2013年03月11日

海賊戦隊ゴーカイジャー妄想物語その13


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さて、レジェンド大戦終了直後に戻って、今度はザンギャック側の動向を見ていきます。

ザンギャック本星の総司令部では、地球に派遣している自軍の全軍が地球でしつこく抵抗を続けていたスーパー戦隊という連中を倒した上で最後にゴセイジャーを討伐するために全軍が集結し、いよいよ地球征討戦争を勝利して終えるところまでこぎつけたのだと理解していました。ところが地球でその最後の戦いにザンギャック全軍が突入した後、地球派遣軍からぷっつり連絡が途絶えてしまったので総司令官のワルズ・ギルや参謀総長のダマラスをはじめ、幕僚たちはみんな不審に思いました。
月面に前線基地はあり、全軍が総攻撃のために地球方面に出払っていて、月面基地には少数の警備兵と数隻の戦艦、あとは整備班などの非戦闘要員しか残っていませんでしたが、ワルズ・ギルが月面基地に状況を問い質したところ、どうやら全軍が突如激しい戦闘に巻き込まれた様子で、月面基地でもあまり状況は把握出来ていないようでした。
そうこうしているうちに地球で戦っているザンギャック軍を検知する反応が月面基地のレーダー上から見る見る減っていき、遂にはそれが全部消えてしまったので、信じがたいことだが自軍は全滅したようだと月面基地では結論を出すしかなく、その旨をザンギャック本星の総司令部に報告してきました。
0107.jpgワルズ・ギルは自分の指揮する作戦で配下の軍が全滅したなどという不名誉を現実として受け入れることが出来ず、何度も月面基地に事実確認をするよう繰り返し指示しましたが、月面基地は様々なデータを示して、どういう事情によってなのかは不明ながらとにかく地球派遣軍が月面基地の僅かな数の留守番部隊を残して全滅したのは間違いないと伝えます。それでもワルズ・ギルは信じようとはせずに月面基地の兵と押し問答を続けていましたが、参謀総長のダマラスはこれは一大事だと思い、すぐに司令室を出て皇帝アクドス・ギルに拝謁し、事の次第を報告しました。するとその話を聞いたアクドス・ギルはすぐにダマラスを伴って司令室にやって来て、緊急事態だと言ってワルズ・ギルから指揮権を取り上げて事態の収拾にあたることにしました。
アクドス・ギルは息子ワルズ・ギルが困った失態をやらかしてくれたものだと思いましたが、それでも帝国の後継者であるワルズ・ギルに非があるという形にするわけにはいかなかった。息子個人のためならばむしろ厳しく叱責する方が良いのでしょうが、アクドス・ギルが重視したのはあくまで自らの築き上げた帝国の安定であり、そのためにはただでさえあまり評価の高くない皇太子ワルズ・ギルの責任を追及するようなことは出来ません。
ワルズ・ギルは何ら欠点の無い無謬の総司令官でなければならず、それは別に虚像でも構わないというのがアクドス・ギルの考え方でした。だからこそ司令室でこれ以上息子が醜態を晒すことがないように一旦指揮権を取り上げてワルズ・ギルを退室させたのですが、ワルズ・ギルの方は指揮権をいきなり奪われて、父が怒っているのだと思い怖くなり、父に告げ口をしたダマラスを不快に思い、更に自分は父とダマラスに恥をかかされたのだと考えて腹立たしく思いました。

一方、司令室に残ったアクドス・ギルとダマラス以下の幕僚たちの許には月面基地から思わぬ報告が寄せられました。それは地球で全滅した軍の生き残りが月面基地に戻ってきたという報告でした。戻ってきたのは例のシドの上官の特殊部隊の隊長ただ1人でした。その隊長の報告は以下の通りでした。
彼の乗っていた戦艦がゴセイジャー討伐のために所定の目的地で戦闘に従事していたところ、突然背後から攻撃を受けました。既にゴセイジャー以外のスーパー戦隊は撃破したとの報告は受けていたので一体何者による攻撃なのか分からず、ザンギャック軍は混乱状態に陥り同士討ちまで始める始末でしたが、暫くすると襲ってきた敵はスーパー戦隊らしいと判明しました。信じられないことに全く何の前触れもなくザンギャック全軍をスーパー戦隊が包囲しており、凄まじい勢いで攻撃してきていたのです。
それゆえ、スーパー戦隊はザンギャック軍が把握していた比較的少数の精鋭部隊ではなく、ザンギャック軍を圧倒するほどの質と量を誇る巨大な敵であったのだとザンギャック軍の兵達は悟り(実際は誤認だが)、自分達がまんまと罠に嵌められたのだと感じてパニックに陥った。
隊長が把握している戦闘の記憶は一旦ここで途切れています。何故なら、隊長はその直後、自分の乗っている戦艦を含む一艦隊ごと、突如割れた空に呑み込まれて奇妙な空間をしばし彷徨い、その後、元の戦場の空間に戻った時には、ザンギャック軍は自分達の艦隊を除いては全滅していたからです。だから、どうやってザンギャック軍が全滅したのかは隊長には詳細には分からなかったが、状況から考えてスーパー戦隊の大軍によって全滅させられてしまったのだろうと思えました。
そのスーパー戦隊は何処に行ったのだろうかと隊長たちが不思議に思って眼下の地上を見下ろすと、スーパー戦隊の戦士たちと思しき一団が地上に立っており、自分達の艦隊を見上げているのに隊長たちは気付きました。スーパー戦隊が実はとんでもない大軍であったと思っていた隊長たちはその200人程度の戦士たちを見て斥候であろうと考え、状況はよく分からないながらも自分達の艦隊の所在をスーパー戦隊の本軍に報告されてはマズいと思い、眼下のスーパー戦隊の戦士たちを皆殺しにしようと思い攻撃を開始した。
0109.jpgすると突然、地上のスーパー戦隊の戦士たちが巨大なエネルギー弾のようなものを発射してきて、あっという間に上空のザンギャック艦隊は全滅させられてしまった。この隊長だけはさすがに特殊部隊の指揮官だけはあって、たった1人だけ間一髪の脱出に成功し、命からがら救命ポッドで戦場を離脱して、何とか月面基地に戻ってきたのでした。

慌てて逃げ出してきたゆえ、隊長はスーパー戦隊の戦士たちが戦う力を失ったことも把握していないし、そもそも戦闘の大部分の時間を豪獣ドリルの暴走のせいで起きた時空の歪みに呑み込まれていたせいで、スーパー戦隊の勢力を途轍もなく巨大なものだと誤解したままでした。そして最後にスーパー戦隊の戦士たちの放った「大いなる力」の攻撃を目撃したため、隊長はその凄まじい威力に恐れをなし、あんな少数の戦士たちでもあれほどの破壊力のある攻撃を発することが出来るのだから、スーパー戦隊の本軍がザンギャック全軍を全滅させることが出来たのも確かに納得できると思い込みました。
そうして隊長は「地球にはザンギャックの常識を超えた強大な力を持つスーパー戦隊という戦士たちが居り、それによってザンギャック軍は全滅した」と、月面基地から皇帝アクドス・ギルに報告しました。もちろんそれは内密な報告で、報告を聞いたのはアクドス・ギルとダマラスだけであり、月面基地でも隊長はそのことを他の誰にも喋っていませんでした。この宇宙にザンギャック軍よりも強大な力を持つ者が存在するなど決して知られてはいけないことであることぐらいは隊長ももちろん分かっていたのです。
ただ、そうは言っても、スーパー戦隊が途轍もない力を持っているという事実は隠蔽することが出来るとしても、ザンギャック軍が地球で全滅したという事実に関しては、既に月面基地でも本星の総司令部の幕僚たちの間でも周知のこととなってしまいました。これをどのように隠蔽して帝国の宇宙統治に動揺をきたさないようにするかが問題です。
ただでさえ帝国の中央軍をそのまま連れていった地球派遣軍が全滅したとなれば、本星の防衛も含む帝国中央部の軍備が手薄になり、その補充のために全宇宙のザンギャック軍の編成をだいぶ弄らないといけなくなり、それは帝国内の軍事バランスを混乱させることになり、帝国の統治力は低下します。そこにザンギャック軍の弱さなどが流言されると反乱なども誘発する可能性がある。そうならないようになんとか引き締めていかねばならない。そのあたりアクドス・ギルはしばし熟慮して方針を決定しました。

0108.jpgまず、もちろんスーパー戦隊が強大な力を持っていることやザンギャック軍を打ち破ったということはアクドス・ギルとダマラスと特殊部隊隊長だけの秘密として他には伝えないことにしました。ただ、もちろん地球でザンギャック軍がスーパー戦隊と戦っていたことや、その戦いの末にザンギャック軍が全滅したということは月面基地でも総司令部の幕僚たちの間でも周知の事実であったので、ザンギャック軍が地球で全滅した理由をスーパー戦隊以外に何かでっち上げる必要がありました。
かといって普通に戦って作戦の失敗で負けただけとするわけにもいきません。そうなれば総司令官であり次期皇帝であるワルズ・ギルの権威に疵がついてしまいます。また、もし普通に戦って負けたとなれば当然ザンギャック帝国としては雪辱戦をしなければならないが、地球に測り知れない力を持つスーパー戦隊が存在すると分かった以上、無計画に攻めるのは危険でした。下手したら敗北を重ねることになり、いっそう帝国の権威が地に堕ちる危険もあります。だから、地球を攻めるにしてももう少しスーパー戦隊について秘かに情報を収集してからでなければいけない。その間の時間稼ぎが何か必要でした。
そこでアクドス・ギルは現地軍の内部に裏切り者がいたのだということにしました。それもかなり大規模な帝国への反逆組織の策謀によるものだとして、まずはその反乱分子の討伐を先に行わねばならないのだということにしたのです。そうすれば当面は地球を攻撃しなくて済むので、反乱分子との戦いの間にスーパー戦隊について情報を集めればいい。現地軍に裏切り者がいたのならザンギャック軍の敗北はスーパー戦隊の謎の力無しでも説明はつきますし、作戦ミスというわけでもないので本星で指揮をとっていた総司令官のワルズ・ギルの経歴に疵もつかない。
だが実際はそんな裏切り者や反乱分子などは実在しないので、誰かをスケープゴートにしなければならない。そこでアクドス・ギルは月面基地に残っていた非戦闘員のスタッフの中に帝国への反逆組織のスパイが大量に潜入していたのだとデッチ上げることにしました。いずれにしてもザンギャック軍がスーパー戦隊と戦った上で大敗北したことを知ってしまった月面基地の者たちは生かして帰すわけにはいかない。どうせ口封じのために殺さねばならないのだから、ついでに反逆の罪を被せてしまえばいいのだとアクドス・ギルは考えました。

ただ、月面基地の者たちを皆殺しにして一件落着としてしまうわけにもいかない。それでは地球のスーパー戦隊について調べる時間稼ぎが出来ないし、ザンギャック軍の敗北やスーパー戦隊の存在を知るもう一方の存在である本星の幕僚たちの口を封じることは出来ないからです。さすがに本星の総司令部の幕僚たちを皆殺しにしたり悉く投獄したりすることは出来ない。しかしザンギャック軍の大敗やワルズ・ギルの失態を知った幕僚たちの中から皇帝一族の権威を侮り、この大敗後の帝国の混乱に乗じて不穏な動きを示す者が出てこないとも限らない。彼らを黙らせ従わせるには皇帝の圧倒的な力を示して屈服させなければならない。そのためのデモンストレーションの場が必要なのだとアクドス・ギルは考えました。
今回の権威失墜の元凶たる地球を皇帝の持つ圧倒的な力で滅ぼしてしまえば最高のデモンストレーションとなるのだということはアクドス・ギルにも分かっていましたが、何やら未知の力を持っているらしいスーパー戦隊の居る地球を不用意に攻めるのは万が一のリスクがあると、あくまで慎重なアクドス・ギルは警戒しました。デモンストレーションならば確実に成功させられる相手でなければならない。そこでアクドス・ギルは月面基地のスパイ達は幾つもの星が結託した大規模な反逆組織が送り込んだ者達であるということにして、反逆者たちの本拠地である幾つもの反逆星を叩き潰すことが急務だという事実をデッチ上げて、虚偽の征討戦争を起こすことにしたのでした。
その征討戦争の中で皇帝の圧倒的な力を幕僚たちに見せつけることがアクドス・ギルの真の狙いでした。だからそれは幕僚たちの手を借りるような通常の征服戦争ではない。あくまで皇帝だけが持つ特別な力だけで圧倒的なパワーを見せつけなければならない。そうしたデモンストレーションに格好のものをアクドス・ギルは最近手に入れていました。それは帝国艦隊の新たな旗艦である皇帝専用座乗艦ギガントホースでした。
0110.jpgギガントホースに搭載した圧倒的な数のギガロリウム砲だけで実際に星を滅ぼす様を目の前で見せつければ、幕僚たちも帝国艦隊の一部を率いて反乱など起こしたところでギガントホースを保有する皇帝一族には敵うはずもないことを悟り、愚かな野望を抱くこともなくなり、帝国は丸く治まるであろう。そのためなら反逆星の汚名を被せて幾つかの星を滅ぼすぐらい仕方のないことだとアクドス・ギルは考えました。

アクドス・ギルは極秘回線を使ってそうした計画を月面基地の特殊部隊隊長に伝え、月面基地の兵達には現地の非戦闘員スタッフ達の裏切り行為によってザンギャック軍は全滅したのだということが判明したのだと説明するよう指示しました。そして、その上で残兵たちを率いて月面基地の戦艦に乗り込み、上空に浮上して月面基地を攻撃、破壊し、非戦闘員スタッフを基地ごと皆殺しにするよう指示しました。
隊長はアクドス・ギルからのそうした指示に従い、まず月面基地の兵達に現地軍の非戦闘員スタッフ達が裏切ったので敗戦したのだと虚偽の説明をし、それを聞いた兵達は激怒して非戦闘員スタッフたちを次々と捕えていきました。突然捕らわれたスタッフたちは驚いて兵達に理由を尋ね、兵達はお前達の星が手を組んで帝国に反逆してお前達をスパイとして送り込んできたことが露見したのだと罵りました。当然全く身の覚えの無いスタッフ達は事実無根だと言い返しましたが、兵達はスパイの言うことなど嘘だと決めつけて聞く耳を持たず、抵抗するスタッフ達を殺戮していきました。
ただ、基地に残っていた非戦闘員のスタッフ達は兵達よりも圧倒的に多く、慌てて逃げ出して基地内に隠れた者達も多かったので、兵達も基地内の掃討戦に深入りする不利はすぐに悟り、特殊部隊隊長の指示に従い格納庫に行き、基地に残った数隻の戦艦に分乗すると、他の脱出用の宇宙船を全て破壊して基地内のスタッフ達の逃げる手段を奪って閉じ込め、戦艦を発進させて月面基地上空からの砲撃で基地を吹き飛ばして、スタッフ達を1人残さず虐殺したのでした。

しかしその直前、月面基地から宇宙の彼方の故郷の星に向けて必死のメッセージを送った者がいました。基地内で非戦闘員への殺戮が始まった時に驚いて物陰に隠れた例のエンジニアのドッゴイヤー家の一同は、ザンギャック軍が自分達の星が帝国に反逆したと決めつけていることに驚きました。息子たちは酷い誤解だと憤りましたが、ザンギャック帝国の遣り口に詳しい父親はそうではないと思いました。
これは誤解などではなく、何らかの陰謀なのだと直感した父親は、どんなに説明して誤解を解こうとしても無駄であり、故郷の星は問答無用で滅ぼされると予想し、もはや自分達は基地から逃げ出すことも出来ず殺されるのだろうと覚悟を決め、せめてただ1人故郷に残して来た末の息子のドンをはじめ、故郷の星の人々を少しでも多く生き延びさせたいと思いました。
そこで父親は秘かに持ち込んできていた小型メッセージカプセルに大急ぎで故郷のドン宛てのメッセージを打ち込みました。自分達は反逆者の嫌疑をかけられてこれからザンギャック軍に殺されるということ、必ず自分達の星を反逆の罪でザンギャック軍が滅ぼすだろうからすぐに人々に危険を知らせて皆で脱出するようにということ、ザンギャックが甘い態度を示しても決して信用せずに必ず逃げること、これらの事項を大急ぎで打ち込むと父親は基地の外に向けてカプセルを射出し、その直後、上空の戦艦からの砲撃で月面基地は木端微塵に砕け散りました。だが、射出されたカプセルは掌サイズの小型のものだったのでザンギャック戦艦にも感知されずに無事に宇宙空間を飛んでいき、自動的に故郷の星のドッゴイヤー家を目指して宇宙空間を航行していったのでした。

0111.jpg一方、特殊部隊隊長から首尾よく月面基地を破壊して非戦闘員のスタッフ達を皆殺しにしたという報告を受けたアクドス・ギルは、すぐに残存部隊を引き連れて本星に帰還して事後処理の顛末の詳しい報告をするよう指令し、それを受け、隊長は数隻の戦艦を率いて太陽系から去り、宇宙の彼方のザンギャック本星に向かいました。
そしてアクドス・ギルは本星の総司令部の幕僚たちに向かい、まずは中央軍の地球における壊滅を極秘事項とするよう命じ、迅速かつ隠密に宇宙各方面のザンギャック軍の再編成を行い、中央軍の抜けた穴を埋めて帝国内の軍事バランスを維持するよう厳命しました。そしてその上で、アクドス・ギルは今回の地球における敗戦の原因は現地軍の中に紛れ込んだ反逆組織のスパイの攪乱工作によるものだったことが判明したと言い、軍の再編成が落ち着いたらすぐに反逆組織の根拠地となっている星々を討伐するという方針を幕僚たちに向けて表明しました。
この全く寝耳に水のような話に幕僚たちは戸惑い、誰がそのような報告をしたのかと質問したところ、アクドス・ギルは皇帝親衛隊の独自の調査網によって判明したことだと言うだけであったので、幕僚たちは内心では全く信用しませんでした。幕僚たちはワルズ・ギルの無能な司令官ぶりをずっと見てきていましたから、敗戦の責任は明らかにワルズ・ギルおよび彼の暴走を止められなかった自分達幕僚のミスにあると分かっていました。それゆえ皇帝がとにかく不肖の息子である皇太子の権威を守るためにスパイの嫌疑などをでっち上げているのだろうということは賢明な幕僚たちには察しはつきました。

それゆえ、幕僚たちはやや白けた気分で、軍の再編成には時間もかかり、暫くは反逆組織への討伐戦争に大軍を回す余裕は無いのではないかと意見しましたが、それを聞いたアクドス・ギルはそうした幕僚たちの反応を予想していたかのように、本星の防衛に他の軍を回す余裕が無いというのならば本星の防衛は自分がギガントホースに座乗して自ら行うと言い渡したので、幕僚たちは青ざめて慌てました。帝国艦隊の最大最新鋭の旗艦ギガントホースが圧倒的な戦闘力を有していることは幕僚たちは承知しており、その艦に伝説の最強皇帝アクドス・ギルが現役復帰して完全武装で乗り込み、自分達の頭上で睨みを効かせるというのですから、思わず恐怖を感じたのです。
だがアクドス・ギルは平然とした顔で更に言葉を続け、ある程度軍の再編成が進み本星の防備に新たな戦力を投入する目途が立ったなら自分がギガントホース1艦だけで反逆星の討伐に出向くので、別に大軍を出す必要など無いが、その代わり幕僚は全員ギガントホースに同乗して討伐戦争に参加するよう言い渡したのでした。これを聞いて幕僚たちはますます緊張に身を固くしました。要するに自分達は本星の防衛においても全くアテにされておらず、むしろ留守中に反乱でも起こしかねない危険分子扱いされているのだと、彼ら優秀な幕僚たちは察することが出来たのです。
ここまで圧倒的な自信と、それを裏打ちする実力を有した皇帝に猜疑の目を向けられているのは自分達が帝国のこの手痛い敗戦を知ってしまったゆえであり、今の時期に皇帝への忠誠が疑われるような行為は自殺行為となるのだと皆が思い、震え上がりました。愚かなワルズ・ギル相手ならば侮った気持ちも内心抱いていた幕僚たちも、皇帝アクドス・ギルのこの先手を打った恫喝によって震え上がり、むしろアクドス・ギルは彼らに競って忠誠の態度をとらせることに成功したのです。

これだけでもう帝国が揺らぐ可能性は低くなったといえますが、それでもあくまで慎重な皇帝アクドス・ギルは実際に皇帝一族の持つ圧倒的な力を若い幕僚たちの脳裏に刻み込むことによって、次代まで帝国の統治を安泰ならしめることが出来ると考え、ギガントホースによる反逆星の討伐はあくまで実行するつもりでした。だが、その際にギガントホースに乗って自分が本星を離れてしまうと、やはり本星の防備が手薄になる。反乱防止のために幕僚たちをギガントホースに乗せて連れていき、本星の防衛はワルズ・ギルの下に皇帝親衛隊を半分置いて当たらせるつもりでしたが、それでもどうしても本星の防衛は戦力不足でした。
0112.jpg自分がギガントホースに乗っている以上は反乱を起こそうなどという愚か者はそうはいないだろうと思っていたアクドス・ギルですが、それでも万が一に備えて手を打っておくことにしました。以前から帝国一の科学者といわれており、行動隊長の改造手術の第一人者として知られていたザイエンが艦艇に代わる新たな決戦兵器として最近熱心に提唱していた人型の搭乗巨大ロボット「決戦機」の開発配備にゴーサインを出したのです。こうしてザイエンはアクドス・ギルの前面支援を受けて、さっそく急ピッチで決戦機を増産し、アクドス・ギルは皇帝親衛隊の隊員たちにそれら決戦機を与えて操縦させて本星の防衛体制を向上させていくことにしました。

そうした動きが始まった頃、地球での戦いが終わって1ヶ月ほど経った、地球暦で言うと2012年1月の終わり頃、月面基地から引き揚げてきたザンギャック軍の戦艦数隻の残存艦隊がザンギャック本星の近くまで戻ってきました。アクドス・ギルはギガントホースを発進させてその残存艦隊を出迎え、ギガントホースの手前で停船させると、裏切り者が何をしに本星へやって来たのかと糺しました。
このあまりに意外な皇帝の言葉に驚いた残存艦隊の兵達は裏切り者とはいったい何のことなのかと抗議しましたがアクドス・ギルは聞く耳を持ちません。アクドス・ギルは最初から月面基地の残兵たちも生かしておく気は無く、ザンギャックの敗戦やスーパー戦隊の存在を知っている彼らも反逆組織の一員であったということにして葬り去るつもりで本星に呼び寄せたのです。彼らは反逆組織の一味であって本星でのテロ計画のためにやって来たのだとの虚偽情報をアクドス・ギルから聞かされていた本星防衛隊の兵達も残存艦隊を包囲して敵意を剥き出しにしています。
だがアクドス・ギルは残存艦隊の中に例の特殊部隊隊長の姿が無い様子だということに気付き、残存艦隊の兵たちに隊長はどうしたのか尋ねました。すると兵たちの言うには、隊長は皇帝からの急に指令で自分だけ先に本星に来るように言われたので戦艦に積んであった小型高速艇で出発したはずだと言います。それを聞いて、アクドス・ギルは隊長がこの展開を先読みして逃げたのだと悟りました。

隊長は皇帝アクドス・ギルがザンギャック軍の敗戦を知った残兵たちを生かしておくはずがないと読んでいたのです。特にスーパー戦隊の謎の巨大なパワーという帝国にとっての重大機密を知ることになってしまった自分を必ず口封じのために殺すであろうことは、隊長自身がこれまでにもそうした帝国のエゴのための数々の暗殺を命じられてきただけに、嫌になるほどよく分かっていました。
だから隊長は本星には戻らずに途中で逃げたのであり、普通に逃げたのではすぐに捕まってしまうので、残存艦隊に乗る他の残兵たちを囮にして逃げるため、他の残兵たちには事情は一切説明せずに本星に行かせて見殺しにして、アクドス・ギルが残存艦隊を攻撃している間に自分だけは出来るだけ遠くに逃げるというのが隊長の作戦でした。アクドス・ギルはまんまと隊長の策に嵌ってしまったことになります。そのことを悟ったアクドス・ギルはギガントホースの砲撃で残存艦隊を乗員ごと吹っ飛ばして始末すると、ただ1人逃亡した反逆者である元特殊部隊隊長を全宇宙の指名手配犯とし、その行方を探し出して殺すよう官憲に命じました。
とはいっても相手は特殊部隊のリーダーですから、並大抵の者では探し出して捕えることは出来そうもない。そこでアクドス・ギルは特殊部隊には特殊部隊をぶつければいいと考え、特殊部隊の最精鋭メンバーを裏切り者の元隊長への追手に差し向けるよう指令を下しました。その結果、地球での怪我が癒えて現場に完全復帰したばかりの特殊部隊のエースのシド・バミックにも隊長追討の命令が下されたのでした。
それだけ措置を講じておけば、何処に逃げようともいずれは隊長も始末はつくだろうと考え、アクドス・ギルはもう隊長のことなどどうでもよくなり、後は下の部局に任せることにしました。そんなことよりも、アクドス・ギルはそろそろギガントホースを使っての一大デモンストレーションの準備の方に取り掛かることの方が大事であったのです。

0113.jpgさてそれと同じ頃、ドン・ドッゴイヤーの住む星では平和な日々が続いていましたが、ある日、ドンが学校から自宅に戻ってくると郵便受けの中にカプセルが入っていて、自宅のパソコンに繋いで中身を見てみると、それはザンギャック軍の軍属として出稼ぎに出ている家族からのメッセージでした。今回は軍事作戦に同行する仕事だと聞いており、そういう場合は軍属が勝手に外部に連絡することは基本的に許可されないことになっており、実際これまでにこういう場合に家族が自宅に連絡してきたことなど無かったのでドンはこれが異常な事態だと感じました。
いや、そもそもそのメッセージの内容が極めて異常な内容でした。よほど急いで文面が打ち込まれたようで、詳細な経緯の説明などは一切無い。そもそもドンの家族たちが何処の星に行っていたのかすらメッセージには記載されていませんでした。ただとにかくそこに書いてあったのは、ドンの家族達が反逆者の嫌疑をかけられて殺されるということと、ザンギャック軍がドンの住む星も必ず滅ぼすだろうから人々に危険を知らせてみんなで逃げるようにというドン宛てへのメッセージでした。
あまりに突拍子も無い話にドンは驚愕し、最初はとても信じられませんでした。このメッセージの内容が真実ならば、いったいこのメッセージがいつ出されたものなのかは不明ながら、おそらくドンの家族は既に死んでいるのだろうと思われましたから、そんなことが真実であろうはずがないとドンは思ったのです。
しかし、このような特殊なメッセージカプセルを使う者はその星では第一人者のエンジニアであったドンの父親ぐらいしか考えられず、これは確かに自分の父親が出したメッセージであり、父親がつまらない冗談などをメッセージカプセルに入れて送ってくるはずもないことはドンにも分かっていましたから、やはり信じたくはないがこれは本当の話なのではなかろうかとドンには思えてきました。
だとすると、ザンギャック軍はもうすぐドンの住む星を滅ぼそうとしているということになる。もちろんドンの家族たちが帝国への反逆者であったはずもなく、もし家族がザンギャック軍に殺されたのだとしても、それは間違いなく誤解に基づくものでした。その誤解に基づいてザンギャック軍がドンの住む星を滅ぼそうとしているとは、あまりにムチャクチャな話であり、ちょっと信じられない話です。実際、そのような兆候があるようにはドンにも感じられませんでした。
こんな話を他の人達に知らせたところでとても信じてもらえるとは思えない。笑われるだけだと思って尻込みしたドンでしたが、それでもこのメッセージが自分の家族が命懸けで自分に託した遺言のようなものかもしれないと思うと、やはりその託された使命を果たさなければならないような気がしてきて、ドンは思い切って周囲の人達に相談してみました。予想通り、多くの人達はまともに取り合ってくれませんでしたが、学校の先生が1人、決してドンの話の内容を信じたわけではないが、一応真面目にドンの相談に乗ってくれて、ドンの父が高名なエンジニアであったこともあって、ドンはTV局の取材を受けてこのメッセージの中身についてその星の住人みんなに向けて知らせて、警告を発することが出来ました。

だがその評判は芳しいものではありませんでした。もともとドッゴイヤー家はザンギャックに媚びていると悪口を言われるほどにザンギャック寄りであり、そんな家の者たちがザンギャックから反逆者扱いされるとはとても信じられないという懐疑的意見や、逆にそんな家の者たちがザンギャックに殺されたのならいい気味だという意地悪な意見、また他には以前はザンギャックに媚びていたクセに急にザンギャック批判をするとはとんでもない変節漢だという感情的な非難など、散々は悪意に満ちた意見がドンを襲うことになったのでした。
それはもともとドンの星ではザンギャックに対して不満が燻っていたからでもあり、それでありながら、まさかザンギャックがかなりザンギャックに従順なこの星を滅ぼしたりするはずがないという安心感もあったからでありました。
仮にドンの家族がザンギャックに殺されたのが本当だとしても、彼らが反逆者だなどとは信じられないからザンギャックは誤解していることになる。いや、仮に誤解ではなく本当にドンの家族が反逆者であったとしても、それはあくまでもドンの家族だけの問題であるというのがこの星の他の人々の意見でした。自分達まで巻き添えになって滅ぼされる理由など無い。
これまでも内心不満は抱きながらも、それでもザンギャック帝国に対して忠誠を尽くしてきたという自負はこの星の人々にはありました。そんな自分達をザンギャック皇帝が問答無用で滅ぼしたりするはずはない。もしザンギャックの方から何か言ってきたとしても、きっと誠意を尽くして事情を説明すれば誤解は解けて、この星が滅ぼされるような事態にはならない。誰もがザンギャックに対して怖くて反逆の意思など持っていなかったので、自分達がザンギャックに滅ぼされるなどという事態を想像することが出来なかったのです。それで人々は自分達の身に迫る危機には思い至らず呑気にドンの話を聞き、無責任な非難を浴びせるだけでありました。
これにはドンも参ってしまい、やはりTVなどに出て余計なことを言うのではなかったと後悔しました。周囲の身近な人達もドンを非難まではしなかったものの、これ以上世間に向けて余計なことを言わない方がいいと忠告してくれて、ザンギャック軍が何も言ってこないところを見ると、あのメッセージは何かの間違いであり、きっと家族も生きて戻ってくるだろうと言って励ましてくれたので、ドンもそうかもしれないと思うようになり、静かに家族の帰りを待つ生活に戻ることにしたのでした。



0114.jpgさて、その頃、すなわち地球暦で2012年2月の終わりにあたる頃、赤い帆船型宇宙船のガレオンに乗って地球から宇宙に向けて旅立ったアカレッドは、航海に出て2ヶ月ほどが経っていました。アカレッドの旅の大きな目的は2つです。1つは宇宙に散らばった34のスーパー戦隊の「大いなる力」を回収することであり、もう1つはその34戦隊の大いなる力を使って「宇宙最大の宝」を作動させて宇宙を作り変える担い手として、現在の宇宙において平和を実現するためにザンギャックと戦っている正義の35番目のスーパー戦隊を見つけ出して地球に連れていくことでした。
しかし、この2つの大目的は共にいきなり暗礁に乗り上げていました。まず宇宙に散らばった「大いなる力」の方ですが、その探知機として連れてきたはずのオウム型ロボのナビィは航海に出て2ヶ月というもの、全く「大いなる力」を感知せず、無駄なお喋りをするだけでした。
ナビィは自分がもともとは地球の中心の「宇宙最大の宝」を安置した亜空間の石室への道を開く「扉」であったという記憶はありません。それどころか自分が地球から宇宙にやって来たという記憶すら無く、単に自分が宇宙の旅人アカレッドという男の相棒の水先案内ロボットだという意識だけを植え付けられていたので、全く呑気なもので余計なお喋りをしながら時々気ままに行き先を指示し、アカレッドはそのたびにそこに「大いなる力」があるのかと思ってガレオンを奔らせましたが、毎回空振りに終わりました。
それでナビィにどうしてその場所を目指すよう言ったのか聞いてみると、水先案内ロボなので何となく言ってみただけだと答えられてしまい、どうやら「大いなる力」を感知したわけではないようだと分かりました。ナビィの仕様がマズいのか、それとも「大いなる力」の方が感知可能な状態になっていないのかよく分からないが、とにかく今はナビィで「大いなる力」を感知出来ない状態であるようだとアカレッドは理解しました。待っていればいずれ感知可能な状態になるのか、それともならないのか、どちらなのかもよく分かりませんでした。

しかしアカレッドは慌てて地球に戻ろうとはしませんでした。せっかく宇宙に飛び出してきた以上、もう1つの大目的である35番目の戦隊探しをまず先行して始めておけばいいと思ったのです。そうしているうちに「大いなる力」も感知できるようになるかもしれない。そう思ってアカレッドは自分やナビィの気の向くままに宇宙を飛び回り、ザンギャック帝国と戦っている正義の戦士たちを探してみました。
だが、半ば予想はしていなかったわけでもないが、そんな正義の戦士たちにはお目にかかれませんでした。その代わりにアカレッドが出くわしたのはザンギャックの官憲の船ばかりで、気儘に宇宙を飛び回るガレオンを見て不審に思った官憲の船が停船を命令してくることもしばしばでした。停船して臨検を受けて地球のことやスーパー戦隊のことや「大いなる力」についてザンギャックに余計な事情を知られてしまうのは良くないと思ったアカレッドは、ガレオンは高性能の戦闘艦に改造していましたから、停船命令を無視して逃げるのが常であり、それでもしつこく追ってくる官憲の船には攻撃を加えて撃退しました。
別にザンギャック軍と戦闘することがアカレッドの旅の目的ではありませんでしたから、ザンギャックの艦隊を発見したら隠れてやり過ごすことにしていましたが、発見されて追いかけてこられれば逃げるために戦うこともありましたし、そうして戦い始めたら相手が小規模な艦隊の場合は全滅させることもありました。これらは全て降りかかる火の粉を払う行為であり、もともとはザンギャックとは敵対する立場であるアカレッドはそうした行為に何ら抵抗も無く、ごく自然な行為として捉えていました。

そのようにザンギャック艦とのトラブルを処理しつつ、正義の戦士たちを探す日々を続けたアカレッドですが、戦士探しは成果が出ず、「大いなる力」の方も何処にあるのやら見当もつかない状態が続きました。ただ全く無意味な旅だったわけでもなく、唯一の成果は地球を出る時に「この星の意思」に依頼されていた「スーパー戦隊の戦士たちの体内に残った大いなる力を引き出す方法」を遂に確立したことでした。
それはナビィの構造と自らの持つ「大いなる力」の特性を研究した結果、アカレッドが彼特有のアイテムを生成する能力によって作り上げたラッパ型の器具を向けて吸い込めば相手の体内にある「大いなる力」を吸い出せるというものでした。アカレッドはこれで宇宙の作り変えという大目標に向けての1つの保険が出来たと内心安堵し、この器具に「ラッパラッター」という名をつけて、ナビィにも知られないように船内の秘密の隠し場所にしまっておきました。
こうしてようやく1つ旅の成果を上げたアカレッドは、この勢いで35番目の戦隊も見つけようと思い、立ち寄った星で出会った人々にザンギャックと戦う正義の戦士はいないものか尋ねて回りましたが、誰もそういう者には心当たりは無いという。

0115.jpgそうした中、地球暦で言えば2012年2月頃、とある星で立ち寄った酒場でアカレッドがいつものようにザンギャックと戦う正義の戦士は何処かにいないかと質問すると、店主がこの宇宙でザンギャックと戦うような奴は旦那と同じ海賊しかいないだろうと言うので、アカレッドは驚いて、自分は海賊ではないと否定しました。だが店主は手配書が回ってきてるんだから間違いないだろうと言って、店に貼ってある「赤き海賊」という名のついたアカレッドの写真の貼ってある手配書を指さしました。
アカレッドは成り行きでザンギャックの官憲と何度も争ったために、勝手にザンギャックによって海賊扱いされて、その全身真っ赤な風貌や真っ赤な帆船に乗っていることなどから「赤き海賊」という異名までつけられて賞金首にされてしまっていたのでした。
面食らったアカレッドでしたが、その店主がお尋ね者の犯罪者を目の前にして怖がっていないことに気付き、どうして通報したり逃げたりしないのだと問いかけました。すると店主は、確かに海賊を怖がったり嫌ったりする者は多いが、自分はもともと若い頃は海賊の仲間だったこともあって、昔は海賊の中にも真っ当な奴もいたことを知っており、旦那を一目見て、なんとなくだがそんなに悪い海賊じゃないことは分かるからだと答えました。

それでアカレッドはその店主の話に興味を持ち、真っ当な海賊がいるということは、それは海賊の中に宇宙の平和や正義のためにザンギャックを倒そうとして戦うような者達がいるということなのかと質問しました。すると店主はアカレッドが冗談を言っていると思ったのか、可笑しそうに笑い、海賊がそんな慈善事業家みたいに宇宙平和のために行動するわけがないだろと言い、海賊がザンギャックと戦うのはザンギャックが海賊を犯罪者扱いして捕まえようとするからだと、当たり前のことのように答えました。
それに対してアカレッドは、実際に犯罪者だから海賊なのだろうと指摘しましたが、店主は苦笑して、確かに悪事を働いている海賊がほとんどだがと認めた上で、でも旦那みたいに悪いことをしてない海賊だっているだろうと逆に指摘してきました。アカレッドは、いや自分は海賊じゃないのだがと言い返しましたが、店主はアカレッドの言葉には耳を貸さず、遠い目をして懐かしそうに、昔はそんな海賊が結構いたもんだと、しみじみと言います。そして、単に自分のやりたいことをやる、自由を愛する気の良い連中をザンギャックが勝手に海賊と一緒くたにして犯罪者呼ばわりしたのだと、怒気を込めて店主は少し小声で呟きました。
アカレッドは宇宙海賊の実態を知らなかったので、そういう事情があったのかと改めて感心しましたが、しかし店主に向かって思わず、やりたいことをやるというのは結局は個人の欲望を押し通すということであって、犯罪者とまではいかないかもしれないが自分勝手に通じるのではないかと指摘しました。
だが言った後でアカレッドは店主の若い頃の想い出にケチをつけるような余計なことを言ってしまったと気付き、店主が怒って言い返してくると思って身構えました。個人の欲望といっても別に悪い欲望ばかりではない。家族や仲間を大切にしたいという想いだって欲望の一種であるし、宇宙の平和を願う想いだって一種の個人の欲望です。個人の欲望といっても大きいものから小さいものまで、純粋なものから薄汚れたものまで様々なものがある。それら全てを一緒くたにして自分勝手などとレッテルを貼るのではザンギャックと発想が同じではないかとアカレッドは反省しました。
ところが店主はアカレッドに反論してくるわけではなく、意外にもしょんぼりしてしまい、確かに旦那の言う通りだと言うのでした。そして、あの大海賊団だって結局は皆が自分勝手なエゴに走ったために自滅してザンギャックに勝てなかったのだと愚痴りました。

アカレッドがその話に興味を示し、ザンギャックを倒そうとして戦った海賊団がいたのかと質問すると、店主はアカレッドの顔をまじまじと見て、宇宙海賊なのにあの大海賊団の話も知らないのかと呆れて、もう20年ぐらい前の話だと言い、自分もその海賊団に参加していたわけじゃないので噂に聞いただけなのだがと前置きした上で、その海賊団もさすがに戦ってザンギャックを倒すことが出来ると思っていたわけではなく、単に自由を求めてザンギャックと戦っただけだったのだが、これまでで一番大規模な海賊団で、ザンギャック相手にも勝ち目は無いこともなかったのだと悔しげに言いました。
アカレッドはちょっと不思議に思い、戦って勝つ自信の無い海賊団がどうやってザンギャックに勝つというのかと問いました。すると店主は、だから自分は噂で聞いただけだから詳しいことはよく分からないのだがと前置きした上で、とにかく宇宙全体と同じ価値を持つ「宇宙最大のお宝」を手に入れることさえ出来れば、宇宙を支配するザンギャック帝国にだって勝てると思っていたんじゃないのかなと答えました。

アカレッドはいきなり異星の酒場の店主の口から「宇宙最大のお宝」という言葉が出てきたので驚愕し、「宇宙最大のお宝?」と問い返しました。「宇宙最大の宝」といえば、地球の中心の亜空間にある不思議な装置であり、これまでにこの世界に34のスーパー戦隊の世界を融合させて34の「大いなる力」を生み出したり、その副作用でザンギャック帝国を生み出したりしてきた、言わばアカレッドのこの宇宙の旅の原因をも作ったような、全ての元凶のような物体の名称でした。
それと酷似した名称を持つ「宇宙最大のお宝」というものの話題がいきなりこんな異星の酒場で出たのでアカレッドは驚いたのですが、酒場の店主の方は「赤き海賊」ことアカレッドが当然「宇宙最大のお宝」のことを知っているものだと思っているようで、アカレッドが驚いているのは20年前の大海賊団が「宇宙最大のお宝」を手に入れようとしていたことを知らなかったからだと思い、アカレッドに向かって大事なことを教えるように、実はそうだったんだと言いました。20年前の大海賊団が「宇宙最大のお宝」を手に入れることが出来ていれば、何せ宇宙全体と同じ価値のあるものなんだから、ザンギャックに勝つことだって出来たに違いない。酒場の店主はアカレッドにそう言いました。
アカレッドはその酒場の店主の言う「宇宙最大のお宝」というものがもしかしたら地球にある「宇宙最大の宝」と同じものなのかもしれないと思えてきて、店主に向かってそれはいったいどんな形をしているのかと質問しました。すると店主は大笑いして、そんなこと俺が知るわけがないと答えます。昔から宇宙海賊の誰もが手に入れたいと夢見ながら、誰1人手に入れた者はいない、いったい何処にあるのか、どんな代物なのかも全く分からない海賊の伝説のお宝、それが「宇宙最大のお宝」だということは、宇宙海賊なら誰でも知っているはずだろうと笑いながらアカレッドの肩を叩いた店主は、アカレッドが冗談を言ったものだと思ったようです。
そして笑い終ると店主はちょっとしんみりした様子で、まぁ要するにただの伝説だと呟きました。誰1人手に入れた者がいないのも当たり前だ。宇宙全体と同じ価値のあるお宝、そんな途方もない物が本当に存在するわけはないんだから。そう言った店主はアカレッドの方に振り向いて、自嘲気味に実は俺だってそんなお宝が実在するなんて信じていないし、今日びの海賊でそんな伝説を本気で信じている奴なんていやしないよと溜息をついて言いました。
そして、20年前の大海賊団の連中だって、結局は「宇宙最大のお宝」の存在を信じ切れずに皆がそれぞれ自分の欲望を優先させてバラバラになって自滅していったに違いない。旦那の言うとおり、海賊なんて結局そんなものだ。それで海賊にも愛想が尽きて、こうして拗ねて場末の星で酒場の店主をやってるんだと、店主はアカレッドに自分の身の上を話しました。

そして続けて店主は自分の心の動きに戸惑うように、だが、旦那はどうも違うと思ったんだと、アカレッドの顔をじっと見て言いました。俺の直感だが、旦那は何か途方もない目的を本気で掴むために海賊になって旅をしているように思える。アカレッドの顔を見据えてそう言い切った店主に相対してアカレッドは自分が見透かされたような気がして慌てましたが、店主は別にアカレッドの旅の真の目的を見破ったわけではないようで、更に何か考えながら、昔、俺が若かった頃に何人か同じような雰囲気を持った大海賊に会ったことがあると言葉を続けました。
そして、だから何となく旦那が並の海賊とは違うことが分かるんだと店主は言い、さっきから旦那と話をして「宇宙最大のお宝」の話をしてみて思ったんだが、きっと俺が若い頃に会った大海賊たちは「宇宙最大のお宝」という途方もない夢を本気で信じて手に入れたいと思っていたから、旦那と同じ雰囲気を感じさせたんじゃないだろうかと、店主はアカレッドに同意を求めるように聞いてきました。
アカレッドは何と答えていいのか分からないので黙っていると、店主はじっと黙って考え込んだ後、勝手に1人で納得したように、そうだ、きっとそうだ、と頷いて手を叩きます。そしてアカレッドの方に振り返って、ニヤニヤ笑って、旦那の旅の目的は「宇宙最大のお宝」を手に入れることだったんだなと、見当違いなことを言い出しました。
アカレッドは面食らって、それは違うと否定しようとしましたが、店主は聞く耳を持たず、誰にも言いふらしたりしないから安心してくれと言ってアカレッドの言葉を遮りました。そして、店主は何やら得心した顔をして、宇宙を平和にするためにザンギャックと戦うような奴というのは、きっと旦那や昔の大海賊みたいに、「宇宙最大のお宝」という途方もない夢を本気で掴み取ろうとするようなとんでもない海賊だけなんだろうなと、しみじみと言いました。

そこまで言って、店主がハッとして、そうか!と大声を出したのでアカレッドが驚いて店主の顔を見ると、店主はこれが旦那の質問への答えだったんだと言います。いきなり質問と言われてアカレッドが何のことやらよく分からず目を丸くしていると、店主は最初に旦那が聞いてきた「ザンギャックと戦う正義の戦士は何処にいるのか」という質問の答えだと言い、アカレッドは何だかよく分からない展開ながらも目当ての戦士の居場所を教えてくれるというのなら有難いと思い、思わず身を乗り出しました。
すると店主は「宇宙最大のお宝」という途方もない夢を本気で手に入れようと考える旦那みたいなトンデモない海賊ならば、ザンギャックと戦って宇宙を平和にするなんていうトンデモないこともきっとやるはずだよと言いました。アカレッドは何だかちょっと自分がバカにされたような気がしたのは気に障りましたが、とにかくそういう海賊ならば35番目の戦隊の候補になるのかもしれないと思い、思わず勢い込んで、ならばそのトンデモない海賊は何処に行けば会えるのかと尋ねました。
すると店主は事もなげに、だからさっきから言ってるように、いまどきそんな奇特な海賊は居ないよと言いました。つまり、ザンギャックと戦う正義の戦士などはこの宇宙に存在しないというのが、旦那の質問への答えだと、店主がニコニコして言うので、アカレッドはバカバカしくなって、もういい、無駄な時間を過ごしたと言い、お勘定をして酒場を後にしました。

ガレオンへの帰り道、アカレッドは酒場での店主との会話を想い出し、宇宙海賊の伝説の「宇宙最大のお宝」というのは一瞬、自分の知る「宇宙最大の宝」と同じものかとも思ったが、やはり全く別の物であり、単なる宇宙の迷信のようなものだったのだと思いました。もちろんアカレッド自身、「宇宙最大のお宝」などという海賊の伝説の宝の存在など信じられない。そんな物を本気で手に入れようとしている者がいるとは思えなかったし、仮にそんな者がいたとしても、そんな者が自分の探し求める35番目の戦隊であろうとは想像出来ませんでした。
だいたい海賊などがスーパー戦隊の後継者に相応しいとは思えない。全ては酒場の変わり者の店主の世迷言に過ぎない。そう思ったアカレッドは、それにしても自分まで海賊扱いされてしまったとは面倒なことになったものだと溜息をつきました。そうしていると、ふと「海賊」という言葉の響きに何か記憶の中に引っ掛かるものがあったような気がしたアカレッドでしたが、それが何なのかよく思い出せないままガレオンに着き、留守番をしていたナビィの出迎えを受けました。

0116.jpgところがそこでアカレッドを出迎えたナビィがいきなり船室内でムチャクチャに飛び回り始め、呆気にとられるアカレッドの頭上で天井に激突し、落ちてきました。落ちてきたナビィを受け止めたアカレッドが驚いていったいどうしたのかと尋ねると、ナビィは目を回しながら近くにある星の名を呟き、そこに金色の光が見えるゾヨとうわ言のように言いました。
金色の光と聞いてアカレッドがもしやと思い、正気に戻ったナビィにさっきはどうしてあんなことを言ったのかと尋ねると、ナビィも何だかよく分からないが急に身体が勝手に動いて天井にぶち当たって、その瞬間に星の名前が頭の中に浮かび、その星のビジョンの中に金色の光が見え、それをそのまま自然に口にしていたのだと説明しました。
つまり全くの無意識の行動だったわけで、これを聞いてアカレッドは遂にナビィが「大いなる力」の在り処を感知したのだと確信しました。それでアカレッドはそこに行ってみようと言って、さっそくナビィを伴ってガレオンでその星に行きました。

そこは辺鄙な、ほとんど人は住んでいない星で、大部分は荒野でした。その星に降り立ったアカレッドは先だって感知した金色の光は何処にあるのか、更にナビィに感じ取れるかどうか聞いてみました。するとナビィは無意識に「大いなる力」の在り処を感知できるようになっているようで、金色の光の在り処にアカレッドをどんどん誘導していってくれます。
そうして遂にナビィが此処だと言って辿り着いた場所は、何も無い砂漠の真ん中でした。てっきり地球でのスーパー戦隊とザンギャックの戦いの直後に目撃した大量の金色の光のうちの1つがそこにあるものだと予想していたアカレッドは、何も見当たらない風景を見て拍子抜けして、もしやナビィが間違えたのではなかろうかとも思いました。だが一歩踏み出したところ、アカレッドは何か妙な異物を自分が踏みしめていることに気付き、足を上げて足元の砂をどけてみました。
0117.jpgするとそこには実に意外なものがありました。そこにあったのは赤い色をした小さな人形で、その形はマジレッドを模したものであったのです。地球から遠く離れた辺鄙な無人星の砂漠にどうして地球のスーパー戦隊の1つ、マジレンジャーのマジレッドの人形などがあるのか、あまりの意外な物の発見にアカレッドは驚き、その人形を拾い上げました。そうして手でその人形をつまんだ瞬間、アカレッドの身体に異様な感覚が走ったのです。

アカレッドはその人形から確かに強大なエネルギーを感じ取りました。アカレッドの身体の中には歴代レッド戦士たちの持つものと同じ「大いなる力」が存在しています。当然マジレッドの「大いなる力」と同じものも体内にある。どうやらそのマジレッド人形の中のエネルギーとアカレッドの体内のマジレッドの「大いなる力」が共鳴しているようでした。つまり、このマジレッド人形の中にマジレッドの体内から出て宇宙に飛び出したマジレンジャーの「大いなる力」が存在しているようだとアカレッドはようやく理解しました。
いや、人形の中に「大いなる力」が存在しているというよりも、この人形自体が「大いなる力」そのものなのだろうとアカレッドは思い直しました。あの2ヶ月前のザンギャックとの戦いの最後にマジレッドの体内から飛び出した金色に光り輝くマジレンジャーの「大いなる力」は、2ヶ月間宇宙空間を彷徨った後、ようやくこの星に飛来してこの場所に落下し、マジレッドの人形の形態に結晶化したのだ。
そのように「大いなる力」の落ち着き先が定まって人形化した時点でナビィはその場所を感知することが出来るようだ。おそらく他の200個弱の「大いなる力」も今頃宇宙のそれぞれバラバラの場所で落ち着き先を定めて人形化しているのだろうとアカレッドは推測しました。

それにしても、どうして人形の形になどなったのだろうかと思い、アカレッドが無意識にその手でつまんだマジレッド人形をしげしげと眺めながら裏返してみると、人形の背中側には腰から下に何か変な金属状の扁平な棒が、まるで尻尾のように真下に向けて生えていました。その扁平な棒状の金属は複雑な屈曲した形をしており、まるで鍵のようだとアカレッドは思いました。
もっとよくその金属を観察しようとしてアカレッドがその人形を持ち上げたところ、人形の腰から下の脚部分が前に曲がることに気付きました。それを目いっぱい曲げていくと脚部分が上半身にピッタリくっつくまで180度曲がり、赤い上半身と脚部分がくっついたパーツの下にメタリックな屈曲した扁平な棒が伸びる形となり、まさにそれは赤い柄のついた鍵のようになったのでした。
0118.jpgなるほど、「大いなる力」がマジレッドの人形になったのかと思ったらそうではなく、マジレッドの人形型の鍵になっていたのかと感心しつつ、アカレッドはそれにしてもどうして鍵の形になっているのだろうかと不思議に思い、その鍵を掌の上に乗せてまじまじと見つめました。アカレッドの肩にとまっていたナビィも腕の方に降りてきて、その初めて見る鍵を不思議そうに眺めて首を傾げています。

そのナビィの姿をふと見たアカレッドは、ハッと気付きました。ナビィ本人は知らないことだが、ナビィは「大いなる力」が全部揃ったら現在のオウム型から本来の扉型に戻るようになっている。その扉を開くと「宇宙最大の宝」が安置してある亜空間の石室に行く道が開けるのだが、そこに最後の難関がありました。その扉はびっしりと鎖で封印されており、その鎖は34個の錠前で固定されていたのです。
錠前の数である34が34戦隊の数に対応しているのだろうことは容易に察しはつき、おそらく34戦隊の「大いなる力」でこの34個の錠前を外して扉の封印を解くようになっているのだろうということはアカレッドも「この星の意思」も想像していました。だが、具体的にどうやって錠前を外すのかまではよく分かっていませんでした。しかし、こうしてマジレッドの「大いなる力」が鍵の形になっているのを見て、その方法は至って当たり前でシンプルな方法であったことが分かったのでした。34戦隊の「大いなる力」が込められた鍵を錠前の鍵穴に挿せば、錠前は外れて鎖の封印が解け、「宇宙最大の宝」への扉が開くのです。なるほどそういうことだったのかと感心してアカレッドはマジレッドの鍵を握りしめました。

だが同時にアカレッドの脳裏に、この鍵の使い道はそれだけではないはずだという想いがよぎったのです。アカレッドはどうして自分がそんな風に思うのか、奇妙に感じました。自分はこの鍵のことを以前から知っていたような気がする。しかし、それは有り得ない。この鍵はつい最近、この宇宙の片隅の辺鄙な無人星で「大いなる力」が結晶化して出来上がったものであって、それ以前は存在していなかったはずであり、自分が以前にこの鍵を見たことなどあるはずがない。
少なくとも2ヶ月前のスーパー戦隊とザンギャックとの戦いの最終日以前にはこの鍵は絶対にこの世に存在しなかったはずです。ところが、自分はガレオンで宇宙に旅立つ以前にこの鍵を見たような気がする。スーパー戦隊とザンギャックの戦いの最終日がアカレッドの旅立ちの日だったのですから、これはどう考えてもおかしい。いったいこれはどういうことなのだろうかと困惑したアカレッドは、じっと考え込んで旅立ちの日以前の記憶を辿っていき、遂にその記憶に辿り着きました。

0119.jpgそれは厳密にはアカレッド自身の記憶ではなく「この星の意思」の記憶でした。現時点から1年半ほど前、まだアカレッドが地球で眠りについていた頃、シンケンジャーとゴセイジャーが共闘してブレドランや外道衆と戦ったという事件があり、その際に両戦隊の見ていない場所で外道衆の一味と戦った謎の5人組がおり、その5人組のうちの1人が今アカレッドが手にしているのと同じマジレッドの人形型の鍵を持っていたのです。
それを「この星の意思」が人知れず観察していたわけですが、その後しばらくしてから「この星の意思」が地球の中心で「宇宙最大の宝」を発見し、それについて何か知っているのではないかと思ってアカレッドを目覚めさせた際、「この星の意思」はこの5人組が「宇宙最大の宝」に何か関係しているのかと思って、この5人組を目撃した時の記憶のビジョンもアカレッドの意識に共有させて、何か覚えが無いかと確認したのです。
アカレッドはその5人組について何も知らなかったので、その時はその遣り取りに特に意味は無かったのですが、「この星の意思」から同じ思念体同士ゆえに正確な記憶のビジョンの移植を受けたので、「この星の意思」が目撃した5人組の記憶はアカレッド自身が目撃した記憶であるかのように鮮明詳細にアカレッドの意識に残っていました。
その記憶に辿り着いたアカレッドがよく思い出してみると、確かにその5人組のうちの1人がこのマジレッド型の鍵を手にしていました。いや、それだけではなく、5人組の残りの4人はそれぞれデカレッド、ボウケンレッド、ゲキレッド、ゴーオンレッドの形をした鍵を持っており、しかもその5人はその5つの鍵を使ってそれぞれの鍵のレッド戦士に変身したのです。自分が直接目撃したわけではなかったので、その記憶のことをついつい忘れていたアカレッドでしたが、こうしてマジレッドの鍵を手にして記憶を辿ることでそれを思い出すことが出来ました。

0139.jpgしかし、この記憶にある出来事はどう考えてもおかしい。それらの鍵が今自分の手にしている鍵と同じものだとしたら、その5人組が手にしていた5つの鍵が1年半前に存在しているはずがないのです。
0140.jpg果たしてあの5人組の1人が持っていたマジレッドの鍵と、今自分の手許にあるマジレッドの鍵は同じものなのだろうかと疑念を抱いたアカレッドは、その1年半前の記憶の中で謎の5人組がその鍵を使って変身したことに思い至り、もしやこのマジレッドの鍵にも同じようにマジレッドへの変身能力が備わっているのかもしれないと思いました。
そう思いついてマジレッドの鍵をぎゅっと握りしめた時、アカレッドに向かってナビィが話しかけてきて、この鍵はいったい何なのか質問してきました。それでアカレッドはハッと我に返りました。危うくナビィの前で鍵の変身能力を試してしまうところであったのです。もしそれで自分がマジレッドに変身してしまってナビィにその姿を見られてしまうと、後々面倒なことになるかもしれない。今はとにかくまだナビィには地球やスーパー戦隊のことや、それらと自分との関係について余計な知識を与えておくのは得策ではない。
そう思い直したアカレッドは、ナビィの質問に対して、これは私がずっと探していた物なんだと答え、ナビィのお蔭でそれを見つけることが出来たと言い、ナビィに感謝の言葉を述べ、鍵を持ってナビィと一緒にガレオンに戻りました。

そうして夜になってナビィに船室でもう寝るように言うと、アカレッドはマジレッドの鍵を持って自室に籠り、鍵を手にしてこっそりとマジレッドへの変身を試みてみました。すると、やはり予想通り、アカレッドはマジレッドの姿に変身したのでした。もともとアカレッドは体内に34戦隊のレッド戦士の持つものと同じ「大いなる力」を持ち、歴代レッド戦士に変身する能力がありますから、鍵を使わなくてもマジレッドには変身できます。だが今回はその能力はあえて使わず、鍵の力だけで変身を試みて変身に成功したのです。つまり、やはりこの「大いなる力」が結晶化した鍵にはその鍵が象ったスーパー戦隊の戦士に変身する力が込められているのです。それはつまり、1年半前に現れた謎の5人組の持っていた鍵と今アカレッドが持っている鍵は同じものだということです。
しかし1年半前にこの鍵がこの世界に存在したというのは有り得ない。このマジレッドの鍵だけに限らず、あの5人組の持っていた5つの鍵は全て、2ヶ月前の戦い以前には世界に存在しなかったものであり、おそらくこのような鍵の形態をとるようになったのはここ数日の間のことであり、しかもそれらの鍵は全て地球から遠く離れた宇宙の各地で生成したばかりであるはずです。だから1年半前の地球にあの5本の鍵が存在するはずはない。その存在するはずのない鍵を持って出現したあの5人組はいったい何者なのか。

0121.jpg「この星の意思」の話では、あの5人組は忽然と現れて外道衆の一味とマトリンティスのロボットを倒した後、忽然と消息を絶ったといいます。まるで別の世界からやって来たようだとも「この星の意思」は言っていました。もし、あの2010年10月初旬に現れた5人組が、この鍵がこの世界に生まれた2012年2月以降の世界からやって来たとしたならば、それは確かに別世界からやって来たといえます。彼らが何らかの理由で2012年2月以降の世界からやってきて2010年10月の世界に現れ、その後すぐに元の2012年2月以降の世界に戻ったとするならば、さすがの「この星の意思」もその行方を追うことは出来なかったのも当然です。
つまりタイムスリップということになります。あの時代に存在しなかったはずの鍵を彼らが持っていたという現象に納得のいく説明をつけるのはこの理論しかないでしょう。しかし、それはあの謎の5人組が時間移動能力を持っているという前提での話です。そんなことが有り得るものとは普通は考えられない。しかしアカレッドはそれは十分に有り得ると思いました。
あの5人組は実際は「謎の5人組」などではない。本人たちがその時にちゃんと自分達の名称を名乗っています。最初にそれを聞いた時は「この星の意思」もアカレッドも、あまりに意外な名乗りだったため、何かの冗談かと思っていたのですが、今のアカレッドから見ると、その2010年10月の5人組の名乗りには重大な意味が読み取れるのです。

0122.jpg彼らは自分達のことを「ゴーカイジャー」だと名乗り、個人別の名乗りで「ゴーカイレッド」「ゴーカイブルー」「ゴーカイイエロー」「ゴーカイグリーン」「ゴーカイピンク」と名乗りました。まるでスーパー戦隊みたいです。実際、彼らが登場して名乗った時の姿形はそれぞれ赤青黄緑桃の全身スーツを着たもので、まさにスーパー戦隊そのものでした。
しかし、「ゴーカイジャー」などというスーパー戦隊は「この星の意思」もアカレッドも聞いたことはなかった。だから何者かがスーパー戦隊の真似事をしてふざけているのかとも思えました。だが、ふざけているにしては彼らは異常に強かった。素人がスーパー戦隊のコスプレをして遊んでいても外道衆やマトリンティスを倒したり出来るはずはない。少なくとも彼らは本物の34のスーパー戦隊と同等以上の強さは有していた。
また、彼らは鍵の力で歴代の5人のレッド戦士に変身して外道衆を倒したわけだが、いくら歴代戦士に変身したとしても、その力をちゃんと使いこなすためには彼ら自身がそれに見合った強さをもともと備えていなければいけないはずです。そういう意味でも、やはり彼らはスーパー戦隊と同等の戦士たちだったといえます。

そして、一番問題なのは彼らがその鍵を持っていたということです。彼らはその鍵を何処で手に入れたのだろうか。この鍵が世界に生まれた2012年2月以降の世界であることは間違いない。すなわちアカレッドの居る現時点以降の世界ということになる。だが、問題はその場所です。この鍵は宇宙でバラバラに生成しているはずです。例えばデカレッドの鍵が生成した場所とボウケンレッドの鍵が生成した場所は全く違うはずです。それらバラバラな場所で生成し存在していたはずの鍵を手に入れた者はもともとバラバラな場所に居る縁もゆかりも無い者同士であるはずです。そんなバラバラな場所に居たはずの5人が地球で仲良く5人揃ってゴーカイジャーなどと戦隊みたいなことをやっているのはどうにも不自然です。
これを合理的に説明するためには「宇宙にバラバラに散らばるスーパー戦隊の戦士の形をした鍵を集めて地球に持っていく」という意思を持った者の存在が不可欠なのですが、この宇宙広しといえど、そんな奇特な意思を持った者は自分以外に存在するわけがないとアカレッドは思いました。つまり、このゴーカイジャーと名乗る5人組は2012年2月以降、つまりこれから先のアカレッドと関わりを持つ連中なのです。そもそもゴーカイジャーの5人の持っていた5つの鍵のうち、少なくともマジレッドの鍵に関しては現時点でアカレッドが手にしているのですから、ゴーカイジャーがマジレッドの鍵を手に入れる過程でアカレッドと接点を持たないわけにはいかないはずです。
いや、現時点の状況をまともに考えれば、ナビィの「大いなる力」探知機能が正常に使えるようになった以上、宇宙に散らばった「大いなる力」が形を変えた200個弱の鍵をアカレッドよりも早く集めることが出来る者などいるとは思えない。そもそも、あんな鍵に価値を見出して自分の物にしようなどと考える者がアカレッド以外に存在するとも思えない。だからまともに考える限り、これから1年も経たないうちにアカレッドが全部の鍵を集めるに決まっているのです。ならば、あのゴーカイジャーの5人が持っていた5つの鍵はアカレッドから貰ったものと考える方が自然です。
となると、アカレッドはせっかく集めた鍵をゴーカイジャーと名乗る5人組に与えるということになる。これはただの鍵ではなく、スーパー戦隊の「大いなる力」なのであり、宇宙を作り変えるという大計画に不可欠のものです。そんな大事なものを渡すということは、それはアカレッドがゴーカイジャーの5人をその大計画を託すに相応しい相手だと認めたということです。つまり、あのゴーカイジャーの5人こそが、アカレッドが認めた35番目のスーパー戦隊なのです。

そうだと仮定すれば、どうしてゴーカイジャーの5人が時間移動して過去の世界に現れたのか説明がつくようにアカレッドには思えました。もし自分がゴーカイジャーの5人を35番目のスーパー戦隊だと認めたとするならば、あの5つの鍵だけではなく全ての戦士の鍵をゴーカイジャーに渡しているはずであり、しかもゴーカイジャーの5人は地球でスーパー戦隊の戦士たちから体内に残った方の「大いなる力」も集めて回っているはずです。ならば、その過程でゴーカイジャーはタイムレンジャーの「大いなる力」も完全な形で手に入れることになる。おそらくゴーカイジャーの5人が過去の世界に時間移動してきたのはそのタイムレンジャーの「大いなる力」を使ったからに違いないとアカレッドは思いました。
もちろん「何のために過去にやって来て外道衆やマトリンティスと戦う必要があったのか」という部分では謎は残るが、とにかくどうやって時間移動を可能にしたのかという点だけは、彼らが34戦隊の「大いなる力」を揃えた35番目のスーパー戦隊であったと考えれば説明がつくのです。
彼らがどの時点の未来からあの2010年10月に飛んできたのかは不明だが、現時点よりも未来であることは間違いない。つまり、これから先、そう遠くないうちに自分は宇宙であの5人と出会い、彼らのことを35番目のスーパー戦隊「ゴーカイジャー」だと認めて、集めた「大いなる力」の結晶化した鍵を全部、その5人に渡して彼らを地球に連れていくことになるのだろうとアカレッドは予想しました。

そこまで考えて、アカレッドは極めて重大なことに気付き、愕然としたのでした。あの2010年10月に出現したゴーカイジャーの5人がアカレッドがこれから宇宙で出会う35番目の戦隊だとするならば、彼らが何者であるのかについて、あの2010年10月出現時に彼ら自身が既に説明していたからです。彼らは単に「ゴーカイジャー」と名乗ったのではない。「海賊戦隊ゴーカイジャー」と名乗ったのです。また、何者かと問う外道衆に対して、ハッキリと「自分達は海賊だ」と回答していました。先だって酒場からの帰り道でアカレッドの脳裏によぎった「海賊」という言葉に関する微かな記憶はこれであったのです。つまり、ゴーカイジャーの5人は海賊、宇宙海賊なのです。
となると、これから先の宇宙の旅の中でアカレッドは宇宙海賊の5人と出会って、その5人を35番目のスーパー戦隊の戦士だと認めることになるというのです。それはつまり、アカレッドが宇宙海賊の5人を宇宙平和のためにザンギャックと戦う正義の戦士だと認めるというのと同義です。
しかし、先だっての酒場の店主の話によれば、確かにこの宇宙でザンギャックと戦う者は海賊だけだが、海賊は宇宙の平和や正義のために戦うなどということはなく、単に自分の欲得に動かされているだけだという。そんな海賊を自分は35番目の戦隊の戦士として認めることが出来るのだろうかとアカレッドは戸惑いました。それに自分だけが認めても仕方ない。34のスーパー戦隊の戦士たちが自分達の後継者と認められるような戦士たちでなければ残り半分の「大いなる力」は揃わないのだから意味は無い。
いや、ラッパラッターがある以上、必ずしも34戦隊の側の同意は必要無くなっていました。しかしそれは言い換えれば、アカレッド1人の判断で新たな世界の創造者を決定することが出来るようになったということも意味していました。下手すればアカレッドの判断の誤りによって、自己の利益しか考えない身勝手な海賊が「宇宙最大の宝」を使って自分にだけ都合の良い世界を作ってしまうかもしれない。だから35番目の戦隊に海賊が相応しいのかどうかのアカレッドの判断はあくまで慎重でなければいけない。
ただ、そうはいっても実際この宇宙でザンギャックの支配を全く受け入れず戦う者は海賊しかいないのが現実です。そして2010年10月の事件から類推するに、どうやら自分はこれから海賊と出会って世界の運命を握る鍵を手渡すことになるようだということもアカレッドには了解できました。だいたい、自分が変な連中に鍵を渡すとも思えない。それなりに納得できる相手だからこそ鍵を渡すはずです。つまり自分が35番目の戦隊に相応しいと思える海賊が確かに存在するのであり、それがあのゴーカイジャーなのだということになります。

では、自分が35番目の戦隊に相応しいと思える海賊とは、どんな海賊なのだろうか。そのように考え込んでみたところ、アカレッドの脳裏に突然、先だっての酒場の店主の冗談みたいな話が思い出されてきました。「宇宙最大のお宝」という途方もない夢を本気で掴み取ろうとする海賊こそが宇宙を平和にするためにザンギャックと戦うことが出来る。酒場の店主はそのように言いました。
それはアカレッドとの会話の流れの中で飛び出した1つの思いつきであり、戯言に近い、店主もさして深い意味を込めて言った言葉でもないでしょう。アカレッドも店主が妙なことを言ったとしか受け止めていませんでした。だが、こうして35番目の戦隊が宇宙海賊である可能性が高いことが判明した後で改めてその言葉を思い返してみると、案外その酒場の店主の戯言が核心を突いていたように思えてきました。
このザンギャックに支配された宇宙で、ザンギャックを倒して宇宙の平和を実現することなど限りなく不可能に近い、まさに途方もない夢想です。だから誰もそんなことをしようともしない。現時点でそのゴーカイジャーの5人もそんな夢想を抱いてなどいないでしょう。おそらくそんな発想自体がこの宇宙には無いのです。
だが、たとえ「ザンギャックを倒して宇宙を平和にする」という夢想を発想することは出来ていなくても、それと同じくらい実現不可能な夢を本気で掴み取ろうとして行動する気概がある者ならば、「ザンギャックを倒して宇宙を平和にする」という夢のために行動することも出来るようになる可能性は十分にある。
その実現不可能な夢というのが海賊の世界では「宇宙最大のお宝」という伝説の宝なのです。海賊なら誰もが憧れつつも誰もが手に入れたことがない、宇宙全体と同じ価値のある宝、そんなものが現実に存在するとはアカレッドにも到底思えませんでした。おそらくほぼ全ての海賊も実際はあの酒場の店主のようにそんなものはただの伝説だと思って、本気で手に入るなどと思っていないでしょう。
だが、そんな不可能な夢を本気で掴もうと思っている海賊がいたとしたら、その海賊はザンギャックを倒して宇宙を平和にするという夢も本気で掴もうと思える可能性はある。少なくともアカレッド自身がその海賊に世界の運命を賭けてみてもいいと思えるような気はしました。自分がこの鍵を託すことが出来る海賊がいるとしたら、それはきっとそういう海賊だとアカレッドは思いました。それはつまり、「宇宙最大のお宝」を本気で手に入れようとしている途方もない夢を持った海賊です。
そんな海賊はもはやいないと酒場の店主は言っていましたが、実際あの店主が全ての海賊を知っているわけでもなかろうし、確かにそう簡単には見つからないのであろうが、探してみる価値はあるとアカレッドは思いました。

ただ、仮にそういう「宇宙最大のお宝」を手に入れようとしている海賊を見つけることが出来たとしても、その海賊は大変な夢想家であることは間違いないであろうが、善人や正義の味方とは限らない。おそらくは宝の魅力に憑りつかれた者であり、現時点で決して宇宙の平和のことなど考えてはいないであろうし、ザンギャックと戦う意思も特に無いであろう。つまり、35番目の戦隊の戦士となる素質だけはあるが、その意思はそもそも無いはずです。
そんな者にいきなり「宇宙平和のためにザンギャックと戦う意思を持て」などと言っても、鬱陶しがられて逃げられるだけであろう。また、そうした宇宙平和への意思がまだ無い状態の時にいきなり「地球に行って宇宙最大の宝という装置を使って自分の思い通りの世界を作っていい」などと言われてしまったら、もしかしたら自分の欲望を満たすために世界を作り変えようとするかもしれない。
だから、もし「宇宙最大のお宝」を手に入れようとしている奇特な海賊に出会うことが出来たとしても、アカレッドはいきなり自分の旅の真の目的を告げるべきではない。とにかくまずはその海賊と一緒に行動するようにして、共に過ごす時間の中でその海賊を35番目の戦隊に相応しい宇宙平和への意思をもってザンギャックと戦う戦士へと徐々に変えていくしかない。
実際のところ、どのようにすればお宝目当ての海賊を35番目の戦隊に変えていくことが出来るのか、アカレッドにも現時点では全く想像がつかない。そんな途方もない夢を追いかける海賊というものがまず酒場の店主の言うように希少な存在なのであり、そもそも海賊という人種のこと自体よく知らないアカレッドにとってはそんな希少種の海賊など、全く未知の生き物と言っていいのだから、それを35番目の戦隊へと導いていく方法など全く想像がつかないのも当たり前です。とにかくまずはそういう海賊を見つけることが先決であり、その後どうするかはそこから考えるしかない。そう心に決めて、アカレッドは今後の旅の方針をまとめ直しました。

0123.jpgまず「大いなる力」が結晶化した鍵だが、スーパー戦隊の戦士の形をした鍵ということでアカレッドはこれを便宜上、「レンジャーキー」と呼ぶことにしました。このレンジャーキーはおそらくあの2ヶ月前のザンギャックとの最終決戦の場にいた192人の戦士たちの放出した192の「大いなる力」が結晶化したものですから、全部で192個存在するのでしょう。つまり、アカレッドは今回手に入れたマジレッドのレンジャーキー以外にまだ191個のレンジャーキーを回収していかなければいけない。
だが、この宇宙にはまだ191個のレンジャーキーがばら撒かれているはずなのにナビィは今回マジレッドのレンジャーキーにしか反応しなかった。これはおそらくナビィの「大いなる力」探知機能の有効範囲が限られているからなのでしょう。今回はたまたまガレオンの居た場所の近くの星にあったマジレッドのレンジャーキーの反応だけをナビィの探知機能が拾ったのであり、ナビィを乗せたまま別の場所にガレオンが移動すれば、また別のレンジャーキーの反応を探知することもあると予想されます。
つまり、残り191個のレンジャーキーを集めるためには、同じ場所を二度通ることもないぐらいフリーダムに宇宙を飛び回るしかない。そうしているうちにレンジャーキーは集まっていくでしょう。但し、レンジャーキーが今回のように都合よく無人の星に転がっているとは限らない。ザンギャック軍の施設のある星に転がっている場合だって有り得るのであり、そういう場所に行けばまたザンギャック軍とイザコザを起こすことも有り得る。このままではますますアカレッドの「赤き海賊」としての悪名は上がっていくことでしょう。
ならばいっそ開き直ろうとアカレッドは思いました。人が自分のことを海賊と呼ぶのならもういっそ海賊でいい。気儘に宇宙を旅して回ってザンギャック軍に逆らいながら変な鍵を集めて回る奇特な姿は、まさに海賊そのものと言っていい。それも一般的な海賊ではない。相当変わり者の海賊です。

どうしてアカレッドという男は奇妙な鍵を集めて宇宙を旅するのか、アカレッドは自問自答してみました。それはこの鍵が「宇宙最大の宝」に辿り着く道への扉を開ける鍵だからです。つまり自分は「宇宙最大の宝」に辿り着くためにレンジャーキーを集めている。それをそのまま「赤き海賊」としての自分の旗印にすればいい。「赤き海賊」であるアカレッドは「宇宙最大の宝」を目指して旅をする宇宙海賊なのです。
これはある意味、嘘ではない。この場合の「宇宙最大の宝」とは地球の中心の亜空間にある装置のことなのですが、別にそのことはあえて詳しく言及する必要は無い。とにかくアカレッドという宇宙海賊は「宇宙最大の宝」を手にするためにレンジャーキーを集めているという事実だけ表に出せばいい。
もちろんそんなことは大っぴらに言う必要は無い。公式には「赤き海賊」は目的不明の謎の海賊でいいのです。ただ、もし旅の途中で伝説の「宇宙最大のお宝」を手に入れようとしている奇特な海賊に出会ったら、その時にアカレッドは自分の旅の目的、すなわち「宇宙最大の宝を手にするためにレンジャーキーを集めている」という事実を告げ、共に旅をするよう誘えばいい。
アカレッドの言う「宇宙最大の宝」と、その海賊の目指す「宇宙最大のお宝」とは厳密には違うものなのですが、別にアカレッドは嘘はついていない。勝手に海賊の側が勘違いして仲間になるだけのことです。そもそも海賊の伝説の「宇宙最大のお宝」など本当は実在していない可能性が高く、それがどういう代物なのかという定義があるわけでもない。だから、それが最終的に地球にある「宇宙最大の宝」だったとしても別にアカレッドが海賊を騙したことにはならないだろう。
まずはレンジャーキーを探し求めて宇宙を飛び回りながら、その旅の中で出会った海賊たちに片っ端から何を欲して海賊をやっているのか質問していき、「宇宙最大のお宝」という答えを示した海賊に対して自分も「宇宙最大の宝」を手にするためにレンジャーキーを集めているのだと打ち明けて共に旅をする仲間になるよう誘い、そうしてなし崩しに一緒にレンジャーキー探しの旅をするようになった後、徐々にその海賊を35番目の戦隊に相応しい考え方へと誘導して変えていく。それがアカレッドの新たに考えた今後の旅のプランでした。

そうしてアカレッドは翌日、ナビィに向かって改まって、自分は実は「宇宙最大の宝」を求めて宇宙を旅する海賊、通称「赤き海賊」だったのだと告白し、昨日ナビィが見つけてくれた鍵はレンジャーキーというもので、「宇宙最大の宝」に辿り着くために必要な物なのだと説明しました。そして、レンジャーキーは昨日の1つだけではなくまだたくさん必要なので、これからもナビィには昨日のようにレンジャーキーの在り処が分かったら教えてもらいたいと言い、よろしく頼むと言ってアカレッドはペコリと頭を下げました。
今さら急にこんな取って付けたような告白をして信じてもらえるのだろうかとヒヤヒヤしていたアカレッドでしたが、ナビィは単純なので簡単にその話を信じて、むしろやっと自分が役に立てるようになったと思い、大喜びで張り切りだし、じゃあオイラも海賊だったのかと聞いてきたので、アカレッドがそうだと答え、私達は「赤き海賊」の海賊一味だと言うと、ナビィは1人と1羽だから海賊団だと訂正し、一味の名前を「赤き海賊」改め「赤き海賊団」としました。
0137.jpgこうして1人と1羽の「赤き海賊団」が旗揚げすることになり、ナビィがどうせならちゃんと「赤き海賊団」の海賊マークを作ろうと言い出したので、アカレッドは手許にあるマジレッドのレンジャーキーをじっと見て、それを畳んで鍵形態としたものをデザイン化し、そこに2010年10月に出現したゴーカイジャー5人が使っていた剣のデザインを組み合わせて、一般的な海賊旗のスカル&ボーンズに似たようなシンボルマークを作りました。
いずれはこの「赤き海賊団」の一員が35番目のスーパー戦隊、「海賊戦隊ゴーカイジャー」となり、レンジャーキーを掲げて地球に凱旋するのだという未来を内心夢見て、アカレッドはその「赤き海賊団」の新たな旗印をガレオンのマストや船体に大きく描き、ナビィにもせがまれて首元にこのマークを刻印してやりました。
そして、この旗印を描いた黒い海賊旗も作り、ガレオンのマストのてっぺんに掲げ、いずれゴーカイジャーの乗艦となるこの船の名をアカレッドは「ガレオン」から「ゴーカイガレオン」に改称しました。ナビィは「ゴーカイ」とはいったい何の意味なのかと質問してきましたので、アカレッドは「宇宙最大の宝」を探す豪快な旅のための船なのだからそれに相応しい豪快な名前にしただけのことだと答えておきました。

そうしてゴーカイガレオンに掲げられた海賊旗の「赤き海賊団」のシンボルマークを満足げに見上げていると、アカレッドはそういえばこの「赤き海賊団」の自分の作ったシンボルマークを自分は以前に見たことがあるということを思い出しました。それは例の2010年10月のゴーカイジャー出現時の記憶で、あの時にゴーカイジャーの5人が5つのレッド戦士のレンジャーキーを挿していた器具に、よく思い出してみるとこの「赤き海賊団」のシンボルマークが使われていました。いや、よくよく考えてみると、それだけではなく、ゴーカイジャー5人の額や胸元にもしっかりこのマークは描かれていました。
ということは、これはやはり自分の立ち上げた「赤き海賊団」からゴーカイジャーが生まれるということの証明なのだろうかとも思えましたが、あるいはこの2010年の事件の記憶の中でゴーカイジャーがこのマークを身に着けていたという記憶が自分の中に無意識に存在し、それが影響してあのようなマークを作っただけなのかもしれない。そうならば「赤き海賊団」からゴーカイジャーが生まれるという証明にはならない。いったいどっちが先なのかよく分かりませんでしたが、そんなことよりもアカレッドはこのシンボルマークのことがきっかけになって、より鮮明に思い出された2010年の記憶の中のゴーカイジャー5人が使ったその奇妙な器具のことが気になってきました。

ゴーカイジャーの5人はその携帯電話みたいな形のアイテムにレッド戦士のレンジャーキーを挿してそれぞれの戦士に変身しました。だがアカレッドは先だってマジレッドのレンジャーキーで試してみた結果、レンジャーキーだけでマジレッドに変身することが出来た。この差はいったい何だろうかとアカレッドは考えました。どうもゴーカイジャーの5人はあのアイテムを介さないとレンジャーキーを使って変身することが出来ないようでした。どうも奇妙だと思ったアカレッドでしたが、よくよく考えたら奇妙なのは自分の方なのだろうと考え直しました。
スーパー戦隊の力は特別な力です。レンジャーキーを手にしただけで誰もが変身できるわけがない。アカレッドがレンジャーキーだけで変身出来たのは、もともとアカレッドが体内にマジレッドの持つものと同じ「大いなる力」を持っているからだったのでしょう。同様に体内にマジレッドの「大いなる力」のオリジナルを半分残している小津魁もおそらくマジレッドのレンジャーキーだけでマジレッドに変身することは出来るはずですが、それ以外の者はマジレッドのレンジャーキーだけでマジレッドに変身することは出来るはずはない。そういう者のためにあの携帯電話型のアイテムは必要なのでしょう。
そういう者とはつまり、もともとスーパー戦隊の「大いなる力」を持っておらず、スーパー戦隊の戦士に変身する能力を持たない者です。よく考えれば当たり前の話ですが、あの2010年に現れたゴーカイジャーの5人はスーパー戦隊への変身能力を持たない、ただの海賊です。だからあのようなアイテムにレンジャーキーを挿してレッド戦士へ変身したのです。
0125.jpgならば、あの5人の歴代レッド戦士に変身する前の姿は、いったいどういうことなのだろうかとアカレッドは考えました。つまり赤青黄緑桃の「赤き海賊団」のシンボルマークの入った全身スーツ姿の方のことです。あれがゴーカイジャーのオリジナルの姿ということになるのでしょうけれど、あれが彼ら5人の元々の姿だとは到底思えません。スーパー戦隊への変身能力をもともと持たない普通の海賊の5人ですから、元の姿は普通の人間型であり、あの全身スーツ姿は変身した後の姿であると考えるのが普通です。とすると、彼ら5人はあの携帯電話型のアイテムを使ってゴーカイジャーの姿にも変身したのだろうと想像できます。

では、いったいどうやってあのアイテムを使ってゴーカイジャーに変身したのでしょうか。あのアイテムはレンジャーキーを挿しこんで変身する仕様になっているようでしたから、ゴーカイジャーへの変身もレンジャーキーを用いたと考えるのが最も自然です。だが、いったいどんなレンジャーキーを挿しこんだというのでしょうか。
あの時、ゴーカイジャーの5人は歴代レッド戦士のレンジャーキーをあのアイテムに挿し込んで、そのレンジャーキーの戦士に変身していました。ならば、ゴーカイジャーへの変身にはゴーカイジャーのレンジャーキーを挿し込む必要があります。具体的には、ゴーカイレッド、ゴーカイブルー、ゴーカイイエロー、ゴーカイグリーン、ゴーカイピンクのレンジャーキーを各自が挿し込む必要がある。
しかし、そんな戦士のレンジャーキーが存在するわけはない。レンジャーキーは2ヶ月前のザンギャックとの戦いに参加した34のスーパー戦隊の192人の戦士の分しか存在しないはずであり、ゴーカイジャーの5人のレンジャーキーなどというものが存在しているはずはないのです。だが、あのような変身アイテムを持った5人組がゴーカイジャーに変身している以上、その本来は存在しないゴーカイジャーのレンジャーキーというものが未来の何処かの段階以降は存在しているようなのです。

ということは、あの5人組がゴーカイジャーのレンジャーキーを自作したというのだろうか。いや、その可能性は低いだろうとアカレッドは思いました。お宝目当ての海賊がレンジャーキーを集めるのならともかく、新たなレンジャーキーを自作する動機は無い。そもそも彼らはスーパー戦隊を知らないだろうし、わざわざスーパー戦隊のような姿になって戦おうとする必然性も無い。
だいいち、レンジャーキーを自作するためには、レンジャーキーを構成する「大いなる力」についてよほど熟知していなければ無理でしょう。ただのお宝目当ての宇宙海賊が地球のスーパー戦隊の「大いなる力」について知っているはずがない。だから、ゴーカイジャーのレンジャーキーはあの5人組の海賊が自作したものではないはずです。
もしもこの世界にレンジャーキーを自作出来る者がいるとしたなら、それはもともと「宇宙最大の宝」や「大いなる力」を生み出した正体不明の存在か、あるいは「大いなる力」を体内にずっと持っていたスーパー戦隊関係者、あるいは「この星の意思」かアカレッド自身、これらのうちのいずれかでしょう。だが、宇宙海賊ゴーカイジャーの5人とこれから先に出会ってレンジャーキーを託すのがアカレッドであろうと推測される以上、ゴーカイジャーのレンジャーキーを作って5人の宇宙海賊に渡す者もまたアカレッドなのであろうと考えるのが自然でした。状況的にそう考えるのが一番自然です。
となると、そもそもレンジャーキーを使って変身するという行為自体がお宝目当ての宇宙海賊にとって必要性の無い行為であることから考えても、あの5人の持っていた携帯電話型の変身アイテムもまた、ゴーカイジャーのレンジャーキーと共にアカレッドが作って渡すことになると考えた方が自然でしょう。アカレッドには十分にその動機はあります。アカレッドはお宝目当ての宇宙海賊5人を35番目のスーパー戦隊にしなければならないからです。そのためには変身アイテムである携帯電話型器具とレンジャーキーを作って5人に渡さなければならない。

つまり、どうやらこれからアカレッドが出会うと予想される5人の宇宙海賊たちは放っておいて勝手に35番目の戦隊になってくれるわけではなく、彼らがゴーカイジャーというスーパー戦隊になっていくために必要な物は全てアカレッドが用意してやらないといけないようなのです。
それはおそらく変身アイテムだけではない。ゴーカイジャーとしての手持ちの武器類も用意しておいてやらないといけないのであろう。確か、2010年10月に出現した時のゴーカイジャーの5人は、いかにも海賊風の蛮刀と小型のクラシックな感じの銃を使って外道衆と戦っていました。ああいう感じの剣と銃もアカレッドがとりあえず人数分は用意しておいてやらないといけないようです。
また、あの時「この星の意思」も直接目撃はしていないのでアカレッドもまたその記憶は貰ってはいないのだが、その2010年10月に出現したゴーカイジャーは外道衆との戦いの後、マトリンティスの巨大ロボとも戦い撃破していたようなのです。ということは、ゴーカイジャーはどうやら歴代34戦隊と同等クラスの巨大戦力は保有しているようです。そしてお宝目当ての宇宙海賊がそんな歴代スーパー戦隊並の過剰な巨大戦力など必要としていない以上、その巨大戦力もまた彼らの自作によるものとは考えられない。その巨大戦力もまた自分が用意すべきものなのだろうとアカレッドは思いました。

そういうわけでアカレッドはナビィと共に「赤き海賊団」を旗揚げしてゴーカイガレオンに乗ってレンジャーキーを探す冒険の旅を開始した後、ナビィのナビゲートが発動してレンジャーキー探索をする時以外の時間の多くは1人で自室や船内の各所に籠って、彼特有のアイテム生成能力を駆使してコツコツと作業をするようになりました。
まずはアカレッドはマジレッドのレンジャーキーやその後順次回収していった他のレンジャーキーを使って、レンジャーキーの特性を調べ、レンジャーキーを挿し込んでそこに込められたスーパー戦隊の戦士の「大いなる力」を発動することの出来る簡単なシリンダー状の装置を作りました。これは要するにレンジャーキーの鍵穴のついた筒のような小さな装置で、レンジャーキーの汎用型の「受け」用の器具と言っていい。アカレッドはこれを「ゴーカイシリンダー」と名付け、試しにこのゴーカイシリンダーをラッパラッターに取り付けてみました。
0126.jpgラッパラッターは本来は「大いなる力」を吸い出すための装置なのですが、アカレッドはこれにゴーカイシリンダーを取り付けることで、レンジャーキーを挿し込んでそのレンジャーキーの戦士の力を実体化するという実験をしたのでした。アカレッドがラッパラッターに付けたゴーカイシリンダーにマジレッドのレンジャーキーを挿し込んで回し、レンジャーキー内の「大いなる力」がラッパラッターに流れ込むようにした後、ラッパラッターを吹くと、ラッパラッターの先から飛び出した金色の光がマジレッドの姿に変わって降り立ちました。
予想以上の成果にアカレッドは驚きましたが、このマジレッドは意思を持たない単なる力の塊であり、命令された行動はすることは出来ましたが、自分の意思で動くということは出来ませんでした。ただ、それはアカレッドも想定していたことでした。これはレンジャーキーの力を使ってスーパー戦隊の戦士の力を纏って人間が変身できるようにするための前段階の実験に過ぎなかったので、まずはこの結果は上々でした。次はこの意思無き力の塊を意思を持つ人間が纏うようにするための装置を作る段階に進めばいいのです。
ただ、このラッパラッターの新しい機能、すなわち意思を持たない戦士のエネルギー体を作り出す機能は、これはこれで何かの役に立つこともあるだろうと思ったアカレッドは、そのままラッパラッターに5つのゴーカイシリンダーを取り付けて、ラッパラッターを改造しておくことにしました。

0127.jpgまた、アカレッドはいずれゴーカイジャーが使用することになる剣と銃の製造にも取り掛かりました。その剣と銃のデザインは、あの2010年10月の事件の際に現れたゴーカイジャー5人が持っていた剣と銃のデザインに倣い、アカレッドはその剣を「ゴーカイサーベル」、銃を「ゴーカイガン」と名付けました。そして更にアカレッドはゴーカイサーベルとゴーカイガンに1つずつゴーカイシリンダーを取り付け、レンジャーキーの力をゴーカイサーベルやゴーカイガンを介して強大な攻撃力として利用出来るようにしました。これはゴーカイジャーの必殺技の発動のための工夫でした。
アカレッドはまだゴーカイジャーとなるべき海賊たちと出会ってすらいなかったので、ゴーカイジャーという戦隊が海賊戦隊であるということ以外は一体どういう特性を持った戦隊であるのか全く分からず、それゆえ個性豊かな個人別の武器なども考え付かなかった。それでゴーカイジャーという戦隊の武器は共通装備であるゴーカイサーベルとゴーカイガンだけということにして、通常の戦隊ではより強力な個人別武器や合体大型砲などで繰り出す必殺技もこのゴーカイサーベルやゴーカイガンだけで繰り出すようにしたいと考えました。
0128.jpgしかし小型武器であるゴーカイサーベルやゴーカイガンではそれほどの威力のある攻撃力は発揮出来そうにない。そこでゴーカイサーベルやゴーカイガンにゴーカイシリンダーを取り付けることで、レンジャーキーのパワーを攻撃力にプラスして必殺技クラスの威力のある技を可能にしたのでした。
このゴーカイシリンダー付きのゴーカイサーベルとゴーカイガンをゴーカイジャーの人数分5セット製作したアカレッドは、それらを自室に隠しておき、それとは別にゴーカイシリンダーを付けていないゴーカイサーベルとゴーカイガンを多数作り、とりあえずそれらを「赤き海賊団」の武器として使うことにしました。レンジャーキー回収の冒険程度ならばゴーカイシリンダー無しのゴーカイサーベルやゴーカイガンで十分でしたし、そもそもアカレッド自身がレンジャーキーの力など使わずともスーパー戦隊の戦士と同等以上の強さを有していましたから、それで特に問題は無かったといえます。

そして、その作業と並行して、アカレッドはゴーカイジャーの変身アイテムの製作に取り掛かりました。それがすなわちラッパラッターの実験の次の段階の作業ということになります。
ゴーカイシリンダーでレンジャーキーから引き出した力をラッパラッターのように戦士の形に実体化するだけではなく、その戦士の形となったパワーを人間が装着して戦士に変身することを可能にするのがこの作業の目標でした。それは要するに、あの2010年10月に出現したゴーカイジャー5人が歴代レッド戦士のレンジャーキーを携帯電話型のアイテムに挿入して行った作業を再現することに他ならない。それゆえ、この作業で製作するゴーカイジャーの変身アイテムの形は、あの時ゴーカイジャーの5人がレンジャーキーを挿入した携帯電話型の装置を倣ったものとなります。その器具をアカレッドは「携帯式器具」という意味での「モバイル」と「海賊」の「パイレーツ」を組み合わせて「モバイレーツ」と名付けました。
0129.jpgこのモバイレーツは基本的には通信機ですが、本体上部にはゴーカイシリンダーが埋め込んであり、そこにレンジャーキーを挿し込んで回すとラッパラッター同様、レンジャーキーの戦士の力が実体化して出力されるようになっています。しかしラッパラッターのようにその戦士の力が単に実体化して降り立つのではなく、出力したエネルギーがモバイレーツを持っている人間の身体に装着されるよう調節されていました。
これは基本的にはラッパラッターから出力したエネルギー体と同じようなものです。エネルギー体が操作する者の外部に別個体として存在するのがラッパラッターを使った場合であり、モバイレーツを使った場合にはエネルギー体が操作する者の外装となって一体化することになります。どちらの場合も操作者が自分の意思でそのエネルギー体を動かすという点では同じことです。
ただ、モバイレーツを使って変身して操作者とエネルギー体が一体となった方がきめ細かな動きが自在になりますから、レンジャーキーの持てる全てのパワーを引き出すことが出来るといえます。だがそれは変身者がレンジャーキーのパワーを制御出来るだけの力を持っていればの話であり、力の足りない者はむしろレンジャーキーのパワーに振り回されてしまい満足な力を発揮できない。それならばまだラッパラッターを使ってエネルギー体を自分とは離れた別個体として出して、大まかな指示だけ出して動かした方がまだマシといえます。つまり力の足りない未熟な者にはラッパラッターが適しており、モバイレーツは上級者向けの道具ということになります。

仮にモバイレーツを使って変身し、レンジャーキーのエネルギー体と一体化して戦うとして、その変身者として最も適しているのは当然そのレンジャーキーの戦士の本来の変身者ということになります。つまり例えばマジレッドのレンジャーキーをモバイレーツに挿して変身してマジレッドのレンジャーキーの力を100%発揮できるのはマジレッドのオリジナルの変身者である小津魁ということになります。
あるいは小津魁よりも高い能力を持った戦士ならばやはりマジレッドのレンジャーキーの力を100%引き出すことは出来るかもしれないと思いがちだが、やはり100%の力となるとより繊細な動きを可能としてこそ引き出し得るものなので、小津魁本人の方がその点では誰よりも上でしょう。だからやはりマジレッドのレンジャーキーの100%の力を引き出し得るのはこの世界で小津魁ただ1人と言っていい。小津魁と同じ「大いなる力」を持つアカレッドでもさすがにマジレッドの力を使う熟練度の差があるので、小津魁には及ばないでしょう。
ただ、それでも小津魁以上の能力を持つ変身者ならば、100%には及ばなくてもマジレッドのレンジャーキーの99%や98%の力は引き出すことまでは出来ると思われます。小津魁と同等程度の実力者ではそこまでは無理でしょう。やはり熟練度のハンデというのは大きい。小津魁よりもかなり力が上の変身者ならば、ようやく熟練度のハンデを相殺して小津魁の変身したマジレッドとほぼ互角の力を引き出すことは出来るといえます。ただ、それでもやはりオリジナルの変身者である小津魁の100%には紙一重及ばず、99%を超える力を引き出すことは出来ないでしょう。それがオリジナル変身者以外の者のどうしても超えられない限界なのだといえます。
アカレッドもそれぐらいのレベルであろうと思われ、モバイレーツを使った場合だけでなく、普段のアカレッドの「ソウル降臨」のマジレッドへの変身も実際は100%のマジレッドではなく99%のマジレッドだと考えればいい。だからもしアカレッドがソウル降臨やモバイレーツ変身でマジレッドに変身して小津魁のマジレッドと戦えば紙一重の差でアカレッドの方が負けることになるでしょう。まぁソウル降臨の場合にはそれは有り得る想定ですが、レンジャーキーを使う変身の場合は小津魁の方が変身不能になることが前提になっているので、そもそも成立しない仮定ということになりますが。
また、そもそも、現在レンジャーキーに含まれている「大いなる力」は本来オリジナル変身者が体内に持っていた「大いなる力」のうちの半分程度に過ぎない。変身に必要なトリガー的な部分が身体から飛び出した半分の方に含まれていたのでオリジナル変身者の方は変身能力を無くしていますが、変身可能なレンジャーキーの方の「大いなる力」もフルパワーが揃っているわけではないのです。だから仮によほどの達人がレンジャーキーの力を100%引き出し得たとしても、現時点のレンジャーキーの力ではたとえ100%でもオリジナル変身者の力には遠く及ばないのです。

そうした原則を踏まえた上で2010年10月に出現したゴーカイジャーの5人の戦いを検証してみると、それはかなり奇妙なものでした。あの時、ゴーカイジャーの5人はマジレッドやデカレッドなど歴代レッド戦士5人のレンジャーキーをモバイレーツに挿し込んで、その5人のレッド戦士に変身したのですが、その5人のレッド戦士のオリジナルの力とほぼ同等の力を引き出して戦っていました。
これは現時点のレンジャーキーの状態からすると有り得ない話なので、おそらくこの2010年10月にタイムスリップしてきたゴーカイジャーは、未来のどの時点からタイムスリップしてきたのかは不明ですが、どうやらマジレンジャー、デカレンジャー、ゲキレンジャー、ボウケンジャー、ゴーオンジャーの5つの戦隊の残り半分の「大いなる力」は既に手に入れた後であるのだろうとは推測できます。まぁタイムスリップしてきているということはタイムレンジャーの「大いなる力」も全部揃えている可能性が高いので、他にマジレンジャーなどの5戦隊の「大いなる力」を揃えていると考えるのはそう不自然なことではない。
ただ、その5戦隊の「大いなる力」が彼らがモバイレーツに挿したレンジャーキーの中にフルパワーで込められていたとするなら、なおさらそのフルパワー、おそらく100%ではなく99%なのであろうが、それでもかなりのパワーとなるレンジャーキーの力を彼らがほぼ完全に使いこなしていたというのは不可解です。
前述のごとくオリジナル変身者よりもかなり上の実力の持ち主ならばそういうことも可能なのですが、それはあくまで理論的には可能であるというだけであって、現実には百戦錬磨のスーパー戦隊のレッド戦士の変身者よりもかなり実力が上の達人がそうそう多く存在するはずがない。そんな希少な達人がたまたま5人揃ったなど、不自然です。
しかも5人のうち2人はどう見ても女性戦士でしたし、男のうちの1人はあまり強そうにも見えなかった。あの5人組が赤座伴番や小津魁や明石暁や漢堂ジャンや江角走輔をはるかに凌駕する達人であるとは、どうも思えませんでした。だが実際にあの5人はその5人のレッド戦士のレンジャーキーのフルパワーを99%ほど引き出すという達人しか不可能なことをやってのけていた。

0130.jpgその謎を解く手がかりはあのレッド戦士に変身する前に彼らが着用していたゴーカイジャーのスーツにあるのではないかとアカレッドは考えました。つまり、普通に生身の状態でモバイレーツに歴代レッド戦士のレンジャーキーを挿して変身したのではなく、生身の状態から一旦ゴーカイジャーの姿に変身して、その姿で歴代レッド戦士に変身したからこそ、彼ら5人は歴代レッド戦士の力をオリジナル戦士とほぼ同じぐらい引き出すことが出来たのではないかという推理です。
謎を解くカギは二段変身にあったのではないか。そう考えたアカレッドはそれが自分の「ソウル降臨」と同じ原理だということに気付きました。実はアカレッドとてその本来の彼自身の実力はスーパー戦隊の歴代戦士をはるかに凌駕しているというほどではない。歴代レッド戦士と同じぐらいの強さと言っていいでしょう。まぁ標準レベルから見ればとんでもない実力者なのですが、それでも決して歴代レッド戦士を遥かに上回る実力を持つ達人というわけではない。
だから本来はアカレッド程度の実力では他人である歴代レッド戦士の持つ力を十分に引き出すことなど出来るはずがない。それなのにアカレッドが歴代レッド戦士に変身して歴代レッド戦士のオリジナルの実力の99%程度を引き出すことが出来るのは、アカレッドが歴代レッド戦士の「大いなる力」と同じ「大いなる力」を歴代レッド戦士全員分、体内に持っているからです。
ならば、あのゴーカイジャーの5人も同じなのではなかろうか。アカレッドのような特殊な思念体ではない生身の人間である彼らは、アカレッドのようにもともとの体内にそんな特殊な「大いなる力」を持っているわけではないであろうから、彼らがレッド戦士への変身前に装着していたゴーカイジャーのスーツ、つまりゴーカイジャーの「大いなる力」の中にスーパー戦隊の歴代戦士の持つ「大いなる力」と同じものが含まれているのではなかろうか。
ただ、そのゴーカイジャーの「大いなる力」の中に含まれるのは、あの時彼らが変身した5人のレッド戦士の分だけではなかろう。彼らが192個のレンジャーキーを受け継ぐ35番目の戦隊である以上、おそらくは192人の戦士全員に変身出来るはずであり、彼らゴーカイジャーの「大いなる力」の中には192戦士の全ての「大いなる力」と同じ成分が含まれている。それがゴーカイジャーの「大いなる力」、すなわちゴーカイジャーのレンジャーキーを作成するとした場合にその原材料として必要な成分ということになる。

そんな奇妙な「大いなる力」を作ることが出来るのだろうかとアカレッドは一瞬迷いましたが、よく考えたらそれは決して手掛かりが無い作業ではありませんでした。何故ならアカレッド自身の持つ「大いなる力」が歴代レッド戦士限定とはいえ、同じような複合的性質をもったものだったからです。
つまり、アカレッド自身の「大いなる力」を研究してその性質を解明した上で、アカレッドの「大いなる力」をベースとしてそこにレッド戦士以外の他の戦士たちの「大いなる力」も回収してきたレンジャーキーから順次加えていく作業を繰り返していけば、最終的に192個のレンジャーキーが揃った時点でゴーカイジャーの「大いなる力」を作り上げることは出来るのです。
0131.jpgそこでアカレッドは、あの2010年10月に現れたゴーカイジャー5人の姿をそれぞれ象った中身が空のレンジャーキーをアカレッド自身の「大いなる力」で生成しておき、そこにそのゴーカイジャーの「大いなる力」を移植して、更に変身後スーツやマスクのデザインデータや、各自の手持ち武器のゴーカイサーベルとゴーカイガンをエネルギー体に還元したもの、その扱い方のマニュアルデータなども一緒に収めておく方針としました。これで変身者がモバイレーツにゴーカイジャーのレンジャーキーを挿し込んで変身すれば、瞬時に変身者はゴーカイレッドやゴーカイブルーなどの姿となり、その場でゴーカイサーベルやゴーカイガンという武器も実体化して手にすることが出来るわけです。

更にアカレッドは、ゴーカイジャーが192個のレンジャーキーを用いて歴代戦士に二段変身する際や、ゴーカイサーベルやゴーカイガンにレンジャーキーを装填して必殺技を放つ際の流れをスムーズにするために、ゴーカイジャー各自の変身後スーツのバックルから自在に自分の望むレンジャーキーを取り出すことが出来るような仕様としておきました。
そのためにはゴーカイジャーのベルトのバックルとレンジャーキーの保管場所との間が「大いなる力」が通過する異次元通路で繋がっていなければならないわけですが、アカレッドにはそうした特殊な異次元通路を繋げる能力を有する者に心当たりがありました。それはナビィでした。
ナビィはもともと地球の中心の亜空間の石室へ繋がる通路を開く扉であり、その扉は「大いなる力」で開く。つまり「大いなる力」を媒介にして異次元通路を開くのがナビィの本来の能力なのであり、その能力は小型オウムロボットに姿を変えた今でも無意識的に機能しているはずでした。
地球の中心の「宇宙最大のお宝」に至る通路は封印されており、全ての「大いなる力」が揃わない限りは開くことは出来ませんが、それ以外の簡単な異次元通路ならば、多少の「大いなる力」があればナビィの力で開いて繋げることが出来るのではないかと考えたアカレッドは、幾つかのレンジャーキーが集まった段階で実験を試みました。

0133.jpgまずアカレッドは自分のベルトのバックル部分だけをソウル降臨でゴーカイジャーのバックル風の小箱型のデザインにしてみて船室に行き、それまでに回収したレンジャーキーを宝箱に入れて船室の真ん中に置き、そこから少し離れた位置に立ってナビィに向かって「その宝箱と自分のベルトのバックルの間を見えない通路で繋いでみてほしい」と頼みました。
ナビィはそんなことが出来るわけがないと言いましたが、アカレッドは出来るつもりになってイメージして繋いでみてほしいと重ねて頼み、ナビィも仕方なくその気になって、まず宝箱にとまってから続いてアカレッドのベルトのバックルまで飛んできてとまりました。その間、ナビィは自分の後ろ足が異次元の通路を引っ張ってきているというイメージであったわけですが、この実験がなんと成功したのでした。
実験が終わった後、見事に繋がった異次元通路を通してアカレッドがベルトのバックルから宝箱の中のレンジャーキーを取り出してみせたのを見てナビィは自分の秘められた能力に驚き、これは何のための通路なのかとアカレッドに尋ねてきました。アカレッドはまだナビィにゴーカイジャーのことや「大いなる力」のことを教えるわけにはいかなかったので、レンジャーキーが宝箱ごと奪われた時のための奥の手を試してみただけだと説明しておきました。だが本当はいずれゴーカイジャーのメンバーが変身して活動するようになった時にナビィに宝箱とバックル(ゴーカイバックル)の間のレンジャーキー移動用の異次元通路を開通させる作業の予行演習を兼ねて実験をさせたようなものでした。
0132.jpgこの実験の成功で異次元通路で宝箱とゴーカイバックルの間を繋げることが可能だと確信したアカレッドは、ゴーカイジャーはイメージしただけで任意のレンジャーキーをゴーカイバックルに呼び寄せることが出来るという仕様と定め、また、変身解除や必殺技発動などでレンジャーキーの「大いなる力」が使用完了した後はそのエネルギーをゴーカイバックルが自動的に吸収して元のレンジャーキー形態に戻して速やかに宝箱に送り返すという仕様にも設定しました。

このようにアカレッドはゴーカイジャーの「大いなる力」の様々な仕様を決定していきましたが、この計画に従う限り、ゴーカイジャーの「大いなる力」が完成するのはどうしても192個のレンジャーキーが揃って以降ということになります。そうして完成したゴーカイジャーの「大いなる力」をゴーカイジャーの5つのレンジャーキーに移植して作業は完了ということになりますが、ならばその後ゴーカイジャーのレンジャーキーをモバイレーツに挿し込めばゴーカイジャーの5人の戦士が誕生し、35番目の戦隊ゴーカイジャーが始動するのかというと、そう話は単純ではないだろうとアカレッドは思っていました。
もしそれで済むのならば、誰でもゴーカイジャーのレンジャーキーとモバイレーツを使えばゴーカイジャーとなり、ゴーカイジャーの「大いなる力」を手にすることが出来るということになるが、スーパー戦隊とはそんな簡単、安易なものではない。

そもそも「大いなる力」とは何なのだろうかとアカレッドは考えました。本来は「大いなる力」とは「宇宙最大の宝」によって作り出された、世界の成立ちに関係する何か得体の知れない巨大なエネルギーであり、スーパー戦隊の戦士たちの所有物ではなかった。だが、それがその後スーパー戦隊の戦士たちの体内に落ち着くようになり、その戦う力の源泉となり、戦士たちの身体から「大いなる力」の半分が飛び出した現在も、その飛び出した「大いなる力」はこうして戦士の形をした人形となっているくらい、「大いなる力」とスーパー戦隊とは切っても切り離せない関係となっている。
いったいどうやって、もともとは無関係のはずの「大いなる力」とスーパー戦隊の戦士たちとが結びついたのかというと、それはスーパー戦隊が世界を守って戦ってきたからであるように推測は出来ます。
「大いなる力」はスーパー戦隊の戦士たちが自力で作り出したものではなく、もともと「宇宙最大の宝」によって作り出されていたと思われる。おそらくは既存の世界に新たな世界が融合した際に「宇宙最大の宝」の内部でその世界の「大いなる力」が生じていたのでしょう。その「大いなる力」がスーパー戦隊の戦士たちの体内に生じたと感知されたのは、その世界において新たに登場したスーパー戦隊が世界を守りきってひとまず戦いを終えた時でした。しかし、これは実はスーパー戦隊の戦士たちの体内で「大いなる力」が生じたのではなく、「宇宙最大の宝」から戦士たちの体内へと「大いなる力」が居場所を変えたという方が正確でしょう。
ただ、今回のザンギャックとの戦いの最後に戦士たちの体内から「大いなる力」が半分抜けただけで戦士たちが変身して戦う力を失ったという現象を見る限り、戦士たちの戦いに「大いなる力」は不可欠であったようです。となると、厳密に言えば、それぞれのスーパー戦隊の戦いが終わった時に「大いなる力」が一気に「宇宙最大の宝」から戦士の体内に引っ越してきたわけではなく、戦士たちが戦い始めた時から「大いなる力」は戦士たちと繋がりを持ち始めていたはずです。
おそらく戦士たちが戦いを重ねていくにつれ、彼ら自身は無自覚のうちに「大いなる力」と戦士たちの繋がりは徐々に強く濃くなっていき、それに比例するように戦士たちも強くなっていき、そして最終的に世界を脅かす強大な敵を倒して彼らが戦いを終えた時、「大いなる力」は「宇宙最大の宝」から離れて完全に戦士たちの体内に移ってきたのでしょう。その段階で初めて、戦士たち自身にも、スーパー戦隊を観察していた「この星の意思」にも、「大いなる力」が戦士たちの体内に在ることが感知されたのだと思われます。

「大いなる力」とスーパー戦隊との結びつきとはそういうものだということはアカレッドにも推測は出来ます。ならば、このまますんなりとはゴーカイジャーの「大いなる力」はゴーカイジャー5人のものにはならない。
確かに192個のレンジャーキーを揃えて、アカレッド自身の「大いなる力」をベースにして、192個のレンジャーキーを分析して作りだした「大いなる力」を原材料にして作業すれば、ゴーカイジャーの「大いなる力」は作り出すことは出来るであろうし、それをゴーカイジャーのレンジャーキーに込めることも出来るでしょう。
しかし、それはこれまでの戦隊の戦いの歴史において最初に「宇宙最大の宝」の中に「大いなる力」が単に存在していたという状態と同じです。その段階ではまだ「大いなる力」と戦士たちとは結びついておらず、彼らはまだスーパー戦隊の戦士ではなかった。彼らは「大いなる力」と結びつくことでスーパー戦隊の戦士となったのであり、「大いなる力」もスーパー戦隊の戦士たちと結びつくことによって戦う力としての特性を備えるようになったのです。だからゴーカイジャーの5人もゴーカイジャーの「大いなる力」と結びつくことで初めてゴーカイジャーとなるはずであり、「大いなる力」もその時初めてゴーカイジャーの戦う力となるのです。
だが、歴代34戦隊は別に「大いなる力」の存在など全く意識しない状態で、知らず知らずのうちに「大いなる力」と結びついてきた。彼らは彼らの世界の中の脈絡の中で成り行きで変身アイテムを手にすることになり、戦うことを決断したことによって、無意識に「大いなる力」と結びついたのです。だからゴーカイジャーの5人がゴーカイジャーの「大いなる力」やレンジャーキーとの結びつきを直接的に求めても「大いなる力」は彼らに反応することはないだろう。
つまり、特定の条件を満たした状態にない場合に彼らがゴーカイジャーのレンジャーキーをモバイレーツに挿しても何も起こらないと予想されます。ゴーカイジャーの分以外の他の192個のレンジャーキーの場合は、既に34戦隊の戦士たちが「宇宙最大の宝」から切り離して自分のものとした「大いなる力」が結晶化したものだから、モバイレーツに挿した場合にはちゃんと反応して、戦士の戦う力が飛び出して変身者の身体に装着はされます。だがゴーカイジャーの「大いなる力」はまだ誰も自分のものとしていない。ただ存在しているだけであり、この状態ではモバイレーツやラッパラッターを介して戦士の戦う力として実体化することはないのです。

しかし、ゴーカイジャーに変身出来なければ、他の戦隊の戦士に変身出来てもあまり意味は無い。他の戦隊の戦士に変身出来ればそこそこの力は発揮出来ますが、それはオリジナルに比べればかなり落ちる力でしかない。他の戦隊の戦士に変身してフルパワーに近い力を引き出すためには、ゴーカイジャーに変身した上での二段変身が大前提なのです。2010年10月に出現したゴーカイジャーはちゃんとそれが出来ていた。だから、これからアカレッドが出会う5人の宇宙海賊はまずはゴーカイジャーの「大いなる力」と結びつく必要があります。
そのためには、むしろ他の戦隊のレンジャーキーを使って変身出来るというモバイレーツの性能は当初は邪魔といえます。別にゴーカイジャーに変身出来なくても、他の戦隊の戦士に変身出来れば、そこそこ戦えるわけですから、それで別にいいんじゃないかと変な妥協をしてしまう可能性が生じるからです。
そこでアカレッドは5人の海賊用に作ったモバイレーツに細工して、ゴーカイジャーのレンジャーキーを挿してゴーカイジャーの「大いなる力」を出力しない限り、他のレンジャーキーには一切反応しないようロックをかけることにしました。これで5人の海賊たちはまずはとにかくゴーカイジャーのレンジャーキーを使って変身することを達成しなければいけなくなります。

さて、では問題はいったいどうすれば5人の宇宙海賊はゴーカイジャーの「大いなる力」と結びつくことが出来るのかです。それはこれまでの34戦隊の場合と同じパターンを繰り返すのだろうとアカレッドは思いました。それはつまり「世界を守るために戦う」という行為や意思によって「大いなる力」と繋がるということのように見えます。だが、アカレッドは厳密にはそうではないと感じました。
それはアカレッド自身が「ソウル降臨」という技で各スーパー戦隊の「大いなる力」を引き出して、各スーパー戦隊のレッド戦士に変身することが出来るからでした。アカレッドが「ソウル降臨」の技を使う時、各スーパー戦隊の「大いなる力」を引き出すトリガーとなるのが、まさに各スーパー戦隊の「ソウル」、すなわち魂、精神でした。その34戦隊のソウルを総称してアカレッドは「スーパー戦隊魂」と呼んでいましたが、それは便宜的に総称しているだけのことで、実際は「スーパー戦隊魂」を構成する34戦隊のそれぞれのソウルはそれぞれ違う特色を持っていました。
例えばマジレンジャーのソウルは「勇気」であり、デカレンジャーのソウルは「プロフェッショナルの誇り」であり、アカレッドは「ソウル降臨」でマジレッドに変身する際には勇気というソウルを意識し、デカレッドに変身する際にはプロとしての誇りというソウルを意識するようにしていました。そうすることによってアカレッドはマジレンジャーやデカレンジャーの「大いなる力」を引き出すことが出来ているのです。
つまり、各戦隊のソウルが各戦隊の「大いなる力」と結びつくために必須の要素であるということです。例えば小津兄妹は世界を守るために戦おうと決意したことによってマジレンジャーの「大いなる力」と結びついたのではなく、その際に「勇気」というソウル、つまり「勇気」という精神を得たのでマジレンジャーの「大いなる力」と結びつき、その力を引き出すことが出来たのです。
0134.jpgならば35番目のスーパー戦隊であるゴーカイジャーもそれと同じパターンなのだと考えられます。ゴーカイジャーにもゴーカイジャーに対応した何らかの「ソウル」があり、5人の宇宙海賊がそのソウルを得た時、彼らはゴーカイジャーの「大いなる力」と結びつき、モバイレーツを介してゴーカイジャーのレンジャーキーに秘められたゴーカイジャーの「大いなる力」を引き出して実体化させ、ゴーカイジャーに変身することが出来るようになるのです。

では、そのゴーカイジャーのソウルとは何なのか、それはアカレッドにはよく分からない。それは彼ら自身に課せられた運命に関わる話であって、他人であるアカレッドには分からないし、アカレッドが決める筋合いの話でもない。ただ、「宇宙最大のお宝」という途方もない夢を掴もうとしている宇宙海賊をスカウトしようと考えているアカレッドの立場で予測するならば、彼らのソウルとは「夢」に関係したものではなかろうかとは思えてくるが、具体的にそれがどのような形でゴーカイジャーという戦隊のソウルとなるのか、ちょっとよく分かりません。
まぁそれはいずれ彼らが自分のもとに集まってくれば見えてくるであろうとアカレッドは思いました。まずは「宇宙最大のお宝」を手に入れようとしている宇宙海賊を見つけて仲間にするのが先決です。そして、その5人の海賊を集めながら、並行して192個のレンジャーキーを集め、ゴーカイジャーのレンジャーキーを完成させた頃には、ゴーカイジャーのソウルが何であるのか、彼ら5人にも自分にも見えてくるであろう。
そう考えたアカレッドは、完成した5つのモバイレーツを船内の別の隠し場所に隠し、ゴーカイシリンダーを埋め込んでいない、普通の通信機能だけのモバイレーツを別に6つ作り、1つは自分用とし、残り5つはこれから仲間になるであろう5人の宇宙海賊にひとまず使わせるために自室に置いておくことにしました。

そして、更にアカレッドは、いずれゴーカイジャーが使うことになる巨大戦力の準備にも取り掛かることにしました。スーパー戦隊の巨大戦力といえば巨大な合体ロボと相場が決まっています。そして合体ロボを構成するパーツは各メンバーの乗る巨大マシンであるのが定番です。そこでアカレッドは5つの巨大マシンを「ゴーカイマシン」と名付け、そのうちの1つ、核となる巨大ロボの胴体部分に変形するゴーカイマシンをゴーカイガレオンと定めて、それに見合った改造を施すことにして、更に残り4つの両手両脚に変形するゴーカイマシンを新たに作ることにしました。
これらの作業はナビィにもバレないように極秘で行わねばなりませんでした。幸いナビィは船室と操舵室しか出入りしていなかったので、アカレッドは船内の居住スペースと操舵室以外の広大なエリアに全部結界を張って入ってこれないようにして、主にその結界内でガレオンの改造や他のゴーカイマシンの建造などの作業を行うことにしました。この巨大戦力の準備作業はさすがにそう簡単に終わるような作業ではなく、アカレッドはゴーカイジャーのレンジャーキーが完成する頃までには巨大戦力の作業も完了するというぐらいを目標にコソコソと作業を続けていくことにしました。

0124.jpgこのゴーカイジャーのメンバーが乗るゴーカイマシンですが、アカレッドは海賊たちがゴーカイジャーとして覚醒して変身出来るようになるまではその存在は秘密にしておくことにしました。ただ、ゴーカイガレオンだけは現時点でも既に「赤き海賊団」の居住艦ですから、その存在は秘密というわけではない。
ゴーカイガレオンはいずれ海賊たちがゴーカイジャーとして覚醒すればゴーカイジャーのメインの居住艦となるのですから5人の海賊の中でリーダー、つまり船長に相応しいとアカレッドが認めた者に操縦させると決め、当然スーパー戦隊におけるリーダーとはレッド戦士ですから、ゴーカイガレオンの操縦者はゴーカイレッドということになります。いずれアカレッドは時期を見て5人の海賊の中でリーダーと認めた者にゴーカイレッドのレンジャーキーとモバイレーツを渡し、そして残る4人にはそれぞれゴーカイブルー、ゴーカイイエロー、ゴーカイグリーン、ゴーカイピンクのレンジャーキーをモバイレーツと共に渡すこととしました。
そしてゴーカイガレオンの船内の結界内に隠された4つのゴーカイマシンのボディカラーはそれぞれブルー、イエロー、グリーン、ピンクとし、それぞれゴーカイブルー、ゴーカイイエロー、ゴーカイグリーン、ゴーカイピンクの乗機としました。その上でアカレッドはいずれレンジャーキーと共に海賊たちに渡す分のモバイレーツに細工をしておきました。
例えばモバイレーツがゴーカイブルーのレンジャーキーを挿し込まれてその中のゴーカイジャーの「大いなる力」を出力して実体化し、モバイレーツの持ち主である海賊をゴーカイブルーに初めて変身させた後、モバイレーツから特別な信号を発してゴーカイガレオン内のブルーのゴーカイマシンを隠している結界を解除するようにして、同時にモバイレーツの音声案内でそのゴーカイブルーとなった海賊をブルーのゴーカイマシンの隠し場所へ誘導するという仕掛けです。アカレッドはこれと同様の仕掛けをイエロー、グリーン、ピンクの場合の分も同様に仕込んでおきました。これで海賊たちはゴーカイジャーへの変身能力を獲得すると同時に自分の操縦するゴーカイマシンも手に入れることになります。

0135.jpgそして更に、アカレッドは海賊たちが5機のゴーカイマシンを全て手に入れ、この5機を同時に全部発進させた時に合体機構が立ち上がり、巨大ロボへの合体が可能となるようにし、この5体合体の巨大ロボの名を「ゴーカイオー」と命名しました。そしてゴーカイオーへの合体に最初に成功した時、その集合コクピットの5人の操縦席にゴーカイシリンダーの鍵穴がせり出して姿を現すようにもアカレッドは仕掛けをしておきました。
このコクピットのゴーカイシリンダーは機能的にはゴーカイサーベルやゴーカイガンに取り付けたゴーカイシリンダーと同じであり、武器にレンジャーキーのエネルギーを加えて、より強力な攻撃力を発揮するための装置といえます。この場合の「武器」は巨大ロボであるゴーカイオーなのであり、レンジャーキーのパワーでゴーカイオーに強大な攻撃力を発揮させるためのゴーカイシリンダーといえます。つまり、5人がこのコクピットのゴーカイシリンダーにゴーカイジャーのレンジャーキーを挿し込むことによって、ゴーカイオーからゴーカイジャーの「大いなる力」が強大な攻撃力となって発現するというわけです。

それがどんな形で発現するのかは、実はアカレッドにはよく分かりません。それは実際にゴーカイジャーの5人が揃ってゴーカイオーを動かしてコクピットにレンジャーキーを挿してみないことには分からないのです。
ただ「大いなる力」によって何かが生成されることは間違いない。例えばゴーカイサーベルにレンジャーキーを挿せばエネルギー体の斬撃波が生成されるであろうことや、ゴーカイガンにレンジャーキーを挿せばエネルギー弾が生成されるであろうことは想像はついていました。だからゴーカイオーからもそうした類のエネルギーが発射されるのかもしれないし、あるいは何か強力な武器が実体化して生成されるのかもしれない。そのあたりハッキリしたことが分からないので、アカレッドはとにかく何らかのエネルギーや物質を生成するための空間だけを用意しておくことにしました。
0136.jpgすなわち、ゴーカイオーの胴体と両腕両脚を構成する5機のゴーカイマシンに大きいハッチを設けておき、ゴーカイオーに合体した際にそれらのハッチがゴーカイオーの胸部と両腕両脚前部の5か所にくるようにしておいたのです。そしてゴーカイオーの集合コクピットでレンジャーキーを挿すと、それらのハッチ内部に空洞状の亜空間が発生して、そこでレンジャーキーから引き出された「大いなる力」によって何かが生成され、ハッチの蓋を開けて飛び出してくるという仕掛けとしたのでした。

そして、この仕掛けにおいては、ゴーカイジャーのレンジャーキーだけではなく、もちろん他の34戦隊のレンジャーキーでも同じようなことが出来るはずであり、様々な戦隊のレンジャーキーをコクピットに挿すことによって、ゴーカイオーのハッチ内で様々な戦隊の「大いなる力」によってそれぞれ特色のある武器やエネルギーが生成されるはずでした。おそらくそのように歴代戦隊の「大いなる力」を使う場合は、ゴーカイオーのハッチから飛び出してくるものは各戦隊の巨大戦力に関連したものである可能性が高いように予測できました。
但し、巨大なゴーカイオーの更なる強大な力となるほどのエネルギーないしは武器を生成するとなると、かなりの量の「大いなる力」が必要であり、おそらく現在宇宙に散らばっているレンジャーキーを回収したとしても、そのままでは本来の半分しか「大いなる力」が無い状態ですから、ゴーカイオーのコクピットに挿しても無反応でしょう。ゴーカイオーを介して各戦隊の「大いなる力」を発現することが出来るようになるのは、地球に戻って各戦隊の戦士たちから残り半分の「大いなる力」を譲ってもらって以降のことになるでしょう。
そうなると当面ゴーカイオーで使えるのはゴーカイジャーのレンジャーキーだけということになりますが、それにしたところで最初から海賊たちがゴーカイジャーのレンジャーキーの中の「大いなる力」をそんなに多く引き出せるというわけでもないでしょうから、すぐにこの機能を使える可能性は低いとは思えました。ただ、それでもゴーカイジャーが覚醒した後しばらくすればこのコクピットのゴーカイシリンダーも使えるようになるでしょうから、とにかくゴーカイオー初合体成功時にゴーカイシリンダーは露出させることにするとアカレッドは決めました。

それらの方針をあらかじめ決定して、アカレッドはレンジャーキー探しの旅のかたわら、1人で秘かにゴーカイマシンの製造やゴーカイジャーのレンジャーキーの生成の作業に励んでいったのでした。
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 21:12 | Comment(0) | 海賊戦隊ゴーカイジャー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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