2011年01月29日

タイムピンク

タイムピンク.jpg





















2000年度の戦隊はその数年前から「ミレニアム戦隊」と呼ばれて制作サイドでは特別扱いだったようです。
そしてミレニアム戦隊は「時間」をテーマとすることも既定事項だったようです。
2000年という年が時の節目ということで、タイムトラベルをネタにした作品としようということでしょう。
そういえば長い歴史を重ねてきたスーパー戦隊シリーズもタイムトラベルをネタにした作品はここまでありませんでした。
いや、そもそもタイムトラベルものというのはどうしても話が少し難しくなり、戦隊シリーズがメインターゲットとしている未就学児童層には理解させるのが難しいのです。
それにあえて挑戦しようというのですから、ミレニアム戦隊ということで少々難しい内容になっても仕方ないという下地はあったのでしょう。

ただ、それを加速させたのは、この作品がシリーズ開始25周年記念作品という位置づけとなってからでしょう。
確かに「ゴレンジャー」の開始は1975年ですから、2000年で25年目になります。
ただ、「ゴレンジャー」と「ジャッカー電撃隊」をシリーズに含むということは「オーレンンジャー」の時に20周年記念キャンペーンをするためにやったことで、その後は別にあまり強調されてはいませんでした。
それを再び25周年という形で強調することが出来たのは、2年前の1998年にこの2作品の原作者である石ノ森章太郎が逝去していたからでしょう。

というより、石ノ森が逝去し、彼が晩年に希望していた「がんばれ!!ロボコン」のリメイクのために東映がメタルヒーローシリーズを終了して同枠で1999年に「燃えろ!!ロボコン」を制作して放送し、
その後番組として2000年に石ノ森の代表作である「仮面ライダーシリーズ」を「平成仮面ライダーシリーズ」として復活させようということになったのがきっかけでしょう。
つまり、石ノ森の遺志であったロボコンとライダーの復活をする代わりに、ゴレンジャーとジャッカー電撃隊を完全にスーパー戦隊シリーズに組み込んだというような感じです。

スーパー戦隊シリーズはテレビ朝日系の日曜朝7時半から8時までの枠、
そしてもともとメタルヒーローシリーズの枠であった時間帯で平成仮面ライダーシリーズをやるわけですから、
それは同じくテレビ朝日系の日曜朝8時から8時半までの枠であり、つまり日曜朝の7時半から8時半までの1時間、スーパー戦隊シリーズ、平成仮面ライダーシリーズが続いて放送されることになるわけです。

ただ、仮面ライダーのTVシリーズは1989年以来のことで、長いブランクがあります。
しかもテレビ朝日系で仮面ライダーをやるのは初めてのことで、このブランク期間中のライダー劇場版はことごとく興行的に失敗していました。
だからテレビ朝日としても慎重になるのは当然で、当初はむしろ長年の実績もあり、メガレンジャー以来人気作が続くスーパー戦隊シリーズの方が安定感はあると思われていたと推測されます。
それで、この2つの枠をまとめて1つの総合枠と捉えて、戦隊シリーズの人気でライダーシリーズの方を引っ張ろうとしたわけです。

平成仮面ライダーシリーズの第一作「仮面ライダークウガ」は子供向けドラマの枠に捉われない一般ドラマとしても視聴可能な作品を志向していました。
つまり割と高年齢層の視聴者をターゲットにしていたわけです。
ただ、「仮面ライダー」というものは子供向けのものだという先入観は当時は世間では強く、
シリーズ1作目から高年齢層を呼び込もうとしても、上手くいくかどうか未知数でした。
そこで、ライダーに比べれば確実な実績のある戦隊シリーズの方も高年齢層に受け入れられやすい内容にして、そっちで呼び込んだ高年齢層視聴者がライダーの方も見て、その良さに気付いてもらえるようにしようということになったのでしょう。
おそらくそういうわけで、2000年度の作品「未来戦隊タイムレンジャー」はシリーズ屈指の大人向け傾向の強い異色作となったのでした。

タイムマシンが発明されて10年ほどの30世紀末、
時間旅行の弊害で生じた歴史の混乱に対処するために設立された時間保護局の4人の新入隊員ユウリ、アヤセ、ドモン、シオンは
3000年のある日、ロンダー刑務所の冷凍圧縮刑から逃走したマフィアのボスのドルネロを逮捕するべく、リュウヤ隊長と共に初出動したが、
これはドルネロ一味の罠で、リュウヤに変装していたドルネロ一味の幹部に乗っていた時間移動船を乗っ取られてしまいます。
そのまま時間移動して2000年の日本に辿り着いた船から、潜入していたドルネロ一味はロンダーズ刑務所の冷凍圧縮された囚人全員を連れて、まんまと逃亡してしまい、2000年の日本にアジトを作り、ロンダーズ・ファミリーを名乗って悪事を犯し始めます。

囚人たちを鎮圧して歴史の改変を止めるため、緊急戦闘モードに変身しようとする4人だったが、
変身アイテムのクロノチェンジャーはチーム5人全員が揃わないと初期起動しないようプロテクトがかかっており、変身出来ない。
そこでたまたまその場に居合わせたリュウヤ隊長によく似た20世紀の若者の浅見竜也に5つめのクロノチェンジャーを渡して、最初の1回だけ一緒に変身するという奇策でプロテクトを解除し、
4人は変身に成功して、成り行きで一緒に戦う羽目になった竜也と共に、1人の囚人を捕えて冷凍圧縮に戻すことに成功します。

しかしその他の囚人たちを手にしたドルネロ一味の行方は分からず、30世紀の本部に報告したところ、
4人は全ての囚人を回収しドルネロ一味を逮捕するまで20世紀に留まるよう厳命されてしまう。
途方に暮れる4人であったが、そこに竜也がやって来て事情を聞き、4人に住処と仕事場を提供し、一緒に便利屋を開業する代わりに自分もタイムレンジャーの仲間として一緒に戦いたいと申し出ます。
最初は拒んだ4人だったが、「歴史は変えられないかもしれないが、自分の明日ぐらいは変えられる」という竜也の信条を聞いて心動かされ、竜也の提案を受け入れます。
こうして4人の30世紀人と1人の20世紀人が2000年の日本を舞台にして普段は便利屋稼業を営みながら、30世紀からやってきた犯罪者一味と戦う物語が始まったのです。

scan010.jpgつまり「タイムレンンジャー」に出て来る敵組織というのは、地球を侵略して支配しようとか滅ぼそうとかするような組織ではなく、単に金儲けのために犯罪活動を行う犯罪組織なのです。
悪質ではありますが、圧倒的な力を持っているわけではありません。
そもそもロンダーズ・ファミリーなんて言っても、そのメンバーは実質的にはボスのドルネロとその娼婦のリラと、腹心のギエンの3人だけであり、
あとはロンダー刑務所で冷凍圧縮保存刑を受けて、固められて小さくされていた囚人たちが多数いるのですが、この連中が他作品におけるザコ怪人に相当します。
が、この連中はもともとドルネロの子分ではなく、解凍してもらった義理で従っているだけですので、あんまり強固な組織ではありません。

30世紀には地球には様々な異星人や機械人間なども住んでいるので、ロンダーズ・ファミリーには色んな者がおり、奇妙な特殊能力を持った犯罪者ばかりですが、
ここでポイントはこの連中は皆、服役囚だということです。
つまり、一度は30世紀の公的機関によって逮捕された連中なのです。
中にはとんでもない凶悪犯もいますが、基本的には30世紀の装備を用いれば対処可能な連中ということになります。
要するにタイムレンジャーと対等、あるいは格下の連中ということになります。
中には実力で勝る連中もいますが、それでも他の作品の未知の侵略者のように全く対処不可能なほどに圧倒的なのではありません。
それでも20世紀の公的機関では対処困難な脅威ではあるのですが、竜也の父である浅見渡の設立したシティ・ガーディアンズでもそこそこは対処出来てしまったりもします。
つまり弱い部類の犯罪者ならば、20世紀の装備相手であっても圧倒的というほどではないという感じです。

こういうイマイチ強くない敵相手に、タイムレンジャー側も殺るか殺られるかの勢いで戦うというわけでもありません。
基本的には普通にやってれば勝てる相手ですし、そもそも殺してはいけないのです。
この犯罪者たちは死刑ではなく冷凍圧縮刑という超長期(千年単位)の特殊禁固刑の判決を受けているのであり、現場のレンジャー隊員の独断で命を奪うのは禁じられています。
というか、わざわざこんな特殊な刑罰が存在しているということは、おそらく30世紀には死刑は廃止されているのでしょう。

だからタイムレンジャーは囚人たちと戦いますが、決して殺さずに逮捕するのが任務です。
ただ、戦闘シーンは他の戦隊作品と同じような感じに作ってあり、一見ちゃんと敵を倒しているようには見えます。
解凍されて元の大きさに戻って暴れていた囚人を完全撃破した描写の後、再び冷凍圧縮された敵囚人の人形状になったものが転がり、それをタイムレンジャーは回収し保管していくのです。
また、戦闘員に相当するゼニットは新たに作られたロボット兵士なので、これは完全に破壊しても問題は無く、タイムレンジャーは容赦なく破壊していきます。
だから描写としては普通の戦隊の戦闘シーンと同じなのですが、それでも肝心の怪人については「殺していないで逮捕している」という印象は毎回しっかり強調されています。

こういう、正義側が悪側よりも実力的に優越しており、悪側を殺さず逮捕することを目的として戦うというのは、
メタルヒーローシリーズのレスキューポリスシリーズで見られたパターンです。
前作のゴーゴーファイブがレスキューポリスシリーズの世界観をベースにしながらも、災害そのものと戦うのではなく災害を起こす怪人を倒すという形をとっていたのに比べ、
このタイムレンジャーでは、更に一歩、レスキューポリスシリーズの世界観に近付いています。
それは大人受けする渋い作劇法ということになります。

また、渋いといえば、巨大戦で登場するメカやロボもこの作品では非情に渋く、地味です。
1号ロボが5人の搭乗する5つのビークルが合体して作られる点は、マスクマンからゴーゴーファイブの間はメガレンジャーを除いて同一で、タイムレンジャーもその範疇ではありますが、
ジュウレンジャー以降はその5機のビークルにはくっきりと個性がありました。
それがタイムレンジャーの場合は、5機とも非情に無機質な戦闘機で、個性はほとんどありません。
これは30世紀の最新科学で作られた時間保護局の装備なのですから、変なキャラクター性がある方が不自然なので、劇中では自然な描写なのですが、やはり玩具的な魅力には乏しいといえるでしょう。

その5機が合体する1号ロボのタイムロボも、3つの合体パターンは持つものの、
1つは巨大戦闘機であり、残り2つがロボ形態ですが両方とも地味な姿で、
2号ロボのタイムシャドウは合体ロボでも変形ロボでもなく実質は単なるサポートロボでありタイムロボの強化合体パーツのようなもので、
存在感は従来の2号ロボに比べて薄かったといえます。
また従来なら2号ロボの合体パーツとなるはずの新たな5機のビークルも登場しないわけですから玩具の点数自体が従来作品よりもかなり少なめになります。
唯一魅力があったのは追加戦士用ロボのブイレックスですが、これも合体ロボでなく単体のロボで、タイムロボやタイムシャドウと合体出来るわけでもなく、玩具としてはプレイバリューはそう高くはありませんでした。
等身大戦の装備も地味で、また、名乗りも各自がコードネームを名乗った後、「タイムレンジャー!」と言うだけで非情に地味です。
「未来戦隊」とは言いません。そもそも彼らは自分たちのことを「未来戦隊」とは一度も言っていませんし、劇中の誰もその言葉は言いません。
番組のタイトルコールの時に言われるだけです。

まぁ30世紀の時間保護局の装備としてはかなりリアルに作ってあるわけですが、
そういうリアルさを優先させて玩具としての面白味を重視していないという点からも、この作品がメインターゲットをやや高めに設定していることが分かります。
そういう点もレスキューポリスシリーズと同じコンセプトです。
ただ、こういう地味な連中が地味な武器やロボで地味に戦って、しかもあんまり強くない相手を殺さないように加減して戦っているわけで、
戦いにイマイチ、カタルシスというものがありません。
いや、決して戦闘シーンがつまらないわけではなくて、
この作品の戦闘シーンはかなり緻密に作ってあり、作戦や駆け引きの妙が楽しめるのですが、
玩具購買層の小さい子供たちにはやや難しい内容です。
つまり、そういう優れた部分もやはり大人向けなのです。

だいいち、スーパー戦隊シリーズの基本構成は、「強大な悪の侵略者に対して正義の戦隊が立ち向かい劣勢からの大逆転で勝利して世界を守る」というもので、
その大逆転のカタルシスが子供にウケるわけですが、そのパターンから外れたタイムレンジャーは根本的に見せたい部分が違う作品だといえます。
子供向けヒーロードラマとして最も大事な点は、「何故、正義のヒーローは強大な悪に勝つことが出来るのか」についての理由を提示することです。
それは例えば自然を愛する心であったり、弱者を守りたい気持ち、命を救いたい気持ちなどが誰よりも強いからなのであり、
そうした描写を通して子供たちにそうした気持ちの大切さを学ばせることが目的であり、
子供たちもそうした気持ちに触れ、正しい心の力が勝利に繋がるという構図にスカッとするものです。

ところがタイムレンジャーにおいては、戦隊側の方が悪の側よりも優越しているので、勝つのが当たり前で、そこに特別な理由など必要ありません。
だから、正義が悪に勝つ理由というのはこの作品では提示されません。
それは子供たちの求めるカタルシスに欠けるということであります。
ただ、それは言い換えると、従来の戦隊シリーズの作劇パターンから自由になれるということでもあります。
そういうわけで、この作品ではそれまで見られたことのないドラマが展開していくことになります。

この作品におけるドラマの主眼は、悪との戦いなのではなく、
自分の明日を自分の手でより良いものに変えたいと思ってもがいている主要登場人物たちの織りなす人間模様を描くことです。
これは言い換えると、悪との戦い(あるいは敵側は正義との戦い)の方ばかりに一斉に向いているわけではなく、それぞれのキャラがある程度別方向を向いているということで、
その分、非常に登場人物が個性的でバックボーンも多彩なものになります。

主人公タイムレッドの浅見竜也は20世紀の日本有数の財閥の22歳の御曹司で、親に決められた人生を拒んで自分の明日を自分で変えたいと思い便利屋を開業しタイムレンンジャーの一員として戦うことを決断しました。
30世紀から来た4人のうち、アヤセは22歳にして不治の病を抱えていることが判明してレーサーを辞め、命を弄ぶ犯罪者と戦う道を選び、
ドモンは業界を追放された22歳の元格闘技選手で、戦闘力を活かして時間保護局のレンジャー隊に転職し、
シオンは天才的頭脳を持つハバード星人の唯一の生き残りの17歳の少年で、研究材料のように管理された生活から逃れようとして時間保護局に志願しました。
皆、現状の何らかの絶望を抱えて、そこからの打開を図って動き出そうとしたところで巡り合ったことになります。

scan005.jpgそして、この作品のヒロインであるタイムピンクのユウリは、
実は30世紀のインターシティ警察の21歳のマフィア担当捜査官で、ドルネロ一味の不穏な動きを察知して時間保護局に潜入捜査していて、
結局はドルネロらに出し抜かれて20世紀でタイムレンジャーとして戦う羽目になってしまいました。
どうしてドルネロを追っていたのかというと、刑事としての職務から来る正義感ももちろんありますが、
実はユウリの父親も元警察官で、ドルネロの雇った殺し屋によってユウリの両親と妹は殺されているのです。
つまりユウリはドルネロのせいで家族を皆殺しにされてしまったわけで、ドルネロに恨みを抱いているのです。
家族を失ったせいで絶望に沈んだユウリはドルネロを逮捕することで人生をやり直すきっかけにしたいと思って、時間保護局に潜入捜査で入り込んだのでした。
そういう意味で、ユウリもまた他の4人と同じく、自分の手で明日を変えようとしてもがいているのだといえます。

この、刑事であったり、家族を敵に殺されていたりするという設定はまたえらく懐かしい感じがします。
シリーズ初期のカレン水木やダイアン・マーチンらと同じです。
すると必然、キャラも似てくるわけで、ユウリもクールビューティーで大人の魅力を持った女性ということになります。
このタイプのヒロインというのはスーパー戦隊シリーズでは既に古いタイプで、桃園ミキ以降の純粋ひたむき可愛いタイプが主流になって久しいのですが、
このタイムレンジャーという作品はそもそも従来のシリーズ作品とは一線を画した作品で、
やや高年齢層に向けた作品なので、高年齢層にアピールする力のあるクールビューティータイプのヒロインでも十分OKなのです。

ただ、シリーズ初期のクールビューティー系ヒロインはどちらかというと個性が薄くなるぐらい完璧なタイプだったのですが、
ユウリの場合はクールで強気ではあるが、かなりツンデレ系で、その不器用な感じが可愛らしいところもあります。
偉そうな割に家事が全然ダメというデキる女の意外というか典型的というか、そういう弱点もあったりして、なかなか愛すべきキャラです。
ただ、ユウリというキャラ自体がこの物語の中で突出して魅力的なキャラというわけではないと思います。
むしろ、この物語全体が極めて魅力的に仕上がっており、その中でユウリというキャラが中心となって描かれることが多いので、物語の流れの中でユウリが魅力的に見えてくるのです。
キャラ自体に何か破壊的な魅力があるというのとは少し違います。

何故、ユウリがこの物語の中で中心となって描かれることが多いのかというと、
ユウリがこの20世紀において活動を開始した変則的なタイムレンジャー隊のリーダーだからです。
本来のチームのリーダーは30世紀に残ったリュウヤ隊長なのですが、リュウヤが不在で活動する以上、誰かリーダーを決めねばなりません。
竜也は空手の達人で生まれついての人を惹きつける魅力やリーダーシップも有るのですが、世間知らずのお坊ちゃんであり、まず何と言っても30世紀の時間保護局本部との間で意思の疎通が出来ませんのでダメです。
残る4人のうち、アヤセはメカの操縦には秀でているが社交性があまり無く、ドモンは戦闘力は高いが単細胞、シオンは天才的頭脳を持っているが無邪気な子供で、
皆、特化して秀でた部分はあるもののバランスが悪く、あまりリーダー向きではありません。
それに時間保護局隊員といっても、この3人は全くのルーキーで、犯罪者相手の実戦経験は乏しいと言えます。
その点、ユウリはマフィア対策班の捜査官として訓練も実戦も十分に積んでおり、
ロンダーズ・ファミリーの手口もだいたい把握しており、戦闘力もメカの扱いも知性も、ついでに美貌も、あらゆる面で最もバランスがとれていて、
冷静な判断力や作戦をまとめ上げ実行する能力を持ち、性格も真面目で正義感も最も強いので、まさにリーダーとして最も適格といえます。

ただ、ユウリは確かに有能な女性なのですが、基本的にはあまり器の大きい人間ではなく、
真面目すぎて融通が利かなかったり頑固だったりして、すぐ怒るクセもあります。暴力的でもあります。
それに基本はいくら有能で冷静でも、ことドルネロのことになると、恨みがありますので、つい冷静さを失うことも多々あります。
そういう精神的に不安定な面もあり、意外に芯が弱く、誰かの支えを必要とする場合もあります。
まぁ要するに、中身は普通の若い女性なのです。
有能ではあるが、まだリーダーを務めるほど成熟はしていないわけで、成り行き上、仕方なくリーダーを務めているだけだといえます。

それに、ユウリがリーダーといっても、それはロンダーズ・ファミリーとの戦闘モードの時のことであり、
20世紀の世界で生活していくための便利屋稼業に関しては、あくまでリーダー格は20世紀人の竜也です。
普通の戦隊作品では、こういう生活資金に関する問題は大して描写されずに何時の間にか何とかなっているものなのですが、
このタイムレンジャーという作品の面白いところは、この便利屋稼業の方がむしろ詳細に描写されていることです。
金策に苦しんだり、仕事をとるために5人が一生懸命になったり、そういうことがしっかり描かれているのです。
あくまでリアル志向なのだということなのでしょうが、そのおかげで竜也のリーダーシップが強調される作り方になっています。
逆に、この便利屋稼業の方ではユウリは自信満々で取り組んでは不器用ゆえにドジばかり踏んだりして、あまり稼ぎが良い方ではありません。
ちなみに稼ぎ頭はシオンです。

この便利屋稼業のシーンは普通の戦隊ドラマでは不要だと思うのですが、
タイムレンジャーの場合、5人が絶望から出発して自分の明日を自分で見つける話ですので、
最初は未来にあまり希望を持っていなかった5人が便利屋稼業を通して新しい自分の居場所を見出していくという意味で非常に意義あるシーンとなっています。
ユウリも便利屋稼業で失敗したりしていくうちに頑なな心がほぐれていき、仲間と打ち解けていきます。
特に竜也に依存したいという心理が生じてきて、それは戦いの場でも竜也への大きな信頼となっていきます。
そして、それは恋心に変わっていき、竜也もユウリのことを好きになりますので、2人は相思相愛となります。
むしろ、戦闘モードのシーンが多ければ、超個性的なアヤセやドモンやシオンのキャラの方が立ちまくって、冷静なまとめ役であるユウリのキャラは薄くなった可能性が高いでしょう。
この便利屋稼業シーンや竜也とのなかなか素直になれない恋愛関係の描写などが有ったためにユウリというキャラの印象が極めて強いものとなったと言えるでしょう。
結果としてユウリは非常に人気の高いヒロインとなりました。
ただ、2人がお互いの気持ちに気付く頃には事態は急展開していき、2人が結ばれるどころではなくなっていきます。

物語は、竜也の父がロンダーズ・ファミリーの犯罪行為から契約者を守るために創設したシティ・ガーディアンズという民間警備会社に所属する竜也の旧友で空手のライバルでもある滝沢直人が
ひょんなことから30世紀の時間保護局の新装備であるタイムファイヤーやブイレックスを手に入れたあたりから大きく動き出していきます。
直人は貧しい生まれながら独自の優しさや正義感を持った優秀な男だったのですが、
竜也に対するコンプレックスと反発心が強く、竜也を追い越して見返してやりたいという上昇意欲に燃えており、
たまたま手に入れた強大な力を使ってタイムレンジャーと距離を置きつつ共闘してロンダーズ・ファミリーを叩きつつ、
その力によって自身のシティ・ガーディアンズ内での地位を上昇させていく野心に取りつかれていきます。

一方、30世紀の時間保護局では本来のタイムレンジャー隊の隊長であるリュウヤが何やら暗躍し始めます。
その後、2000年の日本にGゾードという謎の巨大ロボが出現して破壊の限りを尽くし始め、
そこで初めてユウリらは自分たちが20世紀に送り込まれた真の目的をリュウヤから聞いて知ります。
それは時間保護局の2994年の時空移動実験の失敗で時空に消えたGゾードが2000年に現れて大暴れした際に起こした時空の乱れの影響で3000年の世界が消滅するという歴史の運命を修正するため、2000年の日本でGゾードを破壊して3000年の消滅が起きないようにするというものでした。
ユウリらが20世紀にやって来て竜也と共に戦うというのも、30世紀のリュウヤによって仕組まれたことであったのです。

なんとかGゾードを倒してユウリらは任務を果たしますが、
自分の手で選んだと思っていた明日が他人によって決められていた道だったと知った竜也はショックを受けて便利屋を廃業してしまいます。
同様にショックを受けたユウリらには任務を果たしたことで30世紀への帰還命令が下ります。
一方、シティ・ガーディアンズの本部長へ出世していた直人は政界の大物に取り入って竜也の父を追いだしてシティ・ガーディアンズの全権を握ろうとしますが、竜也の父の反撃によって失脚します。
また、ロンダーズ・ファミリーは幹部のギエンがリュウヤの差し金で暴走してドルネロを殺し、これによって壊滅します。

photo004.jpgそして破壊の限りを尽くすギエンの体内の反応炉の暴走によって今度は年が明けた2001年の世界が時空の歪みで消滅の危機を迎えます。
どうもGゾードを倒したことで30世紀の消滅が回避された代わりに、20世紀が消滅する運命になったようなのです。
20世紀が消滅すれば30世紀も消滅しそうにも思えますが、Gゾードを倒したことで歴史が変わり、新しく生まれた30世紀には新しく生まれた別の20世紀がくっつき、
今まで存在した20世紀は不要になったので消滅する運命となったようです。
そして、その新しく生まれた30世紀はユウリらにとって辛い絶望の過去は消え去った快適な世界となっているようなのです。

母の叱咤によって立ち直った竜也は2001年の世界の消えゆく運命を変えて世界を救うためタイムレッドとして戦うことを決意しますが、
もしユウリらが共に戦って2001年の消滅の阻止という歴史の再改変に立ちあってしまうと、ユウリらの戻る30世紀は、彼女らにとって快適となった30世紀とはまた別の30世紀になってしまうと知り、
無理矢理ユウリらを未来に帰して一人で戦うことを決意します。
一方、全ての地位を失い放心状態となった直人はギエンの指揮下のゼニットと交戦して致命傷を負い、
竜也に救われますが、結局、ブイレックスの操縦装置を竜也に渡して息絶えます。

3001年の世界に戻ったユウリらを待っていたのは快適な世界でした。
ユウリの家族は殺されておらず幸せな家庭は健在でした。
アヤセの病気は治療法が見つかっており、適切な治療を受ければレーサーにも復帰出来ました。
ドモンは協会から追放されておらず格闘技選手のままでした。
ただシオンだけは母星の滅亡は地球外のことであったので運命は変わっていませんでした。
しかしユウリらはそれは自分の手で掴んだ明日ではないと思い、2001年に戻って竜也と共に自分たちの手で未来を作ることを選び、脱走を図ります。
これをリュウヤは執拗に邪魔をして、なんとか4人を2001年に戻さないように画策しますが、
結局、銃を突き付けたままアヤセと格闘した際、銃が暴発してリュウヤは自分の身体を撃ち抜いてしまい絶命します。

リュウヤが死に際に語った真実とは、
実はGゾードの暴走による30世紀の消滅の場合も、ギエンの暴走による20世紀の消滅の場合も、
どちらにしてもその時、20世紀の戦場でタイムファイヤーが死ぬことになっており、
そのタイムファイヤーとはリュウヤ隊長自身であったことでした。
2994年のGゾードの実験失敗時の時空の歪みを覗いてその運命を秘かに知ったリュウヤは、
自身の死の運命を回避すべく職務を利用して6年間、細かく歴史に介入していき、
直人をタイムファイヤーに仕立てて自分の身代わりで死ぬように誘導していったのでした。
その直人の死の運命が変わることを恐れてリュウヤは4人が2001年に戻ることを阻止しようとしたのですが、その結果、自分が命を落とすことになったのでした。

その後、4人は消滅しようとしている2001年に戻り、一人で戦う竜也と合流し、直人の死を知り愕然としますが、
明日を変えようとして変えられなかった直人の代わりに、2001年の消滅する運命を変えることを固く決意し、
ブイレックスを使った作戦でなんとかギエンの暴走を抑え込みつつ倒し、世界の消滅の危機を回避しました。
その直後、ユウリら4人の身体はまたその2001年から繋がって生まれた新しい3001年へと戻り始め、竜也の前から姿を消していきました。
そして一人残った竜也は、自分の生きる20世紀の先に確かにユウリらの生きる30世紀が繋がっていることを実感し、物語は終わります。

このように、この物語のクライマックスにおいては、ロンダーズ・ファミリーとの戦いは全く重要な要素ではなく、
真の黒幕は30世紀の時間保護局のリュウヤ隊長ということになります。
しかしリュウヤにしても30世紀の世界の消滅を防ぐために力を尽くしたことには違いなく、その結果、20世紀が消滅することになったにしても、それは彼が望んだことではなく、自然に生じてしまった運命でした。
ただ、その運命を分かっていながら、20世紀の方を救おうとはせず放置したのは冷酷ではありますが、
彼は所詮は30世紀の人間なのであって、20世紀を救う義理はありません。
ユウリ達も自分と同じように考えるだろうとリュウヤも思っていたようです。

ただ、その真意は自分の死の運命を回避したいというエゴでありました。
しかし、これは彼もまた自分の明日を自分の手でより良いものに変えたかっただけだといえます。
ただ、リュウヤの場合、そのために時空を超えることが出来るという特別な力を用いてアンフェアな操作を行ったことが仇となったのか、より良い明日は手に入らず、運命を変えることは出来ず、死ぬことになりました。
これについては直人にも同様のことが言えます。
直人も本来は20世紀には存在するはずのない30世紀の力を使って20世紀における自分の野心を実現しようとしたことはアンフェアであり、
そのためなのか、明るい未来は手に入らず命を落とすことになりました。

しかし、だからといって、時空を超えた力を正しく使った竜也やユウリらが明るい未来を得られたとも限りません。
ユウリらは幸せな30世紀を捨ててまた別の30世紀に戻っていきましたが、その30世紀が彼らにとって幸せなものである保証は全くありません。
竜也にしても、結局はいずれは父親の跡を継いで浅見グループに入り、父の決めたレールの上を進んでいくようです。
世界の消滅を防ぐことが出来たという点では、30世紀のリュウヤにしても、20世紀の竜也にしても確かに運命を変えることに成功しているのですが、
個人的な運命についてはさほどパッとした良い物に変わっているわけではありません。
ユウリらについてもその結末は曖昧になっています。

つまり、この物語では、「正義のヒーローが悪を倒す」というテーマが語られていないだけではなく、
それ以前に「正しいことをしていれば未来はきっと良い方向に変えられる」というテーマすらハッキリとは語られていないのです。
この物語で語られているのは、運命は基本的には変えられないかもしれないということです。
ただ、その運命を受け身ではなく自分の意思で選び取ったと自信を持って言い切れるほど自分の意思を持って懸命に生きれば、それは未来に真っ直ぐ繋がって行くということが、この作品では語られているように思えます。

このようなテーマは非常に大人向けで、子供には理解するのは難しいと思われます。
実際、タイムレンジャーはキャスティングも大人向けで、
2年前のギンガマンで出演者のイケメンが話題になったというのもあるが、
やはり大人視聴者に向けてのアピールとして、タイムレッド・竜也役の永井大やタイムブルー・アヤセ役の城戸裕次などをイケメン俳優をキャスティングしています。
そのように戦隊の男メンバーがイケメンとなれば戦隊ヒロインもビジュアルが重視され、ユウリ役は勝村美香のような美人女優が選ばれています。

こうなると子供人気はいまひとつだったかとも思われるでしょうが、
子供というものは分からないものに興味を持って惹きつけられる傾向もあり、
全員がそうでもないですが、一応は基本的に戦隊ドラマでもあり、一定数の子供もタイムレンジャーは喜んで見たようです。
それに加えて、ターゲットとしていた高年齢層の視聴者がじわじわと増えていきました。
普通はこのような1年通して放送する4クールドラマの場合、1クールか2クールの視聴率が高くて、3クール、4クールと進むにつれて視聴率は落ちていくものです。
しかしタイムレンジャーは1クールが低く、その後、2クール、3クールと順々に視聴率を上げていき、4クールが最も視聴率が高いのです。
これは普通は有り得ないことで、よほど内容が視聴者にウケなければこうはなりません。
ドラマ内容はやはり飛びぬけて素晴らしいものであり、実際、高い評価を得たのです。
しかし問題点も残しました。やはり玩具には魅力が無く、玩具売上は前作ゴーゴーファイブから激減してしまったのでした。
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 10:16 | Comment(1) | 戦隊ヒロイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
本当はテレビの感動の最終回・名場面の特集で常連として取り上げるべき一作です。
でもストーリーの解説も多少難しくなるのでちょっと難しいかなぁ・・なんてつまんない事も一瞬頭をよぎりますが


Posted by MOMI at 2011年02月23日 01:37
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