2011年09月27日

第28話「翼は永遠に」感想その1

今回はレジェンド回、しかもジェットマン篇です。
レジェンド回を成立させる難しさは当然、昔の戦隊ほど高くなります。
「鳥人戦隊ジェットマン」はスーパー戦隊シリーズ第15作、1991年度の作品ですから、今から20年前の作品です。
「ゴーカイジャー」におけるレジェンド回のここまでで最古の作品のものはカーレンジャー篇で、
これは15年前の作品でしたが、今回は遂に20年前の大台に乗り、最古レジェンド回記録を大幅に更新しました。
これだけ古いとレジェンドゲストをお招きするのも難しくなりますし、
来ていただいたとしても、過去作品ファン、現在作品ファンともに満足してもらえるような出来にすることは
難しくなってきます。
それはレジェンドゲストの加齢に伴う容貌の変化という面もありますが、
基本的に「ゴーカイジャー」という物語の構成上の問題もあります。

「ゴーカイジャー」は「仮面ライダーディケイド」の反省点をふまえて作られているのは明白で、
当初はどういう構想だったかは不明ですが結果的には単なるお祭り企画で
主人公自身の物語が薄弱になってしまった「ディケイド」とは違い、
あくまで主人公であるゴーカイジャーの物語をしっかり描くことが主眼となっています。
ゆえにレジェンドゲスト達の扱いは軽く、
ゴーカイジャーの物語のそのエピソード時点でのテーマと、そのレジェンド戦隊のテーマを上手く重ねて、
ゴーカイジャーの物語上の各段階のイベントに「必要不可欠なゲスト」として、
それぞれのレジェンドゲストを登場させるという手法をとっています。

では、ゴーカイジャーの物語とはどういう物語なのかというと、
「ザンギャックという悪の帝国との戦い」というのがもちろんメインなのですが、
レジェンドゲスト達は基本的に変身能力を失っていて自分自身はザンギャックと直接戦いませんから、
「戦い」という部分ではゴーカイジャーと上手く絡ませられません。
では他にゴーカイジャーにはどういう物語があるのかというと「宇宙最大のお宝を探す」という要素があります。
しかし、これについてはおそらく終盤まで謎のままにするようですから、レジェンドゲストが絡むのは難しく、
そもそもレジェンド戦隊と「宝探し」という要素はボウケンジャー以外はほとんど接点はありません。

そうなるとゴーカイジャーの物語で残るのは「海賊が正義のヒーローになっていく物語」という要素です。
この物語にレジェンドゲスト達は絡んでいくのですが、
そうなると、そのレジェンド回ごとのゴーカイジャーにとっての
「ヒーローになっていく」ために必要な要素にレジェンドゲストが絡んでいくことになります。
そのためにはレジェンドゲストにもその同じ「ヒーローになっていく」要素が無ければいけません。
つまり、レジェンドゲストは「ヒーローになっていく」ためには何が必要なのか知っていないといけない。
それを知っているからこそ、ゴーカイジャーがその要素を持っていることを発見して、
ゴーカイジャーを「ヒーローになりつつある者」として認めることが出来るのです。

となると、ゴーカイジャーの「ヒーローになっていく物語」に絡むレジェンドゲストは、
彼ら自身が「ヒーローになっていく物語」が特徴的に描かれた作品から登場した方が良い。
もちろん、歴代の戦隊は全部、戦いの中でヒーローになっていったのですから、
厳密に言えば、全ての作品が「戦隊メンバーがヒーローになっていく物語」だったとは言えます。
しかし、ゴーカイジャーのヒーローとして成長して獲得していく要素は毎回違っているわけですから、
そこに絡めるためには、それぞれのレジェンドゲストの所属戦隊の「ヒーローになっていく物語」は
特徴が明確に別々なものとして描かれていないといけません。

そのように考えた場合、メガレンジャー以降の戦隊では
「ヒーローになっていく物語」がそれぞれ明確な特徴をもって描き分けられているのに対して、
カーレンジャー以前の戦隊では
「ヒーローになっていく物語」があまり明確な違いをもって描かれていない印象があります。
それゆえ、カーレンジャー以前の作品のレジェンド回は
ゴーカイジャーの「ヒーローになっていく物語」に絡ませにくい。
ゆえに作りにくいだろうと思っていました。

実際、カーレンジャー篇は一応ありましたが、かなり変則的なレジェンド回であり、
あそこではゴーカイジャーの成長やヒーローの資質に関する物語は全く描かれていませんでした。
ひたすらカーレンジャー風のドタバタコメディ篇として最高の出来だったのですが、
あれはつまり「ゴーカイジャーの物語はありません」状態であり「ディケイド」と同じです。
カーレンジャー篇はあれはあれで面白いし、「ディケイド」風のお祭り作品もそれはそれで面白いのですが、
ああいうカーレンジャー篇のような過去作品世界観重視型のレジェンド回ばかりになれば、
「ディケイド」との差別化を図って作られた「ゴーカイジャー」という作品の
目指していたものとは違うものになってしまうでしょう。

ですから、カーレンジャーよりも前の作品のレジェンド回はなかなか作るのは難しいだろうと思っていたのですが、
今回ジェットマン篇が作られ、見てみた結果、ジェットマンは例外であったことに改めて気付かされました。
ジェットマンはカーレンジャー以前の戦隊の中では異色なほど、
戦隊メンバーが「ヒーローになっていく物語」が濃厚に、しかもかなり特異な形で描かれており、
「ゴーカイジャー」のレジェンド回に使いやすい戦隊であったのです。

というか、ジェットマンこそが実は「ヒーローになっていく物語」の面では、
最もゴーカイジャーとよく似た戦隊であるとも言えます。
何故ならジェットマンのメンバーはその大部分が「本来は地球を守って戦う義理など全く無い者達であったが、
ひょんなことから地球を守って戦うようになっていく」という意味で、
歴代戦隊の中でもゴーカイジャーに近い立場なのです。

単に「一般人が急に戦う羽目になる戦隊」というのは他にもありますが、
それらの多くは何らかの運命的な要素があります。
デンジ星人の末裔であったり、強いダイノガッツの持ち主であったりというような
「彼らにしかない戦士の資格たる特殊因子によって選ばれた」という理屈で
自分を納得させることの出来る戦隊が殆どです。

そう考えると、「もともと何ら戦士の資格たる特殊因子を持っていない生粋の一般人が戦う羽目になった戦隊」は、
ジェットマン(天堂竜以外)、メガレンジャー、ゴーオンジャーの3つだけです。
このうちゴーオンジャーはもともと彼らの持っていた熱い正義の心が炎神と共鳴したという、
特殊因子ではないが戦士の資格のようなものは持っており、それで選ばれており、
何より本人たちが最初からノリノリなのでゴーカイジャーとは全く違う。むしろ真逆といえます。

よって、「地球を守って戦う義理も資格も無いのに本人たちが望まない事故のような形で戦士になる羽目になった」
のはジェットマンとメガレンジャーだけです。
この2つの戦隊だけが「本来は自分たちが地球を守るために戦う義理など無い」という意識を持ち続けて戦い、
そしていつしか意識が変わっていったという意味で、ゴーカイジャーとよく似た戦隊なのです。

つまり、ジェットマンとメガレンジャーは「ヒーローの自意識の無い者がヒーローになっていく」という、
ゴーカイジャーと最もよく似た物語構造を持った戦隊であったのです。
ただ、メガレンジャーの場合、ヒーローへと変わっていく前の彼らが
高校生という、ある意味まっさらな状態であり、
「宇宙海賊」という確固としたポリシーを持ったアウトロー集団がヒーローへと変貌していく
ゴーカイジャーの物語とは、やや趣が異なっています。

そして、それはジェットマンの一般人4人においても実はそう大差は無く、
農業青年、女子高生、ヒマなお嬢様など、4人のうち3人は
メガレンジャーのメンバーとそう大差ない呑気そうな連中ばかりです。
何か自分なりの譲れない「非ヒーロー的な」ポリシーを持っていたアウトロー型一般人が
ひょんなことからヒーローへと変貌していくという、ゴーカイジャーと同じ物語構造を内包した人物は、
ジェットマンの中では、ブラックコンドルこと結城凱しかいません。
言い換えれば、結城凱がいるからこそ、
メガレンジャーとは明確に違うジェットマン独自のカラーが生まれているのであり、
ジェットマンが歴代で最もゴーカイジャーに近い物語構造を持つ戦隊となっているのです。

だからジェットマン篇のレジェンド回が作られない方がおかしいと言うべきで、
そして、その場合、レジェンドゲストはブラックコンドルこと結城凱でなければならない。
結城凱こそがジェットマンにおける「ヒーローになっていく物語」の中心人物2人のうちの1人であり、
そして「地球を守って戦う義理を感じないアウトローが地球を守るヒーローへと変わっていく」という意味で、
宇宙海賊であるマーベラス一味と最もよく似た心性を持った人物なのです。

しかし、「ゴーカイジャー」のレジェンド回としてジェットマン篇が不可欠としても、
そのジェットマン篇のレジェンドゲストは結城凱でなければならないからこそ、
ジェットマン篇は非常に実現困難になります。
結城凱は「ジェットマン」最終回においてチンピラに刺されて「生死不明」になっているからです。

いや、あの演出は明らかに「死んだ」ということを示唆しているのですが、
あえてそれを結論として明示せず曖昧なまま、
それをラストシーンとして物語を完結させていることが問題なのです。
それはつまり、結城凱が「死んだかどうか分からない」ということをもって
「ジェットマン」という物語が完結しているということであって、
そうなると、そこの部分を弄ることが出来なくなってくるわけです。

例えばそれぞれ本編の劇中で明らかに「死んだ」とされた
アバレキラー仲代壬琴やタイムファイヤー滝沢直人などは、
「ゴーカイジャー」の物語の都合で生き返らせたり幽霊にしたりは出来ます。
本編の物語の中での彼らは結論が出た存在なので、
その結論をふまえて「ゴーカイジャー」で新たな解釈を施しても、
本編の結論をふまえている以上は問題は生じません。

しかし死んだかどうか分からない結城凱を勝手な解釈で生き返らせたり幽霊にしたり出来ません。
もちろん勝手に「実は生きていた」とすることも出来ません。
「ジェットマン」という作品を尊重するならば、そのような無礼なことは出来るわけがなく、
「ゴーカイジャー」という作品がスーパー戦隊シリーズ35作記念する特殊な作品として、
過去34作品をリスペクトすることを前提にして成り立っている以上、
「ゴーカイジャー」という作品において「ジェットマン」という作品を尊重しないということは有り得ません。
だから「ゴーカイジャー」に結城凱は登場させることは出来ない。
しかしジェットマン篇のレジェンドゲストは結城凱しか有り得ない。
そうなるとジェットマン篇を作ることは不可能ということになります。

カーレンジャー篇を作る時、宇都宮Pが
「スーパー戦隊シリーズには下手に手を出すと大怪我する作品が幾つかある」と言い、
その1つがカーレンジャーと言っていました。
カーレンジャーの場合はあまりに特殊なギャグワールドであるゆえだったのですが、
宇都宮Pは他にもいくつかそうした危険な作品があると言っており、その作品名は明示しませんでしたが、
ジェットマンがその中に含まれるであろうことはほぼ間違いないというのは
戦隊ファンなら誰でも想像がついたことでしょう。
そして、その理由はこの結城凱の扱いの難しさに尽きるということも意見の一致するところでしょう。

実際、この「ゴーカイジャー」の第1話冒頭のレジェンド大戦のシーンに
ブラックコンドルを登場させるかどうかで宇都宮Pとメインライター荒川氏が大揉めしたとのことですから、
結城凱問題は両氏も当然、当初から認識していたようです。

宇都宮Pの立場としてはブラックコンドルをレジェンド大戦に登場させないなど有り得ないことだったのでしょう。
何故なら本編劇中で死んだ設定になっている戦士のレンジャーキーを登場させないとなると
ゴーカイジャーの多段変身描写の足枷になるし、
バンダイ発売のレンジャーキー玩具もそんな歯抜け状態でラインアップも組めないのですから、
本編劇中で死んだ戦士もレンジャーキーは存在することにしないといけない。
となると、レジェンド大戦でレンジャーキーが生まれたという設定にする以上、
レジェンド大戦の場に本編劇中で死んだ戦士たちもいなければいけない。
その中には当然ブラックコンドルもいなければいけないのです。
スポンサーの期待に応えるべきプロデューサーの立場としてはそれが当然の判断でしょう。

もちろんレジェンド大戦のシーンであえてジェットマンを映さないという逃げ方も出来たでしょうけど、
どうせ後でゴーカイジャーがジェットマンに豪快チェンジする場面があるのですから、
その時にブラックコンドルがレジェンド大戦の場に居たということは視聴者にバレてしまいます。
だから最初から逃げずにブラックコンドルもアバレキラーもドラゴンレンジャーも
堂々と第1話レジェンド大戦シーンで登場させたのです。

しかし物語の整合性を第一に考えるライターの立場からすれば、
アバレキラーやドラゴンレンジャーの復活は許容出来ても、
ブラックコンドルの復活は許容出来なかったのでしょう。
特に荒川氏は自身が「ジェットマン」のサブライターとして作品に関わってますから、
「ジェットマン」が結城凱の生死を曖昧にすることで完結しているということを承知しており、
結城凱のああいう曖昧な終わり方を尊重するのが
「ジェットマン」関係者の当然の務めと思っておられたのでしょう。
だから復活させることも幽霊にすることも生きていたということにすることも出来ない。
よって登場させることは出来ない。そういうわけで宇都宮Pと荒川氏は衝突したのだと思います。

ただ、レジェンド大戦のシーンには確かにブラックコンドルは登場していますが、結城凱は登場していません。
だから、あのレジェンド大戦のシーンのブラックコンドルは結城凱ではないという逃げ方はまだ出来ます。
別人であるとか、あるいはアカレッド的な「スーパー戦隊を愛する者の意思で生み出された存在」としての
ブラックコンドルという戦士の結晶体のようなものとか、そういう解釈は出来ます。
だから荒川氏は折れたのだと思います。

しかし、宇都宮氏は結城凱問題が存在することを承知でジェットマン篇をやろうとしました。
それはゴーカイジャーの物語の流れの中での必然性によるものでしょう。
しかし当然、荒川氏は大反対だったようです。
ジェットマン篇となれば結城凱を出さないといけない。
もし結城凱を出さないとしても、レジェンドゲストが誰か出た場合、
結城凱の問題について何らかの結論を示さないわけにはいかないでしょう。
それは「ジェットマン」のあの曖昧なまま成立している結末を否定することになりますから、
「ジェットマン」に関与した者として、それは出来ないということだったのでしょう。

そうなると、「ジェットマン」の結末を書き換えることが唯一可能な人物に頼むしかない。
そういうわけで、「ジェットマン」のメインライターにして、あの問題の最終回の脚本を書いた張本人、
井上敏樹氏に今回のジェットマン篇を書いてもらうことになったわけです。
そして井上氏は当然のごとく、ジェットマン篇のレジェンドゲストを結城凱とし、
本編のオリジナル役者の若松俊秀氏に直接出演をオファーされたようです。
こうしてカーレンジャー篇と同じく、オリジナルのコンビによって
取扱い注意戦隊のレジェンド回が作られることとなったのでした。

そうして、このジェットマン篇は、ジェットマンのその後を描いた真の完結編のようになっています。
ジェットマン的要素が散りばめられていますが、これはもうオマージュなどというレベルではなく、
新たに書き起こされた完結篇といっていいでしょう。
そうしたジェットマンの新たな完結篇でありながら、
同時にマーベラスの成長を描いたゴーカイジャーの物語の一篇となっています。

ただ、「ジェットマン」という作品がああいう曖昧な終わり方をした以上、
結城凱を出しても出さなくても、どっちにしてもジェットマン篇を作る以上は、
ジェットマンのあの最終回のその後の続編、真のジェットマンの完結篇のような要素が入るのは
避けられないことです。
そういう意味でジェットマン完結篇のように見えているだけであり、
今回のエピソードはジェットマン完結篇を描きたくて作られたわけではない。
あくまで本来メインストーリーとして描かれているのは、マーベラスの成長物語の方です。
その成長物語に不可欠のレジェンドゲストとしてジェットマンの結城凱が登場しているという、
レジェンド回の基本構図は他のレジェンド回と変わりありません。

ただ今回、今までの「ゴーカイジャー」におけるレジェンド回と異質に見えるのは、
レジェンドゲストの結城凱が完全に先輩目線でマーベラスを目下に見て罵倒しまくり、
マーベラスの方もやたら弱さを見せて言われっぱなし、やられっぱなしで、
結局、先輩の結城凱に後輩のマーベラスが教えを受けて成長するような形になっていることです。

これまでは、あの前々回のレジェンドが変身までしたハリケンジャー篇ですら、
ゴーカイジャー側とレジェンド側の関係は対等になるよう細心の配慮がなされていましたが、
今回は完全にレジェンド側の方が格上という印象となったようにも見えます。
これは「ゴーカイジャー」という歴代34戦隊と絡む戦隊の企画が決定した時から危惧されてきたことで、
ゴーカイジャーがレジェンドに貫録負けして食われてしまうのではないかという心配が、
遂にここで現実化してしまったようにも見えます。
一見、ゲストライターの井上氏がやらかしてしまったようにも見えます。が、それは違います。

確かに20年もの月日の重みはありますから、結城凱とマーベラスを並べた場合、
マーベラスがやや貫録負けしてしまうのは仕方ないともいえます。
しかし、案外、ジェットマンや結城凱の方が格上であるとか、
ゴーカイジャーやマーベラスの方が食われたとか、そういう印象はありません。
このあたりは実に巧く構成されており、決してゴーカイジャーの格が下がるようにはなっていないのです。

むしろ、20年も先輩の戦隊に対して、変に突っ張って優位に立とうとする方が
小物感を漂わせるうすら寒い行為なのであって、
一定のリスペクトを示すぐらいの方がゴーカイジャーの格を上げるといえます。

そして結城凱がマーベラスを罵倒しまくるというのも、結城凱だから全く不自然でない行為なのです。
結城凱だからこそ、いくら相手を罵倒しても、先輩風を吹かせているようには見えないのです。
何故なら結城凱はもともとどんな目上の相手でも気に入らないことがあれば平気で罵倒するキャラだからです。
先輩の立場に立ったから後輩に偉そうにするというタイプではない。
むしろ目上か対等の相手にこそ本気で向かっていき罵倒し戦おうとする男です。
だから結城凱ならば、どんなにマーベラスを罵倒してぶん殴っても、
先輩が後輩を指導しているような構図には見えず、
それでいて熱い男と男のぶつかり合いのように見えるという利点があるのです。

また、常に結城凱がマーベラスを手玉に取ってあしらうような行動をとるのも、
普通ならば圧倒的な実力差を示してゴーカイジャーの株を下げる危険のある描写なのですが、
結城凱というキャラの存在の不自然さによって、
マーベラスがとことん結城凱に手玉に取られるのも仕方ないように見えて、
決してマーベラスの株は下がっていません。
むしろ、結城凱が不自然な存在感でわざわざアプローチしてくる相手として選ばれた
マーベラスの方が特別な存在のようにっ見えてきて、株は上がっていると言っていいでしょう。

そして今回、マーベラスが初めて露骨に見せる弱さの描写が衝撃的です。
この弱いマーベラスが結城凱のおかげで立ち直り成長するわけですから、
これはもう完全にゴーカイジャーを下げて、結城凱を上げる描写であるように見えます。
しかし、これも実態は違います。
それは今回がジェットマン篇であり、レジェンドゲストが結城凱であることを考えれば明瞭に分かることです。

ジェットマンというのは、もともと戦士の資質の無い連中が事故の結果、戦う羽目に追い込まれた連中ですから、
ハッキリ言って弱く、しかも敵は歴代でも最強クラスの敵でした。
敵組織のバイラムが幹部同士で足を引っ張り合ってくれたので序盤は助かっていたようなものです。
とにかくジェットマンは弱く、特にその身体能力や戦闘力というよりも、やたらとメンタルの弱い戦隊でした。
だからこそ、ジェットマンの特徴は、
その己の弱さを自覚して、それを乗り越えて強くなった戦士たちという点でした。

弱さをまず自覚したからこそ、それを乗り越えることが出来たのです。
弱さを自覚しなければ乗り越えることは出来なかった。つまり強くはなれなかったのです。
つまり弱さを自覚しないことは強さには繋がらない。
自分の弱さを知らない人間は強いのか?というと、答えは否です。
自分の弱さを知らない人間はずっと弱いままです。
では、どうすれば人間は自分の弱さを知ることが出来るのかというと、それは強くなろうと思うことです。
強くなりたいと思った時、初めて人間は自分の弱さを知り、打ちのめされます。
それが弱さを自覚するということであり、そこから初めて人は強くなることが出来るのです。

結城凱も街の遊び人で酒と女と喧嘩三昧の生活を送っていた時は、
自分ほど上手に楽しく生きている強い人間はいないと思い上がっていました。
これは結局、自分の弱さを知らないだけの状態だったのです。
ところが事故によってジェットマンとなって地球防衛のために強大な敵と戦うことになり、
最初は退屈しのぎの喧嘩の延長線上のような意識で戦い始めましたが、
バイラムへの怒りや、仲間との絆、そして天堂竜というライバルの地球を守る戦士としての強い使命感を見るうちに、
自分も強くなりたいと思った、というか、強い竜への嫉妬の塊となって拗ねまくった結城凱は
初めて退屈しのぎの腕自慢でしか戦えない自分の弱さを自覚したのでした。
そして結城凱はその弱さを乗り越えて強くなり、真の地球を守る戦士となったのです。

その結城凱が今回マーベラスの前に現れて、マーベラスの弱さを指摘し、それを克服するよう促すというのは、
つまりマーベラスの今回突然生じた弱さというのは、
結城凱のかつて自覚した弱さと同じものだということを意味します。
言い換えれば、マーベラスは今回、強くなろうとした結果、
突然今まで感じることのなかった(長い間忘れていた)弱さを自覚することになったのです。
だからマーベラスは単に弱いわけではない。
むしろ今までよりも1ステージ上がったゆえに弱さを自覚することが出来たのだといえます。

それは要するに、前々回のハリケンジャー篇でマーベラス達が
地球を守る戦いに踏み出そうと決意したことに関係しています。
その戦いは今までのマーベラス達には無い、新たな強さを必要とする茨の道です。
そこに踏み込んだことでマーベラス達は今まで盤石と思い込んでいた自分達の強さが、
実は盤石ではないということを無意識的に感じます。
そこで強さの自信が揺らぎ、その「強い自分」という自覚で今まで押さえ込んでいた恐怖の記憶に
マーベラスが囚われてしまうというのが今回のお話です。

ですから、今回のマーベラスは一見情けないように見えますが、
これは実は少し強くなりつつある状態なのだといえます。
真の強さへの1つの段階として、一時的に弱さを自覚して迷う時期なのです。
その段階にマーベラスがあることを知ってか知らずか、
とにかく、かつてそういう類の弱さを克服して真の強さを獲得した戦士の典型である結城凱が
手厳しいアドバイスに現れるというのが今回のエピソードの構成で、
これは決してマーベラスを貶めるような話ではなく、
むしろ弱さを自覚したことで甦ってしまった強烈なトラウマは
普通の人間ならば押し潰されてしまうものなのですが、
それを克服することでマーベラスの強さを描いたエピソードなのです。

なお、今回そのマーベラスのトラウマを刻み込んだ強敵として登場するキアイドーという怪人は、
退屈しのぎに殺し屋稼業をやる怪人であり、
これはかつて退屈しのぎにジェットマンとなった頃の結城凱を彷彿させるキャラであり、
つまり「乗り越えるべき弱さの象徴」のような存在といえます。

いや、もっと厳密に言えば、「己の弱さを知らず、偽りの強さに固執する存在」といえるでしょう。
それはかつて結城凱がそうであったし、
マーベラスも単なる命知らずの腕自慢、自分の強さを高めることが全てという感覚で戦っていた頃は
キアイドーと同じタイプの戦士でした。
だから、その同じ土俵で格上のキアイドーに心理的に位負けしていたのです。
ゆえに、そうではない真の強さを知ることによって、結城凱はかつてキアイドーのレベルは乗り越えており、
今回はマーベラスが真の強さを知ることでキアイドーを乗り越えるという構成になっているわけです。
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 23:17 | Comment(3) | 第28話「翼は永遠に」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年09月29日

第28話「翼は永遠に」感想その2

では本編・・・に入る前に、今回は久しぶりにアバン前のスーパーヒーロータイムのミニコーナー復活です。
前回8月28日放送分で8時からの「仮面ライダーオーズ」が完結し、
今回の9月4日放送分から新番組「仮面ライダーフォーゼ」が始まるため、その宣伝強化のためと思われます。

宇宙空間に浮かぶゴーカイガレオンの前面マストの旗に
天ノ川学園高校の仮面ライダー部の旗が降ろされて掲げられ、
ガレオンの甲板に立つゴーカイジャー達の前に宇宙空間を突っ切って
仮面ライダーフォーゼが飛んできてアップになります。
共に「宇宙」に関係する2作品を上手くリンクさせてます。

ここでの「スーパーヒーロータイム!」というタイトルコールは、
ゴーカイジャー&オーズ時期のタトバコンボ風のボイスではなく、普通に発声されるバージョンになっており、
声は「ゴーカイジャー」のナレーション担当の関智一氏と
「フォーゼ」のナレーション担当の檜山修之が一緒に発声しています。
ちなみに檜山氏は「ゴーカイジャー」第8話でスニークブラザースの弟ヤンガー役で声の出演をしていますね。

そして、ゴーカイレッドがサーベルで画面を斬り裂いて画面転換、
まず今回の「ゴーカイジャー」の超ダイジェストをナビィの傍らで流しつつ、
檜山氏が「ゴーカイジャー!スイッチオン!」とフォーゼ風にゴーカイジャーのタイトルを言い、
続いて今回の「フォーゼ」の超ダイジェストをフードロイドの傍らで流しつつ、
関氏が「カ〜メンラダァ!フォ〜ゼ!」とゴーカイジャー風にフォーゼのタイトルを言って
互いにエールを交換します。

最後はゴーカイレッドとフォーゼが、「フォーゼ」劇中での特殊な握手「フォーゼ握手」をして、
マーベラス役の小澤亮太の声が「派手に!」、如月弦太郎役の福士蒼汰の声が「キター!」と叫び、
マーベラスとフォーゼが決めポーズで締めます。
毎度のことながらスーパーヒーロータイムコーナーは上手くまとまってますが、
それにしても「仮面ライダーフォーゼ」、第1話かなり面白かったです。

さて、ここから「ゴーカイジャー」第28話の本編ですが、
まず冒頭は、いつものようにガレオンの船室から始まるわけではなく、
そもそもゴーカイジャーもザンギャックの面々も登場しません。

いきなり薄暗いアダルトな雰囲気のクラブバーで、
シックな白いドレスを着た美女がカウンターで男とポーカーをしています。
朝の子供番組とは思えないオープニングです。
カウンター内に誰もいないことや、美女の服装がどう見ても水商売風であることから、
このクラブのママが常連客と戯れているシーンと目されます。

「フルハウス・・・あたしの勝ちね・・・」とママはやたら色気のある微笑を浮かべてカードを場に開き、
勝ち誇りますが、背中向けに映る相手の白いスーツを着た男は全く動じた様子は無く
「・・・悪いな・・・ストレートフラッシュだ・・・!」と、カウンターの上に手持ちのカードを開きます。
すると確かにスペードの7〜11のストレートフラッシュでした。
ママは一瞬驚いた表情をしますが、負けを認めたのか、溜息をついて微笑します。

「この勝負に勝ったら何でも言うことを聞く・・・そういう約束だったな?」と男は言い、
美人ママは「・・・何をしてほしいのかしら?」と、男の手を掴みます。
これはもう絶対にエッチなことを要求するはず・・・そういう流れに見えましたが、
白スーツの男はママの手を軽く振りほどき、ここで顔が映ります。
そしてカウンターに出された自分のグラスを手に取ってウイスキーのような酒をグイッと呑むと
「・・・ここの酒は不味い・・・もっと美味い酒が呑みたいもんだ・・・」と遠い目をして言います。

店の酒を「不味い」とハッキリ言ってしまうとは、えらく失礼な発言ですが、
つまり美人ママとのポーカー勝負に勝ったこの男は勝利の報酬として、
この店以外の美味しいお酒を呑みたいようで、それがこの男の望みであるようです。
つまり、ママを酒屋に走らせるつもりなのか?

・・・そもそも、なんでこんなアダルトなシーンが冒頭にくるのか?
もしかして「ゴーカイジャー」とは違うのか?などと思わせますが、
ここで急に画面がアカレンジャー他レジェンド戦士の面々が立ち並ぶ、
いつものレジェンド回バージョンの「ゴーカイジャー」OP映像に切り替わり、
「地球の平和と人々の笑顔を守り続けてきた〜」のレジェンド回バージョンの
OPナレーションが流れてきますから、「ゴーカイジャー」であることは分かります。

しかもレジェンド回ですから、冒頭の人物はレジェンドゲストということになり、
よく考えればあの白いスーツの男は「鳥人戦隊ジェットマン」のブラックコンドル、結城凱です。
そういえば、カウンター越しに奥の方に見えていたプレートには
「Golden Gate」という店名が電光掲示で浮かび上がっていましたが、
「Golden Gate」は結城凱の行きつけのクラブです。

つまり、冒頭のシーンは結城凱が行きつけのクラブで美人ママ相手に、
ちょっとした戯れの賭けポーカーの勝負をしている場面ということで、相変わらずの遊び人っぷりです。
演じているのはもちろんオリジナル役者の若松俊秀氏で、
「ジェットマン」放映時の20年前は結城凱も若松氏も共に25歳でしたので、
現時点では結城凱も若松氏も45歳ということになります。
まぁ劇中設定では実はレジェンド大戦後の数年のインターバルがあるので結城凱は48歳ぐらいかもしれませんが。

ともかく若松氏、若いです。
少し前に特撮雑誌のインタビュー記事で見かけた時はもっと太っていたように思うのですが、
今回の出演で結城凱を演じるために6キロ減量されたそうで、非常に精悍な感じになっています。
短期間でここまで絞り込むのはかなりハードに鍛えてきたと思うのですが、若松氏は腰が悪かったはずで、
それでここまで絞れるほどのトレーニングをするのは並大抵のことではなかったと思われ、
役者魂、いや、「ジェットマン」愛に頭が下がります。

しかし、結城凱といえば、「ジェットマン」最終回で、
バイラムの戦いから3年後、バードニックウェーブの効力も消滅した全く普通の生身の状態で、
天堂竜と鹿鳴館香の結婚式に行く途中、チンピラに腹部を刺されて、
結婚式場に辿り着いたところでベンチに座ったまま力尽きたはず。
あれでてっきり死んだと思われていましたが、
相変わらずGolden Gateに入り浸って酒を呑んでいるところを見ると、死んではいなかったようです。

そういえば「ゴーカイジャー」第1話冒頭のレジェンド大戦のシーンでも
他のジェットマンのメンバーと一緒に滑空してザンギャック軍団と戦う
ブラックコンドルの姿が映し出されていました。
あれもおそらく結城凱であり、ザンギャックの侵攻に対抗するため、
かつてのジェットマンのメンバーと共に再びバードニックウェーブをその身に浴びてジェットマンとなって戦い、
そしてレジェンド大戦の最後に、他のスーパー戦隊の戦士たち同様、
その戦う力を全て放出して変身能力を失い、今はこうして元の遊び人生活を送っているというわけなのでしょう。
しかし、この体たらくでは、ゴーカイジャーとの接点も生じなさそうですが、
いったいどうやってこの結城凱をレジェンドゲストとしたジェットマン篇を成立させるというのか?

とりあえずここはそのままOPテーマが始まり、そしてCM明け、
「翼は永遠に」という今回のサブタイトルが出ます。
「ジェットマン」という作品はサブタイトルに特に決まったフォーマットの無い作品でしたので、
サブタイトルは自由につけることが出来ます。
そこで何故「翼は永遠に」なのかというと、
「翼」というのは鳥や空を基本モチーフとした作品「ジェットマン」を象徴するフレーズであり、
今回がある意味「ジェットマン」の真の完結篇のような扱いになっているので、
「永遠に」という重い意味の含まれたフレーズが使われているという、ここの時点ではそういう印象ですが、
実はその真の意味は後で今回の劇中で、極めて具体的な形で明らかになります。

ここはとりあえず本編が再開し、冒頭の結城凱のシーンの続きは描かれず、
その翌日か数日後か分かりませんが、
いきなりゴーカイオーと豪獣神が巨大スゴーミン軍団と巨大戦をしているシーンから始まります。
このように序盤でいきなり巨大戦を見せてしまう場合というのは、
前後篇の前篇である場合や、さもなくば最後の方の戦闘が等身大戦だけで終わるということを意味しています。
今回の場合、後者なのでしょう。

今回はゴーカイオーはデカゴーカイオー、ガオゴーカイオー、そしてハリケンゴーカイオーと変形しいていき、
豪獣神と共に戦い、最後はゴーカイ無限手裏剣と豪獣トリプルドリルドリームでスゴーミン軍団を圧倒、
全滅させます。
これで後半にはおそらく巨大戦は無いわけですから、この巨大戦のやっつけっぷり、
いかにも「ジェットマン」っぽく、井上敏樹っぽいと言えます。

その惨敗を宇宙空間のギガントホースでモニターしていたワルズ・ギルは
「いやぁ〜・・・こう何度も何度も負けると・・・なんかいっそ、清々しい・・・」と、
すっかり負け癖がついて悟りを得たようになってしまってます。
「・・・それは何よりですこと!」とインサーンはバカは相手にしない主義でテキトーに流しますが、
バリゾーグは「殿下どうかお気を確かに」と何気に酷いことを言いつつ、
「・・・戦いはまだ終わってはおりません」と意外なことを言います。

これにはインサーンも不思議そうに「ん・・・?」とバリゾーグを見て、
ダマラスも「どういうことだ?」と糺します。
ザンギャック地球侵攻軍の作戦は、ダマラスが考える特殊作戦や、ワルズ・ギルが思いついて立案するもの以外の、
普通の地味な作戦はワルズ・ギルの下でバリゾーグが考えるようで、
今回はバリゾーグの立案した作戦であったようです。
それは最近いっそうザンギャックに敵対的になってきたマーベラス一味を始末するための作戦だったようですが、
あえなく失敗に終わった・・・とインサーンもダマラスも、そしてワルズ・ギルも思っていたようですが、
どうもバリゾーグはまだ何か仕掛けを打っているようなのです。

戦いが終わったと思い、マーベラス達6人も公園の中を食事の相談などして歩いていましたが、
その行く手を遮るように赤い鎧のようなボディの怪人が出現し、マーベラス一味の手配書を顔の前にかざします。
その姿を見た瞬間、マーベラスの表情は少し強張ります。
そして、その胸にあるドクロマークを抉る刀傷を見て、「・・・お前は・・・!?」と険しい表情で呟きます。
マーベラスはこの怪人を知っているようですが、
鎧以外のメンバーは全員この怪人のことを知っているようで、それぞれ異なった反応を示します。

掲げていた手配書を手から落としてその顔をハッキリと6人に見せた怪人を見て、
ハカセは「まさか・・・僕たちを狙って!?」と極度に怯えてルカの後ろに隠れ、
ルカはそのハカセに肘鉄を食らわしながら「あら・・・光栄じゃない?」と不敵に笑います。
ジョーも「俺らも一流ってわけだ」とクールに笑い、アイムは緊張した面持ちでその怪人を睨みます。
そしてマーベラスは黙ったまま激しい視線を怪人に浴びせています。
鎧だけが5人の反応を見て不思議そうに「・・・お知り合いですか・・・?」と間抜けな感じで質問するのでした。

5人の反応を見る限り、この怪人がかなりの強敵であり、
賞金首としてのマーベラス一味を狙っている者であることが分かります。
そして鎧だけが知らないということは、
マーベラス達が地球にやって来る前の宇宙の旅の時点で
この怪人と接点があったということを表しているといえます。

その怪人の正体については、再びギガントホースに場面は戻って、バリゾーグが説明してくれます。
「・・・宇宙一の賞金稼ぎ、キアイドー・・・ヤツが仕留めた賞金首の数、150・・・
その総額は1億ザギンを超えているという・・・」とバリゾーグはワルズ・ギルはじめ指令室の面々に説明します。
それに対して「なぜそんなヤツが地球に?」とインサーンが訊ねると、
バリゾーグは「海賊たちを一掃するために呼びよせました」とワルズ・ギルに説明します。

つまり、バリゾーグはマーベラス一味を倒す刺客として
キアイドーという凄腕の賞金稼ぎを地球に呼び寄せたようです。
ただ、バリゾーグ以外はそのことを把握していないということは、正規の行動隊長ではないということです。

どうもキアイドーという賞金稼ぎは生粋の一匹狼なのでしょう。
よって、ザンギャック部隊とは全く別個に独自に動いているようで、
バリゾーグは単にキアイドーを地球に呼んでマーベラス一味を倒して賞金を稼ぐよう勧めただけで、
いつどこで戦うようにとか、細かな指示や命令をする立場ではないようです。
だから、バリゾーグはバリゾーグで正規の部隊を動かしてマーベラス一味を襲い、
それに便乗してキアイドーが動くのを待っているのでしょう。

しかし、バリゾーグがそこまで気を遣い遠慮する相手、キアイドーとはそんなに凄い賞金稼ぎなのか?
150人の賞金首を倒して1億ザギンを超えるほど稼いだということは、
平均すると1人あたり70万〜80万ザギンぐらいの賞金首を倒してきたということになります。
現時点でマーベラスの賞金が500万ザギンで、別格に賞金額の低いハカセと鎧は別として、
残り3人で一番賞金の安いルカでも150万ザギンですから、
確かに倒した相手の数は多いが、マーベラス一味よりもかなり格下の連中を倒して稼いできた、
割と地味な賞金稼ぎのようにも思えます。
しかし、それでも「宇宙一の賞金稼ぎ」というのですから、少し不思議です。

バリゾーグも実際にキアイドーに会ったことはないでしょうから、腕前を確かめたわけでもないでしょう。
それなら何故、そこまでキアイドーに期待するのか?
それは、実はバリゾーグが、ある噂を耳にしたからであるようです。
バリゾーグは言葉を続けます。
「・・・何しろキアイドーは前に一度、キャプテン・マーベラスを倒したことがあるとのこと・・・」

なんと、キアイドーは以前にマーベラスと戦って倒したことがあるそうなのです。
ならば、かなりの腕前なのであろうし、
少なくともマーベラス相手に戦いの相性は良いのだろうとバリゾーグは思ったのでしょう。
そして、マーベラスの方は一度敗れた相手であるキアイドーに苦手意識があるはずだとも
バリゾーグは読んだのでしょう。
しかし、賞金稼ぎのキアイドーに倒されたマーベラスがどうして捕まらなかったのか、謎です。

場面は地上に戻り、さっきの赤い怪人と対峙するマーベラス一味。
マーベラスは目の前に現れた赤い怪人を睨みつけて、「・・・キアイドー・・・!」と呻きます。
やはり、この赤い怪人がバリゾーグの言う例のキアイドーであったようです。
バリゾーグの期待通り、マーベラス一味を倒して賞金を稼ぐために、6人の前に姿を現したようです。
宇宙で一番有名な賞金稼ぎであるようですから、
当然、その標的とされている賞金首の間でもキアイドーの顔は知られているようで、
それでジョー達もキアイドーの顔を見て、すぐに各人各様の反応をしたわけです。

しかし、マーベラスだけはキアイドーの顔がまだ手配書で隠れていた時点で
他の皆よりも一瞬早くキアイドーに気付いており、しかも胸の傷に激しく反応していました。
つまり、ジョー達はキアイドーのことは噂には聞いていたが会ったことはなく、
マーベラスだけはキアイドーに過去に会ったことがあるということです。
しかもキアイドーの胸の傷に覚えがあるということは、
バリゾーグの言うように、マーベラスは過去にキアイドーと戦ったことがあり、
あの胸の傷はマーベラスがつけた傷と想像できます。
しかし、実際はそのあたりは少し違いました。

ここでマーベラスは過去のキアイドーとの因縁を回想します。
確かにマーベラスは過去にキアイドーと戦ったことがありました。
この回想というのは、いつの時期のものであるのか明確には示されていないですが、
マーベラスの武器がゴーカイサーベルやゴーカイガンではないことから見て、
赤き海賊団に入る以前のチンピラ時代のマーベラスである可能性が高いです。
アカレッドと出会う前のマーベラスもザンギャックの倉庫を襲ったりしていましたから、
一応は賞金首だったようです。
ただ、かなり安い賞金首だったとは思われます。
そのマーベラスが賞金稼ぎのキアイドーに狙われて襲われた時の記憶です。

「・・・知っているか?・・・退屈というのは嫌な病気だ・・・薬は2つ・・・金か、戦いか!」と意味不明のことを言って、
いきなり襲い掛かってきたキアイドーに応戦するも、押され気味のマーベラスは銃を連射して反撃しますが、
キアイドーは発射された銃弾を全部掌で受け止めて防いでしまいます。
勝ち誇ったように掌から無力化した銃弾を落とすキアイドーの強さに驚くマーベラスは、
そのまま剣を弾き飛ばされて吹っ飛ばされ、尻もちをついた状態でピタッとキアイドーの剣を頬に当てられ、
すくんで動けなくなってしまいました。

剣を当てられたマーベラスの頬からは鮮血が流れ落ちますが、
マーベラスは圧倒的な実力差を感じて、動くことも出来ません。
それを見て大きく溜息をついたキアイドーは「・・・今のままでは退屈で死にそうだ!」と言うと、
剣を引いて「見ていろ!」と言い、いきなり「むん!!」と自分の胸に剣を突き立てたのでした。
するとキアイドーの胸から鮮血が噴き出します。
トリックでもなんでもなく、本当に自分の胸に剣を刺しているのです。

「なに・・・!?」と仰天するマーベラスの目の前で深々と自分の胸に剣を押し込んだキアイドーは、
致命傷にならない程度で剣を引き抜きますが、血は噴き出したままで、どう見ても重傷です。
致命傷にはならないまでも、戦いの支障になるのは明白で、重大な後遺症となる恐れもあるほどの重傷です。
いったい何を考えて戦いの最中にこんなバカなことをしているのか?とマーベラスが混乱して見ていると、
キアイドーは軽くよろめきながら歓喜の声で
「これでどうだ!?この胸の傷が俺の弱点となった!・・・ここを狙えば、勝てるかもしれんぞ・・・?」と、
マーベラスの胸倉を掴んで、戦うようにそそのかすのです。

もちろん、これぐらいのハンデがあってもマーベラスごとき相手には負けないという絶対の自信はあるようです。
ただ、余裕を見せてマーベラスをからかっているというわけでもないようです。
そんなつまらない動機にしては、やることがエグすぎますし、態度が異常なのです。
キアイドーはマーベラスを突き飛ばすと、フラフラッと傷の痛みに酔いしれたように
「・・・面白い!久々に楽しくなってきたぞぉ!!」と歓喜の叫びを上げ、陶酔すると
「さぁ!戦えぇっ!!」とマーベラスに迫るのでした。

マーベラスは既に戦意を喪失していましたから、さっさと殺せばいいようなものですが、
キアイドーはマーベラスを殺そうとはせず、何度も何度も「戦えぇっ!!」と歓喜の声で喚きながら、
まるで駄々っ子のように迫るのです。
完全に正気ではありませんでした。
マーベラスはそのキアイドーの姿を見て恐怖を感じて、
腰が抜けてガクガクと足を震わせて逃げることも出来なかったのですが、
結局、キアイドーはマーベラスを見逃して去っていったのです。

つまり、キアイドーという賞金稼ぎは、まともな賞金稼ぎではないのです。
腕は確かに抜群に立つのですが、賞金を稼ぐために戦うのではなく、
退屈しのぎに戦いのスリルを味わいたくて賞金首を襲うのです。
賞金首ならば腕の立つ相手が多いし、倒せば金も稼げるから一石二鳥というわけです。
退屈という病を癒すために「金か戦いか」というのはそういう意味です。

ただニュアンスとしては「戦い」が本当の好物のようです。そこが真に異常といえます。
戦ってみて、戦う相手として価値が無いと判断すれば、見込み無しとして殺して賞金を得る一方、
戦ってみて、戦う相手として見込みのありそうな賞金首はわざと見逃して、
何度でもその相手と戦えるようにするのです。
殺してしまったら二度とその相手とは戦えませんから、戦いのスリルを味わう機会が減ってしまう。
それではキアイドーは困るのです。
出来れば、更に腕を上げたその相手と、更にスリルに満ちた戦いをしたい。
その分、キアイドーが倒される危険も高まるわけですが、
キアイドーにとっては自分の命よりも戦いのスリルを味わうことの方が大事ですから、
見逃した敵が強大になればなるほど嬉しいのです。

完全なバトルジャンキー、異常者といえるでしょう。
こんなヤツですから、数多くの腕の立つ賞金首をこれまでに倒してきていながら、
相手が強ければ強いほど、トドメを刺さずに見逃しているのです。
そうして目ぼしい相手は何度でも襲って半殺しにして見逃す。
そういうことを繰り返して、自分の欲望を満たすための玩具のように扱う。
一方、戦う価値も無いような小物と判断すれば、
成長を待っても意味も無いのでさっさと殺して賞金を得ますが、そういう相手はたいした賞金額ではない。
だから、確かに宇宙一の腕を持つ賞金稼ぎでありながら、
「宇宙一の賞金稼ぎ」という肩書の割には賞金額の平均値が低いのです。

そのキアイドーから見れば、チンピラ時代のマーベラスなど、大した相手ではなかったはずなのですが、
キアイドーが見逃したということは
マーベラスのことをいずれスリル溢れる戦いを出来る相手になる見込みがあると見なしたということです。
しかも、自分の身体を傷つけて自分のレベルを下げてでも、
その場でマーベラスと戦ってスリルを味わいたいと思ってしまったほど、
キアイドーから見てマーベラスの潜在能力は稀に見る逸材だったのでしょう。

キアイドーの身体に他に同じような傷が無いことを見ると、
キアイドーがあのような異常な行為に走ったのはマーベラスと戦った時だけだったということになります。
もちろんマーベラス以上に腕の立つ相手はいくらでもおり、
そういう者と戦う際にはキアイドーは自分をわざと傷つけることなく
存分にスリルを味わうことが出来たのでしょうけれど、
遥かに格下でありながらその場で自分の身体を傷つけてハンデを作ってでも無理に戦いたくなるほどの
潜在能力を感じさせられたのは、マーベラスだけであったのでしょう。

ただ結局、マーベラスが完全に戦意を喪失してしまったので、キアイドーはその場は戦うことは諦め、
いずれマーベラスが成長して、存分にスリルを味あわせてくれる相手に成長するまで待つことにしたのでした。
そして今回、バリゾーグからの誘いを受け、
マーベラスがザンギャックの幹部をも恐れさせるほどの強敵に成長したと確信し、
今こそ極上のスリルを味わうチャンスと思い、地球へやって来たのでした。
だからバリゾーグは実はキアイドーを呼んだのは見込み違いなのです。
キアイドーはマーベラスを殺す気は無いのです。
ただ戦いのスリルを味わった後は、散々いたぶった挙句、また見逃す気なのです。

しかしマーベラスはどうして昔戦った時、キアイドーを見て恐怖を感じて戦意を喪失してしまったのでしょうか?
確かに圧倒的に実力差があったのは事実です。
しかし、実力差だけが問題であったのなら、
キアイドーが自分の身体を傷つけてフラフラしていた時ならば、一時的に実力差は小さくなり、
マーベラスから見てまだ付け入る隙はあったはずです。
最悪でも逃げることは出来たはずです。
何にしてもマーベラスにとってその前よりは有利な状況になったのは間違いないです。
しかしマーベラスはむしろキアイドーが傷ついてフラフラになった後の方が
強い恐怖を感じて動けなくなっていました。
つまりマーベラスのあの時の恐怖心は実力差が原因ではないのです。
もっとメンタルな部分の問題であったのです。

チンピラだった頃のマーベラスは、1人で地方駐屯部隊とはいえザンギャック軍に逆らって
「海賊」を自称し、賞金首になって平気でいたりしていましたから、
それなりに「命知らずの無茶な男」で名を売っていたのでしょう。
マーベラス自身、そんな「腕っぷしだけで宇宙を渡り歩く命知らずのアウトロー」の自分が
強くてカッコいいと、誇りを持っていたはずです。
戦って死ぬことなど怖くないと思っていたはずで、
むしろ危険と隣り合わせのスリルを「面白ぇじゃねぇか」と楽しむのが男の生き様だと嘯いていたはずです。
そう思わなければ、そもそも海賊になどなるわけがない。
だからマーベラスは自分が死の恐怖など感じるはずがないと思っていたのです。

しかしキアイドーの「戦いのスリルを味わうためだけに死ぬかもしれない劣勢に自分を追い込む」という
異常な行動を見て、自分が戦いのスリルのためだけにそこまで出来るのか?と自問自答してしまい、
それは出来ないと思ったのです。
冷静に考えれば、そんなものは出来なくても当たり前であり、単にキアイドーが狂っているだけなのですが、
もともとマーベラス自身が腕っぷしの信奉者であり、命知らずが強さの証だという思い込みの持ち主、
いわば粋がった不良少年のようなものだったので、
実際に自分がキアイドーに完敗している以上、
キアイドーと自分の違いは、死の恐怖を乗り越えているか否かにあると思ってしまったのでした。

キアイドーは死の恐怖を感じない強さを持っているから、あそこまで出来るし、あんなに強い。
それに比べて自分はあんな真似は出来ない。
それは口先では命など惜しくないと言いつつ、本当は死ぬのが怖いからだ。
本当は弱い人間なのだ。だから自分は死を恐れずスリルを楽しむ強い心を持つキアイドーには勝てない。
そのように思ってしまったその時のマーベラスは、狂気の行動をとるキアイドーを見て、
自分の弱さや死の恐怖がどうしても心に浮かんできて、
それで恐怖に怯え、腰が抜けて足が震えてしまう醜態を晒してしまったのでした。

そして今、こうしてそのキアイドーに予想外に再会したことで、
マーベラスはその時の恐怖に怯えた心を突然想い出してしまいました。
もうとっくに解消されたと思っていたその恐怖心が突然甦ってきたことに戸惑ったマーベラスは
(この俺が恐怖を感じるなんて・・・!)と心の中で焦り、キアイドーを睨み返そうとしますが、
身体は強張り、思わず僅かに後ずさりしてしまいます。
そのマーベラスの些細な異常に横に立つジョーが微かに気付き、振り向きます。

そのマーベラスはジョーの視線にも気づく余裕も無く、必死で自分の心を支え直し、
(いや、今の俺はあの時とは違う・・・今なら!)と心の中で言い聞かせます。
あのキアイドーの前で腰を抜かしてしまった屈辱の後、
マーベラスもアカレッドと出会い、赤き海賊団で数々の冒険を経験し、
更にはアカレッドとの別れの後、マーベラス一味を立ち上げ、更なる冒険を経て、
今や「宇宙最大のお宝」に手が届こうという成長を遂げたのです。
もちろん腕は格段に上がっている上にゴーカイジャーの力やスーパー戦隊の力も使いこなせる。
そして、それだけではなく、心が強くなっているはずだとマーベラスは自負していました。

赤き海賊団に入って以降、チンピラだった頃には考えられなかったような
数多くの危険を潜り抜けてきた自分は、もはや死の恐怖など克服している。
今や自分はどんな危険にぶち当たっても「面白ぇじゃねぇか!」と不敵に笑って動じない、
むしろそのスリルを楽しむ、昔から目指していた
命知らずの男の中の男に成長した「キャプテン・マーベラス」なのだ、
と心の中で言い聞かせたマーベラスは、今の自分ならキアイドーに負けるはずがないと心を奮い立たせ、
仲間たちと共に豪快チェンジして、ゴーカイジャーへと変身します。

そしてゴーカイガンをキアイドー目がけて撃ちまくりますが、
キアイドーはその銃弾を全て掌で受け止めてしまいます。
そうして掌を開いて掴んだ銃弾をパラパラと地面へ落としていくキアイドーの姿を見て、
マーベラスはかつてキアイドーと戦った時にも同じようなことがあったことを想い出してしまい、
その完敗の記憶が再び鮮明に頭の中を一瞬支配します。
キアイドーは「弱い・・・弱すぎる・・・もっと楽しませてくれ!!」と言うと、
突っ込んできてマーベラスに斬りつけます。
昔の完敗の記憶に気をとられたマーベラスはその剣をまともに喰らってしまい倒れ、
キアイドーは残った5人相手に激しい斬り合いを始めます。

その激しい戦いをマーベラスは四つん這いで身を起こしつつ、見上げます。
キアイドーの剣を喰らってしまったが、
むしろ、その結果、マーベラスは自分が確かに成長していることは実感しました。
こうして戦っている姿を見ても、昔戦った時のようにキアイドーが圧倒的に強いとは感じない。
自分は確かにあのチンピラだった頃の自分ではなく、あの頃の弱さは克服している。確実に強くなっている。
確かにキアイドーは強敵だが、今の自分なら実力的に全く対処不能の敵というわけではない。
そして精神的にも確かに昔より強くなっている。まだ心は折れていない。
昔のように腰が抜けて足が震えるようなことはない。だから精神的にも昔の弱さは克服しているのです。

しかし、それでもキアイドーに「弱い」と指摘されると、確かに自分は弱いと思えてきます。
それはつまり、どれだけ腕を磨き、度胸を磨いて命知らずの男の中の男になっても、精神的に強くなっても、
それでもまだキアイドーの戦いの快楽のために死を全く恐れない狂気じみた強さには勝てないということです。
そんな狂気が真の「強さ」と言えるのかどうかは確かに疑問です。
しかし、それは綺麗事の理屈に過ぎない。
狂っていようが歪であろうが、強いものは強いのであり、それに勝てないものは「弱い」のです。

自分は確かに強くなったとマーベラスは思いました。
チンピラ時代にキアイドーに敗れた後、自分なりに理想とする強さの形を極限まで高めてきたと自負しています。
しかし、それでも勝てない強さがキアイドーにはあるように思えました。
それは正常な人間には越えられない一線を越えてしまった者の持つ強さです。
そこには自分は行くことは出来ない。だから自分はキアイドーには勝てない。
勝てない以上は、自分の積み上げてきた「強さ」はやはり「弱い」のだとマーベラスは思いました。
そう思うと、マーベラスは虚脱感にとらわれて、なかなか立ち上がることが出来なくなってしまいました。

しかし、これは少しおかしい。
現時点のマーベラスがキアイドーよりも弱いかどうかはまだ分かっていないはずなのです。
マーベラスは集中力を欠いたところに一太刀浴びただけのことなのです。
それだけで「勝てない」と決めつけてしまうのはおかしいのです。

これは実は論理の順序が逆になっていて、
マーベラスは今の自分の強さが実は「弱い」ものだと無意識的に認識しており、
だからキアイドーの狂気じみた強さに勝つことは出来ないと決めつけているのです。
だから、どうせ勝てないから戦う気力が湧いてこないのです。

これは更に突っ込んで考察すると、
マーベラスはキアイドーの強さが狂気じみた規格外のものであることを知っているからこそ、
自分の強さがそれに勝てない「弱い」ものだと素直に認めてしまっているのです。
言い換えれば、普通の単なる強敵が相手の場合は、マーベラスは素直に自分の弱さを認めたりはしない。
本当は心の奥底で今の自分は「弱い」と思っているクセに、
普段はそのことは頑なに認めないので心の表面にその「弱さ」が現れることはない。
しかし、昔一度、「弱さ」を曝け出してしまったことのある相手である、
一種狂気じみた規格外の強さを持った特別な存在であるキアイドーを前にした場合だけは、
自分の「弱さ」を認めてしまっても、それは相手が相手だけに「仕方ない」ことなのだという意識が
マーベラスの心の奥底に作用しているのです。

その「仕方ない」という感覚を一種の言い訳にして、自分の「弱さ」を解放している。
普段のマーベラスならば決して現れない「弱さ」が表面化してきている。
この「弱さ」は、昔キアイドーの前でマーベラスが晒した「弱さ」とは実は全く異質のものです。
昔の「弱さ」はマーベラスはとっくに克服済みなのです。
単にキアイドーの前だけではマーベラスは「弱さ」を晒すクセがついているので、
別の種類の「弱さ」も出やすい状態になっているというだけのことです。

マーベラスも昔の「弱さ」は克服出来ているという自覚はあるのですが、
この新たに表面化してきた「弱さ」の正体が分からないので、
昔の「弱さ」と同じようなもののようにも思えて、戸惑っており、
この「弱さ」があるためにキアイドーには勝てないと思ってしまっているのです。

ただ、確かにキアイドーの狂気による強さが規格外のものであるのも事実であり、
現時点の強さを極限まで高めたマーベラスでも、
そこに孕む「弱さ」を克服出来ない状態では勝てないというのも事実ではあります。
むしろ「弱さの克服のためには、こうして「弱さ」が表面化してきているのは良いことともいえます。
ただ、その「弱さ」の克服のためには、まずマーベラスは自分の「弱さ」の真の正体を知らねばならないのですが、
キアイドーを前にしてそれが突然表面化してきたために、
昔克服したはずの「弱さ」と混同してしまって、「そんなはずはない」という想いもあり、
よく分からない状態になり混乱してしまっているわけです。

そういう混乱した状態でマーベラスが戦いを傍観している間に、
キアイドーは他の5人を圧倒する強さを見せつけていました。
鎧は吹っ飛ばされてしまい、残った4人も劣勢を強いられます。
それを見てマーベラスはキアイドーに向かって突っ込んでいきます。
とにかく戦ってみれば何とかなると考えたのです。
しかし、正体不明の弱気によって「キアイドーには勝てない」という想いに囚われてしまっている
マーベラスは動きが硬く、キアイドーに圧倒されてしまいます。

そこで5人は一旦態勢を立て直し、ハカセが「みんな!バイオマンでいこう!」と言って、
他戦隊への変身で活路を見出そうとします。
そして5人はバイオマンに変身します。バイオマンへの5人一斉変身は初めてのことです。
マーベラスはレッドワンに、ジョーはブルースリーに、ルカはイエローフォーに、
ハカセはグリーンツーに、アイムはピンクファイブに変身します。
こうして見ると、ゴーカイジャーとバイオマンは配色も性別も一致していますが、
名乗り順は微妙に違っているということが分かります。
ちなみにハカセのグリーンツー以外は4人ともバイオマンへは初変身となります。

ここはバイオマンは個人戦闘は無く、変身していきなり5人一斉にジャンプし、
同調して空中回転しながらキアイドーに一斉にキックを放ちます。
これは「サーカスループ」というバイオマンの合体技です。
キアイドーはこれを空中に弾き返します。
サーカスループは決め技ではないのでキアイドーほどの強敵に通じないことはもとより予想出来た技であり、
マーベラス達の狙いは、空中に弾き返された後、そのまま空中で円陣を組み、
バイオマンの最強必殺技「スーパーエレクトロン」を発動することでした。
5人はバイオ粒子のエネルギー弾と化してキアイドーに突っ込みます。

しかしキアイドーはこれを弾き返します。
これはキアイドーがゴーカイジャーやバイオマンより強いというわけではなく、
スーパーエレクトロンが不完全だからです。
ゴーカイジャーは既に黒十字王との戦いの際にバイオマンの大いなる力を得ていますから、
バイオマンのフルパワーは引き出せます。
しかし、それはあくまでその資格を得たというだけのことで、
常にフルパワーを引き出せるかどうかは、ゴーカイジャー側のコンディション次第という面はあります。

特にスーパーエレクトロンという技はオリジナルのバイオマンでも強力な精神力が必要でした。
今のゴーカイジャーにおいてはマーベラスの精神状態がかなり不安定になっているので、
スーパーエレクトロンが不発になってしまったのです。
バイオマンという戦隊がレッドの能力の比重の大きい戦隊であるというのも今回はマズかったかもしれません。
マーベラスの精神の不調がより大きな影響を与えてしまったといえます。

しかし、マーベラスの様子がおかしいことにはジョーが少しだけ気付いているだけでしたので、
ルカはスーパーエレクトロンの不発の理由がよく分からず、
「だったらこれで!」とレンジャーキーを取出し、全員それに合わせてレンジャーキーを出し、
マスクマンへと変身します。
マスクマンへの5人一斉変身も今回が初めてです。
マーベラスはレッドマスクに、ジョーはブルーマスクに、ルカはイエローマスクに、
ハカセはブラックマスクに、アイムはピンクマスクに変身します。
ルカのイエローマスク以外は皆、初変身となります。

ここでマスクマンも個人戦闘は無く、
5人並んでメディテーションによるオーラパワーの衝撃波をキアイドーに向けて一斉に放ち、
5つの衝撃波が1つに合体してキアイドーを襲います。
この時、5人が両手で印を結んで衝撃波を発射するのですが、
レッドの「在」、ブラックの「陣」、ブルーの「列」、イエローの「闘」、ピンクの「臨」の
印の形がしっかり再現されていて細かいです。

しかし、この衝撃波もキアイドーの剣に叩き落とされてしまいます。
これもさっきのスーパーエレクトロンの場合と同じく、
精神力に左右されるオーラパワーがマーベラスの精神の不安定による悪影響を受けたのです。
また、マスクマンもレッドのパワーの比重の大きい戦隊でした。
マーベラスの不調に気付かないハカセやルカは多段変身の選択ミスをしてしまったのでした。

まぁ、ここは今回のストーリーの都合上、敗れないといけないわけですが、
マーベラスの精神の不安定を理由にした失敗という理由づけによって
当該戦隊の株が下がらないように出来る戦隊が、5人一斉未変身戦隊の中から選ばれた結果、
バイオマンとマスクマンということになったのだと思います。

これで残る5人一斉未変身戦隊は
チェンジマン、ライブマン、カクレンジャー、アバレンジャーの4つとなりました。
そして、マーベラス一味がレンンジャーキーを所持していながら未だ変身していない戦士はこれで
チェンジドラゴン、チェンジグリフォン、チェンジペガサス、チェンジマーメイド、チェンジフェニックス、
ブラックバイソン、ニンジャレッド、ニンジャイエロー、黒騎士、ゴーオンゴールド(単体変身無し)の
10戦士ということになります。

さて、オーラパワーの衝撃波を叩き落としたキアイドーはそのまま5人に突っ込んで反撃し、
ジョー達4人は斬り倒されてマスクマンの変身が解除してゴーカイジャーの姿に戻り、
マーベラスもキアイドーに斬られてレッドマスクの姿のまま崩れ落ちますが、
なんとか立ち上がり、キアイドーの胸の傷めがけて「うりゃあ!!」とパンチを繰り出します。
胸の傷が未だにキアイドーにとって弱点のままなのかどうかは分かりませんが、
もし弱点のままならば突破口にはなると思い、パンチを繰り出したのです。

しかし、そのような考えに囚われているということは、
既にマーベラスはあの昔のキアイドーに敗れた時の自分に囚われているということであり、
技を破られ続けるうちにマーベラスは
自分がキアイドーに勝てないのは、やはり昔のあの時の弱さを克服出来ていないからなのではないかと
思うようになってしまっていました。
そんな迷いのあるパンチは全く腰が入っておらず、
足が全然前に出ず、ひどい手打ちになってしまい、簡単にキアイドーに受け止められてしまいます。
このマーベラスの異様な姿にはジョーは明らかに異常を感じ取り、ルカも何かおかしいと感じたようです。
キアイドーはマーベラスの手を掴んだまま「ふう・・・甘い・・・」と溜息をつくと、マーベラスを蹴り飛ばし、
無様に転がったマーベラスはレッドマスクの姿からゴーカイレッドの姿に戻ってしまいます。

キアイドーに完敗してしまった5人、そして少し離れた場所でようやく起き上がった鎧に対して、
キアイドーは突然、背を向けて「・・・逃げろ」と意外なことを言います。
「なにぃ?」とマーベラスは呻きます。
「どういうつもりですか!?」とアイムが驚いて問い返すと、
キアイドーは「見逃してやると言ってるんだ!消え失せろ・・・」と吐き捨てるように言います。

キアイドーとしては、これ以上、ここでゴーカイジャーと戦っても、
満足のいくようなスリルは味わえないと判断したようです。
しかし、それなりに成長の見込める連中だとも認めたようで、
ここは見逃して、成長したところでまた戦いたいと思ったようです。
ただ、ザンギャックに頼まれた手前、飽きたからといって自分からこの場を去るのは気が引けるので、
自分が余所見している間に勝手にとっとと逃げろ、と言っているのです。
ゴーカイジャーにとっては、なんとも屈辱的な扱いです。
「てめぇ・・・!」とマーベラスは倒れたまま拳を握りしめてワナワナと怒りに震えますが、
しかし、弱気のせいか、その怒りが戦うパワーへと転化していかないのでした。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 07:36 | Comment(0) | 第28話「翼は永遠に」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年09月30日

第28話「翼は永遠に」感想その3

キアイドーに完敗してしまったゴーカイジャーの面々。
結局、その場は「消え失せろ」というキアイドーの言葉に従うかのように退却することになってしまいました。
このような屈辱はマーベラス一味の旗揚げ以来初めてのこと。
さすがにガレオンに戻ってきた6人はガックリしてしまいました。
ソファで固まって無言でうなだれる5人の中で、ジョーはなんとか口を開き
「・・・さすがは、宇宙一の賞金稼ぎってところか・・・」と呟きながら、チラリとマーベラスの方を見ます。
マーベラスは1人だけ離れて窓際のテーブルに手をついて、5人に背を向けてうなだれています。

ジョーもさすがにキアイドーの強さは認めざるを得ませんでした。
ハッキリ言って自分もキアイドーを舐めていたし、普通に戦えば勝てると思い上がってもいた。
そんな簡単な相手ではなく、必死で戦わねば勝てる相手ではなかったことは悟りました。
それでも、絶対に勝てない相手でもないと思っていました。
そもそも、この世に絶対などということはないが、そういう一般論ではなくても、客観的に見ても、
今の自分達の全力で当たれば、あそこまで完敗するほどの相手でもないとは思えました。
百戦錬磨のキアイドー相手に個々が撃破されたのは仕方ないとしても、
万全の態勢で放ったスーパーエレクトロンやオーラパワー衝撃波の合体攻撃までが
苦も無く弾き返されるというのは異常です。
何かがおかしいとジョーは思いました。そして、その原因はマーベラスにあるように思えました。

キアイドーに遭遇してからのマーベラスの様子は明らかにおかしい。
まるで何かに怯えているような、今までにない弱さをジョーは感じました。
いったいどうしたんだ?と一瞬、非難がましい視線でマーベラスの背中を見つめたジョーは、
しかしそんな自分を恥じました。
弱いのは自分達も同じだと思ったのです。
マーベラスだけを責めるのは間違いです。
攻撃が通じなかったのは、自分達の力も足りなかったからです。

しかし、ジョーは自分達の弱さを恥じているのではありません。
マーベラスと同じように何時の間にか自分達も本来の力を出せなくなっているだけです。
ただ、マーベラスはああして一人でそうした自分の弱さを自覚して苦悩しているのに、
自分達は自らの弱さにさえ気付いていなかった。向き合っていなかったのです。
実際、ジョーもキアイドーに簡単に勝てると思っていた。
マーベラスは明らかに怯えて見えるほどに警戒はしていた。
結果的にはマーベラスの方が自身のことも相手のことも含めて状況はよく見えていたのです。
迂闊だったのはむしろジョー達の方だった。
それなのに一瞬でもマーベラスを非難がましい目で見てしまった自分をジョーは恥じて、目を伏せます。
しかし、何故、自分達が弱くなったのか、その原因が分からないのでした。

その横ではアイムが「悔しいですけど、私達の攻撃の全く通じませんでした・・・」と、しょんぼりし、
ルカは「なんとかしてあいつを倒す方法考えないと・・・!」と腕の傷を眺めながら悔しげに言います。
アイムは普通に実力が及ばなかったと思っているようであり、
ルカは作戦次第で勝てるのではないかと思っているようです。
しかしジョーはそういう問題ではないと思っています。
アイムのように実力が及ばないと簡単に諦める必要は無い。
6人力を合わせれば、決して勝てない相手ではない。
ただルカの言うように安易に作戦次第で勝てるような相手でもない。
自分達が今、力を発揮しきれていないのが問題なのです。
その壁を破らないことには勝機は無い。

しかし、それがどういう壁であり、どういう原因で壁に当たっているのか分からない以上、
「壁を破らないといけない」などと言ったところで抽象論に過ぎず、変に不安を煽るだけです。
だからジョーは黙ってアイムやルカの言うことを聞き流すしかなかったが、
ハカセが「見逃してくれるって言ってるんだし、無理して戦わなくていいんじゃないかな?」と言うと、
さすがにムッとしました。

確かに、あのキアイドーの様子だと、自分達と戦うことにこれ以上は興味を抱いていないようでした。
こちらの態勢が整わない以上、下手に刺激しないでやり過ごすのが賢い方法なのかもしれない。
しかし、それは自分達の心の弱さをそのまま認めてしまうことを意味していました。
実力が本当に劣るのならば、その現実を受け入れることは必要かもしれない。
しかし、心が弱くて実力が発揮出来ていないと知ってしまった以上、
それはそのままにしておくわけにはいかない。
絶対に克服しなければ、本当の負け犬になってしまう。
ハカセ達は自らの心の弱さを意識していないから、このまま引き下がっても平気なのだろうけど、
自分の心の弱さが原因だと分かってしまっている自分とマーベラスは、
このまま負け犬になることを受け入れることなど出来るわけがないと、ジョーは思いました。

ところが、いつもなら真っ先にハカセに怒鳴り返しそうなマーベラスが、
今回は何故か背中を向けて肩を落としたままなのです。
いや、マーベラスはハカセの言葉を聞いて、ジョーと同じことを想っていました。
ここで引き下がったら自分の心の弱さを認めた負け犬になってしまうということは分かっていました。
ただ、ジョーと違うのは、かつてキアイドーに恐怖した自分の心の弱さを知っていることです。
あの心の弱さは克服したはずなのに、今回、またキアイドーを前にして心に弱さが生じてしまった。
本当はその弱さと昔のマーベラスの弱さは異質なものなのですが、
マーベラスはその違いがよく分かっていないので、
自分は結局、ずっと昔の弱さを克服出来ていなかった心の弱いヤツなのかもしれないと思い、
悔しさに両拳を握るものの、ハカセに反論するだけの強気も湧いてこないのでした。

しかしジョーはマーベラスが過去にキアイドーと因縁があったことは知りませんから、
マーベラスが黙ったままであることに苛立ち、
キッとハカセを睨み返すと「・・・このまま引っ込めるか!」と強い口調で立ち上がり、
マーベラスの方に向き直り歩き出します。
マーベラスにもこのまま引っ込めないという意思を明らかにさせようとしたのです。

ところが「・・・でも!」とジョーに何か言い返そうとして立ち上がったハカセの頭が
ちょうどソファのあたりを飛んでいたナビィに激突し、
「いったぁ〜!!」とハカセが頭を押さえて大袈裟に痛がったので
ジョーは足を止めてハカセの方を振り向きました。
するとハカセと激突したナビィがフラフラと浮かびながら
「メラメラメラ〜と火の鳥がぁ、邪悪な敵を打ち倒すぅ・・・」と唱えて
「こんなん出ましたぁ!!」と、落っこちます。
ちょうどナビィのお宝ナビゲートが発動しかけたところに
ハカセの頭とぶつかったショックでお告げが出たようです。
相変わらず、この「お宝ナビゲート」というやつの原理は謎ですが、
ともかくちょうど、今回はこのお宝ナビゲートが出る時期であったようです。

「こんな時にお宝ナビゲート?」とハカセは頭を痛そうにさすりながらブツブツ言います。
こんな酷い負け方をしてみんなが落ち込んでいる時に、お宝探しの気分は盛り上がりそうにありません。
しかし、ナビゲートが出た以上は、それに従って「大いなる力」を探さなければ、
その「大いなる力」をゲットするチャンスを逃してしまうかもしれない。
マーベラス一味が地球へ来たのは「宇宙最大のお宝」を見つけるためであり、
そのためにはナビゲートに従って「大いなる力」を探すことは何よりも優先しなければならない。
それが分かっているだけに、よりによって嫌なタイミングでナビゲートが出たものだとハカセはウンザリしました。

ところが、ルカは「・・・ちょっと待って!」と言って、落っこちたナビィを拾い上げて
「邪悪な敵を打ち倒すって・・・キアイドーを倒すヒントになるかも!?」と言います。
さっきからキアイドーを倒すアイディアは無いものかと思案していたルカは、
ナビィのナビゲートがこのタイミングであったということは、
キアイドー打倒と「大いなる力」が関係があるのかもしれないと思ったのです。

それを聞いてハカセもアイムも表情が明るくなりますが、ジョーは冷めた表情で3人を眺めています。
今回の件はそういう他力本願ではダメだと思ったのです。
ところが、ルカの思いつきを聞いて、それまでずっと背を向けて黙っていたマーベラスが、
ガバッと振り返って「なに!?」と思いっきり食いついたので、
ジョーは嫌な気分になってマーベラスの方をチラリと見ます。
マーベラスはルカ達とは違って自分の心の弱さが今回の敗北の原因だということは分かっているはずなので、
ジョーとしてはマーベラスにそういう他力本願な態度はとってほしくなかったのです。
ところがジョーがマーベラスの方を見たその時、
ナビィのお告げを聞いて「火の鳥って・・・」と考え込んでいた鎧が急に立ち上がり、
ナビィを抱きしめて、大きな声で「もしかしてジェットマンのことじゃあ・・・!?」と叫びます。

現時点で未だゲットしていない「大いなる力」は、
バトルフィーバーJ、サンバルカン、チェンジマン、フラッシュマン、マスクマン、ライブマン、
ファイブマン、ジェットマン、カクレンジャー、オーレンジャー、メガレンジャーの11個です。
ナビィのお告げはこの11個のうちのどれかを指していることになります。
そう考えると、この11の戦隊に絞って「火の鳥」に関係ありそうな戦隊を探せばいい。
そうすると、この中では、合体戦闘機イカロスハーケンが火の鳥になって敵に体当たりする
「ジェットフェニックス」という巨大戦の必殺技を持つジェットマンがそれに該当するとしか思えません。
「フェニックス」はまさに「火の鳥」ですから。
そういうわけで鎧は今回の「大いなる力」はジェットマンのものだと結論づけたのでした。

「・・・ジェットマン?」と問いかけるアイムや皆に、
鎧は「はい!数あるスーパー戦隊の中でも風変わりな人達だったみたいですよ・・・
戦隊を引退した後、1人は無農薬野菜のネット販売で有名な社長さんになったり、
あとアイドルになった人もいましたし、メンバー同士で結婚した人もいたみたいですよ!」と説明し、
アイムは「まぁ素敵!」と結婚という話題に感激します。

ちなみにバイラムを倒してジェットマンを解散した後、
メンバー同士で結婚したのは、レッドホーク天堂竜とホワイトスワン鹿鳴館香で、
アイドルになったのはブルースワロー早坂アコであり、
おそらく無農薬野菜のネット販売の社長になったというのは農業青年だったイエローオウル大石雷太でしょう。
そうなると残るのは冒頭で登場したブラックコンドル結城凱ですが、
結城凱については鎧はここでは何も触れていません。
なお、結城凱と鎧は名前が一緒で紛らわしいので、
結城凱のこの文中での呼称は今回、「凱」ではなく「結城凱」で通します。

しかし雷太が「有名な社長」になっているということは、当然、「大石雷太」という人物は有名人で、
その名は世間の多くの人が知っているのでしょう。
ただ「ジェットマン」という戦隊は20数年も前の戦隊であり、
その当時においてもスカイフォース所属の秘密戦隊扱いであり、
その後、数年前のレジェンド大戦でその姿を再び現すまでは活動もしておらず、
レジェンド大戦以前はジェットマンに興味を持つ人はごくごく限られていたと思われます。

そうした中でジェットマン解散後に起業して成功した雷太や、アイドルになったアコらは有名人になり、
もともと財閥の令嬢であった香やその夫のエリート軍人の竜なども同業者の世界では有名人であったはずです。
彼らは元ジェットマンの雷太やアコや香や竜としてではなく、
単なる青年実業家やアイドルの1人、財閥令嬢、エリート軍人として有名人となっていたのです。
むしろ「ジェットマン」という存在の方が彼らよりもマイナーであり、
スカイフォースからもあまり機密を喋られても困るというプレッシャーもあったであろうから、
彼らは自分達がかつてジェットマンであったことは、一部の親しい人達にしか話していなかったと思われます。

そしてレジェンド大戦が起こってジェットマンもレジェンド戦隊の1つとして語り継がれるようになり、
その戦いに参加した竜たちは自分達の名を吹聴するようなことは決してしなかったであろうが、
レジェンド戦隊のファンの中には「ジェットマンは誰なのか」について調べる者もいたのでしょう。
有名人の発言というものは残りやすく調べやすいものですから、
ジェットマンのメンバーで有名人になった者達の過去の発言から、
「あの有名人の彼らが実はジェットマンであった」ということが
レジェンド戦隊ファンの間では知られるようになっていったのでしょう。

やはり過去の戦隊のメンバーの正体が戦隊ファンの間で知られるようになるポイントが、
素顔の戦士が戦隊とは関係なく有名人である場合というのはあるようです。
明石暁のことを鎧が知っていたというのも、
明石がボウケンレッドである以前に有名な冒険家だったからでしょう。

しかし、ここで鎧が「有名な社長やアイドルになった人もいた」と言いつつ
雷太やアコの名前は挙げていないというのは、明石の場合とは少し様子が違います。
鎧はおそらく「スーパー戦隊を誰よりも愛する男」と自称してはいますが、
まぁ年齢的な事情から、近年の戦隊の情報にはよく通じている一方で、
古い戦隊の情報はさほど詳しいわけではないようです。
だからジェットマンのメンバーに関する情報も、
どういう人達がメンバーであったかという漠然とした情報は頭に入っていますが、
その姓名までは本でも見て調べないとすぐには出てこないのでしょう。
当然、メンバーの近況などは分かりません。
いや、それに関しては鎧の持っている戦隊関連の書籍などにも載っていないと思います。
それらの書籍の情報はあくまで過去のジェットマンメンバーの残した発言をもとに構成されたものであり、
現在のメンバーへの取材で作られたものではないようだからです。

「・・・今でも、普通に暮らされてるんじゃないでしょうか?」と鎧が言うことからも、そう想像出来ます。
竜たちジェットマンのメンバーは、あくまで普通の暮らしを大切にしており、
元ジェットマンであることで表舞台に立つことは望んでいないようなのです。
鎧がわざわざ、詳細な近況を知らないのに、「普通に暮らされてる」と決めつけているということは、
「ジェットマンは引退後、決して表舞台には出ずに一般人として普通に暮らしている」という
印象があるということです。
ジェットマンとはそういうものだという漠然とした定義が戦隊ファンの間では常識なのでしょう。

それはジェットマンという戦隊の特殊性に起因します。
ジェットマンは軍人の竜以外は4人ともごく普通の民間人で、
事故によってバードニックウェーブを浴びてしまったため、戦士として戦う羽目になってしまった戦隊です。
だから、もともと彼らには彼らの本来の人生があり、
戦いが終わり、そして数年でバードニックウェーブの効力も切れれば、
元の普通の生活を送るのが当たり前だったのです。

だから、元ジェットマンという理由で変な騒動や危険に巻き込まれてはいけないので、
元ジェットマンとして世間に出るようなことはせず、
あくまで普通の生活をひっそり送るのが基本になっているのでしょう。
竜だけは軍人ですから立場が異なるのですが、
竜は香と夫婦ですから、香を守るためには竜も元ジェットマンとして表舞台には立つことは出来ないのです。
おそらく彼らはレジェンド大戦にはやむなく参戦したものの、素顔は晒さずに参戦したのだと思われます。

そういうわけで、鎧もジェットマンの元メンバーの近況は分からないのですが、
ナビィのお告げがあったということは、そのジェットマンのメンバーの誰かが
ガレオンの近くにきているということであり、
マーベラスは鎧の話を聞いて、それだけ有名人もいるのならすぐに特定は出来ると思い、
「よし、ジェットマンを探すぞ」と言って、さっさと外に出て行きます。
鎧やハカセ、アイムはいつものごとくマーベラスがお宝探しに燃えていると見て、
張り切って立ち上がり、後に続いて出て行きます。

が、ルカとジョーはすぐには部屋を出て行かず
マーベラスの出て行った部屋の出口あたりを見て少し思案顔となります。
ルカはマーベラスの様子がさっきの戦いの最中からどうもおかしいように思って
漠然と気になっている程度なのですが、
ジョーはマーベラスが自分の弱さを克服することを避けて、
ジェットマンの大いなる力に頼ろうとしているように思えて、不満でした。
しかし、他力本願であれ何であれ、部屋にこもって落ち込んでいるだけよりは、
行動した方が何か良い解決法を見つけるきっかけになるかもしれない。
それはマーベラスにしても自分にしても同じだと思い、
とにかくジェットマンを探しに行くことにしたのでした。

一方、ギガントホースにはキアイドーが呼び出されてワルズ・ギルの詰問を受けていました。
「貴様!なぜ海賊どもを逃がした!?」とワルズ・ギルは激怒しています。
キアイドーの戦いはギガントホースでモニターされており、
キアイドーが見え透いたやり方でマーベラス達を見逃したことはワルズ・ギル達には筒抜けでした。

もちろんキアイドーもそんなことは百も承知で見逃したのであり、こうした叱責は予想済みです。
「この俺から逃げたという噂が立てば、ますます賞金が上がるだろう・・・ブタは太らせてから食え・・・だ!」と、
何やらもっともらしい理屈で自分の行動を説明します。
つまり、マーベラス達をわざと見逃したのは彼らの賞金額を吊り上げて、
最終的に自分が手に入れる賞金額を増やすためだったというのです。
言い換えれば、ちゃんと殺すつもりはあるのだと申し開きしているのです。

しかし、これはウソでしょう。
実際はキアイドーは戦いを楽しみたいだけなので、現時点ではマーベラス達を殺すつもりはない。
しかし、そんなことを正直に言ってしまえばワルズ・ギルの怒りを無用に買って面倒なことになりそうだから、
本当は殺すつもりだが賞金額が不満なだけだと言って誤魔化しているのです。

しかしワルズ・ギルは簡単にこのキアイドーのウソに引っ掛かって
「フン!所詮は金か!薄汚い賞金稼ぎの考えそうなことだ!」と悪態をつきます。
バカのワルズ・ギルがせっかく騙されてくれたのだから、そのまま流しておけばいいようなものですが、
しかしキアイドーはバトルジャンキーはバトルジャンキーなりに戦う者の誇りはあるようで、
さすがにこのワルズ・ギルの侮辱には少しムッとして「・・・俺の虚しさを埋めてくれるのは、金と戦い!
・・・それとも、この中の誰かが退屈を紛らわせてくれるのか?」と、
指令室の面々に向かって殺気を放って凄みます。

インサーンは緊張した面持ちとなり、
バリゾーグはワルズ・ギルを守るようにすっとキアイドーの前に立ち、
ワルズ・ギルは焦ってバリゾーグの後ろにさっと隠れます。
しかしキアイドーは「ほう・・・」と言いながら、彼らの方ではなく部屋の脇の方に視線を移し、
そこに何時の間にか静かに立っているダマラスに向かって
「お前なら楽しませてくれるかもな・・・!」と挑発します。
しかしダマラスは微動だにせず静かにキアイドーを見下ろします。
しばし沈黙の後、キアイドーは「フッフッフ・・・!」とほくそ笑むと、指令室を出て行きました。

この場面で、さりげなくダマラスがザンギャック地球侵攻軍の中で最強の戦士であることが示唆されていますが、
結局、キアイドーもさすがに賞金首でもないダマラスと戦うわけにもいかず、
不遜な言い方ではあったものの、
一応はマーベラス達を狙う意思はあるということを認めさせられた形になったので、
再度、バリゾーグの作戦の一環で、マーベラス達を襲撃することにはなったようです。
ただキアイドーのモチベーションはかなり下がっているようですが。

さて、ジェットマンを探しに外に出たマーベラス一味の6人ですが、2グループに分かれて行動中です。
まず、ジョーとルカとハカセの3人組の方ですが、
歩きながらルカが「ねぇ・・・マーベラスの様子、何か変じゃなかった?」と2人に話しかけます。
ジョーは当然それは気付いていますが、「・・・確かに・・・」と気の無い返事です。
一方ハカセは「当然でしょ!あれだけやられたら僕だって・・・」と答えます。

ハカセもマーベラスが落ち込んでいるのは当然分かっています。
まぁあれだけ分かりやすい落ち込み方を船室でしていれば、誰でもマーベラスが普段とは違うことは分かります。
ハカセはそれを、あそこまでキアイドーに完敗すれば落ち込んで当然だと、
見たまんまの印象を言っているのです。

しかしルカは「そうじゃなくって・・・」と焦れて何か言おうとします。
ルカがマーベラスのことが変だと言っているのは、戦いの後の話ではなく、
戦っている最中から変だったということなのです。
ハカセは負けた結果マーベラスの様子が変になったと言っていますが、
ルカはマーベラスの様子が変だったから負けたのではないかという点に着目しているのです。
このあたり、ハカセよりもルカの方が観察眼が優れています。

しかし、ジョーはそのルカの観方よりも更に深いところを見ており、
負けたのはマーベラスだけが原因ではなく、
自分達全員がマーベラスと同じ心の弱さを抱えていることが原因だと思っていました。
むしろそれが自覚出来て落ち込んでいるマーベラスの方が自分達よりもマシなのだと思っているのです。
だから、ルカがマーベラスのことだけを問題視するような話を振っても、
ジョーには大して興味は持てなかったのでした。

しかし、その3人の会話は、いきなり彼らの横の道端に停まったバイクの大きな空吹かしの音でかき消されました。
ルカが思わずバイクの方を振り向くと、
黒いバイクの上に黒いパンツ、黒いシャツ、黒いメットの全身黒ずくめの男が跨っており、
その男はメットを外すと「乗れよ」とルカに声をかけます。
これはどう見てもナンパです。しかもかなり強引というか、キザすぎて普通はやらないタイプのナンパです。
こんなイタいことをする奴は誰かというと、ルカやジョー達は知らない顔でした。

しかし、視聴者は知っています。
これは冒頭のクラブのシーンでカウンターでポーカーをしていた男、つまり結城凱です。
結城凱はこういうキザなことが大好きな根っからの遊び人、まぁ悪く言えばロクデナシであり、
妙にこういうキザでバカな振る舞いが似合う非生産的な男です。
しかし結城凱ということは元ジェットマンのブラックコンドルであり、
ナビィのお告げはこの結城凱との出会いを指していたと思われるのですが、ルカ達はそんなことは分かりません。

「おい、何だお前?」とジョーが突然ルカをナンパした男を追い払おうとしますが、
ルカは少しこの強引な男に興味を持ったようで、ジョーを手で制して、
逆にこの男をからかってやりたくなりました。
「ナンパ?・・・あんたにあたしを誘う資格があるのかしら?」とニヤニヤして挑発します。
こういう自信家っぽい男はこうやって挑発すれば必死で自分のセールスポイントをアピールしてくるから、
つまらないセールスポイントならば死ぬほどダメ出ししてやればシュンとなるであろうし、
もし金目のものを持っていそうであれば、せいぜいたかってやればいいとルカは思いました。

ところが結城凱はバイクを降りて「あるさ!」と答えてルカに近づくと、
平然と真顔で「・・・女は全て、俺のものだ!」と、相変わらずアホなことを言います。
もう四十代も半ばを過ぎてるというのに、呆れたものです。
ルカもさすがにこんな返答は予想外で、一応余裕の笑顔は保ちつつ、絶句して立ち尽くします。
ハカセは「はあ〜あ!?」と呆れ、ジョーもさすがに苦笑して
「お前・・・おかしいんじゃないのか?」と結城凱の肩をポンと叩きます。

ところが結城凱はそれまでのルカに向けたにこやかな笑顔から一変して
不愉快を絵に描いたような厳しい表情になり、
「・・・触るんじゃねぇ・・・俺は納豆と男が大嫌いなんだ・・・!」と、我慢の限界のようにプルプル震えて言います。
このセリフは結城凱の口癖で、その意味は、まぁその言葉のまんま、
納豆と男が嫌いで、触るのも虫唾が走るという、すごく身勝手な意見です。
ただそんなことはジョーは知りませんから、また意味不明のことを言う男に「はぁ!?」と問い返したところ、
いきなり問答無用で結城凱に顔をぶん殴られて吹っ飛ばされます。

ジョーはハカセと重なり合って倒れ、その拍子にジョーのモバイレーツが地面に落っこちます。
ルカは「何すんのよ!?」と言って結城凱に殴りかかりますが、
結城凱はさっとパンチをかわしてルカの腕を掴み、
女性に暴力は振るわないポリシーなので紳士的に微笑んでルカをどかせると
ジョーのモバイレーツを拾って「こいつは貰ってくぜ!」と言って、
追いかけるジョーやルカを振り切ってバイクに乗って去っていってしまいます。

さて一方、ジェットマン探しに街に出たマーベラス一味の6人のもう1グループ、
マーベラスとアイムと凱のチームの方は、公園内をぶらぶらと、
周りにジェットマンらしき人物がいないか、鎧が見回しながら歩いて、
その後ろをマーベラスがチンタラ歩いており、アイムがその後ろからくっついていくという感じでした。
鎧は「ジェット〜、ジェット〜、ジェットマ〜ン・・・」と、ジェットマンのOPテーマを口ずさんでいますが、
「ゴーカイジャー」の物語世界では「ジェットマン」という番組は放送されていませんから、
これは本来有り得ません。
まぁこのドラマ内の鎧の歌は全部彼の即興の自作であると解釈して、歌は気にしないことにしましょう。

その鎧の後ろを歩くマーベラスのモバイレーツが鳴り、立ち止まってマーベラスが通話に出ると、ルカからでした。
「大変!変な男が現れてジョーのモバイレーツが盗られたの!」というルカの連絡に
マーベラスは「なにぃ!?」と驚きます。

そのマーベラスの後ろで一緒に立ち止まっていたアイムは後ろに気配を感じて振り返ると、
そこに黒いバイクに腰かけた全身黒ずくめの男がいて、こっちをじっと見ていることに気が付きました。
これはもちろん結城凱なのですが、
結城凱が走り去った後、すぐに連絡したであろうルカとマーベラスが通話中ですから、
そのマーベラスの背後に既に結城凱が居るというのは、時系列的に何やら不自然です。

ただアイムはそもそもこの男が何者なのかも知りませんから、
「あの〜・・・何か御用でしょうか?」と尋ねます。
すると結城凱は先ほど奪ったジョーのモバイレーツを取出し、カチャッと開きます。
どうして見知らぬ男がモバイレーツを持っているのか分からずアイムは驚きますが、
マーベラスはルカとちょうどそのジョーのモバイレーツの件で通話していたところだったので、
背後でモバイレーツを開く音がしたので振り向き、目の前の黒服の男が犯人だと悟ります。

そして、進み出て「お前か?ジョー達を襲ったのは・・・そいつを返してもらおうか?」と結城凱に凄みますが、
結城凱は「欲しけりゃ・・・腕ずくで来な!」と挑発します。
というか、完全に喧嘩を売っています。
「・・・面白ぇじゃねぇか!」とマーベラスは結城凱に殴りかかりますが、何故かパンチは届きません。
先ほどの戦いでキアイドーに腰の引けたパンチが届かなかった屈辱が思い起こされて、
マーベラスは苛立ち、荒々しく吠えてパンチを更に何発も振り回しますが、結城凱には当たりません。
それでいて、反撃は喰らってしまう。
こんな普通の地球人相手にも遅れを取ってしまうほど自分は弱くなってしまったのか?と混乱したマーベラスは、
更に狂ったように結城凱に攻撃を繰り出していきます。

そのマーベラスと謎の黒服の男の戦いをアイムは呆気にとられて見ていました。
マーベラスの攻撃はいつもとそんなに違っているようには見えない。
しかし黒服の男はマーベラスの動きを完全に読み切って防御し反撃しているのです。
そんなことが有り得るのだろうかとアイムは呆然とします。

その3人の少し前方では相変わらず鼻唄を歌いながら
鎧が近くにジェットマンらしき人がいないか探していましたが、
後ろでマーベラスが奇声を上げているのに気づき、振り向きます。
すると、アイムが見ている前で、マーベラスが1人で荒々しく吠えながら
空手の演武のようにパンチやキックを繰り出して動き回っているのが鎧には見えました。
鎧は不思議に思い「あの〜・・・マーベラスさん、何やってるんですか?」とアイムに尋ねます。
どういうわけか鎧には結城凱の姿が見えていないようなのです。

しかしマーベラスにもアイムにも、マーベラスと戦う結城凱の姿がしっかり見えているわけですから、
当然、鎧にも結城凱の姿が見えているはずだと思っています。
アイムはマーベラスが謎の男からジョーのモバイレーツを取り戻そうとして必死で戦い、
苦戦を強いられているというのに、鎧が呑気すぎると思い、
苛立って「・・・何って!?」と声を荒げます。
しかし鎧には結城凱の姿が見えていないのですから、アイムが何を怒っているのかも分からず、
不思議そうに1人で暴れるマーベラスを眺めるだけでした。

マーベラスの方はもうモバイレーツがどうのこうのより、
どうして自分の攻撃が全く当たらないのか分からず、
とにかく1発パンチを当てたいと思い、渾身のパンチを繰り出します。
しかし結城凱はそれを掌で受け止めたまま、
「今のレッドはこんなものか!?落ちたもんだなぁ!!」と罵倒し、じりじりとマーベラスを押し込みます。
そして「俺の知ってるレッドはもっとパンチに魂がこもってたぜ!こんなふうにな!!」と叫ぶと、
マーベラスの顔面に1発、2発と強烈なパンチを叩き込み、
マーベラスは近くにあった柵に激突して、その弾みで懐にあったモバイレーツが転がり落ちます。
そのままマーベラスは柵に寄りかかって崩れ落ち、2人の喧嘩はマーベラスの完敗に終わります。

「マーベラスさん!!」とアイムが驚いて駆け寄ってマーベラスを助け起こし、
それを尻目に結城凱は地面に転がり落ちたマーベラスのモバイレーツを拾い上げると
「これ以上ジェットマンを探すな・・・いいな?」と言い残すと、
そのままマーベラスとジョーのモバイレーツを奪ったまま背中を向けて去って行こうとします。

いきなり現れてモバイレーツを奪うことが目的かと思いきや、
レッドがどうとかワケの分からないことを言ったり、
自分達がジェットマンを探していることを知っていたり、
しかもジェットマンを探すなと釘を刺す、
この謎の男の行動がマーベラスにはさっぱり意味が分かりませんでした。
それで混乱し、マーベラスが立ち去ろうとする男の背中に向けて「何なんだ!?お前は!」と喚くと、
男は振り向いて「結城・・・凱だ・・・」とだけ言って、バイクに跨って去っていったのでした。

結局、マーベラス一味はジェットマンを探しに街に出た結果、ジェットマンは見つからず、
それどころか「結城凱」と名乗る謎の男にマーベラスとジョーのモバイレーツを奪われてしまいました。
慌ててモバイレーツの位置を探知しようとしましたが、反応は無く、
夕方まで必死であたりを探し回りましたが、あの男は何処を探しても見当たりませんでした。
これは一大事で、もうジェットマン探しどころではなくなってしまいました。

あの男が「ジェットマンを探すな」と望んだ通りになってしまったわけですが、
どうしてあの男はジェットマンを探さないようにと言ったのか、
夜になってガレオンに戻ってきた後、鎧は引っ掛かりました。
まぁ鎧はその黒服の男というものを見てもおらず声も聞いていないので、
その男がそんなことを言ったのは聞いていないのですが、マーベラスとアイムからそう聞いたのです。
その男の正体を探る手がかりになりそうな具体的な情報はそれだけですから、
鎧はその男がジェットマンに関係した人物ではないかと思い、
ジェットマンに関する資料を改めて調べてみました。
すると、興味深い事実が判明したのでした。

鎧は深夜にガレオンの船室に集まっていた皆に向かい、その事実を告げます。
「・・・実は、ジェットマンには幾つか謎があるんです・・・
その1つが、消えたブラックコンドルの件で・・・その人の名前が結城凱・・・!」という鎧の言葉を聞いて、
全員が驚愕しました。「結城凱」とは、あの黒服の男が去り際に名乗った名前です。
つまり、あのモバイレーツを奪った謎の男はジェットマンの元メンバーであり、
おそらく今回のナビィのお告げを踏まえて考えると、
あの結城凱こそが「ジェットマンの大いなる力」を持って自分達に近づいてきたレジェンド戦士だったのです。

しかし、ならばどうしてナンパしたり喧嘩したりしてモバイレーツを奪ったのか?
どうして「ジェットマンを探すな」などと言ったのか?
それらの疑問については、どうしてなのかという根本的な部分は分かりませんでしたが、
とにかく結城凱がゴーカイジャーを「ジェットマンの大いなる力」の継承者として認めていないということは
全員なんとなく分かりました。
いや、モバイレーツまで奪うということは、戦う資格すら無いという宣告とも解釈出来ました。

何故、そこまで結城凱に見損なわれなければいけないのか?
もしかしてキアイドーとの戦いで惨敗したのを見ていたのかもしれないとも思えました。
それなら、見損なわれても仕方ないようにも思えました。
しかしマーベラスには、結城凱が自分と喧嘩している時に罵倒してきた言葉から察するに、
結城凱がマーベラスの心の弱さに呆れていたのだということは何となく分かりました。
そしてジョーも、モバイレーツを奪われたのが自分とマーベラスであることから考えて、
結城凱が問題視しているのは単にキアイドーに負けたことではなく、
2人が自らの心の弱さに気付きながら乗り越えることの出来ないことなのだろうと想像出来たのでした。

ただ、それ以外にもまだ解けない謎があります。
鎧は「でも、なんで俺にだけ見えなかったんだろう?いったい何がどうなってるんだ?」と
愚痴りながら考え込みます。
そう、結城凱の姿を鎧以外の5人は確かに見ているのに、
鎧だけは目の前にいながらその姿が見えなかった問題です。

ただ実際マーベラスとジョーのモバイレーツが無くなっている以上、5人が幻を見ていたのではない。
確かに結城凱はその場に居たのです。
それなのに鎧だけその姿が見えなかったのです。
鎧にとってはそれが最大の謎でした。
何か自分の身体に異常が起きているのではないかと、鎧は不安になりました。

しかし、見た感じ、鎧の身体に変調があるようには見えないので、
他の5人はさほど大きな問題とは捉えませんでした。
そんなことよりも奪われたモバイレーツの方が重大な問題だったのです。
ただ、マーベラスはモバイレーツのこと以上に、
「今のレッドはこんなもんか?」などと結城凱に喧嘩の最中に罵倒された言葉が
胸に突き刺さって心を苦しめていたのでした。

さて、しかし、確かに結城凱の行動や、鎧だけに見えないことなど謎だらけではありますが、
それ以上に視聴者にとってここで謎なのが、鎧の言った「消えたブラックコンドル」という言葉です。
どうやらこの「ゴーカイジャー」の物語世界の地球の戦隊ファンの認識においては
ブラックコンドルというのは消えた戦士であるようです。

では、いつ消えたのか?
「消えた」と言われているということは、消える前は確かに存在したのですから、
バイラムとの戦いの時は存在したのでしょう。
ならばバイラムとの戦いの後に消えたのかというと、
バイラムとの戦いの後、姿を消したというのなら他のジェットマン全員同じです。
しかし他のジェットマンは「消えた」という扱いになっていない以上、
バイラムとの戦いの後に姿を消したことは関係ない。

じゃあレジェンド大戦で再び戦場に復帰した後、
レジェンド大戦の最後に変身能力を失って姿を消したことを指すのかというと、これも違います。
他のジェットマンだけでなく、レジェンド戦士全員がこの時一緒に姿を消しているわけですから、
ブラックコンドルだけが「消えた」と特筆されるのは不自然だからです。

となると、考えられるのはただ1つ、
レジェンド大戦にブラックコンドルが現れなかったから
「消えたブラックコンドル」と呼ばれたということです。
二十数年前のバイラムとの戦いの際には確かにブラックコンドルは居たのに、
レジェンド大戦で他のジェットマンは馳せ参じたのに、ブラックコンドルだけは何故か来なかった。

というよりも、レジェンド大戦を目撃した地球の多くの人々は
ジェットマンは4人しかいないと思っていたのでしょう。
ところが後で過去のバイラムとの戦いの記録を調べてみると
ブラックコンドルという第5の戦士が居たと知ったのです。
「では何故、そのブラックコンドルはレジェンド大戦に来なかったのか?」と皆が疑問に思った。
当のジェットマンの4人は何も語ることなくレジェンド大戦後、姿を隠してしまい、
表舞台には出てこないので、ブラックコンドルの謎は残った。
ジェットマンのメンバーがとにかく寡黙なので
他にもファンの間で謎扱いになっていることは幾つかあるようですが、
それらと並んで「消えたブラックコンドル」という謎も語り継がれることとなったのです。

しかし、これはおかしい。
「ゴーカイジャー」第1話の冒頭、レジェンド大戦のシーンで
ブラックコンドルはしっかり他のジェットマンと一緒にザンギャック軍と戦っている姿が映っているのです。
それにブラックコンドルのレンジャーキーも実在しておりマーベラス一味が持っています。
それを使って変身したこともあります。
レンジャーキーが存在するということは、
ブラックコンドルはレジェンド大戦に参加していたということを意味します。

だからブラックコンドルはレジェンド大戦に確実に参加していたはずです。
しかし、「消えたブラックコンドル」という謎も確かに存在し、
ブラックコンドルがレジェンド大戦に参加していなかったとも言う。
まるで、その場に確かに存在していたのに、人の目には見えなかったかのようです。
そう考えると、それは今回、結城凱の姿が鎧に見えなかったことと同じ現象のようにも思えてきます。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 07:15 | Comment(3) | 第28話「翼は永遠に」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月01日

第28話「翼は永遠に」感想その4

マーベラスはその晩、寝付けないので真夜中に地上に降りて、公園で1人、剣の素振りをすることにしました。
真夜中の誰もいない公園をゴーカイサーベルを提げて歩きながら
マーベラスは結城凱のことを思い(あいつが・・・ジェットマンだったのか・・・)と心の中で呟きます。

マーベラスはもうすっかりキアイドーと再戦したことで
昔のままの弱さを露呈してしまったと思い込んでしまい、落ち込んでいました。
確かに腕は昔よりも上がっている。あんな無様に腰を抜かしていた頃に比べれば度胸だってついた。
あの頃は命知らずの度胸満点の男のフリをした単なる粋がったガキに過ぎなかった。
キアイドーに圧倒されたマーベラスはそんな自分を恥じて、数々の修羅場を潜って腕と度胸を磨いてきました。
そうして本当に命知らずのスリルをも楽しむ不敵な宇宙海賊、キャプテン・マーベラスとなった。
それは紛れもない事実です。
実際、地球に来てからだって、どんなピンチに追い込まれてもビビったことなどなかった。
自分は間違いなく強くなった。マーベラスはそう確信していました。

ところがキアイドーに再会した時、あのキアイドーの戦いを快楽として純粋に楽しむ狂気を思い出しました。
かつて勝負に負けたこと自体は自分も強くなっているのだから、大して気にはなりませんでしたが、
いかに大胆不敵なマーベラスでも、戦いの最中にキアイドーのように自分の身体に剣を深々と突き刺して、
そうして生じたハンデを喜ぶような度胸はありませんでした。
やはり勝ちたいし、死にたくはない。
ただ純粋に戦いだけを楽しみ、その快楽の中で死んでもいいというような突き抜けた度胸は、
大きく成長したマーベラスにもありませんでした。

そうした気後れの中で戦い、身体が思うように動かずに敗北し、
やはり自分は腕は上がったかもしれないが、度胸ではキアイドーには及ばない、
強さが足りないとマーベラスは痛感しました。
しかし、そんなことを承知で引き下がってしまったら負け犬確定です。
だからマーベラスはなんとかリベンジしたかったが、こんな気後れした状態でキアイドーに勝つ自信が無い。
そこに「ジェットマンの大いなる力」を使えばキアイドーに勝てるかもしれないと聞き、
縋るような想いになりました。
度胸で勝てないのなら、圧倒的な力で倒すしかないと思ったのです。

今までマーベラスは「大いなる力」を強く欲してきましたが、
それはあくまで「宇宙最大のお宝」に辿り着くためのアイテムとしてでした。
戦う力としてそれが欲しいと思ったことはない。
せっかく手に入れた力だから使っていただけです。
基本的には自分のもともとの実力で戦うつもりであり、勝つことが出来るという自信もありました。
ところが今回、初めてマーベラスは自分の実力に自信が持てず、
戦いに勝つために他力である「大いなる力」を欲しました。
情けないとは思いましたが、このまま負け犬になりたくないので仕方なかったのです。

だが、その情けなさをジェットマンの結城凱に見透かされていたのです。
だから、結城凱はマーベラスを「ジェットマンの大いなる力」を託すに足る戦士とは認めず、
ジェットマンを探さないように言い渡し、
自分の力に自信も持てないマーベラスには戦う資格すらないと見なしてモバイレーツまで取り上げた。
そのようにマーベラスは思いました。

マーベラスだって本当は、自分の力を信じず「大いなる力」に縋ることこそ
負け犬の根性だということは分かっていたのです。
本当はキアイドーに気後れしてしまう自分を克服しなければいけないのだということも分かっています。
でも、どうすれば今の自分の弱い心を乗り越えることが出来るのか分からないのです。
今までだってさんざん、極限まで度胸や心の強さは磨いてきた。
これ以上、キアイドーを超える度胸を持つためには、もうキアイドーと同じ狂気の世界に入っていくしかない。
が、まさかそんなことは出来ない。
だから、そこに限界がある以上、キアイドーを超えたという自信を持てるだけの心の強さには辿り着けないのです。

そういうことを思い悩むマーベラスの心の中に先ほどの結城凱の
「今のレッドはこんなもんか!?落ちたもんだなぁ!!」という罵倒の言葉が去来します。
それでマーベラスは苛立ってゴーカイサーベルをグッと握ると、怒声を発してそれを振り回し、
そこらに生えている樹木の枝葉を斬りまくります。

結城凱の言う「今のレッド」とはもちろんマーベラスのことです。
マーベラスが結城凱の知るジェットマンのレッドに比べて劣るので落胆したと言っているのです。
そのジェットマンのレッドは「パンチに魂がこもっていた」と結城凱は言いますから、
結城凱は、ジェットマンのレッドならばこんな時でも決して折れない強い心を持っていたと言いたいのでしょう。
いったいジェットマンのレッドとは、どれほど強い心の持ち主なのだろうかと、
剣を振るいながらマーベラスは考えましたが、
あのキアイドーの狂気に打ち勝つほどの心の強さというのが想像がつかず、
そんなものは結城凱の思い込みの生んだ幻に過ぎないと思い、
そのありえない幻を振り払うかのようにマーベラスはムチャクチャに剣を振り回し、
木の葉を辺りに舞い散らしていきました。

すると突然、その木の葉の向こうに結城凱が現れ
「おいおい、どうした?・・・こんな夜中に」と茶化すように声をかけてきます。
ギョッとしたマーベラスは「結城凱・・・返せ!モバイレーツを!」と激昂しますが、
結城凱は「ダメだ」と拒否します。
そしてマーベラスに向かってゆっくり近づきながら
「自分でも分かってるはずだ・・・今のお前に戦う資格は、無い!」と言い放ちます。

マーベラスは後ずさりしながら「なにぃ・・・!?」と怒ります。
想像通り、やはり結城凱がモバイレーツを奪った理由は、
マーベラスが戦う資格も無いと見なしたからであったようです。
それはキアイドーに気後れした挙句、ジェットマンの大いなる力に頼ろうとした
マーベラスの弱い心を見透かしたからなのであろうが、
だからといってモバイレーツを使う権利まで勝手に取り上げる権利は
結城凱には無いはずだとマーベラスは腹が立ちました。
モバイレーツが無ければ変身して戦えなくなってしまい、困るのです。

そうした困惑した顔のマーベラスを見て、
結城凱は「海賊なんて名乗ってるクセに・・・お前、ビビってるだろう?・・・まったく、情けない奴だ!」と
呆れたように言います。
確かにキアイドーに気後れしているのは事実でしたが、それを認めてしまったら、
それこそ恐れ知らずの宇宙海賊と名乗って今まで生きてきた自分自身の生きざま自体が
嘘だったことになってしまうと思ったマーベラスは焦って
「・・・ふざけんな・・・誰が!!」と結城凱に飛び掛かって、その胸倉を掴みます。

しかし結城凱は男に触られるのが嫌そうに顔を背けた後、ジロリとマーベラスの顔を睨み返し、
「・・・ったく・・・ガキだな!」と吐き捨てるように横を向き、
再びマーベラスを鋭い目で見据えて「・・・自分の弱さと向き合えないとはな!」と叱りつけるように言います。
マーベラスは散々に罵倒されながら、確かに自分が本当はキアイドーにビビっているクセに
海賊という勇ましい虚名にこだわって虚勢を張っているだけの、
まるで昔キアイドーに倒されたガキの頃と変わりない状態だと気付き、情けなくなります。

いや、昔キアイドーに倒された時の自分は、
まだそこでガキはガキなりに自分の弱さに向き合って自分を鍛えて強くなろうとしただけマシです。
今の自分は下手に強くなってしまったために、キアイドーの壁は越えられないと決めてしまっており、
弱さと向き合って克服していこうという気力を無くしてしまっている。
自分はただ弱さに背を向けて虚勢を張っているだけの本当のガキだとマーベラスは思い、
結城凱の胸倉を掴んだ手を離すと、視線を落としてうなだれます.

マーベラスも本当は自分の弱さと向き合うのがキアイドーを超える第一歩だということは分かっている。
そして決してマーベラスも自分の弱さに向き合えないわけではない。
今までだって自分の弱さに向き合って、それを克服する強さを身につけて成長してきたのです。
しかし、今回の壁を超える強さを手に入れる方法はマーベラスには思いつかないのです。
だから、弱さに向き合ったとして、じゃあその先どうすればいいんだ?とマーベラスはうなだれたまま、
また行き詰って黙り込んでしまいます。

結城凱はそんなマーベラスの横を通り過ぎていきながら
「今のお前じゃ、ジェットマンの大いなる力は使いこなせやしねぇかな・・・」と言い、
そのまま立ち去っていきます。
その言葉を聞いて、マーベラスは確かにこんな壁も越えられない自分では
ジェットマンの大いなる力を使いこなすことは出来ないのかもしれないと思います。

が、そこで気付いたのです。
この壁を超えることが出来ればジェットマンの大いなる力を使いこなせるのだとしたなら、
かつてジェットマンの大いなる力を使いこなしていた者ならば、
この壁を超えることは出来ていたということです。
それがつまり結城凱の言う「パンチに魂がこもっていた」というジェットマンのレッドをはじめ、
その中には結城凱本人も当然含まれている、ジェットマンのメンバーです。
本物のジェットマンならば、この今のマーベラスが直面している自分の弱さを乗り越える方法を知っており、
それを実践していたのではないかと、マーベラスは気付きました。
少なくとも何か参考になる意見を聞けるのではないかと思い、
マーベラスは慌てて振り向いて「待ってくれ!」と叫んで、夜道を去っていく結城凱の後を追い駆けます。

ところが、歩いて去って行く結城凱に向かって走って追いかけるマーベラスが何故か追いつけない。
わけがわからず懸命に走っていると、いつの間にか結城凱の姿を見失い、
あたりを見回すと少し離れたところを歩く結城凱を発見し、また追いかける。
そういうことを延々と繰り返していくうちに、いつの間にか夜が明けてしまい、
マーベラスは朝もやの立ち込める墓地に来ていました。
その墓地の中で再び結城凱の姿が見えた場所に駆け込んだマーベラスでしたが、
そこには既に結城凱の姿は無くなっていました。

その周辺を見回しながら歩くマーベラスは、
ふと足元にある小さな洋風の墓碑に目を留め、驚いて立ち尽くします。
その墓碑には「結城凱」という名が刻まれていたのです。
「結城・・・凱!」と墓碑名を読み上げ、マーベラスは「・・・どういうことだ・・・?」と困惑します。
さっきまでそこにいたはずの結城凱の墓があるということがどういうことなのか、全く分からなかったのでした。

どうして生きている人間の墓を作る必要があるのか?
そもそも、どうして自分はこんな場所に来ているのか?
結城凱を追いかけていたら、結城凱の名の刻まれた墓碑の前に辿り着いた。
そんな偶然があるものだろうか?
結城凱が意図してここへ自分を誘い込んだとしか思えないが、
だが、何のために結城凱がそんなイタズラをする必要があるのか?
様々な疑問が頭をぐるぐる回って混乱して墓碑の前に立ち尽くすマーベラスでしたが、
何者かが歩いて近づいてくるのに気づき、その方向に視線をやります。

見てみると、鎧を先頭にジョー、ルカ、ハカセ、アイムの仲間全員が歩いてきます。
そして鎧は結城凱の墓碑を見て「やっぱり・・・死んでいたんですね・・・」と寂しそうに言うのでした。
マーベラスは「そんな・・・バカな!」と絶句し、
アイムも「信じられません・・・」と墓碑を見つめて戸惑います。
ジョー達も皆、同様に鎧の言うことが信じられないようです。

何せ、全員昨日は結城凱とは会っており、マーベラス、ジョー、ルカの3人はその身体にも触れているのです。
結城凱に殴られた傷だって残っている。
マーベラスに至っては数時間前の真夜中にも結城凱の胸倉を掴んでおり、
ついさっきまでその後ろ姿を追いかけていたのです。
断じて結城凱は死んでなどいないと思いました。
しかし、目の前に結城凱の墓碑も存在する。これはいったい何なのか?

鎧は墓碑の前にしゃがみ込んで、墓碑の周りに供えられている品物を見て、
「きっと・・・他のジェットマンの皆さんからですよ・・・毎日のように来てるんですね、ここに・・・!」と
優しく微笑んで、しんみりした顔になります。
墓碑の周りには、マッカランのウイスキーボトル、LARK2箱、カップラーメン、花束、野菜が置かれています。
しかも全てピカピカの新品で、埃ひとつ被ってはいません。
昨日あたりに置かれたものなのでしょう。

マッカランとLARKは結城凱の好物の酒と煙草であり、これはレッドホーク天堂竜が供えたものでしょう。
マッカランにはバラの花が添えられていますが、
これは「ジェットマン」最終話で結城凱が竜と香に差し出した花束へのお返しの意味が込められているのでしょう。
同様のお返しの意味で、花束はおそらくホワイトスワン鹿鳴館香が供えたのであろうと思われ、
そして野菜は当然、今や有機野菜の販売会社社長であるイエローオウル大石雷太が供えたのでしょう。

この中で1つだけ不可解なのがカップラーメンですが、
これはよく見ると「陽気なアコちゃん」という名前のカップめんで、
これは「ジェットマン」第10話「カップめん」という戦隊シリーズ史上最も酷いサブタイトルのエピソードで、
ブルースワロー早坂アコのストーカーである先輩が怪人に操られて作った
「出来上がるまでの3分が待てなくなる」という恐るべき(?)カップめんでした。

なんかこうして書くだけで酷いカオス回だということが容易に分かりますが、
ちなみにこのカオス回は「ゴーカイジャー」メインライターの荒川氏が
スーパー戦隊シリーズにおいて最初に脚本を書いたエピソードです。
その荒川氏にとって記念すべきエピソードで使われた小道具をさりげなくここで使っているのは
制作サイドの遊び心でしょう。
現実問題として、あの「陽気なアコちゃん」がそのまま市販されて今でも売られているとは到底思えないのですが、
ここは制作サイドの遊び心で、「陽気なアコちゃん」をブルースワロー早坂アコが供え物にしている
という設定でよいでしょう。
ここの小道具全て、「ジェットマン」という作品への愛に溢れています。

もちろんマーベラス達にも、そして鎧にも、これらの供え物の細かな由来などは分かりません。
ただ、目の前にある簡素な供え物からは埋葬者に対する深い親愛の情は強く感じられました。
たまたま墓参りの次の日に自分達が来たという偶然もそうはないでしょうから、
彼らはしょっちゅう複数人で待ち合わせて墓参りに来ているようです。
そこまでする参拝者がいる以上、この墓碑には誰かが眠っているのは確かであり、
それは当然、墓碑銘にある通り、結城凱なのでしょう。
となると、毎日のように供え物をしているのは、
かつての仲間であるジェットマンのメンバー4人ということになります。
その供え物の持つ説得力に、マーベラス達も「結城凱は死んでいる」という事実を
受け入れるしかありませんでした。
しかし、であるならば、昨日からマーベラス達が会っていた結城凱はいったい何だったのか?
鎧は、それは死んだ結城凱が自分の意思の力で復活した姿なのではないか?と見ていました。

鎧は昨晩、どうして自分だけが結城凱の姿が見えなかったのか考えているうちに、
「消えたブラックコンドル」の謎に関する考察の中で、
「もしかしたら結城凱はレジェンド大戦以前に人知れず一般人として死亡していたのではないか?」という説が
あったのを想い出したのでした。

ちなみにレジェンド大戦にはかつて死亡した戦士も復活して参戦しています。
だからかつて戦士として戦って死亡した戦士はレジェンド大戦時に謎の復活を遂げたことは
戦隊ファンの間では知られています。
だから、ブラックコンドルがレジェンド大戦に参加していないということは
かつて戦士として戦って死亡したのではなく、
一般人に戻ってから、その生活の中で普通に事故や病気で死亡しており、
そのため復活も無く、レジェンド大戦に参加することが出来なかったのではないか?という説もあったのです。

ただ、鎧はそんなものは何の根拠も無い説だと思って今まではあまり気にも留めていなかったのでした。
そのように何の証拠も無くかつてのスーパー戦隊の戦士を死んだなどと決めつけるのは失礼だと思い、
単に結城凱は何かの都合で姿を消すことになっただけなのだろうと鎧は思っていました。
しかし今回、目の前に存在するはずの結城凱の姿が見えないという現実を突き付けられ、
鎧はそのトンデモ説を想い出し、
あるいは本当に結城凱はこの世のものではない存在なのかもしれないと思ったのでした。

そして、そう考えると、
どうしてレジェンド大戦に参加していなかったはずのブラックコンドルのレンジャーキーが存在するのかという謎も
解けることに気が付いたのです。
つまり、本当はブラックコンドル結城凱はレジェンド大戦に参加していたのですが、
その時点では既に結城凱はこの世の者ではなくなっており、その姿は他の者には見えなかった。
そう考えれば辻褄は合うのです。

ただ、それはいわゆる幽霊のような存在ではなく、
姿は見えないながらもしっかりレンジャーキーの基になったブラックコンドルの戦う力と結びつくことの出来る
実体を持った意思の塊のような一種の「復活体」のようなものを、
他の殉職戦士のように謎の復活によってではなく、自分の意思の力で形成したのであろうと思われました。

そんなことが本当に死人に可能なのか、
そもそもどうして人によって見えたり見えなかったりするのか、
色々よく分かりませんでしたが、
とにかく結城凱がこの世の者ではない可能性は高いと考えた鎧は、
わざわざそのような者が現れて自分が結城凱だと名乗り、ジェットマンを探さないようにと釘を刺すからには、
まだ何か結城凱はマーベラスに対して言わねばならないことがあるはずだと思いました。

マーベラス達にジェットマン探しを完全に諦めさせるためには、結城凱は再び現れなければならない。
きっと近いうちに結城凱はマーベラスの前に現れるはずだと思った鎧は、
マーベラスが深夜1人で出かけたのを見て、他の仲間全員を誘ってこっそり後をつけていき遠目に監視し、
そこに結城凱が予想通り現れ(鎧は見えなかったが)、その後ずっとマーベラスの後をつけてきて、
鎧たちもこの墓地に辿り着いたのです。
そして結城凱の墓碑やその周りのお供え物を見て、
マーベラス一味の6人は鎧の推測が正しかったことを確信したのでした。

鎧の推測とは、まず、やはり結城凱は死んでいたということです。
これは鎧としては結城凱の姿が見えないという現象から推測したことでしたが、
視聴者としては、今まで漠然と推測していたことが遂に決定的な事実として突き付けられたということになります。
「ジェットマン」最終回でチンピラに刺されて、辿り着いた結婚式場の外のベンチで力尽きたところで
その後が描写されていなかった結城凱は、
やはり大方の予想通り、あの時死んでいたことが確定したといえます。
まぁ、あの時は死なずに別の時に死んだという可能性もゼロではないですが、
話の流れ的にはあの時に死んだという解釈で確定でいいでしょう。

しかし、鎧やマーベラス達がこの墓碑を見て読み取ったことは、
単に結城凱が既に故人であるということだけではありません。
鎧は墓碑の前にしゃがんだまま
「分かりました・・・何故、結城凱さんがジェットマンの皆さんを探すのを邪魔したのか・・・」と言います。
マーベラス達5人は立ったまま驚いた顔をして墓碑を見つめ、鎧の言葉に耳を傾けます。
鎧は感動した面持ちで墓碑を見つめながら
「結城凱さんとジェットマンの皆さんは、今も強い絆で結ばれている・・・
だからこそ凱さんは!・・・他の4人を戦いに巻き込みたくないんですよ・・・
普通の暮らしをしている仲間たちを・・・」と言うのでした。

鎧から見て、どうしてマーベラス達がジェットマンを探そうとしていることを
結城凱が察知できたのか謎だったのですが、
それは結城凱がこの世の者ではないから察知することが出来たのでしょう。
実際に結城凱は「ジェットマンを探すな」と言っているのですから、
マーベラス達の意思を察知していたのは間違いない。
よって、鎧は結城凱はマーベラス達にジェットマン探しをさせたくないので、
その邪魔をするために現れたのだと推測しました。

ただ、それならば、単にモバイレーツを奪って「ジェットマンを探すな」と言うだけでは
マーベラス達のジェットマン探しを完全にやめさせることは出来ない。
だから結城凱が再び現れてマーベラスに何かを伝えるはずだと思って見張っていたのです。
そうして結城凱は予想通り現れてマーベラスをこの墓碑の前まで誘導してきた。
だから鎧たちは、結城凱はこの墓碑を見せて何かをマーベラスに伝えたかったのだろうと推測しました。

その墓碑は小奇麗ではあるものの非常に簡素なもので、
周囲の同じような簡素な墓碑群に埋没するような印象の本当に平凡な墓碑でした。
地球を守って戦って死んだ英雄の墓とは到底思えない。
だから、やはり結城凱は戦いの中で戦士として死んだのではなく、
一般人としてごく普通にひっそりと死んだのだと分かりました。

そして、この平凡な墓碑を毎日のように甲斐甲斐しく世話をして、
簡素なお供え物をする4人の元ジェットマンの仲間もまた、
ずっと英雄として表舞台に立つこともなくひっそりと生きてきた。
その彼らが刻んだのであろう墓碑の「結城凱」という銘の下には、
「Black wing sleeping here forever」という銘文が刻まれています。
「黒き翼はこの地に永遠に眠る」という意味です。

「黒き翼」とは戦士としてのブラックコンドル結城凱のことを指しており、
そこに更に「永遠に」という強調が入ることで、
この銘文の意図することは、
結城凱に再び黒き翼の戦士の衣を纏って戦う日が来ることなく永遠に安息の眠りが続くことを願っている
ということになります。
それが元ジェットマンの仲間の心からの願いなのでしょう。
そしてその4人もまた、再び戦士として戦うことなく、ひっそりと普通の暮らしを送ることを望んで生きてきた。
その5人がこの墓碑を中心にして、今も毎日、ひっそりと人知れず強い絆を確認し合っているのです。
これは鎧のように単純に英雄的な戦士に憧れてきた男にとっても、
マーベラス達のように常に戦いの日々を送ってきた者達にとっても、非常に新鮮な印象を与えられるものでした。

普通は戦士というものは、共に戦うことで絆を強めていくものです。
しかしジェットマンはそうではなく、
互いに普通の平凡でひっそりとした暮らしを送ることで絆を強めていく戦隊なのです。
それは彼らがもともと英雄でもなんでもなくて、ごく普通の一般人であったからです。
彼らは戦いの中で戦士として成長していきましたが、そのまま戦士になることを望まなかった。
戦いが終われば、あくまで一般人に戻って普通の暮らしを送ることを望んだのです。
それは彼らがあくまで最後まで普通の一般人であることを貫き通したということです。

彼らがバイラムと戦ったのは、英雄として、戦士としての誇りや使命などのために戦ったわけではなく、
あくまで自分も含めた普通の人々の生活を守るためであり、
それゆえ戦いが終われば、彼らは英雄になるのではなく、普通の生活に戻っていったのです。
彼らの戦いの目的が戦士になることではなく普通の人々の生活を守ることである以上、
自分自身の「普通の生活」を守るという目的も最後には達成せねばならないからです。

ただ、本当に普通の人であれば、まず第一に自分の普通の生活を守ろうとするはずであり、
他の人の普通の生活を強大な侵略者の魔の手から守るために自分の普通の生活を犠牲にしようとはしないものです。
しかし(竜を除く)ジェットマンのメンバーは自分達が普通の生活を送る一般人であるのに、
いや、そうであるからこそ、他の普通の人々の生活を守るために強大な敵と戦おうと決意したのでした。

たまたまバードニックウェーブを浴びて身体は強化されていましたが、
戦士としての鍛錬を積んだわけではない彼らの心は普通の一般人と同じく脆く弱いものでした。
しかし、その弱さを知っているからこそ、彼らは普通の人々がバイラムに蹂躙されることを看過できなかった。
そうして自分の普通の生活はひとまず犠牲にしても、他の普通の人々の生活を守ったのです。
ただ、自分の普通の生活を忘れたわけではない。
それはひとまず他の人々を守るために後回しにしただけで、
彼らの戦う目的には当然、自分の普通の生活も他の人々の普通の生活同様に守りたいという
想いも含まれていたのです。
だから、戦いが終わった後、一番最後に彼らが成し遂げたことは自分の普通の生活を取り戻したことでした。
それを成し遂げて初めて、彼らの戦った目的は全て達成されたことになるのです。

つまり、彼らが普通の生活を送り続けることが、彼らがジェットマンとして共に戦った証なのであり、
彼らの元戦友としての絆を深めていく営為なのです。
だから、結城凱が普通の暮らしの中で死んだことは、確かに仲間たちにとっては悲しい出来事ではありましたが、
それは同時に結城凱が普通の人間としての人生を全うしたということであり、
言い換えればジェットマンとしての生き方を完遂したということも出来るのであり、
仲間たちにとっては祝福すべきことでもあったといえます。

あくまで普通の人間として死んだ結城凱はもはや二度と戦士として戦うことはなく、
普通の人間として、その魂は、その翼は永遠に安息の眠りにつく。
それがジェットマンという戦士の在り方なのです。
その安息の眠りを祝し、そのことを願い、元ジェットマンの仲間は銘文を刻んだのです。
この銘文が今回のサブタイトル「翼は永遠に」に繋がってくるわけです。

「ジェットマン」という作品が伝えたかったこととは何なのか?
この作品は戦隊内恋愛描写が多いとか、やたらギャグ回が多いとか、メンバー構成が変則的だとか、
メンバーがなかなか揃わないとか、際立った特徴を多く備えていますが、
これらは全て、あくまで英雄ではない普通の人間が戦っているのだということを
強調するためであったのだと思われます。

そして「ジェットマン」といえば必ず話題となる衝撃の最終回、結城凱の非業の死についても、
要するにあれは結城凱をあくまで普通の人間として死なせて、
普通の人としてその人生を完結させることによって、
ジェットマンは英雄ではなく、あくまで普通の人なのだという作品のテーマを完成させるためだったと
解釈すればいいでしょう。

そして、あそこまで分かりやすく「死んだ」と思わせておいて、
どうしてわざと本当に死んだのかどうかは曖昧にしたのかというと、
後世のクリエイターによってブラックコンドル結城凱を勝手に英雄として復活させられることがないように
予防措置を講じるという念の入れ方であったのだということが分かります。
それが分かっていたから、荒川氏はブラックコンドルを復活させることに頑なに反対したのでしょう。

ここまで念を入れてまで「ジェットマン」という作品が貫き通して
この作品で表現したかったテーマとは何なのかというと、
それは「この世の平和を守るのは、超越的な英雄ではなく普通の人間である」ということでしょう。
あるいは「普通の人間こそが英雄なのだ」ということなのかもしれません。
そのテーマを完成させるために、結城凱はあくまで普通の人間として死なねばならなかった。
そして、その死は曖昧なものとして描写されねばならなかったのです。

結城凱が死んだのはバイラムとの戦いが終わって3年後、
既にバードニックウェーブの効力が消えて、結城凱も普通の生活に戻って以降のことであり、
ひったくり犯を捕まえて懲らしめたところ、キレたひったくり犯に刺されたのですが、問題はこの後です。
おそらくすぐに病院に行けば助かったと思われるのに、
結城凱はそのまま花束を持って天堂竜と鹿鳴館香の結婚式場に行きます。
すぐに行かないと結婚式に参列出来ないから、怪我の治療もせずに無茶をしたのです。
その結果、傷が悪化して結城凱は死にました。
ひったくり犯を捕まえたのは正義のヒーローっぽい行動ですが、
この後の結婚式参列にこだわる姿勢は全く個人的な執着に過ぎず、
むしろ結城凱が死んだのは、こっちの方が主因ですから、
そんなつまらないこだわりで死ぬのはヒーローとしては、むしろやってはいけないことです。
しかし、これこそが結城凱らしい行動でもあるのです。

結城凱は、かつて香とつきあっており、香は結城凱と別れた後、竜と結ばれて結婚することになりました。
そこには何らトラブルは無くスムーズに移行したのであり、結城凱ももちろん2人の結婚を祝福していました。
それでも結城凱が突然、結婚式への参列をとりやめたりしたら、香と竜は少し暗い気分になるでしょう。
香はかつて自分は結城凱と別れて、その親友である竜に乗り換えたわけですから、
本当は結城凱はそのことを内心不愉快に思っていて、それで結婚式に来ることをやめたのか?と思ってしまい、
竜も同様に結城凱が今でも香のことを想っているのかもしれないと気を遣うでしょう。
そうして新郎新婦2人の気分は沈むでしょう。

後で「怪我をしたので行けなかった」と事情を説明することも出来たでしょうが、
その場合も、結婚式当日の新郎新婦の心に曇りは生じさせることになる。
また、結婚式場に「怪我したので行けなくなった」とすぐに連絡を入れることも出来たでしょうが、
香と竜がそれを結城凱が気を遣ってついたウソだと疑う可能性もある。
だから結城凱は、香と竜の晴れの結婚式を一点の曇りも無い心を送らせてやりたい一心で、
とにかく怪我をおして、フラつく足取りで結婚式場へと急いだのです。
そして式が終わって香や竜たちが外に出てきたところに何とか間に合い、
ベンチで何食わぬ笑顔で座って挨拶し、2人を安心させた後、
そのまま眠るように、2人に気付かれないように息を引き取ったのでした。

つまり結城凱は自分の元戦友である元彼女や親友に良い気分で結婚してもらうために死んだのです。
全く個人的感情であり、ヒーローがこんな理由で死んではいけない。
しかし、結城凱というのはこういう男であり、
あくまでヒーローではなく、普通の心優しい人間としてその人生を全うしたのであり、
それこそがジェットマンという特殊なヒーローの在り方だったのです。

そのように、あくまで結城凱が普通の人間として人生を終え、
復活することもないようにその死を明確に描かないという予防措置も講じた。
それで「ジェットマン」という物語は完結したはずでした。
しかし「ゴーカイジャー」のレジェンド回としてジェットマン篇を描く必要性が生じて、
そこには結城凱をレジェンドゲストとして登場させる必要があるということになり、
そのため、「ジェットマン」という作品のテーマを崩さない形で
「ジェットマン」の結末を新たに書き足すことになり、
それは「ジェットマン」メインライターにして最終話の脚本も手掛けた井上敏樹氏しか
為し得ない作業となったのでした。

そこで井上氏は、まずレジェンド大戦については、
普通の生活にこだわっていたジェットマンの存命4人のメンバーも
さすがにこの地球史上最大の危機に際してだけは、
他の33戦隊に呼応して再び戦場に立つことを決意したと解釈しました。
というか、既に第1話レジェンド大戦のシーンでジェットマンが登場してしまっているのですから、
それはそう解釈するしか仕方がありません。

ただ問題は既に死んだはずのブラックコンドル結城凱です。
このブラックコンドルも他の4人のジェットマンと一緒に第1話レジェンド大戦のシーンで
空を飛び戦っているシーンが描かれていましたから、
アバレキラーやドラゴンレンジャーのように
スーパー戦隊の何らかの大いなる力で謎の復活を遂げたという設定にして処理するしかないように見えます。
しかし井上氏はそういう解釈はあえて採用しませんでした。
それをしてしまうと、結城凱が英雄になってしまうからです。

あくまで普通の人間として人生を終えた結城凱は、
戦いの中で英雄的に散っていったアバレキラーやドラゴンレンジャー、タイムファイヤー達とは
違った扱いにしなければいけない。
それはブラックコンドルを貶めて言っているのではなく、
あくまで普通の人間として死んだということにこだわることが、
むしろジェットマンの尊厳を高めるという考え方です。
そうして、あくまでスーパー戦隊の戦士としてではなく普通の人間として死んだ結城凱は、
スーパー戦隊の神秘的な力で謎の復活を遂げるのではなく、
あくまで自分の意思の力で復活したと解釈されたのでした。

そして、死ぬ時も地球の危機を救うためではなく、
単に仲間たちの笑顔を守るために死んだような結城凱という男が自分の意思で復活するわけですから、
その動機もあくまで地球の危機を救うためというようなストレートなものではなく、
仲間のためであったのでしょう。
普通の生活を愛してやまなかった仲間たちがそれでも戦わねばいけないと決意したというのなら、
自分だけが永遠の安楽な眠りを堪能しているわけにはいかないと結城凱の魂は思い、
仲間たちを守って戦いたいという意思の力で自力で復活したのです。

ただ、仲間たちは結城凱の魂が永遠の平和な眠りについていることを願っているので、
結城凱が戦うために復活したと知れば悲しむでしょう。
結城凱もそうした仲間たちの想いが分かるので、
仲間たちを悲しませないために、仲間たちには自分の姿が見えないようにして復活したのでしょう。
もちろん仲間たちに見えないだけで他の人に見えてしまっていては
結局は仲間たちにも自分の復活がバレてしまって意味が無いので、
地球人には自分の姿が見えないようにしたのでしょう。

戦う相手は宇宙人のザンギャックですから、
宇宙人には姿が見えて実体として感触もあるようにして戦ったのでしょう。
まぁそれでも生身とは少し違うので、
生身では考えられないような不思議な動きや移動なども調節次第で可能なのでしょう。
おそらく相手に物理的な打撃を与える時以外は、
割と変幻自在に姿を消したり瞬間移動したりは出来るのでしょう。

そうしてレジェンド大戦の時、結城凱はジェットマン4人の傍に寄り添いながら戦い、
その姿は敵であるザンギャックにしか見えなかったのです。
第1話冒頭のレジェンド大戦のシーンでブラックコンドルの姿が映っていたのは、
あれはザンギャックにしか見えていなかった部分も含めた完全版の映像であったわけです。
地球人目線ではブラックコンドルは見えていなかったのです。
それで「消えたブラックコンドル」という謎が生まれ、
そしてレジェンド大戦の場に存在していなかったはずのブラックコンドルのレンジャーキーだけが残り、
結城凱は戦う力を失い、再び魂となって虚空に消えていきました。
そしてジェットマンの存命4人も何も語らず普通のひっそりした生活に戻っていった。
あるいは4人はかすかに結城凱の存在を感じていたのかもしれないが、何も語らないためそのあたりは謎です。

そして地球に再びザンギャックが侵攻してきて危機が訪れ、
更にマーベラス一味がやって来て、スーパー戦隊の大いなる力を集め始めました。
そして今回、マーベラス一味はキアイドーとの戦いに使うためにジェットマンの大いなる力を探し始めた。
もしマーベラス一味がジェットマンのメンバーと接触すれば、
ジェットマンのメンバーは戦う力を失った状態で、
この地球の危機を救おうとして戦おうとしてしまうかもしれない。
あるいはマーベラス一味とキアイドーの戦いに巻き込まれてしまうかもしれない。

そのような事態を避けるために結城凱の魂は再び自分の意思の力で復活体となりマーベラス達の前に現れ、
ジェットマン探しを邪魔し、こうして自分の墓碑に案内して、
ジェットマンのメンバーが今は普通に平穏に暮らしており、
自分がその仲間たちと強い絆で結ばれていることを示し、
その仲間たちを戦いに巻き込んで欲しくないという自分の気持ちをマーベラス達に理解させようとしている。
そのように鎧は解釈したのでした。
この解釈ならば、昨日からの結城凱に関する不可解な現象が全て説明がつきます。

このままこの墓碑の前で待っていれば、
おそらく今日にでも墓参りに来た元ジェットマンのメンバーとは出会うことが出来るはずです。
結城凱もそのことを承知でこの場所にマーベラスを案内した。
あとはマーベラスの判断に任せたのです。

これほどの結城凱の仲間を想う気持ちを示されて、
それでもそれを無視してこの場でジェットマンのメンバーを待ち伏せするなら、
所詮マーベラスはその程度の人間ということであり、
どっちみちそんな卑しい男に「大いなる力」を元ジェットマンのメンバーが渡すはずはない。
そんなことはマーベラスにも分かるはずであるから、
この場はマーベラスは大人しく立ち去り、ジェットマンのメンバーを探すこと自体、諦めざるをえなくなる。
そこまで考えて結城凱はこの場にマーベラスを連れてきたのだと、鎧もマーベラス達も思いました。
そして、結城凱に完敗したと感じました。
確かにこれで結城凱の望み通り、自分達はもうジェットマンの大いなる力に手が出せなくさせられてしまった。
見事に結城凱にしてやられてしまったと、痛感したのでした。

しかし、マーベラスだけは鎧の解釈に少し違和感を覚えていました。
結城凱が既に死んでいて、仲間たちと強い絆で結ばれていて、仲間たちを戦いに巻き込みたくないから、
信じられない強靭な意思の力で復活してジェットマン探しを阻止しようとしている。
それは確かにそうなのでしょう。
しかし、それだけでは何故あそこまで結城凱が自分に突っかかってきて罵倒して殴りつけたり、
モバイレーツを奪ったりしたのか、よく分からないのです。

確かにそうやって挑発してこの墓碑まで誘い込む作戦だったのかもしれないが、
それにしては結城凱は熱くなりすぎていたように思える。
何か自分に対して、単に「ジェットマンを戦いに巻き込もうとしている迷惑な奴」としてだけでなく、
それを超える悪感情を抱いているように思えました。
自分に何か他の用があったのではないかとも思えました。

そして、もう1つマーベラスが違和感を覚えたのは、
こうして墓碑の前に立ってみて理解することが出来たジェットマンという戦隊や結城凱という男の実態でした。
あれほど「パンチに魂がこもってた」とか「弱さと向き合える」とか結城凱が言っていたから、
さぞ鋼のような熱く強い不屈の戦う心を持った戦隊をイメージしていたのです。
しかし、こうして墓碑の前に立って受けるイメージは、
むしろ自らの平穏な普通の生活を汲汲と守ろうとする弱弱しいイメージでした。
そんな戦隊のレッドが自分よりも強い心を持っていたとは思えず、マーベラスは戸惑います。
結城凱の言葉から、もしかしたらジェットマンのレッドの話を聞けば、
今の自分の突破口になるのではないかと期待して、
こうして結城凱を追いかけてここまでやって来たのですが、これでは拍子抜けでした。

そして、結城凱にしても、確かに仲間想いの男であることは分かりましたが、
結局は普通の生活を愛する平凡な男のように思えました。
そんな程度の男が、自分の意思の力で死を乗り越えて復活することまで本当に出来るものなのだろうか?
とマーベラスは疑問にも思いました。
実際に復活して姿を見せている以上、そう解釈するしかないのですが、
わざわざ復活して結城凱が単にジェットマン探しの邪魔をしたいだけだとしたなら、
それはマーベラスから見て、何だかつまらないことのように思えました。
本当にそんなことだけのために結城凱が死から復活までしたとは、やはりどうにも思えなかったのでした。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 13:56 | Comment(0) | 第28話「翼は永遠に」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月02日

第28話「翼は永遠に」感想その5

さて、キアイドーはその頃どうしていたのかというと、ゴーミン部隊を引き連れて地上に降りてきていました。
といっても別に行動隊長に就任したわけではないので、正確に表現すれば引き連れていたわけではない。
勝手にゴーミン部隊がキアイドーにくっついてきていただけです。
再びマーベラス一味を狙うよう依頼されて地上に降りたキアイドーでしたが、
バリゾーグはキアイドーがかなりやる気を失っているのを見て、
マーベラス達を追い詰めたとしてもまたわざと見逃すのではないかと危惧し、
その場合、キアイドーに倒されて虫の息になっているマーベラス達にトドメを刺すために
ゴーミン部隊にキアイドーに金魚のフンのようにくっついていくよう命じたのです。

キアイドーとしてはすっかり現状のマーベラス一味に興味を失っているところに
金魚のフンのようにゴーミン部隊につきまとわれて、すっかり嫌な気分になって地上でダラダラしています。
そのキアイドーとゴーミン部隊の背後に、いつの間にか何者かが立っていることに
キアイドーはいち早く気づき、振り向きます。
ゴーミン達も一瞬のうちに何者かに背後をとられていたことに驚き焦り、振り向くと、
黒い服を着た男が1人で立っています。結城凱でした。

キアイドーは結城凱の姿を見て、見知らぬ男だが、只者ではない雰囲気を感じてゾクリと快感を覚え、
「ほう・・・俺と遊んでくれるというのか・・・?」と問いかけます。
結城凱は不敵に微笑みつつ「ああ、楽しませてやるぜ・・・泣くほどなぁ!」と、キアイドーと戦う意思を示します。
キアイドーはちょうど退屈していたところであったので、この謎の男との戦いに興味を持ち、
「貴様が何者でも構わん!・・・ただ、強くあってくれればなぁ・・・」と言いながら剣を抜いて
「見せてみろぉっ!!」といきなり怒鳴りながら目の前に立っていたゴーミン数人を斬り捨てます。

傍にいた他のゴーミン達は驚いてキアイドーの方に向き直りますが、
キアイドーは「フン!」と剣をゴーミン達の方に向けます。
そのまま突っ立っていると斬り捨てるという意思表示です。
つまり、キアイドーは自分にくっついてきているゴーミン達を脅して結城凱に向かって突っ込ませ、
まずは結城凱の実力を品定めしようとしているのです。
キアイドーはゴーミン達に対して突っ込まなければ問答無用で斬り捨てる姿勢を示していますから
ゴーミン達にそれを拒絶することは出来ません。大慌てで結城凱目がけて殺到します。

それを迎え撃った結城凱はハイキックでゴーミンを蹴り飛ばし、
周りを囲んだゴーミン相手にパンチやキックで大立ち回りを演じるのでした。
ここでの若松氏、凄く足が上がってます。
いやハイキックのところは吹き替えかもしれませんが、それにしてもよく身体が動いています。

さて、そうして結城凱がゴーミン部隊と戦っていると、そこにマーベラス達6人がやってきます。
マーベラス達はさっきの墓地にいたところ、
ザンギャック反応を探知したナビィからの連絡でここでやって来たのですが、
指定の場所に来てみると、キアイドー配下のゴーミン達と結城凱が戦っているので驚いて立ち尽くします。

「・・・結城凱・・・」と目を疑うように驚くルカの言葉を聞いて、
「ええ?何処に居るんですか?」と鎧は目の前に結城凱が居てゴーミンと戦っていると知り、
ゴーミン達の群れの方を必死で凝視して尋ねます。
やはり鎧にだけは結城凱の姿は見えていないようです。
鎧も結城凱が自分の姿を地球人には見えないようにしているのであろうことは推測しているのですが、
それでもマーベラス一味の中で自分だけ結城凱の姿が見えないということには理不尽さを感じていました。
確かに自分は地球人だが、宇宙海賊マーベラス一味の一員なのですから、
結城凱がマーベラス一味に姿を見せてアプローチしてきているのなら、
自分にもその姿が見えるように調整するべきだと不満でした。
というか、そうしてほしいと切に願っています。
何せ、目の前に伝説の「消えたブラックコンドル」が居て戦っているというのですから、
スーパー戦隊ファンの鎧としてはそれは垂涎ものであったのです。

一方、結城凱の姿が見えているマーベラス達は、
どうして結城凱がゴーミン達と戦っているのかよく分からず、混乱していました。
いや、確かに結城凱もレジェンド戦士の一員なのですから、ザンギャックは宿敵のようなものです。
だから戦っていても不自然ではないのですが、しかしどうにも結城凱の行動は突拍子も無くて、
その意図がよく分からない。
マーベラス達のジェットマン探しを制止するために死者の世界から舞い戻って姿を現したはずではなかったのか?

そもそも死者が復活するということ自体が奇跡的なことであり、
神の仕業でもなく自分の意思の力でそんな奇跡を起こしているとしたら、
それはどれほどの精神力を必要とすることなのか想像もつかない。
とにかく並大抵のことではないはずです。
何か地上で非常に強い目的意識があり、それをやるためだけに復活という奇跡を起こし、
それを成し遂げれば再び天に還るというのが精一杯のところでしょう。
ならば結城凱はマーベラス達のジェットマン探しを諦めさせた時点で目的を果たし、
楽になって天に戻っているべきではなかったのか?

それなのに未だ地上に残り、ザンギャック部隊と戦っている。
それは大変な精神力の消耗のはずです。
本当は存在しないはずの肉体を精神力で作り出し、その身体で周囲を囲むゴーミン達を殴り蹴る。
生きている人間でも大変な消耗を強いられる作業です。
それを存在しないはずの肉体を精神力で作って実行している。
マーベラスと喧嘩した時とは比にならない重労働を自らの精神に課し、
その疲労は生きている人間ならば肉体の生理的作用である程度は解消される。
解消しきれなくなったら精神の活動を停止させて肉体を休める。
しかし魂だけの存在がその疲労を全て精神でのみ受け止めたらどうなるのか?
下手したら魂が消滅して、無に帰するのではないでしょうか?
そのような危険を冒してまで、どうして結城凱は地上にとどまって1人で戦い続けるのか?

マーベラス達が不可解に思って戦いを凝視していると、突然、結城凱は右腕を顔の横にかざします。
すると右腕になんとクロスチェンジャーのエンブレムフォーメーションが出現し、
結城凱がエンブレムフォーメーションの中央部を押すと、結城凱の姿はブラックコンドルへと変身し、
結城凱はブリンガーソードを振るってゴーミン達を一気に倒していきます。

クロスチェンジャーはジェットマンの変身アイテムであり、
その右腕用のエンブレムフォーメーションの中央部を押して変身するのは
ジェットマンの正しい変身法ではあります。
しかし、結城凱は変身能力はレジェンド大戦で失っているはずですから、
ブラックコンドルに変身出来るわけがないのです。
それなのにいきなり結城凱が目の前でブラックコンドルに変身したものですから、マーベラス達は仰天しました。
呆気にとられるマーベラス達の中で鎧だけが相変わらず何が起こっているのか分からず
不満そうな顔をしていますが、「・・・変身した・・・」と唖然として呟いたハカセの言葉を聞いて、
なんとかその姿を見たいと思い、ハカセを押しのけて必死で戦いの現場の方を覗き込みます。

その時、ハカセはもしかして、結城凱もハリケンジャーやゴセイジャーのように
レンジャーキーを使って変身したのかもしれないと思いました。
何せ神出鬼没の幽霊のような存在ですから、
ガレオンに忍び込んでブラックコンドルのレンジャーキーを持ち出していたのかもしれないと思い、
急いでカーギーロードを通じてイマジネーションで
宝箱の中のブラックコンドルのレンジャーキーを取り寄せてみます。
取り寄せられなかったら、結城凱に盗まれたということです。

ところが、カーギーロードを通ってハカセの掌に出現したレンジャーキーを見てハカセは愕然とします。
「ウソでしょう?レンジャーキーはここにあるのに?」と叫ぶハカセの手には、
ブラックコンドルのレンジャーキーがしっかりと握られていたのでした。
ブラックコンドルの戦う力はハカセの手の中に今もあります。
じゃあ、今、目の前で結城凱の変身したブラックコンドルとは、いったい何なのか?
マーベラス達はますます混乱します。

そうこうしているうちにゴーミン達を蹴散らしたブラックコンドル結城凱に向かい、キアイドーが襲い掛かり、
結城凱とキアイドーの一騎打ちとなります。
ゴーミン達は全滅したわけではありませんが、キアイドーはゴーミン達を下がらせ、
結城凱との一騎打ちを望んだのです。
つまり、ゴーミン達をけしかけてのテストの結果、結城凱はキアイドーの戦いの相手として合格したのです。
こうして結城凱のブリンガーソードとキアイドーの剣が激しい火花を散らして叩きつけ合い、
鍔迫り合いをし、迫真の対決となります。
キアイドーは鋭く突き出された結城凱の剣を手で受け止めて「やるな!・・・嬉しいぞ!」と歓喜の声を上げ、
反撃に転じ、それに結城凱も応えて激しい戦いとなります。

ちなみにこのブラックコンドルですが、
スーツアクターは「ジェットマン」当時のブラックコンドルのスーツアクターを務めていただいた
大藤直樹氏にオファーして演じていただいています。
つまりオリジナルそのまんまのブラックコンドルの完全再現なのです。

あの自分達を圧倒したキアイドーと互角の戦いを繰り広げる結城凱の姿を
唖然として見つめるマーベラス一味の鎧を除く5人でしたが、
次第に結城凱の戦い方の異常に気が付いてきました。
一見互角に見える戦いですが、よく見るとやはり剣の勝負ではキアイドーの方が押し気味で、
結城凱はピンチの場面も多い。なのに結城凱は真正面からひたすら愚直に斬り合っています。
しかしこれは妙です。ジェットマンの力は斬り合うだけではない。
銃も使えるし、なんといっても滑空して空を舞うことも出来る。
なのに結城凱はそうしたジェットマンの特有の力を全く使っていません。

これはつまり、使いたくても使えないのでしょう。
何故ならそれらのブラックコンドルの本当の戦う力はハカセの手の中の
ブラックコンドルのレンジャーキーの中にあるだけだからです。
ならば、今、結城凱が変身しているあの姿は何なのかというと、
それは結城凱の意思の力で作り出した一種の「擬態」なのでしょう。
ブラックコンドルに似せた姿を上に被っているだけで、
多少は防御力は上がったものの、本質的には変身前と同じなのです。
その上で、剣を意思の力で実体化させて、それを振るって戦っている。

だから変身能力の無い身体で剣を振り回しているのとそんなに変わらない力しか発揮出来ないはずなのです。
それなのにキアイドーとあそこまで張り合っている。
それは意思の力によりものだと言うしかない。
よく「意思の力で戦う」などと生身の人間がレトリックとして言うが、
この結城凱の場合、それはレトリックでもなんでもなく、まさに「意思の力」です。
何せ、本当は肉体が無くて、意思しか存在しないのですから、意思の力で戦っているとしか考えようがありません。
意思の力だけで、魂をひたすら削って、あそこまでのことをして戦っているのです。

死によって肉体というクッションすら失った、剥き出しの魂という脆く弱い存在である自分をひたすら鞭打って
無茶な戦いに結城凱を駆り立てているものはいったい何なのか?
ここまで結城凱を駆り立てるもの・・・それは、ジェットマンの仲間しか有り得ないでしょう。
結城凱が意思の力で復活して戦いに身を投じるというのは、
レジェンド大戦の時と同様、仲間を守ることを目的とした場合しか有り得ない。

ジョーは何かに気付いたように
「・・・死んでもなお戦っている・・・他のジェットマンを守るために・・・!」と呟きつつ、
前に立って結城凱を見つめるマーベラスの背中を見ます。
ジョーは結城凱が何をするために自分達の前に現れたのか、ようやく分かったのでした。

結城凱はマーベラス達のジェットマン探しを邪魔するために現れたのではない。
いや、ジェットマンの仲間をそっとしておきたいという気持ちはあったのは確かです。
それに、マーベラス達がジェットマンを探そうとしていることも知っていたのでしょう。
しかし、もともと結城凱がマーベラス達の前に現れたのは、ジェットマンの大いなる力を託すためだったのです。
何故なら、他のジェットマンを戦いに巻き込みたくないと結城凱が考えるのならば、
ジェットマンの大いなる力を託すためにマーベラス達の前に姿を現す役目を担うのは
自分しかいないと考えるのが当然であり、
さっさと自分がマーベラス達に大いなる力を渡してしまえば、
ジェットマンの他の仲間の普通の静かな生活が乱されることはなくなると考えるのが当たり前だからです。

だから結城凱は意思の力で復活体となり、
ジェットマンの大いなる力を渡すためにマーベラス達に接触しようとした。
ところが近くで見てみると、
マーベラス一味はジェットマンの大いなる力を託すに相応しいレベルに達していなかった。
それではジェットマンの大いなる力は結城凱からマーベラス達へ移動しない。
それで結城凱としても困ってしまった。
そこに更に悪いことに、マーベラス達がキアイドーとの戦いで使うためにジェットマンの大いなる力を欲しがり、
ジェットマンのメンバーを探し始めてしまった。

このまま放置しておくとジェットマンの仲間が戦いに巻き込まれてしまうと焦った結城凱は
マーベラス達のジェットマン探しを邪魔し、
マーベラスを墓地へ誘導してジェットマン探しを諦めさせ、
同時に、マーベラス達に大いなる力を渡してやることが出来ない以上、
マーベラス達をジェットマン探しに走らせている元凶であるキアイドーは自分の手で倒そうと決意したのです。
つまり、ジェットマンの仲間の普通の生活を守るために、
結城凱は自分の魂を削ってキアイドーと戦うことにしたのです。
そして、結城凱の魂にそこまで無理を強いることになったそもそもの原因は、
マーベラス達がジェットマンの大いなる力を使いこなすだけの段階に達していないせいでした。

自分達が不甲斐ないせいで結城凱に苦しい戦いを強いる羽目になってしまっている。
マーベラスは結城凱に申し訳なく思いました。
キアイドーとの戦いも明らかに結城凱は押され気味になってきています。
しかし、それでも結城凱は全く弱気になっている様子はありません。
意思の力で、死んだ魂だけの身でもジェットマンの大いなる力までも使いこなして逆転勝利する気でいるのです。
その強い意思の力こそがジェットマンの大いなる力を使いこなす力なのでしょう。
あるいは結城凱ならば、そこまでやってのけるかもしれないともマーベラスは思いましたが、
同時に、そこまで魂を削るのは死人の脆い魂には限度があるだろうとも思えました。

しかし、どうしてそこまで強い意思の力を発揮することが出来るのか?とマーベラスは黙って考えました。
弾き飛ばされた結城凱が不屈の闘志で顔を上げると、キアイドーも「こい!」と誘います。
マーベラスは瞑目し、何故、結城凱はこの状況で強い意思で立ち上がれるのか考えました。

結城凱は死によって肉体を既に失い、剥き出しの魂だけの脆弱な存在です。
これほど弱いものはない。そんな脆弱な状態で魂を削って戦えば、魂までも消滅して無に帰するかもしれない。
それが結城凱は怖くはないのか?
どうして恐怖に打ち勝って強い意思を持ち続けることが出来るのか?
それは仲間のためだからと言うのか?

しかし仲間といっても、共に戦う仲間ではない。
結城凱は仲間の普通の生活を守るために自分だけが戦っているのです。
つまり仲間は戦わない。ただ守ってもらうだけの弱い存在です。
何の力にもなってくれない弱い仲間です。
そういう弱い者達を守るための戦いをする自分もまた、このうえなく弱い存在なのです。

どうしてそれで恐怖を感じないのか?
どうして強い意思を持ち続けられるのか?
自分などはいくら強くなっても、弱い者を守る戦いでは失敗を恐れて不安を感じるというのに、
弱い者が弱い者を守らねばならない場合は、その不安や恐怖は猶更であるはずだろうに
・・・と考えたところで、マーベラスは気づいたのです。
自分が何に恐怖を感じていたのか、自分の弱さが本当は何であったのか、分かったのでした。

マーベラスは今まで、ただ単に自分の強さを自分の戦いのためだけに使ってきました。
ところが最近、地球の人々を守るために戦おうと決意し、
自分の強さを地球の弱い人々を守るためにも使おうと思うようになったのです。
しかし、ここに不安が生じることになってしまっていたのです。
弱い人々を守って戦うことによって、今までの自分の強さの中に弱みが生じてしまったのではないかという
不安が生じたのです。
弱い人々を庇うことによって、自分の強さを今までのように常に100%発揮することが出来なくなり、
以前よりも自分は弱くなったのではないかという不安がつきまとうようになってしまったのでした。

それは普段は微かな不安でしかないのですが、
今回、キアイドーという強敵に相対した時、
弱い人々を守ることによって以前よりも弱くなった自分でキアイドーに勝てるだろうかという不安が大きくなり、
弱気になってしまった。
それを自分は勝手に過去のキアイドーに敗れた時の恐怖が未だに残っているせいだと勘違いしていただけなのです。
そのせいで焦ってますます深みに嵌っていったのです。

そして、結城凱がジェットマンの大いなる力をマーベラス達に託せないと思った理由も
マーベラス達がこの弱気を克服出来ていないゆえのことだったのです。
おそらく、結城凱がこのタイミングでマーベラス一味に接触してジェットマンの大いなる力を渡そうと思った理由は、
マーベラス一味がこの弱さを克服するタイミングだと判断したからだったのでしょう。
つまり、今まで強かったマーベラス一味が地球の弱い一般の人々を守るために戦うようになり、
今までの強かった自分が弱くなったという不安に襲われるようになり、
それを克服する頃だと判断したのです。
それを克服することがジェットマンの大いなる力を使いこなすポイントなのでしょう。

ところがマーベラス一味はその不安を克服出来ていなかった。
それ以前に、マーベラスとジョー以外は、その心の奥底の不安の存在すら意識していなかった。
マーベラスとジョーにしても、何か自分の中に正体不明の「弱さ」が生じていて、
戦いに悪影響を及ぼしていると気付いていただけで、
その「弱さ」がどういう脈絡で生じているのかほとんど把握していなかった。
マーベラスなどは、その「弱さ」をとっくに解消している過去の「弱さ」と混同して
見当違いに苦悩してしまっていました。
それで結城凱はマーベラスとジョーのモバイレーツを取り上げて、あえて弱い自分と向き合わせようとしたのです。

そして結城凱はマーベラスを散々に罵倒したが、
あれも結城凱はキアイドーとの戦いにおけるマーベラスの不甲斐なさを責めていたわけではないのです。
そんなことはもともと結城凱の眼中にはありません。
結城凱が問題視していたのは、弱い人々を守る戦いでマーベラスが弱くなることをビビっていることや、
マーベラスが自分の強さしか見ようとしないガキであり、
自分の弱さを直視して活かそうとしていないこと、
それゆえ天堂竜や他のジェットマンのように強い意思の力を戦いの場で発揮できないこと、
それゆえジェットマンの大いなる力を使いこなすことが出来ず、
弱い人々を守って戦う資格すらないということです。

これら諸々の問題点を結城凱は罵倒しながら言葉にしてマーベラスにぶつけていたのですが、
マーベラスはそれらを全てキアイドーとの戦いに関することだと勘違いして、
その真の意味に気付くことが出来ていなかったのでした。

その問題点を解決する解答は、今まさに結城凱が行動で示しています。
結城凱は自分が現在、途轍もなく脆弱な存在であることは分かっています。
その弱い自分が、仲間たちを戦いに巻き込まないために戦っている。
仲間たちを戦うことのない弱い立場のままにして守ろうとしているのです。
つまり弱い者を守ろうとしている。
弱い自分が弱い者を守るために戦おうとしている。

それは一見、このうえなく不安なことのように思えます。
自分が弱いと思うだけで戦いに際しては既に不安ですから、
その上、弱い者を守らねばならないとしたら猶更不安になるように思えます。
しかし、そうではないのです。
自分が弱いと分かっているからこそ、
弱い者を守るためには自分は強くならなければいけないという前向きな強い意思が生まれるのです。

何も守るものがなく、ただ単に弱い自分が1人で戦う場合は不安しか生じないものですが、
弱い者を守らなければならないと思うと、
自分が弱いと自覚している者は強くなろうという強い意思が生じるのです。
だから弱い者は、強い意思で恐怖を乗り越えるためには、弱い者を守るために戦うのが良いのです。
結城凱はそのようにして究極の脆弱な存在でありながら弱い仲間たちを守るために戦おうとしたゆえに、
死を超越する強い意思の力を発揮出来ているのです。

逆にもともと自分が強いと思っている者は、弱い者を守るために戦う場合、
自分が弱くなることばかり心配してしまい、守りに入って、不安の虜となり、
逆に弱気になってしまうのです。
マーベラス一味を最近蝕んでいたのはこの弱気であり、
この弱気が生じるようになったということは、
マーベラス一味が十分に強くなり、自らの強さに自信を持つようになったということであり、
そして、地球の一般の弱い人々を守るために戦おうと心に決めたということでもあります。
これらの条件が揃った場合に、この弱気は生じるのです。

つまり、それだけマーベラス一味がヒーローとして成長したということなのです。
その段階に達すれば、次はこの弱気を克服して、
その段階でジェットマンの大いなる力が使いこなせるようになるのです。
その克服の方法は、
強くなった自分が弱い者を守ろうとした時に生じた弱さこそが自分の本当の弱さだと認めて直視し、
自分は本当は弱いと知り、弱いからこそ弱い人々を守る戦いの中で
自分の壁を超えてより強くなるための熱い意思の力が生じるのであり、
だから弱い者が弱い者を守るために戦うことには、
超越的な強いヒーローが弱い者を守る戦いよりも意義があるのだと知ることです。

つまり表面的な強さより本質的な弱さの方にこそ強い意思を生み出す価値があるのだから、
強さにこだわるよりも自分の弱さを直視すべきだということです。
これはジェットマンがバイラムとの戦いの中で学んだ重要なテーマと同じであったのですが、
マーベラス一味がこのジェットマンのテーマを身につけるべき段階で、
自分の強さのことばかり気にして、新たに生じた自分の弱さを直視することが出来ずにいたため、
その弱さを克服して弱さから強い意思を生み出すことが全然出来ていなかったので
結城凱は失望していたのでした。

結城凱はジェットマンに入る前は街の遊び人で喧嘩自慢、自信の塊で、
自分の強さだけを信じているような男でした。
そんな結城凱がジェットマンに入った理由は単なる退屈しのぎの腕試しと、
偉そうにプロの戦士を自称する天堂竜の鼻を明かしてやるという対抗意識ゆえでした。
しかしそんな結城凱は本当は心優しい男であったので
素人で弱い仲間たちや普通の一般人を守ろうとする意識を持つようになり、
そのために今までは強いと思っていた自分が弱くなったように感じ、
あくまで強い竜に対してコンプレックスを抱き、竜に反発ばかりしていたのです。

ところが敵の攻撃で死んだと思われていた竜の恋人が洗脳されて敵の幹部となっていたことを知って
竜が腑抜けのようになった事件で、
結城凱は実は竜が心の弱い人間で、恋人を守れなかった自分の弱さを痛感しながら、
それでも地球や仲間たちを守るために強くあろうと努力し、
その結果、強い意思の力で戦士として成長していたことを知りました。
そして、自分に芽生えた弱さから目を逸らそうとして
竜の強さにコンプレックスを抱いて反発ばかりしていた自分はガキだったことを思い知ったのでした。

だから結城凱は自分の弱さを受け入れ、竜の弱さも受け入れ、
竜の弱さも他の皆の弱さも守るために自分は強い意思の力で自分の壁を越えてより強くなろうと思えたのでした。
そして結城凱は、恋人に関する新事実にショックを受けた竜もきっと、
この自分の新たな弱さとも向き合い、仲間や地球を守るために強い意思で復活して
より強くなってくれると信じて待つことにしたのでした。
その結果、結城凱は真に強い戦士となり、竜も復活し、
ジェットマンは自分の弱さを知る者同士が守り合いつつ地球を守ろうとする意思の力で
より強くなっていくという絆で結ばれた戦隊となったのです。

だから結城凱はジェットマンの戦士である限り、
たとえ死んで魂だけとなった今でも、自分の弱さを感じれば感じるほど、
その弱さと向き合うことで、より強くなろうとする強い意思で仲間のために立ち上がり戦えるのです。
キアイドーとの戦いで劣勢となっても、劣勢であればあるほど、強い意思が湧きあがってくる。
結城凱は剣を握りしめて立ち上がり、キアイドーに向かって突っ込んでいきます。

その姿を目の前にして瞑目するマーベラスは、心に中で自分自身を見つめていました。
自分は地球を守って戦うと決めた時から、
実は弱い人々を守って戦うことで自分の強さが損なわれることを心の奥底で恐れていた。
弱くなることにビビッていたのだ。
キアイドーにビビっていたのではない。自分の弱さに向き合うことにビビっていたのです。
結城凱はそれを見て失望し、マーベラスや、同じく自分の心に生じた弱さの正体に向き合えていなかったジョーを
強制的に「弱くなった自分」に向き合わせるためにモバイレーツを取り上げたのです。

ところが自分はモバイレーツが無くなって取り乱してしまった、とマーベラスは反省した。
自分の弱さに向き合わず、ガキにようにもともと持っていた強さを維持することしか考えられなかった。
だからモバイレーツが無くて不安と恐怖に囚われてしまい、
自分の弱さを直視してそこから強くなろうという意思を生み出すことが出来ていなかった。
それを見て結城凱が「ジェットマンの大いなる力は使いこなせない」と言ったのは、あまりにも当然でした。
それはジェットマンの精神と最も遠いからです。

今、自分に必要なことは・・・と思い。マーベラスは瞑目したまま右手を下前方に突き出し、
指を少し折り曲げてモバイレーツを握るような形とします。
今の自分はモバイレーツを持たない弱い自分だ。
しかし今まで、自分はその現実に目を瞑り、有りもしないモバイレーツを持とうとして
このように虚空を虚しく掴んでいた。
目を瞑って手をこんな形にして強さを握ったつもりでいただけでした。

しかし、そんな強さは本当は無い
・・・そう心に言い聞かせ、マーベラスは掌の虚空をギュッと握り潰しました。
自分の強さは無くなったのであり、今の自分は弱い。
その弱さを直視するかのように、マーベラスはカッと目を見開きます。
そして強い意思のこもった視線でキアイドーと戦う結城凱の姿を見ます。

今の自分は確かに弱い。
しかし、脆弱な魂を削って戦う結城凱や、
その結城凱が守ってきた、守ろうとしている全ての弱き普通の生活を送る者たちを守るために戦うならば、
自分はきっと今よりもっと強くなろうという意思の力で前へ進んでいける。
そう思ってマーベラスは力強い足取りで前へ踏み出し、
結城凱とキアイドーの戦う場所へ向かっていきました。

ジョーは歩き出したマーベラスの背中を見て一瞬、少し驚きますが、
その背中から強い意思の力を感じて微笑みます。
マーベラスがモバイレーツを持たない弱さと向き合って、それでも前へ進む決断をしたことが
ジョーにも伝わったのでした。
マーベラスがそう決断したのなら、自分も同じようにモバイレーツを持たないままでも、
当然一緒に前へ進むに決まっているとジョーは思いました。
マーベラスはジョーが夢の果てまで付き合うと決めた相棒だからです。

そうしてマーベラス、それに続いてジョーが前へ歩き出したのを見て、
まずアイムが、そしてルカとハカセも頷き合って、2人に続きます。
モバイレーツを持たない2人が前へ進む以上、自分達が行かないわけにはいかない。
2人を守るためにも当然共に行くことになります。
そして最後に、結城凱の戦う姿を見ようとしてしきりに目をこすっていた鎧も、慌てて5人の後を追います。

そうしてキアイドーに吹っ飛ばされた結城凱が立ち上がって剣を構えてまた前へ出ようとしたところで、
マーベラス達6人は結城凱に背を向けてキアイドーに対峙するように間に割って入ります。
「ほう・・・」と意外そうに呟くキアイドーを真っ直ぐ見据え、
マーベラスは落ち着いた声で「お前の相手は俺たちだ!」と言います。
自分の弱さを乗り越える意思を手にしたマーベラスには、もはやキアイドーに対する気後れは無い。
マーベラスの背中を見て声を聞き、それを感じ取った結城凱は変身を解き、
「お前・・・ようやく恐怖を乗り越えたようだな!」と薄笑いを浮かべます。

マーベラスは結城凱に背を向けたまま厳粛な表情で頷き、
「自分に勝つ力・・・自分の壁を打ち破る力!・・・死をも乗り越える・・・意思の力・・・!」と
最後は結城凱の方を少し振り向いて言います。
死をも乗り越えてきた結城凱の意思の力を見せられることで、
マーベラスはその意思の力こそが自分の弱さや恐怖を克服する「自分に勝つ力」、
すなわち「ジェットマンの大いなる力」の源なのだと悟ることが出来たのでした。

最後にマーベラスが少し振り向いたのは結城凱の意思の力に対する畏敬の念であったのですが、
結城凱は軽い笑顔で「分かったみたいだな、大いなる力が!」と言うと、
マーベラスとジョーのモバイレーツを取り出して
「さっさとアイツを倒してこい!」と檄を飛ばしながら、2人に向かってモバイレーツを放り投げます。
結城凱もマーベラスがようやく自分に生じた人々を守るヒーロー特有の弱さに向き合うことで
ジェットマンの大いなる力を使いこなせるようになったと認めたようです。
そうなれば、もはや独りよがりな快楽のために振るう自分の強さしか見ることも出来ないキアイドーなど、
マーベラスの敵ではないはずです。
よって結城凱はまるでお使いを頼む程度の軽さでキアイドーを倒すよう檄を飛ばすのです。

その信頼に応えようとする力強い表情で半身で振り向いて、
黙ってモバイレーツを受け取ったマーベラスとジョーは、キッとキアイドーの方に向き直り、
6人揃って「豪快チェンジ!!」と、ゴーカイジャーに変身します。
そして、キアイドーの前に立ち塞がるゴーミン達に向かって
「派手にいくぜ・・・!!」とマーベラスがゴーカイガンをぶっ放して戦闘開始、
まずは6人とゴーミン達との乱戦となります。

そして、隙を見て迷うことなくキアイドーへと突っ込んでいくマーベラスに
追いすがろうとするゴーミン達を「行かせるか!!」とジョーが斬り倒していきます。
ジョーはあくまでマーベラスを1人で行かせ、自分はゴーミン達を倒すことに専念し、
マーベラスがキアイドーを一騎打ちで叩くためのフォローに徹します。
マーベラスが手に入れた「自分に勝つ力」が本物なのかどうか、
キアイドーに打ち勝つことで証明してみせねばならない。
そのためにはまず一騎打ちで打ち勝って見せるしかないのです。

そうしてマーベラスはキアイドーと激しく戦い、さすがにキアイドーも反撃して、
マーベラスはキアイドーの剣を喰らって倒れます。
最初の戦いではこれでマーベラスはひるんでしまったのですが、
今回はマーベラスは自分の弱さと向き合ったことによって、
自分が強くなっていくことを信じられるようになっていますから、こんな程度では心は折れません。
すぐに反撃に転じて、キアイドーを後退させます。

もともと実力ではマーベラスはキアイドーに大差ない程度まで成長していたのです。
それが、自分の心に生じていたヒーロー特有の弱さを勝手にキアイドーへの昔感じた恐怖と混同して
萎縮して実力を出せていなかっただけですから、
それが解消した今、マーベラスはキアイドーと互角の勝負は出来るようになっています。

そして自分の心のヒーロー特有の弱さを克服して、更に強くなろうという強い意思を持ったマーベラスは、
ここで更にキアイドーの力を凌駕していきます。
ジャンプして振り下ろしたマーベラス渾身の一撃は、キアイドーの防ごうとする剣を弾いて、
キアイドーの身体を縦一直線に豪快に斬り裂きます。
これでマーベラスとキアイドーの一騎打ちはマーベラスの一本勝ちのような形となり、
キアイドーは大きなダメージを受けてよろめきます。

勝負ありと見た結城凱は、「ジェットマンで決めろ!ゴーカイジャー!」と檄を飛ばします。
結城凱はマーベラスがキアイドーに勝利したのを見て、
マーベラスが完全に「自分に勝つ力」を手中にしたことを確認し、
ジェットマンの大いなる力を使いこなせると、遂に完全に認めたのです。
こうなったら別にジェットマンにチェンジしなくても勝てそうですが、
ここは結城凱としては、ジェットマンの力と精神を引き継いで戦い
勝利するゴーカイジャーの姿を見たいのでしょう。

死を乗り越えて「大いなる力」を託しに来てくれた結城凱への手向けとして、
その結城凱の願いを叶えたいと思ったマーベラスが「ああ!」と応じてバックルから取り出した
レッドホークのレンジャーキーが「大いなる力」が移動してきた証として一瞬光り輝きます。
そして鎧を除く5人が集まり「豪快チェンジ!!」と叫んで
モバイレーツにジェットマンのレンジャーキーを挿して回し、
そのまま大きくジャンプして空中でジェットマンに変身します。

ちなみに今回はジェットマン篇ですから、
通常の場合、ここで「ジェットマン」のOPテーマのインストが流れるのですが、
今回は普通のゴーカイジャーのシリアス調のBGMでした。
これは演出的に合っていたので正解だと思います。

ジェットマンへの変身は、さっきの結城凱の擬態変身も同様でしたが、
ワイヤーフレーム風のエフェクトがしっかり再現されていてカッコいいです。
以前にもジェットマンへの豪快チェンジはありましたが、
5人揃ってしっかり戦闘シーンを描写するのは今回が初めてでしょう。
マーベラスがレッドホークに、ジョーがブルースワローに、ルカがイエローオウルに、
ハカセがブラックコンドルに、アイムがホワイトスワンに変身します。

そしてそのまま5人編隊で滑空してキアイドーに襲い掛かります。
ジェットマンというと空飛ぶ戦隊ですから、
こういう飛行戦闘シーンというのは当然よくあるように思われがちですが、
1991年当時の映像製作技術ではなかなかそういうものでスムーズな映像が作れなかったので、
本来「鳥人戦隊」としてはあるべきそういう映像がほとんど無かったのでした。
それが現在の映像技術で作られたわけで、これは素晴らしいです。

興味深くて少し面白いのが、1人でゴーミン達と戦いながら鎧がこの滑空する5人の姿を見て
「ジェットマン!?ジェットマンだ!ジェットマ〜ン!!ジェットマ〜ン!!」と驚いて大騒ぎすることです。
これは単に戦隊ファンの鎧がミーハーに騒いでいるようにも見えますが、
それにしてもいつにない大袈裟な騒ぎ方です。
これは今回の姿の見えない結城凱を必死に見ようとするテンションの高さと同様で、
「消えたブラックコンドル」という事情が絡んでいるのでしょう。
つまり、この「ゴーカイジャー」物語世界における鎧のような戦隊ファンにとっては、
5人が揃ったバージョンのジェットマンの動く姿というのは、超レアなのでしょう。

5人編隊の滑空攻撃でキアイドーを翻弄した後、
舞い戻って来たマーベラスは着地してブリンガーソードでキアイドーを斬りつけます。
反撃してくるキアイドーですが、既に動きは鈍く、
マーベラスに斬られてひるんだところで飛び上がるマーベラスに気をとられた隙に
今度は左右から滑空してきたルカとアイムに挟撃されて、
更に飛んできたハカセにも斬られ、キアイドーをからかって飛び去るハカセを追おうとしたところで
横から飛んできたジョーにも斬られまくります。

ちなみにハカセの竹内版ブラックコンドルと結城凱の大藤版ブラックコンドルが
あまりにもキャラが違い過ぎてて面白いですが、
1つのエピソードに異なる変身者の同一戦士が現れているわけですから、
これぐらいキャラが違う方が良いのだと思います。

そして飛び去るジョーを追って上を向いたキアイドー目がけてマーベラスが
レッドホークの飛行斬りを叩き込み、
キアイドーは「うわああ!!」と叫んで吹っ飛び、地面に叩きつけられて悶絶します。
そして、地上に並んで降りたった5人はマーベラスの「貫くぜぇっ!!」という気合いの漲った掛け声に合わせて
キアイドーに向かって突進、そして滑空しながら身体を炎で包み、
その5人を包んだ炎が空中で合体し、大きな火の鳥となって、立ち上がったキアイドーを貫いたのでした。

この技は、「ジェットマン」の第50話の最後の敵となったラディゲとの等身大での最終戦で
勝負を決めた技であり、この時しか使われていないジェットマンの最強技です。
戦いを重ねていくにつれて強くなっていったジェットマンが最後に辿り着いた、
ジェットマンという戦隊に秘められていた真の力が発揮された技であり、
この技を決めた時に天堂竜が言ったセリフが「見たか!ジェットマンの真の力を!」でしたから、
ジェットマンの大いなる力を得て、そのレンジャーキーに封じられた全ての力を使えるようになった
マーベラス達が使うのに、まさに相応しい技といえます。

火の鳥に貫かれたキアイドーは、かつて経験したことのない強敵による一撃を喰らって、
その極限ともいえるスリルに歓喜の声を上げて高笑いしつつ、爆発して果てます。
行動隊長ではないので復活巨大化は無しです。
空中に舞い上がった火の鳥は5人のジェットマンへとその姿を戻し、
更に5人は着地しながらゴーカイジャーの姿に戻るのでした。
そこにゴーミン達を一掃した鎧も駆けてきて「カッコよかった〜!」とルカに抱きつき、
ルカが肘鉄を喰らわせて「罰金!」と言う。まだ罰金制続いてたんですね。

そしてマーベラスは立ち上がり、黙って空を見上げます。
自分が「自分に勝つ力」を得てキアイドーに打ち勝つことが出来たのは、
守りたいと思える普通の人々の存在があったからだと再確認するように、青空を見上げたのでした。
マーベラスには何故、それが空なのかは分からないが、守るべきものの象徴が空であるように感じたのです。
それは、結城凱のあの墓碑の銘板が空を見上げるように置かれていたのを思い出したからでした。

エピローグはその青空の下、戦いを終えたマーベラス達6人と結城凱が一緒に公園を歩く場面です。
「やったな!・・・ったく、世話焼かせやがって・・・!」と、先頭を歩く結城凱は軽口を叩きつつ、
見事勝利したゴーカイジャーを祝福します。
最後尾を歩く鎧は相変わらず結城凱の姿も見えず声も聞こえないようで、
キョロキョロ、ウロウロしながら非常に落ち着かない様子でついてきますが、
他の5人は神妙な様子で結城凱の言葉を聞いています。

皆、結城凱が既に死んでいることを知っていますから、
いずれ今の仮の身体が消えて、死者の世界に戻ることになることは予感しています。
そして、その別れの時が近づいていることも何となく分かっているのです。

もう残された時間は無い。
そう直感したマーベラスは突然、階段の一段下がったところに自ら降りて結城凱の方に向き直り、
「結城凱・・・!」と、何か言おうとします。
マーベラスが自分から低い所に降りて何か言おうとするとは滅多に無いことで、
明らかに畏敬の念を表現した態度です。
死を乗り越えるという人知を超える奇跡を起こした意思の力に対する畏敬の念があるのは当たり前とは言えますが、
マーベラスがそれを素直に態度に現して何かを言おうとしているのは、
その結城凱の畏敬すべき意思が起こした奇跡が、
自分達に「大いなる力」を託すためにわざわざ起こしてくれたものだったと知ったからです。
さすがにマーベラスは結城凱が消えてしまう前にそのことに礼を言わねばならないと思ったのでした。

しかし結城凱はマーベラスの真剣な表情を見ると、何を言おうとしているのか察知して、
「何も言うな・・・ケツが痒くなるからな!」と言って、その場にあったベンチに腰を下ろします。
別れの時にしんみりした言葉は言わず、軽口でも叩いて明るく別れたいというのが結城凱の願いのようです。
それを察してマーベラスは仕方なさそうに黙って、
そして、このまま何も礼も言えず、結城凱が消えていくのを見るのは辛いと思い、
結城凱から微かに目を逸らします。

結城凱も見つめ合ったまま別れるのは互いに辛いだろうと察したのか、
ふと空を見上げて「綺麗な空だ・・・目に沁みやがる・・・!」と言い、マーベラス達に空を見上げるよう誘導します。
皆、結城凱に釣られるように一斉に空を見上げ、
マーベラスも結城凱に背を向け、同じように空を見上げます。

結城凱が見上げた空は真っ白な雲が浮かんだ抜けるような青空で、本当に綺麗でした。
この後、仮の肉体を失って天に戻ってしまえば、
この地上から見上げる青空は見ることは出来なくなってしまう。
今後再び復活することがあるかどうか分からないのですから、
これが結城凱にとって地上から見上げる空の見納めになるかもしれません。
魂に焼き付けるように結城凱は空を見つめ、
周りで空を見上げているマーベラス達に向かって
「分かってるな?・・・お前らが守る番だ・・・あの空を・・・」と諭します。

このシーン、「ジェットマン」最終話のラストシーンの完全にオマージュになっています。
「ジェットマン」最終話のラストでは、ナイフで刺されて瀕死の状態でありながら
竜と香の結婚式場にやってきた結城凱が、竜たちを悲しませないように別れようと思い、
ベンチに腰かけて明るく振る舞い、隣に座った竜と一緒に空を見上げて
「空が目に沁みやがる・・・」と言うと、竜が「ああ、俺たちが守った空だ・・・!」と
3年前のバイラムとの戦いのことを思い出し笑顔で応え、
それに対して結城凱は、死をも恐れない強い意思を自分にもたらしてくれた戦友に
「竜・・・ありがとう」と礼を言い、その後、笑顔で静かに息を引き取ったのでした。

それに対してこのシーンでは
「ジェットマン」最終話同様にベンチに座って空を見上げる結城凱が「空が目に沁みやがる」と言い、
さらに「今度はお前たちがあの空を守る番だ」と言うのは、「ジェットマン」最終話の竜のセリフのオマージュで、
ジェットマンが守った空(地球)を、今度はゴーカイジャーが守る番だという継承の儀式になっているのです。
そして、「ジェットマン」最終話では、あくまでしんみりした別れを嫌って明るく振る舞いながらも、
自分自身はしっかり「ありがとう」と礼を言っていた結城凱が、
今回はマーベラスに礼の言葉は言わせないで、冗談めかした別れを強要するというのは、
いかにも身勝手な結城凱らしいといえます。
しかし、これだけ過去のシーンの明らかなオマージュになっていながら、
このシーン自体の脈絡でしっかり名シーンとして成立してしまっているのは実に凄いことだと思います。

結城凱から空(地球)を守るよう、その使命を継承したマーベラスは、
それに対して何か心のこもった言葉で返したいと思ったが、
結城凱はあくまで明るく別れたいのだと考え、空を見上げたまま、ぐっと言葉を呑みこんで、
代わりに「海賊にそんなことを任せていいのか?」とわざと冗談めかして悪態をつきます。
それを聞いて結城凱は嬉しそうな顔で痒そうに鼻先をこすると、「・・・あばよ!」と笑顔で言います。
マーベラス達が空から視線を落としてベンチの方に振り向くと、
やはり案の定、結城凱の姿は消えていました。

自分の消えるところを見せて皆を悲しませたくないから、空を見上げさせている間に消えてやろうという、
最後まで結城凱らしいキザで優しい去り方でした。
皆、そうした結城凱の配慮は理解しつつ、空を見上げていたのです。
空席になったベンチを見て「・・・行っちゃったね」とハカセが少し寂しそうに言い、
「まったく・・・キザな奴だ!」とジョーは最後までキザを貫いた結城凱に呆れつつ嘆息します。
ルカは「でもまぁ、いい男だったなぁ・・・もっと早くに会いたかったかも!」と言って、
結城凱の座っていた場所に座り、少しうっとりし、
アイムはその横で「う〜ん・・・私的には微妙です」と少し思案顔です。
ルカはああいう危険な香りのする男は好みのようですが、アイムはそういうのは好みではないようです。

そして、悲惨だったのは最後の最後まで結城凱の姿が見えなかった鎧で、
皆の会話を聞いてようやく結城凱が消えて去っていったのを知り、
せめて何か痕跡は無いものかと必死でベンチのあたりを探し回り、結局何も見つけられず、
ハカセに向かって「・・・結局・・・最後まで見れませんでした・・・どうしてですかぁ!?
俺が、俺が地球人だからダメなんですかぁ!?」と泣き喚きます。
やはり結城凱の「地球人には姿を見せない」という方針は鎧も例外にはならずに貫徹されたようで、
鎧は1人取り残されてしまったのでした。
6人の中で最もスーパー戦隊を熱烈に愛する鎧にとってはあまりに悲惨といえます。

そうして5人の仲間たちと和やかな時間を過ごしながら、
マーベラスは結城凱が還っていった空を笑顔で見上げ、
(結城凱・・・確かに受け取ったぜ・・・ジェットマンの、大いなる力・・・!)と心の中で呟くのでした。
同時に、ジェットマンの自分を超える強い意思の力を教えてくれたことを感謝するのでした。

さて、これで終わりかと思ったら、まだ続きがありました。
冒頭のシーンで出てきたクラブ「Golden Gate」で、また結城凱と美人ママが
カウンターに座ってポーカーをしているシーンです。

結局、本編中で結城凱が既に死んでいることが明らかになったわけですが、
となると、結局本編中のシーンとは何らリンクしていなかったあの冒頭のシーンは、
死の世界から一時的に復活した結城凱がマーベラス達のところに行く前に
生前の馴染の店「Golden Gate」に酒を呑みに行ったシーンのようにも解釈できます。

しかし、よく考えたら結城凱は地球人には姿が見えないはずですから、
「Golden Gate」のママにも結城凱の姿が見えるわけがありません。
じゃあ、いったいあの冒頭のシーンは何の意味があったのか?という謎が残ってしまうわけですが、
このラストシーンでその謎が明かされます。

ママはカウンターに伏せたカードの役を確かめながら、隣に座っている白いスーツの結城凱に向かって
「どうだった?・・・地上のお酒は・・・」と問いかけます。
それに対して結城凱は「ああ・・・美味かったぜ!・・・最高にな」と答えます。
するとママはすかさず自分のカードを場に広げ「ストレートフラッシュ!」と言います。
そして「今度こそあたしの勝ちね」と得意げに結城凱を見つめます。
確かにストレートフラッシュなんて出れば勝ちは決まりでしょう。
実際、冒頭のシーンでも結城凱はストレートフラッシュで勝っています。
しかし結城凱は余裕の態度で「悪いな・・・」と言ってカウンターの上に自分のカードを広げます。
なんと、その役はスペードの10、J、Q、K、Aのロイヤルストレートフラッシュです。

結城凱は勝ち誇った顔で「ロイヤルストレートフラッシュ!・・・あんた、神様のくせに弱すぎだぜ!」と笑い、
ママも思わず苦笑し、そして結城凱に向かって「ねぇ、1曲聴かせてくれない?凱・・・」と演奏をリクエスト。
それに応えて結城凱はカウンターの前に立ち、サックスの演奏を披露し、ママはうっとりとその音に聞き入ります。
その2人の姿が映る画面手前にある2本のウイスキーのボトルにピントが合い、そこでラストカットとなりますが、
その2本のボトルは、1本は結城凱の墓碑の前に供えられていたマッカラン。
そしてもう1本のボトルのラベルには「HEAVEN SKY」の文字が書かれていました。

このシーン、要するに、この「Golden Gate」という店は空の上の天国にある結城凱の行きつけの店で、
ここのママは実は女神様で、結城凱は冒頭のシーンで女神との賭けポーカーの勝負に勝って、
負けた者は勝った者の言うことを聞かないといけないというルールに則って、
「地上の美味しい酒を呑みたい」という願い事を叶えてもらう名目で、
結城凱は一時的に地球人に見えないように地上に甦らせてもらい、そ
れでマーベラス達のところに行くことが出来たという、そういうタネ明かしになっているということです。

しかし、実際のところは、そう素直に解釈すべきシーンではないでしょう。
結城凱の復活は、あくまで途轍もなく強い、自分に勝つ意思の力によるものでなければ、
今回の本編の内容との整合性がとれないからです。
もし、結城凱がポーカー勝負の景品として地上に来たのだとすると、
ジェットマンの大いなる力の源は「ポーカー勝負に勝つ力」(しかも結城凱ですからイカサマの可能性大)
ということになってしまう。
今回の内容的に考えて、ジェットマンの大いなる力は、そんな気軽なものではないでしょう。
そもそも女神とポーカーして勝てば地上に行けるなんて、
どう考えても天国というのはそういう気軽なシステムではないでしょう。

だから、このシーンと冒頭のシーン、両方の「Golden Gate」のシーンは、
空に眠る結城凱の魂が見ている安らかな夢なのだと解釈すべきでしょう。
普通の人間として人生を全うした結城凱は、その魂は空の彼方の天国で、天使のような白い服を着て、
自分の生前の行きつけの店と同じ名前の店で美人ママと冗談を言い合い、カードゲームに興じ、
相変わらず不味い酒を呑んで、好きなサックスを吹いている、
そういう普通の男だった結城凱の生前と同じような、
普通の安らかな日々の夢に浸っているのだと、そう解釈したい。

そして、あくまで今回の復活は強い意思の力で不可能を可能にしたのですが、
結城凱自身はそういう大変な苦労も全て自分の意識の中では
「なぁに、女神にポーカーで勝ったからさ」というキザなセリフで済ましてしまう、
死んでもなお、そういう男のままであると考えたいのです。

なお、今回からEDテーマの映像が通常バージョンに戻りました。
「199ヒーロー大決戦」「空飛ぶ幽霊船」と、2つ映画の宣伝用映像バージョンが続いたので、
通常バージョンは5月15日放送の第13話以来ですから、3ヶ月半ぶりぐらいですね。
この通常バージョンが流れていなかった3ヶ月半の間に追加戦士の鎧が登場していたので、
もしかしたら通常バージョンのED映像が
鎧が加わったバージョンにリニューアルされる可能性もあるかもしれないと思っていたのですが、
そうはなっていませんでした。もとのまんまでした。
まぁ追加戦士登場でOPテーマ映像がリニューアルされるのは定番ですが、
EDテーマ映像がリニューアルされた例は無いので、無い可能性の方が高かったんですが、
やっぱり無かったですね。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 16:17 | Comment(0) | 第28話「翼は永遠に」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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