2012年05月15日

海賊戦隊ゴーカイジャーTHE MOVIE空飛ぶ幽霊船 感想その1

「海賊戦隊ゴーカイジャー THE MOVIE 空飛ぶ幽霊船」は2011年8月6日から劇場公開された映画で、
「海賊戦隊ゴーカイジャー」の映画化企画の第2弾となります。

「ゴーカイジャー」映画化企画の第1弾であった「ゴーカイジャー ゴセイジャー 199ヒーロー大決戦」は
当初は5月21日公開予定だったものが3月発生の東日本大震災による撮影の遅れの影響で6月11日公開にズレ込み、
この第2弾の「空飛ぶ幽霊船」の方は夏休み映画で当初からの8月6日公開を動かすわけにもいかないので、
「199ヒーロー大決戦」と「空飛ぶ幽霊船」の間は2ヶ月も空いておらず、やや間隔は狭いが、
結局どちらも非常に好調な興行収入を上げたのでOKでしょう。

さて、いきなりちょっと脱線しますが、
東映は1964年から夏休み、冬休み、春休みなどの学校の休み時期に子供向け映画の企画として
数本の子供向けTVアニメをまとめて「まんが大行進」という名称で上映していました。
まぁ毎年必ず3回あるわけではなく、2回しかない年とか1回しかない年などもあったのですが。

ちなみに第1回目の「まんが大行進」となる1964年夏休みの分で上映されていたのは
エイトマン、鉄人28号、狼少年ケン、そして忍者部隊月光でした。
スーパー戦隊シリーズの源流の1つでもある「忍者部隊月光」は確かに原作は漫画ですが、
実写作品なので「まんが」というわけではない。
このように当初から「まんが」と冠していても実写作品もしばしば混じっていました。

また、1966年の夏休み上映分では「サイボーグ009」で
石ノ森章太郎氏の作品が初めてこのラインナップに加わっています。

その後、この子供向け映画のまとめて上映する企画は名称をコロコロ変えていき、
1969年春休み分から「東映まんがまつり」という呼称で固定されるようになり、
この時のメイン作品が現在でも東映アニメーションのマスコットキャラクターとなっている
名作「長靴をはいた猫」です。
そしてその次の1969年夏休みの「東映まんがまつり」のメイン作品が
石ノ森章太郎原作の長編アニメ作品「空飛ぶゆうれい船」でした。

そして、1971年の夏休みの「東映まんがまつり」には
同年春からTV放送を開始して大ブームを起こし始めていた石ノ森章太郎原作の仮面ライダーが遂に登場し、
1975年夏休み上映分まで連続して「東映まんがまつり」では毎回、
仮面ライダーシリーズの劇場版がラインナップに名を連ねることとなりました。

そして、その仮面ライダーシリーズからバトンを引き継ぐように
1975年夏休み上映分の「東映まんがまつり」のラインナップに加わったのがスーパー戦隊シリーズであり、
石ノ森章太郎原作のゴレンジャーとジャッカー電撃隊は
1975年夏休み分から1978年春休み分までの8回の「東映まんがまつり」において、
TV放送時期に合わせて7つの劇場版を制作して上映しました。

そしてシリーズがTV放送で一旦休止した後、原作が八手三郎に変わって東映オリジナル制作となって
1979年に仕切り直したシリーズ第3作(実質的には第1作)であるバトルフィーバーJの劇場版が
1979年夏休み上映分の「東映まんがまつり」で復活して以降、
1987年のシリーズ第11作のマスクマンまではスーパー戦隊シリーズの劇場版映画は
この「東映まんがまつり」のラインナップの中で基本的に毎年、各作品につき1作品ずつ
上映されていくようになりました。
ただ、チェンジマンとフラッシュマンはそれぞれ2つの劇場版が上映されました。

しかし1980年代末になるとアニメ人気が高まって実写系特撮は押されるようになり、
スーパー戦隊シリーズの人気も一旦下火になります。
1988年にはシリーズ第12作のライブマンの劇場版は作られず、
第13作のターボレンジャーの劇場版は1989年春休みの「東映まんがまつり」で上映されましたが、
1990年から「東映まんがまつり」はアニメ作品のみに絞った「東映アニメフェア」と名称を変えて、
ドラゴンボールなどの鳥山明作品を中心としたラインナップの数作品併映で夏休みと春休みで
やっていくことになったため、スーパー戦隊シリーズの劇場版映画はこの後、公開する場が無くなり、一旦途絶えます。

なお、1975年で一旦終わっていた仮面ライダーシリーズの方も
その後、スカイライダーやスーパー1、ブラックやRXなどが不定期にTV放送しており、
それらもその都度、「東映まんがまつり」の中で劇場版が公開されていましたが、
それも「東映まんがまつり」が「東映アニメフェア」になったため公開する場を失いました。
といっても、仮面ライダーシリーズの場合はスーパー戦隊シリーズと違い、
1989年にRXが終了して以降はTV放送版も作られなくなったので、そもそも新作を発表する場が無かったのです。

ところが、その仮面ライダーシリーズの新作を何とか作ろうという動きが
TV放送の方ではなく劇場版で実現することとなり、
1993年に「仮面ライダー誕生20周年記念作品」と銘打って仮面ライダーZOが作られました。
まぁ実際は22周年だったので、えらくいい加減な話なのですが。

とにかくこれを4月に公開することになったのですが、
東映の子供向け映画は基本的にTV放映を見ている視聴者を劇場に呼び込む形ですから、
TV放送していない仮面ライダーZOだけで上映するのはリスキーということになり、
当時TV放送していたスーパー戦隊シリーズとメタルヒーローシリーズの作品の劇場版と併映ということになり、
「東映スーパーヒーローフェア」という名称で1993年4月に公開されました。

この時スーパー戦隊シリーズは第17作のダイレンジャーがやっていたので、
ダイレンジャーの劇場版が作られることになりました。
ちなみにメタルヒーローシリーズの方はジャンパーソンでした。
ただ、あくまでこの「東映スーパーヒーローフェア」の企画のメインは仮面ライダーZOの方であり、
ダイレンジャーやジャンパーソンは客を呼ぶための保険のようなものなので、この2作品は短編でした。

この方式で1994年も1995年も「東映スーパーヒーローフェア」は続けて制作上映されました。
いずれも時間配分として基本的に「ライダーおよそ60分、戦隊およそ30分、メタルヒーローおよそ30分」という感じで、
スーパー戦隊シリーズとしては第18作のカクレンジャー、第19作のオーレンジャーの劇場版を
上映することは出来ました。

この「東映スーパーヒーローフェア」はメインのライダー映画の方はZOとJの2作を作った後、
3年目の1995年には同じく石ノ森原作のキカイダーのリメイクを見据えて
人造人間ハカイダーという映画を作りましたが、結局キカイダーのリメイクは実現せず、
「東映スーパーヒーローフェア」は1995年で終了し、
スーパー戦隊シリーズの劇場版映画を公開する場はまた無くなりました。

ただスーパー戦隊シリーズでは1996年からオリジナルビデオで
現行作と前作の戦隊が競演する「VSシリーズ」を作るのが恒例化し、
TV本編とは違う番外編を作る場は維持されることとなり、
この「VSシリーズ」は2009年から毎年1月に劇場版映画として公開もされることとなり、現在に至ります。

一方、仮面ライダーシリーズは遂に2000年にTVシリーズとして仮面ライダークウガが放送され、
TVシリーズとしての平成仮面ライダーシリーズが始まりました。
クウガは制作スケジュールの関係で劇場版までは作れませんでしたが、
2001年にはシリーズ第2作となる仮面ライダーアギトの劇場版が作られました。
そこで東映はかつての「東映スーパーヒーローフェア」の例に倣って、
このアギトの劇場版をスーパー戦隊シリーズの作品の劇場版の短編映画と併映とすることにし、
この年のスーパー戦隊シリーズ第25作のガオレンジャーの劇場版も作られることになったのでした。

以後、このライダー劇場版と戦隊劇場版の併映セットは特になんとかフェアとか名がつくわけでもなく、
毎年恒例行事化し、上映時期は当初は8月後半から9月のあたりを移動していましたが、
2003年以降、併映方式の「東映アニメフェア」が無くなって春休み分がONE PIECE映画の単独上映となり、
夏休み分が空白となっていたところにほぼ収まる形で、
2006年以降はこのライダーと戦隊の劇場版が8月第1週公開で固定されています。

そして2009年以降はライダーの方のTVシリーズが8月終了という形式に改変されたため、
夏の劇場版がTV本編のクライマックスと同じ時期となった関係で、
夏の劇場版とは別に12月に現行作と前作のライダーが競演するMOVIE大戦という劇場版もシリーズ化されるようになり、
戦隊の方もちょうどこの年から1月にVSシリーズを劇場公開するスーパー戦隊祭がシリーズ化され、
更に2008年から恒例化していた春の電王劇場版の枠も合わせて、
ライダーと戦隊の劇場版映画は定番シリーズだけでも近年特に充実してきています。

さて、この夏のライダー&戦隊の劇場版ですが、
もともとが1993〜1995年の「東映スーパーヒーローフェア」の延長線上にある企画ということで、
その「ライダーおよそ60分、戦隊およそ30分」という時間配分フォーマットを継承しており、
多少の変動はあるものの、2001年以降ずっと基本的にその方針を踏襲しています。

そういうわけで戦隊の方は30分前後という短い尺の作品となっています。
同じ戦隊の劇場版映画でも「VSシリーズ」の方は2戦隊を見せるという条件ではあるものの、
およそ60分というフォーマットになっており、それに比べれば夏の劇場版映画はかなり短い。

ちなみにシリーズ35作記念に特別に作られた映画である「199ヒーロー大決戦」は
80分という戦隊映画としては異例の上映時間の長さを誇っています。
それに比べ、この「ゴーカイジャー」の夏映画の「空飛ぶ幽霊船」は
夏のライダー戦隊併映方式のフォーマットに忠実に31分という上映時間となっており、やはり短い印象です。
ちなみに併映のライダー映画の方は「劇場版 仮面ライダーオーズ WONDERFUL 将軍と21のコアメダル」で、
こちらの上映時間は66分です。

こうして上映時間だけ比べると、どうしても戦隊の夏映画はライダー映画の前座的な扱いに見えてしまいますが、
実際に劇場に足を運んで観れば、決してそうではないことが分かります。
およそ30分というと劇場版映画としては短いようにも思えますが、
それでもTV放送分の1エピソードのOPやEDやCMを除いた実質的な尺であるおよそ21分に比べて
1.5倍の分量であり、十分普段よりも豪華版です。

まぁ戦隊の夏映画はこのおよそ30分という尺の中に
劇場版限定の特別バージョンのOPテーマあるいはEDテーマを入れてくるものであり、
それがまた楽しみの1つだったりもするのですが、
「ゴーカイジャー」の場合、そうした劇場版特別バージョンのEDテーマは
「199ヒーロー大決戦」において既にノルマは果たしているので、
この「空飛ぶ幽霊船」はOPテーマもEDテーマも無い異例の構成となっており、
31分の上映時間を全部ドラマに使用しており、正真正銘、普段のTVエピソードの1.5倍の豪華版となっています。

この「空飛ぶ幽霊船」は結論的にはとても良い出来だったと思います。
一方、同時上映のオーズの「将軍と21のコアメダル」も良い出来でした。

その元となるTVシリーズ自体の出来に左右される部分はありますが、
それでも毎年、この夏の劇場版においては、ライダーは60分程度の尺で良質なものを作り、
戦隊は30分程度の尺で良質なものを作っているといえます。
これはつまり、伝統的にこの夏の劇場版におけるライダーと戦隊とでは制作思想が根本的に違うからなのでしょう。
どうもライダーの方はTVシリーズの物語とは別の1つの物語を作ろうとする傾向が強く、
戦隊の方はあくまでTVシリーズの1エピソードの特別豪華版を作ろうという発想であるようです。

1つの独立した物語を作ろうとすれば30分という尺は短すぎるが、
あくまでTVシリーズの流れの中の1エピソードの豪華版という発想ならば
TVシリーズの1エピソードの1.5倍の30分という尺はちょうどいいのです。

そういうわけで、このゴーカイジャーの夏映画である「空飛ぶ幽霊船」も、
「ゴーカイジャー」TVシリーズの1エピソードの豪華版として見ることの出来るものとなっています。

ただ、TVシリーズのストーリーとの連続性で言うならば「199ヒーロー大決戦」の方が大きいでしょう。
「199ヒーロー大決戦」映画の方は、第16話においてバスコから奪った15個のレンジャーキーの存在なくしては
映画の方の物語が展開しないし、
第17話以降のストーリーも、11戦隊の「大いなる力」の獲得など、映画の結末が前提となって成り立っています。
つまり「199ヒーロー大決戦」はTV版の「ゴーカイジャー」のストーリーの中で
第16.5話として欠かせないピースになっているのです。

もちろん、わざわざ劇場版を見に行かない人もいますから、「199ヒーロー大決戦」を見なくても
TV版の「ゴーカイジャー」を見るのにさほど支障は生じない構成にはなっていますが、
そもそもTV版の各エピソードには見るのを忘れても全体ストーリーの中では全く支障の無い
エピソードの方が多いのであり、それらも含めた中で比べれば、
むしろ第16.5話に相当する「199ヒーロー大決戦」はTV版「ゴーカイジャー」の全体ストーリーの中では
重要エピソードの部類に入るといえるでしょう。

ただ、そうはいっても「199ヒーロー大決戦」は決してTV版の1エピソードを単に豪華にしたような
作り方にはなっておらず、1つの記念映画という大作を作るという制作姿勢で作られたものです。
それは尺の長さだけの問題ではなく、ストーリーの連続性の大きさにかかわらず
「199ヒーロー大決戦」の方は物語にアプローチする主体の存在が複数あるという点で、
TV本編とは根本的に違うからです。

つまり、あくまでTV本編の方はゴーカイジャーが主役であり、ゴーカイジャー視点で物語が進んでいくのに対して、
「199ヒーロー大決戦」はゴーカイジャー以外にゴセイジャーや他のレジェンド戦士たちやサラリーマンなどの
視点にも切り替わっていく群像劇となっており、
厳密にはゴーカイジャーの物語でない部分も多い映画なのです。
そういう意味で、「199ヒーロー大決戦」はTV本編とのストーリー上の繋がりは大きいものの、
やはり根本的にはTV本編の1エピソードの豪華版とはいえないでしょう。

それに対して、「空飛ぶ幽霊船」はTV本編とのストーリー上の連続性は乏しい。
映画内の設定を見る限りTV本編と同じ物語世界の出来事であると思われ、
鎧が仲間として登場していることから第18話終了後の話であることは間違いなく、
第17話から第21話まではストーリーに連続性が認められることからこの間に挿入されるとは考えにくく、
この映画公開日の翌日放送された第24話で登場するザンギャックバズーカという新兵器が
この映画内で登場して結局使われることなく残った新兵器と同じものと見られ、
第24話でそのザンギャックバズーカは破壊されて失われていることから考えて、
この映画は第24話よりは前の出来事を描いたものと推測されます。

となると、この「空飛ぶ幽霊船」のエピソードは第21話終了後から第24話開始前の何処かに挿入されるべき
話なのであろうということになります。
それで便宜上、第24話直前の第23.5話として扱うことにしましたが、
「199ヒーロー大決戦」のようにTV本編のストーリーのある段階の結末が映画の前提となり、
映画の結末がTV本編のストーリーのある段階の前提となるというような明確な連続性が見受けられないので、
このように曖昧になるのです。

つまり第21話と第24話の間の何処に挿入しても支障が無いし、
ザンギャックバズーカというTV本編のストーリー内においてはかなりどうでもいいアイテムさえ気にしなければ、
それこそ第18話以降ならば何処に挿入してもそんなに不自然ではないエピソードといえます。
言い換えれば、これを見逃してもTV本編全体のストーリーを理解する上で全く支障は無いといえます。

ただ、前述したようにスーパー戦隊シリーズのTV本編におけるエピソードの大半はそういうものであり、
この「空飛ぶ幽霊船」もそうしたごく普通の、
あまり全体ストーリーの流れの中では重要ではないエピソードの1つという意味で、
確かにTV本編のエピソードと同類といえます。
少なくともあくまでゴーカイジャー視点でストーリーが展開していくというシンプルさにおいて
「199ヒーロー大決戦」よりはよほどTV本編のエピソードに近いといえます。
そんなTV本編の1エピソードとして成立し得るエピソードを劇場上映用に豪華にして
尺を通常の1.5倍にしたものが、この「空飛ぶ幽霊船」という作品だと言っていいでしょう。

ただ、その内容はTV本編のストーリー展開とは一線を画しています。
TV本編のエピソードの豪華版という制作思想でありながら
TV本編のストーリー展開とは違う内容というのは奇妙だと思われるかもしれませんが、
実際はむしろこれが正解です。

TV本編と同じ世界観や視点でストーリーを構成して、
TV本編のストーリーの展開に沿ったもので、
しかも尺がTV本編エピソードの1.5倍程度というのでは、
やはりどう見ても劇場版としてはショボい印象になってしまいます。
「こんなのだったらTVでやれ」と酷評されておしまいでしょう。

やはりTV本編の世界観の中でありながら、
普段のTV放送のエピソードとは一線を画した劇場版ならではの独自の特色のあるストーリーを用意しなければ、
劇場版としての価値は無いでしょう。

だいたいこの2001年以降のスーパー戦隊の夏映画というのはそういう考え方で作っています。
戦隊側はあくまでいつも通りのスタンスでありながら、
巻き込まれる事件はいつものTVでのエピソードとは一風変わったものであることが多い。
戦隊が異世界に行ったり異世界からの訪問者が事件を引き起こしたりするパターンが多く、
TV本編で戦隊が戦っている敵とは異質な敵と戦うのが通例です。

そのフォーマットに従うならば、このゴーカイジャーの夏映画でも、
普段のTV本編でゴーカイジャーが戦っている敵であるザンギャックやバスコとは異質な敵と戦うということになります。
ただ、このゴーカイジャー夏映画の場合、もう少し根本的にゴーカイジャーという戦隊の在り方という意味で
普段のTV本編とは異質な感じを出そうとしているところが、
例年の戦隊夏映画よりも一歩踏み込んでいるように思えます。

むしろ、この映画で描かれているゴーカイジャーの姿こそが、
ゴーカイジャーの海賊としての本来の姿だといえます。
ただ、だからといって普段のTV本編のゴーカイジャーは本来の海賊としてのゴーカイジャーではないから
「ゴーカイジャー」TV本編は失敗作なのかというと、それは全く逆で、
本来海賊であるゴーカイジャーがあまり海賊っぽくない正義のヒーローの真似事のようなことをする
羽目になっているのがTV本編の面白味なのです。

ただ、それはゴーカイジャーが本来は海賊であるという前提が視聴者に実感されていて初めて効果的といえます。
その点、TV本編の序盤からマーベラス一味の海賊らしさは非常に上手く描写はされていっているとは思いますが、
地球を侵略しようとするザンギャックと戦いを重ねていくにつれて、
中盤になって徐々にマーベラス一味も普通に正義のヒーローっぽい行動をとる場面も増えてきて、
海賊らしさが徐々に薄まりつつあります。

そこでマーベラス達が海賊として地球にやって来た本来の目的である
「宇宙最大のお宝」を手に入れるための戦いを再度クローズアップして
マーベラス一味の海賊らしさを再度強調するために投入されたキャラがバスコなのだといえます。
このバスコの登場によってマーベラス一味の海賊としての側面は再び視聴者に印象づけられたとは思いますが、
現状のマーベラス一味とバスコの戦いにおける問題点は、その奪い合うものが「宇宙最大のお宝」であるという点です。

「現状」と言ったのは、まだ「宇宙最大のお宝」を手に入れるために
「大いなる力」を揃えなければいけない段階であるのが問題であるという意味です。
「大いなる力」の獲得はマーベラス一味の場合はスーパー戦隊の元戦士たちとの相互理解が必須ですから、
争奪戦が基本的にマーベラス一味の勝ちとなる現状においては、
その結末はマーベラス達とレジェンド戦士との相互理解の場面となるわけで、
これがどうも通常の海賊の「欲しいものは奪い取る」というイメージとは少し違うのです。

もちろん、その前段階のバスコとのバトルは海賊同士の激しく見応えあるものになっているので
十分といえば十分なのですが、
最後の最後の部分で少しマーベラス一味の海賊らしさが貫徹されていない印象はあります。

究極の海賊らしさとは、やはりもっとシンプルにお宝を奪い合い掴み合うような
活劇的な分かりやすさだと思うのです。
この「ゴーカイジャー」のTV本編というのは、どうしても物語の構造上、
現状ではそうした荒くれ者がシンプルに宝を掴み取るような通俗的な海賊らしい痛快さに欠けるきらいがあります。

そこで、TV本編のストーリーとは一風変わった展開が許容される夏の劇場版において、
マーベラス一味に「宇宙最大のお宝」とは別の、もっと安直に手に入れることの出来るお宝を狙わせて、
シンプルな争奪戦で勝利をして、相互理解とか回りくどいことは抜きで、
もっと海賊らしくシンプルに腕ずくで宝を分捕らせようとしたのがこの夏映画「空飛ぶ幽霊船」なのです。

ただ「宇宙最大のお宝」一筋のマーベラス達が他のお宝に浮気するのも不自然であるので、
そのお宝は「何でも願いが叶うお宝」ということにして、
マーベラス達はそのお宝を手に入れることによって念願の「宇宙最大のお宝」を手に入れようとするという
設定としたのでしょう。

そして、マーベラス達が本当にこのお宝を手に入れてしまうと「宇宙最大のお宝」も手に入ってしまい、
TV本編の「ゴーカイジャー」も半年で終了してしまうので、
結局はマーベラス達に「何でも願いが叶うお宝」の奪取を成功させるわけにはいかない。
つまり、なんとマーベラス達はこの夏映画の主役でありながら、作戦を失敗してしまう結末となるのですが、
それを後味の悪い形にせず、爽快な形で終わらせるために、
このお宝「ゴッドアイ」の正体に関して、緻密な仕掛けがしてあります。
まぁこの映画の本編内ではその緻密さもあまり触れられず、非常にシンプルにまとめてありますが。

とにかくそうした仕掛けを施した上で、あとはそのお宝「ゴッドアイ」を手に入れるために
マーベラス一味がとことん海賊アクションを魅せるというのが、この映画の主眼でしょう。
子供向け劇場版映画というのはとにかく録画も出来ないし有料だし、
細かいドラマ的な理屈を見せることは二の次で、大事なのはアクションの豪華さです。
「199ヒーロー大決戦」だって、かなり手の込んだ内容ではありますが、
それでも細かいドラマ的な理屈は出来るだけ抑制して、アクションに次ぐアクションで魅せました。
この夏映画もそれは同様です。

ただ、「199ヒーロー大決戦」の場合のゴーカイジャーのアクションは、
あくまでゴセイジャーと共に地球を守るための戦隊アクションでした。
それに対して、この夏映画のゴーカイジャーのアクションは本来の海賊としての
お宝を腕ずくで分捕る海賊アクションとなっており、そのあたりしっかりと描き分けられています。

海賊アクションといえば、やはり船でのアクションでしょう。
船室や甲板の上、マストに昇ったりロープにぶら下がったり柱や樽に隠れたりという、
狭いゴチャゴチャした場所に在るものを上手く使ったアクションという印象ですが、
「ゴーカイジャー」TV本編の方ではあまりそういうアクションをやる機会はありませんでした。

それをこの映画では存分に魅せてくれたわけですが、
ありきたりにマーベラス一味の面々に海賊アクションをさせるのではなく、
海賊ロボであるゴーカイオーが人間サイズになってしまう超巨大な船の甲板を舞台にして
ゴーカイオーに海賊アクションをさせるという意表を突いた見せ方をしたのは素晴らしかったと思います。
そうなると敵も海賊となるわけですから海賊ロボである敵ロボの偽ゴーカイオーが登場することになるわけです。
もちろん等身大アクションでも海賊アクションを魅せるため、
マーベラスと敵の船長との間で船室での迫力満点の一騎打ちの死闘シーンもあります。

そして、「ゴーカイジャー」という作品の「スーパー戦隊シリーズの集大成」という特徴も、
やはり「ゴーカイジャー」という作品の豪華版である以上、この夏映画は強調する必要があります。

「ゴーカイジャー」TV本編の諸エピソードは
レジェンドゲストが登場して過去歴代戦隊とのクロスオーバーストーリーが展開するレジェンド回と、
あくまでゴーカイジャー独自のストーリーが展開する通常回に分かれており、
「199ヒーロー大決戦」がレジェンドゲストが大量登場したレジェンド回の豪華版とするなら、
この夏映画はレジェンドゲストは出ておらず、あくまでゴーカイジャーの海賊としての行動を強調したお話ですから、
通常回の豪華版ということになります。

しかし「ゴーカイジャー」という作品は通常回でも豪快チェンジで常にレジェンド戦隊要素は存在しており、
それはこの夏映画でも同じことで、
その通常回のレジェンド要素が増幅された形で、歴代戦隊からの多彩なゲスト敵怪人が登場します。
それらは海賊アクションの中で登場させてしまうと、せっかくのレジェンド要素がスポイルされてしまうので、
船内に発生した亜空間ということで都合よく処理して、
戦隊アクションとして、ありがちなシチュエーションの中でテンポよく描かれていきます。

このようにアクションは非常に盛りだくさんであり、
全体の尺は31分しかないわけですから、余分なドラマは極力カットされています。
マーベラス達がお宝ゴッドアイを奪うために行動開始するに至る経緯は冒頭のごく短い
スタッフやキャストのテロップが出ているシーンで消化してしまい、
敵の船に乗り込んでから目的地に辿り着くまでも、3匹の幽霊のドジを上手く使ってショートカットしています。

この間、ドラマらしいドラマは進行しておらず、
この映画の中でドラマが描かれるのはマーベラスと敵船長の決闘前と決闘後のそれぞれ少しの時間だけです。
しかもこのドラマが極めて単純明快で、その単純明快さの中にこの映画のテーマが凝縮されており、
他はほぼ全編アクションですから、非常に見るのが楽な面白い映画となっており、
子供向け映画として極めて優秀といえます。
なお、この映画のテーマが何であるのかについてはまた後で本編内で極めて単純明快に出てきますが
それは「ゴーカイジャー」の物語全体の重要テーマでもあると思われるので、そこで改めて考察したいと思います。

さて、しかし今回の映画ではマーベラス一味の戦う敵はどうして幽霊船なのか?
ゴーカイオーの海賊アクションを魅せるためには巨大な敵の船が必要であるというのは分かるのですが、
別にそれは「幽霊船」である必要は無く、普通の海賊船でいいはずです。

マーベラス一味は海賊であり、
今回はマーベラス一味のいかにも海賊らしい側面を強調したいという狙いの映画ですから、
敵もいかにも海賊の敵として相応しいものであるべきです。

海賊というのはどういう敵と戦うのかというと、
現実世界では海賊とは一般人を襲ったり正義の側にいるような官憲などを襲う悪い連中なのですが、
ここではあくまでマーベラス一味は「義賊」というフィクション世界のキャラであり、
そうしたフィクション世界における義賊的な海賊の戦う相手キャラというもので考えなければいけません。

それは悪の海賊、あるいは悪い権力者、特にその配下にある悪い海軍あたりが典型例といえましょう。
TV本編の方でマーベラス一味という正義の海賊の敵である悪い海賊の役回りをまさに演じているのがバスコであり、
悪い海軍としてのイメージを担っているのは艦隊を基地とするザンギャック軍ということになります。

ザンギャック軍があくまでマーベラス達のことをゴーカイジャーやマーベラス一味などとはほとんど呼ばず、
あくまで「海賊」と見下した一般名詞で呼称するのは、
彼らザンギャック軍が「海賊」というイメージに敵対する「海軍」のイメージを担っているからです。
彼らが軍艦を基地として、荒唐無稽な化け物集団ではなく、あくまで秩序だった軍事組織として描かれているのも
「海賊」の敵としての「海軍」のイメージを意識してのことなのでしょう。

つまり「悪い海賊」も「悪い海軍」も既にTV本編の方でマーベラス一味の敵としては登場済みなのであり、
それらとはまた違うタイプの「海賊の敵」として相応しい相手が必要となります。
そこで今回の映画におけるマーベラス一味の敵である幽霊船ですが、
確かに「幽霊船に海賊が欲しがる宝が隠してあって、宝目当てに幽霊船に乗り込んだ海賊が
幽霊に襲われて大ピンチになる」という冒険物語のパターンは存在します。
そういう意味では確かに幽霊船も海賊の敵の典型例の1つといえます。

まぁ実質的には幽霊船の船長ロスダークの戦い方は幽霊というよりは海賊の船長そのものであり、
その搭乗する敵ロボもゴーカイオーによく似た海賊ロボなのですから、
バトルに関しては幽霊船を舞台にした物語らしさはほとんど無く、
巨大海賊船を舞台にした「海賊VS海賊」っぽくなっています。

ただ、それでも確かにストーリー的には、
この映画は「幽霊船の秘宝に挑む海賊の冒険物語」としてしっかりと成立しており、
TV本編とは違う独自性も出せています。
だから結論的には非常に上手く出来上がっていると言えるでしょう。

それで何も問題は無い。
素晴らしい短編映画だったということで総評を終えて、
あとは映画本編のレビューをしていけばいいようにも思えるのですが、
あと少しだけ引っ掛かっている部分について、やや妄想の混じった話をしたいと思います。
それは、この映画のタイトルに関係した話です。

この映画のタイトルは「海賊戦隊ゴーカイジャー THE MOVIE」の部分はまぁどうでもいいとして、
実質的タイトルは「空飛ぶ幽霊船」です。
これは「東映まんがまつり」初期の名作、1969年夏休み上映分のメイン作品だった
「空飛ぶゆうれい船」と同一タイトルと言っていいでしょう。

どうしてこの「東映まんがまつり」初期の名作アニメと今回のゴーカイジャーの夏映画が同じタイトルなのかというと、
どうやら当初はゴーカイジャーの劇場版として、この「空飛ぶゆうれい船」のリメイクが構想されていたようなのです。

なんでそんなことをしようと思ったのか一瞬よく分かりませんが、
「ゴーカイジャー」という作品は自作品に繋がる過去の作品をリスペクトするのを特徴とした作品であり、
春映画では「ゴーカイジャー」のルーツであるスーパー戦隊シリーズの
1975年以降の全34作品をまとめてリスペクトした形になりました。
それに続く夏映画で何かをリスペクトするとなると、
この東映の夏休みの映画枠そのものの歴史をリスペクトしようという構想が持ち上がったとしても
そんなに不自然なことではありません。

1964年の「まんが大行進」以来の東映夏休み子供向け映画枠の延長線上に
この夏休みのライダーと戦隊の劇場版併映枠があるのであり、
その帰結として今回、「ゴーカイジャー」の夏映画が上映されるのですから、
その東映夏休み子供向け映画枠そのものへのリスペクトを込めた作品を制作しようという構想となったのでしょう。

では、その中でどうして「空飛ぶゆうれい船」がクローズアップされたのかというと、
やはり東映夏休み映画といえば「東映まんがまつり」が多くの人、
特に劇場に子供たちを連れてくる父親や母親の世代の記憶に残っているからでしょう。
子供たちはハッキリ言ってゴーカイジャーの活躍が見られればそれで満足なのであって、
過去作品へのリスペクト部分というのは親の世代へのアピールポイントと割り切ればいいのです。

「ゴーカイジャー」関連の劇場版映画というのは
もちろん第一目的は現在の子供たちにゴーカイジャーの活躍を楽しんでもらうことですが、
それに加えて全部が基本的に子供を劇場に連れてくる親世代にも昔を懐かしんでもらおうという
コンセプトでも作られているようです。

そうなるとこの夏映画の場合のコンセプトは懐かしの「東映まんがまつり」へのオマージュということになり、
「東映まんがまつり」を象徴する作品といえば、まず思い浮かぶのは
やはり最初の1969年の「東映まんがまつり」メイン作品の「長靴をはいた猫」ですが、
あれは1969年の春休み映画であって、
今回の枠のルーツである「東映まんがまつり」の夏休み映画の元祖ではない。
「東映まんがまつり」夏休み映画の元祖は、その次の回の「東映まんがまつり」、
つまり1969年夏休みの「空飛ぶゆうれい船」なのです。

しかも「空飛ぶゆうれい船」は単に元祖というだけではなく、名作として名高い。
もちろん「長靴をはいた猫」ももっと名作として名高いが、
「長靴をはいた猫」の場合、あまりにお話が有名すぎてリメイクしづらい。
その点「空飛ぶゆうれい船」は名前はある程度知られているが、
話の内容までしっかり覚えている人は少ないので、リメイクしやすいといえます。

それに「空飛ぶゆうれい船」は石ノ森章太郎原作であり、
「ゴーカイジャー」もまたゴレンジャーとジャッカー電撃隊を登場させている関係上、
スーパー戦隊シリーズとしては34年ぶりに「石ノ森章太郎」が原作者としてクレジットされている作品なので、
実は「ゴーカイジャー」と「空飛ぶゆうれい船」は同じ原作者による作品同士なのです。
それならばリメイクに際して権利関係など障害がほとんど無い。

また、「ゴーカイジャー」は海賊が主役のお話ですから、
海賊と幽霊船はもともと物語世界での親和性が高く、
「空飛ぶゆうれい船」はゴーカイジャーでリメイク話が作りやすい。

まぁ子供たちの付き添いの親世代の観客に懐かしい「東映まんがまつり」へのオマージュとして
「空飛ぶゆうれい船」のリメイクが選ばれる理由としては、シンプルに考えてもこれだけ挙げられます。
しかし、もう少し深くその理由を考えるためには、
そもそも1969年の「空飛ぶゆうれい船」とはどんな内容の物語だったのか知る必要があります。

それは、陰から政府を操りメディアを使った情報操作で人々を洗脳して自己の利益を追求する巨大コンツェルンが、
実はその巨大コンツェルンの陰謀を阻止しようとして戦う幽霊船(本当に幽霊船であるわけでなく
危険な幽霊船という汚名を着せられているだけ)の脅威を煽って、
逆に軍備拡張を推し進めて利益を上げようとするというお話で、
主人公の少年は幽霊船事件に巻き込まれたことをきっかけにその真の黒幕の陰謀に気付き、
幽霊船に乗り込んで巨大コンツェルンと戦うという展開となっています。

アメリカ系っぽい外国資本と結びついたコンツェルンが日本の軍備拡張を画策するのが
絶対悪として描かれているなど、いかにも1969年という時代らしいお話で、
今の時代から見るとズレたところも見受けられますが、
東日本大震災や福島原発災害を経た後にこの作品のリメイクが構想されたことを考えると、
何となく示唆的なものも感じないでもないです。

イデオロギーはこの際度外視して、そこに共通するキーワードは、
一見人々の利益になるかのような甘い言葉で人々を騙して一部の者の利益を画策する
「偽善」や「欺瞞」こそが憎むべき敵だということです。
この2011年の夏に最も求められた正義とは、そうした「偽善」と戦う正義だったのかもしれません。

そして「偽善」というものは表向きは「正義」ですから、正義の側にいる者はどうしても攻撃しにくい。
正義を討つ者は悪でなければならず、「偽善」を討つのも悪であり、
それも正義の心を秘めた悪でなければならない。
それがつまり「偽悪」のヒーロー、つまりアンチヒーロー、ピカレスクヒーローというものです。
海賊の汚名をあえて名乗る「義賊」であるマーベラス一味が真に叩くべき最大の敵は、
本来は悪い海賊や悪い海軍ではなく、こうした偽善の黒幕であるべきではないでしょうか。

ちなみに、この「空飛ぶゆうれい船」をオマージュして宮崎駿が作ったといわれているのが
「ルパン三世」第2シリーズ最終話「さらば愛しきルパンよ」ですが、
ここでは国防省からの兵器生産受注のために軍需企業がその不正を阻止しようとして戦う
アルバトロスというロボットを利用して猿芝居を打ち、
その陰謀を義賊のルパン一味が潰して軍需企業の黒幕を退治するという話となっています。
なお宮崎駿はこの「空飛ぶゆうれい船」の製作に原画スタッフの1人として参加していました。

あるいはこのゴーカイジャー夏映画はこれまた名作といわれる「さらば愛しきルパンよ」を意識して、
ルパン一味を彷彿させるピカレスクヒーローであるマーベラス一味に
そこにおけるルパン一味のような役回りを期待した「空飛ぶゆうれい船」リメイク企画であったのかもしれません。

ただ、「空飛ぶゆうれい船」自体がもともと60分の上映時間の映画であり、
30分のゴーカイジャー夏映画にその内容をリメイクして詰め込むのは無理がありました。
まぁ「さらば愛しきルパンよ」は30分の尺に収めているのですから
単純にドラマ部分だけならば30分程度に圧縮することは可能でしょう。
しかしゴーカイジャーの映画の場合、アクションをたっぷり魅せなければいけないという大きな制約があり、
更にドラマ部分もリメリク部分に海賊物語らしく「お宝争奪戦」という側面も加味しなくてはならず、
その分どうしても長くなります。

だからどうしても、この夏映画の尺の中に「空飛ぶゆうれい船」のリメイクを収めることは出来なかったと見られます。
それでタイトルだけは「東映まんがまつり」の歴史へのリスペクトを込めて「空飛ぶ幽霊船」として、
内容はマーベラス一味が幽霊船の秘宝を手に入れる冒険物語のみとしたのでしょう。

そうした経緯で出来上がったのがこの「空飛ぶ幽霊船」という映画だったとするなら、
この映画の次のエピソードにあたる第24話において登場するセンデンという一風変わった行動隊長の存在が
何となく腑に落ちるような気がします。

第24話はジェラシット篇というべきエピソードで、
ジェラシットが地球人のタコ焼き屋に弟子入りするというお話なのですが、
このエピソードに登場するセンデンというザンギャックの行動隊長の作戦というのが
情報操作によって地球人を騙してザンギャックに従わせようというものでした。

これまで力押しの作戦の多かったザンギャック軍においては異色の作戦ですが、
そもそもこのセンデンという怪人は軍人ではなく
ザンギャックエージェンシーという怪しげな企業の侵略コンサルタントという職種で、
どうもこれまでのザンギャック怪人とは毛色の違うヤツでした。

しかもこのセンデンの情報操作作戦とジェラシットのストーリーは直接ほとんど関係無く、
センデンの作戦はエピソードの前半でマーベラス達の暴力によって簡単に失敗してしまい、
その後センデンはすぐに宗旨替えして武力尊重の作戦を実行するのですから、
そもそも情報操作云々の部分は第24話のエピソード的に不要なのです。
しかし不要な割にはやけに手の込んだ設定になっており、何だかチグハグな印象です。

まぁこの第24話そのものは異常に面白かったので、そういうチグハグさはほとんど印象に残らないのですが、
よくよく考えるとセンデンという特異なキャラクターは第24話においては特に必要ではないのに、
意味ありげに登場しています。

思うに、このセンデンというキャラクターや、
彼に付随する「情報操作によって地球人を騙してザンギャックに従わせる」という作戦は、
もともとは「空飛ぶゆうれい船」のリメイク企画用に用意されていたものを、
そのリメイク企画が頓挫したので、何らかのアレンジを加えてTVエピソード用に流用したものなのではないでしょうか。

夏映画の脚本は荒川氏で第24話の脚本は浦沢氏ですが、
当然ながら宇都宮Pは両方に関わっていますから、
せっかくなので第24話にこの夏映画のボツ怪人を提供し、
浦沢氏がジェラシット篇の中でこれをまたムチャクチャにアレンジしていったが、
情報操作云々という部分は残滓のように一応は残っていたのかもしれない。
まぁこのあたりはそんなふうに妄想しているだけです。
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 21:33 | Comment(2) | 海賊戦隊ゴーカイジャーTHE MOVIE空飛ぶ幽霊船 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月17日

海賊戦隊ゴーカイジャーTHE MOVIE空飛ぶ幽霊船 感想その2

では映画本編ですが、まず東映ロゴの後、宇宙空間をバックにして
レンジャーキーが大量に画面に飛び込んできて並びます。
レンジャーキーはよくチェックすると、第1話時点でマーベラス一味が地球に持ってきた172個、
つまり追加戦士や番外戦士の分を除いた分であるようです。
こうして飛び込んで整列した172個のレンジャーキーが172人の戦士の姿に変わり、
そこから35作記念バージョンのスーパー戦隊ロゴが飛び出してきます。

この飛び込み、飛び出しで思い出しましたが、
この「空飛ぶ幽霊船」という映画、3Dと2Dの両方式で公開されていました。
3Dにも対応しているので、こうして随所に飛び出しや飛び込みなどの演出があり、
画面の奥行を強調する演出などもあります。

戦隊やライダーの劇場版は何故か数年前から、この夏の併映分のみは3D対応になってます。
戦隊の方は2009年のシンケンジャー夏映画から始まりこのゴーカイジャー夏映画で3年目、
同時上映のライダー映画も1年遅れて2010年のW夏映画から2年目です。
当初は珍しさも感じましたが、もう3年目ともなると慣れてきて、
もはや当たり前のことなので別に特筆するほどのことはありません。

さてロゴが出た後、本編のドラマ部分が始まり、まず川沿いの公園をランニングする男が現れます。
これはゴーカイシルバー伊狩鎧です。
ご丁寧に走りながら「ゴーカイシルバー伊狩鎧!今日もランニング絶好調!!」と、
思いっきり自己紹介&説明セリフを言います。

相変わらずバカっぽい男ですが、階段を駆け上がるといきなり立ち止まり、
モロにカメラ目線で、映画を観に来たお客さんに向かって指を突き立て
「お見せしよう!俺の華麗なる名乗り!」と、ものすごいドヤ顔で言います。
いきなりここで名乗りを見せる必然性は謎です。
しかもその場にはいないはずのカメラの向こうの観客に向けて名乗りをするというのですから、
これはいきなり冒頭から尋常ではないシーンです。

「よぉし!」と張り切った鎧は「ゴオオオオオカイ!シルバアアアアッ!!」といつもの、
他の5人の仲間よりもややくどい名乗りを素面で決めます。
つくづく素面で名乗るのが好きな男です。

このちょっと不自然なシーンは、この映画での鎧の出番が
この冒頭のシーンとラストシーンだけであることに関係があるのでしょう。
この映画が公開された8月6日時点ではTV本編は第23話まで放映済みであり、
第17話で登場して第18話でマーベラス一味の仲間入りをした鎧はもうすっかり番組に馴染んでいます。
この映画も時系列的には第23話の後、第24話の前の出来事と思われます。
しかし実はこの映画は第17話よりも前に撮影されています。

これは映画とTVドラマの製作スケジュールの違いによるもので、
どうしても製作に手間のかかる映画は撮影を早めにしておかないといけない。
それでこの映画の撮影は第17話の撮影よりも前だったのです。
ということは、TV本編で鎧が仲間入りする場面が作られるよりも前に、
この映画では既に鎧が仲間入りした前提で撮影が行われたことになります。

いや、そもそも第17話や第18話の鎧がマーベラス一味に加わるストーリーの脚本がまだ出来上がっていない段階で、
この映画の脚本は仕上げられた可能性が高いでしょう。
その脚本も撮影現場に至るまで、そして撮影現場でも様々な修正が入って放映エピソードが出来上がるわけですから、
この映画の脚本を書く段階から撮影をする段階においては、
実は鎧というキャラをマーベラス一味の中でどう動かしていいのか、
まだあまり構想が固まっていなかったと思われます。

そんな状態ですから、下手にマーベラス一味の既存の5人と絡めてしまうと、
実際はこの映画の撮影の後に撮影するのだが映画公開日よりも前にTV放送される
第17話から第23話における鎧の描写と矛盾が生じてしまう危険があります。
かといって、同時進行のTV本編では既に登場済みの鎧がこの映画に全く登場しないというのも、
そんな製作の事情を知る由もない観客の子供たちは奇妙に思ってしまうでしょう。
だから一応は鎧は登場させつつ、既存の5人とは出来るだけ劇中で絡めないで別行動扱いにするという
措置がとられているのです。

これまでのシリーズ作品でも、例年第17話あたりで登場する追加戦士は
夏映画ではこのように別行動で上手く処理されることが多い。
だがここ数年、ゴセイナイト、梅盛源太、須塔兄妹と、
TV本編でも基本的に初期5人とは別行動をとる追加戦士が続いていたため、
この別行動での処理は非常に自然であったのだが、
鎧の場合はTV本編ではガレオンに住んで初期5人と共に生活している設定になっているので、
この映画における別行動はやや違和感があります。

まぁそれはともかく、この映画における伊狩鎧というキャラは、
撮影現場においても「伊狩鎧」というキャラの初お目見えであったわけで、
演じる池田くんだけではなく、制作陣も含めて、
まぁいろいろとキャラのテンションや動きを試してみたかったのでしょう。
それでつい素面名乗りまでやってしまったら結構面白かったのでそのまま使ったのでしょう。

そうして誰もいない真夏の公園で、太陽の照りつける中、1人で素面名乗りを決めた鎧。
まぁどう見ても変質者や不審者の類ですけど、本人は至ってご満悦で
「・・・決まったね」と不敵にほくそ笑みます。
ところがそんな鎧に天が怒ったのか、突如空には黒雲が立ち込め雷鳴が轟きます。
「あ!?」と驚いて空を見上げた鎧は夕立かとも思いましたが、雨は降ってこず、辺りはまるで夜になったかのようです。

これはどうも異常で、自然現象とは思えない。
怪しんで空を覆った黒雲を見据えた鎧の目に、その黒雲の中から空を飛ぶ船が出てきて、
こちらに迫ってくるのが見えました。
「ザンギャック!?」と、鎧はいつものようにザンギャック艦が襲来したのかと思い、上空のその船を凝視しましたが、
近づくにつれてそれが今までに見たザンギャック艦とは全く違うことに気付きました。
それはボロボロな黒い帆船のような形で、船首に大きなドクロのマークがある、むしろ海賊船のように見えました。

「いや、違う!」と、それがザンギャック艦ではない未知の船だと判断した鎧は
「よぉし!ここは俺が!」と張り切ってゴーカイセルラーを取出し、ドラゴンレンジャーのレンジャーキーを装填し、
2番のキー(ドラゴンレンジャーが割り当てられている)を3連打して「カモォン!豪獣レックス!!」と言います。

このあたり、第17話撮影以前の実質的な鎧の初撮影時だけに、
まだゴーカイシルバー関連の設定が固まっていない段階であることが窺えます。
TV本編では鎧はゴーカイセルラーで豪獣神関係の巨大戦力を召喚する時は、
必ず最初はタイムファイヤーのレンジャーキーを使って豪獣ドリルを31世紀に繋がる時空の穴から召喚し、
その後、豪獣ドリルに乗り込んでから
ドラゴンレンジャーのレンジャーキーをコクピットに挿しこんで豪獣レックスへの変形を行ったり、
アバレキラーのレンジャーキーをコクピットに挿しこんで豪獣神への変形を行ったりしています。

だから、TV本編ではゴーカイセルラーにレンジャーキーを装填してキーの3連打をするのは
タイムファイヤーのレンジャーキーの場合だけであり、
ドラゴンレンジャーのレンジャーキーでこの動作を行ってキーを3連打するのはこの映画のこのシーンだけです。
しかもこのシーンは鎧が2番のキーを3連打すると、それに合わせてキーから
ドラゴンレンジャーの顔のCGが3連続で浮かび上がってくるという演出がなされていますが、
TV本編ではタイムファイヤーのレンジャーキーで豪獣ドリルを召喚する際にはこのような演出はなされていません。

まぁ劇場版では普段TV本編ではやらないような派手な演出がなされることは多々あり、
特にこの映画は3D対応なので、こうした飛び出す演出を採用したのかもしれませんが、
おそらくはゴーカイセルラーで直接、豪獣ドリルを経ずに豪獣レックスを召喚するという描写も合わせて、
まだゴーカイシルバー関連の演出案が固まっていなかった頃の1つの試行錯誤なのでしょう。

ここでは鎧がゴーカイセルラーで召喚すると、
まるで夜のようになったビル街に豪獣レックスが雄叫びを上げて出現します。
この段階ではまだ時空の穴とか関係無く出現する設定のようです。
その豪獣ドリルを見て、鎧は「さぁ!ギンギンにいくぜ!!」と張り切って、
ゴーカイシルバーのレンジャーキーをゴーカイセルラーに装填し、錨マークのキーを押します。

するとやはりここではゴーカイシルバーの顔のCGが浮かび上がってきて、
鎧はそのままゴーカイセルラーを突き出して跳び上がり
「豪快チェ〜ンジ!!」と、なんだかデカレンジャーっぽいようなウルトラマンっぽいような
飛び込んでくる変身バンクでゴーカイシルバーに変身。
まぁ変身バンクに関しては他の5人と同系統のTV本編のものが最初から決定していたでしょうから、
ここの場面のは完全に3D対応のこの映画専用の変身バンクなのでしょう。

そうして変身した鎧は豪獣レックスのコクピットに乗り込み、
「よぉし!豪獣ドリルになって、あの船を調査・・・」と言って、
豪獣レックスを飛行能力のある豪獣ドリルに変形させて上空の謎の船に調査に行こうとします。
だったら最初から豪獣ドリルを召喚すれば良さそうなものですが、
そうすると豪獣レックスや豪獣神の出番が無くなるので最初から豪獣レックスで登場させたのかもしれません。

このあたり、もしかしたら制作陣は販促のために豪獣レックスや豪獣神を見せたくて、
そういう思惑も絡んで豪獣レックスがいきなり召喚されるという異例の演出となっているのかもしれません。
何にしてもTV本編ではそのあたりの販促ももっと上手くやっているので、
豪獣神関連の初撮影であったと思われるこの映画では、まだ試行錯誤段階で、
いろいろと豪獣神関係の演出はまだ粗いように見受けられます。

さて、しかし鎧が豪獣レックスを豪獣ドリルに変形させようかとしたその時、
上空の謎の帆船から何かが飛び降りてきました。
地上に降り立ったものは巨大ロボットで、それはなんとゴーカイジャーの巨大ロボ、ゴーカイオーでした。

「・・・ゴーカイオー?・・・なんで?」と鎧は戸惑いました。
ゴーカイオーはマーベラス一味の居住する船であるゴーカイガレオンが合体変形したロボットです。
鎧は普段そのガレオンで生活しており、
ついさっき停泊中のガレオンから地上に降りて1人でランニングしていたら謎の空飛ぶ帆船が出現したのです。
その帆船からいきなり、さっきまで自分がいたはずのガレオンの変形したゴーカイオーが現れるというのは、
どうも変でした。

それにどうもゴーカイオーの様子がいつもとは違います。
左手は鉤爪のようになっており、脚のあたりの配色も黒っぽく、変な黒いマントもしています。
ただゴーカイオーというのは「大いなる力」を使用することで微妙にその形を変えるロボなので、
鎧はこれもまたゴーカイオーの自分の知らない1つの変形形態なのかと思い、
「マーベラスさん・・・そのマントはいったい・・・?」と、
ゴーカイオーを操縦しているはずのマーベラスに向かって訊ねます。

ところがその変な形のゴーカイオーは鎧の問いかけは無視して、いきなり豪獣レックスに斬りかかってきたのです。
不意打ちを喰らった鎧は驚き、「あうっ!?・・・ゴーカイオーじゃない・・・!」と、
ようやく目の前の巨大ロボットがゴーカイオーに酷似した別の巨大ロボットであり、
しかも自分に対して敵意を持った存在であることに気付きました。
慌てて反撃した鎧でしたが、謎の偽ゴーカイオーは右手の剣と左手の鉤爪で執拗に攻撃してきます。

それに対して鎧は豪獣レックスの尻尾の豪獣レックスドリルの一撃で偽ゴーカイオーをひるませるものの、
偽ゴーカイオーはかなり強いようで、豪獣レックスドリルでも大したダメージも受けていない様子で、
豪獣レックス目がけて機銃を撃ちまくってきます。
その激しい砲火の中、鎧は「ここで俺がやられたら地球にピンチがやって来る!でっかい未来が危ないぜ!
ギンギンにいくぜ!!」と、アバレキラーのレンジャーキーをコクピットに挿しこんで豪獣神にチェンジし、
偽ゴーカイオーに突進します。

この偽ゴーカイオーの意図はよく分かりませんでしたが、
この場に鎧がいたのは偶然ですから、もし鎧がすぐに豪獣レックスを召喚して戦わなければ、
この偽ゴーカイオーは街を無差別に攻撃しようとしていたと想像できます。
つまり地球に敵意を持った敵だということになり、ここで自分が負けたら街が攻撃されるに違いない。
だから負けるわけにはいかないと鎧は思いました。
ちなみにここの鎧のセリフの「地球にピンチがやって来る!でっかい未来が危ないぜ!」というのは
「超新星フラッシュマン」のOPテーマの歌詞のフレーズです。

こうして懸命に豪獣神で戦う鎧でしたが、偽ゴーカイオーもそれを上回るほどの強さを発揮し、
じりじりと押された豪獣神は偽ゴーカイオーの目から発したレーザー光線を喰らい、ダメージを受けて後退します。
豪獣神はこのままだとピンチです。

ところがその豪獣神の姿を見て、
偽ゴーカイオーの中から謎の声が「もっともっと・・・強くなければ話にならん!仲間を呼んで出直してこい!!」と響くと、
偽ゴーカイオーはマントを翻して豪獣神に背を向け、上空の黒い帆船に向かって跳び上がっていきました。
「待て!!」と鎧が驚いて呼び止めますが、黒い帆船は偽ゴーカイオーを収容すると飛び去っていってしまいました。

戦いは偽ゴーカイオーの方が優勢で、あのままだと豪獣神は倒されていたはずです。
それなのに偽ゴーカイオーは戦いをやめて去っていってしまいました。
街を破壊することも目的ではなかったようですし、豪獣神や鎧を倒すことも目的ではなかったようです。
仲間を呼んで出直してくるように言っているということは、強い相手との戦い自体が目的なのかとも思えましたが、
それでは別に鎧を見逃す理由にはなりません。
偽ゴーカイオーや黒い帆船の意図が全く分からず、鎧は豪獣神のコクピットを叩いて悔しがるのでした。

さて場面は変わってゴーカイガレオンの船室では、
鎧からの偽ゴーカイオーとの戦いについての報告がもたらされていました。
この場面には鎧は登場せず、この後、この映画のラストシーンまで鎧は出てきません。

どうして鎧がガレオンに戻ってきていないのかについては、
制作的な裏事情としては前述したように、この段階ではまだ鎧と既存5人をあまり絡めたくないからなのですが、
劇中説明的にはその理由はちょっと不明です。
戦いで怪我でもして帰りが遅れているとでも解釈しましょう。
それで連絡だけは外からしてきたようです。

その連絡を受けてルカが「あいつがそんな簡単にやられるなんてねぇ・・・」と船室内の仲間たちに向かって、
少し心配そうに言います。
鎧が心配というより、鎧を負かしたという謎の敵のことが気にかかるようです。
「かなりの強敵ですね・・・」とアイムも不安げです。

ただ、ルカもアイムもただ単に相手が鎧の豪獣神をも負かすほど強いという理由だけで
いつになく動揺しているわけではありません。
「・・・しかも、ゴーカイオーに似てるってのはどういうことなんだ?」とジョーが
マーベラスの方を向いて問い質したように、
その鎧が戦った相手というのがゴーカイオーと酷似していたという鎧からの報告に、
みんな何とも言えない不気味さを感じているのです。

ゴーカイオーはゴーカイジャーだけの持ち物であり、量産型の巨大ロボなどではないはずですから、
ゴーカイオーに酷似したロボットが他に存在するはずがない。
そのはずだとジョー達は思っています。
それで、ゴーカイオーに変形合体するゴーカイガレオンに赤き海賊団時代から乗っていた
船長のマーベラスならば何か心当たりがあるのではないかと思い、ジョーはマーベラスに問い質したわけですが、
マーベラスにも自分達のゴーカイオー以外に別のゴーカイオーが存在するなど皆目見当のつかない話であったので、
黙って考え込み、答えません。

そこにハカセがやって来て「鎧が送ってくれた画像、プリントしてみたよ」と言って、1枚の紙を差し出します。
そこには例の黒い帆船の姿がプリントされていました。
鎧は偽ゴーカイオーの姿を撮影する余裕は無かったようですが、
上空に浮かんで迫ってきていた黒い帆船は豪獣レックスのカメラで撮影することには成功していたようです。

そのボロボロの黒い帆船の異様な姿を見て、アイムは「これって・・・」とまるで幽霊船のようだと思い言葉を失いました。
ところが、その画像を見てナビィが何故か過剰な反応を示し、
「わあああ!!幽霊船!幽霊船だあああ!!」と大騒ぎして怯えて飛び回ります。
アイム、ハカセ、ルカはナビィの異常な怯えっぷりに怪訝そうな顔をしますが、
ジョーまでもその画像のプリントされた紙を手に取って、驚いた顔で
「間違いない・・・宇宙を彷徨い、死者の魂を呼び寄せるという噂の船だ・・・!」と言うのでした。

どうやらナビィとジョーはこの謎の黒い帆船の正体を知っているようで、
それは宇宙を彷徨う有名な幽霊船であるようです。
ナビィとジョーというと、このマーベラス一味のメンバーの中では古参メンバーであり、
この2人が知っているということは、やはりマーベラスもこの幽霊船のことは知っているようで、
画像を横目で見ると立ち上がったマーベラスは「・・・そして、この船にはとんでもねぇお宝が積まれてる!」と言って、
その画像の紙をジョーの手から掴み取り、不思議そうな顔で見守る一同に背を向けて数歩進みながら
「・・・ゴッドアイ・・・どんな夢も1つだけ叶える宝玉・・・海賊の間では有名な代物だ・・・!」と言います。

このゴッドアイという秘宝のことはジョーもナビィも知らなかったようです。
つまり、チンピラだったとはいえ、もともと一応は海賊であったマーベラスは
赤き海賊団に入る以前の昔から、この海賊業界では有名な噂となっていた幽霊船の話も、
そこに積まれているという噂のゴッドアイという秘宝の話は知っていたようですが、
別にそのことを赤き海賊団に入ってから話題にしたことも無いようです。
だからナビィもゴッドアイのことは知らなかったのでしょう。

マーベラスは赤き海賊団のアカレッドやその飼っていたオウムロボットのナビィは
もともと海賊だと思い込んでいましたが、実際はアカレッドは海賊ではなく地球のスーパー戦隊の関係者でした。
だからアカレッドは海賊ではなくナビィも海賊の仲間ではない。
よってアカレッドもナビィも幽霊船のこともゴッドアイのことも知らなかった。
マーベラスはアカレッドもナビィも海賊なのだから幽霊船の噂もゴッドアイの噂も当然知っていると思って、
赤き海賊団に入って以降も彼らの前であえて幽霊船に関する噂話などしなかったのでしょう。

そもそも赤き海賊団は「宇宙最大のお宝」一筋の海賊団だったから、
そんな幽霊船やゴッドアイのことなどどうでもよかったのです。
そういうわけでナビィは幽霊船もゴッドアイのことも知らなかった。
そしてジョーもルカもハカセもアイムも、それに鎧ももちろん、
彼らは皆、もとは海賊ではなかったのですから当然、幽霊船の噂もゴッドアイの噂も知りませんでした。

ただ、ジョーとナビィだけは幽霊船の噂だけは知っていたというのはどういうわけかというと、
おそらくマーベラス一味をマーベラスとナビィが旗揚げしてジョーが加わった後、ルカが加わるまでの時期に、
他の海賊との接触などによってナビィとジョーは幽霊船の噂を耳にする機会があったのでしょう。
それは宇宙を彷徨うボロボロの黒い大きな帆船で船首に大きなドクロのマークがあり、
死者の魂を呼び寄せるという噂であったのでしょう。

ただ、その時マーベラスもその場にいたであろうと思われるのですが、
どうしてマーベラスはその時にゴッドアイの話題を出さなかったのか?
それはおそらく、「宇宙最大のお宝」一筋のマーベラスにとっては
幽霊船やゴッドアイは大して興味のある対象ではなく、
おそらくそんな幽霊船など実在しないと見なしていたからでしょう。

夢想家であるマーベラスらしくないようにも思えますが、
もともとはマーベラスは「宇宙最大のお宝」さえ単なる伝説に過ぎないと見なしていた、意外に現実的な人間でした。
マーベラスは単に「夢は諦めたら手に入らない」とアカレッドに諭されて、
それであえて「宇宙最大のお宝」の実在を信じることにしたのです。
だから伝説のお宝ならば何でもかんでも片っ端から実在を信じるという天性の夢想家というわけではない。

マーベラスにとって実在すると信じる価値のある夢、すなわちお宝は「宇宙最大のお宝」だけであり、
根は意外に現実主義者のマーベラスは幽霊船やゴッドアイなどは実在しない、
そんなものはただの宇宙の船乗りに言い伝えられた怪談だと思っていたようです。
だからナビィやジョーと一緒にいた時に幽霊船の話題が出た時も、そんな藩士はどうでもよく、
あまり話に乗ることもなく、ゴッドアイの話題も出していなかったのでしょう。

そしてマーベラスがそんな調子ですから、ジョーもナビィも幽霊船はどうせ実在などはしない、
ただの宇宙の怪談の類だろうと思い、記憶の片隅に追いやり、
その後に仲間になったルカやハカセやアイムや鎧にも幽霊船の話などしたこともなかったのでしょう。

ところが、今回、鎧が撮影した画像を見ると、かつて噂に聞いた幽霊船そのものであったので
マーベラス、ジョー、ナビィの三者はビックリしたのです。
ナビィは幽霊船が実在して自分達の敵となったことが怖いので怯え、
ジョーは本当に幽霊船が実在していたことにただ驚き、
マーベラスは幽霊船が実在しているのならゴッドアイも実在しているに違いないと思ったのです。

そのゴッドアイは「どんな夢も1つだけ叶える宝玉」だとマーベラスはかつて噂で聞いていました。
そんな都合のいい宝玉など存在するわけがない、
だいたいそれを積んでいるという幽霊船だって、そんな怪しげなものが存在するはずがないと
マーベラスは思ってきました。
しかし幽霊船は実在した。
幽霊船が実在するぐらいならば、どんな夢も叶えるゴッドアイだって実在しているのではないかと
マーベラスは思い、ムクムクと好奇心が湧きあがってきました。

ところが、それを聞いてハカセは興奮して立ち上がり
「すごいや!それを手に入れて、宇宙最大のお宝が欲しいって願えば・・・!」と言い、
言葉を継いでルカも「大いなる力とか関係無く一気にゲットできる!やったねぇ〜!!」と大喜びで
ハカセの身体を叩きます。

マーベラスは単にゴッドアイがもし実在するのなら興味深いと思っただけだったのですが、
確かにハカセやルカの言う通り、ゴッドアイがもし「夢を叶える宝玉」だとすれば、
ゴッドアイを手に入れて「宇宙最大の夢を手に入れる」という夢を叶えるように願えば、
「宇宙最大のお宝」を手に入れることが出来るということに気付きました。

現状、「宇宙最大のお宝」を手に入れるためにはスーパー戦隊の34の「大いなる力」を揃えなければならない。
その「大いなる力」はこの時点でマーベラス達は22個集めており、残りは12個です。
ペースとしては一応順調とはいえますし、その手間を特に面倒だとも思っていなかったマーベラスですが、
最近バスコという邪魔者が現れて、「大いなる力」を横取りするために何かと画策してくるのが
鬱陶しいと感じていました。

バスコに「大いなる力」を奪われること自体への焦りは、
少し前に元ボウケンレッドの明石との冒険の時に解消しました。
しかし先日、元ゴーピンクの巽マツリから「大いなる力」を奪うためにバスコは
無関係の少年の命を盾にとって脅迫してきたりしました。
「大いなる力」の奪い合いのせいでレジェンド戦士や一般人に危害が及ぶ可能性も生じてきたのです。
そのことを思い出すと、マーベラスは「大いなる力」争奪戦をスルーして「宇宙最大のお宝」が手に入るのなら
それに越したことはないと思いました。
そう考えるとマーベラスはゴッドアイをますます欲しくなり、何とか手に入れたくなってきました。

しかし、そこでアイムが「ちょっと待ってください」と慌ててハカセとルカを落ち着かせるように口を挟みました。
アイムは「・・・先ほどの噂が本当なら死者の国に引き込まれてしまう恐れがあるのではないですか?」と
慎重に確認するように問いかけます。

噂というのはジョーの言っていた「幽霊船は死者の魂を呼び寄せる」という噂のことです。
つまり幽霊船の中には死者の魂がウヨウヨいるということであり、
ゴッドアイを手に入れるために幽霊船の中に乗り込んで、そんな死者の魂の群れの中に入っていけば、
どう考えても無事では済みそうもない。
死者の魂にとりつかれて自分達も死者の国に引き込まれてしまうのではなかろうかとアイムは不安になったのでした。
というか、アイムはそういう危険が当然予想されるのに能天気にはしゃいでいる
ハカセやルカの方が見ていてちょっと怖いような気がしました。

ジョーもアイムの後ろで腕組みをして
「ああ・・・幽霊船に立ち向かって、今までに生きて帰ってきたヤツはいないからな・・・」と呟きます。
アイムにそう言われてジョーは幽霊船に関して昔聞いた噂には、
幽霊船に乗り込んで生きて帰ってきた者はいないという噂も含まれていたことを思い出したのです。
今まではその噂自体、ただの宇宙の怪談の類だと思って信じていなかったジョーですが、
こうして幽霊船そのものの実在が明らかとなった以上、その噂も本当のことなのかもしれないとジョーは思いました。

つまりこれまでにもゴッドアイ目当てに幽霊船に乗り込んだ者は本当に何人もいたが、
全員生きて戻ることは出来なかったのではないだろうか。
それはつまり全員命を落としたということであり、
噂通りに幽霊船内が死者の魂で満ちているとするならば、
アイムの言うように幽霊船に挑んだ者達は全員、死者の国に引き込まれてしまったのかもしれない。

ナビィもジョーと同じように怪談は本当の話だったのだと思い、そんな怖い場所に行くのに怖気づき、
「ああ〜怖いよぉ〜・・・どうするの?ど〜するの?みんなぁ〜・・・」と焦って船室内を飛び回り、狼狽えます。
そしてナビィは「ねぇねぇねぇねぇ!マーベラスゥ〜?」と縋るように、
皆に背を向けたまま立つマーベラスの方に飛んでいきます。

マーベラスは、さすがに死者の国に引き込まれるとか、そんなことはないだろうとは思いましたが、
幽霊船が実在してその伝説が伝わっている以上、
かつて幽霊船に挑んだ海賊たちが存在したのは事実なのだろうと思いました。
そして生きて戻った者がいないというのも事実であろうと思いました。
だからこそ死者の魂を呼び寄せるとかいうのはあくまで噂なのだと思ったのです。

何故なら、幽霊船に行って生きて戻った者がいない以上、
幽霊船の中がどうなっているかなど実際のところは誰も知っているはずがないからです。
幽霊船に挑んだ者が誰ひとり生きて戻ってこなかったことから海賊たちの間で恐怖が生まれ、
その恐怖心が死者の魂がどうのこうのという噂を生み出したに過ぎないのだとマーベラスは思いました。

しかし、となると、誰も幽霊船の内部の実態を知らないのだとするなら、
もしかしたらやはりゴッドアイも実在しないのかもしれない。
だがゴッドアイ目当てに多くの海賊が命を落としてきたのはどうやら事実のようだから、
幽霊船にゴッドアイが存在するという話にはそれだけの信頼性はあると思えました。

そして間違いない事実は、幽霊船にはとんでもない危険が待ち構えているということです。
1つ確かなことは、そこにはどういうわけかゴーカイオーにそっくりな巨大ロボットがあるらしいことです。
どうしてゴーカイオーそっくりな巨大ロボがあるのかマーベラスにはさっぱり分かりませんでしたが、
とにかくその偽ゴーカイオーは豪獣神を負かすほどの強敵であるということで、
それだけでも十分、幽霊船には危険が潜んでいると言っていい。
その上に、他にどんな危険が潜んでいるか想像もつかない。

しかしマーベラスには迷いはありませんでした。
「・・・だが!・・・お宝のために命を賭ける・・・」と言うと、マーベラスは皆の方に振り向いて
「それが海賊ってもんだろ!」とニヤリと不敵に笑います。

マーベラスはもう既にゴッドアイというお宝を手に入れたいと思ってしまっていました。
欲しいお宝は自分の手で掴み取る。それを邪魔する者はぶっ潰す。それが海賊のシンプルな行動原理でした。
相手が誰であろうが、どんな強大な敵であろうが、お宝を掴み取るためには決して逃げずに戦い、ぶっ潰す。
そのポリシーは曲げられない。
それが命懸けの戦いになろうとも、勝ち目が無かろうとも、たとえ相手が幽霊であろうとも、
とにかく一旦手に入れると心に決めたお宝を掴み取るために突き進む。
それが海賊なのであり、それを曲げてしまうと、もはやマーベラス達は海賊ではなくなってしまう。
だから、海賊である以上、ここでマーベラスが迷うということは決して無いのです。

仲間たちもマーベラスの言葉を聞いて、
マーベラスがゴッドアイを手に入れたいお宝として狙いを定めたことを悟り、
マーベラスがそうなった以上は相手が生きて帰った者のいない難攻不落の幽霊船だろうが何だろうが、
もはや突き進むしかないと悟りました。

それはマーベラスが海賊だからであり、
そして同時にジョーもルカもハカセもアイムも海賊でしたので、
マーベラスと想いは1つ、やはりゴッドアイを手に入れ、そして「宇宙最大のお宝」を手に入れたいと思った以上、
ゴッドアイ目指して突き進むことに迷いはありませんでした。
「幽霊船のお宝目指して、全速前進だぁっ!!」と号令をかけるマーベラスに、
4人は声を合わせて「おお!!」「OK!!」「うん!!」「はい!!」と力強く応えました。

ここでマーベラスが幽霊船の画像の紙を放り投げて、それが画面いっぱいに広がって幽霊船が画面に大映しとなり、
その後、マーベラス、ジョー、ルカ、ハカセ、アイムの5人のそれぞれの紹介カットに重ねて
「宇宙最大のお宝を目指して地球に舞い降りた5人!
それは海賊の汚名をあえて名乗り、夢に向かって突き進む豪快な奴らだった!」というナレーションが流れます。

それぞれの紹介カットは宇宙空間を背景にそれぞれの変身前姿と、それぞれの手配書が配置され、
手配書の似顔絵欄にはそれぞれの変身後姿の画像という感じになっています。
そしてそれぞれの個人紹介カットに役名とキャスト紹介テロップが出ます。
なお、この映画はあくまで初期メンバー5人がメインなので鎧はこの個人紹介カットは与えられていませんで、
後で普通にテロップだけで紹介されています。

そして宇宙空間をバックにゆっくり並んで歩く5人のカットに海賊旗がバックに変わると、
同時に5人は変身後姿に変わり、この映画のタイトル文字が飛び出してきて、
「海賊戦隊ゴーカイジャー!THE MOVIE!空飛ぶ幽霊船!!」とそれが読み上げられ、
ここでタイトル文字が出て導入部が終わってここからいよいよ物語が本格的に動き出していきます。

さていつものTV本編ならば、このタイトル文字の後はOPテーマとなるのですが、
この映画の場合はこのままドラマ部分が続きます。
ただし、普通にドラマが進行していきながら、この後、ガレオンが幽霊船の中に突っ込む場面までは、
画面上にはキャストやスタッフの紹介テロップがポンポンと出ていくことになります。

まずはここで場面は宇宙空間に展開するザンギャック地球侵略軍の旗艦ギガントホースの司令室の
TV本編でもお馴染みのシチュエーションの場面となります。
この映画にも一応ちゃんとザンギャックの皆さんも登場します。まぁちょっとだけですけど。
どうやらここでは司令室に集まって幹部たちから現在の諸状況の報告を
司令官ワルズ・ギルが受けている場面のようです。

司令官席に座って幹部たちの報告を受けていた司令官ワルズ・ギルは、例の幽霊船の件も報告を受けたようで、
それを聞くと驚いて「なぁんと!?あの幽霊船が地球に!?ゴッドアイを積んでいるというアレか!?」と問い返します。
ワルズ・ギルは幽霊船やゴッドアイの言い伝えを知っていたようです。
それを聞いてダマラスが不思議そうに「・・・その通りですが・・・何か?」と
ワルズ・ギルの心中を伺うように問い直します。

ダマラスも幽霊船の伝説のことは知っていたようで、
まさかそれが実在して、こうして地球に現れたということには驚いていたものの、
だからといって自分達の地球征服事業に特に関係のあるようなことでもないと思い、さして重要視していませんでした。
まぁ一応はちょっと珍しい事としてワルズ・ギルへの報告の中に入れ込んでいただけであり、
まさかワルズ・ギルが食いついてくるような話題とも思っていなかったので
ダマラスはワルズ・ギルの鋭い反応を意外に思ったのでした。

もしかしたら幽霊船を使った何か斬新な作戦でも考え付いたのかもしれないと、
あんまり期待しすぎないようにしてダマラスが問うと、
ワルズ・ギルは指令席から駆け降りてくると得意げに
「分からないのか!?それがあれば地球征服など一瞬で終わるのだぞ!!夢のお宝ではないかぁ!!」と
興奮気味にまくしたてます。

ダマラスは案の定のワルズ・ギルの安直っぷりに失望しました。
ワルズ・ギルは何でも夢が叶うというゴッドアイを手に入れて
「地球を征服したい」という夢を叶えようとして考えているのです。
しかし何とも情けない。
確かに思わぬ海賊の邪魔で苦戦に陥ってはいるものの、
地球征服ぐらいは自力で成し遂げなければザンギャック帝国の皇太子として恥ではないか。
お宝の力に頼って何の努力もせずに地球征服の成果だけ得ようとは虫が良すぎる。

だいいち何でも夢が叶う宝が手に入れば帝国の後継者として願うべき夢ならば
他にもっと気宇壮大なものがありそうなものです。
それなのに自分の目先の課題の達成に安直に使おうなどとは、
本当に自分の目先のことしか見えていない小人物と言うほかない。
いや、そもそも徹底した現実主義者のダマラスは、
たとえ伝説通りの姿の幽霊船が実在したとしても、
何でも夢が叶うなどという都合のいいお宝がこの世に存在するなどとは到底信じていないのです。

そんな在りもしないものに頼ろうというワルズ・ギルの浮ついた考え方自体を情けなく思い、
ダマラスは進み出て「殿下!・・・そのような安易なお考えは・・・!」と意見しようとしますが、
ワルズ・ギルはまたダマラスの鬱陶しい小言が始まったと思い、
「うるさぁ〜い!!」と大声を張り上げて怒鳴り、「うるさい!うるさい!うるさぁ〜い!!」と喚き散らして
ダマラスを黙らせながら司令席に駆けあがり、椅子にしがみついて
「どんな手を使おうと、征服は征服だぁ〜っ!!」と駄々っ子のように吠えます。

ダマラスは呆れて黙り込み、
代わってインサーンが「ワルズ・ギル様・・・それならお急ぎになられた方が・・・」と進み出ます。
続いてバリゾーグも「海賊どももおそらくゴッドアイを狙っているかと・・・」と進言します。
インサーンもバリゾーグも地球征服の手段へのこだわりやゴッドアイの正体など別に興味は無い、
ただのワルズ・ギルのイエスマンですから、ワルズ・ギルがゴッドアイを所望ならその決定に従うだけのことです。

ただ、ゴッドアイを手に入れるなら早く動かねばならない。
ザンギャック軍は地球に突如現れた幽霊船がゴーカイジャーと交戦したことを既に知っていました。
つまりゴーカイジャーも幽霊船の存在を知ったということであり、
彼らが海賊である以上、ゴッドアイの伝説も知っているはずであるから、
きっとゴッドアイを手に入れようとするはずだと、インサーンとバリゾーグは読んでいました。
早く動かねばゴーカイジャーに先を越される危険があるのです。

それを聞いたワルズ・ギルは「なにぃ!?」と驚いて振り向き、「うう〜む・・・」と焦ります。
あの忌々しい海賊どもとゴッドアイを奪い合うとなると、並の行動隊長では危うい。
ゴッドアイを海賊に横取りされてたまるかと怒りを滲ませ、
ワルズ・ギルは「バリゾーグ!インサーン!ただちに出撃だぁぁっ!!」と幹部2人にこの重大任務を命じ、
インサーンとバリゾーグは「はっ!」と恭しく一礼して司令室を退出していったのでした。

一方、マーベラス一味はさっそく幽霊船の探索を開始していました。
結局、鎧は伴わずに今回は5人で幽霊船に乗り込むことにしたようです。
これは制作的な事情なのですが、まぁ一応劇中での事情を脳内補完しておくとすると、
まず鎧が先の偽ゴーカイオーとの戦いで負傷したこともあるでしょうが、負傷自体はまぁ大したことはない。
むしろ、幽霊船でどんな危険が待ち受けているか分からないので、
5人が幽霊船で最悪の事態に陥った時に鎧が連絡を受けて助けに向かうことが出来るように、
鎧を待機させていると解釈した方がいいでしょう。

また、どうして鎧が待機要員なのかというと、鎧が豪獣ドリルの操縦者であるからというのも大きな理由ですが、
鎧のモチベーションの問題も考慮したのでしょう。
鎧はあくまでザンギャックを倒して地球や宇宙を平和にするという夢を実現するために海賊になったのであり、
お宝探しに賭けるモチベーションはマーベラス達ほどは高くない。
実際、バスコとの「大いなる力」争奪戦の場合、まだあまり戦う意義が
自分の中でピンときていない様子も見受けられました。
そんな鎧を極めて危険なお宝探しの探検となる幽霊船への突入に同行させるのは、
マーベラス達も少し危険な気がしたのです。

さて、そういうわけで5人の乗ったゴーカイガレオンは地球上空の何処かにいるのであろう幽霊船を探し求めて、
どんどん空を進んでいきます。
見張り台には5人の中で一番目が利くルカと、付き添いでアイムが昇っており、空を見回していました。
そうしていると、ガレオンはやけに厚い雲の中に入っていきました。

「雲が多いですね・・・」と少し困った顔でアイムが言います。
こう雲が多くては視界が悪くて幽霊船を探すどころではない。
しかし、これだけ探しても幽霊船が見つからないということは、
幽霊船は雲の中に隠れているのではないかとルカは思い、黙って雲の隙間に目を凝らします。

その時、鋭く雷鳴が轟き、アイムは思わず「きゃあっ!」と叫んでルカにしがみつきます。
ルカは鎧が雷鳴と共に幽霊船が現れたと報告していたことを思い出し、幽霊船は近くにいるのではないかと思いました。
そうして雲の切れ目に視線を凝らし、雲の切れ目に黒い物体が浮かんでいるのを遂に発見したのでした。
「見えた!」とニヤリと笑ったルカはモバイレーツで「左舷90度!近いよ!」と操縦席のマーベラスに連絡します。
幽霊船は雲を隔てて、実はすぐ近くにいた。そのようにルカには見えたのです。

マーベラスはルカからの連絡を受けて操舵輪を回してガレオンを左に旋回させました。
すると正面に、確かに鎧から送られてきた画像と同じ黒い幽霊船が見えました。
「あれか!・・・見つけたぜ!」と、マーベラスはさっそく横付けして乗り込んでやろうとガレオンを前進させます。

ところが、ガレオンはなかなか幽霊船に到達できません。
実は幽霊船はそんなに近くにいたわけではなかったのです。
近くにあるように見えたのは目の錯覚でした。
実はかなりガレオンと幽霊船の間には距離があったのですが、
あたかも近くにあるように見えたのは、幽霊船がおそろしく巨大だったからです。

そういうわけなので、近づくにつれて幽霊船はどんどん大きくなっていきます。
船室のモニターに向かっていたハカセは「ちょ・・・嘘でしょ!?・・・どんだけ大きいの!?」と驚き呆れます。
横に立ったジョーもモニターに映った幽霊船の巨大さに唖然としながら
「・・・高さは20倍以上はあるだろうな・・・」と呟きます。
ハカセはガレオンが小舟以下の大きさに見えてしまうほどの、
予想を遥かに超える幽霊船の圧倒的な大きさに「ほえええ〜・・・!」と絶句し、
見張り台から船室に降りてきたルカもアイムも唖然としてモニターを見ます。

しかし操縦室のマーベラスは全く臆することなく、「よぉし!一気に突っ込むか!!」とガレオンを全速前進させて、
巨大な幽霊船の下に潜り、その船底の下ギリギリのところを突っ切っていきます。
ハカセの「うわあああああ!!」という絶叫がガレオン内に響き渡りますが、
難なく幽霊船を追い越してその船首の下部に出たガレオンは、
そこにある巨大なドクロの口からどうやら船内に入ることが出来るようだと判断したマーベラスによって、
ドクロの口の中に突っ込んでいったのでした。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 11:34 | Comment(2) | 海賊戦隊ゴーカイジャーTHE MOVIE空飛ぶ幽霊船 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月18日

海賊戦隊ゴーカイジャーTHE MOVIE空飛ぶ幽霊船 感想その3

幽霊船の船首に開いたドクロの口から巨大な幽霊船内部に侵入したゴーカイガレオンは、
巨大な洞窟のような船内を、船尾方向に向けて進んでいきました。
そこは誰も人はおらず、ボロ布が多数ぶら下がっている薄暗い不気味な空間で、
見た感じ、とても現在使用している船とは思えない、廃船そのものに見えました。
こんな廃船としか思えないものが飛んでいるわけですから、ますます不気味でした。

そして、その船内の空間は船尾方向へ進むにつれて狭くなっていき、ガレオンでの飛行が困難になってきたので、
マーベラス達5人はガレオンを停泊させておいて、その先はガレオンを降りて5人で徒歩で進むことにしました。
この広大な船内の何処にゴッドアイがあるのか皆目見当はつきませんでしたが、
少なくともここまで通って来た廃墟のようなスペースには無さそうでした。
この先、どんどん狭くなっていくと船首と船尾の中間ぐらいに居住スペースのようなところがあって、
そこにゴッドアイもあるのではないかと、マーベラス達は漠然と考えたのです。

しかし居住スペースといっても、こんな廃船のような船にいったい何者が居住しているというのか。
この船が何らかの意思に操られて動いている以上、何者かがこの船にいるのでしょう。
鎧が偽ゴーカイオーから「仲間を連れて出直してこい」という人の声が聞こえたと言っており、
その偽ゴーカイオーがこの幽霊船に収容されたというのですから、何者かがこの幽霊船には居るのは間違いない。
しかし、こんな廃船に住む者というと、まさに幽霊なのではないだろうかと、ハカセは何だか怖くなってきたようです。

最初はゴッドアイを手に入れて「宇宙最大のお宝」もゲットしようと張り切っていたハカセでしたが、
この不気味な船内の光景を見ているうちに、やはりジョーの言っていた噂通り、
この船には死者の魂が招き寄せられているように思えてきて、生来の臆病癖が出てきて
「うわああ・・・やっぱ止めない・・・?」と言ってガレオンに戻りたがります。

しかしマーベラス達は構わず歩きだし、
ルカは「ここまで来て何言ってんのよ!」とハカセを叱って手を引っ張って連れていきます。
幽霊船だの死者の魂だのというのは海賊の恐怖心が作り出した言い伝えに過ぎない。
この船に何者かが潜んでいてゴッドアイを守っているのは確かであろうが、それは幽霊などであるはずはない。
ハカセを除くマーベラス達はそう考えていました。

ところが、マーベラス達5人が歩いて去っていったガレオンの停泊場所の近くには、
何やら半透明のフワフワ浮かぶ、まるで幽霊のような物体が3つ行き交い、
「フハハハハ・・・」「ケケケケケ・・・」と不気味な笑い声を上げて、
マーベラス達の後ろ姿を見つめていたのです。

さて一方、ワルズ・ギルからのゴッドアイを奪ってくるようにという命令を受けて出撃したインサーンとバリゾーグは、
ギガントホースから目立たないように小型の戦艦に乗り換えて、配下の兵達と共に幽霊船に接近していました。
「目標補足・・・」と言ってバリゾーグは幽霊船への降下準備に入ります。
このゴッドアイ回収部隊の作戦は戦艦から幽霊船にバリゾーグとインサーン率いる行動部隊を降下させ、
行動部隊が幽霊船内部に侵入してゴッドアイを奪うというものであるようです。

インサーンもバリゾーグに続いて降下準備に入る前に、両手で抱えた大型の火器を愛おしそうに見つめて
「さぁ・・・お出かけの時間よ・・・」と我が子に言い聞かせるように言います。
そしてインサーンは「ゴッドアイは何としても私達が手に入れるわ・・・海賊たちに出くわしたらよろしくね・・・
ニューウェポンちゃん・・・」と色っぽく呟き、その大型火器に口づけをしました。
どうやらこの大型火器はインサーンが新たに開発した新兵器であるようです。
この実戦に初めて投入する新兵器を、もし幽霊船の中でマーベラス一味に遭遇したら使ってやろうと、
武器開発の技官らしい秘かな楽しみをインサーンは胸に秘めていたのでした。

そうして小型戦艦を幽霊船の甲板の上に停止させると、
バリゾーグとインサーンと配下のゴーミン達は降下を開始します。
ところが、なんといきなり幽霊船は右に旋回していき、降下部隊の真下にあったはずの甲板が右に移動していきます。
「なに!?・・・突然の方向転換だと!?」とバリゾーグは仰天し、
インサーンも新兵器を抱えたまま「嘘でしょお!?」と慌てます。
見ると、自分達の落下していく先は甲板ではなく、黒雲の立ち込める空となっているのです。

大慌てで空中で足掻くザンギャック降下部隊の面々でしたが、そんなことをしてもどうなるわけもなく、
「うわあああ!」という叫びを残して、そのまま真っ直ぐ、
幽霊船の左舷の空中を虚しく地上に向かって落下していったのでした。
降下部隊を乗せた小型戦艦の接近は幽霊船に察知されていたのか、あるいは単なる偶然なのか分かりませんが、
とにかくザンギャックの作戦はあっけなく大失敗に終わったのでした。

小型戦艦に設置してあったカメラからのモニター映像をギガントホースの司令室で見ていたワルズ・ギルとダマラスは、
あっという間に幽霊船の脇の空中を点のようになって落ちていく降下部隊の姿を見て、唖然として顔を見合わせました。
すると突然ワルズ・ギルは「おのれおのれおのれ〜!」と傍にいたゴーミンの頭を八つ当たりでポカポカ殴り始め、
更に作戦失敗の腹いせにキレまくって司令室内のゴーミン達に片っ端から
「おのれ〜!あいつら役立たずが!!」と殴る蹴るの乱暴狼藉を働きます。

この殿下御乱心にダマラスは慌てて「おやめください殿下!!」と縋りついて止めようとしますが、
ワルズ・ギルの大暴れは止まることなく、そこらにいたゴーミンの肩を掴んで
「お前のせいだ〜!!」と大きく振り飛ばし、プロレスのロープに投げられたレスラーのように
別のゴーミン達によって弾き返されてきたそのゴーミンに向かって、
ワルズ・ギルは豪快にドロップキックを炸裂させます。
そうしてゴーミン達ともども床に落下するワルズ・ギルに
ダマラスが情けなそうに「殿下ぁ〜!!」と嘆く声が司令室内に響くのでした。

さて、今回のこの映画、ザンギャック勢の出番はこれで終わりです。
これだけならメインストーリーに絡むこともなく、別に登場しなくても一緒だとも思えます。
そもそも31分しかない今回の映画でマーベラス一味と幽霊船の対決を描き、
その上ザンギャックまで絡めて三つ巴の戦いを描く尺的余裕は無く、
最初からザンギャックを絡めることは不可能だったのです。

だから本来はザンギャックは登場させなくてもいいのですが、
「199ヒーロー大決戦」でもやや無理矢理ザンギャックの出番を作っていたように、
この「ゴーカイジャー」の一連の劇場版にはザンギャックは必ず登場させる方針のようです。

それはやはり映画を観に来る子供たちへのサービスなのでしょう。
つまり愛すべきバカ殿下ワルズ・ギルを囲むギガントホース司令室コントが子供たちに人気があるということで、
この映画では普段のTV本編よりも更に激しくワルズ・ギルが大暴れして子供たちを楽しませる、
そういう目的のシーンだと思えばいいでしょう。

さて、こうしてザンギャック勢が人知れず退場していった頃、
マーベラス達5人は幽霊船内の居住区っぽい区画に入っていました。
この巨大な幽霊船の中に確かに人間大の生き物の生活空間のようなスペースがあったのです。
つまり、やはり何者かがここには居る。
いや、少なくとも「居た」のだろうとマーベラスには感じられました。

というのも、その居住区っぽい空間はまるっきり廃墟のようになっていて、
どう見ても現在まともにそこで誰かが生活しているようには見えないからです。
かつては何者かがここで暮らしていたのだろうが、今はその何者かはここには居ないとしか考えられない。
それでも、この船を動かして、ゴッドアイを守護している何者かは存在するのであり、
その現在ここに居る何者かと、かつてここで暮らしていた何者かの関係はよく分かりませんが、
とにかく少なくともこの場所は現在この船を動かしている者の生活の痕跡は全く無い廃墟であるのは確かでした。
こことは違う別の区画に現在のこの船の主の生活空間が有るのかもしれない。
ならば、この廃墟でかつて暮らしていた者達は何処に行ったのだろうか、
マーベラスには想像も及ばないことでした。

ただ、かつてこの廃墟で暮らしていた者がどういう者であったのか、
この廃墟の印象から、マーベラスは何となく想像することは出来ました。
それは海賊であるように思えたのです。
マーベラス自身が海賊であったので、何となくこの空間から海賊の痕跡を感じ取ることが出来たのです。
そもそも画像や突入前に見た船首の巨大なドクロのマークなどは海賊船に特有の紋章であり、
この船は現在は謎の廃船だが、昔は巨大な海賊船であったのではないかとマーベラスには思えました。

そうしてマーベラス一味の5人は廃墟のような居住区の廊下を進んでいきますが、
先頭をマーベラス、その後ろにジョーが続き、その後に続くアイムの背中にハカセがピッタリとくっついています。
別にセクハラしているわけではなく、すっかり幽霊船の不気味な雰囲気にビビってしまったハカセが
暗い廊下を1人で歩くのが怖いので、誰かとくっついていたいだけのことなのですが、
さすがに異性にここまでピッタリくっつかれてしまってはアイムとしても困ってしまい、
「・・・ハカセさん!ちょっとくっつき過ぎです・・・」と振り返ってハカセを睨んで注意し、
そのままそそくさと歩いていってしまいました。

面と向かって拒絶されてしまうとハカセとしても、もうアイムにくっつくことも出来なくなってしまい、
暗い廊下で誰とも手も繋がずに歩かないといけない。
ハカセは大いに失望して「そんなぁ〜・・・アイムまで〜・・・」と嘆くと、
身も世も無い有様で「明らかに出そうじゃん、ここ〜・・・」とブツブツ言って周囲をキョロキョロ見回します。
するとハカセの右隣に何か人影が動いたように感じて、思わずハカセがそちらを見ると、
そこには金髪の男の姿がありました。
驚きの余り「ううっ!!」と短い悲鳴を上げたハカセは硬直してその謎の金髪の男と向き合います。

その悲鳴を聞いて最後尾を歩いていたルカが、敵が現れたのかと思い「なに!?」とハカセの前に飛び込んできて、
ハカセが凝視する相手を睨みつけます。
ところがルカが見た相手はルカ自身であり、その後ろにはハカセが立っていました。
そこにあったのは朽ちかけた鏡であり、ハカセが見た謎の金髪の男は
金髪モジャモジャ頭のハカセ自身の鏡に映った姿に過ぎなかったのでした。

おおかた、ハカセは鏡に映った自分を見て幽霊と勘違いしたのだろうとルカは思い、
そのあまりにバカバカしい怖がりっぷりに呆れて溜息をついたルカは「・・・鏡じゃん!」と言って
ハカセの肩をドン!と叩いてプリプリして先を進んでいきました。

1人で鏡の前に取り残されたハカセは、確かによく見ると自分が見ていたのは鏡の中の自分だったのだと気付き、
自分のマヌケさ加減に少し可笑しくなり「ホントだ・・・なぁんだ・・・」と苦笑して、
お蔭で少し落ち着いて鏡に向かってネクタイの曲がりを直しはじめました。
自分1人だけが勝手に鏡に映った自分を幽霊だと思い込んでビビっていただけで、実際は幽霊などいなかった。
やはり、この船には幽霊などいないのだと、ハカセは気を取り直しました。

ところが、そのハカセが見つめる鏡の中の自分に重なるように、
いきなり「ユ〜レイヒ〜!」と陽気に歌いながら、角が生えた兜をかぶった半透明の小さめの物体が
鏡の中に浮かび上がってきましたので、ハカセは「うわああっ!?」と驚いて後ずさりしました。
といっても狭い廊下ですので、ハカセの背中はすぐに壁にぶつかってしまい、それ以上退がれなくなってしまいます。
「挨拶がわりだ・・・」と言って鏡の中から出てきたその物体はタコみたいに口を伸ばしてきて
ハカセの頬にいきなり濃厚なキスをしてきます。
壁に阻まれて後ろに逃げられないハカセは「ううう〜!」と呻いて、思いっきりキスされてしまいました。

この謎の喋る物体は先ほどガレオンの傍で不気味に笑ってマーベラス達を観察していた連中のうちの1つですが、
外見は妙に可愛らしく見えます。
しかし、鏡の中にその姿が現れたにもかかわらず、本体が鏡の前に立っていたわけではありません。
実体が無いのに鏡の中の虚像だけが出現したのです。
しかもその鏡の中の虚像が勝手に動いて喋って、鏡の外に飛び出してきて、ハカセに触れたのです。
これは幽霊に間違いないと思い、ハカセは恐怖にすくんで動けなくなってしまい、
無様に幽霊にキスされてしまったのでした。

角付き兜をかぶったこの幽霊はハカセの頬から口を離すと「ふはははっ!」と愉快そうにハカセを嘲笑います。
ようやく身動きが出来るようになったハカセは半ば腰を抜かしながら、
先を進んでいたマーベラス達のところに必死で這っていって追いつき
「うわぁ・・・幽霊にチューされたぁぁ〜・・・!」と半泣きでルカに縋りつきました。

ルカはまたハカセが何かを幽霊と錯覚して怯えていると思い、
「はぁ?またバカなこと言って!」と呆れてハカセの手を振りほどいて叩きますが、
そこに突然物陰から「ユ〜レイヒ〜!そうでもなかったりしてぇ!」と叫んで、
今度は1つ目の幽霊がルカの顔の前に飛び出してきたのでした。
「ひゃあああ!!」と驚いたルカは思わずその幽霊をバチンと叩いて飛び退いて、
後ろで唖然として見ているマーベラス達3人の方に逃げていきます。

ところが今度はその3人の足元に「ユ〜レイヒ〜!」と、別の女の子型の幽霊が飛び込んできて
クルクル回って風を起こし、その風でスカートを持ち上げられたアイムが
「キャアッ!?」と驚いてスカートを押さえますが、
その女幽霊はアイムのスカートの下で望遠鏡のようなものを覗いて
「ははっ!見〜えちゃったぁ!」とからかうように面白がります。

この女幽霊、スカートめくりをしてアイムのパンティーを見たようです。
何ともつまらん悪戯をするものですが、
この3つの小さな幽霊たちは、確かにさっきガレオンの辺りをチョロチョロしてマーベラス達を観察していた連中です。
どうやら幽霊船に侵入したマーベラス達に嫌がらせをするのが目的のようです。

マーベラスはこの船は幽霊船といってもそれは俗称であって、本当に幽霊などが居るわけではないと思っていたので、
本当に幽霊が現れたことに驚きました。
どうやらこの船は本当に幽霊船であり、死者の魂を呼び寄せるという噂は本当だったのだと
意外に思ったマーベラスでしたが、それは所詮はそれだけの驚きでしかありませんでした。

もともとマーベラスは幽霊など恐れてはいない。
何か危険な攻撃を仕掛けてくるなら話は別だが、
この3つの小さな幽霊は相手を驚かす悪戯ぐらいしか出来ないようでした。
ならば別に恐れる必要など無いとマーベラスは思いました。

一番幽霊を怖がっていたハカセをはじめ、他の4人も想像していた幽霊はもっと怖いものだったのであり、
その怖いタイプの幽霊が出てきたらどうしようと内心ビクビクしていただけのことですから、
出てきた幽霊が案外怖くないタイプであったことで、むしろ逆に気持ちが楽になってしまいました。

マーベラスは全く幽霊を怖がることなく「ふざけんな!」とアイムの足元の女幽霊を踏み潰しました。
しかし、さすがに幽霊だけあって、踏み潰されたはずの女幽霊はダメージは受けず、
「あはは〜!なぁんてね!」と陽気にはしゃいで飛び去り、
廊下の真ん中にさっきの角付き兜の幽霊、1つ目の幽霊と一緒に並んで浮かび上がって、
この3つの幽霊は「そんじゃまぁ!歌っちゃおう!」と、いきなり脈絡なく楽しげに合唱し始めます。

まるでミュージカルのようで、こういうディズニーっぽい演出はスーパー戦隊シリーズでは珍しいが、
かつて「長靴をはいた猫」や「空飛ぶゆうれい船」の頃の「東映まんがまつり」ではよく見られた演出手法です。
ちなみにこの3幽霊、この映画本編中で名前が呼ばれることはありませんが、
兜をかぶった奴はガツン、1つ目の奴はベロン、女の子風の奴はバチンという名という設定となっています。
そして、この3幽霊の声を担当されているのは普通の声優さんではなく、特別ゲストの3人で、
ガツンの声がささきいさお氏、ベロンの声が松原剛志氏、バチンの声が堀江美都子さんです。

ささき氏は俳優や声優としても長年大変な活躍をされている方で、
声の出演としては「ガッチャマン」のコンドルのジョー、「ヤマト」の斉藤始など、
また洋画吹替えではシルヴェスター・スタローンなど、渋い声の役で有名ですが、
なんといっても歌手として、特にアニメソングや特撮ソングの歌手として超有名な人で、
「アニメソング界の大王」と称されています。

アニメソングの代表曲は「たたかえ!キャシャーン」「ゲッターロボ!」
「宇宙戦艦ヤマト」「真っ赤なスカーフ」「銀河鉄道999」など多数あり、
特撮ソングの代表曲は「進め!ゴレンジャー」「秘密戦隊ゴレンジャー」「見よ!!ゴレンジャー」
「ジャッカー電撃隊」「いつか、花は咲くだろう」という、
スーパー戦隊シリーズの第1作と第2作のOPとEDに全て絡んでおり、
その他、近年では「デカレンジャー」のEDテーマ「ミッドナイトデカレンジャー」も担当されています。

一方、堀江さんは「アニメソングの女王」の異名を持つ、
これまた恐るべき数のアニメソングを歌っておられる歌手ですが、
声優業も活発で、「魔法少女ララベル」のララベル役、「秘密のアッコちゃん(第二期)」のアッコ役、
「愛少女ポリアンナ物語」のポリアンナ役、「私のあしながおじさん」のジュディ役、
「家なき子レミ」のレミ役などが有名です。

本業の歌手としてはアニメソングの代表作は「アクビ娘の歌」「けろっこデメタン」「緑の陽だまり」
「ぼくらきょうだいてんとう虫」「キャンディ・キャンディ」「ボルテスVの歌」「花の子ルンルン」
「ラ・セーヌの星」など、ささき氏同様アニメソング史上やアニメ史上極めて画期的な作品に関わっている一方、
特撮ソングにも女性歌手ながらかなり昔から単独歌唱でも関わっており、
代表曲は「かぐや姫先生のうた」「月光の子守唄」「それゆえタックルちゃん」「花のモモレンジャー」
「ゴレンジャー絵かきうた」などがあります。
そして水木一郎氏とのデュエットで「斗え忍者キャプター」、
ささきいさお氏とのデュエットで「進め!ゴレンジャー」という名曲にも参加しています。

つまり、スーパー戦隊シリーズ第1作「秘密戦隊ゴレンジャー」の主題歌
「進め!ゴレンジャー」を歌っていたのが、ここで登場したガツン役のささき氏と、バチン役の堀江さんなのです。
2人とも声優としても実力者なので当然、演技も見事なものですが、
ここでは歌う幽霊ということで歌唱力を期待されての起用であり、
しかもあえてささき氏と堀江さんを起用しているということは、
シリーズ第1作「ゴレンジャー」へのリスペクトに他ならないでしょう。

そして、ベロン役の松原氏はささき氏や堀江さんと共にアニソン四天王の1人とされる水木一郎兄貴の弟子である
特撮ソング歌手で、主にウルトラシリーズのティガやコスモスやメビウスの楽曲に参加し、
そして云わずと知れた、この「海賊戦隊ゴーカイジャー」の主題歌担当歌手であります。

つまり、スーパー戦隊シリーズ第1作の主題歌を歌った歌手と、
最新のシリーズ第35作の主題歌を歌った歌手が幽霊の声役として、この場に集まっているわけです。
松原氏もミュージカル俳優としても活躍される方なので、演技に全く問題は無いわけですが、
ここではやはりスーパー戦隊シリーズ35作の歴史の最初と最新の主題歌担当歌手の特別ユニットによる歌唱で、
シリーズの歴史をリスペクトしようというのが最重要な趣旨ということになります。

その歌はこの映画オリジナル曲の「ないしょのユーレイヒー」(作詞:荒川稔久、作曲:山下庸介)という曲で、
明るいワルツ調の曲に合わせて3幽霊は空中で陽気に飛び回りながら
「俺たちゃユ〜レイ!怖いぞユ〜レイ!ユ〜レイヒヒヒヒヒヒヒ〜!ユ〜レイヒ〜!
お宝守って〜、泣く子も黙らす〜、絶対言わない宝の場所は、この先な〜んて〜、内緒だよっ!!」と唄います。

いきなり幽霊が唄い出したのでマーベラス達5人は唖然として聞いていましたが、
こんな歌詞を歌いながら3幽霊がマーベラス達の背後の方向を指さしたものですから、
その方向にゴッドアイがあるということが分かり、
マーベラス達は歌が終わるとさっさとその方向に向けて歩き出します。

3幽霊の役目は幽霊船への侵入者を怖がらせてゴッドアイに近づけさせないで守るというものであったようなのですが、
調子に乗って歌った歌詞の中にゴッドアイの在り処を示唆する言葉が入っていたために、
逆にマーベラス達をゴッドアイの方に正確に向かわせることになってしまい、
しかもこの幽霊たちは全然怖くもなく、大した攻撃力も無いものですから、全く足止め役として機能していません。

3幽霊はスタスタと去っていくマーベラス達の背を呆然と見送って、
全く自分達のミスに気付いていないようで、
「お宝の方に」「行っちまったぞ〜」「なんで分かっちゃったの?なんで?なんでぇ?」と
呑気に言い合うばかりでした。

さて、そうして通路を進んでいったマーベラス一行は、遂に通路の終点の扉に辿り着き、
その重い扉を開くと、その向こうには何やら薄暗い広い部屋が広がっています。
その部屋にマーベラス達5人が踏み込んで数歩進むと、入り口の扉が音を立てて自動的に閉まったので、
ハカセは思わず「うわ!?」とビビりました。

閉じ込められたのかと思った瞬間、今度は部屋の中の灯りが勝手に点いて、部屋の中の様子が明らかになりました。
驚いて5人は部屋の中を見回します。
それはかなり広い大広間のようなスペースで、白黒の格子柄の床はちょっとオシャレな感じで、
端にステージのように階段でせり上がった部分があり、
その背後の壁に天井まで達するほどの大きなドクロの彫り物がはめ込まれています。

なんだか悪の組織のアジトの大広間のような感じですが、
つまり普通の客船ではなく、やはりこの船は大規模な海賊団のアジトであったようです。
この大広間に海賊団のメンバーを集めて船長があの一段上がったステージで演説でもして
仲間を統率していたのでしょう。

ただ、それはやはり遠い過去の出来事であったように思えます。
床にはホコリが溜まり、そこらにある柱やそれに繋がる足場の鉄骨は錆び、それについた布もボロボロで、
全く生きた人間の生活感のようなものがない廃墟然としています。
ここには今、昔のように海賊は誰もいないようです。

しかし勝手に扉が閉まったり灯りが点いたりもしており、何者かが居ることも確かです。
その何者かが何なのかというと、先ほど出会った幽霊のように、それは幽霊なのかもしれない。
この船の居住区の中心であり終点はここであろうと思われ、そこにこうまで生きた人間の生活感が無い以上、
やはり、この船は廃墟となった海賊船に幽霊が招き寄せられて、幽霊の巣になっている幽霊船だったのかと、
マーベラス達5人には思えてきました。

そうして5人がそのステージの方を見た時、5人は一斉に「ああ・・・!」と、あることに気付きました。
ステージの背後の壁の大きなドクロの左目の奥に何か光るものがあるのです。
それは目玉でした。
白目部分が赤く、黒目部分が青い、変わった配色の目玉です。
が、本物の目玉であるはずもなく、目玉の形を模した宝玉がはめ込んであるのでした。
つまり、これこそが「神の目」、すなわち何でも夢を1つ叶える宝玉「ゴッドアイ」だったのです。

「あれか!」とマーベラスはステージに昇ってゴッドアイを掴み取ろうとして早足で前に進み、
他の4人もそれに続きます。
ところがマーベラス達がステージの階段を昇り始めたところ、何処からか飛んできた青白い大きな火の玉が
「思い通りエサに釣られてきたか・・・愚か者ども・・・!」と声を発してマーベラス達の周りを一周すると、
マーベラス達の身体は階段の下の床に投げ出されてしまったのです。
そして、その青白い火の玉はステージの上に飛んでいき
ドクロ像の前で人間型の怪人が後ろ向きに屈んだ姿に変わります。

床から起き上がって「なんだ、てめぇは!?」とマーベラスが怒鳴ると、
その怪人は「俺は船長のロスダーク!・・・この船と共にずっと宇宙を彷徨ってきた・・・」と名乗りながら、
立ち上がりマーベラス達を見下ろすように振り向きました。

そのロスダークと名乗った怪人は、全身を鈍い光を放つメタリックブルーの甲冑に身を包んだ
不気味で威圧感あふれる怪人でした。
見るからに強そうで、船長と名乗っているところから、この船の支配者であるようです。
となると、偽ゴーカイオーを使って豪獣神と戦ったのも、先ほどの幽霊たちを使役していたのも、
このロスダークということになる。
そしてゴッドアイを守護しているのも、このロスダークなのであろう。

しかし、「宇宙を彷徨ってきた」という言い回し、そしてこの船の生者の気配の無さ、
今のまるで人魂のような登場の仕方や不思議なパワー、
そして甲冑から覗くその顔がまるで骸骨であることなどを考えると、
この船はやはり幽霊船であり、
幽霊船の船長と名乗る不気味な怪人ロスダークもまた幽霊なのではないかと思えたルカは
「じゃあ、あんたも幽霊!?」と訊ねてみました。

それに対してロスダークは「そうだ・・・だが俺は間もなく甦る・・・
このゴッドアイを狙う強欲どもの生体エネルギーを吸い取り続けてきたからなぁ・・・!」と、
幽霊であることを認めた上で、意外なことを口走ります。

「生体エネルギーって・・・?」と、その予想外の言葉の意味を反芻したハカセは、
つまりそれは生きている人間を殺して命を奪い、
その生命のエネルギーを吸い取って死者のロスダークが生者として復活するということを意味していると悟りました。
いや、どうやら今までロスダークはそれを何度も繰り返して、数多くの人間を殺して生体エネルギーを奪い取り、
自身の復活のためのエネルギーとして体内に溜め込んできたようなのです。

おそらくロスダークの身体から発する強大なパワーもその貯めこんだ生体エネルギーによるものであろうし、
豪獣神を負かしたという偽ゴーカイオーの信じがたい強さも、
偽ゴーカイオー自体がロスダークが自身の体内に溜め込んだ生体エネルギーで作り出したものだと考えれば
納得はいきます。

それほど膨大な生体エネルギーをロスダークは溜め込んでいるようで、
これまでに数多くの犠牲者を生んできたと思えますが、
それでもまだ死者であるロスダーク自身を生者として復活させるには足りないようです。
果たして死者が生き返ることなど可能なのか、よく分かりませんが、
ロスダークはそれが可能だと信じており、そのためには膨大な生体エネルギーが必要であるようです。
それだけの膨大な生体エネルギーを集めるためには強い生命力を持った者をたくさん殺して、
その生体エネルギーを奪わねばならない。
だからロスダークはゴッドアイの番人をしているのだとマーベラス達は気付きました。

死者の魂に溢れている幽霊船の中にある、何でも夢を叶えてくれる秘宝ゴッドアイを手に入れるために
ここまで乗り込んでくる者こそ、どんな危険を冒してでも自分の夢を叶えようとする欲望の大きな者であり、
欲望の大きさはそのまま生命力の強さに比例しているのでしょう。
だからロスダークはゴッドアイを奪おうとしてやって来る強欲で生命力豊かな者をこうして待ち伏せして殺して、
その生体エネルギーを奪ってきたのです。

ということは、今回まんまとロスダークの仕掛けた罠の中に飛び込んできた獲物は
マーベラス達5人ということになります。
「じゃあ今度は僕たちを!?」とハカセが慌てて問い直すと、
ロスダークは「その通り・・・!」と平然と答えます。

これはどうやら、自分達はたまたまロスダークの仕掛けた罠に迷い込んだわけではないらしいと
マーベラス達は悟りました。
ロスダークの口ぶりからして、どうやらロスダークは最初からマーベラス達を狙って、
エサをちらつかせて誘い込んだようです。

わざわざ地球にやって来て幽霊船の姿を晒して、わざとゴーカイオーにそっくりな巨大ロボを生成して、
それを使ってロスダークは暴れるつもりだったようです。
その目的はマーベラス一味の注意を惹くためであったのでしょう。
そうして偽ゴーカイオーで注意を惹いて幽霊船とゴッドアイの存在に気付かせるように仕向けて、
マーベラス一味を幽霊船におびき寄せるというのがロスダークの作戦であったようです。
鎧がたまたま偽ゴーカイオーの降下時に居合わせて豪獣神で立ち向かったのは、
ロスダークにとって手間が省けたといえます。

しかし、そこでロスダークが豪獣神を倒す力を持ちながら、あえて豪獣神を倒してしまわなかったのは、
鎧1人の持つ生体エネルギーだけでは満足できなかったからでしょう。
ロスダークの求めている獲物は、単に強欲なだけの者ではなく、強欲でいて、しかも強い者でなければいけないのです。
それこそが最も良質の生体エネルギーを大量に奪うことが出来る極上の獲物なのでしょう。

ロスダークは地球にマーベラス一味という「宇宙最大のお宝」を手に入れようとしている、
途轍もなく大きな夢、すなわち欲望を持つ海賊たちが来ていて、
しかもザンギャック軍を向こうに回して堂々と戦っている強者であるということを知り、
まさに極上の獲物だと思い、マーベラス一味を幽霊船におびき出して倒して生体エネルギーを奪おうと考えた。

それで偽ゴーカイオーで暴れて誘い出そうとしたら、
マーベラス一味の1人である鎧が立ち向かってきたが、ロスダークは鎧1人の生体エネルギーでは満足できなかった。
1人ではなく全員揃わないと十分な生体エネルギーにならないし、
鎧は6人の中では一番、お宝に対する欲望が少なく、ロスダークの求める強欲な者ではなかった。
だからロスダークは鎧を殺しても仕方ないと思い、
マーベラス達に幽霊船の情報を伝えさせるためにわざと見逃したのです。
そのロスダークの仕掛けた罠にマーベラス達はまんまと嵌められたということになります。

しかも、これがロスダークの復活のための罠だとすると、
そもそもここにあるゴッドアイはロスダークが強欲な強者を誘い込むために置いてある偽物である可能性も高い。
だとしたらマーベラス達はとんだマヌケだったことになります。

しかし、さっき通路で出会った幽霊たちは本物のお宝を守っているつもりであったように見えました。
あの幽霊たちはおそらくロスダークがその生体エネルギーを駆使した魔力によって招き寄せた
死者の魂を使役していたものであり、
あの幽霊たち自身が船長であるロスダークに騙されて偽物のゴッドアイを本物だと思い込まされている可能性もあるが、
マーベラス達はやはりゴッドアイは本物であると信じようと思いました。
とにかく手に入れてみれば本物か偽物か分かるのです。

まんまと罠に嵌ったマーベラス達でしたが、このまま大人しくロスダークに倒されるつもりはありませんでした。
相手はロスダーク1人であり、マーベラス達は5人います。
たとえ相手が幽霊だとしても、負ける気はしませんでした。
お宝のゴッドアイは目の前にあるのであり、それを手に入れるのを邪魔するのならば、
たとえ相手が幽霊だろうが船長だろうがぶっ潰すのみです。
そうしてロスダークを倒してゴッドアイを手に入れれば、それが本物なのか偽物なのかハッキリする。
シンプルな話でした。

マーベラス達5人は一斉にゴーカイガンを構えてロスダークに狙いを定めて、
マーベラスは「あいにくだが・・・それは無理ってもんだ!」と言い放ちます。
逆にロスダークが追い詰められた形になったように見えました。
しかしロスダークは全く動じる様子も無く、
落ち着いた声で「この先に待ち受ける我がしもべたちに敗れた瞬間・・・」と言いながら
マーベラス達に背を向けてしまいます。

「この先」というロスダークの言葉の意味が一瞬マーベラス達には分かりませんでした。
お宝とその番人を目の前にして、マーベラス達はここから先、もう何処か別の場所に進むつもりなど、
もはやありませんでした。
ゴッドアイを目指す冒険はここが終着点であるはずなのです。

しかしロスダークは壁にある巨大なドクロの前に立ち塞がるようにマーベラス達に背を向けると、
「・・・お前達の命は終わる・・・」と言葉を続け、指をパチンと鳴らすと
「さらばだ!」と言って、いきなり横に駆け出していきました。
マーベラス達はロスダークが逃げると思って、慌ててロスダークを目で追い、正面から視線が逸れました。

その瞬間、それまでロスダークが身体で隠していた正面の壁のドクロの口がカッと開き、
そこから光の帯のようなものが飛び出してきたのですが、
ロスダークに釣られて脇を見ていたマーベラス達は一瞬、その正面から飛んできた光の帯への対応が遅れ、
あっという間に5人まとめてドクロの口から伸びる光の帯に縛り上げられてしまったのでした。
そして次の瞬間には光の帯は「うわぁ!?」と慌てる5人の身体をドクロの口の中に引っ張り込んでしまいました。

マーベラス達はまんまとしてやられたことに気付きます。
ロスダークが思わせぶりにドクロの前で後ろを向いた後、駆け出したのは、
このドクロの口の仕掛けを成功させるための布石だったのです。
5人はドクロの口に引っ張り込まれた後、何やら変な空間を吸い込まれていき、
何処かに向かって真っすぐ落ちていきました。

「あんたの思い通りになんか絶対させないんだからね〜!!」と悔しげに叫ぶルカの声が消えていき、
元の大広間には静寂の中、ロスダーク1人が残りました。
そのロスダークはドクロの左目に埋め込まれたゴッドアイを見つめると、
「命ある者の願いしか叶えぬゴッドアイよ・・・俺が甦ったら、この宇宙の全てを手に入れる夢・・・
必ず叶えてもらうぞ・・・!」とゴッドアイに向けて語りかけるのでした。

このロスダークの口ぶりからすると、どうやらこのゴッドアイは偽物ではなく、確かに本物であるようです。
ただ、ゴッドアイは生きている者の願いしか叶えることは出来ないようで、
幽霊であるロスダークの願いは叶えられないようだという新事実がここでロスダークによって語られました。
そしてロスダークには「宇宙の全てを手に入れる」という夢があるようで、
その夢をゴッドアイを使って実現しようとしているのです。

だから、そのためにはまずロスダークは生き返らなければならない。
生き返って生者になってからゴッドアイを使って「宇宙の全てを手に入れる」という夢を叶えようとしているのです。
そこでロスダークはゴッドアイをエサにして生命力の強い強欲な強者たちを幽霊船におびき寄せて殺していき、
その生体エネルギーを奪って、自分の復活のためのエネルギーを貯めてきたというわけなのです。

ロスダークの目標は単に生き返ることではなく、
生き返ってからゴッドアイを使って宇宙を手中に収めるという、とんでもない野望を実現することにあったのです。
その仕上げにロスダークはマーベラス達の生体エネルギーを奪うためにドクロの口の中に引っ張り込んだ。
さっきのロスダークの言葉によれば、そのマーベラス達が引っ張り込まれて落ちていった先には、
ロスダークの手下たちが待ち受けていて、マーベラス達を倒そうとして襲ってくるようです。
そしてマーベラス達がその手下たちに負けた瞬間、マーベラス達の命は失われて、
その生体エネルギーはロスダークに奪われるという仕組みになっているようです。

なお、このロスダークの声を担当されているのは、声優界の超ベテランで大御所である内海賢二氏です。
洋画ではスティーブ・マックィーンの吹替えで有名な内海氏は
アニメでも1963年の「鉄腕アトム」の第1作から声優として仕事をしているアニメ界の草創期からの立役者で、
「魔法使いサリー」のサリーパパ役、「新造人間キャシャーン」のブライキングボス役、
「Dr.スランプ アラレちゃん」の則巻千兵衛役、「北斗の拳」のラオウ役、「ドラゴンボール」の神龍役、
「ダイの大冒険」の大魔王バーン役、「はじめの一歩」の鴨川会長役などが代表的な役柄で、
他に数多くのシリアスからコミカルまでのキャラクターを幅広い演技力でカバーしておられますが、
渋い声の悪のボスを演じることが比較的多いです。

あまりにベテラン大物声優なので特撮ヒーロー番組が全盛期を迎えた頃には、
やられ役の怪人の声を担当してもらえるような立場ではなく、
また敵幹部の声などでもあまり出て貰う機会も無く、
スーパー戦隊シリーズでは今まで一度も声を担当されたことがありませんでした。
特撮関係でのこれまでに内海氏の目立った役というと、
「ウルトラマンメビウス」のラスボスである暗黒宇宙大皇帝エンペラ星人ぐらいといえます。

この「ゴーカイジャー」という作品は、過去34のスーパー戦隊の物語世界と繋がった物語世界なので、
敵側の新登場の主要キャラの声優には、
過去のスーパー戦隊シリーズ作品に登場していない人を選ぶというこだわり
(199ヒーロー大決戦の黒十字王の神谷明氏は過去にガンマジン役はあるが)を貫いています。

そこでこのロスダーク役にも、これまでスーパー戦隊シリーズに登場したことのなく、
なおかつ敵のボスとしての風格を兼ね備えた声優ということで内海氏に白羽の矢が立ったわけで、
内海氏のスーパー戦隊シリーズ初めての役となる、この幽霊船の船長ロスダークは
内海氏特有の非常に渋い声のゾクゾクする大物悪役となっています。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 21:52 | Comment(1) | 海賊戦隊ゴーカイジャーTHE MOVIE空飛ぶ幽霊船 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月21日

海賊戦隊ゴーカイジャーTHE MOVIE空飛ぶ幽霊船 感想その4

幽霊船の船長ロスダークの罠に嵌ってゴッドアイを嵌めこんだドクロの口の中に引っ張り込まれてしまった
マーベラス達5人は、奇妙な空間を通って真っ逆さまに墜ちていきました。
そして青空に黒いドクロ型の雲が現れ、その開いた口の部分からマーベラス達は排出され、
「わああああ!?」と絶叫して、そのまま地面に真っ直ぐ墜落しました。

地面に「ぐっ!」と激突したマーベラス達5人でしたが、
普通はそんな高さから生身のまま墜ちれば無事で済むはずはないのですが、
全員大したダメージは受けていないようです。
全員立ち上がって周囲の風景を見て驚きました。
なんだか山の中の中華風の寺院の境内のような場所で、どう見ても屋外でした。

幽霊船の船内にいたはずなのに、どうしていきなりこんな山の中の寺院にいるのか、意味がさっぱり分からず
ハカセが「・・・何なの?ここ・・・何処?」と狼狽えて問いかけますが、
マーベラスは「・・・知るか!」と困った顔で応えます。
こんな場所は見たこともないのです。

一方、ジョーは懸命に頭を働かせて「いや・・・あくまで船の中のはずだ・・・!」と言います。
生身で上空から墜落して地面に激突して普通に立ち上がれるなど普通は有り得ない。
ここは現実的な空間ではなく、ここにある自分達も現実的な肉体を持った存在ではないのだとジョーは思いました。
ドクロの口に引っ張り込まれた自分達の肉体は、あのドクロの中に発生した何らかの亜空間に送り込まれたのであり、
あの大広間から位置的には移動はしていないはずです。
そしてその肉体から意識だけが分離させられて、更に別の意識空間に飛ばされたのが
現在の自分達が意識している自分であり、その意識空間がこの山中の寺院なのだろうとジョーは思いました。

アイムもジョーの考えをだいたい理解したようで
「・・・ということは、現実ではないイメージ空間ということですか・・・?」と不思議そうに言います。
ここには実体は無く、意識だけが支配するイメージ空間であり、
だから意識だけの自分達も、自分自身を意識だけの存在とは認識せず、
あたかも肉体を伴っているかのように認識するのだと、
アイムはこんな不思議なことが起こり得るのだということに驚きました。
いや、こんなことが自然に起こるはずはなく、
あの幽霊船の壁のドクロに人間を亜空間に引き込んでから意識だけを分離して
イメージ空間に飛ばす機能が備わっていたのだろうと思えました。

ただ、この寺院がイメージ空間だとして、
自分達はこんな場所は知らないし、こんな場所に来ることは望んでいないのだから、
これは別の何者かのイメージした空間なのだろうとも思えました。
それはおそらくロスダークのイメージした空間なのでしょう。
ロスダークはあの壁のドクロに働きかけることで、望みどおりのイメージ空間を作り出して、
ドクロの中に引き込んだ人間の意識をそのイメージ空間に送ることが出来るのだと、
マーベラス達には事態が少し呑みこめてきました。

その時、ルカが空を見上げて、慌ててマーベラスの腕を叩きながら「ちょっと!・・・あれ!」と空を指さして叫びます。
マーベラスや皆がルカの指さす方の空を見上げると、そこには5人が排出されたドクロの形をした黒雲があります。
それを指さしてルカは「ドクロの口が・・・どんどん閉じてってる!」と言うのでした。
よく見ると、確かに最初にマーベラス達がこのイメージ空間に放り出された時よりも
少しドクロの口が狭くなっています。

「閉じ込めるつもりか!?」とジョーは焦って言います。
あの口から自分達の意識がこのイメージ空間に放り出されたということは、
あの壁のドクロの中の亜空間に自分達の意識が戻るためには、あの黒雲ドクロの口を通るしかないと思われます。
ドクロの中の亜空間にはマーベラス達の肉体があり、
意識が抜けているので動くことが出来ない状態にあると思われます。
意識がこのイメージ空間からドクロの黒雲の口を通って亜空間に戻れば、
肉体の中に意識が戻って肉体を動かし、あのドクロの口を通って元の幽霊船の大広間に戻ることも出来るはずですが、
もしもあの黒雲ドクロの口が閉じて意識がこのイメージ空間に閉じ込められてしまえば、
マーベラス達は二度と元の現実世界に戻ることは出来なくなります。

幸い、一気にその通路を塞ぐことは出来ないようですが、
ロスダークはドクロを操作して、徐々に意識の通路を塞いで、
マーベラス達の意識をこのイメージ空間に閉じ込めようとしているようです。
しかし、どうしてロスダークが普通にマーベラス達を殺さずにこんなことをするのか、
イメージ空間にマーベラス達の意識を閉じ込めていったい何をするつもりなのか、
マーベラス達にはよく分かりませんでした。

その時、マーベラス達の背後に何者かが奇声を発して現れました。
ハッとしてマーベラス達が振り向くと、何か戦闘員っぽい連中が集団で迫ってきます。
その連中の姿を見て「ザコっぽいのが出てきやがったな・・・!」と正直な感想を言ったマーベラスに向かって、
その集団は声を揃えて「我々はザコではない!!過去のスーパー戦隊に倒され、無念の想いを抱えたまま、
魂となって彷徨っていた、悪の精鋭だ!!」と反論します。
よく見ると、この連中はスーパー戦隊シリーズのゴレンジャーからゴセイジャーまでの歴代34作品に登場した
悪の組織の戦闘員たちが各作品から1人ずつ、合計34人集まっています。

その顔ぶれを列挙していきます。

シリーズ第1作「秘密戦隊ゴレンジャー」から、黒十字軍の戦闘員のゾルダー
シリーズ第2作「ジャッカー電撃隊」から、クライムの一般兵士のクライマー
シリーズ第3作「バトルフィーバーJ」から、エゴスの戦闘員のカットマン
シリーズ第4作「電子戦隊デンジマン」から、ベーダー一族の下級兵士のダストラー
シリーズ第5作「太陽戦隊サンバルカン」から、機械帝国ブラックマグマの機械兵士のマシンマン
シリーズ第6作「大戦隊ゴーグルファイブ」から、暗黒科学帝国デスダークの兵士のマダラマン
シリーズ第7作「科学戦隊ダイナマン」から、ジャシンカ帝国の兵士のシッポ兵
シリーズ第8作「超電子バイオマン」から、新帝国ギアのロボット戦闘員のメカクローン
シリーズ第9作「電撃戦隊チェンジマン」から、大星団ゴズマの戦闘員のヒドラー兵
シリーズ第10作「超新星フラッシュマン」から、改造実験帝国メスの一般兵士の兵士ゾロー
シリーズ第11作「光戦隊マスクマン」から、地底帝国チューブの雑兵のアングラー兵
シリーズ第12作「超獣戦隊ライブマン」から、武装頭脳軍ボルトの戦闘用ロボット兵のジンマー
シリーズ第13作「高速戦隊ターボレンジャー」から、暴魔百族の最下級暴魔のウーラー兵
シリーズ第14作「地球戦隊ファイブマン」から、銀帝軍ゾーンの戦闘兵のバツラー兵
シリーズ第15作「鳥人戦隊ジェットマン」から、次元戦団バイラムの戦闘兵のグリナム兵
シリーズ第16作「恐竜戦隊ジュウレンジャー」から、バンドーラ一味の兵士のゴーレム兵
シリーズ第17作「五星戦隊ダイレンジャー」から、ゴーマ族の戦闘兵のコットボトロ
シリーズ第18作「忍者戦隊カクレンジャー」から、妖怪軍団の最下級妖怪のドロドロ
シリーズ第19作「超力戦隊オーレンジャー」から、マシン帝国バラノイアの戦闘員のバーロ兵
シリーズ第20作「激走戦隊カーレンジャー」から、宇宙暴走族ボーゾックの下級戦闘員の兵士ワンバー
シリーズ第21作「電磁戦隊メガレンジャー」から、邪電王国ネジレジアの一般兵士のクネクネ
シリーズ第22作「星獣戦隊ギンガマン」から、宇宙海賊バルバンの兵士の賊兵ヤートット
シリーズ第23作「救急戦隊ゴーゴーファイブ」から、災魔一族の戦闘兵の使い魔インプス
シリーズ第24作「未来戦隊タイムレンジャー」から、ロンダーズファミリーのロボット兵士のゼニット
シリーズ第25作「百獣戦隊ガオレンジャー」から、オルグの戦闘員のオルゲット
シリーズ第26作「忍風戦隊ハリケンジャー」から、宇宙忍群ジャカンジャの戦闘員の下忍マゲラッパ
シリーズ第27作「爆竜戦隊アバレンジャー」から、邪命体エヴォリアンの下級兵士のバーミア兵
シリーズ第28作「特捜戦隊デカレンジャー」から、エージェント・アブレラ配下の安価型メカ人間のアーナロイド
シリーズ第29作「魔法戦隊マジレンジャー」から、地底冥府インフェルシアの雑兵の冥府兵ゾビル
シリーズ第30作「轟轟戦隊ボウケンジャー」から、ゴードム文明の戦闘員のカース
シリーズ第31作「獣拳戦隊ゲキレンジャー」から、臨獣拳アクガタの下級拳士のリンシー
シリーズ第32作「炎神戦隊ゴーオンジャー」から、蛮機族ガイアークの一般兵の蛮機兵ウガッツ
シリーズ第33作「侍戦隊シンケンジャー」から、外道衆の戦闘員のナナシ
シリーズ第34作「天装戦隊ゴセイジャー」から、ブレドラン(ブラジラ)配下の戦闘員の魔虫兵ビービ

以上の34種類の戦闘員が1人ずつ、合計34人の戦闘員軍団が登場し、自分達を悪の精鋭だと言い張ります。
まぁ、厳密に言うと、この34種類の戦闘員には言葉を喋れない設定のものが結構多いので、
ここで口を揃えてセリフを言ってること自体がちょっと変であり、
だいいちロボットとか無生物系のものも結構多く、
それらが死者の魂となっているというのも妙であるようにも見えます。

しかし無生物にだって魂はあります。
人形の幽霊なんてものがあるぐらいですから、ロボットでありながら死者の魂が生じても何らおかしくはない。
また、肉体を持っていた頃は肉体的制限によって喋ることが出来なかったような者も、
肉体の軛を脱した死者の魂となったことによって意思を言葉にして流暢に話せるようになったとしてもおかしくはない。
だから、この場面で34戦闘員が登場して喋っているのは、
彼らが死者の魂であるという前提ではそんなに奇異なことではありません。

さてマーベラス達は「199ヒーロー大決戦」映画でビービ、ゾビル、ウガッツとは戦っていますが、
いちいちその姿を覚えていないので、どの戦闘員も初めて見るような印象です。
それを見越して戦闘員の連中は「精鋭」だなどと見栄を張っているようですが、
マーベラス達はたとえ初対面でも、相手から漂う圧倒的なザコ臭で、相手がザコだということは分かります。
マーベラスは「・・・いや・・・ザコだろ!」と再度決めつけるのでした。
この不毛な遣り取りに、ルカが「どうでもいいよ!とっとと片付けて帰ろ!」と面倒くさそうに言います。
ルカにも、他の皆にもロスダークの狙いがだいたい分かってきたようで、
マーベラスも「フン・・・」と鼻で笑います。

ロスダークがこのイメージ空間にマーベラス達の意識体を送り込んだ理由は、
ここでロスダークの呼び寄せた死者の魂と戦わせるためだったのです。
そういえばロスダークはマーベラス達をドクロの口に引っ張り込む直前に、
「この先に待ち受ける我がしもべたちに敗れた瞬間、お前達の命は終わる」と言いました。
つまり、このイメージ空間においては意識が全ての世界ですから、意識体がそのまま肉体のようなもので、
普段肉体を使って戦うのと同じように戦うことは出来るが、
このイメージ空間での肉体がダメージを受けて倒されれば、それは意識体としての死に直結し、
意識が死ねば、ドクロ内の亜空間内の真の肉体も死ぬのです。

そして、どうしてロスダークがマーベラス達の命を現実空間で奪おうとはせずに、
このようなイメージ空間で命を奪おうとしているのかというと、
現実空間で戦闘力を発揮出来る死者の魂は生体エネルギーで武装したロスダークただ1人であるからであるようです。

つまり、現実空間で戦おうとすると、どれだけ幽霊船に死者の魂を呼び寄せたとしても、
マーベラス一味の5人に対してロスダークは1人で戦わねばならない。
それだとロスダークはさすがに不利なのです。
一方、イメージ空間ならば意識体である死者の魂は肉体を持っているかのように、
生前のものに近い戦闘力で戦うことが出来て、
同じく意識体であるマーベラス達に擬似的な肉体的ダメージを与えることも出来るのであり、
最終的にマーベラス達の意識体を死に至らしめることも出来るのです。

そしてロスダークはドクロの力を使って死者の魂ならばいくらでも
自分の作ったイメージ空間に呼び寄せることが出来ますから、
マーベラス達の意識体をイメージ空間に落として閉じ込めて、多数の死者の魂に襲わせた方が
数的有利な状況で戦うことが出来るというわけなのです。

あの壁のドクロにそんな恐るべき機能があったとは、これはマーベラス達の想像を遥かに超える事態だといえます。
おそらくロスダークはこれまでも同じようにして、
ゴッドアイを狙って幽霊船にやって来た強者たちをあのドクロの罠に嵌めてイメージ空間に意識を落とし、
そこで死者の魂と戦わせて殺してきたのでしょう。
そして、イメージ空間でその強者の意識体と戦わせる死者の魂は、
かつてその強者によって殺されて恨みを抱いている死者の魂を選んできたのでしょう。
その方がその強者は恐怖を感じるであろうし、死者の魂も恨みを晴らすために執念深く戦うからです。

そういうわけで今回のマーベラス一味に対しては、
直接マーベラス達に恨みを抱いている死者の魂が来るのが順当であるようにも思えますが、
ロスダークが選んだのは過去に34のスーパー戦隊に倒された恨みを抱く者達でした。
それはマーベラス達がスーパー戦隊の力を使って戦う戦士達だからです。
スーパー戦隊の力に対抗するためには、スーパー戦隊への恨みを募らせた死者の魂が最適だという判断なのでしょう。

そういうわけで34戦隊に恨みを抱く34作品分の戦闘員軍団が
このイメージ空間におけるマーベラス達への刺客として立ち塞がったわけですが、
そうと分かればマーベラス達のとるべき行動も自ずと決まってきます。
このザコ軍団をさっさと片付けて、あの上空のドクロの口が閉まってしまわないうちに、
再びあの口から元の亜空間に戻って、自分の真の肉体に戻り、
更に壁のドクロの口を通って元の現実空間の幽霊船の大広間に戻って、
5対1でロスダークをさっさと倒してゴッドアイを手に入れることです。
きっとそうしてみせると固く心に決め、マーベラス達はレンジャーキーを取出し、
「豪快チェンジ!」と5人は一斉にゴーカイジャーに変身したのでした。

ここから戦闘アクションシーンとなり、
状況的にはかなり緊迫しているはずなのですが、この後、しばらくコミカルな場面が続きます。
ストーリー展開としては不自然なのですが、
これはあくまで夏休みの貴重な日にお金を払ってこの映画を観に来てくれた
お客さんの子供たちや親たちへのサービスです。
やっぱり映画の場合、普段のTV版よりも更に楽しく笑える場面も多くないといけません。

だから、本当は上空の黒雲ドクロの口が閉じていくという緊迫した状況であるはずなのに、
出てくる敵はユルい奴が続き、マーベラス達もいきなり呑気に遊んでいるように見えてしまい、
どうも不自然なのですが、それはファンサービスのギャグシーンと割り切って楽しむことにして、
ドクロの口が閉じていくタイムリミット設定のことはしばし忘れてください。

まず、変身したマーベラス達5人はそれぞれ1人ずつで戦って、戦闘員軍団を圧倒します。
マーベラスはひたすら豪快に力強く、ジョーは鮮やかでいてクールに、アイムは華麗な身のこなしで、
ルカはスピード感あふれる余裕を見せ、ハカセは軽妙にトリッキーな動きで、
それぞれが持ち味を出して戦闘員軍団を一気に蹴散らしました。
最初は精鋭などとカッコつけていましたが、やはり戦闘員たちは個々ではザコであり、群れてもやはりザコでした。

たまらず我先に逃げ出す戦闘員たちの後ろから悠然と追いかけるマーベラス達5人の真ん中で
マーベラスは剣を担いで「おいおい・・・もう終わりかよ?」とせせら笑うように言います。
いや、こういうセリフって、普通は悪役が吐くセリフなんですけど、
マーベラスは妙にこういう悪役セリフが似合っているので面白い。

このマーベラスの軽侮を受けて、逃げようとしていた戦闘員たちは立ち止まり振り返り怒ります。
先頭に立ったナナシが「おのれぇ!!こうなったら我らの本当の力を見せてやるぅ!!」と啖呵を切り、
他の戦闘員たちも同意して大いに気勢を上げますが、それにしてもなんでナナシが仕切ってるのか?
ナナシものすごい目立ってます。

この「本当の力を見せる」という、いかにも弱いヤツが口にする負けフラグ確実なセリフに対して、
マーベラスは相変わらず口が悪く「・・・初めっから見せろっての!」と悪態をつきます。
先ほどからのマーベラスの傲慢発言もかなり負けフラグになり得るセリフなのですが、
ここはもうほとんど負けフラグ同士のヒーロー不在対決の様相を呈してきています。

戦闘員たちは「兵隊合体!!」というナナシの号令に合わせて、ナナシを中心にして身体をくっつけていきます。
だからなんでナナシが仕切ってんだよと思わずにはいられませんが、
何だかよく分からないうちに34の戦闘員は融合して「合体完了!!」と声を揃えて、
なんとも酷いデザインの1体の怪人が姿を現しました。
全身にびっしりと34戦闘員の顔がお面のように貼り付いている不気味なデザインです。
こんなことが出来るのも、この戦闘員たちが死者の魂、すなわち意識体だからなのでしょう。
もう何でもアリのこの超展開に「ああ!?合体しちゃった!?」とハカセも驚愕します。

合体戦闘員は一気に攻勢に出て、全身から34戦闘員の手と思われる触手を伸ばして
マーベラス達5人を攻撃してきました。
しかしマーベラス達はこの多数の触手をゴーカイサーベルで斬りまくり、
更にゴーカイガンの一斉連射で合体戦闘員を撃ちまくります。

この合体戦闘員、外見な恐ろしくグロテスクで大柄にもなっており、なんだか一見強そうな怪人のようですが、
元が特に特殊能力も無い34種類の戦闘員がくっついただけですから、
攻撃力は単に殴ったり蹴ったりするぐらいのようで、防御力も大したことはないようです。

34の戦闘員が束になって戦うのと、34の戦闘員が合体して戦うのと、戦力的には結局は同じであるようで、
合体戦闘員はさっきと同じようにマーベラス達にメッタ斬り、メッタ撃ちにされて「うわああ!」と無様に転がります。
まぁいつもは戦闘員はこれぐらいの攻撃でとっくに倒されているわけですから、
合体したことでそれなりに耐久力は上がってはいるようですが、
マーベラスはすっかり余裕で「おいおい・・・合体してもやっぱりザコはザコだなぁ・・・」と、
またも弱い戦闘員たちを容赦なくディスります。

これを聞いて合体戦闘員の中心にいるナナシが「おのれぇ〜!ナナシの本当の力、見せてやるぅ〜!」と激怒して、
合体戦闘員は立ち上がりますが、
なんとこれに対して、合体戦闘員の身体を構成する他の戦闘員たちが口々に
「俺だ!俺だぁ!」「俺!俺〜!」「お前じゃ無理だぁ!」「もっともっと!」と叫んで
次々と合体ボディから手を伸ばしたり身体を乗り出してきたりして、自己アピールを開始してきたのです。

どうもこの合体戦闘員は身体を動かす命令系統が複数あると混乱するので、
一応ナナシに指揮命令系統を全部一任していたようです。
ところが全くゴーカイジャーに手も足も出ないので、他の戦闘員たちは
ナナシの指揮にはもう任せておけない、自分がナナシに代わって指揮をとらねばいけないと思ったようです。
それで我も我もと合体ボディを自分の意思で動かそうとして相争うものですから、
なんだか収拾がつかなくなってしまいました。

これにはマーベラス達も唖然として見つめ、
ハカセは「・・・なんか揉めてる・・・?」と、いったい何が起こっているのかと不思議そうに呟きます。
合体戦闘員というものの存在自体がこのイメージ世界特有の不条理なものであるので、
その合体ボディのコントロール権の奪い合いで戦闘員同士が揉めるという事態そのものが
あまり想像できないマーベラス達は、事態があんまりよく分からないようで、
アイムは手足から各戦闘員たちが飛び出しては引っ込むことを繰り返すために手足が激しく動いている
合体戦闘員の姿を見て、「・・・まるで・・・ダンスのようですね?」と感心します。

確かに合体戦闘員は激しくステップを踏んで手を振りあげてジャンプしたり回転したりしており、
ブレイクダンスを踊っているようです。
その場所も寺院の中のステージっぽい場所で、何故か舞台照明のようなライトがあったりして、
ダンス感を演出しています。
これを見てマーベラスは、もしや合体戦闘員はこのダンスの動きから
攻撃を仕掛けてこようとしているのかと思いました。
ならばこちらもダンスに長けた戦士で対抗しようと思い、
マーベラスは「ダンスにはこれだ!」とレンジャーキーを取り出して、
5人は一斉に「豪快チェンジ!!」と多段変身し、バトルフィーバー隊の姿となったのでした。

バトルフィーバー隊への豪快チェンジはこれまでTV本編では登場しておらず、この映画で初披露となります。
「スパイダーマン」から引き継いだアメコミヒーローのフォーマットと
「ゴレンジャー」「ジャッカー電撃隊」の集団ヒーローのフォーマットを合体させた
スーパー戦隊シリーズ第3作「バトルフィーバーJ」に登場する主役戦隊のバトルフィーバー隊は
アジア、ヨーロッパ、ユーラシア、アフリカ、アメリカという世界各地域をそれぞれ代表する
戦士5人組というコンセプトであり、一応色分けはしてありますが、
ゴレンジャーやジャッカー電撃隊のように色で個性づけしているのとはちょっと違う戦隊です。

白地に赤が特徴的なバトルジャパンにはマーベラスが変身し、
白字に青が特徴的なバトルフランスにはジョーが変身し、
全体的にオレンジっぽい色のバトルコサックにはルカが変身し、
全体的に黒っぽい色のバトルケニアにはハカセが変身し、
ピンクのレオタード姿のミスアメリカにはアイムが変身します。

なお、ゴーカイジャーの多段変身においてオリジナルでは男戦士であるものにアイムやルカが変身する場合、
その戦隊の女性戦士のコスチュームデザインに倣ったスーツデザインに刷新されるのであり、
このバトルフィーバー隊における女性戦士のミスアメリカがハイレグレオタード姿であることから、
ルカが変身したバトルコサックもハイレグレオタード姿になっていないとおかしいはずですが、
ここではバトルコサックは元の男戦士の時のままのスタイルになっています。
これはさすがにゴーカイイエローおよびその多段変身戦士を全て演じる超一流の女形スーツアクターの
蜂須賀祐一氏といえども、ハイレグレオタード姿では男であることを隠すのは不可能と判断されたからでしょう。

さて、ここでマーベラスがバトルフィーバー隊への豪快チェンジを選択したのは、
さっきも言っていたようにダンスにはダンスで対抗するためです。
バトルフィーバー隊はその名のとおり、世界中のダンスを採り入れた技で戦う戦隊であり、
その戦闘スタイルはかなりビジュアル的に面白いです。

ここでもそれが見たいところですが、残念ながら尺の都合なのか、
バトルフィーバー隊としての格闘シーンは無く、いきなり決め技となります。
ならば別にバトルフィーバー隊でなくても良さそうなものですが、
ダンスにダンスで対抗するという流れはバトルフィーバー隊を出すためのこじつけのようなもので、
ここで制作側は確かにバトルフィーバー隊を出したかったようではあります。
それでいて、せっかくバトルフィーバー隊を出しておいてダンス戦闘をさせないのですから、
単にこの映画でバトルフィーバー隊を出しておきたかったということなのでしょう。

それは、ここまで第23話までのTV本編で未だにバトルフィーバー隊の多段変身を登場させていないので、
使っておきたかったということなのでしょう。
ただ尺の関係で格闘シーンまでは入れることが出来ず、決め技だけとなったのでしょう。

ちなみにここの場面、「バトルフィーバーJ」のOPテーマのインストバージョンが流れます。
通常「ゴーカイジャー」のTV本編では当該戦隊のレジェンド回ではない時に
ゴーカイジャー以外の戦隊の関連曲が流れることはないのですが、映画の場合は特別であるようで、
「199ヒーロー大決戦」映画でも、ゴセイジャーとゴレンジャーのOPテーマが
ボーカル入りで劇中挿入曲として使われていました。
この「空飛ぶ幽霊船」映画でも、まずはここでインストバージョンではありますが、
バトルフィーバーのOPテーマが流れたのです。

そして5人は変身して決めポーズをとると、すぐに万能棒のコマンドバットを取出し、
「ペンタフォース!!」と叫んで上に放り投げます。
5本のコマンドバット5人の頭上で合体し、バズーカタイプのペンタフォースに合体し、降りてきました。

ペンタフォースというのはバトルフィーバー隊の必殺武器で、5本のコマンドバットを合体させて完成するのですが、
前期に使用されたミサイルを発射するバズーカタイプと、
後期に使用された敵に投げつけるブーメランタイプの2種類の合体形式があります。
ここではマーベラス達は前期型のバズーカタイプのペンタフォースを構えます。

これを見て、合体戦闘員は根拠も無く自信満々で「ふん!そんなものでやられる俺たちではない!!」と言って、
悠然とマーベラス達の方に歩いていきます。
なんだか強そうではありますが、これは全くの虚勢であり、
マーベラスは容赦なく「フィーバー!」と号令をかけ、5人はペンタフォースからミサイルを発射、
これが炸裂して合体戦闘員は「うわぁ!!」とあえなく倒されてしまいました。

しかしその爆炎の中から、「これで終わりと思うなぁ!!」という断末魔の声と共に何かが多数飛び出してきて
マーベラス達の周りで炸裂し、マーベラス達は「うわぁぁ!?」とその爆炎に巻き込まれてしまったのでした。
飛んできたのは野球のボールであり、合体戦闘員たちは倒されはしたものの、
マーベラス達をこのまますんなりとこのイメージ空間から脱出させないように、
次の罠への仕掛けをしてから果てたのでした。

合体戦闘員の最期の足掻きで飛ばしてきた野球のボールが炸裂して吹っ飛ばされたはずのマーベラス達5人でしたが、
次の瞬間、5人が倒れ込んだ場所は先ほどの寺院とは違う場所でした。
5人を呑みこんだ爆炎も無く、5人とも全く傷も負っていません。
あの合体戦闘員の倒された後の最後の一撃というのは、通常の相手を殺傷する攻撃ではなく、
イメージ空間における意識体特有の、相手を別のイメージ空間に飛ばすための攻撃であったようです。

「・・・ん?」と倒れたまま顔を上げたマーベラス達が周りを見ると、そこは平らに整地された地面の上でした。
「ここは・・・?」とマーベラス達は戸惑いながら身を起こしていきます。
なんだか見覚えがあるような無いような、奇妙な場所でした。

そこにスピーカーを通したような女性の穏やかな声が
「たいへん長らくお待たせいたしました・・・只今より試合開始でございます」と響いてきます。
その言葉の意味がよく分からず、立ち上がった5人は更に困惑し、
ハカセは「なんだなんだ!?」とキョロキョロ周りを見回しました。
そこは広いグラウンドで、観客席もある。よく見ると、そこは野球場であることにようやく5人は気付きました。
マーベラス達は野球場のピッチャーマウンドのところに並んで投げ出されていたのです。

寺院から一瞬で野球場のド真ん中に移動するとは普通ではない。
これもまた新たなイメージ空間なのであり、自分達はさっきの野球ボールの攻撃によって、
この野球場のイメージ空間に飛ばされたのだとマーベラス達は悟りました。
となると、ここにもまた新たな刺客である死者の魂、
おそらくスーパー戦隊にかつて倒された死者の魂が待ち構えているはずであり、
この野球場はその敵にとって有利な場所なのであろうと想像出来ましたが、
それにしても、どうして野球場なのだろうかとマーベラス達は困惑しました。
いったいどんな敵が待ち構えているのか?

すると、さっきの穏やかな女性の声、つまりウグイス嬢の場内アナウンスが続けて
「・・・バッターは、一番、指名打者・・・」と言うので、思わず5人はバックスクリーンの方に視線をやると、
「野球仮面!」というウグイス嬢のコールと共にバックスクリーンの電光掲示板には
「DH 野球仮面」という文字が点灯し、誰も観客はいないはずなのに球場は大歓声が沸き起こり、
「うわっはっはっはっはっは!!」という高笑いが5人の背後から聞こえます。

5人が驚いて後ろを振り向くと、三塁側のベンチから何者かが高笑いしながら出てきます。
その姿を見て、ハカセは「うわ?」と驚いて指さしました。
頭が大きな野球のボールで、身体は黒い全身スーツにマントを翻した、
なんともシュールな姿の怪人がいきなりバットを担いでベンチから出てバッターボックスに向かっているのです。
いったいこの怪人が何者なのか、これから何が始まるのか分からず、5人はその怪人の動向を見守りました。

すると、その怪人はバッターボックスに入ると、
「みごと三振を奪えれば、この世界から出〜してやろう!」と言って予告ホームランのポーズを決めて、
バットの先をバックスクリーンに向けて突き出します。
「何だてめぇは!?」と問い返すマーベラスに対して、
その怪人は「生まれ変わった野球仮面・・・とだけ言っておこう・・・」と気取って答えると、
バットを構えて「この俺と野球で勝負だぁ!!」と気合を入れます。

この怪人は野球仮面です。
野球仮面とはシリーズ第1作「秘密戦隊ゴレンジャー」第53話に登場した黒十字軍の仮面怪人であり、
そのシュールな外見とコミカルな動きで仮面怪人中で随一の人気を誇るヤツです。
なお、この野球仮面、1976年に登場した時と全く同じ外見で、
しかも声をあてているのは35年前と同じ永井一郎氏です。

永井氏は日本声優界の重鎮の1人でこの映画の撮影時80歳で、なんとロスダーク役の内海氏よりも年長です。
内海氏と同じく1963年の「鉄腕アトム」第1作から参加している大ベテランで、
これまでに膨大な役を演じておられますが、代表的なものとしては「サザエさん」の磯野波平、
「ゲゲゲの鬼太郎」の子泣き爺、「ど根性ガエル」の町田先生、「宇宙戦艦ヤマト」の佐渡酒造、
「未来少年コナン」のダイス船長、「機動戦士ガンダム」のナレーション、「うる星やつら」の錯乱坊、
「ドラゴンボール」のカリン様、「YAWARA!」の猪熊滋悟郎、「らんま1/2」の八宝菜、
「はじめの一歩」の猫田銀八など、愛嬌のある老人役が多い。

特撮ドラマへの参加はあまり多くありませんが、
スーパー戦隊シリーズでは「獣拳戦隊ゲキレンジャー」のマスター・シャーフー役が有名で、
「ゴーカイジャー」第7話のゲキレンジャー篇にも1シーン登場したシャーフーの声をあてていただいていました。
その永井氏がスーパー戦隊シリーズにおけるもう1つの当たり役である「ゴレンジャー」の野球仮面の声を
35年前と同じように、この映画で相変わらずトボケた感じであてていただいております。

野球仮面は「ゴレンジャー」第53話で、そのシュールな外見からは少し意外な殺伐とした作戦を実行しようとしますが、
ゴレンジャーに阻まれ、最後はゴレンジャーハリケーンの変形技の野球対決で、
ゴレンジャーの卑怯な作戦の前に敗れ去り、大爆発して果てました。

だいたい「ゴレンジャー」という作品は2年も放送したシリーズ最長作品ですが、
1年目は比較的シリアスで2年目はかなりコミカルに路線変更しています。
この2年目に主に使われた必殺技がゴレンジャーハリケーンで、基本的にこの技は卑怯技です。
野球仮面の第53話というのもこの2年目にあたり、
野球仮面以外の怪人も2年目はだいたいはゴレンジャーハリケーンの卑怯技で倒されています。
しかし、その中でも野球仮面の時の技は特に卑怯で、
卑怯技ゴレンジャーハリケーンの代表的使用例と言っていいでしょう。

その野球仮面の死者の魂がロスダークによって呼び寄せられて、
マーベラス一味に対する第二の刺客として繰り出され、この野球場のイメージ空間で野球対決を挑んできたのは、
35年前の無念を晴らすためなのでしょう。

一方、マーベラス達は野球仮面のことは知らないが、
ゴレンンジャーの技であるゴレンジャーハリケーンのことは知っています。
それはゴレンジャーのレンジャーキーに封じられたゴレンジャーの戦う力に由来し、
それはゴレンジャーが黒十字軍との戦いの中で培ってきた能力です。

つまり黒十字軍との戦いの中でゴレンジャーが編み出していった技が
ゴレンジャーの戦う力の中にフィードバックされており、
それが現在はゴレンジャーのレンジャーキーの中に封じられているのです。
だからマーベラス達はゴレンジャーのレンジャーキーを使ってゴレンジャーに変身した際に、
ゴレンジャーの蓄積してきた技のイメージは頭の中に流れ込んできて把握しています。
その技で倒した相手のことは分からないが、技そのものは知っているのです。
特にゴレンジャーの必殺技ゴレンジャーハリケーンの代表的な変則使用例である野球戦法については、
マーベラス一味の面々の頭の中には強く印象が残っていたようです。

このイメージ空間で現れた敵怪人が野球対決を所望しており、
その野球仮面という敵怪人を三振に打ち取ればイメージ空間から脱出できると知り、
ルカはすぐにゴレンジャーハリケーンの応用技で野球対決で相手を三振に取る技があったことを思い出しました。
ルカはその技がかつてゴレンジャーが35年前にまさにその野球仮面を倒した技であることは知らないが、
野球仮面が野球対決を望むならば、ゴレンジャーのあの技が最適だと咄嗟に思い、
皆に向かって面白そうに「・・・野球仮面なら・・・アレしかないでしょ!」と言います。

マーベラスもルカと同じ技を思いついていたようで、「ああ!一気にいくかぁ!!」と応じると
ゴーカイバックルからアカレンジャーのレンジャーキーを出します。
他の4人も同様にゴレンジャーのレンジャーキーを出し、「豪快チェンジ!!」と、一斉にゴレンジャーに変身します。

ここで懐かしの「ゴレンジャー」のタイトルバックが背景となり、
5人はオリジナルのゴレンジャーに倣ってターンして変身し、
なんとBGMとしてオリジナルのEDテーマである「秘密戦隊ゴレンジャー」のインストバージョンが流れ始めました。
あの「バンバラバンバンバン」で有名な曲です。
「ゴーカイジャー」の物語の中で他作品のOPテーマ以外の曲が流れたのはこれが初めてといえます。

マーベラスがアカレンジャーに変身し、ジョーがアオレンジャーに変身し、ルカがキレンジャーに変身し、
ハカセがミドレンジャーに変身し、アイムがモモレンジャーに変身し、
5人一斉に「ふん!」と左足を一歩前に踏み出して、「5人揃って!ゴレンジャー!!」と右手を前に突き出す、
オリジナルのままのゴレンジャーの全体名乗りを決めます。

このように全体名乗りだけとはいえ、多段変身時に決めゼリフをちゃんと言うパターンは
これまでの「ゴーカイジャー」TV本編では見られなかったことで、
やはり劇場版ならではのサービスという意味合いもあるのでしょうけれど、
これはバッターボックスに立つ野球仮面にも懐かしかったようで、
「懐かしい〜!35年ぶりだのぉ!」と感激して泣くような仕草をして、
「燃えてきたぞぉぉ!!」と、いっそう張り切ってバットをブンブン振り回します。

自分を卑怯な技で殺した相手のことを懐かしんで感激して泣くというのも変な話ですが、
結局は野球仮面は今こそ35年前の雪辱を晴らすチャンスだと、ますます燃えてきたようです。
ちなみに、この野球仮面が感涙にむせぶ仕草、永井氏の当たり役である「ど根性ガエル」の
町田先生(「教師生活25年」と言って泣く人)がちょっと入ってるような気もします。

この野球仮面に対してマーベラス達はゴレンジャーハリケーンのエンドボールであるアメフトのボールを
アイムが地面に突き出し、全員が同じように手を突き出すゴレンジャーハリケーン開始時のお決まりのポーズで、
マーベラスは「ゴレンジャーハリケーン!チアガール!」と技のコードネームを言います。

なお、35年前にゴレンジャーが野球仮面を倒した時にアカレンジャーが唱えた技のコードネームは
「ゴレンジャーハリケーン!変化球!」であり、今回は別のコードネームになっています。
これは、野球仮面がゴレンジャーの名乗りを見て懐かしがったのを見て、
もしかしたら野球仮面はゴレンジャーのこの野球対決用のゴレンジャーハリケーンを知っているのではないかと思い、
マーベラスが微妙に技の内容を変更したからです。

さて、ではマーベラスが即興でアレンジした「ゴレンジャーハリケーン・チアガール」とはどんな技なのか?
まぁ、ものすごくバカバカしい技なんですが、
とりあえず途中までは「ゴレンジャー」第53話で野球仮面を撃破した「ゴレンジャーハリケーン・変化球」と
同じ流れで進んでいきます。

ちなみに、その「ゴレンジャー」第53話の「ゴレンジャーハリケーン・変化球」の時はどんなだったのかというと、
まずモモレンジャーがアメフトボール状のエンドボール(中身は爆弾)をミドレンジャーに投げると、
エンドボールは野球のボールに変わり、それを受け取ったミドレンジャーがピッチャー役になり、
キャッチャー役のキレンジャーに向かって最初にアンダースローで投げ、野球仮面が空振りしてワンストライク、
そして次にピッチャー役がアオレンジャーに変わって、アオレンジャーがスローボールを投げて
野球仮面が空振りしてツーストライク、
そして最後にピッチャー役がアカレンジャーに変わり、アカレンジャーが速球を投げ、
野球仮面はそれを打とうとしますが、モモレンジャーがボールをリモコンで操作して
いきなりボールが宙をフワフワ舞い始め、野球仮面はそれを打とうとして何度も空振りして三振し、
最後は何故か野球仮面が引退を宣言したところでボールが野球仮面の頭に当たって大爆発、
野球仮面は倒されたのでした。

何だか色んな意味でヒドい技ですが、
今回も最初、モモレンジャーの姿をしたアイムがアメフト状のエンドボールを持って
「行きますよぉ・・・ハカセさん!」と言ってクルリを回ると、エンドボールは野球のボールになります。
それをアイムはミドレンジャーの姿をしたハカセに投げ、
ハカセは「オッケェ〜イ!」と受け取って、マウンドに立ちます。

バッターボックスには野球仮面が右打席で「どんな球でも必ず打つ!」と燃えに燃えており、
その後ろではキャッチャー役のキレンジャーの姿をしたルカが「来〜い!」とミットを構えます。
なお、35年前は野球仮面は左打ちだったはずですが、ここでは右打席に入っています。

そしてハカセは「よぉし!アンダースローだ!いくよルカ!」と言って、アンダースローで第一球を投じました。
野球仮面は思いっきりバットを振りますが、ボールはバットに当たらずルカの構えたミットに収まります。
「あら?空振りだと〜!?どうしたことだぁ!?これはぁ〜!」と野球仮面はバットを振り回してわめき、
ルカはほくそ笑んで「フフ・・・ワンストライク!」と言って、
ハカセに代わってマウンドに立ったジョーに向かって「ジョー!」と言ってボールを投げます。

この一連のアイムやハカセやルカや野球仮面のセリフや動きは
「ゴレンジャー」第53話のモモレンジャー、ミドレンジャー、キレンジャー、野球仮面の
セリフや動きとほぼ同じなのですが、
その当事者であるはずの野球仮面はこれでもどうもこの流れが35年前に自分が敗れた時と
同じであることに気付いておらず、35年前と同じセリフを言っているようです。
やっぱり野球仮面はアホです。

そしてルカからのボールを「オーライ!今度は俺だ・・・」と受け取ったジョーは
「スローボール!」とわざわざ予告しながらスローボールを投じて、
「打てるものなら打ってみろ・・・」と言いながら投じたその弾はヘロヘロヘロヘロと進んでいき、
せっかくスローボールだと予告してくれているというのに「ああああ・・・・」と待ちきれずに
前につんのめった野球仮面は「うわああ!」とボールが来る前に豪快に空振りして尻もちをつき、
ルカはボールを受けて「ツーストライク!」と得意げに喜びます。

ここまでもジョーやルカや野球仮面のセリフや動きは
35年前のアオレンジャーやキレンジャーや野球仮面とほぼ同じで、
ホントに見事に再現して、現代の映像技術でリニューアルして無駄に豪華になっています。

35年前から何ら進歩も反省もなく全然ダメダメなクセに
「二度あることは三度は無い!」と意味不明なことを喚いて未だ闘志の衰えない野球仮面に向かい、
アカレンジャーの姿のマーベラスはルカからボールを受け取ってマウンドに立つと
「よぉし!これで三振だ・・・いくぞ!」と、これまた35年前のアカレンジャーと同じセリフを言います。

野球仮面は「よぉし!!」とやる気満々でバットをホームベースに叩きつけますが、
間違えて自分の足を思いっきり叩いてしまい「あいたたた!」と跳び上がって痛がります。
もうホントにどうしようもないバカです。
しかしすぐに気を取り直して野球仮面は「俺を侮るなぁ!」とバットを構え、三球目を待ちます。

そこにマーベラスは「はあああっ!!」と思いっきり剛速球を投げ込み、
「こいこいこいこい!」と待ち受ける野球仮面の目の前にボールが迫った時、
なんとボールがピタリと空中で静止したのでした。
このシーンまでずっと「秘密戦隊ゴレンジャー」のインストバージョンのBGMが流れていたのですが、
その曲もちょうどここで終わります。

元ネタの35年前の「ゴレンジャーハリケーン・変化球」の時は、
ここからモモレンジャーのリモコン操作でボールが宙を舞うことになったのですが、
今回の「ゴレンジャーハリケーン・チアガール」の場合はどうなるのか?
なんとここでいきなり空中で静止したボールが真っ二つに割れて、中から3人のチアガールが出現して
「イェ〜イ!」と元気いっぱいにボンボンを振りながら「G3!プリンセス!!」とコールしたのでした。
あまりの予想外の展開に野球仮面は「ええええええ!?」と唖然として絶句します。

この「G3プリンセス」とは何者なのか、35年前に死んだ野球仮面には知る由もないだろうが、
この3人組はシリーズ第32作「炎神戦隊ゴーオンジャー」に登場した期間限定アイドルユニットで、
そのメンバーはゴーオンイエロー楼山早輝と、ゴーオンシルバー須塔美羽と、
ゴーオンジャーの敵組織ガイアークの害水大臣ケガレシアの女性3人ユニットです。
確かにこの3人のチアガールの出現した場面の背景には
「ゴーオンジャー」本編で使用されていたG3プリンセスのエンブレムが浮かび上がっています。

どうして敵同士がアイドルユニットを組んでいるのか、その事情は「ゴーオンジャー」第31話を見れば分かりますが、
真面目に説明しても頭痛がするだけのような下らない事情なのでいちいち説明はしません。
とにかくこのG3プリンセスは「ゴーオンジャー」当時、実際に作品世界を飛び出して
現実世界でCDや写真集まで発売してしまうという悪ノリっぷりを見せました。

まぁとにかく、どうしてそのG3プリンセスがマーベラスの投げたボールの中から現れたのかというと、
もちろんこの3人は本物の早輝、美羽、ケガレシアではなく、
あくまでこのイメージ空間でマーベラスが作り出したイメージの産物です。
そもそも本物のG3プリンセスのユニホームはピンクのフリフリのミニスカートの衣装であって、
チアガールの格好ではありません。

これはあくまで可愛いチアガールを見せて野球仮面を幻惑してやろうというマーベラスのセコい作戦の産物であり、
単なる可愛い女の子のチアガールであれば本来は何でもいいのであって、
G3プリンセスがチアガールの格好をして出てくる必要性は無いのです。
そもそもマーベラスはG3プリンセスなど知らないのだから、
マーベラスがG3プリンセスの入ったボールを投げることが出来るはずがない。
だからこのシーンは本来は有り得ない根本的に変なシーンなのですが、
一種のお祭り映画である今回の映画では、これはお遊びのシーンとして許容するのはアリでしょう。
どうせなら普通の女の子を出すよりも、過去戦隊の人気美女ユニットであるG3プリンセスが登場した方が面白い。

ただ、歴代戦隊では他にも女性ユニットのようなものもあったと思えるのですが、
どうしてここではG3プリンセスが選ばれたのか?
それは第一に、「ゴーオンジャー」が歴代シリーズ作品の中で女性レギュラー陣のルックスのレベルが
トップレベルであり、それを集めたG3プリンセスが歴代女性ユニットの中で一番の美貌を誇っており、
しかも3年前の作品ですから、メンバーのルックス的な劣化がほとんど無いからでしょう。

そして、この「空飛ぶ幽霊船」映画の監督の渡辺勝也氏と脚本の荒川稔久氏のコンビというのが、
実はスーパー戦隊シリーズ屈指のカルトエピソードといわれる「ゴーオンジャー」第31話、
すなわちG3プリンセス誕生エピソードの監督と脚本と同じコンビなのであり、
なんでも渡辺氏がG3プリンセスをやけに気に入っているそうです。
そういうわけでここはG3プリンセスがチアガールのコスプレをして野球仮面を幻惑するという、
実にバカバカしい場面となったのでした。

バックには「ゴーオンジャー」の挿入歌でもあるG3プリンセスの楽曲
「G3プリンセスラップ」のインストバージョンが流れています。
まぁ「ゴーオンジャー」EDテーマ「炎神ラップ」のアレンジ曲なのですが、
「ゴーカイジャー」の物語の中で別の戦隊の挿入歌がBGMとして使用されるのはこれが初めてのこととなります。

G3プリンセスの3人の真ん中に立っているのは「199ヒーロー大決戦」に本物も登場した
ゴーオンイエローの楼山早輝です。
早輝を演じているのはオリジナル役者の逢沢りなさんで、この映画の撮影時19歳で、
最近は映画やドラマやグラビアなどで活躍しています。

3人の左端に立っているのはゴーオンシルバーの須塔美羽で、
美羽を演じているのはオリジナル役者の杉本有美さんです。
杉本さんはこの映画の撮影時は22歳で、グラビアやモデルでの活躍が著しいが、
コンスタントにテレビ番組にも出ています。

そして3人の右端に立っているのはガイアークの害水大臣のケガレシアで、
演じているのはオリジナル役者の及川奈央さんで、
この映画撮影時は30歳ですが、元AV女優界の女王という経歴から来る妖艶な色気と独特の若々しさは健在で、
AV女優からマルチタレントに転身後は、最近では「ゴーオンジャー」以外にも
映画の「ディケイド」完結篇に蜂女の役で出演するなど、特撮作品での活躍が目立ちます。

3人ともいずれも美女ですが、
タイプは早輝が可愛い妹タイプ、美羽が気の強い美女タイプ、ケガレシアがお色気熟女タイプというふうに
担当が分かれており、
ここでも早輝は瞳をウルウルさせてちょっと拗ねた顔で「おじ様!そんなバットで何するの?」と
野球仮面に向けて、あざとく話しかけます。
というか、なんかセリフがエロい。

続いて財閥令嬢の美羽が「ダメよぉ!ボールがボールを打つなんて!」と
Sっ気たっぷりの笑顔を振りまき、野球仮面に上から目線でダメ出し。
そしてケガレシアは甘えた視線を絡ませながら「だから・・・お願いでおじゃる!打たないで!」と
独特の「おじゃる」口調で媚びを売ります。

要するにこのボールを打たずに三振しろと要求しているわけですが、
この無茶な要求をするG3プリンセスがどうして今回はチアガールの格好をしているのかというと、
野球仮面は野球選手がモチーフの怪人だから、きっとチアガールにメロメロになるだろうという
マーベラスの安直な発想によるものでした。

しかしマーベラス以上にアホな野球仮面は
「うへぇ!かわいい〜!」とG3プリンセスにすっかりメロメロになってしまい、
「あいや・・・カワイ子ちゃんにそう言われると・・・あ、困ったぁ〜!」と、一気に陥落寸前となります。
しかしここでG3プリンセスの願いを聞いて三振してしまうと野球仮面はマーベラス達との勝負に負けてしまいます。
そのことをなんとか思い出した野球仮面は「・・・ん?・・・いかんいかんいかん!」と
バットで自分の頭を叩きまくって目を覚まし、
「ここは心を鬼にしてぇ・・・!」と再びバットを構えてボールを打とうとします。

だが、打とうにもボールは2つに割れていて、その真ん中にはG3プリンセスの3人が
「ん〜!おじ様ぁ〜!」と泣きそうな甘えた表情で抗議してきます。
これをまたまともに見てしまった野球仮面は結局ボールを打つことは出来ず、
「ん・・・いや・・・しかしぃ・・・!」と、再び苦悩し始めます。
もうホントにどうしようもないオヤジです。

頭を抱えて苦悩する野球仮面を見てG3プリンセスはしてやったりと小悪魔的な笑顔になり
「ウフッ!じゃあねぇ!おじ様〜!」と言うと、
2つに割れていたボールが元に戻ってG3プリンセスは消え、
静止していたボールはいきなりルカの構えるミットめがけて動き出します。
悩んでいた野球仮面はそれに気付いて「いかん!」と慌ててバットを振りますが、
悩んでいて動き出しが遅れた分振り遅れて、あえなく「あああ〜!」と空振り。
まぁ、まともに勝負しても打てなかったような気もしますが、
このオリジナルのゴレンジャー以上に卑怯なマーベラス達の作戦の前に野球仮面はこれで三振し、
マーベラス達は勝利をもぎ取ったのでした。

「空振り三振!やったぁ!」と立ち上がるルカの前で野球仮面は「しまったああああ!」と大声で悔しがります。
普通は抗議するところだと思いますが、抗議しないところは妙に清々しいヤツです。
野球場には試合終了を告げるサイレンが鳴り響き、マウンドでは皆は喜び、
アイムは「ルカさぁん!」とマウンドを駆け下りていき、
「試合終了〜!」と歓喜してマウンドへ走ってくるルカと勝利の抱擁をしようとしていますが、
アイムは別にピッチャーしてないはずなので、もうワケが分かりません。

マーベラスも「よっしゃぁ!」と、これで野球仮面との約束通り、
このイメージ空間から抜け出すことが出来ると思いガッツポーズをとります。
一方、敗れた野球仮面はガックリと膝をついて落ち込んでいましたが、
ようやく立ち上がり「・・・老兵は去るのみ・・・若返れ!野球界!!」と、35年前と同じく、高らかに引退を宣言、
すると35年前と同じように野球ボール(中身は爆弾)が落ちてきて野球仮面の頭を直撃し
「あいたぁ!?」と痛がった野球仮面は「うわああ!さらばあああ!!」と断末魔の叫びを上げて
いきなり不条理にも大爆発して果て、
その爆炎は「うわあああ!?」と驚くマーベラス達まで呑みこんでいったのでした。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 07:34 | Comment(5) | 海賊戦隊ゴーカイジャーTHE MOVIE空飛ぶ幽霊船 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月23日

海賊戦隊ゴーカイジャーTHE MOVIE空飛ぶ幽霊船 感想その5

イメージ空間の野球場での野球仮面との勝負で、
野球仮面を見事(?)に三振に切って取って勝利したマーベラス達でしたが、
いきなりの野球仮面の爆発に巻き込まれたマーベラス達は、次の瞬間、また別の場所、
貨物港の波止場のような場所に「ぐあっ!?」と投げ出されました。

今回は変身も解除して生身に戻ってしまっていますから、
同じ断末魔の際の最後っ屁のような攻撃とはいっても合体戦闘員とは違って
野球仮面の攻撃はそれなりに強力であったようで、マーベラス達もそれなりに大きなダメージを受けたようです。

それにしても、野球仮面はマーベラス達に「自分から三振を奪えればこの世界から出してやる」と言いましたから、
野球仮面を三振にとったことでマーベラス達は元の現実世界に戻れるものだと思っていました。
しかし、もし元の世界に戻るとすれば、幽霊船の大広間に戻らないといけないはずです。
それなのに、こんな見知らぬ港に出てくるのはおかしい。
だいいち、港の上空には相変わらず例の黒雲ドクロが浮かんでおり、
その口は最初の頃よりもだいぶ狭まっており、もう完全に閉じる寸前です。
黒雲ドクロが空にあるということは、やはりここはまだイメージ空間ということになります。

ならば野球仮面は約束を破ったのかというと、おそらくそういうことではなく、
単に野球仮面を三振にとれば、あの野球場のイメージ空間をクリアして、
次のイメージ空間に進むことが出来るというだけの意味だったようです。
その次のイメージ空間がこの波止場であり、
そこにおけるマーベラス達への刺客と思しき集団が出現して迫ってきます。

その集団を先頭に立って「クックックック・・・」と笑いながら率いているのは、
シリーズ第28作「特捜戦隊デカレンジャー」に登場した宇宙武器商人のエージェント・アブレラです。
そしてアブレラに従っている集団は、「デカレンジャー」本編でアブレラの取り扱う商品であった
メカ人間のドロイド達です。
ドロイドには値段の安い順にアーナロイド、バーツロイド、イーガロイドの3種類がありますが、
ここでは3種類全部揃っており、全部で十数体います。

アーナロイドはゴーミン程度、バーツロイドはスゴーミン程度、イーガロイドは行動隊長レベルの実力と考えればいい。
更にアブレラはインサーンやバリゾーグあたりの幹部怪人レベルの実力者ですから、
意識体である分は多少は差し引いたとしても、これはかなり手強い敵集団といえます。
ロスダークはそんな手強いアブレラ軍団の死者の魂たちをこのイメージ空間に呼び寄せて
マーベラス達への刺客としたのです。

なお、アブレラの声を担当しておられるのは
「デカレンジャー」でアブレラの声を演じたオリジナル役者の中尾隆聖氏です。
中尾氏は日本声優界の草分け的存在の1人であり、この映画の撮影時は60歳、
「それいけ!アンパンマン」のバイキンマン役、「ドラゴンボールZ」のフリーザ役で特に有名な
ベテラン声優さんですが、
最近のニチアサ枠ではこの映画の後の出演となった「スイートプリキュア」のノイズ役が印象的です。
まぁこのように冷酷で妙な色気のある悪役を演じることの多い中尾氏ですが、
「デカレンジャー」のアブレラ役もハマリ役でした。

そのアブレラが中尾氏の声で幽霊として甦って再登場は視聴者には嬉しいが、
アブレラのことなど知らないマーベラス達には全然嬉しくはない。
むしろ迷惑そうに起き上がると、アブレラ達を睨みつけて「・・・またかよ・・・しつけぇなぁ・・・!」とボヤきます。

結局は野球仮面に勝っても別のイメージ空間に移動するだけだったのなら、
さっきの野球場で野球仮面と遊んだりせずに真面目に空のドクロに突っ込むよう試みた方がよかったと
マーベラス達は後悔しました。
てっきり現実世界に戻れると勘違いして野球対決に入れ込んでいるうちに
ドクロの口はだいぶ閉じてきてしまっています。
急がなければ完全に閉じてしまうでしょう。
しかし、今度の敵はなんだか手強そうで、そんな簡単にドクロに近づけさせてくれそうにありません。
マーベラス達は焦ってきました。

そんなマーベラス達を揶揄するようにアブレラは「いつまででも続きますよ?」と
特徴的な慇懃無礼な丁寧口調で嘲笑い、
「なにしろここには、スーパー戦隊に倒されてきた魂が、ざっと1500は呼び寄せられてますからねぇ・・・」と言うと、
さっと手を上げて合図をして、アブレラ軍団はマーベラス達に対して一斉に銃撃してきます。

慌てて銃撃を避けて波止場に置いてあるコンテナの陰に逃げ込むマーベラス達ですが、
アブレラの言葉には大いに驚かされました。
この幽霊船にはロスダークによって、マーベラス達へのイメージ空間での刺客用に
1500人ぐらいの歴代悪の組織の怪人たちの死者の魂が集められているというのです。
その膨大な数の死者の魂と戦って全部倒さなければ、どうやらこのイメージ空間の連鎖は終わらないようです。
しかし1500人の死者の魂ですから、それを全部倒すためには、
あといったいどれだけの数のイメージ空間をクリアしなければいけないのか、考えるだけで気が遠くなります。

「何それ!?やってもやってもキリないじゃん!」とルカは嘆き、
マーベラスとジョーがコンテナの陰から撃ち返すと、
アブレラは「それが嫌なら、大人しく私・・・エージェント・アブレラに倒されなさい!」と語気を荒げて反撃し、
コンテナの陰のマーベラス達を追い詰めるのでした。

それにしても1500人もの死者の魂とは凄い数です。
さすがにいちいち全部数えるのは面倒なので概算しますが、
1作品につきおよそ50話で、怪人は毎回登場するとは限らず前後篇で1人という場合もあるので45人ぐらいとしても、
首領や幹部を含めると1作品につき50人ぐらいにはなります。

中には「ジャッカー電撃隊」みたいに話数の少ないものや
「バイオマン」のように怪人数の極端に少ないものもありますが
「ゴレンジャー」のように話数も怪人数も多いものもあって相殺されますから、
だいたい1作品平均50人の怪人が戦隊によって倒されていると仮定し、
それが34作品ですから、全部でおよそ1700人もの敵怪人が
34戦隊によってこれまでに倒されているということになります。
更に先ほど出てきたような戦闘員の幽霊も含めるならば、もっと数は増えるでしょう。

ならば、そのうちスーパー戦隊に対する恨みを捨てきれず成仏出来ずに幽霊となって彷徨い、
ロスダークの使うドクロの魔力で幽霊船に死者の魂として呼び寄せられたのが1500人ほど居るというのは、
あながち不自然な数ではないと言えるでしょう。

なお、この出番を待機している1500ほどの死者の魂の中には
おそらく黒十字総統やブラジラやダゴンやヨゴシマクリタインのような者達も含まれていると思われますが、
ここにおける死者の魂としての彼らと「199ヒーロー大決戦」映画に登場した思念体としての彼らとは、
あくまで異質な存在といえるでしょう。

「199ヒーロー大決戦」に登場したのは彼ら悪の怪人たちの地上に残した怨念の
残留思念が現実世界に実体化したものであり、彼らの魂本体ではないのに対して、
今回の「空飛ぶ幽霊船」に登場しているのは、悪の怪人たちの死んだ後も成仏出来ていない魂本体なのです。
死者の魂そのものであるので、現実世界では何ら戦闘力は発揮することは出来ないが、
このようにイメージ空間では生前のような戦闘力を発揮することが出来る。
一方、「199ヒーロー大決戦」の方に登場した残留思念の実体化した化け物は
オリジナルとは違う一種の物の怪であるので現実世界で戦闘力を発揮することが出来たが、
不安定な存在であり、その戦闘力もオリジナルに比べて弱かった。

それに対して、この「空飛ぶ幽霊船」に登場する幽霊たちはイメージ空間限定ではあるものの、
あくまでオリジナルな存在なので生前のオリジナルの戦闘力に近い能力を発揮出来るので、
イメージ空間限定ながら極めて手強い相手なのです。
まぁ戦闘員はあくまで戦闘員らしく弱く、野球仮面はあくまで野球仮面らしくアホだったが、
アブレラ軍団はあくまでアブレラ軍団らしく強敵なのです。

こんな連中があと1500人も控えていて、様々なイメージ空間において続けざまに繰り出されてくる。
そんなものの相手をまともにしていれば、
全員を倒す前に上空のドクロの口が塞がって二度と現実世界に戻れなくなるのは確実でした。
いや、そもそも野球仮面に楽勝した後でさえもイメージ空間を変える際にそれなりのダメージを受けたのですから、
こんなことを繰り返しているうちにマーベラス達もダメージを溜めていき、
いずれは力尽きて幽霊たちに倒されてしまうのは必定でした。

「マーベラス・・・このままじゃマズい・・・」と、ジョーはコンテナの陰からアブレラ達の様子を窺いながら
マーベラスに「お前は1人で戻れ!」と言います。
ジョーの意外な言葉にマーベラスは驚いてジョーの顔を見上げました。
するとアイムも「そうです!私達が引き付けておきますから・・・その隙に・・・!」とマーベラスに向かって言います。

この無間地獄のような状況を脱するには真っ正直に戦い続けていてはダメであり、
戦いは避けて上空のドクロを目指すしかない。
しかし、間断なく襲ってくる幽霊怪人たちがなかなかそんな余裕は与えてくれそうにない。
ならば、他の4人が幽霊怪人たちを引き付けて作った隙をついて
マーベラス1人がドクロの口に突っ込んで元の現実世界の大広間に戻り、
ゴッドアイを手に入れるのが得策だとジョーやアイムは言っているわけです。

確かにそれがゴッドアイを手に入れるためには現状では最善の策だとは言えます。
しかし、マーベラスは困惑した顔で「・・・お前らはどうすんだ!?」と、皆の顔を見回します。
自分を助けるために仲間たちが自ら死を選ぼうとしているのではないかと心配したのでした。

だが、別に4人はマーベラス1人を生かすために自分達が犠牲になって死のうと思っているわけではないようです。
ルカはフッと笑って「こいつら倒したらすぐに追っかけるよ!」とあっけらかんと応えます。
ハカセも笑顔で「だから一足先に行って、お宝を手に入れて!」とマーベラスに言うのでした。
マーベラス以外の4人の想いは同じであり、
それはあくまでゴッドアイを手に入れるための最善の道を選んだというだけのことだったのです。

ジョー達もこのイメージ空間からの脱出を諦めてなどいない。
どのイメージ空間に移っても常に上空に黒雲ドクロはあることや、
敵を倒すと爆発に巻き込まれてダメージを受けてしまうことが理解出来てきたジョー達は、
アブレラを倒した後、爆発に巻き込まれないように注意して上空のドクロを目指すつもりでいるのです。

ただ、上空のドクロの口が閉じてしまう前にアブレラを倒せるかどうか確実ではないので、
保険としてマーベラス1人だけでも先に現実世界の方に戻しておくのが、
ゴッドアイを確実に手に入れるためには最善の方法だというのがジョー達の立てた作戦であったのです。

それに、最悪の場合、ジョー達がアブレラと戦っている間にドクロの口が閉じてしまったとしても、
先にマーベラスが幽霊船の大広間に戻ってロスダークを倒してドクロを操作すれば、
再びドクロの口を開くことも出来る可能性もあります。
マーベラスならば1人でもロスダークを倒せる可能性は最も高いのであり、
だから、とにかく現状ではまずマーベラスだけを先に現実世界に戻すために囮となることが
ジョー達にとっては、ゴッドアイを手に入れるためにも、生き残るためにも最善の道なのです。

その理屈はマーベラスにも理解は出来ました。
しかしマーベラスは「・・・だが・・・」と逡巡します。
もし自分を送り出した後、ジョー達がアブレラやその他の幽霊怪人たちに負けたら、
あるいはドクロの口が閉じてしまい再び開くことが出来なかったらどうしようかと不安が消えないのです。

マーベラスがロスダークを倒してドクロの操作権を奪ったとしても、
ジョー達を元に戻す操作が出来るかどうかも全く不確実です。
おそらくあのドクロは生者の魂をイメージ空間に落とすための装置なのであって、
救い出す機能はつける必要は無いので、
あの装置を操作してもジョー達を救いだせる可能性は低いと思えました。

つまり、結局はジョー達が自力で脱出するしかないのではないかと思えます。
そして状況的にジョー達がドクロの口が閉じる前にイメージ空間を脱出できる可能性は高いとはいえない。
つまり、ジョー達の作戦はかなり失敗の可能性が高い作戦といえます。
もし失敗したら、マーベラスは結果的にゴッドアイを手に入れて仲間を失うことになります。
だが、あのゴッドアイという宝に仲間を捨ててまで手に入れる価値があるのか、マーベラスには疑問でした。

ロスダークは自分が生き返るためにゴッドアイをエサにして強欲な強者たちをおびき寄せて
生体エネルギーを奪ってきた。
つまり、あのゴッドアイはロスダークが強欲な者たちをおびき寄せるために用意した
偽物である可能性が高いのではないかとマーベラスは思っていたのです。
偽物のお宝を手に入れるために仲間を失うようなことになったら自分は大変な後悔をすることになる。
それがマーベラスは不安で躊躇してしまっていたのです。

すると、そのマーベラスの躊躇を見透かしたように、
ジョーはマーベラスの肩を掴んで「迷うなんてお前らしくないぞ・・・?」と少し揶揄するように言います。
そしてマーベラスをキッと睨むと「今お前が行かなくて・・・」とパンチを繰り出し、
マーベラスが思わず差し出した掌に向けて拳を叩き込みながら
「誰が掴むんだ!?・・・俺たちの夢を・・・?」と檄を飛ばしました。

ジョー達も自分達がイメージ空間から抜け出す作戦の成功の可能性が低いことは分かっています。
そしてロスダークの持っているゴッドアイが偽物である可能性が高いことも分かっています。
それゆえマーベラスが最悪の場合を考えて躊躇する気持ちも分かります。

しかし、ジョー達はそれでも自分達はこのイメージ空間を抜け出して現実世界に戻ることが出来るという
可能性を強く信じています。
そして現実世界でゴッドアイを手に入れ、ゴッドアイに願い事をして
「宇宙最大のお宝」を手に入れることが出来るはずだと強く信じて疑っていません。
そのための最善の方法が今はまずマーベラスを先に現実世界に行かせるために囮になるということだと
強固な信念を持っています。
そこに迷いは無いのです。

どうしてジョー達が僅かな可能性を固く信じて、
絶対に上手くいくという強固な信念を揺るがせることがないのかというと、
それは彼らがマーベラス一味の海賊だからでした。

彼らにどんなに僅かな可能性でも、きっと夢は掴み取ることが出来るということを
教えてくれたのは船長のマーベラスなのです。
「宇宙最大のお宝」という途轍もない夢を掴み取ることが出来ると信じて疑わないマーベラスの姿を見て、
ジョー達はどんな不可能な夢でも掴み取ることが出来ると信じることが出来たのであり、
マーベラスと共に「宇宙最大のお宝」を手に入れてやろうと思い、マーベラス一味の仲間になったのです。

マーベラスは今回、幽霊船に乗り込むことを決める際に「お宝のために命を賭けるのが海賊だ」と言いました。
それは、一見絶対に手に入れられないと思えるお宝でも絶対に手に入れることが出来ると信じることが出来るからこそ、
僅かな可能性に迷うことなく命を賭けることまで出来るのが真の海賊であり、
マーベラス一味の強みだという意味だったはずです。

仲間たちは皆、そのポリシーに賛同し、ゴッドアイを絶対に手に入れることが出来ると信じ、
ゴッドアイを使って自分達の念願の宝である「宇宙最大のお宝」を手に入れることが出来ると信じたからこそ、
命を賭けて幽霊船に挑んできたのです。
そして今、マーベラスだけを先に現実世界に戻して、
残った自分達が命懸けでハイリスクな戦いに挑もうとしているのも、
ゴッドアイや「宇宙最大のお宝」を絶対に手に入れることが出来ると信じているからです。

ジョー達4人のこのような不可能に挑戦してお宝をゲットする固い信念は、マーベラスから学んだものでした。
ところがそのマーベラスがこの期に及んでゴッドアイが偽物かもしれないとか、
手に入れられないかもしれないとか、ジョー達が脱出に失敗するかもしれないとか、
そんなことでウジウジと迷うというのはジョー達にとっては考えられないことでした。

自分達を夢の旅路にここまで固い信念でのめり込ませた張本人であるマーベラスとは、
そんなヤワな男ではないはずです。
どんなに可能性は低く見えようともそんなことは一切気にすることもなく、
きっと目的を達成し、夢を掴み取り、目指したお宝を必ず手に入れることが出来ると
誰よりも強く信じて突き進む信念の男、それがマーベラスであり、
今さら信念が揺らいだマーベラスなど許さない、
というより、実際ジョー達が強固な信念を持っている以上、
その大本となったマーベラスの信念が揺らぐなどということは有り得ないことなのであって、
ジョー達は夢対する強固な信念の揺るがないマーベラス以外のマーベラスは一切受け入れられないと言っていい。

だからマーベラスは一切弁解や説明もすることは出来ない。
ジョー達の望むマーベラスであること以外にマーベラスの選択肢は無いのです。
そんな誰よりもお宝を掴み取る信念を強固に持つマーベラスだからこそ、
ジョー達は自分達全員を代表してゴッドアイや「宇宙最大のお宝」を掴み取る戦いに
マーベラスを送り出そうとしている。
いや、ここでお宝を掴むための最後の戦いに行くのはジョー達を夢の旅路に引き込んだマーベラスの義務といえます。

マーベラスはジョーに檄を飛ばされて、改めて自分のなすべきことが腑に落ちました。
そしてルカやハカセやアイムの顔を見ます。
ルカもハカセもアイムも笑顔で頷き、
マーベラスがお宝を掴み取ることを信じるからこそ、自分達も同様にお宝を掴み取ることを信じることが出来る、
すなわち、このイメージ空間を脱出できると信じて戦うことが出来るのだという意思を伝えました。

マーベラスは皆の意思を受け止め、
ここで自分のなすべきことは、必ず本物のゴッドアイを手に入れることが出来ると信じ、
必ずジョー達もイメージ空間を脱出できて現実世界で再会できることを信じて、
とにかく命を賭けて戦うことだと悟りました。

そしてマーベラスは一瞬、フッと天を仰いで苦笑いします。
ジョー達を夢の旅路に引き込んでおいて、どうして自分はこんな大事なことを忘れて迷っていたのだろうかと、
自分のことが少し滑稽になったのでした。
しかしそんなことを今は面白がっている余裕はありませんでした。
アブレラはコンテナへの包囲網を狭めてきていますし、上空のドクロの口はどんどん狭くなってきています。
方針が決まれば、すぐに行動しなければなりません。
マーベラスは「・・・分かった!」と皆に応えます。

「マーベラスさん・・・」とアイムが駆けより、ルカもハカセもマーベラスの傍に来ます。
マーベラスはその3人の肩を力強く叩きながら「お宝手に入れて!」と言い、
最後にジョーに拳を叩き込んで「・・・待ってるからなぁ!」と怒鳴り、ニヤリを笑ってジョーの目を見つめます。
ジョーはマーベラスの拳を掌で力強く受け止めて、ギュッと握り返しながら
マーベラスの顔を真剣な眼差しで見つめ返して「・・・頼んだぜ・・・マーベラス・・・!」と、
目と目で後の再会を誓い合ったのでした。

一方、アブレラは配下のドロイド達を引き連れてコンテナの前に迫ってきて
「大人しく出てきなさい!」と、無駄な抵抗はしないようマーベラス達に呼びかけます。
といっても、マーベラス達が大人しく出てきたからといってアブレラは許すつもりなど無く、
どうせこのイメージ空間の無間地獄から助かる道は無いのだから、
ここで一思いに自分に倒された方が苦しみが短くなるのでお勧めだと言っているに過ぎません。

もちろんアブレラもそんな呼びかけにマーベラス達がすんなり応じるとはあまり思っておらず、
まだもう少し悪足掻きをしてくるだろうと警戒していました。
ところが、コンテナの陰から白い布のついた棒切れが差し出されてブンブンと振られたのを見て、
アブレラは「ん?」と前進を止めました。
まるで降伏の白旗のように見えたのです。

すると、そこにコンテナの陰からジョーやルカ達がゾロゾロと出てきて、
その中でハカセがさっきの白旗を掲げているのを見て、アブレラもこれは本当に降参したようだと思い
「・・・諦めましたか・・・」とほくそ笑みます。
そして横一列に並んでアブレラ達の前に立ったジョー達が全員手にしていた武器を地面に落として、
両手を万歳して掲げたのを見て、アブレラはすっかり安心して「分かればよろしい」と言い、
さてどうやって殺してやろうかと考えて、目の前の4人を眺めます。

その瞬間、アブレラはあまりに意外な展開に少し動揺して、
そういえば相手が4人しかいないということに今まで気付いていなかったことに気が付いて、
「・・・ん?・・・もう1人はどうした!?」と慌てて訊ねます。
確か5人いたはずなのに、今目の前に立っているのは4人しかないない。
そういえばリーダーのマーベラスがいないのです。

そのアブレラの性急な問いかけに対してジョーはニヤリと笑って「フン・・・知るか!」と言うと、
足元に落としていたゴーカイガンを蹴りあげて手でキャッチして、
クルリを身を翻してアブレラ達目がけて連射します。
アブレラ達はマーベラスがいないことに動揺していたので、
このジョーの不意打ちに「うわっ!?」と焦って陣形を乱し、
その隙に4人はゴーカイジャーに変身して武器を拾い、
更に「豪快チェンジ!!」とコールして駆け出しながらデカレンジャーに多段変身して
アブレラ軍団に突っ込んでいきます。

ジョーがデカブルー、ルカがデカイエロー、ハカセがデカグリーン、アイムがデカピンクに変身しています。
相手がアブレラだからデカレンジャーという演出的意図ですが、
ジョー達自身はアブレラとデカレンジャーの因縁は知りませんから、
まぁこのデカレンジャーへの変身というチョイスは偶然ということになりますが、
アブレラは因縁のあるデカレンジャーの姿を見て「小癪なぁっ!!」と怒り心頭、
4人を迎え撃って乱戦となり、一瞬行方不明のマーベラスのことは頭の中から消えてしまいました。

その一瞬の隙をついてジョーはアブレラの身体を掴んで抑え込むと「行け!マーベラス!!」と大声で合図を送ります。
すると、ジョー達の出てきたコンテナの陰で「豪快チェンジ!」というマーベラスの声がしたかと思うと、
コンテナの陰からジェットマンのレッドホークが滑空しながら飛び出してきたのです。
もちろん、このレッドホークはマーベラスが多段変身したものです。

そのレッドホーク姿のマーベラスがゴーカイジャー4人とアブレラ軍団の乱戦場の上を飛び越していくのを見て
「うおおっ!?」と驚いたアブレラはマーベラスを攻撃しようとしますが、
ジョーに抑え込まれて攻撃の機会を逃してしまいました。
同様にルカ、ハカセ、アイムもここぞとばかりにドロイド達を攻撃し、マーベラスの戦場からの離脱を援護します。

そうしてまんまと戦場を離脱したマーベラスが飛び去っていくのを見送りつつ、
ジョーは「・・・絶対に掴めよ!マーベラス!」と力強く言うと、アブレラに鉄拳を叩き込みました。
その4人の想いを受け止めて、マーベラスはジットウイングを翻して滑空しながら、
上空の黒雲ドクロの口に真っ直ぐ突っ込んでいったのでした。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 16:08 | Comment(2) | 海賊戦隊ゴーカイジャーTHE MOVIE空飛ぶ幽霊船 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月24日

海賊戦隊ゴーカイジャーTHE MOVIE空飛ぶ幽霊船 感想その6

第三のイメージ空間の波止場でエージェント・アブレラ率いるドロイド軍団と対峙することとなった
マーベラス一味の5人は、ジョー達4人がデカレンジャーに変身して囮となってアブレラ達を引き付けている間に
マーベラス1人がレッドホークに変身して上空のドクロの口を通って
元の現実世界の幽霊船の大広間に戻るという作戦を決行、
見事に成功し、マーベラスは上空のドクロの口に突っ込むことに成功しました。

同時に幽霊船の大広間では、ロスダークが傍らにある壁の巨大ドクロに生じた異変を察知して
「うぬうっ!?」とドクロから離れます。
すると、ドクロの口から何者かが飛び出してきて、大広間の床に降り立ち、光に包まれて変身します。
ロスダークとドクロの方に振り返って「・・・地獄の底から還ってきた!そのお宝は貰うぜ!」と、
ドクロの左目に嵌ったゴッドアイを見据えて言い放ったのは、
レッドホークの変身を解除してゴーカイレッドの姿に戻ったマーベラスでした。
マーベラスの意識体は黒雲ドクロの口から亜空間に戻り、そこで自分の真の肉体を取り戻して、
一気に壁のドクロの口を通って元の大広間に帰還したのです。
もちろんマーベラスの目的はロスダークを倒してゴッドアイを奪うことでした。

このマーベラスの言葉に対してロスダークは「お宝のためなら仲間も捨てるとは・・・」と呆れ果てたように言い返します。
マーベラスがイメージ空間で戦っている他の仲間を見捨てて、
自分1人だけがゴッドアイを手に入れるために戻ってきたのだと思ったようです。
いや、それぐらい強欲な男の生体エネルギーはさぞや強大なものであり、
それを殺して奪うことによって自分が生き返るに足るエネルギーが得られるのだと思い、
ロスダークは歓喜したのかもしれません。

しかし、このロスダークの見方はマーベラスにとっては全く心外でした。
マーベラスはジョー達が必ず自力で現実世界に戻ってくると信じ、
ジョー達はマーベラスが必ずゴッドアイを掴み取ると信じている。
その相互の信頼関係があるからこそ、マーベラスはこうして1人で先に戻ってきて
ロスダークと戦おうとしているのです。

仲間を捨ててお宝だけを得ようなどという狭い了見ではない。
そんな狭い了見では、かつて赤き海賊団を裏切ってお宝を独り占めしようとしたバスコと同じになってしまう。
かつてバスコに裏切られたマーベラスは、まるで自分をそんなバスコと同じように扱うようなロスダークの言葉に
「・・・ざけんな!!」と激しく反発しました。

しかし、その時マーベラスの目の前で無情にも壁のドクロの口は閉じてしまい、
ロスダークは「この口は二度と開かない・・・」と宣告します。
そしてロスダークは勝ち誇ったように「お前の仲間たちは絶対にこの世界には戻れないのだ・・・」と続けます。
やはりこのドクロは生きた人間の意識を死者の魂の待ち受けるイメージ空間に送るためだけの装置であって、
自力で戻らない限り、このドクロを使ってイメージ空間に墜ちた意識体を現実世界に戻すことは
出来ないようになっているようです。
そして、ドクロの口が閉じてしまった以上、ジョー達は自力で現実世界に戻ることも出来ず、
結局は現実世界に戻る方法は失われたことになります。

おそらくドクロの口が二度と開かないというのは、
この壁のドクロの口は一旦閉じた以上は、仮に再び壁のドクロの口を開いたとしても、
もうジョー達のいる亜空間からイメージ空間へのルートには繋がることはないという意味なのでしょう。
結論的には、ジョー達4人はもう現実世界に戻る手段を失ってしまったのであり、
マーベラスはゴッドアイを手に入れるためにイメージ空間に仲間を見捨ててきたという結果になってしまったのです。

それがどうしようもない現実というものであり、
マーベラスがいくら否定しようとも、マーベラスはお宝を手に入れるために仲間を捨てた
卑しい強欲な男に過ぎないのだとロスダークは強調し、
お宝に目が眩んで仲間を捨てて1人でノコノコやって来たマーベラスにはもはや勝ち目は無いと見なして、
「諦めてお前も命を捧げろぉ!」と迫ります。

イメージ空間に取り残されたジョー達4人もすぐに力尽きて死に、生体エネルギーをロスダークに捧げることになる。
そして宝に目が眩んで1人で無謀な戦いを挑んできたマーベラスもここで軽く倒して、
その欲にまみれた生体エネルギーを吸収し、今回こそ生き返ってやろうとロスダークは大いに意気込みます。

一方のマーベラスは、もはやジョー達が現実世界に戻ることが出来なくなったと知り、
完全に1人ぼっちになって、さぞや気落ちしているかと思いきや、
さにあらず、「諦めるワケねぇだろ!」とキッパリと言い返したのです。
マーベラスはこの絶望的状況においても、全く諦めてはいませんでした。

ゴーカイサーベルを右手に握りしめて、
ロスダークの肩越しに見える壁のドクロの左目の瞳、すなわちゴッドアイを見つめて、
つかつかと数歩、前に進むとマーベラスは左手を前に掲げて
「・・・俺は約束したんだ・・・この手で夢を掴むってなぁ!!」と怒鳴りながら、
拳で遠くに見えるゴッドアイを掴み取るようにギュッと握るのでした。

ここまでマーベラスの信念を揺るぎないものとしていたのは、ついさっきジョー達と交わした約束のゆえでした。
マーベラスは必ずゴッドアイや「宇宙最大のお宝」を掴み取り、
その代わり、ジョー達は必ずイメージ空間を脱出して現実世界に戻るという約束を交わしたからこそ、
マーベラスはこうして諦めずにゴッドアイに向かって前に進むことが出来るのです。
そしてマーベラスが諦めない以上、ジョー達も決して諦めたりはしない。
そういう約束だからです。

そしてジョー達が決してマーベラスが夢を諦めたりはしないと信じてくれているのと同様、
マーベラスもまたジョー達が現実世界へ戻ることを決して諦めたりはしないと信じているのです。
ジョー達が諦めないと知っている以上、マーベラスがジョー達の帰還を諦めるわけにはいかない。
そして、ジョー達もマーベラスが夢を掴み取ることを信じているからこそ、自分達の帰還を決して諦めることはない。
だから、マーベラスが夢を掴み取ることがジョー達の帰還に繋がるのであり、
マーベラスは夢を掴み取る信念を持ち続ける限り、
どんな絶望的状況であってもジョー達の帰還を信じることが出来るのです。

つまり、マーベラスの中では「夢を掴む=仲間達の帰還」という等式が成り立っており、
それゆえマーベラスはこの絶望的状況であるからこそ、夢を掴み取るため、
ゴッドアイを狙って前に出ることが出来るのですが、
ロスダークは単にマーベラスが仲間を捨てても掴もうとしたゴッドアイへの妄執の虜となっているだけだと受け取って、
「・・・フン!」と鼻で笑うと、「掴んでみろ・・・!」と嘲笑って、
ゴッドアイとマーベラスの間を引き裂くように、剣を振りかざしてマーベラスに飛び掛かったのでした。

そうして大広間を縦横無尽に動き回り、
柱に繋げて組んである足場の鉄骨にぶら下がったり、相手の身体を飛び越えたりして様々な体術も駆使しながら、
マーベラスとロスダークは激しい斬り合いを繰り広げます。
この狭い空間でのトリッキーな斬り合いは、まさに海賊アクションといえます。

斬り合いは互角であり、一旦距離をとって2人は対峙します。
ロスダークはマーベラスの執念に舌を巻きながら、
それでもこれまでにもゴッドアイを独り占めしようという欲望に囚われた強者たちを撃ち破ってきたロスダークは
所詮はマーベラスも自分には勝つことは出来ないだろうとタカをくくり
「1人で勝てると思っているのか?・・・愚か者め!!」と嘲笑しました。

対するマーベラスはさすがにロスダークが強いことは戦ってみて再確認し、
確かに1人で勝つことが容易ではない相手であることは悟っていました。
しかし、それでもマーベラスは勝利を確信していました。
勝てる根拠が特にあるわけではなかったが、
とにかく自分はロスダークに勝ってゴッドアイを掴み取るのだという確信が揺るがないのです。

それを考えてマーベラスは不思議な気分になりました。
少し前まで自分はゴッドアイは偽物なのではないかと心配しており、
ジョー達の脱出が失敗するのではないかとも不安に思っていました。
そんな自分が今ではここまで揺るぎない信念に支えられて戦うことが出来ている。
一体どうしてなのだろうかと考えて、
マーベラスはそれはさっきジョー達が自分の夢を掴み取る力を信じてくれたからであり、
同時に自分もジョー達の夢を掴み取る力を信じることが出来たからなのだと思いました。

つまり、空間は隔てられていても、共に同じ夢を掴み取るために信じ合って
それぞれ命懸けで戦っている仲間がいると感じることが出来るから、
自分は強大な力を持つロスダーク相手にも勝利を確信して戦うことが出来るのだと、マーベラスは気付いたのでした。
そうだったのだと気付いたマーベラスはロスダークに向かって
「お前には1人に見えるかもしれねぇが・・・俺はずっと5人で戦ってんだ!!」と言い放ち、
イメージ空間に取り残されても決して諦めることなく戦い続けているであろうジョー達4人に思いを馳せます。

果たして、実際にイメージ空間ではジョー達は上空のドクロの口が閉じてしまったのを見ても、
全く諦めることなく懸命に戦い続けていました。
現実世界に戻ったマーベラスが決して夢を諦めることなくロスダークと戦っているはずだと確信しているからこそ、
4人は自分達もどんな絶望的状況になろうともこの空間からの脱出を諦めるわけにはいかないと思っているのです。

そのためにまずは立ち塞がる強敵のアブレラ軍団を倒さねばならない。
まともに戦っても簡単には倒せないアブレラ軍団を相手に、
ジョーとルカとハカセとアイムは、波止場のコンテナ群の中にドロイド達を誘い込み、
狭いコンテナとコンテナの隙間を使って各所でドロイド達を分断孤立させて、
分散してデカレンジャーの得意技である物陰からの狙撃でドロイド達を順次撃破していく作戦を実行します。
そして遂にドロイド達を全部片付けたジョー達4人は合流して、一気にアブレラに対して攻勢をかけるのでした。

そうしたジョー達の方の戦況は全く分からないながらも、
現実世界でロスダークと対峙するマーベラスにも、
4人の仲間が同じ夢を掴むために決して諦めずに戦っていることは感じ取ることが出来ました。
そして、5人で同じ夢に向かって戦っていると感じるからこそ、
自分は夢を掴む信念を決して捨てずにこうして戦うことが出来ているのだと悟ったマーベラスは、
それは今だけではなく、ずっとそうだったのだと思い出したのでした。

マーベラスはさっきもゴッドアイは偽物ではないかと疑ったり、
ジョー達の脱出が失敗するのではないかと不安に思ったりしたが、
実はマーベラスはそういうところ案外、醒めた現実主義者なのです。
「宇宙最大のお宝」だって最初はマーベラスは伝説に過ぎないと思って意外に醒めた認識しか持っていませんでした。

しかしアカレッドに「夢は諦めたら手に入らない」と諭されて、
「宇宙最大のお宝」を掴み取ることが出来ると信じてみようと思ったに過ぎません。
そこでは確かにマーベラスは自分で夢を信じることを決断したのですが、
それでもあくまでそれはアカレッドという同じ夢を掴もうとする仲間の存在があってこそ
為し得た決断であるのも事実です。

そして「赤き海賊団」の一員となったマーベラスは
アカレッドとバスコという仲間と共に「宇宙最大のお宝」という夢を掴むために
夢中になって冒険をして幸福な日々を送りました。
しかしバスコの裏切りによって「赤き海賊団」は壊滅し、マーベラスは共に夢を掴む仲間を失いました。

その後のマーベラスは虚脱状態となり、自分を庇って死んだアカレッドと
「宇宙最大のお宝」という夢を掴む約束を結んだにもかかわらず、
たった1人になったマーベラスは、再びアカレッドと出会う以前のように、
夢を信じる気持ちを見失ってしまっていたのです。

そして、そんな時にマーベラスはジョーに出会って、
その一途に何かを信じようとして足掻く姿を見て、再び夢を信じて掴み取ろうとする気持ちが湧きあがってきた。
だからマーベラスはジョーを仲間にしたいと思ったのです。
再び共に大きな夢を掴もうとすることの出来る仲間を得れば、
また自分も夢を掴み取ることを信じて旅を続けることが出来ると思えたからです。

そうしてジョーを仲間にしてマーベラス一味を旗揚げしたマーベラスは、
その後、ルカやハカセやアイムも仲間に加えて地球にやって来た。
どうして彼らを仲間にしたのかというと、それはそれぞれ事情はバラバラではあるが、
基本的にはジョーの場合と同じく、マーベラスにとっては彼らが共に「宇宙最大のお宝」という
途方もない夢を掴む旅の仲間として相応しいと思えたから仲間にしたといえます。

それは一見、マーベラスが彼らの資質を認めてやって仲間にしたかのように見えますが、
実際はマーベラスが彼らの存在を必要としていたといえます。
彼らと一緒に夢を掴み取ることを信じる旅をすることによって、
実際は案外醒めた現実主義者のマーベラス自身が
「宇宙最大のお宝」という夢を掴み取ることを信じ続けることが出来たのです。

ずっと5人で旅をして、ずっと5人で戦い続けてきたからこそ、
マーベラスは夢を掴み取るという信念を持つことが出来た。
いや、マーベラスだけでなく、5人それぞれ、あるいは鎧も含めた6人の仲間全員が同じように、
仲間がいるからこそ夢を掴むことが出来るのです。

そういうことだったのだと気付いたマーベラスは、
ならば自分の掴み取るべき夢とは、単なる「宇宙最大のお宝」ではないのだと思いました。
1人で単にお宝だけを掴もうとしていたなら、自分は夢を掴むための旅をここまで続けることは出来なかったはずです。
仲間と一緒に掴む夢だからこそ、ここまで夢を掴むための旅を続けることが出来たのです。
だから、自分の掴み取る「宇宙最大のお宝」は仲間と共に掴むものであるはずなのです。
ならば、仲間がいない状態で1人で「宇宙最大のお宝」という夢を掴み取るわけにはいかない。

自分は仲間が後から戻ってくることを信じて、先に1人だけ戻ってきて夢を掴もうとしていた。
一見それは正しい手順のように思えました。
だが、それは間違いであったとマーベラスは思いました。
自分の掴む夢というのは、仲間と共に掴む夢、仲間と共に掴むお宝でなければいけない。
ならば、まずは仲間を取り戻し、仲間が揃った状態でお宝を掴まなければダメなのです。
遠回りなのかもしれないが、自分達はそもそもそういう遠回りでしか旅を続けることは出来なかった海賊なのです。
いや、それこそが真の海賊なのだとマーベラスは思いました。
そうなれば、まずは仲間を取り戻すのが海賊としての自分のやるべきことでした。

もちろんマーベラスはジョー達が帰還の希望を捨てずに戦っている以上、
ジョー達が自力で帰還できることを信じています。
しかし、それとマーベラスのやるべきことの問題は別の問題です。
ジョー達が自力で帰還出来ようが出来まいが、そんなことは関係無く、
マーベラスの立場として、仲間たちの戻っていない状態で
先に「宇宙最大のお宝」を手に入れてしまうわけにはいかないのです。

無論マーベラスは「宇宙最大のお宝」を絶対に諦めるつもりはない。
そうなると、マーベラスは「宇宙最大のお宝」を手に入れるためには、
まずは急いで仲間たちを取り戻さねばいけない。
だからマーベラスが夢を掴むためにまず第一にやるべきことは、仲間を取り戻すことなのであり、
それはマーベラスがやらねばならないことなのであって、
ジョー達が帰還してくるのを期待して待っていて良いような問題ではないのです。

つまり、今のマーベラスが夢を掴むために絶対に実現させなければいけないことは仲間の奪還であり、
それはどうも尋常な手段では実現困難な状況のようです。
そうなると、自ずと何をすべきなのか決まっていく。

そこまでマーベラスが思い至ったところに、
ロスダークはマーベラスが5人で戦っているなどと意味不明のことを言っていると見て
「ほざけぇっ!!」と銃撃をしてきます。
跳び上がって銃撃を避けたマーベラスは、大広間に置かれた鉄骨の足場に掴まり、
更に足場の上を跳びはねて、ロスダークの執拗な銃撃から逃げ回り、
再び床に飛び降りると物陰に飛び込んでそこからロスダーク目がけて銃で反撃します。

そうして今度は激しい銃撃戦となり、マーベラスの正確な射撃でロスダークが怯んだ一瞬の隙を突いて、
マーベラスは身を翻して駆け出します。
マーベラスの目指していたのは壁のドクロの方向でした。
それを見てロスダークはマーベラスが乱戦の中でドクロの左目に嵌めこまれたゴッドアイを
奪い取ろうとしているのに気付き、「くうっ・・・させるかぁっ!!」と慌てて駆け出し、
大きくジャンプして、マーベラスよりも一瞬早くステージの上に飛び降りてドクロの前に立ち、
ドクロの左目のゴッドアイを守るようにしてマーベラスの行く手を阻みました。

マーベラスはロスダークがゴッドアイを絶対に死守する姿勢を示したことに一瞬驚きます。
このゴッドアイが単にロスダークが強欲な者どもをおびき寄せるために用意した偽物であるならば、
こんなに必死になって守る必要はない。
やはりこのゴッドアイは本物だったのだと確信したマーベラスは
「どけぇっ!!」と怒鳴ってロスダークに斬りかかりますが、
ロスダークは凄まじい気迫で防戦し、逆にマーベラスを吹っ飛ばしてステージから叩き落とします。

マーベラスも床に転がって起き上がると、すかさずゴーカイガンで反撃してロスダークを狙撃して倒そうとしますが、
ロスダークはこれを凌ぐとステージから飛び降りてきてマーベラスに斬りかかり、
再び床の上で両者の激しい斬り合いが展開されます。
こうした激しい戦いの中、マーベラスは何か妙な違和感を覚えてきていました。
ロスダークがあれほど必死に守ろうとしたということは、やはりゴッドアイは本物だった。
だが、本物だとすれば何か話が変だとマーベラスは気付いたのです。

ゴッドアイはどんな夢でも叶えてくれるという。
ならばどうしてロスダークは生き返るためにわざわざ生体エネルギーなど集めているのか?
そんな回りくどいことはせずにゴッドアイに「生き返りたい」という願いを叶えてもらえば済む話ではないか。
何故ロスダークはそうしないのか?

あるいはゴッドアイは幽霊の願いは叶えないのかもしれないとマーベラスは思いました。
つまり生きている者の願いしか叶えないということです。
だからロスダークはまずは他人の生体エネルギーを奪って復活しなければいけないのかもしれない。
もしそうだとすると、ロスダークが生き返ろうとしているそもそもの動機は
ゴッドアイを使って何か願いを叶えるためということになる。

単に他人の生体エネルギーを奪うことだけが目的ならば、わざわざ本物のゴッドアイを晒す必要は無い。
ロスダークがあくまで本物のゴッドアイの傍に居ることに固執するのは、
ロスダークの目的が単に生き返ることではなく、
生き返って願いを叶えるためではないのかとマーベラスには思えました。

そもそも、もしゴッドアイが幽霊の願いも叶えるとした場合でも、
それでもロスダークが生き返るためにゴッドアイの力を使わない理由は、
ゴッドアイが1つの願いしか叶えられないからなのだろう。
つまりゴッドアイが生きている者の願いしか叶えないとしても、そうでないとしても、
いずれにせよ、ロスダークの本命の願いは生き返ることとは別にあり、
その本命の願いを叶えるためにロスダークはゴッドアイの傍を離れないのだろう。

しかし幽霊のままでその願いが叶うのなら、
とっくにロスダークはゴッドアイにその願いを叶えさせればいいはずです。
だがゴッドアイがまだロスダークが必死に守る対象であるということはその魔力を失っていないということであり、
つまり、まだゴッドアイは一度も願いを叶えていない状態であるということになる。
すなわちロスダークもまた、未だ一度もゴッドアイに願いを叶えさせてはいない。
ということは、やはり幽霊のままではゴッドアイを使って願いを叶えることは出来ないのだと思われます。
おそらくロスダークはゴッドアイを狙って来る他人の生体エネルギーを奪い続けて生き返り、
その上でゴッドアイを使って何か願いを叶えようとしているのではなかろうかとマーベラスは推測しました。

そのロスダークの願いとはどんな願いなのか、そんなことはマーベラスは興味はありませんでした。
むしろ問題は、もし自分の推測が当たっているとすれば、
どうしてロスダークは願いを叶えないまま幽霊となってゴッドアイの番人になっているのかという点だと
マーベラスは考えました。

ここで一旦整理すると、
まずゴッドアイが生者の願いしか叶えないとするなら、それは生者が作ったものであるはずです。
幽霊がわざわざ幽霊には使えないアイテムを作る理由は無いからです。
だからゴッドアイを作った者は生者であったはずです。
しかし、その生者はゴッドアイで願いを叶えるつもりはなかったようです。
ゴッドアイ製作者がゴッドアイで願いを叶えるつもりならば、
製作後すぐにその製作者がゴッドアイを使って願いを叶えてゴッドアイの魔力は失われているはずだからです。

その製作者がどういう考えでゴッドアイを作ったのかという問題はひとまず置いておいて、
少なくとも生前のロスダークがゴッドアイを作ったのではないと思われます。
ロスダークはゴッドアイを使って願いを叶えようとしている可能性が高いのですから、
彼がゴッドアイで願いを叶えるつもりのない製作者であったという可能性は低い。
となると、ゴッドアイはもともとはロスダークの所有物ではない。
ゴッドアイはこのもともとは巨大な海賊船であったと思しき船に、
この壁の巨大ドクロの左目にずっと嵌め込まれたままであったのであり、そこにロスダークはやって来たのでしょう。

つまり、ゴッドアイを作ったのはこの船のもともとの持ち主である可能性が高い。
それはおそらく古の大海賊と思われます。
大海賊自身に何らかの魔力があったのか、魔力を持つ者の協力を得たのかはよく分からないが、
その大海賊は自分の巨大な海賊船の内部に、生者の願いを1つだけ叶えるというゴッドアイという宝玉を作り、
更に生者の魂を死者の魂の蠢くイメージ空間に落とす巨大ドクロを船内の大広間の壁に埋め込んで作り、
ゴッドアイをその魔性のドクロの左目に嵌め込んだのでしょう。

どうしてその海賊がそんなことをしたのかよく分からないが、
その海賊は姿を消し、ゴッドアイが残された海賊船は廃船となり、
そこにロスダークがやって来たと思われます。
あるいはロスダークがやって来たことで海賊が駆逐されていなくなり、
海賊船は廃船となり幽霊船となったのかもしれず、
あるいはロスダークの前に何者かが海賊を駆逐して、ロスダークはその何者かを駆逐したのかもしれない。

そのあたりはハッキリとしたことは分からないが、
1つハッキリしていることは、ロスダークがこの船にやって来た目的です。
それはゴッドアイを使って自らの願いを叶えるためであったのでしょう。
しかしロスダークは幽霊であったので願いを叶えることは出来ず、生
き返って願いを叶えるためにゴッドアイを狙ってやって来る者達の生体エネルギーを集めるため、
ゴッドアイの番人となった。
そのようにマーベラスは先ほど推測しました。

しかし、そうだとすると話が少しおかしいのです。
この推測に従えば、ロスダークの願いというのは生き返って叶えることに意義がある願いということになり、
生者が持つべき願いということになる。
そもそもゴッドアイが生者の願いしか叶えないのならば、
その叶える願いというのは生者にとって意義のある願いだけということになる。

それに、ロスダーク自身がここまで懸命にゴッドアイの傍で生き返ろうとしているということは、
ロスダーク自身、ゴッドアイが生者の願いしか叶えない宝玉だということを知っているということになります。
それを知っていて、それでも願いを叶えるためにこの船にやって来たということは、
ロスダークはこの船にやって来た時はまだ生きていたのではないかとマーベラスは思いました。
つまりロスダークは生前、ゴッドアイを奪って願いを叶えるためにこの船にやって来て、
ここで命を落として幽霊となり、ゴッドアイの番人となった可能性が高い。

ならば、ロスダークもゴッドアイを狙って幽霊船に挑んで敗れて死んだ者なのかというと、
どうもそういうわけでもないように思えました。
何故なら、これまでにもロスダーク自身が数多くの強者たちをこの幽霊船におびき寄せて殺してきているのに、
その敗者たちの幽霊はロスダークのようにゴッドアイの番人にはなっていないからです。
つまり、ロスダークは単なる幽霊船に敗れて死んだ者ではなく、何か特別な立場であるようなのです。

ロスダークはゴッドアイを奪って願いを叶えるためにこの船にやって来たのであり、
ロスダークはこの船での戦いに敗れてはいない。
それなのにロスダークはゴッドアイで願いを叶えることは出来ずに命を落として幽霊となり、
ゴッドアイの番人をする羽目になった。

もしそうだと仮定するなら、ある1つの推測が導き出されます。
その可能性に気付いてマーベラスの背筋にゾクリと戦慄が走ります。
そして剣と剣をぶつけ合い、「くうっ・・・!」と鍔迫り合いで押し込み合うロスダークの顔が
マーベラスの顔の鼻先に迫り、マーベラスはその骸骨と化したロスダークの顔を凝視しながら、
思わず死への恐怖心が募ってきました。

しかしマーベラスはすぐに、(いや、そうではない)と思い直し、
「おりゃあっ!!」と思いっきりロスダークの顔に頭突きをかまします。
これでロスダークは怯み、マーベラスは突如湧き上がってきた迷いを吹っ切りました。
そしてマーベラスは「はぁっ!」と跳び上がって鉄骨で組んだ足場に昇って、
追ってきたロスダークとの間で激しい斬り合いを再開します。

「死ねえっ!」と突き出したロスダークの剣を間一髪避けたマーベラスは勢い余って足場から落ちかけますが、
なんとか持ち直して「おりゃあっ!!」と反撃します。
それでもロスダークはマーベラスを剣技で押し込み、大広間の逆の端の鉄骨の足場の方に弾き飛ばします。
だがマーベラスも後ろに吹っ飛びながら「うおおおお!!」とゴーカイガンを撃ちまくって、
ロスダークは剣で必死に防御し、「うぬうっ・・・!」と銃撃のお返しをしてきました。

しかしマーベラスは飛ばされていった先の鉄骨を掴んで回転してロスダークの銃撃を鮮やかに避けると
「はぁっ!!」と撃ち返してロスダークを怯ませます。
そのまま回転して鉄骨の上に立ったマーベラスは「おりゃあああっ!!」と叫んで
大広間を横切るほど大きくジャンプしてロスダーク目がけてドロップキックを繰り出しますが、
ロスダークも「くうっ!」と間一髪、マーベラスのキックを手で受け止めて投げ飛ばし、
更に強烈なキックを叩き込んできます。

まさに一進一退の攻防ですが、このキックを空中で受け止めたマーベラスは再び大広間の逆の端の足場の上に飛ばされ、
着地すると「そろそろ決着をつけてやる!!」と威勢よく叫んでゴーカイサーベルにレンジャーキーを挿して回し、
「いくぜぇっ!!」とゴーカイサーベルを構えてエネルギーをチャージしながら
「はああああ!!」と気合を溜めてゴーカイスラッシュの構えに入っていきます。
これを見てロスダークも「ええいっ!・・・くたばるのはお前のほうだ!!」と忌々しそうに言うと、
口から生体エネルギーと思しき青白い闘気を吐き出して剣に吹き付けます。

そうして大広間の端の足場で青白い闘気を帯びた刀身を掲げて
「むううううん!!」とロスダークは気合いを発し、
マーベラスは大広間の反対側の足場の上で真っ赤なエネルギーを帯びたゴーカイサーベルを構えて
「はあああああ!!」と気合を発します。
そして「おりゃあああっ!!」という裂帛の気合いを込めて両者は剣を振り下ろし、
双方の剣から発した赤と青のエネルギー衝撃波が大広間の中央で衝突し、大爆発を起こしました。

この爆風を受けてロスダークは「ぐああああっ!!」と吹っ飛んで床に墜落して激しく身体を打ちつけますが、
一方マーベラスは吹っ飛んだ様子は無く、
ステージ方向で足音が響くので「ぐうっ・・・?」と驚いてロスダークがなんとか顔を上げると、
なんとステージにはマーベラスが変身解除した姿で平気な顔をして立っています。
しかもマーベラスの左手には、ステージの後ろの壁のドクロから奪い取ったゴッドアイが掴み取られていたのでした。
「な・・・なんだとぉ・・・!?」と愕然とするロスダークに向かって、マーベラスは「へっ!・・・油断したな!」とせせら笑い、
「最初から爆発に紛れて・・・奪い取るつもりだったんだよ!」と言って、両手でゴッドアイをガシッと掴むのでした。

マーベラスは手強いロスダークを出し抜いてゴッドアイを奪い取るのは、まともに戦っても至難の業だと悟り、
めくらましで奪い取る作戦を立てたのです。
一進一退の派手な勝負を演出して、ロスダークをゴッドアイから引き離しておき、
最後に自分が大技のゴーカイスラッシュを放とうとすれば、きっとロスダークも対抗して大技を放ってくる。
その2つの大技のエネルギーを衝突させればこの大広間の中で大爆発が起きて、
自分もロスダークも共にダメージを喰らって吹っ飛ばされるだろうとマーベラスは考えました。

そこで自分だけがダメージを受けずに済めば、
ロスダークがダメージで動けない間に自分だけが動いてゴッドアイを奪い取ることが出来ると思ったマーベラスは、
爆発の瞬間にわざと変身を解除して変身エネルギーを解放して自分の身を爆風から守る盾とすることにしたのです。
そうして無事に爆風を凌いだマーベラスは、床に倒れ込んだロスダークを尻目に
ステージに昇ってゴッドアイを奪い取ることに成功したのでした。

そして、ゴッドアイを手に入れたマーベラスが次にすることといえば、願い事を唱えることに決まっています。
しかしゴッドアイは1つしか願い事を叶えない宝玉ですから、
マーベラスが願い事を叶えてしまうと、もうロスダークは願いを叶えることが出来なくなってしまいます。
まだ身体が思うように動かせないロスダークは慌てて
「やめろぉっ!!それは俺が甦って・・・夢を叶えるためのもの・・・!!」と絶叫して哀願します。
それを聞いて、マーベラスはやはりそうだったのかと、自分の推測が正しかったことを確信しました。

ゴッドアイは生者の夢しか叶えない宝玉であり、
ロスダークはゴッドアイを狙って幽霊船に挑んでくる強者達の生体エネルギーを奪って生き返り、
ゴッドアイを使って自分の夢を叶えようとしていた。
しかし、マーベラスは哀れだがそのロスダークの夢は決して叶うことはないのだと確信しています。

というか、おそらく生体エネルギーを集めればロスダークが生き返れるという話自体が嘘だと思えました。
その嘘にロスダーク自身は気付いておらず、生き返って夢を叶えることが出来ると思い込んでいるようだが、
決してその望みは叶わない。
ロスダークは騙されているのです。
誰に騙されているのかというと、ゴッドアイに騙されているということになるでしょう。

おそらくロスダークはかつて自分の夢を叶えるためにこの船に挑んだ男であり、
その時、ゴッドアイの番人と戦って敗れて死んだのではなく、
番人に勝利してゴッドアイを奪い取ることに成功した男なのです。
そのロスダークがどうして夢を叶えることが出来ないまま命を落として幽霊となり、
ゴッドアイの番人になってしまったのか?
それはゴッドアイに夢を叶えるように願ったためにロスダークが命を奪われてしまい、
幽霊にされてしまい、ゴッドアイの新たな番人にされてしまったからなのです。

おそらくロスダークの倒した前の番人も同じようにその前の番人を倒してゴッドアイを手に入れて
願いを叶えようとしたために命を奪われてゴッドアイの番人にされてしまっていたのでしょう。
そうしたことが昔から何度も繰り返されてきて、その間、ゴッドアイは結局一度も誰の夢も叶えてはいないのであり、
その正体は夢を叶える宝玉などではなく、
夢を叶えようとする者の命を奪って番人としてしまう呪いの宝玉だったのです。

ロスダークも、その前の番人たちも、ゴッドアイに命を奪われた後、生前の記憶を奪われ、
ただ最期の瞬間に願った夢だけを妄執として抱き続けるように仕向けられ、
ゴッドアイを狙って幽霊船にやって来る強欲な強者たちを殺して生体エネルギーを奪い続ければ
生き返ってゴッドアイで夢を叶えることが出来ると、ゴッドアイの魔力で信じ込まされていたに過ぎない。

その殺戮のための装置として、この船にゴッドアイと共に設置されていた呪いのドクロをも受け継いだ
代々の番人幽霊たちは、それを駆使して幽霊船にやって来た強欲な強者たちを殺していき、
生体エネルギーを奪ってきた。
それらの生体エネルギーはロスダークたち代々の番人たちを強化していき戦う力とはなっていったが、
決してそれでロスダークたち代々の番人たちの死者の魂が生き返るなどということはないのです。
彼らはただ延々と呪いの宝玉に操られて強欲な者どもを殺し続けるために利用されていたに過ぎない。

彼らの終わることのない呪われた妄執と殺戮の日々が終焉を迎えるのは、
彼ら代々の番人たちの罠をも打ち破ることの出来る強者が現れた時だけであり、
そうして強者に倒された番人の魂はようやくあの世に行って成仏し、
番人を倒した強者はゴッドアイを奪い取って願いを唱えて、
その結果ゴッドアイに命を奪われて新たな番人に仕立て上げられてしまうのです。

ロスダークもそうやってゴッドアイの番人をさせられていたわけです。
だからロスダークはどうやっても生き返ることは出来ないし、
ゴッドアイで夢を叶えることも出来ないのです。

しかし、ゴッドアイが呪いの宝玉であるとするならば、
マーベラスもまたゴッドアイで夢を叶えることは出来ないはずです。
いや、それどころか、ゴッドアイを狙って幽霊船に挑んで、
番人を倒してゴッドアイを奪い取り夢を叶えようとしているマーベラスの立場は、
かつてのロスダークと全く同じであるように見えます。

つまり、このままマーベラスが当初の予定通り「宇宙最大のお宝を手に入れたい」という夢をゴッドアイに願えば、
「宇宙最大のお宝」など手に入れることは出来ず、逆にマーベラスはゴッドアイによって命を奪われて、
ロスダークに代わって新たなゴッドアイの番人幽霊にされてしまうのです。

マーベラスはそれが分かっているはずです。
戦いの中でロスダークがゴッドアイを死守しようとしたのを見た後、
そういうことなのではないかと推理していたマーベラスは、
最終的にロスダークが生き返ってゴッドアイで夢を叶えようとしていると告白したのを聞いた瞬間に、
その推理が正解であったことを確信したはずです。

それなのに、何故かマーベラスはその忌まわしき呪いの宝玉であるゴッドアイを掴んだままで、
じっとロスダークを見下ろすと、目に怪しい光を宿して「・・・叶えるのは・・・俺の夢だ!」と言い放つと
ニヤリと笑い、両手で掴んだゴッドアイを口のあたりに持ち上げて「・・・ゴッドアイ・・・!」と呼びかけます。
そしてロスダークが「やめろぉぉっ!!」と必死に止めようと叫ぶのを無視して、
マーベラスは右手に載せたゴッドアイを頭上に高々と掲げて、
ここでなんと「・・・俺の仲間を元に戻せぇっ!!」と意外な願いを大声で唱えたのでした。

その言葉に応えるようにゴッドアイは黄金色の光を放ち、ロスダークはその光に吹っ飛ばされます。
同時にイメージ空間では、例の波止場でアブレラを包囲して「はあああっ!!」と一斉に剣を振りかぶって
飛び掛かっていたジョー達4人の姿が黄金色の光に包まれて一瞬で掻き消え、
1人残されたアブレラは「うお!?消えた・・・!?」と驚愕します。

そして、現実世界の幽霊船の大広間では、ゴッドアイから放たれた黄金色の光が掻き消え、
マーベラスは不安げにゴッドアイを下ろして覗き込みます。
何故かマーベラスは命を奪われてはおらず、自分の願いが叶えられたかどうか確信は持てていないようで、
険しい顔でゴッドアイを見つめました。
するとゴッドアイはマーベラスの手の中で一瞬にして灰色の石の塊に変わっていってしまったのでした。

マーベラスが驚いてそれを見つめていると、
大広間の中央の床の上に突如、黄金色の光が出現して、
そこからジョーとルカとハカセとアイムの4人が現れ、
変身が解けた姿で剣を振り下ろすようにして着地します。

「はっ!?」といきなり周囲の情景が変わっていることに驚いた4人は「ここは・・・?」と周りを見ます。
さっきまでの波止場とは全然違う室内であり、まだ戦闘中であったはずの相手のアブレラの姿もありません。
「アブレラと戦ってたはずなのに・・・?」とハカセは困惑しました。
もしかしたらまた別のイメージ空間に飛ばされたのかもしれないと戸惑う4人の背後から
「早かったなぁ!・・・お前ら!」というマーベラスの声がしたので、
4人がハッとして振り向くと、ステージの上にマーベラスが立っています。

驚いたアイムが思わず「マーベラスさん!?」と駆け出し、
他の3人も「マーベラス!」と、ステージの上のマーベラスに駆け寄りました。
マーベラスが居ること、そしてステージや壁のドクロなどを見て、
4人はこの場所が現実世界の幽霊船の大広間だということをようやく悟りました。

しかし、4人はまだアブレラと戦闘中であったのであり、まだ現実世界に戻るために何かをやっていたわけではない。
それなのにどうしていきなり現実世界に戻ることが出来たのだろうかと4人は不思議に思いました。
そしてなんといっても気になるのは、マーベラスの安否と、ゴッドアイを手に入れることが出来たのかどうかです。
どうやらマーベラスは元気であるようで4人はまず安堵しましたが、
ゴッドアイの方はというと、例のドクロの左目部分には、さっきあったはずのゴッドアイがありません。
焦って4人が部屋の中に視線を巡らせてゴッドアイを目で探しますが、それらしいものは無い。

ふとマーベラスの手を見ると、マーベラスは何か丸い石の玉を持っています。
そんなものはもともとマーベラスは持っていませんでした。
いったいこれは何だろうと思ったルカは、
その石の玉がちょうどゴッドアイと同じくらいの大きさだということにハッと気付き、
「・・・マーベラス・・・もしかして、それを使って・・・?」と問いかけました。
確かゴッドアイはどんな夢でも1つだけ叶えてくれる宝玉だという。
ならば、その1つの夢を叶えたらゴッドアイはもはや宝玉としての機能を失い、
ただの石ころになってしまうのではないかと思えたのです。

そもそもマーベラスの余裕たっぷりの態度を見る限り、
マーベラスは首尾よくロスダークを倒してゴッドアイを奪取したように見えます。
マーベラスならきっと成功するだろうとジョー達も信じていました。
だからマーベラスはゴッドアイを手に入れたはずであり、だからこそドクロの左目部分は空になっているのです。
そしてマーベラスはゴッドアイを手に入れれば「宇宙最大のお宝」を手に入れるよう願う予定だったはずです。

ところが、この場に「宇宙最大のお宝」らしきものは何処にも無い。
つまりマーベラスはゴッドアイを手に入れたのに「宇宙最大のお宝」を手に入れるように願っていない。
しかしゴッドアイがマーベラスの手の中で石ころになっているとしたら、
マーベラスは何か別の願い事でたった1回の願い事のチャンスを使い切ってしまったことになる。
そして、突然原因も分からないまま自分達が現実世界に戻ることが出来たことから、
もしかしたらマーベラスはゴッドアイに向かって「仲間を元に戻せ」と願ったのではなかろうかと、
ルカは思ったのでした。

もしそうだとしたら、自分達のせいでマーベラスは夢を掴むチャンスを棒に振ってしまったことになる。
そう思えてルカは表情を曇らせ、ジョーもハカセもアイムも深刻な顔をして黙り込みます。
しかしマーベラスは手に掴んだ石ころを掲げて、あっさりとした顔で
「・・・いや、こいつは偽物だった・・・だからまた夢はやり直しだ・・・!」と言うと、
ニヤリと笑って階段を降りて、石ころを大広間の壁に向けて放り投げ、
壁に激突した元はゴッドアイであった石ころは、あえなく粉々に砕け散ったのでした。

さて、どうしてマーベラスは「宇宙最大のお宝」ではなく「仲間を元に戻す」という願い事をしようと思ったのか?
これはそんな難しい話ではありません。
マーベラスはロスダークと戦う中で、自分が仲間と共に夢を掴もうとしてきたからこそ、
決して夢を諦めることなく戦い続けられるのだということに気付き、
自分にとっての「夢を掴む」ということは「仲間と共に夢を掴む」ということでしかありえないと確信したのです。

だからマーベラスにとっては仲間がいない状態で「宇宙最大のお宝」という夢を掴むということはありえない。
まず仲間が居る状態を整えてから「宇宙最大のお宝」を掴み取るという順序は動かすことは出来ません。
しかしゴッドアイで叶えられる願いは1つである以上、
その最初の「仲間を取り戻す」という願いをまず叶えるしか選択肢は無かったのです。

仲間が自力で戻ってくるのを待ってからゴッドアイを使って「宇宙最大のお宝」を手に入れるというのでは、
結局はお宝の方を仲間よりも優先させたことになってしまう。
マーベラスにとって仲間とお宝は切り離せないものであり、同価値のものなのだから、
とっておきの1回のお願いのチャンスをお宝のためにキープしておいて、
本来は先にやるべき仲間の奪還を後回しにするような真似は出来なかったのでした。

その方針はロスダークと戦い出した最初の頃にもうマーベラスの中では確定していました。
むしろ問題は、ゴッドアイが呪いの宝玉であったことを確信した後において、
どうしてマーベラスがその自分の「仲間を元に戻す」という願いが叶うと確信することが出来たのかです。
ゴッドアイに願い事をしたために命を奪われて宝玉の番人幽霊にされてしまったと思われる
ロスダークという実例を目の前にしながら、
どうしてマーベラスは自分の願い事が叶って、自分は死なずに済むと確信出来たのか?

いや、確信までは出来ていなかったはずです。
ただ、賭ける価値があると思えたのでしょう。
マーベラスが何に賭けたのかというと、それは海賊の心意気でした。

このゴッドアイという宝玉を作ったのは、おそらくこの幽霊船のもともとの持ち主であり、
それは古の大海賊であるようでした。
海賊というものは夢を掴むために宇宙の大海原を自由に航行する者達です。
海賊にとって夢を掴み取るということはとても大事な、自らの存在意義そのものと言ってもいい。
だから海賊が夢を冒涜するようなことをするはずがない。
夢を叶える宝玉と偽って呪いの宝玉を作り、夢を求める者達を騙して殺戮していく、
そんな夢を踏み躙るようなことを海賊がするはずはないのです。

だから、このゴッドアイは一見、呪いの宝玉のように見えて、
実はやはり夢を叶える宝玉なのだとマーベラスは思いました。
但し、それはあくまで海賊にとっての夢を叶える宝玉なのであって、
海賊でない者にとっては呪いの宝玉へと変貌する恐ろしい一面を秘めたものなのだとマーベラスは考えたのでした。

では、「海賊にとっての夢」とは何なのか?
それは海賊であるマーベラス一味にとっての夢は何なのか考えれば、既に答えは出ています。
それは「仲間と共に掴む夢」であるはずです。
少なくともマーベラスは海賊の夢とはそういうものだと信じています。
というか、ついさっきそう確信したばかりなのです。

そのマーベラスにとっての「海賊の夢の在り方」と、
ゴッドアイを作った古の大海賊にとっての「海賊の夢の在り方」が一致している保証は全くありません。
もしかしたらゴッドアイを作った海賊は単に夢を冒涜して殺戮を楽しむ外道であった可能性もある。
もし、そうであったならマーベラスがゴッドアイにどんな願いを唱えようとも、命を奪われることでしょう。

しかし、マーベラスは古の海賊があくまで海賊としての夢を踏み躙るようなことはないと信じた。
そして、自分の得た「海賊の夢の在り方」、すなわち「海賊の夢は仲間と共に掴むものである」という確信が、
古の海賊の精神に通じるものだと信じたのです。
だから、仲間を取り戻した上で仲間と共にお宝を掴もうという自分の願いならば必ず叶い、
命を奪われるようなことはないだろうと思えたのでした。

逆に、もし仲間を見捨てたり後回しにして「宇宙最大のお宝が欲しい」などと言えば、
おそらくロスダークのように命を奪われて宝玉の番人にされてしまったのでしょう。
ロスダークや歴代の番人たちは、おそらくゴッドアイを手に入れた時、自分1人の欲望を満たす願い事をしたのであり、
それは海賊の夢の在り方に反した願いであったので、その願いは叶うことはなく、
逆に命を奪われて宝玉の番人にされてしまったと思われます。

マーベラスも、もしイメージ空間に落とされず、
イメージ空間でのジョー達との遣り取りや、ロスダークとの戦いの中での気付きが無く、
イメージ空間にジョー達を置いて来た状況ではなく、
当初の予定通りに単に「宇宙最大のお宝が欲しい」という願いを唱えていれば、
ロスダークと同じ運命を辿っていたところだったのです。

しかし、ジョー達を取り戻さねばいけない状況の中で、
お宝と仲間のどちらかを選ばねばいけない状況となり、
まず仲間を取り戻すという選択をしたことによって、マーベラスは命拾いをして、
ゴッドアイはマーベラスに微笑んで、その願いを叶えてくれて、その役目を終えて石ころに変わったのでした。

しかし上手くいく保証は全くありませんでした。
危険を察知して全く何の願い事もしないという選択肢だってありました。
そうすればマーベラス自身は確実に助かったのです。
しかしマーベラスは古の海賊の心意気と己の海賊精神を信じて、仲間のために命を賭けたのでした。

そのことにマーベラスは全く躊躇はありませんでした。
何故なら、ジョー達4人の仲間たちもマーベラスのために命を賭けてくれていたからです。
仲間が自分を信じて命を賭けていてくれているのですから、
マーベラスもまた仲間のために命を賭けることに躊躇などするはずがない。
それがマーベラス一味の絆であり、海賊の絆というものでした。

こうしてゴッドアイはマーベラスの願いを叶えてくれたのですが、
そんなゴッドアイをどうしてマーベラスは「偽物」だと言ったのか?
ルカにゴッドアイを使って仲間を助けたのではないかという疑惑を向けられて、
マーベラスはいちいち恩着せがましいことは言いたくなかったので、
その話をはぐらかすためにゴッドアイを「偽物」だと言ったとも解釈出来ます。

しかし、結果的にはマーベラスの言葉でルカ達の疑惑は全く晴れてはいません。
マーベラスがゴッドアイを使って仲間達を現実世界に移動させたことは状況的にほぼ間違いないということは
ジョー達4人には分かってしまっています。
しかし、マーベラスの「偽物だった」という言葉を聞いて、ジョー達は最初は呆気にとられていましたが、
すぐに妙に納得して微笑み合います。

これはマーベラスが仲間には決して嘘は言わない男だということがジョー達には分かっているから、
この「ゴッドアイが偽物だった」という言葉も決して嘘や誤魔化しの言葉なのではなく、
真実の言葉としてジョー達なりに解釈出来たからです。
ただ、これはあくまでジョー達なりの解釈であって、マーベラス自身の解釈とは微妙にズレています。

マーベラス自身はもちろん仲間に嘘は決して言わない主義ですから、
「ゴッドアイが偽物だった」という言葉は、自分が仲間たちを助けたという事実を隠すために
出鱈目を言ったつもりの言葉ではありません。
実際、もし「宇宙最大のお宝が欲しい」と願い事をしていれば、その願いは叶わなかったわけですから、
ゴッドアイは当初マーベラス達が噂で聞いていた「なんでも夢を1つだけ叶えてくれる宝玉」とは
全く違うものだったのであり、そういう意味では確かに「偽物」だったのです。

だから当初の予定していた願い事をすることが出来ず、
この「偽物」でも叶えることの出来る願い事がたまたま「仲間を元に戻すこと」だけであったので、
仕方ないからそれを願ったまでのことだということをマーベラスは暗に言っているのです。
そして、そういうわけだから「宇宙最大のお宝」は今まで通り、
仲間で力を合わせて地道に「大いなる力」を集めて手に入れるしかないのだと今回の事件を結論づけたのでした。

このマーベラスの言葉は確かに今回の出来事の事実関係としては正直にありのままを説明しています。
ただ、マーベラスは仲間に対して嘘はつきませんが、決して素直でもありません。
「偽物」の宝玉だったから仕方なく「仲間を元に戻す」という願い事をしたわけではなく、
ゴッドアイが本物であったとしても偽物であったとしても関係無く、
とにかくマーベラスはたった1つしか願い事が出来ない状況であれば迷いなく
「仲間を元に戻す」という願い事をしたはずだからです。

ゴッドアイの真実については何がなんだかよく分からなかったジョー達4人でしたが、
このマーベラスの心情については、マーベラス自身の素直でない表現よりもよほど真実に肉薄して
受け取ることが出来たといえます。

ここでジョー達はマーベラスがゴッドアイを「偽物」と称したのは、
仲間と一緒に掴む夢こそが「本物の夢」なのであり、
マーベラスがゴッドアイを掴み取った時に叶えようとした夢は、
仲間と一緒に掴む夢ではなかったゆえに「偽物の夢」だったという解釈に由来していると考えました。

仲間がいない状態でゴッドアイを掴んだマーベラスが夢を叶えようとした時、
マーベラスは仲間と一緒に掴めない夢は偽物の夢に過ぎないと気付き、
その夢を掴むことを拒否し、代わりにゴッドアイを使って仲間を元に戻した。
このように掴み取ったタイミングが悪かったとはいえ、結果的にゴッドアイは夢を掴むことが出来なかった。
だからゴッドアイは当初期待していた夢を掴む道具ではなく、偽物の道具だったということになった。
そういう意味でマーベラスはゴッドアイのことを「偽物」だと言ったのだとジョー達は解釈したのでした。

そして、その根底には、あくまで仲間と一緒に夢を掴むことこそが一番大事なのだという
マーベラス独特の海賊としての哲学があるのだと知り、
それこそが自分達が共に夢を掴む旅をしたいと思ったキャプテン・マーベラスという男なのだと再確認し、
ジョー達4人はお宝の獲得には失敗したというのに妙に嬉しくなって、つい微笑んだのでした。
マーベラスもジョー達に背を向け、粉々になったゴッドアイの方を見つめながら、
妙に爽快な気分になり「ヘッ!」と鼻で笑いました。

その時、その5人に向けて「お前ら・・・許さんぞぉ!」という声が聞こえてきました。
よく見ると、それは大広間の端っこの床に転がっていたロスダークが発する声でした。
爆風に吹っ飛ばされ、更にゴッドアイが発した光に吹っ飛ばされたロスダークは、まだしぶとく生きていた・・・
いや、幽霊なので生きていたというのは語弊がありますが、まだ成仏してはいなかったようです。

多少身体が動くようになってきたようで、ようやく起き上がってロスダークは「絶対にゆるさぁんっ!!」と激怒します。
生き返ってゴッドアイを使って宇宙の全てを手に入れるという夢を叶えようとしていたロスダークは、
その大事な大事なゴッドアイを石ころにされて粉々に砕かれたことで怒り心頭に達していたのです。

マーベラスはロスダークが生き返ることもおそらく有り得ないと分かっていました。
また、ロスダークの夢の内容は知らないが、
どうせその夢を叶えようとしてゴッドアイに命を奪われたような利己的なつまらない夢なのであろうと思い、
そんな夢は仮に生き返って願ったところで叶えられることはないのだとも思いましたが、
ゴッドアイに記憶を奪われて操られてきたロスダークにもう今更何を言っても分かるまいと、
いちいち説明するのは諦めました。

それに、もはやロスダークを操って番人として使役してきたゴッドアイも消滅した。
ならばロスダークも、もう役目から解放され、
この妄執の無間地獄から解放されて楽になるべき時がやって来たといえます。
自分達に出来ることは、ロスダークを倒して
ゴッドアイの番人の宿命から解放してやることぐらいだと思ったマーベラスは
モバイレーツとレンジャーキーを出して
「・・・ったく!・・・幽霊なら幽霊らしく・・・さっさと成仏しろ!」と言い放ちました。

ジョー、ルカ、ハカセ、アイムももちろんイメージ空間に落とされてさんざん苦しめられた恨みがありますから、
ステージから降りてきてマーベラスと共に変身の構えに入り、
5人は「豪快チェンジ!!」とゴーカイジャーに変身し、
「ゴーカイレッド!」「ゴーカイブルー!」「ゴーカイイエロー!」「ゴーカイグリーン!」「ゴーカイピンク!」と
順々に名乗りを上げていき、最後は「海賊戦隊!ゴーカイジャー!!」と5人全員で名乗りを上げます。
この一連の名乗りは劇場版特別版で3D対応になっていて、いつもの名乗りバンクとは若干違う感じになっています。

そして変身するなり5人はいきなりゴーカイジャーのレンジャーキー5個と
ゴレンジャーのレンジャーキー5個を放り投げ、「いつもより派手にいくぜぇっ!!」と叫びます。
これはいきなり決め技のファイナルウエーブの準備動作ですが、
ロスダークが手強いことが分かっているだけに、5人はロスダークにダメージが残っている今のうちに
一気に勝負をつけようとしているのです。

そして各自の持つゴーカイサーベルにゴーカイジャーのレンジャーキーが挿入され、
ゴーカイガンにゴレンジャーのレンジャーキーが挿入され、
それらが回って「ファ〜イナルウェ〜イブ!!」とエネルギーが充填されていき、
5人はファイナルウエーブ状態となったゴーカイサーベルとゴーカイガンを構えて
「はあああああ!!」と気合を入れます。

そして5人は「ゴーカイブラスト!!・・・ア〜ンド、スラッシュゥゥッ!!」と叫んでゴーカイガンを撃ち、
次いでゴーカイサーベルを振り下ろして、5色の弾丸型の衝撃波と5色の三日月型の衝撃波は合体し、
それがなんとアカレンジャー、アオレンジャー、キレンジャー、ミドレンジャー、モモレンジャーの姿となって
ロスダークに突っ込んでいきました。
こういう類の演出はTV本編では、第4話の五刀流ブルースラッシュ以来で、なかなか珍しいです。

ロスダークはこれをまともに喰らって「うおおおっ!?」と断末魔の声を残して
爆炎の中で消滅してしまったかのように見えました。
ところが、ロスダークが消え去った大広間でマーベラス達が安堵したように構えを解いて立ち去ろうとした時、
青白い光が大広間に中央に集まって巨大なロスダークの顔のような形になって
「まだだぁ・・・まだ俺は終わっていない・・・」というロスダークの怨念のこもった声が響いたかと思うと、
次の瞬間にはその青白い光はつむじ風のように消え去っていったのでした。

予期せぬ怪奇現象に続いて、更に天井方向から何か破壊音が響くのを聞き、
「なに?・・・なになに!?」とルカは慌てて周囲をキョロキョロ見回し、皆が戸惑う中、
マーベラスは上部の甲板で何かが起きていることを感じ、まだ戦いは終わっていないと判断して、
「甲板へ出るぞ!!」と駆け出し、5人は大広間を出て、幽霊船上部の甲板に向かいます。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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2012年05月26日

海賊戦隊ゴーカイジャーTHE MOVIE空飛ぶ幽霊船 感想その7

巨大幽霊船の大広間のドクロの左目から奪い取ったゴッドアイに向かって
マーベラスは「宇宙最大のお宝」ではなく「仲間を元に戻すこと」を求め、
その願いは叶って、イメージ空間に閉じ込められていたジョー達4人は幽霊船の大広間に帰還、
マーベラス一味は5人が揃い、遂に幽霊船の船長ロスダークを撃破しました。
しかし、戦いが終わったと思ったのも束の間、幽霊船内にはロスダークの幻が現れ、
その不気味な声が、まだ戦いは終わっていないと告げます。

ロスダークの幻が消えた後、上の方で破壊音が響くのを聞いて幽霊船の広大な甲板に登った
マーベラス達の目の前に現れたのは、甲板を破って幽霊船内部から昇って来たゴーカイオーに酷似した巨大ロボでした。
驚く5人の中でルカは「出た!偽ゴーカイオー!」と言います。
これが噂の、豪獣神を負かしたというゴーカイオーそっくりの巨大ロボ、
偽ゴーカイオーなのだと即座に悟ったのでした。

そういえばこれがまだ残っていたということに気付いた5人でしたが、
いったい誰が偽ゴーカイオーを動かしているのか、それとも勝手に動くようになっているのか、
一瞬よく分かりませんでした。
すると、偽ゴーカイオーから「貴様らぁ・・・生きてここからは帰さん!!」と、聞き慣れた声が響きます。
ロスダークの声でした。
やはり偽ゴーカイオーを操縦していたのはロスダークであったのです。
意外にもロスダークは先ほどのマーベラス達の放ったゴーカイブラスト&スラッシュを喰らっても
まだ完全には倒されてはいなかったようです。

もともとは幽霊であるロスダークは、あの廊下で会った3幽霊のように
本来は現実世界では無力な存在に過ぎないと思われますが、
あのドクロを使ってイメージ空間に送られて幽霊たちに殺された者達の生体エネルギーを吸収することによって、
現実世界における戦闘力を持った肉体を得ていたのでしょう。

そのロスダークの現実世界における肉体は、先ほどのゴーカイブラスト&スラッシュで
肉体を構成する生体エネルギーを全部吹っ飛ばして消滅させたはずです。
あの後、大広間に現れて恨み言を叫んだロスダークの幻は、あれは所詮はロスダークの霊体に過ぎず、
肉体を失いゴッドアイの呪縛も失った霊体は普通ならばそのまま死後の世界へ行くはずでした。

ところが、ロスダークは彼が殺してきた者達から奪った生体エネルギーをまだ他にも大量に残していた。
それがロスダークがその持てる生体エネルギーの多くを注ぎこんで生成した偽ゴーカイオーだったのです。
その偽ゴーカイオーを構成する生体エネルギーにありついたロスダークの霊体は再び肉体を取り戻し、
偽ゴーカイオーを操縦してマーベラス達を倒して、その生体エネルギーを奪おうとしているのです。

ゴッドアイは失われてしまったので、
宇宙の全てを手に入れるというロスダークの野望はもはや叶えることは出来ないが、
こうなったらロスダークとしてもマーベラス達を殺して野望を潰された恨みを晴らし、
その生体エネルギーを奪って、せめて生き返ってやろうと、まだ生への執着を募らせているのでした。
しかし実際は生体エネルギーをいくら集めても死者のロスダークが生き返ることは有り得ない。
ロスダークはゴッドアイに騙されていたに過ぎないのですが、
もはや妄執の虜となったロスダークにはそんな事実は理解出来ません。

「・・・しつこい野郎だ!」と呆れたマーベラスはモバイレーツの操作で
幽霊船の船体内に停泊させていたゴーカイガレオンを呼び寄せ、
甲板を突き破って上昇してきたガレオンに向かって「いくぜぇ!ハァッ!!」と、仲間5人で飛び乗り、
そのまま上昇していくガレオンからゴーカイマシンを出し、空中で「海賊合体!!」とゴーカイオーに合体したのでした。
そしてそのままマーベラス達は幽霊船の中央マストの最上部まで跳び上がって
ゴーカイオーをマスト最上部の横柱の上に着地させ、「完成!!ゴーカイオー!!」と見得を切りました。

幽霊船があまりに巨大なので、巨大ロボであるゴーカイオーや偽ゴーカイオーが
まるで人間サイズであるかのようでした。
いや、甲板の上の階段や通路などの構造物が全て巨大ロボが通行するのに適したサイズになっていることから考えて、
おそらくこの巨大幽霊船はもともとは巨大ロボをも多数所有して運用していた
大海賊団のアジトの巨大海賊船であったのであり、
かつてはこの甲板の上で多数の海賊団所有の巨大ロボが動き回っていたのであろうと想像できます。

今は廃船となり幽霊船となった、その荒涼とした甲板の上に立つ偽ゴーカイオーの姿を
マストのてっぺんから見下ろしてマーベラスは「フン!」と鼻で笑います。
自分達を幽霊船におびき寄せるためにロスダークが念には念を入れて生体エネルギーを使って
ゴーカイオーに酷似したロボを作ったものと思われる偽ゴーカイオーを初めて目の当たりにして、
確かにゴーカイオーによく似ているものだと多少感心したマーベラスでしたが、
所詮は偽物は偽物であり、本物のゴーカイオーに敵うはずはないと思ったのでした。

倒したはずのロスダークが甦ったのは、この偽ゴーカイオーの生体エネルギーを得たからにすぎず、
後はこの偽ゴーカイオーもろともロスダークに引導を渡せば、完全にロスダークを滅することは出来る。
きっちりゴーカイオーで偽ゴーカイオーを倒して幽霊船の戦いに終止符を打つ。
マーベラス達は決意を固めました。

アイムが「海賊の海賊版なんて、著作権の侵害です!」と
偽ゴーカイオーがゴーカイオーのデザインをパクっていることを抗議すると、
ロスダークは甲板からマストの上のゴーカイオーを見上げて「俺が勝てば偽物はお前達だぁ!」と、
本物のゴーカイオーを倒して壊してしまえばこの世にゴーカイオーはこの偽ゴーカイオーだけになるのだから、
偽ゴーカイオーが本物のゴーカイオーになるのだというような、中国企業のような無茶苦茶なことを言い、
偽ゴーカイオーの左手の鉤爪で偽ゴーカイオーの足元から上に向けて張られたロープを引っ掛けて手繰り寄せ、
それを右手に握った剣で断ちました。

そのロープはゴーカイオーの立つ中央マストの最上部まで繋がっており、そこで滑車に通してあって、
滑車の下で大きな砂袋が括りつけてありました。
つまり甲板から伸びて滑車を支点にして砂袋を吊るしていたロープだったのですが、
そのロープを甲板から断ち切ったために砂袋を吊り下げる力が失われ、
砂袋は甲板に向けて勢いよく真っ直ぐ落下していきます。

同時に砂袋に繋げられたロープも一緒に引っ張られていき、
滑車を経由して偽ゴーカイオーの鉤爪を引っ掛けたロープも勢いよく上に引っ張られていき、
ロープに鉤爪を引っ掛けたまま偽ゴーカイオーはロープと一緒にマストの最上部の滑車のところまで一気に昇ってきて、
最上部の横柱の上に飛び乗って、ゴーカイオーと対峙しました。
これは海賊ものの映画などで昔からよく描かれる古典的な海賊アクションです。

こうして一気にゴーカイオーに肉薄した偽ゴーカイオーを、
ロスダークは「いくぞぉぉっ!!」と荒々しく怒鳴って突撃させ、
対するゴーカイオーのコクピットでもマーベラス達が「はああっ!!」と操舵輪を回して
ゴーカイオーを前進させ、偽ゴーカイオーを迎え撃ち、
マストのてっぺんでゴーカイオーと偽ゴーカイオーは剣と剣を激しくぶつけ合って戦い始めたのでした。

黒雲に覆い隠されて空に浮かぶ巨大幽霊船で、雲が流れる中、
マストのてっぺんの逃げ場の無い細い横柱の上で激しく斬り合うゴーカイオーと偽ゴーカイオーという
この場面を含めた、幽霊船甲板上のゴーカイオーと偽ゴーカイオーのアクションシーンの大半は
3Dのモーションピクチャーで製作されており、
巨大ロボが人間サイズに見えてしまう巨大幽霊船の甲板上という
通常では有り得ないシチュエーションにおけるアクションを
なめらかな動きでリアルっぽく見せることに成功しています。

まずマスト上の戦いの方は、
剣を2本持ったゴーカイオーと、右手に剣を持った偽ゴーカイオーの間で激しい攻防が繰り広げられましたが、
偽ゴーカイオーが意外に強くてゴーカイオーは次第に押し込まれて後退していく羽目になりました。
豪獣神を破ったぐらいですから偽ゴーカイオーは確かに強いのです。
しかし本家のゴーカイオーに乗るマーベラス達はどうしても相手を偽物だと見下してしまいがちになり、
偽物相手に本物が遅れをとるわけにいかないという妙な意地も湧いてきて、ついつい真っ向勝負に出てしまいましたが、
パワーはどうも偽ゴーカイオーの方が上回っているようです。

考えてみれば偽ゴーカイオーはロスダークがマーベラス達を誘い出すために
ゴーカイオーの姿に似せて作っただけのことであって、
別にゴーカイオーを目標にして作ったロボットというわけではない。
だから本物に劣る偽物という位置づけなのではなく、
単に外見が似ているだけの全く別物のロボットだと考えなければならない。
そして偽ゴーカイオーは確かにパワーはゴーカイオーを上回る強敵なのです。
真っ向勝負で勝てる相手だと思って舐めてかかってはいけない相手でした。

防戦一方となったゴーカイオーは狭い横柱の上を後退し、
マストの縦柱の陰に回り込んで偽ゴーカイオーの剣から逃れますが、
偽ゴーカイオーも執拗に追ってきて、縦柱を回っての追いかけっこのようになり、
一周して横柱の上を逃れようとしたゴーカイオーに向けて偽ゴーカイオーが剣を繰り出し、
これを喰らったゴーカイオーはバランスを崩して横柱から足を踏み外してしまいます。

「わああっ!?」とマストから転落しそうになったゴーカイオーはすんでのところで右手の剣を投げ捨てて、
咄嗟に右手で足場となっていた横柱を掴んでぶら下がり、なんとか転落を免れましたが、
そこにすかさず偽ゴーカイオーはゴーカイオーの右手をガシガシと踏みつけて、
ゴーカイオーを蹴り落とそうとするのでした。
「くうっ・・・!」と懸命に耐えるゴーカイオーのコクピット内のマーベラス達に向かい、
偽ゴーカイオーのコクピットのロスダークは「甲板に叩きつけられて砕け散れぇっ!」と容赦なく怒鳴って
偽ゴーカイオーはストンピングの連打、遂にゴーカイオーは右手を離してしまい
「ああああっ!」と真っ逆さまに甲板に向かって落ちていきます。

しかしジョーが「そうはいくか!」と叫び、5人は「はぁっ!!」と操舵輪を回して
空中でゴーカイオーの態勢を立て直すと、マストにかかって風にたなびいて膨らんだ帆に
左手に握っていたゴーカイケンを突き立て、帆を斬り裂きながら落下していき、
剣と帆の間の抵抗を利用して落下速度を緩めて、
帆を支点にして横っ飛びして別のマストの中段の横柱に飛び移りました。

それを見下ろしてロスダークは「ううむ・・・?」と呻くと、
ゴーカイオーをこのまま逃がすまいと思い、「くううっ!」と悔しげに叫んで
マストから甲板に繋がっているロープに偽ゴーカイオーの鉤爪を引っ掛けて一気にロープを滑り降り、
マストの横柱を飛び移りながら甲板に降りて行くゴーカイオーを追いかけます。

そうして互いに甲板のやや離れた位置に降り立ったゴーカイオーと偽ゴーカイオーは再び対峙することになりました。
マーベラスはさっきは偽ゴーカイオーを舐めていたことを反省し、
強敵と認めた上であらゆる手段を尽くして戦うことを改めて決意し、
「そろそろ本気でいくかぁ!!」と気合を入れ、5人は「はぁっ!!」と操舵輪を回して
ゴーカイオーを偽ゴーカイオー目がけて突撃させます。
ロスダークも「・・・面白い!」と、すっかり戦いを楽しんでいる風情で偽ゴーカイオーをマントをひるがえして突撃させ、
両者は甲板の真ん中で激突し、今度は十分な足場の上でがっぷり四つに斬り合います。

今度はゴーカイオーは1本残った剣を両手握りにして振り回して、
偽ゴーカイオーに対するパワー不足を補って互角の勝負に持ち込みました。
ところが真っ向からやり合っても強い偽ゴーカイオーがここで逆に奇手を使い、
右手に持った剣ではなく、左手の鉤爪でゴーカイオーの剣を引っ掛け、絡めてその動きを封じたのでした。
さすがにロスダークはかつて幽霊船に挑んで勝利しただけあって、熟達した戦士です。

剣が封じられて「・・・なにぃ?」と驚いたマーベラス達に対して、
ロスダークは「これでどうだぁ!?」と偽ゴーカイオーの目から奥の手のレーザー光線を発射、
これを喰らったゴーカイオーは幽霊船の舳先まで吹っ飛ばされてしまいました。
そのまま幽霊船を飛び出して地上に落ちていく勢いだったゴーカイオーでしたが、
「・・・なんの!」とマスト最上部と舳先を結んでいたロープに掴まり、ロープを斬って舳先と切り離すと、
ターザンのようにロープにぶら下がったまま船尾方向へ高速で突っ込んでいきます。

これに対して「逃がすか!」とロスダークは偽ゴーカイオーの左腕に仕込んだ火砲で
ゴーカイオーを狙って乱射しまくりますが、高速で移動するゴーカイオーに命中させることが出来ず、
甲板上の構造物を撃って破壊しまくっていきます。
ゴーカイオーはサーカスの曲芸のように別のロープにまた飛び移り、更に甲板の上を高速移動していき、
偽ゴーカイオーはそれを狙って乱射を続け、ロスダークはどんどん自身の幽霊船を破壊していくことになりました。

そうして遂には幽霊船の各所が火を噴き出して大破し、沈む寸前の幽霊船は完全に横倒しになった状態となり、
炎に包まれた船腹の上、船首のドクロのほど近くに偽ゴーカイオーは仁王立ちとなります。
一方、ゴーカイオーも遂に逃げ場を失い、ボロボロに横倒しになった中央マストの先端にぶら下がり、
足元には黒雲が渦巻く虚空という、逃げ場の無い状況となりました。

もはや両者とも絶体絶命の状況なのですが、
ロスダークは既にマーベラス達の生体エネルギーを奪うとか、生き返るとか、
そういう当初の目的はもう何処かに飛んでしまったようで、ただ戦いの狂気に支配されてしまったように満足げに
「久々に歯ごたえがあった・・・楽しかったぜぇ・・・!」とせせら笑うと、
「さらばだ・・・!!」と言って、偽ゴーカイオーの胸部ハッチを開いて、そこから巨大な砲身を突き出しました。

その砲身がゴーカイオーに狙いを定めているのを察して、
「・・・むっ!」とゴーカイオーのコクピットのマーベラスは呻きます。
まるでゴーカイオーの必殺武器のゴーカイホーのような砲身ですが、
偽ゴーカイオーの突き出したその砲身は5つもあり、
まともに喰らえばゴーカイオーといえどもひとたまりもないでしょう。

その5つの砲身が発射態勢に入ったのを見て、マーベラスは「させるか・・・!」とレンジャーキーを出し、
「ド派手にトドメだぁぁっ!!」と叫びます。
同時に仲間4人もそれぞれレンジャーキーを取り出して「おう!!」と応じ、
5人は一斉に「レンジャーキー!セット!レッツゴー!!」と叫んで
レンジャーキーをコクピットのカギ穴に挿して回しました。
そして偽ゴーカイオーの砲撃を避けるためにマストから手を離して落下するゴーカイオーの
胸部と両腕両脚のハッチが一斉に開き、
そこからバリブルーン、マジドラゴン、パトストライカー、ゲキタイガー、ドラゴンヘッダーが飛び出してきたのです。

マーベラスが挿し込んだレンジャーキーはアカレンジャーのレンジャーキーであり、
それによってゴレンジャーの大いなる力であるバリブルーンが召喚され、
マーベラスの乗機であるゴーカイガレオンの部分にあたる胸部のハッチから飛び出したのです。

ジョーが挿し込んだレンジャーキーはマジブルーのレンジャーキーであり、
それによってマジレンジャーの大いなる力のマジドラゴンが召喚され、
ジョーの乗機であるゴーカイジェットの部分にあたる右腕のハッチから飛び出したのです。

ルカが挿し込んだレンジャーキーはデカイエローのレンジャーキーであり、
それによってデカレンジャーの大いなる力のパトストライカーが召喚され、
ルカの乗機であるゴーカイトレーラーの部分にあたる左脚のハッチから飛び出したのです。

ハカセの挿し込んだレンジャーキーはゲキバイオレットのレンジャーキーであり、
それによってゲキレンジャーの大いなる力であるゲキビーストの1つのゲキタイガーが召喚され、
ハカセの乗機であるゴーカイレーサーの部分にあたる左腕のハッチから飛び出したのです。

アイムの挿し込んだレンジャーキーはゴセイピンクのレンジャーキーであり、
それによってゴセイジャーの大いなる力のゴセイヘッダーの1つのドラゴンヘッダーが召喚され、
アイムの乗機であるゴーカイマリンの部分にあたる右脚のハッチから飛び出したのです。

ここまでのTV本編での描写では、ゴーカイオーにおける「大いなる力」の発動時は
5人のメンバーが同じ戦隊のレンジャーキーを揃ってコクピットに挿して、
その1つの戦隊の「大いなる力」を発動していました。
このように1人1人のメンバーの挿すレンジャーキーの戦隊がバラバラというパターンは今までは一度も無く、
今回が初めての描写といえます。

この方法を使えば同時に5つの「大いなる力」を発動できるように見えます。
となると、いつもの5倍の攻撃力を発揮できているようにも見えます。
しかし、そんな便利な使い方が出来るなら、普段からこの方法は多用されているはずですが、
今まで使われていないということは、これはそんな都合のいい方法ではないようです。

よく見ると、通常はゲキレンジャーの「大いなる力」はゲキビースト5体であるはずが、
ここではゲキタイガー1体しか出ておらず、
ゴセイジャーの「大いなる力」も本来はゴセイヘッダーが多数出るはずなのに、
ここではドラゴンヘッダーしか出ていません。
つまり、それぞれの「大いなる力」はフルパワーではないようです。

おそらくゴーカイオーから放出されている「大いなる力」の総和はいつもと同じであり、
出現している5つの「大いなる力」は、それぞれ通常の5分の1のパワーなのです。
要するに、このバリブルーン、マジドラゴン、パトストライカー、ゲキタイガー、ドラゴンヘッダーは
5つが力を合わせてようやく1つの「大いなる力」と同等のパワーなのであり、
この5つの攻撃が全て合わさってようやく1つの「大いなる力」の攻撃力と同じなのです。

ならば別にこんなややこしいことをせずに、
普通に1種類の「大いなる力」をフルパワーで使えばいいではないかと思われるかもしれないが、
これは対ロスダーク、対偽ゴーカイオーを想定した特殊な技なのだと解釈すべきでしょう。

つまり、どうやらロスダークは偽ゴーカイオーを作るに際して、かなりゴーカイオーのことを研究したようであり、
「大いなる力」のことも熟知している可能性が高い。
だから普通の使い方をした場合、偽ゴーカイオーにその回避策を用意している可能性があるのです。
それを封じるために、普段は使わないような「大いなる力」の変則技を咄嗟に繰り出したというのが、
この5つの「大いなる力」をそれぞれ5分の1の出力で同時に繰り出すという変則攻撃の狙いであったのでしょう。

なお、スーパー戦隊シリーズの夏映画というのは「ガオレンジャー」以降は、
劇場版の限定、あるいは劇場版で初登場となる新ロボットや新合体形態、新武装や新武器など、
劇場版と連動した新たな玩具展開があるのがこれまで恒例となってきました。

この「ゴーカイジャー」夏映画の「空飛ぶ幽霊船」でも、
このように劇場版限定の決め技が登場したことになりますが、これは玩具展開とは絡めてありません。
その他にも劇場版限定のアイテムも登場していません。
しいて挙げれば偽ゴーカイオーが劇場版限定ロボということになりますが、これも玩具化はされていません。

つまり、この「空飛ぶ幽霊船」映画は、2001年以降のスーパー戦隊夏映画では初めて
玩具展開が絡んでいない作品ということになります。
その理由はよく分かりませんが、この映画はとにかく玩具計画とは別個に企画されたものだということは確かなようで、
それは「ゴーカイジャー」という作品がシリーズ35作記念作品ということで、
その劇場版は他のシリーズ作品の劇場版とは何らか違う特別扱いであったのであろうと推察出来ます。

さて、このマーベラス達の繰り出した変則攻撃の5つの「大いなる力」は
ゴーカイオーの5つのハッチから発射されて、猛烈な勢いで偽ゴーカイオー目がけて飛んでいきます。
ロスダークはこの想定外の反撃に対して「うぬぅっ・・・!」と偽ゴーカイオーの胸部から突き出た砲身を
この飛んでくる5つの「大いなる力」に向けて、回転式のガトリング砲のように撃ちまくりますが、
5つの「大いなる力」はこれをかいくぐって一気に偽ゴーカイオーに迫ると分散して多方面から同時攻撃を仕掛けます。

まずはパトストライカーが偽ゴーカイオーの胸部の砲身を粉砕して攻撃力を奪い、
次いでゲキタイガーが偽ゴーカイオーの剣を握った右手を撃破して防御力を奪い、
マジドラゴンが偽ゴーカイオーの脚を砕いて飛び去り、偽ゴーカイオーの回避能力を奪った上で、
最後にドラゴンヘッダーとバリブルーンが相次いで偽ゴーカイオーの胴体を貫いたのでした。

これで致命的ダメージを受けた偽ゴーカイオーのコクピットで
ロスダークは「ううっ・・・くっ・・・!」と懸命に偽ゴーカイオーを立て直そうとし、
横倒しになり爆発を繰り返す幽霊船の船首付近を偽ゴーカイオーは蠢き、
船首のドクロの口の中に「うおおっ!」と転落してしまいます。

炎に包まれた幽霊船の内部に転落した偽ゴーカイオーとロスダークに向かって、
ゴーカイオーのコクピットからマーベラスは「今度こそ大人しくしてろ!・・・永遠にな!」と別れの言葉を贈り、
ロスダークは炎の中で「・・・地獄が・・・地獄が俺を呼んでいる・・・!!」とうわ言のように叫びました。
遂に偽ゴーカイオーが最期の時を迎え、ロスダークの持てる全ての生体エネルギーは尽きようとしており、
自らの魂がこの世との繋がりを断たれて死後の世界へ旅立とうとしているのをロスダークも感じ取ったようです。

しかし、これまでに己の利己的な欲望を叶えるためだけにあまりにも多くの人を殺戮してきた
ロスダークの魂の行き着くべき死後の世界とは地獄に他ならず、
ロスダークの視線の先に見えるのは地獄の情景であるようです。
それを嫌がっているのか歓迎しているのか判然としない声色でうわ言を呟いた後、
ロスダークは「ぎゃああああああっ!!」と断末魔の絶叫を響かせ、偽ゴーカイオーもろとも爆散して果て、
直後に幽霊船も遂に大爆発を起こし、黒雲の中で大きな炎の塊となって砕け散ったのでした。

その爆炎の中からただ1つ飛び出してきたのはマジゴーカイオーでした。
偽ゴーカイオーに一撃を喰らわせた後にマジドラゴンが舞い戻って、落下していくゴーカイオーと合体し、
マジゴーカイオーとなって空を飛び、マーベラス達は無事に爆散する幽霊船からの離脱に成功していたのです。

さて、この映画の物語のエピローグは、
幽霊船での冒険を終えて、ガレオンの船室でいつものようにテーブルを囲んで夕食を摂っている
マーベラス達5人のところに、待機していた鎧が戻ってきた場面です。

マーベラス達が絶体絶命の危機に陥ったら助けに行くという手筈で待機していたと思われる鎧ですが、
結局はマーベラス達からのSOSコールはありませんでした。
まぁ実際はマーベラス達はかなりの危機的状況に陥っていたのですが、
イメージ空間からは鎧への連絡のしようもなかったし、
現実世界に戻って以降も戦いに次ぐ戦いで鎧への連絡のヒマは無いまま、気が付けば戦いは終わっていたのです。

鎧の方はそんな実情は知りませんから、SOSコールも無いままガレオンが幽霊船から戻ってきたのを知り、
てっきりマーベラス達が大した障害もなくゴッドアイを手に入れてミッションを成功させたのだと思い込んで、
大喜びでガレオンに戻ってきました。
勢い余って船室の脇を駆け抜けてしまった鎧は「おおっとっと・・・」と戻ってきて、
元気いっぱいに「待たせてごめぇぇん!」と船室に駆け込んでくると、
さっそく目を輝かせ、「・・・で、何処にあるんですか!?ゴッドアイは!」と、
テーブルで食事をしている5人に勢い込んで尋ねます。

鎧は別にお宝に興味がある類の人間ではないのだが、
それでも「なんでも夢が叶う伝説の秘宝」などという珍品に興味が無いわけはない。そ
んな世にも珍しいものを見たり触ったり出来る機会なのですから、興奮するのは当たり前です。
しかも、そのゴッドアイを使ってマーベラス達の求めている伝説の「宇宙最大のお宝」までが
遂に手に入るわけですから、鎧の好奇心は最大限に膨れ上がっていました。
しかし満面の笑顔の鎧に対して、マーベラス達5人はしばし黙って無反応のまま食事を続け、
そしてジョーが面倒そうに「・・・残念だが、無い!」とキッパリ答えます。

意外な回答に鎧は愕然として「なんでですかぁ!?」と尋ね返しました。
マーベラス達が幽霊船から無事に帰ってきて、何ら悔しそうな素振りも無く、
こうして普通にメシを食っているのだから、当然首尾は上々であるはずだと鎧は思っていました。
それが幽霊船からゴッドアイを持ち帰っていないというのですから、あまりに意外でした。

「・・・まさか、掴み取れなかったわけじゃあ・・・?」と、鎧は一転して少し落胆した口調で質問してきました。
「欲しいものは必ず掴み取る」というのがマーベラス一味の海賊としてのポリシーだったはずです。
そのポリシーをザンギャックに支配された宇宙の大海原で貫いてきた心意気に感じ入って、
鎧は正義のヒーローやスーパー戦隊としてのゴーカイジャーではなく、
海賊としてのゴーカイジャーの仲間になりたいと思ったのです。
ところがマーベラス達はゴッドアイを目の前にしながら掴み取ることが出来ず、
何事も無かったかのように平気な顔でメシを食っている。
そう思えると鎧は少し落胆したのでした。

その鎧の落胆した様子を見て、少し気の毒に思ったのか、
アイムがおずおずと「・・・それが・・・ゴッドアイは偽物だったそうで・・・」と何やら言葉を濁します。
アイムも、そしてジョーもルカもハカセも、あのゴッドアイが単なる紛い物の玩具ではなかったことは分かっています。
あの幽霊船で起こった出来事について、すなわちマーベラスがゴッドアイを使ってお宝を手に入れるのではなく
仲間を取り戻したのだということは4人ともだいたい察しはついています。

その経緯を詳しく説明すれば鎧も気持ちよく納得してくれるだろうとはジョー達にも分かっているのですが、
何せそれはあくまでジョー達4人の想像でしかなく、
真相を知る当事者のマーベラスが「ゴッドアイは偽物だった」とだけ言って、
おそらく照れて詳しい経緯を語りたがっていない様子である以上、
4人としてもあまり余計なことを言うのは気がひけるので、鎧
にゴッドアイがどうなったのか質問されて困ってしまったのです。
それで、アイムは自分の想像は交えず、マーベラスの主張をそのまま伝える形で
「ゴッドアイが偽物だった」ということを鎧に伝えたのでした。

鎧はそれを聞いて愕然とし、露骨に落胆した様子で
「・・・えええ?・・・そんなオチ、ありぃ!?」とガッカリしてブツブツ言います。
鎧は幽霊船で起きた出来事は全く知りませんから、
単にゴッドアイは所詮は伝説の産物で、幽霊船には偽物が置いてあっただけだという、
よくありがちな話だったのだと思い、アイムの言葉をすんなり信じました。
そして、マーベラス達が決して本物のゴッドアイを目の前にしながら
お宝を諦めて逃げ帰ってきたのではないと分かって安堵もしました。
しかしそれでも、てっきり本物のゴッドアイを見ることが出来ると心から楽しみにして駆けつけたので、
肩透かしを食らってそのガッカリ感は非常に大きく、
理屈では諦めても心は諦めきれないで、ウジウジと文句を言い続けていたのでした。

マーベラスはその鎧のブツクサ言っている様子を見て、
まだ鎧が「ゴッドアイは偽物だった」という自分の説明に納得せず、
事件の詳細を突っ込もうという野暮なことをしようとしているのかと勘違いして、
ややキレ気味に「なんだお前・・・文句あんのかぁ!?」とどやしつけました。

一喝されてシュンとなった鎧は「・・・無いですけどぉ・・・」と、
まだゴッドアイを見ることが出来なかった残念感を少し引きずった風情を見せますが、
そこにジョーは「いいじゃないか!」と鎧を励ますように力を込めて言葉をかけます。
ルカは鎧の様子などどうでもいい感じでジョーの皿の上の肉を狙って手を伸ばしますが、
ジョーは鎧の方を見ながらルカの手を掴んで肉を死守しつつ、
「・・・また宇宙最大の宝を探す旅が続くんだ・・・」と鎧に言い聞かせます。

これはマーベラスがあの幽霊船の大広間でゴッドアイが偽物だったと言った後にジョー達に言った
「また夢はやり直しだ」という言葉と同じことを言っているのでした。
あの時、マーベラスはお宝が手に入らなかったのに妙に嬉しそうにその言葉を口にした。
だから、マーベラスが本当に仲間である自分達に伝えたかった言葉はそっちの方であることを
ジョー達は分かっていたのです。

「そうそう!そっちの方が楽しいよ!」とハカセもジョーの言葉に賛同して、鎧に言い聞かせます。
アイムも微笑んで頷き賛同し、ルカもニヤニヤ笑って「・・・みんなで一緒に、ってのがね・・・?」と言って、
マーベラスの方をチラリと視線を向け、からかうように笑い、
ジョーもハカセもアイムも黙々と食事を続けながらほくそ笑みます。

マーベラスが1人で手に入れるお宝よりも、仲間と一緒にお宝を掴み取る旅の方に価値を見出したのだということを
4人はしっかり理解しているのであり、
4人は自分達も同じ価値観を持っているのだということを鎧に伝えつつ、マーベラスにも暗に伝えたのでした。

本当ならハッキリと互いの価値観の一致を確認し合うべきところなのでしょうが、
マーベラスが照れ屋で意地っ張りなのでハッキリとした遣り取りではなく、
このように暗示するような遣り取りにせざるを得ない。
全く世話の焼ける船長だが、これがどんなお宝にも替え難い自分達の最高の船長なのだと思い、
ルカはマーベラスをじっと見つめ、ジョーもハカセもアイムもその様子を面白がるのでした。

その4人の変な雰囲気を感じてマーベラスは「・・・なんだ・・・?」と焦って、
「・・・俺の顔になんか付いてんのかぁ!?」と慌てた顔で怒鳴りますが、
ルカは「べっつにぃ!」と鼻で笑ってそっぽを向きます。

すると、場をまとめるように「そうそう!」とナビィが口を挟み、
幽霊船に行った5人の話の内容についていけず1人唖然としている鎧の前に飛び上がって羽ばたきながら
「1人よりぃ、2人がいいさ、2人よりぃ、5人がいいさ、夢でかくなるぅ、って言うでしょ?」と
節をつけて唱えながら、鎧に言い聞かせます。

ナビィ自身はガレオン内で留守番をしていたので、幽霊船の大広間で起きたことは把握していませんでしたが、
この場での5人の遣り取りを聞いて、
マーベラスがお宝よりも仲間と共に夢を掴み取る旅を選んだのだろうと察したようです。
そしてそれが海賊として正しい選択であり、鎧も含む6人にとっての明るい未来を導く考え方だと理解したのです。

このナビィの言葉の中に出てくる
「1人よりぃ、2人がいいさ、2人よりぃ、5人がいいさ、夢でかくなるぅ」というフレーズは、
スーパー戦隊シリーズ第5作「太陽戦隊サンバルカン」の前期EDテーマの「若さはプラズマ」の冒頭の歌詞
「1人より2人がいいさ、2人より3人がいい、力も夢も、そして勇気も、それだけ強くでかくなる」が元ネタです。
サンバルカンは3人であるのに対して、今回幽霊船に乗り込んで絆を確認したゴーカイジャーのメンバーが
5人であるので、2人よりいいのは5人になっています。

そのナビィの言葉の意味するところは、
1人で掴む夢よりも、仲間と一緒に掴む夢の方が、より大きな価値のあるものだということであり、
まさに今回の映画の内容そのものであり、
マーベラス達5人が確認し合った海賊の掴むべき夢の在り方を表していますが、
それとピッタリの内容のフレーズを含んだ曲が過去のスーパー戦隊の関連曲の中にあるというのが
むしろ驚異的といえます。

そしてナビィはこの言葉を言い終ると、いきなり鎧を飛び越えてきて、
どアップになってカメラ目線で「ねぇ〜!みんなぁ!?」と、
スクリーンの向こうにいる観客に同意を求めてくるのでした。
これはつまり、ここでナビィの言った言葉こそが、この映画を観に来た観客の、特に子供たちに向けて
最も強調して伝えたい内容であったということです。
すなわち、「仲間と一緒に力を合わせて掴む夢にこそ大きな価値がある」ということが、
この映画が子供達に伝えたいメッセージであるのです。

そうした価値観を伝えたジョー達の言葉を聞き、ナビィの言葉に諭されて、鎧もその価値観に同意したようで、
確かにゴッドアイを見ることなどよりも、
これから仲間一緒に「宇宙最大のお宝」という夢を手に入れるための冒険の旅の方が楽しいと納得しました。

ただ、1つだけどうにも納得できない点があって、鎧はナビィを追いかけてきて
「・・・ちょっとちょっと!そこは6人でしょお!?ナビィ!!」と抗議します。
確かにナビィは「2人より5人がいい」と言って、6人目の仲間の鎧を除け者にしています。
それが鎧には受け入れ難かったのです。
しかしナビィは「ええ〜え?6人じゃ語呂が悪いしぃ・・・」と意地悪を言って、
まだ新入りで見習いの鎧をからかうのでした。
鎧はまだ自分が見習いだから人数にカウントされないのかと落ち込み「そぉんなぁ〜・・・!」と嘆いてへたり込み、
マーベラス達は仲間の絆を再確認した喜びを胸に、満足そうに夕食を頬張るのでした。

そして夕景の中、地上に係留されたガレオンのカットから海賊旗のカットに
「海賊戦隊!ゴーカイジャー!!」というコールと共にタイトル文字が出て、
ナビィがゴーカイジャーの6つのレンジャーキーを置きながら
「みんな〜!まったねぇ〜!」と観客に挨拶をして飛び去っていき、
6つのレンジャーキーは6人のゴーカイジャーに姿を変えて「はあっ!!」と元気よくジャンプして、
この映画、「海賊戦隊ゴーカイジャー THE MOVIE 空飛ぶ幽霊船」は終わりとなりました。

さて、こうしてこの映画の内容をまとめてみると、
スーパー戦隊シリーズの劇場版としては極めて異色の作品であることが分かります。
それは、この「空飛ぶ幽霊船」という作品には、「正義のための戦い」や
「地球や世界や人々を守るための戦い」という要素が一切無いという点です。

ゴーカイジャー以前のスーパー戦隊シリーズの劇場版、
いや劇場版に限らず、TV本編も含めたあらゆるエピソードにおいて、
これらの要素が含まれなかったエピソードは一切無かったと言っていいでしょう。
何故これまでは、これらの要素の含まれなかった作品が無かったのかというと、
ゴーカイジャー以前の34戦隊は全て、正義の戦隊であったり、世界を守るための戦隊であったので、
それらの戦隊を主役にして物語を動かす以上、
どうしても正義のための戦いや世界を守るための戦いが描かれることになったからです。

それらの中で唯一、ボウケンジャーだけがやや微妙な立ち位置でしたが、
ボウケンジャーにおいてもメンバー個々の動機はどうあれ、
ボウケンジャーという組織の目的は表向き世界の平和と安定を維持するための宝探しであったので、
やはり大筋では世界の平和を守る戦いを描くものとなっていました。

ところがゴーカイジャーという戦隊は世界平和とか関係無く自分が手に入れたいからお宝探しをする戦隊なので、
ゴーカイジャーにおいては正義や世界平和は関係無く純粋なお宝探しの冒険物語を作ることが可能となるのです。
これがゴーカイジャーの夏映画である「空飛ぶ幽霊船」がここまで作られた歴代戦隊エピソードの中で唯一、
正義も世界平和も関係無いエピソードとして成立し得ている理由といえます。

ただ、それは「成立し得ている理由」であって、そんな特殊なエピソードが作られた理由そのものではない。
確かにゴーカイジャーを主役にすれば、正義も世界平和も関係無いエピソードを成立させることは可能です。
しかし、ゴーカイジャーの普段のTV本編では、そのエピソードの大部分は
「正義のための戦い」「地球を守るための戦い」になっています。
本来は地球を守る義理の無いお尋ね者の宇宙海賊であるゴーカイジャーが地球を守るために戦う羽目になるというのが
「ゴーカイジャー」という物語の面白味であり、
それゆえ基本的に「ゴーカイジャー」の物語は、やはり過去の戦隊と同じく
「地球を守るための戦い」を描くものとなっています。

そんな中、あえて正義や世界平和という要素を排除してゴーカイジャーの「海賊としてのお宝探し」のみを描いたのが、
この「空飛ぶ幽霊船」のコンセプトとなっています。
しかし、何故「あえて」そんなエピソードを夏映画で描いたのか?
劇場版だから普段のTV本編とは毛色の違った特別感のあるエピソードにしたかったというのも1つの動機でしょう。
しかし普段のTV本編とは違った感じにしようというだけなら他にも選択肢はあったと思います。
それに、普段と違った感じのエピソード、例えば宝探しがメインのエピソードであったとしても、
その中に「正義」や「世界平和」の要素が多少含まれていても問題は無いはずです。

ところが、このゴーカイジャーの夏映画は、あえて海賊の宝探しエピソードとされ、
正義や世界平和の要素を一切排除した形で作られました。
それはどうしてなのか?

実は「ゴーカイジャー」TV本編でもここまで極端なエピソードはこの映画公開時の第23話終了時点まで、
ただ1つの例外以外には存在していません。
その例外エピソード以外は、必ずストーリー内の何処かに「正義」や「世界平和」の要素が存在しています。
では第23話までのTV本編内で唯一、正義も世界平和も一切関係無く
海賊の宝探しだけが描かれたエピソードはどれかというと、それは第15話と第16話の前後篇、
すなわち、バスコが初登場してマーベラス一味とレンジャーキー争奪戦を繰り広げたエピソードです。

他にもバスコが登場するエピソードは第20話や第23話がありますが、
これらはレジェンド回でもあるので地球を守ることがテーマに含まれています。
言い換えると、純粋にマーベラス一味とバスコだけが対決するエピソードは第15話と第16話だけであり、
これだけが第23話以前の「ゴーカイジャー」TV本編で唯一、「正義」も「世界平和」も関係無い
海賊のお宝争奪戦エピソードなのだといえます。

この第15話と第16話の前後篇と、この「空飛ぶ幽霊船」、この2つのエピソードだけが、
「ゴーカイジャー」の前半の物語の中で少数派、つまり特殊な位置づけのエピソードなのだといえます。
この2つのエピソードに共通しているのは「海賊のお宝争奪戦」を描いたエピソードであり、
「正義」や「世界平和」の要素は排除されていることです。

では第15話と第16話の前後篇では具体的に何が描かれたのか?
それは、仲間を取り戻すために夢を捨てることをバスコに要求されたマーベラスが、
仲間も夢も諦めずに掴み取るのが海賊だという心意気を示したエピソードでした。
そして今回の「空飛ぶ幽霊船」は、マーベラス達が仲間で一緒に掴み取る夢こそが
海賊の目指すべき真の夢だと悟るエピソードでした。
結局、この物語前半の2つの特殊エピソードは両方とも「夢と仲間の関係」について描いたものといえます。

つまり、「ゴーカイジャー」という物語において「夢と仲間の関係」というのは
最重要テーマであるということになります。
そして、この「夢と仲間の関係」について描いた2つのエピソードは両方とも、
あえて「正義」や「地球を守ること」などの要素は徹底排除されています。

「地球を守ること」と「夢と仲間の関係」を一緒に描くことは決して不可能ではありません。
だから、「ゴーカイジャー」の物語においては、
あえてこの2つのテーマを一緒に描かないように注意していると解釈すべきでしょう。
いや、正確に言えば、「ゴーカイジャー」の物語の現状においては、
あえてこの2つのテーマは分けて描くようにしていると言ったほうがいいでしょう。

それは言い換えると、いずれは「ゴーカイジャー」の物語において、
この2つのテーマは1つに合わせて描かれる時が来るということです。
現在、それがあえて分けて描かれているということは、
その時というのはおそらくこの物語のクライマックスの時なのでしょう。

それまではあえて「地球を守ること」と「夢を仲間の関係」は別々に描かれる。
それはつまり、「地球を守るということ」と「夢と仲間の関係」という2つのテーマが、
この「ゴーカイジャー」という物語の2大テーマなのだということです。

そして、「ゴーカイジャー」という物語の構造として、この2大テーマと2つの劇場版が対応しているのです。
すなわち、第一のテーマである「地球を守るということ」というテーマを描いた劇場版が
6月に公開された「199ヒーロー大決戦」映画であり、
第二のテーマである「夢と仲間の関係」というテーマを描いた劇場版が、
この8月公開の夏映画「空飛ぶ幽霊船」だったのです。

この「ゴーカイジャー」の2つの劇場版は、
「ゴーカイジャー」という物語の2つの主要なテーマをそれぞれ描いており、
おそらくこの2つのテーマが絡まり合って「ゴーカイジャー」の物語の結末に
大きな影響を及ぼすことになると予想されます。
だから、この2つの劇場版で何がテーマとして描かれたのかを読み解くことによって、
「ゴーカイジャー」の物語の結末を読み解くヒントになるといえます。

まず「199ヒーロー大決戦」においては、地球を守って戦うということはどういうことなのかが徹底的に描かれ、
テーマ的な結論として「スーパー戦隊の戦いを通して勇気と強さと正義の心を学んだ
地球の人々のパワーこそが地球を守る戦いの最大の切り札となる」ということが示されました。
それに対して、今回の「空飛ぶ幽霊船」では、「夢と仲間の関係」が描かれ、
テーマ的な結論としては「仲間と一緒に掴む夢にこそ最も大きな価値がある」ということが示されました。

この2つの大テーマが「ゴーカイジャー」の物語の終盤にどのように絡み合っていくのか、
この物語の折り返し近くの8月時点ではハッキリしたことは分かりません。
ただ、その物語終盤で必ず物語のカギを握る最重要アイテムとして
登場することが予想されるのが「宇宙最大のお宝」ですが、
この「空飛ぶ幽霊船」では、その「宇宙最大のお宝」の正体に関するヒントが示されているように思えます。

今回の映画のラストシーンでナビィが観客に向かって語りかける、
この映画のテーマといえる最重要なセリフにおいて、
「1人より2人がいいさ、2人より5人がいいさ、夢でかくなる」と言っています。
1人で掴む夢よりも仲間で掴む夢の方が大きな価値があるという意味のことを言っているのですが、
ここでは、その仲間の人数が多くなるほどに「夢でかくなる」という意味が語られており、
つまり仲間の人数が最大限になれば、夢も最大になるということです。
つまりマーベラス達がもっともっと多くの仲間と共に夢を掴んだ時、その夢の価値は最大となる。
それはすなわち「宇宙最大の夢」であり「宇宙最大のお宝」なのではないでしょうか。

そしてもう1つ、そもそもこの映画において登場した「ゴッドアイ」とは何だったのか、
考察しておいた方がいいでしょう。

先に辿って行ったストーリーに沿った考察の中で得た結論としては、
ゴッドアイとは、古の大海賊が作った魔力を持った宝玉であり、
利己的な夢を願う者の命を奪い幽霊として宝玉の番人として使役するが、
仲間と共に夢を掴むことに価値を見出す者の仲間を守ろうとする願いだけは叶えて、
そのたった一度の願いを叶えると石ころに変わってしまうものでした。

問題は古の大海賊はどうしてそんな代物を作ったのかです。
利己的な夢を持つ者を次々と殺していくことのみを目的としたわけではないでしょう。
もしそうなら仲間を想う願いを叶える機能など付ける必要は無いからです。
おそらく真の目的はこのゴッドアイで願いを叶える者と出会うことであったのでしょう。
すなわち、自分の欲望のためではなく仲間と共に掴む夢に価値を見出す者を見つけるために
ゴッドアイは作られたのだと思われます。

何故そういう者を見つけるためにゴッドアイを作る必要があったのかと考えると、
それはつまり、ゴッドアイのような特殊なアイテムを使わなければ見つけ出せないぐらいに、
そういう者は希少であったからです。
しかし「仲間と共に掴む夢に価値を見出す者」は決してこの世界に多数派ではないでしょうが、
それなりの数は存在するはずです。
わざわざこんな危険な宝玉を作り出してまでして探すようなものではないと思えます。
ということは、ゴッドアイを作った者が探し求めていた「仲間と共に掴む夢に価値を見出す者」は
一般的な意味での「仲間と共に掴む夢に価値を見出す者」ではない。

考えてみれば、マーベラス一味の手に入れようとしている「宇宙最大のお宝」もまた、「仲間と共に掴む夢」です。
しかし、もし今回の冒険の中でマーベラス達が誰ひとりイメージ空間に落とされることもなく
順調にゴッドアイを手に入れて「宇宙最大のお宝」を欲しいと願い事をしたとしたら、
その願いは叶えられたかというと、おそらくその願いは叶えられることはなく、
マーベラス達はロスダークと同じように命を奪われていたでしょう。

何故ならマーベラス達の求める「宇宙最大のお宝」は
確かにマーベラス一味という仲間内においては「仲間と共に掴む夢」ですが、
他人から見れば所詮はマーベラス一味という6人組の海賊たちの利己的な夢に過ぎないからです。
その程度の利己的な仲間内の夢を持っている者たちなど、宇宙にはいくらでもいます。
だからゴッドアイという宝玉の、たった1回しか叶えられることのない願い事の適用される対象にはなり得ないのです。

ならばゴッドアイがこの宇宙でたった1つだけ叶えることを許す願い事とはどういうものなのかというと、
それは「仲間と共に掴む夢」の究極形だといえます。
つまり、1人よりも2人、2人よりも5人、そして5人よりも100人、1000人と仲間の数を増やしていき、
遂には宇宙の全ての人を仲間にして掴む夢です。
ナビィが言ったように「仲間が増えれば夢は大きくなる」のですから、
宇宙の全ての人を仲間にすれば、その夢は宇宙最大になる。
すなわち「宇宙最大の夢」です。
ゴッドアイというのは宇宙の全ての人を仲間にして掴む、
宇宙で至高唯一の「宇宙最大の夢」を叶えることの出来る宝玉なのだといえます。

しかし、宇宙の全ての人を仲間にして掴む夢とはいったいどんなものなのか?
ハッキリ言って具体的イメージは全く浮かんできません。
宇宙の人々はそれぞれがバラバラな嗜好、目的、欲望を持っており、
その全員が心を合わせて1つの夢を目指すなどということが有り得るとは到底思えません。

もしそれが可能となるとすれば、それは究極の自己否定を前提にしなければならないでしょう。
宇宙における全ての人が自分の欲望を捨て、自分というものを犠牲にして他者を仲間として、
その仲間のために尽くすことを心がければ、「宇宙最大の夢」は叶えられるでしょう。

ただ、そんなことが実現するとは到底思えません。
全ての人が全ての他者のために自己犠牲に徹するなど、全く非現実的といえます。
しかし、だからこそ、それは「宇宙最大の夢」なのだといえます。
そして、このゴッドアイを作ったのは古の大海賊であり、
海賊とはとても大きな無茶な夢を追う者達です。

古の大海賊は、この宇宙で一番大きな、現実には到底有り得なさそうな夢を掴みたいと思ったのではないでしょうか。
ただ、その「宇宙最大の夢」の具体的な姿はその古の大海賊には皆目見当はつかなかった。
だから、彼自身は「宇宙最大の夢」を掴むことが出来る者ではなかった。
だが、彼は自分は掴めなくても、「宇宙最大の夢」がどういうものか知りたいと願った。
それが彼の夢だったといえます。
そのために彼は「宇宙最大の夢」を掴める者を探そうとした。
そして「宇宙最大の夢」を掴むことが出来る者がいるとするなら、
それは仲間のために究極の自己犠牲が出来る者でした。
そこで古の大海賊は、その「宇宙最大の夢」を掴む資質を持つ者を探し出し選別するアイテムとして
ゴッドアイを作ったのです。

まずその資質の第一条件は「夢を信じて掴もうとすることの出来る者」であることです。
そこで古の大海賊はゴッドアイがどんな夢でもたった1つだけ叶えることが出来る宝玉だという嘘を
真実であるかのように噂として流布させました。
ただ、大抵の者はそんな噂を信じたりはしない。
どんな夢でも叶う宝玉など、あまりに胡散臭い話だからです。
言い換えれば、そんな胡散臭い噂を信じて掴み取るためにやって来る者は、
夢を信じて掴む力を強く持つ者だけだということです。
よって、ゴッドアイを奪うためにやって来る時点で一次試験はクリアしているといえます。

ただ、「宇宙最大の夢」を掴む資質は単なる夢想家というだけでは不十分です。
「宇宙最大の夢」を掴むに足る、宇宙最強の力が無ければいけない。
そこで古の大海賊は、ゴッドアイを守護するシステムとして例の壁の巨大ドクロを作り、
ゴッドアイを目指して来た者達をイメージ空間に引きずり込み、
その挑戦者たちにとっての最強の敵といえる亡霊たちと延々と戦わせる無間地獄に落とすようにしたのです。

普通に化け物やロボットなどを番人として置いても、様々なタイプの挑戦者たちの全てに対応できるわけではない。
だが、イメージ空間でその挑戦者たちに因縁のある敵や、その挑戦者の能力に合わせた敵などを、
死者の霊を呼び出して自由にチョイス出来るようにすれば、どんな挑戦者が来ても対応可能です。
宇宙のあらゆる人材を対象とした選別システムだからこそ、
そこで挑戦者に与える試練としては、こうした幽霊を使ったイメージ空間でのバトル方式が
最も効率的だったといえます。

このイメージ空間でのバトルをクリアしてゴッドアイを手に入れることが出来るだけの強さを持つ者は、
「宇宙最大の夢」を掴む者として相応しい強さを持った者として認められ、
「宇宙最大の夢」を掴む資質の二次試験をクリアしたといえます。
ただ、大抵の挑戦者は、この二次試験で脱落し、イメージ空間で命を落として、
イメージ空間内の敵幽霊キャラの一部として再利用される運命となりました。

この二次試験を突破した挑戦者は歴代でもごく少数であり、
その中で最も最近の二次試験の合格者がロスダークだったのでしょう。
しかし、この二次試験合格者に仕掛けられる最後の罠が、
「ゴッドアイは自分を犠牲にして他者を救いたいという願いしか叶えず、
それ以外の願いを口にした者の命を奪ってゴッドアイの番人としてしまう」というものでした。
これは、古の大海賊が「宇宙最大の夢」を掴む最重要の資質として
「究極の自己犠牲と仲間への愛」を据えたからです。

つまり古の大海賊の考えた「宇宙最大の夢」を掴み得る者の資質とは、
「夢を信じて掴もうとする純粋な心と、宇宙最強クラスの強さを持ち、
さらに自分を捨てて仲間を助けようという精神を宇宙規模にまで拡大し得る強大さで有する者」ということになります。
特に大事なのはこの最終試験で試される資質であり、
その前段階に試される夢を信じる心や宇宙最強クラスの戦闘力などは必要最低限の条件に過ぎないといえます。

それらの厳しい試練を経て遂に手に入れたゴッドアイを使ってどんな夢でもたった1つだけ叶える権利を手中にした時、
人間は普通はまず間違いなく、自分の夢のことだけで頭がいっぱいになり、
仲間や他人のことなど忘れてしまうでしょう。
せっかく戦い抜いて夢を叶える権利を手にしたというのに、
自分を犠牲にして他人を助けたいなどという願い事をする者はまずいないでしょう。

しかし、そんな絶対に有り得ないようなことをする者だからこそ、
この宇宙で絶対に有り得ない究極の自己犠牲を為し得る資質を持つ者として認められるのであり、
「宇宙最大の夢」を掴める可能性を持つ唯一の者になり得るのです。
そんな絶対に有り得ない者を選別して見つけ出すために、
このゴッドアイの三段構えの試練のシステムは用意されたのだといえます。

それにしても、どうして古の大海賊は「宇宙最大の夢」などを求めたのか?
それは彼が海賊だからだという説明でも十分であるようにも思えますが、さらに一歩踏み込んで考えるならば、
その古の老海賊は海賊として夢を追いかける膨大な者達を見続けた生涯の中で、
「夢」というものの持つ危うさを知ったのではないかと思えます。

「夢」というものは生きるための素晴らしい原動力となる反面、利己的な欲望として暴走していくこともある。
その利己的な欲望はいずれ宇宙を危機に陥れるのではないかと危惧した老海賊は、
その宇宙の危機を止揚するために、自己の欲望よりも、
他の人々を仲間として共に掴もうとする夢を優先することこそが必要ではないかと思い、
利己的な夢や欲望の暴走による宇宙の巨大な危機が生じた時に、
それに対抗し得る巨大な自己犠牲の仲間愛に満ちた力を見出したいと思ったのでしょう。
その力こそが「宇宙最大の夢」といえます。

そこで老海賊は、自身の支配する大海賊団を解散し、
自身の旗艦としていた巨大海賊船にゴッドアイと巨大ドクロを設置し、
巨大ドクロで召喚した死者の霊たちと共にゴッドアイの番人となり、
「宇宙最大の夢」を掴み取る資質を持った者の来訪を待つ旅を続け、
来訪した挑戦者たちに試練を与えていったのです。

そして挑戦者たちの多くはイメージ空間に落とされて幽霊に敗れて死んでいき、
僅かにイメージ空間を自力で脱してゴッドアイを掴んだ者も、
利己的な願いを叶えたために命を奪われてゴッドアイの番人幽霊として操られて、
更なる挑戦者となり得る強者を探して幽霊船に呼び込む作業に従事させられることになったのでした。
ゴッドアイの創造者である老海賊はそれらの日々の中でいつしか身は朽ちて
自身も幽霊となってこのゴッドアイに宿って幽霊船に留まり、
ゴッドアイで願いを叶える「宇宙最大の夢」を掴む資質を持つ者が現れるのを待ち続けていたのでしょう。

そうしてマーベラス一味が幽霊船にやって来て、
マーベラスはゴッドアイで何でも好きな願い事をする権利を手にしながら、
イメージ空間に落とされた仲間たちと共に夢を掴むために、
自分の命が奪われる可能性があることを知りつつ、あえてゴッドアイに仲間を元に戻すよう願い、
その結果、遂にゴッドアイで願いを叶えることに成功しました。
そして老海賊の霊はマーベラスこそが「宇宙最大の夢」を掴む資質を持つ者だと認めて、
満足してゴッドアイと共に昇天していったのです。

確かにマーベラスは、あの状況で利己的な夢を叶えることよりも自分を犠牲にしても仲間を救うことを優先し、
しかもそれは仲間と共に夢を掴むためであったわけですから、
まさに「宇宙最大の夢」を掴む資質を有した男なのでしょう。

しかしマーベラス自身は、あの判断は仲間をイメージ空間に落とされた極限状況だから選んだ道なのであって、
決して利己的な夢よりも自己犠牲的な夢の方が価値があるという固定観念を持つまでには至っていません。
つまり、今回のような極限状況で正しい判断が咄嗟に出来たという意味では
確かにマーベラスには「宇宙最大の夢」を掴む資質はあるのだが、
その自身の資質についてはまだマーベラスは無自覚であり、
「宇宙最大の夢」を掴むために最重要なポイントが「仲間と共に掴む夢のための自己犠牲精神」であることにも
まだ気付いてはいません。

というより、そもそも古の宇宙海賊がゴッドアイを通して
「宇宙最大の夢」を掴む資質を持つ者の選別を行っていたということ自体、マーベラスは知りませんから、
「宇宙最大の夢」なんて代物自体、知りません。

だが、そもそもマーベラス達の探している「宇宙最大のお宝」というものもまた、
古の宇宙海賊が流布した伝説の産物なのです。
それは結局はゴッドアイを作った古の宇宙海賊の目指した「宇宙最大の夢」と同じものなのではないでしょうか。

そうなると、マーベラス達が手に入れようとしている「ゴーカイジャー」の物語上の最重要アイテムである
「宇宙最大のお宝」を掴み取るために最重要なポイントとなるのも
「仲間と共に掴む夢のための自己犠牲精神」なのではないでしょうか。

そして、そのことをマーベラス達はまだ知らない。
この「物語上の重要ポイントでありながら主人公のマーベラス達が認識していないこと」というパターンは
「199ヒーロー大決戦」映画における
「スーパー戦隊から勇気や正義の心を学んだ地球の人々の持つ力が地球を守る大きな力となる」という
重要ポイントの時と同じパターンです。

この春映画のパターンに照応するように、今回の夏映画「空飛ぶ幽霊船」では、
「仲間と共に掴む夢のための自己犠牲精神が宇宙最大のお宝を掴み取る決め手となる」という重要ポイントが示され、
この春と夏の映画で示された2つの重要ポイントが共に主人公のマーベラス達には未だ認識されていないということは、
この2つのポイントは「ゴーカイジャー」という物語全体を貫く2大テーマなのであって、
この2つのテーマが物語終盤に絡まり合って1つに合わさっていくことを
暗示しているのではないかと推測できるのです。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 12:22 | Comment(0) | 海賊戦隊ゴーカイジャーTHE MOVIE空飛ぶ幽霊船 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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