2011年11月17日

第37話「最強の決戦機」感想その1

今回は通常回ですが、前々回と前回のゴーオンジャー篇の前後篇に引き続き、今回と次回も前後篇の模様です。
しかも今回の終わり方が物凄いピンチでの終わり方で、
これまでも劣勢の場面で終わることは何度かありましたが、
ここまで明確に切迫した大ピンチのシーンで終わったのは、バスコ登場篇の前篇だった第15話ぐらいでした。
ということは、今回の前後篇はあのバスコ登場篇に匹敵する盛り上がりが予想されるわけです。

これまで1クール目、2クール目の終わりは
シンケンジャー篇、ハリケンジャー篇という前後篇のレジェンド回で盛り上げて、
その後は割と緩めの単篇の通常回で次のクールをスタートさせるというパターンであっただけに、
前回までのゴーオンジャー篇の前後篇の後、こういう濃厚な通常回の前後篇が来るとなると、
3クール目の終わりが何処であるのか、少し迷うところです。

まぁ、そうは言っても、3クール目の後はもう最終クールで、
クライマックスの展開へ向けての流れが始まるのですから、
3クール目のコンセプトは、クライマックスの前にゴーカイジャーが「地球を守る正義のヒーロー」として
態勢を整えるということにあると思われます。
それについては前回までのゴーオンジャー篇でかなり突き詰めたところまでテーマとしては扱われたとは思います。
しかし、今回のエピソードではマーベラスの「守ること」の意味が問いかけられており、
次回の後篇ではそれに関する答えが示されるのであろうと思われますので、
まだ今回と次回の前後篇は、3クール目の流れの中であろうと思われます。

おそらくゴーオンジャー篇でテーマとしては突き詰められつつも、明確な描写が避けられた分を
「ゴーカイジャーの物語」として明確な描写を伴って扱って、
そこでゴーカイジャーが真の意味で「地球を守る正義のヒーロー」となったという形にして3クール目を締め、
第39話から遂にクライマックスへ向けた流れが始まるのでしょう。

まぁ確かに、この物語はあくまでゴーカイジャーの物語ですから、
ゴーカイジャーのヒーローとしての1つの完成した姿を示すのは、ゴーオンジャー篇ではなく、
あくまでゴーカイジャーの物語の核心を描いたエピソードにおいてであるべきでしょう。
そして、ゴーカイジャーの物語の核心とは、ゴーカイジャーというヒーローの在り方を直球で描くことでしょう。
今回は、まさにその直球であり、
マーベラス達の心情の中身を徹底的に描写しなかったゴーオンジャー篇とは打って変わって、
いきなり序盤から鎧がマーベラスに対して、マーベラスの「守る」ということの意味を問いかけ、
それについてマーベラスが考え込む描写が回想シーンまで交えて随所に織り込まれ、
心情描写が思いっきり為されています。

このマーベラスが「守ること」について考え込むというのが今回の前篇のメインテーマであり、
それについては次回の後篇で結論が示される模様ですが、
このマーベラスが特に重大な事態でもないにもかかわらず物事を深く考え込むという描写自体が
いつになく異例のことであり、マーベラスの状態が普通でないところから今回のエピソードは始まっています。
となると、その前に何か大きな出来事があるはずですが、
今回の冒頭からマーベラスの悩みはじめの場面までの間にこれといった大きな出来事は起きていません。

ですから、これは前回の出来事の影響でマーベラスがナーバスになっていると考えるべきでしょう。
しかし前回というと、マッハルコンという相棒を得て、
ゴーオンジャーの大いなる力を使いこなしたというお話であり、
終わり方も明るい平和な感じであったので、
いきなり今回、マーベラスがナーバスになっているのは、ちょっと不自然なようにも見えます。
しかし、前回のお話の深いところで描かれたテーマが今回のマーベラスの心情に影を落としていると考えれば、
結構自然に繋がるのです。

そうなると、そこから今回のメインテーマが始まり、そして次回に繋がっていくと考えると、
実はゴーオンジャー篇の前後篇と、今回の前後篇とは繋がりが深く、
根っこでは同じテーマを扱っている、
見ようによってはこの4篇で1つの連作になって3クール目を締めているのではないかとも思えてきます。

このマーベラスのドラマと共に今回、ゴーカイジャーにおいてクローズアップされているのが、
ジョーがバリゾーグと激突するというドラマです。
ジョーとバリゾーグの因縁というと、それが匂わされたのは第4話まで遡り、
具体的にその因縁が描写されたのは第11話、第12話のシンケンジャー篇であり、
その後、第30話のライブマン篇で重大な転機を迎えて今回に至りますが、
今回は第30話の続きとしてジョーとバリゾーグの激突が描写されているという描き方ではなかったと思います。

そもそもジョーとバリゾーグの因縁のドラマは、
それ1本で1つのエピソードが作れるほどの重要設定になり得るのですが、
実は案外、この物語においてはそういう扱いはされていません。
シンケンジャー篇の時は、マーベラス一味の絆を描く大きなドラマの中の主要な要素として扱われただけであり、
ライブマン篇の時はジョーの戦う意味の開眼を描くドラマの中の主要な要素となっただけです。
それは終盤に一気にジョーとバリゾーグのドラマを盛り上げるための前フリのようにも思えますが、
今回もマーベラスが「守ること」について考え込むドラマとの抱き合わせで描写されています。
エピソードの中での扱いの重みとしては、今回よりもライブマン篇の時の方が上だという印象すらあります。

思うに、この物語においては、ジョーとバリゾーグの物語そのものは実は案外重きは置かれておらず、
バリゾーグというキャラクターは一種の比較材料として存在しているように思えてきます。
すなわち、シンケンジャー篇の時も、あくまで主題はマーベラス一味の絆であり、
その絆をジョーを中心に描くにあたって、ジョーとバリゾーグの過去に失われた絆をまず描き、
それと比較する形でマーベラスとジョーの絆が浮かび上がってくるという構成になっていました。

今回もジョーとバリゾーグの関係はそれと同じような使い方をされているのではないかと思えます。
つまり、今回はマーベラスがマーベラス一味においての「守ること」について考え込むことが
メインテーマとなっており、それと対比する形でザンギャック軍の司令官のワルズ・ギルのドラマが描かれており、
その中でワルズ・ギルとバリゾーグの関係がクローズアップされていて、
それがマーベラスとジョーの関係と対比されるように扱われているようなのです。
そうした対比構図の中でジョーとバリゾーグが激突しているように見えます。

つまり、マーベラス一味のヒーローとしての在り方を描くために、
それと対比される存在としてザンギャックが描かれており、
その構図の中で、マーベラス一味の絆と対比する形でワルズ・ギルとバリゾーグの関係が描かれており、
そこにおいてジョーとバリゾーグの戦いは描写されているのですが、
ジョーの内面的な葛藤は既にライブマン篇でほぼ決着がついており、今回はそこから全く揺らいではいません。

つまり、今回のエピソードで描こうとしているのは、あくまでマーベラス一味のヒーローとしての在り方と、
それに対比される存在としてのザンギャックの在り方なのであり、
ジョーとバリゾーグの因縁そのものではないようです。
むしろ、ジョーとバリゾーグの戦いは、
マーベラス一味とザンギャックの在り方の違いを浮かび上がらせるための
舞台装置として機能しているのだといえます。

さて、そういうことになると、
今回のエピソードにおいてはマーベラス一味とザンギャックの対比が重要というわけで、
そういう意味でも、今回のエピソードが前回までのゴーオンジャー篇から
一続きのテーマのお話であると考えられます。
何故なら、前回のエピソードの考察から、ザンギャックという悪の組織の本質が浮かび上がっていたのであり、
それがあるからこそ、今回のザンギャックの描写、
そして、ザンギャックに対抗する立場であるマーベラス一味の在り方の描写も
一定の方向づけがされることになるのです。

むしろ、今回は主にザンギャックの描写がなされていて、
そうしたザンギャックという敵に対する場合、マーベラス一味がどのような対応をすべきであるのか、
割とノーマルな感覚で描かれています。
そのノーマルな対応の結果、ピンチになって終わるのであり、
おそらく次回の後篇では、ノーマルな感覚を超えて対応した結果、
マーベラス一味が逆転していく過程が描写されるのだと思われ、
そこでこそマーベラス一味のヒーローとしての在り方が描かれるのでしょう。

今回はその前フリのエピソードですから、主にザンギャックというものがどういうものかが描かれ、
それに対してのマーベラス一味のリアクションが描かれます。
ただ、今回はザンギャックの描写が多いが、別にこの作品はザンギャックを描くことがメインなのではなく、
ザンギャックを描くことによってマーベラス一味というヒーローの在り方を浮かび上がらせることが
本来の目的なのです。

このように敵組織の描写を通して戦隊側の本質を浮かび上がらせるという作劇法は
スーパー戦隊シリーズでは常套手段ではあります。
そういう意味では、あくまで戦隊側を描くための手法とはいえ、敵組織をどう描くかというのは大事です。
敵組織を魅力的に描けば、その分、戦隊側も魅力的に見えてくるものです。

ただ、シリーズの歴史の中では、戦隊側との比較対象としての存在意義を超えて、
独自にキャラ立ちして、やたらと魅力的になってしまった敵組織というのもあり、
これはこれで盛り上がって良いのですが、
本来の敵組織の存在意義である「戦隊側を魅力的に見せるため」という大目的が何処かに行ってしまって、
敵組織の方が戦隊側よりも目立ってしまったりして、やや本末転倒気味になってしまってるような場合もありました。

その点、「ゴーカイジャー」におけるザンギャックは、
あくまでゴーカイジャーのアンチテーゼ的な使われ方が徹底しており、
かなりキャラ立ちしていながら、独自に魅力が暴走してしまって作品の方向性が変わってしまうほどのことはなく、
上手く制御されていると思います。
これはもともとザンギャックの基本設定がしっかりしているから、
各キャラ(特にワルズ・ギル)の言動がいくら暴走しても、
基本設定から逸脱することが無いようコントロールされているからなのでしょう。

それにしても、当初はこの作品においてザンギャックという敵組織は、
そんなにしっかりとは描写されないものだと予想していましたが、その予想は完全に外れてしまったようです。
何せ、この作品は歴代戦隊のゲストが多数出演し、
歴代戦隊への多段変身込みのアクションシーンも充実させなければならない以上、
どうしても尺が足りなくなるから、敵組織の描写はどうしても薄めにせざるを得ないと思っていました。

いや、実際、ザンギャックに関する描写の尺は決して多くはありません。
その上、バスコという第三勢力まで登場して、
時々、リュウオーンとかババッチードとか、ザンギャックに所属しない過去戦隊絡みの敵まで登場したりして、
ザンギャックの出番そのものは、当初予想していた少なさよりも、更に輪をかけて減ってしまっています。

しかし、「尺が足りないから薄い描写にするだろう」という予想がそもそも甘かったわけで、
この作品の制作陣やキャストの皆さんは尺は少なくても密度の濃い描写をしっかりしてくれたのです。
というか、この「ゴーカイジャー」という作品は、
基本的に盛りだくさんの内容を詰め込み過ぎが常態化しているので、
ドラマもアクションも何もかも、あらゆる要素において、
本当に必要な部分は尺が少なくても密度の濃い描写をするという方針が徹底しているのだといえます。
ザンギャックもその例外ではなかったのですが、
例外になっていないということは、ザンギャックをしっかり描くことが
この作品においてどうしても必要な部分だと認識されていたということなのでしょう。

この「ゴーカイジャー」という作品が始まった当初は、
物語の軸は、ゴーカイジャーと歴代スーパー戦隊との交流であり、
ゴーカイジャーの敵であるザンギャックは、単なる記号的な敵としてしか描かれないのかとも思っていました。
ちょうど「ゴーカイジャー」に先行して存在していた類似作品の「ディケイド」が、
ディケイドと歴代ライダーの交流をメインに描いて、登場する敵組織は一貫したものではなく、
最終的に黒幕的な扱いになった大ショッカーだとかいう組織も、
かなり適当な描写の記号的な悪の組織に過ぎなかったので、
ザンギャックもそれと似たような扱いになるのかとも思っていました。
実際、番組開始当初の各種媒体などでも、レジェンド戦隊の話題が中心となっていて、
ザンギャックの扱いはかなり軽かったので、
劇中でも同様にザンギャックの扱いは適当なものになると思ってしまったのです。

しかし実際に物語が動き出してみると、
歴代戦隊はあくまでゴーカイジャーのオリジナルの物語に登場するゲストという扱いであり、
しっかりゴーカイジャーの物語が描かれていくようになりました。
そうなれば、ゴーカイジャーの独自の敵であるザンギャックの存在感は増すのは当然で、
ザンギャックは決して記号的な悪という描かれ方にはならなかったのです。

いや、シリーズ歴代作品の中には、普通にメイン戦隊の物語が描かれながら、
その敵組織がかなり記号的な悪という描かれ方をしたものもあり、
それでもちゃんと物語は成立していた場合が大部分でしたから、
別にザンギャックも記号的な悪として描いてもよかったはずです。
しかし、ここまでの「ゴーカイジャー」の物語を振り返ってみると、ザンギャックは決して記号的な悪ではなく、
かなり個性的な悪の組織として描かれています。
それは、やはりこの「ゴーカイジャー」という作品が歴代戦隊が登場する特殊な作品だからなのです。

つまり、歴代戦隊が登場する作品だから敵組織の描写が薄くなるのではなく、
「ゴーカイジャー」の場合はむしろ逆で、
歴代戦隊が登場する中でゴーカイジャーの物語をしっかり描くために
ゴーカイジャーという主役戦隊を極めて個性的な戦隊としたため、
必然的にその敵組織であるザンギャックも個性的な組織として描かなければいけなくなったのです。
そして逆に言えば、そうした必要性以上にザンギャックを個性的に描こうという無駄な熱意も無いため、
ザンギャックの独特な個性は、あくまでゴーカイジャーという戦隊の独特な個性の
合わせ鏡のような意味合いしかない。
少なくとも現時点ではそのように見えます。

もちろんこれから終盤の展開の中であっと驚くような意外なザンギャックの正体が明らかになる可能性は
無いわけではないでしょう。
特に今回新たに登場したザンギャック皇帝やドゴーミンあたりはまだまだ謎の多いキャラであり、
このあたりがメインになってくると、ザンギャックという敵組織の劇中での存在意義が一変する可能性はあります。
いや、むしろ、クライマックスにおいてそうすることを狙って、
あえて皇帝をここまで登場させずに今になって急に登場させてきたのでしょう。

しかしまぁ、それはまた後の回で考察すべきことですので、ここでは置いておいて、
とにかく現時点では、ザンギャックの特殊性はゴーカイジャーの特殊性に由来している
合わせ鏡のようなものと見ていいでしょう。
そして、そのゴーカイジャーの特殊性というものが、
歴代戦隊との競演の中で埋没することがないために、かなり個性的な「お尋ね者の宇宙海賊」としたために、
それと合わせ鏡となるザンギャックも非常に個性的な敵組織となっているのです。
いや、今までも何となくザンギャックは個性的な敵組織だと思っていたのですが、
今回の描写を見て、その特殊性をハッキリと認識しました。

一言で言うと、ザンギャックというのは、凄く普通の組織なのです。
凄く普通で平凡な組織であることが、ザンギャックの最大の特殊性であり、個性なのだといえます。
何故、平凡で普通であることが特殊なのかというと、
スーパー戦隊シリーズの敵組織というのは異常な組織であるのが当たり前だからです。
異常でない組織もたまにありますが、
それらは小規模組織であるか、記号的な悪として描かれた無個性組織である場合がほとんどであり、
個性も存在感もありながら異常性の無いザンギャックのような敵組織というのは極めて珍しいといえます。

ここで言う異常性というのは人知を超えた狂気のようなものです。
世界の破滅や人類の滅亡そのものが目的であったり、
一見もっともらしい行動をとっていても、その根底にある動機の部分に異常な破壊衝動が存在したり、
極めて身勝手な怨念やエゴによる行動であったり、
結果的に破滅を招き寄せてしまうことに無自覚な愚劣さが存在したり、
その存在そのものが負の存在であったりするものが歴代戦隊の敵組織の大部分の特徴といえます。
そうでないもので、何となく漠然とした侵略者的な敵組織もありましたが、
その幹部が極めて異常な人格の者の集まりであったりして、
とにかくどうしようもない狂気の集団という印象で描かれるのが通常だといえます。
これはつまり、その敵組織と対比される戦隊側が明確に正義の戦隊なので、
それと対照的に描くと、どうしてもそういう、見るからに異常な集団として描くのが正解ということになるのです。

ところがゴーカイジャーの場合、明確に正義の戦隊である歴代戦隊との競演の中で埋没しないために、
あえて明確に正義ではない戦隊として描かれています。
それが「お尋ね者の宇宙海賊」というゴーカイジャーの独特のキャラなのですが、
その「お尋ね者の宇宙海賊」に対比される敵キャラは3つのパターンが考えられます。
「正義のヒーロー」、「ライバル海賊」、「取り締まりの官憲」の3つです。

これらのうち、「正義のヒーロー」に相当するのがレジェンド戦隊ですが、
これは精神的な対立から和解へと至る流れが毎回繰り返されて対立構造が消化されて、
ゴーカイジャーを正義のヒーローへと変えていく展開を生み出すキャラとして描かれます。
また、「ライバル海賊」は言うまでもなくバスコであり、お宝探しの競合者として描かれます。

そして「取締りの官憲」の役割を担うのがザンギャックで、
宇宙においては犯罪者として追われる立場のゴーカイジャーを追いかけるのがザンギャックであり、
ゴーカイジャーが「秩序を乱す者」とするなら、ザンギャックは「秩序を作り維持する者」の立場です。
しかしながら、宇宙の辺境である地球においては、そのザンギャックの支配は及んでおらず、
ザンギャックは地球にもその支配を及ぼそうとして「侵略者」として現れます。
そして地球においてザンギャックと遭遇したゴーカイジャーは、
「侵略者」であるザンギャックに対抗する「地球の守護者」へと変貌していくのです。

このように、ゴーカイジャーとザンギャックはそれぞれ2つの顔を持っているのです。
ゴーカイジャーは地球外においては「お尋ね者の犯罪者」であり、地球においては「地球の守護者」なのであり、
一方のザンギャックは地球外においては「宇宙の統治者」であり、地球においては「侵略者」なのです。

いや、歴代作品の悪の組織の中には例えば「チェンジマン」のゴズマのように
「宇宙の統治者」にして「地球に対する侵略者」という二面性を持った敵組織もありましたが、
ゴズマの場合、その対比キャラであるチャンジマンが「地球の守護者」という一面しか持っていなかったため、
それと対比する側面である「地球に対する侵略者」としてしか事実上描写されませんでした。

しかしザンギャックの場合、その対比キャラであるゴーカイジャーが
ザンギャックの二面性に対応する二面性をしっかり持っており、その二面性がしっかり描写されているので、
ザンギャックもしっかり、二面性が描写されているのです。
すなわち、ザンギャックは「地球に対する侵略者」であると同時に「宇宙の統治者」としても
しっかり描写されているのです。

というか、ゴーカイジャーを「地球の守護者」であると同時に「宇宙のお尋ね者」として描いて、
その上でゴーカイジャーとザンギャックの対立関係を描こうとするのならば、
ザンギャックの「宇宙の統治者」という側面は絶対にちゃんと描かないといけなくなります。
だから、この作品においてはザンギャックはちゃんと「宇宙の統治者」らしく描かれています。
それがザンギャックの「普通で平凡であること」なのだといえます。
言い換えれば、異常な感じで描かれていないということです。

スーパー戦隊シリーズの敵組織は異常な感じで描かれるのがお約束であるはずなのですが、
このザンギャックだけは異常性はほとんど無く、普通人の感覚でも彼らの組織は理解可能な、
何処にでもありそうな、普通の平凡な組織に見えるのです。
まぁ普通の組織といっても、普通の会社というわけではなく、軍隊として普通というところでしょうか。
といっても、現実世界の軍隊はあんなに弛んだ組織ではないと思うので、
まぁハリウッド映画などで描かれるような、ちょっとデフォルメされた、
ちょっと悪くてちょっとダメな、普通の人間が運営しているような軍隊の描写として
受け入れることが出来そうな組織なのです。

少なくとも人間には理解不能な異常な感性を持った異星人が動かしている
無慈悲で邪悪な人類生存の絶対的脅威という描写ではありません。
侵略者は確かに侵略者なのですが、人間と絶対的に相容れないような邪悪な生物ではなく、
単に弱小国を占領しようとして攻めてきた強国の軍隊という印象です。
ワルズ・ギルやダマラスたち、ザンギャック幹部から怪人まで全員が怪人の姿をしているので、
どうもピンとこないですが、感覚としては、「機動戦士ガンダム」におけるジオン軍の感覚に近いといえます。
おそらく地球人がこぞって降参すればザンギャックは地球人を皆殺しにするようなことはないでしょう。
但し、過酷な支配や収奪は行うでしょうけれど。

つまり、そんなに異常な連中ではないのです。単なる打算的な統治者に過ぎないといえます。
そんな異常な破壊衝動しか無いような愚劣な連中であったならば、
宇宙を統治することなど出来ないからです。
あまり愚劣で異常な連中としてザンギャックを描いてしまうと、
彼らが宇宙を統治しているという事実に説得力が無くなってしまうので、
彼らを異常者として描くことは出来ないのです。
それに対して、ゴーカイジャーにとって「お宝探しの競合者」としての側面のみで描かれているバスコは、
かなり異常性のあるキャラとして描写されているといえます。

ザンギャックの側は、これまでの数々のエピソードにおいてもほとんど異常性は描かれていません。
例えばダマラスは裏でバスコと繋がっているなど少々よく分からないところはありますが、
基本的には実直な職業軍人として描かれているといえます。
インサーンは科学者キャラらしい偏執的な面はあるものの、基本的には職務を忠実にこなしています。
バリゾーグはそもそもシドが記憶を奪われて改造された戦士であり、基本的には異常な存在ではありますが、
あくまでシドではなくバリゾーグとしての行動原理は
上官であるワルズ・ギルにひたすら忠義を尽くす模範的軍人そのものであり、何ら異常な行動はとっていません。

こうして見ると、下っ端の行動隊長クラスはともかく、
ザンギャックの幹部クラスは皆、あくまで職務として地球侵略に従事しているのであり、
別に地球や地球人に対して特別に偏った憎しみや恨みなどを抱いているわけでもなく、
特別に残虐な行動を好むような異常な性癖も持っていません。
また、特別に強烈な野心や破壊衝動などのようなマイナスの感情を外に向けて発散したり、
内に溜め込んだりもしていません。
そういう意味で極めて普通の連中なのです。

むしろ、ザンギャックに関しては幹部全員が着ぐるみキャラで正解だと思います。
もし人間態の幹部がいたら、あまりに彼らが普通人に見えてしまい悪役にすら見えない可能性も高いからです。
逆にマーベラスやジョーの方が悪役に見えてしまうかもしれません。
それほど、ザンギャック幹部は普通の連中なのです。
もし彼らが人間態であれば、戦隊側にいてもそんなに不自然ではないキャラだといえます。

そのザンギャックの中で唯一、異常性が感じられていたのがワルズ・ギルでした。
もちろんこれまでの彼の描写からして、彼がどうしようもない小者キャラであることはハッキリしていますが、
小者は小者なりに、地球やあるいは身内の帝国に対する異常な憎悪などを秘めている可能性は有りました。
彼の普段の行動はそう疑うに足るほどに常軌を逸したものだったからです。

しかし、今回のエピソードでワルズ・ギルのこれまでの異常な行動の理由が明らかにされ、
それによって、彼もまた普通の人間にもよく理解出来るレベルの苦悩を抱えた、
極めて「等身大の人間」であったことが判明してしまい、
しかもそのワルズ・ギルを取り巻くザンギャック内の人間関係が今回、割と詳細に描写された結果、
もう完全にザンギャックという敵組織には異常性が無いことが結論づけられてしまったといえます。
但し、皇帝周辺に関してはあるいはそうではないかもしれないので完全な断定は保留しますが、
少なくとも地球侵略軍も含む、ザンギャック帝国の大部分は
決して異常性のある敵組織ではないと言っていいでしょう。
つまり、彼らは決して無法者ではなく、ある意味、正統性のある宇宙の統治者なのです。

ただ、重要なのは、ザンギャックが異常ではないという事実そのものではなく、
その決して異常ではない普通の宇宙の統治者であるザンギャックがどうして「悪」であるのかです。
というより、この「ゴーカイジャー」という作品において、
その宇宙の普通の統治者であるザンギャック帝国をどのようにして「悪」として描くのかというのが
大事な問題なのです。
そして、それは宇宙のお尋ね者でもあるマーベラス一味をどうやって「正義」として描くのかという問題と
表裏一体といえます。

そして実はその問題については、前回までのゴーオンジャー篇の考察で解答は得ているのです。
すなわち、ゴーカイジャーが「宇宙のお尋ね者の犯罪者」でありながら「地球の守護者」でもあるという矛盾は、
彼らを「自由の精神を尊重して守るために戦う者達」と解釈することによって解くことが出来ます。
それと同様に、ザンギャックが「宇宙の統治者」でありながら「地球に対する侵略者」であるという矛盾もまた、
ザンギャックが「自由を蹂躙して宇宙を一元支配しようとする独裁帝国」であると解釈することで
解くことが出来ます。
そして、ゴーカイジャーこそが、ザンギャックによる自由の蹂躙を阻止して自由の精神を守ろうとして戦う
正義のヒーローということになるのです。

ただ、それはあくまでゴーカイジャー側に立った解釈に過ぎません。
ゴーカイジャー側の主張は
「それぞれの星の個性や自由は尊重すべきであり、ザンギャックによる一元支配によって自由を奪うのは良くない」
というものです。
もちろんこの考え方はこの「ゴーカイジャー」という物語においては正しいことであり勝利する側の考え方です。

しかし、物語の制作者がその考え方が正しいと思うからといって、
物語世界の中でその考え方が無条件で全ての登場人物によって受け入れられるのならば、
そもそも物語など作る意味は無い。
その考え方の正しさをつらつらと述べる論文でも書いていればいい。

物語の中でその考え方の正当性に説得力を持たせるためには、
ちゃんとその考え方に反対する説得力のある意見を持つ反対者を、
その考え方を主張する主人公と対決させて、
主人公側が納得のいく描写で勝利しなければならない。
そのためにこの作品ではザンギャックが登場するのであり、
おそらくは今回のエピソードとは別のテーマにおいてはバスコもそうした役割を担うキャラなのでしょう。

ここでザンギャックが主張すべき考え方は
「宇宙の平和を保つためには強大な力による一元支配が必要なのであり、
そのために多少の犠牲や自由の制限が生じるのはやむを得ない」という考え方です。
これは、ある意味、1つの正しい意見と言ってもいい。
例えば信長や秀吉による天下統一事業はこういう思想に基づいたものであろう。
秦の始皇帝やアレキサンダー大王など、歴史上の覇王的な英雄もこういう考え方に基づいて行動したのでしょう。
いや、現代の中央集権型の国家の基本理念はだいたいそういうものでしょう。

実際、自由ばかり追い求めて無秩序な状態を野放しにして、それで人々が本当に幸せになるのか、
甚だ疑問ではあります。
自由は尊重しなければいけないが、
統治による自由の制限が行き過ぎた場合以外は自由権の乱用は控えた方がいいのかもしれません。
ただ、この考え方は統治者にとって都合が良すぎて悪用される危険も大きい。
まぁ結局、理屈としては、ゴーカイジャーの「自由を重視する考え方」と、
ザンギャックの「安定を重視する考え方」は、一長一短で、本当はどちらが正しいか、
簡単に結論を出すことは出来ません。

だから、「ゴーカイジャー」の物語世界の中でも、
宇宙の人々は、ザンギャックによる統治に不満は色々あれども、
それでもその統治を受け入れている人達も多くいるのです。
だからザンギャックは強いのです。

以前に考察した時、どうしてザンギャックが宇宙を広く統治することが出来るのかということを考察し、
あの時はザンギャック皇帝が何か途轍もないパワーを持っているからではないか?などと考えましたが、
ゴーオンジャー篇を経た今はそうではないと思っています。
いや、おそらくザンギャック皇帝も何か強大な力は持っているのであろうし、
皇帝を倒すことが帝国崩壊への大きなポイントであるのも事実でしょうけれども、
宇宙の人々が皆、皇帝の力にひれ伏しているわけではなく、
ザンギャックの自由を抑圧する力による支配を、
宇宙の安定維持のために多少は有用なものとして受け入れている人々が多く存在するからこそ、
帝国の支配は続いているのだと思います。
だから、そういう宇宙の現実を知っているマーベラス達は
「ザンギャックに勝つのは無理だ」という認識を持つのです。

しかし、この「ゴーカイジャー」の物語は、
ゴーカイジャーの「自由を尊重する考え方」がザンギャックの「力による支配で安定をもたらす考え方」に
勝利する物語であるはずですから、
現実世界ではどちらが正しいか分からないとはいえ、
物語の上では結局はゴーカイジャー側が勝たねばいけない。
しかし、現実世界ではどちらが正しいか分からないほど拮抗した考え方同士なのですから、
あんまり安易にゴーカイジャーが勝っても、逆に物語としての説得力が無くなってしまう。
だから、それを説得力をもって描くための舞台装置として今回の前後篇が造られたのでしょう。

今回の前篇でゴーカイジャーはザンギャックに敗れますが、おそらく次回の後篇で大逆転します。
その時、ゴーカイジャーの「自由を尊重する考え方」が
ザンギャックの「力による支配で安定をもたらす考え方」に勝利する根拠が示されるのでしょうが、
その根拠が何であるのかも、既にゴーオンジャー篇の考察を経て、
私たちは想像することは出来るようになっています。

それは異世界の壁を乗り越えて自分の信じる夢を突き進む「自由を尊重する者」は仲間との絆を得ることは出来るが、
異世界の壁を取り払い一律支配された世界で、壁を乗り越え信じて突き進む夢を持たない
「自由を蹂躙する者」は仲間の絆を得ることは出来ないという、その決定的な差です。
つまり「夢」、そして「絆」の有無が勝敗を分けるということなのでしょう。

そして、実際、今回の前篇で、既にその「絆」の有無の対照的な描写は始まっているのです。
いや、ゴーカイジャー側はマーベラスが考え込んでいるので、あまりパッとした結論には至っておらず、
むしろ最後には誤った判断をしてしまっているようには見えますが、
それでも、そんな厳しい状況の中でも彼らの絆の強さはしっかりと見て取れる構成になっています。

一方のザンギャック側は、これはある意味、悲劇的な描写になっています。
むしろザンギャックの連中が「絆」というものをとことん軽視するような愚かな行動をとるのであれば、
もっと軽い気持ちで受け止めることになったでしょう。
ところが今回、ワルズ・ギルの内面が初めて深く描写されて、
彼が実は仲間との「絆」を切実に求めるナイーブな男だったことが判明します。
そして、彼の周りの人間たちも、決して彼のことを嫌ってなどおらず、
彼と「絆」を結ぼうとしていることも感じ取れる描写になっています。

ところが、例えばダマラスとワルズ・ギルの気持ちはすれ違い、
バリゾーグとワルズ・ギルの絆は所詮は偽物の絆であるゆえにどこまでいっても空々しく虚しい。
この「絆を求めても決して得られることはない」という悲劇が、見ていて結構辛くなってくるのです。
最初から絆など求めないというほうが見ていて気楽です。
絆を求めているのに得られることはないのを見る方が残酷で冷厳な事実が胸に迫ります。

その冷厳な事実とは、
「自由を蹂躙する帝国に身を置く限り、彼らの絆は歪なものにならざるを得ない」ということです。
このワルズ・ギルを中心としたザンギャック側の切なく残酷な悲劇の描写こそが、
次回のゴーカイジャーの絆の力がザンギャックを打ち破る大逆転劇に
最大限の説得力を与えるのであろうことが容易に想像することが出来ます。
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 23:56 | Comment(0) | 第37話「最強の決戦機」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月18日

第37話「最強の決戦機」感想その2

では本編ですが、まず些細なことですが、番組開始直前のスーパーヒーロータイムのミニコーナーが今回ありません。
これは8時からの「仮面ライダーフォーゼ」が駅伝で休止なので当然の措置ですが、
「フォーゼ」も前回で序盤9話を消化し、そろそろスタートダッシュの猛烈プッシュ期間も終わりですから、
冒頭のスーパーヒーロータイムのミニコーナーもそろそろこのままフェードアウトする可能性濃厚といえます。
この後はスーパーヒーロータイムのミニコーナーはおそらく
「フォーゼ」終了後に暫く流れてからフェードアウトして、
次に再び冒頭のスーパーヒーロータイムのミニコーナーが披露されるのは、
来年2月に「ゴーカイジャー」の次の36番目の戦隊のドラマが始まる時でしょう。

そして本編が7時30分と同時に開始し、
今回はいきなり巨大スゴーミンが群れをなして登場してゴーカイオーと豪獣神がそれをやっつけるという
巨大戦のシーンから始まります。
前後篇の前篇で後半の巨大戦シーンが無い場合にこういう冒頭いきなり巨大戦という措置はよくとられますが、
今回の場合は後半にもちゃんと巨大戦シーンはあります。

しかし今回の後半の巨大戦シーンはゴーカイジャーが敗北してしまうので、
玩具販促的にはあまり良いシーンを作れない。
しかし前回、マッハルコンとゴーオンゴーカイオーというクリスマス商戦に向けて
最大限にプッシュしなければいけない大型高級玩具を登場させてしまったわけですから、
暫くはその活躍を描かねばいけない。

いやまぁ、実は既にCMなどで玩具ネタバレしてしまっているように、
前回のマッハルコンの登場はクリスマス商戦の主役となる新巨大ロボの次回における登場のための布石であるわけで、
次回からどうせマッハルコンも込みで、その新巨大ロボの猛プッシュが始まるのですが、
それでも一応今回は、前回に登場したばかりのマッハルコンとゴーオンゴーカイオーの活躍を描かない、
新玩具登場の次の回に1回穴を空けるなどというのは玩具販促番組の姿勢としては有り得ないわけで、
ここはきっちり、マッハルコンとゴーオンゴーカイオーの活躍を
この冒頭の取ってつけた感満載の巨大戦シーンで描いています。

豪獣神のドリルやゴーカイオーの剣でだいたいのスゴーミン達を倒した後、
また現れた2体の巨大スゴーミンに対してマーベラスは「うぜぇな!」と吐き捨て、
ゴーカイオーの5人がゴーオンジャーのレンジャーキーをコクピットに挿し、
ハッチからマッハルコンのキャストとソウルが出現し、
ソウルをキャストにセットすると、マッハルコンが目を開き「バ〜リバリ〜!!」と声を上げ、
ゴーカイオーがマッハルコンを前へ「GO!!」と放り出すとマッハルコンは疾走しながら見る見る巨大化、
「今日もよろしくお願いします!」とアイムが丁寧にお辞儀すると
マッハルコンも「おう!任せとけ!バリバリいくぜ!」と威勢よく応えます。

「いくぜ!!」とマーベラスが操舵輪を回してゴーカイオーが大きくジャンプ、
両脚パーツを離脱してマッハルコンの上からドッキングしてゴーオンゴーカイオーとなり、
スゴーミン達に向けて突進、「ド派手にぶっちぎるぜぇっ!!」とマッハルコンが叫び、
ホバーモードとなって空に飛び上がり、上空から急降下しながら
「豪快!ゴーオングランプリ!!」と皆が叫びスゴーミン達に向けて剣を振りおろし、
2体のスゴーミンを倒し、これで全てのスゴーミンを倒して戦いを終えます。

前回初登場のマッハルコンですが、
あの後、何度かこうした巨大スゴーミンとの戦いに呼んでもらっているようで、
もうだいぶザンギャックとの戦いにも慣れたようです。

戦いが終わった後、ゴーカイオーと豪獣神の方に振り向いてマッハルコンは
「そういやぁ、素朴な疑問なんだけどよぉ!」と、ふと思いついたように問いかけます。
コクピットの中のマーベラス達が何だと思って耳を傾けると、
マッハルコンは「ゴーカイジャーにも大いなる力ってあんだろ?どんなんだ?」と聞いてきます。

マッハルコンは今までずっとマシンワールドに閉じこもって暴走族をやっていたので、
ゴーカイジャーやスーパー戦隊の戦いについて何も知らない状態でした。
そのマッハルコンがマーベラスの相棒となって、
急にこうして必要な時にゴーオンジャーの大いなる力によって召喚されるようになり、
戦士の一員となったものですから、色々なことに興味津々であるようです。

そのマッハルコン、今回は自分をこうして呼び出している「大いなる力」というものに興味を持ったらしく、
「大いなる力」にはゴーオンジャーのものだけでなく、他の戦隊のものもあるらしいと、
誰かに聞いて知ったようです。
それでマッハルコンは、ならばゴーカイジャーにも当然「大いなる力」があるのだろうと思い、
当然マーベラス達はそれを普段使っているのだろうと思い、それがどういうものなのか知りたくなったようです。
しかし、マッハルコンの予想に反して、マーベラス達の反応はなんとも歯切れの悪いものでした。

マッハルコンの質問を聞いて「私たちの大いなる力ですか・・・?」とアイムは戸惑います。
そもそもマーベラス一味が「大いなる力」というものの存在を初めて知ったのは
地球に来たばかりの頃、無人島でハカセが出会ったという、
おそらくマジレンジャーの元戦士と思われる黒いローブを着た謎の男(小津魁)からハカセが聞いたという
「34のスーパー戦隊の大いなる力を引き出せば宇宙最大のお宝が手に入る」という言葉によってでした。
だから、マーベラス達にとって「大いなる力」とは、34のスーパー戦隊のものであり、
ゴーカイジャーに「大いなる力」が存在するという発想は今まで無かったのです。
「考えたこともなかったなぁ・・・」とハカセは嘆息し、ジョーも「うむ・・・」と考え込みます。

なお、第32話のゴーカイガレオンバスターの初登場時に
ゴーカイジャーのレンジャーキーをガレオンバスターに挿入する時に光ったことから、
あの時点で「ゴーカイジャーの大いなる力」はある程度は引き出されているものと思われます。
まぁこのあたりの細かい設定は、実はスーパー戦隊シリーズの場合は
実際には玩具的な事情に翻弄されてグチャグチャになってしまうことが多く、
今回も本当はそういう例ではないかと思うのですが。

つまり、ドラマ的にはこの第37話から第38話にかけての最終合体ロボの登場に合わせて
「ゴーカイジャーの大いなる力」を引き出すことにする予定で、
最終合体ロボ玩具のギミックの中に「ゴーカイジャーの大いなる力」関連のアイテムも仕込んでいたのですが、
その一方で等身大戦の最終兵器であるゴーカイガレオンバスター玩具の方も
「ゴーカイジャーの大いなる力」対応の仕様として作られてしまい、
この2つのアイテムの登場が具体的にドラマ内のどの時期になるのか確定しないうちに、
2つの「ゴーカイジャーの大いなる力」関連の玩具が生まれてしまい、
それをドラマ内で処理するのが難しくなってしまったということではないかと思うのです。
まぁ毎年似たようなことが起きている種類のトラブルです。

それを今回は先に登場したゴーカイガレオンバスターの際には、
玩具の仕様に忠実にゴーカイジャーのレンジャーキーを光らせておいて、
ドラマ内ではそれが「ゴーカイジャーの大いなる力」であるかどうかは曖昧にしてスルーして処理し、
今回の第37話、第38話の前後篇で初めて「ゴーカイジャーの大いなる力」が登場したかのように見せて、
そこに最終合体ロボを絡めていこうとしているのでしょう。

だから、こちらも制作陣のその思惑に乗って、
第32話の時はゴーカイジャーのレンジャーキーが光ったことは見ないフリをしておけばよかったんでしょうが、
当時はそんな事情とは想像もしていなかったので、あれが凄く意味がある描写だと思ってしまって、
あの時点で「ゴーカイジャーの大いなる力」が遂に引き出されたのであり、
それをガレオンバスター製作者のハカセやその他のメンバーも把握したのだと思いっきり考察してしまいました。
しかし、それは先走りすぎだったようです。
この考察ブログ、かなり先走って考察してきたことが多いので、
これからこうやって訂正しなければいけないことが多々あるだろうことは覚悟しています。

今回のこの「ゴーカイジャーの大いなる力」についてはどのように解釈し直すかというと、
それでも第32話の時点でゴーカイジャーのレンジャーキーが光ったことは事実ですから、
あの時点でゴーカイジャーのレンジャーキーに込められていた大いなる力が
ある程度引き出されるようになったことは、やはり事実であるということにします。
そして、それが引き出されたのは、やはりハカセがガレオンバスター製作作業の中で
「仲間の力を合わせること」の重要性を実感したことによるものでしょう。

しかし、それだけで「ゴーカイジャーの大いなる力」が全て引き出されたわけではないようです。
ゴーオンジャーの大いなる力も、早輝がマーベラス達の様子を見て
大いなる力を渡してもいいと思えるほどの段階であったにもかかわらず、
それが実際に引き出されたのは、マーベラスがもう少し深いレベルで正義ノミカタの精神を理解して
マッハルコンとの絆を結んで以降のことでしたから、
ゴーカイジャーの大いなる力に関しても同様に、
それを全部引き出して、真に巨大戦で使用出来るようにするためには、
単に「仲間の力を合わせる」以上の、もっと深い部分での理解が必要なのでしょう。

だから第32話の段階では確かに「ゴーカイジャーの大いなる力」は引き出されているのですが、
それはまだ十分なレベルではないのであり、
ハカセや他のメンバーも、まだ自分達が「ゴーカイジャーの大いなる力」を引き出しているという
自覚も無い状態であったようです。
「仲間の力を合わせること」の重要性は認識したものの、
それが「ゴーカイジャーの大いなる力」の源泉の初期段階の精神性だということもまだ気付いていなかったようです。
ここでハカセが言っているように、
そもそも「ゴーカイジャーの大いなる力」というものが存在することさえ考えたこともなかったのだとしたら、
確かにゴーカイジャーのレンジャーキーがガレオンバスターに挿す時にちょっと光ったからといって、
そのことの意味に気付くこともないでしょう。

だから、ここでマッハルコンに変な質問をされてハカセもジョーもアイム同様、戸惑っています。
確かにゴーカイジャーも他のスーパー戦隊もレンジャーキーにその力が込められているという点では同じですから、
他の34のスーパー戦隊のレンジャーキーから大いなる力が引き出せるというのなら、
ゴーカイジャーのレンジャーキーからも大いなる力が引き出せてもおかしくはない。

そういうことは今まで発想したことがなかったのでハカセ達は驚いたのですが、
しかし、それはそんな重大な問題ではないような気がしました。
何故なら、自分達はゴーカイジャーであり、
ゴーカイジャーは他の戦隊のようにオリジナルの戦士が他に存在するわけではなく、
この世にゴーカイジャーは自分達しか存在しない以上、
当然、本来ゴーカイジャーが備えているべき精神性は自分達の精神性そのものであり、
だから自分達がゴーカイジャーの大いなる力を引き出せていないはずはない。
とっくの昔に自分達はゴーカイジャーの大いなる力は引き出して使っているはずなのだと皆、思いました。
ただ単に今まで「ゴーカイジャーの大いなる力」などというものが存在するという認識が無かったから、
それがどういう形で使われてきたのか分かっていないだけなのです。

それでルカは少し考えて「ゴーカイオーがそうなんじゃないの?・・・ね?マーベラス・・・」と、
マーベラスに確認します。
「大いなる力」というのは巨大戦の時の戦力として出現するものですから、
自分達が他のスーパー戦隊の大いなる力を獲得するようになる以前から所有している巨大戦力である
ゴーカイオーこそが「ゴーカイジャーの大いなる力」なのではないかとルカは考えて、
マーベラスならアカレッドからレンジャーキーを貰った時に
そのあたり何か聞いているのではないかと思って確認したのです。
しかしマーベラスは「・・・知るか!」と、そんな話にはあんまり興味無さそうに言います。
まぁ実際、マーベラスも「ゴーカイジャーの大いなる力」のことは知らないのでしょうし、
そんなものの存在について考えたこともないのでしょう。

しかし、そもそもマーベラス達が数あるレンジャーキーの中でどうして
ゴーカイジャーのレンジャーキーを基本的に使うようになったのか、その経緯は謎です。
まぁその点については最後まで説明されることはないような気もしますから、
あんまり気にしないことにします。

さて、このように皆の反応がかなり鈍かったことから、
マッハルコンは皆がよく知らないようなことを聞いてしまったことを悟り、
「ま、いいや!・・・変なこと聞いて悪かったな!」と、申し訳なさそうに話を打ち切り、
「じゃ、また何かあったら呼んでくれよな!バァ〜リバリィ!!」と言って、
マシンワールドへ戻っていきました。

マッハルコンって、「ゴーオンジャー」に出てきた他の炎神たちみたいに
ヒューマンワールドにキャストとソウルに分かれた状態で居残って
相棒の戦士と一緒に日常生活を送るわけではないようですね。
まぁキャストとソウルが他の炎神と比べてバカでかいという事情もありますが、
要するに、「ゴーカイジャー」の物語世界をゴーオンジャー篇以外で
そこまでゴーオンジャー風味にするつもりはないという意図が制作陣にあるということなのでしょう。
あくまでマッハルコンは風雷丸やガオライオンと同じように
「呼べばやってくる」という存在として扱うということでしょう。

炎神好きの私としては個人的にはガレオンの船室でホログラムで喋るマッハルコンというのも見てみたかったが、
色々とドラマ部分の尺の問題もありますから、
これ以上、船室内の喋るキャラの数を増やすのは得策ではないと思うので、
この判断は正しいと思います。

さて、この戦いをモニターで見ていた宇宙空間のギガントホースの指令室のワルズ・ギルは、
毎度のごとく「うおおおお!!うおおおお!!なぜ毎回毎回、海賊なんぞに邪魔されねばならんのだ!?」と怒り狂い、
指令室内でゴーミンの頭を叩いたりして大暴れして、作戦失敗のストレスを発散します。
そしてワルズ・ギルは「この俺の人生!どんなことでもこの俺の意のままになってきたというのに!」と吼えます。

なるほど、そういう人生を送ってきたから、
地球へ来てからの作戦失敗の連続に対して平常心でいることが出来ないのですね。
しかし、この言葉を聞く限り、ワルズ・ギルにとって、この地球での失敗というのは、
まるで人生初めての挫折経験であるようです。
とはいっても、彼の性格や能力を考えると、
他の星にはマーベラス一味のような厄介な連中はいないということを差し引いても、
他の星で実戦経験があれば、必ずそこでも似たような失敗を繰り返していたはずです。
それなのに今回が初めての挫折であるように言うということは、
この地球侵略作戦がワルズ・ギルにとって初陣であるようです。

初陣でいきなり司令官というのも普通は有り得ない話ですが、
絶対権力を握っている皇帝の跡取り息子だからこそ、そういう無茶が可能になるのでしょう。
それだけ甘やかされて、なんでも意のままに父親におねだりして叶えてもらって育ってきたのでしょう。
例えば脱走しようとして捕われた屈強な軍人を自分に忠実なロボット兵士に改造してほしいなどという
残酷なおねだりも皇帝に聞き届けてもらっていたのでしょう。

皇帝もバカではないので初陣の息子に司令官を任せようと自分で思ったりはしないでしょうから、
この地球侵略軍の司令官になりたいというのもワルズ・ギルが父親におねだりして、
息子に甘い皇帝がその願いを聞き届けた結果なのでしょう。
「どんなことでも意のままになってきた」というのは、そういうことも含めてのことと解釈すべきで、
ワルズ・ギルは自分の希望で地球にやって来て、華々しい初陣を飾るつもりであったようです。

ところが、地球に来てから急に全てが上手くいかなくなってしまった。
それは当たり前の話であって、地球には何でもワルズ・ギルの願いを聞いてくれる皇帝はいないし、
部下たちは皇帝の息子のワルズ・ギルの言うことは何でも聞いてくれるが、
敵はワルズ・ギルの言うことを聞いてくれないからです。
戦争というのは、何でも思い通りになる宮廷のお遊びとは違って、困難の伴うものであり、
たとえ皇帝の跡取り息子であったとしても、何でも思い通りになどならない、
努力して乗り越えなければならないものなのです。

といっても、生まれてから困難を乗り越える努力などしたことのないワルズ・ギルは、
そんな努力をする自分など想像も出来ない。
だが自分の出来そうなこととそうでないことぐらいの区別はつくので、
地球行きを希望したのは、努力しないで簡単に勝利して、そのくせ高い名声を得ることが出来そうだったからでした。

地球は数年前にザンギャックの大艦隊が攻め寄せた時、
34のスーパー戦隊の活躍でザンギャック艦隊を全滅させて退けた星です。
その地球を征服すれば、ワルズ・ギルの声望は一気に高まる。
しかも、その34のスーパー戦隊という連中はその数年前の戦いで
ザンギャック艦隊と相討ちになって消えてしまったという。
念のために数年間、皇帝の親衛隊が様子を見てみたが、
やはりスーパー戦隊はいなくなったのは確実のようでした。

ザンギャック艦隊の敗北など、宇宙の民衆には知られてはならないことですから、
情報統制によって民衆には知らせてはいません。
しかし、ザンギャック軍の内部では、
ザンギャックの大艦隊が地球征服に失敗して撤退したということは知られています。
それでもザンギャック艦隊を破った者の名前が宇宙に広まることは許されないから、
「スーパー戦隊が地球を守ったのであり、今はそのスーパー戦隊は地球にいない」ということを知っている者は
帝国内でも皇帝の周辺だけです。

だから、スーパー戦隊がいなくなって丸裸同然となった地球を楽に征服すれば、
ワルズ・ギルの声望はザンギャック軍の中で一気に高まる。
次期皇帝として、その声望はワルズ・ギルにとってどうしても欲しいものだったのです。
だから地球侵略軍の司令官就任を父親におねだりして、その望みは叶い、
楽に地球を征服して全てはワルズ・ギルの思惑通りにいくはずだったのです。

それなのに思わぬ邪魔が入ったのでした。
それがよりによって宇宙海賊などという取るに足りないゴミクズのような存在であるというのが
ワルズ・ギルには信じられなかったのです。
宇宙海賊などという連中は悪さをしながらザンギャック軍から逃げ回るしか能の無い連中のはず。
その宇宙海賊が何故か地球に居座ってザンギャック部隊の作戦を悉く邪魔してくるのですから、
ワルズ・ギルにはそれだけでも理解不能の事態でした。
その上、更に信じられないことに、自分の配下の部隊が全て、その宇宙海賊に敗れているのです。

地球に来るまでは全ては思い通りであったはずなのに現在のこの状況、
ワルズ・ギルには何がどうしてこうなったのか、もうサッパリ意味が分からないのでした。
自分は完璧だったはず。
ならば今の状況は海賊のせいであり、海賊を討伐できない無能な部下たちのせいとしか考えられず、
部下に当たり散らすしか出来ないワルズ・ギルでした。

しかし、大暴れで不満を撒き散らすワルズ・ギルを眺めながら、その配下の幹部たちはじっと黙って立っています。
そのうち、バリゾーグはただ単にワルズ・ギルに忠実なだけで他に何も考えられないような者ですから、
まぁそれはいいとして、
ダマラスとインサーンはワルズ・ギルは気付いていない危機的状況に想いを巡らせていました。

ダマラスとインサーンはそれぞれ、前回のガイアークの突然の地球侵略作戦を阻止するために現れた
マーベラス一味のことを考えていたのです。
マーベラス一味が自分達とは何の因縁も無いはずのガイアークと戦うために現れたということは、
マーベラス一味は地球を守るために戦っているということを意味します。
しかしマーベラス一味と地球には何の関係も無いはずです。
それでもマーベラス一味が地球を守るために戦うということは、
マーベラス一味は地球そのものを守ろうとしているのではなく、
侵略されようとしている星の人々の侵略者の支配からの自由を守ろうとしているということです。
ザンギャックとの戦いも単に腹が立って喧嘩しているのではなく、そういう意識の戦いということです。

それは地球だけに適用される思想ではなく、
ザンギャックに征服されてその支配下にある全ての星の自由の回復に繋がる思想です。
つまり、それは帝国の根本を揺るがしかねない超危険思想であり、
マーベラス一味もそれがどれほど危険な思想であるか分かっているはずです。
それが分かっていて、それでもあえてその自由思想を掲げて戦いを挑んでくるということは、
マーベラス一味は相当の覚悟であるということです。

ならば、マーベラス一味を並の海賊だとは思わない方がいい。
かなりの強敵だと認識すべきです。
逃げ回る海賊を掃討する程度の軽い気持ちで戦えば、こちらが大ヤケドをすることになる。
いや、今までの作戦失敗だって、マーベラス一味をただの海賊だと舐めてかかったのが原因ではないか?
そう思って、ダマラスもインサーンも反省しました。

ダマラスなどはマーベラス一味よりも、むしろマーベラス一味を駆逐するために呼んだはずなのに
マーベラス一味を倒そうともせず何やら勝手なことをしているバスコの方の動向に気を取られていたが、
そうしているうちに、気が付けばマーベラス一味はザンギャック一の装甲をぶち破るほどの力も手に入れていました。
考えてみれば、マーベラス一味がどういうわけか
消えていなくなっていたはずのスーパー戦隊という連中の力を受け継ぎ始めていたことにも、
あまり大した注意を払っていなかったのですが、
おそらくマーベラス一味が何時の間にか相当強化されたのは、
そのスーパー戦隊の力のせいだとダマラスもようやく気付くようになりましたが、
既にかなり手遅れの感があります。

これから気を引き締め直したとしても、
今の地球侵略軍の戦力では、そう簡単にマーベラス一味を倒すことは出来ないくらい、
マーベラス一味は既に強化されてしまっています。
かといって、マーベラス一味が帝国の根幹を揺るがす危険思想を掲げて戦う以上、
放置しておくわけにはいかないし、地球を諦めて撤退するなど有り得ない。
こうなったらこちらも相当の犠牲を払う覚悟でマーベラス一味を叩き潰すために全面対決するしかないと、
ダマラスとインサーンは半ば悲壮な覚悟を固めつつあります。

しかし、大きな問題が1つありました。
それは、よりによってその地球侵略軍の司令官が無能なワルズ・ギルだということです。
いや、ただの無能ならば、これほど地球方面の状況が悪化すれば司令官を替えてもらえば済むのですが、
皇帝の跡取り息子のワルズ・ギルをダマラスやインサーンの意向で動かすことなど出来ないし、
皇帝に直訴したところで、息子に甘い皇帝がダマラス達の意見を聞いてくれるはずもない。

ならばワルズ・ギル自身に司令官を辞するよう説くしかないのだが、
地球で手柄を立てることに異常に執着するワルズ・ギルが司令官を辞めたがるはずもない。
地球の状況が変わりつつあること、宇宙海賊が危険極まりない相手となりつつあることを説いたところで、
ザンギャック軍の実力を絶対視して、地球人や宇宙海賊などを蔑視している
ワルズ・ギルには理解出来ないであろうし、
マーベラス一味の危険思想のことを説いても、
帝国の宇宙支配を絶対不変のものだと無邪気に信じ込んでいる世間知らずのワルズ・ギルには
理解不能でしょう。

つまり、地球侵略軍の司令官はどうしてもワルズ・ギルのままなのであり、
ワルズ・ギルの指揮下で、あの危険なマーベラス一味との決戦に突入していくしかない。
となれば、ワルズ・ギルが無能だとしても、そのワルズ・ギルと腹を括って心中するしかない。

ダマラスやインサーンは、今まで地球侵略など、それこそどんな無能でも可能だろうと思って、
ワルズ・ギルがどんな馬鹿なことをやっても、
いちいちワルズ・ギルと衝突して睨まれるのが嫌なので放置していました。
今となっては、自分達のそうした不誠実な任務への取り組みが、
ワルズ・ギルの司令官としての成長を妨げて、今日のような事態を招いたのだと悔やまれます。

せめて今後はワルズ・ギルに真摯に向き合い、厳しい諫言もして、
マーベラス一味との困難な戦争を勝ち抜ける司令官へと育てていかなければいけない。
とにかく今のままのワルズ・ギルではマーベラス一味には勝てない。
なんとかこの状況を変えなければならない。
そういう切実な想いがダマラスの胸にこみ上げてきます。
そういう想いで今こうして喚いて暴れて部下に当たり散らしているワルズ・ギルの醜態を見ると、
苦々しい想いと焦りに駆られてしまい、
ついダマラスも「殿下!嘆いている場合ではございません!直ちに次なる作戦に移りましょう!」と
厳しい口調でワルズ・ギルに迫り、諫言してしまいました。

するとワルズ・ギルは激しい敵意をむき出しにして
「黙れ!この俺に指図するつもりかぁっ!?」とダマラスを頭ごなしに怒鳴りつけ、
ダマラスはそのあまりの剣幕に思わず「ううっ・・・」と怯んで黙り込んでしまいます。

ダマラスはどうして自分がこれほどワルズ・ギルに嫌われているのか、納得がいきませんでした。
ダマラスは長年、皇帝の忠実な家臣として振る舞ってきたし、
王子のワルズ・ギルとの関係も決して悪くはなかったはずです。
だからこそ、皇帝にワルズ・ギルの補佐役として任命されたはずです。

皇帝も、いくら楽勝必至の地球侵略作戦とはいっても、
戦争というものは何が起きるか分からないものであり、
初陣のワルズ・ギルには荷が重いということも分かっています。
だから百戦錬磨の信頼できる重臣のダマラスを補佐役につけ、
ワルズ・ギルのことを助けてくれるよう計らったのです。
もちろんワルズ・ギルとダマラスの仲が険悪だと思っていれば皇帝もダマラスを補佐役につけるはずもない。
だからワルズ・ギルとダマラスの仲は決して険悪ではなかったはずなのです。
まず第一にダマラス自身にワルズ・ギルと自分の不仲の自覚が無い。

だから、いざ地球侵略軍の参謀長の任に就いて、ワルズ・ギルと共に航海の旅に出てから
急にワルズ・ギルに意味不明の冷淡な仕打ちを受けるようになって、ダマラスは大いに傷ついていました。
歴戦の忠臣としての誇りを踏み躙られて晒し者にされるような仕打ちも何度にもおよび、
ダマラスもすっかりワルズ・ギルに関わるのが嫌になってしまうほどでした。
そうして生じた司令官と参謀長の不仲や疎遠な関係が、地球侵略軍の機能をマヒさせ、
その間にマーベラス一味の強大化という事態の悪化を招いたようなものです。
ようやくその事態の悪化に気付き、態勢を立て直そうとしたが、
それでもなおワルズ・ギルの原因不明の自分への敵意がまたこうした足を引っ張るのかと思い、
ダマラスはやりきれない想いになります。

そうして俯くダマラスを睨みつけるワルズ・ギルの背後で、
ギガントホースに接近する宇宙船の情報を知らせるブザー音が響き、
インサーンが船外モニターを覗きこんで「これは・・・?」と少し驚いたように呟くと、
「ワルズ・ギル様、皇帝親衛隊の船が接近しております」と、ワルズ・ギルに報告します。
モニターに映るギガントホースに横付けした小型の宇宙船は、
確か第11話で皇帝親衛隊長のデラツエイガーが乗ってきたものと同じ、紫色のボディの宇宙船であり、
どうやらこのタイプのものは皇帝親衛隊専用の宇宙船であるようです。

このインサーンの報告を聞いて、ワルズ・ギルは驚いて振り向くと、モニターのところに飛んできて
「んん?父上の親衛隊だと?・・・どういうことだ?」と焦ってモニターを覗き込み、大いに怪しみます。
どうもワルズ・ギルは父親の皇帝が苦手のように見受けられます。
といっても、皇帝はなんでもワルズ・ギルの願いを聞いてくれる甘い父親なのですから、
怖がっているというわけではないようですが、
何か過剰に父親のことを気にしているような印象です。

ここでOPテーマが始まり、今回のOPナレーションは通常回バージョンです。
そして今回のOPテーマ内の映像は巨大ロボのパートが
前回のゴーオンゴーカイオー登場を受けてマイナーチェンジとなっています。
第27話の時、その前回のハリケンゴーカイオー登場を受けてのマイナーチェンジ以来、
久々のマイナーチェンジです。
やはり玩具展開のある変化のある場合だけ、OP映像の巨大ロボのパートのマイナーチェンジがあるようです。

今回新たに編成された巨大ロボのパートは、
単にゴーオンゴーカイオーをフィーチャーするという趣旨ではなく、
マジゴーカイオー、デカゴーカイオー、ガオゴーカイオー、ハリケンゴーカイオー、ゴーオンゴーカイオー、
そして豪獣ドリル、豪獣レックス、豪獣神というラインアップが短くカット繋ぎされていく感じで、
クリスマス商戦に向けて、全ロボ玩具を網羅した印象です。
なお、シンケンゴーカイオーが無いのは玩具的にはガオゴーカイオーと同一だからでしょう。
となると、第39話のOPテーマでは、おそらく豪獣ドリルと豪獣レックスが
豪獣神と同一玩具なのでその画が省かれて、
その空いた尺に次回登場の最終合体ロボの画が入るのかもしれません。

そしてOPテーマが終わり、CM明け、「最強の決戦機」という今回のサブタイトルが出ます。
これは通常回ですから、何のフォーマットも関係無く、内容そのまんまのタイトルです。
特に捻りも何も無い直球のサブタイトルです。
「最強の決戦機」の異名を持つ巨大ロボが登場するエピソードというわけです。

そして本編が再開し、さきほどのギガントホース指令室のシーンの続きのシーンで、
皇帝親衛隊の宇宙船がギガントホースに突然やって来たというので、
ワルズ・ギルはじめ地球侵略軍の幹部一同、
顔を揃えてギガントホース内にある格納庫へとやって来た場面となります。

その親衛隊用の宇宙船から降りて、格納庫の階段を昇ってワルズ・ギルの前に進み出たのは
2人のスゴーミン・・・ですが、いつものスゴーミンは青い体色ですが、
このスゴーミン2人は赤い体色をしています。
その赤いスゴーミンの1人が「これはこれは殿下・・・ごきげんうるわしゅう、ドゴ」と言い、
2人とも恭しくお辞儀します。

なんか「ドゴ」とか語尾に変な言葉をつけてますが、
確かスゴーミンは語尾に「スゴ」とつけるはずなのに、
「スゴ」とは言わずに「ドゴ」と言うということは、
もしかしてこいつらはスゴーミンではなく・・・?と考えたら、
やっぱり案の定、ワルズ・ギルがやや苛立った声で「親衛隊のドゴーミンがいったい何の用だ?」と問いただし、
この赤いスゴーミンは「ドゴーミン」という名だと判明しました。

ゴーミンがスゴーミン同様、「ドゴーミン」は個人名ではなく階級名であるようです。
だからこいつらは2人ともドゴーミンです。
いったいドゴーミンというやつが全部で何人いるのか知りませんが、
皇帝親衛隊の士官は皆ドゴーミンであるようですから、
「隊」というぐらいですから2人だけということはないでしょう。
たぶん本国の皇帝の傍にはこいつらと同じ恰好をしたドゴーミンが数十人ぐらいはいると思われます。
皇帝直属の護衛のような連中ですから、おそらくスゴーミンよりはかなり強いと思われます。

それで、その本来は皇帝の傍についていなければならないはずのドゴーミンが
わざわざ2人も雁首揃えてこんな辺境の星である地球侵略軍まで何の用でやって来たのかというと、
もう1人のドゴーミンの言うには
「陛下のご命令で、ザンギャック決戦機、グレートワルズを持って参りました、ドゴ」とのことです。

皇帝直々の命令で何かよほど大事なものを運んできたので、
その護衛役としてドゴーミン2人もつけて来たということのようです。
本来は皇帝の護衛をするドゴーミンを護衛としてつけるわけですから、
そのグレートワルズというやつは皇帝と同じくらいザンギャック帝国では貴重なものなのでしょう。
なんだか名前を聞く限り、嫌な予感のする名前ですが、
ドゴーミンがそのように説明すると同時に、格納庫の大きなゲージが開いて、
格納庫内の何か巨大な物体の姿がワルズ・ギル達の目に飛び込んできました。
インサーンは「グレートワルズですって・・・?」と驚きの声を上げて、その巨大な物体を見入ります。
インサーンはグレートワルズというものが何なのかは知っているようですが、その姿は見たことがないようです。

インサーンが見入るその巨大な物体は、巨大ロボットでした。
しかもこの巨大ロボ、スマートな白と青のボディカラーで、
どうもこれはワルズ・ギルの姿を模したものであるようです。
胸部から腹部にかけてはワルズ・ギルの顔が大きく象った模様が刻まれています。

う〜ん、なんとも縁起の悪そうなデザインですが、
それはワルズ・ギルの日頃の醜態を知った者の偏見に満ちた見方であり、
何の先入観も無い心で見れば、非常にカッコいいデザインです。
むしろ正義のロボットに見えます。
インサーンもすっかりそのカッコよさに心奪われたようで「ステキ!!」と乙女の声を上げます。

インサーンは帝国軍のエリート技官ですから、
この「グレートワルズ」という巨大ロボの名前は聞いたことがあるのでしょう。
だがその姿は見たことが無かった。
インサーンほどの地位にある技官でもその姿を見ることが許されていなかったわけですから、
帝国の中枢しか知り得ないような、よほどの秘密兵器なのでしょう。
おそらく、その姿形がワルズ・ギルに似せてあることからして、
皇帝が跡取り息子の皇太子就任か何かを記念して、
ワルズ・ギルを守るために帝国の技術の粋を結集して作らせた最強ロボなのでしょう。

ワルズ・ギルはさすがにこの自分に似せた巨大ロボのことは知っているようですが、
実際に実物を見るのは初めてであるようで、呆然としてグレートワルズを見上げています。
そのワルズ・ギルにドゴーミンの1人が
「陛下はこのグレートワルズを使って、邪魔な海賊を排除し、
一刻も早く地球を征服せよとのこと、ドゴ・・・」と言います。
つまり皇帝はワルズ・ギル軍が地球で変な海賊の邪魔にあって征服作戦が進んでいないという噂を聞き、
心配になって、もともとワルズ・ギルを守るために作ったグレートワルズをこの機会に役立てようと思い、
支援兵器としてわざわざドゴーミン2人を護衛につけて届けさせたのです。

ワルズ・ギルはそのグレートワルズの威容を息を呑んで見つめて、
それが父親から自分のためにわざわざ送られたものだと知り、「まさか、こんなものを・・・」と感動します。
グレートワルズは帝国の最強の秘密兵器であり、帝国の最後の切り札ともいえるものです。
だから、これは自分が皇帝となった後、もし帝国の存亡の危機が訪れた時にこそ使うべきものであり、
こんな辺境の星の征服作戦に投入すべきような兵器ではない。
それをわざわざ送ってきてくれるとは、父はよほど自分のことを心にかけてくれているのだと思い、
ワルズ・ギルは感激して「父上、感謝しますぞ!」と、直立不動で声を震わせます。

そのワルズ・ギルの横にダマラスが進み出て、
「・・・確かに、ザンギャック最強のグレートワルズを使えば、誰でも地球征服が出来るのは・・・?」と感嘆しますが、
その声には幾分、不満の色が滲んでいます。
陛下は殿下に甘すぎる・・・と思ったのです。

ダマラスももちろんグレートワルズのことは熟知しています。
そして、それが帝国の秘中の秘であることも知っています。
だから、こんな帝国の最後の切り札を軽々しく地球にまで持ってこさせるなど、
本来あってはならないことということも痛感しています。

そこまでせずとも、せっかく自分がこれからワルズ・ギルを献身的に補佐して、
今まで不誠実であった分、まさに命懸けで仕えて
ワルズ・ギルに戦争の厳しさを教えて一人前の司令官に育て上げ、
そして我が命に替えても、堂々と戦ってマーベラス一味を倒して
ワルズ・ギルに真の勝利の栄光をもたらすつもりでいたのです。
それなのに、こんなものを送ってこられては、
またワルズ・ギルは父親に甘えていれば何でも望み通りになると勘違いして、一向に成長しない。
そうした不満が、ダマラスの言葉を無意識に、やや皮肉めいたものとしてしまったのでした。

それがワルズ・ギルには伝わったようで、
ワルズ・ギルはカチンときて、「ダマラス!!誰でもとはどういう意味だ!?」と怒鳴りつけます。
この最強兵器があれば自分のような無能が司令官でも勝利できるというふうに、
ダマラスが自分のことをコケにしていると感じたようです。

まぁ実際ダマラスはそのように思っています。
現実にワルズ・ギルは未熟で無能な司令官であり、現状ではマーベラス一味に勝利するのは困難です。
しかし、このグレートワルズを投入できるとなれば話は別です。
きっとマーベラス一味を倒して地球をあっという間に征服出来るだろうということはダマラスには分かります。
しかし、だからといってダマラスはワルズ・ギルの無能を嘲笑っているわけではない。
無能のままではいけないから、こんなものに頼らずに地道に苦労して経験を積んで
成長していってほしいと思っているのです。
そういう気持ちが強すぎたために、つい皮肉めいた言い方になってしまっただけのことであり、
ワルズ・ギルをコケにしているつもりなど無いのです。

ダマラスは慌てて「・・・いえっ!決してそのような意味では・・・」と弁解しようとしますが、
またもやワルズ・ギルの激しい敵意に満ちた視線に睨まれると、
どうにも言い返せなくなり、黙り込んでしまいます。
ワルズ・ギルはダマラスが黙ると、せっかく感動していた気分に水を差されて大いに気分を害したようで、
不満そうに溜息をつき、気を取り直すようにグレートワルズに向き直ると
「・・・まぁいい!・・・とにかくこいつさえ有れば、我らの勝利は間違いなしだ!!」と高らかに宣言するのでした。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 23:48 | Comment(0) | 第37話「最強の決戦機」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月19日

第37話「最強の決戦機」感想その3

ギガントホースに強力な秘密兵器グレートワルズが到着していたのと同じ頃、
地球上の某地点で錨を下ろして停泊中のゴーカイガレオン、
いつもの船室ではマーベラス一味の6人とナビィが先ほどの戦いの後、ゆったりとした時間を過ごしていました。
ハカセはテーブルで何か機械の修理をしながら
「まったく・・・ザンギャックの連中も手を焼かせるんだから・・・」とブツブツ文句を言い、
ルカも「ほんっと、懲りないよねぇ」と溜息をつき、
アイムも「さすがに疲れます・・・」とウンザリした様子です。

さっきの大量の巨大スゴーミンとの戦いは、勝利したもののマーベラス一味の面々もさすがに疲れたようです。
一見楽勝のように見えましたが、やはり相手の数が多いと大変です。
行動隊長クラスの怪人の方が確かに手強いが、
今のゴーカイジャーの戦力ならば並の行動隊長ならば簡単に倒せます。
簡単に倒せるという意味では、もう既に行動隊長もスゴーミンもそう大差は無いぐらいになっています。
だからスゴーミンだから楽だとかいう意識も既に無い。

むしろ1人の行動隊長と戦うよりも、大勢のスゴーミンと戦う方が嫌でした。
倒すのに要する時間や労力は行動隊長もスゴーミンも同じようなものなのだから、
その数が多い方が、その分、時間や労力を費やすので疲れるのです。
だから、さっきのような戦いが一番疲れます。

結局、ザンギャックというのはそうやって物量作戦でどんな強敵でもじりじりと疲労を蓄積させて追い込んでいき、
最終的には取り囲んで倒すというのが得意戦法であり、
これは物量が豊富でなければ出来ないという条件付きではありますが、やはり最強無敵の戦法だといえます。
ハカセ達がウンザリしているのは、疲れもありますが、
ザンギャックのそうした戦い方をよく知っているだけに、
自分達もそうしたザンギャック戦法にじわじわと削られていっているような予感がして、
少し嫌な気分になっているからでした。

ナビィはハカセ達の愚痴を聞いて同調するように、パタパタと飛びながらマーベラスの傍に行き
「地球を守るのも苦労するねぇ、マーベラス!」と呑気に言い、
マーベラスの座る船長椅子の背もたれのいつもの自分の定位置にとまります。
ところが、マーベラスはナビィの言葉を不機嫌そうな顔で聞いて
「・・・別に!・・・降りかかる火の粉を払ってるだけだ・・・!」とぶっきらぼうに応えます。

マーベラスも見た感じ、どうもハカセ達と同じようにザンギャックとの戦いに疲れを感じているように見えますが、
こんな程度は苦労のうちに入らないので疲れていないのだと強がっているのです。
しかし、マーベラスはここで、どうしてこれが苦労のうちに入らないのかという理由として、
自分の強さをアピールするわけではなく、大したことをしていないからだと言っています。
つまり、これは「地球を守る」というような行為ではなく、
単に「降りかかる火の粉を払う」という行為に過ぎないというのです。

すると、マーベラスの椅子の後ろでジョーと一緒に筋トレをしていた鎧が、
そのマーベラスの言葉を聞いて立ち上がり、マーベラスをからかうように
「またぁ!口では何だかんだ言ってぇ!結局いつも守ってくれてるじゃないですか!」と笑顔でじゃれてきます。

鎧はマーベラスが「自分に降りかかる火の粉を払っているだけだ」という趣旨で発言したのだと思ったようです。
つまり、「俺は売られた喧嘩を買っただけのことであって、地球を守るために戦ったわけではない」という、
マーベラス特有の、照れを含んだツンデレ発言なのだと解釈したわけです。
しかし実際は誰がどう見てもマーベラスは地球を守ろうとして戦っているように見えます。
決して自分の都合で戦っているわけではない。
そんな誰が見ても明らかなことを今さら隠そうとするとは、マーベラスはよほどの照れ屋なのだと思い、
鎧はついからかいたくなったのでした。

こういう場合、褒めたり感謝したりすれば、マーベラスは真っ赤になって怒るはずです。
だから鎧は面白がって「あは!俺は嬉しいっすよ!」と笑いながらソファの方に行って座り、
ニヤニヤしてマーベラスの反応を見ます。
ところがマーベラスは散々からかわれたというのに、やけに冷静で、
不愛想な顔で「・・・どう思おうがお前の勝手だがな・・・守ってねぇし・・・守れてもいねぇ・・・!」と目を伏せます。
なんだか異様にテンションが低いです。

どうもマーベラスは鎧が言うように自分が地球を守っているわけではないと本気で思っているようです。
となると、さっきの「降りかかる火の粉を払ってるだけ」というのも、
単に売られた喧嘩を買っただけという意味で言ったのではないということになります。
何故なら、誰がどう見ても最近のマーベラスがザンギャックと戦っている姿は、
自分が売られた喧嘩を買っているとか、自分や仲間の身を守るために仕方なく戦っているとか、
そういうものではないからです。
だから「売られた喧嘩を買っただけだ」なんて言っても、すぐに見え透いたウソだと見破られてしまう。
こんなに鎧の言葉に真面目な顔で反論するぐらい本気で「地球を守っていない」と思っているのならば、
マーベラスがそんなすぐに論破されてしまう幼稚なウソを言うはずがない。

だからここでマーベラスが言う「降りかかる火の粉を払ってるだけ」というのは、
自分に降りかかる火の粉を払っているという意味合いで言っているわけではないのです。
自分の行動は地球に降りかかる火の粉を払っているだけのことであって、
それは地球を守っているのとは違うのだとマーベラスは言っているのです。
しかし、火の粉を払うことだって、立派に守っていることとして誇っていいような気もするのですが、
どうしてマーベラスはこんなに暗い顔をしているのか?

それは「守れてねぇ」と言っているように、
要するにザンギャック相手には火の粉を払っているだけでは
最終的には地球を守りきることは出来ないことを知っているからです。
ザンギャックは何度邪魔されても決して諦めることなく何度でも攻めてくる。
そして、今こうしてザンギャックの物量作戦に疲れを感じ始めているように、
守る側は火の粉を払っているうちに次第に疲れが蓄積していって、最後は物量に押し切られて敗れてしまうのです。

ザンギャックの自由を抑圧する暴力による支配体制は確かに非道なものであり、
自分達はそれを許せないから戦っている。
しかし宇宙の大部分でザンギャックの力による支配を「力による安定」として受け入れている人々も大勢いる。
そういう者達をザンギャックは優遇しながら、他方で弱者を虐げて搾取している。
結局、ザンギャックに虐げられている者と同じぐらいの数、
何となくザンギャックの支配を受け入れて恩恵を受けている者もいるのです。
だからこそザンギャックの支配体制は安定しており、
ザンギャックはその支持者たちに支えられて富強であり、圧倒的な物量作戦を展開できる。

一方、ザンギャックに虐げられている者は数は多いが、その力は奪われて弱体です。
だから到底ザンギャックには敵わない。
ならばマーベラス達もそれなりに才覚はあるのだから、ザンギャックに上手く取り入って生きた方が賢いはずですが、
マーベラス達はザンギャックのルールに縛られて生きるのが嫌で、ザンギャックのやり方が納得出来ず、
あえてザンギャックのルールから離れて反逆者として生きる道を選んだのでした。

反逆者というとカッコいいですが、要するに強者から離れて弱者側にある者であり、
ザンギャックのルールに縛られることから逃げた者であり、逃亡者に過ぎません。
強大なザンギャックを倒す力など無い。
弱い奴が必死で逃げていただけです。

ただ、あまりに小規模のゲリラ部隊のような存在ですから、
常にザンギャックの全軍を相手にするようなことはなく、毎回戦うのはザンギャックの小部隊です。
だから戦術の才があれば連戦連勝も可能です。
マーベラスも、赤き海賊団の頃も、マーベラス一味を結成してからも、
ザンギャックの治安維持部隊が逮捕しに来たのを返り討ちにしたり、
軍資金を奪うためにザンギャックの駐屯基地を襲撃して全滅させたり、
たまたま遭遇したザンギャックの小規模艦隊を壊滅させたり、それなりに華々しい戦果も上げてきました。
だからこそ地球に来た時点でもそれなりの賞金額がついていたのです。

しかし、これらの戦果は全て、海賊特有の神出鬼没のヒット&アウェイ戦法によるものでした。
奪うものを奪い、倒すべき相手を倒してから、
ザンギャックが増援を送ってきて物量にものをいわせる前に素早くその場から逃げて行方をくらます。
そしてまた別の目的地に突然現れて、奇襲で勝利し、また素早く立ち去るのです。

これは身軽なゲリラ部隊だからこそ可能になる戦法であり、
逆に少人数のゲリラ部隊である赤き海賊団やマーベラス一味がザンギャック相手に勝ち続けるには
この戦法以外にはあり得ない。
1ヵ所に留まってザンギャックの物量作戦とまともに戦い続けても、次第に疲弊して負けるに決まっています。
だからマーベラス達は1ヵ所に留まって戦い続けたことなどありませんでした。
つまり、特定の星や住人を守るために戦ったことなどないのです。

海賊は守るためになど戦えない。むしろ攻める戦いしか出来ないし、守る側は常にザンギャックの方でした。
ザンギャック支配下での戦いでは常に、マーベラス達が攻める側であり、ザンギャックは守る側でした。
そしてザンギャック側が増援で優勢になって攻めに転じれば、
マーベラス達は守ることはせず、さっさと逃げて生き延びてきたのです。
守るために戦ったら負けることを知っていたからです。

実際、バスコの裏切りのせいとはいえ、
あの連戦連勝だった赤き海賊団も秘密基地の場所をザンギャックに知られて攻撃を受け、
守る立場に置かれたら、あっという間に敗北して壊滅してしまった。
守ろうとして戦っても、勝てないし守れない。
だから自分達が守って戦っているつもりでも、それは本当に守っていることにはならない。
ただ降り注ぐ火の粉を必死で払っているだけです。
そしてザンギャックの物量作戦が降らせる火の粉は、一つ一つの火の粉は大した火力は無くても、
その量と持続力が桁外れなので、いつか絶対に払い落としきれなくなり、
火の手が上がり、自分達の守ろうとしているものは炎に包まれて焼け落ちる。

赤き海賊団のような小さな海賊団さえ、守りきれずにそうして焼け落ちたのをマーベラスは知っています。
ましてや地球という大きな星に降ってくる火の粉を全部払い落として火事を防ぐなど、
自分達のような海賊には到底無理だとマーベラスは思っています。

第1話の時、冒頭の宇宙空間でザンギャック艦隊を壊滅したシーンでは躊躇をほとんど見せなかったマーベラスが、
地球に降り立った後、ザンギャック部隊と戦うことにはやけに躊躇していたのも、
しばらくお宝探しで居つくことになる地球でザンギャックと揉め事を起こすことを恐れたからです。
居場所を特定された状態でザンギャック軍と戦うことの不利を知っていたからです。

それでも結局は戦ってしまい、マーベラス一味は当初はかなり危機感が強かったのですが、
幸いザンギャックの地球侵略軍はワルズ・ギルという無能司令官が参謀長のダマラスと不仲であり、
まともに機能していなかったのでマーベラス一味は連戦連勝を重ねることが出来ました。
しかし、それも限度はあります。
もし地球侵略軍を打ち破ることが出来たとしても、そうなればもっと強力な帝国も主力軍が攻めてくるのは必至です。
そうしていずれはザンギャックの物量作戦の前に息切れして、赤き海賊団のように壊滅させられるか、
その前に守りきれずに地球が征服されてしまうだろうとマーベラスは思いました。

これは確かにザンギャックに支配された宇宙の現実、そこでの自分達のような海賊の在り方を熟知する
マーベラスだからこそ思い至る結論であり、
鎧のような宇宙の現実に疎い者にはよく分からないことでありましょう。
ただ、ちょっとここでのマーベラスの態度は不可解です。
これが宇宙の常識的な考え方だというのなら、どうして今になって急にこんなことを言い出すのか?
今まではこんなマイナス思考な言葉は口にすることなく、普通に地球を守るために戦っていたはずです。

特にハリケンジャー篇以降は「地球を守るために戦っている」という自覚がしっかりあったはずですが、
その時はマーベラスはこんな弱音は吐いていませんでした。
むしろ、あの頃よりも今の方がゴーカイジャーの戦力もアップしているのですから、
今になって急に弱気になるのはおかしい。
今の状態で決して強気になれないのは分かるが、
ならばハリケンジャー篇の時点でもっと弱気になっていないとおかしいはずです。

ましてや、今回は前回のゴーオンジャー篇で、
マーベラスは自分がザンギャックから地球を守って戦う意義を「宇宙の自由を守るため」だと初めてハッキリと知り、
だからこそ自分に関係の無い星である地球を守るためでも戦う意義があるのだと知ったばかりです。
ならば、普通はモチベーションは上がりまくっているはずです。
それなのに今回いきなり、このテンションの低さですから、一体これはどうなっているのか?と思ってしまいます。
しかし、実はこのマーベラスのローテンションは当たり前の反応なのです。

この地球を守る戦いがマーベラスにとっては「自由を守る戦い」であり、
単なる好き嫌いで戦うのとは違って重大な意義があることが分かったということは、
もはや避けられない、逃げられない戦いということになります。

前回のゴーオンジャー篇で、マーベラスは地球を守る戦いの真の意義を知る前は、
自分に無関係の世界のために戦って敗れることに恐怖していました。
恐怖するということは、心の奥底ではいよいよヤバくなれば「嫌だ」「逃げたい」と思っているからです。
逆に「もう逃げない」と覚悟が定まれば恐怖心は無くなります。
マーベラスは自分の地球を守る戦いが「自由を守る戦い」であり、
それが自分にとって重大な意義があるということを知って、恐怖心を克服しました。
それは言い換えれば「もう逃げない」という覚悟が定まったということです。

しかし、逃げずに戦って勝てればそれでいいんですが、
マーベラスは守る戦いでザンギャックに勝てるとは思っていません。
だから地球を守って戦っても最終的には負けるだろうという予想は変わらないわけです。
ただ、ゴーオンジャー篇の後、今までは定まっていなかった
「もう逃げない」という覚悟が定まったというだけのことです。

つまり、言い換えれば、ゴーオンジャー篇の前はマーベラスは心の奥底では、
負けそうになったら逃げようと考えていたということです。
絶対に逃げてやろうと確信していたというわけではないでしょうが、
そういう可能性は心の片隅に残していたのです。

それは別に卑怯な考え方ではありません。
だって、火の粉を必死で払い落しても落としきれず、遂に地球が炎に包まれて、
守るべきものが無くなってしまったら、それでも地球に居残って何をするというのか?
そういう場合は泣く泣く逃げるしかないでしょう。

実際、マーベラスは赤き海賊団が炎に包まれて壊滅した時、最後には逃げ出したのです。
アイムだってファミーユ星が滅びる時、逃げ出しましたし、
ルカだってスラムを捨てて逃げたのだし、
ジョーもシドを見捨てて逃げたようなものです。
負けた時に逃げることで生き延びた連中が集まってマーベラス一味を作っているのです。
だから、負けて逃げることは恥ずべきことではない。

ただ、逃げるということは本当の最後の瞬間には立ち会わないということです。
そこまで立ち会っていたら逃げられなくなってしまいますから。
だから逃げる者は本当の最後の敗北の瞬間の悲惨を見ることはない。
だから目を背けることが出来るのです。
そうして薄めた過去の敗北の記憶を心の奥底にしまい込んで、また前に向かって進むことが出来るのです。
マーベラス一味の面々はそうやって前向きに生きてきた連中といえます。

だからマーベラスは経験上、負ける直前に逃げ出せば、
また前を向いて生きていくことが出来るということを知っています。
だから、地球を守って戦って、いよいよ負ける直前に仕方なく逃げるという可能性を自分の心の中に残していた時は、
マーベラスは未来に希望を持つことが出来ていたのです。
だから、マーベラスはザンギャックから自分達が地球を守って戦っても勝ち目が無いことは分かっていても、
何となく突き抜けた明るい気分を持つことが出来ていたのです。
「とことんやってダメだったら、最後は諦めるしかない」という達観があったのです。

しかしゴーオンジャー篇で地球を守る戦いの「自由を守る戦い」という自分にとっての重大な意義を知り、
それが自分の命を賭けてもいい戦いだと知ったことで、
マーベラスは「もう決して逃げない」「逃げられない」と覚悟を固めました。
しかしその結果、マーベラスは「負けても最期まで逃げない」という立場に立つことになってしまい、
もはやそれで死ぬことにも恐怖は感じませんでしたが、
とことん最後まで敗北を見つめなければいけなくなり、
心に逃げ場が無くなり、未来の敗北の情景で頭がいっぱいになってしまい、暗澹たる気分になってしまったのでした。

まぁ覚悟は見事に定まっていますから全くオタオタしたところは無いのですが、
醒めた絶望感に浸った状態といえます。
こんな状態で「地球を守っている」などと褒められても困ってしまいます。

地球を守ることなど出来るわけではない。
自分は単に地球が炎に包まれて燃え尽きる最後の瞬間まで、
降ってくる火の粉を払い落とし続けて自分も炎に包まれる道化となる覚悟を固めただけのことなのです。
それだけの覚悟を固める価値のある戦いだと認めたわけだが、
それでも負けは負けであり、結局は地球は守れないし、自分の志も地球と一緒に燃え尽きるだけのことです。
だが、自分はそのために生まれてきたのかもしれない。
ザンギャックの作ったルールの下で腐った人生を送るよりも、
そうやって信念を貫いて戦って死ぬ方が自分らしい生き方なのかもしれないと、マーベラスは思っていました。

そんなマーベラスの心情は知らず、鎧はマーベラスの「守ってねぇし、守れてもいねぇ」という言葉を
相変わらず照れ隠しなのだと思い込んで
「ちゃんと守ってますよ!・・・もう!素直じゃないんだから!」と茶化しつつ、
ソファの前のテーブルの上に散らばっているスーパー戦隊大百科(鎧の自作)を整理し始めます。
その鎧に向かってマーベラスは暗い顔をしたまま、
「鎧・・・お前が言う、“ザンギャックから地球を守る”ってのは・・・こういうことだったのか?」と、
唐突に、何か縋るような目つきで質問します。

実はマーベラスは、ほとんど負けて死ぬ覚悟を固めていながら、それでもまだ迷っていました。
もちろん死ぬことが怖くなったとか、負けることが怖くなったわけではありません。
宇宙の現実を考えれば、こういう結論にしかなり得ないのだとマーベラスは確信しています。
しかし、それでも、本当にそれだけしか道は無かったのか?と疑問が残るのです。
怖気づいているわけではなく、純粋な疑問です。
その疑問の答えを鎧が持っているとはマーベラスは思っていません。
ただ、鎧なら知っているのではないかと思い、思わず質問したのでした。

それはつまり、鎧の信奉するスーパー戦隊の戦士たちならば、
「ザンギャックから地球を守る」というこの難題にどのような結論を出すのだろうかという疑問でした。
この地球を様々な悪の組織から守ってきたというスーパー戦隊ならば、
こんな火の粉を払うようなことしか出来ない自分とは全く違う、
地球の守り方に関する答えを出すことが出来るのではないだろうか?とマーベラスは思ったのでした。

もちろん、そのスーパー戦隊が34戦隊が束になって相討ちになってようやく撃退したザンギャックは、
これまでに彼らスーパー戦隊が戦ってきたどんな悪の組織よりも桁外れに強力な敵ですから、
スーパー戦隊ならばザンギャックを倒す有効な方法を用意してくれるなどとは期待していません。
スーパー戦隊の悪の組織を倒して来たという実績も経験も対ザンギャックには大して役には立たないでしょう。
しかし、マーベラスは地球のことについては無知ですから、
スーパー戦隊の戦士たちの戦い方の中からマーベラスが思いもよらないような
地球を守る戦い方のヒントが得られるかもしれないと、
微かな望みを繋ぐように、スーパー戦隊に詳しい鎧に質問をしてみたのでした。

そういう質問意図があるわけですから、前後の話の流れからして、
ここは「火の粉を払うだけ」ではない形でザンギャックから地球を守る方法があれば教えてほしいと
マーベラスが言ってきていると解釈すべきなのですが、
鎧はマーベラスが立派に地球を守って戦っていると決めつけていますから、
勢いよくスーパー戦隊大百科を閉じると、笑顔で立ち上がって
「もちろんですよ!!現れる敵をバッタバッタと薙ぎ倒しぃ!」と派手なアクションで
威勢のいいことを言い始めます。

が、それ以上の言葉は続きません。
鎧の認識では地球を守る戦いというのは、現れる敵の怪人を倒していけば
それで自然に勝利に至るものであったからです。
鎧はスーパー戦隊の過去の戦いの内実を詳しく知っているわけではなく、
公式情報レベルの知識しか無いので、まぁそういう認識しかありません。
それにザンギャックが宇宙でいかに圧倒的な勢力を誇っているのかも実感がありません。
だから、この程度のことしか言えません。

しかし、どうやらその程度のことを言っても、
それはマーベラスが求めている解答にはならないのだろうということは、
マーベラスの浮かない顔を見ると鎧にも分かりました。
そうなると、鎧はちょっと焦ります。
つまりマーベラスは今のように戦っていても地球を守れる自信は無いと言っているわけです。
鎧は今のように戦って勝っていけば地球を守ることが出来ると信じているのですが、
肝心の船長のマーベラスがそれでは勝つ自信が無いというのは、鎧にとっては由々しきことでした。

地球は絶対に守らないといけないし、
ザンギャックのような宇宙の悪は倒して宇宙の自由と平和を回復せねばならない。
そのために今の戦い方ではダメだとマーベラスが言うのならば、
別の正しい方法を用意しなければならない。
鎧にはそんな名案は思い付きませんが、マーベラスはあるいはその方法を知っていて、
それでこういう質問をしてきているのかもしれないと鎧は思い、
マーベラスの前に行くと
「・・・ていうか・・・じゃあ逆に聞きますけど・・・マーベラスさんの“守る”って・・・どういうことなんですか?」と
真剣な顔で逆質問したのでした。

するとマーベラスは黙り込んでしまいます。
鎧の質問に答えようとして、自分にとっての「守る」とは何なのか考えてみたのですが、
何せ今まで一度も何かを守って戦ったことは無い。
ザンギャックに逆らって何かを守って戦うなどということは無理なのです。
そういう宇宙からやって来たマーベラスに、そんな経験があるわけがない。

もちろん何かの経緯で何かを短期的に守ったことはありますが、最後まで守りきったわけではない。
ヤバくなれば逃げて生き延びてきたのですから、最後までとことん何かを守ったことはない。
仲間入り前のジョーやルカを助けたこともありますが、あれは結局は一緒に逃げただけであり、
守ったというのとは違う。
結局、逃げた者は誰かを守ったということにはならないのです。
自分が「守る」ということが分からないのは、今まで自分が逃げてばかりいたからだとマーベラスは分かりました。

前回、マッハルコンに「逃げてばかりいる奴には負けない」と言ったマーベラスでしたが、
それが言えるようになったのは、その直前にガンマンワールドで
もう逃げないという覚悟を固めることが出来たからであり、
それ以前は実はマッハルコンと五十歩百歩の存在であったのです。
だから「守る」ということについて全く経験が無くて、自分にとっての「守る」を説明する言葉が出てこない。

そうして黙り込んでしまったマーベラスを思わずハカセ、ルカ、アイムも見つめます。
ジョーも筋トレを中断して立ち上がり、マーベラス同様、考え込みます。
皆、マーベラスが何に戸惑っているのかよく分かるのです。
何故なら、宇宙から来た4人の仲間はマーベラス同様、
今までずっとザンギャックからは基本的には逃げ続けてきただけであり、
何かを腰を据えて守りきった経験など無いからです。
だからマーベラス同様、自分にとっての「守る」とは何なのか答えを見つけることが出来ない。
皆、鎧のマーベラスに向けた質問を、自分に向けられた質問であるかのように考え込み始めたのでした。

そういう変な空気になったことを感じて、マーベラスは更に考え込みました。
勝利の見込みが無いとはいえ、地球を守る戦いを指揮する船長の立場として、
皆のためにも何か答えを見つけねばならないと焦ったのでした。
それで、マーベラスは自分は確かに何かを守りきった経験は無いが、
守ってもらった経験はあることを想い出しました。
それは赤き海賊団の壊滅事件の時、アカレッドに命を守ってもらった例の想い出でした。
マーベラスはあの時のアカレッドの心情を辿れば、
「守る」ということの答えが見つかるのではないかと思い、あの時のことを想い返しつつ考え込みます。

あの時、アカレッドは何を守ろうとしたのだろうかとマーベラスは考えました。
そうしてあの時のアカレッドの行動を思い返してみて、
アカレッドが単に自分の命を守ろうとしたのではなかったのだと分かりました。
あの時、アカレッドは自分にレンジャーキーとナビィやガレオンを託すために自分を助け、
敵と相討ちになって自分を逃がしたのだったことをマーベラスは想い出したのです。

単に2人でザンギャックの追手から逃げるだけならば、アカレッドは死なずに逃げる余裕はあったかもしれない。
しかし、それではレンジャーキーもナビィもガレオンも奪われていたでしょう。
この3つを奪われないようにするためには、逃げずに戦って、あの場にいたザンギャック軍を排除する必要があった。
だからアカレッドは相討ち覚悟でとことん戦って、自分の命を投げ出して、
その場にいたザンギャック軍を道連れにして倒したのです。
お蔭でマーベラスはレンジャーキーの箱を抱えてナビィを伴ってガレオンに乗って脱出することが出来た。

つまりアカレッドは逃げずに戦って守りきったのです。
何を守ったのかというと、それは言うまでもなく「夢」です。
宇宙最大のお宝を手に入れるというアカレッドの大切な「夢」を、アカレッドは守りきったのです。
しかしアカレッドは死んでしまった。
しかも運悪く死んだのではなく、最初からアカレッドは命を捨てる覚悟で突っ込んでいったのです。
となると、アカレッドが守ろうとしたのはアカレッド自身の夢ではなく、
マーベラスの夢だったということになります。

アカレッドはマーベラスの夢なら何でも守りたいと思っていて、
たまたまマーベラスの夢も「宇宙最大のお宝を手に入れる」であったというだけのことなのか、
それとも単にあの場では戦えるのがアカレッドだけだったから、
どちらか1人生き延びて「宇宙最大のお宝を手に入れる」という夢を引き継ぐとしたら
マーベラスという選択肢しかなかったのか、
そのあたりの詳細なアカレッドの心理はもう今となっては分からないが、
とにかくマーベラス自身が「宇宙最大のお宝を手に入れる」という夢を持たない限り、
3つのアイテムは意味が無いものですから、
3つのアイテムを託したということは、アカレッドはマーベラスの夢を守ろうとしたと言っていいでしょう。

つまり、マーベラスが知っている唯一の「守る」という行為の実例は、
敗北の中でも命を捨てて仲間の夢を守りきったアカレッドという男の例だけということになります。
そのことに気付いて、マーベラスは、アカレッドに出来たことなら自分にも出来る。
いや、やらねばならないと思いました。

そもそも自分がザンギャックに逆らって海賊になったのは、自由の精神の尊重を求めたからです。
その「自由」とは、言い換えれば「夢を掴む自由」です。
その自由を尊重する精神ゆえに自分は地球の自由がザンギャックに蹂躙されることを見過ごすことは出来ない。
だから逃げずに戦って守り切ろうとしているのだが、
おそらく力及ばずいずれは敗北して、自分は自由の精神に殉じて死ぬことになるだろう。
それは怖くはないし誇らしいことであるとまで思うが、
それでも自由な世界を実現出来ないことは、やはり無念だ。

だから、地球の自由を守ることは出来ないかもしれないが、
せめて、一緒に夢と自由を掴むために集まった仲間の「夢を掴む自由」だけは命に替えても守り抜きたい。
そうすれば、もし自分が「宇宙最大のお宝を手に入れる」という夢を掴む前にザンギャックに敗れて死んだとしても、
その夢は仲間が引き継いで実現してくれる。
アカレッドだって同じように無念に思って自分に夢を掴む自由と「宇宙最大のお宝」を託したのだろう。
だから、今度は自分がアカレッドと同じことをしなければならない。
それが自分にとっての「守る」ということだとマーベラスは思いました。

つまり、それが鎧に回答すべき答えでした。
しかし、マーベラスはムスッとした顔で立ち上がると「・・・さぁな!」と言いながら、
ぶっきらぼうに鎧に肩をぶつけて通り過ぎていき、そのまま振り向きもせずに船室の外に出て行きました。

どうしてマーベラスが鎧の質問の解答に辿り着きながら、
ちゃんと答えようとせずに出て行ってしまったのかというと、
自分にとっての「守る」ということは、自分の命を捨てても仲間達の夢を守ることだ、などと言えば、
仲間たちはきっと自分と同じことをしようとすることが想像がついたからでした。
そんなことになったら、イザ本当にその場面が来た時に誰が命を捨てて誰が生き残るかで揉めるに決まっている。
そんなことになればマーベラスの望みを叶えるのが難しくなるだけでした。

自分だってもしアカレッドにあらかじめそのようなことを聞いていれば、
きっとあの時抵抗してしまっていただろう。
不意打ちだったからアカレッドの本懐は遂げられたのです。
だから、こういうのは、アカレッドみたいに黙っておいていきなりやるのがいい。
だからマーベラスは鎧にも他の仲間たちにもこの自分の決意は秘密にしておくことにしたのでした。

それに、何も今そんな話をすることもないだろうとも思えたのでした。
いずれはザンギャックの物量に押し切られることになるとはいっても、
現在の情勢を見る限り、まだまだ簡単に自分達がザンギャック軍に押し切られるようにも思えませんでした。
だから、今、自分が決意したようなことを実際にやるような機会はすぐにやって来るようなこともないだろうと
マーベラスには思えました。

どうも先日のゴーオンジャー絡みの一件以来、妙にナーバスになってしまって、
えらく気の早い心配をしてしまっていたようだとマーベラスは反省し、
妙な空気になってしまった船室のムードを変えるためにも、
その根源である自分が一旦出て行くことにしたのでした。

しかし鎧は、マーベラスが自分の質問を無視して、
「守る」ということについてのマーベラスなりの考えを示してくれなかったことに
「マーベラスさん・・・?」と戸惑って、その後ろ姿を目で追います。
自分の「守る」という考え方と、マーベラスの「守る」ということについての考え方の溝が
埋まることなく放置されて不安になった上に、
マーベラスが地球を守る自信の無いまま戦っているのではないかと思うと、
鎧は急にこの先の戦いが不安になってきたのでした。

一方、何やら考え込んでいたマーベラスが何も答えずに去っていったのを見て、
ルカとハカセとアイムはその後ろ姿を見つめて思案顔となります。
マーベラスが何か「守る」ということについて考え込んでいたことは間違いない。
しかし、それは自分達ザンギャック支配下の宇宙海賊にとっては経験不足すぎて良い答えの導き出せない
自問自答であったはずです。
実際、3人ともすぐにそれは自分達には気の利いた答えは出せないことだと分かりました。

もちろん地球を守って戦う意思、宇宙の自由を守って戦う意思は彼らにはあります。
でもそれは最近になってやろうと思ったことであり、まだ成し遂げてはいない。
成し遂げていない、経験の無いものを上手く語ることは出来ない。
だからマーベラスにも当然、答えは出せないものだと思っていました。
そして予想通り、マーベラスは答えを出せずに去って行った。
しかし、それにしては妙に思案の時間が長かったように3人には思えたのです。

それで3人は何か変だと思いました。
もしかしたらマーベラスは何か「守る」ということについて思うところがあり、
それを仲間には秘密にしようとしているようにも感じられたのです。
ただ、それはマーベラスの思案の時間が微妙に長く感じられただけという些細な違和感であったので、
確信ではなく、ふとした疑惑というレベルだったのですが、
3人の心にそれは少し引っ掛かったのでした。

そして、船室の中ではただ1人、ジョーだけはマーベラス同様、「守る」ということについて深く思案し、
マーベラスと同じ結論を得ていました。
何故かというと、ジョーもまた「守る」という経験は無い立場でありながら、
「守られた」経験があったからです。
ジョーの場合、それはシドによって守られた経験でした。

シドがジョーを守った場合も、アカレッドがマーベラスを守った場合と同じで、
ジョーの夢を守るためにシドはザンギャックの追手を自分の方に引きつけて戦い、
その間にジョーを逃がして、逃げずに戦いジョーの夢を守りきったのでした。
そして、アカレッドの場合と同様に、シドの夢もまたジョーの夢と共通したものであり、
ジョーはシドの夢も引き継いだようなものでした。
その夢とは、ザンギャックによる過ちが繰り返されないよう戦うというものであったのです。
ただ、ジョーの場合もつい最近、ライブマン篇の時にようやく
その夢に逃げずに立ち向かう覚悟が定まったばかりでした。

そしてジョーは鎧の言葉を聞いて、自分なりに「守る」ということの意味を考えた結果、
シドに守られた経験を想い返し、
自分にとって「守る」とは、シドと同じように、
もし戦いに敗れようとも、その時は命に替えても仲間の夢だけは守り切ってみせることだと決意したのでした。
いや、そもそもシドに命を救われた自分がマーベラスの夢に惹かれたのは、
シドが自分の夢を守るために命を賭けてくれたのと同じように、
自分もいつの日かマーベラスの夢を守って命を賭けることで
シドと同じようになりたいという願望があったからではないかとまで思いました。

つまり、ジョーはマーベラスと同じようなことを考えていたわけですが、
その結論に至るまで深く考え込んでいたため、マーベラスの様子に注意を払う余裕が無く、
ジョーはマーベラスも自分と同じようなことを考えていたことには気付きませんでした。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 21:04 | Comment(0) | 第37話「最強の決戦機」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月20日

第37話「最強の決戦機」感想その4

さて、一方、ギガントホースの指令室ではワルズ・ギルが幹部連中を集めた前で
「いいか!グレートワルズがある今!」と言って司令官の席からぴょんと飛び降りると、
指令室の中央まで進み出て「海賊なんぞ虫けら以下の存在に過ぎん!奴らを強制排除する!!」と堂々と宣言します。
父親の皇帝から最強の決戦機グレートワルズが届けられた途端、急に強気になっています。
それほどグレートワルズは圧倒的に強いようで、こうなれば細々した作戦も無く、
マーベラス一味を見つけてグレートワルズで倒すというシンプルな作戦でいくようです。

幹部一同、その作戦に異論は無いようです。
こんな辺境の戦いにわざわざ帝国の秘密兵器のグレートワルズを送ってくる皇帝の親バカぶりには呆れたダマラスも、
まぁそれでも手の打ちようがなくなっていたマーベラス一味をこれで簡単に倒せるのは確かであるし、
グレートワルズでマーベラス一味を倒す作戦そのものは賛成でした。
バリゾーグに異論があるはずもなく、
もちろん、すっかりグレートワルズが気に入ったインサーンも異論は無い。

が、インサーンは1つだけ確認しておかねばいけないことがありました。
インサーンは「・・・では、誰に出撃を?」とワルズ・ギルに確認します。
つまり、グレートワルズはゴーカイオー同様、搭乗型の巨大ロボなのです。
だから操縦者が乗らないと戦えない。
そして、その操縦者を誰に命じるのか、その肝心の指示がワルズ・ギルから出ていないのです。

すると、ワルズ・ギルはインサーンの方に振り向いて、
なんと「決まっているだろう!俺自ら行く!」と言うのです。
この意表を突いた言葉に一同は仰天しました。
司令官のワルズ・ギルが自らグレートワルズに乗り込んでマーベラス一味を討伐するというのです。
何故そんなことをしなければいけないのか、幹部一同、意味が分かりませんでした。

普通に巨大ロボの操縦に長けた行動隊長を行かせればいいはずです。
それでワルズ・ギルの司令官としての名声に傷がつくなどということはない。
部下を上手く使うのが司令官の求められる能力であって、
自ら戦って武勲を上げる能力など、無くても何の支障もありません。
自ら海賊を討ち取ったからといって、ワルズ・ギルの司令官としての評価が高まるなどということはないのです。
だから、そんなことは全くする必要は無い。

それでも勇将型の司令官の場合、闘争本能が抑えきれずに自ら出撃するタイプもいないことはない。
が、ワルズ・ギルはおよそそういう勇将タイプとは対極に位置するタイプの司令官であったはずです。
むしろ臆病な男のはず。
それが自ら出撃など、全く予想外の展開に混乱したダマラスは、
慌てて「ううっ!・・・殿下!お待ちください!」とワルズ・ギルに駆け寄り、
「確かにグレートワルズは最強の決戦機!・・・しかし、司令官自らが出撃など、常軌を逸しております!!」
と思わず声を荒げて諫言したのでした。

ダマラスがワルズ・ギルの出撃に反対の理由は、
まず司令官自らが出撃する意義が感じられないことが第一の理由でしたが、
ワルズ・ギルの身を案じてという側面もあります。
グレートワルズはザンギャックの科学の粋を集めて作られた究極の決戦機ですから、
誰が操縦してもマーベラス一味のロボを圧倒する能力を発揮することは出来るはずです。
だから戦士としては使い物にならないワルズ・ギルでもグレートワルズを操縦すれば
マーベラス一味を倒すことは出来るでしょう。

しかし、それでもワルズ・ギルではグレートワルズの全ての能力を引き出すことは出来ない。
ならば万が一ということも有り得るのです。
戦場は何が起きるか分からないから、万全の状態で戦うように態勢を整えるのがベストです。
ここはやはり操縦者はワルズ・ギルではなく、ロボの操縦に長けた者の方が安全です。
グレートワルズは1人乗りのロボですから、ワルズ・ギルが搭乗すれば、
ワルズ・ギルを戦場に1人で放り出すことになってしまう。
それでもし不測の事態が生じれば帝国の一大事です。

ワルズ・ギルは本来は血を見ても怯えるような臆病な男ですから、
戦場の危険を覚悟の上で出撃するなどということは有り得ない。
おそらくグレートワルズの能力と自分の能力を過信して、絶対に大丈夫だと思って行こうとしているのでしょうが、
それは戦場を甘く見た軽挙妄動だとダマラスは思いました。

いや、それでも臆病者のワルズ・ギルは危険がゼロとまでは思っていないはずですから、
いつもなら自ら出撃しようなどとは言い出さないはずです。
そもそも司令官が自ら出撃する意味など無いし、そんなことをしても司令官として評価されるわけでもない。
いつも指令室でふんぞり返っているワルズ・ギルは、ある意味、そういうことは熟知しているはずです。
だから、こんな常軌を逸したことをする必要は無いし、そもそも普段のワルズ・ギルらしくない行動です。
ダマラスがワルズ・ギルのことを気でも狂ったのかと勘繰ってもやむをえないといえます。

しかし、そうはいっても皇帝の息子に面と向かって「常軌を逸している」は、
いくら慌てていたとはいえ、ちょっと言葉が過ぎるでしょう。
これはまたワルズ・ギルに「失礼なことを言うな!」と一喝されても仕方ない状況です。
ところが、ワルズ・ギルは意外にもダマラスの言うことを否定はせず、
苛立ちを爆発させるように「・・・常軌でも何でも逸してやるさ!!」と大声で怒鳴り返したのでした。

つまりワルズ・ギルは自分が自ら出撃することが司令官の行動として常軌を逸していることは自覚しているのです。
自覚していて、あえてそれをやろうとしているわけですから、
常軌を逸してでもそれをやらねばいけない理由があるということでしょう。
そして、その理由が常軌を逸している理由だから、自分のことを常軌を逸していると言っているのであり、
つまりはワルズ・ギルは自分は常軌を逸する必要があるとまで思っているようなのです。

ただ、それはあくまで中途半端ではあります。
何故なら、ワルズ・ギルはどのような局面でもそんなことを言い出しているわけではないからです。
普段から自ら出撃することにこだわる性癖があるのならば、
常軌を逸脱した司令官キャラとして一貫しているから、それはそれで説得力は有るのですが、
結局ワルズ・ギルはグレートワルズという戦場で自分を絶対的に守ってくれる安全装置が手に入った途端、
急に常軌を逸したことを安心して言い出したようにしか見えません。

おそらくワルズ・ギルは自分には司令官が自ら出撃するような常軌を逸した行動が必要だと
普段から何か思い詰めるものがあったのですが、
臆病者なので常軌を逸した行動にずっと踏み出せなかったのでしょう。
それがグレートワルズが手に入ったことでタガが外れたようです。
ではワルズ・ギルは何をそんなに思い詰めていたのか?

ワルズ・ギルはダマラスを睨みつけて
「俺を舐めるなよダマラス!・・・お前は俺を無能なバカ息子だと思っているのだろう?」と言って、
ダマラスに背を向けて数歩、歩きます。
ワルズ・ギルはダマラスが自分の出撃に反対するのは
グレートワルズを十分に使いこなせない無能だと思っているからだと見抜いているのです。
そして舐めて見下しているのだと決めつけています。

ワルズ・ギルに心の中を見透かされるとは予想していなかったダマラスは一瞬狼狽えますが、
すぐに慌てて「・・・滅相もない!!」と強く否定します。
確かに軍人として無能だとは思っているが、バカ息子だとまでは思っていないし、舐めてなどいないのです。
ところがワルズ・ギルはゆっくりダマラスの方に振り向いて
「・・・見え透いた嘘を・・・俺が何も知らないとでも思っているのか?」と、ねちっこく言い、
自分がザンギャック本国の皇帝宮殿で目撃した話をし始めます。

ワルズ・ギルが目撃した場面、それは、この地球侵略作戦が始まる前、皇帝の謁見の間での出来事です。
狭い部屋で、数段高い床面に置かれた玉座に皇帝が座り、
その左右にドゴーミンが1人ずつ、計2人槍を立てて護衛として立っていますが、
この2人が今回地球に来ているドゴーミンと同じとは限らないでしょう。
そして、その玉座の前の数段下がった床面にダマラスが跪いており、
他にはこの部屋には何本も太い柱が屹立している以外には何もありません。
宇宙を総べる帝国の皇帝の玉座としては質素に過ぎるので、
これはおそらく重臣に内密の命令を下すための私的な謁見の間なのでしょう。

その皇帝の姿はこのシーンでは影になっていて、シルエットぐらいしか分かりませんが、
そんなに巨大な姿をしているとか、特別な怪物的な姿ではないようです。
まぁ基本的にザンギャック幹部は地球人から見れば怪人なのですが、
ザンギャック基準で考えれば、別になんてことはない普通の怪人という印象で、
むしろダマラスなどよりは小柄で、しかしだらしなく肥えているようでもなく、
老人ながら精悍な体つきであるようです。

その顔はここでは詳細はよく分かりませんが、
第34話で出てきた1000ザギン札の真ん中に描かれた肖像画と同じ顔のように思えます。
また、例のザンギャックの紋章の真ん中にデフォルメされた形で描かれている顔のような模様にも
似ているように思えます。
ただ、1つ気になるのは、お札の肖像画にしても紋章の顔にしても、ちゃんと両目があるのですが、
このシーンの皇帝はどうやら片目が塞がっているようなのです。

皇帝とワルズ・ギルが親子なのにかなり風貌が違う点からして、
お札の人物が皇帝の父であるというわけでもなく、おそらく皇帝本人であると思われることから、
この本物とお札の片目の有無の相違は少し気になります。
少し、というのは、まぁ独裁者の場合、妙に風貌を気にする傾向があるので、
ザンギャック皇帝が醜い片目顔では具合が悪いので片目であることを
民衆には隠しているという可能性も十分にあるからです。

ただ、もしそういう事情でないとしたら、
何か特別な事情があって片目が無いことを隠さねばならないのかもしれません。
ただダマラスの前では平気で片目顔を晒しており、
おそらく宮殿で他の家臣と会う時も顔を隠したりはしていないであろうから、
そんな重大な秘密であるとは考えにくい。

そうなると、あと1つ考えられる可能性としては、
紋章やお札などが出来て以降、つまり帝国が成立して以降の比較的最近において
皇帝が片目を失ったということです。
そして、もしそれが病気で原因ではなく、何らかの怪我で片目を失ったのだとすれば、
ザンギャック皇帝の片目を奪うほどの何か重大な出来事が比較的最近起こったということになります。

そのあたりはまだ謎であり、単に深読みしすぎかもしれません。
もし単にみっともないから片目であることを民衆に隠しているだけだとするなら、
若い頃に片目になった可能性が高く、その精悍な体つきからしても、どうも歴戦の勇将というイメージで、
この皇帝が一代でザンギャック帝国を築いたという設定であっても、
十分説得力のあるようなキャラ造形がなされているのがシルエットだけで伝わってきます。

シルエットだけでそれが伝わってくる大きな要因になっているのはその声で、
超ベテラン俳優・声優の小川真司氏が声をあてており、
その知的で落ち着いた、それでいて凄味のある冷徹な声は、
この「ゴーカイジャー」という作品の悪のラスボス役に相応しいといえます。
まぁ本当にこの皇帝がラスボスになるかどうかはよく分からないのですが、
小川氏に声をお願いしておいて軽い扱いで終わるはずもないので、ラスボスとなる可能性が濃厚だと思います。

なお、この皇帝は今回、劇中ではその名前が呼ばれることはありませんが、
OPテーマ中でテロップでその名前が出ており、その名はアクドス・ギルというそうです。
ワルズ・ギル(悪すぎる)の父親がアクドス・ギル(悪どすぎる)というのも、笑ってしまうネーミングですが、
要するにこのザンギャック皇帝家はギルという姓の家柄であるようです。
まぁどこの馬の骨とも知れない成り上がり者がアクドス・ギルと名乗って、
息子にワルズ・ギルと名付けただけかもしれませんが。

とにかく「ギル」さんであるわけです。
そうなると小川氏が2000年のテレビアニメ「人造人間キカイダーTHE ANIMATION」で
「プロフェッサー・ギル」役の声を担当されたのは奇遇ということになります。
おそらく「ギル」繋がりで小川氏に声をお願いしたとか、
小川氏に声をお願いすることを前提に序盤から登場に息子のキャラの姓を「ギル」にしたとか、
そういう事情ではなく、全くの奇遇であったのだろうと思います。

ただ、「悪どすぎる」という邪悪さが前面に出た名前ではありますが、
小川氏の声のイメージの影響か、あまり邪悪で狂気に満ちたキャラという印象ではありません。
今回は短いシーンだけの登場ですから断言は出来ませんが、
やはりザンギャック帝国は皇帝も含めて、割と正統派でまともな敵組織として描かれるような気がします。
ただ、小川氏は知的で冷徹な悪役の演技がお上手なので、まさか善人であろうとも思えず、
何か裏のあるキャラなのであろうと推測は出来ます。

まだまだ謎が多く、一筋縄ではいかない部分が残っているザンギャックの設定ですが、
それでも今回ワルズ・ギルにスポットが当たった描写のお蔭で、
ワルズ・ギルを取り巻く人間模様に関してはだいぶ真実が明らかになってきているといえます。

これまで謎だったダマラスとワルズ・ギルの関係も、
ダマラスはワルズ・ギルに対しては例えば裏切りを画策しているとか、そういう根深い悪意や敵意は無いようです。
今までの不誠実な態度や、隠れてコソコソ動くような態度、陰口を叩いていたような態度も、
単にワルズ・ギルがダマラスを嫌っているせいで
ダマラスもワルズ・ギルを疎ましく思うようになった結果だったと解釈すべきでしょう。
ただバスコと何か妙な関係があることに関してはまた別問題で、
そちら方面ではまだ何か裏のありそうなキャラではあります。
そして皇帝も息子のワルズ・ギルに対しては単に甘やかしているだけの父親であるようですが、
それ以外はまだまだ謎の多いキャラといえます。

さて、回想シーンですが、
まず、謁見の間に召し出して玉座の前に跪かせたダマラスに向かって皇帝アクドス・ギルは
「ダマラス・・・第二次地球侵略艦隊、ワルズ・ギルに司令官を任せる」と威厳のある声で伝えます。
顔を伏せていたダマラスはこれを聞いて、さすがに「うっ!?」と驚いて顔を上げると、
「・・・殿下に?・・・しかし、それは荷が重すぎるのでは・・・?」と跪いたまま、慎重に異議を唱えます。

ダマラスは私的な謁見の間でそのような話をされたことを、
重臣である自分に皇帝が内密に意見を求めているのだと解釈して、
率直に軍人として自分の意見を申し上げたのでした。
実戦経験の無いワルズ・ギルに軍司令官など務まるわけがない。あまりに危険すぎる。
論じる価値も無いナンセンスな話だとダマラスは思ったが、
さすがに皇帝にナンセンスなどとは言えないので、これでも言葉を選んでいるつもりです。
皇帝の意見に異議を唱える以上、叱責は覚悟の上ではありましたが、
叱責されても諫言すべき時はするのが忠臣の務めと思っているのでダマラスは言うべきことは言ったのでした。

しかし皇帝はダマラスを叱責しようとはせず、
ハッキリ言って自分の跡取り息子の無能を指摘されたにもかかわらず、別に不機嫌になる様子もありません。
静かに「・・・一度侵略に失敗したとはいえ、地球を守るスーパー戦隊とやらはもう居ない・・・」と
地球の状況を説明します。
積極的に息子のワルズ・ギルが司令官に適任である理由を説こうともせず、
単に地球はそれほど手強い相手ではないのだという、
どちらかというと、だからワルズ・ギルでも大丈夫だとでも言いたげな、消極的な擁護です。

これは皇帝もワルズ・ギルをどうしても司令官として行かせたいというほどではないということで、
この地球行きを希望したのがワルズ・ギルであることが窺えます。
皇帝は手柄目当ての息子のおねだりに負けて地球侵略軍の司令官に任命することを既に決意しており、
ダマラスを呼んだのは別に意見を聞くためではありませんでした。

息子が無能であることなど皇帝は分かっており、
公の場ならともかく、こんな内密の場でそんなことを今さら指摘されても怒る気もありません。
スーパー戦隊がいなくなったという地球ならば無能な息子でもそんなに危険ではないと分かっているから
地球侵略軍の司令官になりたいという息子の願いを聞き届けたのです。
だから今さら分かりきったダマラスの意見など聞く気もない。

皇帝は続けて「それにダマラス・・・お前にワルズ・ギルの補佐を任せる・・・」と言い渡したのです。
こっちが皇帝の本題でした。
ダマラスは予想外の展開に「・・・私が・・・!?」と驚愕し、絶句します。
今さっき、自分はワルズ・ギルが司令官には不適格だと意見したばかりだというのに、
その自分がそのワルズ・ギルの補佐につくというのだから驚きでした。

というか、そもそもこうして皇帝に直々に謁見するような立場のダマラスは
参謀というより司令官クラスの軍人、いやおそらくザンギャック全軍の総司令官あたりであるはずで、
タイプ的にも勇将タイプですから、誰かの補佐をするというより、一軍を率いる大将が適任のはずです。
そんな自分が今さら補佐役の参謀などを命じられること自体がダマラスには驚きであり
不本意なことでもありました。
その上、その自分が仕えるのが、自分が無能と判定したばかりのワルズ・ギルだというのだから、
更に驚きでした。

それに、確かに皇帝の息子と一介の軍人のダマラスでは身分は違うが、
軍歴は比べものにならないほどダマラスの方が上なのです。
だから、こんな人事はダマラスもハッキリ言って不愉快でしたが、
それ以上にワルズ・ギルもやりづらいだろうとダマラスは思いました。
補佐役ならば他にもっと優秀でワルズ・ギルの使いやすそうな者がいるはずです。

ところが、そんなこんなで納得出来ない顔のダマラスに向かって皇帝は
「お前がいれば、地球など簡単に征服出来るだろう・・・」と謎かけをするようにゆっくりと言い聞かせ、
最後に「違うか・・・?」と凄みのある声を発してダマラスを片目で睨みつけたのでした。

これを聞いてダマラスはハッとします。
つまり、ワルズ・ギルは飾りの司令官であり、
実質的に自分が地球侵略軍の司令官に任命されているのだと気付いたのです。
そして、実質的に自分が取り仕切って地球を征服し、手柄は全てワルズ・ギルに献上するようにという命令なのです。
もし断れば、ダマラスは地球征服に自信が無いという臆病者だとされて処分される。
だから断ることなど出来ない。
皇帝はそういう有無を言わさぬ命令を下すために自分を呼んだのだとダマラスは悟り、
「・・・はっ・・・陛下の仰せのままに・・・」と畏まるしかありませんでした。

こうしてダマラスはワルズ・ギル軍の参謀長として地球へやって来ることになったのです。
しかし、どうして皇帝がこのような酷い命令をダマラスに下したのかというと、
別にダマラスに恨みがあったわけではないと思います。
皇帝もダマラスもまだ謎の残るキャラなので、何とも断言は出来ませんが、
少なくともこのシーンの2人の間からは険悪な雰囲気は見受けられませんでした。

ただ最後の「お前がいれば地球など・・・」の件は、
あるいはダマラスと皇帝と地球の間に何らかの因縁があるようにも見えないこともない。
が、皇帝は地球にスーパー戦隊が居ないという間違った情報をそのまま信じ込んでいるし、
「スーパー戦隊とやら」と言っていることからも、どうやら地球とは因縁の無いキャラのようです。
だから最後のセリフは地球とダマラスの因縁を突っついた発言ではなく、
単に明言を避けつつダマラスに地球征服の手柄をワルズ・ギルに献上するよう暗に促した発言と
解釈した方がいいでしょう。

そして、ダマラスをその役目に選んだ理由は、
ダマラスが帝国で最も有能な司令官であり、同時に最も口の堅い忠臣であったからでしょう。
だから、無能なワルズ・ギルの代わりに地球を征服して、全ての手柄をワルズ・ギルに献上するという、
帝国の恥部ともいえるような作戦を任せることが出来たのです。
では、なぜ皇帝はそのような恥ずべき作戦をダマラスに命じたのか?
それは、次期皇帝となるべきワルズ・ギルの経歴に一切の瑕がついてはいけないからでした。

特に、強大な力によって宇宙を1つにまとめて支配するザンギャック帝国の皇帝は
完璧な強さを持っていなければならない。
皇帝の完璧な強さによって宇宙の安定と平和は保たれるというのがザンギャック帝国の根本原理です。
あまりに広大で多彩な宇宙を1つの大帝国としてまとめるためには、
法や理念や損得勘定だけでは不可能であり、絶対的なカリスマが必要なのです。

現皇帝のアクドス・ギルにはそのカリスマは文句無しに備わっています。
しかし、その跡取り息子のワルズ・ギルにはそのカリスマが欠けている。
それをそのまま放置しておくと、次代になると帝国は瓦解してしまう。
それは皇帝自身はもちろん、帝国の中枢で利益を貪っている重臣たちとしては困るのです。
飾りでもウソでも何でもいいから、ワルズ・ギルには万能のカリスマであってもらわねば、自分達の身が危なくなる。
だから偽りでも何でもいいから輝かしい軍歴は必要なのです。
そういうわけで、実質的には参謀のダマラスが司令官として動いて地球を征服し、
ワルズ・ギルはギガントホースで寝ているだけで「地球征服の英雄」として祭り上げられる手筈となったのです。

皇帝アクドス・ギルとしてもいずれはワルズ・ギルのカリスマの捏造のために
このような措置は取らねばならないとは思っていましたから、
今回ワルズ・ギル本人から地球侵略軍司令官への就任を希望してきたのをちょうどよいと思い、
こうした役目に適任のダマラスに影の司令官役を命じたのです。
ダマラスも帝国の中枢で利益を貪る重臣グループの1人ですから、
皇帝が何を考えて自分にこんなことを命じてきたのか、ようやく理解し、
1人の軍人としては忸怩たる想いではありましたが、
帝国の今後のことを考えれば、無能なワルズ・ギルのカリスマを捏造する作業は不可欠であり、
自分がこの汚れ仕事を引き受けるしかないと決意したのでした。

ところが、この謁見の間の柱の陰で、ワルズ・ギルが隠れてこの2人の会話を盗み聞きしていたのです。
どうしてそんなことをしたのかというと、
おそらく自分が地球侵略軍の司令官になれるのかどうかが気になって、
父親が軍司令官のダマラスを地球侵略作戦の件で内々に呼びつけたという報告を受け、
きっと自分の話をするのだろうと思い、コソコソと盗み聞きをしたのでしょう。

なぜ皇帝の私的な謁見の間などという最高度の警備の敷かれている場に潜むことが出来たかというと、
それはまさに皇帝の溺愛する息子のワルズ・ギルだからこそ
皇帝親衛隊をも抱き込んで忍び込むことが出来たからでしょう。
逆に、ワルズ・ギル本人でなければ、例えばワルズ・ギル配下のスパイのような輩では
絶対に忍び込むことは不可能だったことでしょう。
そういうわけでワルズ・ギルは謁見の間の柱の陰に隠れており、皇帝やダマラスはそれに気づかなかった。

それでワルズ・ギルは秘かに2人の会話を全部聞いていたのですが、
まずダマラスが自分のことをまるで無能のように評したことに驚愕しました。
何故ならワルズ・ギルは自分のことを天才だと思っていたからです。
というか、ワルズ・ギルにそう思い込ませたのは、ダマラスをはじめとした重臣の面々、そして父である皇帝でした。
だからワルズ・ギルはダマラスが自分の前で言う言葉と正反対の言葉を父に向かって述べるのを聞いて、
まさに青天の霹靂であり、大きなショックを受けました。

ダマラスや重臣たちにとっては次期皇帝のワルズ・ギルは無謬の存在でなければならず、
非の打ちどころの無い万能の天才であってもらわねばならない。
もちろん現実にそんな都合の良い天才が存在するわけがないことは彼らにも分かっています。
しかし巨大になりすぎたザンギャック帝国が宇宙を1つにまとめて支配していくためには、
その非現実的なカリスマが必要なのです。

現皇帝のアクドス・ギルのカリスマは宇宙の征服王としての実績に裏打ちされたものだから問題無いが、
既に征服するべき広大な敵地すら存在しなくなったこの宇宙で征服王を実際に再び作り出すことは出来ない。
だから非現実的なカリスマを捏造するしかない。
そのことが分かっていた重臣たちは、最初からワルズ・ギルを立派な英雄に育て上げようなどとはしませんでした。
ザンギャック皇帝に求められる非現実的なカリスマはそもそも努力などで到達できるものではないのです。
演出して作り上げていくしかない。

むしろ変に英才教育などして中途半端に英邁になられては自分達の好きなように操ることが出来なくなる。
皇帝はあくまでカリスマとして祭り上げた飾りであり、
実質的な政務は自分達が好きなようにやりたいというのが重臣たちの本音でした。
現皇帝のアクドス・ギルが家臣に苛烈なところがあったので、
余計に重臣たちは次期皇帝は御しやすい方が望ましいと思いました。
だから重臣たちはワルズ・ギルを厳しく鍛えようなどとはせず、ひたすら天才だと褒めそやして、
周囲にもカリスマ捏造のため「王子は天才だ」と吹聴して回ったのでした。

また皇帝のアクドス・ギル自身、戦争に出掛けていることの方が多く留守がちであったので
息子の教育は重臣に丸投げ状態であり、
自身もたまにしか会えない息子のことはひたすら甘やかしていたので、
ワルズ・ギルを鍛えるようなことはありませんでした。

こうしてワルズ・ギルは無能で怠惰な臆病者として成長したのですが、
自分のことを万能の天才だと思い込み、自分の望むことは全て何の苦労も無く叶うものだと思い込んできました。
そして重臣たちは皆、自分があまりに天才なので恐れ入って仕えているのだと信じ込んでいました。
もちろん尊敬する父にとって自分は自慢の息子だとも思っていました。
幼い頃からそう言い聞かされてきたのですから、そうとしか考えられなかったのです。

しかし、そんな万能の天才のはずのワルズ・ギルは父親のように戦場に行くことにあまり積極的ではなかった。
それもそのはずで、本当はワルズ・ギルは臆病者だからです。
しかし、そのようには誰も指摘してくれなかったのでワルズ・ギル自身、自分が臆病者で無能だという自覚は無い。
だから、やはり戦場で武勲を立てなければいけないと思い、
根が臆病者ですから、無意識的に安全そうな戦場を選び、
数年前にザンギャック艦隊を撃滅したが実は今は丸裸同然という地球という星の存在を知り、
その侵略軍の司令官として次期皇帝に相応しい手柄を立てようと決意して父親におねだりしたのです。

ところが父の皇帝とダマラスの会話を盗み聞きすると、
ダマラスが自分のことを無能呼ばわりして司令官就任に反対し、
父はそんなダマラスを自分の補佐役として地球について行くように命じて、
「お前の力で地球を征服しろ」などと言うのです。

いつもは自分のことを褒めちぎる2人の、あまりに普段とは掌を返したような言葉に
ワルズ・ギルは、騙され裏切られた気分になって激しく傷つき、
あまりのショックの大きさによって疑心暗鬼になってしまい、
ダマラスと父親が共謀して自分から手柄を取り上げて陥れようとしているのではないかという
疑念を抱いてしまったのでした。
今まで無邪気に信じていた相手に騙されていたと知ったショックがあまりに大きくて、
その反動でワルズ・ギルは人間不信になってしまったのです。

皇帝がハッキリとダマラスに「お前が地球を征服してそれをワルズ・ギルの手柄にしろ」と言っていれば、
ワルズ・ギルはこれもまた酷く傷ついたでしょうけれど、それでも変な誤解をせずには済んだはずです。
しかし皇帝も、いくら何でもそこまでハッキリと自分の息子の無能を認めるようなことを
父親として口にしたくなくて、ダマラスならば曖昧な言い方をしても意図は察するはずと思って、
ああいう謎かけのような言い方をしたのですが、
まさか物陰に隠れていた息子がその内容を曲解して疑心暗鬼になってしまうとは
予想だにしていなかったことでしょう。

そういうわけでワルズ・ギルは地球遠征の旅の最初からダマラスのことを油断のならない奴だと警戒して、
手柄を横取りされてたまるものかと思い、ダマラスの邪魔ばかりして、意見も聞かず、遠ざけたのです。
そしてダマラス抜きで何とか自分の力でさっさと地球を征服してしまおうとして焦り、
もともと無能である上に焦りも加わって作戦は失敗の連続、
しかもマーベラス一味という邪魔者まで現れて、
いなくなったと聞いていたはずのスーパー戦隊の連中まで何やら暗躍して
マーベラス一味と手を組みだす始末で、もうどうにもこうにも何ともならない状況となってしまったのでした。

しかし、ダマラスのことを裏切り者だと思っていたにもかかわらず、
ワルズ・ギルはダマラスを疎遠にして姑息な意地悪はしつつも、参謀長を解任しようとはしませんでした。
父である皇帝やその重臣たちのことも自分を裏切ったのだと決めつけながらも、対決しようともしていません。
本当に皇太子たる自分を陥れようという陰謀があるのなら帝国の一大事であり、放置しておいていい話ではない。
たとえ父である皇帝が関与しているとしても、そんな陰謀に関与する以上、
たとえ相手が皇帝でも皇太子として対決しなければいけないはずです。
しかしワルズ・ギルは全く戦おうとはしていない。

いや、本当は戦いたいのですが、戦うのが怖いのです。
皇帝や重臣たち、そしてダマラスとも全面対決する勇気が無いのです。
勝つ自信が無いのもありますが、
それ以前に、仮に彼らと戦って勝利して排除したとして、
彼らを乗り越えてその先に広がる世界に1人で立ち向かう勇気が無いのです。
何故なら、彼らに庇護される万能な世界しかワルズ・ギルは知らないので、
彼ら抜きで1人で道を切り開くことなど出来ないからです。
だから、彼らを憎みながら、同時に彼らを頼りたくなってしまう。それで中途半端にウジウジしてしまう。

地球侵略作戦にしても、疑心暗鬼に陥ってダマラスや皇帝や重臣たちの力に頼らずに
自分1人の力で武勲を上げてやろうと意気込んで地球へやって来たのですから、
話の筋からいけば、自ら出撃して戦うべきです。
司令官自ら出撃して戦うなど常軌を逸しているかもしれないが、
まさにワルズ・ギルを取り巻いている(と本人が思い込んでいる)状況は常軌を逸しているのです。

何せ、重臣一同に父である皇帝までがグルになって自分の手柄を横取りしようとしているわけです。
普通に戦っていても手柄は全部ダマラスのものになってしまう。
だからワルズ・ギルは誰にも文句を言わせない自分の手柄を上げるためには
自分自身が自ら出撃しなければいけないのです。
そんなことが常軌を逸していることはワルズ・ギルも分かっています。
しかし、自分を取り巻く状況が常軌を逸している以上、
常軌を逸した行動に出るしかないのだとワルズ・ギルは思ってしまっているのです。
しかし、実際はワルズ・ギルはその常軌を逸した行動をとってきませんでした。
それはやはり勇気が無かったからです。

結局は皇帝や重臣たちの庇護が無ければ何も出来ないのです。
もちろんワルズ・ギル本人は自分は天才だと思っていますから臆病だなどとは認めませんが、
実際は臆病なのです。
だから彼らのことを憎みつつ、なんだかんだで彼らに擦り寄って頼るという心の揺れを示すのです。

いや、今まで二度、ワルズ・ギルは自ら出撃しました。
一度目は第11話の時、親衛隊長のデラツエイガーがやって来た時です。
あの時はデラツエイガーという自分に忠実な強者が現れたのでダマラスへのあてつけに
デラツエイガーを護衛につけて自ら出撃しました。
しかし、デラツエイガーも本来は皇帝の忠実な配下であり、
ワルズ・ギルはその父である皇帝に複雑な感情を抱いているはずなのに、
あっさりその皇帝の手持ちの怪人のパワーに頼っていたのです。
これは結局、皇帝の庇護のもとということです。
しかもこの時は実質的には全く戦闘に参加していません。
撃たれて腰を抜かせて退却して、むしろ味方の作戦の邪魔をして終わっています。

そして二度目の自らの出撃は第36話、つまり前回のガイアークとの戦いの時であり、
あれは相手がザコばかりと見くびって出て行っただけであり、
いざ戦闘が始まると物陰に隠れて参加せず、
マーベラス一味が現れるとさっと逃げてしまいました。

つまり結局、ワルズ・ギルは自ら戦ったことなどない。
しかし潜在的には自分はそうしなければダマラスや父の皇帝たちに手柄を横取りにされてしまうという
強迫観念を抱えていたのです。
そのような時に父親から最強の決戦機であるグレートワルズが届けられて、
最初は父の好意を素直に感謝していたのですが、
ダマラスがグレートワルズを見て「これを使えば誰でも地球を征服できる」と言っているのを聞いて、
ワルズ・ギルはまた疑心暗鬼の虫が騒ぎだしてしまいました。

ダマラスが「誰でも」と言っているのを、「自分でも」という意味で言っていると曲解して、
ダマラスがグレートワルズで地球征服をして、それを自分の手柄にしようとしているのだと思ってしまったのでした。
そして、父の皇帝や重臣たちもそのつもりでダマラスと示し合わせてグレートワルズを送ってきたのではないかと、
ワルズ・ギルの疑惑は広がっていきました。

ならば、ワルズ・ギルとしては自らの立場を守るためには
自らグレートワルズに乗って出撃して海賊たちを討伐して、
文句のつけようのない自分の戦果を上げる以外、道は無くなってしまいます。
それでワルズ・ギルはたとえ常軌を逸していようとも、
自分を取り巻く常軌を逸した陰謀を打ち破るためには、自ら出撃するしかないと思い、
自分がグレートワルズに乗って出撃することにこだわったのでした。

自分をそこまで追い詰めたのは、ダマラスや父の皇帝周辺が企んだ自分を排除しようとする陰謀のせいであり、
ダマラスはその陰謀が無能な皇帝のバカ息子にはバレていないと思い込んでいるのだろうが、
ところが実は俺はそんな陰謀はあの秘密の会話を聞いて見破っているのだ、
ということをワルズ・ギルはダマラスに言い放ったのでした。

そして、ワルズ・ギルは怒りに震える拳を握りしめて
「今までお前の芝居にも付き合ってきたが・・・グレートワルズがある以上、我慢もこれまでだ!!」と
ダマラスを怒鳴りつけます。
グレートワルズという帝国最強のパワーを手にした今、
遂にワルズ・ギルは今まで自分を小馬鹿にしてきたダマラスや重臣たち、
そして父である皇帝に宣戦布告をしたのでした。

自分はグレートワルズの力を使って、自分の手で帝国の実権を握ってみせる。
その前祝いにまずは小手調べで海賊どもを血祭りに上げる。
そうワルズ・ギルは決意し、そう思うともはやダマラスなど相手にする価値も無いと思い、
「お前は沈黙と共に見ていろ・・・!」と言い捨てて、
ダマラスに背を向けて、さっさと指令室から出て行こうとします。

一方、ダマラスはワルズ・ギルから地球遠征前の皇帝と自分の秘密の会話内容を暴露されてしまい、
愕然として言葉を無くしていました。
ワルズ・ギルが自分と皇帝の真意について酷い誤解をしていることに気付き、なんとか弁解しようとしたのですが、
かといって真意を説明しようにも、
その真意が「あなたが無能だから私が代わりに手柄を立ててあげるようお父上に頼まれていたのです」なんていう
ミもフタもない内容なので、今そんなことを言えば余計にワルズ・ギルの怒りが爆発するだけであるし、
しかも自分が天才だと思い込んでいるワルズ・ギルがそれを真実だと信じて受け入れるはずがない。

それでダマラスは絶句してしまい、何か上手い言い訳は無いものかと必死で考えますが、何も思い浮かばない。
というか、他の部下たちの前で自分が皇太子のことを皇帝の御前で誹謗していたなどと暴露されてしまって、
ダマラスは完全に立場を無くして平常心でいられない状態でした。
そうしてダマラスが立ち尽くしている間にワルズ・ギルがさっさと部屋から出ていってしまうので、
ダマラスは焦って「殿下!・・・お考え直しを・・・!!」と呼び止めようとします。
自分の受けた誤解はともかく、まずはワルズ・ギルを引き止めなければいけないということに気付いたのです。

ワルズ・ギルは酷い誤解のせいで自分がグレートワルズに乗って出撃するしかないと思い込んでしまっているが、
それはグレートワルズで戦えば必ず勝てるという過信が前提になっている。
が、戦場では絶対に大丈夫などということはない。
おかしな思い込みで戦えば、何かとんでもない落とし穴にはまるような羽目になるのではないかと
ダマラスは心配になったのです。
しかしワルズ・ギルは「フン!」とダマラスの呼びかけを無視して指令室を出て行ってしまいました。
そのワルズ・ギルの後ろ姿をバリゾーグが黙って見つめ、そして歩き出します。

ダマラスを怒鳴りつけて指令室を飛び出し、その足でワルズ・ギルはギガントホースの格納庫にやって来ました。
そこではグレートワルズが出撃準備態勢を整えつつありました。
そのグレートワルズを見上げて、ワルズ・ギルは「父上・・・」と寂しそうに呟きます。

もともとグレートワルズは父の皇帝がワルズ・ギルの守護のために
ワルズ・ギルに似せて作らせた最強の決戦機であり、
ワルズ・ギルから見れば父から自分への愛情の象徴のようなものでした。

ワルズ・ギルは思う。
父がこれを作ってくれた時は自分を愛してくれていた。
それなのに今はもう父は自分を愛してくれていない。
それどころか、この自分への愛の象徴を使って自分を陥れようとまでしている。
いったいどうして父は変わってしまったのか?
愛する父と戦いたくはないが、父があくまで自分を陥れるというのなら、
自分はこの父から自分への愛の象徴たるグレートワルズを使って父と戦うしかない。

まぁほとんど誤解に基づく妄想なのですが、ワルズ・ギルは大真面目に悲しがっています。
そして、そのように感慨にふけりながら、ワルズ・ギルはそれでも父への想いを断ち切ることは出来ない。
それも当然です。
そもそも、そうして父とまで戦おうなどと思うようにまでなったのは
ワルズ・ギル本人の力の裏付けや決意があってのことではなく、
父が作った帝国最強の力が手に入って勝てると確信出来るようになったからです。
つまり、まだ依然としてワルズ・ギルは父親の庇護下の安全で万能な状態でなければ
生きていくことは出来ないままなのです。
そんな男が父と戦うことなど出来るはずがない。

それでグレートワルズを見上げてグズグズ言っているのですが、そこに何者かが歩いてきます。
ワルズ・ギルが振り向いて見ると、バリゾーグでした。
「バリゾーグ!」と言うワルズ・ギルの前に立って、バリゾーグは無言でワルズ・ギルを見つめます。
バリゾーグがどうしてここにやって来たのかというと、
それはバリゾーグがワルズ・ギルを守るようにプログラムされているからです。
つまり、バリゾーグはワルズ・ギルの心身の状態を常に正確に検知して、
それに合わせた行動をとることが出来るようになっているのです。
そのバリゾーグの目から見て、さっき指令室を出て行くワルズ・ギルがとても悲しそうに見えたので、
心の弱った状態のワルズ・ギルを1人にしてはいけないというプログラムが作動して、追いかけてきたのでした。

そのようにバリゾーグの前ではワルズ・ギルは心の内を隠すことは出来ない。
それはあくまで護衛の機械兵士として付加された機能であり、
絶対忠義とセットになった機能ですから、心の内を知られても言いふらされたり悪用されることはない機能です。
しかし結果として、ワルズ・ギルは次期皇帝として他の者には言えない本音を隠す必要が無い相手として
バリゾーグを重宝するようになっていました。

ここでもワルズ・ギルは自分の心の悲しみを察知してやって来てくれたバリゾーグを
長年の親友を見るような目で見ると、
「・・・俺は子供の頃からずっと、父上の重臣たちに囲まれてきた・・・」と言いつつ、
バリゾーグに背を向けて述懐し始めます。
そして「しかし、誰もが父に似ぬバカ息子と思っていただろう・・・」と自嘲するように言います。

ワルズ・ギルは自分のことは万能の天才だと思っている。
だから本当に自分がバカ息子だなどとは思っていない。
自嘲しているのは、表面上は天才などと持ち上げておいて、裏に回れば無能扱いして誹謗していたような
連中の本心を無抜けなかった自分の迂闊さでした。
しかし、それは自分には人の本質を見る目が無いということだ。
それだけで既に万能ではない。
そして、自分のことを天才だと教えてくれたのは、その嘘つき連中ばかりです。
ならば自分が天才というのも嘘なのかもしれない。本当は自分はバカ息子なのかもしれない。
そう考えると、なんだか自信が無くなってきて、戦う自信が無くなってくるワルズ・ギルでした。

そうすると、自分はもしかしたら、誰かに守ってもらわなければ生きていけないのかもしれないとも思えました。
しかし、もう父も重臣たちもダマラスも自分を守ってくれる人たちではなくなった。
自分が捨ててしまったのだと、ワルズ・ギルは思いました。
無性に寂しくなったワルズ・ギルは「・・・俺は1人だ・・・お前がいなければな・・・」と言います。
バリゾーグは「ボス・・・」と応じます。

もはや誰も信じられなくなり、自分を守ってくれる相手を皆捨ててしまったワルズ・ギルは
それでも1人で世界に立ち向かっていく勇気を持てず、自分を守ってくれる相手を探します。
そうすると残っているのは、自分に絶対忠誠の行動をとるようプログラムされ改造された
機械兵士のバリゾーグだけだったのです。

シドがバリゾーグに改造されたのは、ジョーと共にザンギャック軍から脱走して捕まってすぐの頃でしょうから、
今から数年前のことと思われます。
それはワルズ・ギルが地球侵略軍の司令官となるよりもだいぶ前のことでしょうから、
ワルズ・ギルが捕らわれたシドに会ったのは、
先ほどのダマラスと皇帝の会話を盗み聞きしてショックを受けたりするよりもだいぶ前のことと思われます。

だから、その頃のワルズ・ギルは心の底から自分を万能の天才と思っており、
何でも自分の望んだことは叶うと思っていた頃でしょう。
そうしたワルズ・ギルがシドの剣の腕を気に入り、自分の側近になるよう求めたが、
シドはきっぱり断り、ザンギャックの支配体制を批判するようなことも言ったのだと思われます。
それで激怒したワルズ・ギルは自分を称賛せず従わない、あまつさえ帝国の批判までするシドを異常者だと決めつけ、
正常な状態に矯正するように改造してやったのです。

つまりワルズ・ギルとしてはむしろシドはバリゾーグになって素晴らしい人生を手に入れたという解釈であり、
自分はシドをバリゾーグにすることで救ってやったとまで思っていたと思われます。
つまり、ワルズ・ギルが作ったバリゾーグは、自分の素晴らしさを称えるための人形であり、
それがバリゾーグの幸せと思ってワルズ・ギルは悦に入っていたのです。
ところが、ここにきてワルズ・ギルは自分を守ってくれる者達を自分の疑心暗鬼で全て手放してしまい、
誰にも守ってもらえずに不安になったワルズ・ギルが最後に自分を守ってくれる相手として縋ったのが、
皮肉なことに自分が救ってやった気で玩具にしていたバリゾーグだったのです。

ワルズ・ギルは思い切って「俺はダマラスや父上の重臣どもの鼻を明かしたい!」と初めて口に出して宣言します。
それでもさすがに父である皇帝そのものへの反逆の意思を口にする勇気はありませんが。
そしてワルズ・ギルはバリゾーグの方に向き直り「・・・お前は俺についてきてくれるな?」と尋ねます。
するとバリゾーグは姿勢を正し
「私はワルズ・ギル様の忠実な部下・・・どんな命令でもお聞きいたします」と、堂々とした言葉で
ワルズ・ギルの期待に応えてくれたのでした。

「うん・・・!」と感動して、安心したように頷くワルズ・ギルですが、
しかし、このバリゾーグの返答はいつものプログラム通りの、
常にワルズ・ギルを称えて、ワルズ・ギルの命令に従うというだけの人形としての反応に過ぎません。
そこに心などは存在しておらず、ただの機械的反応があるだけです。

こんなものは作られた偽物の忠義であり、見せかけの称賛の言葉を述べる重臣たちと何も変わらない。
バリゾーグをこんな人形にしたのはワルズ・ギル本人であるのに、
そのバリゾーグの作られた言葉によって自分が守られたと感じるとは、愚劣を通り越して哀れですらあります。
しかし、それでもワルズ・ギルはこのバリゾーグの言葉で再び戦う勇気を得ます。
哀れではありますが、ワルズ・ギルにとっては、もはやそれしか頼るものはないのです。

グレートワルズが手に入り、そしてバリゾーグが守ってくれるなら、
海賊とも、重臣たちとも、父親とでも戦えると、心を奮い立たせたワルズ・ギルは
グレートワルズの方に向き直ると「グレートワルズで、海賊どもを排除する!!」と勇ましく号令をかけ、
次いでバリゾーグに向き直ると「バリゾーグ!!奴らの船を探し出せ!!」と命令を下します。
バリゾーグは姿勢を正し「イエス、ボス」と一礼して応じます。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 19:39 | Comment(2) | 第37話「最強の決戦機」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月22日

第37話「最強の決戦機」感想その5

それから少し経った頃、再びゴーカイガレオンは錨を上げて、ゆっくり街の上空を飛んでいました。
そのガレオンのマストの見張り台では鎧が1人、ぽつんと柵にもたれて眼下の景色をしょんぼりして眺めていました。
鎧はマーベラスが「地球を守ってないし、守れてもいない」と言いながら、
じゃあマーベラスにとっての「守る」とはどういうことなのかという鎧の質問に答えられなかったことに
ショックを受けていました。

本当はマーベラスは答えられなかったわけではなく、答えなかっただけなのですが、
鎧には答えられずに逃げたように見えました。
つまり、マーベラスは地球をどうやったら守れるのか分かっていないのだと、鎧は思いました。
地球を守って戦っているはずのゴーカイジャーとしてはそれは由々しきことだと鎧は思ったのでした。
まぁ実際、マーベラスは地球を守る方法は分かってないどころか、
そもそも内心それは無理だと思っているのですから、鎧の危惧は的を射ているとはいえます。

しかし、鎧がこんなところで1人でしょんぼりしているのは、マーベラスのことだけが原因なのではありません。
船長のマーベラスが地球をどうやったら守れるのか分かっていないと言っているのに、
自分以外の全員、それが問題であるようには考えていないようなのです。
その温度差が感じられて、鎧はさっきの船室でも自分一人、「地球を守ってる」とか言ってはしゃいでいたが、
何か浮きまくっていたような気がしました。

鎧は最近ではマーベラス達5人も地球を守って戦うことを素晴らしいことだと
思うようになってくれているのだと思い込んでいたのですが、
もしかしたら、それは自分の勝手な思い込みであって、
地球を守って戦っていることを嬉しがっているのは自分だけであって、
他の皆は相変わらずそうでもなかったのかもしれないと思い、
そうすると強い疎外感を覚えて、船室に居づらくなり、
こうして見張り台で1人でしょんぼりと考え込んでいたのでした。

そこに誰かが見張り台に上がってきます。
それはジョーでした。「どうした?」と鎧に声をかけて、ジョーは鎧の上着を差し出します。
鎧が上着も着ないで見張り台に1人でいることに気付き、上着を持ってきてあげたのですが、
もちろん単に上着を届けるのが目的ではなく、
上着も持たずに見張り台に1人でいるということは鎧が何か塞ぎこんでいるのだと気付き、
気になってやって来たのです。

ジョーに声をかけられて鎧はビクッとして、振り向いて慌てて上着を受け取りながら
「あ・・・いやぁ、その・・・なんていうか・・・」と苦笑いしつつ言葉を濁します。
正直に自分だけ除け者のように感じたので1人になりたかったなどとは言いづらかったのです。

ジョーは鎧が何を落ち込んでいるのかイマイチよく分からなかったが、
鎧がマーベラスに「地球を守ってない」と言われて、
その後「守る」ということについて問答して、マーベラスがハッキリとした返事をせずに去っていった時、
鎧が戸惑っていたのを想い出して、そのことをまだ気にしているのかと思い、
「・・・マーベラスに言われたことを気にしているのか?」と問いかけます。

鎧は上着を羽織りながら、「まぁ・・・そんなとこです・・・」と歯切れの悪い口調で答えました。
本当は皆の態度の方が気になっているのですが、
確かに、もとはといえばマーベラスが「地球を守ってない」とか言い出したことが原因だと思いました。
そして、自分はマーベラスの話を変だと思ったのに、他の皆は変だと思っていないから、
だから自分と他の皆との間に溝があるように感じられたのだと気付きました。
つまり他の皆から見ればマーベラスよりも自分の方が変に見えるのだろう。
ならば、皆から見て自分がどう変に見えるのかを聞けば、この疎外感の原因が分かるかもしれないと思い、
鎧は「俺、なんか変なこと言っちゃいましたかね?」とジョーに尋ねます。

マーベラスに自分が言ったことが皆から見て変だったというのなら、
それがどう変であったのか教えて貰いたいという意図で鎧は言ったのですが、
ジョーは鎧がマーベラスの言ったことが納得がいかないという抗議の意味で言ってきていると解釈して、
マーベラスがどう考えて鎧にああいうことを言ったのか説明してやろうとして、
少しマーベラスの心情を想像しつつ、
「お前も知っているだろう・・・あいつが赤き海賊団に居た時のことを・・・」と語り始めます。

鎧は「はい・・・ドンさんから聞きました・・・」と応えます。
マーベラスが赤き海賊団の時の想い出を仲間に語ったのは、第15話のバスコ登場篇の時だけであり、
あの時点ではまだ鎧は仲間になっていない。
だからマーベラスは鎧に直接、赤き海賊団の壊滅の時の話はしていないのです。
一応、鎧はハカセから又聞きの形ではその話は聞いているようですが、
やはり直接本人から聞くのとでは実感が全然違うものです。

そう考えるとジョーは、そういえば自分達は鎧に自分達の宇宙での想い出話など
ほとんどしたことがないことに気付きました。
特にマーベラス一味に入る前の話などは元の5人の仲間内でもほとんどしていません。
大抵のことは特別に秘密にしなければいけない事情があるわけではない。
しかし、碌でもない嫌な想い出ばかりなので、あまり口にしたくなかったのです。
宇宙から来た元の5人はお互いそういう境遇であることはだいたい分かっているから、
あえて過去の話には踏み込まないようにしていたし、
お互いの過去の話などしなくても、宇宙でどういうことが起きているのかは十分に分かっていました。

しかし、そのノリのまんま皆が鎧と接して、自分の宇宙での悲惨な経験の話をしなかったため、
もともとザンギャック支配下の宇宙の現実をよく知らなかった鎧は、
宇宙の現実を知らないままでここまで来てしまい、
宇宙で育った自分達とは物事の見方にズレが生じてしまっているのだということにジョーは気付きました。
それで鎧が1人だけ落ち込んでいるのだと気付いたジョーは、
ならばこの際、ちゃんと宇宙の現実を教えてやらねばならないと思いました。

まずジョーはマーベラスがどうして鎧に「地球を守ってない」などと言ったのか、
その心情を説明するために赤き海賊団の壊滅事件のことに言及しようとしています。
というか、ジョーが知るマーベラスの過去というのは、赤き海賊団の話だけ、
しかも詳しく知っているのはその壊滅事件のあらましだけなので、
そこからマーベラスの心情を推察するしか術は無いのです。

「船長のアカレッドは・・・マーベラスを守るためにザンギャックと戦って命を失った・・・」と
ジョーはゆっくり言葉を噛みしめ、
「・・・はい・・・」と素直に聞く鎧に向かって語りながら考えます。
そして、アカレッドが、自分を庇って死んだシドと同じであり、
自分を守るために恩人が死んでしまったという点で自分とマーベラスが同じだと気付きました。

あのシドが捕らわれてバリゾーグに改造されて実質的に殺されてしまうきっかけになったのは
ジョーが異星の子供たちを守ろうとしたことでした。
ジョーはあの時、子供を守ることが正しいと信じて、素直に正しいことをしただけだった。
しかし、その結果、自分は死にかけて、代わりにシドが自分を守ってくれて命を落とした。
もちろん今でもジョーは子供を守ることが間違っていたとは思っていないが、
それでも、あの時、ジョーはザンギャックから何かを「守る」ということは
ザンギャック支配下の宇宙では命と引き換えにしなければ出来ない過酷な行為なのだということを
嫌と言うほど実感させられた。

あの時の苦々しい気持ちを想い出したジョーは、
きっとマーベラスも同じ実感を味わったのだろうと思いました。
命と引き換えにするということは、命が1つである以上、1度しかその機会は無いということです。
だからよほどの時でないと「守る」なんて気軽に約束出来るわけはない。
死ぬことが怖いというより、たった1度のチャンスをそれに使ってしまっていいのか迷いが生じるのが
1つの命しか持たない人間ならば当たり前だからです。
ザンギャックから何かを「守る」というのはザンギャック支配下の宇宙ではそれぐらい重いことなのです。
その重い決断をしたシドの姿を目の当たりにした自分と同じ想いを、
マーベラスもアカレッドの重い決断を見た時にしたに違いない。
「・・・だから、簡単に守るなんて言えないんだろう・・・」とジョーはマーベラスの気持ちを想像して、
眼下に流れていく景色を見ながら言います。

マーベラスは軽々しく「守る」などとは言えなかったから、ああいう言い方をしたのだとジョーに説明されて、
鎧は確かにあの時、自分はマーベラスをからかうような軽い口調で
「守っている」などと言っていたことに思い至り、身を固くします。
続けてジョーは「ザンギャックに連戦連勝していた赤き海賊団も、アカレッドも・・・
最終的にはザンギャックに負けたんだ・・・!」と言って鎧の方に振り向くと、その目を見つめます。
鎧は「負けた」というジョーの言葉を聞き、思わず目を伏せます。

マーベラスは大切な人を守れなかったのです。
逆に大切な人の命に捨ててもらって守られてしまった人なのであり、そのことで深く傷ついている人だった。
そのことを自分はハカセから聞いて知っていたはずなのに、
あんなに無神経にマーベラスに向かって軽々しい言い方で「守ってくれている」などと囃し立ててしまった。
その自分の無神経がどれほどマーベラスを傷つけてしまったことだろうかと、鎧は自分が恥ずかしくなりました。

そしてジョーは再び前を向いて「・・・ルカや、ハカセや、アイムの星も同じだ・・・
今までザンギャックと戦って・・・勝ったヤツは誰もいない・・・!」と固い表情で言います。
鎧はハッとした顔でジョーの方を見ます。
他の皆もマーベラスと同じ境遇なのだと初めて知ったのでした。
ジョーはあえて自分のことは言いませんでしたが、「勝ったヤツは誰もいない」と言った時点で、
自分もその敗北者の一人だったのだと告白しているに等しいのです。

つまり、鎧は自分以外の仲間は皆、
自分の星をはじめ、大切なものを守ることが出来ずに負けてしまった人達だったと初めて知ったのでした。
そんな人達が見知らぬ星である地球を守って戦ってくれているというのは、鎧には分からない重みがあることでした。
そして全員がザンギャックから何かを守るということの困難をよく知っている。
何せ、今まで宇宙で誰もそれに成功した者などいないからです。
だから、地球を守るために戦ってはいるけれど、本当は皆、守りきる自信など無いのです。
どうやって守っていいのかも分かっていない。
そんな便利な方法が分かっていたら、まず真っ先に自分の星を守ったはずです。

そんな自信の無い状態で、地球人の鎧に向かって「俺たちが地球を守ってやる」などと胸を張って言えるわけがない。
そんな安請け合いをして後で落胆させたくはないのです。
それなのに、自分は「守ってくれてますよ」とか「俺は嬉しいですよ」とか、軽々しいことを言って、
皆を精神的に追い詰め、その挙句「守る」とはどういうことなのかなどという、
皆にとって一番の難問を突き付けてしまった。
そう思うと鎧は申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。

皆に「守る」ということの意味など分かるわけがない。
いくら守りたいと思っても、ザンギャックから何も守れたことなどないのだから。
いや、もし「守る」ということのマーベラス達にとっての意味を一言で表現するなら、
それは「絶望」や「不可能」だと、鎧は思い、やりきれない気持ちになりました。

いや、自分だって「守る」ということの意味をマーベラスに問われた時、まともに答えられなかった。
自分だってザンギャックから自分の星を守りきったことなど無いという点では皆と同じなのだと鎧は気付きました。
そして、皆の絶望を知った今、鎧の心にもザンギャックと戦って地球を守るということの
絶望感が覆いかぶさってきます。

そうしてジョーを潤んだ目で見つめる鎧の姿を横目で見ながら、
ジョーは鎧に皆の考え方を説明するためとはいえ、かなり鎧に残酷なことを言ってしまっていることに気付きました。
自分達は既に自分の星を失った身だから開き直れる部分はある。
しかし、鎧は今まさに自分の星を守ろうとして踏ん張っているのです。
その鎧に向かってこんな未来を絶望させるような話をして本当によかったのだろうかとジョーは戸惑いました。

しかし、もう言ってしまったものは仕方がない。
これが現実なのであり、鎧に現実を受け止める強さがあることを期待するしかない。
そう思ってジョーは「だから・・・ザンギャックから地球を守るっていうのは・・・
宇宙最大のお宝を見つけるのと同じぐらい・・・難しいかもしれない・・・!」とキッパリと言って、
鎧の方に再び向き直り、じっと鎧を見つめます。

すると鎧は俯いたまま「・・・それでも・・・」と言います。
この宇宙を覆う絶望的な現実すら知らず軽口を叩いていたような愚かな自分ではありましたが、
それでもその絶望に負けてしまうわけにはいかないと思ったのです。
自分は宇宙の現実も、戦いの本質も、守ることの何たるかも知らない、
ただのスーパー戦隊に憧れるだけのミーハーな男かもしれないが、
そんな自分でもマーベラス一味に入ってから、実際にレジェンド戦士の人達に出会って、
様々な想いを受け取ってきた。

「自分が地球を守りたい」と心の底から言った自分だからこそ、
黒騎士ヒュウガから地球を守る使命を託されたのであるし、
リュウレンジャーの亮からは、
どんなに絶望的な状況でも人を守りたいという気持ちを持ち続けるのがヒーローだと教わった。

そう、どんな絶望の中でも希望や夢は捨てたくはない。
マーベラス達だって、どんなに困難でも「宇宙最大のお宝」という夢を捨てはしなかった。
自分にとっての夢は「地球を守るヒーローになること」なのです。
自分もマーベラス一味の仲間である以上、どんな絶望の中でも夢は諦めない。
だから、たとえ絶望的だと分かっていても、地球を守りたいという気持ちは絶対に諦めない。
そう心に決めると、鎧は顔を上げてキッとジョーを睨むと
「だとしても!・・・俺は守ってみせます!絶対に!!」と強く言い切ったのでした。

するとジョーはフッと微笑んで、前を向くと「・・・お前らしいな!」と清々しく言うのでした。
鎧が絶望的な宇宙の現実をただ受け止めるだけではなく、それを跳ね返すような強い意思を示したのが、
ジョーは嬉しく思いました。
そんな強がりを言ったところで絶望的な状況が変わるわけではないが、
最初に鎧の仲間入りを認めた時から、
この不思議なほどの鎧の逆境の時ほど希望を示そうとする奇妙な反発力がジョーは好きでした。
それが実に鎧らしいと思えたのです。

いや、地球人には皆そういう傾向があるのかもしれない。
それが地球にスーパー戦隊というヒーロー達が存在して、
今まで彼らによって守られていたことと関係があるのかもしれないと、ジョーはふと思いました。

ところがその時、いきなり大きな衝撃が見張り台を襲い、ジョーと鎧の身体を大きく揺さぶりました。
いや、見張り台だけではなく、ガレオン全体が大きく振動しています。
しかも多数の爆発音と何かが飛来する音が響きわたっており、何処からかガレオンが砲撃されているようでした。

慌てて下を見た鎧は「あれは・・・!?」と左斜め前方の地上から砲弾が飛んできており、
その発射元と思われる倉庫の脇の地点に多数の人影があるのを発見します。
それはザンギャック部隊で、ゴーミンやスゴーミン達を従えてバリゾーグが
「見つけたぞ」とガレオンを見上げて、どんどん部下たちにガレオンを攻撃させています。
ワルズ・ギルにマーベラス一味を探し出すよう命令されたバリゾーグが、遂にガレオンを発見し、
マーベラス一味を引っ張り出すために攻撃してきているのです。

見張り台からバリゾーグの姿を確認したジョーは「・・・バリゾーグ!」と呻きます。
鎧もザンギャックの攻撃だと悟り、
「ザンギャック!・・・ジョーさん、どうしましょう?」とジョーに判断を仰ぎます。
このまま更に高度を上げて逃げようと思えば逃げられる。
別にバリゾーグ部隊は一般人を襲っているわけではなく、自分達と戦おうとしているだけのようでした。
ならば、別に必ず戦いに応じなければならないわけでもない。

しかしジョーはバリゾーグを睨みつけて「・・・みんなを呼べ・・・」と鎧に指示します。
今さっき、ザンギャックが無敵であり自分達はザンギャックに勝つ自信が無いということを鎧に告白し、
それでも鎧が戦うという気持ちを返してくれた以上、
ここでザンギャックに挑まれた勝負から逃げるわけにはいかない。

それに、見たところバリゾーグ以外は雑魚ばかりのようです。
つまり、ジョーとバリゾーグの勝負に余計な邪魔が入る要素は少ない。
ならば、今こそ好機だとジョーは思いました。
シドの身体を使って宇宙の自由や希望を踏み躙るバリゾーグを我が手で倒し、
シドの魂をその過ちによる苦しみから救済することが出来るかもしれない。
そう考えて、ジョーは静かに闘志を燃やします。

そうしてマーベラス一味の6人は地上に降り立ち、倉庫脇でバリゾーグ率いる部隊の前に立ちはだかります。
「来たか・・・海賊ども」と言うバリゾーグの姿を見て、
アイムは「あれは・・・ジョーさんの先輩だった・・・」と、少し戸惑います。
「バリゾーグ・・・!」と、ルカもじっとバリゾーグを睨みつけますが、単なる敵を見るよりも厳しい顔です。

バリゾーグがジョーの先輩のシドという男の改造された姿であるということは、
ジョーは仲間にいちいち説明はしていません。
しかし第30話のライブマン篇の時のジョーの言動によって、仲間たちは大体の事情は察しており、
ジョーも仲間たちが事情を察していることは分かっています。
つまり、もはやバリゾーグを元に戻すことも、シドの記憶を取り戻すことも出来ないということは皆、
分かっているのです。
ただ、そのバリゾーグに対してジョーが今後どう対処するつもりであるのかは皆には分かっていません。
だから皆、飛び降りてきてみると相手がバリゾーグであり、
バリゾーグとジョーが対峙する状況となったことに少し驚いていました。

実は前回のガイアークとの戦いの際にもバリゾーグはいたのであり、
ジョーはバリゾーグの姿を見て決着をつける勝負の決意を固めていたのですが、
あの時はザンギャックの幹部たちはすぐに撤収してしまったので勝負は実現せず、
ジョー以外の他の仲間たちはあの時は主敵のガイアークの方に気が集中していたので、
ジョーとバリゾーグの因縁のことにまで気が回っていませんでした。

しかし今回は、相手は実質的にはバリゾーグ1人と言ってもいい状況です。
そうなるとジョーがいったいどうするつもりなのか気になって、
アイムはジョーがかつての先輩と戦うというようなことがあってもいいものだろうかと動揺し、
ルカは逆に、ジョーが降りて戦うことを選んだということは覚悟を決めてのことだと悟り、
その重い決断を受け止める表情となっているのです。

そしてジョーはバリゾーグを睨みつけながら「バリゾーグは俺がやる・・・他の連中は任せてもいいか?」と、
有無を言わせぬ低い声でマーベラスに言います。
マーベラスはジョーがライブマン篇の時に言っていた「悲劇を繰り返させん」というのは、
すなわち一騎打ちでバリゾーグを倒すことで
改造されて元には戻れないシドの悲劇に自分の手で終止符を打つことなのだと悟り、
そのお膳立てを整えるために雑魚の相手をさせられることに
「仕方ねぇ!・・・そのかわり、さっさと終わらせろよ!」と応じて、レンジャーキーを取り出します。

そして6人は「豪快チェンジ!!」と、ゴーカイジャーに変身し、名乗りを上げます。
名乗りが終わると「ジョーさん!」とアイムは自分のゴーカイサーベルをジョーに投げて寄越します。
アイムはジョーが第4話の時にこだわっていた剣の師匠が今はバリゾーグに改造された、そのシド先輩なのだと悟り、
この悲しい師弟対決が避けられないのなら、せめてあの時ジョーが師匠の名誉のためにこだわっていた
二刀流で勝負をつけさせてあげたいと思ったのでした。
ジョーもその気遣いに感謝しつつ、既に勝負に集中する態勢に入っているため、
黙ってアイムのゴーカイサーベルを受け取ると、代わりに自分のゴーカイガンをアイムに投げて寄越します。

そして「よっしゃあ!派手にいくぜぇ!!」とマーベラスが号令をかけて6人はバリゾーグ部隊に向けて突撃し、
バリゾーグもゴーミン達を率いて突っ込んできて、両者は激突し、乱戦となります。
打ち合わせ通り、ジョーはバリゾーグに向かっていき、
マーベラス達5人はゴーミン達がジョーとバリゾーグのサシの勝負を邪魔できないように、
ゴーミン達をひきつけて派手に立ち回りを演じます。

一方、ジョーはバリゾーグを一騎打ちの状況に誘い込むために、
わざとバリゾーグの攻撃に押されているように受けに徹して後退を重ねて、倉庫の中に転がり込んでいきます。
それを追って倉庫の中に入ってきたバリゾーグを見て、
ジョーはこれでようやく完全に誰の邪魔も入らない一騎打ちの状況に持ち込めたと判断して、
突如攻勢に転じて、バリゾーグに斬りかかり、両者は激しく剣と剣を叩きつけ合って斬り合います。
ここの両者の動きはチャンバラアクションとして実に素晴らしいレベルで、観ている方も一気に盛り上がってきます。

ところで、何故、洋の東西を問わず、剣のアクションというのは人を魅了するのか?
もちろんリアルな剣を使った殺し合いではなく、映画やテレビなどでの剣のアクションのことですが。
それは人間の繊細な動きが一瞬で勝負を決するほどの大きなパワーを生むからでしょう。
肉弾戦はダメージの積み重ねを描写しないといけないので、あまり単純明快な描写にならない。
かといって機関銃や爆弾など、機械に頼りすぎると人間同士の勝負という描き方が難しくなります。
それに肉弾戦だと体格差、機械化戦だと武器の差などで、勝負の公平性が無くなって、
結局は肉体的な強さや武器の性能の差で勝敗が決したように見えてしまう。

その点、剣のアクションが良いのは、
対峙し合った者同士の精神力の差がそのまま勝負を決するような描き方がしやすくて、
アクションシーンを通して人間ドラマを描きやすいことです。
前々回のガンマンワールドで描かれたような拳銃の早撃ち勝負なども
剣のアクションとそうした特性では似ていますが、
剣のアクションの方が様々なバリエーションで人間ドラマを描けるという点でより優れているといえます。
まぁそういうわけで、この剣豪同士のジョーとバリゾーグの勝負は、
まさにここまで人間ドラマとして描写されてきました。

最初に両者が対峙したのは第11話の時でした。
あの時は最初はバリゾーグの正体を知らなかったジョーはバリゾーグと互角の勝負をしていたが、
バリゾーグがシドの円月剣のような必殺剣を使ったことで動揺したジョーが
まともに技を喰らって変身解除してしまい完敗し、
その後はバリゾーグの正体を知って放心状態となりバリゾーグになす術もなく斬られそうになって
マーベラスに救われました。
そして第2戦はその直後の第12話、
バリゾーグの中のシドの記憶を取り戻そうとしてジョーはバリゾーグ目がけて円月剣を放ちましたが、
バリゾーグはこれを簡単に剣で受け流して破り、去っていきました。

まず第11話の時は、ジョーはバリゾーグがシドだと気付いた時点で戦意を喪失してしまっており、
一方のバリゾーグはワルズ・ギルを守るために本気で戦っていたため、
そのためバリゾーグの一方的な勝利となり、ジョーはマーベラスに助けられなければ死んでいるところでした。
しかし第12話になると少し状況は変わっており、
ジョーはシドの記憶を取り戻すためにショック療法のように円月剣をバリゾーグ目がけて放ちますが、
これは殺気の欠けた攻撃であり、あくまでフルパワーではありません。
それゆえバリゾーグに防がれてしまったのですが、
バリゾーグもこの時は剣を拾いに来ただけであり、
ワルズ・ギルにジョーを殺すように命じられていたわけではないので、ほとんど戦意を示していませんでした。

しかしこの時、バリゾーグはジョーの円月剣にだけは反応して対応しており、
そうでなければたとえフルパワーでなかったとはいえジョーの円月剣を防ぐことは出来なかったでしょう。
そして円月剣を破った後はバリゾーグは再びジョー相手に無関心となり、トドメを刺すこともなく去っていきました。
つまり、この時点ではジョーはバリゾーグを殺さずにシドに戻そうとして強い関心を示しているが、
バリゾーグの方はあくまでワルズ・ギルにしか関心が無いといえます。

しかし円月剣だけは別で、ジョーが円月剣を使うと反応して戦おうとしますが、
その威力が大したことがないと分かると興味を失っています。
しかしバリゾーグはシドとしての記憶は無く、剣の技だけがシドから受け継がれている状態です。
だから、おそらくこの円月剣という技そのものによほど深い意味があったので、
バリゾーグの中でもこの技だけは特別な技として認識してしまうようです。

それは心の動きというほどのものではない。
そもそもバリゾーグに心など無い。
それはバリゾーグなりの特別な最強の剣なのであり、正義を執行する剣なのでしょう。
だから、それを他人が使うというのはバリゾーグにとって脅威なのでしょう。
だからジョーがその構えをした時、脅威を感じてバリゾーグは迎撃し、
受けてみると大した威力ではなかったので安心して再びジョーを無視したのでしょう。

と考えると、どうしてジョーがこの円月剣を喰らわせることでシドに記憶を刺激出来ると考えたのかも
何となく分かってきます。
第11話の回想シーンでザンギャックの兵士養成所でジョーとシドが2人きりでいる場所で
シドがこの技を披露している描写がありましたが、
どうもこの技は2人にとって特別の意味があったようです。
おそらく2人が養成所時代に共に信じた正義を執行するための特別な最強技として、
この技を2人で極めたのでしょう。
つまり、2人の正義の戦いを共に遂行する同志の絆の象徴であったのでしょう。
その正義はおそらく宇宙の人々の夢を守ることであったと思われます。

しかしザンギャック軍の実態はその反対であり、宇宙の夢を見る自由を圧殺するものでした。
それゆえ2人は脱走しましたが、シドは捕らわれ、
ワルズ・ギルによって記憶を奪われてバリゾーグへと改造されて、
その正義を執行するための技は、ザンギャックの正義、ワルズ・ギルの正義を執行するための技として
意味を捻じ曲げられてしまいました。
そのシドの変わり果てた姿を見たジョーは、その技を本来の意味で喰らわせることで
シドの記憶を呼び覚ますことが出来ると考えたのでしょう。

しかし実際はジョーは本来の使い方は出来ていないのです。
自らの信じる正義の執行のために技を放ったのならば、
それはザンギャックの悪を撃つ技でなければならないはずです。
しかしジョーはバリゾーグを倒すのではなく、シドを救いたいという気持ちだけで撃っていました。
改造前のシド自身ならば、そんな中途半端な気持ちで円月剣を放つことはなかったでしょうから、
そんな剣ではバリゾーグに通用するはずもなく、
バリゾーグに大した脅威を感じさせることもなかったのでした。

ただ、バリゾーグがこうして全くジョーに無関心となったことで、
さすがにジョーもバリゾーグの中にシドの記憶は無いと悟り、バリゾーグへの興味を失いました。
そうして第3戦目は「199ヒーロー大決戦」映画の時(第16話と第17話の間)、
第4戦目は第26話に巡ってきましたが、
これらの時はジョーは既にバリゾーグへの特別な興味は失っており、
バリゾーグはワルズ・ギルから特にジョーやマーベラス一味の抹殺命令を受けていたわけではないので、
一騎打ちになったわけでもなく、普通に「戦隊VS怪人」として戦っただけでした。

しかし第30話の際にジョーはバリゾーグの設計図が手に入ったことから再びシドの記憶を取り戻そうとしますが
元イエローライオンの大原丈によってそれが無理だと宣告され、
過ちを繰り返させないようにすることでシドの魂だけでも救われるということを示唆され、
ザンギャックを倒してシドのような悲劇の連鎖を断ち切ることが
シドの目指した正義に通じるということを悟りました。

そうして、かつてシドと絆で結ばれた正義の心を取り戻したジョーは、
昔のシドと同じ威力の円月剣を放ち、
シドを改造した科学者怪人であるザイエンを葬り去りました。
その模様をギガントホースのモニターで見ていたバリゾーグは、
ジョーの円月剣に以前とは違う明確な脅威を感じとり、注目したのでした。

こうして第30話を境に、ジョーはシドの魂を救うためにバリゾーグを倒すことを誓い、
バリゾーグは自分の正義を脅かす潜在的な脅威としてジョーを意識するようになりました。
そうして第36話において両者は対峙することになりましたが、
あくまでバリゾーグはワルズ・ギルの命令に従うのが第一ですから、
ワルズ・ギルの撤退命令に従い撤退し、2人の対決は実現しませんでした。

そして今回の一騎打ちということになったわけですが、
確かに互角のように見えて、しかし少々バリゾーグが押し気味となります。
バリゾーグはジョーのことを自分の信じる正義を脅かす脅威と認識して目障りだと感じており、
しかも今回はワルズ・ギルが海賊抹殺のための作戦を発令していますから、
心置きなくジョーを抹殺する気で剣を振るっています。

しかし一方のジョーは少し躊躇があります。
さっきの船室での「守る」ということについての問答や、見張り台での鎧との会話の際に、
シドがかつて命を捨てて自分を守ってくれたことを改めて想い出して、
ジョーの剣先には自分のせいでバリゾーグとなったシドの身体に対して、
本気で殺すつもりで斬りかかることに僅かばかりの躊躇が生じていたのでした。
その僅かの剣先の鈍りの分、バリゾーグの本気の剣に対して遅れが生じて、
ジョーはじりじりと押し込まれていきました。

これではいけないと思い、ジョーはバリゾーグの剣を肩で受けて跪いた姿勢から
「シド先輩!・・・俺は貴方の記憶を取り戻そうと考えていた・・・」と言いつつ、ゆっくり立ち上がりました。
バリゾーグの中に無意識にシドを感じてしまって剣先が鈍っているのなら、
バリゾーグを見るのではなく、あえてシドに語りかけ、シドに決別することで吹っ切ることにしたのでした。

そうしてジョーはバリゾーグの剣を弾き返し、バリゾーグを睨みつけながら
「だが、それが不可能ならば!・・・俺は貴方に語る言葉を持たない!」と怒鳴ります。
それは自分の中に僅かに残ったシドを殺したくないという想いへの決別の言葉でした。
そしてジョーは剣を構え、「この刃こそが・・・俺の・・・言葉だっ!!」と叫ぶと、
渾身の一撃をバリゾーグに叩き込みます。

ジョーは当初は必死で呼びかけて記憶を取り戻すことでシドの魂を救いたいと思っていた。
しかし、それが無理ならば、自分の刃でバリゾーグを倒すことによってシドの魂を救うしかない。
言葉で呼びかける代わりに剣で殺すことによって魂を救うのです。
目的は魂を救うという点で同じなのだから、つまり、シドの魂の救済という目的に関して言えば、
言葉も剣も同じであり、刃は言葉なのです。

しかし、この本気で殺すつもりになったジョーの剣をバリゾーグも受け止めます。
そして「フン!剣などで誰と語らうつもりだ?・・・あいにく私の刃に言葉など無い!」と言うと、
ジョーの剣を弾き返して、反撃してきます。
そしてこれを受け止めたジョーに対してバリゾーグは
「・・・あるのは、ワルズ・ギル様への忠義のみ・・・!」と言うと猛然と攻撃に転じます。

ジョーの剣はバリゾーグを本気で殺すつもりの剣となったが、
それはあくまで本気でシドの魂に向き合う剣です。
しかしバリゾーグの剣は本気でジョーを殺そうとする剣だが、ジョーの魂とは向き合っていない。
そこにはワルズ・ギルへの忠義しかありません。
ジョーに対する殺意も、自分の「ワルズ・ギルのためだけに剣を振るう」という正義とは別の何かのために
自分の正義の必殺剣を同じ威力で使うジョーの存在が許せないからでした。
結局はバリゾーグにとってはワルズ・ギルこそが絶対正義なのであって、
バリゾーグはジョーの方を向いているわけではなく、ワルズ・ギルの方にしか向いていないのです。

もちろん、それは偽物の忠義、捏造された忠義です。
しかし、どんなに嘘でも、バリゾーグにとってはそれは間違いなく真実なのです。
だからバリゾーグの剣にも一切の迷いは無い。
それゆえジョーの本気になった攻撃を受け止め反撃に転じることも出来る。

が、ジョーもまた、その嘘によって作り上げられたバリゾーグの本気という悲劇に終止符を打てるのは、
バリゾーグの死だけだと分かっていますから、こちらももう全く迷いは無い。
それゆえバリゾーグの猛攻を受けて、ジョーは更に反撃に転じて、
こうして両者は更に激しくぶつかり合うのでした。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 01:12 | Comment(0) | 第37話「最強の決戦機」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

第37話「最強の決戦機」感想その6

一方、倉庫の外ではジョーを除くマーベラス達5人がゴーミンやスゴーミン達を全て片付けましたが、
そこにまた新手のゴーミン集団が現れて迫ってきます。
「キリがねぇなぁ・・・」と溜息をついたマーベラスは
「一気にいくぜ!!」とゴーカイガレオンバスターでゴーミン集団を撃って全滅させます。
この時、今回はジョーがいませんから、
いつもはジョーがゴーカイブルーのレンジャーキーを挿す鍵穴に鎧がゴーカイシルバーのレンジャーキーを挿し、
いつもはジョーが支えるマーベラスの左肩と左腰も、鎧が支えます。

ところが、このゴーカイガレオンバスターを撃ち終った直後、
ゴーミン集団が吹っ飛んだ爆炎の前に突如、例の2人のドゴーミンが降り立ち、
猛スピードでマーベラス達に突っ込んできて、
ガレオンバスターを撃ち終った直後の反動を受けて一瞬の無防備な状態のマーベラス達に
激しい攻撃を浴びせてきたのでした。

猛スピードで動き回る2人のドゴーミンに打ちのめされたマーベラス達から
再び猛スピードで離脱して距離をとったドゴーミン2人は、
それぞれが手にした槍を突き上げて交差させますが、
マーベラス達から見て左側に立つドゴーミンの突き出した槍の穂先が青い龍、
右側に立つドゴーミンの突き出した槍の穂先が赤い龍の形となっており、
これが交差されて突き出されて、右に青い龍、左に赤い龍が向かい合うようになり、
ここにザンギャックの紋章のエネルギー体が重なって浮き上がるように発生して、
このエネルギー体を2人のドゴーミンは槍先で繰り出してきてマーベラス達に撃ち込んできます。

なるほど、確かにザンギャックの紋章には真ん中の皇帝の顔と思しき模様の右に青い龍、左に赤い龍が描かれており、
あれは親衛隊を象徴していたようです。
あるいは、何か別の由来があるのかもしれませんが、
その何かを模した槍が親衛隊のマークとなっているのでしょう。
このエネルギー体が炸裂してマーベラス達は吹っ飛ばされて倒れます。

この一連のドゴーミンの攻撃が一瞬のうちに繰り出されて、
あっという間に倒れ伏してしまった5人は驚きました。
ハカセは「何こいつら!?」と怪しみ、アイムも「強すぎます!」と呆れたように言います。
そして鎧も「スゴーミンに似てますが・・・比べものになりません!」と、
いきなり現れた謎の赤いスゴーミンが何者なのかと戸惑いを示します。
どうやらマーベラス達は皇帝親衛隊のドゴーミンの存在は知らないようです。

このハカセ達の言葉を聞いて、ドゴーミンの片割れが
「皇帝親衛隊である俺たちドゴーミンの力は、一介の行動隊長の力などは優に超えるドゴ!」と野太い声で言い、
もう1人の片割れも「見た目で人を判断するなと、先生に教わらなかったのか?ドゴ!」と、
こちらは少し冗談めいたことを言います。
何か1人は微妙に武闘派で、1人は微妙に知性派っぽいです。

しかしドゴーミンは行動隊長クラスの怪人よりも遥かに強いとは驚きですが、
この一連の攻撃を見ればそれも納得です。
ただ行動隊長といっても今まで出た者にはかなり実力にバラつきはあったので、
中にはドゴーミンよりも強そうな者もいました。

そもそもこのドゴーミン達を率いていた親衛隊長のデラツエイガーをもゴーカイジャーは倒しているのですから、
十分にゴーカイジャーもドゴーミンとは渡り合えるはずです。
まぁ親衛隊長が必ずしも親衛隊の隊員たちよりも強いとは限らず、
案外、実力はさほど変わらないが家柄などの要素でデラツエイガーは隊長であっただけかもしれませんが、
まぁ今の攻撃はマーベラス達がガレオンバスターを撃ち終った瞬間を狙った奇襲であり、
マーベラス達が一方的にやられてしまったのはそのあたりにも原因があり、
確かにドゴーミンは強いが、圧倒的というほどでもなさそうでした。

やはり反動の大きいガレオンバスターは怪人を1人残して弱らせてトドメを刺すような
戦闘の最終段階で使わないと、こういう逆襲を喰らってしまう危険はあるようです。
が、とにかく見た目は似ていてもドゴーミンはスゴーミンとは比べものにならない強さであるのは間違いない。
知性派の方の1人は見た目だけでスゴーミンと同種扱いされたのがちょっと嫌で、
皮肉混じりの冗談を言ったようです。

これに対して「・・・ゴメン!学校なんて行ったことないのよね!」と冗談を返しながらルカは立ち上がり、
他の皆も立ち上がります。
不意打ちは喰らってしまったが、仕切り直して戦えば勝てない相手ではないと判断しているようです。
まぁ実際、スラム育ちのルカは学校に行ったことはないようですが。

そしてマーベラスも「てめぇらこそ、皇帝に教わらなかったか?
海賊ってのは一筋縄じゃいかねぇってな!」と言いつつ、バックルからレンジャーキーを取り出します。
このセリフ、ドゴーミンの冗談に冗談で返しただけのようにも聞こえますが、少々引っ掛かるセリフでもあります。
あるいは皇帝は海賊と何か因縁があり、マーベラスはそのことを知っているのかもしれません。
ただマーベラス自身はドゴーミンのことも知らないぐらいですから皇帝とも当然、面識は無いでしょうから、
マーベラスの知る海賊、例えばアカレッドが皇帝と何らかの因縁があることを聞いていたという可能性はあります。

まぁここは戦闘の場面を追います。
5人はレンジャーキーを出してモバイレーツに挿し込み「豪快チェンジ!!」と、多段変身を遂げますが、
何やらいつもと様子が違います。
関さんのいつもの変身ボイスが聞き取れない。
なんだか5種類混じってしまってワケ分からん「×××レンジャー」みたいな言葉になってしまってます。

見ると、マーベラスがウルザードファイヤー、ルカが大剣人ズバーン、ハカセがシグナルマン、
アイムがデカスワン、鎧が黒騎士に変身しています。
それぞれマジレンジャー、ボウケンジャー、カーレンジャー、デカレンジャー、ギンガマンの
番外戦士扱いの戦士です。
まぁシグナルマンや黒騎士は本編では番外戦士扱いではなく、どちらかというと追加戦士扱いなんですが、
この「ゴーカイジャー」においては最後までバスコが所持していた
10個の番外戦士レンジャーキーのカテゴリーの戦士となります。

この第31話のオーレンジャー篇でマーベラス達が手に入れた番外戦士カテゴリーの戦士は
別格に強い戦士という扱いになっており、ある種、切り札的な戦士です。
ドゴーミンがそれなりの強敵で、しかも2人もいるということで、
マーベラスはここで切り札の番外戦士への多段変身に初めて踏み切ったようです。

そのチョイスの基準は、一応マーベラスは赤い番外戦士であるウルザードファイヤー、
ルカは黄色っぽいズバーンという色合わせで、
ハカセはシグナルマンとは第31話で召喚体と戦った因縁があり、
アイムは女性型戦士のデカスワン、
鎧は因縁のあるヒュウガからレンジャーキーを受け取った黒騎士というように、
一応皆、なんとなく根拠のあるチョイスとなってます。

ただ、鎧の場合、ゴーカイセルラーに黒騎士のボタンが無いのにどうやって変身したのかという疑問はありますが、
まぁこの際、細かいことは突っ込まないでおきましょう。
玩具の仕様に縛られすぎるより、これぐらい融通は利いた方がいいです。

これでマーベラス達がレンジャーキーを所持していながら未だ変身していない戦士は
ゴーオンゴールド(単体変身無し)、デカマスター、マジマザー、リオ、メレ、姫シンケンレッドの
6戦士となります。
ただ、TV本編で未変身という意味では、ファイブレッド、ファイブブルー、ファイブブラックも追加されます。

ドゴーミン達もこの番外戦士への多段変身には驚いたようで、
「なんだ、それは?」と武闘派っぽい方が言います。
ドゴーミン達はそもそもこの場に何をしに現れたのかというと、勝手にやって来たわけではなく、
バリゾーグの作戦に参加しているのでしょう。
つまりワルズ・ギルはバリゾーグだけを信用して孤独に戦っているつもりでいるようですが、
実質的にはバリゾーグを通じて地球侵略軍全体を動かしている状態には変わりなく、
単にダマラスが指揮系統から外されているだけというのが実情です。
そして、この本国からグレートワルズを搬送してきた2人のドゴーミンも臨時で地球侵略軍の配下に加わって、
バリゾーグと連動して動いているようです。

それゆえ、ドゴーミンはある程度ゴーカイジャーに関する情報は入手していると見られます。
ガレオンバスターの弱点を突いた攻撃などはゴーカイジャーの戦法を研究していたからこそ出来たことでしょう。
だから当然ドゴーミン2人はゴーカイジャーがスーパー戦隊の戦士に多段変身することも知っていたようですが、
さすがに初めて披露する番外戦士への多段変身はデータに無かったので面喰ったようです。

これに対してルカは「ま、変化球ってヤツ?・・・可愛いでしょ?ズンズン!」と、
両腕を曲げて肘を下に押し込むズバーン特有の動きをします。
金ピカの化け物風のズバーンですが、ルカのクネクネした動きや声がつくと妙にエロくて、確かに可愛い。
こんなものを可愛いとは思いたくないのですが、クセになってしまう可愛さがあります。

これを聞いて知性派っぽい方のドゴーミンはイラッときたようで
「ズンズンって・・・ふざけてるのかドゴォ!?」と怒鳴ります。
いや別にふざけてません。ズバーンってこういうヤツですから。
オリジナルのズバーンはセリフは「ズンズン」とか「ズバズバ」しか言いませんし、
こういうポーズをとりながら喋るヤツなのです。まぁ声は男の声でしたが。

そもそもドゴーミン自身、「ドゴ」とか語尾に変なのをつけてるのだから、
他人の事をとやかく言えた義理じゃないでしょう。
ルカは構わず「ズンズン!」と返します。
すると何を思ったか武闘派っぽい方のドゴーミンが「うぅ〜む・・・ドゴォッ!!」と吼えます。
こいつら、もしかして案外面白いキャラなのかもしれません。

そして、これに対抗するようにルカは更に「ズンズン!!」とノリノリで、
横では黒騎士の鎧まで一緒になって同じポーズで「ズンズン」をやってます。
ふざける黒騎士というのも新鮮です。
そして画面奥ではハカセの変身したシグナルマンが、このくだらない遣り取りを無視して、
シグナイザーをポリスバトンモードにして呑気にゴルフのパターのフォームチェックをしています。

このグダグダの展開に呆れたようにマーベラスが「・・・いつまでやってんだ!一気に叩くぞ!!」と号令をかけ、
ドゴーミン目がけて5人は突っ込んでいき、ドゴーミン達も迎え撃ちます。
武闘派っぽいヤツの方はマーベラス、ハカセ、アイムと戦い、
知性派っぽいヤツの方はルカと鎧のペアと戦います。

番外戦士とはいってもシグナルマンとデカスワンはそんなに強い方ではないので、
最強戦士格のウルザードファイヤーと組むのは順当といえます。
一方、ズバーンと黒騎士は最強レベルとまではいかないが、両方ともかなり強い戦士ですので、
この2戦士のタッグならウルザードファイヤーにシグナルマンとデカスワンを合わせた戦闘力にも匹敵するでしょう。

この2つの最強チームともいえる相手に対して、ドゴーミン2人もかなり善戦しますから、やはり大したものです。
武闘派っぽいヤツの方はマーベラスのウルサーベルの斬撃を槍で受け止めて弾き飛ばし、
更にハカセとアイムも投げ飛ばして「おととい来やがれ!」と、
ハカセとアイムに向けて腕からエネルギー弾を発射してトドメを刺そうとしますが、
マーベラスが「させるかぁ!!」と割って入り、
ジャガンシールドとウルサーベルでエネルギー弾を弾いて防御し、そのまま逆襲に転じて突っ込み、
ハカセもアイムもそれに続きます。

一方、知性派っぽいヤツの方は鎧のセイバーモードにしたブルライアットの攻撃と
一進一退の攻防を繰り広げているところに
ルカが「ズバァッ!!」と強烈なローリングソバットを炸裂させて、
よろめいたドゴーミンにルカが「いくよぉ!」と腕を回して攻勢に転じます。
ルカは前進しながら「ズンズンズンズン!ズババババババァッ!!」と、
ドゴーミンのボディに連続ボディブローを叩き込み、
最後は豪快なアッパーカットでドゴーミンを天高く吹き飛ばします。

そして「うおおお!?」と宙に舞ったドゴーミンに対して、
同時にジャンプした鎧が空中で「黒の一撃!!」とブルライアットを一閃して、その胴体を斬り裂きます。
黒の一撃は本来は回転ジャンプして斬り下ろす技なので、ちょっと違うのですが、
まぁ変形技ということで、この一撃を受けてドゴーミンは絶叫して落下していきます。

一方、武闘派っぽいもう1人の方に対しては、
アイムが「スワンファンタジー!!」と、そしてハカセが「シグナルスラッシュ!!」と叫び、
それぞれ連続で大技を炸裂させます。
このスワンファンタジーもシグナルスラッシュも、両方とも本編でオリジナル戦士は使ったことのない新技です。
スワンファンタジーは羽根が舞い散るエフェクト付きの回転回し蹴りのような技で、
シグナルスラッシュはポリスバトンモードにしたシグナイザーで突っ込んで一閃する技です。

そしてマーベラスがジャガンシールドの盾の目を開き、「くらえ・・・!」と言うと、
盾の目から光弾を出して「ブレイジングシュート!!」と叫んで
ウルサーベルで弾き飛ばしてドゴーミンにぶっつけます。
このブレイジングシュートはウルザードファイヤーの得意技の1つで強力な技です。
これを喰らってドゴーミンは吹っ飛ばされて転がり、
そこにもう1人のドゴーミンもフラフラになって逃げてきます。
形勢不利と判断したドゴーミン2人は
「・・・意外にやるなドゴォ・・・!」「一時退却だドゴォ・・・!」と呻いて姿を消し、撤退していきます。

まぁ強いといっても5対2の数的劣勢で最強格の戦士に変身したゴーカイジャーに勝てるほどの
力は無いようですから、行動隊長の中でも強めの部類のものと同程度の強さというところでしょう。
これで倉庫の外のザンギャック兵は一掃されたこととなり、
後は倉庫の中でジョーと一騎打ちを繰り広げるバリゾーグを残すのみとなります。

さて、そのジョーとバリゾーグの一騎打ちですが、
激しく剣と剣をぶつけ合いながら倉庫内を動き回る目まぐるしい展開となっていました。
何と言ってもお互いひたすら無言なのが良いです。
「語るべき言葉を持たない」なんて言いながら結局ベラベラ喋って戦ったりしがちなのですが、
ここではお互い無言でひたすら殺し合ってるのが迫力があって良いです。

攻防の方は互角の均衡した勝負というよりは、
一瞬の油断であっという間に勝負が決しそうなシーソーゲーム的な展開で、
確かにこの方が真剣勝負らしいですね。
倉庫内の障害物なども利用して転がったり飛んだりして綺麗な勝負ではないのも真剣勝負っぽいです。

ただ、互いに本気で殺しにかかっている意味でメンタルでは互角なはずの勝負で、
それでもややバリゾーグ優勢であるのは、さすがに剣の師匠であるだけに強さの引き出しが多いのでしょう。
途中でジョーは二刀のうち一刀を弾き落とされて一刀になってしまいますが、
それでもジョーもまだまだ逆転のチャンスを窺って闘志は衰えず、
激しくバリゾーグに向かって剣を振るいます。

バリゾーグはこのまま斬り合っていてもジョーを倒すのは困難で、下手をすれば自分が倒されると悟り、
勝負を長引かせるのは得策ではないと判断し、「・・・腕を上げたなゴーカイブルー!」と言うと、
跳び下がってジョーと距離を置き、
「しかし・・・ワルズ・ギル様のためにも、ここで負けるわけにはいかない・・・!」と言いながら、
一気に勝負を決するために必殺技の円月剣の構えに入ります。
自分がもし死ねばワルズ・ギルを守る者がいなくなってしまう。
さっきワルズ・ギルに「お前しかいない」と言われた以上、
バリゾーグはここはどうあっても負けるわけにはいかないのです。

ジョーはそのバリゾーグの構えを見て、「あの構え・・・!」と驚き、声を上げます。
それは第11話でバリゾーグが自分に向けて放った技の構えであり、
同時にそれはかつてシドが編み出して自分に教えてくれた、2人の絆のような技である円月剣の構えでした。
「シド先輩の技を・・・!」とジョーは怒りにかられます。
その技は本来、シドが自分の信じた命懸けの正義の実現のために使うはずであったものであり、
シドの身体に偽物の正義を自分の意思によらず埋め込まれた機械兵士が
ワルズ・ギルやザンギャックを守るためなどに使って良いような技ではない。

「死ぬがいい!」と剣を身体の前で十字に振るうバリゾーグに対抗して、
すかさずジョーも「うおおっ!!」と同じように身体の前で十字に剣を振るい、円月剣の構えに入ります。
仲間の夢を守るために命さえも捨てる覚悟を自分の意思で固めた、その自分の円月剣こそ、
命を捨てて自分の夢を守ってくれたシドの本来の円月剣と同じ、本物の円月剣であり、
バリゾーグの放つ偽物の円月剣など一蹴して、この勝負を決する剣だと考えたのでした。

そうして向かい合ったジョーとバリゾーグは互いに同じ動作で、
同時に円月剣の十字型の衝撃波を放ち合い、その衝撃波は両者の中間点でぶつかり合い、
一瞬、きりもみ状となって押し合い、直後、その中間点で大爆発を起こしたのでした。
その激しい爆風にバリゾーグは「ぐあっ!?」とよろめき、
ジョーは「うわあっ!?」と後方に弾き飛ばされ、倒れます。

そこに倉庫の中に入って来たマーベラス達が駆け寄ってきて
「ジョー!」「大丈夫ですか!?」と口々にジョーに声をかけるが、
ジョーはマーベラス達を「来るなぁっ!!」と声を張り上げて後ろ手で制します。

ジョーは円月剣の撃ち合いが相討ちに終わったことが信じられず納得がいきません。
どうして自分の本物の円月剣がバリゾーグなどの偽物の円月剣と互角の威力なのか?
あのバリゾーグはシドの魂など受け継いではいない。
自分こそがシドの魂を受け継ぐ者なのです。
ならばシドの技を撃ち合えば、自分が勝つはずでした。
まさかバリゾーグのワルズ・ギルやザンギャックを守ろうとする剣と、
自分やシドの仲間や人々の夢を守ろうとする剣が同じだとでもいうのか?
シドの魂をバリゾーグが持っているというのか?

いや、そんなはずはない。シドの技をザンギャックを守るために振るった剣が本物であるはずがない。
自分の技がちょっとしたミスで不完全だっただけだとジョーは思い、
「手を出すな!!・・・バリゾーグは俺がやる・・・!」と立ち上がります。
今度こそ円月剣でバリゾーグを倒して、どちらが本物のシドの後継者なのかハッキリさせ、
シドの魂を救う決意でした。

しかし、その場に「ハッハッハッハ!!」と高笑いの声が響きます。
見ると、何時の間にか倉庫内にワルズ・ギルが現れて、高笑いしながらバリゾーグの傍に歩いてきており、
バリゾーグは恭しく黙礼しています。
ワルズ・ギルはバリゾーグの横に立つと「よくやった!バリゾーグ!」と褒めます。

この作戦はそもそもワルズ・ギルが自らマーベラス一味を倒すための作戦であったのですが、
ワルズ・ギルはグレートワルズを使えば勝てるとは思っていましたが、
それでも自分が直接戦わなくても勝利すればそれはそれで楽でいいと思い、
バリゾーグやドゴーミンがマーベラス達を倒すという展開でも良かったようです。
要はダマラスを排除して自分が前線で指揮を執った形での勝利であれば何でもよかったのです。
普段なら怖くて海賊相手の前線には出てこないのですが、
今日はグレートワルズという切り札がありますから、こうして前線に出てきて指揮が出来るというわけです。

ただ結局、ドゴーミンは撤退し、バリゾーグもジョーを倒しきれず、
このままでは5対1でバリゾーグを倒されてしまうと見て、
ワルズ・ギルはやはり自分がグレートワルズでマーベラス達を倒さねばならないと思って、遂に姿を現したのです。

マーベラス達はワルズ・ギルの姿を見たのは第11話と前回、第36話の2回だけですが、
ついこの前に会ったばかりですからよく覚えています。
「あいつは・・・!」とハカセは驚きます。確か、ザンギャック軍の司令官です。
まさか、こんな前線にいきなり司令官が現れるとは予想外でした。

一方、ジョーは「皇帝のバカ息子!・・・ワルズ・ギル!!」と怒りを露わにします。
そもそも自分がバリゾーグとここまで血みどろの死闘を演じてシドの魂を救おうとする羽目になっているのは、
この皇帝のバカ息子のワルズ・ギルが気紛れでシドをバリゾーグに改造したからでした。
諸悪の根源と言っていい。
いや、それだけではない。現在の宇宙の不幸の根源はザンギャック皇帝一族と言って過言ではありません。

そのジョーの言葉で目の前に居るのがザンギャック皇帝の息子、
つまり地球侵略軍の司令官なのだと知った鎧は仰天します。
鎧は一応、先日のガイアークとの戦いの際にワルズ・ギルとは顔を合わしていますが、
あの時はすぐにワルズ・ギルが撤退してしまったので誰なのかよく分かっていなかったのです。
第11話の時点では鎧はいませんでしたから、司令官ワルズ・ギルの顔は知らなかった。

目の前に敵の親玉がいきなり現れて驚くと同時に、鎧はこれは好機だと思いました。
地球侵略軍の司令官を倒せばザンギャックは撤退していくかもしれない。
そうなれば地球を守ることが出来る。
鎧は一歩前へ出てワルズ・ギルを指さして
「ノコノコ出てくるなんてちょうどいい!一気に決めましょう!!」と言って、
マーベラスの方に振り返って言いました。

しかしマーベラスは鎧にアイアンクローを決めて強引にどかせます。
確かにワルズ・ギルを倒す好機だが、
いつもは臆病にも前線に出て来ず、出てきても怖がってばかりいるヤツが、
妙に余裕の態度で出てきたのがマーベラスは気になりました。
バリゾーグに「よくやった」と褒めていたところを見ると、
これはどうやらワルズ・ギルが自分達に仕掛けた罠であるようだとマーベラスは気付き、
何か小細工があるに違いないと、慎重にワルズ・ギルの様子を窺います。

するとワルズ・ギルは「威勢だけはいいようだな海賊ども!・・・
そうだ!俺こそが宇宙帝国ザンギャックの司令官、ワルズ・ギル様だ!」と、派手にポーズを決めてノリノリです。
グレートワルズという絶対的な切り札を手にしているお蔭で、すっかり余裕です。
しかしマーベラス達には、どうしてワルズ・ギルがこんな危険な場所に出てきてこんなに余裕を示していられるのか、
その根拠は分かりません。
ただ、何かがあるのだろうということは想像はつきます。

続けてワルズ・ギルは「この場で平伏するか、それとも死すか、選ぶんだな!」と、
ますます調子に乗った発言をしますが、
こうした発言を見る限り、ワルズ・ギルはかなりキザで上品な悪役だと分かります。
つまり、マーベラス達を絶対に自分の手で殺したいと思っているわけではなく、
降伏すれば受け入れてやろうという度量は持っているのです。

というより、そういう度量を示してやろうという意識が強いのだといえます。
それはつまり、統治者としての風格を示したいということなのでしょう。
ワルズ・ギルにとってマーベラス一味は全身全霊をかけて憎むべき敵ではなく、
単なる地球侵略作戦を邪魔する障害物でしかない。
だから「抹殺」ではなく「排除」なのです。
生きていようが死んでいようが、とにかくいなくなればいいのです。
だから降伏してくれば受け入れて生け捕りにして、帝国の然るべき裁きを受けさせればいいし、
もしあくまで抵抗するならその場で殺すしかない。
まずは降伏するか抵抗するか、相手に選ばせねばならない。
何故なら、抵抗する意思を無くした敵を殺したりすれば統治者としての品格を疑われるからです。

つまり、ワルズ・ギルは残酷な殺戮者ではなく、あくまで本人は正義の執行者のつもりなのです。
何故なら、宇宙はザンギャック帝国のもとに統一されることにより安定するのだとワルズ・ギルは思っており、
ザンギャックによる全宇宙の併合はワルズ・ギルから見れば正義だからです。
そしてその宇宙の統治者にして平和をもたらす者は自分なのです。
そのワルズ・ギルから見ればマーベラス一味は許されざる悪ですが、
正義の執行者であり統治者たる自分が無慈悲な殺戮で手を汚すわけにはいかない。
だから、こうしてしっかり順序は踏んでいるわけです。
降伏すると言っても殺すつもりだとか、そういう卑怯な真似をする気も無いでしょう。
もし万が一マーベラス達が降伏すればワルズ・ギルはそれを受け入れて捕縛するつもりでいたと思います。
それが為政者としての正しい姿だからです。

もちろんザンギャック全体がこのように上品な騎士道精神を行動理念としているわけではない。
下っ端の兵たちは無抵抗の女子供も容赦なく虐殺する無法な連中です。
しかし、それは彼らが下っ端だからです。
ワルズ・ギルのような統治階級にいる者は、為政者としての風格を見せねばならないので、
民から軽蔑されるような無法な行為をするわけにはいかないのです。

だから、ワルズ・ギルがマーベラス達に温情を示すようなことを言っているのは、
別に優しい性格だからでもないし、マーベラス達に特別な感情を抱いているからでもない。
単にワルズ・ギルは「政治」をしているだけなのです。
「騎士道精神に則って無法な海賊を排除した英雄」というパフォーマンスを演じて、
ダマラスや重臣たち、ひいては父である皇帝に対してすら政治的優位を得ようとして
正義の執行者を演じているのです。

つまり、あくまでワルズ・ギルが意識している「敵」は目の前のマーベラス達ではなく、
あくまでダマラスや皇帝なのです。
マーベラス達のことは敵としてはあまり眼中には無く、
自分の政治ショーのダシ、生贄のようなものとしか意識していない。
当然、この戦いはギガントホースではモニターされており、映像も記録されている。
今後のワルズ・ギルの政治的なプロパガンダに何度も使われる予定の大事な映像です。
だから、さっきからワルズ・ギルはやたらと芝居がかった大袈裟な言動をしているのです。

しかしマーベラスにはそんな政治の話が想像がつくはずもなく、
大してピンチでもないのにいきなり降伏を勧告されて、呆れて
「あいにく平伏するほど行儀よく育ってないんでなぁ!」とガラ悪く応えます。
まぁどんな不利な状況でどんな強敵が相手でもマーベラスは絶対に降伏などしないのですが、
今の6人VS2人の状況で、しかも相手が最弱のボンボンであるワルズ・ギルならばなおさらのことでした。

このマーベラスの降伏を拒絶する言葉を聞いてワルズ・ギルは
「なるほど・・・死を選ぶか・・・」と後ろを向いてほくそ笑みます。
ワルズ・ギルとしてはその方が好都合だったのです。
戦わずして海賊を捕縛する映像よりも、
抵抗する無法な海賊をグレートワルズの圧倒的な力でねじ伏せる映像の方が
自分を英雄として演出するインパクトは圧倒的に上だからです。

ワルズ・ギルはあくまで画面映えを意識してカッコ良く振り向くと
「よかろう!我が手で引導を渡してやるから光栄に思え!」と高らかに宣言し、
左腕を胸の前に水平に畳んで敬礼のポーズをとりつつ、
威厳に満ちた声で「グレートワルズ発進!!」と号令を発します。

すると、それをモニターしているギガントホースの指令室では
インサーンが「グレートワルズ発進・・・!」と復唱しつつコントロールパネルのキーを操作し、
格納庫のグレートワルズを起動させます。
グレートワルズはその顔面部の目にあたるカメラ部に赤い灯がつき、
腕を動かすと、おびただしいジェット噴射の煙を残して、格納庫から飛び出します。
同時にギガントホースの前面について二頭立ての馬の顔のパーツのうちの1つが割れて、
その割れ目から猛烈な速度で宇宙空間へ向けてグレートワルズが飛び出していったのでした。

母船が割れて中から巨大ロボが飛び出してくるという演出は、
昔はスーパー戦隊シリーズではお馴染みでしたが、ずいぶん久しぶりにこういうの見ました。
懐かしくてインパクト大ですね。
まさか馬が割れるとは思わなかった。

しかし、グレートワルズがカッコいいというのもありますが、
この一連のシーンは確かに文句無しにカッコいいです。
メカニックな演出の貢献度も高いですが、
やはりその前段階のワルズ・ギルの堂々とした君主的、騎士的な言動は、
たとえ政治的意図の入ったパフォーマンスであるにせよ、かなり映えました。

これはやはり今までのワルズ・ギルとは一味違います。
今までのギャグキャラとしてのワルズ・ギルに慣れた人から見れば、
ちょっと違和感を覚えるくらいでしょうけれど、
意外に違和感が無いのは、ちゃんと前段階でワルズ・ギルの(全く誤解に基づくとはいえ)孤独と、
(グレートワルズという万能ロボの入手が前提とはいえ)それを乗り越えて前へ進もうとするチャレンジが
描かれており、そこからこの場面に至るまで、いや今回ラストまで、
ワルズ・ギルの声を担当される野島裕史氏の迫真の演技がそれらにリアリティーを与えているからです。

ワルズ・ギルはこれまでの人生、皇帝や重臣たちによって一切の障害を取り除いた万能の世界を提供されてきたが、
それは実際は果てしなく広い何も無い牢獄に閉じ込められていたようなもので、
一見は自由だが、その牢獄の中には一切の障害物も壁も無いため、
壁を乗り越えてこそ獲得される自由も夢も得られない世界でした。
いわば、ワルズ・ギルというキャラは、ザンギャック帝国という自由を隠微な形で抑圧した独裁帝国に
嬉々として暮らして恩恵を受け、引き換えに夢や自由を手放した人達の象徴のようなものだと思えばいいでしょう。
つまりマーベラス一味と対極に位置するザンギャックの理念が実体化したようなキャラがワルズ・ギルと言っていい。

そのワルズ・ギルが今回初めて、誤解によって皇帝や重臣に不信感と敵意を抱き、
何でも有るようでいて実は何も無かった自分の世界の中に、
初めて父や重臣という「乗り越えるべき壁」を作り上げ、
彼らを乗り越えたいという夢を持ち、壁を乗り越えるという自由の精神に触れることになった。
それがワルズ・ギルに大きな自信を与えて、今までにない堂々とした態度をとらせているのです。

しかし、その壁を乗り越える勇気を持つためにはワルズ・ギルは信頼できる仲間が必要だということを初めて知り、
信頼出来る相手はバリゾーグしかいなかった。
バリゾーグと一緒だからこそワルズ・ギルは壁を超える勇気を持つことが出来たといえます。
しかし、そのバリゾーグとの絆は所詮は作られた嘘の絆であり、非常に不安定であります。

また、そのバリゾーグと超えようとしている壁にしても、
その壁を乗り越えた先は決して自由な世界ではなく、元の牢獄の中です。
何故なら、あくまでワルズ・ギルはバリゾーグも含めて、自分の壁を乗り越えようとする力を、
全てザンギャック帝国という万能の牢獄から自由を失う引き換えに与えられてきたものを使っており、
牢獄の壁を超えて真の意味で自由になることは放棄しているからです。
彼は単に牢獄の王になろうとしているだけであり、牢獄の外周の壁は超えようとはしていない。
そもそも超える力も無い。
その点、帝国の作った牢獄の壁を超えようとしているマーベラス一味とは違っています。

そういうわけで、確かにワルズ・ギルは以前よりは強くなり、
あるいはザンギャックの皇帝として相応しい人物へと脱皮しようとしているのかもしれないが、
その基盤は案外脆弱であり、
帝国の理念を脱した場でマーベラス一味と戦うとなると、危ういかもしれないといえます。

さて、ギガントホースから射出された無人のグレートワルズは誘導システムで一瞬にして地上に到達し、
ワルズ・ギルがマーベラス達と対峙していた倉庫のすぐ脇に降り立ち、
ワルズ・ギルは「と〜う!」とジャンプしてグレートワルズに乗り込みます。

6人はそのグレートワルズを見上げて驚きます。
「なんだこれ!?」とハカセは呆れ、マーベラスは「また面倒なのが出てきやがったなぁ!」とぼやきます。
まぁ、あんまり危機感は抱いてはいないようです。
一方、グレートワルズのコクピットに乗り込んだワルズ・ギルは
「ザンギャック最強の決戦機グレートワルズで、お前達を葬ってくれる!」と張り切ってレバーを操作して、
グレートワルズを動かし、グレートワルズはゆっくりと歩き出します。

ガラス張のビルにグレートワルズの姿がきれいに映ったりして、
もうほとんど正義のロボット級の破格の待遇のグレートワルズは、
改めて見るとワルズ・ギルにそっくりというわけではなく、
色合いや細部のデザイン、胸部の顔模様がワルズ・ギルを彷彿させている
スマートなフォルムの巨大ロボットで、イメージとしてはワルズ・ギル親衛隊の巨大騎士という感じです。

これに対してマーベラスは「やれるもんならやってみろ!!」とゴーカイガレオンを呼び、
鎧は「時を超えて出でよ!タイムレンジャーの大いなる力!」と、豪獣ドリルを召喚します。
そしてゴーカイオーと豪獣神でグレートワルズに立ち向かいます。
「決戦機だか何だか知らねぇが、ぶちかますだけだ!!」とゴーカイオーのコクピットからマーベラスは怒鳴り、
ワルズ・ギルはグレートワルズのコクピットで「フン!」と余裕で鼻で笑います。

これ、向かい合ってる姿を見てると、「騎士VS海賊」なので、
どう見てもグレートワルズの方が正義のロボットみたいに見えて可笑しいです。
まぁワルズ・ギル自身は自分こそ圧倒的な力で宇宙に安定をもたらす正義の戦士だと思っており、
ザンギャックによる平和を乱すけしからん海賊を討伐しているつもりなのでしょう。

それにしても、やはり、こういう搭乗型の巨大ロボット同士の対決は燃えます。
スーパー戦隊シリーズの巨大ロボの発想の源流は「マジンガーZ」「ゲッターロボ」以降の
巨大ロボットアニメなのですが、
巨大ロボットアニメのバトルの売りは、やはり巨大ロボット同士のバトルでした。
スーパー戦隊シリーズでもその路線も試みられたこともありますが、
やはり経費節減のため、1つの着ぐるみで等身大戦と巨大戦をこなすために、
怪人が巨大化するという設定が普通になりました。

しかし、この敵の巨大化怪人と戦隊の巨大ロボが戦うという構図は、
どうしても「化け物を武器を使って退治している」という印象で、
あまり対等な立場での人間ドラマというのが成立しにくいといえます。
等身大戦の時は人間臭さを見せていた敵怪人も、巨大化してしまうと、どうしても化け物になってしまった感が強く、
人間臭さが無くなってしまう印象で、巨大ロボ戦で深いドラマを表現するのは難しいといえます。
その点、戦隊側と同じように敵側も巨大ロボットに敵キャラが乗り込んでいると、
戦闘機同士のバトルのような感じで、
互いのコクピットの場面を描くことで、しっかり人間ドラマを描くことが出来るのが良いところです。

さて、戦闘開始となり、まずマーベラス達はゴーオンジャーのレンジャーキーをゴーカイオーのコクピットに挿して
マッハルコンを召喚し、キャストにソウルを挿して巨大化させ、
マッハルコンは「バリバリいくぜぇっ!!」と叫んでビーム砲を発射しながらグレートワルズに疾走していきます。

しかしワルズ・ギルは「知っているぞ!そいつの力は!」と言ってレバーを引いてグレートワルズを操り、
素早い動きでマッハルコンのビーム砲を避けていきます。
マッハルコンの能力は既に何度かの戦いをモニターして研究済だった上に、
グレートワルズがとにかくスピードに優れており、攻撃が当たらないのです。
「ハッハッハ!」と高笑いしながらワルズ・ギルはマッハルコンの攻撃を全部避けてしまいました。
マーベラス達はグレートワルズの桁違いの機動力に驚き、ルカも「速い!」と唸ります。

そしてワルズ・ギルは「喰らえ!ワルズアロー!」と、
グレートワルズの左腕に装着した弓からエネルギー矢を発射してマッハルコンを射て、
矢が何本も命中したマッハルコンは「うわあ!」と叫び、次元の扉の向こうに撤退してしまいます。
「マッハルコン!」と叫ぶマーベラスに向かい、
ワルズ・ギルは「ざまあ見ろ海賊ども!本気の俺を止められると思うなよぉ!」と勝ち誇ります。

グレートワルズが大変な強敵であると悟ったマーベラスは、
今度は豪獣神に乗る鎧に向かって「豪獣ゴーカイオーだ!鎧!」と指示します。
「わかりました!」と鎧も応じて、アバレンジャーのレンジャーキーでゴーカイオーと豪獣神が合体し、
豪獣ゴーカイオーとなります。
圧倒的なスピードを誇るグレートワルズに対しては、スピード重視の攻撃は通用せず、
複数のロボで攻撃してもあまり意味は無い、
むしろこちらがグレートワルズのスピードに翻弄されて各個撃破されるだけだとマーベラスは判断したようです。
それよりも、ゴーカイオーと豪獣神の力を1つにして最もパワーと防御力に優れた豪獣ゴーカイオーで
確実に攻撃してくるグレートワルズを迎え撃つ方が良いという考えです。

しかしグレートワルズは真正面から豪獣ゴーカイオーに突っ込んできて、
懐に入ると右腕に装着した剣で豪獣ゴーカイオーをメッタ斬りにし始めます。
「このグレートワルズがこれまでの行動隊長と同じだと思うなよ!」と嘲笑うワルズ・ギルは
更に距離をとってワルズアローを叩き込み、
マーベラス達6人は豪獣ゴーカイオーのコクピットでなす術なく「ぐあああ!!」と苦しみます。
ワルズ・ギルは勝利を確信して「ハッハッハ!素晴らしいぞ!これぞ俺の求めていた力だぁっ!!」と高笑いして
再びグレートワルズを豪獣ゴーカイオーに突っ込ませて剣で斬りまくります。

豪獣ゴーカイオーのコクピットではハカセが「そんなぁ・・・」と途方に暮れます。
スピード重視の機体なのかと思って豪獣ゴーカイオーでパワー勝負に持ち込もうとしたのに、
パワー勝負でも圧倒されるとは、予想を遥かに超えるグレートワルズの強さでした。
「まるで歯が立たないなんて・・・」とアイムも驚きます。
これほどの秘密兵器をザンギャックが保持していたとは想定外でした。
「・・・信じられん・・・!」とジョーも呻くばかり。

ルカは苛立った声で「どうすんの?・・・これ!」とマーベラスに対応策を問いかけますが、
マーベラスもどう対応したらいいのか分からない様子で、無言です。
代わりに鎧が「突撃しましょう!・・・逃げるわけにはいきません!」と強い調子で言います。
どんな絶望的状況でも逃げずに戦わなければ、地球を守ることは出来ない。
さっき、どんなにザンギャックが強大でも地球を守ってみせるとジョーの前で自分に誓ったばかりの鎧ですから、
いきなりここで逃げるわけにはいかないと思っているのです。
しかし、突撃してもあのスピードでは絶対にかわされて手痛い反撃を喰らうのは目に見えています。
ハカセは「でも・・・破れかぶれに行っても無理だよ!」と鎧に反論します。

そうこうして揉めていると、ワルズ・ギルは「喰らうがいい・・・ワルズギルティ!!」と言って、
グレートワルズの胸部の自分の顔から強烈な高熱ビームを発射します。
どうやら、これがグレートワルズの決め技であるようです。
これを喰らった豪獣ゴーカイオーはコクピットの回路がショートして電撃に襲われ、
6人は「うわあああ!?」と絶叫して苦しみ、もはや身動きで出来ない状況となります。

まさに絶体絶命となってしまった6人であり、
豪獣ゴーカイオーでグレートワルズに反撃する手立てももはやありません。
電撃で苦しみつつ、マーベラスはこの未だかつてない絶体絶命の状況を、
かつての赤き海賊団の壊滅事件の時の想い出に重ねて見ます。

あの時、ザンギャックの襲撃を受け、赤き海賊団を守りきることが出来ずに壊滅させてしまった時、
船長のアカレッドは最後の最後に、自分の命を投げ出して、仲間である自分の夢を守ってくれたのだったと、
マーベラスは改めて想い出しました。
今、自分もアカレッドと同じ立場に立っている。

さっき、鎧と船室で問答した時、自分にとっての「守る」ということは、
到底勝ち目の無いザンギャックとの戦いの果てに、ザンギャックに敗れるその時、
アカレッドのように自分の命を捨ててでも仲間の夢だけは守ってやることだと心密かに決心していたのです。
それはまだ遠い将来のことだと思っていたが、
まさかザンギャックがいきなりこんな強力なロボットを投入してくるとは予想外でした。

しかし、これもまた想定内のことでもあります。
ザンギャックはやはり凄まじい底力を持っており、
遠からずこのような圧倒的な力に敗れる時はやってくる運命だったのです。
案外早くその時がやって来ただけのことだとマーベラスは悟り、
今こそアカレッドと同じような決断をすべき時だと覚悟を決めます。

つまり、ここで自分の夢を追う旅は終わりということです。
それは残念ではありましたが、仲間の夢を守れるのなら本望だと思い、未練を断ち切り
「・・・ちっ!・・・ここまでか・・・!」とマーベラスは呟きます。
後ろでマーベラスが何かを言ったことに気付き、何か対応策の指示かと思った鎧は
「ど・・・どうしたんですか?マーベラスさん!」と必死で問いかけますが、
マーベラスは「俺が残る!お前たちは脱出しろ!」と決然とした口調で言い切りました。

これには他の5人は呆気にとられ、ルカは「はぁ!?」と耳を疑います。
ハカセも「何言ってんのマーベラス!?」と、マーベラスの真意を測りかねて問い直します。
マーベラスやガレオンを置いて脱出などして今後どうするというのか?
全く話が見えませんでした。
しかしマーベラスは「いいから脱出しろ!!」と怒鳴りつけます。
あまりに一方的なマーベラスの物言いにアイムも「そんな!?」と反発しますが、
マーベラスは「・・・これは船長命令だ!!」と問答無用の態度で皆に脱出を命じます。

ゆっくり問答などしているヒマは無い。
早く皆を脱出させないと、すぐにもガレオンは爆発してしまうかもしれないし、
脱出装置だって、いつ使用不能になるか分からない状況なのです。
だからどんな手を使ってでも5人を脱出させなければいけない。
そして5人を安全な場所まで飛ばすためには自分がここに残って脱出誘導システムを操作しつつ、
抵抗し続けて敵の目を引き付けなければならないのです。

そのためには船長権限だって使ってやろうというマーベラスの姿勢でした。
海賊船においては船長の命令は絶対なのです。
しかし普段のマーベラスはグウタラ船長なので、皆に絶対的な命令を下しても説得力もあんまり無いし、
面倒臭いので、あまり強権的なことは言わず、皆の意見に流されてダラダラしたりしていることが多い。
それでマーベラス一味は上手く回っています。
しかし、ここは船長の権限で皆に従ってもらうしかないとマーベラスは思いました。

しかし、ジョーは「お前!!・・・こんな時だけ、都合が良すぎるだろ!!」と激怒します。
普段ダラダラしてばかりいるクセに、こんな時だけカッコつけるのは卑怯すぎる。
というより、この騙し討ちのようなマーベラスのやり方にジョーは腹が立って仕方なかった。
さっき鎧に「守る」ということについて質問されて何も答えなかったのは、こういうことだったのかと、
ジョーは今になって気付いたのでした。

マーベラスも自分と同じように、「守る」ということを命を捨てて仲間の夢を守ることだと心に決めていたのです。
考えてみれば、自分がシドに命を捨てて守られたのと同じように、
マーベラスもアカレッドに命を捨てて守られたのです。
ならば同じ結論に至っても当然といえました。
そう気付きつつも、ジョーはマーベラスに先手を打たれてしまったことが悔しく、
騙し討ちにあったような気分でした。
守ろうと思っていたのに、守ることは出来ずに、また守られてしまう。
また大切な仲間の命を捨てさせてしまう。それだけはもう嫌だとジョーは思いました。

一方、グレートワルズのコクピット内のワルズ・ギルはワルズギルティを放ちながら
「見ておられるか父上!?・・・見ているかダマラス!!」と陶酔したように叫びます。
あくまでワルズ・ギルの目に映る敵は目の前の海賊ではなく、自分の超えるべき父やダマラスでした。
海賊を討伐して地球を征服し、英雄となった自分は、父やダマラスを超えて、帝国を我が物として、
自分を裏切った父やダマラスを死ぬほど後悔させてやる。
その時になって、自分を愛さなかったことを懺悔させてやる。
そのための第一歩が今日なのだと思い、「俺はこいつらを倒す!!・・・喰らえ!!」と、
ワルズ・ギルはレバーを倒してワルズギルティの出力を最大にします。

これによって更に豪獣ゴーカイオーを強烈な高熱ビームが襲い、コクピットのあちこちが爆発を起こし、
6人は「うわあああ!?」と絶叫し、マーベラスはもはやこれ以上は猶予は無いと判断し、
「このぉ!!」と叫んで5人の席の強制脱出装置を作動させ、
5人は「うわあっ!?」という声を上げ、5つの光る玉となって
豪獣ゴーカイオーの外に強制排出されて飛んでいきます。

そのまま遠方まで一気に誘導されて飛ばされた5人は、3手に分かれて地上に不時着します。
ハカセとルカとアイムの3人はさっきの倉庫のあたりに不時着し、
鎧は何処かのビルの屋上に不時着し、
ジョーはどこかの道路の上に不時着し、「マーベラスの野郎・・・!」と悔しがって地面を叩きます。
3か所はバラバラで、お互いの場所は分かりません。

一方、豪獣ゴーカイオーのコクピットではマーベラスが1人で頑張って抵抗を続けており、
脱出した5人の方にグレートワルズの注意が向かないようにしています。
しかしワルズ・ギルは脱出した5人にはあまり興味も無いようで、
ひたすら豪獣ゴーカイオーを倒すことに必死です。
それも当然で、ワルズ・ギルにとってはグレートワルズが派手に海賊のロボを吹っ飛ばす映像を記録することが
政治的に大切なのであって、海賊の生き死になどどうでもいいことでした。

どうせこの圧倒的なグレートワルズの力があれば、
誰も自分の地球征服を邪魔することなど出来ないのだとワルズ・ギルは確信しているのでした。
そんなことより、とにかく今は派手に海賊ロボを倒すことだけが大切でした。
「しぶといっ!!」と怒鳴ってワルズ・ギルは更にワルズギルティを発射し続け、
遂に豪獣ゴーカイオーは大爆発し、マーベラスは「うわああああ!!」と絶叫し、
コクピットに上がる火柱に包まれます。

その大爆発を地上から見て、3か所に分かれた仲間5人は
「マーベラス!」「マーベラスさぁん!!」と口々に叫びます。
そうして、豪獣ゴーカイオーは吹っ飛びながらガレオンへと姿を戻していき、
そのまま遠くの山中に突っ込んで動かなくなってしまいました。
大爆発の中、マーベラスが果たして無事なのか不明ですが、
その方向に向けて5人の仲間は一斉に駆け出します。
とにかく一刻も早くガレオンに行ってマーベラスを助けなければいけない。
また、他の仲間とも合流しなければならない。

一方、ゴーカイジャーを破ったワルズ・ギルはグレートワルズのコクピットで
「ハッハッハッハ!!見たか!俺がワルズ・ギル!ザンギャックの次期皇帝だ!!」と高笑いして勝ち誇り、
これで父やダマラスを見返すことが出来ると自信を深めるのでした。
これで今回の前篇は終了し、次回の後編へと続きます。

なお、この本編終了直後、
なんと次回登場の「カンゼンゴーカイオー」という新合体ロボの玩具バレのCMが流れてしまいました。
そしてEDテーマと次回予告終了直後、「199ヒーロー大決戦」映画のDVDに関する告知も流れます。
このDVD、ちなみに本日我が家にも到着しました。
また機会があれば、これのレビューもしたいと思います。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 22:55 | Comment(1) | 第37話「最強の決戦機」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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