2012年01月30日

第48話「宿命の対決」感想その1

今回は前回の話からの続きで、バスコとの決着篇の後篇です。
やはり、クライマックス篇の5篇は、まず前半の2篇を使ってバスコとの決着を描き、
後半の3篇を使ってザンギャックとの最終決戦を描くようです。

ただ、この「ゴーカイジャー」という作品の35作記念のお祭り企画という特性上、
もしかしたらバスコ決着篇で「宇宙最大のお宝」の正体まで明かして、
「ゴーカイジャー」という作品としてのテーマは完結させて、
「ゴーカイジャー」という物語の実質的な最終篇とするのかもしれないとも思っていました。
そうしておいて、最終3篇は、実質的に「スーパー戦隊シリーズ35作品」の最終篇という扱いとして、
「VSシリーズ」的な特別篇のようにするつもりかもしれないと、危惧すると共に期待もしていました。
つまり「ゴーカイジャーVSスーパー戦隊」の全戦隊拡大版をTV本編で3話使って構成するというような感じで、
お祭り企画で、全戦士が変身しての完全なる共闘篇で、
「35戦隊VSザンギャック」の大戦争を派手に描くだけの話にするのかもしれないと思っていたのです。

それをどうして危惧すると共に期待していたのか?
まず危惧というのは、それはもはや「ゴーカイジャー」の物語とは別物になってしまうので、
せっかくここまで作ってきた物語が最後にやたら盛り上がるだけの派手なお祭り企画で終わってしまうのは
勿体ないという意味で危惧していたということです。
そして期待していたというのは、
そう危惧しながらも、この35作記念のお祭り企画というものに自分自身が当初から潜在的に期待していたものが、
まさにそういう内容だったからです。

この「ゴーカイジャー」という作品の一番物足りない点は、
せっかく過去作品の戦隊のメンバーのオリジナル役者に出演してもらいながら、変身して戦わせていないことです。
この作品はあくまで現在の子供たちに向けた物語であり、その主役はあくまでゴーカイジャーですから、
過去作品の戦士が目立ってゴーカイジャーの物語がしっかり作れなかったら意味は無い。
だから、ここまで描かれてきた「ゴーカイジャー」の物語は正しい作り方だったと思います。
ゲスト戦士をいちいち変身させて戦わせていたら、
1年間通してゴーカイジャーの物語をしっかり描くことは出来なかったはずです。

しかし、過去作品ファンとしては、せっかくのお祭り企画だけに、
もっと歴代戦隊の活躍も見たかったという気持ちもあります。
そのあたりは物足りなかったと感じる人も確かにいます。
だから、「ゴーカイジャー」の物語はテーマ的にはバスコ決着篇で終えてしまい、
残り3話は長らくスーパー戦隊シリーズを応援してくれたファンへのサービス企画のようにして、
ひたすら35戦隊とザンギャックのバトルを描くというのもアリなのではないかと期待もしていたのです。

しかし、今回のエピソードで「ゴーカイジャー」の物語はテーマ的にまだ完結していません。
「宇宙最大のお宝」の正体は相変わらず謎のままであり、
むしろアカレッドの謎など、新たな謎まで発生してしまいました。
だから「ゴーカイジャー」の物語はまだまだ続きます。
おそらく最終話までしっかり続くのでしょう。

よって、お祭り企画で残り3話を消費するという可能性は無いと思います。
最後まで、あくまで「ゴーカイジャー」の物語を描ききるのです。
正直、危惧と期待のどちらが大きかったかというと、危惧の方が大きかったので、こうなって安堵しています。
やはり「ゴーカイジャー」という作品は一貫してゴーカイジャーの物語を丁寧に描いてきたのだから、
最後までその方針を貫いてほしいと思います。

しかし、今回のエピソードですが、確かに「ゴーカイジャー」の物語は完結しなかったとはいえ、
前回に引き続き、異常に濃い、極めて重厚なエピソードでした。
前回と今回の前後篇は、まさに神回というやつで、
シリーズ史上屈指の傑作エピソードと言って良いのではないかと思います。

今回、なんといっても凄いのはアクションです。
バスコに既に巨大戦力が無く巨大化アイテムも無いこともあって、
この作品のエピソードで初めて巨大戦シーン無しという、等身大戦に特化したアクションが盛り沢山で、
その質が高いのはもちろんのこと、それぞれのアクションシーンのアイディアが素晴らしいの一語に尽きます。

「素面ゴーカイジャーVS召喚ゴーカイジャー」、
「多段変身歴代オールレッド戦隊VS召喚ゴーカイレッド」、
「マーベラスVSバスコの敵同士の武器交換アクション」という、
この「ゴーカイジャー」という作品の特徴的アクションの積み重ねがあったからこそ映える
変則的アクションの連続は、素晴らしいアイディアの連発でした。
これだけでも殿堂入りクラスであるのに、
更にマーベラスとバスコの決闘の決着シーンがストーリーやテーマと連動した見事なもので、
アクションでしっかり物語を紡いでいました。

このように今回のエピソードはアクションシーンが多く、全体的にドラマ部分は少な目でした。
ストーリーとしては、マーベラス達が前回バスコに奪われたレンジャーキーやガレオンを取り戻すために
戦いを挑み、バスコと決着をつけて、それらを取り戻すという、
至ってシンプルなものでありましたが、ドラマ的に薄かった印象は一切ありません。
むしろ極めて濃厚であったといえます。

今回アクションシーンが多めでドラマシーンが少なめであったのと逆に、
前回はドラマシーンが多めでアクションシーンは少なめであり、
この前後篇は完全に2話で1つのストーリーになっているのでしょう。
前回の豊富なドラマ部分を受けて、今回のドラマ部分の意味が深まっており、
それがまた今回のアクション部分の意味を深いものにもしていると解釈すべきなのでしょう。

その今回のドラマというのは、一見すると、
「正義は勝利し、悪は敗れる」という因果応報の分かりやすいドラマが描かれていたように見えます。
確かに最終的にはそうした正邪の対照がくっきりするような結末にはなりましたが、
それはあくまで今回のエピソードの着地点に過ぎず、
マーベラス達の物語が今回のバスコに勝利した要因を
自分達の物語の最終的な着地点として受け入れたわけではないと思います。

それがどういう着地点に行きつくのかというドラマは次回以降に持越しになったわけですが、
どうしてそれが持越しになったのかというと、
この作品においてバスコというキャラは全否定されるようなキャラではないからです。

登場当初はバスコというキャラには裏の事情が有るのかとも思っていました。
例えば裏でザンギャック皇帝と繋がっているとか、
「宇宙最大のお宝」を使って何か良からぬことを企んでいるとかです。
それはつまり、純粋にお宝を求める、純粋に夢を求めるキャラではないという意味で、
真の意味での「海賊」ではないキャラという解釈です。

つまり、マーベラスが本物の海賊であり、それに対比されるキャラとして、バスコは偽物の海賊であり、
最終的にバスコがマーベラスに敗れる時というのは、
バスコが所詮は偽物であったということが弱点となって敗れるのだろうと予想していました。
いや、今回のエピソードをそのように解釈することも十分に可能であるし、
実際、バスコは所詮はある意味では邪道の偽物の存在だったと私も半ば思っています。
物語の最終的な結論はやっぱりそのように「バスコ的」なるものは否定されて終わるのではないかとも思っています。

いや、そうあるべきなのではないかというニュアンスで、
どうも私自身、この「ゴーカイジャー」の物語の今後の展開がよく分からなくなってきました。
最終盤になってここまで迷わされるというのは、
それはつまり、この作品の構成が素晴らしいということの証明でもあるのですが、
それにしても痛し痒しというやつです。

迷わされている原因は、バスコが当初予想していた裏のあるキャラではなかったことです。
バスコが「宇宙最大のお宝」をどうして執拗に狙うのか、どうして赤き海賊団を裏切ったのか、
そのあたりの、「海賊」のポリシーを裏切るような、
云わばバスコの「邪悪な偽海賊」としての底が見えるような情報がいつ出てくるのかと待ち構えているうちに、
何時の間にやら終盤になってしまい、どうも思ったよりもバスコは普通の奴っぽいという印象に変わってきました。

これは実はこの後の最終3話の敵となるザンギャックについても言えることで、
どんな邪悪な意思や目的を持った悪の組織かと思って、
その隠された禍々しい真の目的がいつ判明するのかと待ち構えているうちに、
終盤になってもそんな情報は全く出て来ないどころか、
序盤からお馴染みの幹部連中までも次々と倒されていき、
ゴーカイジャーとの因縁すら薄い、普通に地球を侵略しようとしている巨大軍事帝国になってしまいました。

そこで、途中から、ザンギャックがこのような普通っぽい敵として描写されたのは、
ゴーカイジャーが宇宙の抑圧的な秩序に対する反逆者の戦隊であるという
キャラクター性を際立たせるためであると考察するようになり、
バスコはそうではなく、もっとドラマチックな設定が描かれるのだろうと予想しました。

ところがバスコも意外に普通の奴でした。
バスコとの決着篇と思しきエピソードの前篇である前回においても、
未だバスコ関連の隠されていた驚愕の設定などが全く匂わされないことから、
これはバスコは間違いなく、ややこしい裏設定などの無い普通人キャラなのだと悟り、
これまでのバスコ関連の描写を全て考察し直してみたところ、
確かにバスコが普通人キャラであると見なした方が全ての辻褄が合うことが分かりました。

これは一見面白くない。
背景に分かりやすい邪悪なドラマを抱えていた方が、明確に悪として分かりやすく、
それを倒す正義のヒーローの物語が盛り上がります。
だから、バスコが予想していたよりも普通っぽいキャラであったことは、
一見すると、単に悪役として描写不足のように感じられます。
いや、バスコが悪ではないというわけではなく、とんでもないゲスなのですが、
予想していたものよりも背景描写が薄いように感じられるのです。
しかし、今回のエピソードで、バスコが普通っぽく描かれたのは、
この最終盤の展開の中で、マーベラス達のキャラに更なる深みを持たせるためであったのだと分かりました。

となると、ザンギャックが終盤になって異様に薄い普通っぽい敵組織として描かれているのも、
同じ理由なのではないかと、ふと感じられました。
基本的にはマーベラス一味の反逆者ヒーローというキャラクター性を際立たせるために
ザンギャックは普通に描く必要はあったのでしょうけれど、
それにしても終盤に来てのザンギャック描写のいっそうの薄さというのは妙で、
実はとんでもない凄い裏設定があるとかいう流れにはおそらくならないでしょう。

それでいてラスボスがザンギャックであり、
バスコを倒しても未だ「宇宙最大のお宝」の正体が判明していないということを考え合わせると、
どうやら「宇宙最大のお宝」に絡めてマーベラス達のキャラを更に深く一段掘り下げるために、
今回のバスコのように、ザンギャックという普通の敵が活用されるのではないかと思えてくるのです。

要するに、悪が普通の存在として描写されることによって、
悪の存在に格別の理由が必要無い世界、
すなわち悪の優位な世界を描くことが出来るのであり、
そうした世界で正義のヒーローを描く場合には、
正義は自明の存在ではないので、正義の存在に格別の理由が必要となり、
結果的に正義のヒーローの本質が描かれることになるということです。

その場合、正義が自明でない世界では
正義のヒーローは最初から正義のヒーローではない。
正義のヒーローではない者が正義のヒーローとなっていく「ゴーカイジャー」の物語は
こうした物語構造に合致した物語なのだといえます。

そうしてザンギャックという普通の悪との対比でゴーカイジャーが正義のヒーローの本質に到達して、
ゴーカイジャーの物語は完結するのでしょう。
今回のエピソードは一旦マーベラス達の物語にその前段階として必要な揺らぎを生じさせたように見えます。
そして、そこで活用されたのがバスコというキャラであったのです。

もちろんバスコにしてもザンギャックにしても、
そこらへんにいるような普通の一般人と同じように描写されているわけではなく、
特殊な悪人キャラには描かれています。
ここで言う「普通」というのは、特に入り組んだ背景描写を描くわけではなく、
普通に存在し得ると思わせるぐらい、背景描写が薄いということです。

背景描写が薄い場合は単なる印象の薄いキャラになってしまう危険があるのですが、
それと対比される形で主人公キャラがしっかり描かれていれば、
そこから逆算される形で悪人キャラの方もどういう意味を持ったキャラであるのか、腑に落ちてきます。
そうして腑に落ちれば、どうしてそのキャラが背景を薄く描かれていたのか、その意味も分かってきます。

バスコの場合、今回において遂に、そのキャラが腑に落ちて、その意味もハッキリと分かりました。
それと同時にバスコは退場なのですから、腑に落ちるように描くのが遅いと言われれば遅いのかもしれませんが、
キャラの完成と退場が同時であるというのは、脇役だからこそ出来る贅沢な描き方であり、
バスコというキャラは終わってみれば、全く余分な使われ方はせず、有終の美を飾った名悪役であったと思います。
ザンギャックも同様であってほしいと願います。

ただザンギャックとバスコの場合、この作品においては全く意味の違った敵役であります。
ザンギャックはマーベラス一味と全く相容れない水と油のような間柄であり、
それゆえ最終的にマーベラス一味が正義のヒーローとなるに際して、その敵役として必要なのでしょう。
ただ、ザンギャックは絶対悪としては描かれていないし、マーベラス一味も絶対善としては描かれていません。
絶対悪でないものと絶対善でないものとの戦いで、マーベラス一味を正義のヒーローとして描くに際して、
「宇宙最大のお宝」というアイテムが何らかの役割を果たすのだと予想出来ます。
そこにおいて、「正義のヒーロー」とは一体何なのか、最終的な答えが出るのでしょう。

ただ、普通に1年間、ヒーロードラマを描いていくと、主人公は絶対善に自然になっていきますし、
その敵は自然に絶対悪になっていきます。
毎回毎回、主人公が悪の怪人を機械的に倒していけば、どうしてもそのように見えていくものです。
しかし1年間、ヒーロードラマを保つためには、どうしてもその積み重ねは必要です。
だが、この「ゴーカイジャー」という作品では、最後に「宇宙最大のお宝」を使って
「正義のヒーロー」というものの答えを描くためには、
ザンギャックは絶対悪に描きたくないし、マーベラス一味は絶対善には描きたくはない。

だから、そのために何らかの工夫が必要です。
そのように考えると、この「ゴーカイジャー」という作品において描かれてきたドラマの
幾つかの要素が、その工夫のためにも機能していたということに気付きます。

この「ゴーカイジャー」という物語は主要な要素は3つ有ります。
「ゴーカイジャーVSザンギャックの戦い」
「宇宙最大のお宝探し」
「宇宙海賊の主人公たちが正義のヒーローに成長していく物語」の3要素です。
そして、この3要素がそれぞれ関わり合いながら
「通常回」と「レジェンド回」の2本立てで物語が進行していきます。

マーベラス一味は「宇宙最大のお宝」を手に入れるために
34個のスーパー戦隊(レジェンド戦隊)の大いなる力を次々と集めていきます。
これは「宇宙最大のお宝探し」という物語の要素を描いていくロールプレイングゲーム仕立ての舞台回しであり、
この要素が描かれるエピソードが「レジェンド回」なのですが、
その「レジェンド回」の都度、マーベラス一味はそれぞれのスーパー戦隊の元戦士たちと出会って、
地球を守ってきた伝説のヒーロー達の持っていた精神と同じ精神が自分達の中にも存在することを
1つずつ知っていき、そのたびに少しずつ彼らはヒーローとして成長していきます。

これが「宇宙海賊の主人公たちが正義のヒーローに成長していく物語」という要素の描写なのですが、
この要素を描くにあたっての大前提が、彼らが基本は宇宙海賊であるということです。
この部分を主に描いているのが「通常回」という、
レジェンド戦士は登場せず、マーベラス一味のキャラを掘り下げつつ
「ゴーカイジャーVSザンギャックの戦い」を描いていくエピソードです。

ゴーカイジャーとザンギャックの戦いはレジェンド回でも描かれますが、
レジェンド回の場合のザンギャックは単にマーベラス一味とレジェンド戦士との絡みのきっかけとなったり、
単に倒されるべき敵として登場するという程度の扱いであり、
ザンギャックというキャラの本領が発揮されるのは通常回の方です。

通常回というのは、宇宙を支配するザンギャック帝国の非道に対して戦いを挑む、
お尋ね者の宇宙海賊であるマーベラス一味の反骨のヒーローとしての心意気を主に描くエピソードであり、
この通常回で、マーベラス一味は反骨の宇宙海賊であることが強調され、
そのマーベラス一味の反骨精神が、
レジェンド戦隊の正義のヒーローの精神と重なり合うことが描かれるのが「レジェンド回」なのです。

つまり、この通常回とレジェンド回が交互に連なっていくことによって、
「宇宙海賊の主人公たちが正義のヒーローに成長していく物語」が描かれる構造になっているのです。
そして、その流れの中で、「レジェンド回」でマーベラス一味がレジェンド戦士と精神の一致点を見出すことで
獲得される「大いなる力」は、「宇宙最大のお宝探し」のカギとなって確保されていくと同時に、
「ゴーカイジャーVSザンギャックの戦い」におけるゴーカイジャーの追加武装としても活用されていくのです。

このように「ゴーカイジャーVSザンギャックの戦い」「宇宙最大のお宝探し」
「宇宙海賊の主人公たちが正義のヒーローに成長していく物語」の3要素がそれぞれ関わり合いながら
「通常回」と「レジェンド回」の2本立てで物語が進行していくという基本構造で、
「ゴーカイジャー」の物語は十分に面白く機能するようになっています。

ただ、それは単に「ゴーカイジャー」の物語のフォーマットを
ローテーション的に回して機能させることが出来るというだけのことです。
物語というものは綺麗に終わらせなければいけないのであり、
それは物語を単に回していくのとはまた違った作業です。

上記のような通常回とレジェンド回のローテーションを回していくだけならば、
マーベラス一味は次第に正義のヒーローへと成長していき、
34個の大いなる力を集め終ると同時に完全なる正義のヒーローとなり、
正義の敵である悪の組織ザンギャックを滅ぼして大団円という、
当たり前すぎる終わり方をすることになります。

まぁこれはこれで面白くないこともないのは、
もともと基本構造だけでもかなり面白い物語なのだから当然なのですが、
やはりさすがに捻りが無さすぎます。
クライマックスの盛り上がり感があまりにも無い。
やはりクライマックスには山場が必要です。

そこで、34個の大いなる力を集めてもなお、
マーベラス一味は絶対善の正義のヒーローとはなっておらず、
倒されるべきザンギャックも絶対悪の必ず倒すべき敵というわけではないという、
ヒーロードラマとしてはある意味、危機的状況を作り上げておき、
そこでクライマックスになって登場する「宇宙最大のお宝」が大きな役割を果たして、
善悪の対決が一気に盛り上がるという構造にしたのではないかという気がしています。

そのように思う根拠として、
この「ゴーカイジャー」の物語は、終盤になっても通常回とレジェンド回の連動がイマイチ悪いのです。
おそらくわざと悪くしているのではないかとも思えます。

つまり、普通はレジェンド回を重ねていくにつれて
マーベラス一味はどんどん正義のヒーローらしくなっていくはずであり、
その正義のヒーローらしさの増大は通常回の描写にも反映されて、
人々を守って戦う描写が増えていくはずなのですが、あまりそういう傾向は顕著ではありません。
終盤になっても通常回においては、相変わらずマーベラス達はダーティーな反骨のヒーロー然とした姿勢を維持し、
ザンギャックから人々を守るためというよりは、降ってくる火の粉を払うための抗争や、
逆境から立ち上がるリベンジに明け暮れているように見えます。

レジェンド回を重ねるたびに内面的には確かに正義のヒーローになっていっているのですが、
あくまで通常回での描写にはそれを実際の行動としては反映させないように制作サイドが努めているようです。
これはつまり、クライマックスにおいてあまりマーベラス達が絶対善、ザンギャックが絶対悪という
絶対的な対立構図が最初から見えてしまっていない状態を作るための伏線なのではないかと思えるのです。

そのような思惑が存在すると考えれば、
ゴーカイシルバー伊狩鎧という追加戦士が中盤で登場した意義というものも分かってきます。
最初、鎧というキャラが現れた時、
これはレジェンド回でマーベラス達とレジェンド戦士の橋渡しをするために機能するキャラなのだと思いました。
しかし、実際はあまりそのように機能することはありませんでした。
確かに鎧が加わってレジェンド関連の知恵袋になったり、
レジェンド関連の小ネタが増えたりして愉快な描写は増えましたが、
鎧の加入がレジェンド回の構造自体に根本的な変化をもたらすことはありませんでした。

むしろ鎧の存在意義は通常回の方にあったといえます。
鎧という地球人のスーパー戦隊マニアのキャラはマーベラスたち宇宙海賊とは違って、
真っ当な正義のヒーローとして動かせる、この作中の唯一のキャラなのであり、
鎧はマーベラス一味のレジェンド回で増大していった正義のヒーローとしての側面を
通常回で一身に肩代わりさせるためのキャラとして用意されたのです。

鎧が正義のヒーロー役をしっかり担ってくれるお蔭で、
マーベラス一味の正義のヒーロー性が高まっていった後でも、
マーベラス達5人は、登場時とあまり変わらない反骨ヒーローとして振る舞うことが可能になったのでした。
また、マーベラス達の鎧との考え方の違いを対比して描くことで、
マーベラス達の反骨ヒーローらしさを際立たせるというテクニックもたびたび使われました。

鎧というキャラの存在意義はそういうことであったのだと思います。
つまり、鎧もまた、マーベラス一味をクライマックスまで絶対善として描かないようにする
工夫の一環として機能したキャラであったといえます。

そして、一方、ザンギャックを絶対悪として描かないという工夫のために機能したのが、
ワルズ・ギル、ダマラス、インサーン、バリゾーグ、アクドス・ギル、ダイランドーなどの
ザンギャック帝国幹部陣の人間ドラマでした。

このザンギャック内のドラマは、主要3要素の連動したこの作品の物語の基本構造とは
ほとんど関係ありませんでした。
これらのメンツのうち、主役のマーベラス一味と因縁があったのはバリゾーグぐらいなもので、
そもそもこの幹部連中はマーベラス一味と直接顔を合わせることさえ稀であり、
ひたすら本筋とは関係ない内輪のレベルの意外に人間臭いドラマに終始したように見えます。
こういうことは珍しいといえます。
これも、マーベラス一味との対立関係をあまり先鋭化させず、
内輪の人間ドラマを描くことで、極端な絶対悪として印象づけることを回避してきたという意味があったのでしょう。

そうやって振り返っていくと、この物語の中における、残る存在意義が不明な要素はバスコだけです。
他にレジェンド戦士たちやアカレッドもいますが、
レジェンド戦士たちはあくまで各話におけるゲスト扱いであり、
その存在意義は既に物語の基本構造の中で、マーベラス一味にヒーロー性を示し、
マーベラス一味のヒーロー性を見出す者として十分に機能しています。
また、アカレッドは重要キャラですが、結局クライマックスまで、未だまともに登場しておらず、
謎の多すぎるキャラであり、現状ではマーベラスの回想の中のキャラでしかありませんから、
ここまでの物語の中での存在意義が何であったのか考察するような対象ではありません。

そういうわけで、バスコだけがよく分からない。
一見、「宇宙最大のお宝探し」の競合者という存在意義があるように見えますが、
別に競合者はバスコでなくてザンギャックであっても良かったはずですし、
競合者自体が物語の構造上、絶対に必要だったとも思えません。

だから、どうもバスコの存在意義が分からず、
ものすごい巨悪に成長してラスボスになるのかとも思ったが、そういうわけでもなかった。
マーベラス達が正義の海賊であるのに対して、悪の海賊として配置されているのだろうという
印象は受けていましたが、
マーベラス達が海賊であることや正義であることを強調すること自体が、
この物語の中で大して重要な要素とは思えず、
そんなことはバスコというキャラを使わずとも、普通に描写出来ており、
そもそもバスコのようにたまにしか出ないキャラでは、そんな目的に大して役に立つとも思えませんでした。

しかし、クライマックスまでマーベラス達とザンギャックの間の
絶対善と絶対悪の絶対的対立関係を際立たせないようにするという思惑が存在するのではないかという
視点を導入することによって、バスコの存在意義というものが見えてきたのです。
いや、実は話は全くの逆であり、
今回のエピソードを見たことによって、バスコというキャラの真の存在意義が分かり、
その結果、クライマックスまでマーベラス達とザンギャックの間の
絶対善と絶対悪の絶対的対立関係を際立たせないようにするという制作陣の思惑が
存在するのではないかという推論が生まれたのです。

すなわち、バスコというのは、
マーベラス一味を絶対善にしないためにブレーキ役として
機能していたキャラだったのではないかと、
今回感じたのです。

通常回を反骨ヒーロー系のエピソードにするよう努めたり、
正義のヒーロー性を鎧に肩代わりさせたりして、様々に工夫していっても、
それでもレジェンド回を重ねていくにつれて、
どうしてもマーベラス一味の正義のヒーローらしさというのは自然に大きくなっていってしまいます。
特に最近の終盤のエピソードでは、かなり善良で人々のために戦うヒーローっぽくなってきていました。

もちろん基本的にはそれは良いことなのであり、
最終的にはその方向で物語は着地するはずだと思うのですが、
そこにこのままなだらかな曲線で軟着陸してしまっては物語の流れとして面白くないので、
一旦逆方向に引き戻さないといけない。

そのためには、正義のヒーローの甘さを思い知らせる、超辛口のキャラが必要です。
それが激辛の香辛料をその名に持つ男、バスコ・タ・ジョロキアだったのです。
バスコというキャラはマーベラス達が正義のヒーローっぽくなりすぎないように、
定期的に現れてマーベラス達の甘さを否定して、「海賊」に引き戻すためのブレーキ役のキャラであり、
ブレーキ役だからたまにしか登場する必要が無かった。
いや、基本的にはマーベラス達が正義のヒーローであるドラマであるこの作品においては、
たまにしか登場してはいけないキャラだったのです。

つまり、バスコは実は「偽海賊」ではなく、超辛口の「真の海賊」であったのであり、
バスコと戦うことを通して、マーベラス一味は自らが「正義のヒーロー」ではなく、
もともとは「海賊」であることを定期的に確認させられていたのです。

そのバスコが今回の最後の最後の出番において、
ザンギャックとの最終決戦前にめっきり正義のヒーローっぽくなっていたマーベラス達を
一旦大きく「海賊」へと引き戻しておくという役目を最大限に果たしたのだといえます。
ただ、それだけではなく、バスコは一旦「海賊」に引き戻した後のマーベラス達に、
彼自身の敗北を通して、その先の、最終3篇においてマーベラス達が本当に辿り着くべき答えのヒントも
示したような気もします。
前回と今回のバスコとの決着篇の前後篇というのは、そういう趣旨のエピソードであったのではないかと思います。

前回のエピソードを振り返ってみると、
サリーの一件を巡ってマーベラス一味とバスコの考え方の違いが浮き彫りになったことが分かります。
どんな絶望的状況でも未来のささやかな幸せを願う仲間たちとの絆を第一に考え、
時にはそれを夢よりも優先させるマーベラス一味。
一方、絶望的な世界の中で夢を掴むためには、大切な仲間さえも切り捨てるために存在するという考え方のバスコ。
この両者がサリーを巡って対立し、サリーはマーベラス一味を選んだ。

つまりマーベラス一味の理念がバスコの理念に勝利した。
そのように見えた瞬間、サリーを仲間として迎え入れたことが仇となり、
マーベラス一味は逆転負けを喫してしまったのです。
夢を仲間よりも優先させるバスコの夢を掴もうとする執念が、
仲間を夢よりも優先させるマーベラス一味の甘さを凌駕したのです。

普通のヒーロードラマならば、これは悪の善に対する一時的勝利に過ぎないことは明白ですが、
この「ゴーカイジャー」の場合、事情が違います。
何せ、ゴーカイジャーは夢を追い求める海賊の戦隊なのです。

本当はマーベラス達は夢を掴むことを優先するならば、サリーにここまでこだわる必要は全く無かったはずです。
一方、バスコは夢を掴むために、とことんサリーを道具として利用し尽くした。
どちらが「夢」というものに対して真摯であったかというと、それはバスコの方でしょう。
ならば、当初の予想とは全く逆で、バスコこそが真の海賊であり、マーベラス達は紛い物の海賊ということになる。
となると、この物語が海賊の物語である以上、バスコがマーベラス達に勝利したのは
正当なことということになります。

ただ、これがこの物語の結論ではありません。
何せ、この物語は「海賊がヒーローになる物語」だからです。
そしてゴーカイジャーは「夢を掴むために集まった仲間たちの絆」そのものなのです。
しかし「海賊」と「ヒーロー」という概念、「夢」と「仲間」という概念は、
前回のサリーを巡る対峙でも明らかなように、なかなか相容れるものではありません。

バスコはそれが相容れないということを知っており、見切りをつけている者であり、
その結果、とことん「海賊」と「夢(という名のエゴ)」に徹したダークヒーローです。
純粋に夢の力で戦うヒーローというのはバスコのような者を言うのでしょう。
バスコが5つの戦隊の大いなる力を奪うことが出来ているのも、彼が単純な悪ではなく、
夢の戦士、ダークヒーローだからです。

ヒーローはたとえ変身能力を失っていても、単なる悪に簡単に屈したりはしない。
しかし相手がダークヒーローであるなら話は別です。
この「海賊」と「夢」に徹したダークヒーローに対抗するには、
「ヒーロー」と「仲間」にとことん徹する必要があります。
スーパー戦隊はまさにその資質を持った戦士たちなのですが、
残念ながら変身能力を失っているので、それがハンデとなってバスコに勝つことが出来なかった。

一方、唯一変身能力を持ってバスコに対抗し得る存在のゴーカイジャーは、
「海賊」と「ヒーロー」、「夢」と「仲間」の間で中途半端に揺れ動き、バスコに敗れました。
そこで今回、マーベラスはそのことを悔いて、自分も海賊としての原点に戻り、
「海賊」と「夢」に徹してバスコと決着をつけようとします。

しかし、その決着は意外な形でつくことになります。
そこで示される価値観は、非常に月並みでありながら、
これまでこの「ゴーカイジャー」の物語の中であまりテーマとして取り上げられて来なかったもので、
その極めて月並みなテーマをセリフで言ってしまうと白けてしまいがちですが、
その説明を一切セリフ無しに表現した今回の脚本と演出は極めて秀逸といえます。
神回というのはこういうエピソードを言うのでしょう。
もちろん、この着地点に持っていくための周到な種蒔きをした前回のエピソードも合わせた、
前後篇の総合的な評価としての神回ですが。

そのことを踏まえて、「ゴーカイジャー」の物語を俯瞰してみると、
どうして34のスーパー戦隊はレジェンド大戦でザンギャックを完全に倒すことが出来ず
戦う力を失う羽目になったのか、なんとなく分かってきます。
おそらく「ヒーロー」と「仲間」に徹したヒーローではザンギャックは倒せないのです。
また、バスコがザンギャック支配下の宇宙で絶望から抜け出せなかったのは、
「海賊」と「夢」に徹したヒーローでもザンギャックには勝てないからなのでしょう。

それらがどうしてなのか、そもそもザンギャックとは何を表しているのか、
それは現時点ではよく分かりません。
それはおそらく最終3篇を見ると、見えてくるのでしょう。

ただ、おそらくザンギャックを倒すことが出来るのは
「海賊」と「ヒーロー」の両面を兼ね備えた、「夢」と「仲間」を両立させることの出来る
ヒーローだけなのでしょう。
だから、この物語は「海賊がヒーローになる物語」なのであり、
海賊でありながらヒーローであるマーベラス一味という主人公たちが設定されたのです。

ただ、「海賊」と「ヒーロー」、「夢」と「仲間」を両立させることは困難であり、
それゆえ、マーベラス達は単に中途半端となって、
とことん「海賊」と「夢」に徹したバスコに一旦敗れ去った。
今回、マーベラスがその雪辱を果たしてバスコに勝利したのは、
バスコと同じく「海賊」と「夢」に徹したからではなかった。
マーベラスはそうして勝とうとしたが、結末はそうではなかった。

おそらく、そのバスコに対する勝利の決め手として今回のエピソードで示された価値観こそが、
「海賊」と「ヒーロー」、「夢」と「仲間」を両立させるもののヒントとなるのでしょう。
だから、ザンギャックとの決戦前にそのヒントが示される必要があった。
そういうわけでマーベラス一味とザンギャックとの決戦の前に、
マーベラス一味とバスコとの決着篇が挿入される必要があったのではないかと思います。
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 11:08 | Comment(2) | 第48話「宿命の対決」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年01月31日

第48話「宿命の対決」感想その2

では本編ですが、まずは前回のダイジェスト映像を流しながら
「34の大いなる力を手に入れるため、バスコはなんと相棒のサリーを犠牲にして、ゴーカイジャーを撃破!
・・・さらにゴーカイガレオンを乗っ取り、ナビィをも手中にした
・・・このままでは、宇宙最大のお宝はバスコが手に入れてしまう!もう止められる者はいないのか・・・?」
というナレーションで前回の粗筋を振り返ります。

ダイジェスト映像としては、サリーの爆死に巻き込まれるマーベラスと、
バスコに吹っ飛ばされて敗北するジョー達5人、
バスコに奪われたゴーカイジャーのレンジャーキー、捕らわれたナビィ、高笑いするバスコ、
そして地面に倒れたまま動かないマーベラス達6人に降り始めた雷雨が降り注ぐという
前回のラストシーンまでが流れます。

そして、その前回ラストの倒れた6人のシーンからそのまま今回の本編が始まり、
まず雨粒が顔に当たってジョーが目覚めます。
バスコに倒されたジョーは死んではおらず、気絶していただけであったようです。
バスコは前回、戦いに勝利した後、倒れた6人に向かって歩いていきましたが、
6人からレンジャーキーを奪っただけで、トドメは刺していなかったようです。
どうして6人にトドメを刺さなかったのかというと、おそらくそんなことにはもともと興味が無いからでしょう。

バスコが興味があるのは「宇宙最大のお宝」を手に入れるということだけであり、
そのために必要なものはどうやら「34の大いなる力の宿ったレンジャーキー」、
「ゴーカイガレオン」、「ナビィ」の3つのアイテムだけであるようで、
バスコはそれさえ奪えれば、他のことにはほとんど興味は無いようです。
それで、ジョー達を倒して、手応えを感じたバスコは、サリーの爆発に巻き込まれたマーベラスも含めて、
虫の息の6人はすぐに死ぬだろうと思って、念のためにレンジャーキーだけ奪って、
おそらく6人のうちの誰かのモバイレーツを使ってガレオンの位置を調べると、
6人は放置して急いでガレオンに向かったようです。

バスコはマーベラス達はどうせすぐ死ぬと思っており、
仮に生きていたとしても、レンジャーキーを奪っておけば変身出来ず刃向うことは出来ないし、
万が一、もし万全の状態で再び挑んできたとしても勝てる自信はありました。
だからマーベラス達に構っている時間は惜しかったのでしょう。
もともとバスコはお宝探しに関係ない殺人や破壊活動などには一切興味は無いので、
この場合、既にお宝探しの障害となり得ないであろうマーベラス達6人を確実に殺すことよりも、
まず一刻も早くガレオンに向かいたかったのです。

早くしなければ、ナビィが異変に気付いて、
バスコの来襲に備えてガレオンを移動させてモバイレーツとの回線を遮断してしまうかもしれない。
そうしてナビィがガレオンを動かしながらひたすら隠れて逃げ回る作戦に出れば、
既に巨大戦力を喪失して、しかもその容器であるサリーまでも失ったバスコは、
ガレオンを捕捉出来なくなってしまう危険がありました。

だからバスコはとにかく念のために慌ててマーベラス達からレンジャーキーだけを奪うと、
ガレオンに向かったのです。
その結果、バスコはナビィがマーベラス達との連絡がとれないことに気付いて
ようやく慌て始めた頃にガレオンに辿り着くことが出来て、
ガレオンを乗っ取り、ナビィを捕えることには成功しましたが、
焦って戦いの場を後にしたために、ジョー達のダメージの度合いを見誤ることになったのです。
バスコの攻撃を喰らって吹っ飛ばされたジョー達5人はそれほど深刻なダメージは受けておらず、
ただ単にショック状態で長く気絶していただけでした。

目覚めるとジョーは、まず自分が倒れて気絶していたことを知り、
つまりバスコとの戦いに敗れたのだと知り、悔しがって地面を拳で叩きます。
仲間のサリーを非情にも爆殺してマーベラスともども吹っ飛ばしたバスコに対して激怒したジョーは、
マーベラスとサリーの仇を討つために絶対にバスコを倒してやりたかった。
しかし、それは叶わず、返り討ちにあってしまったことが口惜しくて仕方なかったのでした。

だが、悔しさに浸っている場合でないことは分かりますから、
すぐにジョーは傍で倒れているアイムと鎧に気付き、駆け寄ると、
2人が生きているのか確かめるように「アイム!鎧!」と2人の身体を揺すって大声で呼びかけます。
するとアイムと鎧は目を覚ましたので安堵したジョーは、その傍で倒れているマーベラスに気付き、
一番心配なのはマーベラスだということを想い出しました。

ジョー自身が割とピンピンしているということは、
一緒にバスコに倒された他の4人も同じ程度のダメージということです。
現にアイムと鎧は簡単に目を覚ましました。
そしてアイムと鎧はそれぞれルカとハカセを揺すり起こしていますが、
ほどなくルカとハカセも目を覚ましました。

しかしマーベラスだけは状況が違います。
マーベラスは戦いの前にサリーと一緒にバスコの仕掛けた爆弾で吹っ飛ばされ、
サリーはバラバラになってしまい、
何故かマーベラスは身体に大きな損傷は無かったが、意識不明状態になっていたのです。
すぐ隣に居たサリーがバラバラになるほどの爆発ですから、
外見上は大きな損傷は無いといってもマーベラスは深刻なダメージは受けているはずです。

バスコも間違いなくマーベラスは致命傷を負ってすぐに死ぬだろうと判断して、
あえて生死を確かめる手間さえ省いたようです。
ジョーもマーベラスは格別に深刻な状態だと気付き、
慌ててマーベラスに駆け寄ると、あまり揺すっては危険だと思い、静かにマーベラスの肩に手をかけて
「マーベラス!・・・大丈夫か!?」と呼びかけました。

ハカセを起こした鎧も慌てて駆け寄り「マーベラスさん!目を開けてください!」と呼びかけ、
アイムもルカもハカセもマーベラスが危険な状態であったことを思い出し、慌てて駆け寄って、
マーベラスの様子を固唾を呑んで見守ります。
戦いが始まる前、既にマーベラスは意識不明状態だったのであり、
あれから更に自分達が戦っている間も、戦いに負けて気絶していた間も放置されていたわけで、
もはや取り返しのつかない状態になってしまっているのではないかと、5人は不安になります。

ところがマーベラスは「う・・・く・・・」と呻き声を上げて顔を動かし、意識を取り戻したのです。
そして更に起き上がろうとしますが、これはさすがに厳しいようで、
身体の痛みに顔を歪め、完全に身を起こすことは出来ません。
やはりジョー達に比べて大きなダメージを受けているようですが、
それにしても隣でサリーがバラバラになるほどの爆発に巻き込まれた割には、
ダメージは妙に軽いと言えます。

何らかの事情で爆風がほとんどサリーの方に向かい、マーベラスは致命傷を受けるのは免れたようですが、
そんな奇跡的な偶然が起こっているとは普通は気付きませんから、
爆発の直後にマーベラスに駆け寄った5人は、マーベラスが倒れて動かないので、
さぞや深刻なダメージを受けたのだと早合点したようです。
実際はマーベラスは死ぬようなダメージは受けていなかったようです。

ただ、爆発のショックはやはりそれなりにあるようで、
「無理なさらないで・・・」と気遣うアイムに向かって、
マーベラスはまず「・・・バスコは・・・?」と小さな声で問いかけます。
爆発の瞬間、マーベラスはサリーを助けようとしていたのだから、
目を覚まして最初に気遣うべきはサリーの安否であろうが、
マーベラスはサリーのことではなくバスコのことを気にしています。
これはおそらく爆発のショックで一時的に記憶が飛んでしまっているのであり、
マーベラスの覚えている記憶はバスコと対峙しているところで途切れているのでしょう。
そしてサリーの存在は今のマーベラスの頭からは何処かに飛んでしまっているようです。

アイムはマーベラスが意外に無事であることに喜びを感じつつも、
少し記憶が混乱している様子を察し、どう応えようか迷います。
とりあえずサリーのことは、あまりに悲惨な結果となったので
マーベラスにサリーが死んだことを伝えるのは憚られ、
マーベラスがサリーの安否を質問してこないことはむしろ好都合だと思いましたが、
バスコがどうなったかについても、今のマーベラスにどう説明すればいいものか、アイムは少し迷います。
アイムも自分達がバスコに負けてしまったことは分かっていますが、
それがあまりに申し訳なくて、どのように説明したらいいものか一瞬分からなかったのです。

一瞬の気まずい沈黙の後、アイムに代わって答えるようにルカが
「・・・ゴメン・・・負けちゃった・・・レンジャーキーも奪われたみたい・・・」と、目を伏せて悔しげに言いました。
皆、目を覚ましてからすぐに自分の手持ちのゴーカイジャーのレンジャーキーが
奪われていることに気付いていたようです。

レンジャーキーというものは基本的には使い終わるとカーギーロードを通って
ガレオンの宝箱に戻るようになっているようです。
前回のバスコに敗れた戦いの際にジョー達5人が次々に使っていた
ダイレンジャー、ハリケンジャー、ギンガマンのレンジャーキーは使い終った後、
それぞれ宝箱に戻ったようですが、
銀河の戦光をバスコに弾き返されてギンガマンの変身が解除された後、
バスコに倒された際の5人はゴーカイジャーの姿に戻っていました。
このゴーカイジャーのレンジャーキーだけは変身解除後も宝箱には戻らず、
常にマーベラス達の懐に収納されているようです。

その有る筈のゴーカイジャーのレンジャーキーが無いことは皆、すぐ分かるようになっているようで、
マーベラスも自分のゴーカイレッドのレンジャーキーも無くなっていることに気付きます。
自分が気を失っている間にジョー達がバスコに負けて、レンジャーキーを奪われたということは、
自分のレンジャーキーを奪ったのもバスコの仕業だと、まだぼやけた頭でマーベラスは悟りました。

一方、ハカセは「ガレオンのコンピュータにアクセス出来ない!」と焦りながらモバイレーツを操作して、
次いで「・・・ナビィも・・・ダメだ・・・」と落胆します。
どうやら6人ともレンジャーキーは奪われたものの、モバイレーツは奪われていないようです。
バスコは以前に第16話でジョー達を捕えた時や、第42話でダマラスと一緒にマーベラスを捕えた時には
レンジャーキーと共にモバイレーツを奪っていますから、
今回モバイレーツを奪わなかったのは不自然であるようにも思えます。
しかし、これは整合性のとれた行動だと思います。

これまでの描写を整理してみると、
まず、例えば第44話でルカが生身から直接マジマザーに変身したように、
別に最初にゴーカイジャーに変身しなくても、モバイレーツにレンジャーキーを挿せば、
どの戦士にも変身は出来るようです。
同じケースとしては第16話でハカセが生身から直接シンケングリーンに変身したケースがありますが、
しかし、この第44話と第16話はよく見ると状況が違います。

第44話のルカは地上の公園に居て、
ガレオンの宝箱からマジマザーのレンジャーキーを取り寄せてモバイレーツに挿しました。
一方、第16話のハカセは人質交換の場にやってきたマーベラスが持参した宝箱の中にあった
マーベラスのモバイレーツに、同じく宝箱の中にあったシンケングリーンのレンジャーキーを挿して変身しました。
つまり第44話はいつものゴーカイジャーに変身後に
カーギーロードで他のレンジャーキーを転送させてくるのとほぼ同じ行程を経て変身しているのに対して、
第16話ではずいぶんと回りくどいことをしています。

これは第16話の時はハカセ達はバスコに自分自身のモバイレーツとゴーカイジャーのレンジャーキーを奪われて、
それはサリーが持っていたからです。
ハカセはシンケングリーンに変身してからサリーを攻撃して
自分達のモバイレーツとゴーカイジャーのレンジャーキーを奪還したのです。

第44話のケースと第16話のケースの大きな違いは、
モバイレーツとゴーカイジャーのレンジャーキーの有無といえます。
これが有れば宝箱からカーギーロードでレンジャーキーを転送できるが、無いと転送が出来ないのです。
そして第16話ではハカセがマーベラスのモバイレーツを手に入れた後も
レンジャーキーをわざわざジョーが拾って挿してあげているので、
モバイレーツにはレンジャーキーを転送させる能力は無いようです。

第19話冒頭でナビィが鎧にカーギーロードを接続する際にわざわざゴーカイシルバーに変身させていることや、
常にマーベラス達がゴーカイジャーのレンジャーキーだけは宝箱に戻さずに
持ち歩いていることなども考え合わせると、
おそらくカーギーロードを通して宝箱からレンジャーキーを転送させる能力は
ゴーカイジャーのレンジャーキーの方に宿っていると思われます。
もしモバイレーツにその能力があるのなら、マーベラス達はモバイレーツだけを持ち歩けばいいはずです。
それなのにゴーカイジャーのレンジャーキーを持ち歩いているということは、
ゴーカイジャーのレンジャーキーがカーギーロードと繋がっているということです。

そして第44話のルカのケースで見たように、
ゴーカイジャーのレンジャーキーさえ持っていれば、別に変身していなくても、
宝箱から別のレンジャーキーを取り寄せることは出来るようです。
第2話で少年にレンジャーキーを見せてほしいと乞われたマーベラスが生身の状態で
シンケンレッドやマジレッドなどのレンジャーキーを懐から取り出したのも、そういう仕組みだったのです。

ちなみにあの時の少年はシンケンレッドのレンジャーキーをモバイレーツに挿して
生身から直接シンケンレッドに変身し、
怪人に敗れて変身解除した際にシンケンレッドのレンジャーキーをその場にモバイレーツと共に落としていますが、
これは少年がカーギーロードに繋がっているゴーカイジャーのレンジャーキーを持っていなかったから、
使用後のシンケンレッドのレンジャーキーが宝箱に戻ることが出来ず、その場に落ちたのだと解釈出来ます。

このように考えると、おそらくアカレッドが作ったのであろう変身機能付きモバイレーツは、
集めた34戦隊のレンジャーキーを宝箱に入れたまま有効活用するために、
最初からゴーカイジャーのレンジャーキーと対になっていたのだと思われます。
つまり、変身機能付きモバイレーツとゴーカイジャーのレンジャーキーはセットで開発されたのです。
そして、ゴーカイジャーのレンジャーキーさえあれば他のレンジャーキーを宝箱から手元に転送したり、
武器をガレオンの武器庫から転送したり出来るのです。

変身機能付きモバイレーツは、通常のバスコも持っている通信端末の機能に、
ゴーカイジャーのレンジャーキーや他の転送してきたレンジャーキーを挿して変身するための機能を
プラスしたものであり、
宝箱から離れた状態でゴーカイジャーのレンジャーキーとセットになっていなければ、
単なる通信端末としての機能しかない普通のモバイレーツ同然の存在でしかありません。
だからバスコはもし万が一マーベラス達が生き延びたとしても、
ゴーカイジャーのレンジャーキーさえ奪っておけば変身は出来ず脅威にはなり得ないと思ったのでしょう。

第16話でレンジャーキーだけでなくモバイレーツも奪ったのは変身を封じるためというよりも、
人質のジョー達がマーベラスと独自に連絡をとったりしないように
通信端末としてのモバイレーツを取り上げるのはむしろ当然の措置であったに過ぎず、
第42話でダマラスに捕らわれたマーベラスのモバイレーツをレンジャーキーと一緒に奪ったのは、
あの場合は後でマーベラスに返すことが前提だったのでまとめて預かっていただけであり、
むしろセットにして持っておかねばならない事情があっただけのことです。

変身能力を奪うという目的だけなら、モバイレーツまで奪う必要は無く、
ゴーカイジャーのレンジャーキーさえ奪えばいいのです。
念には念を入れてモバイレーツまで奪う必要はバスコはほとんど感じなかったのでしょう。
ゴーカイジャーのレンジャーキーさえ奪えばマーベラス達の変身能力は封じたも同然であるし、
それよりも一刻も早くガレオンに向かう方を優先したかったのでしょう。
何より、バスコはマーベラス達はどうせすぐに息絶えるだろうと思っていたのだから、
レンジャーキーを奪ったこと自体が念には念を入れた行為だったといえます。
だから、そこに更にもう1つ念を入れるということはしなかったのでしょう。

ただ、変身能力を封じるという目的だけならば、
バスコはマーベラス達のゴーカイジャーのレンジャーキーを破壊した方が良かったのかもしれません。
いや、そもそもレンジャーキーというものが破壊可能なものなのかよく分からないのですが、
破壊が不可能だとしても、わざわざガレオンの宝箱にしまったバスコの行為を見ると、
バスコはゴーカイジャーのレンジャーキーや大いなる力も
「宇宙最大のお宝」を手に入れるために必要だと思っているのかもしれません。

小津魁がハカセに語った言葉が真実だとするなら、
「宇宙最大のお宝」を手に入れるために必要なのは34の大いなる力だけですから、
ゴーカイジャーのレンジャーキーや大いなる力は関係無いはずです。
しかしバスコはそこまで詳細な話は知らないので、
とにかく全部のレンジャーキーを揃える必要があると思い、
そういう意味合いもあって、マーベラス達からゴーカイジャーのレンジャーキーを奪ったのでしょう。

しかし、このようにバスコがマーベラス達からゴーカイジャーのレンジャーキーさえ奪えば
その変身能力を封じることが出来るということを知っていたとするなら、
バスコはもともとアカレッドの作った変身機能付きモバイレーツと
ゴーカイジャーのレンジャーキーのセットについて知っていたということになります。
おそらくアカレッドの行動に探りを入れていく過程でバスコはその存在や使い方に関する情報は知ったのでしょう。

だから、それも裏切り決行の際に奪おうとしていたのでしょうけれど、
これに関しては隠し場所がよく分からず、奪えなかったのでしょう。
そして、ゴーカイジャーがラッパラッターの召喚戦士よりも強いとは知らなかったのでしょう。
一方、マーベラスは何も知らず、アカレッドの死後、ガレオンで脱出した後で
ナビィからその隠し場所を聞いて、初めてゴーカイジャーの変身システムの存在を知ったのだと思われます。

さて、こうしてゴーカイジャーのレンジャーキーを奪われてしまったマーベラス達は、
ガレオンの宝箱からレンジャーキーを転送してくることも、
ガレオンの武器庫から武器を転送してくることも出来ないので、
モバイレーツを持っているだけでは戦う力は無いも同然です。
そうなれば、ガレオンに戻って宝箱から直接レンジャーキーを取り出してモバイレーツに挿して変身したり、
ガレオンの武器庫から直接武器を手にとるしかありません。

それでハカセは、ゴーカイジャーのレンジャーキーが奪われたことを知ると、
いつもマーベラスがやっているようにモバイレーツに「5501」と入力して
ガレオンをこの場の上空に呼び出そうとしたのですが、ガレオンに通信が繋がらないのです。
そこで続けて、ナビィに直接通信しようと試みましたが、これもダメだったようです。

ガレオンへ繋がる回線とナビィに繋がる回線は別々であるようですが、
これが両方繋がらないということは、ガレオンとナビィの双方に異変が生じたということを意味します。
片方だけならば偶然ということも有り得ますが、
両方ダメということは間違いなくガレオンで何か異変が起こったと見ていい。

ハカセの報告を聞いて、ジョーは愕然とし、
「・・・バスコが・・・ガレオンを乗っ取ったってことか・・・!」と、悔しげにワナワナと震えながら、
最悪の事態が起きたことを認めざるを得ませんでした。
「多分・・・」とハカセも沈痛な顔で頷きます。
自分達に勝ったバスコが、トドメを刺すのも忘れるぐらい急いで何処かへ行ったとすれば、
それはバスコの喉から手が出るほど欲しがっている192個のレンジャーキーと29の大いなる力の置いてある
ゴーカイガレオンしか考えられないと、ジョーもハカセも気付いたのです。

実際、バスコはガレオンを乗っ取っており、
もし万が一マーベラス達が生きていた場合、彼らの唯一の挽回のチャンスとなる、
モバイレーツを使ってのガレオンの召喚を不可能にするために、
念のためにガレオンとモバイレーツの回線を切っていたのです。
もともとガレオンの乗員であり変身機能は無い通常版とはいえモバイレーツの使用者であるバスコならば、
それぐらいの手を打つのは当然でした。

そしてナビィですが、ジョーとハカセの沈痛な表情から察するに、
彼らはナビィもガレオンで既にバスコの毒牙にかかって機能停止してしまったと思っているようです。
実際はナビィはバスコにとっては「宇宙最大のお宝」を手に入れるために必要なものであるようなので、
バスコはナビィを殺したりはしていないのですが、
ジョーやハカセ達はそのあたりはあまりよく分かっていないようなので、
てっきりナビィはバスコに殺されてしまったので連絡がとれないと思っているようです。

ジョーとハカセの遣り取りを聞いて、まだ頭がぼんやりするマーベラスも、
自分が意識を失っていた間に、事態は最悪な状態になっていることに気付き、愕然とします。
アイムも途方に暮れて「レンジャーキーを奪われ・・・ガレオンも奪われ・・・」と呟いて立ち上がり
「・・・これから・・・どうしたらよいのでしょう・・・?」と天を仰ぎます。
その天からは、遂に雷雨が激しくなり、大きな雨粒を6人に叩きつけてきました。

6人はバスコにゴーカイジャーのレンジャーキーを奪われて、
宝箱からレンジャーキーを転送してくることも出来ず、変身して戦うことは出来ない。
かといってガレオンに戻って宝箱や武器庫に行って態勢を立て直そうにも、
そのガレオンをバスコに乗っ取られてしまい、ガレオンを呼び寄せることも出来ない。
当然バスコはガレオンを何処か別の地点に移動させてしまっているはずだが、
回線が切られているからモバイレーツでその位置を調べることも出来ない。
ガレオンの場所が分からない以上、
もちろんガレオンに居るバスコからゴーカイジャーのレンジャーキーを奪い返すことも出来ない。
そして、こういう時の最後の頼みの綱のナビィまでもバスコによって葬り去られてしまった。

そのガレオンでは今頃、バスコが宝箱の中の192個の全てのレンジャーキーと29の大いなる力を手中に収めており、
バスコのもともと持っていた5つの大いなる力と合わせて、
遂に「宇宙最大のお宝」を手に入れるために必要な条件を満たす、34の大いなる力を揃えているはずである。
つまり、このままではバスコが「宇宙最大のお宝」を手に入れてしまう。
いや、既にもう手に入れている可能性もある。

全く最悪の状況で、万事休す、お手上げと言っていい。
それどころか住処であるガレオンすら失い、6人は行き場所さえ無い状態であり、
これまでずっと目標としてきた「宇宙最大のお宝」が奪われてしまうとなると、
やるべきことすら見つからない状態です。

急にどしゃ降りになってきた雨に打たれながら、仰向けに寝転がったままマーベラスは、
いったいどうしてこんな最悪な結果になってしまったのだろうかと考えました。
だいたい、どうしてそんな最悪なことになっている間、自分はずっと呑気に寝ていたのだろうかと考えると、
記憶が次第に甦ってきて、自分がサリーを爆弾の爆発から守ろうとしていたことを想い出しました。
そうしてこの場にサリーがいないことに気付きます。

あの状況でサリーが再びバスコに付いて行ったとも思えず、
マーベラスは自分はサリーを助けられなかったのだと悟りました。
ジョー達はサリーのことを一言も云わないが、
それはつまり、サリーはもうこの世には居ないということなのだとマーベラスは悟り、
自分が気を失っていたのは、サリーを吹っ飛ばした爆発に巻き込まれたのが原因だと理解しました。
その後、ジョー達が5人でバスコと戦い、敗れた結果、今の最悪の状況に至ったのです。
ならば、この最悪の状況は、自らが招いた結果だったのだとマーベラスは気付きました。

バスコは強敵であり、6人がかりで戦ってようやく互角の勝負に持ち込める相手だった。
それなのに戦いの前にマーベラスが爆発に巻き込まれて戦線離脱したから
ジョー達は5人でバスコと戦う羽目になって敗れてしまったのです。
爆弾の起動に気付いた瞬間、その場を跳び退いていれば、マーベラスは爆発に巻き込まれることはなく、
バスコとの戦いに参加することは出来ました。
そうなれば結果は全く違っていたかもしれない。
つまりサリーを見捨てていれば、マーベラスは爆発に巻き込まれることもなく、
バスコにも勝てていたかもしれないのです。

もちろん仲間になる道を選んでくれたサリーを見殺しにすることが正しい行為であるはずはない。
しかし、そのマーベラスの仲間想いの行為が、
仲間であるジョー達に不利な戦いを強いる結果をもたらし、
仲間で力を合わせて追い求めてきた夢を失う結果に繋がったのです。
あの時、サリーを見捨てて逃げていれば、夢は手に入ったかもしれない。

いや、そもそもサリーを追ってこの森に来なければ、バスコと危険な等身大戦をする羽目にもならなかった。
サリーを助けたいと思ったから危険を承知でこの森に来たのです。
サリーを見殺しにしてガレオンに篭っていれば、バスコとは常に有利に戦うことは出来た。
そうしていれば、どう間違ってもこんな結果にはならなかっただろう。
つまりサリーを仲間にして救いたいというマーベラスの気持ちが仇となって、
マーベラス達は夢を失う羽目になったのです。

マーベラスは確かに以前に巨大な幽霊船の船長ロスダークとの戦いの際に、
夢を捨てて仲間を選んだことがあります。
あの時はジョー達仲間を見捨てていれば、マーベラスは「宇宙最大のお宝」を手に入れることが出来たはずです。
しかしマーベラスは手に入れたゴッドアイがただ1つ叶えてくれる願い事で仲間を助けて、
「宇宙最大のお宝」は諦めました。

だからマーベラスという男は基本的には「夢よりも仲間を選ぶ」男なのかもしれない。
ただ、あの時は確実に「宇宙最大のお宝」を手に入れることの出来るチャンスをフイにしただけのことであって、
「宇宙最大のお宝」を誰かに奪われたわけではなく、それを手に入れるチャンスは繋がっていたのです。
マーベラスは夢を諦めたわけではなかった。
ただ、夢は1人で叶えるのではなく、仲間と一緒に叶えなければ意味が無いと思っただけなのです。
だから正確に言えば、あの時はマーベラスは「夢よりも仲間を選んだ」のではなく、
「1人で掴む夢よりも仲間と共に掴む夢を選んだ」のです。

ところが今回のマーベラスは、サリーを助けるために「仲間と共に掴む夢」を失ったのです。
サリーはサルであり「夢」の意味は理解出来ない。
しかしマーベラスはサリーを仲間にしようと思った。
それは、マーベラスにとっての仲間というものの本質は、一緒に夢を掴むための存在ではなく、
一緒に絶望的な宇宙でささやかな幸せを目指す存在であったからです。
それならサルでも仲間になり得ることにマーベラスは気付いたから、サリーを仲間にしようとして、
サリーもそれに応えて仲間になった。
その直後に悲劇が起き、マーベラスは仲間になったばかりのサリーを守ろうとしたのです。

しかしサリーは確かに仲間だが、共に夢を掴む仲間ではなかった。
そのサリーを助けることを優先して夢を失ったのならば、
やはりマーベラスは「夢よりも仲間を選ぶ」男だったのかもしれない。

これが個人的な問題ならば、それがマーベラスという男の本質であったということで済ますことは出来ますが、
そのマーベラスがサリーと引き換えに捨てた夢は、「仲間と共に掴む夢」だったのですから、
マーベラスは仲間を裏切ったことになる。
となると、マーベラスは「仲間を選ぶ」男ですらない。
結局、甘い考えで夢も仲間も裏切ってしまった男だということになる。

しかし、サリーを助けようとした行為が誤りだったとは決して思えない。
マーベラスはバスコに夢を奪われそうだというのに、
その原因になったサリーの一件を激しく悔やむ気持ちにはなれませんでした。
つまりは、自分は夢よりもサリーを選ぶような男だったのだとマーベラスは思いました。
一方、サリーを捨てて殺したバスコは許し難い外道だが、
サリーを捨てて夢を選んだ分、少なくとも自分よりは夢を掴む気持ちが強かったのだろうと
マーベラスには思えました。

つまり、マーベラスは夢を掴もうとする想いの強さでバスコに負けていた。
何時の間に負けてしまっていたのだろうかと考えて、
マーベラスは自分がサリーの一件で夢と共に仲間を裏切ってしまったことを
悔やんでいることに気付きました。
悔やんでいるということは、それが間違っていたと思っているからです。
要するにマーベラスは仲間を夢に巻き込んで落胆させてしまったことを悔やんでいるのです。

もともと「宇宙最大のお宝」はマーベラスの夢だった。
マーベラスが5人をその夢に巻き込んで、その挙句、自分で勝手に失敗して
夢を台無しにして他の5人を落胆させたのです。
マーベラスが悔やんでいるのはそのことでした。
単にマーベラス1人が夢を追い掛けて、仲間のサルを助けるために夢を失ったとしても、
それは自分はそういう人間だったのだと思って納得出来ます。
しかし他の仲間を勝手に自分の夢に巻き込んで、さんざん迷惑をかけて落胆させてしまったと
マーベラスは悔やみました。

どうして仲間を夢に巻き込んだのか?
マーベラスは仲間というのは一緒に夢を掴もうとするものだと思っていました。
赤き海賊団だってそういう仲間だったはずです。
だからマーベラス一味でもマーベラスは同じようにして、
仲間と一緒に「宇宙最大のお宝」を手に入れようとしました。

しかし、マーベラスは今回のサリーの一件で、仲間の本質を知ったのです。
仲間は一緒に夢を掴むものではなく、絶望の中で一緒に幸せや希望を目指すためのものだったのです。
マーベラスはジョー達を一緒に苦しい境遇の中でも希望を忘れずにやっていける
心の強さを持った連中だと思ったから、一緒に旅をする仲間に誘ったのです。

ならば、それだけで良かったはずです。
「宇宙最大のお宝」探しに巻き込む必要は無かったはずです。
なのに、どうして仲間を自分の夢に巻き込んだのだろうかと考えたマーベラスは、
それは自分が1人で夢を掴む自信が無かったからであり、
有体に言えば、夢を1人で追うのは寂しかったからなのだと思いました。

それだけ自分は心が弱く、夢を掴もうとする気持ちが弱かった。
それに比べて、バスコは仲間を切り捨てて1人になっても夢を掴もうとする強い気持ちを持ち続けた。
むしろ仲間を切り捨てることで夢を掴もうとする気持ちを強くしていった。
そんな生き方が正しいとも羨ましいとも思わないが、
マーベラスは確かに夢を掴もうとする想いの強さでは自分はバスコに負けていたし、
赤き海賊団もマーベラス一味も、1人で夢を掴もうとしたバスコには勝てなかったのも道理だと思いました。

仲間を大切にする自分の生き方は決して間違ってはいないが、
自分には「宇宙最大のお宝」という夢を手に入れるほどの資格は無かったのであり、
ましてや、その夢に仲間を巻き込む資格など無かったのではないかとマーベラスは思いました。
結局、仲間を選んで夢を失い、勝手に夢に巻き込んだ仲間に苦労ばかりさせた挙句、
失望させただけで終わってしまった。
激しい雷雨に打たれながら、マーベラスは天を仰いで、虚しい気持ちに苛まれていくのでした。

ここでOPテーマが始まります。
最初のOPナレーションは通常回バージョンで、このバージョンはあるいは今回が最後かもしれません。
OPテーマが始まり、脚本は荒川稔久氏で、
これはもう間違いなく、最終話まで5話連続荒川脚本でしょう。

そしてOPテーマが終わり、CM明け、今回のサブタイトル「宿命の対決」が出ます。
もはや何の捻りも無い、一切の説明不要のド直球のサブタイトルで、
サブタイトルにさんざん凝ってきたこの作品の最終盤がド直球のサブタイトルだらけというのも、
いかにもこの作品らしいと言えます。

さて本編が再開し、激しく雷雨が降りしきる中、ゴーカイガレオンが渓谷のような場所に停泊しています。
前回の最後に遂にガレオンを乗っ取ったバスコは、
やはりガレオンを元の場所とは違う場所に移動させていました。

いつもはすぐに発進出来るように宙に浮かんだ状態で錨を地上に下ろして停泊していますが、
この渓谷ではガレオンは地面に船体を接して不時着しています。
これは船体を隠しているようです。
万が一マーベラス達が生きていた場合に備えて、
たまたまガレオンを在り処を知られてしまう危険を無くすためというのもありますが、
ザンギャックに見つかって攻撃されることを避けるためというのもあります。

何せ今やガレオンでは働き手はバスコしかいませんから、
空を飛ばしながら別のことをするわけにはいかず、
安全な場所に停泊させておいて、バスコはじっくりと他のことに取り組まねばならないからです。
それはもちろん、さっそく「宇宙最大のお宝」を手に入れる作業に着手するということです。

船室の床にはロープでグルグル巻きにされてナビィが「う〜、う〜・・・!」と呻いて転がされています。
嘴までロープで塞がれたナビィは声を出すことも出来ず、全く身動きも取れません。
ハカセがナビィに通信を試みてもダメであったのは、ナビィが身動き出来ない状態であるからのようです。
おそらくこの体勢では通信回線を開くことも出来ないようになっているのでしょう。

しかし、やはり前回の最後にバスコに捕らわれてしまったナビィは、始末されてはいませんでした。
何故ならバスコは「宇宙最大のお宝」を手に入れる作業にはナビィが必要だと知っているからです。
これもおそらくバスコが赤き海賊団の時代にアカレッドの周辺を探っていく中で知った情報なのでしょう。
つまりは、バスコはアカレッド抜きで1人でも
「宇宙最大のお宝」を手に入れるための方法を一生懸命探っていたようで、
その過程で、その作業にはナビィとガレオンとレンジャーキーと「大いなる力」という謎の物が
必要であることを知り、「大いなる力」を集めるための道具であるラッパラッターの存在、
そしてゴーカイジャーのシステムのことも知ったのでしょう。

そうして赤き海賊団を裏切り、全てを奪うことには失敗したもののラッパラッターは奪い、
その後、地球でマーベラス達と争い、
アカレッドの遺したゴーカイジャーのシステムの意外な手強さに苦戦はしたものの、
こうして遂に「宇宙最大のお宝」を手に入れるために必要な物を全て揃えたバスコは、
満足そうに笑いながらガレオンの窓から外の雷雨を眺めた後、
船室の方に向き直り、床に転がって呻いているナビィを一瞥すると、
ナビィに背を向け、テーブルに向かいます。

テーブルの上には、宝箱から抽出した5つの戦隊のレンジャーキーが並べてあります。
それは、サンバルカンの3戦士のレンジャーキー、チェンジマンの5戦士のレンジャーキー、
フラッシュマンの5戦士のレンジャーキー、マスクマンの5戦士のレンジャーキー、
ファイブマンの5戦士のレンジャーキー、合計23戦士のレンジャーキーでした。

つまり、バスコがそれらの戦隊の元レジェンド戦士たちからラッパラッターで奪った
大いなる力を珠状にして持っている5つの戦隊のレンジャーキーです。
このテーブルの上の5戦隊23戦士のレンジャーキーを見下ろして、
バスコは「まずは俺が奪った、サンバルカン、チェンジマン、フラッシュマン、マスクマン、ファイブマンの
大いなる力を、レンジャーキーに・・・」と言って、
懐から5つの戦隊の大いなる力の珠を取出し、テーブルの上にかざします。

そうしてバスコが背を向けている間、床でもがいていたナビィは
ソファーの傍のテーブルの下に意外なものを発見しました。
何故か床に果物ナイフが突き刺さっているのです。

これは昨晩、サリーが誤ってテーブルから落とした果物カゴの中に入っていたナイフで、その時、床に突き刺さり、
その後、宝箱を持って出て行ったサリーも、そのサリーを追って外に出て行ったマーベラス達も、
留守番のナビィも、そして侵入してきたバスコも、
このソファー脇のテーブル下のナイフには誰も気付いていなかったのでした。
そのナイフに、床に転がされたナビィは初めて気付いたのです。
これはチャンスだと思ったナビィはロープに縛られたままソファーの方に転がっていきます。

一方、そのナビィに背を向けたままテーブルに向かったバスコの掌の上の5つの珠は、
金色の光を発して浮き上がり、テーブルの上のそれぞれの戦隊のレンジャーキーに吸い込まれて消えていきました。
「・・・これで全てのレンジャーキーに大いなる力が入った!」とバスコは満足げに言います。
どうやら、一度ラッパラッターで吸い出した大いなる力は、もう一度ラッパラッターを使わなくても、
そのまま近づければレンジャーキーに注ぎ込むことが出来るようです。

ともかく、これで34の大いなる力は全てレンジャーキーに宿ってこの場に集まったことになり、
この部屋にあるレンジャーキーの全てに大いなる力が宿った状態となりました。
小津魁が言っていたことが真実だとするなら、
これで「宇宙最大のお宝」を手に入れることが出来る条件は満たしたことになります。
しかし、それだけでは特に何も起きません。
まだ何か作業が必要であるようです。

そしてバスコはその作業の内容を知っているようで、
「お次はナビィちゃんを・・・」と言って背後に向き直ります。
次の作業にはナビィが必要であるようです。

ところが床にはナビィはいません。
バスコは「・・・ナビィちゃん?」と慌ててキョロキョロと船室内を見回し、
床に伏せてソファーの方を覗き込んで「マジ!?」と目を見張ります。
ソファーの傍のテーブルの下の床には果物ナイフが突き刺さっており、
その傍にはナイフで切断されたロープの残骸だけが散乱していたのです。
ナビィが床に刺さった果物ナイフの刃に自分の身体を縛るロールをこすりつけて切断し、
縛めを脱して逃げたに違いありませんでした。

どうしてこんなところにナイフが刺さっているのか、バスコにとってはなんともアンラッキーでしたが、
これはもともとはバスコが利用して捨てたサリーが偶然落としたナイフだったのですから、
バスコにとっては因果応報というか、なんとも皮肉な偶然でした。

が、バスコはそんなことは知りませんし、
そもそも、こんなことぐらいでメゲたりはしません。
素早く立ち上がると「・・・ったく、面倒かけんなって!」とボヤキながら、
メインコンピュータを操作してガレオンの出口を全部遮断します。

ついさっきまでナビィが床に転がっていたのはバスコは確かに見ています。
だからナビィが逃げ出したのはついさっきのことであるはずです。
ならば、まだガレオンの外には出ていないはず。
すぐに出口を遮断してしまえば、ガレオン内にナビィは閉じ込めることは出来たはずです。
そうなれば、後は船内をくまなく捜してナビィを見つけ出してもう1回捕まえれば済む話です。

しかしガレオン船内は居住区以外のスペースも合わせると、かなり広い。
バスコ1人で探すのは大変ですし、そもそもバスコはそんな面倒くさいことをする気は無い。
というか、もしバスコがこの船室を留守にしている間にナビィがこの部屋に来て
宝箱やメインコンピュータに何か細工でもしたら面倒ですから、
バスコ自身はこの船室を動くわけにはいかないのです。

そこでバスコはラッパラッターを吹き鳴らします。
つまり召喚戦士を使ってナビィを捜索させ捕えさせることにしたのです。
幸い、この部屋には腐るほどレンジャーキーがありますから、
バスコは久々にラッパラッターで召喚戦士を出しました。

しかも、なんとここでバスコは、
よりによってゴーカイジャーのレンジャーキーをラッパラッターのシリンダーに挿して、
ゴーカイレッド、ゴーカイブルー、ゴーカイイエロー、ゴーカイグリーン、
ゴーカイピンク、ゴーカイシルバーの6人の召喚戦士を出したのでした。

その6人の召喚戦士に対して「ナビィちゃんを捜して、ここに連れ戻す!・・・OK?」と命令を下すバスコ。
心を持たない6人の召喚ゴーカイジャーは無言で頷き、一斉に船内の各所に散っていきます。
それを見送ってバスコは意地悪く笑って「頑張ってねぇ〜!」と手を振るのでした。
おそらくバスコがここでわざわざゴーカイジャーの召喚戦士を使ってナビィを捜索させたのは、
普段馴染のあるゴーカイジャーによって追い回される恐怖をナビィに味あわせてやろうという
悪戯心のようなものだったのでしょうが、
サリーの遺したナイフに続き、これがバスコの計画の第二の綻びとなったのでした。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 22:06 | Comment(2) | 第48話「宿命の対決」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月02日

第48話「宿命の対決」感想その3

ガレオンで偶然サリーの遺したナイフを利用してバスコから逃げ出したナビィを捜すため、
バスコが6人のゴーカイジャーの召喚体を繰り出した頃、
そのゴーカイジャーのオリジナル戦士であるマーベラス達6人は戦う力を失い、途方に暮れていました。

その6人の身体を先ほど激しさを増した雷雨が容赦なく叩き、
行き場所を失った6人は森の近くにあった教会に辿り着いて、その中で雨宿りしていました。
教会といっても、そこは無人の教会でした。
何故なら、中はメチャクチャに破壊されていたからです。
おそらくザンギャックの引き起こした戦災で破壊されて、そのまま廃棄された教会の廃墟なのでしょう。

マーベラス達は鎧を除いては地球人ではないのでキリスト教の教会のことは知りませんが、
本来は教会というのは人々の幸せと希望に満ちた日常の象徴のような場所です。
そこが破壊されており、外には空を分厚い雷雲が覆って光を遮り激しい雨が降りしきり、
教会の廃墟の中は薄暗く、しばしば雷鳴を轟かせながら発する雷の閃光でのみ一瞬照らされる情景は、
かなり絶望的ムードを漂わせています。

この情景は象徴的であり、おそらく、幸せや希望が破壊されて絶望が支配している状況を表しているのでしょう。
そうした情景の中にマーベラス達が配置されているということは、
この絶望的情景は、今のマーベラス達の状況を象徴しているということになります。
実際、この空を暗く染める雷雨は、前回、ジョー達がバスコに敗北した時に降り始め、
今回、マーベラス達が自分達が戦う力を失い、
強大な力を持つバスコを相手になす術も無い絶望的状況に落とされたと悟ると同時に、その激しさを増しました。
だから、まさにマーベラス達の状況と連動した象徴的な場面設定の1つであり、
この廃墟となった教会も同じく象徴的な場面設定と考えてよいでしょう。

ただ、この象徴的な場面設定は、単にマーベラス一味の状況を象徴しているだけではなく、
更に二重の意味で、戦う力を失って強大なザンギャック帝国軍の前になす術の無い
34のスーパー戦隊および地球の状況をも象徴しており、
特に来るべきアクドス・ギル率いるザンギャック帝国の総力を上げた第二次地球総攻撃の前に晒されようとしている
現在の34のスーパー戦隊と地球の状況も象徴していると思われます。

その激しい雨音と雷鳴が響く薄暗い教会の廃墟の中で、マーベラス一味の6人はしょぼくれて佇んでおり、
その中でもマーベラスはまだダメージが残っていて起き上がれない状態で、
朽ちかけた長椅子の上に横たわっています。
その6人の中では、ルカが「せっかくここまで来て・・・あんなヤツに宇宙最大のお宝を・・・!」と、
最も激しく苛立ちを募らせています。

皆、今まで「宇宙最大のお宝」を手に入れることを目標にして集めてきた
レンジャーキーや大いなる力を奪われてしまったことに一様にショックを受けていましたが、
ある種の虚脱状態のようになっており、明らかに焦りの色を見せているのはルカだけでした。
これは、ルカが「宇宙最大のお宝」を手に入れた後にやろうと思っていたことがあるからです。
それは、宇宙全体と同じ価値を持つという「宇宙最大のお宝」を売って宇宙全体を買い取り、
宇宙全体をザンギャックに親を殺された宇宙の全ての子供たちが安心して暮らせる世界にするという、
なんとも壮大で、よく考えたら実現が可能なのかちょっと怪しい夢なのですが、
とにかくルカはそれをやろうと思っていました。

マーベラス達の了承を取るつもりだったのか、
それとも最後の最後でマーベラス達を裏切って「宇宙最大のお宝」を持ち逃げするつもりだったのか、
よくは分かりませんが、今となってはいずれにしても、もはやその望みは、
実現寸前でのバスコの横取りによって潰え去ろうとしています。
それがルカは悔しくて堪らない。

一方、アイムはそんなルカを見て、どうしてルカがそんなに口惜しがっているのか、よく分かりませんでした。
ルカは自分のその夢については仲間の誰にも言っていなかったからです。
しかし、アイムはむしろこんな事態になればルカのように悔しがるのが当たり前なのであり、
「宇宙最大のお宝」を奪われそうだというのにルカのように悔しがらない自分の方が変だと思いました。
それで、どうして自分は悔しくないのだろうかと考えると、
それは自分が「宇宙最大のお宝」を手に入れた後、どうするかというビジョンを
何も持っていなかったからだと気付きました。

アイムはザンギャックに滅ぼされた故郷のファミーユ星の宇宙に散った難民の人々の希望の象徴になるため、
王女として海賊になったのであり、
そのアイムを受け入れてくれたマーベラス一味という海賊団が、
たまたま「宇宙最大のお宝」を掴むための旅をしていただけであり、
アイムも何故かそれに夢中になって一緒に頑張っていたのです。

だから、自分はもともとそれをよく知らないので、
「宇宙最大のお宝」を手に入れた後のビジョンが無いのだが、
当然、自分より前に海賊団の一員だった皆はそのビジョンがあったからこそ、
ルカのように悔しいはずだアイムはと思いました。

本当はルカの悔しさは他の皆には共有出来ていない悔しさなのですが、
アイムはそんなことは知らないので、
ルカが悔しがっているのと同じことをマーベラス達も悔しがっているのだろうと思い、
自分も皆と悔しさを共有したいと考えて、横たわって黙り込んでいるマーベラスに向かって、
「そういえば・・・マーベラスさんは、宇宙最大のお宝を手に入れて・・・どうなさるおつもりだったのですか?」
と質問しました。

すると、アイムの横にいたハカセが「確かに、ちゃんと聞いたことなかったかも・・・」と言ったので、
アイムは少し意外に思いました。
自分より前に海賊仲間になっていたハカセは当然、
船長のマーベラスの「宇宙最大のお宝」を手に入れた後のビジョンを知っていると思っていたからです。
というか、ハカセのあまりに軽い反応も意外で、
ハカセ自身、「宇宙最大のお宝」を手に入れてどうするつもりだったのか、
アイム同様、何も考えていないように見えました。

実際、ハカセはいわくつきの海賊船であるガレオンの修理を請け負った縁で
マーベラス達に仲間に引き込まれただけであり、
最初は嫌々だった海賊生活が次第に気に入ってマーベラス達と一緒に行動しているが、
マーベラス達のもともとやっている「宇宙最大のお宝」探しの目的について深く考えたことはありませんでした。
そして、よく考えたら、そんな目的もよく知らないことに自分もよく今まで何の疑問も持たずに
協力してきたものだと、ハカセはちょっと不思議な気分になりました。

それでハカセも興味が湧いて、アイムと共にマーベラスの答えを待って、マーベラスの顔を覗き込みますが、
マーベラスが寝転がって天井を眺めたまま「・・・さぁな・・・」と気の抜けたような返事をしたので、
アイムとハカセは「え・・・?」と意外そうな顔をします。
常に「宇宙最大のお宝」に向かってがむしゃらで、時には強引すぎるほどであったマーベラスにしては、
意外な反応であったからです。

当然、マーベラスは「宇宙最大のお宝」を手に入れて、それを使って何かをしようとしていたから、
あれだけ必死になって「宇宙最大のお宝」を手に入れようとしていたのだと、アイムもハカセも思っていたのです。
それなのに、まるで確固とした目的も無しに「宇宙最大のお宝」を手に入れようとしていたかのような
マーベラスの反応でした。

しかし実際、マーベラスには「宇宙最大のお宝」を手に入れた後、
どうするつもりだったのかというビジョンはありませんでした。
そもそもマーベラスは「宇宙最大のお宝」が何なのかすら知らないのですから、
それを手に入れて、どう使えばいいのか分かるはずがない。
しかし、今までマーベラスはそんなことは気にしたことはありませんでした。
正体が不明だろうが、ビジョンが無かろうが、
とにかく自分は絶対に「宇宙最大のお宝」を手に入れてやるという強固な意志があったので、
いちいち細かいことは考えず、突っ走っていたのです。

ところが、バスコに敗れて、その意志が挫けてしまった。
それも単に戦いに敗れたのではなく、
自分の夢を掴もうとする想いがバスコの夢を掴もうとする想いよりも弱かったのだと思い知らされるような形で
自滅してしまったマーベラスは、
自分には「宇宙最大のお宝」という夢を掴む資格は無かったのではないかと思ってしまっていました。

今までは、「お宝の正体は何なのか」とか、「お宝を手に入れてどうするのか」などという細かい理屈は、
「細かい話はどうでもいい。とにかく俺はお宝を手に入れる」という強引なマッチョイズムで
抑え込んでいたのですが、そこが急に脆弱になってしまったので、
マーベラスは細かい理屈にいちいち付き合うようになってしまっており、
そもそも、どうして自分は正体も分からないものを目的も曖昧なまま、
そんなに欲していたのだろうかと不思議にさえ思い、
「・・・だいたい、そのお宝が何だかも分かんねぇ・・・」と、やや自嘲気味に言います。

これにはハカセとアイムは驚きます。
2人はマーベラスがてっきり「宇宙最大のお宝」の正体を知っているのだとばかり思っていたのです。
それが、実はマーベラスが「宇宙最大のお宝」の正体が何であるのか知らなかったとは、実に意外でした。

しかし、ジョーとルカはこれぐらいでは別に驚きはしません。
ハカセとアイムはもともと宇宙海賊の世界には疎い、全くのカタギであったので、
もともと宇宙海賊の世界で言い伝えられている「宇宙最大のお宝」のことを全く知らなかったので、
宇宙海賊のマーベラスは当然、その宝が何であるのか知っていると思っていましたが、
ジョーはもともと宇宙海賊とは敵対するザンギャック軍の出身で、
ルカは海賊と同じ裏社会の一員である盗賊出身であったので、
それぞれ多少は宇宙海賊の業界情報にはいくらかは通じていました。
だから、ジョーとルカは「宇宙最大のお宝」という代物があくまで宇宙海賊にとっても
伝説的な代物であることを知っていますから、
マーベラスがそれが一体どういうものであるのか正確に知らなくても当然だと思っていました。

しかし、ルカは盗賊時代にザンギャックの基地でマーベラスとジョーに命を助けられた時、
2人が「宇宙最大のお宝」が存在すると断言したから、それを信じて仲間になったのです。
だから、ルカはマーベラスがもともと「宇宙最大のお宝」の存在の確証は得ていたことは疑っておらず、
当然、その正体に何らかのイメージを抱いていたからこそ、それを手に入れようとしていたのだと思っていました。
つまり、価値のあるものだと分かっているからこそ、それを手に入れたいと思っているはずなのです。

あくまで伝説的な宝物だからその正体については信憑性のある情報は確かに無い。
そういう意味では確かに正体不明です。
しかし、宇宙全体と同じ価値があると言い伝えられるぐらいの宝ですから、さぞ高価な物に決まっている。
だからこそ、昔から強欲な宇宙海賊がみんな欲しいと思ってきたのだろうとルカは考えていました。
つまり、海賊が言い伝えてきた伝説なのだから、
その宝の正体は、いかにも海賊が欲しがりそうな莫大な金銀財宝の類に決まっていると、
ルカは先入観を持っています。

「・・・でも、宇宙の全てと同じ価値があるっていうんだから、
すっごい量の金塊とか、宝石とかじゃない・・・?」とルカはちょっと不満げにマーベラスに問い返します。
確かにハッキリした正体は分からないが、
海賊はみんな「宇宙最大のお宝」が莫大な財宝だと思っているはずなのです。
マーベラスだって海賊なのだから例外ではない。
莫大な金銀財宝だと思って、それを手に入れようとしていたはずなのです。

それなのに、現在それをバスコに奪われそうになっているものだから、急にマーベラスは弱気になって、
もともと正体も知らなかったなどと言い出している。
伝説のお宝なのだから正体はハッキリ知らないのは当然。
それを承知で、莫大な財宝があると信じて突き進むのが海賊というものだとルカは考えています。
マーベラスだってそういうつもりで今まで突き進んできたはずです。
そのマーベラスを信じてルカも仲間になったのです。
それなのに、ここでちょっと状況が悪くなったからといって急に弱気にならないで欲しいとルカは思いました。
ルカ自身はまだお宝を諦めていない。いや、諦めたくはないのです。
だから弱気なマーベラスなどは見たくありませんでした。

しかし、「すごい量の金塊や宝石」というルカの言葉を聞いて、鎧は思わず立ち上がり、
「でも、宇宙と同じくらいって・・・一体どれぐらいの量なんでしょうね?・・・
1億トン?・・・いやいや、百億トンとかですかね!?」と無邪気にはしゃぎます。
全くアバウトな数字を挙げていますが、それだけ鎧は全く「宇宙と同じ価値」という基準がピンときていないのです。
なにせ、鎧にとっては、「宇宙最大のお宝」が宇宙と同じ価値であるという話自体が初耳でした。

それだけ、鎧は「宇宙最大のお宝」というものには実は興味がありません。
そもそも地球人の鎧は「宇宙最大のお宝」の伝説の存在すら知りませんでした。
鎧が夢中になっていたのは、むしろ「宇宙最大のお宝」を手に入れるためのステップである、
34戦隊の大いなる力を集める作業の方だったと言っていいでしょう。
鎧自身、自分が「宇宙最大のお宝」にこだわる理由は、
それが自分を海賊の仲間に選んでくれたマーベラスの夢だからに過ぎないと思っています。

だから、ハッキリ言って今まで大して興味の無かった「宇宙最大のお宝」に関しては
鎧はほとんど予備知識が無い状態なので、
宇宙海賊業界の常識などには全く囚われず、1億トンとか百億トンとか、好き勝手に荒唐無稽な数字を言います。
その話にハカセも乗ってきて「ガレオンに載せられるかなぁ?・・・重すぎて動けなくなったりして・・・!」と
冗談めかして言い、鎧とはしゃぎます。

それを見て、ルカは憮然とします。
今はふざけて冗談を言い合っているような場合ではないと思ったこともありますが、
どうも鎧とハカセの遣り取りを聞いていると、
海賊業界の古い伝説を鵜呑みにして「宇宙最大のお宝」が莫大な財宝だと思い込んでいた自分の方が
よほど非現実的であったように思えてきたから、どうも決まりが悪かったのです。

確かに宇宙全体と同じ価値の金塊や宝石というと、どうしても、恐ろしく莫大な量になります。
そもそも、そんな大規模な宝を隠す場所など、この宇宙に存在するのだろうか?
いや、その在り処は地球だと確定しているのですが、
この小さな星に全宇宙と同じ価値の金塊や宝石を人目につかない場所に隠すことなど出来るものなのだろうかと、
ルカは不審に思いました。

となると、「宇宙最大のお宝」は莫大な金銀財宝の類ではないのかもしれない。
ならば何なのだろうかと考えて、ルカはよく分からなくなってきました。
とにかく何か凄い物であることは間違いないが、正体はよく分からない。
じゃあ、もしかしてマーベラスが「そのお宝が何だかも分かんねぇ」と言っていたのは
弱気になっていたのではなく、ずっと本気でそう思っていたということだったのかもしれないとルカは思いました。

つまり、マーベラスは正体がよく分からない「宇宙最大のお宝」を、
その存在を確信して懸命に手に入れようとしていたということになります。
どうしてそんな無駄になるかもしれないことにマーベラスは懸命になっていたのだろうかと、
ルカは不思議に思いました。

いや、よくよく考えたら、鎧とハカセのバカ話を聞くまでもなく、
ルカ自身、「宇宙最大のお宝」が単純な金銀財宝でないことぐらい、分かっていなければいけないはずでした。
こんな簡単なことにどうして今まで気付かなかったのだろうかと、ルカは戸惑いました。
いや、気づいていたのに、それでもいいと思ってマーベラスに付き合っていたのではなかろうかと、
ルカは自分の心に少し疑いを抱きました。

一方、少し離れて立っていたジョーは皆の一連の遣り取りを黙って平静な態度で聞いていました。
ジョーはマーベラスと初めて出会った時から、
マーベラスが「宇宙最大のお宝」が存在すると言う限り、それは必ず存在するのだと、固く信じていました。
ただ、宇宙全体と同じ価値があるといわれる「宇宙最大のお宝」の正体が金銀財宝ではないだろうとは、
ずっと思っていました。
そしておそらくマーベラスもそれは分かっているはずだとも思っていました。

では「宇宙最大のお宝」の正体が何なのか、ジョーに目算がついているかというと、
それは流石に皆目見当はついていませんでした。
そして、おそらくマーベラスもその正体が何なのか分かっていないのだろうとも、
ジョーは何となく分かっていました。
だから、マーベラスがこの場でお宝の正体を知らないと告白しても、ジョーは一向に驚きませんでした。

では、何故ジョーはルカのように、マーベラスがお宝の正体を知らないままお宝を手に入れようとしていることを
不自然だと思わなかったのかというと、
ジョーはもともとマーベラスが普通の海賊のように財宝などに興味を持つタイプではないと見なしていたからです。

ジョーはマーベラスのことを純粋に好奇心で動く腕白坊主のような心の持ち主だと見なしていました。
だから、おそらくマーベラスは「宇宙最大のお宝」の正体が分からないからこそ、
それを手に入れたいと思っているのだろうと、ジョーは感じていました。
つまり、伝説の「宇宙最大のお宝」の正体を自分の手で突き止めたいというのがマーベラスの望みなのです。
そのようにジョーは解釈して、マーベラスに命を救われた自分は、そのマーベラスの冒険に同行して、
マーベラスの背中を守り、マーベラスの夢を守るのが務めだと考えていました。

そのように考えると、ジョーはまるで義務感でマーベラスに協力しているようだが、
不思議にそんな気持ちは無く、ごく自然にマーベラスの夢を守りたいという気持ちを抱いていました。
それだけに、こうしてバスコに敗れてマーベラスの夢を守れなかったことがジョーは悔しいのですが、
しかし、ひととおり悔しがってみると、
結局、マーベラスは「宇宙最大のお宝」を手に入れること自体には大して執着していなかったわけだから、
バスコに敗れてお宝を奪われても、自分達は何も失ってはいないのではないかと、ジョーにはふと思えました。
負けたことは悔しいが、お宝を得られずに何かを失ったわけではない。
バスコへの復讐はいずれ必ずするとして、
今はとにかく巻き返しのために焦らず一から出直すしかないとジョーは思いかけていました。

一方、マーベラスは長椅子に横たわったまま、天井を見つめて、
ずっと最初のアイムの質問に対する回答を探していました。
自分は「宇宙最大のお宝」を手に入れてどうするつもりだったのだろうかと、冷静に考え直していました。
それは自然に、正体も分からないのに、どうしてあんなに「宇宙最大のお宝」が欲しかったのだろうかという
自問自答に変わっていきます。

あるいは、自分は「宇宙最大のお宝」の正体を見極めたかったのかもしれないとも思いましたが、
それにしては、ルカと鎧とハカセの「宇宙最大のお宝」の正体に関する推論の会話を聞いても、
全く興味が湧いてこないのが不思議でした。
それで、どうやら自分は「宇宙最大のお宝」の正体には興味が無いようだとマーベラスは気付きました。
じゃあ、いったいどうして自分は「宇宙最大のお宝」を手に入れたいなどと思ったのだろうかと、
マーベラスは不思議に思いました。

そうして過去の記憶を辿っていくと、
すぐに自分が最初に「宇宙最大のお宝」を手に入れたいと思った時がいつだったのか想い出すことは出来ました。
それはアカレッドに最初に出会った時です。
しかし、アカレッドに言われるままに「宇宙最大のお宝」を手に入れようとし始めたわけではない。

あの時、アカレッドはマーベラスに対して「宇宙最大のお宝」は伝説ではないと言い、
「君が諦めたのでは手に入らない」「あとは君の決断だけだ」と言った。
それだけです。
厳密にはアカレッドは「宇宙最大のお宝」が実在するとは言わなかった。
そして、その具体的な中身についても何も言わなかった。
その上でマーベラスに全ての決断を委ねたのです。

そしてその結果、マーベラスは自分の意思で、「宇宙最大のお宝」が実在すると信じ、
その正体が分からないまま、それを自分が手に入れたいと思ったのです。
その決断にはアカレッドは関係無い。
アカレッドは単に同じように「宇宙最大のお宝」を手に入れたいと思う仲間として
マーベラスを迎えてくれただけのことであり、
「宇宙最大のお宝」を手に入れたいとマーベラスが思ったのは、アカレッドの影響ではないし、
赤き海賊団の一員だったことも関係無い。
アカレッドはその決断にヒントをくれただけです。

マーベラスが「宇宙最大のお宝」を手に入れたいと決意したのは、1人の海賊としての決断だったのです。
いや、それまでは自称海賊に過ぎなかったチンピラのマーベラスは、
「宇宙最大のお宝」を手に入れたいという夢を持つことで、真の海賊になろうとしたのです。

そのことを想い出したマーベラスは横たわって天井を見つめたまま
「・・・中身は何でもいいのかもしんねぇ・・・」と呟きました。
これにはルカも「え・・・?」と驚きます。
ハカセ、鎧、アイムも、キョトンとした顔でマーベラスを見ます。
そして、てっきりマーベラスが「宇宙最大のお宝」の中身を知りたくて、
それを手に入れようとしていたのだと思っていたジョーも、
このマーベラスの言葉には意外な印象を受けて、ピクッと動いてマーベラスの方を見ます。

皆、「宇宙最大のお宝」の中身が何でもよかったとマーベラスが言っているということは分かりましたが、
ならばいったいマーベラスは「宇宙最大のお宝」を手に入れることに何の意義を見出していたのか?
マーベラスにとって「宇宙最大のお宝」という夢はいったい何だったのか?
5人にはさっぱり分からなくなってきたのでした。

その5人に向けて言っているのか、自分自身に向けて想い出すように言い聞かせているのか、
マーベラスは天井を向いたまま、少し目を輝かせつつ
「・・・この宇宙を旅する海賊たち・・・誰もが欲しいと望みながら・・・誰も手にしたことがない伝説の宝物・・・」と言う。
これはもちろん「宇宙最大のお宝」のことを指します。
マーベラスが何を言い出すつもりなのかと思い、真剣に耳を傾けていたジョーは、
一瞬、どうして今さらそんな基本的な話をするのかと思いましたが、
その瞬間、ハッと重大なことに気付きました。
あまりに基本的な話すぎて、今まで気にすることが無かった不自然な点に気付いたのでした。

この「宇宙最大のお宝」の伝説は、ずっと昔から宇宙海賊の間で語り伝えられてきた伝説だったのです。
ならば、数年前に起きたと言われるレジェンド大戦の時に生じたという
レンジャーキーや大いなる力を使って手に入れられるという、
自分達が今掴もうとしている「宇宙最大のお宝」という物は、
古くからの伝説の「宇宙最大のお宝」と果たして同一の存在なのだろうかとジョーは疑問に思いました。

いや、今この地球にある「宇宙最大のお宝」が偽物だというわけではない。
「宇宙最大」かどうかはともかく、何か凄い宝がこの星に存在するのは間違いない。
それはアカレッドがレンジャーキーを使って見つけることが出来ると信じた宝であり、
それをアカレッドは「宇宙最大のお宝」だと称したが、
マーベラスはそれを伝説の「宇宙最大のお宝」だと信じた。
信じたからこそ、マーベラスはアカレッドと共に宝探しの旅を始めて、
その後、こうして地球まで辿り着いたのです。

つまり、マーベラス一味の現在の状況に至る全ての始まりは、
マーベラスが伝説の「宇宙最大のお宝」の実在を信じたことにある。
しかし、その時の状況は、現在の「宇宙最大のお宝」が手に入る寸前の状況とは全く違うし、
マーベラスがアカレッドと共にレンジャーキーを集めるよりも以前ですから、
本当に何の確証もない状態だったはずです。
その時点では、伝説の「宇宙最大のお宝」は本当に単なる伝説だったはずです。

いや、実際、アカレッドが自分の捜している宝を勝手に「宇宙最大のお宝」と称しただけのことであって、
古い伝説の方の「宇宙最大のお宝」というものは、本当に単なる伝説であり、
本当は実在しなかったのではないか?
「誰もが欲しいと望みながら、誰も手にした者がいない」というのは、
いかにも実在していないように感じられる言い回しです。

問題は、どうしてマーベラスはそんな胡散臭い伝説を信じたのかです。
それは、この伝説が海賊が言い伝えた伝説だからでしょう。
海賊の伝説だから、海賊のマーベラスは信じたのです。
いや、この海賊の古い伝説を信じることによって、真の海賊になろうとして、
マーベラスはこの伝説を信じたのです。

言い換えれば、この伝説は確かに嘘なのかもしれないが、
そこには海賊の真髄が込められているのです。
マーベラスが「宇宙最大のお宝」を手に入れたかった理由は、その中身が欲しかったからではなく、
「宇宙最大のお宝」を手に入れることが、海賊の真髄を極めることと同義だったからなのです。
そして、それがマーベラスの「夢」だった。
ジョーはそのことに気付き、思わず吸い寄せられるように歩きだし、マーベラスの方に近づいていきます。

続いて、「・・・それを手にした者は宇宙の全てを手にしたのと同じ・・・」というマーベラスの言葉を聞きながら、
ジョーと同じことに気付いたアイム、ハカセ、鎧、ルカもマーベラスに近づいていきます。
問題は、そのマーベラスの「夢」である海賊の真髄とは何なのかです。
その真髄がこの「宇宙最大のお宝」の伝説には込められている。

そもそも、どうして海賊がこんな伝説を語り伝えてきたのか?
「誰もが欲しいと望みながら、誰も手にすることが出来ない、手にしたら宇宙の全てを手にしたのと同じ」という
宝物の伝説を、どうして海賊が言い伝える必要があったのか?
よく考えたら、これは全然、海賊とは関係無さそうな宝物です。
しかし、これは確かに海賊らしい宝物なのです。

そもそも海賊とは何なのか?
それは、ザンギャック支配下の宇宙においては、
苦しみに満ちた世界の中で自分の意思で幸せや希望をささやかながらでも実現し、
宇宙の現状を少しずつでも良くしていこうとした者たちのことでした。
宇宙空間でそういう自由意思で生きる道を求めた者達をザンギャックが「海賊」と呼び、排斥した結果、
アウトロー化していった者も多かったが、
もともと海賊とは、そういう者達でした。

そういう正統派の海賊たちが、海賊の真の精神を忘れないように、
「この宇宙の現状では困難であるが、真の海賊というものは誰もが宇宙の現状を変えることの出来る
宝物(のような精神)を探し求めねばならない」という趣旨の宝物伝説を語り伝えたのが、
この宝物伝説の本質なのでしょう。

マーベラスはその伝説を信じたから、アカレッドと一緒に「宇宙最大のお宝」を掴む旅に出たのです。
つまり、マーベラスにとっては「宇宙最大のお宝」を掴むということは、
苦しみに満ちた宇宙で少しでも現状を良くするために希望を抱き続けることと同義といえます。
そして「宇宙最大のお宝」も、そうしたささやかな希望も、現実には手に入れることは非常に難しい。

しかし、マーベラスは周囲に集まって来た5人に向かって、身体を横たえたまま微かに顔を向けて
「・・・そんなもんが存在するなら・・・手に入れるしかねぇじゃねぇか・・・!」と声に力を込めます。
手に入れるのが難しいものだからこそ、どんなことをしても手に入れなければならない。
現実が厳しいからこそ、それに負けてはいけない。
それが逆境の中で希望を捨てない海賊の正しい生き方というものだとマーベラスは再確認しました。
「夢は・・・手に入れられないと思った時に・・・無くなっちまうんだから・・・!」と、
マーベラスは6人に向かって微笑みました。

つまりマーベラスにとっての「夢」とは、逆境において決して捨てない希望そのものなのです。
だからこそ、誰も手に入れられない「宇宙最大のお宝」を掴もうとすることは
マーベラスにとっての「夢」になるのです。

そのことに気付いて満足げなマーベラスの顔には、いつしか微かに光が差してきていました。
何時の間にか、外はほとんど雨は上がっており、
雲が薄くなって、教会の廃墟の中にも微かに薄日が差してきています。
その淡い光の中、マーベラスの周りに集まって、ジョー達5人は真剣な表情で立ち尽くし、
マーベラスを見つめていました。

マーベラスが「宇宙最大のお宝」を手に入れたいと思った理由は、その中身が何であるのかはどうでもよく、
それが自分の現状を良くするものでありながら手に入れるのが難しいものであるからだったのです。
そういうものを何としても手に入れるのが海賊の夢であり、マーベラスの夢なのです。
それは、マーベラスの海賊としての夢というものが、
困難な状況の中でも現状を良くするために希望を抱くことと同義だからです。

そのことを理解したことによって、5人は、
それぞれどうして自分をマーベラスが共に夢を掴むための仲間に選んだのか、ハッキリと分かったのでした。
それは自分も絶望的な状況の中で自分の意思で少しでも現状を良くしようという希望を抱いていたからです。
そのために強大なザンギャックに逆らうことも辞さなかった。

ジョーは真に人々を守る人生を選ぼうとしてザンギャック軍を脱走し、
ザンギャックによる悲劇に終止符を打つことを望んだ。
ルカはザンギャックに迫害されるスラムの子供たちが安心して暮らせる楽園を作るために
ザンギャック相手の盗賊となって金を稼いだ。
ハカセはザンギャックに故郷を追われて移住した星で相手を差別しない誠実な仕事で信用を築く生き方を選んだ。
アイムは滅びた故郷の民の希望の象徴となるため、自ら海賊となりザンギャックと戦う道を選んだ。
そして鎧は戦う力を失った地球を守り、さらに宇宙の運命を変えるため、
スーパー戦隊の精神を引き継いで戦う道を選んだ。

マーベラスがかつて鎧に言った、仲間の条件「自分には無い何かを持っている者」というのは、
こうした彼らそれぞれの、
絶望的な状況において少しでも現状を良くしていくために希望を抱くことが出来るということだったのです。
それはそれぞれマーベラスとは方向性は違うが、
逆境で希望を捨てないというマーベラスの海賊としての夢の形とは一致していた。
だからマーベラスは自分達を同じ夢を掴もうとしている者だと見なして、仲間に選んだのだと、5人は悟り、
マーベラスが掴もうとしていた「宇宙最大のお宝」という夢は、
正真正銘、自分達の夢でもあったのだと実感したのでした。

だから自分達は「宇宙最大のお宝」の正体やマーベラスのそれに対する想いなどをよく知らないのに、
まるで自分の夢であるかのように懸命になっていたのです。
それは本当は自分自身の夢だったからなのです。
「宇宙最大のお宝」の中身はジョー達5人ももちろん知らない。
しかし大事なのは中身ではないのです。
手に入れることが絶望的な状況でも決して諦めず希望を捨てないという一点において、
マーベラスも含んだ6人の夢は「宇宙最大のお宝」を手に入れるという夢で一つになっていたのです。

ならば、今の状況でその夢を諦めるなどということは有り得ない。
絶望的状況で諦めない、どんなことをしても手に入れるからこそ自分達の夢、海賊の夢だからです。
ジョーは一旦諦めかけていた自分を恥じ、自分の夢がマーベラスと同じであったことを思い出し、
「マーベラス・・・!」と強く声をかけます。

マーベラスも、自分の夢の正体が「逆境でも現状を良くする希望を捨てないこと」だと気付いたことで、
自分が仲間を選ぶ条件がやはり根本的には「同じ夢を掴むことが出来る者たち」であったことを悟り、
自分の集めた仲間は同じ夢を掴もうとしていたのだと確信しました。
つまり、自分が1人で夢を掴む自信が無いから仲間を夢に巻き込んだわけではない。
皆、同じ夢を掴もうとしていたのです。
だから、自分は決して夢を掴む気持ちが弱かったわけではない。

サリーだって「逆境でも現状を良くする希望を捨てない」サルだったからマーベラスは仲間にしたのであり、
つまりは同じ夢を掴む仲間だったのです。
サルだから「夢」を理解出来ないなどということはない。
サリーも立派な、共に夢を掴む仲間だったのです。
だからサリーを助けようとした行為は「夢」を選んだ行為なのであって、
サリーを選んだ自分は夢を捨てていないとマーベラスは確信しました。

つまり、自分の夢を掴もうとする気持ちは決して弱くはない。
だから、まだまだ夢を諦める必要は無い。
「宇宙最大のお宝」をまだ諦めたりはしない。
そのような淡い光が、マーベラスと仲間たちの心に差してきた、その時、
ルカのモバイレーツの呼び出し音が突然、鳴り響いたのでした。

ルカが通話に出ると、モバイレーツからは「みんなぁ〜!返事してぇ!お願い!」とナビィの声がします。
ナビィはもうバスコに始末されてしまったと思っていたルカは「ナビィ!?」と驚きます。
ナビィの声を聞いて「無事だったんだ!」と驚いてハカセもルカのモバイレーツに駆け寄り、
横たわるマーベラス以外の全員がルカの周りに集まります。

そのナビィはガレオンの薄暗いコクピットにいて、
「ルカぁ!みんな何やってんだよぉ!?バスコにガレオン乗っ取られちゃったよぉ!!」と、
皆の無事を知って安堵しつつも、これまでバスコに散々な目にあわされた恨み言を言います。
ルカはやはり想像した通り、ガレオンがバスコに乗っ取られてしまったのだと悟り、
悔しげに「分かってるわよ!今どこ!?」と急いてナビィに訊ねます。

とにかくガレオンをバスコに乗っ取られてしまった以上、
せめてまずはナビィだけでも合流して、状況を聞いて作戦を練ってガレオンの奪還を図るしかない。
ナビィは脱出に成功して連絡してきているに違いないとルカは思ったのです。
しかしナビィは「バスコから逃げて、コクピットに潜り込んでる!ガレオンの出口全部塞がれちゃって、
外には出られないよぉ!」と言います。

ナビィは逃げ出したわけではなく、未だガレオン内に閉じ込められてバスコから隠れているだけだと知ったルカは、
ナビィと合流する目算が外れて、少し苛立った口調で「ガレオンは何処なの!?」と問い返します。
ナビィがガレオンから出られないのならば、今の状況を少しでも変えるには、
直接、自分達がガレオンに行くしかない。
幸いナビィと連絡が取れたので、ナビィに聞けばガレオンの現在地が分かるかもしれない。

そのルカの質問を受けて、ナビィはコクピットの計器を操作して、現在地の座標を調べます。
バスコはメインコンピュータでガレオン船内を掌握していましたが、
何故かコクピットの計器はバスコに気付かれず操作出来る状態であるようです。
どうやらメインコンピュータでコクピットの操舵系統などは統制出来るようですが、
コクピットにあるサブコンピュータだけはメインコンピュータが壊れた時に最低限の機能は代替出来るように
別系統になっているようです。
これはバスコは知らなかったわけではないのでしょうが、
赤き海賊団時代もコクピット周りは主にアカレッドが担当していてバスコは縁が薄く、
大した機能も無いコクピットのサブコンピュータを切っておくことは今回、ついうっかり忘れていたのでしょう。

そうした幸運に助けられてナビィはガレオンの現在地を調べることに成功し、
「えっと・・・ポイント140で停泊中・・・」とルカに現在地の座標を報せたところで、
後ろでコクピットの入り口のドアを開こうとする物音を聞き、
「はっ!?」と慌てて通信を切って操舵輪の台座の陰に隠れました。
バスコが探しに来たの思ったのです。

ところが、ドアを開けてコクピット内に入ってきて、室内を見回る人影をコソッと覗いたナビィは驚きました。
自分のことを探していると思しきその人影の正体はゴーカイレッドだったからです。
しかし、バスコに乗っ取られたガレオンが封鎖されたこの状況でマーベラスが船内に居るはずはない。
だいたい、今さっき、ナビィはルカと通信中でしたが、マーベラスがガレオンに向かったなどとは聞いていない。
マーベラス達はガレオンの現在地すら知らない状況のはずだった。

だから、これは偽物のゴーカイレッド、
つまりバスコがラッパラッターで召喚したゴーカイレッドだということに、すぐにナビィは気付きました。
バスコは自分を捕えるためにゴーカイジャーを召喚して使役している。
おそらく船内の他の場所には他のゴーカイジャーの召喚戦士5人もウロウロしているはずです。
これではいずれ捕まってしまうと思ったナビィは「あ・・・ダメ・・・みんな、早く来てぇ〜・・・」と呟きます。

コクピット内を召喚ゴーカイレッドがウロウロしている状況では、身動きも出来ないし声を立てることも出来ない。
マーベラス達と通信も出来ない。
とにかく現在地は教えた。後はとにかく自分が捕まってしまう前に、
早くマーベラス達が助けに来てくれることを期待するしかないとナビィは思いました。

一方、通信中に突然、ナビィの声が消えたのでルカは驚いて
「ナビィ?・・・どうしたの?ナビィ!」と呼びかけますが、既に通信は切れており、
「もお〜・・・」とルカはモバイレーツを閉じます。
何かナビィに異変が起きたに違いない。
おそらくバスコの仕業だろうと思い、ルカは焦ります。
やはりガレオン内では切迫した事態が進行中のようです。

しかしハカセは「でも、ガレオンの場所は分かった!」と言って、目に光をたたえて鎧と頷き合います。
とにかくナビィがギリギリのタイミングでガレオンの現在地だけは教えてくれた。
幸いポイント140なら、ここからそう遠くはない。
これで、ガレオンに乗り込んでレンジャーキーや武器という「戦う力」を手に入れてバスコに反撃し、
ガレオンも宝箱も奪還出来る可能性が生じたのです。

そしてジョーも「・・・まだ終わってない・・・!」と闘志を燃やします。
ナビィは「宇宙最大のお宝」の件は何も言わなかった。
もともとナビィは「宇宙最大のお宝」探しのナビゲートロボなのだから、
ナビィにとって一番の関心事は「宇宙最大のお宝」であるはずだ。
だから、バスコが「宇宙最大のお宝」を既に手に入れてしまっているとしたら、
ナビィはまずそのことを言うはずだとジョーは思いました。

そのナビィが「宇宙最大のお宝」のことには一切言及しなかったということは、
まだバスコは「宇宙最大のお宝」を手に入れてはいないはずだとジョーは考えたのでした。
いや、ナビィが隠れている間にバスコが「宇宙最大のお宝」を手に入れてしまっている可能性もありましたが、
ジョーはまだ間に合う可能性に賭けようと思ったのです。
まだ夢は取り戻せる。

マーベラスも頷き、「う・・・うう・・・!」と痛みに耐えながら身体を起こしてきます。
自分の夢の本質を思い出し、自分には夢を掴む資格があると再確認したマーベラスは、
今度こそはちゃんとバスコと戦って、奪われた自分の夢を取り戻してやろうと闘志を奮い立たせました。

しかし、そのマーベラスの横にしゃがみ込んだジョーはマーベラスの肩に手をやって、
ぐっと抑え込んで元通りに横たわった態勢に戻そうとします。
マーベラスは驚いてジョーの顔を見つめますが、
ジョーはじっとマーベラスの顔を見つめ返しながら、ゆっくりとマーベラスの身体を押し戻していって、
遂にはマーベラスは元通り、仰向けに横たわってしまいます。

そのマーベラスに向かってジョーは「俺たちに任せろ・・・!」と言います。
今のマーベラスの身体のダメージではバスコと戦うのは無理がある。
ここはマーベラスを除いた5人で再びバスコに挑むしかないとジョーは言っているのです。

確かにまだマーベラスはバスコと戦えそうな状態までダメージは回復していない。
もう少し休まなければ無理でした。
しかし早く行かなければバスコは「宇宙最大のお宝」を手に入れてしまうかもしれないし、
ナビィにも危険が迫る可能性もある。
それにガレオンもずっと同じ場所にあるとは限らない。
一刻も早くガレオンに向かわねばならない。
ならば、ここはマーベラスは置いて行くしかない。

しかし、さっきも5人がかりでバスコに勝てなかったのに、また5人だけで行かせていいのだろうかと、
マーベラスは申し訳なさそうな顔でジョーを見つめます。
しかし、ジョーも、マーベラスを見下ろして立つルカ、ハカセ、アイム、鎧の4人も、
バスコとの戦いに気後れした様子は微塵もありません。

アイムは毅然として「私たちの夢は同じ・・・必ず取り戻してきます・・・!」とマーベラスに言いました。
さっきまではマーベラス以外の5人はマーベラスの夢の本当の姿を知らなかった。
しかし、5人は今、マーベラスの夢を知り、それが自分達の夢と同じなのだと知った。
さっきまでは5人はマーベラスの夢を守ろうとして戦っていたが、今は違います。
自分の夢はマーベラスの夢と同じ、他の仲間の夢とも同じ、みんなの夢なのです。
そのみんなの夢を取り戻す戦いなのです。

以前にマーベラスが幽霊船の戦いで夢を捨てて仲間を選んだように見えたことがあったが、
あれは本当は、マーベラスは仲間を助けることで、みんなの夢を取り戻したのです。
だから今度は5人がバスコを倒して、みんなの夢を取り戻す番でした。
つまり、さっきまでとは意識が違う。
だから、きっと夢を取り戻せると、皆、確信しているのでした。

マーベラスがどうして強いのか。それは、マーベラスは今まで、みんなの夢を守って戦っていたからです。
そのマーベラスと同じ意識になった今、自分達は今までよりもずっと強くなったと、5人は確信しています。
「今度は・・・絶対に負けません!」と鎧は真っ直ぐマーベラスを見つめて宣言しました。

すると、教会の外では雲間から太陽が顔を出し、
太陽の光がステンドグラスから教会の廃墟の中にさあっと射し込んできて、
マーベラスの顔を照らし、ジョー達5人の身体も照らします。

その光に照らされながら、マーベラスは少し考え込んで、
ここは5人の夢に対する強い想いに賭けるしかないと思いました。
確かに「宇宙最大のお宝」はもはや自分1人の夢ではなく、
6人の仲間みんなの逆境の中での希望を抱く心そのものであり、6人みんなの夢となっている。
それを取り戻しに行くという仲間たちを引き止めることは自分には出来ない。
今はとにかく、5人に急いでもらい、バスコの野望を食い止めることが先決でした。

マーベラスは決断し、5人に向かって「・・・頼む!」と言いました。
それを受けて5人は無言で頷き、一斉に駆け出して、教会の扉を開けて、
すっかり晴れ上がった外の光に包まれて、ガレオンに向けて駆けていったのでした。
その5人が消えていった外の光を見つめながら横たわるマーベラスの身体は、
ステンドグラスから射し込んだ光で照らしだされていたのでした。

この突然、外から教会の廃墟に射し込んできた光は、
絶望的な状況の中で希望を捨てなかったマーベラス達6人の「夢」の形そのものを象徴していると同時に、
この現在の絶望的状況を逆転する希望そのものも象徴しています。
その希望の光が、マーベラス達6人が自分達の夢が同じだということを
真の意味で確認し合ったタイミングで射し込んできたということは、
仲間の夢が同じであることが絶望的状況からの勝利への突破口だということを意味しています。

ただ、この場面で要注目なのは、この光がステンドグラスからマーベラス達に届く前に、
廃墟の中に立つ、乳飲み子のイエスを抱いた聖母マリア像をかすめて通っていることです。
つまり、この希望の光は、マリア像からマーベラス達に注がれたような構図になっていたのです。
ならば、この絶望的状況からの逆転の希望の光には、
仲間の夢が同じだということに加えて、マリア像が持つ何らかの意味が加わっているはずです。
それがこの場面ではまだマーベラス達には分かっていません。

そして、このマリア像の持つ意味も加えた希望の光の意味は、
この現在のバスコに立ち向かうマーベラス一味の運命を切り開く道だけでなく、
ザンギャックの大侵攻という絶望的状況に晒される地球やスーパー戦隊の運命を切り開く道も、
指し示しているのです。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 12:57 | Comment(0) | 第48話「宿命の対決」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

第48話「宿命の対決」感想その4

その後、少し経って、マーベラス1人を教会の廃墟に残して駆け出したジョー達5人は、
ナビィの報せてくれたポイントに移動して、そこに停泊しているゴーカイガレオンを発見したのでした。
ガレオンはさっきナビィが逃げ出した時と同じく、渓谷の中にその身を隠すように停泊したままで、
バスコはまだガレオンを移動させてはいないようです。
ナビィを連れ戻さない限り、「宇宙最大のお宝」を手に入れるための手順が進められないようですので、
バスコは召喚ゴーカイジャーがナビィを捕えてくるのを、ただひたすら待っているようです。

このあたり無策なように見えますが、
バスコはマーベラス達が生きている可能性は低いと見ており、
ナビィがコクピットのサブコンピュータを使って現在地を割り出して
マーベラス達に報せたなどとは夢にも思っていないので、
そういう前提で考えるならば下手にガレオンを動かしてザンギャックにでも発見される方が下策というものでしょう。
とにかくバスコにとってはこの渓谷に隠れているのが、
一番平穏に「宇宙最大のお宝」を手に入れる作業を終える道なのです。
だからお宝を手に入れるまではバスコはこの渓谷からガレオンを動かすつもりはありませんでした。

その渓谷の、ガレオンを隠すように屹立する断崖の上にジョー達5人は辿り着いて、
断崖ギリギリの場所にしゃがみ込んで眼下のガレオンを見下ろします。
「結構・・・ギリギリの距離ですね」と、鎧がガレオンを見て息を呑みます。
この崖の上から飛び降りて、崖下のガレオンに着地しようという5人の算段であるようですが、
崖の先端からガレオンまでの距離が微妙に離れています。
飛び降りる高さとしては、まともに落ちたら大怪我で済まないぐらいの高さです。

といっても、バスコによって出入り口が全て封鎖されているガレオンに乗り込むためには、
崖下から歩いて近づいても不可能です。
上空から甲板に降り立って、甲板から樹脂状のカバー部分を破壊して内部に侵入するしかない。
ロープにアンカーを付けたものがあれば地上から甲板によじ登って侵入することは出来るが、
普段使っているアンカー付きロープはガレオンの中であり、
新たにそれに類したロープを用意している時間的余裕はありません。

とにかくバスコが「宇宙最大のお宝」をいつ手に入れてしまうのか分からない以上、
一刻も早くガレオンに侵入しなければならない。
ならば上空から甲板に侵入するのが最も良い。
といっても空飛ぶ機器を持っていない今のジョー達にはそれも難しい状況でした。
ところが指定された地点でガレオンを見つけると、ちょうどよく高い崖の脇に停泊してあったので、
崖の上から甲板に飛び降りればいいという作戦となったのです。

もちろん、もし飛び降りてガレオンまで届かずに地上に落下すれば大怪我で済まない高さですから、
まともに甲板に着地しても同様に大怪我では済まない。
だから、着地点は限定されます。
甲板前部の真ん中にある、比較的弾力性のある樹脂で出来たカバー部分に向かって5人一斉に跳ぶしかない。

あそこなら、この高さから飛び降りた5人の体重が一斉にかかれば破れるであろうが、
その際に落下の衝撃も吸収されるはずです。
つまり、怪我なく着地すると同時に、ガレオン内部への侵入にも成功する、手っ取り早い着地ポイントといえます。
逆に、それ以外の場所に着地したらアウトです。
崖上から覗くと、その場所に届くかどうか微妙であるように感じた鎧は思わず息を呑んだのです。

しかし、ルカは平然と「そんじゃ・・・行きますか!」と言います。
ルカは届く距離だと判断したようで、躊躇しているヒマは無いと思ったようですが、
チラリとハカセの方を見て「ハカセ・・・大丈夫?」と声をかけます。
冷静に跳べばきっと届く距離だと判断したルカですが、
この中では一番怖気づきそうなハカセが恐怖心で動きが固くなって失敗することを少し危惧したのでした。

そのハカセは崖下を見つめてひきつった顔をしていましたが、
ルカに言葉をかけられると我に返ったように表情を引き締め、
「・・・行く!行くなって言われても行く!」と強い口調で応えます。

もちろん永遠のヘタレキャラのハカセが急に勇敢になったりはしない。
やっぱり怖いことは怖いのです。
でも、これは誰かのためではなく、自分の夢を取り戻すためのダイブでした。
もともと仲間のためにしか勇気を出せなかったハカセでしたが、
仲間の夢と自分の夢が1つであることを実感した今、
誰のためでもなく、自分達みんなのために、より大きな勇気を出すことが出来るようになったのです。
いや、ここで勇気を出さなかったら後悔する。

その想いは、これまでは自分の夢と他の皆の夢が同じだとは気付いていなかったアイムも同じであるようで、
何時に無く激しい調子で「私も!」と勢い込みます。
アイムも、初めて本心から皆で1つの夢に突き進む気持ちを実感し、高揚していました。
あまりのハカセとアイムの熱さに、思わずいつもは一番うるさい鎧が
2人の声が大きくてバスコに聞こえるのではないかと心配そうにするほどで、
ジョーも5人の高まる一体感に満足そうに「上等だ・・・」と呟くと立ち上がり、
「・・・みんな・・・行くぞ!」と言います。

そうして5人は立ち上がり、一斉に崖から跳び降り、
狙いの樹脂カバーの上に落下し、カバーは5人の体重と加速度を受けて破れ、
そこで落下の衝撃を大部分吸収された5人はガレオンの船倉の機関部エリアに無事に着地に成功したのでした。

なお、この乱暴な侵入を受けても、バスコは5人の侵入に気付いていません。
この落下の衝撃はガレオンの居住区エリアである船室の方には届いていませんし、
そもそもガレオンには、外敵侵入を感知するセキュリティ網などは全く存在しないのです。

これまでのエピソードでも、スニークブラザースのエルダー、アラタ、明石暁、ダイヤール、
偽ルカ、ボンパー、バスコなど、様々な不審者の侵入に際して何の警報も発していません。
また、赤き海賊団の壊滅事件の際にも、ザンギャック部隊が船室に雪崩れ込んでくるまで、
その侵入にはマーベラスもアカレッドも気付きませんでした。
というか、そんな気の利いたセキュリティシステムがあれば、とっくにナビィも捕まっているはずです。
どうも乗員が代々、腕に覚えのある者ばかりなので、セキュリティには無頓着であるようです。
ジョー達5人はガレオンのセキュリティの甘さを知っているので、
こうした大胆な侵入を敢行しても大丈夫だという読みがあったのです。

「よし!潜入成功!」と胸を撫で下ろすハカセに向かい、
鎧が「どうしましょう?・・・とりあえずコクピットに行ってナビィさんを!」と言って、
ナビィが潜んでいるというコクピットへ向かおうとしますが、
ハカセは「メインコンピュータのある居住区を確保した方がいいと思う!
あそこさえ押さえれば、あとはなんとでもなるよ!」と言って呼び止めます。

ナビィの通信が途中で切れたことから考えて、コクピットもどうやら安全とはいえない状況でした。
もしかしたらナビィはもうコクピットにはいないかもしれない。
他の安全な場所に逃げたか、あるいは既に捕えられているかもしれない。
もし前者であればコクピットに行っても無駄足で、こちらが危険に晒されることになる。
後者であればナビィはおそらく船室に連行されている。
後者の場合の方がナビィの危険は切迫している。
もちろん船室に行っても5人は危険に晒されるのだが、
同じ危険に晒されるのなら、よりナビィの危険度が高く、確保した場合にメリットの大きい場所の方がマシです。

それなら、やはり船内の全てを管制出来るメインコンピュータのある居住区、船室の方が良い。
メインコンピュータを押さえれば、ガレオンは奪還したも同然です。
逆に、コクピットを押さえたところで、メインコンピュータを敵に押さえられた状態では、
ガレオンを奪還したことにはならない。
それに5人の戦う力であるレンジャーキーも居住区に置いてあるのだから、
居住区に行かないことには、まともに戦うことも出来ない。
だから断然ここは居住区を目指すべきなのです。

しかし、ジョーは「だが・・・そこにバスコもいるだろうな・・・」と指摘します。
居住区に行けば、必然的にバスコと戦うことになる。
変身出来ない状態でバスコと戦って勝機があるのか、疑問でした。
今、優先すべきはナビィを助けてガレオンやレンジャーキーを奪還することでした。
バスコと戦うのはリスクが高い。
なんとかバスコと戦わずにこれらを奪還して、それからバスコと戦うのが最も賢い作戦だとジョーは思いました。

が、これに対して、ルカが「・・・考えたって仕方ないでしょ!どうせやんなきゃいけないんだし!」と
クールに言い返します。
確かに、逃げ出したナビィはともかく、ガレオンのコントロールとレンジャーキーに関しては、
バスコがそう易々と手元から離すはずもなく、そんな楽天的な想定はするだけ無駄でした。
ガレオンとレンジャーキーを奪還しようとすれば、どう考えてもバスコと戦わざるを得ない。
特にレンジャーキーは絶対に取り戻さないと、まともな戦いにならない。
だから、危険は承知で生身でバスコと戦って、まずはレンジャーキーを取り戻しすしかないのです。

「よし!分かれて居住区を目指すぞ!・・・不意を突いて一斉に飛び掛かれば、勝機もある・・・」と
ジョーは決断を下しました。
とにかく、まずはレンジャーキーの奪還に専念した作戦で生身でバスコに挑み、
レンジャーキーを奪った後、変身して、そこからまともにバスコと正面対決すればいい。
だから、まずは二手に分かれて居住区に別々の方向から一斉に襲撃をかけることにしたのです。

バスコは1人ですから、そうなれば片方のチームをバスコが相手している隙に
もう片方のチームが宝箱を奪うことが出来る。
レンジャーキーさえ奪ってしまえば、そこからは変身して戦える。
そういう作戦でした。
「了解!」「OK!」と応じて、5人は2チームに分かれて、
別々のルートを進んで居住区の船室を目指すことにして、散っていきます。

しかし、バスコの圧倒的な強さを考えると、
生身の5人が一斉に飛び掛かったところで、本当に首尾よくレンジャーキーを奪還出来るのか、
心細い作戦といえます。
それでも、何の工夫も無く正面攻撃するよりはいくらかマシな作戦であるので、
この作戦に賭けるしかないのです。

ただ、それでもし首尾よくレンジャーキーを奪えたとしても、
じゃあその先、5人が変身して戦ってバスコに勝てるのかというと、
それもなかなか大変であることは、さっきの戦いで立証済みです。
いろいろ前途多難ではあるが、とにかく微かな可能性に賭けていくしかないのです。

5人が分かれた2チームのうち、1チームはジョーとアイムの2人組でした。
その2人が下層階の電源室の区画のあたりを駆けていると、そこの廊下で何者かと鉢合わせして、
ジョーとアイムは「はっ!?」と立ち止まります。
反射的に、バスコと鉢合わせしたのかと思い身構えると、
なんと相手はバスコではなく、ゴーカイブルーとゴーカイピンクの2人組でした。

「私達!?」とアイムは驚きます。
自分自身がいきなり目の前に現れたように感じて、唖然とする2人でしたが、
ジョーはハッとラッパラッターの存在を思い出し、
「そうか!・・・ナビィを捜すためにバスコがあのラッパを使って・・・!」と悔しげに呻きます。

第31話で手持ちのレンジャーキーを全て失って以降、
最近はバスコがあのラッパラッターを使っている姿を見ていなかったので、
ついジョーもラッパラッターの存在を忘れていました。
だからバスコはサリーを捨てた今はたった1人で自分達の相手をしなければいけないものだと
ジョーは決めつけていた。
それで、バスコが居住区の船室に居る限りは、
船室までは誰にも邪魔されずにすんなり辿り着けるはずだと決めつけていた。
また、バスコに一斉に飛び掛かれば勝機があると思い込んでいた。

しかし、バスコがラッパラッターでレンジャーキーを戦士に実体化して使役してくるとなると、
さっき立てた作戦は前提から崩壊してしまう。
実際、こうして早くも召喚戦士と鉢合わせしてしまい、
時刻を合わせて一斉に船室に飛び込んでバスコに襲い掛かる作戦は崩壊してしまった。
作戦を回復させるためにはすぐにこの2人の召喚戦士を倒していくしかないのだが、
よりによって自分自身の召喚戦士が相手とは・・・と考えたところで、
ジョーはハッと、これはもしかしてチャンスなのかもしれないと気付いたのでした。

一方、二手に分かれたもう1チームの方、ルカとハカセと鎧の3人組の方も、
船底の機関部区画の通路を走っていると、
そこでゴーカイイエロー、ゴーカイグリーン、ゴーカイシルバーの召喚戦士3人組とバッタリ遭遇していました。
「あ!?」と一瞬、呆気にとられた3人でしたが、
すぐにそれがバスコがナビィ捜索のためにラッパラッターで召喚した戦士なのだと気付きます。

それにしても、よりによってナビィを追いかけ回すのにゴーカイジャーを召喚して使うとは、
なんという悪趣味なのかと思い呆れると、
目の前の3人の召喚戦士は、いつもルカ達3人が名乗りの時に決めているポーズをしてみせています。
召喚戦士はレンジャーキーのパワーや情報が実体化したものですから、
オリジナル戦士の普段の戦闘時の行動パターンが反映された動きを無意識にやるようになっています。
だから戦う前に名乗りポーズを決めるというお決まりの行動パターンも忠実になぞっているようです。
つまり、これは彼ら召喚戦士なりの戦闘開始の合図なのでしょう。

しかしハカセは召喚ゴーカイグリーンの名乗りポーズが気に入らないようで
「僕はそんなオシッコの後にズボンで手を拭くようなポーズはしないぞ!」と憤慨します。
いや、召喚ゴーカイグリーンの手汗を拭くような変な名乗りポーズは
普段ハカセがやっている名乗りポーズの完全なるコピーなのです。
ルカは「してる、してる・・・!」とハカセにツッコミを入れ、
鎧も驚いて「え?・・・あれって無意識だったんですか?」とハカセに尋ねます。

いや、いくらなんでもハカセも名乗りポーズの時に全く無意識状態であったわけではありません。
ただ、ハカセ自身はもっとカッコいいポーズを決めているつもりだったのでしょう。
あの変な手の動きは無意識でやっていたようです。
まぁしかし、実際、人間の行動なんてそんなものが多い。
ルカのポーズにしても鎧のポーズにしても、毎回意識して動かしているわけではないでしょう。
ただ単に自分のイメージ通りである点でハカセとは違うものの、
2人にしても、無意識に毎回同じポーズをとっていたはずです。

つまり、この召喚戦士というやつは、オリジナル戦士の無意識に沁みついている行動だけを
コピーしているのであり、心が無いので意識的に新たな行動をとることなどは出来ないのです。
そのことに気付いたルカは「それより・・・運が向いてきたってこと?」と言います。
3人の召喚戦士がいつものルカ達と同じような仕草で襲い掛かってくると、
ハカセも鎧もルカと同じことに気付いたようで、鎧は「いきますよ!」と張り切り、
3人は気合いを入れて召喚戦士たちを真っ向から迎え撃ちます。

ラッパラッターで召喚された戦士は、正規の戦士よりは確かに弱いが、それでも生身の人間よりも遥かに強い。
ジョー達5人も生身でゴーミン程度ならば倒すことは出来るぐらい鍛えているが、
召喚戦士はゴーミンはおろかスゴーミンよりは確実に強く、並の行動隊長レベルぐらいの強さがあります。
だから、普通ならば5人が生身の状態で同数の召喚戦士に勝てるはずもない。
おそらく相手がゴーカイジャー以外の召喚戦士であったら、ジョー達は簡単に負けてしまったのでしょう。
しかし、相手がゴーカイジャーの召喚戦士で、しかも自分の普段変身している担当戦士の召喚体であれば話は別です。

何故なら、それらの召喚戦士は、普段の自分の無意識に沁みついた行動しか取ることが出来ない相手だからです。
つまり、ジョー達5人は落ち着いて平常心で戦えば、無意識に相手の動きに身体が対応してくれるのです。
例えばジョーならばゴーカイブルーの攻撃パターンはだいたい無意識に把握しているので、
素早く身体が反応して対処出来るから、簡単には攻撃を喰らうことはない。
ゴーカイブルーは決してジョーの予想外の攻撃をしてくることはないので、戦うにはかなり楽な相手です。

そして逆にジョーはゴーカイブルーの防御の動きは知り尽くしていますから、
その裏をかいた攻撃を加えればいい。
ゴーカイブルーは決してジョーの想像の更に上をいく防御はしませんから、
ジョーがゴーカイブルーの裏をかいた攻撃は必ずヒットします。

しかし、だからといって楽勝なのかというと、そんなことはなく、
パワーもスピードも防御力も圧倒的に召喚戦士の方が上ですから、ちょっとでも油断すれば一気に圧倒されます。
生身のジョー達の唯一の強みは、相手の動きが先読み出来ることだけです。
だから慎重にクレバーに戦わないといけない。

しかし最大の問題点は、地道に有効打を重ねていったとしても、
生身の攻撃力では召喚戦士を倒す決め手は無いということです。
ただ、これは相手がゴーカイジャーであれば突破口はあります。
ジョー達が相手の動きを読みながら戦うに際して、相手を倒すことを目指すのではなく、
相手の武器を奪うことを目的とすればいいのです。

ゴーカイジャーという戦隊はほとんど両手が武器で塞がった状態で戦う戦隊ですので、
武器を使わない戦い方というのはほぼありません。
もちろん生身のジョー達は素手で戦う術も心得ていますが、
ゴーカイジャーに変身した時はほとんど武器に頼った戦い方しかしません。
その結果、ゴーカイジャーのレンジャーキーに蓄積された無意識の戦闘パターンは
ほぼ全て武器アクションであり、素手アクションはほとんど無い。
その無意識に基づいた行動しか出来ない召喚戦士は、
素手アクションはほとんど素人同然と言っていいでしょう。

だから、相手の動きを先読みした慎重かつクレバーな戦い方で、
とにかく召喚戦士の武器さえ奪えば、ゴーカイジャーの召喚戦士は一気に弱体化する。
そして、その奪った武器であるゴーカイサーベルやゴーカイガンは、
ジョー達5人の生身の戦士たちにとっては普段使っている最も使い慣れた武器であり、
召喚戦士を倒すことが十分に可能な破壊力を有しているのです。

そして召喚戦士は倒せばレンジャーキーに戻る。
つまり、ゴーカイジャーの召喚戦士を倒せば、ジョー達5人はゴーカイジャーのレンジャーキーをゲットして、
モバイレーツやゴーカイセルラーにそれを挿して、ゴーカイジャーに変身出来る。
そしてゴーカイジャーに変身すれば、カーギーロードを使って他のレンジャーキーも取り出して、
多段変身も出来るようになるのです。

電源室の廊下ではそのことに気付いたジョーはゴーカイブルー召喚体と、
アイムはゴーカイピンク召喚体と、それぞれ戦いを開始していました。
ジョーは「レンジャーキーを取り戻せば・・・変身出来る!」と言いながら、
ゴーカイブルーの攻撃を先読みしてかわしながら、
執拗にゴーカイブルー召喚体の持つゴーカイサーベルを狙います。
アイムも同様に、ゴーカイピンク召喚体の攻撃を繰り出す武器を持つ手を払いながら、
なんとか相手の隙を見つけようと必死に食らいつきます。

一方、機関室の方でも、ゴーカイジャー召喚体との戦いの有利を悟った3人は、
ルカがゴーカイイエロー召喚体と、ハカセがゴーカイグリーン召喚体と、鎧がゴーカイシルバー召喚体と、
それぞれ自分の担当戦士との戦いを選択していました。
ゴーカイイエローに肘打ちを喰らわせながら、ルカは「サンキュー!ナビィ!」と叫びます。

もしジョーの決めた作戦が順調に進んでいれば、ルカ達は簡単に船室に辿り着いて
5人で一斉にバスコに飛び掛かって戦う羽目になっていた。
その場合、ゴーカイジャーのレンジャーキーを本当に上手く奪還できるか、
ハッキリ言ってルカはあまり自信は無かった。
自信は無いが、とにかくやるしかないという心境だったのです。
ところがバスコがわざわざゴーカイジャーをラッパラッターで召喚して、
船室から遠く離れた船底部に派遣してきてくれていたお蔭で、
上手くやればゴーカイジャーに変身した状態で船室のバスコに襲い掛かることが出来るかもしれない。

つまりバスコはよりによって自身にとって最悪のカードを切ってしまったのです。
バスコにその選択をさせる元凶となったのはナビィの脱走でした。
ナビィが逃げたので、バスコはナビィを驚かせるために
わざわざゴーカイジャーの召喚戦士にナビィ探しを命じて船内に放ったのです。

バスコがそんな不用心なことをしたのは、船内にジョー達が忍び込んでくるなどとは予測もしていなかったからです。
そして、ジョー達が船内に忍び込んでくることが出来たのは、
逃げ出したナビィがコクピットでガレオンの現在地を調べてルカに教えてくれたからでした。
だから結局、最大の功労者はナビィということになるが、
そのナビィが逃げ出すことが出来たのは、サリーの遺したナイフのお蔭なのだから、
誰もが知らないことではありますが、バスコは自分が捨てて殺したサリーに裏切られて計画が崩れ始めているのです。

こうしてガレオンの下層階の2ヵ所で
生身のゴーカイジャーと召喚体のゴーカイジャーとの戦いが繰り広げられる一方、
ガレオンの上層階のコクピットでは、長い間、ゴーカイレッド召喚体がナビィを捜し回っていましたが、
ナビィは上手く探索の目を逃れて隠れ通し、遂にゴーカイレッド召喚体は諦めてコクピットから出て行きました。

ナビィは「ふぅ〜!全く危ないとこだったよ!」と安堵の溜息を洩らし、
飛び上がりながら「じゃあ、もいっかいマーベラス達に連絡を・・・」と言いつつ、
ふとコクピットの入り口のドアの方を見て凍りつきます。
半開きになったドアの外には、さっき出て行ったはずのゴーカイレッド召喚体が立っており、
コクピット内を無言で覗き込んでいたのです。
「ぎゃあああああ!!」とナビィは思わず絶叫します。
遂にナビィは追手に見つかってしまったのでした。

それにしても、この場面、ゴーカイレッドのマスクの人相が悪いことや、
無言であることなども相俟って、
なんだかちょっとホラーみたいで怖いです。

こうして上層階で事態が急展開を見せる一方、
再び舞台は下層階の生身ゴーカイジャーと召喚ゴーカイジャーの攻防に移ります。
まず電源室付近のジョーVSゴーカイブルー召喚体の攻防は、
基本的に左手のゴーカイガンを背中に回して使わないゴーカイブルーのクセを熟知しているジョーが、
ひたすら召喚体の右手のゴーカイサーベルを奪う戦い方に徹し、
階段付近にある柱を巧みに利用して召喚体のサーベル攻撃をかわしながら、
遂に召喚体の右手を柱に叩きつけて「ふん!」と召喚体からサーベルを奪い取ると、
「はっ!!」とサーベルを一閃、反撃に転じます。

そして、その近くの狭い廊下でゴーカイピンク召喚体に押し込まれていたアイムは、
「くっ・・・ここで負けるわけには・・・参りません!!」と、相手の力を利用して一瞬、押し返し、
その一瞬の隙間を縫って蹴りあげた足を召喚体の左手を狙って叩きつけます。
その衝撃で召喚体が落としたゴーカイガンが廊下を乾いた音を立てて転がり、
それに素早く飛びついて拾い上げたアイムは反転して、
襲い掛かってくる召喚体の身体に銃弾の雨を叩き込んで反撃を開始します。

さて一方、機関室の方では、まずルカがゴーカイイエロー召喚体を相手に優位に戦いを進めています。
ルカはもともと女盗賊、女海賊として屈強な男たちと戦うために
パワー不足を補う巧妙な戦い方を磨いていましたから、
動きを先読み出来るパワー偏重の自分の召喚体などはほとんど敵ではない様子で、
組み合って相手の力を利用して「ふん!」と投げ飛ばすと、
倒れた召喚体の腕を捩じりあげて「えい!」とゴーカイサーベルを容易く奪って形勢を完全に有利にします。

また、その近くでは鎧がゴーカイシルバー召喚体と真っ向勝負となっていました。
召喚体の方はゴーカイスピアをいつも鎧が使っている通りに豪快に振り回しますが、
狭い機関室では上手く扱えず、生身の鎧は接近戦に持ち込んで
召喚体の隙を突いて「おりゃあ!」と渾身のキックを繰り出して吹っ飛ばします。
その弾みで落ちたゴーカイスピアを拾って鎧は「ああ・・・なんか、やりづれぇ!!」とぼやきながら反撃に転じます。
武器を手に入れて優勢となった鎧ですが、
普段の自分の変身後の姿を攻撃するのは、やはり少し変な気分であるようです。

そして、ハカセVSゴーカイグリーン召喚体の攻防は、異色戦士同士のバトルとなっており、
やはり召喚体となってもゴーカイグリーンはハカセのこれまでの不思議アクションの経験の蓄積が
無意識の動きとなってレンジャーキーにも還元されていたようで、
無意識に動く召喚戦士とは思えないような変な動きをします。
ここでも階段の手すりを滑り降りるような奇妙な動きでハカセを翻弄しようとする召喚体ですが、
ハカセはこの程度の動きはオリジナルの強みで読んでおり、「おおっと!?」と容易くかわすと、
なんと切り返しに消火器を使って白い煙を噴きつけて召喚体の視界を塞ぐという卑怯な攻撃を繰り出し、
慌てる召喚体に倒立回転で飛びつき、「意表をつく戦いは・・・僕の方が本家だぞ!!」と言いながら、
肩車から回転して床に叩きつけるアクロバチックなアクションの中で巧みにゴーカイガンを奪い取り、
召喚体の身体に銃弾を撃ち込んで反撃します。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 23:09 | Comment(0) | 第48話「宿命の対決」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月03日

第48話「宿命の対決」感想その5

その頃、1人だけ教会の廃墟に残されていたマーベラスは、
長椅子の上で身体を横たえてダメージの回復を図りながら、
ガレオンに向かったジョー達5人のことを案じていました。

マーベラス達6人は一旦バスコに敗れて「宇宙最大のお宝」を失いかけたことによって、
自分達にとっての「宇宙最大のお宝」という夢の本質を知ることが出来ました。
それは結局、苦しみに満ちたこの宇宙の現実の中でも決して希望を捨てることのない
海賊の心の象徴のようなものであり、
「宇宙最大のお宝」を掴もうとする夢が、自分達のこの宇宙を海賊として生きていく心の支えであったのです。

だからマーベラス達は海賊であろうとする限り、「宇宙最大のお宝」を諦めるわけにはいかない。
「宇宙最大のお宝」の中身や用途や価値が何であるかなどはこの際どうでもいい。
「宇宙最大のお宝」を手に入れることそのものが海賊の誇りを守ること、
苦しみに満ちた宇宙で希望をもって生きることの証なのです。

言い換えれば、「宇宙最大のお宝」とは、
この絶望の世界で希望を信じて突き進むという海賊の誇りを持った者しか、それを手にする資格は無いといえます。
マーベラス一味の仲間たちは、マーベラスがその「宇宙最大のお宝」を手に入れるに値するだけの
海賊の誇りを持っていると見極めた者だけを選んで仲間として受け入れてきたのです。

マーベラスはハッキリとそういう基準を常に意識していたわけではない。
ただ何となくそうして仲間を選んできた。
それはやはり、最初にマーベラス自身がアカレッドによって赤き海賊団に誘われた時の、
アカレッドの言動から受けた影響によるのでしょう。

アカレッドはマーベラスを誘った時、「宇宙最大のお宝」の存在を信じるか否かをマーベラス自身に決めさせて、
マーベラスがそれを信じたので、仲間に受け入れた。
つまり、この宇宙に有り得ないような宝物の存在を信じられる者だけが、
「宇宙最大のお宝」を掴むことが出来るという基準がアカレッドによって示されたのです。
マーベラスはその伝統を無意識に受け継ぎ、
悪の支配する宇宙で自分の信じる理想を突き進む者だけを仲間に選んできた。

仲間として認められたジョー、ルカ、ハカセ、アイム、鎧の5人も、
自分がどうして仲間に選ばれたのかよく分かっていなかった。
自分の独自の価値観が認められたのだろうとは何となく分かっても、
それが「宇宙最大のお宝」と直結しているとまでは気付かなかった。
6人の繋がりがそうした無意識の繋がりであるうちは、
彼らは所詮は赤き海賊団を超えるものではなかったのかもしれません。

しかし、自分達の生き方そのものが「宇宙最大のお宝」を掴む資格であるからこそ、
この6人が仲間として集まったのだという運命を全員が知った先刻以降、
彼らは赤き海賊団を超えて、真の意味でマーベラス一味、ゴーカイジャーという宇宙海賊として
独り立ちしたのだといえます。

だから、ジョー達5人も、自分も、以前とは気合いが違う。
その分、確実に強くなっているはずだとマーベラスは思いました。
そう信じたから、ジョー達5人だけでガレオンに行くことを許したのです。

しかし現実問題として、やはりバスコも強い。
今までだってマーベラス達は腑抜けていたわけではない。
必死でバスコを倒そうとして戦ってきたはずです。
それなのにバスコには勝てなかった。
ジョー達も今までよりも多少気合いが入ったからといって、いきなり飛躍的に強くなるわけではない。
冷静に現実を見れば、さっきマーベラスが気絶していた間にバスコがジョー達に完勝した戦いと、
力関係はそんなには変わっていません。
いや、変身出来ない分、ジョー達の方が圧倒的に不利ですし、
もし変身出来るようになったとしても、やはりバスコ有利は動かないと考えるのが普通です。

マーベラスだってそんなことは分かっていますが、
今の状況では他に手段が無いので、ジョー達の奮起に賭けただけのことであり、
根本的には、さっき無様に気絶してジョー達に戦いを押し付けてしまった時と同じようなことを
またやっているだけです。

ただ、マーベラスは改めて自分達が海賊として誇りをもって生きてきたことを確認した後だからこそ、
バスコごとき裏切り者の海賊がどうして自分達よりも強いのだろうかと不思議に思いました。
もちろんバスコの怪人態の戦闘力が単純に凄まじいという要素もあります。
しかしマーベラス達だって強化してきています。
今は確かにマーベラスがダメージを受けて不利な状況になっていますが、
普段の万全な状態では、総合的に見ればバスコとマーベラス一味の力はそうは違わないはずです。
怪我を負っていたとはいえ、バスコより強いダマラスもマーベラス達は倒したのですから、
バスコに勝ってもよさそうなものなのですが、どうしてもバスコには勝てない。

何かバスコには単純な戦闘力以上の強さを感じます。
それは何か強靭な精神力のようなもののように思えるのですが、
しかしバスコは人格的には見下げ果てた男です。
そもそもどうしてあんな男が赤き海賊団に仲間入り出来たのだろうかと考えたマーベラスは、
アカレッドが人選を誤るということは考えにくいと気付きました。

ならば、バスコもまたマーベラス同様、
この宇宙に有り得るはずのない宝物の存在を信じることが出来る男だと認められて、
赤き海賊団の一員になっていたことになります。
つまり、バスコはマーベラスと同じく、「宇宙最大のお宝」の正体などそうでもよくて、
ただ単に誰もが手に入れたくて手に入れられない伝説の宝だから、それを掴んでみたいと思っていた男なのであり、
その根底には、苦しみに満ちた宇宙で希望の存在を信じたいという想いがあったはずです。

そのような動機で「宇宙最大のお宝」を求めていたバスコは、
欲にかられて「宇宙最大のお宝」を欲しがっていたわけではない。
おそらくマーベラス同様、その正体が金銀財宝だなどとは思っていなかったはずです。
いや、そもそも中身が何であるのか、あまり深くも考えていなかったでしょう。
バスコが興味があったのは、マーベラス同様、
「手に入れられない物を手に入れたい」という海賊の誇りだけだったはずです。

バスコは外道ですが、その海賊の誇りという点では現在も揺らいでいないはずです。
何故なら、相変わらずバスコは「宇宙最大のお宝」を手に入れたいという想いを強く持っているし、
「宇宙最大のお宝」が存在するかどうかも分からない伝説のお宝であるという点は、
バスコの裏切り前も裏切り後も、ほぼ状況は変わっていないはずだからです。

つまりバスコは海賊の誇りはしっかりと持っているのです。
嘘つきの裏切り者であるという点で人格的には最低ですが、
人格という点ではマーベラスだって別に完璧な聖人君子というわけではなく欠点はたくさんあります。
海賊というのは別に聖人君子である必要は無いのです。
ただ絶望の中でも独自の意思で希望を見出して未来を切り開いていくことが出来ればいい。
そういう点ではバスコは立派な海賊なのです。
だから、その精神的な点だけで既にバスコはマーベラス一味と互角の強さは持っているのです。
更にそこにあの凄まじい戦闘力が加わるのですから、確かに強いわけです。

ただ、バスコの精神的な強さはそれだけではないとマーベラスは思いました。
バスコは赤き海賊団を裏切った時、裏切った理由を問われて、
「宇宙最大のお宝」を独り占めしたいからだと答えましたが、
それは嘘だとマーベラスは思いました。
何故なら、そもそもバスコは「宇宙最大のお宝」の中身には興味は無く、
単にそれを掴みたかっただけであり、
掴んだ後のことなど、マーベラス同様、何も考えていなかったはずだからです。

では、本当はどういう理由でバスコは裏切ったのか?
その理由はマーベラスにはどうしても想像はつきませんでした。
しかし、確実に言えることは、バスコは仲間を裏切って捨てることによって、
「宇宙最大のお宝」の獲得に自分が更に近づくのだと信じているということです。
どうしてバスコがそんな風に思ったのかは分かりませんが、
とにかくあれほどお宝のことしか考えていない男が、
お宝の獲得以外の理由で仲間を裏切るということは考えられませんでした。

しかし、その「宇宙最大のお宝」という同じ夢を掴もうとして力を合わせてきた仲間なのですから、
それを裏切るというのは大変なことです。
それは夢を裏切るに等しい。
マーベラスにはそんなことは出来そうにありませんでした。
いや、そんなことをしたら、自分は夢を追いかける資格は失ってしまうし、
夢を掴もうとする気力など消えてしまうと思いました。
仲間で1つの夢を掴むというのはそういうことであり、
夢を掴むために集まった仲間というのはそういうものなのです。
それはマーベラス一味も赤き海賊団も同じでした。

しかしバスコは仲間を裏切った。
裏切り行為自体は絶対に許せない外道な行為だが、
バスコはその外道を行ってもなお、夢を掴もうとしているのです。
それは確かに凄いことであるとは、マーベラスも思いました。
共に同じ夢を掴もうとして力を合わせていた仲間を裏切っても、その夢を掴もうと思えるのは、
決して善ではないが、確かに信じがたいほど強靭な精神力だとマーベラスは認めざるを得ませんでした。

それは本当に純粋に自分が夢を掴むことしか考えていない究極のエゴイストであり、
夢を掴むために利用できるものは何でも利用し、切り捨てるべきものは何でも切り捨てる、
残るものは夢だけという生き方です。
それは、夢を追うために世界から逸脱したアウトローである「海賊」のお手本のような生き方なのかもしれません。

バスコは或る意味、究極の海賊なのであり、
裏切った仲間の夢を掴もうとする力を奪って自分の夢を掴む力に変えてしまうような、悪夢のような男だといえます。
マーベラス一味が仲間の夢を掴む力を合わせて戦う海賊だとするなら、
バスコは仲間を切り捨てて、その夢を掴む力を奪って我が物として戦う海賊といえます。

そして、「海賊」という存在の根本的な世界における孤独さを考えると、
海賊として、より正しい生き方は「合わせる」のではなく「捨てる」ことなのだとマーベラスは感じました。
海賊はもともと世を捨てて旅立った者だからです。
根本的には海賊は「捨てる」者なのです。
だから、同じ夢を掴もうとする仲間の力を合わせたマーベラス一味の力よりも、
仲間を捨てることで強くなるバスコの方が、海賊としての力が強いのです。

そう感じたマーベラスは、やはりジョー達5人が立ち向かってもバスコには勝てないと思い、
このままジョー達を見殺しに出来ないと、長椅子の上で上体を起こします。
休養をとった甲斐があって、マーベラスは起き上がれるほどには回復してきていました。
それでもまだ起き上がるのに激痛を感じたマーベラスは、自分がまだ満足に戦える状態でないとは感じました。

しかし、マーベラスは大きく呼吸をしながら、仲間の危機にこれ以上休んでいるわけにいかないと心を決め、
左手を伸ばして長椅子に掛けてある上着を掴むと、上着を担いで立ち上がり、出口に向かって歩き出します。
しかし腹部に負った傷の激痛で、マーベラスは数歩進んだところでしゃがみ込んでしまい、
そこにあった長椅子にしがみついてしまいました。

身体全体のダメージは抜けてきて、身体は痺れがとれて動くようにはなったものの、
痺れがとれたことによって、かえって全身に負った傷は激痛を発して
マーベラスの身体の自由な動きをまだ妨げています。
こんな痛み程度でしゃがみ込んでしまうとは情けないと思ったマーベラスは起き上がろうとしますが、
なかなか動きがとれず、椅子を掴んで左手をよじ登らせてようやく顔を上げる有様です。

こんな程度の痛みで動けなくなるとは、やはり自分はバスコよりも弱い海賊なのかとマーベラスは思いました。
それはやはり自分が仲間を捨てることが出来ず、
仲間みんなの夢を守ろうとしているからなのだろうかとも思ったマーベラスは、
今の現状はそんな綺麗なものでもないと思いました。

結局は自分は今、現実にはジョー達だけに戦いを押し付けて見殺しにしようとしている。
この場でうずくまっている現実は、まさにそういうことだ。
そして、仲間を捨てることで自分がバスコのように強くなれるのかというと、
自分はそんなことは無理だと思いました。
そんなことには自分の精神は耐えられない。
自分は結局、仲間みんなの夢を守ることでしか戦えない。

ならば、さっさと立ち上がってガレオンに駆けつければいい。
でも、それじゃバスコには勝てないと思っているから、
自分はこれぐらいの痛みで立ち上がれなくなっているのだとマーベラスは思いました。
結局、自分はこんな危機に直面しても仲間を捨てることも守ることも出来ない意気地なしなのだと思い、
マーベラスは悔しさのあまり、「こんな時に・・・俺は・・・!」と怒鳴って、
右手の拳を目の前の長椅子に叩きつけました。

すると、どういうわけか、拳の外側でなく、握り込んだ拳の内側に突き刺さるような痛みを感じて、
マーベラスは驚きました。
不審に思い、叩きつけたままの右拳をゆっくり開くと、
拳の中には銀色の金属の飾りのようなものがあったのでした。
この飾りのやや尖った部分が叩きつけた拳の内側に食い込んでいたのです。

しかしマーベラスはどうして自分がそんなものを握っていたのかよく分からないようです。
どうやらマーベラスは横たわっている間もずっとそれを右手に握り込んでいたようですが、
今まで右手が痺れていてマーベラス自身、拳の中の物体に気付かなかったようです。
それにしても無意識にずいぶん大事に握っていたものですが、
マーベラスはそれが何なのか、一瞬分からない様子です。

どうして自分がこんなものを、何時から握っていたのだろうかと考えたマーベラスは、
じっとその金属の飾りを見つめているうちに、失われていた記憶が甦ってきました。
身体の痺れがとれて立ち上がれるようになってきて、
マーベラスの心身はようやく本来の調子に戻ってきたようで、
それに伴って、爆発のショックで一時的に失われていた一部の記憶も全て甦ってきたのです。

その記憶は、さっきの森の中でバスコがサリーの首につけたペンダントの爆弾を爆発させた瞬間の記憶でした。
この前回の爆発シーン、サリーはバラバラになって即死していたのに、
隣にいたマーベラスは意識不明とはいえ五体満足というのは不自然で、
しかも今回の冒頭でマーベラスはすぐに意識を取り戻し、
普通に喋ったり上体を起こそうとしたりしていたので、
いくらなんでもマーベラスの怪我が軽すぎる不自然さが感じられました。

これは特撮ヒーロードラマ特有のご都合主義的展開のようにも見えましたが、
一応前回の考察ではマーベラスがペンダントを外してサリーを助けようとして鎖を引っ張り、
それで驚いたサリーが逆に引っ張り返して
爆弾の仕込んである一番大きな飾り部分を自分の身体の方に抱え込んでしまい、
それで爆風がほとんどサリーの方向に向かってしまったからではないかと推理しました。
しかし、本当はそういう事情ではなかったのです。
かといってご都合主義的展開だったわけでもなく、ちゃんと説得力のある展開であったのです。

マーベラスの想い出した記憶は、
バスコが起爆装置を押して、サリーの首から下げたペンダントの爆弾のカウントダウンの電子音が鳴り始め、
サリーが「ウキッ!?」と驚きの声を上げ、マーベラスがペンダントに爆弾が仕込まれていることに気付き
「まさかっ・・・!?」とサリーの方に向き直り右手を伸ばしてサリーのペンダントを引きちぎって
外そうとして引っ張った時、サリーが「ウキッ!」と反応したところです。

前回の放送分の映像ではこの部分はサリーの背中越しのアングルになっていて、
この後、すぐに爆発が起きました。
前回の考察では、この時マーベラスが引っ張ったので
サリーが驚いて声を上げてペンダントを引っ張り返したように見えたので、
それに基づいた考察をしたのですが、今回はこの部分がサリーの正面からのアングルで再現されていました。
つまりマーベラスの目線です。

その映像では、サリーはマーベラスが右手で掴んで引っ張ったペンダントを「ウキッ!」と鳴いて引っ張り返して、
自分の腹のハッチを開いてその中に電子音を発して明滅するペンダントの飾り部分をしまい込んで、
素早くハッチを閉めたのです。
マーベラスはそれを目の前で見て驚き、一瞬「あぁ!?」とサリーの顔を見ます。
するとサリーはマーベラスを見つめ返して「ウキッ!」と鳴きながら大きく頷き、
その直後、爆発が起きて、体内で爆発が起きたサリーはバラバラになって即死、
一方のマーベラスはサリーの身体がクッションになって軽減された爆風に吹っ飛ばされて地面に叩きつけられ、
気を失いました。

その結果、マーベラスは爆風やサリーの破片によっておびただしい怪我を負い、
一時全身がショック状態となりましたが、命に別状は無く、こうして次第に回復してきているのです。
そして、ペンダントを引きちぎろうとしてマーベラスの右手が強く掴んでいたペンダントの
鎖についていた端っこの方の小さな飾りが、
爆発の瞬間、拳を握りしめたまま吹っ飛ぶマーベラスによって引きちぎられて、
マーベラスの右手の拳の中に握り込まれて遺されたのです。

マーベラスもよほど強い意思でペンダントを引っ張ろうとしていたのでしょう。
それゆえ、その拳はマーベラスが気を失った後も、
その後の意識が回復して手当てを受け、森の中から教会まで運ばれている間も、その後も、
感覚が痺れていたにもかかわらず、ずっと固く握りしめられたままだったのです。
その右手に握っていた飾りを見つけて、
マーベラスは爆発のショックで一時喪失していた、サリーの最期の瞬間の記憶を想い出すことになったのでした。

右手の掌の上に乗った銀色の飾りを見つめながら、
マーベラスは「・・・俺はあいつにも助けられたってことか・・・!」と悔しそうに呟くと、
右手で飾りをぎゅっと握りしめます。

サリーは確かにマーベラスに引っ張られたペンダントを引っ張り返していましたが、
それは反射的な行動なのではなく、
素早くハッチを開けてペンダントを入れてからハッチを閉め直していることから考えて、
明らかに意図的な行動でした。

サリーはバスコが起爆装置のスイッチを押して電子音が鳴った瞬間、
ペンダントが爆弾だということは気付いていたのです。
つまりマーベラスと同時にそれが爆弾だと気付いていたことになります。
そして、マーベラスが逃げずに自分を助けようとしてペンダントを引っ張ろうとするのを見て、
サリーは逆にマーベラスを助けるために、自分の腹の中に爆弾を仕舞い込んだのです。

そのサリーの自己犠牲によってマーベラスは生き残ることが出来た。
つまりマーベラスはサリーの命と引き換えに助かったのです。
しかしマーベラスはサリーを助けようとしていたのです。
それなのにサリーを助けることは出来ず、サリーを犠牲にして、自分だけ逆にサリーに助けられてしまった。
そしてバスコはマーベラスこそ仕留められなかったものの、
仲間のサリーを切り捨てて殺すことに成功した。

マーベラスは、結局自分は仲間を見殺しにして、仲間を犠牲にして生きているだけであり、
今、ジョー達だけを戦わせて見殺しにしようとしていることと同じことだと思いました。
サリーに感謝はしているが、サリーの死は自分に何も力は与えてくれそうもありませんでした。
仲間の死は自分にとっては、ただただ悲しく虚しいだけでした。
実際、サリーの最期を想い出しても、自分は立ち上がる力すら湧いてこない。
自分は肝心な時に仲間を守れず、仲間を犠牲にして守られてばかりなのだと、改めて思い知らされただけです。
こんな自分だから、ジョー達のピンチにも、こうして立ち上がることすら出来ないのだと、
一層落ち込んでしまいます。

一方、バスコはサリーという仲間を切り捨てて殺したことによって、
その犠牲をますます自分の力として、強くなっていくのだろうとマーベラスは思いました。
仲間を切り捨てて強くなるバスコと、弱くなる自分と、
その明確な差が現在の立場の明暗を分けている。
そのように思ってマーベラスは身体を支える力を無くし、
溜息をついて身体を反転させて力無く長椅子にもたれて床に座り込んでしまいました。

そうすると、マーベラスは祭壇跡に立つ白い聖母マリア像をちょうど正面から見上げるような形となりました。
もちろん宇宙海賊のマーベラスはクリスマスも知らなかったぐらいですから、聖母マリアなど知りません。
単なる廃墟の中に立つ、赤ん坊を抱いた母親の像としか、マーベラスの目には映りません。
ステンドグラスから射し込んでくる光がその像を包んで、
更にその光は伸びてきて床に座り込んだマーベラスも包み込んでいます。
廃墟の中に射す同じ光に包まれた、その不思議な母親の像をじっと見つめながら、
マーベラスはその像から射す光が廃墟や自分を照らしているように思えました。

そうして何となくその像を見つめながら、
マーベラスはふと、サリーは本当にバスコによって犠牲になったのだろうかと思いました。
サリーはバスコに捨てられて惨めに悲しい想いで死んでいったのか?
いや、そんな風には見えなかった。
サリーは納得して自らハッチに爆弾を押し込んで死を受け入れたのです。
それはバスコの思惑の外ではなかっただろうか。

サリーが自分の死を自ら選び取ったのだとしたら、
サリーの命はバスコに奪われたのではなく、サリー自身に奪われたのです。
サリーはバスコに捨てられて死んだのではなく、最後はサリー自身がサリーを捨てて殺したのです。
ならば、仲間を捨てて、その仲間の夢をも自分の力としてしまうバスコも、
バスコに捨てられることを拒んで自らを捨てたサリーの夢の力を我が物にすることは出来なかったはずです。

ならば、サリーはバスコに対する最後の意地を見せるために、腹の中に爆弾を自ら突っ込んだのか?
いや、そんな意地を張って、バスコへのあてつけのようにして死んでも、
それではバスコに呪縛されて死んだのと同じであり、バスコに殺されたという事実は変わらないでしょう。
そうではなく、最期の瞬間、マーベラスに対して大きく頷いたサリーは、
単にバスコへの意地を貫いたのではなく、もっと満足し安らかであったように見えました。

あの時、サリーは自分に何を言ったのだろうかと考えたマーベラスは、
サリーの最期の瞬間の迷いの無い態度が、ある人物の最期の姿に似ていることに気付いたのでした。
その人物とはアカレッドでした。
アカレッドもバスコに裏切られて、マーベラスを守るために自らザンギャック軍の中に突っ込んで死にました。
アカレッドもバスコに捨てられて惨めに死んだのではなく、最後は自らを捨ててみせたのです。

そしてアカレッドも決してバスコへの意地やあてつけで自ら死んでみせたのではない。
アカレッドはサリーとは違い、ちゃんと最期の言葉を遺していますが、
そこにはバスコのことなど一切触れられていない。
バスコなど相手にしてはいないのです。
アカレッドはマーベラスに「俺の分まで生きろ。そして宇宙最大の宝を必ず手に入れろ」と言ったのです。

つまり、アカレッドは自分を捨てて、マーベラスに夢を託したのです。
だから堂々と死んだのであり、決してバスコに捨てられて死んだのではなく、
アカレッドの夢を掴もうとする力はバスコなどには奪われていない。
マーベラスに受け継がれたのです。
だからアカレッドは満足して死んでいった。

ならばサリーも同じなのではないかとマーベラスは思いました。
サリーはあの最期の瞬間、自分を捨てて守ったマーベラスに夢を託して満足して死んだのではないでしょうか。
夢を託すという意思を示すためにマーベラスに向かって大きく頷いて死んでいったのではないでしょうか。

この場合の「夢」というのは「宇宙最大のお宝」のことではない。
いや、「宇宙最大のお宝」はその象徴に過ぎない。
アカレッドがマーベラスに託した「宇宙最大のお宝」も象徴として言っているだけです。
何故なら、もともとアカレッドがマーベラスを赤き海賊団に誘った時に問うた
「宇宙最大のお宝を信じるかどうか」という問いかけは、
つまりは苦しみの中に希望を見出すことが出来るかどうかという意味であったからです。

それが出来る者だけが「宇宙最大のお宝」を掴む仲間になれるということであり、
アカレッドが最後にマーベラスに託した夢というのは、
そうした生き方を貫いて自分の宝物を手に入れろという意味でした。
そういう生き方を託したのです。

サリーもまた、苦しみの中に希望を見出す生き方をマーベラス達に示され、
サリー自身がその生き方に共鳴したから、マーベラス達もサリーを仲間として迎え入れた。
その瞬間、サリーはバスコの仕掛けた爆弾で自分とマーベラスが共に殺されかけたので、
自分を捨ててマーベラスを生かし、マーベラスに自分の夢、
すなわち、苦しみの中に希望を見出して宝物を掴む生き方を託したのです。

こうしたアカレッドやサリーの自己犠牲的な行為は、
バスコによる仲間を裏切り切り捨てるという行為の意味合いを最後の瞬間に全く意味の違うものに変えてしまい、
アカレッドやサリーの夢はバスコに奪われず、マーベラスに引き継がれた。

実際、その都度、事態はバスコの思い通りになってはいない。
アカレッドが最後に自分を捨てたことによって、バスコはあの時、
レンジャーキーもガレオンもナビィも奪うことは出来なかった。
サリーが最後に自分を捨てたことによって、バスコはマーベラスの命を奪えなかった。
全て、バスコの夢を掴もうとする行動原理からすれば、挫折です。

なぜ、大事な仲間を捨てることで夢を掴むことすらやってのけるほど
強固な「夢を掴む意思」を持ったバスコがアカレッドやサリーには挫折させられてしまったのか?
それはアカレッドやサリーの「夢を掴む意思」がバスコの上を行ったからに他ならない。
単純にアカレッドやサリーの方がバスコよりも力が強かったというだけのことです。
それは、アカレッドやサリーがバスコよりも、もっと大事なものを捨てて夢を掴むことが出来る、
バスコよりももっと強固な「夢を掴む意思」を持っていたからです。

もっと大事なものとは、自分自身です。
アカレッドやサリーは自分を捨てて夢を掴むことが出来るが、
バスコは仲間は捨てることは出来ても自分は捨てることは出来ない。
この世で一番大事なものは、やはり何といっても自分自身です。
それをバスコは決して捨てることは出来ない。
自分を捨てて夢を掴んでも、自分がいなければ夢を手に取ることは出来ないからです。
だから、夢を掴むことに執着しているバスコには、どうしても自分自身だけは捨てることは出来ない。

その一番大事で重い、自分自身というものを捨てることが出来るアカレッドやサリーは
真に究極の「捨てる」者であり、真に究極の海賊です。
その真に究極の海賊が、究極の海賊に過ぎないバスコに勝つのは当たり前といえます。
というか、自分を捨てる者しか、仲間を捨てるバスコに勝つことは出来ないといえます。

しかし、アカレッドやサリーだって、
自分自身を捨てれば夢を掴むことは出来ないではないかと思われるかもしれません。
しかし大丈夫なのです。
夢を同じくする仲間がいれば、自分を捨てて掴んだ夢を託すことが出来るので、夢は掴むことが出来るのです。
だからアカレッドやサリーは堂々と自分を捨ててバスコに挑み、
夢を託すことの出来る仲間がいないので自分を捨てることの出来ないバスコを凌駕して、
夢を仲間であるマーベラスに託すことが出来たのです。

そうしたサリーの死の本当の意味に気付いたマーベラスは、
そこに自分がバスコに勝利する唯一の道を見出したのでした。
それは自分を捨てることでした。
仲間を捨てて夢を掴むバスコの強大な夢を掴む力に打ち勝つには、
自分を捨てて夢を掴む戦い方をするしかない。

そしてマーベラスは自分はそれを出来るはずだと気付いていました。
何故なら、マーベラスはさっきのサリーの爆死の寸前、逃げることは出来たはずなのに、
サリーの爆弾ペンダントを自ら掴みに行ったからです。
マーベラスという男は仲間のために自分を捨てることが出来る男なのです。

それはアカレッドの行動の影響を受けた結果であり、
そしてマーベラスのその行為がサリーの行動を誘発したのです。
ならば、アカレッドに影響を受け、サリーに影響を与えたマーベラスならば、
アカレッドやサリーのやったことも出来るはずです。

そして、これが最重要ポイントだが、
マーベラスには、同じ夢を掴むために集まった仲間たちがいる。
マーベラスは自分を捨てて掴んだ夢を託すべき仲間がいるのです。
だから、マーベラスは自分を捨てても夢は掴むことは出来ます。
マーベラスは仲間を捨てて夢を掴むようなことは出来ないが、自分を捨てて夢を掴むことが出来る。
そして、自分を捨てて夢を掴む力こそが最強の「夢を掴む力」なのであり、真の海賊の力なのであり、
バスコの仲間を捨てて夢を掴む究極のエゴイストの「夢を掴む力」を打ち破る唯一の力なのです。

そのことに気付いたマーベラスは、じっと目の前に立つマリア像から廃墟に降り注ぐ光を見つめながら、
相討ち覚悟で自分を捨ててバスコと戦い、仲間に夢を託すことによって、みんなの夢を掴むという、
絶望からの一筋の勝利への光明を見出していったのでした。

しかし、この場面、廃墟の教会に射し込む光が絶望的状況からの逆転、
苦しみの中に見出す希望を象徴するのは分かるとして、
どうしてその希望の光が聖母マリア像から発しているかのように描写する必要があるのか?
それは何らかの象徴であるはずです。

教会だからマリア像を小道具として使っただけという理屈ではないでしょう。
教会だからといってマリア像を映す必要は無いし、
おそらくこの場面はマリア像を使うために、わざわざ廃墟を教会という場所に設定したはずです。
マリア像を使う意図が無く、単に廃墟でいいのなら、この場所は教会ではなかったはずです。
つまり、このマリア像が今回のエピソードの最重要要素ということになります。

ただ、マリア像だからといって、ここでキリスト教の厳密な教義の話などしてもあまり意味は無いでしょう。
制作者の意図はそんなところには無いであろうし、
そもそもこの場面でこの光の意味を受け取るキャラであるマーベラスが
キリスト教のことなど何も知らないのですから。

だから小難しい宗教的な話は抜きにして、
聖母マリア像をキリスト教に無知な宇宙人のマーベラスが見たそのままの印象で、
それが何の象徴であるのか考えればいいのです。
そうした見方で観れば、マリア像とは単に赤子を慈しむ母親の像です。
ならば、その象徴するものは「慈愛」でしょう。

「慈愛」というと、一般的には「慈しみ可愛がる深い愛情」というような意味とされますが、
ここで母親が赤子を抱く像の特に意味するものとしては、母から子への深い愛情ということになり、
それは結局、「見返りを求めない無私の愛」というものを象徴するのではなかろうかと思います。
つまり「私」が無い愛、自分を捨てても平気で我が子を守る母の愛です。

マーベラスは赤子を慈しむ母親の像が廃墟の中で光に包まれているのを見て、
母親の無私の愛と同じものをサリーやアカレッドの無私の行動、自分を捨てる行動に見出し、
それが絶望的状況をひっくり返す唯一の希望の光だと感じたのです。

母親はどうして赤子を守るために自分の命は捨ててもいいとさえ思えるのか?
それは赤子は母親が産んだものであり、母親自身の血肉であり、母親の分身だからです。
だから母親から見れば、赤子さえ生きていれば、自分は死んでも赤子の中で生きているのだから、
厳密には自分は死なないのです。

簡単に言えば「自己同一化」ということでしょう。
母親にとっては自分と赤子は同じなのです。
だから母親は赤子のために自分を捨てることが出来る。

これがマーベラスから見れば、自分に夢を託して自らを捨てて死んだサリーやアカレッドと重なって見え、
そのサリーやアカレッドがバスコの思惑を超えた存在であったことから、
自分を捨てる無私の行動が究極のエゴイストであるバスコに勝利する突破口と感じられたのです。

母親は最もそうした傾向がよく見られる存在なので、ここではマリア像という形で象徴的に使われていますが、
この母親から赤子に向けられる無私の愛と似た形の愛は、他にも様々な局面で見られます。
つまりは、自分と同じだと思える相手に自分の志を託して、
自分は身を捨ててその相手を生かすという形の愛情であり、
家族関係や血縁関係のある場合はよく見られる現象ですが、
別に血縁関係は無くても夢や志を同じくする仲間の間でも見られる現象です。

だから、同じ夢を掴むために集まったマーベラス一味に適用されるのも当然であり、
この無私の愛は、全ての愛の中で最も強く根源的な愛なので、
これがあらゆる絶望的状況を跳ね返して希望を生み出す突破口となるのも当然といえます。

ただ、この無私の愛のもう1つ特徴的なことは、
この愛は本当に誰かに夢や志を託して死ぬということが有り得る愛であるだけに、
詰まるところ、これは親子や一族、先祖から子孫というような、
世代から世代に受け継がれる連綿とした愛情でもあるということです。

子供のために自分の身を捨てて死んだ母親の志は、その子供に受け継がれるのであり、
無私の愛を示して身を捨てて死んだ人の夢や志は消えることはなく、
その魂を継いで生きている者に受け継がれていく。

しっかり魂が引き継がれていくならば、
父の夢は息子に受け継がれ、先祖の志は子孫に受け継がれ、創業者の精神は後継者に引き継がれていく。
死んだ人はいなくなったわけではなく、無価値なわけでもなく、
そうやって死んだ人は生きている人の中で生き続けていく。
この世界はそうやって成り立っているのであり、そこにこそ絶望から立ち上がる希望が見出される。
今回はエピソードはそういうことを言いたいのではないかと思います。

そして、この「海賊戦隊ゴーカイジャー」という作品において同じ精神を共有した者同士といえば、
マーベラス一味の仲間同士も確かにそうなのですが、
もう1つ、34のスーパー戦隊とゴーカイジャーの間の関係もそれに当てはまります。

それゆえ、この物語は、
レンジャーキーを取り戻せば再び戦うことが出来るはずの34のスーパー戦隊の戦士たちが、
マーベラスたちゴーカイジャーに自分と同じ夢や志を認めて、
あえて自分を捨てて(変身能力を捨てて)、
その夢や志を(レンジャーキーや大いなる力と共に)ゴーカイジャーに託してきたことが、
来るべきザンギャックの大侵攻という絶望的状況からの逆転勝利の希望に繋がるという
物語構造になっているのです。

そうやって、スーパー戦隊シリーズ35作品分の歴史、世代を超えて、
戦士の夢や志は受け継がれていく。
この物語はそういうことを描く物語なのだということを、
この場面の、廃墟の中で光に包まれるマリア像は象徴しているのではないかと思えてくるのです。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 20:05 | Comment(3) | 第48話「宿命の対決」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月04日

第48話「宿命の対決」感想その6

さて、ゴーカイガレオンの居住区、バスコの1人待つ船室には、
無言のゴーカイレッド召喚体が「離せ〜!」と喚いてもがくナビィを鷲掴みにして連行してきました。
先ほどコクピットでゴーカイレッド召喚体に発見されてしまったナビィは、
多少は逃げ回ったのかもしれませんが、結局は捕まってしまったようです。

バスコはそれを出迎えて「よぉ〜し!よくやった!」と喜んでゴーカイレッド召喚体を褒め、
「ナビィちゃん!追いかけっこは楽しかった?」と、ナビィを覗き込んで意地悪く質問してきます。
ナビィが普段慣れ親しんでいるゴーカイジャーに追いかけられて乱暴に扱われることに、
普通の追手に捕まる以上に恐怖感や嫌悪感を抱くであろうことが分かった上で、なぶっているのです。

バスコはナビィのことを「ちゃん」付けなどして馴れ馴れしく呼んでおり、
一応昔馴染でもあるので、そんなに悪意が無いかのようにも見えていましたが、
実際のところはバスコにとっては所詮はナビィもかつて裏切って捨てた赤き海賊団の仲間に過ぎず、
酷薄な感情しか抱いていないようです。

まぁバスコはマーベラスのことも「マベちゃん」呼ばわりであったり、
ダマラスのことも「ダマラスのおっさん」と呼んだりしていますから、
決して親近感を抱いていない相手にも馴れ馴れしい呼び方をするクセがあるようです。
むしろ馴れ馴れしく呼ぶのは、相手をナメて見下しているということの表れなのでしょう。

ナビィはバスコのあまりの厭味ったらしい意地悪さにさすがにキレたようで、
「んなわけないだろ!いくら捕まったって何回でも逃げてやるぅ!」と怒鳴り返します。
一旦逃げ回って散々酷い目にあって連れ戻され、ナビィも遂に開き直ったのです。

結局、待ちわびたマーベラス達の救援は間に合わず、捕らわれてしまった。
怒ったバスコは自分に酷い仕打ちをしてくるに違いないとナビィは覚悟していました。
しかしナビィも戦闘力の無いナビゲートロボとはいえ、れっきとした海賊団の一員の誇りがあります。
暴力に簡単に屈するつもりはありませんでした。
バスコが獰猛な本性を剥き出しにしてくるなら、むしろ、より強気に対抗してやろうと心に決めていました。
そのせいでバスコに殺されても構わない。
いや、むしろバスコに殺されるまで徹底的に抵抗してやろうと、ナビィは腹を括っていました。

しかしバスコはゴーカイレッド召喚体から乱暴にナビィを掴み取り、
ナビィの足を掴んで逆さ吊りにして持ち上げて、
「そんなわけにはいかないよ!!ナビィちゃんには大事な、大事な役目があるからねぇ!」と
ナビィに向かって嫌らしく言います。

バスコはナビィを殺すわけにはいかないようです。
もちろん、その大事な役目が終わるまでは、という限定条件付きのことなのでしょう。
大事な役目とやらが終われば、サリーを殺したように容赦なくナビィのことも殺すのでしょう。

そうした嫌らしい殺意を匂わせるバスコでしたが、
ナビィはそれよりも、バスコの言う自分の「大事な役割」というやつが気になるらしく、
逆さ吊りのまま「役割〜・・・!?」と不思議そうに問い返します。

それはここまでの話の流れから推測すると、
バスコが「宇宙最大のお宝」を手に入れるための手順の中で
ナビィを何らかの形で使うということを指していると思われますが、
奇妙なことにナビィ自身は自分に「宇宙最大のお宝」を手に入れる作業の中で
何らかの役割が割り当てられているという自覚は無いようです。

そこに下層階の方から他の5人のゴーカイジャーの召喚体も戻ってきて、無言で船室に入って来て整列しますが、
バスコはそれには構わず、ナビィに向かって得意げに
「何のエネルギーの供給も無く動き続ける永久機関・・・宇宙の物理法則を無視したイレギュラーな存在・・・!」
と何やら小難しい説明をし、
次いで「ナビィちゃん!君が宇宙最大のお宝への・・・扉なんだよ!」と言ったので、
ナビィは「なんですとぉ〜!?」と驚愕します。

バスコはナビィに関する秘められた真実をナビィに告げたわけですが、
ナビィ自身はそのことは全く知らなかったようです。
おそらくバスコはアカレッドの周辺に探りを入れてその情報を知ったようですから、
アカレッドはナビィの秘密は知っていたようです。
となると、アカレッドはナビィの秘密を知りながら、
そのことをナビィ自身には教えていなかったということになります。

確かにそれは「宇宙最大のお宝」に関する重大な秘密であり、
ナビィが口が軽そうなキャラですから、教えていない方が安全策であるとは思いますが、
どうもやはりアカレッドは仲間に対して秘密が多すぎるキャラのように思えます。

結局のところ、アカレッドのこうした一連の秘密主義の意味するところは、
「宇宙最大のお宝」を手に入れるのは、あくまで自分だという意思のように思えてきます。
確かに一連の秘密主義は、アカレッドが「宇宙最大のお宝」探しに常に関わっているのならば、
何ら問題はありません。
しかし、逆に言えば、アカレッドがいなければ「宇宙最大のお宝探し」は出来ないようになっているとも言えます。

バスコがアカレッドから色々と情報を探り出していたから現在のような状況になっていますが、
もしアカレッドの思惑通りに物事が進んでいたとするなら、
「宇宙最大のお宝」を手に入れるまでの作業には
常にアカレッドが立ち会っていなければ進まない状態になっていたはずです。
つまり、アカレッドが秘密主義であった理由は、
常に「宇宙最大のお宝」探しに自分が立ち会うためであったとも言えます。

どうしてアカレッドはそんな意図を持っていたのか?
単にお宝が欲しかったからなのか、それとも別の意図があったのか、
ちょっと現時点ではよく分かりません。

それよりここで問題は、バスコが喋ったナビィの秘密の内容です。
なんでもナビィは「宇宙最大のお宝」への「扉」だそうです。
そういえば前回の冒頭ナレーションでも「宇宙最大のお宝への扉が開く」という、
ちょっと気になる表現がありましたが、
ここでも「扉」という言葉が出てきて、やはり「宇宙最大のお宝」は「扉」の向こうに存在するようです。

そして、その扉はナビィなのだとバスコは言うのです。
オウム型の小型ロボットのナビィが「扉」とは奇ッ怪な話ですが、
ナビィのボディに付いている扉を開くと、お茶菓子のようにお宝がしまってあるというような
単純な話ではないようです。

何故なら、ナビィが「扉」である由縁が、ナビィが「永久機関」であるからなのだそうだからです。
それにしても「永久機関」とは、この最終盤に来て、いきなりトンデモない設定が飛び出してきました。
「永久機関」とは、バスコも言っているように「何のエネルギーの供給も無く動き続ける」機関であり、
昔から夢の装置として科学者が作ろうとしてきた代物です。

そういえば第8話でスニークブラザースのエルダーがガレオンに潜入した際に、
マーベラス達がナビィの電池を交換したことがあるかどうかとか、
ナビィの動力源は電池じゃなかったのかなどと、実にくだらない遣り取りをして
エルダーをイライラさせていましたが、
あの物語序盤のバカバカしいギャグ回の実にどうでもいい会話が、
この最終盤の重大な秘密の伏線だったとは、実に恐るべきロングパスです。

つまり、マーベラス達は確かにあの時言っていたようにナビィの電池を入れ替えたことなど無く、
そもそもナビィの動力源は電池などではなく、
永久機関なのだから一切のエネルギーの外部からの供給は必要無いので、
マーベラス達はナビィのエネルギー補充はしたことがなく、
それゆえナビィの動力源が分からなかったのです。
ロボットであるのに一度もエネルギー補充をしたことがないという不可解な現実を、
長々と一緒に旅をしてきたマーベラス達が第8話段階で初めて気付くというのも、
まぁアバウトなマーベラス一味らしいといえばらしい。

ただ、この「永久機関」ですが、
現在においては、エネルギー保存の法則やエントロピー増大の原理に矛盾するため、
現実には作ることは出来ないとされています。
もちろん、それは現実世界の話であって、物語世界の中ではその技術が確立されていることが前提で
世界観が構築されている場合は多々あります。

しかし、ここでバスコがその「永久機関」のことを
「宇宙の物理法則を無視したイレギュラーな存在」と形容していることから考えて、
この「海賊戦隊ゴーカイジャー」の物語世界においても
「永久機関」は現実世界と同じような扱いで、
エネルギー保存の法則やエントロピー増大の原理に矛盾するため、
現実には作ることは出来ないものと見なされているようです。

そして、そうした現実がありながら、
その中で「永久機関」として存在するナビィはイレギュラーな存在、つまり例外的存在なのだそうです。
例外というか、本来は有り得ない存在と言っていいでしょう。
しかもここでバスコが単なる「物理法則を無視した」ではなく、
わざわざ「宇宙の物理法則を無視した」と言っているところからして、
ナビィは宇宙の中でも唯一と言っていい特異点のような存在だと思われます。

物語の最終盤になって、こんな難しそうな設定が出てくるというのは考察する方としては困りもので、
このまま放置しておいても、おそらく次回エピソードあたりで
このナビィの謎については解明や説明がなされるのであろうことが予想されるので、
このまま無視して素通りするのが賢いのでしょうけれど、
やはりせっかくですので、次回すぐに色々と訂正する羽目になることは覚悟の上で、
ちょっと考えてみたいと思います。

一応、ここでは話の趣旨としては、
ナビィが現実には有り得ない特異点であるゆえに、一種の非現実的な世界への「扉」となるのであり、
その特異空間に「宇宙最大のお宝」が存在するということなのでしょう。
そして、「扉」には「鍵」が付き物であり、
普段は閉じられて入ることの出来ない「扉」は「鍵」によって開けるものです。
そのナビィという普段は「扉」には見えない物を「扉」にして、その「扉」を開いて
「宇宙最大のお宝」の存在する特異な空間への道を開く「鍵」が、
34の「大いなる力」を宿した192個のレンジャーキーなのでしょう。

だから、さっきバスコは、まず5戦隊の「大いなる力」をレンジャーキーに入れて、
34の大いなる力を宿した192個のレンジャーキーを揃えた状態を作った上で、
ナビィに何かをしようとしたのです。

おそらく192個のレンジャーキーを使って34の大いなる力をナビィに注ぐと、
ナビィという「扉」が開き、その先に「宇宙最大のお宝」が存在するという流れなのでしょうけれど、
その場合、バスコがもう1つ執拗に欲しがっていたゴーカイガレオンの使途がよく分かりません。

扉を開いた後、「宇宙最大のお宝」のある場所に行くためにゴーカイガレオンが必要なのか、
それとも「宇宙最大のお宝」を手に入れた後、それを使用するためにゴーカイガレオンが必要なのか、
あるいは全然別の意味があるのか、ちょっとよく分かりませんが、
とにかくバスコは「宇宙最大のお宝」を手に入れることしか興味は無く、
手に入れた後のことには興味は無く、そして手に入れる手順だけはしっかり把握しているようですから、
ガレオンも「宇宙最大のお宝」を手に入れるまでの手順の中で役割はあるはずです。
しかしガレオンの役割についてここまで特に言及が無いということは、
もしかしたら、この一連の作業をガレオンの船室でやっていること自体に意味があるのかもしれません。

宝箱は何処にでも持っていけるし、ナビィも何処にでも連れていくことは出来るはずです。
だからバスコはフリージョーカーでこの作業をやってもよいはずなのです。
ところがガレオンでやっており、しかもバスコはこの船室から動こうとはしていない。
となると、ナビィという「扉」はガレオンの船室において34の「大いなる力」を注入しなければ
開かない仕様になっているのかもしれません。

しかし、となると、ナビィというのは一体何なのでしょう?

レンジャーキーや「大いなる力」の成り立ちは地球のスーパー戦隊由来の代物として理解は出来ます。
その34のスーパー戦隊の「大いなる力」という特異な性格を有した巨大エネルギーは
ナビィという「扉」を開く鍵となり得るのであって、
ナビィやその向こうにある「宇宙最大のお宝」とは実は異質な存在と言っていいでしょう。

何故なら、スーパー戦隊の「大いなる力」は確かに希少な存在ではありますが、
「宇宙の物理法則を無視したイレギュラーな存在」ではないからです。
ということは、ナビィや「宇宙最大のお宝」は本来、スーパー戦隊とは関係ない
「宇宙の物理法則を無視したイレギュラーな存在」に連なる存在であり、
地球にあるスーパー戦隊の「大いなる力」が何らかの理由によって、
その扉を開くだけのきっかけを与えることが出来ると見なされただけなのかもしれません。

となると、ナビィや「宇宙最大のお宝」は地球やスーパー戦隊とは関係無く、
全く別に遥か昔から宇宙の何処かに存在していた可能性もあります。
少なくとも、バスコの言葉を素直に受け取るならば、
ナビィはアカレッドが作ったものではないと思えます。
「宇宙の物理法則を無視したイレギュラーな存在」である永久機関をアカレッドが自作出来たとは
到底思えないからです。

ただ、そのナビィの「扉」の開く条件に関係しているのであろうガレオンに関しては
アカレッドが作った可能性はあります。
それはもしかしたら「大いなる力」に近い特性を持った物体なのかもしれません。
実際、ガレオンは「大いなる力」に対応していますので、その可能性は十分あります。

このように謎めいた存在であるナビィですが、
どうにも気になるのはナビィが「永久機関」であるという点です。
それも、「永久機関」が本来は物理学的には宇宙に存在しないとされている世界観の中で存在する
「永久機関」であるという点が問題です。

ここであえて発想を飛躍させることにしますが、
私たちはこうした現実世界に近い世界観の中に突然、それまでは物理学的に有り得ないとされた
「永久機関」が出現した超有名な物語世界を1つ知っています。
それは「宇宙戦艦ヤマト」です。
そして、その永久機関の名は「波動エンジン」と言います。

あまりに有名な「波動エンジン」ですが、
これは原作者の1人である松本零士氏が考案した仮説を
九州大学の理学部教授に仮説としては存在し得るという承諾を得て、
それを基に作り上げた劇中小道具ですので、
「ヤマト」劇中だけでなく、それなりに汎用性のある設定といえます。

この「波動エンジン」は宇宙エネルギーを圧縮して超光速タキオン粒子に変換して動力とするエンジンであり、
その性能面は細かな設定があるが、それはこの際あまり関係無く、
これが「永久機関」である由縁は、この動力源となっている「宇宙エネルギー」というものが
宇宙に無限に存在し、エネルギー保存法則やエントロピー増大原理などの制約を受けない存在であるからです。

この「宇宙エネルギー」というものは現実世界の宇宙論の分野では
「ダークエネルギー」として現在研究対象となっており、
宇宙のエネルギーの半分を構成する謎の宇宙膨張のエネルギーです。

ちなみに現在「ゴーカイジャー」の相方としてスーパーヒーロータイムを構成している
8時からの仮面ライダーシリーズ「仮面ライダーフォーゼ」は、
このダークエネルギー、「宇宙に無限に存在するコズミックエナジー」をテーマにした物語です。

つまり、このダークエネルギーの謎を解明して使いこなすことを可能とすれば、
永久機関は実現する可能性はあるのです。
しかし、この「ゴーカイジャー」の物語世界は現実世界同様、
ダークエネルギーの謎は解明されていないようです。

その世界に、宇宙でただ1つ、ダークエネルギーで動くイレギュラーな永久機関として
ナビィが存在しているのかもしれません。

ただ、ナビィの普段の様子を見ていると、
その凄さは電池交換の必要が無く、曖昧な占いをするという程度のものでしかなく、
宇宙で唯一のイレギュラーな永久機関としての本領が発揮されているようには思えません。
だから、おそらくナビィという永久機関は今まではフルパワーでは動いていないのでしょう。

そのナビィという永久機関をフルパワーで動かすと「扉」が開き、
その向こうに「宇宙最大のお宝」が現れるのかもしれません。
「ヤマト」の世界でも波動エンジンを最初に稼働させるためには波動エネルギー(宇宙エネルギー)とは別の
膨大な補助エネルギーを必要としています。
34のスーパー戦隊の「大いなる力」は、この補助エネルギーに相当するのかもしれません。
34の大いなる力を注入することでナビィという永久機関はフルパワーで動き出し、
そのダークエネルギーが「扉」を開いて「宇宙最大のお宝」をその向こうに出現させるのかもしれません。

ただ1つ気になるのは、この永久機関の動力源がダークエネルギーだとした場合、
ダークエネルギーは宇宙膨張のエネルギーですから、その根源にはビッグバンがあります。
つまりダークエネルギーはビッグバンのエネルギーである可能性がある。
ビッグバンとは、つまり宇宙創成です。
もしダークエネルギーが開いた扉の向こうにある「宇宙最大のお宝」が
ダークエネルギーに関係のある物体であったとするなら、
それは宇宙を創成する力を持っているのかもしれない。

そうだとするなら「宇宙の全てと同じ価値がある」という伝説と合致すると言うことも出来ます。
また、この「ゴーカイジャー」のOPテーマ曲の
「頑張る気味のがむしゃらが今、この世界を変えるぜ」という歌詞にも掛かってくるようにも思えてきます。

以上、バスコの言葉をもとにして色々と考察してみましたが、
次回また色々と修正しなければいけない羽目になりそうです。
ただ、劇中のバスコ当人の方は、単にアカレッドのメモ書きか何かから知った知識を
そのまま言っているだけのことで、
彼が興味があるのは、単にナビィに全てのレンジャーキーで全ての大いなる力を注入すれば
「宇宙最大のお宝」に繋がる扉が開くということだけであり、
そうして「宇宙最大のお宝」を手に入れることだけでした。
その手に入れた「宇宙最大のお宝」の用途などにも興味は無いのです。
だから別に色々とややこしいことなど考えてはいません。

とにかくナビィが戻ってきた以上、さっさとこの船室で作業を続けようと思い、
バスコはナビィを逆さ吊りに掴んで掲げながら、
黙って整列しているゴーカイジャー召喚体に向かって
「お前ら、もういいよ!宝箱に戻りな!」と無造作に命令しました。

ところが、召喚体のうちの、ゴーカイレッドを除く5人は
いきなりゴーカイガンやゴーカイスピアを取出して構えます。
バスコの顔がさっと引きつり「・・・お前ら、まさか!?」と言った瞬間、
5人の召喚体は黙ったままバスコに向けて発砲、
バスコは慌ててナビィを放り出し、
「チイッ!」と舌打ちしてメインコンピュータの操作台の陰に飛び込み、難を逃れます。

一方、バスコに放り出されて「わあああ!?」と床に落っこちたナビィは、
いきなり召喚体がバスコに反逆するという、全く予期せぬ事態に「なに!?・・・なになに!?」と大いに戸惑います。
すると、喋れないはずのゴーカイイエロー召喚体がナビィに向けて
「ごめんナビィ!あたし達は本物よ!」といきなり声を発しました。
しかもその声はルカの声であったので、ナビィは「ええええ!?」と、またもや驚きます。

実はこのバスコにいきなり発砲したゴーカイブルー、ゴーカイイエロー、ゴーカイグリーン、
ゴーカイピンク、ゴーカイシルバーの5人は召喚体ではなく、
ガレオンの下層階で遭遇した召喚体との戦いの末、召喚体を倒してレンジャーキーに戻し、
そのレンジャーキーを拾ってモバイレーツやゴーカイセルラーに挿して、
ジョー、ルカ、ハカセ、アイム、鎧の5人が変身したオリジナル戦士のゴーカイジャーだったのです。

「海賊版の海賊なんかに、本当の海賊が負けるわけありません!」とアイムは言い放ちます。
なんだかややこしい言い回しですが、
要するに生身とはいえ本家の戦士が自分の劣化コピーの召喚戦士などに負けるわけがないということです。
それだけ生身で戦える戦士として鍛えてきた自負があるのです。

こうして5人が本物だと知って「みんな〜!さっすがぁ〜!!」とナビィは大喜びです。
自分の通信を受けて助けに来てくれたので安堵したというのもあり、
また、召喚戦士を生身で倒した見事な戦いっぷりを褒め称えているのです。
だが、それよりも更に素晴らしいのは、
彼ら5人は変身すればオリジナル戦士ですから当然、外見上は召喚体とそっくりであり、
黙っていれば全く見分けがつかないということを利用して、
召喚体のフリをしてまんまと船室に乗り込んでバスコに不意打ちを食らわした作戦の見事さでした。

しかも、そうして白々しく整列していたお蔭で、
ジョー達5人はバスコの軽率なお喋りから
「ナビィが宇宙最大のお宝への扉となる永久機関である」という
重大な情報を知ることが出来たのでした。

一方、まんまと一杯喰わされた形となったバスコは怪人態に変身して
「・・・まったく!・・・生きてるだけでも驚きだけど・・・」と呆れたように言って立ち上がります。
バスコがジョー達の見事な不意打ちを許してしまったのは、
ゴーカイジャー召喚体がまさかジョー達本人に入れ替わっているなどとは想像だにしていなかったからです。

そもそもバスコはマーベラス達6人はおそらくもう死んだと思っていました。
しかし爆弾で吹っ飛ばしたマーベラスはともかく、
ジョー達のダメージの度合いをしっかり確かめていなかったのは自分のミスであったとバスコも思いました。
しかし、一応それでも念のためにガレオンとモバイレーツの通信を遮断し、
ガレオンを移動させて見つからないように渓谷に隠していたのだから、
まさかジョー達がガレオンに侵入してくるなどとは予想も出来ませんでした。
だからこそ、バスコは平気でゴーカイジャー召喚体を船内に放ったのです。
ジョー達が侵入してくると分かっていたら、そんな不用心なことをするはずがない。

ただ、そうした諸々のバスコの不用心に付け込んだとはいえ、
生身の身体で召喚戦士に打ち勝ってきたのは紛れもなくジョー達5人の実力であり、
これにはバスコも舌を巻きました。

しかし、だからといってそれが一体どうしたのだとバスコは思い、
「ここまで乗り込んでくるとはね!」と言うやいなや、手からビームを発射して5人を拘束します。
結局はこうして変身に成功したところで、5人がかりでも自分には敵わないのは
さっきの戦いで実証済みだというのに、どうして好き好んでまた負けるためにこんな所まで乗り込んできたのか、
バスコは5人の愚かしさに呆れました。

苦しがる5人を睨んで「ホントに・・・何処までも手間かけさせる奴らだ!」と言うと、
バスコは「はっ!!」と手を振って、拘束したビームごと5人を壁を突き破ってガレオンの外に放り出しました。
とにかく、こうしてガレオンに乗り込まれたからには、まずは5人を完全に排除しなければ、
バスコは順調に「宇宙最大のお宝」を手に入れる作業を進めることは出来ない。
かといって、作業場所である船室をこれ以上破壊されるわけにもいかないので、
バスコは5人を外に放り出して、外で倒すことにしたのでした。

それに、バスコはゴーカイジャーのレンジャーキーも「宇宙最大のお宝」を引き出す作業に必要だと思っているので、
ジョー達に奪われた5つのゴーカイジャーのレンジャーキーを奪還するためにも、
必ずジョー達を倒さねばならないと思っています。

「わあああ!!」と吹っ飛んでガレオンの近くの荒野にまで飛ばされてきて
地面に叩きつけられたジョー達5人を追いかけて、
バスコとゴーカイレッド召喚体も、ジョー達の前に降り立ちます。
まずはバスコは「やっちゃいな!」と指をパチンと鳴らして、
ゴーカイレッド召喚体をジョー達に向けてけしかけます。

これに対してジョーの「一気にいくぞ!」という号令で5人は「豪快チェンジ!!」と、
5人のレッド戦士へと多段変身します。
ジョーはデンジレッド、ルカはギンガレッド、ハカセはゴセイレッド、
アイムはマジレッド、鎧はデカレッドに変身しました。

ここは「歴代レッドVSゴーカイレッド」というレッド対決がコンセプトであり、
ジョー達の方はオールレッド戦隊ですが、ここでのレッド戦士のチョイスには特に深い意味は無く、
単にアクションの流れを作りやすいチョイスになっているのでしょう。

勝負自体は最初から見えています。
相手はゴーカイレッドとはいっても所詮は召喚体であり、しかもたった1人です。
それに対してジョー達は正規戦士と同等の力を発揮出来る多段変身のレッド戦士が5人がかりですから、
ジョーの宣言した通り、ここは召喚体など一気にやっつけて、その後のバスコとの戦いこそが本番なのです。

だからバスコはほとんど意味の無い突撃を召喚体に強いて、
無意味に更にもう1個のレンジャーキーをジョー達に差し出しているようなものであり、
こういうところを見てもバスコは確かに個人としての戦闘力も高く狡猾な奸計には長じているものの、
戦略というものは分かっていない戦下手と言わざるを得ません。
これもまた結果的にはバスコの命取りに繋がるのですが、
バスコはここでゴーカイレッドのレンジャーキーも奪われたとしても、
どうせその後、自分がジョー達を倒して6個のレンジャーキー全部を奪い返せば済むことという程度に
無頓着に考えています。

こうして戦闘開始となり、まずはハカセと鎧が「うおおお!!」とジャンプしながら、
突っ込んでくるゴーカイレッド召喚体に向けて、ハカセはゴセイブラスター、鎧はハイブリッドマグナムを撃ち、
ゴーカイレッド召喚体に命中させて、その突進を止めます。
更に何度も跳び回りながら、ハカセと鎧はゴーカイレッド召喚体をメッタ撃ちにしていきます。

そうして続いてルカとアイムが進み出て、ルカは「炎のたてがみ!!」と叫んで、
ギンガレッドの炎のアース技の構えに入り、
アイムは「ジー・マジカ!!」と掛け声をあげて、
マジレッドの炎のエレメントパワーを強化する呪文を唱えます。
そして2人揃って「はっ!!」と炎を発してゴーカイレッド召喚体に浴びせます。

これらの連続攻撃を浴びてフラフラになったゴーカイレッド召喚体に向けて
ジョーが「うおおお!!」と突っ込んでデンジパンチを繰り出してボコボコに殴りまくり、
最後は「ふんっ!!」と強烈なアッパーカットを炸裂させて、
宙に舞いあがった召喚体は遂に空中で爆発し、ゴーカイレッドのレンジャーキーに戻って落ちてきました。

ジョー達5人はゴーカイジャーの姿に戻って、
この地上に落ちてきたゴーカイレッドのレンジャーキーを拾い上げて
「返して貰うぞ!」とバスコを睨みつけるジョーを中心に集まり、今度はバスコと対峙します。
しかしバスコは「フン!・・・それがどうした?」と余裕綽々です。

これに対して鎧は「今度こそ負けない!」と闘志を漲らせて
いきなり必殺武器のゴーカイガレオンバスターを構え、
他の4人は「レンジャーキー!セット!」と、
ゴーカイブルー、ゴーカイイエロー、ゴーカイグリーン、ゴーカイピンクのレンジャーキーを
ガレオンバスターの側面の鍵穴に挿し、鎧が最後尾の鍵穴にゴーカイシルバーのレンジャーキーを挿して回します。

するとガレオンバスターは「スペシャルチャ〜ジ!!」という認識音を発し、
エネルギーを充填し始め、ガレオンバスターを構えてバスコを照準に捉える鎧と、
その鎧の背中を後ろから支えるジョー、ルカ、ハカセ、アイムが声を揃えて
「ゴーカイガレオンバスター!!」と叫びます。
スペシャルチャージというのはゴーカイシルバーのレンジャーキーをメインキーとして
ガレオンバスターを発射する際の認識音であるようで、
鎧がメインのガレオンバスター発射の画は今回が初披露です。

ジョー達も普通に戦ってもバスコを倒すことは難しいのは分かっていますから、
いきなり必殺武器ゴーカイガレオンバスターを撃つことにしたのでした。

ゴーカイガレオンバスターはもともと対バスコ用を意識して作られた武器でしたから、
これまで使っていなかったのは不自然のようにも思えますが、
準備に一定の時間のかかるゴーカイガレオンバスターは、
普段から敵がある程度弱体化した場合に使う場合が多く、
素早く動き回るバスコ相手にはなかなか使いづらいものがありました。

まずは通常攻撃でバスコを弱らせてから使う必要があるのですが、
その通常攻撃でなかなかバスコにダメージを与えられない状況なのですから、
ゴーカイガレオンバスターまで繋げるのも難しい。
かといって通常攻撃を繰り出しても、じわじわ劣勢に追い込まれていくことが予想出来るので、
いっそいきなりゴーカイガレオンバスターを構えて、
自信家のバスコが挑発に乗って正面から受けてくれることを期待することにしたのです。

そうすれば、ゴーカイガレオンバスターの威力ならば、
いくら防御の巧みなバスコでも無事では済まない。
倒せなかったとしても、一定のダメージは与えられるはずです。

すると、幸いにもバスコは「カモン!」と正面に立ったまま動かず、
ゴーカイガレオンバスターを受ける構えになります。
これを好機と見て、鎧は「はっ!!」と引き金を引き、銀色のライジングストライクを発射します。

しかしバスコは手にした剣に例の破壊的な赤色の闘気を全開にして込め、
その剣でライジングストライクを「ふんっ!」と受け止めたのでした。
これはおそらくファイナルウェーブ状態のゴーカイサーベルと同等ぐらいのパワーを帯びた剣と思われ、
ライジングストライクよりはもちろんパワーは劣りますから、その威力を打ち消したりすることは出来ませんが、
それでも簡単には突破されずに少し受け止めるぐらいなら出来ます。
そこに後は剣の技術を駆使してライジングストライクの勢いを利用して、
そっくりそのまま向きを反転させて、バスコは「はあっ!!」とジョー達5人の方に
ライジングストライクを撃ち返したのでした。

この予想もしていなかったライジングストライクの返し技に驚いたジョー達は、
直撃こそ免れたものの、至近弾を浴びて「うわあああっ!?」と吹っ飛ばされてしまい変身解除、
そして彼らの手にしていたゴーカイガレオンバスターは高々と宙を舞って
バスコの手の中に収まってしまったのでした。

こうして対バスコ用の武器であったゴーカイガレオンバスターはバスコによって破られてしまいました。
ただ、これはライジングストライクの破壊力がバスコに通じなかったというわけではありません。
バスコは常に相手の強い破壊力をもった攻撃は剣や手や腕などで防御しており、
身体で受けることは常に避けています。
つまり、むしろ打たれ弱い方であると思われ、
その分、身体能力や武器を扱う技術で防御力を高めているようです。
今回も剣のパワーを最大限に高めた上で高度な剣の技術を使って返し技を決めただけであり、
ライジングストライクを正面から粉砕したわけではない。

そのライジングストライクも、通常はマーベラスのゴーカイレッドのレンジャーキーをメインキーとした
レッドチャージが最強の威力なのであり、
マーベラスがいないために鎧が放ったスペシャルチャージでは、やや威力は落ちていました。
あるいはレッドチャージのライジングストライクならば
バスコも返し技を成功させることが出来たかどうかは微妙だったでしょう。
そもそもバスコがこの最大パワーを使っての返し技を決めることが出来たのは、
戦闘開始直後の、まだ何のダメージも受けていない万全の状態だからこそ可能だったのだと思います。

そう考えると、第43話で重傷を負った上に通常攻撃でボロボロにされて
剣もまともに持ち上げられない状態に追い込まれた上で
レッドチャージのライジングストライクに身体を貫かれて、それでも倒れなかったダマラスは、
バスコよりも遥かに強い「宇宙最強の男」の称号に相応しい強さを備えた戦士だったとは言えます。
おそらくダマラスも万全の状態であれば、バスコ程度の返し技は使って、
ライジングストライクを弾き返すことは出来たはずです。

さて、こうして吹っ飛ばされて変身解除したジョー達5人は「ぐうっ!」と呻いて地面に叩きつけられ、
ゴーカイガレオンバスターをバスコに奪われてしまったのを見て、
ハカセは「そんなぁ・・・」と嘆息し、ジョーは「バッカ野郎・・・!」と悔しがります。
全員、ライジングストライクの至近弾を受けたため、
強烈なダメージで身体全体が痺れて立ち上がることすら出来ません。

バスコはもはや5人に抵抗する力は無いと見て、変身を解いて人間態になると、
「・・・ったく面倒くさいことさせないでって!」と言いながら
ガレオンバスターに挿してある5個のレンジャーキーを抜き取ると、
ガレオンバスターを地面に放り捨て、地面に落ちたガレオンバスターは消え去って、
カーギーロードを通ってガレオンの武器庫に戻ります。

バスコはガレオンバスターなどどうでもいいのであって、欲しいのはあくまでレンジャーキーなのです。
これでバスコはゴーカイブルー、ゴーカイイエロー、ゴーカイグリーン、ゴーカイピンク、ゴーカイシルバーの
5個のレンジャーキーは奪還しました。
その5個のレンジャーキーをニヤニヤ笑って掲げたバスコは
「どうせお前らがまた負けて・・・レンジャーキー取られるんだからさぁ!」と言って、自分の銃を取り出します。

そして「これで終わりだ・・・」と、銃を構えてジョーに狙いを定めます。
あとはジョーの持っているゴーカイレッドのレンジャーキーさえ取り戻せば、
また元通り、全てのレンジャーキーと全ての大いなる力はバスコのものとなり、
再び「宇宙最大のお宝」を手に入れる作業を開始できます。
そのために、まずバスコはジョーを殺してレンジャーキーを奪い、
続いて他の4人も殺してしまおうとしているのですが、
身体を動かすことも出来ない5人はどうすることも出来ません。

「じゃあねぇ・・・」とバスコが非情に引き金を引こうとした、その瞬間、
バスコの周囲にいきなり火柱がいくつも上がり、バスコは「うっ!?」と怯んで身をよじって避けました。
そこにゴーカイガンを撃ちながら現れたのはマーベラスでした。

そのマーベラスの生きて歩いてくる姿を見て、バスコは「ううっ!?」と驚愕して、
鋭い目でマーベラスを睨みました。
バスコはまさかサリーの爆発に巻き込まれたマーベラスが生きているとは思っていなかったのです。
ジョー達の奇襲にマーベラスが参加していなかったことで、
バスコはマーベラスの死を更に強く確信していました。
だからバスコは心底驚いたのでした。

一方、教会でマーベラスが安静にしているはずだと思っていたジョー達5人は、
いきなりマーベラスがこの場に現れたので「マーベラス!?」と驚きます。
確かにこの場所自体はマーベラスもナビィからの連絡で知っていましたが、
ダメージの大きいマーベラスがここに来るとは予想していなかったのです。
いや、というか、ダメージの残るマーベラスはここには来ずに、今回はジョー達に任せるはずだったのです。
しかしマーベラスは平然と「・・・わりぃ!遅くなった!・・・あとは俺に任せろ!」と言って、
いつものように銃を回して肩に担ぎ、バスコを睨みつけます。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 10:41 | Comment(0) | 第48話「宿命の対決」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月05日

第48話「宿命の対決」感想その7

バスコに奪われた仲間みんなの夢、すなわち「宇宙最大のお宝」を手に入れるために必要な
レンジャーキーやガレオンを奪還するため、ゴーカイガレオンに攻め込んだジョー達5人でしたが、
仲間を捨てても夢を掴むという、バスコの強固な夢を掴む執念の力がジョー達の想いを凌駕したのか、
ジョー達はバスコの前に敗北し、一旦奪還したゴーカイジャーのレンジャーキーをも再びバスコに奪い返され、
残るはジョーの握るゴーカイレッドのレンジャーキーのみ、
しかも5人はバスコに銃を突きつけられて身体も動かせず、絶体絶命のピンチに陥りました。
そこに、ジョー達のピンチを予期して、ナビィの報せたガレオンの場所に駆けつけたマーベラスが
間一髪のタイミングで乱入してきて、バスコの前に立ち塞がったのでした。

バスコは森の中でサリーを爆殺した際に、その爆心に一緒にいたマーベラスが
生きていることは有り得ないと思っていたので、マーベラスが突然現れたことに心底驚き、
マーベラスのあまりのしつこさにいい加減ウンザリした様子で
「マベちゃん・・・ホントにしつこいね!」と呆れます。

さて、バスコはサリーが爆弾を自分の腹のハッチに入れてマーベラスに向かう爆風を減殺して
マーベラスを守ったということは知りませんから、
確かにマーベラスが爆心で爆発に晒されたという事実だけを認識しています。
だからバスコはマーベラスが運よく生きてはいるものの、
絶対に戦うのは無理なぐらいの深刻なダメージを負っていると思っており、
マーベラスがカッコつけて立っているのは元気そうに見せるためのハッタリに過ぎないと読んでいます。

どうしてマーベラスがそんなハッタリをかます必要があるのかというと、
これまでバスコは少しでも自分に不利な状況が生じるとさっさと撤退することが多かったからです。
だから、これまでのパターンを鑑みて、
強敵であるマーベラスがまだまだ戦えるという姿勢を示すことで、
バスコが安易に撤退してくれることをマーベラスは期待している。
そういうことなのだろうとバスコは見切っています。

確かにバスコはこれまで、あくまで自分が「宇宙最大のお宝」を手に入れることを最優先に行動してきたので、
マーベラス達と決着をつけることにはこだわっていませんでした。
マーベラスの方がバスコを追い詰めようとしていきり立って、
バスコはそれをかわして嘲笑いつつ撤退していくというのがこれまでのよくあるパターンでした。
だからマーベラスはここでも精一杯強がって猛攻を加えれば、
戦いに淡泊なバスコは撤退してくれるのではないかと期待している。

しかし、確かにバスコは基本的にお宝に関係無い戦いは好まないという意味では戦いに淡泊ですが、
お宝に関係するとなれば、とことんしつこく戦う主義でした。
今までの「大いなる力」争奪戦でバスコが安易な撤退を繰り返していたのは、
一定数の「大いなる力」を自分が押さえている限り、他の「大いなる力」を自分が手に入れようが
マーベラス達が手に入れようが、どっちでもいいと考えていたからであり、
基本的にはマーベラス達に「大いなる力」を集めさせて、後でごっそり頂く作戦であったからです。
そういう状況で危険を冒してとことん戦うなんて、バスコにとってはナンセンスでした。
そんな無意味な戦いでつまらないミスでもして死んだりすれば、お宝を手に入れることが出来なくなってしまう。
だからバスコはマーベラス達を相手にこれまでとことんまで戦うことはなかった。

だが、今はその時とは状況が違う。
もうあと一歩でバスコは「宇宙最大のお宝」が手に入るのです。
マーベラス達はそれを邪魔する障害物に過ぎない。
だからバスコはこの場で完全にマーベラス一味の息の根を止めるつもりでいます。

そういう状況であるのに、戦うことの出来ないマーベラスが必死の虚勢を張って乱入してきて、
ハッタリでバスコが撤退してくれることを期待している。
バスコはそのように判断し、マーベラスの愚かな判断を嘲笑うように
「そんな身体でまともに戦えると思ってんの!?」と言います。
つまり、お前が戦えないクセに虚勢を張っているのはバレバレなんだよ、と嘲笑しているのです。

バスコはいきなりこれでマーベラスの作戦の出鼻を挫いてやったと思って得意げですが、
マーベラスの方はバスコの意外な反応に内心少し驚きます。
マーベラスはバスコが思うような戦えない状態ではありませんでした。
サリーが爆弾を自分の腹に入れて爆風を減殺してくれたお蔭で、
運動機能に支障が出るような深い傷は負っていません。
爆発後しばらく身体が動かなかったのは、全身に強烈なショックを受けた後遺症で、
しばらく全身が痺れていたからであり、今は痺れも無くなり、身体は普段通りに動きます。

ただ万全な状態でないのは確かで、全身の痺れが無くなった分、
全身に生じた細かな裂傷が猛烈な痛みと熱を発しており、
マーベラスが身体を動かすと、その痛みと熱が増して、気がおかしくなりそうでした。
しかしマーベラスはこの戦いに期する重大な決意によって、それらの苦痛を抑え込んでいたのです。
だからマーベラスは今、強靭な精神を維持し続ける限りは普段通りに戦うことは出来る。
そして、とことんまで戦う気概もありました。

ところがバスコの反応を見ると、どうやらバスコはマーベラスが戦うことが出来ない状態であり、
戦意の無いことを隠してハッタリをかましているだけだと思っている。
そのように感じ取ったマーベラスは、これは好都合だと思いました。

マーベラスは相討ち覚悟でバスコを倒すつもりで戦いに臨んでいます。
いや、相討ち覚悟の攻撃でなければバスコは倒せないと見ています。
仲間を捨てて夢を掴むバスコの執念を上回るには、
こちらは自分を捨てて夢を残った仲間に託す執念で攻撃するしかない。

しかし、いきなり相討ちを狙ってもバスコにかわされてしまうのがオチです。
だから、ある程度は互角の戦いに持ち込んで、
バスコにも一定のダメージを与えた状態で相討ちを仕掛けなければいけない。
それが一番の難題だったのですが、バスコが自分の戦闘力を見くびってくれているのだとしたら、
機先を制していくらかダメージを与えて、互角の戦いに引きずり込むチャンスだとマーベラスは思ったのでした。

そこでマーベラスは「・・・気にすんな!ちょっとしたハンデだ!」と、
負傷のハンデを見破られてもなお虚勢を張る風に演じます。
マーベラスは昔から明らかに不利な状況や自分の方が弱い状況でも粋がってカッコつけるクセがあり、
仲間だった頃のバスコにはそういうところをいつも心配かけていました。
だから、マーベラスがこのように強がるセリフを言えば、
バスコはいつも通りのマーベラスの虚勢だと判断しやすい。

そしてマーベラスにとって更に決定的に好都合であったのは、
バスコがわざわざ嫌らしくハッタリを指摘して嘲笑してくるということは、
バスコは今回はとことん戦うつもりであるらしいと分かったことでした。

マーベラスにとって最も困るのは、
相討ちを仕掛ける前にバスコにレンジャーキーやガレオンだけ奪われて逃げられてしまうことでした。
この状況なら、そうなってしまう可能性も十分あり得る。
しかしバスコが自分を殺すつもりでかかってくるのなら、こんな好都合なことはない。
相討ちに持ち込めるチャンスが生じるからです。

どうやら、遂に赤き海賊団壊滅事件以来、長らく待ち望んでいた
宿命の決着の時がやって来たようだと悟ったマーベラスは
「それより・・・お前の顔を見るのは、これが最後だ!」と言ってバスコを強く睨みつけ、
「絶対にケリをつける・・・!!」と言いつつ、
ゴーカイガンをバスコに向けて突きつけ、闘志を剥き出しにします。

しかしバスコはこのマーベラスの闘志すら、哀れな虚勢に過ぎないと見なして
「フッ・・・最後か・・・」と、腕組みしたまま下を向いて可笑しそうにほくそ笑みます。
戦えないクセに必死で強がって、それがバレてしまったマーベラスが
昔のように開き直っているようにしかバスコには見えなかったのです。

無謀に粋がってみたところで、このままでは最期を迎えるのは確実にマーベラスの方だと、
バスコは完全にナメ切って「じゃあ最後にいい事教えてあげる!」と、急に話題を振ってきます。
バスコはマーベラスを殺してしまう前に、マーベラスを更に絶望のドン底に突き落としてやろうという
意地悪な気持ちになったのでした。

だいたいバスコはマーベラスが一人前の海賊ぶって自分に説教めいたことを言ってきていたのが
本心では腹立たしかったのでした。
だから本当は地球に来て最初にマーベラスと戦ってからずっと、マーベラスの鼻っ柱を折ってやりたかったのだが、
マーベラス達を泳がせて大いなる力を集めさせる作戦を遂行する以上、
マーベラス達をいい気分で宝探しさせておく必要があり、
マーベラスの鼻っ柱を折ってやることが出来なくなったのです。

しかし、全ての大いなる力もレンジャーキーも揃った今、もはやそんな気を遣う必要も無くなった。
マーベラスが死んでしまう前に、生意気なマーベラスに自分こそが偽物の海賊だったのだと思い知らせて、
海賊の誇りなど抱かせずにあの世に送ってやろうとバスコは思いました。
そうしてバスコは「マベちゃんが懐いてたアカレッド・・・実はこの星のヤツだったんだよ!」と、
いきなり意外なことを言い出します。

といっても、実は私のようなスーパー戦隊シリーズのコア視聴者には意外でもなんでもない情報なのですが、
そういえば「ゴーカイジャー」の劇中ではアカレッドは
あくまでマーベラスの元師匠の宇宙海賊という扱いになっており、
地球との関係を示唆されたのは「199ヒーロー大決戦」映画でレジェンド大戦の直後、
宇宙の彼方へ飛んでいくレンジャーキーの群れを土星付近で見送る姿が一瞬映ったことと、
第21話のボウケンジャー篇のラストシーンで元ボウケンレッドの明石暁が
アカレッドと知り合いであるかのようなセリフを呟いたことだけでした。
だから「ゴーカイジャー」が戦隊初見の視聴者から見れば、
アカレッドはあくまで宇宙海賊のはずで、
むしろ映画やボウケンジャー篇の描写の方が不可解に見えたかもしれません。

実際はアカレッドはもともとは地球において歴代スーパー戦隊のレッド戦士の
平和への願いから生まれた思念体のような存在であり、
これまでスーパー戦隊シリーズではVシネマ「ボウケンジャーVSスーパー戦隊」にだけ登場したことがあり、
その時に明石暁とは出会っています。

だから、アカレッドが地球のヤツであるというバスコの情報は真実を突いており、
バスコはおそらく赤き海賊団を裏切る前にアカレッドの周辺をコソコソ調べ回っている時に
そのことを知ったのでしょう。
しかし当然、マーベラスにとってはそんなことは寝耳に水で、
さすがにマーベラスはゴーカイガンをバスコに突き付けたまま「なにぃ・・・?」と驚愕します。
また、未だ起き上がれずにマーベラスとバスコの対峙を見守っていたジョー達5人も、これには驚きます。

なお、この時、鎧も驚いた表情をしていることからも、
地球人の鎧もアカレッドが地球の戦士だということは知らなかったことが分かります。
まぁ「ボウケンジャーVSスーパー戦隊」の時に一瞬登場しただけの戦士ですから、
スーパー戦隊の戦士たちの一部にしかその存在は知られていない戦士なのでしょう。

とにかくマーベラス達6人にとってはアカレッドは
あくまでもともとマーベラスやバスコと一緒にレンジャーキーを集め、
「宇宙最大のお宝」を手に入れるための旅をしていた赤き海賊団の船長の宇宙海賊であり、
マーベラスの命の恩人でした。
それがもともと地球出身であったとバスコは言っているのですが、
確かにそれは意外な奇遇ですが、一見、単にそれだけの話であるように見えます。
しかしマーベラス達6人がここまで驚愕しているのは、
もしそれが真実ならば、どうも妙な話になってくるからでした。

レンジャーキーはこの星のスーパー戦隊の戦う力から数年前のレジェンド大戦時に生まれたものだということを
マーベラス達は地球に来てから知りました。
レンジャーキーの形がそもそもスーパー戦隊の戦士たちの姿を模したものですから、
スーパー戦隊の戦士のことを知っている者が見れば、レジェンド大戦時の経緯を知らなかったとしても、
レンジャーキーが地球に関連のあるものであることはすぐに分かるはずです。
そしてスーパー戦隊は地球人なら誰でもその存在は知っているものだという。

ならば、もしアカレッドが地球出身であるならば、
レンジャーキーが地球のスーパー戦隊に由来したものだということは分かっていたはずということになります。
しかしアカレッドはマーベラス達にそんなことは一言も言わなかった。

そもそもジョー達5人はアカレッドのことはマーベラスの回想で話を聞かされただけで、その姿を知らないのですが、
マーベラスはアカレッドの全身を真っ赤な薄めのバトルスーツで包んで
ゴーグル付きのメットを被った姿を知っています。
今までマーベラスはあれは宇宙の何処かの星の特有の服装なのだろうと思っていたのですが、
もしアカレッドが地球の者だとするなら、地球ではあのような姿をした者はスーパー戦隊の戦士たちしかいない以上、
アカレッドもスーパー戦隊の関係者ということになるということに気付きました。

ならば、アカレッドはレンジャーキーが地球のスーパー戦隊の戦う力が
レジェンド大戦時に姿を変えて宇宙に散った物だということは当然知っていたはずです。
それなのにアカレッドはマーベラスとバスコにそのことを全く言いませんでした。
いったいどうしてアカレッドはそんな大事なことを仲間に言わなかったのだろうか?
当然マーベラス達はそのことを不審に思います。

そこにバスコは更に「俺たちは宇宙最大のお宝をエサに・・・レンジャーキーの回収の手伝いをさせられてたんだ!」
と衝撃の事実をマーベラスに告げたのでした。
そして、ゴーカイガンを構えたままバスコを睨みつけるマーベラスに向かって、
バスコは少し怒気を込めて「あの赤いオッサンは、俺たちが命懸けで集めたレンジャーキーを、
この星の連中にタダでくれてやるつもりだったんだよ!・・・こんなチンケな星を守るためにねぇ・・・」と
断言したのでした。

そういえばバスコは第15話のダマラスとのフリージョーカーでの密会シーンで、
ダマラスから地球に「宇宙最大のお宝」や「大いなる力」があるという情報をもたらされたのを受けて、
「宇宙最大の宝・・・レンジャーキー・・・地球・・・大いなる力・・・やっと繋がったよ!」と
何やら興奮気味に語っていました。

ここまでのバスコの行動から推測して、バスコが赤き海賊団を裏切る前に、
「宇宙最大のお宝」を手に入れるためにはレンジャーキーだけでなく、
ナビィとガレオンと「大いなる力」というものが必要であることや、
それらを使って「宇宙最大のお宝」を引き出す手順を把握していたことは推定されています。

ただ、バスコは赤き海賊団を裏切った後、すぐに「大いなる力」を手に入れるために地球にやって来たわけではなく、
ダマラスの情報を得てから地球にやって来ていますから、
赤き海賊団時代には「大いなる力」の正体や在り処は知らなかったと思われ、
単にそういう名前のものが「宇宙最大のお宝」を引き出す作業で必要だと把握していただけであるようです。

つまり「大いなる力」が地球のスーパー戦隊の戦士たちが持っているものだとは、
ダマラスから聞くまでは知らなかったのです。
そしてもちろん「宇宙最大のお宝」の在り方もダマラスの情報を聞くまでは知らなかったので、
それが地球にあるということも知らなかった。

しかし、第15話のダマラスとの密会時のセリフを聞く限り、
バスコは確かに以前から「地球」という星の名を「宇宙最大のお宝」関連の情報の中で
キーワードとして把握していたようです。
それが一体どうしてなのか今までよく分からなかったのですが、
今回のバスコの告白で、そこの部分が明らかになりました。

バスコは赤き海賊団時代から、アカレッドが地球出身のスーパー戦隊関係者であることや、
レンジャーキーが地球のスーパー戦隊の戦う力がレジェンド大戦の時に姿を変えて宇宙に散ったものであることも
把握していたのです。
そしてアカレッドが地球に戻って、回収したレンジャーキーを
スーパー戦隊の戦士たちに渡そうとしていたということもバスコは掴んでいたようです。

だがバスコは「大いなる力」や「宇宙最大のお宝」が地球にあるということは把握していなかった。
そのあたりを把握してバスコの頭の中で全ての情報が1つに繋がったのは第15話の時点です。
それ以前のバスコにとっての「地球」とはアカレッドの故郷であり、
アカレッドがレンジャーキーを持って帰ってスーパー戦隊の戦士たちに返そうとしていた場所に過ぎず、
「宇宙最大のお宝」や「大いなる力」というものは宇宙の何処か別の星にあると思って
バスコは探し回っていたようです。

おそらくバスコは最初は伝説の「宇宙最大のお宝」の実在を信じて、
純粋にそれを手に入れるために赤き海賊団に加入したのでしょう。
マーベラスがアカレッドに出会った時にされたような問答を経て、
バスコもまた、誰も手に入れられない物を手に入れようとする、
宇宙の絶望の中で希望を求める者としてアカレッドに認められた者なのであり、
バスコもまたアカレッドを自分と同じように純粋に不可能といわれる夢を掴むことだけを考えている男だと思い、
そういう点は信頼していたのでしょう。

ところが、おそらくある時、バスコは偶然アカレッドが地球出身であることを知り、
アカレッドがその事実を自分とマーベラスに秘密にしていることを知り、
ふと不審に思い、アカレッドの周辺を探り始めたのでしょう。
その結果、バスコは、アカレッドが自分達に「大いなる力」というものの存在を隠していたり、
宝箱の中には無い25個のレンジャーキーを隠し持っていることや、
ラッパラッターや変身機能付きモバイレーツやゴーカイジャーのレンジャーキーなどを
秘かに開発していたことなどを知ったのでしょう。

そうして大いにアカレッドへの不信感を募らせたバスコは、
更にアカレッドの周辺を探るうちに、
そもそもレンジャーキーが地球のスーパー戦隊の戦士達の戦う力がレジェンド大戦時に姿を変えたものであり、
アカレッドの正体はスーパー戦隊の関係者であり、
アカレッドは集めたレンジャーキーを地球に持って帰ってスーパー戦隊に返そうとしていることを知ったのでしょう。

これを知るに及んで、バスコはアカレッドが「宇宙最大のお宝」をエサにして自分達を騙して、
さんざんレンジャーキーの回収を手伝わせていただけであり、
レンジャーキーが集まりきったら、自分達を裏切って捨てるに違いないと確信したのでしょう。
それでバスコは裏切られる前に裏切って自分が「宇宙最大のお宝」を掴むための準備を開始し、
アカレッドの周辺の情報を調べ上げて、
「宇宙最大のお宝」を手に入れるために必要なものや手順などを把握してから、
必要な物を奪って裏切りを決行したのでしょう。

「宇宙最大のお宝」や「大いなる力」の在り処は調べ出せなかったが、
それはアカレッドも把握していないのだろうとバスコは解釈したようです。
そもそもバスコはアカレッドが「宇宙最大のお宝」をエサにして自分達を騙していただけだと思っていたので、
アカレッドが「宇宙最大のお宝」や「大いなる力」の在り処を把握していなくても不自然には思わなかったようです。

とにかく多少の情報不足はバスコにとっては仕方ない状況だったといえます。
何故ならバスコはレンジャーキーが集まりきってしまったら
アカレッドの方から裏切りを仕掛けてくると思い込んでいたからです。
だから先手を打つためには、レンジャーキーが集まりきった瞬間を狙うしかなかったのです。
確かに赤き海賊団をバスコが裏切ったのは、
レンジャーキーがアカレッドの隠し持っている追加・番外戦士の25個とゴーカイジャーの5個とも合わせて、
197個が集まりきったタイミングでした。

そして結局、アカレッドの自分の身を捨てた抵抗によってバスコの裏切りは不発に終わり、
バスコはラッパラッターと追加・番外戦士の25個のレンジャーキーだけしか奪えず、
「大いなる力」や「宇宙最大のお宝」の在り処も分からず、
ガレオンに残りのレンジャーキーやナビィ、ゴーカイジャーの変身システムなどを乗せて逃げた
マーベラスの行方も分からないまま、
ザンギャックとつるんで、サリーを調教し、ロイドを開発して
「宇宙最大のお宝」探しの再開に備えていたのでしょう。

そんな中、ダマラスから「地球という星に宇宙最大のお宝が隠されており、
それを求めてマーベラスが地球に来て、お宝を引き出すために必要な大いなる力を集めている」という情報を聞いて、
これで全ての情報が1つに繋がったと大喜びでバスコは地球へやって来たのです。
これがバスコのこれまでの行動の経緯だったのです。

それを踏まえてバスコは「いいかい?マベちゃん・・・俺が裏切ったんじゃない!
・・・あのオッサンが最初から俺たちを裏切ってたんだよぉ・・・」とマーベラスに向かって得意げに言い放つのでした。
これは別に自己正当化をしようとしているわけではありません。
バスコのような悪党がそんな殊勝なことを考えるはずがない。

いくら相手が裏切ろうとしていたからといって、裏切り返すのは正しいことではない。
裏切りは所詮はどんな理由があろうと裏切りであり、最低の行いです。
正しく生きたければ、裏切ろうとするような相手とは距離を置き、離れていけばいいだけのことです。
だから裏切りに裏切りで返したバスコは悪でしかない。

というか、そもそも本当にアカレッドが裏切ろうとしていたのかどうか、微妙です。
結局、「宇宙最大のお宝」も「大いなる力」も地球に在ったのであり、
アカレッドはマーベラスやバスコと共に地球に行こうとしていた。
レンジャーキーをスーパー戦隊に返そうとしていたのは確かであろうが、
ナビィにレンジャーキーの「戦う力」「大いなる力」を注いだとしても、
それはナビィの「扉」を起動させる補助エネルギー的なものであるとしたら、一種の触媒のようなものであり、
再びレンジャーキーに戻してスーパー戦隊のもとへ返却出来るのかもしれない。
もしそうだとすると、「宇宙最大のお宝」を赤き海賊団が手に入れることと、
アカレッドがスーパー戦隊にレンジャーキーを返すことは両立し得るかもしれない。

ただ、もしそうなら最初からアカレッドも正直にそう言えばいいだけの話であり、
あまりにもマーベラスとバスコとナビィにまで秘密が多すぎたアカレッドは
裏切ろうとしていると疑われても仕方ないといえます。
ナビィの秘密の件を隠していたことなど、
アカレッドが自分抜きでは「宇宙最大のお宝」を手に入れられないようにしていたのも、
結局は誰にも「宇宙最大のお宝」を渡したくないからであったと思われても仕方ない。

だから、やはりアカレッドはマーベラスやバスコを騙していたと考えた方が妥当でしょうし、
裏切ろうとしていたと思われても仕方ないでしょう。
しかし、だからといって裏切り返す必要は無い。裏切りは悪です。
しかしバスコは、その悪をあえてやって仲間を捨ててまでも自分の夢を掴もうとするのが
真の海賊なのだと言っているのです。

そして、アカレッドの裏切りも知らず、
裏切り者のアカレッドと仲良しごっこをしながら、
アカレッドに内心では夢をコケにされていたようなマーベラスなどは、
自分自身の「夢を掴もうとする想い」を貶めていたマヌケに過ぎず、
海賊を名乗る資格などは無い未熟者だと見なして、バスコは小馬鹿にしているのです。

「アカレッドに裏切られていた」という衝撃の事実を知れば、マーベラスはそう認めざるを得ない。
たとえアカレッドが仲間を裏切ろうとしていたとしても、
確かにバスコが卑劣な裏切り者で、仲間を捨てた薄情者であるという事実は変わらない。
しかし、それでもバスコは自分の「夢」はアカレッドの裏切りによって汚されないように守ったのです。
しかしマーベラスは裏切り者のアカレッドと馴れ合って自分の「夢」を汚した。
だから、自分こそが本物の海賊であり、マーベラスなどは未熟者の海賊もどきに過ぎない。
バスコはそう言っているのであり、マーベラスはさぞショックを受けたことだろうと思い、
バスコは意地悪くマーベラスを見つめます。

ところがマーベラスはゴーカイガンをバスコに突き付けたまま、じっとバスコを見つめ返すと、
軽く溜息をついて「・・・言いたいことはそれだけか?」と呆れた顔で問いかけました。
マーベラスの意外な反応にやや驚いたバスコが鋭い目で睨み返すと、
マーベラスは冷めた口調で「今の俺は赤き海賊団じゃない・・・」と言います。

マーベラスも実際のところ、バスコの話を聞いて驚いてはいました。
バスコの言うことなど出鱈目だと思うことも出来ましたが、
確かに25個の追加・番外戦士のレンジャーキーの件や大いなる力の件などを考えても、
アカレッドが自分達に隠し事を多く持っていたことは事実であり、
アカレッドが何のために隠し事が多かったのかというと、自分達を信用していなかったからであり、
それはつまり信頼し合う関係ではなかったとアカレッドが見なしていたということで、
アカレッドの方に裏切りの意思があったと考えた方が自然でした。

それにアカレッドの件はさておき、バスコの告白は、
バスコがどうして赤き海賊団を裏切ったのかという、どうしても分からなかった謎を解明出来ていた。
だから、それは真実なのだろうとマーベラスは思ったのです。

もしアカレッドの裏切りを知ったのがマーベラスだったなら、マーベラスは裏切らなかっただろう。
バスコが裏切りに裏切りで返したのは、もともとバスコが世界に絶望しており、
自分が夢を掴むためには仲間などは切り捨てて犠牲にすべきものでしかないという考えの持ち主だったからです。
しかしバスコ以外の同じような冷酷な薄情者が同じような状況に立ったなら、
裏切ってまで夢にしがみつこうとはしなかったであろう。
いや、そもそもそんな人間はアカレッドの仲間になどなったりはしない。

バスコがアカレッドの仲間になり、アカレッドに裏切られて、ひたすら夢を貫くために裏切りまで敢行したのは、
バスコが誰よりも夢に純粋な男だったからです。
ひたすら世界に絶望した薄情者でありながら、夢を掴むことだけには誰よりも純粋だった男、
それがマーベラスがどうしてバスコがあそこまで強いのか必死に考察した末に辿り着いたバスコの正体であり、
バスコのさっきの告白は、そのマーベラスの辿り着いたバスコ像に合致していたのです。

バスコはおそらく仲間など作ったこともなく、作ったとしてもすぐに裏切ってきたのでしょう。
そんなバスコが赤き海賊団に入ったのは、
アカレッドだけは自分と同じぐらい「夢」に純粋な真の海賊だと思ったからです。
だからバスコはアカレッドなら裏切らずに一緒に「夢」を目指すことが出来るかもしれないと思っていた。

しかしアカレッドは「夢」に純粋ではなかった。
それでバスコはアカレッドやそれに従うマーベラスを裏切ったのです。
そういうことだったのだろうと考えて、
マーベラスはこれでバスコに関する過去の出来事が全て辻褄が合ったような気がした。
だからマーベラスはバスコの告白を真実だと信じたのです。
すなわち、アカレッドが赤き海賊団を裏切っていたのだという事実を受け入れたのです。

それは確かにマーベラスにとって驚愕の事実でした。しかし、
そんなことは今のマーベラスを揺るがす衝撃にはなり得ませんでした。
アカレッドは確かにあのまま順調に航海を続けていけば自分達を裏切ったのかもしれない。
しかしアカレッドは死んだ。
アカレッドは悪巧みをしていたかもしれないが、それはアカレッドの死と共に水泡に帰したのです。

その死の瞬間、アカレッドは悪巧みの失敗を悔いていたかというと、
そんなことは一切、口にしていなかった。
バスコは知らないだろうが、マーベラスはアカレッドの死の瞬間を知っている。
アカレッドは自らの身を犠牲にしてマーベラスを守り、
マーベラスに「宇宙最大のお宝」を手に入れるよう、夢を託したのです。

あの瞬間、赤き海賊団は消え去り、マーベラス一味が生まれたのです。
赤き海賊団のアカレッドは裏切り者で悪巧みをしてマーベラス達を騙していたかもしれないが、
それは消え去った過去の話に過ぎない。
その頃のアカレッドの言葉は懐かしい想い出であり、自分の原点ではあるが、
今の自分の行動とは直接繋がってはいない。
今の自分の行動を規程しているのは、アカレッドの言葉で言うならば、
あの最後の時の言葉だとマーベラスは思った。

過去の人間、死んだ人間の全ての行動をいちいち背負い込む必要は無いのです。
大事なのは、過去の人間や死んだ人間が現在生きている者に遺した志です。
そのことをマーベラスはサリーの行動によって学び、
それによってアカレッドの最期の行動の意味も再確認することが出来た。
赤き海賊団の時代のアカレッドの怪しい行動や、それに騙されていた自分など、
そんなことはいちいち考えても今の自分には意味は無い。

今のマーベラス一味の自分にとって意味があるのは、今の自分に繋がるアカレッドの言葉だけであり、
それはあの最後の瞬間のアカレッドの言葉だけであり、
自分はあの言葉に従うだけでいい。
あのアカレッドの最期の言葉から生まれたマーベラスの夢は、
今やジョー、ルカ、ハカセ、アイム、鎧も含めた仲間みんなの夢になった。
今の自分はその夢を掴むために突き進むだけだ。
そしてその原点にアカレッドがいる。
マーベラス一味にとってのアカレッドはそれ以上でもそれ以下でもない。
それが自分にとってのアカレッドの全てだとマーベラスは思いました。
だからバスコの告白などは、アカレッドの部分に関してはマーベラスにとっては見当違いの昔話でしかない。

「この星に宇宙最大のお宝が有り、それを手に入れるための物が揃ってる!・・・それだけで十分だ!」と、
憮然とした顔でバスコを真っ直ぐ見下して、マーベラスは言います。
そして「俺たちゴーカイジャーの夢を邪魔するもんは・・・誰であろうと、ぶっ潰す!!」と
マーベラスは語気を強めます。
もはや「宇宙最大のお宝」という夢はマーベラス1人のものではなく、
ゴーカイジャーみんなの夢であることを強調するマーベラスの言葉に
倒れたままのジョー、ルカ、ハカセ、アイム、鎧は思わず笑みをこぼします。
ただ、マーベラスがみんなの夢を掴むためには自分を捨てることが出来るという覚悟で
戦いに臨もうとしていることには誰も気付いていません。

そしてマーベラスはバスコを睨みつけて
「・・・てめぇだろうが・・・ザンギャックだろうが・・・アカレッドだろうがなぁっ!!」と荒々しく言い放ったのでした。
マーベラスにとってアカレッドはあくまで自分に夢を託して、
自分の中に志となって生き続ける存在なのであり、
もし仮にアカレッドが生き返って、赤き海賊団の船長のアカレッドとして
ゴーカイジャーの夢を邪魔してくるというのなら、
マーベラスは夢を掴むためにアカレッドを倒すことに躊躇はしません。

何故なら、もはやそのアカレッドは自分と同じ夢を掴む仲間ではないからです。
マーベラスにとって同じ夢を掴もうとする仲間はゴーカイジャーだけであり、
それ以外の者でゴーカイジャーの夢の邪魔をする者があれば、
誰であろうがぶっ潰して、必ずみんなの夢を掴む。
それが現在のマーベラスの決意でした。

そして、その「みんなの夢を掴む」という意思は
「自分を捨てることが出来る」という極めて強い覚悟に裏打ちされています。
それゆえマーベラスの夢を掴む意思は以前よりも遥かに強固なものに見えます。
マーベラスの秘めた覚悟は読み取れないバスコも、
何故か圧倒的な「夢を掴む意思」の強さを見せるマーベラスに感じ入ったようで、
不本意そうではあるが「・・・ふぅん・・・言うようになったじゃん!」と言わざるを得ませんでした。

アカレッドの裏切りを教えれば動揺して未熟者の正体を晒すものだと期待してみれば、
マーベラスに妙な自信を漲らせて、揺るがない「夢を掴む意思」を見せられたバスコは
「なんか嬉しくなってきたよ・・・」と言います。
最後の瞬間にマーベラスが精神的に真の海賊に成長したように思えたのです。
あるいは死を前にして何か悟りでも得たのかとも思えました。

本音ではバスコは自分と同じくらい純粋に「夢」だけに突き進む真の海賊と共に旅を続けたかったのかもしれません。
ただ、もはや一緒に旅をする必要も無い。
バスコは「夢」をあと一歩で手に入れるところまで来ており、もう旅は終わりなのです。
その旅の最後に戦い殺す相手が未熟者の海賊よりも真の海賊である方が好ましいとバスコは思いました。

「じゃあ決着つけようか!マベちゃん!」と嬉しそうに言いながら怪人態に変身したバスコは、
「・・・いや、マーベラス・・・!」と言い直し、真の海賊に成長したかつての弟分に敬意を表して、
軽侮した愛称呼びを止めて、本名で呼びかけつつ、銃撃を加えます。
バスコはマーベラスのことを精神的には成長したが、いかんせん重傷で戦う力は無いと見切り、
早々に勝負を決しようとします。

同時にジョーが「マーベラス!!」と大声で呼びかけつつ、
握っていたゴーカイレッドのレンジャーキーをマーベラスに投げつけ、
それがマーベラスの差し出したモバイレーツに挿さり、
「豪快チェンジ!!」とマーベラスはゴーカイレッドに変身し、
バスコの銃撃をかいくぐって「はああっ!!」と前に飛び出し、ゴーカイガンを撃ちまくります。
この銃撃をかいくぐってバスコもジャンプし、空中で組み合ったマーベラスとバスコは回転しながら着地し、
マーベラスは「おおりゃあああ!!」と猛烈な勢いでゴーカイサーベルを振り回し、バスコに斬りかかり、
バスコも剣で応戦し、激しい斬り合いとなります。

マーベラスは斬り合いの中でもアグレッシブに動き、
蹴りや足を使った組み技など、全身を使った派手な攻撃を繰り出し、バスコを押しまくり、
バスコが思わず後退したところに銃撃を浴びせます。

バスコの方は、重傷でまともに動けないはずとタカをくくっていたマーベラスが
意外に激しく動きアグレッシブに攻めてくるので戸惑います。
サリーの爆発に巻き込まれて重傷を負っていることは間違いないはず。
だからマーベラスは無理をして渾身の力を振り絞った決死の攻撃を仕掛けてきているのだとバスコは思いました。
この必死の攻撃にまともに付き合えば何かの間違いで大怪我をする可能性があると思ったバスコは、
安全策をとり、マーベラスの攻撃を受けながら、マーベラスの力が尽きるのを待つことにしました。
この無理な攻勢はそんなに長くはもたないはずだから、せいぜい攻撃を受けて時間を稼ぎ、
マーベラスの電池が切れたところで反撃に転じようとバスコは考えました。

そして「はっ!」と前に出たバスコにマーベラスも「はあああ!!」と突っ込み、
再び両者は激しく斬り合います。
マーベラスは右手に剣、左手に銃のいつもの海賊スタイルで、
海賊同士の決闘なのですから、当然といえば当然ですが、
バスコもまた同じように右手に剣、左手に銃の海賊スタイルです。

この2人が斬り合いから、互いに相手の右手の剣を自分の左手の銃の銃身で受け止めて
至近距離で押し合い、睨み合い状態となります。
そうしてバスコはマーベラスの力が尽きるのを今か今かと待ちかねますが、
マーベラスの気迫は全く衰えることは無く、バスコは少し迷いが生じてきます。
そこで互いに相手を押し込んだ反動で身を離した2人は一回転して互いに相手に銃を突きつけ、
同時に至近距離で発砲、同時に後方に大きく跳んで着弾のダメージを軽減し、
後方に転がった2人はすぐさま今度は遠距離での射撃戦に移行し、互いの銃撃を転がりながらかわし、
互いに有効なダメージを相手に与えることは出来ません。

そこでマーベラスはゴーカイサーベルとゴーカイガンをファイナルウェーブ状態とし、
バスコもこれに対抗して自分の剣と銃に闘気を込めてファイナルウェーブと同等の状態とし、
互いに「おりゃあ!!」「ふんっ!!」とエネルギー弾とエネルギー波を発射、
これが2人の真ん中で激突し、空間を歪める大爆発を誘爆し、
マーベラスとバスコ双方とも「うわああ!!」と絶叫して後方に吹っ飛んでしまいます。

この混乱の中、マーベラスのゴーカイガンとバスコの剣が、それぞれ相手側の方に吹っ飛んでいってしまい、
倒れたマーベラスの前の地面にバスコの剣が突き刺さり、
そこから遠く離れて倒れたバスコの前の地面にゴーカイガンが転がります。

これらの息もつかせぬ攻防を、倒れたまま戦況を見つめるジョー達5人も固唾を呑みます。
マーベラスが意外に動けていることも5人には驚きでしたが、
バスコの動きが案外鈍いようにも見えて、少し不可解でもあり、
しかし、このマーベラスの動きではバスコの全力にはやはり勝てないように思えて、5人は不安です。

一方、素早く起き上がったマーベラスはゴーカイガンが無いことに気付くと、
駆け出すとすぐに迷いなくそこに刺さっていたバスコの剣を引き抜き、
そのまま自分のゴーカイサーベルと合わせて二刀流スタイルで「うおおおおお!!」と全力で駆けてバスコに突撃し、
バスコはゴーカイガンを拾って自分の銃と合わせて二丁拳銃スタイルでマーベラスを迎え撃ちます。

バスコはいくら待ってもマーベラスの動きが衰えないので、ようやくこれはおかしいと気付いてきました。
マーベラスはおそらくサリーの爆発の時、素早く後ろにでも跳んで、
意外とサリーの爆弾のダメージを受けていない。
ここまま攻撃を受けていても無駄に自分のダメージを増やすだけだと悟ったバスコは、
本気で戦おうとしますが、思わずマーベラスの動きに合わせて変則的な武器交換をしてしまい
二丁拳銃スタイルでマーベラスの二刀流を迎え撃ってしまったことが仇となります。

バスコは仲間と一緒に戦わないので、武器交換などしたことはなく、二丁拳銃スタイルなど初めてでした。
しかしマーベラスが猛然と突っ込んでくる中、今さら体勢を変えるヒマも無く、
バスコは慣れない二丁拳銃で撃ちまくりますが、
単調な射撃は全ての銃弾をマーベラスの二刀流で弾かれてしまい、
マーベラスは一気に飛び上がり「えあああ!!」とバスコに二刀で斬りかかります。

しかし、さすがにバスコも間一髪、マーベラスの振り下ろした2本の剣を
自分の手にした2つの銃の銃身で受け止め、弾き返して、
そのままマーベラスの身体に至近距離で銃弾を撃ちまくります。
銃弾の威力を軽減するため後ろに跳んだマーベラスは、その勢いのまま後方の岩壁をキックし、
反転して大きく上に跳びながら、「てやああっ!!」と、右手に持ったバスコの剣を、
バスコ目がけて投げつけます。

上に跳んだマーベラスの意味不明な動きに一瞬気をとられたバスコは
マーベラスの投げた自分の剣をよけきることが出来ず、右手に剣が当たり、
右手に持っていたゴーカイガンを落としてしまいます。
そこで慌てたバスコを見て、マーベラスは着地するとすぐに「うおおおお!!」とバスコ目がけて突っ込みますが、
バスコはここでようやく持ち味である超高速移動を繰り出し、逆にマーベラスに突進して、
何度もマーベラスの身体の脇を通りながら打撃を加えて、
棒立ちになったマーベラスに距離をとって「はあっ!!」と銃撃を加えて、これを全弾命中させて、
マーベラスは左手にゴーカイサーベルを握ったまま「ぐわああっ!!」と地面に転がります。

これでひたすらアグレッシブであったマーベラスの動きはようやく止まり、
バスコはようやく安堵し、「・・・結構粘ったけど・・・ここまでだよ・・・!」と銃を構えたまま、
倒れたマーベラスに近づいていきます。
マーベラスのダメージの度合いを読み間違い、更には変則的な戦闘スタイルに付き合ってしまったために
余計なダメージを受けてしまったバスコでしたが、
マーベラスの動きが止まったのを見て、やはりマーベラスはサリーの爆弾のダメージは受けており、
ようやくその影響が出てきて、もうマーベラスは動けないと判断したのでした。

それでバスコはトドメを刺しにマーベラスに近づいており、
そのムードを察して、倒れて戦況を見つめていたジョー達5人も「マーベラス!!」と悲嘆の声を上げます。
ジョー達も、やはり怪我を負ったマーベラスはここまでが限界なのだと思ったのでした。

一方、倒れたままのマーベラスは近づいてくるバスコをチラリと見上げて「ちっ・・・!」と舌打ちします。
動けなくて悔しがっているわけではありません。
実は重傷を負っているわけではないマーベラスはまだまだ動ける。
だが、そろそろバスコが本気の攻撃を繰り出してくるようになってきて、
バスコの油断が終わりを迎えようとしていることを感じ取り、
まだまだバスコにダメージを与えておきたかったと思い、悔しがっているのです。

バスコが勝手にマーベラスのことを重傷を負っていると勘違いしてくれていたお蔭で、
マーベラスはバスコに一定のダメージを与えることが出来ました。
しかし、相討ちの態勢に持ち込んでからの勝負のためには、もっとバスコにダメージは与えておきたかった。
しかし、これ以上動き回ると、もうおそらくバスコが油断するのはこの場面までであろうと
マーベラスは見極めていました。
ここで勝負に出なければ、ズルズルとジリ貧になると読んだマーベラスは、
今の状態で勝負に出るしかないということに少し悔しさを覚えて舌打ちしたのです。

そうとは知らないバスコはもうマーベラスは動けないと決めつけて、
マーベラスの前に立つと「楽しかったよ・・・マーベラス!」と、マーベラスに向けて発砲しますが、
マーベラスは突然動いて、素早く飛び退いて銃弾をかわし、後ろに転がりざま、
そこにあった、さっきバスコに投げつけて落ちていたバスコの剣を狙い澄ましたように右手で拾い上げ、
まさかマーベラスがまだ動けると思っておらず慌てるバスコに再び二刀流で斬りかかって懐に入り込むと、
斬り合いを続けるのではなく、「ちょろちょろ動き回るのもここまでだ!!」と叫び、
マーベラスはバスコに向かい合ってしゃがみ込んで、バスコの左足の甲を自分の右足で踏んづけます。

マーベラスの意外な行動にバスコが「ん!?」と驚いて自分の踏まれた左足を見た瞬間、
マーベラスは右手に持っていたバスコの剣を渾身の力で自分の右足の甲に向けて深々と突き刺し、
剣を自分の右足、そしてその下のバスコの左足も貫いて地中に刺し貫きました。

これにはジョー達も「マーベラス!?」と驚愕します。
どうしてマーベラスがそんな自分を傷つけるような行動をとったのか、一瞬、意味が分からなかったのでした。
マーベラスの地中深くまで突き立てたバスコの剣によって縫い付けられてしまったバスコの左足は
上から同様に縫い付けられたマーベラスの右足に思いっきり踏みつけられて、
ピクリとも動かすことが出来なくなってしまいました。

これでバスコはこの場から動けなくなっただけでなく、
身体を浮かせて相手の攻撃のダメージを軽減することが全く出来ない状態で、
至近距離でマーベラスと向き合う形となってしまいました。
これでバスコはマーベラスの繰り出す強烈な攻撃をまともに受けることになる。
マーベラスが狙っていたのはこの形だったのでした。

この形に持ち込めば、バスコに確実に致命傷を与えることが出来る。
この形に持ち込むために、マーベラスはバスコを油断させて
ダメージをじわじわ与えて動きを少しずつ鈍くさせていき、
油断が無くなる寸前のタイミングで賭けを仕掛けたのです。
それは見事に成功し、マーベラスは確実にバスコに致命傷を与える形に持ち込むことが出来た。

しかし、それはマーベラスも同じ条件です。
マーベラスもまた、至近距離で防御の出来ない状態でバスコの強烈な攻撃をまともに受けることになる。
つまり、どちらも次の一撃が必殺の一撃となる。
単純に早い方が勝つが、これだけ至近距離ならば相討ちになる可能性が高い。

つまりマーベラスは相討ち狙いなのだと気付いたバスコは
「・・・正気?・・・メチャメチャやるねぇ・・・マーベラス!」と呆れます。
これはバスコには全くの予想外でした。
予想外だったので簡単にこの形に持ち込まれてしまったのです。
どうして予想外だったかというと、バスコもマーベラスも宝の奪い合いのために戦っているわけですから、
死んでしまっては意味が無いからです。
だから相討ち狙いというのは有り得ない戦法でした。

しかしマーベラスは最初から相討ち狙いでした。
実は最初から秘かにそう示唆もしていたのです。
「言ったろぉ?・・・これが最後だ!・・・絶対にケリをつける!!」と言いながら
左手に持っていたゴーカイサーベルを右手に持ち替えたマーベラスは
「おおおりゃああああっ!!」と絶叫して、バスコの胸部めがけて剣を薙ぎ払い、
同時にバスコもマーベラスの心臓めがけて発砲します。

その強烈な斬撃と銃撃で閃光が走り、2人の足を縫い付けていたバスコの剣が弾け飛び、
ジョー達5人は「マーベラスゥゥッ!!」と絶叫します。
5人が見守る中、閃光が消えた後、マーベラスとバスコの2人は、
それぞれ剣と銃を握ったまま変身が解除して、後方に倒れ込み、双方ともピクリとも動きません。
5人はようやく身体を起こし、マーベラスの名を叫びながら2人の倒れているところに近づきますが、
やはりマーベラスもバスコも死んでしまったように動きません。

特にマーベラスは左胸の心臓部にまともにバスコの放った銃弾が命中して
上着に大穴が開いて煙が立ちのぼっており、心臓は焼け焦げてしまったように見えます。
バスコも大きく胸が斬り裂かれて致命傷を負っています。
やはり相討ちで2人とも絶命してしまったように見えます。
ということはマーベラスの狙い通りということです。

ところがジョー達が近づいていくと、バスコの銃を握った手がピクリと動いたかと思うと、
いきなりバスコがカッと目を見開き、ゆっくり身を起こします。
マーベラスの執念も及ばず、やはりバスコの執念が勝り、バスコだけが生き残ってしまったのかと思われたのですが、
どうやらそうではなかったようです。

バスコはフラフラと起き上がりながら「・・・まさか・・・相討ちになるとはねぇ・・・」と苦しい息で言います。
バスコはマーベラスの剣で致命傷を負っていたのです。
自分がもはや助からないと悟ったバスコは、マーベラスがどうなったのか確かめるために
最後の執念で、既に半ば死んだ身体で立ち上がったのでした。
すると、マーベラスは心臓に弾丸が命中して目を閉じて仰向けに倒れて動かない。
自分の弾丸もマーベラスを仕留めていたと知ったバスコは、勝負の結果は相討ちだったと知ります。

しかしバスコにとってはこの結果は意外でした。
マーベラスの剣が完全に自分を斬り裂く前に
自分の弾丸の方が少し早くマーベラスの心臓に当たったように思っていたのです。
だから相討ちは回避して自分が勝利しているはずだったのです。

ところが自分の身体は完全に切り裂かれて間もなく絶命する。
ならば、あれは錯覚だったのだろうかと思い、
自分の生涯最後の勝負の正確な結果だけを確かめたくてバスコは立ち上がったのでした。
そして見てみると、やはり勝負の刹那に自分の網膜に焼付いた通りの場所、
マーベラスの心臓部に銃弾は着弾している。
確かに自分の銃弾は一足早くマーベラスの命は奪っていた。
しかしマーベラスの執念が死んだ身体を動かし、最後まで剣を振り抜かせたのだろうと理解したバスコは、
勝負は相討ちに終わったが、自分の執念はマーベラスの執念に敗れたと悟りました。

自分は他人や仲間は平気で捨ててきたが自分自身を捨てることは出来なかった。
しかしマーベラスは自分を捨てて向かってきた。
それは夢を掴むために戦う海賊としては有り得ない戦い方です。
自分はあくまで海賊の限界を超えられなかったが、マーベラスは海賊であることを捨てて、
ただひたすら相討ちで自分の命を奪いに来た。
そんな捨身には勝てないとバスコは思いました。

以前のマーベラスはあくまで半人前だが海賊だった。
そのマーベラスがいよいよ一人前の海賊になったと思って戦ったら、とんだ錯覚で、
マーベラスは海賊であることを捨てて捨身の復讐鬼になっていた。
そのあたりを見誤ったことを悔いたバスコは、
「・・・ちぇ・・・もっと早くやっときゃよかったなぁ・・・」と、
マーベラスが半人前の海賊であるうちに殺しておいた方がよかったと後悔しました。

そのバスコの悔恨の言葉を聞き、ジョー達は勝負は相討ちとなり、
バスコを倒すと共にマーベラスも死んでしまったことを知り、絶望します。
ところが次の瞬間、仰向けに倒れて動かなかったマーベラスの頬がピクリと動き、
「う・・・」とマーベラスが呻き、その目が開いたのです。
「・・・ああっ!」とジョー達は思わず声を上げます。
そしてマーベラスはほとんどダメージも負っていないかのようにムクッと上体を起こします。

これにはバスコはさすがに「・・・なに・・・!?」と驚愕します。
銃弾は心臓に命中しているはずなのですから、バスコが驚愕するのも当然です。
そしてそれはマーベラスも同じであるようです。
「ううっ・・・」と立ち上がったマーベラスは不思議そうに自分の左胸を見ます。

実はマーベラスが危惧していた通り、相討ち勝負の前にバスコに与えておくべきダメージの量がやはり足りず、
バスコのスピードの方が勝っており、
自分が剣を振り切る前にバスコの銃弾が自分の心臓に当たったことをマーベラスは感じていたのです。
だから自分は負けて死んだのだと思っていたら、目が覚めたら自分は死んでいなかった。
どうやら気絶していただけだったようだと気付いたマーベラスは、
じゃあ、あの心臓に感じた衝撃は何だったのかと不審に思い、
煙を上げる左胸の上着の大穴に指を突っ込んで、そこにあるものを取り出して、
それを見てマーベラスは驚きます。

あの教会で右拳に握り込んでいることに気付いたサリーのペンダントの飾りに、
バスコの放った銃弾が突き刺さって煙を立てていたのです。
そういえば教会を出る時、あの飾りを上着の左胸のポケットに押し込んでいたことをマーベラスは想い出しました。
偶然、バスコの弾丸がサリーの飾りに当たって止まり、その弾着の衝撃が飾りの下の心臓に達して、
それで剣を振り切った後、マーベラスは倒れた後、貧血を起こして気絶していたのです。

一方、マーベラスが左胸の大穴から取り出した銃弾の刺さった金属製の飾りを見て、
バスコはよろめきながら「あ・・・あ・・・あ・・・」と、あんぐり口を開けて驚愕しました。
その飾りは、バスコがサリーにガレオン潜入ミッションの前にあらかじめ、お守りだと偽って渡していた
爆弾のついたペンダントの欠片だったからです。

どうしてそんなものがマーベラスの胸ポケットに入っていて
自分の放った銃弾からマーベラスの心臓を守ったのか、一瞬分からなかったバスコでしたが、
すぐにそれはマーベラスがあのサリーの爆発の瞬間に握っていたものなのだと気付きました。
握り込んででもいなければ、あの爆発の中でそんな綺麗な形で残っているわけがない。

つまりマーベラスはサリーの爆発の瞬間、後ろに跳んで逃げたりはしていない。
むしろ前に出て爆弾のついたペンダントを爆弾と知りながら掴もうとしていた。
しかし、そんなことをしていてここまで動けるほどダメージを軽減することなど出来るはずがない。
ならば考えられる可能性はただ1つ、
サリーが自分で腹のハッチにでも爆弾を突っ込んでマーベラスを守ったのだろう。
どうしてサリーがそんなことをしたのか?
それはマーベラスが自分の身を犠牲にしてでも仲間になったサリーを守ろうという姿勢を見せたから、
サリーも自分を捨ててマーベラスを守ったのだ。

サリーがそういうサルであったとするなら、
今回の宝箱を盗み出す作戦も、サリーが銃で撃たれてもなお宝箱をバスコのために盗み出してきたのは、
バカなサルがバナナに釣られてやったことではないはずだ。
おそらく第39話でサリーが危ない時、バスコがまだサリーを利用するつもりであったから
身を挺して守った時、サリーはそれでバスコが自分のことを大切に思ってくれていると思い、
それで今回も銃で撃たれてもバスコのために宝箱を盗んだのです。

サリーはバスコが自分を身を挺して守ってくれる仲間だと思ったから、
バスコのために命の危険を顧みない作戦に励んだのです。
だからサリーはバスコが渡した「お守り」を本当にバスコが自分を想ってくれて渡してくれたものだと思っていた。
ところがバスコはそのサリーの想いを裏切って、お守りと偽って爆弾を渡していた。
その時点でバスコはサリーを身を挺して守る人ではなくなっていたのであり、
ならばサリーもバスコを守る必要は無い。

一方、マーベラスは自分を捨ててもサリーを守ろうとしたので、
サリーも自分を捨ててマーベラスを守った。
だからマーベラスはほとんどダメージを受けていない状態でバスコと戦えたのであり、
あのサリーに渡した「お守り」が最終的にマーベラスを守る「お守り」に化けたとしても何ら不思議は無い。
そう考えて、どうして自分がマーベラスに負けたのか、全て辻褄が合ったような気がして、
バスコは妙に納得して「・・・なるほどね・・・」とニヤリと笑います。
そして「そういうことか・・・」と目を伏せます。

自分を捨ててサリーを守ろうとしたマーベラスは逆にサリーに守られて勝利し、
「宇宙最大のお宝」を得ることになった。
また、マーベラスの自分を捨てる覚悟の相討ち勝負も、
相討ちでバスコを倒して、残った仲間を守って彼らにお宝を遺そうという作戦だったが、
これもサリーのお守りによってマーベラスは勝利した。

つまり、自分を捨てて仲間を守ろうとする者は仲間に守られて勝利して、より大きなものを得る。
「自分を捨てれば大きなものが得られる」ということです。
これはまさにバスコの海賊としての哲学である「何かを得るには何かを捨てなければならない」でした。
より大きなものを捨てればより大きなものが得られる。
ならば、自分にとって最も大事な「自分自身」を捨てれば、最も大きな宝物、
すなわち「宇宙最大のお宝」が得られる。
言い換えれば、最も大事な自分自身を捨てられる者でなければ「宇宙最大のお宝」は得られなかったのだ。

しかし自分自身を捨てて宝を掴むためのアクションを起こすためには
大前提として同じ夢を目指す仲間の存在が不可欠であり、
仲間を捨ててしまったバスコにはそれは無理である。
つまりバスコは自分自身を捨てられないゆえに「宇宙最大のお宝」は得られない運命だったのです。
そのことを悟ってバスコは目を伏せて苦笑したのでした。

マーベラスの勝利を確認し、ジョー達5人が「やったぁ〜!!」と歓喜する中、
マーベラス自身はサリーの飾りを見つめながら不満そうにして、
バスコの方に何故か申し訳なさそうな顔を向けます。

マーベラスは結局、最終的にはバスコの強さを認めて、
バスコの「何かを捨てねば何かを得ることは出来ない」という海賊の哲学を認めていた。
だからこそ、バスコの更に上にいくために、バスコが捨てることの出来ない自分自身を捨てようとしていた。
それなのに、こんな飾りに助けられて自分を捨てることなくバスコに勝ってしまった。
これはマーベラスの望んでいた勝利の形ではありませんでした。

マーベラスは自分を捨てることで自分を捨てられないバスコに勝って、
自分こそが最高の宝物である「宇宙最大のお宝」を得る資格のある最高の海賊だということを知らしめ、
仲間にその夢を渡したかったのです。
だから、マーベラスはこれで自分は本当にバスコに勝ったのか?という顔でバスコを見ます。

一方、バスコは自分の海賊の哲学「何かを捨てねば何かを得ることは出来ない」を
マーベラスに認めさせることが出来たことで満足感を覚えていました。
そして、その上で、自分を捨てて仲間みんなの夢を掴む覚悟を示した者には、
生者死者問わず、同じ夢を共有した仲間の加護が得られる。
夢というものは1人では得られない。
そうやって仲間で達成していくものであり、世代を超えて夢は繋いでいくものなのだ。
そうして人は繋がっており、生きている者も死んだ者も想いは受け継がれる。
それが海賊の真の姿だったのだとバスコは死の直前に答えに辿り着き、
マーベラスこそが真の海賊だったのだと確信しました。
そして、人生の最期に最高の海賊と戦って死ねることを喜びと感じました。

しかし、相変わらず頭の悪い元弟分がそのことを理解出来ずに憮然としているのを見て苦笑したバスコは、
そのことは意地悪く教えてやらずに逝くことにしました。
そうしてバスコの手から握っていた銃が落ち、
バスコは膝から崩れ落ちてマーベラスの前に突っ伏して倒れ、
その姿はどす赤いオーラがかき消えると同時に、跡形も無く消え去っていったのでした。

そのバスコの消えた跡に右足をひきずって歩み寄ったマーベラスは、
そこに遺されたゴーカイブルー、ゴーカイイエロー、ゴーカイグリーン、
ゴーカイピンク、ゴーカイシルバーのレンジャーキーを拾い上げます。
すると、一気に気が緩んだマーベラスの全身にはそれまで精神力で抑え込んでいた全身の裂傷の激痛が走り、
マーベラスは気が遠くなって地面に倒れ込みます。

慌てて「マーベラス!!」とジョー達5人がマーベラスに駆け寄り、
仰向けに倒れたマーベラスを抱え起こします。
ハカセが「大丈夫!?マーベラス!!死んじゃやだぁ!!」とか叫んでいますが、
これは普通は女性陣のセリフのような気もします。
マーベラスは目を開けて「・・・バ〜カ・・・今くたばるわけがねぇだろ!」とハカセに悪態をつき、
「・・・いよいよ宇宙最大のお宝が拝めるってのに・・・」と言って、5人のレンジャーキーを突き出します。

本当はマーベラスがお宝を自分達に託して死のうとしていたことは理解しつつも、
マーベラスが生き残り、そのことにはあえて触れない以上、自分もそのことはもう言うまいと心に決め、
ジョーはゴーカイブルーのレンジャーキーを手に取り、「・・・そうだな・・・!」と応えます。
アイムもゴーカイピンクのレンジャーキーを握りしめ「いよいよ・・・なのですね?」と顔を上げます。
ルカもゴーカイイエローのレンジャーキーを受け取ると「なぁ〜んかドキドキしてきた!」と満面の笑顔となります。

ゴーカイグリーンのレンジャーキーを手にしたハカセは「じゃあ、早くガレオンに戻ろう!」と立ち上がり、
ゴーカイシルバーのレンジャーキーを見つめた鎧は少し涙声で
「まずは腹ごしらえしましょう!おいしいものたくさん作りますから!」と言いながら
ジョーやアイムと共にマーベラスを抱え起こし、6人は寄り添って歩きだします。
ルカが「お!いいねぇ!じゃ、今日はあたしも手伝おうかな?」と意外な申し出をするので、
ハカセは慌てて「え?いや・・・ルカはいいよ!」と丁重に遠慮し、
ルカは「ど〜いう意味よ!」と憤慨するのでした。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 06:06 | Comment(0) | 第48話「宿命の対決」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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