2011年12月20日

第42話「宇宙最強の男」感想その1

今回はスーパー戦隊シリーズ毎年恒例の
クリスマス商戦に向けての販促用の一大決戦エピソード前後篇の前篇です。

戦隊の玩具というものは欲しがるのは子供ですが、買うのは大人です。
子供が欲しがる時でも大人に買う気が無ければ結局売れないので、
大人が買いたがる時期が一番売れる時期になります。
でも大人が買いたがる時期に肝心の子供が欲しがっていなければ意味は無い。
だから大人が子供に1年で最も玩具を買ってあげたくなるクリスマス商戦の時期に、
子供が戦隊玩具を欲しくなるように誘導するために、玩具を猛烈にプッシュするエピソードを作るのが、
玩具販促番組であるスーパー戦隊シリーズでは毎年恒例行事となっています。

ただ戦隊関連玩具といってもたくさん種類がありますから、全部をプッシュするわけにもいきません。
メインスポンサーの玩具会社のバンダイがプッシュしたい玩具が何なのかが問題です。
とにかく売れれば何でもお金に変わるのだから何でもいい、というわけにはいきません。
バンダイが玩具を消費者に直売しているのならそういう理屈も成り立ちますが、
玩具メーカーの商売相手は一般消費者ではなくて実質的には小売店ですから、小売店との信頼関係が大切です。
つまり買い取ってもらった玩具を出来るだけ売り残らせないようにして、
小売店が損をしたと思わないようにするのが大事なのです。

このクリスマス商戦というのは小売店は在庫を一掃するチャンスと捉えているので、
バンダイとしても小売店の抱えている在庫商品の玩具をプッシュするのが
メーカーとしては最も誠実な姿勢といえます。
まぁ実際、クリスマス前にちょっとだけ画面に玩具が登場したぐらいで、
その玩具が急に飛ぶように売れるとも思えないのですが、
これは実質的な効果がどうのこうのという問題ではなく、
メーカーが小売店に買っていただいた在庫を処理するために小売店さんが懸命に頑張っている時期に、
せめてもの援護射撃をするという、誠意の問題なのです。
その誠意が信頼関係を維持して、次の戦隊の玩具も引き受けていただけるわけです。

で、その小売店がこのクリスマス商戦に便乗して必死になって処理しようとする
在庫の山となっている戦隊玩具とは何なのかというと、それは大抵は巨大ロボ関連の玩具です。
「ガオレンジャー」以降、巨大ロボ関連玩具がやたらたくさん発売されるようになりましたが、
そんなにたくさん巨大ロボや巨大メカを登場させて、
毎回のエピソードでそれらを全部劇中で使用出来るわけがない。
だいたい特定の時期しか登場しない巨大ロボや巨大メカが多数派となります。

例えば「ゴーカイジャー」でも、最近はめっきりガオライオンやパトストライカーなどを見なくなりました。
シンケンゴーカイオーやハリケンゴーカイオーも一時期は毎回のように登場していましたが、
何時の間にやら、すっかりご無沙汰です。
ここらへんの玩具は、劇中でもあまりプッシュされなくなり、
新しいそれに代わる巨大ロボや巨大メカも登場してプッシュされたりして、
子供たちから忘れられていってしまい、小売店で在庫の山となっていることが多い。
だから、これらの最近登場しなくなった巨大戦力群をプッシュして小売店の在庫処理をサポートするのが、
クリスマス商戦期のエピソードに課された使命なのです。

となると、今まで劇中に登場した巨大ロボや巨大メカが総登場するような
一大決戦が繰り広げられるエピソードということになります。
そして、そのように戦隊側が戦力の全部を投入しなければいけない敵となると、大変な強敵でなければいけない。
何故なら、パワーバランス的には、その敵キャラよりも強いキャラを倒す時にも
戦力の全部を投入しなければ辻褄が合わなくなってしまうからです。

これ以前のエピソードで戦力の全部投入など、やっていないわけですから、
少なくともこのクリスマス商戦期の一大決戦エピソードで倒される敵は、
それまでのエピソードで出てきたどの敵キャラよりも強くなければいけない。
そして、この後はクライマックス篇に突入していくわけですが、
クライマックス篇でも毎回毎回、全戦力の投入なんてやっていたら作劇が制限されてしまうので、
基本的にクライマックス篇でも、このクリスマス商戦期の一大決戦エピソードで倒される敵よりも強い敵は
登場しないということになります。

唯一の例外は最後の最後に倒されるラスボスですが、
ラスボスの場合は戦力の全部投入でも倒すことが出来ず、更にプラスアルファの力で倒すとか、
全く別種の力で倒すとか、そういう1回限りの工夫をして、
このクリスマス前の一大決戦エピソードの敵を凌駕する強さを演出します。
つまりラスボスはある意味、イレギュラーな存在、想定外の存在なのであって、
戦隊が普通の戦い方をする限りにおいての「最強の敵」は、
実はこのクリスマス商戦期の一大決戦エピソードで倒される敵キャラなのです。

そういうわけで、この一大決戦エピソードには今までで最強の敵がでてきます。
最強の敵ならば、その強さを示すためには戦隊側が今までにないような大ピンチに陥らねばならない。
そうなると1エピソードだけでは大ピンチ描写に説得力を持たせることは出来ないので、
だいたい2エピソードにまたがる前後篇構成となるのです。
その前篇にあたる今回のエピソードは、
その最強の敵によってゴーカイジャーが大ピンチに陥るところまでが描かれます。

その今回登場する最強の敵というのがダマラスです。
ということは、やはりダマラスは次回の後篇でゴーカイジャーの戦力総投入によって倒されて退場となるわけです。
特筆すべきことは、このダマラスは第1回から登場しているにもかかわらず、
ゴーカイジャーと顔を合わすのは今回初めてであり、そして次回には倒されて退場してしまうということです。
こういう扱いの敵キャラというのは、あまり記憶にありません。

強いて言えば、ラスボスにはこういう扱いの者がいます。
ただダマラスはラスボス型のキャラではないし、
そもそも序盤から登場しているラスボスの場合は、当然ながら戦隊側はその存在を知っており、
会っていなくても名前ぐらいは知っています。
ところがなんとダマラスの場合、第1話から登場しているにもかかわらず、
マーベラス達はダマラスという奴がザンギャック地球侵略軍の中にいるということすら知らなかったのです。

今回、元ザンギャック兵のジョーがたまたまダマラスの噂を聞いたことがあるので、
いきなり現れた謎の敵がダマラスという名前だということを知ることが出来ましたが、
ジョーがいなければ最後までマーベラス達はダマラスの名を知らなかった可能性すらあります。
これほど主役戦隊と縁の薄い敵幹部というのも前代未聞といえます。
いや、終盤に唐突に現れた新幹部ならばそういう立ち位置であっても不思議ではないのですが、
ダマラスは第1話から登場していて、ダマラスの方はやたらマーベラス一味については詳しかったりするのですから、
この非対称っぷりは、冷静に考えたらかなり異様です。

こういうダマラスの扱いが物足りないという人もいるでしょう。
もっと戦隊側と敵組織の幹部のライバル関係を盛り上げるような作品の方が好みだという人から見れば、
確かにこのダマラスの扱いは物足りないと思います。
いや、私も正直、正義と悪のライバル対決が好きなので、ダマラスの扱いは物足りませんでした。

ただ、それは単に好みの問題で、作品の評価とは関係の無い話です。
自分の好みとは違っても出来の良い作品というものはあります。
大事なことは、その作品が目指している形が明確かつ良質なものであり、
その目指す形が実現出来ているかどうかです。
そうして出来上がった物が自分の好みと会わなかったとしても、非難するにはあたらない。

例えば「ゴーオンジャー」と「シンケンジャー」は両方とも目指すところが全く違う作品だが、
共に良質な目標を実現した名作だと思います。
「ゴーオンジャー」においても、「シンケンジャー」においても、
自分の嗜好とは合わない描写は幾つかありましたが、
それがあるからといって、この2作品の評価は全く下がることはありません。
「ゴーカイジャー」も同様なのであり、このダマラスの扱いが自分の嗜好に合うかどうかは全く重要ではなく、
大事なのは、このダマラスの扱いがこの作品の目指す形に合致したものであるのかどうかです。

ここまで「ゴーカイジャー」という作品を観察してきた印象では、
あくまでこの作品の主要なセールスポイントは、
歴代戦隊への多段変身アクションと、
お尋ね者の宇宙海賊がヒーローになって地球を守るに至るまでの成長物語、
そこに歴代戦隊のレジェンドゲストが関与して歴代シリーズ作品との
クロスオーバーワールドが広がっていく壮大な世界観、
そして「宇宙最大のお宝」を巡る宝探しアドベンチャー、
まぁだいたいこんなところでしょう。

こうして見てみると、この作品においては、ザンギャックという敵組織はあまり重要な要素ではないように思えます。
当初はザンギャックも「宇宙最大のお宝」争奪戦に絡んでくるのかと思っていましたが、
そのようにはならず、単に「ゴーカイジャーの敵」という扱いに落ち着きつつあります。
ゴーカイジャーが地球を守るヒーローへと成長していく過程で、
当然「地球を侵略する敵」が必要だから、そのために配置された敵役という印象です。

かといって、決して記号的な描かれ方をしていないというのがザンギャックの特徴で、
かなりリアルに描かれています。
リアルといっても、現実にあんな化け物揃いの宇宙帝国が存在するわけがないので、
そういう意味では現実的ではないのですが、
見た目は化け物だが中身は妙に人間臭く、現実世界の人間の組織と同じような描かれ方をしているという点で、
リアルなのです。

つまり、破壊や殺戮のみを目的とするのではなく、
破壊や殺戮はあくまで征服のための1つの手段であり、軍事作戦はあくまで政治の一部である、
あくまで普通の軍事帝国なのです。
そもそも怪人が倒された後で巨大化するシリーズのお約束的展開にしても、
ザンギャックにおいてはこれは地球侵略軍の技官インサーンが発明した独自の技術であり、
地球侵略軍でしか使われていないローカルな技術に過ぎません。
その他の地域のザンギャック軍では行動隊長は巨大化して怪物になったりせず、
普通に戦艦や決戦機を操って戦う軍人なのです。
見た目が化け物っぽいだけで、決して本当に化け物なのではない。あくまで人間的なのです。

今回ダマラスは「宇宙最強の男」という触れこみで登場しますが、
それにしても、全宇宙を破壊し得る暗黒エネルギーを体内に持っているとか、
そういう化け物じみた意味での「宇宙最強」なのではなく、
あくまで等身大戦で武器を手にして戦う場合における「宇宙最強」なのであって、
「宇宙最強の武人」であるに過ぎない。

そんな程度でも「宇宙最強」を名乗れてしまう世界観なのです。
つまり「ゴーカイジャー」の物語世界というのは、圧倒的な化け物が存在しない世界なのです。
そこで展開されているのは、「海賊VS軍人」という案外ミリタリーな争いです。
考えてみれば、昔から物語世界では海賊の敵は海賊あるいは海軍だと相場が決まっていました。
この作品はその原則に忠実に作られているのです。
だからザンギャックはあくまで軍事組織であり、その成員は軍人であり、つまり極めて人間的なのです。
記号的な化け物ではない。単なる記号的な正体不明確なインベーダーではないのです。
それゆえ、ザンギャックにおいては各キャラがしっかり人物造形がされています。

そこで誤解が生じてしまうのです。
そこまで緻密に人間的に描いている以上、
きっとマーベラス一味との間で深い人間ドラマを展開するはずだと思ってしまうのです。
例えばバリゾーグなんかは絶対にそうなるはずだと目されていたキャラですが、そうはなりませんでした。

しかし、バリゾーグは確かにマーベラス一味との間で人間ドラマは描かれませんでしたが、
マーベラス一味と対比されるテーマを体現した存在として描かれてはいました。
バリゾーグというキャラが決して記号的悪役ではなく、緻密に人間的に描かれた目的は、
マーベラス一味と対比されるテーマを担わせるためであったと言っていいでしょう。

いや、普通はそのように主役と対比させたテーマを担わせたキャラは、
テーマを担わせた上で主役と深く絡めたドラマを作っていくものなのです。
例えば近年では「シンケンジャー」における腑破十臓というキャラは、
主人公の志葉丈瑠と対比されるテーマを担った上で、その丈瑠とやたら濃厚に絡んだドラマを展開しました。

ところがバリゾーグはマーベラス達と対比されるテーマを担うだけで、その先のドラマが描かれなかった。
それはバリゾーグだけではなく、ワルズ・ギルもそうであったし、今回のダマラスにしても同じです。
「ゴーカイジャー」におけるザンギャックの敵キャラは、
マーベラス達とのテーマの対立はしっかりと有るのに、
そこから展開する、マーベラス達との深いドラマが無いのです。

丈瑠と十臓のようなライバル対決のドラマが好きな人から見れば、
確かにこういうザンギャックのキャラ達は物足りないかもしれない。
しかし、そもそも「ゴーカイジャー」と「シンケンジャー」は目指す形やセールスポイントが全く違う作品ですから、
同じというわけにはいかない。

「シンケンジャー」のドラマの主眼は侍と外道衆との戦いを深く心理劇的に描写していくことでしたから、
丈瑠と十臓のドラマが深く描かれることに価値は有りました。
しかし「ゴーカイジャー」のドラマの主眼はマーベラス一味とザンギャックの戦いではなく、
マーベラス一味が精神的にヒーローへと成長していく話、そして「宇宙最大のお宝」に関するミステリーですから、
マーベラス達とザンギャック側のキャラとの人間関係を深く描く必要は無く、そこに割ける尺がそもそも無い。

個々のエピソードではそういう尺も作れる場合もあるかもしれないが、
ちゃんと人間関係のドラマを描写しようとするなら、年間通して一定の尺をそこに割くプランが無ければいけない。
そこまでの尺をマーベラス達とザンギャック側キャラとの人間ドラマに割くことは出来ないし、
その優先度も低いというのが結論だったのでしょう。
むしろ、優先度はバスコの方が高いはずです。

また、「ゴーカイジャー」という作品はそもそもドラマ重視の作風ではない。
いや、ドラマ的には深いし充実もしているのですが、
例えば「シンケンジャー」のように大河ドラマ的な物語そのものの醍醐味を追求したような作り方ではないのです。
それは手を抜いているというのではなく、「ゴーカイジャー」という作品特有の条件に従った結果だといえます。

特有の条件とは、レジェンド回というものが2回に1回ぐらいの頻度で存在して、
そこで毎回、それぞれが異なったテーマを担ったレジェンドゲストが登場するということです。
このレジェンド回では、マーベラス達とレジェンドゲスト達の絡むドラマはあまり深くは描かれません。
ドラマを深く描いて変に因縁づけたところで、
レジェンドゲスト達は1回限りしか登場しないので意味が無いし、むしろ変です。
そして、レジェンド回ではあくまでマーベラス達がメイン扱いとなり、レジェンドゲストはあくまでゲストです。
これはマーベラス達がレジェンドゲストに食われてしまわないように配慮したためです。

それらの結果、個々のレジェンド回というのは、
レジェンドゲストが担うテーマを反映したマーベラス一味を主役としたドラマが描かれることになりました。
そうなると、レジェンド回のたびにテーマの異なったドラマがオムニバス形式で描かれるようになっていき、
そういうものが2回に1回ぐらいの頻度で挿入される以上、
物語全体も1つのテーマに絞り込んで一貫したドラマを描くというような作り方は出来ません。

唯一、一貫して描くことが可能なのは、
全てのエピソードにおいてマーベラス一味をメインに据えたドラマを描き、
マーベラス一味が毎回異なるテーマを消化することによって、
ヒーローとして精神的に成長していく物語ということになります。
レジェンド回という特殊な形式のエピソードを抱えている以上、
「ゴーカイジャー」という作品のドラマはそのような作り方にならざるを得ない。

となると、メインであるマーベラス一味以外の登場キャラは皆、
レジェンドゲスト以外も、レジェンドゲストと同様に、
マーベラス一味と心理的に深く絡むドラマを見せるための存在ではなく、
マーベラス一味の成長物語に提供するテーマを担って登場する存在となるのです。

ザンギャックもその例外ではなく、
ザンギャックのキャラはしっかりと人物造形を施されることによって
マーベラス達と対立するテーマを担って登場するが、
ザンギャックのキャラとマーベラス達の人間ドラマは深くは描かれず、
あくまで描かれるのはそのザンギャックのキャラの提示したテーマをお題とした
マーベラス一味のヒーローとしての成長物語なのです。

ヒーローとライバルキャラの火花散るようなライバル対決を楽しみたいという人には物足りないかもしれないが、
「ゴーカイジャー」という作品はあくまで基本はそういうものだと思って楽しむしかないのであって、
その目指す方向性においては素晴らしい完成度の作品だといえます。

ただ、物語全体として、最後の最後までそうしたテーマ重視のオムニバス風ドラマのままで通して、
それで物語がしっかり完結するとは制作陣も思ってはいないでしょう。
だから、おそらく年明けからのクライマックス篇だけは物語の趣が変わり、
テーマが一貫した大河ドラマ風の展開となることが予想され、
そこでマーベラス一味としっかり絡ませて人間ドラマを描くために温存されているサブキャラが
バスコとアカレッドなのでしょう。
この2人は、クライマックス篇で有効に使うために、
あえてそれ以前のオムニバス風の展開の中であまり登場させずに手垢をつけさせないようにしていたフシがあります。

一方、ザンギャックの幹部連中も温存はされていましたが、
それはマーベラス一味と戦わせる機会を少なくしていたという意味の温存であり、
単に強さを損なわないようにしていただけです。
毎回登場はしていて、マーベラス一味との対立するテーマを提示する役割だけはしっかり担わされていました。
そのくせ戦わないのですから、まさにテーマ提示だけの役割を果たす、
オムニバス風ドラマ向けのキャラだったと言っていいでしょう。

何故なら、マーベラス一味と前線でガンガン戦えば、
それに伴ってマーベラス達との間の人間ドラマが生じるからです。
それを回避していたというのは、強さの温存という意味もあったのでしょうが、
あえて人間ドラマを盛り上げることを避けて、
テーマの提示役に留めておかなければいけないという
この作品特有の思考によるものであったのではないかと思います。

その点、バスコの場合は登場は少ない割に、登場するたびにマーベラス達と激しいバトルを繰り広げており、
しっかり大河ドラマ的展開の中でのライバルキャラの役目を果たしつつ、
クライマックスに向けて温存されています。
そもそもバスコが担うテーマというのが現時点では明確になっていないという点が、
バスコというキャラが最も温存されている由縁だといえます。
つまり、バスコだけが登場は少ないながらも、テーマよりもドラマ優先の敵キャラなのです。

そして、あくまでザンンギャックはテーマを担う役目の敵キャラであり、
敵キャラである以上、このマーベラス一味を主役としたヒーローの成長物語においては、
マーベラス一味というヒーローに対立するテーマを担う存在ということになります。

マーベラス一味の成長物語は、人間ドラマとしてリアルに緻密に描かれていますから、
その対立テーマを提示するためにザンギャック側の主要キャラも人間的に緻密にリアルに描かれているのです。
その結果、ザンギャックはリアルな軍事組織、軍事帝国として描写されています。
つまり、ザンギャックというのは「軍事力を行使して宇宙を征服した帝国」であるということが、
その担っているテーマと深い関係があるということになります。

マーベラス一味というのは生粋の地球人ではないので、
彼らの地球防衛の戦いは、「愛国者」的なものにはなりません。
彼らがザンギャックから地球を守る動機は、地球を守ることを通して夢や自由を尊重する精神を守り抜こうという、
一種の「解放者」的なものとなります。
となると、その対立者であるザンギャックは「愛国者」に対応する「侵略者」ではなく、
むしろ「解放者」に対応する「抑圧者」の相貌を帯びることとなります。
つまり、「暴力による抑圧」というのがザンギャックの担うテーマなのだといえます。

滅びた星の元王女と滅びた星の民である海賊たちの、
宇宙に散らばった弱き人々の希望になりたいという気高い精神によって結ばれた絆が、
ザンギャックの暴力と恐怖による宇宙統治手法の象徴的存在である
「惑星の破壊神」と呼ばれた最強の破壊工作員ともいえるザツリグを打ち破ったことによって、
マーベラス達の理念の方がザンギャックの理念よりも人々を統治する理念として正統性があることを示したのが
前回、第41話のエピソードだったといえます。

つまり言い換えれば、ザンギャックの宇宙統治の不当性を主張する存在としての
マーベラス一味の正統性を示したエピソードということになり、
簡潔に言えば、マーベラス一味がザンギャック帝国を倒しても、
それは正当なことなのだということが示されたのだといえます。

皇帝アクドス・ギルが直々に地球に乗り込んで来て、
ザンギャックの理念とマーベラス一味の理念が真っ向勝負するというのが
第41話から第43話までのテーマであろうと推測されますが、
第41話でマーベラス達はザンギャック帝国の宇宙支配の正統性を否定したことになります。
では、続く第42話、第43話の前後篇でマーベラス一味とザンギャックとの間で争点となる
理念、テーマはいったい何なのか?

そのカギは今回の前後篇でマーベラス一味に倒されることになる敵キャラである
ダマラスというキャラの担わされたテーマが何であるのかが重要な手掛かりとなるでしょう。
そのダマラスの担うテーマを考察するにあたって、
ダマラスというキャラの極めて特殊な立ち位置がポイントとなります。

それがつまり、先述したように、
ダマラスが一見すると物足りないとも思えるほど、マーベラス達と縁が薄いことです。
第1話から大部分のエピソードに登場しているのに、1度も前線に出てマーベラス達と顔を合わせたこともなく、
ダマラスはマーベラス一味のことはそれなりに調べたり戦いをモニターして知っているにもかかわらず、
マーベラス一味はダマラスの存在さえ知らないという、一種、敵幹部キャラとしては前代未聞の扱いなのです。

ダマラスが今まで前線に出てマーベラス達と顔を合わせる機会が無かった劇中における理由は、
ワルズ・ギルが誤解に基づいた思い込みでダマラスが自分の手柄を奪おうとしていると疑心暗鬼になって、
ダマラスに手柄を奪われまいとして、ダマラスの出陣を許可しなかったからです。

確かにその理屈でダマラスがマーベラス達と会っていなかったことの説明はつく。
しかし、この設定自体、第37話で唐突に出てきた設定であり、
しかも第37話と第38話のエピソードは、この設定が無くても成立はしたはずです。
単にワルズ・ギルがダマラスのことを誤解して警戒していたというだけでも第37〜38話のエピソードは成立する。

何度かダマラスが出陣していても問題は無かったはずです。
むしろ、何度かダマラスの出陣があった方が、
ワルズ・ギルがダマラスに猜疑心を向ける様子を前もって具体的に描写出来たと思います。
また、ダマラスが出陣を許可されていなかったとしても、
ダマラスがマーベラス達と顔を合わせる機会は無かったわけではない。
作劇上、そんな機会は作ろうと思えばいくらでも作れたはずです。

だから、どうも本当は制作サイドの意向としてダマラスとマーベラス達を会わせたくないというのがあって、
後付けで第37話でワルズ・ギルが出陣を禁じていたという設定
(具体的に言及されたのは第41話のインサーンの言葉が初)が作られたのではないかと思えるのです。

いや、会わせたくないというか、
単に縁の薄い敵キャラとしてダマラスを造形したかったわけではないと思います。
それならばダマラスもマーベラス一味に対して無関心なキャラとするはずだからです。
ダマラスはむしろマーベラス一味に対して、かなり興味を持っているし、
ワルズ・ギルの死以降は、強烈な恨みを向けています。
普通はこういうキャラはマーベラス一味と深く絡ませて使うのが常道です。

わざわざ恨み全開キャラにしておいて、あまり恨みの対象であるマーベラス達と絡ませないというのも不自然です。
恨み全開キャラになる予定のキャラなのに、
前もってマーベラス達との間に因縁を作っておかなかったのも不自然です。

というか、今回のダマラスの描写を見ても、ワルズ・ギルに関する言及が少ないのも意外です。
ちなみにアクドス・ギルももはや息子のワルズ・ギルの話題にはあまり触れていません。
どうもダマラスやアクドス・ギルのこだわっているのは、ワルズ・ギル個人の死ではないようです。
アクドス・ギルの場合は帝国の威信なのでしょうが、ダマラスはまたそれとは違うようです。

ただとにかくダマラスの場合、恨みといっても純粋にワルズ・ギルの仇を討ちたいという動機ではないようで、
恨み全開キャラといっても、これ以前にマーベラス達と絡ませる必要があまり無かったような気がします。
つまり、どうも恨みのポイントがズレているというか、マーベラス達とすれ違うような印象なのです。
ダマラスはマーベラス達に向けて一方通行にカッカしていて、
マーベラス達はダマラスの存在すら知らないという、よく考えると少し滑稽な非対称構図は、
このダマラスとマーベラス達の、どうしてもすれ違う、奇妙な価値観のズレを象徴しているもののようです。

単純に考えれば、制作サイドがダマラスとマーベラス達を会わせないようにしていた理由は、
両者を戦わせたくなかったからだということはすぐに想像出来ます。
戦えば、マーベラス達が主役のヒーロードラマである以上、ダマラスの完勝というわけにはいかない。
たとえ勝負には勝っても上手く逃げられたりして、
次第に「宇宙最強の男」という称号は怪しいものとなっていきます。

というか、ダマラスが「宇宙最強の男」だという称号は今回になって唐突に出てきたのですが、
もしこれまでにダマラスが前線に出て何度か醜態を晒していたら、
とてもそんな称号は恥ずかしくて出してくることは出来なかったでしょう。
つまり、これまでダマラスを前線に出してこなかったことと、
今回「宇宙最強の男」という称号が出てきたことは連動しているといえます。
ダマラスを「宇宙最強の男」という称号をもったキャラとして戦わせるために、
これまで前線に出すことを控えていたのです。

何故、「宇宙最強の男」という称号を最後の最後に突然出してきたのかというと、
もし最初から「宇宙最強の男」という触れこみであったならば、
前線に出さないのが不自然に感じられてしまうし、
かといって前線に出せば醜態を晒して「宇宙最強の男」としての価値が損なわれてしまうから、
どっちにしても「宇宙最強の男」という称号を最初から出してもメリットは無いからです。

レギュラー敵キャラで「宇宙最強の男」という称号はそれぐらい価値を落とさず使うのが難しい称号です。
結局、今回のダマラスのように、ずっと上手い理由をつけて前線に出さないようにしておいて、
いざ前線に出す時に「宇宙最強の男」という称号が登場するというのがベターということになります。

しかし、そうしてもなお、今回の「宇宙最強の男」という称号には唐突感を覚えます。
それがどうしてなのか、よくよく考えてみると、
タイミング的に唐突であるとか、前フリ不足から来る唐突感なのではなく、
そもそも「宇宙最強の男」という称号自体に、ある種の唐突感があるからなのです。

確かに宇宙最強の武人の名に恥じないだけの強さは、今回のダマラスはしっかり発揮しています。
間違いなく、これまで出てきた敵の中では最強でしょう。
今回のエピソード、その強さは見事に描写されています。
ダマラスの強さは確かに本物です。
しかし、それでもなお、そこに唐突感や、空虚な感じを覚えるのは、
強いからといって、「宇宙最強の男」という称号を送ってしまったり、名乗ってしまうセンスゆえです。
そこにある種の感覚のズレ、傲慢さを感じるのです。

あるいは本当にダマラスは宇宙で一番強い戦士なのかもしれない。
だからといって、それは本当に「宇宙最強の男」なのでしょうか?
「強い」ということの本質は単に戦闘力が優秀であること、それだけなのでしょうか?
宇宙は広く神秘に満ちているというのに、単に戦いの場で一番強いというだけで、
簡単に「宇宙最強の男」などと名乗ってよいものなのでしょうか?

つまり、「宇宙最強の男」という称号そのものに、ある種のいかがわしさ、まやかしの印象があるのです。
ダマラスがこれまで登場した敵の中で最強であるのは確かなのですが、
「宇宙最強の男」という称号がつくことによって、その強さに何となくいかがわしさが付加されてしまうのです。
それを敏感に感じ取れる人は、今回のダマラスの強さを見ても、何となく大したことがないように思えて、
一種、拍子抜けしてしまい、あまりバトル的に盛り上がってこないように思い、ガッカリしてしまう。
それは一大決戦を盛り上げようとする今回のエピソード的には失敗描写のようにも思えます。

しかし、そうではなく、それこそが制作サイドの意図通りなのでしょう。
つまり、これまでダマラスをマーベラス達に会わせなかったのは、
ダマラスに虚飾に満ちた「宇宙最強の男」という称号を付加させたままマーベラス達の前に登場させて
決戦を戦わせるためであり、
マーベラス達がダマラスの存在すら今まで知らなかったのは、
マーベラス達をその虚飾に満ちた価値観から遠ざけておくためだったのです。

要するに、ダマラスの信奉する「強さ」は偽物であり、
マーベラス達の持つ「強さ」こそが実は本物なのであり、
その価値観は交わることが無いほどレベルの違うものであるということを象徴していたのが、
ダマラスばかりが熱くなり、マーベラス達はダマラスのことも「宇宙最強の男」の称号も知らず、
興味も無かったという非対称で一方通行な描写なのです。

ただ、ダマラスの「強さ」が偽物だといっても、
ホントにダマラスが口先ばっかりの弱っちい奴だったら、ただのお笑いエピソードになってしまいます。
そうではなく、確かにマーベラス達を圧倒するほどの強さを持っていながら、
その強さには何か決定的に大事なものが欠落しているということなのでしょう。

今回の前篇では、ダマラスの圧倒的な強さばかりが強調されて終わっていますが、
しかし「宇宙最大の男」という空虚な称号が登場したことで、
ダマラスの強さが、強さに溺れた傲慢の強さであり、
それは真の「強さ」ではないということが暗示されているといえます。
そう考えて見てみると、今回のエピソードでもダマラスの自分の「強さ」への過信や傲慢は
いくらか描写されています。
ワルズ・ギルの仇討ちにこだわるのも、ワルズ・ギルを慕ってのことではなく、
結局は自分の武人としてのプライドを満足させるための行動であることが分かります。

つまり、ダマラスは徹底的な「強さ」の信奉者であり、
ザンギャック最強の武人であることも合わせて考えると、
まさにザンギャック帝国の「強さ」の象徴のようなキャラなのです。
ザンギャック帝国自体が暴力によって宇宙を支配する「強さ」を絶対的価値観として信奉する帝国であり、
その中枢にあって「強さ」を徹底的に信奉する最強の戦士ダマラスは、
まさにザンギャック帝国の「強さ」の象徴です。

すなわち、ダマラスの「強さ」こそがザンギャックの「強さ」そのものなのであり、
ダマラスの「強さ」が大事なものが欠落した偽物だということになれば、
ザンギャック帝国の「強さ」も同様に偽物なのだということが証明されるのです。

ただ、実際にはダマラスもザンギャック帝国も強い。
だからこそ、彼らは宇宙を制覇してきたのです。
だから、実は彼らの強さが偽物だという真実を浮き彫りにするためには、
彼らの偽物の「強さ」を超える本物の「強さ」を見せつけて、その「強さ」でダマラスを倒してやればいい。
そうすれば、その本物の「強さ」の前ではザンギャック帝国の「強さ」は否定されることになる。

そしてもちろん、その本物の「強さ」を備えているのはマーベラス一味ということになる。
今回の前篇ではマーベラス一味はダマラスに完敗してしまうが、
この一大決戦の前後篇のテーマは、きっとダマラスの「宇宙最強の男」などという虚飾の称号を打ち破る
本物の「強さ」をマーベラス一味が発揮して、ダマラスを葬ると共に
ザンギャック帝国の「強さ」が実は偽物に過ぎなかったという真実を白日の下に晒すことであるのは間違いない。

ここにきて「宇宙最強の男」という虚飾の称号が登場したこと、
そして、その称号を帯びたダマラスというキャラに対するマーベラス一味の異常なまでの今までの関係の薄さ、
これらの意味を読み解くと、今回の前後篇のテーマはそのようであるとしか考えられません。

アクドス・ギルが登場しての第41話、第42話、第43話は
マーベラス一味の理念とザンギャック帝国の理念が真っ向から激突するというテーマ重視のエピソードであり、
第41話でマーベラス一味はザンギャック帝国の宇宙支配の正当性を否定する価値観を提示して、
勝負に勝つことによってマーベラス一味の価値観がザンギャック帝国の価値観を凌駕したことを象徴的に示し、
ザンギャック帝国の宇宙支配を不当なものとし、それを打倒する正当性を得たといえます。

しかし、いくらザンギャック帝国の宇宙支配が不当なものだと言ったところで、
実際にザンギャック帝国は現在、宇宙を支配している。
不当なはずのザンギャックが何故、宇宙を制覇出来たのかというと、それは、その「強さ」ゆえです。
強いから、どんなに不当でも無理を押し通して道理を引っ込めてしまうことが出来る。
宇宙の多くの人々はザンギャックの宇宙支配が不当だと気付いても、
それでもやはりザンギャックが強いから逆らうのは得策ではないと思い、黙り込んでしまう。

ならば、やはりザンギャックを倒すためには、
「実はザンギャックは強くない」という認識を宇宙に広める必要がある。
第41話でマーベラス一味はザンギャックを倒す正当性を得たが、
それだけでは、まだザンギャック帝国の理念を全て打ち破ったことにはなっていません。
ザンギャック帝国の「強さ」そのものがザンギャック帝国の宇宙支配を維持している1つの理念になっているのです。

だから、第42話、第43話の前後篇では、
マーベラス一味は本物の「強さ」を示してダマラスの偽物の「強さ」、
すなわちザンギャックの「強さ」の象徴を打ち破ることによって、
ザンギャック帝国の「強さ」が実は偽物だということを白日の下に晒す。
それがこの前後篇のテーマであるに違いありません。

だから、今回の前後篇の本質的テーマは、ダマラスとマーベラス一味の戦いなのではなく、
マーベラス一味の持つ「本物の強さ」が何であるのかということになります。
そのマーベラス一味において、今回、その「本物の強さ」を担うキャラは、
前篇を見る限り、ハカセであるようです。

バトルやドラマを徹底的に熱く盛り上げたいならば、
「強さ」が服を着て歩いているようなキャラであるマーベラスやジョーをメインに据えて、
ダマラスとガチンコ対決させるのがベストなのでしょうけれど、
そういうのは、クライマックス篇においてバスコあたりとやることになるでしょうから、
ここで同じようなことをやっても仕方がない。
今回はバトルやドラマを熱く盛り上げるよりも、テーマを打ち出すことを重視するべき局面ですから、
そういうエピソードであることを前提に楽しむのが吉です。
ライバル対決の檄熱のバトルを勝手に期待して、それが得られないからといって文句を言っても仕方ありません。

そして、そういうテーマ重視のエピソードにおいては、ダマラスに対応させるのはハカセがベストチョイスです。
何故なら、ハカセはマーベラス一味で最弱の男ですから、
そういうキャラが「宇宙最強の男」であるダマラスを破る場合にこそ、
強さにこだわり信奉する者の持つ傲慢な「強さ」を超える「本物の強さ」が何であるのか、
鮮明に浮き彫りになるからです。

ところが、そのはずであるのに、今回の前篇におけるハカセは、
「伝説の勇者」という、ダマラスの「宇宙最強の男」の胡散臭さを遥かに凌駕する
トンデモない胡散臭い虚飾の称号を付加されて登場するのですから面白い。
この「ハカセが実は伝説の勇者であった」という唐突に出てきた事実(?)は
今回の劇中描写で明らかに嘘くさいことが暗示されていますが、
果たしてこれが次回の後篇でどのように落着していくのか、予測不能です。

ただ、今回の前篇におけるハカセの描写で重要なのは、この胡散臭いハカセ勇者説の方ではなく、
勇者説よりはかなり地味ですが、今回初めて明らかにされた、ハカセがマーベラス一味に加入した顛末です。
つまり、今回の前後篇は「ハカセ過去篇」になっており、
これでクライマックス篇に入る前にマーベラス一味の全員の一味への加入逸話が描かれたことになります。

ただ、これまでに描かれたジョー、鎧、ルカ、アイムの加入時のドラマがそれなりに皆、
シリアスでありドラマチックであったのに対して、
今回描かれたハカセの加入時のドラマは地味でコミカル、悪く言えば緊張感が無く非常にチープな印象のものでした。
まぁ、いかにもハカセらしいといえばハカセらしいのですが、
今回は前後篇ですから、今回の前篇の加入話の続きがまだ後篇で描かれるのだろうと思われ、
そこでドラマチックは展開も期待出来るかもしれません。

ただ、実は今回の前篇で描かれた加入話だけでも、ハカセは十分にカッコいいのです。
そのカッコよさが分かりにくいのが、いかにもハカセらしいのですが、
極めて等身大で視聴者に親近感の湧くタイプのカッコよさだという点も、またいかにもハカセらしい。
おそらく、この分かりにくいハカセのカッコよさが、
ハカセの「本物の強さ」のヒントになるのだろうということは想像がつきます。

いや、というより、ここまでのいわゆる「過去篇」、つまりメンバーの加入逸話を中心としたエピソードは、
前回考察したように、マーベラス一味の絆を描くことが主眼ですから、
ここでハカセの加入話におけるハカセのカッコよさから導き出される「本物の強さ」というのは、
ハカセ個人の「本物の強さ」ではなく、
マーベラス一味の絆の生み出す「本物の強さ」ということになるのでしょう。
それがどういう形の強さであるのかについては、
次回の後篇で、ダマラスの強さと対比してハッキリと描かれていくのだと思われます。

今回はその他は、結構バトルシーンが多く、アクション的に充実しており、
更にダマラスとバスコの関係についても興味深い展開がありますが、
これについては次回の後篇で一波乱ありそうな様子ですので、次回を楽しみにしたいところです。
にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
にほんブログ村 にほんブログ村 テレビブログ スーパー戦隊へ
にほんブログ村
posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 19:14 | Comment(0) | 第42話「宇宙最強の男」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月21日

第42話「宇宙最強の男」感想その2

では本編ですが、今回、冒頭からいきなりバトルシーンで始まります。
前後篇の前篇ではよくあるパターンで、前篇がピンチ場面で終わる予定の場合、
最後の方の巨大戦が出来なくて大事な巨大ロボ玩具の販促が出来ないので、
今回のストーリーが始まってしまう前に何だかよく分からないけど最初から戦ってるという設定で
巨大戦をやってしまうというやつです。
ただ、そういう場合、ホントに取ってつけたように巨大戦だけやるのが通例なのですが、
今回は巨大戦は鎧が豪獣レックスで担当して、同時進行でマーベラス達5人は等身大戦もやっています。
これは、巨大戦のノルマはこなしながら、同時に今回のストーリーも巧妙に始めているというわけです。

いきなりドリルのどアップから始まる本編、
ドリルは豪獣レックスの尻尾で、
「負けてたまるかぁっ!!」と豪獣レックスのコクピットで吼えるゴーカイシルバーに変身した鎧、
戦う相手は巨大ドゴーミン2人です。
ドゴーミンということは敵はザンギャック、しかも皇帝親衛隊です。
インサーンの巨大化光線で巨大化しているようで、
ドゴーミンは普通の行動隊長クラスの怪人よりも強く、しかもそれが2人ですから、
豪獣レックスも巨大スゴーミンを相手にしている時の楽勝ムードとは違い、結構苦戦しているようです。

一方、そのすぐ近くの地上では、等身大のドゴーミン2人に率いられたゴーミン部隊と
マーベラス達5人がゴーカイジャーに変身して戦っています。
前回、皇帝親衛隊の最強格の隊員であるザツリグを倒されたはずですが、
ザンギャックは懲りずにまた皇帝親衛隊を繰り出してマーベラス達を倒しにかかってきたようです。
地球に乗り込んできた皇帝アクドス・ギルはまだマーベラス達を倒してワルズ・ギルの仇を討ち、
帝国の威信を回復させることを諦めてはいないようです。
まぁ1回負けたぐらいで諦めてくれると思うのは、いくら何でも甘い見方だといえます。
宇宙を制覇した皇帝がわざわざ辺境の地球までやって来て、1回の失敗ですぐ諦めるなんて、
そんなヤワなはずはない。

しかし、マーベラス一味で最もヤワな男であるハカセは、
皇帝親衛隊の最強格の怪人を倒したのだから、
これでもうザンギャックもウンザリして地球を攻撃するのを諦めてくれるのではないかと
結構本気で期待していたようです。
それなのに、またザンギャックが出たので、ハカセはいい加減ウンザリした様子で、
戦いながら「もう!いい加減、暴れ回るの止めてくれないかなぁ!?」とブツブツ文句を言います。

それを聞きつけた隣で戦うルカが
「あいつらが止めるわけないでしょ!くだらないこと言ってないで!」と、ハカセをからかうようにして、
文句ばかり言ってないで真面目に戦うように叱ります。
ハカセは「くだらないことって・・・」と不満そうです。
ハカセはルカのように戦いそのものが楽しくて戦っているわけではありません。
いつも戦い方はやけに面白い戦い方になっていますが、必死に戦った結果面白い形になっているだけで、
ハカセ自身はそんなに面白がっているわけではない。本当は戦いは嫌いなのです。

この物語の序盤でも、基本的にはハカセはザンギャックとの戦いを避けようとしていました。
しかし、ハカセもザンギャックが地球の人々の自由を暴力で無理やり踏み躙ろうとしているのを見て怒りを感じ、
戦いはじめ、今ではザンギャックと戦って地球を守ることで人々の自由や夢を守ることが
ハカセにとっても大切な夢となっています。
だからザンギャックが地球で暴れる限りはハカセはもう決して逃げないで戦い続けます。
しかし本当は心底戦いが嫌いなのです。
別に高尚な平和主義者というわけではなく、単に危険なことや荒々しいことが嫌いで、
気楽に生きたい小市民的な男なのです。

マーベラスやジョー、ルカなどはある種、英雄的な気質を持っており、
大きな夢を抱いて、それに向かって一生戦い抜くというのが似合うタイプです。
そうした大きな夢を受け止める器を持った人物である彼らは、自然に戦いの中で喜びを感じることが出来ますが、
ハカセはそんな英雄的なタイプではなく、日々のささやかな暮らしに喜びを見出す小市民タイプですから、
本当は戦いは嫌なのです。

夢や自由を得るためには戦わなければいけないことは分かっているから戦います。
でも決して戦いが好きなわけではない。
それでも、ザンギャックから地球を守って戦うと決めた以上は、それはとにかくやり遂げないといけない。
だからハカセは早くザンギャックが撤退してくれれば、
自分はひとまず嫌いな戦いをしなくて済むと期待しているのです。

つまりハカセがザンギャックの撤退を望むのは地球のためを想ってなのではなく、
どちらかというと、自分のために望んでいることなのです。
しかし、それはハカセの大真面目で切実な願いなのであって、
それをくだらないなどと一蹴されてしまって、
どうせ戦うのが好きなルカには自分の気持ちは分からないのだと思い、ハカセは不満です。

しかし、そんなに戦うのが嫌ならばやめればいいのに、
どんなに嫌であっても、一旦やると決めたことはやり通すという、
妙に律儀なところがハカセの持ち味です。
第32話でもその律儀さで根気強く粘り抜いてゴーカイガレオンバスターを完成させました。

しかし、とにかくハカセは戦いが嫌いで、
そんな自分がマーベラス達に比べて戦いには向いていないと、多少卑屈な想いはあります。
そういうハカセはゴーミン達が自分の周りに群がってくると、
自分がこの中では一番弱いと知ってゴーミン達が狙って来ているような気がしてきます。

実際は他の4人に対してもほぼ均等にゴーミン達は分散して攻撃をしており、
ハカセだけ集中攻撃しているということはないのですが、
ハカセはちょっと被害妄想にかられてゴーミン達が自分を弱いと思ってバカにしているのだと思い、
「もう!なんで僕にばっかり来るんだよ!?」と腹を立てつつ、
ゴーミン達に取り囲まれないように、傍に立てかけてあったハシゴを昇ります。

しかしハシゴの立てかけてある上の方からもゴーミンが現れ、ハカセに向かって銃撃してきて、
さらにハシゴを外して倒してしまいます。
ハカセは「おわあああ!?」と叫んでハシゴごと落下し、近くにあった段ボール箱の山に突っ込み、
首と両手両脚を段ボール箱から突き出した、段ボール怪人というか、
古いロボットの玩具みたいな姿になってゴーミンと戦い続けます。

そのハカセの不格好な姿を見たジョーは呆れて、
ゴーミン達と戦いながら「おいハカセ!いつまで経っても、戦い方が愉快なままだな!」とからかいます。
ハカセは段ボール箱から脱出しながら「愉快って・・・!」とムッとします。
懸命に戦っているのに、お笑い芸人扱いされたようで不愉快に思ったのでした。
しかしルカも「今欲しいのは、愉快より豪快なんだけど!」と、なんだか上手いこと言って、
ハカセをギャグのネタにしてしまいます。

一方、アイムは真面目に戦い続けていましたが、知らない間にハカセとの間の距離が縮まっていて、
ハカセもアイムも互いに気付かないまま、
アイムがゴーカイサーベルを振り上げた手の握り拳がハカセの頬を痛撃してしまい、
ハカセは「痛たっ!?」とよろめき、大の字に倒れてしまいます。
アイムは「ああ!?申し訳ありません!」と慌てて謝りますが、
戦場の真ん中で大の字になってしまったハカセの醜態に思わず敵のゴーミン達まで爆笑し、
ハカセを指さして大ウケとなります。

なんだか今回は妙に和やかムードの戦闘シーンですが、
ハカセ中心に描くと戦闘シーンもこんなノリになってしまうのです。
しかし笑われたハカセは、またバカにされたと思い、更に腹を立てて
「もう!みんなで僕をバカにしてぇ!」と立ち上がり、
ちょっとカッコいいところを見せてやろうと張り切って「見てろよぉ!」と駆け出しますが、
すぐに足がもつれて前につんのめり、駆け出した勢いのまま
「わああああ!?」と大きく身体が前に飛び上がってしまいます。
そしてハカセを笑っていたゴーミン達の群れにダイブして、
ゴーミン達はハカセの下で将棋倒しになって、やっつけられてしまいました。

ハカセはせっかくカッコよく戦おうとしたのがドジのためにまた失敗してしまったと思って、
慌てて下敷きにしたゴーミン達を見ますが、
「ん?・・・ん?・・・あれ?」と、何時の間にか自分がまた奇想天外なやり方で
ゴーミン達を片付けてしまったことに気付き、まぁこれはこれで仕方ないと納得するのでした。

さて、まだ戦いの途中ですが、今回はここでOPテーマが始まります。
前回は通常回でしたが、今回もOPナレーションは通常回バージョンで、
マーベラス一味とザンギャック皇帝親衛隊との激突篇は、レジェンドゲスト抜きのガチンコ勝負が続きます。

そしてCM明け、今回のサブタイトル「宇宙最強の男」というのが出ます。
これは通常回ですからフォーマットも何も関係無く、
今回の内容そのまんまのストレートなサブタイトルです。
すなわち、「宇宙最強の男」が今回登場するわけですが、
それが誰なのか、この段階ではまだよく分かりません。

さて本編が再開し、冒頭の戦闘シーンの続きです。
まず巨大戦の方は、鎧が豪獣レックスを豪獣神にチェンジし、巨大ドゴーミン2人に対抗します。
豪獣レックスで倒しきることが出来ず、豪獣神にチェンジしてみることになったわけですから、
やはり巨大ドゴーミンは手強いのです。

一方、等身大戦の方ではマーベラスが赤いレンジャーキーを出して「こいつで決めるか!」と合図して、
5人で「豪快チェンジ!!」と変身したのは、ゲキレンジャーでした。
しかし、いつもの5人でのゲキレンジャーへの多段変身とは様子が違います。

ゲキレンジャーは5人戦隊で、
普段はマーベラスがゲキレッド、ジョーがゲキブルー、ルカがゲキイエロー、
ハカセがゲキバイオレット、アイムがゲキチョッパーに変身します。
しかし今回はマーベラス、ジョー、ルカの3人はいつも通りですが、
ハカセは黒獅子リオ、アイムはメレ獣人態に変身したのです。

リオとメレはマーベラス達が最後にバスコから奪ったレンジャーキーの、
いわゆる番外戦士の10人の中の2人で、
本来は追加戦士のゲキバイオレットやゲキチョッパーよりも更に正規戦士に遠い存在のはずなのですが、
「ゲキレンジャー」という作品においては、実は解釈次第では、初期赤青黄3人組に、
このリオとメレを合わせて初期5人メンバーという考え方もあるのです。

もともと「ゲキレンジャー」という作品ではOPテーマの戦隊メンバー紹介場面に
最初からリオとメレもジャン、レツ、ランの3人と同格扱いで登場したりしていて、
「正義の戦隊と悪の戦隊が共に切磋琢磨する物語」という構図でした。
そもそも配色を見ても、ゲキレンジャーの3人が赤青黄で、リオが黒、メレが緑ですから、
この5人で戦隊メンバーの定番カラーを占めています。
おかげで後で登場する追加戦士が紫と白という、戦隊カラーとしては非定番カラーとなっており、
色だけで見れば、リオとメレを合わせた初期5人が正規メンバーで、
バイオレットとチョッパーが番外戦士のように見えます。
だから、解釈次第では今回のリオとメレが初期3人と並ぶゲキレンジャーへの多段変身もアリなのです。

ただ、その場合、配色的には緑色戦士に相当するメレへの変身者はハカセであり、
「ゴーオンジャー」の例などを見ると、黒色戦士に相当するリオへの変身者はアイムでなければいけないはずです。
しかし、リオとメレの場合、戦隊の戦士風のフォルムではなく、
完全にそれぞれが男型怪人、女型怪人の姿をしているので、
男女逆転バージョンのスーツを作ることが出来なかったのだと思われます。
それで、リオにはハカセが、メレにはアイムが変身したのでしょう。

こうして変則的ゲキレンジャーに変身した5人とゴーミン軍団との乱戦となりますが、
ハカセの変身したリオの違和感が凄いです。
リオといえばクールでストイックで、覇王の風格で戦う戦士です。
もともとのキャライメージが「北斗の拳」のラオウだったというのですから、
ハカセには最も遠いキャラと言っていいでしょう。

覇王の風格そのままに、リオは百獣の王であるライオンをモチーフとした戦士ですが、
ハカセの変身したリオは、まるで猫がモチーフの戦士のように軽妙でコミカルな戦士となってしまいました。
オリジナルのリオは不動の構えから重厚な攻撃を繰り出す戦士でしたが、
ハカセのリオは壁によじ登り、飛び降りてゴーミンを捕まえて
「がお!」と猫が爪を立てるような仕草で吼える、おふざけ戦士です。
なんかガオレンジャーと間違えたようなアニマルアクションになってます。

一方、アイムの変身したメレも、なんだか妙な感じです。
こちらは凛としたメレっぽい動きをしていて、アクション的に違和感は全く無いのですが、
メレというとアクの強い悪女のイメージなので、
マーベラス一味ではアイムではなくルカのイメージに近い。
だからアイムがメレの格好をしているだけで何だか不思議な感じです。

ゴーミン達を押しまくって5人集合した時も、
ハカセがリオの姿でピョンピョン飛び跳ねてきて「あ痛て!」とすっ転び、
「大丈夫ですか?」と慌ててアイムがメレの姿で助け起こすという、
とてもリオとメレには見えない、ほのぼのとした異様な情景が繰り広げられます。

さて、ここでジョーが「フン!もう1ついくか!」と青いレンジャーキーを取出し、
続いて5人で「豪快チェンジ!!」と変身したのは、ファイブマンでした。
マーベラスがファイブレッドに変身し、ジョーがファイブブルーに変身し、ルカがファイブイエローに変身し、
ハカセがファイブブラックに変身し、アイムがファイブピンクに変身します。
「199ヒーロー大決戦」映画では豪快チェンジ済でしたが、
TV本編でマーベラス一味がファイブマンに一斉変身するのは初めてのことです。

こうして見ると、この冒頭の戦闘シーンで鎧だけに巨大戦をさせているのは、
前後篇の前篇で巨大戦のノルマをこなすという目的以外に、
鎧だけを等身大戦から除外しておいて、
変則ゲキレンジャーとファイブマンへの5人一斉変身をスムーズに見せるためだったことが分かります。

言い換えれば、この冒頭の戦闘シーンの目的には、
今回のストーリーの伏線としてハカセの心情を描くのと同時に、
変則ゲキレンジャーとファイブマンへの豪快チェンジを消化することがあったのだということになります。
つまり、豪快チェンジの未だ消化していないノルマ消化のために戦闘シーンであったのです。

まず、ここでファイブマンへの5人一斉変身をしたことで、
マーベラス一味はTV本編で34戦隊全ての5人一斉変身を遂に終えたことになります。
なお、6人一斉変身を未消化の戦隊は、あとはジュウレンジャーとマジレンジャーだけです。

そして、変則ゲキレンジャーでリオとメレに変身し、
ファイブマン一斉変身でファイブレッド、ファイブブルー、ファイブブラックに変身したことによって、
マーベラス一味がレンジャーキーを所持していながら未だ変身していない戦士は、
これで遂にマジマザーただ1つだけとなります。

マーベラス達はファイブマンに豪快チェンジした後、ゴーミン達と再び乱戦に突入し、
ここではよく見るとファイブマン各自の個人武器を使って戦ってます。
マーベラスはファイブレッドの剣型の個人武器のVソードを使い、
ジョーはファイブブルーの鉄アレイ型の個人武器のツインアレイを使い、
ルカはファイブイエローのタクト型の個人武器のメロディータクトを使い、
ハカセはファイブブラックのナックル型の個人武器のパワーカッターを使い、
アイムはファイブピンクのフルーレ型の個人武器のキューティーサークルを使い、戦っているのですが、
いかんせん、このシーンが1〜2秒ぐらいしか無くて短すぎます。

本来はここは劇場版も含めて初めてファイブマンの5人揃っての個人アクションをしっかり見せる場面のはずで、
そのつもりで撮影時はしっかりアクションをして長めに撮ったのであろうと思われますが、
今回のエピソード全体の尺調整の結果、ほとんど編集時にカットされてしまったようです。

まぁとにかく、このファイブマンでマーベラス達が戦い始めたのを受けて、
鎧は豪獣神のコクピットで「こっちもいきますよぉ!!」と張り切って、
豪獣神の右腕のドリルをトライデントモードにして、電撃攻撃で巨大ドゴーミンを攻撃します。

一方、地上の等身大戦の方では、ファイブマンの姿のまま、マーベラス達は大技を発動します。
マーベラスが赤いボールを手にして「スーパーファイブボール!」と掛け声をかけて、
そのボールを「はぁ!」とキックしたのでした。

このスーパーファイブボールという名の技は、
あの初代戦隊ゴレンジャーのゴレンジャーストームを彷彿とさせる技で、
5人が順番に蹴って繋ぎながらエネルギーを充填していったボール型爆弾を相手にぶつける必殺技ですが、
ゴレンジャーストームのようにボールが最後は相手の苦手なものに姿を変えるというような、
ふざけた技ではありません。

ゴレンジャーストームのように、蹴った後、次の蹴るメンバーのパーソナルカラーに
ボールの色が空中で変わっていくという技で、
マーベラスが蹴った赤いボールが飛びながら青い色に変わっていきます。
この赤いボールにはファイブレッドの額の紋章も刻まれており、
それがボール色が青に変わると同時に、ファイブブルーの額の紋章に変わっていきます。
この色と紋章が変わっていくエフェクトが、「ファイブマン」放送の1990年当時には不可能だった
ハイクオリティなCGでリニューアルされているのが印象的です。

そうして青いファイブブルー仕様に変わったボールを今度は「はっ!」とジョーが蹴り返し、
これが同様に黄色いファイブイエロー仕様となって飛んでいき、ルカが「よっ!」と蹴り返し、
ボールはピンク色のファイブピンク仕様となり、それを「はい!」とアイムがヘディングで切返し、
黒色のファイブブラック仕様となったボールをハカセが「はあああ!!」と大きくジャンプしてキャッチし、
宙返りして着地してターンします。
するとハカセの手にしたボールはまた赤色に変わり、
しかもファイブマンの紋章の刻まれたプロテクターに包まれます。

この5人分のエネルギーが充填されたボール型爆弾を胸の前に突き出した手で掴んで立ったハカセが
「マーベラス!」と合図をすると、「はっ!」と跳び上がったマーベラスがこのボールを飛び蹴りして
「喰らえ!!」と、ゴーミン達の群れに向かって発射、
これが大爆発を起こして、ゴーミン軍団は全滅します。

これで地上で残るは2人のドゴーミンだけです。
ゴーカイジャーの姿に戻ったマーベラス達5人は、
「トドメだ!」とバックルから出した光を合体させてゴーカイガレオンバスターを構えます。
前回はアイムがメインで構えましたが、今回はいつも通りマーベラスがメインで構えて、
通常通りのライジングストライクを発射します。
一方、巨大戦の方でも鎧がアバレンジャーの大いなる力である豪快電撃ドリルスピンを発動し、
ドリルを構えて高速で巨大ドゴーミン2人に突っ込み、
巨大戦でも等身大戦でも同時にドゴーミン達を撃破して、戦闘に終止符を打ったのでした。

その戦闘の模様を遠く離れた地球上空の宇宙空間に浮かぶギガントホースの指令室で
モニターしていたダイランドーは「ちょいちょいちょいちょ〜い!何なのさ!?海賊どものあの余裕は!?」と
苛立ちを露わにしてゴーミンの頭を殴って、インサーンに不満をぶつけます。
それを冷ややかに受け流したインサーンは
「・・・奴らの力は本物です・・・我々は、負けるはずのない戦いに、悉く敗れてきました・・・」と応えます。

どうも今回のドゴーミンを中心とした作戦の推進者はダイランドーであったようです。
ダイランドーは前回のザツリグの敗北が信じられず、
マーベラス一味のごとき海賊風情が皇帝親衛隊の精鋭を倒すだけの実力を有していると
は認められなかったようなのです。
だから、マーベラス達がザツリグに勝ったのは、ザツリグの油断や不調など、あるいはまぐれであるとか、
とにかくマーベラス一味が実力でザツリグに勝ったわけはないと主張し、
それを確かめるためにドゴーミン達にゴーミン部隊を引き連れて出撃を命じ、
マーベラス一味を襲撃させたのでしょう。

しかしドゴーミンぐらいでは、ワルズ・ギルを倒した戦いで更にパワーアップを果たした現在のマーベラス一味は
倒せないということはインサーンは承知していますから、この戦闘結果に驚くでもなく、平然としています。

インサーンとて、最初は海賊風情にザンギャックの正規軍が負けるはずがないと思っていた。
というより、海賊風情がザンギャックの正規軍の地球侵略に立ちはだかる障害になるなど、
想像もしていませんでした。
しかし、マーベラス一味は明らかにザンギャックの宇宙征服事業そのものを否定する存在になりつつあり、
しかもそれに見合っただけの実力を有して、今やザンギャックの大きな目の上の瘤になろうとしています。
無論、このまま放置しておいていいとはインサーンも思ってはいない。
しかしドゴーミン程度を送り込んでもどうにもならないということは分かっているので、
インサーンは最初から今回の作戦には反対のようでした。

ダイランドーはドゴーミンの率いる部隊が全滅したことで
インサーンの言い分を認めざるを得なくなったことが腹立たしく、思わず声を荒げましたが、
確かに今回の結果を見た限り、マーベラス一味の実力は本物であることは認めざるを得ないとは思いました。
つまり、ザツリグを倒したのもマーベラス一味の実力だということです。

ダイランドーもさすがにそれを認めざるを得ないと思うと、クルリと後ろの司令官席の方に振り向き、
「こうなったら!いよいよ、このミーの出番でやんしょ!?アクドス・ギル様・・・」と恭しく頭を下げます。
ザツリグでも勝てなかった相手となれば、ザツリグと同等の実力者である自分が相手をするしかない。
親衛隊には自分とザツリグ以上の実力者は現在いないのだから、
自分以外にマーベラス一味の相手が務まる者はいないというのがダイランドーの考えでした。

ザツリグが負けたのだから自分も負けるかもしれないなどと弱気なことは考えていません。
そんな軟弱な精神で皇帝親衛隊員など務まるはずがない。
だいたいザツリグが負けたといっても、実力的にはザツリグの方が勝っていたが、
マーベラス一味の作戦がザツリグの裏をかいて勝負が決したようなものです。
ザツリグを相手にその作戦を実行出来るという時点でマーベラス一味は大変な実力者であるのは間違いないが、
それでも勝負は紙一重で決したようにダイランドーは思ったのです。

それに、やはりザツリグに油断が無かったかというと嘘になる。
相手の実力が本物だと認めて、もっと慎重に戦えば勝てたかもしれない。
だからダイランドーは、自分ならばザツリグよりももっと慎重に、
もっと上手い作戦でマーベラス一味を倒すことは出来るという自信は持っていました。
だから出撃を志願したのでした。

そのダイランドーが頭を下げた先の司令官席には皇帝アクドス・ギルがじっと黙って座っていました。
アクドス・ギルもまた、当然マーベラス一味とドゴーミン達との戦いをモニターしていたのですが、
ダイランドーのように敗北に驚いてはいませんでした。
アクドス・ギルは前回のザツリグの敗戦時にマーベラス一味の実力が本物であることは認めていましたから、
今回、ドゴーミンを繰り出しても勝つことは難しいだろうとは思っていました。

が、今回はとにかくダイランドーの好きなようにやらせたのでしょう。
アクドス・ギルとしてももう少しマーベラス一味の戦い方を観察しておきたいとも思っていたので、
出撃を許可したのでしょう。
しかし、ダイランドーが自ら出撃を申し出ると、アクドス・ギルは微動だにせず、じっと黙って考え込みます。
さすがにダイランドーに出撃を命じるのは躊躇されたのでした。

ダイランドーが大変な実力者であることはアクドス・ギルももちろん分かっています。
しかし、そのダイランドーの実力は、あのマーベラス一味に敗れたザツリグと互角という程度です。
もちろんアクドス・ギルもマーベラス一味のザツリグとの戦いを見て、
それが紙一重の勝利であったことは分かっていますから、
マーベラス一味の戦い方を二度観察したダイランドーならば
マーベラス一味に勝てる可能性が高いことも分かってはいます。

しかし、そもそもザツリグだって勝てる可能性が高かったはずなのに、逆転されて敗北した。
紙一重であっても結果として敗北したのは事実です。
「負けるはずのない戦いに悉く敗れてきた」というインサーンの言葉は真実なのだろうと、
アクドス・ギルは思いました。
どうして海賊風情にそんな力があるのか、アクドス・ギルには全く分かりませんでしたが、
とにかくこの海賊たちには何か得体の知れない、予測不能な強さがある。
つまり想定外のことが起きる可能性が高い。

その予測不能な怖さを軽く見て、軽率に重要な戦力を海賊との戦いに投入して失ってきた結果、
地球侵略軍は弱体化していったのだと、皇帝には事の次第がだいぶ分かってきました。
その同じ失敗を繰り返すわけにはいかない。
ダイランドーは確かにマーベラス一味に勝てる可能性は高いが、
相手が予測不能な強さを持つマーベラス一味だけに、何が起きるか分からない。
もしザツリグに続いてダイランドーまでも失えば、皇帝親衛隊までも一気に弱体化して、
自分自身の身の安全、いや、それ以上に帝国の威信が維持出来なくなってしまうということを、
アクドス・ギルは心配したのでした。
かといって、このまま帝国の皇太子を殺害したマーベラス一味を放置しておくことも
帝国の威信の低下を招くから、それもまた出来ない。
さて、どうしたものかとアクドス・ギルは思案します。

しかし、ここでこのように冷静に思案するというのも、
アクドス・ギルがワルズ・ギルの仇を討とうとしているのは、
別に息子の仇をとりたいという親の心によってなのではなく、
あくまで帝国の威信を守るための皇帝の公務としてであるというのが分かります。
何が何でも親衛隊員を全員特攻させてでも息子の仇を討ちたいとまでは考えていない。
あくまで親衛隊の温存が優先なのです。

そうしてアクドス・ギルが黙っていると、そこに「お待ちください!」とインサーンが進み出ます。
そしてアクドス・ギルに向かって恭しく頭を下げつつ
「ワルズ・ギル様の死を一番無念に感じているのは、ダマラス様です!」と言い、
跪くと「ぜひ!ダマラス様に・・・!」と頭を再び下げて、
ダマラスの出陣とマーベラス一味への復讐に許可を与えてくれるように嘆願したのでした。

インサーンは前回のエピソードでアクドス・ギルがギガントホースへ到着するなり反逆を疑われて
拘束されて船内の牢に連行されてしまったダマラス参謀長のことを、あれからずっと気にかけていました。
ワルズ・ギルが第38話でマーベラス一味に倒されてから、
インサーンとダマラスは共にマーベラス一味への復讐を企図していました。
ところがダマラスだけは反逆の罪に問われて拘束されてしまった。

ダマラスが皇帝に反逆の意思など無かったことはインサーンには分かっています。
これはもともとは亡きワルズ・ギルの誤解が生みだした不幸な行き違いなのです。
だから、ダマラスがこんな誤解のために、
あれほど熱意をもって取り組んでいた海賊への復讐の機会を奪われたのは、
インサーンから見れば、さすがに気の毒で仕方なかったのでした。

特に武人としてのプライドが誰よりも高いダマラスは、
地球に来てからワルズ・ギルによってずっと出陣を禁じられ、
そして今またアクドス・ギルによって拘束されて出陣出来ない。
このまま戦う機会無く罪人として生涯を終えるのは、あまりにも気の毒です。
せめて戦いの場を与えてあげてほしいとインサーンは思いました。

それに、皇帝親衛隊でも手に余る事態となった以上、
頼れるのはダマラスしかいないだろうという読みもインサーンにはありました。
だから、今このタイミングでダマラスの助命嘆願をするのが有効だと、
インサーンは瞬時に判断したのでした。

これを受けてアクドス・ギルはじっとしたまま「ううむ・・・」と小さく唸ります。
アクドス・ギルはギガントホースに乗り込んできてからの一連の作戦におけるインサーンの言動を観察して、
インサーンが事態を正確に把握していることに気付いていました。
そのインサーンがここまで反逆者として牢に入れられたダマラスを庇うということは、
ダマラスはインサーンの言うように潔白なのかもしれないとアクドス・ギルは思ったのでした。

ダマラスの拘束の際にもインサーンはダマラスが実はワルズ・ギルに出撃を禁じられていただけだと言って
ダマラスを弁護しようとしてザツリグに制裁を加えられています。
反逆者として疑われたダマラスに肩入れするということはそれぐらい危険なことだと
インサーンもその時、骨身に沁みたはずです。
それなのにまたこうしてダマラスに肩入れする発言をするということは、
インサーンは偽りを言っているわけではないということはアクドス・ギルには分かりました。

そして、これまでの地球侵略軍の戦いを全て正確に把握しているインサーンが言うのだから、
実際、息子のワルズ・ギルがダマラスに出撃を禁じていたのだろうとも思いました。
アクドス・ギルは自分の亡き息子が愚か者であったことは分かっています。
だから、亡き息子ならばそういう愚かな命令を下していたとしても不自然ではないとも思いました。
そうなると、ダマラスは別に皇帝である自分の命令に逆らっていたわけではなく、
むしろ皇太子の愚かな命令にも律儀に従っていた忠義者ということになる。

ただ、どういう事情があったにせよ、
皇帝である自分が信頼してワルズ・ギルの補佐役につけたというのに、
その期待を裏切ってみすみすワルズ・ギルの傍についていながら見殺しにしてしまったことには変わりはない。
本来は許すわけにはいかない。

だが、今はとにかく、ワルズ・ギルの仇討ちを果たして帝国の威信の回復を図らねばならない。
どうしようもない愚か者ではあったが、あれでも皇太子なのだ。
ザンギャック軍の手で仇を討たないわけにはいかない。
しかしこれ以上皇帝親衛隊の無駄な消耗は避けたいところです。
だからアクドス・ギルはダイランドーは温存して、
代わりにダマラスに海賊の討伐を命じるのが良いかもしれないと思いました。

ダマラスなら、どうせ処罰する予定だった者だから、
万が一、海賊に倒されたとしても皇帝親衛隊の痛手にはならない。
いや、そもそもダマラスが海賊に敗れるなどということは、
さすがに万が一にも有り得ないだろうとアクドス・ギルには思えました。

さて、ギガントホースの船内にある牢内では、
拘束されて牢内に放り込まれて以降、ダマラスはじっと同じ場所に座って俯いていました。
そこにドゴーミン達を引き連れてダイランドー、そしてインサーンがやって来ます。
それでもダマラスはじっと下を向いたまま、興味を向けようともしません。
あらぬ嫌疑をかけられて、どうせ不毛な尋問でもされるのであろうが、
そんなことにはもはや何の興味も湧かないとダマラスは思っていました。

ダマラスが無視するのでダイランドーは苛立った様子で牢の鉄柵を手の鉤爪で叩いて甲高い金属音を響かせ、
「ヘイ!ユー!出てこいな!」と怒鳴ります。
ダマラスは予想外のダイランドーの言葉に、初めて「うう・・・?」と反応して顔をゆっくり上げます。
いや、あるいは処刑が決まったのかもしれないと思ったのでした。
尋問もせずに処刑とは、あまりにも酷いとも思ったが、
煩わしいことが無いのは幸いかもしれないともダマラスは思いました。

ところが、ダイランドーの横に立つインサーンは厳粛な面持ちで
「ダマラス様・・・誤解が解けました」と、ダマラスに伝えました。
つまり、牢を出るようにという命令は、処刑のためではなく、
嫌疑が晴れたから釈放されるということのようだとダマラスはようやく理解したのでした。
しかし、ダイランドーはインサーンの言葉にケチをつけるように「認めるのはまだ早いっしょぉ!」と怒鳴ります。

皇帝アクドス・ギルはインサーンの嘆願を受け入れて
ダマラスを牢から出して海賊討伐のために出陣させるという命令を下しましたが、ダイランドーは不満のようです。
ダイランドーにしてみれば、自分で海賊を倒すつもりでいたので、
それを止められて代わりに罪人のダマラスが出撃するのが、
まるで親衛隊員の自分が罪人のダマラス以下の扱いを受けたようで不満なのです。
つまり、ダイランドーから見れば、まだダマラスは罪人のままなのです。
そして、皇帝もそのように考えているのだとダイランドーは解釈している。
だからインサーンの軽率な物言いにいちいち突っかかりたくなるのです。

ダイランドーはインサーンに対してきつい口調で
「よいか?ワルズ・ギル様の仇を取ってからっしょぉ?」と言うと、牢の鉄柵を乱暴に叩いて、
「ダマラス!ユーに出来るのかいな!?」と怒鳴りつけるのでした。
ザツリグが倒されたような強敵を相手に、
ワルズ・ギルの補佐も満足に出来なかったような無能が本当に勝てるのか?と
ダイランドーは疑問を呈しているのです。

座ったままそれを聞いたダマラスは、だいたい事態が呑み込めてきました。
インサーンがあのように言うということは、確かに反逆の疑いは解けたようだが、
自分は相変わらず罪人のままであるのは変わらない、無罪放免ではないのだということが分かったのでした。
結局、ワルズ・ギルを見殺しにしてしまった補佐役としての無為無策の罪は消えてはいない。
その罪を償うために自分は海賊討伐に出撃させられるのであり、
海賊を討伐してワルズ・ギルの仇を討って初めて、自分の罪は帳消しになるのであり、
現時点ではまだ仮釈放の身の罪人であるのだと、ダマラスは自分の置かれた立場を理解しました。

しかし、ダマラスには何ら不服はありませんでした。
自分が無為無策の無能な参謀長であったことは紛れもない事実であり、
そのせいでワルズ・ギルをみすみす見殺しにしてしまった罪は永遠に消えることはないと、
ダマラス自身が認めていました。
そして、その無能な参謀としての罪は消えないが、
せめて自分の地に堕ちた誇りを取り戻すためには、武人としての誇りで埋め合わせるしかないと思っていました。

地球に来てからというもの、ワルズ・ギルの命令で出撃できない状況で、
海賊たちにやりたい放題されて何ら有効な対応策も打てず、
遂には司令官のワルズ・ギルまで討たれてしまったという屈辱は、
忌々しい海賊たちを武人として討ち果たすことでしか晴らしようがありませんでした。

ダマラスがワルズ・ギルの仇討ちをしようとしていたのも、要するに海賊を討つための大義名分に過ぎませんでした。
もしワルズ・ギルが討たれていなかったとしても、とにかく出撃禁止命令さえ解除されていれば、
ダマラスはすぐにでも海賊討伐に向かったはずです。
それぐらいダマラスの海賊に対する鬱憤は溜まりに溜まっていました。

それはワルズ・ギルの出撃禁止命令によって溜まった鬱憤もかなりのものでしたが、
それにしたところで海賊の出現さえなければ、こんなに悔しい想いを募らせなくても済んだのであり、
ダマラスにとっては全ては海賊のせいという思考になっていました。
こうしてあらぬ嫌疑をかけられて牢に入れられたのも、元はといえば海賊が地球征服の邪魔をして、
挙句ワルズ・ギルを殺したりしたからであり、やはりダマラスから見れば、海賊たちのせいでした。
だから、とにかくダマラスにとっては全ての恨みの元凶は海賊たちであり、
海賊たちを自分の手で討ち果たすことで武人としての誇りを取り戻すことだけが、
今のダマラスにとっての唯一の救いでした。

自分が前線に出て戦えば、必ず海賊など討ち果たせる。
なのに今までその機会が無かった。
そのおかげで失敗を繰り返し自分のプライドはズタズタにされてしまった。
だから海賊をこの手で討って誇りを取り戻したい。
それがダマラスの本音でした。
そのためにもともとワルズ・ギルの仇討ちをしようとしていたダマラスです。
だから、今こうして改めて皇帝からワルズ・ギルの仇討ちを命じられて、
ダマラスとしては願ったり叶ったりでした。
そう思うと、先ほどまで、もう戦う機会は無いかもしれないと諦めかけていた心が嘘のように、
また戦える悦びに、ダマラスの心には見る見る力がみなぎってきます。

ダイランドーが無能な参謀の自分に仇討ちなど出来るわけがないと決めつけて
小馬鹿にしているということはダマラスにも理解出来ました。
確かに自分はそのように小馬鹿にされても仕方ないほど無能な参謀ではあった。
が、武人としての自分は違う、とダマラスは思いました。
武人としての自分はダイランドーごときに小馬鹿にされるような存在ではないし、
小馬鹿になどされてはならないはずでした。
それなのに、ダイランドーごときのこのような罵声を浴びねばならなくなったのは、
これもまた全て海賊たちのせいだとダマラスは思い、ますます海賊たちへの怒りが募ります。

ダイランドーをじろりと睨み返すと、
ダマラスは「・・・誰に向かって言ってる・・・?」とドスの効いた低い声を上げながら、ゆっくりと立ち上がると、
両腕を繋いでいた手錠を一瞬で引きちぎり、「ふうん!!」と気合を発し、気当たりだけで牢屋の鉄柵を粉砕し、
ダイランドーやインサーン達も吹っ飛ばします。
ダイランドーに対してというより、その怒りの矛先はほとんどマーベラス一味に向けられたものでした。

吹っ飛ばされそうになった「うおっ!?」と慌てて持ち堪えたダイランドーは、
身体の埃を払いながら「・・・って、いきなりかよ!?・・・ったく!」とぼやきます。
ダマラスの凄まじい気当たりを受けて平気な顔をしているダイランドーも確かにかなりの強者のようですが、
やはりダマラスの方がダイランドーよりも実力は上であるようです。

ダイランドーも本当はダマラスの方が自分よりも実力者であることは認めているようですが、
ワルズ・ギルをみすみす見殺しにした大失態があるだけに、
ダマラスがよほど腑抜けたのだと舐めてかかっていたようです。
ところがいきなりダマラスが凄まじい迫力を見せたものだから、
ダイランドーも少なくともダマラスの武力に関しては、全く錆びついてはいないことをようやく認めたようです。
先ほどまでの高圧的な態度が消え、旧友に接するような態度に変わっています。

そうしてダイランドーが「ほい!」と差し出したマーベラス一味の手配書をダマラスは乱暴に奪い取ります。
ダイランドーはダマラスがマーベラス一味の手配書を見たことがないのかもしれないと思って
わざわざ持ってきたのだが、もちろんダマラスは手配書など今さら見る必要など無いほど、
マーベラス一味のことは熟知しています。
しかし、それでもダマラスはあえて手配書を1枚1枚めくって見つめます。
自分がこれから倒すことになる海賊たちの賞金首としての値打ちを確認し、
それを倒すことによって自分の武人としての誇りがどれほど満たされるのか確認することで、
少しでも自分の心を癒そうとしているのでした。

まずダマラスは6枚の手配書を重ねた1番上にあるマーベラスの手配書を睨みつけ
「・・・赤き海賊団の生き残り、キャプテンマーベラス・・・」と独り言を言い、
1枚めくってジョーの手配書を見て「裏切り者、ジョー・ギブケン・・・」、
更にめくってアイムの手配書を見つめ「ファミーユ星の王女、アイム・ド・ファミーユ・・・」、
そして次にめくってルカの手配書を見て「女盗賊、ルカ・ミルフィ・・・」、
更にめくって鎧の手配書を睨んで「そして、この星で加わった、伊狩鎧・・・」と、
ブツブツと恨みがましい声で独り言を言っていきます。

そして最後にめくってハカセの手配書を一瞥すると
「・・・こいつはどうでもいいが・・・覚悟しておけ・・・海賊ども・・・!」と殺気を漲らせて
6枚の手配書をクシャクシャに丸めて潰してしまい、
やはり手配書を見ているだけでは満足できないダマラスは
さっさと海賊どもを実際に討ち取らねば到底自分の武人の誇りは満足せず心が癒えることもないと思い、
歩き出して行動を開始したのでした。

なお、1人だけ無視されてしまったハカセですが、これはハカセの賞金額が安すぎるからでしょう。
以前、第8話の時、ダマラスとインサーンとでマーベラス一味の手配書を見ながら
海賊の行動の分析をした場面がありましたが、
あの時もダマラスはハカセのことは全く相手にしていませんでした。

どうやらダマラスから見れば、ハカセのような賞金額も低い小者は、
相手にする価値すら無いと見なしているようです。
だから、今のダマラスにとってはハカセは、
倒しても自分の武人の誇りを満足させることが出来るような相手ではないので、眼中に無いわけです。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
にほんブログ村 にほんブログ村 テレビブログ スーパー戦隊へ
にほんブログ村
posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 23:57 | Comment(0) | 第42話「宇宙最強の男」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月22日

第42話「宇宙最強の男」感想その3

その翌日、なんだか恐ろしく強そうなダマラスがマーベラス一味を抹殺するために既に動き始めているというのに、
そんなことは知らないマーベラス一味の面々はゴーカイガレオンで呑気にしています。
そのガレオンの船室に「ええ〜っ!?」というアイムの素っ頓狂な大声が響き渡ります。
皆が驚いて「・・・何なんだ?アイム・・・」と駆け寄ると、
アイムは慌てて「すみません・・・でも、これを読んでいたらハカセさんが・・・!」と、手にしていた雑誌を掲げます。

その雑誌は「女星セブン」という名の雑誌で、「女性セブン」のパロディーであることが明白なのですが、
この雑誌の表紙や裏表紙がツッコミ所満載のネタの宝庫なので、
細かい部分までは全部読み取ることは出来ませんが、
まぁホントに結構どうでもいいことばかりなのですが、ちょっと適当に分かるところだけチェックします。

まず雑誌名の「女星セブン」には「地球版 日本語訳」と添えられており、
この雑誌が宇宙で広く発行されている、全宇宙的な女性誌であり、
記事内容は一応は全宇宙の話題を網羅しつつも、
「地球版」ということで、地球近辺に暮らす宇宙人向けに、地球ローカルな話題も盛り込んだものであるようです。
そして「日本語訳」ということは、記事の内容が日本語で書かれているということで、
そうなると英語版やフランス語版などもあるということになります。

そういえば、いつもマーベラス一味が購読している「SPACE SPORTS」という英語版の宇宙のスポーツ新聞も、
あれも「地球版 英語訳」なのかもしれません。
まぁ、そうはいっても、そもそもマーベラス一味もザンギャックの連中もみんな日本語を喋っている
この物語世界でそんなことを厳密に考察しても仕方ないので、どうでもいいです。

とにかく「女星セブン」というのはタイトルからして女性誌であるようです。
表紙にはいかにも女性誌っぽいゴテゴテしたレイアウトで見出しが色鮮やかに詰め込まれていて、
上品さのカケラもありません。

その表紙をチェックする前に触れておきたいのが裏表紙で、まぁこれもどうでもいいネタなのですが、
そこには、どこかで見たようなデザインの一面広告が掲載されており、「みんなの宇宙船保険」と書かれています。
これはどう見ても自動車保険の広告のパロディーで、
宇宙的雑誌ですから、当然、主要な乗り物は自動車ではなく宇宙船なので
自動車保険ではなく宇宙船保険の広告が掲載されているようです。
ということは、この物語に出てくる宇宙船はみんな宇宙船保険に加入して購入しているのか?
・・・などと考察してもあんまり意味は無さそうなのでやめておきます。
最近は雑誌の裏表紙広告といえば保険の広告ばかりなので、単にそれをパロったのでしょう。

で、表紙の方の見出しですが、
いかにも女性週刊誌らしく、芸能、ゴシップ、政治、経済、旅、グルメなど、バラエティーに富んでおり、
表紙の写真は韓流スターっぽい優男の写真で、
その下にはその関連記事っぽい見出しに「グン・ソンチャク」という文字が見え、
どうもこの表紙の男は「チャン・グンソク」の名前をもじった
「グン・ソンチャク」という名の宇宙版の韓流スターであるようです。

他に芸能記事としては、
「宇宙流最旬スター名鑑 話題ドラマに出演のあの宇宙人からS-POPグループまでピックアップ!!」というのがあり、
「S-POP」というのがどうやら「K-POP」のもじりであるようで、
「S」は「SPACE」の略で、芸能界用語として「韓流」ならぬ「宇宙流」を意味するようです。
どうも表紙のグン・ソンチャクも韓国人ではなく宇宙人であり、韓流ではなく宇宙流スターであるようです。
で、何処の宇宙人なんだということや、じゃあ地球の芸能界に進出してるのかどうかなど、
全くどうでもいい話なので置いておきます。

経済記事というか、主婦向けの財テク記事のようなものとしては
「宇宙と経済が見える!妻の金銭感覚が夫婦の老後を決める!?」という見出しもあり、
ゴシップ記事風の見出しには「やはり!タニーチャ星王子(28)かつら疑惑」という
笑ってしまうようなセンセーショナルな見出しもあります。
これ、たぶん巻頭グラビア記事だと思われますが、タニーチャ星って何なんだ?
今後の物語に深く絡んでくる・・・ことは絶対に無いと断言していいでしょう。

そして、そのかつら疑惑のゴシップ記事の見出しの下の見出しがこの物語的には衝撃的で、
「辺境の星地球で人気の旅館 宇宙人亭主ジェラシットが考案した地球人に贈る最高のサービスとは?」という
見出しであり、横にはなんと小さくジェラシットの写真まで添えられています。

地球のことを「辺境の星」なんて書いてしまっているあたり、
この雑誌があくまで地球近辺の宇宙人を購読対象とした雑誌であることを物語っていますが、
どうもこの見出しから類推すると、第24話でタコ焼き屋の店主の母親と駆け落ちしたジェラシットは、
旅館の亭主に収まっている模様です。
第24話のラストでは田舎の旅館に住み込みで働き始めたように見えましたが、
あれはもしかしたらタコ焼き屋の母親のヘソクリか何かを使って自分達で手に入れた旅館だったのかもしれません。

そうして宇宙人でありながら地球の旅館の亭主になったジェラシットが
地球人宿泊客に向けて独自のサービスを考案して、ジェラシットの旅館は地球人に人気の旅館となっているようで、
そのことが珍しいネタとして宇宙人向けの雑誌でも記事となって取り上げられているようです。
ジェラシット商売繁盛で何よりですが、
「ゴーカイジャーVSギャバン」のネタバレ情報では、ジェラシットはこの少し後の時系列では
ザンギャックと関係のある監獄に収容されてしまっているようで、
どうもこの記事がザンギャックの目に留まったのが原因なのではなかろうか?

そのザンギャックに関しても気になる見出しが下の方にあります。
というか、見出しの大きさ的にはこれが今週号のメイン記事っぽいのですが、
「宇宙帝国ザンギャック 彼らが地球に来た本当の目的とは?」という見出しがデカデカと載っています。
どうも地球近辺の宇宙人たちの間では、ザンギャックが地球を侵略しようとしている目的が
いろいろと憶測されているようです。

これがそれなりに根拠に基づいた記事で、ザンギャックが何らかの特別な目的があって地球を侵略しているのか、
それともゴシップ誌らしく、何でもかんでもネタにして騒いでいるだけなのか、よくは分かりません。
地球におけるレジェンド大戦やマーベラス一味との戦いに関して
ザンギャック側がどれだけ情報を公開しているのかもよく分かりませんので、
世間的にどういう憶測が成立するのかもよく分からないのです。

まぁ雑誌のレベルから見ても、そんなに大した内容の記事ではなく、
色んな憶測を並べ立てた上で、結局何ら結論も出さずに終わる記事なのでしょうけれど、
それにしてもザンギャックの地球侵略が大きな話題になっているには確かなようです。
まぁ地球版の雑誌ですから、地球を舞台にした侵略戦争が話題になるのは確かですが、
決してザンギャックに好意的なニュアンスの記事でないということは、
ザンギャックが苦戦していることは周辺には伝わってきているということなのでしょう。

そして、もし本当にザンギャックが何か特定の隠された目的があって地球を攻撃しているのだとするなら、
それはこの物語的には、というか、このブログ的には気になることです。
もしかしたら、最近の考察で否定した
「ザンギャック皇帝と宇宙最大のお宝には何らかの関係がある」というのが
実は可能性として有り得るかもしれないからです。

グン・ソンチャクとかタニーチャ星王子のヅラ疑惑とかはどうでもいいですが、
ジェラシットの記事は一応TV本編内容とリンクした記事であるので、
あるいはこのザンギャックに関する記事の見出しも、
クライマックス篇に向けたさりげない伏線である可能性もゼロではない。
だから一応、ほんの少しだけ気に留めておくようにします。

さて、その「女星セブン」をアイムが読んでいたら思わず大声を上げてしまうほど驚いて、
皆が理由を聞くと、アイムはハカセをその雑誌で見たからだと言います。
というか、アイムもまずはジェラシットやザンギャックの記事で驚くべきだと思うのですが、
パラパラと何気なくめくっていたら最初にハカセを発見したので驚いたようです。
つまり、かなり目立つところにハカセが載っているようなのですが、
皆には女性誌とハカセの繋がりの意味が分かりません。

ちなみにアイムの声を聞きつけて集まってきたのはマーベラス、ジョー、ルカ、鎧の4人であり、
その当の本人のハカセだけはいません。
船内の何処か別の場所にいるようです。

アイムの言っていることの意味が分からず、ルカは「はぁ?何がよ?」と怪訝そうな顔をして
アイムが差し出した「女星セブン」を受け取り、開いて見てみると、
開いたそのページにハカセのように見える人物の姿の写真がデカデカと載っていたので、
全員目を丸くして驚いたのでした。

「ホントだ!ドンさんだぁっ!!」と鎧が驚愕して見つめた、
そのハカセのように見える人物は、神話の英雄のような白い布をまとったような服に身を包んで
剣と盾を持った凛々しい姿で、雑誌のちょうど真ん中、センターカラーのページの記事に
写真が大きく掲載されています。
その記事は何かの企画記事のようです。
横から覗き込んだジョーが訝しげに
「あの人は今どこに?・・・いくつもの星を滅ぼした邪悪な竜を退治した勇者、ドン・ドッゴイヤー?」と、
その記事のタイトルを読み上げます。

どうもこの記事は現在消息不明の有名人の行方をあれこれ詮索する記事のようで、
タイトルの感じからして、これはハカセに関する記事ではなく、
過去に宇宙で活躍していた、とある勇者に関する記事のようでした。
「勇者ドン・ドッゴイヤー・・・?」と胡散臭いものを見るように、ルカがページをめくると
「彼こそが伝説の勇者ドン・ドッゴイヤーだ!!」という大きな文字と共に、
さきほどのタイトルページのものよりも更にどアップになった勇者の顔が映っています。

問題は、その伝説の勇者の顔がハカセにそっくりであり、
しかも名前もハカセの本名であるドン・ドッゴイヤーと全く同じだということでした。
全くの別人で顔がそっくりというのは有り得ない話でもなかったが、
名前までも同じというのは偶然の一致としても到底有り得るような話ではありません。
マーベラスとジョーはワケが分からず「はぁ・・・?」「何だこれ・・・?」と呆れ顔になります。
2人とも、宇宙で今までこんな名前の勇者が存在したなどという噂は聞いたこともないようで、
しかもそれがハカセと顔と名前が一緒だという笑ってしまうような内容で、
とにかく非常に怪しげな記事だという印象を受けたようです。

しかし、鎧は「ちょっと!見せてください!」と必死にその雑誌を奪い取ると、
その勇者の写真を見て、「ホントにドンさんだぁ!!」と大騒ぎします。
顔が同じで名前も同じなのだから同一人物に違いないと素直に信じているようです。
鎧があまりに素直に信じているもので、ナビィも「ええええ!?」と驚いて叫びます。

と、そこに船室で鎧が自分の名を大声で叫んでいるのを聞きつけて、
「え?何?どうしたの?」と当の本人であるハカセが不思議そうな顔で登場します。
ハカセは厨房で1人で昼食の準備をしていて、それで船室にはいなかったようです。

「オイラにも見せてよぉ!」とナビィが雑誌を見たがって騒ぐのを無視して、
鎧はもうすっかり勇者とハカセを同一人物だと思い込んでいるようで、
ハカセの顔を見ると呆然として「・・・勇者・・・ドン・ドッゴイヤー・・・」と呟き、
尊敬の眼差しをハカセに向けます。
実はハカセは海賊団の一員でありながら、その本当の正体は勇者だったのだと鎧は信じて、
さすがだと思って感動しています。

しかしハカセは鎧の呟きを聞いても、「え?」とマヌケ面のままで、どうも意味が分からない様子です。
つまり、ハカセは自分が「勇者ドン・ドッゴイヤー」などという
伝説の勇者であるという自覚は無いということであり、
ならばやはり、この記事はたまたま似た顔で同じ名前の別人の勇者に関する記事か、
あるいはゴシップ誌特有のデタラメ記事であるかのどちらかということになります。

まぁ宇宙はとにかく広いので、
マーベラス一味の面々が知らない勇者がいて、その勇者がハカセと顔と名前が同じであることも
有り得なくはないかもしれません。
ともかくこの勇者の存在の真偽はともかく、
この勇者がハカセと同一人物であるのかどうかについては、
この場に当の本人のハカセがいるわけですから、ハカセに確認すれば分かることです。

ルカはこの際、当の本人のハカセに事実関係を確認するのが手っ取り早いと思い、鎧から雑誌を奪い返すと、
「・・・邪悪な竜にドン・ドッゴイヤーはたった1人で立ち向かった・・・」と声に出して
記事の中のドン・ドッゴイヤーの事績の部分を読み上げました。
読み上げた上で、これが自分のことなのかどうかハカセに問い質すつもりでした。

そうして続きをルカが読むと、
「そして邪悪な竜を倒した瞬間、強烈な光に包まれた勇者ドン・ドッゴイヤーは、そのまま姿を消してしまった・・・」
と、その勇者はなんと生死不明であることに皆は気付かされました。
確かによく考えたら、この記事のタイトルは「あの人は今どこに?」でしたから、
この勇者は現在行方不明になっているわけです。

じゃあ、この勇者は、もし本当に実在していたとしても、もう死んでいるのかもしれない。
というか、この記事内容を読む限り、あまりにファンタジックなお話であり、
本当にこんな勇者が現実に存在したとはあまり思えませんでした。
こんな実在したかどうかも不明の人物とハカセが同一人物であるはずがないとルカは思いましたが、
ハカセはルカの読み上げた内容を聞くと、意外にもシリアスな表情になり、
「それが・・・僕の、過去・・・」と何やら考え込みます。

さっき、勇者だと鎧に言われた時は意味が分かっていないような顔をしていたのに、
今度は一転、ルカの言う勇者としての事績が自分の過去であると認めたかのような言葉です。
いや、事実関係を認めたというよりは、ハカセ自身が事実関係を探ろうとしているような、
よく分からない態度です。
だいいち、もし仮にハカセが勇者だったとしても、それは過去のことであったに決まっています。
だから、あえてハカセ自身が「過去」などと強調する必要は無い。
これではまるでハカセの過去はハカセとは無関係であるかのような他人行儀な物言いです。
そうしたハカセの不可解な物言いに違和感を覚えたアイムは「・・・過去って・・・?」と首を傾げます。
どうもハカセの様子が妙だと思ったのでした。

そこにジョーが「けどお前・・・ザンギャックに故郷の星を滅ぼされて移住したって・・・?」と
怪訝な様子で口を挟みました。
ジョーはハカセが自身の過去が勇者であったかもしれないようなことを言うので、
それはおかしいと思って、口を挟まざるを得なかったのです。
何故ならジョーはハカセの過去を知っており、それは竜と戦った勇者などではないことを知っているからです。

確かにジョーは第37話で鎧にハカセの星がザンギャックに滅ぼされたということを教えており、
ハカセの過去を知っているのは確かです。
ここでのジョーのセリフから察するに、ハカセがマーベラス一味に加入した際に、
ハカセ自身が自分の過去をジョー達に打ち明けていたようなのです。
それによると、ハカセはザンギャックに故郷の星を滅ぼされたので別の星に移住していた一般人で、
そこでマーベラス一味と出会い、加入することになったようです。

そのジョーの知るハカセの過去の何処にも、伝説の勇者であった話や、竜と戦った話は出てきていません。
だから、ハカセが自分の過去が勇者であったかのように今になって言うのはおかしいだろうとジョーは指摘しており、
横でマーベラスもジョーと同意見であるようで、ジョーの言葉に頷いています。

どうもこの場に居る面子の中で、この雑誌の記事に懐疑的なのがマーベラス、ジョー、ルカの3人であるのは、
この3人がハカセの加入時に既にマーベラス一味に身を置いており、
ハカセの「ザンギャックに星を滅ぼされて移住した」という身の上話をハカセから直接聞いた
メンバーであるからであるようです。
だから、ハカセが伝説の勇者であったなどという話はこの3人にとってはそもそも有り得ない話なのです。
一方、ハカセの加入時にまだ一味に加わっていなかったアイムと鎧は
ハカセの過去の話を本人から直接聞いたことがないので、雑誌の記事内容を素直に受け入れやすいのです。

ただ、ハカセの過去がここでジョーのセリフによって初めて具体的に視聴者に明かされたことになり、
その結果、ハカセはただのザンギャックによって星を滅ぼされた移住者であり、
伝説の勇者などではなかったことはハッキリしたといえます。
ところがハカセはジョーの指摘に対して、俯いて
「ゴメン・・・実は、昔の記憶が無いなんて・・・言えなくて・・・」と申し訳なさそうに謝罪したのでした。

このあまりに意外なハカセの告白に、一同は驚きます。
が、驚き方にも各自で温度差はあります。
アイムは「・・・記憶喪失だったんですか?」と考え込みながらハカセに再確認します。
ハカセが黙って頷くので、ナビィは「知らなかった〜!」と感嘆し、アイムも納得します。
それならハカセのさっきの不可解な態度も辻褄が合うからです。
自分の過去がまるで自分とは関係ないことであるかのように言って、
自分の過去を探ろうとしていた不可解なハカセの態度は記憶喪失であったからだということが分かったのです。

つまりハカセは自分の過去を本当は知らないのであり、
本当のハカセの過去は伝説の勇者だったのかもしれないし、そうではなかったのかもしれない。
ハカセ自身にもそれは分からない。
ただ確かなのは、ハカセが自分の過去を知らないということだけです。
ハカセが自分の過去を想い出せない以上は、
ハカセが本当に伝説の勇者であったのかどうかは、不明なままです。
だからアイムが納得したのはハカセが記憶喪失であったということだけであって、
ハカセが伝説の勇者だと信じたわけではありません。

一方、アイムの後ろの方ではマーベラスとジョーがハカセの意外な告白に驚いた後、
胡散臭そうに顔を見合わせます。
2人はハカセが加入時に自分の過去をすらすらと説明したのを聞いていますから、
その時、ハカセが記憶喪失であることを隠していたようにはとても思えなかったのです。
だから記憶喪失などは嘘だと直感しました。
ただ、なんでハカセがそんな嘘を言うのか理由がよく分からないでマーベラスとジョーの2人は戸惑っているのです。

一方、鎧は何やら興奮しまくっていて、ハカセに慌てて駆け寄ると
「いや!でも、これで想い出せたら凄いですよ!勇者パワーがドバ〜ッと炸裂して、
ドンさん1人でザンギャックを倒しちゃうかも!」と、ハイテンションに喚き散らします。
どうやら鎧はハカセが記憶喪失であるという話を信じただけでなく、
もう完全にハカセの想い出せない過去は伝説の勇者であったのだと確信しているようです。

何故なら、名前と顔が一致しているだけでなく、
勇者が竜を退治した時に激しい光に包まれて姿を消してしまったという記事内容と
ハカセの記憶喪失が辻褄が合うからです。
つまり、勇者ドン・ドッゴイヤーは竜を倒した時に浴びた激しい光のショックで、
自分が勇者だったという記憶を無くしてしまい、
その後、過去の無い一般人ドン・ドッゴイヤーとして人生を送ることになり、
たまたまそのドン・ドッゴイヤーがマーベラス一味に加入したのだと鎧は推理したのでした。

そして、ハカセが勇者としての記憶を取り戻せば、きっと勇者としての超人的なパワーも復活し、
勇者としての正義感によって、きっと邪悪な侵略者であるザンギャックも滅ぼしてくれるに違いないと、
どんどん鎧の正義のヒーロー妄想は膨らんでいくのでした。

しかし、ハカセはさすがに鎧の暴走する妄想には困惑して「・・・それは、さすがに・・・」と苦笑します。
ハカセ自身、自分が勇者だと言っているわけではない。
単に記憶喪失だったと言っているだけなのです。
それなのに勇者だったと決めつけられて、ザンギャックを1人で倒せと言われても困ってしまいます。

しかしアイムも鎧ほど先走ってはいませんが、
確かに記事内容の勇者の事績とハカセの記憶喪失とが辻褄が合うことには気付いていました。
ならばこの記事はかなり信憑性があるのかもしれないと思い、
ルカの広げている記事内容を更に覗き込んで、
「左腕にある星型の痣が勇者の証だが、果たして彼は今何処に・・・」という文節を発見して読み上げます。

それを聞いて、ルカは「・・・左腕?」と言ってハカセに近づきます。
ルカもマーベラスやジョー同様、ハカセが仲間入りした時に語った過去の話が記憶喪失を隠すための
作り話だったとはどうも思えません。
しかしハカセが今ここで自分達に嘘をつく理由も無いと思い、
ハカセが記憶喪失だと言うからには記憶喪失なのかもしれないとも思い、判断に迷っていました。

そこに星型の痣の話を聞いたものだから、
もしハカセの左腕に痣があれば記事通りハカセは勇者であったことになり、
過去の記憶を失っていることが証明されると思ったのでした。
ナビィも「左腕・・・」と言ってハカセを見て、鎧もハカセの左腕をじっと見つめ、
ハカセは何やら不穏なムードを感じて左腕の上部を押さえて後ずさりします。

その瞬間、ルカは鎧と一緒にハカセにとびかかり、
「ちょ・・・ちょっと!何?」を慌ててもがいて抵抗するハカセを押さえこんでシャツを脱がせてしまいました。
そしてハカセの左腕を剥き出しにして見ると、なんとそこには上腕部いっぱいに広がる、
まるでマジックで書いたような星型の痣(?)があったのでした。

ルカと鎧は「星型の痣!!」と目を丸くして驚きますが、
その様子を冷ややかに見つめていたマーベラスは「・・・前からあったか?・・・そんなもん」とケチをつけます。
ハカセの左腕にそんな大きな痣があったという記憶はマーベラスには有りませんでした。
ジョーも同様に疑い深そうにハカセのことを睨みます。
ハカセは疑われたのでムッとしたのか、乱暴に鎧を押しのけると
「あったよ!僕もずっと気になってたんだ・・・!」と言いながら、憮然としてシャツを着て、
腕の痣を隠してしまいました。

ルカは痣を見てビックリはしたものの、確かにマーベラスの言う通り、
そんな痣は見たことがないような気もして、また何だかよく分からなくなって、眉間に皺を寄せて考え込みますが、
鎧の方はハカセ本人が痣があったというのだから確かにあったのだと素直に受け取り、
「間違いないですよ!ドンさんは伝説の勇者!ドン・ドッゴイヤーだったんです!」と、
これでもうハカセが伝説の勇者であったことは確定したと決めつけて大興奮状態です。
ナビィも単純に鎧の勢いに乗っかって「ハカセ!勇者!勇者!ハカセ〜!」と大はしゃぎです。
ナビィはマーベラス達と同じくらいの期間ハカセを見てきているはずなのに、全く疑おうとしていない。
根が単純なのでしょう。

しかしマーベラスとジョーは「ホントか〜・・・?」と、もう完全に疑ってかかっています。
記憶喪失といい、痣といい、あまりにもハカセの言うことは唐突すぎるのです。
ただ、そうは言っても、そのハカセの言い分と辻褄が合う記事が雑誌に載っているのも事実なので、
完全否定することも出来ないのですが、
そもそもマーベラスとジョーは女性誌なんてウソばっかり書いているものだと偏見の目で見ていますから、
どうせいい加減な記事だろうと思い、ハカセが勇者だなどとは絶対に信じられません。

ただ鎧とナビィはもう完全にハカセが勇者だったと確信しており、
アイムも基本的にハカセの言うことを信じていますから、痣が有ったことでハカセ勇者説にかなり傾いています。
そうした皆の熱い眼差しを浴びながら、ハカセは
「そう言われれば・・・なんか記憶が・・・出そうで出ない!・・・あ〜、悔しいなぁ!」と頭を押さえて歩き、
大袈裟に苦悩しているような素振りを見せます。

マーベラスとジョーはハカセが記憶喪失だなどというのはもう絶対にウソだと決めつけてますから、
ハカセのそうした過剰な態度をクサイ芝居と決めつけて蔑んだ視線を送り、
2人して顔を見合わせて首を振って、ハカセのことは無視して、
マーベラスは座って新聞を読み始め、ジョーは筋トレを開始します。
もうハカセのウソには付き合いきれないという態度です。

しかしアイムは素直にハカセの言葉を信じて、
「どうしたら想い出せそうですか・・・?」と心配そうに後ろから覗き込んで尋ねました。
別にアイムはハカセが過去に勇者であってもなくてもどっちでもいいのですが、
ハカセが自分の過去を知らないというのは気の毒に思えたので、
何か過去を想い出す手助けが出来ないものかと思ったのでした。

するとハカセは即座に、ハッと思いついたように「・・・超美味しいもの・・・」と呟きます。
ハカセの意外な言葉にアイムが「え?」と問い返すと、
ハカセはアイムの方に振り向き、「今、不意に感じたんだ!・・・もしかして、勇者の僕は美食家だったのかも!」と
真顔で言いました。

これを聞いて、マーベラスはバカバカしくなって新聞を畳んで後ろに放り投げます。
要するにハカセは変な記事に便乗して記憶喪失のフリをして皆を騙して
美味しいものを食べに行きたいだけだとマーベラスは気付いたのです。
ハカセがいきなり記憶喪失のフリをする理由が分からなかったマーベラスでしたが、
分かってみれば、あまりにもくだらない理由であったので、もう呆れて言葉も出ない。
ジョーもマーベラスと同感であるようで、
ハカセのしょうもないウソに付き合わされた無駄な時間を取り戻すように筋トレにますます没頭していきます。

ルカはハカセのあまりに都合の良すぎる言葉にますます疑惑を深めてハカセの顔をまじまじと見つめますが、
アイムは素直にハカセの言葉を信じて「では、超美味しいものを召し上がれば、記憶が戻るかも!」と笑顔で
鎧やルカに話しかけ、鎧はそれに応じて「それでは行きましょうか!超豪華レストランへ!」と、
どんどん話を進めていき、何時の間にか、豪華レストランに外食に行くという話になってしまいます。
鎧はこれでハカセの記憶が戻れば、勇者パワーでザンギャックを一蹴出来ると、まだ妄想しているようです。
こうしてハカセを囲んで豪華ランチに出掛けることになり、ハカセは満足そうにニヤニヤ笑っています。

まぁ、このシーンを見る限りでは、
あの伝説の勇者の記事の胡散臭さはともかくとして、
ハカセが過去に伝説の勇者であったのかどうかは真偽は定かではありません。
そしてハカセが記憶喪失であったのかどうかについても、
マーベラス達が疑ってかかるのは加入時のハカセの想い出があるからであって、
視聴者はそのハカセ加入時の話をまだ知らないので、何とも判断のしようがありません。
まぁマーベラス達が疑っているのだから疑わしいのだろうと想像出来る程度です。

ただ、あの左腕の痣はどう見ても胡散臭く、
記事を見て、それに合わせるためにハカセが自分でマジックで書いたと思われても仕方ない代物だと思いますし、
最後の「美味しいものを食べたら記憶が戻るかも」というのは、
これはもうほぼ間違いなくハカセが美味しいものが食べたくてテキトーなことを言っていると見ていいでしょう。

そのあたりを総合して考えても、
やはりハカセは記憶喪失のフリや勇者のフリをしているだけだと疑われても仕方ない状況だと思います。
視聴者にそう思わせるサインは制作サイドはこのシーンで既に多少は発していますので、
一応、ハカセは嘘をついているという前提でここから先は話を進めていきます。

さて一方、その頃、地上のとある街では、人気の無い道をバスコがサリーを連れて歩いていました。
バスコは第39話のメガレンジャー篇でマーベラス達に出し抜かれて
メガレンジャーの大いなる力を奪取することに失敗して撤退して以来、3週間ぶりの登場です。

バスコが普段登場しない時に何処で何をしているのかについては不明なので、
ここでバスコが地上を歩いているというのが何のためなのかはハッキリとは分かりません。
ただ、バスコの拠点はあくまで宇宙空間のフリージョーカーにあり、地上には拠点は無いはずですので、
バスコが地上に居るというのは何らかの用件のためと考えた方がいいでしょう。
そしてバスコの地球における用件といえば、スーパー戦隊の大いなる力を集めることでありますから、
ここでも大いなる力を手に入れるための何らかの暗躍のために何処かに行こうとしている場面のように受け取れます。
しかし、この場面のバスコは何やらニヤニヤとほくそ笑んでおり、何か良いことがあったみたいです。
ということは、大いなる力集めで何かバスコにとって喜ばしい状況が生じたのかもしれません。

ところが脇道から出てきた人影が、この嬉しそうに歩くバスコに後ろから
「何か良いことでもあったか・・・?」と低くドスの効いた声で話しかけます。
その声にハッと驚いてバスコが振り返ると、
「・・・バスコ!」と言葉を続けて呼びかけた、その人影はダマラスでした。
「ダマラスのおっさん・・・!」とバスコは愕然として絶句します。

バスコは地上でダマラスに会ったことが極めて意外であったようで、かなり焦っている様子です。
つまりバスコはダマラスがワルズ・ギルによって出撃を禁じられていたことを知っていたのでしょう。
確かに、よく考えてみれば、第15話の時、ダマラスはバスコにマーベラス一味の抹殺を依頼しており、
ダマラス自身が出陣出来るのであればバスコにわざわざそんなことを頼む必要は無いわけで、
バスコがその依頼を受けたということは、
あの時点でバスコはダマラスが司令官のバカ息子の命令で地上に出撃出来ない状況にあるということは
把握していたはずです。

しかし、ならばワルズ・ギルが死んだ後、
バスコはこれでダマラスが地上に降りてくることが出来るようになったと考えなかったのでしょうか?
いや、おそらくそう予想したのでしょう。
だから第39話の冒頭、ワルズ・ギルの死を知って
バスコはマーベラス達が余計なことをしてくれたものだと困っていたのです。
それはつまり、ワルズ・ギルが死んだことでダマラスが地上に自由に降りてくることが出来るようになれば、
自分のやろうとしていることの障害になり得るという危惧がバスコに有ったということだったのでしょう。

あの時の考察では皇帝が乗り込んでくることを恐れていたのではないかとも考えましたが、
確かにそれもあるのかもしれませんが、
こうしてここでのバスコの焦りっぷりを見ると、
バスコはダマラスが地上で自由に行動することも警戒していたと解釈した方がいいように思います。

ただ、もしそうだとすれば、
バスコは第39話以降はいつダマラスが自分の前に現れてもおかしくないとばかりに、
もっと警戒していなければならないはずです。
ところがここではダマラスの突然の登場にバスコは驚いている。
つまりダマラスが地上に現れるのはバスコにとって現時点でも依然として意外なことだったのです。

つまり、バスコはダマラスが皇帝の命令でギガントホースに足止めを喰らった後、
拘束されたこともおそらく知っていたのでしょう。
おそらくギガントホース内に何らかの情報源を持っているのでしょう。
だからバスコはダマラスがまだギガントホースの牢屋の中だと安心して地上で何かをやっていたのです。
その地上で何かをやっていたためなのか、
ダマラスが昨日釈放されて皇帝から地上への出撃を許可されたということはバスコには伝わっていなかった。
だからバスコはここでいきなりダマラスに出くわして、驚愕したのです。

しかもバスコは単に驚いているだけではなく、どうやら身の危険を感じています。
しかし確かバスコとダマラスは手を組んでいたはずです。
どうしてそんなに警戒する必要があるのか?
いや、そもそもバスコは恐ろしく強いのですから、ダマラスをそんなに怖がる必要などないのではなかったのか?

だが、ダマラスが黙ってバスコへ向けて歩き出すと、サリーは殺気を感知して吠えながら逃げていき、
バスコは「チッ!」と舌打ちし、厳しい表情になります。
やはりダマラスが攻撃してくるつもりだということを確信したのです。
バスコは今まで見せたことのないような必死な顔になりダマラスの攻撃を迎え撃とうとして身構えますが、
ダマラスは一定の距離まで近づいたところで剣を振るい、衝撃波をバスコ目がけて飛ばします。

バスコはこの衝撃波を腕を組んで受けながら赤いオーラを発して怪人態に変身しますが、
なんとバスコは怪人態になったにもかかわらず、ダマラスの剣の発した衝撃波1つに吹っ飛ばされて
「うあああ!!」と無様に後ろに倒れ込んだのでした。
バスコ怪人態はゴーカイスクランブルを手で受け止めて弾き返したりするぐらい強力であるはずなのに、
ダマラスの強さはどうやらそれを上回るトンデモないものであるようです。
なるほど、これならバスコがダマラスと相対するのを警戒していたわけが分かります。

しかし、バスコよりもダマラスの方が強いのはこれで分かったが、
分からないのは、どうしてダマラスがいきなり仲間のはずのバスコを襲ったのかです。
ダマラスが皇帝から与えられた任務はマーベラス一味の抹殺のはずです。
むしろバスコはそのための仲間のはずなのに、いきなり仲間割れをしているのはどういうことなのか?

それについては次のダマラスのセリフで明らかになります。
ダマラスは倒れ込んだバスコにゆっくり近づきながら
「貴様・・・その姿になっておきながら、海賊どもを倒さなかったとは・・・!」と怒気を含んだ声で言います。

ダマラスがバスコに対して立腹しているのは、第31話のオーレンジャー篇の時、
バスコが初めて怪人態に変身してマーベラス達を圧倒し、全員を戦闘不能状態に追い込み、
全員を簡単に殺せる状況にあったにもかかわらず、何故かトドメを刺さずにその場を去った件です。
あの時、ダマラスはギガントホースからバスコの変身を察知し、
バスコが遂にマーベラス達を倒すものだと期待していました。
ところが、バスコがその期待を裏切ってマーベラス達をわざと殺さなかったので、怒っているのです。

今となってはバスコを地球に呼び寄せたのは完全にダマラス1人の意思であったことが分かります。
ダマラスがバスコを地球に呼び寄せた理由は、
ワルズ・ギルから自ら出撃することを禁じられ、作戦をまともに立案実行することさえ許されなかったダマラスが、
ザンギャック軍とは別の、ワルズ・ギルには邪魔されない系統で自分の手駒として動く者が必要だったからです。

つまりダマラスから見てバスコは自分の代わりに地上に降りて
マーベラス一味を倒してくれる助っ人であったはずなのです。
そのつもりでダマラスはバスコを呼び寄せた。
それはバスコが自分に次ぐぐらいの武力を持つ者であり、
ザンギャック軍の命令系統とは別に独立して動ける者だと見込んだからでした。

ただ、ザンギャック軍の軍人でないバスコはダマラスの部下ではないので、ダマラスの命令に従う義務は無い。
そこでダマラスはバスコが「宇宙最大のお宝」というものを探していることを思い出し、
第8話の段階でダマラスが掴んでいた「地球に宇宙最大のお宝があり、
それを見つけるために必要な34のスーパー戦隊の大いなる力もある」という情報を教えるのと引き換えに、
バスコに地球でマーベラス一味を抹殺するよう求めた。

この取引に応じてバスコが地球へやって来たのが第15話です。
この時、ダマラスがワルズ・ギルには隠れてバスコを支援したり、コッソリとバスコの船に忍んでいったりしたのは、
ダマラスからバスコへの依頼をワルズ・ギルに秘密にしておくためでした。

ところがバスコは前もって「宇宙最大のお宝」に関する何らかの情報を得ており、
ダマラスからの情報と合わせて、この時、「宇宙最大のお宝」を手に入れる何らかの計画を組み立てたと思われます。
そしてダマラスがワルズ・ギルの出撃禁止命令で自由に動き回ることが出来ないという事情も知った。
基本的にはバスコはダマラスには戦っても勝てないので従っていたと思われますが、
この時以降、ダマラスが自由に動けず、自分に頼るしかない状況であるのを良いことに、
好き勝手に振る舞うようになり、マーベラス達と戦っても、マーベラス達をあえて倒そうとはせず、
ダマラスともあの第15話以降は接触を断ったのだと思われます。

つまり、バスコはダマラスから情報を貰うだけ貰って、持ち逃げしたような格好となり、
その後は地球で独自の考え方に基づいて好き勝手やるようになっていったのです。
ただ、それでも第23話でバスコがゴーミンを借りたりしているように、
ダマラスとしてもバスコがマーベラス一味と戦うと言う限りは、
期待を込めてバスコの求める協力は出来る範囲でしてきたのでしょう。
ところがバスコはそのダマラスの協力も悉く裏切り続け、
遂には第31話でバスコが怪人態になってマーベラス一味に完勝しながら倒さなかったのを見て、
ダマラスはバスコがマーベラス達を殺すつもりがないということにハッキリと気が付き、
ここでバスコとダマラスの協力関係は完全に終わりを告げたのでした。

そうして、それ以降、ダマラスにとっては自分の依頼を裏切ったバスコは、
マーベラス一味に次ぐ怒りと恨みの対象となっていたのです。
だから、地上で活動出来るようになったダマラスがバスコに怒りの攻撃を加えたのは当然といえば当然のことでした。
また、バスコもダマラスを騙して恨みを買っているという自覚はありますから、
ダマラスといきなり出くわして焦ったのです。

そうして叩きのめしたバスコに向かってダマラスは、第31話の時の件を追求し、
「何故、手加減をした・・・?」と責めます。
どうして自分の依頼を無視したのかと、いったいどういうつもりなのかと
ダマラスは怒りにかられて責めているのです。
だからダマラスはどういう理由でバスコがマーベラス一味を殺そうとしないで放置しておくのか、
その理由を徹底的に追及しようとしているわけではない。
そんなことはダマラスにとってはあまり興味の無いことなのです。

ところがバスコにとっては、それは絶対に言いたくないことのようで、
立ち上がりながら「・・・さぁ〜て、何のことだか・・・?」と、手加減をしていたこと自体を認めようとはせず、
とぼけようとします。
これがあまりに白々しい不誠実な態度だったので、
ダマラスは「とぼけるなっ!!・・・貴様の力をもってすれば、確実に倒せたはずだ・・・!」と怒鳴りつけます。

ダマラスはあくまでバスコが自分の命令を聞かなかったことについての怒りをぶつけており、
ダマラスが確認したいことは、バスコが自分に逆らうつもりなのか否かということのようでした。
いや、バスコはもうとっくにダマラスを裏切っているわけですから問答無用でぶっ殺せばいいはずなのです。
それなのにダマラスはバスコの自分への服従の意思の有無をまだ確かめようとしています。
つまり、ダマラスはここにバスコを殺しに来たわけではなく、
バスコを再び従属させるためにやって来たようなのです。
それはつまり、再びバスコを使おうとしているということです。
そういうわけで、ダマラスの興味の向いているのは、バスコがマーベラス達を殺さない理由ではない。

そのことに気付いたバスコは、「ま、いろいろ事情があるんスよ・・・」と適当に誤魔化しつつ、
ダマラスに対してヘコヘコして下手に出てみせます。
バスコとしては、自分がマーベラス一味を殺さずに泳がせている理由はあくまで
ダマラス、いやザンギャックには知られたくないようです。

ダマラスはバスコがへりくだった態度をとったので一応敵意は無いのだと思い、少し安心したのか、
「今度こそ完膚なきまでに海賊どもを叩きのめす!・・・貴様も手を貸せ!」と本題を切り出します。
つまり、ダマラスはバスコをマーベラス一味討伐作戦に協力させるためにやって来たのです。
だから、マーベラス一味のところに行く前にダマラスはバスコの居場所を探し出してやって来たのです。
ただ、怒りと恨みは溜まってますから制裁はしっかり加えて、屈服させた上で作戦を手伝わせるつもりなのです。

しかし、バスコは一度裏切った男です。
そんなヤツをわざわざ使う必要は無いとも思えるのですが、
どうしてダマラスはそんなにバスコに手伝わせたいのか?
それはやはりマーベラス一味が手強いことは分かっているので、
それと戦うためにはバスコぐらい腕の立つ配下が欲しいからです。

ただダマラスは自分が単独ではマーベラス一味に負けそうだと思っているわけではありません。
万が一にも自分が負けるなどとは思っていません。
ただ、相手は6人もいるわけで、
腕の立つ武人が自分1人だけでは何人か取り逃がしてしまう可能性があると思ったのです。

特にダマラスが恐れたのは主犯格のマーベラスを取り逃がすことでした。
6人を相手にしているうちに一番取り逃がしてしまう可能性が高いのは、やはり一番腕の立つマーベラスでした。
主犯格を取り逃がしてしまっては意味は無いわけで、
だからこの作戦を完璧に成功させるためには、ダマラスは自分は出来るだけマーベラスを集中して戦い
倒したいと思っていました。
それに、ダマラスの武人としての誇りを満足させるための戦いの相手は、
やはり一味の中で最も腕が立ち、最も賞金額の高い強者であるマーベラスが相応しいと思えました。

だから、マーベラス以外の5人を一手に引き受けてくれる強力な助っ人が必要だったのです。
そしてダマラスの頼める範囲内では、そこまで強力な助っ人になり得るのはバスコぐらいだったのです。
気に食わない奴だが、仕方がないとダマラスは思い、バスコは殺さずに使うことにしたのでした。

バスコもダマラスのそういう思惑は分かりますから、ダマラスは自分を殺せないと踏んで
「嫌だと言ったら?」とカマをかけます。
実際、バスコはマーベラス達を殺すのは不都合なので、マーベラス一味を倒す作戦に協力などしたくはない。
まだ駆け引きは出来るはずだとバスコは思っていました。

しかしダマラスは間髪入れず、バスコの鼻先に剣の切っ先を突きつけ、
「・・・死ぬだけだ・・・それでも一向に構わんがな・・・」と返答しました。
ダマラスはもう今更バスコとの取引などする気はありません。
作戦に協力しないのなら殺すつもりでした。
問答無用というわけです。
バスコはダマラスの作戦に協力してマーベラス達を殺す手伝いをしなければ、
この場でダマラスに殺されることになります。
しかしバスコはどちらも選びたくない。

その時、「キィ〜ッ!」と吠えてサリーが飛び込んできてダマラスに襲い掛かります。
主人のバスコの危機を救おうとしたのですが、これは無謀で、
ダマラスは振り向きざまサリーを一閃、サリーは悲鳴を上げて吹っ飛ばされます。
すると、その一瞬の隙を狙い、バスコはダマラスに斬りかかります。
こうなったらイチかバチかダマラスを倒してやろうと思ったのです。

が、ダマラスはこのバスコの不意打ちに落ち着いて対処して、何度か刃を交えて、
すぐにバスコを押さえこんでしまい、「この私に勝てると思っているのか・・・?」と凄みをきかせました。
バスコは座り込んだまま「フン!」と悔しがります。
不意打ちも通じず完敗で、そのまま殺されても文句を言えない状況で、まだ殺されてはいない。
こうなったらダマラスに従う以外ここは仕方がないと悟りました。

そうしてバスコはダマラスに背を向けてゆっくり立ち上がり、両手を上げて剣を地面に落とし、
「分かりました・・・」と言いながら変身を解いて人間態に戻り、
「やりますよ・・・ダマラス様・・・」と不承不承ながらダマラスの命令に従う意思を表明し、
忌々しそうに舌打ちするのでした。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
にほんブログ村 にほんブログ村 テレビブログ スーパー戦隊へ
にほんブログ村
posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 23:55 | Comment(0) | 第42話「宇宙最強の男」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月24日

第42話「宇宙最強の男」感想その4

ダマラスとバスコが手を組んでマーベラス一味を討伐するという、かつてないほどの危機がマーベラス一味に迫る中、
そんなことは想像もしていないハカセ達は呑気に高級レストランで昼食をとっていました。
さっき、ガレオンの船室でアイムが見つけた女性誌の記事にハカセそっくりの勇者のことが載っており、
そのことを問い質したところ、ハカセが実は記憶喪失で過去のことを覚えていないと告白し、
ハカセが昔、伝説の勇者であった可能性が急浮上、
しかもハカセは美味しいものを食べれば過去の記憶を想い出すかもしれないと言い、
それを真に受けた鎧とアイムがハカセを連れてさっそく高級レストランへ来たのです。
マーベラスとジョーはハカセの言うことを信用しておらず、一緒に行くことを拒否してガレオンに残りましたが、
同じくハカセの話に懐疑的なルカは高級レストランの豪華な食事目当てについて来ています。

レストランで注文した料理は素晴らしく美味しく、
ハカセは「うん!美味しい、美味しい!やっぱ最高だねぇ」と夢中になって食べています。
そうしたハカセを見て、隣に座る鎧は「どうです?・・・なんか、思い出せそうですか?」と
期待に目を輝かせて質問してきます。
美味しいものを食べればハカセの勇者だった頃の過去の記憶がすぐに甦ってくるものだと期待しているのです。

しかしハカセは食べるのに夢中で、「ん?・・・何が?」と邪魔くさそうに問い返します。
これを聞いて鎧は「何がって・・・」と愕然とします。
記憶を取り戻すために食事に来たはずなのに、
ハカセが食事に夢中になってすっかりそのことを忘れているのではないかと思い、
鎧はキツい口調で「ドンさんの過去のことですよ!」と強調します。
するとハカセは「・・・あ・・・」と、そういえばそうだったという顔をして慌てて、
ぎこちなく鎧に笑顔を向けつつ「も、もう一息かなぁ・・・?」と言って、ニヤケ顔で食事を頬張るのでした。

鎧やアイムはハカセの言うことはなんでも素直に信じてしまうので、それで納得して、
もう一息でハカセの記憶が戻るに違いないと思って納得しますが、
しかし、これはどう見てもハカセの態度は怪しい。

だいたい、美味しいものを食べれば記憶喪失が治るなんて変な話です。
今までにもハカセは高級レストランで美味しいものも食べたことは何度もある。
その時には記憶喪失が治ったりしていないのだから、
美味しいものを食べれば記憶喪失が治るというのは明らかに嘘でしょう。

そして、そんな嘘をつくということは、ハカセ自身が真面目に記憶喪失を治そうという気が無いということです。
しかし記憶喪失の方がいいなんて思う人がいるわけがない。
但し、それは本当に過去の記憶が無い人の場合です。
実際は過去の記憶がある人ならば記憶喪失ではないわけだから、記憶喪失が治らなくても平気です。
つまり、やはりハカセのこの態度は、記憶喪失のフリをしている可能性が濃厚です。

ルカはハカセの不自然な態度を見て、
ますますハカセが記憶喪失のフリをしているのではないかという疑惑を深めます。
しかし、ならばどうしてハカセは記憶喪失のフリなどするのか?
ルカは、それはハカセが自分達と出会った時に言っていた過去の話を無かったことにして、
自分の過去を雑誌に載っていた伝説の勇者であるかのように言い張るための手段なのではないかと疑い始めました。

雑誌に載っていた伝説の勇者は確かにハカセと顔も名前も同じであり、ハカセ本人であるように思えました。
しかも痣まで一致しているのですから、
ルカもあそこまで一致したら、あれはハカセなのではないかと思いかけていました。
しかし、レストランに来てからのハカセの態度があまりにいい加減で調子が良すぎて、あまりに怪しいので、
ハカセの記憶喪失が演技のような気がしてきて、
ならばやはりハカセは伝説の勇者のフリをしようとしているように思えてきました。
つまり、たまたま顔も名前も痣も一致している伝説の勇者のフリをしようとしているのです。

ちょっと顔も名前も痣もということになると偶然の一致が過ぎるような気もしますが、
ともかくハカセが記憶喪失であるというのは限りなく怪しいのであり、
ハカセがそんなくだらないウソをついているとしたら、
ハカセが伝説の勇者である可能性も低いはずだとルカは思いました。
ただ、不自然なほど、あまりにも偶然の一致点が多すぎるから、
完全にハカセが嘘をついているという確証も無いが、それにしても怪しすぎる。

ルカは疑惑の眼差しでハカセの顔をじ〜っと覗き込んで、「・・・あんたホントに伝説の勇者?」と問いかけました。
ハカセはギクッとして、目が泳いでルカから視線を逸らします。
ハカセが記憶喪失であるという前提に立てば、ハカセが伝説の勇者であったのかどうかは、
ハカセにはその真偽は分からないはずですから、ハカセに質問しても仕方ないはずです。
だからルカがハカセに問いかけてくるということは、ハカセの記憶喪失そのものを疑っているということです。
ハカセはそのことに気付いて、ギクッとしたのですが、
アイムと鎧はルカの言葉を何気ない一言だと思って気軽に聞いています。

ただ、ルカもハカセが記憶喪失のフリをしているのではないかという疑惑は持っていますが、
ハカセがしらばっくれる以上、ハカセが伝説の勇者でないという根拠を持っているわけではない。
確かに雑誌に載っていた伝説の勇者はハカセ本人に限りなく近いのです。
しかしルカも疑うからにも何らかの疑う理由は示さねばならない。
それはもうルカの主観を言うしかなかった。
ルカの知るハカセの過去と伝説の勇者との間にルカが感じる違和感が、
ルカがハカセが伝説の勇者ではないと思う根拠でした。
ハカセの方をじろじろ見ながら、
ルカは「初めて会った時のアレは、いくら何でも、勇者とは言えない気がするけど・・・」と言います。
そうしてルカが語ったのは、ルカが初めてハカセと出会った時の想い出でした。

回想シーンは、何やら寂れた星のボロ小屋におしとやかそうな淑女が訪ねてきて
「船の修理をお願い出来ますか・・・?」と依頼をするところから始まります。
淑女の依頼を聞いたボロ小屋の主は白衣を羽織った男で、忙しそうに机の上に置いた小物の修理作業の手を止めつつ
「はい、もちろん!・・・今の仕事が終わったらすぐに!」とにこやかに返答します。

この淑女風の女ですが、よく見るとルカです。
やけに清楚なヒラヒラスカートのワンピースを着て、髪型がウェーブがかかっているので、
パッと見はルカの印象ではなく、しかも声が普段とは全く違う、
可愛い子ぶりっ子した甘い猫撫で声なので分かり辛かったのですが、これは声色を変えているのであり、
そういうのも含めて、変装のようです。
どういうコンセプトの変装なのかというと、善良な一般市民のフリであるようです。

つまり、どうやらガレオンが故障して修理を依頼しようとしているようなのですが、
お尋ね者の宇宙海賊の船の修理など、普通の修理屋は怖がって引き受けてくれないのです。
宇宙海賊そのものが怖いというのももちろんあるが、
宇宙海賊に手を貸したなどとバレたらザンギャックにどんな酷い罰を受けるか分からないという恐怖の方が大きい。
だから、一般の修理屋は宇宙海賊に関わり合いになってくれないので、
そういうところに修理の依頼をする場合はこのように一般人のフリをして接触するのです。

そうしてルカが変装して修理を依頼しに来たのがどうしてまたこんなオンボロな小屋なのかというと、
おそらく、この寂れた星では宇宙船の機器の修理を出来るようなところは、
このオンボロな小屋で営んでいる便利屋だけだからであるようです。

たぶん、この星はザンギャックの引き起こした戦争か何かで荒廃してしまった無人の星であるようで、
宇宙船が立ち寄ったりするだけの星のようです。
宇宙航路における、田舎の寂れたドライブインのような星と言っていいでしょう。
そこには立ち寄った宇宙船の乗員を相手にする店が何軒か点在し、
立ち寄る宇宙行商人から物資を買ったりして細々と暮らしているようで、
そのうちの一軒の店が便利屋になっていて、主に機械の修理なんかを請け負っているようです。

ここの星の店の者は皆、他の星からの移住者だが、
この便利屋の店主もやはり他の星からの移住者で、この田舎の寂れた星でボロ小屋で1人で商売をしているのだが、
いかに寂れた星といっても、多少は宇宙船の行き来があり、
しかも機械の修理が出来るのがこの便利屋しか無いわけですから、そこそこ商売は繁盛して忙しいようです。
で、その便利屋を1人で営んでいる白衣の男がハカセであったのです。

一般人の女性に化けてガレオンの修理を依頼しに来たルカは、
こうして寂れた星の便利屋の店主であったハカセと初めて出会ったのでした。
ハカセは快くルカの依頼を受けましたが、先に引き受けた仕事がつかえていて、
ルカの依頼をこなすのはその後になるというのです。

しかしルカとしてはどうしても急いでガレオンを修理したい事情があるようで、
慌ててハカセに縋って「今すぐお願い!急いでるの!」と相変わらず乙女チックな猫撫で声で
目をウルウルさせてお願いします。
するとハカセは「・・・それは困りましたねぇ・・・」と言いながら少し困った顔でルカの方に振り向いて立ち上がると、
すぐにニッコリ笑って、「じゃあ、すぐやります!」と、
他の仕事の前に、今すぐルカの依頼を片付けると快く約束したのでした。
目の前でお客さんが困っているのを見て、そのまま放っておくことは出来ない親切心の持ち主であるようです。

ところが、その直後、ニコニコしてルカと向き合って立つハカセの視線がルカの顔からふと逸れて、
何気なく後ろの壁の方に向いた瞬間、ハカセの視界に壁に貼られた賞金首の手配書が目に入りました。
この手配書は最近この星に立ち寄ったザンギャック軍の憲兵隊が貼っていったもので、
なんでも凶悪な3人組の宇宙海賊だという話でした。
その3人分、3枚の手配書のうちの1枚、メンバーの紅一点の女海賊の手配写真が、
ふと目の前の女性に似ているような気がして、ハカセは再び視線を目の前の女性の顔の方に戻します。

ニコニコ微笑んでいるその女性の顔を見たハカセは「ん?」と、もう一度、手配書の写真の方に視線を戻します。
やはり同じ顔のように見えました。
ハカセは驚いた顔で「え?」と目の前の女性、すなわちルカの方をまた素早く見ます。
ルカも便利屋の店主の様子がどうもおかしいことにようやく気付き、
ルカの顔からは思わず笑顔が消えて、眼光が鋭い、女海賊の怖そうな顔になります。
それを見て、ハカセはまた手配書の方と目の前の女性の顔を見比べて、
間違いなく目の前の女性が実は宇宙海賊の一味だったことを確信し、
「ううう!宇宙海賊〜!?」と悲鳴を上げて、いきなりルカを突き飛ばして走り出し、
小屋の外に一目散に逃げ出そうとします。

しかし慌てて駆け出したため、ハカセのズボンが飛び出していた金具に引っ掛かり、
ズボンがずり下がって足に絡まり、
ハカセは「うえええ!?」と叫びながら小屋のドアを押し開けて四つん這いに倒れ、
パンツ一丁になった尻をルカに丸見えにして突き出しました。
しかもパンツの後面にはカエルのアップリケが貼ってあるという、今と変わらず酷いセンスのパンツでした。
ルカは思わずハカセの尻のカエルを見て「・・・あ!」と声を上げます。

一方、ハカセは必死で起き上がると、ズボンを持ち上げただけでしっかり履く余裕も無く、
「あああああ!!」と喚きながら、パンツの尻のカエルを見せたまま、
ルカから一目散に逃げて走り去っていったのでした。
それを見送りながら、ルカは「ちぇっ・・・バレたか・・・!」と舌打ちします。
結局、自分が海賊だとバレてしまったので、便利屋はこれでもうビビって修理を引き受けてくれない。
こうなれば諦めるしかない。困ったことになったと思いつつ、
それにしても便利屋が尻のカエルのアップリケを見せたまま逃げていく姿があまりに滑稽で、
ルカは呆れつつ、強い印象に残ったのでした。

ここで回想シーンは一旦終わり、現在の高級レストランの場面に戻ります。
ルカはそのカエルのアップリケの想い出話をして、
「何処の星に行ってもビビられたけど・・・あれは情けなさすぎ!」と呆れ顔で苦笑いしたのでした。
つまり、ルカが言いたいことは、あんなカエルのアップリケを尻に貼ったパンツ丸出しで逃げたような
過去のハカセが伝説の勇者とか、有り得ないだろうということだったのです。

そのルカの話の中でのハカセのビビりっぷりがあまりにも面白かったもので、
初めてその話を聞いたアイムも鎧も思わず吹き出してしまいました。
それを見て、ハカセはムカッとして
「ちょっ・・・今そういう話じゃないじゃん!!」と大声で怒鳴りながら立ちあがり、
レストラン中の注目を集め、失笑を買ってしまいました。

確かに、ルカの話は自分と出会った時のハカセがカッコ悪かったからといって
勝手に勇者のはずがないと決めつけているだけであり、ルカの勝手な主観を述べているだけです。
そもそも、ハカセの言い分に従うならば、ルカと出会った時点のハカセは記憶喪失になっていた状態なのですから、
勇者としての記憶が無く、それゆえ情けない行動をとったとしても、
それがハカセがかつて勇者であったという事実を否定する根拠にはならないはずです。
だからルカの言っていることは確かにこの場において適切な話ではありません。

ただ、それはハカセが記憶喪失であればの話であり、
ルカはその大前提を疑っており、ハカセもルカにそれを疑われてしまっていることは自覚して、
さっきは目が泳いでしまっていたぐらい弱気のはずです。
だから、ここでハカセがいきなりルカに対して逆ギレして怒鳴るというのは、少し変です。
ハカセが今、ルカに対してそんなに強気に出ることは出来ないはずなのです。
これはおそらく、思わずハカセも感情的になってしまったというところなのでしょう。

では何が原因でハカセがキレたのかというと、アイムと鎧に笑われたことです。
せっかくアイムと鎧が自分のことを伝説の勇者だったかもしれないと思って尊敬の眼差しを送ってくれていたのに、
ルカが自分の過去のカッコ悪い話などしてバカにするから、
結局またアイムと鎧にも笑われて、侮られてしまったことが腹立たしかったのでした。

このハカセの逆ギレから類推するに、
ハカセが記憶喪失のフリをして自分が伝説の勇者であるかのように見せようとしている目的は、
単にアイムや鎧を騙して美味しいものを食べるためであったのではなく、
皆に尊敬されたかったからであろうと思えます。

ハカセは日頃の自分がマーベラス達に比べると弱くてカッコ悪いから、皆にバカにされていると感じています。
特に昨日の戦いでは敵味方問わず、皆にバカにされて笑いものにされてしまったと思ってムカついていました。
だから記憶喪失のフリをすれば、自分がもしかしたら雑誌に載っている伝説の勇者なのかもしれないと
仲間たちに思わせることが出来て、それで皆が自分のことを一目置いてくれれば、
今後は自分のことをあまりバカにしなくなるのではないかと考えたのでしょう。

つまりハカセは自分が伝説の勇者だと強く主張するつもりはない。
記憶喪失のフリをすることによって、
皆に「ハカセは伝説の勇者だったのかもしれない」という意識を植え付けることさえ出来ればよかったのです。
だから鎧の言うように、記憶を取り戻して勇者パワーでザンギャックを倒すとか、
そこまで話が飛躍すると困ってしまう。
ハカセにはそもそも勇者の記憶など無いから、記憶が戻るなんてこともないし、
記憶が戻ってザンギャックを1人で倒すことなど出来るはずがない。
だから、記憶を戻すという方向で話が進むのはハカセとしても、あまり歓迎出来ない話のはずでした。

それなのに、ハカセは鎧やアイムがあまりにも見事に騙されるもので、つい調子に乗ってしまって、
ちょうど美味しい食事を食べに行きたかったので、悪戯心を起こして、
美味しいものを食べれば記憶が戻るかもしれないなどと言ってしまった。
それでハカセは逆に記憶が戻るかもしれないと、やたらと鎧やアイムを期待させてしまって自らを窮地に追い込み、
更に冗談が過ぎたためにルカに疑われてしまいました。
そうしてルカに過去の恥ずかしい話を暴露されて、結局はアイムや鎧の尊敬を再び失ってしまったと思い、
ハカセは苛立って思わず怒鳴ってしまい、
そして、自分が調子に乗ったために結局失敗したのだと後悔しました。

しかし、一方、そんなハカセの心中は知らず、
アイムはむしろ、さっきのルカの話の続きが気になるようで、
「そんなハカセさんが、どうして海賊になったのですか・・・?」とハカセに質問します。

ルカの話だと、ハカセはまだその時点では便利屋で、ルカが海賊だと気付いて怖がって逃げ出したのであり、
そのままではハカセとマーベラス一味とは無関係のままお別れになってしまいます。
しかし結局ハカセはマーベラス一味に入ったのであり、
ならばいったいどういう経緯で、ルカの話の後、ハカセがマーベラス一味に入ったのか、
アイムは俄然興味が湧いてきたのでした。

そもそも、経緯以前に、ルカが海賊だと気付いただけで何もされてもいないのに
パンツ丸出しで逃げるほど怖がっていたようなハカセが、
どうして最終的には自分自身も海賊になろうと思ったのか、どうにも謎でした。
鎧もアイムと同じように疑問に思ったようで、パンを口いっぱいに頬張りながら
「おへもひひないふ、ほえ!(俺も聞きたいです、それ!)」とハカセに言います。

2人の質問をいきなり向けられて、ハカセは立ち上がったまま「・・・それは・・・」と返答に困りました。
自分がマーベラス一味に加入した時の話は、アイムや鎧にはあまり知られたくないのです。
それはさっきのルカの話の続きですから、当然あまりカッコいい話ではない。
また笑われてしまうかもしれないのがハカセは嫌だったのです。

それでハカセは思わず、笑顔で「・・・もちろん男のロマンっていう・・・」と、
また適当に美化した話をしようとしますが、
そのハカセの言葉を「それはね!」とルカが横から出てきて遮り、ハカセの肩を掴んで強引に席に座らせます。
ルカはハカセが嘘ばっかり言うので呆れて、自分が本当のことを言わないといけないと思ったのでした。
そうしてルカはアイムと鎧に向かって
「・・・ザンギャックとやり合ってるうちに、ガレオンのメインコンピューターが壊れちゃって・・・」と、
さっきの想い出話の続きを真実ありのまま語り始めたのでした。

ここで再び回想シーンとなります。
さきほどのルカとハカセの初対面のシーンは夕方ぐらいでしたが、今度は夜のシーンで、
場所は停泊中のゴーカイガレオンです。

このハカセが便利屋をやっている星で何らかの理由でザンギャック部隊と戦闘になったマーベラス一味は
この時点では3人、すなわち、マーベラス、ジョー、ルカの3人です。
つまり第34話の回想シーンでマーベラスとジョーがルカを仲間に引き入れた少し後の頃の話です。

3人はザンギャック部隊は倒したものの、何故かガレオンのメインコンピューターが動かなくなってしまい、
3人の手には負えない重症の状態であるようで、ガレオンを発進させることが出来なくなってしまったようです。
だから停泊中というよりは停止中と言った方が正確な状態です。
このままではザンギャックの増援がやって来て、動かないガレオンは格好の標的となってしまう。
かといってガレオンを捨てて逃げるわけにもいかない。

それで慌ててルカがこの星で宇宙船の機器の修理を出来る者を探したら、一般の便利屋が1軒あるだけだった。
それで海賊であることを隠して一般女性に変装して依頼に行ったが、
海賊だということがバレて便利屋の店主(ハカセ)はパンツ丸出しで逃走してしまい、
ガレオンの修理を出来る望みは絶たれた。

夜になってガレオンに戻ってきたルカから事の顛末を聞いたマーベラスは、
ガレオンの船室で「はぁ〜!マジでどうにもなんねぇのかよ!?」と困り果てて床に座り込みます。
ジョーも焦った顔でマーベラスの後ろをウロウロしており、
ナビィもマーベラスの傍らで「あ〜、困ったねぇ〜」とボヤいています。

と、その時、「あ?」とマーベラスが窓の外に何かが動いているのに気付いて、
立ち上がって素早く銃口を向けます。
ザンギャックが早くも攻めてきたのかと思ったのでした。
ところが窓の外に居たのはザンギャック兵ではなく、白衣を着たマーベラスの見知らぬ男でした。
白衣を着た男がロープでよじ登ってきてぶら下がり、銃口を向けられて慌てて
「う、撃たないでぇ!撃たないでぇ〜!!」と必死で命乞いをしています。

その白衣の男を見たルカは「あ・・・!」と驚きました。
その男の顔に見覚えがあったのです。
窓の傍に駆け寄ったルカは男の顔を覗き込んで「アンタ・・・?」と目を疑います。
その男は、さっきパンツ丸出しで逃げ去ったはずの便利屋の店主だったのです。

便利屋の店主、すなわちハカセはロープに必死にぶら下がりながら
「壊れたの、どこですか?・・・見ますから!」と叫びます。
というか、早く助けてやらないと、今にもロープから落っこちそうですが、
ハカセと初対面のマーベラスとジョーは、窓の外の変な男がいきなり修理屋みたいなことを言い出したので、
事態が呑み込めず「あぁん・・・?」と戸惑います。
ただ、ルカだけはさっきの経緯がありますから、
ハカセが自分の依頼したガレオンの修理をするためにやって来たことを理解し、
助けだしてガレオンの中に連れて入りました。

しかしルカにはどうしてハカセが来たのか、よく分かりませんでした。
さっきの依頼については、確かにハカセは「すぐやる」とは言いましたが、
あれはあくまでルカが一般人のフリをしていたから成立した約束であり、
ルカの正体が海賊だとバレた時点であの約束はご破算になっているはずでした。

一般人の船を修理するのと海賊の船を修理するのとでは、修理屋の負うリスクは雲泥の差があります。
海賊の船の修理など、ザンギャックが恐ろしくて、普通の修理屋は絶対にやりたがらない。
ルカも自分達の船を修理した修理屋がザンギャックに睨まれるのは気の毒だと思っています。
しかし先ほどは非常事態だったので、便利屋を騙してガレオンに連れていって、
海賊船であることを隠して修理させるつもりでいました。
騙されたということであれば、便利屋も大したお咎めも受けないだろうと思ったのです。

しかし海賊だとバレてしまった以上は無理矢理に修理させることは出来ませんでした。
ルカはさっきも逃げるハカセを追い駆けて捕まえてガレオンに連行して
無理矢理脅して修理させることも可能でしたが、あえてそうはしませんでした。
嫌がる一般人を無理矢理脅して従わせるのはルカの趣味ではありませんでしたし、
それより何より、脅されて無理矢理であったとしても、海賊船だと承知した上で修理したとなれば、
便利屋がザンギャックに酷い目に遭わされるのは明白だったからでした。

つまり、ルカの正体が海賊だと知られてしまった以上、ルカはむしろ便利屋とは関わり合いになりたくなかった。
海賊と知った上で自分と関わり合いになれば、便利屋が不幸になるからです。
そして当然、さっき便利屋は海賊と関わり合いになることを恐れて逃げたのだから、
海賊である自分と関わり合いになりたいなどと思うはずはないとルカは思っていました。

ところが便利屋は海賊船の修理だと知った上で、自ら進んで修理にやって来たのです。
確かに修理をしてくれること自体は嬉しかったが、ルカは便利屋に対して無性に腹が立ちました。
せっかく見逃してやったのに、わざわざ自分から海賊と関わり合いになりに来るなんて信じられないと思ったのです。
ルカは自分の親切が無にされたような気がして苛立ち、ハカセを船室に連れてくると
「どうして?さっきはあんなにビビってたクセに!」となじりながら、乱暴に引っ立てます。

マーベラスやジョーも、どうやらこの白衣の男がさっきルカが言っていた、
海賊だとバレてしまったので修理を頼めなくなってしまった便利屋なのだと気付き、
不可解なものを見るようにハカセを睨みます。
マーベラス達は自分達がザンギャックに逆らう宇宙海賊であるというだけで一般人から煙たがられ、
関わり合いになることを迷惑に思われているのは仕方ないことだと思いつつ、
時には人々のために戦ったりもしていた身としては、
あまりに厄介者扱いばかりされることには理不尽も感じていました。

それだけにハカセの親切は本心では嬉しかったのだが、
海賊が相手だと分かっているのに親切にしてくるハカセの考えが理解出来ませんでした。
相手が海賊だと知った上で手を貸すということはザンギャックに逆らうということであり、重罪です。
そのことの重大な意味が分からないほどバカなのか?
あるいはよほど無鉄砲なのか?
いや、そのどちらでもないはずです。
何故なら、さっきハカセはルカが海賊だと知ってビビってズボンも履き忘れるほど慌てて逃げ出したからです。

つまり、この便利屋は海賊に手を貸すことのリスクはちゃんと知っているし、
そのリスクを恐れる心もちゃんと持ち合わせてるはずなのだと、マーベラス達は思いました。
それなのにどうして、この便利屋はわざわざ自分の意思で修理に来たのだろうかと、
マーベラス達は不思議に思いました。

ルカのなじる言葉を聞いたハカセは、
自分がルカが海賊だと知ってビビって逃げ出したからルカがそれを察して身を引いてくれたのだと悟ります。
それはつまり、自分がザンギャックに睨まれることを恐れて約束をご破算にして逃げたのだと
思われていたということを意味します。
それは誤解だと思い、ハカセは少し憮然として、俯きながら
「僕は・・・一度引き受けた仕事については・・・ちゃんと約束を守るって決めてるんだ・・・」と、ブツブツ言い返します。
そして続けて「それに・・・僕の故郷も、ザンギャックに滅ぼされたから・・・」と不機嫌そうに言います。

どうやらハカセは、ルカに見くびられていたことに少し腹を立てているようなのです。
ハカセはルカが海賊だと知っても、決して約束をご破算にしようとは思っていませんでした。
ザンギャックに睨まれることを恐れてもいませんでした。
だから、自分が修理の依頼を受けたのが海賊だと知ったハカセは近くに停泊している海賊船を探し出し、
これがさっきの依頼主の船だと判断して、修理のためによじ登ってきたのです。

じゃあどうしてさっきはあんなに怖がって逃げたのかというと、
それは単にハカセが極度の臆病者だから、ルカが凶悪な海賊だと聞いていたので、
ルカに睨まれて純粋に怖くて、つい反射的に逃げてしまっただけのことだったのです。
ルカはハカセがそこまで極端な臆病者だとは知りませんから、
てっきり今までルカ達が関わってきた一般人同様、
ザンギャックに睨まれるのが怖くて自分達から距離を置こうとしている態度だと誤解していたのです。

しかし、それほどの臆病者であるハカセがどうしてザンギャックに睨まれることを恐れずに、
海賊との約束を果たそうと思ったのか?
それは「引き受けた仕事はちゃんと約束を守る」ということがハカセの絶対的な信念になっているからでした。
そして、それはハカセの故郷の星がザンギャックに滅ぼされたこととも関わりがある。

すなわち、ハカセは故郷を滅ぼされたことによって、たった1人で見知らぬ寂れた星に移住する羽目になり、
そこで孤独な便利屋生活を送ることになった結果、
引き受けた仕事をしっかりこなして信用を築き上げることで人々と繋がって生きていくことが出来ることを
学んだのです。

というより、故郷の生活を全て失ったハカセの人生には、
その新しく移住した星での自分の信用で築き上げた生活が人生の全てでした。
それはザンギャックに与えられた人生でもなく、ザンギャックに保証してもらった人生でもない。
むしろザンギャックはハカセから人生を奪った存在でしかない。
だからハカセはザンギャックに媚びて自分の信念を曲げる気は無い。
媚びたところでザンギャックが自分に何かをもたらしてくれるとは、
故郷を滅ぼされたハカセには思うことが出来ないからです。

だからハカセは移住した星で自分の試行錯誤の結果見つけた生き方である
「自分に出来ることを引き受けて、引き受けた仕事はしっかり約束を守って信用を築いていく」という
地道な信念を、ザンギャックに睨まれてもひたすら愚直に貫き通すことにしているのです。

もちろんザンギャックに逆らう海賊に手を貸したとなれば
下手したらザンギャックに殺されることはハカセも分かっています。
しかし、既に全てを失ったハカセは、やっと見つけた自分の信じられる生き方を
またザンギャックのせいで曲げなければならないとしたのなら、
もはや生きていくことに希望は見出せそうにない。
殺されることは確かに怖いが、希望の無い人生を送ることも耐え難い苦痛のように思えて、
ハカセはどうしても自分の信念を曲げたくはなかったのでした。

ハカセは別に海賊に特別にシンパシーを感じているわけでもなく、
特に関わり合いになりたいとも思っていませんでしたが、
それでも自分が一旦修理を引き受けた以上は、相手が海賊であろうとも、
その約束はいつも通りしっかり守らなければいけないと思い、勇気を振り絞ってガレオンまでやって来たのでした。

だからハカセは自分がザンギャックに睨まれるのを恐れて逃げ去ったのだとルカ達に誤解されていたことに気付くと、
少しムッとしたのです。
ザンギャックに睨まれても自分の信念は守りたいという想いは海賊だけの専売特許ではない。
戦う力も無く臆病者の小さな便利屋の店主にだって、それぐらいの意地はあるのだと、
ハカセは自分をバカにする海賊たちに反感を覚えました。

だが、ハカセが不機嫌なのは、それだけが原因ではありませんでした。
更にハカセは不機嫌そうに「・・・って、何なんですか!?・・・この部屋!!」と、船室を見渡して声を荒げます。
ハカセの言葉の意味がよく分からない様子で、ジョーは「何って?・・・この船の居住区だ」と胸を張り、
ナビィも「そうそう!」と相槌を打ちます。
しかし、その船室の情景は凄まじいものでした。
この回想シーンのガレオンの船室の様子は、
いつも「ゴーカイジャー」の本編で見るガレオンの船室の様子とは全く違っていました。

さっきまでのマーベラス達が途方に暮れている場面からハカセがルカに連れられて入ってくる場面までの間は、
船室のほんの一角しか映し出されていなかった。
そのほんの一角にマーベラスとジョーとルカとナビィ、そしてハカセが固まっていたからです。
いや、というより、その一角にしか彼らの居場所が無かったのだと言った方が正確でしょう。
その一角以外の船室の大部分は、足の踏み場も無いほどに散らかっていたのです。

いや、散らかっているというレベルではなく、まさにゴミ屋敷状態で、
床にはいっぱいになったゴミ袋がぎっしりと散乱しており、
ロープを通して服やタオルがシワシワになって大量に引っ掛けられていて視界を遮っています。
ソファや食卓などにもタオルやシャツが正体不明の布類が散乱し、
使った荷物は出しっぱなしでテーブル脇の床に置きっぱなし、地図もクシャクシャになって放置されており、
テーブルの上はインスタントのカップ麺の容器が汁が入ったまま何個も放置されていたり、
宅配ピザの空き箱が山積みになったり、空になった酒瓶がそのまま置きっぱなしだったりして、
荒んだ生活を示しています。

というか、よくこんな環境で飲み食いが出来るものです。
しかもカップ麺とか宅配ピザとか、宇宙にもそんなものがあるのが驚きですが、
ジャンクフードばっかりで、栄養のバランスが悪いことこの上ないと言えます。
全く、いくらなんでもこれは酷すぎます。

要するにマーベラスとジョーとルカの3人は生活能力がほとんど皆無と言っていい。
そういえば現在のガレオンの船室のシーンでも、
この3人が部屋の中で何かまともに働いている場面というのは見たことがない。
基本的には3人とも遊んでいるか怠けているだけであり、
遊んだり怠けたりしていない時は、自己鍛錬か宝石いじりぐらいしかやっていません。
掃除や炊事、洗い物をしているのは見たことがなく、
唯一の例外といえばジョーが趣味のケーキを作る時ぐらいです。

マーベラスはもともと街のチンピラみたいな生活を送っており、
赤き海賊団の回想シーンでは真面目に床掃除もしていたが、
あれもあくまでマーベラスの回想だから多少美化されている可能性もあり、
食事は全部バスコが作っていたようだし、
どうもマーベラスがあまり家事方面では役に立っていたようには思えません。

ジョーも兵士として戦闘訓練ばかりに没頭してきたため、家事には無頓着のようです。
まぁ軍隊というのは整理整頓が基本で、
兵士は身の回りのことは自分で処することが出来るようにするものなのですが、
ザンギャック軍はどうも軍規がいい加減な印象なので、
ジョーはあまりそういう生活面の基礎訓練が出来ていないようです。
また紅一点のルカは本来は家事面では唯一期待できる人材のはずなのですが、
何せスラム育ちで風呂も入れないような生活を送っていた元盗賊ですから、
これは一番期待薄と見ていいでしょう。

こんな3人が集まって戦いと冒険に明け暮れる航海を続けているわけですから、
船室がゴミ屋敷状態になるのも仕方ないと言えます。
そして3人はこのゴミ屋敷状態を当たり前の状態だと思って、何の疑問も抱いていないようですので、
どうしようもないダメ人間たちと断言していいでしょう。

ハカセは3人もナビィも全くこの部屋の惨状に無頓着であると知ると、
「信じられない!よくこんな所で暮らせますね!」と遂にキレて、勝手に部屋の片づけを始めます。
マーベラス達が呆然と見守る中、ハカセは「ゴミはちゃんと分別しろぉ!」
「四角い部屋を丸く掃くなぁ!」「ちゃんとした栄養を摂らなきゃダメだろぉ!」と怒鳴り散らしながら、
一気呵成に部屋を片付け、掃除をしてピカピカにして、
厨房で料理を作って綺麗に盛り付けをしてテーブルに並べるところまでこぎつけたのでした。

こうして見違えるほど清潔でスッキリとした船室の光景は、
現在の「ゴーカイジャー」本編で見ることの出来る船室の光景と同じものとなったのでした。
この光景を見てナビィは「はあああ〜!?」と驚きの声を上げます。
いや、アカレッドやバスコが居た頃はこの船も綺麗だったはずなので、今更驚くナビィもおかしいのですが、
長らくゴミ屋敷状態を見慣れてしまって審美眼がマヒしていたのでしょう。

一方、マーベラス達3人はもともと審美眼が腐っていますので、
部屋が綺麗になったことには大して感動しませんでしたが、
テーブルに並んだ美味しそうな料理には反応し、駆け寄って「・・・おおぉ・・・!」と料理を見つめて唾を呑み込みます。
まるで動物みたいです。
ハカセはさすがにゴミ屋敷状態からここまで一気に部屋の文明レベルを立て直すのは重労働であったようで、
疲れた様子でしたが、「こうでなくちゃダメだよ!」とやり遂げた仕事に満足したように頷きながら
テーブルに食器や皿を並べます。

マーベラス達は飢えた獣のように席につき、いきなり料理を貪り食い始め、「美味い!!」と歓声を上げます。
ハカセは、そりゃあジャンクフードなんかとは比べ物になるはずもなく美味いに決まっていると、
誇らしげに「そりゃそうでしょ!」と胸を張りますが、
ハッと何かが違うことに気付きます。
自分は何をしにここに来たのか、何か勘違いしている自分に気付いたのです。
掃除や料理をしに来たのではなかった。
そのことに気付いて、ハカセは「・・・って、違ぁ〜う!!・・・僕は修理しに来たんだった!」と叫んで、
慌てて駆け出してガレオンの操作系統の機器の方に向かったのでした。

ハカセの便利屋稼業は機械の修理だけでなく、
部屋の掃除や料理代行まで何でも引き受ける「何でも屋」であるようで、
この稼業で鍛えられたのでハカセは家事や機械弄りまで何でもこなせるようです。
まぁ全てが一般家庭レベルであり、際立って優れているというレベルではないわけですが、
とにかく何でも一通りこなせるのです。

しかし、そのハカセの便利屋稼業の経験の中でも、
このマーベラス一味の生活環境ほど酷いものは前代未聞であったようで、
思わずハカセは依頼も無いのに、その持てる能力を駆使してマーベラス一味の生活環境の改善の
ミッションを果たしてしまったのでした。
そんな余計なことをしていたために本来の仕事であるメインコンピューターの修理を忘れてしまっていた
ハカセは慌てて修理に取り掛かります。

そうして船室のパネルスクリーンの前にある操作盤の下の基盤部分を開いて中をチェックしてみたハカセは、
食事を中断して後ろで見守るマーベラス達の方に振り向いて
「あのぉ・・・壊れてるのって、ここだけですか?」と軽く問いかけます。
そのハカセの言い方がやけに軽々しいものだったので、ルカはムッとして
「何その言い方・・・これはこの船の脳みそみたいなもんなのよぉ!」と声を荒げました。

この船の全ての機能を管理するこのメインコンピューターがどれほど精密でデリケートな機器なのか、
この便利屋は分かっていないのではないかとルカ達は思いました。
便利屋が普段扱っているような玩具のような機器の修理などとは次元が違うのだ。
持ち主のルカ達にも恐ろしくて弄ることさえ出来ないようなデリケートな代物を、
玩具の機器と同じように考えてもらっては困るのだとルカは不満そうにハカセをなじり、
ナビィも「そうだぞ!」と同調します。

しかしハカセは「分かってます、分かってます!」と邪魔くさそうに言ってルカ達の非難を制すると、
基盤の方に振り向いて「・・・これなら、こうすれば!」と、配線の脇にある大きなボタンを1回押す。
すると、鈍い起動音がして、パネルスクリーンの初期画面が立ち上がり、操作盤にも光が甦ったのでした。
マーベラス達は「直った・・・!?」と目を見張ります。
なんとハカセがボタンを1つ押しただけでメインコンピューターは元通りに直ってしまったのです。

ジョーはハカセに歩み寄ると「凄いな・・・お前!」と肩を叩いて絶賛、心の底から驚いている様子です。
ルカも「指一本で直しちゃうなんて、アンタ、マジで神!?・・・ゴッドじゃん!」と感動してハカセを崇め、
ハカセの身体をバンバン叩きます。
いやしかし、ハカセはボタンを1つ押すだけしかやっておらず、全然凄いことはやっていません。

おそらくハカセの押したのは単なる非常用の起動ボタンであり、
おそらくはさっきまでのゴミ屋敷状態の埃だらけの劣悪な環境が原因で
メインコンピューターが不調となっていたところに
戦闘時の衝撃で一時的にシステムダウンして操作盤では起動できない状態になっていたのでしょう。
だから別に壊れていたのではなく、基盤内にある非常用の起動ボタンで再起動させれば済む話であったのに、
全く機械音痴のマーベラス達3人は操作盤をやみくもに叩くばかりで、
基盤の中を見るという発想すら無かったようです。

つまりマーベラス達が極端にダメなだけであって、ハカセが凄いわけではないのです。
しかしマーベラス達は自分達がダメであるということすら分からないほどにダメダメな連中なので、
ハカセを神のような修理の腕前を持つ男だと思って崇めているわけです。
そこまでダメな人達を見るのは初めてだったのでハカセも唖然として、
ジョーとルカの褒め言葉に対して「それほどでも・・・」と苦笑いします。

しかし、こんなに機械音痴ばかり3人でよく航海が無事に続けてこられたものです。
特にマーベラスはこれでもともとこのガレオンに乗っていた赤き海賊団の一員だったというのだから呆れます。
赤き海賊団ではおそらく機械関係はアカレッドとバスコが全部やっていたのでしょう。
つまり、家事も機械もほとんどマーベラスは役立たずだったわけで、
戦闘ぐらいしか能が無い男だったことになります。
これでは確かにバスコにマベちゃん呼ばわりされて小馬鹿にされても仕方ないような気もします。

また、このマーベラス、ジョー、ルカの船内では全く役に立たない3人組だけで
長期間航海を続けていたとは到底思えないことからも、
赤き海賊団壊滅事件からこのハカセとの出会いまでは
そんなに長い期間は経過していないのであろうと推測されます。
そもそも、物語の随所で出てくる各メンバーの回想シーンでのそれぞれの風貌から推察される年齢が
現在とそう違わないことからも、
マーベラスとアカレッドの出逢いからマーベラス一味が地球にやって来るまでの出来事は、
2年間ぐらいの期間内の出来事なのではないかと思われます。

さて、こうしてメインコンピューターの修理(?)に成功してジョーやルカにベタ褒めされるハカセでしたが、
そのハカセに向かってマーベラスが歩み寄ります。
そして、何故かハカセがさっき作った骨付きモモ肉をハカセに向かって差し出し、
「気に入った!」と笑顔で言います。

そんなにモモ肉が気に入ったのかと思いきや、
マーベラスは「お前・・・俺たちの仲間になれ!」と意外なことを言います。
「え!?」とハカセは驚きました。
赤い服の海賊は自分のことを気に入ったから仲間にしたいと言っているようだが、
自分の何が彼の気に入ったのかハカセには一瞬よく分からなかったのでした。

戸惑うハカセをよそに、マーベラスはもう話は決まったかのように
「俺たちは宇宙最大のお宝を探してる・・・その仲間だ!」と言ってニヤリと笑います。
ハカセは横でマーベラスの意見に大賛成の様子でニヤニヤするジョーとルカを見て、
どうやらこの海賊たちが自分の修理の腕を買って仲間にしたいと思っているのだなと気付きます。
また、確かにモモ肉のことも気に入っているようで、
料理や掃除などの家事をやってくれる要員が欲しいのだろうという彼らの事情も察しました。
確かにこの3人だけで航海を続けては、またすぐに船室はゴミ屋敷に戻ってしまうであろうし、
機器が故障したらお手上げなのだろうとハカセは思いました。

そんなことを考えていると、横からルカがすっかりハカセが気に入った様子で
「アンタ、名前なんて言うの?」と聞いてきます。
ハカセは戸惑いながら「僕は・・・ドン・ドッゴ・・・」と名前を答えようとしますが、
その口にマーベラスは骨付きモモ肉を突っ込んで黙らせ、
「フン!・・・ハカセだな!」とまたワケの分からんことを言います。

「ええ?」と問い返すハカセにマーベラスは「お前、ハカセみてぇだから、ハカセでいいだろ!」と、
ものすごくテキトーなことを言います。
まるで「太陽にほえろ!」の石原裕次郎扮するボスが新人刑事にニックネームをつける場面のようです。
「えええ!?」と嫌そうなハカセに対してルカは「いいね!よろしくハカセ!」と、さっそくハカセ呼びを開始、
ジョーも「頼むぞハカセ!」と昔からの仲間のように呼びかけます。
ナビィも面白がって「ハカセ!ハカセ〜!」とはしゃぎます。

マーベラスはフッとほくそ笑み、
ハカセは皆を見回して「えええええ!?」と自分の置かれた状況に悲鳴を上げました。
ハカセ呼びが嫌とか言っている場合ではありません。
何時の間にか、なし崩しに海賊の仲間にされそうになっているのですから、
臆病者のハカセとしてはこれは一大事でした。

ここで回想シーンは終了し、
場面は現在、高級レストランにて、ルカが回想シーンにあったようなハカセ加入秘話を語ったところに戻ります。
ただ、このルカの話はもともとアイムと鎧のリクエストに応える形で始まったものですが、
実はアイムと鎧のリクエストに応えるような内容にはなっていません。

アイムと鎧は臆病者のハカセがどうして海賊になろうと思ったのか知りたかったのです。
ところがルカの話は、マーベラス達がハカセを海賊の仲間に誘ったところで終わっており、
ハカセがどうして海賊になることを承諾したのかという肝心の部分は語られていません。
しかしルカの話にこの続きがあるわけではなく、ここで話はおしまいです。

つまり、続きには語る価値のあるような大したことはなかった。
ハカセは「ええええ!?」とか言って嫌がりつつも、なし崩しに何時の間にか仲間になっていった。
そのようにルカは理解しており、ハカセも実はそのように理解しています。
結局、マーベラス達の強引さに流されて、ハカセはズルズルと海賊の仲間入りをすることになったのです。

まぁ大前提として、海賊船の修理をしてしまったハカセは
どうせ元のボロ小屋に戻って便利屋生活を続けることは出来なくなっていたという状況はあります。
どっちにしてもハカセは生きながらえるためには
店を畳んで何処かにまた移住せねばならない状況には追い込まれていました。
だから、いっそマーベラス一味に入ってしまうという道もアリだったのです。
そういう状況でマーベラス達がもうハカセが仲間になったかのように勝手に決めつけたので、
ハカセはそのペースに流されて、何時の間にか本当に一味に入っていたというのが実情だとハカセは理解しています。

そして、そんな自分をカッコ悪いと思っています。
特に、ちゃんとした志をもって海賊の仲間に入って来たアイムや鎧に比べて、
自分はなんと主体性が無いのだろうかと思い、恥ずかしく、
だからハカセはあまり自分の加入時の話を正直に話したくなかったのです。

ところが、アイムはルカの話を聞き終えて、「素敵です!そのお話・・・」と意外にも目を輝かせます。
そして、「やはり、伝説の勇者だったからこそ、ハカセさんは怖くても、約束を守りとおせたのですね・・・」と
感心したように言ったのでした。

つまりアイムは、そもそも臆病者だとルカが言う昔のハカセが
どうして海賊になったのかがよく分からなかったのですが、
ルカの話の続きを聞いて、その中で出てきたハカセのセリフから、
ハカセがザンギャックにも屈しない信念の持ち主だったことに気付き、
それならば海賊になったのは何ら不思議なことではないと納得したのでした。

ハカセがどうして最終的に海賊という生き方を受け入れたのかなどという細かいことは、
それがなし崩しでも、流された結果でも、アイムにとってはどうでもいいのです。
もともとハカセには海賊となるのに相応しい資質が確かにあったのだとアイムには思えたので、
アイムの疑問は勝手にもう解決したのです。

つまり、どんな障害にも屈することなく、自分の信じた道を突き進む心をハカセは持っていた。
その信じた道が戦いの道や冒険の道であるマーベラス達のような者もいるが、
ハカセの場合はその信じた道は、地道な自分の日常の仕事を真面目にこなしながら
人々と信頼関係を築いていく道だったのです。
だから一見、ハカセは小市民的で、弱く臆病なように見えるが、
それでもその信じた道を理不尽な暴力を相手にしても決して譲らずに貫こうという気概では、
決してマーベラス達に劣るものではない。

いや、弱く臆病なハカセだからこそ、
自分の信じた道を貫くことは、強くて勇気のある者達に比べれば、より困難であるはずです。
その困難を跳ね返して信じた道を貫くことが出来たハカセは、
強くて勇気がある者達よりも、自分の信じる道を決して曲げずに進める力がより多くあるのです。
アイムは、そのようなハカセの強い信念の力に気付いたからこそ、
マーベラス達はハカセを仲間に誘ったのだと気付いたのでした。

実際、ルカもハッキリそうは言いませんでしたが、アイムの言葉を否定しないところを見ると、
ハカセのそういうところを買って仲間に誘ったということを言おうとしていたのであり、
また、マーベラスもジョーも同じような気持ちでハカセを誘ったのだと、ルカも解釈していました。

マーベラス達は、確かに機械のメンテナンスや家事全般をやってくれる仲間が欲しかった。
また、自分達に協力したためにザンギャックに追われる立場になったハカセを
見捨てて逃げるのは申し訳ないとも思っていた。
だが、それだけの理由でハカセを仲間に誘ったわけではない。
マーベラス達はハカセには「宇宙最大のお宝」という壮大な夢を自分達と一緒に掴むだけの
資格があると思ったのです。
それは、確かにハカセは弱くて臆病者だったが、
マーベラス達は、ザンギャックに睨まれることを承知で、それでも約束を守ることを優先したハカセを見て、
ハカセには自分達を上回る、信念をあくまで貫こうとする心があることを知ったからです。

そのことにアイムも気付き、そんな特別な力をハカセが持っているのは、
やっぱりハカセがもともとは勇者だったからに違いないと解釈したのでした。
記憶は失っても、勇者としての心の強さは健在なのだとアイムは思いました。
鎧も同じように思ったようで頷いています。

ハカセはアイムの言葉を聞いて「えええ?・・・そう言われると、照れるなぁ・・・!」と大いに照れて笑顔になります。
主体性なく海賊の仲間入りをしたカッコ悪い過去の話を聞かれてしまって、
ますますカッコ悪いヤツだと思われてしまっただろうと、ガッカリしていたハカセは、
アイムが意外にも過去の自分を高く評価してくれて嬉しく、照れ臭く感じました。
これはさっきまでの勇者のフリをして褒められていた時には感じることが出来なかった嬉しさでした。

ウソをついて褒められても虚栄心が満たされるだけのことで、
心から嬉しく思うことはないし、照れ臭いなどと思うことはない。
照れというのは本当の自分の言動を過剰に褒められた時に覚える感情であって、
偽りの自分を褒められても照れることはない。

本当の自分を褒められて心から嬉しさを感じたハカセは思わず幸せな気分になりましたが、
同時に、先ほどまでの嘘をついて褒められて喜んでいた自分が
それに比べてなんとも卑小なものであったことを痛感し、
つまらないことをしてしまったものだと後悔しましたが、
アイムと鎧は、そのハカセの過去の真実の美点をハカセのウソ話の勇者説と結びつけて
勝手に解釈してしまっており、
もうこうなっては今さら記憶喪失や勇者だったかもしれないという話が嘘だったとは言い出せず、
ハカセは困ります。

そんなハカセのちょっとした内心の葛藤は知らず、
鎧は「さぁさぁ!食べて、食べて!」とハカセに食事を勧めて、
早く勇者の記憶を取り戻させようとするのでした。

そうして食事を終えて、店を出て、ガレオンへ向かって4人は歩き出しますが、
ハカセは「ああ〜!」と気持ちよさそうに満腹になったお腹をさすりながら
「よぉし!次は大人気スイーツでも行ってみよう!」と笑顔で号令をかけ、鎧も「おう!」と張り切って応じます。
ハカセはせっかく楽しい時間なのだから、もうこうなったらゴチャゴチャ悩まず、今を楽しもうと決めたのでした。

それに対してルカは「・・・ちょっと!調子乗りすぎなんじゃない?」と、文句ありげです。
ルカはハカセが記憶喪失だなどというのはもう絶対ウソだと思っていますので、
美味しいものグルメツアーの悪ノリをまだ続けようとするハカセに呆れたのです。
しかし鎧が「まぁまぁまぁまぁ!こうなったら行くところまで行っちゃいましょうよ!」とルカをなだめて、
ハカセの肩を掴んで「絶対!記憶戻りますから!!ハハハハッ!!」と、
あくまでハカセが勇者だと信じて、記憶を取り戻す気満々です。
これにはさすがにハカセも罪悪感を覚えて、一緒に笑うに笑えず、乾いた苦笑いを漏らします。

すると後ろでアイムまでも「私もそう信じています・・・」と言うので、ハカセが思わず振り返ると、
アイムは「だって素敵じゃないですか?・・・ハカセさんが実は伝説の勇者だったなんて・・・」とはにかみます。
それを聞いてハカセはハッとして「アイム・・・」と嬉しさが込み上げて感動しました。
アイムがハカセのことを伝説の勇者だと信じようとしている理由は、
別に純粋な性格で騙されやすいからなのではなく、
もともとハカセのことを素晴らしい仲間として尊敬してくれていたからなのです。

アイムにとってのハカセは素晴らしい人だから、
だからハカセが伝説の勇者だったと聞かされて、
素直にそれは素敵なことだと思って受け入れることが出来るのです。
いや、鎧もきっとアイムと同じなのだろうとハカセは思いました。
アイムも鎧ももともとハカセのことを尊敬してくれているから、
ハカセが勇者だという話をすんなり信じることが出来るのです。

それなのに、ハカセは自分がアイムや鎧にバカにされていると思い込んで、
皆を騙して嘘話で尊敬を得ようとしていた。
実際はそんなバカなことはする必要は無かったのです。
アイムも鎧も、それにマーベラス達だって、ハカセの良いところはちゃんと認めてくれていたのです。
そうしたアイムや鎧の気持ちに気付いて、ハカセはまたウソをついたことを後悔しましたが、
どうもここまで来てしまうと、なかなか嘘だったとは言い出しにくい。

迷いつつも、「それじゃあ行きましょうか!」とハカセと肩を組んで歩き出す鎧に引っ張られて、
ハカセも「お〜う・・・!」と応じて、一緒に歩き出します。
と、その時、歩き出した4人の前に立ち塞がるように何者かが現れます。
それはダマラスでした。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
にほんブログ村 にほんブログ村 テレビブログ スーパー戦隊へ
にほんブログ村
posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 18:26 | Comment(0) | 第42話「宇宙最強の男」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月25日

第42話「宇宙最強の男」感想その5

遂にダマラスはマーベラス一味を倒すために、ハカセ、ルカ、アイム、鎧の4人組の前にその姿を現しました。
しかし、ハカセ達は今まで地上に降りて戦うことを許されていなかったダマラスとは、
当然顔を合わせたことはありません。
それでも、一瞬呆気にとられたハカセ達は、
いきなり自分達の目の前に立ちはだかった怪人がザンギャック軍の怪人だということにはすぐに気付き、
「ザンギャック!」と言って身構えます。

ワルズ・ギルを倒して以降、しばらく動きの無かったザンギャック軍が、
前回のエピソードで皇帝親衛隊が到着した後、
ワルズ・ギルの仇討ちのために執拗に自分達を狙ってきていることはハカセ達は分かっていました。
この怪人も新たなザンギャックからの刺客なのだろうということはすぐに察しがつきました。

それゆえ、ダマラスとハカセ達との距離はかなり有りましたが、
ダマラスが「ふんっ!」と剣を振るって衝撃波を飛ばしてきたのをハカセ達は難なく避けることは出来ました。
だが、その避けた衝撃波はハカセ達の遥か後方にある十階建てぐらいの大きなビルを直撃すると、
粉々にしてしまったのです。
「なんだコイツ・・・!?」と鎧は真っ青になります。
巨大化した怪人の攻撃ではない。等身大の怪人の、しかも片手で剣を一振りした剣圧だけなのです。
それで巨大なビルが粉々になるとは、測り知れないパワーといえます。

得体の知れない化け物に危険を感じた4人は、
ダマラスが歩いて近づいてくると、ひとまずその場を逃れることにしました。
マーベラスとジョーを欠いた4人だけでは太刀打ち出来ないと直感したのです。
しかしダマラスも追いかけてきます。
そこに突然、銃弾が何発も撃ち込まれてダマラスの進路を妨げました。
銃弾を撃ってきたのはマーベラスとジョーでした。
ダマラスのザンギャック反応をガレオンでナビィが感知して、マーベラス達は出動してきたようです。
「マーベラス!ジョー!」とハカセ達が駆け寄り、これでゴーカイジャーは6人揃いました。

そこでマーベラスは、いったいどんな敵の部隊が襲ってきたのかと、銃撃の上げた埃が晴れてダマラスの姿を見て
「あぁん?」と意外そうな声を上げました。
現場に到着するとルカ達が必死で逃げているから、よほどたくさんの敵がいるのかと思えば、
よく見てみると相手はたった1人であったからです。
マーベラスはさっきのダマラスのビルを粉々にした攻撃を見ていないので、
どうしてルカ達4人がたった1人の敵から逃げていたのか意味が分かりませんでした。
ところがマーベラスの隣に立つジョーは、ダマラスの顔を見ると、「あれは・・・ダマラス・・・!?」と愕然とします。

「何者だ?」とマーベラスは、どうも相手は只者ではないと気付き、ジョーにその正体を尋ねます。
ジョーは元ザンギャック兵であったといっても、あまりザンギャックの怪人のことは知らない。
そのジョーが知っていて、しかもこれほど驚いているわけだから、
さぞかし名の知れた強力な怪人なのだろうとマーベラスは思ったのでした。
それに応えてジョーは、やや上ずった声で「宇宙最強といわれている・・・ザンギャックの軍師だ・・・!」と言います。

なんとダマラスはザンギャック軍では「宇宙最強」という称号で呼ばれていたようです。
つまり今回のサブタイトル「宇宙最強の男」とは、ダマラスのことを指していたのです。
確かにダイランドーをビビらせ、バスコを圧倒したその武力は、
少なくともザンギャックでは最強であると考えていいでしょう。
ザンギャックこそは宇宙最強の軍団であるのだから、そのザンギャックで最強ということは
宇宙最強の武人であるという理屈なのでしょう。
本当に宇宙最強かどうかはともかく、ザンギャック最強であるのは確かで、
しかもマーベラス達が今まで一度も勝てていない相手であるバスコ怪人態を一蹴しているのですから、
マーベラス達がダマラスに勝つのはほぼ無理と言っていいでしょう。

それにしても、最強の武人でありながら「軍師」というのも少し意外な印象ですが、
これこそがダマラスが「最強」である証なのかもしれません。
ハッキリ言ってこれまでのダマラスの描写を見ている限り、ダマラスの作戦面での才能は平凡といえます。
悪くもないが、特に優れているようにも見えない。ごくごく平均点レベルです。
しかも詰めが甘く、老獪さにも欠ける。
本質的には軍師向きではなく、あくまで武人であり、将軍や司令官に向いているタイプだといえます。
そのダマラスがどうして軍師なのかというと、おそらく強すぎるので警戒されたからなのでしょう。
このダマラスに軍勢を与えて野放しにすることを皇帝は危険視したのでしょう。
だから自分の軍師として手許に置き、悪く言えば飼い殺しにしたのだといえます。

そう考えると、ダマラスの生涯というのは、さぞ不自由で鬱屈したものであったのだろうと思えてきます。
ダマラスが不自由さと引き換えに手に入れた誇りは「宇宙最強」という称号だけであり、
それだけがダマラスの人生における拠り所であったのでしょう。
だから、その栄光の歴史に汚点をつけたマーベラス一味をダマラスは許せないのです。

ジョーの言葉を聞いて、鎧は「宇宙最強・・・!?」と驚きます。
が、同時に納得もしました。
先ほどの凄まじいとしか言いようのない一撃は、まさに宇宙最強という称号を持つ戦士に相応しいと思えたのです。

そのダマラスは、マーベラス一味が6人になったのを見て、
「全員揃ったようだな・・・」と初めてマーベラス達に向けて言葉を発し、全員の顔を確認します。
そしてダマラスは「ワルズ・ギル殿下の仇・・・討たせてもらう!」と宣言しました。
ワルズ・ギルの仇を討つことそれ自体は、ザンギャック軍として当然なさねばならない責務です。
しかし、ダマラスにとってはそれに加えて、むざむざ司令官を討たれた武人としての恥を雪いで、
地に堕ちた「宇宙最強」の誇りを取り戻すための戦いでもありました。

しかしマーベラスは「ボンボンの尻拭いか!・・・ご苦労なこった!」と呆れたように言い放ち、
ダマラスの誇りを踏み躙ります。
「・・・許さん・・・!」とダマラスは案の定、激怒します。
もちろん、これはマーベラスはダマラスをわざと挑発して怒らせ、平常心を失わせようとして行ったのであり、
ダマラスは簡単に作戦に引っ掛かったように見えます。

しかしジョーは「絶対に油断するな・・・今までの奴らとは、根本的に違う!」と真剣な声で
マーベラスに注意するのでした。
ちょっと怒らせたぐらいで付け入る隙が見出せるような、そんな甘い相手ではないということです。
むしろ相手が挑発に乗ったのを見て安心していたら、大ヤケドするのはこっちだと、ジョーは注意し、
マーベラスも言われなくても、そうした雰囲気はひしひしと感じていました。
しかしダマラスはもう完全に戦闘態勢に入っており、
ここはマーベラス達としてはとにかく逃げるよりも、まずは一撃食らわして様子を見るのがベストでした。

緊張感あふれる面持ちでマーベラス達6人はレンジャーキーを取出し
「豪快チェンジ!!」と、ゴーカイジャーに変身し、ダマラスと対峙します。
しかしダマラスは剣を構えたまま動かない。
マーベラス達は先に動くことにして、「派手にいくぜぇっ!!」と言うと、
「うおおおお!!」とダマラス目がけて突っ込みます。

そしてダマラスに接近すると「はっ!」と剣を振り下ろしますが、
ダマラスは周りを囲んで斬りかかってくるマーベラス達を1人で剣を振るって逆に圧倒してしまい、
「うがああぁっ!!」と叫んでダマラスが繰り出したエネルギー波を込めた刃によって、
周囲のマーベラス達が逆に薙ぎ倒されてしまいました。
そうして倒れ込んだマーベラスに向かってダマラスは突っ込んできて、剣を振りおろし、
執拗にマーベラスを狙ってきます。
マーベラスも剣でダマラスの剣を受け止めますが、パワーの差は圧倒的で、たまらず逃れます。

そして再び6人集結して、マーベラスは「これでどうだぁっ!!」とファイナルウェーブを発動、
「おらぁっ!!」と、ダマラス目がけてゴーカイスクランブルを発射します。
更に加えて鎧もゴーカイスピアでファイナルウェーブを発動し、ゴーカイシューティングスターを発射し、
ゴーカイスクランブルに合体させて、猛烈なエネルギー波がダマラスを襲います。
しかしこれをダマラスはなんと「うらあっ!」と気合を込めた剣の一振りで粉砕してしまったのです。
そして仁王立ちのまま「はああっ!!」と気当たりを発して、
それだけでマーベラス達は危うく吹っ飛ばされそうになり、なんとか持ちこたえます。

ゴーカイスクランブルはバスコにも弾き返されましたが、
バスコでも一旦手で受け止めてから弾き返したのであり、
剣の一振りで真っ向から瞬時に粉砕するほどの力はありませんでした。
しかも今回はゴーカイシューティングスターの威力も合わせているのですから、
それを一瞬で粉砕したダマラスはバスコよりもかなり強いということになる。
さすがにマーベラス達も怯みます。
そこに間髪入れずダマラスは闘気を込めて剣を一閃して、先ほど十階建てのビルを粉砕した衝撃波を発射し、
マーベラス達は「うがああっ!!」と、これを喰らって倒れてしまいました。

大きなダメージを受けた6人ですが、なんとか立ち上がります。
そして立ち上がりながらジョーは「・・・まともにぶつかっては・・・ダメだ!」と言います。
前回のエピソードでザツリグと戦った際も、最初の戦いでザツリグに一撃も加えることも出来ずに敗れて、
まともにぶつかるのは避けて、一旦隠れて作戦を練ろうという案もありました。
しかしアイムの仇討ちの件もあり、あえてまともにぶつかる道を選択して、
その結果、ザツリグを倒す突破口を見出して勝利を得ました。
だから今回のダマラスも、まともにぶつかれば何か突破口を見出せるかもしれないという淡い期待は
ジョーにも多少はありました。

しかし、ダマラスの強さはザツリグとは別次元のものでした。
ザツリグの強さは胸の目という裏技を用いたものでしたが、
ダマラスの強さは完全に正攻法の剣1本を振るって生み出されたものでした。
それでいて、マーベラス達はダマラスの身体に一撃を攻撃を当てることさえ出来ていない。
これはまともにぶつかって突破口を見出せるような相手ではなかったとジョーは悟ったのでした。

マーベラスも同感であるようで、「一旦退いて・・・態勢を立て直す・・・!」と撤退の決断を下します。
逃げるわけではない。
とにかくまともにぶつかっても勝機を見出せない以上、姿を隠してから作戦を練って、
卑怯な手を使ってでも何でもして、とにかく勝利をもぎ取ろうという作戦でした。
そのためにはこの場は逃げの一手だと、
マーベラス達はダマラスに向けて威嚇射撃をしながら後ずさりしていきます。
その中でハカセだけ、ダマラスのあまりの強さに恐怖したのか、腰が抜けてしまい
足取りがおぼつかないので「ハカセ!」とマーベラスが立ち上がらせて連れて退こうとします。

ところが先に駆けだしたジョー、ルカ、アイム、鎧の4人の前に何者かが立ち塞がったのでした。
「そうはいかないんだなぁ!」と、ふざけた口調で現れたのはバスコでした。
既に怪人態となっており、サリーも伴ってきています。
そういえば、ダマラスにマーベラス一味の討伐を手伝うように協力させられることになったはずの
バスコがダマラスと一緒に居ないのは何となく変だと思っていたら、
ここでマーベラス一味の逃げ道を塞ぐ役目で登場する手筈だったようです。

しかし、そんな事情は知らないジョーは、突然のバスコの登場に「バスコ・・・!?」と驚愕します。
ダマラスが地球に来ていること自体をさっき初めて知ったばかりのマーベラス達から見れば、
ダマラスとバスコの繋がりなど想像外のことですから、
バスコがダマラスのサポートをするように現れた意味がさっぱり分かりませんでした。

確かにバスコはザンギャックの許可を得て私掠活動を行う海賊ですから、
ダマラスとバスコが顔見知りである可能性はあり、
基本的に両者は協力関係にあるということは理屈としてはマーベラス達にも分かりますが、
何せバスコは全く食えない、自分の都合しか考えない男であり、
しかも基本的に「宇宙最大のお宝」しか興味は無い男です。
そんなバスコがワルズ・ギルの仇討ちなどに興味があるはずがない。
だから単にダマラスに協力しているだけなのでしょうが、
バスコのような自分勝手な男がダマラスに協力しているということがあまりに意外で、
どういう事情でそういうことになっているのか、マーベラス達にもよく分かりませんでした。

ただダマラスがバスコを従わせるほど強いということは、
さきほどからの戦いで十分に納得させられていました。
そしてその強力なダマラスが迫りくる中、
退路には強敵バスコが立ち塞がるという最悪の展開となったことは確かでした。

「お前らは俺が構ってやるよ!」と言うと、バスコはジョー達4人に向けてサリーをけしかけ、
更に自身も参戦して、ジョー達4人とバスコ勢のバトルが退路で始まってしまいます。
ジョー達はダマラスから逃れるためにはバスコを倒して退路を開くしかない。
片やバスコの方は、どうやらジョー達と戦うのが目的のようです。
つまり、ダマラスがバスコを従わせて、わざわざこの戦いに連れてきた意味というのは、
ダマラスが海賊団の頭目であるマーベラスを確実に仕留めるためのサポート役なのです。
そのためにバスコはマーベラス以外のメンバーを引き受けて戦い、そして倒すのが任務となります。
ここでジョー達4人をマーベラスから分断して引きつけたところで
バスコはその任務の半分ぐらいは達成したことになります。

これでダマラスは心置きなくマーベラスと戦うことが出来るはずでしたが、
ハカセが腰を抜かして逃げ遅れていて、マーベラスがハカセを助けていたため、
ダマラスから見ればハカセという邪魔者が居残っていたという形になっています。
しかしハカセ1人ぐらいでは大して邪魔にもなりません。

背後でバスコが出現してジョー達に襲い掛かり、
そして目前にはダマラスが迫ってくるという絶体絶命の状況にマーベラスは迷います。
とにかく今は撤退と決めたのだから、ジョー達に加勢してバスコを強行突破するのが
ここでは、よりマシな選択であるようには思えました。
バスコも強敵でしたが、ダマラスと戦うよりはバスコと戦う方がまだ勝てる確率は高そうだったからです。
しかし、ハカセが逃げ遅れており、ダマラスがハカセに迫っています。
怯えて「マーベラス!」と助けを呼ぶハカセに「お前は下がってろ!」と言うと、
マーベラスはハカセを庇ってダマラスに単身斬りかかっていきました。

ハカセではダマラスの相手をするのは無理だとマーベラスは判断したのですが、
マーベラスもダマラスと1人で戦うなど無茶なことでした。
あっという間に劣勢に追い込まれます。
自分を助けるためにマーベラスに無茶な戦いをさせることになってしまったのを見たハカセは、
自分が弱いせいでマーベラスに迷惑をかけてしまったことが悔しく、
自分もこういう時、役に立たないといけないと勇気を奮い起こして立ち上がり
「はああ!」と叫び、ダマラスに掴みかかっていきます。

マーベラスを追い詰めようとしたところで背後からハカセに掴まれたダマラスは、
鬱陶しそうにハカセを突き飛ばすと剣を振り下ろして一太刀でハカセを斬り倒し、
「わああ!?」とハカセが倒れるのを一瞥もせず、再びマーベラスに向けて攻勢に転じます。
ダマラスはあくまでマーベラスと戦い、マーベラスを倒すことしか眼中に無いという感じです。

そのダマラスの様子を見て、バスコはジョーと鎧の2人を軽くあしらいながら
「あ〜あ!ダマラスのおっさん、完璧に本気だ!今度ばかりは、マベちゃんも終わりだな!」と軽口を叩きます。
一方、ルカとアイムは「ウキィ〜ッ!」と跳んできたサリーの不意打ちを喰らって「きゃあ!」と吹っ飛ばされます。
ここで優勢な立場に立ったバスコは今まで見せたことのない大技をジョーと鎧に向けて放ちます。
それは炎を放つ太刀を「はぁっ!はぁっ!はあああっ!!」と気合を発して3連続で繰り出すというような技で、
これを喰らったジョーと鎧は爆炎で「うわあああ!!」と吹っ飛ばされます。

さて一方、ダマラスと戦うマーベラスが完全に劣勢となっている状況で、
ハカセは停めてある車の陰に隠れて「どうしよう・・・足が震えて・・・」と、
さっきダマラスに一蹴されてしまって怖気づいてしまっているようです。
しかしマーベラスがダマラスに斬り倒されて、
ダマラスが何やら剣を天に向けて突き上げて大技の構えに入ると、
ハカセの危険センサーがビンビンに反応して「マーベラス!」と叫んで、
倒れているマーベラスを庇って飛び込んできますが、
ダマラスの剣が発した竜巻状の衝撃波に2人とも「うわあああ!!」と吹っ飛ばされ、
近くの建物に激突、落下して変身解除してしまいます。

「マーベラス!大丈夫・・・?」とハカセはマーベラスを助け起こします。
車の陰に隠れていたハカセはまだ余力があるので起き上がれましたが、
マーベラスは「・・・悪ぃ!」と礼を言って起き上がろうとしますが、
既にダメージが溜まりすぎていて、身体が動きません。
マーベラスは「・・・しかし、宇宙一ってのは伊達じゃなさそうだ・・・!」と、
さすがにダマラスの圧倒的な強さに脱帽します。

その時、後ろで「うわあああ!!」と絶叫がして、ハッとマーベラスとハカセが振り返ると、
ジョー達4人もバスコに圧倒されて、遂に変身解除に追い込まれていました。
どうやら今回、バスコもかなり本気で戦っているようです。
ダマラスが見ている前で、バスコも手を抜くと自分の命が危ない立場ですから、
全力を出さないわけにはいかないのです。

バスコの本音としてはマーベラス達は生かしておいて自分の目的のために利用したいので、
殺したくはないのだが、こうなっては仕方ない。
「ゴメンね!・・・マベちゃん・・・」と、ふざけた口調で一応断りを入れると、
バスコはジョー達にトドメを刺しにかかります。
マーベラスは「やめろ!バスコ!!」と懸命に叫びますが、
バスコは容赦なく「はぁっ!はぁっ!はあああっ!!」と先ほどの大技を炸裂させ、
生身で倒れたままのジョー、ルカ、アイム、鎧を爆炎に呑み込んで、
「わああああ!!」と悲鳴を残して4人は焼き尽くされて消滅してしまいました。

「ジョー!みんな!!」とハカセはその信じられない光景に驚き、4人を呼びますが、返事は無く、
何処かに4人が逃れた形跡も無い。
4人は炎で焼き尽くされてしまったようです。
「4人はきっちり片付けたぜ?・・・あとはそいつらだけだ!」とバスコはダマラスに向かって、
自分の仕事分はしっかり果たしたことをアピールし、
マーベラスは倒れ込んだまま「嘘だろ・・・?」と絶句します。

ジョー達4人がバスコによって倒されて、これでマーベラス一味は生き残りはマーベラスとハカセだけです。
そして今度はその2人にダマラスが迫ります。
生身で動けないマーベラスを守るため、ハカセは生身のまま立ち上がり、
ゆっくり歩いて迫ってくるダマラスの前に立ち塞がって「来るな!・・・来たら承知しないぞ!」と喚きますが、
ダマラスはハカセなどそこに立っていないかのように完全無視で歩みを止めず、
ゴミでも払うかのように「・・・貴様などどうでもいい!」と苛立った声で言いつつ、
ハカセの肩を掴んで投げ捨てました。
ハカセは地面に思いっきり叩きつけられて「ぐうっ!」と叫んで気絶してしまいます。

ダマラスは、マーベラス一味が予想以上に歯応えが無いので失望していました。
特に船長のマーベラスは今や賞金額が無制限の超大物の賞金首で、
さぞかし手強い相手であろうと予想していたのです。
その強敵を激闘の末に倒してこそ、ダマラスの宇宙最強の戦士としての誇りは充足されるはずでした。
久しぶりの実戦でダマラスはそういう戦いを期待しており、
それゆえわざわざバスコまで助っ人として駆り出して他のザコの相手をさせようとしたのです。

ところがそのマーベラスは戦ってみると拍子抜けするほどに弱かった。
いや、自分が強すぎるのだとダマラスは思いました。
宇宙最強である自分とマーベラスの力は天と地ほどの開きがある。
大袈裟に勝負するほどの相手ですらなかった。
マーベラスなどは本質は所詮は弱いチンピラに過ぎず、弱い者には価値など無い。
この宇宙では強さこそが正義なのであり、強い者こそが唯一、価値がある存在なのだ。
それゆえザンギャックこそが唯一の正当な宇宙の支配者であり、
そのザンギャックで最強の自分は、宇宙で最も価値ある戦士なのだとダマラスは再確認しました。

そう考えると、弱い無価値な虫ケラの分際で、
自分にこれまで数多くの恥辱を与えてきたマーベラスに対する憎悪がダマラスの中では膨れ上がってきました。
この屈辱を晴らすには、ただ勝負の場で普通に殺すだけでは足りない。
というより、こんな価値の無いクズを相手に宇宙最強の自分が真っ当に勝負をしたということ自体が
未だにこのクズに与えられた屈辱の範囲内のような気もしてきました。
ましてや、そのクズのようなマーベラスの手下の、
話にならないような安い賞金首のゴミのような奴に構うことすら、ダマラスには耐えられませんでした。
ハカセなどは目障りでしかなく、刀のサビにする価値すらない。

ハカセを払いのけるとダマラスは無様に動けなくなったマーベラスの頭を鷲掴みにして引っ張り上げて、
マーベラスを自分の前にぶら下げて、
「キャプテン・マーベラス・・・貴様はタダでは殺さん!
・・・この私が受けた屈辱、倍にして返してやる・・・!!」と睨みつけます。

ダマラスはこの場でマーベラスを対等な勝負の相手として倒す価値すら無いと見なし、
マーベラスを生け捕りにして、
じっくりとマーベラスに自身が無価値であることを痛感させるような屈辱的な死を与えてやろうと思いました。
そうしてマーベラスの思い上がりを打ち砕かないことには、ダマラス自身の屈辱は晴れないと思えたのでした。

しかしマーベラスは身体はボロボロでありながら、まだ反抗的な目でダマラスを睨み返し、
いきなり「はあっ!」とゴーカイガンとゴーカイサーベルで起死回生の反撃を仕掛けてきます。
どこにこんな力が残っていたのか驚異的ですが、最後の力を振り絞っての抵抗でした。
しかしダマラスはこんな程度でどうにかなる相手ではない。
ダマラスは落ち着いて反撃して、ゴーカイガンもゴーカイサーベルも弾き飛ばし、
力の尽きたマーベラスの顔を掴むと「力の差というのは残酷なものだな・・・!」と嘲笑して、
「ふんっ!」とマーベラスの顔を思いっきり拳で殴り飛ばし、
マーベラスは「うああああっ!」と宙を舞って地面に叩きつけられて気絶します。

ダマラスはマーベラスが今のような反抗的な、
まだ生気のある身の程知らずな視線を向けているうちは殺すつもりはない。
マーベラスを絶望させ、自分のことを価値の無いクズだったと自覚させた上で殺すつもりです。

気絶したマーベラスの懐から零れ落ちたモバイレーツとゴーカイレッドのレンジャーキーを
「こいつは貰っておくよ・・・」と拾ったバスコに対して、
ダマラスは気絶したマーベラスを脇に抱え上げて「いくぞ!バスコ!」と命令します。
バスコは「へいへい・・・」と応じてついて行き、
2人はギガントホースへマーベラスを護送しようとします。

その時、ハカセはようやく目を覚まして、マーベラスが連れ去られてようとしているのを見て驚き、
ヨロヨロと起き上がって、「待て・・・マーベラスをどうするつもりだ・・・!?」とダマラスとバスコを呼び止めます。
こうなれば、自分が戦ってマーベラスを助けなくちゃいけないとハカセも決死の覚悟です。
しかし、ダマラスとバスコはハカセを一瞥すると、相手する価値もないというような蔑んだ視線を送り、
「フン・・・」と鼻で笑って無視し、そのままマーベラスを抱えたまま姿を消してしまったのでした。

あっと思ったハカセは呆然と立ち尽くします。
そしてダマラスとバスコが居なくなると、辺りが静寂に包まれていることに改めて気づき、
ハッとして周囲を見渡します。
やはり、さっきバスコの技で炎に呑まれたジョー達4人の姿もありません。
そして、今マーベラスも連れ去られてしまった。
ハカセは1人取り残されてしまったのです。

何ともいえない孤独感がハカセを襲い、
ハカセの脳裏にはいなくなってしまった5人との想い出が自然に湧き上ってきます。
そして、その記憶の最後にあるのは、自分が皆に嘘をついてしまったことでした。
「ジョー・・・ルカ・・・アイム・・・鎧・・・マーベラス・・・!」と、ハカセはゆっくり順々に、
5人の仲間の名を虚空に向かって呼び続け、そしてガクッと膝から崩れ落ちます。

自分は皆に自分を強く見せようとして伝説の勇者だとか記憶喪失だとか嘘をついた。
しかし、いくら嘘をついても本当の自分は仲間が殺されたり連れ去られたりしても、
全く助けることも出来ず足手まといになるだけの弱いダメな奴に過ぎなかった。
それどころか、殺す価値も相手に認めてもらえないような無価値な人間に過ぎなかった。
そんな自分が皆に強い人間に見せるために嘘をついたお返しとして、
皆がやられたフリをして自分を騙しているのではないかとも思ったハカセは「嘘だろう・・・?」と呟きます。

いや、そうだったらどんなにいいだろうかと妄想しているだけで、現実にはそんなはずはない。
現実に皆は殺されてしまい、連れ去られてしまった。
嘘をついていたのは自分だけであり、その嘘は撤回する余裕もなく、
自分は皆のことを騙したまま、お別れすることになってしまったのだと痛感したハカセは、
その絶望的な現実を受け入れることを拒絶するかのように
「こんなの嘘だあああ!!」と絶叫して地面に伏して泣き喚き、拳で地面を叩くのでした。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
にほんブログ村 にほんブログ村 テレビブログ スーパー戦隊へ
にほんブログ村
posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 12:00 | Comment(0) | 第42話「宇宙最強の男」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。