2011年03月06日

ボウケンイエロー

ボウケンイエロー.jpg





















「ボウケンジャー」におけるダブルヒロインは「ボウケンガールズ」という愛称で親しまれましたが、
このボウケンガールズにおけるボウケンピンク西堀さくらの相方にあたるのが、
ボウケンイエローに変身する間宮菜月です。
菜月は19歳のボウケンジャー最年少隊員で、
ボウケンジャーの第1話開始直前に、パートナーの伊能真墨と一緒に
暁によってボウケンジャーにスカウトされ、入隊したばかりの新米隊員でした。
つまり暁が、2号機マシンと4号機マシンの完成を受けて、
その2機の操縦者として選んだのが真墨と菜月だったわけです。

暁はボウケンジャー結成時には自分に不足している能力を補う意味で
戦闘のプロである自衛官のさくらと情報収集のプロである元産業スパイの蒼太をスカウトしましたが、
その3人でボウケンジャーは一通りは機能していたのであり、
更なる増員に関しては、単に巨大ロボのダイボウケンを動かすには5台のパラレルエンジンの出力が必要なので、
5機のマシンの合体というシステムとなり、そのため5人の搭乗者が必要だったからに過ぎないといえます。
つまり、追加の2人には特に何らかの特殊技能が必要だったわけではなく、
単に「プレシャスを回収する」という任務に適性が高いということが条件であったようです。
そこで暁が腕が立つと見込んだ同業者、つまりトレジャーハンターの真墨と菜月をスカウトしたようです。

真墨と菜月はもともと2人のチームでトレジャーハンターをやっていたので、暁はこのチームごとスカウトしたのです。
真墨は21歳、菜月は19歳の若いチームでしたが、
真墨は両親と死別して子供の頃から盗掘団に拾われて彼らと一緒にトレジャーハンターをしていた経歴の持ち主で、
業界歴は暁よりも長いベテランです。
そのため、真墨はトレジャーハンターとしての能力は極めて高く、
最強のトレジャーハンターとして有名だった暁に対して面識は無かったものの秘かにライバル意識を抱いており、
暁のスカウトを受け入れてボウケンジャーに加入したのも、
暁を出し抜いてプレシャスを手に入れて、すぐに脱退して鼻を明かしてやるためであり、
本気でボウケンジャーに入ろうとしていたわけではありませんでした。
ところがその企みは暁に見破られており、プレシャス奪取に失敗した挙句、
暁に命を救われた真墨は、暁を超えるためにボウケンブラックとして暁の傍で働くことを決めるのでした。

しかし、これは真墨の事情であり、
そのパートナーの菜月は同じような思惑でボウケンジャーに入ったわけではありません。
そもそも、暁にしても、欲しかったのは真墨のトレジャーハンターとしての腕であり、
菜月のことはあまり良く知らなかったようです。
だから暁として積極的に菜月をスカウトはしておらず、
単に真墨が自分がボウケンジャーに入るならパートナーの菜月も一緒でないとダメだと要求したのでしょう。
暁としても、4人目と5人目に宝探し以外の特殊能力は求めていないし、
真墨のパートナーなのだから、そこそこの腕前なのだろうと軽く考えていたようで、
真墨は真墨で、どうせすぐに暁を出し抜いて逃げ出すつもりだったので、
菜月のことはその出し抜く作業のパートナーと考えており、
逃げ出す時一緒に菜月も逃げ出せばいいというぐらいに軽く考えていたのでしょう。
だから、誰も菜月がボウケンジャーに適性があるかどうか真面目に考えてはいなかったのです。
そして結果的に、真墨がボウケンジャーに残ることになったので、
菜月もそのままボウケンイエローとして残留することになったのでした。

実際は、菜月は全然腕利きのトレジャーハンターではなく、
ボウケンジャーの中では格段に腕が落ちるお荷物的存在でした。
そもそもどうしてそんな役立たずが真墨のパートナーをしていたのかというと、
ボウケンジャー加入の2年前に
真墨がとある遺跡で腕輪を嵌めている以外は素っ裸の少女が倒れているのを発見し、
その少女が記憶喪失であるのが分かり、菜月という名をつけて一緒に連れていくことにしたのが始まりです。
だから現在年齢の19歳というのも、
単に発見時に真墨が17歳ぐらいだろうと見た目で判断したからであり、確実な数値ではありません。

なぜ真墨が菜月を連れていったのかというと、これが実につまらない理由で、
「かわいかったから」らしい。まぁ若い男の子だったわけで、仕方ないといえば仕方ない。
菜月の方も真墨のことが気に入ったからくっついていったようですが、
単に真墨の女になるのではなく、真墨からトレジャーハンターとしての技を教えられて、
一応は真墨のパートナーとして一緒にあちこちの遺跡を巡るようになったのは、
遺跡を探し回ることで何か自分に関する手掛かりが見つかるのではないかと期待してのことでした。

何せ、菜月は生まれてから真墨と出会うまでの一切の記憶が無いのです。
手掛かりは遺跡で倒れていたことと、腕輪だけでした。
だから、あちこちの遺跡に行っては、そこに縁のある者たちや遺跡に詳しい同業者などに自分の顔や腕輪を見せて、
何か知っていないか聞いて回るのです。
だから菜月はボウケンジャーからのスカウト話が来た時、真墨とは違って心から歓迎していました。
ボウケンジャーに入れば、それまでよりも格段に多くの遺跡にサージェスの費用で回ることが出来るからです。

もともとそういう意識ですから、任務に真摯に打ち込む姿勢は欠けています。
トレジャーハンターとしての技能は、真墨が一通り教えただけあって、
一応は平均的なことは大抵こなしますが、あまり高度なことは出来ません。
というか、地図を見るのが苦手という、トレジャーハンターとしてはかなりマズい弱点もあり、
記憶が無いため一般常識に疎く、子供のままのような極めて純真な性格のため、
非常にお人好しで、すぐに他人に騙され、ドジも多い、まぁ大変なトラブルメーカーです。
ただ、異常に強靭な身体をしており、華奢な身体でありながら怪力の持ち主で、
時々、予知能力を発揮することもあるという謎めいた面もあり、
これらが任務に役立つことも多く、全くの役立たずというわけではありません。
それに、これはさすがに偶然だと思いますが、
菜月のドジが結果的にプレシャスの手掛かり発見に繋がったりすることも多いです。
その怪力ゆえに個人キャッチフレーズは「強き冒険者」で、
操縦するマシンも力強いイメージに合わせ、ブルドーザー型のゴーゴードーザーです。

性格は無垢そのもので、
何しろ精神的には生後2年のような状態なので、赤ん坊のような純真さを持ちます。
天真爛漫で明るく人懐っこい。
自分のことを「菜月」と呼びます。
先入観というものがほとんど無いので、誰に対しても分け隔てなく優しく、
特に仲間と認めたボウケンジャーのメンバーには非常に懐いており、いつも甘えています。
同時に、あまり計算や打算などしない性質なので、
自分のことはそっちのけで、仲間を励ましたり、他人のために奔走したりする癖があり、
時には任務そっちのけになることもあります。

菜月の場合、失われた記憶を取り戻して自分のルーツを知ることが、
彼女の求める「自分だけの宝物」なのであり、冒険の意味なのです。
そして、菜月の個人ストーリーの縦糸は、当然ながら、この「自分のルーツ探し」となります。
これが随所で挿入され、少しずつ手掛かりが見つかっていき、
結局、34話で菜月の正体は10万年前に滅びたレムリア文明の遺したリリーナという名の姫だったと分かります。

レムリア文明の滅亡を予知した両親によって出生直後から冷凍睡眠させられて
5000年で1歳ずつしか年をとらなかったため、現代に17歳ぐらいで出現したのだそうです。
怪力や予知能力もレムリア人の備えていた能力で、
腕輪は両親の形見で、菜月が発見された遺跡はレムリアの遺跡だったのでした。
記憶が無いのも出生直後から眠っていたので当然であり、記憶喪失ではなかったのでした。
つまり、菜月が求めていた過去の記憶というものは存在せず、
菜月の持つ記憶は真墨と過ごした日々とボウケンジャーの仲間と過ごした日々、
つまり、間宮菜月としての記憶がその全てであったのです。
だから、菜月は「間宮菜月としての記憶」を「自分だけの宝物」とすることを心に決めたのでした。
これが菜月の縦糸のストーリーとなります。

n-natsuki004-2.jpgこのように、菜月は極めて特殊な境遇のヒロインで、
クールビューティー系ヒロインのさくらと、子供のような純真無垢ヒロインの菜月とで、
見事に好対照をなして、しっかりヒロインのキャラ分けが出来ています。
正常な境遇の女の子が菜月のような言動をとった場合、
それは失笑モノであるか、あるいはあざとすぎて不快な印象を与えてしまうでしょうが、
このような特殊な境遇が設定された上でならば、不自然さは無く、むしろ可愛らしく感じられます。
あまりに幼い印象が強過ぎるので、女性的魅力はやや足りなく感じられますが、
決して悪い印象は無く、妹系の可愛いキャラとしては強烈な個性を発揮しており、
ヒロインとしてのキャラは非常によく立っています。
何より、子供には好かれるキャラでしょう。

菜月は純粋で明るく素直で優しく、他人のために一生懸命に頑張るキャラで、
実は典型的な正統派戦隊ヒロインのキャラなのですが、あまりそういう印象はありません。
それは、その特殊な境遇の方が目立ちすぎるからです。
しかし、この「ボウケンジャー」という物語においては、菜月のようなキャラが存在するためには、
この特殊な境遇というのは必要であったのでしょう。

まず、「ボウケンジャー」には、菜月のようなキャラは絶対に必要でした。
もう1人のヒロインのさくらが正統派戦隊ヒロインではなかったので、
正統派戦隊ヒロインが必要だったからという事情はもちろんありますが、
それ以上に深刻だったのは、男性キャラの方にも正統派の熱血型の戦隊ヒーロータイプがいなかったことでした。

暁は基本的に冷静なチーフであり、
「ボウケンジャー」という作品の「正義の戦士でなく淡々とミッションを遂行する」という世界観を体現するキャラでした。
蒼太はその暁の理解者キャラであり、暁と同じ思想の持ち主であり、
真墨が暁との対立者として熱血キャラになるかと思いきや、
真墨も暁と同業者であり、同じ仕事論理で動く人間で、むしろ、よりクールなタイプでした。

こうなると男性陣は全員、大人でクールで少し暗いイメージになってしまいます。
本当は暁には熱さや人間味も有るのですが、
絶対的チーフという立場で誰も暁の内面に踏み込んでいかないものですから、クールな態度が崩れませんでした。
本来は役割的には真墨がもっと動き回って引っかき回すキャラでないといけないのでしょうが、
キャラ設定ではむしろ暁よりもクールなキャラになってしまいます。
どうもキャラ設定の段階で少し間違えてしまったようで、
真墨を熱いキャラとして動かそうとした形跡はあるのですが、ことごとく上手くいっていません。

こうして男性陣が全体的にクールで大人しくなり、
さくらはクールキャラですから、この時点で全員が暗い印象になります。
だから、ここで1人、とびっきり明るく子供っぽいキャラを出す必要があったのです。
そうしないと全体的に暗くてどうしようもなくなってしまいます。
ただ、残るは女の子の枠でしたので、明るい純粋なヒロインとして菜月は登場することになり、
ふわっとしたイメージの中村知世が菜月役として選ばれました。

しかし、他の4人がクールなプレシャス探索者のプロフェッショナルなイメージでしっかり世界観に合致している中、
やたら明るく子供っぽいキャラの菜月のような人間がボウケンジャーの一員となること自体が不自然でした。
普通は菜月みたいなキャラはボウケンジャーにスカウトなどされるわけがないのです。
同じプロフェッショナルを売り物にしていたデカレンジャーでも、ウメコはもう少ししっかりしていましたし、
そもそもデカレンジャーの業務よりもボウケンジャーの業務の方が、敵対する相手が強力な分、シビアです。
またデカレンジャーは公的機関でしたが、ボウケンジャーは民間で、その分も戦いはシビアとなります。
シビアな戦いの場に、普通は子供みたいな女の子は読んでもらえないものです。
そこで、菜月の特殊な境遇というものを設定して、
菜月がボウケンジャーで活動することのエクスキューズとしたのです。

そして、菜月は次第にボウケンジャーの論理に染まっていくことになりますが、
そうなると、せっかく正統派戦隊キャラであった菜月がその機能を果たさなくなっていくというジレンマが生じます。
そうなると、また作品全体のムードが変に落ちついていってしまいます。
どうしても、変に落ちつく方向に進んでいってしまうのです。

本来は、いかにもボウケンジャー的なクールな世界観を体現するのが初期3人組で、
真墨と菜月の新規参入2人組は、2人ともボウケンジャー的な世界観に真っ向から反した
「正義の戦士的な明るいキャラ」にすべきだったのではないかと思います。
そうしてぶつかり合って、その中で暁のキャラももっと早くから動かしていけばよかったのではないかと思うのです。
暁のキャラが動いて、明るい面が出て来るようになったのは、追加戦士の映士が出てきてからです。
映士はアシュとの戦う宿命を背負った、いかにも正義の戦士的なキャラであり、
ボウケンジャーの価値感とは全く異質の価値感を持つ男です。
ここでようやく男性キャラで暁のアンチテーゼとなり得るキャラが出てきました。
本当は真墨が第一話からこういうキャラとして菜月と共に登場した方が良かったのではないか。

n-natsuki001.jpg菜月の古代レムリア人だったというキャラ設定も、それが判明した後、そこで話は終わってしまったが、
本来は、古代レムリア人の姫であったことによって生じる宿命と、
ボウケンジャーとしての使命との葛藤などが描かれてもよかったのではないかとも思えるのです。
しかし実際には、菜月のレムリア人としての宿命も描かれず、
映士の高岳流やアシュの血の宿命もあっという間に解消されて、
2人とも簡単に暁に賛同して冒険スピリッツに目覚めて、ボウケンジャー的価値観に染まっていきます。

その後、何故か真墨が闇に染まりかけたりしますが、
真墨はそもそも善悪に葛藤するようなキャラとしては描かれておらず、
この葛藤を描くなら映士のはずですが、映士は冒険スピリッツに目覚めて愉快なキャラに変わってしまったので、
その代役のような感じで真墨がさんざん苦悩させられて、そのせいで終盤に戦線離脱までしてしまいます。
こういう不可解な描写があったせいで、終盤に真墨の縦糸のストーリーをしっかり描ききれずに終わってしまったりしました。
映士もボウケンジャー加入後は非常に面白いキャラとなってドラマを盛り上げてくれましたが、
せっかくのクエスターとの因縁や、ボウケンジャー内での異質な立ち位置などのシリアスな面は消化不良で終わりました。

これらの事象というのは、結局、この「ボウケンジャー」という物語が、
「ボウケンジャー」的な価値観だけを重視して、
普通の戦隊的な価値観というものを出来るだけ排除しようとしていることによって起きているのです。
ボウケンジャー的な価値観と戦隊的な価値観のぶつかり合いから何かを生み出そうという意欲があまり感じられない。
だから菜月もその正統派戦隊ヒロイン的な純粋さや優しさでトラブルメーカーにはなりつつも、
結局はボウケンジャー的な価値観の中に絡め取られていってしまうのです。
レムリア人であるという驚愕の宿命を知ってもなお、
その宿命に動かされて別の原理で動きだすようなことはなく、
現在のボウケンジャーとしての自分を宝としてしまうのです。

あれだけ謎解きを盛り上げておいて、そういう落ちつき方をしてしまうのは、
やはりちょっと拍子抜けというものです。
レムリア人であるからこそ、
けた外れの純粋さや優しさをボウケンジャーの価値感を超えて行使する意義に改めて目覚めてもいいような気もするのですが、
あくまでボウケンジャーであることにアイデンティティを求めてしまうのです。

いや、あくまでこの作品は、従来の戦隊作品のような「正義のヒーロー」とは違う
「冒険ヒーロー」像を提示するのが趣旨だから、
従来型の正義のヒーロー像はそんなに強調しなくてもいいのだという意見もあるでしょう。
確かにそれは一理あるのです。
しかし、この作品がストーリー的には大変面白かったにもかかわらず、
あまり人気が出なかった理由を推論するにおいて、
このあたりで錯誤があったのではないかという気がします。

この作品で提示された「冒険ヒーロー」というものの姿が、
本当にそんな擁護すべきものであったのかどうかが、甚だ疑問なのです。
それはもっと揺さぶるべきものだったのではないかという気がします。
そのために、アンチテーゼとしての「正義のヒーロー」像というものをぶつけるというのは、
1つの手段でしかありません。
その1つの手段として、映士や菜月を使うやり方も有り得たのではないかとも思えるだけのことです。

それをやらないのなら、
もし映士や菜月も暁たちと共に冒険ヒーローの道に進んでいくというのなら、
それはそれでいい。
しかし、ならば、彼らが「冒険ヒーロー」なのであれば、
なおさら、この作品の提示する「冒険ヒーロー」の在り方に戦いを挑まなければいけない。
そこにこそ、本来の彼らの縦糸のストーリーの帰着点は在ったはずなのです。
彼らの「自分だけの宝物」は終盤に彼ら自身が述べた抽象的な美辞麗句としてではなく、
その本来の帰着点にこそ、もっと具体的な姿で本当の「自分だけの宝物」は存在したはずなのです。
その戦いを放棄したために、彼らの個人の縦糸のストーリーは中途半端なものに終わってしまったのでした。

何が言いたいのかというと、真の「冒険ヒーロー」の物語というのは、
正義などは標榜せずに、形式的な正義や悪などを超えた、自立した筋の通った倫理観を提示するものであり、
それは単なる冒険好きの話を描くものではないということです。
ヒーローならば、正義という名ではなくても、何らかの筋を通した倫理観は持たなければいけません。
とにかく冒険が好きだというのも1つの倫理観かもしれませんが、
それを自立した倫理観だと言い張るためには、
少なくともその冒険は自力で行くべきであり、他人の命令で行くべきではないでしょう。

「インディ・ジョーンズ」はまさにそういう物語でした。
主人公ジョーンズは誰の命令で動いているわけでもない生粋の冒険好きで、
単に悪人が秘宝を悪用することを阻止したいだけです。
ただ、そのために戦っている時は、ジョーンズは正義の行動をしているつもりでしょう。
しかし、その正義の行動すら報われないのがこの物語のポイントで、
結局は悪人を滅ぼすのは秘宝の力であり、
秘宝は悪人はもちろんジョーンズの手にも渡らずに消えていくのです。
正義も悪も超越したところにある真理こそが真に価値あるもので、神秘的なるものなのです。
その手に触れてはいけない真理に恐れ入り、
その神秘を体験することにこそ冒険の価値があると想い、ジョーンズは満足する。
そういう物語です。

その「インディ・ジョーンズ」を発展させて作られた日本の「スプリガン」にしても、
実は主人公の御神苗優は本編で描かれたミッションにおいてオーパーツの回収にはほとんど成功していません。
悪人に利用されることは辛うじて阻止しますが、オーパーツそのものは消滅してしまったりして、
優の手を経てアーカムの手に渡ることは少ないのです。
優はそうした神秘を経験することを愛しており、
彼が戦うのは、ささやかな親しき者達の平和を守るためと、
筋違いに神秘を弄ぶことに対する怒りです。

だからアーカムのやり方に賛同出来ない時は異議も唱えますし、仕事をサボることもあります。
彼がアーカムの仕事を受けているのは、姉がアーカムの職員であるから仕方なくであり、
アーカム上層部に対しては不信感を持っています。
優の他にもアーカムに不信感を持つスプリガンは少なくなく、中には離反する者もおり、
最終的にはアーカムが集めたオーパーツを利用して世界の軍事バランスを操作しようとするに及んで、
優や同志たちもアーカム上層部に離反し、アーカム内でクーデターを起こして、
アーカムの方針を本来あるべき穏健な方向に戻したのでした。

優は正義のために戦っているわけではなく、
むしろ、アーカムが正義でありオーパーツは正義のアーカムが有効活用するのが正しいなどという
傲慢な考え方に先鋭的に反対する立場です。
優は高飛車な正義など信じてはいません。
しかし何も倫理観が無いわけではないのです。
仲間の信頼を裏切るアーカム上層部を許すことは出来ませんし、
オーパーツの神秘を弄ぶ愚行は絶対に許容しない意地があるのです。
そういう筋を通したい気持ち、譲れない一線はあり、そのためには命だって賭けるのです。
そして、そうした戦いが終わった後、優はミッションなど無関係に自力で冒険の旅に出るのです。
こういうのが本当の自立した倫理観を持った「冒険ヒーロー」です。

chise001.jpgそれに比べて、ボウケンジャーはどうなのか。
ボウケンジャーの雇い主のサージェス財団はボウケンジャーに対して
やたらと秘密主義で、よく嘘をつきます。
ボウケンジャーを騙して借りて来た人形を勝手に燃やしたこともあります。
ボウケンジャーの方でもサージェスを信用しておらず、出し抜くようなこともあります。
終盤など、サージェスは敵にプレシャスを奪われないようにするため、
自らのプレシャス保管庫を爆破して貴重なプレシャスを壊したりしており、
しかもその爆発に暁を巻き込んでいます。
また、さくら達が敵と戦っている最中に
マシンに積んだプレシャスを奪われるのを阻止するためにその機能を停止させ、
そのために敵の前でさくら達を変身不能にしています。

このように利己的な理由でサージェスはボウケンジャーを裏切るような真似を平気で何度も行うのです。
そして、何度もそんな目にあっても、ボウケンジャー達はサージェスに不信感は抱きつつ、
それでもサージェスに反抗もせず、結局はミッションをこなしていきます。
その理由は「冒険が好きだから」です。
しかし、真に冒険を愛しているのなら、サージェスの筋違いな行為は糺すべきでしょう。
もしそうしないのなら、サージェスに頼っての冒険は止めて、
自分なりの冒険をするべきではないでしょうか。

これでは結局はサージェスに頼った方がたくさん冒険が出来るから打算でくっついているように見えてしまいます。
サージェスは気に入らないが正義の戦いのためには仕方ないと言えれば、話は早いのですが、
この作品では正義の戦いと言うわけにはいきませんから、結局、「冒険が好き」と言うしかない。
ならば、せめてサージェスに抗議して謝らせて筋は通さないといけません。
そうしないと、好きな冒険をするためにサージェスの筋違いな行為を見ないフリをして、
権力に屈しているように見えてしまいます。

いや、実際、大人の社会というのはこういうものなのです。
みんな自分のしたいことをするために、力を持った者の横暴には目を瞑って上手く立ち回っているのです。
しかし、そんな大人社会のしがない現実を知らしめるために
子供向けヒーロードラマというのはあるわけではありません。

別に子供向けドラマだから子供っぽい夢物語ばかり描くべきだとは思いません。
タイムレンジャーみたいに大人のドラマを描いてもいいのです。
でもタイムレンジャーでは竜也やユウリたち主要登場人物たちは毎回筋の通った行動をしていましたし、
筋違いの行動をした直人やリュウヤたちはしっかり報いを受けていました。
そういう大人のカッコよさや、悪い大人がちゃんと罰される姿などを見せるのは、
そこそこ描写がハードでも、それはちゃんと筋が通っていれば子供たちは許容出来るのです。
別に正義を標榜などしていなくてもいいのです。
実際、タイムレンジャーは全く正義など標榜していませんでしたし、
最後の方などは完全に反逆行為になっていました。
でも筋が通っているから子供たちは受け入れたのです。

一方でボウケンジャーにおけるサージェスの行為は全く筋が通りません。
いや、サージェスは大局的に見て正しい判断をしていたのかもしれませんが、そういう問題ではないのです。
ボウケンジャーに嘘をついていたり危険な目にあわせたことをちゃんと謝ったりすべきなのです。
そんなことでいちいち謝らないのが大人社会なのかもしれませんが、
そんな大人社会のカッコ悪さはいちいち正確に子供向け番組で描写しなくていいのです。
そこはやはり謝る描写はしっかり入れるべきです。
そういう筋の通らない、どう見ても胡散臭い雇い主に逆らうこともなく、
従順にプレシャスを回収して上納し続けるボウケンジャーは、子供たちから見て、あまりカッコよくないのです。

いっそ御神苗優のように毎回、回収に失敗するのならまだいいのですが、
ヒーロードラマで主人公がいつもミッションに失敗するわけにもいかないという事情もあったのか、
ボウケンジャーはせっせとサージェスに献上し続けます。
そしてサージェスの裏切りがあってもスプリガンのようにクーデターを起こすわけでもありません。
ヒーロードラマで主人公側が内輪揉めするわけにもいかないということなのでしょう。
しかし、ならばせめてもう少しサージェスを親切な組織に描いた方が良かったでしょう。
サージェスが胡散臭いままでは、それに従順なボウケンジャーが情けなく見えてしまうという弊害があるのです。

いや、大人目線で見ると「ボウケンジャー」はそのリアルな大人社会の悲哀の描写も含めて、
渋くて作劇も面白くて、なかなか良作なのです。
しかし、子供目線ではヒーローとしてのボウケンジャーがとにかく情けなくカッコ悪いので、あまりノレないのです。
その結果、視聴率は当初はマジレンンジャーの勢いを受けて
7%台半ばの高い水準でスタートしたにもかかわらず、ズルズルと下がり続け、
秋ぐらいに6%台後半ぐらいまで落ちてきたところで、
テレビ東京系で10月からポケモンサンデーがそれまで朝8時開始だったのを朝7時半開始に時間を拡大し、
ボウケンジャーはそのポケモンサンデーに更に視聴率を食われてしまい、更に視聴率を下げ、
最終的には5%台後半まで落ちてしまったのでした。
また、それに連動して玩具売上もかなり派手な展開をしたにもかかわらず、あまり伸びず、
一応なんとか100億円は突破し、101億円となったのでした。
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 01:22 | Comment(0) | 戦隊ヒロイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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