2013年02月12日

海賊戦隊ゴーカイジャー妄想物語その12


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次いでジェットマンの5人ですが、ザンギャック艦隊を全滅させてレジェンド大戦が終結した後、その場に現れたアカレッドや「この星の意思」の話を聞き、その内容があまりに想像を絶するものであったので大変驚きました。バイラムとの戦いが終わった後のおよそ19年間、軍人の竜を除いて、香も雷太もアコも完全に一般人として平穏に暮らしてきたので、急に宇宙の平和とか、世界の作り変えなどと言われても突拍子が無さすぎてピンときません。竜にしても地球の平和を守るために戦うことしか考えてこなかった堅物の職業軍人ですので、こんな非現実的な話には面食らってしまい、16年間天国で楽しく暮らしていた凱にとってもこれは思いも寄らない話でした。
だからジェットマンの5人は「この星の意思」の計画に協力すべきかどうかも、ちょっと簡単には判断出来ない状態でした。ただ、宇宙や世界のことはともかく、5人は地球の人々の平和な生活は守りたいと思っていましたから、「この星の意思」の計画ならばザンギャックの再侵略を阻止できるという点は素直に歓迎することは出来ました。
しかし問題は「この星の意思」の計画に協力して「大いなる力」を渡し、そして「この星の意思」の計画が実現した暁にはジェットマンの5人もこの世から消えてしまうということでした。竜たちはそれでも自分達の存在と引き換えに地球の人々の平和な暮らしを守ることが出来るのならば本望だと言いましたが、凱はその考え方には賛成できませんでした。

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ジェットマンは一般人がやむを得ない事情で戦うことになった戦隊であり、もともと地球を守るために命を賭ける義理など無い連中の集まりでした。だから当初は地球や他人のために自分の命を捨てるなど真っ平だと思っていました。軍人の竜だけはそうした覚悟が定まっているかのように見せていましたが、これも実際は見せかけであり、本質は行方不明の彼女に未練タラタラの弱い男でした。しかし、そんな情けない連中のジェットマンですが、命懸けの戦いをせざるを得ない立場なのでした。
自分のやりたいことや欲しいもののために夢中になって、それが命懸けの戦いになるというのならまだ納得は出来る。しかし守る義理の無い他人のために戦って危ない目にあうのは納得出来ないし、そんな戦いで死ぬのは無駄死にのように思えて本当に怖い。だから死にたくない。しかしジェットマンしかバイラムと戦える者がいない以上、死にたくないのに死ぬかもしれない戦いをするしかない。普通の平穏な暮らしをしたいのに平穏に生きることが許されない。自分がヒーローなどではなく弱い一般人だと自覚しているのに、ヒーローのように戦わねばならない。この狂おしい矛盾した状況の中で凱たちは恐怖に震えながら戦うしかありませんでした。
この恐怖から逃れるためにはいっそ自分が特別に強い心を持ったヒーローであると思い込むというのも1つの方法でした。しかし凱たちにはそれは出来ませんでした。仲間たちのどうしようもない弱さを目の当たりにして、どうしても自分の弱さを自覚せざるをえなかったからです。
そこで凱たちはいっそ開き直って自分の弱さを認めました。他人のために犠牲になることを受け入れる心の強さも無い弱い自分達は、それゆえに絶対に死にたくない。死なないためには勝つしかない。だから弱い自分達が力を合わせて戦って、何が何でも勝ち抜いて生き残るしかない。弱い人間の戦い方はそれしかないと開き直った凱たちは仲間の結束を強め、必死で訓練を積んで戦い抜き、最終的にバイラムを倒して自分の命を守り抜き、仲間を守り抜き、そして世界を守り切ったのでした。
そして戦いを終えた時、凱たち5人はそれこそがジェットマンの力だと悟りました。決して世界を守るために自分の身を犠牲にすることを辞さないヒーローのような強さは無いが、やむにやまれぬ戦いに踏み込んだごく普通の弱者が自分の弱さを直視して力を合わせて戦って何が何でも勝ち抜く姿勢、それがジェットマンの力でした。それを教えてくれたのは自分自身の弱さ、そして弱さを見せてくれた仲間達でした。
それら全てに感謝した凱たちは、ジェットマンの仲間はあくまでヒーローとしてではなく一般人として生きていこうと戦いの終わった後にジェットマンの絆のもとに誓い合い別れました。その後、凱は些細なトラブルに巻き込まれて事故死してしまいましたが、そういうあくまで一般人としての死で人生を全うした自分がいかにもジェットマンとして相応しく思えて満足していました。

だから、他の仲間4人にも一般人として生き、一般人として死んでほしいと思っていた凱は、竜たちが自分達の存在と引き換えにして宇宙を救おうとしているのを見て、そんなヒーローらしい最期はジェットマンらしくないと思えたのでした。
ジェットマンならそんな潔く自分を犠牲にせず、弱さを自覚して必死に戦い続けるべきだろうと思った凱でしたが、戦うといっても自分達は「大いなる力」を半分失ってしまって変身して戦うことは出来ない。いや仮に「大いなる力」を取り戻して戦えるようになったとしても、長期的に見て勝ち目が薄いのは確実です。このまま戦い続けても世界も、そして自分達自身も生き長らえることは出来そうにない。そういう状況の中で自分達を犠牲にすれば確実に世界は救うことが出来ると聞けば、竜たちが自己犠牲の道を選ぼうとするのも無理も無い。理屈としては凱もそういう選択も有りだということは分かります。
しかし凱としては世界や宇宙の運命がどうなろうともジェットマンの仲間たちがジェットマンらしくない行動、自己犠牲的な強いヒーローのような行動をとることはどうも許せなかった。それは確かにジェットマンの絆の誓いを守ろうとする凱の意地でありましたが、この状況でその誓いにあくまでこだわるのは凱の我儘と言われても仕方ない。竜たちに「ジェットマンらしく生きろ」などと説教したところで、この状況では竜たちを説得することはおそらく出来ないだろうと思った凱は、こうなれば竜たちを騙してでも自分のジェットマンとしての意地を通してやろうと考えました。

そこで凱はアカレッドがガレオンで旅立ったのを見送った後、世界を救うためなら自分達の「大いなる力」をアカレッドが連れてくる35番目の戦隊に渡してもいいと言う竜たちに向かって、自分もその方針に賛成だと前置きした上で、その35番目の戦隊に会って「大いなる力」を渡す役目は自分にやらせてほしいと言い出したのでした。竜たちは驚いて、死んでいるのにそんなこと出来るのかと凱に尋ねました。それに対して凱はまた今回みたいに一時的に下界に降りてくればいいと言い、むしろ死人だからこの役目に適しているんだと言葉を続けました。
意味が分からなくて首を傾げる竜たちに向かって凱は、その35番目の戦隊の奴らはきっと危険な連中だからだと説明を始めました。凱の言い分は、ザンギャックの支配する宇宙でザンギャックに刃向って戦い続けている連中がいるとすれば、それはかなりトンデモない連中であって、常に争いを呼び込むような連中に違いないというものでした。アカレッドが見込んで連れてくるのだから正義の心は持っているのであろうが、極めて敵の多い連中であるのは間違いない。だからきっと35番目の戦隊の連中は争いを地球にまで持ち込んでくる。
そんな35番目の戦隊に変身して戦う力を失った者が接触するのは危険であり、特にジェットマンのメンバーの場合はずっとごく普通の一般人として生活してきたので変身できない状態で35番目の戦隊に接触するのは特に危険と思われる。その点、死者の霊である自分ならばこれ以上死ぬことはないのだから多少の危険は平気であり、危なくなればすぐに回避することも出来ると凱は言いました。だからジェットマンの5人の中では自分が35番目の戦隊に接触するのが一番適役なのだと主張した凱は、これまでずっと毎日欠かさず墓守をしてもらったお返しをしたいのだと言って竜たちに頭を下げ、きっと35番目の戦隊がジェットマンの志を継ぐに相応しい戦隊であることを見極めて上手くやるから、どうか俺に任せてほしいと頼み込みました。
それを聞いて竜たちは確かに35番目の戦隊に「大いなる力」を渡すためにはまずは35番目の戦隊の志を知らねばならないことに気付き、そのためには彼らに深く接触しなければいけないが、そこに危険が伴うという凱の予想は尤もであるように思いました。そして確かに凱ならばそうした危険の中でも上手くやってくれるであろうとも思えました。とにかく竜たちは凱にこうして頭を下げて頼まれてしまえば、凱がジェットマンを代表して35番目の戦隊と接触することを拒絶するような理由は何も無い。もともと凱のことを仲間として深く信頼しているので、凱が自分達の代表を務めることに何の異論もあろうはずもない。
ただそれでも凱1人に危険な任務を押し付けるわけにはいかないと、竜も同行すると申し出ましたが、凱は竜に万一のことがあったら香が悲しむからダメだと言って頑として1人で行くことを譲らず、竜も結局は凱の熱意に押し切られて、凱1人に任せるという結論となったのでした。

15jet01.JPG凱は一旦天国に戻って、そこから下界の地球にやって来た35番目の戦隊を観察し、適切なタイミングで35番目の戦隊に接触して「大いなる力」を渡すことを試みるということになり、ジェットマンの他の4人は凱を信じて任せるという方針が決定しました。だが凱としてはこうしてとりあえず35番目の戦隊と竜たちが直接接触して安易に「大いなる力」を渡してしまわないようにすることが出来ればまずはOKであって、実はそこから先はどうするのかあまり深く考えていませんでした。
凱としてはジェットマンが宇宙の平和のために安易に自己を犠牲として捧げるような結末は望んでいなかったので35番目の戦隊に「大いなる力」を渡したくはない。だから35番目の戦隊と接触しないのも1つの手でしたが、35番目の戦隊の方からジェットマンを探すようになれば、彼らが竜たちのもとに辿り着くのを阻止するために結局は凱は35番目の戦隊に接触するしかない。
「大いなる力」を渡したくないのに35番目の戦隊とは会わねばならない。きっぱりと「大いなる力」を渡すことを拒絶してもいいのだが、凱とてこのままザンギャックの再侵略になす術なく蹂躙されていくことを望んでいるわけではなく、もし地球に危機が迫るのであれば何か対抗策は必要だと思っており、その最後の切り札が「この星の意思」の言っていた策であることも分かってはいます。その道をきっぱりと捨てることにもちろん躊躇はあります。
結局は凱も迷っているのであり、そもそもザンギャックの再侵略があるのかどうかも現時点では分からないし、とにかく成り行き任せであり、いずれ35番目の戦隊と会う時、その時の状況次第、相手次第で出たとこ勝負しかないと凱はかなり適当に考えていました。ひとまず竜たちと35番目の戦隊との安易な接触さえ封じることが出来れば良い、それだけしかハッキリした凱の方針はありませんでした。

とにかくそういう方針が決まり凱は安堵して、戦いが終わって今後の方針も決まった以上、早く戻らないと女神様に叱られちまうんで、そろそろ自分はあの世に帰らせてもらうと竜たちに告げました。そして、名残惜しそうに見つめる竜たちに向かって、またこれからも墓守を頼むと笑って凱は姿を消し、その場に残された竜たち4人はしばらくしんみりしていましたが、静かに立ち去っていき、再び元の生活に戻り、以前と変わらず交代で毎日欠かさず凱の墓守を続けたのでした。
一方、天国のバーに戻った凱は竜たちをはじめ34戦隊の戦士たちに姿を見せて戦ったことで女神からお小言を頂戴する羽目となりましたが、凱も実際理央やメレの能力のことは想定していなかったので、あれはワザとじゃないと説明して謝り、結局は凱が今後は女神のリクエストによるサックス演奏を断らないという条件で許して貰うこととなりました。その上で女神は、それにしてもよく無事で戻ってきたものだと呆れ顔で凱に言いました。そして、どうやら天国に戻ってくる前の竜たちと凱の会話も聞いていたようで、女神はまた地上に行って危ないことをするつもりなのかと呆れたように凱に問いかけました。
凱は自分は死人だから危険な目にあっても大丈夫であるかのように言っていましたが、実際は死者の霊が下界に降りて肉体を得て、そこで肉体的死に至るようなダメージを受けた場合、霊体に致命的ダメージを及ぼし、完全消滅してしまう恐れがあったのでした。女神はそもそも凱が下界に降りたところで自力で仮初の肉体を得ることも出来ないであろうとタカを括っていたのですが、凱がそれを成し遂げてしまったので驚くと同時に、その状態で戦いに参加すれば極めて危険だと思いハラハラして見守っていました。
その凱がなんとか無事に戦いを終えて勝利を掴んだのを見て女神もようやく安堵していたのですが、その凱が戦う力を失ったというのにまた危険に飛び込もうとしているのを見て、もう呆れるしかありませんでした。その女神の問いかけに凱はニヤニヤ笑いながら、あれはあいつらを危険な目に遭わせないための方便だと答え、また下界に降りる機会があったとしても俺だってもう今回みたいな危険な目に遭うのは真っ平だから心配するには当たらないよと言って、バーカウンターに腰かけて空のロックグラスを手に取って、女神に酒をおねだりするのでした。
女神は相変わらずどうも信用できない男だと思って凱を見つめ、どうしてこんないい加減な男が天国に来ているのだろうかと溜息をついて、カウンターの中に入って凱のキープボトルを取出してから、凱のグラスに氷をつまんで入れ始めたのでした。


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一方、ファイブマンの星川5兄妹はレジェンド大戦後の「この星の意思」の話を聞いて当初は戸惑いました。ファイブマンとしての戦う力を突然失い、更には1年後には「大いなる力」を全部失って自分達自身がこの世界から消えて無くなってしまうというのですから、戸惑うのは当然といえます。
その後5人は地元に戻って再びニュータウン小学校の教職に復帰し、もともとファイブマンであることは周辺には知られていた彼らはひとまず周囲には戦いの結果ファイブマンの装備が損耗して現在は使えない状態になっていると説明し、日常はファイブマンの装備を使っていたわけでもないので、その後も戦う力を使わないことを不自然がられることもなく、戦う力を失っていることは隠し通すことは出来ました。
問題はやはり「大いなる力」をどうするのかということですが、「この星の意思」の計画を最初に聞いた時の衝撃がだいぶ落ち着いてくると、星川兄妹はこの10年来、両親などから情報を入手していたザンギャック支配下の宇宙の惨状に想いを馳せるようになりました。14five01.JPGそして自分達の大切な教え子であるニュータウン小学校の生徒たちのことを想い、やはりザンギャックによって蹂躙された宇宙も、これからまたザンギャックによって地球の子供たちが危機に晒されることも放置しておくことは出来ないと考えるようになり、ザンギャックのいない平和な宇宙が作れるというのであれば、その引き換えに自分達の存在が消えても構わないという気持ちになってきました。そこで星川兄妹は他の戦隊にも相談してみようと考え、まずはターボレンジャーのメンバーに連絡をとってみることにしたのでした。

34のスーパー戦隊のうち、割と近年に現役であった戦隊は普段親交は無かったが、2001年にガオレンジャーとラクシャーサの戦いに助太刀した24戦隊、すなわちレジェンド大戦以前において当初から「スーパー戦隊」として総称されていたゴレンジャーからタイムレンジャーまでの24戦隊は、互いにそれなりに親交はありました。ただ、それらの中でタイムレンジャー、ギンガマン、カクレンジャー、ジュウレンジャー、ジェットマンあたりは基本的に他の戦隊と交流することが少なく、それらを含むジェットマン以降の戦隊同士はそんなに深い親交があったとはいえません。
特に戦隊間の親交が深かったのはファイブマン以前の戦隊であり、これらの戦隊は互いに連絡を取り合うようになって長い年月が経っており、軍事組織や何らかの支援組織を有したメカニック系の戦隊であるという特色も共通していて、戦隊メンバーが皆年齢を重ねて社会的に指導的な地位にいるという点も似通っていたので、特に親交が深かったのです。そうした一種のスーパー戦隊サークルの一員であるファイブマンの星川兄妹は、その仲間として親交のあるターボレンジャーのメンバーとも相談しようと考えたのでした。

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炎力をはじめとするターボレンジャーの5人は久しぶりに変身してザンギャック軍の侵略を阻止すべく戦い、ザンギャック軍を撃退することは出来たもののターボレンジャーに変身して戦う能力を失ってしまい、困ってしまっていました。これではもしザンギャックが再び侵略軍を送ってきた時、それに対抗して戦うことが出来ない。自分達ターボレンジャーだけでなく他の33戦隊も全部同様な状態なわけですから、このままでは地球が危ないと思われ、力たちは焦っていました。
その危機を救う方法は、レジェンド大戦後に現れた「この星の意思」の言っていた計画、つまり「宇宙最大の宝」とかいう不思議な装置を使って世界を作り変えてしまい、ザンギャックのいない平和な宇宙を実現するというものだという話でした。だが、どうも話が大きすぎるのか、そもそもそんな話が本当に有り得るのか疑わしいのか、力たちにはピンとくる話ではなかった。
とはいっても、34戦隊が力を合わせてようやく地球侵略軍を撃退することに成功したような状況ですから、ザンギャック帝国から地球を今後も守り抜くのは困難と思われ、ましてや既にザンギャックに支配されて苦しめられている宇宙の人々を救う名案など、なかなか有るとは思えませんでした。
そういうところに旧交温めているファイブマンの星川学から連絡を貰い、力たちは星川兄妹とレジェンド大戦以来久しぶりに会いました。そして宇宙の人々を救うために自分達の存在と引き換えに「大いなる力」を使ってもらおうかと思っているという星川兄妹の意見を聞かされ、それで良いものだろうかと相談を受けたのでした。星川兄妹の方が力たちよりも年上なのですが、一応ターボレンジャーの方が先輩戦隊にあたるので相談してきたという形でした。
13turbo01.JPGところがその星川兄妹の覚悟に接した力たちは、その覚悟に感服し、すっかり影響を受けて、自分達も同じように覚悟を固めようと思ったのでした。本当のところ、力たちは相変わらず宇宙を作り変えるという話にあまりピンときていなかったのですが、さしあたりそれぐらいしか名案は無いわけで、星川兄妹が自分達の存在と引き換えにそれを実現しようというのなら、自分達もそれに付き合って自分の身を犠牲にして宇宙の平和を実現してやろうという気持ちが燃え上がってきたのです。

このあたり割と軽々しい判断のように見えますが、ファイブマンにせよターボレンジャーにせよ、このあたりの代の戦隊になると、その年齢的な要素も判断に影響を及ぼしています。彼らは40歳を超えており、これぐらいの年齢になると、ある程度自分の人生の先行きが見え、ここまでの人生にある程度納得が出来るようになって自分を惜しむ気持ちが若い頃よりも薄らいでくるものです。
特にファイブマンにしてもターボレンジャーにしても、また彼ら以前にあたる他の古参戦隊のメンバーにしても、大抵は既に何事かを成し遂げたという実感を持つことが出来る人生を送ってきていました。若い頃に地球を守る戦いに勝ち抜き、その後も達成感のある仕事をある程度やり抜いて、世に何かを残してきたというそれなりの自負はあります。もちろん彼らとて命は惜しいし、この世界に未練はある。まだまだやり残したことは幾らでも思いつく。しかし、それでも宇宙の平和と引き換えにならば自分の身を消し去っても後悔はしない程度の満足感は既に持ち得ているのです。
だから星川兄妹も、力たちも割と簡単に自分の存在が消えるような決断が出来る。いや、出来るというのならもっと若い戦隊でもそういう決断は出来るのだが、むしろこのベテラン戦隊の方が既に人生に満足してしまっている分、無意識にそういう決断を簡単にしてしまう傾向にあるのです。ほぼ同年代でもカクレンジャーやダイレンジャーやジュウレンジャーのメンバー、またジェットマンの凱のように、特殊な人生観を持っていたり特殊な境遇にある者はやや違った結論に達するのですが、ごく普通の満足できる人生を送ってきた40歳以上の戦士たちは、この極限状況において割と気軽に自分を犠牲にする判断をするというのも無理は無いといえます。

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ただ、そうした中でこの年代の戦隊で例外的な対応であったのはライブマンでした。ライブマンの5人もザンギャックの侵略軍の脅威に対抗すべく共に戦おうというアカレンジャー海城剛の呼びかけに応えて立ち上がり、レジェンド大戦を最後まで戦い抜きましたが、もともとはあまり戦いに乗り気であった戦隊ではありませんでした。特に国連職員の鉄也と純一はともかくとして、科学アカデミアに残った天宮勇介、大原丈、岬めぐみの3人はライブマンであった過去を忘れたかのように研究者の仕事に没頭し、ボルトとの戦いの後もライブマンとして戦う準備をしておくようにという国連の依頼を拒否していました。
それは彼らがかつてのボルトとの戦いの際に悪に走った親友たちを止めて救おうとしたのに、結局救うことが出来なかったことで心に深い傷を負っていたからでした。勇介たちにとってはライブマンとして戦うということは世界を救うと共に友を救う戦いでもあったはずなのに、世界はどうにか救えたものの友を救うことは出来ず、見ようによっては自分達が友たちを追い詰めて死に追いやったような形となってしまいました。少なくとも勇介たちはそのように思い、苦しみました。そして自分達にとってライブマンとして戦ったことはいったい何の意味があったのか、よく分からなくなってしまい、それゆえライブマンであったことを忘れるかのように研究者としての仕事に没頭してきたのでした。
鉄也と純一の場合はもともとボルトに走った勇介たちの親友である月形剣史たちを救おうという動機で戦っていたわけではなく、剣史たちに殺された兄や姉の遺志を継いで戦っただけですから、ボルトとの戦いの後も勇介たちのように傷つくことはなく、いつしかライブマンの自覚のもと他のスーパー戦隊とも親交を持つようになっていき、勇介たちアカデミア組の3人もその縁でライブマンの一員として一応スーパー戦隊の人脈の中に身を置くことにはなりました。
そして、2001年に勇介が剣史たちの墓参りの時にたまたま出会ったガオイエロー鷲尾岳の窮地を救ったことがきっかけで、勇介はスーパー戦隊の先輩戦士としてガオレンジャーを支援して戦うことになり、ようやく戦士としての魂を取り戻しました。ただ、これはあくまで自分達の後も連綿と続いて地球を守り続けているスーパー戦隊の仲間として戦う気持ちを取り戻したに過ぎず、相変わらず勇介はライブマンの戦いの意味は見失ったままでした。
その後、この勇介によってスーパー戦隊の一員として戦うことを勧められた丈やめぐみも戦士の魂は取戻し、結局ライブマンの5人はスーパー戦隊の一員としてレジェンド大戦にも参加することになりました。だが、勇介、丈、めぐみの3人はそれでもずっとライブマンの戦いの意味は見失ったままでした。そんな3人ですから、レジェンド大戦直後に現れた「この星の意思」の言葉を聞いて困ってしまったのです。

12live01.jpg基本的には勇介たちもファイブマンやターボレンジャーの面々のように、自分達がこの世界から消えることと引き換えにこの宇宙からザンギャックという脅威が消えて平和が実現するというのなら、自分を犠牲にしても構わないと自然に思えました。だが、問題はそのためには自分達の体内に残ったライブマンの「大いなる力」を35番目の戦隊に渡さなければならないのだということでした。
「大いなる力」を渡すためには35番目の戦隊がライブマンと同じ志を持っていると勇介たちが認めなければならないという。しかし、勇介たち自身がライブマンの志を見失っており、自分がライブマンであったこと自体否定したような人生を送ってきたのです。そんな自分達が35番目の戦隊にライブマンの「大いなる力」を渡すことなど出来るはずがないと勇介、丈、めぐみの3人は思いました。
勇介たちはいっそ35番目の戦隊に「大いなる力」を渡す役目は鉄也や純一にやってもらおうかとも考えましたが、鉄也と純一は自分達は勇介たちのライブマンに途中から参加したのであって、勇介たちがライブマンが何であるのか分からないのであれば、それは自分達にも分からないのだと言い、その役目を辞退し、あくまでライブマンの「大いなる力」をどうするのかについては勇介、丈、めぐみのアカデミア組に託しました。
しかし託されてしまった勇介たちは困り果てました。もしかしたら自分達が「大いなる力」を渡すことが出来ないせいで宇宙を平和な世界に作り変える計画は失敗してしまうかもしれない。更にそこにファイブマンやターボレンジャーの面々がこの計画に前向きな姿勢であることを伝えてきて今後のことを相談したいなどと言ってきたので、勇介たちはますます困ってしまい、研究が忙しいなどと適当な口実を作って他のスーパー戦隊との接触を避けるようになってしまったのでした。

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一方、何故かノリの悪いライブマン組になかなか接触出来なかったファイブマンやターボレンジャーの面々は仕方ないのでライブマンより更にもう1つ先輩戦隊にあたるマスクマンのタケル達5人と連絡をとりました。するとタケル達はとっくに自分達の存在と引き換えに宇宙を救う決意を固めており、既にフラッシュマンやチェンジマンの面々とも同一歩調をとることで合意していると言いました。
11mask01.JPGマスクマン、フラッシュマン、チェンジマンのメンバーはレジェンド大戦後に現れた「この星の意思」やアカレッドの話を聞いて、最初は何か自分達の命懸けの戦いを小馬鹿にされたような気がして不愉快でしたが、後で落ち着いてよく考えてみれば、確かに「この星の意思」の計画が地球や宇宙を最も確実にザンギャックの脅威から救う方法であるように思えてきたのでした。
問題はそれと引き換えに自分達の存在が消えてしまうことなのですが、マスクマン、フラッシュマン、チェンジマンのメンバーはそれぞれ、これまでの人生で自分達はひとまず後悔しないだけのことはやってきたと思い返し、宇宙の人々の幸福と引き換えならば自分達が消えることは惜しくはないと思いました。
10flash04.jpgそうして「大いなる力」をアカレッドが連れてくるという35番目の戦隊に渡してやろうと決意したわけですが、彼らは自分の戦隊だけが35番目の戦隊に「大いなる力」を渡せば計画が実現するわけではないということは分かっています。34戦隊全部が「大いなる力」を渡さなければ計画は実現しない。といっても、34戦隊はレジェンド大戦時はアカレンジャー海城剛のもとに従っていましたが、あれはレジェンド大戦時の特別な形であり、通常は互いに対等独立の関係であり、何らかの上下関係や指揮命令系統があるわけではない。だから「大いなる力」を渡すかどうかの判断も各戦隊の自主的判断に任されており、たとえ先輩戦隊といえども後輩戦隊に自分の方針を押し付けて従わせることは出来ません。
09change01.jpgただ、親しい戦隊同士ならばあくまで友人関係として互いにどういう方針であるのか確認し合った上で、同じような方針なのであれば同一行動をとるよう調整するぐらいのことは出来ました。そこでもともと親交の深かったマスクマン、フラッシュマン、チェンジマンの3戦隊は真っ先に連絡を取り合い、「大いなる力」を35番目の戦隊に渡すという方針で一致していることを知ると、想いを1つにして行動することを約束しました。そこにファイブマンとターボレンジャーも連絡してきて、やはり同じ方針であることが確認され、この5戦隊は同一歩調をとることになったのでした。

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そして、この5戦隊の中で最も先輩戦隊にあたるチェンジマンのリーダーであり地球守備隊の幹部である剣飛竜は更に他の戦隊の意向も確かめるために、同じように軍事組織の幹部をしていることで05sanbaru04.jpg昔から特に親交の深いバトルフィーバー隊とサンバルカンの面々にも連絡をとり、この2戦隊も地球と宇宙の平和を実現出来るならば自分達は消えても構わないという考え方であることを知りました。
そこで剣はこの2戦隊にも一緒に行動することを提案し、更にバトルフィーバー隊のリーダーの伝正夫にデンジマン、ゴーグルファイブ、ダイナマン、バイオマンの4戦隊の意向も確かめるよう頼んだのでした。03fever04.jpgこの4戦隊ももともとチェンジマンやバトルフィーバー隊とも割と親交が深い戦隊であり、この4戦隊も含んだファイブマン以前の古参戦隊グループはもともとバトルフィーバー隊が最古参戦隊としてまとめ役のような立ち位置でありました。だから剣は自分が4戦隊の意向を伺うよりも、バトルフィーバー隊の伝に4戦隊の意向を聞いてもらう方がより良いと思ったのです。

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ところで、どうして初代戦隊のゴレンジャーではなくバトルフィーバー隊が古参戦隊のまとめ役なのかというと、もともと初代戦隊のゴレンジャーと二代目戦隊のジャッカー電撃隊は世界の融合の果てに何か大異変が起こることを警戒して歴代戦隊の戦いをこっそり観察し続けるという特別ミッションを遂行していたため、長らく歴代戦隊の前に姿を現すことはなかったからです。
08bio01.jpgバトルフィーバー隊以降の戦隊はゴレンジャーとジャッカー電撃隊という戦隊が自分達に先立って存在していたことは知っていたものの、それは彼らから見ても半ば伝説的な存在であったのです。だから次第に連絡を取り合って親交を結んでいった古参戦隊の中でのまとめ役はその中で最古参であったバトルフィーバー隊の面々であったのでした。
結局2001年のガオレンジャーとラクシャーサの戦いの際にゴレンジャーとジャッカー電撃隊はバトルフィーバー隊以降の戦隊の前に姿を現し、世界の融合の果ての危機の可能性について説明してスーパー戦隊のリーダー的存在となったのですが、それでもこの始祖2戦隊はこの時点であまりに伝説的存在になり過ぎていて、やはりどうも古参戦隊から見ても一歩引いて仰ぎ見るような存在で、あまり馴れ馴れしく出来る存在ではなく、どうしても昔から親しんできた古参戦隊グループ同士の仲に比べて遠慮しがちな関係になりがちでした。
07daina01.jpg例えば今後の方針でゴレンジャーがこう考えているという意向を聞いてしまうと、それに反対するのをついつい遠慮して、本心とは違う道を選んでしまう危険もありました。だからこういう時は対等の立場で本音を言い合える、もともと親しいバトルフィーバー隊の方にまとめ役をお願いしてしまいがちなのでした。
それで伝がデンジマン、ゴーグルファイブ、ダイナマン、バイオマンの面々に今後どうしようと考えているのか尋ねてみたところ、この4戦隊もバトルフィーバー隊と同様、「この星の意思」やアカレッドのやり方に対して納得できないところはあるものの、それでも冷静に考えれば地球や宇宙を救うためには現状では「この星の意思」の計画が一番確実であると思っており、地球や宇宙の平和の実現のためなら自分達は消えても構わないと考えていることが分かりました。
06gogle01.jpgそうして結局、バトルフィーバー隊をまとめ役とするような形で、デンジマン、サンバルカン、ゴーグルファイブ、ダイナマン、バイオマン、チェンジマン、フラッシュマン、マスクマン、ターボレンジャー、ファイブマンの古参11戦隊がアカレッドが連れてくる35番目の戦隊に「大いなる力」を渡す方向で同一歩調をとることとなったのでした。

一方、ジャッカー電撃隊とゴレンジャーはこの動きは把握していながら同調はしていませんでした。この始祖2戦隊はバトルフィーバー隊以降の古参戦隊とはまた異なった認識を持っていたのです。別に始祖2戦隊が聡明で古参戦隊が浅はかというわけでもなく、その逆というわけでもなく、それは単に互いの認識している常識が異なっているという違いによるものでした。
04denji01.jpgバトルフィーバー隊以降の古参戦隊の場合、年代的な傾向もあり、地球や宇宙を救うためなら自分達は消えても構わないという考え方が当たり前となっており、親交を結んでいた戦隊仲間は皆そのような考え方であったため、それがスーパー戦隊として当然の考え方のように簡単に信じてしまう傾向がありました。しかしゴレンジャーとジャッカー電撃隊はその古参戦隊群だけでなく、ゴセイジャーまで至る34戦隊全部を観察してきたので、スーパー戦隊といっても全部が全部が古参戦隊と同じような考え方をするわけではないということをよく知っていました。
どちらが正しいかという問題ではない。むしろゴレンジャーやジャッカー電撃隊のメンバー個々の感覚としては、古参戦隊に近い考え方だったといえます。自分達が犠牲となることで次代の人々が幸福になるのならば、年老いた自分達が消えることはむしろ望むところだと思えました。
だが自分達はそれで良くても、そういう展開を望まない戦隊が1つでもあれば、「この星の意思」の計画は成就しない。そのことが問題でした。いや、そういう問題があること自体はもちろんバトルフィーバー隊以降の古参戦隊だって理解はしていました。いずれそういう問題が生じることになり、その時は問題解決のために努力をしなければいけないだろうという程度の予測は当然立てていました。しかし、ゴレンジャーとジャッカー電撃隊の問題意識はそれとはだいぶ異なっていました。問題があるという認識ではなく、問題があることが問題だという認識であったのです。

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レジェンド大戦終了直後にアカレッドと「この星の意思」が34戦隊の前に現れ、「宇宙最大の宝」を使って宇宙を作り変える計画について説明してから去っていった後、ジャッカー電撃隊の行動隊長のビッグワン番場壮吉はアカレッドが戦隊メンバー達に冷たい視線を浴びせられていた時にゴレンジャーのリーダー、アカレンジャーの海城剛がアカレッドの計画に賛意を示したことに興味を覚えました。また、その際に海城がアカレッドに何やら意味深なことを言っていたことも番場は気になっていました。
それで他の33戦隊がそれぞれの戻るべき場所に戻っていった後、ゴレンジャーとジャッカー電撃隊だけがザンギャックとの戦争中にスーパー戦隊総本部となっていたイーグル秘密基地に戻った際、番場はまず海城にどうしてあの計画に賛成したのかと尋ねました。すると海城は賛成したわけではないと言います。番場は不思議そうに、でもアカレッドが35番目の戦隊を連れて戻るのを待つと言ったではないかと海城に問い返しましたが、海城は番場に向かって、それは何もあの計画のためとは限らないと言い、逆に番場に対して、あの計画の成否について番場壮吉としてはどう考えているのかと質問してきました。
それに対して番場はそりゃ普通に考えて失敗するだろうと即答しました。番場も個人的にはあの方法で宇宙が救われるなら大歓迎だとは思っていましたが、歴代スーパー戦隊を全部観察してきた番場には、34戦隊全部の「大いなる力」が揃わなくては成功しないというこの計画が実現するとは到底思えなかったのです。
34戦隊の「大いなる力」をアカレッドが宇宙から連れてきた35番目の戦隊に渡して、35番目の戦隊が「宇宙最大の宝」に34戦隊の「大いなる力」を戻すことで世界の融合を解除して宇宙をザンギャックもスーパー戦隊もいない平和な宇宙に作り変える、しかもスーパー戦隊が35番目の戦隊に「大いなる力」を渡すためには自分の戦隊と同じ志を35番目の戦隊の中に見出さないといけないという、そういう計画なのですが、番場がすぐに思いつくだけでも、この計画に賛同しそうにない戦隊や、協力困難な戦隊は結構な数に上りました。
例えばカクレンジャー、ダイレンジャー、ギンガマン、ハリケンジャー、ボウケンジャー、シンケンジャーあたりはかなり難しいであろうし、他にも問題のありそうな戦隊は複数簡単に思いつきました。これでは34戦隊の「大いなる力」を35番目の戦隊の許に集めるのは難しい。だからこの計画は失敗するだろう。そう海城に向かって説明した番場は、だがそれは普通に考えればの話だと断りを入れ、もし「この星の意思」が「大いなる力」をスーパー戦隊側の意思を無視して取り出す方法を用意すれば話は別だと言いました。
「この星の意思」だって自分達同様34戦隊をずっと観察してきているのだから、この計画に非協力的な戦隊が現れることは予想出来るはず。あの周到な「この星の意思」がそんな計画の失敗に繋がる事態を手をこまねいて放置しておくとは思えない。だからきっと何か手は打ってくるだろう。番場はそう言って海城への質問の答えの結論としました。

しかし海城は、番場の予想した「この星の意思」の奥の手までも予想はしていたようで、番場の説明を聞いても一切顔色は変えず、その上でおそらくそれでも「この星の意思」の計画は失敗するだろうと言い切ります。これには番場も意外そうな顔をして、どうしてそう思うのかと海城に問いかけました。それに対して海城は、そもそもどうして「この星の意思」がそんな奥の手まで考えなければならない事態になっているのか考える必要があると言いました。
それは34戦隊の協力が無ければ計画が成功しないという状態になってしまっているからだ。では、どうしてそうなってしまったのかというと、それは34戦隊の戦士たちの体内に「大いなる力」が半分残ってしまったからであり、それは「この星の意思」としては想定外の事態だった。そういう考え方をすれば、まるで「大いなる力」が半分自分達の体内に残ったことが想定外のアクシデントであったように思えてしまうが、実際はそうではないと海城は番場に向かって言います。
02jaker01.jpg番場は「この星の意思」の説明した通り、それが想定外のアクシデントであったと認識していたので、海城の言葉を意外に思いましたが、よくよく「この星の意思」の言葉を思い返してみて、ハッとしました。ザンギャックとの戦いの直後に現れた「この星の意思」の説明を最初からじっくり反芻してみると、確かにこれは想定外のアクシデントなどではない。確かに「この星の意思」にとっては想定外であったろうが、それは「この星の意思」の希望的観測から見ての「想定外」に過ぎないということは「この星の意思」自身が言及していたのだということを思い出した番場が海城の顔を見ると、海城も頷いて話を続けました。
「この星の意思」は地球の中心で「宇宙最大の宝」という装置を発見した際に、その装置の仕様を理解したという。つまり「宇宙最大の宝」は「この星の意思」が作ったものではなく、何か別の存在が作ったものなのです。そして「この星の意思」が理解したその装置に関連する様々なルールの中で、「大いなる力」を34戦隊の戦士たちから装置の使い手に移譲する際のルールは、「34戦隊の戦士たちが装置の使い手を自分達と同じ志を持つ者だと認めること」であった。だが、これが困難だと見た「この星の意思」がザンギャックとの戦いを利用して強制的に34戦隊の戦士たちの体内から「大いなる力」を放出させようとした。それが今回の事件の実態でした。
つまり、「この星の意思」は本来のルールとは違うことをやろうとしたのです。あるいは「この星の意思」が今回のような行動をとるに至った経緯を考えると、これはこれで何らかの運命的な導きによるものなのかもしれない。いや、きっとそうなのだろう。だがそれでもこの「宇宙最大の宝」やそこから生み出された「大いなる力」に関連する本来のルールとは違うことを無理にやろうとしたことは紛れもない事実です。
そうなると、むしろこの装置やルールを作った者から見れば想定外なことをしていたのは「この星の意思」の方なのであり、それは成功の可能性が最初から低いことであったと考えるしかない。だから「この星の意思」の思惑は外れ、34戦隊の戦士たちの体内に「大いなる力」は半分残ってしまった。本来のルールから外れた無理なことをしたのだから、それが当然の結果だったのです。
つまり、「この星の意思」の計画がこうして窮地に陥っているということ自体が、その計画が「宇宙最大の宝」関連の本来のルールから外れていたことの証となっている。現在の事態はそれで説明はつく。そして、もし「この星の意思」がその自分の無理筋の計画をあくまで完遂するために更なる手を打ったとしても、それはやはり本来のルールから外れている限り決して上手くはいかないのだろうと予想がつく。

しかし問題はここからです。こうなってくると、「宇宙最大の宝」の使い手がその使用エネルギーである34戦隊の「大いなる力」を獲得するためには34戦隊の戦士たちから自らと同じ志を持つ者だと認められなければならないということになる。それがこの装置を作った者が定めた本当に正しいルールなのです。
だが、34戦隊の中にはこの装置を使って宇宙を作り変えることに賛同しないことをポリシーとしている戦隊もあるし、宇宙の作り変えをしようとする装置の使い手と自分達を同一視できない戦隊もある。つまり、「宇宙最大の宝」の使い手がこの装置を使って宇宙を作り変えようとする限り、34戦隊の「大いなる力」を全部集めることは出来ない。34戦隊の「大いなる力」が全部揃わないと「宇宙最大の宝」を使うことは出来ないのだから、結局、「宇宙最大の宝」を使っての宇宙の作り変えは不可能だということになる。
しかし「この星の意思」は「宇宙最大の宝」が宇宙を作り変えることが出来る装置だという情報は読み取っている。これは大きな矛盾です。おそらく「宇宙最大の宝」は本当に宇宙を作り変えることは出来るのでしょう。だが実質的には宇宙を作り変えることは出来ない。ならば一体何のためにこんな装置が作られたのでしょうか。
もともとは宇宙を作り変えるための装置として作られたのだが34戦隊の中に偏屈な戦隊が複数生まれたために使えなくなってしまったと考えることも出来るが、これは違うだろうと海城は思いました。34戦隊がこの世界に現れる原因となった世界の融合そのものがこの装置によって引き起こされたものなのです。つまり、この装置、あるいはこの装置の製作者自身が34戦隊をチョイスしているわけで、最初から宇宙の作り変えという計画を許容しない戦隊が34戦隊の中に含まれていることは折り込み済みだったはずなのです。
そう考えると、この「宇宙最大の宝」という装置の製作者であり、同時にこれまでの34回もの世界の融合を仕掛けてきた張本人は、本心では宇宙の作り変えなど望んではいないということになる。それなのに宇宙の作り変えが可能な「宇宙最大の宝」という装置を作った。これは奇妙な話です。
あるいは「宇宙最大の宝」は単に世界を融合させるための装置であって、そこに「大いなる力」を戻せば宇宙を一旦リセットして作り直すことが出来るという機能が生じたのは偶然であって、その機能は単なる予期せぬ副産物に過ぎないという見方も出来るかもしれない。だがこれも違うだろうと海城は思いました。もしそうであるならば、わざわざ「大いなる力」などというものを生み出して34戦隊の戦士たちの体内に仕込む必要性など無いし、「宇宙最大の宝」を地球の中心に置いて「この星の意思」に発見させるように仕向けたり、その装置の仕様を読み取れるようにしておく必要も無い。
「宇宙最大の宝」を作った世界融合の黒幕は、明らかにこの34世界が融合した世界において、「大いなる力」や「宇宙最大の宝」を使って更に何かをさせようとしている。そのために「この星の意思」やアカレッド、そして自分達スーパー戦隊も動かされようとしている。そして、その黒幕が望んでいることは「宇宙を作り変えること」ではない。しかし同時に「宇宙を作り変えること」が可能な装置も製作し、それを自分達に提示している。

この奇妙な状況を深読みする必要は無いと海城は思いました。この奇妙な状況をそのまま受け入れて解釈すればいい。その黒幕は宇宙を作り変えることが可能な装置を使うという目的で「この星の意思」やアカレッドやスーパー戦隊を動かしながら、その果てに宇宙を作り変えることではない別の何かの目的を実現しようとしているのです。
どうしてそんなややこしいことをしようとしているのか不明であり、またその「別の何かの目的」が何であるのかも全く分からない。ただ、その黒幕の思惑に従って状況が進んでいけば、その答えもいずれ見えてくるのではないかと海城は考えました。だからザンギャックとの戦いの後に現れた「この星の意思」の説明に対してこれらの気付いたことを指摘することもなくそのまま説明を受け入れ、アカレッドの申し入れを受け入れて快く宇宙へ送り出したのでした。
海城はもともと、どうしてアカレッドのような思念体の戦士が生み出されたのか不審に思っていましたが、今回の件でその謎が解けたような気がしたのです。おそらくアカレッドはこうして34戦隊の戦士たちが「大いなる力」を半分放出して戦う力を喪失した後、宇宙に散った「大いなる力」を回収して35番目の戦隊を見つけてくるだけでなく、この世界融合の黒幕が本当に目指していることが何であるのかについての解答を34戦隊の代わりとなって見つけてくるために生み出された34戦隊の分身のような戦士なのだと海城には思えたのでした。
だからアカレッドには今のところ黒幕の思惑通りに動いてもらった方がいい。その果てにきっと答えが見つかる仕組みになっているはずだからです。それで海城はアカレッドを「スーパー戦隊の分身」だと激励して、きっと正しい解答、すなわち「世界融合の黒幕の真の目的に合致した35番目の戦隊」を見つけ出すことが出来るはずだと内心期待して宇宙に送り出したのです。
そうした自分の考えを番場やその場に居たゴレンジャーやジャッカー電撃隊のメンバーに向かって海城が説明したところ、一同は大いに納得し、ならばとにかく1年後のアカレッドの帰還を待つことにしようということになりました。

01-2A.jpg
そうしてジャッカー電撃隊の面々が帰っていくと、基地に残ったゴレンジャーのメンバーに向かって海城は最後の戦いの前に士気を削いではいかねいと思って皆に言っていなかった大事な話があると切り出して、自分以外のゴレンジャーの4人に江戸川元総司令の死の事実を告げました。
4人は江戸川が死んだと聞き驚き、病死したのか、それとも今回の戦災で亡くなったのか尋ねました。ゴレンジャーのメンバーにとっては父親のように慕ってきた相手である江戸川ですが、今回の戦争で世間では多くの人達が自分の家族や友人を失っています。そのような犠牲者を出さないために戦うべき戦士が自分達の立場であるわけで、多くの人々が家族や友人を失って悲しんでいるのは自分達の力不足が原因ともいえます。だからたとえ父親同然の江戸川の死といえども、世間の人々の悲しみを差し置いて自分達が大袈裟に嘆き悲しむことは出来ない。もちろん非常に悲しいのですが、今の自分達が江戸川の死に涙を流すことは出来ないと新命たち4人は思いました。
しかし海城は4人の問いかけに首を振って、江戸川さんは戦死したと告げました。意外そうな顔をする4人に向かって海城は江戸川がザンギャックの基地に潜入して捕虜になっている人々を救出して、更にザンギャックの重要な情報を盗み出して脱出し、追手と戦って情報を孫に託して死亡したことを説明し、実はその江戸川の盗み出した情報のお蔭でスーパー戦隊は最終決戦を勝利することが出来たのだと告げました。
初めてその事実を知らされた新命たち4人は、まさに江戸川が年老いた身で最後まで戦士として自分達と共に戦い抜いたのだと悟り、胸が熱くなり、こみあげてくるものがありました。そして新命たち4人は涙を流し、海城も一緒に泣きました。これは5人にとって父親同然の江戸川の死を悲しんでの涙ではありません。年老いてとっくに引退して長らく会っていなかった江戸川が最後まで自分達と共に戦ってくれたことが嬉しく、江戸川という尊敬すべき戦友と共に戦えたことに素直に感動して込み上げてくる涙でした。
もし江戸川が命を落としていなかったとしても、5人は感動の涙を流していたことでしょう。戦士が無闇に悲しみの涙を流すことは自戒していた5人でしたが、戦友の勇敢な行為に感動して涙することは戦士ならば許されることだと考えていたので、ここは海城たち5人は心置きなく感動の涙を流しました。海城もこの感動はかつて江戸川と共に戦ったゴレンジャーの5人だけで共有すべきだと思い、5人だけになってこの事実を他の4人に告げる機会までずっと感情を爆発させるのを抑えていたのでした。
そして、ひとしきり涙を流して5人が落ち着いたところで、海城はまだ人々への戦勝報告の手筈を整えたり、戦後処理や復興計画の始動など、しばらく多忙は続くが、出来るだけ早く時間を作って新宿のスナック・ゴンの地下の旧ゴレンジャールームに5人で行こうと言いました。ゴレンジャーの5人は長らくスナック・ゴンには行っていなかったので、新命たちは海城のいきなりの提案に少々面食らいましたが、江戸川が以前と変わらずゴンを住居としていたことは知っていましたから、要するに弔問なのだと理解し、新命は海城に江戸川さんの亡骸はそこに戻っているのかと尋ねました。
海城はそこまではハッキリ把握していないと答え、自分も江戸川さんの死を知ったのは最終決戦の直前だったので、その後の詳細は把握出来ておらず、亡骸の弔いの件なども気になっており、ゴンに行くのはその確認のためという理由もあると言いました。また、江戸川が遺した情報を自分に届けてくれた江戸川の孫に対して後で自分が出向いて事の経緯を伝えると約束したので、その約束を果たしに行くのも1つの目的だと海城は言いました。ただ、わざわざ5人で出向くのは他に理由があるからでした。
それは旧ゴレンジャールームに江戸川から海城たちゴレンジャーの5人宛てのメッセージが遺されているからだったのです。どうして海城がそのことを知ったのかというと、あの江戸川から孫の剛に託されて海城の許に送信されたマイクロチップのデータの中に、1枚だけザンギャックの基地から持ち出したものとは違うものが混じっていたからでした。

01goren03.jpgかつて海城たちがゴレンジャーとして江戸川の下で活動していた時期に、江戸川や海城たちの間で伝達事項がある際、誰宛てにどういう類の伝達事項があるかを示す、外部の者には分からない符牒を遣り取りする習慣がありました。そして、その伝達事項の詳しい中身は特に指定が無い場合はゴレンジャールームの中の秘密の隠し扉の中に収めておくことになっていました。その符牒が記されたデータが送られてきたデータの中に1枚混ざっていたのです。
それは江戸川から海城たちゴレンジャー5人それぞれに伝達事項があるというもので、その伝達事項は私的なものでした。そんな私的な通信の符牒がザンギャックの機密データの中に混じっているのは不自然なので、おそらく最初は江戸川はその符牒だけを自分達に送る手筈であったが、思わずザンギャックの機密データが手に入ったので一緒に送ることになったのだろうと海城は推測しました。そして、ザンギャック基地に潜入する直前に自分達に届く手筈を整えていた私的な通信とは、おそらく生命の危険を覚悟した上での遺書の類ではなかろうかと思えました。

実際のところはだいたい海城の推測通りでした。江戸川はザンギャック基地に潜入するためにゴンの地下の旧ゴレンジャールームを出発する前に、少しの時間鎧を外で待たせて、万が一の時のために海城たちゴレンジャーの5人に宛てての遺書を書き、旧ゴレンジャールームの中の自分と海城たちだけが知っている秘密の隠し扉の中に入れました。もちろん無事に戻ることが出来ればそんな遺書は回収して破り捨てるつもりでしたが、何せ敵基地深く潜入するわけですから万が一のための備えであったのです。
そして江戸川は首から下げたペンダントのチャームの中に海城たちへ向けた通信の存在を示唆する符牒のデータのマイクロチップを入れ、旧ゴレンジャールームのデータ送信機器の操作マニュアルの用紙も添えました。死を覚悟した時にはそのペンダントを鎧に渡して逃がして、旧ゴレンジャールームから現ゴレンジャールームの海城にこの符牒を送らせ、遺書の存在を海城に伝えるつもりであったのです。
すると潜入先の基地でザンギャックの機密データが手に入ったので、江戸川はそれらも一緒にチャームの中に入れ、鎧を生き残らせるために逃がした時点では江戸川は死を予期していなかったので鎧と別行動をとることになり、結局は死を覚悟した段階で傍にいた剛にペンダントを託すことになったのでした。
つまり、もともと江戸川が遺書を海城たちの手許に届けるために符牒の入ったペンダントの準備をしてザンギャック基地に潜入していなければ、ザンギャックの暗号データは海城の許には届かなかった可能性が高い。江戸川の死の覚悟や海城たちへの格別の想いが結果的に地球人のザンギャック帝国に対する勝利を呼び寄せたともいえます。
そこまで詳細な事情は分からないながらも、江戸川がこの戦時の切羽詰った状況を知りながらわざわざ自分達に何か私的なメッセージを残してザンギャック基地に向かったということは、そのメッセージはよほどのもの、おそらく半ば死を覚悟した上での遺書のようなものであったのだろうということは海城にも容易に理解は出来ました。ならば、江戸川が死んだ今、自分達は出来るだけ早くそれを見なければならない。海城は新命たち4人にそう説明し、数日後、なんとかスケジュールを調整して5人で新宿に行き、ゴンを訪ねました。

海城たち5人が着くと、ゴンには剛が居ましたが、既にザンギャックとの戦いが終わったことは報道されていたので、この日は千葉の方に疎開していた剛の母や兄たちが江戸川の弔いと、剛を連れて行くためにゴンにやって来ていました。
戦争は終わり、新宿は荒れ果てており、江戸川も亡くなった今、まだ少年の剛が此処に残る理由も無い。母親はひとまず剛を千葉の実家に連れて行くことにしたのでした。剛の兄たちにとっても江戸川は祖父であり、また母親にとっても義理の親であった江戸川の死は大きなショックで、ゴンに着いて近くに埋葬した江戸川の墓に行くと母も兄たちも悲しみに暮れましたが、その後店に戻ると母親は剛に江戸川のことや地下室のことで説明を求められました。
亡き祖父の指示通りに地下の旧ゴレンジャールームに入ってイーグルの海城のところに連絡をしたりしたことによって、既に剛は江戸川がイーグル関係者であったのであろうことは見当がついており、新宿自警団のサブリーダーに事情説明を求めて、サブリーダーから江戸川が元イーグルの総司令であったということは聞き出していました。ただサブリーダーもそれ以上の詳しい話は知らなかったので、剛は長年祖父と一緒に暮らしていた母親ならもっと詳しい話を知っているかと思ったのでした。
剛が知りたかったのは、祖父は自宅の地下にこんな秘密基地のようなものを作って何をしていたのかということです。おそらくイーグルの任務に関係していたことなのであろうが、それに母親や、あるいは数年前に亡くなった父親は関与していたのであろうかというのが剛の抱いた疑惑でした。それで剛は母親に、祖父がイーグル総司令だったことや地下室のことを知っていたのかと尋ねました。
江戸川が総司令だったことまで知られていては、さすがに母親も何も知らなかったとしらばっくれるのも不自然であったので、それらについては実は知っていたと答えるしかありませんでした。母親はもちろん地下の旧ゴレンジャールームのことや亡き義理の父が元イーグル総司令であったことや亡き夫がイーグル工作員であったことは知っていましたが息子たちには秘密にしていました。もちろんイーグルの任務は家族にも秘密であるという鉄則がその最大の理由でしたが、同時に母親は息子たちは義父や夫のような殺伐とした世界には足を踏み入れてほしくないという想いもあったからでもありました。
それで母親はせめて亡き夫、すなわち剛の父がイーグル工作員だったことは隠そうと思い、確かに義父の権八はイーグル元総司令だったが、もともと家族にも機密は明かさない仕事であり、だいぶ前に引退したのもあって自分はもちろん、実の子であった亡き夫も権八とイーグルの関わりはあまり詳しくは知らないのだと説明しました。
しかし剛が地下室はそんな長い年月使ってないような感じではなかったと反論すると、母親は困ってしまいました。最近まで江戸川が使っていたとなると亡き夫もそれを知らなかったというのは不自然となるからです。そこで母親は仕方なく、地下室が昔イーグルの特殊部隊であったゴレンジャーの司令室だったことを明かし、江戸川が現役当時はゴレンジャーの指揮官であったので此処の地下にゴレンジャールームが作られたのだと説明しました。
ここまでは本当の話なのですが、ここから先は母親は剛に嘘の説明をしました。つまり、江戸川が退役してゴレンジャールームは別の場所に移ったが、此処の地下の旧ゴレンジャールームも時々ゴレンジャーのメンバーによって使われていたのだと虚偽の説明することによって、亡き夫がイーグル工作員として地下室を使って活動していたという事実を隠したのでした。
この母親の説明を聞いて、剛はそれで地下室は使用したような形跡があったのかと納得し、ならばあのゴンでも何度か見かけたことのあるような気のする「イーグルの海城」という男がゴレンジャー関係者なのかと思い、母親に海城という人がゴレンジャーなのかと質問しました。
剛はあの祖父を亡くした日に地下室のモニター越しに会話したイーグルの海城という男が何者であるのか分かっていなかったのですが、母親の方は今回の対ザンギャック戦争に際してゴレンジャーがスーパー戦隊の一員としてその存在を明かし、リーダーとして海城の名も公開していたのは新聞で知っていたので、これは別に秘密にしなくてもいいことだと考えて、剛の質問に頷き、そうだと答えて、海城剛はスーパー戦隊の1つ、ゴレンジャーのリーダーのアカレンジャーなのだと説明し、もともと義父の権八の部下だった海城氏は最近までよくこの店にもコッソリ来て地下室を使っていたのだと言いました。

01goren04.jpg剛はこの母親の話を信じて納得したのですが、そこにちょうど海城たち5人がゴンを訪ねてきたので剛も母親もビックリしました。海城たちと母親は顔見知りであり、海城は母親に江戸川の件でお悔やみの言葉を述べ、亡骸などの弔いはどういう状況なのか尋ねました。それで埋葬も済んでいることを聞くと海城は墓参に行っていいでしょうかと伺いを立て、母親は海城たち5人を江戸川の埋葬場所に案内しました。
海城たち5人は江戸川の簡素な墓標の前で静かに瞑目して手を合わせ、その後、再びゴンに戻って海城は剛の母親にこれからどうするのか尋ねました。息子たちとひとまず千葉の実家に行くと母親が答えると、海城は今はかなり忙しいが、江戸川の正式な墓の手配や葬儀などはこちらで何とかするので、追って連絡させてもらいますと言い、母親の実家の連絡先を聞きました。
そして、実は地下の部屋に江戸川さんから自分達への遺書が置いてあるらしいので、ちょっと見に行かせてもらっていいだろうかと海城は母親に尋ね、許可を貰うと地下に行こうとしたところ、剛が海城を呼び止めて話しかけてきました。剛は地下室のモニター越しに会話した海城の顔を覚えていたので、こうして訪ねてきた海城という男があの時のイーグルの海城であり、しかもそれがあのザンギャック軍と戦ったスーパー戦隊のリーダーであるアカレンジャーの正体であることも分かっていました。
海城の方もあのモニター越しの会話の時に顔は合わしているので剛が自分のことを覚えていることも予想していましたし、おそらく既に母親あたりから江戸川が元イーグル総司令であったことやゴレンジャーとの関係の話も聞いているだろうとも思っていました。もともとイーグル関係の情報は剛たち江戸川家の孫たちには一切秘密であったことは海城も分かっていましたが、しかし剛があの地下室の存在を知り、イーグル関係者であることが明らかな自分と通信までした以上、母親や周囲の人々も剛に何の事情も説明せずに納得させることなど不可能だということは海城には想像がついていたからです。
また、自分がアカレンジャーであることも既に情報公開してしまっていたので、海城は既にそれも剛は把握している可能性は高いとも思っていました。仮に今は把握していなくてもいずれはどうせ知ることになる。だから別に海城は剛に対して自分がアカレンジャーであることを隠すつもりもありませんでした。しかし、そうなると海城から剛に向かって今回の江戸川の死について事情説明するほどの情報など、もはやあまり無い。むしろ海城の方がどうしてこんなことになったのかもっと詳しく聞きたいぐらいでした。
そういう状況なので海城は剛への事情説明の約束を果たすのをついつい後回しにしていたのですが、剛に呼び止められて事情説明をしなければいけないのだと思い至り、そう思うと、これは迂闊なことは言えないとも思いました。母親が剛に全部秘密を明かしたとは限らない。例えば剛の亡き父親のイーグル工作員としての秘密活動の件など、海城は剛の父親を後輩として可愛がっていましたから全て把握していましたが、それを全部母親が剛に説明したとも思えない。しかしこの状況ではあるいは一部は説明せざるを得なかったのかもしれない。そのあたりどうなっているのか、いきなり剛に話しかけられた時点で把握していなかったので海城は少し緊張し、剛の言葉をよく読み取って慎重に対応しようと思いました。

そのように祖父や父親のことを剛が根掘り葉掘り聞いてくるのではないかと海城は警戒しましたが、意外にも剛はそういう話はせず、ゴレンジャーの海城さんですよねと確認した上で、あの時送ったデータは役に立ったのですかと質問してきました。海城は際どい質問ではなかったことに安堵して、笑顔で頷いて、あのデータのお蔭で我々スーパー戦隊はザンギャック軍に勝利することが出来たと言い、江戸川さんと君のお蔭だと笑いかけ、剛に近づいて固く握手しました。
剛は安堵した顔になり、じゃあ爺ちゃんの仇は討てたんですねと嬉しそうに言いました。ところが海城はその剛の言葉を聞くと、少し厳しい表情になって、それは違うと言ったのでした。我々は江戸川さんの仇を討つために戦ったわけではないし、君の行為もお爺さんの仇討ちであったという解釈ではいけないのだと海城は言います。
実際のところ江戸川さんがあのデータの重要性をどれほど認識していたのかは分からないが、それでもザンギャックとの戦いで何かの役に立つだろうと思って、命を賭けて自分のもとに届けようとしてくれた、それはこれ以上自分の大切な人達が犠牲になることがないようにしたかったからだと海城は剛に熱く語りかけ、もちろん君のことも守りたかったから江戸川さんは君を庇って死んだんだと言いました。
そして、俺たちはそういう江戸川さんの気持ちが分かるから、江戸川さんが守りたいと思っていた君や、その他この地球の全ての人々をこれ以上犠牲にしないためにこそザンギャックと戦ったのであって、江戸川さんの仇を討つために戦ったわけじゃないと海城は言い、大切な人達を守りたい、それが常に江戸川さんの望みであり、俺たちの望みでもあった、だから今回も俺たちは江戸川さんの想いを受け継いで人々を守るために戦った、そして君もその戦いの中で君の出来ることをやってくれた、俺たちの仲間だと思って感謝していると、海城は剛に感謝の言葉を述べ、だから仇討ちをしたのではなく、お爺さんの想いを受け継いで地球の人々を守ったんだと思って胸を張ってほしいと剛に言いました。
その海城の熱い言葉を聞いて、剛は祖父やスーパー戦隊が大切な人達を守りたい熱い想いで戦っていたことを知り、胸が熱くなりました。そして無性に自分も祖父の想いを受け継いで、そんな想いで戦いたいという気持ちになり、祖父の想いを受け継いでザンギャックを倒してくれたスーパー戦隊への憧れが急速に膨らみました。その勢いで剛は海城に向かって、自分も祖父の想いを継いで大切な人達を守るために戦いたい、だからスーパー戦隊の戦士になりたい、出来れば海城さんの跡を継いでアカレンジャーになりたいと、突然とんでもないことを言い出したのでした。
これには海城はちょっと慌てました。剛の言葉があまりに予想外であったこともありますが、実は生前の剛の父から若い頃海城は何度も同じようなことを言われていたので、剛と剛の父が重なって見えてしまい、剛が父から何か聞いていたのではないかなどとも想像してしまって焦ったのでした。そして更に、そうした焦りに加えて、この剛の申し入れに正直に返答できない今の自分の特殊な状況も海城を困惑させました。
通常時ならば海城はアカレンジャーの戦士の使命をいずれは誰かに譲らねばならないと考えることにさほど不自然さは感じなかったのですが、先日のザンギャックとの戦い終了直後に現れた「この星の意思」の話から推測した今後の展開に照らすと、ゴレンジャーをはじめとした34のスーパー戦隊の「大いなる力」は何らかの目的を果たすために35番目の戦隊の手許に集められることになるようです。つまり、ゴレンジャーやスーパー戦隊の戦う力や戦う使命は宇宙からやって来る35番目の戦隊に受け継がれるのであり、剛のような地球人の少年に受け継がれることはないと思われるのです。だから剛の願いが叶う可能性は無い。
しかし、そんな残酷なことを剛に伝えることは出来ないし、だいいちスーパー戦隊が戦う力を失っていることを秘密にしておかねばならない現状でそんなことを正直に口外出来るわけがない。だから海城は返答に窮してしまい、少し躊躇した後、剛に向かって、まだ子供だから無理だと言い、まずは心身を鍛えるようにと、適当な事を言ってその場を誤魔化しました。剛の方は海城に励まされたと思って喜んでおり、海城はとりあえず剛が満足したようなのでここで話を切り上げ、地下室に行くことにしました。

そうして海城たちゴレンジャーの5人はゴンの地下の旧ゴレンジャールームに降りていき、秘密の隠し扉の奥に案の定、江戸川から5人に宛てた遺書を発見したのでした。それはザンギャック基地へ向かう直前に急いで書いたものであるので内容は至って簡潔なもので、もし生きて帰ることが出来なければという前提でゴレンジャーの5人各自に向けた別れの挨拶やそれぞれのメンバーに向けた気の利いた言葉が簡潔に書いてあり、ハッキリ言ってさして重要な内容のものではなく、あくまで明るい調子で戯言のような内容でした。
つまりは、確かに江戸川は海城たちに遺書を残したいという意図はあったのであろうが、それは重要な情報の送信を依頼することによってペンダントを託した相手(当初の予定では鎧)を死にゆく自分から引き離して安全地帯に逃げるように仕向けるための仕掛けの一環であったようで、遺書の内容自体にもともとシリアスな意味を持たせる意図は江戸川には無かったと思われます。
だから文面は冗談めかした別れの挨拶になっており、ユーモアを常に忘れなかった江戸川らしい遺書で、結論としてはゴレンジャー諸君と共に戦えたことを誇りに思うという、さらっとした内容でした。ただ、そんな中で海城に対してだけは江戸川も想うところがあったようで、海城宛ての遺書の内容だけはやや内容が多く、やや真面目なものになっていました。
01goren05.jpgそこには37年前に江戸川が部下であった海城の兄を黒十字軍の攻撃から守り切ることが出来ずみすみす死なせてしまったことへの詫びの言葉が書かれており、更に今回のザンギャックとの戦争で海城の可愛がっていた後輩である伊狩が近所に住んでいたのに空爆でみすみす死なせてしまったことについての江戸川の詫びの言葉も綴られていました。海城はイーグルの後輩の伊狩が退役して新宿に住んでいることは知っていましたが、既に空爆で死亡していたことは知らず、驚きました。
とにかく江戸川は海城の大切な人達を守れなかったことを申し訳なく思い、それらが自分にとっても大切な人達であっただけに自分の無力を残念にも思っていたようで、思えば37年前に海城の兄を救えなかった時から自分は衰えを自覚していた、いや衰えは関係無く元来無力だったことを自覚したのかもしれないと江戸川は遺書で告白していました。そして、そんな時に共に戦い始めた海城をはじめとしたゴレンジャーの諸君に自分の戦う使命を託すことが出来たことを有難く思ってきたと江戸川の遺書の文面は続いていました。無力な自分でも戦う使命を託せる相手を得たことで、こうして最後まで戦い抜くことが出来た。だから自分はイーグル司令としてではなく、1人の地球人としてゴレンジャーと共に戦えたことを誇りに思うと江戸川は遺書で述べていました。
そしてそこから話題が転じて、江戸川の遺書は海城ももうすぐ還暦であることを指摘し、老婆心ながら海城たちも自分のゴレンジャーとしての戦う使命を託せる後継者を見つけておいた方がいいのではないかと提案していました。ゴレンジャーの特殊な事情は承知の上でやはりそれは必要なのではないかと江戸川は記していました。
ゴレンジャーの特殊な事情とは、「大いなる力」を持っていることや、他のスーパー戦隊の動向を観察し続けるという特殊な任務のことであり、それについてはイーグル首脳部は把握していましたから、当然江戸川もそれは承知しており、その特殊事情があるゆえに海城たちが他の誰にもゴレンジャーの使命を引き継がせることを躊躇していたことも江戸川は知っていました。しかし、年を重ねて肉体的にも衰えは来るであろうから、自分の経験に鑑みて、江戸川はむしろ海城たちが最後まで人々を守るために戦い続けるためにはゴレンジャーの後継者は必要ではないかと考えていたのでした。
その上で江戸川の遺書は、実は自分は最近アカレンジャーの使命を託せるだけの資質があるのではないかと思える男を見つけたと書いてあり、その男の名は伊狩鎧、例の海城の後輩の伊狩の忘れ形見、息子だとのことでした。鎧は現在ここ新宿で人々の生活を守るために自分と共に働いており、今は未熟だが自分の大切な人達を守るために自分の出来ることを地道にやり通す粘り強さを持った男で、海城の亡くなった兄によく似たところがある、きっと将来大きなことを成し遂げると見込んでいる、そのように鎧を評価した上で江戸川は、今から鎧と共に剛を助けるためにザンギャックの基地に潜入するが、自分の命に代えても鎧はきっと死なせずに生きて戻す、だからもしこの遺書を見てアカレンジャーの後継者として興味が湧いたら一度鎧に会ってみてほしいと海城に向けて書き残していたのでした。

海城は後輩の伊狩に鎧という息子がいたことは知っていましたが、会ったことはありませんでした。当然、鎧がここゴンで今年になってからバイトしていたことも、ザンギャックとの開戦後、家族を失った鎧がここ新宿で江戸川と共に自警団で働いていたことも知りませんでした。だからいきなり江戸川から鎧をアカレンジャーの後継者に推されても意外な展開に驚くばかりでしたが、江戸川がわざわざ遺書で名指しし、命に代えても守るべき価値があるとまで言及している鎧という男のことが気になりました。
同時に、海城がまだ若い頃に後輩の伊狩が江戸川の息子と競うように自分こそが次のアカレンジャーだと名乗りを上げて海城によく使命を継がせてくれるよう頼んできていたのを思い出しました。海城たちはゴレンジャーのイーグル上層部しか把握していない特殊任務を継続するため、結局は伊狩にも江戸川の息子にも使命を継がせることはなかったのですが、恩師の江戸川が最後の最後でその伊狩の息子を次代アカレンジャー候補に指名するというのも妙な因縁を感じました。そして自分の尊敬していた亡き兄に似ているという鎧という男そのものにも海城は興味を抱きました。
それで海城は他の4人と一緒に地下室を出て階上に登ってゴンの店内に戻り、剛の母親に伊狩鎧という男は何処にいるのか尋ねました。すると母親も一瞬困惑したような反応をして、鎧が何処にいるのか分からない様子です。母親はザンギャックとの開戦後も何度か江戸川と連絡はとっており、その中で家族ぐるみの付き合いの伊狩家が鎧を除いて全滅したことや、鎧が江戸川や剛と共に新宿で人助けのため働いていることも把握はしていました。だが江戸川が亡くなる前後の事情はよく分かっておらず、少し前にゴンに着いて剛から聞いた事情説明もバタバタしていたので鎧の話にまでは及んでおらず、母親としては海城に問われて初めて、そういえば此処に居るはずの鎧の姿が見えないことにようやく気付き、慌てたのでした。
そうして、いったい鎧は何処に行ったのかと戸惑う母親に向かって、剛は鎧がもう此処には居ないことを初めて告げました。剛の話を母親や海城が聞いたところ、鎧は昨日、山梨の疎開先に向けて出発したとのことでした。

鎧は数日前、スーパー戦隊がザンギャック侵略軍を打ち破って戦争は終わったと報道で知り、歓喜し安堵すると同時に、やはりスーパー戦隊は素晴らしいと改めて思いました。そして、それに比べてやはり今の自分は自分の大切なものを守るという点であまりに無力だと、家族や江戸川の死を思い出して落ち込みました。
だが自警団の戦時体制の後片付けに多忙を極めたこの数日の間、夜になって部屋で1人「星の伝説」の絵本を眺めながら考えた結果、それでも自分はたとえ届かないかもしれないが幼い頃の夢であった「いつかスーパー戦隊の戦士のようになりたい」という想いは消すことは出来ないということに気付いた鎧は、ならば今は自分の明日を地道に一歩一歩良いものに変えていくために、今の自分のやるべきこと、出来ることを努力していこうと思い直し、疎開先の高校の仲間たちの許に戻り、学業や空手を頑張ることにしたのでした。
そう言って鎧が旅立ったのは昨日のことであり、海城たちとはちょっとした行き違いでありました。海城がどうしても鎧に会いたければ疎開先に連絡すれば容易なことではありましたが、海城はふと思い直して、鎧に会うのはやめておくことにしました。せっかくの江戸川の推薦でしたが、状況は変わっていたからです。
つまり、アカレンジャーの戦う使命を受け継ぐ者はどうやらアカレッドの連れてくる35番目の戦隊になるようなので、いくら江戸川の推薦でも伊狩鎧に受け継がせることは出来ない。ならば海城が鎧に会う意味など無い。可愛がっていた後輩の息子ではあるが、鎧はおそらく自分の亡き父がイーグル工作員だったという事実は知らないのだから、海城が鎧と会っても自分の正体を明かすことは出来ない。そんな出会いなどセッティングしたところで意味など無い。だから海城は鎧とあえて会うのはやめておきました。
そんなことをしているヒマがあるなら、鎧のように今回の戦争で家族を無くした世界中の膨大な数の少年たち全員の生活や学業の支援が今後も行き届くよう骨を折るのが自分達の役目であろうと考えた海城は鎧への興味は断ち切り、剛たちには鎧が此処にいないのならば別にわざわざ探す必要も無いし、今後も別に会おうと思っているわけではないと言いました。
単に江戸川の遺書に世話になった人物の1人として伊狩鎧という名があったのでちょっと興味を持っただけのことだと言い、海城は更に剛や母親や兄たち、その場に居た全員に向かって、自分達が此処に来たことは他言無用に願いたいと釘を刺し、更に母親には剛がスーパー戦隊やゴレンジャーの一員になりたがることなどないよう上手く誘導しておいてほしいと、こっそりと耳打ちして依頼しておき、その後、海城たちゴレンジャーの5人は江戸川の遺書を手にしてゴンから去っていったのでした。
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 21:01 | Comment(0) | 海賊戦隊ゴーカイジャー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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