2012年05月31日

海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE 感想その1

この「海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバン THE MOVIE」という映画は
2012年1月21日から劇場公開された映画で、
2011年6月公開の「199ヒーロー大決戦」、2011年8月公開の「空飛ぶ幽霊船」に続く、
「海賊戦隊ゴーカイジャー」の映画化企画の第3弾となります。
そして同時に、「スーパー戦隊35作記念・メタルヒーローシリーズ30周年記念作品」という冠がつけられている、
一種の記念映画、アニバーサリー映画という位置づけになっています。

まぁ「ゴーカイジャー」という作品自体がスーパー戦隊シリーズ35作記念作品であり、
「199ヒーロー大決戦」もスーパー戦隊シリーズ35作記念映画だったので、
「ゴーカイジャー」絡みはなんでも35作記念という冠はつけることは出来るような感じですが、
この映画の場合はそれだけではなく、メタルヒーローシリーズとのダブル記念作という扱いです。

メタルヒーローシリーズというのは、1982年から1999年にかけてテレビ朝日系で放映されていた
東映制作の特撮アクションヒーロードラマシリーズです。
その最初期の3作品が「宇宙刑事ギャバン」「宇宙刑事シャリバン」「宇宙刑事シャイダー」という、
銀河連邦警察に勤務する宇宙刑事の活躍を描くという同一の世界観が連続した三部作で、
これは「宇宙刑事シリーズ」といわれます。

東映では1971年にテレビ朝日系で放映を開始して大ブームを起こした
石ノ森章太郎原作の「仮面ライダーシリーズ」が人気が下降して1975年にTBS系に移った後、一旦シリーズを終了させ、
代わって1975年に東映が大ヒットさせたのがライダーがTBS系に移った後の枠で放映したテレビ朝日系の、
同じく石ノ森原作の「ゴレンジャー」でした。

こうして戦隊ドラマの流れが誕生したのですが、
スーパーロボットアニメのブームに押されて後番組の同じ石ノ森原作の「ジャッカー電撃隊」が失敗して
1977年でこのテレビ朝日系の戦隊ドラマの流れも一旦途絶えます。
それが1979年にスーパーロボット的な要素を加えて復活してテレビ朝日系で
東映オリジナル制作の「バトルフィーバーJ」が放映され、
ここからスーパー戦隊シリーズが現在までずっと続いており、
現在は石ノ森原作の「ゴレンジャー」と「ジャッカー電撃隊」もシリーズに含まれるものと定義されています。

この「バトルフィーバーJ」と同じ1979年に石ノ森原作の仮面ライダーシリーズもTBS系で一旦復活しましたが、
1981年に再びシリーズは一旦終了となりました。
この1981年はスーパー戦隊シリーズの方では実質同枠での3作目の「サンバルカン」が放映していた年であり、
ようやくこの年あたりから「スーパー戦隊シリーズ」という呼称が散見されるようになった頃です。

そこで東映では軌道に乗ってきたばかりのスーパー戦隊シリーズと両輪となって特撮ヒーローブームを牽引するような、
仮面ライダーに代わる新しい特撮ヒーロー像を模索し、
1982年にハイレベルなアクションと斬新な宇宙規模のSF設定、男臭い大人のヒーロードラマを売りにして
テレビ朝日系で東映オリジナル制作の「宇宙刑事ギャバン」を放映、大人気を博して、
その後、同一世界観でギャバンの後輩宇宙刑事が活躍する
「宇宙刑事シャリバン」「宇宙刑事シャイダー」が同枠で放映され「宇宙刑事シリーズ」と呼称されました。

この宇宙刑事シリーズは1985年に三部作で完結しましたが、
同じ枠で宇宙刑事と同じメタリックボディを特徴としたSF特撮ヒーローのドラマを東映が制作を続行し、
これが作品途中で放送枠の変更を繰り返しつつ、同一シリーズの体裁を保ち続けたので、
いつしか初期の宇宙刑事シリーズも包含して「メタルヒーローシリーズ」と総称されていくようになりました。
まぁその後は必ずしもメタリックなヒーローばかりでもなかったのですが、
放送枠は細かな変遷を経て1989年にはテレビ朝日系の日曜朝8時から8時半の枠が固定し、
以後1999年まで10年間、日曜朝の特撮ヒーロー番組という市場を開拓した重要なシリーズとなりました。

つまり、メタルヒーローシリーズは1982年から1999年までの17年間、
スーパー戦隊シリーズと共に東映制作・テレビ朝日系放映の子供向け特撮ヒーロードラマの二本柱として
存在していたといえます。
そして1997年にはスーパー戦隊シリーズの「メガレンジャー」もテレビ朝日系の日曜朝7時半から8時の放送枠に
移動してきて、日曜朝7時半から戦隊、8時からメタルヒーローというラインナップが形成されました。

これにあたって相互の明確な差別化を図るために、
メタルヒーローシリーズの方は往年のフジテレビ系の「不思議コメディーシリーズ」風味の
コミカルなロボットの活躍するご近所コメデイーとなり、従来の戦うヒーロー路線ではなくなり、
1998年の石ノ森章太郎氏の死去を受けて、この枠で1999年に石ノ森原作の「がんばれ!ロボコン」のリメイク
「燃えろ!ロボコン」が放映されることになって、
東映オリジナル制作のメタルヒーローシリーズという括りのシリーズはここで終了することになったのでした。

そして、この「燃えろ!ロボコン」の後でこの日曜朝8時枠で2000年に放映されたのが
同じ石ノ森原作の仮面ライダーの新作品「仮面ライダークウガ」であり、
ここからテレビ朝日系の日曜朝8時の平成仮面ライダーシリーズが始まり、
7時半からのスーパー戦隊シリーズと合わせて日曜朝の「スーパーヒーロータイム」を形成し、
今や東映制作の特撮ヒーロードラマの新たな二本柱となって、
「ゴーカイジャー」放映の2011年ではや12年目となります。

しかしメタルヒーローシリーズはそれよりも長い17年もの間、
スーパー戦隊シリーズと共に東映の特撮ヒーロー路線を支え続けていたのであり、
スーパー戦隊シリーズに先駆けて日曜朝の特撮ヒーロー枠を開拓し、
その枠は平成仮面ライダーシリーズに受け継がれて継続中であるということも考え合わせると、
その重要性は実はかなりのものといえます。

今の視聴者である子供たちにはあまりピンとこないかもしれないが、東映的には重要なシリーズであり、
そのメタルヒーローシリーズが始まったのが1982年で、
この映画の公開時の2012年はその30周年ということになりますから、
メタルヒーローシリーズ30周年記念作品として、この2012年にメタルヒーローシリーズ第1作である
「宇宙刑事ギャバン」にスポットを当てた企画が持ち上がってくる気運はもともとあったといえます。
実際、ゴーカイジャーとのコラボ云々は抜きにして、
メタルヒーローシリーズ30周年企画でこの2012年に何かをやろうという動きはあったようです。

しかしどうして「30周年」なのか?
それは、以前に「199ヒーロー大決戦」映画の中の真っ白な空間における
レジェンドゲストの選定基準について考察した際に書いたように、
現在の特撮ヒーロー番組を視聴するような年代の子供たちの親の世代が、
自身が子供の頃に見ていた特撮ヒーロー番組というのが、
だいたい20年前から30年前の範囲の作品であることと関係があるのでしょう。

その20年前から30年前の、かつての子供たちは
その後、成長するにつれて変身ヒーローなどには興味を失い、普通に学生生活、社会人生活を送り、
結婚して子供が生まれ、その子供がかつての自分のようにテレビの特撮変身ヒーローなどに興味を持つようになり、
一緒にテレビを見る習慣が付き、それによって最近、彼らはかつて自分にも
自分の子供たちのように夢中になっていた特撮ヒーローがあったことを思い出すようになり、
懐かしく感じるようになってきた。

そういう現在のお父さん世代が懐かしく思い出すようになったヒーローというのが、
だいたい20年前から30年前あたりのヒーロー達であり、
それゆえ「199ヒーロー大決戦」の真っ白なレンジャーキー空間の場面に現れて
マーベラス達に声をかけたレジェンド戦士は、初代ゴレンジャーと二代目ジャッカー電撃隊は別格として、
あとはゴーグルファイブ、ダイナマン、バイオマン、ターボレンジャーという、
この20年前から30年前の範囲内の戦隊のレジェンド戦士たちだったのであり、
それは子供を連れて映画館に足を運んできてくれたお父さん世代へのサービスであったと解釈しました。

言い換えれば、お父さん世代には、この年代のヒーローは映画限定ならば一定の需要はあると
見込んでいたということです。
そして、メタルヒーローシリーズも30周年なのですから、
その第1作である「宇宙刑事ギャバン」は先の白い空間レジェンド組の1つである
ゴーグルファイブと同年の30年前の作品であり、
1990年代初頭のレスキューポリス三部作あたりまでは、現在のお父さん世代にとって懐かしい作品といえます。

つまりメタルヒーローシリーズの全盛期というのは現在の子供との生活の影響で
かつてのヒーローを懐古的になりがちなお父さん世代には心惹かれるものはあり、
そのオマージュが一点に集中していくところがあるとすれば、
昭和スーパー戦隊においてはそれが原点にして最大のヒット作である「ゴレンジャー」であるのと同様、
やはりメタルヒーローシリーズにおいては、それは原点にして最大のヒット作である
「宇宙刑事ギャバン」ということになるでしょう。
だから、このメタルヒーローシリーズ30周年となる2012年に
「宇宙刑事ギャバン」に焦点を当てたアニバーサリー企画を実現しようという動きが以前からあったのです。

一方、「ゴーカイジャー」に関して言うと、
TV本編の最終盤に劇場公開されることになる、
1月の「スーパー戦隊祭」の劇場公開枠をどうするのかという問題を抱えていました。

1996年に「オーレンジャーVSカクレンジャー」を作って以来、
毎年3月にリリースするオリジナルビデオとして恒例化していた「スーパー戦隊VSシリーズ」を
2009年に「ゴーオンジャーVSゲキレンジャー」を1月に先行して劇場公開して好評を得たことをきっかけに、
翌2010年から最初から1月の劇場公開を前提にフォーマットを整えて
単独上映のおよそ60分映画を上映する「スーパー戦隊祭」という上映枠でシリーズ化が志向されて、
第2弾として「シンケンジャーVSゴーオンジャー」が作られ、
2011年1月には「ゴセイジャーVSシンケンジャー」も続けて作られました。

当然、2012年1月にもスーパー戦隊祭の第4弾として「ゴーカイジャーVSゴセイジャー」が作られるべきところです。
しかし、従来のスーパー戦隊VSシリーズのフォーマットに基づいた実質的な「ゴーカイジャーVSゴセイジャー」は、
春映画の「199ヒーロー大決戦」の中のゴーカイジャーとゴセイジャーの絡みの部分で既に描かれてしまいました。
どうしてそんな変則的な事態となったのかというと、それは「ゴーカイジャー」という作品の特殊性ゆえです。

「ゴーカイジャー」の物語世界には主人公戦隊のゴーカイジャー以外に他の歴代34戦隊も存在しており、
ゴーカイジャーは他の34戦隊から順々に出会っていき「大いなる力」を受け取っていきます。
つまり、「ゴーカイジャー」の物語は、レジェンド戦隊絡みにおいては
「大いなる力」を集めていく物語だと言って過言ではないでしょう。
そうなると、ゴーカイジャーと他の戦隊との出会いに際しては、
「大いなる力」の譲渡問題は避けて通ることが出来ません。

しかし、このスーパー戦隊祭の上映枠の公開日である1月下旬というのは、
「ゴーカイジャー」の物語の本筋であるTV本編は最終盤を迎えている時期であり、
このタイミングで例年の「VSシリーズ」のノリでゴセイジャーとの出会い、
あるいは5年おきの「VSスーパー戦隊シリーズ」のノリで複数戦隊との出会いを描いてしまうと、
こんな物語最終盤でゴセイジャーあるいは複数戦隊との「大いなる力」譲渡問題も描かねばならないことになります。

だが、この1月下旬という物語最終盤の時期というと、既に「大いなる力」は全部集めていなければマズい頃であり、
もしこのタイミングで譲渡される「大いなる力」があるとすれば、
それは最後に登場する「大いなる力」あたりであるはずです。
それは本筋の物語において極めて重要な場面となりますから、当然TV本編のエピソードとして描かなければいけません。

つまり、「ゴーカイジャー」の物語世界においては、
この1月下旬の物語終盤のタイミングで「大いなる力」譲渡絡みとならざるを得ない他戦隊との絡みのエピソードは、
それが「VSゴセイジャー」であれ「VSスーパー戦隊」であれ、劇場版という形で挿入するのは難しいのです。
それをやりやすくする唯一の方法は時系列をズラすことです。

そもそも「VSシリーズ」がオリジナルビデオで3月リリースしていた頃は、
TV本編も終了した後のリリースですから、TV本編との時系列など考慮する必要も無く、
単なる前年戦隊とのコラボ企画の番外編として作っていました。
それで何となく、追加戦士や追加武装、追加合体ロボなども出揃って、
クライマックスに続く物語がまだ始まっていないタイミングあたりの設定で描いていたので、
だいたい秋頃、第35話あたりの頃の出来事としてエピソードが作られていました。
撮影もこのあたり、10月下旬ぐらいの時期に行われるのでちょうどよく、
「VSシリーズ」は伝統的に第35話付近に挿入される番外編というコンセプトで作られていました。

劇場版「スーパー戦隊祭」として1月に先行上映されるようになっても、そうした伝統は引き継がれ、
2010年1月の「シンケンジャーVSゴーオンジャー」も
2009年11月初旬放映の「シンケンジャー」第三十六幕の後あたり、
2011年1月の「ゴセイジャーVSシンケンジャー」も
2010年9月下旬放映の「ゴセイジャー」epic32の後あたりに挿入されるものだと思われます。

つまり、「シンケンジャー」の場合も「ゴセイジャー」の場合も
TV本編最終盤の時期に劇場公開された前年戦隊とのコラボ映画の内容が、
時系列的には同時進行のTV本編よりも3〜4ヶ月分も遡っていたのです。
それでもあまり違和感は無かったので、
「ゴーカイジャー」でもその伝統に則って第35話付近に挿入されるエピソードとして
「VSゴセイジャー」や「VSスーパー戦隊」を作って、1月下旬に劇場公開してもいいようにも思えます。

しかし「ゴーカイジャー」の場合はその方法は使えません。
どうしてかというと、「シンケンジャー」や「ゴセイジャー」の場合は
他戦隊とのコラボをあくまで番外編として見ることが出来たから、
時系列が不自然でもそんなに違和感は覚えなかったのであり、
対して「ゴーカイジャー」の場合はTV本編で常に他戦隊とのコラボをやっているので、
「VSゴセイジャー」にしても「VSスーパー戦隊」にしても、TV本編と同じ物語に見えるのであり、番外編には見えない。
それでいて時系列が狂っていると、見ていて混乱してしまいます。

特に「ゴーカイジャー」の物語というのは、ことにレジェンド戦隊の絡む分には、
順々に「大いなる力」が集まっていく、極めて連続性の強い物語構成になっており、
ここにレジェンド戦隊や「大いなる力」に関連して時系列が混乱すると、物語の流れ全体が崩壊する恐れがあります。
だから「ゴーカイジャー」の物語においては、エピソード重視の作風からは意外でありますが、
実は時系列は極めて重視されています。

物語の連続性が極めて強いため、時系列は厳密に作られており、
それゆえ「ゴーカイジャー」の関連映画は春映画の「199ヒーロー大決戦」、夏映画の「空飛ぶ幽霊船」、
そしてこの冬映画も、全て厳密にTV本編の放映スケジュールに合わせた時系列の内容となっています。
そういうわけなのでこの映画も第47話放映日の前日に劇場公開されましたから、
第46話と第47話の間のエピソードとなっており、
まさに全51話の「ゴーカイジャー」の物語の最終盤に挿入されるエピソードとなっています。

つまり結論的には、この最終盤時期に劇場版で「VSゴセイジャー」も「VSスーパー戦隊」もやるわけにはいかないので、
それらの要素はまだ物語が序盤から中盤に差し掛かった頃の時系列にあたる
春映画の「199ヒーロー大決戦」に入れ込まれました。

そうなると問題はこの冬映画の方で、
例年この上映枠でやっている内容を春映画で早々にやってしまったので、
この冬映画でやることが無くなってしまいました。
スーパー戦隊の劇場版といえば夏の短編映画と冬のVS映画の二本立てというフォーマットが確立していましたから、
その二本柱を春映画と夏映画でやり切ってしまったわけで、冬映画でやることがない。

ならばいっそ作らないという手もありますが、
東映は本来は映画会社なのですから、良い映画を作ってお客さんに喜んでもらうのが本分です。
せっかく毎年人気を獲得して4年目となった「スーパー戦隊祭」の上映枠を使わないのは勿体ない。

ならばこの上映枠を使って「ゴーカイジャー」以外の映画をやればいいのではないかという考え方もあるが、
春映画も夏映画もヒットした「ゴーカイジャー」の映画をやれば間違いなく集客が見込めるのに、
あえて別の映画をやるというのは商売的に考えて、どう考えても間違っています。

そうなると、やはり2012年1月21日公開の「スーパー戦隊祭」の上映枠で
「ゴーカイジャー」の新作映画を制作することになりますが、
ならばいっそ、「VS」という冬映画の従来の形にとらわれず、
ゴーカイジャー単独のオリジナルストーリーの60分ものの映画を作ればいいという考えがまず当然浮かぶでしょう。
しかし、「スーパー戦隊祭」という上映枠のブランドは
「VS」、つまり別作品とのクロスオーバー企画を看板にして確立されてきたものであって、
そこはせっかくだから今後も強調していきたいという戦略が東映としてもあったのでしょう。

東映のスーパーヒーロータイム関連の劇場版体制としては、
春に「電王+ライダー」、8月に「戦隊&ライダー」、12月に「ライダー×ライダー」、1月に「戦隊VS戦隊」
というメリハリのきいた感じで年間通してのブランド化を図っているようですから、
そのプランの一角である1月の「VS」のコンセプトが曖昧になるのはあまり歓迎すべきことではありません。
1月映画はあくまで「VS」という看板は維持してほしいところでしょう。

そこでゴーカイジャーと何かをコラボさせないといけないが、
TV本編で「大いなる力」絡みで登場している34戦隊は全部使えませんから、
それ以外の何かメジャーな東映制作の特撮ヒーローということになります。
真っ先に思い浮かぶのは仮面ライダーですが、
ライダーは現役のフォーゼ、前作のオーズ、その前作のW、更には昭和7人ライダーまでも
1ヶ月前の2011年12月に公開の劇場版「MOVIE大戦」で登場していますから、
ここでゴーカイジャーとそれらのどれかをコラボさせてもプレミア感が全く無い。

しかもゴーカイジャーを含む戦隊とライダーのクロスオーバー企画としては、
全く別系統で大きな計画が既に開始されていましたので、
この2012年1月のスーパー戦隊祭でゴーカイジャーとライダーのクロスオーバー映画を作るというわけにはいきません。

そこで、この2012年にちょうど30周年を迎えるということで
何らかの記念企画を念頭に置いて動き出していたメタルヒーローシリーズの
「宇宙刑事ギャバン」に関するプロジェクトに白羽の矢が立ち、
ゴーカイジャーとギャバンのクロスオーバー企画で
「ゴーカイジャーVSギャバン」の劇場版を作ろうということになったようです。

「ギャバン」の方は30周年ということで何かやろうとは思っていたが、
さすがに劇場版映画は難しいという状況でした。
やはり子供人気が無ければ映画の採算は見込めませんが、
ギャバン単独やメタルヒーローの看板では現役世代の子供の集客は確実には見込めません。
しかし現役の人気戦隊のゴーカイジャーと一緒ならば
現役の子供世代の集客はかなり高確率で見込めますから興行として成立します。

一方ゴーカイジャーの方はギャバンと組むことによってスーパー戦隊祭の「VS」という看板を守ることが出来ます。
また、「ゴーカイジャー」という作品の劇場版映画は「199ヒーロー大決戦」にしても「空飛ぶ幽霊船」にしても、
子供たちの付き添いで劇場にやって来るお父さん世代の懐古的な嗜好を刺激する趣向が凝らしつつ
過去作にリスペクトを捧げるというのがコンセプトの1つであり、
30年前の作品である「宇宙刑事ギャバン」とのコラボというのは、
まさにその「ゴーカイジャー」劇場版としてのコンセプトに合致します。
例えばフォーゼやオーズとコラボするよりも、ギャバンとコラボする方が、
より「ゴーカイジャー」という作品らしいと言えます。

なお、「199ヒーロー大決戦」映画に際して、デンジブルー青梅大五郎役で大葉健二氏に出演していただいた時、
予想以上に大葉氏がアクションが出来たので、
同じ大葉氏のかつての最大の当たり役である宇宙刑事ギャバン一乗寺烈役で出演して
生身アクションまでこなすことが可能だろうと判断されてこの映画に繋がったという話もあります。
しかし、そんな程度の理由で映画の興行に踏み切るとも思えず、
これは実際はちょっとニュアンスが違うのではないかと思います。

何故なら「199ヒーロー大決戦」では青梅のアクションシーンなど無かったからです。
青梅のアクションシーンが無かったのに青梅役の大葉氏がアクションが出来たということを
スタッフが認識していたというのも妙な話で、
おそらく実際は大葉氏が56歳になった現在でもアクションが出来るということを確認した上で
青梅役を依頼したのでしょう。

つまり「199ヒーロー大決戦」ではもともとは青梅はもっと出番が多くアクションもする予定であり、
だからこそアクションの出来る大葉氏が演じる青梅というキャラが「199ヒーロー大決戦」映画に登場したのでしょう。
同様のコンセプトのキャラが「199ヒーロー大決戦」の中で青梅と共に登場したリュウレンジャー亮であり、
これも演じる和田圭市氏は43歳でありながらアクションの出来る役者でした。

つまり青梅も亮も、ついでにウメコも、もともとアクションさせることを前提に、
アクションの出来る役者の演じるキャラとして登場していたと思われるのです。
それはおそらく明石や早輝や千明や源太も同様なのであろうということは
「199ヒーロー大決戦」の感想のところで考察しました。
そして、「199ヒーロー大決戦」の内容が変更になって「VSゴセイジャー」の側面が強調されたため、
残念ながら青梅や亮などのアクションシーンは無くなったのでしょう。

それについては、まぁウメコ役の菊地さんや、明石役の高橋くん、早輝役の逢沢さん、
千明役の鈴木くん、源太役の相馬くんなどには、申し訳ないと言って軽く謝れば済む話でしょう。
しかし、青梅役の大葉氏や亮役の和田氏にはそういうわけにもいきません。
大葉氏と和田氏の場合、単に「年齢の割にはアクションが出来る役者」という軽い扱いではないのです。

2人ともある意味、アクション俳優の世界においては一種の権威のような存在で、
スーパー戦隊シリーズのスタッフからの尊敬を受けている立場です。
その御二人にアクションの仕事をお願いして「無くなったのですいません」で済ますわけにはいかないでしょう。
それはやはり埋め合わせをしなければいけません。

そういうわけで「ゴーカイジャー」TV本編の第33話のダイレンジャー篇に和田氏は亮役で再登場し、
見事な生身アクションを披露する機会を得たのだと思われます。
ならば同様に大葉氏もリベンジの機会を与えられなければならないわけで、
大葉氏ならばデンジブルー青梅大五郎役での再登場か、あるいはバトルケニア曙四郎役での登場ということになります。
おそらく当初はバトルフィーバー篇で曙四郎を登場させて生身アクションをさせる案が
有力だったのではないでしょうか。

しかし、「ゴーカイジャー」の冬映画で宇宙刑事ギャバンとのコラボという案が持ち上がってきたので、
ならばそこで大葉氏をギャバンの一乗寺烈役で登場させて生身アクションもやってもらおうということになり、
それに先立つ第44話のバトルフィーバー篇では曙四郎の出番は実質1シーンに抑えられたのでしょう。

とにかくこうして実現した「ゴーカイジャーVSギャバン」の企画ですが、
これは「スーパー戦隊祭」の「VSシリーズ」としてのブランドイメージの継続のために
「VS」という文字は入っていますが、実際のところは従来のスーパー戦隊の「VSシリーズ」とは全く別物の作品です。

従来の「VSシリーズ」というのは現役戦隊と前年戦隊が出会って、
最初はギクシャクしながらも打ち解けていき、世界を守るために力を合わせて共通の敵と戦うというお話であり、
かなり定型的な様式美の世界になっています。
それはスーパー戦隊というものが基本的に様式美を重んじる作品であり、
スーパー戦隊同士のコラボの場合、似たような様式美を持った2つの作品のコラボを成り立たせる過程で、
どうしてもその共通の様式美の中に物語が落とし込まれていく傾向があるからです。

例えば互いに5〜6人の戦隊でチーム内での役割分担がなんとなく出来ています。
どちらのチームにも赤がいて、青がいて、ヒロインがいて、追加戦士がいて、マスコットや後見キャラがいて、
というように互いに対照となるキャラがいるわけで、
その似た者同士、あるいは正反対の者同士などとチームの垣根を超えて組み合わせて
バラけさせてドラマを進行させていったり、
アクション場面でも同じ色のコンビで戦ったりするという趣向がよく見られます。

他にもチームの垣根を超えた合体技や武器交換など、「VSシリーズ」ならではの楽しみというものがあり、
これらは毎年繰り返されることが決してマンネリにはなりません。
何故なら毎年の戦隊の組み合わせが違い、毎年の戦隊がそもそも趣向が違うからです。
だから、この「VSシリーズ」特有の様式美は長い間、毎年継続されてきました。

「ゴーカイジャー」の作品世界において、そういう伝統的な様式美も含んだ
真の意味での「VSシリーズ」と言えるものは、
やはりあくまで春映画「199ヒーロー大決戦」におけるゴセイジャーとの絡みの部分でしょう。
春映画における前年戦隊ゴセイジャーとの絡みの部分には
上記したような「VSシリーズ」の様式美は全て描かれていたといえます。

一方、この冬映画の「ゴーカイジャーVSギャバン」においては
そうした従来の「VSシリーズ」の様式美は成立しようがありません。
コラボ相手のギャバンは戦隊ではなく、5人組でもなく、様々な色分けキャラの集団ではないのですから、
根本的に違うのです。

だから、「ゴーカイジャー」という作品における実質的な「VSシリーズ」は
あくまで春映画における「VSゴセイジャー」なのであって、
この冬映画は一応形だけは「VS」という文字は入っていますが、
いわゆる「VSシリーズ」とは全く別物の1つのオリジナルな内容の映画ということになります。

では、この冬映画はどのような内容となるのかというと、
ここで重要なポイントは、この映画が「ゴーカイジャー」という作品のTV本編と並行した劇場版であるということです。

「ゴーカイジャー」の劇場版の大きな特徴として先述した点は、時系列が極めて厳密でなければならないという点です。
つまり、この「ゴーカイジャーVSギャバン」は2012年1月21日に劇場公開されるということは、
第46話と第47話の間に挿入されるエピソードとなるということであり、
言い換えれば第47話から始まるクライマックス篇の直前のエピソードということになる。
ならば、物語の最終盤、クライマックス篇の直前に描かれるに相応しい内容のエピソードでないといけない
ということになります。

しかし、これというのは結構、劇場版の在り方としては難題ではないかと思います。
よく見られる一般ドラマの劇場版というやつは、
だいたいはTV本編が完結した後に、その続編として上映されます。
TV本編と同時進行して劇場版が上映されるということ自体が珍しい。

子供向けの作品の場合はTV本編の放映が継続している時に劇場版が上映されることは多いが、
「ドラえもん」や「ONE PIECE」などのような長期にわたってTV本編が続いている作品は
TV本編の内容が実質的にエンドレスであり、物語展開上でのクライマックスというものが存在していないので、
そのクライマックスの流れに劇場版の内容が縛られるということはなく、
常に自由な発想で番外編と割り切った劇場版オリジナルストーリーを構想出来ます。

その点、「ゴーカイジャー」劇場版に条件が近いものとしては、
同じように1年区切りで物語が完結していく仮面ライダーシリーズとプリキュアシリーズの劇場版があります。
ただ、スーパー戦隊シリーズも含めて、これらのシリーズも
TV本編のクライマックス時期に同時に劇場版を上映するという面倒なことは避けるのが基本で、
自由な発想で番外編的な劇場版を作ってきました。

ところが近年になってスーパー戦隊シリーズと仮面ライダーシリーズでは
それぞれ別々の理由でTV本編のクライマックス時期と劇場版公開時期が重なるという異常事態が生じてきたのです。
スーパー戦隊シリーズはVSシリーズの先行上映枠としてのスーパー戦隊祭が
2009年からTV本編終盤と重なる1月下旬に公開されるようになったからであり、
仮面ライダーシリーズの場合は同じ2009年からTV本編の物語が8月末で完結するように放送時期が変更され、
その結果、8月上旬公開の夏映画の公開時期がTV本編のクライマックス時期と重なるようになってしまったからです。

こうして生じた異常事態に対して、2009年以降のスーパー戦隊祭の方はあくまで時系列をズラして、
TV本編終盤と同じ1月に上映しておきながら、その映画の内容はその3〜4ヶ月前の出来事と設定して、
あくまで自由な発想の番外編として作りました。
そもそも従来の戦隊の場合、2つの戦隊が同時存在してコラボしている「スーパー戦隊祭」の作品世界そのものが
TV本編の作品世界とは重ならないパラレルワールドであるという前提で捉えるのが自然でした。

一方、2009年以降のライダー夏映画の方は
他のライダーとコラボするMOVIE大戦とは違ってあくまで単独主役作品であり、
時系列をズラすということはせず、
あくまで物語終盤の時期に上映される映画であるという意識で映画を作っています。

言うなればTV本編のクライマックス篇とは別の「もう1つの完結篇」という感じになっています。
もちろんあくまでTV本編が本筋ですから、夏映画で全ての決着がつくわけではないのですが、
そのライダーの作品としてのメインテーマをTV本編とは別の形で描ききっているといえます。

ディケイド劇場版に至ってはTV本編とはパラレルな完全に別の形の最終話としてディケイドの旅の終わりを描きました。
W劇場版はストーリー的にはあくまでTV本編のクライマックス篇の直前のエピソードとして描かれましたが、
映画の内容は「W」という作品のメインテーマを全て凝縮して決着させた
壮大な「別のクライマックス篇」となっていました。
オーズ劇場版はその両者の中間のような感じで、TV本編とは別のパラレルな番外編ではあるものの
物語を全て決着はさせておらず、それでいて「オーズ」という作品のメインテーマを
TV本編とは別の形で見事に着地させた或る種のクライマックス篇であったといえます。

TV本編のクライマックス時期に劇場公開され、TV本編の最終話を終えてもなお劇場で上映されることもある
2009年以降のライダー夏映画の場合、こうした「もう1つの完結篇」というコンセプトが
適切な方法論として選ばれたのでしょう。

一方、同条件のスーパー戦隊祭の場合は、「VSシリーズ」オリジナルビデオの時期からの伝統もあって、
あくまで時系列をズラすという方法論をとっていたわけですが、
この「ゴーカイジャー」という作品の劇場版は従来の戦隊とは違い時系列をズラすということが出来ず、
またパラレルワールドという設定も使いにくいので別の方法論が必要となります。

ライダーと同じように「もう1つの完結篇」というコンセプトで作るのも1つの正解です。
あくまで時系列の正確さにこだわり、パラレルワールドという概念も使わないのならば、
「もう1つの完結篇」でありながらもTV本編のクライマックス篇直前エピソードとしても成立していた
W劇場版が良いお手本となります。

しかし、「ゴーカイジャー」という作品ではこの冬映画において、
あくまで「もう1つの完結篇」という方式は採りませんでした。
「もう1つの完結篇」となると「ゴーカイジャー」という作品のメインテーマを深く描くということになりますが、
それは既に「ゴーカイジャー」の場合、春映画と夏映画でやってしまっていたからです。

春映画では「お宝目当ての宇宙海賊が地球を守るヒーローとなれるのか?」というテーマが描かれ、
夏映画では「1人で掴む夢と仲間と共に掴む夢のどちらに価値があるのか?」というテーマが描かれました。
そしてこの2つのテーマがTV本編のクライマックス篇で1つの大きなメインテーマに昇華するのだろうという
流れがしっかり出来上がっています。
それなのに、そのクライマックス直前の冬映画で
改めて春や夏にやったのと同じようなテーマの映画を作ってもマンネリな印象です。

だから「ゴーカイジャーVSギャバン」では、「ゴーカイジャー」という作品のメインテーマはあえて外して、
あくまでTV本編のクライマックス篇直前の独立した重要なエピソードとして成立する作品が志向されたといえます。
そういうわけで、この映画は「ゴーカイジャー」TV本編とはちょっと毛色の違う話になっています。

「ゴーカイジャー」TV本編とは簡単に言えば、「地球を守る戦い」と「お宝探し」の二本立ての物語です。
全てのTV本編のエピソードはこの2つのテーマのどちらかが描かれており、
ここまでに作られた春映画も夏映画もこの2つのテーマをそれぞれ分担して描いてきました。
ゴーカイジャーの戦う動機は、地球や人々を守るため、宝を手に入れるため、
あとは自分に降りかかってくる火の粉を払うため、だいたいこの3つです。

ところがこの冬映画では「地球を守る戦い」も「お宝探し」もほとんど描かれていません。
ゴーカイジャーの戦う動機は地球を守るためでもなく、宝を手に入れるためでもなく、自分の身を守るためでもなく、
ギャバンという1人の宇宙刑事を監獄から救い出すためなのです。
そのために危険な亜空間にある脱獄不可能といわれる監獄にゴーカイジャーが挑んでいくというのが
この映画のお話です。

「ゴーカイジャー」というのは海賊という悪漢を主人公にした一種のピカレスクヒーロー物語なので、
制作側としてもピカレスクヒーローものの定番ネタ「脱獄モノ」は何処かでやってみたかったようですが、
TV本編ではそういうエピソードを作る機会が無く、この冬映画で実現させたという側面はあるようです。

だが、「宇宙刑事ギャバン」とのクロスオーバーワールドにおいて
「捕われた囚人を救いだす」というシチュエーションの持つ意味合いは全く別の意味を持っています。
それは、「父と子のドラマ」です。

「宇宙刑事ギャバン」の物語というのはギャバンと犯罪組織マクーの怪人との戦いのエピソード集であると同時に、
マクーによって拉致されたギャバンの父をギャバンが探し出して救出するまでの
縦軸のドラマを描いた物語でもありました。
ギャバンの父のボイサーも宇宙刑事であり、刑事としての魂が父から息子に継承される物語であったのです。

その「ギャバン」と「ゴーカイジャー」のコラボ作品において、
今度はギャバンがマクーの後継者でもあるザンギャック怪人アシュラーダによって捕われの身となり、
かつてギャバンの父のボイサーが幽閉された魔空空間の監獄に収監されて、かつてのボイサーのように拷問を受け、
そのギャバンをマーベラスが救いだすわけですから、
ギャバンがかつてのボイサーの「父」の立場に立ち、マーベラスがかつてのギャバンの「息子」の立場に立った、
新たなる「父と子のドラマ」が描かれているといえます。

もちろんギャバンとマーベラスは実の親子ではなく、昔一度出会っただけの間柄でしかありません。
それでもこの映画におけるマーベラスは明らかにギャバンに「父親」的なものを見ており、
ギャバンも「息子」に接するようにマーベラスに接しています。
この映画内でのマーベラスの役回りが「ギャバン」本編のギャバンに相当し、
この映画内でのギャバンの役回りが「ギャバン」本編のボイサーに相当していること、
2人の間で「ギャバン」本編におけるボイサーとギャバン同様にヒーローの魂の継承が認められることなどからも
ギャバンとマーベラスはこの映画において擬似的な父と息子の関係にあるといえるでしょう。

そして同時にこの映画は「ギャバン」的なモチーフを散りばめて
「ギャバン」のテーマである「父と息子のドラマ」を想起させることによって、
この映画を観に来ている劇場内の父と息子たちにある種のメッセージを発しているともいえます。

劇場にこの映画を観に来ている子供たちにとっての憧れの対象は現役ヒーローであるマーベラスであり、
劇場に子供を連れてきている父親にとっての、かつての憧れのヒーローはギャバンでした。
しかし父親たちがギャバンに憧れていた頃は、まだギャバンは今のマーベラスぐらい若く、
父親たちはまだ今の自分の息子ぐらいの少年でした。

そのかつての少年たちが成長して、かつて自分の憧れのヒーローだったギャバンの年齢を超えて大人になり、
子供が出来て、その自分の子供と一緒に劇場に来てギャバンと再会したら、
ギャバンも年齢を重ねており、彼らかつての少年たちが大人になっても、
ギャバンはまだ彼らより年上の初老の大人として仰ぎ見る存在だった。
確かにもはや若々しさは無いし衰えも感じさせるが、それでもギャバンはまだ立派なヒーローでした。

そしてそのギャバンの擬似的な息子として描かれるマーベラスは、
かつて少年の頃にギャバンに出会い、大きな大人として仰ぎ見ていたが、
劇中の現在時間では成長して背の高さではギャバンを追い越し、
ギャバンと肩を並べて戦う現役バリバリの全盛期のヒーローとなっています。

マーベラスはギャバンに追いつき、追い越しつつあります。
一方ギャバンはマーベラスに追いつかれて、追い越されようとしている。
一見ギャバンが衰えて落ちぶれたようにも見えますが、そうではない。
息子は父親を追い越す時や父親を失う時にこそ人生の一番大事なことを知るのです。
そして父親は息子に追い越される時やその人生を終える時にこそ、息子にとって重大な価値をもった存在となる。

実の父親のいないマーベラスはギャバンに再会して
その自分の成長とギャバンの人生が交差する瞬間に立ち会ったことで、大事な何かを得たことになります。
ギャバンはその父親としての役割を立派に果たし、
成長したマーベラスにまだなおヒーローとしての規範をしっかりと示しました。

ギャバンはかつてギャバンに憧れた少年たちが成長して大人になった現在の若き父親たちにも
ギャバンとしてのヒーロー像を示したと同時に、
彼ら若き父親たちに自分の将来なるべき理想的な初老の父親像をも示したといえます。

現在マーベラスを憧れのヒーローとして仰ぎ見ている彼らの息子たちが成長して、
この映画のマーベラスぐらいの年齢になって父親と肩を並べて生きていくようになった頃、
現在の若き父親たちはこの映画のギャバンぐらいの白髪混じりの初老の父親となっているでしょう。
その時、息子たちはこの映画で見たマーベラスを思い出し、父親たちはこの映画で見たギャバンを思い出して、
息子が父親を超える時に息子がどうあるべきか、父親はどうあるべきか、参考とすることが出来れば幸いだという、
あえて「宇宙刑事ギャバン」をモチーフにして「父と息子のドラマ」を描いて発した制作側の
観客へのメッセージはそのあたりにあるような気がします。

では「父と息子のドラマ」によって制作側は何を描こうとしたのか?
そして、それが「ゴーカイジャー」という物語全体の中、
TV本編のクライマックス篇直前のタイミングで挿入するべきエピソードとしてどんな意義があると考えたのか?

地球を守る戦いも、お宝探しも描くこともなく、
擬似的な父と息子のドラマを描くことによってこの映画が示したものは
マーベラスの海賊としての「原点」でした。
つまり、制作側は、TV本編の最終盤、クライマックス篇直前のこのタイミングで、
TV本編ではこれまで長々と描かれることのなかった主人公の「原点」を描いたのです。

劇場版で「原点」を描くという発想はスーパーヒーロータイムで前例があります。
それもかなり近い前例です。
2009年の12月に劇場公開された「仮面ライダー×仮面ライダーMOVIE大戦2010」の中の一篇として上映された
「仮面ライダーWビギンズナイト」です。

「仮面ライダーW」という作品は2010年9月放送の第1話冒頭アバンで
主人公の左翔太郎とフィリップのWへの初変身と思われる断片的な場面を見せた後、
本編はいきなりその1年後、既に2人がWとして活動している状態で物語が動き出します。
ですから、主人公2人がWになった原点に何があったのか、視聴者にはずっと謎であったわけです。
そのWの原点となった1年前の事件の詳細が初めて描かれたのが、
TV本編開始から3ヶ月経った12月に公開された映画「ビギンズナイト」であったのです。

但し、この「ビギンズナイト」は、単に描かれていなかった「第0話」として
Wの原点を初めて描くことだけを目的とした映画ではありません。
あくまでTV本編の時系列に沿って、初変身をしたビギンズナイトの1年3ヶ月後の
2010年のクリスマスイブに起きた重大事件によって訪れる危機を乗り越えるために、
主人公2人がビギンズナイトに負ったトラウマを乗り越える必要があり、
そのために1年3ヶ月前のビギンズナイトが想起され、
主人公2人はWの原点を思い出し、自分達がWであることの真の意義を再確認してトラウマを乗り越え、
現在のクリスマスの事件を解決して前に進む。
そういう物語が描かれている映画なのです。

「ゴーカイジャーVSギャバン」において描かれる「原点」というのも、
この「ビギンズナイト」において描かれた「原点」と同じような扱いのものといえます。
少年の頃のギャバンとの出会いに起因するマーベラスの海賊としての「原点」そのものを描くのが目的なのではなく、
そうして自らの原点を再確認したことによって、マーベラス達が自分達の海賊であることの真の意義を確認して
現在の大きな危機を乗り越えて前に進んでいくことが描かれるべきでしょう。
ところが、この「ゴーカイジャーVSギャバン」という映画においては、
「ビギンズナイト」とは違って、その「現在の危機を乗り越えて前に進んでいく」という部分が描かれていません。

といっても、この映画が中途半端な内容であるというわけではなく、
ストーリーとしては、ギャバンによるマーベラス一味の逮捕から、急転直下、ギャバンによる宇宙警察の不正の告発、
マーベラス達の解放、そしてギャバンが魔空監獄に囚われて、
マーベラス達がギャバンを脱獄させるために魔空監獄に乗り込み、見事にギャバンを救出し脱獄に成功し、
ギャバンと共に獄長のアシュラーダ達を倒すという、脱獄モノの活劇としては見事に完結しています。

しかも子供向け映画としては比較的複雑なストーリー展開であり、
ここに更にバスコと新戦隊ゴーバスターズの戦い、青梅大五郎や曙四郎も登場してのそっくりさんコント、
魔空監獄に収監されたジェラシット他ユルい怪人たちのコントなどの小ネタが挿入され、
相変わらずの充実した劇場版豪華アクションの数々、
そしてマーベラスとギャバンの擬似親子的な濃厚なドラマなど、極めて充実した内容となっています。

これはハッキリ言って、この映画はかなり濃いです。
子供向け劇場版映画はある程度は薄味でなければいけないのですが、
この映画の場合ちょっとその限度を超えて濃いので、60分という尺の中では詰め込みすぎとなっており、
しかもマーベラスとギャバンのドラマは「ゴーカイジャー」関連の劇場版の中で最も深いドラマなので
子供には深いところまでは分かりづらく、結果としてこの映画は少し難しい映画となっており、
それらをこの尺に詰め込んで無理に子供向きに描いた部分では破綻している描写も幾つかありますが、
それでも最終盤に突入している「ゴーカイジャー」という物語とキャラの持つ勢いで押し切れているといえます。

この1年間無茶なことに挑戦し続けてきた「ゴーカイジャー」という物語は、
この終盤に至って一種「何でもアリ」の突破力を備えるようになっているのです。
そういうわけで、この「ゴーカイジャーVSギャバン」は充実したアクション活劇として成立はしています。
というか非常に面白く、ゴーカイジャーファンからもギャバンファンからも評判が良く、興行成績も良く、
見事な成功作です。
「ゴーカイジャー」の劇場版の中で随一の出来という声もよく聞きます。

まぁ「199ヒーロー大決戦」もレベルの高い作品でしたが、
あれはあくまで「スーパー戦隊映画」として素晴らしい出来だったのであり、
ゴーカイジャー単体の映画として素晴らしかったわけではありません。
「199ヒーロー大決戦」のゴーカイジャーの出ている部分も実質的には「ゴーカイジャーVSゴセイジャー」であり、
ゴーカイジャー単体の物語であったわけでもないので、
ゴーカイジャー映画として高い評価を出来るかどうかは微妙です。

また「空飛ぶ幽霊船」は純粋にゴーカイジャー単独映画として素晴らしい出来ではあったと思いますが、
いかんせん尺が30分と短く、かなり脳内補完しなければ極めて薄味の映画に見えてしまいますから、
あくまでスーパー戦隊の短編夏映画としては際立って良い出来だったという程度の評価となるでしょう。

その点、「ゴーカイジャーVSギャバン」は「VS」という文言は入っているものの、
実際はギャバンをモチーフとしたゴーカイジャー単体の物語として成立しており、
どちらかというと「VSシリーズ」よりはTV本編のレジェンド回に近い構成といえます。
つまり、ギャバンの物語が土台になってはいるものの、主役はあくまでゴーカイジャーなのです。
言わば、「ゴーカイジャー」の物語のテーマから最も縁の薄い作品でありながら、
「ゴーカイジャー」のTV本編の作り方に最も近い作り方をしている劇場版とも言えます。

それで60分の尺に盛りだくさんのエンターテイメントも盛り込んで、
ゴーカイジャーという物語の魅力で押し切ることに成功しているわけですから、
この映画が「ゴーカイジャー映画」の最高峰という評価は妥当といえるでしょう。

ただ、そうではありつつも、この映画は構成的に大きな欠落があるように思えます。
それは先述したとおり、マーベラス一味の原点を描きながら、
その原点がこの映画の中で伏線として回収されていない点です。

原点を描くのは、その原点を再確認したことによって自分達が何者であるのかを再確認し、
それを現状の危機を突破するきっかけとするためであるべきです。
そのように現在で役立ててこそ、過去における原点を回想するという行為が伏線として活きてくるのであり、
物語は綺麗に完結します。
仮面ライダーWの「ビギンズナイト」はそういう点で完璧な映画でした。
主人公2人がWの原点を再確認することによって現在のクリスマスの危機を突破することに繋がって
物語は見事に完結しています。

ところが「ゴーカイジャーVSギャバン」の全篇における戦いは、
むしろマーベラス達が自分達の原点を再確認するための戦いとして描かれており、
そうして再確認した原点が活用される戦いは描かれていません。
ならば別に原点を再確認する必要は無かったのであり、
原点など絡めずに普通の脱獄ストーリーとして描いてもよかったように思えます。
そういう点で「原点」をわざわざ持ち出した意味が不明で、少し中途半端にも見えて、
再確認した原点が放置されたままの未完の印象があります。

しかし、この「未完」であるというのが、この映画の真の狙いなのです。
「原点」という伏線はこの映画内で綺麗に回収される必要は無く、この映画は綺麗に完結する必要は無い。
「ビギンズナイト」はその映画内で「原点」を再確認したことで
現状の危機を突破するところまでしっかり描きましたが、
「ゴーカイジャーVSギャバン」では、そこまでしっかり描くことはあえて避けたのです。

何故なら、「原点」を再確認した後の現状の危機の突破は、この映画の続きの物語の中で描かれるからです。
そのために「ゴーカイジャーVSギャバン」という「ゴーカイジャーの原点を再確認する物語」は、
ゴーカイジャーの最大の危機が描かれることになるTV本編のクライマックス篇の直前の時系列に配置されたのです。

つまり、この「ゴーカイジャーVSギャバン」という映画で擬似的な「父と息子のドラマ」によって
マーベラス一味の「原点」を描き、
そうして再確認された「原点」によってマーベラス一味は海賊としての真の意義を知ることになり、
それがクライマックス篇における彼らの最大の危機を突破するきっかけとなるのです。
それこそがクライマックス篇の直前の時系列に、
この映画における「父と息子のドラマ」をわざわざ挿入する意義だったのです。

もちろん全てのTV本編視聴者がこの映画を劇場に観に行くわけではありませんから、
この映画を観なくてもTV本編のクライマックス篇は話の辻褄は合うようには作られているはずです。
そして、この映画もまたこの映画単体でももちろん完結していますが
実はTV本編のクライマックス篇を見ることによって真の意味で完結するようにも作られており、
TV本編のクライマックス篇も、この映画を観ることによって、より深い味わいあるものとなるはずです。

あとは問題は、どうして「父と息子のドラマ」を描くことによって「原点」を描くことが出来るのか、
またその「原点」はどういうものであるのかについてですが、
それはもうこの映画の物語の特殊状況の中の話ですから、
映画本編の内容を追いながら考察していった方がいいでしょう。
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 22:07 | Comment(0) | 海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月06日

海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE 感想その2

では映画本編ですが、まず冒頭は東映劇場版では定番の東映ロゴの後、
これも「ゴーカイジャー」ではお馴染みのスーパー戦隊シリーズ35作記念ロゴが出てきて、
その後に今回の映画で新たに作った、宇宙刑事ギャバンの30周年記念ロゴが出ます。

そしてドラマ本編が始まり、
いきなり夜の大都会上空を飛ぶゴーカイガレオンが謎の空飛ぶ巨大円盤に追いかけられて
レーザー砲で攻撃されているスリリングなスカイチェイスの場面から始まります。

マーベラス一味の面々はTV本編の第46話で
遂に34番目に表舞台に現れたスーパー戦隊の「大いなる力」であるカクレンジャーの「大いなる力」をゲットし、
これで残るは宿敵バスコの持つ5つの戦隊の「大いなる力」を奪い取れば
34の「大いなる力」が全て揃い、「宇宙最大のお宝」への道が開けるという、
1年前に地球にやって来てからのお宝探しの冒険の最終段階にこぎつけていました。

ところが、カクレンジャーの「大いなる力」を手に入れ、
これで後はバスコの行方を探すのみだとマーベラス達が一息ついたその時、
突然現れた正体不明の空飛ぶ円盤が夜空を航行するガレオンに近づいてきたかと思うと、いきなり砲撃してきたのです。

一応謎の円盤の接近に警戒して変身した姿で操縦室で操舵輪を握っていたマーベラスは、
泣く子も黙る(と本人は思っている)お尋ね者の宇宙海賊マーベラス一味に突然発砲してきた空飛ぶ円盤に驚き、
何発かの被弾にもたじろぐことなく「いきなり攻撃してくるとは・・・いい度胸じゃねぇか!!」とブチギレます。

一方、船室の方ではメインコンピュータで近づいてくる謎の円盤の形状を急いでデータと照会していた
ハカセとアイムが被弾の衝撃で大きく身体を揺さぶられ、
一緒にいたナビィも「わぁ〜!?なんだなんだぁ!?」と謎の円盤のレーザー砲がかなりの威力であることに驚きます。

操作盤に掴まって踏み止まったアイムは
「・・・ザンギャックではなさそうですね・・・こんな船、見たことありません!」と、
回線を通じて船内にいる他の仲間たちにデータ照会の結果を伝えました。
ガレオンに近づいてくる怪しい宇宙船ということで、当然、敵であるザンギャックの宇宙船であることを疑って、
ガレオンのメインコンピュータからザンギャックの船舶の全データと照合してみたのですが、
一致する船体はありませんでした。

このいきなり撃ってきた宇宙船は、大きな円盤型をしており、その大きさはガレオンよりも一回り大きいぐらいで、
メタリックな外壁が特徴で、船底には大きめの角ばった艦橋のような部位がくっついています。
ザンギャック艦にはこのような形状のものはありません。
もちろんバスコの乗艦であるフリージョーカーともこの円盤は全く違います。

被弾の衝撃で床にひっくり返っていたハカセが起き上がってきてアイムの横に立ち、
「通りすがりの賞金稼ぎかな・・・?」と船内の仲間たちに問いかけます。
マーベラス一味の高騰した賞金を狙ってやって来た未知の宇宙の賞金稼ぎである可能性を考慮したのでした。しかし、見張り台に立ってマーベラスに周囲の状況を伝える役目を担っていたジョーは
「今はそんなことどうでもいい!」と、後ろから迫って撃ってくる円盤の方を見て怒鳴ります。

戦いに際して相手が何者か判明するに越したことはないが、
曖昧な推測しか出来ないのならば、もはや戦いが始まった以上、あれこれ相手が何者か考えていても仕方ない。
とにかく相手の攻撃からガレオンを守らねばならない。
ジョーと一緒に見張り台に昇っていたルカは前方に視線を移すと、「前方に超高層ビルが!」とジョーに伝えました。
ハッと前を振り向いたジョーは、ルカの言うようにガレオンの針路の前方に超高層ビル群があるのを見て、
これはチャンスだと思い操縦室のマーベラスに向けて「反撃のチャンスだ!マーベラス!」と伝えました。

謎の円盤はまだ執拗に追撃してレーザー砲を撃ってきており、
ガレオンは敵の攻撃を避けながら逃げるのに精いっぱいでした。
全速で逃げているのですが、謎の円盤の速度は速くてガレオンは逃げ切ることが出来ず、
ひたすら撃たれ続けていたので、反撃する暇も無かったのです。
しかし超高層ビル群の中を縫って飛べば、ビルの陰に隠れて被弾を防ぐことが出来て、反撃に転じる余裕が生まれる。

マーベラスもジョーの進言を受けて、謎の円盤を超高層ビル群に誘い込んで反撃してやろうと考え、
「よぉし・・・砲撃戦用意!」と、船室のハカセとアイムに指示しました。
「了解!」と応じたハカセとアイムはメインコンピュータを操作し、
ガレオンの側面にあるキャノン砲の発射準備を素早く整えると
「左舷ガレオンキャノン!スタンバイ!」とマーベラスに返します。

マーベラスはそれを受け、全速で超高層ビル群に突っ込み、
追いかけてきた謎の円盤の右側のビル群の陰に潜り込むと速度を落とし、
円盤の右舷側をビルの陰に隠れて並走する形としました。
言い換えればガレオンは左舷側のビルの陰に円盤の姿を捕える状態となり、
発射準備の整った左舷のガレオンキャノンの射程内に円盤を捕えたことになります。

そのままゆっくりガレオンを進ませると、
円盤もビル群が邪魔でガレオンに狙いをつけられないのか砲撃が止まり、
ビルの陰からガレオンの姿が覗くと撃ってきますが、
マーベラスはガレオンのキャノン砲が円盤に有効なダメージを与えられるタイミングを計って、
敵の攻撃をやりすごして耐えます。
そして、ここだというタイミングを見計らったマーベラスは「撃てェェッ!!」と船室のハカセに向けて指示を出し、
ガレオンの左舷キャノンは一斉に火を噴きました。

そのままビル群を挟んで並走しながらガレオンと円盤は砲撃戦となりましたが、
ガレオンのキャノン砲が円盤を捉え、円盤は炎に包まれました。
円盤を撃墜したと思い、「やったぁ!」とハカセとアイムは歓喜し、
見張り台のジョーとルカは円盤を包んだ爆炎を見つめます。
ところが、その爆炎の中から、なんと巨大な龍のようなものが飛び出してきて、
真っ直ぐガレオンに突っ込んでくるのです。

ハカセとアイム、ジョーとルカも「あっ!?」と息を呑み、
操縦室のマーベラスも「なにぃ!?」と意外な展開に驚きます。
この不意打ちに対してマーベラス達はなす術もなく、
この龍は一気にガレオンに接近し、口から炎を吐き、逆にガレオンの方が炎に包まれてしまい、
マーベラス達は「わああっ!?」と大慌てとなりました。

ナビィは「初めての衝撃〜!!」と喚きながら右往左往し、
炎に包まれたガレオンがぐんぐん高度を下げているのを感じて「落ちる!落ちる〜!」と、
このままでは墜落して皆死んでしまうと焦って叫びます。
しかしマーベラスもなんとか落下していくガレオンを操って、
その墜落する向きをビル街に隣接する海の方向に向けました。
夜のビル街のネオンの輝く中、ぽっかりと空いた真っ黒な空間、そこが夜の海となります。
その真っ黒な海に向かって炎に包まれたガレオンは落ちて行き、着水しました。

そのガレオン墜落の様子を、その海辺のビル街で買い物袋を両手に持っていた鎧が唖然として見上げていました。
鎧だけはガレオンには乗っておらず、ちょうどこの街に買い物に来ていたようです。
上空が騒がしいので見上げると、なんと自分の住処であるガレオンが謎の円盤と砲撃戦を展開し、
その挙句、炎を噴いて落ちていったのですから、鎧は大変驚き、
両手に持っていた買い物袋を思わず落としてしまいました。
いったいどうしてそんな状況になっているのか、ガレオンを離れていた鎧には事情がさっぱり分かりませんでしたが、
とにかくガレオンにはマーベラスをはじめ仲間たちが乗っているのですから、これは一大事でした。

そのガレオンを撃破した上空の龍は咆哮を発するとその長い首と尾を折りたたみ、角ばった胴体部分に収納します。
どうやらこの龍は機械であるようです。
その首と尾を収納した胴体部はそのまま上昇し、高空から下降してきた円盤とドッキングしました。
円盤はガレオンのキャノン砲を受けて撃破されたわけではなく、高空に退避していたようです。
そして龍の胴体部は、円盤の下にくっついていた角ばった艦橋部であったのです。
円盤はキャノン砲を喰らった時、爆炎に紛れて下部の艦橋部を切り離して龍型に変形させてガレオンに向けて放ち、
円盤本体は高空に退避していたのです。
そうしてガレオンを撃破して墜落させた後、再び艦橋部と合体した円盤は、
そのままガレオンが落ちていった方向に飛んでいきます。
その姿を見送って、鎧はまだ事態がよく分からず、大慌てで「たった・・・大変だああああ!?」と叫ぶのでした。

さて、マーベラスがガレオンを海に着水させたのは
地面やビル街に激突することを避けてソフトランディングさせるためでもありましたが、
同時にガレオンを包んでいた炎を消すためでもありました。
その結果、着水時の猛烈な水しぶきをかぶってガレオンの火は消し止められましたが、
しばらくガレオンは動かせそうにありません。
その上空に先ほどの円盤がやって来て、海に浮かんだガレオンにサーチライトを浴びせてきます。
トドメを刺しに来たのかと思われました。

ところが円盤はガレオンを攻撃しようとはしません。
どうやら円盤の操縦者の目的はガレオンを破壊することではなく、
ガレオンを航行不能にして、中にいるマーベラス達をいぶり出すことであったようです。
つまり、そいつの目当てはマーベラス達であるということです。

ただ、円盤のレーザー砲で無抵抗になったガレオンごと吹っ飛ばしてもよさそうなものだが、
あえてそのようにはせず、サーチライトを浴びせて挑発するような様子は、
まるでマーベラス達に降りてきて肉弾戦で勝負をつけるように誘っているように見えました。
在、船同士の戦いで圧勝して絶対的有利な状況にあるにもかかわらず、
そのアドバンテージを捨てて、あえて肉弾戦を挑んでくるということは、よほど腕に自信があるのでしょう。

だが、それはマーベラス達を舐めてかかっているということでもあります。
「・・・野郎!!」と舐められたことに腹を立てたマーベラスは操舵輪を叩いて操縦室を飛び出していき、
ガレオンを飛び出すと対岸に上陸して、ひとまず変身を解くと、
円盤が誘うように上空を飛ぶのを追いかけ、円盤が上空に停止した場所に駈けていきました。

そこは夜の公園で、マーベラスが円盤の下にやって来ると、
円盤から下に向かって照射されているサーチライトがマーベラスに注がれ、
マーベラスはその眩しさに思わず腕で目を隠します。
同時に苛立ちが込み上げてきました。
ザンギャック軍でないのに自分達を襲ってくるということは、おおかた何処かの賞金稼ぎか何かであろうが、
所詮は宇宙のアウトロー同士であるのに、さっきからサーチライトでやたらと人のことを照らしたりして、
まるで犯罪者扱いするかのような相手の上から目線がマーベラスには気に入らなかった。
いくら賞金目当てとはいえ、いきなり他人の船を襲ってきておいて、
挨拶も無しに人のことを犯罪者扱いして上から見下ろす態度は許せない。

サーチライトがマーベラスの立つ場所の前に立つ階段の上を照らし、そこに向かって円盤から光線が降りてきて、
その光線を通って何者かが地上に降下してきたのを見て、
マーベラスは「舐めたマネしてくれるじゃねぇか!何者だ?」と噛みつくように怒鳴りました。
マーベラスの後を追い掛けてきたジョー、ルカ、ハカセ、アイムの4人も到着し、
マーベラスと共に怒りの視線をその円盤から降りてきた相手に向けます。

サーチライトに照らされる中、階段の上に降り立った相手は、
その乗って来た円盤同様、メタリックシルバーのボディの戦士風の男でした。
そして、その銀色のメタリック戦士は、サーチライトが消えると、
マーベラスの問いかけに応えるように勢いよく右手を高々と上げて「ジュウオオウウッ!!」と独特の掛け声を発し、
右手を下げると同時に身を低くして、腰を回して右手を右に振りだして「宇宙刑事!」と言うと、
両腕を左に、そして右に振った後、すっくと立って右拳を顎の前に掲げて
「・・・ギャバン!!」と名乗ったのでした。

ここで一旦本編が途切れ、この映画のタイトルコールの場面となります。
まず宇宙空間を背景にマーベラス一味の6人の変身後の姿が次々と現れて
最後に6人並んでポーズを決めるカットに合せて
「宇宙最大のお宝を手に入れるため、宇宙狭しと大冒険する6人の宇宙海賊!」という関智一のナレーションが流れ、
次いで冒頭の場面に登場したメタリックシルバーの戦士、
すなわち宇宙刑事ギャバンが宇宙空間を背景に剣を構える場面に合せて
「宇宙の平和を守るため、宇宙警察より派遣された伝説の宇宙刑事!」という関ナレーションが流れます。

ここの2つのナレーションは両方とも注目すべき点があります。
まずゴーカイジャーの方のナレーションですが、
いつものTV本編のレジェンド回バージョンの
「スーパー戦隊の力を受け継いだとんでもない奴ら」という意味合いのナレーションや、
通常回バージョンの「ザンギャックに逆らって海賊の汚名を名乗り宇宙の大海原を行く豪快な奴ら」という
意味合いのナレーションとも微妙に意味合いの違うナレーションをわざわざ新たにかぶせています。

まずここでは「スーパー戦隊の力を受け継いだ」という部分が完全に無くなっています。
が、この映画の中でゴーカイジャーはしっかりスーパー戦隊の力も受け継いで使っています。
また、TV本編の方の冒頭ナレーション部分の映像では鎧を除く5人だけが映像に現れており、
厳密には鎧以外の5人のことを言っていると思われます。
そう考えると「宇宙の大海原を行く」というTV本編の通常回の冒頭ナレーションは事実に正確といえます。
何故なら鎧はまだ宇宙の大海原には飛び出したことが無いからです。
ところが、この映画の冒頭ナレーションでは「宇宙狭しと大冒険する6人の宇宙海賊」と表現されており、
鎧も宇宙を大冒険していることになっていますが、これはTV本編yこの映画の劇中事実には即していません。
そして、この映画の冒頭ナレーションはTV本編の通常回バージョンに似ているようにも見えますが、
通常回バージョンにある「ザンギャックに逆らっている」という文言が無くなっています。
しかし、この映画の中でもゴーカイジャーはザンギャックに逆らっています。

ナレーションの尺的にそれらの文言が入れられなかったのかもしれませんし、
ギャバンの部分の言葉との対比の関係でザンギャック云々の文言は不要と判断されたのかもしれません。
しかし、ゴーカイジャーが「スーパー戦隊の力を受け継いでいること」や
「ザンギャックに逆らっていること」などが触れられていないこと、
何故か宇宙に行ったことのない鎧までも宇宙を大冒険していることになっていることなどから、
どうもこの冒頭ナレーションはこの映画の公開時の2012年1月21日時点でのTV本編やこの映画自体での
ゴーカイジャーの状態とは少しズレた時系列のゴーカイジャーについて述べているような気もします。
それというのも、この「ゴーカイジャーVSギャバン」の映画は、
劇場によっては2012年2月19日の「ゴーカイジャー」TV本編の最終話よりも後にも
上映されている可能性があるからです。

つまり、この冒頭ナレーションで述べられているゴーカイジャーの姿は、
TV本編最終話以降のゴーカイジャーの姿を説明したものであるようなのです。
あるいは、映画公開初日の1月21日の時点のゴーカイジャーでも、TV本編最終話以降のゴーカイジャーでも、
どちらにでも解釈できるような最大公約数的な表現というべきでしょうか。
だから「ザンギャックに逆らっている」という点や、
「スーパー戦隊の力を受け継いでいる」という表現は回避されており、
鎧も宇宙を冒険しているかのようにも解釈可能な表現にしているのです。

ということは、つまり、この映画公開初日にはまだ明らかになっていない
「ゴーカイジャー」TV本編の最終話の結末が、このナレーションによってなんとなく想像できるのです。
このナレーションがゴーカイジャーのTV本編最終話以降の姿を表しているとするなら、
それはゴーカイジャーがザンギャックに逆らっておらず、スーパー戦隊の力も受け継いでおらず、
宇宙最大のお宝を目指して、鎧も含んだ6人で宇宙を冒険しているという姿です。
そうなると、最終話でゴーカイジャーはザンギャックを倒し、スーパー戦隊の力をレジェンド戦士たちに返し、
再びお宝を探すために鎧も一緒に宇宙に旅立つということになります。

が、そうなると、ゴーカイジャーの6人は最終話に至っても結局、
「宇宙最大のお宝」を手に入れることが出来なかったということにもなります。
そのあたり、いったいどういう最終話になるのか、
この映画公開日の時点ではまだ残り5話ある状況ですから詳細はまだ分かりませんが、
この映画の冒頭ナレーションだけで色々と考えさせられます。

さて一方の「宇宙の平和を守るため、宇宙警察より派遣された伝説の宇宙刑事!」という
ギャバンに関するナレーションです。
冒頭のシーンで登場したメタリックボディの戦士は、
まさしく1982年に放映されたメタルヒーローシリーズ第1作「宇宙刑事ギャバン」に登場した
主人公ヒーロー、宇宙刑事ギャバンです。

もちろん1982年に撮影で使用されていたスーツがそのまま残っているわけではないので、
この映画用に新作されたスーツです。
だから細部は1982年当時のものとは微妙に違う、新ギャバンといえます。
だが、殊更に新バージョンであることをアピールするようなデザインではなく、
これは新しいギャバンなのではなく、あくまで1982年のギャバンを今の技術で再現したものであり、
あくまでこれは1982年のギャバンがそのまま年月を経た同一キャラなのだと解釈すべきでしょう。

「伝説の宇宙刑事」という表現も、
このギャバンが初代ギャバンからスーツを受け継いだ二代目や三代目の若手刑事なのではなく、
あくまで伝説の刑事である初代ギャバンが年を経て老刑事となって現れたのだということを示しています。
実際、冒頭の場面の最後の部分でのギャバンの名乗りポーズは、
1982年の宇宙刑事ギャバンの名乗りそのものであり、
また、その声が大葉健二氏の声であることからも、
このギャバンの正体は1982年の「宇宙刑事ギャバン」で大葉健二氏が演じていたギャバンの変身者である
「一乗寺烈」本人であろうと推測されます。

つまり、この「ゴーカイジャー」の物語世界には歴代34のスーパー戦隊だけではなく、
宇宙刑事ギャバンまで存在しているということになります。
そして「ディケイド」のように歴代キャラが同時存在しているのではなく年代順に配置されている
「ゴーカイジャー」作品世界の特徴、「伝説の宇宙刑事」という表現、
この映画撮影時に56歳の大葉氏がギャバンを演じるという点などを考え合わせると、
このギャバンは「ゴーカイジャー」物語世界における1982年に宇宙犯罪組織マクーと戦って壊滅させた
ギャバンが32年か33年ほど経って再び年を経た姿で現れたものだと見なしていいでしょう。

あの円盤は「超次元高速機ドルギラン」というギャバン専用の宇宙船で、
上部の円盤部を「ギラン円盤」といい、下部の艦橋部のような角ばった部位は「ドルユニット」といいます。
このドルユニットが分離して折りたたんで収納していた首や尾を出すと「電子星獣ドル」という青い龍の形態となり、
先ほどのように口から火を噴いて戦ったりします。

星獣といってもドルは生き物というわけではなく、一種の龍型の巨大ロボットなのですが、
電子頭脳を搭載しているからなのでしょうが、自分の意思で動く自律型ロボで、
ギャバンの指示に従う支援ロボです。
内部には操縦席のようなものもあるのですが、大抵はギャバンはドルの上に乗ってドルに指示を出して戦い、
先ほどのようにドル単体でももちろん戦えます。

ただ、このドルギランですが、
1982年放送の「宇宙刑事ギャバン」に登場したドルギランとは大きさがだいぶ違います。
オリジナルのドルギランは直径220mという設定なので、
全長46mのゴーカイガレオンよりも遥かに巨大なはずですが、
冒頭の空中戦を見る限り、ガレオンより一回り大きいぐらいにしか見えません。
この「ゴーカイジャー」物語世界のドルギランはオリジナルのものより、かなり小型になっています。

第9話以降登場しているガオライオンも
「ガオレンジャー」本編に登場したオリジナルのガオライオンとは大きさや形が違っていたり、
第25話以降登場している風雷丸も
「ハリケンジャー」本編に登場したオリジナルの風雷丸とは形が違っていたりしており、
「ゴーカイジャー」物語世界に登場する過去作品の事物は
オリジナルのものとは微妙な部分が異なっている場合もあるようですので、
ドルギランの大きさが違うのもそうしたパターンの1つなのでしょう。

その「オリジナルと微妙に違う」という意味では、
ギャバンのナレーションにある「宇宙警察より派遣された」という部分も同様のように思えます。
1982年放送の「宇宙刑事ギャバン」では、ギャバンが所属していた組織は「銀河連邦警察」であり、
「宇宙警察」ではありません。
「宇宙警察」というのは2004年放送のスーパー戦隊シリーズ第28作
「特捜戦隊デカレンジャー」に登場した組織名であり、
デカレンジャーが所属する全宇宙をカバーする警察組織でした。

この「ゴーカイジャーVSギャバン」映画では、
オリジナル設定では銀河連邦警察に所属していたギャバンが、
何故かデカレンジャーと同じ宇宙警察に所属しているというように設定が微妙に変わっているかのように見えます。
まぁガオライオンや風雷丸の例もあるし、実際ドルギランの大きさまで変わっているわけですから、
ギャバンの所属組織の設定が変わっているという解釈でもOKだとは思いますが、
この件に関しては設定変更という解釈でなく、もっと整合性のとれる解釈も可能だと思います。
というのも、1982年の「宇宙刑事ギャバン」に登場した銀河連邦警察には更に上部組織があり、
その上部組織の名が「宇宙警察機構」というからです。

1982年当時、宇宙警察機構というのは一種の評議会的な組織であって実動部隊であったわけではないようですが、
その下で実動部隊として働いていたのが銀河連邦警察であったようです。
その1982年の時点で、既に宇宙警察機構も銀河連邦警察も長い歴史を持った組織であったようです。
ギャバンの少年時代にギャバンの父のボイサーも同じ銀河連邦警察所属の宇宙刑事として活動していて
宇宙犯罪組織マクーに拉致されて行方不明になっているのは劇中でも明らかになっていますから、
地球暦で1970年以前には既に銀河連邦警察は存在していたはずです。
おそらくもっと歴史は古いでしょう。
当然、その上部組織である宇宙警察機構もそれより歴史は古いと思われます。

「ギャバン」劇中に登場する敵組織である宇宙犯罪組織マクーというのは2万6千年の歴史を持つと言われており、
宇宙警察機構よりも歴史は古いとされていましたから、
宇宙警察機構は2万6千年以内の歴史を持っているようです。
実際のところ、いつから宇宙警察機構が存在するのかは分かりませんが、
おそらくマクーの存在が先行していたことから類推して、
宇宙警察機構の設立の動機となったのはマクーによる異星間を股にかけた組織的犯罪活動に
対抗するためであったのでしょう。
そのためにマクー犯罪対策評議会のような形で、
それぞれの星の治安組織の枠を超えた宇宙警察機構という組織が設立され、
その下にマクーの異星間犯罪に対処する実行部隊として銀河連邦警察が設立されたのだと思われます。

ギャバンの父のボイサーやギャバンはその銀河連邦警察の宇宙刑事としてマクーと戦い、
1983年にギャバンを中心として宇宙警察機構および銀河連邦警察は
遂にマクーの首領のドン・ホラーを倒してマクーを壊滅させたのでした。
そして「宇宙刑事ギャバン」の続編といえる「宇宙刑事シャリバン」「宇宙刑事シャイダー」の2作品においては、
1983年から1985年にかけてマクーに続いて現れた宇宙犯罪組織であるマドーやフーマと
宇宙警察機構や銀河連邦警察との戦いが描かれており、マドーやフーマもここで殲滅されました。

そうなると宇宙警察機構の次の活動目標は
マクーのような全宇宙規模で活動する犯罪組織の次なる発生を未然に防ぐこととなります。
そのために宇宙各地の星における異星人による組織犯罪活動を取り締まって、
それが巨大な星間犯罪組織に成長しないうちに潰していく必要が生じます。
そのためには地道できめ細かな警察活動が必要となるのですが、
巨大犯罪組織との本格的な戦闘を想定して作られた銀河連邦警察は
全宇宙を大まかな活動領域とする武装警察や特別警察の類であり、まさに連邦警察=FBI的な存在であり、
宇宙各地で頻発する小規模な異星人犯罪組織をいちいち検挙していく治安警察的な活動には不向きでした。

そこで宇宙警察機構は組織改編を行い、宇宙各地の星の治安組織から人員を提供してもらって
「宇宙警察」という巨大組織に生まれ変わり、
宇宙各地の星に小規模な異星人犯罪組織の取り締まりを行う宇宙警察の所轄署を置くようになったのでしょう。
そうしてほどなくして宇宙警察の所轄の各星の出張署が置かれるようになり、
地球にも地球署が設置され、ドギー・クルーガーやスワンなどが刑事として赴任し、
十数年の勤務の後にドギーが地球署の署長となって、
やがてホージーやセン、ジャスミンやウメコが刑事として加わり、
2004年にはバンやテツが地球署に赴任したのです。

一方、ギャバンの所属していた銀河連邦警察の方はどうなったかというと、
宇宙警察機構が宇宙警察として組織改編した際、
所轄署単位では対応できない大規模星間犯罪組織対策の特別チームとして残されたのだろうと思われます。
だから銀河連邦警察という呼称は無くなったと思われますが、
FBI的な武装警察の機能はそのままで特別な権限を持った宇宙警察の最強の連邦捜査チームとして残っており、
ギャバンはかつてマクーを倒した伝説の刑事として、そこの責任者にでもなっているのでしょう。

ドギーやバンなどの所轄署の宇宙刑事は異星人犯罪者の処分に際しては宇宙裁判所の判断を仰ぐ必要がありますが、
宇宙警察の総裁の直属の連邦捜査チームのリーダーであるギャバンは
宇宙裁判所の許可を得ずに犯罪者の処断を行えるようです。

そういうわけで、この「ゴーカイジャーVSギャバン」の劇中時期である2015年あたりの1月に
ギャバンが「宇宙警察より派遣された伝説の宇宙刑事」というように形容されるのは何ら不自然なことではない。
いわばギャバンは宇宙警察の最終兵器のような男であり、
大抵の異星人犯罪は所轄署で対応出来ている現状においては、
むしろギャバンが華々しく活動出来る場はあまり無いといえます。

そもそもギャバンは銀河連邦警察の時代から正体を隠しての潜入捜査の専門家のような男であったので、
ギャバンの正体はおろか、その存在を知る者自体、宇宙にはあまり多くないといえます。
宇宙警察の内部でしかギャバンの所属する連邦捜査チームの存在は知られておらず、
「宇宙刑事ギャバン」という宇宙警察草創期の伝説的な刑事の名は宇宙警察内部では有名ではあっても、
その顔もあまり知られておらず、
未だにそのギャバンが宇宙警察内部に勤務しているのかどうかもあまり知られていないのでしょう。
伝説の刑事であり、秘密兵器のような存在といえます。

そういうわけで、ゴーカイジャーのメインコンピュータでギャバンの宇宙船であるドルギランを検索しても、
その正体は判明せず、宇宙を旅して来たマーベラス一味の誰もドルギランのことを知らなかったのです。
それぐらい隠密な存在である宇宙警察の秘密最終兵器ともいえる最強の宇宙刑事ギャバンが、
どうしていきなり地球に現れてマーベラス一味を襲撃したのか謎なのですが、とにかく両者は出会ってしまいました。

そして画面上ではマーベラスの姿とギャバンの姿が続けて大写しとなり、
「出会うはずのなかった宇宙海賊と宇宙刑事が、今、相対する!!」というナレーションが雄々しく謳い上げられます。
これは「スーパー戦隊VSシリーズ」の恒例の煽り文句で、
もともと別々の作品世界の存在である2つの戦隊が本来は出会うはずがないのに、
この作品内でだけは特別に出会うという、特別感を強調するものです。

しかし厳密にはこの「ゴーカイジャーVSギャバン」の場合、この煽り文句はあまり適切ではありません。
片割れのゴーカイジャーという戦隊は、
その「出会うはずのない」相手である他のスーパー戦隊と出会うことは当たり前の世界観の中のヒーローだからです。
ゴーカイジャーならばゴセイジャーと出会うこともゴレンジャーと出会うことも当たり前なのであり、
ならばギャバンと出会っても別におかしくはない。

もちろん、「ゴーカイジャー」の物語世界は34のスーパー戦隊の世界観のみを包含した世界だと思っていたので、
そこにギャバンの世界観まで加わったということにはこの映画では新鮮な驚きはあるが、
ゴーカイジャーに限ってはこの終盤に来ると、もうディケイド同様に何でもアリなので、
たとえ相手がギャバンでもライダーでも「出会うはずがない」とまではなかなか思えないのが実感です。

それを「出会うはずがなかった」とあえて強調しているのは、
単にいつもの「VSシリーズ」と同じ煽り文句を使うことによって、
いつもの「VSシリーズ」の1つであることを強調しようとしているに過ぎないといえるでしょう。
実際は、これは本当はいつもの「VSシリーズ」とは別種の映画であり、
それをあくまで「スーパー戦隊祭」の伝統に則った「VSシリーズ」であるように見せようとしているのです。

なお、ギャバンも「ゴーカイジャー」の物語世界に包含されるとすると、
「ゴーカイジャー」物語世界の1982年に地球で活動していた戦隊であるゴーグルファイブの活動と
ギャバンの活動がバッティングするのではないかということも考えられます。
しかしギャバンはあくまでマクーの宇宙規模の犯罪活動に対処する活動のために地球に派遣されていたのであり、
地球におけるゴーグルファイブとデスダークの戦いには不介入であったと思われます。
それにギャバンの活動は隠密行動が多く、正体も秘密にしており、
戦いも魔空空間という亜空間で行うことが多かったので、一般にはあまり知られておらず、
ゴーグルファイブと共にヒーローが並立するような状態にはなっていなかったと思われます。

そして、それはギャバンから世界観が繋がった1983年度のシャリバンや、1984年度のシャイダーも同じことであり、
シャリバンは同時存在したダイナマンと活動がバッティングすることはなく、
シャイダーも同時存在したバイオマンと活動がバッティングすることもなかったのでしょう。

そして画面上ではギャバンが愛刀のレーザーブレードを十字に斬ると、
その十字の閃光がゴーカイジャーの紋章の十字に交差した剣になり、
ゴーカイジャーのタイトルロゴが現れ、そこにゴーカイジャー6人が現れてゴーカイガンで画面を撃ち抜き、
割れた画面の向こうに宇宙刑事ギャバンのタイトルロゴが現れ、
次いで回転して飛んできたゴーカイジャーのタイトルロゴとギャバンのタイトルロゴが上下からドッキングして
真ん中に「VS」の文字が入り、
それに合わせて「海賊戦隊!ゴーカイジャー!!」とゴーカイジャー6人によるコール、
そして「対!」というマーベラスのコールに続いて
「宇宙刑事!ギャバン!!」というギャバンによるコールがなされて、この映画のタイトルコールが完了します。
そうして、OPテーマは無く、すぐに本編が再開します。

いきなりガレオンを襲撃して撃墜した謎の円盤から降り立った謎のメタリックシルバーの戦士が
「宇宙刑事ギャバン」と名乗ったのを受けて、マーベラス達5人は非常に驚きました。
5人はもちろんギャバンとは初対面であり、ギャバンという名も聞いたことはありません。
だからギャバンという名を聞いて驚いたわけではなく、
てっきり何処かの賞金稼ぎなのかと思っていたこの戦士が「宇宙刑事」と名乗ったことが
あまりに予想外で驚きであったのです。

なるほど刑事ならば妙に上から目線の態度であったのも納得はいきますが、
しかし、どうして刑事がいきなり見知らぬ他人の船を攻撃するのか、マーベラス達には意味が分かりませんでした。
すると、唖然としているマーベラス達に向かって、ギャバンと名乗ったその宇宙刑事はいきなり
「ゴーカイジャー!海賊行為の罪で逮捕する!」と言い放ったのでした。
これにはマーベラス達は更に驚きました。

宇宙刑事ということは、宇宙警察に所属している刑事だということはマーベラス達にも分かっています。
つまり宇宙警察が海賊行為の容疑で自分達を逮捕しようとして、
この宇宙刑事ギャバンに命じていきなり自分達を襲わせたということになります。
確かに刑事が海賊を逮捕するというのは、一見筋が通っている。
しかし、それは妙な話だとマーベラス達は思いました。
宇宙警察が自分達を海賊行為の容疑で逮捕しようとするはずはない。

アイムもムッとしてギャバンの言葉に対して「・・・そんな!?デカレンジャーさんの調査で、
私達の容疑は全てザンギャックの捏造だと分かっているはずです!」と言い返しました。
ハカセもアイムに同調して「そうだよ!僕たちは逮捕されることなんてしてないよ!」と抗議します。

確かにマーベラス達は地球に着いた当初、
第5話の段階で宇宙警察の地球署の署長、元デカマスターのドギー・クルーガーによって
海賊行為の容疑で逮捕されかけましたが、
その時、ドギーが元デカレッドのバンに命じていた極秘調査の結果、
地球署に送付されていたマーベラス一味の逮捕状に記してあった海賊行為の罪状は
全てザンギャック帝国によって捏造されたものであり、
マーベラス達は宇宙警察に逮捕されるような立場ではないことが証明され、放免されたのでした。
それ以降、地球において宇宙警察地球署はマーベラス達を逮捕しようという動きは一度も見せていませんでした。
だからマーベラス達は宇宙警察は自分達の無実を認めているものだと思っていたのです。
そして実際にマーベラス達は宇宙警察に追われるようなことはしていないという自信はありました。

しかし、そもそも第5話のデカレンジャー篇の時、
宇宙警察地球署の刑事である元デカレッドのバンが極秘調査の結果、
マーベラス一味の逮捕状の根拠となっていた海賊行為の罪状がザンギャックの捏造だと判断し、
無罪放免とした件ですが、
あれはこの「ゴーカイジャー」の物語世界においてはどのように解釈すべきなのでしょうか。

ザンギャックはマーベラス達のことをザンギャック帝国の法を違反している海賊として
賞金首のお尋ね者としており、
マーベラス達も自分達がザンギャックの法を破る海賊であるという自覚は持っています。
ならばマーベラス達はやはり海賊なのであり、海賊行為の罪を犯しているのであり、
ザンギャックの言うマーベラス達の罪状というのは捏造ではないのではないかとも思えます。

しかしバンは宇宙警察の刑事として、ザンギャックの主張するマーベラス達の罪状は捏造だと認定しました。
これはつまり、ザンギャック帝国の罪の判定基準と宇宙警察の罪の判定基準が異なることを示しています。
つまりザンギャック帝国において運用されている法律と宇宙警察において通用している法律は別々なのです。
ザンギャックは宇宙の大部分を制覇しているが、
宇宙全体で犯罪取り締まり活動をしている宇宙警察はザンギャック帝国の支配下にあるわけではなく、
ザンギャックからは独立した存在であるようです。
つまり一種の二重権力のような状態といえます。

日本の中世から近世における朝廷の支配体制と幕府など武士権力の支配体制が共存していた状態を連想すれば
分かりやすいかもしれません。
いや武士権力の体制の中でも、例えば守護大名の領国支配体制は
地侍や国人による惣村の支配体制から勃興してきた戦国大名の領国支配体制に取って変わられていっても、
それでも古い守護大名の支配体制や、それよりも更に古い寺社や朝廷の支配体制も
形骸化しながらも一定の影響力は有しており、そこは戦国大名の支配を逃れた自由民たちの逃げ込む先ともなり、
戦国大名たちはこれら既成権力の抵抗にも意外に手を焼いたりしていました。

このように新しい支配体制が勃興してくる時、
それに先立って存在していた体制が形骸化しつつも影響力は残し、
新たな支配体制から逃れた者たちの避難先となり二重権力構造を形成することというのは、
人の世においてよくあることです。
鎌倉幕府の支配を逃れた「悪党」と呼ばれた者達が古い朝廷や寺社の権力の庇護下に逃げ込み、
その力が結集して鎌倉幕府を倒したこともありました。

ザンギャックと宇宙警察、マーベラスのような海賊たちの関係もこれと似たようなものと考えればいいでしょう。
宇宙警察というのはザンギャックよりも古くから存在している宇宙全域をカバーする秩序維持の体制であり、
新たに勃興して宇宙を制覇したザンギャックも、宇宙警察を解体したり、
自らの支配下に置くことは出来なかったようです。
それだけ宇宙警察には歴史と伝統、実績に基づく権威があり、宇宙の人々にとって心理的な拠り所であったので、
ザンギャックも簡単に手は出せなかったのでしょう。
日本の歴史において、どんな強大な武士権力でも朝廷は潰すことが出来なかったのと同じです。

しかし日本の歴史においてそれほど人々の大事な存在であった朝廷も武士権力に実権を奪われたのと同様、
この物語世界においても古く信頼ある宇宙警察もまた
ザンギャックという新たな権力の勃興を許しているのも事実です。
それは朝廷の制度が古臭くて社会の変化に対応出来なかったのと同様、
宇宙警察の秩序維持体制では宇宙の実情に追いつかなくなっていったのが原因でしょう。
では、宇宙警察のどういうところが宇宙の実情に合わなくなっていったのかというと、
そのヒントとなるのがマーベラス達の海賊行為はザンギャックの捏造であるとした
バンやドギーの判断であると思います。

実際、ザンギャックが宇宙警察に示したマーベラス達の海賊行為の記録は捏造だったのでしょう。
しかし、そもそもどうしてザンギャックは捏造などする必要があったのか?
マーベラス達は第1話ではザンギャック艦隊に向けていきなり先制攻撃を仕掛けて殲滅しており、
それ以前にも宇宙の星々でお宝探しのためにザンギャックの守備隊を多数襲撃して壊滅させてきました。
ルカなどはザンギャック相手専門の義賊とはいえ明らかに泥棒であり、
マーベラスやジョーもルカを出し抜いてザンギャックから金を強奪したこともあります。
というか、基本的にマーベラス一味が宇宙に散らばったレンジャーキーを集めて回ったという行為自体、
厳密に言えば他人のモノを勝手に奪い取ってきた行為の繰り返しであったはずです。

これらのマーベラス一味の行為は普通に考えて社会の秩序を乱す犯罪行為です。
これらの犯罪行為を常とするマーベラス一味が「海賊」と呼ばれるのは当然のことのように思えます。
だからザンギャックはマーベラス達のこれらの過去において現実に行った数々の行為を
そのまま偽りなく列挙していけば宇宙警察にマーベラス達を逮捕させることは簡単であるように思えます。

それなのにザンギャックはわざわざバンの調査で嘘だとバレてしまうような虚偽の罪状をでっちあげた。
それは言い換えれば、現実にマーベラス達が行ってきた「犯罪行為」は
宇宙警察の取り締まり対象ではないということを意味します。
だからザンギャックは第5話の時に邪魔なマーベラス一味を始末するために
宇宙警察が動くに足るような種類の犯罪行為をマーベラス達が冒したかのように捏造した申し立てをして
地球署を動かそうとしたのだが、
ドギーに命じられたバンの調査でマーベラス達が宇宙警察の取り締まり対象となるような罪は
犯していなかったことが判明して、マーベラス達は無罪放免されたのです。

しかしマーベラス達はザンギャック軍を相手に殺人や強盗も含む破壊活動の限りを尽くしており、
その多くには正当防衛の形跡すら無く、おそらく巻き添えを食って一般人の犠牲も出ていると思われます。
これで警察の取り締まり対象でないというのも奇異な印象ですが、
実際のところ、これはそんなに奇異なことではないでしょう。

現代日本の常識に照らすと確かにマーベラス達が警察の逮捕の対象にならないというのは奇異ですが、
一昔前ならばこんなに警察が市民生活の細部にまで干渉して
細かい罪状まで規制して社会秩序を守ってくれるということの方が珍しいといえます。
西部劇の物語世界などを見れば分かるように、
昔の世界では基本的に人々は「自分の身は自分で守る」ものであり、
そこでは大抵のケースでは自分の力で自分や大切なものを守れなかった者は
単に自分が無力だったので悪かったということで諦めるしかないのであり、
暴力で他人を殺して権益を拡大した悪者はそのまま逮捕されることもなくのさばっているのが通例です。
保安官なんていうのはよほどの重罪人しか逮捕しませんで、
そこらの牧場でカウボーイが何者かに殺されたとしても、いちいち捜査なんかしません。

これが無法地帯というものですが、
西部劇の世界の良いところは、そうした悪者を最終的に決闘の末に倒した正義の味方たちもまた、
いちいち警察に逮捕されたりしないところです。
まぁそこには決闘のルールというものは暗黙のうちに存在しているのですが、
細かいことはともかくとして、個人間の暴力的な紛争解決の手段が正当化されている世界といえます。
日本でも明治維新以前には民間の個人間の仇討ちのルールが認められていたのですが、
これもそうした警察に頼らない個人間の暴力の肯定例の一つといえます。

これは悪者が暴力でやりたい放題をしてしまうという問題点もありますが、
その悪者を暴力で倒した場合にもお咎め無しで済むという利点もあります。
まぁ映画などでは正義の味方と悪者は明確に描き分けられているので分かりやすいですが、
現実世界ではこうした個人間の紛争の場合はどっちが正しいのか、大抵はハッキリとはしません。
どちらにもそれなりの正当な言い分があることが多いです。
それで争いにまでなって警察が介入してきて逮捕される羽目になるのは当事者たちにとっては困ったことです。

まぁ客観的に見れば、人が傷ついたり死んだりする事態は良くないので、
それを未然に抑止するためにも過度の暴力行為には警察の介入が有り得るという体制になっていることは
良いことだとは言えます。
現代の文明社会というのはそういう体制なのだといえますが、
これはよほど警察組織が充実していて法の支配が徹底した社会においてのみ成り立つ体制といえます。
現代でもアジアやアフリカの発展途上国の多くでは警察による解決だけでなく
個人間での暴力的解決を暗黙のうちに肯定して、
それによる自然的な社会秩序の維持能力にも頼るしかないのが現状といえます。

それが現代日本のような社会よりも素晴らしいと肯定するつもりはないです。
ただ、そんな社会でも人々はそれなりに機嫌よく暮らしていたりするのも事実です。
そもそも日本だって欧米だって、ちょっと前まではそんな社会で人々はそれなりに楽しく暮らしていたのです。
確かに現代社会の方が優れているのかもしれないし、
現代人には現代社会の方が暮らしやすいのは間違いないでしょう。
だが、昔の個人間の暴力が認められていた時代も決して完全否定されるほどの欠陥社会であったわけではなく、
人の暮らす社会の1つのタイプとして十分にあり得るのだということです。

それに現代のような暴力が警察によって徹底的に規制された社会にも問題点はあります。
それは警察が正しいという前提でこそ真っ当に成立する社会なのであって、
仮に警察が悪に染まっていた場合、暴力を徹底的に規制されて戦う力を奪われた民衆は
一方的に警察権力に抑え込まれて搾取される羽目となります。

現代でも北朝鮮や中国のような独裁国家はそんな社会なのであり、
これらの独裁国家の特徴は「犯罪が少ない」ことですが、
これは実際は警察がまともに仕事をしていないので、
そもそもまともな犯罪の案件自体がまともに取り上げられていないからです。
実際は夥しい犯罪が行われているのが現状なのですが、
警察はむしろ犯罪者と結託して善良な民衆を苦しめている場合が多い。
それは法を犯す犯罪者が権力者と結びついていたり、権力者そのものが犯罪者であったりするからですが、
警察がそんな犯罪者と結託するほどに腐り果てるのは、
やはり警察の力が強くなりすぎて、相対的に一般民衆の暴力が過度に押さえこまれた社会であるからです。

警察による一般人の暴力への規制が行き過ぎると、どうしても警察権力が腐敗して独裁の弊害が出る。
これは1つの真理です。
アメリカなどではこれを過度に嫌って銃規制に根強く反対している人達が多いです。
確かに北朝鮮のような地獄のような管理国家になるぐらいなら
アメリカのような銃社会になる方がまだマシかもしれません。

アメリカ人は国家に過度に管理されるぐらいなら銃を持った隣人に怯えながら自衛する自由を選ぶというわけです。
まぁ実際はアメリカが銃規制したからといって北朝鮮や中国のような社会にはならないでしょう。
逆に北朝鮮や中国が自由になったからといってアメリカや日本のようにもならないでしょう。
実際、改革開放後の中国はむしろどんどん社会情勢が悪化していると思います。
これは文化が違うからであり、もともとの精神性が違うからです。
宗教の問題が絡んでくるとも言えますが、それは本稿とはあまりに関係無いので、まぁいいです。

ここでわざわざ現代社会の事例を出して言いたかったことは、
現代社会のような警察による個人間の紛争への過度の介入は、
そもそも一般民衆に対する警察力のよほどの充実がないと出来ないことであり、
またそれが実現した場合、権力の腐敗や自由の制限、独裁の弊害などに繋がる恐れも孕んだものとなるということです。

だから、人間社会では警察による秩序の一元管理を嫌い、
個人間の紛争解決の余地を求める自然の欲求は存在するのであり、
それが個人間の暴力を肯定するものであっても受け入れる風潮はあります。
ただ一方でそうした無法を嫌い、権力によって悪事を徹底的に取り締まってほしいという想いも民衆には存在します。
特に社会が複雑化して個人間の紛争が多くなってくると、いちいち自分で戦っているヒマは無いですから、
人々は強大な権力によって身のまわりの悪事を取り締まってほしいと思うようになります。
近代文明社会が成立してからそういう傾向は自然に拍車がかかり、
その結果、現代のような管理社会が成立してきたのだと思いますが、
同時にまた高度管理の独裁権力による弊害も生じてきたのだといえます。

それで、本稿との関係で言うと、
ザンギャック帝国が宇宙を支配するに至った「ゴーカイジャー」物語世界における宇宙というのは、
この地球の現実世界の歴史における近代文明社会への移行期の社会に相当する段階なのではないかと思うのです。
そもそも宇宙は広大であり、多くの人々が暮らしていますから、
宇宙警察の要員だけで宇宙の全ての人々の日常の個々人間の紛争を法で縛ることなど出来なかったはずです。
だから宇宙警察は従来、個々の紛争には不介入方針であり、
あくまでマクーのような悪質な組織犯罪活動の取り締まりに特化した組織であったと思われます。

そうなると、その宇宙警察が活動していた宇宙というのは、
個人同士や地域同士、国同士、星同士などの相互の間の紛争は自分の力で解決するのが基本であったのでしょう。
まぁ現在の地球の現実世界でも国同士の紛争を犯罪として取り締まる権限は警察や裁判所にはありません。
戦争というものは国家が紛争を解決する手段として保証されており、
そこで人が死んだとしても、そのことで誰かが罪に問われるということは基本的にはありません。

戦争行為の中で逸脱した残虐行為があった場合は「戦争犯罪」として軍事法廷で罪に問われることはありますが、
線引きが非常に難しく、大抵は敗者の側が見せしめ的に裁かれるだけのことで、
勝者の側の残虐行為などは原爆投下が良い例で、大抵は罪に問われることもありません。
残虐行為程度でもそんな有様ですから、
第一次大戦後や第二次大戦後に戦争そのものを罪として裁こうという気運が起こったものの、
見事に失敗して現在に至るまで戦争による国家同士の殺人や破壊行為は正当な行為として黙認されています。

このようにこの狭い地球ですら国家同士の紛争の自己解決は
戦争という暴力的解決も含めて警察や裁判所の管轄外で黙認されているのですから、
「ゴーカイジャー」物語世界の広大な宇宙では秩序維持はもっと大変でしょうから、
個人間の紛争も含めて全て自己解決が大前提だったのでしょう。
だから宇宙警察は個々の紛争には不介入でそれぞれの自己解決に任せており、
宇宙警察の業務は悪質な犯罪組織の撲滅に限定されていたと思われます。

そもそも個人や地域の間の紛争の処理などは、
宇宙全体を統治する統一政府のようなものがあってこそ可能なのであって、
警察が単独でそこまで首を突っ込むのは越権行為ともいえます。
宇宙警察はもともと国家権力を背景に成立したものではなく有志連合のようなものであったので、
そこまで強大な権限を握ることを自ら望まなかったし、
それは一歩間違えば圧政につながる危険な行為であるとも認識していたので、
個々の紛争への介入はしない方針を貫いたのでしょう。

ただ、そうして宇宙警察によってマクーのような犯罪組織の活動を抑え込むようになって
宇宙が人々の活動で活気づくようになってくると、個々の紛争も増加し激しくなっていきました。
そうなると個々の紛争をいちいち自分で解決するのが面倒臭くなってきた人々は、
個々の紛争に不介入方針を貫く宇宙警察に飽き足りなくなり、
強大な力で個々の紛争を解決してくれる宇宙をカバーする新たな統治権力を求めるようになったのでした。

その結果、宇宙の人々は新たに勃興してきたザンギャック帝国にその統治権力としての役割を求め、
ザンギャックもそれに応える形で勢力を伸ばしてきたのでしょう。
ただ、もともと邪悪な性格を持ったザンギャック帝国は強大な権力を得ると腐敗し、
独裁の弊害は宇宙を覆い、虐げられる人も多くなりました。
ただ、それでも紛争の自己解決の気概を失った人々の多くはザンギャックの支配を受け入れ、
ザンギャックに取り入って上手く生きていく者もいたのでしょう。
だからこそザンギャック帝国の宇宙支配は成り立っているといえます。
正義や自由よりも人々は利便性や効率を重んじて、
悪に迎合して弱き者を見捨てることで繁栄を享受するようになったのです。

そうして成立したザンギャックの支配する世界ではザンギャックの法が施行されて、
人々はザンギャックの官憲によって日常の細かな行動まで刑罰でもって管理されていったのです。
個々の紛争を自力で解決することは禁じられ、ザンギャックの司法が全てを解決してくれるのであり、
紛争解決のために暴力を振るえば逮捕され刑罰を受けます。
つまり人々は紛争の自己解決の手間から解放されて
ザンギャックの官憲に頼って生きることが出来るようになったのであり、
そうしたザンギャック社会から見れば、かつての宇宙警察の作っていた秩序などは
古臭くて不完全なものに見えたことでしょう。

しかしその反面、ザンギャック帝国では官憲は唯一の暴力装置として強大な権限を持つようになり、
汚職や腐敗も横行するようになり、公平な裁きも行われなくなったのです。
ザンギャックの統治階級と要領よく結びついたものは甘い汁を吸う反面、
それと紛争を起こした側は不公平な扱いを受けて社会的に葬られることも多々あり、
ザンギャックの統治階級そのものに狙われた者などは
酷い目に遭わされても全く救済されることもない状態となりました。

そうして理不尽に仕事を奪われ、家を奪われ、家族や仲間を奪われ、果ては星を滅ぼされたりした者たちは
辛うじて生きながらえても何の救済もされることもなく、
ザンギャック帝国の社会の最下層で蠢くしかない人生を送ることになりました。
マーベラス、ジョー、ルカ、ハカセ、アイムの5人は皆そういう人生を送ってきた者達の1人であったのです。

この5人以外にも多くの人々がザンギャック支配下で虐げられて、ザンギャックの支配から逃れようとしました。
そうした人々はザンギャックの法を受け入れることをやめて、
ザンギャック帝国の支配が及ぶ前の生き方を回復させようとしました。
それはつまり、宇宙警察が作っていた緩やかな秩序体制であり、
自分の身は自分で守り、自分の絡んだ紛争は自力で解決するのが当然の世界でした。

そうした世界は滅び去ったわけではなく、
ザンギャックの庇護を離れて宇宙の大海原に逃れれば、その外に依然として広がっていたのです。
宇宙警察も依然として健在であり、そうした緩やかな秩序体制の中で
以前と変わらず悪質な組織犯罪に対する取り締まり活動をしていました。
ただ、宇宙の多数派の人々は宇宙警察には背を向けてザンギャックの支配体制を受け入れており、
宇宙警察としてもザンギャック帝国内のザンギャックの独自の法による支配体制の中の出来事に
口を出すことは出来ない状態でした。
もともと宇宙警察がカバーしようとしていなかった分野をカバーするために新たに作られたのが
ザンギャックの法である以上、宇宙警察の権限でザンギャックの法を左右することなど出来るはずがないからです。

だから宇宙警察はザンギャック帝国内でかなり非人道的な行為が行われていることは承知していたが、
それはあくまでザンギャックの司法判断でザンギャックの法に照らして正当なことだと解釈されている以上、
宇宙警察としては手を出すことは出来ず傍観するしかなかったのでしょう。
しかし同時にザンギャックの支配を逃れて宇宙の大海原に飛び出した者達が
ザンギャックと私的に紛争を繰り広げる行為に対しても宇宙警察はそれを個々人間の紛争として扱い
不介入方針を貫いたので、彼らザンギャックから逃れた者達を犯罪者として扱うこともありませんでした。

彼らは宇宙の大海原を誰の庇護も受けずに自己責任で生きていく道を選んだ者達であり、
かつてザンギャック帝国成立前は宇宙を航行する民は皆そのように生きていました。
ザンギャック帝国成立後は彼らのような生き方をする民の方が少数派となりましたが、
いわば彼らは「ザンギャック公民」に対比して「自由民」とでも呼ばれるべき存在だったといえます。

しかし帝国の支配下の民がその支配を勝手に脱すること自体がザンギャック帝国の法においては罪であったので、
ザンギャック政府は彼らを犯罪者として扱い、不法に宇宙を航行する「宇宙海賊」と呼びました。
つまりザンギャックから見れば帝国の支配から離脱して勝手に宇宙を航行する者が「海賊」なのであり、
それだけでも犯罪者として扱うべき存在であったといえます。
ただ、それはあくまでザンギャックの法における定義であって、
そもそも彼ら「海賊=自由民」たちはザンギャックの法に従う意思を持っていないのですから、
結局はザンギャックは彼ら海賊たちを捕えるためには戦って勝つしかない。

そうして宇宙の大海原ではザンギャックの官憲と海賊たちの紛争が頻発することとなり、
官憲側から見ればそれは不心得者の臣民を懲罰しているということになるのですが、
客観的に見ればザンギャックと海賊一味のそれぞれの利害の衝突する紛争ということになります。
宇宙警察から見ればそういうことになり、それゆえ宇宙警察はそれに不介入方針ですから、
海賊がザンギャックに殺されても、逆に海賊がザンギャック官憲を殺しても、
それらを取り締まり対象とはせず放置してきました。

そもそも宇宙警察から見れば、
もともと彼らのような「自由民」たちは「海賊」と見なすようなものではなかったのです。
もともと宇宙には彼らのように自己責任で自己の力で紛争を解決するような者達しかいなかったからです。
宇宙警察の法による犯罪者としての「海賊」の定義は、
もっと悪質かつ大規模なマフィアのような犯罪組織の構成員が船団を組んで
宇宙で活動しているような者達のことでした。

むしろ、そうした宇宙警察における「海賊」の定義に合せて、
ザンギャックは彼らの支配を脱した自由民たちを犯罪者扱いするために「海賊」という汚名を被せたのだといえます。
つまり、本当はザンギャックの圧政の犠牲者であり難民であったに過ぎない者達が
帝国に反逆して脱走したに過ぎないのですが、
ザンギャックの官憲は彼らをまるでマフィアの一員であるかのように濡れ衣を着せて悪質な犯罪者として扱い、
宇宙警察にもそのように告発したのです。

彼らが「海賊」と呼ばれたのはそういうわけだったのであり、
ザンギャックは宇宙警察にも彼ら自由民たちがマフィアの手先であるかのように捏造した被害届を出して、
宇宙警察にも追われる身としたのです。
マーベラス一味もザンギャックによってそうした濡れ衣を被せられて宇宙警察に告発されていたのであり、
第5話でジャスミンがマーベラスを逮捕する際に言っていた「諸々の海賊行為」というのは、
別にザンギャック兵との抗争の事実のことを指していたわけではなく、
ザンギャックから告発されていたマーベラス達のマフィアの手先としての組織犯罪への関与疑惑のことを
指していたわけです。

そして、それはバンの極秘調査の結果、
ザンギャックによる全くの捏造であり、マーベラス一味はマフィアとの関与など全く無く、
宇宙警察の取り締まり対象ではなかったことが判明し、
無罪放免となったというのが第5話の顛末であったのです。

もちろんバンは調査の過程でマーベラス達がザンギャックの施設を襲撃して
殺人や窃盗などを繰り返してきたことも確認したわけですが、
宇宙警察の法においては無法地帯である宇宙の大海原ではそれらの行為は
紛争の自己解決手段なのであり犯罪としては扱わないので、特に咎めることもしなかったのでしょう。

仮にもヒーローであるバンやドギー達がマーベラス達の殺人などの事実を知りながら放置したというのは
一見奇異ではありますが、
そもそもバン達も宇宙刑事として合法的に殺人を実行してきた立場であり、
その法が解決手段として適用されていない宇宙における個々の紛争において
宇宙刑事が殺人によって事態の解決を図ることを放棄している以上、
誰か別人、この場合はその紛争の当事者が殺人を犯してでも事態の解決を図るしかないのは当然です。
だからバンとマーベラスは基本的に同じことをしているのであり、
バンがマーベラスを非難する資格は無いといえます。

もちろんバンは自分の利害のために殺人を犯しているわけではなく、
公平な立場で公務を執行して社会正義を実現しているのであり、
それに比べてマーベラスはあくまで自分の利害のために殺人や窃盗を行っているのですから、
どっちが立派なのかといえば宇宙刑事であるバンの方がマーベラスよりもよほど立派だとはいえます。
しかし、そのバンの立派さはあくまで宇宙警察の法の適用される事案に限定された話であり、
例えばザンギャックとマーベラス一味の抗争において宇宙警察が割って入って公正な裁きをして
宇宙刑事によって正義を執行してくれるのならばマーベラスだって殺人や窃盗は犯さなくて済むのかもしれないが、
実際は宇宙警察はザンギャックと海賊の抗争には不介入なのだから
マーベラスは自分の手で自分の利益を守るために戦うしかないのであり、
マーベラスをそういう殺人者の立場に追い込んでいる責任の一端は宇宙警察にもあり、
バンやドギーのような宇宙刑事がマーベラス達のザンギャックとの抗争における自分の利益を守るための
殺人行為などを非難する資格は無いといえましょう。

ただ、別にマーベラス達は自分達の殺人や窃盗行為が立派だなどとは思っていないでしょう。
彼らも基本的には人間として殺人や窃盗という行為が正しい行為だとは思っていません。
実際あんまり気分のいいものでもないでしょう。
ただ生きていくため、自分の利益を守るため、自分の想いを遂げるためには
やらなければ仕方ないのだと割り切っているだけのことです。
そうして割り切らねば生きていけないのが彼らにとっての宇宙の現実なのだといえます。

彼らはもともとザンギャック帝国の支配下に暮らしていましたが、最初から帝国内では排斥された立場でした。
マーベラスもジョーもルカも幼少時に生まれ故郷の星をザンギャックに滅ぼされた難民の子であったようです。
マーベラスはチンピラのようにして暮らし、ジョーはザンギャック兵士の養成所に引き取られ、
ルカはスラムで迫害を受けながら戦災孤児たちの世話をして暮らし、
つまり3人とも最初からまともな市民として生きていたわけではない。
一種の帝国によって見捨てられた棄民といえます。

マーベラスは順調にアウトローになったようで、ジョーはザンギャック軍の実態に絶望して脱走し、
ルカは戦災孤児たちを救済する夢を叶えるために盗賊に身を落とし、
要するにこの3人は海賊一味に加入する以前からザンギャックの法に反逆した犯罪者であったのです。
ジョーもルカも犯罪者としてザンギャックに追われる立場となったため、
マーベラスの誘いを受けてザンギャックの法の外に生きる存在である海賊になったのだといえます。

ハカセは成長するまではザンギャック帝国の支配領域にある星でそれなりにまともな暮らしを送っていたようですが、
結局は故郷の星をザンギャックに滅ぼされて難民となり、
ザンギャックによって捨てられた民のうちの1人となり、
流れ着いた星で便利屋をしている時に出会ったマーベラス達を手助けしたために
ザンギャックに追われる犯罪者となり、マーベラスに誘われて海賊の仲間となりました。
アイムはファミーユ星の王女でしたが、ファミーユ星はザンギャックに滅ぼされて、
アイムは罪人として追われる立場となり、亡命先で出会ったマーベラス一味に自ら志願して仲間入りしました。
つまりハカセもアイムもザンギャックの法を破った犯罪者として追われる立場となって、
その結果、ザンギャックの法の外にあるアウトロー集団である海賊の仲間入りをしたことになります。

実際、海賊というのはそういう連中が多いのでしょう。
その罪状というのは宇宙警察の法においては確かに罪には問われないものなのかもしれないが、
ザンギャックの法においては確かに犯罪です。
そしてマーベラス一味の5人はザンギャック帝国内で生まれ育ったわけですから、
ザンギャックの法しか知りません。
だからザンギャックの法を違反して罪に問われた自分は犯罪者だという自覚は持っています。

自分達が邪な心で間違ったことをしたなどとは決して思っていませんが、
世間から見れば自分達はアウトローなのだという自覚はあるわけです。
「本当は自分達は海賊や犯罪者などではなく自由民と呼ぶべき存在だ」などという
宇宙の歴史に照らした高尚な思想などは全くありません。
アウトローは所詮はアウトローであり、自分達は社会から弾き出されたお尋ね者だという
コンプレックスはしっかりあるのです。

そういうアウトロー達が掃き溜めのように集まった場所が海賊団といものなのだということも彼らは知っています。
ならば彼らは自分達が海賊であることを誇ることなど出来ないはずです。
彼らは「海賊」という呼称が本来は宇宙警察で言うマフィアの一味の船乗り達という意味であり、
帝国を脱走した船乗りたちを「海賊」と悪しざまに呼ぶザンギャックの呼称自体が
不当なものであるという事実などは知りません。
彼らはあくまでザンギャックに押し付けられた常識しか知りませんから
「海賊」はあくまで「海賊」なのであり、彼らは犯罪者集団なのだという漠然とした印象を持っています。
そして実際に海賊一味の中にはもともとザンギャックの法を犯した犯罪者が多く、
もともとそういう者達は決して品の良い連中ではなくロクデナシが多かったのも事実です。

だからマーベラス一味の5人は「海賊」というものに良いイメージは本来持てないはずです。
実際、TV本編の通常回のオープニングナレーションでも「海賊の汚名」と言及されているように、
マーベラス達も「海賊」が汚名であるという認識は持っています。
「海賊」であること自体は決して誇らしいことではなく、
あくまで犯罪者の汚名なのだという認識はマーベラス達も持っているのです。

ところがそのナレーションでは
「海賊の汚名を誇りとして名乗るとんでもない奴ら」というようにマーベラス一味は紹介されています。
マーベラス達は海賊が犯罪者の汚名と認識しながら、それを誇りとして名乗っているのです。
そして、それはとんでもないこと、つまり稀有なことなのであって、
マーベラス達も海賊がみんな自分達のようにその汚名を誇りとして名乗るべきだと見なしているわけではないのです。
いや、海賊とは本来はみんな自分達のように誇り高くあるべきだとは思っているのかもしれませんが、
現実には決してそうではないことも分かっています。
そんな現実の中で自分達はある種、特別な海賊なのだと思っており、
だからこそマーベラス一味は「海賊の汚名を誇りとして名乗る」ことが出来るのだといえます。

ではマーベラス一味の何が他の現実の海賊と違うのかというと、
マーベラス一味の連中はアウトローが行き場を無くして仕方なく掃き溜めのように集まったのではなく、
あくまで夢を叶えるために集まったという自負があるという点です。
これが彼らの誇りの源だといえます。

彼らはみなザンギャック支配下では夢を断たれた者達であり、
夢を断たれたのは彼らだけではない。
数多くの人々がザンギャック支配下では無残な形で夢を断たれてきたのを彼らは目撃してきました。
彼らから見ればザンギャック帝国は人々が夢を見ることを許さない支配体制でした。
実際彼らはザンギャックの意向に反して自分の夢を掴もうとして罪に問われる羽目となりました。

そんな彼らがあくまで夢を掴むためには海賊になるしかなかった。
夢を掴むことが罪だとするならば、
なるほど確かにザンギャックから見れば
マーベラス一味は夢を掴むために集まった仲間であるゆえに犯罪者だといえます。
ならばその海賊という犯罪者としての汚名、むしろ夢を追う者として誇りをもって名乗ってやろう。
そうしたマーベラス一味の反骨精神が通常回のオープニングナレーションの真意といえましょう。

だから彼らは自分達が海賊であることに誇りを持っています。
しかしそれはあくまでマーベラス一味という「夢を掴むために集まった稀有なる海賊」に限った話であり、
マーベラス達が海賊全般に誇りを持っているわけではなく、
一般的には海賊というものは誇るべき存在ではなく、
世間からは単なるアウトロー集団だと思われているということも分かっています。

また、マーベラス一味が夢を掴むために集まった特別な海賊だということは仲間内の限定的な了解事項に過ぎず、
世間一般から見れば自分達も他の海賊同様、単なるアウトロー集団として扱われるのだということも
マーベラス達は自覚しています。

そもそも「夢を掴むために集まった」ということを誇りには思っているといっても、
それはあくまで夢を掴みたいという自分の中から湧き上がる想いに忠実であることに誇りを感じているに過ぎず、
世間に対して誇れるようなことだとはマーベラス達も思っていません。
夢を掴むといってもあくまで自分達の身勝手な欲望に過ぎないという謙虚な気持ちはあります。

誇りといっても内心のものであって、他人に対して驕る気持ちなどはありません。
自分達が聖人君子だなどとは思っていませんし、
むしろアイムを除いては大して育ちも良くない彼らは自分達のことを
世間的にはロクデナシの一種であり、不良集団だと思っています。
間違っても立派な集団だなどとは思っていません。

夢といっても自己の欲望を叶えようとしているだけのことであり、
世間にはそんな自分達よりももっと立派な人達も存在していることはマーベラス達も分かっています。
それは自己の欲望よりも公共の利益を第一に考えて献身的に行動するような人達です。
医者や教師や福祉に携わるような人達の全てがそうだとは言いませんが、
そういう仕事をしている人の中には確かにそういう人達がいます。
そんな人たちの方が自分達よりもよほど立派だとマーベラス達も分かっています。

立派だと分かっていてどうしてそういう生き方をしないのかという意見もあるでしょうが、
人生とはままならないものであり、例えば十分な教育を受ける機会なども無かったであろうし
彼らは彼らの人生の与えられた条件の中で懸命に生きて
結局は自分の夢を掴むために戦う道を選ぶことになった、そういう運命だったのだと言うしかありません。

ただ、そんな彼らでも夢を追う海賊である自分達よりも
公共のために献身する立派な人達が存在することは分かっています。
腐敗しきったザンギャックの官憲などは論外としても、
宇宙警察の刑事たちなどはマーベラス達から見ても尊敬すべき立派な存在だったとはいえます。

第5話でもマーベラス達は宇宙警察地球署の刑事たちに対して敵意は見せておらず、
それなりの敬意を払っていました。
ただドギー達が事実誤認に基づいてマーベラス達を逮捕しようとしていたので
マーベラス達が感情的に反発して衝突していただけです。
そうした衝突さえなければ、決してマーベラス達の方から宇宙警察に敵意を示すことはなく、
むしろ敬意を抱いているように見えました。

ただ、かといってマーベラス達が宇宙警察に対して好意を示していたようにも見えませんでした。
このあたり、どうも屈折した心理があるようで、
マーベラス達自身は宇宙警察に対して内心それなりに敬意を払っている一方、
マーベラス達はどうせ自分達のようなアウトローのことを
宇宙警察は嫌っているのだろうと卑下しているように見受けられます。
実際に世間で冷たい視線に晒され続けてきた彼らからすれば、
宇宙のエリート集団である宇宙警察の刑事たちから見れば
自分たち宇宙海賊などはくだらない連中だと思われているのだろうというコンプレックスはあるようです。

ただ裏社会に身を置く彼らとしては、
一応自分達の行為が宇宙警察の法における取り締まり対象である
「海賊行為」には相当しないということは把握しています。
だから敵対的関係でないことは分かっているのですが、
それでもエリートと底辺、法の執行者とアウトローというように、
あまりに対極にある両者は「所詮は住む世界が違う」とマーベラス達は冷めた認識であるようです。

だから第5話でザンギャックに被せられた濡れ衣に基づいてドギー達に逮捕されそうになった時、
マーベラス達は所詮は宇宙刑事などは自分達のことを理解しようともしないのだと思い
怒りを感じて反発したのですが、
実はドギーがバンに命じて真相を調べてくれていたことを知り、
濡れ衣を晴らしてもらって、宇宙警察と分かり合うことが出来たように思って嬉しく思ったのでした。

ところが今回、また別の宇宙刑事が宇宙警察から派遣されてきて
「海賊行為」の容疑で自分達を逮捕するというのですから、マーベラス達は驚き、非常に不快に感じました。
地球署が自分達の濡れ衣を晴らしてくれたはずなのに、
どういうわけでまた宇宙警察で自分達が罪人扱いになったのか、マーベラス達にはよく事情は分かりませんでしたが、
おそらく再度ザンギャックが自分達がマフィアの手先だとか何だとかいう捏造の告発をして、
よく調べもせずに宇宙警察本部がそれを鵜呑みにして、
このギャバンとかいう宇宙刑事を派遣したのだろうと思いました。

そう考えると、やはり宇宙警察はデカレンジャーの地球署はともかくとして、
やはり海賊のことなど基本的に見下しており、
社会の底辺の海賊の言い分など聞く耳も持たずにザンギャックの言い分の方を一方的に信じてしまうような
鼻持ちならないエリート集団なのだと思えてきて、マーベラス達は非常に不愉快に思えたのでした。

アイムやハカセの抗議を受けても
それに全く反応することもなく無言で階段を降りてくる銀色のコンバットスーツに身を包んだギャバンの姿を見て、
海賊の言い分など聞く必要も無いという傲慢な態度を見てとって、
マーベラス達5人の顔色は変わり、心の底から怒りが湧き上がってきました。

呆れたように「・・・問答無用ってわけか・・・」と呟きながら
ジョーが一歩前に出てマーベラスに並びギャバンを睨みつけ、
マーベラスは所詮は自分達は宇宙の嫌われ者のアウトローなんだという諦念を込めたふてぶてしい表情で
顔を歪めて軽く冷笑しながら、黙ってレンジャーキーを取出し、
モバイレーツを開くとレンジャーキーを突き出して「豪快チェンジ!!」とコールしました。
同時に他の4人も同じようにモバイレーツを構えてレンジャーキーを突き出し
「豪快チェンジ!!」とコールし、5人は一斉にゴーカイジャーの姿に変身します。

とにかく自分達は宇宙警察に逮捕されるような罪は犯していない。
一点の曇りも無い人生とは言い難いことは自覚しているものの、
ザンギャックのデッチ上げた罪状などで捕まるのは真っ平御免です。
相手の宇宙刑事が問答無用で自分達を逮捕するというのなら、戦ってでもこの場を切り抜けるしかない。
それにこの分からず屋の宇宙刑事に宇宙の底辺と見下される宇宙海賊の気概というものを見せつけて
思い知らせてやりたいという想いもマーベラス達にはありました。
これに対してギャバンは「ジュオオウッ!」と特徴的な掛け声を上げて大きくジャンプして、
突進してくるマーベラス達5人の中に飛び込んで、
たった1人でゴーカイジャー5人に対して真っ向勝負を挑み、両者は乱戦に突入していったのでした。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 07:22 | Comment(1) | 海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月09日

海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE 感想その3

さて、ゴーカイジャーとギャバンの戦いが夜の公園で始まりました。
どうしてこの映画の最初の等身大戦闘シーンが夜の屋外であるのかというと、
それはおそらく全身に電飾を施した戦士であるギャバンが最も映える戦闘場面が夜間の屋外戦闘だからでしょう。
この映画を観に来た子供たちにとってはおそらく初見であるはずのギャバンという戦士の
一番カッコイイ姿を印象づけようという狙いなのでしょう。
そういう意図のある場面ですから、成り行きとしてここはギャバンがカッコよく描かれ、
子供たちにとってのヒーローであるゴーカイジャーを圧倒します。

さて、そういう意味合いの戦闘場面で戦い始めたゴーカイジャー5人とギャバンでしたが、
さすがに伝説の宇宙刑事というだけあってギャバンは強く、
機先を制して1人でゴーカイジャー5人に囲まれながら逆に押し返します。
マーベラス達はいつものようにゴーカイガンとゴーカイサーベルを持っての戦いですが、
一方のギャバンは素手で戦っています。
それでギャバンの方が押しているのですからギャバンの強さは相当なものです。

ギャバンは既に老人といえる年齢のはずですが、大して衰えてはいないようです。
それになんといってもギャバンのコンバットスーツの性能が優れており、
ギャバンの戦闘力を増幅し、見事な身のこなしを可能とし、
素手でゴーカイサーベルを受け止めることも出来るのです。

しかしマーベラス達5人の方も普段のザンギャック相手の戦いの時よりもいささか精彩を欠いているといえます。
これは、基本的にマーベラス一味は宇宙警察と敵対する立場でないため、
宇宙刑事との戦いに慣れていないというのが1つの理由です。
ただそれはギャバンもお互い様であるはずです。
だからマーベラス達が押されているのは別の理由があります。
それはマーベラス達はギャバンとの戦いにいまいちモチベーションが上がらないからでしょう。
宇宙警察はマーベラス達にとって根本的に敵意を向ける対象ではないからです。

マーベラス達にとってザンギャックは彼らの存在意義的に根本的な敵なので、
ザンギャックとの戦いはマーベラス達はモチベーションは上がります。
また、地球に来てからザンギャック以外にマーベラス達が戦った相手としては
黒十字王の一味やガイアークやリュウオーンなどがいますが、
これらは明確にイカレた破壊者や侵略者たちであったので、
地球を守ろうと決意していたマーベラス達にとっては十分に戦って倒す理由は持てる相手でした。

そしてもう1つ、マーベラス達が戦いにおけるモチベーションを高めることが出来るシチュエーションというのは、
これもまた自分達のアイデンティティともいえる「宇宙最大のお宝」の獲得に繋がる戦いです。
それゆえマーベラス達はバスコ相手にも全力を発揮して戦うことが出来ます。
また幽霊船の船長ロスダークとの戦いも「宇宙最大のお宝」の獲得を目的としたものであったので
最大限のモチベーションで戦うことは出来ました。

ところがこのギャバンとの戦いはお宝探しは関係無く、地球を守る意義があるわけでもなく、
根本的にはマーベラス達は宇宙警察と戦うことに意義も感じていません。
もちろんマーベラス達は問答無用で襲ってきたギャバンに対して怒りを感じており、
本気で倒す意思をもって戦っているのですが、
それは所詮はチンピラの喧嘩のようなものであって、命懸けの勝負というほどまでには集中出来ていないといえます。

実際、第5話の時に同じような状況でマーベラスが宇宙警察地球署のドギーと戦った時も
マーベラスは手錠をしていたとはいえドギーに敗れており、
その後ドギーが遅れをとったザンギャック怪人をマーベラスは手錠をしたまま翻弄しており、
要するにマーベラスは宇宙警察を相手にした時はザンギャック相手にした時ほどには
全力を引き出すことが出来ないようです。
それは根は善良な連中であるマーベラス一味の全員に共通した傾向であるようで、
ギャバンを倒そうとして確かに本気で戦ってはいるものの、彼らは全力を発揮することが出来ていないようです。

彼ら自身、自分達の調子がイマイチだということは自覚しており、
更に手合せしてみて、このギャバンという宇宙刑事が全力で戦わなければ勝てそうにない相手だということも分かり、
このままではマズいと焦りました。
そこでマーベラスがなんとか相討ちのような感じでギャバンを押し返して動きを止めたところに
他の4人はゴーカイガンの一斉射撃でギャバンを撃ちまくりギャバンを後退させ、
ここから気合いを入れ直して反撃に転じることにします。
マーベラスが「いくぞぉっ!!」と号令をかけ、4人も「おう!!」と応じて一斉に突撃し、
マーベラス達5人は先ほどよりは集中力を高めて戦いに臨みます。

しかしギャバンもマーベラス達の反撃を受けて更に気合いを入れたようで、
果敢に突っ込むとジャンプして「スパイラルキック!!」と技名を叫びつつ、ルカとアイムを蹴り飛ばし、
そこに斬りかかってきたジョーとハカセの攻撃をジャンプしてかわすと、
素早い動作で右腕にバードニウムエネルギーを溜めて「レーザーZビーム!!」と叫んで破壊光線を発射、
ジョーとハカセは「わあああっ!!」と吹っ飛ばされます。
更にそこに襲ってきたマーベラスの攻撃をかわすと
ギャバンは「ジュオオオッ!!」と叫んで大きく跳び上がって建物の上に登り、
そこで自身の主要武器である片手持ちの剣レーザーブレードを出して構えました。

最初は素手で普通に戦っていたギャバンでしたが、ここに来てマーベラス達に合せてギアを更に一段上げたようで、
多彩な技を繰り出した挙句、必殺武器まで取り出してきて本気モードのようです。
慣れない戦いにイマイチ調子の出ていないマーベラス達に対比して、
ギャバンの方は逮捕状の出た犯罪者を制圧する戦いは手慣れたものであり、全力をしっかり発揮出来ているようです。

「野郎!!」と怒鳴ってギャバンのいる建物の上に跳び上がったマーベラスは、そこでギャバンと激しく斬り合いますが、
やはりイマイチ調子の出ていないマーベラスはギャバンの剣技に圧倒されて
「うわあああっ!!」と地面に落下してしまいました。

しかしタフなマーベラスはすぐに「やるじゃねぇか!」と身を起こし、
そこに集まって来た他の4人の仲間と共に「・・・だったらこれだ!」とレンジャーキーを取出して
ゴーカイサーベルのシリンダーに挿し、
「ファ〜イナルウェ〜イブ!!」というコールを発するゴーカイサーベルを5人が一斉に振り下ろすと、
必殺技ゴーカイスラッシュの5色の三日月型の衝撃波が発射され、
建物の上に立つギャバン目がけて飛んでいきました。
いよいよ追い詰められたマーベラス達はさすがに本気モードになり、全力で必殺技を放ったのでした。

これで倒せるはずだと確信したマーベラス達でしたが、
なんとギャバンは「バリアー!!」と叫んで前方に光の壁を出現させ、
ゴーカイスラッシュの衝撃波を防いでしまいました。
このギャバンバリアーもレーザーZビームなど同様、
ギャバンのコンバットスーツに組み込まれた多彩な装備のうちの1つです。

しかし、そんな装備のことは知らないマーベラス達は驚愕しました。
「嘘!?効かない・・・?」とルカは信じられないという風情で唖然とします。
今までファイナルウェーブをバスコやダマラスのように力で撥ね返した者はいましたが、
このような奇妙な技で防御された経験は無く、マーベラスも「マジか・・・!?」と愕然として立ち尽くしました。

その隙にギャバンはマーベラス達を見下ろしたまま「レーザーブレード!」と叫びながら、
手にしたレーザーブレードにバードニウムエネルギーを注入し、最大出力の光の剣とし、
同時にギャバンのコンバットスーツの目の部分が赤く光ります。
バードニウムエネルギーというのはバード星人であるギャバンの持つ特殊生体エネルギーで、
宇宙警察の本拠地のあるバード星で開発されたギャバンのコンバットスーツやレーザーブレードは
一連の動作を経てこのバードニウムエネルギーを注入することによって最大出力を発揮します。

そうして最大出力となったレーザーブレードを用いて放つ技といえば、
ギャバンの1982年版のTV本編では「ギャバンダイナミック」というギャバン最大の必殺技と相場が決まっており、
往年のファンはレーザーブレードが白く輝き、ギャバンの目が赤く光れば
当然ギャバンダイナミックが拝めるものと期待する場面となりますが、
ここではその期待を裏切るように、ギャバンが「ジュアアアッ!」と叫んでレーザーブレードを振り下ろすと、
その刀身から発していた光がロープのように伸びて飛んでいき、マーベラス達5人に巻きついて、
5人をまとめて縛り上げてしまったのでした。

そしてこの光のロープはそのまま5つに分割して
5人をそれぞれ別々に縛る光の輪となって5人の両手の動きを封じてしまいます。
その拍子に「うわっ!?」と倒れた5人は起き上がることも出来ず、
しかもエネルギーを輪に奪われたのか変身も解除してしまい、
マーベラスは「なにぃ・・・!?」と、あっという間に囚われの身となったことに驚きます。

ギャバンは本来は敵を倒すために使うレーザーブレードのエネルギーを
拘束用の技にアレンジして用いたのです。
これはこれで素晴らしい剣技ですが、
いつもならば抵抗する犯人はギャバンダイナミックでその場で倒すギャバンが、
今回はどうもマーベラス達をあくまで生かしたまま逮捕することに拘っていたようです。

となるとギャバンはあくまでマーベラス達を殺してしまわないように手加減をして戦っていたことになります。
つまりギャバンもまた全力を出して戦っていたわけではない。
全力を出し切れなかったマーベラス達と、逮捕という目的のために全力を出せなかったギャバンの双方ともに
条件は同じであったはずなのに、結果がこのように差がついたのはどうしてなのかというと、
それはやはり年の功というものでしょう。
歴戦の勇者であるギャバンは力をセーブしても効率よく勝利するコツを掴んでおり、
まだ若いマーベラス達は全力で戦えば強いが、
全力を出し切れない場ではギャバンほどには上手く戦うことはまだ出来ないのです。

起き上がることが出来ずに呻くマーベラス達5人の傍に飛び降りてきたギャバンは
マーベラスの懐からモバイレーツを奪うと、自らも変身を解除して生身の姿となりました。
突如現れたメタリックシルバーのボディを持った宇宙刑事ギャバンと初対面であったマーベラス達は
ギャバンのその姿が変身態であったこともよく分かっていなかったので、
変身解除後に人間の姿が現れたことに驚いてギャバンの本来の姿を見つめます。

それは茶色い革ジャンを着た初老の男で、
没収したモバイレーツを一瞥するとマーベラスの方をチラリと見て
「銀色の輝きは・・・伊達じゃないぜぇ?」と何やらキザなセリフを言って
指を二本立てて軽く頭に添えて突き出して敬礼してみせます。
若い頃からの口癖ですが、まぁあまり意味は無いセリフで、
大して面白くはないが、冗談のようなものです。

そしてギャバンは通信機を取り出して「こちらギャバン・・・例の海賊どもを逮捕しました・・・」と
何者か、おそらく宇宙警察の上司に向かって報告をしました。
といってもギャバン自身が宇宙警察ではそれなりに高い地位であろうし、
年齢的にもかなりのベテランであろうと思われるので、
そのギャバンの上司となると、宇宙警察におけるかなりの高官ということになります。
このギャバンを派遣してのマーベラス一味を逮捕する作戦の責任者は宇宙警察のかなりの高官であるようで、
地球署などのレベルを超えた宇宙警察本部のハイレベルなところで意思決定された作戦のようです。
どうしてそんな宇宙警察の中枢あたりがチンケな海賊であるマーベラス一味の逮捕に
そこまで前のめりになっているのか、ちょっと不可解ではあります。

さて、ここでこの映画の中で初めてギャバンの素顔が明らかとなったわけですが、
最初から声でバレてましたが、やはり演じておられるのは大葉健二さんでした。

ちなみに変身解除後もギャバンは役名はあくまでギャバンです。
例えばアカレンジャーならば変身解除後は海城剛、
ゴーカイレッドならば変身解除後はマーベラスというように本名で呼ぶことになるのですが、
ギャバンの場合は変身前も変身後もギャバンが本名であり呼び名です。
1982年放送の「宇宙刑事ギャバン」の中ではギャバンは地球では「一条寺烈」と名乗っていましたが、
これは地球で潜入捜査するにあたって仮に名乗った地球での通り名であって本名ではありません。
あくまでバード星人であるギャバンの本名はギャバンなのです。

ちなみにギャバンは宇宙警察(銀河連邦警察)の本部のあるバード星生まれのバード星育ちですが、
実はバード星人の宇宙刑事ボイサーが地球担当刑事として赴任した時に出会った日本人女性を妻として迎え、
両者の間に生まれたバード星人と地球人のハーフがギャバンであり、
母親の旧姓が「一条寺」だったため、母の故郷である地球に赴任したギャバンは
何か地球で正体を隠して活動するための通り名が必要だということから、母の旧姓「一条寺」を名乗ったのです。

よって、現在はもう地球で潜入捜査をする身の上でない以上、
ギャバンは「一条寺烈」という仮名を名乗る必要性も意味も無く、
あくまでこの映画内ではギャバンは常に本名のギャバンなのであって、
「一条寺烈」という往年の視聴者にお馴染みの呼び名は一度も登場しません。

そのギャバンを演じるのは、
既に紹介したように1982年当時「宇宙刑事ギャバン」においてギャバンを演じたオリジナル役者の大葉健二氏です。
大葉さんは「ゴーカイジャー」の物語世界においては既に2回登場済みです。
最初は第16話と第17話の間の時系列のエピソードである「199ヒーロー大決戦」映画の中で
元デンジブルー青梅大五郎の役で出演し、
続いて第44話のクリスマスエピソードで元バトルケニアの曙四郎役として出演しました。
それらに続いて今回、大葉氏は3回目の出演、しかも毎回違う役での出演となります。

だから既にこのブログでも大葉健二という役者については説明済みですので、ここではいちいち紹介はしませんが、
ギャバンの役柄との関係でいえば、
この映画撮影時に56歳の大葉氏が何歳のギャバンを演じたのかという点はちょっと気になるところです。
ただギャバンは1982年の本編でも年齢設定がハッキリしていませんでした。
そもそも地球人でないので年齢も何だかよく分からないのですが、
バード星人というのは基本的には地球人と同一種族であるらしく、歳のとり方や寿命も同じようなものらしい。
だから見た目が20歳代半ばであったギャバンはその見た目相応の年齢だったと思われ、
それが地球人と同じようなペースで年齢を重ねて、当時から劇中時間で33〜34年が経っている現在、
ギャバンは60歳前ぐらいということになります。

要するにもともとのギャバンの見た目から類推される年齢設定が大葉氏の当時の実年齢のまんまだったのですから、
レジェンド大戦後数年分の劇中誤差が3年ほどあるとはいえ、
まぁ大葉氏の見た目そのままの年齢が現在のギャバンの劇中年齢そのままで全く違和感は無いわけです。

その60歳手前というギャバンの年齢ですが、
宇宙警察がどういう就業規則になっているのかは分かりませんが、
もし宇宙警察にも定年制があるとするなら、ギャバンもそろそろ定年間近、
少なくとも刑事として現場の第一線からはそろそろ引退を迫られる頃なのかもしれません。
これだけ戦えるのですから引退する必要などはないようにも思えますが、
あくまで公的機関ですから誰でも規則には縛られるのであり、それはギャバンとて例外ではない。
何にしても長い刑事人生がそろそろ終着点を迎えようとしている年齢だと言っていいでしょう。

そうした超ベテラン刑事のギャバンですが、
確かに白髪混じりの頭は年齢は感じさせるものの、他の見た感じはまだまだ若々しく、
スーツなど着たりせず、相変わらず若い時と同じようにトレードマークの茶色い革ジャンを羽織っています。
何やら面白くない冗談めいたことも言ったりして、性格も若い頃とあまり変わっていないようです。

この映画ではお話の展開上ギャバンは割とシリアスな場面が多いですが、
1982年の本編のギャバンは基本的に明るくノリの良いお調子者の熱血漢で、
捜査や戦闘、訓練などは至って真面目ですが、日常生活ではお気楽でひょうきん者、
子供好きでちょっといい加減なところのあるユルい男でした。
それでいて男臭くダンディで、熱い心を持っており、ユーモアを好む余裕のある大人の男という風情で、
いわゆるハードボイルドというヤツです。
当時イメージとしては「スペースコブラ」や「ルパン三世」のルパンのような、
渋くて面白カッコいいヒーローであったと思います。

この映画ではストーリー展開上、そういうギャバンのコミカルな側面はあまり強くは描かれていませんが、
そういうコミカルな面は大葉氏の役者としての持ち味でもあるので、
随所でとぼけた味わいを出して、それがギャバンの老刑事としての余裕や哀愁を
絶妙に湿っぽくならないレベルに調整して、
マーベラスに対する大人の男の接し方の味わいを上手く醸し出していると思います。

さて、物語に戻りますと、その後ギャバンはマーベラス達5人のモバイレーツを全部没収すると、
5人をドルギランに収容してそのままドルギランを操縦して何処かに向かって飛んでいき、
そうしていると夜が明けてきました。

小さな窓から朝日が差し込んできたドルギラン内の牢屋の中に閉じ込められたマーベラス達5人は項垂れています。
5人には何やら特殊な形の手錠が掛けてあります。
ドギーやジャスミンが使っていた宇宙警察の標準装備の手錠とはまた異なった特殊な形状で、
ギャバンの所属する特別捜査チーム専用のものであるようです。

それを外す方法を思案するようにじっとその手錠を眺めていたルカは結局は解除方法が思いつかなかったようで、
「・・・何なのよもう・・・!」と苛立ちを込めて溜息をつくと、
手錠を牢屋の鉄格子に強く叩きつけて「何でこんなことになるわけ!?」と怒鳴ります。
せっかく「宇宙最大のお宝」まであと一歩というところまで迫りながら、
身に覚えの無い罪で宇宙警察に逮捕されてしまったことが悔しくて堪らないのです。

一方、牢屋の真ん中でへたり込んだハカセは床を見つめて
「・・・どうしよう?・・・海賊行為の罪って確実に死刑だよね・・・?」と毎度のごとく弱気な声で不安を口にします。
ザンギャックに賞金首にされて、その賞金額が最近はつり上がってきても平気な様子となっていたハカセですが、
不当な侵略者であるザンギャックによる刑罰のことは軽く見ることは出来るようになったハカセも、
正当な警察機関として内心認めている宇宙警察の刑罰は
リアリティのあるものとして恐怖の対象のままであるようです。

その宇宙警察の法では海賊行為の罪は重く、死刑が課されるものであるようです。
マーベラス達は海賊を名乗っていますが、それはあくまでザンギャックに被せられた汚名であって、
自分達が宇宙警察の取り締まる対象である「海賊行為」、
つまり組織的な略奪や危険物の密輸などをビジネスとして行っているような者ではないということは
マーベラス達ももちろん分かっています。
しかし宇宙警察は自分達がそうした海賊行為を行ったのだと誤解しているようだから、
このままでは海賊行為に相応の刑罰、つまり死刑に処されてしまう。
弱虫のハカセはそのことが怖いのです。

しかし、鉄格子にもたれてハカセの言葉を聞いてジョーは
「・・・だったらひとおもいに片付けられてもよさそうなもんだがな・・・?」と軽く言いながら
自分の手を拘束した手錠を掲げてみせました。

確かに海賊行為は死刑が当然であり、自分達はその海賊行為をやったと決めつけられており、
しかも逮捕を拒んで抵抗して刑事を殺そうとして戦った。
立派な公務執行妨害罪のオマケ付きです。
もともと死刑相当で抵抗までしたのですから、
宇宙警察のルールにおいては、これはその場で殺されても仕方ないといえます。
それなのにどうして自分達は殺されず、こうしてわざわざ手錠を掛けられて何処かに連行されているのだろうか?
ジョーはそのことがどうも引っ掛かっていました。
あるいは宇宙警察は自分達を殺すつもりではなく、
何か別の目的があって連行しているのではないかともジョーには思えました。

しかし、あくまで弱気なハカセは悪い方に悪い方に考えるようで、
立ち上がるとジョーに縋りついて「見せしめに公開処刑とか・・・そういうの考えてるんじゃない?」と
マイナス思考なことを言います。
ジョーが相手にしないように無視すると、ハカセは今度は席に戻っていたルカに縋りついて
「やだぁ!そんなの絶対やだあああ!!」と喚きます。

ハカセはとことん死ぬのが怖いようで、これはこれで1つの必死で生きていく力ではありますが、
ルカは死ぬことよりも宝が手に入らないことの方が辛い性格なので、
このハカセのひたすら命を惜しむ姿が鬱陶しくなって、手錠でハカセの頭を殴り飛ばして黙らせ、
それに合わせるようにルカの横に座っていたアイムが「まだ鎧さんがいます!」とハカセをたしなめました。

あの場で自分達が殺されなかったということは、
とにかく宇宙警察はすぐに自分達を殺すつもりはないのだろうとアイムも思いました。
あるいはハカセの言うように宇宙警察は公開処刑でも考えているのかもしれないとはアイムも思いましたが、
そうだとしてもそれなりの準備が必要ということになります。
ならばすぐに殺されるというわけではなさそうです。
それならばきっとそれまでに鎧が助けに来てくれるはずだとアイムは思ったのです。

そのアイムの言葉を聞いて、ルカは失礼なことに今の今まで鎧の存在を忘れていたようで、
ハッとしてアイムの方を振り返って「・・・そうよ!」と叫ぶと、
満面の笑顔で「鎧に夜食の買い出し頼んで大正解!」と得意げに言いました。

どうやらガレオンがドルギランに襲われた時に鎧だけがガレオンに乗っておらず
買い物袋を提げて街に居たのは、ルカに夜食の買い出しのパシリをさせられていたからであるようです。
そのお蔭で鎧だけは逮捕されずに済んだ。
あれだけ派手に市街地上空で空中戦をやったのですから、
鎧もガレオンが襲われたことは把握しているはずであろうし、
今はもう仲間5人が連れ去られたことも分かっているでしょう。
だからきっと鎧が豪獣ドリルで救出に来てくれるはずだとルカもアイムも思いました。

「あいつに期待するしかないか・・・」とジョーも呟きます。
ジョーももちろん鎧だけが無事であり、自分達を救出するために動くであろうことは予想していましたが、
果たしてルカの言うほど期待出来るのかどうか懐疑的ではありました。
鎧がすぐに事態に対応出来たのであればギャバンとの戦いに加勢に現れたはずで、
それが出来なかったということは鎧はガレオンが襲われたことには気付いても、
誰が襲ったのか、仲間が何処に連れ去られたのか、そういう詳細は把握していない可能性が高い。

ガレオンは海上に無事に残っており、
ガレオンのメインコンピュータを使えば5人のモバイレーツの位置情報は検索できるが、
ガレオンのメインコンピュータは墜落のショックで一時的にダウンしており、
ナビィの手で復旧するまで多少時間はかかるだろう。
それにフリージョーカーの時のように宇宙警察の円盤にも
モバイレーツの信号を妨害するシステムもついているかもしれない。
だから確実に鎧が自分たちの危機に間に合うぐらい早く助けに来ることが出来るか、
確率は五分五分ぐらいだろうとジョーは思いました。
しかし、もし宇宙警察が自分達を処刑しようとしているなら、もう後は鎧に期待するしかない。
ジョーは溜息をつき、牢屋の端に座り込んで黙ったままのマーベラスの方を見ました。

マーベラスはずっと怒りの形相で押し黙ったままでした。
死ぬことが怖いわけではないし、お宝を目の前にして挫折したことを悔しがっているわけでもない。
マーベラスは海賊の誇りを踏み躙られたような気がして、それが我慢ならなかったのです。

いや、海賊など一般的には単なるゴロツキの集まりで、
確かにマフィアの手先のような仕事に手を染めているクズが多いこともマーベラスも分かっています。
しかし自分達は確かに下品な乱暴者ではあるが、それでもそういう心底クズなゴロツキ連中とは違う。
いや、自分にとっての「海賊」とはそういうくだらないものではないのだという強い自負がマーベラスにはあります。

それはつまり自分達は夢を掴むために集まった仲間だという誇りなのですが、
最初にジョーを仲間に誘った時からマーベラスは夢を掴むために航海をしていると言っていました。
その「海賊=夢を掴むための航海をする者」というマーベラスの考え方は
アカレッドに航海に誘われた時に生まれたものであるように一見思えますが、
よく考えたらマーベラスはアカレッドに出会った時点で「海賊」と自称していました。

実質的には船も無く航海にも出たこともない単なるチンピラで、
「海賊」とは言い難い存在だったはずなのですが、
何故かマーベラスは「海賊」と自称していました。
それはつまり「海賊」に憧れていたということを意味します。
そしてアカレッドの誘いに即座に応じることが出来たということは、
もともとマーベラスの中で「海賊=夢を掴むために航海する者」という考え方があったからだと思われます。

あの時のマーベラスとアカレッドの初対面時の問答を振り返ってみると、
マーベラスの心の中にあの時点で既に「宇宙最大のお宝」への憧れが存在したのは確実であり、
「海賊は宇宙最大のお宝を掴むために航海するものだ」という考え方も存在していました。
ただ単にマーベラスはあの時までは、「しかしそれは伝説のお宝であって実在はしない」と決めつけていただけです。
しかし実在はしないお宝であり非現実的な夢だと分かっていながら、
それでもマーベラスはそのことをずっと心に留めており、海賊への憧れも捨てていなかった。

つまりマーベラスは「海賊とは宇宙最大のお宝という夢を掴むために航海するものだ」という考え方を
幼稚で非現実的だと卑下しながらも、それでもその考え方を個人的には大切にして生きていたのです。
それはアカレッドに出会った頃のマーベラスにとって既にとても大切なことであったのです。
だから幼稚な思い込みだと恥じながらも、
アカレッドに欲しいものは何なのか質問された時、マーベラスは「宇宙最大のお宝」だと答え、
海賊はそれを掴もうとするものだと言い、でも所詮は伝説だと自嘲して照れ隠しをしたのです。

それに対してアカレッドが「宇宙最大のお宝」は伝説ではなく実在すると言い、
そんなふうに諦めたら手に入らないのだと諭したので、
マーベラスは「宇宙最大のお宝」を現実の目標として行動を開始する決意が出来たのです。
そういう意味でやはりマーベラスにとってアカレッドとの出会いは非常に重要な出来事ではあります。
しかしマーベラスにとってアカレッドとの出会いは「夢を現実に移すきっかけ」であって、
アカレッドとの出会い以前からマーベラスには今と同じ「夢」はあったのです。
そして、その「夢」と「海賊」というものは既にその時点でセットになっていた。

ジョーもルカもハカセもアイムも鎧も、マーベラスと出会った時点で既に「夢」を持った者達ではありましたが、
それは「海賊」と結びついてはいませんでした。
ジョー達の「夢」に「海賊」という要素を結びつけたのはマーベラスです。
それぐらい、普通の人間にとって「夢」と「海賊」という要素は結びつきにくいものなのです。
「夢を掴むために航海する海賊」であるマーベラスというインパクトある存在との出会いがあってこそ、
彼らは「夢」と「海賊」を心の中で結びつけてマーベラス一味の一員となることが出来たのです。

ところが、その当の本人であるマーベラスの心の中で「夢」がどうやって生じて、
「夢」と「海賊」がどうやって結びついたのか、
アカレッドとの出会いまで遡って見ても、まだ謎なのです。
そのマーベラスの「夢」の原点、「海賊」としての原点はアカレッドとの出会い以前に存在するはずです。

しかし、ザンギャック支配下において「海賊」というのは決して肯定的な存在ではないはずです。
それなのにどうしてマーベラスは「海賊」に憧れを抱き、それが「夢」と繋がったのか?
何かよほど特殊な経験があったのではないかと思われます。
それが何なのかは未だ不明ながら、
とにかく世間的にはどうであろうともマーベラス個人にとっては「海賊」とは「夢」そのものなのであり、
それはマーベラスの昔からの固い信念なのです。
おそらくその確信はマーベラスの人生そのものだと言ってもいい。

だから、それが否定されたことがマーベラスには許し難いことであったのでした。
自分は普通のマフィアの手先のような下衆な海賊たちとは違う。夢を掴むために航海してきた。
もちろん殺しも盗みも一通りの悪事はやってきたが、
それはザンギャックと戦って生き抜いて夢を掴むためであって、
殺しや盗みやそれによって財産を得ること自体が目的だったわけではない。

もちろん、だからといって自分が殺人者や破壊者であるという事実が消えるわけでもないことも分かっている。
だからザンギャックと戦って死ぬこともある意味では因果応報で仕方ないとも思っている。
自分が真っ白で綺麗な人間だなどとは思っていないし、自分の手は汚れまくっているとも分かっている。
だが、自分の人生を支えてきた「夢を掴むために航海する海賊」の誇りだけは汚されることは許せない。
夢のために悪事も重ねてきたが、それはそれだけ夢に向かって純粋だったからだ。
いや、夢のために重ねた罪の重さを自覚しているからこそ、
夢を掴むために進んできたのだという事実だけは曲げたくなかった。
それを全く否定されて、マフィアの手先のような海賊として断罪されるのだけは耐えがたいのでした。

ただザンギャックに「海賊」と蔑まれてお尋ね者にされるのはマーベラスは平気でした。
ザンギャックは敵なのだから、とにかく出鱈目でも何でも相手を非難して悪しざまに言うのは当然であり、
そうした文脈でザンギャックからつまらない犯罪者扱いされたとしてもマーベラスは気にはなりませんでした。
むしろ人々の「夢」を否定し抑圧するザンギャックから悪しざまに言われば言われるほどに、
自分達こそが「夢」を大切にする海賊なのだという誇りを高めることが出来るほどでした。

しかし敵でもなく、公平な存在なのだと思っていた宇宙警察からマフィアの手先のように扱われて、
夢を掴もうとしてきた自分の航海、自分の人生を根こそぎ否定されてしまったことはマーベラスにはショックでした。
それは激しい怒りの感情を湧き立たせると同時に、
逮捕されて牢屋に閉じ込められてからはマーベラスの心に大きな失望も生んでいました。

所詮は自分のような世界に見捨てられて育ったような人間の言うことなど、
この世界は受け入れてくれないのだとマーベラスには思えてきました。
生まれてすぐにザンギャックの侵略戦争で親も失い故郷も失って、
自分が何処の誰なのかさえ分からないで筆舌に尽くし難い貧乏と差別の中で生きてきた
戦争孤児のマーベラスにとって、ザンギャックの支配する世界は自分をとことん拒絶する場所でした。
そんな世界で夢を見出し、海賊になって夢を掴もうと思い、なんとか生きる意義を見出して必死に生きてきた。
しかし、ザンギャックの世界を脱して飛び出した外の世界でも、
宇宙警察に代表されるその世界はやはりそんな自分の人生をただの薄汚い犯罪者だったと断罪した。

マーベラスは自分の人生を否定するつもりはない。自嘲する気も無い。絶望しているわけでもない。
だが、あくまで自分を拒絶する世界に対してはもうあまりに腹が立って腹が立って、もう嗤うしかない。
ムシャクシャしてきて、そんな世界をこれ以上、真面目に相手しても
仕方ないようにマーベラスには思えてきたのでした。
宇宙警察地球署のドギーに逮捕された時も同じような拗ねた気分になったものですが、
あの時はザンギャック怪人との戦いに巻き込まれて、なし崩しにドギーと共闘するうちに気が紛れていったのですが、
今回は牢屋の中でじっとしているうちにずいぶんと腐った気分になっていったのでした。

といって、仲間が必死で生き延びるために足掻こうとしている横で自分が投げやりなことを言うわけにもいかない。
自分は船長であり、自分が仲間たちをこの危険な航海に誘ったのです。
だから投げやりなことは口が裂けても言えないが、かといって皆を積極的に励ますような気分でもなく、
マーベラスはとにかく黙って俯いて、怒りの形相で床を睨みながら皆の話を聞いているしか出来ないのでした。

さて、そうしているうちにドルギランは遂に目的地に到着しました。
そこは郊外にある大きな体育館であり、その内部では宇宙警察の隊員たちが隊列を組んで待機しており、
何やら高官っぽい男性が1人います。
その体育館の上空に停止したドルギランは機体の底部から体育館の屋根に向けてビームを照射します。
ビームは屋根を透過して体育館内部に達し、そのまま隊員たちが取り囲む体育館中央の床面に照射され、
ビームを伝ってドルギラン内部から手錠を掛けられたままのマーベラス達5人と、
それを連行してきたギャバンが転送されてきました。

宇宙警察の隊員たちは転送されてきたマーベラス達5人に一斉に銃を向けて威嚇し、逃亡を警戒します。
手錠をかけられ変身アイテムを取り上げられた状態で周囲を武装した隊員たちに囲まれて、
ギャバンまでもがいる状況では、さすがにマーベラス達も手も足も出ない。
しかしそれでも宇宙警察側から見れば牢屋の中に閉じ込めておくよりもマーベラス達の逃亡リスクは高くなる。
それを承知であえてこんな場に降ろしたということは、ここで何か大事な用件があるということです。

不安げに周囲を見回したハカセは宇宙警察の隊員たちの中に1人だけ、
マントを羽織った高官っぽい人がいるのに気付き、
「・・・なんか偉そうな人がいるよぉ・・・」と前に立つマーベラスに囁きました。
マーベラスもその人物の存在には既に気付いており、
おそらくギャバンがさっき通信機で報告をしていた相手がこの男であり、
今回の自分達の逮捕を命じた上官なのだろうと思い、ハカセに向かって「・・・黙ってろ・・・」と言うと、
憮然とした顔でその男を眺めました。
するとマーベラスの前に背を見せて立っていたギャバンがその男に向かい姿勢を正すと前に進み出て
「ウィーバル宇宙警察総裁!ご指示通り、海賊たちを連行しました」と畏まって報告します。

ギャバンの後ろでマーベラス達は驚きました。
ギャバンにマーベラス達の逮捕を命じた人物は宇宙警察の総裁だったのです。
総裁といえば宇宙警察の一番偉いトップであり、人前に滅多に姿を現すことさえないという雲の上のような人です。
そんな偉い人がザンギャックの捏造の罪状を信じて自分達を逮捕するよう命じたのかと
マーベラス達は愕然としました。
その地位に見合わぬ不見識に呆れると同時に、
よくもまぁ宇宙警察の総裁ともあろう人が一介の海賊の逮捕などにそこまで深く拘り、
こうして現場にまで顔を出したものだとマーベラス達は唖然としたのです。

そのウィーバル総裁ですが、演じておられるのは、なんと名優の佐野史郎氏です。
これは劇場版ならではの大物ゲストのキャスティングというやつで、
スーパー戦隊シリーズの劇場版ではよくあることなのですが、
「ゴーカイジャー」という作品の場合、いつもレジェンド要素で色々と盛り込む要素が多いので
大物ゲストを呼んでもあまり出番を増やすことも出来ず、
これまでの春と夏の劇場版では、まぁ声優的には神谷明氏とか内海賢二氏とか、かなり豪華でしたが、
大物顔出し俳優ゲストのキャスティングはありませんでした。

それが今回は佐野氏の出演でようやく実現したのですが、
実は佐野氏の顔出し出演場面はこのシーンだけであって、そんなに出番は多くありません。
考えようによっては少し失礼な扱いかもしれないのですが、
佐野氏は特撮好きで有名な役者さんなので、頼みやすかったのかもしれません。

ただ、やはり何といっても佐野氏の醸し出す上品でありながら怪しく邪悪なオーラ、
そして独特の植物的な威圧感、緊張感がこのウィーバルという役にはピッタリであったので
オファーということになったのでしょう。
つまり、それだけ一筋縄ではいかない複雑なキャラということで、
佐野氏は絶品のキャスティングであったと思います。
やはりこの役は短い出番でも佐野氏クラスの演技派の役者でなければ独特の味は出なかったと思います。

そのウィーバル総裁はギャバンの報告を威厳を滲ませて無表情に「うん・・・ご苦労だった」と受け取ると、
ゆっくりとギャバンに近づいてきてその後方のマーベラス達の方を見つめながら
ギャバンとは目を合わさずにギャバンの横を通り抜けつつ、
微かにほくそ笑みながら「さすがは宇宙最強の刑事・・・」と言ってギャバンの肩をポンポンと軽く叩きました。
普段あまり感情を表に出さない男であるようですが、
よほどマーベラス一味の逮捕という成果を得たことが嬉しかったのか、思わず笑みが漏れたという感じですが、
何やらその笑いには邪悪なものが含まれているようにも見えます。

ギャバンはウィーバルのねぎらいの言葉にも特に反応することもなく
そのままマーベラス達に背を向けたまま直立しており、
ギャバンの背後に進み出てきたウィーバルはマーベラス達の正面に立つと、
5人をじろじろ見て「お前達がゴーカイジャーとかいう薄汚い海賊か?」と憎々しげに問い質しました。
いや、問い質したというよりも単に罵倒したというべきで、
宇宙警察総裁という権威ある立場の人間の吐くような言葉とは思えない毒を含んだ物言いといえます。

この失礼なウィーバルの態度にマーベラス一味の面々はムッとした表情で睨み返します。
マーベラスもこれには呆れたように溜息をつき、フンと冷笑します。
この宇宙警察の総裁は具体的に自分達がどういう悪事を働いたかなどには興味が無いようで、
単に海賊という薄汚い身分の者だというだけで小馬鹿にしている。
所詮はこの宇宙で支配階級に属するエリート達などというのは皆、
このような差別意識丸出しの嫌なヤツばかりであり、
自分達のような底辺の人間たちは言い分もまともに聞いてもらえない、
それどころか汚いゴミのようにしか見られないのだとマーベラスは思い、
つくづく嫌な世の中だと苦々しい気分になりました。

そのふて腐れたマーベラスの顔を見て、ウィーバルは冷たく「惨めな姿だ・・・」と吐き捨てると、
隊員たちに向かって「では、処刑の準備を!」と指示しました。
すると隊員たちはマーベラス達5人に群がってきて、
5人を体育館中央にあるステージのような一段高くなった場所に連れていこうとします。
どうやら今日この体育館はマーベラス一味の処刑を執行するために宇宙警察が借りきっているようで、
マーベラス達は処刑執行のためにこの場に連れてこられたということのようです。
中央のステージはマーベラス達の処刑台なのです。

この急展開にハカセは「え?・・・え?・・・やだよぉ!」と慌てて、連れていかれるのを嫌がります。
これはハカセの悲観していた公開処刑ですらない。
この体育館には宇宙警察の隊員たち以外には誰もいないのです。
これならば、わざわざこんな場所で処刑をする意味など別に無い。
ギャバンが戦った時にそのままマーベラス達を殺していても同じことです。
これではどうしてギャバンがあえて生かしたまま逮捕することに拘ったのか意味が分かりません。
だからこの場でいきなり処刑という展開はハカセも想定しておらず、
突然自分達の処刑が始まったことに狼狽しました。
これでは早すぎる。まだ最後の頼みの綱の鎧が助けに来ていないのです。

そうして狼狽するハカセに対してルカは「情けない声出さないの!」と叱ります。
ルカやアイムも、また処刑が目的ではないのではないかと推測していたジョーにしても
この意外な展開に驚いていましたが、この状況では抵抗は不可能です。
とにかくここまで一定の時間は稼ぐことは出来たのであり、
鎧がこの場を突きとめて救出に来てくれるには十分な時間であったと信じるしかない。
一旦、鎧を信じると決めた以上、きっとギリギリのタイミングで鎧が助けに来るのだと
ルカ達は最後まで信じる腹を固めました。

そうしてハカセ1人喚きながら、結局マーベラス達5人は処刑台の上に連れていかれ、
手錠に処刑台に設置された鎖を結び付けられていきます。
マーベラスはわざわざ生け捕りにしておきながら
どうしてこんな場所でいきなり宇宙警察の内輪しかいない状況で
自分達の処刑が行われる展開になったのかイマイチ分かりませんでしたが、
おおかたギャバンが総裁に手柄を自慢したかったのだろうと思い、
宇宙警察なんて嫌なヤツばかりだと呆れ果てました。
そして、とことん腐りきった宇宙の現実にウンザリして、真面目に相手するのもバカバカしい気分になって、
拗ねた顔で憮然として隊員たちに身を任せていました。

その時、それを冷たい視線で眺めているウィーバルの方にギャバンはおもむろに向き直り、
ウィーバルの傍に立ち「・・・総裁・・・1つだけ確認させてください」と声をかけます。
ウィーバルはギャバンの方に向き直らず、マーベラス達の方を見つめたまま
「・・・何だ?」とやや面倒臭そうに質問を許可しました。
するとギャバンはウィーバルをじっと見据えて
「彼らの海賊行為とは、どんなことですか?」と意外な質問をしました。

海賊行為の容疑でマーベラス達を逮捕した当の本人であるギャバンが
そのマーベラス達の海賊行為の罪状の内容を聞かされていないはずはない。
それなのにこんな質問をするということは、
ギャバンは自分が聞かされたマーベラス達の罪状が真実ではないと思っているということを意味します。

「彼らは何もしていないと言っています」とギャバンは言葉を続けました。
ちゃんとハカセが主張していた言い分をギャバンは覚えていたのです。
そして、そのハカセの言い分の方が宇宙警察の方の言い分よりも理があるのではないかと
ギャバンは思っているようです。
内心ギャバンがマーベラス一味の方に理があると思っているのは明らかであり、
建前上としても、少なくとも真偽を明らかにしてから処刑をするかどうか決定するべきではないかと
ウィーバルに対して異議申し立てをしているのは間違いありません。

しかし、それならばギャバンはその事実であることが疑わしい逮捕状に基づいて
マーベラス達を逮捕したことになります。
職務だから仕方ないという見方も出来ますが、
ギャバンのような公正な男が職務だからといって冤罪の可能性に気付きながら
文句の1つも言わずに逮捕を実行するというのは不自然といえます。

だから今頃になって急にギャバンが異議申し立てを行うことはウィーバルにも予想外だったようで、
やや困惑した様子で黙った後、「・・・海賊の言うことなど聞く必要は無い!」と
紋切型の口上でギャバンの意見を退けようとしました。

他でもない宇宙警察の総裁がこの逮捕は正当だと認めているのです。
いくらギャバンが伝説の刑事だからといって、一介の刑事が総裁の判断に異議を唱えるなど僭越に過ぎる。
ましてや海賊ごときの意見と宇宙警察総裁の判断とを天秤にかけて
海賊の意見の方を重視するなど失礼にもほどがあります。
厳格なる階級社会である宇宙警察における総裁の絶対的な権威で
ギャバンの異議を押し切ってしまおうとウィーバルは思ったようです。

ところがギャバンは総裁の権威に恐れ入るどころか、逆にウィーバルを睨みつけて
「・・・バカな・・・」と呆れ果てたように呟くと、
「宇宙警察がそんないい加減でいいんですか!?」と叱りつけるように怒鳴り返したのです。
口調は丁寧だが、明らかに総裁を軽侮した態度です。
確かにギャバンの言い分の方が筋は通っているが、
それでも宇宙警察の代表である総裁が判断したことをここまで全否定するというのは、
その組織の部下としての物言いとしては、ちょっと礼を失した態度といえます。

ギャバンほどのベテラン刑事がこんな物言いの良し悪しも判断がつかないはずもない。
意識的にこういう失礼な態度をとっているといえます。
それはあくまで自分はこの処刑を阻止するつもりだという断固とした意思表示であり、
更にはわざとウィーバルを怒らせて挑発しようという意図も窺えました。

ウィーバルもギャバンのそうした意図に気付いたようで、
どうやら最初からギャバンはマーベラス達を処刑させるつもりはなく、
ここで自分を問い詰めて何かを探ろうとしているのだと悟りました。
何時の間にかギャバンの描いたシナリオに乗せられている自分の姿に気付いたウィーバルは、
その流れを断ち切るかのように「黙れ!!」と大声で怒鳴り返しました。

もちろん、今のギャバンにそんな恫喝が効果が無いことはウィーバルにも分かっています。
ウィーバルは開き直ったのです。
ここでウィーバルがグズグズ屁理屈で誤魔化そうとすることはギャバンも当然予想はしているはずで、
そうした想定内の逃げ腰の対応をする限り、ギャバンはどんどん攻めの手を打ってくるでしょう。
ならばいっそ、ギャバンの探ろうとしている答えを真っ直ぐ突きつけてやって、
逆に攻勢に転じてやろうとウィーバルは思ったのでした。

ウィーバルは初めてギャバンの方に振り向いて、冷たく睨みつけて
「こいつらは・・・ザンギャックに逆らった!」と大きな声で言い放ちます。
ウィーバルがいきなり大声を出したので処刑台の上のマーベラス達も思わずウィーバルの方に注目していたのですが、
そこで飛び出してきたこのウィーバルの意外な言葉にマーベラス達は「ええ?」「ああ?」と耳を疑い驚愕しました。
それぐらいこれは異常な発言であったのです。

しかしこの衝撃の発言の意味を深く考える余裕も無く、
その瞬間、マーベラス達の手錠に結び付けられた鎖が一気に引き上げられて、
マーベラス達5人はバンザイの格好で処刑台に吊り下げられる態勢となってしまい、
空中でジタバタもがくのみとなってしまいました。
そのマーベラス達5人に狙いを定めて宇宙警察の隊員たちは一斉に銃を構え、銃殺刑の執行準備が整いました。
しかし、さっきのウィーバルの発言は隊員たちにとっても驚愕の内容であったはずなのですが、
どういうわけか、この場にいる隊員たちは全く動じた様子はありません。
処刑のプロセスも滞りなく進んでいきます。

そうして処刑準備が整えられる中、ウィーバルは平然とギャバンに向かって
「それこそがこの宇宙最大の悪であり、即時処刑に値するんだ!」と言葉を続け、
言い終るとプイッとギャバンから視線を外して処刑台の方を冷たく見つめます。

ギャバンもこのウィーバルの発言にはさすがに驚き、少しの間、言葉が出ませんでした。
いや、ギャバンの場合はその内容自体には大して驚いていません。
ウィーバルの本音がそんなところにあることは予想していたからこそ、
厳しい追及をしようとしていたからです。
しかしその厳しい追及がまだ始まったばかりの段階で、
いきなりウィーバルがここまであけすけと本音をぶちまけるとは予想していませんでしたので、
そのことにギャバンは驚愕したのです。

更にギャバンにとって少し予想外だったのは、
ウィーバルのこの異常な発言を聞いて隊員たちが全く動じていない点でした。
ギャバンはこの場でウィーバルを問い詰めて支離滅裂な発言をさせれば
隊員たちが動揺して処刑執行が困難な状況になると見越していたのですが、
どうやら状況はそんな甘いものではなかったようです。
この場にいる隊員たちは1人残らずウィーバルの息がかかった者ばかりのようで、
まともな感覚を持った宇宙警察の一員はいないようです。
だからこそウィーバルは平然と本音をぶちまけたのだといえます。

その予想以上に酷い状況に一瞬ギャバンは驚き、黙り込みました。
気が付けば周囲は敵だらけで、その敵は開き直って平然と敵意を剥き出しにしてきている。
自分の身にも危険が迫っていることをギャバンは感じました。
しかしギャバンはすぐに気を取り直します。
そうした最悪の状況への備えもギャバンはちゃんとしてきています。
ギリギリの強行策だが、その奥の手を使ってこの場を切り抜けるしかありません。

澄ました顔で処刑台を見つめるウィーバルの横顔に向かい、
ギャバンは「・・・遂に本音を吐いたな・・・」と声をかけます。
その口調は既に上官に対する敬語ではなく、
刑事が被疑者を見下ろして喋るぞんざいな口調そのものになっていました。
ギャバンにとって目の前にいる男は既に宇宙警察総裁ではなく、一介の被疑者でした。
「宇宙警察が何故ザンギャックの味方をする!?」と厳しくギャバンはウィーバルを問い詰めます。

さっきウィーバルはマーベラス達が処刑されるのはザンギャックに逆らったからだと言い、
ザンギャックに逆らうことこそが宇宙最大の悪だとまで言い放ちました。
しかし、宇宙警察の総裁という立場にある人間がこんな発言をするということは絶対に有り得ないのです。

そりゃあ人間には好き嫌いはありますから個人的にザンギャックにシンパシーを感じる総裁がいても、
それはさほどは不自然ではありません。
しかし宇宙警察は個々の紛争に対しては中立不介入が大原則のはず。
こんなザンギャックにのみ一方的に肩入れしたような発言を、
宇宙警察の代表者たる総裁がするなどということは、この宇宙がひっくり返っても有り得るはずがないのです。
もし総裁が内心ではザンギャックを好きだとしても、
立場上そんな本音を公の場で口にすること自体絶対に許されないのです。
そんなことは無教養なマーベラス達ですら知っている宇宙の常識です。
だからマーベラス達はウィーバルのさっきのあまりに偏った発言を聞いて心底驚いたのです。

しかしギャバンはその宇宙警察総裁にあるまじき発言の異常さにはさほど驚いていない。
それはギャバンが目の前の男が本当は総裁ではないと気付いているからです。
そしてギャバンに問い詰められたウィーバルも、
全く自分がギャバンに総裁扱いされていないのは明らかだというのに動揺した様子もなく
平然として処刑台の方を見たままです。

ギャバンはそのウィーバルを注意深く見据えたままポケットから手持ちのスイッチを取出し、
素早くボタンを押しました。
それと同時に遂に処刑台に向けて構えていた隊員たちの銃口が一斉に火を噴き、
マーベラス達をハチの巣にしようとしますが、
マーベラス達の両手に掛けられていたギャバンの特殊手錠が突如解錠され、
吊り下げられていたマーベラス達5人は支えを失い処刑台の床面に落下し、
間一髪銃撃を避けることが出来たのでした。
ギャバンが押したスイッチは、マーベラス達の手錠の解錠のリモコンのスイッチだったのです。

何が何だか分からないが急に自由の身となったマーベラス達は、
尻もちをついた後、素早く立ち上がって駆け出し、
慌てる宇宙警察の隊員たちの銃撃をかいくぐって突っ込むと、隊員たちを叩きのめしていきます。
同時にギャバンはウィーバルが妙な動きをしないようにレーザーブレードを取り出して
ウィーバルの首筋に突き付けて牽制し、ウィーバルはチラリと横目でギャバンを見ます。

そうしてギャバンとウィーバルが微動だにしない目の前で、
マーベラス達は処刑台の傍にいた隊員たちを全員倒しました。
ところがその倒された隊員たちは、なんと倒された後、
宇宙警察の隊員の姿からザンギャックの兵士であるゴーミンの姿に変わったのです。
これにはマーベラスは「・・・ゴーミン?」と驚愕します。

この場にいた宇宙警察の隊員たちは皆、ゴーミンの変装だったことになりますが、
いったいどうしてそんなことになっているのか、マーベラス達にはよく分かりません。
いや、それ以前にどうしていきなり自分達の手錠が5つ同時に外れて命拾いしたのか、
マーベラス達には事態の展開がどうもよく呑みこめないのでした。

そのマーベラス達に向かって背後から「手荒な真似をして済まなかった」とギャバンが声をかけて詫びを入れます。
マーベラス達がギャバンの方を見ると、
なんとギャバンがウィーバルに剣を突きつけているので、5人は驚きました。
何やらギャバンとウィーバルの2人が処刑の是非で口論をしているのは5人は気付いていましたが、
それにしてもいきなり刑事のギャバンが宇宙警察総裁に剣を向けているのですから、これはどうも只事ではない。

不審の目を向けるマーベラス達に対して、ギャバンはウィーバルに剣を突きつけて威嚇を続けながら
「こいつはウィーバル総裁に化けて宇宙警察を乗っ取ろうとしている・・・
それを止めるにはこうするしかなかったんだ!」と説明しました。
つまり、このウィーバル総裁は本物のウィーバル総裁ではなく、
何者かがウィーバル総裁になりすましている偽者であり、
その目的は宇宙警察の乗っ取りであるのだとギャバンは言うのです。

このウィーバルのさっきからの宇宙警察総裁にあるまじき言動もそう考えれば納得はいきます。
その正体は、その極端にザンギャック贔屓な不自然な発言や、
ゴーミンが隊員たちに化けていたという事実から考えて、おそらくザンギャックの怪人なのでしょう。
ザンギャック怪人が宇宙警察総裁になりすまして宇宙警察を乗っ取ろうとしている。
それは宇宙警察をザンギャックの都合の良い傀儡組織とするというザンギャック帝国の恐るべき作戦であったようです。

しかし、そもそもどうしてザンギャックは宇宙警察の乗っ取りなどという大胆な作戦を実行しようと思ったのか?
もともと宇宙警察は個々の紛争には不介入が基本方針であるため、
ここ何十年かの間に新たに勃興してきたザンギャックの非道に対して不介入方針を堅持してきており、
ザンギャックにとっては大して邪魔にはならない存在だったはずです。
まぁ悪く言えば都合のいい相手だったわけです。

ザンギャックの支配を逃れたマーベラス一味のような者との紛争においては、
確かに第5話の時のようにザンギャックは宇宙警察の個々の紛争に対する中立姿勢のせいで
煮え湯を呑まされることもしばしばありましたが、
少なくともザンギャック帝国支配下の領域内の出来事においては宇宙警察は無力であり、
ザンギャックにとっては邪魔な存在ではなかったはずです。
だからザンギャックは宇宙警察のことなど気にする必要は無かったはずです。

それなのに総裁の座を乗っ取ろうなどという
ザンギャックにとっても一歩間違えれば宇宙警察と全面対決になりかねないリスクの高い
荒っぽい作戦に踏み込んだのは、そうせざるを得ない事情があったからだと思われます。
おそらく、どうしてもウィーバル総裁を排除しなければいけない事情があったのでしょう。

想像するに、本物のウィーバル総裁は長年の宇宙警察のザンギャックへの不介入方針を改めて、
ザンギャック帝国内での非道行為についても宇宙警察が介入できるように
画期的な制度改革を進めようとしていたのではないでしょうか。
それをされてしまうとザンギャックとしても困るので、ウィーバル総裁を排除するしかなかった。

だが、ウィーバル総裁がザンギャックと鋭く対立しようとしていたのは宇宙警察内部でも知っている者は多いので、
もしウィーバルがいきなり暗殺されたりすればザンギャックが手を下したのだと疑われ、
結局は宇宙警察をザンギャックとの全面対決に向かわせることになります。
それではやはりザンギャックには都合が悪いので、
ザンギャック皇帝アクドス・ギルはウィーバルを単に排除するのではなく、
配下の怪人をウィーバルに化けさせて本物のウィーバルが健在であるかのように見せかけて、
その怪人は慎重にそれまでのウィーバルの反ザンギャック姿勢を捻じ曲げていき、
改革を骨抜きにしてきたのでしょう。
そういう場合、本物のウィーバルを生かしておく必要性も無いので、
残念ながら本物のウィーバルはザンギャックによって既に秘かに殺されてしまったのだと思われます。

おそらくザンギャックの怪人がウィーバルになりすましていることは
ザンギャック帝国の中枢においても極秘事項だったと思われます。
宇宙警察も全く無能ではなく、その諜報網もザンギャック中枢近くにまで及んでいるでしょうから、
この作戦の露見を防ぐため、この宇宙警察乗っ取り作戦の全貌は
皇帝アクドス・ギルと最側近の数名程度しか把握していない超極秘作戦だったはずです。
となると、このウィーバルになりすましている怪人も
ザンギャック皇帝アクドス・ギルに最も近い側近の怪人であるはずで、
おそらく親衛隊よりも更に皇帝に近い、皇帝と一心同体となったような家臣であるはずです。

また、偽ウィーバルも些細な言動の不自然さから正体を見破られるのを恐れて、
何かと理由をつけて人前に姿を見せる機会を減らし、不自然な態度も極力抑えていたので、
宇宙警察内部でもウィーバルが偽者であると見破る者はいなかったのです。

しかしギャバンだけはウィーバルの態度が不自然であることに気付いていたようです。
おそらくギャバンは個人的にウィーバルとは親しかったのでしょう。
それでギャバンは何時の頃からかウィーバルが別人のように性格が変わってしまったように感じていました。
しかし、それだけでウィーバルが偽者だと見破ったわけではありません。
ギャバンがウィーバルが偽者だと気付いた最初のきっかけは、第5話のデカレンジャー篇の時の出来事でしょう。

マーベラス一味が地球にやって来て、同時にザンギャックの第二次侵略軍が地球に侵略を開始した当初、
侵略軍の司令官ワルズ・ギルは海賊相手に苦戦していることを
本国の皇帝であり父であるアクドス・ギルには報せないようにしていたようですが、
まだその箝口令が徹底しない初期の頃に、地球に来ている海賊一味が侵略軍の邪魔をしているという程度の情報は
ダマラスあたりからアクドス・ギルにも伝わっていたのでしょう。

それで息子に甘いアクドス・ギルは軽い気持ちで
もともとザンギャックが捏造して宇宙警察に送りつけていた被害届に基づいて
偽ウィーバルを動かして宇宙警察の手でそのマーベラス一味とやらいうチンケな宇宙海賊の逮捕状を作らせて、
地球署にマーベラス達を逮捕させるように命じさせたのでしょう。

もともとはザンギャックの捏造した被害届は
宇宙警察のその被害があったとされる管轄内ではいい加減な情報としてあまり相手にされていなかったようですが、
それはあくまで本物のウィーバルが総裁を務めていた頃のまともな宇宙警察においての話であり、
偽ウィーバルが総裁の座についている宇宙警察ならば無理が通って道理が引っ込むことも有り得るのです。
偽ウィーバルはアクドス・ギルの命令を受けて、そのいい加減な被害届を全部真実と認定し、
マーベラス一味の逮捕状を認可し、地球署にマーベラス一味を逮捕するよう命じました。

本当は偽ウィーバルもあまりそういう強引なことをして偽者のボロが出ることは避けたかったのですが、
皇帝アクドス・ギルの命令とあれば仕方ない。
まぁ辺境の星々での偽の被害届に基づいて、これまた別の辺境の星である地球の刑事たちを少し動かして
チンケな海賊を逮捕する程度ならば話がそんなに大きくなることはないとタカをくくったのでしょう。

しかし地球署の署長のドギー・クルーガーは逮捕するよう命じられたマーベラス一味が
レンジャーキーを受け継いでいることや、マジレンジャーが既に「大いなる力」を渡していたことなどから、
その逮捕状の罪状の真偽を疑い、部下のバンに命じて極秘捜査を行わせて
その罪状がザンギャックの捏造であったことを突きとめ、マーベラス達を無罪放免とし、
地球での行動を認めてしまいました。

ただドギーはまさか宇宙警察総裁のウィーバルがザンギャック皇帝の命令で
マーベラス達を逮捕しようとしたなどとは想像もしていないので、
単なるミスでこのような逮捕状が出てしまったのだろうと思い、
「間違って変な逮捕状が来たが再調査の結果間違いだったことが分かった」という報告を
総裁に向けて提出して、この一件は幕を引いたのでした。

その報告を受けた偽ウィーバル総裁は、地球署に改めてマーベラス達を逮捕するよう命じることはしませんでした。
既にマーベラス達の無罪の真相を掴んでしまっている地球署に不当逮捕をしつこく強要して、
むやみに刺激するようなことをすれば、話が大きくなってしまって
自分の正体がバレる恐れがあると思い警戒したのでした。
よって偽ウィーバルは地球署からの報告書を素直に受け取っておいて、その後はマーベラス達の逮捕は諦め、
この一件が大きな話にならないように情報を隠蔽し、
自分がマーベラス一味の逮捕を命じたという事実そのものを宇宙警察本部では無かったこととしたのです。

ところがギャバンはたまたまドギーから直接この一件を聞いたのでしょう。
ギャバンにとって地球は母親の故郷であり、かつて赴任してマクーを倒すために戦った想い出深い地であり、
第二の故郷といってもいい星です。
今でもそれなりに繋がりのある場所なのでしょう。
それで地球署の署長のドギーとも面識はあり、おそらくドギーと個人的に話す機会があり、
たまたまマーベラス一味の誤認逮捕の一件の話題となり、
ザンギャックの捏造した偽の罪状に基づいた逮捕状が本部から送られてきたが
再調査の結果、過ちに気付いたという事実をドギーから聞かされたギャバンは、
少し気になって本部に戻ってからそのドギーから総裁宛てに送られたという報告書を確認してみようとしたが、
本部にはそんな報告書は残っておらず、そんな報告があったという事実すら確認出来なかった。
それどころか、マーベラス一味を逮捕するように地球署に逮捕状が送られたという事実すら無かったのです。

しかし長年の付き合いでドギーが自分にわざわざそんな嘘をつくはずがないと確信しているギャバンは、
最近様子がおかしいウィーバルの方を怪しみ、何か隠蔽が行われたのではないかと疑い、
地道に極秘の内部捜査を個人的に進めたのでしょう。
いくら総裁命令で隠蔽が徹底されていたとはいっても、一旦組織内で逮捕状や報告書が動いており、
その時にそれを複数の職員が目にしていた以上、
名刑事ギャバンの執拗な捜査によって遂に隠蔽されていた事実は突き止められ、
ギャバンはウィーバルがザンギャックの捏造情報を精査もせずに強引にマーベラス一味の逮捕状を発行するのを主導し、
その後ドギーからの報告書も握りつぶしていたこと、
それらの事実を巧妙に隠蔽していたということを知ったのです。

ただ、それを知ったギャバンは直接ウィーバルに抗議に行ったり、
組織内で不正として公に告発しようとはしませんでした。
そんなことをしても総裁の権限で潰されてしまうだろうと思ったのです。
それだけ総裁の権限は強大なものでした。
いや、ギャバンのよく知るウィーバルならばそんな不当な圧力はかけないだろうと思えましたが、
ギャバンはこの一件で今のウィーバルは自分のよく知るウィーバルではないと確信していました。

そもそも反ザンギャック傾向の強い正義漢のウィーバルが
ザンギャックの幼稚な捏造情報を精査もせずに海賊の逮捕状を発行するはずがなく、
そういうことが起こったということは、そのウィーバルは別人としか思えないとギャバンは確信し、
組織内で下手に動いても、この情報ごと自分が抹殺される危険すらあると思い、
慎重に行動して更に極秘捜査を1人で進めていったのでした。

そして最近まで進めた捜査の結果、
ギャバンはウィーバル総裁の正体がザンギャックの怪人が化けた偽者であり、
本物の総裁を殺してすり替わり宇宙警察の乗っ取りを画策しているに違いないという確信を得ていました。
ただ偽者を追い詰める決定的な証拠も不足しており、
滅多に人前に姿を見せない偽者のウィーバルに近づく機会すら無かったギャバンは、
この陰謀をどうやって食い止めたらいいのか、良い方法が見出せずに困っていたのでした。

すると、このまま手をこまねいているうちに定年を迎えてしまうのではないかと焦るギャバンのもとに
千載一遇のチャンスが舞い込んできました。
どういうわけなのか不明だが、なんとウィーバル総裁直々に、たっての指名で、
ギャバンに地球へ行ってマーベラス一味を逮捕するようにという命令が来たのです。

この命令を受けてギャバンは、もちろんこの逮捕状がドギーの一件の時と同様、
ザンギャックの命令によるデタラメの逮捕状だということは分かりましたが、
一度失敗しているというのに、本部の最精鋭刑事である自分まで動員して
偽ウィーバルが再度逮捕しようとするマーベラス一味という海賊が
よほど偽ウィーバルや背後のザンギャックにとっては邪魔者なのだろうと思ったギャバンは、
そのマーベラス一味をエサにすれば偽ウィーバルをおびき出すことが出来るかもしれないと思いました。

そこでギャバンは快くその命令を受けるポーズをとり、
定年前の最後の大仕事としての栄誉を求め、
逮捕したマーベラス一味を総裁臨席の場で処刑することを提案し、
その場で自分の功績について総裁から直接称賛の言葉を賜るようにせがみました。
いくら伝説の刑事である自分の頼みでも普通ならばそんな懇願は通らないだろうとはギャバンも思いましたが、
マーベラス一味を確実に葬ったことを確認するために偽ウィーバルはその誘いに応じるだろうと読んだのでした。

すると予想通り、偽ウィーバルは地球でマーベラス一味の処刑に立ち会うと言ってきたので、
ギャバンはとにかくマーベラス達の弁明は聞かずに強引に逮捕しました。
あらかじめマーベラス達に事情を話して平和裏に物事を進めるという手もありましたが、
ギャバンはそこまで初対面のマーベラス達を信用していたわけでもないので、
最後まで計画を極秘に進めるためにもマーベラス達に事情は一切説明しませんでした。

だいいち、これは宇宙警察内部のゴタゴタの問題なのであって、
その解決のためにマーベラス一味が協力する義理など全く無い。
事情を話したところでマーベラス一味に協力を拒否されるのが関の山だとギャバンは思い、
マーベラス一味には気の毒だが、背に腹は替えられないので、強引に作戦に巻き込むしかなかったのです。

そうしてマーベラス達を逮捕したギャバンは偽ウィーバルが指定した処刑場に5人を連行し、
マーベラス達を偽ウィーバルの連れてきた隊員たちに引き渡すと、
その場で今まで自分が掴んだ情報を突きつけて偽ウィーバルの不正を糾弾して追い詰め、
処刑を無効とし、偽ウィーバルの正体を明らかにしてやろうと思っていました。

ところが追及を始めた途端に偽ウィーバルがいきなり自分から正体をバラすような発言をして開き直り、
しかも処刑場の隊員たちは全員ザンギャックの手下であり、
処刑は有無を言わさずに強行されるのだと悟ったギャバンは、最後の手段に踏み切ったのでした。
それはあらかじめリモコンで解錠できるようにしていたマーベラス達の手錠を解錠して逃がし、
ギャバン自身が偽ウィーバルをその場で直接倒すという強行策でした。

以上がここまでの顛末の真相だと推測されます。
第5話で突然、マーベラス一味の逮捕状というものが宇宙警察において出現し、
それがザンギャックによる捏造であったという事実が判明し、
その後その一件がどうなったのか説明もありませんでした。
そこには本来は前後の経緯が存在するはずなのですが
「ゴーカイジャー」の物語においてはそれはサイドストーリーに属するので
特に明確に描かれることもありませんでした。
しかし今回の映画で再び宇宙警察におけるマーベラス一味の逮捕状が登場し、
しかもそれに宇宙警察の中枢を巻き込んだ陰謀が絡んでいるという展開となった以上、
第5話の前後のサイドストーリーも含めた、こうした1つのストーリーを補完した方がいいと思いました。

まぁそういうわけで、そういうのがここまでの顛末の真相であったとして、
かといってギャバンの手短な説明でマーベラス達はその経緯の全てを把握したわけではありません。
ただ、デタラメな罪状に基づいて自分達を処刑しようとしていた宇宙警察の隊員たちの正体が
ザンギャックのゴーミンであったこと、
そもそも今回の罪状はもともとデカレンジャーの捜査によって
ザンギャックによる捏造だったこともマーベラス達は知っていたことからも、
宇宙警察の乗っ取り云々はよく分からないものの、
とにかく自分達の逮捕を命じた宇宙警察総裁のウィーバルが偽者であり、
おそらくザンギャック怪人であろうというギャバンの話は信憑性があるということは
マーベラス達にも理解は出来ました。

そして、その偽者の総裁をおびき出すために自分達を逮捕してエサとしたのだとすると、
ギャバンが強引にマーベラス達を生きたまま逮捕することにこだわったことや、
その後の一転した処刑への疑念の表明などの一連の不可解な行動も説明がつき、
公開処刑でもない総裁臨席での内輪だけの奇妙で性急な処刑執行の謎も解けます。
全ては偽者の総裁をおびき出すためのギャバンの仕掛けだったのです。
となると、さっき手錠がいきなり外れたのもギャバンの仕業なのだろうとマーベラス達は思いました。
しかし、だからといってギャバンに感謝する気持ちが湧いてくるわけではない。

ザンギャックによる宇宙警察の乗っ取りというのは、
確かに大局的に見ればザンギャックに追われる立場であるマーベラス一味にとっては歓迎すべき事態ではない。
だから乗っ取りを阻止しようとするギャバンの行動は心情的には応援できる。
しかし、だからといって、その作戦に勝手に自分達を巻き込んでエサとして使ったギャバンの乱暴なやり方は
マーベラス達にとっては迷惑以外の何物でもない。

下手したら死ぬところだったのです。
あのまま冤罪で処刑されていたらシャレになっていないのであって、
勝手に自分達をそんな窮地に追い込んだギャバンがあそこで自分達を助けるのは当然の義務なのであって、
そんなことでいちいち感謝する気はマーベラス達は起きませんでした。

そういうわけで、むしろ憤慨して当然のマーベラス達でしたが、
意外にギャバンに対して怒りの感情は湧き上がってきませんでした。
それはギャバンが手荒なことをしたことを詫びてくれたからでした。
それはつまり、本当はギャバンはマーベラス達の無実を信じていたということを意味します。

ギャバンのそうした真意を聞くまでは、
マーベラス達は宇宙警察はてっきりザンギャックの言い分を鵜呑みにして
自分達のことを薄汚い犯罪者だと決めつけているのだと思っていました。
しかしこうして真相が明らかになってみると、
あくまでマーベラス達を犯罪者扱いしていたのは
宇宙警察に不正な手段で潜り込んでいたザンギャックの手先なのであって、
本来の宇宙警察はギャバンのようにマーベラス達の無実を信じてくれていた。

ザンギャックがマーベラス達を犯罪者扱いするのは別にマーベラス達には気にはならないのです。
利害がぶつかる敵同士なのですから、デタラメでもなんでも敵を悪しざまに言うのは仕方ないことです。
マーベラスの気分を重くしていたのは、本来公平であるべき宇宙警察に犯罪者扱いされたことでした。
それによって、まるでこの宇宙で無価値な存在であると決めつけられたような気がして
マーベラスは腐った気分になっていました。
しかしギャバンの言葉を聞いて、そういうわけではなくて、ちゃんと宇宙警察は
自分達が自分達なりに懸命に生きてきたことを認めてくれているような気がして、
マーベラスはなんだか救われた気分になったのでした。
この宇宙も案外捨てたもんじゃないという気がしてマーベラスは再び明るい気分になりました。

まぁ、だからといって自分と大切な仲間達がギャバンにとんだ迷惑をかけられたことも事実であるので、
マーベラスとしては嬉しいやら腹立たしいやら、どうにも複雑な気分でしたが、
とにかくギャバンにもやむを得ぬ事情があってこのようなことになったのだということは理解し、
ギャバンの方に振り向いて真顔で「・・・なるほど・・・」とだけ呟きました。

とにかく宇宙警察の隊員たちに化けていたゴーミン達は片付け、
偽者のウィーバルにもギャバンが剣を突きつけている。
この場はもはや勝負ありという風に見て取れました。
これはもともとギャバンの仕掛けた戦いであり、マーベラス達は巻き込まれただけです。
だから仕上げはギャバンに任せればいいとマーベラスは思いました。
ギャバンの強さはマーベラス達は身を持って知っていますから、
ウィーバルの始末はギャバンが勝手にやればいいと思いました。

もちろんギャバンもそのつもりで、「貴様も正体を現せ!」と偽者のウィーバルに剣を突き立てたまま迫ります。
ここまでのギャバンの言葉は偽ウィーバルも聞いていたはず。
つまり偽ウィーバルは自分が偽者だということをギャバンに見破られて
この場で罠に嵌められて進退窮まった状況であることも理解しているはずです。
ならばもう観念して正体を現し、尋常にギャバンと勝負するしかない。

もちろんギャバンは自分の勝利を確信しています。
あとはこの偽者の正体を暴き、この場で倒して宇宙警察の乗っ取りの陰謀を阻止すれば
一件落着だとギャバンは思いました。
しかし偽ウィーバルはギャバンの方を向くと、何故かニヤリと不気味に余裕の笑顔を見せ、
全身から赤黒い禍々しいオーラを発し、遂に人前で初めてその本来の怪人の姿を現したのでした。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 07:24 | Comment(1) | 海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月12日

海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE 感想その4

ギャバンは極秘捜査によって
現在の宇宙警察の総裁ウィーバルが本物のウィーバルを殺して成り変わった偽者であることを突きとめ、
その正体はザンギャックの怪人であり、その目的は宇宙警察の乗っ取りという
ザンギャック帝国の大陰謀を見破りました。
その企みを阻止するために
ギャバンは偽のウィーバルに命じられたマーベラス一味の不当逮捕を素直に遂行するフリをして、
マーベラス一味の処刑場に偽者のウィーバルをおびき出す作戦を決行、
遂に偽者のウィーバルを追い詰めました。

一見、そのように見えます。
しかし、どうにも不自然な点があります。
いや、おそらく偽ウィーバルはギャバンが自分のことを偽者だと見破っているということは
気付いていなかったでしょうし、
マーベラス一味をエサにして自分をここにおびき出す計画であったことも気付いていなかったと思います。
そういう点では偽ウィーバルはまんまとギャバンに嵌められたといえます。

しかし、ギャバンによる偽ウィーバルへの追及が始まった時、
偽ウィーバルは自分が罠に嵌められたことに気付きながら、言い逃れして窮地を脱しようという努力を一切せず、
むしろ自ら進んで本性を露わにしていきました。
それはギャバンの意表を突くという狙いもあったでしょう。
しかしギャバンはその意表をついた展開にもしっかり対応して、
マーベラス達を救うと同時に偽ウィーバルを追い込むことにも成功しました。
ならば偽ウィーバルは進退窮まったはずです。

ところが偽ウィーバルはまだ余裕を見せています。
つまり最初から余裕があったからこそ、自ら進んで正体をバラすことも出来たのであり、
あわよくば偽ウィーバルは意外な展開に慌てたギャバンがミスしてくれることも期待はしていたのでしょうが、
さすがにギャバンはミスはしなかった。
そこで偽ウィーバルはここに至って自分も奥の手を出すことにしたようです。

まずは偽ウィーバルは化けていた宇宙警察総裁のウィーバルの姿から
自分の本来のザンギャック怪人としての姿に戻りました。
「私はザンギャックのアシュラーダ・・・」と名乗った、
その怪人の姿は頭部や両肩などに多数のドリルを備えた厳めしい姿で、かなり強そうです。

なお、偽ウィーバルから本来のアシュラーダの姿に戻った後も、
声は偽ウィーバル時と同じく、佐野史郎氏のままです。
これは厳密に考えると少し不自然です。
アシュラーダはウィーバルになりすましていた時はウィーバルの姿だけでなく声も真似ていたはずですから、
アシュラーダとウィーバルが偶然同じ声色であったなどということでない限り、
偽ウィーバルの姿からアシュラーダの姿に戻ることによって
元のアシュラーダの声に戻らなければいけないはずだからです。

だからアシュラーダの姿に戻っても同じ声のままというのはおかしい。
これは劇中描写としてはどうしても不自然と言うしかなくて、なんともフォローのしようもありません。
ただ、子供向け映画ですから、見ている子供に分かりやすい描写を心がけることも大切です。
リアルを追求することが逆に子供から見て分かりにくくなってしまうことというのは多々あるもので、
ここで姿だけでなく声まで変わってしまうと、小さい子供には別キャラのように見えてしまうでしょう。
だから、子供向け映画としては、ここで偽ウィーバルとアシュラーダを同じ声にすることで、
姿が変わっても一貫した同じキャラであることを示すという演出はアリだと思います。

それにやはりせっかく出演いただいた佐野氏の演技力を、
たとえ声だけでもアシュラーダ本体の方でも活かしたいというのは演出側として自然な感情であろうし、
佐野氏の演じたキャラの本体の方の演技を別の声優の方が引き継ぐとしたら、
それはやはりかなりのプレッシャーということにもなるでしょうから、
いっそそのまま佐野氏に一貫した演技プランで演じていただいた方が良いともいえます。

さて、物語の方に戻りますが、
この超極秘作戦の担当者であるアシュラーダはザンギャック帝国においても、
おそらく皇帝アクドス・ギルの最側近の怪人と思われ、
変身能力だけが取り柄の道化などではないのは明白です。
かなりの実力者と見ていいでしょう。

「さすがはギャバン・・・海賊をエサに私をおびき出すとは、なかなか考えたじゃないか?」と余裕たっぷりの口調で
自分を罠に嵌めたギャバンの手腕を褒めるアシュラーダに対して、
ギャバンは一歩距離を置いて用心深くレーザーブレードを構えます。
アシュラーダがかなりの実力者であることはギャバンも当然相対して分かります。
当然、アシュラーダのこの余裕は自身の実力に由来しているとギャバンは判断し、
目の前のアシュラーダに注意を集中しました。

ところが、そうしたギャバンを嘲笑うようにアシュラーダは「しかし・・・甘い・・・!」と言い放ちます。
それはギャバンの一見完璧に見える罠に不備があったという嘲りでした。
一瞬意味が分からなかったギャバンはレーザーブレードを構え直しながら「なにぃ?」と問い返しました。
と、その瞬間、突然ギャバンの背後で爆発が起こり、ギャバンは「うわあああ!!」と吹っ飛ばされたのでした。

ギャバンとアシュラーダの遣り取りを見守っていたマーベラス達も、
この突然の出来事にあっと驚き息を呑みます。
何者かがギャバン目がけて銃撃をしたようです。
その銃撃のあった方向をマーベラス達が慌てて見ると、
おそらくこれもゴーミン達の化けたものであろうが、新手の宇宙警察の隊員たちが整列して立っていました。
しかし撃ったのは彼らではない。その新手の隊員たちの隊列の中から銃を構えて前に進み出てくる者がいます。

呻いて起き上がってその狙撃手の方に振り向いたギャバンは、その姿を見て「ああっ!?」と驚愕の声を上げました。
驚くギャバンを見て愉快そうにアシュラーダは
「こいつを連れて来ていてね!ザンギャックと宇宙警察・・・2つの技術で作り上げた最強の戦士・・・
ギャバン・ブートレグだ!」と、その狙撃手の正体を説明したのでした。

最強の戦士、ギャバン・ブートレグと呼ばれたその戦士のボディは
全身メタリックシルバーのコンバットスーツ状になっており、
その外見はギャバンのコンバットスーツに酷似しています。
そっくりで見分けがつかないというわけではありませんが、基本デザインは同一で、
明らかに同系統、同じシリーズと言っていいでしょう。
むしろギャバンのコンバットスーツは三十数年前から同じデザインであるのに対して、
それを現代風に更に斬新にした最新型ギャバンと言うべきデザインです。

それが偶然ギャバンに似通っているわけではないことは、
アシュラーダの言った「ギャバン・ブートレグ」という名称からも明らかです。
その名に「ギャバン」という文字が入っていることから、
明白にギャバンと同系統の戦士として作られたことが分かります。

ちなみに「ブートレグ」とは「海賊版」という意味です。
まぁこの映画の物語が「海賊戦隊ゴーカイジャー」の1エピソードであるということに引っ掛けて
「海賊版ギャバン」という名を冠した戦士を登場させたのでしょうが、
ともかく海賊版ということは「偽ギャバン」という意味と解釈していいでしょう。

夏映画「空飛ぶ幽霊船」には偽ゴーカイオーが登場しましたが、
あれもアイムが「海賊の海賊版」と言っていたように、
「海賊版」という言葉が「悪いヤツが使う偽者」という意味で使われていました。
今回の「ブートレグ(海賊版)」も「悪者であるザンギャックの使う偽者のギャバン」ということになります。

しかもこのブートレグは、アシュラーダが「作り上げた」と言っていることから、
どうやらギャバンのように生身の戦士がコンバットスーツを蒸着して変身したものではなく、
機械で作られた人造戦士であるようです。
そして、それは「ザンギャックと宇宙警察の2つの技術で作り上げた」というのです。
ザンギャック帝国の幹部でありながら宇宙警察の総裁に化けて宇宙警察を牛耳っていたという、
2つの顔を使い分けていた狡猾な怪人アシュラーダだからこそ、
このような形の戦士を作り上げることが出来たのだといえます。

しかし、それが具体的にどう最強戦士なのか、
その場で唖然として見ていたギャバンやマーベラス達には一瞬よく分からなかった。
単にザンギャックと宇宙警察という宇宙でも双璧をなす高い武器開発の技術力を持つ組織の技術を融合したから
最強だと豪語しているだけなのかとも漠然と思えた。

しかし、そのブートレグがギャバンの顔を認識して一直線に突っ込んできたのを迎え撃ったところ、
ギャバンはそのブートレグの動きに異様な既視感を覚えました。
確かに最強戦士と豪語するだけあって見事な動きでしたが、その動きはギャバンには見事に予想がつくものでした。
但し、ブートレグもまたギャバンが防御しようとする動きを見事に予想出来ているようで、技は互角となります。
しかしコンバットスーツを蒸着していない状態のギャバンは力負け、スピード負けして劣勢に追い込まれていきます。
不利を悟ったギャバンは、ブートレグの正体が何なのかようやく分かりました。

ブートレグの攻撃を何とか受け止めながらギャバンは「俺の能力を複製したのか・・・?」と呻きます。
ブートレグの動きは何から何までギャバン本人にそっくりだったのです。
正確に言えば、コンバットスーツ装着時のギャバンの動きを完全にコピーした戦士といえます。
いったいどうやって自分の能力を完全コピーした機械戦士などを作ることが可能になったのか
ギャバンには皆目見当がつきませんでしたが、
とにかく間違いなく戦士としてのブートレグの動きは自分の動きそのものでした。

自分の変身後の姿に変身前の自分が敵うはずがない。
ならば変身すれば互角なのかというと、確かに互角といえば互角でしょうが、
ギャバンは基本は生身の戦士であり消耗するし疲労します。
一方ブートレグは完全に機械の戦士ですから疲れたり衰えたりしません。
だから互角の力で延々と戦い続けていれば、最終的には力が低下しないブートレグの方が勝つでしょう。
宇宙最強の刑事の能力を複製し、その宇宙最強の刑事をも倒し得る戦士だからこそ、
ブートレグは「最強の戦士」という称号を与えられているのです。

そして、そのブートレグがどうやって生み出されたのか、ギャバンにはよく分かりませんでした。
ギャバンと同じコンバットスーツを作ること自体は宇宙警察の技術力を利用すれば可能です。
総裁に化けていたアシュラーダならばそれは可能だったでしょう。
しかしギャバンの強さはコンバットスーツの性能だけによるものではない。
ギャバン自身が研鑽して積み上げてきた肉体的能力が加わってこそのものなのです。
それは宇宙警察の技術で再現することは出来ないはずです。

しかし、先ほど自分達を圧倒したギャバンがたちまち劣勢に追い込まれるのを呆気にとられて見ていたマーベラス達は、
ブートレグの能力がギャバンの複製だと聞いて、あることに気付きました。
アシュラーダはブートレグが「ザンギャックと宇宙警察の2つの技術で作られた」と言いました。
そこでマーベラス達はザンギャックの作り上げた機械兵士の傑作のことを思い出したのです。
それはバリゾーグでした。

バリゾーグは機械兵士の能力だけではなく、
そこにジョーの剣の師匠であったザンギャック元特殊部隊員シド・バミックの能力を移植して完成した戦士でした。
そのバリゾーグ製作のノウハウはザンギャック最高の科学者ザイエンのものであり、
インサーンなどはその技術を完全に解明することは出来なかったようですが、
帝国の中枢にあったと思われるアシュラーダはそのザイエンの技術のノウハウを手にしていたようです。
そのザイエンの遺したノウハウを用いて機械兵士の身体に移植する能力がシドのものではなくギャバンのものであり、
その機械の身体が宇宙警察の技術で作り上げたギャバンシリーズのコンバットスーツの改造版の機械兵士
ギャバン・ブートレグであったとしたならば、
移植されたギャバンの能力はフルに発揮されることになるでしょう。

しかし改造手術を受けてバリゾーグにされてしまったシドとは違い、ギャバンは本体がこうして健在なのです。
ならばどうやってギャバンの能力をブートレグに移植出来たのかというと、
そこで宇宙警察の技術力が使われたのだと思われます。
おそらく宇宙警察ではコンバットスーツを通してギャバンの能力に関する精細なデータをとっていたのでしょう。
そのデータを総裁に化けて入手したアシュラーダが
ザンギャックのザイエンの技術を使ってブートレグにそのデータを移植して、
ギャバンを超える最強の戦士ブートレグを作り出したのです。
ザンギャックと宇宙警察の2つの技術で作り上げた最強の戦士というのは、そういう意味であったのです。
細かい経緯はよく分からないながらも
マーベラス達はおそらくバリゾーグのように機械兵士の身体に宇宙警察から盗んだギャバンの能力データを
移植した戦士がブートレグなのだろうということは直感したのでした。

唖然としてブートレグを見るマーベラス達の足元に、
ブートレグに蹴り飛ばされて「おわああ!!」とギャバンが転がってきました。
しかしギャバンは立ち上がります。
ブートレグは常に生身のギャバンよりも一段上の力を発揮するのでギャバンはブートレグに勝つことは出来ない。
しかしブートレグの動きは全部読むことは出来る。
読むことは出来てもよけることが出来ないのだが、それでも読めている分、簡単には致命傷は喰らわない。

だからまだ立つことは出来るのですが、いつまでもそんなことは続けられません。
ダメージは溜まっていって結局は倒されることになります。
結局、このままでは勝ち目は無いのだということはギャバンにも分かりますし、
それはアシュラーダにも分かっています。
もはや勝機が無いことはギャバンも悟ったであろうと見て
アシュラーダはブートレグを一旦退かせて自分の横に立たせます。

こうなったらギャバンの狙いはブートレグと戦いながら
隙を見てブートレグを操るアシュラーダを急襲して倒すことしかありません。
そのギャバンの狙いを読んで、アシュラーダはブートレグにギャバンを襲わせることではなく
自分を守ることを命じたのでした。
なかなか慎重で狡猾な怪人です。
そして、ここでアシュラーダは「ギャバン!海賊と共に地獄へ行け!」と嘲笑い、
体育館の中に大量のゴーミン達を呼び寄せたのでした。
あっという間に夥しい数のゴーミン軍団にギャバンとマーベラス達は包囲されてしまいました。

ギャバンも、マーベラス達も、これはあまりに不自然だと驚きました。
マーベラス一味の処刑執行のための宇宙警察隊員たちが全部ゴーミンの変装であったのはまだ分かりますが、
それとは別にこれほど大量のゴーミン達を忍ばせておく必要があったとは思えない。
アシュラーダはギャバンの罠には気付いていなかったはずなのですから、
この場は単に手錠で縛られたマーベラス一味を処刑すればいいだけの場であったはずです。
ならば、こんな大量の兵を隠しておく必要など無いではないか。
いったいアシュラーダは何者と戦うつもりでこれほど大量の兵を忍ばせていたのだろうか?

いや、そもそもどうしてブートレグをここに連れてきていたのか?
ギャバンをも倒し得る最強戦士という隠し玉がどうしてこんなところに都合よく居たのか?
まさかこんな目立つギャバンの偽者を常に偽ウィーバルがボディガードとして連れ回しているはずがなく、
今日この場に特別に連れて来ていたと見て間違いない。
結果的にブートレグがこの場にいたお蔭でアシュラーダはギャバンの罠を打ち破ることが出来たわけですが、
それは偶然にしては出来過ぎというものでしょう。
かといってあらかじめアシュラーダがギャバンがここで罠を仕掛けていることを見破っていたわけでもない。

となると考えられるのはただ1つ、
逆にアシュラーダが最初からこの場でギャバンを罠に嵌めようとしていたということになります。
つまり、アシュラーダはギャバンがマーベラス一味の処刑を総裁臨席の場でやりたいと言ってきたのを受けて、
その場でマーベラス一味もろともギャバンを謀殺してやろうと考えて、
大量の兵と対ギャバンの秘密兵器であるブートレグを潜ませていたのです。
すると、アシュラーダの予想外にギャバンが自分の正体を見破っており、自分を倒すために罠を張っていた。
危うくギャバンの罠に嵌りそうになったアシュラーダだったが、
あらかじめギャバンを謀殺するために忍ばせておいたブートレグを繰り出すことで
窮地を脱して形勢逆転したということになります。

この場にギャバンが現れた時にウィーバルに化けたアシュラーダがほくそ笑んだことや、
アシュラーダがギャバンの罠の巧みさを褒めながらそれでも甘いと言ったのも、つまりはそういうことだったのです。
おそらくアシュラーダは最初からギャバンを謀殺するつもりで
マーベラス一味の逮捕のために地球に呼び寄せたのでしょう。
そしてブートレグを作り上げていたのも、ギャバンを倒す作戦に投入するためであったと思われます。

しかし、これはどうも妙な話です。
アシュラーダはギャバンが自分の正体に気付いていることや、
自分を罠に嵌めようとしていることは知らなかったのです。
つまり別にアシュラーダはギャバンと敵対関係にはなかったはずですし、
特に邪魔者だと思う理由も無かったはずなのです。
それなのにアシュラーダはギャバンを殺そうとしていた。

ウィーバル総裁に化けているアシュラーダとしては、目立った行動は出来るだけ避けるのが賢い判断のはずです。
ギャバン謀殺などという危ない橋を渡る必要性があるとは到底思えません。
しかしアシュラーダはわざわざブートレグまで作り上げて念入りにギャバンを倒すための準備を積んできたようです。

どうもこれはおかしい。
ザンギャック皇帝アクドス・ギルがアシュラーダに命じたことは宇宙警察の乗っ取りであって、
ギャバンを殺すことではなかったはずです。
また今回の件でも、アクドス・ギルが地球侵略の邪魔者であるマーベラス一味の排除を
アシュラーダに命じたのは理解出来るが、
アクドス・ギルはおそらく一緒にギャバンを謀殺することなど命じてはいないはずです。

どうも、このギャバンを狙ったというのはアシュラーダの独断のように思えます。
そのあたり、どうも謎が残るのですが、この場ではギャバンやマーベラス達にはそこまで頭は回りません。
ただ彼らにもハッキリ分かったのは、どうやらアシュラーダが最初からギャバンを狙って
この場で罠を張っていたということです。
もちろんマーベラス一味の処刑もするつもりではあったのですが、
アシュラーダの力の入れようを見ると、どうもギャバンの方がメインターゲットであった印象です。

どうしてアシュラーダがギャバンを狙うのか、
その理由はマーベラス達はもちろん、ギャバン自身にも分かりません。
ただ、当初はギャバンはマーベラス達の命を狙うザンギャックの手先たちの中に
あえてマーベラス達を連れてくることで敵の親玉をおびき出したつもりでいました。
だから敵の親玉を潰すという目的を果たしながら、囮として使ってしまったマーベラス達のことは
責任をもって守ろうという意識でした。
ところが実際はここに集まったザンギャック勢は主にギャバンを狙っていたのです。
実際の対決の構図は当初の想定よりも、より「ギャバンVSザンギャック」の色が濃いものだった。
マーベラス達はそこに巻き込まれてしまったという印象がより強い。

しかも現状の敵味方の戦力比を見ると、最初に想定していたよりも深刻な状況です。
ギャバンがこうした状況をあらかじめ見越していれば、
こんな深刻な場にマーベラス達を巻き込むようなことはしなかったでしょう。
自分の読みが甘かったためにマーベラス達には申し訳ないことをしてしまったと、ギャバンは悔やみました。
ギャバンは周囲のザンギャック兵達の方を睨みながら、背後にいるマーベラス達に向けて
「巻き込んで済まなかった!あとは俺がカタをつける・・・君たちは逃げろ!!」と言います。

最初はギャバンはマーベラス達を救った上でアシュラーダを倒すつもりでした。
しかしこの状況では、マーベラス達を守りながらアシュラーダを倒すのは難しそうでした。
いや、マーベラス達も自力で戦って自分の身は守るであろうが、
巻き込んでしまった立場のギャバンとしてはマーベラス達を守る義務からどうしても逃げることは出来ない。
マーベラス達が自力で戦えようが戦えまいがそんなことはこの際関係無く、
とにかくギャバンは彼らを守らねばならない。

そしてこの状況においてはギャバンはまずマーベラス達の安全確保を最優先するしかない。
そのためにはアシュラーダを倒すことは二の次とするのもやむなしでした。
まずマーベラス達を逃がし、その後、余力でもってアシュラーダを倒すという戦い方をするしかない。
そのために敵の大部分を自分が引き受けようとギャバンは思いました。

それに対してアイムが「でも・・・この数!」と言います。
周囲のゴーミン達は大変な数です。
もちろんアイムとしても、こんな不利な状況にいきなり巻き込まれて
ギャバンの戦いに付き合おうなどという気はありませんでしたが、
こんな大量の敵を相手に1人で戦ってアシュラーダを倒すなどどう考えても無謀だと思えたので、
どうせならギャバンも一緒に6人全員で血路を開いて逃げた方がいいのではないかと思ったのでした。

しかしギャバンは「大丈夫ぅっ!!」と腹の底から大声を出しながら、
自分の着ている革ジャンの腹のところをドン!と叩きます。
するとどういう仕組みになっているのかよく分かりませんが、
ギャバンの懐から没収していたモバイレーツが出てきます。
ギャバンはそのモバイレーツをひょいとマーベラスに投げて返し、
更に続けて4つモバイレーツを取り出すと他の仲間4人にも投げ返しました。

これでマーベラス達は変身も出来るようになりました。
変身して戦って囲みを解いて脱出するようギャバンは言っているのです。
そしてギャバンは少し後ろに視線をやってマーベラス達の方をチラリと見て軽く笑うと、
ぐっと前方のアシュラーダの方を睨みながら、自分に気合いを入れるように
「・・・よろしく勇気!」と言い、こめかみに右手の指2本を添えて敬礼のように前にチョイッと突き出しながら
「・・・だよ!」と、マーベラス達に対して軽くおどけてみせました。
「自分は大丈夫だから君たちは逃げなさい」という意思を伝えるためにギャバンは余裕を示してみせたようです。
そして次の瞬間、ギャバンはアシュラーダの方に向かって駆け出し、ゴーミンの群れに突っ込んだのでした。

あくまでギャバンはアシュラーダをこの場で倒すつもりです。
そのためには、まずはギャバンが多くの敵を引き付けている間に
巻き込んでしまったマーベラス達に逃げてもらわないといけないとギャバンは考えています。
この圧倒的不利な状況から一旦撤退するというつもりはギャバンには無いようです。
ならばマーベラス達としてもギャバンが戦いやすくするためには、
自分達は早く逃げた方がいいということになります。

もちろん逃げるためにはマーベラス達も戦わねばならないが、
それはあくまでこの場を逃れるための戦いであり、
この場のザンギャック兵を全部倒してアシュラーダを倒すまで戦うというものではない。
マーベラス達はこの大量の兵を相手に宇宙警察のためにそこまでする義理は無い。
マーベラス達は圧倒的劣勢になった時、自分達だけ逃げるか、あるいはギャバンともども逃げるか、
2つの選択肢がありましたが、ギャバンが逃げるつもりがない以上、マーベラス達だけが逃げるしかありません。

しかし、どうしてギャバンは圧倒的劣勢が分かっていながら、
あくまで逃げずにアシュラーダを倒すために戦おうとするのか?
ブートレグがいる以上、ギャバンの不利は決定的であるようにマーベラス達には見えました。
しかしギャバンは勝ち目が無いとは思っていません。

確かにギャバンとブートレグは、ギャバンが変身すれば能力的には互角です。
そして持久力や耐久力ではブートレグの方が上です。
しかしギャバンはブートレグに足りないものに気付いています。
それが先ほどのギャバンの「よろしく勇気」という謎の言葉に関係しています。
その言葉に象徴されるモノをギャバンは持っており、それが自身の最大の武器だと自負しており、
ブートレグにはそれが無い以上、自分はブートレグに打ち勝つことが出来ると確信しています。
だからギャバンは自信を持って「大丈夫」と言うことが出来たのです。

それにしても「よろしく勇気」というのは奇妙なフレーズです。
日常において一般人があまり使う言葉ではありません。
このフレーズは実は1982年放送の「宇宙刑事ギャバン」のTV本編の主題歌
「宇宙刑事ギャバン」のサビの歌詞に由来しています。

この主題歌のサビは「ギャバン、あばよ涙、ギャバン、よろしく勇気、宇宙刑事ギャバン」という歌詞になっています。
つまり「よろしく勇気」は「あばよ涙」と対になっているフレーズであり、
2つのフレーズが一緒になって1つの意味となっているようです。
だから、ここでギャバンが言った「よろしく勇気」には「あばよ涙」の意味も含まれていると見ていいでしょう。
それで、これはいったいどういう意味なのかというと、歌詞のフレーズの意味としてはシンプルな意味だと思います。

ギャバンの主題歌の歌詞は全体的に「男らしいヒーローのような生き方とはどういうものなのか」について
視聴者の子供たちにストレートに示すものとなっています。
1コーラス目でヒーローの条件として重視されていることは「振り向かないこと」「ためらわないこと」であり、
2コーラス目で同様に重視されていることは「あきらめないこと」「悔やまないこと」です。
つまり、後ろ向きな精神は否定されており、前向きな精神が肯定されている。
そして1コーラス目のサビに「あばよ涙」「よろしく勇気」のフレーズがあり、
2コーラス目のサビの同一箇所には「あばよ昨日」「よろしく未来」というフレーズがある。
こうしてまとめてみると、「涙」は「昨日(過去)」に重ね合わされており、
「勇気」は「未来」に重ね合わされていることが分かります。

つまり、ギャバンの主題歌に込められた子供たちへのメッセージというのは、
「悲しく辛い過去を振り向いて悔やんで涙するのはもうやめて、あきらめず、ためらわず勇気をもって進めば、
茨の道の先にもきっと明るい未来を掴み取ることが出来る」ということです。
それが男っぽいヒーローの生き方だということをギャバンの主題歌は子供たちに伝えようとしていたのです。

この場面でギャバンが言った「よろしく勇気」というフレーズには、
このギャバン主題歌のメッセージ全体の意味が込められていると見ていいでしょう。
要するにギャバンはどんな不利な状況でも諦めず躊躇わない勇気をあるので、きっと勝利するのだという
確信があるということになります。

しかし、これだけではかなり月並みな解釈となります。
まぁ月並みになってしまうのは仕方ない。
何せ、このギャバン主題歌の歌詞はかなり抽象的であり、漠然とした意味だからです。
基本的には子供たちへ向けたメッセージソングなので、ギャバンに限らず誰にでもあてはまる内容なのです。

そもそも、この「よろしく勇気」という言葉はギャバンの決めゼリフというわけではなく、
単なる主題歌の歌詞でしかありません。
1982年放送の「宇宙刑事ギャバン」本編でギャバンがこのセリフを言ったことはありません。
もしこれがギャバンの決めゼリフであったのなら、
そこには劇中人物であるギャバンのキャラ的な背景が反映されており、
そのセリフにはギャバンならではの深い意味が込められていることでしょう。
しかしギャバンというキャラが実際はこのセリフと縁が無いので、
このセリフに込められた意味は主題歌の漠然としたメッセージの域を超えないのです。

だが、この映画のこの場面ではギャバンは「よろしく勇気」というセリフを言ったのです。
メタ的なことを言わせてもらうと、劇中人物であるギャバン自身はギャバンの主題歌を聞いたことはないはずです。
それなのに「よろしく勇気」などという奇妙な言い回しを知っている。
そんな変なセリフが即興で出てくるはずはないでしょう。
つまり、この映画におけるギャバンというキャラは「よろしく勇気」というセリフを知っているのであり、
おそらく、こういう絶体絶命の場面で拠り所とするような大切な言葉なのでしょう。
ギャバンという人物を象徴する、一種の決めゼリフと言っていい。
ギャバンにとって、このセリフは自分を自分たらしめている、人生の指針のような言葉なのでしょう。

1982年放送の「宇宙刑事ギャバン」本編では、ギャバンはこのセリフを喋らなかったが、
これもまた「ゴーカイジャー」物語世界に登場するキャラがオリジナルとは微妙に設定が違うものもあるという
1つの例と考えればいいでしょう。
但し、相違点はあくまで微妙です。
ドルギランの大きさが違っているという程度の違いです。
大きさは異なっていても、あくまでギャバンの乗機は1982年のTV本編と同じドルギランなのであって、
見たこともないような宇宙戦艦などに乗ってはいない。
それと同じように、この映画におけるギャバンは「よろしく勇気」という決めゼリフを持っているが、
それはあくまで1982年のTV本編の主題歌における意味と同じ意味なのであって、
1982年TV本編の内容が背景となった決めゼリフであるはずなのです。

つまり、30年前のTV本編の中におけるギャバンの物語の中で
「よろしく勇気」というギャバンの決めゼリフは形成されたと解釈出来ます。
我々が30年前に見た「宇宙刑事ギャバン」という番組の中では
ギャバンは「よろしく勇気」などというセリフは言っていませんでしたが、
この映画に登場したギャバンは、どうもその30年前の「宇宙刑事ギャバン」のギャバンとは
微妙に違う設定のキャラであるようです。

この映画に登場したギャバンの三十数年前の地球におけるマクーとの戦いの物語は、
我々の「宇宙刑事ギャバン」で見たギャバンの物語と酷似していながら細部が少しだけ違う。
そこではギャバンは「あばよ涙、よろしく勇気」などというセリフを好んで使っていたのでしょう。
ただ、そのセリフに込められた意味は、そのギャバンの人生に根差したものであり、
そのギャバンの人生は、我々の知る「宇宙刑事ギャバン」におけるギャバンの人生とほぼ同じであるので、
だいたいそのセリフにギャバンがどういう意味を込めていたのか、
その物語を思い出し、更に主題歌の歌詞もヒントにすれば、だいたい想像することは出来ます。

主題歌において強調されていたのは
「辛い過去に涙するのをやめて勇気をもって前向きに生きれば明るい未来を掴み取ることが出来る」ということです。
この意味が込められた「よろしく勇気」というセリフをギャバンが愛用していたということは、
劇中人物であるギャバンには、そうした教訓を実感するような出来事があったということになります。

言い換えれば、ギャバンには乗り越えるべき辛い過去があったということになります。
「宇宙刑事ギャバン」の物語に登場するギャバンは子供好きな明るい成人男性ですが、
それは既に涙に暮れた過去を乗り越えて、ある程度の明るい未来を掴んだ姿だといえます。
ギャバンにも成人する前には辛い過去に涙して未来に絶望するような少年時代があり、
それを勇気によって乗り越えて明るい未来を掴んだからこそ、
ギャバンは子供たちにも明るく勇気をもって未来に向かって進むよう励ましている。
それがギャバンの主題歌の隠された真の設定なのでしょう。

では、そのギャバンの少年時代の辛い出来事というのは何なのかというと、
それはおそらく父であるボイサーの失踪でしょう。
ギャバンが少年の頃、地球に赴任していた宇宙刑事であった父のボイサーは突然行方不明となり、
おそらく宇宙犯罪組織マクーの犯罪に巻き込まれて死んだと思われていました。
ギャバン少年は絶望して涙に暮れたことでしょう。
無力な少年は父の喪失という悲しみの前に、ただ絶望するしかなかった。

しかし、その後、ギャバン少年は涙に沈んだ過去に決別して、
父を取り戻すという明るい未来を目指して進む決意をしたのです。
ギャバンは父は生きており、マクーの関与した陰謀に触れたために捕らわれたままであると信じ、
父を救い出そうと考えました。
そのためには父がマクーのどういう陰謀に関係して拉致されたのか突き止めなければならない。

そのためにギャバンは自分も宇宙刑事になろうと思いました。
そして父と同じように地球に赴任し、父と同じようにマクーと戦って宇宙の平和を守りながら、
父の失踪の手掛かりを探り、最終的には父を救出しようと決意したのでした。

しかし、まず宇宙刑事になるのは様々なテストをクリアして危険な訓練も積まなければならない。
1つの星を任される刑事になるのは更に大変な難関をクリアしなければいけない。
もし宇宙刑事になって地球に赴任出来たとしても、常に死と隣り合わせの苛酷な任務の日々となります。
そんな中、うまく父の失踪の手掛かりが見つかるとは限らない。
だいいち父が生きている確率は極めて低い。

また、もし万が一、父の失踪事件の全貌を掴みマクーの陰謀を突き止めることが出来たとしたら、
それはそれで極めて危険なことです。
父のボイサーはその陰謀を知ったためにマクーに浚われたと思われるから、
もしその陰謀を知ればギャバンにも父と同じ危険が迫ることになる。

そうした恐怖と不安を乗り越えて、
逆にマクーに乗り込んで生きているか死んでいるか分からない父を救い出そうというのですから、
かなり成功の可能性は低い絶望的な話で、
よほどの勇気が無ければこんな絶望的な道を進んでいくことは出来ないでしょう。

しかしギャバン少年は、だからこそ良いのだと思いました。
この世で一番の勇気は、この世で一番不可能なことに挑戦する勇気です。
言い換えれば、この世で一番不可能なことに挑戦することによって、この世で一番の勇気が湧いてくる。
そして、その時のギャバン少年にはこの世で一番の勇気が必要だったのです。
何故なら、当時のギャバン少年は父の喪失という、この世で一番の悲しみに沈んでいたからです。

勇気こそが悲しみを乗り越えるために必要なのであり、
この世で一番の悲しみを乗り越えるためには、この世で一番の勇気が必要であり、
この世で一番の勇気を湧き起こすためにはこの世で一番不可能なことに挑戦するしかない。
だからギャバンは、宇宙刑事になって父の失踪の謎を解き父を救出するという、
ほとんど不可能に近い明るい未来を本気で掴むために挑戦することにしたのです。

悲しみを乗り越えて勇気を発揮して未来に進むことがただ普通に素晴らしいのではない。
人は悲しみを乗り越えるためにこそ勇気を発揮して未来に進むことが必要なのです。
悲しんでいる者、絶望に沈んでいる者こそが、
その悲しみや絶望を乗り越えるために、真に勇気が必要な者なのであり、
明るい未来に向かって進まねばならない者なのです。
それゆえ、絶望している者こそが、真の勇気を得て、真の明るい未来を掴む可能性のある者なのです。

真の勇気とは必要によって生まれてくるものであり、
その必要とは悲しみを乗り越えるために必要ということです。
つまり真の悲しみを知る者こそが、それを乗り越えるために真の勇気を得ることが出来、
真の明るい未来を掴むことが出来る。

あのギャバンの主題歌の真の意味はこれであり、
「あばよ涙、よろしく勇気」という言葉の真の意味もこれです。
単に「悲しみと決別して勇気をもって未来に進もう」という意味ではない。
「涙」と「勇気」は相反するものではなく、表裏一体なのです。
「涙」があるからこそ「勇気」が生まれてくる。
「涙」を知った者は「勇気」をもって未来に進むしかないのです。
絶望的状況であればあるほど、人は勇気を必要とする。
そして、その勇気は絶望を乗り越える力となり、未来を拓く。
「あばよ涙、よろしく勇気」というのは、その真理を簡略に表したフレーズなのです。

そのことをギャバン少年は知っていた。
しかし、どうして少年の身でそんな人生の含蓄の込められたフレーズの意味を理解していたのか?
思うに、この独特の言い回し、そして極めて分かりやすい日常的な単語のみで構成されていることなどから、
これは子供向けに作られた言い回しであろうと推測出来ます。
となると、この「あばよ涙、よろしく勇気」というのは、
父のボイサーが息子のギャバンに向けて、
人生における悲しみと、それを乗り越える真の勇気というものについての真理を教えるために
作り出したフレーズであったのではないでしょうか。

その父の残した言葉によってギャバン少年は、
父を失った悲しみに沈んだ今の自分には、まさに不可能に挑戦する勇気こそが必要なのだと悟り、
宇宙刑事になって父を救出するという目標を定めることが出来たのでした。

その後、ギャバンは厳しい訓練を経て難関をクリアして宇宙刑事となり、父と同じように地球に赴任し、
マクーの犯罪と戦いながら父の手掛かりを探し、遂に父の失踪の真相を解き明かしました。
それは、父がマクーの極秘に開発していた宇宙征服のための最終兵器の完成のカギを握る
レーザーシステムの設計図の秘密を知ってしまったために、
父からその秘密を聞きだすためにマクーが父を拉致したというものでした。
そして、父が長年ずっとマクーに拷問され続けながら、
それでも口を割らずに未だに捕らわれの身のままで生きていることを知りました。

単に口を割らないだけならば、ある程度強靭な精神力を持った者ならば可能でしょう。
口を割らないまま死んでしまえば、それはそれである意味では楽だからです。
しかし、実はボイサーはその設計図を自分の掌に特殊なインクで描いており、
そのインクは体温が低下すると浮かび上がるという特性を持っていたので、
ボイサーが捕らわれの身のままで死ぬことによって設計図はマクーの手に落ちる。
だからボイサーは絶対に死ぬことが出来ず、かといって口を割ることも出来ないので、
とにかく死なないように頑張り続け、ずっと生きたまま拷問に耐え続けるしか選択肢は無かった。

それは気の遠くなるほど絶望的な日々であり、到底耐えることは不可能であるように思えます。
しかし「あばよ涙、よろしく勇気」の言葉をギャバンに伝えたボイサーは、
まさに「不可能に挑む勇気こそが絶望を乗り越える」という真理を実践し、
マクーの苛酷な拷問に耐え続けて、生き続けていたのでした。

その父の事件の真相を知ったギャバンは、遂にボイサーを救出して、マクーの最終兵器開発計画を潰したのでした。
しかし、長年の拷問によってボロボロになっていたボイサーは
ギャバンと再会し救出されてからすぐに死んでしまいました。
結局ギャバンは「父を救出する」という不可能への挑戦を成し遂げたが、
父の死によって、その達成は束の間のことであり、明るい未来を掴むことが出来たとは言い難い。

しかしボイサーが宇宙刑事として命を賭けて守ろうとした宇宙を守り、
宇宙刑事としてボイサーの遺志を継ぐことによって、
きっと自分と父の明るい未来をそこに見出すことが出来るはずだと思ったギャバンは、
不可能への挑戦はまだ終わっていない、継続していると思い直し、
その後マクーを滅ぼし、更にその後はマクーのような宇宙犯罪組織の暗躍によって
宇宙の平和が脅かされることを防ぐために宇宙刑事として身を粉にして働いてきた。

その自分の今までの宇宙刑事としての人生、そして父ボイサーの生き様を通して、
ギャバンは人間は絶望的な状況でこそ不可能に挑戦する勇気を湧き立たせ、
それが絶望的状況を乗り越える力となるのだということを確信しています。

もちろん全ての人間がそんな強さを持っているわけではないが、
ギャバンは様々な絶望を乗り越えてきた自分の持つ強さはそうした種類の強さなのだと自負しています。
父の一件だけではない。刑事なんて仕事をしていると、やりきれない現実ばかりにぶつかります。
その現実に打ちのめされて自分の弱さを知り、勇気を出してその現実を乗り越えていく。
刑事の仕事はそんなことの繰り返しであり、それが出来なければ一人前の刑事とはいえない。

長年、そういうことを繰り返してギャバンは強くなってきた。
「宇宙最強の刑事」などと言われるが、本当に自分が宇宙最強なのかと言われるとギャバンにはよく分からない。
自分は絶望を知る弱い人間だと思っている。
だが、最強かどうかは知らないが、
その弱さや絶望を知っているからこそ自分には強さが有るのだということは知っている。

そんなギャバンは、このザンギャックの兵や強敵ブートレグに囲まれた絶望的状況で決して怯むことはありません。
むしろ、そうした絶望的状況でこそ最も強いのが自分だと自負している。
「よろしく勇気」というのは、そうしたギャバンの自負を象徴する言葉です。

確かにブートレグはギャバンと同等の能力を持っており、ギャバンを凌駕する持久力を持っており、
データ的にはギャバンを超える強さを持っています。
しかし人間ではないブートレグには、絶望的状況でギャバンが発揮するデータを超えた力はインプットされていないし、
その力に対応するプログラムも施されてはいない。
ギャバンは絶望的状況に陥るたびに今でも強くなり続けているのです。
だから、こんな絶望的状況だからこそ、自分はブートレグにきっと打ち勝つことが出来るとギャバンは信じています。

とにかく、この敵軍の中で問題となるのはギャバンと同等の能力を持つブートレグです。
そのブートレグさえ倒せば、アシュラーダを討つことは出来る。
だからブートレグに勝つことを確信しているギャバンは、自信をもって突っ込んでいったのでした。

ギャバンからモバイレーツを受け取ったマーベラス一味の面々は、
「よろしく勇気」というギャバンの口走った奇妙な言葉の意味はよく分かりませんでしたが、
ギャバンの態度があまりにも確信に満ちたものであったので、それ以上はギャバンを止めようとは思いませんでした。
ギャバンはヤケクソになって突撃しているのではなく、それなりに勝算があるのだということは分かったのです。

それでも圧倒的不利ではあるのは間違いないので、心配はありましたが、
別に仲間というわけでもないので、それ以上積極的に制止する理由も無いし、
仲間でもないギャバンが加勢を求めているわけでもないのに、
こんなもともと自分達には関係無い争いに勝手に加勢するというのも変です。
とにかく今はギャバンが望むように、
ギャバンの戦いの邪魔にならないように自分達は早くこの場を脱出した方がいいと思いました。
ギャバンのことが多少は気にかかりましたが、ジョー、ルカ、ハカセ、アイムは
ギャバンの言葉を受けてそのように心を決めました。

ところがマーベラスだけどうも様子が変です。
ギャバンが「よろしく勇気」という言葉を口にして二本指を敬礼のように突き出した瞬間、
ハッとしたような表情でギャバンを見つめて固まったように動かなくなってしまったのでした。
そのマーベラスが背中を見つめるギャバンは迷いなく駆け出してゴーミン達の群れの中に突っ込み、
次々とゴーミン達を倒していきます。

大葉健二氏の生身アクションは、先ほどのいきなりブートレグが襲って来たのに対して応戦した場面と、
そしてこのシーンという2つの場面でこの映画では披露されます。
「ゴーカイジャー」の物語に3度目の出演となる大葉氏ですが、遂に生身アクションを披露したわけです。

何せこの映画の撮影時56歳ですから、
普通の演技はともかく、生身アクションについては正直、
ちゃんとしたアクションが出来るのかちょっと心配ではありました。
年齢ゆえに衰えたショボいアクションを見せられて
往年のファンがガッカリするようなことになりはしないかという危惧が無いではなかった。
また、子供たちから見てヒーローに見えない、ただの老人に見えてしまったらどうしようという不安もありました。

「ゴーカイジャー」の物語において古い作品のレジェンド回が回避されがちであるのは、
やはりあまり年齢の上のレジェンドゲストが
子供たちから見てヒーローに見えないのではないかという心配が制作サイドにあるからです。
そういう点、56歳の大葉氏は普通ならば子供たちから見て絶対にヤバいです。

しかし、そんな危惧を吹っ飛ばすような見事な身のこなしです。
さっきブートレグにやられてしまうアクションの場面も見事なアクションでしたが、
やはりこの場面のようにヒーローらしくバッタバッタと敵を倒す場面が一番映えます。

どれだけ年齢を重ねても演技によってヒーローとしての説得力を見せてくれるレジェンドゲストは
「ゴーカイジャー」の物語の中でたくさん登場はしました。
いや、全員がそうであったと言ってもいいでしょう。
しかし、これだけの高齢になって、演技だけでなくアクションでも
ヒーローとしての説得力を示してくれる役者はそう多くはいないでしょう。
大葉健二氏はまさにそれが可能な稀有な役者さんの1人といえます。

そして、ギャバンはゴーミンの群れの中で戦いながらアシュラーダを睨みつけます。
それに対して「フッフッフッフッフ・・・」と不気味に余裕の笑みを見せるアシュラーダを倒すべく、
ギャバンは「・・・蒸着!!」と変身ポーズをとり、
光の玉となって「ジュオオオッ!!」と叫んでゴーミン達を蹴散らしてアシュラーダの目の前に突っ込み、
コンバットスーツを蒸着した姿を現して、一気にアシュラーダ目がけてレーザーブレードを振り下ろしました。
そこにブートレグが飛び込んできてレーザーブレードを突き出して、ギャバンのレーザーブレードを受け止め、
ギャバンは「むっ!」と予想通りブートレグとの決着が先であることを悟り、
アシュラーダの前で激しくブートレグとの斬り合いに突入していきます。

一方、ギャバンからモバイレーツを返してもらったマーベラス一味の面々も
襲い掛かってくるゴーミン達の包囲網を突破してこの場を逃れるため、
一斉にゴーカイジャーの姿に豪快チェンジして戦闘開始しますが、
その中でマーベラスだけが未だ呆然とギャバンの姿を凝視しており、突っ立ったまま変身していません。

まさかマーベラスがこんな緊急時に棒立ちになっているとは想定もしていなかった他の4人は、
何せ周りを囲んだゴーミン達の数が尋常ではなかったので、敵の方に集中しており、
このマーベラスの異常な様子に気付かずに戦い始めました。
その中でジョーだけがマーベラスが戦っている気配が無いのに気付いて、
ふと後ろを振り向くとマーベラスが変身もしないで棒立ちになっているのに気付いて
「・・・ん・・・?」と不審に思いました。

どういうわけかマーベラスは少し離れた場所でギャバンとブートレグが斬り合いをしているのを見て呆然としています。
一体マーベラスに何が起きたのか、ジョーにもよくは分かりませんでしたが、
ここまでの描写では映画を観ているお客さんにもさっぱり分かりません。

そのマーベラス、どうやらさっきギャバンが言った
「よろしく勇気」という言葉に大きなショックを受けているようです。
ギャバンの方を凝視しながらマーベラスの脳裏には、昔の記憶のようなものがフラッシュバックしています。
その記憶は革ジャンを着た男が指を二本突き出す姿、子供の頭を撫でる男の手、
そして「よろしく勇気だ!」という男の言葉が響きます。

遠い記憶であるようで、マーベラスにはその記憶の中の革ジャン男の顔が思い出せません。
だが、どうやらその男が過去に「よろしく勇気」という独特のセリフを言うのをマーベラスは聞いたことがあるようで、
その記憶の中の男と同じ独特のセリフ、そして同じような仕草をギャバンがいきなりしたので、
マーベラスにはギャバンがその記憶の中の男と同一人物のように思えて大いに驚いたのでした。

そう思ってマーベラスがじっとギャバンの姿を見てみると、
確かにあの遠い記憶の中の男と後ろ姿や服装も似ているような気もしてきます。
年齢はずいぶん記憶の中の男とは違うが、
遠い昔の記憶ですから、その記憶の中の男ともし現在出会えば、
おそらくギャバンぐらいの年齢になっているぐらいだとマーベラスは気付き、
ますますギャバンがその記憶の「よろしく勇気」の男なのではないかという疑惑は膨らみます。

だが、そんなはずはないと思い、マーベラスは混乱しました。
何故なら、マーベラスの記憶の中のその男は宇宙刑事などではなく、
宇宙海賊、そしてマーベラスの「父親」だったからです。
だから、その男がギャバンであるはずがない。
しかし、あるはずがないと思いつつも、あるいはそうなのかもしれないとも思えてきて、
マーベラスの頭の中はひどく混乱してきました。

それで戦いの最中だというのに、1人だけ呆然自失の状態となってしまっていたマーベラスでしたが、
突然、体育館の床の下、自分の足元から異様な破壊音が湧き起こってきたため、さすがにハッと我に返りました。
次の瞬間、体育館の床がバリバリと轟音を立てて破壊され、
床に開いた大きな裂け目から巨大なドリルが突き出してきて、
ジョー達と戦っていたゴーミン達を大量に蹴散らします。

それは豪獣ドリルの尖端の巨大ドリルでした。
豪獣ドリルは地下からその姿を現すと、
コクピットからは「お待たせ致しましたぁ!皆さん!乗ってくださぁい!」という鎧の得意げな声が響きます。
ようやく鎧がマーベラス達の連れ去られた場所を特定して救出にやって来たようです。

スーパー戦隊シリーズにおいては、
戦隊側の巨大戦力で敵の等身大の怪人や戦闘員を直接攻撃するという描写は基本的にはタブーなのですが、
今回は鎧もやはりガレオンのメインコンピュータの復帰に時間がかかった関係で
マーベラス達の居場所の特定に意外に時間がかかってしまい、
大慌てで飛び込んできたという緊急時対応であったので、まぁ特例扱いということでいいでしょう。

鎧としては仲間のピンチに間一髪で颯爽と現れたヒーロー気取りですが、
実際のところは待つ身の仲間5人から見れば鎧の登場は予想以上に遅く、
ギャバンに助けられていなければマーベラス達はとっくに死んでいました。
そして、ギャバンに助けられてモバイレーツも返してもらい、自力脱出のために戦い始めた状況の中で、
彼らはすっかり鎧のことなど忘れていました。

そんな忘れられた頃にようやく現れて得意顔の鎧に呆れたルカは「来るのが遅〜い!」と激しくツッコミますが、
ハカセはこれで戦う手間が省けて脱出できると思い
「やったぁ〜!」と歓喜して豪獣ドリルの方に向かって駈けていきました。
仕方なくルカもゴーミン達を蹴散らしながらハカセの後を追い、
アイムも「参りましょう!」と豪獣ドリルに向かいます。

ジョーもそれに続こうとしてマーベラスの方を見ますが、マーベラスはそれでもまだ突っ立ったままです。
鎧が救出に来たことは分かっているはずであり、仲間達がみんな脱出の態勢に入っていることは分かっているはずです。
それなのにまだ1人だけ変身もせずに突っ立ったままのマーベラスを見て、ジョーもさすがに焦れて
「何してる!?・・・マーベラス!!」と大声で怒鳴りました。

マーベラスはまだギャバンと自分の父親が同一人物なのかもしれないと思い、
その真相を探るかのように、ブートレグと戦い続けるギャバンの姿を凝視していました。
鎧が助けに来た以上、すぐに脱出しなければいけない。
しかし、この場を脱出してしまうと、もう二度とギャバンには会えないかもしれない。
ならば今少しの間だけでもギャバンの姿を観察して、
果たしてギャバンが遠い記憶の中の父親と同一人物なのかどうか見極めたいとマーベラスは思ったのです。

しかし、観察してもよく分からない。
だいいちギャバンはコンバットスーツ姿に変身してしまっているので、見た目ではもうよく分かりません。
それでも何かヒントが見つかるかもしれないと思い必死で見つめるマーベラスでしたが、
さすがにジョーの怒声で我に返って、ジョーの方をチラリと見ます。
今の自分はマーベラス一味の船長であり、仲間たちを率いる立場です。
こんな個人的な感情で皆に迷惑をかけるわけにはいかない。
そう思ったマーベラスは残念そうにギャバンの方を一瞥すると、
想いを振り切るように顔を背けて駆け出し、豪獣ドリルに向かいました。

ジョーはマーベラスが豪獣ドリルに向かうのを見届けつつ、
いったいマーベラスは何をしていたのかと思い、マーベラスがじっと見ていた方向に視線をやります。
そこにはブートレグと戦うギャバンの姿がありました。
マーベラスはずっとギャバンを見つめていた。
しかも変身するのを忘れるほど必死で見ていたのです。
そのことい気づいたジョーでしたが、
しかし、いったいどうしてマーベラスがそんなに初対面の宇宙刑事のギャバンのことを気にかけていたのか、
ジョーにはその理由は皆目見当はつきませんでした。

だが、今はそんなことを確かめている余裕は無い。
首を捻りながらジョーも脱出を急ぎ、豪獣ドリルに飛び込みました。
そうして仲間5人全員が豪獣ドリルに乗り込んだのを確認すると、
鎧は「よし!脱出!」と言って豪獣ドリルを発進させ、
豪獣ドリルはゴーミン達を吹っ飛ばして飛び上がり、体育館の屋根を突き破って飛んでいき、
マーベラス一味はまんまとその場を脱出することに成功したのでした。

これによってその場にいたゴーミン達はほぼ全滅し、
体育館には相変わらず互角の戦いを続けるギャバンとブートレグ、そしてアシュラーダが残されます。
マーベラス一味を取り逃がしてしまったアシュラーダですが、
「フン!海賊どもの処刑は後だ!」と、あまり残念そうではありません。
アシュラーダにはむしろマーベラス一味よりもギャバンの方が主なターゲットであるようで、
ブートレグに向かって「ギャバンを魔空空間に引きずり込め!」と命令を発します。
このアシュラーダの命令を受けてブートレグは目を赤く発光させてフルパワー形態となり、
ギャバンを押さえこみにかかります。
一方、ギャバンはこのアシュラーダの意外な言葉に「・・・魔空空間だとぉ!?」と驚愕しました。

この「魔空空間」とは何なのかというと、
1982年放送の「宇宙刑事ギャバン」TV本編において登場していた亜空間のことです。
宇宙犯罪組織マクーは敵である宇宙刑事と戦う際、
このマクーの支配する魔空空間を作り出して敵を引きずり込み、そこで戦いました。
魔空空間においては、魔空空間を支配するマクー側の怪人は能力が3倍に増幅するので、
敵との戦いが有利になるのです。

ギャバンはその頃、あえて魔空空間で戦ってマクーの怪人たちを倒していきましたから、
恐ろしく強いのは間違いない。
しかし、ギャバンと同じ能力を持つブートレグが魔空空間に行けば、
数値的にはギャバンの3倍の強さということになります。
それではいくら何でもギャバンは絶対的に不利となります。

そこにギャバンを引きずり込んで一気に勝負を決しようというのがアシュラーダの目論みであるようですが、
しかし、この魔空空間はマクーの専売特許のようなもので、
ギャバンが三十数年前に首領のドン・ホラーを倒してマクーを壊滅させた後は、魔空空間も消滅したはずでした。
だから、それから三十数年が経った現在、ここでザンギャック怪人であるアシュラーダの口から
「魔空空間」という懐かしい言葉が飛び出してきたのを聞いて、ギャバンはあまりの意外な展開に驚き、
「バカな・・・宇宙犯罪組織マクーは滅びたはずだ!」とアシュラーダに向かって言い返します。

しかし、アシュラーダの身体の前方の空間には、赤黒い亀裂のようなものが生じてきて、
それが見る見る広がっていくのでした。
それは確かにギャバンの若い頃、この地球でマクーとの戦いに明け暮れていた頃に
たびたび目撃した魔空空間の入り口によく似ています。
マクーが滅びて久しい現在、魔空空間が存在しているとはギャバンには到底信じられませんでしたが、
もし万が一、あれが魔空空間だとするなら、
あの空間の亀裂がこのまま拡大してきてギャバンを呑みこもうとするはずです。
ブートレグがフルパワーでギャバンを押さえこみにかかっているのは、ギャバンを逃がさないようにするためであり、
自分もろともギャバンを空間の亀裂に引きずり込むためです。

そうした敵の意図を察したギャバンは不安な気持ちになりました。
いや、ギャバンがそんな弱気になっているのは、
そもそも勝てると思って戦い始めたブートレグ相手に意外な苦戦を強いられていたからでした。
ブートレグが予想以上に強かったというわけではない。
確かにブートレグの能力はギャバンの能力のコピーであり、
己の能力をよく知るギャバン自身が予想した通りの強さでした。

問題はギャバン自身の方にありました。
絶望的状況を勇気で乗り越えてきた自分だからこそ、
その同等の能力を持つブートレグを更に凌駕する力を発揮出来るはずだと思っていたのに、
その期待した力は生じてきませんでした。
それどころか、ブートレグと互角の戦いを強いられているうちに、
予想していた以上に早く疲労が襲ってきました。

もしかして、これが「老い」というものなのかとギャバンは思いました。
もちろん、自分が老いてきていることは知っています。
しかし、老いによる衰えを跳ね返すだけの鍛錬を積んできたつもりであるし、
自分には老いによる衰えを跳ね返す精神力があると自負していました。
実際、戦いの場でこれまで老いを感じたことはありませんでした。

しかし自分と互角の能力を持つ相手との戦いで
老いによる衰えが露呈してしまったのかもしれないとギャバンは思いました。
それは言い換えれば、自分には老いによる衰えをカバーするだけの
プラスアルファの力がもはや湧き上がってこないということです。

どうしてなのかとギャバンは考えました。
これまで自分にはその力があると思っていた。
しかし実際はそうではなかったのかと思えてきます。
それならば自分の能力を複製してなおかつ衰えることのない機械の戦士に敵うはずはない。

そこに突然「魔空空間」と疑われる空間の出現です。
マクーを滅ぼしたことこそがギャバンの勇気の象徴でした。
しかし、それがどうも根本から揺らいできたようにギャバンには思えてきたのでした。
本当に自分が勇気をもって絶望と戦って明るい未来を掴んできたのか、ギャバンの確信は揺らいできました。

そうして動揺するギャバンは遂にブートレグに押さえこまれて、床に膝をついてしまいました。
そこに赤黒い空間の亀裂が一気に拡大してきて、
ギャバンは「うわああああ!!」と絶叫しながら呑みこまれていってしまいました。
そして、その赤黒い亀裂が広がった雲のような塊は、
ギャバンとブートレグ、そしてアシュラーダを呑みこんで一気に縮小し、空間の中に掻き消えてしまい、
その後には誰もいない体育館の静寂のみが残されたのでした。

さて、しかし、その誰もいなくなったはずの体育館に、どういうわけか微かに猿の鳴き声がします。
見ると、誰もいなかったはずの観客席の椅子に、何時の間にか宇宙猿のサリーと、
そしてその飼い主のバスコが座っていたのです。
バスコは一部始終を見ていたようで、ニヤニヤ笑いながら
「・・・あ〜あ!・・・マベちゃんもまた、厄介な奴を呼び寄せたねぇ〜・・・!」とぼやくのでした。

バスコといえば「宇宙最大のお宝」を奪い合ってマーベラス一味と対立関係にある宿敵です。
「宇宙最大のお宝」を手に入れるために必要なスーパー戦隊の「大いなる力」は全部で34個であり、
この映画の時系列の直前にあたるTV本編の第46話において、
遂に最後の「大いなる力」であったカクレンジャーの「大いなる力」がマーベラス一味の手に入り、
34の「大いなる力」のうち29個がマーベラス一味、5個がバスコの手許に集まりました。
後はマーベラス一味とバスコとで決着をつけて、勝った方が34の「大いなる力」を揃えて
「宇宙最大のお宝」をゲットする。現在はそういう状況です。

バスコもそうした状況に至ったことは第46話のラストの段階で確認していますから、
マーベラス達の持つ「大いなる力」を奪うチャンスを窺って、マーベラス達のことを隠れて監視していたと思われます。
そこに突然、宇宙刑事ギャバンと名乗る刑事が現れてマーベラス達を逮捕連行してしまった。
これを隠れて見ていたバスコは意外な展開に戸惑いました。

単純に考えれば、まさに今こそマーベラス達のいなくなったガレオンに乗り込んで
レンジャーキーごと、そこに宿った「大いなる力」を全部、
そしてガレオンもナビィも、全部奪うチャンスでした。
しかし、このあまりに自分に都合の良すぎる展開に対して、極めて用心深いバスコは逆に怪しさを感じました。

バスコはさすがに博識なので
マクーのことや、かつてそのマクーを滅ぼした伝説の宇宙刑事ギャバンのことも一応は知ってしました。
しかしギャバンと直接接したことはないのでギャバンが何を考えているのか、どうもよく分かりませんでした。
マーベラス達が宇宙警察に逮捕されるような罪を犯してはいないことはバスコも知っていますから、
どう見てもギャバンのマーベラス一味逮捕は不当逮捕でした。
「伝説の刑事」と呼ばれた名刑事がそんな不当逮捕を何の疑いも無く実行するというのも、
バスコから見てどうも不可解でした。

もしかしたら、これは自分をおびき出して5つの「大いなる力」を奪うための
マーベラスの罠なのかもしれないと深読みしたバスコは、
この逮捕が真実であるのか確認するためドルギランの後を追跡し、
この体育館に忍び込んでマーベラス達やギャバンの動向を観察していたのでした。

結局、マーベラス達がバスコに罠を仕掛けようとしていたわけではないことは判明し、
バスコはそんなことならいっそ素直にガレオンに乗り込めばよかったと後悔しましたが、
マーベラス達は脱出してガレオンに戻ってしまったので、もはやそんなことを言っても仕方ない。

それよりバスコにとって問題だったのは、この一件に絡んでアシュラーダが登場したことでした。
バスコは「マーベラスが厄介なヤツを呼び寄せた」とボヤいていましたが、
これは状況的にアシュラーダのことを指していると見ていいでしょう。
つまりバスコにとってアシュラーダは厄介な相手なのです。

バスコはもともとはザンギャックと手を組んでいました。
また、これまでのエピソードを振り返ってみると、
バスコはおそらくザンギャック内部に情報提供者を抱えており、
ザンギャック内部の事情を少しは知っているのでしょう。
そのバスコはアシュラーダとはどういう役目を担った怪人であるのか知っているようであり、
それが自分にとっては厄介な相手だと認識しているようです。

そういうわけで、誰もいなくなった体育館に姿を現したバスコは、
マーベラス達から「大いなる力」を奪いつつ、
同時に厄介なアシュラーダを始末する都合のよい策は無いものか、思案を始めたのでした。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 17:39 | Comment(0) | 海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月16日

海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE 感想その5

ここで舞台はゴーカイガレオンに戻ります。
鎧の豪獣ドリルによって救出されたマーベラス達5人は、
まずはそのまま置きっ放しにしていたゴーカイガレオンに戻って、
ドルギランの攻撃によって損傷したガレオンの修復にあたりました。
しばらくの間、全員で船内の各所をチェックして回りましたが、火はすぐに消えたので船内に大きな損傷は無く、
一旦ダウンしていたメインコンピュータもナビィによって復帰していました。
そうした作業を一通り終えて、今はガレオンは鎧の乗って来た豪獣ドリルと並んでゆっくりと空を飛んでいます。

そのガレオンの船内チェックの仕上げとして船室でメインコンピュータの動作に異常が無いか確認したハカセは
「とりあえずガレオンも大丈夫みたい!」と安堵したように言って作業を終えます。
ガレオンに異常は無く、今後の航海や戦闘などに支障は無い様子です。
つまり、大詰めを迎えつつある「宇宙最大のお宝」探しの旅の継続に支障は無いということです。
また、宇宙警察による海賊行為の容疑もデッチ上げだったことが明らかとなり、
その不当逮捕を命じた宇宙警察の総裁も偽者だったことが発覚し、
今後は不当逮捕の心配もどうやらひとまずは無さそうです。
これで一安心、元通りの宝探しの日々に戻ることが出来ます。

ハカセは嬉しそうに「いやぁ・・・一時はどうなっちゃうかと思ったよぉ!」と、
船室に集まっている皆に笑顔を向けます。
処刑台に吊られた時は本当にもうこれでおしまいかと絶望していたハカセは、
こうして生きて再び皆と一緒に旅を続けられることが心の底から嬉しいのです。
1匹だけガレオンに残って皆のことを心配していたナビィも、嬉しそうにパタパタ飛んできて
「良かった!良かったぁ〜!」とハカセに相槌を打ちます。
すると、そこに「ホッホッホッホ〜!」と高笑いしながら鎧が飛び込んできて
「絶妙のタイミングだったでしょお!?俺ぇ〜!!」と有頂天でクルクル舞います。

昨晩、夜の街で火を噴いて落ちていくゴーカイガレオンを目撃した鎧は
大慌てで夜の海に墜ちたゴーカイガレオンを探し回り、
鎧がようやく海に浮かぶガレオンを発見した時には既にマーベラス達は地上に戦いに行ってしまった後でした。
それで慌てて地上に行ってマーベラス達を探しましたが、
その時には既にマーベラス達はギャバンに逮捕連行された後であり、鎧は完全にマーベラス達を見失ってしまいました。
そこでまたガレオンに取って返してモバイレーツの信号を追跡しようとしましたが、
ガレオンのメインコンピュータの復旧に手間取って信号の追跡が出来ず、
朝になってようやくメインコンピュータが復旧したのでマーベラス達の居場所が分かり、
鎧はすぐに豪獣ドリルで体育館に駆けつけたのでした。

このように、絶妙のタイミングでもなんでもなく、実際はことごとく間の悪い行動を繰り返した鎧でした。
鎧自身、助けに行くのが遅くなってしまったことは分かっていて、これはヤバいと思って焦っていたのですが、
体育館に駈けつけてみると、まさにマーベラス達が大ピンチの場面にちょうど飛び込んだことになり、
結果オーライで救世主的な役割を果たすことが出来たと思い込んでいます。
だからハカセが喜んでいるのも、自分への感謝の言葉なのだと感じて、鎧は有頂天なのでした。

ハカセは呆気にとられて鎧を見ていますが、
鎧は皆が自分に感謝していると思い込んでおり、すっかり自分に酔って
「ハッハッハ!やっぱ真打は遅れて登場〜!なんつーて!」と浮かれまくって
今度はソファに座るルカの方に行くと、「ねぇ!?」と同意を求めて、ルカに褒めてもらおうとします。

ところが、実際には鎧の登場は絶妙なタイミングでもなんでもなく、
5人が吊るされて処刑執行という絶体絶命の場面には全然間に合っていなかったのです。
その一番危ない場面で5人が助かったのはギャバンがリモコンで手錠を解錠してくれたからであって、
鎧は5人が変身してゴーミン達を蹴散らして脱出しようとしていた場面に乱入してきたに過ぎない。
お蔭で脱出はよりスムーズにはなったが、あそこまでいけば別に鎧が来なくても脱出ぐらいならば何とかなった。
あれほどルカ達が期待していた割には、鎧はハッキリ言ってあんまり役に立っていなかったと言えます。

それなのに妙に鼻高々な様子の鎧を見てムカついたルカは鎧を突き飛ばして
「何が真打よ!?何が絶妙よ!来るならもっと早く来なさいよっ!!」と耳をつねってキレまくり、
驚き慌てる鎧を「お蔭でこっちは大変だったんだから!」と押さえつけます。
そこにハカセも加わって「そうだよ!!死ぬところだったんだよ!!」と怒りながら
鎧の胸倉を掴んで身体をガクガクと揺さぶります。
助けに来るのが遅れたクセに調子に乗り過ぎた鎧はこうして折檻を受ける羽目となったのですが、
それを見てアイムが和やかに
「まぁ、よいではないですか・・・こうしてみんな無事に助かったわけですから・・・!」とルカとハカセを宥めます。

確かに鎧も遅れはしましたが、
マーベラス達5人を倒して連れ去った得体の知れない敵の居る場所に単身乗り込んできたわけですから
命懸けで一生懸命だったわけです。
実際、あれがギャバンがアシュラーダを追い詰めるためのお芝居ではなく、
ギャバンも含めた宇宙警察全体が真にゴーカイジャーの敵であった状況ならば、
果敢に乗り込んできた鎧も返り討ちに遭っていたかもしれない。
そういう可能性が大いにあるのに仲間のために命を賭けようとしていた鎧もまた、
結果的に無事に帰ってくることが出来たのだから、ちょっとは有頂天になっても仕方ない。

とにかく6人全員が無事に今回の一件を乗り切ったのは有難いことだとアイムは思いました。
せっかく仲間がこうして再び集まることが出来たのだから、あまり喧嘩しないで仲良くしましょう、
ということをアイムは伝えようとして、
「ね!ナビィ!」と傍に飛んできたナビィに微笑みかけて同意を求めます。
それを受けてナビィは「そうそう!終わり良ければノ〜プロブレム〜!・・・ってねぇ!」と、
インチキなことわざで強引にまとめにかかり、
ルカとハカセもそれを聞いて不承不承、鎧のことを許してやることにしますが、
鎧がまだ調子の良いことを言ったりするので、まだゴチャゴチャと揉めて
結局はギャーギャーと大騒ぎとなります。

まぁいつものガレオンの船室の騒々しくも楽しい情景というところですが、
そんな中、マーベラスとジョーの2人だけは何やらいつもとは違う妙なムードです。
いつもならルカ達と一緒になって率先して鎧をイジメていそうなマーベラスは
何故か船長椅子に座ったまま俯いて押し黙ったままでした。

まぁ、これだけならば、単に昨日からの騒動で疲れただけとか、
またはあれだけの敗北と危機の後ですから、船長として何か考えるところもあって黙っているというようにも見えます。
しかしジョーはさっきの処刑場を脱出する直前にマーベラスの様子がおかしかったことに気付いていますから、
ここでのマーベラスの押し黙って何かを考え込んでいる様子が、
あの時の異常な様子の延長線上にあるものだと思えてきます。

じっと黙って座っているマーベラスの傍らでじっと黙って腕組みをしてテーブルにもたれて、
マーベラスに背を向けていたジョーは、そのままの態勢で「・・・どうした?」と問いかけてみました。
しかしマーベラスは黙ったまま無反応です。
さっきのギャバンの「よろしく勇気」という言葉のことで思い悩んでいたマーベラスですが、
仲間たちには関係無い自分の遠い過去の出来事に絡んだ些細な悩み事をいちいち仲間に言うつもりは無い。
だから、別に大したことはなく、単に疲れて黙っているだけであるかのようにして
ジョーの質問をやり過ごそうとしたマーベラスでしたが、
マーベラスが何も答えようとしないのを受けて、ジョーは続けて
「・・・気になるのか?・・・あの宇宙刑事のことが・・・」と、ズバリと切りこみました。

ジョーはマーベラスが処刑場を脱出する際に戦うのも忘れて呆然として
ギャバンの方を見ていたことに気付いていました。
どうしてなのかはよく分からないがマーベラスが異常にギャバンのことを気にしていることはジョーは感じていました。

いや、ジョー自身、ギャバンのことが気にならないわけではありませんでした。
一応ギャバンは処刑を阻止して自分達を逃がしてくれたわけであるし、
あの後ギャバンが無事にアシュラーダを倒したのかどうか、気にならないわけではない。
ジョー自身、ギャバンがあの後どうなったのか気にしているのですから、
同じようにマーベラスも気にはしているだろうとはジョーも想像しました。
あの時、マーベラスがギャバンを見つめていたのも、戦いの行方が気になっていたのだと考えるのが自然です。

しかし、ジョーはさほど深くはギャバンのことで思い悩むようなことはありませんでした。
ましてや自分の戦いそっちのけでギャバンの方に気を取られるなどという気分にはなれませんでした。
あの場でギャバンに助けてもらったといっても、
もともとはギャバンが宇宙警察内部の揉め事の解決のために
マーベラス一味を利用するために戦いに巻き込んだのであって、
あの場でマーベラス達が死にかけたのはギャバンのせいです。
だからギャバンがマーベラス達を助けたのは当然の行動であって、特に感謝するほどのことではない。

そのことはギャバン自身もよく分かっていました。
だからギャバンはもともとは宇宙警察内部の揉め事には無関係の
マーベラス達はあの場を早く立ち去るように言ったのであり、
その言葉に従ってあの場を離脱したマーベラス達は、別にギャバンに負い目を感じる必要など無い。
あの場でギャバンと共に戦う義理など全く無いのです。
だからギャバンを見殺しにして置き去りにしたなどという罪悪感など全く持つ必要は無い。
1人で残って戦うという判断はギャバンが勝手にしたことであって、
そのことにマーベラス一味は何ら責任を感じる必要などありません。

もちろん、あの状況でギャバンが無事に生き残れたのか、ジョーだって心配ではあります。
あのブートレグという機械戦士はギャバンの能力を複製しているとのことだった。
ならばギャバンの苦戦は必至と思えました。
しかし、そんなことはギャバンも百も承知のはずです。
それでもあれほど自信たっぷりに突っ込んでいったのですから、
ギャバンには勝算があったはずだとジョーは思いました。
また万が一ギャバンがブートレグに敗れるような結果になったとしても、
あれほどの強さを持つギャバンが完敗するとも思えず、
敗北した場合でも何とか無事にあの場は逃れることは出来たはずだと思えました。

つまり、自分達がそれほどギャバンのことを心配する必要など無いし、
宇宙警察内部の変な陰謀についても、今回のように自分達に被害が及ぶような事態が起きない限り、
一介の海賊であるマーベラス一味が関わり合う必要など無い。
だいいち、自分達はギャバンに手も足も出ずに負けたのです。
そんな自分達がギャバンの戦いを心配するなど、おこがましいようにも思えました。

そんなことに変に首を突っ込むよりも、今の自分達には他に大事なやるべきことがあります。
それはもちろん「宇宙最大のお宝」を手に入れることです。
1年前に地球にやって来てから地道に集めてきたスーパー戦隊の「大いなる力」も29個が集まり、
あとはバスコが奪い取った5個の「大いなる力」を手に入れれば
34個のスーパー戦隊の「大いなる力」が全て揃い、「宇宙最大のお宝」を手に入れることが出来る。
つまり「宇宙最大のお宝」は目の前なのです。
そんな大事な大詰めの時期に余計な揉め事に首を突っ込む必要は無い。

むしろ、ギャバンも敗れてザンギャックの宇宙警察乗っ取りが完成してしまうような事態になるのなら、
マーベラス一味にも最大の危機が訪れることが予想されます。
ならば、なおさら急いでその前に「宇宙最大のお宝」を手に入れておきたい。
もしかしたら「宇宙全体と同じ価値をもつ」という「宇宙最大のお宝」ならば、
その最大の危機に際しての何らかの切り札として使えるかもしれないからです。

だから、確かに多少はギャバンの安否は気にかかるものの、
今はギャバンの心配をして立ち止まっているような場合ではない。
それは自分だけでなく他の仲間も皆、同じ想いだとジョーは思っていました。
しかしマーベラスという男が一見は悪党のように見えて、実はとんでもないお人好しだということも
ジョーは知っていますから、
あるいはマーベラスは妙にギャバンに感情移入して
宇宙警察のゴタゴタに首を突っ込もうとしているのではなかろうかとジョーは危惧していました。

もしそうならば諌めなければならないと思って
ジョーは黙り込んでいるマーベラスに切りこんでいこうとしたのですが、
マーベラスの方はジョーの言葉を聞いて、
自分がさっき処刑場の脱出前にギャバンの方を見つめていたことをジョーに気付かれていたことを悟りました。
そして同時に、自分が宇宙警察のゴタゴタに首を突っ込もうとしているというふうに
ジョーが誤解しているのだろうと思いました。

マーベラスは別に宇宙警察のゴタゴタに首を突っ込むつもりもないし、
別にギャバンに加勢しようなどと思っているわけでもない。
単にギャバンの「よろしく勇気」という言葉のことが自分の過去の記憶と重なって気になっているだけなのです。
変に誤解されるのも面倒だと思ったマーベラスは、思わず
「・・・昔・・・会ったことがある気がするんだ・・・あいつ・・・」と呟いていました。

意外なマーベラスの返答にジョーは驚いてマーベラスの方に視線をやり、
船室内でギャーギャー騒いでいた他の仲間たちもマーベラスが何か変なことを言っているのに気付いて、
ピタリと騒ぎを止めてマーベラスの顔を見ました。

その中で1人だけ、ギャバンと顔を合わせていない鎧が
「・・・う・・・宇宙刑事・・・ギャバンさん・・・ですか?」と、不思議そうにマーベラスに尋ねました。
鎧も脱出したハカセやルカから、5人を連れ去ったのが宇宙警察から派遣された宇宙刑事ギャバンという男であり、
それは宇宙警察の不正を暴くためのお芝居だったという感じの大まかな事情説明は受けていましたので、
ギャバンという宇宙刑事がマーベラス一味の敵ではないということは把握しています。
しかし、鎧はそのギャバンという刑事がマーベラスと旧知の仲だというような話は聞いていません。

なお、地球人の鎧も、三十数年前に地球で宇宙犯罪組織マクーと戦っていたギャバンのことは知らないようです。
スーパー戦隊についてはやたら詳しい鎧ですが、ギャバンの存在すら知らないのです。

これはまぁ仕方ないことでしょう。
いつも派手に悪の組織と人前で巨大ロボで戦ったりしていたスーパー戦隊とは違い、
ギャバンは正体を隠して地球に潜入捜査をしていただけであるし、
マクーとの戦いは主に魔空空間で行っていたので地球の人々にあまり目撃されておらず、
当時において事件に巻き込まれた特定の人々以外にはあまり知られた存在ではありませんでした。
しかも、それからもう三十数年が経っているのです。
鎧がギャバンのことを知らなかったとしても無理はないでしょう。

そのギャバンとマーベラスが旧知の仲かもしれないと言われても、鎧にはどうもピンときません。
確認するようにマーベラスに問い直した鎧に応えて、マーベラスは「・・・ああ・・・」と言いながら、ちょっと困りました。
いつのまにか自分の方から仲間に向けて過去の話をする流れになってしまっている。
マーベラスは仲間に嘘をついたり隠し事をするのは嫌いだが、過去の話となると話は別でした。
マーベラス一味においては過去の話をしたくなければしないでいいし、
他の者も仲間の過去を詮索はしないというのが暗黙のルールです。

だからマーベラスはとにかくギャバンに加勢したり宇宙警察の内紛に首を突っ込むつもりはないということさえ
明言しておけばよかった。
もしもその上で、じゃあ何を悩んでいたのかと問われれば、それは言いたくないと答えておけば、
あとは仲間の方で何か過去の出来事絡みで言いたくないことがあるのだろうと察してくれる。
マーベラス一味とはそういう仲間なのです。

だからマーベラスは自ら進んでギャバンと過去に出会ったことがあったかもしれないなどと言う必要は無かった。
それをわざわざ自分から口にしてしまったために鎧に問い返されて、それにまた答える羽目になっている。
こうなると今さらこの話はしたくないなどとは言いにくい。
どうして自分はこんな余計なことを言ってしまったのだろうかと、マーベラスは不思議な気分になりました。

一方、鎧を除く4人の仲間たちはマーベラスの言葉を聞いて不可解に感じました。
マーベラスはギャバンと出会ったことがあるかもしれないと言う。
確かに旧知の仲ならば必要以上にギャバンのことを気にするというのも理解は出来る。

だが、どうも話が変です。
昨晩の段階でマーベラスはギャバンとは出会っており、素顔も見ています。
ギャバンもマーベラスの顔を見ています。
しかし2人の間に旧知の仲らしき会話は無かったし、
その後もマーベラスはギャバンと旧知であるような話は
牢屋で一緒に居た仲間にも一言も話してはいませんでした。
それなのに今になって急にギャバンと旧知であったかもしれないなどと言い出すというのは変な話です。

だが、マーベラスがそんな嘘をつく意味は全く無いし、
そもそもマーベラスは仲間に嘘を絶対につかない男です。
だからマーベラスは本当にギャバンと出会ったことがあるかもしれないと思っているのであり、
マーベラスが急にそのように感じたきっかけが何かあったのだろうと4人は思いました。
何かマーベラスとギャバンの間にはよほど特別な因縁があるようです。

だが、4人は鎧のように気軽にマーベラスにギャバンの話を突っ込むことは躊躇われました。
互いの過去の話を詮索しないのが、彼ら宇宙から来た5人の暗黙のルールだったからでした。
鎧を除く5人の間で何ともいえない妙な沈黙が流れますが、
その沈黙を破るようにアイムが静かに立ち上がるとマーベラスの前に立ち、
少し遠慮がちに「詳しく・・・聞かせてくださいませんか・・・?」と真剣な眼差しで言いました。

マーベラス一味においては、仲間の過去の話を詮索しない。
その暗黙の了解がこの物語で最初に示されたのが第4話でした。
あの時はジョーがザンギャック怪人ゾドマスに剣の師匠(シド先輩)のことをコケにされて
意地になって一騎打ちにこだわっていたという話でした。

あの時点でジョーはまだ仲間たちにシドの件は話はしておらず、
仲間達はどうしてジョーがそんなに一騎打ちにこだわるのか理解出来ませんでしたが、
それでも黙ってジョーの好きなようにさせることにしました。
マーベラス達はジョーの激しい拘りの背景には過去の何か辛い出来事が関係しているのだろうと察し、
それは仲間といえども容易に打ち明けられるような話ではないのであろうから、
あえて詮索することはせず、ジョーを信じて黙って好きなようにさせたのです。

つまり「事情は聞かなくても仲間のことは信じる」というのが海賊の絆だということが示されたのが第4話でした。
そのこと自体は何ら問題はありません。
海賊の絆はそれほど強固なものだということです。

この第4話で、まだ仲間に加わって日が浅かったアイムだけが
ただ1人だけマーベラス達のジョーに対する態度が納得出来ていなかったのですが、
最終的には「事情は聞かなくても仲間のことを信じる」ということが海賊の絆なのだということを理解して、
アイムも海賊として一歩成長しました。
そういう意味でこの第4話はエピソードとしては完結しています。

しかし、今になって振り返ってみれば、
どうしてマーベラス達は「事情を聞いた上で信じる」という道を選ぼうとしなかったのか、
またアイムも最初は「事情を聞いた上で信じる」べきだと言っていたのに、
どうして急に「事情を聞かずに信じる」という方針に変わったのか、少し不思議です。

あの時、アイムは「事情を聞かなければ信じられない」などとは言っていません。
ただ、仲間ならばジョーに何か悩みがあるのなら事情を聞くべきではないかと思っただけです。
ジョーが事情を話してくれないから信じられないというわけではなく、
仲間なのにジョーの事情を聞いてあげようとしないマーベラス達のことが理解できないというのが
アイムの不満でした。

そのアイムの不満が収まったのはルカの言葉によってでした。
あの第4話の時、ルカはジョーには仲間にも言えないような悲しい過去があるということをアイムに教えて、
だから自分はジョーに事情を聞くことは出来ないが、それでも仲間だからジョーを信じたいのだと言いました。
それを聞いてアイムは自分も事情を聞かずともジョーを信じようと思い、
それが海賊の絆なのだと理解しました。

その時、アイムはマーベラス達が本当はジョーのことを心配しているのだが、
ジョーの悲しい過去の想い出を口にしたくない気持ちを慮って事情を聞かないようにしているのだということを理解し、
そうした事情がよく分からない状態でも仲間を信じるというのが、
過去に悲しい想い出を抱えた仲間を持つ海賊の真の絆なのだと悟ったのでした。

この第4話の時点では、ジョーに仲間にも言えないような悲しい過去があるということがハッキリし、
そのことを察して事情をあえて聞かずにジョーを信じようとする他の仲間達の姿が描かれたといえます。
しかし、その後、物語が進むにつれて、どうしてこの時、仲間たちが
ジョーの「仲間にも言えない悲しい過去を抱えている」という事情を察してあげることが出来たのか、
その理由が判明していきます。

それはつまり、仲間達もジョーと同類だったからなのです。
マーベラスにしても赤き海賊団の壊滅、アカレッドとの死別、バスコの裏切りなどの
悲しい過去について仲間達に秘密にしていました。
ルカもまた、故郷のスラムでの悲惨な日々や妹のリアの死のことなどを仲間達に言っていませんでした。
ハカセの場合は故郷の星が滅ぼされて流浪の身となって辺境の星で便利屋となっていた経緯などは
大まかにはマーベラス達に説明はしていたようですが、
自分より後に加入したアイムや鎧には自分の過去は一切語っていませんでした。

みんな、それぞれ仲間にも語りたくないような辛い過去を抱えた身であったからこそ、
ジョーが何か思いつめて何の事情の説明もしようともせずに一騎打ちにこだわる姿を見た時に、
それが仲間にも言えない過去の悲しい出来事に起因した拘りなのであることを悟り、
それならば事情を聞くことは出来ないと理解した上で、それでもジョーを信じようと思ったのです。

何故なら、自分もまた同じように仲間に言えない悲しい過去に起因する拘りに動かされて
皆に心配をかける局面はやって来る可能性はあるからです。
そういう事情を聞けない不安を抱えながらも、それでも信じ合うことが、
この悲しい過去を抱えた者同士の集まる宇宙海賊においては必要なルールなのだと、自然に理解できていたのです。

それは、ルカの話を聞いてすぐにジョーの抱えた事情や、ジョーを気遣うルカ達の心情を理解することが出来た
アイムにしても同じことでした。
アイムもまたジョーと同じように、仲間にも言えない悲しい過去を抱えていたからです。

アイムはザンギャックに滅ぼされたファミーユ星の王女であることをマーベラス達に打ち明けた上で
海賊の仲間に入れてほしいと申し出て、マーベラス一味の仲間になりました。
だからマーベラス達はアイムの過去を知っているつもりでした。
しかし、アイムはこの加入申し込みの時、自分から進んで自分の過去について話してはいません。
ただ単にファミーユ星の王女だと自己紹介しただけであり、
ファミーユ星が滅ぼされたことは有名な事件だったのでマーベラス達がもともと知っていただけのことです。

アイムもファミーユ星の王女だと名乗った理由は、
亡命した星の人々の希望の象徴となるために海賊になりたいという自分の考えを説明するためであって、
そういう事情が無ければ別に自分の過去を語るつもりなど無かったでしょう。
実際、仲間に加わって以降はアイムは自分の過去について何も語ってはいません。
アイムもまた自分の悲しい過去を仲間に語ることは避けていたのです。
例えば星の人々を一夜にして虐殺されて父と母を目の前で殺されたことなど、
アイムの心に深く刻まれた悲しい想い出でしたが、アイムはそれを仲間にも言おうとはしていませんでした。

そして、その悲しみの奥底にファミーユ星を滅ぼした下手人であるザンギャック怪人ザツリグへの復讐心という
拘りが潜んでいたことまではまだこの時はアイムも無自覚ではありましたが、
とにかく自分にも仲間に語れない悲しい過去があることはアイムもハッキリ自覚していた。
そして、それが何らかの拘りを生み出す可能性も薄々感じたのでしょう。
だから第4話の時、ルカの話を聞いて、ジョーが仲間にも言えない悲しい想い出があるゆえに
一騎打ちに拘ってしまうということにも理解を示し、
ルカ達がそうしたジョーにあえて事情を聞かずにそれでもジョーを信じようとする気持ちに
共感することが出来たのです。

また、マーベラス達もまた、
内容は不明ながらもアイムもまた何か仲間には言えない悲しい過去に起因する
何らかの激しい拘りを内に秘めていることに気付いており、
だからアイムも仲間の悲しい過去に深入りせずに信頼し合うマーベラス一味の流儀を理解出来るはずだと
第4話時もアイムのことを信じ、期待していたのです。

ところで、どうしてマーベラス一味の面々は皆、自分の過去の悲しい想い出を仲間に言おうとはしない流儀なのか?
それはまず第一義的には、あまりに悲しい話なので言いたくないという気持ちはあります。
しかし、そんな自分の感情的な好き嫌いだけで仲間に言うか言わないかを決定しているわけではないでしょう。
根本的には、それはマーベラス一味という海賊団においては「言うべきではないこと」だからです。
そういう意識があるから、悲しい過去を仲間に語ることに精神的なブレーキがかかるのです。

では、どうしてマーベラス一味においては悲しい過去の話は「言うべきではないこと」、すなわちタブーなのか?
それはマーベラス一味が「夢を掴むために集まった仲間」だからです。
夢というのは未来において掴むものであり、
ひたすら夢に向かって進んで行くマーベラス一味の仲間達は過去は振り返らないし、過去は必要無いのです。

特に明るい夢を目指しているマーベラス一味においては、悲しく辛い過去の想い出話などはするべきではない。
聞いた他の仲間が不快に思うだろうという気遣いもありますが、
それ以上に、辛い過去を振り切ってマーベラス一味の仲間になって
心機一転、明るい未来に突き進もうと決意した自分自身を裏切るような気がして、
過去の辛い想い出のことは考えないように努め、仮に考えてしまった時もそれを口にしたくはない。
そういう心のブレーキが皆の心中において働いているのです。

言い換えると、それだけ彼らの心の中で過去の辛い想い出の影響力は大きく、
第4話のジョーや第41話のアイムのように、
仲間の信頼を裏切るような身勝手な行動までとらせてしまう拘りを生む力があるのです。
だからこそ、マーベラス一味の面々は、
自分が明るく未来の夢に向かっていくマーベラス一味の仲間であり続けるために、
出来るだけ辛い過去の想い出に背を向けて生きるよう努めているといえます。

そして、このザンギャックの支配する宇宙で悲惨な目にあってきた彼らの人生における過去の想い出とは、
結局はそのほとんどが辛い想い出なので、
彼らはマーベラス一味の一員となって以降は、自分の過去全般について振り返ることを止め、
過去を必要としない生き方をすることにしたのです。

つまり、彼らは過去に興味が無い。
自分の過去のこともあまり考えないようにして日常を生きているし、
仲間の過去に対しても興味を持たないようにしている。

第4話でジョーの過去に何か辛いことがあったことは察しても、その内容を詮索しようとはせず、
それでいて過去に何があったのかに関わらずジョーのことを信用しようとしていたというのは、
一見、心が広いように思えます。
しかし、彼らは基本的に仲間の過去に興味を持たないのであり、
それでも仲間であり続けなければならないのですから、
仲間の過去に興味を持たないまま互いに信用するクセが勝手についているだけのことだったのです。

そうしたマーベラス一味の流儀は、もともとは船長のマーベラスの流儀だったのでしょう。
そもそもマーベラスが仲間たちを選んで仲間として受け入れていったのですが、
マーベラスは新たに仲間となった者の過去の事情を一切聞かないまま、それでも仲間として受け入れています。
まぁおそらく辛い想い出が多いのだろうと気遣ったという面もありますが、
それでも何らかの楽しい想い出だってあるかもしれないのですから、
何も過去を問わないというのも随分と極端な話です。

脱走兵のジョーがザンギャック兵に追われているのを助けた時も、
どうして脱走したのかマーベラスは全く質問していません。
女の身1つでザンギャック専門の盗賊をしていたルカに出会った時も、
どうして盗賊などやっているのか事情を全く聞こうとはしませんでした。
普通はそういう重大なことは質問しそうなものですが、マーベラスはそれらに全く興味を示していません。

そして同時にマーベラスは仲間たちに自分の過去を話そうともしていませんでした。
まぁレンジャーキーを集めるという作業について新たに仲間とした者に説明する必要上、
自分がもともと「赤き海賊団」の一員であって、
レンジャーキーを集めて「宇宙最大のお宝」を手に入れるという夢を
その時から継続しているということは明らかにする必要はあったので、
そういうことは簡単に説明はしていたようですが、
「赤き海賊団」時代の想い出話は仲間たちに一切してしませんでした。

結局マーベラスが「赤き海賊団」の想い出話を仲間に対してする羽目になったのも、
第15話でバスコがマーベラス一味の前に突然現れて「宇宙最大のお宝」を狙っているという話をしたため、
バスコについて仲間に説明しないわけにはいかなくなって、それに絡めて仕方なく説明したに過ぎません。

しかし、「赤き海賊団」の時期というのは、最後こそ悲しい結末となりましたが、
それ以前についてはマーベラスの人生の中でも比較的楽しい想い出が多かったはずの時期なのですが、
マーベラスは断片的にすら、その想い出を話そうとはしていなかったようです。
これも殊更に秘密にしようとしていたというよりも、単に話す必要が無いと本気で思っていたようです。
マーベラスはそれだけ「過去」というものに無頓着なのです。

どうやらマーベラスという男は、自分のものも他人のものも含めて、
とにかく「過去」というものに極端に興味が無いようなのです。
過去を見ずにひたすら未来の夢だけを見ている。
そういう一風変わった男が作った海賊団だからこそ、
マーベラス一味は自らの過去をほとんど語ることのないメンバーで構成され、
それでいて互いに信頼し合うという奇妙な海賊団となったのでしょう。

マーベラス自身は、過去を知らずに仲間と信頼関係を築くことに何の困難も感じない人間であるようです。
そういえばマーベラスは「赤き海賊団」時代も、
バスコの過去もアカレッドの過去も全く知らないのに、やたらと楽しげに馴染んでいました。
一見何てことはないようですが、これはよく考えたらかなり変わっています。
そう考えたらバスコもアカレッドも同じように変わっているのですが、
まぁアカレッドは実は思念体ですから、普通の人間ではないし、
バスコはおそらくマーベラスと同類なのでしょう。
そういう「過去に興味を持たない」という変わった連中だけが集まっていたのが
アカレッドの集めた「赤き海賊団」だったということになります。

しかし、普通の人間は過去に興味を持たないなどということはない。
マーベラス以外のマーベラス一味のメンバー、例えばジョーもルカもハカセも、
みんな語りたくない過去を抱えてはいたが、
自分の過去を明かさずに仲間と信頼関係を結ぶことに最初は困難を感じていたと思われます。

例えば第4話においてルカが回想していた、
昔ジョーの剣へのこだわりに突っ込んで質問してしまってジョーの拒絶にあったという話とか、
第6話においてジョーが回想していた、
ルカにどうして金に執着するのか質問してはぐらかされたという話などは、
まだ彼らがマーベラス一味に入って日が浅かった頃に、
それ以前に彼らが所属していた仲間内のように互いの過去を知って信頼関係を築くべきではないかという
迷いがもたらした出来事であったのでしょう。

そんな彼らもマーベラスという過去に全く頓着しない船長に接して、
ひたすら未来の夢に突き進んでいくうちに、
マーベラスの流儀に染まって、相手の過去を知らずとも信頼関係を築くようになっていったのでしょう。

またハカセも仲間入りした当初はマーベラス達に自分の過去についてある程度説明していたようですが、
それもまた、仲間となった以上は過去を打ち明けるべきという常識的な考えに基づいた判断だったのでしょう。
しかしハカセは第42話で自分の過去が伝説の勇者であったかのように仲間に嘘をつこうとしており、
それはつまり仲間内でハカセの過去の話が話題に上らなくなって久しいからこそ思いついた悪戯だといえます。
ハカセ自身、あまりに過去の話題に触れない生活に慣れ過ぎて、
自分が仲間入り当初にマーベラス達に過去を打ち明けていたことをつい忘れてさえいたのでしょう。
つまり最初は仲間内で過去の情報を共有し合うのが常識だと思っていたハカセも、
マーベラス一味の流儀に馴染んでいくうちに、過去については触れないという習慣に染まっていったようなのです。

そしてアイムも自分自身が仲間に打ち明けられない辛い過去を抱えていながらも、
そんな状態で仲間と信頼関係を築くことの難しさを感じていた。
それで行き詰ったのが第4話だったのだが、
そこでアイムはジョーの過去を知ろうとせずに、それでもジョーを信頼することによって、
ようやくマーベラス一味の流儀を身につけたのでした。

しかし、そのアイムが今、「過去に興味を持たない」というマーベラス一味の流儀の元祖といえる
マーベラスに向かって、ギャバンとの過去の出来事について説明するよう迫っています。
それは、アイムがマーベラス一味のそうした流儀が変化してきたことを感じているからです。

確かに、仲間の過去を詮索することなく、それでも信頼し合うことの出来る
マーベラス一味の仲間の絆は強い。
しかし、その仲間の絆は何のためにあるのか?
単に宝を見つけるためにあるのか?
これまでのマーベラス一味の旅を振り返ってみて、決してそうではないとアイムは思いました。

仲間の絆は、仲間の個々人を支えて成長させてきた。
そして、その成長とは、各自の過去への向きあい方の変化であったのだとアイムには感じられました。
各自が仲間の絆の中で成長して、各自の過去への向きあい方が変化するにつれて、
マーベラス一味の流儀も少しずつ変わってきたのだと、
これまでの旅、特に地球にやって来てからの戦いの日々を振り返って、最近アイムは確信してきていました。

その1つの表れが鎧という6番目の仲間の在り方です。
マーベラス一味が地球にやって来て以降、第18話で仲間入りした地球人の鎧は、
確かに夢を持っており、辛い過去も持っているという意味ではマーベラス一味の既存メンバーと似ています。
しかし、鎧は仲間たちの過去を知ろうとしたり、内面にも遠慮なく踏み込んでくることが多い。
第4話時点でのアイムがジョーに対してとっていた態度と似ています。

第4話におけるアイムはそれがマーベラス一味の流儀ではないことを悟って、
自分がマーベラス一味の流儀に合せて、仲間の過去を詮索しないまま信じる道を選びました。
しかし鎧はあまりマーベラス一味のそうした流儀に自分を合わそうとはしていない。
これは鎧の態度に問題があるわけではなく、
他の仲間たちが鎧のそうした無遠慮な態度に対して、
第4話時点のアイムに対する時よりも、より寛容になっているからです。

例えば鎧は第29話でアイムの過去を詮索しようとしていますが、
マーベラス達はそれに対して非協力的ではあったものの、面白がっていただけであって、
それが一味においてはタブーであるという態度はあまり示しませんでした。
結局その後、第41話ではマーベラス達は鎧にアイムが仲間に加わった経緯を説明していますし、
また鎧は第42話では今度はハカセが仲間に加わった経緯を知りたがりましたが、
ルカは面白がってそれを説明しています。
また第37話と第38話の前後篇では鎧はマーベラスの過去の古傷を抉るような突っ込みをしていますが、
マーベラス達はそれに対して割と寛容に接しています。

このように最近になると、
マーベラス一味の「過去には興味を持たない」というルールはかなりユルくなってきています。
それは、地球に来てから次第に各自が自分自身の過去と向き合うようになっていたからです。

アイム自身も第41話において、両親と故郷の星の人々の仇のザツリグと再会したことによって、
それまで向き合ってこなかった自分の最も悲しい過去と、
そこから生じた拘りである復讐心と向き合うこととなりました。
そのため、アイムは過去に捉われた復讐の道を選び、
それがマーベラス一味の一員として相応しくないと思い、未来の夢を掴む旅を諦めようとまで思いつめました。

しかし、その時、仲間たちはアイムの過去を受け入れて共に戦うと言ってくれました。
それは共に復讐を果たすためではなく、
その悲しい過去から生まれたアイムの「皆の希望の象徴となりたい」という夢こそが本物であり
アイムの真の夢の原点なのだとマーベラス達が認めたからです。
だから、アイムと共にその夢を掴む旅を続けるために、共にアイムの憎むべき敵と戦って勝とうと思ったのです。
そうした皆の想いを受け取ることによって、
アイムは初めて自分の悲しい過去に正面から向き合い、それを乗り越えて、
自分の夢の原点が何なのか真に知ることが出来たのでした。

しかし、第4話の時のジョーの一騎打ちへの拘りと、
この第41話のアイムの1人で復讐の戦いに向かおうとする拘りは、非常に似たケースであるにもかかわらず、
それに対する仲間たちの対応は全く違います。
第4話の時はジョーの過去に踏み込むことを遠慮して全員がジョーを信じて見守るという選択をしたのに対して、
第41話ではアイムの過去を受け入れて、そこに共に戦うに足る夢が存在することを認めているのです。

この変化の背景には、
他の仲間達も皆、第4話以降、それぞれが自分の過去に向き合い、
少しずつそれを乗り越えて、自分の夢の原点を掴んできたという経緯があるのです。

第4話の時はジョーは自分1人で自分の拘りである一騎打ちをやり遂げて、
それを黙って見守ってくれた仲間たちに感謝していますが、
これでは仲間との絆はより強くなったものの、まだ自分の過去を受け止めて乗り越えるには至っていません。

そのジョーの悲しい過去とは、ザンギャック軍時代の先輩であり剣の師であったシドを失ったということでした。
それは最初は単純な喪失感であり、未練でした。
それがシドへの過剰な思慕、思い入れとなっており、
それゆえシドのことをコケにしたゾドマスをシドの剣で倒さなければ気が済まなくなっていたのです。
ジョーの剣に関する拘りも、シドに教えられた剣こそが最強であることを証明して
シドへの恩返しをしたいという過剰な想い入れのゆえでした。

その結果、ジョーは第11話と第12話の前後篇で、シドがバリゾーグに改造されていることを知った時、
仲間に何も言わずに仲間から離れてバリゾーグをシドに戻そうとしました。
この時、どうしてジョーは黙って仲間から離れたのか?
敵であるバリゾーグと会うことを知られたくなかったというような理由ではないでしょう。
今にして思えば、それはおそらく、自分の過去の拘りそのものである
シド=バリゾーグと向き合いに行こうとする自分の行動が、
過去に向き合わないことが流儀のマーベラス一味の一員として相応しくないと思ったからなのでしょう。

結局この時はジョーはバリゾーグをシドに戻すことは不可能だと知り、シドは死んだのだと悟りました。
ここにおいてジョーは思いっきり自分の悲しい過去と向き合ってしまう羽目になったのですが、
それと同時に共に助け合って夢を掴むために旅をする仲間であるマーベラス一味が
自分にとってかけがえのない物なのだと悟り、仲間のもとに戻りました。

しかしマーベラス一味とは過去に向き合わない者の集まりであるはずです。
それなのにジョーは過去と向き合ったことによってマーベラス一味の価値を再確認した。
それはつまり、シドとの悲しい過去の出来事に向き合い乗り越えることこそが
実はマーベラス一味においてジョーが仲間と共に掴もうとしている夢の原点に繋がるのだということを
暗示しているのですが、
この第12話時点のジョーはまだ過去に向き合っただけであり、乗り越えてはいないので、
まだそこまでは気付いていません。

そのことにジョーが気付くきっかけとなったのが
第30話において元ライブマンの大原丈にバリゾーグの一件に絡んで
「過ちを繰り返さないために足掻くことこそが友の魂を救う道」と諭されたことでした。
それを聞いてジョーは、かつて自分とシドが掴もうとしていた夢が
ザンギャックによる悪行でこれ以上多くの人達を苦しめることが繰り返されないために
戦うことであったことに気付きました。

それがジョーの夢の原点であり、そのことに気付いたジョーは、
自分はシドの魂を救うためにザンギャックの悪行を繰り返さないように戦わねばならないと思い、
シドを改造して悪の手先としているバリゾーグこそがまず自分が断つべき
ザンギャックによる悪行そのものだと心に決めました。
ここにおいてジョーは遂に過去を乗り越え、仲間達にシドの一件を打ち明けることが出来たのでした。

但し、ジョーが完全に過去を乗り越えるためには、その打ち立てた目標を達成しなければいけません。
つまりバリゾーグを自分の手で倒してこそ初めて、本当にジョーは過去を乗り越えて夢の原点を掴んだといえます。
それをジョーが達成したのが第37話と第38話の前後篇で、ここで遂にジョーはバリゾーグを倒しました。
そして、その時ジョーは、自分がバリゾーグに勝利することが出来たのは
共に夢を掴むために力を合わせて戦う仲間の絆の力によるものだと悟りました。

つまり自分の過去を乗り越えて夢の原点を掴むためには、1人ではなく仲間の絆が必要だったのであり、
自分は共に夢を掴む仲間であったシドを失ったことが悲しかったのであり、
だからこそ新たに共に夢を掴む仲間を求めてマーベラスの仲間となり、
本当はマーベラス一味において自分の過去を乗り越えて夢の原点を掴もうとしていたのだということを
ジョーは初めて理解したのでした。

すなわち、マーベラス一味とは、本当は過去を捨てて未来に夢を掴むためだけの海賊団なのではなく、
過去を乗り越えて夢の原点を掴むために仲間の絆を求めた者達の海賊団だったのだとジョーは悟ったのでした。
少なくとも自分にとってはマーベラス一味とはそういうものだと思い、
だからこそアイムの一件でも、ジョーはアイムと共にアイムの過去を乗り越えて夢の原点を掴もうとしたのです。

他のメンバーにしても同じことでした。

ルカの場合の悲しい過去とは、
故郷のスラム街で酷い貧乏のために自分と同じ戦災孤児たちを救うことが出来なかったことであり、
特に妹のリアを死なせてしまったことでした。
それゆえルカは貧乏生活に絶望し、過去の無力な自分と決別するかのように故郷の星を飛び出し、
戦災孤児たちが安心して暮らせる星を買うという夢を叶えるための金を貯めようとして、
遂には盗賊にまでなっていました。

ルカは貧乏な過去を否定し、金さえあれば子供たちを救う夢を叶えることが出来ると信じていたのです。
マーベラス一味に入ったのも、「宇宙最大のお宝」を手に入れれば
宇宙全体の孤児たちを救うことが出来るかもしれないと思ったからです。

第6話で成金の春日井親子に関わった時もルカは昔の貧乏時代を思い出す羽目になって不愉快そうにしており、
自分の過去とまともに向き合うのを避けていました。
この時は春日井親子によって、貧しい時代に共に助け合った絆こそが価値があるということを
教えられた形となったルカですが、それでもこの時点ではまだ、
それを素直に自分にあてはめて考えることは避けていました。

しかし、そんなルカも第23話で目の前で苦しむ子供の命を救うことの出来ない自分の無力を痛感した際、
かつて妹やスラムの孤児達を救えなかったのは貧乏のせいではなく自分の無力が原因だったのだという、
自分の過去の真実に向き合うことになりました。
その時、初めてルカは仲間であるアイムの前で自分の過去の話を打ち明け、
自分は金を貯めるのが夢なのではなく、
金の有無は関係無く、とにかく目の前で苦しむ弱い子供たちを救いたかったのだという自分の本心に気付きました。
そしてアイムが目の前の子供の命を救うために力を合わせたいと申し出たことによって、
ルカは自分の無力の限界を超える力が仲間の絆によるものだと悟り、
アイムと力を合わせて1人の少年の命を救うことによって、過去を乗り越えることが出来たのでした。

そして第34話において、故郷のスラム時代の友人のカインと再会し、
懸命に働いて大富豪となったカインがお金の力でルカの夢を叶えて戦災孤児たちを救うことを申し出て、
自分と一緒に来るように求めてきた時、
ルカは自分の夢の原点が故郷のスラムのどん底の貧乏生活の中で子供たちを守りたいという
切なる想いであったことを再確認しました。
そして、カインもまた同じ原点から出発した夢を金の力で実現しようとしているのであり、
それは自分の目指していた道と同じであるはずだと思いました。

しかしルカはカインと共に行く道は選ばず、マーベラス一味に残ることを選択しました。
どうして自分はカインと共に行こうとしないのか考えたルカは、
自分は金の力ではなく、共に夢を掴むための仲間の絆の力で自分の原点の夢を叶えたいと思っているのだと悟り、
もともとそのためにマーベラス一味に入ったのだという自分の真実に気付きました。
そしてマーベラス一味に入ったことによって自分は宇宙全ての子供たちを救いたいのだという
もっと大きな、自分の真の夢の原点に気付いたのだということも思い出しました。

つまり、悲しい過去に向き合って乗り越えて、夢の原点を思い出して掴み取るために
自分はマーベラス一味の夢を掴む仲間の絆を求めたのであり、
そして実際、仲間の絆が自分に過去を乗り越え夢の原点を掴む力を与えてくれてきたことも実感しました。
そうしたことに気付いてカインの申し出を断ってカインに別れを告げたことが、
ルカにとっては過去を完全に乗り越えた象徴的な出来事となり、
ルカは宇宙全体の子供たちを救いたいという自分の夢の原点を掴み取るために
マーベラス一味の仲間たちと力を合わせて戦っていこうと決意を新たにしたのでした。

また、ハカセにとっての悲しい過去とは、自分の弱さそのものでした。
弱さゆえに人々はザンギャックの侵略に翻弄され、弱い者の言い分など聞く耳も持ってもらえない。
強い者でなければ生きている価値が無いような宇宙の現実こそが、
弱い人間だと自覚しているハカセにとっては辛く悲しい過去そのものでした。

そんな弱肉強食の宇宙の過酷な現実に嫌気がさしたハカセは
世界に背を向けて1人で辺境の星に引きこもって細々と便利屋を営んでいました。
それは一種の逃避ではありましたが、
言い換えればザンギャックの作ったルールに従いたくないという一種の消極的抵抗であり、
ハカセの弱者なりの意地の結果でした。
そういうハカセがザンギャックに追われるお尋ね者のマーベラス一味をひょんなことで手助けしてしまい、
そのままハカセはなし崩し的にマーベラス一味の仲間入りをする羽目となったのでした。

そうして海賊団の一員として戦うようになったハカセは、
弱い過去の自分と決別して強くなりたいと思うようになりました。
第7話などは特にそうしたハカセの「努力して新たな自分に変わりたい」という
強い向上心の表れたエピソードでしたが、その他のエピソードも通して
地球に来てからのハカセは目覚ましく成長していき、強くなっていきました。
それは言い換えれば、弱い過去の自分にとことん背を向けようとする行為だったといえます。

しかし第31話でマーベラス一味がバスコに完敗し、
更なる強さを求めた時、ハカセは限界を感じて、やはり自分は弱くて無力だと落ち込みました。
だが、ハカセはたまたま知り合ったサッカー少年との交流を通して、
仲間と一緒にやれば実力以上の力が発揮できるということを知り、
マーベラス一味に加入してからの過去を振り返って、
もともと弱い自分が強くなってきたのは自分1人の力によるものではなく、仲間と一緒だったからだと悟り、
仲間と協力して新武器ゴーカイガレオンバスターを開発しました。
この時、ハカセは弱かった自分の過去に向き合うことによって自分の弱さを知り、
それによって仲間の絆という真の強さを得たのだと言えます。

そして第42話と第43話の前後篇では、
つまらない悪戯で過去の自分を偽って伝説の勇者のフリをしているうちに仲間たちを失って
1人ぼっちになってしまったハカセは大いに反省して自分の真実の過去に向き合い、
1人ぼっちで宇宙最強の男であるダマラスに立ち向かう勇気が湧いてこない自分の弱さを痛感する羽目となりました。

しかし自分の過去に向き合ううちに、ハカセは自分がマーベラス一味に入った頃は
ゴーミン相手にもまともに戦えなかったほど弱かったことを思い出し、
その頃の自分がマーベラス達に「弱くても出来ることだけやって互いに助け合えばいい」と言われ、
それが海賊の仲間の絆だと教えられたことで何だか嬉しくなり、
海賊として戦っていく自信がついたことを思い出しました。

ハカセはそうして戦って強くなっていくにつれて、その初心を忘れるようになりましたが、
もともとは「弱くても役に立てる」という意味でハカセはマーベラス一味を気に入っていたのです。
それを思い出したことによって、ハカセはもともと自分が
ザンギャックの支配する弱肉強食の世界に背を向けてまで抱いていた夢の原点が
「たとえ弱くても生き生きとした人生を送りたい」ということであったことを悟り、
それは弱さゆえの悲しい過去から生まれたのだと知りました。

強くなって生き生きとした人生を送るようになることは過去の弱さゆえの悲しみの否定に過ぎず、
自分の夢の原点を掴み取ることにはならない。
弱くても生き生きとして人生を送ること、弱い者でも生き生きと暮らせる世界を作ることこそが、
真に悲しい過去の弱さを乗り越えるということであり、
自分の夢の原点を掴むことだと気付いたハカセは、
自分が過去を乗り越えて夢の原点を掴み取るためにマーベラス一味に入ったのだと悟りました。

そのマーベラス一味の旅は自分の夢に絶対に必要なのであり、旅を終わらせるわけにはいかない。
そのためには、共に弱さを補い合う仲間の絆が不可欠なのであり、仲間を絶対に失うわけにはいかない。
そう思ったハカセはダマラスに捕らわれたマーベラスを救い出すために、
宇宙最強の男に強さで対抗するのではなく、弱くても自分に出来ることで対抗しようと決意し、
それが真の強さを生み、その結果、マーベラスを助け出し、
更にかけつけた他の仲間たちも合わせて、弱い者たちが力を合わせることで発揮した真の強さで
ダマラスを倒すことに成功したのでした。

これによってハカセは弱さを無力と感じて打ちひしがれていた悲しい過去を乗り越え、
弱い者でも生き生きとした人生を送ることが出来るという、夢の原点を掴んだのです。
そして、それはマーベラス一味の仲間の絆があってこそ到達することが出来たのでした。

また、マーベラス一味が地球に来てから仲間に加わった地球人の鎧にしても、
他の仲間たちと同じように当初は自分の悲しい過去に背を向けていました。
それは、レジェンド大戦でスーパー戦隊が戦う力を失って姿を消し、
再び始まったザンギャックの侵略に対してなす術の無い地球人としての無力感に落ち込んでいた日々でした。

その鎧の陰鬱で不安な気分を吹っ飛ばしてくれたのが、
突然、元アバレキラー仲代壬琴らによって与えられたゴーカイシルバーとして戦う力でした。
これによってヒーローになれたことに有頂天となって一気にテンションの上がった鎧は、
さっそく第17話と第18話の前後篇の時に
ザンギャックと戦うためにマーベラス一味に仲間入りを志願して押しかけますが、
マーベラスは鎧がヒーローになったことで夢を叶えて満足してしまっていると感じ、
それ以上の夢を持たない鎧がマーベラス一味の一員としてザンギャックを敵に回して戦うことは出来ないと見て、
鎧の仲間入りを拒否した挙句、変身アイテムを取り上げてしまいました。

しかし鎧は変身できない状態で遭遇したザンギャック怪人と戦う羽目になり、
戦っているうちに、単に自分がヒーローになるという夢を超えて、
ザンギャックを倒して宇宙を平和にするという夢に覚醒し、
その結果、マーベラス一味の6人目の仲間として認められました。
こうしてゴーカイジャーの仲間入りをした鎧は大喜びでひたすら前向きに夢に向かって突き進んでいきました。
それと同時に、それ以前のザンギャックと戦う力を持っていなかった頃の
無力感に満ちた過去には背を向けて顧みないようになっていきました。

しかし第31話でバスコに重傷を負わされて満足に戦うことが出来なくなり、
更にその怪我がようやく治ったところで第33話において変身アイテムをザンギャック怪人に呑みこまれてしまって、
その焦燥から、鎧は再び昔のように戦う力を持たない無力な自分に戻ってしまうのではないかと
不安にかられてしまいました。
つまり背を向けていた悲しい過去に思わず鎧は向き合うことになってしまったのです。

そんな時にたまたま出会った元ダイレンジャーの亮との遣り取りの中で、
鎧は亮が変身出来る出来ないは関係無く人々を笑顔にしたいという夢を実現するために戦い続けていることを知り、
自分ももともとは同じであったことを思い出しました。

確かに戦う力を得たことによって鎧は実際に戦う勇気を得ることは出来たのですが、
ザンギャックから人々を守りたいという気持ち自体は、
戦う力を持たない無力感に満ちた日々の中でこそ生まれたのであり、それこそが鎧の夢の原点でした。
この悲しい過去の中から生まれた想いがあったからこそ、
鎧は第18話では変身できない状態でザンギャック怪人と戦ったのであり、
その戦いの中で「ザンギャックを倒して宇宙の人々みんなを守りたい」という
大きな夢を生み出すことが出来たのでした。

そして、もともとは想いはあっても夢に向かって突き進むことの出来なかった鎧は、
戦う力を得た段階では大きな夢を抱くことは出来なかったが、
第18話でどうしてもマーベラス一味の仲間入りをしたいと思うようになったことによって、
戦う力を取り上げられた状態で、大きな夢に覚醒して、それに向かって進みだすことが出来た。
つまり、鎧にとっても夢の原点を掴み取って実現するためにはマーベラス一味という仲間の絆が必要だったのであり、
それは最初から戦う力を持たない悲しい過去を夢の原点としているという認識に基づいていたのです。
それらのことに改めて気づくことが出来た第33話の段階で鎧は過去に向き合い乗り越えたのであり、
自分の夢の原点が何であるのか掴むことが出来たのでした。

このように、マーベラス一味のそれぞれの面々にとって、
過去というものは背を向けるものではなく、いつしか向き合い乗り越えるものとなっていたのであり、
過去を乗り越えることによって自分の夢の原点を掴み取るものとなっていました。
そして、各自は自分が過去を乗り越え夢の原点を掴むことが出来たのは、
マーベラス一味の仲間の絆があったからだと感じていました。

ただ、これは6人が話し合ってそういう共通認識を持っていたというわけではなく、
各自がそれぞれ別個にそういう認識を持っていたに過ぎない。
アイムはアイムで、自分の経験に基づいて、
マーベラス一味においては決して過去の話題はタブーではなく、
それが辛い悲しい想い出だとしても向き合って乗り越えてこそ、
自分の夢の原点を見つけることが出来るものだと思えていました。

そして、自分が加入した当初に比べて、今のマーベラス一味の絆は更に強固になっており、
その絆の力が各自が過去に向き合う辛さをきっと支えることが出来るようになっているのだと感じられました。
実際、アイムは皆に支えられたからこそ悲しい過去に向き合い乗り越えることが出来たのです。
本当のマーベラス一味というものはそういうものであるべきだとアイムには思えました。

だから、マーベラスとギャバンの間に過去に何があったのかは分からないが、
マーベラスはここでその過去にも背を向けずに乗り越えるべきであり、
自分たち仲間はそのマーベラスを支えるべきだとアイムは思いました。
そうした覚悟でアイムはマーベラスの前に立って、ギャバンとの過去の話をしてほしいと頼んでいるのです。

そして、そのアイムとマーベラスの姿を見て、
周りにいるジョーもルカもハカセも鎧も、それぞれが別々に、自分の経験を踏まえて、
マーベラス一味においては過去というものは乗り越えるべきものであると感じ、
マーベラスの抱えているギャバンとの過去の話がどういうものか不明ながらも、
もしかしたらその過去の想い出は今まさにマーベラスの中で
向き合い乗り越えるべきタイミングなのかもしれないと思いました。

実際のところ、他の仲間にはその想い出がどんな内容なのか分からない以上、
もしかしたら何てことはないつまらない話で終わるのかもしれない。
しかし、もしかしたらそれはマーベラスの大事な夢の原点に関わる話なのかもしれない。
もしそうならば、マーベラスにとって、それはどんなに思い出すのが辛い話であろうとも、
乗り越えるべき価値のある話であり、仲間ならばそのマーベラスの過去の克服を支えなければいけない。
各自がそれぞれ別個にそんなふうに思い、黙って真剣な眼差しでマーベラスを見つめました。

一方、当事者であるマーベラスはアイムや皆の真剣な眼差しを受けて、困惑したように黙って視線を落とします。

マーベラスもマーベラスで他の仲間たち同様、地球に来てからの1年の間に、
主なところでは第15話と第16話の前後篇、そして第37話と第38話の前後篇において、
仲間にも語ることもなく背を向けてきた幾つかの悲しい過去の想い出に向き合うことを余儀なくされてきました。
バスコの裏切り、赤き海賊団の壊滅、アカレッドとの死別など、
そしてそうした悲しい想い出が連想されるのであまり思い出さないようにしていた
赤き海賊団の時代の様々な出来事などです。

これらを思い出して向き合い、乗り越えることによって、
マーベラスは自分が一番望んでいることが何なのかという解答を掴み取って来たように思っています。
それは、そのマーベラスの過去の克服に際しても決して欠かすことの出来ない支えであり続けた
「共に夢を掴むために集まった仲間の絆」でした。
自分は共に夢を掴む仲間の絆を求め続けていたのであり、そのためにマーベラス一味の仲間を集めてきた。
赤き海賊団という過去を乗り越えた結果、そのようにマーベラスは思いました。

となると、マーベラスの夢の原点とは「共に夢を掴む仲間の絆を得ること」ということになるようにも思えます。
しかし、これはおかしい。
まず「夢」が存在してこそ「共に夢を掴む仲間」というものが存在するのであって、
大前提の「夢」無しで「夢を掴む仲間」そのものが「夢の原点」となるということは有り得ない。
マーベラスの「夢の原点」は「夢を掴む仲間の絆」とは別個に存在するはずなのです。

そもそもマーベラスが自分の原点だと思って思い出していた「赤き海賊団」の頃においては
マーベラスはアカレッドと出会って赤き海賊団に参加した時点で「宇宙最大のお宝」という夢を心に抱いていました。
だからマーベラスの「夢の原点」は「赤き海賊団」以前に存在するのです。
そして、その夢は「共に夢を掴む仲間の絆」と切っても切れない関係にあるようなのです。

つまり、マーベラスにとっての夢の原点は、最初から「仲間と共に掴むもの」という特性を持っていたようなのです。
だからマーベラスは共に夢を掴む仲間を求めてきたのであり、
それがあまりにも夢の原点と一体化した特性であるために、
仲間の絆そのものがマーベラスの夢の原点であるかのように見えてしまうのです。
しかし、夢の原点は別に存在しており、それは仲間と共に掴むものでなければならないようです。

この「夢の原点」は「宇宙最大のお宝」そのものではない。
単に「宇宙最大のお宝」ならば、その正体は不明ではあるが、
マーベラスたち普通の海賊たちの抱くイメージとしては莫大な財宝の類であるから、
必ずしも仲間と共に掴むものとは限らない。
実際、バスコは「宇宙最大のお宝」を一人で手に入れようとしています。
だからマーベラスが自分の夢が仲間と共に掴むものでないといけないと思っているということは、
その夢の原点は「宇宙最大のお宝」そのものではなく何か別のものなのであり、
マーベラスがその夢の原点から出発して「宇宙最大のお宝」という具体的な目標を掲げているのは、
単に便宜的な措置に過ぎないといえます。

そもそもマーベラスは「宇宙最大のお宝」が何なのかよく分かっていないようであり、
マーベラスが本当に欲しいものは「宇宙最大のお宝」そのものではなく、何か別のものだと思われ、
それはマーベラス自身、ハッキリと意識はしていないが、
それこそがマーベラスの「夢の原点」だといえます。
その原点は「赤き海賊団」の時期よりも更に昔の想い出の中に存在するはずです。

しかしマーベラス自身は普段そこまで深く自分の内面について考えないし、
他の仲間達にしても同様なので、マーベラス自身も仲間たちも、なんとなく漠然と
「マーベラスの原点は赤き海賊団の時代にある」というイメージを持っており、
マーベラス自身は自分の夢の原点は「宇宙最大のお宝を手に入れようと思ったこと」や
「共に夢を掴む仲間を集めようと思ったこと」あたりだと思っています。
しかし、これは言ってみれば「マーベラス一味の原点」ではありますが、
そのマーベラス一味の原点であるマーベラスという人間の原点ではありません。

ここでマーベラスが何故かギャバンとの過去の関わり合いの話を仲間に向かって無意識のうちに言及し、
急にギャバンとの過去の話が持ちあがってきたことによって、
仲間たちもマーベラス自身も、もしかしたら「赤き海賊団」時代以前に
マーベラスという人間の原点が存在したのかもしれないと気付き、
そのギャバンとの想い出の中にその原点があるのかもしれないという期待が起こってきました。

少なくともジョー、ルカ、ハカセ、アイム、鎧の5人の仲間は
そのギャバン関係の想い出が、マーベラスにとって「赤き海賊団」の想い出に匹敵する
重大なインパクトのあるものではないかと期待しました。
それは同時に「赤き海賊団」の想い出に匹敵するような悲しい過去なのではないかという危惧でもあり、
だからこそ仲間達はマーベラスがその悲しい過去を乗り越えるのを支えようという心構えで固い表情をしています。
マーベラスが処刑場からの脱出以降、ずっと深刻な顔で思い悩んでいる様子を見れば、
誰でもそのギャバンとの想い出は深刻な悲しい過去なのであろうと想像するのも無理はありません。

しかし、マーベラス自身は、そうしたジョー達の固い表情を見て、ちょっと困ってしまいました。
マーベラスがギャバンと出会っていたかもしれないという想い出が、
「赤き海賊団」の壊滅に匹敵するような悲しい想い出であるかのようにジョー達が想像して身構えていることは
マーベラスにも分かりました。

しかし実際はそんな大した想い出ではないのだとマーベラスは思いました。
マーベラスが処刑場の脱出以降、その過去の記憶を頭の中で思い描いては深刻な顔をしていたのは、
その想い出の内容が深刻だからではなくて、
マーベラスが自分で思い描いていたその記憶のイメージと、
そのマーベラスが出会った人物が宇宙刑事ギャバンであったかもしれないという想定とが、
あまりにも噛み合わないので、とにかくひたすら頭が混乱していたに過ぎません。

だから想い出の内容自体はさほど大した内容ではないのです。
「赤き海賊団」壊滅事件の時のようなインパクトを期待されても困るし、
そこに自分の原点が存在するという、そんな大袈裟なものでもないだろうとマーベラスは思いました。
あくまで個人的な、そんなに悲しいわけでもなく、
むしろマーベラスの過去の想い出の中では比較的マシな想い出ともいえます。

そんなものを皆に向かって大袈裟に語るほどの必要があるのだろうかとマーベラスは少し躊躇し、
船長椅子を立ち上がって皆に背を向けて船室の端に向かい、窓に向かって外を眺めます。
すっかり仲間達は意気込んで聞く姿勢になっています。
ここで語るのを拒否すれば、ますます深刻な想い出だと誤解させることになると思えました。
そこでマーベラス自身もさっきから混乱している頭の中を整理するという目的も兼ねて、
とにかく一度皆に向かってその出来事について語ってみることにしたのでした。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 23:56 | Comment(0) | 海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月20日

海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE 感想その6

「・・・あれはまだ・・・俺がガキの頃だった・・・」と、マーベラスが仲間達に向かって語り始めた想い出話は、
10年以上前、彼がまだ身体も小さな10歳そこそこの少年だった頃のことです。
そのマーベラスの語る回想シーンの中の少年は浮浪児のようなボロい格好をしています。
その想い出の舞台は宇宙空間を飛ぶ貨物船の中でした。
少年は船の窓から星空を眺めて嬉しそうにしています。

その時の少年のように窓の外の景色を眺めながら、
現在の成人マーベラスはあの時のことを思い返しながら説明を続け、
「たった一人で潜り込んだ貨物船が、ザンギャックに襲われた・・・」と背を向けたまま仲間たちに言います。
その想い出の中では、少年は貨物船に正規の手続きで乗船していたわけではなく、
コッソリ1人で潜り込んでいたようです。

つまり密航しようとしたわけです。
現在のマーベラスや、この事件の何年後かのアカレッドとの出会いの場面などから想像するに、
おそらくこの頃からやんちゃな悪ガキではあったのでしょう。
ただ、まだ少年ですから、別にそんな性質の悪いことをしようとしていたわけではなく、
おそらくは宇宙船に乗って宇宙の旅に出てみたいという好奇心によるものだったのでしょう。

マーベラスの故郷の星はザンギャックに滅ぼされていますから、マーベラスもまた戦災孤児だったと思われます。
身なりを見ても貧しいのも分かります。
身元もハッキリしない貧しい戦災孤児の悪ガキなど、
正規の手続きでは客船などで宇宙に旅立つことなど出来ないのでしょう。
だから少年は貨物船の荷物に忍び込んで密航して宇宙に行こうとしたと思われます。

そもそもザンギャックの支配する領域とは、
ザンギャックに従わずに宇宙を航行する者達を「海賊」呼ばわりするような自由の無い宇宙の大海原ですから、
もともとザンギャックに反抗的であったマーベラス一味の他の仲間も、
かつて密航の経験ぐらいはあるであろうし、密航者と出会ったことも数多いと思います。
だから、仲間達は少年時代のマーベラスが貨物船で密航をしようとしていたという話自体は
大して珍しい話ではないし、動機は好奇心の類であろうと思いました。

そして、その貨物船がザンギャック軍に襲撃されたという話も、この宇宙ではそう珍しい話ではない。
ザンギャックの支配する領域ではザンギャック軍は治安を守って
悪人から人々を守護しているという建前にはなっているが、
実際にはザンギャック軍こそが率先して罪も無い人々を襲って略奪をしまくっている悪者であることの方が多い。

ザンギャック軍の匪賊同然の実態については、ジョーなどはその実体験者であるし、
他の仲間達も、地球人の鎧も含めて、イヤというほど知っています。
何か目ぼしい品物を積んでいそうな船を見つけたら襲撃して略奪し、
その行為を誰かに指摘されれば、自分達が攻撃したのは海賊や盗賊だったのであり、
あれは悪者を討伐しただけだと嘯くのがザンギャック軍の常套手段でした。
そんな見え透いた嘘でもザンギャックの支配領域では大手を振ってまかり通るのが、この宇宙の現実でした。
密航して呑気に星空を眺めていた少年はそうした宇宙の現実の洗礼を受けることとなったのです。

その時のことを回想して、現在のマーベラスは
「・・・あっという間に火の手が回って、俺は逃げられなくなった・・・」と話を続けました。
ザンギャック艦からの砲撃を受けて、その貨物船では火災が発生して貨物室には火の手が回りました。
もともと貨物室内の右も左も分からない状態の少年はどっちに逃げればいいのかも分からず右往左往して、
船員たちが火事で死んでいく姿などを目にしながら逃げ惑っているうちに、
何やら高い荷台の上で、下に降りるハシゴも炎で閉ざされてしまい、逃げ場を失って進退窮まってしまいました。
背後からも炎が迫っており、このままでは焼け死ぬのも時間の問題となりました。

その時、荷台の上で焦ってキョロキョロする少年に向けて「跳べぇっ!!」と大きな声で何者かが呼びかけました。
その声は荷台の下の貨物室の床の方から聞こえてきます。
少年が荷台の上から見下ろすと、貨物室の床の上、炎の中で革ジャンを着た1人の男が立って、
少年の方を見上げていました。

少年のいる荷台の上から見て、貨物室の床は10mぐらい下でした。
床もかなり火の手が回ってきていますが、男が入ってくることは出来ているわけですから、
まだなんとか外に脱出できる経路は繋がっているようです。
床にまで降りれば、今ならまだ脱出は可能でしょう。
しかし荷台から床に降りるハシゴはもう炎で閉ざされていますから、少年が床に降りるには飛び降りるしかない。
だが10歳そこそこの少年が10mも下に飛び降りれば怪我をして逃げられなくなる可能性が高いし、
だいいち普通は子供がこの高さは怖くて跳び降りることなど出来ない。

それで、その男は自分が下で受け止めてやるから飛び降りても大丈夫だという趣旨で、
少年に「跳べ」と言っているのです。
少年が助かるにはもうそれしか方法は無いでしょう。
じっとしていても炎は迫ってきており、すぐに荷台は炎に呑みこまれそうです。
下で受け止めてくれるという男は屈強そうな身体をしており、少年が跳び降りればきっと受け止めてくれるでしょう。
それならば男の言う通りに飛び降りて貨物室からの脱出を図るのが少年の生き残る唯一の道でしょう。

ところが少年は、下で待ち受ける男の方を見て逡巡し、目の前の手すりを掴んで俯き、
「ダメだよ・・・怖いよ・・・ぼく・・・死ぬ・・・」と力無く言って、後ずさりしていこうとします。
少年は怖気づいたようです。
そりゃあ確かに10mも下の床に飛び降りるのは、
たとえ下で受け止めてくれる人がいるといっても、子供には怖いことでしょう。
しかし、飛び降りなければ炎に包まれて焼け死ぬのです。
飛び降りるのも怖いが、普通は焼け死ぬ方がもっと怖いはずであり、
死ぬのが嫌だから仕方なく飛び降りることになるはずです。

しかし少年は死ぬよりも飛び降りる方が怖いようです。
それはつまり、死ぬのがあまり怖くないからであるようです。
というより、死ぬことにあまり抵抗が無い。
生きる気力が無くなっているということなのでしょう。
だから、死ぬことよりも飛び降りることの方が怖くなり、
いっそ死んでしまった方がマシだと思ってしまうようです。

そうした少年の生きる気力の不足が飛び降りる阻害要因となっているのを見てとったのか、
その男は少年に向かって、「男なんだろぉ!?」と叱るように言いました。
叱るといっても、非難するような感じではなく、親が子を叱るように愛情がこめて励ますような語調です。
この男の言葉に込められた温かさを感じた少年は、
冷めようとしていた心を揺り起こされたようにハッとして男を見下ろしました。

船外ではまだザンギャック艦による砲撃が続くという切羽詰った状況の中、
少年を見上げて、その男は「ここで死ぬのは君の勝手だ!」と言います。
そもそも、この男はこんな危機的状況の中で行きずりの少年を助けなければいけない義務があるわけではない。
貨物室で炎に呑みこまれそうになっている少年が助かろうとしているのだと思ったから、
それを手助けしようとして自発的に声をかけただけなのです。
誰かにこの少年を助けるよう依頼されたわけでもない。
だから当事者の少年に助かろうとする気が無いのならば、無理に助ける必要など無いのです。

実際、この男は少年の命を助けること自体にそれほど強い拘りは無いようです。
生きることだけに価値があるわけではない。
生きてさえいれば良いことがあるわけでもないし、命を長らえることだけが素晴らしいわけでもありません。
人間には死ぬべき時だってありますし、命を捨てる価値のある場合もある。
それは年端のいかない子供だって同じです。
子供だから特別に命の価値が高いわけでもない。
子供にだって命を捨てる権利はある。

しかし、それはたった1つしか無い命、たった1回しか捨てることの出来ない命の価値、人生の価値を
十分に分かった上で、今がまさにその命を、その人生を捨てる価値のある時だと思い定めた、
前向きな死でなければいけない。
もしそういう想いで死のうとしているのならば、たとえ少年であろうとも勝手に死ねばいい。
少なくとも、この男自身はこの貨物船の危機の中で見ず知らずの少年を助けるために自分の命を危険に晒しているのは、
そうした前向きな覚悟であるようです。

しかし、この男は少年からはそういう前向きな死の覚悟を感じることは出来なかったようです。
男は少年が単に未来に希望を持てずに生きる気力を失っているので安易に死のうとしているのだと感じたのです。
生きる希望を持てないから死を選ぶなどというのは、男として正しい道ではない。
男なら、そんな死に方はすべきではない。
その男は少年に男らしい生き方、男らしい死に方を求めたのです。

では、どうしてその男が初対面の少年が未来に希望を持っていないことが分かったのかというと、
少年が飛び降りることを怖がったからです。
つまり少年が勇気を持ち合わせていなかったから、
少年が「死ぬ」と言っているのは前向きな死ではなく、生きる希望を持てないから死に逃げ込もうとしている、
後ろ向きな死、およそ男らしくない死なのだと見破ったのでした。

勇気があれば、未来に希望を抱くことが出来るから、後ろ向きな死を選ぶようなことはない。
むしろ勇気ある者が選ぶ死とは、未来に希望を感じながら、それを捨ててでも何かを得るために、
あえて希望に満ちた自分の未来を捨てる勇気を貫く、前向きな死です。
少年がそういう前向きな死を選ぶというのなら止めはしない。
この男は少年に「死ぬな」と言いたいわけではない。
また、未来に希望を見出そうとしないような少年を無理に助けたいという気もありません。
この男は少年に向けて、生きるにせよ死ぬにせよ、未来に希望を抱くように諭している。
それこそが男らしい生き方なのだと教えているのです。

「・・・だが、君さえその気になれば、君の行く手にはきっと素晴らしい未来がある!」と、
男は優しく少年を元気づけるように言いました。
ここで男は無条件で未来が素晴らしいなどとは言っていません。
生きてさえいれば素晴らしい未来が得られるなどということはない。
「その気になれば」こそ素晴らしい未来は得られるのです。

では、「その気になる」とはどういうことなのかというと、
その答えとしてすぐにその男は、じっと自分を見下ろす少年に向けて
「それを掴み取るために勇気を出せ!」と力強く言いました。
つまり、勇気を出せば素晴らしい未来が感じられる、未来に希望を抱くことが出来る、
そしてその未来に感じた希望はきっと叶えられて、素晴らしい未来を掴み取ることが出来るのだと、
男は言っているのです。

勇気を出せば素晴らしい未来を掴み取ることが出来るのであり、
勇気を出して素晴らしい未来を掴み取る生き方こそが、真に男らしい生き方なのだという、
大人の男の人生訓を、この男は少年に教え諭してくれたのでした。
しかし、どうして勇気を出せば素晴らしい未来を掴み取ることが出来るのか?
そもそも「素晴らしい未来」というものが何なのかイメージ出来ない少年は、
行きずりの浮浪児である自分などに男の人生を説いてくれるその不思議な男の顔を真剣な眼差しで見下ろしました。

どうしてこの男の人は情けなく死を選ぼうとしている自分などに向けて
こんな緊急の場で一生懸命に男の生き方を説いてくるのか、
少年には理由がさっぱり分かりませんでした。
単に「勇気を出して跳び降りろ」とだけ言えばよさそうなものですが、
どうしてここで未来の話になるのか、少年にはよく分からないのでした。

しかし、それでも続けてその男が言ったセリフは少年の心に沁みました。
男は少年を見上げて、「あばよ涙・・・よろしく勇気だ!」と言うと、
右手の親指と人差し指をくっつけて立てて自分の頭の横に添えると、
少年に向けて敬礼するようにビシッと突き上げたのでした。

この男は少年がどうして未来に希望を抱くことが出来ないのか、理由を分かってくれていたのです。
男は少年の身なりや顔つきを見て、少年のこれまでの人生に辛いことや悲しいことがあまりに多すぎて、
それで未来に希望を見出すことが出来なくなっているのだろうと理解しました。
よほど恵まれない境遇で生きている少年なのであろう。
普通に考えれば、そんな少年の未来が素晴らしいものである可能性は低い。
だから「勇気を出せば素晴らしい未来を掴める」なんていうのは気休めに聞こえます。

しかし男は、そんな悲惨な境遇で涙してきたような少年にこそ、
今の悲惨な状態を抜け出すためには素晴らしい未来を掴むという不可能に挑戦する勇気が必要なのだと思いました。
そして、その勇気の必要性を最も理解しているのは、
最も悲惨な境遇にある少年自身のはずだということを知っていました。

一見臆病な弱虫のように見える少年だが、彼が悲惨な境遇にある限り、心の中では勇気を最も欲している。
勇気は少年の遠くにあるのではなく、少年のすぐそば、心の中にしっかり存在している。
ただ過去に辛い想いをしすぎたために涙が勇気を覆い隠しているに過ぎない。
自分の今の悲惨な境遇をひっくり返すような素晴らしい未来を思い描き、
その素晴らしい未来を掴み取ろうという意思さえ持てば、
少年の心の中の勇気は今より何倍も大きくなって、それを覆い隠している涙を消し去り、心の表面に姿を現す。

きっかけは「素晴らしい未来をイメージして掴み取る意思を持つこと」だけでいい。
わざわざ勇気を何処かから持ってきたり、新たに作り出す必要など無い。
勇気はもとから少年の中に存在しているのです。
素晴らしい未来をイメージし、勇気を覆い隠す涙に別れを告げれば、自然に勇気が湧いてきて、
これからは勇気が少年にとって未来を掴む旅の友となる。
それぐらい簡単なことなのです。
涙に別れを告げて勇気と共に進むという選択が、それぐらい気軽なものであるということを表す言葉が
「あばよ涙、よろしく勇気」という、全く日常的な感覚の言い回しであるのです。

その男の平易な言葉を聞いて、少年は自分の心の中に確かに勇気が存在することを感じた。
そして、その男の言う「素晴らしい未来」というものが何なのかよく分からないが、
とにかくそんなに素晴らしいのならば、それを掴みたいという熱い想いが湧き、
同時に自分のような浮浪児がそんなものを掴むのは不可能だと思えた。
そう思うと、少年は悔しくなってきて、俯いて拳を握りしめました。

不可能なのは分かっている。
しかし、それでも少年は素晴らしい未来というものを掴みたいと思いました。
すると、不可能に挑戦するという、今まで少年が経験したことのない、
ゾクゾクする熱い感覚が込み上がってきます。
少年は「面白いじゃないか」と思えてきました。
そして、これが本当の「勇気」というものなのかと思えてきました。
そう思えてきた少年はその勇気が本物であることを確かめるかのように右手の拳をギュッと強く握って、
階下に立つ男の真似をするように「・・・よろしく・・・勇気・・・!」と呟いて、
親指と人差し指をビシッと揃えて立ててみました。

気が付けば、未来を悲観して此処で死んでしまおうという気持ちは少年の心の中から無くなっていました。
その代わりに、ここを生き残って、「素晴らしい未来」を掴み取りたいという想い、
そしてその困難に挑戦する勇気が少年の心を占めていました。
少年は俯いていた視線を上げて、階下の男を見下ろして睨みつけました。
その目は先ほどまでの弱弱しいものではなく、ギラギラした光が宿っています。

その「素晴らしい未来」を掴みたいという夢に目覚めた少年は、
これからはその夢を掴むために勇気を出そうと決意し、
まずはこの火災の危機を切り抜けて生き残って夢に向かって進むために勇気を発揮しました。
少年は躊躇することなく目の前の手すりを乗り越えて、その足は虚空に向かって踏み出しました。

当然、少年の身体は下の床に向かって落下を開始し、
その一瞬後に、少年がさっきまで立っていた荷台の上の空間は噴き出してきた炎に呑みこまれ、
少年の背後では大爆発が起こったのでした。
少年は背後から爆風を受けて「うわあああ!」と叫びますが、
一瞬早く飛び出していたため、間一髪、命拾いしました。
そのまま落下した少年は下で待ち受けていた男に受け止められて、無事救出されたのでした。

以上がマーベラスの回想した内容でした。
この少年の成長した姿が現在のキャプテン・マーベラスなのですが、
一方、この少年を救出した男は何者であったのかというと、
この男に救出されたマーベラス自身、この男が何者であったのか覚えていません。
というより、この男が何者であったのか、その事件の当時において最初から不明だったのです。

マーベラス少年は男に救出された後、すぐに貨物船の救命艇に乗せられて、
他の生き残りの船員たちと共に炎上する貨物船から脱出したのですが、
救命艇までマーベラスや他の船員たちを誘導していたその男は、貨物船から離れた救命艇には乗っていませんでした。
男はマーベラスの気付かないうちに姿を消していたのです。
まさか、マーベラスに向かって生きるように諭したあの男が自ら炎上する船と共に死を選んだとも思えないので、
男は自前の脱出手段を持っていたと思われました。

当然、その時マーベラス少年はあの男が誰なのか、他の船員たちに尋ねましたが、
あの男は貨物船の船員ではなかったようで、そもそもあんな男はその貨物船には乗っていないはずでした。
ならばマーベラス同様に密航者という可能性もありましたが、
あの男の堂々とした態度や、自前の脱出手段を持っていたことなどから、その可能性は低いと思われ、
おそらく別の船で宇宙を航行していたあの男がザンギャック軍に襲撃されている貨物船を見かけて、
わざわざ乗り込んできて人命救助をして、そして自分が何者か告げることもなく去っていったようです。
そういうわけで、その男が実際のところ、どこの誰なのかはマーベラスにはずっと分からないままでした。

なお、このマーベラスの回想シーンを見た視聴者の多くは、
この男がおそらくギャバンの10年ほど前の姿なのだろうということは分かるはずです。
ここの回想シーンではこの男はバックショットとロングショットだけで映されており、
顔がハッキリとは映っていません。
これはマーベラスがこの男の顔をよく覚えていないということを象徴的に表現している演出ですが、
それでも視聴者目線で見れば、ほぼ間違いなく大葉健二氏の演じるギャバンに見えます。
これだけボカした演出の場合、よく似た他人というオチも有り得ますが、
ここの場面では声も完全に大葉氏の声なので、視聴者はほぼ間違いなくこの人物がギャバンだと認識は出来ます。

また、この男が「あばよ涙、よろしく勇気」という
1982年版のギャバンTV本編の主題歌のサビの歌詞のフレーズをセリフにして喋っていること、
この映画に登場した老ギャバンも同じ「よろしく勇気」というセリフを同じ仕草で喋っていること、
この男の「あばよ涙、よろしく勇気」という言葉の解釈が
先だって考察した1982年版ギャバンやこの映画における老ギャバンにおける
このフレーズの解釈とほぼ同じであることなどからも、
この男はギャバンである可能性が濃厚といえます。
なお、この回想シーンでこの男が少年マーベラスに向けて言った「男なんだろ?」というセリフが
1982年版ギャバンTV本編主題歌の冒頭のフレーズと同じであるというのも、
スタッフの遊び心であり、この男がギャバンであることを暗示する符号といえます。

まぁ、これらの主題歌絡みのメタ的な符号というのはともかくとして、
この回想シーンはあくまでマーベラスの脳内で思い出された情景そのものですから、
現時点でのマーベラスは視聴者が見えたり聞こえたりしているのと同じ程度には
およそ10年前の事件の時の男の顔や声を思い出しているのでしょう。
それならば、その回想の中の男が昨日出会ったギャバンである可能性が高いということも認識出来ているはずです。

これほど鮮明に覚えていたのなら
昨晩の初対面時にもマーベラスはギャバンが昔自分を助けてくれた男かもしれないと思っても良さそうなものですが、
ここの回想シーンの鮮明さというのは、
あくまでさっきの処刑場の脱出直前のギャバンの「よろしく勇気」という言葉を聞いて以降、
マーベラスの頭の中で遠い記憶が次第に鮮やかに甦ってきているからこそのものと解釈すべきでしょう。

それ以前は、この遠い昔の記憶はもっとぼんやりとしており、この男の姿も声ももっと曖昧なものでした。
実際、さっきの処刑場でギャバンの「よろしく勇気」のセリフを聞いた直後の
マーベラスの脳裏をよぎった回想シーンでは、
この男が「よろしく勇気だ」と言う後ろ姿が一瞬甦っただけであり、しかもそれはモノクロでした。
それが数時間経過して今回の仲間たちに請われて語るために回想したシーンは、
もっと前後の出来事も詳細に、赤味がかったカラー映像で思い出されており、
その男の姿や声も鮮明になっているのです。

このように徐々にマーベラスの回想は鮮明になってきており、最初は全てがボンヤリしていました。
そんなボンヤリした記憶の中でただ一つ「よろしく勇気」のセリフだけはマーベラスはハッキリ覚えていたので、
ギャバンが処刑場で「よろしく勇気」と言った時、マーベラスは驚いて、
この記憶を思い出すきっかけとなったのでした。
それだけこの「よろしく勇気」という言葉はマーベラスにとってインパクトのある言葉であったのです。

この回想の事件そのものはマーベラスの中ではこれまであまり思い出されることもなかったボンヤリしたものでした。
思い出してみると、確かに重要な出来事であったことが分かりますが、
普段のマーベラスはこの事件のことをそんなに常に意識しているなどということはなかった。
それなのに、この事件の時に登場した「よろしく勇気」という言葉だけは
マーベラスの頭の中では重要な位置づけであったようです。

しかし普段のマーベラスは仲間たちとの会話の中で、この「よろしく勇気」などという言い回しは使わない。
それなのにギャバンがその同じセリフを言っただけで激しくショックを受けてしまうほどに
マーベラスの中では「よろしく勇気」という言葉が重要な位置づけであるというのは、
「よろしく勇気」という言葉はマーベラスにとっては
その最初に聞いた時の想い出を忘れてしまっても覚え続けることが出来るほどに、
普段から心の中で想起され続けている、自分の核心として常にあり続けた言葉であり、
それはあまりにマーベラスの核心であるゆえに
仲間との会話の中でも軽々しく口にすることもない言葉だったのだと思われます。

つまり「よろしく勇気」とそれに象徴される「素晴らしい未来を掴み取るための勇気」というものは
マーベラスという人間のアイデンティティそのものと言っていいでしょう。
そして、この「よろしく勇気」という一風変わった言い回しは、
マーベラスは遠い昔のボンヤリした記憶の中で誰かに聞かされて以来、
他に誰かが口にしているのを聞いたことはありませんでした。
そうしてマーベラスは何時しか、この「よろしく勇気」というのは
自分だけが知っている言葉であるかのような感覚を持つようになっていました。

だから、さっき処刑場を脱出する直前にその言葉がギャバンの口から出てくるのを聞いた時、
マーベラスは心底驚き、混乱したのでした。
それでマーベラスは、変身するのも忘れて、慌てて記憶を辿り、
自分がこの言葉を最初に誰から聞いたのか思い出そうとしました。
そうして思い出したおぼろげな記憶の中では、
この「よろしく勇気」という言葉をマーベラスに教えてくれたのは、
確かマーベラスの父親であったということになっていました。

それでマーベラスはビックリして、ブートレグと戦うギャバンを見つめました。
あの宇宙刑事ギャバンが自分の父親だったのかと思い、
同時に、いやそんなはずがないという想いも交錯して、
更にそこに遠い昔の何処かの火事場の記憶がフラッシュバックしてきて、
何が何やら分からない混乱状態の中でマーベラスがギャバンを見つめていたところに
鎧が豪獣ドリルで乱入してきて、ジョーに怒鳴られてマーベラスは我に返って、
後ろ髪引かれる想いでギャバンを残してその場を脱出したのでした。

そうして脱出した後、やや落ち着いたマーベラスは、
さっきの自分はいきなり「よろしく勇気」という言葉を聞いたことや、
ザンギャック軍に包囲された極限状態であったこと、
直前に処刑されかかって間一髪助かったことなどから、かなり興奮状態であったことが分かりました。
それで落ち着いた思考が出来なくなっていたのだとマーベラスは思いました。

少し落ち着いてよく考えてみれば、ギャバンが自分の父親であるはずがない。
そもそも、自分に「よろしく勇気」という言葉を教えてくれた人物は
自分の本当の父親ではないのだということをマーベラスは思い出したのでした。
自分が勝手にそのように思っていただけのことであって、本当は違うのだということは知っている。
処刑場を脱出した後、少し落ち着いてからマーベラスは、
脱出直前に頭をよぎった例の火事場の記憶が何だったのか思い出して、
それが10年ちょっと前の事件であり、自分はその時にある人物と出会って「よろしく勇気」という言葉を聞き、
それ以降、一時期その人物のことを自分の父親だと勝手に思っていたのだったということを思い出しました。

しかし、今度はそうなるとギャバンは自分の父親ではないとしても、
その事件の時に出会った男その人なのかもしれないとマーベラスには思えてきました。
つまり、まださほど鮮明に思い出せてはいない、その10年ちょっと前の事件の時に
自分は宇宙刑事と出会って「よろしく勇気」という言葉を教えられたということになる。
しかし、自分のその記憶は確かそんな感じのものではなかったように思えて、マーベラスは再び混乱しました。

その時に出会った相手が宇宙刑事であるはずはないように思えて、
やはり自分の思い違いであったのかとも思えましたが、
その事件の記憶が甦っていくにつれて、
その記憶の中の人物の輪郭がどうもギャバンと似ているようにも思えてきます。
しかし、もしその人物がギャバンだったとしたなら、かなり話がややこしいことになりそうな気がして、
マーベラスは困惑しました。
何がどうややこしいことになるのかハッキリはしませんが、どうも落ち着かない気分であったのでした。

それでガレオンに戻ってからもマーベラスはじっと黙って、
ギャバンのことや、その事件のことを考え込んでいたのですが、
そこにジョーのツッコミが入って、マーベラスは思わず
「ギャバンに出会ったことがあるかもしれない」ということで悩んでいると答えてしまい、
アイムに請われ、皆の圧力も感じて、結局、仲間達にその10年ちょっと前の事件の話をしたのでした。

それがここで述べられた、炎上する貨物船からの脱出事件の回想だったのですが、
ここでマーベラスに求められていた説明は、ギャバンとの過去の因縁についてでしたので、
この貨物船炎上事件の時に自分が出会った男がギャバンなのではないかという疑惑を
自分が感じているということだけが仲間達に伝われば十分に説明は果たしたことになります。

そのためにはマーベラスは、少年時代の自分が密航しようとしていた貨物船がザンギャックに襲われて炎上し、
そこに現れた見知らぬ人物が自分を助けてくれたという話、
飛び降りるのを怖がって助かるのを諦めようとしていた自分を
その人物が素晴らしい未来を掴むために勇気を出すように励ましてくれて、
それによって自分は勇気を出して飛び降りて、その人物に受け止めてもらって助かることが出来たという話、
そして、その人物が自分に勇気を出すように励ます際に言ってくれた言葉が
「あばよ涙、よろしく勇気」だったという話、
だいたいこれぐらいの表面的な話を仲間達に説明すれば十分でした。

それだけ聞けば仲間達は、鎧を除いては
さっきマーベラスと共にギャバンが「よろしく勇気」という謎めいた独特のセリフを言っていたのを聞いていますから、
マーベラスがギャバンとその事件の時に出会った人物とが同一人物ではないかと思って
頭を悩ませていることは理解してくれるはずでした。
だからマーベラスもそれに十分な表面的な説明、
つまりその事件の時に起こった出来事だけを整理して伝えただけでした。

つまり、その事件の際にマーベラス自身がどんな想いでその男の言葉を受け止めたのか等、
ここまで述べてきたような深い心情的な部分はマーベラスは仲間たちに説明していません。
というか、マーベラス自身、仲間たちに向けてその事件の事実関係を説明していくことによって、
同時進行で事件の詳細がようやくハッキリと思い出されてきたのであり、
同時にようやくその事件の時に自分がどんなことを感じていたのかについても鮮明に思い出してきたのですから、
それを整理して仲間たちに伝える余裕はありませんでした。

そして、そうしてあの時感じたことまで鮮明に思い出したことによって、
マーベラスはあの事件の後、どうして自分があの人物のことを父親と思うようになったのかという事情も思い出し、
更に一番大事なことも思い出してきたのです。
それはマーベラス自身にとっても、ついうっかり忘れていた記憶であり、
しかし自分にとって一番大事な記憶でした。
窓の外を眺めながら10年ちょっと前のその事件についての説明を終えたところで、
その重大な記憶が頭の中に浮かび上がってきて、
マーベラスはそういえばそういうことだったのだと思い至りました。
それは、まさに現在のマーベラスという人間の原点でした。

そこでマーベラスは、この記憶が自分の夢の原点だったのだと気付き、
最初に想像していたよりも自分にとって重大な過去であったことを知りました。
それに気付いたことで、マーベラスはどうして自分が仲間たちに
わざわざこの話をするような流れに持っていってしまったのか謎が解けたように思えました。
自分自身、無意識にこの想い出が自分の夢の原点だと分かっていたから、
仲間たちと共にそれを乗り越えるために認識を共有しようとしていたのだと思えたのでした。

そういうことだったのかと思い、マーベラスは窓の外を見たまま、
あの事件の時、飛び降りた自分を受け止めてくれた男の大きな背中に父親を感じて抱きついた感触を思い出し、
あれが自分の夢の原点だったのだと実感して、ぎゅっと拳を握ると、
仲間達の方に振り向いて「・・・で!・・・今の俺があるってわけだ・・・」と、さっきよりも明朗な声で言いました。

皆に説明したお蔭で自分の頭の中も整理されて、自分の原点を知ることが出来た。
そのことを素直に嬉しく思うマーベラスだったのですが、
一方、そのマーベラスの想い出話を聞いていた5人の仲間たちは皆一様に深刻そうな、困惑したような、
なんとも複雑な表情をしています。
皆の方に振り向いて船室の中央に歩いて戻ってきたマーベラスは皆の表情が意外に暗いので一瞬戸惑いました。

そこにジョーが腕組みをしたまま「・・・だとすれば・・・あの宇宙刑事は命の恩人ってことか・・・」と呟くのを聞いて、
マーベラスはハッとして立ち止まりました。
自分の原点を思い出したなどと感じているのは、あの事件の時の自分自身の想いを思い出した自分だけであり、
事実関係だけを聞かされたジョー達から見れば、
単に火事場で怖気づいていた子供の頃のマーベラスをギャバンらしき人物が通りがかって勇気づけてくれて、
お蔭でマーベラスが命拾いしたという話でしかないということにマーベラスは気付いたのでした。

もしその程度の想い出話だったとするなら、
皆が予想して待ち構えていたような話とはだいぶ違うのだろうとマーベラスには思えました。
皆は「赤き海賊団」の壊滅事件のことを告白した時のような、
マーベラスの現在に重大な影響を与えているインパクトある事件の告白を期待していたのであろうというのに、
自分の説明した事件のあらましは、単にギャバンが自分の子供の頃の命の恩人かもしれないという話であり、
現在の自分がさっき思い悩んでいたのは、単に命の恩人かもしれない人の安否を気遣っていたという
全く個人的な話に過ぎないことになる。

そこでマーベラスは、ジョー達に向かって、
実はそうではなくてこの一件は自分の夢の原点に関わる重大な出来事だったのだということを
説明しようかと思いましたが、
その瞬間、では自分はさっき何を思い悩んでいたのだろうかと思い返しました。
確かに単に命の恩人の安否を気遣っていたというわけではない。
あの時の命の恩人がギャバンであるとするなら何か自分にとって重大な問題があるように思えて、
それで悩んでいたはずです。

いったい何が問題であるのか、その時点ではハッキリ分からなかった。
だが、あの事件が自分にとって夢の原点と思えることが判明した今となっては
何が問題だったのかマーベラスにはよく分かるような気がしました。
それはジョーが「宇宙刑事が命の恩人」と言うのを聞いた瞬間、
その言葉がマーベラスの心に突き刺さったからでした。

マーベラスにとっての命の恩人、すなわち、あの事件の時に出会った男は「宇宙刑事」などではなかった。
そのことが前提となって現在まで繋がるマーベラスの夢の原点は成り立っていたのです。
だから、もしあの時の男が宇宙刑事ギャバンであるのなら、
マーベラスの夢の原点は単なる勘違い、思い込みの類であったのかもしれなくなる。
ギャバンがあの時の男かもしれないと気付いた時から
ずっと自分の心に引っ掛かっていたのはそのことだったのだと気付き、
マーベラスは船室の真ん中で立ち止まったまま、険しい顔をして俯きました。

さっき皆に想い出話をした際にあの事件の記憶は更に鮮明になり、
あの男の姿や声もより鮮明に思い出されてきました。
その結果、マーベラスはますますギャバンがあの時の男であるような気がしてきていました。
しかし、そういうことになると、結果的に自分は重大な思い違いをしていたということになる。
そう思えてきて、マーベラスは困惑しました。
これでは仲間たちに自分の夢の原点を見つけたなどと言うどころではない。
それどころか、現在の自分の正当性に関する自信すら揺らいできます。

この場面、マーベラスは黙って険しい顔をしているだけであり、
その後も結局、マーベラス自身は自分が何を悩んでいたのか明言はしていません。
しかし、これより後の映画内でのマーベラスとギャバン、そして仲間たちの
微妙な心情を見せるドラマを読解するためには、
かなり背景となるストーリーを補完する必要があるように思えますので、
このブログではマーベラスの原点となる物語をここで勝手に補完させてもらうことにします。
まぁいつもながらの妄想なので申し訳ないのですが、
後でギャバンに関する補完ストーリーも合わせて、とにかく妄想で書かせてもらいます。

そういう補完ストーリーを踏まえて、改めてマーベラスの回想した10年ちょっと前の事件のことを考察してみますと、
まず、この回想内に登場する少年は「マーベラス」という人物なのかという疑問が浮かんできます。
もちろん、現在のマーベラスが回想している内容の主格であるのですから、
この少年はマーベラスと同一人物なのでしょう。
この少年が後にマーベラスとなったのは間違いはない。

しかし、果たしてこの時点でこの少年は「マーベラス」という名であったのでしょうか?
私は違うと思います。
マーベラスはさっきこの事件の回想を述べた後、「で、今の俺があるってわけだ」と言いました。
マーベラスは教養が足りないので気の利いた言い回しが出来ない。
だから何だか「命を救われて今の俺は生きている」という当たり前のことを言っているように聞こえますが、
これは実際は深い意味が込められているのだと思います。
つまり、この事件の結果、この少年は「マーベラス」という人物に生まれ変わったのだと思うのです。

この「海賊戦隊ゴーカイジャー」という物語の主人公である
「キャプテン・マーベラス」というキャラクターの名称の由来について、
そういえばこのブログでは一度も触れたことはありませんでした。

この名称はおそらく任天堂が1996年に発売したスーパーファミコン用ゲームソフト
「マーヴェラス〜もう1つの宝島〜」に由来していると思われます。
そもそも「海賊戦隊ゴーカイジャー」という物語自体、
「伝説の海賊の宝を探しつつ主人公が成長していく旅の物語」という物語の骨子からして、
19世紀末にイギリスのスチーブンソンによって書かれた海洋冒険小説の古典的名作にして
ジュブナイル小説の傑作である「宝島」を明確にモチーフとしていますが、
その「宝島」をモチーフとして1996年に製作されたゲームソフトが「マーヴェラス〜もう1つの宝島〜」です。

このゲームソフトも元ネタの「宝島」同様、海賊の隠した伝説の秘宝を探すというストーリーに従って進行する
ロールプレイング形式のアクションアドベンチャーゲームですが、
この物語の中で主人公(プレイヤー側)の少年たちが探し求める宝を隠した伝説の海賊の名前が
「キャプテン・マーヴェリック」と言います。

「マーヴェリック」とは「異端者」という意味を持つ単語であり、
このゲーム内では「荒くれ者ばかりの海賊の中で一風変わった知恵のある海賊として知られていた」という意味で
「異端者」の異名をとっていたという設定となっています。

しかし「マーヴェリック」という単語のもともとの意味は、
カウボーイが使っていた「焼印を押していない牛」であり、つまり「家畜ではない野生の牛」を表す言葉でした。
ここから派生して「飼いならされていない、組織に属していない異端者、一匹狼」の意味で使われていたのであり、
単なる変わり者というよりは、
「巨大な敵に立ち向かう自由自立の気概を持つ孤高かつ破天荒な抵抗者」のイメージが強い。
だから、もともと「マーヴェリック」という言葉は、いわゆる物語上の「海賊」のイメージに合致しており、
海賊の固有名詞として相応しいと言えます。
この「海賊戦隊ゴーカイジャー」の主人公である若き宇宙海賊の船長のキャラも、
まさに「キャプテン・マーヴェリック」という名にピッタリの典型的な反骨の海賊キャラとなっています。

しかし「キャプテン・マーヴェリック」という名をそのまま主人公の名にしてしまうと、
このゲームのキャラの名前をそのままパクったことになってしまうので、それではいくら何でもマズいので、
このゲームのタイトルであり、このゲームで登場する海賊キャプテン・マーヴェリックが隠した
財宝の名称でもある「マーヴェラス」を拝借して、
「キャプテン・マーベラス」という主人公の名前を設定したのでしょう。

「マーヴェラス」は「素晴らしい」という意味を持つ単語です。
つまり海賊マーヴェリックの隠した宝が「素晴らしい宝」であるという意味で、
その宝の名称が「マーヴェラス」となっているのです。
そうなると、この「海賊戦隊ゴーカイジャー」の主人公の海賊船長は
「素晴らしい」という意味を持つ名前であるということになります。

下賤な海賊にしては妙に立派な名前であり、
実際この船長のキャラは、妙に魅力はありますが、それでもそんなに素晴らしい人格者というわけではありません。
単細胞の乱暴者で、やたらと食い意地が張っています。
ハッキリ言って、名前負けしていると言ってもいいでしょう。

マーベラスが立派な素晴らしい人物だと視聴者が受け取るのは自由ではあるし、
実際のところは素晴らしい人なのかもしれません。
しかし、少なくともこのマーベラスという男は自ら「素晴らしい男だ」と主張するようなキャラではない。
そんなキャラがそんな名前負けするようなご立派な名前を名乗っているという設定になってしまったのは、
本当はこのゲームに登場する「キャプテン・マーヴェリック」という名から連想して作られたキャラが、
そのままその名を使うわけにいかないので、語感が似ていてゲーム内でもこのキャラに関わりの深い
「マーヴェラス」を名前として使うことにした結果だと思います。

そんなことは偶然に過ぎないという見方も出来るでしょうが、
この「海賊戦隊ゴーカイジャー」の制作陣はおそらく、
この「マーヴェラス〜もう1つの宝島〜」を番組制作過程で参考にしていた時期はあるはずだと思います。
そう思う根拠は、両者が「宝島」というモチーフを共通しているという点もありますが、他の理由もあります。

この映画の感想記事は物語内の時系列的にはTV本編のクライマックス篇5話の前に位置するので、
クライマックス篇の内容に触れるのはこのブログのルール的にはネタバレになってしまうのですが、
ちょっとネタバレしてしまうと、
クライマックス篇の中で登場する「宇宙最大のお宝」の形状が
任天堂のゲームソフト「ゼルダの伝説」に登場する秘宝「トライフォース」に酷似しているのです。

つまり、この「ゴーカイジャー」の制作陣は「ゼルダの伝説」に題材を求めるという意識は持っていたことになります。
そして、この「ゼルダの伝説」は「マーヴェラス〜もう1つの宝島〜」と制作スタッフの多くが共通しており、
「マーヴェラス〜もう1つの宝島〜」は「ゼルダの伝説」と同一世界観の物語であるとも認識されています。
つまり、この2つのゲームは関係が深いのであり、
「ゴーカイジャー」の制作陣が「ゼルダの伝説」を参考にする意識を持っていたのならば、
「マーヴェラス〜もう1つの宝島〜」も参考にしていた可能性は高いといえます。

むしろ、そこに登場する宝の名を主人公の名前として拝借するほど
「マーヴェラス〜もう1つの宝島〜」を最初から参考にしていたからこそ、
クライマックス篇の構想を練る段階で「マーヴェラス〜もう1つの宝島〜」に関係の深い
「ゼルダの伝説」が参考にされたのだと言えるでしょう。

ともかく、「マーヴェラス〜もう1つの宝島〜」を参考にしていたとするなら、
「ゴーカイジャー」の主人公に最も相応しい名前は本当は「キャプテン・マーヴェリック」の方であったはずです。
それが「キャプテン・マーベラス」という名に落ち着いたのは、
ゲームのキャラ名をそのまま使うわけにはいかなかったからであろうと思われ、
この主人公のキャラに「マーベラス」という言葉の意味が合致しているから
「マーベラス」という名になったわけではないと思われます。

その結果、「マーベラス(素晴らしい)」という名にはあまり相応しいとは言えない
粗野で下品な男がキャプテン・マーベラスというキャラ名となったとして、
それはあくまで制作過程での事情であって、
劇中でこの海賊船長が「キャプテン・マーベラス」と名乗るようになった経緯ではありません。

どうして彼は「マーベラス」という名前なのか、
その由来について、この物語の中でこれまで説明されたことはありませんでした。
それは絶対に説明されなければいけないというほどのことではなく、
単に親が彼にその名前を何となく名づけたのだろうと勝手に解釈しておいてもよかったと思います。
しかし物語的な時系列で最終盤となるこの映画において、ハッキリした描写ではないものの、
どうして彼が「マーベラス」という名なのかという由来が暗示されたような気がします。

実際はこの物語の制作過程では「マーベラス」という名は「マーヴェリック」の代案のような位置づけであり、
積極的に「マーベラス」というキャラ名に意味を持たせてはいなかったと思います。
しかし、今回「ゴーカイジャーVSギャバン」の映画を作るにあたって、
マーベラスとギャバンの過去の出会いのストーリーを作る過程で、
上手く「マーベラス」という名前の劇中における由来を回収したのだと思います。

ところで、先だって、マーベラス一味の面々の過去とも向き合い方について考察した際、
他のメンバーが仲間に加わった当初は過去に向き合わないまま仲間との信頼関係を築くことに
それなりに苦労していたのに、
マーベラスだけは過去に向き合わずに仲間との信頼関係を築くことに苦労した様子は無いと言いました。
マーベラスという人間は極端に過去に無頓着であるとも言いました。
それは、マーベラスにはそもそも「過去」というものが無かったからではないでしょうか。

もちろん現在のマーベラスには「赤き海賊団」時代などの過去の想い出はあります。
しかし、マーベラスという人間はそれ以前の人格形成期に
「過去を持たないまま人間関係を築く」という生活を当たり前のように送っていたので、
その結果、過去に無頓着なまま人間関係を作ることに長けた人間となったとも考えられます。
つまりマーベラスは自分のルーツや根っこを知らない。

マーベラスの「赤き海賊団」以前の過去に関して、この「ゴーカイジャー」の物語の中でこれまでに示された情報は、
まずマーベラスの故郷の星はザンギャックに滅ぼされたということがあります。
そしてアカレッドと出会う以前は1人でチンピラのような生活を送りながら
ザンギャックの施設を襲ったりして海賊を自称しており、
「宇宙最大のお宝」という海賊の伝説のお宝に憧れを抱いていた。
そしてアカレッドに誘われて、そのままアカレッドについて行って「赤き海賊団」に入りました。

これを見る限り、どうやらこの時点でマーベラスに親や家族の類はいないようです。
そして今回の映画では少年時代のマーベラスが浮浪児であり、
密航して何処かに行こうとしていたというのが描かれました。
ここにも家族の影は全く見えません。

ここでの少年マーベラスの生きる気力の欠乏した様子や、ギャバンと思われる男の言葉に対する反応、
そしてこの映画におけるこの後のマーベラスとギャバンの不思議な擬似的な父と息子のような関係も考え合わせると、
どうもマーベラスは本当の父親というものをそもそも知らないのではないかと思えます。

おそらくマーベラスが赤ん坊の頃にマーベラスの故郷の星はザンギャックによって滅ぼされ、
マーベラスの両親はその時に死亡したのではないかと思います。
その際に子供たちは脱出させられて生き残り、
その時赤ん坊だったマーベラスは物心ついた時にはもう既に天涯孤独の孤児であり、
自分の親が何処の誰であり、何をしていた人なのか、
そもそも生きているのか死んでいるのかさえ、何も知りようもなかったのでしょう。
ただ、少し大きな子供たちや生き残りの大人たちから、
自分の生まれた星がザンギャックに滅ぼされたということは教えられ、
おそらく自分の両親はその時に死んだのであろうと理解しました。

マーベラス少年の周囲には同じように自分の過去やルーツが何も分からない孤児ばかりであったので、
過去の無い者同士で人間関係を築くのはマーベラス少年にとって当たり前のことであり、
それゆえマーベラスは過去に無頓着なまま他人と関係を築くことに全く抵抗が無いのです。

いや、そもそもこの少年は「マーベラス」という名ではなかったはずです。
もともとは生まれた時に両親につけられた本名があったはずですが、
それは故郷の星が滅びて両親と別れてしまった後、もう分からなくなってしまっていたと思われ、
この少年は最初、名前すら無かったと思われます。
ただ、それでは不便なので孤児集団の中で便宜的に何らかの名前をつけられたと思われますが、
間違っても「マーベラス」などという立派な名前ではなかったはずです。
浮浪児のような戦災孤児には「素晴らしい」などという意味を持つ名前はあまりにも似合わない。
何か別の、至って平凡な名前がつけられていたはずです。

その少年の人生がロクなものでなかったのは状況的に容易に想像出来ますし、
実際、この映画では10歳過ぎぐらいに成長したその少年は浮浪児になり、生きる気力が欠乏した状態でした。
このザンギャックに支配された宇宙で、ザンギャックに逆らって滅ぼされた星の生き残りの
天涯孤独の戦災孤児の浮浪児が何をやっても浮かび上がれない極貧生活を送るのは当然で、
それだけでも絶望すべき状況ではありますが、
この少年の場合、親の顔も正体も知らず、自分の本当の名前も知らず、
自分が何処の何者なのか分からない状態で、どのように生きるべきか指針を示してくれる大人もいない中で育ったため、
このどん詰まりのような人生をいったいどうやって切り開いていけばいいのか
皆目見当がつかない状態であったと思われます。
それで何処か別の場所に行けば人生が変わるかもしれないと思い、
貨物船に潜り込んで新天地を目指したところ、ザンギャック軍の襲撃に巻き込まれてしまったのでしょう。

そして、その時、少年はすっかり絶望してしまったのでした。
ザンギャックに故郷を滅ぼされ、親を殺されて天涯孤独の孤児にされてしまい、
何をやっても報われることの無さそうな人生に最初から放り出されてしまい、
自分が何処の何者なのかも分からず、何を目指して生きればいいのかも分からない。
何かが変わるかもしれないと期待して宇宙に飛び出してみたらザンギャックに襲われてしまった。
このまま逃げ場の無い宇宙空間で、会ったことのない両親と同じように
自分も惨めにザンギャックに殺されるんだろうと少年は思いました。

自分は所詮はザンギャックには勝てない弱者なのであり、
親子ともどもザンギャックにいたぶられて殺されるだけの惨めな人生だったように思えました。
これまでもロクなことが無かった自分の人生の結末などそんな程度のものだったのだろうと妙に納得出来てしまい、
ここで足掻いて仮に助かったとしても、特に何か目標があるわけでもない人生がこの先続いても、
こんなつまらない世界でこれから先どうせ良い事などありそうにない。
辛く悲しいことばかりこれからも続くのなら、
いっそここでこのままザンギャックに殺される方がマシだと少年は思いました。

そこにあの男が現れたのです。
その男は少年に向かって、素晴らしい未来を掴み取るための勇気を持つことさえ出来れば、
悲しい人生に別れを告げて前向きに生きていくことが出来ることを教えてくれました。
それが男らしい生き方だと諭してくれました。

それを聞いて少年はその「素晴らしい未来」というものを掴んでみたいと思い、生きていく勇気が湧いてきました。
そして、こんな自分でも、いやこんな自分だからこそ、
「素晴らしい未来」を掴もうと思うなら不可能に挑む勇気が湧いてきて
生きていくことが出来るという希望が生まれ、
その男の腕の中に飛び込んで助け出され、炎上する貨物船から生きて脱出することが出来ました。

少年はいっそそのままその男について行きたいと思っていたのですが、
その男は別の船で通りかかって炎上する貨物船に人命救助に来ていただけであったようで、
何時の間にかいなくなっていて、少年が乗った貨物船の救命艇には乗っていませんでした。
男の方も自分が助けたその少年が身寄りの無い孤児の密航者だったとは思わなかったようで、
貨物船を無事に脱出すれば少年には帰る場所があるのだろうと思って、
少年には特に何も言わず、少年を含む貨物船の生き残りが救命艇に乗り込んで脱出するのを見送って
自分の船に戻って立ち去ったようです。

そうして再び1人ぼっちになった少年は、
その男に言われたように、これからは勇気を出して涙に別れを告げて男らしく生きていくことを決意しました。
ただ、その勇気を出すためには「素晴らしい未来」というものを掴む意思を持たねばいけないが、
それまで素晴らしいことなど何一つ無かった少年には
「素晴らしい未来」というものが何なのかイメージ出来ませんでした。

少年は困ってしまいました。
きっとあの男は「素晴らしい未来」というものが何なのか知っていたはずなのに、
それが何なのか聞き出す前にあの男がいなくなってしまったのが残念でなりませんでした。

そもそもあの男は何者だったのだろうかと思った少年が
あの男に助けられて脱出した他の船員たちに質問すると、
船員たちはその男が「宇宙海賊」だと言いました。
ザンギャック軍に襲われている船に乗り込んできて人を助けたりするような、
ザンギャックに睨まれることを平気でやるような怖い者知らずは、
この宇宙では宇宙海賊しか有り得ないのだそうです。

実際は男は自分が何者か明確には告げずに立ち去ったようですが、
そういう態度からしてお尋ね者の宇宙海賊そのものであり、
船員たちが男を宇宙海賊だと断定するのも無理はありませんでした。

宇宙海賊といえばザンギャック政府は公式には悪辣非道な犯罪者であるかのように喧伝していましたが、
宇宙の大海原で現実を見ている船乗りたちは、大きな声では言えないが、
実際はみんな、ザンギャック軍こそが真の無法者であり、
宇宙海賊の中にはむしろ真っ当な連中も多少はいるということを知っていました。
だから、そういう真っ当な宇宙海賊がちょうど通りかかって
ザンギャックに襲われている貨物船を気の毒に思って助けてくれたものだと船員たちは理解していました。

少年はそれまで海賊とは極悪非道な奴らだと思っていたのですが、
船員たちの話を聞いて認識が変わり、自分を助けてくれた宇宙海賊に憧れを持つようになりました。
少年は親とも接しておらず、学校にも行っていませんでしたから、
それまで少年に男らしい生き方や、人生に希望があるというようなことを諭してくれた大人はいませんでした。
自分に温かい言葉をかけてくれて、あれほど親身になってくれた大人に接したのは初めてだったのでしょう。
少年は自分を受け止めてくれたその男の大きな手の温もりをずっと噛みしめ、
父親というものはこういうものなのだろうかと思いました。

本当の父親を知らない少年はその男が父親であるかのように、その男のことを思慕し、
その海賊の男が父親だったら良かったのにと思いました。
だが、よく考えてみると、少年の父親が本当に死んだのかどうか不明でした。
そもそも自分の父親が誰なのか分からないのですから、生死すら確かめようがないのです。
自分が孤児だから親は死んだと勝手に決めつけていただけで、
本当は父親は何処かで生き延びていて、自分の息子は死んだと思っているだけかもしれない。

少年はそんなふうに考えました。
そして、あの海賊の男こそが自分の本当の父親だったのではないだろうかと思いました。
何の根拠も無い妄想であり、少年自身、実際はそうではないことは分かっていましたが、
それでも少年はそう考えることで自信を持つことが出来たのです。

自分の父親はザンギャックにも立ち向かう勇気を持つ男の中の男で正義の宇宙海賊だ。
だからその息子の自分だって父親と同じように宇宙海賊になってザンギャックとも戦える。
そう思うことによって少年は初めて自分が何者なのか心に定めることが出来たのです。
自分は海賊の息子であり、将来は父親の後を継いで海賊になる。
少年はそう決心したのでした。

そして、そうして海賊になると決めた少年は、宇宙海賊について船員たちから話を聞いていくうちに、
あの男、つまり自分の擬似的な父親が言っていた
自分にとっての「素晴らしい未来」が何なのかについても心に定めることが出来ました。

海賊である父親が自分に掴み取るように諭し、自分が将来海賊として掴み取るべき最も素晴らしいものとは、
船員たちが「海賊ならば誰でも手に入れたいと願いながら未だに誰も手に入れた者がいない
伝説の最高のお宝」だと教えてくれた「宇宙最大のお宝」でした。
きっと海賊をやっている父親もその「宇宙最大のお宝」を手に入れたいと願っており、
それを自分の「素晴らしい未来」として心に定めて勇気を出しているのだと思った少年は、
自分も海賊となるからには自分の掴み取ろうとする「素晴らしい未来」は
「宇宙最大のお宝」であるべきだと心に決めました。

そうして、それまでの悲しみに挫けてばかりだった人生に別れを告げた少年は、
生まれ変わった自分にそれまでの冴えない名前ではなく、新しい名前をつけてやることにした。
いや、本来の名前を取り戻したのです。
自分の本当の父親であるあの海賊が赤ん坊だった自分に昔与えてくれた本名を
再び今の自分が自分に与えようと少年は思ったのでした。

もちろん、少年はかつて故郷の星の滅亡の前に赤ん坊の自分がどんな名前であったのかは知らない。
しかし、あの男が自分の父親であるのならば、きっと生まれてきた息子には
「素晴らしい未来を掴む勇気を持つ男になるように」と願うはずです。
だから、それにちなんだ名前を息子に与えたはずだ。
そう思った少年は、きっと自分の本名は
「素晴らしい」という意味を持つ「マーベラス」だったに違いないと思いました。

なお、この「ゴーカイジャー」の物語世界では
宇宙では何故か英語と日本語が公用語のようになっている。
全くアンリアルな設定だが子供番組なので問題は無いでしょう。
この公用語の英語で書かれた新聞を学校に行ったことがないというルカが普通にすらすら読んでいることから考えて、
この物語世界の宇宙では学校に行かなくても英語の読み書きぐらいは出来るようになるようです。
だからこの浮浪児の少年が「マーベラス」という単語の意味が「素晴らしい」だと知っていたとしても
何らおかしくはない。

ただ、本当に自分の昔の本名が「マーベラス」だと思っていたわけではない。
少年も本当はあの海賊の男が自分の父親ではなく、
自分に「マーベラス」という名を与えたりしていないことも心の底では分かっていました。
実際は海賊の男に「素晴らしい未来」を掴むことを目指すように諭されて生きる勇気を得た少年が、
その男を見習って海賊になることを決意し、
「素晴らしい未来」にちなんで自分で自分に「マーベラス」という新しい海賊としての名前を与えたのです。

ただ、弱虫だった自分が男らしい海賊になることが出来るという自信を持つためには、
その海賊の男と自分との間に父と息子の関係があるという思い込みを必要としたというだけのことです。
だから、そうして「マーベラス」と名乗るようになったその少年は、
別に本当にその海賊の男と自分が親子だと思い込んで探し回ったりすることはせず、
成長して、操船術と喧嘩の腕を磨いて、
無法なザンギャックの兵達に喧嘩を売ってやっつけて戦利品をいただいたり、
酒場の用心棒のようなことをやったりして、チンピラ紛いではあったが
それなりに自分なりに納得できる海賊生活が板についてくるようになると、
その男のことは精神的な父親として心の奥に大事にしまうようになりました。

そのマーベラスの海賊生活ですが、
彼が自分の「素晴らしい未来」として掴み取ろうと心に決めた「宇宙最大のお宝」を、
彼は本気で探し回ってはいませんでした。
アカレッドに出会った時、欲しいものは何なのか問われて「宇宙最大のお宝」だと答えながら、
同時に「所詮は伝説」だと言っています。
まぁ実際、海賊の間でも「宇宙最大のお宝」は伝説の存在であり実在はしないのだという考え方が常識的でしたから、
探そうにも手掛かりも無い状態だったのも事実でしょう。

ただ、マーベラスは最初から「宇宙最大のお宝」が自分にとって、
あくまで象徴的存在であることが分かっていたのではないかと思います。
本当に掴み取るべきものは「素晴らしい未来」なのであり、
それがあまりにも漠然としていて実態が分からないので、
海賊という自分の立場なりのより具体的な最高到達目標として「宇宙最大のお宝」を掲げたに過ぎない。
例えば、漠然と素晴らしい未来を夢見ている人々でも、
様々な職業ごとに掲げる目標は異なっているようなものです。

海賊だから「宇宙最大のお宝」を掴み取ることによって「素晴らしい未来」を掴むことになるのです。
ただ、実は「宇宙最大のお宝」にしても「素晴らしい未来」にしても、本当に掴み取る必要は無い。
あの男がマーベラスに言ったことは、それらを掴み取ろうとすることによって
勇気が湧いてくるというのが肝要なのであり、その勇気が人生の原動力なのです。
だから、掴み取ろうという意思さえ持続出来ていれば、
目当ての「宇宙最大のお宝」や「素晴らしい未来」は完全に手に入らなくてもいいのです。

だから勇気さえ湧いてきて人生が充実していれば、目標物が手に入らなくても満足出来てしまう。
いや、普通はやっぱり欲しいものは欲しいので、それが手に入らないと満足出来なくなってくるものなのですが、
このマーベラスにおける「宇宙最大のお宝」の場合、
あまりにも伝説的で、あまりにも手掛かりが無かったものですから、
手に入りそうもない状態がいつしか当たり前になり、
いつしかマーベラスはそれで満足するようになってしまっていたのです。

「宇宙最大のお宝」は伝説であって実際には手に入りそうにないが、
それでも自分はそれを掴み取ろうとする勇気を持った海賊なのだという、
変に安定した満足感がマーベラスを支配するようになっていきました。
しかし、これは欺瞞であり倦怠です。
本当に掴み取ることが出来ると思うからこそ、掴み取るための真の勇気が湧いてくるのであって、
掴み取るポーズをとるだけで湧いてくる勇気などは所詮は虚勢に過ぎず、本物の勇気ではない。
そうした虚勢の勇気のレベルに満足するようになっていったマーベラスは次第に腐っていきつつありました。

そんな時、マーベラスはアカレッドに出会い、
アカレッドはマーベラスが「宇宙最大のお宝」を掴み取ろうと思っていることに何か感じ入ったようではありましたが、
その想いが中途半端なまま腐りかけているのを見て取って、
「本気で手に入ると思わなければ手に入れることは出来ない」と指摘しました。
それに先立ってアカレッドに完敗していたマーベラスは
「宇宙最大のお宝」を掴み取ろうとする想いが偽物になってしまっていたために
自分の勇気が偽物に堕していたことを悟り、
それゆえ赤い海賊に敗北した自分は何時の間にか男らしい生き方を忘れていた、
海賊として道を誤っていたと反省し、
アカレッドと共に今度こそ本気で「宇宙最大のお宝」を掴み取るための旅に出発したのでした。

そうして「赤き海賊団」の一員となったマーベラスは
ひたすら「宇宙最大のお宝」を目指して冒険の旅に熱中し、
そのうちにあの貨物船の事件の時のことは記憶の片隅に追いやられていきました。
その後、バスコの裏切りによって「赤き海賊団」が壊滅し、アカレッドとも死別することとなりましたが、
マーベラスは再び立ち上がり、新たに仲間を集めてマーベラス一味を立ち上げ、
あくまで「宇宙最大のお宝」を手に入れるべく突っ走ってきました。

そうして仲間と共に地球にやって来て「大いなる力」を集め、
あと少しで「宇宙最大のお宝」、
すなわちマーベラスにとっての「素晴らしい未来」が手に入るところまでこぎつけた、
ちょうどその時に宇宙刑事ギャバンが現れて、
ギャバンの発した「よろしく勇気」という言葉をきっかけに
マーベラスの忘れていたあの貨物船の事件の記憶が甦り、
あのマーベラスが自分の父親のように想っていた、自分に生きる勇気を与えてくれた命の恩人の宇宙海賊の男が、
本当は宇宙刑事ギャバンであったかもしれないという疑惑が持ち上がってきたのでした。

もしあの時の男がギャバンだったとするなら大問題でした。
マーベラスはあの時の自分に生きる指針を示してくれた父のような男が宇宙海賊だと思っていたからこそ、
自分も宇宙海賊になったのであり、
その男と自分が宇宙海賊であるという前提で、
自分にとっての目指すべき「素晴らしい未来」は海賊の伝説の「宇宙最大のお宝」を掴むことだと決意したのです。

ところがあの時の男がギャバンであり宇宙刑事だったとするなら、
あの男ギャバンの言った「素晴らしい未来」の意味合いはだいぶ違ったものだったことになります。
ギャバンがあの時の少年、すなわちマーベラスに期待した生き方は
宇宙海賊になって伝説のお宝を手に入れるというようなことではなかった可能性が高くなります。

ギャバンはあの時の少年だった自分に、
もっと真っ当で立派な、公のために尽くすような男になって欲しかったのではないかとマーベラスは思いました。
少なくとも、自分の欲望を満足させるためにお宝を手に入れようとして
邪魔者を蹴散らしていくアウトローのような生き方など、
宇宙刑事であるギャバンが望んでいたとは思えない。

いや、実際のところ、もしあの男がギャバンであり、
あの時ギャバンがマーベラス少年にそういう真っ当で立派な生き方を望んでいたとしても、
その後マーベラスが例えば刑事になるとか判事になるとかして、
その期待に応えることが出来たとは到底思えませんから、
マーベラスは別にギャバンの期待に応えられなかったことを悔いているわけではない。
問題はマーベラスがあの事件のことを思い出したことによって、自分の夢の原点だと一瞬思った、
あの時の自分の決意が、もしかしたら大きな勘違いに基づいたものであったかもしれないということでした。

まぁマーベラスはいずれにせよ所詮はアウトロー的な生き方しか出来なかったのであろうと思われ、
たとえ勘違いであろうとも、あの時の決意があったからこそ
同じアウトローでも多少はマシな生き方を出来たのであり、夢も持つことが出来たし、勇気も持つことが出来た。
だから別にあれが勘違いだったとしても、マーベラスは後悔はしていない。
ただマーベラスは不安になっただけなのです。
何が不安かというと、自分の「勇気」が本物なのか自信が揺らいできたことでした。

マーベラスは昨晩ギャバンに完敗してしまったことにそれなりにショックは受けていましたが、
それは宇宙警察との戦いに不慣れであることや、ギャバンの戦闘力が高すぎるからだという、
多分に技術的な問題だと思っていました。
しかし、ギャバンがあの時の男だったかもしれないと思うことによって、
マーベラスの中で昨晩の完敗は別の意味合いで解釈されるようになってきました。
自分がギャバンよりも弱いのは、
自分の勇気があの時、あのギャバンかもしれない男が期待したようなレベルに
達していないせいではないだろうかと思えたのです。

あの時の男は「素晴らしい未来を掴もうとすれば勇気が出る」と言いました。
あの男自身がそうやって「素晴らしい未来」を掴もうとして勇気を出していたのでしょう。
そういえばあの男は自分の身も顧みず炎上する貨物船に飛び込んで人々の命を救った。
そんな勇気を持った男の思い描く「素晴らしい未来」が利己的なものであるはずがない。
自分のことよりも他人のことを大切に思うようなものが、あの男の「素晴らしい未来」なのであり、
それを掴もうとして生じる勇気は、あのように自分を顧みず人を助けようとする勇気であり、
その勇気の生み出す力は大きいのだと思えました。
もしあの男がギャバンだったとするなら、
あのギャバンの凄まじい強さは、そうしたギャバンの掴もうとする「素晴らしい未来」が
本物の「素晴らしい未来」であり、そこから生まれる勇気が本物の勇気だからだとマーベラスには思えました。

そして、一方、自分はどうなのかとマーベラスは自省しました。
自分はもしかしたら、あの時の男が宇宙海賊だったと勘違いして、
あの男も「宇宙最大のお宝」を目指していると思い、自分も「宇宙最大のお宝」を手に入れようと思った。
それが「素晴らしい未来」なのだと思い込んだ。
しかし、あの時の男はそんな自分が宝さえ手に入ればそれでいいというような価値観を持った男ではなかった。
それはよく考えれば分かったことであるのに、深く考えることなく、
自分はあの男が宇宙海賊だと思い込んで、
彼にとっての「素晴らしい未来」が「宇宙最大のお宝」を掴むことだと決めつけ、自分もその真似をしてしまった。

だが、それはあの男の本意とは違っていたのではないか?
あの男は自分にそんな生き方を望んではいなかったのではないだろうか?
それを勘違いして、利己的な夢に突っ走ってしまった結果、
自分はあの男の獲得していた、そして自分に期待してくれていた勇気に遠く及ばない
偽物の勇気しか手に入れることが出来なかったのではないだろうかとマーベラスは思いました。

そうした考えに基づけば、
もしあの時の男がギャバンだったとするなら、自分がギャバンと戦って完敗したのは当然のことのように思えました。
真に目指すべき「素晴らしい未来」を間違えて、偽物の勇気しか出せない男に成長してしまった自分が、
本物の勇気を持つギャバンに勝てるはずがない。

もし、あの時の男がギャバンだとするなら、
自分はあの時の男の期待を裏切ってしまい、本当に男らしい生き方をしてこなかったことになる。
昨晩の敗北はその証拠ではないだろうかとマーベラスは思いました。

そんな情けない自分が本当に「宇宙最大のお宝」を掴み取ることが出来るのか?
いや、もし「宇宙最大のお宝」を手に入れたとしても、
それはあの時に自分の欲した「素晴らしい未来」とはほど遠いものなのではないだろうか?
そのようにマーベラスは不安を感じたのでした。

そうして険しい顔で俯いて立ち尽くすマーベラスの懐に入れていたモバイレーツが突然、呼び出し音を奏でます。
仲間は全員同じ船室に居るというのに、いったい何だろうかと怪訝そうにマーベラスが通話に出ると、
「よぉマベちゃん!」という馴れ馴れしいニヤケた声が聞こえてきました。
「バスコ!?」とマーベラスは顔色を変えます。
モバイレーツに連絡してきたのは「宇宙最大のお宝」を奪い合う宿敵であるバスコでした。
マーベラスが顔色を変えて怒鳴るのを聞いて、マーベラスの傍にいた仲間5人も驚き、血相を変えます。

マーベラス一味の面々はバスコとは第43話の時、
すなわちバスコがいきなりダマラスを裏切って姿を消して以来、
およそ1ヶ月ほどの間、顔を合わしていませんでした。

あの時、バスコはマーベラス達が残りの「大いなる力」を全部揃えたら決着をつけようと宣言して姿を消しました。
その後マーベラス達は残り2つの「大いなる力」を集め、
つい先日、マーベラス達が最後の「大いなる力」であったカクレンジャーの「大いなる力」を得たことによって、
そのバスコの言っていた「決着」の条件が整ったといえます。

もちろんマーベラス達も決着をつけるのは大いに望むところであったので
バスコの行方をこっちから探そうと思っていた矢先に、ギャバンによって逮捕されるという騒動に巻き込まれ、
それがようやく落ち着いて再びガレオンの日常に戻ってきたところです。
そこにバスコからの突然の連絡ですから、これはいよいよ決着をつけようということなのかと思えましたが、
卑怯者のバスコが真っ当な勝負を仕掛けてくるとも思えず、
わざわざ連絡してくるということは、またどうせ姑息な罠でも仕掛けてくるつもりなのだろうと警戒し、
マーベラスは「・・・何の用だ!?いったい!」と怒鳴りつけます。

しかしバスコは面白そうにニヤニヤして余裕の態度でマーベラスの怒気を受け流し、
「興奮しなさんな!・・・さっきの宇宙刑事にまつわる面白い情報があるんだけどさぁ・・・聞きたい?」と、
意外なことを言い出します。
どうしてバスコがいきなりギャバンの話をするのかと少し面食らったマーベラスでしたが、
続けてバスコが伝えた言葉を聞いて、「なんだと!?」と更に驚愕しました。
なんと、バスコの言うには、ギャバンがザンギャックに捕らわれたのだというのです。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 07:25 | Comment(0) | 海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月01日

海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE 感想その7

さて、地球と月の間の宇宙空間に展開するザンギャック軍の侵略艦隊の旗艦
ギガントホースの艦橋にある司令室にはアシュラーダが参上しています。
司令室の真ん中で畏まって直立不動のアシュラーダの周りを「ちょいちょいちょいちょ〜い!」と言いながら、
皇帝親衛隊員のダイランドーがチョコマカと動き回って、
「何やってんの!?ユーの使命は宇宙警察の乗っ取りと、海賊の抹殺だったはずでしょ!?」と、
何やらアシュラーダを詰っているようです。

ザンギャック地球侵略軍は第38話で司令官ワルズ・ギルをゴーカイジャーに倒された後、
第41話以降は本星から親衛隊を率いて直々に乗り込んできた皇帝アクドス・ギルが指揮を執っています。
だが第43話で宇宙最強の男の異名を持つ参謀長のダマラスがゴーカイジャーに敗れて後は、
無駄な被害の拡大を嫌ったアクドス・ギルはゴーカイジャーを直接攻撃する作戦はストップして、
地球侵略とゴーカイジャーの完全抹殺のためにザンギャック本星から大増援軍を呼び寄せる作戦に切り替えました。

その大増援軍は先日編成が終わり、本星を出発してこの宇宙の辺境にある地球に向けて出発したといいます。
今はその増援の到着を待っていればいいはずなのですが、このダイランドーの言葉を聞く限り、
やはり今回アクドス・ギルはアシュラーダにゴーカイジャー抹殺作戦を命じたようです。
そもそもアシュラーダは宇宙警察総裁ウィーバルになりすましての宇宙警察乗っ取り作戦に従事していたはずであり、
そんなアシュラーダにゴーカイジャー抹殺作戦をわざわざ命じるというのも妙な話です。
それにこんな作戦をわざわざ命じる計画があったのなら、
本星に増援を送るようにという大変な作戦を命じる以前にこのアシュラーダを使った作戦を実行しておくべきでしょう。

どうしてこんな変則的なスケジュールで作戦が実行されたのかというと、
おそらくアクドス・ギルが本星からの増援作戦を決定した段階では
アシュラーダは地球侵略軍には居なかったのでしょう。
それは考えてみれば当たり前の話で、
アシュラーダは宇宙警察の本部のあるバード星でウィーバル総裁になりすますという任務があるのだから
地球侵略軍に居るわけがない。

そのアシュラーダが今こうして地球に来ているのはアクドス・ギルが呼び寄せたのかというと、
わざわざこのタイミングで呼び寄せるというのも変な話です。
バード星での宇宙警察乗っ取り計画を一旦抜けさせてまで
どうしてもアシュラーダを使ってゴーカイジャー抹殺計画をやりたかったのならば、
アクドス・ギルは本星からの増援計画を始動する前にアシュラーダを呼び寄せていたはずです。

そう考えると、今回、アシュラーダの方から突然地球にやって来たのだろうと思われます。
ただ地球方面の戦況と無関係のアシュラーダが自分からゴーカイジャー抹殺を申し出るはずもないので、
アシュラーダにゴーカイジャー抹殺を命じたのは、あくまでアクドス・ギルのはずです。
となると、アクドス・ギルは突然やって来たアシュラーダを見て、
急に思いついてゴーカイジャー抹殺を命じたと思われます。

どうもアシュラーダという怪人は、あくまでアクドス・ギルの臣下であり、
アクドス・ギルの命令で宇宙警察の乗っ取りやゴーカイジャーの抹殺に動いたりもするが、
基本的にはある程度自律的に動いている怪人のようであり、
ザンギャック軍の指揮命令系統には属していないように思えます。
おそらくアクドス・ギル直属の何らかの裏の仕事に従事して、一定の裁量を任されているポジションなのでしょう。

これまでにも何度も言及してきましたが、ザンギャックというこの物語の敵組織は、かなり「まとも」な組織です。
邪悪な帝国には違いないのですが、邪悪は邪悪なりに宇宙の大部分を統治しており、
組織的に機能している国家なのです。
そういうちゃんとした国家ですので、いくらアクドス・ギルが独裁者だといっても、
何事も官僚組織を動かして物事を進める必要があります。
軍などはその最たるものです。

何から何までがアクドス・ギルの望んだ通りに実現するわけではない。
独裁者の命令が遂行されないということはないであろうが、
組織を動かすにあたっては、即応性に欠けることもあるであろうし、
あまりにもムチャクチャなルール無視の命令は出すことが憚られたりするでしょう。

しかし独裁政権を維持していくためには、独裁者にはいざとなればその反則的な行為も必要となってきます。
ザンギャック帝国がまともな国家であるゆえにこそ、
普通に軍組織を動かしていては出来ないような汚れ仕事を
皇帝の直接の命令で遂行する秘密工作機関のようなものが必要となるのです。
宇宙警察の総裁を暗殺して総裁に化けて成り変わり、宇宙警察を秘かに乗っ取るなど、
まさにその最たる汚れ仕事であり、
機密保持のためにも、ザンギャック軍の組織を通して遂行することなど出来ないミッションです。
そういうことを行う皇帝直属の秘密工作機関の長がアシュラーダなのでしょう。

そして、こういう裏の秘密工作機関は機密保持のためには、表の組織側とはあまり密に連絡をとらないで、
ある程度自律的に動くようにするものです。
だから皇帝アクドス・ギルといえどもアシュラーダの行動を逐一管理しているわけではない。
アクドス・ギルはその秘密工作機関の一定の方向性を定期的に指示するのみで、
その工作機関の細かい作戦行動はアシュラーダの裁量で自律的に決定し遂行しているのでしょう。

それはつまり、アシュラーダがアクドス・ギルに非常に信用されているということでもあります。
アクドス・ギルにとって最も信用出来る側近だからこそ、
アシュラーダはそのような裏仕事を任されているのだといえます。
といってもアクドス・ギルの場合、アシュラーダの人柄を気に入ったとか、そういうことではないでしょう。
おそらくアシュラーダに何か特別な能力があり、それが裏の仕事を任せるのに適任ということなのでしょう。

そして、アクドス・ギルがアシュラーダのその力を高く評価して厚遇しているので、
アシュラーダが裏切ることはないだろうとアクドス・ギルは思っているのでしょう。
そこには、アシュラーダが妙な気を起こしたとしても、
自分の力の前には到底敵わないであろうというアクドス・ギルの絶対的な自信があると思われます。

そのようにアクドス・ギルとアシュラーダは裏で深い繋がりを維持し続けてきたのであり、
その信頼関係は盤石で、アシュラーダは帝国の暗部を支えて自律的に行動していたようです。
そうしたアシュラーダに対してアクドス・ギルは必要に応じて、宇宙警察の乗っ取り作戦や、
マーベラス一味の逮捕状の捏造など、新たな指令を下すこともありましたが、
秘密工作機関の日常的業務はアシュラーダの裁量で遂行されていたようです。

そういうわけでアシュラーダはその秘密工作機関の何らかのミッション遂行のためにたまたま地球にやって来て、
地球上空のギガントホースに皇帝アクドス・ギルが来ていたので挨拶に立ち寄ったのでしょう。
それは第46話の直後ぐらいのことで、既にアクドス・ギルは地球侵略作戦において
当面はマーベラス一味を直接討伐することは控えて、本星からの増援を待つ態勢に入っていました。
しかし、意外な場所でアシュラーダと顔を合わせたアクドス・ギルは名案を思い付いたのでしょう。

宇宙警察総裁に化けているアシュラーダならば宇宙警察の組織を動かせるのだから、
宇宙警察本部から腕利きの宇宙刑事を地球に派遣して海賊行為の容疑でマーベラス一味を逮捕させ、
そのままマーベラス一味を謀殺することが可能なのではないかと考えたのです。

アクドス・ギルは本星から増援が来れば確実にマーベラス一味を倒して
地球を征服することは出来ると思っていましたが、
本音を言えば、それほどの大兵力を地球方面に集中させて他の支配地域の兵力が手薄になるのは
出来れば避けたいところでした。

増援艦隊の到着前に上手くマーベラス一味を殺すことが出来れば、
増援艦隊はさっさと解散させて本来の持ち場に戻らせることが出来る。
それをせずにわざわざ増援を呼び寄せているのは、
皇帝直属軍の親衛隊がこれ以上マーベラス一味との戦いで消耗するのを避けたいという
独裁者特有の心理によるものでした。

しかし、アシュラーダを使って宇宙警察の組織を動かすことが出来るのならば、
マーベラス一味と戦うのは宇宙警察の刑事であって、
もし仮に宇宙刑事がマーベラス一味に倒されたとしてもアクドス・ギルは痛くも痒くもない。
むしろ宇宙警察もザンギャックにとっては目障りな存在なので、
宇宙警察とマーベラス一味で潰し合ってくれれば好都合ともいえます。

そういうわけでアクドス・ギルはギガントホースに挨拶にやって来たアシュラーダに、
腕利きの宇宙刑事を地球に差し向けてマーベラス一味を逮捕して謀殺するよう命じたのでした。
その命令を受けてアシュラーダは、それならば伝説の宇宙刑事ギャバンこそが宇宙警察最強の刑事であり、
マーベラス一味をきっと捕えることが出来るはずだと言って、
さっそく偽の逮捕状を使ってギャバンを地球に呼び寄せてマーベラス一味の逮捕に向かわせたのでした。

ところがアシュラーダの作戦は、こともあろうに呼び寄せた刑事ギャバンに見破られており、
しかもギャバンはアシュラーダの化けているウィーバル総裁がザンギャックの傀儡の偽者であることまで気付いていた。
その結果、マーベラス一味の抹殺には失敗し、逆にアシュラーダは危うくギャバンの罠に嵌められそうになった。
その危機を何とか切り抜けたアシュラーダは秘密を知ったギャバンを捕えた上で、
すごすごと再びギガントホースに帰還してきた。
一見そのように見えます。

ダイランドーなどはアシュラーダがマーベラス一味の抹殺という肝心の任務に失敗し、
宇宙警察の乗っ取りの秘密まで見破られて、散々な醜態を晒したと見なして散々嫌味を言った後、
「刑事1人捕まえて・・・どうすんのよ?」と言って、アシュラーダの喉元に鉤爪を突きつけて罵倒しました。

アクドス・ギルに最も近い側近であるアシュラーダですが、正式なザンギャックの軍人ではありません。
そもそも公式にはアシュラーダには何の肩書きも無い一般人扱いです。
その方がアクドス・ギルの指示1つで自由に動かせて都合が良いのです。
一方のダイランドーはザンギャック軍の中でもエリート中のエリートである皇帝親衛隊の今や実質的な指揮官であり、
この場では皇帝に次ぐ副官的な立場です。

そうした高級軍人のダイランドーから見れば、
何の肩書きも無いクセに皇帝の周辺をウロチョロしている得体の知れない男であるアシュラーダは
気に食わない相手でした。
もちろんアシュラーダが帝国の暗部に関わる裏仕事をしているということはダイランドーは知っていましたが、
その実態はハッキリせず、ただ皇帝との繋がりだけはやたらと濃くて、
ひたすら皇帝に忠誠を尽くす自分よりも重用されているようにも見えます。

そういうところがダイランドーにとっては癇に障るのと同時に、
いずれは自分もアシュラーダに狙われることもあるのではないかと警戒する想いもあり、
とにかくダイランドーはアシュラーダが大嫌いでした。
だから、アシュラーダが任務を失敗したと聞いてダイランドーはざまあ見ろと思い、
ここぞとばかりにアシュラーダを罵倒したのでした。

それに対してアシュラーダは全く意に介していない様子で、微動だにせず真っ直ぐ立っています。
アシュラーダの正面には一段高い司令官席があり、そこには皇帝アクドス・ギルが座っています。
アクドス・ギルは少し上体を傾けてゆったりと椅子に腰かけながら両手首を軽く打ち合せてポンポンという音を立て、
威厳に満ちた声で「・・・やめろダイランドー・・・」と、ダイランドーに向けて呟き、
アシュラーダへの攻撃を止めさせました。
ダイランドーは慌ててアクドス・ギルの方に向き直り、
「あ・・・はい・・・」と頭を下げ、不承不承ながらアシュラーダから離れます。
ダイランドーはまた皇帝のアシュラーダ贔屓かと感じて不満に思いましたが、
アクドス・ギルは別にアシュラーダを庇ったわけではなかった。

ザンギャックでは皇帝の命令は絶対です。それは表の組織でも裏の組織でも何ら変わりない。
海賊を抹殺するようにアクドス・ギルが命じた以上、アシュラーダは本気でマーベラス一味を倒しに行ったはずです。
そして本気で作戦を遂行して失敗したのは紛れもない事実です。
これはとんだ恥さらしであり、たとえ皇帝の最側近のアシュラーダといえども厳罰ものです。
それなのにアシュラーダは平然とした顔でギガントホースに戻ってきた。
これは何か仕掛けがあるのだろうとアクドス・ギルは思ったのでした。

そもそも今回、アシュラーダは作戦に一旦失敗して追い詰められながら
ブートレグという戦士を投入して危機を切り抜けて、
マーベラス一味は取り逃がしたもののギャバンを捕えることには成功した。
随分と手回しが良いことである。
どうしてわざわざ対ギャバンの切り札のようなブートレグを連れてきていたのか、
アクドス・ギルは疑問に思いました。

それにギャバンを捕えるほどの力を持つブートレグを使ってマーベラス一味の方に攻撃を集中していれば、
マーベラス一味の方を倒すことが出来たように思えるのだが、
アシュラーダはギャバンを捕えることの方に比重を置いていたように思える。
しかも宇宙警察乗っ取りの陰謀に気付いたギャバンをすぐに殺さずにわざわざ生け捕りにしたのも
理由がよく分からない。

アシュラーダともあろう者が理由も無くこのような不可解な行動をとるはずもない。
どうやらアシュラーダにはまだ何か企みがあるようだとアクドス・ギルは気付きました。
ダイランドーなどは単純に作戦失敗と決めつけているが、
アクドス・ギルはどうやらアシュラーダの作戦にはまだ続きがあるのだと見抜いて、
まずはその存念を聞かねば始まらないと思ったのでした。

アクドス・ギルがアシュラーダの方をギロリと隻眼で睨みつけて
「・・・アシュラーダ・・・貴様の考えを聞かせてもらおう・・・」と言うと、
アシュラーダはそれを待っていたように「・・・はっ!」と畏まり、説明を始めました。

一方その頃、マーベラス一味の6人はバスコに呼び出されて地上のとある公園に来ていました。
突然のバスコからの連絡でギャバンがザンギャックに捕まったと聞かされ、
更に詳しい情報を教えてやるから指定の場所に来るようにというバスコの誘いが罠である可能性は十分にありましたが、
バスコがマーベラス達の前に姿を見せる時というのは、どっちにしても大概は罠を張っていると相場は決まっている。
何にしてもバスコがマーベラス達のために善意で動くなどということは有り得ないのであって、
今回もどうせロクでもない罠であるのは間違いない。

ただ最初から罠だと分かっていればそう簡単には引っ掛からないし、
ギャバンに関する情報が多少は得られるのなら十分だと思われました。
万が一、ギャバンに関する情報云々というのは全部嘘で、いきなりバスコが襲ってくるのなら、
それはそれで望むところであり、そのまま一気に決着をつけてやってもいいとマーベラス達は思っていました。

第31話でバスコに完敗したマーベラス達でしたが、
その後、ゴーカイガレオンバスターを開発したり、
ゴーカイジャーの大いなる力を得たりして格段にパワーアップしており、
第39話の時はバスコともかなり良い勝負をしました。
第42話の時はダマラスとタッグを組んだバスコに敗北しましたが、
あれはダマラスという強大な敵の出現でマーベラス達が浮足立っていたからであり、
第43話ではバスコも勝てなかったダマラスを手負いとはいえマーベラス達は倒しています。
今や6人がかりならばバスコとは互角の勝負が出来るという自信がマーベラス達にはあります。
バスコもマーベラス達との実力差がほとんど無くなっていることは自覚しているはずで、
6人が固まって警戒態勢をとっていれば、バスコとてそう簡単におかしなことは出来ないはずです。

それが分かった上で、それでもギャバンの情報をエサにマーベラス達を呼び出すわけですから、
バスコがギャバンに関する何らかの情報を与えようとしていることは本当なのでしょう。
そして、それがバスコにとって何らかのメリットがあるとすると、
そのギャバンに関する情報はそれなりに価値あるものであり、
つまり真実の情報である可能性が高いと思われました。

おそらくバスコは何処からかマーベラス達とギャバンの行動を観察していたのであり、
マーベラスの態度を見て、ギャバンとの間に何らかの因縁があることを敏感に感じ取ったのだろう。
だからマーベラスがギャバンに関する情報を欲しがるだろうと見越したようです。

その誘いにあえて乗って指定の場所である公園にやって来たマーベラス達の前にバスコはサリーを連れて現れました。
バスコも今やザンギャックに追われる身ですから、
いきなりフリージョーカーで飛んでくるような目立つ真似はしません。
ひょっこりと現れたバスコは、あくまで用心深く、マーベラス達とは距離をとって、
指定した場所を見下ろす場所に立って、マーベラス達に声をかけました。

そうしてさっそくギャバンに関する情報の話となりますが、
マーベラスはバスコが無償で情報を提供するとは思えず、
おそらくは情報提供の前に、その見返りに何かを要求してくるだろうと予想していました。
ところがバスコは自分を見上げて睨みつけるマーベラス達に背を向けると、
いきなり「・・・あの宇宙刑事・・・魔空空間に引きずり込まれたみたいよ?」と言って、悪戯っぽくニヤリと笑います。
バスコがいきなり情報を喋り出したのでマーベラスは少し面食らいましたが、
それよりもバスコの言ったことがよく分からず、眉間に皺を寄せて「魔空空間・・・?」と問い直します。

バスコはあの体育館の処刑場でギャバンが不可解な空間に呑みこまれるのを目撃しており、
その空間のことをアシュラーダが「魔空空間」と呼んでいたのも聞いています。
だから、あれが「魔空空間」であり、ギャバンはその「魔空空間」に引きずり込まれたのだということも
分かっています。
一方マーベラス達はその時にはもう処刑場を脱出していたので、
ギャバンが「魔空空間」に引きずり込まれたということは知りません。
だからバスコは自分の目撃したことをマーベラス達に伝えようとしているだけであるように見えます。

ところがバスコはマーベラスの問いかけに対して、
「・・・宇宙犯罪組織マクーによって作られた、邪悪なエネルギーに満ちた異空間さ・・・!」とスラスラと答えたのでした。
どうやらバスコはマクーや魔空空間について、もともと一定の知識は持っていたようです。
ということは、やはりあのギャバンを呑みこんだ妙な空間は本当の魔空空間だったようです。

ところで「魔空空間」とは何なのか?
これは1982年の「宇宙刑事ギャバン」TV本編に登場した設定であり、
宇宙犯罪組織マクーが本拠地としていた異次元空間です。
ギャバンとマクーの怪人が戦う時には、マクーは地軸転換装置を用いて地球の地軸を操作して
魔空空間というブラックホールのような亜空間を発生させて、その中にギャバンを引きずり込んで戦っていました。
魔空空間の中ではマクーの怪人は戦闘力が3倍になるから、マクーとしては魔空空間で戦う方が有利だったのです。

ただ、この地軸転換装置を使うパターンというのは地球において小規模の魔空空間を発生させる場合であり、
マクーが本拠地としていた魔空空間は別に地軸転換装置を用いて発生させたものではありませんでした。
それに、地軸を操作して何らかの重力場を作り出してブラックホールを発生させるというのは
原理的に分からないこともないですが、
それがマクー怪人のみが強くなる不思議な空間の発生に繋がるという原理がイマイチよく分かりません。
それにマクーは地軸転換装置など科学力が優れていた反面、変に呪術的なところがあり、
首領のドン・ホラーをはじめ幹部連中には超能力や魔術を使う者が多かった。

それらを総合して考えると、
おそらく魔空空間とはドン・ホラーの超能力によって作り出された邪悪なエネルギーに満ちた空間であり、
そこではドン・ホラーの配下の邪悪な者たちだけが戦闘力が増幅されるようになっていたのでしょう。
そして、このドン・ホラーの力で作られたオリジナルの魔空空間は一定の規模が維持されており、
もともとはその大きさは不変であったと思われます。

そして地軸転換装置を用いた魔空空間発生のノウハウは
オリジナルの魔空空間が作られてからだいぶ後で開発された新技術と思われ、
これは地軸の操作によって生み出した重力場でブラックホールを作り、
そのブラックホールにドン・ホラーの超能力を加えて新たな魔空空間化するか、
あるいは既存の魔空空間に連結するという作業なのでしょう。

この地軸転換装置を使って作り出す新たな魔空空間は小規模なものであり、
通常ギャバンがマクー怪人と戦っていたのは、この小規模の魔空空間の方でした。
今回、処刑場に突然現れてギャバンを引きずり込んだ魔空空間は
この地軸転換装置で生み出された魔空空間と思われますが、
あの場には地軸転換装置など何処にもありませんでした。

その謎は、おそらくブートレグの内部に地軸転換装置が組み込まれていると考えれば解けるでしょう。
アシュラーダがブートレグに向かって「ギャバンを魔空空間に引きずり込め」と命じた時、
ブートレグの目が赤く光りましたが、あれはフルパワーとなったのと同時に、
内蔵の地軸転換装置が発動した徴でもあったのでしょう。

そうして魔空空間に引きずり込まれたギャバンは、3倍にパワーアップしたブートレグと戦う羽目になり、
もともと能力的にはギャバンとブートレグは互角ですから、
3倍に強化されたブートレグにギャバンは全く歯が立たず敗れたのでしょう。
ところがアシュラーダは敗れたギャバンをそのまま殺さず、捕えて連れ去ったようなのです。
地軸転換装置で発生させた魔空空間は小規模なものですから、そこに留まっていても仕方ないのであり、
アシュラーダは何処か別の場所にギャバンを連れていった。
それは、地軸転換装置で生み出した魔空空間から繋がった、より広大なオリジナルの魔空空間だと思われます。

ギャバンが魔空空間に引きずり込まれるところは目撃したバスコですが、
その後のギャバンの行方は目で見て確認はしていないはずです。
それなのにギャバンが敗れはしたものの殺されずに捕らわれ、
オリジナルの魔空空間に連行されていったということまでバスコが把握しているのは、
おそらくザンギャック内にバスコに通じた内通者がいるからなのでしょう。
そこから得た情報でギャバンが魔空空間に捕らわれていることは掴んだバスコですが、
あの処刑場の出来事を見ただけで、ごく短時間のうちにそこまで的確な情報を掴むことが出来ているということは、
大前提としてバスコが魔空空間のことやアシュラーダの正体などについて、
もともと予備知識があったからだと思われます。

どうしてバスコがそれらを知っているのかという点も問題ではありますが、
それよりもここでまず問題なのはアシュラーダです。
アシュラーダがどうしてギャバンを殺さずに生け捕りにしたのかということも疑問ですが、
それ以前にどうしてアシュラーダがオリジナルの魔空空間に行くことが出来るのか謎です。

また、小規模の魔空空間にしても地軸転換装置を作動させるだけで発生するものではない。
地軸転換装置だけではダメなのであって、そこにドン・ホラーのようなマクーの超能力者のパワーが加わってこそ
魔空空間は発生させることが出来るのです。
今回ブートレグに地軸転換装置を内蔵していたとしても、それだけでは魔空空間は発生しないはずなのに、
どうして魔空空間は発生したのか?
いや、そもそも三十数年前にギャバンがドン・ホラーを倒してマクーが滅びた時に魔空空間も消滅したはずなのです。
だからこそギャバンは処刑場で突然に魔空空間が発生した時、あれほど驚愕していたのです。

このように謎だらけなのですが、
そのあたりの謎は再び場面をギガントホースの方に戻してアシュラーダの言葉を聞くことで解けていきます。

ギガントホースでは、アクドス・ギルに今回の作戦に対する真意を問い質されたアシュラーダが口を開きます。
「ご存知の通り、マクーがギャバンに滅ぼされ、魔空空間は縮小しました・・・」と、
アシュラーダはいきなり魔空空間に関する説明を始めます。
ザンギャックに情報提供者を持つバスコがアシュラーダが魔空空間を扱うことが出来るという情報を
得ているぐらいですから、当然ザンギャック軍の中枢であるこのギガントホースの司令室にいる面々は
アシュラーダが魔空空間を操る能力を持っていることは皆知っています。
しかし、今回の作戦をどうするつもりなのかという皇帝の問いかけであるのに、
いきなり何の関係も無い魔空空間の講釈を始めるとはいったいどういうつもりなのかと、
ダイランドーなどは呆れた様子です。

ただ、ここでアシュラーダは看過できない発言をしています。
ギャバンがマクーを倒した時に魔空空間は消滅したのではなく、縮小しただけだというのです。
そして、そのことはこの場にいるザンギャック首脳陣は皆知っているようです。
どうやら単にアシュラーダが魔空空間を作り出せる特殊な能力を持っていて独自に魔空空間を作ったという話ではなく、
アシュラーダの出入りしている魔空空間はかつてマクーが使っていた魔空空間そのものであるようです。
但し、それはマクー滅亡によって、かなり規模が縮小した残りカスのようなものであるようです。

では、どうしてアシュラーダはマクーの遺した魔空空間を受け継いでいるのか?
そもそもマクー滅亡時に魔空空間が完全に消滅しなかったのは何故なのか?
その答えとなる言葉をアシュラーダは言います。
アシュラーダはアクドス・ギルに向かって
「しかし、私はマクーのボスであるドン・ホラーの血を受け継いでおります!」と言って、自分の胸を軽く叩きました。

これを聞いてダイランドーは「んん?」と驚いてアシュラーダの方を振り向き、
アシュラーダの後ろに控えていたインサーンも「うっ?」と意外そうに呻いて思わず一歩前に踏み出します。
皆、アシュラーダの意外な発言に驚いているようなのですが、
その中でアクドス・ギルだけは落ち着いた態度で右手で左手の手首を軽く叩くと、
そういえばそうだったと思い出したように「・・・おお〜・・・」と低く感嘆の声を漏らします。
どうもアクドス・ギルだけはアシュラーダがドン・ホラーの血を受け継いでいることは知っていたようです。

アシュラーダもアクドス・ギルがそのことを知っていることを前提に、アクドス・ギルに向けて発言しているのであり、
アシュラーダがドン・ホラーの血を受け継いでいるということは、
アシュラーダとアクドス・ギルの2人だけが知る秘密であったようです。
そして、この2人だけに通じる秘密のメインテーマが魔空空間であるところを見ると、
アシュラーダがドン・ホラーの血を受け継いでいることと魔空空間を扱うということが、
アクドス・ギルがアシュラーダを裏仕事に重用しているという待遇に深い関係があるようです。

しかしアシュラーダがあのギャバンの宿敵であったドン・ホラーの血を引いていたとは驚きですが、
つまりはこういうことなのでしょう。
ドン・ホラーがギャバンによって倒されて宇宙犯罪組織マクーが滅びた三十数年前、
魔空空間の一部は消滅せずに残った。
それはドン・ホラーの魔空空間を発生させる能力を受け継いだ者が秘かに生き残っていたからであり、
それがアシュラーダだったのでしょう。

アシュラーダがドン・ホラーの特殊な超能力を受け継いでいたのは、
ドン・ホラーの血統を受け継ぐ者だったからであり、
普通に考えればアシュラーダはドン・ホラーの息子だと思われます。

1982年の「宇宙刑事ギャバン」のTV本編においては
ドン・ホラーの息子としてはサン・ドルバというキャラが登場しており、
このサン・ドルバは宇宙犯罪組織マクーの首領の後継者として期待されていた幹部でしたが、
物語終盤でギャバンによって倒されました。
しかし当然ながらアシュラーダなどというキャラは登場していません。

そもそもアシュラーダの年齢設定などもよく分からないのですが、あまり若い怪人ではないようですから、
三十数年前のマクー壊滅時点で、兄弟であるサン・ドルバ同様に
父が首領を務めるマクーの幹部として活動していてもおかしくなかったはずです。
しかしアシュラーダが登場していないということは、アシュラーダはマクーにおいては重用されてはおらず、
地位が低かったようです。正規の構成員ですらなかったのかもしれません。

ドン・ホラーの息子ともあろうものがどうしてそんな日陰者であったのかというと、
おそらくはサン・ドルバが悪のエリートであったのと対照的にアシュラーダは落ちこぼれであったのでしょう。
それはアシュラーダがサン・ドルバに比べて戦闘力や頭脳などで極端に劣っているとかいう話ではなく、
おそらくはアシュラーダは母親の血統の問題などで、
ドン・ホラーの後継者として相応しい超能力の持ち主とは見なされなかったからなのでしょう。
マクーの後継者は魔女キバを母に持つ血統的な超能力エリートであるサン・ドルバと早くに決定されており、
そうなると邪魔者でしかないアシュラーダはあえて組織の中で冷遇されていたのでしょう。

その結果、ギャバンによってマクーが滅ぼされた時、
ドン・ホラーと共に組織の中枢で幹部をしていたサン・ドルバも倒されたが、
日陰者だったアシュラーダは秘かに生き残った。
そしてアシュラーダはドン・ホラーの魔空空間を発生させ維持する超能力を受け継いでいたが、
やはりその能力は父に比べてかなり劣ったものであったので、
アシュラーダによって維持されて残った魔空空間は
マクー壊滅以前よりもかなり縮小したものとなってしまったのでしょう。
当然、そんな状況ではマクーを再興することなど出来るはずもなく、アシュラーダは途方に暮れていたことでしょう。

その三十数年前のアシュラーダに秘かに接近したのが、
当時宇宙で急速に勢力を拡張させ始めたばかりのザンギャック帝国の皇帝アクドス・ギルであったと思われます。
あるいはアシュラーダの方がアクドス・ギルに自分を売り込んだのかもしれません。
どっちが先にアプローチしたかはともかく、
アクドス・ギルは壊滅した宇宙犯罪組織マクーの首領ドン・ホラーの血を引くために
魔空空間を扱うことが出来るというアシュラーダの特殊な能力に目をつけ、
アシュラーダにザンギャック帝国の裏仕事を担わせることにしたのでしょう。

つまり、いくら絶対的な独裁権力を持つ皇帝といえども、
現実世界において強引な粛清や暗殺などで邪魔者を排除していくとなれば、不満も生じてくるし、
秘密裡にやったとしても何処からか露見する不安も抱えることになるが、
異次元世界である魔空空間に邪魔者を連れ去ってしまえば、
そこは現実世界の法が一切及ばない完全なる無法地帯であり、
相手をどう料理しようがアクドス・ギルの自由です。

帝国が大きくなるにつれて皇帝といえども法に縛られて自由に邪魔者を始末するのが難しくなる。
それがいずれは自分の独裁権力の危機に繋がると考えたアクドス・ギルは、
アシュラーダを自分の直属の最側近である秘密警察局長として抱えることによって
「魔空空間」という反則的な裏技を独占的に確保することにしたのです。

要するにアクドス・ギルが複雑化した宇宙大帝国ザンギャックの中枢で昔と変わらずに独裁権力を維持できているのは、
邪魔者を秘密裏に魔空空間に連れ去り始末するという隠し技があるからだといえます。
アシュラーダはマクー壊滅後、縮小してしまった魔空空間を拠点にして
マクーの再興も果たせないままであったのですが、
そうしてアクドス・ギルに取り入ることによってザンギャック帝国の中で特殊な地位を確保し、
ザンギャックの裏の大幹部として転身を遂げたのでした。

そういうわけなので、ザンギャックの幹部たちはアシュラーダという皇帝の側近の秘密警察局長が
魔空空間を使って裏仕事をしているらしいことや、
アシュラーダが皇帝の命令によってのみ動き、
いつ自分達にもアシュラーダの魔の手が向けられるか分からないということは知らされていましたが、
アクドス・ギルはアシュラーダに関する詳細な情報は帝国の幹部たちにも開示せず、
アシュラーダ自身も神出鬼没で、いつ何処で何をしているのか幹部たちは把握できない状況であったのです。

だからダイランドーもインサーンも、
いきなりアシュラーダがドン・ホラーの血を引いていると告白したのを聞いて仰天したのでした。
もちろんダイランドーもインサーンも昔ザンギャックが宇宙を征する以前に宇宙で悪の限りを尽くしていた
宇宙犯罪組織マクーの話も、その首領であったドン・ホラーのことも概略は聞いています。
マクーが魔空空間を使っていたということも知っていますから、
アシュラーダがマクーの残党なのかもしれないとは何となく思ってもいました。
しかし、ダイランドーもインサーンもアシュラーダがマクーの元首領のドン・ホラーの血を引いていたとは
さすがに思っていなかったようで、このアシュラーダの告白は彼らには驚きであったようです。

一方、アクドス・ギルはアシュラーダがいきなりドン・ホラーの血を引いていると告白したのを聞いて、
そういえばそうだったと思い出して感嘆しました。
つまり、それまでは忘れていたということであり、さほど重要視していた情報ではなかったわけです。
実際、アクドス・ギルから見れば、アシュラーダはドン・ホラーの血を引いているとはいっても、
父には遠く及ばない能力の持ち主であり、
それゆえこうして帝国の裏仕事を命じられて飼われる立場に成り下がっているのですから、
今さらアシュラーダがドン・ホラーの血を引いていることを吹聴したところで大して意味は無いと思えました。

そういう結構どうでもいい話であったので、
アクドス・ギルもアシュラーダがドン・ホラーの血を引いているということ自体、
つい長年の間に忘れていました。
そして、そんなどうでもいい話をいきなり喋り出したアシュラーダを見て、
アクドス・ギルは感嘆しつつ不審にも思いました。
余計な情報を幹部たちに明かすことはアシュラーダという裏幹部の怖さを薄めることに繋がり、
弱点を突きとめられる危険も増す。
あまり賢明なことではないのだが、どうしてアシュラーダともあろう者がいきなり
自分の出自に関する情報を自ら幹部連中を前にして喋り始めたのか、アクドス・ギルにはよく分かりませんでした。

すると、アシュラーダはアクドス・ギルに向かって
「海賊どもの処刑は失敗しましたが・・・私に流れるドン・ホラーの血を活性化させれば魔空空間は拡大します!」と
意外なことを言い出しました。
一瞬、アシュラーダが何の話をしているのかよく分からず、司令室内に困惑した空気が流れ、
「・・・血の活性化とは何だ?」とダイランドーが思わず横から口を挟んでアシュラーダを問い質します。

アクドス・ギルもどうやらアシュラーダの真の狙いが魔空空間の拡大、
つまり自身のドン・ホラーから受け継いだ超能力の活性化であったということは理解しましたが、
ギャバンを魔空空間に連れ去ったことや今後の海賊退治の作戦の展望にその話がどう繋がるのか、
イマイチ分からず首を傾げました。

そんな中、アシュラーダの背後からインサーンだけが納得したように
「憎っくきギャバンを痛めつけてドン・ホラーの血をたぎらせるということね?」と言います。
ダイランドーが驚いてインサーンの方を見ますが、
アシュラーダはアクドス・ギルの方を向いたままインサーンの質問には答えず立ったままです。
が、インサーンは自分の見立てに自信を持っているようです。
インサーンはアシュラーダの話を聞いて、噂に聞いたことのある宇宙犯罪組織マクーの特殊性を思い出したのです。

マクーは高度な科学を駆使していた一方、変に呪術的な側面があり、
怪しげな生贄の儀式なども行っていたということを博識なインサーンは何かの資料で見て知っていました。
そして、おそらく二万六千年にも及んだ長大な歴史を持つマクーの原初の姿はその呪術的な組織であり、
魔空空間を発生させる特殊な超能力のパワーの源もそうした呪術的な何らかのパワーだったのだろうと
インサーンは想像していたのです。
それがアシュラーダの言う「血の活性化」というものなのだろうとインサーンは思い、
そう考えると今回のアシュラーダの行動は全て辻褄が合うと納得したのです。
つまり、アシュラーダはギャバンを生贄として苦しめて殺すことによって呪術的なパワーを得て、
魔空空間を発生させる能力を強化しようとしているのです。

では、どうして生贄はギャバンである必要があるのか?
それについてはインサーンはギャバンがアシュラーダにとっては父であるドン・ホラーの仇なので、
ギャバンを生贄とすることで、アシュラーダはより興奮して呪術的効果が高まり、
ドン・ホラーから受け継いだ血を源とした超能力が活性化するのだろうと想像しました。
しかし実際のところ、それはアシュラーダの内心とは微妙にズレがありました。
そのあたりの微妙なニュアンスの違いを感じて、アシュラーダはインサーンの言葉に無反応であったのです。

アシュラーダは亡き父のドン・ホラーに対して屈折した想いを抱えていました。
血統的な理由で亡き父によって全く自分は期待されず低い評価を下され冷遇されてきた。
自分は出来の悪い不肖の息子である。
そうしたコンプレックスがアシュラーダの心を生涯、萎縮させ続けていました。
ところが少し前に皇帝アクドス・ギルの命令で宇宙警察総裁ウィーバルを殺害して
ウィーバルになりすまして宇宙警察を秘かに乗っ取るという作戦を実行したことによって、
アシュラーダは奇しくも自分の父を倒した組織である宇宙警察内部に深く潜入することになり、
父を倒した伝説の宇宙刑事ギャバンにも直接接する機会を何度か得ました。

その時アシュラーダは異様な血の昂ぶりを覚えたのでした。
それは恨みというよりは、父を倒したギャバンを倒すことによって自分は父を超えることが出来るのではないかという、
長年の父へのコンプレックスが解消される圧倒的な解放感であったといえます。
そんな想像をしただけでアシュラーダの心は今までにないほどに昂ぶり、
その結果、自身の魔空空間を生成する能力が僅かながら向上したことに気付いたアシュラーダは、
自分の超能力の小ささの原因は血統の劣位によるものではなく、
父に対するコンプレックスだったのではないかと考えたのでした。

ならばギャバンを倒して父を超えたと実感することが出来れば、
自分は亡き父へのコンプレックスから解放されて、
本来持っている強大な超能力を発揮して
父のものを超える広大な魔空空間を支配することが出来るのではないだろうかとアシュラーダは考え、
その効果を最大限に発揮するためには、
ギャバンを痛めつけながらマクーの風習に則った生贄の儀式に捧げて
超能力の活性化を図ろうと企むようになりました。

しかし、そのためにはギャバンに勝たねばならないが、
アシュラーダにはギャバンに勝つ絶対的自信は持てませんでした。
そこでアシュラーダはウィーバルになりすましているのを利用して
宇宙警察内部のギャバンの戦闘力に関する極秘データを盗み出して、
ザンギャックの機械兵士の製造ノウハウを使い、
更に戦闘を有利にするための魔空空間を新たに発生させる地軸転換装置という
マクーの遺産ともいえる技術も組み込んで、
ギャバンを超える力を持つ最強戦士であるギャバン・ブートレグを開発したのでした。

そうしてブートレグが出来上がり、いよいよ上手い口実でギャバンを誘い出して
罠にかけようと思っていたアシュラーダは、ちょうど別件で立ち寄った地球で
皇帝アクドス・ギルから海賊退治のために宇宙警察の刑事を使えないものかと訊ねられ、
これはギャバンをおびき出す格好の口実となると思ったのでした。
そうしてギャバンに至急地球に来て海賊マーベラス一味を逮捕するよう命じると同時に
バード星の宇宙警察本部から秘かにブートレグを地球に送らせたアシュラーダは、
ギャバンから海賊の処刑に立ち会ってほしい旨を要請されると、
その場でブートレグにギャバンを襲わせようと考えて、
指定した処刑場の体育館にブートレグと大量のゴーミン達を忍ばせていたのでした。

そういうわけで、まさかギャバンが自分の正体に気付いて逆に罠を仕掛けてくるとは
予想していなかったアシュラーダは思わず不覚をとってマーベラス一味を取り逃がしてしまいましたが、
ブートレグを忍ばせていたお蔭でギャバンだけは捕えて魔空空間に連れ去ることに成功したのでした。

しかしアシュラーダにとってはギャバンこそが自分の能力向上のための本命であり、
マーベラス一味などは実際どうでもよかった。
だからマーベラス一味を捕えるよりもギャバンを捕えることの方を優先したのです。
だがアクドス・ギルにとってのこの作戦の本命のターゲットはあくまでマーベラス一味のはずです。
それをアシュラーダが優先しなかったというのは大きな問題です。

アクドス・ギルもアシュラーダやインサーンの説明を聞いて、
アシュラーダが何を考えてギャバンを生け捕りにしたのか大体理解しました。
アシュラーダは魔空空間を扱う能力を向上させて魔空空間を拡大することを目指しており、
そのためにはギャバンを捕える必要があり、
そのためにアシュラーダは前もってブートレグという機械戦士まで開発していた。
そういうことは分かりました。
しかしアクドス・ギルにとって解せないのは、それを自分の命じた海賊退治よりもアシュラーダが優先させたことと、
こうした魔空空間拡大計画をこれまでアシュラーダがアクドス・ギルにも秘密で進めていたということです。
それはアシュラーダが何か腹に一物あるようにも思わせるものがあります。

もともとアシュラーダがアクドス・ギルに従っているのは、その魔空空間を扱う能力が中途半端に低いゆえでした。
ならばもしアシュラーダの魔空空間を扱う能力が飛躍的に上昇すれば、
アシュラーダはアクドス・ギルの庇護下を離れて、
完全復活した魔空空間を拠点として独自にマクーを再興しようとするかもしれない。
アクドス・ギルはふとそんな疑念を抱きました。

いや実際、アシュラーダは父を超えるためにマクー再興まで視野に入れており、
それは皇帝アクドス・ギルにとってはあまり歓迎すべき事態でないことも察しています。
アシュラーダとしてはアクドス・ギルに反逆するという意識まではないが、
これまで帝国の暗部を知りすぎてきた自分が帝国を離れて独自の動きをすること自体、
皇帝の不興を買うことは予想していました。
だからアシュラーダとしては自分の本心をアクドス・ギルに悟られないように慎重に行動せねばならなかったのだが、
ギャバンに罠に嵌められて思わず少し焦ってしまい、ギャバンという本命の獲物を目の前にして、
ついギャバンに気をとられてマーベラス一味を取り逃がすという失態を犯してしまい、
そのことを追及されるのは必定という展開になってしまった。

そこでアシュラーダは自分の野心のために魔空空間を拡大させようとしているのではなく、
あくまでアクドス・ギルの命令を遂行し帝国の威信を高めるために
魔空空間を拡大させようとしているのだというポーズをとる必要があり、
そのための理屈も用意してこの場に臨んでいました。

が、アシュラーダがその核心部分をいよいよ語ろうかとした時、
口を挟んできたインサーンがそのまま艦橋の窓から見える青い地球の方に向かいながら
「そして魔空空間が拡大すれば・・・地球を丸ごと包み込むことさえ出来る・・・」と、
わざわざアシュラーダの言おうとしていたことを言ってくれたので、
ありがたいと思ったアシュラーダは思わずインサーンの方に振り向いて「その通りです・・・!」と答えたのでした。

つまり、ギャバンを生贄とすることでアシュラーダの魔空空間を作り出す能力が強くなれば、
地球を丸ごと魔空空間で包み込むことさえも可能となり、
それがザンギャック帝国にとって有益なのだとインサーンは言っているのです。
何故なら魔空空間ではその空間を支配する邪悪な勢力の側、すなわちザンギャック側の戦闘力は3倍増しになるので、
より地球侵略が容易になるからです。
もちろんマーベラス一味も簡単に倒せるようになるであろうし、他の地球人たちの抵抗も簡単に抑え込める。
そうなれば本星から呼び寄せる大艦隊も早々に地球侵略を終えて本来の担当地域に帰らせることが出来るし、
呼び寄せる必要すら無くなるかもしれない。
それは帝国の宇宙支配体制にとっては有益なことでした。

才気溢れるインサーンは一瞬でそこまでアシュラーダの意図を読み切って、
得意げにその作戦意図を披露したわけですが、
それはあくまでインサーンのようにアシュラーダも帝国に絶対的に無邪気な忠誠を誓っていると
仮定した上での想定でしかありません。
実際はアシュラーダは現在は父を超えてマクーを再興しようという野心に憑りつかれつつあり、
インサーンの言ったこのような理屈はアシュラーダが表面的に取り繕うために用意していた言い訳に過ぎないのですが、
アシュラーダとしては思わぬところから先回りして自分に賛同してくれる者が現れて助かりました。

それで内心ほくそ笑んでインサーンに同意したアシュラーダですが、
もちろん自分の遠大な野望は秘めておきつつも、
当面の問題としてギャバンを生贄として魔空空間を拡大させることに成功すれば
アシュラーダは本当に地球全体を魔空空間で包み込んでアクドス・ギルの地球侵略をサポートし、
なおかつマーベラス一味も血祭りに上げるつもりではあります。
だから別にインサーンの意見に同意したアシュラーダの言葉に嘘があるわけではない。

それを見てアクドス・ギルも、今まで内密に計画を進めていたアシュラーダの態度に不透明な部分を認めつつも、
一応はアシュラーダを信用して今回の作戦を継続させることにしたのでした。
まぁアクドス・ギルとしては、もし万が一アシュラーダが帝国に反逆して魔空空間でマクーを再興したとしても、
現実世界をしっかりザンギャックが抑えている限りは
アシュラーダなど恐れるには足りないという考えはあったといえます。

さて一方、地上の某所にある公園では、
さっきのシーンで見たようにバスコがマーベラス達6人に対して魔空空間のことを説明しているわけですが、
ここでギガントホースのシーンを挟んだからといって、
ギガントホース内でアシュラーダ達が話していた内容と同じことを
バスコがマーベラス達に説明していたというわけではありません。

そもそもアシュラーダがドン・ホラーの血を引いていることや、
ギャバンを生贄にすることで魔空空間を拡大させようとしていることなどはバスコは一切知りませんし、
興味すらありません。
ただバスコはマクーや魔空空間について一定の知識を持っており、
アシュラーダが魔空空間を扱う特殊能力を持っていることは把握しているようです。

バスコもザンギャックと一時期手を組んでいたわけですから
アシュラーダの存在を小耳に挟んだこともあるのかもしれませんが、
それにしても基本的には部外者ですから、
もともとバスコが魔空空間に興味があったからこそアシュラーダの存在も知るようになったと考えた方が自然でしょう。

ただマーベラス一味の面々がみんな揃って魔空空間というものを知らない様子を見る限り、
三十数年前に滅んだマクーの使っていた「魔空空間」というものは
一般的な宇宙の人々の間ではあまり知られていないようです。
つまり、アシュラーダのような者を抱えているザンギャック帝国の幹部連中でもない限り
「魔空空間」などはおよそ縁が薄く、よほどの興味が無ければ知ることもない事象であるようなのです。

どうしてそんなものにバスコが興味を持つようになったのか不明ですが、
バスコも魔空空間についてはさっきマーベラス達に言ったような
「マクーによって作られた邪悪なエネルギーに満ちた亜空間」という知識以外は詳細なことは知らないようです。
つまり「魔空空間」というものを何か根本的に研究しているという感じではない。
「魔空空間」や「マクー」そのものはバスコの興味の対象ではないのです。

バスコの興味の対象はむしろアシュラーダのようにも見えます。
確かにバスコはアシュラーダを「厄介な奴」と呼んでいましたから、
アシュラーダがザンギャック帝国の秘密警察局長であり、
ザンギャックの不利益になる者を始末する闇の執行人のような存在だということは知っているようです。
つまりバスコのようなザンギャックを裏切った反逆者から見ればアシュラーダは天敵のような存在であり、
マーベラス一味を始末するためとはいえ、アシュラーダのような奴が地球にウロウロしているような状況では
バスコとしても安穏とはしておれず、
せっかく「宇宙最大のお宝」を目の前にしながら行動の自由が制限されそうで鬱陶しく思っていたのでした。

ザンギャックの大幹部であるアシュラーダですが、ダマラスほどの強さではない。
バスコが戦っても勝てる可能性は十分にありましたが、
アシュラーダは謎めいた魔空空間を操る能力を駆使しますので
バスコとしても安全策をとって勝負は避けたいと思っていました。
だいいち、お宝探しに関係無く戦ったりすること自体、バスコにとっては全く無駄なことであり、
忌避すべきことでした。

つまり言い換えれば、アシュラーダもまたバスコが真に興味を持つような対象ではない。
バスコがアシュラーダという存在を知るようになったきっかけ自体が、
別の物に興味を持った結果だったと思われます。

高台の上でマーベラス達に背を向けたまま、
バスコは魔空空間が邪悪なエネルギーに満ちた亜空間だと説明した上で、ニヤニヤして
「その魔空空間にある宇宙最悪の刑務所・・・魔空監獄の最上階に・・・ギャバンはぶち込まれてるんだってさぁ!」と
言いながら振り向いてマーベラス達を見下ろしました。

もともとはバスコはギャバンやアシュラーダの動向など何も知らずにマーベラス達を観察していただけでした。
そこに突然ギャバンが現れてマーベラス達を逮捕して連れ去り、
それを怪しんだバスコはギャバンを尾行し、処刑場に辿り着いたところで例の騒動が起きて、
バスコが隠れて見ている目の前でウィーバルに化けていたアシュラーダが正体を現して
ギャバンを謎の空間に引っ張り込んで姿を消した。
それがほんの数時間前の出来事です。
それなのにバスコはギャバンの閉じ込められている場所まで既に探り当てています。
ザンギャック軍内部にバスコへの内通者がいるにしても、これは情報を特定するのが早すぎます。

おそらくバスコは最初から「魔空監獄」という場所がアシュラーダと関係があることを知っていて、
ギャバンが連れていかれた場所はそこだという前提で、
それについての確認作業をするだけであったのではないでしょうか。

つまりバスコはもともと魔空空間に「魔空監獄」という
捕えた者をぶち込むザンギャック御用達の収容施設があることを知っていたのです。
いや、そもそもバスコは最初に「魔空監獄」という場所に興味を持ち、
それについて調べていく過程で、それが「魔空空間」という亜空間に存在していることや、
魔空空間がかつてマクーが作り出した亜空間であるということを知ったのではないかと思えてきます。
また、アシュラーダという怪人の存在も、バスコは「魔空監獄」の管理者が誰なのか調べていく過程で
知ることになったのでしょう。

どうしてバスコがそんなに「魔空監獄」という場所に興味を持ったのか?
いや、興味を持ったのであろうと推測できるのかというと、
それはバスコが「魔空監獄」が「宇宙最悪の刑務所」であることを知っており、
しかもここでそれを強調して言っているからです。

バスコは「宇宙最大のお宝」に異常に執着しており、
それでいて、どうやらその宝の正体もよく知らないように見受けられます。
それなのに仲間であるアカレッドやマーベラスをザンギャックに売ってまでも
「宇宙最大のお宝」を独り占めしようとした。
何故なのかとアカレッドに糺された時、
バスコは「宇宙最大の宝だから独り占めしたくなる」という人を喰った返答をしました。
しかし今となってはあれは冗談なのではなく、バスコの本心だったのではないかと思います。

バスコは宝の中身などどうでもいいのです。
とにかく宇宙で最も価値のあるものを自分一人だけのものにして、
自分を宇宙で唯一最高の価値のある存在としたい、そういう欲望の虜になっているのです。
だから「宇宙最大のお宝」を手に入れようとし、独り占めしようとしたのです。

そんなバスコはとにかく「宇宙で一番」というものに惹かれ、挑みたくなるようなのです。
そういうわけで「宇宙最悪の刑務所」という異名を持つ「魔空監獄」というものの存在をふとしたことで知ったバスコは、
それに挑んで勝利することで自分が宇宙で最高の価値を得ることになるのではないかと思って興味を持ち、
いろいろと調べた時期があったのではないかと思えます。
その結果、ザンギャックの秘密警察局長のアシュラーダがそこを管理していることや、
それが魔空空間という昔マクーの作った亜空間に存在していることも知るようになったのでしょう。

それはおそらくバスコが「宇宙最大のお宝」に惹かれるようになった以前のことであり、
やがて「宇宙最大のお宝」を手に入れることに夢中となったバスコは「魔空監獄」には興味を失うようになり、
そのことは記憶の片隅に追いやっていたようです。
ところが今回、バスコの目の前に突然アシュラーダが出現してギャバンを謎の空間に引っ張り込んで姿を消した。
それを見てバスコはこれが例の魔空空間であり、
おそらくアシュラーダはギャバンを魔空監獄に連れていったのだろうと想像しました。

どうしてアシュラーダがそんなことをしたのかバスコにはさっぱり分かりませんでしたし、
別に知りたくもありませんでした。
バスコがそこで考えたことは、アシュラーダの存在が自分の地球での活動の邪魔であることと、
もしギャバンが魔空監獄に連れ去られたのならば
マーベラス達を罠に嵌めることが出来るかもしれないということでした。

上手くいけばマーベラス達とアシュラーダを相討ちさせて、
その間に自分は漁夫の利を得ることが出来るかもしれないと思い、
バスコはさっそくザンギャック内部の自分に通じたスパイを使って
アシュラーダがギャバンを魔空監獄に連行したのかどうかを確認したのでした。
すると、やはりバスコの予想通り、
アシュラーダはギャバンを魔空監獄の最上階に閉じ込めたようだと判明し、
バスコは大喜びでマーベラスにそれを教えるためにこうして呼び出したのでした。

しかし、相手のマーベラスはバスコからそのことを知らされても
「・・・宇宙最悪の・・・魔空監獄・・・?」と険しい顔で呟いただけで、
どうも「魔空監獄」などという場所のことは知らないようです。
まぁ「魔空空間」のことさえ知らなかったのですから、「魔空監獄」を知らなくても当然なのかもしれません。
ただ、マーベラスの表情は決して単に知らない場所のことを聞かされて驚いたというような素っ頓狂なものではなく、
それなりにバスコの言葉が心に響いている様子です。
しかも「宇宙最悪」というフレーズをわざわざ呟いているあたり、
どうもマーベラスもまた「宇宙最悪」という言葉の響きに心動かされるものがあるようなのです。

そうしたマーベラスの心の僅かな揺れを見透かしたようにバスコは
「そ!なんたって出来てから2万6千年間、1人も脱獄されたことがないっていう死の迷宮だからねぇ・・・」と
楽しげに煽るように言います。
頼んでもいないのにやけに詳しく魔空監獄のことを教えてくれるバスコの態度は不可解であり、
そもそもそんな謎の監獄についてやけに具体的な情報まで知っていること自体が不自然なのですが、
マーベラスはじっと黙って俯いてバスコの言葉を聞いています。
普通の人間ならばそんな物騒な監獄の話は聞きたくもないというところでしょうが、
マーベラスは明らかにバスコの話に心動かされてしまっており、
それをバスコに悟られまいとして耐えているように見えます。

バスコは明らかにマーベラスを煽っているのです。
そのことはマーベラスにもようやく分かりました。
ギャバンが魔空監獄に捕らわれていると聞かされればマーベラスはきっとそこに行こうとするだろうと
バスコは読んでおり、わざとその情報を教えているのです。
つまり、マーベラス達を魔空監獄に行かせることがバスコの目的なのであり、
それがバスコの利益に繋がるということなのです。

バスコが自分に何のメリットも無く単なる親切心でギャバンに関する情報をマーベラス達に教えるわけはない。
最初は見返りを要求するのかと思ったがそういうわけではなかった。
だが見返りなど必要無かったのです。
この情報を教えてマーベラス達が魔空監獄に行ってくれれば、それがそのままバスコのメリットになるからです。

バスコはマーベラス達を煽って魔空監獄に向かわせて、
その留守にガレオンが手薄になったところを狙って、
マーベラス達の集めた29個の「大いなる力」の収められたレンジャーキーごとガレオンを奪おうとしているのです。

いや、いっそバスコはマーベラス達が魔空監獄で戦って死んでくれればいいと思っています。
自分の持つ5つ以外の「大いなる力」を見つけ出してくれた以上、
もはやバスコにとってマーベラス達を生かしておく意味など無い。
さっさと殺して全てを奪うべき対象でしかありませんが、
かといって自分でマーベラス達を殺すのはなかなか骨が折れそうです。
いっそ魔空監獄に挑んで勝手に死んでくれればそれに越したことはない。

まぁ現実空間で戦えばマーベラス達6人ならばアシュラーダに簡単に負けはしないのでしょうけれど、
とにかく魔空監獄は魔空空間にあるわけで、そこではザンギャック側は3倍に強化されます。
だからマーベラス達はそこに戦いに行くとなるとかなり危険なことになるわけです。

とりあえずバスコにとって最高にハッピーな結末は、
魔空監獄でマーベラス達とアシュラーダが相討ちで両方死んでくれることでした。
ただそこまで最高の結末にならないとしても、
マーベラス達とアシュラーダのどちらかが死んでくれれば、どっちに転んでもいいわけで、
両者が魔空空間で戦っている間にガレオンを奪うことは容易だとも思えました。
だからバスコはわざとギャバンが魔空監獄に捕らわれたという情報を確認してマーベラス達に教えているのです。

そうしたバスコの邪悪な意図、
マーベラス達を魔空監獄に行かせて、その隙を突いて「大いなる力」を船ごと奪おうとしているという
ズルい考えはマーベラスだけではなく、ジョー達他の仲間5人も気付いて、
キッとしてバスコを睨みつけます。
それぐらいバスコの態度はミエミエでした。
普通ならこれぐらい罠であることがミエミエであれば誰も引っ掛かるとは思えない。

いや、バスコ自身もこんなミエミエの罠でマーベラス達を騙して
魔空監獄へ行かせることなど出来ないことは最初から分かっています。
だからマーベラス達を騙せるとは思っていないし、騙そうという意思すらない。
マーベラス達が魔空監獄に行かなかったらそれはそれでいいのです。
その場合はまた別の作戦を考えればいいだけのことです。
そういうわけでバスコは真面目に騙そうという気すら無く、とことんふざけた態度で
「つまり・・・そこに行くってことは死にに行くってこと!」と腹をかかえてせせら笑い、
マーベラスに向かって柵から身を乗り出して「だからマベちゃん!絶対行っちゃいけないよぉ〜!?」と
悪戯っ子のように忠告にならない忠告をします。

ここまで罠であることが明白なのも珍しい。
しかし、それでもバスコはマーベラスならば、こんなミエミエの罠に嵌ってくれるのではないかと期待しています。
バスコも別にマーベラス達をからかって遊ぶためにわざわざ呼び出したわけではありません。
これでも成算があるのです。
成算があるからこそ、平然とふざけた態度をとっているのです。

つまり、マーベラスならば
この「宇宙最悪の刑務所」や「今まで1人も脱獄したことがない」というような煽りを受ければ
心動かされるはずだという妙な確信がバスコにはある。
何故ならバスコ自身がそうしたものに心動かされる傾向が強く、
バスコはマーベラスもきっと自分と同類なのだろうと思っているからです。

どうして同類なのかというと、
マーベラスもバスコも「宇宙最大のお宝」を本気で手に入れようとしている似た者同士だからです。
少なくともバスコはそう思っている。
「宇宙最大のお宝」に惹かれる自分が「宇宙最悪の刑務所」に挑戦することにかつて惹かれたのと同じように、
「宇宙最大のお宝」に心惹かれているマーベラスだって
「宇宙最悪の刑務所」へ挑んでみたくなるに違いないし、
「脱獄不可能監獄」という不可能への挑戦に惹きつけられる気持ちを抑えがたくなるはずだと
バスコは読んでいるのです。

もちろん現在は「宇宙最大のお宝」に夢中になっているバスコ自身が
「宇宙最悪の刑務所」への興味を抑制することに成功しているのと同様、
「宇宙最大のお宝」という確固とした目標を持っているマーベラスもまた、
そのお宝を目前にして魔空監獄などに挑んでいる場合ではないと思って自制することは出来るはずです。

しかし魔空監獄に挑む動機が明確には存在しないバスコとは違い、
マーベラスには魔空監獄に挑む動機が他に明確に存在するのだとバスコは思っています。
それがギャバンでした。
あの処刑場の脱出直前にマーベラスがギャバンを見つめて明らかにおかしな様子であったことに
バスコは敏感に気付いていました。
具体的な事情はよく分からないが、マーベラスとギャバンの間に何か特別な関係があるのだと察知したバスコは、
ギャバンの危機を救うためならばマーベラスは魔空監獄に挑むという選択もするのではないかと思いました。

いや、正確に言えば、ギャバン救出という大義名分で自分の理性を抑え込んで、
不可能への挑戦という自分の欲求を満足させることもマーベラスの場合は有り得るということを
バスコは感じ取ったのでした。
それが自分やマーベラスという人種、すなわち「海賊」の本性なのだと見切っているのです。

だからギャバンがアシュラーダに連れ去られたのを目撃した後、
バスコはきっとギャバンが魔空監獄に連行されたのだと見て、
これはマーベラスを煽って動かす良い材料になると思い、
急いで情報確認をしてからマーベラスへ連絡してきたのでした。

それにしても、どうしてマーベラスにしてもバスコにしても
「宇宙最大」や「宇宙最悪」などというフレーズに心惹かれて、
そうした宇宙最高の価値を得るという不可能に挑戦したくなってしまうのか?
それは2人の人生がよほど無価値なものであったということの裏返しなのでしょう。

マーベラスもバスコも共にアカレッドに誘われて「赤き海賊団」に入った者ですが、
その「赤き海賊団」というのはどうも仲間の過去に極端に無頓着な集団であったようです。
つまり、メンバー全員が「過去」というものを持たない連中であったと思われます。
実は思念体であったアカレッドを除くとマーベラスとバスコは同じような境遇であった可能性が高い。
つまり自分が何者なのかも分からない天涯孤独の孤児であったマーベラスと、
バスコもほぼ同じ生まれ育ちであったと想像出来ます。

バスコは仲間を売って宝を独り占めしようとして猿1匹だけを連れて宇宙を旅する海賊です。
確かに軽蔑すべきクズですが、バスコからはどうしても孤独なイメージが漂ってきます。
おそらく生来孤独な人間なのでしょう。
つまりバスコもまた天涯孤独の孤児だったのでしょう。

そして、だからこそバスコは不可能に挑戦して宇宙で唯一最高の価値を求めようとしたのです。
それは、天涯孤独で悲しみだけの空虚な人生を送っていたマーベラスが
あの貨物船事件の時に命の恩人に諭された結果、
そんな自分が生きていくためには素晴らしい未来を得るという不可能に挑戦する勇気が必要だと思ったのと
同じことです。

悲しい過去を生きてきた者は、生きていくためには勇気が必要であり、
その勇気は彼らには到底掴めないような素晴らしい目標を目指してこそ湧いてくるのです。
それはあのマーベラス少年だけが悟ったわけではない。
バスコもまた人生の何処かでそのことを悟り、
宇宙最高の価値を得ることを望むことによって湧いてくる勇気を生きる力の源としてきたのです。

そういう意味でマーベラスとバスコは同類といえます。
少なくともバスコはマーベラスを同類と見なしているからこそ、
「宇宙最悪の刑務所」などと言って、それがマーベラスを動かすポイントだと思って煽ってくるわけです。
そしてマーベラス自身、バスコが自分を同類と見なして煽ってきていることを理解しつつ、
それでも確かにバスコの煽りに心が揺れてしまっている自分を感じていました。

そのマーベラスの目から見てバスコという男は最低のクズでした。
自分が裏切られたからそう思うわけではなく、
バスコなどは所詮は刺激的な目標を掲げて、それに挑戦するスリルを生きる糧としているに過ぎない男であり、
その自分1人の欲求を満たすために邪魔な者は仲間といえども排除していくエゴイストでした。
そんなバスコを軽蔑していたマーベラスでしたが、
今こうしてバスコに煽られて心が揺れてしまっている自分もまた所詮は似た者同士なのかもしれないと
マーベラスは思いました。

もちろん全く同じではない。
細かい部分ではだいぶ違うし、何処か根本的なところは全く違うようにも思えるし、
違うようにありたいとマーベラス自身思ってきました。
マーベラスが決して仲間を裏切らないのもバスコとは根本的に違うところです。
だがバスコのようなスリルと冒険を好み邪魔者はぶっ潰していくという生き方は
確かに「海賊」というものの生き方の典型ともいえます。
少なくともマーベラスも「海賊」である以上、そうした基本的な部分はバスコと同じなのであり、
海賊などとは縁遠い人達から見れば自分とバスコなど似たようなもので、
共にクズのように見えるという意味で同類なのだろうとも思えてきました。

そう、例えばギャバンのような宇宙刑事から見れば
自分とバスコなど同じようなものにしか見えないのだろうとマーベラスは思いました。
もし仮にあの貨物船事件の時の命の恩人が宇宙刑事ギャバンだったとするなら、
ギャバンがあの時、少年時代の自分に目指すように諭した「素晴らしい未来」とは、
決して目の前にいる最低男のバスコと同類の姿ではなかったはずだとマーベラスには思えてきました。

すると、バスコの軽薄極まりない下品な態度がまるで自分の鏡に映った悪しき実像のように思えてきて
マーベラスは不快感が込み上げてきて、悪夢を振り払うように「・・・うるせぇっ!!」と怒鳴って
バスコの言葉を遮るのでした。
それを見てバスコはマーベラスが自分の言葉に煽られて迷っている証だと判断し、
作戦は大成功だとばかりに得意げに「ハハハ・・・」と笑うと、
後は結果を楽しみに待つことにして、陽気に「んじゃねっ!」と手を振って、
サリーを連れてその場を立ち去っていきました。

バスコのあまりにもナメた態度に我慢ならない鎧がバスコの後を追いかけようとして一歩前に踏み出しますが、
マーベラスがうなだれたまま動かないのを見てその背後でジョー達4人も動かず、
仕方なく鎧もバスコを追い掛けるのを止めます。

バスコがせっかくノコノコと姿を現しているのですから、
今6人でバスコを襲って5つの「大いなる力」を奪うのが得策だということは皆分かっています。
もちろんマーベラスもそれは分かっているのです。

しかしマーベラスはギャバンが例の自分の原点ともいえる貨物船事件の時の命の恩人なのかもしれないと気付いてから、
自分は目指すべき「素晴らしい未来」を間違ったのかもしれないという気がしており、
海賊として一心不乱に「宇宙最大のお宝」を掴み取るという自分の生き方は、
それはギャバンが望んだ道ではなく、ギャバンが見たら残念に思うかもしれないと感じられて、
海賊としての生き方の信念が揺らいでしまっていました。

特に目の前で自分と同じように「宇宙最大のお宝」を手に入れようとして、
そのために奸計を巡らすバスコの醜悪な姿を見ると、
ますますマーベラスはそうした自己嫌悪とギャバンへの気後れに駆られてしまいました。

そう思うとなりふり構わずバスコを倒して「大いなる力」を奪って
「宇宙最大のお宝」を掴み取るという気力がイマイチ湧いてこず、
そんな精神状態でバスコと戦うこと自体が危険なことのようにも思えて、
マーベラスは立ち去るバスコを項垂れて見送るしか出来なかったのでした。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 07:13 | Comment(0) | 海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月05日

海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE 感想その8

マーベラスを散々煽った末に愉快そうに笑いながらバスコが立ち去った公園で、
マーベラス一味の6人は黙って佇んでいました。
自分達を罠に嵌めようとする、あまりにも露骨なバスコの態度に対して腹立たしさを覚えていた6人でしたが、
バスコがいなくなって少し冷静になってみると、
バスコが言っていたギャバンの状況の方がどうにも心配になってきました。

あの処刑場で自分達が脱出した後、ギャバンはアシュラーダに敗れて捕らわれたようなのです。
あれだけ強かったギャバンが簡単に捕らわれるとは予想外でした。
ギャバンならば勝てないまでも逃れることぐらいは出来るはずだと思っていたのですが、
そのギャバンが簡単に敗れて捕らわれたということは、
アシュラーダには何か更に奥の手があったのだろうと思えました。

それがつまり、バスコの言っていた「魔空空間」という名の
邪悪なエネルギーに満ちた空間なのであろうとマーベラス達は思いました。
あの戦いの場でアシュラーダはその「魔空空間」を出現させてギャバンを引きずり込み、その結果ギャバンは敗れた。
つまり、魔空空間とは邪悪な者にエネルギーを与える空間なのであり、
アシュラーダの一派はそこでは強い戦闘力を発揮するのであろうと推測されます。

そして、その魔空空間内にある「魔空監獄」という刑務所の最上階にギャバンは捕らわれているという。
どうしてギャバンがすぐに殺されずに一旦刑務所にぶち込まれたのか、マーベラス達にはよく分かりませんでした。
まぁおそらくバスコにもそこらへんの理由はよく分かっていなかったのでしょう。
ただ、普通の公式の刑務所ではない以上、刑期を終えれば出所してくるというような類の刑務所ではないのは確かで、
要するに二度と生きて出てくることはない強制収容所のようなものです。
囚人が人道的な扱いを受けるはずもなく、
そんな場所にぶち込まれたギャバンはこのままでは生きて現実世界に戻ることは出来ないであろうし、
その命は今でも既に風前の灯のようなものでしょう。

ならばギャバンを助けに行くかというと、話はそう簡単ではない。
まずそもそも魔空空間への行き方がさっぱり分からない。
アシュラーダは自在に魔空空間というものを作り出せるようだが、マーベラス達にはそんなことは出来ない。

また、バスコもおそらく魔空空間に行く方法は知らないのでしょう。
バスコはマーベラス達を魔空空間へ行かせたいのが本音なのだから、
その方法を知っていれば必ず教えたはずだからです。
けしかけるだけけしかけておいて、行く方法は自分で勝手に調べろというわけです。
なんとも無責任ですが、そういういい加減なところもいかにもバスコらしいと言えます。

そして、もし仮に魔空空間に行く方法が分かったとして、
本当に魔空監獄からギャバンを助け出せるのかという問題があります。
何せ今まで誰も脱獄に成功したことがない監獄だというのですから、よほど警戒は厳重なのでしょうし、
恐るべき罠も待ち構えているのかもしれない。
もちろんそこにはアシュラーダも、あのブートレグも居るはずです。
特にブートレグは、あのマーベラス達が手も足も出ずに完敗したギャバンと同等の戦闘力を備えており、
総合力ではギャバンを超えた実力の持ち主です。

そして、そのブートレグやアシュラーダを含めた魔空監獄の守備隊の連中は全員が
この現実世界よりも大幅に強化されていると予想されるのです。
もしその監獄がこの現実世界にあるならば、シンプルに守備隊の連中を全員ブチ倒してギャバンを助け出せばいい。
しかし、おそらく魔空監獄の守備隊をマーベラス達6人だけで全部倒すことは不可能でしょう。
特に魔空空間でアシュラーダやブートレグに勝つのは至難の業と予想されます。
ギャバンがあえなく敗れているのですから、そう予想しておいた方がいい。

ならば、シンプルな正攻法では脱獄は難しい。何らかの作戦が必要です。
だが、すぐにそんな鮮やかな作戦が思いつくわけもない。
というか、魔空監獄の構造も何も分からないのだから、事前に作戦など立てようもない。
出たとこ勝負で、その場で作戦を捻りだすしかないのだが、何も思いつかない可能性もある。
何とも危なっかしい話です。

更に大きな問題は、もしそのようにしてマーベラス達が魔空監獄に行ってしまったとしたなら、
それはまさにバスコの思うツボだということでした。
必ずバスコはその隙を突いてガレオンを襲ってくるはずです。
もちろんガレオンに乗ったまま魔空空間とやらに行ければ問題は無いのですが、
おそらくそんな都合よくはいかないでしょう。
状況的にあの体育館でアシュラーダはバスコを魔空空間に引き込んだと思われ、
そうなると魔空空間の入り口というのは割と小さめのサイズと想定され、
ガレオンが通過するのは難しいと思えるからです。

ならば宝箱を持ったまま魔空空間に行くという手もあるが、
そんな危なっかしい何が起きるか分からない場所に宝箱を持っていって、
もし紛失するようなことがあれば、それこそ大変です。
やはり宝箱はガレオンに置いておくしかないが、バスコ対策をどうするか、大問題です。

そして根本的な問題として、それほどの諸々の危険を冒してまでして
マーベラス達がギャバンを助けなければいけないものなのかという点があります。

マーベラス一味とギャバンは本来は無関係のはずです。
それどころか昨日の夜、突然初対面のギャバンがマーベラス達を襲ってきて無実の罪で逮捕したのであり、
それは宇宙警察内部のゴタゴタを解決するためにマーベラス達を巻き込んだだけのことでした。
つまりマーベラス達としてはギャバンに迷惑をかけられたようなものです。
ギャバンにマーベラス達への悪意が無かったのは確かですが、
それにしても、そういうことならそういうことで事情を説明してくれてもよかったようなものなのに、
ギャバンは事情を説明せず問答無用でマーベラス達を自分のお芝居に巻き込んだのであり、
そのあたりはやはり刑事として海賊に対しては一線を引いているというか、
あくまで仲間として心を許しているとは言い難いといえます。

やはりギャバンはマーベラス達から見て仲間なのではない。
ギャバンが宇宙警察の正常化のためにザンギャックと戦う正義の人であるということは分かっているし、
行きがかり上、ギャバンがザンギャックによって殺されそうになっていることは
確かにマーベラス一味の面々にとっても気にかかることです。
また、今後も不当逮捕の憂き目に遭わないためにも
マーベラス達にとっても宇宙警察がザンギャックに乗っ取られるという事態も出来れば阻止してほしい。

しかし、あくまで仲間というわけでもないギャバンを救うために、
マーベラス達がこれほどまでにリスクの大きな戦いに自分の命を賭けたり、
自分の夢を台無しにする危険を冒してまで戦いに行く必要まであるのか、
それはさすがに甚だ疑問ではあります。

あの処刑場を脱出した後、そのままバスコからの情報を得たのであれば、
マーベラス一味の面々の結論はだいたいそんなところに落ち着いたことでしょう。
だが、今は少し事情が違っています。
バスコから連絡が来る直前、ジョー達5人はマーベラスから彼の少年時代の出来事を聞かされていたのです。

それによればギャバンはマーベラスの少年時代の命の恩人なのかもしれないのです。
もしそうならば、そのギャバンの命が危ないというのにマーベラスがそれを放っておくというのも具合が悪い。
といっても、ともかく魔空空間に行く方法がまず分からないというところで、
また話は堂々巡りとなって行き詰ってしまいます。

そうしてマーベラス一味の面々が困った顔で黙って突っ立って考え込んでいると、
彼らの背後から公園の中を歩いてくる陽気な声が聞こえてきました。
男が独り言を言っているかのような声でしたが、どうやら誰かに呼びかけながら歩いているようで、
「腰を振って!腰!腰!」などと奇妙なことを言っています。
何だろうかと思わず興味を惹かれてハカセが振り向いて見てみると、
背後になんと大きなジャイアントパンダを連れた、
緑色のシャツの上にウエスタン調の革製のベストを着たワイルドな感じの初老の男が現れたのでした。

男は「パンダちゃん!腰でバランスとってね!いいよいいよ!」と陽気にパンダに話しかけて
自分も腰を振りながら歩いています。
パンダを散歩させている男がパンダに二足歩行のやり方をレクチャーしていたようです。
それだけでもかなり異様なのですが、ハカセが仰天したのはそのことではなく、
そのパンダを連れた初老の男の顔でした。
なんと、その男はさっきバスコが「魔空監獄にぶち込まれた」と言っていた宇宙刑事ギャバンその人だったのです。

ハカセは驚いて「・・・ギャバンさん!?」と叫びます。
なんだかキャラがちょっと変わったようにも思えますが、
その顔は間違いなく数時間前まで処刑場で一緒にいたギャバンでした。
どうしてパンダと一緒にいるのかよく分かりませんが、
とにかくどうにかして魔空監獄から脱出したのだろうと思い、ハカセは安堵しました。

ハカセの素っ頓狂な叫び声に驚いて後ろを振り返ったマーベラス達5人も、
パンダを連れたギャバンの姿を見て「あああ!?」と仰天します。
しかし奇妙なことにパンダを連れたギャバンは、ハカセに名を呼ばれたというのに全く無反応で、
相変わらず夢中でパンダに話しかけています。

その時、ここでマーベラス一味の6人の中でただ1人、鎧だけが他の5人とは異なった反応をします。
ハカセの声に驚いて後ろを振り向いてパンダを連れたギャバンの姿を見た鎧は驚いてその男を指さし
「ああああ!!バトルフィーバーJのバトルケニア!曙四郎さぁん!!」と歓喜の声を上げたのでした。

すると、ハカセの呼びかけには全く無反応だったそのギャバンの顔をした男は
「むっ!」と驚いて鎧の方に振り向き、そこにいる6人組の姿を見ると
「・・・あ!あ!」と一瞬焦ったような表情を浮かべて驚き、
その後嬉しそうに6人の方を指さして「ゴーカイジャーか!?」と声をかけてきました。

唖然とするマーベラス達の中で鎧1人だけは猛烈に感激して
「はい!はい!」とまるで犬が尻尾を振るように男の呼びかけに応えています。
どうやらパンダを連れた男はギャバンなのかと思ったら別人だったようで、
鎧との遣り取りを見る限り、レジェンド戦隊の1つであるバトルフィーバー隊の人らしい。
しかし、やはりどう見てもギャバンにしか見えないと思って
鎧以外の5人は不思議そうにその曙四郎という男の顔をまじまじと見つめました。

本当にギャバンではなく別人なのかということを鎧に確認しようとしてジョーが鎧の方に振り向いた時、
たまたま鎧の背後を通り過ぎようとしていた人の顔が視界に入って、
ジョーは思わず「ああああ!!」と大きな声を上げ、その人を指さしました。
他の5人も今度はいったい何だと思ってジョーの指さす方を一斉に見ると、
そこにはいきなりジョーに大声で指さされてギョッとして立ち止まっている初老の男がいました。
その男の顔を見て、マーベラス達はまたまた仰天します。その男はギャバンだったのです。

しかし、やはり何か妙です。
顔は確かにギャバンなのですが、青い上着の上にエプロンをかけて屋台を引いている。
これもどうもギャバンとは雰囲気が違うようにも思えます。
そして、6人の中で一番観察眼が鋭いルカは、その屋台の男の服装を何処かで見た記憶があると気付き、
瞬時に記憶を辿って、ある人物に思い当たり「あ!」と声を上げました。

その男はジョーの声に驚いて6人の方を見て一瞬ビックリした顔をしましたが、
すぐに「よぉ〜!ゴーカイジャー!」と人懐っこい笑顔を浮かべ、
屋台の取っ手を下ろすと「久しぶり!元気だったか?」と親しげに声をかけてきました。

この屋台の男はゴーカイジャーの面々とは面識があるようですが、
「久しぶり」と言っているということは数時間前に別れたばかりのギャバンではないようです。
男はてっきりゴーカイジャーの面々が自分のことを覚えていて声をかけてきたのだと思って
親しげに言葉を返してきているのですが、
マーベラス達はてっきりギャバンだと思っていたこの男がギャバンではないようだと分かって混乱して、
ギャバン以外にこんな顔の男に今まで会ったことがあっただろうかと唖然としています。

しかし、その中でルカは男の言葉を聞いてますます自分の直感が正しいのではないかと思ってきました。
やはり、この男は以前に黒十字王との戦いの際に突然出現した不思議な白い空間の中で出会った
レジェンド戦士たちの中にいた男ではなかろうかと思ったルカは、
その男を指さして「デンジマンの・・・青の人・・・?」と問いかけました。

その直後、マーベラス達5人と一緒に唖然としてその男の顔を凝視していた鎧が「うおおおお!!」と興奮して駆け出し、
その屋台の男の手を掴んで「感激ですううう!!デンジブルーの青梅大五郎さん!!」と
またもや猛烈に感動して歓喜の声を上げたのでした。

その青梅大五郎と呼ばれた男は一瞬、鎧が何者か分からない様子で「お?」と戸惑いますが、
鎧があまりに懐いてくるので勢いに押されるように「・・・ああ・・・」と握手に応じ、
そこにさっきのパンダの男、つまり曙四郎が近づいてマーベラス達6人に「よろしく!」と挨拶すると、
鎧は今度は曙の方にいきなり抱きつき「こんなところでお会い出来るなんて〜!」と、
まるで家族や恋人と再会したかのように歓喜します。
この鎧の異常に興奮した行動に曙も青梅も思わず苦笑いするしかなく、
2人はマーベラス達の方を見て困った顔をしながら、
互いの姿を見て少し驚いたような素振りも見せますが、とにかく鎧の興奮ぶりに振り回されてしまいます。

この2人、共にギャバンそっくりの顔をしていますが、確かに鎧の言う通り、
パンダを連れていた男は3代目のスーパー戦隊であるバトルフィーバー隊の元バトルケニアこと曙四郎であり、
屋台を引いていた男は4代目のスーパー戦隊である電子戦隊デンジマンの元デンジブルーこと青梅大五郎であり、
2人ともれっきとしたレジェンド戦士、しかもかなり古参の、レジェンド戦士たちの中でも重鎮にあたる戦士です。

2人がギャバンそっくりの顔をしているのは当然で、
曙四郎も青梅大五郎も、当時演じていたオリジナル役者は共に大葉健二氏であり、
ギャバンのオリジナル役者である大葉健二氏と同一人物なのであり、
この場面の曙も青梅もオリジナル役者の大葉氏が1人2役で演じているからです。
ギャバンも含めて3つのキャラともに現在の大葉氏が演じているのですから、顔が同じなのは当たり前です。

つまり大葉氏は1979年に「バトルフィーバーJ」でバトルケニア曙四郎を演じ、
続いて1980年に「電子戦隊デンジマン」でデンジブルー青梅大五郎を演じ、
1982年に「宇宙刑事ギャバン」で主人公ギャバン一条寺烈を演じたわけです。
スーパー戦隊シリーズ初期の頃はシリーズ内外問わず、
同じ役者が異なったヒーローを演じるということは多くありました。
大葉氏も代表的ヒーロー役者でしたから、このように1人で何人ものヒーローキャラを演じていたわけです。

ただ、同じ役者が演じる別々のヒーロー同士が同じ物語の中で競演するということはありませんでした。
まず当時はそういうシーンを自然に見せることは映像技術的に困難でありましたし、
そもそもそれぞれのヒーロー同士は異なった物語世界のキャラであることが大前提だったからです。
逆に、同一世界観の一連の複数の物語の場合は、
さすがにそこで同じ役者が異なったヒーローを演じるということはタブーとなっていたといえます。

ところが、この「海賊戦隊ゴーカイジャー」という作品は、
これまであくまで別々の物語世界という設定となっていたスーパー戦隊シリーズ歴代34作品を
全て同じ物語世界として含んだ世界観の物語なので、
当然、歴代スーパー戦隊の全ヒーローが同時に存在する設定となっています。
となると、同じ大葉健二氏が演じた曙四郎も青梅大五郎も同じ世界に存在するわけですから、
同じ場所で出会って会話することも有り得るわけです。

というか、変身後の姿としてはとっくに第1話のレジェンド大戦の場面でこの両者は競演しています。
いや、この両者だけではなく、アオレンジャー新命明とビッグワン番場壮吉(共に演じたのは宮内明氏)、
ゴーグルブラック黒田官平とダイナブラック星川竜(共に演じたのは春日純一氏)、
チェンジペガサス大空勇馬とドラゴンレンジャー・ブライ(共に演じたのは和泉史郎氏)、
ニンジャレッド・サスケと黒騎士ヒュウガ(共に演じたのは小川晃輝氏)もそれぞれ、
変身後の姿としてならばレジェンド大戦時に同じ場面に登場して競演しています。

また、春映画の「199ヒーロー大決戦」では、
デンジブルー青梅大五郎とリュウレンジャー亮とデカピンク胡堂小梅の3人という
別々の戦隊のヒーロー同士が変身前の姿で競演して1つのシーンを作り上げていました。
「ゴーカイジャー」の物語世界とはそういう世界なのですから、
バトルケニア曙四郎とデンジブルー青梅大五郎が変身前の姿でたまたま出会っても何ら不自然ではないのです。

更にこの冬映画において「ゴーカイジャー」の物語世界に宇宙刑事ギャバンも存在するという設定となった以上、
曙四郎と青梅大五郎とギャバンという、大葉健二氏の演じた3大ヒーローが同時存在して
競演可能な状況となったといえます。
これは「ゴーカイジャー」という特殊な設定の物語世界を作り上げた結果の産物であり、
同時に近年の合成映像技術の進歩の賜物といえます。

その顔はソックリだがあくまで別人の曙四郎と青梅大五郎の2人のレジェンド戦士は、
「ゴーカイジャー」の物語の中には共に既に登場済みです。
まず先ほども言ったように変身後の姿では既に第1話の冒頭のレジェンド大戦の場面で共に登場しています。
このレジェンド大戦はマーベラス達が地球にやって来る数年前、おそらく劇中時間としては2011年の出来事で、
地球を襲ってきたザンギャックの第一次侵略軍を34戦隊が迎え撃って、
戦う力を失うという代償を払って撃退した戦いですが、この時に既に曙と青梅は顔を合わせています。

春映画の「199ヒーロー大決戦」における描写からして、
別々のレジェンド戦隊同士は普段はほとんど交流は無いようなので、
曙と青梅はこのレジェンド大戦時に初対面だった可能性もありますが、
この2人の属した戦隊であるバトルフィーバー隊とデンジマンの場合、
バトルフィーバー隊が1979年、デンジマンがその翌年の1980年に活動した戦隊ですから、
当時から多少は互いに面識があった可能性も大いにあるでしょう。

そして、この「ゴーカイジャー」の物語の中では、
変身前の姿としては、デンジブルー青梅大五郎は春映画「199ヒーロー大決戦」の中で既に登場しており、
この時は主にダイレンジャーの亮やデカレンジャーのウメコらと絡んでいて、
直接マーベラス一味の面々とは会っていませんが、
映画終盤にマーベラス達がレンジャーキーの作り出した不思議な白い空間の中に入り込んだ時に、
そこに他の十数人のレジェンド戦士たちと共にビジョンとして登場し、
マーベラス達に微笑みかけてデンジマンの「大いなる力」を渡しています。

そういうわけで青梅としてはマーベラス一味の面々とは初対面ではないという意識なのでしょうが、
マーベラス達はあまりよく覚えていないようです。
実際、「199ヒーロー大決戦」の5つ後のエピソードにあたる第21話において、
この白い空間に登場したレジェンド戦士の1人である元ボウケンレッドの明石暁が登場した際、
マーベラス達は誰もその顔を覚えていませんでしたから、
いちいちこのレンジャーキー空間で出会った戦士たちの顔は覚えていなかったようです。

一方、バトルケニア曙四郎は第44話に変身前の姿で登場しています。
だが、この時は曙はサンタの扮装をしてルカと鎧の前に一瞬姿を現しただけであり、
あとはマーベラス達を隠れて観察していただけであり、
レジェンド戦士として名乗ってもおらず、素顔も見せておらず、
そのままマーベラス達の留守中のガレオンの宝箱の中のレンジャーキーに直接、
バトルフィーバー隊の「大いなる力」を与えています。

よって、曙から見ればマーベラス達の顔は馴染のあるものですが、マーベラス達は曙の顔は知りません。
だからいきなりマーベラス一味に自分の名を呼ばれて曙は一瞬焦ったのですが、
別に今となっては隠れて彼らを観察する必要も無く、彼らに対して正体を隠す必要も無いので、
にこやかに話しかけてきたわけです。

しかし、このようにマーベラス達は青梅の顔も曙の顔も知らないはずなのに、
どうして鎧は彼らの顔を知っていたのか?
というか、レンジャーキー空間で青梅に出会った時はまだ鎧の加入前であったし、
曙は顔を見せていなかったわけですから、鎧は彼らに会ってはいないはずです。
それなのに鎧がこの2人の顔を見てすぐにその正体が分かったということは、
鎧がもともと2人の顔を知っていたからでしょう。

つまり熱烈なスーパー戦隊ファンである鎧は
もともとデンジブルーとバトルケニアの変身前の顔も名前も知っていたのです。
これまでのエピソードを見る限り、
鎧は必ずしも全てのレジェンド戦士の素顔や名前を知っていたわけではありませんでしたが、
少なくともデンジマンとバトルフィーバー隊に関しては
鎧のような一般の戦隊ファンの間でもその素顔や名前は知られていたようです。

まぁ鎧がマーベラス一味に加わった時点でデンジマンの「大いなる力」は既に獲得済みであったので
鎧のデンジマンに関する知識は役に立つことは無かったのであろうし、
バトルフィーバー隊に関しては国防軍の秘密部隊なので、
顔や名前が分かっていたところで結局は居場所が分からないので鎧にはどうしようもなかったのでしょう。

ただ、おそらく鎧が入手していた青梅や曙の素顔の写真はおそらく三十数年前のものであろうと思われるので、
今よりもかなり若い頃の顔であり、
それを見ていただけで現在の2人の顔を見て即座にその正体を言い当てるのですから、
やはり鎧も大したものではあります。

しかし、ならばどうしてルカは青梅の顔を見てデンジマンのデンジブルーだと気付いたのか?
それはおそらく鎧がマーベラス一味に加入してすぐ、第22話の時に作成した「スーパー戦隊大百科」のお蔭でしょう。
鎧はマーベラス達をスーパー戦隊ファンに洗脳するために
自分の持てる戦隊知識を出し惜しみせずにあの資料を作ったと思われますので、
あの資料のバトルフィーバー隊とデンジマンのページには当然、
鎧の入手していた曙や青梅の素顔の写真も貼ってあったと想像出来ます。
ルカはそれを見て青梅の若い頃の顔を覚えていて、
目の前に現れた屋台の男にその面影を重ね合せることが出来たのでしょう。

といっても鎧のように熱心な戦隊ファンでもないルカが
一瞬で屋台を引く初老の男が青梅であることに気付くことが出来たのは、それだけの理由によるものではないでしょう。
おそらくルカは黒十字王との戦いの時にレンジャーキー空間に現れた十数人のレジェンド戦士たちの印象を覚えていて、
第21話の時にその中にいたはずの明石の正体がすぐに分からなかった反省を踏まえて、
鎧の作った「スーパー戦隊大百科」に載っているレジェンド戦士の変身前の姿と
あのレンジャーキー空間に現れたレジェンド戦士たちの姿形の記憶との照合作業をやっていたのでしょう。

その結果、あのレンジャーキー空間でビジョンとして現れたうちの1人、
青い服にエプロンをかけた初老の男の顔はハッキリとは覚えていないものの、
あの時貰った「大いなる力」のリストやその他の判明しているレジェンド戦士の情報などと照らし合わせて、
更に「スーパー戦隊大百科」に貼ってある若い頃に写真に面影があることから、
どうやらあの青服にエプロンの男はデンジマンのブルーであるようだとルカは当たりをつけていたのでした。
それで今回、あのレンジャーキー空間に現れた時のまんまの格好で青梅が現れたものですから、
ルカはこのギャバンそっくりの顔をした男はもしかしたらデンジマンのブルーなのではなかろうかと閃いたのです。

そうしたら案の定、鎧がその男をデンジブルーだと言い、その男もそれを認めたので、
ルカはやはりそうだったのかと思いつつも、それでも到底信じられないという想いもありました。
何せ、おぼろげにしか顔を覚えていなかったそのデンジブルーの男の素顔をこうしてハッキリと見てみると、
どう見てもギャバンと瓜二つなのです。
しかも、それと同じ顔の人間がこの場にもう1人現れて、
しかもそれもまたレジェンド戦士の1人、バトルケニアの人だという。
こんな奇異なことが現実に起こり得るのだろうかとルカは不審に思いました。

これほど同じ顔の2人の人間を目の前にして平然としてはしゃいでいる鎧の態度も不可解であり、
これは何かの冗談なのではないかという気もしてきます。
いや、ルカだけではなくマーベラス一味の鎧を除く5人全員、
この異様な状況を鎧の仕組んだ悪戯なのではないかと疑っています。

だいたい、1人は変なパンの屋台を引っ張っており、
もう1人はパンダを連れて散歩していて、
その2人が偶然こんな場所でバッタリと出会い、しかもそこにマーベラス一味の6人が居合わせているなんて、
まるでマンガのような展開です。
誰かにかつがれているのではないかと怪しんでも無理もないシチュエーションといえます。

実際、この場面、あまりにもご都合主義的すぎて、
もしかしたら曙と青梅が示し合わせてマーベラス一味に会うためにこの場に現れたようにも解釈できます。
しかし、2人の態度を見る限り、どうもそういうわけではないようで、あくまでたまたまこの場にやって来たようです。
まぁこの場面は深読みする必要は無く、
子供向け映画ならではの、展開を早く分かりやすくするための良い意味でのご都合主義的展開だ
とシンプルに解釈しておいた方がいいでしょう。

青梅が相変わらず前と同じ服を着て屋台を引いているのも、
曙が前と同じパンダを連れて歩いているという一見バカバカしいマンガ的描写も、
再登場する2人のキャラを記号的に表現して、
以前に登場したキャラだと、観客の子供たちに記号的に分かりやすく見せる工夫だといえます。
そもそもギャバンも含めて3人も同じ顔のキャラが登場するわけで、
それぞれに記号的な特徴を持たせなければ区別自体が出来なくなってしまうのですから、
「青梅=アンパン屋台」「曙=パンダ」という記号的な特徴づけは必須といえます。

ちなみに、第44話で曙が連れていたパンダはあの時は着ぐるみであって
中に汀マリアあたりが入っているのではないかと妄想していましたが、
どうやら本物のパンダ(という設定)であったようです。
さすが動物と喋れる男、曙四郎です。

まぁそういうわけで、青梅大五郎と曙四郎は思わぬ場所で再会し、
しかもその場にはマーベラス一味まで居合わせており、
青梅にとっては初対面となる鎧が猛烈に感動してはしゃいでいるわけです。

つい先日の第46話でマーベラス一味がカクレンジャーの「大いなる力」を獲得し、
34戦隊の「大いなる力」が全てレジェンド戦士たちの手を離れて
マーベラス一味あるいはバスコの手許に来たことによって
「宇宙最大のお宝」に向けて大きく前進したことは喜ばしいことではありましたが、
その一方で鎧には一抹の寂しさもあったようです。

鎧にとっては「大いなる力」を集めていく過程で数々のレジェンド戦士たちと出会うことも
大きな楽しみであったようで、それがもうこれで終わりなのかと思うと、秘かに残念な気もしていたようです。
そんなところでいきなり青梅と曙に出会った鎧は、
もうレジェンド戦士と触れ合う機会も無いのかと諦めかけていたので、嬉しさもひとしおであったようです。

それでついついいつも以上に猛烈に感激して興奮状態となってしまった鎧は、
今度は青梅と曙の2人の前で「・・・あの、私ですね!」と言いながら
「ゴオオオオカイ!シルバアアア!」と叫んで例の派手な名乗りポーズをとり、
「・・・をやっております伊狩・・・」と改めて自己紹介しようとします。

変なヤツがいきなり変なことを始めたので半ば呆れたように苦笑しながら青梅と曙は鎧を眺めていましたが、
せっかくの鎧の名乗りは「鎧!」と言って乱入してきたハカセに
耳を掴まれて引っ張られて中止させられてしまいました。
そのまま「あいててて・・・」と耳を引っ張られたままマーベラス達のところに連れていかれた鎧は、
5人の真ん中に放り込まれて「いててて、何?何?」と訳が分からず戸惑います。
せっかくレジェンド戦士2人に挨拶していた途中なのにどうして邪魔されたのかサッパリ分からない鎧ですが、
ハカセをはじめ5人全員、いきなりギャバンと同じ顔をした2人が現れたこの状況を
何かの悪戯なのではないかと疑惑の目を鎧に向けています。

ハカセは青梅と曙に聞こえないように小声で
鎧に「この人達、マジでバトルケニアさんとデンジブルーさんなの?」と問い質します。
鎧を囲んだ他の仲間たちも皆、鎧に疑いの視線を向けていますが、
しかし鎧は自分が疑われているとは微塵も想像していないようでキョトンとして、
いちいち2人の方を指さすハカセの手を失礼だとばかりに何度も叩きます。

どうも鎧は嘘をついているようには見えない。
しかしそれにしてもこの状況はおかしすぎるだろうと思い、
ハカセは「・・・ギャバンさんそっくりじゃん!」とツッコミを入れます。
それを聞いて鎧は「えええ!?ホントですかぁ!?」と逆に仰天しました。
鎧はギャバンに会ったことがないので、青梅と曙がギャバンにそっくりであることをそもそも知らないのです。

その鎧を驚きの反応が本気であるのを見て、
5人も確かにギャバンの顔を知らない鎧がそもそもギャバンのそっくりさんを用意した悪戯など
仕込めるわけがないと気付き、やはりこれは悪戯ではなく、
本当に本物のレジェンド戦士2人なのかもしれないと思いました。

だが、それでもその2人が同じ顔をしているのはやはり変だと思い、
アイムが「・・・そもそも・・・お二人が瓜二つなのも驚きですが・・・?」と鎧に質問するのですが、
鎧は事もなげに「あ、全然違います!」と手を振ると、
並んで立って談笑している青梅と曙の方に駆けだしていき、
青梅の肩に後ろから抱きつき「青梅さんはアンパンの香り!」と言い、
更に曙の肩を掴んで「曙さんはサバンナの香り!」と言い、
陽気に笑って「ハハハ・・・そんなもん、目を瞑ってたって分かりますよ!」と、何やら不条理なことを言います。

確かに香りならば目を瞑っていても分かるでしょうけれど、
どうして鎧が初対面の青梅と曙の香りまで把握しているのか、さっぱり意味が分かりません。
だいたいアンパンの香りはまぁ分かるとして、サバンナの香りとはいったい何なのか?
まぁ要するに醸し出す雰囲気が全然違うということなのでしょうが、
マーベラス達には相変わらず全然2人の区別はつきませんでした。

ただ鎧があまりに自信満々なので、
あるいは宇宙人から見ると微妙な地球人の個人差は分かりにくいだけなのかもしれないとも思えてきました。
例えば日本人から見れば黒人は同じ顔のように見える人が多いが、
黒人同士ではそれらは明確に違う顔に見えるというような感じです。
だから、やはり鎧の言う通り、この2人は似ているようで全然違う他人なのであり、
ギャバンとも本当はそんなに似ていないのかもしれないとマーベラス達にも思えてきました。

更に当の本人の青梅と曙も鎧の言葉を聞いて、
どうやら自分達がよく似ているという話題でマーベラス達が盛り上がっているのだと理解し、
曙が面白そうに「そういや・・・似てるかな?俺たち」と青梅に尋ね、
青梅も「ちょっとだけね!先輩!」とおどけて応じます。
それを見てマーベラス達は、やはり地球人同士ならばこの2人はちゃんと区別がつくぐらいなのだと思いました。
ただまぁ、この青梅と曙の場合、基本的にそれぞれのチーム内ではギャグ担当要員なので、
日常会話の半分ぐらいは冗談だと思った方がよく、あまり大真面目に言動を受け取らない方がいいのですが。

ともかく、そうしてようやく2人が本物のレジェンド戦士だと信じる気になったマーベラス達が見つめる前で、
曙がその似た者同士についての会話の流れでふと思いついたように
「・・・宇宙刑事ギャバンにも、何度か間違われたなぁ・・・!」と懐かしそうに苦笑しました。
すると青梅も少し驚いて、曙に向かって「ああ!俺もです!本人にも一度バッタリ会って・・・!」と告白しました。
一応、曙の方が1年先輩の戦隊なので、青梅は曙に対して敬語のようです。

しかし、ここではそんなことよりも、2人の言った内容の方が重大です。
なんと曙も青梅もギャバンに面識があるようなのです。
しかもこの口ぶりからすると、曙や青梅の年代のヒーロー達の間では
宇宙刑事ギャバンという人物はそれなりに知られた人物であったことが窺えます。

1982年から1983年にかけて宇宙刑事ギャバンが地球に赴任して宇宙犯罪組織マクーと戦っていたということは、
当時既に地球での悪の組織との戦いを終えていたゴレンジャー、ジャッカー電撃隊、バトルフィーバー隊、
デンジマン、サンバルカン、そして現役戦隊としてデスダークとの戦いを繰り広げていたゴーグルファイブなどには
知られていたようです。
一般人にはあまりその存在は知られていなかったギャバンですが、
さすがは地球の平和維持に並々ならぬ興味を持つスーパー戦隊の戦士たちですから、
ギャバンの活動についてもそれなりに把握はしていたようです。

ギャバンそっくりの曙と青梅は当時それぞれ
ギャバンを知る人からギャバンに間違われたという経験があるようで、
青梅は本人にも会ったことがあるといいます。
おそらく曙も懐かしそうにしているところを見ると、当時ギャバンに会ったことはあるのでしょう。
ギャバンがその後も地球と一定の関係を持っていることを考えると、
1983年以降もギャバンと彼らとはちょっとした親交は続いていたのかもしれません。

しかし、そんな事情は知らないマーベラス達は
いきなりレジェンド戦士2人の口からギャバンの名前が飛び出したのでビックリしました。
そもそもマーベラス達6人は昔ギャバンが地球に赴任していたということすら知らないのですから、
地球のスーパー戦隊の戦士が宇宙刑事ギャバンと知り合いであるなど想像もしていなかったのでした。
鎧も驚いて「マ・・・マジですかぁ!?」と叫んで曙と青梅の会話に割って入ります。

しかし曙と青梅の方は久しく地球には来ておらず、最近は現場にもあまり出ていないはずの老刑事ギャバンのことを
マーベラス一味が知っているとは思っていませんから、
ギャバンの話題はあくまで古参レジェンド戦士である2人の間だけで盛り上がる想い出話のつもりで喋っていたのです。
そこにいきなり鎧が激しく食いついてきたので、曙と青梅は不思議そうに鎧を見つめます。

それに対して鎧はちょっと慌てて
「ああ、いやね・・・今ちょうどギャバンさんの話をしてたところなんです!」と説明しました。
曙と青梅は声を揃えて「ええ!?」と驚きました。
どうしてこの若い宇宙海賊たちがギャバンのことを知っており、
「ギャバンさん」などと親しげに呼ぶのか、よく事情が分からなかったのでした。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 16:53 | Comment(1) | 海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月06日

海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE 感想その9

さて、ここで時間は少し飛んで、
マーベラス達が公園で曙と青梅と出会ってからしばらく後、小一時間後ぐらいのことです。
マーベラスは1人である場所に来ていました。
その場所は数時間前にマーベラス達6人が処刑されかかって脱出した体育館でした。
あの命を落としかけた忌まわしい場所へマーベラスは舞い戻ってきたのです。

そこはもう既にザンギャック軍は引き上げており、誰もおらず、
結局用を足さなかった処刑台だけが虚しく放置されたままとなっています。
どうしてまたマーベラスはそんな場所に1人で現れたのか?
ゆっくり歩いて、だだっ広い体育館の真ん中に立ち止まると、
マーベラスは懐から何かを取り出して、手に持ったその物体を真剣な眼差しで見つめます。
それは、バトルケニアとデンジブルーの2つのレンジャーキーでした。

どうしてマーベラスがこの2つのレンジャーキーを手にしてさっきの体育館に1人でやって来ているのか、
それは先ほどの公園の場面の曙と青梅との出会いの後の場面に話を戻さねば説明は出来ません。

公園でマーベラス達とたまたま出会った元バトルケニアの曙四郎と元デンジブルーの青梅大五郎が、
旧知の仲の宇宙刑事ギャバンがマーベラス達と面識があると知って驚いたところで
さっきの公園の場面は終わってしまいましたが、当然その後、話には続きがありました。

マーベラス達は曙と青梅に昨晩ギャバンと出会った後の出来事の顛末を説明し、
曙と青梅の2人はギャバンがザンギャックに捕まって魔空空間にある魔空監獄に連れていかれたと知り、
大いに驚いたのでした。
その会話の際、曙と青梅の2人が「魔空空間」というマーベラス達には聞いたこともない言葉を聞いても
不審そうな様子は見せず、
「魔空空間にギャバンが連れていかれた」という説明を聞いてストレートに深刻な表情を見せたので、
マーベラスは曙と青梅の2人がもしかしたら「魔空空間」について知っているのではないかと思い、
魔空空間への行き方を尋ねてみました。

すると、2人の老戦士は険しい顔をして黙り込みます。
どうやら2人は魔空空間というものを知っているようです。
もちろん曙四郎がバトルケニアとしてエゴスと戦っていた1979年放送の「バトルフィーバーJ」や、
青梅大五郎がデンジブルーとしてベーダー一族と戦っていた1980年放送の「電子戦隊デンジマン」の劇中では
「魔空空間」などというものは一切登場していませんでしたので、
ここで曙と青梅の2人が「魔空空間」を知っているというのは、
この「宇宙刑事ギャバン」の物語世界をも包含した「ゴーカイジャー」の物語世界独自の設定です。

つまり先述したように1982年時点で既に存在していたゴーグルファイブ以前の6戦隊は、
1982年当時、地球においてデスダークの侵攻に対するゴーグルファイブの戦いとは別に秘かに繰り広げられていた
マクーの地球に対する侵略行為と、それに対処している宇宙刑事ギャバンの戦いの実態も把握していたと思われます。

ゴーグルファイブ以外の第一線からは退いた5戦隊も、一応地球の平和に責任を負う立場である以上、
自ら戦うことは控えてはいても、地球において繰り広げられている戦いについての情報収集はしていたと思われます。
マクーの犯罪行為に関しても、あくまでそれに対処する担当は宇宙警察であり、
その地球担当刑事であるギャバンだったのですが、
デンジマンやバトルフィーバー隊もマクーの犯罪行為の手口などはだいたいは把握していたのでしょう。

例えば現実世界でも海の上の犯罪行為は海上保安庁の管轄であり、
麻薬犯罪は厚生労働省の管轄であったりはしますが、
かといって警察がそれらの犯罪の手口などについて無知ということはなく、
ひととおりのことは把握しているのと同じことです。

だからバトルフィーバー隊の曙もデンジマンの青梅も、
マクーの作り出す「魔空空間」というもののメカニズムについても、だいたいのことは把握していたようです。
ただ、彼らは魔空空間に行く方法までは持ち合わせてはいませんでした。
だから魔空空間に行く方法を問われても、確実な方法を答えることは出来ない。

しかし、行く方法が無いのならすぐにそのように答えればいいのですが、
そうではなく深刻な顔で黙り込むということは、行く方法があるということです。
しかも、それは確実な方法というわけではなく、リスクを抱えた方法のようです。
要するに理論的には可能だが、実際に魔空空間に行ってみた実績がある方法ではないということです。

それは当たり前の話で、魔空空間はマクーの滅亡以降は消滅したものだと曙も青梅も信じていたからです。
既に無くなってしまった魔空空間に行く方法を実践したりテストしてみたりする必要は全く無いし、
テスト自体が不可能だったのです。
というより、行く方法を考える必要すら無かったのであり、
曙と青梅は今マーベラス達から魔空空間の実在を聞かされて、即興で行く方法を思いついたに過ぎない。
そんなことでは、そりゃあリスクが高いのは当たり前です。

だから曙と青梅はその危うい方法をマーベラス達に教えるのを躊躇している。
教えたらマーベラス達はその方法を試そうとする可能性が高いと思ったからです。
マーベラス達が魔空空間に行く方法を尋ねてくるということは、
どういう事情なのか詳細は不明だがマーベラス達がギャバンを助けに行こうとしているからだと
曙と青梅の2人は思いました。
だから、その方法を教えたらマーベラス達はその危険な方法を試みる可能性が高い。
それが分かっていて安易にその方法を教えるというのは常識人として躊躇するのは当たり前です。

しかし曙と青梅が躊躇している理由はそれだけではない。
魔空空間の恐ろしさを知っている2人は、マーベラス達がもしギャバンを助けるために魔空空間に行ったりすれば、
仮にこの危険な方法が成功して魔空空間に行けたとしても、
そこでの危険な戦いを勝ち抜いて生きて戻ってくることが出来なくなるのではないかということも危惧しているのです。
それはもちろんマーベラス達のことを単純に心配しているという意味合いもあるが、
やはり34戦隊の力を引き継いでザンギャックの侵略から地球を守って戦ってくれている
マーベラス達ゴーカイジャーの力を失いたくないという意味合いも大きかったといえます。

もちろん曙も青梅も旧知のギャバンの身を案じる気持ちはありますが、
今はそんな私情を優先させている状況ではないと思えました。
現在、地球はザンギャックの侵略を受けており、それを食い止めることが出来ているのは
マーベラス達ゴーカイジャーの存在あってのことであり、
そのマーベラス達に曙のいるバトルフィーバー隊や青梅のいるデンジマンをはじめとした
多くのスーパー戦隊が「大いなる力」を託してきたからです。
つまりゴーカイジャーは地球を守るためにスーパー戦隊が見出した最後の希望なのです。

春映画でゴセイジャーが、また第26話でハリケンジャーがそれぞれレンジャーキーを使って変身したことから考えて、
マーベラス達からレンジャーキーを取り戻せば34戦隊は戦うことは出来るのですが、
それが分かっていてもなお曙や青梅たちはマーベラス達にレンジャーキーを託し、「大いなる力」も託しています。
それは何かマーベラス達に特別に期待するものがあるからだといえます。
彼らレジェンド戦士たちがゴーカイジャーに何を期待しているのか詳細は未だ不明ですが、
とにかくそのゴーカイジャーを旧友のギャバンを助けるために
魔空空間のような危険な場所に行かせるわけにはいかないと曙も青梅も思いました。

こう言っては申し訳ないが、昔はいざ知らず現在のギャバンは
ザンギャックの侵略から地球を守るために大して役に立つ存在とは言い難い。
宇宙警察はザンギャックの侵略行為に対して不介入方針だからです。
だからギャバンを助けたところで地球防衛のために何か役に立つということはない。
あくまでギャバンを助けたいというのは曙や青梅の個人的感情、旧友を救いたいという私情に過ぎませんでした。
そんなことのために地球防衛の切り札であるゴーカイジャーを死地に追いやるような真似は出来ない。
それは地球を守るスーパー戦隊の戦士として正しい行為ではない。
曙と青梅はそう思って、マーベラス達に魔空空間への行き方を教えるのを躊躇い、
曙と青梅はマーベラスに背を向けて、公園の柵に掴まって、黙って遠くの空を見つめました。

しかし、2人はしばし考えて思い直しました。
ここで「地球を守るため」という大義名分でマーベラス達の行動に制限を加えるというのは、
これまでの自分達スーパー戦隊がマーベラス達を最後の希望として賭けてきた
想いそのものを裏切ることになるのではないかと思ったのです。

確かにギャバンを助けたところで地球防衛の役には立たないのであって、
スーパー戦隊としてもマーベラス一味としてもギャバンをわざわざ助ける義理など無い。
しかし、よく考えればマーベラス一味には地球を守る義理自体がもともと無いのです。
地球を守る義理など無いのに地球を守るために戦っている、マーベラス一味とはそういう連中なのです。

いや、そもそもマーベラス達は地球を守っているのではなく、
彼らの守りたいと思う何か大切なもののために戦っており、
その一環として地球を守る戦いも存在しているに過ぎないのかもしれない。
つまり、守る義理や大義名分など関係無く、自分の守りたいと思ったものを守る、
そういう連中だからこそ、彼らは地球を守るために戦ってくれているのであり、
そういう連中だからこそ、今も何の義理もないギャバンを助けようとしているのではないか?
そして、そういうマーベラス一味だからこそ自分達も他のレジェンド戦士たちも
自らの「大いなる力」を託そうと決意してきたのではなかったか?
そのように曙も青梅も思いました。

ならば、もしマーベラス達が助ける義理もメリットも大義名分も無いギャバンを助けるために命を賭けるというのなら、
それはきっと彼らにとって大切な守るべき何かを守ろうとしているのだと思えました。
そして自分達レジェンド戦士たちもまた、とっくに彼らの大切なその何かに賭けているのだから、
今回もマーベラス達が大切な何かを守ろうとするのなら、黙ってそれに賭けるべきだろう。
マーベラス一味に「大いなる力」を託して運命を預けた時から、この戦いは「地球を守る戦い」ではなくなっている。
もっと大きな何かを守るべき戦いになっているのであり、
きっとマーベラス達がギャバンを助けたいという想いは、その何かに深く関係しているはずだと、
曙も青梅も思いました。

そうして心を決めた青梅は「魔空空間への行き方・・・」と言いながらマーベラスの方に振り向いて説明しようとします。
するとそこに曙も振り返ってきて「・・・だったら俺たちのレンジャーキーを使え!魔空空間への道が開ける!」と
覚悟した表情でマーベラスに対してズバリと言います。
これが青梅も言おうとしていた、魔空空間に行くための方法でした。
ただ、それが決して安全が保証された方法ではないことを示すように青梅は厳しい表情で
「無事に行ける保証は無い・・・だが、賭けるとしたらそれしかないだろう・・・!」と
マーベラスの顔を見据えて言葉を添えます。

さて、ここで魔空空間に行くためにレンジャーキーを使うという意外な方法が提示されたわけですが、
いったいどういう脈絡でそういうことになるのでしょうか?
まず、青梅が「無事に行ける保証は無い」と言っていることから、
これはあくまで正規の方法ではない、かなり強引で無茶な反則的な方法だということが窺えます。

安全確実に魔空空間に行くために一番良い方法はマクーがやっていたのと同じ方法ですが、
これはドン・ホラーやアシュラーダのような特殊な超能力者の存在と
地軸転換装置というマクー独自の技術が必須ですから、
マーベラス達が真似することが出来るようなものではありません。
そこで曙と青梅は魔空空間が現実世界とは別の亜空間であるという特性を利用することを考えたのでした。
ここで曙が「レンジャーキーを使えば魔空空間への道が開ける」と言っていることから、
レンジャーキーは亜空間への入り口を開く特性があるようです。

そういえば「199ヒーロー大決戦」の中でもレンジャーキーによって現実空間とは異なった奇妙な白い空間が現れました。
あれは一種の亜空間といえますが、
これまであの白い空間は「レンジャーキーによって作り出された」のだと思っていましたが、
ここでの曙のセリフからすると、あれは「作り出された」のではなく、
もともと存在していた亜空間への道がレンジャーキーによって「開かれた」ようです。

つまりレンジャーキーというのは亜空間を作り出すアイテムなのではなく、亜空間への道を開くアイテムなのです。
これまでレンジャーキーという、この物語の核となるアイテムについてあまり考察することはありませんでしたが、
ここで「道を開くアイテム」であることが判明したことによって、
そもそもどうして34のスーパー戦隊の戦士たちの戦う力が結晶化したアイテムが「鍵型」をしているのか、
その理由が何となく分かってきました。

つまり、レンジャーキーとは「亜空間へ続く道の入り口にある扉を開く鍵」なのです。
だから鍵の形をしているのです。
となると、あの黒十字王との戦いの時に現れた白い空間は、レンジャーキーが作り出した亜空間なのではなく、
もともとこの地球には何らかの亜空間が存在しており、
レンジャーキーがそこに繋がる道を一時的に開いてマーベラス達とゴセイジャーや
他の十数人のレジェンド戦士たちの意識をそこに導いたということになります。

その亜空間とは一体何なのか、この段階ではまだ謎です。
そもそもどうしてレンジャーキーにそんな特性があるのかも謎です。
このブログの割と序盤の方でレンジャーキーについて考察した際、
そこに込められたパワーは「物語世界を構築するパワー」なのではないかと考察しましたが、
だとすればこの現実世界とは別の世界と繋がる何らかのパワーがそこに込められていても、
そんなに不思議なことではないのかもしれません。

とにかくまだ謎は尽きないのですが、
ここで問題は、レンジャーキーが亜空間への扉を開く鍵であることを曙と青梅は知っているということです。
そういえば黒十字王との戦いの際にレンジャーキーが白い亜空間を開いた時も、
青梅を含んだ十数人のレジェンド戦士たちは特に驚いた様子もなく、
その空間の中にその意識体のようなものを出現させていました。
つまり曙と青梅に限らず、レジェンド戦士たちは皆、
レンジャーキーが亜空間の扉を開く鍵だということを知っていたようなのです。
まぁゴセイジャーはあんまり分かっていなかったようですが。

そもそもレジェンド戦士たちは皆、これまでのエピソードにおいてマーベラス達との接触の際、
レンジャーキーというアイテムについてそれなりの知識を持っていたように見受けられますが、
「199ヒーロー大決戦」映画の冒頭のレジェンド大戦のシーンでは、
34戦隊の戦士たちは気を失っている間に戦う力が宇宙に飛び出していってしまったことに
辛うじて気付いていただけのように見えました。
そうして宇宙に飛び出した彼らの戦う力はレンジャーキーに姿を変えて、
結局マーベラス達がそれらを持って地球にやって来るまでは、
レジェンド戦士たちはレンジャーキーの存在すら知らなかったはずです。
それなのにレジェンド戦士たちはレンジャーキーに関してマーベラス達も知らないような秘密まで知っている。
これは不可解です。

おそらく、「199ヒーロー大決戦」映画のレジェンド大戦のシーンは
あの時起こった出来事の全てを映し出していたわけではなく、あの後の続きがあったはずなのです。
同じ「199ヒーロー大決戦」映画の中の青梅や亮たちのシーンの描写から想像するに、
レジェンド戦士たちはレジェンド大戦以降は一堂に会するということは無かったと思われるので、
あのレジェンド大戦終了後の場面の直後、あの場で何かがあって、
その時、34戦隊のレジェンソ戦士たちはレンジャーキーの秘密を含む、
この物語の核心的な部分について何らかの情報を得て、その情報を共有したのではないかと思います。
そして、その時の情報の中にはこの物語の最後にして最大の謎である
「宇宙最大のお宝」に関する秘密も含まれていたと想像できます。

また、「199ヒーロー大決戦」映画のそのレジェンド大戦直後のシーンの一連の流れの中で、
宇宙を飛んでいくレンジャーキーを眺めるアカレッドの姿が映っていたことから、
このレジェンド大戦直後の「宇宙最大のお宝」やレンジャーキーに関する秘密を
34戦隊の戦士たちが初めて知った場にはアカレッドも何らかの形で関与していたということも想像できます。
そこからおそらくアカレッドのレンジャーキーを集める宇宙航海の旅が始まり、
それがマーベラスやバスコとの出会いにも繋がっていくのだと思われます。

そのあたりの詳細はまだこの映画の段階、つまり第47話以前の状況では不明のままです。
よって、それらの謎に関してはここでは置いておいて、
この映画内の情報として重要な部分だけに話を絞りますと、
レンジャーキーが亜空間への扉を開く鍵だとしても、
そうして開かれる亜空間はあくまで魔空空間とは違う別のものだということです。

レンジャーキーは魔空空間を作り出せるわけでもなく、魔空空間を開く専用アイテムというわけでもない。
ただ単に亜空間を開く特性を持っている一種のアイテムであり、
本来の使い方をする限りは魔空空間ではなくて別種の亜空間を開くという結果を生じるはずです。
ただ亜空間を開く特性はあるので、使い方の工夫次第では魔空空間も開くことが出来るかもしれない。
曙と青梅が「確実に行ける保証は無いが賭けるしかない」と言っているのはそういうニュアンスなのでしょう。
レンジャーキーを変則的な使い方をすれば
魔空空間に行ってギャバンのもとに辿り着けるかもしれないから、その方法に賭けようということです。

ここでポイントとなるのは、ギャバンが魔空空間に引っ張り込まれた場所である体育館に行くことと、
バトルケニア曙四郎とデンジブルー青梅大五郎のレンジャーキーだけを使用するということです。

そのメカニズムについては曙と青梅はマーベラスに詳細には説明しなかったようです。
ただ単に例の体育館に行ってバトルケニアとデンジブルーのレンジャーキーを使って
モバイレーツに挿し込むイメージで、ギャバンの許へ辿り着けるように念じながら
空間の扉を開くように鍵を挿し込む動作をするという指示だけしたのです。

どうして曙と青梅はマーベラス達にレンジャーキーの原理まで説明しなかったのか?
マーベラス達がそれぐらいのことは知っていると思っていたからというわけではなく、
おそらく現時点ではマーベラス達にそのことは教えない方がいいという判断が働いたようです。
最初にマーベラス達に出会ったレジェンド戦士であった元マジレッドの小津魁をはじめ、
全てのレジェンド戦士たちはマーベラス達にあえてレンジャーキーや
「宇宙最大のお宝」についての詳細を教えないようにしているように見えます。
それがどうしてなのかは現時点では不明ですが、とにかく曙と青梅もその方針に沿って、
マーベラス達に原理的な説明はせずに端的に今回のケースでやるべきことだけをレクチャーしたようで、
むしろその方がマーベラス達には呑みこみやすかったとはいえます。

だからマーベラス達はどうしてそんな方法が良いのかよく分かってはいません。
だからここで映画を観ている側は勝手に、どうして曙と青梅はそんな方法が良いと思ったのか
考察しなければいけません。

まず、例の体育館に行く理由は、
亜空間への入り口が一度開いた場所というのは、繰り返し同じ亜空間への扉が開きやすい状態になるからでしょう。
例えばバミューダトライアングルなど、地球上にも幾つかの特異点のような場所があり、
何度も同じ場所で亜空間への扉が開いていると思われますが、それと同じことです。
つい数時間前に魔空空間への扉が開いた体育館に行って、
亜空間への扉を開く特性を持ったレンジャーキーのパワーを発動させれば、
その不安定な重力場が刺激されて魔空空間への扉が開く可能性が高くなる。

ただ、あくまでレンジャーキーは魔空空間を開くためのアイテムではないので、
レンジャーキーの能力をまともに発動させてしまうと、
本来レンジャーキーが開くタイプの亜空間が優先的に開いてしまい、魔空空間が開かない。
そこでレンジャーキーの能力をまともに発動させないためにも、
使用するレンジャーキーをバトルケニアとデンジブルーの2つだけに限定するのでしょう。

黒十字王との戦いの時は176個のレンジャーキーによって白い空間が開きました。
また、第19話の時に鎧がゴールドアンカーキーを精製した白い空間も亜空間だったとするなら、
あの時は追加戦士の15個のレンジャーキーの力で亜空間の扉が開いたということになります。
どうもレンジャーキーは十数個揃うだけでも亜空間を開くことが出来るようなのですが、
その数や種類に応じて亜空間の状態は違いはあるようです。
その詳細はよく分かりませんが、おそらく全部のレンジャーキーが「大いなる力」が入った状態で揃った時、
完全な形の亜空間への扉が開くのでしょう。

ただ、ゴールドアンカーキーの時の例を参照する限り、
どうも使用するレンジャーキーの戦士と開いた亜空間との間に何らかの関連性は生じるようです。
ゴールドアンカーキーの時は15人の追加戦士のレンジャーキーで開いた亜空間に、
その15人の追加戦士の変身後の姿が現れました。
黒十字王との戦いの時の白い空間にしても、
あの時現れた元アカレンジャー海城剛をはじめとしたレジェンド戦士たちのレンジャーキーも当然、
あの176個のレンジャーキーの中には含まれていました。

そして、あの時、海城は「レンジャーキーには戦士たちの想いが込められている」と言いました。
おそらく、そのレンジャーキーに込められた戦士の想いが開く亜空間の状態に何らかの影響を与えているようです。
特にゴールドアンカーキーの時のように少数のレンジャーキーで亜空間を開いた場合ほど、
その傾向は明確になるのでしょう。

そこで今回はバトルケニアとデンジブルーの2個のレンジャーキーだけを使用しますが、
おそらく2個だけでは本来は亜空間を開くことは出来ないのでしょう。
しかし、それは何も無いところから本来レンジャーキーが開くべきタイプの亜空間を開く場合の話です。
あの数時間前に魔空空間が開いたばかりの体育館の不安定な重力場でならば、
2個のレンジャーキーだけでも亜空間への扉は開く。
そして、その場合に開くのは本来のレンジャーキー空間ではなく、魔空空間の方であるはずです。

ただ、それでもとにかく異次元への移動ですから、不確実なことが多い。
とんでもない別次元に飛んでしまう危険もある。
レンジャーキーを本来とは違う変則的な使い方をしているのですから、それは猶更のことです。
そこでより確実性を上げるために、その2つのレンジャーキーはバトルケニアとデンジブルーの2つなのです。

どうしてこの2人のレンジャーキーなのかというと、
この2つのレンジャーキーには、この2人の想いが込められているからです。
つまり、この2人のレジェンド大戦時までの戦いの日々の残留思念が存在している。
そして、その中にはギャバンとの交流の記憶もあるのです。

もちろん、この2人以外にもギャバンと出会ったことのあるレジェンド戦士は存在するかもしれない。
例えば同じ宇宙警察勤務のデカレンジャー関係者などはギャバンと会ったことがある可能性は高いでしょう。
だが、この場でギャバンと確実に会ったことのあることがハッキリ分かっているのは曙と青梅の本人たちだけです。
それに使用するレンジャーキーの数を増やし過ぎると本来のレンジャーキー空間の方が優先的に開いてしまうので、
曙と青梅のレンジャーキー2つだけに絞った方がいい。

また、黒十字王との戦いの時の白い空間においては、
現実世界にいるレジェンド戦士たちの意識が亜空間にそのまま現れており、
レンジャーキーの残留思念を媒介して現実世界からレジェンド戦士が意識を干渉してくることは
可能であるようですから、今回も曙と青梅のレンジャーキーを使って亜空間への扉を開くに際して、
現実世界から曙と青梅の2人も何らかの精神的な支援を行うことも出来ます。

では、どうしてギャバンとの交流の残留思念が込められた曙と青梅のレンジャーキーが良いのかというと、
その残留思念が魔空空間にいるギャバンの存在を感知して、そこに導いてくれる可能性が高いからです。
現実世界から曙と青梅のギャバンを求める思念も後押しし、
更にレンジャーキーを手にしたマーベラスのギャバンの許へ辿り着きたいという意思もプラスすれば、
猶更その指向性は上がるでしょう。

つまり、ギャバンという存在が亜空間の果てしない座標軸の中で
曙と青梅のレンジャーキーを引き寄せるマーカーの役目を果たすわけです。
そうしてこの2つのレンジャーキーをギャバンのいる魔空空間に導いてくれるのであり、
そのレンジャーキーと共にマーベラス達も魔空空間に行くことが出来るという原理なのです。

また、魔空空間から現実世界に帰ってくる場合はどうなのかというと、
今度は曙と青梅の2人がマーカーの役目を果たせばいいだけのことです。
魔空空間は人工的に作り出された不安定な空間なので、
魔空空間から現実世界に行くのはそんなに難しいことではない。
もともと現実世界の住人であるマーベラス達はレンジャーキーを使えば割と容易に魔空空間から脱することは出来るが、
その際に変な次元に迷い込まないように曙と青梅をマーカーとして意識して
彼らの2つのレンジャーキーを使えば、きっと現実世界に戻ってくることは出来る。

ただ、現実世界から魔空空間に行く場合はそこまで確実というわけでもなく、
仮に首尾よく魔空空間に行けたとしても、魔空空間の状況がよく分からない以上、
魔空監獄とは大きく離れた場所に行ってしまう危険性も想定しなければいけない。
そういう危うい方法ではあるのですが、今マーベラス達が魔空空間に行くとすると、その方法に賭けるしかない。
マーベラス達がその方法に賭けるというのなら、曙と青梅はマーベラス達の判断に任せて、
彼らに賭ける覚悟を決めたのでした。

曙と青梅はそのように覚悟を決めてマーベラスに魔空空間に行く方法を伝えたのですが、
当のマーベラスの方は曙と青梅に魔空空間への行き方を質問した時点ではそこまでの覚悟が定まっていたわけではない。
とりあえず魔空空間への行き方が分からないのでは何も始まらないので、とりあえず質問してみただけのことです。
行き方が分かったからといって必ず魔空空間に行くという決意をしていたというわけではない。

やはりギャバンを助けるために自分達がそこまでのリスクを背負い込む必然性は無いのだと
マーベラスは思っていました。
「宇宙最大のお宝」があと一歩で手に入るところまでようやくこぎつけたのです。
いや別にマーベラスも、お宝とギャバンを天秤にかけて、
お宝が惜しいからギャバンを捨てるべきだというような打算的なことを考えているわけではない。
これは船長としての責任の問題でした。

マーベラス一味は今は地球を守るために戦ったりもしているが、
本来は「宇宙最大のお宝」という夢を掴むために集まった仲間です。
地球を守るために戦っているのだって、その夢と全く無関係ではない。

「宇宙最大のお宝」という夢を手に入れるためにはレンジャーキーが必要であり、
そのレンジャーキーは本来はこの地球を守るために使われるべき道具なのです。
だから本当はそのレンジャーキーは元の持ち主であるスーパー戦隊の戦士たちか、
あるいはその後継者となり得る地球人の若者にでも渡すべきものなのですが、
マーベラス達は「宇宙最大のお宝」を掴むためにレンジャーキーを所有しておかないといけない。

しかも折悪く、マーベラス達がレンジャーキーを手にして
「宇宙最大のお宝」を手に入れるために地球にやって来たのとほぼ同時に
ザンギャックによる地球侵略が再開されてしまった。
だから、「宇宙最大のお宝」を手に入れるまでの間、
マーベラス達はレンジャーキーの力を使って地球を守るという義理を果たすことにしたのです。

そして、「宇宙最大のお宝」を見つけるためにはレンジャーキーだけではなく
34戦隊の「大いなる力」が必須なのであり、
マーベラス達はこれまで多くのスーパー戦隊から「大いなる力」の提供を受けてきました。
彼らスーパー戦隊の戦士たちはマーベラス達が「宇宙最大のお宝」を手に入れることを
手助けする義理などは無いはずです。
いや、実際どうなのかは実は不明なのだが、少なくともマーベラス達は
レジェンド戦士たちが宇宙海賊の伝説のお宝である「宇宙最大のお宝」のことを知っているはずはないし、
興味も持っているはずがないと思っているので、
自分達が「宇宙最大のお宝」を手に入れることをスーパー戦隊の戦士たちが応援する義理は無いと思っています。

それなのに多くのスーパー戦隊は好意的に自分達に「大いなる力」を提供してくれました。
そこには「大いなる力」を使って地球をザンギャックから守ってほしいという
スーパー戦隊の戦士達の願いが込められているのだということをマーベラス達は感じ取っており、
その引き受けた責任を重く受け止めていました。

この地球の危機に際してあえて自分達にレンジャーキーを預けたままにして、
更に「大いなる力」まで提供してくれたスーパー戦隊の戦士たちの決断は非常に重いものだったということは、
普段言葉にはしませんがマーベラスだって十分に分かっています。
いや、実際どうして自分達のような宇宙海賊をそこまで彼らレジェンド戦士たちが信頼してくれるのか、
正直言ってマーベラスにはよく分からないのですが、
とにかく非常に重いものを背負わされていることは自覚しています。
だからマーベラスは地球を守るために戦おうと思っている。

いや本当はそれだけではない。
そうしたレンジャーキーや「大いなる力」に関する義理が無くても、
きっと自分は地球を守りたいと思ったのだろうとはマーベラスも分かっているのですが、
それはあくまで個人的感情でしかない。
マーベラス一味の船長として仲間たちを地球を守るための危険な戦いに巻き込む決断をした決め手は、
やはりレンジャーキーや「大いなる力」に関連して発生したそれらの義理でした。
そして、それはあくまで「宇宙最大のお宝」という夢を掴むために発生した義理であったのです。

「宇宙最大のお宝」を掴もうという夢が無ければ、レンジャーキーも「大いなる力」も必要無いわけだから、
地球を守って戦う義理も生じることはなく、
マーベラスが仲間と共に地球を守るためにザンギャックと戦うという事態にはならなかったはずです。
つまり「宇宙最大のお宝」を掴むという夢が無ければ「地球を守って戦う」という義理が生じることはなく、
「地球を守って戦う」という義理を果たさずに「宇宙最大のお宝」という夢を掴むというのは許されない。
「宇宙最大のお宝」という夢を掴むことと、地球を守って戦うということは、
切っても切り離せない表裏一体の物事なのです。

「地球を守って戦う」ということは一見、「宇宙最大のお宝」という夢の実現と無関係な回り道のように見えるが、
実はそうではなく、一心同体なのだといえます。
それが分かった上でレンジャーキーや「大いなる力」を自分達に託してくれた
スーパー戦隊の戦士たちの想いに報いるためにも、
マーベラス達は必ず地球を守るという義務を負うと同時に、
必ず「宇宙最大のお宝」を手に入れるという夢を実現しなければならない。

そしてまた、マーベラス一味の仲間達は
マーベラスが「宇宙最大のお宝」という夢を共に掴むために集めた仲間たちです。
言い換えれば、彼らを旅に付き合わせ、夢に巻き込んだからには、
マーベラスは必ず「宇宙最大のお宝」を掴むという夢を仲間と共に実現しなければならない。
そして「宇宙最大のお宝」という夢が「地球を守って戦う」という義理と表裏一体、切り離せない関係となった以上、
マーベラスは仲間と共に「宇宙最大のお宝」という夢を掴みつつ、
仲間と共に地球を守るために戦う義務を負うことになる。

言い換えれば、本来は共に夢を掴むために集めた仲間をマーベラスが巻き込むことが出来る戦いは、
「宇宙最大のお宝」という夢を掴むための直接的な戦いと、
その夢と不可分の関係にある「地球を守って戦う」という意味合いの戦い、この2つのみということになるのです。

しかし「ギャバンを助け出すために亜空間に行く」という戦いは、このどちらでもない。
「地球を守って戦う」ということは「宇宙最大のお宝」という夢と一見無関係なようでいて実は不可分の関係にあるが、
「ギャバンを助けるために戦う」というのは「宇宙最大のお宝」という夢とは何の関係も無い。

無論マーベラスも仲間たちの態度を見ていれば、
彼らがギャバンに好意を持っており、ギャバンの身を案じているのだろうということは分かります。
マーベラス自身、そういう感情を持っています。
だが、そんな感情を優先させて夢の実現を危うくする道を
マーベラス一味の仲間に対して強いることは船長として決して正しい選択ではない。
マーベラスはそう思いました。

しかし、ならばマーベラスはどうして曙と青梅に魔空空間への行き方を尋ねたのか?
それはマーベラスは個人的にギャバンを助けに行きたいという気持ちがあったからでした。
もちろん、それは単にさっき一緒に戦ったギャバンのことが心配だというような生ぬるい気持ちではない。
当然、さっき仲間達に対して語った10年ほど前の貨物船事件が関係している。

ギャバンは少年時代のマーベラスの命を救ってくれた恩人かもしれないのです。
但し、ここでマーベラスを突き動かしているのは、
単に「命の恩人かもしれない人を見殺しには出来ない」というような過去を振り返った感傷的な理由ではない。
マーベラスにとってそれは現時点においてもっと切実な感情でした。

あの事件の時、生きる希望を失っていた孤児が自分を助けてくれた男に
「素晴らしい未来」を掴むための勇気を持てばどんなに辛く悲しい人生でも生きていけると諭され、
生きる希望を見出した。
そして、ザンギャックに逆らって何の義理も無い人々の命を守り、
自分が何者なのか名乗ることもなく去っていった気高いその男を宇宙海賊だと思い込んだ少年は
自分も宇宙海賊になろうと決意し、「素晴らしい未来」を掴む男という意味で自分の名を「マーベラス」と改め、
宇宙海賊マーベラスの掴むことを目指す「素晴らしい未来」を
伝説の海賊のお宝である「宇宙最大のお宝」と定めました。

そうして成長したマーベラスは、その後、アカレッドとの出会いを契機に伝説のお宝の実在を確信し、
本気で「宇宙最大のお宝」を掴む旅にアカレッドと共に出発し、
一旦アカレッドとの死別後挫折しましたが、再び仲間を得て立ち上がり、
遂にこうして地球にやって来て
「宇宙最大のお宝」をこの手で掴む前の最後の試練である宿敵バスコとの決戦を目前に控えています。

この「宇宙最大のお宝」を掴むための苦難の旅と戦いをマーベラスが乗り越えてくることが出来たのは、
自分の掴むべき「素晴らしい未来」は「宇宙最大のお宝」だと固く信じてきたからです。
だからこそ、どんな危機にぶち当たっても、その危機を突破する勇気が常に湧き上がってきた。
その勇気を生んできたのは「宇宙最大のお宝」という夢の持つ力であり、
その夢の原点はあの貨物船事件の時に出会った宇宙海賊の言葉でありました。

いや、あの貨物船事件の時の宇宙海賊の男、マーベラスが心の中で父親とまで思ったあの男の
「よろしく勇気」という言葉が原点であったからこそ、その夢は勇気を生むことが出来たのであり、
あの時の臆病で後ろ向きな孤児の少年は、「素晴らしい未来=宇宙最大のお宝」を目指して突き進む男、
「キャプテン・マーベラス」となることが出来たのです。

ところが、その「宇宙最大のお宝」を目前とした今、
あの貨物船事件の時に自分を救ってくれた男は宇宙海賊ではなく、
宇宙刑事であるギャバンだったかもしれないという疑惑が湧き上がってきた。
もしあの男が宇宙刑事だったとするなら、
彼が自分に目指すように諭した「素晴らしい未来」とは海賊の伝説のお宝などではなかったはずであり、
彼が自分に掴んでほしかった「素晴らしい未来」は
宇宙海賊になって「宇宙最大のお宝」を掴み取ることなどではなかったはずだと、マーベラスは思いました。

自分は勝手にあの命の恩人を宇宙海賊だと誤解して
「宇宙最大のお宝」を自分の掴むべき「素晴らしい未来」だと信じ込んできたが、
それは勘違いだった可能性が高い。
「宇宙最大のお宝」という夢に向かって突き進む自分は一人前の海賊となり、男の中の男になり、
「素晴らしい未来」を掴むための勇気を身につけた立派な男になったつもりでいた。
世間からはアウトローと蔑まれようとも、マーベラスは自分はあの時の恩人の示してくれた道をしっかり進んできた、
自分なりに立派な男に成長したと自負していました。
しかし「宇宙最大のお宝」という夢が勘違いに基づいて生まれたものであり、
本来自分が選ぶべきだった「素晴らしい未来」とは違うものだったのかもしれないという想いが生じた結果、
マーベラスはその誤りの夢から生まれた自分の勇気も偽物であり、
自分は立派な男などではなかったのかもしれないと慄然としました。

実際、マーベラスは仲間と6人がかりでありながらギャバンに無様に完敗しました。
もしギャバンがあの時の命の恩人だったとするなら、
自分がギャバンに完敗したのは、
結局、自分があの時の命の恩人が自分に期待したような勇気を持つことが出来なかった結果を
象徴しているような気がしました。

宇宙警察はザンギャックと敵対しているわけではない。
宇宙警察の刑事がザンギャックに逆らっても何の得もないのです。
それなのにギャバンは宇宙の正義を守るために自分に何の得にもならないのに組織の中で1人で必死に戦っている。
確かにギャバンは高潔で立派な男です。
そして、それはあの貨物船事件の時の命の恩人の行動にも通じるものはある。
そう考えると、やはりあの時の男はギャバンであったようにも思えてくる。

とにかくギャバンとあの時の男が同一人物であるにせよ、そうでないにせよ、
単に海賊のお宝を手に入れたいと思っている自分は
そうした高潔な立派な男たちには遠く及ばない男に過ぎないのではないかとマーベラスには思えました。
だから自分はギャバンには勝てなかったのだと、
マーベラスは急に自分がとてもちっぽけな、つまらない男のように思えてきました。

そうして醒めた目で現実を見てみると、
自分以外に「宇宙最大のお宝」を手に入れようとしている男など、
現在この宇宙には他にバスコ1人だけであることに気付きました。
そのバスコがどういう男なのか考えると、それはギャバンなどには遠く及ばない、人間のクズのような男です。
自分もギャバンのような真に立派な男からみればバスコと五十歩百歩なのかもしれない。
今回の逮捕のお芝居も事前にギャバンが自分達に全て事情を話してくれていても良さそうなものだったが、
ギャバンはあえて何も説明せずに強引に自分達をお芝居に巻き込んだ。
それはやはりお宝目当ての宇宙海賊をあまりギャバンが信頼していないからなのだと思えました。

そう思うと、マーベラスは何だか切なくなりました。
アウトローと蔑まれることには慣れているつもりだったのですが、
ギャバンがあの時の命の恩人、あの時の自分の心の父親だったのかもしれないと考えると、
クズのような男だと思われるのはとても悲しく悔しいことでした。

いや、自分は決してバスコのようなクズではないとマーベラスは思いました。
というより、そう思いたかったのです。
自分は確かに今まで勘違いをしていたかもしれないが、
それでも自分は自分なりに多少は立派な男になったはずだ。
いや、なっていなければいけない。
本当に立派な男になったかどうかはともかく、
あの時の恩人に対しては、立派な男になった姿を見せなければいけない。
さもなければ、自分の人生はいったい何だったのかと、マーベラスは思いました。

だからマーベラスは、ギャバンがあの時の男だったのかどうかは分からないが、
とにかくギャバンに自分の立派な行動を見せたいと思ったのでした。
ただ立派な行動といっても具体的に何をすればいいのか、
ずっとアウトローとして生きてきたマーベラスには大して多くのことは思いつきませんでした。

一番分かりやすいのは、あの時の命の恩人と同じ行動をすることです。
すなわち、自分に何の得にもならないのに危険に飛び込んで、
何の義理もない人が危機に晒されているのを救うことです。
それをやれば、とりあえず自分はクズではなく、少しは立派な男であることを示すことが出来る。

だからギャバンが魔空空間で危機に陥っていると聞いて、
マーベラスはそれを何の得にもならないからとか、何の義理も無いからという理由で見捨てるなどということは出来ず、
危険が待ち受けていることは承知で魔空監獄に挑んでギャバンを助け出したいという気持ちを抑え難くなったのでした。

簡単に言えば、親にいいところを見せたい子供のような、かなり幼稚な感情といえます。
マーベラス自身、我ながらなんとも幼稚な考え方だと呆れました。
しかし、そんな幼稚なことでもしなければ、
このままでは自分という人間を無価値なもののように思ってしまうとマーベラスは思いました。
それはつまり自分の求める「宇宙最大のお宝」という夢をも無価値なものと思うことになる。
そんな気持ちになれば、バスコに競り勝って「宇宙最大のお宝」を手に入れることは不可能でしょう。
自分のためにも、仲間のためにも、それだけは避けたいとマーベラスは思いました。
だから、幼稚でもなんでも、とにかく今はギャバンを助けるために魔空監獄に行き、
その目標を達成して自信を取り戻そうとマーベラスは考えたのでした。

ただ、そうした自分の気持ちを仲間たちには到底説明は出来ない。
それは自分が「宇宙最大のお宝」という自らの夢の価値を疑っているということを
告白することを意味するからでした。

マーベラス一味は「宇宙最大のお宝」という夢を共に掴むために集まった仲間たちです。
現在は地球を守るために力を合わせて戦っており、鎧などは主にそちらの目的で仲間に加わっていますが、
その「地球を守って戦う」という目的もまた「宇宙最大のお宝」という夢があったからこそ生じた目的なのです。
つまり、現在マーベラス一味の仲間達が共に旅をして共に戦っていることの原点は
「宇宙最大のお宝」というマーベラスの夢にあるのです。
マーベラスが自分の「宇宙最大のお宝」を掴み取るという夢の価値を確信し、
その夢を共に掴む仲間として、現在の5人の仲間たちを選び、認め、自分の夢の道連れとして巻き込んだのです。
そのマーベラスが今頃になって「宇宙最大のお宝」という夢が
本来自分の目指すべき夢ではなかったかもしれないなどと言えるわけがない。

実際、仲間達にとっての夢の価値は何ら変わってなどいないのです。
今回はマーベラスがギャバンと出会ったことをきっかけにして勝手に1人で迷い始めて、
その自分勝手な迷いを乗り越えるために、勝手に何ら益のない魔空空間行きを決行しようとしているに過ぎない。
動機は単に自分が立派な男だと自分で納得するためにギャバンにカッコいいところを見せたいだけという、
実にくだらない理由でした。

「宇宙最大のお宝」は目前であり、地球を守る戦いも佳境に突入している大事な時期に、
こんなくだらない自分1人の拘りに仲間たちを巻き込むわけにはいかない。
というより、こんなくだらない理由で自分が魔空空間に行くということを説明することすら出来ないので、
マーベラスとしては黙って1人で魔空空間に行くしかない。

もちろん自分が曙と青梅に魔空空間への行き方を質問していたことは仲間達はみんな知っているから、
自分が魔空空間にギャバンを助けに行くつもりであることは仲間たちは予想はしているだろう。
だが、自分が特に何も説明もせず、黙って1人で魔空空間に行ってしまえば、
仲間たちとしても引き止めることはないだろうとマーベラスは思いました。
ギャバンがマーベラスの命の恩人である可能性が高いことは仲間たちは皆知っており、
マーベラスが単に命を救ってもらった恩返しをするためにギャバンを助けようとし、
それは自分1人が幼い頃に受けた恩を返すための戦いだから、1人で戦うことに拘るだろうということは、
仲間たちも理解してくれると思ったのです。
だから自分が黙って1人で魔空空間に行けば、仲間たちはそれを黙認してくれる。
そうすれば自分の「宇宙最大のお宝」という夢への確信が揺らいでいるという事実は知られることはない。

そう思ったマーベラスは、仲間たちには黙って1人でバトルケニアとデンジブルーのレンジャーキーを持って、
こうして例の体育館へとやって来たのでした。
あとはこのまま魔空空間に行ってギャバンを助け出すことで自信を回復し、
夢への確信を取り戻し、現実世界に戻ってくれば、
また何事も無かったように「宇宙最大のお宝」を目指す旅を再開することが出来る。
左手でつまんだ2つのレンジャーキーを見つめながらそう思ったマーベラスは、
曙と青梅の言葉を思い出し、しかし、それがそう容易でもないのだろうとも思い、俯きました。

曙と青梅はマーベラス達が6人で魔空監獄に挑むという想定で、魔空空間に行く方法を教えてくれたのです。
それでも相当の覚悟が必要であるということは2人の口ぶりから明らかでした。
果たしてたった1人の念の力でこの2つのレンジャーキーを用いて魔空空間に無事に辿りつけるのか、
よく分かりませんでした。
そして、もし仮に魔空空間に辿り着いたとしても、
たった1人で魔空監獄からギャバンを救い出して無事に戻ってくることが出来るのか、
マーベラスには到底確信は持てませんでした。

しかし、今さらそんなことを言っても仕方ない。
マーベラスは意を決したようにキッと視線を上げ、
とにかく2個のレンジャーキーを使って魔空空間への扉を開くべく、一歩前に踏み出そうとします。
その瞬間、「それでは・・・参りましょうか!」という柔らかな声がマーベラスの右後ろから響き、
ハッとしてマーベラスが振り返ると、そこにはアイムがにこやかに佇んでいました。

同時にマーベラスの左後ろから進み出てきたジョーが、
マーベラスの左手から2つのレンジャーキーを奪い取り、
そのままマーベラスを追い越して前に歩いていきます。
驚いてマーベラスはジョーの方を見ます。
その背後からハカセもマーベラスの肩をポンと叩いて前に出ます。
更にマーベラスの背後にはルカも鎧も歩いてきています。

マーベラス一味の仲間たち5人は全員マーベラスの後を追って、この場にやって来たのです。
黙ってマーベラスの前に進み出て立ち止まったジョーが、
後ろから来たハカセにバトルケニアのレンジャーキーを渡し、
自分はデンジブルーのレンジャーキーを持っているところを見ると、
ハカセと2人で魔空空間への扉を開くつもりのようです。
どうも仲間達はマーベラスの魔空空間行きを察知して止めに来たのではなく、
マーベラスと一緒に魔空空間に行ってギャバンを助けるつもりであるようです。

しかし、仲間に言えないようなみっともない理由で魔空空間に行こうとしていたマーベラスは慌てて
「・・・ちょっと待て!」と叫んでジョーとハカセを制止し、
仲間たちに向かって「・・・これは俺一人の拘りだ・・・お前らを巻き込むつもりは無ぇぞ!」と言います。
あくまで自分1人で命の恩人への個人的義理を果たしに行くのだというポーズをとるマーベラスでしたが、
それに対してジョーはマーベラスに背を向けたまま「・・・何言ってんだ?」と言葉を返し、
「・・・ギャバンはお前の原点かもしれないんだろ?」と言うのでした。
唖然とするマーベラスの横に鎧も進み出て
「マーベラスさんの原点ってことは、俺たちの大いなる原点ってことですから・・・!」と言ってニッコリ笑います。

仲間たちは皆、ギャバンかもしれない人物が
マーベラスにとって単に子供の時に船火事の危機から命を助けてもらったというだけの相手ではないことは
分かっていたのです。
確かに火事の時に命を助けてもらったというだけならば、それはマーベラスだけが受けた恩であり、
他のマーベラス一味の仲間たちには無関係の話です。
しかし、仲間たち5人はマーベラスの想い出話を聞いて、
その人物の励ましの言葉によって少年時代のマーベラスが
「素晴らしい未来を掴むための勇気」を持つことが出来るようになり、
その結果、マーベラスは海賊となり、「宇宙最大のお宝」という生きていくための必須の夢を
初めて持つことが出来るようになったことは理解していたのでした。

それなのにマーベラスが仲間たちが単にその人物が命の恩人に過ぎないとしか理解していないと誤解したのは、
ジョーがその人物をマーベラスにとっての「命の恩人」だと評したからでした。
しかしジョーにとっての「命の恩人」という言葉の持つ意味は、単に「命を助けてもらった人」という意味ではない。

現在のジョーにとっての「命の恩人」とはマーベラスでした。
確かにジョーはとある星でザンギャックの追手に殺されそうになっていたところをマーベラスによって救われた。
しかし、単にその場で命を救われただけでその後のジョーが生き続けることが出来たわけではない。
ザンギャックに裏切られ友であるシドを失い生きる希望を無くしていたジョーが
再び生きる希望を持つことが出来たのは、
マーベラスによって「宇宙最大のお宝」という大きな夢を与えられたからでした。

実際のところジョーは「宇宙最大のお宝」が何なのかよく分からなかったのだが、
その夢に向かって突き進むマーベラスの姿を見て、
この男と一緒に夢を追えば、その先に素晴らしい未来が掴めるのではないかという希望を持つことが出来たのでした。
そうしてジョーは再び生きる希望を見出し、こうして今も生きている。

人は夢があるから生きていける。
ジョーにとっての「命の恩人」というのは、
そういう「生きるために必要な夢を与えてくれた人」という意味合いの言葉なのです。

ジョーはマーベラスの貨物船事件の話を聞き、
少年時代のマーベラスにとって、その船で出会った男は
「生きるために必要な夢を与えてくれた人」だったのだと理解し、
そういう意味で「命の恩人」だと発言していたのでした。
それはまさに「マーベラスの夢の原点」と言い換えても差し支えない人物だったといえます。

ジョー以外の他の仲間たち4人にしても同じで、
その男がマーベラスに生きるための夢を与えてくれた「夢の原点」だったということは理解していました。
何故なら彼らもまたこの宇宙で絶望に押し潰されそうになっていた時にマーベラスと出会って、
共に夢を追うようになって生きてくることが出来た者たちだったからです。
自分達にとってのマーベラスが、マーベラスにとってはその男だったのだということは容易に理解出来たのでした。

その男は少年時代のマーベラスに生きるために必要な夢を与えてくれた。
そして、そのマーベラスの夢を共に掴もうと決めたことによって、
ジョーもルカもハカセもアイムも鎧も、生きていく希望や勇気を得ることが出来た。
そう考えれば確かに鎧の言う通り、その男はマーベラスの原点であるだけではなく、
マーベラスの夢を共に掴むために集まった仲間であるマーベラス一味の仲間全員の大いなる原点といえます。

しかし、だからこそ、そのマーベラスの夢の原点にしてマーベラス一味の全員で掴む夢の大いなる原点である男が
宇宙刑事ギャバンかもしれないという事実は重大な問題を孕んでいるはずなのです。
そして、そのことはジョーもルカもハカセもアイムも鎧も分かっていました。
だから彼らはマーベラスの貨物船事件の話を聞いた時、揃って複雑で深刻な表情をしていたのです。

あの逮捕がアシュラーダを欺くためのお芝居だったと判明して以降は、
ギャバンがマーベラス一味に対して悪意や敵意が無いことはジョー達にも分かっていました。
しかし、それはあくまでマーベラス一味が宇宙警察の取り締まり対象ではないとギャバンが認識しており、
それなのに宇宙警察のゴタゴタに巻き込んで申し訳なかったという贖罪意識に過ぎない。
つまりギャバンはマーベラス一味に負い目を感じているから好意的であるのに過ぎないのであって、
そういった事情の絡まない素の状態でギャバンがマーベラス一味と相対した場合に
ギャバンが好意的であるとは限らないのです。

むしろ、今回の一件についてアシュラーダを引っ張り出して罠に嵌める局面までは
マーベラス達に対して何ら事情を明かそうともしていなかったところを見ると、
ギャバンが本音では宇宙海賊であるマーベラス一味のことを一段下に見て、
決して心の底から信頼してはいないことは窺えました。
宇宙の平和を守る誇り高き宇宙刑事から見れば、所詮は宇宙海賊などはアウトローであり、
決して敬意を払うべき相手ではないのでしょう。

それは当然といえば当然であり、
自分達がそんなふうに見られていることには慣れているつもりのジョー達でしたが、
その宇宙刑事ギャバンが本人は無自覚であろうが、実は宇宙海賊であるマーベラスの夢の原点であり、
マーベラス一味全員の夢の大いなる原点であったとなると、なんとも複雑な心境となりました。

今までマーベラスもジョー達もそんなことは知らなかったから、
自分達の夢の正当性に一切の疑問は持っていませんでした。
しかし、宇宙刑事ギャバンが宇宙海賊の宝探しという、いかにもアウトローっぽい夢を
「素晴らしい未来」として推奨などするわけがない。
つまり、もしその男がギャバンであったとするなら、
マーベラスはギャバンの推奨した「素晴らしい未来」の意味を勘違いして
「宇宙最大のお宝」という夢を持ったことになる。
そして、ジョー達はその勘違いの夢をマーベラスと共に掴むために生きてきたことになる。

そう思うと、ジョーもルカもハカセもアイムも鎧も、それぞれが居心地が悪い気分になりました。
そして、その気持ちは自分達を夢を掴むための旅に引き込んだ張本人であるマーベラスが
最も強く感じて苦しんでいるのだろうということも、5人は理解していました。
だから、マーベラスはきっと1人で責任を負うつもりだろうと5人は予想していました。
きっと1人で魔空空間に行ってギャバンを助け出し、この心のモヤモヤにケリをつけるつもりだろう。
そう予想していた5人はマーベラスの後をつけて、この体育館にやって来たのでした。

しかし、そこまで5人がマーベラスの心中を察していたということは、マーベラスにとっては困惑すべきことでした。
つまり、仲間5人はマーベラスが「宇宙最大のお宝」という夢の価値を疑ってしまっていることを
知っていることになるからです。
マーベラスは「宇宙最大のお宝」という自分と仲間たちの夢を勘違いの産物と疑ってしまい、
その価値に確信を持てなくなって、それでも自分が立派な男になったのだと自分に言い聞かせるために、
「宇宙最大のお宝」という海賊としての夢を脇に置いて、
貨物船事件の時のあの男の真似事のようなことをやろうとしている。
そうしてギャバンにカッコいいところを見せて、何となく自分を安心させたいのです。

これは自分の「宇宙最大のお宝」という夢に巻き込んだ仲間への背信行為なのではないかと
マーベラスは心の底で思っていました。
だから仲間に今回の魔空空間行きを打ち明けることさえ出来なかったのです。
それがこうしてバレてしまい、マーベラスは自分の卑屈な心が見透かされて、
仲間に非難されているような気がして心苦しくなり、周りを囲んだ仲間たちの視線を避けるように目を伏せました。

しかし、そんなマーベラスに向かってジョーとハカセは振り返り、
ハカセは「ちゃんと確かめたいじゃん!」と明るく言います。
そして、「そ!」とそれに応じてマーベラスの横に進み出たルカは
「・・・やりたいことをやる・・・それが海賊ってもんでしょ?」と、
振り向いたマーベラスの顔を見つめて微笑んで言いました。
それを見て、マーベラスは仲間たちが自分達の夢も、そして自分達みんなの夢を信じるマーベラスの想いも、
今までと変わらず信じてくれているのを感じました。

確かにマーベラスは十年ほど前の貨物船事件の時に出会った人の言葉を勘違いして、
その人の求めた「素晴らしい未来」とは違う夢を追いかけてしまったのかもしれない。
夢の原点からして大きくズレて始まってしまったのかもしれない。
しかし、夢というものは他人に決められるものではないし、他人に認めてもらうために目指すものではない。
きっかけはそうやって他人に与えられるのかもしれないが、
夢を持ち続け、その夢に向かって突き進めるのは、その夢が自分のやりたいことだからです。

マーベラスは確かに10年ほど前の事件の時、命の恩人の教えてくれた夢を勘違いしてしまったのかもしれないが、
そうして得た「宇宙最大のお宝を掴む」という夢をその後ずっと持ち続けることが出来たのは、
それが誰に指図されたからでもなく、マーベラス自身がやりたかったことだったからであるはずです。
だからこそ、ジョー達もマーベラスの夢に惹きつけられたのです。
勘違いから始まったかもしれないが、
ジョー達仲間5人を惹きつけたマーベラスの夢が偽物であるなどということは絶対にないのです。
マーベラスがやりたいと思ってやってきたことである以上、それは本物の夢なのです。

ジョー達5人もそれは同じことです。
最初はマーベラスの夢に惹きつけられて「宇宙最大のお宝」という夢を追いかけるようになった5人でした。
5人がずっとそのまま「マーベラスの夢に付き合っている」というスタンスであったなら、
その原点であるマーベラスの夢が勘違いだったと分かった瞬間、大きく動揺していたでしょう。
しかし、ジョー達5人はマーベラスの命の恩人がギャバンだったかもしれないと知った時、
一瞬居心地が悪く感じて戸惑いはしたものの、結局そこまで大きく動揺はしなかった。
それは、「宇宙最大のお宝」という夢はいつしか彼ら5人自身が実現したい夢となっていたからです。
だから原点が勘違いであったとしても、それは決して偽物の夢にはならないのです。
そして、それはマーベラスも同様であるはずだと5人は思いました。

いや、より厳密に言えば、5人にとって「宇宙最大のお宝」という夢だけが本物の夢になったというわけではない。
彼らは「宇宙最大のお宝」という夢を共に掴むための仲間を得て、
仲間と共に夢を掴むための旅と戦いを続けてきたことによって、
自分の辛く悲しい過去に向き合って、
自分の真にやりたいと思っていた夢の原点を知ることが出来るようになったのです。

つまり、彼らは「宇宙最大のお宝」という夢を真に自分の夢とし、
その同じ夢を仲間みんなで共に掴む夢として目指す仲間の絆を得ることによって
過去に向き合うことが出来て、自分のもともと掴み取ろうとしていた夢の原点、
言い換えれば自分の本当に目指していた「素晴らしい未来」が何なのか遂に知ることが出来たのです。
そして、その過程で5人はそれぞれ過去に向き合うことに躊躇い葛藤しました。
そうした自分の経験を踏まえて、5人はマーベラスもそれと同じなのだと思いました。

今マーベラスは「宇宙最大のお宝」という夢を真に自分の夢として、その夢を共に掴む仲間の絆も得て、
その結果、やはり遂に「宇宙最大のお宝」以前のマーベラスの真の夢の原点ともいえる
過去の出来事に向き合おうとしているのです。
そこで見出される夢の原点こそがマーベラスの本当にやりたいことです。
ジョーもルカもハカセもアイムも鎧も、みんな既にそうして真にやりたいことを見つけて、
それをやり抜く決意をしています。
「やりたいことをやる」というのが海賊の生き方だからです。

今にして思えば、その自分の真にやりたいことをやるために
自分は「やりたいことをやる」海賊になったのだと彼ら5人は思えてきます。
そうした海賊の「やりたいことをやる」という生き方を5人に教えてくれたのはマーベラスでした。
だから当然、マーベラスも自分の真にやりたいことを見つけて、その真にやりたいことをやらねばいけない。
そのためには夢の原点といえる過去の辛く悲しい出来事に向き合わねばいけない。

貨物船事件そのものはそんなに悲しい事件ではないのでしょうが、
その背景にはマーベラスの悲しい過去があるはずです。
その悲しい過去からマーベラスの真の夢の原点は生まれてきたはずです。
それが何だったのか確かめなければいけない。
具体的にそれが何だったのか分からなかったとしても、
少なくともそこに何か確かなものがあったという手応えを得ることが出来れば、
それは「宇宙最大のお宝」を掴むための仲間との旅が決して無意味なものではなかったことの証となります。
「宇宙最大のお宝」は確かにマーベラスの本物の夢だったのだということになるのです。

ジョーもルカもハカセもアイムも鎧も、そうやって自分の真の夢を見出し、
そしてそれによって現在の「宇宙最大のお宝」という夢が自分の本物の夢であることを確認してきたのです。
だから5人はマーベラスもそれを確かめるべきだと思いました。
そして、5人は自分がその確認作業をすることが出来たのは、
仲間の絆があってこそであったことが分かっていますから、
マーベラスがその確認作業をするに際しても仲間の絆が必須だと知っています。

だから、マーベラスが自分の夢の原点を確かめに行くというのなら、
仲間である自分達も一緒に行って、マーベラスの手助けをし、共にマーベラスの夢の原点を確かめたい。
そうして全員が自分の真にやりたいことを知り、
「宇宙最大のお宝」という共通の夢を自分の夢として再確認すれば、
マーベラス一味は遂に真の意味で「やりたいことをやる」海賊となるのです。
ハカセとルカがマーベラスに向けて言ったセリフには、仲間全員のそうした素直な想いが込められていたのでした。

その想いをぶつけられたマーベラスは、皆を見回して「・・・お前ら・・・!」と絶句しました。
そんな理由で危険極まりない魔空空間への挑戦に同行するというのは無謀な意見のようにも思えます。
あくまで自分の過去へのこだわりに仲間とはいえ他人が干渉してくるのを嫌う心情もいくらかあります。
しかし、これまでの仲間との旅の積み重ねの中でマーベラスも、
現在の夢の原点を知るためには過去には向き合わねばいけないこと、
そして過去に向き合うためには仲間の絆が必要であることは理解してきていました。

ニッコリ微笑んでマーベラスを見つめる5人から、その仲間の絆をこうしてストレートにぶつけられて、
マーベラスは安堵する気持ちを感じました。
そして、自分がそんな気持ちになるのは、
やはり自分は「宇宙最大のお宝」という夢を捨てて別の立派な男を演じようとしているわけではなく、
あくまで「宇宙最大のお宝」という夢の真の原点を確かめるために
ギャバンに会いに行こうとしているゆえに仲間の絆を必要としていたからなのだという気分になってきて、
やがてそういうことだったのだと確信しました。

今まで忘れていた夢の原点に宇宙刑事ギャバンがいたのかもしれないという予想外の事態に慌ててしまって、
自分の夢が他人から見てどう評価されるのかなどと余計なことを考えてしまったが、
実際は夢の原点が正当だとか本物だとか義理があるだとか難しく考える必要などなかったのだと
マーベラスは思いました。

「宇宙最大のお宝」を掴むことにしても地球を守って戦うことにしても、
ただシンプルに自分がやりたいからやってきたに過ぎないのです。
そして、自分のやりたいことを一緒にやってくれる仲間を求めたのです。
「志を同じくする仲間と共にやりたいことをやる」ということ、
それが自分の掴んだ「素晴らしい未来」だったのだとマーベラスは気付きました。

それはやはり宇宙刑事から見れば身勝手な海賊の夢に過ぎないのかもしれない。
だがマーベラスはもはや迷いませんでした。
自分の夢の原点が勘違いだったかもしれないと知ってもなお自分の、いや自分たちの夢を
揺るぎなく信じてくれる仲間たちが共にいる限り、
この夢は宇宙の他の誰とも比べる必要など無く、自分にとって最高の価値のあるものだと確信できるのです。
実際、仲間たちと共に「素晴らしい未来」を掴むために湧き上がってきたマーベラス一味の勇気は、
これまでにも数多くの絶望的状況を乗り越えるパワーとなってきたからです。

もはやマーベラスはギャバンに立派な姿を見せようなどという気はありませんでした。
ただ純粋に、この仲間と共に掴んだ「素晴らしい未来」をどうして自分が目指すようになったのか、
その原点を確かめたかった。
ギャバンに会えばそれが分かるかもしれないし、
その「素晴らしい未来」の姿がより具体的になるかもしれない。
この仲間たちと一緒ならば、魔空空間だろうが魔空監獄だろうが突破して
そこまで辿りつけるかもしれないのだとマーベラスは期待に胸が高鳴りました。

そうしてようやく、この魔空空間へ突入してのギャバン救出作戦の
マーベラス一味にとっての真の意義を理解したマーベラスは、黙って皆を見つめてフッと微笑みます。
心が通じ合った6人にはそこにもはや余計な言葉は必要無く、
マーベラスに応えて無言で微笑んだジョーとハカセはデンジブルーとバトルケニアのレンジャーキーをカギ型に変形し、
クルリとマーベラス達に背を向けて6人の先頭に立つと、
やや緊張した面持ちで2つのレンジャーキーを虚空に向けて突き出し、念を込めます。

すると、2つのレンジャーキーから突然、青と緑の閃光が発して、体育館の中をその閃光が突き進んでいき、
その閃光が達した体育館中央にムクムクと赤黒い異様な空間が出現したのでした。
数時間前にアシュラーダとブートレグが発生させてギャバンを呑み込んだ魔空空間が
同じ位置に再びその姿を現した、いや、レンジャーキーによって強引に入り口を開かれたのです。

それを見たマーベラス、ルカ、アイム、鎧の4人は前に進んでジョーとハカセに並んで横一列になります。
目の前の赤黒い空間こそ、バスコの言っていた魔空空間への入り口に違いない。
やはり曙と青梅の言った通り、この2つのレンジャーキーには
ギャバンのいる魔空空間へ導く能力があったのだと6人は確信しました。

「・・・開いた・・・」とルカがクールに呟きました。
見るからに不気味な空間の先にはどんな危険が待ち受けているか分からない。
しかし、今やマーベラス一味の6人にとって、その不気味な空間の先にこそ、
自分達全員の夢の原点が何だったのか確かめるカギが待っているのだと感じられ、
恐れる気持ちよりもワクワクする気持ちが湧き上がってきます。
背筋を伸ばして腕組みをして目の前の魔空空間への扉を傲岸に見据えたマーベラスが
「ようし!今だ・・・!」と不敵に号令をかけると同時に6人は一斉に駆け出し、
躊躇することなく魔空空間の入り口に突っ込んでいきました。

次の瞬間、6人はそのまま見知らぬ場所を駆け抜けていました。
ハッとして6人が立ち止まると、そこは先ほどまで居た体育館とは全く別の場所で、
薄暗い空には赤い厚い雲から稲妻が走り、見知らぬ緑色の大きな衛星が浮かんだ、
何とも不気味で幻想的な薄暗い荒野でした。
明らかに地球ではないので、瞬時に何か別の空間に移動したのは間違いないが、
確かに不条理ではあるものの意外に普通っぽい状況に6人は少し戸惑いました。

「これが魔空空間・・・?」とルカは怪しみます。
魔空空間そのものに恐れはもはや無いが、
もしかしたら別の変な空間に飛ばされてしまったのかもしれないという点は不安であったのです。
マーベラスも仮にここが魔空空間だったとしても、
この位置がいったい魔空監獄から見てどういう位置関係にあるのか分からず、周囲を見回します。
するとその時、稲光が照らし出したやや遠くにある断崖の上に何か建造物があることにマーベラスは気付いたのでした。

遠目なので詳細は分かりませんが、その建造物は上部にタワー構造のものを備えているように見えました。
確かバスコはギャバンが魔空監獄の最上階に捕えられていると言っていました。
わざわざ「最上階」と言うところを見ると、何か建物の最上部が特殊な構造になっているのではないかと推測できます。
つまり、あの最上部にタワー構造を備えた大規模な施設のような建物が
噂の「魔空監獄」なのではないかと思ったマーベラスは、
その建物を睨んで「あれが・・・魔空監獄・・・?」と呟くのでした。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 23:57 | Comment(0) | 海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月10日

海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE 感想その10

魔空空間でマーベラスが発見した建造物は、その推測の通り、やはり魔空監獄でした。
先ほどギガントホースでアシュラーダが言っていたように、
魔空空間は昔マクーが存在していた頃に比べてかなり縮小しており、
この魔空監獄を取り巻く一帯しか残っていないようです。
それゆえマーベラス達は魔空空間に入ると同時に自動的に魔空監獄の見える場所に出てきたようです。

そもそもバスコが2万6千年の間、誰も脱獄者を出していないと言っていたことから考えて、
この建造物は昔からずっと監獄として使われていたようです。
まともな国家機関でもないマクーが刑務所を保有する必然性も無いことから、
この監獄はマクーにとって都合の悪い者を捕えて閉じ込めるための強制収容施設であったと思われ、
そこをアシュラーダが管理しているのは、もともとアシュラーダがマクー時代から
この監獄の管理者であったからなのでしょう。

つまりマクー健在時は組織の中で魔空監獄の獄長というのは閑職扱いで、
ドン・ホラーの不肖の息子としてあまり期待もされておらず冷遇されていたアシュラーダは
魔空監獄の獄長として無為な日々を送っていたと思われます。
そのアシュラーダがマクー壊滅時にただ1人生き残り、
アシュラーダの管理する魔空監獄の周辺の魔空空間だけがひっそりと残ったが、
組織が壊滅して監獄だけが存在しても意味は無い。
そこでザンギャック皇帝アクドス・ギルに取り入ったアシュラーダは、
魔空監獄をザンギャックにとって都合が悪い者を非合法に浚ってきて幽閉するための施設とし、
自分はその監獄の獄長でありザンギャックの秘密警察局長という裏幹部として転身したのでしょう。

ただ、どうしてマクーの首領ドン・ホラーにしてもザンギャック皇帝アクドス・ギルにしても、
自らにとって都合の悪い相手を殺さずに幽閉する監獄を必要としたのか、一見不可解なようにも思えます。
邪魔者はさっさと殺せばいいように思えるからです。
しかし、それは魔空監獄を一般的な刑務所のようなイメージで見た場合の話です。

魔空監獄は囚人を更生させて社会復帰させるための施設などではない。
結局はそこにぶち込まれた者は生きて外に出ることはない、死の収容所なのです。
捕えた者はすぐに殺さずに拷問にかけて仲間の名前や居場所などと聞きだす必要がある場合もありますし、
そうでない場合でも生きている者というのは死んだ者よりも何かと役に立つのです。
強制労働で死ぬまでこき使うことも出来るし、危険な人体実験の素体にすることも出来る。
また、洗脳や改造を施して従順な下僕化して再利用し、死ぬまで戦わせることも出来ます。
なんといっても魔空空間にある監獄ならば囚人の仲間が救出に乗り込んでくる心配をしなくて済む。

まぁ、そういう非人道の極みのような行為を誰憚ることなく行える、
独裁者にとってやりたい放題な、囚人にとっては地獄のような施設が、
この魔空監獄というものの実態と思われます。

その魔空監獄の細長の建物は獄舎の窓と思われる小さな窓が等間隔で横並びに連なった列が何段か縦に並んでおり、
建物内部は何層構造かになっているようです。
そしてその建物上部にはマーベラスの遠目に見たとおり、タワー状のものが上に向けて突き出しており、
その最上部のフロアー内にギャバンは幽閉されていました。
あの体育館で魔空空間に引きずり込まれたギャバンは
自分と同じ戦闘力を持つブートレグが魔空空間で3倍に強化されてしまったため、全く太刀打ちできずに完敗し、
そのまま捕らわれて魔空監獄に連行され、その最上階にぶち込まれてしまったのでした。

どうしてアシュラーダが魔空空間を発生させることが出来たのかギャバンには全く不可解でした。
また、てっきりアシュラーダが宇宙警察の乗っ取りの陰謀を知った自分を
口封じのために殺すつもりだと思っていたのに、
自分が敗北後すぐに殺されずに生かされたまま監獄にぶち込まれたこともギャバンは不審に思いました。
それで一旦アシュラーダがギガントホースに戻ってアクドス・ギルに今後の作戦について説明していた間、
魔空監獄の最上階に繋がれたギャバンはアシュラーダの正体やその行動の真意を測りかねて悩んでいました。

最上階の狭いフロアーには鉄格子で仕切られた幾つかの獄舎が並んでいましたが、それらは全て空室となっています。
最上階はわざわざギャバンの貸切状態にしているようですが、
ギャバンはそれらの獄舎に収容されるわけではなく、
それらの獄舎を見下ろす吹き抜けの回廊の壁面に埋め込んだ金属製の枷で
両手首を拘束されて身動き出来ない磔状態とされていました。
そして、その磔状態のギャバンのもとにやがてアシュラーダがギガントホースから戻ってきて、
勝ち誇ったように自分の正体や目的を明かし、それを聞いてギャバンは驚愕したのでした。

アシュラーダはかつて三十数年前にギャバンが滅ぼしたマクーの首領であったドン・ホラーの血を引いた
マクーの残党であり、ザンギャックに裏幹部として秘かに潜り込んで
魔空空間をザンギャックのために悪用してきたのだというのです。
なるほど、ドン・ホラーの血を引いているのなら
アシュラーダが魔空空間を扱うことが出来るのも納得がいくとギャバンは思いました。

だが、ギャバンが最も驚いたのはアシュラーダが自らの体内のドン・ホラーの血をたぎらせて
魔空空間を拡大し、マクーの復活を目論んでいると言ったことでした。
しかも、そのためにギャバンをこの監獄で散々なぶって殺すのだという。
そして、そのためにギャバンを罠に嵌めて捕えてここに連れてきたのだというのです。

それを聞いてギャバンは、なるほど、まんまと罠に嵌められたのは自分の方であったのだと悟りました。
前々からアシュラーダは魔空空間を拡大してマクーを復活するために自分を生贄にすることを企んで、
その計画に使うためにわざわざ自分の能力をコピーしたブートレグまで作っていたのだとギャバンは理解し、
まんまと罠に嵌った自分の迂闊さを悔やみました。

もちろん、アシュラーダがマクーの残党でドン・ホラーの血を引いていたことや、
アシュラーダがギャバンを生贄にして魔空空間拡大を画策していたことなど、
ギャバンには全く予想しようもなかったし、他の誰もそんなことを予測することなど出来なかったでしょう。
実際、アシュラーダが仕えるアクドス・ギルさえも
アシュラーダのそうした計画に一切気付くことがなかったのですから、
事前にギャバンがアシュラーダの計画を予測して罠を回避するなどということは不可能だったと思います。

それはギャバンも分かっています。
ギャバンが悔やんでいたのは、あえなくブートレグに押さえ込まれて魔空空間に引きずり込まれてしまった
自分の不甲斐なさでした。
体育館の戦いでさっさとブートレグを倒しておけば、まんまとアシュラーダの罠に落ちることはなかったはずです。

ギャバンとしては自分はブートレグに勝てるはずだと思って戦いを挑んだのですが、想定よりも自分が弱かった。
それは年齢による肉体の衰えなのかもしれないと感じていたギャバンでしたが、
こうしてアシュラーダの話を聞いたことによって、それは違うと思いました。
老いなどではなく、もっと根本的に自分の人生が間違っていたように感じられたのでした。
それがギャバンの後悔の最も大きな部分を占めたのでした。

そうしているうちにすぐにギャバンに対する拷問が始まりました。
獄舎を見下ろす吹き抜けの回廊に現れたブートレグが、
そこの壁に両手を拘束されて身動き出来ないギャバン目がけて
電磁ムチのようなものを何度も振り下ろして散々に痛めつけます。

当然ブートレグにギャバンへの拷問をするよう命じているのはアシュラーダであり、
ムチによる拷問でボロボロになったギャバンの傍に歩み寄ったアシュラーダは
「どうだ?自分の偽物に拷問されるのは・・・?」と楽しげに問いかけました。
まんまと罠に堕ちたギャバンを嘲笑って、更なる絶望感を味あわせようというのがアシュラーダの意図です。
父を倒したギャバンを絶望させればさせるほど、アシュラーダの心は父を乗り越えたという達成感で満たされていく。
それによってますます気分は高揚して、魔空空間を拡大させる儀式の準備は整っていくのでした。

ギャバンは激痛に歪んだ顔をゆっくり上げて、アシュラーダの顔を睨みつけ、
怒りの形相で「くっ!!」と悔しがりました。
その眼にはまだアシュラーダという悪を憎む炎が宿っており、ギャバンの心はまだ折れてはいないように見えます。
それを見てアシュラーダは「フッフッフッフッフ!・・・血が騒ぐ・・・!」と余裕の態度でほくそ笑みました。

いずれにせよこうなってしまってはもうどう足掻いてもギャバンは手も足も出ない。
じっくりとなぶり続けて、この強靭なギャバンの意志を挫き、絶望に染め上げてやる方が、
ますます自分の中のドン・ホラーの血が高揚するというものだと、
アシュラーダはますますこれからが楽しみになり、
引き続きブートレグに命じてギャバンの身体にムチを浴びせていくのでした。

ムチの嵐の中、ギャバンは激痛に耐えながら、
このまま拷問が続けば自分の命が尽きるのも時間の問題だと思いましたが、
なんとしても自分がここで死ぬわけにはいかないのだと思い、必死で耐えようとします。
自分がここでアシュラーダの思惑通りに殺されれば、
アシュラーダの中のドン・ホラーの血が完全に覚醒して魔空空間が拡大し、宇宙犯罪組織マクーが復活してしまう。
それだけは避けなければいけない。
だから自分は絶対に死ぬわけにはいかない。

かといってこの状況を脱する手段も無く、拷問は受け続けるしかない。
拷問の苦痛は耐えがたく、いっそ意識を失いそのまま死んでしまえばこの苦痛から逃れることが出来る。
だがマクーの復活を阻止して宇宙の平和を守るためには死ぬわけにはいかないギャバンは、
延々と拷問の苦痛に耐えながら意地でも死なないように頑張らねばならない。

これはどうも亡き父のボイサーと同じ境遇になったとギャバンは思いました。
ボイサーもマクーの開発しようとする悪の超兵器の完成のカギを握る設計図の秘密を守るために、
自分の掌に描いた設計図が死による体温低下で浮かび上がるのを阻止するため死ぬわけにはいかず、
マクーに捕らわれて十数年間も拷問を受け続けながら口も割らず死ぬこともなく耐え続けました。

そんな絶望的な戦いを続けた父の勇気をギャバンは尊敬し、自分もそんな父のような男になりたいと思ってきました。
考えようによっては、これはギャバンにとって亡き父を超えるチャンスなのかもしれない。
父と同じようにこの絶望的状況を耐え抜いて生き抜くことによって、
遂にギャバンは亡き父のボイサーと並び、更には乗り越えることが出来るのかもしれない。

しかしギャバンは自分にはそれは無理かもしれないと思いました。
確かにボイサーの場合はマクーは設計図の秘密を聞きだすために
簡単にボイサーが死ぬことはないようにいくらか手加減はしていましたが、
今回はアシュラーダはギャバンをじわじわ殺すことそのものが目的なのだから、
死を逃れることはよりいっそう困難といえます。
しかしギャバンが父と同じように拷問を耐えることが出来ないと思う理由はそんなことではなく、
そもそも自分は父のように強い人間ではないと思ったからでした。

亡き父ボイサーが耐え難い拷問を耐え抜いて生き抜いたのは、
マクーの超兵器開発を阻止して宇宙の平和を守るためでした。
つまり宇宙の人々の未来を守るためにボイサーの発揮した勇気が
常人ならば耐えることが不可能な拷問に十数年も耐えるという奇跡を起こしたのです。

ギャバンはそんな父の勇気を引き継ごうと思い、
宇宙の平和を守る仕事である宇宙刑事という職務にその後もますます励みました。
宇宙刑事として懸命に職務を果たしていくことで、いつしか父の勇気を超える勇気を得て、
不可能を可能にする戦士になれると思ったのです。
そうして宇宙刑事として十分なキャリアを積んで、遂には「伝説の刑事」とまで呼ばれるようになったギャバンは、
定年を間近に控えた最近になると、自分は父を超えてはいないものの、
父にほぼ並ぶほどの立派な男になったのではないかと秘かに自負するようになっていました。

だから今回もブートレグに勝てると思ったのです。
自分の能力をコピーしてなおかつ疲れを知らない機械戦士のブートレグがかつてない強敵であり、
限りなく勝つことが難しい相手であることはギャバンも分かっていました。
だが、宇宙の平和、宇宙の人々の未来を守るために
宇宙警察の乗っ取りの陰謀は必ず打ち砕かなければいけないという強い意思を持つ自分ならば、
亡き父ボイサーのように不可能を可能にする勇気を発揮出来るはずだと思ったギャバンは、
その意思の力は意思を持たない機械戦士のブートレグを凌駕すると確信したのです。

ところがギャバンはあえなくブートレグに押さえ込まれ、魔空空間に引きずり込まれて敗北した。
最初はそれは年齢を重ねた結果の肉体の衰えのせいかと思ったギャバンでしたが、
アシュラーダの話を聞いて、そうではなかったのだと気付いたのでした。
それは自分が亡き父ボイサーに全く遠く及ばない男であったからでした。
そんな程度の男である自分が亡き父のような不可能を可能にする勇気などを発揮出来るわけがないのであり、
実力的に自分を上回る戦士であるブートレグに順当に負けてしまったのは当たり前の結果であったのです。
そのことに気付いたギャバンは、
そんな自分が亡き父のように拷問を耐え抜いて生き抜くという難行を達成出来るとは到底思えなくなっていたのでした。

では亡き父ボイサーと自分の違いとは何なのか?
ギャバンが気付いたその違いとは、ボイサーは真に宇宙の人々の未来のために戦う男であったのに対して、
自分は結局、宇宙の人々の未来を守る真の戦いから逃げ続けた男だったということでした。

どうしてアシュラーダの話を聞いてギャバンがそう思ったのかというと、
ザンギャックの幹部であるアシュラーダが実はマクーの残党であり、
この三十数年間ザンギャックに潜みながらマクーの復活を目論んでいたことを知ったからでした。
つまりアシュラーダはザンギャックを隠れ蓑にしてマクーの復活を図っていたことになる。
まぁ実際はアシュラーダがマクー復活を企み始めたのは最近のことであるようですが、
そんなことはギャバンは知らないので、
アシュラーダがザンギャックを隠れ蓑にして陰謀を巡らしていたように見えます。

それに実際問題としてアシュラーダというマクーの核心ともいえる魔空空間を操作できる特殊能力者が
ザンギャックの庇護下で生きながらえていたのは事実です。
もちろんそんなことはギャバンも宇宙警察の誰も知らなかったことです。
知っていれば何とかして対処したことでしょう。
だから仕方なかったといえば仕方ないのですが、
普段から宇宙警察がザンギャックに対しても踏み込んだ捜査活動をしていれば、
アシュラーダの存在にも気付くことが出来たかもしれない。
それは結果論だといえばそれまでだが、
今となってはギャバンにはこれは宇宙警察や自分に対して下された必然の報いのように感じられました。

ザンギャックの支配領域内でザンギャック政府や軍によって非人道的な行為が横行していたことは、
宇宙警察も把握はしていました。
だがザンギャックは非合法な犯罪組織ではない。
れっきとした国家なのであり、その支配を支持する(支持するポーズをとらされているのかもしれないが)
多くの国民を抱えており、独自の法体系や司法制度も備えており、
それは宇宙警察の制度よりもある意味緻密であり先進的でした。

それゆえ、その領域内で行われている非人道的行為は巧妙に合法正当なものとされており、
宇宙警察は手出しすることが出来なかった。
下手に手出しすると面倒なことになるので、
宇宙警察は個々の間の紛争には不介入という原則に則って
ザンギャックの領域内の政府による非人道行為には不介入方針を貫くことにしました。

実際にはそれらが「個々の間の紛争」などというレベルの生易しいものでないことは分かっていたのです。
ただ宇宙警察の制度ではそこに介入する法的根拠が無い。
だから原則論を振りかざして現実に行われている非人道行為から目を背けて、
見ないようにしていたのが現実でした。

そう考えるとアシュラーダがザンギャックのもとに身を潜めたのも偶然でもなんでもないことが分かります。
宇宙警察の追跡対象であるマクーの残党のアシュラーダは、
ザンギャックに身を寄せれば宇宙警察から逃れることが出来ることが分かっていて、
計算づくでザンギャックの裏幹部になったのです。
つまり、宇宙警察のザンギャックに対する煮え切らない態度が、
結果的に今日のマクー復活の危機を招いたのは明白でした。

宇宙警察はマクーのような宇宙犯罪組織の活動を阻止するために存在している。
もともとはマクーの活動に対処するために設立された銀河連邦警察がマクー壊滅後、
マクーの悲劇を繰り返さないために更に組織を充実させて作られたのが宇宙警察です。
だからマクーが復活するとなると、宇宙警察のこれまでの三十数年間はいったい何だったのかということになる。

しかし「何だったのか」と問われれば、
今回ザンギャックを隠れ蓑としてマクーが復活しようとしていることを考えると、
まさに宇宙警察のこの三十数年間がザンギャックへの悪しき迎合であったがゆえに、
その間、宇宙警察の無為のせいで未来を奪われた宇宙の人々の怨念が
マクー復活という罰を宇宙警察に下したようにギャバンには思えてなりませんでした。

いや、ギャバンにとってもそれは他人事ではない。
ギャバンもまた、ザンギャックの無法は知りながら、見て見ぬフリをしていたのです。
宇宙警察上層部がザンギャックに不介入方針であった以上、
ギャバンが独断でザンギャックに手出しするわけにはいかない。
そんなことをしてザンギャックと面倒事が起こればギャバンは宇宙刑事の資格を剥奪されてしまうかもしれない。
ギャバンはそれを恐れたのです。

もちろん給料が惜しいとか、そんなくだらない理由ではない。
ギャバンにとって「宇宙刑事であること」は亡き父との大切な繋がりだったのです。
宇宙刑事として宇宙犯罪組織と戦い、宇宙の平和を守るという活動を続けることによって、
ギャバンは亡き父と並び、亡き父を超えることが出来ると信じて、ひたすら職務に励んできたのです。
だからギャバンにとって宇宙刑事を辞めるなどということは考えられなかった。
だからザンギャック領域内で非道なことが行われていると聞いてはいたものの、
上層部からの命令が無い以上、ギャバンは自分が動こうという気は起きませんでした。

ギャバンは宇宙警察の秘密兵器的な立場であり、通常は本部で訓練や事務に携わり、
現場に出動する事件は悪質な宇宙犯罪組織の取り締まりに限定されていたので、
あまりザンギャック領域内の一般の人々の苦境を直接目撃することもなかった。
だから正義感の強いギャバンもついつい職務に流されて
ザンギャック領域内の人々の苦境を見過ごしてしまったといえます。

それでもギャバンも全くのマヌケであるわけでもないので
ザンギャックの非道行為は知識としては把握しており憂慮はしていました。
だが、どうしても宇宙刑事という職にこだわったギャバンは
自ら職を擲ってまでして行動する勇気は湧かず、職務の忙しさで自分を誤魔化していたといえます。

その間にどれほど多くの人々の未来がザンギャックの手によって奪われたことか。
かつて宇宙の人々の未来を守るために必死で拷問に耐え抜いた亡き父ボイサーが生きていれば、
この事態にどう対処しただろうかと、今になってギャバンは深い悔恨の中で考えました。
きっとボイサーならば宇宙刑事の職を辞してでも、苦しむ人々を見捨てるようなことはしなかったであろう。
いやボイサーだけではない。
今回ザンギャックに殺されたウィーバル総裁にしても
宇宙の人々の未来のためにザンギャックに敢然と立ち向かおうとしていたのだ。

それにひきかえ自分はいったい何だろうかとギャバンは思いました。
ウィーバルが命を賭けて戦おうとしていた時、自分はいったい何をしていたのか。
自分が宇宙刑事であり続けることが宇宙の平和を守るために必要な正義だと言い聞かせて、
宇宙警察の管轄外で苦しむ人々の未来を切り捨てていたのではなかったか。

アシュラーダによるマクー復活という衝撃を
自分のそうした姑息な振る舞いに対して下された鉄槌だと認識したことによって、
真に自分のやりたいことを不可能であっても挑戦したボイサーやウィーバルに比べ、
自分は所詮は正義のためにやるべきことなどという制限を設けて
やりたいこともやらず、無難に可能なことしかやろうとしていなかったのだとギャバンは痛感しました。

そんな官製の正義に染まった自分が真の勇気を持つことが出来るわけはなく、
真に素晴らしい未来など掴めるはずがなかった。
そんな男がボイサーのような勇気で不可能を可能にする戦いを勝ち抜くことが出来るわけがない。
実力で自分を凌駕するブートレグに敗れたのも当然であり、
ボイサーのように拷問に耐え抜いて生き抜く奇跡が起こせるとも思えない。

ギャバンはそんな自分の不甲斐なさに腹が立ち、アシュラーダに対して怒りの形相を向けたのです。
怒りの対象はアシュラーダではなく、むしろ自分自身でした。
なんといっても腹立たしかったのは、自分が父の志を受け継ぐことが出来ていなかったことでした。

ギャバンは幼い頃から父に男の生き方は「あばよ涙、よろしく勇気」だと教えられていました。
父が失踪した後もその教えを忠実に守り、
宇宙刑事になって父を救い出すという不可能に挑戦する勇気で悲しみを乗り越えて前に進むことが出来ました。

あの頃の自分は父と同じような生き方が出来ていた。
そして、その結果、父を助け出すことが出来た。
父は自分が助け出さなければさすがに拷問の中で死ぬことになり、
設計図がマクーの手に渡り、宇宙は危機に陥ったのだろう。
だから、父の教えを守って成長した自分が父と宇宙を救ったのだとギャバンは思っていました。
しかし、父の死後の自分が父に遠く及ばない男になってしまっていたことを自覚したことによって、
ギャバンはその認識は間違っていたのではないかと思いました。

結局あの時、宇宙を救ったのは父だったのではないか?
父が自分に「あばよ涙、よろしく勇気」という男の生き方を教え、
それに従って自分は宇宙刑事になり、父を救い出した。
それは全て父によって仕組まれたことであり、
父は自分が教えを授けた息子が成長してきっと自分を、そして宇宙を救いに来ると信じて
拷問に耐え抜くことが出来たのではないか?
ギャバンは最初は父を救いたい一心で宇宙刑事になったが、
父の敷いたその道を進んでいくうちに、いつしか宇宙の人々を守るようになっていき、
遂には宇宙を救ったのですが、それも父に仕組まれたことであったのかもしれない。

もちろんボイサーが全てを緻密に計算して仕掛けを施していたなどということはないでしょう。
ギャバンの感じたのはそういうことではない。
ただ、あの時の自分の行動は父の志を引き継いだものであり、父の志の一部だったということです。
父の「宇宙を救いたい」という志の中で自分は動かされていたに過ぎない。

いや、ボイサーも自分の生き方を引き継いだ息子ギャバンの存在無しで
自分の志を遂げることは出来なかったはずであり、
息子ギャバンを育て上げ、息子に男の生き方を伝えた結果、
自分の力と息子の力を合わせて自分の志を遂げたことをもって、
ボイサーという男の人生は見事に完結したのだといえます。
それが真の男の生き方であり、父親の生き方なのだとギャバンは気付きました。

単に勇気をもって不可能を可能にする英雄的行為をするだけで男の人生は完成しない。
父親となり、息子に自分の志を伝えて、自分の志を受け継いだ息子と共に自分の志を遂げることによって、
男は真の男の中の男となり、その人生はようやく完成するのです。
亡き父ボイサーはそうして男の中の男になり、満足して人生を完結させて死んでいったのでした。

ところが、遺された息子である自分はその真の男の生き方の指針である父を失ったことによって、
その一番大切なことを理解しないままその後の人生を送ってしまった。
単に宇宙刑事として職務に励むことが父の生き方を受け継ぐ道だと勘違いしてしまった。

本当はギャバンは宇宙刑事である以上に、父親にならなければならなかったのです。
父となり、息子に向かって自分の父から受け継いだ志を伝えるという行為があれば、
きっとギャバンは父から受け継いだ志を見失うことはなかったはずです。

息子に対してボイサーの志を伝える時、ギャバンは何を強調するだろうか。
それは決して「宇宙刑事であり続けることが最も大事だ」などということではないでしょう。
真の勇気とはそんなものではない。
「あばよ涙、よろしく勇気」というボイサーの志を息子に伝えることによって、
自ずとギャバンはこの宇宙で真に必要な勇気が
真に悲しんでいる人々を救うためにこそ必要であることに気付いたはずです。

だがギャバンには息子はいませんでした。
だからギャバンは父のように生きられなかった。
しかし、そんなことは本質的な話ではない。そんなことは言い訳にはならないのです。
世の中には様々な理由で結婚できない人もいるし、結婚しても子宝に恵まれない人もいる。
それらは肉体的な事情や経済的な事情であったりする。
ギャバンもまた諸事情で自分の血を引いた息子は持つことが出来なかった。

だが、血縁関係の有無はこの際関係無い。
父親の心情で自分の男の生き方を伝えることが出来る相手であれば、
血縁関係は無くても、それは息子なのです。
極端に言えば、相手が血の繋がらない女の子であっても、
父として男らしい生き方を教えるのであれば、それは一種の息子といってもいいでしょう。

ギャバンは確かに実の息子は持つことは出来なかったが、
他人の子でも何でも心情的な「息子」として、
父から受け継いだ「あばよ涙、よろしく勇気」という生き方を伝えるべきだった。
そうすることによってギャバン自身がボイサーの志を忘れることなく、
不可能に挑戦する勇気を持ち続けることが出来たはずなのです。
そして、ギャバンから「あばよ涙、よろしく勇気」の志を教えられた「息子たち」は、
この宇宙で不可能に挑戦して素晴らしい未来を掴もうという志を持つようになり、
その「息子たち」と共にギャバンは志を遂げてこの宇宙で不可能を可能にしようとしたはずなのです。

この宇宙で現在、素晴らしい未来を掴むために
悲しみを乗り越えて勇気を振り絞り挑戦するべき不可能とは、
きっとそれはザンギャックの悪に立ち向かうことだとギャバンは思いました。
ギャバン1人では無理でも、多数の「息子たち」と力を合わせれば戦うことは出来る。
そのようにしてギャバンが父親となり息子に志を伝えようとしていれば、
ギャバン自身も、ギャバンの「息子たち」も
ザンギャックの無法に対しても立ち向かう勇気を持つことは出来たはずだったのです。
そうすることによってギャバンは真の男として人生を完成させ、父ボイサーを超えたはずです。
また、当然そうなれば、アシュラーダによるマクー復活の危機なども招くことはなかったはずです。

だが、自分は宇宙刑事であり続けるという形式的なことに拘ってしまい、
そういう人間として本質的な営みを忘れていたのだとギャバンは悔やみました。
その時、いや、一度だけ印象に残っている、
自分が父の志を息子のような少年に伝えようとした事件があったと、ふとギャバンは思い出しました。

それは今から10年ほど前、宇宙犯罪組織の摘発の任務を受けて目的地に移動途中だったギャバンが、
とある宇宙空間でたまたまザンギャックの軍艦に襲われている貨物船に遭遇した時のことでした。
あまりのザンギャックの非道な行いに思わず正義感を抑えきれなくなったギャバンでしたが、
ザンギャック艦を攻撃するわけにもいかず、せめて貨物船の乗員だけでも助けようと思い、
貨物船に単身乗り込み、乗員たちの救出活動にあたりました。

その時に貨物室で火事に怖気づいていた1人の浮浪児風の少年が生きる希望を失って竦んでいるのを見て、
ギャバンは昔の自分に父親が言ってくれたように「あばよ涙、よろしく勇気」という言葉を伝え、
素晴らしい未来を掴もうという意思を持てば勇気が湧いてきて生きることが出来ると諭しました。
その結果、少年は勇気を出して飛び降りてくれて、ギャバンはその少年を抱きとめて助けることが出来た。

その事件のことをギャバンが覚えていたのは、
あの頃はギャバンはそんなふうに少年に男の生き方について諭すなどということは久しくやっていなかったからです。
しかし不思議なものだと、あの時のことを思い出してギャバンは思いました。
あんなふうに少年に男の生き方を伝えるなどということはあの頃は長らくやっていなかったのに、
どうしてあの時、あの少年に自分はあんなことを言ったのだろうか?
いや、もともと子供好きだった自分がどうして長らくそういうことをしていなかったのか、
そっちの方がよく考えたら不思議だとも思えました。

今になって考えてみれば、あの頃は既に長らくザンギャックの非道に対して及び腰になっていた自分は
少年に向かって堂々と「素晴らしい未来」について説くことに無意識に後ろめたさを感じていたのだろう。
ギャバンも本当は自分はザンギャックの非道を許せないと思っており、
ザンギャックの非道と戦いたいと思っているという自分の本音に無意識に気付いていたのです。
しかし宇宙警察や宇宙刑事の立場などに拘って、自分の本当にやりたいことから目を背けていた。
全てを擲って自分のやりたいことを貫く勇気も持つことが出来なかった。

そんな自分が「素晴らしい未来」や「勇気」などを説くことに説得力が無く、
恥ずかしいことであることを無意識に感じていて、
それで自分は本当は宇宙の子供たちに対して息子に伝えるように
父ボイサー譲りの男の生き方を説きたい気持ちがあったにもかかわらず、
何時の間にかそれを封印するようになっていたのだろう。

だが、あの貨物船の事件の時、
本当は宇宙刑事という立場上、関わり合いになってはいけない事件であったにもかかわらず、
思わずギャバンは駆け出して貨物船の人々を逃がす手助けをしていた。
それはザンギャックに知られれば面倒なことになることはギャバンも分かっていた。
しかし、それが分かっていてもギャバンは何故かいつになく爽快な気分になっていたのでした。

それはゴチャゴチャした大人の事情は無視して自分の本当にやりたいことを多少は出来たという、
ちょっとした満足感と昂揚感によるものでした。
その感情の勢いであの時の自分はいつになく饒舌になり、
あの少年を相手に自分の父の真似をして、父が息子に説くような気分で
「あばよ涙、よろしく勇気」という言葉を伝え、ボイサー直伝の男の生き方を説いたのだろうと
ギャバンは思いました。

しかし滑稽なものだとギャバンはブートレグのムチ打ちの痛みに顔を歪めながら苦笑しました。
自分は貨物船がザンギャック艦に炎上させられているのを止めることもせず、単に救助活動をしただけでした。
結局はザンギャックの無法を止めることもしていない。
あんな程度のことをしたぐらいで通りすがりの少年に向かって父親気取りで
「素晴らしい未来」や「勇気」などを説く資格があるとでも思ったのかと、可笑しくなりました。

しかもあの時自分は、少年に偉そうなことを言った直後、ふと冷静になって、
自分が宇宙刑事だとバレて面倒なことになるのが怖くなり、
乗員たちを救助艇に乗せた後、自分が何者か名乗ることもなくコソコソと逃げるように姿を消したのです。

いや、そもそも自分はあの少年に宇宙刑事だと名乗る勇気など無かったのかもしれない。
あの少年も酷い境遇で育ったようであり、それはおそらくザンギャックの非道によるものだろう。
そんな少年が貨物船でもザンギャックのせいであんな怖い目にあった。
そうしたザンギャックの非道が横行していたというのに、宇宙警察は何もしてこなかったし、
ギャバンも宇宙刑事として何ら手を打とうとしていなかった。
あの時だって別にギャバンはザンギャックと戦う決意を固めていたわけではない。

宇宙警察や宇宙刑事などザンギャックに迎合する頼りない奴らだと思われていたことだろう。
むしろあの時、自分が「宇宙刑事」だと名乗った方が、
あの時少年に説いた男の生き方に関する言葉は説得力を失ったのではなかろうかともギャバンには思えました。
それで少年たちからの非難の目を恐れて、名乗ることもせずにその場を逃げ出したのでした。

あの事件の時も逃げ出し、結局その後も自分はザンギャックと戦うことからは逃げ続けてきた。
その結末が、ザンギャックを隠れ蓑としたマクー復活計画の生贄となる運命だったのかもしれないと
ギャバンは思いました。

そして、もし自分が亡き父ボイサーのようにこの状況から脱することが出来るとするなら、
それはボイサーのように自らの志を受け継いだ息子による救助を待つ以外にないのだと思いました。
だがボイサーがしっかりと男の生き方を息子である自分に伝えていたのに対して、
自分はそもそも父の志をしっかりその後も受け継げていたのかがまず怪しく、
それを伝えた「息子」などいないのだとギャバンは痛感しました。

あの貨物船の少年にだけは父ボイサーの教えた男の生き方を説いたが、
そもそも父ボイサーが言うならともかく、自分のような何者かも名乗ることなく逃げた男の言葉など、
あの少年の心に何の説得力も与えなかったことだろうとギャバンは嘆息し、
結局自分は何も残してこなかったのだと悔恨しながら、
このまま誰の助けも期待することなくブートレグのムチを受け続けるしかないのだろうと覚悟するのでした。

さて、同じ頃、魔空監獄の最下層階を取り囲むフェンスをマーベラス一味の6人はよじ登っていました。
遠目に見えたタワーのついたこの建造物以外に他に目ぼしい建物が無いことから、
マーベラス達はこれが魔空監獄なのだろうと目星をつけ、
近づいてきてその建物をゴーミン達が物々しく警備していることから、
やはりこれが魔空監獄だろうと確信しました。

近くに来て見上げると、どうやら建物の上にあるタワー状の部分からは厳重な警戒設備が突き出しているようです。
一方、下のビル状の建物の方は上のタワー部分ほどは警戒が厳重ではない。
特に1階の外、建物への出入り口はさほど警戒が厳重というわけではないようです。
これはいったいどういうことなのだろうかとマーベラス達は考えました。

バスコが「ギャバンが最上階にぶち込まれている」と言ったことから考えて、
どうやら重要な囚人ほど上層階に収容されているようです。
となると、ビルの下層階にはあまり強くない囚人が収容されていると思われ、
脱走を警戒する警備も手薄でいいのでしょう。
そもそも建物周辺の警備が、確かに厳重ではあるのですが予想していたほどではない。
2万6千年の間脱獄者を出していない最悪の刑務所というから、
よほど厳重な警戒システムでもあるのかと思ったらそういうわけでもないようです。

これはおそらくこれだけ手狭な魔空空間内に存在するからなのでしょう。
つまり、この狭い魔空空間は、三十数年前に魔空空間が縮小したことによって狭くなったのではなく、
もともと魔空監獄の周辺の魔空空間だけは他の魔空空間からは離れて存在していた狭い空間だったと思われるのです。
だからマクー壊滅時にも、この魔空監獄の魔空空間だけは残り、今まで誰にも気づかれずに済んだのでしょう。
要するに、囚人は仮に監獄から逃げ出せたとしても魔空空間から逃げ出すことは出来ず、
しかもこの魔空空間が狭いので、すぐに山狩りで捕まってしまうのです。

また魔空空間ではザンギャック看守側の戦闘力が3倍に強化されているので、
警備の人数がある程度多ければ並の強さの囚人では太刀打ち出来ず監獄から逃げ出すことさえ困難で、
しかも魔空空間から逃げ出せない以上、脱出は絶対に不可能となる。
だから下層階の囚人相手に手の込んだ脱走警戒システムなど不要なのでしょう。

また、魔空空間には外部からの侵入者というものが想定されていないので、
外敵に対する防護システムを充実させる必要も無い。
それでも上層階にあたるタワー部分には戦闘力の高い囚人を収容するので、
脱走を警戒してタワーの外には警戒網が張り巡らされているようです。
またタワー部の囚人は重要人物であることも多いようで、一応外からの襲撃の警戒もされているようです。

少し離れた場所からこの監獄のそうした特性を観察して理解したマーベラス達は作戦を練りました。
ギャバンの捕らわれている場所がタワーの最上部だと分かっている以上、直接外からそこに突っ込みたいところですが、
タワーの外側は警戒網が厳重なので侵入がバレる危険が大きい。
いつもならば豪快に正面突破が信条のマーベラス一味ですが、
何せここは魔空空間であり、いつもなら簡単に蹴散らせるであろうゴーミン達ですら
それなりの強敵と化している可能性が高い。
しかも敵の警備陣の規模もよく分からない。
だから出来るだけ戦闘は避けてギャバンのいる場所に辿り着きたいところでした。
それに魔空監獄の建物はの外壁は堅牢で破壊して侵入するのも難しそうでした。

そこでマーベラス達は警備が薄めだと推測できる下層階の内部に普通に出入り口から一旦入って、
建物の外よりは警備が薄そうな建物内部を昇っていき最上階を目指すことにしたのでした。
わざわざ監獄内部に外から侵入して、外に向かうのではなく袋小路の上へ上へと昇っていく者のことは
警備側も想定しておらず、裏をかける可能性が高く、
上手くやれば警備側に発見されずに上層階まで進むことが出来ると思えたのです。
また、外壁よりは内部の方が脆いと思われ、いざとなれば破壊して臨機応変な動きも出来そうです。

しかしバスコが魔空監獄のことを「迷宮」と表現していたことは少し気になりました。
まだ何か魔空監獄には仕掛けがあるようなのです。
だが、それはどっちしてもよく分からないことなので、
まずは1階から監獄内部に侵入し、その後は状況に応じて臨機応変に対応していくしかない。

そういうわけでマーベラス達6人はまず監獄を取り巻くフェンスをコッソリと乗り越え、
監獄の建物1階のすぐ外まで迫りました。
そこはゴーミン達が歩哨に立って歩き回って警戒していましたが、
その人数は決して多くはなく、上手く身を隠しながらであれば動き回ることは可能でした。
6人は黙って目配せすると、マーベラスとハカセとアイムの3人と、ジョーとルカと鎧の3人の二手に分かれて、
監獄の建物の周囲をそれぞれ逆方向に向かって走り出します。
そうして歩哨のゴーミンの目をかいくぐって身を潜めながら進んでいきました。

割と呑気なハカセがゴーミンに見つかりそうになって
マーベラスが襟首を掴んで物陰に引っ張り込んだりしてコミカルな場面もありますが、
彼らが何をしようとしているのかというと、内部への出入り口を見つけようとしているのでした。
ジョー達3人の方はまず1つ出入り口を見つけましたが、
物陰から様子を窺うと、そこはゴーミンが常に見張りに立っています。
おそらく正面入り口にあたるのでしょう。
ここは発見されずに内部に侵入するという目的には適していないと思ったジョー達は
仕方ないという表情でその出入口を使うのは諦めて更に先に進むことにしました。

そうして少し進むと、もう1つ出入り口があり、そこには見張りは立っていません。
どうやら通用口のようなものであるようです。
しめたとばかりにルカがニヤリと笑ってその出入口に駆け寄って取っ手に手をかけますが、扉は開きません。
カギがかかっているのです。普段は使っていない出入口であるようです。

ルカが扉を見ると、そこには鍵穴が6つ放射状に並んでいました。
この鍵穴に鍵を突っ込んでロックを解除すれば扉は開くはずですが、当然その鍵はルカの手許にはありません。
ルカは鋭い目をしてジョーの方を振り返り、ジョーはルカのやろうとしていることを察して黙って頷き返しました。
するとルカは細長い金属棒のようなものを取出し、
ニヤリと笑うとそれを鍵穴に突っ込んでカチャカチャと動かし始めたのでした。

これは泥棒のピッキング行為の時に使う道具のようなもので、鍵をこれで開くつもりであるようです。
ルカは元盗賊ですが、この物語内であまりそうした経歴を活かした
マニアックな活躍シーンというものが描かれたことはないが、
ここで遂にルカの元盗賊らしい描写がなされたといえます。

このルカの解錠作業はそれなりに時間はかかるようですが、
この扉が普段使われていないのならばここに見張りが頻繁に来ることもないと思われ、
解錠作業をする余裕はあると判断したジョーはルカに解錠作業をさせて、
自分と鎧はその後ろで周囲に注意して見張りをして、
ゴーミンがやって来たらルカに知らせて身を隠すという算段としました。

すると、そこにマーベラス達3人もやってきます。
逆方向から建物周囲を探っていたマーベラス達も結局は発見されずに侵入可能そうな出入り口は見つけられずに
ここに辿り着いたようです。
つまり、この扉しか侵入出来そうな場所は無いということであり、全てはルカの解錠の成否にかかっている。

そうしてルカが幾つかの鍵穴を解錠していくうちに、
扉の近くのフェンスあたりに1人、歩哨のゴーミンがやって来て、その周辺を見回り始めました。
ビビリのハカセは焦ってきて、ルカの耳元に近づいて「早く!早くしてよ!」と小声でルカを急がせます。
ルカも少しハカセを鬱陶しそうにしつつ焦り、急いで更にもう1つの鍵穴を解錠しますが、
その時の音がそれまでの鍵穴の解錠音と少し違っていたのでハカセは不安になり
「今、なんか変な音したよ!ホントに開くのぉ〜?」と情けない声を出してルカにネチネチと文句をつけ始めました。

すると、ルカはたまりかねたようにイライラを爆発させ「あああああ!!もう五月蠅いなぁ!!」と怒鳴って、
いちいち集中を乱してくるハカセの肩をドン!と叩いて黙らせようとしました。
ジョーが慌ててルカを黙らせようとしますが、既に手遅れで、驚いた鎧も「はうっ!!」と変な声を上げてしまい、
フェンスのあたりに立っていたゴーミンが何か変な音がしたことに気付いて、
建物の方に振り向くと不思議そうな様子でキョロキョロしながら
少しずつマーベラス達6人のいる場所に近づいてきました。

マーベラスはとりあえず黙ってハカセの頭を思いっきりぶん殴り、ルカは慌てて解錠作業を再開します。
あと残る鍵穴は1つでした。
そこにもう1人ゴーミンが現れて、合せて2人のゴーミンが別方向から6人のいる方に近づいてきます。
このままでは発見されるのは時間の問題と焦って6人は扉の傍に集まり身を竦めます。
その時、遂に最後に残った鍵穴の奥に突っ込んでいたルカの持った金属棒がカチャンという微かな音を立て、
それを聞いたルカは目を見張って「・・・開いた!」と呟きます。

そのままルカが扉を押すと扉は開き、ルカは建物内部に入っていき、
続いて5人も扉の向こうに潜り込みました。
その直後に2人のゴーミンが扉の外にやって来ますが、間一髪扉は静かに閉じられて、
ゴーミン達はその扉からマーベラス達が侵入したことには気付くことなく、
不思議そうに首を傾げて立ち去っていったのでした。

そうして監獄の建物内部に潜入したマーベラス達6人は一団となって注意深く1階の内部を進んでいきました。
1階は牢獄のようなものは無く、居住空間ではなく主に動力や空調などの設備が並んでいましたが、
やはり予想通り、警備は厳重とはいえない。
一定のポイントを巡回して動き回っている歩哨のゴーミンを慎重にやりすごしながらマーベラス達が探していたのは、
更に上の階へと進むための階段でした。

そうしていると6人の目の前に螺旋階段が現れ、マーベラス達は急いでそれを駆け上がります。
この調子で敵に発見されないままどんどん上に昇っていくのがマーベラス達の作戦の理想形でした。
そうして螺旋階段のてっぺんまで辿り着いたマーベラス達は、
その上の階に進む次の階段を探すために動き始めました。
螺旋階段の近くには別の階段は無い。
しかしこのフロアーの何処かに上に昇る階段があるはずだと思い、
マーベラス達がその階の広間のようなところに用心深く出てくると、
そこには鉄格子に仕切られた牢獄が多数並んでおり、ようやく監獄らしい光景となりました。

その牢獄の前を横切りながら、鉄格子の向こうの牢屋の中をチラリと見ると、
中には何処か別の星の人と思われる囚人たちが黙って座り込んでいます。
「・・・捕まってる人達がいるよ・・・」とハカセが怖々とした声で呟きました。
やはりこの施設は監獄であったことをこれで完全に確信し、
バスコの言っていたように脱獄不可能の最悪の場所だと実感し、また少し怖くなったのでした。

アイムは気の毒そうに囚人を見ながら
「ザンギャックに反抗して、閉じ込められた人達でしょうか・・・?」と、ふと疑問に思ったことを口にします。
バスコから最悪の刑務所とは聞いたものの、
そもそもこの監獄にギャバン以外にどういう人達が収容されているのかマーベラス達は知らない。
ただ、罪を犯したわけでもないギャバンがぶち込まれるぐらいだから、まともな刑務所でないのは明白で、
おおかたザンギャックが自分達の悪政に都合の悪い連中をぶち込む政治的な収容所なのだろうと思い、
自身も一度その手の施設にぶち込まれた経験のあるジョーは「・・・多分な・・・」と答えます。

そうして更に6人は両側に多くの牢屋の連なる通路を進んでいき、
とある牢屋の中で「ハァ・・・」と溜息をついてちゃぶ台のようなものの前に座っている囚人を
鉄格子越しに何となしに横目に見ながら通り過ぎようとしました。
しかし、その囚人になんだか見覚えがあるような気がして、一同は「・・・ん?」「ん?」と思わず立ち止まります。
その囚人も最初は看守かと思っていた牢屋の外に立ち止まった6人組の姿をふと見上げて、
「あ・・・ゴーカイジャー・・・」と思わず呟きました。
この囚人もどうやらマーベラス達のことを知っているようです。

えっと思って6人が牢屋の方に振り向いてよく見ると、
なんとその囚人は6人の知り合いの元ザンギャック怪人のジェラシットでした。
ルカとハカセと鎧の3人は驚いて大きな声で「ああああああ!?ジェラシット!?」と叫んで、
ジェラシットの牢屋の鉄格子に飛びつきました。
マーベラスとジョーとアイムも、まさかこんな場所でジェラシットに会うとはあまりに予想外で、
唖然としてジェラシットを見つめます。

マーベラス一味がジェラシットに最初に会ったのは第14話の時で、その時は一応敵だったのですが、
第24話で再会した時にはジェラシットはザンギャックから追放されており、
何故か地球人のタコ焼き屋のペットになっており、心機一転して宇宙人初のタコ焼き屋になろうとしていたはずです。
ところがその後、ジェラシットはタコ焼き屋の主人の母親と駆け落ちして失踪し、
第42話の時にマーベラス達が読んだ「女星セブン」という雑誌には
ジェラシットが田舎の温泉宿の主人に収まっているという記事が載っていました。

だからてっきり今頃はジェラシットは温泉宿で呑気に暮らしているのだろうと思っていたマーベラス達は、
魔空監獄の牢屋で閉じ込められたジェラシットと再会するとは夢にも思っていませんでした。
「ジェラシット!なんでこんな所に!?」とハカセが思わず鉄格子を掴みながらジェラシットに問いかけます。
するとジェラシットは「・・・聞いてくださいますか・・・」と言いながら、
手に持っていた湯呑をちゃぶ台に静かに下ろします。
ジェラシットは1人でちゃぶ台に向かって座って湯呑でお茶を呑もうとしていたところだったようで、
どうして監獄の中でそんなことが許されているのかという細かいツッコミは無しということで、
とにかく宇宙人のクセに妙にほっこりした身のこなしをしており、
なるほど温泉宿の主人に収まっていたというのは本当のようです。

そうして呑みかけていたお茶をちゃぶ台に降ろしたジェラシットは突然手で顔を覆って泣き始め、
「くううう〜っ!!聞くも涙!語るも涙の、長い、長い物語・・・!」とむせび泣きながら
左手を前に突き出してかざしました。
その左手の薬指には何やら指輪がキラリと光っています。
これはおそらく第24話でも登場した、駆け落ちしたタコ焼き屋の母親との間に交わした結婚指輪であろうと思われます。

ジェラシットはどうやら自分が駆け落ちしてから、こうして魔空監獄に収監されるまでの出来事を
全部語ろうとしているようです。それは波乱万丈の物語であるようで、話せば長くなるとのことですが、
ジェラシットは妻と引き離されて1人寂しく閉じ込められた牢屋で、
この悲劇の物語を誰かに愚痴りたくて仕方なかったようで、
その語りは泣きが入りながらも講釈調になっており、かなりノリノリです。

しかしジョーは間髪入れず「いや・・・いい!」と首を振ってジェラシットの話を聞くのを断りました。
いつも恋愛感情で行動するジェラシットのことだから、
どうせ想い出話の大部分はくだらないノロケ話に決まっている。
今は自分達はギャバン救出のために先を急ぐのだから、
ジェラシットのそんなくだらない話を長々と聞いているヒマは無いとジョーは思ったのでした。
喋る気満々だったジェラシットはジョーの断固とした拒絶に「え?」と拍子抜けしますが、
マーベラスも憮然とした顔で「・・・お前に関わるとロクなことがねぇ・・・」と、そっぽを向きます。

マーベラス達は第14話の時はインサーンと元レッドレーサー陣内恭介の関係に嫉妬した
ジェラシットの暴走に巻き込まれた挙句、恭介に変なお芝居をさせられてしまった。
まぁ最後のはジェラシットは直接関係無いが、とにかくジェラシットが絡むと変なことに巻き込まれるということです。
そして第24話の時はザンギャックに捨てられて地球で途方に暮れているジェラシットについつい同情して
タコ焼き屋になる夢を応援して、お蔭で宇宙人差別に晒されたり、ザンギャック怪人に襲撃されたりして、
散々面倒事に巻き込まれ、その挙句ジェラシットは勝手に駆け落ちしてタコ焼き屋になる夢を捨ててしまった。
マーベラスは開店祝いの花輪まで買ったのに、まるでバカみたいでした。
しかも結局タコ焼きは食えなかったし、一部地球人の宇宙人差別にウンザリしたりで、踏んだり蹴ったりでした。

それでマーベラスはますますジェラシットというヤツはマーベラス一味にとって鬼門のようなヤツだと思うようになり、
失踪したジェラシットが温泉宿で呑気に暮らしていると知った時も、
不吉だと思い、会いに行こうともしませんでした。
よりによって、そんなヤツと潜入した魔空監獄で会ってしまって、
マーベラスはどうしてジェラシットが此処にいるのかなどどうでもよく、
とにかく作戦失敗の嫌な予感がして仕方なかったのでした。

一方ジェラシットは自分がマーベラスにそこまで忌み嫌われているという自覚が無いので、
マーベラスが自分との関わりを避けようとしているのを見て、見捨てられると察して、
慌てて立ち上がり鉄格子に取りすがり「そんなこと言わずに、ここ開けてくださいっ!!」と
6人に向かって哀願を始めました。
詰まるところ、ジェラシットはここでたまたま出会った知り合いのマーベラス一味に
牢屋から出して逃がしてほしいようです。

「どうしましょう・・・?」とアイムは困った顔でマーベラスの方を見ます。
一応知らない仲ではないジェラシットがこうして監獄に捕らわれているのはさすがに気の毒であり、
助けてあげたい気もするが、自分達は最上階のギャバンのもとに向かうのであるから、
もしジェラシットを牢屋から出しても一緒に行動は出来ない。
そうなると逃げ出したジェラシットが看守たちに見つかって騒ぎになり、
自分達の潜入がバレてしまう可能性が高くなる。
かといってジェラシットを見捨てて立ち去れば、腹を立てたジェラシットが騒いで
結局は自分達の潜入が看守にバレる危険もあります。
このままではどっちにしても隠密行動で最上階を目指すという作戦は台無しになってしまいます。

どうしていいか分からないアイムはマーベラスの判断を仰ごうとしますが、
マーベラスはジェラシットなんかに出くわしたせいでやっぱりヤバいことになってきたと苦々しく思い、
ますます憮然としてジェラシットを無視して頑なな態度でそっぽを向くだけです。
他の仲間達も皆、困り果てた様子で立ち尽くしています。

すると、その時マーベラス達の背後から「こっちも開けておじゃるぅ〜!」と呼びかける声がしました。
6人が振り向いて見ると、その声はジェラシットの牢屋と通路を挟んだ向かいの牢屋の中に座っている、
やたらゴテゴテした汚い機械のパーツを身に着けたエロい女性からのものでした。
その女性に続けて、横に座っているこれまた汚い機械のボディの怪人が
「汚いのはいいのだが、狭いのが我慢ならんゾヨ!」と意味不明な愚痴をこぼし、
更にその横に座っている同じく汚い機械の怪人が一升瓶を振りかざしながら
「住みにくくて仕方ないナリ〜!」とクダを巻きます。

牢獄なのに一升瓶で酒盛りが出来ているのだから文句を言うとバチが当たりそうなものですが、
この見るからにロクでもなさそうな3人組は、よく見ると3人とも頭に三角巾を巻いており、
なんだか幽霊であるようで、しかも3人それぞれ口調がやたら特徴的です。
そして汚さを好むという変な性癖がある。
こんな三人組を確か見た覚えがあると思った鎧は「・・・ええっと・・・もしかして・・・」と言いながら、
ルカとハカセとアイムと一緒にその牢屋の前に近づきます。

一方、マーベラスとジョーは胡散臭そうなものを見るような目をして、
これ以上変な連中と関わり合いになるまいとして動きませんが、
変な三人組の牢屋の前に立った鎧は
「ゴーオンジャーさんと戦った・・・ガイアークの、三大臣さん・・・ですよね?」と尋ねてみました。
すると三人組の紅一点の女が「そうでおじゃる!」と答えました。

やはり、この三人組はガイアーク三大臣でありました。
つまり、2008年のスーパー戦隊シリーズ第32作「炎神戦隊ゴーオンジャー」に登場した
ゴーオンジャーの敵組織ガイアークの幹部キャラであった
害地大臣ヨゴシュタイン、害気大臣キタネイダス、害水大臣ケガレシアの三大臣です。
ちなみにエロい女キャラがケガレシア、その隣で愚痴っていたのがキタネイダス、
一升瓶を持ってクダを巻いていたのがヨゴシュタインです。

なお、顔出し女幹部のケガレシアをここで演じているのはオリジナル役者の及川奈央さんで、
夏映画「空飛ぶ幽霊船」でも野球仮面との対決シーンで
マーベラスの投じたゴレンジャーハリケーンの野球ボールの中から
G3プリンセスの1人のケガレシア役として登場しています。
だが、あれはあくまでゴレンジャーハリケーンという技の中で出現したG3プリンセスというキャラであって
本物のケガレシアではない。
本物のケガレシアとして「ゴーカイジャー」の物語内に登場するのは初めてのこととなります。

また、キタネイダスの声は真殿光昭氏、ヨゴシュタインの声は梁田清之氏というふうに、
それぞれオリジナル声優さんが声を当ててくれています。
梁田さんの場合、ヨゴシュタインの父のヨゴシマクリタインの声で
既に春映画「199ヒーロー大決戦」に登場済みです。

さて、この「ゴーカイジャー」第35話と第36話にも登場したガイアークという悪の組織は
異次元世界であるマシンワールドからの侵略者で、
全ての並行世界を公害で汚染された汚い世界に変えようと企む組織で、
当初ヒューマンワールドに攻めてきてゴーオンジャーと戦っていたガイアークには首領格のキャラがおらず、
この三大臣のトロイカ体制でありました。

ガイアークの連中というのは汚いものを好むという性癖があるので、
あらゆる世界を自分達の好みの汚い世界に変えようとしており、それが非常に迷惑であったので
ゴーオンジャーはヒューマンワールドを守るためにガイアークと戦うようになったのですが、
基本的にガイアークの連中は世界を汚くすることは「良いこと」だと思っていました。

この三大臣も、単細胞で乱暴者で邪魔をする者は腕づくで排除する主義で、ちょっと頭が弱い連中ですが、
基本的には気のいい連中で、ガイアークの楽しく暮らせる世界を作ろうという建設的思考の持ち主で、
非常に仲間想いの情の厚い陽気な酔っ払いキャラで、決して悪人というわけではなかった。
ただ単にガイアーク以外の者から見ればものすごく迷惑で分からず屋の馬鹿という感じでした。

それで同じく単純正義バカ集団のゴーオンジャーとガチンコで戦いを繰り返し、
途中でヨゴシュタインはゴーオンレッド江角走輔との一騎打ちで倒されて死に、残ったキタネイダスとケガレシアは
物語終盤で登場したガイアークの最高幹部である総裏大臣ヨゴシマクリタイン(ヨゴシュタインの父)の
部下や他者を使い捨てにして踏み躙るエゴ丸出しの態度に憤慨し、反乱を起こしましたが
ヨゴシマクリタインに処刑されてしまいました。

そういうわけで「ゴーオンジャー」の作中では三大臣はみんな死んでしまったのですが、
2010年の映画「シンケンジャーVSゴーオンジャー」で再登場しました。
この三大臣、死者の世界に行く前に死者の魂が通るという三途の川で、
普通は生の世界への執着心を落として通り過ぎるものなのですが、
なんと三途の川の穢れた水が気に入ってしまい、そのまま幽霊になって三途の川の底に一緒に住み着いて
酒盛り三昧の日々を送っていたようです。

ところが彼らはヒューマンワールドを三途の川の水で汚しまくろうと企む
ガイアークの害統領バッチードの力で生き返らされ、元の生の世界へ舞い戻って、
バッチードの作戦に協力するよう迫られました。
しかし三大臣はガイアーク上層部の横暴にすっかり嫌気がさして、
今後は他人に迷惑はかけずにひっそりと汚い場所で面白おかしく暮らそうと決めており、
三途の川の底は彼らにとって楽園であったので、生き返らされたことを迷惑に思い、
シンケンゴールド梅盛源太の寿司屋台で食い逃げした挙句、そのまま何処かに逃げてしまいました。

その後、三大臣の消息は不明でしたが、
おそらく何処か汚い場所でひっそり楽しく酒盛りでもして暮らしていたのでしょう。
ちなみにバッチードの力によって生き返っているので実はもう死者ではないのですが、
何故かその後も幽霊時代のまま頭に三角巾を巻いたままのようです。

今や完全に自堕落キャラと化した三大臣がザンギャックに対してわざわざ反抗するということもなさそうであるし、
どうしてこの三大臣が魔空監獄に収監されているのかよく分からないところですが、
それについてケガレシアが「もう悪い事するのは止めようって決めたのが、
ザンギャック的に気に入らなかったみたいで・・・」とこぼします。
つまり、どうやらザンギャックに地球侵略に協力するよう求められて、三大臣がそれを断ったところ、
魔空監獄にぶち込まれてしまったようです。

そういえばザンギャックには「ハリケンジャー」の敵組織であった宇宙忍群ジャカンジャの残党や、
「ゲキレンジャーVSボウケンジャー」に出てきた悪役パチャカマックの係累などが属しており、
宇宙各地で悪の怪人たちをスカウトして戦力を増やしていっているようです。
ただ、それでザンギャックの誘いに応じれば問題ないのでしょうが、
断ったりすると敵対分子と見なされて捕えられて魔空監獄にぶち込まれたりするようです。

ザンギャックはガイアークの存在を第35話までは知らなかったようですから、
第36話でババッチードがマーベラス達に倒されてガイアーク侵略軍が壊滅した後、
ザンギャックはガイアークの残党も取り込もうとして探し回り、この三大臣を見つけて勧誘したのでしょう。
だが三大臣が断ったので、この三大臣は反ザンギャック分子のリストに入れられてしまったようです。

その三大臣、結局こうして魔空監獄に収監されてしまったようですが、
そこにマーベラス達が現れ、向かいの牢のジェラシットが騒ぎ始めたのを聞き、
マーベラス達のことを誰だかよく分かっていないようですが、
とにかく頼めば脱獄の手助けをしてくれそうだと思い、声をかけてきたようです。
しかしジェラシット同様、この三大臣を脱獄させて騒ぎを起こすわけにもいかず、
かといって見捨てて行って騒がれるのもマズいわけで、マーベラス達は困ってしまいます。

そこに今度は三大臣の隣の牢の中から「そっちはいいから、こっち開けて!」と何やら可愛らしい女の声がします。
マーベラス達がそっちを見ると、そこには青いコスチュームの若い女の子が立っており、
鉄格子の外に写真集を突き出して「開けてくれたらこの写真集あげるよん!」と、
胡散臭そうな小悪魔的微笑を浮かべていました。
なんで牢屋内で写真集を持っているのか謎ですが
その写真集の表紙には、その牢の中の女の笑顔が映っており、「SHIZUKA」というタイトルが印刷されています。
鎧はその写真集に見覚えがあるようで、「うわあああ!風のシズカさんまで!?」と歓喜して飛んできて、
写真集を手に取るとパラパラと中を覗きます。

この胡散臭そうな女は2006年度のスーパー戦隊シリーズ第30作「轟轟戦隊ボウケンジャー」に登場した
ボウケンジャーの敵組織の1つ、ダークシャドウの女幹部である風のシズカでした。
演じているのはオリジナル役者の山崎真美さんで、
素顔はとても可愛いのですがシズカのコスチュームが非常に残念な女優さんです。

ところで鎧はさっきもガイアーク三幹部に「さん」付けして呼んだりして、
ここでもシズカと会って喜んだりしており、
どう見ても地球や人類を脅かすスーパー戦隊の敵組織の幹部に対する態度とは思えません。
つまり鎧はガイアーク三幹部や風のシズカが改心して
スーパー戦隊の敵とはいえない存在となっていることは知っているようなのです。

ただ、ガイアーク三大臣は確かに悪人ではなかったが人類の敵であった時期があったのは間違いないが、
風のシズカの場合、もともと地球や人類の敵であったとすら言い難い。
シズカの属していたダークシャドウは影の忍者の一族の末裔たちが
ちょっとヤバめの闇ビジネスに励んでいる企業のようなもので、
基本的にやっていることは経済活動、目的は金儲けでした。
だから社会秩序を壊したりする意図は無く、
非合法な手段で古代の秘宝プレシャスを入手して売買することを生業としていました。

そもそもボウケンジャーの雇い主であるサージェス財団も
プレシャスを解析してその成果をレスキュー活動に活かしたりしており、
やっている内容は社会貢献的なものが多いが、要するに企業活動でやっており
プレシャスを使って金儲けをしていたわけだから、ダークシャドウとそう大差はない。

ダークシャドウの方が何でもアリで遣り口が乱暴であるだけのことで、
悪徳有害企業ではあるが合法的存在であり人類の敵というほどのことはない。
ボウケンジャーにとっては敵というよりは競合相手という感じで、
金儲けのためなら手段を選ばないダークシャドウは
人類にとって脅威的存在であったジャリュウ一族やゴードム文明などとも手を組んで
その力を利用することも厭わなかったが、
ジャリュウやゴードムの目指していた人類滅亡や世界支配に手を貸すつもりもなく、
要するに自分達以外のあらゆる善悪の勢力を全て自分の金儲けのために騙して利用することしか考えていないという、
なんともドライで狡猾なブラック企業であったわけです。

だが、そんな最低なダークシャドウも
ジャリュウやゴードム、あるいはダークシャドウの裏切り者のヤイバによる行為が
世界を危機に陥れた時はそれと戦おうとするボウケンジャーに力を貸したりもしているので、
決して世界の破滅を望んではいない。

そういう点は割とバスコに似たタイプの「敵」といえるかもしれないが、
ダークシャドウの場合はバスコとは違い仲間の絆は強くアットホームな雰囲気で、
いつもボウケンジャーに邪魔されて商売に失敗ばかりしているので狭くてボロい小屋のようなアジトに住んでいる、
やたら所帯じみたショボい組織でした。

まぁそういう一応合法的企業の一員で、ショボくて何処か憎めない連中であった
ダークシャドウの一員であったシズカは「ボウケンジャー」最終話においても
相変わらずボウケンジャーとプレシャスの奪い合いのドタバタを繰り広げている描写がありましたが、
この「ゴーカイジャー」の物語世界でもそういう生活はまだ続いていたようで、
ボウケンジャーのライバルのチョイ悪の美人トレジャーハンターか何かでちょっとした有名人にもなっていたようです。
それで副業で写真集なども出したりしていたようで、
スーパー戦隊ファンである鎧も当然それはチェックしていたのでしょう。

ザンギャックはそうしたダークシャドウにも傘下に加わって地球侵略を手伝うよう勧誘したようですが、
当然ダークシャドウはそんなことには興味が無いので断り、
その結果、反ザンギャック分子としてシズカは魔空監獄に捕らわれてしまったようで、
シズカもジェラシットが騒ぎ出したのを見てマーベラス達に脱獄させてもらおうと思ったようです。

しかし、そうなると当然ダークシャドウで捕らわれたのはシズカだけではないはずで、
鎧と一緒にシズカの牢の前にやって来たルカ達の背後から
「これこれ・・・ワシもおるぞぉ!」という威厳のある老人の声がします。
ルカ達がハッとして振り返り、シズカの牢に通路を挟んで向かい合う牢を見ました。

つまりジェラシットの隣の牢の中ですが、そこには鳥籠がぶら下がっており、
その中には青い体色のフクロウがおり、なんとそのフクロウが喋りかけていたのでした。
声の感じからして渋い老人がいるのかと思って振り向いたら鳥が喋っていたので
ルカ達は驚いて「・・・鳥!?」と叫びます。
するとシズカが怒って「鳥じゃない!」と叱り、
ビックリして振り向いたルカ達に向かってニッコリ笑って「ウフフフ!幻のゲッコウ様よん!」と教えてくれました。
鎧もニコニコ笑って頷いており、この鳥のことを知っているようです。

そう、このフクロウは幻のゲッコウという名で、こんな姿をしていますがダークシャドウの頭領です。
元は人間でたいそう立派な忍者だったそうですが、
数百年前に突如出現して忍者の里を襲った巨大な魔鳥を封印するために自らの身体に取り込み、
それ以来、フクロウの姿になってしまい生き続けているらしい。
だから決して鳥というわけではなく、シズカの忍術の師匠であり、シズカはゲッコウを大変尊敬しているのです。

まぁセコい金儲けばかりしているダークシャドウの頭領ですから、そんなに立派な人物ともいえないが、
それでも自分を犠牲にして魔鳥を封印したりしていることから、
自分の一族も含めたこの世界を守ろうという、それなりの使命感もあるようです。
そのゲッコウも当然ザンギャックの誘いは断ったようで、
その結果シズカと共に魔空監獄に捕らわれてしまったようです。

ちなみにゲッコウの声はオリジナル声優の銀河万丈氏です。
銀河氏は悪役声優として名高く、スーパー戦隊シリーズでも
「シンケンジャーVSゴーオンジャー」のバッチード、「ゴーカイジャー」のババッチード、
「アバレンジャー」の爆竜ブラキオザウルスなどの声をあててもらっています。

さて、シズカのフォローを受けてゲッコウは「うん!鳥じゃない・・・」と、
自分は鳥ではなくて人間の忍者だということを説明しようとしますが、
それを遮るように横から「私めもいま〜す!」とハイテンションなお調子者っぽい声が飛び込んできました。
ルカ達がそちらに視線を移すと、ゲッコウの鳥籠がぶら下がっている牢の中、
鳥籠の隣には虫籠がぶら下がっており、その中に人間の拳大ぐらいの大きなハエがいます。
鳥に続いて、まさか今度は虫が喋ったのかと驚き、ルカは「・・・虫!?」と目を丸くして、虫籠に近づきました。
虫籠の中の巨大ハエは「バエです!」と丁寧に自己紹介しました。

このバエという巨大なハエは2007年度のスーパー戦隊シリーズ第31作「獣拳戦隊ゲキレンジャー」に登場したキャラで、
ここでのバエの声はオリジナル声優の石田彰氏が担当してくれています。
そのバエはゲキレンジャーの敵組織である臨獣殿サイドの幹部メレといつも一緒にいて
巨大戦の実況などをしていたため、臨獣殿の怪人の一種と勘違いしている人も多いが、
実はこのバエはゲキレンジャーを支援している正義の拳法である激獣拳の拳士でした。

かつては人間の姿をした拳士だったのですが、
昔、激獣拳と臨獣拳が戦った時、メレと戦ったバエはハエの姿に変化して戦って敗れてメレに呑みこまれ、
その後メレが死んだ時に共に死に、現代においてリオの術でメレが甦った際に腹の中で一緒に甦った関係で、
メレから離れて生きていけない身体になったためメレと常に一緒に行動していたに過ぎない。
心情的にはゲキレンジャー寄りだったがメレから離れるわけにもいかないのと、
メレの妙に愛嬌のある性格のお蔭でいつもボケとツッコミの漫才をしているような関係となり、
途中でいろいろあってメレから離れても生きていけるようになったにもかかわらず、
結局はメレの死まで行動を共にしました。
といって臨獣拳に染まって悪の道に走ったわけでもなく、
むしろメレやリオの方が最後にはゲキレンジャーの仲間のようになっていました。

で、結局メレの死後、「ゲキレンジャー」最終話ではバエは
ゲキバイオレットの深見ゴウと共に武者修行の旅に出ました。
その後もおそらくバエはマスター・シャーフー率いる激獣拳に身を寄せて拳法修行をしていたと思われますが、
昔の記録を調べて何か誤解したようで、ザンギャックはバエを悪の臨獣拳の怪人と勘違いして
仲間に加わるように勧誘してきたようで、当然バエはそれを拒絶し、
生意気な反ザンギャック分子の烙印を押されてしまったバエは
三大臣やダークシャドウ師弟と共に魔空監獄にぶち込まれてしまったようです。

ゲッコウにしてもバエにしても身体が小さいので牢屋の鉄格子を簡単に潜り抜けてしまえる。
だからわざわざ鳥籠や虫籠に閉じ込めて牢屋の中に吊るしてあるのでしょう。
さて、しかしこのバエの姿に驚いて思わず虫籠に近づいてしまったのがルカの失敗でした。
バエが挨拶に続いて何か言おうとした瞬間、ゲッコウの鳥籠とバエの虫籠を突き飛ばして、
牢屋の奥から「ヤ〜ツデンワニだワニ〜!!」と叫んでワニのような姿の変な怪人が飛び出してきて鉄格子に掴まり、
「わああ!!」と大慌てのゲッコウとバエの迷惑は一向に顧みず、
「出〜してほしいのだぁ〜!!」とバカ丸出しの口調で大暴れし、
「可愛い子ちゃんおいでぇ〜!!」と、牢屋の中からにゅっと手を伸ばして
ルカの腕を掴んで引っ張りこもうとしたのでした。

予想外の事態に「わあああ!?」と悲鳴を上げるルカを見て、
アイムはルカを助けなければいけないと思い、「ルカさん!!」と叫んで飛び込んできましたが、
ヤツデンワニと名乗るこのエロ怪人はアイムの腕も掴んで引っ張りこもうとし、
一気に鉄格子を挟んでセクハラ騒動が勃発します。

このエロ怪人は本人が名乗っている通りヤツデンワニという名で、
2003年度のスーパー戦隊シリーズ第27作「爆竜戦隊アバレンジャー」に登場したキャラで、
ヤツデンワニの声を担当していただいているオリジナル声優の津久井教生氏は
他にスーパー戦隊シリーズでは「ゴーオンジャー」で炎神キャリゲーターの声もあてていただいています。

このヤツデンワニはアバレンジャーの敵組織エヴォリアンの怪人だったのですが、
あまりに役立たずであったためにエヴォリアンに見捨てられて、
悪役だった頃のアバレキラー仲代壬琴に拾われてこき使われたりした後、
結局アバレンジャーの秘密基地である喫茶店、恐竜やの住み込みバイトになったという、
なんとなくジェラシットに似た経歴の持ち主です。

基本的にバカだが悪い奴ではなく、恐竜やを気に入って意外に真面目に働き、
そのままエヴォリアンが壊滅してアバレンジャーの戦いが終わった後も恐竜やで働き続け、
2005年の「デカレンジャーVSアバレンジャー」では恐竜やの社長にまで上り詰めていました。
そのヤツデンワニはその後も順調に実業家として暮らしていたようですが、
ザンギャックがエヴォリアンの残党として仲間になるよう勧誘し、
もともと悪いことをすることに興味が無いヤツデンワニはそれを拒否し、
そのために魔空監獄にぶち込まれてしまったようです。

それで牢屋の奥でしょんぼりしていたヤツデンワニでしたが、
無類の女好きのヤツデンワニは鉄格子のすぐ外に好みの女子が現れたので急に元気になって飛び出してきた模様です。
ヤツデンワニは女子に軽蔑の視線を向けられると惚れてしまうというドMの変態なので、
ドS女子であるルカは好みのド真ん中ストライクなのでした。

脱獄させて欲しいのだかセクハラしたいだけなのか不明のヤツデンワニの大暴れのあおりを受けて、
ゲッコウの鳥籠とバエの虫籠は吹っ飛ばされて牢屋の中に転がり、
向かいの牢屋からシズカは「ゲッコウさまぁ〜!!」と悲鳴を上げ、
ゲッコウは鳥籠の中でジタバタして「シズカ〜!起こせぇ〜!」と怒鳴ります。
そこにすかさず鎧が駆け寄って、鉄格子の隙間から牢屋の中に手を差し入れて
横倒しになったゲッコウの鳥籠をちゃんと立ててあげたので、ゲッコウは「お若いの・・・ありがとう」と感謝しました。

その横ではヤツデンワニがルカとアイムの腕を掴んでぐいぐい引っ張って、
ルカとアイムは嫌がってキャアキャア悲鳴を上げて大騒ぎとなっており、
ハカセはオロオロしてそれを眺め、
マーベラスはジェラシットの牢の前で憮然として皆の様子を眺めています。

ジョーはこのバカバカしい騒動に呆れて首を振って、
三大臣の牢のシズカ側とは逆の隣の牢の鉄格子にもたれて溜息をつきましたが、
するとその牢の奥から妖艶な女の声が「ちょっとお兄さん!」といきなり話しかけてきたので、
ジョーはビクッとして振り返りました。

そこにはコウモリのような姿をした女怪人が立っていて
「ここから出さないと呪うわよ・・・」とワケの分からないことを言ってきます。
「はぁ?」と呆れたジョーは変なヤツに関わり合いになってはマズいと思って焦って逃げようとしますが、
その女怪人は逃げようとするジョーの腕を強引に掴んで鉄格子に貼り付かせ、
やたら高飛車な態度で「ちょっと!顔をよく見せて!」と迫ります。

その勢いに押されて思わず振り返ったジョーの顔にその怪人は顔を近づけてガン見して、
「あら・・・いい男ね!あんた!名前なんていうの!?」と、
完全にジョーの苦手な年増女の押しの強さでグイグイ迫ってきましたので、
これにはジョーはタジタジになってしまいました。

この妙に肉食系年増女キャラの怪人は、
2005年度のスーパー戦隊シリーズ第29作「魔法戦隊マジレンジャー」に登場した
マジレンジャーの敵組織である地底冥府インフェルシアの幹部怪人の妖幻密使バンキュリアで、
ちなみに声を担当していただいているのはオリジナル声優の渡辺美佐さんです。

インフェルシアは地底に存在する魔物の住む世界で徹底した弱肉強食の世界であり、
強者が弱者を支配するのは当然という論理で冥府帝ン・マの命令のもと、地上世界を征服しようとしていました。
バンキュリアも当初はインフェルシアの思想に疑いを抱かずにマジレンジャーを散々苦しめた敵幹部でしたが、
終盤になってン・マのやり方に疑問を覚え、人間の勇気の価値に目覚めて
冥府神の1人スフィンクスと共にン・マから離反して、
最終的にマジレンジャーと協力してン・マを倒しました。

「マジレンジャー」最終話においては、
その後はバンキュリアはスフィンクスらと共に地上世界との調和と共存を目指して
インフェルシアの改革にあたっているということが示唆されていました。
その続きの物語である「ゴーカイジャー」においても、
バンキュリアは平和な世界に変わったインフェルシアの指導者として暮らしていたと思われますが、
ザンギャックはおそらくインフェルシアにも再び邪悪で攻撃的な性格を取り戻して地球征服に協力するよう迫り、
それを拒絶したバンキュリアを反ザンギャック分子と見なして魔空監獄に連行したのでしょう。

そこにマーベラス達が牢屋に通りかかったので、
バンキュリアは誰だか知らないが脱獄のチャンスと見たようですが、
なんだか逃げたいのかジョーにベタベタしたいのかよく分からない妙な態度になっているのは、
元来バンキュリアが一見怖そうな外見や態度とは裏腹に、実はひどい寂しがり屋で人懐っこい性格だからです。
しかし、そのお蔭で余計に押しが強くなっており、ジョーはかなりドン引きでビビっています。

ハカセもジョーが怖そうなオバサンに捕まっているのを見てひきつった顔で気の毒そうにしていると、
ハカセ自身も「可愛いでおじゃるなぁ!」と言うケガレシアに腕を引っ張られ、
更に逆の腕を「出してくれたらデートしてあげる!」とシズカに引っ張られてモテモテ状態、
牢屋と牢屋の間で体を両側から引っ張られて壁に貼り付いてしまいました。

ハカセの腕を引っ張って「こっちを先に出すでおじゃる!」と頑張るケガレシアに
酔っぱらったヨゴシュタインとキタネイダスが声援を送り、
一方で動物組の牢の前では鎧が「なんでまた鳥になっちゃったんですか?」と、
かねてから疑問に思っていた質問をゲッコウにぶつけ、
ゲッコウが「うん・・・それはの・・・昔昔の話じゃ・・・」と応えて、すっかり話し込んでいます。

その横ではヤツデンワニのセクハラ攻撃を嫌がるルカとアイムが悲鳴を上げ、
その足元に転がった虫籠の中ではバエが「皆さんにすっかり忘れられちゃって・・・」とイジケていますが、
ジタバタもがくルカのつま先が虫籠を蹴り飛ばし、バエは「あいた!」と悲鳴を上げます。

バンキュリアはというと、逃げようとするジョーを捕まえて鉄格子に磔状態にして
背後から「妖幻密使バンキュリアっていうの・・・」と自分の名前を名乗り、
「・・・言ってみて!」とジョーに自分の名前を強引に呼ばせようとし、
ジョーが嫌々ながら「・・・妖幻密使・・・バンキュリア・・・」とオウム返しすると、
バンキュリアは「そうそう!いいわぁ〜!!」と興奮して悶えます。

これら一連のドタバタ騒動を腕組みをしたまま仁王立ちして見つめるマーベラスは、
おもむろに横にやって来て鉄格子の向こうから「おお〜い!ここから出して、くださぁ〜い!」と
しつこく言ってくるジェラシットの呼びかけを聞き流しながら、
この監獄はバカばかりを収容する施設なのかと呆れ果てていました。

しかし、この映画の本筋とはあまり関係無い、このシーンの趣旨は何なのかというと、
まぁやはり、この映画の本筋部分はゴーカイジャー関連の映画の中では最も重厚なので、
ここらへんでちょっとギャグシーンを入れておきたいという事情なのでしょう。

それにせっかく監獄に侵入するわけですから、幽霊船で幽霊との掛け合いがあったように、
監獄では囚人との掛け合いが良いだろうという考えなのでしょう。
「ゴーカイジャー」という作品の特性上、ここで登場する囚人たちは
スーパー戦隊シリーズで過去に登場したキャラであることが望ましく、
コミカルなシーンですから、コミカルなキャラが望ましい。

そしてザンギャックが敵対する者を捕えてぶち込む監獄ですから、
「ザンギャックの敵=スーパー戦隊の戦士たち」というのがまず浮かびますが、
ここでレジェンド戦士を囚人として出してしまうとこのシーンの物語内の意味合いが大きくなりすぎて、
ちょっとした軽いギャグシーンという趣旨を逸脱してしまう。
そこでスーパー戦隊シリーズの各作品でよく見られる「改心したコミカルな敵レギュラー怪人」を
ザンギャックに捕らわれた囚人として出そうということになったのでしょう。

それらのキャラは人気キャラであることが多く、ここまでのTV本編では登場させる余地があまり無かったが、
スーパー戦隊シリーズのファンならば、彼らの姿を見ればきっと喜んでくれるはずだという計算も立ちます。
この手の改心怪人は昔からいますが、まぁこの映画のメイン客層がやはり現在の子供たちということもあり、
着ぐるみの現存状況という現実的問題なども踏まえて、近年の作品の改心怪人キャラに絞ったと思われます。

近年の作品といっても「ゴーカイジャー」の前作の「ゴセイジャー」には
何度も甦る鬱陶しいブラジラという奴がいますが、これは全然改心などしていません。
その前作「シンケンジャー」の場合、TV本編では敵幹部でシタリだけは生死不明で終わりましたが、
その後「ゴセイジャーVSシンケンジャー」で、事もあろうにマーベラス達に惨殺されてしまい、
「ゴーカイジャー」第40話でそれが「ゴーカイジャー」物語世界の出来事だと再強調されてしまいました。
というかシタリも全く改心などしていません。

となると直近の改心敵レギュラー怪人は「ゴーオンジャー」のガイアーク三幹部ということになります。
三幹部は厳密にはTV本編では死亡したのですが、
「シンケンジャーVSゴーオンジャー」で生き返って失踪しているので、
結果的に生き残った改心キャラということになりました。

そして、その前作の「ゲキレンジャー」では
リオとメレという超重要な改心敵キャラがいます(死んでるけど)が、
この2人はレジェンド戦士に含まれているのでここでは除外され、
厳密には敵側キャラではないのだがずっと敵側に居たバエが改心(?)キャラとして選ばれました。

その前作「ボウケンジャー」は複数敵組織が存在しており、
クエスターは全滅、ゴードムのガジャは永い眠りについたし全然改心なんかしておらず、
ジャリュウ一族は首領のリュウオーンがひねくれたまま死に、
「ゴーカイジャー」第21話で復活してしっかりマーベラス達に倒されてしまっていますから登場の余地は無く、
ここではTV本編で唯一残存した敵組織ダークシャドウが
そもそもザンギャック的な悪とは異質なライバル組織ということで改心キャラという扱いになったようです。

また、その前作「マジレンジャー」には非常に明確な生き残った改心敵キャラの典型例である
バンキュリアがいます。
「マジレンジャー」の場合はスフィンクスもここでバンキュリアと共に登場しても良さそうなものですが、
終盤の冥府十神篇のみ登場のスフィンクスは登場期間が短かったので除外されたのかもしれません。

そしてその前作「デカレンジャー」はそもそもレギュラー敵組織というものが無く、
生き残った敵改心キャラで印象に残っている奴もいないので除外ということになり、
その前作「アバレンジャー」は当然、敵怪人から華麗に転身して恐竜やの社長にまでなった
ヤツデンワニということになります。
その前作「ハリケンジャー」、そのまた前作の「ガオレンジャー」には改心して生き残った敵キャラはおらず、
それ以上古い20世紀戦隊となると、現在の子供たちには馴染の無いものとなりますし、
ヤツデンワニまで遡れば短いコントシーンを作るには十分なキャラ数はもう既に確保されています。

そういうわけで、ガイアーク三幹部、バエ、風のシズカ、幻のゲッコウ、バンキュリア、ヤツデンワニに、
更に「ゴーカイジャー」登場怪人の中で唯一の改心怪人であり一部で熱狂的人気を誇る
ジェラシットを再登場させて加えたラインナップとなったのでしょう。

ただ、単にコントシーンをやるという目的だけならば、
ここで登場させるキャラは絶対に改心敵キャラである必要も無いでしょう。
単に面白いキャラを登場させればコントシーンとしては成立しますし、
それが歴代作品登場キャラであれば「ゴーカイジャー」らしさも保つことは出来ます。
ここであえて改心敵キャラを登場させたのはコントシーンとしても最良の選択であったのと同時に、
ちゃんとストーリーと辻褄を合わせる意味もあったのだと思います。

まず、アシュラーダがいきなり地球に現れた目的は、
おそらくもともとは地球にいる反ザンギャック分子を捕えて魔空監獄に送り込むためであったと推測出来ます。
宇宙の各地でのザンギャックへの勧誘活動はザンギャック軍の特定の部局の仕事だと思われ、
そこでザンギャックに協力することを拒んだ者をその部局がその場で逮捕拘束するわけではなく、
反ザンギャック分子としてリストアップだけして、
そのリストは秘密警察のアシュラーダの方に摘発対象リストとして回されるのでしょう。

実際、バエやヤツデンワニはともかく、
三大臣もダークシャドウ師弟もバンキュリアもかなり強大な戦闘力を持っており、
そんじょそこらのザンギャックの行動隊長クラスでは太刀打ちは出来ないはずです。
こういう手強い反ザンギャック分子を捕えるには、
アシュラーダが狡猾な手段を使って魔空空間に引きずり込んでから捕えるしかない。
だから魔空監獄への囚人の逮捕連行は全部一括してアシュラーダがやることになっているようで、
アシュラーダは自らその作業をするために宇宙各地の星を巡回して回っており、
その合間に宇宙警察総裁に化けて行動もせねばならず、結構多忙なのです。

それでいちいちアクドス・ギルもアシュラーダの行動スケジュールを把握しているわけでもなく、
摘発作業の進行はアシュラーダの裁量に任せているのでしょう。
そのアシュラーダが今回はたまたま地球の反ザンギャック分子の摘発にやって来て、
三大臣やダークシャドウやバンキュリア達を捕えて魔空監獄にぶち込んだようです。

ジェラシットもインサーンの気まぐれで追放はされたものの、
ザンギャック軍の勧誘部局から再びザンギャックに戻るよう命じられたのでしょうが、
地球で温泉宿の主人として幸せに暮らしていたジェラシットはこれを拒否し、
そのため反ザンギャック分子と見なされてアシュラーダによって魔空監獄にぶち込まれた模様です。
ジェラシットも含む、ここにいる面々は実はかなり強いのですが、
見た感じがおバカなので、弱いと思われてこんな下層階に収容されたようです。

そうして一通り地球での活動を終えたアシュラーダは地球上空に皇帝アクドス・ギルが来ていると聞き、
謁見に訪れ、そこでアクドス・ギルからマーベラス一味抹殺のために宇宙刑事を動かすよう命じられ、
ちょうど良い機会だと思い、ギャバンを罠に落とすべく呼び寄せたというわけです。

そういうわけで、ここに収監されているジェラシット以下の改心怪人グループは、
魔空監獄にぶち込まれたばかりで、まだこの監獄がどういう場所なのか分かっていない様子で、
牢屋から出ることさえ出来れば簡単に逃げられると思い込んでおり、
元気いっぱいでマーベラス達に牢屋から出してくれるように要望しているのです。

これを迷惑に思い、バカ騒ぎをする囚人たちの身勝手さに呆れつつも、
マーベラスはさっきのケガレシアの言葉を聞いて、
この囚人たちがどういう立場の者達であるのか何となく理解してきました。

どうやらここに居るのは、かつてスーパー戦隊の敵だった連中であって、
決して正義のヒーローといえるような連中ではない。
言わば、単に自分のやりたいことをやっているだけの身勝手な連中に過ぎない。
この連中が脱獄したがっているのだって、
ここを脱出して地球の平和を守るために戦おうなどと思っているからではなく、
ジェラシットのように単に自分の好きなことをして暮らす生活を取り戻したいからです。

それはスーパー戦隊の戦士たちやギャバンのような真のヒーローといえるような
自らを擲って戦う戦士たちに比べればくだらない連中なのかもしれない。
だがマーベラスはむしろこのくだらない連中の方に親近感を覚えました。
この連中は正義のために戦う義務も負っていないのに、単に自分のやりたいことをやるために
ザンギャックに逆らうという巨大なリスクを負う覚悟があるのです。

決して正義の味方というわけでもなく、単に自分のやりたいことを貫くために
ザンギャックに反旗を翻して戦ってきた自分達と、
ここにいる連中は本質的には似た者同士なのだとマーベラスは感じました。
その目的が公式に多くの人々に認められた「正義」というお墨付きを得ていない分、誰も助けてくれはしない。

実際マーベラスはこの連中のバカ騒ぎを見て、
この先を急ぐ状況で何としてもこの連中を助けてやりたいなどという気分にはなっていません。
自分の身勝手でザンギャックに逆らった以上、独力でザンギャックと戦うしかない。
誰かに助けてもらおうなどというのは虫が良すぎる。
だからマーベラスはこんな連中を助ける気はない。助ける義理など全く無い。

だが、それは自分達と同じ立場なのだとマーベラスは思いました。
自分達もこの宇宙の正義という後ろ盾など無く、
自分のやりたいことをやるという身勝手な目的でザンギャックに逆らってきた以上、
誰からも助けてもらうことは出来ない。

しかし、どうしてそんな損なことをしたのか?
それはもちろん、どうしても掴みたい夢があるからです。
だが、その夢は本当にザンギャックに逆らわなければ掴めない夢だったのか?
例えばバスコはザンギャックと手を組みながら「宇宙最大のお宝」を手に入れようとしていた。
自分もそうすればよかったのではないか?
しかし、そんなことをする自分の姿はマーベラスには想像もつきませんでした。

となると、自分の中では「宇宙最大のお宝」という夢よりも
「ザンギャックに逆らうこと」の方が大事だということになる。
今まで「夢を掴むためにザンギャックに逆らってきた」と思ってきたが、
マーベラスはこのくだらない囚人たちがザンギャックに逆らっている姿を見て、
それはもしかしたら違っていたのかもしれないと思いました。

ジェラシットのような奴の目指すものがザンギャックに逆らってまで求める価値のあるものとは思えないし、
ザンギャックに逆らわなければ手に入らないものとも思えない。
本当はジェラシットも含めて、ここにいるような連中は単にザンギャックが嫌いなのではないか?
ただザンギャックに逆らう理由としてスーパー戦隊のように「正義」というものが掲げられない彼らのような者は、
自分の身勝手な欲望のために戦うという形をとるしかないのではなかろうか?

それはもしかしたら自分達も同じなのかもしれないとマーベラスは思いました。
そもそもマーベラス達が生まれ育った宇宙においては
ザンギャックに逆らうということは「正義」などではないのです。
そんな宇宙でそれでも意地でもザンギャクに従いたくないという者は
「正義」の御墨付きも得ることなく、自分の身勝手な欲望のために戦うという形をとるしかない。
公式に認定された正義でない以上、どんなに内心が澄んでいたとしても、
それはやはり身勝手にやろうとしている欲望に過ぎないのです。

自分はもしかしたらどうしてもザンギャックに逆らいたくて夢を抱いたのかもしれないとマーベラスは思いました。
いや、しかし「宇宙最大のお宝」を掴み取るという夢は決して嘘ではない。
それが本気だからこそここまでその夢を貫くことが出来たのだともマーベラスは思いました。
それにバスコだって結局はザンギャックを裏切った。
やはり「宇宙最大のお宝」はザンギャックに逆らわねば手に入らないものなのだとマーベラスは自分に言い聞かせ、
やはり自分は夢を掴むためにザンギャックに反旗を翻したのだと思い直しました。

ただ、自分達が地球に来て、ザンギャックと戦うことを正義と認識するスーパー戦隊の戦士たちと出会い、
彼らと心を通い合わせてもなお、
それでも決して「正義」を標榜することなく「夢」を掴むためにザンギャックと戦い続けているのは確かでした。
それが誰からも助けてもらったり支持してもらうことも出来ない孤独な戦いだと分かっていてもなお、
自分達はあくまでやりたいことをやるためにザンギャックに逆らっている。
そういう点で、マーベラスは妙にこの場にいる囚人たちに親近感を覚えたのでした。

そうしてマーベラスが目の前の大騒ぎを眺めていると、そこに見張りのゴーミンが1人やって来て、
通路にいるマーベラス達6人が牢屋の中の囚人たちと揉み合っているという
信じがたい光景にバッタリと出くわしたのでした。
驚いて立ち止まったゴーミンは一瞬「ゴ・・・ゴ!?」と絶句し、人形のように体が固まります。
それを見てマーベラス達や囚人たちも呆気にとられ、一瞬フロアーは静寂に包まれ、
そのゴーミンは半ば腰を抜かしながら「・・・ゴ、ゴ、ゴ、ゴ〜!!」と叫びながら駆け去っていきました。

それを呆然と見送ったマーベラス達でしたが、
次の瞬間、警報ベルの音がけたたましく魔空監獄中に鳴り響くと、ようやく我に返って大慌て、
囚人たちともどもパニックとなりました。
遂にマーベラス達は看守たちに発見されてしまったのです。
というか、こんなに騒いでいれば発見されるのも当然です。
やっぱりジェラシットに関わるとロクなことがないと、腕組みしたままマーベラスは溜息をつきました。

とにかく侵入がバレてしまった以上、再び監獄内の何処かに隠れてもすぐに発見されてしまうでしょう。
かといってギャバン救出という目的がある以上、撤退も出来ない。
マーベラス達は前に突き進むしかないのだが、
気掛かりはジェラシットたち、この場にいる囚人たちでした。

アイムもすぐにマーベラスに駆け寄ってきて、じっと黙ってマーベラスの顔を見ます。
このまま自分達がこの場を去って先に進んでいけば、
この牢内に残された囚人の面々はマーベラス一味の侵入を手引きした疑いをかけられて、
どんな酷い目にあわされるか分からない。
もしそんなことになったらそれは自分達の責任ということになる。
そのことをアイムは心配しているのでした。

マーベラスは一途に見つめるアイムの視線からちょっと目を逸らしつつ、
「・・・だから言わんこっちゃねぇ!」と悪態をついてゴーカイサーベルを取り出すと、
いきなりそれを思いっきり振り下ろしてジェラシットの牢の入り口を閉じている錠前を破壊しました。
それを合図にマーベラス一味の面々は改心怪人たちの牢の錠前を一斉に破壊し、
ジェラシットは「お世話になりました!」と頭を下げ、バンキュリアは「呪うわぁ〜!!」と大喜びし、
皆、出入り口が開いた牢から飛び出してきて逃げ出します。
おっちょこちょいのシズカはゲッコウの入った鳥籠を忘れて駆け出し、
ヤツデンワニが「青いお姉ちゃん!鳥忘れてる!」と叫びながらゲッコウの鳥籠とバエの虫籠を抱えて追いかけます。

そうして、警報ベルが相変わらず鳴り響く中、
あっという間に改心怪人たちはそのフロアーから逃げ出していきましたが、
別にマーベラスは彼らを助けたつもりではない。

このまま魔空監獄の外に逃げ出したところで彼らは魔空空間から逃げ出せるわけでもなく、
いずれは捕まることになる。
マーベラス達と一緒でなければ魔空空間から逃げ出すことは出来ないのです。
だがマーベラスは自分達と同行するようには言わなかった。
マーベラス達にはギャバンを救出するために最上階に向かうという目的があり、
それに彼らを連れていくわけにもいかないし、彼らは足手まといになるかもしれない。

だから、ある意味、マーベラスは彼らを見捨てたといえます。
だが、それが冷たいとはマーベラスは思いません。
自分のやりたいことをやるためにザンギャックに逆らうというのは、
誰からも助けてもらうことのない孤独な戦いを選ぶということであり、
誰にも助けてもらわず自分で戦うしかないという覚悟は持って当然だと思ったからです。
それはお互い様なのだとマーベラスは思う。

だが、それでもマーベラスが彼らを牢から出すことだけはしたのは、
彼らと自分達の間に、そのお互い様だと思える、何となく共感を覚えたからであり、
だから彼らに迷惑をかけることだけはしたくなかったからです。
とにかく彼らが逃げ出して、あとは自力で時間を稼いでくれれば、
その間に自分達が魔空監獄をぶっ潰せばいい。
マーベラスはそう決めたのでした。

ジェラシット達が逃げ出したのと入れ替わるように、
フロアーにはゴーミン集団が集まってきてマーベラス達に向かって戦闘態勢をとります。
「こうなりゃ・・・強行突破だ!!」とマーベラスはレンジャーキーを取出し、
5人の仲間もそれに応じてレンジャーキーを構え、「豪快チェンジ!!」と6人はゴーカイジャーに変身、
ゴーミン集団と戦闘に突入していったのでした。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 18:23 | Comment(2) | 海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月14日

海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE 感想その11

さて、ここで一旦舞台は魔空空間から現実世界の方に戻り、
マーベラス一味の6人が魔空空間へ行った後、現実世界に残され、街中に係留されているゴーカイガレオンを
少し離れたビルの上から見上げるバスコとサリーのツーショットとなります。
バスコはサリーの頭に手を乗せてニヤニヤしながらゴーカイガレオンを眺めて
「やっぱりわざわざ飛び込んでいくとはねぇ!バッカじゃなかろうか?」と嘲笑っています。
何を嘲笑っているかというと、それはもちろんマーベラス達のことです。

バスコはマーベラス達にギャバンが魔空監獄に捕らわれているという情報を教えて、
魔空監獄が宇宙最悪の今まで誰も脱獄に成功したことが無い刑務所だと言って煽りました。
ギャバンとマーベラスの関係はバスコにはよく分かりませんが、
とにかくそうすればマーベラスがギャバンを救うために魔空監獄に行くのではないかと期待したのでした。

バスコにも、その罠にマーベラスが確実に引っ掛かるという確信があったわけではない。
罠であることは明白なので、引っ掛からないかもしれない。
しかしマーベラスならば罠と分かっていても行くのではないかという気もしていました。
まぁ引っ掛かってくれる確率は五分五分ぐらいだろうとバスコは思いました。
もし引っ掛からなければ次の作戦を考えればいいだけのことです。

そうして様子を窺っていると、まずマーベラスが公園から1人で体育館へ行ったので、
バスコは作戦は成功したと喜びました。
バスコはマーベラスが1人で魔空空間に行くと予想していたのです。
そうすればゴーカイジャーで最強のマーベラスが欠けた状態でガレオンの守りは手薄になる。
そこを襲えば、自分の力ならばゴーカイジャーの残りの5人ならば倒せるとバスコは考えていました。
ところが、なんとマーベラスが体育館に向かったすぐ後、他の5人も一旦ガレオンに戻った後、
マーベラスを追って体育館に行き、結局6人全員、一緒に魔空空間に入っていったので、
これにはバスコもさすがに驚き呆れました。

これではガレオンは空っぽではないか。
自分がマーベラスを魔空空間に行かせて、その間にガレオンを襲って
マーベラス一味の持つ「大いなる力」を奪おうと企んでいることぐらい当然分かっているはずなのに、
ガレオンを空っぽにして全員で魔空空間に行くとは、ホントにバカではなかろうかとバスコは思いました。
もしかしたら頭に血が昇って罠だということすら気付いていないのか?
もしそうだとしたら度し難い愚か者たちだとバスコは呆れました。

とにかく今が大チャンスなのは間違いない。
「じゃまぁ!この隙に・・・!」とニヤリと笑ってバスコはビルから飛び降り、
サリーと共に下の道路に着地すると、獲物を見るようにガレオンを見上げ、
「ゴーカイガレオンも、レンジャーキーも、貰っちゃいますかぁ!」と張り切って、悠々と歩き出したのでした。

「宇宙最大のお宝」を手に入れるためには全てのレンジャーキーとゴーカイガレオンとナビィが必要なようです。
そしてレンジャーキーには34のスーパー戦隊の「大いなる力」が込められていないといけない。
現在、全てのレンジャーキーとゴーカイガレオンとナビィ、
そして29のスーパー戦隊の「大いなる力」はマーベラス一味の手中にあり、
バスコの手中にあるのは5つのスーパー戦隊の「大いなる力」だけです。
しかし、そのマーベラス一味の持つ「宇宙最大のお宝」を手に入れるために必要なものは全て、
今はガレオンの中にあり、そのガレオンにはマーベラス一味の6人は留守で、無防備な姿を目の前に浮かべている。
今バスコが目の前に浮かぶガレオンに乗り込めば、
「宇宙最大のお宝」を手に入れるために必要なものは全てバスコの手中に揃う。
遂に「宇宙最大のお宝」を手に入れる時が来たと、バスコは胸躍らせ、ガレオンに向かおうとしました。

その瞬間、「ストップ!その先には行かせない!」という男の声が響き、
バスコはギクッとした顔をして立ち止まり、素早く左右に視線を走らせます。
もしやマーベラス達が魔空空間から舞い戻って待ち伏せでもしていたのではないかと危機感を覚えたのでした。
しかし周囲にマーベラス達が居るような気配は無い。
代わりに後方にバイクの走る音が聞こえたので、バスコが焦って振り向くと、
なんとすぐ後ろにバイクが猛スピードで迫ってきており、バスコを跳ね飛ばそうとしています。
大慌てでバスコとサリーは飛び退き、バイクはそのまま猛スピードで通過し、
バスコ達の前、少し離れた場所でサイドターンして急停止しました。

身を翻して着地してそのバイクの方に向き直ったバスコとサリーはバイクに乗っていた相手を睨みます。
さっきの謎の声はこのバイクの相手からのものに違いない。
バイクを運転していた相手は明らかに自分達に敵意があり、自分達のガレオンへの侵入を阻止しようとしていた。
つまり自分達の敵だと認識し、サリーは「ウキ〜!ウキキッ!」と歯を剥いて警戒心を露わに吼えています。
バスコは相手が何者かまず見極めようとし、相手を見据えます。
バイクの色は赤で、それに乗っている者も赤い上着風のバトルスーツのような格好で、下半身は黒いタイツ風であり、
頭部には赤いマスクを被っています。

一瞬マーベラスがゴーカイレッドに変身した姿かとも思いましたが、よく見ると明らかに違うデザインです。
ならばマーベラスが他のスーパー戦隊のレッド戦士に豪快チェンジした姿かと思いきや、
バスコの知る34戦隊のどのレッド戦士にもこのようなデザインの者はいませんでした。
バスコも「赤き海賊団」時代にレンジャーキーは全て目は通していますから、
そのデザインは一通り頭の中に入っています。
そのバスコの知るレンジャーキーの中には、目の前の赤い戦士のような姿をしたものは無かった。

バスコは首を傾げて、バイクの男に向かって「・・・誰?」と問いかけます。
するとバイクに跨っていた赤い戦士は足をくるっと持ち上げて身体を90度回転させ、
バイクにもたれるようにして降りてきて「レッドバスター!」とクールな声で名乗りました。
やはりバスコの知らない声でした。
それにバスコはレッドバスターなどという名の戦士も知らない。

いったい何者なのかと疑問に思ったバスコでしたが、その瞬間、ぞっと背筋に悪寒が走り、あっと思って左を向くと、
バスコのすぐ左に青いスーツの戦士が何時の間にか立っていて、
バスコの方に身体を向けて「ブルーバスター!」と落ち着いた声で名乗ります。
もしやと思ってバスコがすぐさま右に振りむくと、
バスコのすぐ右にも同様に黄色いスーツの戦士が忽然と現れて立っており、
「イエローバスター!」と、これは甲高い女の声で名乗ります。

バスコは驚愕し、サリーも予想外の敵の突然の出現、しかも想定外の肉薄にパニックに陥り、
頭を抱えて目を白黒させています。
ブルーバスターにイエローバスターということは、つまり最初に名乗ったレッドバスターという奴の仲間に違いない。
一体何者なのか一切不明だが、それにしても自分に全く気配も感じさせずにここまで近づくとは、
只者ではないとバスコは思い、「・・・チッ!」と舌打ちすると「フン!」と剣を振るいます。

左右に立つブルーバスターとイエローバスターを一気に撫で斬りにしようという攻撃でしたが、
2人は「はっ!!」と跳び上がり、バスコの剣をかわして空中で回転しました。
同時にバイクにもたれていたレッドバスターがすっと前に出て、バスコに向かって近づきます。
バスコの剣は空を斬り、ブルーバスターとイエローバスターは宙返りをして飛び退き、
バスコの前方に無事に着地、そこにレッドバスターが歩いて来て並び、
3人の謎の戦士は一列に並んでバスコに相対することとなりましたが、
バスコの方も左右にいたどうも只者ではない青と黄色の戦士が自分の剣を避けることぐらいは想定内です。
むしろ2人を肉薄した距離から追い払うための斬撃だったと言っていい。
並び立った3人に向かい、バスコは素早く身構えます。

そのバスコに向けて、ブルーバスターと名乗った戦士は
「悪いことは言わないから、大人しく帰った方がいいんじゃない?」と意外に柔らかい声で言います。
それに続いてイエローバスターも「帰らないと、大変なことになるかもよ?」と言いながら
バスコに向けて銃を構えるようなふざけたポーズをとります。
真ん中に立つレッドバスターは黙ったままです。

バスコは彼らの言葉を聞いて、
やはりこの3人の謎の戦士たちは自分がガレオンを襲おうとしていたことを知った上で、
それを邪魔しに来たのだと確信しました。
自分がこのタイミングでガレオンを襲う可能性があることを知っているとしたら、
それはマーベラス一味の面々しかいない。
つまり、この3人はマーベラス達に頼まれて自分と戦ってガレオンを守るためにここに来たというわけだと
バスコは納得しました。

やはりマーベラス達は魔空監獄行きを煽った自分の言葉が罠だということは
さすがに気付いていたのだと思ったバスコは、
しかしまさかマーベラス達が助っ人を頼むとは予想していませんでした。
しかもこの助っ人、何処の誰だか分からない正体不明の戦士です。
今までマーベラス達をずっと観察していたバスコですが、
マーベラス達の周りにこんな3人組の姿を見かけたことは一度もありませんでした。
赤青黄というカラーリングのチームということはスーパー戦隊っぽいが、
かといって34のスーパー戦隊のどこにもこんな戦士たちはいないはずです。

しかもこの連中は奇妙なことを言ってきているとバスコは思いました。
青と黄色の言葉を聞くと、自分に対して「勝ち目が無いんだから退散しろ」と
上から目線で挑発しているように聞こえる。
よほど自信があるからそういうことを言っているのか、
あるいは怒らせて冷静さを失わせようという挑発なのか、
いずれにせよ、あまり巧い手ではないとバスコは思いました。

対峙すればどの程度の実力なのか、バスコはある程度は分かります。
この3人組はマーベラス達とそう変わらない程度の腕だと思われました。
その程度の腕で、たった3人で自分に勝てるつもりでいるのかとバスコは内心嘲笑いました。
それにマーベラス達から頼まれたのなら、
自分がこんな程度の挑発で冷静さを失うはずがないことも分かっているはずです。
むしろ分かっていなければ準備不足というものです。
つまり、この3人組の上から目線は、自信の表れでもなければ、挑発でもない。
ハッタリに違いないとバスコは思いました。
自信満々の態度を見せて、自分を撤退させようとしているのです。

確かにバスコもガレオンを守る者が誰もいないと思ったからこそ、
こうして悠然とガレオンに向かおうとしていたのであって、こんな邪魔者が現れて計算が狂ったのは確かです。
未知の敵と戦うのは確かにリスクがある。
慎重な性格のバスコとしては、ここはリスクのある戦いは避けて作戦を練り直すというのも、
十分に考慮すべき選択肢でした。
それを見越して、この3人組は威嚇して自分を撤退させようとしているのだろうとバスコは思いましたが、
しかし、こんな千載一遇のチャンスをそう易々と逃したくないという想いもバスコにはあります。

この滅多に無い好機、目の前の邪魔な3人組を蹴散らして一気にガレオンを奪ってしまいたいとバスコは思いました。
それほどバスコの「宇宙最大のお宝」への執念は凄まじく、こんなミエミエのハッタリなどは効果は無い。
むしろハッタリをかまして追い払おうとしているということは、自信の無さの裏返しなのだろうとバスコは思いました。
もしかしたら雰囲気から感じる強さもハッタリで作り出したものかもしれない。
案外この3人組は見かけよりも弱いのかもしれないとも思えました。

あるいはマーベラス達が腕の立つ連中にスーパー戦隊っぽい恰好だけさせて
ハッタリでガレオンの番人をさせているだけなのかもしれない。
スーツ姿のせいで強く見えていただけなのかもしれないと思い、バスコは余裕の笑いを取り戻し、
剣を肩に担いで「何お前ら?・・・知らない奴らだけど、スーパー戦隊の偽物かぁ?」とカマをかけてみました。

すると、イエローバスターと名乗っていた女戦士が偽物呼ばわりされたことにカチンときたようで
「偽物って何よ!」と怒鳴り返し、「あたし達は一番新しい36番目のスーパー戦隊・・・」と言います。
それを引き取るようにしてレッドバスターと名乗った赤い戦士が「特命戦隊!」と言い、
続いて3人で口を揃えて「ゴーバスターズ!!」と、何やらスーパー戦隊っぽい名乗りを上げたのでした。

特命戦隊ということは確かにスーパー戦隊の1つっぽい名前だが、
バスコは「特命戦隊」も「ゴーバスターズ」も、そんな言葉自体聞いたこともない。
だいたい、スーパー戦隊は全部で34個しか無いはずです。
マーベラス達ゴーカイジャーを含めて仮に35個だとしても、36番目など存在しない。
これはますます偽物の自称戦隊っぽくなってきたとバスコは思いました。

だいたいゴーバスターズなんて、「〜レンジャー」や「〜マン」が多い戦隊の名前としては何か変ですし、
よく見ると上半身はジャンパーを着ているだけみたいに見え、
頭部マスクはフルフェイスのヘルメットに変なサングラスをして誤魔化しているように見えます。
バスコはこれはすっかり偽物だと思い、ニヤニヤ笑いながら
「・・・何それ?・・・そんなの知らないけどなぁ・・・?」とからかうように言います。
3人組がインチキ戦隊だと確信したバスコは、相手の強気はハッタリに過ぎないと見なして、
ここは撤退はせず強行突破しようと決めました。

レッドバスターはバスコが退くかどうか黙って見極めていたようですが、
どうやらバスコが退く意思は無いというのを見てとって、
バスコの揶揄するような態度に対して「大丈夫!これから知ることになる・・・」とクールに対応します。
つまり、戦う態勢に入ったのです。
同時にブルーバスターとイエローバスターは自らの左肩の前面を押して、
カメラのようなものを何処からか転送してきて、それを構えて
いきなりバスコ目がけてレーザー光線のようなもので銃撃してきました。

いきなり現れたカメラが武器だと予想していなかったバスコは不意をつかれて少し慌てますが、
剣で飛んでくるレーザー弾を叩き落としつつ怪人態に変身します。
しかしブルーバスターとイエローバスターの銃撃は闇雲な攻撃だったのではなく、
レッドバスターの攻撃の援護射撃であったのでした。

レッドバスターは不意の銃撃に対応するのに集中しているバスコ目がけて
「はっ!」と掛け声をかけて真っ直ぐ突っ込みます。
その速さにバスコは目を見張りました。
飛び出すと同時、瞬時にレッドバスターはバスコの懐に入り込んでいました。
バスコも高速移動を得意とする戦士でしたが、レッドバスターの加速はバスコ以上でした。
自分よりも速い者が存在することに驚いたバスコは慌てて後退し、
追いかけてくるレッドバスターは柄の長いナイフのような武器で斬りつけてきます。
大胆な加速で懐に入って来たかと思えば、ナイフアクションの方はかなり堅実で隙がありません。

バスコも華麗な剣さばきで応戦しますが、
レッドバスターの手堅い攻撃に対して、形勢をひっくり返すほどの展開にはなかなか持ち込むことは出来ません。
バスコはこれはどうやらインチキ戦隊や偽物戦隊の類ではないようだと認識を改めざるを得ませんでした。
レッドバスターはなかなか大した戦闘力の持ち主であり、マーベラスと比べても遜色は無い。
ダッシュ力だけならばマーベラスはおろか自分をも凌駕しており、およそこの世のものとは思えない。
ただ、真に凄いのはレッドバスター単体の力ではなく、他の2人との連係の見事さでした。
これは確かに「本物の戦隊」だとバスコは痛感したのでした。

そうしてバスコとレッドバスターの一騎打ちのような形で斬り合いがやや膠着状態となったところで、
ふとバスコは残り2人はいったいどうしたのかと疑問に思いました。
レッドバスターが自分と密着して動き回る接近戦に突入したから援護射撃は出来なくなったと思われ、
既に最初の銃撃は止んでいました。
ただ、最初の攻撃を見た感じ、このゴーバスターズという戦隊はムダのない連係攻撃を得意としていると思われ、
レッドと自分が戦っている間、援護射撃が止んでからほんの十秒にも満たない時間だが、
その僅かな時間もブルーとイエローが遊んでいるとは到底思えない。

レッドバスターの剣をさばきながらバスコがチラリと先ほどブルーとイエローが立っていた場所を見ると、
既に2人の姿はありません。
いったい何処に行ったのかとバスコは焦り、一旦レッドバスターから距離を置いて態勢を整えようと、
大きく後ろに跳んで逃れました。

すると、それを予想していたかのようにバスコの着地した場所の後ろには既にブルーバスターが先回りしており、
「はああああ!」と激しい気合いを発して待ち構えていました。
そしてバスコが着地して、その重心が完全に地面に乗った瞬間を見定めて、
ブルーバスターは「GO!!」と叫んで拳を地面に叩きつけます。
そうすると、なんとブルーバスターの拳は路面を破壊するほどの威力で地面を大きく揺さぶり、
ちょっとした地震が発生したような状態となりました。
レッドバスターが超加速能力の持ち主である一方、ブルーバスターは人間離れした怪力の持ち主であるようです。

てっきりブルーバスターもレッドバスターと同じ超加速の戦士かと思って警戒していたバスコは
この展開は予想していませんでした。
というか、拳を叩きつけて地面を揺らすような攻撃はそもそも全く想定外です。
そんな怪力の持ち主が存在するはずがない。
しかし、その信じがたいことが起き、ちょうど地面に重心をかけていた瞬間を狙われたバスコは
地面の揺れによって大きくバランスを崩して「お?・・・おおお?」とよろめきました。

そこに、何処からともなく現れたイエローバスターが大きく跳び上がり、
バスコの真上の上空で真っ逆さまの態勢をとって「はあっ!」と叫んで、
さっきのカメラのような銃でバスコを真上から狙い撃ちしてきました。
イエローバスターは驚異的なジャンプ力を持った戦士であるようです。
予想外の角度からの銃撃を崩れた態勢目がけて喰らったバスコは
「ぐっ!?ぐううっ!!」と大慌てで剣を頭上で振り回して銃撃を弾こうとしますが、
さすがにいくらか銃撃を身体に喰らって、ダメージを受けてしまいました。

そのチャンスに更に畳みかけるように、
着地したイエローバスターは「はあっ!」とそのまま今度はナイフ状の武器を構えて真っ直ぐ駆けて突っ込んできて、
ブルーバスターもレッドバスターも同時にナイフを構えて突っ込んできます。
そうして3方向からの同時攻撃を受けたバスコはあっという間に3人に取り囲まれてしまいました。
3人はバスコの周りでめまぐるしくポジションを入れ替えながらナイフの波状攻撃を繰り出し、
バスコを防戦一方にして、包囲網から脱出する隙を与えません。

しかしバスコも華麗な剣さばきで、この目まぐるしく繰り出される3方向からのナイフ攻撃を見事にさばいています。
最初は相手をインチキ戦隊だと思って舐めていた上に、相手の戦術や特殊能力が全く未知であったので、
ゴーバスターズ3人組の鋭い攻撃に浮足立ってしまったバスコですが、
だいぶゴーバスターズとの戦いにも慣れてきて、動きが良くなり、
3対1の状況ですが、さすがにバスコはもう決して劣勢ではありません。

そうして戦いながらバスコは相手の力量を測っていき、
やはり個々の力はゴーカイジャーぐらいのレベルだということは分かってきました。
ならば相手はたった3人ですからバスコが優勢でもよさそうなものですが、
それが何故かなかなかバスコのペースにならないので、バスコも違和感を覚えてきました。
何か3人組の戦い方は妙なのです。

そうして少し焦れてきたバスコは局面を打開するために
やや強引にレッドバスターの首筋に向かって斬撃を繰り出しました。
そんな大振りが当たるわけもないとバスコも計算済です。
わざと大きな動きをして隙を見せて相手の反撃を呼び込んで、
そこに鋭いカウンターを食らわしてやろうと思ったのです。
ところがレッドバスターはバスコの斬撃を避けようとせず、ピタリとバスコの首筋にナイフを寸止めし、
同時にバスコの背後からナイフを繰り出していたブルーバスターもイエローバスターも
バスコの背中ギリギリのところでナイフを寸止めしたのでした。

レッドバスターはバスコの斬撃が誘いであり、本気の一撃ではないことを見切っていたのです。
そして大振りすれば隙が生じてバスコの反撃を喰らうことが分かっているので
ナイフを寸止めしてバスコの動きを封じたのでした。
ブルーバスターにしてもイエローバスターにしてもそれは同じでした。
バスコのカウンター狙いを読んでナイフを寸止めしたのであり、
そうなると逆にバスコは下手に動くと自分が痛い目を見るのでピタリと動きを止めるしかありませんでした。

このゴーバスターズ3人は確かに見事な判断と動きでした。
しかし、これはやはり妙だとバスコは思いました。
確かに慎重で的確な動きでしたが、それはあくまで安全策としてです。
バスコ相手になかなか有効打を与えるチャンスなどあるものではない。
そこまで慎重になっていたら勝つことなど出来ない。
さっきのようなチャンスには、罠だと分かっていても多少思い切ったチャレンジをしなければ延々と勝負はつかない。
マーベラス達ならば罠だと分かっていてもあえて何らかの勝負に出るはずです。

それに比べ、この3人組はまるで自分に勝つ気が無いようにバスコには思えました。
しかし、この3人組がマーベラス達の仲間であるならば、
自分に勝ちたいと思わねばならないはずだと、バスコは不審に思いました。
マーベラス達は自分の持つ5つの「大いなる力」を欲しいと思っているのだから、
自分を倒して「大いなる力」を奪うチャンスを逃さないはず。
ならば、マーベラス達の仲間であるこの3人組も隙を見せれば攻撃してみたくなるはずなのに、
どうしてこの3人組はこんなに淡泊なのだろうかとバスコは不思議に思いました。

そして、どうしてなのか分からないが、この3人は自分を倒そうとはしておらず、
ただガレオンへの侵入阻止のみに専念しているようだとバスコは悟りました。
何故この3人が自分を倒して「大いなる力」を奪うつもりが無いのかはよく分からないが、
これはどうもやりづらいとバスコは思いました。
相手が自分を倒そうとして踏み込んでくるからこそバスコは相手の隙を見つけて攻撃することが出来るのです。
よほどの実力差があるならともかく、この3人組ほどの実力者にひたすら守りに専念されては、
いかにバスコといえどもこの3人を倒したり振り切ったりしてガレオンに侵入して
欲しいものを奪うというのはかなり手間がかかりそうです。

それにこの3人組、戦ってみて分かったが、この手の防御優先の戦いにやたら慣れており、隙がほとんど無い。
そういう点、ゴーカイジャーのような爆発的な攻撃力は欠けるが、
緻密な防御力ではよほどゴーカイジャーよりも手強い。
そしてバスコはこのような敵との戦いはあまり慣れていない。
つまり、この戦い方はゴーバスターズの土俵ということです。

これは非常にマズいとバスコは思いました。
もともとマーベラス達の留守中を狙ってガレオンを奪取しようという作戦であったのですから、
バスコは今回はマーベラス達と正面切って戦うリスクを負うつもりはありませんでした。
しかし、このままゴーバスターズ相手に足止めされてモタモタしていたら、
そのうちにマーベラス達6人が魔空空間から戻ってくるかもしれない。
そうなったらバスコはゴーカイジャー6人とゴーバスターズ3人の合わせて9人と戦う羽目になってしまう。
ゴーバスターズ3人は今は自分を倒すつもりはないようだが、マーベラス達が戻ってきたら気が変わるかもしれない。
というより、最初からマーベラス達が戻ってくるまで自分をここに足止めしておくのが
ゴーバスターズとマーベラス達の共同作戦であったのかもしれないと、バスコは不安になりました。

しかし、それはどうも違うようです。
ゴーバスターズの3人は最初、バスコに撤退を勧め、撤退しないと大変なことになると忠告しました。
あれはハッタリではなく本心だったようです。
ゴーバスターズの3人は最初から防御戦に専念するつもりであり、
いっそバスコが戦わずして撤退してくれれば戦う手間も省けて最善だと思っていたフシがある。
そして、いざ戦い始めたら防御に徹した自分達の壁をバスコが突破するのは困難だということも読んでおり、
そうして千日手のような戦いを続けていれば、
そのうちにマーベラス達が戻ってきて本当にバスコが追い詰められる羽目になることも読み切っていて、
しかもそれを避けるようにバスコに親切に忠告までしてくれていたのです。

つまりゴーバスターズの3人はバスコを倒すつもりもなく、
この場でバスコがマーベラス達に倒されることもあまり望んでいないようなのです。
そのことに気付いてバスコはどうもよく分からなくなってきました。
この3人組はマーベラス達と仲間というわけではなく、マーベラス達と示し合わせているのではないようなのです。
それなのにガレオンのことは必死で守ろうとしている。

いったい何者なんだろうかと、バスコは不思議に思いましたが、
とにかく、ゴーバスターズが何を考えてこんな戦い方をしているのかは不明ながら、
この場でバスコを食い止めるという目的だけに限って言えば、
結果的にはゴーバスターズのこの防御に徹した戦い方は理想的であり、バスコは付け入る隙が無いのでした。
そして、このまま長期戦に引きずり込まれればマーベラス達が戻ってきてバスコは窮地に陥る可能性が高い。

レッドバスターの首筋に剣をピタリと当てて、
自分の首筋にナイフをピタリと当てて動かないレッドバスターの顔をじっと見て、
バスコは「・・・なかなかやるね?」と言いました。
何者なのかよく分からないが、これを全部計算づくでやっているとしたら大したものだと思ったのでした。

一見これでバスコは詰まれたように見えます。
だがバスコはゴーバスターズがこれで勝ったと思うのはまだ甘いとばかりに「・・・でも・・・」と不敵に呟くと、
「サリー!」と声を上げます。
そう、バスコは1人ではない。まだ飼い猿のサリーがいます。
バスコとゴーバスターズのハイレベルの戦いについていけず戦いの当初から呆然としていたサリーですが、
バスコはこうして自分がゴーバスターズ3人を引き付けている間にサリーをガレオンに向かわせようとしたのです。

バスコの見たところ、ゴーバスターズは3人がかりで上手く自分の動きを封じている。
しかしそのままではサリーがガレオンに向かえば止めることは出来ないので、
もしサリーがガレオンに向かえば1人はサリー阻止に向かわねばならなくなる。
そうなるとバスコを阻止するのは2人になり、今よりも無理をしなければバスコを止めることは出来なくなり、
そこに隙が生じることになり、バスコはその隙を突いてゴーバスターズを振り切って
ガレオン奪取に成功出来る可能性が大きくなる。

バスコはそういう計算でした。
この状況でサリーを動かせば、自分かサリーのどちらかはガレオンに到達できると踏んだのです。
ところが、いつもなら元気よく鳴き声を返してくるはずのサリーからの返事が無い。
バスコは戸惑って、「・・・あれ?・・・サリー!?」と再度サリーに呼びかけつつ、
さっきサリーが居たあたりの路上を見てみます。

すると、そこにはなんと果物に囲まれて上機嫌のサリーが座り込んでバナナの皮を剥いています。
その光景に目を疑ったバスコは「・・・サリー?」とまた呼びかけますが、
バナナに夢中のサリーはバスコの声が耳に入らないようで、鼻歌混じりにバナナを頬張ろうとします。
主人の呼びかけを蔑にされたことにバスコはさすがに腹を立て、
今度は「サリィ〜ッ!!」と怒気を込めて怒鳴りつけ、サリーはハッとバスコの方を見て、
主人が怒っていることに気付いて焦り、バナナを落っことします。
しかし、バスコの命じた通りに動けるような状態ではないようです。
サリーはエサの果物に気を取られてしまっている状況で、怒られて怯えつつも食事は諦めきれないようで、
「ウキッ!ウキッ!!」と必死で周囲に転がる果物を拾い集めています。

動物は主人の言いつけを何でも疑うことなく実行するという点で便利ではありますが、
上手くアメとムチを使って動かさなくてはいけないのであって、その調節は非常にデリケートです。
適当にサリーを連れているだけに見えるバスコも、実はサリーの躾けはかなり細かく気を遣っているのです。
それなのに、こんな戦いの最中にあんな大量のエサを与えてしまっては、もうサリーはしばらく使い物にならない。
なんだってまた、あんな場所にあんなたくさんの果物があるんだろうかと、バスコは困惑しました。

すると、バスコの背後でイエローバスターが「エサは代わりにあげといたよ!」と言います。
それを聞いてバスコはどうしてそこにあんなにたくさんの果物があるのか納得しました。
ゴーバスターズ側は最初からサリーが邪魔になることを読んでおり、
戦いが始まってバスコがレッドバスターと斬り合いをしていた十秒ほどの間に
イエローバスターの手でサリーに果物を与えて籠絡していたようなのです。

なんと手回しの良いことかと呆れ、バスコは力無くうなだれて「・・・はぁ・・・」と溜息をつきました。
サリーが使い物にならず、自分1人で防御に徹したゴーバスターズ3人を相手にするのなら膠着状態は避けられない。
となると、このままここで戦い続けるのはリスキーでした。
バスコは戦意を失い、剣を下ろすとフラリと歩き出します。
同時にゴーバスターズの3人もバスコに向けていたナイフを大人しく下ろします。
やはりこの3人はバスコを殺すという意思は無いようです。

いや、バスコだけではない。
サリーのことも邪魔だと思っていたのなら殺してもよかったはずです。
果物で手なずけることが出来たぐらいですから、
その気になればイエローバスターはサリーを殺すことだって出来たはずです。
それなのに殺すのではなく、あえて果物を使って戦闘不能にしただけということは、
この3人はバスコだけでなくサリーもまた殺そうとはしていない。
いや、むしろ殺してはいけないかのようです。

明らかに敵のはずなのに、何故か自分達を殺してはいけないと考えている様子のゴーバスターズについて、
もうバスコは深く考えるのが面倒臭くなり、これ以上関わり合いになるのは止めようと思いました。
こんな得体の知れない不気味な連中とリスキーな戦いをしても、
実はバスコは全て欲しいものが手に入るわけではないのです。

現在マーベラス達は魔空空間に行っているが、
魔空空間に入る際にレンジャーキーを使っていたのをバスコは見ていました。
つまりレンジャーキーは魔空空間と現実世界の間の境界を超える特性があるようなのです。
ということはマーベラス達は魔空空間でもガレオンの宝箱の中のレンジャーキーを取り出して
豪快チェンジすることが出来る。
ならば魔空空間で戦っているであろうマーベラス達は
幾つかのレンジャーキーを宝箱から引き出して持っている可能性が高い。
少なくとも魔空空間行きに使った2つのレンジャーキーは持っているはずです。

そうなると、もしバスコが苦労してゴーバスターズを振り切ってガレオンで宝箱を手に入れたとしても、
そこには全部のレンジャーキーは無い可能性が高い。
しかし「宇宙最大のお宝」を手に入れるためには全部のレンジャーキーが揃っていないといけないのです。
だから、ここで無理して戦ってもバスコはまだ「宇宙最大のお宝」を手に入れるための材料を
全て揃えることは出来ないのです。
まぁそれでもかなりの収穫は見込めるわけだから、簡単に奪えるのなら奪っておかなければ損だと思って
ガレオンに乗り込もうとしたのですが、こんなにリスキーな戦いになるのであれば話は別です。

別に今こんな無理な戦いをして不完全な収穫しか得られないのならば、
ここは一旦仕切り直して、また日を改めて、
今度はマーベラス達が外から宝箱のレンジャーキーを取り出すことが出来ない状況、
すなわちマーベラス達を戦闘不能状態に陥れた上で、ガレオンに乗り込む作戦を考える方がマシだと思い、
バスコは「・・・ここは一旦引き上げようかなぁ・・・?」と愚痴りながら、フラフラと歩いていき、
サリーの居るところまで来ると、いきなり思いっきりサリーの頭をぶん殴ります。
作戦失敗の罰以前に、主人である自分以外の他人にエサで釣られたことへの罰を与えたのでした。
いきなり殴られて「ウキィ〜ッ!?」と悲鳴を上げたサリーは、
そのまま背を向けてスタスタ去っていくバスコを慌てて「ウキッ!ウキ〜ッ!」と追いかけていきました。

そうしてバスコとサリーが去っていくのをじっと見送っていたゴーバスターズの3人は、
ミッション成功を確認して安堵した雰囲気となります。
ブルーバスターは一仕事終えたという風情でリラックスした声を出し
「・・・さてと!・・・あとはゴーカイジャーで十分かな?」と何やら意味深なことを言います。
これに応じてイエローバスターが「・・・強いもんね!」とゴーカイジャーのことを褒め、
「あたし達も負けないように頑張ろう!」と何だか張り切っているので、
彼らがゴーカイジャーの実力を低くは見ておらず、むしろリスペクトしているのが分かります。
そして、このイエローのセリフに対してレッドバスターも「そうだな・・・帰ろう!」と応じて、
残る2人は「うん!」と応え、3人は去っていきました。

どうやらゴーバスターズ3人には何処か帰る場所があり、そこでは彼らなりの戦いが待っているようです。
少なくともバスコとの戦いやザンギャックとの戦いに深く介入しようという意思は無いようです。
そして彼らはゴーカイジャーのことを知っており、しかもその強さをリスペクトしているが、
何故か奇妙なよそよそしい上から目線で「あとはゴーカイジャーで十分」などとも言う。
確かに、このゴーバスターズという連中はどうにも不自然で謎めいています。

さて、このバスコとゴーバスターズの戦いのシーンですが、
これはスーパー戦隊ファンの目線では、恒例のお約束のシーンです。
すなわち、冬の映画枠である「スーパー戦隊祭」恒例の「新戦隊先行お披露目シーン」です。

「スーパー戦隊祭」、つまりVSシリーズの劇場版は毎年1月下旬公開で、
TVシリーズの新戦隊の放送開始が毎年2月中旬ですから、
TVシリーズ放送開始前に「スーパー戦隊祭」を観るために劇場に足を運んだ子供たちに向けて
新戦隊をちょっと前宣伝しておこうという趣向のようです。

まぁ恒例といっても「スーパー戦隊祭」自体がまだ開始されて4年目であり、
劇場版第一弾の2009年1月公開の「ゴーオンジャーVSゲキレンジャー」は
もともと3月発売のVシネマのみの予定で作られていたものですから
2月開始の新戦隊(シンケンジャー)の先行お披露目などの趣向があるはずもなく、
この趣向が定着したのは「スーパー戦隊祭」という体裁で1月の劇場版公開前提で作られるようになった次作
「シンケンジャーVSゴーオンジャー」以降のことです。

そういうわけで2010年1月公開の「シンケンジャーVSゴーオンジャー」では
同年2月開始の新戦隊であるゴセイジャーが1シーンだけ先行登場してその姿をお披露目し、
2011年1月公開の「ゴセイジャーVSシンケンジャー」では
同年2月開始の新戦隊ゴーカイジャーが1シーンだけ先行登場しました。
恒例といっても、この「ゴーカイジャーVSギャバン」に先行する前例はこの2例だけです。

ただ、類似の趣向として、平成仮面ライダーシリーズが9月放送開始に切り替わった「仮面ライダーW」以降は、
それに先行する8月公開のライダー夏映画で新ライダーが
1シーンだけ先行お披露目登場するという趣向が始まっており、
同じ東映の特撮班の仕事ですから、一緒くたにして考察してもいいでしょう。

2009年8月公開の仮面ライダーディケイド劇場版「オールライダーVS大ショッカー」では
同年9月放送開始の新ライダーである仮面ライダーWが1シーン先行登場しており、
2010年8月公開の仮面ライダーW劇場版「運命のガイアメモリ」には
同年9月放送開始の新ライダーである仮面ライダーオーズが1シーン先行登場しており、
2011年8月公開の仮面ライダーオーズ劇場版「将軍と21のコアメダル」には
同年9月放送開始の新ライダーである仮面ライダーフォーゼが1シーン先行登場しています。

ここまでが2012年1月公開の「ゴーカイジャーVSギャバン」に先行する類似例ということになりますが、
ちなみに先日、2012年8月4日に公開された仮面ライダーフォーゼ劇場版「みんなで宇宙キターッ!」にも
9月放送開始予定の新ライダーである仮面ライダーウィザードが1シーン先行登場しました。

この2012年1月公開の「ゴーカイジャーVSギャバン」における
同年2月放送開始の新戦隊ゴーバスターズの先行登場シーンも含めると、
これまでに戦隊で3例、ライダーで4例、この先行登場の趣向は実施されたことになります。
とにかく東映特撮班の作る戦隊映画とライダー映画は近年非常に客入りが好調で、
ここでの先行登場は格好の新番組の前宣伝となるので、今後も恒例となっていくのは間違いないでしょうが、
当然といえば当然ですが、それぞれ細かい趣向は微妙に違います。

これらの新戦隊や新ライダーは映画の物語の中ではだいたい唐突に登場し、
何の予備知識も無く映画を観ていると正体不明の戦士が急に出てきて大暴れするという意味不明のシーンとなりますが、
メイン視聴層である男児たちの多くはだいたいは「てれびくん」や「テレビマガジン」のような児童誌を読んでおり、
そこでは1ヶ月ぐらい前から既に新戦隊や新ライダーの姿などは掲載されていますから、
この先行登場シーンはすんなり受け入れられます。

むしろ、その登場が唐突で映画の物語の本筋からは断絶している方が、
全体のストーリーの中に埋没せずに「前宣伝」であることが強調され、
先行登場シーンを作る意図には叶うといえます。

ただ当然ながら、この先行登場シーンの唐突感が大きくなると映画の本筋と噛み合わず、作品の完成度は落ちます。
まぁあくまで先行登場の趣向だと割り切って観る人が大部分なので、
このシーンが唐突であっても気にする人はいないのであって、あまり気にする必要は無いのですが、
制作側というのはあくまで作品の完成度というのは気にするものですから、
実害が無いからといって、なかなか簡単に割り切れるものでもないのでしょう。
ここら辺は制作側にも異常に割り切るタイプの人と、ある程度の整合性は求めるタイプの人がいるようで、
それぞれの映画や先行登場する新戦士の特性などによってもケースバイケースとも言えます。

例えばディケイド劇場版に登場したWは全く唐突な登場で、
あそこで登場したのは「仮面ライダーW」という記号的存在に過ぎなかったといえますが、
そもそもディケイドの物語世界自体があらゆるライダー世界が同時存在しており、
1つ1つのシーンが同じ世界の連続した物語であるのかどうかさえ不明という稀有な世界観であり、
言わば「違和感」で成立している物語とすら言えますので、
その中で唐突にWが登場して唐突に去っていっても全く違和感というものが無かったといえます。

その後、冬のMOVIE大戦でもディケイドとWは再び競演していますが、
この時も非常に唐突な展開となっており、それでいて違和感があまり感じられなかったのは、
ディケイドという特異なキャラが絡んでいるゆえと思われます。
ただディケイド夏映画に先行登場したWはその登場があまりに唐突であり、
ディケイド自体がリイマジネーション、つまりパラレルワールドの積み重なった世界の物語なので、
そもそもあそこに登場したWが「仮面ライダーW」本編における
左翔太郎とフィリップの変身したWそのものとは到底思えなかったのですが、
MOVIE大戦で一応は同一人物であるという設定に落ち着いたように思えます。

ただMOVIE大戦でディケイドとWが競演したシーンはWは変身後の姿のみの登場であり、
本当にあれが翔太郎とフィリップであったのかどうかイマイチ不明です。
というより、わざとぼかしているのでしょう。
まぁ普通は変身後の姿だけであったとしても同一人物と考えるものですが、
ディケイドの物語というのはTV本編とは別人が変身するパラレルワールドのライダーが大量に登場する物語であり、
そのパラレルライダーは時にオリジナルのライダーと同じ顔、同じ声であったりもするので、
ディケイドが登場する物語の中で登場するWはどれほど本物に見えても別人である疑惑は拭い去れません。

例えば翔太郎とフィリップの変身したWの登場していたMOVIE大戦のWパートから
ディケイドとWの競演するMOVIE大戦パートに切り替わった瞬間に、
既にその場はディケイド時空に呑みこまれて、そこに登場するWは別人に切り替わっている可能性すらある。
まぁ制作側の意図がどうであるのかは不明だが、そんな疑惑が残るのは
ディケイド時空であることに合せて、
やはりお互いが変身後の姿のみで対面しているから、何か別世界の出来事のような印象になるからでしょう。

そういう点を踏まえてなのか、続くライダー先行登場企画である
W劇場版におけるオーズ先行登場場面では、
オーズの変身者である火野映司が生身の姿で最初に登場して変身後のWと絡み、
その後で映司がWの目の前でオーズに変身しています。

そして、WとオーズはディケイドとW同様、冬のMOVIE大戦で再会しますが、
この場面も生身の映司が登場して、更に生身の翔太郎とフィリップと絡んでいます。
当然ディケイドがいないので変なディケイド時空も無いわけで、
ここにおいてWとオーズは同じ世界観の中で共存するライダーということになったといえます。

ただ、このMOVIE大戦においてはWパートの方はTV本編の続編という内容でしたが、
オーズのパートはどうもTV本編とは異なった設定の物語となっており、パラレルワールドと考えられます。
そして、このMOVIE大戦のWとオーズの競演シーンは
Wの夏の劇場版におけるオーズ先行登場シーンの後日談となっており、
つまり、どうやらW劇場版とWオーズMOVIE大戦は同じ物語世界の出来事であって、
その世界にはWとオーズが共存しているのだが、
それら2本の映画を貫く物語世界は必ずしもオーズのTV本編の物語世界とは一致していないと思われます。

ではWのTV本編との関係はどうなのかというと、
W劇場版「運命のガイアメモリ」はWのTV本編と同一世界の出来事とされていますから、
そうなるとWのTV本編はWオーズMOVIE大戦とも同一世界の出来事と思われます。
そして、その世界にはオーズも存在しているのだが、
そのオーズは確かに火野映司が変身するオーズだが、
オーズTV本編のオーズ=火野映司とはパラレルな存在であるようです。

オーズのTV本編にはあくまでライダーはオーズやバースしか存在しておらず、Wは存在しない。
一方、WのTV本編の物語世界にはオーズも存在しており、パラレルな火野映司も存在している。
これはWの物語が「風都」という一都市に限定された狭い物語だから可能となる設定なのでしょう。
風都にはWというライダーが存在し、他の街にはオーズというライダーも存在するという、
そういう解釈が可能な世界観なのです。

いや、それはオーズも同じことで、オーズの物語もまた、割と狭い地域に限定された物語です。
というより、そういう「狭さ」が平成仮面ライダーシリーズの、戦隊とは異なる際立った特徴なのだといえます。
つまりは、戦隊というのは「侵略者との戦い」を大規模に描く物語なのですが、
それに対して平成仮面ライダーシリーズは第1作の「クウガ」によって、
X-FILEのような「怪奇事件の謎解き物語」という性格を与えられ、その伝統を引き継いでいるのです。

その歴史の積み重ねの末に一旦「ディケイド」という異色作を挟んで、
その平成ライダーの基本コンセプトに明確な形で再構築したのが、
風都で起こる様々な怪奇事件の謎を解いて解決していく探偵ライダーの物語であった
「仮面ライダーW」であったのです。
つまり「W」はシリーズの新たな原点と言ってよい作品であり、
それに続く「オーズ」「フォーゼ」も極めて狭い地域での物語であるというコンセプトは徹底されています。

それは単に「W」で再確認されたライダーのコンセプトに忠実であろうという趣旨でしかないのでしょうけれど、
どうやらそのライダーの物語の地域限定性という特性を上手く使って、
「オーズ」「フォーゼ」個々のTV本編とは別に並行して、
夏映画とMOVIE大戦限定で「W」本編と繋がった一貫した物語世界を紡いでいっているように思えます。
それは「風都限定の探偵ライダー」という極めてエピソード重視で、
あらゆるキャラとの競演が容易であるという仮面ライダーWの設定が優れているゆえでしょう。

例えばオーズの夏の劇場版においてはフォーゼがTV本編に先駆けて先行登場しましたが、
そこではフォーゼの変身者である如月弦太郎が生身でも登場し、
映司の変身したオーズと顔を合わせていますが、
このオーズの夏の劇場版はオーズTV本編とは微妙に違う、パラレルな世界の物語のようです。
そしてオーズとフォーゼの冬のMOVIE大戦では、この夏映画の出会いから数ヶ月を経て弦太郎と映司が再会し、
更にそこに風都からやって来たWの翔太郎とフィリップも加わって、4人で共闘することになります。

このMOVIE大戦におけるオーズのパートはオーズTV本編の最終話の後日談的な内容になっていますが、
夏映画での弦太郎との遣り取りや、前年夏映画での翔太郎やフィリップとの遣り取りとの連続性も認められるので、
TV本編最終話の映司とアンクの別れと極めて似た展開を経たパラレルワールドであり、
あくまで「W」の世界観がベースになっていると思われます。

また、オーズTV本編では「仮面ライダー」という概念が劇中で語られることはほとんど無いのに対して、
W夏映画に登場した映司は「仮面ライダー」というものを知っており、
このオーズとフォーゼのMOVIE大戦における映司も「仮面ライダー」について言及しています。
そもそもこのオーズとフォーゼのMOVIE大戦には伝説の7人ライダーとして1号からストロンガーまでが登場しており、
都市伝説としての「仮面ライダー」が存在する「W」TV本編の世界観と一致していますが、
一方、「オーズ」TV本編の世界観では「仮面ライダー」の都市伝説は存在しません。

一方、「フォーゼ」TV本編の世界観は「仮面ライダー」の都市伝説が存在しており、
このMOVIE大戦の世界観と一致しています。
しかもこのMOVIE大戦のフォーゼのパートはフォーゼTV本編と酷似した世界観であり、
TV本編の後のエピソードにこのMOVIE大戦の後日談的な内容も幾つかあります。

そうなると、このMOVIE大戦と繋がっているオーズ夏映画での映司と弦太郎の遣り取りも、
TV本編オリジナルと同一の弦太郎とパラレル映司の遣り取りであった可能性もあり、
オーズ夏映画の物語がフォーゼTV本編と同一世界の出来事だという解釈も有り得る。
そして、それが一連の劇場版の世界と「W」TV本編とも同一世界であるという考え方も成り立つ。

ただ、オーズ夏映画に先行登場した弦太郎はフォーゼTV本編との整合性は確認できない存在であるので、
やはり厳密にはオーズ夏映画はフォーゼTV本編とは異なった世界と考えるべきであろうと思われ、
そうなるとオーズとフォーゼのMOVIE大戦における弦太郎もオーズ夏映画との繋がりがある以上、
フォーゼTV本編と極めて似たパラレルワールドの存在と考えた方がいいでしょう。

やはりフォーゼTV本編にはオーズやWや7人ライダーなど他のライダーが登場しない以上、
MOVIE大戦とTV本編が全く同じ世界の物語と考えるのは無理があり、
更にフォーゼは先日公開された夏映画も
TV本編の何処にも挿入できないような微妙に違った世界の物語のようであるので、
先行登場のオーズ夏映画だけがフォーゼTV本編と繋がっているとは考えづらい。
ただフォーゼ夏映画はオーズとフォーゼのMOVIE大戦の後日談的な部分を含んでいます。

つまり、どうやらやはり個々のTV本編とは別に、
2010年のW夏映画から2012年のフォーゼ夏映画までの夏と冬のライダー映画は繋がった1つの物語世界であり、
それは「仮面ライダー」の都市伝説が存在する世界であり、
「W」のTV本編と連続性があると推測される世界のようです。

一方、ディケイドとWが競演している2009年のディケイド夏映画と、同年冬のMOVIE大戦に関しては
それとは異なったディケイドの世界観の中の出来事と思われ、
その中でMOVIE大戦のWパート(ビギンズナイト)だけは「W」TV本編と繋がった世界ではないかと思えます。

これらのライダー映画に関する世界観の連続性については、あくまで推測に過ぎませんが、
ここで長々と脱線してライダー映画のことを考察したのはどうしてなのかというと、
少なくともW夏映画からフォーゼ夏映画までの新ライダー先行登場シーンや新旧主役ライダー同士の競演シーンは、
単に先行登場による前宣伝のみが目的なのではなく、
「一貫した世界観を示すため」というコンセプトがあるように思えるということです。

一貫した世界観の中の物語であるということを示すためという目的があるからこそ、
先行登場する新ライダーは現役ライダーと出会ってセリフの遣り取りをするのであり、
変身前の素顔も見せるのではないかと思えるのです。
まぁフォーゼ夏映画に先行登場したウィザードは素顔は見せなかったが、
それでもちゃんとフォーゼと絡んで「ウィザード」と名乗ってはいます。

それに比べて「スーパー戦隊祭」における新戦隊の先行登場の場合に特徴的なのは、
新戦隊は決して現役戦隊を含む他の戦隊とは絡まないということです。
これはつまり、W以降のライダーの場合と違って、
戦隊映画や戦隊TV本編の一貫した世界観を示そうという意図が全く無く、
本当に純粋に単なる前宣伝用の場面だと割り切って作っているということです。

戦隊の場合、個々の作品のTV本編はもちろんそれぞれ別個の独立した物語世界を持っており、
シリーズの異なる作品にまたがる一貫した世界観は存在しない。
それはもちろん個別の戦隊の夏映画においても同様です。
そして「スーパー戦隊祭」で描かれている「VSシリーズ」の世界においては、
2つの戦隊(時には5つほどの戦隊)が競演はするが、
それはあくまでそれぞれの戦隊のTV本編とは別個のパラレルワールドの出来事と思われ、
また、「VSシリーズ」の個々の作品同士の世界観に繋がりはありません。

例えば「シンケンジャーVSゴーオンジャー」は
「シンケンジャー」TV本編のどのエピソードとどのエピソードの間に挿入される出来事なのかハッキリとはしておらず、
「シンケンジャー」TV本編のエピソードに何ら影響は与えていません。

また、「シンケンジャーVSゴーオンジャー」にも「ゴセイジャーVSシンケンジャー」にも、
2つの「スーパー戦隊祭」に共にシンケンジャーという戦隊は登場しますが、
「シンケンジャーVSゴーオンジャー」に登場したシンケンジャーと
「ゴセイジャーVSシンケンジャー」に登場したシンケンジャーの間に直接の連続性は描写されていません。
「シンケンジャーVSゴーオンジャー」のシンケンジャーは「シンケンジャー」TV本編のパラレルな存在と思われ、
「ゴセイジャーVSシンケンジャー」のシンケンジャーは「シンケンジャー」TV本編の後日談的な存在のように
描かれていますが、「シンケンジャー」TV本編との直接的なリンクがあるわけではないので、
あくまで酷似した設定のパラレルワールドという解釈も可能です。

つまりは、仮面ライダーの場合と違ってスーパー戦隊の場合は、
個々のTV本編はもちろん、夏映画やVSシリーズなどもそれぞれ1つ1つが
別個の物語として作られていると考えた方が良さそうです。

例えば「シンケンジャーVSゴーオンジャー」においてはゴセイジャーが先行登場し、
ここで登場したゴセイジャーはシンケンジャーやゴーオンジャーのことを知っているかのような態度をとっていますが、
「ゴセイジャーVSシンケンジャー」においてシンケンジャーに出会ったゴセイジャーの面々は、
一応前もってシンケンジャーという戦隊の存在は知ってはいるものの、
シンケンジャーの個々のメンバーのことを全く知らず、
「シンケンジャーVSゴーオンジャー」の時に陰からシンケンジャーの戦いを見守っていたかのような様子は
微塵も見られません。
そしてもちろん「ゴセイジャー」TV本編に出てくるゴセイジャーはシンケンジャーのことなど全く知りません。

つまり「シンケンジャーVSゴーオンジャー」も「ゴセイジャー」TV本編も「シンケンジャーVSゴセイジャー」も、
ゴセイジャーの登場する各作品はそれぞれが全く個別の世界観の物語となっているのです。
スーパー戦隊シリーズはこのように作品と作品の世界観の繋がりを排除しがちであり、
それに反してW以降の仮面ライダーが少なくとも劇場版に関しては世界観の繋がりをいくらか気を遣っているという、
この差は何処に起源があるのかというと、
それはおそらく「仮面ライダー」の物語世界がもともと昭和ライダーの頃から
一貫した世界観において描かれがちであり、
それに対してスーパー戦隊の場合はもともと個々の作品をまとめて一貫した世界観で描くという
経験が無かったからでしょう。

そういうわけで、「スーパー戦隊祭」における新戦隊の先行登場シーンも
一貫した世界観との整合性など考える必要は無く、
単なる前宣伝と割り切って、半ば作業的に前後の脈絡と切り離して唐突に登場させるだけでよかった。
その場合、ライダーのように下手に現行戦隊と接触させてセリフの遣り取りなどをさせると、
もともと整合性など考えていない分の粗が見えてしまうし、
一貫した世界観が無いのならそもそも両者を接触させる必要性自体が無いので、
唐突に新戦隊だけが登場する場面となるのです。

ただ、新戦隊だけが登場してもあまり効果的な先行お披露目にならないのであって、
戦う新ヒーローのカッコよさを先行して視聴者の子供たちに印象づけるためには、
やはりカッコよく戦う姿を見せないといけない。
つまり戦う相手が必要となります。
これは新ライダー先行登場の場合も同様であり、
先行登場シーンは戦隊もライダーも共にバトルアクションシーンとなっています。

その戦う相手ですが、ライダーの方から見ていくと、
まずディケイド夏映画「オールライダー対大ショッカー」におけるW先行登場シーンでは、
いきなりバイクで乗り付けたWが映画限定の敵ボス格のシャドームーンをボコボコにするという趣向になっており、
かなり新ライダーであるWの強さを強調した演出になっています。
しかしその一方でディケイドや他のライダーが力を合わせても苦戦したシャドームーンにWが圧勝するという
ストーリー的な整合性の無さは際立ちますが、
ディケイド時空では何だかそういうことも含めて何でもアリなので、まぁいいような気もします。

その点、非常に綺麗に話のまとまっている名作であるW夏映画「運命のガイアメモリ」におけるオーズ先行登場シーンは、
映画限定の敵軍団であるNEVERの大将であるエターナルと戦いに行こうとするWの行く手を
NEVERの副将ルナ・ドーパントが遮る場面でオーズがいきなり登場し、
ルナ・ドーパントを引き受けてWを先に行かせ、見事に強敵ルナ・ドーパントを倒すという場面になっています。

ディケイド夏映画におけるWはシャドームーンに直接トドメまでは刺さなかったのですが、
W夏映画のオーズは敵の副将を完全に倒してしまっていますので、強さ演出としてはより強調されており、
敵大将はちゃんとWに残しておいて最終決戦前の最大の邪魔者の排除だけするという、
ストーリーにしっかり組み込まれた使われ方をしています。

そしてオーズ夏映画「将軍と21のコアメダル」におけるフォーゼ先行登場シーンは、
敵のボスであるガラとオーズが対峙している場面に突如フォーゼが乱入して、
オーズと共にガラを圧倒するという展開となっています。

但し、フォーゼ乱入直前のシーンでオーズの働きかけによってガラが憑依していた女性がガラからの離脱に成功して
ガラは急速に弱体化しており、
しかもフォーゼ主導の戦い方ではあったがオーズの力も借りた戦い方で弱体化したガラを圧倒しただけであるので
フォーゼの強さ演出としてはW夏映画のオーズほどではない。
ガラもトドメは刺されておらず、
フォーゼが去った後の展開の中でガラは復活し強化して最終形態となっています。
しかし、そうはいっても劇場版の敵ラスボスを圧倒する戦いぶりは爽快であり、
新ライダーの強さ演出としては十分でしょう。

これらディケイド夏映画、W夏映画、オーズ夏映画の3例の新ライダー先行登場シーンというのは全て、
劇場版のストーリー内のラストバトルの流れの中での新ライダー登場となっています。
最高にバトルが盛り上がったところで新ライダーが颯爽と登場する方がより印象的だからでしょう。

その点で異色なのはフォーゼ夏映画におけるウィザード先行登場シーンで、
物語中盤でアリシア連邦の工作員インガ・ブリンクが繰り出した
ホロスコープスの12のエネルギー体が弦太郎たちの宇宙船の発進を邪魔しようとしている場面で、
ホロスコープスの排除をするフォーゼとメテオの前に突然ウィザードが現れて
ホロスコープス残り3体を引き受けてフォーゼやメテオを宇宙に行かせるという場面となっています。

ここでウィザードはホロスコープス3体を圧倒して撃破します。
このホロスコープスはあくまでエネルギー体であってオリジナルではないので、その分弱いのですが、
それでもこの3体はサジタリウス、ヴァルゴ、ジェミニという、
ホロスコープスの中でもかなり精強な部類のものであり、
しかもやはりホロスコープスはTV本編の敵幹部軍団ですから、
いくら擬似体とはいってもそれを圧倒するという演出は強さ演出としては合格点といえます。
また、あくまで倒されるホロスコープスが擬似体であるということで
終盤の展開直前のTV本編への悪影響もほとんど無いといえます。

ただ、このウィザード先行登場シーンは映画のストーリーの中盤であり、
この後ストーリーにどんでん返しが生じてしまうので、
結果的にウィザードの行動は間違っていたということになってしまうという問題点はあります。
先行登場をいつものようにラストバトルの中に組み込めばそういう問題は生じなかったといえますが、
何せフォーゼ夏映画のラストバトルの場所は人工衛星の内部および月面であり、
ウィザードが通りすがるわけにはいかない場所ばかりです。

一連の新ライダー先行登場シーンに共通したパターンは、
新ライダーがたまたまそこを「通りすがる」ということです。
これはディケイドの「通りすがりの仮面ライダー」というコンセプトから来ているのか、
あるいは地域限定性の強いライダーがたまたま自分の物語世界の担当地域の外に出てきたという
イメージなのかよく分かりませんが、とにかく新ライダーはふらっとその場を通りすがるのであって、
いくらウィザードでも人工衛星の中や月面を通りすがるというのは不自然です。
だから、どうしてもフォーゼ達が宇宙に飛び立つ前にウィザードが通りすがる必要があり、
物語中盤の先行登場シーンとなったといえます。

そういう特殊事情が無く、純粋に前宣伝優先の考え方に沿うならば、
本来は先行登場シーンはラストバトル内である方がよりカタルシスがあり、効果的だといえます。
スーパー戦隊祭における新戦隊の先行登場シーンも同様であり、
「シンケンジャーVSゴーオンジャー」に先行登場したゴセイジャーは、
物語終盤にシンケンジャーとゴーオンジャーが遂に勢揃いして
外道衆とガイアーク連合軍に対して反転攻勢に出てラストバトルに突入した後、
外道衆の別動隊として唐突に行動を開始したアクマロ、腑破十臓、薄皮大夫の3人の前に突如出現し、
この3人を圧倒して敗走させました。

この際、ゴセイジャーはシンケンジャーともゴーオンジャーとも顔を合わせておらず、
シンケンジャーの仲間である提灯のダイゴヨウにたまたま戦っている姿を目撃されて慌てて口止めしていますが、
どうして他の戦隊に姿を見られてはいけないのか、どうして口止めしなければいけなかったのか、
その明確な理由はこの映画内でもゴセイジャーTV本編でも、
後にシンケンジャーと競演した「ゴセイジャーVSシンケンジャー」においても、全く描かれることはありませんでした。

つまりは物語的に意味のある理由などは無く、
「スーパー戦隊シリーズの場合はライダーとは違って作品を超えた世界観の繋がりは無いので、
あえて新戦隊の先行登場シーンは現役戦隊と絡ませない」という制作方針を
暗に強調した演出と考えればいいでしょう。

そして、ここでゴセイジャーと戦ったアクマロ、十臓、大夫の3人は
シンケンジャーTV本編の敵組織である外道衆の幹部クラスの実力者たちであり、
それを圧倒することで新戦隊ゴセイジャーの強さを強調する演出となっています。

ただ、本来はこの3人とも、個々がシンケンジャーが束になってかかっても苦戦するほどの相手ですので、
それを3人まとめて圧倒するゴセイジャーの強さがややインフレを起こしており整合性が少し破綻していますが、
あくまで先行登場シーンにおける新戦隊補正と考えればよく、
つまりはこの先行登場シーンは前後の文脈にあまり関係無くあまりに唐突な展開で始まるため、
あくまで前宣伝のためのものと割り切って作られたのだということが
見ている側にも何となく分かるようになっているので、これはこれでいいのです。

ただ1つ問題なのはゴセイジャーにあまりにも簡単に圧倒されてしまった3人が
TV本編の重要な敵キャラであることから、
この3人が弱いイメージで捉えられてしまってTV本編の方の緊張感を削ぐという点です。

フォーゼ夏映画におけるウィザードのホロスコープス3体撃破シーンも
そういう問題点が生じる可能性はあったシーンですが、
あそこではその3体はあくまでオリジナルではなくエネルギー体だということで問題を解消しています。

一方、この「シンケンジャーVSゴーオンジャー」におけるアクマロ達の撃破問題は、
これは実は全然問題はありません。
何故なら、この「シンケンジャーVSゴーオンジャー」が公開された1月30日の時点で
「シンケンジャー」TV本編は第四十七幕まで既に放映済であり、
この時点でとっくの昔にアクマロは倒されて退場しており、
十臓も第四十七幕で倒され、大夫も第四十七幕のラストシーンで斬られて瀕死の状態となっており、
映画公開日翌日の第四十八幕冒頭で大夫も退場するからです。
つまり、今さらこの映画でこの3人が弱体化した印象を与えたとしても、
本編視聴にはほとんど悪影響を与えることはないようになっているのです。

この「シンケンジャーVSゴーオンジャー」におけるゴセイジャー先行登場シーンはこのように、
あくまで新戦隊の前宣伝という目的のみに特化して割り切って作るというコンセプトを貫いており、
その方針は翌年の「ゴセイジャーVSシンケンジャー」におけるゴーカイジャーの先行登場シーンでも、
ほぼそのまま踏襲されています。

物語終盤にゴセイジャーとシンケンジャーがようやく全員揃い、
血祭のブレドラン率いる軍団とのラストバトルに突入した後、
外道衆の別動隊として唐突に行動を開始した外道衆幹部のシタリの前にゴーカイジャーが突如出現して、
シタリ率いる外道衆部隊を全滅させ、シタリを倒してしまうという展開は、
「シンケンジャーVSゴーオンジャー」のゴセイジャー先行登場シーンとほぼ同じフォーマットと言っていいでしょう。

ゴーカイジャーがゴセイジャーやシンケンジャーと顔を合わすことを避けており、
たまたま戦いを目撃したダイゴヨウがゴーカイジャーに口止めされるところまで
「シンケンジャーVSゴーオンジャー」の際とそっくりであり、
わざと同一フォーマットをなぞる演出であるのは明白です。

「シンケンジャー」TV本編の外道衆最高幹部であったシタリが
「シンケンジャーVSゴーオンジャー」のアクマロ達と違ってここで完全に倒されてしまうのも、
単に「シンケンジャー」TV本編が既に終了しているからという理由に過ぎないでしょう。

このように「ゴセイジャーVSシンケンジャー」におけるゴーカイジャー先行登場シーンは、
あくまで「シンケンジャーVSゴーオンジャー」において確立された
スーパー戦隊的な新戦隊先行登場シーンの前宣伝特化フォーマットをなぞっただけであり、
それ以上の深い意味など込められてはいなかったはずです。
少なくとも「ゴセイジャーVSシンケンジャー」の制作陣はそういう認識でこのシーンを作ったはずです。

ところが、この「ゴセイジャーVSシンケンジャー」におけるゴーカイジャー先行登場シーンはその後、
「ゴーカイジャー」TV本編の第40話において、全く違う解釈を施されて回収されることとなったのです。

すなわち、元タイムイエローのドモンの依頼でタイムスリップしたゴーカイジャーが
2010年10月のゴセイジャー&シンケンジャー連合軍と血祭のブレドラン軍団との戦いの場面に出くわして、
そこで遭遇したシタリ部隊と戦闘を繰り広げて全滅させたという出来事が第40話で描かれたのでした。
ここではゴーカイジャーがダイゴヨウに遭遇する場面までは描かれていませんが、
映画のシーンの方はゴーカイジャーがドモンから過去の人間にむやみに接触しないように言われていたので、
それで自分達の存在をシンケンジャーに知られるのを恐れてダイゴヨウに口止めしたのだと解釈可能になっています。

しかし、どうして第40話においてこんな内容が描かれたのかというと、
タイムレンジャー篇だからタイムスリップをネタにしたかったとか、
後のカクレンジャー篇に向けての伏線という意味合いもあってのことと思えますが、
それにしてもわざわざ「ゴセイジャーVSシンケンジャー」の物語とリンクさせる必要が
どうしてあったのだろうかという疑問は残ります。
しかし、実はその必要は大アリであり、
これは「ゴーカイジャー」という物語において避けて通ることが出来ない問題であったのです。

先に「スーパー戦隊というものはライダーと違って個々の作品を超えた世界観の繋がりは無い」と言いましたが、
「ゴーカイジャー」という作品は当然、その原則から外れた作品であるわけです。
「ゴーカイジャー」だけはスーパー戦隊シリーズ歴代作品全てと繋がった一貫した物語世界を持っています。
それは各作品のTV本編だけではなく、
「ボウケンジャーVSスーパー戦隊」のオリジナルキャラであるアカレッドや、
「ゲキレンジャーVSボウケンジャー」のオリジナルキャラであるパチャカマックや、
「シンケンジャーVSゴーオンジャー」のオリジナルキャラであるバッチード、
「ゴセイジャーVSシンケンジャー」のオリジナルキャラである血祭のブレドランなども
「ゴーカイジャー」物語中に登場している以上、
「ゴーカイジャー」の物語は「VSシリーズ」の各作品とも繋がった物語世界を持っているといえます。

となると、スーパー戦隊における新戦隊の先行登場シーンは
「個々の作品同士の世界観の繋がりは無い」という考え方を前提にして前宣伝用映像と割り切って作られているのだが、
「ゴーカイジャー」の場合だけはその原則は通用しないということになる。
一連の繋がった世界に35戦隊が存在しているのなら、唐突で不自然な先行登場シーンを作るわけにはいかない。
それなりの脈絡のある先行登場シーンとしなければならない。

そうなると、むしろライダー夏映画における新ライダーの先行登場シーンに近いイメージとなりますが、
「ゴーカイジャー」の場合はライダーの場合よりも更に不自然さは排除されなければいけなくなります。
何故なら、ライダーは劇場版に限定しての一貫した世界観を維持すればいいので
各作品のTV本編との整合性までは気にしなくていいのだが、
「ゴーカイジャー」の場合、そもそも「ゴーカイジャー」TV本編が他の34戦隊のTV本編もVSシリーズも含めて
全てと一貫した世界観を持っており、
その「ゴーカイジャー」TV本編と「ゴーカイジャー」の全ての劇場版は一貫した世界の物語だからです。

だからゴーカイジャーの絡む作品における先行登場シーンは、
「前宣伝映像なんだから唐突な感じで作っておけばいい」というわけにはいかない。
ちゃんと「ゴーカイジャー」の物語との整合性があり、
新戦隊の登場はストーリー上の脈絡のある形としなければならないのです。

そう考えると、この「ゴセイジャーVSシンケンジャー」におけるゴーカイジャーの先行登場シーンは大問題です。
この「ゴセイジャーVSシンケンジャー」も広義では
「ゴーカイジャー」の大きな物語の中の1つのパーツであることになるからです。
そうなると「ゴーカイジャー」の物語の中に、狭義の「ゴーカイジャー」本編におけるゴーカイジャーと、
「ゴセイジャーVSシンケンジャー」に1シーンだけ登場するゴーカイジャーという、
2つのゴーカイジャーが登場することになってしまうのです。

その異常事態を解決するためには、この2つのゴーカイジャーを1つに繋げなければならない。
だが、「ゴーカイジャー」の場合、ライダー劇場版シリーズにおけるWやオーズやフォーゼの同時存在や、
ディケイド時空のような解決法は選べない。
何故なら、「ゴーカイジャー」物語世界における35戦隊の作品世界の同時存在というのは、
同時進行のものではなく、年代順に並べられているからです。
つまりゴーカイジャーの物語世界から見て、34戦隊の物語世界は過ぎ去った過去の出来事なのです。
当然、「ゴセイジャーVSシンケンジャー」の物語もゴーカイジャーの存在する現在から見れば、
ゴーカイジャーが地球にやって来る前の過去の出来事であり、
そこに登場するゴーカイジャーは過去の人物になるのです。

ゴーカイジャーがまだ地球に来ていなかった頃に
ゴーカイジャーが地球におけるゴセイジャーやシンケンジャーの戦いの場に現れていたという、
この不可解な出来事を整合性のあるものとして、
この現在と過去の2つのゴーカイジャーを1つに繋げる手段があるとするなら、
それはタイムスリップしか有り得ない。

だから、第40話のタイムレンジャー篇で後のカクレンジャー篇のための仕込みをしつつ、
同時にタイムスリップという手段を使って、
この「ゴセイジャーVSシンケンジャー」におけるゴーカイジャーの問題を解決する必要が生じたわけです。
タイムスリップという手法によって
ゴーカイジャーの先行登場シーンは「ゴーカイジャー」の物語に必須の整合性を獲得したのです。

このように「ゴーカイジャー」の物語においては、
スーパー戦隊シリーズのTV本編や劇場版、Vシネマなどの全ての作品は一貫した物語世界を形成しており、
しかもそれは年代順の縦の時系列に配置されています。
それゆえ、実質的なVSシリーズ作品であった春映画「199ヒーロー大決戦」においても
ゴーカイジャーとゴセイジャーの出会いはしっかりとした脈絡で描かれています。

通常のVSシリーズ作品の場合、2つの戦隊は背景説明も無く唐突に出会うのですが、
「199ヒーロー大決戦」の物語世界は「ゴーカイジャー」TV本編とも、
その数年前の過去として設定された「ゴセイジャー」TV本編ともしっかり繋がっており、
両戦隊はそれぞれの物語の脈絡の結果、必然的に出会い、
そしてこの「199ヒーロー大決戦」の結末はそのまま「ゴーカイジャー」TV本編の
その後のストーリーに繋がっていきます。

その他、「ゴーカイジャー」TV本編に登場する様々なスーパー戦隊も、
ゴーカイジャーの現在の物語から見て過去の出来事と設定された各戦隊のTV本編の物語から繋がった存在として登場し、
それぞれのTV本編の後日談的なエピソードが展開されます。

つまり「ゴーカイジャー」の物語時空では、
全てのスーパー戦隊の物語は縦軸の時間軸に
1番目の戦隊であるゴレンジャーから35番目の戦隊であるゴーカイジャーまでが並んで存在しているのです。

そんなことは「ゴーカイジャー」という物語の基本認識であると思われるかもしれない。
だが、これが「ゴーカイジャー」の物語内におけるあらゆる戦隊に適用される絶対的な大原則であると
改めて認識するならば、それは「36番目のスーパー戦隊」にも適用されるということに気付くことが出来ます。

この「ゴーカイジャーVSギャバン」におけるゴーバスターズ先行登場シーンは、
「スーパー戦隊祭」の新戦隊先行登場シーンの過去2例と同様、
新戦隊のゴーバスターズは変身後の姿だけで登場し、
現役戦隊のゴーカイジャーとは出会うことは無く、出会うことは回避している様子も見受けられ、
突然出現して強い敵キャラであるバスコと戦って勝利して去っていきます。

これだけ見ると、過去2例のフォーマットを踏襲しているようにも見えますが、
過去2例と異なる部分も多い。
まずゴーバスターズの登場が過去2例のようにラストバトル突入後ではなく物語中盤である点です。
そういう点、フォーゼ夏映画のウィザード先行登場シーンと似ているようにも見えるが、
その意味合いは全然違います。

フォーゼ夏映画のウィザードの場合は、ラストバトルが延々と地球外でのみ繰り広げられるという物語の展開上、
あの中盤の場面にしかウィザードを登場させることが出来なかったという事情があるのですが、
「ゴーカイジャーVSギャバン」の場合はラストバトルは
魔空空間から戻ってきてから現実世界の地球の普通の場所で繰り広げられるので、
ここにゴーバスターズを先行登場させることは十分に可能なはずなのです。
それなのにそのようにしなかったということは、
この中盤の場面にゴーバスターズを登場させることに意義があったということになります。

前宣伝という意味ではこの中盤で登場させる意義は特にはありません。
むしろ前宣伝という意味ではラストバトルの時の方が良いのではないかと思える。
だから、ここでゴーバスターズが登場しているのはストーリー上での必然性によるものです。

また、ゴーバスターズの戦う相手がバスコであるというのも
過去の新戦隊先行登場フォーマットとは異なった趣となっています。
これまでは「シンケンジャーVSゴーオンジャー」におけるゴセイジャーも、
「ゴセイジャーVSシンケンジャー」におけるゴーカイジャーも、敵を圧倒しています。
ゴーカイジャーはシタリを完全に倒していますし、
ゴセイジャーはアクマロと十臓と大夫を倒しはしませんでしたが完全に圧倒していました。
なんといっても、ゴーカイジャーもゴセイジャーもちゃんと派手な必殺技や得意技を見せています。
前宣伝というものはそうでなくてはいけません。
これは新ライダー先行登場シーンについても同じで、みんなちゃんと得意技を存分に魅せて強敵を圧倒しています。

ところが、この「ゴーカイジャーVSギャバン」におけるゴーバスターズは、
「ゴーバスターズ」本編が既に開始されている現時点から見て、あまり能力を発揮してはいない。
特徴的な特殊能力は魅せていますが、敵を倒すような技を出してはいない。
いや、これは「ゴーバスターズ」本編を見ていなくても分かることです。
この先行登場シーンにおけるゴーバスターズは本気でバスコを倒そうとしていないのです。
その結果、もちろんバスコを倒すどころか追い詰めることすら出来ていないわけで、
早々と戦術的な不利を悟ったバスコがほぼ無傷で撤退してくれたので勝利しましたが、
前宣伝映像としては極めて地味になってしまっているといえます。

どうしてゴーバスターズはバスコを倒そうとしなかったのかというと、
それはもちろん「ゴーカイジャー」の物語的には
ここでバスコがゴーバスターズに倒されてしまうわけにはいかないからです。
バスコにはこの後のクライマックス篇でマーベラス一味と最後の決着をつけて
物語を大いに盛り上げるという重要な使命があるのですから、
こんなところでポッと出の3人組に倒されたり、無様に圧倒されたりしている場合ではないのです。

つまり、前宣伝のための新戦隊先行登場シーンで
ゴーバスターズがバスコのようなゴーカイジャー本編終盤の最重要キャラと戦っていること自体が
根本的に間違っているのです。
前宣伝としてならば、ゴーバスターズはこんな中盤でバスコとではなく
アシュラーダの配下の怪人とでもラストバトルの別局面で戦って派手に撃破すべきであり、
そういう描き方も十分に出来たはずです。

バスコと互角に渡り合う実力は確かに大したものであり、
そのアクションも非常に洗練されていてカッコいいが、
やはりこの短い先行登場シーンはインパクト勝負であり、ド派手に敵をやっつけなければダメでしょう。
だから、ハッキリ言って、前宣伝映像としては、このゴーバスターズ先行登場シーンは失敗だと思います。
アクションの出来がどうこう以前に根本的な設定の時点で失敗していると言っていいでしょう。

ただ、それは「ゴーカイジャーVSギャバン」映画としての失敗ではありません。
この映画の制作陣としては、とにかく本筋の物語をしっかり描くことが出来れば成功なのであって、
新戦隊の前宣伝の成否までは責任を負うものではありません。

ぶっちゃけて言えば、スーパー戦隊祭やライダー夏映画の制作陣から見れば、
新戦隊や新ライダーの先行登場シーンなどは、上層部からねじ込まれた異物に過ぎないでしょう。
この異物はそのままでは映画の本筋の進行の邪魔にしかならない。
だから、拒否することは出来ない以上、映画の本筋の中に出来るだけ溶け込ませて
違和感を解消していきたくなるものです。

しかし、それはインパクトが削がれていくのと同義です。
つまり前宣伝としてはスポイルされて用を為さなくなる。
前宣伝など、映画の本筋を邪魔してもインパクトを示した物勝ちなのです。
だから、映画の本筋を守るために出来るだけ先行登場シーンを無難な整合性のとれたものにスポイルしようとする
前番組の制作陣と戦って、先行登場シーンのインパクトを確保するために努力しなければならないのは
新番組の制作陣でなければならない。

その新番組制作陣のゴリ押しが足りない場合、
先行登場シーンは映画の本筋に組み込まれた無難で整合性のとれたものとなり、
逆に新番組制作陣のねじ込む力が強ければ、
先行登場シーンは映画本筋から浮いた違和感に満ちたインパクトの大きいものとなります。

特に「ゴーカイジャー」という作品は、スーパー戦隊シリーズの中では極めて特異な存在であり、
他の戦隊の世界観を自らの作品の世界観の中で整合性を持たせようとする傾向が特別に強い傾向があります。
それは新番組である「ゴーバスターズ」とて例外ではありません。
うっかりしているとゴーバスターズもまた「ゴーカイジャー」の物語時空の中での
1つの整合性のある登場人物として取り込まれてしまう。

しかし、そうなると新戦隊としてのインパクトが薄くなってしまうのです。
ゴーバスターズ制作陣から見れば、本当ならゴーバスターズはこの映画の中で
もっと違和感ありまくりな存在であった方がいいのです。
その方が前宣伝としては成功といえます。
だからゴーバスターズ制作陣は相当頑張ってねじ込んでいかないといけないはずです。

しかしどうやら両者のせめぎ合いの結果、ゴーカイジャー制作陣の方が勝ったようです。
言い換えればゴーバスターズ制作陣の方のねじ込みの力が足りなかったようです。
その結果、このゴーバスターズ先行登場シーンはこの映画本筋の中で
整合性のとれた自然なシーンとなってしまっており、
それは新戦隊の前宣伝としては失敗ですが、この映画の完成度という意味では成功といえます。

つまり、ゴーバスターズは物語中盤の地味な場面でバスコ相手に地味なアクションを強いられて、
派手に敵をやっつける見せ場にも恵まれずに退場する羽目となったのですが、
映画のストーリー上はバスコによるガレオン奪取を阻止してゴーカイジャーの魔空空間行きをサポートするという
非常に重要な役割を果たしているのです。
これはゴーカイジャー制作陣側の勝利であり、ゴーバスターズ制作陣側の敗北といえます。

「特命戦隊ゴーバスターズ」という作品はその内容はともかくとして、
とにかく放送開始当初から視聴率が極端に低かった。
視聴率という指標の重要度は今ではかなり低くなっていますが、
それにしてもその数字の低さは新戦隊開始時としては極端でした。
また、「ゴーカイジャー」終盤に流れていた新番組予告もあまり魅力的なものではなかった。

どうも「ゴーバスターズ」という作品はその内容の良し悪し以前に
前宣伝に注ぎ込む力が足りなかったのではないかと思えます。
それがどういう背景事情によるものなのか分からない以上、あまり厳しいことも言えませんが、
この映画におけるゴーバスターズ先行登場シーンの様子を見ると、
どうもそういうことではないかという気がするのです。

ただ、この先行登場シーンは、前宣伝としては失敗であり、なんとも地味なものとなりましたが、
むしろ映画内の1シーンとしてはクオリティの高いものとなっています。
単純に「目的不明の敵の前に目的不明の新戦隊が現れて大暴れして去っていった」という感の
過去の2例の先行登場シーンよりはよっぽど意味の深いシーンとなっているのです。

つまり、この先行登場シーンは単なる前宣伝用映像ではなく、
「ゴーカイジャー」の物語の中で大きな意味のあるシーンなのです。
「ゴーカイジャー」という作品の持つ特殊な性格は、
当初は前宣伝用映像として以外の意図など無かった「ゴセイジャーVSシンケンジャー」における
ゴーカイジャー先行登場シーンに「ゴーカイジャー」物語世界の中での大きな転機となる
新たなストーリー上の意味を与えて再解釈させる力となったぐらいであるから、
それは「ゴーカイジャーVSギャバン」におけるゴーバスターズ先行登場シーンにも同じように適用され、
そのシーンは「ゴーカイジャー」の物語世界の中でストーリー上の意味を持ってくることになります。

「ゴセイジャーVSシンケンジャー」におけるゴーカイジャー先行登場シーンに新たに付与された物語上の意義は、
「大いなる力」が揃うのか揃わないのかの分かれ目となる
「ゴーカイジャー」の物語の大きなターニングポイントとなるものでした。
この「ゴーカイジャーVSギャバン」におけるゴーバスターズ先行登場シーンに付与される物語的な意義も、
それと同様、というか一繋がりのものと言っていいでしょう。

まず、この先行登場シーンに登場するレッドバスター、ブルーバスター、イエローバスターですが、
変身後の姿しか現れてはいませんが、その声や喋っている内容などから考えて、
おそらくレッドバスターは桜田ヒロムであり、ブルーバスターは岩崎リュウジであり、
イエローバスターは宇佐見ヨーコでしょう。
つまり「ゴーカイジャー」の後番組として2012年2月下旬に放送開始された
「特命戦隊ゴーバスターズ」に登場する3人の戦士たちです。

しかし、この先行登場シーンに登場したヒロムとリュウジとヨーコは
「ゴーバスターズ」TV本編に登場しているオリジナルのヒロムとリュウジとヨーコと同一人物ではありません。
何故なら、ここでヨーコは自分達のことを「36番目のスーパー戦隊」と名乗っているからです。

「ゴーバスターズ」TV本編の物語世界には、そもそも「スーパー戦隊」などという概念は存在しませんし、
ゴーバスターズに先行して35個のスーパー戦隊が存在した歴史など無いのです。
だから「36番目のスーパー戦隊」などと自己紹介している彼らは
「ゴーバスターズ」TV本編オリジナルのヒロムとリュウジとヨーコではなく、
TV本編とは別のパラレルワールドの住人に違いない。

まぁ先行登場シーンに現れる新戦隊や新ライダーがTV本編とは別のパラレルな存在だというのは恒例のことであり
当たり前のことと言えますが、
この映画の先行登場シーンのゴーバスターズの場合は「36番目のスーパー戦隊」と名乗っていることからして、
「ゴーカイジャー」の物語世界の存在であると特定せざるを得ません。
ゴーバスターズの他に35個もスーパー戦隊というものが存在する世界など、
「ゴーカイジャー」の物語世界しか存在しないからです。

まぁ「ゴーカイジャー」の物語世界に登場しているキャラなのですから
「ゴーカイジャー」の物語世界の存在であるのは当然といえば当然なのですが、
ここで問題なのは「ゴーカイジャー」の物語世界においては
各戦隊は縦の時系列で年代順に並んで存在しているということです。
そうなると、「36番目のスーパー戦隊」と自称しているゴーバスターズというのは、
自分達に先行して35個のスーパー戦隊が存在していたということを知っているわけですから、
35番目のスーパー戦隊であるゴーカイジャーから見て未来に存在しているスーパー戦隊ということになるのです。

実際、あのシーンに登場したゴーバスターズの3人はゴーカイジャーのことを知っていました。
ただ、この「ゴーカイジャーVSギャバン」の時点の前にゴーバスターズは既に存在しており、
36番目のスーパー戦隊を自称してあの場所にやって来たというようにも思えます。
しかし、その場合はゴーバスターズが「36番目」を自称するのは不自然です。
何故なら、この「ゴーカイジャーVSギャバン」の時点、
つまり「ゴーカイジャー」TV本編の第46話と第47話の間の時点では
まだマーベラス達ゴーカイジャーは「スーパー戦隊」とは自称しておらず、
この物語世界にはまだ「スーパー戦隊」というものは34個しか存在していないからです。

ゴーカイジャーが35番目のスーパー戦隊だと認識しているのは
「ゴーカイジャー」という番組を観ている視聴者であって、
「ゴーカイジャー」の劇中世界ではまだマーベラス達ゴーカイジャーは「スーパー戦隊」とは認識されていません。
だからこの「ゴーカイジャーVSギャバン」に登場したゴーバスターズは「36番目のスーパー戦隊」を自称する以上、
ゴーカイジャーが35番目のスーパー戦隊の認識された以降に登場した戦隊ということになり、
それはつまり、この映画の劇中時間における「現在」よりも「未来」からやって来た戦隊ということになるのです。

ゴーバスターズが未来から現在にやって来たとするなら、その方法はタイムスリップしかありません。
そして、この推理は「ゴーカイジャー」物語世界の原則に忠実なのだといえます。
何故なら、「ゴーカイジャー」の物語世界において「新戦隊の先行登場」というものがこれまでに存在したのは
ゴーカイジャー自身の2010年におけるゴセイジャーやシンケンジャーの戦いの場に現れたケースだけであり、
それがどういう脈絡で行われたものなのかというと、それは「タイムスリップ」であったからです。

つまり「ゴーカイジャー」物語世界では「先行登場=タイムスリップ」と考えればいいのであり、
この「ゴーカイジャーVSギャバン」におけるゴーバスターズ先行登場も、
かつてのゴーカイジャーの場合と同じくタイムスリップだったと考えればいいのです。

全ての戦隊が縦の時系列に並ぶ「ゴーカイジャー」物語世界における「先行登場」というのは
タイムスリップの産物だと考えるのが最も自然なのです。
特にゴーカイジャー自身が深く関係している、ゴーカイジャー自身の先行登場と、
ゴーカイジャーの留守中にガレオンを守るためのゴーバスターズの先行登場は関連性があると見るべきであり、
共に同じ目的に向かう意思に基づいたタイムスリップであると考えた方が自然といえるでしょう。

その意思とは、タイムスリップの主体の意思です。
タイムスリップの主体といっても、それはゴーカイジャーやゴーバスターズではありません。
彼ら自身にはタイムスリップ能力は無いからです。
この「ゴーカイジャー」物語世界でタイムスリップを仕掛けることが出来る者とはただ1つ、
タイムレンジャーしか有り得ません。

ゴーカイジャーが2010年10月のゴセイジャーとシンケンジャーの戦いの現場のほど近くに出現した
タイムスリップを仕掛けたのはタイムレンジャーのメンバーであり
31世紀時間保護局員である元タイムイエローのドモンでした。
ならば、このゴーバスターズがごく近い未来の世界から
おそらく2015年の1月あたりと思われるゴーカイジャーとギャバンの絡んだ事件の渦中に
タイムスリップしてきたのも、ドモンが仕掛けたものではないかと推測出来ます。

どうしてドモンがおそらく1年後の時代ぐらいにいるゴーバスターズの3人を
この場面にタイムスリップさせたと推測できるのかというと、
それはこの「ゴーカイジャーVSギャバン」の出来事が
「ゴーカイジャー」TV本編の第46話の直後にあたるからです。
この第46話というのはドモンにとって極めて重要なエピソードであったはずです。

ドモンは第40話でマーベラス達に31世紀からビデオレターを送り、
タイムスリップモードに特別に調整した豪獣ドリルに乗って2010年10月2日に行って
寝隠神社を爆破事件から守るよう依頼しました。

31世紀のドモンの知る歴史では21世紀初頭のマーベラス達はカクレンジャーの「大いなる力」だけを
見つけることが出来なかったために「宇宙最大のお宝」を手に入れることが出来なかったという結末となっており、
ドモンはその歴史を改変したいと思い、マーベラス達をタイムスリップさせたのです。
そしてその結果、寝隠神社は爆破事件から守られて、
第45話で自力で寝隠神社の謎を解いたマーベラス達が寝隠神社でニンジャマンの壺を発見し、
ニンジャマンと出会って第46話のラストに遂にマーベラス達はカクレンジャーの「大いなる力」を獲得したのでした。

この時、マーベラス達は無自覚でしたが、
もともとの「マーベラス達が宇宙最大のお宝を手に入れられない歴史」から
「マーベラス達が宇宙最大のお宝を手に入れられる歴史」へと、歴史が更新されたのです。
その結果、マーベラス達の居る21世紀初頭の現在から見た未来も、
もともとの未来から新たな未来へと変更されたのです。

当然、遠い未来である31世紀の世界も変更されたはずです。
もしかしたらドモン自身も消えてしまう可能性もあったでしょう。
しかし、第46話以降の出来事であるこの映画の序盤のシーンで鎧が豪獣ドリルに乗って現れていたことから推測して、
第46話の歴史改変以降も31世紀のドモンも時間保護局も健在であるようです。

おそらくマーベラス達が「宇宙最大のお宝」を手に入れても手に入れていなくても、
地球の歴史はそう変わりはない結末であったようです。
それは第45話のラストで登場した元ニンジャホワイトの鶴姫が
「宇宙最大のお宝」が無くてもマーベラス達がザンギャックから地球を守ることが出来ると
予想していた様子であることからも推測出来ます。

鶴姫が危惧していたのは「宇宙最大のお宝」を手に入れたらマーベラス達が地球を去ってしまうことの方であり、
おそらく歴史改変前でもドモンが31世紀に健在であったことから推測して、その鶴姫の読みは的確であり、
もともとの歴史ではマーベラス達は「宇宙最大のお宝」は手に入れられなかったが
ザンギャックの地球侵略は撃退出来たのでしょう。

ならばドモンがマーベラス達に「宇宙最大のお宝」を手に入れさせようとしたことは、
マーベラス達がザンギャックを撃退しないうちに「宇宙最大のお宝」を手に入れて
地球を去ってしまうというリスクを生じさせることを意味していた。
それが鶴姫の危惧であり、ドモンも歴史改変の結果、そうした事態となる危惧はしていたのでしょう。

しかし第46話ラストで歴史がその方向に変わったにもかかわらず
31世紀の世界が変わることなく存在しているということは、
新しく更新された歴史においてマーベラス達は「宇宙最大のお宝」を手に入れても
ザンギャックの地球侵略は阻止してくれたのだということを意味します。
つまり鶴姫の危惧は杞憂に終わり、ドモンは賭けに勝ったのです。

そして、もう1つ確かなことは、
どうやら「宇宙最大のお宝」をマーベラス達が手に入れたことによって
地球の歴史には何ら影響は生じていないようだということです。

しかし、ならばドモンはどうしてわざわざリスクを負ってまで歴史を変えようとしたのでしょうか?
何も結果が変わらないのならば、わざわざ歴史を変える意味など無かったようにも思えます。
それは確かにその通りであり、何かが変わるからこそドモンはわざわざ歴史を変えようとしたはずです。
そして、その変わる部分というのは地球の歴史とは別の歴史に関することであるようです。
つまり地球外の宇宙の歴史に何らかの変化が生じさせることを目的としてドモンは歴史を改変したようです。

鶴姫がマーベラス達に「宇宙最大のお宝」を渡さないことによって
地球に釘づけにしようとしたことから逆に考えると、
ドモンがマーベラス達に「宇宙最大のお宝」を渡すことによって狙ったことは、
マーベラス達を地球から旅立たせることであったという結論になります。

鶴姫はその旅立ちがザンギャックによる地球の危機の前になるということを危惧したのですが、
ドモンはマーベラス達が地球の危機を救った後に「宇宙最大のお宝」を手に入れて地球を去るという可能性に賭けて、
その賭けに勝ったわけです。
しかし、それは五分五分の賭けであったはずで、
そんなリスクを負ってまでしてマーベラス一味を地球から解放して宇宙に旅立たせることに
31世紀のドモンの目から見て大きな意義があったのだと思われます。

それがどのような意義なのかは不明ですが、
とにかく第46話終了時点で31世紀の時間保護局にいるドモンは、
21世紀初頭の歴史が更新されたことは確認したのでしょう。
更新された新たな歴史は新たな「あるべき歴史」としてドモンも含めて時間保護局において認識されたと思われます。

しかし、なぜ「時間保護局」という機関が存在しているのかというと、
不正な歴史改変を防いで「あるべき歴史」を守るためです。

今回の歴史改変は確かに当初はドモンが極秘に仕掛けたものではあるが、
結局は21世紀人であるマーベラス達が自分の意思で事態を切り開いて未来を変えたのであり、
これは「不正な歴史改変」ではなく、「あるべき歴史」の誕生です。
だから時間保護局はこの新たな歴史を31世紀に繋がる「あるべき歴史」と認定し、
これを保護すべき対象としたはずです。
つまり、この「あるべき歴史」を揺るがす要因があれば、
これを取り除くという作業が時間保護局の仕事ということになります。

特に今回のような急激な歴史の更新が生じた場合、
もとの歴史から大きく状況が変わった21世紀の世界においては、
その急激な変更に対応出来ず、様々な歪みや不都合が生じてくる可能性もある。
それがバスコによるガレオン襲撃事件であったと思われます。

もともとの更新前の歴史では
マーベラス達はカクレンジャーの「大いなる力」を手に入れることが出来なかったわけだから、
マーベラス達が残りの「大いなる力」を揃えたら決着をつけてレンジャーキーを奪おうと待ち構えている
バスコはこの時点で行動を起こすことは無かったはずです。

おそらく更新前の歴史においてもこのタイミングでギャバンの事件にマーベラス達が巻き込まれて、
マーベラス達が魔空空間に行くという展開になったようですが、
それは更新前の歴史ではバスコにそそのかされてのことではなかったようです。
マーベラス達は何か他の方法でギャバンが魔空監獄に捕らわれたことを知り、魔空空間に行ったのです。
つまり更新前の歴史ではこの時点でバスコに動きは無かった。

更新後の「あるべき歴史」でもその部分は何ら変わらないはずだった。
しかし、それは31世紀において確定した資料上の「あるべき歴史」においてそのようになっているだけであり、
ドモンが時間保護局の設備を用いて21世紀世界において実際に起きていることを見てみると、
どういうわけかバスコがマーベラス達を魔空空間に行くようにそそのかしている。
これは「あるべき歴史」とは異なる奇妙な展開だと思ったドモンが更に調べていくと、
このままの流れの先には「マーベラス達を魔空空間に行かせた後で
バスコがガレオンを襲ってガレオンやレンジャーキーを奪う」という展開が生じることが分かりました。
そして、これは「あるべき歴史」を危うくする不確定要因となることが判明しました。

どうしてこんな不確定要因が生じたのかというと、急激な歴史の更新によって生じた歪みによるものでした。
マーベラス達がカクレンジャーの「大いなる力」を手に入れたら当然バスコは行動を開始する。
これはもともとの更新前の歴史では生じなかった展開ですが、その展開が歴史更新によって始まってしまった。
しかし更新後の歴史においては、このバスコの行動に対処する要素が欠けていた。
急激な歴史更新によって、そのあたりの要素が間に合っていなかったのです。
このままでは更新された新たな「あるべき歴史」には無い、
「このタイミングでのバスコによるガレオン奪取」というイレギュラーな事態に発展してしまう。
だから時間保護局としてはこれに対処して、この事態を阻止しなければならない。

そして、この「あるべき歴史」の保護ミッションは
ドモンが第40話でマーベラス達にやらせた歴史改変とは全く別物の完全に合法正当なミッションなので、
あんな回りくどい方法をとる必要は無い。
大胆に歴史に介入しても平気です。
だから一番手っ取り早いのはマーベラス達の魔空空間行きを止めさせることですが、
この方法が選択されなかったということは、
おそらくマーベラス達がここでギャバンを救出するために魔空空間に行くという出来事は
ここからの「あるべき歴史」にとって外すことが出来ない重要事項なのでしょう。

だからマーベラス達の魔空空間行きを止めることは出来ないが、
そうなるとバスコのガレオン奪取を阻止出来なくなる。
31世紀の時間保護局の直接介入も可能だが、
強行部隊であるタイムレンジャーの戦う力はマーベラス達に預けている以上、
タイムレンジャーの力で阻止することも出来ない。
バスコは強敵なので、タイムレンジャーの力無しで時間保護局の通常装備で阻止するのは難しい。
バスコを止められるとするならスーパー戦隊の力しかないが、それらも全てマーベラス達に戦う力を預けている。

そうなると時間保護局の裏技として、ドモンが第40話でやった方法をとることが考えられる。
つまり、レジェンド大戦で戦う力を失う前のスーパー戦隊を過去からタイムスリップで連れてきて
バスコのガレオン侵入を阻止させるのです。

しかし、この方法はさすがに使えない。
第40話でマーベラス達が2010年に行って寝隠神社を守ることが出来たのは、
マーベラス達が2010年という時代から見て未来人だったからです。
人間は決して未来を知ってはいけない。
未来を知れば歴史は確実に変わってしまうのです。
だからタイムスリップは過去に行く場合と、そこから元の自分の時代に戻る場合のみが許されているのです。
そうなるとマーベラス達の居る2015年現在から見て過去の時代の住人である34のスーパー戦隊は全員、
2015年という未来に来ることは出来ない。

つまり、バスコのガレオン奪取を阻止することが出来るとするなら、
それは2015年現在から見て未来の世界に存在するスーパー戦隊だけということになる。
そこでドモンは緊急対応としてゴーカイジャーの次の36番目のスーパー戦隊であるゴーバスターズを
未来の世界から豪獣ドリルを使って呼び寄せて、
マーベラス達が魔空空間に行った後、バスコの襲撃からガレオンを守らせたのでしょう。

そもそもマーベラスだけでなく他の仲間も全員揃って魔空空間へ行くという決断を出来たのは、
バスコの罠に対応する策が存在することを認識していたからだと思われます。
魔空空間に行けば留守中にバスコがガレオンを襲ってくるということはマーベラス達には予測はついていたはずで、
だからこそ当初マーベラスは1人で魔空空間に行こうとしていたとも言えますし、
ジョー達もマーベラスが1人で魔空空間に行こうとしていることに気付いており、
仲間として同行したいと思いながら、当初はバスコへの備えも考慮して
自分達はやはり留守を守らなければいけないという意識はあったと思います。

だからジョー達は最初はマーベラスが1人で体育館に向かうのを引き止めて一緒に行くと申し出ることが出来ず、
マーベラスが体育館に向かうのを黙認していたのでしょう。
だが、そこにドモンからバスコ対策は任せておいて魔空空間に行くようにというメッセージが届き、
それでジョー達は後はドモンに任せて急いでマーベラスの後を追って体育館に向かったのでしょう。

あの体育館から九死に一生を得て脱出した際に豪獣ドリルは使用されており、
その数時間後の場面でもガレオンに横付けされていましたが、
マーベラス達6人がバスコに呼び出されて公園に向かうに際して豪獣ドリルは31世紀に戻されたと思われます。
ところが公園でバスコと別れて曙と青梅に出会い、魔空空間への行き方を聞いたマーベラスが
そのまま姿を消して体育館に向かった後、ジョー達がガレオンに戻ると豪獣ドリルが再び横付けされていて、
その中に第40話の時のようにビデオメッセージが載っていたのでしょう。

そこには細かい経緯の説明や具体的にゴーバスターズに守らせるという説明なども無かったと思われます。
歴史の流れにおかしな影響を与えないために過去の人々に対しては与える情報は出来るだけ絞るというのが
時間保護局の基本方針だからです。
ドモンからのメッセージ内容は本当に「バスコ対策は任せて魔空空間に行け」という程度の簡潔なものだっのでしょう。

しかしジョー達にとってはその方が一刻も早くマーベラスを追いかけるためには好都合だったと思います。
ドモンが信頼できる相手であることや、どうやらあまり情報を詳しく説明できない立場であるということも、
カクレンジャー篇を経た現時点においてはジョー達も理解出来ていました。
だからジョー達5人はドモンからのメッセージを受けて即断し、すぐにマーベラスの後を追って体育館に向かい、
マーベラスが1人で魔空空間に入っていく直前にギリギリ間に合ったのでしょう。

マーベラスはそのままジョー達と合流した勢いで魔空空間に行き、
バスコ対策はどうするのかという問題は思わずそこでは失念していたようですが、
魔空空間に着いた後でジョー達からバスコ対策はドモンがちゃんとしてくれているらしいということは
聞いたのでしょう。

一方、ドモンはビデオメッセージを受け取ったジョー達が立ち去ると同時に豪獣ドリルを31世紀に戻し、
今度は36番目のスーパー戦隊であるゴーバスターズの活動している
近未来(おそらくマーベラス達の現在から見て1年後ぐらいの未来)のゴーバスターズの基地へ豪獣ドリルを送り、
その中に24番目のスーパー戦隊のタイムレンジャーからゴーバスターズへのメッセージの入った
ビデオレターを入れておいたのでしょう。

ここにおいてもドモンはゴーバスターズにあまり詳細な情報は与えなかったと思われます。
ただ単に豪獣ドリルにセットしてある2015年1月の某日に行って
魔空空間に行ったゴーカイジャーの留守中のバスコのガレオン侵入を阻止するようにというミッションが述べられ、
それを阻止しなければ本来の「あるべき歴史」が変わってしまい、
ゴーバスターズの時代にも大きな影響が出ることになるという警告が添えられていたのでしょう。

ゴーバスターズがこれを信用してミッションを遂行しようと決断した背景には、
実際にゴーカイジャーの時代に直近の未来であるゴーバスターズの時代には
この歴史の歪みの悪影響が既にいくらか出始めていたからではないかと推測されます。
また、当然その「あるべき歴史」について
マーベラス達の時代から見て未来人であるゴーバスターズの面々も大まかには理解しており、
2015年1月某日の段階でゴーカイジャーがバスコにガレオンやレンジャーキーを奪われることが
重大な問題であることぐらいはいちいち説明されなくても理解出来たのでしょう。

それでゴーバスターズの3人、ヒロム、リュウジ、ヨーコは豪獣ドリルに乗り込んで
2015年1月某日のバスコがガレオンを襲う直前の時間にタイムスリップしてきたというのが、
あの突然のゴーバスターズの登場の真相ではないかと思います。

ゴーバスターズにはビートバスターの陣マサトやスタッグバスターのビート・J・スタッグなどもいますが、
この2人は普段基本的にゴーバスターズの基地にいないので、
このミッションは基地にいたヒロムとリュウジとヨーコの3人で処理することにしたのでしょう。
未来にある特命部の基地からの武器の転送まで可能となっていたのは
豪獣ドリル内に備え付けた31世紀の技術によるものと思われます。

そうして未来からやって来たゴーバスターズのことを当然バスコは知らないわけで、
それゆえ「スーパー戦隊の偽物」だと勘違いし、
それに対してヨーコは「一番新しい36番目のスーパー戦隊」だと自己紹介したが、
これはゴーバスターズの時代における自己認識を言っているに過ぎないので、
過去人であるバスコは全く信用せず小馬鹿にした対応をするというチグハグな遣り取りになったわけです。

そしてゴーバスターズ3人がバスコを倒そうとしなかったことや、
出来れば戦わずに撤退させるのが最善だという認識であった理由は、
ドモンから託されたミッションがあくまで
ゴーカイジャーが魔空空間から戻ってくるまでの間ガレオンを防衛することであり、
またドモンからバスコは強敵なので防衛戦に徹した戦い方をしなければ危険だという
アドバイスもあったからなのでしょう。

ただ、それだけではなく、
おそらくドモンはゴーバスターズに「バスコとサリーを殺すと歴史が変わる」という警告を与えていたのでしょう。
その詳細な説明は無かったと思われますが、
ゴーバスターズはバスコからガレオンを守ることは「あるべき歴史」を守るために必要なことだが、
勢い余ってバスコやサリーを殺すようなことになると過度な歴史への干渉となって
「あるべき歴史」を損ねてしまうことになるということは理解出来たと思います。

つまり、ドモンはこのギャバン事件の後、
バスコとサリーには「あるべき歴史」の中で果たすべき重要な役割があることを把握していたのでしょう。
だからバスコを倒すことは出来ない。
倒さずにガレオンを守るという戦いにならざるを得ない。
だからこそ、ヴァグラスからエネトロンを守るという防衛戦を専らとして得意としている
ゴーバスターズがこのミッションに適任であるという判断となったのでしょう。

その結果、ゴーバスターズはまかり間違ってバスコやサリーを殺してしまわないように必殺技は封印し、
特殊能力を駆使した体術と特殊部隊風のナイフアクションのみで防衛に徹して戦うことにしたのですが、
これが結果的に奏功してバスコに付け入る隙を与えず持久戦に引きずり込む展開となり、
戸惑ったバスコが勝手に未知の戦士に対して危機感を覚えて早々に撤退してくれたので
ゴーバスターズのミッションは予想よりも早く成功裡に終了した。
あるいはゴーバスターズが安易にバスコを倒すつもりで戦っていればバスコのガレオン侵入を許していたかもしれない。
さすがは公務員戦隊のゴーバスターズ、後先考えずにシタリをぶっ殺したマーベラス達とは違ってちゃんとしています。

そして戦いの後、リュウジが「・・・さてと!・・・あとはゴーカイジャーで十分かな?」と言ったのは、
こうしてバスコを撤退させた以上、自分達の今回のタイムスリップミッションは終了であり、
この時代における後の戦いは歴史通りにゴーカイジャーに任せておけばもう大丈夫なのだろうという
感触を得た状況での発言と考えればいいでしょう。

そしてヨーコがそれに応じて「・・・強いもんね!」と言ったのは、
ヨーコが歴史的事実として、この後のこの時代のバスコやザンギャックとの戦いにおける
ゴーカイジャーの強さを知っているということを示しています。
つまり、ヨーコ達の把握している歴史(既に更新された新たな「あるべき歴史」)においては
ゴーカイジャーはこのギャバン事件後のバスコやザンギャックとのクライマックスの戦いを
かなりの強さを発揮して勝ち抜くことになるようです。

そしてヨーコは気持ちを切り替えて「あたし達も負けないように頑張ろう!」と、
自分達の時代の本来の戦いであるヴァグラスとの戦いに思いを馳せ、
ヒロムも「そうだな・・・」と同意し、「帰ろう!」と言って、
自分達の時代である未来へと戻るべく豪獣ドリルに向かって歩き出したというところで
この先行登場シーンは終了したと見ればいいでしょう。

この先行登場シーンの描写や、この映画におけるゴーカイジャーの行動、
更に「ゴーカイジャー」の物語にこの時点で残されていた様々な謎、
そしてゴーバスターズという戦隊の特性など、様々な要素を点と点を繋ぐようにしていくと、
このような推測が成り立つ。
真偽は確定出来ませんが、これこそがこのゴーバスターズ先行登場シーンの
「ゴーカイジャー」の物語における脈絡ではないかと思います。

このようなタイムスリップを前提とした解釈をすれば、
このゴーバスターズ先行登場シーンの割に地味な描写や個々のセリフや行動の謎も説明がつき、
「ゴーカイジャー」第40話以降の歴史改変に関わる一連のストーリーの1つの決着点ともなると思うのです。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 09:27 | Comment(0) | 海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月19日

海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE 感想その12

さて、ここで再び舞台は魔空空間に戻り、
魔空監獄に潜入したものの結局は割と下層階で警備のゴーミンに発見されてしまったマーベラス達が
こうなったら強行突破で最上階まで昇っていこうという作戦に切り替え、
ゴーカイジャーに変身して大量のゴーミン達を相手に乱戦に突入した場面の続きです。

ゴーカイジャー6人とゴーミン部隊の戦いというと、
通常の場合であればゴーカイジャー側がゴーミン達をあっという間に圧倒することが多いのですが、
今回はなかなかすんなりとはいかないようです。
これは魔空空間においてはザンギャック側はアシュラーダの力によって3倍の強さとなっているからです。
だからゴーミンといえども1人1人がここではスゴーミンぐらいの強さにはなっており、
しかも数がやたら多いのでさすがにゴーカイジャー6人の力をもってしても
簡単にこの場を突破することが出来ないのです。

それでも奮戦の末、ようやく最初に襲ってきたゴーミン達をほぼ制圧したマーベラス達でしたが、
そこにまたすぐに第二波の大量のゴーミン達が現れます。
それを見て「ん?・・・また新手か!」とジョーは呆れたように呻き、
ハカセは「キリが無いよぉ!」と泣きを入れます。

さすがにザンギャック警備兵側も魔空監獄内の警備兵を一気にこの場に集中させてきているようです。
このまままた第二波のゴーミン部隊と乱戦に突入すれば、そこでまた時間をかけることになり、
そうしているうちにまた第三波のゴーミン達がやって来る。
そうなるとこのフロアーで延々と戦い続けることを強いられることになります。
それでは結局最上階には辿りつけそうもない。

そこでジョーは鎧と2人で第二波のゴーミン部隊の前に立ち塞がり、
「ここは俺たちに任せて急げ!」とマーベラス達に向けて叫んで
「豪快チェンジ!!」と、デンジブルーに多段変身しました。
鎧もジョーの横でゴーオンゴールドに多段変身します。

ジョーのデンジブルーへの多段変身は、
魔空空間行きに使うために持っていたデンジブルーのレンジャーキーをそのまま使ったということであり、
せっかく青梅役でも大葉さんに出演してもらったわけだから
デンジブルーをここで登場させようという制作サイドの意図もあるのでしょう。
そしてデンジブルー、というかデンジマンといえば
やはり「ゴーカイジャー」においてはやたらデンジパンチがフィーチャーされており、
ここでも当然デンジパンチを使うことになります。
そうなると一緒に戦う鎧もパンチ技主体の戦士に多段変身した方がアクションの見栄えが良いので、
鎧の変身する追加戦士の中でも特にボクシング技を得意とするゴーオンゴールドがここでチョイスされたのでしょう。

そうしてデンジブルーとゴーオンゴールドに変身したジョーと鎧は、
新たに現れた第二波のゴーミン達の群れの前に立ち塞がり、
攻め寄せてくるゴーミン達を片っ端からパンチでぶっ飛ばしてその侵攻を食い止めます。
つまり、ジョーと鎧はこの場で盾となって敵を食い止め、
その間に残り4人の仲間を最上階へ行かせようとしているのです。
この監獄の警備兵の大部分はこの場に集結しつつあるようで、
ここでジョーと鎧が派手に戦ってゴーミン達を引き付けておけば、
ジョーと鎧はここから先にはもう上に進めなくなりますが、
残り4人は手薄になった上のフロアーをスルーして最上階まで一気に行けるという、そういう作戦なのです。

そうしたジョーと鎧の意図を察したアイムは「お願いします!」と言い、
マーベラスも「任せたぜ!」とジョー達に言葉をかけ、
第一波のゴーミン達の残党を薙ぎ倒してマーベラス、ルカ、ハカセ、アイムの4人はこのフロアーを脱して
一気に奥の階段を駆け上がっていきました。

この階段を駆け上がっていく4人の姿を
最上階でギャバンを拷問している途中であったアシュラーダがモニターで確認し、
「ドブネズミどもが入り込んだか・・・」と小馬鹿にしたように言います。

警備兵からの報告でマーベラス一味が監獄内に侵入したと聞いた時はアシュラーダもいささか驚きました。
そんなことは全く想定していなかったからです。
そもそも魔空空間はそんな誰でも自由に出入り出来るような場所ではない。
マーベラス達がいったいどうやって魔空空間に入ってきたのか、アシュラーダは不思議に思いました。

それにいったい何をしに魔空監獄に侵入してきたのかもよく分かりませんでした。
新たに地球で収監した囚人たちを脱獄させたようであるので、最初はそれが目的なのかとも思えましたが、
マーベラス達は脱走させた囚人たちとは別行動をとって上の階にひたすら向かおうとしている。
ならばギャバンを救出しに来たようにも見えます。

しかし、どうして海賊たちがギャバンを助け出そうとするのか、
アシュラーダにはイマイチ理由が分かりませんでしたが、とにかく細かい話はどうでもいいとも思いました。
マーベラス一味がこうして魔空監獄に侵入してきたのは事実であり、
そしてマーベラス一味の抹殺こそが皇帝アクドス・ギルが最も自分に対して望んでいることなのだと、
アシュラーダはこれは好都合だとほくそ笑みました。

アシュラーダ自身はもはやマーベラス一味の抹殺などは結構どうでもよくて、
ギャバンを殺して魔空空間を拡大させてマクーを再興することの方に夢中になっていますが、
それでも別に強大なザンギャックと敵対するつもりなどはない。
アクドス・ギルを怒らせるような真似は出来るだけしたくない。
だからアクドス・ギルの望む「マーベラス一味の抹殺」を成功させて
皇帝のご機嫌をとることが出来るなら好都合なのです。

その獲物がわざわざ自分から飛び込んできてくれたのですから、アシュラーダは大喜びでした。
監獄に侵入され、警備兵の群れを突破されて
マーベラス達がこの最上階に向けて一気に駈けてきていることに危機感は全くありませんでした。
それだけアシュラーダは魔空監獄の鉄壁の守りに自信を持っているのです。
むしろマーベラス達は脱出不可能な罠に自ら嵌りに来たようなものだとアシュラーダは嘲笑い、
ブートレグの方に向き直り、「魔空都市を発生させろ!」と命令を下します。
その命令に応えてブートレグは先ほどギャバンを魔空空間に引きずり込んだ時のように目を赤く光らせました。

その傍で壁に磔状態でボロボロになっていたギャバンはブートレグの様子を目で追い、
なるほどブートレグの内部に地軸転換装置が仕込んであったのかと納得しました。
ブートレグがアシュラーダの命令を受けて魔空空間を発生させているようです。
「魔空都市」というものがどういうものなのかギャバンにはよく分かりませんでしたが、
まぁ魔空空間の一種と想像は出来ます。
魔空空間の中でさらにまた魔空空間を発生させることが
マーベラス一味の侵入に対処する手段とどのような関係であるのか、ちょっとよく分かりませんでしたが、
とにかくその対処をしている間はブートレグによるギャバンへの拷問は中断されるようで、
ギャバンは少し一息つくことが出来ました。

しかしギャバンは「バカな・・・海賊たちが・・・何故?」と戸惑います。
そもそもあの海賊たちがどうやって魔空空間に入ってくることが出来たのかも謎でしたが、
それ以上にギャバンは海賊たちが何のために魔空監獄にやって来たのか分からず戸惑っていたのでした。

もともとギャバンは「ゴーカイジャー」第5話のデカレンジャー篇の後日談として、
ザンギャックの偽の告発に基づいて宇宙警察上層部が宇宙海賊マーベラス一味を誤認逮捕しようとしたという一件を
旧知の地球署署長ドギーから聞いて、
それがきっかけとなって宇宙警察上層部とザンギャックの不可解な関係を疑うようになり、
最終的に総裁のウィーバルがザンギャックの怪人にすり替わっているという確信にまで辿り着いたのでした。

だからギャバンは今回アシュラーダの化けた偽ウィーバルからマーベラス一味の逮捕指令を受ける以前から
マーベラス一味のことは知っていました。
しかし、昔から知っているわけではない。
ドギーから誤認逮捕の一件を聞いた時に初めてそんな海賊が存在することを知ったのでした。
マーベラス一味はザンギャックの官憲から見ればそれなりに有名な賞金首ですが、
宇宙警察から見れば取り締まり対象というわけでもなく、組織犯罪取り締まりに長年忙殺されていたギャバンは、
マーベラス一味のような「ザンギャックが勝手に犯罪者呼ばわりしているアウトロー集団としての海賊」については
よく知りませんでした。

だから、そういうアウトロー、一種の任侠集団としての海賊のうちの1つに
「マーベラス一味」というものがあるのだということも、
ドギーから誤認逮捕騒動の話を聞いた時にギャバンは初めて知ったのでした。
その時、ギャバンが興味を惹かれたのは宇宙警察上層部がそんな奇妙なミスをしたという事実の方であったのですが、
ドギーの方は軽い世間話のつもりであったので、とりとめなくマーベラス一味のことなどについても語っており、
ギャバンもその時、マーベラス一味というのがどういう連中であるのか一応、
1つの世間話として軽く聞いてはいました。

その時のドギーの話によると、そのマーベラス一味という名の宇宙海賊は、
伝説の海賊のお宝を探して宇宙を旅して地球にやって来た連中であり、
基本的にはお宝目当ての冒険家なのだが
ザンギャックに従わないためにお尋ね者になっているアウトロー集団なのだという話でした。
そのため、マーベラス一味は仲間の絆をとても重んじており、その結束力はなかなかのものだという。

そして、そのマーベラス一味はザンギャックと出くわして喧嘩を繰り返しながら、
なんだかんだで地球の人々を守ったりしている心優しい一面もあり、意外に熱い心の持ち主なのだという。
それはおそらく彼らが彼らなりに海賊としての独自の価値観に誇りを持っているからなのだろうと
ドギーは言っていました。

そのドギーの話を聞いた1年近く前の時、
ギャバンは確かにちょっと変わった海賊がいるものだなと軽く感心はしました。
ザンギャックにあえて逆らって夢を追う硬骨漢というのは1人の男として好感も持ちました。
ただ、ギャバンはそのマーベラス一味という海賊は
あくまで自分達だけの任侠的な独自の価値観に従って行動する自主自立の気骨を持ったアウトローであり、
別に宇宙全体の公共の利益などのために動いているわけではないと思いました。

その海賊たちがお宝を目指すのも、ザンギャックに逆らうのも、地球の人々を守るのも、
自由やロマンを愛し、筋の通らないことを嫌い、罪も無い弱い者がイジメられるのを見過ごせないというような、
アウトローなりの独自の美学に基づいた行動なのだろうとギャバンは思いました。

そしてギャバンは、そんな海賊は決して自分のような宇宙刑事と相容れるような人種ではないのだとも思いました。
それは別に自分のような刑事をエリートだとして海賊を見下しているという意味ではない。
むしろ逆で、ギャバンは宇宙警察という巨大組織の中で様々なしがらみに縛られながら
悪と戦わねばならない自分のような宇宙刑事というものは、
その海賊たちのように自分だけの価値観に従って行動するような自由は無く、
本心では納得出来ないような行動もとらねばならないこともあり、
本心ではやらねばいけないと思うことが出来なかったりもする、
そういう理不尽に耐えねばいけないのだという思考に慣れきっていたのでした。
例えばザンギャックとの争いを避けねばいけないことなど、その最たるしがらみでした。

それでも、そんな理不尽な境遇の中でも、泥にまみれても正義のために戦うのが宇宙刑事だと
ギャバンは誇りを持ってきたのですが、そういう宇宙刑事の屈折した誇りは、
シンプルに自分だけの価値観を貫く彼らのような海賊には理解してもらえないだろうと、ギャバンは少し自嘲し、
むしろドギーがそのマーベラス一味との出会いを通じて海賊の誇りと刑事の誇りが
相容れるもののように感じているのを見て不思議に思ったぐらいでした。

別にギャバンは刑事であることを卑下していたわけではない。
正義を貫くためにはルールを守らねばならず、そこには自ずと様々な制約がついて回る。
そうした制約の中で正義というものは実現していくしかないというのがギャバンの考え方でした。
それが正義を貫く者の生き方であり、それは苦難の人生でもあるが、
誰かがそうした苦難を引き受けねばならない。
自分はそういう人生を選んだ者だと、その時ギャバンは思っていました。

ただ、そんな人生とは違う価値ある生き方だってもちろんあることもギャバンは知っています。
他人の作ったルールに一切縛られず、自分のルールのみに従って生きる
海賊のような人生もまた楽しいものだろうとギャバンは思いました。
もちろんそれはただ気楽なだけの人生ではない。
自分のルールのみに従うということは、言い換えれば自分以外の誰も自分を助けてくれない
危険と隣り合わせの厳しい自己責任を負う生き方となります。

そういう人生もまた良いものだとギャバンは思いましたが、
それは自分の選んだ人生とは違う人生であり、自分のような苦難に満ちた正義を追い求める人生と、
海賊のような危険に満ちた自由を追い求める人生は、あまりに立場が違いすぎて相容れることはないと思えたのでした。

そういうギャバンですから、その後の極秘捜査でザンギャックの宇宙警察乗っ取りの陰謀に気付き、
そこに偽総裁からマーベラス一味の逮捕を命じられた時、海賊をエサにして偽総裁をおびき出す作戦を立てましたが、
こんなややこしい宇宙警察の失態の解決のために協力することを、
彼らのような自主自立の気風の海賊たちが納得してくれるわけがないと思いました。
自由を貫く宇宙海賊としがらみの中で戦う宇宙刑事が相容れるわけがないという先入観がどうしても強かったのです。
それでギャバンは事前に協力を要請しても話がこじれると思い、
強引な形で何ら事情を説明もせずに問答無用で逮捕してマーベラス達を偽総裁をおびき出す作戦に巻き込んだのでした。

そしてその挙句、マーベラス達を危ない目にあわせてしまい、ギャバン自身はアシュラーダに捕らわれたのだが、
ギャバンがアシュラーダに捕らわれた時点では既にマーベラス達は脱出していたので、
ギャバンは自分が魔空監獄に捕らわれたこと自体、海賊たちはおろか、誰も知らないものだと思っていました。
だからあの海賊たちが自分を助けるために魔空監獄に乗り込んできたとも思えない。

かといって、魔空監獄はたまたま通りかかるような場所でもなく、
よほどの事情が無ければあえて乗り込んでくるような場所でもない。
あの海賊たちと魔空監獄との接点があるとも思えず、
何人かの囚人を脱獄させた後、それで目的達成したわけでもないようで、ひたすら上に昇ってきているということは、
どうも最上階の自分を目指してやって来ているようにギャバンには思えてくる。

つまり、あの海賊たちは何らかの方法で自分が魔空監獄に捕らわれたことを知り、
何らかの経緯で魔空空間に行く方法を手に入れ、
自分を救い出すためにこうして魔空監獄に乗り込んできた。
そのように考えるのが一番自然だとギャバンは思いましたが、
しかしどうにもギャバンは理解に苦しみました。

あの海賊たちが独特の義侠心を持った連中だということは分かりますが、
自分は彼らに迷惑をかけただけの立場であり、彼らにとって助けるような対象ではないはずなのです。
何の罪も無くザンギャックに苦しめられている人々を見過ごすことが出来ないというような、
第三者的な義侠心で助けるようなケースとは根本的に違う。
彼らと心理的に距離を置き、彼らをトラブルに巻き込んだだけの自分を、
彼らが多大なリスクを払って助けに来るような理由など何処にも無い。
だから海賊たちが自分を助けに来るはずなどない。
だが、それ以外に彼らがここにやって来た理由が想像もつかない。
そういうわけでギャバンは大いに戸惑ったのでした。

さて、一方、一気に階段を駆け上がっていくマーベラス、ルカ、ハカセ、アイムの4人ですが、
その行く手を遮るように階段の途中に変な扉が閉じています。
そこに辿り着いたマーベラスは「ん?・・・小細工しやがって!」と、
その扉を単なる進路を妨害するための障害物程度のものと思ったようで
「おらぁっ!!」と思いっきりケリを入れてドアを開き、4人は扉の向こうに突っ込んでいきました。

ところが扉の向こうは階段ではなく、広い空間となっていました。
どうやら扉はその階のフロアー部に入る扉であったようだと思ったマーベラス達でしたが、
そのフロアーのはずの広い空間は何とも予想外の異様な光景でした。
そこはさっきのフロアーのように牢屋が並んでいる殺風景な光景ではなく、
なにかヨーロッパの風光明媚な古い街並みのような、趣のある光景となっていました。
そもそも上には抜けるような青空が広がっており、とても監獄内の光景とは思えない。

ハカセは「あれ?」と戸惑って、4人ともキョロキョロ周囲を見回し、
間違って外にでも出てしまったのかとも思いましたが、
それにしても外の魔空空間はこんな爽やかな景色ではなかったはずです。
また、この趣のある街並みには他に誰も人はいませんでした。どうも不自然というしかない。

「ここ・・・何処・・・?」とルカが怪しむように呟くと、
その疑問に答えるように、突然、その静かな街並みに「地獄の一丁目だよぉ!!」という不気味な声が響き渡りました。
「ん!?」とギクッと驚いて4人は周囲を見回しますが、その声の主の姿は見当たらないし、
その声が何処から聞こえたのかも分からない。
周囲の空間全体から聞こえたようでもありました。

ただ、その声には強烈な敵意と憎悪が込められていたことは4人とも感じ取っていましたので、
自ずとこの奇妙な光景の持つ意味合いも4人には分かってきました。
ルカは「つまり・・・変な空間ってわけね!」と納得しました。
つまり、この奇妙な街並みは何かの間違いで4人が迷い込んだわけではなく、
4人を始末するための罠としてアシュラーダ側が作り出した人工的な空間なのです。

おそらく、これも一種の魔空空間なのだろうと4人は思いました。
この場所は本当はまだ魔空監獄の内部であり、あの階段から広いフロアーに出た場所のはずなのですが、
アシュラーダはブートレグに命じてそこに発生させた魔空空間の中に4人を引き込んだのです。
それがヨーロッパの中世都市風であるので「魔空都市」と名付けているようです。

どうやら魔空監獄内においては様々な種類の魔空空間を多数生み出せるようで、
脱走者や侵入者などをその脱出できない空間に閉じ込めることによって、
魔空監獄は2万6千年間も脱獄を不可能としてきたようです。
つまり「魔空監獄」とは「魔空空間にある監獄」という意味なのではなく、
その本質は「魔空空間で形成されている監獄」なのであり、
魔空監獄はこうした脱出不可能な魔空空間が組み合わさって出来ているのが真の姿であったのです。
なるほど、意外に警備が手薄であったのも、こういう奥の手があったのならば納得でした。

だいたいそういうことであることに気付いたマーベラス達は、
これによってバスコの言っていた「迷宮」という言葉の意味がだいたい分かったのでした。
この奇妙な空間からは迷宮のように脱出は困難なのであり、
そしてこの迷宮のような空間にはミノタウロスのように迷宮を守る番人がいる。
つまり、この空間に引きずり込んだ相手を倒そうとして襲ってくる刺客が潜んでいる。

それを察して周囲を警戒して身構える4人でしたが、
よく考えたらさっきの謎の声には何やら聞き覚えがあるような気もしてきました。
いや、あの特徴的な世紀末的な声は視聴者にもどうも覚えがあります。

と思ったら次の瞬間、マーベラス達4人の周囲に突如、とんでもない数の赤い小さなボールのようなものが出現し、
一斉に地面に落ちて弾みながらザワザワと好き勝手なことを喋り始めたのでした。
マーベラス達は驚いてその赤いボールを見て、それが普通のボールではなく、
小さなトゲトゲが突き出した掌サイズの赤い玉で、顔のような模様があるものだと気付きました。
そして、それは自分達にとって見覚えのあるものであることも思い出したのでした。

ただ、それにしてもこの数の多さはちょっと考えられないものでした。
確かマーベラス達の記憶にあるその赤いボールはこんなたくさんではなかったはずだからです。
そのトゲトゲの赤いボールはめいめいが好き勝手なことを喋っていますが、
その内容はとりとめがなく無意味なものでした。

だが、その中でただ1つ、さっきの謎の声と同じ、ひときわ大きな声がマーベラス達に向けて
「ここで会ったが1年目!弟ヤンガーの仇、このエルダーとぉっ・・・」と叫び、
そして一拍置いて、それらの赤いボールの大群の向こうに姿を現したゴツい身体の岩石怪人のようなヤツが
身体に似合わないやけに可愛いアニメ声のような女の声で「妹シスターが恨みを晴らします!」と、
声に似あわぬ怖いことを言います。

やはりさっきの謎の声は、あのエルダーであったようです。
エルダーとは、「ゴーカイジャー」TV本編の第8話で登場したザンギャックの行動隊長、
スニークブラザースの片割れ、兄貴の方です。

スニークブラザースは第8話の時にダマラスがマーベラス一味が地球に来た目的が何なのか探るために
ガレオンに潜入させた、潜入諜報活動を得意とする行動隊長の兄弟でした。
兄のエルダーは掌サイズの赤いトゲトゲボールのような小怪人で、
その小さな身体を使って潜入諜報活動をする役目で、
弟のヤンガーはゴツい身体をした岩石怪人に赤い大きめのトゲトゲボールが寄生した姿で、
おそらくトゲトゲボールの方が本体なのだと思われ、
兄のエルダーを遠投の要領で潜入目的地に投げ込むことが主な役目でした。

第8話の時はこの兄弟はガレオンへの潜入を敢行し、
結局は諜報活動そのものは成功してマーベラス達が「宇宙最大のお宝」を手に入れるために
「大いなる力」を集めているという貴重な情報をダマラスにもたらすことに成功し、
これが後にバスコを地球に呼び寄せることになるという、
物語において非常に重要な役割を果たすことになったのですが、
その諜報活動の成功直後にマーベラス達に潜入がバレてしまい、倒されてしまいました。

この時、一旦倒されて復活巨大化したスニークブラザースは、
弟のヤンガーが兄のエルダーをゴーカイオーに向かって投げつけ、
ゴーカイオーはこれをバットをフルスイングしてジャストミートし、エルダーは宇宙の彼方に吹っ飛ばされ、
その後ヤンガーはゴーカイフルブラストで倒されました。
これで兄弟揃って死んだと思われていたスニークブラザースですが、
意外というか、やっぱりというか、宇宙の彼方に吹っ飛ばされたエルダーだけは生きていたようです。

まぁ当初は再登場させる予定も無く、死んだという設定であったのでしょうけれど、
このスニークブラザースのキャラがやたら濃くて、敵怪人でジェラシットに次ぐキャラ人気を獲得したものですから、
せっかくなので今回、ジェラシット同様、生死がイマイチ不明っぽい描写だった兄のエルダーの方を
生きていたことにして再登場させたようです。

当然エルダーの声は第8話の時と同じく「北斗の拳」のハイテンション次回予告ナレで有名な千葉繁氏で、
今回も千葉氏のアドリブが炸裂しまくっています。
そして同じくハイテンション声優の檜山修之氏が声を担当した弟ヤンガーは
第8話で完全明確に倒されているのでさすがに再登場は無く、檜山氏の声が聞けないのは残念ではありますが、
ヤンガーの着ぐるみ自体は今回シスターという新キャラとして使い回しされています。

このシスターはその名の通りエルダーの妹であるらしく、外見はヤンガーそっくりだが、
よく見ると岩石怪人に寄生している本体の赤いトゲトゲボールの顔面が
睫毛が長かったり頭頂部に花飾りがあったりして女性的で、岩石怪人も赤いスカートを履いていたりする。
シスターの声は特撮は初めてだがアニメ界では近年ご活躍の声優の加藤英美里さんで、
見事なアニメ声の妹キャラをここでは演じておられますが、
演じるキャラの幅が広い声優さんなので、ここでいきなり野太い声に豹変して
「うおおお!」と唸りながら両掌で小さな赤いトゲトゲボールを押し潰します。
どうやらこれがエルダーの本体であるようです。

この大量のエルダーそっくりのトゲトゲボールは何なのかというと、
エルダーが作り出した自身の実体をもった分身のようなものであるようで、
その大量の分身の中に本体が紛れて大量の分身を操って攻撃するようです。
以前はエルダーはこんな能力は使っていなかったはずですが、
これも魔空空間でパワーアップしているので使える能力なのでしょう。

もともとはインサーン配下の怪人であったはずのスニークブラザースですが、
宇宙の彼方に吹っ飛ばされた後、どういう経緯か不明ながら何時の間にかアシュラーダの配下になったようで、
妹のシスターと共に魔空監獄の番人役をやっていたようです。
そこにたまたま、かつて弟のヤンガーを倒した憎い仇であるマーベラス一味がやって来たものですから、
エルダーとシスターは今こそ兄弟の仇討ちの好機と張り切っているようです。

ただ分身能力を獲得してもエルダーの攻撃方法自体はさして変化しておらず、
誰かに投げてもらわねば破壊力は発揮できないようで、
今回も妹シスターが野蛮キャラに豹変して「おらああああ!!」と力任せに
エルダーの本体と分身を一緒くたにしてマーベラス達目がけて豪速球で投げ込んできます。
この攻撃によって身体に多数のエルダーをぶつけられたマーベラス達は「うわあ!?」と悲鳴を上げ、
たまらず逃げ惑い、そこらにあったテーブルや椅子を使ってバリケードを作ってその陰に隠れ、
ボール攻撃を必死で防ぎます。

そうしているうちに考え無しに勢い任せにエルダーの分身を投げ込みまくっていたシスターは
全部のエルダーを投げてしまい、手元に投げるものが無くなってしまいました。
「ん?」と攻撃が止んだことに気付いたマーベラス達はバリケードの陰からゾロゾロ出てきて、
反撃に転じるべくシスターに迫ります。
これに対してシスターは再びアニメ声の妹キャラに戻り「ああ〜!?どうしましょう!?」と大いに焦り、
ハッと思い出したように「お兄様!合体よ!」と叫びます。

するとそこらじゅうに散らばっていたエルダーの分身がみんな一斉に大騒ぎしながらシスターのところに集まってきて、
シスターを包み込んで一塊となり、巨大な赤いトゲトゲボールを形成したのでした。
そのまま、その巨大ボールは「うらあああ!!」と怒鳴り声を上げて猛烈な勢いでマーベラス達目がけて転がり出し、
マーベラス達は慌ててゴーカイガンで応戦しますが、銃弾はボールの表面に吸い込まれていき、全く効果が無い。

危険を感じてマーベラスとアイムは飛び退きますが、ルカが逃げ遅れたところ、
ハカセがルカを突き飛ばして身代わりとなり、巨大ボールの直撃を受けてしまい、「うわあああ〜!」と絶叫しました。
ところがハカセは仁王立ちのまま巨大ボールを突きぬけてしまっていました。
つまり巨大ボールはハカセに直撃しながら、ハカセを薙ぎ倒すことなく通り抜けていったのです。
どうもこれは巨大ボールを形成する大量のエルダーの分身の密度が薄くて、
何か大きくて固いものにぶつかるとその部分がバラバラになってしまうからであるようです。

といっても全身に一斉に大量のボールが直撃したようなものですから、
さすがにハカセもダメージを受けて前のめりにバッタリ倒れます。
そしてハカセを通り抜けた巨大ボールは建物の壁に激突してバラバラに分解し、
大量のエルダーの分身がそこらじゅうに散らばるのでした。

一方ルカはハカセが倒れたのを見て、自分を助けるためにハカセが自分を犠牲にしたのだと思い、
慌てて「ハカセ!」と叫んで駆け寄り、抱え起こしましたが、
ハカセは死ぬほどのダメージでもないので「・・・大丈夫!」と言い、
マーベラスとアイムに向かって「ここは僕とルカが何とかする!」と叫びました。

何故か急に仕切りだしたハカセに勝手に持ち場を決められて、ルカは「はぁ!?」と困惑しますが、
ハカセはルカの微妙な反応にはお構いなしで「2人は先を急いで!」と、どんどん話を進めていきます。
ハカセはエルダーとシスターの合体攻撃を受けて、致命傷こそは受けなかったものの、
やはりこの魔空空間では彼らがかなりパワーアップしているのを実感し、
この戦いが一筋縄ではいかないと悟ったのでした。

この強敵となったエルダー達と戦いながら、同時にこの空間からの出口を見つけなければいけない。
「迷宮」というぐらいだから脱出は難しい空間なのだろう。
それでも入口があったのだから、きっと探せば出口は何処かにあるはずだとハカセは思いました。
ただ、それはそう簡単には見つからないのかもしれないのだから、
エルダー達と戦いながらとなると難しくなってくる。
ならばエルダー達との戦いを自分が引き受けようとハカセは決めたのでした。

おそらく自分よりもマーベラスが戦った方がエルダー戦を優位に進められることもハカセには分かっていましたが、
危険が増すことは分かっていても、この場はまずはマーベラスを先に急がせなければいけない。
もともとハカセ達5人の仲間がマーベラスと共に魔空空間にやって来た目的は
マーベラスの夢の原点が何だったのか確認するためであり、
そのためにマーベラスをギャバンと会わせるためでした。
だから、この空間を脱して最上階へ向かって進むのはマーベラスでなければならないのであり、
ハカセは仲間としてマーベラスを最上階に進ませるために
敵を引きつけて戦う役目を引き受けようと心に決めたのでした。

もちろん怖いし、戦うのも本音ではあまり好きではないが、
それでもこれが仲間としてやらねばならないことであり、
また仲間として自分が出来ることでもあるとハカセは思ったのでした。
ただ1人ではやっぱり自信が無いのがハカセらしい正直さで、
ハカセは勝手にルカを一緒に戦う居残り組に指名したのです。

ルカはどうして自分がハカセのパートナーをやる羽目になるのか意味が分からず「あたしが!?」と戸惑いますが、
ハカセがせっかく仲間のために戦いを引き受けようという勇気を発揮し、
そのパートナーに自分を指名したのだから、その決断に水を差すのも悪い。
まぁさっき一応盾になって自分を助けてくれた借りも返さねばならないと思い、
ルカは「・・・ハァ・・・まいっか!」と溜息をついて納得しました。

そうしてハカセは「いくよぉ!ルカ!」と張り切って立ち上がりレンジャーキーを構え、
ルカも「あいよぉ!」と応じてレンジャーキーを構え、
2人は背中合わせに「豪快チェンジ!!」と同時に多段変身しました。
ルカはハリケンイエロー、ハカセはバトルケニアへの変身でした。
ハカセのバトルケニアは、さっきのジョーのデンジブルーと同じく、
魔空空間に入る時に使ったレンジャーキーをそのまま持っていて戦いでも使ったということですが、
ルカのハリケンイエローは特にハカセのバトルケニアと合わせた深い意味は無いようです。

ハカセはシスターの方に襲い掛かり反撃を開始し、
シスターは最初はハカセの突然の攻撃的姿勢に慌てて女の子っぽい悲鳴を発してクネクネと逃げ惑う有様でしたが、
やがて性格が豹変し、野太い声で「何すんだ!このぉ!」と逆ギレして反撃、
それにハカセも応戦し、一進一退の攻防となります。
おそらく本来は今は亡きヤンガーと同等の力の持ち主であろうと思われるシスターは
現実空間ではさほど強い怪人ではないはずなのですが、やはりこの魔空空間ではそれなりに強く、
ハカセもそう簡単に倒せそうにありません。

一方ルカはエルダーへの対処を受け持ち、
ハリケンイエロー専用ガジェットであるクエイクハンマーを使って、
周囲を跳び回って襲ってくるエルダーの分身の赤いトゲトゲボールを次々と叩き落としていきます。
そして「どれがエルダーよ?お前か?お前か?」と言いながらモグラ叩きのように分身たちを叩き潰していきます。
なるほど、これをやるためにハンマー使いの戦士をチョイスする必要があり、
普段ルカの変身するイエロー戦士の中でハンマー使いの戦士といえばハリケンイエローぐらいしかいないので、
自動的にここはハリケンイエローというチョイスとなったようです。

こうして手当たり次第に分身を叩き潰していけば、いずれは本物のエルダーを潰すことが出来るという作戦なのですが、
これもまた、あまりに分身の数が多いので、気が遠くなるような作業です。
しかしルカとハカセがこうして敵を引き付けてくれている間に、
マーベラスとアイムはこの空間からの脱出口を探す余裕が生じます。
ルカとハカセの想いを受け取ったアイムは「では・・・お願いします!」と感謝の意を示し、
マーベラスとアイムは戦いの場から離脱して駆け出しました。

ただ、何処に脱出口があるのか分かりません。
実際そんなに簡単に脱出できるようになっているのなら、
2万6千年も脱獄者を出していない宇宙最悪の刑務所だとか迷宮だとかいう称号が付けられるわけがない。
だから、脱出口を見つけることは限りなく不可能に近い。
少なくとも、そんなにすぐに脱出口が見つかるはずはない。そのはずでした。

ところがマーベラスとアイムが駆けだすとすぐに目の前の路地のど真ん中に扉が忽然と出現していました。
何も建物も無い位置に扉だけが置いてあるのです。
それは先ほどこの空間に入る時にマーベラスが蹴って開けた扉と同じ形のものでした。
マーベラスはそれがこの空間の出口なのだと直感し、「あれか・・・」と呟き、
アイムも「はい!」と確信に満ちた声でマーベラスの背を押したので、
マーベラスは躊躇せず突っ込んでいき、その扉をさっきのように蹴って開け、
そのまま2人は扉の中に飛び込んでいきました。
すると、2人は次の瞬間、
さっきの中世ヨーロッパ風の魔空都市に入る前に駈け上がっていた魔空監獄の階段室に戻っていました。
やはり、あの扉は魔空都市空間からの脱出口だったのです。

しかし、どうして2人はこんな簡単に魔空都市からの脱出口を発見することが出来たのか?
こんな簡単に脱出できるのならば「迷宮」と呼ばれるわけがないし、
アシュラーダもこんな簡単に脱出できると予想はしていなかったはずです。
何かアシュラーダの想定を超える要素がマーベラス達にはあると考えるしかない。

そもそもマーベラス達が魔空空間に自力で侵入に成功していること自体がアシュラーダの想定外の事態なのですから、
ここにおける想定外の要素もそこに繋がっているはずです。
すなわち、レンジャーキーの持つ力がアシュラーダの想定外の要素なのです。
レンジャーキーの持つ「亜空間の扉を開く力」が、
この場面でも魔空都市という小規模亜空間から元の魔空空間に戻ることを可能にしたのでしょう。

ただ、ここではマーベラスとアイムはさっき体育館から魔空空間の扉を開いた時のように
デンジブルーやバトルケニアのレンジャーキーを使って意識的に亜空間の扉を開いたわけではない。
単に魔空都市空間の何処かに出口があるはずだと思って探したところ、出口の扉を発見したに過ぎない。
つまり、マーベラス達に備わる何かの力が自動的に作用して亜空間の扉を開いたと思われる。

それはおそらく、マーベラス達が身に帯びているゴーカイジャーのレンジャーキーの持つ
「亜空間の扉を開く力」によるのでしょう。
ゴーカイジャーのレンジャーキーだってレンジャーキーの一種ですから、
34戦隊のレンジャーキー同様、亜空間の扉を開く力はあるはずです。
マーベラス達はそのことに気付いていないが、
ここではゴーカイジャーのレンジャーキーの持つ力によって亜空間の扉が開いて、
マーベラスとアイムは魔空都市から元の魔空監獄の階段に戻ることが出来たようです。

ただ、普段はゴーカイジャーのレンジャーキーはそんな能力は発揮しておらず、今回は特殊なケースだとは思われます。
そもそもゴーカイジャーのレンジャーキーで魔空空間の扉がそんなに安易に開くのなら、
曙や青梅はわざわざバトルケニアやデンジブルーのレンジャーキーを使うようにアドバイスしないはずです。
あの現実空間から魔空空間への扉を開いてギャバンの近くに辿り着くという目的を達成するというケースにおいては、
やはりゴーカイジャーのレンジャーキーではなく、バトルケニアやデンジブルーのレンジャーキーが必要だったのです。
となると、今回、ゴーカイジャーのレンジャーキーの力で亜空間の扉が開いたのは、
あくまで魔空空間内に作られた魔空空間からの脱出という特殊なケースだったからだと推測できます。
魔空空間内の魔空空間は通常の魔空空間よりも遥かに不安定な空間なのでしょう。
だから通常は脱出不可能でも、レンジャーキーの力を使えば脱出することが出来るのでしょう。

ただ、それはあくまで魔空都市からの脱出に限った話であり、
脱出したからといって必ずしも元の魔空監獄の階段室に戻れるというものではない。
とんでもない異次元空間に飛んでしまう可能性もあるのです。
ところがマーベラス達が元の階段室に戻ることが出来たのは、
単にゴーカイジャーのレンジャーキーの力のお蔭だけではありません。

これはやはりマーベラス達のギャバンのもとに辿り着こうという意思の力が作用していると見るべきでしょう。
いや、より正確に言えば、マーベラスがギャバンに出会うことによって
マーベラス一味の夢の原点が確認されることを望む想いが、
ゴーカイジャーのレンジャーキーの力と連動して、魔空都市からギャバンの許へマーベラスを導こうとして
元の魔空監獄の最上階へ続く階段室へとマーベラス達の身体を戻したのだということになります。

そうした詳細な脈絡は分かっていないものの、
元の階段室に戻ったマーベラスはアイムを伴って、一目散に最上階目がけて駆け上がっていくのでした。
こういう仲間を次のステージに進ませるために各ステージに少しずつ仲間が居残って敵を食い止めて
仲間を先に行かせるという展開は、まさに「リングにかけろ」「キン肉マン」「男塾」のような
80年代少年ジャンプ黄金期の黄金パターンです。
その黄金パターンに従うとすると、次にまたもう1つ戦いのステージが待っているはずです。

すると視聴者の予想通り、だいぶ上層階に上がってきたところで、また階段が途中で扉で塞がれています。
マーベラス達が魔空都市を脱出したことにいささか驚いたであろうと思われるアシュラーダですが、
またブートレグに命じて、更なる罠の空間を仕掛けてきたようです。
この扉を見て、また罠の空間だと気付いたマーベラスですが、
こうなったらあえて罠に飛び込んで刺客を粉砕して、出口を見つけて突破するのみだと心に決め、
躊躇うことなく扉を蹴り飛ばして、開いた扉の向こうにアイムを連れて飛び込んでいきました。

すると次の瞬間、2人は海の上の虚空に飛び出し、そのまま海面に落下してしまいました。
「うっ!?」と驚いたマーベラス達ですが、海は浅瀬であり、海中ですぐに足の裏は地面を掴むことが出来ました。
見てみると、そこは遠浅の浜辺のすぐ近くの波打ち際であるようです。

「今度は海ですか!?」とアイムの戸惑うセリフが終わらないうちに、
激しい爆発音と共に2人の周囲の海面に激しい水柱が幾つも立ちのぼりました。
「ああ!?」と呻いてマーベラスが浜辺の方を見ると、そこには白いボディのロボット怪人が立っています。
その怪人がマーベラス達をミサイルで攻撃してきたようでした。

ここはまたさっきのような迷宮空間であり、
この見知らぬロボット怪人が今回の迷宮の番人なのだと理解したアイムは
「・・・一気に参りましょう」とマーベラスに言います。
番人をさっさと倒して、この迷宮の出口を見つけて早くまた元の魔空監獄に戻って最上階を目指そうというつもりです。
「豪快チェンジ!!」と掛け声を上げて、マーベラスはゴセイレッド、アイムはゴセイピンクに変身しました。

ここで2人がゴセイジャーに多段変身したのは、2人としてはあまり深い意味は無く、
なんとなく連係プレー重視でチョイスしただけのようですが、
制作側のチョイスの根拠としては、このマーベラス達と対峙しているロボット怪人が
「ゴセイジャー」TV本編における敵組織であったマトリンティス帝国の皇帝である10サイのロボゴーグだからでしょう。
しかしロボゴーグは「ゴセイジャー」本編の中でゴセイジャーに倒されたはずなのですが、
どうしてここに現れたのか謎です。

ただマーベラス達はこの怪人がロボゴーグであることや、既に死んでいるはずであることも知らず、
単なる迷宮の番人怪人としか思っておらず、さっさと倒すために攻撃を開始します。
そしてアイムがゴセイピンクの専用武器であるスカイックショットで援護射撃する中、
マーベラスは「うおおおお!!」とロボゴーグに突撃し、
「おりゃああっ!!」とゴセイレッドの専用武器であるスカイックソードを一閃、ロボゴーグを撃破しました。

ところが撃破したはずのロボゴーグの姿が消え、マーベラスは突如毛むくじゃらの怪物に喉元を掴まれていました。
しかも辺りの風景が海辺ではなく、いきなり雨が降りしきる森の中に変わっており、
何がなんだか分からないままマーベラスは怪物に振り回されて地面に叩きつけられ、
続いて怪物はアイムに襲い掛かりました。

この毛むくじゃらの怪物もマーベラス達には見覚えの無いヤツでしたが、
実はこれもまた複数の敵組織が入れ替わり登場した作品である「ゴセイジャー」の敵組織の1つ、
幽魔獣の大幹部であったビッグフットの筋グゴンでした。
しかし筋グゴンもまた「ゴセイジャー」本編の中で倒されたはずです。

さっきのロボゴーグといい、この筋グゴンといい、
その唐突な出現や消滅、辺りの風景の急激な変化などは全く不可解で、
おそらく今回の迷宮空間の特性に関係があるのでしょうが、
この両者とも一言も言葉を発しておらず、唸り声や叫び声のようなものも一切発していないことから、
どうもオリジナルのロボゴーグや筋グゴンではないように思えます。

この筋グゴンはマーベラスを地面に叩きつけた後、棍棒を振り回してアイムを襲い、
アイムは必死に防戦し、割って入ろうとしたマーベラスが棍棒の攻撃を受けている隙に
アイムは「はぁっ!!」とスカイックショットで反撃し、この直撃を受けて筋グゴンは撃破されました。

このあたりも少し不可解で、さっきのロボゴーグもスカイックソードの一閃で倒され、
この筋グゴンもスカイックショットで倒されたりしていますが、
本来のロボゴーグや筋グゴンは敵組織のラスボス格ですから、
ゴセイジャーの個人武器1つで倒せるような相手ではないはずです。
だから、やはりこれはオリジナルではないと思われます。

そしてやはり先ほどと同じように、筋グゴンを倒したはずが、
次の瞬間にはマーベラスとアイムの周囲の風景はまた一変して見知らぬ荒野になっており、
2人は「うわあああ!!」と叫んで爆風に吹き飛ばされているという、
またさっきのようにいきなりピンチの場面から始まるという展開となっていました。

吹っ飛ばされて崖を転がり落ちた2人の前に舞い降りたのは蛾のような姿をした怪人で、
この怪人が空から2人を爆撃したようです。
これもまた2人には見知らぬ怪人でしたが、
実はこれも「ゴセイジャー」に登場して既に倒されているはずの敵組織ウォースターの首領、
惑星のモンス・ドレイクです。

このモンス・ドレイクの持つ斧から発射された光線でマーベラスとアイムはまた吹っ飛ばされ、
アイムは倒れたまま「これはいったい・・・?」と困惑します。
さすがに先ほどからの異様な展開の連続に、
この空間で戦った3怪人が何者か知らない2人にも、どうもこの空間が異常であることは分かってきたようです。

さて、そもそもいったいどうして死んだはずのロボゴーグ達がここに現れたのか?
これまでにも春映画「199ヒーロー大決戦」で過去において死んだ黒十字王やブラジラなどが復活したり、
夏映画「空飛ぶ幽霊船」でも過去において死んだ野球仮面やアブレラが登場したりしましたが、
今回はそれらとはどうも様子が違います。

「199ヒーロー大決戦」の時は倒された怪人の恨みや憎しみの思念が実体化したものであり、
「空飛ぶ幽霊船」の時は倒された怪人の死者の魂そのものが現れていました。
それゆえ、これらの怪人たちは自分の意思や感情というものを持っていました。
だが、今回登場しているロボゴーグ、筋グゴン、モンス・ドレイク共に、
およそ意思や感情というものは見受けられません。
何せ彼らを殺した張本人であるゴセイジャーの姿にマーベラス達が変身しているにもかかわらず、
何の感慨も抱いていないようなのです。

これは魂の抜けた人形のようなものと思われます。
だが、ただの人形ではない。誰かの命令を受けて動いているようには見えないし、
なんといっても倒されたと思ったら忽然と消えているのも不思議です。
何か実体の無い幻影であるように思えます。
魂の無いロボゴーグ達の戦闘力だけが反映された幻影のようなものが出現して、
マーベラス達はそれらと戦わされているようです。

つまり、今回の迷宮空間は幻影空間のようなものであり、
魂や実体を持たない幻影の戦士と戦わされる空間であるらしい。
そして周囲の空間もその幻影戦士に対応したものになるようです。

例えばロボゴーグは海底を本拠地としていたマトリンティス帝国の皇帝だったので、
いつも海から攻撃してきていました。
また筋グゴンの率いていた幽魔獣軍団は密林の中に潜む未確認生物をモチーフとした怪人集団でした。
モンス・ドレイクの率いるウォースターも宇宙からの侵略者であったので、
だいたい敵は開けた荒野に空から舞い降りるシチュエーションが多かったといえます。

そして、これら幻影怪人はやはりオリジナルよりは弱いようであり、
この3怪人はオリジナルはスーパー戦隊の力でも倒すのは困難な相手ですが、
ここで現れる幻影ならば倒せないこともない相手のようです。
だが、1つの幻影怪人を倒せばすぐに次の幻影怪人が現れて、ステージも切り替わっていく。
そうしてこの空間に捕らわれた者は延々と続く戦いを強いられるのです。

ただ1つ不思議なのは、マーベラス達はロボゴーグ達のことを知らないし、
アシュラーダもおそらくロボゴーグ達のことは知らないはずなのに、
どうして彼らの幻影をこの空間に出現させることが出来たのかという点です。

アシュラーダが作り出した幻影というわけでもなく、
マーベラス達の思考を読み取って彼らの記憶に残る強敵を出現させたというわけでもない。
ならば、この幻影怪人の正体は何なのかというと、
おそらくこの幻影空間はその空間に閉じ込められた獲物の持つ能力を読み取って、
その能力に対応した強敵を次々と出現させる仕組みになっているようです。

それで今回のケースは
ゴーカイジャーの最大の能力であるレンジャーキーによる34戦隊への多段変身能力に空間が反応して、
34戦隊の強敵たちの幻影怪人を次々と繰り出している状態となっているようです。
つまり、今のところたまたま出現しているのがゴセイジャー関連の強敵たちの幻影なのですが、
このままモンス・ドレイクも倒したら次は例えばシンケンジャー関連の強敵ということで
血祭ドウコクや腑破十臓の幻影が登場するかもしれないし、
別に順番は適当で、いきなりゴレンジャーの強敵であった日輪仮面やゴールデン仮面のような
幹部怪人の幻影が出てくるかもしれない。
とにかく34戦隊の歴史において強敵の人材は豊富であり、
倒しても倒しても次から次へとスーパー戦隊の強敵が登場してくるという状態であるようです。

目の前の敵がかつてスーパー戦隊を苦しめた強敵の幻影であることには気付いていないマーベラスも、
目の前の敵が幻影であり、この空間がそうした幻影怪人が間断なく現れて襲ってくる空間であるということは気付き、
「チッ!・・・倒してもキリがねぇってことか!」と舌打ちしました。
まさに無間地獄のような幻影空間の罠に堕ちたマーベラス達にはこの罠から逃れる術は無いかのように思えます。
実際、この空間は本来は脱出不可能なのでしょう。

しかし、ここで不思議なことに、またこの空間の出口の扉が忽然と出現したのでした。
その扉の存在に気付いたのはアイムでした。
当面の敵である蛾の怪人、すなわちモンス・ドレイクの幻影の方を見たアイムは、
モンス・ドレイクの背後の高台に先ほどの都市空間からの脱出の際に見たのと同じ形の扉が
いつのまにか現れているのを発見し、「あぁ!・・・マーベラスさん!次の扉が・・・!」と驚いてマーベラスに言いました。
マーベラスも驚いてその扉を見つめます。

自分達の夢の原点を確かめたいというマーベラス達の想いの力がレンジャーキーと作用し合って
亜空間に本来は有り得ない扉を開いているのですが、マーベラスにはその脈絡はよく分からない。
ただ、この不安定で変転していく空間において、
あの扉がいつまでもあそこに存在し続ける保障は無いということは何となく分かりました。
とにかくこの千載一遇の好機を逃すわけにはいかない。

「・・・ああ!」と頷いたマーベラスは立ち上がり、
アイムと共に「うおおおお!!」と真っ直ぐモンス・ドレイクに突っ込んでいきました。
そして2人を目の前まで引き付けてモンス・ドレイクが繰り出した斧からの雷撃を、
マーベラスはジャンプし、アイムは下に飛び込んでかわし、2人ともモンス・ドレイクの背後に出ました。
2人はモンス・ドレイクを倒すのではなく、その背後の扉に向かうのが目的でした。

しかしモンス・ドレイクもすぐに振り返って2人目がけて雷撃を繰り出します。
これに対してアイムはテンソウダーにディフェンストームカードを装填して
「天装!!」と叫び、風の壁を展開し、雷撃を食い止めました。
このタイミングでモンス・ドレイクを倒すと、また新たな敵が登場して周囲の空間が一変し、
せっかくの扉が消えてしまうかもしれない。
だから、ここはとにかく防御に徹するしかない。

アイムはモンス・ドレイクの攻撃を食い止めながら、背後に着地したマーベラスに向かって
「・・・行ってください!」と叫びます。
自分が敵を食い止めている間にマーベラスを扉に向かわせようと決意したのでした。
今回の戦いで夢の原点を確かめるのはマーベラスですから、
最上階に辿り着いてギャバンに会うのはマーベラス1人で十分でした。
ただ最上階にも強敵が待ち構えている以上、出来れば一緒に行きたいと思っていたアイムでしたが、
こうなってしまっては仕方ない。
他の仲間たち同様、マーベラスを信じて託すことにしたのでした。

マーベラスも躊躇することなくアイムの想いを受け止め、「ああ!!」と返事すると
「はぁっ!」と掛け声を上げて飛び上がりました。
そのままゴセイレッドの浮遊能力を使って舞い上がり、マーベラスは真っ直ぐ扉に向かって突っ込んでいき、
「てやあっ!!」とスカイックソードで扉を突き押して開き、そのまま扉の中に突っ込んでいったのでした。

次の瞬間、マーベラスは元の魔空監獄の通常空間に戻っていました。
同時にゴセイレッドの変身は解除してゴーカイレッドの姿に戻っています。
ただ、今回マーベラスが飛び込んだのは階段室ではなく、
やや広い空間で、左右には空の牢屋が並んでいました。
そして勢い余って通路の床で転がって起き上がったマーベラスが目の前を見上げると、
そこには吹き抜けの壁面上部に両手首を拘束されて磔状態となったギャバンがいたのでした。

マーベラスは遂に最上階に辿り着いたのです。
マーベラスが転がり込んだ牢屋に挟まれた通路を見下ろす吹き抜け廊下の奥には、アシュラーダもブートレグもいます。
マーベラスは状況を確認し、どうやら目指す最上階に辿り着いたようだと理解し、「ヘッ!」と不敵に笑います。

そのマーベラスを見下ろして、ギャバンは驚愕して「・・・海賊・・・!」と呻きました。
事ここに至ってさすがにギャバンも、やはり海賊たちの目指していたのはこの最上階であったのだと確信したのですが、
それにしても一体何をするために海賊たちは命懸けでここまでやって来たのか、
ギャバンはまだよく分かりませんでした。

いや、この自分しかいない最上階を目指していた以上、
海賊たちは高い確率で自分に用件があるのだろうと推測出来ますが、
ギャバンには海賊たちが自分とそれほどの深い関係があるとは思えないので、
この事態を前にしても戸惑いの方が先行するのでした。
あるいはこの魔空監獄の最上階に海賊の欲しがる何かの宝物があるという可能性もゼロではない。
突拍子も無い推理ですが、相手がお宝目当ての海賊であることを考慮すれば、
そちらの方が可能性は高いようにも思えてくる。

一方、アシュラーダはマーベラス一味が何を目的として魔空監獄にやって来たのかなど、
あまり興味はありませんでした。
まぁギャバンに用件があるのであろうが、そんなことはどうでもいい。
アシュラーダにしてみれば、マーベラス達は倒さねばならない獲物であり、
海賊たちが監獄内でバラバラになって、まずマーベラスがたった1人で
ノコノコとここまでやって来たのは実に好都合でした。

まぁ確かにアシュラーダは脱出不可能のはずの迷宮空間からマーベラス達が脱出したのは予想外の驚きでした。
原理はよく分からないが、どうやらマーベラス一味は亜空間の扉を自力で開いて脱出する能力を持っているらしい。
現実空間からこの魔空空間まで自力でやって来たのも、その不思議なパワーが関係しているのだろうと
アシュラーダは思いました。

アシュラーダは「ここまで来るとは大したものだ・・・」と素直にマーベラスを褒めました。
マーベラスも褒められて悪い気はしないようで、少し胸を反らして剣をひょいと担ぎ、
「まぁな!史上初の脱獄・・・見せてやるよ!」と宣言しました。
これにはギャバンもアシュラーダもいささか驚いたようです。
やはりというか何というか、マーベラス達の目的は他の何物でもなく、
ギャバンを救い出して脱獄させることであったと、堂々と宣言がなされたのです。

確かに状況的にはその可能性が高いことはギャバンにも分かっていましたが、
ギャバンにはマーベラス達がそこまで自分にこだわる理由が全く分からない。
一方、アシュラーダはマーベラス達の目的がギャバンの救出であろうとは思っていましたが、
それはバカな海賊の誇大妄想に過ぎないと思っていました。
おおかた「宇宙最悪の刑務所を破る」という不可能に挑戦することで
海賊としての名を上げようとでも思っているのであろうが、
これまでにもそんな愚かな動機で魔空監獄に挑戦しようとした者はいたが、それは結局全て為し得ぬ夢でした。

「だが、それは不可能だ・・・」とアシュラーダはマーベラスを見下ろして嘲笑います。
確かに亜空間を移動出来る不思議な力を持っている以上、
マーベラス達はこの場からギャバンを連れ出して現実空間に戻ることは可能なのでしょう。
だからマーベラスは自信満々なのだとアシュラーダは思いました。
それで浅はかな海賊たちは自分と同じ土俵に立ったつもりでいるようだが、
海賊たちも持つ亜空間制御能力はあまりに脆弱で中途半端なのだとアシュラーダは内心嘲笑いました。

魔空空間に来たはいいものの、マーベラス達は自身の戦闘力をコントロール出来ていないので、
このザンギャック側が強化された空間においては極めて脆弱な獲物に過ぎない。
それに空間を移動する能力も中途半端なので、結局こうして罠をクリアするたびにバラバラになってしまい、
強大な敵にチームで戦うことが出来なくなっており、各個撃破が容易です。

そして、これまでの罠の番人たちはなんとか出し抜くことが出来たのかもしれないが、
この最上階の番人はギャバンをも凌駕する最強戦士のブートレグです。
しかも3倍に強化されている。
そして、この最終目的地まで来れば。小賢しい亜空間移動能力で逃げるわけにはいかない。
純粋に力と力の勝負です。

5人がかりでギャバンにあえなく逮捕された宇宙海賊ごときが
たった1人で3倍に強化されたブートレグに勝つことはおろか、出し抜くことさえ不可能だと
アシュラーダは確信しており、素早くブートレグの方に向き直ると
「やれ!ブートレグ!!」と厳しい口調で命令を下しました。

ブートレグはその命令を受け、手に持っていた拷問用の電磁ムチを捨て、
吹き抜け部から飛び降りて、マーベラスの眼前、マーベラスの立つ位置の反対側の通路の端に立つと、
一瞬止まって、倒すべき敵と命令を受けた獲物の個別認証を行います。
その一瞬の隙を狙ってマーベラスはゴーカイガンの弾丸を多数ぶち込みます。
しかしブートレグも素早くレーザーブレードを抜いて、飛んできた弾丸を全て身体の前で弾き落とします。
そしてブートレグはマーベラスに向かって一直線に突っ込んできて、
マーベラスは遂に最強の敵であるブートレグとの戦闘に突入したのでした。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 07:18 | Comment(2) | 海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月22日

海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE 感想その13

仲間たちのサポートによって遂にただ1人で魔空監獄の最上階に辿り着いたマーベラスは、
壁面に磔にされたギャバンの眼下でブートレグとの戦闘に突入しました。
フロアーの中央で激しく剣と剣をぶつけ合う両者の戦いは、当初はマーベラスがやや押し気味に進めました。
剣1本で戦うブートレグに対して
剣の攻撃の合間に有効に銃撃を織り込みつつトリッキーな体術でブートレグの攻撃を避けるマーベラスの戦い方が
功を奏したようです。

最強戦士とはいってもブートレグも完全無欠の戦士というわけではない。
マーベラスはあの処刑場であった体育館でギャバンと戦うブートレグの動きをしっかり見ていましたが、
ブートレグはあの時変身せずに棒立ちであったマーベラスの戦いを見ていない。
戦うマーベラスを初見のブートレグはマーベラスの動きに慣れるのに少し時間が必要でした。
片やマーベラスはブートレグの動きはだいたい見ていましたから、多少はその裏をかくことは出来る。
その両者の差がこの序盤では出たのだといえます。

これはマーベラスの計算内のことで、マーベラスはこの序盤の有利を利用して作戦を組み立てていました。
普通はこれだけの有利な状況ならばマーベラスは敵を圧倒します。
しかし、ブートレグに対しては多少押し気味というだけで、ほぼ互角に近い。
それだけブートレグの強さは抜きんでているということです。
マーベラス一味の6人を圧倒したギャバンの能力をコピーした機械戦士であり、
しかもこの魔空空間ではギャバンを圧倒して捕えるほどの戦士に強化されたブートレグを
この魔空監獄で倒すことが出来るとはマーベラスもさすがに思っていません。

マーベラスがこのタイマン勝負で目指しているのは無理してブートレグを倒すことではなく、
先ほどアシュラーダに宣言した通り「脱獄」でした。
序盤の優勢を活かしてブートレグの動きを止め、その隙にギャバンの拘束を解いて救い出し、
そのままギャバンを連れてこの場から脱出し、魔空空間からも逃げ出すというのがマーベラスの作戦でした。

それがそんな簡単に成功するかどうか分かりませんが、
少なくともこの魔空空間においてはブートレグの本来の実力はマーベラスを遥かに凌駕しているのですから、
戦いの序盤でまだ初見の相手にブートレグが多少バタバタしているうちにこの場を逃れないと、
ブートレグはすぐにマーベラスの動きも学習して対応してくるのは確実なので、
この作戦しかマーベラスもギャバンも生き残る道は無い。
下手に勝てるかもしれないなどと調子に乗って深追いすれば、
手酷いブートレグの反撃に遭うだろうということはマーベラスは分かっていました。
最初にガツンと一撃を喰らわせて、その隙にギャバンを救い出して逃げるしかない。
もちろんブートレグは追ってくるだろうが、それに対処する方法はマーベラスは考えていました。

とにかくこの場はブートレグをひるませてギャバンを救い出すしか手は無い。
一進一退の攻防の中、そうした必死の決意で繰り出したマーベラスのゴーカイガンの連射が遂にブートレグにヒットし、
ブートレグは一瞬動きが止まりました。
「へっ!」と嘲笑ったマーベラスは今がチャンスと思い、くるりと背後のギャバンの方に向き直り、
ギャバンを見上げました。

マーベラスはこの最上階に到着してから、ずっと敵であるアシュラーダやブートレグの動きに注意を払っており、
もちろん戦いが始まって以降はその視線はブートレグに集中していました。
だから、この場でマーベラスがギャバンの顔をまともに見たのは、この時が初めてでした。

ギャバンとはあの体育館で別れて以来の再会です。
あの後、脱出してからマーベラスはガレオンであの10年前の貨物船事件の時の記憶をかなり詳しく思い出しました。
だからマーベラスはギャバンの顔を見た瞬間、
もしかしたらあの時の男がギャバンであることがハッキリ分かるかもしれないと思い、
振り向きざま、一瞬ギャバンの顔を凝視してしまいました。
それによって一瞬マーベラスの動きは止まってしまったのです。

そのマーベラスと目が合う形となったギャバンは、
そんなマーベラスの胸中の想いや、10年前の事件に関するこだわりなども知りませんから、
敵に背を向けて一瞬棒立ちとなったマーベラスを見て驚きました。
ここまでの隙の無いマーベラスの戦いぶりからは考えられない不可解なマーベラスの隙だらけの動きに
ギャバンは危うさを感じたのでした。
ブートレグはあれぐらいの銃撃で倒されたりはしない。一瞬の隙でも見せれば命取りなのです。

そしてギャバンの予想通り、ブートレグはこの一瞬の隙を見逃さず、
その身体を赤い光球と化して、背後からマーベラスに突っ込んできました。
この技は体育館での戦いでギャバンがゴーミン達を蹴散らす時に使った技ですが、
光球の色に白と赤の違いはあるものの、もちろんギャバンの能力をコピーしたブートレグも同じ技を使えるのです。

しかしマーベラスも別にブートレグを倒したと思って油断したわけではない。
チャンスは一瞬だということは分かっていたはずなのです。
それなのにギャバンの顔を見て思わず動きが止まってしまったのでした。
瞬時に自分の失敗を悔やんだマーベラスですが、
決して油断していたわけではないので、この背後からのブートレグの光球攻撃に
「うわあっ!」と叫びながらも身体にかするだけでなんとかかわして、致命傷は免れました。
しかし光球態のブートレグはマーベラスをかすめて2往復して前に出ると通常形態に戻り、
マーベラスとギャバンの中間点に降り立ち、すぐに再びマーベラスに襲い掛かってきました。
マーベラスにとっての一瞬だけ生じたチャンスは潰えたのでした。

その後の戦いはさっきのようにフロアー中央での斬り合いとなりますが、
さっきとは打って変わってブートレグが押し気味となります。
どうやらブートレグは早くもマーベラスの動きに慣れてきたようで、
こうなると、この場における本来の実力差がそのまま反映された展開となるのは必定であり、
もはやマーベラスにはブートレグの隙に付けこむチャンスは巡ってこないように思えてきます。
しかしマーベラスはブートレグに押し込まれながら、決してチャンスを掴み取る希望は捨てていませんでした。

最上階のフロアーのマーベラスとブートレグが戦っている通路の両側には幾つかの牢屋がありますが、
これらの牢屋は現時点では全て使用されておらず、
片側は鉄格子が外されており、もう片側の方は鉄格子があり、その鉄格子の扉も鍵がかけられて閉じられています。
マーベラスがブートレグに蹴り飛ばされてその鉄格子に激突し、
そこにブートレグが振り下ろして来たレーザーブレードをマーベラスは間一髪でかわして、
レーザーブレードは牢屋の扉の鍵を破壊しました。

それを見たマーベラスは咄嗟に牢屋の鉄格子の扉を引き開いて、
続けて振り下ろしてくるブートレグの二の太刀を鉄格子の扉でブロックして防ぎ、
そのまま扉越しにブートレグを牢屋の中に蹴り飛ばして押し込みました。
そうしておいて扉を閉じてマーベラスは「はあっ!」とギャバンの方に向かって駆け出します。
予測困難なトリッキーな戦術でブートレグを牢屋に叩き込んだことによって、
ギャバンのもとへ向かう時間を稼ぐことが出来たとマーベラスは思ったのでした。

ところがマーベラスが数歩踏み出したところで背後で大爆発が起こります。
ブートレグが牢屋の鉄格子を破壊して脱出したのだろうということは容易に想像はつきました。
だが牢屋から飛び出してきたブートレグが駆け去るマーベラスに攻撃をヒットさせることが出来るという保証は無い。
とにかくギャバンのもとに飛び込んで両手首の枷を破壊することさえ出来れば、
そこから先は脱出のことだけ考えれば済む。
2つの手枷の破壊なら一瞬で可能と思えました。
ならば、この千載一遇のチャンスを無駄にせず、このまま駈け続けた方が良いようにも思えます。
さっきのように一瞬止まるようなことがなければ、
ブートレグの背後からの攻撃がマーベラスにヒットするよりも早く
マーベラスがギャバンの許に飛び込むことは不可能ではないようにも思えました。

しかしマーベラスは何か危険を直感して立ち止まり、瞬時に後ろを振り向きました。
その瞬間、ブートレグが何か巨大なものを投げつけてくるのが見えて、
マーベラスは「はっ!」と反射的に身体を反らせて屈み、
投げつけられた巨大なものを間一髪ギリギリのところでかわすことが出来たのでした。
その物体は猛烈なスピードで「ぐうっ!?」と呻くマーベラスの見上げる鼻先を通過して横っ飛びしていき、
壁に激突して、あっという間にバラバラの金属片となりましたが、
鼻先を通過する物体が牢屋1つ分の面積を持つ鉄格子だということを確認したマーベラスは、
危ないところだったと肝を冷やして起き上がり、ブートレグの方に向き直りました。

ブートレグは牢屋の中から力任せに鉄格子を外すやいなや、
その鉄格子をそのまま横倒しにしてマーベラスに向けて思いっきり投げつけたのです。
鉄格子の幅はマーベラス達が戦っていた通路の幅にほぼ等しく、
横に逃れて避けることは不可能ですし、左右に狙いを外してくれるという可能性も無い。
あのままマーベラスがブートレグに背を向けてギャバンの方へ駈け続けていれば、
マーベラスは背中からブートレグの全力で投じた鉄格子を喰らって、その身体は真っ二つになっていたことでしょう。

やはりブートレグはとんでもない強さだと実感したマーベラスでしたが、
肝を冷やしている暇もなく、すぐにブートレグは距離を詰めてきてレーザーブレードで襲い掛かってきますので、
マーベラスは「しつけぇ野郎だ!!」と文句を言いながら、
鉄格子を外した方の牢屋部に残された金属の柱の陰に回り込んで、柱を挟んでブートレグと向き合う形として、
ブートレグの斬撃を逃れつつ、隙を見て「たあっ!」と一太刀喰らわせます。

そうしてブートレグの態勢が少し崩れた隙に
マーベラスはフロアー側面の吹き抜け廊下に向かってジャンプして、
廊下の床に掴まってよじ登りながら「はあっ!!」とゴーカイガンでブートレグを狙い撃ちしました。
フロアーの側面とはいえ吹き抜けの廊下に上がってしまえば、
そこからはフロアー奥の吹き抜け廊下部に拘束されているギャバンのもとへは走って辿り着けます。
マーベラスはブートレグにその邪魔をさせないために、とにかくブートレグを攻撃して牽制し、
その動きを止めることに集中していました。

しかしブートレグはゴーカイガンの銃弾を受けてもなお動きを止めることはなく、
大きく跳び上がって吹き抜け廊下に昇ってきて、
またここでもマーベラスとブートレグは斬り合いとなり、マーベラスはギャバンに近づくことは出来ません。
いや、ギャバンを救う以前にマーベラスはブートレグの剣技に完全に押されまくってしまい、
自分の身を守るので精一杯の状況となります。

そして、押しまくられたマーベラスはブートレグに思いっきり蹴り飛ばされて、
反対側の側面の吹き抜け廊下まで「うわあああ!!」と飛ばされて、
追いかけて飛び込んできたブートレグから逃げ回る羽目となります。
とにかくギャバンを救い出すためにはブートレグに対して一瞬でも優勢な状況を作らなければいけないのに、
もはやマーベラスはそれどころではない感じとなってしまいました。

無様に逃げ回るマーベラスは両側面の吹き抜け廊下の間に架かっている細い鉄骨の上に逃れていき、
ブートレグもそれを追いかけていきます。
しかし、これはマーベラスの誘いでした。
一見無様に逃げ回っているだけのように見えたマーベラスは実は冷静でした。

この魔空空間においてはブートレグとの実力差はもうどうしようもない。
まともに戦って勝つことはおろか、一瞬の優勢さえ作り出せそうにないことはマーベラスも痛感していました。
ならばまともな戦いは出来るだけ避けなければならない。
そして、マーベラスが実力を発揮出来て、ブートレグが実力を発揮出来ない変則的なシチュエーションで戦うしかない。

そんな都合のいいシチュエーションをこの場、この状況で即座に見出すのは簡単ではありませんでしたが、
マーベラスは足1個分くらいの幅しかない狭い鉄骨の上の不安定な足場ならば
ブートレグもその実力の全ては発揮出来ないだろうと判断したのでした。
もちろんマーベラスとて不安定な足場では万全の力を発揮出来るわけではないが、
それでもマーベラスは海賊としてこういう鉄骨やマストの上のような
不安定な足場の上で戦う訓練は積んでいますし実戦経験も積んでいます。
だから、この鉄骨の上での戦いならば自分に一日の長があるとマーベラスは判断しました。

勝つことは出来ないとしても、
鉄骨の上で戦えばブートレグに一撃を加えて動きを一瞬止めるぐらいのことは出来るかもしれない。
そう思ってマーベラスは逃げるフリをして鉄骨の上に移動し、
心を持たない機械戦士のブートレグはそれがマーベラスの誘いだとは気付かず、
ただ機械的にマーベラスを追って鉄骨の上に乗ってきました。
そこですかさずマーベラスは鉄骨の上で反転してブートレグに斬りかかり、
鉄骨の上を両者がフェンシングのように前後移動だけしながらの激しい斬り合いとなります。
そしてマーベラスの狙い通り、不安定な足場での戦いはマーベラスに一日の長があるようで、
ここでは両者はほぼ互角の戦いとなりました。

このようにマーベラスは絶対的不利な状況でかなり考えて工夫して戦っています。
だが、それでもまだ及ばない。
かなり減退されてしまったブートレグの強さはそれでもマーベラスを上回り、
マーベラスはじりじり押し込まれて結局は鉄骨の上から追い落とされてしまいました。

ところがマーベラスもただでは転ばない。
落ちそうになりながら腕を伸ばして鉄骨を掴み、鉄棒の後方大車輪の要領で
「おおりゃあああ!!」と叫んで身体を振り上げ、鉄骨の上に立つブートレグの前に逆立ち状態で突っ込み、
キックを叩き込んだのでした。
この意表を突いた攻撃を受けてブートレグはバランスを崩して下の床に横倒しになって落下、
一方マーベラスもブートレグにキックを叩き込んだ反動で鉄骨から手が離れて吹っ飛んで下の床に落下します。

だがマーベラスは横倒しになったブートレグとは違い、上手くしゃがんで着地したので、
これでギャバンのもとへ行く一瞬の隙を掴んだと思い、すぐに後ろのギャバンの方に振り返りました。
ところがブートレグは信じがたい反応速度ですぐに起き上がって銃を構えており、
振り返ったマーベラスはブートレグの銃撃をモロに何発も喰らってしまいました。

「うああ!!」と吹っ飛んだマーベラスに向かってブートレグは追い打ちをかけて突っ込んできて、
マーベラスは慌ててゴーカイサーベルでレーザーブレードを受け止めますが、
ゴーカイサーベルを弾き飛ばされてしまいました。
後方に吹っ飛んだゴーカイサーベルは床に真っ直ぐ突き刺さり、
マーベラスはそれを取り戻しに行く余裕など無く、襲い掛かってくるブートレグに対処せねばなりません。

剣を失ったマーベラスはますます絶対的に不利な状況に追い込まれました。
普通は後退したくなる場面ですが、
ここでマーベラスは剣を失った不利な状態で逃げ回っても事態は悪化するだけと思い、
逆に果敢にブートレグの懐に飛び込みました。
この意外なマーベラスの行動に意表をつかれたブートレグはマーベラスの侵入を許し、
マーベラスはこのチャンスを活かさなければ勝負は終わりだと思い、
全力を振り絞って執拗にブートレグのレーザーブレードを持つ腕に縋りつきます。

つまりマーベラスはブートレグからレーザーブレードを奪おうとしているのです。
自分が剣を失ったなら相手から剣を奪えばいいという発想は真っ当な武人の発想ではなく、
まさに邪道な海賊らしい発想といえます。
もともと宇宙刑事ギャバンの戦闘データを移植した戦士であるブートレグは悪の手先ではありますが、
あくまで戦闘術はギャバン同様、正統派でスマートで洗練されています。
だから、こういうマーベラスの泥臭い邪道な戦い方にはどうも意表をつかれることが多々あるようで、
ここでもブートレグは慌ててマーベラスの腕を振りほどきましたが、
離れ際マーベラスの「たあっ!!」と放ったキックがブートレグの腕にヒットして、
その衝撃でレーザーブレードはブートレグの手を離れて吹っ飛んでいき、壁に深々と突き刺さってしまったのでした。

ブートレグもさすがに敵の剣を奪うというマーベラスの当初の目的は阻止したものの、
これで両者ともに剣を手許から失い、手にした武器は互いに銃が1挺ずつとなり、
マーベラスは絶対的劣勢に陥ることは阻止したのでした。

ここから仕切り直しということになりますが、落ち着いて仕切り直す暇は無い。
この超接近状態で次の一瞬どちらが先に動くかが重要です。
ここで最初に反応したのはやはりブートレグの方でした。
マーベラスは蹴りを繰り出した直後ですぐには銃を構えることが出来ませんでしたが、
ブートレグは剣を失っても動じることなく素早く銃を抜いて構え、
目の前のマーベラスの顔に照準を合わせようとします。
このあたりの落ち着いた動きはまさにギャバンのコピーならではのものです。

しかしマーベラスもブートレグがそうすることは読めていますから、
クルリと身を翻して銃の照準から左にヘッドスリップするようにして頭部を逸らして踏み込み、
右肩の上に銃を持ったブートレグの左手首を乗せて、その左手首を下から右手で掴みました。
同時にブートレグの銃が火を噴きますが、既にマーベラスは避けた後ですから、
それは虚しく何も無いところに向けて射ち込まれます。

しかしマーベラスの腕の力ではブートレグの腕をずっと固めていることは出来ないので、
すぐに振りほどかれてまた顔に狙いをつけられてしまうのは必至です。
だがマーベラスは銃を撃たれるのを阻止しようとしたわけでもなければ、銃を奪おうとしたのでもありませんでした。
ブートレグが左手で銃を発射した時に反動が生じたタイミングに合わせて、
下からブートレグの左手首を掴んでいた右手で思いっきり上に押し上げ、
同時にそこに自分の左手首を添えて一緒に押し上げたのです。
つまり、両手の力と銃の反動の力を合わせてブートレグの左腕を思いっきり上に跳ね上げるというのが
マーベラスの真の狙いだったのです。

そしてマーベラスの左手には既にゴーカイガンが握られています。
至近距離で銃を持った腕を跳ね上げられてがら空きになったブートレグの胴体に
ゴーカイガンのありったけの弾丸をゼロ距離でぶち込むというのがマーベラスの起死回生の策でした。

ところがブートレグはマーベラスがゴーカイガンを持った左手を添えて自分の手首を跳ね上げようとしているのを見て、
一瞬でマーベラスの策を予測し、素早く腕を引いたので
マーベラスはブートレグの腕を跳ね上げることは出来ませんでした。

そうなればブートレグが銃を持った手を引いた時に生じた一瞬の隙をついて
マーベラスはゴーカイガンを撃ち込むしかない。
マーベラスはブートレグが引いた左手を追うようにゴーカイガンを持つ自分の左手を突き出して
ブートレグの顔に向けて発砲しますが、ブートレグはこれを身体を反らして間一髪でかわして、
右手でマーベラスの左手を跳ね飛ばし、間髪入れず左手に握った銃で撃ち返してきました。

だがマーベラスはこの手を伸ばせば相手に届く至近距離の銃撃戦ならではの奥の手を使います。
ブートレグの狙いが正確であることが分かり切っている以上、
遠距離の銃撃をかわすのは困難でも至近距離なら銃撃をかわすのは逆に容易です。
正確に狙いをつけたブートレグの銃身をちょっとズラしてやれば狙いは確実に外れるのです。
そして、それは手が届く至近距離ならば、タイミングさえ読めれば簡単な作業でした。
ブートレグが間髪入れず差し出した左手の銃はマーベラスの右手の間合いに完全に入っており、
しかもマーベラスはブートレグとの戦いの中でブートレグの銃を繰り出すタイミングを完全に読んでいました。
ブートレグが差し出した銃の引き金を引いた時には既に銃を持つ左手首は
半身になったマーベラスの右手に押さえ込まれて狙いを外されており、
ブートレグの銃撃はまたも虚しく空を撃ちました。

そして間髪入れずにマーベラスはその右手の上に交差させるようにして左手をブートレグに向けて突き出してきます。
もちろんマーベラスの左手にはゴーカイガンが握られています。
マーベラスはこの隙を突いて今度こそブートレグに至近距離で銃弾をぶち込むつもりでした。
ところが、なんとブートレグもマーベラスと同じようにして右手を繰り出してマーベラスの左手を押さえ込み、
その狙いを外してしまったのです。
ギャバンの戦闘力をコピーしたブートレグも当然、近接戦闘での銃捌きは会得しており、
またブートレグもマーベラスの動きは既に完全に見切っていたのでした。

そして、このまま至近距離で撃ち合っていても互いに相手に命中させることは出来ないと悟ったブートレグは、
そのまま腕を跳ね上げてマーベラスを突き飛ばし、
自身も後方に身を翻して一歩下がって距離を取ろうとします。
マーベラスも突き飛ばされたまま身を翻して着地し、
同時に着地して1メートル半ほどの間合いで向き合った両者は同時に引き金を引き、
両者の間の僅かな空間の真ん中で両者の銃撃がぶつかり合い、オレンジ色の閃光が激しく炸裂します。

さすがにこの激しい衝撃にマーベラスは反射的に少し後退しますが、
ブートレグは撃ちながら、この衝撃波の中を踏み込んできており、
互いの銃撃を相殺した閃光の中から飛び出してきたブートレグはマーベラスに襲い掛かってきます。
マーベラスは閃光によってブートレグが一瞬よく見えず、まともにブートレグの肘打ちを喰らってしまい、
ひるんだところを裏拳で吹っ飛ばされます。
そして「うわっ!」と数歩後退したマーベラスに向かいブートレグは狙い澄ましたように銃弾を何発も射ち込み、
これらが悉く命中したマーベラスは、「うわああ!」と吹っ飛んで、
遂に蓄積したダメージによって変身解除して倒れ込んでしまったのでした。

これを見て磔状態のギャバンは「うう!」と目を見張って呻き、
そこから少し離れた位置に立って戦いを見下ろしていたアシュラーダは、
これで勝負あったと見て「フフフ・・・」とほくそ笑みました。

ギャバンはマーベラスが敗れたのを見て驚いたわけではない。
マーベラスがブートレグに勝てないだろうとは予想はしていたからです。
といっても、ギャバンは別にマーベラスの実力を過小評価していたわけではない。

この映画の最初のシーンでマーベラス一味は5人がかりで戦って、それでもギャバンに圧倒されて敗れた。
だからギャバンはマーベラス一味のことを大して強くないと思っていると、そういう印象を持たれがちでしょう。
あるいはマーベラス一味のことを強い海賊だと認めているとしたら、
それを倒した自分こそがやはり宇宙最強だと自負しているとも受け取れます。
しかし、そのどちらも違います。

そもそもギャバンは宇宙最強など目指していないし、そんなものに興味など無い。
ギャバンが求めていた強さは宇宙の人々の平和な暮らしを守るために戦うことの出来る力であって、
誰かと優劣を競うなどという意識は無い。
例えば宇宙の戦士の強さを競う闘技大会のようなものがあったとしても
ギャバンはそんなものには間違っても出場はしないし、仮に出場しても自分は勝ち残れないだろうと思っていました。
そういう大会で勝ち進むことが出来るのは、「宇宙最強の戦士」の称号を得ることを目指し、
それを得て満足出来るような人種なのです。

つまり、人は自分の夢に向かって突き進む時にこそ、その本来の力を発揮出来るのであり、
ギャバンの強さは他人と競うことで発揮されるものではなく、
ギャバン自身の夢である「宇宙の人々の平和を守るために戦う力を持つ男になる」という夢を
達成するためにこそ発揮されるものでした。

では、どうして人は夢に向かって突き進む時にこそ本来の最大限の力を発揮出来るのかというと、
それはあの貨物船事件の時にギャバンが少年、つまりマーベラスに語った言葉の通りだからです。
すなわち、人は達成不可能とも思える素晴らしい未来を夢見て目指すことによって
勇気が湧いてきて前に進むことが出来るからです。
その勇気が人を強くして、本当にその夢を実現してしまうのです。
だから夢を掴むために戦う時こそ人は最大限の力を発揮するのです。

言い換えれば、同じ人物でも自分の目指す夢のための戦いでない場合は最大限の力は発揮出来ない。
つまりギャバンの強さはシチュエーションによって変化するのであり、それはギャバンだけでなく誰でも同じなのです。
だから厳密な意味で、どのような場合においても不変の「宇宙最強の男」などという絶対的なものは存在しない。
そんなものは虚飾に過ぎない。

実際、ザンギャック帝国において「宇宙最強の男」と称されていたダマラスも
マーベラス一味やバスコの前に敗れ去った。
1対1なら負けていないともいえるが、
1対1で戦わねばいけないという限定をつけること自体がシチュエーションを限定してしまっていると言えますし、
そもそもあの時ダマラスは部下を大勢引き連れていたわけだから、むしろ多勢に無勢だったのはマーベラス達の方です。
バスコの卑怯な騙し討ちが無ければ負けなかったとも言えますが、戦いに卑怯もクソも無い。
卑怯がダメというのなら、それこそ闘技大会ぐらいでしか通用しない「宇宙最強」といえます。
つまりダマラスはあの時、文句なしにマーベラス達に負けたのです。

しかしダマラスの強さがハリボテのようなものだったとしたなら、
あのバスコが表向きだけとはいえ従ったりするわけもないので、その強さは確かに本物だったのでしょう。
それなのにダマラスがマーベラス達に敗れたのはどうしてなのかというと、
あの戦いはダマラスが最大限の力を出せる場ではなかったからでしょう。
つまりダマラスの夢を掴むための戦いではなかった。

そもそもダマラスに夢があったのかどうか不明ですが、
かつて本当に強かった頃はダマラスにも夢はあったのでしょう。
「強さ」にしか価値を見出そうとしていなかったダマラスの態度からして、
本気で「宇宙最強の男」を目指していたのかもしれません。

しかし「宇宙最強の男」などという称号は先述のように虚飾に過ぎない。
虚飾を目指してダマラスが真の勇気や強さを獲得出来たとも思えないので、
当初はダマラスには目指すべき、いや超えるべき具体的な「宇宙最強」があったのでしょう。
それを超えてしまったのか、あるいは超えるのを諦めてしまったのか、
とにかくダマラスは夢を失い、虚飾の「宇宙最強の男」という称号を与えられてそれに満足し、
その名誉を守ることのみに汲々するようになったのでしょう。

ダマラスはその最期の戦いでは、
その虚飾の名誉を傷つけたマーベラス一味に対する復讐心で戦っていたに過ぎないので、
ダマラスの本来持てる最大限の力は発揮出来ていなかった。
一方、良い意味でも悪い意味でも夢を掴むために懸命に戦うマーベラス一味やバスコは最大限の力を発揮出来た。
だから地力では優るダマラスに勝つことが出来たのです。

だが、そうしたダマラスの「宇宙最強」の称号が虚飾に過ぎないということを
バスコは気付くことが出来ていなかった。
それはつまりバスコが「宇宙最大のお宝」を追い求めているからなのでしょう。

既に夢を追う情熱すら無くしたダマラスに比べて、確かにバスコは夢を追い求めている。
しかし、絶対的なものなど存在しない宇宙において、「宇宙最強」という夢が所詮は虚飾であるのと同様、
「宇宙最大」というのもかなり虚飾くさい。
そんなものを追い求めているバスコだから、ダマラスの強さの虚構性についても見抜くことが出来ずにいたのでしょう。

そんなバスコが一歩踏み込んでダマラスに一撃を加えることが出来たのは、
マーベラス達の仲間の絆がダマラスを出し抜くのを目の当たりにしたからでした。
つまり、「宇宙最大のお宝」という、どう考えても虚構的な夢を追い求めている
似た者同士のマーベラス一味とバスコの間を決定的に分かつものは、
バスコ登場時からずっと強調されてきていますが、やはり「仲間の絆」の有無なのだといえます。
それが両者の強さの差となって表れてくるのでしょう。

そして、バスコの目指す夢が虚構性の強い「宇宙最大のお宝」そのものであるのに対して、
マーベラス一味の目指す真の夢はまた別にあり、そこには「仲間の絆」が関係してくるとも考えられます。
いや、そもそも「宇宙最大のお宝」を手に入れるだけならばバスコのように仲間などいなくても平気なはずです。
マーベラスがどうしても「仲間の絆」を求めたのは、彼の目指す夢が単に「宇宙最大のお宝」ではないからであり、
仲間達もまたそれは同様なのだとも考えられます。

ちょっと先を急いで脱線が過ぎました。
とにかく「人は夢を掴むために戦う時こそ最大限の勇気と強さを発揮する」のです。
バスコなどはそれがよく分かっているから、お宝が関係しない戦いは極力避けようとする。
夢を失ったダマラスや、夢を持てなかったワルズ・ギルなどはそれが既に分からなくなっていたので、
自分にとって真に意義の無い戦いに深入りして命を落とすことになったのです。

ギャバンの場合は「宇宙の人々の平和な暮らしを守る」という
父から受け継いだ夢を実現するために戦う時こそ最大限の強さを発揮出来たので、
宇宙刑事としての職務を遂行する場合のギャバンは非常に強かった。
自分の強さはそういうものだとギャバンは思っていましたから、
別に自分が宇宙最強だなどと思ったことは無いし、
同じ宇宙刑事同士ならばともかくとして、全然別の世界で別の価値観を持って生きる者を
自分よりも弱い相手だなどと蔑んだこともありません。
格闘技の世界チャンピオンがもし犯罪者としてギャバンの前に立ち塞がれば
ギャバンは絶対に勝利する自信はありましたが、
もしその世界チャンピオンとリングで真っ当な試合をすれば自分は勝てないだろうとも思っていました。

マーベラス一味についても同じことで、
ギャバンは簡単に6人を倒して逮捕しましたが、決してマーベラス一味が弱いなどとは思っていませんでした。
また、あれがマーベラス一味の本来の実力だとも思っていませんでした。
マーベラス一味は「宇宙最大のお宝」とやらいう夢を掴むために戦ってきた海賊なのであって、
実際そのためにザンギャックに賞金首とされても勝ち抜いて生き抜いてきたのですから、
その彼ら独自の夢を掴むために戦う限りにおいてはかなり強いのは間違いないのです。
そして、その強さこそが彼らの持つ本当の強さなのですから、マーベラス一味が弱いなどということは決してない。
彼らが間違いなく強者であることはギャバンは分かっていました。

むしろ、彼らが夢のために戦う真の強者であり、決して薄汚い犯罪者ではないと分かっていたからこそ、
ギャバンは彼らを逮捕するのは容易だと思ったのです。
もし彼らが本物の犯罪者ならば宇宙警察は彼らにとって明確に敵であり、
宇宙の秩序破壊を目的とする彼らにとっては、いわば宇宙の秩序維持を目的とする宇宙警察は
彼らの悪しき夢の実現の障害ですから、彼らは夢を掴むためには宇宙警察を倒さねばなりません。
だから宇宙警察と戦う時、犯罪者は全力で立ち向かってくる。

しかしマーベラス一味は犯罪者ではないので宇宙警察と戦う理由は無い。
宇宙警察と戦って勝ったとしても、彼らの目指すお宝に近づくわけでもない。
そんな戦いにマーベラス一味が最大限の力を発揮出来るわけがないということは
ギャバンは最初から分かっていたのです。
しかもいきなり身に覚えの無い罪状で有無を言わせず逮捕だなどと言われれば、
いくら豪気な海賊でも心穏やかではいられない。
開き直って戦ったとしても、動揺は攻撃を鈍らせます。

しかし、相手が犯罪者でないと分かっているのなら
ギャバンもまたマーベラス一味を相手に全力を発揮出来ないはずです。ならば対等のはずです。
しかし、そこは年の功、百戦錬磨のギャバンはそれは十分対処出来ます。
マーベラス一味の場合は普段は戦いたくない相手と戦うような経験は無いので、
納得のいかない戦いにおいて自分の実力が上手く発揮されない状況そのものに不慣れであり、
精彩を欠く自分の動きに戸惑い、それが焦りを生み、更に空回りを生み、
無駄な動きが目立ち、どんどん悪循環に嵌っていきます。

一方のギャバンは職務上、戦いたくない相手と戦わざるを得なくなるようなシチュエーションも
何度も経験済みですから、そういう時に自分が万全の力が出せないということも実体験して知っています。
だからマーベラス一味と戦った場合、自分がどの程度の力しか出すことが出来ないということを
あらかじめちゃんと予測出来ているので、戦いが始まってから戸惑ったり焦ったりするということはない。
冷静にそのシチュエーションで自分の発揮できる最大限の能力を全く無駄なく引き出すことが出来るのです。

これはギャバンが自分が宇宙最強の絶対的存在などではなく
状況次第で強くもなり弱くもなるのだということを常に心がけているからこそ出来る芸当であって、
宇宙最強などという言葉にこだわるダマラスのような男には出来ない芸当でした。
ギャバンはマーベラス達が全力を出せずに焦る状況を作り出し、
自分は冷静にその時引き出せる力を発揮しただけです。
ギャバンがマーベラス一味の5人を苦も無くひねることが出来たのは、そういうカラクリに過ぎなかった。

からギャバンはマーベラス達が本来の実力を発揮すれば、自分にとってもかなりの強敵であることは認識していました。
それゆえギャバンはこの最上階にやって来たマーベラスがブートレグ相手に、
あのギャバンと戦った時とは全く見違えるような素晴らしい戦い方を見せていても、
その強さそのものには大して驚いていませんでした。
マーベラスが本来の実力を発揮すれば、ギャバンのコピーであるブートレグとの対戦においても
これぐらいの動きは見せるだろうということは、ギャバンもある程度は予想はついていたからです。

ただ、ギャバンがよく分からなかったのは、
どうしてこの戦いにおいてマーベラスがその本来の実力を発揮できているのかという点でした。
マーベラスという海賊がその最大限の強さを発揮できるのは、彼の夢を掴むための戦いの時であるはずです。
しかしマーベラスは魔空監獄からギャバンを脱獄させるためにやって来たのだとさっき宣言しました。
だが「魔空監獄から宇宙刑事ギャバンを救い出す」ということは、
マーベラスという宇宙海賊の夢である「宇宙最大のお宝」とは何の関係も無いはずだとギャバンは不思議に思いました。
自分の夢と関係ないのにマーベラスがわざわざここにやって来たというだけでも驚きなのですが、
その上、自分の最大限の強さを引き出し得ているというのは全く意外なことでした。

いや実際にこれがマーベラスの全力なのかについては
本人に聞いたわけではないのでギャバンには断言は出来ないのですが、
ギャバンとて宇宙最強などと思い上がってはいないものの、それなりに自分の実力には自信はありました。
その自分の実力と同じ能力を持ち、更にこの場では3倍に強化されているブートレグに対して
ここまで食い下がっている以上、これがマーベラスの真の全力のように思えたのです。

また、これまで数多くの戦いを繰り広げ、同時に数多くの戦いを見届けてきたギャバンの肥えた目で見ても、
目の前のマーベラスとブートレグの戦いほどのハイレベルな攻防というのは、
そうそう見たことがないほどのものでした。
間違いなく宇宙最高峰の攻防の1つに属するものであり、
特に実力的に劣るマーベラスの工夫に工夫を重ねた考え抜かれた緻密な戦術は目を見張るものがありました。
だから、これがマーベラスの全力でないとは、どうも考え難い。
それに、ここまでやってもそれでもマーベラスが劣勢である以上、
やはりこれはマーベラスの全力と考えるしかない。
もしこれよりも更に上があるのなら、出し惜しみなどするような状況ではないはずです。

となると、どうして夢を掴むための戦いでもないのに
マーベラスが自身の最大限の力を発揮出来ているのかというのが問題です。
あるいはマーベラスは夢を掴むための戦いではなくても常に最大限の力を引き出せる特殊なタイプなのかもしれない。
しかし、それならギャバンに完敗したあの戦いの説明がつかない。
やはりマーベラスもまた、自分の夢を掴むための戦いでこそ最大限の力を引き出せる戦士のはずなのです。

だがマーベラスの夢は海賊の伝説のお宝を掴み取ることだったはず。
本人たちがそう自分で宣言しているのだと、ギャバンはドギーからそう聞かされていました。
だが現に今、マーベラスは海賊のお宝とは全く関係無い戦いで最大限の力を発揮している。
これは何か話がおかしいとギャバンは思いました。
もしかしたらドギーの話が間違っているのかもしれない。
本当にマーベラス一味の夢は海賊の伝説のお宝そのものなのだろうか?
少なくとも船長のマーベラスの夢は何か別のものなのではないだろうか?とギャバンの胸に疑惑が生じました。

じゃあ、もしマーベラスの夢が他の何かだったとして、
それがいったい何であり、それがこの戦いの意義とどう繋がるのか、それはギャバンには全く想像もつきませんでした。
ギャバンはドギーから聞いた断片的な話でしかマーベラスという男を知らないのだから、
そもそもそんなことが分かるわけがない。
論理的に考察するだけの材料も無いのですから、論理的に考えるだけ無駄というものです。
マーベラスの行動も思考も全く謎のままでした。

ただ、ギャバンはマーベラスのことは何も知らないが、
そのマーベラスが戦っている相手であるブートレグのことは誰よりもよく知っていました。
それゆえ、そのブートレグに食い下がり得る戦士、いや食い下がるべき戦士となると、心当たりはあります。
それがマーベラスの謎の正体と重なるとは限らないが、その1つの可能性ではあると思えました。

まずギャバンの知るブートレグの正体とは、ギャバン自身でした。
それは単に自分の戦闘力をコピーした戦士だからなのではない。
その心まで自分そっくりだとギャバンは思ったのです。
いや、正確に言えば、単に能力だけでなく、人間の心を持たないという点で
自分とブートレグはそっくりだと思ったのでした。

ギャバンは宇宙の人々の平和な暮らしを守るために宇宙刑事として戦い続けたいと思い、
そのために宇宙刑事としての立場を守ることを優先するようになり、
何時の間にかザンギャックの無法に苦しめられる人々を見捨てていた。
つまりギャバンの戦いは何時の間にか「宇宙の人々の平和な暮らしを守る」という夢を逸脱したものとなっており、
人間らしい心を捨ててただ単に戦闘マシーンのように戦い続けるために戦うようになっていた。
そして今回、こうして捕らわれて自分の愚かさに気付いたギャバンは
自分が何時しかザンギャックの間接的な共犯者となっており、
マクーの復活に繋がるミスを犯して宇宙を危機に晒そうとしていたことを知りました。

そうした自分を省みた上でブートレグを見てみれば、
ただギャバンそっくりの外見と戦う能力だけを持ち、人の心を持たず、
ザンギャックの手先となり、マクー復活のために使役されている機械戦士のブートレグは、
まさにギャバン自身の姿を鏡に映して見るようなものでした。

機械戦士のブートレグは人の心を持たないゆえにもちろん夢など持たない。
だから夢を掴むための勇気や強さを発揮することは出来ない。
それこそが機械には無い人間だけの持つ強さであり、特に自分にはその力があるとギャバンは思っていました。
それゆえ、たとえ能力をコピーしたところで人の心を持たないブートレグ(海賊版)ごときが
本物のギャバンである自分に勝てるわけがないと思い、あの体育館でギャバンはブートレグに挑んでいったのでした。

しかし、ギャバン自身もとっくの昔に人の心を捨ててザンギャックの間接共犯者のような、
ただ宇宙警察という組織に盲目的に従う戦闘マシーンとなっていたのです。
ギャバンが自分の夢だと信じ込んでいた「宇宙の人々の平和な暮らしを守る」という夢は、
ザンギャックに虐げられる人々を見捨てていたことによって虚構となっており、
そのような虚構の夢はギャバンに人間だけが持つ勇気や強さをもたらすことはなかった。
つまり、ギャバンは心を持たない戦士という意味でブートレグと対等に過ぎなかったのであり、
鏡に映った自分と戦うような状態となったギャバンは膠着状態に陥り、
そうなると疲労を知らないブートレグに遂には押し込まれ、魔空空間に引きずり込まれて敗北したのでした。

そうした自分とブートレグの関係を完全に把握した現在のギャバンの目から見て、
目の前でマーベラスと戦っているブートレグは現在の自分そのものでした。
いや、その現在の自分を更に3倍に強化した姿という方が正解でしょうが、
とにかく強さの度合いはともかくとして、ブートレグはギャバンから見て自分そのものでした。

ならば、その現在の道を誤ってしまった自分を倒してくれる者がいるとしたら、それはどういう者であるべきなのか?
それはもちろん、まずはギャバン自身でした。
自分の過ちが生み出したともいえる、悪しき自分の分身である怪物ブートレグは
自分自身の手で葬りたいとギャバンは思いました。
だが、ギャバンがこれまでの自分のままであるならば、再びブートレグと戦ってもまた敗れるだけのことでしょう。
だからギャバンは変わらないといけない。
だが、今さら自分が変わったところで、これまでの過ちが消えるわけでもない。
急に考えが変わったからといって、これまで自分が蔑にしてきた夢を都合よく取り戻すことなど
出来るものだろうかとギャバンは疑問に思いました。

そもそも自分はこうして磔にされて物理的に戦うことなど出来ない。
それは単に物理的に縛られているというより、要するに一旦敗れたという証であり、
既に自分はもうブートレグと戦う資格は剥奪されているようにも思えました。
ならば自分以外の誰かがブートレグを倒すとするならば、誰が最も相応しいと言えるのか?

まず考えられるのは父のボイサーです。
父の夢を引き継ぐことが出来なかったこの不肖の息子の悪しき分身に
怒りの鉄槌を下す資格を最も有しているのは父のボイサーだと思えました。
だがボイサーは既にこの世にいないので、これは妄想に過ぎない。

ならばボイサーやギャバンの本来の夢や志をしっかりと引き継いだ後継者が
ブートレグを倒すのが良いように思えます。
ギャバンの息子あたりが適役といえますが、残念ながらギャバンには息子はいない。
しかし血の繋がりは無くてもギャバンの志さえ引き継いでくれていれば息子の代わりにはなる。
そういう精神的なつながりの息子のような者がギャバンの志を継ぐ者として
道を誤ったギャバンの悪しき分身ブートレグを倒してくれれば、
それがギャバンにとっては幸福な結末のように思えます。
また、ギャバンの志の後継者ならばブートレグを倒すことは出来るとも思えました。

しかし自らが道を誤っていたギャバンが他人に自分の本来目指すべきだった夢を
ちゃんと教えたことなど無いように思えます。
いろいろと宇宙警察内でも建前としては立派なことも色々と言ってはきたが、
実際に宇宙警察の状況が改善されてきたわけでもなく、
所詮はギャバンの言葉は建前論として聞き流されてきたのであろうと思われます。
それは聞く側に問題があるというより、ギャバン自身がザンギャックへの対処に関して言行不一致であるために
その言葉は建前論と解釈するしかなかったのであろうし、実際に建前論だったのでしょう。

つまりはギャバンは自分の夢の後継者など作ってこなかった。
だから後継者だの精神的な息子だのがブートレグを倒すなどというのも
現実には有り得ない妄想に過ぎない。

ところが、そう思っていたところでマーベラスが最上階に現れてブートレグと戦い始めて善戦する姿を見て、
ギャバンは妙な気分になってきました。
マーベラスこそが自分の夢の後継者なのではないかと思えてきたのです。
それはマーベラスのこの戦いの動機がどうにもよく分からないという点や、
妙に自分の救出に執着している点など、そうした不自然さに対する1つの解答としての意味合いも少しはありましたが、
やはり大部分はギャバンの「そうだったらいいな」という願望に過ぎません。

本当はマーベラスが全然違う動機で戦っていても何ら支障は無いのですが、
ギャバン個人の願望としては、やはり出来れば自分の夢の後継者が自分の過ちの分身であるブートレグを
倒してくれれば爽快だという想いはあります。
また、そういう者でなければおそらくブートレグは倒せないだろうとも思えたのです。

といってもギャバンは本当にこの場でマーベラスがブートレグに勝てるなどとはさすがに思っていませんでした。
ブートレグが3倍に強化された魔空空間ではそれは絶対に不可能です。
ただ、ギャバンはマーベラスが戦い始めた時から、マーベラス自身がそのことはよく承知した上で、
あくまで隙を見出して自分を救出して脱出することを狙っているのは気付いていました。
ブートレグを倒すのではなく、あくまでブートレグを出し抜いてギャバンの救出と脱出を狙うというのであれば、
3倍に強化されたブートレグ相手にもそれは普通に不可能なレベルのことでした。

「普通に不可能」というのは「絶対不可能」とは違う。
言い換えれば「かなり無理はあるが不可能を可能にすれば達成できる」というぐらいのレベルです。
いうなれば、3倍に強化されたブートレグの隙をついてギャバンを救出することが出来れば、
それは通常の状態のブートレグを倒すに等しい。
そして、それはギャバンを倒すにも等しいといえます。

つまりギャバンは、マーベラス一味の本来の実力は自分に軽くひねられた程度のものではないということは認めつつも、
それでもマーベラス一味が本来の力を出したとしても、
せいぜいマーベラス一味が5人ないし6人揃って自分と対等ぐらいと見ており、
マーベラス1人ぐらいでは自分を倒すことは出来ないと見ているのです。
そして、それはギャバンの分身といえるブートレグに対しても
マーベラス1人では勝ち目は無いということを意味します。

そもそも「宇宙刑事ギャバン」制作時のコンセプトとして
「ギャバン1人でスーパー戦隊5人分」となっているので、
このギャバンの戦力分析は設定的に正解といえます。

つまり、マーベラス1人ではギャバンやブートレグを倒すのはほぼ不可能であり、
ましてやそのブートレグが3倍に強化された魔空空間では
ブートレグの隙を突いてギャバンを救出することすら、ほぼ不可能なのだといえます。

だが、ギャバンはマーベラスの戦う姿を見ているうちに、
マーベラスならばあるいはその不可能を可能にして、
ブートレグの隙を突いて自分を救出できるかもしれないと思えてきました。
それぐらいマーベラスの奮戦ぶりは想像以上で、
単なるお宝目当ての海賊がこの状況でここまで奮戦するのはあまりに不自然と思えてきたギャバンは、
もしやマーベラスはブートレグを倒す資格を持つ者、
すなわちボイサーやギャバンの夢を受け継ぐ者なのかもしれないなどと思ったのでした。

もちろんギャバンはマーベラスなどに会った覚えも無く、自分の夢を伝えた覚えも無いので、
それは正確に言えば、受け継いだというより、たまたま一致しているという意味でした。
それはつまり、マーベラスという宇宙海賊がギャバンやボイサーと同じ
「宇宙の人々の平和な暮らしを守る」という夢を掴むために戦っているという意味であり、
そんなことは常識的に有り得ない。そんな海賊がいるわけがない。
仮にそんな海賊がいたとしても、そんな海賊がたまたまこの場に居合わせてブートレグを倒そうとするわけもない。
それに、そんなたまたま夢が一致した海賊がブートレグを倒したとしても、
それは真の意味でのギャバンの後継者ではないのだから、ギャバンにとって意義があるともいえない。

だから論理的に考えて有り得ない話であり、どうでもいい話なのです。
ただ単にギャバンが目の前のマーベラスとブートレグの戦いの持つ意味がサッパリ分からないので、
思わず自分の願望をあてはめて、あらぬ妄想を抱いただけでした。

自分は戦うことは出来ない。自分の代わりに戦ってくれる夢の後継者もいない。
そんな状況で自分の過ちの分身のような機械戦士ブートレグに一矢報いて、自分の過ちを正してくれる戦士が、
自分の本来目指していた夢をたまたまでもいいから引き継いでくれていた戦士であれば
どんなに自分は救われることだろうかと、ギャバンは思ってしまったのです。

だから、目の前でブートレグを相手に信じられない奮戦を見せつけるマーベラスの姿が、
あまりに自分がブートレグに対してやろうとして出来なかった戦いのイメージに重なって見えたために、
ギャバンは思わず自分のその願望を重ね合せて、心の中でマーベラスに声援を送っていたのでした。

もしマーベラスがこの魔空空間でブートレグの隙を突いて自分を救出することが出来たとしたなら、
それはマーベラスがブートレグを倒したに等しい。
それはつまり、ブートレグの鏡像である現在のギャバンを超えたに等しい。
それは本来はマーベラスには不可能なことであるが、
その不可能を可能にするのが「夢を掴むために戦う力」なのであり、
ギャバンを超えるという不可能を可能にする夢とは、本来ギャバンが目指そうとして見失っていた夢でしかありえない。
だから、もしマーベラスがブートレグの隙を突いてギャバンを救出できれば、
それはマーベラスがギャバンの「宇宙の人々の平和な暮らしを守る」という夢を受け継ぐ者だったことの証となる。
ギャバンはそんなふうに考え、そうであったらいいと思い、
マーベラスがブートレグに競り勝つことを心の中で願ったのです。

いや、実際こんなのは無茶な理屈であり、あちこちに論理の飛躍がある、正真正銘の妄想でした。
マーベラスがブートレグに競り勝つとしたら、確かに人間特有の「夢を掴むための力」を必要とするであろうが、
その夢がギャバンと同じであるという根拠など何処にも無い。
確かにギャバンと同じ夢を持つ者ならばブートレグに競り勝つという不可能を可能とすることが出来るかもしれないが、
それは他の何らかの夢を持つ者でも可能であるかもしれないのです。
もしマーベラスがブートレグに競り勝ったとしても、たまたまマーベラスがその種の夢の持ち主であり、
その夢のために戦った結果ブートレグを破ったに過ぎないかもしれない。
そうであればギャバンとは何の関係も無い話である。

「マーベラスの作戦成功がマーベラスの夢とギャバンの夢が同じであることの証明となる」という仮説は、
単に「自分の夢が夢を見失った自分の分身を打ち負かす」という結末を望むギャバンの願望が生み出した
妄想に過ぎません。
しかしギャバンは妄想と知りながら、それでもそうであればどんなに良いだろうかと思い、
マーベラスがブートレグに競り勝つのを望み、気が付けば心の中でマーベラスに声援を送っていました。

しかし結局マーベラスはブートレグに競り負けて、遂に変身解除に追い込まれてしまいました。
それを見てギャバンは思わず落胆し「うう!」と呻き、
所詮は全ては自分の身勝手な妄想だったと改めて痛感しました。
やはりマーベラスがブートレグに及ぶはずなどなかった。
また、見ず知らずの海賊のマーベラスが自分と同じ宇宙の平和を願う夢などを持っているはずがない。
単にお人好しで義理堅い宇宙海賊が自分の境遇に同情して、
信じられないほどの男気を発揮して助けに来てくれただけのことであり、
そして必死で戦った挙句、それでも結局ブートレグには一矢報いることも出来ずに敗れた。
それが受け入れるべき現実なのだとギャバンは思い知りました。

アシュラーダもブートレグの勝利とマーベラスの死を確信して「フフフ・・・」とほくそ笑んで、
階下のマーベラスの検死のために移動すべく一歩踏み出し、ギャバンの傍を離れました。
つまりアシュラーダが吹き抜け廊下部から下に降りてくるまでに
マーベラスの処刑は完了する手筈となっているということです。

その手筈通り、アシュラーダが動き出すと同時にブートレグは
マーベラスを変身解除にまで至らしめた光弾を撃ち終わったばかりの銃を、
マーベラスに向けて銃口を突き出した状態から一瞬肩口にまで引いて銃口を天井に向け、
すぐにまたマーベラスに銃口を向けて突き出し、引き金を引きました。

ところがその瞬間には、突如起き上がったマーベラスはブートレグの懐に飛び込んで、
ブートレグの銃から光弾が発射されるより一瞬早くブートレグの銃を持つ左手を横に弾いていたのです。
そのため、光弾は間一髪のタイミングでマーベラスには命中せず、
そのまま右腕でブートレグの左上腕部を掴んでブートレグの懐深くに一歩突っ込んだマーベラスは
ここで意外な行動に出ます。

常識的に考えればこのままの勢いで突っ込んでいきブートレグに一撃加えるところです。
変身はしていないがマーベラスは左手にはゴーカイガンを握ったままでしたので
至近距離でブートレグを撃つのがまず定石でしょう。
しかし、もはやそうした常識や定石では通用しないことはマーベラスは分かっていました。
どんな至近距離でブートレグに向けて銃を撃っても、ブートレグの右手が空いている以上、きっとまた防がれてしまう。
いや、むしろ至近距離だからこそ右手で押さえ込まれて防がれてしまう。
当然ブートレグはマーベラスが次は至近距離で自分に向けて撃ってくると思って
右手をスタンバイさせているはずなのです。だからそんな攻撃は無駄でした。

ならば一旦ブートレグの右手の稼働範囲から離れて撃てばいいかというと、
それもまたさっきと同じで、今度も互角の撃ち合いとなり、結局は競り負けることになる。
せっかくブートレグの左手を押さえ込んだこの千載一遇の好機を無駄にしたくはないから、
この密着した状態で次のアクションは起こさなければならない。
しかし至近距離でブートレグに向けて発砲しても100%失敗することは分かっているのでそれも出来ない。

そこで苦肉の策でマーベラスは一歩踏み込んで
ブートレグの伸びきった左腕の肘のあたりで急にブートレグに背を向けたのでした。
このあまりに意外なマーベラスの行動にブートレグも対応出来ませんでした。
ブートレグの右手はマーベラスが自分に向けて突き出して来た左手を押さえ込むべくスタンバイさせた状態でしたので、
いきなり向けられたのがゴーカイガンを握った左手ではなくマーベラスの背中であったことに対して、
何ら対処出来ず、一瞬固まってしまいました。

その一瞬の隙にマーベラスは密着した敵に背を向けて何をやったのかというと、
なんと自分の右手で下から掴んでロックしたブートレグの左上腕部の上に自分の左腕を突き出して乗せ、
左手に握ったゴーカイガンをブートレグとは180度違う方向に向けて、引き金を引いたのです。
いったいマーベラスは何処を目がけて撃ったのかというと、
それは床に突き刺さったままになっていた自分のゴーカイサーベルでした。
何のためなのかというと、もちろん無意味にゴーカイサーベルを破壊するためではない。
マーベラスが狙ったのはゴーカイサーベルの刀身でした。

マーベラス達はよくゴーカイサーベルで敵の銃弾を叩き落としたりしていますから、
当然ゴーカイサーベルの刀身は銃弾が多少当たったぐらいでは折れたりせず、銃弾を弾きます。
ならば当然、刀身を撃てば跳弾して銃弾は別の方向に飛んでいきます。
つまりマーベラスが狙ったのはゴーカイサーベルの刀身そのものではなく、
刀身で跳弾した光弾の飛んでいく先なのです。

言い換えれば、マーベラスは跳弾までも利用して狙った的に命中させることが出来るということになります。
しかし果たしてそんな神業のようなことが可能なのか?
まぁ狙う的次第では可能でしょう。
ただ漠然と誰か特定の人間に当たればいいと思って撃つのなら、
その相手に背を向けて狭い部屋で壁にでも向かって撃てば、かなりの確率で跳弾が相手に当たります。
まぁ自分にも当たるかもしれませんが。
もしマーベラスがブートレグを予期せぬ跳弾で攻撃しようと思っていたのなら、これは有り得る戦術です。

しかし、それならば別にゴーカイサーベルを狙う必要は無い。壁を撃てばいいのです。
わざわざ小さくて複雑な形をしたゴーカイサーベルの刀身を狙っている以上、
マーベラスの目的は漠然とブートレグを攻撃することではなかったはずです。
マーベラスの狙った的はもっと精密なものであったのです。

つまり、マーベラスは跳弾で
自分やブートレグの背後の壁面で磔となっているギャバンの手首の拘束具を破壊しようとしたのです。
しかしゴーカイサーベルは最初マーベラスが飛び込んできた入口側の壁際の床に刺さっており、
ギャバンはフロアーの奥の壁の高いところに磔になっています。
そしてマーベラスとブートレグはフロアーの中央あたりにいる。
そうなるとマーベラスの撃った光弾はフロアーの半分ぐらいを飛んでゴーカイサーベルで跳弾し、
その後フロアーの端から端まで飛んでギャバンのところに達することになる。
しかも跳弾するゴーカイサーベルとギャバンの高さは全然違う。
本当にこんなので跳弾で手首の拘束具に狙って命中させるような精密射撃が可能なのか?
しかし、それが可能なのでした。
それはマーベラスが跳弾させる的がゴーカイサーベルの刀身だからこそ可能なのです。

先述したようにマーベラスはよくゴーカイサーベルで敵の銃弾を叩き落とします。
これは敵味方問わず他のキャラもよくやりますが、決して皆漠然とはやっていない。
適当に弾き返した場合、跳弾が味方に当たってしまう可能性があるからです。
まぁザンギャック怪人なんかは配下のゴーミンに跳弾が当たっても大して気にしないので
適当にやっているのでしょうが、仲間を大切にするゴーカイジャーはそういうわけにはいきません。
絶対に味方に当たらないように銃弾を刀身で弾かないといけません。
そのためには彼らは刀身のどの位置にどういう角度で銃弾が当たればどこに向かって跳んでいくのか、
しっかり把握しています。

だからマーベラスは床に刺さったゴーカイサーベルの刀身のどの位置に銃弾を当てれば
跳弾がギャバンの手首の拘束具に当たるのか計算することが出来るのでした。
壁を撃った場合はこんな精密な射撃は出来ません。
跳弾させる的がゴーカイサーベルの刀身だからこそ、こういった精密射撃が可能なのです。
だからマーベラスはゴーカイサーベルを狙ったのです。

しかし、それだけではこの精密射撃は可能にはなりません。
まず大前提として、そのゴーカイサーベルの刀身のピンポイントに命中させる精密射撃が出来なければいけません。
果たしてマーベラスにそこまで正確なピンポイント射撃が出来るのか?

その技量はマーベラスには確かにあるとは言えます。
第35話でマーベラスはガンマンワールドでガイアーク怪人のチラカシズキーと決闘した時、
相手の撃った銃弾にゴーカイガンの銃弾を命中させるという神業のような精密射撃を行っています。
だが、あの時はマーベラスは右手でゴーカイガンを構えていました。

基本的にはマーベラスにとって銃は剣の補助のような扱いらしく、
普段の右手で剣を持ち左手で銃を持つスタイルの場合は
銃は格闘の要所でぶっ放すという用途になっており精密な狙撃などはやらないようです。
ただ射撃の腕が無いわけではなく、右手で銃を扱えば驚くべき精度の精密射撃をします。
そのあたりは右と左のガンアクションは完全に使い分けてあるようで、
左手では右手ほどの精密な射撃は出来ないようです。

しかし、今回のマーベラスは左手で銃を構えています。
右手はブートレグの銃を持つ左腕を握って動きを封じていますから、離すわけにはいきません。
そこでマーベラスはブートレグの左腕の上に自分の左腕を置いて、狙撃用の台座代わりにしたのです。
よくジョーが銃を撃つ時にゴーカイサーベルの刀身の峰を台座代わりにしていますが、
あれの代わりのようなものです。
こうすれば銃身が安定し、普段よりも狙いがつけやすくなります。
マーベラスはそうして右手よりやや劣る左手の狙撃精度を補ったのでした。

ただ、そうは言っても左手で精密射撃はしたことはほとんど無く、
敵の腕を台座にするわけですから下手したら動いて狙いがつけられなくなるかもしれない。
またゴーカイサーベルの跳弾箇所も、床に刺さったサーベルに跳弾させるなんていうケースは初めてですから
本当にちゃんと予測通りの角度で飛んでいくかどうか100%の自信は無い。
つまり、外れればまだいい方で、最悪の場合、ギャバンに光弾が命中してしまう危険もある。

しかし危険があるからといって躊躇しているわけにもいかない。
このままこのチャンスに躊躇して何もしなければ、
おそらくマーベラスもギャバンも間違いなく命運が尽きるのです。
だから、ここまでの目算が立っている以上は、もうこうなったら成功の可能性に賭けるしかないのです。

また別の問題として、跳弾した光弾はマーベラスの予想通りのコースを飛ぶならば
ブートレグの顔のあたりをかすめていくことになるが、もしかしたらブートレグに当たるかもしれない。
もしそうなれば光弾はギャバンの手枷には届かないのだが、
まぁこれに関してはむしろブートレグに当たってくれてもいい。
ブートレグに命中するか、あるいはブートレグが防御姿勢をとらざるを得なくなるのならば、
マーベラスがブートレグを攻撃する隙が生じ、
そこをマーベラスが狙い撃ちしてブートレグにダメージを与えれば、
今度はその隙にギャバンの手枷を破壊すればいい。
もしブートレグが上手く跳弾を避けてくれれば、いや、おそらく上手く避けると思うが、
もしそうなれば跳弾はギャバンの手枷を破壊するはずです。

だが、根本的な問題がもう1つあります。
ギャバンを壁面に拘束している手枷は左右の手枷、つまり2つあるのです。
しかし跳弾で破壊出来るのは1つだけですから、
この作戦が成功してもまだギャバンは完全に自由にはならないのです。

ただ、これはもう仕方ない。
一度に2発も跳弾を操作するなど、いくらマーベラスでも不可能です。
跳弾はあくまで奇襲でギャバンの手枷を1つ破壊する作戦であり、
この後、すぐに今度は真っ当な手段でもう1つの手枷を破壊するしかない。

そのためにマーベラスはこの跳弾がブートレグの顔をかすめて
ギャバンの右手の手枷を破壊するコースの方を選択したのです。
ブートレグに当たってくれればそれはそれで両方の手枷を破壊出来る隙を見出せるからそれでいい。
そしてもしブートレグが跳弾を避けたら、跳弾に注意を向けたブートレグの一瞬の隙をついて、
やはりマーベラスはブートレグを攻撃するつもりでした。
そしてブートレグをひるませてギャバンの残りの左手の手枷を撃って破壊する隙を作るのです。
この場合のブートレグへの攻撃は成功するかどうか確信はありませんでしたが、
通常の状態よりは成功確率はまだ高いと思えました。

ギャバンを救出する作戦はそれでいくしかない。
だいたいそういう手順でいくという前提でマーベラスはゴーカイサーベル目がけて
ゴーカイガンの引き金を引きました。
ところがここで予測していなかった事態が起こったのです。
狙撃の台座代わりにするためにグイッと引っ張ったブートレグの左腕に変に力が入った影響なのか、
ブートレグの左手に握られた銃の引き金が引かれてしまい、発砲したのです。

マーベラスの放った光弾は、
マーベラスから見て左前方にある床に刺さったゴーカイサーベル目がけて飛んでいきましたが、
同時にブートレグの銃から発射された光弾は
マーベラスから見て右前方にある壁に突き刺さったままのブートレグのレーザーブレードの方向に
たまたま飛んでいったのでした。

そのままマーベラスの光弾は計算通りにゴーカイサーベルの刀身に命中し、
計算通りの角度でブートレグの方に向かって跳ね返ってきました。
一方、ブートレグの偶然発射した光弾は、偶然レーザーブレードの刀身に命中し、
なんと偶然マーベラスの方に向かって跳ね返ってきたのでした。

マーベラスはこの予期せぬもう1つの跳弾に驚いて、慌てて身体を反転させて間一髪避けます。
そうして後ろを振り向いたマーベラスの視界には
同時にもう1つのマーベラスの放った跳弾を慌てて避けて態勢を崩すブートレグの姿が映りましたが、
ブートレグの方にも注意は払いつつ、マーベラスの関心は自分の放った跳弾が
計算通りギャバンの右手の手枷に命中するのかどうかという点に向けられ、
ブートレグの顔をかすめて飛んで行った跳弾を目で追います。

すると、マーベラスの視界に意外なものが飛び込んできました。
さっきマーベラスが危うく避けたブートレグの跳弾がマーベラスの跳弾と交差して、
マーベラスから見て右の方に飛んで行ったのです。
その跳弾の飛んで行った先はマーベラスと向かい合った形となったギャバン側から見れば左方向、
というより、そのブートレグの跳弾はたまたまですがギャバンの左手の方に飛んでいったのでした。
一方、マーベラスの跳弾の方は計算通りにギャバンの右手の方に飛んでいきます。

そしてマーベラスの跳弾はギャバンの右手首の手枷に命中、
同時になんとブートレグの跳弾はたまたまギャバンの左手首の手枷に命中したのでした。
そしてギャバンを壁面に拘束していた2つの手枷は同時に破壊され、
ギャバンは縛めを解かれて自由の身となった。

しかし、計算された跳弾と偶然の跳弾、合せて2つの跳弾がギャバンの手枷に命中した瞬間、
既にギャバンは驚愕の表情でマーベラスを見つめていました。
マーベラスの計算し尽くした跳弾作戦や、それを果敢に実行した勇気や、
ブートレグの偶発的な跳弾の幸運なども確かにギャバンにとって驚きではありましたが、
それらよりも一瞬前に起きたことの方がギャバンにとって衝撃的だったのです。

それはマーベラスがブートレグの銃撃をかわして懐に飛び込んだということでした。
あれが無ければマーベラスは撃たれて死んでいたし、
あそこでマーベラスがブートレグの銃を持つ腕を掴まえていなければ、
その後の作戦も偶発的事故も起きなかった。
だから、あそこが真の分水嶺でした。
ブートレグ側から見れば、あそこが大失敗だったことになる。

あの時、ブートレグは僅かに不可解な動きをしていました。
変身解除して倒れ込んでいたマーベラスに銃口を向けて構えていた銃身を
一旦自分の肩口に引いて銃口を天井に向け、
その後再び銃身をマーベラスに向けて突き出して引き金を引いたのです。

どうせマーベラスを撃ち殺すつもりならば一旦銃を引いたりせずにそのまますぐに撃てばよかったように思えます。
結果論として言えば、そのタイムラグが無ければ
マーベラスはブートレグの銃撃をかわして懐に飛び込むことは出来なかったと言えます。
どうしてブートレグはわざわざ銃を一旦引いたのか、
その理由はアシュラーダにもブートレグ自身にもよく分からないでしょう。
というより、そうした動きがあったことや、それが失敗の原因となったこと自体、
アシュラーダもブートレグも自覚は出来ていないでしょう。

だがギャバンはその動きにすぐに気付き、それが敗因となったことにも瞬時に気付きました。
そして、どうしてブートレグがそんな動きをしたのかについての理由もハッキリと分かったのでした。
何故なら、その動きはもともとギャバンの癖だったからです。
癖というよりは宇宙刑事としての職務的なスタイルが
長年繰り返されていくうちに自然な動作として身について癖のようになったと言えます。

宇宙刑事というのは犯罪者を殺すことも多いが、単なる殺人マシーンなのではなく、
また単に犯罪者が憎くて殺すわけでもない。
あくまで犯罪者に法の裁きを受けさせることで宇宙の法秩序を守るために戦うのであり、
それがひいては宇宙の人々の平和な暮らしを守ることに繋がると信じて戦うのです。
だから宇宙刑事は犯罪者を殺すために戦うのではなく、裁判を受けさせるために逮捕するという目的で戦う。

ただ裁判といっても宇宙裁判所は逮捕現場でデリートを許可するかどうか即決するため、
ジャッジメントタイムの後、デリート許可、すなわち死刑判決が下された犯罪者はその場でトドメを刺されます。
デカレンジャーのような普通の宇宙刑事の場合はこういうスタイルが基本で、
犯罪者にトドメを刺す前にジャッジメントタイムで一旦間を置くことになります。

しかし特別捜査官のギャバンが対処する犯罪者たちは
ほぼ全て既にデリート許可が出ているような凶悪犯罪者たちであり、
そもそもギャバンには宇宙裁判所のジャッジメントを仰がずに
独自にデリートの可否を判断出来る権限が与えられています。
だからギャバンは戦闘時にジャッジメントタイムで間を置く必要が無く、
有無を言わせず戦いの流れの中で犯罪者を始末することが出来る。

まぁ任務成功が何よりも大事ですから、相手を瞬殺してしまわないといけないようなシチュエーションでは
ギャバンも流れの中で止まらずに犯罪者を倒していきます。
しかし、余裕のある状況では相手が無力化してトドメ寸前の状況となったら
ギャバンは一瞬動きを止めて最後にもう1度、相手がデリートに値する犯罪者であるかどうか
瞬時に黙考することを自分に課していました。

迷いがあるわけでもなく、相手に同情し許そうとしているわけでもなく、別にヒューマニズムから来る行動でもない。
宇宙裁判所の本来持つ権限まで委託されている特別捜査官の判断は極めて重いものであり、
その判断は最後まで慎重には慎重を期すべきだという使命感と、
もしその権限に甘えて考えること無しに敵を殺すようになったら自分は宇宙刑事ではなくなるという職業倫理感が、
ギャバンにデリート直前の一瞬の静止黙考という習慣を課したのでした。

もちろん相手が無力化されて安全な状況の時だけですが、
それでも敵を前にして動きを止めることは危険なことでした。
しかし、それでもギャバンは宇宙刑事として、その習慣を自らに課し続けました。

その静止黙考の一瞬、武器を持つ手を体幹方向に引くのは、
敵を攻撃するわけでもない武器を敵の前に突き出したままにしておくのは
武器を奪われたり叩き落とされたりする危険なので、その危険を避けるためでした。
その一連の動きもこの静止黙考とセットになって習慣化していき、
身体に沁みついていき、いちいち考えなくても自然にその動作をするようになっていきました。

そのようにちゃんと敵の反撃も想定した備えはしてあります。
ギャバンはその習慣を自分に課すと同時に、
自分のそのこだわりのために任務が失敗することは決して無いように、
その静止黙考の一瞬の間に敵が襲ってきても完璧に対処出来るような態勢をしっかりととっていました。
それらの一連の隙の無い動きは完全にギャバンの身についていき、
その結果、その動作のデータもまた他の戦闘データと一緒にブートレグにも移植されていたようです。

おそらくアシュラーダもそんな動作までブートレグにコピーされたことは気付いていなかったでしょう。
だがギャバンは自分にとって大切な儀式でもあるその動作を、
変身解除して無力化されたマーベラスにトドメを刺す直前のブートレグがやるのを見て、
すぐにそれが肝心の黙考は伴っていないものの
形だけならば自分のあの動作と全く同じ動作だということに気が付きました。

ブートレグの動作はギャバン自身のものと全く同じで、
それは敵に付け込む隙を与えない完璧な動きのはずでした。
ところがマーベラスはその隙を見事に突いて反撃に転じたのです。
ブートレグがギャバンの能力を完全コピーしたために皮肉にも受け継いだ
唯一の無意識の弱点になり得る静止黙考ポーズを終えて
トドメを刺すべく銃を構えた腕を突き出した瞬間に僅かに生じた隙を
信じられない素早く的確な動きで捉えたのでした。

そのマーベラスの電光石火の動きを見て、
ギャバンはもし自分がマーベラスにブートレグと同じように相対していたとしても、
やはり同じようにマーベラスに隙を突かれてしまっていただろうと思えました。
ギャバンが長年かけて積み上げてきた宇宙刑事としての核心といえる隙の無い動作を破られたのです。

つまりマーベラスはこの瞬間、ギャバンを超え、ブートレグを超えたのだといえる。
それはマーベラスの実力的には不可能なはずでした。
だがマーベラスはその不可能を可能にした。
そんなマーベラスだからこそ、
成功が確実とは言えない精密射撃の跳弾作戦を果敢に挑戦して成功させることも出来たのであり、
ブートレグの銃の偶然の暴発から奇跡的な跳弾によってもう1つの手枷まで破壊するという
幸運まで呼び込むことが出来たのです。
不可能を可能にする人間は奇跡を呼び込むことが出来るのです。

ギャバンはマーベラスがブートレグに変身解除に追い込まれて倒された時、
やはりマーベラスがブートレグに競り勝つのは不可能だと思いました。
しかしマーベラスはその不可能を可能とし、
ブートレグの隙を突いて遂にギャバンを拘束から解放してしまった。
そして、その不可能を可能にする力とは、人間の「夢を掴み取るために戦う力」なのであり、
ギャバンは自分がブートレグに対して収めたかった勝利とは、このような勝利なのだと強く思いました。

そうなると、やはりマーベラスの夢とは自分の夢と近いものなのではないだろうかと、
手枷が破壊された直後に自由になった両手を身体に引き寄せてギャバンがまたあらぬ妄想を抱いた瞬間、
「跳べぇっ!!」というマーベラスの激しい怒号がギャバンの鼓膜を震わせたのでした。

マーベラスは自分の跳弾だけではなくブートレグの偶然の跳弾までもがギャバンの手枷を破壊してくれたのを見て、
驚くと同時に、これで残った手枷を破壊する手間が省けたと一瞬安堵しましたが、
同時にどうも様子がおかしいことに気付いたのでした。
破壊された手枷の跡の部位からギャバンの背後の壁面の十字架型の部位全体に
何かショートしたような火花が走っているのです。

それを見て、マーベラスは瞬時に手枷に仕掛けが施されていたことに気付きました。
おそらく逃亡防止用に、無理に手枷を外そうとすると爆発する仕掛けなのでしょう。
瞬時に手枷が吹っ飛んだので起爆装置がスムーズに起動していないようだが、今すぐにでも爆発すると見た方がいい。
つまり、最初の作戦通りに手枷を1つずつ破壊していけばいいという悠長なことをやっていれば、
ギャバンは爆破に巻き込まれて死んでいたことになる。

だが、そんなことすら考える余裕も無く、慌てたマーベラスは
とにかくまずは横で態勢を崩しているブートレグに思いっきり蹴りを入れた上で
ゴーカイガンの銃弾をぶち込んで吹っ飛ばすと、
クルリとギャバンの方に向き直り「跳べぇっ!!」と叫んだのでした。

ギャバンもマーベラスのその叫びを聞いてハッと我に返り、
背後の壁がショートしているのを見て、そこに危険が迫っているのを感じ、
即座に吹き抜け廊下部から大きくジャンプして下の床に向けて、両手を広げて飛び込みました。
次の瞬間、ギャバンの背後の壁が大爆発を起こし、
一瞬早く飛び出していたギャバンは間一髪、爆発に巻き込まれるのを免れたのでした。

マーベラスは吹き抜け廊下から階下へダイブしてきたギャバンを受け止めるべく、
上を見上げながら数歩前に出ました。
その瞬間、ギャバンの背後で大爆発が起こって、
その爆炎と、爆炎を背負って舞い降りてくるギャバンの姿がマーベラスの視界を占めました。
その瞬間、目の前で爆炎を背負って飛び降りてくるギャバンと、
10年前に爆炎を背負って飛び降りたマーベラス自身の姿とが重なり、
マーベラスの脳裏にあの貨物船事件の時の記憶が急激に、より鮮明に甦ってきたのでした。

次の瞬間、落下してきたギャバンを抱き止めたと同時にマーベラスは、
今の自分のように10年前に自分を抱き止めてくれた人物の顔を遂にハッキリ思い出しました。
それは、現在の印象より少し若いが、間違いなく今こうして自分が抱き合っている相手、
宇宙刑事ギャバンその人の顔であったのでした。

抱きとめたギャバンをゆっくりと床に降ろして、
マーベラスが立って抱き合うような形となった相手のギャバンは
10年前同じように抱き合った時に比べてだいぶ小さな印象であるが、
それはマーベラス自身が単に成長して背が伸び身体が大きくなったから生じた肉体的印象に過ぎない。
10年前も現在も、こうして両手で掴んだギャバンの両肩から伝わってくる感触そのものは全く変わっていなかった。
それはずっと変わることのない、マーベラスにとってのただ1人の「父親」の記憶のこもった、
温かく大きな感触であったのでした。
マーベラスは穏やかな笑顔になって、フッと微笑み、「やっぱりそうだ・・・!」と呟きました。

一方ギャバンはマーベラスの奇妙な呟きを聞き、変な印象を持ちました。
まるでマーベラスはギャバンの何かを知っており、この状況によってその何かを確認したかのようです。
しかしマーベラスが自分の何を知っているのだろうかとギャバンは不審に思いました。
自分はマーベラスのことは何も知らないし過去に会ったこともない。
それなのにマーベラスが自分のことを何か知っているというのはどうも奇妙です。

あるいは自分とマーベラスは何処かで会ったことがあったのだろうかと考えたギャバンは、
ふと、今の状況というのが先ほどブートレグに拷問を受けている時に思い起こした
10年前の貨物船事件の時の1つの情景に似ていることに気付きました。
「跳べ!」と促されて高い場所から爆炎を背に受けて飛び下りてきた者を
下で待ち受けた者が受け止めるというシチュエーションは、
あの時は受け止める側だったギャバンが今回は受け止められる側であるという違いを除けば、
他はよく似ていました。

そのことにふと気づいたギャバンは、
もしかしたらマーベラスはあの事件の時の少年なのではなかろうかという突拍子もない疑惑が湧いてきて、
思わず目を丸くして「・・・お前は・・・?」と呟きましたが、
さすがにそれは何の根拠も無い妄想だと思い、その後に続こうとした言葉を黙って呑みこみました。

確かにマーベラスが自分と過去に何らかの接点があったと考えた方が
今回のマーベラスの自分を救出するための強い拘りも説明はつけやすいとはギャバンも思いました。
それに、ギャバンはあの10年前の少年にだけは「あばよ涙、よろしく勇気」というボイサーの教えを伝えており、
「素晴らしい未来を掴もうとする夢を持てば勇気が湧いてきて絶望的状況でも切り開いて前に進むことが出来る」
という精神を伝えました。
今回のマーベラスがブートレグやギャバンを超えて不可能を可能にした力は、
まさにそのボイサーや本来のギャバンが持っていた「あばよ涙、よろしく勇気」の精神のもたらした
「夢を掴む力」であるようにも思え、
ならばあの時の少年が成長した姿がこのマーベラスだと考えれば、
マーベラスがどうしてこの絶望的状況から逆転し、ブートレグを出し抜いて自分を救い出すことが出来たのか、
全て辻褄が合う説明が出来るように思えました。

だが、それはあまりにも自分に都合が良い妄想だとギャバンは思い直しました。
それは全て、「自分の過ちの生み出した分身ブートレグを本来の自分の化身が倒してほしい」という
自分の悔恨から生じた願望を満たすという目的から逆算して自分の脳内で作られた物語に過ぎない。

そもそも、自分が何者なのかも名乗らずに逃げた男の言葉など、あの時の少年の心に届いたとも思えない。
あの時の少年が自分の志を継いでくれているわけなど無いのです。
ましてや、その少年が宇宙の人々の平和を願う海賊になって自分を助けにやってくるなんて、
何処のお伽噺なのかと疑うぐらい、有り得ない話でした。

マーベラスはあくまでお宝目当ての海賊なのであって、
そのマーベラスがブートレグを出し抜くことが出来たのは、
この世界には自分がまだ知らない未知の種類の「強さ」というものが存在するからなのだろうとギャバンは思いました。
ただ、マーベラスはおそらく過去に何らかの形で自分と接点がある可能性は高い。
自分はうっかり忘れているようだから、その点については確認しなければいけないとギャバンは思いました。

一方マーベラスは昔の恩人であり父親のように憧れ仰ぎ見た男がギャバンだと分かり、
その相手と再会して抱き合っている状況を素直に喜んでおり、
ギャバンが「お前は・・・」と言うのを聞いて、てっきりギャバンも自分のことを思い出してくれたのかと思って
子供のような気持ちで嬉しくなり、再会を喜び合おうとして目を輝かせて何か言いかけますが、
そこに背後から「ハッハッハッハッハ・・・」という哄笑が響いてきたので、
マーベラスはハッと現実に引き戻され、険しい表情に戻りました。

哄笑の主はゆっくりと階段を降りてきたアシュラーダでした。
そのアシュラーダの降りてきた階段のすぐ前には
マーベラスがさっき蹴り飛ばして銃弾を撃ち込んで吹っ飛ばしたブートレグも再び起き上がってきています。
ギャバンを救出することには成功したが、
マーベラスがこの魔空監獄に乗り込んで達成しようとしていた目標は、ギャバンを救出して脱出することですから、
まだここからの脱出に成功しないうちは危機は続いているのです。

アシュラーダは余裕たっぷりに
「上手く出し抜いたつもりのようだが、鉄壁の魔空監獄からは逃げられはせん・・・」と
マーベラスとギャバンに向けて言い放ちます。

確かにアシュラーダはまさかマーベラスがブートレグを出し抜いて
ギャバンの救出をやってのけるとは予想もしていなかったので、いささか驚きました。
マーベラスにそれほどの力があるとは思っていなかったのです。
これが現実世界ならばブートレグはマーベラスに倒されていたかもしれない。

しかし、ここは魔空空間です。
現実空間では勝利に等しいマーベラスの殊勲も、
この魔空空間では所詮はブートレグを多少転ばせただけのダメージしか与えられていない。
その上アシュラーダ自身も全く無傷で控えております。
一方マーベラスは疲労が激しく今は変身も出来ない状態です。
ギャバンにしてもブートレグに叩きのめされた後、拷問も受けてボロボロです。
現状はアシュラーダ側の絶対的優勢は何ら変わっていない。

この最上階だけでもそんな状態であり、
更にこの魔空監獄にはまだまだ無数の迷宮空間の罠を発生させることが出来る。
マーベラス達が不思議な力を使ってそれらを次々と脱出していったとしても、
この最上階から下に降りて行く過程でそれらの罠を全部抜けて、
仲間全員が集合してこの魔空監獄から脱出するまでは大変な手間と労力を必要とする。
その間に絶対に自分やブートレグがマーベラス一味とギャバンの息の根を止めることになる。
アシュラーダはそう考えて自信満々でした。

しかしマーベラスはギャバンの両肩を掴んでいた両手を離してアシュラーダの方に振り返り、
クールに「そいつはどうかな・・・?」と言ってゴーカイガンをアシュラーダに向けて構えます。
マーベラスはこの相変わらずの大ピンチに全く慌てた様子は無く、やたら落ち着いています。
しかしアシュラーダはそれはハッタリに過ぎないと思いました。
そんな真正面からのミエミエの銃撃など、飛んできても簡単に弾き落とすことが出来る。何の威圧感も無い。
一方で剣の方は床に刺さったままで使えない。
マーベラスには何も出来はしないとアシュラーダはタカをくくっていました。

さて、その頃、マーベラス達を上に進ませるために下層階の牢屋のフロアーで
ゴーミンの大群を引き受けて大暴れしていたジョーと鎧は、
ようやくかなりの数のゴーミンを倒したところで、そろそろ時間的に頃合いだろうと思い、
フロアーの中央付近に立ち、それぞれデンジブルーとゴーオンゴールドの姿から
ゴーカイブルーとゴーカイシルバーの姿に戻りました。

ほぼ同じ頃、上層階に発生した幻影空間の中でモンス・ドレイクと戦っていたアイムも、
頃合いを見てゴセイピンクの姿からゴーカイピンクの姿に戻りました。
同時に中層階に発生した魔空都市空間の中でエルダーとシスターのコンビと戦い続けていたルカとハカセも、
街並みの真ん中にある中庭の中心で背中合わせに集まると、
頃合いと見てそれぞれハリケンイエローとバトルケニアの姿から
ゴーカイイエローとゴーカイグリーンの姿に戻りました。

この3つのフロアーに散らばった5人は、
皆ゴーカイガン(鎧だけゴーカイスピアのガンモード)を手にして、
目前の敵に気を配りつつ、上の方で何かが起きるのを待つかのように、チラリと上を気にします。

そして最上階では、フロアーの端にいるアシュラーダとブートレグの方に向けて
クールな表情でゴーカイガンを構えていたマーベラスが、急にニヤリと笑うと、
ゴーカイガンを斜め下前方に向け、引き金を引きました。

ゴーカイガンの銃口の向いた方向には最上階の床しかありません。
突然のマーベラスの意味不明の行動に「むぅ?」と呻いたアシュラーダもブートレグも、
そしてマーベラスの横にいたギャバンまでも呆気にとられる中、
マーベラスは轟音を轟かせて執拗に床に向けて一気に大量の銃弾を連射していきました。
その狙っている箇所も一定ではなく、
床のあちこちに向けてマーベラスはムチャクチャにぶっ放していっているように見えます。
お蔭で床はあちこちが砕け、最上階にはもうもうと埃が舞い立ちます。

しかしマーベラスはムチャクチャに撃っているわけではありませんでした。
その謎の銃撃には一定の規則性がありました。
マーベラスは最上階の床の中央部を大きな円形を描くように撃ち砕いていたのです。
目的は床に大きな穴を開けることでした。
執拗に何度も何度も撃っていたのは、一気にいくつもの階の床も同じように
中央部にぶち抜きの大穴を開けるように撃ち砕いていたからです。

そして、マーベラスが最上階から幾つかの階の床に大穴を開けたところで、
その大穴はアイムのいる幻影空間の大空に、瓦礫と共に突如ポッカリとした大きな穴となって姿を現しました。
それを見たアイムはその空に開いた大穴に位置を合わせるように、
目の前の地面に向けてゴーカイガンを撃ちまくり、
マーベラスが最上階でやったのと同じように地面に大穴を開けていき、
そして更にその下の階も、その下の階もぶち抜きで大穴を貫いていきます。

そうして同様にリレーするようにして、魔空都市空間のルカとハカセも、下層階のジョーと鎧も
床を打ち砕いて大穴を開けていき、
あっという間に最上階から1階まで続く大きな落とし穴が魔空監獄の全フロアーの床に開いたのでした。
いや、これは落とし穴ではなく、ここに飛び込んで逃げ出すための脱出口でした。
マーベラス達6人は一気に連携作業で、全員が一斉に一瞬にして1階まで逃亡することが出来るルートを開いたのです。

これはマーベラス達が魔空空間に進入してすぐに魔空監獄を発見してから、
建物に近づいて「建物内部に侵入してから最上階を目指す」という作戦を決定した際に、
あらかじめ6人で申し合わせていた脱出方法だったのです。
といっても、当初の予定では6人全員で最上階に辿り着くという前提であったのですが。

ここで問題となったのは最上階でギャバンを救出した後、どうやって魔空監獄を脱出するのかということでした。
さすがに最上階でギャバンを救出した時点でまだ監獄への侵入がバレていないということはないでしょうから、
行く時のように律儀に階段を使って降りていくというのは無理と予測できます。
ならば最上階から壁をぶち破って外に飛び降りて逃げるかというと、
建物の外、特に最上階付近のタワー外部は特に警戒網が厳重なので脱出は難しい。

それなら、外を飛び降りるのが難しいなら、中を飛び降りればいい。
中には飛び降りる場所が無いというのなら作ればいい。
最上階から銃で床をぶち抜いてどんどん飛び降りていって1階まで降りて脱出すればいい。
かなりアバウトで荒々しい計画ですが、それでいくことに決定していたのでした。

ところが当初計画は侵入早々に敵に発見されたことによって強行突破策へと大きく変更を余儀なくされ、
仲間たちが下層階、中層階、上層階で順次に敵を食い止めている間にマーベラスが最上階に辿り着いて
ギャバンを救出したのでした。
もちろんバラバラになった後、マーベラス一味の面々は他の仲間たちがどうなったのか分からなくなっています。
ジョーと鎧は残り4人が最上階に行ったと信じており、
ルカとハカセはマーベラスとアイムが最上階へ行ったと信じており、
アイムはマーベラスが最上階へ行ったと信じています。
ただ、それはあくまで理想的展開の仮定の話であり、
もしかしたら上に進んだ仲間たちもまたバラバラになっている可能性もあることは各自は覚悟はしていました。

ただ彼らはとにかく少なくともマーベラスは最上階に辿り着いて
ギャバンを救出することには成功するはずだと確信していました。
そして、もしこの監獄の中で1人ずつバラバラになっていたとしても、
他の仲間たちもまた全員必ずマーベラスのギャバン救出成功を信じて、
最初の方針通りにマーベラスがギャバン救出の後に最上階から脱出口をぶち抜いてきた時に、
それに呼応して脱出口をぶち抜くであろうと予想しており、
自分もそれに呼応して床をぶち抜き、更に下に向かって脱出口をぶち抜くのだという
心の準備はしっかりしていたのです。

その想いは監獄の中で離れ離れになっても仲間全員一致していました。
ただバラバラになっていると下手すると脱出口を開くタイミングや位置がズレる危険はありましたので、
そこは各自、気をつけていました。
まずタイミングは、とにかくだいたいの頃合いを見てゴーカイガンを撃てる状態でスタンバイしておき、
自分の真上の天井に脱出口が開いたら自分も床をぶち抜くという段取りでいくしかない。

また位置は合わせるのは比較的簡単で、
最上階は監獄中央にそびえるタワーの最上端ですから、その中央でマーベラスが脱出口を開けば、
各階の脱出口を繋ぐラインは各階のど真ん中を通るはずです。
だから下層階のジョーと鎧の場合はフロアーのど真ん中で待機していて、
真上の天井に脱出口が繋がってきたら、その穴の位置を見て細かい位置は微修正して、
それに合わせて床に穴を開けていくことになります。

ただ変な迷宮空間に引き込まれてしまったままのルカとハカセ、そしてアイムの3人に関してはどうするのかというと、
これはあくまで魔空監獄内のフロアーに迷宮空間が重なっているのだから、
空間の見た目に惑わされないで、最初にその空間に入った扉の位置、
あるいはマーベラスが空間から脱出した扉の位置、
そして魔空監獄のフロアーの広さなどをだいたい計算して、
だいたいフロアーの真ん中に相当しそうな位置に目星をつけて、そこで空に大穴が開くのを待つしかない。

ただ、この3人の場合問題であったのは、
当初はこんな変な空間に閉じ込められることは想定していなかったので、
ゴーカイガンでその迷宮空間の壁ごと床をぶち抜くことが出来るかどうかよく分からないということでした。
ただ、これはもう「出来る」と信じるしかない。
そして結果として、それは可能でした。

それはゴーカイジャーのレンジャーキーの力を帯びたマーベラスが迷宮空間の扉を開くことが出来たのと同じ原理で、
やはりゴーカイジャーのレンジャーキーの力を帯びたゴーカイガンやゴーカイスピアの銃弾は
迷宮空間の壁を床ごとぶち破ることが出来たのでした。

そうして、マーベラスが最上階から下に向かって魔空監獄の中央を縦にぶち抜くように脱出口をぶち破っていくと、
それに順次呼応して他の仲間5人も脱出口をぶち破り、
あっという間に魔空監獄のド真ん中にマーベラス達のための脱出口が出来上がったのでした。
ただ、それが最上階から1階まで貫いて開通したということは、マーベラス一味の誰ひとり確認はしていません。
各自が確認できたのは、自分のフロアーの上と下に脱出口が開いているというだけのことでした。
特に最上階のマーベラスなどは単に自分が下に向かって脱出口を少し開いたということしか把握しておらず、
下の方の各フロアーで仲間たちがそれに呼応したのかどうかすら全く把握出来てはいません。

だが、ジョーも鎧も、ルカもハカセも、アイムも、全員が何の躊躇もなく、即座にその穴に飛び込んでいきました。
仲間全員が必ず一斉に脱出口を開通させてくれているはずだと絶対的な信頼感で確信しているのです。
そして最上階でも、まさかこの穴は脱出口なのかとようやく気付いたアシュラーダが
「・・・なにぃ!?」と驚愕するのを尻目に、マーベラスも「じゃあな!」とニヤリと笑うと
ギャバンを抱えて、仲間を信頼して全く躊躇なく足元の大穴に飛び込んで、
さすがに「えええっ!?」と戸惑うギャバンと共に、魔空監獄の全フロアーに開いた穴を通り抜けて
猛スピードで落下していったのでした。

そして1階ではジョー、鎧、ハカセ、ルカ、アイムが順次着地し、
変身解除して生身のマーベラスとギャバンはそのまま着地することは出来ないので
1階の直前でマーベラスがアンカー付きロープを放って何かの器具にひっかけて落下速度を緩め、
最後にゆっくり着地しました。
全員がしっかり揃って降りてきたことについて、全員がさも当然のことのようにしており、
特に感動した様子も無いところは、さすがに仲間の絆と信頼感の強さを物語っています。

こうしてマーベラス一味の6人は全員揃って、
ギャバンを救い出した上で魔空監獄の1階まで一気に逃亡に成功したのでした。
ただ、こうなれば追手がやってくることも確実です。
しかし、追手への対策および脱獄作戦の最後の仕上げもマーベラス達は最初からしっかり用意していました。
マーベラス達はここで必殺武器のゴーカイガレオンバスターを取り出したのです。

ハカセが「鎧!」と言ってゴーカイガレオンバスターを鎧に渡し、
「よっしゃあ!」と受け取った鎧が構えたゴーカイガレオンバスターに、
「レンジャーキー!セット!!」と、メガシルバー、ガオシルバー、ボウケンシルバー、ゴーオンシルバーの
4つの歴代シルバー戦士のレンジャーキーが挿され、
更に最後部の鍵穴には鎧自身の手でゴーカイシルバーのレンジャーキーが挿しこまれます。

「スペシャルチャ〜ジ!!」とエネルギーが一気に充填していくガレオンバスターを何処に向けて撃つのかというと、
鎧はなんと真上に向けて構えます。
鎧と、その身体を下から支えるジョーとハカセは「ゴーカイガレオンバスター!!」と叫んで、
今さっき自分達が降りてきた脱出口目がけてライジングストライクを発射したのでした。

マーベラス達は、この魔空監獄の中にいる数多くの番人たちは自分達を追いかけるために
最も手早い移動通路として、この脱出口を使うのであろうことを読んでいたのです。
実際、逃亡したマーベラス達とギャバンを追うために、ゴーミン達やエルダーやシスター達、
そしてその他の数多くの番人たちは、みんな一斉にこの脱出口に飛び込んで
マーベラス達を追いかけようとしていました。
そこに向けてライジングストライクが発射されたのです。

ライジングストライクは床に生じた亀裂である脱出口および、亀裂によって脆くなったその周囲の床面も吹き飛ばし、
巨大な火柱となって真上に突き進んでいき、
各フロアーをメチャクチャに破壊しながら魔空監獄の全ての番人たちを呑みこんで焼き尽くしていきました。
もちろん、ゴーカイガンでも迷宮空間の壁をぶち破ることが出来たぐらいですから、
ガレオンバスターのライジングストライクは魔空監獄内の全ての迷宮空間も悉く破壊して突き進んでいきました。
その中でエルダーやシスターはもちろん、幻影空間のモンス・ドレイクのような幻影怪人たちも消滅していきました。

そして、ライジングストライクは遂には
唖然としてマーベラスの脱出を見送ったばかりのアシュラーダとブートレグの居る最上階にまで達します。
普通ならいくらライジングストライクが強力といっても
これだけの規模の建造物の1階から最上階までの床や天井を全部ぶち抜いて届くということはない。
だが、脱出口の大穴が最上階から1階まで貫通している状態ならばライジングストライクは最上階まで届くのです。

マーベラス達が最上階から1階まで貫く穴を貫通させようとした、隠されたもう1つの理由はこれでした。
この大穴はギャバンを救い出して脱出した後、
魔空監獄の一番底から建物内部を徹底的に破壊し、
そして最上階のアシュラーダとブートレグを確実に仕留めるために使う攻撃用の穴でもあったのです。

絶え間なく轟音の響く階下が徹底的に破壊され、魔空監獄が消滅していくのを悟ったアシュラーダが
「・・・バカな!!魔空監獄が!?」と最上階で呻いていたところ、
遂にライジングストライクによる破壊は最上階に達し、
アシュラーダは「・・・海賊どもめ!!」と悔しげに喚きながら、
狼狽するブートレグと共に紅蓮の炎の中に呑みこまれていったのでした。

マーベラスはさっきまで魔空監獄という名で真上にそびえていた建造物が
巨大な炎の柱となっているのを満足げに見上げ、後ろに立つ仲間達の方に振り向いて不敵に笑い
「ド派手に脱獄だ!」と言うと、右手を高々と上げます。
すると、紅蓮の炎の中からマーベラスのゴーカイサーベルがクルクル回って落ちてきて、
マーベラスの右手にキャッチされたのでした。

最上階の床に刺さったまま置き去りにしていたマーベラスのゴーカイサーベルが
最上階が破壊されたことによって1階まで落ちてきたのです。
それはつまり、魔空監獄が最上階まで粉々になり、
アシュラーダもブートレグも倒したということを意味していました。
マーベラス達は最初からギャバンを救出して脱出した後、
最後にこうして建物最深部からの攻撃でアシュラーダとブートレグもろとも
魔空監獄をぶっ潰すつもりであったのです。

そこまで達成した以上、こうなればもうこんな所に長居は無用です。
魔空監獄が崩壊しアシュラーダが死んだことによって、この魔空空間ももうすぐ消滅することになるでしょう。
マーベラスはキャッチしたゴーカイサーベルをクルリと回して肩に担ぎ悠然と歩きだし、
その後ろをガレオンバスターを抱えた鎧、ギャバンを両側から支えて歩くルカとアイムが続き、
ジョーとハカセはそれぞれまた来た時のようにデンジブルーとバトルケニアのレンジャーキーを突き出して
マーベラスの一歩前に出ます。
するとまた2つのレンジャーキーから青と緑の光が飛び出し、魔空空間から現実空間へと続く扉が開き、
マーベラス一味の6人とギャバンの合わせて7人は、その扉に入っていったのでした。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 22:25 | Comment(1) | 海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月31日

海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE 感想その14

魔空監獄でギャバンを救出し、脱獄に成功した後、真下からの攻撃で魔空監獄をぶっ潰したマーベラス達は、
紅蓮の炎に呑みこまれて崩壊する魔空監獄の真下から現実世界に戻るべく
デンジブルーとバトルケニアのレンジャーキーを使って亜空間の扉を開き、その中に入っていきました。

すると次の瞬間、マーベラス達とギャバンは見たこともない海の傍の倉庫群のような場所に出てきました。
現実空間に戻る際はこの2つのレンジャーキーの本来の持ち主である青梅と曙のもとに戻るようイメージするように、
その青梅たちから言われていたマーベラス達は、言われた通りにしたのですが、
到着した場所には青梅も曙もいません。
まぁ魔空空間に行った時もギャバンのもとに辿り着くようイメージしたが、
出た場所は魔空監獄からややズレた場所でした。
やはり、この変則的な亜空間移動の方法の場合、誤差はそれなりにあるようです。

ただ、ここが亜空間ではなく現実世界であるのは間違いない。
一同は変身解除して安堵し、解放感のあまり鎧が「帰ってきたぁぁぁ〜!!」と、
フォーゼのように両手を上げて大声で叫び、横にいたジョーが「・・・うるさい・・・!」と叱ります。

すっかり一件落着ムードのマーベラス達ですが、何か大事なことを忘れていないか?
いや、あんまり大事なことではないので忘れているのでしょうが、
ジェラシット達のことをすっかり忘れているようです。
マーベラス達によって脱獄させてもらったジェラシットおよび
シリーズ歴代の改心怪人たちはどうなったのでしょうか?

最初はマーベラスはジェラシット達を逃がした後、
どうせ魔空空間からは逃げられないだろうけれども魔空監獄をぶっ潰したら
一緒に連れて帰ってやってもいいとでも思っていたようですが、
結局、ブートレグとの死闘を経る中でマーベラスもジェラシット達のことはうっかり忘れてしまい、
さっさと現実世界に戻ってきてしまい、ジェラシット達は魔空空間に置き去りにされたようです。
その魔空空間もアシュラーダが死んで消滅するとなれば、ジェラシット達はどうなってしまうのか?

魔空空間というのは現実空間に隣接した亜空間の袋のようなものですから、
それが消滅すれば、そこに閉じ込められていた現実世界由来のものは
現実世界の方に戻ってくるのではないかと思えます。
だからジェラシット達は無事に元いた世界に戻ってくることが出来たのではないでしょうか。

あるいは現実世界ではなくて全然別の異次元世界に飛ばされてしまう可能性もあるが、
最悪その場合でもたぶん大丈夫です。
何故なら、あの改心怪人集団の中にはガイアーク三大臣がいたからです。
あの3人はただの酔っ払いみたいに見えますが、
実はどんな異次元世界でも自由に行き来出来る便利な能力を持っています。
だから、ジェラシット達のあの集団がバラバラにならずに行動していたならば、
もし異次元に飛ばされたとしても、この現実世界(ヒューマンワールド)に戻ってくることは出来るでしょう。

それに、途中で何かアクシデントがあって誰か命を落としてしまったとしても、
あの集団にはバンキュリアがいましたから大丈夫です。
何せバンキュリアは死者を甦らせることが出来ます。

まぁそういうわけでジェラシット達のことはおそらく心配しなくても大丈夫なようです。
だが、よく考えたらあの魔空監獄にはジェラシットたち改心怪人チーム以外にも囚人はたくさんいたはずです。
ジェラシット達と同じフロアーにも少なくとも2人いたことは画面上でも映っています。
おそらく画面には映っていないが、あれだけ大きな監獄ですから多数の囚人がいたはずです。
囚人といっても犯罪者ではなく、単にザンギャックにとって都合が悪いので幽閉されていた者達です。
何か犯罪を冒していたのならばわざわざ魔空監獄に隠すように収容せずに普通の刑務所に入れるでしょうから、
むしろあそこに居たのは本当は何の罪も無い善良な人達だったといえます。

そういう人達がたくさん残っていたのにマーベラス達は容赦なくライジングストライクをぶっ放して
魔空監獄をムチャクチャに破壊したのですから、これはよく考えたら問題です。
おそらくあの破壊の様子からして、あそこにいた囚人の皆さんは、
逃げ出したジェラシット達を除いてはみんな死んでしまったと思われます。
つまりマーベラス達がその罪も無い善良な人達を大量に殺したのです。
しかも、その一部逃がしたジェラシット達のこともついつい忘れて魔空空間に置き去りなのですから、
マーベラス達はずいぶん囚人たちに冷たいように思えます。

しかし、この作品的にはあれでいいのだと思います。
もちろんマーベラス達の行為は人道的に問題はある。決して褒められたものではない。
だが、そういう問題点を抱えたところが彼ららしいのであり、この作品らしい部分なのだといえます。

というか、別に映画の中で囚人たちが死んでいく様子が描写してあるわけではないのに、
わざわざこんな触れなくていい部分にツッコむ必要も無いのではないかと思われそうですが、
このマーベラス達のこういう問題(?)行動が
この「海賊戦隊ゴーカイジャー」という戦隊のスタンスを象徴しているように思えるので、
ついつい触れたくなってしまうのです。

あの魔空監獄に収容されていた囚人たちは、みんなザンギャックに逆らったために捕らわれた人達でした。
ザンギャックに逆らわなければ捕らわれることはなかったはずです。
ザンギャックに逆らうということはそうしたリスクを負うことだと分かった上で、そのリスクを負った人達なのです。
まぁ全員がそうだったのか分からないが、
ザンギャックに逆らうことは大変なリスクを引き受けることを意味するというのは宇宙の常識であり、
まだザンギャックに支配されていない地球のような例外的な星の住人を除いては、
それはだいたい宇宙に暮らす者の中では共有された考え方といえます。

そうした常識を持つ者の中には当然マーベラス一味も含まれますし、ギャバンも含まれます。
ギャバンは無意識にそのリスクを負うことを避けていたのですが、
マーベラス達は自らそのリスクを負ってザンギャックに逆らっていました。
マーベラス達はザンギャックに逆らえばどういうことになるか分かった上で、
あえてザンギャックに逆らって生きる道を選んだのです。
だから自分の身に何が起こってもそれは自分が招いたことであり、自分で責任を負わねばならないことでした。
他人に助けてもらえるなどとは思っていない。

だいたい自分を助けた者もザンギャックに逆らうことになり、自分と同じリスクを負う羽目になるのです。
だから、ザンギャックに逆らう道を選んだ以上、何が起ころうともそれは自分で責任を負わねばならないのであって、
他の誰も自分のことを助けてくれないという意識を持たねばならない。
マーベラス達はそのように覚悟して戦ってきました。
そして、それはこの宇宙でザンギャックに逆らう道を選んだ者みんなに共通した覚悟なのだということを
マーベラス達は知っています。

あの魔空監獄に収容されていた者達はみんなそういう、マーベラス達と同類の連中だったはずです。
あそこにいた連中はザンギャックに逆らえば最終的に自分が殺されるか、
魔空監獄のようなところにぶち込まれることになることは覚悟して、
それでもあえてザンギャックに逆らう道を選んだのです。
だから誰かに助けてもらえるなどとは思っていない。
自分の選んだ道のオトシマエは自分でつけるという覚悟であったはずです。

そうした囚人たちの心理は同類であるマーベラス達にはよく理解出来ていました。
だからマーベラス達は、自分達が彼らを助ける必要は無く、
彼らを助ける義務も負っていないということも分かっていました。
そういうわけで、マーベラス達が彼らを助けなかったことは、そんなに責められるべきことではない。

実際、あのジェラシット達がいたフロアーには地球の改心怪人たち以外にも
牢屋にぶち込まれた囚人たちは居ましたが、
彼らはあの大騒動の中でもマーベラス達に助けてほしいなどとは訴えていませんでした。
彼らは他人に助けてもらおうという意識は無く、自分の選択に自分で責任を負おうと覚悟を決めていたのです。
それがこの宇宙でザンギャックに逆らうと決断した者の流儀なのだといえます。

ならば何故、ジェラシット達だけはあんなにみっともなくマーベラス達に助けてほしいと懇願したのかというと、
地球の改心怪人たちはザンギャックの支配下で暮らしたことが無いので、
ザンギャックに逆らうという意味の重大さがイマイチ分かっておらず、
誰かに助けてもらえるという意識があったのでしょう。
じゃあジェラシットはどうなのかというと、アイツの場合はそもそもザンギャックを追放された身であるし、
ザンギャックに逆らっているという意識はあまり無く、単に自分の恋愛体質に忠実に行動しただけなので、
信念に殉ずるなどという覚悟は無いと思われます。

そういうわけでジェラシットと地球の改心怪人たちだけが助けてくれと騒ぎだし、
マーベラス達は仕方なく助けたのですが、
ここでマーベラス達は彼らが覚悟が無いのを哀れに思って助けたわけではないでしょう。
ザンギャックに逆らうことによるリスクを承知して覚悟を決めて戦っているマーベラス達から見て、
ジェラシットや地球の改心怪人たちはむしろいい加減な連中というふうに見えたはずです。
自分に損になることは分かった上でザンギャックに逆らったという意味では同類といえますが、
いざ捕まって助けを求めて騒ぐなどというのはみっともない。
少なくともマーベラス達は彼らに対して好感は抱かなかったはずです。

しかしマーベラス達はそれでも彼らを牢屋から出してやった。
これはつまり、マーベラス達はジェラシット達を特に贔屓して逃がしたわけではないということになります。
単にジェラシット達が助けてほしいと声を上げたので、
あまり好感は抱かなかったものの、仕方なく助けてやったということになります。

では、特に贔屓したわけでもないのにジェラシット達だけ助けたのは何故なのかというと、
それは単に余裕が無かったからです。
ギャバンを助けに行くという当初の大目的がある以上、他の囚人たちを助けているようなヒマは無かったが、
ジェラシット達だけはあんまりうるさく言うものだから、とりあえず牢屋から出してやったのです。

要するにマーベラス達は、
魔空監獄の囚人たちが他人に助けて貰わなくていいという覚悟を持っていることは知っており、
自分達が彼らを助ける義務は無いということは了解しつつも、
それでも余裕さえあれば彼らを助ける意思はあったのです。
実際今回も僅かな余裕の中でジェラシット達だけはなんとか助けています。

また過去においてもマーベラスはザンギャックから脱走したジョーを助け、
マーベラスとジョーはザンギャックに殺されそうになっていたルカを助け、
マーベラスとジョーとルカはザンギャックに逆らったハカセを助け、
マーベラスとジョーとルカとハカセはザンギャックに追われていたアイムを助け、
マーベラスとジョーとルカとハカセとアイムはザンギャックと戦っていた鎧を助けました。

これらのケースにおいても、助けられた側は「助けてほしい」などとは言っていません。
弱虫のハカセですらザンギャックに逆らった自分のリスクは一応自分で引き受ける覚悟でしたし、
自分から仲間に入れてほしいと言ってきたアイムも、
それは自分の身を守るためではなく、自分の夢を叶えるためでした。
彼らもみんなザンギャックに逆らったリスクは自分で負うつもりであった。
しかしマーベラス一味はそんな彼らを助けてきました。

そういうマーベラス一味ですから、魔空監獄の囚人たちのことも助ける意思はあったと思います。
だが、そんな余裕は無かったのでうるさく助けを求めてきたジェラシット達だけは仕方なく助けたものの、
他の囚人たちは結局助けることは出来なかったのでしょう。

しかし、それならばどうしてマーベラス達は囚人たちを皆殺しにしたのだろうかという疑問は湧いてきます。
「皆殺し」というのは随分ショッキングな言い回しですが、これは事実です。
今回、マーベラス達が魔空監獄の1階から最上階に向けてゴーカイガレオンバスターを撃たなければ、
魔空監獄の囚人たちが死ぬことはなかった。
だから今回、魔空監獄の崩壊時に死んだ大量の囚人たちを殺したのはマーベラス達です。
マーベラス達が大量殺人の下手人であるのは間違いない。

しかもその場には宇宙刑事ギャバンも居合わせていました。
ただ、これはあくまでザンギャックとマーベラス一味の私的な紛争の中の出来事なので
宇宙警察は不介入であり、ギャバンはこのマーベラス達の大量殺人を咎めることは出来ません。

それに、今この場で彼ら囚人たちを殺したのは確かにマーベラス達ですが、
もしマーベラス達が今回魔空監獄を破壊しなかったとしたら彼ら囚人たちは平穏に暮らしていけたのかというと、
そんなことは全然有り得ないわけで、
どのみち魔空監獄に収監されている限り、遠からず命を落とす運命であったといえます。
そして、彼らも自分達のそうした運命を悟っており、
マーベラス達にそこから救い出してもらおうなどとも思っておらず、自分の行為の責任を自分で負う覚悟は持っていた。

マーベラス達にしても囚人たちを大量に殺すことに喜びを見出していたというわけでもなく、
彼らを進んで殺したいと思ってやったことではない。
あくまで魔空監獄を潰すということが目的であり、その過程でやむを得ず彼らを巻き込んでしまったのです。
だから平和に暮らしていた人々を突然マーベラス達が理不尽に殺戮したというケースとはだいぶ異なるわけです。

だが、それでもマーベラス達はジェラシット達のことは助けているわけですから、
囚人たちを助けたいという気持ちはもともとあったはずです。
それなのに結局はジェラシット達を除く囚人たちを皆殺しにしたわけですから、
それはマーベラス一味の面々自身の良心として、それで本当にいいのかという問題は残ります。

それはもちろん、囚人たちが自分達の手で大量に死んだこと自体は喜ばしいことではないはずです。
だがマーベラス達は嬉しそうにしている。
つまり、囚人たちの死を悼む気持ちを上回る喜びが他にあるということになります。
それは何なのかというと、「魔空監獄をぶっ潰したこと」以外に考えられません。

彼らが魔空空間に行ったのは第一義的にはもちろんギャバン救出のためであったはずです。
だからその目的を達成したことが喜びであるとも考えることは出来ますが、
それならその目的を達成した段階で魔空空間から去ればよかったのです。
最上階から1階まで飛び降りた後、マーベラス一味がギャバンを伴って全員集合した段階で
すぐにレンジャーキーを使って魔空空間を脱出することは出来たはずです。
確かにガレオンバスターを上に向けて撃つことによって追手の追撃を阻止することは出来ますが、
追手など魔空空間から逃げ出してしまえば恐れるべきはブートレグとアシュラーダぐらいのものです。
ガレオンバスターの発射準備に要した時間を考えれば、
その時間を使えば追手が1階に降りてくる前にマーベラス達は確実に魔空空間を脱出することは出来ました。
だからガレオンバスターの発射には追手の阻止の意義はあまり無い。

むしろガレオンバスターを撃った主目的は魔空監獄の破壊であったようです。
そして、その目的を達成したことを現実空間に戻ってきたマーベラス達は喜んでいるのです。
つまり、マーベラス一味が魔空空間に行った目的は、ギャバン救出は当然のこととして、
もう1つ、魔空監獄をぶっ潰すということも当初からの大目的であったようなのです。
そして、その「魔空監獄をぶっ潰す」という目的の達成は、
マーベラス達にとっては多数の囚人の殺害という後味の悪さを相殺して余りあるほどの喜びなのです。

追手の阻止だけの目的でガレオンバスターを撃って、その結果、膨大な囚人たちが死んだとなると、
マーベラス達はそんなに喜びはしないはずです。
やはり魔空監獄をぶっ潰すためにガレオンバスターを撃ち、その目的が達成できたので、
巻き添えで大勢の囚人たちが死んだとしても、
その後味の悪さを遥かに超える喜びを感じることが出来たといえます。

つまりマーベラス達の価値観は決して目の前の命を至上の価値とするようなものではない。
大勢の囚人たちを殺しても魔空監獄を潰すことが出来ることの方が大事なのだという価値観なのです。
言い換えれば、魔空監獄を潰すためには囚人の命は犠牲にしてもやむを得ないということであり、
魔空監獄を潰すということは囚人の命を犠牲にするだけの価値のあることだということになります。

しかし、よく考えたらマーベラス達は数時間前にバスコから聞かされるまで
魔空監獄の存在すら知らなかったはずであり、
魔空監獄そのものに対しては特別なこだわりは無いはずです。
だからマーベラス達が魔空監獄を潰すことに意義を感じているとしたなら、
それは「ザンギャックの監獄だから」という理由からであるのは明白でしょう。
マーベラス達はザンギャックの監獄だから魔空監獄を潰したいと思ったのであり、
そこにいる囚人たちを犠牲にしても潰す価値があると判断したのです。

しかし、どうしてマーベラス達はザンギャックの監獄をそんなに潰したいと思ったのか?
マーベラス一味がザンギャックと敵対しているからといえばそれまでだが、
そもそも彼らはどうしてザンギャックと敵対しているのか?
ザンギャックが彼らをお尋ね者として敵視しているから、
降りかかる火の粉を払うためにマーベラス達は戦う羽目になっているのか?
しかし、今回も別にわざわざ魔空監獄を潰す必要は無かったはずです。

また、第34話で回想されたルカとの出会いの時、
マーベラスとジョーはわざわざザンギャック基地の金庫を襲撃していますが、
これも降りかかる火の粉を払うという行為ではなく、
むしろ積極的にマーベラス達の方からザンギャックに被害を与えています。

この時はマーベラス達はザンギャックの侵略を受けている星の人々が少しでも多く逃げられるように
ザンギャック軍の足を引っ張ろうとして金庫を襲撃したと思われます。
ただ、同じ目的で金庫を襲ったと思われるルカともども、マーベラス達も、
決して自分が本当は人々のために金庫を襲ったとは明言はしていません。
あくまで単にザンギャックから金を奪ってやろうとしていたというスタンスは崩していません。

それでもこの時の両者の遣り取りから、
彼らが本心ではザンギャックに虐げられた人々を救うためにザンギャックの基地を襲撃したのだろうと推測は出来ます。
マーベラス一味が地球を守って戦ってみる気になったのも、
もともと彼らがザンギャックに虐げられた人々を助けるために
積極的にザンギャックに対して攻撃を仕掛ける傾向を持っていたからなのでしょう。

そう考えれば、このザンギャックの監獄である魔空監獄をわざわざ潰そうと思った理由も、
ザンギャックに虐げられた人々を救うためであったと思われます。
だが、その結果、マーベラス達はザンギャックに虐げられた人々そのものである魔空監獄の囚人たちを
大量に殺してしまいました。
しかしマーベラス達はそれで良かったと思っているようなのです。

このあたりは分かりにくいところでしょうが、
魔空監獄が存在し続ける限り、また新たに魔空監獄にぶち込まれて虐げられる人々は増えていくのであり、
ここで魔空監獄を潰しておくことによって、そうした未来の被害者を救うことになるわけです。
だから魔空監獄を潰す千載一遇のチャンスを逃すわけにはいかない。
そのためには現時点で魔空監獄にぶち込まれている囚人たちの犠牲は仕方ない。
囚人たちの命のことを気にして攻撃を躊躇していては魔空監獄は潰せなくなる。

彼ら囚人たちは既に自分の決断の責任を自分で取ろうと決意しており、他人の助けは必要としておらず、
命は捨ててかかっている人達であり、おそらくは自分と同じ被害者が増えることは望んでいない人達です。
だから、自分の命を捨てることで忌まわしいザンギャックの圧政の象徴たる魔空監獄を
潰すことが出来るのならば本望であろうし、
逆に自分の命を救うために魔空監獄が潰されずに残ってしまうということになれば非常に口惜しく思うでしょう。

彼らの命を救うために魔空監獄を残してしまっても、彼らは遠からず魔空監獄で殺されることになるのです。
ならば、彼らの命を救うために魔空監獄を潰さないという選択をすることは、
彼らを無駄死にさせることになり、彼らを悲しませることになる。
だから、彼らを犠牲にして魔空監獄を潰すのが、この場合は正解なのです。
命を守るよりも敵を倒すことを優先し、敵を倒すことによって未来に失われる可能性のある命を守るというのが
マーベラス一味のザンギャッくとの戦いの特徴的なスタンスといえます。

そして、これと似たようなことはマーベラス達は普段からやっているのです。
例えば市街地でマーベラス達がザンギャック軍と戦う場合、巻き添えで食って死んでいる人は必ずいます。
特に巨大戦となった場合、かなりの死傷者が出ているはずです。
しかし、死傷者が出るからといって市街地での戦闘を躊躇すれば、
単にザンギャック側が市街地を破壊するのを黙認して市民の被害を拡大させるだけのことですから、
被害を最小限に止めるためには、その場にいる人達を犠牲にしてでも市街戦をするしかない。

これもまた
「ザンギャックに虐げられた人々を救うためにザンギャックに虐げられた人達を殺す」ということの一例です。
そうした普段からやっていることと同じことを、
今回マーベラス達は魔空監獄をぶっ潰す時にやっただけのことです。

そして、このようにマーベラス達が普段からやっている
「悪を倒すために犠牲が出るのは仕方ない」という行為は、
歴代34のスーパー戦隊もみんな同じように一般人がいる場所で市街戦をしたりして、
同じようにやってきたことなのです。

しかし、マーベラス達とレジェンド戦隊とでは、この件に関して同じでない部分があります。
それは、レジェンド戦隊の場合は人々の犠牲を
「地球を守るため」「世界を守るため」に仕方ないものだったと公に正当化出来るのに対して、
マーベラス達はそうした正当化がおおっぴらに出来ない立場である点です。

レジェンド戦隊の場合は、その犠牲になる人々と同じ側に立った存在だと認められています。
その度合いは公的機関の戦隊からボランティア戦隊まで、その公式認知度の点で幅はありますが、
それでも彼らは明確に地球人側、人間世界側の存在として認知されており、
地球や世界を守るために戦っているという意思が明確です。
だから、彼らが侵略者たちと戦うのは地球やこの世界を守るためだということは
周囲の人々にとっては明快なので、そのために多少の犠牲が生じても
世界を守るためには仕方ないと納得は出来ます。

しかしマーベラス達の場合は宇宙人であり宇宙海賊なので、地球人側の存在として明確に認知されにくいのです。
特に今回は侵略者が宇宙帝国ザンギャックであり、
マーベラス達は地球の事情とは全く無関係に以前からこのザンギャックと敵対関係にあり、
地球上でザンギャックとマーベラス達が戦う場合、
この両者の以前からの敵対関係を地球に持ち込んで勝手に喧嘩しているように見えてしまいます。

いや、そういう側面は確かに事実なのです。
マーベラス達は確かに地球を守るという意識もあるが、
以前からいちいちザンギャックのやることが気に入らなくてぶっ潰してやりたいという意識も存在しており、
この2つの意識が彼らのザンギャックとの戦いの理由となっています。
つまり地球人側から見れば宇宙人同士の私的な喧嘩を持ち込んでいるように見える部分は確かにある。
また、地球を守るために戦っているという彼らの姿勢も、
地球人でもない者がどうして地球を守るために戦うのか、地球人から見ればその根拠が曖昧であり、
マーベラス達が本気で地球のために戦っているのか、本当に地球人側の存在なのか、
常に疑惑の目を向けられているといえます。

自分達がそういう曖昧で疾しい存在であることはマーベラス達は自覚しています。
だから、自分達がザンギャックと戦う際に地球人の犠牲が生じた場合、
それを「地球を守るために仕方ない犠牲だった」などというふうに
「正義」の名のもとに正当化することが出来ない。

しかし地球の人々を守るために地球で戦う以上、地球の人々をある程度犠牲にすることになるのは仕方ないことです。
よそ者のマーベラス達がそのように人々を犠牲にして戦うことになると、どうしても迷惑がられる。
だがマーベラス達は迷惑がられても地球を守って戦うことを止める気は無い。
ならばもう開き直って「勝手に喧嘩をして人々に迷惑をかけている宇宙海賊」として振る舞うしかない。

いや実際、マーベラス達が宇宙人のクセに地球を守って戦おうなどということは彼らが勝手に決めたことであり、
地球人に頼まれたことではない。
言い換えればマーベラス達がザンギャックとの戦いで巻き添えで地球の人々を殺しているのも、
マーベラス達が勝手にやっていることなのです。
よそ者が勝手に戦う以上、それが大局的にその世界の人々のためになるとしても、
やはり基本的には迷惑な行為なのだということはマーベラス達は分かっているのです。

それは地球における戦いに限った話ではない。
例えば先述のマーベラスとジョーがルカに出会った星におけるザンギャック基地襲撃についても、
本当はその星の人々を救うためという目的であったにもかかわらず、
マーベラスもジョーもルカも、ハッキリとそういう動機で自分が行動したとは決して言おうとしていませんでした。
3人とも、自分の想いはどうであれ、基本的にはそれがよそ者の余計なおせっかいであり、
下手したら迷惑でしかない行為だということは常に自覚しているのです。

マーベラス一味はそのように迷惑な海賊として、
宝探しをしながらそうした余計なおせっかいを止めようとはせず、
あちこちの星で細々とザンギャックに酷い目にあっている人を助けたりして
ザンギャックと小競り合いを繰り返して旅を続けてきたのです。

ただ、他の星はほとんど通りすがるだけであったので、その余計なおせっかいもごく限られたものであったのですが、
旅の目的地である地球には腰を落ち着けることになったので、その余計なおせっかいもかなり本格的なものとなり、
ある意味では地球にとって非常に頼れる存在となっている反面、
よそ者ゆえに非常に迷惑な存在にもなっているのです。

マーベラス達はザンギャック軍と戦う際に地球人を犠牲にしても正義の名のもとに正当化も出来ない立場で迷惑がられ、
それでもザンギャックから地球を守る戦いを勝手にやり続けているために、
自分達は勝手にザンギャックと喧嘩する迷惑な宇宙海賊だと開き直るしかない。
それは確かに事実でもあるのです。
マーベラス達は宝探しとは関係ないザンギャックとの余計なおせっかいの戦いを続ける限り、
そうした迷惑な存在として後ろ指を指されるという十字架を背負い続けることになるのです。

このようにマーベラス一味のように怪しげなよそ者でありながら
地球を守るために戦った戦隊というのはスーパー戦隊には存在しません。
しかし、この物語世界においてはスーパー戦隊以外では似た例があります。
実はそれがギャバンでした。

ギャバンもまた地球人ではなく宇宙の果てからやって来た宇宙人
(地球人とのハーフではあるが育ちは異星であるバード星)の宇宙刑事でありながら
地球を守るために宇宙犯罪組織と戦いました。
地球人から見ればこれもまた宇宙人同士の争いに地球人が巻き込まれているように見えます。
同じ宇宙刑事でもデカレンジャーのように堂々と地球署の看板を掲げていれば
地球のために戦う公的存在としての安心感はありますが、
ギャバンの場合は潜入捜査官なので地球人に正体を隠して戦っており、正義のためという自己正当化が難しい。
正体不明の変な宇宙人が宇宙犯罪組織と勝手に戦っているように見えてしまいます。
そうなると普通に戦っていると地球人から見てどうも迷惑な存在となってしまいます。

そこでギャバンは地球を守って戦いながら出来るだけ地球人に迷惑をかけないよう、
あえて魔空空間で戦うことを選んだのでした。
魔空空間で戦うと自分の戦いがその分苦しいものになると承知の上で
魔空空間でマクー怪人たちと戦うことで極力地球人の犠牲者を出さないようにしたのです。
その結果、ギャバンは「迷惑な宇宙人」という十字架は背負わずに済みましたが、
その代償に常に苦しい戦いを自らに課すことになったのです。

一方マーベラス達は魔空空間のような便利な設定は無かったため、
地球を守るために戦いながら、地球人から見て迷惑なよそ者として見られるという十字架を背負うことになった。
結局、正体不明のよそ者が戦う場合、何かリスクを負うことにはなるのです。
マーベラス達は地球に来る前もずっとそうしてよそ者として勝手にザンギャックと戦って
色々な星の人々をちょっと助けては迷惑がられたりもしてきたのであり、
ギャバンも様々な星で宇宙犯罪組織と戦いながら、
出来るだけ異星の人々に迷惑をかけないように気を遣ってきていました。

ギャバンがそうした面白くもない「よそ者としての戦い」を続けてきた理由は、
もちろんそれが宇宙刑事としての職務だからです。
しかしマーベラス達の場合、どうしてそんな戦いを続けてきたのか?

マーベラス達は「宇宙最大のお宝」を手に入れるために旅をしていると言いながら、
明らかにそれとは無関係にザンギャックに虐げられた人達を助けるためにザンギャックに逆らってきています。
そして、それが明らかによそ者の余計なおせっかいであり、
時には大勢の犠牲者を出す迷惑行為でもあることは分かっているので間違っても正義面などはしない。
実際、彼らはその関わった星の人達から見れば、所詮は変なよそ者であり、正義の味方でもなんでもないのです。
だからマーベラス達は正義の味方の論理で自分達がザンギャックと戦う理由を説明することが出来ない。
自分自身でもなんでザンギャックにいちいち突っかかるのかよく分からない。
だから「気に入らないからぶっ潰した」というような、
あくまで自分の身勝手な感情のままに行動したというふうに説明し、自分自身でもそうなのだと思っていました。

そんなマーベラス一味は、第三者が見てもなかなか理解しにくい。
本人たちが自分自身のことをあくまでお宝探し目的の海賊だと自称し、
ザンギャックと戦う理由は単に「気に入らないから」と言い、
自分達が地球人から見て迷惑なよそ者に過ぎないと認めてしまっている。
こうした彼らの態度をそのまま真正直に受け止めれば、なんだかとんでもない連中のようにも思えてしまいます。
少なくとも地球人の味方には見えないし、善人にも見えない。

しかし多大な被害を出したりして迷惑ではあるものの、
結果的に彼らはいつもザンギャックから地球を守ってしまっているので、
単にザンギャックとたまたま喧嘩しただけとも思えず、どうもよく分からない連中ということになる。

元デカマスターのドギーも、レンジャーキーを受け継いだ戦士としてのゴーカイジャーというものに対して
レジェンド戦士の1人としてどういう想いを抱いているのかは別として、
1人の宇宙刑事としてマーベラス一味という海賊を信用はして「大いなる力」も渡したりはしたものの、
当初はまだまだよく分からないところがあると思っていました。

そんな頃にギャバンはドギーに会ってマーベラス一味の話を聞いた。
ドギーはおそらくレジェンド戦隊の部外者であるギャバンには
「宇宙最大のお宝」や「大いなる力」に関する秘密の話はしなかったと思われますので、
ドギーのマーベラス一味に関する話は、あくまで宇宙海賊としてのマーベラス一味の話に限定されていたのでしょう。
ドギーから話を聞いたギャバンもまたドギーから聞いた話をそのまま受け取り、
マーベラス一味は基本的に「宇宙最大のお宝」という海賊の伝説のお宝を追い求める連中でありながら、
何故かザンギャックと戦って地球を守っている酔狂な連中という印象しか抱きませんでした。
その印象のままギャバンは魔空監獄に捕らわれ、
そこに自分を助けに来たマーベラス達の行動を見て、どうにもマーベラス達の真意が分からず戸惑ったのでした。

しかし、少なくともマーベラス一味のうち、マーベラスを除く5人は、
地球における戦いの中で、それぞれ自分がどうしてザンギャックと戦っているのか、
その真の理由を知るようになっていました。

彼らは当初はそれがよく分からず、単に「気に入らないから」という理由で自分を納得させていましたが、
戦いの中で自分の過去と向き合うことになり、過去に向き合うことで
自分のもともとの真の夢、夢の原点が何だったのか知るようになった。
その夢の原点こそが彼らがザンギャックと戦う理由だったのでした。

ジョーの夢の原点はザンギャックの過ちによる犠牲者をこれ以上増やさないために戦うということでした。
ルカの夢の原点はザンギャックによって親を失った子たちが安心して暮らせる宇宙を作ることでした。
ハカセの夢の原点はザンギャックに虐げられてきた弱者の自分でも己の意思を貫くことが出来るようになることでした。
アイムの夢の原点はザンギャックに抵抗する者の存在が宇宙の人々の希望の象徴となることでした。
鎧の夢の原点は地球と宇宙の人々を幸せにするためにザンギャックと戦う真のヒーローになることでした。

5人は戦いの中で悲しい過去に向き合って苦しみながら、
仲間達の存在が支えとなってこうした自分の夢の原点を知り、
それが自分がザンギャックと戦ってきた真の理由だったのだと悟ったのでした。

しかし、そうした彼らがどうしてマーベラスと共に旅をして、マーベラスと共に夢を掴もうと思ったのか、
どうしてマーベラスは彼らを仲間としたのか、
それについてはマーベラスの夢の原点が判明しなければハッキリとはしません。
その自らの夢の原点を確かめるためにマーベラスはギャバンに会いに魔空監獄にまで行ったのです。

だが、ギャバンを救い出して魔空監獄からも脱出し、魔空監獄もぶっ潰したというのに、
マーベラスは実はその肝心の「夢の原点」が何なのか、まだサッパリ分かっていませんでした。
分かったのはギャバンがあの10年前の貨物船事件の時に自分を助けてくれた
命の恩人であることは間違いないということだけでした。

魔空監獄の最上階で飛び降りてきたギャバンを抱きとめた時、
10年前の記憶が鮮やかに甦ってギャバンがあの時の男だと確信し、
まるで生き別れの父親に再会したような嬉しさを覚えて無邪気に喜んでしまったマーベラスでしたが、
そこにアシュラーダの邪魔が入り、
まずは魔空監獄から脱出し、魔空監獄をぶっ潰すという当初の目的を完遂することになりました。

それが終わり、こうして現実世界に戻ってきて少し冷静になってみると、
マーベラスはさっきは喜びのあまり思わずギャバンの肩を抱きしめてしまったりして、
ちょっと恥ずかしいことをしてしまったと思い、
照れ隠しにギャバンに背を向けて先頭に立ったまま、ギャバンの顔は見ずに少し首を後方に曲げて
ぶっきらぼうに「・・・大丈夫か?」と声をかけました。

それはあまりにも素っ気なかったので、ギャバンは一瞬それが自分に向けられた言葉だと分かりませんでしたが、
すぐにそれが自分を気遣うマーベラスの言葉だと気付き、
マーベラスの後ろに進み出て「・・・ああ!」と力強く応えました。

マーベラスはギャバンも自分のことを思い出してくれていると思っているので、
さっき自分が10年前の少年の時のように、
父親に甘えるように無邪気に喜んでいたことにギャバンが気付いているのではないかと思い、
子供っぽいと笑われるのではないかと思って照れてしまい、
ギャバンの方をまともに見ることが出来ず、わざとぶっきらぼうな態度で照れを隠しているのです。

それでも照れながらでもマーベラスがギャバンに話しかけようとしているのは、
あの10年前の時、ギャバンが自分に言ってくれた言葉の真意を確かめるためでした。
それがマーベラスの夢の原点だからです。

一方、5人の仲間たちもマーベラスが照れているのは態度で分かります。
そしてマーベラスの態度を見て、仲間たちはやはりギャバンこそがマーベラスの言っていた
10年前の命の恩人であり夢の原点の人だったのだと悟りました。
魔空監獄の最上階で何があったのかは知らないが、
マーベラスは最上階でギャバンが命の恩人だったと確信し、2人は再会を喜び合ったのだろうと、
仲間たちは思いました。

となると、ここからは10年ぶりに再会した2人の水入らずの会話ということになる。
マーベラスが照れるのも当然です。
そう考えた仲間たちは2人の会話の邪魔をしてはいけないと思い、
気を利かせてさりげなく2人から離れて、遠巻きに見守る態勢に入ります。

しかしギャバンはマーベラスが10年前に出会った少年だとは気付いていない。
いや、実際はギャバンはさっき抱き合った時、マーベラスがあの時の少年なのではないかと直感したのだが、
それは何の根拠も無く、自分に都合のいい妄想に過ぎないと思って
ギャバンはそうした自分の直感を否定していました。

長らく困難な夢に挑戦する勇気を見失いザンギャックに妥協してきたギャバン自身の
悪しき分身といえるブートレグから一本取ったマーベラスが、
かつてギャバン自身が夢に挑戦する勇気を持つように諭したあの少年の成長した姿であり、
マーベラスがギャバンの夢を引き継いでくれていたのだとすれば、
ギャバンは何か自分が救われるように思えました。

そういう自分の心理が分かっているだけに、
ギャバンはマーベラスがあの時の少年かもしれないという自分の直感を、
自分が現実を逃避して甘美な妄想に逃げ込もうとしているだけだと感じたのでした。
ギャバンはそんな非現実的な甘い妄想に一瞬でも浸った自分が恥ずかしくなり、
マーベラスの顔を見るとまた変な妄想が湧いてくるのではないかと警戒し、
あえてマーベラスに背を向けて、背中合わせに立ち、気を取り直すように真面目くさった口調で
「何故わざわざ俺を助けに来た?」とマーベラスに問いかけました。

マーベラスは10年前に出会った少年などではなく、あくまでお宝探しをしている宇宙海賊だと
自分に言い聞かせたギャバンでしたが、
だがそうなると、どうしてお宝目当ての海賊がわざわざ自分を助けるために
危険な魔空監獄に乗り込んできたのか、どうしてそんな何の得にもならないことをしたのか、
よく分からなくなってきます。
しかし何か理由があるはずだと思ったギャバンは、まずはその疑問について問いかけることにしたのでした。

そのギャバンの宇宙刑事としての事務的な口調にマーベラスは少し拍子抜けしました。
マーベラスはてっきりギャバンも10年前の自分との出会いを思い出してくれたものだと思っていました。
だから「何故助けに来た?」などという質問が出てくることは予想していませんでした。
ギャバンがかつて命を助けた少年がギャバンの危機を救いに来るのはむしろ当然のことです。
そりゃ命の恩人だからといって必ず助けに行くとは限らないが、
現にこうして昔ギャバンに助けられた少年が成長して助けに来ているのですから、
それに向かって助けに来た理由をいちいち質問するというのも野暮な話です。

どうやらギャバンは本気でどうして自分が助けに来たのか分かっていないようだと気付いたマーベラスは、
ギャバンは10年前の事件のことを思い出したわけではないのだと悟りました。
いや、そもそも10年前の事件のことを覚えていないのだ。
そう思うとマーベラスは1人で一方的に盛り上がっていた自分が可笑しくなって、
ギャバンに背を向けたままフッと鼻で笑いました。

考えてみればそんなことは当たり前のことでした。
伝説の宇宙刑事ともなれば、あんな程度の事件は腐るほど多く経験してきているであろうし、
命を助けた子供だって星の数ほどいるでしょう。
自分はその中のほんの1人に過ぎず、あの時一度会ったきりであるにすぎない。
いちいちギャバンが覚えているわけがない。

さっきギャバンが「お前は・・・」と何か意味のありそうなことを言ったのを聞いて、
てっきりギャバンも自分のことを思い出してくれたと思い込んでしまったが、
あれは自分があの事件の全てを思い出した昂揚感によって、
ギャバンも同じに違いないと勝手に決めつけてしまったに過ぎなかったのだとマーベラスは思いました。

しかし、そうなると困ったことになります。
ギャバンに質問された「何故わざわざ助けに来たのか」に対するマーベラスの本当の回答は、
ギャバンがあの時自分に掴むように言った「素晴らしい未来」が
ギャバンがどういう意図で言った内容のものであるのか確認するために来たということなのですが、
ギャバンがあの事件の詳細を覚えていないとなると、その確認が出来ない。

マーベラスはギャバンがあの事件のことを覚えていると思っていたので、
今まさにギャバンにあの時自分に言った「素晴らしい未来」とは
何を意図したものだったのか質問しようとしていました。
しかしギャバンがあの事件の詳細を覚えていないのなら、その質問をしても仕方ない。
それどころか、ギャバンの「何故助けたのか?」という質問に
「素晴らしい未来」の意味を確認するためであるとか、夢の原点を確かめるためであるとか回答しても
ギャバンはその意味を理解してくれないだろう。

困ったマーベラスはギャバンと背中合わせのまま、仕方なく「礼を言うためだ・・・!」と答えました。
とにかくいきなり事件の詳細の話をしてもおそらくギャバンは戸惑うだけだろうと思ったマーベラスは、
まずは自分とギャバンが昔出会ったことがあるという事実の説明から始めるしかないと思い、
自分が10年前にギャバンに命を助けられた者だと言おうと思ったのです。

そのマーベラスの言葉を聞いてギャバンは、
マーベラスの口ぶりからして、やはり自分とマーベラスはどうも過去に接点があったようだとは感じましたが、
最初から10年前の事件をあえて除外しているギャバンには、
マーベラスに礼を言われるような過去の接点は全く心当たりは無い。
また、今回の一件でマーベラスが自分に礼を言う筋合いがあるとも思えない。
自分は単にマーベラス一味に迷惑をかけただけだからです。
そう考えて戸惑ったギャバンは、少し考え込んでから「・・・礼?」と不思議そうに問い返しました。

マーベラスはギャバンが10年前の事件のことを忘れていると思いつつ、
それでも自分が礼を言うために来たのだと過去の接点をほのめかしたら、
あの事件の時の出会いのことを思い出してくれるのではないかと少しだけ期待していました。
しかしこれではマーベラスもギャバンはどうやらすっかり自分との出会いを忘れてしまっているようだと
確信せざるをえない。

マーベラスは首を少し後ろに向けて、ちらりとギャバンの方を見ると、
「・・・やっぱ覚えちゃいねぇか・・・!」と苦笑いしつつ、ギャバンに背を向けたまま横に数歩進み出て、
「10年も前の通りすがりのガキのことなんか・・・」と自嘲気味に呟きます。

マーベラスはギャバンが10年前の自分との出会いのことをすっかり忘れていると思い、
この言葉を聞いてもギャバンは自分のことを思い出しはしないだろうと思っていますが、
ギャバンの方はマーベラスに背を向けたまま、
マーベラスの口から「10年前の通りすがりのガキ」という言葉が出たことに目を丸くして驚き、
少しマーベラスの方に顔を向けつつ、戸惑いの視線を泳がせます。

10年前にギャバンがマーベラスに出会っていたとすると、
その頃のマーベラスは10歳よりやや上ぐらいと思われ、
10年前にギャバンが通りすがりに出会ったそれぐらいの年頃の少年というと、そんなに多くはない。
その中にはさっきからギャバンが気にしている例の貨物船事件の時に出会った少年も含まれています。
その中で現在の消息が不明で、しかもギャバンが礼を言われる筋合いのある少年といえば、
あの貨物船で出会った少年ぐらいしかギャバンは心当たりはありませんでした。

となると、あるいは妄想ではなく本当にマーベラスがあの時の少年だったのかもしれない。
まさか、そんな偶然があるものだろうかと、ギャバンは戸惑いました。
そもそもどうしてあの時の少年が宇宙海賊になったのか、その経緯もよく分からない。

それにマーベラスがあの時の少年だとするなら、ギャバンは単に火災からマーベラス少年を救い出しただけのことです。
しかも大したことはやっていない。飛び降りさせて受け止めただけです。
そんな程度の些細な恩義に対して、宇宙海賊になったマーベラスが
命懸けで戦って報いようとするというのも、なんだか不可解でした。

だいたい、マーベラスは自分のことを10年前の命の恩人だと覚えていたのなら、
どうして最初に夜の公園で顔を合わせた時にそのように言わなかったのか、
そういう点もギャバンには不可解でした。

一方マーベラスはギャバンが既に10年前の事件のことを思い出しているとは知らないので、
どこから説明したらいいものかよく分からず、やはりギャバンに自力で思い出してもらおうと思い、
何か良いヒントは無いものかと一瞬考え、思いついたのが「よろしく勇気」という言葉でした。

ギャバンは体育館でブートレグと戦う前に「よろしく勇気」という言葉を口にしていました。
そして、その「よろしく勇気」という言葉は10年前の事件の際に
ギャバンからマーベラスに向けて投げかけられた言葉でもあります。
10年前の事件の時の詳細をギャバンが忘れてしまっていたとしても、
この「よろしく勇気」という言葉だけは今でもギャバンは使い続けている。
そして、この「よろしく勇気」という言葉を10年前にもギャバンが
行きずりの少年に向けて投げかけたことを自分は知っている。

そのことをアピールすれば、それをヒントにしてギャバンが
10年前の事件のことを思い出してくれるのではないかと考えたマーベラスは軽くニヤリと笑うと、
クルリとギャバンの方に振り向いて「よろしく勇気さんよぉ!」と呼びかけたのでした。

このマーベラスの口からいきなり飛び出した「よろしく勇気」という言葉を聞いて、ギャバンは驚き、
そしてマーベラスがあの10年前の事件の時に出会った少年の成長した姿であることを確信できたのでした。

マーベラスが礼を言うためにギャバンを助けに来たと言い、
10年前にギャバンと出会ったことがあると言った時、
ギャバンは消去法でマーベラスの正体があの貨物船事件の時の少年だということはほぼ絞り込めていました。
だが、あの時の少年がいきなり宇宙海賊になって自分の前に現れ、10年も前の些細な恩義を返そうとしており、
他にも宇宙海賊らしからぬ奇妙な行動ばかりとっているのがどうしてなのか、
それら突拍子も無い事柄の意味がよく理解出来ず、
どうにもその事実を納得して受け入れることが出来なかったのです。

しかし「よろしく勇気」という自身のモットーともいえる言葉をマーベラスが口にしたのを聞いて、
ギャバンは納得がいったのでした。
単にその言葉をあの時ギャバンが少年に伝えたから、
その言葉を口にしたマーベラスがあの少年の成長した姿だと証明されたという意味ではない。

マーベラスはギャバンがすっかり昔のことを忘れたと思っているが、
そこまで言われてようやくマーベラスの正体に気付くほどギャバンは鈍くはない。
その言葉を言われる前にギャバンはマーベラスがあの少年であることはほぼ間違いないと思っていました。
だが、あまりにもマーベラスの行動に謎が多く、
マーベラスの正体があの少年だとすると、ますます謎が深まるばかりだと思って戸惑っていたに過ぎない。

しかし、この「よろしく勇気」という言葉を聞いて、ギャバンはそれらの謎が全て解けて、
マーベラスの行動が全て合点がいったので、
マーベラスがあの時の少年であるという事実をスッキリした気持ちで受け入れることが出来たのでした。
そして同時にギャバンはマーベラスという人間の真実を知ったのでした。
「・・・やっぱり君は・・・あの時の・・・!」と言ってギャバンはマーベラスの顔を見つめます。
ギャバンが知ったマーベラスの真実とは、
マーベラスがどうして宇宙海賊になったのかという理由についての真実でした。

10年前、少年だったマーベラスは自分の命を助けてくれた男が宇宙海賊だと思い込み、
その男がマーベラスに目指すように諭した「素晴らしい未来」を目指すために
マーベラスはその男と同じ宇宙海賊になろうと思った。
それがマーベラスが覚えている「自分が宇宙海賊になった理由」でした。
しかしその男の正体であるギャバンは自分がマーベラスによって宇宙海賊に間違われていたことなどは知りませんから、
もっとシンプルに考えたのでした。

ギャバンは確かにあの時、命を救った少年に「よろしく勇気」という言葉を伝えました。
そしてその少年が成長してマーベラスとなり、
そのマーベラスは「よろしく勇気」という言葉をずっと覚えていたのです。

おそらくマーベラスは自分の顔は忘れていたのだろうとギャバンは思いました。
だから最初に夜の公園で会った時には自分と10年前に出会っていたことに気付かなかったのだ。
ところがその翌朝の体育館でのアシュラーダ一派との戦いの時に
自分が「よろしく勇気」という言葉を口にしたのを聞いて、
マーベラスは自分が10年前に出会った人だということに気付いたのだろう。
これでマーベラスが最初に出会った時には何も言わずに
今になって10年前の一件のことを告白してきた謎はまず解けます。

そう考えてギャバンは、ここに重大な意味があることに気付きました。
つまりマーベラスは10年前に出会った自分の顔は忘れていたクセに、
10年前に聞いた「よろしく勇気」という言葉だけはしっかり覚えていたということになるのです。
顔も忘れる程度の繋がりの薄い男の言った言葉だけは覚えていたということは、
それだけその言葉がマーベラスにとって大きな意味のある言葉だったということでしょう。

ただ「よろしく勇気」という言葉そのものには大した意味など無い。
よって、この「よろしく勇気」という言葉だけをマーベラスがずっと10年間も大事にしてきたというのは不自然です。
マーベラスにとって大事であったのは「よろしく勇気」という言葉そのものではなく、
そこに込められた意味の方であり、その意味を象徴するフレーズが「よろしく勇気」なのだと思われます。

その「よろしく勇気」に込められた意味とは何なのかというと、それはギャバンは誰よりもよく知っていました。
ギャバンは10年前にマーベラスと思しき少年に会った時、その意味をしっかり少年に説明しています。
すなわち「素晴らしい未来を掴み取ろうという意思を持てば、
どんな辛く悲しい人生でも前に進む勇気が湧いてくる」ということです。
こうした意味を説明した上での「あばよ涙、よろしく勇気」という言葉をあの時ギャバンは少年に贈りました。

だからマーベラスが「よろしく勇気」という言葉を大事にしてきたということは、
言い換えれば「素晴らしい未来を掴み取ろうとする意思の生み出す勇気」を
彼がこの10年間、生きる糧にしてきたということを意味します。

ならば、マーベラスがさっきギャバンが自分をわざわざ助けに来た理由を問うた時、「礼を言うためだ」と答えたのは、
単に火災から助けてもらったことに対する礼という意味で言ったのではないはずです。
マーベラスがあの10年前に出会った男、すなわちギャバンに感謝しているのは、
「よろしく勇気」に象徴される「生きる指針」を与えてくれたことに対してなのです。

ギャバンはあの10年前の事件の時、生きる希望を無くしていた少年の姿を思い起こし、
おそらく決して大げさではなく、あの時の自分の言葉が無ければ、
マーベラスはあの後生きていくことは出来なかったのだろうと思いました。
つまりギャバンの示した生きる指針があったからこそマーベラスの人生は開けて、
ここまで生きてくることが出来たのです。

そう考えれば、マーベラスがどうしてわざわざ命懸けで自分を助けに来たのか、
ギャバンにはようやくその謎が解けました。
単に行きずりに命を救われた相手というような軽いものではなく、
マーベラスにとってその10年前に出会った男は人生の原点のような重い存在だったのです。

だから「よろしく勇気」というフレーズを聞いたことによって
10年前のその男がギャバンだと知ったマーベラスは、
困難と危険を乗り越えて魔空空間にまで乗り込んできて、
命懸けの戦いの果てにギャバンを助け出したのです。
そういうことだったのだとギャバンはようやく納得しました。

しかし、マーベラスが10年間「よろしく勇気」に象徴される考え方を人生の指針と大事にしてきたとするなら、
その結果、どうしてマーベラスがアウトローの宇宙海賊になっているのか、
一見するとそれは矛盾しているようにも思えます。

「よろしく勇気」という言葉に象徴される人生の指針とは
「素晴らしい未来を掴み取る意思が生み出す勇気で前に進む」ということであり、
マーベラスがその指針に従って勇気をもって人生を切り開いてきたとするなら、
何らかの「素晴らしい未来」を目指してきたはずです。
現実に10年経って成長したマーベラスがお宝を探す宇宙海賊になっているということは、
10年前に少年マーベラスが思い描いて掴み取ろうとした「素晴らしい未来」は
「宇宙海賊になって伝説の宝を手に入れること」であったように思えます。

いや実際、マーベラス自身はまさにそういう認識なのです。
10年前の事件以降のマーベラスにとっての「素晴らしい未来」とは
「宇宙海賊になって伝説のお宝を手に入れること」だったのです。

だが、「伝説のお宝」は単に「海賊ならお宝」という安直な発想の産物に過ぎず、
その「海賊になる」という未来も、
自分にその人生の指針を教えてくれた人が海賊だと思い込んだマーベラスの勘違いの産物に過ぎなかった。
だから、その10年前の男がギャバンである可能性が高いと気付いた時、
すなわち10年前に自分に人生の指針を与えてくれた人が海賊ではなかった可能性が高いと知った時、
マーベラスは自分の人生が根底から崩壊するような気分になり、大きく動揺したのです。
それでもマーベラスがその動揺を鎮めて、比較的落ち着いた気持ちで魔空空間に行くことが出来たのは
仲間たちのお蔭でした。

仲間達は自分が共に掴みたいと思ったマーベラスの夢が単なる勘違いの産物だとは思えなかった。
何故なら彼らはマーベラスと共に海賊となってお宝を掴み取ろうとして旅をして戦い続けてきた結果、
それぞれが自分の夢の原点、すなわち本当に目指していた「素晴らしい未来」のイメージを
掴み取ることが出来たからです。
だからきっとマーベラスの「海賊になってお宝を掴み取る」という「素晴らしい未来」も
勘違いの産物などではなく、本物の「素晴らしい未来」に繋がっているはずだと思えました。

そうした仲間達の信頼を受けてマーベラスは、
きっと夢の原点であるギャバンに会えば自分の現在掴もうとしている「素晴らしい未来」が
本物の「素晴らしい未来」であることが確認されるはずだと信じて、
強い気持ちで魔空空間に行くことが出来たのです。

では、そのマーベラスに「素晴らしい未来」を掴み取るように説いた当の本人であるギャバンは、
10年前に出会った少年が成長したマーベラスが宇宙海賊になってお宝を掴み取る道を選んだことを知って
どう思ったのかというと、それこそがまさに自分があの時の少年に向かって示した
「素晴らしい未来」そのものだったのだと認めたのでした。
いや、正確にはギャバンもあれから10年経って今回の一件を経験した上で、
ようやくそのことに気付くことが出来たと言うべきでしょう。

ギャバンはマーベラスがあの10年前に出会った少年だったことを確信してマーベラスの顔を見つめつつ、
10年前の貨物船での出来事を改めて鮮明に思い返しました。
そして、飛び降りてきた少年を受け止めた時、自分がいつになく満ち足りた気持ちであったことを思い出したのでした。
どうしてあの時の自分が満ち足りていたのかというと、それはあの時の自分が自分の本当の気持ちに従って行動し、
その想いを見知らぬ少年に受け入れてもらえたことが心の底から嬉しかったからだということを
ギャバンは思い出したのです。

ギャバンは若い頃にマクーを倒して父を失い、
その後は父の遺志を継いで宇宙刑事として宇宙の人々の平和な暮らしを守るために、
マクーのように宇宙のルールを破って悪事を働く宇宙犯罪者たちと戦ってきました。
そうして何時の間にかギャバンは、「宇宙のルールを守ること」が
「宇宙の平和を守ること」と同義だと思い込むようになってしまい、
それこそが父の志を継ぐ道だと信じるようになってしまっていました。

確かに宇宙犯罪者たちを相手に戦う分にはその考え方は正しい。
しかしザンギャックのような合法的な宇宙帝国の内部で法に基づいて行われる
非人道的な行為に対しては宇宙警察のルールは不介入が原則であり、
「宇宙のルールを守ること」は「ザンギャックの行為を野放しにすること」と同義でした。

しかし一介の刑事であるギャバンは自らルールを破ることは出来ず、
ザンギャックの非人道的行為に対しては思考停止にならざるを得なかった。
それでついつい職務にかまけてザンギャックによって苦しめられている人達のことは
見て見ぬフリをするようになってしまった。

結局のところ、自分には勇気が無かったのだとギャバンは思いました。
しかし、どうしてそこで勇気が湧いてこなかったのか?
父ボイサーからギャバンが受け継いだ教えによれば、
「素晴らしい未来」を掴もうとする限り、勇気は湧いてくるはずではなかったのか?

いや、まさにその通りだからこそ勇気が湧いてこなかったのです。
ギャバン自身、宇宙警察のルールに縛られて宇宙の不幸な人々の存在を見捨てている
自分の進んでいる先の未来は決して父の目指していたような「素晴らしい未来」などではないことが
心の奥底では分かっていたのです。
だから無意識に勇気が湧いてこない状態であったのです。

そんなギャバンが誰か他の人間に向かって
本気で「素晴らしい未来」や「勇気」について説くことなど出来るわけがない。
そういうわけでもともとは子供好きだったギャバンは、
いつしか子供たちに向かって勇気の尊さを諭すようなこともなくなっていきました。

あるいは自分に息子でもいればそんな人生ではなかったかもしれない。
自分の息子には恥ずかしい父親の姿は見せたくないという意地が生じてくるだろう。
もし自分に息子がいれば、父親の意地で、息子に真の勇気の価値を伝えるために
自分は父のように「素晴らしい未来」を掴むために戦う道に戻っていき、真の勇気も取り戻せたかもしれない。

ふとそんなことを思ったこともあったギャバンでしたが、
現実問題としてギャバンに息子などおらず、
ギャバンは自分の疾しさから目を背けるようにますます宇宙刑事としての職務に没頭していき、
宇宙犯罪者たちを退治して宇宙警察の法を守護していく実績を積んでいくことで、
人間の心を捨てた者だけが持つことの出来る仮初の満足感を得ていったのでした。

そんな時、10年前、任務地への移動途中のギャバンはあの貨物船事件に遭遇したのです。
普段はザンギャックの非道行為を見ないフリをしていた自分が
どうしてあの時はわざわざ事件の渦中に飛び込んでいったのか、ギャバンにはよく分かりませんでした。
あそこまで露骨な悪事を目の前に見せつけられた経験が無かったから、ついカッとなってしまったのかもしれない。
とにかくギャバンは宇宙警察のルールをつい破ってしまい、
ザンギャックが襲撃していた貨物船から乗員を助け出すという本来はやってはいけない介入をしてしまいました。

しかし、その時ギャバンは宇宙刑事として間違ったことをしているはずなのに妙に清々しい気分でありました。
ギャバンは心の底で、これこそが真の勇気を生み出す素晴らしい未来へ続く道なのだと気付いていたのです。
だからギャバンは炎上する貨物室で出会った少年を勇気づける必要に迫られた時、
あの時だけは素直に父から教えられた「素晴らしい未来を掴む意思が勇気を生み出す」という人生訓を
見知らぬ少年に向けて口にすることが出来たのでした。

だが、ずっと子供たちに父からの教えを伝えることを怠っていたギャバンは、
そんな自分の言葉が少年の心に届くのかどうか、
表面上は自信満々に説いてはいたものの、実は内心不安でした。
ところが少年は自分の言葉を受け入れてくれて、飛び降りてきてくれた。
あの時、ギャバンが少年を救ったように見えて、
実はギャバンの方が少年に自分の考え方の正しさを認めてもらって救われた気持ちだったのです。

10年前といえば、現実の世界では「素晴らしい未来」など絵空事になりつつありました。
ザンギャックによる宇宙への勢力拡大は、その実態は侵略そのものでしたが、あくまで合法的に行われ、
宇宙警察はそれに対して介入する根拠も無く全くなす術もなく、
ギャバンもそうした現実から逃れるようにひたすら犯罪者の検挙に明け暮れており、
「素晴らしい未来を掴むための勇気」など恥ずかしくて口に出せる状況ではなかった。
ギャバンでさえそんな調子ですから、ギャバンの出会う全ての人々は
そんな「素晴らしい未来」など絵空事だと思って冷笑に付すような状態でした。

そんな時に予想外に青臭い行動をとってしまったギャバンが行きずりの浮浪児に、
思わずその青臭い「素晴らしい未来」論をぶってしまった。
見るからに「素晴らしい未来」などには縁の遠そうな浮浪児は、
おそらくザンギャックによって荒れ果てた宇宙で人生においてロクなことなど無かったのであろうと思われ、
その少年をそんな境遇に追い込んだ責任の一端は自分にもあるとギャバンは思いました。
だから自分の説いた「素晴らしい未来」論など、
少年から見れば非現実的で無責任な綺麗事にしか聞こえないかもしれない。
少年の心を動かす力は無いのかもしれないと、ギャバンは焦りました。

しかし少年は素直にギャバンの言葉を受け入れてくれて飛び降りてきてくれた。
その少年を受け止めた時、ギャバンはこの宇宙に自分の心の叫びを受け入れてくれる者がいたのだと感動し、
救われた気持ちになりました。
そしてまた、その自分の説いた教えは自分が父から受け継いだものであり、
父の教えを初めて年端もいかない子供に伝えることが出来たギャバンは、
その少年が実の息子のようにかけがえのない宝のように思えて、
思わず実の息子を愛おしむように少年のことを抱きしめて頭を優しく撫でていたのでした。

その時ギャバンがそこまで素直な気持ちになることが出来たのは、
その貨物船事件に対処した時のギャバンが自分の本心に忠実な行動をとっていたからです。
それは一言で言えば「ルールなんてクソくらえ」という心境でした。
宇宙警察のルールや、宇宙警察とザンギャックの間で妥協の産物として出来上がった宇宙のルールなどは
ギャバンのような宇宙刑事は当然守らなければいけないものであり、
実際ルールを守ることによって秩序が保たれるという側面は確かにある。

だが、現実には真面目にルールを守れば守るほど宇宙の多くの人々は不幸になっていく。
ルールが根本的に間違っているのです。
ルールは人々を幸福にするためのものであるべきなのに、実際にはそのようになっていない。
ザンギャック帝国を守るためのルールに堕落してしまっている。
こんな宇宙の現実の中で自分が幸せになる、他の人々を幸せにする、
つまり「素晴らしい未来」を作っていくためにはルールを破るしか道は無いのです。

本当の「素晴らしい未来」や本当の「勇気」というものは宇宙のルールを超越したところに有るのであり、
そこに辿り着いて掴み取るためにはルールを蹴散らして、
この世界で一見誰からも無難に受け入れられる正しい言説を乗り越えていかねばならない。
あの事件に介入していった時、ギャバンはそういう心境になっていたのであり、
あの少年に「素晴らしい未来」や「勇気」について説いた時も
そうした心境がギャバンを突き動かしてその言葉を吐かせたといえる。

だがギャバンは宇宙刑事である自分にそれを普段から実践する覚悟が無いこともよく分かっていましたから、
そんな覚悟の無い自分の言葉が少年に届くかどうか自信が無かった。
ところが少年が自分の言葉を受け入れてくれたので、
まるで自分の覚悟が息子によって認めてもらえたような気分になって嬉しくなったのでした。

だが、実際はその少年はギャバンの本当の息子ではなく、
そしてギャバンは宇宙刑事であり、任務の途中でした。
いくら腐ったルールだろうが、そのルールに則ってギャバンが戦ってこそ守れる命があるのもまた現実であり、
そのギャバンの到着を待ち望んでいる人達がその時も存在していたのです。
だからギャバンはそのままセンチメンタルな感情に流されて
宇宙警察のルールを無視して生きる道を選んで宇宙刑事の職を辞するわけにはいかなかった。
面倒事に巻き込まれて任務地への到着を遅らせるわけにもいかなかった。
だからギャバンは自分が宇宙刑事だと名乗ることもなく、
そのまま炎上する貨物船から脱出していく乗員や少年たちから隠れるようにして姿を消したのでした。

腐ったルールに従って汚物にまみれても、
自分を頼ってくる者がいる限りは愚直に任務をこなして自分の出来る範囲の人々を守り続ける。
それが自分の選んだ生きる道なのであり、
その道に自分はもはや後戻りできない責任を負ってしまっている。
それがギャバンの見出した宇宙刑事としての覚悟でした。

その道の先には「素晴らしい未来」など待ってはいないことは心の底では気付いていましたが、
それでもギャバンはそれなりに誇りをもって宇宙刑事の職務を全うしていくという日常に戻っていきました。
唯一ギャバンの心に引っ掛かっていたのは、あの少年に言った言葉が
結果的に有言不実行となってしまったことですが、
よく考えたらあの時自分は勝手に熱くなって語っていたが、
少年の方は単に「生きていればいい事もあるから飛び降りる勇気を奮い起こそう」という程度の意味に解釈して
あの言葉を受け入れただけのような気もしてきました。

あれぐらいの年齢の少年ならそんな程度であろう。
だから少年はそんな深い意味であの言葉を理解しているわけではないのだから、気にする必要も無い。
きっとあの少年は自分のことなど忘れて宇宙の何処かで呑気に暮らしているのだろうと
ギャバンは思うようになっていきました。

そうして10年が経ち、ギャバンはあの事件のことも少年のこともほとんど思い出すこともなくなり、
宇宙はすっかりザンギャックに蹂躙されてギャバンにとっては不愉快ではあったものの、
それでも宇宙刑事としてのギャバンは順調そのものであり、
伝説の宇宙刑事として皆に一目置かれ、ギャバン自身も自分なりによく頑張ってきたという感慨も抱きながら、
輝かしい栄光と共に遠からず引退の花道を飾るところにこぎつけていました。

そんな時、ギャバンは旧知の地球署署長のドギーから、
お宝目当てでありながら地球を守ってザンギャックと戦ったりもする
変わり者の宇宙海賊マーベラス一味に関する妙な世間話を聞きました。
ギャバンはそのマーベラスなんとかいう宇宙海賊のことは知らなかったが、
なんでもドギーの話によれば、そのマーベラス一味をザンギャックが捏造した罪状で逮捕するようにと
宇宙警察本部から間違った命令が来たので再調査して間違いを指摘しておいたというのです。

その話を不審に思ったギャバンは独自に宇宙警察本部内のその一件に関する出来事を調べていき、
遂にザンギャックによる宇宙警察乗っ取りの大陰謀を突き止めたのでした。
その事実を突き止めた時、ギャバンはザンギャックに対して協調と妥協を繰り返してきた宇宙警察に対して
ザンギャックが決して敵意と悪意を緩めることはなかったのだと痛感し、苦々しい気持ちになりました。

宇宙警察はザンギャックとの間で妥協したルールを懸命に守ることで宇宙の平和を維持しようとしてきた。
だが、そんな努力は虚しいものでした。
ザンギャックは結局、そのルールを盾にして宇宙警察の動きを封じておいて、
裏からはどんどん悪意をもって浸食してくる。
結局、ザンギャックに協調してルールを守っていく道の先には「素晴らしい未来」などは無かったのだと
ギャバンは思わざるを得ませんでした。

こうなったらもう戦うしかない。
戦ってザンギャックの影響を脱して本当の「素晴らしい未来」を勝ち取るしかない。
そう決意したギャバンは宇宙警察の組織に対してたった1人で戦いを挑み、
マーベラス一味をエサに使って偽総裁に化けたアシュラーダを遂に罠にかけて追い詰めるところまでいったのでした。

ところがアシュラーダはギャバンと対等の力を持つブートレグを投入してきて、
ギャバンは今こそ「素晴らしい未来」を掴みとるために湧き上がる勇気という、
人間の心だけが持つパワーでブートレグを倒そうとして
「よろしく勇気だ」と、まさにその人間の心を象徴するフレーズで自らを鼓舞してブートレグに挑みかかりましたが、
これまでずっとザンギャックとの戦いを回避し続けてきたギャバンには覚悟も足りず勇気も湧いてこなかった。

その結果ブートレグに敗れて魔空監獄の最上階に捕らわれたギャバンはアシュラーダの目的がマクーの復活と知り、
ザンギャックとマクーに手玉に取られ続けてきた宇宙警察と自分の完全なる敗北を悟り、
やはり自分の選んだ道の終着点には「素晴らしい未来」は無かったのだと痛感したのでした。

ところが、そこにマーベラス一味が乗り込んできて、
最上階に1人だけ辿り着いたマーベラスは圧倒的な実力差のハンデをひっくり返して、
ブートレグを出し抜いてギャバンを救出することに成功し、
更には脱出した後、魔空監獄をぶっ潰したのでした。

そのマーベラスの示した力は、まさに人間の心だけが持つ不可能を可能にする勇気のパワーであり、
それは「素晴らしい未来」を掴み取るために湧き上がってくる勇気のもたらす力として、
ギャバンがブートレグを凌駕するために欲したが得られなかったパワーそのものであるように思えました。
つまりマーベラスはブートレグもギャバンも超えた勇気の力を発揮したのであり、
マーベラスがそのような力をどうやって得たのか、ギャバンは不思議に思い、
マーベラスという男はいったい何者なのだろうかと訝しく思いました。

すると、マーベラスは魔空空間から現実世界に戻ってきた後、ギャバンに向かって、
自分は10年前にギャバンに出会ったことがあり、
その時の礼を言うために魔空空間にギャバンを助けに行ったのだと告白し、
更には「よろしく勇気」という、あの貨物船事件の少年しか知り得ない言葉を口にしたのです。

状況的に、おそらく10年前に出会った相手の顔を忘れていたマーベラスが
「よろしく勇気」というギャバンの口にしたフレーズを聞いたことによって
10年前の恩人がギャバンだと思い出したようであり、
それはそれだけ「よろしく勇気」という言葉がマーベラスにとって重要な人生の指針であったという意味であり、
つまり「素晴らしい未来を掴み取る意思が生み出す勇気」がマーベラスの生きる糧であったのであり、
その考え方を教えてくれたギャバンに対する感謝の念がマーベラスを動かして、
危険な魔空空間へ乗り込んでギャバンを救出するという行動に踏み切らせる一因となったのだろう。

そうした経緯がだいたい呑みこめたギャバンは、
つまり、あの10年前の貨物船事件の時に出会ったあの少年が
宇宙海賊マーベラスとなって自分と再会することになったのだという事実に直面したのでした。

そして現在のギャバンはその事実がすんなりと腑に落ちます。
何故なら今回の一件を通して、ザンギャックと協調してルールを守っていく道が
どれほど愚かで不幸な結果しかもたらさないのか、嫌というほど思い知ったからです。
それは言い換えれば、今となっては一瞬の気の迷いであったかのような印象の
あの貨物船事件の時の自分こそが本当はマトモで、唯一「素晴らしい未来」に繋がっていたのだと、
改めて実感したということでもあります。

あの時の「ルールなんてクソくらえ」という自分の本気の想いは、
本気であり、それが真理であったゆえに、それこそが「素晴らしい未来」に繋がる想いとして、
あの少年にもちゃんと伝わっていたのだとギャバンはマーベラスを見て実感しました。

あの時ギャバンは少年に「ルールなんてクソくらえ」などという言葉は言っていませんが、
そもそもザンギャックに逆らうということがルールに逆らうということであり、
あの時のギャバンの反ザンギャック的行動はそれ自体が少年から見てインパクトのあるものであったはずです。
その男が言った「素晴らしい未来」とは何なのか、「勇気」とは何なのか、
少年が考える際に、そこに「ザンギャックの押し付けるルールへの抵抗」という意味合いが含まれるのは
当然の流れであったと思われます。

いや、そもそもあの時の少年がギャバンに言われたことに従って、
「素晴らしい未来」というものを掴み取る道を真剣に模索した場合、
その答えは自ずとルールに対する抵抗の方向に向かっていくはずなのです。

何故なら、仮にあの少年が何か簡単な個人的な楽しみを見つけたとしても、
それは「素晴らしい未来」にはならないからです。
そんな個人的な楽しみなどザンギャックは、いやザンギャックの作ったこの宇宙のルールは、
あっという間に踏み躙ってしまう。

ギャバンのような宇宙警察のエリートのような地位にある者であれば、
自分なりの世界を持ったままザンギャックと妥協して上手くやっていくことも出来ます。
しかし、そんな卑屈な生き方が本当に「素晴らしい未来」といえるのか?
卑屈でも素晴らしいと言い張るのも個人の自由ですが、
少なくともギャバン自身はそうしたザンギャックとの協調の結末が
決して「素晴らしい未来」にならなかったことを身をもって知りました。

ましてや、あの時の浮浪児の少年のような何の地位も財産も無い弱い者達は
ザンギャック相手に協調や妥協をする資格さえ認められません。
服従するか蹂躙されるかの二者択一しかない状況です。
そういう浮浪児のような少年がギャバンの言葉に従って「素晴らしい未来」を掴み取ろうとした場合、
その道は少年を不幸にしているザンギャックの作ったルールへの抵抗を伴わないわけにはいかないのです。

エリート刑事という地位ゆえに余裕のあったギャバンは、
こうして今回とことんドン底に突き落とされるまでその真理を完全に受け入れることは出来なかったのだが、
最初から社会の底辺で不幸の極みにあった浮浪児の少年は、
「素晴らしい未来」を掴み取るためにはザンギャックの作ったルールを拒否することが必須であるという判断に
即座に迷わず到達したのです。

そう、ギャバンの教えに従って「素晴らしい未来」を掴み取ろうと決意したあの浮浪児の少年が
ザンギャックの作った宇宙のルールを破るアウトロー、宇宙海賊のマーベラスになったのは
ごく当然の成り行きであったのです。

そして、それはギャバンの教えをマーベラス少年が意図的に捻じ曲げた結果などではなく、
あの事件当時のギャバンは確かに「ルールなどクソくらえ」という精神で行動しており、
その精神が忠実にマーベラスに受け継がれていると見るべきでしょう。

10年経って、結局はザンギャックとの関係においては「ルールなどクソくらえ」の精神でしか
対処は不可能という結論に達することになった現在のギャバンは、
10年前の自分が本気でルールを破るべきだと考えていたこと、
それが本当は正しい道だったこと、
そしてその精神はあの少年にしっかり受け継がれていたのだということを認めるしかありませんでした。

これはもはやギャバン1人が10年前の事件の経緯を思い出して勝手に妄想しているわけではない。
あの時の少年が成長したマーベラスの現在における数々の行動がギャバンの仮説の正しさを裏付けているのです。

まずマーベラスが魔空空間でブートレグを出し抜いてギャバンを救出し得たという事実は、
これはマーベラスの正体が不明だった状態では
何か未知の理由による未知のパワーの賜物という解釈も成り立ちましたが、
こうしてマーベラスの正体があの事件の時の少年だと判明し、
マーベラスがギャバンのあの時の言葉の影響を認めて感謝の意を示している以上は、
マーベラスがあの時のギャバンの言葉に従って「素晴らしい未来」を掴もうとしてきたと判断せざるを得ない。
そしてその「素晴らしい未来」を掴もうとする意思が生み出した勇気が
ギャバンやその分身のブートレグを凌駕したということは、
その「素晴らしい未来」はギャバンが目指すべきであったのに到達し得なかったもの以外は有り得ない。

それはすなわち「ザンギャックのルールに縛られない未来」です。
マーベラスはそれを掴み取ろうとして戦ってきた。
そして、それを掴み取ろうとする意思はマーベラスに大きな勇気をもたらした。
その勇気はザンギャックのルールと戦ってこなかったギャバンの勇気を凌駕し、
ギャバンの分身であるブートレグを相手に魔空空間という不利な状況においても
隙を突いて出し抜くという成果を上げることが出来たのです。

これがマーベラスがギャバンの言葉に従った結果、宇宙海賊となったという根拠のその1ですが、
ギャバンの気付いた根拠のその2は、
ギャバンがドギーから聞いていたマーベラス一味の話の中で感じていた疑問点に関連します。

ドギーはマーベラス一味は仲間の絆が非常に強いと言っていた。
これがギャバンには根本的に疑問でした。
マーベラス一味という海賊は「宇宙最大のお宝」というものを手に入れるために旅をしているという。
お宝を手に入れる旅にどうして仲間が必要なのだろうかとギャバンは疑問に思ったのでした。
お宝ならば1人で手に入れた方が独り占め出来て都合がいいはずです。
それなのにどうして仲間を求めたのか?

いや、人手として仲間がどうしても必要で仕方なく集めたというのならまだ話は分かる。
しかし仲間の絆が強いというのだから、どうも妙です。
ドギーがわざわざ強調するぐらいですから、その絆の強さはかなりのものなのでしょう。
実際、魔空監獄に乗り込んでマーベラス1人を最上階まで送り込むことが出来たのは、
マーベラス一味のチームワークが並大抵のものではないことを物語っていました。
実力的にも、そして自分との関係という点でも、マーベラスが最上階に行くことが
全員揃って最上階に行けそうにない状況におけるベターな選択肢であったのは確かだったのだろうとは
ギャバンも思いましたが、全員がそうしてマーベラスを先に進ませるために身を擲ったというのは、
口先だけの仲良しグループなどには到底出来ない、本当に強い絆で結ばれた仲間同士なのだということが分かります。

また、魔空監獄からの脱出時、仲間が掘った穴が目視できない状況で、
必ず仲間達が脱出用の穴を繋げてくれているはずだという確信をもって
躊躇なく全員が一斉に穴に飛び込んだことからして、
マーベラス一味の絆が絶対的なものであることはあの時一緒に穴に飛び込んだギャバンにも窺い知れます。

しかし、どうしてお宝目当ての海賊団がそこまで結束力が強いのか?
「マーベラス一味」というからにはマーベラスが仲間たちを集めて海賊団を結成したのでしょうけれど、
どうしてマーベラスは仲間を求め、仲間との強い絆を求めたのか、ギャバンにはよく分かりませんでした。

だが、そもそもマーベラスの本当に目指していたものが「素晴らしい未来」であり、
それが「ザンギャックのルールに縛られない未来」であったとするなら、
どうしてマーベラスが仲間の絆を求めたのかよく理解出来ました。
ザンギャックに逆らい、ザンギャックと戦うというのなら、それは極めて困難な戦いになることは確実であるのだから
1人よりも信頼できる仲間と助け合った方がいいに決まっている。

それに「素晴らしい未来」というものは1人では作り上げることは出来ません。
未来の世界であれ何であれ、とにかく世界というものは多くの人間が集まって作り上げているものですから、
マーベラス1人だけが自己満足的に素晴らしい未来を作ったつもりになっていても、
周囲の人達が素晴らしい未来を掴み取っていなければ、
結局はマーベラスも素晴らしい未来を手にすることにはならないのです。

つまり、マーベラスだけがザンギャックのルールを破って、
ザンギャックのルールに縛られない未来を掴み取ったつもりでいたとしても、
そのマーベラスと関わりを持つ社会がザンギャックのルールに従ったままであれば、
結局はマーベラスはザンギャックの支配を脱したことにはならない。
ならば世の中との関わりを断って世捨て人のように反ザンギャックの立場を鮮明にして
何処かに立てこもって生きるかというと、そんなものは「素晴らしい未来」とはとても言えない。

つまりマーベラスがザンギャックに縛られない「素晴らしい未来」を掴み取るためには、
世界と積極的に関わっていき、究極的には自分の関わる世界全体を
ザンギャックのルールに縛られない未来に変えていかなければいけない。
それは限りなく達成不可能に近いが、とにかくそれを掴み取ろうという意思で進んでいかなければ話にならない。
達成できるかどうかは問題ではなく、
そうした達成不可能とも思えるほどに素晴らしい未来に向かって努力していくことによって
勇気を得ることが大事なのです。

だからマーベラスは大きな目標に向かっていく努力として、まずは簡単なことから始めていった。
それが、まずは自分と同じようにザンギャックのルールに縛られない未来を掴むために
戦おうとしている者を仲間としていき、その仲間との絆を深くするということでした。
そうすることによって、まずはマーベラスの最も深く関わる最重要な小さな世界は
「ザンギャックのルールに縛られない素晴らしい未来」に変わるのです。
この仲間たちと一緒に行動する限り、
マーベラスは決して自己満足ではない「素晴らしい未来」を確かに目標として掲げることが出来る。

こういう理由で、ザンギャックのルールに縛られない素晴らしい未来を掴み取ろうとするマーベラスは、
同じ志で強く結ばれた仲間を欲した。
そのようにギャバンは理解しました。
だが、それは所詮は小さな小さな共同体に過ぎない。
当面は仲間を集めることでマーベラスと仲間達の「素晴らしい未来」は安定したかもしれないが、
現実にはマーベラス一味の仲間内だけで世界が完結しているわけではないのです。
結局はマーベラス一味の「素晴らしい未来」は周囲のザンギャックに従う世界との軋轢は絶えず、
そのたびにマーベラス達の「素晴らしい未来」は損なわれていく。

だからマーベラス達は自分達の「素晴らしい未来」を完全に掴み取るためには、
周囲のザンギャックに従う世界とは戦い続けていかねばならない。
本当は周囲の世界からザンギャックのルールの支配を排除できるのが一番良いのだが、
それは極めて困難であり、逆にはみ出し者のマーベラス一味の方が世界から排斥されるのが常となりましょう。

だが、未だザンギャックのルールに支配されていない世界ならば話は別です。
そこはマーベラス一味にとっては他のザンギャックに支配された世界よりは
割と容易に自分達の「素晴らしい世界」に組み込むことが出来る場所なので、
マーベラス達はその場所をザンギャックの支配下に入らないように守りたくなる。
それが地球なのです。

ギャバンはドギーからマーベラス一味という宇宙海賊が地球を守って戦っていると聞いた時は
奇異な印象しか持ちませんでしたが、
こうしてマーベラス一味の目指しているものが
「ザンギャックのルールに縛られない素晴らしい未来」であると仮定すれば、
マーベラス達が地球を守って戦っているのも当然の帰結として納得できました。

マーベラス達は自分達の目指している「ザンギャックのルールに縛られない素晴らしい未来」を
完全に掴み取るためには、究極的には宇宙全体からザンギャックを排除したいと思っているはずです。
だが、それがいきなり達成出来るはずもなく、ほぼ不可能とも思えるぐらい困難なので、
まずはその達成がまだ不可能でもなさそうな、
未だザンギャックの支配を受け入れていない地球を守る戦いに取り組んでいるのだとギャバンは思いました。

つまりマーベラス達が地球を守って戦っているのは地球への愛着などが理由なのではなく、
あくまで宇宙全体をザンギャックから解放して平和にするという想いが
根本的な理由となっているのだとギャバンは理解したのでした。

これはギャバンだからこそ断言できるのだといえます。
何故ならギャバンもかつてマーベラス達と同じ立場だったからです。
ギャバンも地球とは無関係の異星人でありながら地球を守って戦ったことがある。
確かにギャバンは地球で戦ううちに地球に愛着を感じるようにはなっていった。
だが、だからこそギャバンはその地球への愛着が自分の戦う原動力ではなかったことがハッキリと分かるのです。

愛着はあくまで愛着であり、ギャバンが地球を守って戦うのは、あくまで宇宙の平和のためでした。
異星人が地球を守って戦う場合の心理はそういうものだということはギャバンは自分の経験上よく知っているのです。
異星人が地球への無邪気な愛着だけでとことん戦い抜くことなど出来はしない。
やはり宇宙平和への強い想いがあってこそ戦えるのです。
だからきっとマーベラス達もそうなのだとギャバンは思いました。

現在マーベラス達が地球を守るためにザンギャックと戦っているということは、
その心の奥底にはザンギャックの支配から宇宙を解放して
平和な素晴らしい未来の世界を作りたいという強い想いが存在しているということを意味している。

ただ、「どうしてその場所が地球なのか?」という疑問はあります。
ギャバンの場合は勤務地が地球だったから自動的に地球で戦うことになったわけだが、
マーベラス達の場合は宇宙を旅している中で地球以外でも
ザンギャックの支配下でない星も少ないながらも他に存在したはずです。
それなのにどうしてマーベラス達は地球でザンギャックとの全面対決に覚醒したのか?

それがどうしてなのか詳しいことはもちろんギャバンには分かりません。
だが地球で戦った経験のあるギャバンには何となくその理由が分かるような気がしました。
何がどうというふうに具体的なことは言えませんが、
ギャバンにもこの地球が何か特別な星だということは感じられていました。
他の星でも数多く戦っているギャバンだから分かるのですが、
地球は何か戦士にパワーを与えてくれる不思議な感じがあるのです。

この地球には何かよく分からないが特別なものがある。ギャバンはそう感じていました。
おそらくマーベラス達がこの地球でザンギャックとの全面対決に踏み切ったのも、
そのギャバン自身も感じたことのある不思議なパワーの影響なのではないかと思えました。

ただ、そうであったとしても、
かつてのギャバンがそうであったようにマーベラス一味の戦いの真の目的は
地球防衛を超越した「宇宙の解放」であり、
地球で戦い始めたことによってマーベラス達はその自分達の究極の目標に向かって
一歩前進したことになるのだと思えました。
それが偶然であったのか、あるいは何かの意図に導かれてのものであるのか、
そのあたりはギャバンにはよく分かりません。

とにかくマーベラス達はザンギャックを倒して、その支配から宇宙を解放しようとしている。
それが本当に出来るのかどうかはともかく、
マーベラス一味に意識的なのか無意識的なのかどちらか分からないが、
とにかくそういう意図があることはギャバンはもはや疑いませんでした。

しかし、いくら何でもそれは誇大妄想に過ぎるのではないかとも思えます。
単にマーベラス達は地球を気に入って地球を守ろうとして戦っているだけかもしれない。
あるいはお宝を探すために地球を守りたいだけなのかもしれない。
いくら同じように異星人が地球を守って戦っているからといって、
マーベラス一味がギャバンと必ずしも同じとは限らないのです。

だからギャバンもついさっき見た光景が無ければ、そこまで断言することはなかったでしょう。
しかしギャバンは決定的な場面を見てしまったのです。
それはマーベラス達が魔空監獄を焼き払って完全に破壊した場面です。

あの周到な手順を見る限り、マーベラス達は急に思いついて、
ギャバンを救出したついでに魔空監獄を破壊したわけではなく、
最初から魔空監獄を潰すことを目的としていたのは明白です。
しかし、魔空監獄を潰すことはマーベラス達が地球を守るために戦っていることと直接関係無いことであり、
お宝探しとも関係無い。
単純にザンギャックへの敵意による行為と解釈するしかない。

魔空監獄がザンギャックの宇宙支配の重要拠点の1つだと分かった上で、
マーベラス達は何としてもそれを潰そうという執念を燃やしていたのです。
それは恐るべき執念でした。
何せ、マーベラス達は魔空監獄を潰すためには
魔空監獄に収容されていた大量の囚人たちを巻き添えで皆殺しにすることも厭わなかったのです。

それは基本的には人間社会のルールを外れた行為です。
人の命は何よりも重いはずです。
だが、そこで人命を尊重して躊躇した結果、魔空監獄を潰さなかったら、
人の道を外れなかったことで本人の心は救われるかもしれないが、
今後も魔空監獄に収容されていく人々は救われることはない。
これから魔空監獄で苦しめられることになる人々の未来を守り、「素晴らしい未来」とするためには、
大量殺戮者の汚名を被っても、手段など選ばず、
この千載一遇のチャンスに確実に魔空監獄を潰さねばならないのもまた1つの真理でした。

その真理は宇宙の人々が見ないようにしていた真理でした。
その真理を真っ直ぐ見つめる覚悟を皆が欠いていた。
ギャバンも宇宙を救うために悪に堕するまでの覚悟は無かった。
しかし、あまりに強大な力と正当性を有した宇宙帝国ザンギャックの猛威に立ち向かって
宇宙に「素晴らしい未来」を実現するためには、
宇宙のルールや正義や人道などをあえて捨てて悪人の汚名を被る覚悟が必要だったのです。

マーベラス達だって普段は地球の人々を守って戦っているわけで、根は心優しい連中のはずです。
大量の囚人を自らの手で殺すことが愉快であるはずはない。
しかし、ザンギャックのルールに縛られることのない素晴らしい未来を実現するためには、
どうしてもザンギャックの宇宙支配の拠点は潰さねばならない。
そのためにはルール違反者、人でなし、犯罪者の汚名は甘んじて受けようという覚悟を定め、
勇気をもっているのがマーベラス一味であり、それゆえ彼らは宇宙海賊なのです。

そして、そうしたマーベラス一味の「ザンギャックの支配の無い平和な宇宙の未来」を掴み取るための
「正義の立場を捨ててルールを破ってでも、人の道に外れてでも、
とにかくまずはザンギャックの非道を阻止するために戦う」という海賊の覚悟と勇気とは、
間違っている宇宙警察のルールを守ることを優先したために
ザンギャックの横暴を許してきてしまったギャバンに欠けていたものであり、
ギャバンが心の奥底にずっと押し込めていたものでもありました。

その押し込めていた想いがギャバンの表面に一瞬顔を出した10年前の貨物船事件の時に
たまたま出会った少年によって、そのギャバンの想いはしっかり受け継がれていたのであり、
少年は成長して宇宙海賊マーベラス一味を立ち上げ、
「ザンギャックの支配を脱した素晴らしい未来」を掴むために勇気を奮い起こして戦っている。
そのようにギャバンは理解しました。

しかし、そのことをギャバンは果たして素直に喜ぶべきなのか?
いや、ギャバンの心境を問題にしているわけではなく、
ここではもっと根本的な、この作品における問題として、
宇宙刑事ギャバンという正義のヒーローが、ルール違反者のアウトローであるマーベラス一味のことを
自分の志を受け継ぐ者として認めてしまってもいいのかという問題があります。

物語の流れ的にはギャバンはマーベラス達のことを自分の想いを継ぐ者として認める流れであるのは明白です。
だが、子供向けヒーロー映画として、そこまで踏み込んでもいいのか、今少し慎重に考えるべきかもしれません。

ゴーカイジャーだけが登場する作品であれば、ピカレスクヒーローものとして世界観が確立していますから、
確かにマーベラス一味のアウトローっぷりがヒーローとして肯定されるのは当然のことといえます。
しかし、この「ゴーカイジャーVSギャバン」においては、
このままでは宇宙の法の守護者である宇宙刑事ギャバンという正義のヒーローが、
法秩序の破壊者にしてルール違反者である宇宙海賊マーベラス一味を
自分の志の後継者として認めてしまうことになる。
しかもこの映画内でマーベラス達は明示はされていないものの、
確かに魔空監獄で罪も無い人々を大量に殺すというヒーローにあるまじき行為を働いています。

ギャバンのような明明白白な正義のヒーローが
そんなとんでもない連中をヒーローとして認めてしまっていいのだろうか?
それは本当に観客の子供たちに示すべき、ギャバンというヒーローの在り方として適切なのだろうか?

だが、ここであえて、それは適切だと解釈しておきたいと思います。
何故なら、本当はヒーローとはルールを守る存在ではないからです。
また、厳密に言えば、ヒーローとは世界を守る存在でもない。

これは別にルールを守るという行為や世界を守るという行為を否定しているわけでも、バカにしているわけでもない。
それらは尊い行為であり、間違いなくルールを守る者は正しいし、世界を守る者は立派です。
しかし、それらは厳密にはヒーローの行為ではない。
ヒーローというものは絶体絶命の世界の危機を救って、より良き未来を切り開く者なのです。
それは言い換えれば未来を変える者であり、世界を変える者ということになる。

また、世界が絶体絶命の危機に瀕しているということは、
その世界は危機に瀕する原因となるような大きな問題点を抱えているということであり、
その世界を救うためには、その問題点の改善や除去は避けて通れない。
つまり、ヒーローの活躍するような状況においては、
現在ありのままの世界をそのまま維持したまま救うことなどは出来ないのであり、
世界の救済には世界の変革は欠かせないことになるのです。

そうなると絶体絶命の危機から世界を救うヒーローとは、
世界の守護者ではなく、世界の変革者ということになる。
そしてヒーローが世界の変革者であるとするなら、
ヒーローは既存の世界のルールに縛られていることは出来ないはずなのです。
つまりヒーローとは、既存のルールを超えて世界を変革して、世界を救う存在なのです。

もちろん既存のルールを守る者や、世界をありのままの姿でひたすら守ろうとする者を否定するつもりはない。
それらの人々ももちろん社会に必要な尊い存在です。
ただ単にそういう人を「ヒーロー」と呼ぶのは適切ではないというだけのことです。
逆に「ヒーロー」の定義に当てはまる人の中には、そうした地道で堅実な行為をする人々よりも
人格的には全く劣る人も多くいます。
マーベラスなど、その典型といえます。

だが、ヒーローにはヒーローにしか出来ない役割があり、それは非常時において特に期待される役割なのだといえます。
だからヒーローとは品行方正である必要は無いし、世界秩序を維持する役割を負うわけでもない。
そういうことは他にやる人がちゃんといるのであり、
ヒーローはヒーローにしか出来ないことを役割分担として、しっかりやればいいのです。
それが世界の変革による救済なのであり、そのためにヒーローは世間のルールは超越することが許されるのです。

例えば軍隊は平時は大して役に立たないが、非常時は活躍が期待され、
その際は一般社会のルールを無視して活動することが許容されている。
ヒーローとは、そういう超法規的な存在の極端なものと考えればいいでしょう。

もちろん、常に変革という選択肢が正しいというわけではない。
守旧や現状維持が正解である場合の方がむしろ多いといえます。
そういう時というのは変革が無くても事態を良好な状態とすることが出来る平時なのであり、
そういう時代にはヒーローは必要とされていない。

また、ヒーローというものは危うい存在でもあり、変革には当然悪しき変革もあります。
ヒーローを偽装した者が変革と称して単に既存のルールを破壊して
世界を自分の都合の良い形に変えてしまうことも有り得る。
そして自分に都合のいい新たなルールを打ち立てて人々を苦しめることも出来る。
ザンギャック皇帝のアクドス・ギルなどはまさにそうした悪のヒーロー、偽のヒーローであったといえます。

そうした悪の勢力が増して世界がどうしようもなくなった時こそが
真のヒーローによる真の変革が待望される時代なのであり、
そんな悪のヒーローが打ち立てた悪のルールに支配された世界を変革して救済しようとして戦うヒーローが、
その悪の作った既存のルールを守って戦おうなどとしても戦えるわけもない。
悪のヒーローの作ったルールと戦うヒーローは、ルール違反者でなければならないのです。

「たとえ間違ったルールでも自分はそのルールに則って戦う」というのは
1つのルール順守者の姿勢としては立派ですが、
そういう者だけでは決して世界を変革して救済することなどは出来ない。
そんなものは悪のルールを作った者の思う壺でしかない。
世界に風穴を開けるヒーローは世界のルールに反する変革者でなければならない。
それは見方によったら反逆者であり、誰も助けてくれない孤独なはみ出し者です。

マーベラス一味はまさにそうした意味でのはみ出し者でありヒーローなのであり、
実はギャバンだって本来はそういうヒーローなのです。
何故なら1982年放送の「宇宙刑事ギャバン」におけるギャバンは潜入捜査官だったからです。

潜入捜査官というと、正体を隠して地球で活動していたわけですから、
地球における世間的なルールに反して活動をしていたわけで、
同時に宇宙警察の完全なる保護の下で活動出来るわけでもなく、
地球のルールも宇宙警察のルールからも離れて、それらのルールの助けを得ることもなく、
独自の判断で活動せざるを得ない一種のはみ出し者の立場でした。
そうして自分で道を切り開いてマクーに浸食されつつある地球の状況を変えていき
救っていったギャバンは、まさにヒーローでありました。

そのヒーローの精神をギャバン自身はザンギャックとの関係の中で
宇宙警察のエリート捜査官という立場上、見失っていってしまったのですが、
ギャバンのヒーローとしての魂は刑事魂から海賊魂へと形を変えながら、
しっかりとマーベラスに受け継がれていた。

このザンギャックによって悪のルールで支配された宇宙で
真のヒーローはルールを超えて世界を変革する者であるべきであったことを
深い悔恨と共に思い出したギャバンが、
そうした真に待望されるヒーロー魂を受け継いだマーベラス一味のことを、
自分のヒーロー魂の後継者として認めないわけはないのです。

ギャバンの「やっぱり君は」という言葉を聞いてマーベラスは、
ギャバンが実際はとっくに自分のことを思い出してくれていたのだと気付き、
思わず嬉しくなってニヤケてしまいそうになり、
それが照れ臭くてギャバンから少し顔を背けてフッと照れ笑いを浮かべました。
そのマーベラスの肩を力強く叩いてギャバンは「そうか・・・未来を掴み取ったんだな!」と
感極まった声でマーベラスを称えました。

ギャバンはマーベラスの目指す「素晴らしい未来」が
ザンギャックに縛られることのない世界であることに気付いていましたから、
まだその夢が完全に実現していないことは分かっています。
宇宙の大部分は未だザンギャックの支配下にあり、魔空監獄を潰したり地球侵略軍を撃退したところで、
事態はそう簡単に好転するとは思えません。
だからここでギャバンがマーベラスに「未来を掴み取った」と言って称えているのは一見おかしいように思えます。

だが、ギャバンがあの貨物船事件の時に少年に向かって説いたのは
「素晴らしい未来」を掴むことそのものの価値ではなく、「勇気」を持つことの価値だったはずです。
「素晴らしい未来」はあくまで実現が困難な遠大な目標なのであり、
その目標が大きければ大きいほど、困難であればあるほど、
それを掴み取るために湧き上がってくる勇気は大きなものとなるということが
ギャバンがあの臆病者の少年に最も伝えたかったことなのです。

だからギャバンは本当は少年に「素晴らしい未来」を掴んでほしいと思っていたわけではない。
むしろ、簡単に掴み取れるような手軽な夢を「素晴らしい未来」に据えてほしくはなかった。
ほとんど実現不可能な夢に向かって本気で突き進む勇気こそ掴み取って欲しかったのです。
それこそがあの時のギャバンが本当に少年に掴み取ってもらいたいと思っていた「素晴らしい未来」の姿でした。

そして、そのギャバンの期待に少年は見事に応えてくれた。
臆病者だった少年は宇宙海賊マーベラスとなり、
宇宙を支配する強大なザンギャック帝国と戦って自由で平和な世界を掴み取るという壮大な夢を抱き、
その夢を実現するために突き進む勇気を手にしたのです。

ギャバンは実際のところ、マーベラス達がザンギャックに勝って宇宙を解放することが出来るとは思えませんでした。
いや、ギャバン自身が戦ったとしても、宇宙警察全体がザンギャックに立ち向かったとしても、
その目標は達成できないだろうと思っていました。
それぐらいザンギャックは強大なのです。
そもそも勝ち目があるなら、とっくにギャバンはザンギャックと戦っていたはずです。
勝ち目が無いから戦うことを諦めていた。
勝ち目が無いから戦う勇気を失っていたのです。

しかし、マーベラスは勝ち目が無くても戦うことを諦めなかった。
勝ち目が無くてもザンギャックから宇宙を解放するという夢を抱き、
それに向かって突き進む勇気を持ち続けたのです。
それこそがギャバンが10年前にあの少年に持つように諭した「未来」のあるべき姿、
ヒーローのあるべき姿でした。
つまり、マーベラスはギャバンの期待した「未来」を確かに掴み取ったのです。

いや、マーベラスが掴み取ったのは「勇気」だけではない。
マーベラスの「ザンギャックと戦って宇宙を解放する」という夢はマーベラス自身に勇気をもたらしただけではなく、
同じ夢と勇気を持った仲間たちを引き寄せ、
ごく小規模ながら海賊団マーベラス一味という「ザンギャックのルールに支配されない世界」をも作り上げたのです。
それはマーベラスがギャバンの期待した勇気をもって戦い続けた結果、
同じ夢と勇気を持った仲間達との絆が深まっていった結果の産物だったのでした。

つまり、マーベラスは「勇気」だけでなく、実現困難な目標であった「素晴らしい未来」そのものすらも、
限定された規模ながら掴み取ってしまったのです。
すなわち、その「素晴らしい未来」とは「同じ夢を掴むために集まった仲間の絆」でした。

それはギャバンには結局掴み取れなかったものでした。
ギャバンはザンギャックと戦う勇気を持つことが出来なかったため、
同じ夢を持つ仲間を引き寄せることが出来なかったのです。
だから、ギャバンから見ればマーベラスは期待した以上のことを成し遂げた、眩しくなるような相手でした。

あの弱虫だった少年がよくぞこんなに立派になったものだとギャバンは感動し、
そのマーベラスが掴もうとしている夢が、
もともとは自分が父から引き継ぎ、そして自分がマーベラスに手渡したものだったと思うと、
ギャバンはまるで息子が偉業を成し遂げたことを誇らしく思う父親のような気持ちになり、
万感の笑顔でマーベラスの肩を力強く叩いて喜びを表しました。

その光景を少し離れた位置で眺めて、ジョー、ルカ、ハカセ、アイム、鎧の5人は
我が事のように嬉しそうな顔で微笑み合いました。
5人は10年前の事件の時のギャバンの心境やマーベラスの心境を細部まで分かっているわけではなく、
魔空監獄の最上階でギャバンとマーベラスの間に何があったのかも知らないので、
この場での2人の会話を聞いても、その意味するところが実はあまり良く分かっていません。

ただギャバンがマーベラスが未来を掴んだことを喜んでいるので、
きっとマーベラスの夢はギャバンが望んでいたものだということが
ギャバンとマーベラスの間で確認されて2人で喜び合っているものだと思い、5人は安堵したのでした。

マーベラスの夢の原点はギャバンとの再会によって確認され、
マーベラスが「宇宙最大のお宝」を掴み取るために突き進んできたことは
決して勘違いの産物などではなく、夢の原点であるギャバンの意図にも合致するものであったのだと
5人は思ったのでした。

しかしマーベラスはギャバンが自分を褒めてくれる言葉を聞いて、
そのギャバンから溢れてくる父親のような優しい想いを感じて嬉しく思いながらも、一方で戸惑ってもいました。
ギャバンは「未来を掴んだ」と言って自分のことを褒めてくれているが、
自分はまだ「素晴らしい未来」を掴んではいないとマーベラスは思ったのです。

マーベラスの目指す「素晴らしい未来」とは、もちろん「宇宙最大のお宝」を掴み取ることでした。
まだ自分は「宇宙最大のお宝」を手に入れたわけでもないのに、
ギャバンは自分のことを「未来を掴んだ」と言って褒めてくるのは妙だとマーベラスは思いましたが、
よく考えたらそれは当たり前だと気付きました。
ギャバンは自分が「宇宙最大のお宝」を手に入れることを
自分の「素晴らしい未来」だと心に定めているという事実をそもそも知らないのだとマーベラスは気づきました。

今のギャバンの目に映る自分はあの10年前の事件の時の少年のままなのだ。
あの時ギャバンは少年だった自分に「素晴らしい未来」を掴むように言った。
そして10年ぶりに再会した自分を見て、その「素晴らしい未来」を掴んでいるように見えたから、
こうして褒めてくれているのだ。
自分が宇宙海賊になって「宇宙最大のお宝」を目指すようになったのは
10年前の事件後にギャバンと別れた後のことですから、
当然あの事件の時のギャバンが言った「素晴らしい未来」とは「宇宙最大のお宝」とは別物のはずです。

そもそもギャバンはマーベラスが勘違いしていたように宇宙海賊などではなかったのですから、
「宇宙最大のお宝」なんてもの自体知らなかった可能性が高い。
ギャバンがあの時自分に掴み取るように言った「素晴らしい未来」は
「宇宙最大のお宝」ではなく別の何かであり、
今の自分を見てギャバンはそれを掴み取ったのだと言っている。
いったいそれは何なのだろうかとマーベラスは不思議に思いました。
そして、そもそも自分が魔空空間に行ってギャバンを救い出したのは、
それが何なのか確かめるためではなかったかとマーベラスは思い出しました。

つまり、この時点でマーベラスはギャバンが自分のことを何故褒めているのかよく分かっていないのです。
ギャバンはマーベラスの目指す夢を
「ザンギャックと戦ってザンギャックに縛られない未来の世界を実現すること」だと理解し、
それに向かって突き進む勇気と、その夢を共に掴むために集まった同じ勇気を持った仲間達との絆こそが
マーベラスの掴んだ「未来」だと見なして褒めているのですが、
マーベラス自身にはそういう自覚は無いのです。

マーベラスはあくまで自分は「宇宙最大のお宝」を掴み取ろうとする宇宙海賊なのだと思っており、
ザンギャックと戦っているのは単にザンギャックが気に入らないからだと考えていました。
「気に入らないものはぶっ潰す」というのが海賊の流儀なのだから、
たとえ相手がザンギャックであろうとも気に入らない限りは遠慮なく戦う。
マーベラスの頭の中はそれぐらいのシンプルなものでしかなく、
ザンギャックに縛られない未来の世界を築こうなどという大それたことは意識したことはありませんでした。
となると、これは一見、ギャバンが早合点しただけであるようにも見えます。

マーベラスが宇宙海賊になろうと思った理由は10年前の事件の時に自分を助けてくれて
「素晴らしい未来」を掴む生き方を教えてくれた男が宇宙海賊だったのだと勘違いしたからなのです。
自分が目指すべき「素晴らしい未来」を何にすべきか分からなかったマーベラスが、
その道を教えてくれた男と同じ道を進もうと思い、
その男が宇宙海賊なのだと勘違いしたので自分も宇宙海賊になろうと思い、
宇宙海賊ならばその掴み取る「素晴らしい未来」は「宇宙最大のお宝」だろうと安直に決めただけのことでした。
そして海賊だから気に入らないザンギャックにも喧嘩を売るのです。

だが、ギャバンはそもそも自分が宇宙海賊に間違われたという特殊な事情を全く知らないので、
マーベラスが宇宙海賊になろうと決めた理由を普通に考えてしまい、
あのような最下層の浮浪児がこの宇宙の現状で「素晴らしい未来」を掴もうとするのならば
ザンギャックの支配からの解放という考え方に到達せざるを得ないのだから、
「素晴らしい未来」を求めたマーベラスは自然とザンギャックから解放された世界を
目指すようになっていったはずだと推論しました。

これがそもそも勘違いであり、マーベラス自身は実はそんな難しく考えておらず、
自分に人生の指針を示した人物が宇宙海賊だと思い込んだので
自分も宇宙海賊になろうと思っただけであったというように見える。
そうなるとギャバンのマーベラスについて悟った「真実」というもの、
つまりここまで長々と述べてきたマーベラスの正体は全てギャバンの勝手な思い込みに過ぎず、
勘違いに基づいて感動してマーベラスのことを褒めているギャバンが
事情を分からないマーベラスを戸惑わせているだけということになります。

しかし、果たして本当にそうなのか?
本当は単にマーベラスが自覚していないだけで、
ギャバンの素直な推論の方が正しいのではないでしょうか?

マーベラスはこれまでずっと10年前に自分の命を救い人生の指針を示してくれた相手が宇宙海賊だったと思い込み、
そのことに疑いを差し挟んだことはありませんでした。
そして今回、それが勘違いだったことを初めて知った。
自分が宇宙海賊の道を選んだのは勘違いの結果だったのだという事実は、
マーベラスには衝撃的なインパクトを与えました。
そのインパクトがあまりに大きすぎたため、マーベラスは肝心のことを深く考えることが出来なくなっていたのでした。

それは、どうして自分がその命の恩人を宇宙海賊だと思い、その人の真似をしようと思ったのかということです。
マーベラスがその人のことを宇宙海賊に違いないと確信したのは、
その人がザンギャックに逆らう行動を堂々ととったからでした。
そんな大人はマーベラス少年の周囲にはそれまで存在しませんでした。
だから、その人は普通の人ではなく、ザンギャックのルールを破って宇宙を自由に航行するという
宇宙海賊に違いないと思ったマーベラスは、同時にその人のそうした行動に強い共感と憧れを抱いた。

自分もいつかあの人みたいな宇宙海賊になって、ザンギャックに運命を左右されない人生を送りたい。
そういう切なる想いがあったからこそ、マーベラスはその人を宇宙海賊だと確信した上で、
自分もその人のような宇宙海賊になりたいと思ったのです。
そして、その自分の願いを叶えるためには当然ザンギャックは邪魔者なのであるから、
マーベラスにとってザンギャックは本能的に気に入らない相手であり、排除すべき敵となったのです。

つまり、その夢の原点からマーベラスは実際には既にザンギャックのルールからの解放を夢見ていたのです。
それがマーベラスが海賊になった真の原点なのであり、マーベラスが海賊となって本当に目指したかったことなのです。
そして、それはその時のギャバンの本質ともしっかり合致していた。
つまり、ギャバンの推測の方が正解だったのです。

だがマーベラスはもともと自分の心の奥底を省みて考えを整理するようなことは苦手な性質で、
自分は人生の指針を示してくれた恩人に倣って宇宙海賊になり、
宇宙海賊となった以上は「宇宙最大のお宝」を自分なりの掴むべき「素晴らしい未来」として掲げるのだという、
なんともシンプルな思考で頭の中は硬直していたのでした。
それが実は勘違いに基づくものだったと判明した以降は、ますますマーベラスは心に余裕が無くなり、
自分の心の奥底を見つめることが出来なくなっていたので、
とにかく自分の「素晴らしい未来」は「宇宙最大のお宝」なのだと頑なに思い込んでいました。

そこにギャバンがやたらと自分のことを「未来を掴んだ」と言って褒めてきたのですが、
それは明らかに「宇宙最大のお宝」とは別の意味での「未来」でした。
ギャバンはマーベラスの掴むべき「素晴らしい未来」を「宇宙最大のお宝」とは何か別のものだと定義している。
そのことは10年前の勘違いに気付いた段階でマーベラスにも予測は出来ていたことです。
そして、それが何なのか確かめるために自分は魔空空間に行ってギャバンを救い出したのです。

だから、今こそそれが何なのかギャバンに聞くべき時なのだとマーベラスは思いました。
ギャバンの口ぶりからすると、自分はそれを掴み取っているらしい。
そういう点では、自分は決して間違った道を歩んではいなかったのだと、少し安堵出来ました。
だが、もしかしたらそれは「宇宙最大のお宝」とは何の関係も無いものなのかもしれない。
もしそうだとしたら、自分の「宇宙最大のお宝」に賭けてきた想いは全く無意味だったことになるように思えて、
マーベラスはギャバンから答えを聞くのが何だか怖くなってきました。

それでも、せっかく魔空空間まで行って、仲間たちまで巻き込んで
とうとうここまでこぎつけたのだから、
勇気を奮い立たせてギャバンにその「未来」とは何なのか質問しようと決意し、
マーベラスは緊張した面持ちでギャバンの方に振り向き、ギャバンと向き合いました。

ギャバンは温かな笑顔でマーベラスを見つめ返しています。
その笑顔を見て、マーベラスはギャバンは自分がその「未来」を当然自覚しているはずだと
思い込んでいることに気付き、
今から自分が自分の掴んだ「未来」とはいったい何なのかという間抜けな質問をしようとしていることに気付いて、
少し恥ずかしくなりました。

だが、それでも恥を忍んでマーベラスが口を開こうとしたその時、
「まだ終わりではないぞ!」という聞き覚えのある声が辺り一面に鳴り響いたのでした。
それはさっき魔空監獄で死んだはずのアシュラーダの声でした。

ハッとしてマーベラスとギャバンは声の聞こえてきた方に振り向きました。
それは2人を少し離れて並んで見守っていた仲間5人の背後方向であったので、
ジョー達5人も一斉に背後を振り返りました。
そうして7人が注視したその方向、倉庫街の中の広場にはアシュラーダとブートレグが立っており、
更にその頭上に大きく開いた魔空空間の扉からは、かなりの数のゴーミンやスゴーミンが降り立ってきています。
驚いて見つめる7人の前で頭上の魔空空間の扉を閉じたアシュラーダは、
大勢のゴーミンやスゴーミン、そしてブートレグを引き連れて
「いい気になるのもそこまでだ!貴様らを必ず倒す!!」と、物凄い剣幕で怒鳴りつけました。

アシュラーダは死んでいなかったのです。
おそらく、あの魔空監獄を取り巻く魔空空間そのものは魔空監獄の崩壊と共に消滅したのでしょうけれど、
炎上爆発する魔空監獄の最上階で、間一髪、ブートレグに命じて出現させた魔空空間の中に
アシュラーダとブートレグだけは飛び込んで助かったのでしょう。
そしてアシュラーダは一旦現実世界の根拠地に移動し、そこで新手のゴーミンやスゴーミンを引き連れて
魔空空間を使って移動し、こうしてマーベラス達の前に再び現れたのです。

もちろんマーベラス一味とギャバンを倒すために現れたわけですが、
アシュラーダの様子はさっきまでとはだいぶ違っています。
魔空監獄での戦いの時はアシュラーダはギャバンに対しては
自分のパワーアップのための生贄として殺そうというつもりであり、
マーベラス一味に対してはアクドス・ギルに命じられたので義務的に殺そうとしていたに過ぎませんでした。
しかし今は違います。
大事な魔空監獄まで潰されてアシュラーダは怒り心頭となっており、復讐心に燃えているようです。

ただここで不可解なのは、アシュラーダがまだ魔空空間を発生させる手段を確保していながら、
マーベラス達を魔空空間に引きずり込まずに、あえて現実世界で戦って倒そうとしている点です。
魔空空間で戦った方が圧倒的に有利であるはずなのに、どうしてアシュラーダは現実世界で戦おうとしているのか?
それはアシュラーダのプライドの問題なのでしょう。
というか、より厳密に言えば、アシュラーダはまだ自身のパワーアップを諦めてはいないのです。

アシュラーダのパワーアップの必須条件は、亡き父のドン・ホラーを超えたという自信を得ることでした。
そのために父を倒したギャバンを生贄に捧げようとしていたのですが、
それはもはや失敗してしまい、魔空監獄やそれを取り巻く魔空空間まで失うという大失態を犯してしまった。
絶対有利な魔空空間に敵を迎え撃っておきながら敗北して魔空空間まで喪失したとなると、
これでは父の失敗を繰り返したことにしかならない。
ここまでの失態を犯した上で再びマーベラス達やギャバンを魔空空間に引きずり込んで倒したとしても、
それはもはや恥の上塗りにしかならず、そんなことで父を超えたという実感など得られはしない。

こうなったら父を超える方法はただ1つ、
父がやらなかった困難な戦いを挑み、そこで強敵のギャバンやマーベラス一味を打ち倒すことで
父を超えたというプライドを満足させるしかない。
つまり、あえて不利な現実世界で戦ってギャバンとマーベラス一味を倒すということです。
それを達成した時こそ、自分は父を超えてパワーアップを果たすことになる。
アシュラーダはそのように考えていたのでした。

このアシュラーダ一派の登場に対して、マーベラス一味の面々は横一列に並んで立ち向かう態勢をとりますが、
その中でマーベラスはアシュラーダの方を睨みつけて仲間と共に整列しながら、
横に立つギャバンに向かって「あんた・・・いけるか?」と訊ねました。

ギャバンはブートレグにこっぴどくやられて敗北した後、更に魔空監獄での拷問で痛めつけられていました。
その傷を気遣ったという面もありますが、マーベラスがそれ以上に気遣ったのは、
ギャバンがさっき完敗したブートレグを相手に戦う自信があるのかどうかという点でした。

このまま戦えば、きっとアシュラーダはまたギャバンにはブートレグをぶつけてくる。
ブートレグはギャバンの能力をコピーした機械戦士であり、
ハッキリ言ってギャバンにとっては相性は最悪の相手といえます。
そんな最悪の敵を相手に手負いの状態で戦える自信は本当にあるのか心配でした。

マーベラスはギャバンが勝てるかどうかを心配しているわけではない。
そんなことをいちいち心配していては戦いなどやっていられないからです。
マーベラスが心配していたのはギャバンがブートレグに勝つ自信を持てない状態にあるのではないかという点でした。
もしそんな状態で戦うことになれば極めて危険です。
だから、ギャバンに自信が無いというのであれば、いっそギャバンは戦わない方が安全であるように思えて、
マーベラスは戦いの前にギャバンの意思を確認しようと思ったのでした。

しかしギャバンはマーベラスの問いかけに対して即座に
「ああ・・・この程度の傷、なんてことない!」と力強く答え、アシュラーダやブートレグをキッと睨みつけました。
その目はすっかり生気を取り戻し、闘志によって光り輝いていました。
ギャバンは今度こそブートレグに勝てるという確信を得ていたのです。

どうしてギャバンがブートレグに勝てる自信を獲得出来たのかというと、
それはマーベラスが自分の志を引き継いでくれていたことを知ったからでした。

ギャバンは自分がこれまでずっとザンギャックと戦うことから逃げて
宇宙の多くの人々を見殺しにしてきたことを知った。
それが父のボイサーから受け継いだはずの
「宇宙の人々の平和な暮らしを守るために不可能に挑戦する勇気」に全く反した生き方であったことを知り、
自分がいつしか人間の心を失った戦闘マシーンのようになっていたことを知った。
そんな自分は人間の心だけが引き出すことが出来るその勇気を父のように引き出すことは出来ないのは当然で、
それゆえ能力的に互角な機械戦士のブートレグを上回る力を出すことが出来ずに敗れたのだと悟っていました。

ギャバンはその分析に間違いは無いと今も思っています。
そして、自分の過去の行いは変えることは出来ない。
ギャバンがザンギャックに屈して宇宙の人々を見殺しにしてきた過去の罪は消え去ることはない。
自分が父の教えを実践することが出来なかった不肖の息子であったという事実も消せはしない。
自分は本当に大したことはない男であり、世界を救うヒーローなどではなかったのだとギャバンは痛感しました。

その認識は今も変わっていません。
しかし、それでもギャバンはそんな自分でも勇気を引き出すことが出来ると思えたのでした。
それは人間の心を取り戻すことが出来たからです。
人間の心さえあれば、機械戦士には引き出せない勇気を引き出すことが出来る。
ならば能力が互角で心を持たない機械戦士のブートレグを倒すことは出来るとギャバンには思えたのでした。

では、どうしてギャバンは自分の過去の罪を認めたまま人間の心を取り戻すことが出来たのかというと、
それは自分が父から受け継いだ志が自分という人間を経由して
息子のような年齢のマーベラスという男に伝わって大きく花開いていたことを確認したからでした。

たったそれだけのことです。
ギャバン自身の人生が全く父の教えに反していたという事実は何ら変わっていない。
ただ単に父の志をマーベラスに伝えたというだけのことであり、
しかもマーベラスとは10年前にたまたま一度会っただけであり、
マーベラスの中でその志が大きな夢になって花開いたことにおいてギャバンは大した役割も果たしていない。
だが、ギャバンは人間はそれで十分なのだと思った、いや、初めてそう悟ることが出来たのでした。

人間は誰もがヒーローになれるわけではない。
また、ヒーローとして活躍できた人間でも一生ずっとヒーローであり続けることが出来るわけでもない。
光り輝くのはほんの一時のことであり、一生を通してみればだいたいパッとしないものだ。
つまり人間なんてそんなに大したことが出来るわけではない。
ただ、1人1人の人間は大したことはなくても、
人間は世代を超えて志を引き継いでいって最終的には大きなものとして結実させることが出来る。
それこそが人間の心にしか出来ない営みなのです。

自分は確かに宇宙の人々のために大したことは出来なかったかもしれないが、
それでも父から受け継いだバトンを次の世代であるマーベラスに手渡したことで
十分に1人の人間として役割は果たしていたのであり、
父から自分に引き継がれた人間の心はマーベラス、いやマーベラス一味の仲間達の絆の中でしっかり生きている。
そのマーベラスもまた結局は大したことは出来ないかもしれないが、きっとその志は次の世代に引き継がれていく。
それが人間の営みなのだ。

そう悟ったことによってギャバンは自分の生きた価値を知り、
1人の人間としての自信を取り戻し、人間の心を取り戻し、
その結果、再び立ち上がり戦う勇気を取り戻したのでした。
宇宙刑事ギャバンは完全復活したのです。

そのギャバンの自信に溢れた言葉を聞いて、マーベラスは安堵し、
前方の敵の方を見据えながらフッと笑みを漏らします。
ギャバンが戦う自信を失っていなかったことに安心しただけではなく、
自分が思わず安堵の笑みを漏らしたのは、別の理由もあるのだとマーベラスは気付きました。

それは、ギャバンと一緒に戦う機会を失わずに済んだという安堵でした。
そんなことに安堵している自分に気付いた時、
マーベラスは自分が10年間ずっと、
いつか大きくなってあの人と肩を並べてザンギャックと戦うことを夢見ていたのだということに気付いたのでした。

これは自分がずっと待ち望んでいた戦いなのだと悟ったマーベラスは、
同時にこのような機会はもう二度と訪れないのだろうとも悟っていました。
宇宙海賊と宇宙刑事という両者の立場の違いは、
今回のような極めて特殊なケースにおいてしか共闘という形を生み出すことはない。
この戦いが終わればギャバンとはまた別の道を歩むようになり、二度と共闘の機会など無いであろう。

だから自分は本当はこのたった一度の機会に絶対にギャバンと一緒に戦いたいと思っていたのだとマーベラスは悟り、
ギャバンが万全の状態で戦える状態であって本当に良かったと心の底から安堵し、
戦える状態で自分の隣に立ってくれたギャバンに心の中で深く感謝しました。

一方、ギャバンも前方の敵を睨みつけたまま、マーベラスがフッと笑うのに呼応するようにニヤリと笑います。
宇宙刑事でありながら真の「素晴らしい未来」を掴むために真の勇気を奮い立たせて戦う仲間を得ることが出来ず
1人で戦った挙句一旦敗れた自分が、こうして宇宙海賊と志を1つにして仲間として一緒に戦うことで
戦う力を取り戻したことが何だか可笑しかったのもある。
だが、それ以上に自分の志を引き継いで立派に戦士として成長した息子と共に戦うことは、
戦士としてこれに勝る誉れは無いとギャバンは思い、腹の底から高揚感が湧きあがってきたのでした。

もちろんマーベラスはギャバンの実の息子ではないが、
自分が父から受け継いだ魂を渡した相手は血の繋がりなど無くてもギャバンにとっては立派な息子でした。

自分の魂を引き継いだ息子と肩を並べて戦うという、
かつて感じたことのない達成感と昂揚感でギャバンの心は湧き立ち、闘志が体中に漲りました。
そして、これは亡き父のボイサーですら為し得なかったことだと気付きました。
ボイサーは息子である自分と肩を並べて戦うことなく死んだ。
実際のところ、そうしたすれ違いは世間には多い。

親には確かに子供に自分の志を受け継がせたいという欲求はあるものだが、
そもそも子供は親の所有物ではなく、子供に無理に自分の志を押し付けることは出来ない。
無理に押し付けてもそれは子供の方が心の底から受け入れたりはしない。
だから息子が父の志を引き継ぐケースの方が稀であり、
仮にうまく志は引き継いだとしても、父と子が様々なしがらみで同じ立場で戦えるわけではないケースも多い。
そしてボイサーとギャバンのようにタイミングが上手く合わない場合も多い。
つまり、同じ志を持った父と子がこうして共闘出来る機会など滅多に無い幸運なのです。

実際、ギャバンとマーベラスはこの機会を逃せばもうおそらく共闘の機会など無いだろう。
そのことに気付いたギャバンは、自分が今、ある意味で父の到達し得なかった領域に
足を踏み入れたのだという達成感を覚えた。
初めて父に肩を並べ、父を超えたように思えたのでした。

だがそれはギャバン1人で為し得たことではない。
マーベラスという息子の存在があってこそでした。
ギャバンは立派に成長して隣に立ってくれたマーベラスに感謝し、
この幸運な機会に感謝し、自分は幸せ者だと感じました。
そして、この幸福な時間を丁寧に心に刻みつけながら戦おうと決意しました。

そうして互いの存在に感謝したギャバンとマーベラスは、黙って前方の敵を見据えたまま、
隣り合った互いの拳を、かけがえのない時間を噛みしめるようにゴツンとぶつけ合い、
今生にただ一度の父と息子の共闘の開始を告げるゴングを鳴らしたのでした。 にほんブログ村 テレビブログ 特撮へ
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posted by 通りすがりのシンケンブラウン at 09:21 | Comment(0) | 海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年09月03日

海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE 感想その15

さて、ここからはカタルシスに満ちた王道の戦闘場面となります。
この「ゴーカイジャーVSギャバン」という映画はここまで割と重苦しい展開が多く、
戦闘場面もゴーカイジャー側の苦戦描写が目立っていました。
しかし、ここからのアシュラーダ部隊との決戦ではそうした鬱憤を晴らすかのような
ゴーカイジャーとギャバンが大活躍するケレン味たっぷりのド派手アクションが炸裂します。

まずは戦闘の前に「変身&名乗り」です。
この映画ではここまでにギャバンは1回、ゴーカイジャーは3回の変身シーンの描写がありましたが、
それらは全て簡略版であり、
ゴーカイジャーもギャバンも共に、変身プロセスをバンク映像なども含めて
フルバージョンで描写した正式な変身シーンはありませんでした。
そのフルバージョンの変身シーンがギャバンもゴーカイジャーも、共にここで連続して披露されます。

しかも「フルバージョン」といっても、ギャバンの場合はこれはただのフルバージョンではない。
ギャバンのフルバージョンの変身シーンといえば、かの有名なあのシーンということになります。

敵意剥き出しのアシュラーダ部隊の前にマーベラス一味の6人とギャバンが横一列に並び立ち、
その真ん中に立ったマーベラスとギャバンは、
左に立ったマーベラスの右拳と右に立ったギャバンの左拳を互いにゴツンとぶつけ合いました。
ギャバンはそのまま左拳を振り上げて顎の前に掲げ、
両足を開いて腰を落とした姿勢で「蒸着・・・!」とコールして変身ポーズに入ります。

ここで同時にBGMは印象的なトランペットの音色が流れ始めました。
これは1982年の「宇宙刑事ギャバン」TV本編の挿入曲「チェイス!ギャバン」の
イントロの懐かしのメロディーラインです。
ただ原曲そのままではない。
この「チェイス!ギャバン」は微妙に現代風にアレンジされており、
原曲はボーカル入りですが、ここではインスト版になっています。

この曲がバックに流れる中、ギャバンは右腕を大きく身体の前で回して左肩の外側にまで回し込み、
その反動で両手を交差させて前に突き出します。
そしてそのまま半身になって左腕を身体に平行に前に出したまま深くしゃがみ込んで、
一気に反動で勢いよく真っ直ぐ立ち上がりながら
「うりゃあっ!!」と叫んで右手を天に向けて真っ直ぐ高々と、力強く突き出したのでした。

そしてすぐにその右手を胸まで引き下げて、「むぅん!」と気合を発してギャバンが両腕を身体の左右に開くと、
一瞬にしてギャバンの身体にシルバーメタリックのコンバットスーツが装着され、
ギャバンは右腕を後方に引き、左腕をそれに平行に身体の前で曲げて左肘を前に出したポーズで
「むん!」とタメを作ってから、重心を右から左に移動させながら
今度は左腕を後方に引いて右腕を身体の前に回してきて、
腰を落としたまま身体の左側で両腕を曲げて両拳を合わせるポーズで静止しました。
これがギャバンの変身、いや蒸着完了時の決めポーズです。

そして、この決めポーズで静止したギャバンの映像に渋い声のナレーションがかぶってくる。
そのナレーションは「宇宙刑事ギャバンがコンバットスーツを蒸着するタイムは僅か0.05秒に過ぎない」と言います。
これこそがギャバン変身シーンのフルバージョンの最大の特徴である懐かしの変身プロセス解説ナレーションです。
この名物ナレーションは往年のギャバンファンがこの映画で最も待望していたものの1つですが、
見事な変身シーンの再現と共に、この映画ではこの名物ナレーションも再現してくれました。

ただ、1982年のオリジナル版ではこの名物ナレーションは
「宇宙刑事ギャバン」のナレーター政宗一成氏によるものでしたが、
この映画では「ゴーカイジャー」本編のナレーターである関智一氏が発声しています。
ただ、この場面の関氏はかなり政宗氏のオリジナルのナレーションに似せるようにして喋っている印象です。

そしてこの懐かしの解説ナレーション場面には続きがあり、この映画ではその続きも見事に再現してくれています。
ナレーションは続けて「では、蒸着プロセスをもう一度見てみよう!」と言い、
ここで画面は再びさっきギャバンが「蒸着・・・!」と変身動作開始のコールをした場面に戻ります。

但し、ここでは背景は黒バックになっており、
その黒バックの前でギャバンはさっきと同じ一連の動作をして、
「うりゃあっ!!」と叫んで右手を高々と天に向かって突き上げます。
さっきの場面ではこの後すぐにギャバンが右手を引いて両腕を左右に開くと
コンバットスーツが一瞬で装着されましたが、
この黒バック画面はナレーションで言った通り、蒸着プロセスをもう一度見てみる趣向です。
それも同じものを二度流しても仕方ないので、今度は蒸着プロセスをじっくり詳しく見る趣向なのです。
だから、さっきの場面では一瞬で処理されていたプロセスが、ここではじっくりと再現されていきます。

ギャバンが右手を高々と上げたその先、天空高く、地球上空に亜空間に情景は飛び、
そこに待機していたギャバンの搭乗母艦の円盤、超次元高速機ドルギランが映ります。
ドルギランは亜空間にも移動することが出来るので、普段は亜空間に待機しているのです。
今回もあの体育館にギャバンやマーベラス達を降ろした後、地球上空の亜空間に待機していたのですが、
そのままギャバンが魔空空間に捕らわれてしまったので、ドルギランも亜空間でずっと待機状態だったのでした。

その待機状態が解除されたのはギャバンが「蒸着」というコンバットスーツ装着コードを
発声したことに反応したからでした。
そのコードを受けてドルギランの上部ユニット、ギラン円盤内部のコンピュータが
「了解・・・コンバットスーツ、電送シマス」と応答し、
一旦船内で具現化したコンバットスーツを粒子状にして
地上のギャバンに向けて発したビームに乗せて一瞬で電送し、
その粒子はギャバンが右手を引いて「むぅん!」と両腕を左右に開く動作の中で
ギャバンの身体に吹き付けられるようにしてコンバットスーツに再構成されていき、装着が完了します。

これが「蒸着」です。
「蒸着」というのは現実に金属加工の現場で使用されている技術で、
加熱して蒸発させた金属を基盤に付着させて薄膜を形成する技術です。
1982年にギャバンのコンバットスーツの着ぐるみを作る際にこの蒸着の技術が使われており、
これをそのまま劇中の変身コードとしたのです。
この変身描写は当時画期的で大変なインパクトを与えたのですが、
現在見ても、現在の映像技術でリニューアルされていることを差し引いても、やはり十分に斬新です。

先ほどのナレーションにあったようにこの蒸着プロセスに要する時間は僅か0.05秒という設定になっており、
設定的にはこれはギャバンが「蒸着」というコードを発声してから
コンバットスーツ装着が完了するまでの所要時間のことであるようです。

つまり、実際はこれだけの複雑なプロセスが0.05秒、つまり1秒の20分の1の一刹那の間に行われている。
「もう一度見てみよう」のナレーションの後に全ての行程が詳細に描写されたバージョンは言わずもがなですが、
その「もう一度見てみよう」のナレーションの前、最初に描写された現実空間を背景にした蒸着シーンも、
ギャバンが左右や上下に腕を振ったりしている時間は0.05秒は遥かにオーバーしていますから、
あれも実は実際の一刹那の動きをスローにして見せているものということになります。

確かに、「変身ポーズをとっている時に敵が棒立ちで攻撃してこないのはどうして?」なんていう
特撮ヒーロー向けの意地悪な質問がよくありますが、
「宇宙刑事ギャバン」という作品はそれに対する回答をちゃんと用意している番組であったのです。
実際はギャバンが「蒸着」と言った0.05秒後にはコンバットスーツの装着は完了しているのですから、
敵は変身中のギャバンを攻撃する余裕などあるはずがない。
「ギャバン」TV本編では敵が銃を発射すると同時にギャバンが「蒸着」と発声し、
コンバットスーツ装着後に飛んできた銃弾を手で掴むという描写もあり、
そのスピード感を分かりやすく描写することもありました。
子供向けとはいえ、かなり考えられて作られていた設定であったのです。

そういうわけで、ここの場面もギャバンが最初に隣のマーベラスの右拳とゴツンとぶつけた左拳を振り上げて
「蒸着」とコールしてからコンバットスーツ装着完了まで劇中設定では0.05秒しか経過しておらず、
その間、ギャバンの左右に並んで立っているマーベラス一味の6人が棒立ちであるように見えるのも、
これはものすごいスロー再生なので別に不自然ではないのです。
ギャバンが「蒸着」と発声した0.05秒後にコンバットスーツの装着が完了し、
そしてギャバンが「むん!」と気合を込めて決めポーズをとったところで
最初にギャバンとマーベラスの拳がぶつかった瞬間からの所要時間はトータルでおよそ3秒ほどでしょう。
感覚としては「一拍置いた」というぐらいの時間経過といえます。

この最初の「蒸着」コールから一拍置いた時点では既にマーベラス一味の6人は
懐からゴーカイジャーのレンジャーキーを取り出していました。
確かに一応、マーベラス達6人は先にギャバンを変身させるために、
わざとギャバンの動きに一拍遅らせて動いたようです。
ギャバンの蒸着動作完了とほぼ同時、つまりマーベラスとギャバンが拳をぶつけ合ったおよそ3秒後、
今度は既に右手でレンジャーキーを取り出して左手にはモバイレーツを構えていたマーベラス達6人が
カチャッと右手でレンジャーキーをカギ状に折り曲げて変身動作を開始します。

ここでBGMはギャバンの「蒸着・・・!」の場面からずっと流れていた
「チェイス!ギャバン」のインスト版のメロディーラインから自然に繋がる感じで、
「ゴーカイジャー」TV本編でいつもお馴染みの
ゴーカイジャー変身時のBGM「ゴーカイチェンジ!」のイントロに乗り替わります。
この曲もスーパー戦隊シリーズ歴代変身BGMの中でも屈指の名曲ですが、
これも「チェイス!ギャバン」同様、よく聞くといつものやつとは微妙にアレンジが違います。

実はここの一連のBGMは「蒸着!豪快チェンジ!」という名の1つの楽曲であり、
この映画のギャバンとゴーカイジャーのこの連続変身シーンのために
「チェイス!ギャバン」と「ゴーカイチェンジ!」をメドレー風に繋げて1つの楽曲としたものだったのです。
それぞれの曲のアレンジがオリジナルとは微妙に違っていたのは、
1つの曲として違和感なく繋げるために出来るだけアレンジを似たものとするためだったのでしょう。

そして、ここからはいつものTV本編でお馴染みのゴーカイジャーの変身シーンとなるかと思いきや、
腰を落として身体の前に右手に突き出して「豪快チェンジ!!」とコールした6人が
一旦引いた右手を大きく身体の前で左に振りこんで、
左手に握ったモバイレーツとゴーカイセルラーにレンジャーキーを挿入すると、
「ゴォ〜カイジャァ!!」という認識音と共にモバイレーツとゴーカイセルラーから飛び出した
X字型と錨型のエネルギー体が6人の身体に飛び込んで、一瞬で6人はゴーカイジャーの姿となります。
これではフルバージョンの変身シーンではなく、最初の夜の公園のシーンと同じ簡略バージョンです。
ギャバンの方はしっかりフルバージョンの変身シーンであったのに対して、これではバランスが悪い。

しかし、実は今回はここからが本番で、
なんとここで変身完了のポーズで静止したマーベラス達とギャバンを画面上に映しながら、
いきなり先ほどと同じく政宗一成を意識した関ナレーションが
「海賊戦隊ゴーカイジャーが変身するタイムも僅か0.1ミリ秒に過ぎない」と言ったのです。
そして「では、その変身プロセスをもう一度見てみよう!」というノリノリの関ナレーションの後、
先ほどのギャバンの場合同様、変身プロセスの詳細がもう一度繰り返して映し出されたのでした。

すなわち、宇宙空間のバンク映像において飛んできた6色のXやVや錨マークが
マーベラス達6人のスーツやマスクやエンブレムにどんどん変わって
装着されていくプロセスが映し出されたのです。

まぁ、これはあくまでイメージ的な変身バンク映像であって、
ギャバンのリアルな電送や装着場面とは意味合いはちょっと違うのですが、
それでもこれは遊び心あふれるサプライズでした。

ギャバンの変身シーンにおける政宗風のナレーションと変身シーンの詳細繰り返しは
オリジナルの再現という趣向だったので、ある意味では期待と共に予想されていたことでしたが、
まさかゴーカイジャーの変身シーンでも同じことをやってくるとは予想外で、
良い意味でふざけていて最高です。

しかも変身所要時間がゴーカイジャーの場合0.1ミリ秒という新設定まで
ここでいきなり出してくるのですから驚きです。
0.1ミリ秒ということは、1万分の1秒ということであり、
ほとんど一刹那に過ぎないギャバンの蒸着所要時間の0.05秒より500倍も速い。

ちなみに「宇宙刑事ギャバン」に続く宇宙刑事シリーズ第二作「宇宙刑事シャリバン」における
主人公シャリバンのコンバットスーツ装着(赤射)所要時間は
1ミリ秒(1千分の1秒、ギャバンの50倍の速度)であり、
同じく第三作「宇宙刑事シャイダー」における
主人公シャイダーのコンバットスーツ装着(焼結)所要時間も同様に1ミリ秒ですから、
ゴーカイジャーの変身所要時間は3人の宇宙刑事よりも遥かに短いということになる。

だが、これは別に宇宙刑事のテクノロジーよりも
ゴーカイジャーの変身システムを作った者(おそらくアカレッド)のテクノロジーが
優れているというわけではないでしょう。
両者は変身システムが根本的に違うのです。

ギャバンやシャリバン、シャイダーの場合は全て、「蒸着」などの変身コードを口にすると
上空の母艦でそれを感知して粒子化されたコンバットスーツが地上のギャバンたちに電送されてきて装着されるので、
変身コードの発声後は自動的にいつも一定時間で進行する行程であるから、
ギャバンの場合の蒸着所要時間の0.05秒というのは、
この変身コード発声から蒸着完了までの総時間ということになります。

一方、ゴーカイジャーの場合はレンジャーキーをモバイレーツないしはゴーカイセルラーに挿入して
認識させなければ自動変身システムが起動しないので、
一定時間で進行する行程はレンジャーキー挿入時から変身完了までの時間ということになり、
0.1ミリ秒というのは、この部分の所要時間を指すと思われます。

実際、関ナレーションの後の繰り返し場面は
ギャバンの場合は「蒸着!」というコールをする場面から始まっているのに対して、
ゴーカイジャーの場合はモバイレーツからエネルギー体が飛び出してくる場面から始まっており、
それぞれその場面から変身完了までの所要時間が0.05秒と0.1ミリ秒ということを言いたいのでしょう。

この両者の行程を見比べると、
ゴーカイジャーの場合はレンジャーキーを認識した変身アイテムから飛び出した変身エネルギー体が
ダイレクトに変身者の身体に飛び込んでスーツとなって装着されるのだが、
ギャバンのような宇宙刑事の場合は遥か上空の母艦で変身コードを認証してから
コンバットスーツの粒子を遥か上空から地上に電送するという手間がかかっています。
どうしてもその分のタイムラグが多少は生じてギャバンの場合は0.05秒かかってしまうのでしょう。
むしろ、これだけややこしい手順でよく0.05秒で済んでいるものだと驚きます。
シャリバンやシャイダーの1ミリ秒となると、もはや驚異というしかない。
しかしゴーカイジャーの0.1ミリ秒というのも、いくらダイレクト変身だといっても驚くべき速さです。
結局、どっちの技術が凄いのかというと、両者ともに甲乙つけ難いということになります。

ただ現実に表れた数値的にはゴーカイジャーの方がダイレクト変身である分、
ギャバンよりも500倍も速い変身になっているのは間違いない。
しかし、これは自動変身行程の所要時間の比較に過ぎないのであって、変身時間トータルの数値ではありません。

ギャバンの場合は単に「蒸着!」という変身コードを口にするだけで自動変身行程が起動しますから、
自動変身行程の起動までに費やす時間がほぼ1秒ほどで済むが、
ゴーカイジャーの場合はバックルか懐からレンジャーキーを取り出してカギ型に変形させて
「豪快チェンジ!」とコールしてモバイレーツに挿し込むまで、
フルバージョンでは3秒程度、簡略した形でも1秒ほどはかかります。
結局、両者とも変身するために必要な時間はあまり変わらないといえます。

しかしともかくギャバンにしてもゴーカイジャーにしても、
画面上で実際に経過している時間よりはかなり短い時間で変身行程を終えているのは間違いなく、
マーベラスとギャバンが拳をぶつけ合って戦闘開始の合図をしてからギャバン変身完了までおよそ3秒、
そこからゴーカイジャー変身完了までおよそ3秒、
合計6秒ほどで7人全員が変身を完了したことになります。

その気になれば両者とももっと早く変身することは可能であり、
簡略した形で同時に変身すれば7人全員の変身完了まで1秒というのも可能でしょう。
だが、ここは決戦前の様式美、そしてたった一度の記念すべき宇宙海賊と宇宙刑事の共闘ということで、
あえてフルバージョンを両者順番に披露し合うという形にしたのでしょう。

となると、ここは様式美重視ですから当然、「変身」の次は「名乗り」ということになります。
まずはマーベラスが「ゴーカイレッド!」といつものように名乗りを上げ、
続いてジョーが「ゴーカイブルー!」、ルカが「ゴーカイイエロー!」、
ハカセが「ゴーカイグリーン!」、アイムが「ゴーカイピンク!」、
そして鎧が「ゴオオオオカイ!シルバアアッ!」と派手めの名乗りをいつも通りに決め、
最後に6人で「海賊戦隊!ゴーカイジャー!!」と全体名乗りを決めます。
そして間髪入れず、ギャバンが身体を左に振ってから立ち上がりながら
「宇宙刑事!ギャバン!」と7人目の名乗りを決めたのでした。

これで戦闘前の儀式は終わり、マーベラスはクルクルッとゴーカイガンを回して構えると
「派手にいくぜぇっ!」と啖呵を切ってアシュラーダ部隊に向けて発砲しながら歩き出します。
同時にマーベラス一味の仲間達とギャバンもマーベラスと並んで同じように発砲しながら歩きだし、
更に背後で恒例の謎の爆発によって立ち上がる火花を背負って7人は「うおおおおおお!!」と駆け出して、
アシュラーダ部隊に突っ込んでいったのでした。

そして、ここのマーベラス達が発砲して歩き出したところで流れ始めたBGMは、
遂にここで満を持して「ギャバン」TV本編の主題歌「宇宙刑事ギャバン」です。
この映画のキーワードともなっている「あばよ涙、よろしく勇気」の歌詞のある例の曲です。
しかもインスト版ではなく串田アキラ氏のボーカル入りです。これは燃えます。

この名曲「宇宙刑事ギャバン」の流れる中、
7人はアシュラーダ率いるザンギャック部隊と激突、乱戦に突入していきます。
まずはゴーミン軍団をゴーカイジャーの6人がゴーカイサーベルとゴーカイガン、ゴーカイスピアで蹴散らしていき、
ギャバンはゴーミン達を「ジュウウッ!」と大立ち回りで蹴散らします。
ちなみにこの掛け声、本当は「宇宙刑事」の「うちゅう」からとって「チュウッ!」と言っているそうですが、
「ジュウウ!」としか聞こえないので「ジュウ」や「ジュオオ」と表記させてもらっています。

そして、更にここでギャバンは敵に向かって飛び込んで両腕でパンチを放ちながら体当たりしていく技
「ディメンションボンバー」を繰り出して大勢のゴーミン達を一気に倒していきます。
こういう細かい技名でもしっかり叫ぶのがギャバンの特徴、というか昭和ヒーローの特徴です。
一方ゴーカイジャーは決め技のファイナルウェーブでも技名は叫ばないことも多々あります。
このあたりは時代の差というものでしょう。

しかし、やはり魔空空間とは違い、
現実空間ではゴーカイジャーとギャバンはゴーミン程度は軽く圧倒していくのであり、
ここに来ていかにもスーパー戦隊シリーズらしい胸のすくようなヒーロー無双アクションとなります。
ただ、アシュラーダの引き連れてきたゴーミン達はかなり多いので、
倒しても倒しても新手が繰り出されてきます。
それこそまさにヒーローの見せ場というやつで、
ここでマーベラス達はゴーカイジャーアクションの極致を繰り出します。

ゴーカイジャーのアクションといえば34のスーパー戦隊への豪快チェンジ、
つまり多段変身が最大の特色ですが、
それに次ぐ特徴的アクションといえば、互いの武器を交換しながら戦うアクションです。
ここではまず、その武器交換アクションが披露されます。

この「ゴーカイジャーVSギャバン」という映画は1月下旬公開の「スーパー戦隊祭」の上映枠の映画です。
これは例年のスーパー戦隊シリーズTV本編の最終話直前時期にあたり、
つまり戦隊の場合は物語終盤時期に冬映画が上映されるのです。
これは「ディケイド」以降のライダーにおける夏映画と時期的には相似関係にあります。

そのライダー夏映画の場合は物語終盤の劇場版ということで作品的な集大成という位置づけとなっているといえます。
あくまでストーリー的な集大成はTV本編の最終話を含むクライマックス篇で描かれますが、
その作品のコンセプト的な意味での1つの集大成が夏映画で描かれる傾向にあるといえます。
そういうわけで、ライダー夏映画はその作品の重要な要素が全部ぶち込まれることになり、
アクションも集大成アクションとなります。

例えばW劇場版では全フォームに連続チェンジして戦ったり、
オーズ劇場版も全コンボが一斉登場して同時に必殺技を放ったり、
フォーゼ劇場版も全ホロスコープスス相手に全アストロスイッチを連続使用して戦ったりしました。
これらは集大成であると同時に、多分に作品の最終盤における「カーテンコール」的な意味合いがあると思われます。
要するに最後だから良いものはもう1回全部見せておこうというような感じです。

戦隊の冬映画も時期的にはそういうことをやりたくなる時期の作品なのですが、
戦隊冬映画の場合は「VSシリーズ」なので、
前年戦隊とのコラボという意味で3月リリースのVシネマ時代から固定のフォーマットがあります。
それは当然、2つの戦隊のコラボ感を盛り上げる方向性のものであり、
片方の戦隊の集大成的な方向性ではない。

例えばライダーのようにTV本編で登場した現役戦隊のアクション要素を全部一気に投入するよりは、
むしろ前年戦隊との合同技や同じ色同士のコンビ技など、
TV本編とは違う変則技の方が重視されるといえます。
だから、戦隊冬映画は時期的には集大成アクションが見たいところなのですが、
どうしてもそれが十分に出来る環境にはなかったといえます。

だが「ゴーカイジャー」の場合は実質的な「VSシリーズ」は春映画でのゴセイジャーとの競演で済ましており、
この冬映画は一応タイトルに「VS」の文字は入っていますが、
ギャバンとのコラボの場合は「戦隊VS戦隊」のフォーマットには縛られることはない。
実質的にはギャバンをゲストに迎えた上でゴーカイジャーの単独映画を作っているようなものであり、
ライダー夏映画とほぼ同じ条件といえます。

まぁライダー夏映画のように明確に集大成的な内容ではなく、
むしろ内容的にはTV本編クライマックス篇直前の挿話的な内容なのですが、
よくよく内容を読み込んでいくと確かに集大成的でもあります。
そしてアクションに関しては比較的分かりやすく
「ゴーカイジャー」という戦隊のアクションの集大成的なものを目指しているようです。
ここで武器交換アクションを魅せ、更に後で多段変身も魅せてくれます。

しかし後で描かれる多段変身の方は集大成にしては控え目といえます。
これはつまりここからのTV本編のクライマックス篇の方で
多段変身の集大成は別に用意してあるということでしょう。

この映画公開時の「ゴーカイジャー」TV本編は第46話まで消化しており、
最終話である第51話まで残すところあと5つのエピソードであり、
既に第46話でバスコの持つ分を除く全ての「大いなる力」を手に入れたマーベラス達に残された戦いはあと2つです。
1つは「大いなる力」を全て揃えて「宇宙最大のお宝」を手に入れるためのバスコとの最終決着の戦い、
もう1つはやがて地球に到着するザンギャック大増援軍を率いたアクドス・ギルとの地球の運命を賭けた最終決戦です。

このうちバスコとの決戦は、相手のバスコが戦闘員を持たない一匹狼である点や、
マーベラスとの深い因縁がある点を考えると、
マーベラスとバスコの一騎打ちで決着する可能性が高く、
アクドス・ギルとの最終決戦に関しては地球の運命が懸かっているだけに、
おそらく34のスーパー戦隊の力が関与した戦いになることが予想され、
このアクドス・ギルとの戦いにおいて多段変身の集大成的な演出があることが予想できます。

一方、武器交換アクションに関しては、
この予想においては、バスコ戦、アクドス・ギル戦のいずれにも目ぼしい見せ場が無さそうです。
そこでクライマックス5篇の直前エピソードであるこの映画では、
アシュラーダ部隊との戦いでまずはこの武器交換アクションをしっかり集大成的に描こうという趣向のようです。

武器交換そのものは「ゴーカイジャー」TV本編で1年間通してコンスタントに描写されてきましたが、
そのほとんどは単に鎧以外のマーベラス一味の5人が手持ちの武器をポ〜ンと上に放り投げて
他の者にパスするような簡単な描写になっており、
武器交換そのものがアクロバティックなアクションになっているという意味での
真の意味での「武器交換アクション」で、
しかも5人揃って流れるように魅せるものは
第1話と第2話のパイロット篇で披露して以降はありませんでした。

つまりは、作品のお披露目ということで特にアクションに力を入れるパイロット篇が特別であっただけで、
あそこまで凝った武器交換アクションは「ゴーカイジャー」TV本編エピソードでは
通常はやらない方針であったのでしょう。
そこまでやらなくても十分に「ゴーカイジャー」という作品のアクションはハイレベルなものだったので、
その判断で良かったのだと思います。

そのパイロット篇だけの特別にアクロバティックな武器交換アクションがこの映画でこの場面で再び披露されます。
全く同じものではありませんが、ほぼ同レベルに凝ったものであり、
最初のお披露目で魅せたものをこうして最終盤の劇場版で再び披露するというのは、
まさにこの「ゴーカイジャー」という作品のカーテンコールに相応しいといえます。

その武器交換アクションはここではまさにパイロット篇の時のように流れるように披露されます。
まずマーベラスがゴーミンに向かって「はぁっ!」と斬り下ろした左手のゴーカイサーベルを
「ルカ!!」と叫んで放り投げると、
そのゴーカイサーベルは少し離れた場所で戦っていたルカの背後にいたゴーミンの胴体に深々と突き刺さります。

マーベラスの呼びかけに反応して振り向いたルカはゴーミンの身体に刺さったサーベルを見て、
「あいよぉ!」と威勢よく応えながら自分のゴーカイサーベルを握った左手で
ゴーミンの身体に刺さったマーベラスのサーベルの柄を握って引き抜いて
2つのサーベルを得意の双竜刀スタイルに合体させつつ、
サーベルを引き抜いた反動でその場でスピンして一回転すると、
「ハカセ!!」と叫んで右手のゴーカイガンを上に向かって放り投げます。

すると建物の上で戦っていたハカセは「ありがと!」と礼を言いながら
右手に握っていたゴーカイサーベルを素早く左脇に挿し込んで、
自分のゴーカイガンを持つ左上腕部と左脇腹の間で挟み込み、
空になった右手でルカのゴーカイガンを受け取って得意の二丁拳銃スタイルにチェンジすると、
「ほい!」と左上腕部を左脇腹から離してゴーカイサーベルを自然落下させて
「よっ!」と左脚で蹴り飛ばします。

ハカセが自分のゴーカイサーベルを蹴り飛ばした先はその建物の下で戦うジョーのところでした。
ジョーはルカがハカセにゴーカイガンを放り投げた時点で
次はハカセが自分に向けてゴーカイサーベルを蹴ってくることが既に予想出来ていたようで、
ハカセがゴーカイサーベルをキックすると同時に
「アイム!!」と呼びかけながら左手のゴーカイガンを素早く近くで戦うアイム目がけて放り投げていました。
そうして右手のゴーカイサーベルを構えて周囲のゴーミン達を威圧しながら、
空になった左手を後ろに向かって伸ばして、ハカセが蹴ってきたゴーカイサーベルを背面キャッチして、
得意の二刀流スタイルとなります。

そのジョーが投げたゴーカイガンをアイムは
ゴーカイサーベルを持った右手とゴーカイガンを持った左手で「はっ!」と挟んでキャッチし、
一瞬両手が塞がったアイムは回し蹴りでゴーミンを吹っ飛ばしながらスピンしつつ、
左手に2つのゴーカイガンを握り込み、
スピンで勢いをつけて「マーベラスさん!」と叫んで
右手のゴーカイサーベルをマーベラスに向かって投げつけると、
左手から右手に1つゴーカイガンを持ちかえて得意の二丁拳銃スタイルとなります。

最初にルカにゴーカイサーベルをパスした後は少しの間左手のゴーカイガンだけで戦っていたマーベラスは、
このアイムのゴーカイサーベルを右手で受け取って、元の最も得意なスタイル、
すなわち右手にゴーカイサーベル、左手にゴーカイガンという海賊スタイルに戻り、
「はぁっ!」とゴーミン達を斬り倒すと突っ走っていきます。

そして、ゴーカイジャー6人の中でただ1人この武器交換に加わっていなかった鎧は
「おおりゃあ!」とゴーカイスピアを振り回してゴーミン達を倒していきます。
鎧の場合は手持ち武器が槍型のゴーカイスピアだけであり、
そもそもマーベラス達の武器交換には参加出来ないのです。
しかし鎧はめげる様子もなく「俺はぁ!スピア一筋!ギンギンにいくぜぇっ!!」と張り切って
周囲のゴーミン達をスピアで薙ぎ倒すと、新たな獲物を求めて駆け出していくのでした。

それにしても、こうして改めてマーベラス一味の武器交換アクションを見ると、
剣と銃を同時に使うために両手が塞がるという
ゴーカイジャーのアクション面の制約を逆手にとって面白いことを思いついたものだと感心します。

両手が塞がっているわけですから、
仲間から武器をパスされた時にまともにそれをキャッチすることが出来ないわけで、
更に自分が他の仲間に武器を送る動きにも支障が生じることになるのです。
そうした制約があるからこそ、それを解決するためにアクロバットな動きをする必要が生じるのであり、
その自然に生じてくるアクロバットな動きが見ていて楽しい見せ場になるわけです。

これは実は「歴代戦隊を登場させなければいけない」という制約を抱え込んだ状態でスタートした
「海賊戦隊ゴーカイジャー」という作品そのものが抱えた構造と相似だといえます。
この作品もまた、その元来持たされた制約をアクロバットによって強みに変えて魅せてきた作品なのであり、
武器交換アクションはそれを象徴するものであったのかもしれません。

さて一方、ギャバンの方はどうしていたのかというと、海辺の広場で「ジュウウッ!」と殴って蹴って、
ゴーミン達を蹴散らしていました。
そのギャバンがゴーミン達を片付けたところで「あっ!」と驚いて斜め上を見上げました。
その視線の先には何かが勢いよくギャバン目がけて飛び込んできます。
それはブートレグでした。
ブートレグがギャバン目がけて飛び蹴りを繰り出してきていたのです。

これに対してギャバンも即座に反応し、「とおおおっ!」と拳を突き出し、
ギャバンのパンチとブートレグのキックが空中で激突します。
やはり能力が互角であるのでこれは相討ちで互いの攻撃の勢いが相殺され、
ギャバンの拳を弾き飛ばしたブートレグの方も後方に飛ばされ、
回転して着地してギャバンとブートレグは互いの攻撃の届くか届かないかギリギリの間合いで
一瞬対峙することになりました。

やはりアシュラーダはギャバンに対しては最大の難敵であるブートレグを差し向けてきたようです。
ただ、難敵とはいってもブートレグはギャバンの能力をコピーしただけですから
能力的には互角で持久力で優っているに過ぎない。
魔空空間に引き込むことが前提ならばギャバンにとって強敵ですが、
現実空間で戦う分にはブートレグは長期戦に持ち込まねばギャバンを倒すまでには至らないはずです。

つまりアシュラーダはブートレグを使ってすぐにギャバンを倒そうとしているわけではない。
むしろブートレグのギャバンと全く互角の能力を使ってギャバンを膠着状態に追い込み、
当面は足止めすることが狙いであるようです。

ギャバンは互角の能力を持つブートレグを倒すことは出来ない。
戦えば必ず膠着状態に陥る。
そのことは先般の体育館の戦いでアシュラーダは確信していました。
だからここでも同じ結果になると読んでいます。

一方ギャバンの方は今度こそブートレグを倒す機会が到来したと張り切り、
ブートレグに一騎打ちの勝負を誘うように駆け出し、
追いかけてくるブートレグと共に倉庫の壁をぶち破って中に飛び込み、
「ぬおおおっ!!」と激しい肉弾戦に突入していったのでした。

ここで、BGMがこれまで流れていた「宇宙刑事ギャバン」から「ゴーカジャー」TV本編の主題歌
「海賊戦隊ゴーカイジャー」のボーカル入り版に変わり、
場面もマーベラス一味6人の戦闘シーンに変わります。
ここは武器交換を終えてそれぞれ最も得意な戦闘スタイルとなったマーベラス一味の面々の
無双アクションを堪能する場面であり、
やはり「ゴーカイジャー」という作品の集大成的意味合い、カーテンコール的意味合いで、
マーベラスの口癖である「派手にいくぜ!」の変形バージョンが
他のメンバーによって唱えられるという趣向になっています。
なお、この「派手にいくぜ」の変形バージョンを唱えるという趣向そのものは
「ゴーカイジャー」TV本編でもこれまでにもしばしば試みられていることです。

まずはルカが狭い高所で二刀を手にして宙返りを決めるという、
地味ではあるもののかなり難易度の高い、さすがは中の人が蜂須賀さんと唸らされるアクションを決めるなど、
いかにもルカらしい身軽なアクションで「ほっ!」とおどけつつ高所を跳び回り、
ゴーミン達を斬って突き落としていきます。
そして威勢よく「派手にやるよぉっ!!」と叫んで大きく跳び上がり、
そのままゴーミン達の驚いて見上げる中、地上まで飛び降りて着地し、
二刀流で円を描いて舞うようにゴーミン達を斬り倒していきます。

別の場所では倉庫の高い建物の外付けの各階の非常階段に陣取ったゴ