、叫び喚き、遂には絶望してしまうことも多々あります。
戦いが不安で絶望するのではなく、人の命を助けられないかもしれない不安から絶望してしまうわけです。
そうして心に弱さが生じた時にこそ「人の命を守りたい」という強い想いが、彼らの心の弱さに打ち勝ち、その結果、敵にも打ち勝つのです。
そうした彼らの熱い熱い大逆転の描写を何度も繰り返し描写することによって、人の命を守りたいという彼らの強い想いが彼らが悪に打ち勝つ原動力になっているのだということが強く実感される構成となっているのです。
そのために、彼らは戦闘のプロではなく救命のプロでなければいけなかったのでした。

scan006.jpgこの5人の救命のプロは5人兄妹で、紅一点はゴーピンクに変身する巽祭(マツリ)です。
巽家は代々の江戸の町火消しの家系で、それは由緒正しいのかそうでないのかよく分かりませんが、兄妹はみんな市民の安全を守る職業に就いています。
兄4人の下の末っ子のマツリは21歳の救急救命士で、国立臨海病院という病院所属でした。
どうも巽家は海の近くにあるようで、そのやたらと江戸っ子下町風情であることから、住所は深川や木場などの東京の古い下町のあたりではなかろうかと思われます。

その臨海病院で誇りをもって日々一生懸命に救命士の仕事をしていたマツリですが、
ある日、東京に変な隕石が落ちてきて、それが化け物の姿になって暴れ始めた時、それまで10年間音信不通だった父親、巽モンドが突如として現れて家で寝ていた兄妹5人に救急戦隊になるよう命令したのです。
何のことやら分からないマツリ達兄妹でしたが、ほとんど無理矢理スーツを装着させられて、無理矢理に被災現場に送られ、
5人はもともと救命活動をしなければいけないと焦っていたので、結局モンドのペースに乗せられてノリノリで救助活動を開始し、
モンドが開発したという素晴らしい威力の装備を夢中で使いこなしていたところ、
災害の根源である隕石から変形した化け物が襲ってきて、父の指示に従いながら応戦しているうちに巨大ロボまで操縦して化け物を倒してしまったのでした。
その後、職場に行くと何故か全員辞表を提出して退職したことになっていて驚くのですが、父モンドの仕業でした。
モンドは5人に仕事を辞めて救急戦隊ゴーゴーファイブに専念するよう命令したのでした。

なんかもうムチャクチャなのですが、
モンドという人はもともとは巽防災研究所の所長、といっても個人で勝手にやってただけの民間の科学者でした。
ただ、とんでもない天才で、しかも天才ならではの変人で、一種のマッドサイエンティストの類です。
10年前にモンドはマイナスエネルギーの存在を発見し、それが近い将来、地球に大災害をもたらすだろうことを予測し、危機を訴えましたが、当然誰も変人のモンドの言うことをまともに相手にしません。
そこでモンドは仕方なく(?)家族にも何も告げずに姿を消し、秘かにマイナスエネルギーの起こす大災害に対抗する装備の開発に着手したのでした。
そうして勝手に5人の子供たち用のゴーゴーファイブの装備をある程度完成させ、東京湾の海底に勝手に秘密基地まで作っていたモンドでしたが、
遂に10年経って隕石の落下を見て自分の予期していた危機が到来したと悟り、姿を現したのです。

モンドが失踪した時、長男のマトイは15歳で末っ子のマツリは11歳でした。
その後、モンドを捜しに旅に出た母の律子も飛行機事故に巻き込まれて行方不明となった時、長男のマトイは17歳、末っ子のマツリは13歳でした。
その後は長男のマトイが8年間、家長として弟や妹たちの面倒を見て散々苦労したのでした。
モンドにしてみれば律子がいるので大丈夫だと思っていた目算が外れたのかもしれませんが、それにしてもその律子にさえ何も言わず姿を消したのはやはりマズかったわけで、マトイを筆頭に男兄弟4人はみんなモンドのことを怨んでいました。
その上、勝手に仕事まで辞めさせられて面白いはずもなく、当然、モンドの振る舞いに一斉に反発しますが、
末っ子のマツリだけは素直に父が帰って来てくれたことを喜び、兄たちをたしなめます。

実は長男マトイはあまりの独裁ぶりに家庭内では弟たちから鬱陶しがられており、その弟たちも家庭ではほとんど役立たずであったので、
巽家を実際に取り仕切っていたのは家事全般を担当していたマツリでした。
だから4人の兄はマツリには頭が上がらない状態で、
それにマイナスエネルギーの脅威によって人々の命が危険に晒されていることがハッキリした以上、それに対抗出来る唯一の装備であるゴーゴーファイブの装備は、「人の命を守る」という使命感を持つ彼らにとっては魅力的でした。
そういうわけで結局は、父モンドを司令官として5人兄妹による救急戦隊ゴーゴーファイブが動き出すことになり、
いざやり始めると全員もともとの職業意識の高さからテンションは上がりに上がり、やたらと熱くノリノリで戦うことになったのでした。

このようにマツリは末っ子ながら巽家を裏で取り仕切るしっかり者で、それでいて素直で可愛い性格なので、4人の兄たちから非常に大事にされています。
まぁ実際、マツリがいないと4人はすごく困るわけで、大事にするのは当然でもあるのですが、
4人の男メンバーからこれほど近く熱い愛情を注がれているヒロインというのは他にはいません。
他人同士だったらこんなことは有り得ないわけで、これは男4人で末っ子に女1人という兄妹戦隊ならではの特徴です。
熱い愛情も兄妹愛なのでいやらしさが無く爽やかです。
マツリはとても可憐なのですが、ほとんどセックスアピールを感じさせないのは、周りにゴツい兄達4人に常に囲まれているからでしょう。

最強の妹キャラでありながら、しっかり者で母親のような温かさもあるマツリですが、
しっかりしているのは家庭内だけではなく、もともと救急救命士という立派な社会人として働いていたわけですから、子供じみたところはなく、折り目正しく大人の雰囲気もあります。
それでいて愛敬があり、小悪魔的な側面もありますから、かなり魅力的な女性なのです。
そして戦隊ヒロインとしては、5人兄妹の中で一番、命を救う最前線の現場に居たため、最も命の重みを知っており、使命感は誰よりも強く、弱者を虐げる者に対しては最もストレートに怒りを向けます。
純粋でひたむきではありますが、それは幼さや未熟ゆえの純粋さではなく、しっかりとした職業意識や知性に裏付けられた純粋さです。
といって、クールではなく、命の最前線の職業意識であるため、非常に熱血です。
また、マツリは外見は綺麗な女性なのですが、ショートめの髪型のせいもあってか、どことなく中性的な魅力があります。
兄4人といつもつるんできたため、一番下の弟的な感覚も多少はあるのでしょう。そういうところが非常にカッコいいヒロインに見えるのです。

このようにマツリはかなり優秀なヒロインで、熱く濃い人ばっかりの登場キャラの中でも立派にキャラ立ちして存在感を発揮しています。
しかし何といってもこの作品で最も特筆すべきキャラは長男であるゴーレッドのマトイ兄貴です。
マトイ兄貴があまりに熱くて濃いので、マツリのようにヒロインとしては相当レベルが高いキャラですら、やや霞んで見えてしまうほどです。

そもそも、何故ゴーゴーファイブは兄妹戦隊なのか。
兄妹戦隊といえば「ファイブマン」がありましたが、兄妹戦隊には弱点があります。
まずバックボーンが皆同じになるので個性が薄くなりがちです。「ファイブマン」の時は職業まで皆同じ小学校教師で職場まで同じでしたので、やたら個性が薄くなってしまいました。
そしてもう1つ、まとめ役である長男のキャラだけが立ち過ぎるという欠点があります。
対等な立場の5人が集まってくる他の戦隊と違って、兄妹の場合は最初から明確な上下関係が出来てしまっているのです。
その頂点にいるのが長男で、「ファイブマン」の場合はその長男の星川学がレッドで主役で、しかも両親不在なので家長でもあり、しかも学はすごく立派な人物だったので、学ばかりが目立ってしまいました。

ゴーゴーファイブの場合、改善策として職種を全員違うものにしていますが、それでも全員が救急救命関係ということで似ています。
長男のキャラだけが立ち過ぎるという弊害に関しては、父親が司令官として存在していることでマトイを家長の座から引きずり降ろし、しかもマトイがあまり立派な人格者ではなく弟たちに煙たがられているという設定にすることで解決しようとしていますが、それがむしろマトイのキャラをいっそう濃いものにしてしまっています。
結局ゴーゴーファイブにおいても兄妹戦隊の弱点はさほど改善はされていないのですが、それでも兄妹戦隊という形にこだわり、しかも「ファイブマン」の時とは違って全員のキャラがしっかり立っているのは不思議です。

何故、兄妹戦隊ということになったのかというと、おそらく救急救命のプロ達の戦隊という設定にしたことから導かれた結論であろうと思われます。
戦闘のプロではなく救命のプロ達がいきなり戦闘部隊のような働きまで求められてこなしてしまえるのは、その5人がよほど救命というテーマで1つに結束したチームだからです。
そうなると、この5人はもともと同じチームで活動していたということにしなければならない。
しかし、そうすると「オーレンジャー」の時と同じようにバックボーンが同じでキャラが薄くなってしまいます。
それに皆、同じチームだったということにすれば例えば5人とも元レスキュー隊員ということになり、ますます個性が薄くなります。
やはり、せめて職種はバラバラにしないといけない。
しかし職種がバラバラなのに同じチームで結束していたというのは不自然です。
それを自然に実現するためには、「救命」という一点で繋がったバラバラな職種の5人兄妹が一つ屋根の下に同居して1つのチームのように固く結束していたという形にするしかなかったのでしょう。

つまり、この巽兄妹の結束は異常に固いのです。
両親がいなくなって8年間の思春期から社会人生活にかけて5人で支え合ってきたという点と、
同じ「救命」というテーマを持った職種同士で実際に何度も情報交換し合って連携して現場をこなしてきた経験があり、鉄の結束を誇っています。
やたら喧嘩が多いのですが、それはお互いを心の底から心配し合ってのことであり、逆に言えば遠慮無く何でも言い合える仲である証拠です。実際、すぐ仲直りします。
やたら熱い下町人情一家という感じです。

このやたら血の気が多く結束の固い巽兄妹が、未だかつて経験したことの無い大きな危機に立ち向かい、
怪物と戦いながら常に人命救助のことまで気にかけるという常にテンパリ気味の状況の中、
絶望しそうな気持を奮い立たせて大逆転を繰り返していくにつれ、そのテンションは異常なまでに上昇していきます。
このテンションの高さ、暑苦しさによって、本来は影が薄くなってもおかしくない設定の5人のキャラが見事に立っているのです。
ただ、その中でも、その結束の中心となっている長男のマトイのキャラのテンションの高さと暑苦しさは極端に高く、
まるでジャンプ漫画の主人公キャラのようで、およそ三次元キャラとは思えないほどです。

マトイは何か問題が起きても常に「気合いが足りねえんだ」という言葉で済ましてしまいます。
そして実際に気合いで何とかしてしいまいます。
というか、レスキュー隊の隊長をやっていただけあって極めて有能な男なので、冷静な計算もあって事態を打開しているのですが、
そういうことも含めて全部「気合い」という短い言葉で片付けてしまう脳筋野郎なのです。
また名乗りの時の「人の命は地球の未来!燃えるレスキュー魂!救急戦隊!ゴー!ゴー!ファイブ!出場!」という、やたら暑苦しい掛け声もマトイがやり始めたもので、
最初は他の4人はビックリして引きまくりでした。しかし次からは全員でやるようになっていました。
極めつけは、巨大戦の決め技の時にいちいちコクピットで大袈裟な振りつけで「剣よ!光を呼べ!」「怒りの拳よ!灼熱の嵐を呼べ!」などと叫ぶことです。
もう意味不明なんですが、とにかくテンションは上がりまくります。
完全に振り切れた熱血野郎となったマトイに感化されて、弟や妹たちもどんどん熱血になっていきました。

このように巽兄妹の結束を異常に熱く固いものとしたことに関連して、この兄妹のもう1つの信念「信じあうのが家族です」というのが設定されています。
これは父モンドが失踪した後、母の律子が兄妹たちに言っていた言葉で、この言葉を兄妹たちが大事にしているために、兄弟の結束は揺らぐことなく、父のことも許し、母の生存も信じることが出来ているのです。
人情家族ドラマのような展開になるとしばしばこの言葉は繰り返され、ゴーゴーファイブの家族の信頼関係は強調されます。

そして、それに対比する形で災魔の側では大魔女グランディーヌを母親とした家族として構成されており、グランディーヌの子として4人兄妹が幹部を務めています。
つまり、正義の戦隊と悪の戦隊を対置するというビーファイターシリーズ以来の伝統がここでも使われているのです。
そして、正義の戦隊である巽兄妹および家族が信頼し合っているのに対して、災魔兄妹と家族は全く信頼関係がありません。
兄妹は自分こそが母に気に入られようとして足を引っ張り合い、その母であるグランディーヌも子供たちを捨て駒として利用しようとしています。

これは災魔という悪がどうして強大な力を持ちながら敗れるのかという理由づけにもなっています。
災魔は「闇の意思」そのものだと言ってもいいので、災魔自体が闇に呑まれたために敗れるというレトリックは成立しません。
しかし、闇の存在であったとしても、それでも親子の情愛ぐらいはあるはずです。
しかし災魔は親子の情愛すらも踏みにじったのです。
それゆえに、災魔は巽兄妹、巽一家の結束の前に敗れる運命となったというふうに論理づけることが出来るのです。

このように「ゴーゴーファイブ」という物語は、かなり理路整然と諸要素が整理されている物語なのであって、
巽一家と災魔一族のあらゆる面で相反する思想と思想がぶつかり合うイデオロギー戦争という形になってもおかしくないといえます。
ところが、この理路整然とした世界を巽兄妹の、とりわけマトイの熱血的な暴走が適度にぶち壊してくれるのです。
普通は悩んだり議論になったりする局面でも、マトイが「気合いだ!」なんて言って吹き飛ばしてしまうので、話がどんよりせずにサクサク進んでいくのです。
おかげでこの物語は非常にテンポが良く、やたらと勢いがあり、そして、やたら熱く濃いのです。
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 11:19 | Comment(0) | 戦隊ヒロイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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